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December 2022

Saturday, December 31, 2022

リニア60年のウヨ曲折

2022年も間もなく終わります。国鉄が浮上式リニアの開発に公式に着手したのが1962年ですから、今年は60年の節目だったのですが、現実のリニアは暗礁に乗り上げております。サイドバーで紹介している国商 最後のフィクサー葛西敬之:森功著 講談社刊で要領よくまとめられておりますが、静岡県の反対で静岡工区未着工だけではないリニアへの逆風は複雑怪奇な様相を呈しております。詳しくは後述しますが、葛西敬之JR東海名誉会長の死と、安倍元首相の死で流動化している政治状況が先行きを不透明にしています。

葛西氏の政治との関わりは深く、第二次安倍政権以降、官邸官僚の人事を巡って管政権、岸田政権にも引き継がれています。更にNHK人事への介入を通じたメディア支配もあります。加えて大広告主として広告出稿を通じた新聞、雑誌の言論封殺で、リニアを巡る不都合な報道は殆ど見られませんが、コロナ禍によるリモートワーク定着もあってリニアが見込むビジネス需要に陰りが見られる一方、JR東海の強引な姿勢が実現可能性を下げている現実もあります。

例えば大井川の水問題ですが、南アルプストンネルの湧水を全量戻すことで静岡県とJR東海は合意している筈ですが、JR東海の言い分はあくまでも工事修了後の話で、トンネル掘削中の10か月ほどの期間は除外ということで「話が違う」となり静岡県が怒っている訳ですが、それをJR東海は「静岡県が無理難題を言う」として取り合いません。これは南アルプストンネルの構造からくる問題なんですが、山梨坑口から上り勾配で掘削すると、トンネル内の湧水は山梨県側へ流出する訳で、大井川へ戻すことは物理的に不可能ということです。

これは南アルプスルートでの建設を決めたことに由来する問題ですが、東西坑口を水平に結ぶと土被り3,000mにもなり、土圧でトンネル掘削自体が困難なため、東西両坑口から最大40/1,000の勾配をつけて最大土被り1,400mに抑える為です。山岳トンネルとしては大清水トンネルで1,300mの実績もあり、東海北陸道飛騨トンネルが1,000m以上の土被りの難工事の末2007年に貫通したことで、最短距離の南アルプスルートが選ばれたと言われています。しかし中央構造線をはじめ多数の活断層を横切る難工事が予想されていましたし、実際大井川の水問題もその1つではありますが、問題はそれだけに留まりません。

水問題については東電田代ダムで取水して山梨県側へ流す量が多く、その取水量を調整することで対応可能ではあり、実際JR東海からも提案されてますが、経産省の同意が必要で手続き上の難易度は高いです。加えて急岐な南アルプスの地形で大量のトンネル残土が出る訳で、それを運ぶダンプカーが通れる工事用道路の建設も、環境アセスメントをクリアするハードルは高く困難ということもあります。加えてJR東海の高飛車な態度が県民を怒らせてきたということもあります。

加えて都市部の大深度地下工事を巡る不透明さもあります。仲良きことは美しき哉かな?で取り上げた調布市の陥没事故の影響で都市部の鉱区も着工が遅れています。こちらも事業主体の東日本高速道路の不誠実な態度が住民を怒らせており、簡単に幕引き出来る状況ではありません。また岐阜県工区の斜坑の落盤事故で死者も出してますし、神奈川工区など他の工区でも工事は遅れています。実は静岡県の反対がフィルター効果となって報道されていないだけで、巷間謂われるように静岡県知事が代われば解決とはなりません。

国鉄時代から開発が続けられた磁気浮上リニアですが、延長7kmの宮崎実験線で繰り返し試験を続けてきて、次のステップとしてより長い実験線が必要として宮崎実験線の延伸も検討されながら、将来中央リニア新幹線に繋がるという理屈で山梨に実験線が作られた訳ですが、金丸信自民党幹事長の意向が働いたと言われています。

一方で自民党林喜朗議員の後押しで運輸省と日本航空がHSSTという常電導リニア計画を持ち上げました。ドイツのトランスラピートのライセンス契約で目標最高速300km/hで、羽田空港と成田空港を結んで国内線と国際線の乗り継ぎを狙ったものらしいですが、シーメンスへのライセンス料支払い問題は会計検査院に指摘され国会でも問題になりました。日航が政府全額出資の特殊会社だったことからこうなった訳です。

