« August 2025 | Main | October 2025 »

September 2025

Sunday, September 28, 2025

進まない再エネ発電と地方創生

カラータイマー地価地価*1で取りあげたREITなどの不動産流動化の結果、寧ろ過疎地の土地がクラウディングアウトで価格がつかない状況にあることを指摘しました*2。首都圏の地価上昇が地方へ飛び火しているのですが、あくまでも都市部や観光地の話で過疎地は寧ろ取引自体が成り立たず市場から締め出されている現実があります。そんな視点から注目したいのが北海道鶴居村の釧路湿原隣接地のメガソーラー計画です*3。

報道にメガソーラー嫌いが過剰反応してネットでは話題になりましたが、報道で見る限り国立公園隣接地で樹木が生えて湿地の機能を失いつつある土地です。国立公園内の湿地なら日本が批准しているラムサール条約の対象で国内法でも開発が制限されるのみならず、環境保全の義務もある訳ですが、対象外の地域で、またメガソーラーは導入時に普及のために建築物から外されていて建築確認申請も不要と自治体が規制する根拠が乏しいことは確かです。道庁が森林法を盾に中止勧告しましたが、木が生えているから森林法という湿地ではない現状追認の結果です。環境面ではオジロワシやタンチョウの生育への影響など生態系の異変や破壊につながる可能性はありますが、建築物ではないから環境アセスメントも不要だし都市計画法に基づく原野開発の規制も微妙です。

報道では明らかではありませんが、民有地ですから地権者がいる訳ですが、地権者と開発事業者の関係が不明で、以下は推測の域を出ませんが、仮にかつて蔓延った詐欺的な原野商法で買わされた不在地主で、例えば相続で売るに売れない土地に収益性を持たせることで地権者を救済することになりますし、自治体にも固定資産税が入る訳で、この観点から言えば一概に規制すべきとも言い難いことになります。寧ろ「湿原にソーラーパネル」という短絡的な見方がされているとすれば、そもそも湿原にソーラーパネルを固定するコストはバカにならない訳で事業性を損ないます。

釧路市が規制条例制定に動いていることから、不在地主が地権者である可能性は高いと見られます。環境保全でナショナルトラストという意見もありますが、ラムサール条約で保護対象になっていない土地に善意に基づく多数の1坪地主を爆誕させても問題は解決しませんし、寧ろ問題を複雑化します。地権者を含む当事者間の意見調整にゆだねるしかない問題です。また法の不備は国の立法府が動くべき問題ですが、現状休眠中です*4。これ社畜の怨念エントリーで示したコメ増産問題*5とも通底しますが、地方の産業基盤の脆弱さを無視するより身の丈に合った産業政策こそ重要です。

その意味では再生エネルギーはメガソーラーに限らず地方に収益をもたらす可能性が高いのですが、残念なニュースが続きます*6。洋上風力発電の三菱商事による安値受注問題はインフレなんだよ愚か者*7でも取り上げましたが、メガソーラーで起きたFITによる電力高値買い取りで計画が乱立したばかりか権利の転売が横行して発電事業が進まなかった反省を活かせず、FIT価格を入札で決める形にしたところ、三菱商事が相場の半分の低価格で独占受注したものです。そのJ結果2回目以降の入札はFIP(フィードインプレミアム)と呼ばれる方法で卸市場価格との差額補助の形に変わり、三菱商事の参加は排除されました。

加えて有力視されていたデンマークの風力大手べスタスが断念し、日本国内に予定していた組み立て拠点を整備する計画を白紙撤回しました。事実上の撤退ですが、とにかく巨大な風力発電設備は輸送が困難故に現地組み立てが基本ですし、同時に開業後の保守点検拠点になりますから、継続的に仕事が発生して売電のみならず地場の経済を潤します。典型的な地産地消型産業なんですが、大手商社のお構いなしの利権独占の強引さが台無しにしたものです。ある意味過疎地故に可能な産業をみすみす潰したとも言えます。にも拘らず経産省は三菱商事に対してFIP契約にシフトして救済しようとしているというから呆れます。大手企業に甘い日本政府の在り方こそ脱炭素や地方創生を阻害しているのが現実です。

