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July 2023

Sunday, July 30, 2023

本気の気候変動対策

豪雨の梅雨が明けて猛暑の夏となりましたが、豪雨の影響は多岐に亘ります。

大雨、排水能力超え 秋田大雨1週間「どこの都市でも」:日本経済新聞
秋田市の水害は典型的な内水叛乱です。かがやきを失った北陸新幹線 で取り上げた川崎市のタワーマンション被害のように、豪雨で雨水が下水道の処理能力を超えて流入した場合、逆流して住宅等に被害をもたらすもので、内水氾濫と呼びます。タワマンの場合電気設備を地下に置くケースが多く、水没して停電という被害が起きた訳ですが、停電するとエレベーターが使えず揚水ピンプで水道水をくみ上げて落とす給水設備も使えなくなりますから地獄です。戸建てでも床上浸水もありますし、都市部ならどこでも起こり得るものです。河川の越提氾濫と違って見た目で危険がわかりにくいし、自治体のハザードマップに記載されているとは限りません。

とはいえ地下の下水道の能力増強は簡単ではありませんし、当然多額の費用が掛かります。例えば東京都で大規模な地下調整池を設けたりしてますが、東京都の財政力だから可能ということもありますし、それすら想定外の豪雨が続けば氾濫は起こり得ます。つまり完全な備えは難しい訳です。また確率の低い豪雨への備えにどれだけ公費を使うかについての合意形成も困難です。また人口減少下では公費負担を簡単には増やせません。

そもそも都市化で人口が集積するから下水道を整備しなければならなくなる訳ですが、例えば開発に適さない低湿地を公費で購入して調整池にするとかして、過剰開発を抑制する方向で考えて下水道への雨水流入を抑える方が安上がりで現実的になるんじゃないかと思います。上記かがやきエントリーで北陸新幹線の車両基地が低湿地に立地していたこともありますが、作っちゃいけないところに車両基地を作っちゃったということも言えます。財源制約が強い整備新幹線故に安い底地買いで被害を受けたとも言えます。

てことで苦い経験をしたJR東日本ですが、国鉄時代に建設された東海道新幹線の大阪運転所のように近くに天井川があって、当初から水害対策が考慮され、民営化後も車両を盛土上の本線に避難させる訓練を積み重ねてきた訳で、その経験はJR東日本に引き継がれなかった訳です。とはいえJR東海は水害対策が万全かと言えばそんなことはなく、名古屋の天白川の氾濫で当時の葛西敬之社長の運行継続の指示で多数の列車が立往生して車内泊を強いられましたし、今年の6月豪雨では早めに規制をかけたものの混乱しました。

東海道新幹線、大雨混雑防げ ダイヤや情報伝達改善へ:日本経済新聞
東海道新幹線の約半分の区間が盛土で、パイプを埋め込んで水抜きしたり土留めの擁壁で法面崩落を防いだりといった対策はされてますが、雨量が植えれば盛土が緩んで路盤や法面の崩落は起こり得ます。列車の通過に伴う振動がきっかけになることもあり、沿線の雨量計を見ながら徐行や運休などの規制を決める訳ですが、問題は情報伝達の拙さで駅に乗客が滞留し混乱したことです。JR西日本のように予報段階から計画運休するぐらいしないと結局混乱は避けられないんじゃないでしょうか。

山陽以降の全幹法規格の新幹線では高架橋主体で盛土は取付部などに限られますが、それでも豪雨による混乱は完全には避けられない訳ですから、盛土の多い東海道新幹線ではより慎重な対応が求められます。しかしのぞみ増発で輸送能力を高めてしまったが故に運休の判断が難しくなっているということも言えます。JR東海はそれ故に中央リニアを作るんだとしていますが、輸送力は東海道新幹線には及びませんし、第一難工事で開業の見通しが立たない状況です。

