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December 2025

Tuesday, December 30, 2025

雪道と自動運転

今年はいろいろあって取りこぼした話題が多数ありますが、全てではありませんが年内に片づけたいものを取り上げます。まずは自BANGのオウンゴール*1の後日談*2。記事ではアメリカの台湾への武器売却も一因としてますが、明らかに高市失言に端を発する戦狼外交*3の一環です。一番迷惑しているのは台湾ですが。今回は自衛隊はスクランブルをかけませんでした。しかしそうなると前回のスクランブルはどういうプロセスで行われたかに疑問が残ります。軍事演習の情報収集ならば非武装の偵察機で行うのが国際的な慣例ですし。

で、本題ですが、先週関越道で重大事故が起こりました*4。続報で単独事故で中央分離帯に乗り上げたトラックに別のトラックが追突して炎上し、後続車がそれを避けようとして多重衝突に至り、完全に車線を塞いだという流れのようです。復旧を急ぐために細かな現場検証はスキップされたようで詳細は尚不明ですが、当時積雪による路面凍結と吹雪で50km/h規制がかかっていたようですが、SNSで停止したトラックに猛スピードで突っ込むトラックの動画が流れたりしていて、おそらく単独事故のトラックを後続のトラックが避けきれずに追突したと見られます。規制が守られていなかった疑いがある訳です。

自重の重いトラックは乗用車に比べて滑りにくく雪道でもあまりスローダウンせずに走ることは可能ですが、滑った時のダメージが大きいだけに、本来はスローダウンした流れに合わせて走るべきところを無理をしたと推察されます。ドライバー不足と年末の繁忙期で焦りがあった可能性があります。加えて後続車のうちにはレベル2以上の自動運転車も含まれていたと思いますが、事故時の振舞いがどうだったかが気になります。

滑って転んで壺ッター大草原*5でも取り上げましたが、雪道や凍結路ではタイヤのトラクションが極端に低下しますので、それに合わせて急加速急ハンドル急ブレーキはご法度。フェザータッチのアクセルワークとシフトダウンとダブルクラッチによるエンジンブレーキ活用とソフトなポンピングブレーキを前提にスローダウンして走らせることが求められますが、現時点での自動運転車に雪道モードは実装されているとは考えられませんから、後続車が自動運転オンで走らせていれば事故回避はほぼ不可能。そうでなくても雪に不慣れなドライバーも多数いるでしょうから、たった1台のトラックの単独事故が後続車多数を巻き込む今回のような事故は再現性があることを意味します。雪が降ったら乗らないのが一番の回避策です。

とはいえ物流を担うトラックを減らすのは簡単ではありませんから、政府も新東名や新名神でのトラックの自動運転実装を目指してますが、雪道に対応できなければ大事故のリスクがあるし、それを防ぐにはドライバー手配か運休ということになります。安定輸送を考えれば政策的なモーダルシフトでトラック自体を減らすことを考えるべきでしょう。その意味で鉄道貨物の役割は重大なんですが、熊くまクマ*6のJR貨物のクマ被害という伏兵もあって難しいところですが、クマを含む野生動物の線路進入を防ぐ対策が求められます。しかし雪道の事故を考えれば道路予算で費用負担しても良いのではないでしょうか。

例えば物流を止めるな*7で取り上げた北海道新幹線の並行在来線問題で、国交省は青函トンネルの貨物ルート存続を前提に長万部以南の並行在来線の維持を模索してますが、並行在来線三セクの営業赤字が30億円規模で沿線自治体がしり込みする中で、北海道庁はダンマリを決め込んでいます。ならば国が線路を保有して上下分離する提案があっても良いと思いますが、あくまでも地域の問題としてそこまでは踏み込まずにいます。道庁の姿勢に問題はありますが、鉄道貨物の分担率の高い北海道対本州の輸送インフラとして国が面倒を見る余地はあります。おそらく他の並行在来線三セクとの扱いの違いを言われたくないのでしょうけど、逆に敦賀から先のルートで揉めている北陸新幹線でも湖西線の並行在来線切り離しはルートに関わらず不可避でしょうから、重要な物流インフラとして国が関与する判断はあり得ます。そしてこれらは民生インフラとして国民生活を支えるものでもあります。