結局日航は事業化を諦め、ライセンスは三菱重工へ引き継がれ、愛知高速交通東部丘陵線(通称リニモ)で実用化されましたが、最高速100km/hに留まります。しかし愛知万博の会場となった海上の森の丘陵地帯を抜けるルートはアップダウンが激しく、通常鉄道では整備が難しかったかもしれません。ちなみに最大勾配は60/1,000であり、磁気浮上でレールと車輪の粘着限界に影響されないからですが、逆に言えば中央リニアも60/1,000の急こう配を取り入れれば難工事は幾らか緩和された可能性はあります。

これ金丸信氏の鶴の一声で決まった山梨実験線をJR東海が引き受けるにあたって、中央新幹線が全幹法の基本計画線であることから、技術開発途上のリニアの実現可能性から通常の徹軌道式での整備も視野に入れた結果、粘着駆動の通常鉄軌道方式でギリギリ許容できるのが40/1,000ということのようです。つまり当初必ずしもリニアには拘ってはいなかった訳で、寧ろ東海道新幹線のバイパス線としてJR東海が一体運営すべきということで中央新幹線の権利を確保する目的だったようです。整備新幹線としてならばJR東日本に持っていかれる可能性があったことをブロックした訳です。

高速試験車300X系は中央新幹線を350km/hで走行する前提で設計されたもので、リニアの実現性への保険だった訳です。その成果は700系以降の新系列車に引き継がれてはいますが、隠れた意図があった訳です。それがリニアに傾いたのは技術開発の進捗が想定以上だったということに留まらず、日本の技術力を世界に知らしめるという葛西氏の右派的な思想によって目的自体がシフトしたことも指摘できます。

東海道新幹線の過密ダイヤは度々話題になりますが、実際には関西国際空港の開港や夜行高速バスの充実で輸送量が停滞した時期がありました。それを突破したのは品川新駅開業とのぞみ大増発によるJR東海自身の需要掘り起こしの結果であり、その原資は新幹線買い取りによる減価償却費の拡大と、その買い取り価格への政府へのイチャモンで認められたのぞみ付加料金の設備更新費用としての無税積み立て金です。

後者は買い取り価格の査定が減価償却されない地価部分が多くなることで設備更新が滞るという理屈で、長期運休を想定した設備更新の費用に充てるとしていましたが、認められると一転、長期運休無しでも設備更新は可能としてテヘペロしたりしております。JR東海の強引さや不誠実さを示す事実は事欠きません。

最後に森功氏の前掲書で示された仮説が、葛西氏が6年前に間質性肺炎で余命5年を宣告された直後に3兆円の財投資金受け入れを決めたのではないかということです。財投資金投入自体は当時の安倍首相の提案で、アベノミクスで中身がないと言われてきた成長戦略の目玉としてリニア大阪延伸の前倒しが検討され、税制優遇、補助金、財投資金提供の3案が財務省内で検討され前2者は法改正を伴い特に黒字企業のJR東海が対象となると批判を浴びるとして財投案に落ち着いたということで、裏付け取材もされており、信ぴょう性は高いと言えます。お陰でJR東海がリニア事業を見直すことは困難になっております。

しかしこれが鈍器法定で取り上げたリニア談合事件のきっかけとなります。財投資金の投入で公共性ありと判断されて民間工事の談合事件として立件された訳です。当初立件は困難と言われましたが、リーニエンシー制度で大林組と清水建設が制裁を回避する一方、この2社と大成建設、鹿島建設とを分離公判で前2社を先に有罪化kていさせるという検察の公判テクニックで一審をクリアしております。とはいえそもそも難工事だらけのリニア事業でゼネコンも利益確保が難しく、こうした事件が発覚するのはある意味JR東海が見限られつつある結果とも言えます。日航HSSTの失敗とも通じます。

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Saturday, December 24, 2022

サンク苦労すのプレゼント

今年もあと1週間ですが、コロナとインフルエンザのツインデミックの兆候が見られます。勝てないのはコロナだけじゃない上に、生りを潜めていたインフルエンザもこの2年の感染者数の少なさが逆に免疫の空白となっている訳ですから無防備な状態です。

