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January 2024

Saturday, January 27, 2024

疑惑の感電事故

正月早々の躓き が続いているようなショックなニュースです。

東北・上越・北陸新幹線、24日始発から再開計画 - 日本経済新聞
1/23AM10時ごろ、大宮を出発した上りかがやきが並行する埼京線北戸田駅付近で垂れ下がった架線にパンタグラフを引っ掛けて破損した事故で終日運休となりました。翌日には始発から復旧したものの、車両運用の都合で一部運休が出ています。

原因は架線に張力を与える端部の錘を吊る棒の断裂によって架線が150mに渡って垂れ下がったものですが、同種の事故は例えば2005年の山手線でも起きており、饋電系トラブルはつきものとはいえ当該の吊り装置は通常30年程度で交換されるものが38年間交換されていなかったことが報じられております。架線検測はEASTI-iのような検測車を走らせてデータを取って摩耗や位置のずれなどを見ながら適宜交換されるところですが、錘の吊り装置までは守備範囲には入らないですから、結局巡回目視で異常を調べる形で補修されることになります。

この点は後述しますが、それ以上に問題なのは、復旧作業員の感電事故です。1人は全身やけどの重傷で助けようとしたもう1人は軽傷ながら2人が巻き込まれた事故です。AC25kvに直接触れた可能性があります。保守作業や事故復旧作業は作業員や機械を線路に入れる必要があるので、指令に通知して線路閉鎖と通電停止の措置が取られ、作業終了後点検の上指令に通知して解除されるというのがざっくりした流れです。加えてJR東日本では新幹線のCOSMOSや首都圏在来線のATOSという運行管理システムに現場責任者が端末で直接アクセスして措置する形で高度に自動化されています。故にシステム上は起こり得ない感電事故が起きたという意味で深刻な事態です。

システム自体はよくできていて、よほどのことがない限りヒューマンエラーの発生も考にくいという意味では羽田空港の衝突炎上事故と異なり当事者の注意力に依存する部分は少ない筈なんですが、現実に事故が起きている以上、何らかの手順ミスや勘違いがもたらした事態である可能性はあります。この点は明らかにされるべきです。

一方事故の直接の原因である架線の錘の吊り装置の断裂は、自動化の盲点のような場所で起きたという意味で、別の問題を想起させます。目視確認で劣化状況を確認して交換を手配するという属人的なシステムで、おそらく目視で異常を発見できるスキルが若手に継承されずに、あるいはそもそもなり手がいなくてベテランの雇用延長で対応しているかといった別の問題が存在すると考えられます。そうだとすれば今後もこのような事故が起きる確率は一定程度あると考えざるを得ません。

事故地点は大宮以南の130km/h区間で起きたもので、大宮以北の高速運転区間で起きればもっと大きなダメージになっていた可能性があります。省力化を前提にすれば何らかの監視システムの導入も考える必要があります。この辺が省力化投資の難しいところです。勤労感謝にAIは勝つ?でAIが高スキル労働者を失わせる可能性を指摘しましたが、人口減少に伴う省力化投資自体は避けられないとしても、やり方は慎重であるべきです。その観点から言えば、気になるのがこのニュースです。

JR東日本社長に喜勢陽一氏 JR後入社、JR東海に続き2人目 - 日本経済新聞
ストでスベってスットコドッコイで記述してますが、JRグループの最大労組のJR東労組を挑発してスト決行を宣言させて労働協約違反を言い立ててスト経験のない若手組合員の引き剝がしまでした当事者です。国鉄OBで占められていた経営トップにJRプロパー社員が就任するのはJR東海に次いで2例目ですが、組合潰しでのし上がったってのはJR東海の葛西氏に似ています。

国鉄改革派3課長と言われた井出氏、松田氏、葛西氏のうち、松田氏は国鉄時代から労組重視の労使協調路線を標榜していました。その松田氏がJR東日本所属となったことは、ひょっとしたら動労の松嵜委員長の所謂分割民営化賛成シフトに影響した可能性はあるかもしれません。分割民営化を受け入れた上でJR総連を企業横断型の欧州型産業別組合にして国鉄時代に果たせなかったスト権確立を狙ったと言われます。結果的には実現しませんでしたが、JR東日本とJR東労組の関係は良好で、36協定を含む労使協議を3か月毎に開いて様々な協議を行う体制を確立します。

