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July 2024

Sunday, July 28, 2024

プランB

ここへ来て為替が円高に動いています。きっかけはトランプ銃撃事件からの一連でもしトラがほぼトラじゃないかという観測から始まった所謂トランプラリーらしいのですが、加えて今月末の日銀政策決定会合での利上げ観測と、同時に行われる米FOMC関連で9月会合での利下げ観測を示唆する発言が出るかどうかあたりから、日米金利差が縮まるかもしれないという見方です。加えて言えば8月の円高傾向という経験則もあります。これは米財務省債の償還が8月に集中することから、受け取ったドルを売って円に替える傾向があると言われています。そして長く見られなかった日本時間の昼間の円買いが増えていることも指摘できます。つまりこれまで海外で稼いだドルを海外法人に内部留保していた日本企業が、円高が進行する前にドルを売って益出ししている結果です。円安インフレに苦しむ国民のをよそに利益追求に勤しむ日本企業の頭隠して尻丸出しの姿勢によるものです。

そして突然喰らうド障害でシステム復旧が遅れた企業が多数あり、その中には自動化が進んだテスラのEV工場も。DXだのIOTだのといっても、こうした大規模障害の可能性までは考慮されておらず、プランBが存在しなかった訳です。経済安保を謳ってもロシアなどのサイバー攻撃で機能不全に案る可能性はある訳でプランBは重要です。そしてAIブームもあって絶好調だったテック系企業の株価が調整局面に入ったこともあります。

大統領選に関してはインフレ定着が意味するところでいずれにしろ対日本では誰がなっても「金出せ!」に変わりはないですが、パレスチナ政策ではイスラエルに厳しいと見られるハリス氏に期待します。バイデン大統領の出馬辞退を受けてのことですが、トランプ氏銃撃事件から共和党大会で副大統領候補にバンス氏指名とメディア露出の増える局面での民主党の作戦勝ちのハリス旋風でトランプ氏有利を少なくともほぼ互角まで切り返しました。これを狙っていたという説もありますが、高齢のバイデン大統領の健康問題は以前からわかっていたことですから、最初から狙っていた訳ではなくあくまでもプランBのシナリオと見るべきでしょう。それにひきかえ日本では。

堀井学衆議院議員、香典「違法性を認識」供述 地検聴取に - 日本経済新聞
裏金議員の橋本聖子議員の子分で小物ですが、元スポーツ選手で地元に地盤のない落下傘候補故に有権者の慶弔事への祝金や香典は大事だけど、本人持参という法の縛りがある一方、高齢化で弔事が増えて議員本人が動けないから家族や秘書が代理でということで、本人も違法性を認識していたということで万事休す。こういうところに裏金が使われていたのでしょう。但し香典だけで千万単位にはならない訳で、大口裏金議員は何に使っていたのでしょうか?

小泉劇場で新自由主義に舵を切り福祉切り捨てに走ったことで離反した自民党員が多く、党員が支払う党費が減ったことで裏金の重要性が高まりました。特に派閥資金は公職選挙法の対象にならない自民党総裁選で飛び交う実弾の原資となります。今回は派閥解散が相次ぎましたが、派閥が管理する政治資金は残っている訳で、実弾飛び交う総裁選が展開されます。故に国民的には人気の高い石破氏や小泉氏には可能性はない訳で、あとは不人気な岸田氏に代わる若手が出るかどうかですが、いずれにしてもカネまみれの総裁選で事態を打開できると考えているなら甘いですね。プランBはなさそうです。故に野党の出番ですが、野党同士の足の引っ張り合いが続いており、政権交代もすんなりとは進まない感じです。プランBはあるか?そして日本でもリアルなトラブルが。

東海道新幹線が運転見合わせ、再開は夜以降 保守車脱線 - 日本経済新聞
22日未明に東海道新幹線豊橋―三河安城間で粗酒車両の脱線という第一報だったのですが、詳細がわかると保守車両同士の衝突事故で双方動けない状態で復旧に時間がかかることが次第に明らかになりました。これ福島の原発事故のように、当初は過小な事故のように報じて徐々に大事になるという情報開示姿勢の悪しき慣習ですが、実際はバラスト散布車編成とバラスト突き固めのマルチブルタイタンパー、通称マルタイの衝突事故で、チオ国マルタイの損傷がひどくて現地解体を余儀なくされたことが復旧を遅らせた原因ですが、幾つかの疑問があります。

