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Saturday, December 16, 2023

もうすぐ笑わなくなる鬼

鬼が笑う2024年から間もなく半年。いよいよ鬼が笑わなくなります^_^;。しかし笑う鬼退治は進まず、人手不足倒産が現実味を帯びます。後手後手の後出しジャンケンで窮地の政権には問題解決能力を期待できません。加えて海外にも波乱要因はあります。

FRB、3会合連続利上げ見送り 2024年は利下げ3回分を予想 - 日本経済新聞
FRBが利上げ打ち止めと共にパウエル議長が利下げを示唆したということで為替が動いてドル円が140円近辺に上がりました。但しこれは同時に日銀のマイナス金利解除など金融正常化との見合いということで、日米金利差が縮小するというシナリオに基づきますが、注意が必要です。というのは利上げ打ち止め後も量的引締め(QT)は継続しており、国債市場に上昇圧力がかかっている状況には変わりはなく、引締め的な状況が続く中で、状況に応じた微調整程度の話です。米政府の財政支出拡大傾向は続いていて国債を消化しきれずに市場金利が高騰するリスクがあり、その調整が迫られることを織り込んだということです。

加えて労働市場の軟化でインフレ鈍化が言われてますが、昨年の7%超のインフレ水準を分母とする今年の3%程度のインフレは、それ自体家計への負担となっていて、実質賃金はマイナスのままです。つまりインフレの鈍化イコール終結ではないということで、FRBは油断できない状況にあります。楽観論者が言うようなソフトランディングシナリオにはなりません。故に外需頼みのの今の日本も影響を受けます。同じ3%程度のインフレでアメリカは実質金利でプラス、一方日本はYCC見直しで1%の市場金利ですから実質マイナス金利で為替は140円台に戻ったものの円安の地合いは変わりません。

加えて大統領選次第でアメリカ自身が迷走するリスクがあり、ウクライナとパレスチナへのアメリカの関与の姿勢も変わります。ザックリ言えばウクライナを見捨ててパレスチナ問題ではイスラエルへのコミットを深めることになります。そうなると原油や天然ガスを中東に依存する日本の立場が微妙になります。日本に留まらずEUもアメリカを当てにできない状況を睨んでウクライナとモルドバのEU加盟交渉開始を決めました。これはEUのロシアとの決別を意味します。日本もサハリン2見直しを迫られるでしょう。

てことで嵐の予感の2024年が間もなく始まりますが、経済的混乱や停滞は必至なのに有効な対策を打てないのが今の日本政府です。それでいて2025年の万博がパビリオン建設もままならず開催に間に合わないことは確実ですが、未だに中止も延期も打ち出せずに、一方で追加負担は続き事業費は倍増しております。ま、万博は年が明けても鬼が笑う範疇に留まりますがwww。見通しが立たないのはこちらも同じです。

静岡・川勝知事、リニアで「全工区の工事計画明示を」 - 日本経済新聞
大井川の水問題に解決の可能性が見えてきたとはいえ、南アルプストンネルの作業ヤードや作業用道路の整備を巡るJR東海の静岡県アセスメント条例違反は解消された訳ではなく、直ちに着工とはいかない静岡工区です。

JR東海は開業年度の2027年予定を取り下げたものの、何時まで延期とは発表せず、静岡工区の未着工で遅れていることを際立たせようとしていますが、実際は大手ゼネコンの談合事件や工事現場のコロナクラスター感染による停止や調布市の外環道トンネル工事の陥没事故で大深度地下トンネル区間も未着手だし、岐阜県のトンネル落盤事故もあり、実際にはあちこちで工事が遅れているのですが、そうした情報提供はせずに静岡県を悪者に仕立てようと意図していると川勝知事は訴えている訳です。ちょっと遡りますが、国交省が示した懐柔策がこちらです。

静岡県にリニア新幹線効果1679億円 観光消費増で、国交省試算 - 日本経済新聞
川勝知事は東海道線の静岡空港新駅設置を希望していると言われますが、掛川駅と近過ぎてこだまの連続停車でダイヤ編成上ネックとなることから無理ということで実現可能性はありません。それ故静岡県にメリットのないリニア工事で負担ばかりということに対して国交省の官僚が示した答案がこれです。

加えて静岡県が以前から求めていたのぞみの静岡県内停車ではなくのぞみの一部の需要がリニアに移るからひかりやこだまが便利になるというロジックです。リニアは毎時10本程度で座席定員が1,000人程度とのぞみ16両編成の3/4ですし、当面名古屋止まりということもあってのぞみのリニアへの全面移行は無理ですから、のぞみの静岡素通りは続くと考えられますし、ダイヤ編成権はJR東海にありますから、国交省が何を言おうがJR東海がそれを忖度して実行するとは限りません。

というかそもそもJR東海のリニア中央新幹線計画は、新幹線保有機構からのリース料に国鉄長期債務の一部を乗せて償還させるスキームをJR東日本の株式上場時に主たる事業用資産が自己保有ではないことの弱点を東京証券取引所に指摘されて国に買い取りを求めた結果、再取得価格という時価評価に整備新幹線などに充てる鉄道整備基金の原資を乗せて25年ローンで返済というスキームに変更し、2017年にローンが終了し、その分キャッシュフローの余剰が生じることから、それを活用してローン総額の5.1兆円をベースに資金繰りして整備するという自己資金スキームを打ち出して国庫負担が無いということで政府が承認したものです。

そのために事業費に事実上キャップがかけられており、それが各工区に割り振られた予算の厳格な管理から受注するゼネコンに談合を呼び込んだんだし、予算制約から無理な工事も散見されており、決して工事は順調ではありません。しかも大阪延伸の前倒しという名目では3兆円の財投資金融資を政府が決めましたが、この融資条件がユルユルで30年据え置きその後10年で返済という超破格のスキームですが、加えて大阪延伸前倒しを示唆しながら融資条件にはなっていないということです。

つまり財投の3兆円は破格につなぎ資金となっており、リニアちゃん気をつけてで指摘したように財投資金を資本制資金として計上した結果、JR上場4社の中で株価が高いJR東海のみがPBR1倍割れとなったと見られます。勿論リニア事業が順調に進んで開業し事業用資産として利益を生むようになれば問題はないんですが、現時点でその見通しは立たない訳で、故に資本効率の改善にはつながらない訳です。ちなみに当初5.1兆円とした事業費はその後膨張し、現時点で7兆円となっております。つまり既に財投資金3兆円の半分以上は投入されている訳で、何時になるかわからない開業までは資本効率の改善は無理という訳です。

これ上記笑う鬼退治エントリーで指摘した京成電鉄のオリエンタルランド依存の結果の実質PBR1倍割れ問題とも似ています。OLCや東海道新幹線のような金の生る木をなまじ持っているがために苦労している訳ですね。

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