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Saturday, December 03, 2022

コロナに敗けた国

失われた中国の始まりがこんな形で顕在化するとは思いませんでした。

中国で「白い紙」掲げ抗議 若者らゼロコロナに不満:日本経済新聞
このニュースに接して感じたのは、監視国家中国のバグです。先端技術を躊躇せず情報統制に用い、監視カメラで国民の行動を制御する中国ですが、それをハードロックダウンによるゼロコロナ政策に活用した結果、行動制限でガンジガラメで経済活動に支障するに至り、国民の我慢の限界を超えた訳です。しかも各地で同時多発的に抗議行動が起きた結果、網羅的な監視カメラ網故に情報量が処理能力をオーバーフローしてしまった訳ですね。「白い紙」が抗議の意思を表すあたりも、監視に馴れた中国国民故の知恵なのでしょう。
江沢民氏の自宅付近は厳戒態勢 追悼集会を警戒か:日本経済新聞
こんなややこしい時に江沢民氏が死去したんですが、中国政府の対応は天安門事件のトラウマを感じさせます。1976年1月の周恩来首相の死去の追悼から始まった第一次天安門事件で前年復活した報小平氏が失脚、共に失脚した胡耀邦氏はその後鄧小平氏の復活を助け、1981年に失脚した華国鋒氏に代わって党主席に就任し、1982年党主席制度の廃止で総書記となったものの、1986年の全国学生デモで鄧小平氏が激怒してデモに理解を示して翌年失脚し、1989年4月に急死し、追悼集会と1919年の抗日運動「五四運動」70周年集会から第二次天安門事件に発展し、これを人民解放軍で制圧して「タンクマンの惨劇」が起きたという一連で、政府の過剰反応がもたらされました。
江沢民氏の自宅付近は厳戒態勢 追悼集会を警戒か:日本経済新聞
外国人ジャーナリストにインタビューされたデモ参加者は「胡耀邦、誰それ?」つまり政府の情報統制で国民は天安門事件を知らない一方、政府はナイーブな反応を示していて滑稽です。そもそも胡耀邦氏失脚後の後継の趙紫陽氏もデモ隊へ理解を示す発言で失脚し、その後継者として総書記に就任したのが江沢民氏で、天安門事件の後始末で愛国教育で民主主義を潰した人物ですから二重に滑稽です。中国の改革開放を進めて驚異的な経済成長をもたらしたと内外で評価されていますが、少なくともデモ隊が追悼するような人物ではない訳です。天安門事件は大きなトラウマになっている訳です。その結果こうなります。
ゼロコロナ緩和進める姿勢 中国副首相、抗議受け:日本経済新聞
国民の声に押されて見直しを余儀なくされた格好ですが、ゼロコロナ政策事態を撤回したわけではありません。押してそれはやむを得ない部分もあります。ゼロコロナ政策を徹底しすぎたために、変異株への対応が出来ておらず、それが感染拡大につながった訳ですし、更に国産ワクチンに拘った結果、有効性の高いmRNAワクチンなど欧米製ワクチンを排除した結果、集団免疫が不十分になってしまったこともあり、単純に規制緩和すれば200万人規模の死者も有り得る状況で、実際の緩和手続きは困難を極めます。それでも経済を圧迫し国民生活を窮乏化させることは止めなければならない訳で、中国政府にとっては茨の道です。

とはいえ国民が声を上げたことで国を動かしたという事実は広く共有されますから、今回の騒動が政変に繋がる可能性は無いでしょうけど。民主化の観点から言えば大きな一里塚ではあります。にも拘らず日本在住の中国人デモを「迷惑だ」と罵る日本人が少なからずいることは残念です。共感を示すことが彼らへの力になると共に、中国政府の姿勢に変化をもたらすならばウェルカムな筈です。

この辺は江沢民時代の愛国教育を民主化を潰したと批判した日本人は少なからず居たのに自国の愛国教育には無頓着だったりします。上記エントリーで指摘したように田中角栄氏の日本列島改造論を模倣して短期間に世界一の高速鉄道網を整備したように、中国の政策は日本のそれを模倣したものが多いのですが、愛国教育は寧ろ中国が先行したと言えます。この辺考えると日本の保守派の中国嫌いは嫉妬かもしれません。愛国ぶる嫉妬大丈夫か?略してぶる嫉妬丈夫wwwww。役に立たないブルシットジョブかい。日本も別の意味でコロナに敗けてるんだけどね。

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