その結果1988年12月の中央総武緩行線東中野駅の列車追突事故で車内警報レベルの国鉄型ATCから高度なATS-P設置が加速しました。JR東労組はヒューマンファクター重視で事故を未然に防ぐ対策強化を会社に求め、実現してきました。JR西日本は尼崎事故といった重大事故を起こしましたが、背景に総連系労組と連合系労組との対立が指摘されてます。

JR総連は松嵜氏が意図した会社横断労組の姿勢を重視していましたが、動労と共に分割民営化に協力した鉄労系組合員はついて行けず、そこにくさびを打ち込んで労組の分派を促したのがJR東海の葛西氏で、JR西日本他、東日本と北海道を除く各社が追随します。日本では以前から煩い組合を潰す目的で会社側が第二組合を作らせて、組合幹部経験者を管理職に登用するなどの組合潰しは結構見られましたが、分割民営化後のJRでも同様の動きがあった訳です。確かに松嵜氏の会社横断労組というエキセントリックな構想が分裂の直接的な要素ですが、JR東日本と北海道は総連系労組が主流に留まり、東日本に関しては機能していたと言えます。

しかし2020年の東京五輪を控えて政権からの組合対策の圧もあったと言われますが、組織改編で待遇の異なる運転士と車掌の所属を同じにして動労を出自とするJR東労組を挑発しスト通告に追い込むというのはエグい組合潰しではあります。且つ結果的に労組脱退で瓦解した東労組に代わって社友会という非労組の組織を立ち上げて労使協議も年1回に減らすという形で、労使協議を重視する姿勢をあからさまに反故にしました。こうした背景が今回の新幹線事故に影響している可能性はありますが、広告主であるJRにそこまで突っ込んだ報道はメディアには期待できないでしょうね。

運転士と車掌の配置統合はおそらく将来の自動運転を睨んだ動きでもあると思いますが、車掌に相当する保安要員を乗務させた形のドライバレスを目標と公言するJR東日本だけに、気になるのが乗務員の処遇です。ATOによる自動運転ならば運転操作は自動化されていても、非常時のマニュアル運転対応も含めた動力車運転免許という国家資格を持つ専門職で高待遇となる訳ですが、車掌級の保安要員が免許非保持者とすると、結果的に賃下げの口実になります。それでいて事故時には運転士並み刑事責任が生じるとすれば、そんな仕事を敢えてやりたい人がいるかどうか、上述のようにAIが高スキルの熟練労働者を淘汰するように免許保持者を淘汰するだけならば、大きな問題です。現実的には現行法上の制約もあり簡単には進まないでしょうけど、最大手のJR東日本が規制緩和を求めた時に国がその方向へ動く可能性は大いにあります。

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Sunday, January 21, 2024

帝都電鉄物語

ガバナンス不在の政治で解散総選挙を模索していた岸田首相は岸田派解散という奇策に出ました。確か岸田派離脱を表明していた筈なのに派閥の解散権はあるのか?それはともかく安倍派と二階派は追随した一方、茂木派は態度を示さず麻生派は解散を否定しました。つまり会計責任者の略式起訴または一部議員の逮捕で傷を負った派閥が解散を表明した訳ですが、これ目先のゴマカシです。

ぶっちゃけ派閥を解散して事務所を畳んでも、政治資金規正法で献金者の氏名が開示されない少額献金で裏金が作れる制度上の瑕疵が温存されていれば、議員同士での裏金のやり取りまでは捕捉できません。適当な任意団体を作って実務を秘書に丸投げすれば実態は変わらず、寧ろ表に出にくくなる訳ですね。そして世論を睨んでしれっと元に戻るということですね。政治資金規正法の厳格化と連座制導入までしないと防げません。

