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April 2023

Saturday, April 29, 2023

東京五輪の落とし物

ジングウ・ファミリアでケチがついた新国立競技場は二転三転、Undoしたい大草原wwwの小さな森で森元首相が黒幕で五輪の目的は都市計画変更による神宮の森の再開発だったことも五輪霧中で指摘しました。ザックリ言えば日本初の風致地区指定で開発が制限されていた神宮外苑ですが、一部国有地はあるものの私有地に開発制限をかけることに対する地権者の不満はくすぶっていて、都もそれに応えるべく密かに再開発計画を作っていたものです。二転三転はあったものの、思惑通り再開発にこぎ着けた現在です。

「神宮外苑を、未来につないでいく。」神宮外園地区まちづくりの広告に大竹が一ツッコミ「大きな木切って、小さい木を植えますって本数かい!」:文化放送
利権のふえる訳ワカメちゃんでも取り上げましたが、故坂本龍一氏が都知事に宛てた手紙が話題になり、イチョウ並木の伐採などで反対運動が拡大中で、大手新聞のカラー一面広告を出して火消しに走った訳ですが、大手紙にこのサイズのカラー広告を出せる金銭的湯裕があるところを見せつけて、暗に記事掲載停止を示唆するメディア報道への圧力でもあります。実際殆どのメディアでは取り上げておりません。

それに伴って神宮球場や秩父宮ラグビー場などの建て替えや高層ビルや商業ビル建設も言われておりますが、これだけの大規模開発を都民の同意を得ずに密かに進めたことが問題です。ザハ案で揺れた新国立競技場のドタバタも、高さ制限解除の口実だったということですね。しかも制限解除に伴って容積率も緩和されますが、容積率の余剰の所謂空中権転売によって、近隣の伊藤忠本社ビルの建て替えで伊藤忠から代金が支払われるというおまけつき。試算では1,300億円ぐらいと言われます。故に一部で言われる神宮の森の維持費で明治神宮も大変なんだという説も大ウソってことです。

という訳で、五輪のレガシーは金まみれで、しかも新国立競技場のように使用料が高すぎて稼働率が低迷して赤字垂れ流しですが、再開発に群がった利権屋はそんなことお構いなしに自分たちだけで儲けて山分けの世界です。しかも政権与党に圧力をかける神社本庁のような宗教団体を利する形で旧統一教会問題で関心を集める政治と宗教の不適切な関係をもたらしている訳です。ツケは国民に回ります。

レガシーというのも憚られるこんな落とし物だらけの五輪で国民は不幸です。金満五輪のレガシーとしては選手村を改装して売り出された晴海フラッグの問題もありますが、こちらは地場相場より安い売り出し価格故に売れ行き好調ですが、1人で多数の区分を購入する明らかな富裕層の投資と思われるものが多く、相場に見合う利益を上乗せして転売されることは確実です。ここでも五輪は食い物にされてます。

そして地味ながら五輪には間に合わなかった東京BRTという落とし物もあります。元々五輪前に開通予定だった環状2号線を専用連接バスで運行する計画で、現時点では陸の孤島となっている晴海フラッグの住民輸送及び豊洲市場など湾岸と都心を結ぶ新交通として計画され、当初国産FCV連接バスを予定していたものの、車両開発も間に合わず、とりあえず対車体型の国産FCVバスのトヨタSORAと、いすゞのHEV連接バスが用意され、五輪期間中の選手輸送に活用した後に公募の運行事業者に運行委託ということで、京成バスが選ばれ東京BRTという別会社を設立してとりあえずプレ運行中です。ルートは現状3路線です。

幹線ルート:’(虎ノ門ヒルズバスターミナル)―新橋⋯東京テレポート
晴海ルート:虎ノ門ヒルズバスターミナルー晴海BRTー豊洲市場(ミチノテラス豊洲)
勝どきルート:新橋―勝どきBRT
勝どきルートは他の2ルートと完全に重複しておりますが、おそらく本格運行時に晴海フラッグに乗り入れると共に、東京駅延伸の含みもあるようです。新橋、勝どきBRT、豊洲市場(ミチノテラス豊洲)は乗継停留所に指定されており、ICカード乗車券で最初の乗車から60分以内で乗継成立としており、大人220円、小人110円で一定エリアの面の輸送をサポートしている点が一般路線バスと異なります。

