インフラゾンビの見つけ方
まず令和のコメ騒動の答え合わせ。
コメ不足の真実 - 日本経済新聞コラムの著者は農水省の21万トンの流通段階の行方不明説を否定しています。かつて9割以上だった農協集荷が法改正で集荷業者の新規参入で農協のシェアが5割程度まで下がり、農水省が把握していないだけの可能性が高いのですが、実際は2023年の40万トン減産に対して2024年に18万トン増産で差引22万トンのマイナスで、従来はコメが値上がりすればコメ離れで消費が減って結果的に値下がりというサイクルが続いて作付自体が縮小均衡しててコメの市場規模が縮んでいました。
今回は世界的な日本食ブームとインバウンド客の増加で主に外食で消費が増えた結果、全体の消費があまり減らず2024年の新米出荷前の端境期にコメ不足が顕在化したもので、農水省の言う行方不明の21万トンは最初からなかったという見立てです。ということは備蓄米放出で一時的に値下がりはあるでしょうけど、逆に買い溜めを助長して直ぐに値上がりすることが考えられます。それでいて農水省は1年以内の買い戻しを言ってますから結局先行き値下がりはなく、それどころか逆に投機を呼び込みかねない愚策です。米価を下げたくない農水省の本音が見えますが、今回は石破首相の何とかならないかという指示があって渋々でしょうけど、だから却って市場をかく乱させることをやっちゃうんですね。まあ目先しか見ていないのは農水省に限りませんが。
埼玉・八潮で県道が陥没、車両転落 1人救助中 - 日本経済新聞2週間前のニュースで、しかも後の顛末も含めて深刻な問題を含みます。とはいえ単純にインフラの老朽化問題と括ると本質を見失います。というのも、現地はつくばエクスプレス開業を機に開発が進んだ地域で、崩落地点の下水道管も耐用年数をけていないし、県の広域下水道の一部として定期点検も行われ、直近の点検で異常は見つかっていないとも報じられております。国土交通省の統計では2022年度で年間10,548件の道路陥没事故が起きており、都市部では3割が下水道管が原因だそうです。ということで下水道特有の問題も視野に入れておく必要があります。
上記エントリーでも触れてますが、去年の8月21日の都内の豪雨で東海道新幹線や山手線などの運転抑止の一方で地下鉄南北線市ヶ谷駅や都営大江戸線六本木駅のコンコースに水が流れながら営業を継続したことで、東京の地下鉄の水への耐性とそれを支える公共下水道の能力の高さを示しましたが、一朝一夕にできたものではなく、長い歴史の中で整備されたものです。実際1960年代前半は都内でも杉並区など郊外部では上下水道も都市ガスもなく、上水は井戸で下水は側溝から川へ流す垂れ流し状態でしたが、下水道が先に整備されて井戸が枯れて掘りなおしたりして凌いで後に上水道が整備されました。無圧で勾配をつけないと水が流れない故に深くなる下水道管を先に整備した結果ですが、一応都市計画に沿って整備された訳です。人口密集地だから税収も多く計画的な整備が可能だったということでしょう。
八潮市など隣接県の人口増加は遅れて進みますし、相対的に自治体税収も少なく、開発の進捗に合わせて後追いで整備される形になる訳で、都市計画と整合的な整備ができるとは限らないし、特に八潮市のように最近まで田園地帯だった地域の場合、平地で地下水位が高いと下水道管整備のときの埋め戻しで土が締まっていないと地下水を集めてしまって軟弱化したり、また下水道は有機物を含む汚泥も流れますから、化学変化で硫化水素が発生し水と反応して硫酸になって下水道管のコンクリートを腐食させることもあるということで、崩落の原因となる可能性はいくつか考えられます。仮に腐食が原因とすれば別ルートのバイパスを整備して作り直す必要があり。最低3年かかると言われています。当然バイパスルート上の住民の同意という壁もあります。
公共インフラの維持問題は人口減少下で大きな課題です。民間インフラの場合地震で盛土崩落の東名高速で指摘した減価償却によって東海道新幹線の盛土崩壊がなかったように維持費が手当てできますし維持管理のインセンティブも働きますが、国や自治体が管理する公共インフラの場合その仕組みがない訳で、今回の事故を機に解決を図ろうにも予算がないということになります。さてどうする?
地方創生、26事業で予算過半余る 成長呼べぬ甘い政策 - 日本経済新聞政府は地方創生助成金の倍増を言いますが、予算は余らせるしコンサルタントの助言に従って全国で似たり寄ったりの金太郎飴政策で成果も見えていない。ただコンサルタントへの報酬だけは確実に執行され、中にはマッチポンプで私腹を肥やす悪徳コンサルタントも。地方は創生できないこんな交付金やめて公共インフラ保全に回せないか?
能登の消雪装置9割使えず 地震で配水管損傷、復旧長期化 - 日本経済新聞地震から1年以上経ってもライフライン復旧が進まない能登半島ですが、雪国の公共インフラとしての消雪装置は9割が使えない状態で、上下水道などより優先度が低いということで、当然ながら今回の寒波で移動や物流を阻害して被災地を苦しめます。温度が安定している地下水を汲み上げて道路に張り巡らせた排水管から路面へ流すものです。てことで雪繋がり。
なぜ東海道新幹線は雪に弱いんですか?―― どうしても“遅れやすい”理由 雪以外にもあった | 乗りものニュース寒波の大雪で北陸新幹線がほぼ平常運転だった一方、東海道山陽新幹線に遅れが出ました。その為か湯金強い北陸新幹線を雪に弱い東海道新幹線に繋げる米原ルートを腐し、小浜ルートの優位性を騙るネットの書き込みが見られましたが、ここまで表面的にしかものを診ないネットユーザーに眩暈がします。
のりものニュースの記事にあるように、東海道新幹線が雪に弱いのは雪以外のファクターがあります。簡単に解説すると新幹線列車が高速走行で積雪地をは通過すると、列車風で雪を舞い上げ、プラス気化熱で氷塊を車両に付着させます。それが融解して線路に落ちると道床のバラストを跳ね上げて床下機器などを損傷して走行不能になるトラブルが開業後に頻発し、積雪の多い関ヶ原付近で地下水の水利権を国鉄が購入して列車通過時にスプリンクラーで散布することで氷塊付着を防止することで安定させましたが、それでも雪が多かったり今回のように積雪範囲が広がった場合には、列車を徐行させて氷塊の付着を少なくする一方、駅停車中に人海戦術で氷塊をこそげ落とすことでトラブルを防止している訳で、徐行や駅停車時間の延長で遅延が生じる訳です。
山陽以降の新幹線は高架橋に固定したコンクリートスラブの道床にレールを固定してますから、バラストの跳ね上げはありませんし、東北以降では積雪地帯走行を前提に特に雪の多いと開床式高架として車両の前頭部のスノーブラウで排雪して下へ落とすことで積雪自体を減らし、またボディマウント構造といって床下機器がカバーで覆われた車体構造でモーター冷却風も雪切り室のフィルターを通して供給することでトラブルを防ぐという風に車両側でも対策されてます。そしてほとんどの区間が盛土の東海道新幹線ではバラストの量で線路レベルを微調整することが必須ですので、北陸新幹線並みに耐雪強化することは困難です。
しかし逆に言えば東海道新幹線が雪でダイヤが乱れる時には雪に強い北陸新幹線車両の優先運行で輸送力を確保するという裏技も可能になる訳で、こうした点は米原ルートの具体化の過程で調整可能な問題です。B/C比だけじゃない小浜ルート派の誤解です。
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