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Sunday, December 24, 2023

諸人こぞりて苦しむイブ

ユニコーンの馬脚で取り上げたライドシェア解禁の枠組みが決まりました。

「ライドシェア」24年4月に限定解禁 全面導入に業界抵抗 - 日本経済新聞
DX推進に前のめりな政府にタクシー業界が巻き返した形ですが、タクシー不足の地域や時間帯を限定して2種免許を所持しない一般ドライバーの参入をタクシー会社の管理下で認めるというもので、事業主体はあくまでもタクシー会社で、ドライバーへの指導や事故時の保険対応をタクシー会社が担いアプリ会社の参入は見送りという落としどころとなりました。関連して2種免許の要件緩和も盛り込まれており、カーナビ使用前提で地理学習を簡素化するということですね。この点は寧ろ見直しの契機となったという意味で、ライドシェア導入の議論自体は無意味ではなかったということでもあります。正—反―合の弁証法的展開です。

議論によって問題解決を図ることで、賛成反対の双方に納得感のある解決策を見出すことこそが民主主義のエッセンスです。結果的に決まったことへの事後的な反発が抑えられる訳で、議論を行うプロセス自体は時間がかかりますが、決定後はスムーズに事が運ぶ訳です。ところが民主国家を名乗り選挙制度などを備えた国でも議論をないがしろにして多数決の結果だけを押し通すのは民主主義と言えるのかどうか微妙です。例えばロシアも選挙制度は整ってますが、プーチン大統領の一存でウクライナ侵攻を決めるようなことが起きる訳です。見かけと中身が一致していない訳です。

安倍派裏金、事務総長の権限重点 地検が幹部聴取で捜査 - 日本経済新聞
翻って派閥裏金問題で揺れる日本の政界ですが、キックバック分を議員個人の政治資金収支報告書に記載しなかったことが違反行為として問われているものの、制度上責任を問われるのは会計責任者であって、指示や共謀などを示す物的証拠がない限り議員個人への訴求はできないという結構なザル法です。

今回は派閥パーティということで、資金管理団体としての派閥の運営で、事務総長の議員の権限が問題の中心にあります。つまり事務方に責任押し付けて議員はお咎めなしとはいかない構造がある訳です。キックバックを受けた個々の議員の会計責任者も派閥から不記載で問題なしと言われれば従うでしょうし、それが派閥の事務総長から発せられたものとすれば事務総長を務める議員はアウトになる訳です。但し検察がどこまで証拠を固められるかは尚不明です。またかように資金管理団体が多重化されていて実態を掴みにくいことも立件を難しくしています。

一方キックバックされた裏金が何に使われたかによっては選挙時の買収など公職選挙法違反にも問われますから、各議員は気が気ではないでしょう。また収支報告書不記載の時点で政治資金から外れてる為、議員個人の雑所得として申告納税されていない限り、脱税の責めも負う可能性があります。これは国税当局の守備範囲ですから直ぐにって話ではないですが、落ち着かない議員さん多数でしょう。あと余談ですが、パーティ券を購入した企業や個人でも欠席ならば寄付と見做され上限はありますが所得控除の対象となりますが、出席して飲食など対価を得た場合は交際費で課税となります。企業にとっても税務上面倒なことですが、メリットあるから受け入れているのでしょう。

仮に選挙時の買収で票を買っていたとすれば、選挙制度自体が空洞化し、多数の暴力で物事が決められて、強引に進められるということも起こり得ます。例えばオリガルヒの叛乱で取り上げた電動キックボードの解禁の議論で審議会での慎重論を無視して自民党MaaS議連が強引に決めたりした訳です。しかも国会論戦もそこそこに党議拘束で与党議員は中身を精査せずに賛成に回りますから、実態は少数派の力業で通したということですね。権威主義国家とどこが違うのかということになります。上記エントリーの北陸新幹線大阪延伸でJR西日本の言い分のみで、問題の多い小浜京都ルートに調査費をねじ込んだ与党新幹線プロジェクトチームの横暴もあります。

とまあ言い出したらきりがないですが、東京五輪や関西万博などさまざまな意思決定過程が歪められてきたことは間違いありません。主権者としての国民の自覚のなさが招いた事態ではありますが。最後にこれ。

トラック、高速道路で速度90キロ容認 - 日本経済新聞
電動キックボードでは慎重姿勢だった警察庁がトラックドライバー2024年問題対策として高速道路の大型トラックの制限速度を現行の80㎞/hから90km/hに緩和するというものですが、トラック輸送で何がボトルネックかといえば荷捌きと待機時間なんですよね。大型トラックは荷積みも荷降ろしも時間がかかりますし、そもそも荷捌き場への入場待ちで待機させられる時間が長く、ちょっとスピードアップしたからといって解消するものではありません。安全面を考えれば期間と区間を限定した社会実験で確認してから行うべきで来年4月の実施は拙速です。2024年問題対策の特効薬はありません。もっと早くから対応すべきでした。国民不在は至る所にあります。

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