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March 2024

Sunday, March 31, 2024

もしトラよりもしドラ、鬼さんこちら

米大統領選でトランプが勝ったら?という要らぬ心配から、もしトラだのほぼトラだのと言われてますが、詳細は省きますが、2016年当時よりもトランプの勝つ確率は低いと見られます。もちろん当選の可能性はゼロとまでは言えませんが。それより日本が直面するもしもドライバーがいなくなったら?を心配した方が良いでしょう。

鬼が笑う2024年笑う鬼退治もうすぐ笑わなくなる鬼その他のエントリーで取り上げた2024年問題がいよいよ明日から本番です。さまざまな変化が既に出てきていますが、一番身近な変化はバスの減便でしょう。サイドバーで紹介した週刊東洋経済 2024年3/2号(ドライバーが消える日)[雑誌] 雑誌 – 2024/2/26の特集に詳しいのですが、トラック、バス、タクシー何れもドライバー不足は変わらないのですが、それぞれ事情は異なります。

トラックは荷主に対しての立場の弱さから運賃値上げがままならないことに留まらず、荷主側の都合で発地着地双方で待機時間が求められたり荷役時間に制限があったり、それでいて機械荷役のできない手積みを求められたりとか、とかく注文が多く無理難題オンパレードだったりします。その結果公道上での待機が発生して交通の障害になったりもします。それでも勤務時間に占める荷役時間は少なく、最大は運転時間ですが、待機時間が多数を占め、生産性を低下させています。

それ故残業時間が長くなるのですが、逆に残業手当があるから低賃金でもそこそこ稼げたりする訳です。この点はバスドライバーと共通ですが、結局残業代が生活給に組み込まれている訳で、そこへ働き方改革で残業時間に上限が設けられると手取りが減って生活できなくなるということになり、それが離職を促すという悪循環が予想されます。故に諸人こぞりて苦しむイブで取り上げた高速道のトラック速度規制を80km/hから90km/hに緩和しても待機時間が減らなければ焼け石に水ですし、事故の多発に繋がりかねません。ドライバーの賃上げを含む待遇改善が必要です。当然運賃値上げが必要になりますし、拘束時間の長くなる長距離輸送が困難になります。

そして運賃値上げはトラック輸送の優位性を損なうことになります。実はここに大きなヒントがあるんですが、海運や鉄道によるモーダルシフトの余地があるということでもあります。特に鉄道貨物は高速道の整備に伴うトラックによる長距離輸送の拡大の影響を受けてきて700㎞以上でないと競争力を発揮できないと言われてきましたが、これが500㎞程度まで下がれば鉄道貨物のシェア拡大が可能になります。つまり需要規模の大きい首都圏と近畿圏の輸送需要を取り込める可能性がある訳です。

震災でわかったJR貨物の実力で取り上げた被災地へのガソリン輸送で磐越西線に臨時貨物列車を走らせて対応したのがこれに当たりますが、非電化区間がある磐越西線でDD51重連で500t列車で効果があった訳ですから1,300t列車が設定できる東海道線の輸送力を活用すれば有効なドライバー不足対策は可能です。但しそのためにはJR貨物にひときわ厳しい態度のJR東海の壁を何とかする必要がありますが。

バスの場合は需給調整規制の緩和で新規参入が増えた結果、底辺への競争でドライバーの賃金が削られて、公務員の身分故にその流れに乗れなかった公営バスが次々に撤退を余儀なくされ、特に収益性の高い高速バスや貸切バスへの新規参入増で大手事業者ほど収支が厳しくなる一方、ドライバーの拘束時間の長くなる長距離の高速バスほど維持が困難になって一般路線維持のために収益部門を縮小するという悪循環に陥っています。故に賃上げも困難でトラックと比べても低賃金レベルにあります。大都市圏でも大阪府富田林市に本社のある金剛自動車の事業撤退など維持困難になっております。

