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Sunday, September 11, 2022

衰退途上国の在り方

NISAホイサッサの迷走ぶりは、確定拠出型年金でも同様です。

「放置年金」5年で7割増2400億円 運用機会111万人逃す 転職時手続き忘れ、現金で管理
企業向け確定拠出年金(DC)は鳴り物入りで導入されたものでアメリカの制度に倣った「日本版401k」とも呼ばれました。確定給付型企業年金が厚生年金の受託分を含めて企業の自主運用で従業員に給付額を約束するのに対して、DCは拠出額が決まっていてその範囲内で従業員が自ら選んだ投資商品で運用する仕組みで、アメリカでは定着した仕組みで、転職しても転職先で続けられる可搬性のある個人主体の制度として期待されましたが、採用企業は限られ、転職先がDC不採用だったり、早期リタイアで自営若しくは未就業となった場合は、個人向け確定拠出年金(iDeCo)へ変更するか解約して現金化する必要がありますが、それが放置されているケースが多く月額52円の事務手数料が引き落とされてしまうというもの。やはり制度が理解されず迷走している訳です。

こういうことが日本では多いと感じます。政府の統治システムの劣化を感じさせます。コロナ問題でも分科会での専門家の意見集約もないままに、全数検査を無くし陽性者の待期期間の短縮を打ち出すなどしてますが、何れも実務上の調整項目が多く、政治判断だけで出来る話じゃありません。実際専門家からは懸念の声が出ていますし、実際感染者数も減っているとはいえ高水準ですし、何より死亡者数が多い点は問題です。それも自宅療養中の重症化とか、明らかに医療の包摂が出来ていない中で起きている点は重大です。

国民の命を軽視する一方、国葬はやるという姿勢を崩しません。これも正確には国葬儀であって戦前の国葬とは別物と説明されてますが、それならなぜ国会に諮らなかったのか、司法の見解を確認しなかったのかが問題です。国会で多数派なんですから、最終的には実施する方向で採決できるし、司法が待ったをかける可能性も低いのに、内閣府設置法を根拠に国事行為を閣議決定で決められるとしたところが問題なんです。法的根拠のない国事行為を内閣が勝手にやるということですね。

実際世論調査では反対が多数派ですし、特に旧統一教会問題で安倍元首相がキーマンと見られていることで、このまま知らぬ存ぜぬで押し切ろうというのですから無責任です。他人の死を利用しようという意図が見えます。そしたら英エリザベス女王の死去のニュース。こちらは慣習法の国の国家元首の話ですから当然のように国葬が行われます。エリザベス女王の時代はイギリスの衰退の歴史を刻んだ訳ですが、逆にアベノミクスでインチキ成長戦略の安倍元首相の国葬儀が霞みます。「悼む人がいるんだから反対するな」というのも、おかしい訳で、政府が国費を投じて行う儀式である以上、反対派を説得する責任があります。

日本の失われた30年ですが、90年代半ば以降の生産年齢人口の減少による潜在成長率の低下が構造問題としてある訳で、それに対して適切な資本装備の強化ではなく非正規雇用の拡大で賃金抑制を図った結果、国民の購買力を低下させた結果が現在な訳で、小泉改革からの一連で事態は悪化の一途を辿っています。ドル円も140円を突破して輸入物価上昇が明らかに消費にブレーキをかけているのに日銀は動けないという形でアベノミクスの負のレガシーに苦しめられている訳です。

人口動態の変化は現役世代にとっては雇用面でメリットの筈ですが、実際は非正規雇用の拡大で労働市場が分断された結果、正規雇用者の賃金抑制も起きている訳ですが、とりあえず新卒の就職難がないことで若者の現状維持の心理からか保守化しているという現状です。アメリカではオキュパイ・ウォールストリート運動のように若者ほどリベラルな傾向があり、保守層は中高年白人男性とヒスパニック系反共主義者が中心という状況です。これはこれで深刻な分断ではありますが、日本では分断というよりも統治機構の劣化の影響の方が大きい気がします。

