« January 2023 | Main | March 2023 »

February 2023

Saturday, February 25, 2023

宇宙戦争は終わらない

ロシアのウクライナ侵攻直前の宇宙禍族露貧損で緊迫した状況を思い出しますが、結局戦争は始まり未だに続きている状況で、アメリカのインテリジェンス情報の正確さと共に、兵器供与の一方でNATOの参戦には至らない宙ぶらりんな状況は続きます。基本的にロシアが諦めるまで続くと考えられますが、可能性は低いと言えます。

プーチン氏、核戦力増強表明 ICBMや極超音速ミサイル:日本経済新聞
これつまりロシアが米本土に届く核ミサイルなどで戦略核戦力を増強するということで「大きな北朝鮮になる」宣言です。つまり核エスカレーションも辞さずということです。核共有されているNATOエリアも標的になる訳で、こうなると日米核共有を唱えた政治家の不見識が改めて問われます。

これが重大なのはロシアがソビエト時代に核の増強のためにウラン濃縮に励んで大量の未使用濃縮ウランを現時点で保有している事実があるからです。つまり気球騒動の中国が時間をかけて核増強しているより速いスピードで実現可能ということです。共に実現可能性は低いと思いますが、台湾有事より手前の時間軸の問題ということは押さえておきましょう。こうなると日本のサハリン2などロシアのLNG権益も見直しを迫られるかもしれません。

主権国家であるウクライナへ侵攻したロシアが問題なのは言うまでもありませんが、この戦争は穀倉地帯で天然資源にも恵まれ工業化も進みハイテク産業も優位なウクライナを巡る市場争奪戦という意味では帝国主義戦争と何ら変わらない訳で、ロシアを非難するだけでは問題は解決しません。一方ロシア軍の弱さも露呈しており、通常戦力だけで見ればNATOがもし参戦すれば数日で決着するレベルでしょう。

それが出来ないのはロシアの核の脅しが効いているということで、米バイデン政権は「第三次世界大戦にするつもりはない」と言い、ウクライナを支援しながらやり過ぎないように慎重に進めている訳で、核抑止力のリアルを示しています。それに引き換え日本の安全保障の事象専門家たちの「抑止力」の言葉の軽さは眩暈がします。

帝国主義戦争であるということは、所謂グローバルサウスと呼ばれる途上国の賛同は得にくい訳で、実際国連決議でも棄権などで中立を保つ国が多いのは致し方ないことですし、民主国家の普遍価値を唱えても、彼らから見ればグローバル市場で劣位に置かれ不利な交易条件を押し付けられるという意味では西側諸国も中国やロシアも変わらない訳で、どちらか一方を選べという踏み絵のような態度は寧ろ嫌われます。これは冷戦期の第三世界とも違う現実で、世界はバラバラになっているということです。

加えてリーマンショック後の世界的な金融緩和の結果インフレが止まらなくなり、先進国は日本を除いて利上げに動いている状況ですが、資源高やサービス価格上昇に伴う国内労働市場の逼迫でインフレが止まらす、とりあえず好調なアメリカでさえ賃上げが物価上昇に追いつかず実質賃金がマイナスになっている状況です。金融緩和のやり過ぎが原因ですから、当面景気悪化も避けられず、下手すればマイナス成長ということですね。

独裁強化で露呈した中国の成長の限界は失われた中国の始まりでも取り上げましたが、中国の成長が減速する以上に先進諸国のマイナス成長が米中逆転をもたらす可能性も視野に入れる必要があります。とすると軍事力は経済力で規定される以上、アメリカのプレゼンスも相対的に弱くなるということですが、防衛費増でアメリカに恭順の意を表せば安泰という構図も変わってきます。そして当のアメリカはといえば。

米中貿易、4年ぶり過去最高 日用品・食品など依存高く:日本経済新聞
気球の地政学でも取り上げましたがアメリカが問題視するのは中国による通信のバックドア設置であり、各種ハイテク兵器の性能向上でありという訳で、そのチョークポイントとなる先端半導体を渡さないことは重要ですが、一方で廉価な日用品の調達には製造拠点としての中国が欠かせないし、一方経済成長で国民の肉食嗜好が強まった結果、飼料用穀物は安価なアメリカ産抜きには成り立たないという双方の事情があって貿易拡大に至った訳です。

