« July 2024 | Main | September 2024 »

August 2024

Saturday, August 31, 2024

迷子の台風

本題に入る前に令和のコメ騒動の続きです。

坂本哲志農相、お米の円滑流通を卸業者に要請 備蓄米放出は慎重 - 日本経済新聞
政府は対応する気なし。卸業者に円滑な流通を促してますが、流通が滞っている状況で政府備蓄米の放出はしないで、もうすぐ新米出るからそれで解決というスタンスです。しかし問題は新米は割高というか、値上がり確実です。というのも農協が生産者に支払う前払いの概算金が増額されていて、小売り段階で2~4割高くなると見込まれています。新米と古米の価格差が大きくなるのは仕方ないですが、スーパーの棚からコメが消える、つまり今必要なコメが手に入らない状況の改善こそ必要な筈です。

ここからは裏の取れていない話ですが、元々コスト上昇で農協が生産者に支払う概算金は上がっているのに、コロナ禍で需要が減って値崩れしていたことから、卸が利益確保のための価格つり上げの動機はある訳で、本来ならばそうした流通の不全を解消するため平成のコメ騒動を受けて成立した政府備蓄米制度じゃないのか?ってことですね。加えて市況によって生産者に概算金の上振れ分として加算金を支払う場合もあります。勘の良い方ならお判りでしょうけど、自民党総裁選の後に信を問う解散総選挙という段取りを睨むと、農協を通じてコメ農家にアメを与えることで票の離反を防ぐ狙いが読み取れます。農政改革を打ち出した立民枝野氏はその辺意識してるかも。

東海道新幹線、29日の運転取りやめ 静岡県内の大雨影響 - 日本経済新聞
東海道新幹線は沿線の雨量計が規制値を超えたことから29日の運休を決め、明日9月1日も運休と長引いていますが、それもこれも台風の動きが遅いからです。豪雨に弱い盛土構造も災いしてますが、こればかりはやむを得ません。

台風の動きが遅いのは台風を動かす動力となる太平洋高気圧が弱いのと、偏西風の蛇行で日本列島付近は北へ偏っていて台風10号はうまく乗れなかったから近畿地方で停滞している訳です。そして台風の北側にある秋雨前線に湿った暖かい風を送り込んで活発化させているから東海から関東にかけての広範囲に雨を降らせている訳です。気球の地政学で中国製とみられる観測気球が大きくコースを外れて北米に達して議会の突き上げで撃墜された事件がありましたが、将に偏西風の蛇行を実証しております。ちなみに23年5月に撃墜した気球の残骸を調査した米政府から軍事観測気球でなかったことがこっそり発表されてます。

一方今回は空の便は九州発着便が大量運休したものの、首都圏対関西などは飛んでいますから、輸送力は比較になりませんがある程度受け皿になったと考えられます。故に輸送力に差のある北陸新幹線も米原に繋げば機能するってことです。自民党総裁選出馬表明が遅れてメディア露出を増やしたい与党陣営には水を差された感があるかもしれませんが、脱炭素をサボり石炭火力依存でCO2出しまくった結果、上述のように偏西風が惰行して台風が停滞した訳で、ある意味自業自得です。福島第一原発事故で原発が全停止したから仕方がないと言訳されてますが、このニュースも仕方がないんでしょうか。

原発新増設、誰ができるのか? 技術継承へ細る人材 原発 誰が動かす(上) - 日本経済新聞
東海大学が原子力学科の募集を停止するという記事ですが、福島の事故で受験生が減って定員割れ状態で維持できなくなったわけです。つまり若手の原子力エンジニアが育っていないから、政府方針で原発新増設を決めたところで作る人も動かす人も足りないという状況になる訳です。世界を見渡せばアメリカもスリーマイル事故以来新設が止まり、やはり技術的なブランクを埋められずに迷走してますし、イギリスやフランスも同様です。世界を見渡せば新増設はほぼロシアと中国に偏っており、脱炭素電源として新設を希望する新興国もロシアや中国の企業に頼っているという状況です。いずれ日本もその列に並ぶかも^_^;。建設だけでも10年はかかり立地選定や環境アセスメント、原子力規制委の承認や住民避難計画策定と地元同意とスケジュールこなすうちに2050年来ちまいます。

