鉄路的部落運休のお知らせ
筆者救急搬送入院中につき、当面運休いたします。ご不便をおかけしますがご了承お願いします。
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斎藤幸平: 人新世の「黙示録」(集英社シリーズ・コモン) (集英社学芸単行本)
世界的ベストセラーとなった前著「人新世の「資本論」」の続編。パリ協定で目標とされたプラス1.5℃を早くも超えて破綻に向かう世界への警鐘という意味でより悲観的な内容ですが、希望はあります。若きマルクス研究者の著者は気候崩壊から始まる欠乏資本主義の本質を明らかにし、技術が課題を克服する未来を否定します。寧ろテクノ資本主義で蓄財したリバタリアン達が選んだのが選民ファシズムでありトランプ現象はその表出と。対抗思想としてマルクスが高く評価したパリコミューンからプロレタリア独裁を経ての国家解体とコミュニズムを補助線に民主的計画経済による暗黒社会主義を提唱します。その先駆けの動きも既に見られます。
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海老原 嗣生: 静かな退職という働き方 (PHP新書)
人事や雇用問題で長く雑誌編集に関わる著者による働き方の世界標準の解説。日本でも最近はプライベート重視で出世も望まない若手が増えており「静かな退職者」と呼ばれてますが、脳米ではこれが当たり前。寧ろ日本の労働市場の甲斐あ核の方向性として有効という主張です。某国首相のように「働いて働いて働いて働いて働いて」見当違いです。著者の主張には肯定しずらい部分もありますが、丁寧なサービスが長時間労働をもたらし生産性を下げている現実を明らかにしています。
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是川 夕: ニッポンの移民 ――増え続ける外国人とどう向き合うか (ちくま新書 1882)
目から鱗の1冊。政府は公式には認めてませんが、ぎのう実習生や特定技能制度などは事実上の移民政策です。人口減少で運輸、医療、福祉などのエッセンシャルワーカーの求人難で已む無くとはいえ、意図せざるリベラルな包摂性を備えており、特にアジア圏の若者にとってはキャリアアップのステップになるということ。こうなった理由は歴史的な経緯によりますが、欧米の旧植民地住民の宗主国としての贖罪ではなくフラットな労働移動というアジアの移民ネットワークに特徴があり、人口減に苦しむ日本にとっては悪くない傾向です。しかし昨今外国人排除の傾向が日本だけではなく世界的に見られますが、歴史的経緯で摩擦が多い欧米と違って共生の可能性があると著者は言います。特に社会保証タダ乗り論の実態は寧ろ若い外国人が支え手になっている実態もあり、寧ろ少子化対策よりも筋の良い持続可能性さえあります。
根本祐二: インフラ崩壊 老朽化する日本を救う「省インフラ」 (日経プレミアシリーズ)
1960年代、高度成長期に整備されたインフラが50年と言われる寿命を迎えています。八潮市の下水道管損傷による道路陥没はもっと新しいですが、過去に整備されたインフラの老朽化問題は深刻です。
解決策は著者の言う「省インフラ」です。インフラを減らすといっても官公署、学校その他の公共施設と道路、橋、トンネル、上下水道などの土木インフラで対応は異なります。前者は量を減らして質を保つ居、後者は量を保って質を見直すということです。つまり公共施設は可能な限り整理統合して土木インフラは重要度や老朽化の状態に合わせて対応を変えるということです。そして特に人口減少の進む地方ではコンパクトシティ化による拠点星美が重要となります。成功例として岩手県紫波町のオガールプロジェクトと富山市の複数拠点整備の事例を紹介していますが、当然ながら地域事情に合わせた対応が必要です。尚、交通や電力、都市などの民間インフラには特に触れていませんが、人口減少下の維持という意味では共通する要素はありそうです。
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今井 照: 自治体は何のためにあるのか──〈地域活性化〉を問い直す (岩波新書 新赤版 2092)
「過疎ビジネス」(ちくま新書)で取り上げられた福島県国見町の企業版ふるさと納税制度を悪用したことが起きた背景として「地域活性化」を旗印とする「稼ぐ自治体」を目指す地方創生政策があります。政権が変わる毎に名前は変わるけど地方の自立を求めて活性化の努力をすれば国から補助金や交付金が降ってくる結果、毎度代わり映えのしない事業が立ち上げられ、成果は問われない。結果的に民間がその公金を食い物にする一方で住民は置き去りです。何故こうなったか?著者はその起点に2000年の地方自治法改正を挙げ、それ以降寧ろ国の統制が強化されている現実に切り込みます。地方自治の空洞化とそれに付け込む民間という構図は五輪や万博を巡る不正も同根と評者は見ます。
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川村 晃生, 井澤 宏明, 林 克, 大塚 正幸, 樫田 秀樹, 天野 捷一, 松島 信幸, 阿部 修治, 越智 秀二: リニアはなぜ失敗したか
