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Tuesday, January 03, 2023

戻らない混雑

コロナ禍で初の行動制限のない年末年始ですが、銀座や梅田の人出はコロナ前の2割減と元には戻りません。実際感染者数も死者数も増え、救急搬送の滞りが報じられる中では無理もありません。コロナを克服できていない現実です。そして生産年齢人口の減少で通勤客も減る傾向はありますから、コロナ禍が収束してもこれが新常態ぐらいに考えておくべきでしょう。そんな中で都市通勤鉄道の混雑率に異変が起きています。

日暮里・舎人ライナー、混雑率トップで赤字 東京都に誤算:日本経済新聞
混雑率1位は日暮里舎人ライナー(赤土小学校―西日暮里)144%、2位は西鉄貝塚線(名島―貝塚)140%、3位JR武蔵野線((東浦和―南浦和)137%、4位JR埼京線(板橋―池袋)131.8%、5位JR可部線(可部―広島)131.6%と様変わり。常連だった東京メトロ東西線も東急田園都市線も出てきません。コロナ禍がもたらした大異変を実感します。

ゴムタイヤ駆動のAGTで荷重制限のある日暮里舎人ライナーの144%はおそらく改札制限を伴う水準と考えられます。その結果車両増備や座席のロングシート化などの輸送力増強に追われ、当初計画の2023年度単年度黒字化は実現できない状況で、加えて初期車両の更新時期になり費用の負担で当面黒字転換は見込めない状況です。事業者の東京都交通局にとっては大誤算です。

都交通局は地下鉄都営大江戸線の勝どき駅の予想外の混雑が思い出されますが、沿線に集客スポットを複数抱える大江戸線と比べると、沿線にこれといった集客スポットがなく、専ら日暮里や西日暮里でJRや地下鉄に乗り継ぐ片輸送の通勤客ばかりで所謂集中率の高い非効率な路線という点でも不利な条件です。寧ろこの点は旧国鉄香椎操車場跡地開発で潤った西鉄貝塚線にも見劣りります。

その西鉄貝塚線も宮地岳線と呼ばれていた時代の香椎ヤード再開発で、都市計画による連続立体化事業での150億円の自己負担が重いということで、市営地下鉄貝塚線との相互直通を示唆されながら、追加負担を回避して相互直通を諦めたのですが、単線で増発が困難なこともあり、他線が混雑率を下げた中で残ったってことでしょう。混雑路線として名高い埼京線が辛うじて残ったものの、時代の変化を実感します。

そんな中で地方の崩壊で取り上げたように都市鉄道整備計画が目白押しなのが気になります。これから整備される路線は元を取るのが困難になると見込まれます。その中で今年3月開業の東急/相鉄新横浜線の動向は注目されます。新横浜線の場合は集客拠点としての新横浜がありますから、ある程度の営業成績は残せると思いますが、同エントリーで取り上げた豊住線や南北線延伸、湾岸地下鉄などは厳しい現実が待ち受けます。一方で関西の動きです。

JR西日本、奈良線増便や着座サービス拡大 23年春から:日本経済新聞
奈良線複線化による増発と梅田貨物駅跡地開発のうめきた2期で新地下駅開業となり、うめきた新駅は大阪駅と地下通路で繋がり、特急はるかやくろしおが停車する外、おおさか東線が新大阪から延長して折り返すことなど、運行体制が大きく変化します。他にも快速電車の有料着席サービス拡大などもあり、増収を睨んだ攻めも部分もありますが、全体としては微減というメリハリ型のダイヤ改正です。

これはJR西日本に留まらずJR東日本でも在来線特急の拡充などが見られ、明らかに客単価アップを狙ったものですが、乗客減が明らかな中では民間企業としてこの方向性は納得できます。加えてコロナ減便でリソースに余裕があるということでもあります。運輸業の収支好転が見込みにくい中で攻めているとは言えますが、同時に減便もしている訳で、この傾向は今後も続くと考えられます。

気になるのがうめきた新駅はなにわ筋線が乗り入れる予定なんですが、JRと南海の協議が続いており、2018年に環境アセスメント手続きが始まりましたが、事業着手はまだ先ですから、当然2025年の大阪万博には間に合いません。それどころかトンネル躯体が完成済みと言われる大阪メトロ中央線の夢洲延伸も怪しい雲行きです。

というのも予算が限られていてゼネコン各社が及び腰になっていることと、CGで示された構想図に基づいて具体化されたため、細かな詰めが出来ておらず、施工困難な部分も多数あるという状況です。加えて生産年齢人口の減少による作業員確保の問題もあり、万博パビリオンもできるのかどうか危ぶまれております。大阪地盤の大林組と竹中工務店が積極的ではないようで、万博関連で入札不調が相次いでいます。ど素人のお絵かきには付き合いきれないってことですね。

そして気になるのがなにわ筋線は大阪メトロの稼ぎ頭である御堂筋線と競合することです。只でさえ乗客が減少する中で、競合路線の開業は下手すれば赤字転落もあり得る訳で、大阪市の地下鉄民営化と大阪府の泉北高速鉄道売却で得た資金が投入されることを考えると、明るい展望を描けません。生産年齢人口の減少は輸送需要の低下のみならず、インフラ投資を困難にするという両面で経済を下押しします。

この辺リニア60年のウヨ曲折の工事の遅れも同じ背景ですし、それ以上に完成後の輸送需要の見込み違いもある訳です。人口減少下では労働力の減少を資本装備でカバーして生産性を高め賃金を上げる必要がありますが、資本装備強化のための投資は主に省力化が中心となります。新たなインフラを作ってもメンテナンスする人がいなければ経済を寧ろ冷やします。

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