ここまでは過疎地の問題ですが、地方の都市部でも異変が起きています。JR九州が博多駅空中都市計画の中止を発表しました*8。jr各社の中では早くから不動産開発事業に傾注して本業の鉄道業を補完してきた結果、三島会社初の株式上場を果たしたものの、その屋台骨と言える不動産事業でブレーキです。既に基礎工事の為のスペースを生み出す線路移設に取り組んでいたものの、建設費高騰で断念しました。同様の問題は既に東京では起きていますが、地方の大都市にも飛び火した訳です。地価上昇とインフレに加え人口減少で作業員の確保もままならずこうなりました。JR九州に限りませんが、JR各社は大手私鉄モデルで不動産開発を進めただけでなく、REITなどの流動化事業で開発後に転売して次の開発資金を得るビジネスモデルを構築してきましたが、その持続可能性にブレーキがかかった訳です。

Continue reading "進まない再エネ発電と地方創生"

| | | Comments (0)

Sunday, September 21, 2025

100年殺しのアベノミクス

アベノミクスが日本経済の停滞を招いたという主張を続けてきましたが、やっと社会的に認知されてきたようです。しかしコップの中の嵐*1では逆行する訴えもあり、本当に社会の変化を自覚していないんだなと。仮に首班指名されても国民はそっぽを向くだけですね。

実態として日銀の異次元緩和以外は機能しなかったアベノミクスですが、安倍官邸と黒田日銀の間にすき間風があったことは記憶にとどめておく意味はあります*2。黒田バズーカと言われた異次元緩和は結局日銀の国債大量購入による金融圧迫であり、影のテーマは日米金利差による円安誘導だった訳ですけど、政府はそれをいいことに放漫財政で財政再建目標を先送りし続けますし、企業も成長戦略を海外投資に見出して国内投資を蔑ろにするばかりで賃金は増えずデフレ脱却どこ吹く風で黒田総裁がややキレたなんてことがありましたが、結局政府には逆らえず効果の出ない異次元緩和をずるずる続けることになります。

そして国債発行が増えて当然のように長期金利に上昇圧力がかかりイールドカーブコントロール(YCC)が困難になります*3。また企業の国内投資抑制の影響で国内産業の空洞化が進み貿易収支が赤字基調となり、コロナ禍で財政拡大を余儀なくされたこととウクライナ戦争による資源高とやはりコロナ禍で財政が緩んでいた諸外国のコロナ明けのリベンジ消費によるインフレ昂進で日本は貿易収支が悪化して円安が進み、異次元緩和の見直しを余儀なくされたものの、諸外国が利上げに動いても日銀は直ぐには動けませんでした。その流れが今のインフレを呼び込んだ訳で、将にアベノミクスの呪いです。

その結果米雇用統計エントリー*4で予想した通りFRBは利下げに動きました*5。一方で日銀は今回は利上げを見送ったものの、利上げスタンスは維持しております。寧ろ今回のトピックスはこちらでしょう*6。日銀ETFは簿価37兆円時価70兆円、REITは簿価6500億円時価7000億円と含み益がある訳で、以前からその市場消化を財務省に打診していましたが*7、今回そこに踏み込みました。前段として2002~2010年頃まで緩和策として銀行保有株式と交換する形で資金提供する形で株式を取得した訳ですが、異次元緩和で拡大解釈して株式ETFやREITの購入に踏み込むという中央銀行の禁じ手に手を染めたものです。

なぜ禁じ手かといえば、国債や民間の社債ならば償還期限があって償還されれば残高が減る一方、償還期限のない株式ETFやREITはどこかで売る必要があります。しかし当然売れば市場価格を押し下げて影響が大きいだけに財務省は難色を示していたのですが、銀行引き受け株式の売却は認められ、市場消化を進めた結果、市場に負の影響を及ぼさない売却レベルで時間をかけて消化するということで実現に向かいます。FRBの利下げに拘わらず為替の安定で日経平均が最高値をつけた今の市況も後押しします*8。実際には年明け以降の実行となりますが、市場消化で残高を減らすと同時に含み益の益出しで利上げによる日銀当座預金の付利による日銀自身の収支悪化を防ぎつつバランスシート調整を進めることで利上げスタンスを維持するものでもあります。

ただしこのペースでの市場消化は終わるまで100年以上かかることになり、相変わらず出口は遠く、金融正常化は見通せない状況は続きます。その間にバブル崩壊や大規模災害やパンデミックや戦争などの非常事態への対応ののりしろがない訳です。AIバブル崩壊*9も南海トラフ地震もコロナ級パンデミックも台湾有事も起きないことを祈るしかありません。余談ですがFRBにあからさまに圧力をかける米トランプ政権のスタンスは将来日本の轍を踏むことになる公算大です。実際いろいろ不具合が出ています。