という訳で日米韓台のチップ4と呼ばれる半導体連合で日の丸半導体復活をぶち上げる日本ですが、アメリカが求めているのは中国への半導体関連の輸出を内外を問わず米当局に申請して許可を得ることであって、認められれば輸出は可能です。そして半導体製造に欠かせない露光装置の世界大手ASMLに立地するオランダも巻き込んでおります。しかもEUに諮らずオランダ政府と協定を結ぶ形になっております。これは先端半導体に欠かせない深紫外線(DUV)露光装置はASMLが独占しているからです。

というぐらいにエグイ対応をしていますが、大乗り気の台湾TSMLは最先端分野は台湾に残し中程度の製品を米独日に建設中の拠点へ移して最先端技術は手元に残しつつ各国の補助金はしっかり受け取るといういいとこ取りをしている一方、台湾有事には疎開先として活用することも見越して米アリゾナやドイツの工場は大規模なものになっておりますが、熊本県菊陽町のTSML熊本工場は小規模で主に近くのソニーセミコンダクタの画像センサー用のチップ製造への便宜で選ばれた立地で、半導体関連企業が我先に進出を競った結果地価3割アップで建設工事受注でゼネコンがお祭り状態で大阪万博パビリオン建設が進まないのは怪運国債市場の蓋でも取り上げました。というぐらい確かに半導体で盛り上がっておりますが、不便な熊本空港を巡って高規格の都市高速道整備とともに鉄道整備も動き出しております。

熊本空港アクセス鉄道、肥後大津ルートに 県検討委判断:日本経済新聞
いやホントお祭り状態ですが、日の丸半導体復活は微妙でもゼネコンのお祭りは当分続きそうです。なにわ無くともくまモン半導体。将にオバケ、空騒ぎのおバカにならないことを祈りましょう。

| | | Comments (0)

Sunday, February 19, 2023

気球の地政学

トルコ・シリア国境地帯の地震はその規模の大きさも破格ですが、建物の倒壊が酷い状況です。災害は忘れた頃にやってきます。建物被害の原因がトルコでは賄賂が横行して耐震帰省が守られていなかったことが指摘されています。日本でも耐震強度偽造事件がありました。所謂姉歯事件ですが、大臣認証強度計算ソフトのコピペによるデータ改ざんで、デジタルオンチな日本の官僚のバグですが、五輪不正などでは日本もヤバいかも。

一方のシリアですが、被災地が反政府勢力の支配地域で政府軍による空爆で建物が破壊され、壁や天井の穴を天幕で補修して人が住んでいる状況故、耐震強度云々以前の弱さが災いしております。戦闘の激烈さにおいてはウクライナ以上かもしれませんが、内戦であり欧州から離れていることもあって報道が少なくその悲惨さはあまり認識されておりません。

反政府軍の中の自由シリア軍はアメリカをはじめ西側諸国の支援を得ていますが、必ずしもシリア国民の支持を得ている訳ではありませんし、また内戦故に怪運国債市場の蓋で示したように大っぴらに支援しにくいということもあります。故にアメリカは日本の防衛増強で防波堤になってほしいのが本音なんです。国民にとっては迷惑な話です。

そんな中で中国発の気球が物議を醸しておりますが、思い出されるのが通信傍受でワシントン混線さすで取り上げたスノーデン事件です。米NSCの下請け企業のITエンジニアだったスノーデン氏が米諜報活動の手口や実態を暴露して世界中が大騒ぎした事件です。米国内に留まらず各国から非難の嵐で当時のオバマ大統領は苦境に立たされました。

9.11後に成立した愛国者法で令状なしで通信傍受が可能になり、民間人に紛れるテロリストをあぶり出すためと言われたものの、実態は同盟国を含む各国首脳の通話まで傍受されていたということで、当時の独メルケル首相が不快感を露にするなどのことがありました。そして各国はそうれに反応して様々なことをする訳ですが、ロシアはサイバー攻撃やSNSを通じた米大統領選への介入などで「反撃」しており、トランプ政権誕生を後押ししてある意味わかりやすい反応です。

欧州は人権侵害を重視してEUがGDPR規制をかけています。個人情報の収集と利用を原則本人の承認を経なければならないとする原則に従って加盟各国で国内法制定が相次いでいます。EUは国際ルールとすることを主張し、民間企業の帰省を嫌うアメリカと対立してますが、アメリカも国内法で同等の規制をかける検討は進んでいます。