湾岸のマンション地帯故にそれなりに利用されてはいますが、連接バスが必要な程の需要は現時点では見られず、また虎ノ門ヒルズバスターミナルや新橋のバス停がわかりにくいなどの課題もあります。そして豊洲市場に関しては都営バス市01系統が新橋駅前のJR駅前から210円で運行しており、豊洲市場が目的地なら利便性で勝ります。加えて都営バスのICカード90分ルールで他系統との乗継で100円引きの割引が受けられます。

将来はつくばエクスプレスとの直通が示唆される湾岸地下鉄の建設に繋げたいところでしょうけど、現状では地下鉄建設が必要な程の需要はなさそうです。それでも晴海フラッグの資産価値維持のためには強行される可能性があります。何とも重たい五輪の落とし物です。

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Saturday, April 22, 2023

リニアちゃん気をつけて

米投資家ウォーレン・バフェット氏の来日で日本株に注目が集まり相場も上げております。「投資の神様」の神通力?いえそうじゃなくて、元々売り越し傾向にあった海外投資家が買い越しに転換しており、それを反映した相場ですが、2年前上辺の株価で指摘したように、元々過剰マネーで株価水準が押し上げられていることによるものですし、それに加えて欧米の金融不安、コロナ後の回復が遅れている日本経済への回復期待に加え、東証のガバナンス改革としてのPBR1倍割れ企業問題に対する思惑も絡みます。

PBR1倍割れ倍増 東証再編1年、統治改革仕切り直し:日本経済新聞
おさらいですがPBR=株価純資産倍率は株式時価総額が、総資産から負債を差し引いた純資産(資本勘定)の何倍に当たるかという数値で、資本効率を示す指標として投資家が見ています。PBR1倍割れというのは、資本が生み出す将来キャッシュフローの現在価値の総和の期待値が保有資産売却によって得られる所謂解散価値を下回る訳で、有体に言えば会社を清算した方が良い水準ってことです。

驚くべきことにトヨタや三菱UFJなど日本を代表する大企業が名を連ねていることです。トヨタも三菱UFJも昨今海外事業のウェートを高めており、海外現地法人の収益が大きくなっている一方、稼いだ利益は現地法人で貯蓄されて本社送金されておらず、連結決算で円安もあって簿価上の利益を押し上げている訳ですが、利益が再投資されずに内部留保されている訳です。日本企業の海外現法内部留保と言われております。当然理利に敏い海外投資家が見逃す訳がありません。

投資家の納得が得られる投資計画を明らかにして評価されれば株が買われてPBR1倍割れは解消する可能性がありますが、同時に余剰資金による自社株買いで株主還元を求める圧力も高まる訳です。寧ろ手っ取り早く利益確定するならこちらが主流となる訳ですが、その結果日本企業が稼いだ富が海外流出する訳です。「バフェット効果で株高バンザイ!」とはならない訳です。

会員限定記事ですから図書館で閲覧していただきたいのですが、記事にある一覧表にJR東海が入っており異彩を放ちます。上場JRの他の3社はPBR1倍越えなのに、なぜJR東海だけ?というのが疑問なんですが、他社にないJR東海の特殊事情といえばリニアに行き当たります。直ぐに思いつくのはリニア大阪開業前倒しのための資金繰り支援で国の財政投融資資金3兆円が投入されたことが思い当たります。

そうするとややこしいんですが、財投資金そのものは借入金なんで常識的には負債勘定になる筈ですが、30年据え置きの低利融資で政府保証付きという条件を鑑みれば資本勘定として扱うことも可能な訳で、だとすると資本勘定の膨張でPBRを悪化させた可能性はあります。但しそれなら資本の厚みが増したという意味で株式市場で評価されてもおかしくないのですが、そうなっていないということは、リニア事業に対する株式市場の評価は必ずしも高くはないというか、寧ろマイナス要因と見做されている可能性があるということです。

