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April 2025

Saturday, April 26, 2025

Suica甘いか消費税の鬼が笑う減税ドミノ

Suica甘いか消費税のインプレゾンビの迷走ぶりが笑えない状況になっています。

参院選にらみ減税ドミノ 立憲民主・野田氏が一転容認、財源論後回し - 日本経済新聞
先に断っておきますが、減税反対の立場で書いております。減税派が言う「できない理由」を並べるのではなく、上記エントリー*1で指摘したように無意味だし減税すべきではないという立場です。そして野党各党が消費税減税を掲げ、更に与党も自民党の積極財政派のみならず公明党からも減税論が出てきている中で、立憲民主党だけが減税論に流されずにいたところでの日和見ということで、ガッカリしています。その結果自民党幹部から「財源の裏付けなし」という正論を言われてしまうという倒錯*2が起きています。

財源論を持ち出すと財務省の回し者呼ばわりされますが、インフレ環境での財政出動は英トラスショック*3の二の舞になり、国民生活を困窮させます。別に財務省のレクで洗脳された訳じゃなくて、経済学上の常識に属します。マクロ環境のインフレ―ションというのは総需要に対する総供給の不足から生じていて、供給に見合わない需要の強さが原因ですから、需要を喚起する政策は事態を悪化させます。また貿易収支が赤字転落し、財政赤字が大きい中での赤字財政が続き債務残高がGDPの200%超の日本では、トリプル安はいつ起きても不思議ではない状況です*4。

立憲民主党の日和見の問題は、参院選を控えて党内の減税論を抑えきれなくなったもののようですが、それ故に枝野元代表がさいたま市内の講演で減税ポピュリズムとして釘を刺しました*5。責任政党としての矜持として野田代表へのアピールでもありますし、昨年の総選挙でも消費税減税を引っ込めて給付付き税額控除の導入を打ち出したのですが、党内ですら理解が進んでいなかった中で選挙が近づいて来だがゆえに、意思統一を図ったものです。故に党分裂にならないように意見のすり合わせを求めたものですが、減税派に押されたのか、来年度1年限りの食品ゼロ減税と将来の給付付き税額控除導入という何ともわけわからない着地点となりました。来年の話は鬼が笑います^_^;。

財源論の問題があるので、仮に消費税減税を行うとしても、法律を通して来年度からの実施となる訳で、故に例えば与党の公明党のように減税に先立って年度内に給付金も実施するという分かりやすすぎる選挙目当ての議論もある中で、1年限定としたものの、経済情勢如何での延長圧力が働きますから、結果的に1年じゃ済まなくなりますし、また食品全般を対象とするのか?コメや野菜など価格高騰して生活を圧迫するもの限定とするか、あるいは小売り段階だけのゼロ減税とするのかなどの論点も詰められておりませんし、それらを勘案すると政治的リソースをかなり減耗させる一方、各党が減税を主張する中では集票効果も限られますから、選挙対策としても愚策です。寧ろ悪目立ちしても良いから給付付き税額控除で勝負かけた方が、有権者には響きます。

枝野氏は講演で「キャッシュバック」という言い方で給付付き税額控除を説明してますが、消費税の最大の問題は逆進性にある訳で、それを緩和するために所得税から税額控除し、税額が控除額を下回る場合は差額を給付するという形で「負の所得税」とも言われ、欧州やカナダなど複数の国で採用されている制度であり、金額にもよりますが制度の議論が進めばそれを受ける形で補正予算で年度内実施も可能性があります。加えて控除対象を社会保険料に拡張すれば、所謂年収の壁問題もほぼ解決しますし、世帯人数分の控除が受けられますから、扶養控除と置き換える形での導入ならば財源問題もクリアできます。勿論この辺は制度設計次第ではありますが、国民民主党の基礎控除引き上げや維新の高校無償化よりも社会的包摂性は高まります。その辺の理解が進めば与党が相乗りする可能性もあります。参院選は政権選択ではなく、勝敗は政権交代に直結する訳ではありませんから、だからこそ少数与党の相乗りを誘って政策実現を図る方が国民を助けることに繋がります。ポピュリズムに勝者はいません。

