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February 2024

Saturday, February 24, 2024

令和の秩禄処分

漂流する世界と日本で株価の上昇を好感すべきではないことを述べましたが、こんなニュースの後でも基本的な見解は変わりません。

日経平均最高値、「34年で株価10倍」142社 ゼンショーなど - 日本経済新聞
22日の東証終値で日経平均株価の終値が34年ぶりに最高値を更新しましたが、記事にあるように値上がりを主導したのは新興勢で伝統的大企業は寧ろ足を引っ張っている現実があります。34年間に米NY株は10倍、独DAXも6倍に上昇していて、日本だけが株価の低迷から抜け出せなかった現実が寧ろ明らかです。

日経平均株価は225の指定優良銘柄の単純平均であり、採用銘柄は定期的に入れ替えられますし、合併や上場廃止による入替もありますから、連続性のある指標とは言えませんが、その時点の日本の優良企業の成績表という側面はある訳です。そして新興勢は米国並みの値上がりがある一方、伝統的大企業の多くは株式の持ち合い解消もあって値上がりとは縁遠く、最近になってやっと事業の見直しが進んできたものの、未だ将来展望を描けていないってことですね。逆に言えば米株式市場は出入りが激しく、結果的に新興勢が相場の主力になっている訳で、古い企業の淘汰が進んだ結果とも言えます。つまり日本の産業構造の改革が停滞した結果です。

あと直近の動きとしては米エヌビディアなど半導体主導は相変わらずですし、大型株の値上がりで平均値を上げており、おそらく新NISAで株式投信が売れた結果と考えることができます。加えて言えばウクライナ、ガザ、政治家裏金問題などのバッドニュースが多い中で、受けの良いニュースというメディア側の事情もあって大きく取り上げられているということは言えます。加えて広告主としての金融業界への忖度ですね。

とはいえ株価水準としてはやはり高すぎるというのが正直なところ。エヌビディアの株価収益率(PER)30倍は異常です。PERとは株価が1株利益の何倍に当たるかを示す指標で、平常値は14-16倍程度と言われ、全てが株主に還元される訳ではありませんが、成長投資の継続を前提に投資回収にザックリ30年ということになりますが、当然ながら30年先を予測することは困難ですから、実演可能性は疑われます。AIブームによるGPU需要の上振れという意味でバブルの水準です。

また「貯蓄から投資へ」の掛け声で過剰と言われる家計貯蓄を株式投資へ振り向ける政府の政策誘導もあります。日本でも新興企業には勢いがある訳で、その流れを作る意味でスタートアップへのリスク資金提供の狙いは以前から言われていましたが、所謂ベンチャーキャピタルのようなものは育たずうまくいきません。それ以前にスタートアップ自身が株式公開で資金を集めたら上がりで継続的な投資を止めてしまう傾向もあり、うまくいきません。

そして岸田政権では「新しい資本主義」とやらで「資産所得倍増」「資産運用立国」という言葉が躍ります。これ意味合いとしては資産運用で公的社会保障のバックアップとすることで「分配重視、自己責任で、テヘペロ^_^;」ってところに重心が移っているようです。つまり社会保障を充実させるには増税や社会保険料値上げなどの受けの悪い政策で「増税メガネ」と言われるから、自分で資産を増やす方向へ誘導したいってことでしょう。高齢者の資産取り崩しの意味するところで取り上げた老後資産2,000万円レポートの流れという訳です。国民の不評でレポートは撤回されましたが、ゾンビ的な復活劇です。

という訳で、新NISAはタイトルの秩禄処分の令和版じゃないかってことになります。秩禄処分とは1871年(明治4年)の版籍奉還、廃藩置県の後の明治政府の政策です。明治維新で明治政府が成立した後も諸藩の統治は続いていた訳ですが、勅令によって大名に版籍奉還を求めたもので、大名と武士が地位を失い、藩に代わって地域を統治する国の出先機関として府県が設置されました。その際藩の負債は明治政府が引き取る一方、米切手支給による禄に代わる給付金を華士族に禄高に応じて支給するようになります。これが秩禄です。