ややこしいのはコロナもインフルも表面的な症状は似ており、医療機関の受診のために検査が必要なことです。インフルならば抗ウイルス薬で治療することはできますが、現時点でコロナの特効薬はありません。緊急承認された塩野義のゾコーバを含め使える経口治療薬は3種類に増えましたが、感染初期に症状の進行を遅らせる程度の有効性しかなく、副作用のリスクはそれなりです。

進行を遅らせることで免疫力による自然治癒が狙いですが、当然ながら早期発見早期治療の必要があります。故に行動規制やマスク帰省を撤廃した欧米でも、希望者には公費負担でPCR検査を行う体制を維持しており、行政検査を絞り込んで自費の自主検査に委ねている日本の実情では、そもそもコロナ陽性が確認されないとコロナ専門医療に辿り着けない訳で、実際発熱が確認されて救急搬送のたらい回しや受け入れ拒否が普通に行われております。

当然感染確認が遅れて重症化してしまう訳で、死者数が高止まりしていることに表れております。2類5類の分類問題やマスク解禁などは現実を見ていない議論です。当然年末年始の帰省や旅行は自粛した方が賢明です。特に大都市圏から地方への移動は医療体制の脆弱なエリアでの感染拡大のリスクがあります。今年も巣籠の年末年始を予定しております。

さて、いろいろなニュースがありますが、これを取り上げます。

日銀の金融緩和修正、苦渋のサプライズ 市場は波乱含み:日本経済新聞
実質利上げとかアベノミクス終了とか言われてますが、実態は追い込まれたものです。10年物国債金利の利子率を抑えるイールドカーブコントロール(YCC)の見直しで既にゼロ近辺から0.25%に見直しており、今回それを0.5%まで容認するとしただけです。

そもそもYCCは日銀独自の政策で、中央銀行が制御可能なのは通常1日ものなどの短期金利が中心で、量的緩和は金融きあkンが保有する国債を中銀が買い取ることで通貨量を増やすことで幅広い金利の低下を促すもので、これはFRBやECBでもさあ愛用されましたが、YCCは10年もの国債金利を指標とする長期金利を下げるという意味で量的緩和とは別次元の政策です。

イールドカーブというのは長期の方が金利変動などのリスクがある分、高い利子を約束しないと引き受けられませんから、債券の残存期間をグラフ化すれば短期ほど低く長期ほど高い利子率カーブになる訳ですが、それを期間の長い国債の購入で長期金利も制御しようというそもそも無理筋の政策です。

当然うまくいきませんから欧米では採用が見送られ、日本でも国債の爆買いをしても達成が難しい状況でした。そこへFRBやECBの利上げで内外金利差が出て円安の元凶として批判されましたが、日銀が打ち出したのはYCCの目標金利となる0.25%での国債指値オペで長期金利を維持するというものですが、その結果既発国債の52%と過半数が日銀保有となり、その分流通市場の出玉が減って投機筋が空売りを仕掛けやすい状況になり、実際仕掛けられて維持が難しくなって膝を折ったのが実際です。加えて保有国債に含み損が発生しており、日銀の財務状況の悪化から国債爆買いも持続可能ではありません。アベノミクスの失敗は明らかですが、日銀としては政策の微調整と強弁するしかない訳です。

まあこうなることは予想出来ておりましたが、市場に屈する形での調整なので、市場は反応し、日経平均は下げました。また投機筋の攻撃はこれで打ち止めではありませんので、YCCの維持は困難になるばかりです。お陰で円安は止まり円高に振れてますが、貿易収支の赤字が定着している以上年初のドル円115円といった水準に戻ることはないでしょう。つまりインフレは終わらないってことです。FRBが量的緩和縮小を急ぎ、利上げにも踏み込んだのは、次の経済ショックに備えるノリシロを確保する意味もあった訳ですが、そうしたことに無頓着だった結果、追い込まれて身動きが取れなくなったわけです。言ってみればアベノミクスは多大なサンクコストを残して損切りを余儀なくされたという訳です。