一方の北陸新幹線も敦賀で当面足踏みの状況が続きそうです。やはり難工事が予想される小浜京都ルートに拘らず、早期開業が見通せて事業費も少ない米原ルートで実現することで代替ルートは確保できます。但しJR東海の孤立主義が問題を難しくしている面があります。また豪雨にしろ猛暑にしろ気候変動の影響と見るのが妥当ですし、欧米やオーストラリアなどでも熱波や山火事を気候変動に絡めて報道されることが増えてますが、日本では見られません。正直言って人口減少に対応した開発抑制はCO2排出削減にもなりますし、実際電力需要は縮小しており、再エネ転換がやり易い状況になってきています。政府が言うGXの本気度が疑われます。

水害じゃありませんが首都圏ではこんな輸送障害がありました。

山手線全線で運転再開、11万人に影響 信号装置が故障:日本経済新聞
月曜朝の輸送障害で混乱しましたが、原因は信号トラブル。しかも大崎の東京総合車両センターの本線出口部分の機器トラブルで主要車両を本線に出せずに運休という致命的なもんです。思い出されるのは2015年の籠原駅の地落事故で電留線から車両を出せなくなった輸送障害ですが、今回は信号システムが原因です。

首都圏ではATOSと呼ばれる運行管理システムで列車の進路選定や遅延時の指令業務から駅の案内表示に至る一連の自動化がされている訳ですが、車両基地の出口のトラブルで車両を本線上に出せなければどうにもなりません。勿論システムを解除してマニュアル操作することは可能ですが、その場合車両基地に収容された車両を1編成ずつ手作業で進路を選定し、手旗などで合図しながら動かすことになりますから、大量の要員を確保して慎重に行う必要があります。当然処理能力は落ちますから、早めの復旧はしたものの平常の6割程度の運行に留まった訳です。JR東日本はそれなりに努力した結果です。

但し乗客への告知や案内は徹底しており、大きな混乱は見られませんでした。山手線は京浜東北線との並走区間の代替輸送と共に地下鉄網による代替輸送が可能という立地もありますから、元々冗長性が確保されているとも言えますし、加えてコロナ禍によるリモートワークでピーク輸送量が減っていたことも幸いしました。金融危機は核より怖いで取り上げた通勤定期運賃値上げの影響もあるかもしれません。つまり需要抑制のための値上げを実施ている訳で、こうした冗長性の確保はトラブル対応にも有効ということですね。効率重視一辺倒は見直す時代と言えます。

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Saturday, July 22, 2023

エッセンシャルワーカーが足りない

ブルシットジョブ型雇用の国で進行しているのはタイトルのようにエッセンシャルワーカーの不足です。つまり社会的に有用な価値を生み出す働き手が不足している訳で、忖度ばかりのブルシットジョブが増えてエッセンシャルワーカーの本来の報酬を横取りしている結果、低賃金で人が集まらないし、過労死レベルの超過勤務を前提にしないと仕事は回らないし、働き手も満足な報酬を得られない訳です。故に異次元とやらの少子化対策を焦ってますが、見当違いも甚だしいです。

雇用保険「流用」、給付対象の拡大どこまで?:日本経済新聞
7/21朝刊1面の解説ですが、コロナ対応の雇用調整助成金や前エントリーの年収の壁対策や子育て支援の各種手当など、本来失業給付に使うべき雇用保険が流用されあるいは検討されています。その結果積立金が不足するからと保険料値上げも検討されている訳ですが、こうした財源の流用で結果的に国民負担は増える訳で、それなら必要な政策の為の増税を打ち出せば良いのですが、その場合政策の必要性を含めてより強いツッコミを受けるから回避している訳です。

そもそも少子化対策が必要な理由は何かと言えば労働力不足で経済が停滞することを恐れてでしょうけど、労働力は資本によって一部代替可能であり、資本装備によって労働生産性を高めることは可能です。但し全ての労働が資本によって代替可能な訳ではなく、社会的有用労働としてのエッセンシャルワークは無くなりません。故にエッセンシャルワークを支えるワーカーへの報酬は手厚くする必要がありますが、現実にはそうなっていない訳です。