しかし当然ながら継続的に支給すると政府財政を圧迫しますから、どこかで止めなければならないですが、支給金を元手に事業を興して経済的に自立することを狙ったけれど、元々支配階級として頭の高い武家の商法がうまくいく訳もなく、特に禄高の低い下級士族ほど支給金を蕩尽するだけの厄介者となります。そこで秩禄5年分相当の公債を交付して、かつて武士たちが米切手を売りに行った米市場のような公債流通市場を整備して自由に売買させることで、まとまった資金を持たせて起業を促そうとしたようです。つまりインフレで実質賃金が減ってる一方で資産運用、自己責任で何とかしろという令和の今の新NISAは当時をなぞっているように見えます。

しかし当然ながら下級士族の不満は大きく、それが爆発して西南戦争のような内戦に発展します。明治政府はその制圧に財政を浪費してしまいます。列強の植民地支配を逃れるための富国強兵、殖産興業政策が立往生します。特に文明開化の分かりやすいシンボルとしての鉄道事業への資金配分の不足は顕著でした。特に東と西の両京連絡鉄道構想のとん挫は避けたいところですし、軍部からの要請で艦砲射撃の標的になる海岸沿いの東海道鉄道ではなく中山道鉄道を優先するということになり、そのためには東京―横浜間の官営鉄道はルートから外れ、別途東京から北へ向かう鉄道を建設する必要に迫られますが、西南戦争などで財政が疲弊してとても資金を賄えないということで、井上勝などの鉄道国有方針を退けて民間資本の活用に舵を切ります。

その結果岩倉具視をはじめとする有力華族や裕福な士族が秩禄公債を売却した資金を出して日本鉄道株式会社を設立し、中山道鉄道の一部となる東京―高崎間の建設に乗り出します。資金拠出した華士族は株主となって配当やキャピタルゲインを得られるという意味で誘導して士族の不満を抑える効果も期待できます。とはいえ交付公債由来の資金で出所は政府ですから、ある意味今に至る借金財政の始まりとも言えます。また資金こそ民間に依存しながら官営鉄道の工事部門が施工したり、借入金の利子補給したりと実際は半官半民的な企業でした。TSMCの誘致に補助金大盤振舞いみたいなことやってた訳です。

当時の両毛地区は養蚕が盛んで、官営富岡製糸場が作られて絹織物の加工業が両毛地区で盛んになります。当時の日本の外貨獲得は専ら絹織物の輸出に依存しており、故に日本鉄道は利根川対岸の前橋仮駅まで延伸し、赤羽から品川への山手線で官鉄に接続して横浜港から海外へ出荷という流れが出来て、客貨ともに好調で民間の鉄道投資熱を誘発し、山陽鉄道や九州鉄道などの長距離私鉄の出現に繋がります。所謂第一次鉄道ブームです。

とはいえ鉄道国有方針は撤回した訳ではなく、民間による鉄道建設に法律の網をかぶせます。後に私設鉄道法となる条例制定で、鉄道は国の権限で建設運営される原則を維持する意味で、民間の鉄道事業に対して国が事業の適格性を審査して免許を交付する形で制度化されます。故に官営鉄道との接続と車両直通とか、資金の確実性、事業採算性などが審査された訳ですが、この仕組みは法令のアップデートで細部の変化あるものの基本的に現行の鉄道事業法に至るまで続きます。

そして大正期の鉄道国有化によってほとんどの私設鉄道は官営鉄道に統合される訳ですが、鉄道国有原則は貫徹されます。国の組織も鉄道院から鉄道省と変化し、鉄道省は事業主体としての現業部門と陸海空の民間等の交通事業の監督行政の双方を担う存在になります。故に現業部門は監督部門と並列の存在で監督権限が及ばず、寧ろ地方鉄道法で国の買収提案を事業者は断れない建付けになっていました。これが後の戦時買収の根拠となります。