更に言えばアメリカは原子力産業の空洞化で既存原発のウラン燃料をロシアから輸入していて、ウクライナ戦争の制裁対象にもなっていません。更に悲報ですが安全性が高いと言われる新型炉の中でも有望とされる小型モジュール炉(SMR)に使われる高濃縮ウラン燃料は、現時点でロシアのみが商業供給可能とされており、実際シベリアの北極海沿岸で実用炉が稼働しています。まあロシアが保有する濃縮ウランを発電で減らせるという意味で悪いことばかりではありませんが、冷戦時代に過剰生産されたソビエト時代のレガシー資産は膨大で、とても発電だけでは消化しきれません。核燃料の調達面では欧州も似たり寄ったりの状態です。

日本では核燃料サイクル事業で「国産」を謳いますが、その六ケ所村の核燃料サイクル事業1997年稼働開始の予定をトラブルで27回も変更されていていつできるかもわからないし、そもそももんじゅの開発失敗で高速増殖炉の開発を放棄した結果、プルトニウムを含むMOX燃料を軽水炉で燃やすプルサーマルでお茶を濁してますが、増殖炉と違って高レベル放射性廃棄物を増やす厄介者ですし、既存原発で使う場合、放射線被爆で躯体の劣化が進むと考えられますから、折角動いている既存原発の経年劣化を早めるだけで、メンテナンスコストも上がります。

脱炭素燃料として水素やアンモニアも注目されてますが、何れも現時点で石油由来の発生品だから脱炭素にならないし、再エネ由来の水素などはコスト面で商業化は程遠い現状です。アンモニアも当面石炭火力の併燃で対応ですから、結局石炭火力の延命にしかなりません。また日本製の石炭火力は高効率だという議論もありますが、それでもガス火力などに比べてCO2排出量は多いし、新設した場合30~50年の稼働期間を睨めばカーボンゼロ宣言の2050年を越えて稼働させるのかということですね。その前に停止を余儀なくされる座礁資産にしかならない訳です。

てことで停滞する迷子の台風は日本が生み出した日本の写し鏡かもしれませんね。

| | | Comments (0)

Sunday, August 25, 2024

令和のコメ騒動

災害の備えと憂いは東京も例外ではありません。

東海道新幹線、大雨で一時運転見合わせ 山手線も - 日本経済新聞
港区などで連続150㎜の雨量となって東海道新幹線が規制値越えで運転見合わせ。また山手線など首都圏各線も止まりました。一方、SNSで南北線市ヶ谷駅コンコースの水没や都営大江戸線六本木駅の地上階段から雨水が滝のように流れ込む動画が拡散されたりしてますたが、地下鉄各線は一部地上出口の閉鎖で乗り切り、列車運行は続けていたとか。地下鉄の排水能力の高さを見せました。同時に排水を受ける公共下水道の能力も高い訳ですが。とはいえ帰宅ラッシュのタイミングでのハプニングは影響が大きかったとは言えます。

ノイジーサマーで指摘したように、地震や台湾有事などの軍事的緊張よりも、水害リスクは発生確率から言えば重大です。さりとて全国で東京都並の対策が可能かといえば難しいし、本当のところは原因である気候変動対策としての脱炭素を進めることが重要でしょう。脱炭素の観点から言えばクラウド上で働くAIは大量の電力消費を伴いますから、この観点からも規制が必要ですし、ましてエネルギー資源をほぼ全量輸入に頼る日本に勝ち目はありません。一方で今は落ち着いている電力需要がAIで上振れするという妄言で脱原発を主張していた河野太郎議員が宗旨替えしました。愚かです。

その河野太郎議員は自民党総裁選に出馬の意向だそうですが、前回小石河連合と呼ばれ河野氏支持に回った小泉氏や石破氏はそれぞれ出馬の意向を示しております。河野氏は唯一解散していない麻生派の支援でということでしょう。小泉氏の後ろには菅義偉前首相がついていると言われ、石破氏は独自に推薦人を集めて出馬表明しています。二階派出身でコバホークと呼ばれる小林鷹之議員は甘利昭氏が裏についていて安倍派に多い4回生以下の若手議員票の分散が狙いらしく、噛ませ犬というか当て馬ということのようです。更に出馬意向の議員は多く、党員票の比重が増すことになりますが、党員票も医師会その他の業界団体の影響下にありますから、誰が選ばれても自民党の金権体質は温存されると見るべきです。

