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August 2025

Sunday, August 31, 2025

インド太平洋大炎上

安倍政権時代のインド太平洋戦略でクワッドが始まり、インフラ輸出案件としてインドのムンバイ―アーメダバード間の高速鉄道でJR東日本が受注し、開業に向けてインド人乗務員の訓練をJR東日本が請け負ったことが大炎上してますが、ホント10年程度の過去の話も忘れちゃうネトウヨって相当頭悪いし悪質な差別主義者でもあります。モディ首相訪日にホスト役の石破首相が気に入らないんでしょうけど*1。

インドを巡る国際情勢は複雑になってきていて、日本がインド太平洋を提唱したときには対中国包囲網の思惑があったものの、ウクライナ戦争の経済制裁にインドは参加せずロシア産原油を安値調達してアメリカを苛立たせましたが、トランプ政権で対ロ制裁としてロシア産原油・ガス輸入国への高関税を課すことで、インドに50%関税で対立が深まったことと、カシミール地方の国境紛争でアメリカがパキスタンに接近したことで決定的にアメリカへの怒りが強まり、クワッドの枠組みも機能しなくなる恐れがあります、実際トランプ大統領はクワッド会合の欠席を表明しています。インド独立の経緯とカシミール地方の国境画定が曖昧なままで、言ってみればアメリカはインドの虎の尾を踏んだ形になります。そしてインドはライバルの中国に接近してもいます。アメリカの外交戦略は台無しです。

しかしそうしたこととは関係なく、人口大国で平均年齢が若くIT先進地のインドとの関係を築くことは日本にとっては重要な外交戦略になります。関税で他国を脅し約束も守らないアメリカとの関係は無くせないまでもウェートを下げて成長が見込める新興国との関係を構築することは重要です。ITに強いインドですが、未だに農業人口が多く労働集約的な製造業が手薄な状況で、日本の高度経済成長期の経験は参考になりますし、また半導体の製造参加に意欲を見せているように、同じく国産化にまい進する中国に対抗する意味からも重要なパートナーとなります。

特に先端品ではない汎用品の製造拠点としては、国内需要の大きさもあって安定供給先になる可能性を秘めていて、コロナ禍で汎用半導体のサプライチェーンが止まって自動車メーカーが生産停止を迫られるといったことも防げる可能性が高まります。同時にインドの人口爆発は工業化による雇用創出がなければ社会不安の原因にもなりますし、日印双方のwin-winの関係になる訳です。また中国の国内景気の低迷で、製造能力を持て余した中国が輸出攻勢に出ることも間違いありませんから、インドに製造拠点を構えることでリスクヘッジが可能です。

そして暑いインドでの半導体生産は、別のメリットも考えられます。折れたつばさ*2のE8系トラブルが補助電源装置の熱暴走トラブルだったこと*3も明らかになりました。はらぶさ/こまち分離事故も複数回起きて*4接点御金属クズが原因と言われましたが、E5系単独運転でもトラブルが起きました*5。総胸中の分離事故と違って単独運行のE5系で、連結開放スイッチが単独から連結に切り替わり、異常 な誤作動を検知して非常ブレーキがかかったということで、辛うじてフェイルセーフが働いたと言えます。それに対してより深刻なのが東海道新幹線で主回路インバーターの故障と遮断機の故障が重なる火災事故が起きました*6。こちらは主回路インバーターの故障と回路を遮断するブレーカーの故障が重なったということで、大電流で発煙してしまったし、気付かなければ大惨事になりかねないトラブルです。何れも原因は不明ですが、高温による熱暴走の可能性は否定できません。暑いインドで生産される半導体は熱暴走の不具合を発見しやすいかも。

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Sunday, August 24, 2025

AIが壊す社畜エスカレーター

民営化ドミノ*1の続きです。予想通りではあるんですが、ガソリン税減税の与野党協議会が足踏みしています*2。1兆円程度の財源を示せない野党の本気度が疑われます。特に立憲民主党の「税収上振れと税外収入」は論外です。インフレで税収の上振れは当然ありますが、同時に国債金利も上昇しており、使ってしまえば次年度以降の国債利払い費の膨張で財政を痛め、インフレを助長することになる無責任な議論です。決算剰余金として繰り越して次年度国債発行額を圧縮するのがインフレ時の正しい財政の在り方です。

