熊くまクマ
鹿*1じゃなかった今年の漢字*2。クマ被害とパンダ返還が理由という何とも評価しずらい理由の並びですが、鹿のその後を先に*3。オフレコ報道に対する批判もありますが、内容次第で報道すべきとしたメディアの判断に問題はなく、寧ろNPT体制を理解できていない官邸スタッフがいることが問題でアメリカからもクギを刺されてます*4。
で本題ですが、クマ関連の過去エントリーは2件あります。1つは奈良県上北山村の東の川簡易郵便局*5。故人のレールウエイライター氏が広めた旅行貯金というのがありまして、郵便貯金通帳に旅行先で入金して局名の入ったスタンプを捺してもらうというもので、ダム建設関連で移転後残った8世帯の為の簡易郵便局が、当該世帯も移転して無人集落となった後も存続し、クマやイノシシの出没するところで平日5日間の交番勤務でイノチガケで維持されていたというもの。流石に2005年4月1日に廃止されました。
上北山村はかつて林業が支えでしたが、林業の衰退で観光業が主要産業となっていて、無人地帯の簡易局も簡単に廃止できなかった事情はあるにせよ、過疎地の過酷さを示します。そんな上北山村のアクセスはほぼ国道169号線に限られ、かつては奈良交通熊野線が担っていた公共交通は、今は大淀町・吉野町・川上村・上北山村・下北山村の5町村を結ぶ南部地域連携コミュニティバス(R169ゆうゆうバス)が奈良交通が受託して福神駅(近鉄吉野線:大淀町)~下桑原(下北山村)間を1日1往復でほぼ日帰り不可能と観光立地も劣悪です。大都市圏でも廃止減便が続くバスの過疎地の過酷な現実です。
そんな紀伊半島は面積9,900㎞^2でほとんどが森林ですが、林業が盛んだったことからスギやヒノキなど針葉樹の人工林が多く、クマの生息に適したコナラなどの広葉樹林は僅かです。故にツキノワグマは絶滅危惧種として保護されていて400頭を下回らないことが基準とされていますが、推定個体数が増えて管理にシフトすることが決まりました*5。紀伊半島全域で推定個体数467頭ということで和歌山県と奈良県で保護政策を見直します。上北山村は面積276.22km^2に2025年11月1日現在推定人口376人という過疎地ですが、クマの個体数密度はさらに低い訳で、そもそも遭遇機会は低いものの、被害の酷さは尋常ではありません。童謡の森のくまさんは「お嬢さんお逃げなさい」と促して生息域の外へ誘導する優しさがありますが、現実の猛獣とはエリア分けが必要です。
クマから見れば人間が勝手に山に入って食料の乏しい針葉樹の人工林で林業を営んだ結果、生息域が狭められたということでもありますが、紀伊半島以外でも主に近世の新田開発で平地の少ない日本では森林との境界域の棚田などが開墾され、生産性の低さを補うために山に入り、燃料の薪や肥料の落ち葉、キノコや山菜の採取などが行われて所謂里山を形成することで、クマの生息域は圧迫される一方、ヒトとクマの遭遇もあり、自衛の意味もあって狩猟も行われるようになります。クマの狩猟は鉄砲伝来以降の話ですが、それがクマのヒトへの警戒心をもたらして緩衝地帯を形成する訳です。それが過疎化で耕作放棄地が増えた結果、棚田は樹木が生えて森になり、ヒトも入らないから結果的に生息域を拡大している訳です。故に個体数密度が低く繁殖力の弱いクマでさえ個体数が増える訳です。ヒトとクマの共進化の歴史です。しかも気候変動による気温上昇で冬眠しないクマが現れ、食料が手に入る都市部へ下りる機会も増えます*6。
岩手県盛岡市のホームセンターDCM盛南店ではクマ対策マニュアルがあって、店舗スタッフがそれに従った結果ヒトの被害はありませんでした。そして過去エントリーの2件目でそんなマニュアルがある新幹線駅を取り上げました*7。長野新幹線として開業した安中榛名駅は当時人里離れた山の中でクマ出没に悩まされ、駅員と乗客の安全を図るためのマニュアルが用意され、駅員は指令に通知して列車通過扱いにして駅を閉鎖し、構内のヒトを守るというものでした。クマの生息域に新幹線駅作っちゃったってことですが、そんな立地でも新幹線通勤を想定した宅地造成をして売り出したものの売れず、2区画合筆して農園付き別荘としてやっと売れたという黒歴史があり、結果的にクマの生息域を侵食しました。
紀伊半島など西日本では針葉樹の人工林が多く、元々個体数が少ない上に紀伊半島のように絶滅危惧種として個体数の把握が行われていた一方、東日本はコナラなどの広葉樹林が多く生態系の多様性が維持されていたこともあり、クマの個体数把握は行われていません。故に生息域の拡大で都市部にも出現するようになった訳です。ヒトとクマの共進化も東日本では異なった展開です。故にハンターは趣味で猟銃免許を取得した一般人でクマ相手だと反撃のリスクもあり、猟友会頼みの対策では追い付かなくなっているという風に事情が異なります。秋田や岩手のクマ被害はこうして起きている訳で、地域に応じた対策が必要です。失われた過疎地の里山の復活は難しいですが、例えば境界域の樹木を伐採してソーラーパネルを設置するのも一法です。さらにその電源で地場ビジネスを起こせればヒトが住む緩衝地帯になり得ます*8。ちなみに秋田新幹線こまちもクマ原因の輸送障害が複数回起きています*9。
ということ北海道に話を移すと、こちらにはより大型のヒグマが生息していて生態系も異なりますし、また被害も多岐に亘ります。そんな中で鉄道被害も深刻です*10。シカとの接触と異なり、クマの場合外へ出て排除するのは危険なので、指令を通じて救援が来るまで待機せざるを得ないということで、長時間の運休を余儀なくされます。鉄道貨物の依存度が高い北海道故に深刻です。地域によってクマ対策も一律にはいかない複雑な問題ってことです。政府も外交で揉めてる場合じゃないぞ!
*1鹿の敵討ち 鉄路的部落
*22025年「今年の漢字」は「熊」 各地で出没・被害、パンダ返還も - 日本経済新聞
*3中国、首相官邸筋の核保有発言に懸念表明 「事態は極めて深刻」 - 日本経済新聞
*4米国務省「日本は核不拡散の世界的リーダー」 高官の核保有発言巡り - 日本経済新聞
*5和歌山県、ツキノワグマを保護から管理へ 紀伊半島400頭超で - 日本経済新聞
*6「新世代クマ」冬眠せず市街地に 師走の秋田や岩手、続く厳戒 - 日本経済新聞
*7固定資産税駅ナカ課税強化へ 鉄路的部落
*8進まない再エネ発電と地方創生 鉄路的部落
*9秋田新幹線、クマと接触 32分遅れ - 日本経済新聞 秋田新幹線、クマと衝突 けが人なし - 日本経済新聞 秋田新幹線がクマ3頭はねる 乗客にけがなし - 日本経済新聞 山形・JR新庄駅車庫にクマ侵入 新幹線1本運休 - 日本経済新聞
*10「クマ被害」がJR貨物でも深刻化、シカとの衝突よりもさらに厄介なワケ | 物流専門紙カーゴニュース発 | ダイヤモンド・オンライン
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