一方立憲民主党の代表選で若手が出てこないという嘆きの声がありますが、劣勢の野党第一党で議員数が少ない中で20人の推薦人を集められるのはベテランになりますし、まして影の首相として政権交代を迫る政治手腕も問われますから、ベテラン同士の争いで寧ろ政権構想や政策論争を闘わせることで有権者の関心が高まり次期総選挙に繋げることが狙いですから、単なる権力闘争の自民党の総裁選とはそもそも意味が違います。そして自民支持の業界団体も必ずしも一枚岩ではないので、与党支持層の切り崩しにもつながります。例えばこんなニュース。

米が揺さぶる物価高 7月17.2%上昇、20年ぶり伸び幅 - 日本経済新聞
古米と新米の端境期で昨年の猛暑の不作やインバウンド需要で外食のコメ消費が伸びたとかいろいろ言われてますが、確かに急な値上がりではありますが、水準としては20年前に戻っただけ。その間減反で供給を絞って価格維持をしながら需要がそれ以上に減って価格低下傾向にあったコメ価格ですが、実は卸し倉庫には十分な在庫があると言われております。価格維持で高値で仕入れたコメですが、ウクライナ戦争や円安で輸入小麦が値上がりし、パンやパスタや即席めんが軒並み値上げとなったことから便乗値上げが疑われます。

ウクライナ戦争は長引き為替の円安が定着する中で、相対的に安値の国産米には輸出の目が出てきている訳ですし、民主党時代に打ち出した農家の個別所得補償が有効な局面です。コメの価格維持ではなく農家の所得を補償することで、国内販売価格も下がるし円安と相まって輸出競争力も増す訳ですから、それを梃子に食料自給率を高めるというオーソドックスな食料安保政策になりますし、自民党の票田の農協を切り崩すことにもなります。立憲民主党の代表選ではこうした文字通り骨太の政策論争を期待します。

ノイジーサマーの北陸新幹線関連でも動きがありまして、与党PTが北陸新幹線小浜京都ルート早期着工を画策して25年度予算で事項請求をいいだしているとか。事項請求というには防衛費などで多用されてますが、金額を明示せず事項を明示するもので、執行段階で予備費等から付け替える狙いです。そのため実は防衛費GDP1%はとっくに突破していたりします。同じことを整備新幹線でやろうとしていますが、こうなると整備新幹線着工5原則無視どころか、財政民主主義に反する権力の暴走と言わざるを得ません。こんな与党は早く下野してくれ。

| | | Comments (0)

Sunday, August 18, 2024

災害の備えと憂い

バイデン不出馬のプランBで大統領選を混戦に持ち込んだ米民主党に倣った訳ではないでしょうけど、キッシーも総裁選不出馬を決めました。早速出馬に名乗りを上げる自民党議員が複数出てきてメディアはそれらしく報じてますが、騙されちゃいけません。プランBエントリーでも指摘したように、公職選挙法の縛りがなく実弾飛び交う自民党総裁選がまともな選挙になる筈がありません。派閥が解散しても派閥資金は宙に浮いている訳で、これがどう動くかで決まるだけの目晦ましです。寧ろ出馬に必要な推薦人20人の顔ぶれや唯一解散していない麻生派の動きに注目です。

検証 政治とカネ (岩波新書 新赤版 2021) 新書 – 2024/7/22 上脇 博之 (著)で詳しく解説されてますが、自民党の裏金問題はそもそも法の不備で抜け穴だらけで、通常国会で成立した改正政治資金規正法もザル法で意味がないことが国民にバレているのに、岸田では選挙に勝てないとばかりに顔を変えれば勝てると勘違いしているのが今の自民党という訳です。どうしようもない政治的茶番劇です。

その一方で正月の能登半島地震の復興は進まず、先日の日向灘地震が南海トラフ地震の震源域に当たるということで注意情報が出されて一部で海水浴場閉鎖などの措置が取られたりした中で、台風7号の直撃予報で東海道新幹線の16日終日運休を決めました。結果的に進路が東へ逸れて直撃はなく、一部で終日運休が批判されてますが、余地が困難な地震と違って予報の精度が高まっている天候の異変に先回りすることは、結果的に空振りに終わったとしても咎められるべきことではありません。

