折れたつばさ
参院選投票日当日ですが、ひどいTIXY選挙*1でした。政策よりも目先のアテンションで有権者アピールしてまともな政策論争もないまま過ぎました。それでも選挙報道姿勢を問われたオールドメディアは不十分ながらファクトチェックで姿勢を変えております。従来選挙運動を隠れ蓑に酷いヘイト発言し放題だったことに比べればマシにはなってますが、ヘイト発言に喝采する有権者はそもそもオールドメディアはウソだらけと信じ込んでますから響かない。故に従来投票したことがないような無関心層を動員して議席を得れば解散のない参院で6年の任期を得て少数与党に恩を売りながらうまい汁吸うことができちゃう訳です。
とはいえ政権選択選挙ではない参院選後には原則首班指名選挙は行われませんから、仮に与党が参院で少数転落しても、石破氏が自ら辞めない限り政局にはならないです。そして日米関税交渉の膠着が、アメリカ政府から見れば協議を重ねてきた石破政権が交代すると一からやり直しになるから、選挙が終わるまでは石破政権にマイナスにならないよう配慮してます。そして選挙後の赤沢経財相の8度目の訪米がアナウンスされています*2。つまり石破さん辞める気さらさらなしです。関税協議が政権延命の鍵という倒錯^_^;。とはいえ既に連邦歳入で法人税に次ぐ規模となった関税で税収が調達されている状況*3では交渉の余地は殆どありません。
それに背中を押されたのか日産が追浜、湘南の2工場の閉鎖を決めました*4。ブランド力の弱い日産としては関税の価格転嫁もままならず*5米国内工場を温存して他社製品の受託生産で量を確保する一方、国内工場は縮小せざるを得ない状況に追い込まれた訳です。財務状況が悪い日産としては関税分の値引きの原資がもたない訳です。立地から高く売れる可能性のある工場の閉鎖はそれだけ追い込まれているということです。そしておそらく高く売りたいから、工場ごと居ぬきで買える相手となると鴻海が有力候補になりそうです*6。鴻海はEV事業への本格参入を狙っており、乗用車に留まらずEVバスへの参入もアナウンスしております。国産EVバスはいすゞエルガEVのみで、BYDやヒュンデなど中国や韓国の輸入車頼み故に勝算ありと見たのでしょう。
そして前エントリー*7でも指摘しましたが、通貨当局が動けない中で日米両国のインフレ率の差が為替を動かすことを指摘しました。その結果為替はこう動きました*8。与野党のバラマキ合戦の影響もありますが、自動車を始め関税分を価格転嫁できていないことがアメリカのインフレ率を抑えている可能性も指摘できます。いずれ関税分の価格転嫁が進んで日米のインフレ率が逆転する可能性もあります。実際日本のインフレ率はコメの備蓄米放出やガソリン補助金で抑えられておりますが、それでも日本のインフレ率が高い結果です。今後も微妙な展開が予想されますが、政策的な価格抑制は財政の拡大で結局インフレを呼び込みます。この点はアメリカも似たり寄ったりなので、予想を難しくしています。まあ製造業での経済成長の可能性は日米共に殆どありませんが。
そんな折れたつばさを共有する両国ですが、それでも金融とITで稼げるアメリカに対して、自動車も袋小路でどうするということで半導体に注目が集まりますが、TSMC熊本工場で生産された半導体は殆どエヌビディアやアップルが買い手という現実が影を落とします。2ナノの試作品製造に成功した北海道千歳市のラピダスも同様の問題を抱えており、仮に先端品の営業出荷が可能になっても国内に買い手がいないという現実が待ち受けます*9。SuicaなどのIC乗車券や電子マネーに欠かせないFelicaシステムも今やソニーも見捨てたレガシー技術というぐらいイノベーションの周期が早い半導体のエコシステム構築は技術を磨くだけでは果たせず、寧ろアメリカのバイデン政権のスモールヤードハイフェンス政策で先端半導体が手に入らない現実を受け入れてレガシー技術を磨いて先端品と同等の性能を実現した中国の手堅さが、国内需要に押された結果という点は示唆に富みます。歩留まりが悪く採算が難しい先端品に拘る日本の在り方は、結局熊本の渋滞激化や豊肥本線混雑率ワースト*10という負のインパクトを地域にもたらしています。