とはいえ議員本人が訴求されない現行法下でも検察の不起訴処分に対しては検察審査会で起訴相当または不起訴不当の評決がされれば再度検察に戻され追加捜査が行われますし、当然略式起訴の会計責任者から得られる情報から新たな証拠が出てくることもありますし、一部弁護士による公益に基づく刑事告発もあるでしょう。それ以上にこうした司法手続きイベントの度に報道されて世論が喚起される訳ですから、今回は簡単に「忘れてくれる」ことにはならないでしょう。どう転んでも政権にとっては茨の道です。

という訳で政治不信が極まる状況ですが、よく似た状況が戦前にもあったことは留意する必要があります。政治不信の結果満州利権に連なる拡張主義的革新官僚や財界人、それに軍部への国民の期待が反比例して高まった結果、戦争への道へ突き進んだことを忘れてはいけません。革新官僚の代表といえる岸信介は戦後も影響力を保ちましたし、革新官僚の主張は経済安保や電力利権に連なる経産官僚とイメージが重なります。一方権力機構である検察の暴走はそれはそれで問題です。

サイドバーのアマゾン鉄道書で取り上げた鉄道ピクトリアル 2024年 03 月号 [雑誌] の京王電鉄井の頭線特集号のの歴史過程の澤口一晃氏の記事は、コンパクトにまとめられた通史として秀逸です。元々小田急系列だった帝都電鉄が小田急に吸収され戦時統合で大東急の一員となり戦後の第東急解体で経営基盤の弱い京王に渡った歴史故に外様的で京王の正史よりも小田急の正史の方が詳しいという捩れた存在ですが、澤口氏は当時の政治経済状況を踏まえて東洋経済新報やダイヤモンドなど経済誌の記事まで参照して背景から明らかにしています。

記事の冒頭で鉄道疑獄事件から始まるのも趣味誌としてはチャレンジングですが、当時は戦前の所謂疑似二大政党制時代と言われる時代で、立憲政友会と民政党・憲政会が交代で政権を担っていた時代です。但し当時は内閣総理大臣に衆議院の解散権は認められておらず、内閣総辞職後で野党が少数与党内閣を組閣し、次の衆院選で多数派を得るよう努めるという流れです。その結果選挙対策による利権政治がはびこるのは避けられず、様々な利権絡みの疑獄事件が横行していた時代です。震災後の東京郊外の発展が、所謂郊外電車熱を生み出し多数の免許出願があって鉄道省当局が扱いに苦慮していたこともあり、放射鉄道6路線と環状鉄道2路線が想定され、それに近い路線出願を優先する方針でした。

そんな時代に帝都電鉄の前身の東京山手急行電鉄が設立され、大井町―洲崎間を梅が丘、中野、板橋、巣鴨、北千住を経て山手線の外側を巡る路線が鉄道省が想定した環状鉄道1号線に近い計画として免許を取得したものの、後に政治家の暗躍が明らかになります。この辺の事情は政治の我田引鉄として現在の整備新幹線事業と通じるものがありますね。

加えて東京の郊外開発ブームもあって鉄道株は株式上場によるプレミアムが付きやすいこともあり、電鉄ブームを後押ししましたし、昭和恐慌による不況期は却って電鉄熱を煽りました。この辺株価プレミアムが政治家の懐を温めたでしょうから、リクルート事件も連想させます。故に実現可能性に疑問符がつくものも多数あり、実際に東京山手急行電鉄の免許路線は実現しませんでした。計画では1,435㎜の標準機と1,067㎜の狭軌の三線軌で標準機を旅客、狭軌を貨物が使うという形で貨物輸送を指定していたのは当時の物流事情によるのでしょうが、洲崎で東京市が東京高速鉄道に譲渡した地下鉄計画線の八重洲―洲崎間の路線への乗り入れを想定していて標準軌、そして全線掘割構造で踏切無しの計画を打ち出しており、第三軌条集電が想定されていたかもしれません。