まあ90年代のバブル崩壊から97年の金融危機に至っても銀行の不良債権問題解決に手間取ったことからすれば、日本にはありがちな話ですが、金融以外の分野にもそこここに見られます。例えばこれ。

原発建て替え・運転延長へ転換 政府、GX基本方針:日本経済新聞
やーツッコミどころ満載ですが、同じ日経紙面で2人の専門家がダメ出ししております。
現政権、「政策転換」には値せず 原発政策の行方 橘川武郎・国際大学副学長:日本経済新聞
運転延長、コスト低減限定的 原発政策の行方 大島堅一・龍谷大学教授
橘川氏は新型炉の具体化プランがない状況で、現状関電美浜3号機の建て替えで新型炉が構想されている段階で、計画としては具体化されておらず、コスト面も含めて実現可能性に疑問符がつく中、事故率の高い既存炉の運転延長に事業者を誘導することになりかねないと警鐘を鳴らします。大島氏はその運転延長のための安全対策費の膨張でコスト低減効果は限定的としています。つまりどう転んでも画に描いた餅の脳内フローラのファンタジーでしかないという訳です。

一方で太陽光や風力などの再生可能エネルギーにはあまり言及されておらずバランスを欠きます。現実的には少なくとも太陽光に関しては既にピーク出力時の送電網受け入れを制限されるほどの量を出力している訳で、蓄電や水素生産などでの出力調整や地産地消型の仮想発電所(VPP)の事業化などで安定供給を図るフェーズですが、一方でアジアやオーストラリア産の水素を輸入するとか、輸送によるコスト増や運搬時のCO2排出は見ないふりです。常識的には新型炉の建設は技術面以外にも立地選定や地元了承などの手続きを踏んでから建設すれば10年ぐらいかかる訳で、量産品の太陽光パネルを地面に並べる方が先に市場供給が可能な訳で、実現可能性をまじめに考えている気配はありません。サンクコストの損切りに未練たらたらの原子力村です。

電力網に老朽火力リスク 停止頻発、逼迫解消に懸念も:日本経済新聞
原発再稼働に拘った結果、思ったように再稼働が進まず、老朽火力の長時間稼働で凌いだ結果、補修が間に合わず停止続発となった訳です。電力会社の言い分としては太陽光Yなど再エネの出力が不安定なので火力に頼らざるを得ないと言いますが、老朽火力の主力は石炭火力で、これ鉄道の蒸気機関車(SL)と同じで炉に火を入れてから出力までに時間がかかりますし、停止しても直ちに冷えないからメンテナンスの間合い確保も難しい訳で、ガス火力なら出力の立ち上げも制御も停止も短時間で可能だしメンテナンスも容易な訳で、再エネ受け入れに消極的で火力のリプレースを怠った結果の自業自得です。同様に東日本大震災の時から問題を指摘されながら、今さらの地域間連系線の増強もやっとこれから取り組みますという体たらくです。

それでいて地政学リスクによる輸入化石燃料の高騰で電力会社は赤字に苦しんでいる訳ですから、サンクコストを気にして大損している訳です。サンクコストの損切が出来ずに苦労して得たプレゼントです。ちっとも嬉しくないですが-_-;。経営再建が滞っている東芝もそもそもは原子力事業での失敗で追い込まれた訳ですし、失敗してもそれを認めずに深みにはまるのが今の日本のお家芸なのかもしれません。

その意味で危惧しているのがJR東海が進める中央リニアですが、国鉄時代から開発が続けられ、分割民営化後もJR総研で開発継続され、技術者込みでJR東海に移管されて計画が立ち上がったものの、現状は足踏みしています。静岡県の反対で足止めされているという面ばかりが注目されてますが、そもそも技術的課題や建設コストの上昇や現場でのコロナクラスター感染もあり、外環道調布工区での大深度地下工事のトラブルもあって進まない現実があります。この辺はもう少し掘り下げて別エントリーで取り上げたいと思います。

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Saturday, December 17, 2022

勝てないのはコロナだけじゃない

コロナに勝てない国の過酷な現実を示すニュースです。

コロナワクチン接種後死亡で 愛知医師会「体制に問題」:日本経済新聞
愛知県愛西市で起きた40代女性のワクチン接種後の死亡事案の検証の結果、集団接種会場でアナフィラキシー発症時の体制が出来ていなかったという結果となりました。アナフィラキシー自体はmRNAワクチンのリスクとして当初からアナウンスされており、アナフィラキシー・ショックは最悪死亡に至ることもありますが、その場で適切な処置をすれば回復するものでもあり、集団接種会場でその準備が出来ていなかったことが明らかになったものです。ワクチン接種が自己目的化されてリスク対応がお留守というありがちな日本品質です。