様々な要因がありますが、例えばトラックドライバーやバスドライバーはかつて高給取りだったのですが、団塊ジュニアの後半に就職難で社会人デビューで躓いた所謂ロスジェネ世代が、国の参入規制緩和と業務委託解禁で流入した結果、ドライバーの報酬がほぼ半減して現在に至る訳で、制度がもたらした問題です。逆に言えば制度の見直しと共に労働生産性を高める資本装備への投資によって解決可能な問題でもある訳で、無理して少子化対策を打つ必要もないし、子供が増えれば寧ろ依存人口が増えて国民負担は増すことになります。

つまり少子化対策は経済成長に寄与するものではなく、故に与党内の積極財政派が言うように成長で税収増は無理な訳です。ましてやドライバー不足確実な2024年問題は確実に成長を押し下げます。鬼が笑う2024年で取り上げた北海道新幹線並行在来線問題で揺れる新函館北斗―長万部間の存廃問題で動きがありました。

北海道・函館―長万部、鉄道貨物維持の方向 有識者で詰め:日本経済新聞
記事によると年間100億円程度の赤字の補填の負担をどうするという議論に矮小化されているようで、トラック輸送改善のための資本装備という視点での議論がないのが残念です。

東北新幹線や北陸新幹線の整備区間では、線路を保有する三セク等にフルコスト基準の線路使用料を支払う一方、JR貨物に対してはアボイダブルコスト負担の線路使用料との差額を支給して調整するもので、財源はJR旅客会社が鉄道・運輸機構に支払うリース料に上乗せして徴収し、結果的に三セク鉄道の収支を支えています。しかし収支が厳しい北海道新幹線ではこの手が使えず、財源をどうするかで国と北海道が角突き合わせている現状を追認した議論で果たして結論を得られるのか?という疑問は拭えません。経済運営上必要なインフラとして例えば道路予算を使うことも考えるべきです。

あとドライバーだけじゃない2024年問題として怪運国債市場の蓋で指摘した大阪万博をピンチに追いやる建設労働者不足問題もあります。大阪万博に関してはそれに留まらずパビリオンの入札不調や会場の夢洲の地盤沈下問題とか、五輪汚職で電通が指名停止されてプロセス管理が機能していないとか、大阪メトロ中央線も難工事で、ほぼ予定通りの開催は不可能な状況です。いっそ五輪に倣って無観客開催したら?知らんけど^_^;。

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Saturday, July 15, 2023

ブルシットジョブ型雇用の国

デジ足らん国のデジタルジャック(DX)で取り上げたマイナンバーカードのトラブルはその後も続いております。いちいち取り上げませんが、トラブルの発生率が低いとか、人的ミスでシステムの問題じゃないといった擁護論がありますが、要件定義がいい加減だからカードのICチップへの紐付けを手入力でやってミスを誘発しているのはシステムの問題ですし、個人データを流出させて危険に晒すのはそもそもセキュリティに無頓着だからです。端末に前の人のデータが残るとか保険証の紐付けも自治体職員の手入力だったりして、しかも地方交付税減らすぞと脅して尻叩く一方、問題が発覚しても責任取らないじゃ、ますます不信感を生みます。

てことで内閣支持率ダダ下がりで解散できなかった岸田政権ですが、マイナカード推進派に言わせればカードのトラブルより増税が嫌われたという解釈のようですが、防衛増税にも踏み込めず、当面決算剰余金を充てることで誤魔化そうとしております。コロナ禍に乗じて予備費を積み増してますから、当初予算で赤字国債を発行していて決算で余ったから防衛費に回すでは結局国債の財源化ですし、決算剰余金は基本的に次年度の赤字国債発行の圧縮に使われますから、それを流用することで二重に国債の財源化になっています。誤魔化しばかりです。そして社会保障改革でも誤魔化しです。