例えば日鉄が買収ししたUSスチールで黄金株を交付した米政府に高炉停止を差し止められました*10。同じく米政府が出資したインテルに同業のエヌビディアが出資して協業を提案してます。エヌビディアが国内企業なので事実上の経営権取得です*11。AIデータセンターの壁に Nvidea inside とか^_^;。その結果電力爆食いで電力会社が設備投資を強化して家庭向け電力料金2割高。テック企業の都合で国民生活を追い込む状況です*12。これ日本でも原発新増設その他で同じことが確実に起きます。北陸新幹線の敦賀以西延伸で小浜経由を譲らない福井県の態度も原発受入れのバーターという意識があるかもしれませんが。

テック企業と国民の関係は実は日本でも起きていて、スマホ保険証がスタートしましたが、医療機関はマイナ保険証に続いて読み取り装置や専用アプリの導入で負担がかかり、個人経営のクリニックでは対応が困難だったりします*13。これもデバイスメーカーやソフトベンダーにとっては取りっぱぐれのない国の事業で利益を出して医療機関等にコストを転嫁している訳で、国民の為にはなっていません。そしてJRも上場4社が共同記者会見でネット予約システムで連携を発表しました*14。

1度のログインで他社サイトにも移動できるということのようですが、各社バラバラに開発された結果、独自のルールやインターフェースうやポイント制度の壁は残りますから、例えば東京で東海道新幹線と東北新幹線を乗り継ぐ場合など単純な打ち切り合算となって却って高くつくケースもありますし、事前登録を擁するなどユーザーにわかりやすいものにもなりそうにありません。つまりクソUI^4+α^_^;。元々マルスシステムという共有の基幹システムを持ちながら、各社の都合でバラバラにシステム開発を行った結果、相互連携が取れなくなったわけで、事業者の都合で乗客にコスト負担を強いることになってしまった訳です。加えて各社別々にシステム開発してベンダーに支払っている訳ですから、その分開発費を余分に払っているとも言えます。これ全国共通IC乗車券でも見られますが、結果的に開発コストをペイできずに高コスト故に地方に普及せず逆に離脱まで起きていることにも通じます*15。

結局政府もダメ企業もダメ、頼みの綱の中央銀行も動くに動けず、100年の時を重ねる憂鬱な現実は動かずです。失われた世紀を生きる覚悟をした方が良さそうです。

Continue reading "100年殺しのアベノミクス"

| | | Comments (0)

Sunday, September 14, 2025

案外シンプルに終わりそうな複雑系経済学

90年代に日本でブームになった複雑系経済学ですが、米サンタフェ研究所を中心に科学分野のパラダイムシフトとしての複雑系の科学から、元々多様なパラメータで非線形的な変化が見られることから経済学への援用が試みられ、多数の試みがなされましたが、ゲーム理論のような定着した理論に昇華されることなく、最近ではあまり顧みられておりません。そんな中でここではスタンフォード大のブライアン・アーサー教授が提唱した収益逓増のJ経済学に注目します。

同教授は性能の優れたアップルのマッキントッシュよりも性能の劣るIBM-PCのMS-DOSが優位に立ち、GUI実装版のWindowsで駆逐された現象に注目し、コピーが容易なデジタル分野では主流派経済学の常識とされる収益逓減の法則が成り立たず、逆に収益逓増が見られることで、所謂ロックインと呼ばれる経路依存現象として注目されました。簡単に言えば収益逓減は例えば農地は広い平地で土壌が肥沃で市場へのアクセスが容易なところから農地になりますが、徐々に条件の悪いエリアに拡大することで投資収益が低下するという現象で、デジタル世界ではロックインによる経路依存で逆にに収益が拡大逓増するというもので、本来の複雑系の科学の視点からはシンプル過ぎるきらいはあります。しかし勃興するデジタル経済の説明に好都合ということでブームになった訳です。そしてこれが株式市場にも影響し、多くのIT企業が競い合って株式上場して資金を集め、アイデアを競い合ったものの、その多くは赤字決算で期待だけで株価を押し上げていて、2000年代のITバブル崩壊へつながる訳です。

前エントリー*1の続きになりますが、現在のAIブームが相似相のフラクタル現象*2に見えてしまいます。その帰結はバブル崩壊ってことですが。先週の米株式市場でも相変わらずAI関連株が買われています。しかもその中身がエヌビディアやアルファベットなどのテック大手に限らず、例えば需要増が見込める通信や電力などのインフラ関連株まで買われるようになっています。