バラスト軌道は新幹線では東海道新幹線のみで、山陽以降の全幹法準拠の新幹線とは軌道構造が異なります。山陽以降の新幹線は高架橋主体でコンクリートスラブと称する鉄筋コンクリート板をコンクリート路盤に防振ゴムを介して固定する構造でメンテナンスフリーなんですが、盛土区間が多く不等沈下があるので、微調整が可能なバラスト軌道にせざるを得ない上、16連285km/hの高速列車が3~4分間隔で走る訳ですから、軌道破壊の修復を高頻度で行う必要があります。しかも0時~6時の保守間合いの間に行う必要があります。現場作業はかなりタイトになる訳です。故にバラスト散布車両とマルタイが同じ線路上で作業ということになるんでしょうけど、信号回路はoffで基本目視確認ですが、夜間作業でもあり、保守車両にはGPS連動のブレーキが装備され、また当該乗務員もブレーキ操作をしたにもかかわらず止まれなかったということで、原因はわかりませんが、作業員の確保も含めて保守作業が困難になっている可能性はあります。スラブ軌道は無理でも何らかのメンテナンスフリー対策を考える必要があるように思います。ぶっちゃけのぞみ増発で無理をしている可能性はありそうです。回避の為のプランBは開業時期が見えないリニア?

そしてプランBとしてがぜん注目されたのが、先日敦賀まで開業した北陸新幹線ですが、東海道からシフトした乗客は全車指定のかがやきではなく自由席のあるはくたかに集中した結果、通路まで埋まる大混雑となりました。こうなると敦賀乗換が恨めしい。中途半端な敦賀開業を急ぐより当面乗換でもいいから米原まで開業していれば混乱はある程度緩和されたでしょう。レジリエンスを叫ぶ某京大教授が整備に時間のかかる小浜京都ルートを押してますが、画に描いたプランBでは意味がありません。

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Sunday, July 21, 2024

突然喰らうド障害

世界を揺るがしたシステム障害がありました。

世界の大規模システム障害、復旧へ 米国など影響なお - 日本経済新聞
世界中Windows系OSシステムで障害が起きて航空鵜予約システムや店舗のPOSレジなどが使えなくなり、復旧は進んでますが、未だ障害が続いているところもあるということです。原因はWindowsクラウド向けのクラウドストライク社製セキュリティソフトの19日未明の一斉更新にバグがあり、修正版が配布されたものの、ユーザー側で補正作業が必要なため、復旧に時間がかかったとされております。しかし同じシステムベンダー製予約システムを用いながら、JAL系のジェットスタージャパンで障害が起きた一方ANA系は障害なしとか不可解なこともあり、本当の原因はわかっておりません。

みずほのシステム障害とか、最近では三菱UFJ銀行の障害などもありますが、銀行の勘定系などはメイフレーム時代にCobolという言語で記述された基幹業務システムで、Cobolが使えるエンジニアの退職で年々メンテナンスが負担になっている一方でFintechでAPI公開とかやっていて、システムが複雑になり過ぎた面があります。故にセキュリティ面は強固なんですが、メンテナンスコストは高くなり、維持が難しくなっている面があります。

一方でクラウドはネット上で仮想的に複数のサーバーを束ねて処理する分散型で、ユーザーから見ればセキュリティも含めて使用料を支払って使うという意味で初期投資もランニングコストも安価ということで普及し、アマゾン、グーグル、マイクロソフトなどの大手が注力してユーザーを増やしてきました。ユーザーから見れば自社システムの維持費やセキュリティ費用を気にせずシステム構築できて、最新のセキュリティ環境が提供されるから安全性も高いという触れ込みでしたか、今回は裏目に出ました。

ふと思い出したのが木から落ちたサルで取り上げたJR東日本のSuicaシステムのクラウド移行ですが、各駅にステーションコントローラーを置いて分散処理することで処理速度を高める自前の分散処理システムをクラウド上の仮想センターサーバーに移行するという話題です。コスト削減になる一方、処理速度の問題は残る訳ですが、5Gなど通信環境の進化で遅延が縮小していることや計画中のQRコード乗車券システム導入との整合性を考えると正常進化とは言えるかもしれません。但し今回のようなトラブルに巻き込まれるリスクはある訳ですが。

その一方で楽天銀行との提携でJREバンクと呼ばれるBaaS事業への参入もあり、QRコード乗車券の決済をJREバンクの口座を使うとすれば、寧ろSuicaシステムの存在理由が希薄化する可能性もありますし、下手するとハウスカードのVIEWカードも楽天カードに置き換えられる可能性もあります。現時点でVIEWカードがJR東日本の経営資源としての貢献度がいかほどかはわかりませんが、JR東日本の金融事業が楽天グループと接近することは避けられないでしょう。そしてそれは別の面でSuicaの将来を左右します。