壮大な計画で株式は人気を博したものの資金不足で事業遂行が出来ず、鬼怒川水力電気と小田原急行鉄道の経営者の利光鶴松を社長に迎えて体制立て直しを図ります。一方で井の頭線の路線免許は渋谷急行電鉄という別会社が申請し、こちらは鉄道省想定の放射鉄道2号線相当の路線として免許されたものの、やはり資金調達がうまくいかず、東京横浜電鉄への身売りを画策したものの果たせず、やはり利光鶴松に助けを求めます。かくして両社は東京山手急行を継続会社とする形で合併し、株価プレミアムで得た資金を実現可能性の高い渋谷急行の路線に資金を投入し、社名を東京郊外電鉄に改めたものの、東京市の市域拡大でほぼ全線が東京市内になることから帝都電鉄に改称し開業に至ります。

東京山手急行の掘割路線のコンセプトは継承されたものの、資金難で全線踏切無しにはならず、また法面防護もなく排水設備も貧弱で雨の度に線路寒水となるし、変電所が1カ所しかないから当時最新鋭の電車も電圧降下でまともに走れず、パラレル禁止のシリーズ運転でゆっくりしか走れない散々なスタートでした。しかも当時の沿線は閑散としていて営業成績も振るわなかったのですが、それでも住宅開発の進捗で収支は徐々に改善するものの、利子分を除く利益を減価償却費に計上してその中から山手急行建設利息として無税で配当するという今ならコンプライアンス上問題のある処理をしていましたが、それでも山手急行時代のプレミアムで膨れ上がった資本金がネックで2回にわたる減資で利益をひねり出すというトリッキーな会計処理をして凌ぐ状況で株主から不評を買います。故に最後には小田急による救済合併となります。

そして電力国家管理で鬼怒川水電を失い、陸上交通事業調整法に基づく戦時統合で小田急は大東急に統合されます。結果的には弱点だった変電所増強や車両の融通で助けられ、特に東京大空襲で永福町車庫が壊滅的打撃を受けて稼働車両が7両となったこともあり、戦後復興で東横線向けのデハ3550がデハ1700、京浜線向けクハ5350がデハ1710として井の頭線に竣工し、何れも東横が湘南電鉄乗入れを想定して準備した電装品と長軸台車を履いていて、後に京王線への転用に生かされました。

更に京王時代には安普請の掘割法面の改修や排水設備の強化や路盤のかさ上げが行われたり、オールステンレス車の3000系投入やTTCと呼ばれる運行管理システムの実装でも先行するなどしましたが、路線延長が長く沿線開発が旺盛な京王線では混雑解消が優先されて井の頭線の旧型車転用で凌がざるを得なかったとも言えます。変電所は小田急時代に強化され東急時代に車両が補充されと、マネーゲームに翻弄されて内実を伴わなかった帝都電鉄の負の遺産の解消には多大な時間を要しました。

そして急行運転が戦後の一番のエポックでしょう。元々渋谷と吉祥寺を結ぶ路線として国鉄線のバイパス効果が期待されていたものの、時間がかかり過ぎてバイパス機能が果たせていないことから急行運転が計画され、結果的に通過客の増加で潤ったという意味で大成功になりました。そして東急がこれを参考に大井町線の急行運転を行い田園都市線のバイパス機能を強化したのは周知のとおりです。そんな井の頭線とは縁もゆかりもない千葉の話題です。

JR東日本、京葉線朝の上り快速2本を継続 千葉市が要望 - 日本経済新聞
元々東京外環状線の一部として計画された京葉線ですが、旅客輸送開始と東京駅乗り入れで混雑路線の総武線と地下鉄東西線の混雑緩和が狙いだったこともあり、東京延伸時から快速運転が起こ案われ、特に朝夕新木場のみ停車の通勤快速が2往復設定され、快速も頬終日運行、武蔵野線直通も快速運行で休日は停車駅を変えてディズニーランド輸送に特化するなど柔軟なダイヤを組んでいました。

その後沿線開発が進み、また車両更新もあって各駅停車もスピードアップもありなどして快速の停車駅が増やされ京葉快速は海浜幕張以遠各停の遠近分離型になり、武蔵野快速も各停化されと変化する中で、朝夕の通勤快速は内房線君津及び外房線/東金線の上総一ノ宮/成東への乗り入れで一部総武快速線のバイパスの役割も担ってきた関係で存続してきたものの、列車毎の混雑率のばらつきを解消するために見直しは避けられなかったというのがJR東日本の言い分です。快速通過駅の乗車機会確保が目的ということです。しかし極端から極端に振れたことは問題で、通勤快速の停車駅を徐々に増やすといったプロセスを飛ばして反発されたと言えます。

