« 円安の不都合な真実 | Main | ドルは我々の通貨だが »

Saturday, October 15, 2022

栗鼠殺し?

三浦半島全域に生息域を広げた外来種のタイワンリスを餌付け禁止から害獣として駆除にシフトするという話ではなくて、最近「リスキリング」という単語が新聞の見出しに目立ちます。ということでタイトルのような連想をしてしまいます^_^;。

再教育の意味だそうですが技術革新で労働者のスキルと企業が求めるスキルにズレが生じており、所謂雇用のミスマッチを解消しようということで、特に日本ではITエンジニアやデータサイエンティストが手薄ということもあり、ミスマッチ解消で生産性を高めて賃金アップに繋げたいとい「あたらしい資本主義」の最優先課題として人材投資が叫ばれているという文脈ですが、誰が誰に何を教えてどんな成果を期待しているのかは不明です。

70年代に資本金1億円以下の中小企業で社会人キャリアをスタートさせた私自身は文系に属しますが、数学は得意科目でしたし、また会社のオフィスオートメーションの取り組みで社外の有料プログラミング講座をを受講させてもらったり、それ以外にも外部講師を招いての社内講習や職場内教育(OJT)もありました。大手企業に比べて知名度や待遇面で社員の定着率が低い中小企業故に社員教育は大事だったのでしょう。プログラミングは実務で役立つことはありませんでしたが、システム思考を理解できたという意味で感謝しています。後の大手流通企業での営業現場でPOSシステムの導入を経験しましたが、現場レベルでのシステムへの理解の重要性を体験しています。

文系理系の壁は日本だけの現象とは言い難いものがありまして、アメリカでもザックリ言えば官僚や企業経営者といったテクノクラートと技術者(エンジニア))の双方を効率的に育成する教育システムが機能してきたことに変わりはありません。変化はIT革命によってもたらされました。ごく大雑把に言えば文系テクノクラートも金融工学などで理系的な知識が求められるようになる一方、多くの事務仕事がIT化でスキルが陳腐化し、他方特にITスキルへの需要が増した結果、希少なITエンジニアの争奪戦となっており、テクノクラートとエンジニアの立場が逆転した訳ですが、そんな世界の趨勢とかけ離れた国があります。日本ていうんですけど。

保険証、24年秋にマイナンバーカードと一体化 政府発表:日本経済新聞
マスク、マスク、マスクで軽く触れましたが、そもそもマイナンバーカードとは何者か?が十分説明されておりません。

70年代にグリーンカードという制度の導入が閣議決定されました。アメリカの社会保障カードに倣ったもので当時の大蔵省は「総合課税に必要」というロジックで当時の野党第一党の社会党を巻き込みましたが、国民の拒否感が強く結局見送られました。マイナンバーも制度としては野田政権時代に税と社会保障の一体改革を自民公明の賛成を取り付けて実現した流れで、制度としては導入されましたが、マイナンバーカードは保有を推奨するけど任意という扱いでした。

米社会保障カードの機能を持たせるだけなら、行政機関が保有する個人データへの物理的アクセスキーとしてのカードであればバーコード付きプラ板で必要かつ十分な筈ですが、NFCチップを搭載した多機能カードとしたことで、住基カードと同じ袋小路に舞い込みます。NFCチップを搭載することでセキュリティ問題が起きる訳です。

スキミングの危険性がありますから常時携帯には適しません。しかもNFC周りを含むシステム開発も複雑化し、カード発行には二重パスワードで厳重になりますから、初期設定に時間も費用もかかります。故に汚破損や紛失に伴う再発行も簡単には行えず、現時点で申請から発行まで2か月のタイムラグが存在します。この辺は住基カードでも問題視されてシステム自体が頓死状態になっています。同じ過ちを繰り返した訳です。リスキリングが必要なのは政治家や官僚では?