そして戦後にGHQ命令で現業部門を公社として切り離して日本国有鉄道とし、独立採算の義務を負わせる制度改革が行われましたが、鉄道国有原則は維持され、監督部門の運輸省の監督権限は及ばない存在となりました。こうして見ると国鉄分割民営化に合わせて成立した鉄道事業法でJR各社も国から免許交付を受ける事業者となった訳ですから、鉄道国有原則の廃棄という意味で大きな改革ではありました。故に赤字ローカル線存続で揺れる現状ですが、地域公共交通活性化再生法などで地方と事業者の合意の下での国の関与という形になるのはある意味必然ではあります。

という訳で、長くなりましたのでまとめますが、帝都電鉄物語で取り上げた電鉄ブームもそうですが、鉄道事業は今で言えばデジタル関連のような熱狂の中にあって民間資金を集めやすい事業だったってことですね。ゼロ年代のITバブルや10年代のweb3、昨今のDXやAIブームなど何度かの波が来て民間資金が大きく動いたものの、成熟産業になる将来の姿は現時点では見えません。当然淘汰される流れもありますから、人口減少による需要減や人手不足、ローカル線存続困難など鉄道が直面するようなことがデジタル界隈でも起こり得るということは肝に銘じておきましょう。

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Saturday, February 17, 2024

キャッシュフルなキャッシュレス社会

滑って転んでアップした後で気づいたんですが、桐島容疑者と自民党裏金政治家の共通点に気付きました。どちらも現金決済の匿名性のスキマに生存空間がある点です。現金つまり日銀券などの現物貨幣は名前が書かれている訳ではなく、人から人へと渡り歩く訳で、その動きを後追いして調べるのは困難です。これを現金の匿名性と呼びます。対して銀行などの口座取引やカード、電子マネー、QRコードなどのキャッシュレス決済は取引記録が残る訳で、犯罪捜査などで所謂アシがつく訳です。つまり政治家や派閥のパーティ券が現金で売られるのは、政治家や派閥にとっても、買う側の個人や企業にとっても都合が良い訳です。関係があるかどうかわかりませんがこのニュース。

「年越しお札」125兆円、13年連続で最高更新 - 日本経済新聞
記事では銀行のATM手数料課金が増えた影響などを指摘してます。また年末年始のお年玉や初詣の賽銭などで現金需要が増える時期ではありますが、年越しの日銀券が毎年増えていることは確かです。キャッシュレス社会のキャッシュフルな現実というのが何を意味するのかは謎です。例えばマフィア経済の比重が大きかったかつてのイタリアや麻薬ビジネスが横行する中南米などのようなインフォーマル経済では現金が動きます。果たして今の日本は?

1つ押さえておきたいのはインフレの影響です。物価上昇は結果的に現金需要を押し上げますから、その意味では整合的ですが、一方で政府発行の補助通貨である硬貨の発行は減っている訳で、キャッシュレス決済拡大と整合的です。その一方で日銀券が増えているのは謎です。利息の付かない日銀券の保有は銀行金利がほぼゼロならば所謂タンス預金として合理的ですが、それでも盗難や焼失などのリスクもある訳です。ましてインフレならば実質購買力の低下による価値の毀損がある訳ですから、インフレ下での日銀券増加はやはり謎です。表に出せない金が増えているのか?

記載漏れ3,500万円で書籍購入した二階氏の購入書籍の内訳を公開しました。二階氏のヨイショ本5,000冊他ですが、出版不況でベストセラー本でも1万冊、初刷1,000冊が今や業界標準の時代に5,000冊とはそれだけで出版社を動かせるし著者や自らへの印税もあり、また支持者へ配布することで世論への働きかけにもなります。加えて書店で平積みされて一般客の目にも触れやすくなります。取り締まる法律はありませんが、金の力で言論を買う行為は憲法で保障された言論の自由とは相いれません。民間の営利事業ならば禁止されているステルスマーケティングに当たります。

裏金問題では他にも地雷多数で、例えば政治資金団体としての派閥を解散しても、残金をどうするかは難問です。法令上は構成員による山分けで問題はないんですが、そうなるとそれを受け取った議員個人の政治資金団体側で収支報告書に記載し公開しなければなりません。これも炎上の種になります。故に解散手続きを先送りして忘れた頃にとなりますが、世間が忘れてくれるならシレっと派閥復活の芽もある訳です。いずれにしても当面動かせない金が塩漬けになる訳ですね。メディアはこの辺も注視してほしいところです。