沿線開発が先行して固定客で安定していた井の頭線が急行運転に踏み切ってバイパス機能を強化したのとは逆の展開ですが、元々貨物バイオパスとして計画され、旅客化も混雑路線の救済でバイパス機能が重視された京葉線と真逆ですが、井の頭線の源流である東京山手急行電鉄が外環状線として計画されたことと併せて示唆に富みます。交通機関整備と都市開発の関係は意図した通りには進まないものですね。

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Sunday, January 14, 2024

ガバナンス不在の政治

諸人こぞりて苦しむイブの続きですが、悪夢は続きます。

自民党安倍派「裏金」、幹部聴取は週内に終結 立件見送り公算 - 日本経済新聞
まあ予想通りの展開ですが、政治資金規正法で不記載は会計責任者の責任と定義されていて、公職選挙法で「秘書がやった」の穴を塞ぐ連座制のような規定がない以上、会計責任者の在宅起訴で幕引きとなることはやむを得ない部分があります。

一方インフレは続くよどこまでもの大川原化工機事件のように、証拠を捏造してまで冤罪事件を起こしたのも検察ですから、検察のダブルスタンダードですが、あまりここを突っ込みすぎると選挙で選ばれた議員を同様に追い込んでよいということにもなりかねず問題があります。政治資金規正法の改正で穴を塞ぐ立法府の出番ということで、26日召集の通常国会が注目されますが、能登半島地震の対応も含めて政権にとっては茨の道になりそうです。加えて検察の立件空振りで国民の怒りが収まらない状態で選挙はしたくないでしょうから、解散風を吹かせて政局をコントロールすることもままなりません。どうするキッシー?

その能登半島地震ですが、これまでにも増してデマ情報がSNSで拡散されていて問題ですが、そもそも正確な情報が少なく、被害の程度が酷いものだということが後になって明らかになる傾向から憶測を呼ぶことになると考えられます。典型的なのがれいわ新鮮組の山本太郎議員の被災地入りを巡るバッシングですが、被災地入りした政治家は山本議員だけではなく、複数の議員が被災地入りしており、政府発表やニュースでは伝えられない情報を発信していて、これによって情報の解像度が上がる訳で、叩く理由はありません。その中で山本議員1人だけを叩くというのはおかしなことです。

一方北陸電力志賀原発を巡る放射能漏れ疑惑のような言説も流布しておりますが、政府がドローン飛行禁止を打ち出したり、モニタリグポストの機能していないことを以て、重大な事態を隠しているんじゃないかという疑惑がエスカレートしているようですが、現時点で放射能漏れが起きているという事実は確認されておりません。とはいえ地震直後に「異常なし」の発表があった後にトラブルが発覚するという福島第一原発事故を彷彿させる情報隠蔽姿勢がこうした流言を生み出したとも言えます。