大阪メトロ中央線で一時運転見合わせ 万博会場そばの夢洲駅混雑 - 日本経済新聞
前エントリー*6関連ですが唯一の鉄道アクセスの地下鉄中央線の運休で万博の帰りの足止めという事態が起きた訳です。思いつきで万博やって泥縄で混乱するポンコツぶりは何より政治のポピュリズムの成れの果てです。こうならないためには我々国民がしっかり政治を監視しなければマズいってことです。

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Saturday, April 19, 2025

大転け・完敗万博

大阪・関西万博が始まりましたが、予想通りというか、泥縄が露呈しています。

大阪万博、地下鉄は何度も入場規制 バスは予約優先 - 日本経済新聞
万博会場の夢洲はごみ埋め立て地の人工島で、アクセス手段が限られており、不安視されていました。地下鉄中央線夢洲駅と東ゲートが直結されており、メインルートとなるほか、JR桜島線桜島駅から路線バスタイプのシャトルバスで向かうサブルートの他、主要駅からの観光バスタイプのシャトルバスや指定駐車場からのシャトルバスで向かうパークアンドライドなど多様なアクセス手段を用意していましたが、実際は地下鉄中央線に見学客が集中し、JR大阪環状線乗換駅の弁天町の地下鉄駅で混雑から改札が入場規制されるなどで見学客の遅延が生じ、また東ゲートの入場ゲートのセキュリテイィチェックが手間取り、携帯基地局のキャパオーバーでチケットのQRコードがスマホに表示されないトラブルもあり、完全予約制で混雑のない万博を標榜したことが、2時間遅れで予約時間に間に合わないとか、帰宅時間の夢洲駅の混雑で行列で1時間待ちで「入るには入れず帰るに帰れない」と不満。加えて悪天候で雨宿りする場所がない、巨大リンクの大屋根も風雨の吹き込みでびしょ濡れ。バスアクセス中心の西ゲートではシャトルバスを予約制にしたのに、万博チケットと別の交通系サイトの目立たないメニュー表示でそもそも辿り着く人も少なく予約はガラ空きなのに、帰宅希望の予約外客が殺到して予約客優先のオペレーションで大混乱助長といった具合です。そして道路アクセスも橋と海底トンネルの2ルートだけで、しかもシャトルバスの優先運行故に事実上タクシーが使えない。地場のタクシー業界から改善を求められているのに対応せずという具合です。

アクセス交通の混乱は、実は4月6日のテストランでも見られたことで、交通アクセスの弱点は明らかでした*1。テストランでは予約より早く来た人が多く、ゲートの混雑による一時滞留で夢洲駅の混雑が課題とされましたが、テストラン参加が5万人の一方初日13日の入場者数13万人で倍以上とはいえ、半年の期間中2800万人の入場者数を達成しなければ赤字確定で、1日平均15万人の入場が必要ですが、当然日のよって変動がありますから、少なくとも倍の30万人の入場も視野に入れなければならない訳です。初日の入場ゲートの混乱の解消から言えばかなりハードルは高いと言えます。初日の弁天町駅の入場制限のように思わぬ場所に混乱が生じる可能性もありますし、地下鉄中央線が事故等で運休した場合の混乱もあり得ます。そして初日の大雨のような悪天候もありますし、これから暑くなるシーズンで会場に日よけが乏しく熱中症対策が難しいこと*2もまた問題です。そしてトイレのトラブルやメタンガス問題などまかり間違えば大惨事になりかねない問題*3を抱え、始まったばかりなのにすでに終わっている-_-;。そもそも夢洲開発はカジノ構想ありき*3でタイムスケジュールから2025年の大阪万博開催というタイトなスケジュール*4になった訳です。大量の公費投入でカジノ企業を誘致する大阪維新の姿勢はレントシーキングのカモフラージュでもあります。

