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Sunday, October 08, 2023

戦争とインフレ

前エントリーのインフレは続くよどこまでもの続編を書かざるを得ない現実に直面しています。アゼルバイジャンによるナゴルノカラバフ侵攻のほか、コソボ国境へのセルビア軍集結はまるでロシアのウクライナ侵攻前夜を思わせます。加えてパレスチナのハマスによるイスラエル攻撃とイスラエルによる報復と紛争があちこちで噴出しています。多分元を辿ればこのニュースに行き着くのでしょう。

米下院、マッカーシー議長の解任動議を可決 米国史上初:日本経済新聞
10/1からのつなぎ予算をまとめたマッカーシー議長の解任動議が共和党から提出されて可決成立して下院議長が空位となりました。その結果後任を選ばなければなりませんが、多数派の共和党から選出される限り、保守強硬派の発言力が増すことが予想されます。その結果今回のつなぎ予算で削られたウクライナ支援予算が復活する見通しが立たなくなり、支援継続が難しくなっています。その分アメリカの軍事プレゼンスが低下した訳ですから、鬼の居ぬ間の洗濯とばかりに軍事行動を起こす国や地域が出てくる訳です。

但しそれぞれ抱えている事情は異なります。アゼルバイジャンのアルメニア侵攻は元々仲の悪かった両国の紛争がロシアの軍事的弱体化でバランスが崩れた結果ですが、石油成金のアゼルバイジャンはソビエト時代にも国内の山岳ユダヤ人迫害を抑えられないソビエト政府がイスラエル亡命を認めた結果、人口増のイスラエルがパレスチナ暫定政府(ファタハ)と交わした和平合意を反故にして越境入植したことでパレスチナ情勢を悪化させました。それに対して為す術のないファタハのぬるい対応に対する不満の受け皿としてハマスが台頭し、ガザ地区を実効支配するに至ります。つまりファタハの暫定政府の統治が及ばない訳です。

コソボはそもそもセルビアの自治州だったところをアルバニア系住民が多くセルビア人による虐待を口実にNATOが介入して独立させた経緯があります。故にロシアのクリミア侵攻の時に「コソボはどうだった?」とロシアの立場を正当化する口実に使われ、巡り巡ってウクライナ侵攻に繋がります。ロシアがウクライナを自国の一部と主張するように、セルビアがコソボを自国の一部とと主張することに繋がります。加えてウクライナ問題でNATOの対応が手薄になるという読みもあるでしょう。

同時にロシアにもアルメニアを支援する余力がないことでアゼルバイジャンが攻勢に出たという形でウクライナとの連動は見られます。但しパレスチナのハマスの攻勢は今のところ唐突感が強く、故にイスラエルも虚を突かれた形となっておりますが、やられた分はキッチリ倍返しするイスラエルの流儀からすれば結局パレスチナ側の被害の方が大きくなるのは避けられないでしょう。

という風に連鎖的に起きている紛争は、結局アメリカの軍事プレゼンスの低下で抑えが効かなくなっているってことですね。加えてウクライナ支援予算が減ればその傾向は更に増します。またロシアも北朝鮮に頼らざるを得ないほど弱体化している訳で、アメリカの支援が減ったからといってロシアが有利になるとも言えません。その一方でアフリカのサブサハラ地域でのワグネルの存在感が拡大してロシアの間接的プレゼンスを支えているなど、世界は複雑化しています。

これだけきな臭くなった世界ですが、台湾や朝鮮半島では大きな動きはありません。中国はゼロコロナの失敗や不動産バブル崩壊でそれどころじゃないし、北朝鮮もコロナ禍で国内経済が疲弊しており、特に海外へ出た出稼ぎ労働者が国内に帰れずにいた訳ですから、ウクライナ紛争でロシアへの武器輸出でやっと一息ついたのが現実ですし、国内装備の強化はその分後回しですから、直ちに有事となる可能性は低いといえます。

台湾に関しても騒いでいるのはほぼ日本だけですが、アメリカは本音ではウクライナで手を取られて米軍のアジアシフトが遅れていることを気にしていますが、岸田政権の防衛強化策でミサイル買ってくれるし米軍の指揮下で動くこともあり、寧ろ中国も北朝鮮も相手にしていなかった日本を攻撃する口実を与えることになります。アメリカにとっては日本が弾除けになってくれる一方、日米安保5条による防衛義務はあくまでも議会の承認が必要ですから、ウクライナへの支援すら打ち切ろうとしているアメリカの保守派が支配する議会で本当に防衛してくれるのかは疑っておく方が良いでしょう。

あと朝鮮半島と台湾の国際法上の違いも、日本でゃあまり話題になりませんが、朝鮮国連軍の名目で駐留在韓米軍は紛争当事国であり、朝鮮半島有事には動かざるを得ない立場ですが、台湾に関しては未承認ですから、集団的自衛権行使の対象にはなりません。装備強化などの支援はしてもイザというときには動けない、少なくとも議会の承認は必要です。となると米軍が動けない分初動を日本の自衛隊に頼る可能性はあります。つまり米中代理戦争を負わされる可能性はあります。

そしてミサイルを買うお金も予算化されずに放置されてます。これも度々指摘してますが、真水の財源を確保できなければ、例えば決算剰余金を充てるにしても、その分国債償還費を減らす訳ですから実質国債発行で対応することになります。つまり財政に負荷をかける訳で、生産力を持たない兵器の購入は様々な経路で国民の財布に戻る政府支出を圧迫し国民の経済厚生を悪化させます。しかしそうまでして必要とする議論は行われておりません。

加えて円安によるインフレ進行で国民生活が苦しい時だけに、本当に必要なのかをきちんと議論して国民の同意を得ることは必要です。加えて言えば有事への備えとはいえ一応平時の現状で真水の予算で対応すればこそ、有事の財政出動の余地が出来る訳で、太平洋戦争後のハイパーインフレが示すように、財政の悪化は事後的にインフレで調整されます。ということで紛争で財政支出を余儀なくされる状況では、財政インフレが起きる訳で、国民生活を圧迫します。

その前に定員割れ状態にある自衛隊を戦闘に駆り出すことは現実的に難しい訳で、そもそも人口減少が進む国での軍備増強は国民に負担を強いるだけで実際に戦える体制を構築することすら困難です。この点は自衛隊に限らず2024年問題に直面する建設業や運送業の人手不足と同根ですから、解決は容易ではありません。何しろ大阪万博すら開催が危ぶまれる現状です。遅まきながら政府も動いてはいます。

鉄道・船舶の輸送量10年で倍増 政府の2024年問題対策:日本経済新聞
今ごろこんなこと打ち出しても来年3月の働き方改革には間に合わない訳で、分かり切っていても動かない政府の無策ぶりに眩暈がします。当然ながら北海道新幹線並行在来線の函館本線長万部以南に対する対応は行われることが期待されますが、現状維持ではなく倍増となると、日本の鉄道貨物で致命的な投資不足に対する支援がしっかりできなければ画餅に帰すことになります。まもなく発表される政府の経済対策を注視しましょう。

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