という訳でインフレに苦しむ庶民とは無縁の世界でまともな政策が実行されない訳です。その一方でやはり庶民には無縁の株価上昇が起きていて、バブル期の最高値に迫る場面もありましたが、これだけ生活実感とかけ離れた株価上昇がなぜ起きるのかといえば、基本的にはインフレの影響です。

インフレが呼ぶGDP「5%成長」 32年ぶりの恩恵と錯覚 - 日本経済新聞
2023年の暦年でGDP5%成長という数値だけで海外投資家の日本株への関心が高まっています。つまりインフレで生活実感が悪化している日本国民の苦しみとは無縁の海外投資家が相場を押し上げている訳で、しかも米NY株上昇を受けての動きですが、個別銘柄を細かく見ると日米で共通の動きがあります。いずれも半導体が主導したものという点で共通します。最高値に迫った16日よりも15日(NYは14日)が典型ですが、多くの銘柄が値下がりする中で、米半導体メーカーのエヌビディアが値上がりし、日本では英アーム株を保有するソフトバンクグループ(SBG)が評価益拡大で値を上げて相場を主導しました。いずれも時価総額の大きい大型株故に相場を押し上げたもので、特殊要因が働いたと言えます。故に今回の相場の持続性には疑問符がつきます。

一方インフレによる名目GDP上昇は株価に連動しますから、株価上昇が国民の生活実感と乖離しているのはひとえに政策の不整合によるもので、具体的には日銀の金融政策を引き締めにシフトすることが必要ですが、そうなるとインフレで財政負担が減じている政府の債務に金利上昇圧力をかけることになり、財政政策との整合性が取りづらいということもあり、中途半端な対応に甘んじております。異次元緩和と積極財政で事実上の財政ファイナンスを10年続けたアベノミクスの後遺症です。インフレに苦しむ国民を救うなら政府の財政出動は寧ろインフレの原因になりますので、公共事業の一時凍結などによる総需要抑制策こそが王道です。当然大阪万博や明治神宮再開発なども止めるべきです。

しかし懲りないのは政府だけではないところが頭の痛いところで、例えばマンション価格が上昇しても主に外国人と思われる投資用の需要が旺盛で民間事業も盛んですから、公共事業を止めたぐらいでは効果は薄いし、当然ながら2024年問題も解決しません。寧ろ202年もd内は賃金上昇圧力をもたらしますから、賃金インフレは続くことになります。そして名目賃金は上がってもインフレを後追いするのが精一杯で実質賃金は低下するばかりです。売れるから高価なマンションの建設が止まらないし、それ故に人件費や資材費も上昇してインフレを助長する訳です。神子ぐ延焼に悩む日本に必要な住宅は数の上では充足されている訳で、寧ろ既存ストックを活用した低価格の公営住宅を供給するなどの方が国未生活の支えになります。また能登半島地震のような自然災害の復旧復興も遅れることになります。関連ニュースです。

のと鉄道、一部区間で再開 利用客「ありがたい」 - 日本経済新聞
JR西日本七尾線の七尾―和倉温泉間と同区間を共有するのと鉄道の七尾―能登中島間が2月15日に復旧し営業再開しました。能登中島―穴水間も4月中旬に再開予定ですが、穴水―珠洲間はまだ見通しが立ちません。鉄道の再開は復旧復興を後押しするだけに遅々として進まないのはじれったいところですが、未だに水道も復旧しない状況で優先順位を差配するのは困難ではあります。

その一方で北陸新幹線の敦賀延伸は3月16日に開業予定で、それに合わせて北陸応援割という50%オフの観光キャンペーンを政府は打ち出し、それに関連して避難所不足で域外避難した被災者を受け入れたホテル旅館を空けるために追い出しかけるという鬼畜の所業が行われます。災害復興よりも新幹線開業に合わせた観光振興を優先するってのは違うだろって話です。しかも旅行会社や旅行サイトの手数料が手厚いから、被災地の復興に直接公金を入れるよりも被災地への波及は限られますし、寧ろ被災者の生活再建を遅らせることにもなります。3.11後の2011年3月12日に博多―新八代間を開業した九州新幹線が放映予定のTVCMをJR九州が自粛したことと比べてもひどい話です。この構図は円安インフレで株価上昇の恩恵に預かる企業を潤し、生活が窮乏する国民を置き去りにする構図と相似形ですね。怒ろう!

