物流を止めるな
コロナショックは従来の経済ショックと異なる面があります。大恐慌やリーマンショックなどは金融の混乱で消費が委縮したことで起きた需要ショックと言えますが、70年代の2度の石油ショックは石油の供給不安からの供給ショックと言えます。第三次オイルショックエントリーで指摘したように、需要ショックに対しては所謂ケインズ効果を狙った財政出動で需給ギャップを埋める政策が合理的です。一方供給ショックに対しては、需要喚起するとインフレが進んで経済を圧迫しますから、基本的には市場に委ねて需給調整するのが合理的です。その意味では総需要抑制策で市場調整を促す政策に合理性がある訳で、実際日本では福田政権でそれを実証している訳です。
コロナショックはロックダウンや行動制限などによる需要の蒸発という意味では需要ショックですが、一方で医療や物流などの供給側に供給制約を課す供給ショックの側面もあります。それ故に各国政府の対応も混乱した訳ですが、需要ショックの側面で見れば、旅行や外食が需要蒸発した一方、巣篭り需要で食品スーパーや電子商取引(EC)に需要シフトした訳ですから、経済セクター毎に影響はまだら模様で、またそのことが給付金を巡る混乱や不正などに繋がった訳です。勿論医療も影響を受けますが、初期に複数の医療機関でクラスター感染が発生したこともあり、一般診療は激減した一方、PCR検査やコロナ診療やワクチン接種という特需も享受しています。そんな中で考えさせられるこのニュース。
医療費、再び過去最高に 21年度4.6%増の44.2兆円:日本経済新聞検査精度の高いPCR検査ですが、何故か日本では忌避論が言われました。出所はどうやら厚労省の医系技官らしいんですが、なるほどPCR検査はそれなりにコストがかかりますから、医療費の膨張で財務省からつつかれるのを嫌がったってことだとつじつまが合います。ぶっちゃけ保身ですね。
一方でコロナ病床確保の補助金を受け取りながらコロナ患者を受け入れない病院の問題などが報じられましたが、陰圧室や別棟で専門スタッフを置くといった対応が出来なければ院内感染の恐れがある訳で、受け入れが難しいのも確かです。だからコロナ受け入れを大病院に集約して専門スタッフも集約するということが必要でしたが、それだとコロナ関連の補助金が小規模病院に行き渡らない訳で、医師会がいい顔しない訳で、本来その辺を差配すべき医系技官がまともに働かなかったってことですね。
というう具合にコロナによる経済ショックは一筋縄ではいかない訳で、ある程度混乱はやむを得ない部分はあります。但し一方で疫学データも出揃ってきているのですから、経過観察期間の短縮や行動制限緩和や海外からの入国制限の緩和なども必要に応じて行うこと自体は必要な事なんですが、それに伴う見直しの根拠に完成手は納得のいく説明がされていないし冬に予想される第8波の備えもはっきりしないという状況です。
物流の混乱は主にアメリカのコロナ感染拡大に伴う港湾労働者の人手不足が原因ですが、裏には港湾労働者を含む低所得労働者の感染爆発がある訳で、それに加えてECの拡大による巣篭り需要で、主にアジア地域からの輸入が増えて西海岸のロスアンジェルス港やロングビーチ港にコンテナ船が殺到して、荷役が進まないから沖合待機させられて、世界中の海運が滞る事態になった訳です。つまり需要の拡大に供給が追い付かないという意味での供給ショックが起きた訳です。ちなみにアメリカの対中貿易赤字も拡大していますから、米中デカップリングどこ吹く風の現実が垣間見えます。その意味でこのニュースは結構重大です。
米国、鉄道スト警戒強まる 長距離路線はキャンセルに:日本経済新聞スト自体はバイデン大統領の仲介で回避されましたが、実施されれば国内物流の30%を分担する鉄道貨物が止まる訳ですから、その影響はかなり大きい訳です。故に大統領が仲介して事なきを得ましたが、鉄道各社は従業員の賃上げや待遇改善を約束されました。当然運賃へ波及しますからインフレを助長しかねない訳ですが、賛否は分かれます。
トランプ時代にデタラメだったコロナ対策を立て直して経済を回復させたものの、その結果賃金上昇でインフレが止まらない事態を招いている訳ですが、何もしなければより大きな経済ショックを招きかねない中で、批判を覚悟の決断だったと思います。こういうことが所謂政治決断というやつで、目先の批判は受け入れるけど信念を以て動くというのは日本ではなかなか見られないことではあります。逆に政治家が邪魔して要らぬ災難を招く例は枚挙に暇はありません。
KADOKAWAの角川歴彦会長を逮捕 五輪汚職、贈賄容疑:日本経済新聞アンダーコントロールのウソで招致し、旧国立競技場や都営霞ヶ丘住宅を解体して神宮の森を利権まみれにしてコロナ禍で無観客で経済効果無しの東京五輪ですが、出るわ出るわの五輪利権汚職です。被害者や国民だということは忘れてはいけません。スポーツ界からは札幌五輪招致への影響を危惧する声が聞こえますが、そういう問題じゃないだろ(怒))。一応予定では北海道新幹線札幌開業のタイミングですから、北海道としてもやりたいでしょうけど、その前に北海道新幹線の並行在来線問題が未解決なのは衰退途上国の在り方l で指摘しましたが、続報が出ました。