比較される1970年の大阪万博と何が違うのかですが、時代背景と会場の立地と交通アクセスの違いがかなりあります。70年万博の会場となった千里丘陵は大阪の市街地にほど近い山林地帯で未利用の土地が多かったし、広さもあったから、白紙に近い状態で開発が計画されました。御堂筋を北へ延ばした新御堂筋と大阪郊外の環状道路の中央環状線の整備に伴い、新御堂筋に付帯する地下鉄1号線(御堂筋線)の延伸が同時施工で整備が計画されましたが、市営故に大阪市境をちょっと超えた吹田市江坂までが都市計画に盛り込まれたものの、その先は大阪府による千里ニュータウン計画ということで、府市の管轄の壁があったことは確かですが、同時に京阪神急行電鉄(現阪急電鉄)の営業エリアで阪急バスが京都線や千里線などの鉄道駅へのフィーダー輸送を担っていました。そこへ新御堂筋が通り、地下鉄が伸びてくるとなると穏やかではいられません。そこで阪急は大阪府や関連自治他の出資を仰いで北大阪急行電鉄(北急)を立ち上げ、御堂筋線と直通する鉄道の権益を得た訳です。所謂第三セクターの走りですが、自治体の出資は従であり阪急グループ色の強い企業です。

一方で大阪市内の交通を巡る熾烈な争いがあって、京阪電気鉄道がターミナルの天満橋から淀屋橋へ延伸して都心乗入れの先鞭をつけましたが、大阪市内の鉄道事業は大阪市が地下鉄網を整備して私鉄の進出を抑えようとする一方、在阪各社は都心進出の機会を窺っていました。近鉄は上本町から難波への延伸、阪神は戦前の急行線複々線化構想の落とし子の伝法線を難波へ延伸して近鉄との直通を模索し、千鳥橋、西九条と小刻みに開業させて西大阪線に改称という動きをしました。阪急は新京阪線のターミナルだった天神橋から堺筋を南下する構想を持っていましたが、大阪市の地下鉄6号線(堺筋線)、南海電気鉄道も堺筋を北上する構想を持っていて競願状態で当時の運輸省鉄道局は3社局で協議して結論を得るまで免許交付しないという立場を取り、協議の結果天神橋ー動物園前間を大阪市が整備し、阪急と南海が相互直通するということでまとまり、とりあえず万博関連事業として万博会場近傍を通る阪急千里線との相互直通を優先して軌間4ft8in・1/2(1,435㎜)の阪急に合わせて整備されることになりました。そして北急を中央環状線に併設される中国自動車道を対面通行2車線の暫定開通として4車線化の用地を利用して線路を敷いて万国博中央口までの期間限定の会場線に利用し、会場西ゲート近くを通る阪急千里線に臨時駅の万国博西口駅を設置することになり、鉄道2路線でアクセスが確保されていたことで、混雑を分散できた訳です。結果的に万博輸送を阪急は独占したことになります。そして大阪のミナミに対するキタの比較優位が確立します。

また新御堂筋と中央環状線の整備でシャトルバスによる広域アクセスが可能になり、特に国鉄茨木駅・阪急茨木市駅からの中央環状線のシャトルバスはバス事業で阪急より優勢な京阪バスや当時直営の近鉄バスが参入し、独占エリアとはいえ阪急単独でのシャトルバス運行は無理だったけれど、万博関連で協業ができた訳です。今回の大阪・関西万博では市営バス改め大阪バスと京阪バスが特に力を入れているようですが、ドライバー不足のご時世で交野市の京阪バス撤退という事態もあり、関西でも批判を浴びています。公費を投入したイベントで不便になることは許容されることではありません。