だから役に立たない成長戦略で空回りしていて、NISAもDCも外国の制度を参考にするの悪くはありませんが、それで不具合があれば見直してブラッシュアップしていくことが必要なのに、省庁の壁や政治家の身勝手でおかしくなっている訳です。そんな中で、来週には飛べないジョナサンが走ります。長崎は狭軌だけだった時点で軌間可変車両の開発は挫折すると予想しておりましたが、その通りになりました。結果的にスーパー特急からフル規格に変更した武雄温泉以西の整備区間が孤立状態で開業することになりました。特急かもめリレー号で武雄温泉でホームツーホームの乗換とはなりますが、乗換なしの九州急行バスがほくそ笑んでいるでしょう。新鳥栖—武雄温泉間のフル規格事業化は佐賀県の反対と財源問題で当面見込めません。

幸いなのは並行在来線となる長崎本線肥前山口―諫早間は、当面上下分離で」JRが運航継続となっておりますが、肥前鹿島までは博多からの特急列車運行のために電化路線が残りますが、一方肥前鹿島以西は電化設備を撤去してキハ40系のローカル列車だけとなります。九州新幹線の並行在来線の肥薩オレンジ鉄道ではJR貨物が出資することで電化設備を維持しましたが、貨物は既にJR貨物がトラック輸送に切り替えたため問題になりませんでしたが、事業の見直しが出来ないままの泥縄対応です。

そして並行在来線問題では北海道新幹線の並行在来線となる函館本線新函館北斗―長万部間の存続問題がネットを賑わせています。現時点で地元自治体は引受を表明せず、北海道庁も動いておりませんが、引受のハードルは高く、年30応円程度の赤字必至ですから、何らかの公的助成なしには実現できません。東北や北陸では貨物調整金と称する引受三セクが受け取る金額とJR貨物が負担する金額との差額を新幹線リース料に上乗せする形で対応しましたが、その結果北陸ではサンダーバードの金沢打切りと新幹線つるぎの運行という落としどころとなりました。

一方JR貨物の依頼で貨物廃止の場合の経済損失はみずほ総研の試算で1,453億円と弾き脱されており、特に北海道産農産品の天候ん左右されない市場アクセスインフラとして重要です。ザックリ2%強の負担で経済損失を回避できるんですから経済合理性はありますが、協議が進む気配はありません。対案として国交省で検討されたのが船舶輸送への置換えですが、そうすると天候に左右されますし、室蘭港にしろ苫小牧港にしろキャパシティに余裕はなく、また輸送時間も伸びると予想され断念されます。道内から積み出し港までのトラック輸送もドライバー不足で難しくなっておりますし。

あと民間で構想として検討されているのが第二青函トンネルですが、多額の公費投入が不可避なだけに、費用便益分析のよるB/C比がどうなるか不明です。ということで、当面は何らかの公的助成で並行在来線を残すのが最も現実的な解になる訳です。それと東北新幹線の並行在来線IGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道も減収となります。とはいえ貨物のために地元負担を求めるのは難しい訳で、おそらく国交省では落としどころを考えていると思います。

あくまでも予想ですが、当該区間の鉄道・運輸機構によるJR北海道からの買い取りで貨物専用線として存続させることは考えていると思います。一応2025年までに結論を出すことになっておりますので、ギリギリのタイミングで官邸へ上げて政治判断を引き出すということになると思います。これはこれで泥縄ですが、経済合理性から考えてこれしかないでしょう。その場合三セクによる旅客輸送は無くなります。

その上でJR北海道への売却代金の財源として機構がJR北海道へ融資している債権の棒引きで対応すれば敢えてこのための予算もいりません。似たようなことは債務の株式化(デッド・エクイティ・スワップ)の形でJR北海道株式の引受は行われております。JR北海道は売却代金を新千歳空港新ターミナル乗り入れに伴う線路付け替えなどの事業費に充てることで経営基盤を強化して、あわよくば株式上場ということになるでしょうか。その際JR九州のように経営安定基金の取り崩しを行って減価償却前倒しと言ったシナリオを考えている可能性はあります。そうすれば株式化された債権の元もとれますし。

こううまくいくかどうかはともかく、経済合理性を無視した貨物廃止は考えにくいところです。尤も経済合理性を無視してフル規格化した西球種新幹線や北陸新幹線の小浜京都ルートのような経済合理性無視がたびたび起きていることもまた事実ですが、こうして経済活性化どころか衰退を早めるとすれば国民として不幸なことです。統治の劣化が進む現状から言えばあり得ない話じゃないことが怖いですが。衰退途上国として賢く縮むことは重要です。

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