まあ高市政権では新安保3文書で装備品輸出拡大を成長戦略というたわごとを言ってますが*8、ぶっちゃけ民生よりも軍事、バターより大砲と言っている訳ですが、工場の海外移転と人口減少で国内の供給能力が低下してインフレになっている中で、防衛装備品を輸出して稼ごうって話です。円安で装備品価格が上がっていることから輸入代替の産業政策で量産効果による価格競争力向上も狙っている訳ですが、既に枯れて縮小している国内工業生産力を軍事に割り当てれば民生需要を満たす輸入が増えて輸入インフレで国民生活を困窮化させます。ナチスの軍事ケインズ主義が失敗した歴史の教訓を見ていませんね。身近なところでは北朝鮮の先軍政治で国民が窮乏しています。対して中国は経済成長に比例して装備強化されていて、日本の高度経済成長期の防衛費と同じ展開です。決定的な差がある訳ですね。

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Sunday, December 28, 2025

本当の年収の壁

年収の壁のウソ*1を貫き通した玉木国民民主党代表の与党すり寄りです*2。またガソリン税暫定税率廃止も決まりました。こちらは与野党6党で合意してますが*3。AIが壊す社畜エスカレーター*4でも取り上げましたが、国民民主党の支持団体の連合は財政出動を伴う国民民主党の基礎控除拡大などの減税策はインフレを助長すると批判するとともに、同じく組織内候補を立てて支援する立憲民主党との選挙協力をした選挙区では勝利している点を指摘して選挙協力拡大を求めてますが、それを台無しにしています。

国民民主党の玉木代表は、かつて高度経済成長期に毎年賃上げがあっても所得税の超過累進課税で税負担が増えることから、所得減税で基礎控除が見直されてきた所謂サラリーマン減税のことを指摘してますが、オイルショックで税収減に見舞われた1975年の特例国際法成立までは所謂赤字国債の発行はなく、当時の大平蔵相の猛反対もあって1年限りの特例措置として成立したものです。その後慣例で毎年更新が続き、期限も5年に伸びて現在に至りますが、2026年はその5年に1度の更新の年に当たります*5。年明けの通常国会の予算審議で野党の絶好の責めどころですが、国民民主党は基礎控除拡大の見返りに早々と予算案賛成に回り、与党をアシストしてます*6。元々低所得層の税負担は軽く、高所得層に恩恵の大きい基礎控除見直しを実現して「政権交代より政策実現」とドヤ顔して財政悪化を許して円安と金利高を許して国民を裏切ります。それでも選挙で票が取れると踏んでいる訳で、有権者をバカにしてます。

こうした歴史を知らないで「積極財政で成長戦略」とか「賢い支出で強い経済」とか甘い言葉に騙されちゃいけません。財政出動すればGDPの名目値を増やすことはできますが、供給不足のインフレ状況では物価上昇で調整されて、いつまで経っても物価に賃金が追い付かない状況は続きます。つまり結果的にインフレで手取りは実質減少します。それでもインフレは莫大な債務を抱える政府にとっては事実上のインフレ税で負担が軽くなることから、赤字国債発行をためらわない訳です。高度成長期には赤字国債発行しなくても成長できていて、しかしサラリーマン減税で税収を減らしてきたから結局インフレが常態化していて賃上げを相殺していたのですが、それ以上に経済成長して実質成長率もプラスだったから国民も不満を覚えつつ豊かさを実感していたものですが、その成功体験から抜けられないからインフレ=好景気という固定観念で「好循環」を求めてインフレターゲット論やリフレ論から怪しげな現代貨幣理論(MMT)など甘言を弄する論者が絶えませんが、アベノミクスの失敗が示すように全て幻想です。

てことで本来の年収の壁は実は低賃金にあるということと、インフレは賃上げを相殺することを言いたい訳です。元を質せば2002年春闘のトヨタ奥田会長のベアゼロ宣言に始まりますが、3月期にトヨタは史上最高の連結経常利益1兆円を達成して絶好調だったにも関わらず、中国など低賃金で台頭する新興国を睨んでグローバルに戦うには日本の高賃金の是正が必要ということで押し切りました。これに他社が追随して所謂ベアゼロ春闘の始まりです。