加えてトラックとも共通ですが、待機時間の縮小で実働時間に対して長めの拘束時間を設定して営業所で待機させて、状況に応じた臨時便運行や事故や病欠の代理乗務なども制約されることから、通勤通学時間帯のラッシュ輸送にフォーカスして人を配置する都合から、早朝深夜の運行を見直さざるを得なくなり特に終車の繰り上げが繰り返されていて、都区内でも22時台、近郊では21時台だったり土休日は20時台とどんどん使いにくくなっております。

実はこうしたバスの苦境はタクシーにとってはビジネスチャンスでもあります。タクシードライバーは基本フルコミッションの給与体系ですから、需給調整規制の緩和で都市部の増車が認められた結果手取りが減っていた訳ですが、コロナ禍で外出規制が課されるといよいよ稼げなくなって離職者が増えた結果、クルマはあるのにドライバーがいないという状況に陥っていました。それがコロナ5類化で利用が戻った結果、タクシーが捕まらないという状況を生み出した訳ですが、バスの減便や運行時間帯の短縮で寧ろ稼げる職業となりつつあり、離れたドライバーが都市部では徐々に戻りつつあるのが現状です。そうした中でのライドシェア解禁はタクシー業界にとっては寝耳に水だった訳です。ですからライドシェア推進派が言う既得権益の主張というのとはちょっと違います。

元々規制だらけのタクシー業界では、例えば首都圏では白タクは普通に存在していて規制の抜け穴は元からあった訳ですが、捕まるのは大抵通報によるもので特段の取り締まりは行われていませんでした。特にバブル期の終電後の駅ではあからさまな客引きまでしていました。当時は企業も官庁も残業で終電後の帰宅も珍しくなかったし、その場合の帰りのタクシー代も気前よく経費精算されました。故に稼ぎたいタクシードライバーは深夜を狙って営業してましたし、運よく長距離客を乗せればその日の稼ぎが一発でということもあり、この時代の企業タクシードライバーは厚生年金の標準報酬月額の膨張で手厚い老後資金を得て悠々自適してます。白タクはそのおこぼれを得ていた訳で、ある意味共存していたとも言えます。コロナ禍で痛めつけられた今のタクシー業界にとっては当面は損を取り返すのが精一杯の現状です。

特に二種免許の問題は寧ろタクシー業界から要件緩和の要求が以前からあって、故にライドシェア解禁の見返りとして認められたということになります。加えて当面は地域と時間帯を限定してタクシー事業者がドライバーの指導とクルマのメンテナンスと保険に責任を負う形での解禁となりました。但しこれらは都市部での話で、地方の過疎地では以前から自家用自動車の有償運行で最後の足を確保することは行われておりました。それを日本版ライドシェアと呼ぶかどうかは別として、地方ごとの特殊事情から現行制度下での工夫の積み重ねは既に行われております。という具合にタクシーを巡る事情は地域ごとに特殊で、ライドシェアの完全解禁に問題があることは明らかです。

地方ではバスの減便や廃止は以前から進み、オンデマンドバスや乗合タクシーなどの形でバスとタクシーの境界が曖昧になっている現状があります。但しこうしたささやかな取り組みも自治体の補助金で維持されているのが実態ですが、都市部のバス減便はタクシーの出番を増やすことになり、地方で起きているバスとタクシーの境界の曖昧化が波及する可能性はあります。そうするとタクシー主導のライドシェア解禁はバス事業の圧迫という別の問題を引き起こす可能性も含んでいることは指摘しておきます。こうしたことをちゃんと議論せずに拙速に導入して本当に大丈夫なのか?