70年万博関連では近鉄難波線と鳥羽線の開業、三重電気鉄道由来の志摩線の改軌と万博輸送に直接関わらなかった近鉄が集中投資で経営基盤を強化しました。並行する地下鉄5号線(千日前線)とは同時施工で並行して整備されましたが、万博に伴う外国人観光客来阪対策で通りました。一方そうした流れに乗れなかった阪神西大阪線の延伸は地下鉄5号線との競合故に進まずなんば線として結実するのに長時間を要しましたし、南海は中央環状線アクセスの阪神高速松原線と同時整備された地下鉄2号線(谷町線)の南進に伴って大阪軌道線の平野線が廃止され、堺筋線の天下茶屋延伸で天王寺支援が廃止、更に地下鉄御堂筋線のなかもず越境延伸とエリアを侵食されています。70年万博の経済効果は均等ではなかったのです。その意味で今回の大阪・関西万博の経済効果3兆円は鵜呑みにできません。また関西のGDPシェアは70年万博の100.78%をピークに低下しており、イベント依存の限界でもあります*5。

南海に関しては関西空港連絡輸送で外国人見学客の渡航需要を受けられるとはいえ、直接的なメリットはあまりなく、やはり万博には縁が無いのか?なにわ筋線が開業していれば南海も恩恵があったかもしれませんが、やっと事業着手の段階ですから間に合う筈もありません。なにわ筋線の建設には実は南海も関わってまして、大阪市の市営地下鉄民営化構想に連動して大阪府出資の第三セクターの大阪府都市開発(OTK)の持ち分売却を行いOTKの事業部門だった泉北高速鉄道の売却で揉めて最後は南海電気鉄道に売却されました*6。そしてその売却益はなにわ筋線の整備主体となる関西高速鉄道の資本増強に回すことになっていたので、間に合っていれば南海の泉北線買い取りの資金回収が早まったことになります。これ70年万博で北急が万博輸送対応で大量発注した大阪市営地下鉄規格の電車を、万博終了後に大阪市に売却して元を取って資本費負担を軽減した結果低運賃を維持して最大限メリットを享受したことと対照的です。またなにわ筋線絡みでは京阪中之島線がなにわ筋線開業を睨んだ事業ですし、阪急のなにわ筋連絡線(大阪~十三)と新大阪連絡線(十三~新大阪)構想もありますが*7、後者は南海との直通運転を構想しながら具体的な協議が行われておらず、仮に梯子を外されれば堺筋線の二の舞になります。という訳で欲得絡みの関西鉄道業界事情は比較的摩擦の少ない首都圏の業界事情と大きく異なります。中之島線にしろなにわ筋線にしろ鉄道整備にも公費が投入される中で、公正さが担保されているか?維新絡みではいろいろあり過ぎて疑問を禁じ得ません。

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Saturday, April 12, 2025

経済戦争を啓示した全農の神

自称*1走ルンですの黙示録wwwww。

米国の国債・株・為替が「トリプル安」 相互関税発動で - 日本経済新聞
アメリカが9日に相互関税を発動した直後に安全資産とされる米国債が売られ、為替市場もドル安に振れる異変が起き、株安と相まってトリプル安となりました。所謂リスクオフ市場ではリスク資産の株式が売られて。投資資金が安全資産とされる債券にシフトするから、債券価格が上がり金利が低下するものですが、債券が売られ、しかもドル安が同時進行する展開で、考えられるのは海外勢の米国債売りで、米国債で高いポジションを取って評価損を抱えていた農林中金の損切り売りが疑われる状況でした。実際ホワイトハウスの公式発表で「日本のヘッジファンド」という表現がされています。

全国の農協が金融事業で集めた貯金は農林中金に預託されて運用されて各農協に配当される形で農協の経営を支えています。コメを含む農産品の出荷や肥料や農薬の販売といった経済事業では儲からず、組合員向けの農機ローンや住宅ローンなどで手数料を稼ぐなど金融事業で支える収益構造で、その土台となる農林中金の機関投資家としての運用益が農協の全国組織たる全農を支えているとも言えます。つまり全農の神^_^;*2。