コロナで業績が悪化したJR各社ですが、JR東海はJR東日本などと比べても回復が早かった訳で、業績相場としても疑問のあるところです。この点ではJR東日本もJR西日本も非運輸の関連事業重視に舵を切っており、元々運輸業比率の低かったJR九州共々コロナ後の評価は寧ろ高くなる一方、運輸業比率の高いJR東海は取り残されている可能性もあります。コロナ後を睨めばリニアの必要性も低下した見られますし、静岡工区の未着工問題で暗雲垂れこめているリニア事業に拘泥する姿勢は寧ろ投資家を遠ざけているのではないかということも言えそうです。

それでも資本規模が大きく議決権行使のハードルが高い為、JR九州のようにアクティビスト投資家に狙われずに済んでいるのではないでしょうか。また財投資金の返済を求められる可能性のあるリニア事業の撤退を迫ることも、投資家視点からはやりにくいということもあります。加えて財投資金を投入したJR東海の自社株買いで株主還元をやれば非難されることは目に見えてます。てことで四面楚歌ですね。リニア推進派の皆さん、静岡県を悪者にしても何も解決しませんぜ。

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Sunday, April 16, 2023

成長しないこどもの日本

こどもの日本でJアラート発令を受けての東京メトロの運休措置で議論がありましたが、今回も議論を呼ぶ結果となりました。

北海道新幹線など一時運転見合わせ 北朝鮮ミサイルで:日本経済新聞
政府発表では7時半ごろには発射を確認していたものの、Jアラート発令は7:55で30分近いタイムラグがありますが、その間に軌道予想して落下点を割り出して北海道南西部の陸地に落下する可能性があると判断しての発令ということで、過剰反応とされた2017年の東京メトロとは違うとは言えますが、議論を呼んでおります。

東京メトロの場合は地下鉄駅へ人々が避難して混乱することを避ける為だったようですが、繰り返しますが日本の地下鉄には核シェルターの役割はなく、寧ろ人が殺到することによる混乱の方が怖いのは確かです。故に東京都が緊急避難場所として指定した地下鉄駅も東京メトロと都営地下鉄のやや閑散な駅が中心で、都心の大規模駅は外されております。地下鉄駅と直結のビル等との調整が困難なこともあるようです。つまりJアラートが発令されても殆どの場合逃げ場がないのが現実です。

一方で今回の北朝鮮のミサイルは固体燃料ICBMということで、発射のための燃料注入などの事前準備情報が得られない上に、今回さらに発射後の軌道修正もあったようですし、また日本側のレーダーが見失うという失態もありました。つまり北朝鮮のミサイルは確実に進化していて、迎撃も困難だし発射準備段階を捉えて敵基地を叩くということも困難ということで、ミサイル防衛システムや敵基地攻撃能力が無効ということでもあります。

加えてJアラート発令の迅速化も進められていたのですが、今回も発射から発令までのタイムラグが大きいのも気になります。そもそもJアラートは総務省消防庁所轄の災害警報システムで、地震や津波など時間的猶予の少ない自然災害で避難を促す目的がある訳ですが、当然ながらミサイルのレーダー追尾は所轄外な訳で、防衛省から官邸を経て総務省に指示が出るという形となる訳ですから、発令にタイムラグが出るのも仕方ないのでしょう。今の形だと国民の命を守る機能は心許ない状況です。という具合に何か釈然としない政府の対応です。

やはり国民の命よりもアメリカからの防衛力強化要請の方が優先されているのが現実です。これはウクライナ戦争で標的にされたチェルノブイリやザボリージャの原発の危険性は明らかなのに、原発再稼働に前のめりになれることに通底します。例えばこれ。

敦賀原発2号機の安全審査を再中断 規制委、資料不備で:日本経済新聞
日本原電敦賀発電所2号機は原子炉直下には活断層があると指摘されて停止しておりますが、日本原電はそれを否定して再稼働しようとしておりますが、当然ながら活断層があるという指摘を否定するエビデンスを示す必要がある訳です。規制委も門前払いせずに申請を受け付けたものの、書類の不備で却下され、再提出されたけど再度却下というのがこれまでの経緯です。「書類の不備」と報じられてますが、実態は数値の改ざんであって悪質です。これ東電の柏崎刈羽の不祥事で審査中断された経緯と似ています。