当時団塊世代が未だ現役の一方、2007年には定年による大量退職が始まることが見えていました。定期昇給で賃金が高い中高年従業員が抜けて低賃金の若手が補充されるのであれば企業の人件費負担は変わらないのですが、ベースアップを止めれば人件費を抑えられる訳です。それでいて定期昇給は温存されて賃金自体は上がりますから、現役社員の不満は出にくい訳で、また工場の海外移転などの脅しもあって、雇用維持の観点から労組が追認することになります。その後団塊世代大量退職の補充は非正規効用で対応し、当時バブル後の就職氷河期世代が溢れていたことと、雇用維持の約束を反故にする形で工場の海外移転を進めるなど企業側の身勝手な行動で賃金は低位安定して労働分配率は低下の一途を辿り、ゼロ年代で70%から60%まで落ちました。つまり企業は儲かっているのに賃金を抑えた訳で、一方労組の強い欧米では賃上げが続いたので、ぶっちゃけこれが失われた30年の最大の原因です。手取りが増えないのは賃金を抑えたからということですね*7。

しかしその結果企業は莫大な内部留保を抱えることになり、それがアクティビストの標的になっていて、配当や自社株買いなどの株主還元を迫られる形で取り崩されている訳です。特に海外アクティビストの標的となっていて、それが株高をもたらしている一方で円安債券安は留まることを知らず、それがインフレを助長しますから国民生活を圧迫します。という訳でいい加減成果の出ない「成長戦略」やめませんか?

国民の関心事はインフレであり将来不安である訳で、新NISAの好調はそうした不安を反映したものではあります。しかしS&P500やオールカントリーなど米国株中心の海外投信に多くの資金が流れてますから、一種の円キャリートレードとなって円安を助長してインフレ要因になるという矛盾もあります。来年度予算で防衛費や企業向けの補助金や地方交付税の積み増しなどが並ぶ一方、社会保障給付の減額が盛り込まれてますが、これは将来不安を助長するものになります*8。

社会保障費+2%と社会保障関係費以外の+4%はインフレ対応の歳出増ですが、社会保障費の圧縮で高額療養費上限上げ*9やOTC類似品の値上げ*10などが打ち出されてますが、その節約額は2000億円程度*10。一方で会計検査院は省庁が設置する基金の未消化を取り上げてます*11。すべて無駄と言うつもりはありませんが、ほんの少しの見直しで救える命は確実に増えますし、1.5兆円程度とされる暫定税率廃止財源も捻出可能ですし、更に言えば与野党で協議される給付付き税額控除の財源も手当てできる可能性があります。簡単な試算ですが、106万円や130万円の所謂社会保険料の壁対応ならば1人2万円程度で最低限の制度導入する場合、2.5兆円程度の財源があれば可能ということが言えます。

その一方地方交付税交付金、国債費、防衛費は何れも10%超の増額です。国債費は新発国債分の他、借換債発行を睨んだ利払い費の増額があって動かせないところ。既に借換債だけで180兆円規模でしかも長期債の売れ行きが芳しくないから中短期債への借り換えとなってその分償還が早まるから借換債も膨張して金利上昇が反映されるから年度を重ねるごとに負担が増えて政策経費の余地を狭めます。地方交付税交付金の増額は悪評のお米券その他のインフレ対策費として特別交付金が計上されていますが、インフレ対策で消費が増えればインフレを助長します。防衛費も装備品の増額が主体で自衛官の待遇改善は僅かです*12。

そしてほんのちょっとの鉄分^_^;。北陸新幹線の敦賀以西のルート問題で調査費が計上されてます*13。正式決定となる5原則を無視して与党PTだけで決めた小浜京都ルートで前例のない調査費計上を押し込んだ与党PTですが、調査費計上した結果、京都の水問題で環境アセスメントがとん挫し、国交官僚によるB/C比見直しで0.5という絶望的な数字が出た訳で、計上自体はは毎年続いているものの執行は止まっている状況なのは繰り返し取り上げてきましたが、与党に入った維新の意向で見直しされることになり、金額はそのままに新年度予算にも計上されています。しかしほぼ執行の可能性はゼロです。これも繰り返してますが、整備新幹線のスキーム自体が矛盾をはらみ限界になっていることを認めた上で新制度を提案するのが本来ですが、こうした現実を見ない成長戦略が無意味なのは言うまでもありません。