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Saturday, March 23, 2024

インボイス始めました

確定申告が終わって一息つきました。やはりというか、物価上昇の影響で経費が膨張して課税所得は激減です。インフレが憎い-_-;。また昨年10月1日付で適格請求書発行事業者に登録されて消費税の納税義務も負いましたから、所得税と消費税の2回の確定申告となりました。消費税に関しては1-9月の非課税事業者期間と10-12月の課税事業者期間があって区分経理で仕分けがメンド臭かったけれど、インボイスの電子帳票保存などは経過措置で紙で良いということになりましたので、当面紙で対応して電帳対応はゆっくりやればよいということで助かってます。

とはいえインボイス対応は零細企業や個人事業主の事務負担を高めたことも確かで、自民党の裏金問題に厳しい目を向けられるのはタイミングですね。昨年末の発覚時は安倍派中心でその影響力を受ける岸田政権にとってはチャンスでもあったのですが、他派へ波及し、特に岸田派の会計責任者の訴追で捨て身の派閥解散でサプライズを演出するも、世論の逆風が収まらなかったのは確定申告の時期に当たったこともあるでしょう。好事魔多しですね。

米ドジャースの大谷選手の専属通訳水原氏の事件は意外でしたが、野球も賭博対象となるアメリカでプロ選手が違法賭博に関わったってのは、本人の関与の有無に関わらず重大事件になります。ドジャース移籍でプロアスリート世界最高年俸を得て結婚し、公私にわたって絶好調だっただけに痛いところです。日本の国税庁にあたる内国歳入庁(IRS)とFBIが捜査に動き、MLBも本人から聴取するということで最悪身柄拘束もあり得ます。

てなことに関係なく円安株高は続きます。日銀政策決定会合の後で米FOMCで利下げ示唆があって米国株が値上がりした流れで日本株も上げてますが、日銀はマイナス金利解除でも緩和的と言いFRBは利下げするけどまだ先と言い、結局枠組みは変わらないということで安心してくださいで指摘した通りの展開です。但し日本株はともかく米株はバブルの水準ですから、この相場がいつまでも持続する訳ではありません。外国人相場の日本株もいつ資金が引き上げられるかはわかりません。円安相場では利益確定の売り逃げで終わると見るべきでしょう。

てことで特に新NISA出で株始めた人は要注意。損切りで売却損が出た場合、普通口座や特定口座なら確定申告で配当所得との損益通算ができますし、本業が低所得なら総合課税を選ぶことで配当控除が使えます。非課税のNISA口座ではできません。また配当所得は年20万円以下は課税免除となります。故に非課税だからといった理由ではなく、自分に合った投資スタイルを見つけることが大事です。基本的に資金力の乏しい個人投資家は株を長く持って配当を受け取ったり株主優待を受けたりしてメリットを得るといった狙いで良いでしょう。その意味では明らかに高値の現状で株を仕込むのは悪手でお勧めできません。

あと蛇足的ニュース。

国際機関の拠出金、当初予算で未確保 円安が外交に影 - 日本経済新聞
当初予算の想定為替レートを超える円安で拠出額が不足してしまい、補正予算でカバーすることが検討されています。つまり税金の一部が海外へ流出することになる訳で、その分政府支出を圧迫し行政サービスを低下させる訳ですね。こうなるとただでさえ遅れが指摘される能登半島の復興が進まなくなるでしょう。それでいて武器購入や五厘や万博には景気良く税金を投入するのですから救われません。特に自衛隊の出動を怒らせたりボランティアの現地入り自粛を求めたりと疑問だらけの対応ばかりで政府によるプッシュ型支援打ち切りとかひどいことばかりです。

そんな中で被害の大きかったのと鉄道の能登中島―穴水間が4月6日に復旧し全線運行されるのは朗報です。ボランティアの現地入りもやり易くなります。但し未だに宿泊場所がないから、例えば金沢などからの通いで対応となり移動時間分だけ作業時間が圧迫される訳です。当然ながら観光客を受け入れる余裕はありません。その一方で北陸新幹線敦賀延伸開業で観光客を呼び込もうとしているなど、政府や県の対応はチグハグです。そもそも自衛隊の災害復旧というのは前線補給のロジスティクス能力の活用な訳で、それがうまくいっていないのは実際の戦闘能力に疑義があるってことでもあります。これで国を守れるのか?

