絶望の少子化対策
前エントリーの戻らない混雑 にも関連する問題ですが、政府や都が少子化対策を打ち出した新年ですが、釘を刺しておきたいと思います。岸田首相が新年記者会見で「異次元の少子化対策」に旧統一教会が名付け親の子ども家庭庁が中心にとか、家父長的パターナリズムが前提で欧米標準の婚外子の法的保護な眼中にないでしょうし、悪い冗談としか思えません。中身も児童手当の恒久化とか不妊治療の無料化とか、目新しいものはなく、どこが異次元なんだか。
加えて小池東京都知事が18歳以下への月5,000円の支給ですが、年間6万円ってことですね。東京都は合計特殊出生率が47都道府県中最下位であり、コロナ禍前は転入人口の増加による社会像で人口増加が続いていた訳ですが、コロナ禍で転出が増えて危機感を覚えた訳ではないでしょうが、子育て支援を強化して子育て世代に選ばれることを狙ったものということです。
しかし東京の出生率の低さは住居費の高さが一番のネックです。賃貸の賃料が高い上に分譲マンションの値上がりも続いており、子育て世代の年収では高根の花です。共稼ぎのパワーカップルならば何とかなるとしても、子供が出来たら手狭になるから郊外に引っ越すということも起こります。そう考えると年間6万円程度の支援では焼け石に水です。
加えて教育費の負担もあります。少子千万!でも取り上げましたが、教育費の負担、特に大学の学費の値上がりは、貧困世帯の子供の将来を閉ざします。子供を産み育てる環境は障害だらけです。それをどうにかするのではなく小手先で何とかしようということですから効果は期待できません。
そもそも少子化対策がなぜ必要なのか?ですが、人口減少を止めたいからなんですが、人口減少の影響は結局経済成長の制約要因になるから何とかしたいということになる訳です。成長のために子供を増やせって、人間は機械じゃないです。より重要なのは労働力として見込める生産年齢人口の減少が問題なんですが、こんなこと70年代から言われてきたことが実現しているだけの話で、これまで何の手も打たれてこなかった結果でもあります。
15-64歳の生産年齢人口の減少は90年代後半から起きている訳で、凡そ四半世紀で3,000万人減っており、年平均60万人という規模です。その結果労働力の投入量が減って供給制約となる一方、家計所得も国全体では減少する訳ですから、消費が縮小して需要制約も起こる訳で、需給両面の制約要因となって経済を下押しする訳ですから、ありきたりな成長戦略ではどうにもなりません。前エントリーの末尾でリニアを作る作業員の不足と完成後の利用客の不足を指摘しましたが、将にこれです。
そして少子化対策は、高齢人口を支える現役世代に更に扶養人口を増やして負担を増やすことにしかならない訳で、現役世代の困窮化はそれ自体少子化をもたらしますし、支えられる高齢者世代の社会保障圧迫で不満となるばかりか、それを見せられる現役世代の将来不安をもたらす訳です。それもこれも経済成長を前提とした対策故のミスマッチなんです。
労働力の投入量の減少を補うための移民受け入れも、年平均60万人もの穴を埋めるのは現実的に無理な訳で、唯一可能なのは資本装備を増やして労働力不足を補い、労働生産性を高めて現役世代の賃金を上げることで、1人当たりGDPの水準を維持することのみです。仮に移民を受け入れるにしても稼げない国に行きたい外国人はいない訳で、1人当たりGDP水準維持は海外からの転入人口を増やすことにも繋がります。
つまりリニアのような大規模インフラの整備よりも、省力化に資するデジタル投資など、労働生産性を高めて賃金上昇につながる投資を行うことが重要です。限られた労働力を例えば軍事部門に張り付けたり、国立競技場のように維持費が高く低稼働なハコモノを作ったりすることは何の役にも立ちません。
その意味でDX推進は総論としては良いのですが、国民にマイナンバーカードを持たせることなどは無意味です。これは栗鼠殺し?の論点ですが、そもそも国民の個人データを国が管理する必要はない訳で、本人に鍵を持たせて必要な時だけ本人の意思で使う形にすれば十分なんで、それならシステムの維持費も低廉で済みますし、情報漏洩のリスクも減りますから、セキュリティにコストをかけずに済みます。これ良い見本がが目の前にありますよね。中国っていうんですがコロナに敗けた国で示したように大量の国民データの処理には高いコストがかかります。
当然大量輸送に優位性がある鉄道にとっては存続が難しい時代ですが、新しい動きも徐々に出てきています。
無人駅、5割に迫る グランピングやエビ養殖に活用:日本経済コスト削減のための無人駅化は進みますが、その結果不要となった駅舎や隣接する土地の活用の事例が少数ながら出てきていることです。コストダウンだけだといずれ支え切れずに廃線ということもあり得ますが、駅を別の用途で活用して人を駅へ呼ぶとか、地域の必要なインフラにするとかですね。
これだけでどうにかなる訳ではありませんが、発想としてはローカル線のプラットフォーム化とでも言いますか、ローカル線の存在を前提とした地域ならではの付加価値創造が可能ならば、そこで得た富でローカル線の赤字補填も現実的な話になります。グーグルやフェイスブックがサービスは無料提供して広告費で稼ぐみたいなものをイメージすればわかりやすいと思います。
加えてえちぜん鉄道や岳南電車で取り組む電力託送事業とか銚子電気鉄道のぬれ煎餅とかもこのジャンルに入ると思いますが、更に駅に充電しテーションを併設してEVレンタルとか地域5Gシステムを構築してリモートワーカーを集めるとか、アイデアはいろいろあると思いますが、重要なのは地域の特性を生かした他にないものを生み出せるかどうかだと思います。その結果地方の人口減少が止まれば、中長期では人口減少の底打ちにもつながります。まあそこへ至るには時間がかかりますが、どのみち子供が増えたところで労働力となるのは20年後とかですから、回り道のようで有効性は高いと言えます。こうした構想が出せるならば「異次元」と言えるかもしれませんが。
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