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Sunday, December 21, 2025

熊くまクマ

鹿*1じゃなかった今年の漢字*2。クマ被害とパンダ返還が理由という何とも評価しずらい理由の並びですが、鹿のその後を先に*3。オフレコ報道に対する批判もありますが、内容次第で報道すべきとしたメディアの判断に問題はなく、寧ろNPT体制を理解できていない官邸スタッフがいることが問題でアメリカからもクギを刺されてます*4。

で本題ですが、クマ関連の過去エントリーは2件あります。1つは奈良県上北山村の東の川簡易郵便局*5。故人のレールウエイライター氏が広めた旅行貯金というのがありまして、郵便貯金通帳に旅行先で入金して局名の入ったスタンプを捺してもらうというもので、ダム建設関連で移転後残った8世帯の為の簡易郵便局が、当該世帯も移転して無人集落となった後も存続し、クマやイノシシの出没するところで平日5日間の交番勤務でイノチガケで維持されていたというもの。流石に2005年4月1日に廃止されました。

上北山村はかつて林業が支えでしたが、林業の衰退で観光業が主要産業となっていて、無人地帯の簡易局も簡単に廃止できなかった事情はあるにせよ、過疎地の過酷さを示します。そんな上北山村のアクセスはほぼ国道169号線に限られ、かつては奈良交通熊野線が担っていた公共交通は、今は大淀町・吉野町・川上村・上北山村・下北山村の5町村を結ぶ南部地域連携コミュニティバス(R169ゆうゆうバス)が奈良交通が受託して福神駅(近鉄吉野線:大淀町)~下桑原(下北山村)間を1日1往復でほぼ日帰り不可能と観光立地も劣悪です。大都市圏でも廃止減便が続くバスの過疎地の過酷な現実です。

そんな紀伊半島は面積9,900㎞^2でほとんどが森林ですが、林業が盛んだったことからスギやヒノキなど針葉樹の人工林が多く、クマの生息に適したコナラなどの広葉樹林は僅かです。故にツキノワグマは絶滅危惧種として保護されていて400頭を下回らないことが基準とされていますが、推定個体数が増えて管理にシフトすることが決まりました*5。紀伊半島全域で推定個体数467頭ということで和歌山県と奈良県で保護政策を見直します。上北山村は面積276.22km^2に2025年11月1日現在推定人口376人という過疎地ですが、クマの個体数密度はさらに低い訳で、そもそも遭遇機会は低いものの、被害の酷さは尋常ではありません。童謡の森のくまさんは「お嬢さんお逃げなさい」と促して生息域の外へ誘導する優しさがありますが、現実の猛獣とはエリア分けが必要です。

クマから見れば人間が勝手に山に入って食料の乏しい針葉樹の人工林で林業を営んだ結果、生息域が狭められたということでもありますが、紀伊半島以外でも主に近世の新田開発で平地の少ない日本では森林との境界域の棚田などが開墾され、生産性の低さを補うために山に入り、燃料の薪や肥料の落ち葉、キノコや山菜の採取などが行われて所謂里山を形成することで、クマの生息域は圧迫される一方、ヒトとクマの遭遇もあり、自衛の意味もあって狩猟も行われるようになります。クマの狩猟は鉄砲伝来以降の話ですが、それがクマのヒトへの警戒心をもたらして緩衝地帯を形成する訳です。それが過疎化で耕作放棄地が増えた結果、棚田は樹木が生えて森になり、ヒトも入らないから結果的に生息域を拡大している訳です。故に個体数密度が低く繁殖力の弱いクマでさえ個体数が増える訳です。ヒトとクマの共進化の歴史です。しかも気候変動による気温上昇で冬眠しないクマが現れ、食料が手に入る都市部へ下りる機会も増えます*6。

岩手県盛岡市のホームセンターDCM盛南店ではクマ対策マニュアルがあって、店舗スタッフがそれに従った結果ヒトの被害はありませんでした。そして過去エントリーの2件目でそんなマニュアルがある新幹線駅を取り上げました*7。長野新幹線として開業した安中榛名駅は当時人里離れた山の中でクマ出没に悩まされ、駅員と乗客の安全を図るためのマニュアルが用意され、駅員は指令に通知して列車通過扱いにして駅を閉鎖し、構内のヒトを守るというものでした。クマの生息域に新幹線駅作っちゃったってことですが、そんな立地でも新幹線通勤を想定した宅地造成をして売り出したものの売れず、2区画合筆して農園付き別荘としてやっと売れたという黒歴史があり、結果的にクマの生息域を侵食しました。