会場には問診や接種を行う医師や看護師が大勢いたにも拘らずですから深刻です。医師も看護師もコロナ禍で診療忌避で暇だから、その意味で集団接種はいいアルバイトなんでしょうけど、あらかじめアナフィラキシー対策の研修を受けるとかしていないと対応できないこと自体はやむを得ない部分があります。コロナ対策という課題解決がワクチン接種推進という目的のすり替えが起きた訳で、この手の話は日本の政治や行政では珍しくもないことですが深刻です。加えてオミクロン株派生ウィルスに既存のワクチンの有効性が低下しているという論文も出されました。

コロナ「BQ.1.1」「XBB」、従来ワクチンの予防効果低く:日本経済新聞
コロナに関しては様々な知見が蓄積されてきておりますが、新株にワクチンが効かないとすれば、現在の第8波で置き換えが起きて感染収束が見通しにくく長引くなることを意味します。ただでさえ乾燥で感染拡大しやすい状況が続く訳です。旅行支援や年末の帰省による感染拡大も注意が必要です。役に立たない政府を持つと国民は苦労します。
安保政策転換、問われる優先度 防衛3文書に映る課題:日本経済新聞
これも前エントリーの続きですが、反撃能力や財源論がメディアに踊る中で、国会閉会後の閣議決定でこれです。そりゃツッコミどころ満載だから年末年始を挟んで来年の通常国会の頃には国民も忘れてくれるとでも思っているのでしょう。サイバーや宇宙などこれでもかとばかりにメニューが並んでますが、省庁横断という点がミソですね。つまり国交省管轄の海上保安庁の巡視船新造とか、農水省関連で食糧安保のための自給率アップとか、経産省関連で防衛産業活性化とか、軍事研究を餌に科研費配分を増やすといった文科省関連とかですね。これで有事も安心か?

そもそも防衛費倍増が先に示されて、後付けで各省庁が予算分捕り合戦をしている構図です。税制改革が絡む財源論はある意味目晦ましです。課題解決ならばまず現状の課題を抽出して足りないピースが何かを明らかにした上で、実現可能な対策を検討するというプロセスを経ていませんから鉄火場になっている訳です。これでまともなものが出てくるとは思えません。ぶっちゃけ政治家も官僚も課題解決よりも我田引水に忙しいって訳で、国民は置き去りです。

カルテル「申告制」の威力 処分減免、関電は課徴金ゼロ:日本経済新聞
電力大手のカルテル事件ですが、元々呼び掛けた関電はリーニエンシーで自己申告し捜査協力したということで課徴金が免除され、捜査協力にも消極的だった中国電力は過去最高額の707億円の課徴金となり、折からの燃料費高騰もあって3月期決算で2千億円超の赤字予想となりました。課徴金は競争回避によって生じた超過利益の推定額から割り出されますから、免除された関電が課されたであろうか長期は1千億円ぐらいになると推定されています。

言い出しっぺがお咎めなしという何とも変な決着ですが、元々痺れて関電の高浜町助役との贈収賄事件の発覚を受けてコンプライアンス委員会を立ち上げて見直した結果、カルテルの事実が出てきて公取委へ申告した結果ですから、関電としては狙ったものではないとはいえ、痺れる話です。6基の原発再稼働で燃料費負担に喘ぐ他社をしり目に、電力自由化で越境営業の余力がある関電ですが、製造業立地の多いエリアだけに他社の参入は避けたい一方、越境営業のメリットは薄く攻め込まれる立場で恫喝まがいのカルテルを仕掛けた訳です。