野党各党でも国民民主党は論外として、維新の法人税租特法減税の見直しとか、共産はそれに加えて金融課税強化を打ち出しています。本気で政権取りにいくならせめてこれぐらいのことは言うべきですし、暫定税率の原点がオイルショックによる道路特財源の税収減を補う2年間の時限立法だった訳ですから、民営化エントリーで示した潤沢故に無駄が多い道路予算の削減を何故言えないのか?高速道路無料化を打ち出した民主党の後継政党らしからぬところです。そしてこれは腹括った少数与党の石破政権を利するものでもあります。立憲執行部にはどうせ少数与党だから向こうから頭下げてくるだろうという甘い考えがあるんじゃないか?だとすればとんでもないことです。

知恵熱の夏*3で示したように自民公明の与党の敗北は必然だったのですが、立憲民主党の伸び悩みも必然と言えるという厳しい総括ができていないってことです。そんな中で立憲・国民両党で組織内候補を擁立した連合から参院選の総括案が発表されました*4。連合自身の組織の弱体化を示す集票力の低下を認めつつ、それでも地方区で立憲と国民が選挙協力したところでは当選していることを指摘し、両党の協力を示唆するとともに、国民民主党の政策が財政支出を増やして寧ろインフレを助長し労働者を苦しめると言及しています。元を質せばアベノミクスの異次元金融緩和と財政出動の結果の円安インフレなんで、何故正面からアベノミクス批判ができなかったのか。結局自公の少数与党を助ける結果になっている訳です。

その石破政権もツッコミどころ満載で、例えばコメ増産を打ち出し、大規模化やスマート農業でやる気のある農家の支援や企業参入の解禁を打ち出してます。これ政権交代前の民主党も似たようなことを言っていたんですが、政権交代後には減反を前提とした10アール当たりの補助金交付に後退しました。但し国内出荷しない輸出米や加工品や飼料用など減反の枠外で自前で販路を見出す限り自由に作付けできる形とし、減反廃止の激変緩和を図ったことと、コメの先物市場を開設して市場価格を見ながら作付けの参考にする体制を整えました。但し農協の反対で先物市場は機能せず、また第二次安倍政権では逆に食用米の補助金を無くして加工米、資料米、輸出米に補助金を出して事実上の減反を継続させました。令和のコメ騒動でそれが裏目に出て逆にコメ先物市場には注目が集まるようになりました。

で、石破政権の大規模化とスマート農業が何故ダメかというと、戦後の農地改革で水田の圃場が細分化されていて。特に三大都市圏を擁する平野部では相続その他の事情で離農者が農地を手放し、小規模開発の宅地になったりしていますから、物理的に圃場の大規模化が困難になっており、また離農者が増えて一部の専業農家に生産委託されるケースは増えてますが、離れ離れの小規模な圃場で耕作を続けるしかない現状があります。

スマート農業で特に注目されている乾田直播農法ですが、種籾の前処理や播種後の雑草取りの手間が大変で、田植えが省略できるメリットを相殺してしまいます。雑草取りの手間を減らすには除草剤散布が欠かせず、近くに宅地があったりすると使えないし、そんな農薬まみれのコメが高値で売れるか?とか、水田耕法の利点の連作障害がない点もやってみなければわからないし、また水田耕法を前提とした農機類も使えず現時点では監視カメラやドローンなどの価格も高く、参入障壁が存在します。まして人口減少に苦しむ地方の中山間地では尚更で地方創生にも逆行します。一点突破的なイノベーションは無理があります。

食料米、輸出米、加工米、資料米の壁を取っ払って耕地面積で補助金を付けた上、先物市場の市況を参考に作付け量を決めることと、収穫後も市場価格を参照して出荷するといった形にして、離れた圃場の作付けなど農業者の工夫を引き出すことで儲かる農業を実現しつつ適正価格でコメが買えるようにして消費者にもメリットがあるといった形にすることは可能です。