志賀原発が過去様々なトラブルを重ねて運転停止を繰り返し、情報開示も問題だらけという点も憶測を生んだ原因でしょう。以下wikiからざっと拾ってみます。

1993年2月に能登半島沖地震発生、7月に1号機運転開始
1997年には配管溶接部のトラブルと使用済み燃料輸送容器に関するデータ不正が発覚
1998年1月に復水器細管漏洩で手動停止
19999年6月に非常用ディーゼル発電機のクランク軸ひび割れ、更に定期点検中の臨界事故でデータ改ざん、対外報告を怠り8年間隠蔽、原子炉自動停止後の必要な措置を行わないなどの不正
2000年1月にy2kでシステム障害
2003年6月に定期検査中に配管の水があふれて作業員が浴びる事故
2004年6月に廃棄物処理施設洗浄中に水漏れで160万ベクレルの放射線漏れ
2005年3月に国の地震調査委員会が建設中の2号機炉心近くの断層の危険性を指摘、4月に地滑りで送電線鉄塔倒壊
2006年1月には試運転中の2号機で原子炉隔離冷却系の開閉試験で全閉できず運転停止、3月それでも2号機営業運転開始、直後に金沢地裁が運転差し止め請求訴訟で差し止め命令、6月に原子力安全・保安院が中部電力浜岡原発5号機ののタービン羽損傷を受けて同型の志賀原発2号機の点検を指示し7月に運転停止して点検の結果ひび割れが確認され、9月に2号機高圧タービン室に粒状金属発見、11月に1号機定期点検中に発電機付属装置の冷却ファンに記録用紙が吸い込まれ一部が残り運転監視中に異常振動で手動停止、同月2号機の耐震裕度向上工事着手
2007年3月に能登半島地震で1号機の使用済み燃料貯蔵プールで45リットルの水飛散、放射線量約750万ベクレル、7月に新潟県中越沖地震発生で志賀原発でも震度4でも1,2号機とも運転停止中
2008年に2号機の再起動も気体廃棄物の水素濃度上昇で出力低下で手動停止の後再起動、7月に1号機の耐震裕度向上工事着手
2003月3月に大阪高裁金沢支部が2号機運転差し止め請求を棄却、1号機の再起動を申し入れ起動、4月に気体廃棄物処理系でキセノン133が通常の10倍も監視運転継続して好感度オフガスモニタの異常値で通常の約200倍で出力を下げて漏洩燃料の範囲特定作業、石川県と志賀町も立ち入り検査、11月に調整運転中の2号機の非常用ディーゼル発電機で潤滑油洩れ、12月にも再度の潤滑油洩れ
2010年10月に2号機運転差し止め訴訟で最高裁により住民側の敗訴確定
2011年1月に2号機の原発格納容器内の冷却器凝縮水量が低下して手動停止、2月に1号機の原子炉再循環軸封部の第2段シール圧力増加で部品交換のため運転停止、3月の東日本大震災時には2号機の定期点検で1,2号機とも運転停止中、4月に福島第一原発級の緊急時対応訓練実施、8月に北陸電力が破砕帯周辺の地殻変動と地震発生状況の報告書提出
2012年6月に石川県と富山県の住民から1,2号機の運転差し止め請求訴訟で金沢地裁に提訴、7月に原子力安全・保安院が破砕帯の調査計画提出を命じる
2013年5月に1号機の低圧タービンにひび割れを確認7月に新しい規制基準が施行、12月に前年い保安院から指示された破砕帯調査の最終報告書提出
2014年8月に原資慮億規制委員会に2号機の適合性審査を申請
2015年3月に原子力規制委の有識者調査団が敷地内断層が活断層の可能性を指摘、9月に2号機建屋内に雨水侵入
22019年7月に構内の防災敷材倉庫付近で電源車火災が発生し自主消火
2021年8月に2号機安全装置不具合を発表、主蒸気隔離弁の基板故障で7月に警報を確認していた
2022年6月に能登半島で地震発生、令和6年地震に連なる群発地震の始まり
2023年3月に原子力規制委が2号機の敷地内断層を活断層でないとする北陸電力の主張を妥当と判断、5月に能登地方で地震
2024年1月に令和6年能登半島地震発生
今回の地震の原因と見られているのは地層の流体上昇圧力によるものと見られております。太平洋プレートがユーラシアプレートの下に潜り込むときに一定量の海水も取り込み、地価の高温高圧に晒されることで上昇圧力がかかるもので、その結果タイル状に並ぶ隣接地殻を繋ぎ止める目地が壊れて地震になる訳で、今回は能登半島北部の未知の断層が動いたものとされております。当然ながら近隣の断層にストレスがたまりますから、今後も余震が続くということになる訳です。

正月早々の躓きで見たように志賀原発のトラブルは多発しており、今後の群発地震の影響もありますから、補修計画も作りにくいですし、北陸電力が規制委から得た「活断層ではない」というお墨付きもチャラになり断層の調査はやり直しです。とにかく地殻が大きく動いて最大4m隆起し水平方向に1.2mズレた訳で、その結果海岸線の形が変わり、多数の港が接岸不能となって災害支援活動を支障している状況です。

