鉄路的部落運休のお知らせ
筆者救急搬送入院中につき、当面運休いたします。ご不便をおかけしますがご了承お願いします。
| 0
川村 晃生, 井澤 宏明, 林 克, 大塚 正幸, 樫田 秀樹, 天野 捷一, 松島 信幸, 阿部 修治, 越智 秀二: リニアはなぜ失敗したか
当事者の国やJR東海は認めないでしょうけど、2023年の出版当時に「失敗」を指摘します。リニア関連は元々メディア露出が少なく開業遅れや事業費膨張で倍増など断片的に報じられていますが、何故そうなったのかを商学、地質学、土木、工学の専門家や市民団体やジャーナリストの共著で明らかにしています。大井川の水問題ばかりが大きく取り上げられていますが、工事の遅れやトラブルは多数あり、現実的に開業に辿り着ける可能性はほぼ皆無とさえ言えます。元々全国新幹線てR津道整備法に基づく国策事業を民間企業であるJR東海が進め、沿線自治体が住民説明会や用地買収で動くという神津は、原発などの国策民営事業と似ています。そしてリスクを低く見積もって事業推進される傾向も同じで、所謂公共事業に広く見られる現実です。リアル書店で入手しにくいマイナー版元でもあり、オンラインでの購入がお勧めです。
(★★★★★)
アドリアン・エステーヴ, 中野 佳裕: 環境地政学(文庫クセジュ) (文庫クセジュ Q 1071)
著者はパリ政治学院国際学研究所の研究員で専門は国際関係論。訳者はクセジュ文庫で脱成長関連の翻訳を複数手掛けています。地政学と言えば主権国家をアクターとする軍事的均衡のリアリズムですが、エコロジー的なリアリズムで再構成するのが本書の試みです。気候変動や生態系攪乱、あるいは資源争奪に伴う問題など多岐に亘るのですが、従来の人間中心主義的リアリズムでは解けない問題として再定義を試みます。本書に記述はありませんが、日本のクマ被害も里に下りたクマの駆除問題に矮小化すべきでないという視点で見る必要はあります。
(★★★★★)
佐藤 信之: 日本のバス問題-高度成長期の隆盛から経営破綻、再生の時代へ (中公新書 2874)
交通分野で著書多数の著者による日本のバス問題の現在地を表した本書は、バスの歴史から現在に至る過程を分析し、バス事業の構造問題をあぶり出します。鉄道が典型ですが、交通事業のような装置産業は費用逓減の法則により、継続事業で安価に良好なサービスを継続できる構造があり独占の公益性がりますが、交通路を公共の道路に依存するバスの場合は既得権の温床となる側面もあり、それ故に既存事業者が保護されてきた経緯があります。一方規制緩和で新規参入が増えて競争環境が作られたものの競争市場に歪みがあります。そんな中でウィラーやイーグルバスのように新しいアイデアで市場を切り開く事業者も現れる一方、既存事業者は過疎地のみならず都市部でも減便による衰退がはじまっている現状です。自動運転その他の技術革新やデマンド運行やMaaSといったトータルサービスプラットホーム構築など構造改革で未来を拓く試みが求められます。
(★★★★★)
近藤 大介: ほんとうの中国 日本人が知らない思考と行動原理 (講談社現代新書 2784)
中国と日本はなぜこんなにすれちがうのか?大陸国で日本の10倍以上の人口を抱えるリスク感覚の中国と、島国で安穏とした日本とでは国の成り立ちも人々の気質の異なります。中国ウォッチャ―の著者がそれをかみ砕いて解説した本書はとにかく面白く読めます。またこの違いを理解すれば無駄な摩擦も防げるというもので、排外主義がはびこる昨今、必読書として推したい1冊です。
(★★★★★)
花房 尚作: 田舎の思考を知らずして、地方を語ることなかれ 過疎地域から考える日本の未来 (光文社新書 1373)
東京一極集中が止まらず、過疎地は悲惨、いずれ消滅といった現示が、田尾都会の都心の思考から出る言葉であり、田舎の思考はもっとゆるく、おくれやひずみを抱えつつそれを合理的に選択した人々が住んでいます。そしてそうスタ中央集権的なバックグラウンドで「地域活性化」とか「地方創生」といった形ばかりの事業に国の補助金や交付金がつきますが、成果はほぼ無い状態です。著者の過疎地生活での気付きから都会と田舎の思考を適宜シフトしつつ実効性のある地方分権論の可能性を示します。
(★★★★★)
スラヴォイ・ジジェク, 早川 健治: 「進歩」を疑う: なぜ私たちは発展しながら自滅へ向かうのか (NHK出版新書 747)