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Saturday, March 16, 2024

安心してください、ゲタ履いてますよ

パンツは知らんけど^_^;。漂流する世界と日本で展望した日銀の3月マイナス金利解除が現実になりそうです。

日銀、マイナス金利解除へ 賃上げ拡大で17年ぶり利上げ - 日本経済新聞
決定会合前のリーク記事の是非は横に置きますが、既に日銀自身のオペレーションで市場に織り込まれています。政策金利の指標とされる1日ものの銀行間市場金利はマイナス圏ながらほぼゼロ近傍に誘導されていて、実際は日銀当座預金の一部に課されたマイナス金利をなくすだけですから、市場に大きなショックは起きない訳です。加えて今週の東京株式市場の4日続落でもETF購入に動かず、異次元緩和からの正常化を進める姿勢を見せております。加えて春闘集中回答日の満額回答目白押しですから、既に既定路線といえます。その日銀保有ETFにも動きがあります。
日銀ETFの含み益34兆円 株高で過去最大、活用策を議論 - 日本経済新聞
簿価で36兆円が株高で70兆円の評価額となり34兆円の含み益となっていますがここからが難問です。市場で売れば株価を下げることになるため、とりあえず配当収入を金利上昇による保有国債の含み損対策の引当金にすることを財務省と折衝中ですが、色良いい返事はないようです。日銀は当面の緩和的な政策を維持するとしていますが、国債評価損の引当金を積めば逆に国債売却に踏み込む可能性もありますから財務省は警戒しているのでしょう。日銀としては更に踏み込んで初期に購入した低簿価のETFを少数売って益出ししたい筈ですが、そうなると株式市場への影響もある訳で認めにくい訳です。逆に言えば償還期限のない株式ETFの処分の難しさは課題として残ることになりますが。異次元緩和の暗愚な破壊力は尾を引きます。

為替がやや円高に動いて、これを日銀の政策変更と結びつける議論がありますが、150円台から147円程度になっただけで輸出企業の想定為替レートが130円台が主流ですから企業業績への影響は軽微ですし、米FRBの利下げ観測が後退して日米金利差もあまり動かずで海外勢の買い越し姿勢もあまり変化はないし、寧ろ米商業用不動産ローンの不良債権化で米地銀の経営への影響が心配されてNY株も調整されて寧ろ日本株の割安感が注目される地合いですし、何より日銀がETFを簡単に処分できないことが、日本株の下支え要因として歓迎されてさえいます。為替や金利差と共に海外勢から見れば三重に下駄を履いたおいしい状況です。これはまた人件費を削って配当や自社株買いで株主に報いる姿勢の日本企業から富が海外へ流出することをも意味します。国民が貧しくなる訳です。鉄道業界でも気になる動きがあります。

東北新幹線が一時運転見合わせ オーバーラン影響で - 日本経済新聞
昨今不祥事が目立つ日本企業ですが、ビッグモーターのような新興企業はいざ知らず、日野自動車、ダイハツ工業、豊田自動織機などのトヨタ系列各社や、遡れば東芝や三菱電機などの老舗企業の名が目白押しです。疑問なのは老舗企業で組合が一定の役割を持つはずなのに、何をやっていたのか?ってことです。

結果から言えばバブル後の日本企業は過剰投資で債務を抱えて銀行の不良債権処理で融資を絞られたことから、新規の設備投資を抑制した訳です。それがはっきり表れているのがゼロ年代で、GDPの名目値もほとんど変化しなかった時代ですが、この期間の固定資本減耗が凡そ107兆円でほぼ変化しなかった一方、給与や社会保険料で構成される雇用者報酬は減ってその分株主と経営者の取り分となる営業余剰が増えています。日本企業は投資を抑制しつつ株主の取り分を増やし続けたってことです。

民間企業の減価償却費に当たる資本の維持費の固定資本減耗は成長経済では徐々に増えて資本装備を増やして生産性を高めて経済成長に繋がる訳ですが、それを怠って人件費に相当する雇用者報酬を削って株主に帰属する営業余剰を増やすということを続けた訳です。失われた30年は謂わば必然です。それに対して組合は既存の組合員の雇用維持を重視して組織率の低い若手を派遣労働者など非正規雇用で受け入れることを認めました。その結果現場の規律が維持できなくなった可能性があります。