アベノミクスで日銀の異次元緩和の低金利で組合員から集める貯金の利息はほぼゼロ近傍で、それを外債投資で利ザヤを稼ぎ、それに加えて為替差益もあって我が世の春だったけど、インフレで保有米国債金利が上昇して評価損を抱え、関税騒動でリスクオフ相場となって金利が戻したタイミグで損切りに動いたというありそうなシナリオです。一方植田日銀の金融正常化で利上げスタンスで既に銀行が利息を上げている状況では農協貯金も利息の見直しは避けられず、調達コストを押し上げます。

米政府は当初米国債を大量保有する中国政府による国債売却を疑ったフシがあり、金融戦争になりかねない危機を察して「相互関税」の上乗せ分の90日の執行延期を発表しました。トリプル安は基軸通貨ドルの信認に関わる一大事で、それこそ中国に留まらず貿易決済をドルに頼る日本を含むアジア諸国や産油国が一斉に売りに回れば大惨事となる訳で、止めざるを得なかったということですね。故に単純な朝令暮改ではなく本当に肝を冷やしたんだと思います。そして90日の猶予は中国だけは適用されず、関税合戦の結果、アメリカの対中関税は145%、中国の対米関税は125%となりました。当然世界経済へのマイナスは避けられませんが、最も傷つくのはアメリカです。

経済不調の中国ですが、関税合戦の打ち止めを発表しております。実は米中の泥仕合は中国の方がアドバンスがあります。不動産バブル崩壊で内需は不調ですが、日本のそれと比べたら銀行の不良債権も深刻さは軽く、実際日本で見られた投資の萎縮もありません。EVや太陽光発電といった次世代技術で世界シェアトップを取り、且つ必要なリチウムやレアメタル、レアアース等の希少資源のほとんどを国内生産または権益保有で他国を圧倒しており、脱炭素に後ろ向きだったアメリカとは差がついています。トランプ大統領がウクライナの鉱物権益を欲しがる理由もこれです。

半導体も最先端品こそ劣後しているものの、国産化で汎用品の輸入代替は進んでおり、DeepSeek*3のような最先端品に依存しないイノベーションも起きています。加えて最近あまり言わないけど、一帯一路で外需を取り込み仲間を増やす戦略も着々と進んでいます。そして大声じゃ言えないけどスリーマイル事故以来原子力産業を失ったアメリカに対して、核兵器開発で得た知見で原子力発電でも差をつけており、AI向けデータセンター用電源の面でもアメリカはハンデを負っています。加えて一帯一路で内需の不信をカバーしつつ仲間を増やす戦略も健在です。逆にアメリカは関税騒動で見限られつつあります。例えばこのニュース。

パナマ運河2港売却進まず CKハチソン縛る米中綱引き - 日本経済新聞
パナマ運河を巡るあれこれも複雑なんですが、アメリカのパナマ運河返還要求に対して、パナマ政府は引き渡しは拒否しつつ、運河水位低下解消のための人造湖拡張に対するアメリカの住民補償肩代わりなどの条件に応えて2港湾の権益を持つ香港資本のCKハチソンの子会社を米ブラックロック他の出資する投資組合への譲渡の仲介をし、一帯一路からも離脱するなどアメリカに協力姿勢を見せたものの、投資組合の資金集めが停滞して宙づり状態になっておりますが米政府が助け舟を出すこともなく停滞しています。アメリカに忖度して譲歩してもこんな目に遭うとなれば、距離を置く国が増えて中国を利することになります。

加えて米国債大量保有の中国にとっては、使える武器として認識された訳です。今回のトリプル安で弱いドルに対してすら元安が進んだように、今回中国は動いていないと見られますが、同時に元安は関税ショックを和らげる一方、イザとなれば米国債を売り浴びせて米政府を慌てさせることもできるということで、中国政府のさじ加減次第でアメリカの関税攻勢に対抗する武器に使えることを悟った訳です。ですからパナマのように米中の争いに巻き込まれないことが重要ということですね。