やっと本題ですが、技術革新が必ずしも問題解決に繋がらないのはありふれた問題でもあります。そんな中でChatGPT5が「冷たくなった」というユーザーからの抗議が起こりました*5。前バージョンの4oと比べてフレンドリーさが失われたということですが、そもそも人間ではないAIに共感を求めること自体が間違いで、元々ハルシネーションと呼ばれるいい加減な回答を返すことは指摘されてきましたから、ユーザーが検証しないと使えないのですが、フレンドリーな受け答えに癒されて下手すると宗教とアヘン*6のような依存症にもなりかねませんし、それを誘導に使われる罠にはまる可能性もあります。基本的には個人のスキルアップのツールとして壁打ちの相手に使うのは有効でしょう。逆に言えばそれ以上でも以下でもないツールです。

但し生身の人間ではありませんから当然制約はあります。特に熟練を要する高スキルの獲得は、結局若いうちにそうした人と接する中で試行錯誤するしかない訳で、それはまた高スキルの人の補助的な立場で学ぶということでもありますが、高スキルの人がAIとの壁打ちで多くの問題を解決できてしまうと煩わしい若手の弟子を取りたがらないということも起こり得ます。そうするとその人の高スキルは次世代に継承されず引退して失われることになります。つまりAI依存で若手の育成が滞ることを意味します。典型的なのはプログラマーですが、業務フローを見ながらソースコードを書いてはテストの試行錯誤を経てスキルを上げていく部分をAIが肩代わりしてしまうと若手が育たないというジレンマに陥ります。既に米テック大手では業績好調でも大量解雇に動いており、AIに代替されるのは高給取りの技術職という予想が当たった訳です*7。

日本の場合は雇用慣行の違いから異なった展開が予想されますが、所謂新卒市場に異変が起きる可能性は指摘しておきます。労働力人口減少の結果、新卒市場は売り手市場となり初任給が高くなってますが、どこかの時点でこれが反転する可能性があるということです。事務職と技術職が該当することになりますが、新人が下働きで覚える業務フローをAIが代替してしまえば若手を大量採用する必要が無くなる訳です。しかも即戦力として迎えられるから、付いていけずに離職する可能性も高まります。つまり有名大学を出て大企業に勤めて一生安泰というキャリアプランが成り立たなくなるということです。

これ企業側から見ると新卒市場の取り合いから好待遇を訴求しなければ人が集まらないという事態が解消されますから、即戦力にならない新人の初任給を下げられることを意味します。そしてゼロ年代以来の賃金抑制の結果勤続年数による定期昇給率が下がって賃金カーブがフラットになってますから、勤め続けても賃金はあまり上がらないということで、これが手取りが増えない原因なんですが、結局副業で補填するしかないということになります。ますますスキルは身につかず稼ぐには長時間労働しかなくなるということで、正社員でも実態は非正規と変わらないということになりかねません。てことで第二氷河期に向かうということですね。

元々日本的雇用慣行のメンバーシップ型雇用がバブル崩壊後に崩れて団塊世代の退職者補充を非正規で済ませたことが氷河期世代を生んだ元凶ですが、彼らはスキルアップに努めて正社員を勝ち取っても勤続年数の壁で定期昇給の恩恵も不十分で新卒プロパーと待遇差がありますし、賃金カーブのフラット化で若手より先に昇給が止まり賃金格差が固定化するし、役職者になれるチャンスも少なく、なれても役職定年で平に降格したりと散々な目に遭ってきた訳ですが、その二の舞がこれから就職する若手にのしかかる訳です。インフレを受けて賃上げが進んでいるとはいえ定期昇給込みですから、実質賃金に影響するベースアップ分は3%程度でインフレ率に追いつかない状況です。

そんな中で気になる動きがJR東日本で起きています。最大労組のJR東労組をぶっ潰して、代わりに社員親睦組織兼労使協議帯として経営陣と現場を繋ぐ社友会を組織して協議機会を1ヵ月から3か月に減らしたりした結果トラブルが増えています*8。その一方で会社に賃上げ要求をしたりして労組のような動きを見せていますが、労組ならざる社友会のこの動きに社員から違和感の声が上がっているということです。会社のカバン持ちが賃上げポーズで社員に阿る姿勢の中で、経営サイドからの合理化要求が加速しているというものです。