そして過剰な内部留保を抱えてそれを海外に投資した訳ですが、裏を返せば国内に投資するよりリターンが見込めるからそうした訳で、その結果国内生産は細り貿易赤字が常態化する一方、それを埋めて余りある第1次所得収支を得ているというのが日本の現状ですが、鉄道事業者など内需関連企業はその流れには乗れない訳です。

その中でJR東日本は少子化による人手不足を先取りした省力化投資や安全投資に積極的でした。その背後にはJR総連系のJR東労組の存在があったことは以前にも指摘しましたが、気になるのはストでスベってスットコドッコイ疑惑の感電事故で指摘した組合潰しとトップ交代の影響ではないかと心配しています。昨今トラブルが多いことは確かです。

記事では単独運転のつばさ号の郡山駅での500mのオーバーラン事故後の点検が長引いて東北新幹線東京―盛岡間が運転見合わせされたものですが、現存のE3系は1000番台以降の山形新幹線向け編成ですが、同様に事故は過去にもあってやはりつばさ単独運転列車の事故だったということで、JR東日本は急遽E2系やまびこ編成を回送扱いで併結して対応しています。以下は推論を含みますがおつきあいください。

E3系つばさ編成は1999年~2007年にかけて製造されていてザックリ20年選手ですが、新幹線車両はおおむね20年程度で取り換えと言われますから、晩年期ではあります。しかしE2系やまびこ編成とほぼ同じ経年でE3系単独運行列車でトラブルが重なったのはおそらくE3系特有の事情があると考えられます。特にATCのブレーキ指令で所定位置の範囲内に停止できる筈ができなかった点から、何らかの制動力不足が生じたということになります。

考えられるのは1両あたり400系より2t軽量化されており、軽量化によってレールと車輪の粘着性脳に微妙な低下があったとすれば、当時積雪の影響もあって滑りやすい状況下でのATCによる常用最大ブレーキが空走をもたらして、停まりきれずにオーバーランというのはあり得ます。あるいは在来線走行向けにE2系より小ぶりなE3系の台車構造が車輪とブレーキシューの間の雪詰まりを起こしやすいとか、あるいはモーターの架装空間や駆動装置の雪詰まりとかですが、故にE2系との併結運転では生じなかったという説明は可能でしょう。

気になるのがこのトラブルに関するJR東日本の情報開示の姿勢が不十分に感じられることもあり、組合員保護の立場から注文が多かった組合を潰した結果だとすれば、残念ながら今後もトラブルは続く可能性があります。そうでないことを祈りつつ「安心してください」と言ってほしいですね。

