« ユニコーンの馬脚 | Main | 勤労感謝にAIは勝つ? »

Saturday, November 18, 2023

サルとロバの法螺吹き合戦

ユニコーンの馬脚に連なる話題です。

ChatGPTの顔サム・アルトマン氏、突如解任 開発・提携で溝か - 日本経済新聞
アップルのジョブズ氏も一度解任されたことがありますが、マイクロソフトと提携してChatGPTをリリースしたオープンAIのCEO解任劇です。米議会公聴会で政府の規制の必要性を示したアルトマン氏だけに、ハイテク企業にありがちなマネタイズを急ぐ勢力による慎重派の排除と見られております。

FRBの度重なる利上げに関わらずあまり下げないNY株式市場ですが、AI開発で先行したマイクロソフトの株価が好調で、ライバルのグーグルは後れを取ってややさえない動きで、いずれマイクロソフトが時価総額でアップルを越えると見られております。アップルも独自の半導体開発に舵を切りAIを睨んだ動きを見せてますし、画像処理半導体のGPUでエヌピディアが独り勝ちだったり、アップルを含む独自半導体開発で半導体設計の英アームが好調だったりというのもAI関連の動きということが言えます。

ややわき道に逸れますが、AIブームで先端半導体が求められるのは、ChatGPTのような生成AUがニューロネットワークの仕組みで動いていることと関わります。人間の脳の働きが多数の神経細胞の反応で説明されており、ある刺激を受けた神経細胞は末端でシナプスと呼ばれる刺激物質を発散し、他の神経細胞がそれに反応して刺激が伝送されますが、その際に複数の神経細胞がそれぞれの刺激にウェートの異なった反応をして分岐して伝送経路が複数に発散される一方、出口ではそれが集約されて脳の特定部位が反応して返すということをしている訳ですが、その結果反応の遅い神経細胞でも複数経路で並列処理され、経験則による現実認識と照合され補正されることで遅延を防ぎ的確な反応をするという仕組みです。つまり並列処理がキーワードで、クラウドサーバーで処理される訳ですが、電力消費も大きいし、遅延の問題は付きまといます。

インテルのi5とかi7とかはコアの数を示し並列処理は行われてますが、エヌピディアのGPUは多数のコアが実装されていて微弱電流で遅延のない処理を実現している訳で、AI時代を先取りしている訳ですが、ライバルも追いかけており、インテルやクアルコムもアームと組んで新半導体を開発しようとしてますしIBMがラピダスと組んで北海道千歳市に先端半導体製造工場を作るとかの動きがあります。ラピダスは熊本県菊陽町のTSMC熊本工場と共に台湾有事に備えた経済安保案件として国の補助金を得ています。かくのごとくAIを睨んだ先端半導体の開発製造に資金が集まっている訳ですが、その結果妙なことが起きています。

中国がAI開発に熱心で先端半導体を喉から手が出るほど欲しがっている一方、アメリカの輸出規制で先端半導体が手に入らない状況で国産化を模索し、半導体産業の育成を国を挙げて取り組んでますが、技術的なギャップは大きく開発や生産で追いつくには時間がかかります。その一方で半導体産業の育成の結果、先端品ではないレガシー半導体の生産量は増えています。一方市況品で価格が不安定なレガシー半導体は西側諸国では投資しにくいため品不足が起きて日本の自動車産業で操業停止が相次いだことは記憶に新しいところです。そして中国産のレガシー半導体が市場に出回り結果的に半導体不足は解消されました。この状況は当面続くと考えられますから中国依存となる訳です。政治が経済に絡むとろくなことにならない典型ですね。

アメリカが警戒するのは中国によるAIの軍事利用や民主国家の選挙介入やデマ拡散などに使われることですが、それ中国に限った話ではなくどこの国でも起こり得る話です。つまりアルトマン氏が開発に慎重姿勢を示す理由もそこにありますが、マネタイズ派はお構いなしで開発資金を投入してリターンを得ることを重視します。典型はテスラのイーロンマスク氏ですが、EVの中国生産のようにリターンがあれば売り先は誰でも良い訳で、アメリカで開発されたAIが中国に渡らないとは断言できません。マンハッタン計画に関与した科学者の原爆技術のソビエト漏洩のようなこともあり得ます。AI開発が原爆同様パンドラの箱を開く可能性は残念ながらあり得ます。こんなニュースがそれを示します。

イスラエル軍、ハマス施設の証拠示さず ガザ最大病院 - 日本経済新聞
イラク戦争の根拠とされたイラクの大量破壊兵器開発がウソだった件を思い出させますが、イスラエルのガザ地区攻撃の正当性が揺らぎます。ウソ情報が攻撃の理由とされたとすれば、攻撃する側が敢えてウソ情報を流すだけで正当性を主張できるということになります。仮に生成AIでウソの画像が作られ公開されれば、私たちには検証手段がありません。人間の神経細胞よりも処理能力だけは高いAIで大量のウソを吐き出すとなれば、私たちは真実へのアクセスを事実上封じられます。

これが為政者には好都合でもある訳で、どんな無茶なことでも国民を騙して通してしまうことが可能になりますし、政敵を追い込むウソを流布させるなどのことも可能になります。バイデン大統領もそれ故に中国のAI開発を懸念して先端半導体の輸出規制をしている訳ですが、イスラエルに与することで台無しにしています。木から落ちたサルでも指摘しましたが、生成AIを活かす知恵が地上のサルに備わっているかは疑問です。

例えばオリガルヒの叛乱で北陸新幹線線大阪延伸で小浜京都ルートに調査費が計上されたことを以て決定事項のように言われてますが、整備新幹線スキームでは国とJRと地方が同意することを整備計画推進の条件としているのに、JR西日本の意向だけで与党PTが強引にねじ込んだ予算であり、既に関西広域連合で米原ルート推奨を決めた地方の意向は無視され手続きに瑕疵があります。つまり与党PTの暴走を決定事項と言い換えていて、それを誰も止められないということが起きている訳ですね。似たようなことはコロナ禍の五輪やその落とし物の神宮外苑再開発でも言われますが、密室で決めて強引に通すってことは日本では普通に見られます。

ということでAI以前の現状でウソがまかり通っている日本でAIが普及したら結構厄介です。

| |

« ユニコーンの馬脚 | Main | 勤労感謝にAIは勝つ? »

パソコン・インターネット」カテゴリの記事

ニュース」カテゴリの記事

経済・政治・国際」カテゴリの記事

鉄道」カテゴリの記事

JR」カテゴリの記事

都市間高速鉄道」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« ユニコーンの馬脚 | Main | 勤労感謝にAIは勝つ? »