例えば南武線の遅延問題*9ですが、ワンマン化実施後に朝夕を中心に遅延が日常化しているということで、ドア開までの時間短縮などを打ち出してますが、元々沿線に工場が多く、最近はマンションも林立し、他線との乗換駅が多く乗降が頻繁という路線特性から経営陣が現場をどの程度把握できていたかが問われます。何だか京葉線の快速廃止の混乱*10を思い出させます。いずれも恐らく経営からのトップダウンで実施した結果の不具合という点で共通しています。京葉線は乗客や自治体のクレームを受けて千葉支社長が見直しに動きましたが、南武線ではメカ的な解決策しか示していません。段々JR東日本が嫌いになりつつある昨今です。社員の人も違和感があるならナショナルセンターの連合に相談して労組再結成しても良いと思います。今なら世論も理解するでしょうし、弱体化したナショナルセンターの連合も組織立て直しに繋がります。

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Saturday, August 16, 2025

民営化ドミノの現在地

通常国会期末に衆議院を通過して参議院で否決されたガソリン税の暫定税率廃止法案ですが、参院選の与党敗北を受けて与野党協議で年内実施の方針が打ち出されました。衆参双方で少数与党となった石破政権としては対応せざるを得ないのですが、議論を野党に投げて、財源その他の課題の解決策を出させようということですね。謂わばクリンチ作戦です。

大きな課題は「財源」「ディーゼル」「買い控え・反動増」*1と3つあって、ややこしいのはガソリン税は国税でディーゼルの軽油引取税は地方税で前者は消費税課税対象となる一方後者はかからないし、地方税収減を地方交付税で穴埋めするとすれば、その財源を手当てする必要があり、制度設計が複雑になることから、今回はガソリン税限定となりそうです。その場合の財源は1兆円程度で、予算の議論に絡めて実現可能性を探ることになります。但しそうするとガソリンと軽油の価格が逆転することになり、特にインフレ対策なら物流費等で波及効果の大きい軽油の暫定税率をそのままでは趣旨に反します。この辺の着地点をどうするか、実は野党の方が試されるものになります。

そもそもは道路特定財源とされたガソリン税と軽油引取税がオイルショックによる経済失速で財源難となったことから、2年の期限付きでガソリン25.1円、軽油17.1円の暫定税率を定め、道路財源を確保する目的でしたが、その後紆余曲折はあったものの延長が繰り返され半世紀を超えて存続して現在に至ります。2008年には与野党ねじれ国会で参院で一旦失効した後、衆院の再可決で復活し、2009年には道路特定財源の一般財源化で一般財源となり、使途の制限はなくなりましたが、逆に社会保障費や地方交付税にも回されるようになって寧ろ暫定税率廃止が難しくなり現在に至ります。とはいえ一般財源化されても予算のシーリングで道路予算の比重は高いままなので、一般財源化は寧ろ財政を窮屈にしてしまったうらみはあります。その一端を示す新聞連載記事を紹介します。

道路延びても7割で交通量減少 ずさんな費用対効果試算 - 日本経済新聞
高速道路、利用半減でも4車線化 「整備ありき」遠のく無料化 - 日本経済新聞
ガラガラの自治体有料道、補塡2124億円 予測甘く負担増 - 日本経済新聞
人口減少を無視した甘いB/C比評価。民主党政権下で試行された高速道路無料化が終わって通行量激減しても対面通行解消の4車線化が進み、料金償還は遠のくばかりの高速道路利権。甘い事業見通しで作られた地方有料道路が償還を諦めて無料化される矛盾。過大な予算を所与とする道路の既得権は強固です。但しバスタ新宿*2や肥薩線復旧予算や宇都宮ライトレール*3のように道路予算の使い方は柔軟化してはいますが。尚、肥薩線の復旧が進まないのはJR九州が自己負担分の支出を渋っている結果です。

という具合に現状を過去からの文脈で見ないと見えない問題というものはあります。例えば富山地鉄の一部路線廃止問題です*4。過疎化による末端区間の利用が減っているのに93.2㎞という大手私鉄並みの路線長で保守負担が大きく、実際脱線事故なども起きていて、自治体の支援がなければ一部区間の廃止はやむを得ない状況です。しかし同時に特に本線に関しては並行する北陸本線が北陸新幹線開業で三セク鉄道あいの風とやま鉄道に移管され、車両も新しくなり本数も増えて利便性を増したことで地鉄の利用客を奪ったことも影響していると考えられます。つまり整備新幹線ドミノです。とすれば沿線自治体にとっては複雑な意思決定を迫られることになります。