年収の壁どうなる パート「働き損」解消、50万円の奇策
年収の壁問題はやや複雑なんですが、かつて103万円の壁が言われましたが、これは実際は壁でも何でもなくて、当時の基礎控除38万円+給与所得控除65万円の合計額を上回ると所得税が課税されるというものですが、所得税はあくまで課税所得つまり控除を超えた部分にかかるだけで、しかも最低税率5%ですから、稼ぎ過ぎて手取りが減る訳ではなく、単に税金が引かれるだけです。但し地方税の住民税は基礎控除100万円で1年遅れの負担となりますので、それで驚くケースもあります。

一方社会保険料はいきなり負担となり、従業員数区分で106万円と130万円の壁が生じますが、100人以下が130万円で101人以上が106万円ですが、人数区分が1,000人から100人に変わったことで、例えばスーパーの主婦パートの多くが106万円の壁に捕まるということで、シフトを減らす動きが出ているということですが、この議論には違和感があります。

問題の根底には専業主婦の特権と言える第3号被保険者問題が潜んでいます。被用者年金の配偶者は自己負担無しに基礎年金加入者として扱われ、老齢基礎年金の受給資格を得ますが、パート労働者の厚生年金加入が制度化されて社保加入が事業主に義務付けられた結果、シフトを減らして人手不足になるということで、該当企業から悲鳴が上がった訳です。

これ単純化すれば主婦パートが第3号被保険者から第2号被保険者に変わり、結果的に老齢年金の受給額が増えたり、あるいは第3号被保険者は対象外の妊娠出産一時金の受給資格を得ますし、加えて雇用保険への加入もある訳ですから、例えば勤め先の廃業などで職を失った場合も失業保険の受取も可能なんで、こうした負担と受給の関係をきちんと説明できていない結果でしかない訳です。まあ事業主側の本音としては事業主負担が増えることへの抵抗感を言い換えている可能性はあります。だから対策も雇用保険を使って事業主に補助する形になっていると見ることができます。

あと当然ながら第3号被保険者制度の見直しが連動していない結果でもあり、付け焼刃で制度を弄って混乱させているというのが実態です。こうしたことを放置する一方、少子化対策と称して児童手当の拡充を進めてますが、こちらも財源問題で右往左往しており、別の社会保険会計からの付け替えなどの姑息な対応が意図されております。これが危険なのは認めてしまえば国会審議無しに財源を拡大できてしまう訳で、財政民主主義に反します。

こうした制度の複雑さは、歴史を辿れば近衛文麿政権が進めた国家総動員体制に行き着きます。年金と国鉄の意外な関係で示したように、元々厚生年金制度は日中戦争激化に伴う戦費調達木庭だったことと、当時のサラリーマンが良い待遇を求めて頻繁に転職していたことから、転職が不利になる制度として設計されたもので、元々が軍人から文民に拡大した国の恩給制度の民間版として制度設計されております。勘のいい方は分かると思いますが、日本の雇用形態の特徴と言われるメンバーシップ型雇用の原型が形作られたものです。つまり元々日本はジョブ型雇用の国だったのですが、戦時体制と共に失われました。

より正確に言えば、雛形は軍隊にあって、文民の官僚に波及し、それを民間に平行移動させたものです。そして戦後国民皆保険の建前から個人事業主を包摂する目的で国民年金が制度化されましたが、厚生年金や恩給から始まった共済年金が世帯単位で制度化されたのに対して個人単位となり、故に個人事業主の配偶者も国民年金に加入せざるを得ない状況の一方、厚生年金と共済年金には寡婦年金が制度に盛り込まれております。第3号被保険者の老齢年金は基礎年金と寡婦年金の多い方が適用され、高給取りの配偶者としての専業主婦は優遇されています。

そもそもジョブ型雇用が可能になるためには企業単位を越えた外部労働市場の存在が欠かせませんが、大正昭和期の日本は第一次大戦特需による経済成長と関東大震災の復興需要で成長軌道に乗りながら、反動の昭和恐慌と続く大恐慌で停滞していた時期でもあり、工業化と都市化が進んだ時代でもあります。その結果の電力過当競争や大都市圏の電鉄ブームというイノベーションが進行し、その事業に特化したスペシャリストの需要が増した結果のジョブ型雇用だったという意味で、自然発生的なものだったのでしょう。