去年も本気の気候変動対策のように東亜気道新幹線が豪雨被害で運休となり、除却が駅に溢れ変更や払い戻しでみどりの窓口に長蛇の列ができて混乱しました。JR西日本はいち早く計画運休を決めていたことから判断を遅らせ情報提供も不十分だったJR東海は批判されました。その意味では今回のJR東海の判断は妥当なものと言えます。予知の困難な地震と違って予報精度の高い天候の異変に対しては、事前対策で災害の被害を減らすタイムライン防災の考え方が定着してきたということです。ましてJR東海は災害は忘れた頃にで取り上げた2000年水害の失態もありますから、よくぞ決断したと褒めたい気分です。

勿論JRにとっては稼ぎ時のお盆シーズンの終日運休は収益面ではマイナスですが、動かすことによる被害を回避することで余分なコストを減らす意味もあります。というか、そう考えざるを得ない程気候変動の影響が大きくなっているということでもあります。コストを言い訳に脱炭素をサボってきた結果でもあり、愚かです。

JR東海はプランBエントリーで取り上げた保守車両事故による運休もありました。このときはJR東日本が北陸新幹線に臨時列車を増発したり、ANAが臨時便を飛ばしたりしましたが、今回は北陸新幹線も列車を間引き、羽田成田発着便を中心に航空便も運休が相次ぎ、代替手段がなく前後の日に変更したり諦める人が殆どだったようです。関空連絡橋のタンカー衝突事故を受けて大型船舶の東京湾入湾規制まで実施されたぐらいですから、今回は仕方がないと言えます。一方保守車両事故の続報です。

衝突の新幹線保守用車、ブレーキ機能低下 点検に甘さ - 日本経済新聞
当該保守車両の一部に点検の不備が見つかりました。鉄道の世界で自動ブレーキと言われるもので、コンプレッサーで作った圧縮空気を空気溜めに溜めてホースで各車両に渡した加圧空気管でブレーキシリンダを緩め位置に保持し、ブレーキレバーで加圧管の空気を抜いてブレーキシリンダを込め位置に動かしてロッドで繋がったブレーキシューを車輪に押し付けて摩擦で止めるという仕組みですが、一部の保守車両で圧力不足でブレーキシューが込め位置のまま動かしていて過剰摩耗でスキマができていたということです。

営業車両では電気指令式が主流となっている中で、圧搾空気を用いる自動ブレーキが保守車両では残っていた訳で、また非営業で車籍のない保守車両故に点検に甘さがあった可能性はあります。技術の進化が不均衡なことを思い知らされますが、同時に盛土路盤にバラスト道床の東海道新幹線の特殊性があります。盛土路盤は豪雨時の緩みもありますから、保守精度を求められる高速鉄道の路盤として維持管理が負担になるんじゃないかとも思います。営業車両の一部へのセンサー搭載で2025年にドクターイエローの退役が発表されており、より多くのデータ収集が可能になるとしても、実際の保守作業が旧態依然ではこれがネックになる可能性もあります。

一方予知が困難と言われる地震も知見が増えており、日本列島はすごい-水・森林・黄金を生んだ大地 (中公新書 2800) 新書 – 2024/4/22 伊藤 孝 (著)で詳しく解説されてますが、大陸プレートと海洋プレートのぶつかり合う周縁部で比重の差から海洋プレートが沈み込み、その際に境界部が動いて地震が起きるし、また海水が地層に取り込まれて圧力の不均衡からマグマだまりができやすく火山が多数あり、温帯地域の大陸東端の多雨地帯であることもマグマだまりを形成するという不安定な日本列島で人工工作物の老い大都市の集積のリスクと共に、それ故に豊かな自然にはぐくまれた日本列島の特性を生かし切れていない現状からすると、集積を加速するリニアは不要だし建設は困難というリアルを直視すべきですね。故にリニアはプランBになり得ません。

| | | Comments (0)

Sunday, August 11, 2024

ノイジーサマー

株価の乱高下が続いております。おそらく新NISAデビューの人にとっては初めての経験でしょうけど、一方で日向灘で地震があり台風5号が東北直撃の予報です。秋田県で豪雨被害が起きたばかりなのに台風直撃の東北地方。お盆の帰省シーズンに水を注す自然災害に比べたら、株安なんぞかすり傷レベルではあります。

ネギ背負ったカモその他のエントリーで繰り返してますが、新NISAデビューの人はショックでしょうけど、個人投資家のスタンスとしては株は買ったら忘れろです。積立NISAの場合は特にですが、時価の変動は無視して積立を続けることで、複利運用の効果を高めますし、成長投資枠で個別銘柄を購入した人も、いずれ株価は戻りますから、配当を受け取りながら気長に待つというスタンスで良いと思います。但し自らの投資スタンスを見直すなら、いい機会ではあります。