紀伊半島など西日本では針葉樹の人工林が多く、元々個体数が少ない上に紀伊半島のように絶滅危惧種として個体数の把握が行われていた一方、東日本はコナラなどの広葉樹林が多く生態系の多様性が維持されていたこともあり、クマの個体数把握は行われていません。故に生息域の拡大で都市部にも出現するようになった訳です。ヒトとクマの共進化も東日本では異なった展開です。故にハンターは趣味で猟銃免許を取得した一般人でクマ相手だと反撃のリスクもあり、猟友会頼みの対策では追い付かなくなっているという風に事情が異なります。秋田や岩手のクマ被害はこうして起きている訳で、地域に応じた対策が必要です。失われた過疎地の里山の復活は難しいですが、例えば境界域の樹木を伐採してソーラーパネルを設置するのも一法です。さらにその電源で地場ビジネスを起こせればヒトが住む緩衝地帯になり得ます*8。ちなみに秋田新幹線こまちもクマ原因の輸送障害が複数回起きています*9。

ということ北海道に話を移すと、こちらにはより大型のヒグマが生息していて生態系も異なりますし、また被害も多岐に亘ります。そんな中で鉄道被害も深刻です*10。シカとの接触と異なり、クマの場合外へ出て排除するのは危険なので、指令を通じて救援が来るまで待機せざるを得ないということで、長時間の運休を余儀なくされます。鉄道貨物の依存度が高い北海道故に深刻です。地域によってクマ対策も一律にはいかない複雑な問題ってことです。政府も外交で揉めてる場合じゃないぞ!

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Sunday, December 14, 2025

自BANGのオウンゴール

過去エントリー*1でも指摘した日本政府の自作自演ぶりに眩暈がします。12月6日に起きた自衛隊機に対する中国機のレーダー照射問題で異例の7日深夜2時の記者会見です*2。レーダー照射は攻撃のためのロックオンで使用されることは確かですが、必ずしもそれに留まらず、特に戦闘機同士の場合は接近する相手の位置や速度を知るための照射が多いのが実際です。マッハの速度で飛ぶ戦闘機には民間機では普通の自動航行装置などは装備されておらず目視航行となる訳ですから、遠方から接近する相手に照射することは安全確保の意味からあり得ます。

そして小泉防衛相は事前通告がなかったと説明していましたが、その後中国側から自衛隊護衛艦に向けて空母遼寧の離発着艦訓練実施の無線交信と思われる音声データが公開され、小泉防衛相もその事実を認めています*3。つまり護衛艦が受電した事前通告が共有されていなかったってことで、これ自体は自衛隊側のガバナンスの問題です。おそらく空自からの報告を精査せずに拙速に公表したと考えられます。高市失言で日中関係が微妙な時期に*4、おそらく備蓄米放出で見せた小泉前農相のスタンドプレー*5だと思いますが、自衛隊の内部情報すら確認せずに拙速な対応をしたと考えられます。レーダー照射の事実は事実として、確認してから公表、あるいは敢えて非公表という判断があり得る外交や防衛のナイーブな機微情報を扱う閣僚として軽率のそしりを免れません。

こんなことは枚挙に暇がないんですが、例えば3.11後の福島第一原発の事故の報に対して当時の原子力安全保安院や東電が「メルトダウンではない」と否定して、後に訂正を迫られるという流れと同じですね。あるいは大井川の水問題その他で静岡工区の着工ができない*6とか、瑞浪市の陥没事故関連で打つ手なしと居直り*7、都市部の大深度地下工事の問題点が露呈しても*8工事着手して案の定のトラブル*9を起こすリニア工事に対するJR東海のスタンスにも同様の問題が見て取れます。

これだけ問題を抱えながらJR東海がリニア事業の見直しをしないのは、アベノミクスの成長戦略の1つとして財投資金3兆円の融資の一括返済を求められる可能性があるからですが、30年据え置きの低利融資という破格の条件で難工事や工事の遅れや資材費や人件費の高騰で膨張する事業費をファイナンスできてしまうということです。しかし同時に大阪延伸を睨んだ財投資金融資を使い込みつつ名古屋開業すら見通せない現状では大阪延伸はほぼ不可能と考えて差し支えない状況です。