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Sunday, February 11, 2024

滑って転んで壺ッター大草原

元狼グループの爆弾犯として指名手配中だった桐島聡容疑者が末期がんで鎌倉市内の病院に入院中に告白して話題になりました。直ぐに連想したのがオウム逃亡犯の3人との比較ですが、オウム逃亡犯が17年間の逃亡の末、1人は自首2人は通報で逮捕された一方、桐島容疑者は50年間の逃亡生活ですからオウム犯の3倍近い逃亡生活をしていた訳で、神奈川県内の工務店で住み込みで働いて、アシがつかないように銀行口座も作らず給料も現金という徹底ぶりで、他人の住民票を利用してなりすましていたオウム犯との違いというか、逃亡生活の徹底ぶりに驚きます。

ネットでは他人の保険証で治療を受けていたに違いない、マイナ保険証はテロ犯をも逃さないために必要といった言説が溢れてましたが、社会保険未加入で保険証も作らずにいて自由診療で医療サービスを受けるハードルが高かったから、末期がんで救急搬送されるまで放置していたということですね。逆に言えばそこまでの覚悟があれば逃亡犯の生存空間のスキマはあるということです。

公安にとっては桐島容疑者の確保で支援者がいればそこから組織犯として芋づるを想定していたようですが、当てが外れたという声が聞こえます。オウム逃亡犯のこともありますし、インフレは続くよの大川原化工機事件もそうですが、捜査当局が想定するストーリーが間違っているからチョンボするってことが透けて見えます。

先週の雪で高速道路が軒並み閉鎖されたせいか、クルマ利用が減ったようで道路交通に関しては大きな混乱はなかったようですが、一方で歩行者が足を滑らせての救急搬送は多かったように、雪に不慣れな首都圏のリアルは相変わらずです。クルマでも雪道経験の乏しい首都圏のドライバーは雪道走行のイロハがわかってないから、それなりに事故は起きていたようです。

雪道ではタイヤのトラクションが低下しますから、とにかく滑らないようにする必要があります。故に急加速、急停止、急ハンドルは絶対にしないようにする必要があります。故にゆっくり発進、ゆっくり加速、エンジンブレーキを活用しつつフェザータッチのブレーキ操作、ステアリング時は十分な減速が必要な訳で、故にスピードも控える必要があります。しかしそんなことお構いなしにグイグイ加速して車間を詰めてくるアホがいるので、事故起こすよりはマシなのでハザード点滅させて減速して脇へ寄せて停止して先に行かせます。だから雪の首都圏ではクルマ使いたくなくなります。

故に雪道走行では駆動輪に過剰なトルクをかけないようJにセカンドやサードで発進するとか、減速、停止もシフトダウンしてエンジンブレーキを利かせる一方、急なトルク変動もスピンの原因になりますから、ダブルクラッチで回転数を合せて繋ぎ、フットブレーキはあくまでも補助的にポンピングでチョンチョンといった感じです。オートマ車の場合はひたすらフェザータッチのアクセルワークとポンピングブレーキでユルユル走ることになります。

それで気づいたんですが、雪道の自動運転車の振舞いはどうなんだろうか?って疑問が湧きます。AIで学習させるにしても、雪道の学習の機会は多くなありませんから、レベル2のハンズオフの運転支援レベルでも、強すぎる急制動や急ハンドルをかける可能性がありますし、レベル3のアイズオフ、レベル4のブレーンオフ、レベル5の完全自動運転にも同様の問題が付きまといます。レベル4対応を考えると、積雪時の高速道路閉鎖はデフォルトで考えるべきかもしれません。