当事者の国やJR東海は認めないでしょうけど、2023年の出版当時に「失敗」を指摘します。リニア関連は元々メディア露出が少なく開業遅れや事業費膨張で倍増など断片的に報じられていますが、何故そうなったのかを商学、地質学、土木、工学の専門家や市民団体やジャーナリストの共著で明らかにしています。大井川の水問題ばかりが大きく取り上げられていますが、工事の遅れやトラブルは多数あり、現実的に開業に辿り着ける可能性はほぼ皆無とさえ言えます。元々全国新幹線てR津道整備法に基づく国策事業を民間企業であるJR東海が進め、沿線自治体が住民説明会や用地買収で動くという神津は、原発などの国策民営事業と似ています。そしてリスクを低く見積もって事業推進される傾向も同じで、所謂公共事業に広く見られる現実です。リアル書店で入手しにくいマイナー版元でもあり、オンラインでの購入がお勧めです。
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アドリアン・エステーヴ, 中野 佳裕: 環境地政学(文庫クセジュ) (文庫クセジュ Q 1071)
著者はパリ政治学院国際学研究所の研究員で専門は国際関係論。訳者はクセジュ文庫で脱成長関連の翻訳を複数手掛けています。地政学と言えば主権国家をアクターとする軍事的均衡のリアリズムですが、エコロジー的なリアリズムで再構成するのが本書の試みです。気候変動や生態系攪乱、あるいは資源争奪に伴う問題など多岐に亘るのですが、従来の人間中心主義的リアリズムでは解けない問題として再定義を試みます。本書に記述はありませんが、日本のクマ被害も里に下りたクマの駆除問題に矮小化すべきでないという視点で見る必要はあります。
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佐藤 信之: 日本のバス問題-高度成長期の隆盛から経営破綻、再生の時代へ (中公新書 2874)
交通分野で著書多数の著者による日本のバス問題の現在地を表した本書は、バスの歴史から現在に至る過程を分析し、バス事業の構造問題をあぶり出します。鉄道が典型ですが、交通事業のような装置産業は費用逓減の法則により、継続事業で安価に良好なサービスを継続できる構造があり独占の公益性がりますが、交通路を公共の道路に依存するバスの場合は既得権の温床となる側面もあり、それ故に既存事業者が保護されてきた経緯があります。一方規制緩和で新規参入が増えて競争環境が作られたものの競争市場に歪みがあります。そんな中でウィラーやイーグルバスのように新しいアイデアで市場を切り開く事業者も現れる一方、既存事業者は過疎地のみならず都市部でも減便による衰退がはじまっている現状です。自動運転その他の技術革新やデマンド運行やMaaSといったトータルサービスプラットホーム構築など構造改革で未来を拓く試みが求められます。
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近藤 大介: ほんとうの中国 日本人が知らない思考と行動原理 (講談社現代新書 2784)
中国と日本はなぜこんなにすれちがうのか?大陸国で日本の10倍以上の人口を抱えるリスク感覚の中国と、島国で安穏とした日本とでは国の成り立ちも人々の気質の異なります。中国ウォッチャ―の著者がそれをかみ砕いて解説した本書はとにかく面白く読めます。またこの違いを理解すれば無駄な摩擦も防げるというもので、排外主義がはびこる昨今、必読書として推したい1冊です。
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花房 尚作: 田舎の思考を知らずして、地方を語ることなかれ 過疎地域から考える日本の未来 (光文社新書 1373)
東京一極集中が止まらず、過疎地は悲惨、いずれ消滅といった現示が、田尾都会の都心の思考から出る言葉であり、田舎の思考はもっとゆるく、おくれやひずみを抱えつつそれを合理的に選択した人々が住んでいます。そしてそうスタ中央集権的なバックグラウンドで「地域活性化」とか「地方創生」といった形ばかりの事業に国の補助金や交付金がつきますが、成果はほぼ無い状態です。著者の過疎地生活での気付きから都会と田舎の思考を適宜シフトしつつ実効性のある地方分権論の可能性を示します。
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Comments
毎週記事を楽しみにしていました。一日も早い回復を。
Posted by: 海手線 | Tuesday, May 13, 2025 11:08 PM
ありがとうございます。おかげさまで精密検査の結果、心筋梗塞など重大疾病の可能性は無くなりました。そして本日5/15に無事退院できました。近日中に運転再開する予定です。今後ともご愛読よろしくお願いいたします。
>海手線さん
>
>毎週記事を楽しみにしていました。一日も早い回復を。
Posted by: 走ルンです | Thursday, May 15, 2025 01:58 PM