« 東京五輪の落とし物 | Main | 失敗に学ばない国のGW »

Wednesday, May 03, 2023

スーパープライムショックの予兆

木から落ちたサルで取り上げたChatGPTですが、憲法上の課題もあります。

進化するAI、憲法揺らす ChatGPTが改憲の論点に 憲法記念日特集:日本経済新聞
具体的には以下の通りです。
13条:幸福追求権、35条:人権の保護→大量の個人データ取得によるプライバシー侵害
前文:国民主権、41条:国会は国権の最高機関→国会審議の形骸化
19条:思想、良心の自由、21条:集会、結社、言論の自由→エコーチェンバーやディープフェイクで個人の意思決定に歪み
25条:健康で文化的な最低限の生活営む権利→デジタルデバイド拡大
今でも国会審議は質問の事前通告に基づいて官僚が作成した答弁書を閣僚が読み上げるだけだったりして、熟議とは程遠いですが、AIで答弁書自動生成となればますます形骸化が進み、実質立法府の意思決定がAIに委ねられてしまうことにもなりかねません。また国家機密に属するデータをどう扱うかなども問題です。上記エントリーで指摘した著作権の保護も問題を孕みますし、加えて期限切れの著作権フリー素材であっても、例えば夏目漱石の文体を学習したAIに小説書かせて「未発表原稿発見!」といった使い方も可能性がある訳で、所謂ディープフェイクの影響は選挙介入、歴史や文化の捏造、本物と見分けのつかない詐欺サイトや詐欺メールなど、現実的に多大な影響があります。本気で規制を考えないとヤバいです。

憲法繋がりであと1つ。災害や疫病などで国会議員の任期延長と法律に準ずる内閣政令発出を可能とする緊急事態条項ですが、国会の会期を延長すれば任期切れでも国会議員の身分は維持されます。そこで熟議を尽くして緊急事態に当たれば良いし、例えば大災害、戦争、疫病などはそれぞれ個別具体法で内閣の権限を定めれば済むことです。憲法改正の必要はありません。必要性を主張する人たちは別の意図があるのでしょう。昨今憲法改正を実施た諸国は圧倒的に権威主義国家が多いことも指摘しておきます。てことで本題です。

米地銀FRC破綻、JPモルガンが買収 過去2番目の規模:日本経済新聞
金融危機は核より怖いで取り上げたシリコンバレー銀行やシグネチャー銀行の破綻時から次はここかと言われていたのがカリフォルニア州のファースト・リパブリック銀行(FRC)でした。当時大手銀行がFRCに預金して支援してましたが、預金流出が止まらず、米当局の迅速な対応で預金保護と大手行JPモルガンへの併合が週末の限られた時間で実行に移され、とりあえずの混乱は回避されました。

FRCはSVBとは違った意味でIT産業との関連が深い銀行です。というのは、預金者や住宅ローンユーザーにIT長者が多く、殆どの預金者が米預金保険機構による保護上限の25万ドル’3千万円)を超えているため、上記のように政府は混乱回避の為に預金全額保護を打ち出さざるを得なかったのですが、保護の必要性が乏しい富裕層の救済となることから、この対応はに国内世論も割れてます。当然民主党左派からの不満もありますが、それ以上にトランプの影響で反エリート主義に染まった野党共和党のネガティブキャンペーンもある訳で、最悪トランプ復活を助ける可能性もあります。

FRCは例えばメタのCEOマーク・ザッカーバーグ氏が住宅ローンを利用したとか、IT長者の取引が多いのですが、理に敏い彼らに選ばれるために預金金利を他行より高めにして、一方住宅ローン金利は低めにしてという形で差別化していた訳ですが、圧倒的な預金量と顧客の信用力故にそんなことが可能だった訳です。FRBの金融緩和や低金利政策も追い風でした。しかしインフレでFRBが金融政策を見直し利上げにシフトした結果、預金金利も住宅ローン金利も上昇した結果、FRCの優位性が損なわれた形となり、元々理に敏いIT長者が離れることになった訳です。FRBがFRCを追い込んだ訳です^_^;。

という訳で、IT長者などの優良顧客(スーパープライム層)を引き付けることが優位にならないという意味で教訓となりますし、保守派の反エリート主義とリベラル派の自由主義尊重という対立でアメリカの政治状況も複雑さを増します。わかりにくいのはアメリカの言う自由主義は経済的自由が優先される傾向が強く、これは伝統的保守派の立場でもあり、故に民主党左派の人権重視路線とは必ずしも相性が良くないということですね。故に国民負担で富裕層を助けることへの抵抗感は左右問わず強い訳です。サブプライムショックがリーマンショックの先駆けとなったように、大規模な金融危機の芽は消えておりません。

これ対岸の火事ではなく、日本でも違った形で表れていることでもあります。東京五輪の落とし物で取り上げたように、政治と行政と企業と地権者の談合の錬金術で潤っているスーパープライム層は存在する訳で、アメリカ以上に直接的に公金を食い物にするタックスイーターが現れている訳で、利権漁りという意味で日本の方が病んでいると言えます。

そして異次元緩和の影響もあって不動産価格の上昇が止まらずバブルとなっており、今や都心に限らず郊外億ションも珍しくない状況で、マイホームが手に入りにくい状況です。地価上昇は日銀の金融緩和によるローン金利の低下と円安による海外投資家の不動産購入の両面で押し上げられており、この傾向は当面続くと考えられます。となると家が買えるのは外国人を含むスーパープライム層に限られる時代となり、アメリカのように彼らの行動変化で経済に激震が走る事態もあり得ます。これはまた地価に裏付けられた大規模再開発のインセンティブも止まらないということです、そんな観点からこれを取り上げます。

JR東日本、品川を「東京の玄関」に 不動産で稼ぐ ビッグBiz解剖㊦:日本経済新聞
JR東日本の変化を取り上げた連載記事で、上でITシフト、中で自動化などを取り上げ、最後に不動産事業を取り上げたものですが、高輪ゲートウエーに限らずJR東日本絡みの再開発事業は目白押しで、例えば渋谷は現在進行中ですし、浜松町や新宿などの再開発案件目白押しで、故に昨今のJR東日本の株価は地価動向に連動した動きを見せております。

これリニアちゃん気をつけてのJR東海とは異なったリスクを抱え込んでいるという評価が可能です。いずれ日本でもスーパープライムショックはやって来る可能性は大いにあります。

| |

« 東京五輪の落とし物 | Main | 失敗に学ばない国のGW »

ニュース」カテゴリの記事

経済・政治・国際」カテゴリの記事

鉄道」カテゴリの記事

JR」カテゴリの記事

都市間高速鉄道」カテゴリの記事

都市交通」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« 東京五輪の落とし物 | Main | 失敗に学ばない国のGW »