もう1つはあれこれトラブルはあって工事は遅れてますが、既に着工した工区では着手金が支払われており、また進捗状況に応じて施工業者に支払われる中間金もあり、その中間金は工事の遅れである程度支払いを猶予されている面があり、JR東海にとっては資金繰りが楽な状況が続いているという皮肉なことが起きています。加えてコロナ後の東海道新幹線の万博とインバウンドによる絶好調で笑いが止まらない一方、利益剰余金が増えすぎると株主還元や料金値下げなどの圧力を受ける可能性がありますから、工事代金の引当金に計上することでそれを回避できるという良いことずくめで逆に身動きが取れなくなっているのが実際です。実は日本政府も似たような状況なんですが。

コロナ禍で肥大した暫定予算の問題点は前エントリーでも取り上げましたが*10、国債発行こそ圧縮したものの積極財政が許容できない状況は着々と進みます。FRBの利下げ*11と日銀の今月の利上げが確実視されて金利差は閉じつつありますが、長期金利は確実に上昇しております*12。特に30年物などの超長期債の金利上昇は急で、主に生保などの機関投資家が保有してますが、金利上昇は債券の値下がりを意味しますから評価損が発生する訳で、新規の引き受けは無理で必然的に期間の短い国債で穴埋めせざるを得ません。しかし10年債で2%弱ではインフレ率にも達しないから投資妙味は薄く、新発国債の買い手探しが問題になります。

そんな中で元本保証のある個人向け国債がにわかに注目されてます*13。個人向け国債は固定3年もの、固定5年もの、変動10年ものの3種類があり金利上昇で注目されてますが、一番売れているのが固定5年ものということですが、1.35%ではインフレ率以下で損です。今後の金利上昇を睨めば変動10年もの1択ですが、中途解約は半年ごとの直近2回分の金利が解約金で取られるので10年寝かせられる資金がなければ意味ないし、銀行預金よりはマシ程度です。寧ろゼロインフレ時代でも0.5%の最低保証金利が適用されていた時代には旨みがありましたが、その時には見向きもされていませんでした。国民の投資リテラシーはなかなか高まりません。

てことで積極財政シフトした欧州でも模索がされており、イタリアではメローニ首相が個人向け国債購入を呼び掛けておりますが、日本より利回りが良く長期保有で金利が上がる制度設計の工夫もあり、投資妙味があり市場の信認を得て財政難のフランスよりも高評価で南欧クライシス時代とは様変わりです*14。一方財政規律重視から憲法まで変えて積極財政に転換したドイツではインフレと移民受入れ絞り込みで資材費、人件費が高騰して執行が進まないという日本と似た状況に直面します*15。イギリスでは確定給付年金から確定拠出遠近へのシフトで年金による長期債購入が減って国債の短期化が進みます*16。上記の日本の生保の長期債離れと似た状況で苦しんでいる訳です。

加えて日本では思わぬ伏兵があります。2026年度が5年に1度の特例公債法案提出の年に当たるからです*17。1975年、赤字国債発行を嫌う当時の大平蔵相の肝いりで押し切った1年ごとの特例公債法成立以来、毎年予算審議に絡めて更新され続けた法律ですが、赤字国債が発行できないと予算の執行が止まるということで、以来野党の要求を呑ませる攻防戦に使われました。2011年には当時の民主党菅首相の辞職と引き替えに通し、2012年には野田政権の与野党三党合意で解散総選挙と引き替えに期限4年とする改正法案が通され、後に5年に伸びて今に至り、来年度改正周期を迎えます。これがアベノミクスの積極財政で財政規律を棄損した一方、衆院の過半数は確保したものの与党の劣勢で野党の格好の責めどころとなります。アメリカの債務上限の所謂財政の崖問題の与野党攻防と同じような状況が予想され、荒れる予算審議に高市政権は耐えられるかどうか。尤も野党からして減税要求ばかりで財政規律はどこへやら。高市ショックは必然かも。

