民営化ドミノ*1の続きです。予想通りではあるんですが、ガソリン税減税の与野党協議会が足踏みしています*2。1兆円程度の財源を示せない野党の本気度が疑われます。特に立憲民主党の「税収上振れと税外収入」は論外です。インフレで税収の上振れは当然ありますが、同時に国債金利も上昇しており、使ってしまえば次年度以降の国債利払い費の膨張で財政を痛め、インフレを助長することになる無責任な議論です。決算剰余金として繰り越して次年度国債発行額を圧縮するのがインフレ時の正しい財政の在り方です。
野党各党でも国民民主党は論外として、維新の法人税租特法減税の見直しとか、共産はそれに加えて金融課税強化を打ち出しています。本気で政権取りにいくならせめてこれぐらいのことは言うべきですし、暫定税率の原点がオイルショックによる道路特財源の税収減を補う2年間の時限立法だった訳ですから、民営化エントリーで示した潤沢故に無駄が多い道路予算の削減を何故言えないのか?高速道路無料化を打ち出した民主党の後継政党らしからぬところです。そしてこれは腹括った少数与党の石破政権を利するものでもあります。立憲執行部にはどうせ少数与党だから向こうから頭下げてくるだろうという甘い考えがあるんじゃないか?だとすればとんでもないことです。
知恵熱の夏*3で示したように自民公明の与党の敗北は必然だったのですが、立憲民主党の伸び悩みも必然と言えるという厳しい総括ができていないってことです。そんな中で立憲・国民両党で組織内候補を擁立した連合から参院選の総括案が発表されました*4。連合自身の組織の弱体化を示す集票力の低下を認めつつ、それでも地方区で立憲と国民が選挙協力したところでは当選していることを指摘し、両党の協力を示唆するとともに、国民民主党の政策が財政支出を増やして寧ろインフレを助長し労働者を苦しめると言及しています。元を質せばアベノミクスの異次元金融緩和と財政出動の結果の円安インフレなんで、何故正面からアベノミクス批判ができなかったのか。結局自公の少数与党を助ける結果になっている訳です。
その石破政権もツッコミどころ満載で、例えばコメ増産を打ち出し、大規模化やスマート農業でやる気のある農家の支援や企業参入の解禁を打ち出してます。これ政権交代前の民主党も似たようなことを言っていたんですが、政権交代後には減反を前提とした10アール当たりの補助金交付に後退しました。但し国内出荷しない輸出米や加工品や飼料用など減反の枠外で自前で販路を見出す限り自由に作付けできる形とし、減反廃止の激変緩和を図ったことと、コメの先物市場を開設して市場価格を見ながら作付けの参考にする体制を整えました。但し農協の反対で先物市場は機能せず、また第二次安倍政権では逆に食用米の補助金を無くして加工米、資料米、輸出米に補助金を出して事実上の減反を継続させました。令和のコメ騒動でそれが裏目に出て逆にコメ先物市場には注目が集まるようになりました。
で、石破政権の大規模化とスマート農業が何故ダメかというと、戦後の農地改革で水田の圃場が細分化されていて。特に三大都市圏を擁する平野部では相続その他の事情で離農者が農地を手放し、小規模開発の宅地になったりしていますから、物理的に圃場の大規模化が困難になっており、また離農者が増えて一部の専業農家に生産委託されるケースは増えてますが、離れ離れの小規模な圃場で耕作を続けるしかない現状があります。
スマート農業で特に注目されている乾田直播農法ですが、種籾の前処理や播種後の雑草取りの手間が大変で、田植えが省略できるメリットを相殺してしまいます。雑草取りの手間を減らすには除草剤散布が欠かせず、近くに宅地があったりすると使えないし、そんな農薬まみれのコメが高値で売れるか?とか、水田耕法の利点の連作障害がない点もやってみなければわからないし、また水田耕法を前提とした農機類も使えず現時点では監視カメラやドローンなどの価格も高く、参入障壁が存在します。まして人口減少に苦しむ地方の中山間地では尚更で地方創生にも逆行します。一点突破的なイノベーションは無理があります。
食料米、輸出米、加工米、資料米の壁を取っ払って耕地面積で補助金を付けた上、先物市場の市況を参考に作付け量を決めることと、収穫後も市場価格を参照して出荷するといった形にして、離れた圃場の作付けなど農業者の工夫を引き出すことで儲かる農業を実現しつつ適正価格でコメが買えるようにして消費者にもメリットがあるといった形にすることは可能です。
やっと本題ですが、技術革新が必ずしも問題解決に繋がらないのはありふれた問題でもあります。そんな中でChatGPT5が「冷たくなった」というユーザーからの抗議が起こりました*5。前バージョンの4oと比べてフレンドリーさが失われたということですが、そもそも人間ではないAIに共感を求めること自体が間違いで、元々ハルシネーションと呼ばれるいい加減な回答を返すことは指摘されてきましたから、ユーザーが検証しないと使えないのですが、フレンドリーな受け答えに癒されて下手すると宗教とアヘン*6のような依存症にもなりかねませんし、それを誘導に使われる罠にはまる可能性もあります。基本的には個人のスキルアップのツールとして壁打ちの相手に使うのは有効でしょう。逆に言えばそれ以上でも以下でもないツールです。
