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November 2025

Saturday, November 29, 2025

AIの酸化に降参か左様なら

鹿の敵討ち*1の高市失言を立憲の野田代表がうまくフォローしました。発言撤回は求めず従来の政府方針を語らせることで国内向けには事態を収拾し、同時に質問者として批判されていた岡田代議士の名誉回復を図るという大人の対応を見せました。残念ながら高市首相はそれでも「質問されたから答えた」と岡田代議士批判の世論に乗っかって自己弁護で救いようなし。これからも失言しまくりで誰かがフォローする流れでしょう。その前にトランプ習近平電話会談があり、その後トランプ高市会談で釘を刺されたから本人も失敗は自覚しているとは思いますが*2。

18.3兆円の補正予算を閣議決定して国会へ上程されますが*3、こちらは簡単ではないでしょう。特に本来本予算で対応すべき防衛費増額を補正予算で行うのは臨時的対応を旨とする補正予算の趣旨にも反します。というよりも防衛費に限らず本予算では金額を明示しない事項請求をしておいて、補正予算に潜り込ませたということならば財政民主主義に反する暴挙です。中国の戦狼外交は団体客のキャンセルに留まらず日本のタレントの中国公演の軒並み中止など実害が出ていますが、中国の強硬姿勢を逆手に取って正当化する高市ショックドクトリン*4を警戒すべきでしょう。これナチス台頭時のドイツワイマール共和国時代の大砲かバターか論争の相似形で、敵を作って国民生活を圧迫することに他なりません。

既に市場は財政悪化を織り込んで長期金利が上昇する一方、短期金利は低いままで長短金利差が拡大しています。今後長期債の発行は困難になり短期債で回すことになりますが、そうすると国債の新規8個に害に既発債の借り換えが頻繁になり、インフレによる金利上昇でジワジワトと財政を圧迫することになります。そしてその前に所謂債券自警団の投げ売りが始まると一気に国債大暴落となります。株価以外全部沈没*5で指摘したように株価はインフレを反映して上昇しているもののあくまでも円建ての話であり、円安と債券安は進んでいる現実があります*5。高市ショックも近いかも。株に関してはアメリカのAI相場の後追い*6で、AIブームに沸く米テック企業にも選別の目が向けられています。

2年前に勤労感謝にAIは勝つ?*7で分析しましたが、AIによる生産性向上効果は主に高スキル労働者の経験値に裏付けられた暗黙知をAIに学習させることで低スキル労働者の生産性が改善することが主なもので、謂わば教育効果による労働力の底上げなんですが、これは同時に高スキル労働者にとってはライバルの増加を意味しますから労働市場での優位性を失い賃金が下がることを意味します。加えて低スキル労働者にとってもスキルアップの機会とモチベーションを失わせますから、一定水準以上のスキルアップが止まり生産性向上効果は一巡します。つまり結果的にはAIなしには使えない労働力の劣化を意味する訳です*8。

逆にAIの開発者はそれを利用して労働者を都合の良いツールに誘導する誘因を持ち、創造性のない苦役で労働力を消費される訳ですから、次世代のイノベーションを阻害し経済自体の持続可能性を危うくします。そしてベーシックインカムの美名のもとでばら撒かれる給付を受動的に消費するデジタルペット状態になるとすれば、そんな未来はディストピアでしょう。そしてその片鱗は見えています。例えばアイドルの推し活はある種の依存症的なものがありますし、実在に人が相手ならまだしも生成AIが唯一の話し相手といったことにもなりかねず、実際AI依存症が原因と見られる若者の自殺は報告されています*9。

てことで気になるのがJR東日本がPayPayなどに対抗してモバイルSuicaにteppayというQRコード決済機能を持たせ、且つチャージ上限を現行の2万円から30万円に引き上げて個人間の送金にも使えるようにし、またVIEWカードとの紐付けで後払い決済にも対応すると発表しました*10。従来のFELICAベースのIC乗車券と電子マネーは残りますが、利便性に差をつけてモバイルSuicaへ誘導しようということですね。FELICAチップという特定ハードに依存した結果半導体不足で新規発行を止めた苦い経験もあるでしょうけど、同時に事実上記名カードとなることで個人データを取得しようということでもあります。

乗車券予約、宿泊、ショッピング、決済といった一連をカバーするスーパーアプリ化が狙いでしょうけど、同時にタッチアンドゴーという簡便さで高齢者などライトユーザーにも浸透したSuicaの良さは、アプリ操作で煩雑にンり決済絡みでセキュリティも強化されるとすると、ユーザーインターフェースは複雑化が避けられませんし、ポイントやクーポンで利用を誘導することで一種の依存症的なことも起こり得ます。故に私は乗り換えるつもりはありませんが、ユーザーは気をつけて使わないといけません。これが進化なのか?