首都圏で言えば京成電気軌道の高速電車化と千葉延伸と成田延伸、東武鉄道の電化と日光進出、武蔵野鉄道の電化、京王電軌の子会社玉南電気鉄道による八王子進出、目黒蒲田電鉄や東京横浜電鉄の事業拡大、湘南電気鉄道の開業、小田原急行鉄道の開業、川越鉄道の電化と村山線による高田馬場進出で商号を西武鉄道に変更などがあり、微妙に時期がズレていて特に小田急の開業スタッフは開業後川越鉄道に移って旧西武鉄道の成立に寄与するという形で繋がっております。こうしたダイナミズムは戦時体制で失われました。

そして時は移り日本でもジョブ型雇用が言われるようになりましたが、スペシャリストの能力評価が伴わないからうまく機能せず、新卒採用でスペシャリストを囲い込み優遇する一方、長年勤務の中高年社員は55歳で役職定年で部課長もヒラ待遇で減給、それでも60歳の定年と65歳の年金受給を繋ぐ再雇用のために年下上司の忖度するなんちゃってジョブ型雇用が横行しております。つまりスペシャリストとして会社に貢献するのではなく会社に居続けるための仕事ってことですね。こういうのをブルシットジョブ、日本語で言えばクソどうでもいい仕事となる訳です。マイナカードの紐付け作業を押し付けられる自治体職員も同じですね。これじゃ経済停滞は続きます。

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Saturday, July 08, 2023

ネギ背負ったカモ

株価ダダ下がりですが、損してるのはNISAデビューの個人投資家らしい。

株565円安 ETF「1兆円売り」目前、各分配金見込み額:日本経済新聞
ETFだけじゃありませんが、投資信託は期末の配当を捻出するために利益確定売りする訳で、それを知らずに株高に誘われて株式投資を始めた個人投資家が値下がりの洗礼を受けた形です。NISAホイサッサお猿の株屋で指摘しましたが、減税の恩恵を受けるには毎年売って益出しするしかない訳で、そんなのアマチュアの個人投資家には無理ですし、まして本業がある人なら尚更です。そのNISAは結局こうなりました。
新NISAの投信1000本公表 24年始動、毎月分配は除外:日本経済新聞
つみたてNISAが年間投資枠40万円から120万円になり、一般NISAが船長投資枠に改められて年間投資枠120万円から240万円になり、つみたてNISAと共に非課税期間が無期限になりました。しかし使い易くなったのか?

制度の本命はつみたてNISAなのですが、対象投信が1,000本って冗談か?元々日本の投信は総数4,000本ほどあって素人が簡単に選べる状況ではありません。何故そうなるかといえば、銀行や証券などの金融機関毎に系列会社が組んだ投信を売るスタイルなので、類似商品が多数あって系列毎に並列している状況です。当然それだけ投資規模が小さくなり効率が悪くなります。欧米では独立系の投信会社が主流で、それぞれ投資方針を明確にしており、独自に顧客を獲得してますが、日本の場合横並びで似た商品が多数存在する形になる訳です。整理すると売る側の都合で商品が組まれているということです。

ならば一般NISA改め成長投資枠で従来通り株式や投信やETFで自由にやればというと、前述のように本業を持つ個人がそこまで手間暇かけて株式等の投資ができる訳じゃありませんから、結局金融機関のアドバイザーの意見を聞いて対応することになります。実はここに落とし穴がありまして、金融機関にとっては頻繁に売買すれば手数料が稼げますし、投信の場合は系列投信の商品を勧めて信託報酬を落とさせるとかできる訳です。これ証券業界の悪しき商慣習ですが、銀行も例えば有力地銀の千葉銀行が個人向けに原則禁止されている仕組債を販売して契約者と揉めて、金融庁の処分を受けたりしてますから基本的に変わりません。かつて個人投資家をドブ投資家と呼んだ業界の体質は変わりません。