そうなるとトラックに依存する物流も、たとえ自動運転でドライバレスが実現しても雪で機能しなくなるということも睨んでおく必要があります。となると自動運転は物流改革の解決策としては心許ない訳です。そうなると海運や鉄道貨物へのモーダルシフトこそがドライバー不足対策の解決策ということになります。但し海運のRORO荷役や貨物駅のコンテナ積み替えの自動化などは可能でしょうから、自動運転システムの開発が無駄になることはないですが。

あと雪でマイカー利用を諦めてタクシー呼んだら1時間待ちとかでここでもドライバー不足が顕在化してますが、だからといってライドシェア解禁して一般ドライバーに命を預けますか?って話にもなります。結局有効な雪対策は積雪時にはクルマに乗らない、可能ならば出かけないってことになります。出かける必要があるなら可能な限り公共交通利用で且つ十分な余裕時間を見込むってことですかね。

雪は航空便の欠航などの影響もありますが、それ以上にコロナ禍からの回復が鉄道に比べて遅く、特に単価の高い国際線の需要回復が足踏みしてます。1つは中国経済の不振で中国人観光客が減っていることですが、国慶節で中国国内旅行は活況のようですから、日本が選ばれなくなっただけかもしれません。加えて別のボトルネックも顕在化してきています。

観光立国、空港が足かせ 地上勤務のグランドハンドリング人材戻らず - 日本経済新聞
人手不足はドライバーだけじゃない現実です。特に地方空港では海外エアラインの受け入れが困難になりつつありますし、新滑走路建設で発着枠拡大が見込まれる成田空港でさえ、その能力を活かせない状況です。コロナ禍での減便に合わせて人員削減した結果、コロナ後に人が戻らず窮地に陥っているという現状です。

グラハンと言われる地上職員は航空会社や空港に直接雇用ではなく中小業者に委託されているので、雇用維持ができなかったってことで、タクシードライバーと似た構図ですが、よほどの好待遇を打ち出さない限り今後事態が好転する可能性は無い訳で、部分的な自動化の可能性はあるにしても、インバウンド受け入れにブレーキとなる可能性があります。まあ円安でインバウンドに頼った経済ってのは国民にとっては不幸ですが。

尤も国民を不幸にしているのは裏金問題で右往左往する与党政治家を許してしまっていることですが、二階幹事長のように3,500万円の書籍購入を明らかにして、公共図書館4館分の年間予算相当とナイスなツッコミで噓バレバレです。一般書籍なら物理的に過大な収納スペースが必要ですし、高価な専門書でも事情は大差ないです。あと考えられるのは法外な価格付けがされた本を購入した形での著者への贈与か特定の主張の書籍を大量購入して支援者に配りまくったか?いずれにしてもまともな使い方じゃないことだけは確かです。

という具合にこの裏金問題ですが、辻褄合わせで追加記載すれば使途が問われ、使途が不適切ならば突っ込まれ、使途不明にすれば事実上の雑収入だから、確定申告シーズンってことも手伝って申告納税せよと言われ、尻拭いに動けば動くほど国民から叩かれるって構図です。まして裏金を有権者や地方議員に配っていれば公職選挙法違反にも問われ河合克行元法相のように訴追される可能性もある訳で、何も語れない動けない状況に追い込まれております。

加えて壺問題。盛山文科相が旧統一教会との関係を暴露されて迷走してますが、これ宗教法人の解散命令請求の権限を握る文科相に対する旧統一教会のリークで発覚したようです。ならば更迭して別の文科相を任命すれば良さそうなものですが、岸田首相が任命責任を問われることを嫌っているとか。こうしてドツボに嵌ってしまいました。壺だけにwwwww^_^;。

ネギ背負ったカモで指摘したように無免許ノーヘルの電動キックボード解禁も壺議員の悪行の1つですが、雪の日の電動キックボードの利用状況や事故状況がどうだったのかは知りたいところです。あるいは事業者が貸出しを制限するなどの対応をしていたかどうかなども興味があります。まあ彼らからすれば壺議員さまさまでしょうけど、こうした利益誘導の問題はもっと注目されてよいところです。