日本原電は電力9社と電源開発が出資する発電専業の民間会社ですが、敦賀の他東海第二原発も保有しており、こちらは周辺自治体の同意を得る過程で杜撰な避難計画がすっぱ抜かれていて物議を醸しています。つまり現状原発は休眠状態で稼働していない訳ですが、そんな中での政府の原発活用方針の打ち出しです。やはり国民の命よりも原発再稼働優先という訳ですね。こんな会社に原発動かして欲しくないです。

脱炭素目標の欺瞞で取り上げたように、稼働中の9基(運転停止中の高浜4号機を含む)で電源構成比6%で目標が22%ですから、許可済み7機と申請中11基を含む27基全てを稼働させても足りず、40年超の高浜1号機などで再稼働が計画されております。目標達成には30基程度が必要なので、政府は元々原発活用に舵を切るつもりだった訳で、最初から欺瞞だった訳です。

しかも目標年度は2030年度であと7年しかない訳ですから、いかに無理な数字かということです。但し成長率1.7%という高めの想定ですから、2015年以降の実績値である0.24%とすれば総需要が抑えられて原発は10基程度で済みます。つまり謎の運転停止中の高浜4号機を除外しても、規制委の許可を得た7基中2基程度が稼働すれば当面の需要は賄えます。故に原発再稼働を急ぐべきだという議論はミスリードです。そもそも再エネ38%もドイツで既に達成した水準ですし、アメリカでも再エネ活用が進んでいます。

米国の発電量、再エネが石炭を初めて抜く 2022年:日本経済新聞
欧州のようにFITで政策誘導した訳ではなく、しかも戸建てや工場の屋根のパネルの発電分は含まないですから、実態として再エネ活用が進んでいる訳です。インフレ対策法で再エネ投資が促進される状況もあり、日本より先を進んでいます。日本では実現可能性を無視した議論がまかり通る現状ですが、想定のように成長できていない現実を直視すべきです。同様のことはこちらにも。
大阪のIR認定へ、政府調整 14日にも推進本部で議論:日本経済新聞
詳述は避けますが、人気テーマパークUSJを上回る利用客を想定していて実現可能性に疑問符がつきます。府知事と市長のダブル選挙のみならず議会の単独過半数を得た維新のいい加減な計画に民意のお墨付きを与えたことで、大阪の未来が心配です。怪運国債市場の蓋 で指摘したように万博も微妙だし。

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Saturday, April 08, 2023

木から落ちたサル

ChatGPTが巷で話題ですが、所謂生成AIと呼ばれるテクノロジーで自然言語生成に特化したものですが、仮にこれで小説を書いたとして、著作権はどうなるかというと、AIはあくまでのツールですから、自ら著作権を主張することはない訳で、AIを使って生成した文章を公開した人に帰属するというのは理解できるでしょう。

機械学習で急速に能力を高めているとはいえ、コンテンツの中身に責任を追うのはあくまでも人ということですね。そして機械学習の元データはネット上の言語データからなる訳で、公開された言語データにはそれぞれ著作権者がいる訳で、生成された文章の内容によっては原著作者から剽窃や改ざんと見做される可能性もある訳ですが、公開する以上提訴のリスクはあるということになります。現実的には提訴する側の挙証責任のハードルはありますが。非公開の私的利用に留めるのが良いでしょう。加えてリクエスト側の個人情報も取得される訳ですから、そのリスクも意識しておくことが大事です。

昔サルにタイプライターを与えたら、確率は低いけどシェークスピアの作品を出力する可能性があるという話を聞いたことがありますが、サルに人格はない訳ですから、やはり著作権は主張できません。という訳で金融危機は核より怖いで取り上げた報道の政治的公平性を巡る問題ですが、総務省の行政文書が公開されたことで事実関係は明らかになり、法の支配を謳う国のウソが明らかになった訳ですが、現役閣僚の頸を採る話にすり替わってしまい、本質が曖昧になってしまったのは残念です。

その小西議員が不適切発言で叩かれてるんですが、叩いている人達がステレオタイプな集団心理が見えて正直サル山のサルに見えてしまいます。あ、勿論「サル」は差別語のニュアンスがありますので、公人である小西議員の発言は不適切なものではありますが、あくまでも私人としての感想です^_^;。そもそも人間は樹上生活から脱落して地上生活を強いられた弱いサルなんですが。

