« MAGAのリアル | Main | 大転け・完敗万博 »

Saturday, April 12, 2025

経済戦争を啓示した全農の神

自称*1走ルンですの黙示録wwwww。

米国の国債・株・為替が「トリプル安」 相互関税発動で - 日本経済新聞
アメリカが9日に相互関税を発動した直後に安全資産とされる米国債が売られ、為替市場もドル安に振れる異変が起き、株安と相まってトリプル安となりました。所謂リスクオフ市場ではリスク資産の株式が売られて。投資資金が安全資産とされる債券にシフトするから、債券価格が上がり金利が低下するものですが、債券が売られ、しかもドル安が同時進行する展開で、考えられるのは海外勢の米国債売りで、米国債で高いポジションを取って評価損を抱えていた農林中金の損切り売りが疑われる状況でした。実際ホワイトハウスの公式発表で「日本のヘッジファンド」という表現がされています。

全国の農協が金融事業で集めた貯金は農林中金に預託されて運用されて各農協に配当される形で農協の経営を支えています。コメを含む農産品の出荷や肥料や農薬の販売といった経済事業では儲からず、組合員向けの農機ローンや住宅ローンなどで手数料を稼ぐなど金融事業で支える収益構造で、その土台となる農林中金の機関投資家としての運用益が農協の全国組織たる全農を支えているとも言えます。つまり全農の神^_^;*2。

アベノミクスで日銀の異次元緩和の低金利で組合員から集める貯金の利息はほぼゼロ近傍で、それを外債投資で利ザヤを稼ぎ、それに加えて為替差益もあって我が世の春だったけど、インフレで保有米国債金利が上昇して評価損を抱え、関税騒動でリスクオフ相場となって金利が戻したタイミグで損切りに動いたというありそうなシナリオです。一方植田日銀の金融正常化で利上げスタンスで既に銀行が利息を上げている状況では農協貯金も利息の見直しは避けられず、調達コストを押し上げます。

米政府は当初米国債を大量保有する中国政府による国債売却を疑ったフシがあり、金融戦争になりかねない危機を察して「相互関税」の上乗せ分の90日の執行延期を発表しました。トリプル安は基軸通貨ドルの信認に関わる一大事で、それこそ中国に留まらず貿易決済をドルに頼る日本を含むアジア諸国や産油国が一斉に売りに回れば大惨事となる訳で、止めざるを得なかったということですね。故に単純な朝令暮改ではなく本当に肝を冷やしたんだと思います。そして90日の猶予は中国だけは適用されず、関税合戦の結果、アメリカの対中関税は145%、中国の対米関税は125%となりました。当然世界経済へのマイナスは避けられませんが、最も傷つくのはアメリカです。

経済不調の中国ですが、関税合戦の打ち止めを発表しております。実は米中の泥仕合は中国の方がアドバンスがあります。不動産バブル崩壊で内需は不調ですが、日本のそれと比べたら銀行の不良債権も深刻さは軽く、実際日本で見られた投資の萎縮もありません。EVや太陽光発電といった次世代技術で世界シェアトップを取り、且つ必要なリチウムやレアメタル、レアアース等の希少資源のほとんどを国内生産または権益保有で他国を圧倒しており、脱炭素に後ろ向きだったアメリカとは差がついています。トランプ大統領がウクライナの鉱物権益を欲しがる理由もこれです。

半導体も最先端品こそ劣後しているものの、国産化で汎用品の輸入代替は進んでおり、DeepSeek*3のような最先端品に依存しないイノベーションも起きています。加えて最近あまり言わないけど、一帯一路で外需を取り込み仲間を増やす戦略も着々と進んでいます。そして大声じゃ言えないけどスリーマイル事故以来原子力産業を失ったアメリカに対して、核兵器開発で得た知見で原子力発電でも差をつけており、AI向けデータセンター用電源の面でもアメリカはハンデを負っています。加えて一帯一路で内需の不信をカバーしつつ仲間を増やす戦略も健在です。逆にアメリカは関税騒動で見限られつつあります。例えばこのニュース。