積立NISAで購入者が多いと言われるオールカントリー株式投信(通称オルカン)などの積立株式投信は所謂パッシブ運用の投信で、上場株式の時価総額に合わせて個別銘柄を売買して市場のパフォーマンスをなぞることで手数料を安くできてリターンが多いし、昨今はアルゴリズム取引で自動化されていたりもします。その意味で合理的な選択ですが、残高が増えれば市場取引のウェートが増えて、株価に影響する様々なパラメータを参照しますから、今回の米雇用者統計の数値が予測値を下回ったり、インテルの業績悪化などのイベントに反応して自動的に売り込んで下げを増幅してしまうということが起きます。

見方を変えれば人が介在しない機械取引として謂わばAIが実装されているようなもので、そのAIがノイズを拾った結果の過剰反応ということが言えます。そしてノイズで拡がったボラティリティの着地点は容易に見つからず、上げと下げを繰り返すことになります。それに夏季休暇の薄商いがありますから、落ち着くまでには時間がかかりそうです。パッシブ運用の比重が高まればこういうことは起きやすいとも言えます。機械の過剰反応でも借株による信用取引をしている投資家は下げ幅が下限を越えれば追証を求められ、払い込まなければ自動解約されますから、更に株価を下げてしまい、最後は個人によるパニック売りで損を被るという流れです。こうした株式市場の特性を踏まえながら、個人の投資目的に合った投資スタイルの見直しをするのはあり得ます。損は高い授業料と割り切りましょう。

これ生成AUがフェイクを吐き出すのも同じ原理といえます。フェイクを拡散するには好都合ですが、余計なノイズを拾うこと自体は無くならないでしょう。故に使い方は要注意ですが、AIで生産性が上がるかといえば、有効なノイズキャンセル機能を実装しない限り、アウトプットの有効性の評価に人が関わることで生産性を下げてしまうことが多いと考えられます。これ古典的な情報理論でも説明できますが、情報の正誤が50%の時に意味のある情報伝達は成り立たないカオスになるというもので、逆に必ず間違えるなら寧ろ有効性があるという評価になります。そもそも人の聴覚構造が自然音から音声言語を峻別することで意味を捉えるように、ノイズキャンセル機能が備わっている訳です。将棋や囲碁のようにパラメータが限られていればともかく、現実の多くのパラメータを参照する以上、ノイズの混入は避けられません。それでこのニュース。

北陸新幹線、延伸費用は最大5.3兆円試算 物価高で増加 - 日本経済新聞
物価高でというよりも、京都駅アプローチの具体化によって精緻化した結果の事業費膨張です。インフレは税収を増やしますから、B/C比の悪化はある程度緩和される筈ですが、小浜京都ルートに付きまとうトンネル難工事問題や地下水問題に対する見かけ上の回避策を示す一方、事業費の膨張を示すことで、小浜京都ルートをごり押しする与党PTを国交省が諦めさせようとしていると見ます。ところがB/C比なんか無視していいとか、計算方法を見直せと言っているトンデモ議員たちには響かない。何しろ座長の西田議員はネギ背負ったカモエントリーで触れた電動キックボード解禁をゴリ押しした粒議員です。言ってみれば生身のノイズテーカーにノイズキャンセルを試みる官僚の構図が読み取れます。しかもほとんど無意味なな桂川案を安く提示しているし^_^;。ノイズキャンセルしないと寧ろ生産性を下げるのはAIと変わりませんね。

| | | Comments (0)

Saturday, August 03, 2024

波乱の8月

プランBで指摘した日米金乳政策の方向性の違いは予想通りでしたが、日米で株価下落が起こり、波乱のスタートとなった8月です。為替も円高へ動き、円安メリットが縮小したことや円安に助けられた日本株の株価押し上げ効果も剥落し、早速日銀の利上げにイチャモンですが、直接的にはには無関係です。そもそも今年年初は130円前後で、150円を割った今の水準は3月の日銀YCC終了時の水準とほぼ同じです。日経平均4万円台もこのときにつけました。今回の下落は別の原因です。