自然の恵みに抱かれた樹上生活を追われたが故に、狩りの獲物や天敵の猛獣を見るために直立二足歩行し、また狩りで獲物をしとめない限り空腹が続くことから体内に脂肪を蓄えるようになり、その結果寒さを凌ぐ毛皮を脱ぎ捨てて感覚器官としての皮膚を発達させ、それらの相乗効果で脳の発展が促され、その結果自然に働きかけることで効用(価値)を得る術を習得します。マルクス流に言えば労働ですね。故にどれだけ進化して自然言語処理の能力を得ても自らの生存に関わる価値を生まないAIに人格を定義できないのは自明です。

SVB破綻で始まった金融危機で足踏みが予想されるテック業界ですが、技術の進化が止まるということはない訳で、故にそのアップデートに人が付き合うこともまた避けられないところですが、そんな出来事が鉄道業界でも起きました。

なぜ? 「Suica」がサーバ型に移行する理由 25年近く稼働する“安全神話”の象徴に何が:ITmedia
Suicaの高速処理で安全性の高いローカル処理による分散型からセンターサーバ型への移行がJR東日本から発表され、一部から疑問の声も出ましたが、ブロードバンド通信の普及前で且つ機器類の性能も低かった時代に、改札機によるローカル処理で高速処理を実現する一方、それ故に取扱エリアの拡大が困難だったことから、処理のサーバ移行はそれが可能な環境が整ってきたということでもあり、サーバといってもクラウドですから、セキュリティやバックアップなど多重系の処理で回避するという意味もありますし、クラウドで実現したPayPayなどQRコード決済システムが普及してライバルが増えたことに対応する意味もあるでしょう。コロナ禍で鉄道の利用客減少ということもあり、関連事業としての強化策という側面もあると思います。

またその結果自動改札機のシンクライアント化でコストダウンにもなり地方線区への拡大も容易になります。特急指定券などの複雑なチケットや割引きっぷなどもデータをサーバに置いてアクセスキーとしてIDカード的な使い方も可能となり、今後のシステム拡張の余地もある訳で、新幹線改札もSuica1枚で通れるとか利便性も高まります。通信障害時の問題は自動改札開放で対応することで混乱を防ぐということも視野にあるでしょう。それらの総合判断ということですね。地上のサルは知恵を問われます。

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Sunday, April 02, 2023

怪運国債米国債と欧州劣つ後-!

ウンコクサイ話は日本だけじゃなかった。金融危機は核より怖いで取り上げたSVBにしろクレディ・スイスにしろアメリカとスイスの当局の迅速な対応でとりあえず沈静化してますが、これで終わりとはならない危機の種は残っています。

SVBは預金の膨張に合わせて米国債や不動産担保証券(MBS)など「安全資産」とされる債券投資を増やした結果の破綻なんですが、低金利下で発行された債券ですから、金利上昇に伴う含み損の問題は抱えていた訳で、その為に引当金を積むなどのリスク対応を採っていなかったことが破綻に繋がった訳で、トランプ政権時代の2018年に中堅銀行規制を緩和したことによる影響も言われて政治問題化しております。ということは米中堅銀行に危ない銀行が隠れている可能性は残っている訳です。FRBも利上げげの一方で最後の貸し手として資金繰り支援をしておりますが、金融政策としては矛盾した対応となります。

クレディ・スイスに関してはスイス当局のAT1債無価値化で、劣後債とはいえ弁済順位が劣る株式がUBS株式と交換されて保全されることを考えると疑問が残る対応です。高利回りに惹かれて購入した投資家はリスクを承知していた筈だという議論もありますが、AT1債を発行している銀行はクレディ・スイスに留まらずドイツ銀行など多数あり、これらのAT1債を購入した投資家に動揺が走っておりますし、もっと厄介なのは永久劣後債を謳いながら10年程度で償還して借り換えることが慣習化されている現実があります。ということは借り換えを渋る銀行は危ないという評価になりますし、さりとて借換債を発行したところで引き受けてくれる投資家がいるかどうかもわからないという進むも地獄退くも地獄という現実に直面する訳です。