但しこれらのレガシー企業の投資マインドはかなり異なります。そもそも時間軸からして投資から回収までの期間が長いし、リスクも大きいから必然的に保守的な投資スタンスとなります。テック企業が競争環境の中で先んじて投資を加速するのとは異なったスタンスになる訳です。故にAI投資として行われるデータセンター投資が加速する一方、その電力需要増に備えた電源や送電網の投資はなかなか着手されない結果、ミスマッチが起きてAI投資にブレーキとなる可能性はあります。これ日本でも同様の問題があって、例えば関西電力の美浜原発敷地内への次世代革新炉建設の実現可能性の疑義が指摘されてます*3。反原発派ではない中立的な論者の指摘だけにリアリティがあります。

そしてもう1つ指摘したいのは経路依存による収益逓増が持てはやされた理由として、グローバル化の進捗による国境を越えた水平分業の拡大を後押しした面もあります。特に半導体やソフトウエアのように物理的に軽い一方付加価値の高い財が国境を越えt流通した結果、ハードウエアなどのレガシーな製造部門を外注して付加価値率を高める動きを後押ししました。その結果垂直統合の権化のようなアップルでさえ製造部門を切り離してファブレス企業となり高収益化するという動きを見せます。所謂アセットライト経営です。

所謂選択と集中で自社のコアコンピタンスをOSやアプリなどのソフトウエア及びそのプラットフォームとなるハードウエアのアーキテクチャの開発に置いて再定義した訳です。これでWindows陣営に対する競争力を回復するに留まらず、iPodから始まる携帯デバイスと音楽配信を進化させiPhoneに結実させるなどして世界をリードします。更に開発キットを公開して社外の開発者が開発したアプリをAppStoreで販売するというビジネスモデルで飛躍します。

それに対してGAFAMと呼ばれるテック大手はアップル以外はAI向けのデータセンター投資に余念がないのですが、アセットライト経営という意味ではマイクロソフト、フェイスブック、グーグル共に製造部門を持たないアセットライト経営だった訳で、その各社が自前のデータセンターを建設しエヌビディアのGPUを大量購入している訳で、インフラ企業化しています。つまり過大な資産を抱えることになる一方、AIの競争環境の中でレッドオーシャン化して収益逓減に直面する訳です。当然ながらどこかで淘汰の嵐が起きることになります。インフラ企業の宿命を背負う訳です。

てことで伝統的インフラ企業の鉄道においても、JR東日本の2代目社長の故山之内秀一郎氏がJR東日本のコアコンピタンスとして首都圏を中心とした高速大量輸送の技術とオペレーションを掲げていたことが思い出されます。その流れで東北の50系客車の後継にオールロングシートの701系を投入して鉄ちゃんに悪口言われましたが、首都圏の大量輸送を基準にすればこうなる訳です。勿論乗客の反応が良くなかったこともあり、E731系では国鉄以来の伝統的な3扉セミクロスシートになりました。また電車化でスピードアップが実現したことはあまり評価されなかったようです。しかしIGR銀河鉄道や青い森鉄道でも701系が使われているように、結局ローカル需要を前提に低コストで実現可能な輸送サービスとしては意味があるとは言えます。

最近ではコロナ禍をきっかけとした大都市輸送の低迷で内部補助に頼れなくなった赤字ローカル線問題が顕在化しており、幾つかの動きが出てますが、1つは電化区間の電化設備撤去でありもう1つはBRT化です*4。非電化化では磐越西線会津若松~喜多方間と奥羽本線新庄~院内間で実施されましたが、特に後者は9か月かかった災害復旧で非電化になったもの。JR東日本の説明では災害復旧の迅速化が謳われてます。これも一種のアセットライト経営と言えますが、BRTなら更に迅速化できますし、一般道迂回で見做し復旧も可能という意味で、地方線区の災害復旧や存続のメニューとして上下分離や並行在来線のような三セク鉄道化と並び自治体へ提案できるというものです。元々需要が先細りの中で、現実的な選択肢を増やす取り組みということはできます。JR西日本でも美祢線の災害復旧で地元協議会でBRT方式が有力になっています*5。