栗鼠殺し?で取り上げたオープンループが国内でも徐々に拡大しており、大手私鉄では南海電気鉄道がいち早く導入したほか、東急が続き、その他地方の公営交通やバスを中心に導入が続いております。特に東急ではVISA限定ではなく他社カードも受け入れておりますが、それに関連するかどうかわかりませんが、こんなニュースもあります。

VISAに公正取引委員会が立ち入り検査 他社の信用システム使用制限か - 日本経済新聞
東急のケースが該当するかどうかはわかりまっせんが、VISA以外のカード会社もVISAのシステムが使用されているとすると、VISAへの手数料の支払いが発生する訳で、独禁法違反の恐れがあるということになります。特にインバウンド需要の取り込みで外国人の利用が見込まれるオープンループでVISAが優越的地位を乱用したと見られれば、他社カードの相乗りが進んで結果的に楽天カードが相乗りとなると、ますますSuicaの存在意義は薄れます。今後は見通しにくいですが、ソニーのFelicaシステムが国際規格のNFCに置き換わることを意味します。ソニーとJR東日本がタッグを組んでEDYとSuicaが一本化されて導入コストを下げることが出来ていればまた違ったのでしょうが、日本企業発の規格が国際規格に駆逐されてまたひとつ日本の敗戦確定です。そういやEDYも楽天が買ったけど放置されております。何故こうなる?

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Sunday, July 14, 2024

ポリティカル・マーケティング

鉄路的連結列車の都知事選が終わりました。意外な結果と言われますが、結局組織票を固めた小池氏が当選して無党派票イーターの石丸氏が2位ということで、連合の離反で組合票が分散し蓮舫氏は惨敗となりました。その結果、選挙の裏の動きが可視化された面もあります。

そもそも都知事選は昔から所謂泡沫候補の立候補が多く、美濃部時代に美濃ナンチャラというおっさんが出馬して、政見放送で何故か美濃部氏の政見放送の前にそのおっさんが美濃部知事と都政に罵詈雑言なんてことが普通にありました。投票時の書き間違いと悪評発散を狙った今風に言えば刺客候補という訳ですが、成功した試しはありません。それに対して石丸氏は公示前からいち早く都知事選出馬を公言し、公示2日前の都庁記者クラブ主催の候補者討論会に出席しており、他の多数の泡沫候補と扱いが違いました。

加えて選挙期間中も1分程度のショートムービーで断定口調の発言を繰り返し、新しい選挙スタイルとしてテレビで露出されるなど、かなり特別扱いされていました。案の定裏に自民党系の選挙参謀と統一教会系のスタッフがつき、電通が支えていました。美濃ナンチャラのおっさんの嫌がらせレベルの刺客候補とは比べものにならない程システマティックに票を奪う刺客選挙だった訳です。あんな中二病のコミュ障に票が集まる巧妙さ。特に若い人が騙されたようですが、次回は注意しましょう。

一方世界は動いてますが、いろいろあります。

英国14年ぶり労働党政権 総選挙、スターマー氏勝利宣言 - 日本経済新聞
14年間の保守党政権で英国は大きく揺さぶられました。キャメロン首相時代にEU離脱を主張する保守派のガス抜きを狙った国民投票でまさかの離脱が多数派となり、その後短期間に首相交代を繰り返しながら迷走し、Brexxitの影響で経済も変調で大混乱したあげくの政権交代です。

スターマー新首相は親EUと言われておりますが、流石にEU復帰は無理としても、新協定で関係修復と安定を目指すとしております。EUから見れば通貨ユーロにも参加せず労働力移動の自由を定めたシェンゲン協定も批准せず、特別扱いが多い英国ですが、逆に市場拡大を狙ったEUの東方拡大は英国が主張し、その結果東欧の労働者が西欧に大量流入して、一部は英国にも来た訳ですが、それを理由に保守派がEU離脱を言いBrexitになった訳で、英国の身勝手故にEUから見れば再加入はあり得ないとはいえ、英EUの安定した関係構築は望むところではあります。そしてBrexitの失敗は加盟国の右派の離脱論を牽制する意味もあり、イタリアのように政権に就いて離脱論を封印したりしています。