しかも北陸電力は今回の震源地のほぼ真上に当たる珠洲に原発を作ろうとしていた訳で、仮に完成し稼働していたら、福島どころじゃないシビアアクシデントになっていた可能性もあります。加えて道路の寸断で避難計画の実効性もなかったことが明らかになりました。今後志賀原発の廃炉が議論の対象となることは避けられません。

当然ながら鉄道の被災も深刻で、JR七尾線と三セクののと鉄道も路盤のずれで線路が曲がり復旧が困難な状況が続いています。その中でのこのニュース。

【能登半島地震】JR七尾線、羽咋まで15日再開 七尾は22日以降 - 日本経済新聞
高松以北が運休となっていたJR七尾線は15日に羽咋まで復旧、七尾までは22日以降ですが、和倉温泉までは見通しが立っておりません。当然ながら線路を共有するのと鉄道も復旧の見通しが立っていない状況です。JR西日本とのと鉄道の資金力の差も気になりますが、一方で北陸新幹線敦賀延伸開業が3月に迫る中で、並行在来線絡みの動きもあります。
富山の城端・氷見線再構築案決定 北陸、残る4線が次の課題に - 日本経済新聞
並行在来線としての切り離しを免れた北陸のローカル線のうち城端線と氷見線をあいの風とやま鉄道が引き受ける形でJRから切り離されます。同様の問題は七尾線、高山本線、越美北線、小浜線でも浮上しております。小浜線の場合は孤立線ではないですが、新大阪延伸時の小浜京都ルートを想定した並行在来線となる訳ですが、小浜ルートに固執する福井県の対応が見ものです。

七尾線に関してはIRいしかわ鉄道の引受ですんなり決まりそうですが、七尾―和倉温泉間を共有するのと鉄道との調整をどうするかが難問です。加えてサンダーバードの和倉温泉直通もなくなる訳です。逆に言えばJR西日本は早く決着をつけたい筈です。しかし震災復興にはマイナスですし、ましてのと鉄道の存続も危ぶまれます。石川県の判断はどうなるでしょうか。

かつて水害で長期運休した越美北線も、当時は北陸新幹線の金沢以西が事業化の見通しすらなかった時代に、沿線自治体が住民の定期券購入補助を行うなどの条件で西日本JRバスの専用営業所を現地に設置して代替輸送を行うなどした路線ですから、ここへ来ての切り離しには当然抵抗があるでしょう。なまじフル規格で整備したために地域に難問がのしかかります。政治のガバナンス不在はこんなところにも影響している訳ですね。

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Saturday, January 06, 2024

正月早々の躓き

根拠なき楽観論の時点では予想できなかった波乱の正月になりました。同エントリーで取り上げた辺野古の新基地建設で公費を蕩尽する一方、能登半島地震の被災地の惨状に心が痛みます。当然ながら安全保障とは国民の生命財産を守ることなんですが、群発地震が続いていた能登半島を守ることが出来なかった事実は重いと言えます。

辺野古の新基地にしろトマホークにしろ直接国民を守る訳ではないですし、あまつさえ米国のライセンス生産のパトリオットミサイルのウクライナへの供与もそうですが、軍事装備の増強よりも災害時に迅速に被災地支援が可能な災害救助隊のようなものが、自衛隊、警察、消防のどこに属するかは別として存在しない中で、自らも被災者の被災自治体の職員が対応し、救援を求めるという建付けでは初動が遅くなるのですが、阪神でも東日本でも熊本でも繰り返されております。軍隊が災害救援するのは世界的には普通のことですが、それはロジスティクスの専門家で道なき道を拓き前線に物資を補給する機能を応用したものです。当然ミサイルは役に立ちません。

正月期間中で自治体職員の動員も簡単ではなかったと思いますが、逆に大都市からの帰省者が少なからずいたことは、当事者にとっては過酷ですが、ある意味高齢者しかいない過疎地の災害としては動ける人がいるという意味でプラス面もあります。雇い主の企業が有給休暇扱いで復旧支援すればなお良いですが。逆に道路、通信、ライフラインの遮断で窮地にある訳で、道路が寸断され隆起で港が使えず、能登空港も被災して使えずと陸海空全ての補給路が遮断されていて水さえ届けられない命の危機にもさらされている訳です。