パナマ運河2港売却進まず CKハチソン縛る米中綱引き - 日本経済新聞
パナマ運河を巡るあれこれも複雑なんですが、アメリカのパナマ運河返還要求に対して、パナマ政府は引き渡しは拒否しつつ、運河水位低下解消のための人造湖拡張に対するアメリカの住民補償肩代わりなどの条件に応えて2港湾の権益を持つ香港資本のCKハチソンの子会社を米ブラックロック他の出資する投資組合への譲渡の仲介をし、一帯一路からも離脱するなどアメリカに協力姿勢を見せたものの、投資組合の資金集めが停滞して宙づり状態になっておりますが米政府が助け舟を出すこともなく停滞しています。アメリカに忖度して譲歩してもこんな目に遭うとなれば、距離を置く国が増えて中国を利することになります。

加えて米国債大量保有の中国にとっては、使える武器として認識された訳です。今回のトリプル安で弱いドルに対してすら元安が進んだように、今回中国は動いていないと見られますが、同時に元安は関税ショックを和らげる一方、イザとなれば米国債を売り浴びせて米政府を慌てさせることもできるということで、中国政府のさじ加減次第でアメリカの関税攻勢に対抗する武器に使えることを悟った訳です。ですからパナマのように米中の争いに巻き込まれないことが重要ということですね。

極力米中以外の国との関係を強化して影響を軽減することが大事で、米国内投資を梃子に譲歩を引き出そうとする日本政府の姿勢には不安があります。例えばLNG輸入拡大ですが、アラスカのガス田で生産された天然ガスを現地のLNGプラントで冷却液化して、専用輸送船で冷却輸送して日本の受け入れ基地でタンクに保存するという風に大規模な設備投資を伴いますが、通常ならば相対の長期契約を結んで投資を分担するところを全部の投資負担を押し付けられる可能性があり、それでも引き受ける民間企業があるでしょうか。パナマの事例はそのリスクを示します。そういえば船舶牽引用のパナマ運河鉄道は日本の技術で整備されたアプト式鉄道ですが、パナマ運河改修に伴う設備更新に日本のお鉢が回って来るかどうか。懲りたパナマ政府に中国が安値受注仕掛けたらと考えると不透明です。トランプ関税はこのように投資環境を不安定にするばかりで中長期でアメリカの力を削ぐだけですね。最後にちょっぴりの鉄分でした^_^;。

*1某有名女性俳優の事件がメディアを賑わせましたが、違和感テンコ盛りです。報道ではおそらく警察記者クラブ発表そのままだからでしょうけど、有名人でも処罰されるというアナウンス効果を狙った捜査当局の思惑に乗って、薬物中毒の疑いみたいな話まで報じられるのは異常です。結果的に薬物検査で陰性でした。また医療現場の暴力やハラスメントなどより公共性の高い視点での報道はついぞ見られませんでした。

*2農林中金の理事長によって米国債売却は24年度中に終えて今回の米国債暴落とは無関係とのこと。発表が事実ならば「全農の神」は濡れ衣だったことになります。但しアベノミクスの異次元緩和による金融圧迫で外債投資を積み上げた地方銀行や機関投資家は多数あって、ポジションの調整を狙った数多のトレーダーがリスクオフ相場で株安と連動した国債価格の上昇を好機と見て動いたことは状況的にあり得ますし、結果的にトランプ関税の見直しを余儀なくされる形で政策のアキレス腱を明らかにしたことには間違いはありません。

*3DeepSeekショックで見えたLentSeek 鉄路的部落

| |

« MAGAのリアル | Main | 大転け・完敗万博 »

ニュース」カテゴリの記事

経済・政治・国際」カテゴリの記事

鉄道」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« MAGAのリアル | Main | 大転け・完敗万博 »