極力米中以外の国との関係を強化して影響を軽減することが大事で、米国内投資を梃子に譲歩を引き出そうとする日本政府の姿勢には不安があります。例えばLNG輸入拡大ですが、アラスカのガス田で生産された天然ガスを現地のLNGプラントで冷却液化して、専用輸送船で冷却輸送して日本の受け入れ基地でタンクに保存するという風に大規模な設備投資を伴いますが、通常ならば相対の長期契約を結んで投資を分担するところを全部の投資負担を押し付けられる可能性があり、それでも引き受ける民間企業があるでしょうか。パナマの事例はそのリスクを示します。そういえば船舶牽引用のパナマ運河鉄道は日本の技術で整備されたアプト式鉄道ですが、パナマ運河改修に伴う設備更新に日本のお鉢が回って来るかどうか。懲りたパナマ政府に中国が安値受注仕掛けたらと考えると不透明です。トランプ関税はこのように投資環境を不安定にするばかりで中長期でアメリカの力を削ぐだけですね。最後にちょっぴりの鉄分でした^_^;。

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Saturday, April 05, 2025

MAGAのリアル

MAGA不思議なアメリカが本格始動しました。

アメリカ公表の「相互関税」全リスト 日本24%、中国34% - 日本経済新聞
とりあえず各国一律10%関税が始まり。国別の上乗せは9日からとしてますが、その間の各国の反応を見る為です。早速中国とカナダは報復関税を課すし、EUも米国内投資の停止指令を出して対抗する姿勢を示す一方、メキシコは様子見と国毎に対応が分かれます。日本はと言えば除外を懇願するという対応ですが、これ一番まずい対応です。理由を以下に述べます。

そもそも相互関税というのは二国間で協調して相互に関税を下げる場合の用語法ですが、今回はアメリカが一方的に関税を課す訳ですから相互関税と呼ぶのは誤りです。しかも各国の関税率は10%の最低ラインを前提に各国の対米貿易状況を「貿易赤字高÷輸入高×100÷2」という雑な数式で導き出しているものです。つまり輸入に占める貿易赤字の百分率の半分ということで、輸入超過分はアメリカが搾取されたものと見做しつつ、半分にまけてやるという意味です。つまり二国間交渉の土俵をアメリカが用意している訳で、それに乗れば確実に負けます。

また米中対立でチャイナプラスワンとして投資が集中し漁夫の利を得た東南アジアのベトナムやカンボジアの関税率が高い訳です。関税回避の為のサプライチェーン見直しを迂回貿易と捉えている訳で、大ぐくりで言えばターゲットは中国ということになります。しかし日本企業の多くが中国の拠点を東南アジアに移しつつある中で出口を塞がれたということでもあります。仮に日本だけ除外してもらっても日本企業は救えません。報道によると日産が関税回避で国内生産の米国内移管を検討というニュースもあり、存亡の危機の日産には言い訳が立ち神風かも^_^;。とはいえ株は大変なことに。

NYダウ急落、2231ドル安 関税応酬で史上3番目下げ幅 - 日本経済新聞
新聞の株式欄がストップ安で真っ黒という見慣れない椿事ですが、冗談抜きに経済のブロック化で国際貿易縮小し大恐慌へ発展し、各国の対立激化で果ては世界大戦ということも心配した方が良さそうです。防衛費3%と言われなくて良かったとか、逆にディールのカードとして米製兵器買いますとか言っちゃまずいってことです。特にハイテク株の下げが目立ちますがDeepSeekショックで指摘したようにAI開発に資金突っ込み過ぎた結果のバブルが今回の関税騒動で剥落したとすれば、相場が戻る可能性は低いと言えます。

てことでMAGA勢の動きを止めるとすれば皮肉にも市場の圧力ということになりそうですが、トランプ政権の高官が「デドックス」と表現するようにMAGA勢はバイデン政権の政策の否定をテーマにしていて、政権移行初期の今なら不都合なことは全て前政権のせいにすることも可能と見ている訳です。安倍政権が「悪夢の民主党政権」と言ってデタラメやったことを見倣っている訳です。つまりアメリカは今後衰退する道に入る可能性が高い訳で、関税まけて欲しさに安易な譲歩はすべきではない訳です。同時に今回の関税問題は反対派を混乱させる情報戦の意味もあります。