一応カードを持たなくても保険診療を受けられる代替策は検討されるようで。何らかの証明書のようなものが発行されるらしいですが、保険証を廃止してまでやる意味があるのかどうか?しかも医療現場にNFCリーダーと連動したシステムを導入しなければなりませんから、その費用負担もあります。自然災害やコロナ禍で縦割りの壁が言われ、省庁別にシステムが統一されていないことから「横櫛を入れる」という議論もありますが、アクセスキーが共通化されていればデータアクセス自体はは可能なんで、省庁別のシステムの違いは問題になりません。省庁間の相互参照は特別な場合のみに限定されるべきであることは言うまでもなく、寧ろ法令で厳格に規制すべきです。別のニュースです。

厚生労働省、10年備えた感染把握システム採用せず:日本経済新聞
コロナ以前から厚労省ではFFHSという感染症対策システムを開発し、テストを重ねて完成度を高めていたんですが、事務方トップにも政治家にも情報は上げられず、HER-SYSという俄か作りのシステムを立ち上げましたが、このHER-SYSが入力が面倒な上に不具合の手直しに追われてデータ活用にも至らず散々な結果だった訳です。FFHSだと疑い例を含めて入力は1分で終わり、データ活用も可能だったと言われており、詳細は不明ですが意思決定の闇を感じます。

デタラメトランスフォーメーションなCOCOA騒動もありましたが、流れから言うとITベンダーに仕事を流す意図が感じられます。もっと言えばETCカードもそうですが、諸外国では本線車道の門型ゲートを通過した車のバーコードを読んで後日請求というシステムが主流なのに、やはり日本だけの無線通信規格カードを作ってます。新車にはほぼETCついてますから、諸費用の中にセットアップ料金が含まれてます。利権の臭いがしますね。

正確に言えばNFCが問題なのではなく、NFCを搭載したために生じるエトセトラが問題なんですが、例えばVISAなどの国際カードにはNFCは当たり前のように搭載されてます。国内カードの場合は交通系ICカードで普及したFelicaが主流ですが、カード会社では不正使用が疑われる場合は決済を止めますし、利用者に損害が生じた場合の補償もします。つまり決済に伴う信用を補完する仕組みがある訳ですが、国が管理する個人情報で同様の仕組みはありません。例えば特定個人のデータを調べて犯罪の濡れ衣を着せるようなことも可能な訳です。その部分について「国を信用しろ」だけでは国民としてh納得できない訳ですね。

てことでここまで鉄分ゼロですが、最後にオープンループの話題です。

オープンループ乗車システムはSuicaの地位を塗り替えるのか?:Impress Watch
元々ロンドン市交通局が交通系カードの Oister のコスト負担に悲鳴を上げて導入されVISAのクレジットカードやデビットカード決済で乗客の利便性を維持することを意図して導入されたもので、現在はニューヨークやシンガポールなど世界450事業者に拡大しています。機能としてはカードに搭載されたNFCで決済するもので、日本でも複数事業者で試験を含む導入が始まっております。国際カード保有の外国人旅行者にとっては便利なサービスです。またSuicaなどのFelica系交通ICカードも導入や運営のコストが高いことがネックで地方に拡がりません。

但し課題もありまして、あくまでもVISAのサービスであってそれ以外のカードは使えないですし、日本限定ですがNFCカードリーダーの設置が必要なのでコスト面の優位性は一部スポイルされます。またデータ読み書きのスピード重視のFelica系カードに比べると読み書きが遅く、混雑する大都市の都市交通には導入しにくいということもあります。またSuicaを開発したJR東日本は全く関心を示しておりませんので、特に東日本の事業者にとってはメリットを見出しにくい状況です。但し外国人利用が多い空港連絡バスやタクシーなどではメリットもありますので、部分的な共存の可能性はあるでしょう。

JR東日本は寧ろ磁気乗車券に代わるQRコード乗車券の導入を目指しており、自動改札の搬送ベルトのメンテナンスを省略することを狙っています。こちらもクラウド環境で迅速な処理が可能なのかどうかは開発途上で、こちらに注力すればオープンループ派の関与は薄まらざるを得ないというところでしょう。今後は見通しにくいですが、気が付けばFelicaシステムがガラパゴス化の可能性もあります。

| |

« 円安の不都合な真実 | Main | ドルは我々の通貨だが »

ニュース」カテゴリの記事

経済・政治・国際」カテゴリの記事

鉄道」カテゴリの記事

バス」カテゴリの記事

JR」カテゴリの記事

地方公営交通」カテゴリの記事

都市交通」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« 円安の不都合な真実 | Main | ドルは我々の通貨だが »