中国はスノーデン事件にショックを受けると共に,アメリカがそこまでやるならとばかりにデジタル技術を駆使した監視システムを構築し、チベットやウイグルを含む国内ではほぼ完成させたことはコロナ禍による暴力的規制の画像が世界に拡散して周知の事実となっております。一方でゼロコロナに対する抗議運動が全国で同時多発的に発生すると情報量によるバグで修正を余儀なくされました。アメリカの情報機関のようなプロファイリングの技術は持ち合わせていなかった訳ですが、事後的なデータ解析で獲得する可能性はあります。中国の民主化は遠い。

その一方でトランプ政権による経済制裁で特に5G技術を擁するHuqweiの通信機器の使用が多くの国で禁止されたことで、おそらく中国政府が想定していたHuaweiの通信機器へのバックドア設置がブロックされ、更にバイデン政権による先端半導体の輸出規制でより困難な状況から、気球を飛ばして情報収集することにしたってことでしょう。バイデン大統領がオバマ政権で副大統領だったことから、中国への容赦のない締め付けに躊躇はないのでしょう。

中国も複数の静止衛星を打ち上げていて当然偵察に使われていると思いますが、情報解析のためには別ルートの情報も欲しい訳で、バックドアによる通信傍受がダメなら別の方法でということでしょう。そして戦時中の日本の風船爆弾を彷彿させる偵察気球に行き着いたという仮説は成り立ちます。実際中国はアメリカの撃墜の対応に反応してますし、結構正直です^_^;。とはいえ失敗ではありますが。

米中、高まる偶発リスク 米軍が中国偵察気球を撃墜:日本経済新聞
ワシントンポストの記事が紹介されてますが、それによると気球は海南島で打ち上げられ、偏西風に乗ってグアムなど太平洋島嶼部の米軍基地の情報収集を狙ったものの、偏西風の蛇行で針路が北へずれてアリューシャン列島から米航空鵜識別圏入りしたもので、狙いを外した訳です。

偏西風の蛇行は気候変動で説明されており、CO2排出量の多い北米、欧州、東アジアの3カ所で気温差から大きく南へずれており、逆にCO2排出が少なく吸収源でもある海洋部分で押されて北へずれるということで、図らずも偏西風の蛇行を実証して見せた訳です。折しもシベリアの寒気で東アジアを寒波が襲うタイミングとも符合します。温暖化で寒波?という懐疑派の疑問への回答にもなります。ってことで、気候変動という人類全体の危機にあって戦争やってる場合かいという感想を持ちます。

中国「エネルギー消費」再起動 世界のインフレ左右 チャートは語る:日本経済新聞
エネルギー地政学から言えばミサイル買うより再エネによる地産地消体制構築こそ喫緊の課題の筈です。原発再稼働は手続き上直ぐには無理ですし、60年超の稼働を認めても安全対策投資が嵩んで寧ろ不経済ですが、サンクコストを損切出来ない電力会社の都合が優先されてます。サンク苦労すのプレゼント要らね。事故も災害も忘れた頃にやってくることを肝に銘ずるべきです。
舎人ライナー事故、地震で側面車輪浮き脱線 運輸安全委:日本経済新聞
コロぶナ日本で取り上げた日暮里舎人ライナーの脱線事故の運輸安全委の報告です。地震の揺れで案内輪がガイドレールから外れて脱線ということで、防ぎようのない事故だったようです。新幹線のように売れを検知したら自動停止するぐらいの対策が必要でしょうけど、無人運転によるコスト削減を狙ったAGTとしては追加コスト負担はつらいところです。まして戻らない混雑で示したように混雑対策でによる出費で赤字脱却できないとなれば尚更です。地方も含めて日本の官僚にはバグが多い。

| | | Comments (0)

Saturday, February 11, 2023

怪運国債市場の蓋

怪運国債依存症の続編のウンコクサイ話です。

日銀ピボットで株高の死角 共担オペに「追い証」リスク NQN編集委員 永井洋一:日本経済新聞
「毒まんじゅう」とは穏やかではありませんが、取り上げられている共通担保資金供給オペ、略して共担オペを取り上げております。これは12月の日銀のYYCの上限見直し後も10年ものだけ金利が低い屈曲イールドカーブを批判されて10年もの以外の金利も下げるため、民間銀行が保有する国債の担保差し入れで日銀が低利融資するというもので、日銀だけではすべての残存年数国債の買い付けすることには限界があるので、民間銀行に代わりをさせるものです。つまり金利の高い国債を保有したまま低利融資することで利ザヤが稼げる訳で、銀行保有国債の売りを阻止しようということです。