実は似たような話は、例えば国鉄末期から民営化後にかけて鹿児島本線の列車増発で利便性を増した結果、西鉄北九州線が廃止に追い込まれたり、JR西日本のアーバンネットワークの輸送改善で並行私鉄から乗客を奪ったり、JR東海の攻勢で名鉄が劣勢に立たされたりといったことが起きています。つまり民営化ドミノと見ることもできます。元々国鉄は都市間や地域間を結ぶ幹線輸送、私鉄は地域内完結の輸送というザックリとした役割分担が、地域分割を前提に私鉄の事業領域に国鉄/JRが進出した結果とも言えます。そして整備新幹線は国鉄から引き継いだ幹線輸送を新幹線に譲り、並行在来線切り離しで貨物輸送の負担も無くせる訳で、民営化後の整備新幹線スキームの負の側面が出てきたとも言えます。

整備新幹線の根拠法は全国新幹線鉄道整備法(全幹法)で国鉄時代は建設主体は国鉄と鉄道建設公団で営業主体は国鉄と法定されていて、運輸大臣の指示で東北、上越新幹線が建設され開業しました。それが国鉄改革で分割民営化されれば事業主体を失ってしまう訳ですが、既に整備新幹線として東北新幹線(盛岡市―青森市)、北海道新幹線(青森市―札幌市)、北陸新幹線東京都―大阪市)、九州新幹線(福岡市―鹿児島市)、西九州新幹線(福岡市―長崎市)の5路線が基本計画線から整備計画線に指定されていて、その扱いが問題になり、全幹法も鉄道建設・運輸施設整備促進機構(鉄道・運輸機構)が建設主体で営業主体は分割後の旅客6社が自社エリアを引き受ける一方、分割会社への負担にならない仕組みとして並行在来線の切り離しと受益分を除く事業費を国と地方が負担することとなりました。

但しこの時点では財源が決まっておらず、与党議員からは公共事業費として予算確保が求められましたが果たせず、結果的には1992年のJR東日本の株式上場時にJR3社が国に要望した新幹線の買い取り代金に上乗せされた鉄道整備基金からの出資と運輸省分の一般財源で財源確保し、開業後の線路使用料でJRが返済するという形で事業スキームが決まり、また限られた予算ということでフル規格の他に在来線改軌によるミニ新幹線とフル規格の路盤に当面狭軌で開業するスーパー特急方式が提案され、B/C比に基づく優先配分で当面長野五輪対応の北陸新幹線高崎~長野間が着手されました*5。

その後のあれこれはありますが、このB/C比が曲者で、例えば九州新幹線は当初八代~西鹿児島間をスーパー特急方式で開業し在来線直通特急で新幹線区間で狭軌200km/h営業運転という技術的に未知の領域を前提としてB/C比を高く見せて優先度を上げたりしてましたが、結局B/Cを問えば最高速260㎞/hのフル規格が良い数字を出しますし、北陸新幹線も当初軽井沢~長野間ミニ新幹線だったものがフル規格に変わり、また低金利故に開業後のリース債権を担保に借入れで資金調達するなどしてフル規格に化けていきました。しかし軌間可変車前提の西九州新幹線は開発中止で佐賀県区間の見通しが立たなくなりましたし*5、やはり軌間可変車活用を考えて敦賀までフル規格で開業した北陸新幹線の敦賀の乗換地獄や大阪延伸を巡る小浜京都ルートと米原ルートの争いなど分割民営化の悪い面が出ていて、新幹線が迷惑施設化して佐賀と滋賀で「詐欺だ!」*6ってことになります。

国土軸形成の骨に当たる新幹線に佐賀と滋賀のミッシングリンクを作ってしまったのは国鉄分割民営化への対応が中途半端だったためにJR旅客会社に振り回された国の失敗ですし、更に地方の有力交通事業者を追い込んでいるという構図ですが、もう1つ懸念があります。それは並行在来線を含めて三セク鉄道の職員も国鉄/JRのOBの再就職で賄われてきましたが、JRも自身の合理化で職員数が減っている上、高齢化で退職した後の若手の補充が人口減少で困難になりつつあるのが現実です*7。富山地鉄への支援をケチってあいの風とやま鉄道も人手不足で減便となるような未来はすでに現実化しています*7。地域開発に資する筈の新幹線が地域を衰退させるという寒い話です。

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Sunday, August 10, 2025

外国人問題は社畜の怨念?

