年収の壁のウソ
もう一つの高齢化問題で世代間対立を煽る国民民主党の姿勢を指摘しましたが、今度は103万円の壁を持ち出して与党に飲ませようとしております。「選挙中から手取りを増やす」という公約を掲げていたことからきているのでしょうけど、重大なウソがあります。
年収の壁問題はブルシットジョブ型雇用の国で解説しましたが、103万円の壁は事実上存在しません。法改正されて現状は基礎控除48万円+給与所得控除55万円で合計103万円ですが、年収103万円を超えると所得税が課税されることは確かですが、最低税率の5%が課されるだけで超過1万円毎に500円というレベルです。つまり働いた分手取りは増える訳ですが、社会保険料負担が生じる106万円または130万円の壁ではいきなり保険料負担が来て具体的に手取りが減りますから、103万円の壁とは状況が異なる訳です。
社会保険料は負担の一方で給付と紐付けされている訳で、厚生年金に加入すれば老後の年金受給額が増えたり妊娠出産一時金などもあります。この辺の説明が不十分ではありますが、国民民主党が言うような給与調整という意味では、寧ろ社保加入で雇い主の負担が増えることの方が勤務時間短縮に影響している方が大きいと思います。高齢者の尊厳死を持ち出してまで「手取りを増やす」から社会保険料も見直せと言っている訳ですが、それなら事実上制度にただ乗りしている第3号被保険者制度の見直しが先です。
元々第3号被保険者制度の始まりは1985年の基礎年金制度で導入されたものですが、戦前に始まった厚生年金が世帯単位の加入なのに対して、国民年金は主に農家を含む個人事業主向けで個人加入と異なるスタイルの制度ですが、高度経済成長期の工業化の進捗で農家の余剰労働力を吸収してきた一方、所謂脱サラで商売始める人も少数いてザックリ言えば個人事業主は雇用の調整弁の役割だった訳です。故に赤字3Kの掟?で指摘したように赤字体質だった訳で、1985年の年金改革で基礎年金制度として加入者が増えていて余裕のある厚生年金や共済年金からの会計間扶助を狙い「国民皆年金達成」を謳った訳です。第3号被保険者制度はこのときに始まったものです。
つまり最初から厚生年金等の被用者年金に寄生する形の制度だった訳で、現役世代の手取りを問題視するなら真っ先に見直すべきです。今年も行われた年金会計検証でもスルーされた一方、国民年金加入期間の5年延長や支給開始年齢の繰り下げなどは毎回検討課題に挙げられるなどしており、今の現役世代にとっては負担は増えて給付は遠くなるという話です。加えて言えば被用者年金が世帯単位の加入であるために、所得代替率の算出も正社員の夫と専業主婦に子ども2人の標準世帯の試算としていますが、現実はそれでは家計が賄えないから共働きが増えている訳ですが、夫婦とも正社員の場合の世帯所得が標準世帯と同等の場合は単身世帯2人分として年金支給額は標準世帯と同じになるよう調整されてます。つまり第3号被保険者は完全にタダ乗り状態です。年収の壁は専業主婦がパートなどで家計補助する場合に問題になる訳ですが、第3号被保険者制度がなく専業主婦が国民年金に加入していれば保険料負担はある訳で、社会保険加入で国民年金保険料負担が無くなることで実質的に年収の壁が無効になるというのがすっきりした解決策ですが、そこへ踏み込まない国民民主党は不誠実です。
選挙期間が短く上記のような説明は伝わりにくいからキャッチ―なスローガンで有権者にアピールして票を集めるというのは選挙戦術としてはあり得ますが、選挙後に取って付けたような103万円の壁を持ち出す時点で有権者を騙したに等しいと言えます。28名と議席を4倍増して20代30代の指示が多かったと分析されてますが、これポリティカル・マーケティングの都知事選の石丸現象の再現ですね。難しいこと言わずにキャッチ―なフレーズで自らをキャラ立ちさせれば票が取れるということです。どうも石丸氏と同じ選挙参謀が裏にいるようです。
東京メトロ上場、時価総額1兆円に 個人活況で売買首位 - 日本経済新聞長くなりましたので、東京都繋がりでこのニュースを取り上げます。売り出し価格1,200円に対して初値1,630円がついて現状も1,600円台半ばあたりで割と安定した推移でまずまずのスタートですが、課題もいろいろあります。東京都の対応が国を振り回した結果、完全民営化は見送られました。それを含めて今の株価水準は正直割高と見ております。詳しくは別に機械に譲ります。
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