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Saturday, December 06, 2025

日流ふてほど

韓流ふてほど*1から1年経ち、韓国尹前大統領の裁判が進み、戒厳の真相が明らかになってきてます*2。来年1月にこの件で裁判が始まりますが、ドローンを飛ばすように指示を出した軍関係者の証言が得られております。とんでもない話ですが、高市首相の台湾有事発言*3と構図は似ています。そしてまたやらかしました*4。今月1日に東京で行われたサウジアラビア投資家向けのフォーラムで Just shut your mouths. And invest evelything in me!! (黙って俺に投資しろ)と発言しました。進撃の巨人の決め台詞の英訳ということで、日本のアニメに絡めて得意げに発言したらしいのですが、命令調のかなり失礼な表現です。

書いた記者はニューヨーク支局の経済記者ですが、1日にして世界中に伝わったことを示します。それだけ目立った発言という訳です。同じ日に日銀の植田総裁が名古屋の講演で今月の利上げを示唆し、更に今後も利上げを続けることも示唆しており、その結果やや円高になり長期金利が上昇する一方、株価は下げました。株価はその後上げ下げを繰り返してますが、植田発言を受けての市場の正常な反応ではあります。問題はこれが日本市場の閉じた動きに留まらず、欧州からアメリカへとさざ波のように広がったことで、高市発言の影響を記者が感じ取ったということです。なまじ英語で発言したから世界を駆け巡ってしまったということですね。

鹿虐待*5など、とにかく失言が多すぎます。高市総裁が選ばれた時点から円安が進み長期金利が上昇している流れから、絶局財政で日本発の金融危機を心配する金融関係者が多く、高市ショックを世界は心配しているということです。流行語大賞に選ばれて笑顔で登壇する違和感もありますが、「ワークライフバランス捨てる」*6のインパクトではなく「働いて働いて働いて働いて働いて」の方を採用する選考委員の忖度も変です。ユーキャンがスポンサーから抜けた影響かな*7。

長期金利の上昇は国債の利払い費の膨張のみならず、日銀の金融政策を縛ります*8。黒田日銀時代に異次元緩和やイールドカーブコントロールで国債の高値での大量買いをしたために、通貨回収の手段として国債の市場処分をすれば金利上昇を煽るし、安値で売れば含み損が顕在化して信用不安につながるから、日銀当座預金の利息を増やして金利を動かすしか手段がない一方、高値で買った国債は実現利回りも低く当座預金利息との逆ザヤが発生してしまいます。故に穴埋めにETFやREITの慎重な市場処分でそちらの含み益を充てるしか日銀には打ち手がない訳です。にも拘らず圧縮されたとはいえ11兆円もの国債発行で補正予算を組んでしまう高市政権の財政運営を世界が注視し心配している訳です*9。イギリスのトラスショックと違って日本の高市ショックは世界を巻き込むことが危惧されているのです。しかも成長戦略とやらはアベノミクスの二番煎じで死屍累々の山確実です。

産業構造の変化に対応せず既得権益を強化する成長戦略では結果は出ません。一例を挙げれば羽田空港の国際化ですが、航空会社の機材の小型化もあって羽田空港の過密化が進み、定時運航に支障を来しています。コロナ禍の影響で国際線が打撃を受けた航空各社ですが、政府の支援で凌いだものの、出張の自粛やリモートワークの普及でビジネス客が減っている一方、コロナ明けの海外のリベンジ消費と円安の波に乗ってインバウンド客で国際線は好調なものの国内線は実質大赤字ですが、ターミナルデマンドの一極集中で羽田ばかりが混雑する状況になっています。その羽田の発着枠問題が矛盾を助長していて、1枠十数億円の発着枠を放棄しないために便数を減らせないという矛盾があります。故に路線によっては70%台の低搭乗率でもライバルに権利を奪われないために飛ばさざるを得ないというようなことが起きています*10。

また座席を埋めるためのディスカウントも行われている結果、LCCの優位性が失われてそこでも競合が起きているし、関空や中部など他のハブ空港は逆にさっぱり発着枠が埋まらないという状況です。そんなこんなで成田空港や福岡空港の拡張計画が迫られていますが、何れも羽田の代わりにはならないし、結局東京一極集中を何とかしない限り問題は解決しません。ビジネス客の減少はJRの新幹線も同じなんですが、羽田の遅延常態化は例えば北海道新幹線の開業後のアドバンスを高めるかもしれず、リニアを作るまでもなく国内線航空は白旗を上げる状況ってことです。そうなるとますますリニアを作る意味が失われますが。

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