これだけ裏金問題が吹き荒れて体制派と目される日経新聞すら苦言を呈する状況で、お金の出し手の財界は沈黙を守っています。企業献金にしろパーティ券購入にしろ、営利を目的とする企業が見返り無しに資金を出すことは考えにくい訳で、相応の見返りが期待されるから出している訳です。逆にそうでなければ株主利益の毀損となる訳ですから、株主代表訴訟モノの問題です。今年の株主総会は荒れるかも。

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Sunday, February 04, 2024

漂流する世界と日本とひょっとして東京都

根拠なき楽観論が色々なところで綻びつつあります。

円安呼ぶ新NISA 個人の海外投資「月3250億円外貨需要」 - 日本経済新聞
同エントリーで指摘した新NISAによる海外への資金流出が毎月3,250億円の試算です。そうなれば年間4兆銭弱の資金が海外へ向かい、その多くが米株ETFへ向かうと言われております。その結果ドル円が円安に振れる圧力がかかる訳ですが、投資経験の乏しい素人が新NISAへの関心を高めていて、積立NISAに資金拠出した結果、円安インフレで生活を圧迫するという笑えない状況が実現しそうです。

米株式市場は上げ相場が続いてますが、明らかに高すぎる株価の実現可能性にも疑問符がつきます。一方で日本株もバブル後最高値更新が続いてますが、おそらく今が天井でこれ以上は難しいと思います。円安メリットは確かにありますし、実際大手企業を中心に増益が続いております。TSMC熊本工場など国内製造拠点への投資も見られますし、また中国の不動産バブル問題やスパイ防止法で現地勤務社員の突然の拘束もあり、中国リスクが高まって、中国からの資金シフトも言われており、日本株を押し上げる要因にもなっております。

但し注意が必要なのは、日本株の場合円安によるドル建て価格の割安感も海外勢の動きに繋がってます。そしてそれらの資金の流入は円高要因ですが、多くの場合為替先物予約で円売りポジションをとっており、円買いが円高要因になりにくい上に日米金利差がさや取り出来るので、それだけで投資利回りに下駄を履かせてもいます。そして米FRBの利下げ転換は当分なく、逆に日銀の金融政策の引き締め転換にまだ先という見通しがあるからこその動きです。その一方で日銀のマイナス金利解除は確実視されています。

日銀1月の主な意見、金融正常化「要件満たされつつある」 - 日本経済新聞
日銀がマイナス金利解除をはじめとする金融政策の変更に慎重なのは、主に2つの理由があります。1つは日銀自身のバランスシートの調整問題です。大量の国債を保有し、しかもYCCを止めてはいないので、金利動向如何で購入も有り得る状況で、保有国債の償還期限も伸びている状況なので、所謂テーパリングと呼ばれる償還に伴う保有国債の減少が簡単ではないし、逆に売れば価格低下で損失を被りますから、当面動けない状況です。一方大量保有している日本株ETFが株価上昇で評価益を得ており、株式市場が好調な中で一部償還を進めていて、それによる益出しでほぼゼロ金利の国債に代わって業務純益を稼ぐ状況が続いており、当面この形を維持せざるを得ないということです。

もう1つは政府との関係です。アベノミクスの起点となった政府と日銀の政策アコードで2%の物価上昇を安定させるという責任を負っている中で、既にインフレは2%以上となっておりますが、安定的なインフレではないとする批判が政府から飛んでくるのを警戒しているものです。特に所謂リフレ派が多い安倍派議員からの批判を警戒している一方、岸田官邸からも賃上げと物価上昇の好循環を望む声が強く、動きにくい状況があります。故に春闘統一回答後の4月の政策変更が言われている訳ですが、安倍派解散で時期が早まった可能性があり、3月説が言われるようになっていて、上記記事の「要件満たされつつある」に繋がっていると見られます。逆にそれまでは海外勢の日本株投資は安泰でもある訳ですが、日銀の政策変更に伴うポジション調整は当然あります。