リーニエンシー制度は鈍器法定で取り上げたリニア談合事件でも採用され、大林組と清水建設は営業停止などの処分は受けたものの課徴金は免除されています。ただ構図として違うのは、大林組はJR東海の厳しすぎる予算管理の中での利益配分狙いでしたが、JR東海の姿勢は変わらず、大林組はJR東海に見切りをつけたと見られます。これ台車枠の亀裂の重大インシデントでJR東海が川崎重工を出入り禁止にしたこととも通底しますが、JR東海はとにかくコスト管理が厳し過ぎて、業者に無理難題を吹っ掛けると言われます。この辺は停滞するリニア問題と絡めて改めて別エントリーで取り上げる予定です。

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Saturday, December 10, 2022

コロナに勝てない国

コロナに敗けた国に続いて勝てない国の話です。過去形ではなく現在形なのがミソです。

中国の武漢で新型コロナウイルスによる肺炎が確認された時点では、世界を覆うパンデミックに発展することは見通すことは困難だったとは思いますが、1人の医師が新型ウイルスを発見し学術査読誌に投降したことで世界が知ることとなりましたが、その時点での中国政府の動きは鈍く、あきらかに初動に失敗した訳ですが、それを取り返すようにコロナ封じ込めに国ぐるみで取り組んで沈静化させました。国内から医師など医療関係者が集まり、足りない薬品や医療品を持ち寄り、更に日本を含む国際社会もこれに協力してマスクを送ったりワクチン製造技術の問い合わせに応えたりした訳ですが、この時点ではコロナという共通の敵と戦う姿勢が明確でした。

その結果中国国内では感染が収束した一方、初動の失敗で世界にばらまかれたウィルスは欧米で感染拡大し、欧米由来の変異株が生まれ、武漢株に置き換わりました。その結果波状に感染拡大が続き、その度に新しいい変異株との置き換えが起きており、また一部交雑もあると言われており、現在オミクロンの変異株としてBQ,1,1やXBBが世界で拡大しています。日本でも水際対策の緩和で侵入していると見られ、第8波はこれらではないかと言われております。

間を飛ばしましたが、中国では早々に武漢株を封じ込めた一方、外国との厳格な渡航制限を続けた結果、いち早くコロナ禍を脱して経済再開を果たした訳ですが、それに留まらず台湾、韓国、オーストpラリア、ニュージーランドなどでも初期にゼロコロナに近い強い規制をかけて感染を封じ込めました。日本では緊急事態宣言と称しながら強制力を伴わない自粛勧告だった訳ですが、その結果欧米で拡大した変異株の侵入を許し、夏冬の感染拡大を繰り返しました。

ザックリ言えば日本のコロナ感染周期はほぼ欧米の後追いの形だったと総括できます。加えて初期にゼロコロナで封じ込めた台湾やオーストラリアも、中国のように厳格な規制を続けずに徐々に緩めていった結果、やはり変異株の侵入を防げず感染拡大しています。そして日本のコロナ対策は当初感染者数も死者数も少なく優秀と言われはしましたが、交流の多い近隣の国でそろってゼロコロナやった恩恵と見ることもf出来ます。

そして欧米ではワクチンの普及や治療薬の開発でウィズコロナへの移行の条件が整い、規制を緩めている訳ですが、日本が同じようにできないのは、ひとえにデータ不足でエビデンスに基づいた判断が出来ないことに由来します。謎のPCR検査忌避や保健所の処理能力などのネックで」有意な疫学データを取得できておらず、様子を見ながら徐々に緩めて次の感染拡大の波を呼び込むということを繰り返している訳です。

一方欧米の後追いなので欧米の状況を見ながら意思決定できる立場でもありますが、例えば感染症法上の5類相当への緩和の議論などは、現時点で一般医療機関がコロナ患者を受け入れられる体制があるかどうかが判断基準になる筈ですが、北海道など地方の感染拡大が顕著なように、医療体制の格差が背景にあると考えられます。この状況で緩和できるかどうかを判断するのは困難です。

中国の失敗は外国との交流を減らして変異株の侵入を防いだのは良いとして、逆に変異株に対する免疫が弱点となって遅れて感染拡大して手が付けられなくなり「白衛兵」と呼ばれる防護服マスク姿の官憲による市民への暴力で抑え込んで「白紙抗議」を呼び込む失態となりました。未知の感染症との闘いは一筋縄ではいきません。但しその結果中国は戦略ミスに気付き修正に動いている訳ですが、そうした意識の乏しい日本はというと、相変わらずエビデンスのないままに外国の状況を見ながら恐る恐るということになる訳ですね。ぶっちゃけ戦略不在で修正もままならず勝ちに行けないという意味で現在形ということです。しかしこれコロナだけじゃないところが頭痛いところです。