Suicaリニューアルに関係あるかどうかはわかりませんが、Suicaペンギンの卒業も発表されてます。普通に考えたらイメージの継続性を損なうリスクのあるキャラクターの変更は冒険だと思いますが、原著作者が個人であり個人保有の著作人格権は没後の相続以外に譲渡ができないことからの決定のようです。彦根市キャラクターのひこにゃんを巡る事件を参考に意思決定されたようで、企業として揉め事の芽を摘むということのようです*11。現時点で原著作者と揉めている訳ではないようですが、Suicaリニューアルとタイミングを合わせての決定というところでしょう。AIの時代にも個人の創造力は強固です。

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Saturday, November 22, 2025

戦狼は続くよどこまでも

前エントリー*1の続きですが中国の戦狼外交が日本に向いてます。戦狼外交で中国の嫌がらせを受けたのは日本が初めてではなく、例えば株価以外全部沈没*2で取り上げたネクスペリアを巡る中国とオランダの対立が、結局オランダが折れて解決しました*3。似たような話はバルト3国のリトアニアでも起きていて、中国の人権問題に不信を抱くリトアニア政府は台湾との関係重視に舵を切り、2021年7月に首都ビリニュスに駐リトアニア台湾代表処が開設されたことを受けて中国は駐リトアニア大使召還、北京のリトアニア外交官の外交官特権剝奪、リトアニア産品の禁輸などさまざまな嫌がらせを繰り出しましたが、2023年11月27日にリトアニア外相が中国による制裁が解除されたと発表して終結しました。経緯はわかりませんが、中国に対して何らかの譲歩をしたと考えられます。

つまり日本に対してもいずれ制裁解除はすると思われますが、譲歩を引き出すまではやめないということでもあります。そして日本渡航自粛や留学自粛に続いて石破政権で外交交渉で日本産海産物禁輸の解除が撤回されました*4。更に交渉中の牛肉禁輸解除も見通せず、細かいところでは中国国内の日本関連イベントや興行が軒並み中止になっていたりします。おそらくこれらは具体的に指示されてということではなく、トップの意向を忖度した動きと考えられますから、結局習近平氏が納得するかどうかということになると考えられます。高市政権で習近平氏にリーチできる人材はおそらくいないので、長引くことは避けられません。

今や中国にとっての日本のウエートは欧州の小国レベルということです。またこうした経緯があったので、欧州各国の首脳がこの問題に関心を持ってみているというのも興味深いところですが、トランプが「台湾有事はない」と断言したアメリカよりも、似た経験を共有する欧州との連携に活路があるように思います。戦狼外交とおどろおどろしいネーミングですが、要するに経済的な圧力をかけて相手を威圧するということです。ということは中国依存を低めれば解決可能に見えますが、実はそこに落とし穴があります。

戦狼外交は鄧小平時代の韜光養晦(とうこうようかい=能ある鷹は爪を隠す意)政策が外交の基本方針だったものが、2020年頃にシフトしたと言われますが、韜光養晦はつまり力を得るまではネコを被れということでもあり、世界ナンバー2の経済大国となった今の中国がこうなるのはある意味必然です。そしてその布石を着々と打ってきて今に至ります。ただの泥であるレアアーズの戦略物資化などは典型ですが、資源としてはありふれていても精製して純度を高めるには技術がいるし放射性元素などの副産物の処理が困難で規制に厳しい先進国では事実上無理ですし、さりとて途上国では技術がないということで、精製技術を磨いて中国以外から産出された泥も結局中国へ持ち込まないと使えないということで、いつの間にか世界市場を席巻していたというもの。それ故アメリカさえも譲歩を迫られる外交上の武器になっている訳です。日米で南鳥島のレアアース開発が俎上に載ってっますが、正直実現可能性はかなり低い金食い虫になりそうです。