しかもこのところの株高で若い個人投資家の買いが優勢だったところで、ETFの分配金捻出の売りが出て損している訳です。ちなみに日本のETFの最大の買い手は日銀であり、その日銀はYCCで保有国債で逆ザヤ状態の中で数少ない収益源となっております。つまり日銀の低金利政策の結果預金の利息がほぼゼロの状態で株式投資に誘導された個人が損失を出して日銀を助けてるという状況なんですよね。それでもYCC見直しに踏み込まない日銀です。さてあなたはNISAしますか?

長くなりましたがこれも取り上げたいニュースです。

処理水放出、政府近く時期判断 IAEA「安全基準に合致」:日本経済新聞
IAEAが「お墨付き」を出したというニュアンスの報道が多いですが、IAEAはこのやり方での海洋放出による人や環境への悪影響は無視できる水準とし、IAEAの基準に合致するとしながら、海洋放出自体は日本政府の責任で行うものでIAEAとしては推奨も支持もしない、つまり責任は負わないということです。但し長期間にわたる継続的な放出であることから、IAEAが福島に常駐して監視するとしており、安全性を保証したものという訳ではありません。

あと諸外国の原発冷却水放出でより高濃度のトリチウムが検出されていることが言及されてますが、これらは正常運転されている原発であり、日常的に放出し続けている訳でもありません。福島の場合地下に溶け落ちた燃料デブリに触れた地下水由来の汚染水ですから、汚染の程度が違いすぎますし、フィルターで濾しても取り切れない放射性核種を含んでます。つまりデブリを取り出して廃炉作業が終わるまで継続的に放出される訳ですから、希釈しても放出される放射性核種の総量は決して少なくない訳ですし、廃炉作業が遅れればそれだけ放出期間も伸びる訳です。この辺を誤魔化して「科学的に証明された」と言っている訳です。

マイナンバーカードを巡るあれこれもそうですが、目先を誤魔化して特定企業を優遇する流れです。こんなの認めたら国民はネギ背負ったカモ扱いです。これ結局オリガルヒの叛乱 のロシア政府とワグネルのズブズブの癒着関係と何が違うのか?ってことですね。案の定ブリゴジン氏はロシアへ戻りました。ロシアもウクライナの特別軍事作戦をワグネル抜きでは続けられないってことです。そして同エントリーで取り上げた電動キックボードを巡ってはベストカーで国沢光宏氏がこんな指摘をしています。

もはや無法地帯……国がキックボードを許可した理由が衝撃:ベストカーweb
自民党MaaS議連マイクロモビリティPTの座長が旧統一教会とズブズブの坪議員の山際大志郎氏ってことでお察しですが、彼らは国民の方を向かずに事業者に恩を売って利権化しようってことですね。

実際今月1日に解禁されてみれば都内の幹線道路でも結構見かけましたが、ヘルメットも付けずに車道を悠然と走行して結構危ない場面もあります。利用者は若い人が多いですが、流行りものというには危険すぎます。車を運転する立場からは事故を起こさないよう気をつける必要があります。加えて利用者はスマホアプリで行動履歴データが採られる訳で、事業者からすればネギ背負ったカモそのものです。確かに公共交通では移動しにくいラストマイルの移動手段として魅力的な存在ですが、安全を犠牲にするのはいただけません。カモナベどころかタタキになっちまうぞ!