例えば防衛費増額の議論を見ていて思うのは、財源論ばかりで、実際日本の防衛に足りないピースは何で、それをどう実現するかといった議論は脇に置かれている訳です。ウクライナ戦争で台湾有事もあり得るということは言われますし、特に反撃能力に関しては要注意です。元々的基地攻撃能力と言っていたのを言い換えた訳ですが、敵国のミサイル発射が確認された時点での反撃であれば先制攻撃と見做されかねないですし、その判断は結局アメリカのインテリジェンスに基づくものとなる訳です。

ウクライナでは戦争の指揮命令権はゼレンスキー大統領が握っており、アメリカを含むNATO諸国はあくまでも兵器の供与など補給面の支援に徹しております。その中でウクライナが希望する兵器を全て供給するのではなく、状況を見ながら判断している訳で、その中でウクライナはロシアのミサイル攻撃に対して半数以上を迎撃して善戦しています。しかも迎撃砲は旧ソ連時代の対戦闘機砲を改良してGPSと連動させて精度を上げているという風に、使える兵器を工夫して使っている状況です。

まあロシアのポンコツミサイルだからという可能性ははあると思います。中国や北朝鮮で開発中の巡航ミサイルや超音速飛翔体では現在のミサイル防衛では対応できないということは言われておりますが、そもそもこの辺の議論は北朝鮮のICBM開発で米本土が射程に入ってきたことに対するアメリカの危機感がある訳で、逆にとっくに射程に入っている日本がミサイル攻撃されないのは、現時点で抑止力が働いているからで、それは日米安保条約5条で日本の施政権下のエリアへの攻撃に米軍が反撃することが記されているからですね。つまり現状で日本がミサイルの標的になる可能性はほぼ無いと見て良いでしょう。

ということはアメリカのインテリジェンスに頼る場合、その情報がどれだけ正確なのかを検証できないと、事実上の指揮命令権をアメリカに渡すことになる訳です。言葉は悪いですが、米軍の下請けの鉄砲玉に使われる可能性はある訳です。そしてそれは日本に対する反撃の口実を相手に与える訳で、日本国民を寧ろ危険に晒すことにもなります。それをこうして防ぐという明確な担保がなければ安易に同意できません。アメリカが鉾、日本が盾というこれまでの関係を変更することにもなります。矛盾ですwwwww。

この辺は日本の失われた30年もそうですし、異次元緩和と財政の緩みで身動きが取れない日本のマクロ経済政策もそうですし、目先ばかりで戦略性のない国ですから、衰退はある意味必然なんでしょう。尚防衛費の財源論で言えば、平時の防衛費は恒久財源で担保されていないと、有事に現在のウクライナが置かれているような状況で兵器や弾薬の補給が必要な時には国債等での調達はやむを得ないですが、それが可能なのはであくまでも平時の財政規律が確立していればこそです。平時の防衛費を国債でという議論はそもそも論外です。故に国民負担を納得できる説明が必要なんですが。

京成の23年3月期、純利益上振れ 負ののれん発生益で:日本経済新聞
なかなか微妙なニュースなんですが、訪日外国人の制限解除の遅れで業績回復が遅れている京成電鉄が親子上場解消で新京成電鉄を株式交換で完全子会社化した結果、新京成の純資産時価総額より評価額が低い負ののれん代が発生し、それを特別利益として計上したというちょっとわかりにくいニュースですが、株式市場は一応評価しています。但しこうしたテクニカルな益出しに頼らざるを得ないことも確かで、それだけ本体の運輸業や小売りなど関連事業も含めて不振が続いている訳ですが、意思決定権を強化することで乗り切ろうというのは納得できます。個別企業ではこうした判断が働くのに、国全体で見るとうまくいかないのは何故なんでしょうか?