これEVや半導体も同様で、国を挙げて取り組んでいつの間にか世界一のポジションを獲得する流れです。実は日本も太陽光パネルで世界をリードしながら中国の安値攻勢に敗れてサプライチェーン構築に至らなかった苦い経験があります。その結果実はアジア随一の再エネ大国は今や中国で、日本ではあまりニュースにならないブラジルのCOP30でも中国主導で進み、途上国支援を渋る先進国をしり目に中国の存在感が大きくなっています*4。それに対して日本はと言えば柏崎刈羽原発6号機再稼働で脱炭素を謳うおめでたさ*5。実は原子力産業も例えばアメリカは核燃料をロシアから調達してますし、日本も主にオーストラリアからの調達ですが、やはり先行きの安定供給は見通せません。下手すると原子力産業はロシアと中国がツートップになる可能性もあります。環境規制の厳しい先進国では無理な話です。

こうした話は枚挙に暇がないんですが、例えば高速鉄道での中国の躍進は目覚ましいものがありますが、これ日本の国鉄分割民営化が影響しているんです*6。京滬高速鉄道の開業で「日本の新幹線のパクりだ」の声がありました。確かに中国は技術移転を求めていてドイツのシーメンスやフランスのアルストムは特許で対抗した一方、日本では国鉄末期の車両メーカーの特許強制公開があり、その後の分割民営化で国鉄が無くなって権利関係が曖昧になって対抗できなかった結果ですが、当時の日本では知財の意識が希薄だったことも影響してます。何だか太陽光パネルと似ているような。日本人の学習能力ってこんなもんか?

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Sunday, November 16, 2025

鹿の敵討ち

高市首相が国会答弁でやらかしました*1。国際問題化してます*2。「能力のない頑張り屋はただただ迷惑*3」という予想が残念ながら当たりました。問題は歴代政権のあいまい戦略を無視して手の内を晒したこと。台湾有事への自衛隊の対応は公然の秘密であってもとぼけてれば相手が勝手に疑心暗鬼になる心理戦こそ抑止力なのに、よりによって国会答弁で、しかも質問通告に沿って官僚が無難な答弁書を用意しながら、無視して勝手に発言した結果、秘密が取れて公然になった訳です^_^;。

スパイ防止法の必要性を主張しながらの体たらく。元々国家公務員法や地方公務員法で守秘義務違反は刑事犯罪と定義され、トクリュウへの捜査情報漏洩で警視庁警部補が逮捕されてます*4。国家公務員の場合はさらに特定秘密保護法もあり、民間人もセキュリティクリアランス法の指定を受ければ同様です。それに加えて屋上屋を架す立法事実が存在するのでしょうか?特別公務員の議員や首長が外国のカルト宗教に便宜を図るエージェント行為、所謂壺議員を放置していることから、法律の不備より刑事司法の不作為の問題では?それよりコメ安くしてくれ!

中国の姿勢も今回は強硬ですが、幾つかか理由が考えられます。10月30日に韓国で行われた米中首脳会談で合意した関税と対抗措置の延期です*5。とりあえず米中の対立が一時休戦となった訳ですが、先に仕掛けたアメリカに対してひるまずレアアース輸出規制や米国産大豆輸入制限で対抗した結果、アメリカの方が音を上げてクリンチに逃れたのが実態です。つまりアメリカを屈服させた中国の外交的勝利ということになりますが、副産物として日本の存在感は隅に押しやられた訳です。その自信が日本への強硬姿勢をもたらしたと言えます。

加えて四中全会で党幹部の欠席者多数という事態があります*6。反腐敗運動で処分されたり拘束されたりした幹部多数で、ほとんどが習近平体制で登用された幹部ということで、イエスマンで固めた独裁体制の綻びを示します。泣いて馬謖を切った結果、反主流派のウエートが高まり、習近平総書記に逆風が見られました。それが戦狼外交へのシフトとなって現れ、日本叩きで反主流派のガス抜きを狙ったと考えられます。そして日本への渡航自粛の呼びかけとなったと考えられます。

但しあくまでも渡航禁止ではなく自粛要請ということで、実質的にどの程度の影響が出るかは何とも言えないところ。厳しい態度を見せつつ中国も落としどころを探っているとは言えます。これで中国人観光客が減れば京都などの観光公害も緩和されますし、奈良の鹿虐待も減るかもwww。まさか狙いは鹿の敵討ち?へずまりゅうレベルの愚か者だわ*8。

最後はAIのフーガ*9のフーガ(輪唱)wwwww。田園都市線梶が谷駅事故で国交省が全国の鉄道事業者に連動装置の点検を指示した結果、10事業者15駅で見つかりました。人間のやることには見落としが付きもの。ヒューマンエラーを前提とした対策が必要です。高市発言もヒューマンエラー?