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Sunday, July 02, 2023

オリガルヒの叛乱

先週の出来事ですが、大きな出来事ですので取り上げます。

ワグネル、武装蜂起を停止 プリゴジン氏はベラルーシへ:日本経済新聞
ワグネルの叛乱でロシアのクーデターや政権転覆もあり得たという分析もありますが、疑問でした。結果的にベラルーシのルカシェンコ大統領の仲裁で衝突を回避した訳ですが、プーチン大統領から見れば飼い犬に噛まれたような災難と同時に格下扱いのベラルーシの仲裁を受け入れたことになります。

ワグネル創業者のブリゴジン氏ですが、多数の企業を支配下におさめる新興財閥(オリガルヒ)でもあります。ホットドッグ屋台から事業を興し、高級レストラン経営に至って政府要人が来店し、ブーチン氏とはその時知り合い、気に入られて便宜を図られて台頭し、プーチン氏が大統領になって我が世の春を謳歌してきた訳ですが、民間軍事会社とされるワグネル以外にもレストランやケータリングの会社からメディア企業まで多数の企業を支配下に置き、ロシア発のフェイクニュース拡散などでロシア政府を助けてきたズブズブの関係にありました。

ワグネルの兵士は受刑者の減刑や赦免でリクルートするなどしており、元々アウトローで且つ練度も高いということで、弱体化したロシア正規軍を助ける存在でもありました。ロシアの言うウクライナへの特別軍事作戦でも活躍し、民間人への攻撃などの残虐行為も厭わないその姿勢はロシア国内では報じられず英雄扱いされていただけに、ロシアの国内世論も動揺しています。加えて特別軍事作戦の大義名分としたロシア系住民に対する虐待もウソとバラしちゃうしで、外から見ると何があったの?という話ですが、ロシアのオリガルヒという文脈で見れば謎は解けます。

オリガルヒとは主にソビエト解体後の新興財閥を指す言葉ですが、改革開放で国有企業が次々に民営化される中で、政権に取り入って経営権を取得して財を成したという意味で政治との癒着が特徴ですが、同時にグローバル化の恩恵で事業を拡大して行く中で、政権との軋轢で批判に回るなどして揺さぶる存在でもあります。実際そうしたオリガルヒの叛乱は繰り返されており、政権と対立して海外に亡命して亡命先で謎の死を遂げた富豪が複数存在します。ロシア当局の関与が疑われております。

今回はウクライナ紛争中でウクライナの反転攻勢中という微妙なタイミングということもあって世界を騒がせましたが、劣勢なロシア側で弾薬などの補給が正規軍が優先されたことへの不満が昂じていた訳ですが、とはいえ恩義のあるブーチン氏に弓退く訳にはいかず、側近のショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長の解任を求めた行動という訳で、体制内のゴタゴタです。つまりクーデターに発展する可能性はほぼ皆無だったと言えます。

とはいえプーチン氏がショイグ、ゲラシモフ両氏を更迭することは考えられず、逆に潰されるぞということでベラルーシのルカシェンコ大統領が説得してブリゴジン氏はベラルーシが身柄を保護することで矛を収めさせたという流れです。ロシアにとっては格下とはいえ数少ない同盟国の仲裁を受け入れるしかなく、ベラルーシから見ればロシアに大きな貸しを作った形となります。同盟国が保護する以上過去の叛乱オリガルヒのように暗殺(多分^_^;)を仕掛けるのも憚られます。ブリゴジン氏は丁度ロシアが保護するアメリカ人のスノーデン氏のような存在になります。

そしてワグネルとしてはシリアやアフリカのマリやスーダンなど資源国の政権に食い込んで利権を得ており、そちらの活動が制限されなければ存続可能であり、ベラルーシにとっては金の卵を産む鶏を手に入れたようなものです。ロシア国内に残るワグネル軍ですが、今回の叛乱劇では正規軍士官が便宜を図ったりしており、正規軍に統合しても軍の統制はかなりギクシャクするでしょう。この面を捉えて日本の226事件との類似性も指摘されますが、高橋是清の財政均衡策への反発とはいえ北一輝というイデオローグに共感した青年将校とはかなり異なった動機です。

