減税くそメガネ
ガザの病院空爆でアラブ諸国がイスラエルを非難した後、イスラエルは否定してハマスの自作自演まで言い出す水掛け論、別のテロ組織による攻撃説まで出てますが、これ戦場のリアルとして見ればこの手の話はどれも可能性があります。従軍経験のある古老の話として、戦場では弾は前からばかりでなく横からも後ろからも飛んでくるものとされますし、湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争でも米軍のピンポイント攻撃で民間人誤爆が報じられた事例も多数あり、戦場はカオスであり、検証もしようがないので、いつまでたっても水掛け論になります。
話題を変えて岸田首相を「増税メガネ」と呼ぶネット言説が拡散しました。出所はアベノミクス妄信の情弱ネトウヨ界隈らしいのですが、いつのまにか「くそ」が挿入されて一般化しました。一方で安倍政権下での2回の消費税増税を挙げて「岸田政権は増税していない」という擁護言説も流れましたが、これ正直目くそ鼻くそです。とはいえ内閣支持率低迷もあって本人は気にしているとか。そうした背景でこういうことになるんでしょう。
首相が所得減税を指示、定額検討 宮沢氏「1年が常識」:日本経済新聞時限措置としての所得減税を検討しているようですが、1年期限の定額減税で低所得者世帯には恩恵がないということで、非課税世帯への給付金と組み合わせるということらしいのですが、それ一律給付金と変わらないし、行政手続き上は一律給付の方が簡素で低コストですし、家計補助は需要を刺激してインフレの昂進に繋がるという意味で問題があります。仮に実現しても「減税くそメガネ」と言われるだけですね。インフレ抑制は金融政策で対応するものですが、金融政策を担う日銀の動きは緩慢ですが、流石に変化も見えます。
日銀、金利操作の再修正論 長期金利「上限」1%接近で:日本経済新聞日銀は緩和継続しながら異次元緩和の出口を模索する姿勢ですが、米長期金利上昇による日米金利差拡大による円安と中東情勢の緊迫化による原油価格の上昇圧力もあり、市場はそれを織り込んで動きますから、結果的に長期金利1%の猶予枠を超える可能性が出てきてYCC見直しを余儀なくされそうな気配です。長く続いた異次元緩和で手足を縛られている事情はありますが、市場に押されて渋々動く姿勢ではタイムリーな政策を打つことはできません。
という訳で日銀が当てにならない中で政府が経済対策を打ち出そうとしている訳ですが、財源は曖昧にしており、予備費の未執行分や税収上振れ分で対応することを検討しているようです。これらは剰余金として次年度に繰り越され、財政法で半分は次年度の新発国債発行を圧縮することに使われます。それを補正予算で使う訳ですから、次年度の国債発行額を押し上げますし、今年度予算で国債発行で調達された予算の使い残しという意味では国債を財源にすることと変わりはありません。
加えて防衛費倍増と異次元の子育て対策を打ち出しており、その財源議論も先送りしていますから、将来の増税は避けられない事情があります。一方で防衛族議員からはトマホーク配備の前倒しの要求が出されております。旧式でよければトマホークは今買って配備を前倒しできるというですが、これ米中デカップリングのリアルで取り上げた無人偵察機グローバルホークの旧式を掴まされた話に懲りてないというか、何のための防衛なのかが問われます。加えて財源が確保されない中での前倒しは事実上国債を財源にすることと同じ意味ですから単なるゴマカシです。
異次元の少子化対策も財源を曖昧にしてますが、国会審議を必要としない社会保険料の値上げで対応しようとしているようです。これ事実上の増税ですが、負担と給付の関係を整理して対応すべきことです。絶望の少子化対策でも指摘しましたが、少子化対策は結局現役世代の負担増を通じた窮乏化で寧ろ少子化を促進します。繰り返しになりますが、労働力の減少を前提とした資本装備増強による1人当たりGDPの水準維持が重要です。
あと時限的減税ならば消費税減税が手っ取り早いのですが、その為にはインボイス制度が定着する必要があります。ですからインボイスに反対する一方で消費減税をを求める議論はインチキですし、欧州の消費減税はコロナ化などの非常事態対応で限定的に行われています。期間限定の減税という意味では所得税よりも適切とは言えますが、需要喚起はインフレを悪化させますから、現時点で適切とは言えません。
寧ろ財政需要拡大は将来の増税に繋がる訳で、財政赤字が結局将来に備えた消費をを抑制するメカニズムが働くことも指摘しておきます。これリカードの中立命題と呼ばれる確立した命題ですが、ケインズの財政政策があくまでも需要不足解消の時限的な財政出動ですから中長期では矛盾はありません。課題解決に奇策はありません。その意味で考えさせられるニュースです。
岸田首相、臨時国会でライドシェア導入の検討を表明へ:日本経済新聞管前首相や河野デジタル相を中心に急浮上したライドシェア解禁ですが、特にタクシードライバー不足が言われ、特に地方で顕著ということですが、これ白タク認めろって話ですから、慎重に検討すべきです。東京など大都市部では台数規制撤廃で稼働率が下がってドライバーの収入を押し下げていた現実もある訳で、寧ろ稼働率が上がって生産性が改善している訳です。その意味では全面解禁は疑問です。
ポンド飛び出し円の切れ目で取り上げた京都府京丹後市久美浜町で車両運送事業法第78条を根拠とする自家用自動車有償運送特例による特認という形で現行制度内で対応しました。つまり地方限定ならば現時点でも参入可能性はある訳で、地域の実情を見ながら対応することは可能でしょう。法的整合性の意味で第二種免許所持者限定で車両も商用車登録で毎年車検とか旅客運送対応の保険加入など参入のハードルはありますが、安全輸送を優先すべきなのは言うまでもありません。ネギ背負ったカモで取り上げた電動キックボード解禁のような乱暴なことはしてほしくありません。ホンダ、日本で無人タクシー 移動難民を解消するか:日本経済新聞ホンダが提携関係にあるGMのクルーズの自動運転車を使って2026年にレベル4の無人タクシーを始めるというニュースです。いずれ大都市部にもドライバー不足は波及するでしょうから、それに備えた技術革新は理にかなっておりますが、レベル4の無人運転は海外の一部で認可されているものの、日本にそのまま導入するハードルはあります。特に法令改正を伴う部分で今の日本のような課題先送りの姿勢がネックになる可能性はあります。
技術的には完成度も高くなりつつある自動運転ですが、事故時の責任分担などの問題は技術よりも法的な課題として議論を深める必要があります。有償運行を前提とする以上、安全性ののりしろを大きく取ることになるでしょうけど、そうすると有人運転の他車ドライバーから見れば「かったるいのろま」になることを意味しますので、案外この辺が導入のネックになるんじゃないかと思います。加えて例えば信号が変わるタイミングでの停止と通過の判断や優先関係の曖昧な交差点や見通しの悪い曲線路でのレベル4同士の出会い頭では両者停止状態でフリーズするといったデッドロック現象も対策を求められます。この点は道路側の改良が必要となるケースも考えられます。とすると導入条件は案外厳しいものになりそうです。
こうした点からJR東日本が山手線で実現を目指す鉄道のドライバレス運行が先に実現するかもしれません。専用走行路を走る鉄道ならではのアドバンスですが、同時に併用軌道を走る宇都宮ライトラインのような軌道線では目視運転前提ですので、ドライバレスは不可能となります。とするとLRTのアドバンスは微妙になるということでもあります。この辺はどのように推移するか見通しにくいところではありますが。
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