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Saturday, November 08, 2025

AIのフーガ

米株式市場を追いかけて縋りつくような日本株式ですが、今週興味深い動きが見られました。前エントリー*1で株価の上昇トレンドを取り上げましたが、5日に大幅に下げて終値は5万円を割りました*2。AIバブル崩壊の懸念からか一部ファンドがエヌビディアなどテック株に大量の空売りを仕掛けて値下がりした前日のNY市場の流れから日本市場でもAI関連の売りが出て下げたもので、ソフトバンクグループのような大型株が下げた結果ですが、面白いことに翌6日には相場が5万円台に戻ります*3。AI関連は軟調ですが、内需株その他好業績企業がぶっ浴された結果ですが、ザックリ言えば日本株に流入した資金は引き続き日本に留まっているということになります。

勿論これは円安インフレによるもので素直に喜べないのですが、傾向として輸出その他で外需依存が強く関税の影響で利益を減らす製造業よりも内需関連のサービス業が業績を伸ばしています*4。まあ万博の影響もあると思いますが。それでも資本効率が改善しない日本企業の何が問題なのかということで、面白いコラムを見つけました*5。自己資本利益率(ROE)は自己資本で純利益を割った比率ですが、業績好調で利益は増えても分母の自己資本が増えれば比率は改善しない訳で、特に海外法人の売上が大きい外需依存企業では利益の本社送金をせずに海外法人が内部留保していると、決算時に為替変動を反映した含み益含み損が連結決算で自己資本に算入される訳で、円安による含み益が分母を押し上げているとすれば、なるほどROEは改善しない訳です。しかも国内からの輸出分の関税も円安効果で負担が軽くなるから利益減も圧縮される訳です、つまり日本株は円安で押し上げられているということですね。円安が反転しインフレが収まらない限りこのトレンドは続きます。

その意味では高市政権の所信表明演説で積極財政を打ち出したことは、財政悪化で円安もインフレも止まらず、企業業績が良くてもそれが賃金に反映されない限り賃金がインフレに追いつかず、国民生活は窮乏化することになります。そしてアメリカではさらに気になる動きがあります。アメリカの政府閉鎖が続いて航空管制官が無給で働いているものの、このまま続ける訳にもいかず、連邦運輸省は管制官を休ませるために航空便の減便に踏み込みます*6。言ってみれば政府によるロックアウトのような状況で、当然航空券は入手困難になり出張やレジャーは自粛または片道レンタカーなどの自衛策となり国民生活に多大な影響が出ています。

そしてそのこと自体の経済的損失もさることながら、既に1ヵ月を越える政府閉鎖で予算執行が滞った結果、政府支出による通貨の流動性の低下に影響が出ていると見られることです。つまり日本とは逆に意図せざる歳出削減効果が働いてそれが金融市場の流動性を低下させている疑いがあるということです。暗号資産ビットコインの暴落がそれをよく表していますが、この流れから本当にAIバブル崩壊に至るシナリオもあり得ます。その場合は日本も無事でいられるかどうか。但し企業が外需依存をリスクと捉えて内需関連の投資が増えれば局面が変わる可能性はあります。但し高市政権下では逆方向の動きが気になります。

例えば経済安全保障重視で造船などの海外事業の支援ってのは結局造船能力を喪失したアメリカの艦船製造を支援するって話で外需依存なんですよね。海底ケーブル敷設なども日本のデジタル赤字を拡大させるだけならサービス収支悪化で円安になるだけだし、何より明らかに大砲とバターの大砲重視の姿勢は確実に国民生活を圧迫します*7。そして台湾有事への言及が寧ろ安全保障環境を悪化させる恐れもあります*8。台湾に関しては当事者である中国も台湾も現状維持を求めており、アメリカも動けない。加えて日米共に台湾を国家承認していないから集団的自衛権行使の対象にはならないし、国際法上は内戦となりそれに対する軍事介入は重大な主権侵害になります。つまり現状の法的枠組みでは動けないから歴代政権が曖昧にしてきたところへ踏み込んだ訳で、寧ろ事態を悪化させます。