フランス下院選、左派が逆転勝利 与党の年金改革に国民反発 - 日本経済新聞
やはり右派台頭に悩むフランスでは、マクロン大統領の国民議会解散による総選挙が行われ、マクロン派は左派連合と出馬調整して右派封じ込めを狙った結果、左派の逆転勝利となりました。年金給付開始年齢を2年繰り下げる年金改革で国民に嫌われた結果でもありますが、右派の台頭を止めることはできました。Brexitの失敗もあって右派国民戦線(RN)もEU離脱は言わなくなっておりますし、伝統的右派と違って社会保障の充実を主張して中間層取り込みに励みましたが、右派の唱える社会保障は排外主義的社会保障で、移民や外国人は排除されるなど問題があり、国民はそこは冷静に判断したと言えます。英仏共に有権者は健全ということです。日本の有権者はどこ行き?

ということで、中間層を取り込まないと選挙では勝てないということは洋の東西を問わないようですが、そのために政治家がマーケティング手法で票を集める傾向が見えてきました。これアメリカのトランプ現象も同じです。合理的エゴイストで排外主義を隠しもしないトランプ氏が支持されるのは、中間層に拡がる反移民感情を掘り起こしている訳で、マーケティングで票集めという訳です。加えて企業経営者などの富裕層は自らの事業にプラスかマイナスかで支持を決め多額の選挙資金を寄付する訳です。もはや選挙制度は民主主義の証といえるのかどうか?

プーチンのロシアもメディア介入でウクライナの戦況の劣勢を隠し、少なくともモスクワやサンクトペテルブルグなどの都市中間層に負担が及ばないようにされており、言ってみれば戦争継続のための戦争マーケテイングをやっている訳です。大統領選でも野党系候補は出馬すらできず、知名度の劣る泡沫候補と競って選出されている訳ですから、何だか都知事選の構図とそっくりです。故にウクライナ戦争を民主主義対権威主義の構図で見ることはできません。言ってみれば古典的な領土戦争と変わりません。最高位ではないとはいえ改革派の大統領を選んだイランの方が国民意識は健全といえます。

てことで、実は日本の自民党の裏金問題もマーケティングとして見れば巧妙な訳ですね。企業に寄り添い企業献金やパーティ券で資金提供を受けて裏金化して、それを選挙で配ってまた裏金で回収するという形でシステム化されている訳ですから、簡単に放棄できない訳です。加えて多額の献金をくれる大企業の言いなりになる訳ですね。その結果円安で企業は潤いインフレで国民は困窮している訳で、流れを変えないと国民はただただ貧乏まっしぐらです。でこのニュース。

賃上げ効果の消失に危機感 政府・日銀に再び為替介入観測 - 日本経済新聞
春闘の大幅賃上げと定額減税効果で実質賃金マイナス解消という政府の期待を裏切って実質賃金マイナスが続いた結果、円安を止めないとまずいという判断が働いたようです。アメリカの同意を得られていないのであくまでも覆面介入観測ですが、どうであれ円売りポジションを採る投資家に一時的にでも損失を与えることで市場を牽制しようということですが、繰り返しますが無意味です。

円安で外貨準備には含み益が生じてますから、その範囲内での介入はほぼ負担ゼロですが、今回も3兆円とか言われる介入規模では100倍以上の為替相場に影響を与えることは不可能です。円安を止めるには金融政策を見直すしかないし、その結果低金利依存の財政政策も変更を余儀なくされる訳ですが、積極財政派の雑音でそこを曖昧にしているから円安が止まらないですし、寧ろ助長することになります。例えばこれ。

航空燃料不足、官民の対策 タンカー確保・韓国から輸入 - 日本経済新聞
これ昨今の石油元売りの製油所統廃合の結果、タンクローリーの輸送距離が増えた一方、2024年問題によるドライバー不足が助長して輸送力を落とした結果です。特にインバウンドに期待する地方空港ほど深刻です。製油所統廃合は人口減に備えたリストラ策ですが、一気に進んだのは物価対策としてのガソリン補助金を石油元売りに支出した結果、それをリストラ費用に充てて遅々として進まなかった製油所統廃合を加速した結果です。つまり大企業を支援してツケを地方に回す構図です。タンカー手配もいいけど、東日本大震災の時のようにJR貨物を活用してタンクローリーの輸送距離を短くするという知恵が出ないのが不思議です。繰り返しになりますが、こういうことの積み重ねで生産性を高めるイノベーションの可能性を政府が潰していて生産性が停滞し実質賃金がプラスにならない訳です。政権交代しないと現状は変えられないでしょう。