スロベニア出身の哲学者ジジェクの警告の書。進歩は気取りのリベラル派が最悪の世界に対峙できていないことを憂います。著者は幅広い知識で物理学からエンタメまでの幅広い異分野を比喩に用い、講義や講演の聴衆や著書の読者を飽きさせないサービス精神は大したものです。故に難解なところや日本の歴史など疑問符の付く記述もありますが、その辺を読み飛ばしても文意は伝わります。知的エンタメとしてとにかく面白いから読まなきゃ損です。
(★★★★★)
横山勲: 過疎ビジネス (集英社新書)
福島県国見町の救急車リース事業を巡る調査報道の記録。河北新報記者の著者の執念で、匿名の企業版ふるさと納税制度の闇が暴かれました。その手口は巧妙で、法人税9割控除のふるさと納税制度を利用した事業に寄付企業が関与して利益を吸い上げ公金を騙し取る手口です。世間の関心の薄い過疎自治体の窮状に付け込む悪質さと。それを監視できない地方議会やマスコミの現状にも言及します。こうした問題を見直すことなしには地方創生は悪徳コンサルを肥え太らせ地方を荒廃させるだけです。
(★★★★★)
橋本 健二: 新しい階級社会 最新データが明かす<格差拡大の果て> (講談社現代新書 2779)
一億総中流社会も今は昔。80年代以降続いている格差拡大。社会学者の著者はそれを階級社会と捨てデータを集め分析した成果が盛り込まれています。資本家階級(企業経営者)、新中間層(管理職や技術職)、労働者階級(正規橋労働者)、旧中間層(自営業者)の4つの階級に加え、最近所謂非正規雇用者の増加でアンダークラスが形成されています。これは先進国では共通した現象で、国によって人種や移民など担い手の違いはあるものの、アンダークラスの増加とそれによる格差拡大は共通しています。データで示された実態は驚きですが、もう1つジェンダーギャップや性的マイノリティがこれにクロスして女性やマイノリティの地位が上がらない構造もあります。そしてそれが日本人の政治意識の変化身も波及しており、特に石破政権が去年の総選挙で少数与党となったことにも関連します。しかし同時に階級を問わず格差拡大を問題と考える層は多数いて、右派勢力の拡大もコアな支持層は少数で、中道勢力が協力する余地があることも示します。新書としては分厚いですが、読むに値する1冊です。
(★★★★★)
赤根 智子: 戦争犯罪と闘う 国際刑事裁判所は屈しない (文春新書 1496)
国際刑事裁判所(ICCの所長としてプーチンとネタニヤフに逮捕状を発布した著者は、プーチンから指名手配されトランプから圧力をかけられながら戦争犯罪と戦う日々を綴ります。ICCについても詳しく説明されており、そもそもはWW2後のニュルンベルク裁判や東京裁判がドイツも日本も戦争犯罪人を裁く能力が欠如していたことから連合軍によって開廷された経緯を踏まえて、補完性原理に基づいて活動している組織です。驚いたのは法の支配を唱える日本が、戦争、人権侵害、虐殺などの中核的犯罪を裁く法律が欠如していること。ドイツでは国内法が整備されているのに、本当の有事に刑事司法が動けないという矛盾を抱えています。東京裁判を戦勝国による一方的なものと言うのに国内法も作れない日本の現状を憂います。
(★★★★★)
李舜志: テクノ専制とコモンへの道 民主主義の未来をひらく多元技術PLURALITYとは? (集英社新書)
IQ130以下の者はAIに取って代わられるけど、ベーシックインカムがあるから大丈夫。テクノ専制主義者のナラティブに不安を抱える必要はありません。Pluralityという希望があります。テクノロジーの使い方如何で多元的民主主義を実現し、多くの人を豊かにするコモンの実現を模索する試みは始まっています。米巨大テック企業のテクノリバタリアンズも専制国家の監視システムと変わらないどころか、営利企業に転がされる社会のペットに成り下がるという意味でより深刻です。そうならないために私たちが心がけることを解説しています。
(★★★★★)
Comments
毎週記事を楽しみにしていました。一日も早い回復を。
Posted by: 海手線 | Tuesday, May 13, 2025 11:08 PM
ありがとうございます。おかげさまで精密検査の結果、心筋梗塞など重大疾病の可能性は無くなりました。そして本日5/15に無事退院できました。近日中に運転再開する予定です。今後ともご愛読よろしくお願いいたします。
>海手線さん
>
>毎週記事を楽しみにしていました。一日も早い回復を。
Posted by: 走ルンです | Thursday, May 15, 2025 01:58 PM