そもそもは米半導体大手インテルの業績不振とそれに伴う1,5万人規模の人員削減が発表され、半導体を中心としたテック株が売り込まれたことがきっかけですが、突然喰らうド障害の混乱や生成AIブームに陰りが見えてきたこともあります。加えて米雇用統計が予想を下回り、米景気にマイナス面が見えてきたことで、9月FOMCで利下げはほぼ確実視されながら、金利低下の恩恵を受ける筈のテック企業に逆風が吹き始めたってことです。AIバブルが弾けたと言っても良いでしょう。ムーアの法則で半導体業界牽引してきたインテルですが、微細化の壁に突き当たりました。先を行く台湾TSMCや韓国サムスンも手詰まりなのは同じで、寧ろ米中デカップリングで販路を狭められています。

米景気に関しては既に悪化しているという分析もありまして、実際インフレで賃上げが追い付かず実質賃金が下落する場面もありましたが、インフレの鎮静化で追いついてきたとはいえ、逆に企業の負担は増す訳ですし、堅調と言われる国内消費も、コロナ給付金の大盤振る舞いで支えられていただけで、家計の余剰資金は底を尽きつつあり、低価格品に消費がシフトしているとも言われます。加えてもしトラで低金利、減税、高関税、規制緩和なんぞしようものならインフレ再燃は避けられず、米経済も失速を余儀なくされるでしょう。中国の減速もあり外需依存の強い今の日本で株価が下がるのは当たり前です。そんな中で気になるニュースです。

JR東日本、Suica販売停止1年 ガラパゴス仕様で半導体作れず - 日本経済新聞
一時半導体不足から販売停止に追い込まれたSuicaとPASMOですが、半導体供給が増えて半導体市況を悪化させているにも拘らず、Felica用半導体はSuica販売停止を受けてメーカーの撤退が相次ぎ、今は1社のみとなっている現状です。一方で地方向けICカード乗車券やnanacoやWAONなどの流通系カードは販売されているのですが、販売量の違いから、十分な在庫がないと安定販売が出来ないということで販売開始に踏み切れず、そのためにメーカーの増産が難しいというジレンマに陥っております。故にインバウンド客へのSuica提供ができずに取りこぼしている訳です。

突然喰らうド障害エントリーで取り上げた国際規格のOpenLoopの台頭を許すことになりかねず、JR東日本にとっては頭の痛い問題です。そもそもは香港のオクトパスカードに始まったFelica系カードですが、ソニーが経営再建途上でEDYをNTTに売り、更に楽天に転売して袋小路に迷い込んだ結果、国際化を果たせず、量産効果によるコストダウンも実現できずということで、シャープやエルピーダメモリやジャパンディスプレイなど死屍累々の山を築いた日本企業の失敗の歴史をなぞっているとも言えます。折角香港で普及しているんだから中国や東南アジアで仲間を増やすことは出来た筈です。Felicaカードなら経済安全保障面でストップがかかる心配もないですし、寧ろ中国企業の参入でコストダウンしてたかも。

という訳で、こんな日本企業には円安でもなければ海外勢は見向きもしないという現実を認識できないで日銀に恨み言言っても始まりません。政府もTSMCやラピダスに補助金突っ込むよりもはるかに安上がりなFelicaチップ増産助けてやれよ。別のニュースです。

敦賀原発2号機不合格へ、日本原子力発電の経営に影響 大手電力負担重く - 日本経済新聞
福島の事故後発電停止された13年間、電力供給契約を結ぶ電力5社から基本料金として1.4兆円を受け取って黒字経営という日本原電ですが、東海第2は不祥事続きで地元同意が得られず、敦賀第2は活断層で審査停止で、流石に電力各社も契約見直しに動きそうということですが、再エネ賦課金が明細に記載されている一方、こちらの拠出金は明細には記載されておりません。同様に奉加帖方式で各電力会社に割り振られている福島の廃炉費用も明示されておりません。当然国民はその分高い電気料金を負担している訳です。

実際は太陽光を中心に再エネ電力が猛暑の夏の需要をカバーしていて電力不足は起きていません。AI普及田将来電力需要が増すとも言われますが、そのAIブームが著作権やフェイク問題などで規制が検討され、また電力消費で温暖化を促進するリスクも言われ、見直しでAIブームが踊り場にあるのは上述のとおりです。つまりAIで人類滅亡を早めるかもという微妙な問題がある訳です。

| | | Comments (2)

« July 2024 | Main | September 2024 »