ってことでいろいろ心配はありますが、鹿を指して馬と為す*9東急田園都市線梶が谷駅の事故で政府は鉄道各社にシステム点検を指示し*9、他社でも同じ問題がありました。JR西日本や阪急阪神HD、関東ではJR東日本と京急で見つかり、それぞれ対策を発表しています*10。システム設定のミスが見つかり、今までは事故に繋がったケースはないものの、新しいシステムを導入しても設定ミスの見落としは防げない訳で、東急の見習い運転士のささやかなミスが将来の事故の可能性を摘み取ったと見れば良かったということになります。天下国家を論じて大きな物語に酔うよりも、新しいものを確実に社会実装して役立てていくというこうしたことが、国民生活を豊かにするということは声を大にして言いたいところです。

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Saturday, November 01, 2025

株価以外全部沈没

ほとんど前エントリー*1の続編ですが、事態が動いているのでフォローアップせざるを得ない状況です。

まずガソリン減税ですが、今年12月31日からの暫定税率廃止で与野党が合意しました*2。与野党6党合意ですから国会通過もすんなりいくでしょう。軽油も来年4月1日からということですが、インフレ対策なら物流費に影響する軽油を後回しというのは軽油引取税が地方税で地方から反対の声が上がっていますが、同時にガソリンが安くなることの方が国民へのアピールになるということもあるでしょう。AIが壊す社畜エスカレーター*3でも触れましたが、価格が下がって需要を喚起すると原油の輸入が増えて貿易収支が悪化して円安インフレを招くことになります。

また財源は曖昧なままで、当面税収上振れによる剰余金や法人税の特措法減税の見直しなどとされてますが、特に剰余金は繰り越して次年度の国債発行抑制に用いることが法定されてますから、年度をまたいだ単なるトバシでしかありません。具体的に道路予算削るとか自動車関連税例えば重量税の増税とか、揮発油税の負担がないEVを考慮した走行距離税とか燃料税の炭素税への1本化とかには踏み込まずに済まそうとしている訳です。この調子ですから財政規律の緩みを質そうとはしていない訳で三つ子の赤字*4はますます進みます。

そして自動車半導体を巡るオランダと中国の対立がエスカレートしています*5。ネクスペリアは元々オランダの電機大手フィリップスの半導体部門を独立させた企業ですが、中国資本に買収された結果、オランダ政府から製造技術流出の恐れということで冷戦時代に作られた忘れられた法律で規制をかけたものですが、どうも裏でアメリカが動いているようで、怒った中国政府がネクスペリアの中国にある最終製品工場からの海外出荷を制限した結果、ドイツVWや日本のホンダその他の自動車メーカーが巻き添えになっております。自動車用半導体の世界シェア4割を占める同社の製品の8割は中国工場で最終製品に加工されることから、世界中の自動車メーカーがトバッチリを食っている訳です。これ結局日欧などアメリカの同盟国が傷つくだけの不毛な争いですが、今度はオランダ政府がネクスペリアのシリコンウエハーの中国工場への供給を止めて泥仕合になっています。中国資本のオランダ企業というネクスペリアがまた裂き状態になっている訳で、トランプと習近平がにこやかに握手しても事態は解決しません。中国を除く世界の自動車産業のピンチです。

そのせいか最高値を更新する日本株でも自動車関連はパッとしません。主にAI関連半導体関連の値上がりが支えているようで、相場全体が上げ相場という訳ではありません、円安で割安感があっても海外勢は万遍なく買っている訳ではないということです。高市トレードと言われる株高も一皮むけばという感じですが、特に欧州勢の買いが優勢なのは変わりません。インバウンドやタワマン完売などに見られる安いニッポン現象です。

ほぼ500兆円で動かなかった日本の円建てGDP名目値ですが、ドル建てでは5兆~6兆ドルだったものが、インフレで600兆円を超えた円建て名目値がドル建てでは4兆ドルになっているのが現状な訳で、その分日本の購買力が低下している訳で、一番のインフレ対策は日銀の利上げしかない状況ですが*6、またも日銀は動きませんでした*7。ベッセント国務長官は別に親切心で言っているのではなく、日本政府のドル売り介入を牽制する意図でしょう。実際米ドルは円を除く主要通貨に対して下げており、ユーロ・ポンド・スイスフランなどに対して安値となっていて通貨防衛の意図ですが、欧州の主要通貨は既に米FRBに先駆けて利下げに動いていて、スイスフランに至っては日本よりも低金利なのに上昇してます。そしてFRBも今回は動いたものの*8為替は寧ろ円安に動いてドル円153円台が定着しつつあります。その意味では日銀が利上げしても大勢に影響はないのかもしれませんが、金融正常化の姿勢を示す意味はありますし、利上げを遅らせた分だけ正常化が先送りされます。