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Sunday, March 10, 2024

徒然に大草原wwwwwwww

8日の大雪予想は外れてくれて助かりました。滑って転んでばかりはいられません。しかし滑りっぱなしの政権の迷走は続きます。例えば減税。

減税の事務負担、企業・自治体が反発 政権浮揚効果に影響 - 日本経済新聞
賃上げ時期の実施で手取りが増えて見える効果を狙ったもpのですが、その結果ただでさえ賃上げに伴う給与計算見直しの事務負担がある時期に減税までやらなきゃならないため、企業や自治体が悲鳴を上げています。ホント岸田政権は現場感覚皆無の思いつきばかりです。
経済安保情報、明確な基準を要求 関連法案で経団連提言 - 日本経済新聞
これザックリ言えば特定秘密保護法の民間版です。特定秘密は公務員が対象でしたが、経済安保情報は民間企業や個人が対象で、厳罰化の一方で基準が明確ではないため、第二第三の大川原化工機事件になりかねないだけに、財界が基準の明確化を政府に要請したってことです。民間に疑心暗鬼が広がればイノベーションを阻害することにもなります。中国の反スパイ法のように経済活動を抑制しかねません。
離婚後の「共同親権」導入、民法改正案を閣議決定 - 日本経済新聞
一緒に居られない、あるいは居たくない事情があって別れた両親が共同で子育てって現実的にあり得ません。子どもの養育費の未払いを防ぐ方法としては公正証書作成で縛りを入れることは可能ですし、公正証書作成を義務付けて違反した場合の厳罰化など実情に即した見直しの方法はありますし、親権を持たない側の面会権は現行法でも認められております。そして両親が共同して子育てや教育の方針を決められるならそもそも別れる必要もありません。子どもの教育方針で対立した場合や子連れ再婚の阻害要因にもなりかねず、これらの解決の困難さは結局子どもが被害者となる訳で、何一つメリットはありません。子育て支援にも逆行します。明らかな悪法です。おそらく母が親権を得ることが多いことを快く思わない壺系議員の父権パターナリズムを喜ばせるだけです。
少子化対策の支援金、負担額「月1000円超の可能性」 加藤こども相 - 日本経済新聞
その子育て支援の財源に健保などの社会保険料に上乗せして確保する訳ですが、これ子育て世代の負担が増えるってことです。でも賃上げと減税で実質負担はないというのが政府の説明です。つまり賃上げも減税も行って来いのお金で手元に残らないってことです。インフレ下では実質マイナスです。
<子育てとお金>大学資金、まず預金・国債で - 日本経済新聞
満18歳または高校卒業までの児童手当でカバーできない大学資金は結局貯蓄で賄うしかないのが現実です。大学の学費や教材費が高すぎるのがネックになっている訳で、大学の学費無償化や奨学金制度の見直しの方が子育て支援には有効です。
公共工事の費用対効果、5割で悪化 着工後も増額頻発 - 日本経済新聞
ライトなリスクでもライトラインの公費部分の費用便益比(B/C比)悪化が指摘されてますが、昨今の公共事業は押しなべてB/C比が悪化してます。R20八王寺南バイパスでは鉄道との立体交差部分での鉄道会社との調整不足で工事費が見直されたように事業費の見積りの甘さが指摘されてますし、R103奥入瀬バイパスでは3,200台/日の需要予測に対して実績が2,700台/日でB/C比が1.0から0.7に悪化したりと需要面の見積りの甘さが指摘されてます。インフレや人手不足で事業費が膨張する傾向はあるものの、簡単に増額を認めるのも問題です。経済効果マイナスの公共事業はマクロ経済にとってもマイナスです。
送電ロスなし「超電導」、伊豆箱根鉄道に 営業路線で世界初 - 日本経済新聞
最後ぐらいは草生えない話題・JR総研が伊豆箱根鉄道駿豆線大仁駅近くで13日から超電導送電の営業稼働を始めるというニュースです。ささやかな1歩ですが、送電ロス無しに直流電気を遠距離送電することが可能になしますし、電圧降下を防げますから、将来的には変電所の集約も可能になります。その結果1セクション内の列車数が増える訳で、力行と回生のマッチングも容易になり副次的な節電効果も期待できます。大電流に悩まされる首都圏の通勤路線で採用されれば効果絶大ですし、一方で地方路線では出力調整で余っている再エネ電力を利用した地産地消も可能になるなど可能性は広がります。リニアより汎用性の高い超電導技術の可能性が開けます。

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Saturday, March 02, 2024

円安でつくばとねり的ライトなリスク

来年度予算の年度内成立が確定しました。

2024年度予算案が衆院通過、年度内成立へ 総額112兆円 - 日本経済新聞
憲法の規定で予算案は衆院優越で衆院で可決成立すれば30日後に自然成立となることから、年度内成立が確定した訳ですが、23年度本予算と補正予算で予備費を大量に積み増して使い残している現状からすれば、予算成立が遅れても執行に影響することはなく、能登半島地震の復旧復興などへの影響はほぼありません。寧ろボランティアに制限をかけたりして足を引っ張っているのは国と石川県です。やるべきことをやらない責任は政府と県にあります。