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Sunday, July 07, 2024

イノベーションの可能性

イノベーションを阻むものばかりが目に付くのですが、こんなニュースも。

金融庁が三菱UFJ銀行など処分、銀証連携の規制緩和に影 - 日本経済新聞
型式指定検査の不合理の見直しに消極的だったトヨタとは逆に、銀証分離のファイアーウォール規制見直しを政府に求めてきたメガバンクトップの不正です。利益相反が起きやすい銀行と証券の顧客情報共有は原則禁止されてますが、三菱UFJは傘下証券2社の顧客企業情報を同意なしに銀行と共有していたもので、例えば顧客企業が社債を発行する場合の幹事社選任で銀行が圧力をかけるなどしていた訳で、銀行の優越的地位の乱用が問題視されました。つまりファイアーウォール規制緩和で何がやりたいのかをばらしちゃった訳です。身勝手にも程があります。他方こんなニュースも。
ASEANの再生可能エネルギー広域送電網を支援 首相、中国関与にらみ - 日本経済新聞
供給地と需要地が地理的に離れる再エネ電力の活用には送電網の強化が欠かせません。特に限界費用ほぼゼロの太陽光の活用に道を開く訳で、意義ある投資ですが、わかってるなら国内先にやれよって話です。国内でやれば電気料金が下がるしグリーン電力比率が上がって国内投資の呼び水になります。つまり国内でやればイノベーションになることなのに、地域分割体制で再エネ電力の増加が自社発電所の稼働率低下につながり独占利益を損なうからやらない訳です。そしてこうなります。
1〜3月期GDP、実質2.9%減に修正 建設統計の改定反映 - 日本経済新聞
下方修正の原因は建設総合統計が実態より高く計上されていたのを遡って修正した結果、公共投資の減額や住宅リフォームの減額が反映されたものですが、従来景気対策とされた公共投資と住宅政策が景気対策として効かなくなっていることを意味します。積極財政が無意味なことを示した訳です。そしてそこには構造要因があります。

建設業界の構造変化が進み、ゼネコンと呼ばれる総合建設業からサブコンと呼ばれる型枠工や鉄筋工その他の専門領域を持つ会社に下請けに出す業界慣行が崩れてきています。サブコンを支える職人の不足からゼネコンから下請けされる仕事をサブコンが選んでいるというのがザックリとしたところで、サブコンに断られた案件は公共工事であっても期日までに執行できずに遅れるということが起きている訳です。そこへ2024年問題の働き方改革が重なって専門職人の人手不足を助長している訳です。怪運国債市場の蓋で万博工事の遅れの原因の1つとしてTSMC熊本工場建設を上げましたが、政府の補助金もあって潤沢な資金で金払いの良いTSMC関連に人手を取られた結果、万博工事は進まないという構図ですね。

この構図は事業費がJR東海の資金繰りに依存するリニア工事にも当てはまります。またトンネル工事が多いから残土搬出や最終処分などの問題も未解決のまま見切り発車しているため、今後も遅れが見込まれます。人手不足によるサブコン優位が続けば工期の管理は事実上不可能ですから、いつまで経っても終わらない工事で資金を溶かし続けることになります。東海道新幹線の儲けをつぎ込んで終わらない工事を続けるなら、財投資金3兆円の借金のカタにリニアを放棄するというのも選択肢になります。国にとってはドライバー不足対策としてリニアトンネルを活用した物流施設整備に活用することが可能です。例えば梶ヶ谷貨物ターミナルと名古屋貨物ターミナルを結ぶ貨物専用鉄道整備へ転用とかです。40/1,000の勾配がネックですが、1軸1,000kwのH級機で8,000kwとすればEF210重連相当の出力で1,000t列車牽引なら可能性はあります。そして貨物幹線の東海道本線の貨物列車は1.300t列車を残して新貨物線に回せばJR東海が不満を持つ静岡地区のダイヤ編成の自由度が増しますから、地域密着サービスで静岡工区着工のバーターになり得ます。

あと鈴木知事が設置を希望する静岡空港新駅ですが、掛川駅と近すぎる問題はこだまは通過扱いで一部のぞみを停車させるという解決策はあり得ます。元々首都圏第三空港狙いですから、それで不都合はありませんし、静岡県内のぞみ停車の要望にも応えたことになります。まあこの辺は話し合い次第でしょうけど、不可能ではないということは言えます。こうした積み重ねが実はイノベーションの実践なんです。この点は強調しておきたいと思います。

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