てことでインフレ下で株式の高値更新はある程度持続すると思いますが、銘柄ごとに動きはバラバラで、下げている銘柄もあります。例えばリニア事業費倍増で嫌気されたJR東海です*9。財務の健全性は複雑系エントリー*10で指摘した通りですし、財投の3兆円も30年据え置きという破格条件で現状ほぼ無利子ですから利払いの負担はなく、現状のインフレが続くなら負担にならないかもしれませんが、それ故に居心地の良い現状を抜けられなくなっているとも言えます。東海道新幹線のぞみ増強とインバウンド需要で既にライバルの国内航空便に対しても優位な状況ですから、仮にリニアが開業しても航空からの移転はほぼ見込めないとも言えます。逆に東海道新幹線の好調でキャッシュを稼ぎ過ぎると自社株買いや配当などの株主還元を求められるから現状煩いアクティビストに狙われることもないということも言えます。この辺は伝統的日本企業的なスタンスで、既に赤字ローカル線の名松線に至るまで線路も車両も更新されこれ以上の投資先が見当たらない贅沢な悩みでもあります。何ならJR西日本が渋っている北陸新幹線米原ルートを整備スキーム無視で自前整備するとか。まあやらないでしょうけど。

一方でインバウンド対応は京阪が始めたプレミアムカーが阪急やJR西日本でも取り入れられ、老舗の近鉄特急も差別化された豪華特急のラインナップを整備してます。そんな中で京阪は更にプレミアムカー2両体制と攻めてます*11。上限運賃が決められていて航空鵜のようなダイナミックプライシングが難しい中でJR東日本の中央線グリーン車や私鉄各社の着席サービスが次々に登場してますが、京阪の場合沿線開発が終わって沿線の高齢化や松下・サンヨーといった大手電機産業の撤退やJR西日本との競争激化もあって乗客が減少する中での増収策ですが、当然一般車の乗車定員を削っている訳で、それに対する批判もありますが、背に腹は代えられないということですね。

同様の動きは関東でもありまして、1つは京成電鉄の空港連絡有料特急の増強計画です*12。成田空港第三滑走路供用と3つのターミナルビル統合を成田空港会社が打ち出し、末端が単線のJRと京成の成田空港線の増強を視野に入れてスカイライナーに加えて押上発着の有料特急を2027にも導入ということで、押上が観光名所でもある東京スカイツリー最寄りで浅草にも近いからインバウンド需要の取り込みが見込めるということですね。アクティビストから将来への追加投資を迫られていた京成が動きを見せた訳ですが、同時に都営浅草線への直通も視野に入っていると考えられます。そしてそれを裏付けるような動きが出ました*13。具体策はこれからですが、JR東日本のN'EXの牙城に切り込む可能性もあります。

両社ともにアクティビストの標的にされており、投資をせがまれてしないなら株主還元を求められているという点で共通しています。加えて都営浅草線を通じて関係も深く保安装置も同じ1号線型ATSの上位互換のC-ATS*14でハードは共通で運用が異なるだけなので擦り合わせは容易です。具体的にダイヤに落とし込むときに現状のインフラの貧弱さがネックになる可能性はありますが、インバウンド対応というところは引っ掛かるものの、とりあえず投資に向かうことは評価できます。殆どシナジーのない新京成電鉄の子会社化と統合とか、系列バス会社の再編とかで守りを固める一方だった京成と、やはり沿線の高齢化と立地企業の撤退で京阪と似た苦境にある京急がアクティビストに促されて動いたということですね。日本の現状は明らかに国内の民間投資が不十分だった結果と言えますから。

その意味で日本政府が合意文書を交わした5500億ドルの対米直接投資はヤバいです*15。というのも同様に対米投資を迫られた韓国のこのニュースです*16。長くなりましたのでさわりだけですが、韓国は外貨準備の80%超に及ぶ3500億ドルの直接投資でウォン安によるインフレ昂進を懸念して抵抗していたもので、それ故自動車関税交渉が遅れたのですが、日本のように自動車関税緩和を優先してやはり確実に円安を招く巨大投資を受け入れたことは、国民生活を犠牲にして大企業を救ったということでもあります。とりあえず今回はここまでにしておきますが追って深掘りします。

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