加えて北厘電力の火力発電所の被災で停電が発生しており、電力事情も悪化しております。電気がなければ無事な水道や光回線や携帯基地局も使えなくなる訳です。休止中の志賀原発が動いていればシビアアクシデントの可能性もあった今回の地震で、いち早く「異常なし」と報じられましたが、休止中で使用済み燃料プールの水温が低かったことが幸いしてます。しかしそのプールから汚染水がこぼれてますし、外部電源用の変圧器のオイル漏れで火が出てます。今のところ非常用電源は生きているということで、大事には至らないでしょうけど、地震でモニタリングポストも埋まったか電源喪失で放射線測定が出来ない状況で「異常なし」なのでしょうか。寧ろ被害を過小に見せる情報開示に後ろ向きな姿勢こそ問題です。

その意味では羽田空港の衝突炎上事故は、不幸な出来事ながら乗客乗員を全員無事に避難させたJALクルーの練度の高さや乗客もパニックを起こさずに冷静に指示に従って避難したことなどが報じられてホッとします。加えて事故後の情報開示にも見るべきものがあります。

【羽田空港事故】海保機、滑走路で40秒停止か、JAL機側視認できず - 日本経済新聞
今回異例なのは管制の交信記録が開示されていることで、事故の状況がかなり明らかになりました。管制官は海保機に滑走路手前のランプウエー待機を命じJAL機に着陸を命じたものの、海保機の勘違いなのかはわかりませんが、C滑走路に進入していて、管制官もJAL機も海保機の進入を認識できていなかったということです。典型的なヒューマンエラーですが、大事なのは再発防止であって犯人探しではないということです。

無線による交信で当事者間の情報共有を図るという意味で人の注意力に依存するシステムですが、航空便の増加で地上の事故やインシデントは世界的に増えている傾向にあります。日本でも2015年に那覇空港で自衛隊ヘリが滑走路を横切り離陸準備中のANA機が離陸中止に追い込まれたという重大インシデントが起きています。ヒューマンエラー対策として誤進入防止システムが開発され羽田のC滑走路にも設置されていましたが、マニュアルにより異常な視界不良時に限った運用とされていました。

このこと自体は国際ルールと整合的ですが、日暮れ時で必ずしも視界が良好とは言えない事故時は、日常であって非常時ではないという解釈で使われていませんでした。また管制官に対しては滑走路の誤進入をモニターに表示するシステムがありましたが、管制官は見落としていました。音による警告が必要かもしれません。但し誤進入に対する管制官の責任は問われない法律の建付けになっており、警視庁が進める業務上過失致死傷の立件は行為者と見做される海保機の機長になりそうです。

海保機も能登半島地震の救援物資輸送という臨時の任務を遂行中だった訳で、地震がもたらした事故とも言える側面はあります。元々海難救助を目的とする海保機にとってはイレギュラーな任務ですし、管制官にとっては扱いの難しい航空便です。とはいえボンバルディアDHC8という小型機体で短い滑走距離で離陸が可能なこともあって、滑走路の占有時間は短いですから、大型機の離着陸の隙間にうまくはめ込むことで支障を少なくするという管制官の心理もあったと思います。

故に管制官は滑走路手前のランプウエー待機を命じたと考えられますが、一方海保機は馴れない救援物資輸送で管制官の意図が読み取れずに勘違いした可能性はあります。そうしたすれ違いを回避するには機械的に止める手段をシステムに持たせるのが有効です。鉄道で言うATSやATCのような保安装置の必要性が認識されシステムの運用を含めた見直しは欠かせません。JR西日本の尼崎脱線事故もそうしたヒューマンエラーの積み重ねで起きており、ミスを糾弾し処罰することは却って情報の隠ぺいに繋がります。原発を巡る電力会社の対応にその匂いが感じられます。故にシビアアクシデントが繰り返される危険性はあるということです。

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