寧ろ新年度予算の審議が生煮えで成立させたことの方が問題です。それでも強行採決に及んだのは岸田首相の意向が強かったようです。政治とカネ問題で炎上中で、予算審議を質に取っての追求は野党として当然の戦術ですが、衆院成立後に送致される参院の予算委でも追及されることを嫌った模様です。その為の岸田首相の政治倫理審査会への出席だった訳で、早くこの問題に蓋をしたいのが本音です。しかしあれほどキックバックとな還付金とか言っていたのに首相が裏金発言をしたから寧ろ火に油。しかも故安倍元首相が「やめよう」といっていたのに復活した経緯もかなり解像度が上がりました。やめようとしたのは法令違反の認識があったと考えられますし、それが覆った経緯が不透明で寧ろ疑惑を深めました。もはやトカゲのしっぽ切りでは済まなくなりました。

そんな政治の混乱をよそに、日銀のマイナス金利解除は確度を上げています。IMFでも好感を示すレポートが出され、同レポートで政府の財政支出頼みの姿勢は寧ろ批判されています。加えてここへ来ての日本株の好調が、日銀に思わぬ追い風をもたらします。異次元緩和機に大量購入された株式ETFの含み益が拡大しており、異次元緩和で国債市場が機能を失って利ザヤが消失している一方で、ETF売却で益出しできる環境が整った訳です。つまり仮に緩和見直しで保有国債に含み損が出ても、国債ならば期間をかけて償還を待てますが、売れば値を下げる株式ETFの売却問題は日銀にとっては重い宿題でしたが、高すぎる米株式に対して割安感のある日本株への海外マネーの流入は日銀にとってはチャンスな訳です。

あと日本株ETFを大量保有するGPIFも含み益拡大で投資ポートフォリオ見直し売りで益出ししますから、当面日本株は日銀とGPIFという大量保有機関投資家が売りポジションをとる訳で、新NISAで日本株投資を考えている人は、日銀とGPIFを助けたい人以外は考え直した方が良いでしょう。令和の秩禄処分の地雷です。とはいえ日銀の緩和姿勢は簡単には解消されないことも確かで、当面この構図は続くと考えられます。故に円安反転で円高は現時点では心配することではないでしょう。しかし円安の影響は意外なところにも現れています。

栃木の宇都宮LRT、車両追加へ価格7割高の衝撃 増発・検査視野 - 日本経済新聞
現在宇都宮ライトレールが保有する車両HU300形は17編成あり、昼間ダイヤで3編成が休んでいる状況ですが、4月に予定されるスピードアップで13編成で回せるようになる見込みで、利用が好調なこともあり、増発も視野に入ります。しかし問題は開業時に竣工した17編成は2027年に一斉に重要部検査の期限を迎えるため、期限前に一部編成を前倒しで検査入場させて輪番検査の体制を作る必要があり、その為に予備車確保で2編成の増備となった訳ですが、問題は増備車の価格です。新潟トランシス製のGTシリーズはアルストム傘下のドイツ企業のライセンス生産で、そのライセンス料と輸入部品代が円安で高騰し、実に7割高となった訳です。当然ながら今後の増発や西側延伸への対応が難しくなります。また検査時の部品交換も割高となることもあります。そこで国産メーカーで対応できないかということになります。
宇都宮LRT 福井鉄道フクラムライナー・広島電鉄グリーンムーバー改良型導入も一考の余地 - 日本経済新聞
フクラムライナーは阪急阪神グループのアルナ車両製のリトルダンサーと呼ばれる部分低床車、グリーンムーバーマックスは近畿車両、三菱重工、東洋電k製造、広島電鉄の4社共同開発の完全低床車ですが、純国産のリトルダンサーと異なり弾性車輪や駆動装置などドイツのシーメンス製部品が一部使われていて、やはり円安の影響は受けます。