こうすれば金利上昇を睨んだ投機筋カラ売りに必要な国債の現物が市場に出なくなってカラ売りが困難になることを狙ったもので、残存年限によっては市場が干上がっているケースもあり、また日銀自身も2年もの5年もの20年もののなど買い散りオペでイールドカーブ全体を下げる狙いです。その結果多くの銀行が共担オペに入札し恩恵を受ける一方、投機筋の打ち手を封じることになりますが、同時に投機筋は空売りに必要な国債現物を日銀を含む銀行から借り入れていた訳で、当の日銀が投機筋を助けていたという笑えない構図があります。国債の高値買い取りと当座預金の一部にかかる0.1%の利息を稼ぐ必要がある訳です。

結果的に日銀の国債買い取りは過去最高になっており、民間銀行の共担オペ入札で国債市場はほぼ流動性を失った訳ですが、これも痛し痒しで、逆に規模の小さい市場ほど少ない手持ち資金で市場を動かしやすくなりますから、日銀による国債爆買い以上の効果は見込めませんし、銀行も金利上昇による追証追加を迫られるリスクを負う訳で、やり過ぎが銀行を追い込むことになり、それが民間融資を圧迫する可能性もあります。ただでさえゼロゼロ融資の期限で通常融資への借り換えのタイミングでの民間融資圧迫は愚策ですし、既に多くの銀行で貸倒引当金を積み増している状況です。企業倒産が増えることは間違いありません。

日銀の異次元緩和はこうした瑕をもたらす結果を見ればわかる通り大失敗なんですが、さりとて利上げに動けば国債金利の上昇で銀行の信用不安や国債利払いの増加で財政を圧迫したりすることから、急激にシフトという訳にもいかず、とりあえずYYC見直しから徐々に手掛けて市場にショックを与えない配慮が欠かせません。そんな難題を残して黒田日銀総裁は4月8日に任期満了で退任する予定ですが、後継総裁選びは難航してこうなりました。

日銀新総裁に植田和男氏を起用へ 初の学者、元審議委員:日本経済新聞
日銀プロパーで歴代総裁に仕えて陰で支えた本命とされた雨宮正佳副総裁の辞退で人選は難航し、結果的に民間人の学者として初の総裁ということで植田和男氏が浮かんできました。1998年から2005年まで日銀審議委員を務めており、金融政策に明るいとはいえ速水総裁時代のゼロ金利解除で反対票を投じるなどしており、異次元緩和の見直しがどれだけ進むかはわかりませんが、日銀も財務省も後始末の困難さはわかっているので引き受け手がいないというのが実際のところです。学者先生に弾除けになってもらいたいというのが本音でしょう。でも財政拡張は続きます。
経済力こそ国防の基盤 財政政策と国債増発の行方 鎮目雅人・早稲田大学教授:日本経済新聞
防衛費の財源問題が与党内で論争となっておりますが、税であれ国債であれ国内の経済資源を費消することに変わりはない訳で、国民に我慢を強いることにまります。それなのに防衛費増の必要性に関して腑に落ちる説明はなされておりません。はっきり言いますが、アメリカの歴代政権が日本に求めてきて日本の歴代政権がぬらりくらりかわしてきた宿題に対する満額回答をした訳です。

アメリカの国内世論の分断で支持が盤石とは言えないバイデン大統領にとっては外交成果となる一方、日本には財政負担のみならず、例えば島嶼部防衛の名目で南西諸島の陸自配備を決めたら米海兵隊がついてきたということで話が違うと現地は大騒ぎになっていますが、財政以外でも国民に我慢を強いる訳で、どっち向いて政治やってるんだって話です。そもそも台湾は日本もアメリカも国家承認していないので、中台で紛争が勃発しても内戦ですから集団的自衛権の対象にはなりません。この辺のウクライナとの事情の違いを無視しての軍備増強は少なくとも日本にとっては何のメリットもありません。敢えて言えば日米同盟増強による核抑止力の恩恵ぐらいです。