雨で凌ぎやすくはなりましたが、お熱うございます。社畜の帰省シーズン*1ですが、コロナ禍での帰らざる社畜2*の変化で様変わりしました。バーチャルなご先祖様はは変わらず帰って来るけれど、居なくなるアニオタはコミケの復活で元に戻り、寧ろ推し活や聖地巡礼で活性化されており鉄ちゃん顔負けです。一方鉄ちゃんは青春18きっぷアップデート*3で様子が変わり、売上3割減だそうで、使い勝手の良かった旧青春18きっぷユーザーは一部離れたようです。

とはいえJR東日本の来春の値上げ*4に見るようにコロナ禍の減収がリモートワーク普及で戻らない一方、インフレによる調達価格上昇もあり、これまで維持してきた国鉄末期の運賃体系で発生していた超過利潤が減少し、割引の原資が細った結果、割引きっぷの見直しも避けられないところですし、上記エントリーで指摘したように青春18きっぱーの増加で現場の負担が増えたこと、地方の過疎化でそもそも通学列車も減っていて企画きっぷ発売の趣旨も薄れてきてますし、また旅客6社の売上配分が利用者アンケートの結果に基づく推計値による案分というアナログな方法でこれも負担になっていたと考えられますから、自動改札の入出場記録に基づく実数値で配分できる分バックオフィスの負担も減ります。

てことですっかり様変わりしたお盆の風景ですが、もう1つ変わったのが円安を背景としたインバウンドの外国人観光客の増加です。特に社畜の帰省とは需要がバッティングします。加えてインバウンド客の大きな荷物が座席や通路を塞いでトラブルが頻発しており、観光地のオーバーツーリズムと相まって課題が明らかになってきてます。それなのにJR東海は定員減を嫌って荷物スペースを増やすといった対応を取っていませんし、予約荷物スペースが予約外の荷物で埋まったりしています。外国人観光客が荷物スペースの予約ができることをJR東海がどれだけ告知しているかが問われるところですが、一見さんの観光客にとって使いにくいシステムになっていないかといったところも問われます。

これJR東日本のえきねっとや指定席券売機の使いにくいユーザーインターフェース(くそUU)の問題*5とか、JR東海のスマートEXと別建てだったり、折角全国で使えるようにしたIC乗車券も敢えて仕様を変えて共通仕様から離脱したり*6、合理化でみどりの窓口縮小したら行列ができたり*7、クレジットカードのタッチ決済やQRコード決済の取り組みもバラバラ*8。先に検討していたJR東日本を出し抜いた格好です。混雑を前提に動作の確実性を求められる首都圏に対して、IC乗車券でも先行するSuica/PASMO陣営に対して仲間を増やす横展開で優位にあるICOCA*9と似た構図です。Suica経済圏危うし。JR東日本はみどりの窓口改革としてAI導入を打ち大sていますが*10、AIはあくまで道具で使い方次第です*11。

要注意なのはAIの電力消費の大きさで、単純に社畜の代替を目指すと人口減少下の高エネルギー消費で知恵熱地獄*12になるし、ろくなことになりません。あとマクドナルドのハッピーセット問題*13ですが、ちいかわでも起きたことの反省や対策も無しにポケモンカードのようなプレミアム性のあるキャラクターグッズを景品として配布して客を吊る企業姿勢にこそ問題があり、外国人のみならず日本人もいると思われる転売ヤーのせいにするというのはいただけません。「悪いのは外国人」というのは間違っています。

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Sunday, August 03, 2025

温暖化の加速

辞めない石破首相の続投の理由の一つが南海トラフ地震などの天然災害の発生の可能誌で政治空白を作るべきでないと。そしたらカムチャツカ半島東岸の海溝型地震と広範囲の津波警報/注意報が起きました*1。石破さん、あんた預言者かい?旧約聖書のノアの箱舟やモーゼの出エジプト記など天然災害のメタファーと見られる記述があり、神の試練と預言者の救済という共通したモチーフがあります。