ということで地雷が埋まっている状況に変わりはない訳です。また日本の地銀もSVBと同じような問題を抱えております。コロナ対応で持続化給付金や雇用調整助成金を受け取った地場企業はやはり預金を膨らませている訳ですし、加えてゼロゼロ融資でもとりあえず借りといてという企業が多い訳です。ゼロゼロ融資に関しては日銀の優遇資金提供でカバーされるし、元本の8割は政府保証の信用保証協会の肩代わりでリスクも低いということで銀行がこぞって融資に走った訳で、その結果信用創造で預金口座に積み上がっています。

今年5月には返済開始となりますが、通常の利付き融資への借り換えがすんなり進むとは限りません。解し渋り、貸し剥しで企業倒産となれば、信用不安が拡大して所謂メイン寄せによる特定銀行へのリスク集中による破綻はあり得ます。コロナ対応を口実としたバラマキはそれ自体がリスクを生む地雷です。怪運国債依存症で指摘したように、国債発行による財政赤字は将来GDPの前借りでしかない訳で、ウンコクサイ現実は変わりません。

という訳で金融危機の火種は残っていますし、日米欧何れも厳しい状況にある訳です。その中でロシアの戦術核ベラルーシ配備のニュースが流れましたが、手を変えた核の脅しではあります。というのも専門家の間で言われていたロシアの春の攻勢が実現しておらず、寧ろ占領地域を減らしている現実があります。兵力の消耗が激し過ぎて動けないということのようです。とはいえだから核攻撃に踏み切ることも現実的には難しく、変化球を投げてきたということですね。

ロシアに言わせれば戦術核はNATO加盟国にも配備されているからおあいこというロジックなんでしょうけど、ベラルーシに核の発射ボタンの管理を委ねる訳ではないでしょうし、出来る限りの嫌がらせということなんでしょう。核攻撃するつもりならこんな回りくどいことする必要はない訳です。日本でも核共有をという議論もありましたが、核のボタンをアメリカが手放す訳もないしNPT違反に問われます。

現状公式に非核三原則に従って米軍は日本国内に核配備はしていないことになっており、核配備は事前協議の対象ということになっておりますが、日本政府が検証できる訳ではありませんし、日本に核がないことで中国と対峙しても核戦争にならないという意味でアメリカの弾除けになりますし、いざとなれば深海に潜む原潜からSLBM発車で対応するでしょうし、同盟国とはいえ核のボタンに触れさせたくはないでしょうから、日米安保のリアルを無視した議論です。多分中国は日本国内に核が配備されていると見ているでしょう。

てことで主要国で財政が比較的健全なのは中国という構図です。中国にとっては西側先進国が弱っていく一方、自国は安泰ということで、時間を味方につけられる訳ですから、日本で言われるような台湾有事は当面ないということですね。ロシア産原油やガスを買い叩くことで交易条件も西側より有利になりますし、急ぐ必要はない訳です。但し祭英文総統の訪米や南米歴訪のような行動は挑発行為として報復の意味で威嚇行動を取ることはあります。逆に資源高で15兆円相当の交易損失を出した日本です。17兆円の財政バラマキでGDPの数字はプラスながら、上述のように将来GDPの前借りですから将来の経済を窮屈にしながら防衛費を増やすという愚かなことをやろうとしている訳です

てことでどう転んでも明るい展望が見えない日本です。日本ハムファイターズの新フランチャイズ球場として地域開発の期待を背負って3/30もオープンした北海道ボールパークFビレッジですが、観客輸送で課題を露呈しました。というのも予定されているボールパーク新駅が足踏みしていて、シャトルバスを用意したものの観客が殺到してバスに乗るのに長い待ち時間を強いられるという事態となりました。とはいえ新駅は未着手です。

ボールパーク新駅、計画見直しへ JR北海道社長:日本経済新聞
つまり現時点での計画見直しということは、事業着手までの道のりは遠く、当面課題を抱えたままということです。資材費や人件費の膨張が原因ですから、交易損失がこんなところにも現れたということですね。JR北海道にとっても数少ない増収期待案件故に痛いところです。

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