またウクライナでNATO軍が参戦しないように、敵が核保有国の場合アメリカとしては参戦が躊躇される訳で、核保有国の中国と直接交戦は避ける筈です。そうなると反撃能力として日本に配備したトマホークはインテリジェンスをアメリカに依存する限りアメリカの都合で発射ボタンを押される可能性はある訳で、アメリカの参戦は議会が決めることで大統領は助言するにとどまりますから、議会のせいにして中国に対しては日本がやったことにして参戦をためらうことになれば自国兵士を傷つけることなく中国を叩くことができる訳です。そうならないと確約できるのか。日本の自衛隊の指揮命令権が事実として機能しない可能性を否定できない現実があります。

という訳で経済力が落ち目に日本は防衛力強化の前にやるべきことがる筈ですが、デタラメばかりです。例えばこれ。

大阪万博、背を向けるゼネコン 採算低下で入札不成立:日本経済新聞
公共事業の不調は今に始まった話ではありませんが、再来年開催予定の大阪万博に暗雲が漂います。というのも資材費の高騰に加え台湾半導体メーカーTSMC熊本工場建設で熊本県菊陽町が大騒ぎになっており、関連企業を含め企業の投資意欲が旺盛でゼネコンにとってはおいしい状況にある一方、慢性的な人手不足、更に働き方改革の猶予期間が終わる2024年問題、五輪の費用膨張に対する国民の怒りで予算増額ままならず、夢洲の軟弱地盤も,、翻翻、ハネた~_~;。

なにわ無くとも江戸村先五輪ですよから巡り巡って大阪万博のパビリオン建設が進まず工期が迫れば尚のこと入札は難しくなります。うめきた新駅は来月開業しますが、乗り入れ予定のなにわ筋線は未だに事業着手もされず「なにわ無くとも大阪万博」どころか大阪府、大阪市の見通しの甘さからゼネコンにそっぽを向かれている状況です。府や市は国が何とかしてくれることを期待しているようですが、五輪の躓きが行く手を阻みます。

五輪談合、組織委元次長ら4人を逮捕 独禁法違反容疑で:日本経済新聞
コロナ禍の五輪で無茶やったから国も動きにくいし、防衛増税の議論で万博どころじゃないというところでしょう。いや忘れた頃にこっそりやらかす可能性はありますので、国民として監視は怠れません。ホントいい加減にせい!

| | | Comments (0)

Saturday, February 04, 2023

無視されるシャドーワーク

オーストリアの社会評論家イヴァン・イリイチ氏の造語ですが、子育てを含む家事労働など賃金を伴わない影の労働を名付けたもので、欧州発のベーシックインカムの議論の基盤となっている考え方です。ここから敷衍されるのが、子育てに対する公的支援の在り方です。

絶望の少子化対策怪運国債依存症でも取り上げましたが、生産年齢人口の減少に伴う労働力減少を補う意味では子育て支援は寧ろ逆効果です。15~64歳の生産年齢人口の減少が急速に進行中ですが、現役四大卒で言えば頭の7年は学生で、せいぜいアルバイトで労働参加する程度ですから、労働力として実働する22歳以降から実際のキャリアがスタートする訳ですが、女性の場合は出産年齢が30代半ばまでとして、子育てを含めると20代30代は出産と子育てで手を取られます。これつまりシャドーワークが労働参加後のキャリア初期にバッティングする訳です。

更に大学等の学費高騰で教育費負担が来る40代も厳しいとなります。結果的に女性の多くがキャリアを中断して子育て後の復帰で地位保全されるケースは少なく、パートなどの補助的業務で低賃金を余儀なくされるという流れがあります。つまり女性は端からハンディキャップレースを強いられている訳です。加えて40代半ばからは高齢の両親の介護がのしかかる訳ですから、キャリア後期もシャドーワークを強いられる訳です。

1世代25年として50代で親が後期高齢者になるということですね。これらに対する経済補償としてのベーシックインカムというのが本来の議論です。新自由主義者が言う社会保障の一元化とは全く異なる考え方ですが、その意味で今国会で議論されている児童手当に所得制限を設けないのは当然となる訳です。