宇都宮ライトレールに関しては開業に至る過程で紆余曲折があり、県と市が対立して足踏みしましたし、地場のバス大手関東自動車の反対もありましたし、自動車交通の阻害や財政支出を巡る市民グループの反対もありました。関東自動車は経営悪化でみちのりHDグループ入りし賛成に転じたものの、工事の遅れや見直しで費用便益比(B/C比)が当初の1.1から0.7へ悪化したことなども問題視されております。そうした市民の不満に対して立憲民主党と共産党が後押ししてますが、あくまでも市民グループの声を掬い上げる議会野党の役割ということで、新年度予算を質に裏金問題を追及することと同じで、国会の新年度予算強行採決の轍を踏まないで議論を重ねることが大事です。

それはさておき、元々宇都宮市の東西軸交通に新交通システム導入を検討したことから始まったLRT事業ですから、西側延伸で東武宇都宮駅に接続することが求められていて、検討過程でモノレールやAGTなどの高架式新交通システムでは事業費が高すぎるということでLRTになった経緯があります。しかし西側延伸の為にはJR宇都宮駅北側の陸橋に軌道を整備して駅西側に至り、メインストリートの大通りを通って東武宇都宮駅前から桜通十文字付近までの事業化が進められております。

但しこの区間は利用が見込める一方、バス路線が集中する区間でもあり、東側同様に並行バス路線をバッサリ切ることの難易度ははるかに高いと言えます。実際宇都宮大学陽東キャンパス、清原地区市民センター前、芳賀町工業団地管理センターの3カ所でアクセスバスとの乗り継ぎが図られ、ローカルIC乗車券のtotraで乗継割引サービスが導入されてますが、昼間12分ヘッドのライトレールに対して1時間1本のバスへの乗り継ぎははかばかしくないようです。利便性の乏しいアクセスバスよりもマイカーで停留所付近の駐車場に停めて乗り継ぐ方が利便性は高い訳で、西側の時のように関東自動車がバス路線再編に協力してくれるかどうかはわかりません。当然乗り継ぎによるバスの利便性低下は客離れを起こす可能性もあります。また資材費の高騰や建設2024年問題による人手不足もあり、すんなり進むとは限りません。

一方で宇都宮ライトレールの営業成績は上々で、開業半年の乗客数が予想の200万人を超える220万人に達し、月間の乗客数も開業景気が落ち着いて直近では37,000人程度で、これも想定の31,000人程度から2割増しですから上出来ですが、これが素直に喜べないのは、タイトルのつくばとねり的リスクってことです。つくばエクスプレス(TX)が好業績ながら沿線開発が急すぎて輸送力増強に追われ、車両増備、ダイヤ見直し、座席のロングシート化による収容力強化に追われて、構想にある東京駅延伸がいつまでたっても果たせず、寧ろ8連化に伴うホーム延伸や車両入れ替えで追加投資を余儀なくされてます。

また都営日暮里舎人ライナーも、やはり沿線開発が急で輸送力増強に追われこちらは収容力の大きいロングシートの新車への入れ替えで凌いでおり、既に限界に達し、コロナ禍で通勤ラッシュが緩和傾向にある中で混雑率ワーストとなったことは戻らない混雑で指摘した通りです。日暮里舎人ライナーは沿線にめぼしい集客施設がなく片輸送の非効率もあって2023年度の黒字転換予定が果たせずにいます。

TXも舎人ライナーも車両増備だけでは足らず車両のロングシート化で収容力を高めて対応するところまで追い込まれ、舎人ライナーではゴムタイヤの荷重制限から軽量化した新形車に入れ替えるという追加費用をかけた結果の収支見通しの悪化ですが、これ宇都宮ライトレールのHU300形がタイヤハウスの位置にボックスシートの背もたれを配置する構造からロングシート化は不可能ですから、車両の収容力強化のための入れ替えすらあり得るということですね。TX、舎人ライナー、ライトラインの豊作貧乏トリオになりかねないリスクはある訳です。業績の好調をただ喜んではいられないってことですね。

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