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Saturday, December 03, 2022

コロナに敗けた国

失われた中国の始まりがこんな形で顕在化するとは思いませんでした。

中国で「白い紙」掲げ抗議 若者らゼロコロナに不満:日本経済新聞
このニュースに接して感じたのは、監視国家中国のバグです。先端技術を躊躇せず情報統制に用い、監視カメラで国民の行動を制御する中国ですが、それをハードロックダウンによるゼロコロナ政策に活用した結果、行動制限でガンジガラメで経済活動に支障するに至り、国民の我慢の限界を超えた訳です。しかも各地で同時多発的に抗議行動が起きた結果、網羅的な監視カメラ網故に情報量が処理能力をオーバーフローしてしまった訳ですね。「白い紙」が抗議の意思を表すあたりも、監視に馴れた中国国民故の知恵なのでしょう。
江沢民氏の自宅付近は厳戒態勢 追悼集会を警戒か:日本経済新聞
こんなややこしい時に江沢民氏が死去したんですが、中国政府の対応は天安門事件のトラウマを感じさせます。1976年1月の周恩来首相の死去の追悼から始まった第一次天安門事件で前年復活した報小平氏が失脚、共に失脚した胡耀邦氏はその後鄧小平氏の復活を助け、1981年に失脚した華国鋒氏に代わって党主席に就任し、1982年党主席制度の廃止で総書記となったものの、1986年の全国学生デモで鄧小平氏が激怒してデモに理解を示して翌年失脚し、1989年4月に急死し、追悼集会と1919年の抗日運動「五四運動」70周年集会から第二次天安門事件に発展し、これを人民解放軍で制圧して「タンクマンの惨劇」が起きたという一連で、政府の過剰反応がもたらされました。
江沢民氏の自宅付近は厳戒態勢 追悼集会を警戒か:日本経済新聞
外国人ジャーナリストにインタビューされたデモ参加者は「胡耀邦、誰それ?」つまり政府の情報統制で国民は天安門事件を知らない一方、政府はナイーブな反応を示していて滑稽です。そもそも胡耀邦氏失脚後の後継の趙紫陽氏もデモ隊へ理解を示す発言で失脚し、その後継者として総書記に就任したのが江沢民氏で、天安門事件の後始末で愛国教育で民主主義を潰した人物ですから二重に滑稽です。中国の改革開放を進めて驚異的な経済成長をもたらしたと内外で評価されていますが、少なくともデモ隊が追悼するような人物ではない訳です。天安門事件は大きなトラウマになっている訳です。その結果こうなります。
ゼロコロナ緩和進める姿勢 中国副首相、抗議受け:日本経済新聞
国民の声に押されて見直しを余儀なくされた格好ですが、ゼロコロナ政策事態を撤回したわけではありません。押してそれはやむを得ない部分もあります。ゼロコロナ政策を徹底しすぎたために、変異株への対応が出来ておらず、それが感染拡大につながった訳ですし、更に国産ワクチンに拘った結果、有効性の高いmRNAワクチンなど欧米製ワクチンを排除した結果、集団免疫が不十分になってしまったこともあり、単純に規制緩和すれば200万人規模の死者も有り得る状況で、実際の緩和手続きは困難を極めます。それでも経済を圧迫し国民生活を窮乏化させることは止めなければならない訳で、中国政府にとっては茨の道です。

とはいえ国民が声を上げたことで国を動かしたという事実は広く共有されますから、今回の騒動が政変に繋がる可能性は無いでしょうけど。民主化の観点から言えば大きな一里塚ではあります。にも拘らず日本在住の中国人デモを「迷惑だ」と罵る日本人が少なからずいることは残念です。共感を示すことが彼らへの力になると共に、中国政府の姿勢に変化をもたらすならばウェルカムな筈です。

この辺は江沢民時代の愛国教育を民主化を潰したと批判した日本人は少なからず居たのに自国の愛国教育には無頓着だったりします。上記エントリーで指摘したように田中角栄氏の日本列島改造論を模倣して短期間に世界一の高速鉄道網を整備したように、中国の政策は日本のそれを模倣したものが多いのですが、愛国教育は寧ろ中国が先行したと言えます。この辺考えると日本の保守派の中国嫌いは嫉妬かもしれません。愛国ぶる嫉妬大丈夫か?略してぶる嫉妬丈夫wwwww。役に立たないブルシットジョブかい。日本も別の意味でコロナに敗けてるんだけどね。

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