但し生身の人間ではありませんから当然制約はあります。特に熟練を要する高スキルの獲得は、結局若いうちにそうした人と接する中で試行錯誤するしかない訳で、それはまた高スキルの人の補助的な立場で学ぶということでもありますが、高スキルの人がAIとの壁打ちで多くの問題を解決できてしまうと煩わしい若手の弟子を取りたがらないということも起こり得ます。そうするとその人の高スキルは次世代に継承されず引退して失われることになります。つまりAI依存で若手の育成が滞ることを意味します。典型的なのはプログラマーですが、業務フローを見ながらソースコードを書いてはテストの試行錯誤を経てスキルを上げていく部分をAIが肩代わりしてしまうと若手が育たないというジレンマに陥ります。既に米テック大手では業績好調でも大量解雇に動いており、AIに代替されるのは高給取りの技術職という予想が当たった訳です*7。
日本の場合は雇用慣行の違いから異なった展開が予想されますが、所謂新卒市場に異変が起きる可能性は指摘しておきます。労働力人口減少の結果、新卒市場は売り手市場となり初任給が高くなってますが、どこかの時点でこれが反転する可能性があるということです。事務職と技術職が該当することになりますが、新人が下働きで覚える業務フローをAIが代替してしまえば若手を大量採用する必要が無くなる訳です。しかも即戦力として迎えられるから、付いていけずに離職する可能性も高まります。つまり有名大学を出て大企業に勤めて一生安泰というキャリアプランが成り立たなくなるということです。
これ企業側から見ると新卒市場の取り合いから好待遇を訴求しなければ人が集まらないという事態が解消されますから、即戦力にならない新人の初任給を下げられることを意味します。そしてゼロ年代以来の賃金抑制の結果勤続年数による定期昇給率が下がって賃金カーブがフラットになってますから、勤め続けても賃金はあまり上がらないということで、これが手取りが増えない原因なんですが、結局副業で補填するしかないということになります。ますますスキルは身につかず稼ぐには長時間労働しかなくなるということで、正社員でも実態は非正規と変わらないということになりかねません。てことで第二氷河期に向かうということですね。
元々日本的雇用慣行のメンバーシップ型雇用がバブル崩壊後に崩れて団塊世代の退職者補充を非正規で済ませたことが氷河期世代を生んだ元凶ですが、彼らはスキルアップに努めて正社員を勝ち取っても勤続年数の壁で定期昇給の恩恵も不十分で新卒プロパーと待遇差がありますし、賃金カーブのフラット化で若手より先に昇給が止まり賃金格差が固定化するし、役職者になれるチャンスも少なく、なれても役職定年で平に降格したりと散々な目に遭ってきた訳ですが、その二の舞がこれから就職する若手にのしかかる訳です。インフレを受けて賃上げが進んでいるとはいえ定期昇給込みですから、実質賃金に影響するベースアップ分は3%程度でインフレ率に追いつかない状況です。
そんな中で気になる動きがJR東日本で起きています。最大労組のJR東労組をぶっ潰して、代わりに社員親睦組織兼労使協議帯として経営陣と現場を繋ぐ社友会を組織して協議機会を1ヵ月から3か月に減らしたりした結果トラブルが増えています*8。その一方で会社に賃上げ要求をしたりして労組のような動きを見せていますが、労組ならざる社友会のこの動きに社員から違和感の声が上がっているということです。会社のカバン持ちが賃上げポーズで社員に阿る姿勢の中で、経営サイドからの合理化要求が加速しているというものです。
例えば南武線の遅延問題*9ですが、ワンマン化実施後に朝夕を中心に遅延が日常化しているということで、ドア開までの時間短縮などを打ち出してますが、元々沿線に工場が多く、最近はマンションも林立し、他線との乗換駅が多く乗降が頻繁という路線特性から経営陣が現場をどの程度把握できていたかが問われます。何だか京葉線の快速廃止の混乱*10を思い出させます。いずれも恐らく経営からのトップダウンで実施した結果の不具合という点で共通しています。京葉線は乗客や自治体のクレームを受けて千葉支社長が見直しに動きましたが、南武線ではメカ的な解決策しか示していません。段々JR東日本が嫌いになりつつある昨今です。社員の人も違和感があるならナショナルセンターの連合に相談して労組再結成しても良いと思います。今なら世論も理解するでしょうし、弱体化したナショナルセンターの連合も組織立て直しに繋がります。
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