但し経済的に補償されれば済む話かと言えばそうではない訳で、シャドーワークの賃労働とのバッティングという問題は付きまとう訳です。加えて少子化対策としては殆ど無意味ということは重ねて指摘しておきます。育児に希少化する労働力が割かれる訳ですから、当面の労働力不足は寧ろ深刻化します。これは保育園などの育児支援サービスも人手不足は避けられませんから、結局子育ての負担は増すことに変わりはありません。故に少子化対策としての効果は見込めません。故に「異次元の少子化対策」はあり得ません。

「育休中のリスキリング」発言 野党が岸田首相を批判:日本経済新聞
という訳で岸田首相の発言が炎上した訳ですが、シャドーワークとしての育児という実態を知らないということは、子育て支援の本気度もその程度ってことですし、寧ろ少子化対策にならないなら予算を削ろうという話にもなりかねません。子育て支援はシャドーワークに対する補償であるべきです。加えてリスキリングは学びなおしによるキャリアの乗り換えですが、当然コストもかかりますし、労働参加の空白にもなります。それを与党議員のおそらくやらせ質問で答えてしまうということは、原稿は官僚が作ったとして政府も与党議員もその程度の認識しかないということです。
少子化対策「N分N乗」案 茂木氏が紹介、維国導入訴え 子ども多いほど税軽減:日本経済新聞
フランスなどで採用されているという触れ込みですが、これも愚策。フランスの場合受け入れた移民が主たる受益者で、公式には移民政策を採っていない日本には当てはまりませんし、効果は知れており、出生率も人口増加ラインの2.07に遠く及びません。移民を引き付けて労働力不足を補う効果はありますが。

という訳で労働力不足は結局資本装備による労働代替が必要なのは繰り返し述べてますが、注意が必要なのは資本の質が問われるということです。例えばデジタル投資ですが、アメリカでもGAFAMの人員削減が止まらない状況ですが、巨大ハイテク企業の収益性は例えばアマゾンで言えばユーザーが勝手にポチってくれるから店舗無しでコストをかけずに高収益を得ている訳ですが、その結果ユーザーにシャドーワークを強いているとも言える訳です。グーグルやフェイスブックなども広告をスキップする手間をユーザーに強いているという意味では企業がユーザーにシャドーワークを移転してコスト負担を免れているという側面んもあります。

企業のみならず例えばコロナ対策で立ち上げたHERSYSという通知システムは入力項目が多すぎて医療現場に負担を強いており、それが医療逼迫をもたらすという本末転倒が起きていますし、マイナンバー付与で済むはずのマイナンバー制度が下手に高機能なマイナンバーカードを作ってセキュリティ問題を抱えたりということも同様ですが、申請手続きが煩雑な上、セキュリティのために二重パスワードが要求されたり紛失時の再発行に時間がかかったりで、国民視点でメリットは皆無です。

バスの細道で取り上げた京急ポニー号のデマンド運行見直しによるコストの引き算での値下げという視点も必要です。というのは資本装備は維持費がかかるということで、減耗する固定資本に沈む夕陽で示したように、資本装備を増やせば済む問題じゃない訳です。例えば新国立競技場のように低稼働で赤字となる施設を作っちゃったことは反省点です。その意味で取り上げたいのがリニア問題ですが、週刊ダイヤモンドでJR東海の迷走ぶりが特集されてます。その中の記事です。

JR東海「上から目線」でリニア沿線住民から総スカン、葛西イズムと国益至上主義の無神経:ダイヤモンドオンライン
オンライン記事は会員限定なので、全文は図書館で読んでほしいですが、川勝知事の前任の石川知事時代からの確執を川勝知事が引き継いだもので、故人となった葛西名誉会長の「上から目線」の無神経発言が発火元ということで、残されたJR東海幹部も対応のしようがないのが現実です。そしてこれ。
JR、鉄道回復8割の壁 本州3社の収入コロナ前戻らず:日本経済新聞
これつまり東海道新幹線の需要逼迫というリニア建設の必要性が消えたということです。加えて言えば元々厳しいリニア開業後の収支見通しも赤字必至ということでもあります。加えて地上コイルや車上の超電導コイルのメンテナンスなど未知のコスト負担もありますから、今からでも遅くはないんで、見直しすべきでしょう。とはいえ「皇帝」と言われ異論を述べると干されてイエスマンばかりとなったJR東海の今後は茨の道です。

| | | Comments (0)

« January 2023 | Main | March 2023 »