その意味では整備新幹線も整備費用を国と地方が公金を負担する一方で受益の範囲のリース資産として負債計上するという意味ではアセットライト経営の一形態という見方もできます。しかし西九州と北陸のミッシングリンクのようにスキーム自体が機能しなくなってくると見直しは避けられません。その意味では石破首相の国会答弁で示され、経済財政諮問会議の「骨太の方針」にも明記された中速鉄道構想はまじめに考えてみる余地はあります*6。

例えばJR東日本が改良を表明した山形新幹線福島~米沢間で県境を峠トンネルで越える大掛かりな改良工事が予定されてますが、可能な限りの曲線緩和と踏切除去で現行130km/hを160~200km/h程度にスピードアップする事業を整備新幹線と同等のスキームで実現するあたりが初めの1歩になりそうです。フル規格と比べれば低コスト且つ短時間で可能です。また例えば踏切のないJR西日本湖西線でサンダーバードの160㎞/h化のようなつなぎの対策にも使えます。財政規律を考えればこの辺が妥当なやり方ではないかと思います。

最後にJR東海は赤字ローカル線問題どこ吹く風で東海道新幹線の収益をリニア工事で溶かしまくってますが、財投の3兆円を負債計上して資産圧縮していて財務の健全性を見せていますが、開業が見通せず投資額が膨らんでいる中で名古屋まで開業して完成引き渡しされた時点で地獄に落ちます。だから現状のダラダラと資金を溶かす状況はある意味居心地は良いんですが、将来を展望することか困難です。それでも経営が傾かないのは立地条件が良く戦前の弾丸列車計画で取得した用地を利用できたことによるもので、山陽以降の新幹線が東海道新幹線と比べれば収益は1/3という明らかな収益逓減法則が働いていることは付記しておきます。

Continue reading "案外シンプルに終わりそうな複雑系経済学"

| | | Comments (0)

Sunday, September 07, 2025

米雇用統計悪化で終わる世界

不毛な国内政局が進行中ですが、自民党総裁選前倒しして誰が総裁になったところで、臨時国会の首班指名選挙が関門になります。逆に言えば新総裁に石破さんが選ばれない限り、冒頭解散という奥の手が残されています。そんなコップの中の嵐にお構いなく世界は動いています。そして日米関税交渉で自動車関税等の懸案が解決した一方、5500億ドル(80兆円)対米投資に関わる覚書が交わされ、驚きの中身が明らかになりました*1。アメリカ側から発議されて日米で協議して合意した後にアメリカ側が承認するという流れはまるで日米合同委員会の経済版。日本が拒否権を発動しにくい建付けです。

ラトちゃんアカちゃんの交渉がこんな形で着地するとすると、少なくともトランプ政権期間中はほぼ言いなりのATM状態になりかねません。仮に石破首相続投でも、臨時国会は間違いなく荒れます。相互関税特例や自動車J関税の大統領令署名のためとはいえTACOでも烏ー賊の軟体ポチ*2に成り下がり、おそらく日本の財投資金を米国内の投資に充てる形になりますが、ある意味口約束で密約化するよりはマシとはいえとんでもない地雷を抱え込むことになります。自動車メーカー保護のために国民を犠牲にしてアメリカの国内投資に資金を提供するということですね。

経済好調なアメリカも、ここへ来て変調を来しており、それだけ日本の対米投資を本気であてにしているということです。まず7月発表の雇用統計で予想に届かない結果となりました*3。しかも5~6月の速報値の下方修正もあってFRBの9月利上げが確実視されました。その結果株価上昇と長期金利低下と先取りされ、さらに8月の雇用統計でも予想に届かず、6月の数値もさらに下方修正されてマイナスになり、失業率もマイナス1%となりました*4。これでFRBの9月利下げは確実視されただけでなく、あと2回のFOMCでも利下げが続くかもという展望が出てきました。景気悪化で株高という奇妙な現象ですが。

しかし雇用統計の数字には複雑な要素があり、DOGIによる連邦職員のリストラやAI活用によるITエンジニアの解雇によって減っている一方、不法移民取り締まりによる労働力不足もあり、失業率はさほど下がっていない現実があります。高給取りが減った一方、非熟練工やサービス部門は相変わらず人手不足でミスマッチが起きていることになります。加えてバイデン政権時代に投資を決めた韓国現代自動車のバッテリー工場では建設工やエンジニアの就労ビザを発給せず、仕方なく観光ビザで入国して作業に当たった韓国人が不法就労で摘発されて、韓国では対米不信から投資を引き揚げろという世論に火がついています*5。対米投資でも意に添わなければ平気で潰す訳です。つまり投資先としてはリスクが高い訳です。

