いちご白書をもう一度
バンバンのヒットソングでは、学生運動華やかなりし青春時代を回顧するものですが、歌詞の映画は60年代ニューシネマとして日本で大人気だったもので、元々は米コロンビア大学の学生によるベトナム反戦運動を巡る実話を下敷きにしたフィクションです。故に映画では架空の大学を舞台に、キャンパスにキャンプと称する拠点を設けて籠城するというスタイルで、当時全米の大学で拡がった運動でした。
いちご白書とは当時のコロンビア大学の学部長ハーバード・A・ディーンの「学生の意見なんかいちごが好きだというぐらい無意味」と発言したことに由来するアイロニーですが、映画でも「俺もいちごは好きだけど?」といったやり取りがでてきます。ボート部所属の主人公はもともと政治的にはノンポリだったけど、好奇心からキャンプを覗いて美少女と出会い、お近づきになりたい一心で運動に加わります。動機は不順ですが大学当局の対話を拒む姿勢やベトナム反戦の街頭デモでの警官隊の理不尽な暴力に直面して目覚めていくという流れで、最後は大学の要請で警察がキャンパスに入り強制排除され、ほぼコロンビア大学で起きた出来事をなぞっています。
バンバンの歌でも彼女と見た映画の思い出として歌われていますが、当時は運動に関わっていると女子学生も関心を持って話を聞きに来るということは普通にありました。故にもてたい一心で学生運動やってたやつはたぶんいたでしょう。実際確かに話を聞きに来る女の子は少なからずいましたが、別にもててたわけじゃありません。しかしそれを横目にひがんでた連中が反左翼反リベラルに傾いて、ネットに触発されてネトウヨになっても不思議ではありません。いつの時代にもリテラシーの低いやつはいます。そしてアメリカでは今そんないちご白書をリアルにもう一度再現しています。
アメリカのコロンビア大学に警官隊突入 ガザ反戦学生デモを排除 - 日本経済新聞映画いちご白書のラストシーンを再現するようなニュースです。学生たちはイスラエルのガザ侵攻に対して大学のイスラエルの軍需企業との関係を問い、見直しを求めているもので、街頭の市民デモとは意味合いが違います。故に大学が対話に応じて学生の言い分を聞けば済むことなのに、警察による排除を行った訳で、いちご白書の舞台の1968年当時を再現してしまいました。
更に言えば1968年は今年と同様に大統領選の年であり、民主党ジョンソン大統領が政権の座にありました。但しベトナム戦争はアメリカが当事者でジョンソン大統領の判断で進められた経緯から強硬策に出たものの、世論の反発を買い大統領選不出馬に追い込まれます。バイデン大統領はイスラエル寄りの姿勢を見せながら、イスラエルの人権無視といえる軍事侵攻で揺れる世論から徐々に態度を変えつつありますが、それでも若者の支持離れを見ながら煮え切らない対応をしています。市民や学生の声が無視できなくなっているのは確かです。
話を日本に戻しますと、衆議院3補選で立憲民主党が全て勝利して与野党の議席数が変わった結果、政治倫理審査会の野党委員が1人増えて裏金議員49人の出席を求めることが決まりました。もちろんこれで解決ではありませんが、政権はぬらりくらりから追い込まれている訳です。些細な変化でも結構大きな意味があるってことです。あきらめちゃいけません。そして取り上げたいのはこのニュースです。
JR東日本、みどりの窓口縮小を凍結 デジタル化進まず - 日本経済新聞コロナ自粛で業績を悪化させた結果、省力化にまい進するJR各社ですが、みどりの窓口の集約化で窓口の混雑が常態化して乗客から見て明らかに利便性を損なっており、特に多客期にその傾向が強く出ていますが、GWの窓口混乱でJR東日本はとりあえず現状維持を決め、すでに廃止された駅でも多客期には臨時窓口を置いて現場の混乱を防ぐとしたものですが、JR西日本やJR九州と違って余力があるということはあるでしょうけど、乗客や現場の声を反映して方針変更に柔軟な姿勢を見せました。
みどりの窓口の縮小方針自体は撤回した訳ではありませんが、方向性としてSuicaのエリア拡大やモバイルSuicaで新幹線や特急に乗れるとか、えきねっと予約とか指定席券売機とか様々なメニューで利用客を誘導して対応しようとした訳ですが、何れも必ずしもうまくいっていない現実があります。加えて磁気券に代わるQRコード乗車券の試験もしてチケットレス化を進めて窓口縮小をカバーする目論見ですが、正直言ってユーザーインターフェイス(UI)が使いにくいし、通信に時間がかかって操作性を阻害していたりして、そうした問題もあって窓口利用が減りません。
一つ言えるのは元々国鉄時代の複雑な運賃料金制度を前提に開発されたマルスシステムの問題があります。乗車券、回数券、定期券、グリーン券、特急券、指定券と券種が多く、適用条件も複雑ですからそれに適合したシステムで、窓口業務は職人芸とも言える高度なスキルを求められています。その一方で技を極めた名人が退職年齢に達し、補充された若手のスキルが追い付いていないため、窓口自体の処理能力も落ちていると考えられます。声を上げることの重要性も示しています。
加えてモバイルSuicaにしろえきねっとにしろ指定券券売機にしろ、素人である乗客にUIを通じてマルスを叩かせている訳で、UIも複雑だしネット経由のモバイルSuicaやえきねっとでは通信の遅延による誤操作や誤動作も誘発します。そして結果的に窓口フォローを余儀なくされて窓口混雑を助長します。通信の遅延は通信キャリアのコスト削減策で4G基地局をソフトでエミュレートしたなんちゃって5Gで遅延が解決できないなどJRの責任外の問題も絡んでますが、それも含めてとりあえずの現状維持は的確な判断です。
同時にこれは日本でDXがうまくいかない理由も示しています。まあこの問題は根が深いので、改めて別の機会に取り上げたいと思います。
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