青函の貨物維持、国主導でJR貨物・JR北海道と協議へ:日本経済新聞これは並行在来線引き受けを巡る自治体との協議とは別に、現実的な落としどころを探る動きです。現実問題として船舶へのシフトは難しいし、また例えば同島産のジャガイモはJR貨物で熊谷貨物ターミナルに運ばれてそこから仕向け地にトラック輸送される形で物流倉庫などが整備されている訳で、船舶シフトは受け入れる関東側のインフラも整備する必要がある訳です。JR貨物がみずほ総研に依頼した試算の経済損失は主に北海道の話ですから、こうした需要地側の経済損失もまた考える必要がある訳です。
また同試算で並行在来線三セクが毎年30億円規模の赤字ということもあり、自治体の協議がフリーズしている状況を打開する必要もあります。資産に貨物調整金が反映されているかどうかは定かではありませんが、財源は新幹線リース慮負担後のJR旅客会社の受益分ですから、元々収益性の弱い北海道新幹線では十分な負担が出来ない可能性はあります。実際北陸新幹線金沢開業でサイダーバードの富山乗り入れが無くなったのも、JR西日本の負担能力でカバーしきれない結果と言える訳です。
国が動いたことで、国交省は鉄道貨物を残す方向性を明らかにした訳ですが、北海道庁は動く気配がありません。沿線市町村だけでは毎年30応円の赤字を出す並行在来線三セク鉄道について協議しろと言っても無理ですし、国が助け船を出すとしても交通政策基本法の趣旨に照らせば地元からの働きかけが無いと動けない訳で、道が取りまとめに動くのが望ましいのですが、目先の経済損失よりも五輪招致の方が大事なのかな?だとすればそんな道知事や道議は落選させるべきです。道(どう)が道(みち)を誤らないことを祈ります。
| Permalink | 0
「スポーツ」カテゴリの記事
- 国際問題になった東京五輪の落とし物(2023.09.17)
- 東京五輪の落とし物(2023.04.29)
- 怪運国債米国債と欧州劣つ後-!(2023.04.02)
- 怪運国債市場の蓋(2023.02.11)
- 物流を止めるな(2022.09.17)
「ニュース」カテゴリの記事
- 遅れるのは万博だけじゃない(2023.12.03)
- 人口減少は核より怖い(2023.11.26)
- 勤労感謝にAIは勝つ?(2023.11.23)
- サルとロバの法螺吹き合戦(2023.11.18)
- ユニコーンの馬脚(2023.11.11)
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 遅れるのは万博だけじゃない(2023.12.03)
- 人口減少は核より怖い(2023.11.26)
- 勤労感謝にAIは勝つ?(2023.11.23)
- サルとロバの法螺吹き合戦(2023.11.18)
- ユニコーンの馬脚(2023.11.11)
「鉄道」カテゴリの記事
- 遅れるのは万博だけじゃない(2023.12.03)
- 人口減少は核より怖い(2023.11.26)
- 勤労感謝にAIは勝つ?(2023.11.23)
- サルとロバの法螺吹き合戦(2023.11.18)
- ユニコーンの馬脚(2023.11.11)
「JR」カテゴリの記事
- 遅れるのは万博だけじゃない(2023.12.03)
- 人口減少は核より怖い(2023.11.26)
- サルとロバの法螺吹き合戦(2023.11.18)
- ユニコーンの馬脚(2023.11.11)
- 笑う鬼退治(2023.11.04)
「ローカル線」カテゴリの記事
- 遅れるのは万博だけじゃない(2023.12.03)
- 人口減少は核より怖い(2023.11.26)
- ユニコーンの馬脚(2023.11.11)
- 欧米の対テロ戦争回帰(2023.10.14)
- インフレは続くよどこまでも(2023.10.01)
「第三セクター鉄道」カテゴリの記事
- 勤労感謝にAIは勝つ?(2023.11.23)
- ユニコーンの馬脚(2023.11.11)
- 笑う鬼退治(2023.11.04)
- 減税くそメガネ(2023.10.22)
- インフレは続くよどこまでも(2023.10.01)
「都市間高速鉄道」カテゴリの記事
- 遅れるのは万博だけじゃない(2023.12.03)
- 人口減少は核より怖い(2023.11.26)
- サルとロバの法螺吹き合戦(2023.11.18)
- ユニコーンの馬脚(2023.11.11)
- 笑う鬼退治(2023.11.04)
「鉄道貨物」カテゴリの記事
- 戦争とインフレ(2023.10.08)
- インフレは続くよどこまでも(2023.10.01)
- 中国バブル崩壊を喜ぶ大人たち(2023.09.24)
- エッセンシャルワーカーが足りない(2023.07.22)
- オリガルヒの叛乱(2023.07.02)
Comments