というわけで米経済の先行きは不透明なままですが、FRBが利下げに動く一方、日銀は利上げを模索しています。つまり日米の金融政策は逆向きで、通常ならば円高ドル安に振れそうなものですが、ドル円はあまり動いていません。理由は日本の政治情勢から財政拡大が連想され、インフレが予想されるからです。その一方トランプ関税で心配されたアメリカのインフレは今のところ落ち着いており、結局両国のインフレ率が為替を動かしていることになります。コップの中の嵐をしている場合ではありません。日銀の利上げをやり易くするには財政規律の確保が重要です。しかしインフレは当然政府支出も増やしますから、26年度予算の概算要求は122兆円と過去最高で、せめて不要なバラマキを抑制して今年度予算を使い残して決算繰越金を増やすJことが必要な財政運営となります。それを怠ればインフレで調整される一方、国債金利の上昇で日銀の手足を縛ることになります。

財政運営の泥縄はアメリカも同じで、トランプ減税の恒久化で関税を財源のあてにしてますが、交渉で決まる関税は貿易の阻害要因でもあり二重に歳入の不安定化をもたらします。そうなると米国債の引き受けが難しくなりますし、対ロ制裁や中国の人民元決済拡大などでドル離れが進むし、銀行は既発債の評価損 で新発債の引き受けを躊躇するとなると、新たな引受先を見つける必要があります。そんな中でアメリカでステープルコイン法が下院で成立しました*6。余談ですがトランプのファミリービジネスで仮想通貨に深くコミットしており、利益相反の可能性はあります*7。「ドル基軸の維持」も空々しい。

発行事業者には預金または短期国債の裏付け資産の保有を義務付ける内容で、財政ひっ迫で長期債発行が難しくなる中で、短期債シフトを睨んだものと言えます。従来主に銀行が担っていた役割を拡大する狙いですが、当然ながら銀行と競合する事業ですから、銀行預金がステープルコインにシフトして銀行の信用創造システムを棄損する可能性があります。そうすると主に民間融資に回っていた資金が国債買い支えに回り、AI投資として自前のデータセンター投資にまい進するテック大手の投資を抑制することになります。しかし低金利通貨としての日本円が維持されるならばキャリートレードの種銭になりますからドルの信認を安い円が支える構図が固定化される可能性があり、そうなると日本のインフレは民間投資資金の海外移転で供給力拡大が進まず止まらなくなります。

てことでやっと鉄道ネタですが、JR各社のローカル線廃止議論と無縁のJR東海がリニア工事の遅れで資金とかしまくっているにも拘らず、財務は盤石の謎です。大井川の水問題は鈴木新知事に変わってから協議が進み和解が成立しましたが、残る生態系への影響や作業ヤードと取付道路の着工、重金属を含む要管理残土の処理問題など静岡工区だけでも未解決問題はありますし、加えて人件費や資材費の高騰や人手不足で着工83工区中31工区で2027年の開業に間に合わない状況ですし、同様の問題は静岡工区以外でも抱えています。故に更に遅れる可能性もありますが、JR東海はあまり困っておらず、財務的にも盤石です。

理由は東海道新幹線の好調で大量のキャッシュフローを生み出しており、そのまま利益計上すれば株主還元や法人税課税で削られるところですが、工事の遅れを口実にリニアで溶かすことで免れます。遅れる工区は逆に敢えて遅れを容認し、その間に地域との対話を進めて工事の障害を減らしたり、問題の解決策を探る時間を得ることが可能ということで、寧ろ前向きに捉えられています。住民対話が進むことは悪くはありませんが、最初からやれよ。但し名古屋開業がいつになるかわからない状況は続く訳です*8。故にJR旅客各社が抱える赤字ローカル線問題も災害復旧問題も無縁で、在来線も含めた車両更新が進みJR化初期車両も淘汰されています。

但し名古屋開業が見通せない限り大阪延伸は具体化しませんから実現可能性は遠のきます。財投融資3兆円は無駄になりそうです。リニアで溶かした資金がJR旅客各社のの赤字ローカル線延命や災害復旧に回ることは当然ない訳で、ただただ国民生活と無縁の資金循環でしかありません。国民を助ける国内投資が不振な中で国民を豊かにすることもなく、先が見通せないという意味では米テック大手のAI投資と双璧です。

Continue reading "米雇用統計悪化で終わる世界"

| | | Comments (0)

« August 2025 | Main | October 2025 »