新約聖書の福音書でマタイ伝だったと思いますが、ゴルゴタの丘に連行されたイエス・キリストと同時に処刑される筈の大盗賊の2人の内1人を赦免するとしたらどちらか?とローマ市民に対して役人が問い、市民は盗賊の罷免を求めました。何人も殺した物獲りの盗賊の所業は市民の日常感覚を拡張して理解可能なのに対して、訳の分からん戯言を述べる預言者は理解不能だったということです。裏金議員の方が理解しやすいのか?そんな盗賊の視点でキリストの復活劇を描いたのがスウェーデンのノーベル賞作家ラーゲルクビストの小説「バラバ」で岩波書店から邦訳が出ていましたが、今手に入るかどうかはわかりません。刑を逃れたものの何か空疎な感覚に支配された主人公の心象風景が描かれています。

それはさておき津波警報で東海道線など鉄道やバスの運休や海水浴場の閉鎖などで行き場を失った人が多数出て、鎌倉市では市役所や市会議場を避難者に開放するなどの対応を取りました*2。鎌倉市では市役所の深沢地区(旧国鉄大船工場跡地)への移転計画が市議会の反対でとん挫しましたが、移転して解体し再開発工事してたら対応できなかった訳で、多くの人を助けました。

警報発出時に外出していましたが、一山越えた安全な場所にいたこともあり、スーパーで買い物して自宅へ戻ろうとしたら待てど暮らせどバスは来ない。そのうちバス停に人が集まり収集がつかない中で、ウェブのバスナビで確認したら東海道線以南の路線は全面運休ということで、仕方なく炎天下徒歩で帰宅しましたが、途中のバス停でバスを待つ人がいたのでバスが動いていないことを話し、また鎌倉駅方面は現状がわからないから急いで戻らない方が良いといった話をしながら、暑さを凌ぐ木陰を辿りながら歩きました。緑の多い自宅周辺の環境に助けられました。警報が出ていてもパニックにならなかったのは東日本大震災などの経験が活きたとも言えます。逆に忘れた頃の天災は恐ろしいという裏腹な関係は意識すべきです。

炎天下の避難で熱中症で倒れた人も出ていて、避難の難しさも同時に意識せざるを得ないなど課題もあります。そして今年の夏の暑さは異常というレベルでもあります。体温を越えた気温と共に、特に日本近海の海水温の上昇で湿度が高い状況が続いています*3。つまり大気中の水蒸気量が増えている訳ですが、水蒸気はCO2以上の温室効果ガスです。但し上昇気流に乗って断熱膨張で放射冷却すれば結露して雲になり太陽の輻射熱を遮りますし、雨になれば地面も冷やすから通常ならば温室効果は限定的ですが、太平洋高気圧とチベット高気圧の2つの高気圧の影響で上昇気流は起きにくく、ただ暑く湿った状態が維持される訳です。そして湿度が高いと発汗による体温調整も働きにくくなりますから、原発や半導体やバッテリーと同様*4人間の能力も低下します。つまり生産性が低下する訳です。社会人も夏休みが必要ですね。暑さは農業などにもマイナスです*5。

そしてもう一つ不都合なのは、脱炭素の切り札とされる水素発電やFCVは水蒸気を発生させますから、湿度を高めて温室効果を助長します。グリーン水素の調達コストも高く、水素社会は当てにしない方が良いでしょう。同様につなぎとしてのアンモニア発電もコスト面で壁にぶち当たってますし、炭素固定(CCS)というやはりコストに課題のある技術とセットで推進されてます。当面はコストのこなれてきた太陽光を中心に再エネ活用を探る方が良さそうです。霞が関の官僚たちも考え改めてほしいですが、地下鉄霞ヶ関駅がサウナ状態という悲報です*6。日本の未来は絶望か?

その一方で神宮外苑その他の再開発で樹木の伐採が進んでいて*7、涼をとれる木陰が減っています。加えて東京都は路面温度を下げる遮熱舗装事業を行ってますが、これが逆に照り返しで気温を上げていることが報告されてます*8。翌年にズレた2020東京五輪の暑さ対策でマラソン協議を札幌で開催することになったものの、サッポロも猛暑の予報があり、マラソンコースを遮熱舗装したのですが、その時のデータを解析したら、確かに路面温度は下がったものの、照り返しによる気温の上昇が認められ、熱中症対策としてはむしろ逆効果というエビデンスです。当然子供やペットの犬への影響は大きいし、最近男性も使う日傘も無意味というものなんですが、何故か東京都は遮熱舗装を推進しています。本当は都市緑地や街路樹の整備による木陰の創出こそが求められるのですが、都民を殺しにかかってる?

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