そして株式以外の市場もいろいろ動いておりまして、株式市場との裁定で債券市場は上昇し金利低下しており、日米金利差も縮まって円高に振れました。所謂リスクオフ相場で高リスクの株式から低リスクの債券に式がシフトしてリスクオフの円高となっておりますが、この動きは早晩止まると見られます。米FRBにとっては関税はインフレを呼ぶことになりますから利下げが止まり、寧ろ利上げシフトすらあり得る一方、日銀は先行きの不透明感から利上げに動きにくくなります。加えて日銀ETFの含み損で財務が傷つき、踏み込んだ利上げがやりにくくなります。故に日米金利差は寧ろ拡大に向かうと考えられます。オマケですが年金運用のGPIFも含み損が発生してますから、去年の年金財政検証はやり直すべきです。

一方で原油価格は値下がりしており、これは関税発動前の駆け込みでOPEK+が増産した結果の値下がりで、輸入に頼る日本にとっては助かります。逆に値崩れでシェール増産が難しくなるアメリカにとっては誤算ですが、原油の値崩れは戦費調達をエネルギー輸出に頼るロシアを苦しめます。これでウクライナ停戦が実現するなら瓢箪から駒ですが、資源権益とバーターとなるウクライナの苦しみは続きます。それを間近に見るグリーンランド住民の反発は当然ながら、最大の在外米軍基地がグリーンランドにある以上、アメリカはNATOから抜けられないし、資源権益も欲しいから諦めないでしょう.故に米欧の対立は長期化する可能性があります。こう考えると日米同盟を前面に立てる日本政府の対応は危ういと言えます。

以下鉄ちゃん的蛇足。ストップ安で真っ黒な中で内需株、特に関税の影響を受けない鉄道株は寧ろ買われています。こういう点からも外需依存を減らして内需関連に投資をシフトすることで難局を回避することはもっと考えられた良いと言えます。但し生産年齢人口の減少下ですから、投資案件の選択は重要です。例えばこれはどうでしょう。

新空港線「蒲蒲線」、国が東急の構想認定 今夏にも具体案 - 日本経済新聞
蒲蒲線と呼ばれる新空港線事業を国が認可したもので、とりあえず第一期区間の矢口渡―京急蒲田間の1.7㎞の事業区間で。蒲田と京急蒲田の800mのミッシングリンク解消となりますが、事業費1000億円で京急蒲田駅地下の乗入れる形で当面乗換対応となります。故に北陸新幹線敦賀問題のような高低差乗換が発生することになります。

しかも空港利用客がガラガラ引いて乗換ですから相当なストレスとなります。とはいえ大鳥居までの第二期の事業化は、軌間や車両サイズや保安装置の違いがある上、そもそも京急は乗り気ではなくめどは立っておらず、この点も北陸新幹線に似ます。米原ルートの東海道新幹線乗り入れより厄介かも。加えて現状で羽田空港連絡輸送は需給面で余裕がある一方、JR東日本の羽田空港アクセス線も事業化されており、供給過剰が心配されます。そもそも羽田空港発着枠にも限りがありますし、成田空港も第三滑走路整備と共用時間帯の拡大で発着便数を増やすとされており、関連して京成電鉄が相互車庫拡張で空港連絡輸送強化を打ち出すなど、高度成長期さながらの需要追随型投資を競っていますが、果たして必要な投資なのか?

あと敦賀の乗換は未体験ですが、東京で追体験できそうなところとしては東京駅京葉線ホームや下北沢駅の小田急線急行ホームと京王井の頭線ホームとの乗換、東京メトロ日比谷線と都営大江戸線六本木駅といったところでしょうか。京急蒲田駅はどうなる?

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