そしてアベノミクス継承を謳う岸田政権ですが、インフレ進行で税収の自然増が見込まれる状況にあり、一方日銀が国債償還に動きにくい状況で金利上昇の影響は当面抑制的ですから、所謂増税メガネを言い立てるリフレ派の見立てとは異なり、当面増税には動かないでしょう。一方で防衛費増額や子育て支援の財源問題もあり、国会審議を経ないで見直せる社会保険料値上げなどの姑息な手段で凌ぐというスタンスです。繰り返し述べたますが、インフレは最大の債務者である政府にとっては望ましいことである一方、国民の不満解消は民間の賃上げに依存するというスタンスとなる訳です。そして継続的な賃上げは継続的なインフレの素となりますからデフレへ逆戻りはあり得ず、増税を急ぐ必要はない訳です。これがインフレ税というやつで、ザイム真理教論者が見落としている視点です。

中国を巡る動きも不透明感を増してますが、確実なのはそれでも中国の世界経済に対するウエートの大きさは変わらないということです。上述の中国からの資金シフトによる投資先として日本が選ばれているという要素はあるものの、完全なデカップリングは不可能ですし、バイデン弾頭量が言うスモールヤード・ハイフェンス(狭い範囲の高障壁)も、世論に押されてスモールヤードは徐々に広がりハイフェンスは機能せず、結局混乱をもたらすだけに留まりそうです。それを示すニュースです。

IPEF貿易交渉、漂流の足音 米政治の内向き潮流深まる - 日本経済新聞
元々安倍政権が打ち出したインド太平洋構想の経済版の中国包囲網を意図したものの、米国内の労組票を巡る争いから、所謂もしトラならばアメリカは確実に離脱だろうし、バイデン政権も労組の反対を押し切ってまでは踏み込めないということで、TPPの二の舞が確実視されています。しかも米国内世論への配慮から関税問題は元々外されており、アメリカが抜ければ参加国に具体的なメリットは殆どない訳で、日本が音頭を取っても進まないでしょう。その一方でもしトラ以外にもアメリカに火種があります。
米地銀、続く引き締め余波 利ざや縮小や不動産融資劣化 - 日本経済新聞
これ日銀の政策変更が間近な日本も対岸の火事とは言い難い状況で、債券投資と企業融資や住宅ローンで利ザヤを稼ぐビジネスモデルは中小銀行では日米共通なものが多く、中央銀行の政策変更に影響を受けやすいところです。加えて利上げは不動産市況を悪化させますから、米商業用不動産の不調の原因にもなります。日本と違ってテーパリングが進むアメリカでは尚更です。
スーパープライムショックの予兆
が現実味を帯びます。バブル崩壊は中国だけに留まらない可能性があります。アメリカのバブル崩壊となればリーマンショック以上の経済ショックになる可能性があり、日本も無事では済まないでしょう。それを踏まえるとこんなニュースにも微妙な感想を持ちます。
新路線「臨海地下鉄」、東京臨海高速鉄道が運行へ - 日本経済新聞
結構意外な展開ですが、元々JR東日本が引き受けると言われているりんかい線を運営する三セク東京臨海高速鉄道に臨海地下鉄を建設させるとともに、JR東日本が進める羽田空港アクセス線の臨海ルートを介した羽田空港乗り入れまで視野に入れているということです。但しJR東日本が出資を断ったつくばエクスプレスとの直通の構想があることから、JR東日本との調整は難航するんじゃないかと思います。

あくまでも東京都の発表ですから、JR東日本との調整はこれからの話でしょうけど、おそらく東京都が描いたシナリオは東京メトロの株式上場と絡んだ話だと思います。国と都の意見の不一致で遅れていた東京メトロの株式上場が、小池都政で豊住線や南北線品川延伸に消極的な東京メトロへの影響力保持から、完全民営化ではなく国と都の持ち分比率を維持した形での株式公開で国と意見集約されており、上述のように表面上好調な日本の株式市場で元々6,000億円相当と見積もられていた時価総額が今なら1兆円程度と見込めて、その半分の公開で5,000億円で都の持ち分46%から2,300億円の税外収入が見込めます。それを東京臨海高速鉄道の増資に充てて都の支配力を強めた上で臨海地下鉄の事業主体とするということですね。但しアメリカのバブルが弾ければ成り立ちませんがね。

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