そして半導体関連で山形新幹線つばさE8系のトラブルは原因究明が進まず、東京直通を止めて福島乗換で対応が続きます*11。報道では補助ん電源装置の半導体の不具合ということですが、思い出されるのが国鉄時代の中央快速線201系のサイリスタ日照り*12です。おさらいすると国鉄が中央快速線向けに開発した201系が、走行中に度々主回路がブラックアウトするトラブルに見舞われ、原因はサイリスタ素子の過熱と突き止められました。地下鉄では制御器の抵抗熱対策でサイリスタチョッパ制御が導入された一方、回生ブレーキ対策が必要な地上の鉄道では導入が進まない中で、国鉄一の高密度輸送輸送線区の中央快速線で回生電力の有効利用と量産効果によるサイリスタ素子の価格低減を狙ったものの、制御器は海側という抵抗制御時代の慣例で配置を決めた結果、東西に延びる中央線では日中直射日光を浴びて輻射熱の影響でサイリスタ素子が機能を失うことと、中野以西のベタ停車で加減速が頻繁で走行風による冷却効果も限られた結果でした。対策として制御器箱を白く塗って輻射熱を反射させるなどして安定させたものの、他線区への導入のブレーキになりました。例外は京阪神緩行線で駅間が長く高速走行で冷却効果があって同様のトラブルはありませんでした。
それでも国鉄がユーザーとしてメーカーを育てようとした結果の失敗ですから、その後のパワーエレクトロニクスの成長には貢献できたとは言えます。同様に常磐緩行線の207系900番台*13のセコい失敗もありますが^_^;、最強ユーザーとしての国鉄の存在感は大きなものでした。民営化後のJR各社は半導体も汎用品でコストダウンに励む方向へシフトしてメーカーとの結びつきが弱まったきらいがあります。例えば209系のVVVF制御器がトラブル続きで継続使用を断念して「寿命半分」が実現してしまうといったことですが、その流れでE8系のトラブルを見ると、トラブル発生日の気温が高かったことから、半導体が熱にやられた可能性はあると思います。厄介なのはかつてのパワー半導体と比べても回路構成が複雑化しており、チップ上に電流安定のためのセラミックコンデンサが組み込まれたりしていて、どこに不具合があるかが見えにくくなっていることはあります。また半導体製造のサプライチェーンは長く、その各段階に不具合が混入する機会は増えているということもあります。巨大化した米IT大手のようにサプライチェーンへの影響力を行使する力は弱まっていると考えられます。てことで原因究明は困難を極め、折れたつばさは当分続くと覚悟する必要があります。
*1TIXY選挙の後始末 鉄路的部落
*2赤沢経財相「来週早々に訪米」 関税交渉、8回目の対面協議へ - 日本経済新聞
*3米国はや関税収入大国、半年で13兆円 「安定財源化」で撤廃困難に - 日本経済新聞
*4日産、追浜工場の生産27年度末に終了 湘南工場は26年度末までに - 日本経済新聞
*5対米自動車輸出額6月26.7%減、単価下げ戦略に限界 トヨタは値上げ - 日本経済新聞 輸出台数は増えているのに金額が下回るということは事実上のダンピング輸出でいずれアメリカから問題視されるでしょう。
*6製造業の壁 鉄路的部落
*7カラータイマー地価地価 鉄路的部落
*8止まらぬ円売り、3週連続下落 「参院選後」の財政・政治リスク懸念 - 日本経済新聞
*9国内製造業あってのラピダス 半導体再興、顧客創造が不可欠に - 日本経済新聞
*10熊本県など、JR豊肥本線の輸送力強化申し入れへ 半導体集積で混雑 - 日本経済新聞
*11宗教とアヘン 鉄路的部落
*12JR東日本E233系の読み方 鉄路的部落
*13207系900番台でスベった高等戦術 鉄路的部落
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