という訳でウクライナの反転攻勢でロシアの敗戦という希望から、ウクライナはNATO加盟を希望しております。ベラルーシが立場を強めることは欧州にとっては1つ不安定要因となる訳で、ウクライナのNATO加盟で均衡を図るという面は確かにありますし、NATO加盟の前提として現在の戦闘状態は終息させる必要がありますし、ウクライナが希望する領土の奪還もあきらめる必要があります。加えてトルコなどの反対もあるでしょうし、簡単にできることではありません。しかし一方で戦後処理に関する動きがあることも確かです。

ウクライナ鉄道網、欧州と規格共通に G7交通相会合
ロシアの黒海海上封鎖でウクライナ産の小麦その他の資源輸出が滞ったのはウクライナの鉄道がロシアンゲージの1,520㎜で欧州の国際標準軌4ft8in1/2(1,435㎜)の間で台車交換が発生し輸送量が限られることから、ウクライナの鉄道の改軌をG7主導で進めようという会合です。斎藤国交相は日本のローカル線問題に言及して不興を買ったようですが^_^;。

オリガルヒはウクライナにもいて政治との癒着どころかオリガルヒ出身の政治家が大手を振るって汚職に勤しむどうしようもない状況で、バイデン大統領の次男を含む世界各国の投資家が関与したりしていましたが、それ故に親ロと親欧米派に分かれて政争を繰り返し国民を呆れさせてきたグダグダな状態だった訳で、故にロシアに隙を突かれてクリミアを奪われたりした訳ですが、その結果オリガルヒならざるゼレンスキー氏が中間層の支持で大統領になれたということもあります。その意味でオリガルヒの存在はロシア特有のものとは言い難く、例えばアリババ創業者の馬雲氏のように中国政府の逆鱗に触れて更迭されるというようなことも起きます。新興国にありがちな話ではあります。

しかし先進国も企業や投資家が取引で関与していることもあります。元々企業や投資家の政治関与はアメリカでもロビイストの活動を通じて都合の良い法律を通したり規制緩和を求めたりは普通にある訳で、彼らは新興国でも当然のごとく同じことをします。寧ろオリガルヒは彼らに倣って政治関与しているとも見ることができます。上記のウクライナ鉄道の改軌問題も、市場アクセスを都合よく行うという視点はあります。

逆にこうしたG7会合に参加しながら鬼が笑う2024年で指摘した日本の鉄道貨物に対する政府の対応を自省することがないのは困ったものです。鉄道貨物を失えば日本のウクライナといえる北海道経済は停滞します。それがわからない政治の貧困です。その一方でこんなことが起きます。

電動キックボード普及へ加速 街中・観光390億円市場に:日本経済新聞
クルマの自動運転のレベル4や電動キックボードなどの規制緩和を盛り込んだ改正道交法が前倒しで今月1日から施行されました。交通崩壊 (新潮新書)市川嘉一著で拙速な規制緩和を危惧していますが、同書によれば審議会での検討段階では慎重な意見があったものの、最終報告書には反映されず閣議決定され国会審議もそこそこに可決成立したもので、レンタル事業者の要求で自民党MaaS議連など運輸族議員の圧力が働いたものと見られます。新産業創出の大義名分ですが、自転車同様歩道走行を容認するもので、走行安定性に問題がありながら無免許ヘルメット無しとした点は問題があります。現場の警察官には事故多発を危惧する声があります。

昨今例えば北陸新幹線敦賀以西で議論のまとまらないルート案で小浜京都ルートに調査費を計上させたりしてやりたい放題の与党運輸族ですが、これもJR西日本の意向を受けたもので、それによって並行在来線として切り離される湖西線を抱える滋賀県は蚊帳の外だし、そもそも関西広域連合で合意した米原ルートはガン無視ということで、意思決定手続き上もd内だらけです。こんなことがまかりと売るのは結局有権者の投票行動の結果ですが、オリガルヒ同士の対立に嫌気してゼレンスキー大統領を選んだウクライナ国民を見倣えと言いたいところです。

余談ですが国鉄分割民営化以後JR東海の経営を掌握して政治に関与した故葛西敬之氏をイメージすればオリガルヒは理解しやすいですね。

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