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Sunday, December 14, 2025

自BANGのオウンゴール

過去エントリー*1でも指摘した日本政府の自作自演ぶりに眩暈がします。12月6日に起きた自衛隊機に対する中国機のレーダー照射問題で異例の7日深夜2時の記者会見です*2。レーダー照射は攻撃のためのロックオンで使用されることは確かですが、必ずしもそれに留まらず、特に戦闘機同士の場合は接近する相手の位置や速度を知るための照射が多いのが実際です。マッハの速度で飛ぶ戦闘機には民間機では普通の自動航行装置などは装備されておらず目視航行となる訳ですから、遠方から接近する相手に照射することは安全確保の意味からあり得ます。

そして小泉防衛相は事前通告がなかったと説明していましたが、その後中国側から自衛隊護衛艦に向けて空母遼寧の離発着艦訓練実施の無線交信と思われる音声データが公開され、小泉防衛相もその事実を認めています*3。つまり護衛艦が受電した事前通告が共有されていなかったってことで、これ自体は自衛隊側のガバナンスの問題です。おそらく空自からの報告を精査せずに拙速に公表したと考えられます。高市失言で日中関係が微妙な時期に*4、おそらく備蓄米放出で見せた小泉前農相のスタンドプレー*5だと思いますが、自衛隊の内部情報すら確認せずに拙速な対応をしたと考えられます。レーダー照射の事実は事実として、確認してから公表、あるいは敢えて非公表という判断があり得る外交や防衛のナイーブな機微情報を扱う閣僚として軽率のそしりを免れません。

こんなことは枚挙に暇がないんですが、例えば3.11後の福島第一原発の事故の報に対して当時の原子力安全保安院や東電が「メルトダウンではない」と否定して、後に訂正を迫られるという流れと同じですね。あるいは大井川の水問題その他で静岡工区の着工ができない*6とか、瑞浪市の陥没事故関連で打つ手なしと居直り*7、都市部の大深度地下工事の問題点が露呈しても*8工事着手して案の定のトラブル*9を起こすリニア工事に対するJR東海のスタンスにも同様の問題が見て取れます。

これだけ問題を抱えながらJR東海がリニア事業の見直しをしないのは、アベノミクスの成長戦略の1つとして財投資金3兆円の融資の一括返済を求められる可能性があるからですが、30年据え置きの低利融資という破格の条件で難工事や工事の遅れや資材費や人件費の高騰で膨張する事業費をファイナンスできてしまうということです。しかし同時に大阪延伸を睨んだ財投資金融資を使い込みつつ名古屋開業すら見通せない現状では大阪延伸はほぼ不可能と考えて差し支えない状況です。

もう1つはあれこれトラブルはあって工事は遅れてますが、既に着工した工区では着手金が支払われており、また進捗状況に応じて施工業者に支払われる中間金もあり、その中間金は工事の遅れである程度支払いを猶予されている面があり、JR東海にとっては資金繰りが楽な状況が続いているという皮肉なことが起きています。加えてコロナ後の東海道新幹線の万博とインバウンドによる絶好調で笑いが止まらない一方、利益剰余金が増えすぎると株主還元や料金値下げなどの圧力を受ける可能性がありますから、工事代金の引当金に計上することでそれを回避できるという良いことずくめで逆に身動きが取れなくなっているのが実際です。実は日本政府も似たような状況なんですが。

コロナ禍で肥大した暫定予算の問題点は前エントリーでも取り上げましたが*10、国債発行こそ圧縮したものの積極財政が許容できない状況は着々と進みます。FRBの利下げ*11と日銀の今月の利上げが確実視されて金利差は閉じつつありますが、長期金利は確実に上昇しております*12。特に30年物などの超長期債の金利上昇は急で、主に生保などの機関投資家が保有してますが、金利上昇は債券の値下がりを意味しますから評価損が発生する訳で、新規の引き受けは無理で必然的に期間の短い国債で穴埋めせざるを得ません。しかし10年債で2%弱ではインフレ率にも達しないから投資妙味は薄く、新発国債の買い手探しが問題になります。

そんな中で元本保証のある個人向け国債がにわかに注目されてます*13。個人向け国債は固定3年もの、固定5年もの、変動10年ものの3種類があり金利上昇で注目されてますが、一番売れているのが固定5年ものということですが、1.35%ではインフレ率以下で損です。今後の金利上昇を睨めば変動10年もの1択ですが、中途解約は半年ごとの直近2回分の金利が解約金で取られるので10年寝かせられる資金がなければ意味ないし、銀行預金よりはマシ程度です。寧ろゼロインフレ時代でも0.5%の最低保証金利が適用されていた時代には旨みがありましたが、その時には見向きもされていませんでした。国民の投資リテラシーはなかなか高まりません。

てことで積極財政シフトした欧州でも模索がされており、イタリアではメローニ首相が個人向け国債購入を呼び掛けておりますが、日本より利回りが良く長期保有で金利が上がる制度設計の工夫もあり、投資妙味があり市場の信認を得て財政難のフランスよりも高評価で南欧クライシス時代とは様変わりです*14。一方財政規律重視から憲法まで変えて積極財政に転換したドイツではインフレと移民受入れ絞り込みで資材費、人件費が高騰して執行が進まないという日本と似た状況に直面します*15。イギリスでは確定給付年金から確定拠出遠近へのシフトで年金による長期債購入が減って国債の短期化が進みます*16。上記の日本の生保の長期債離れと似た状況で苦しんでいる訳です。

加えて日本では思わぬ伏兵があります。2026年度が5年に1度の特例公債法案提出の年に当たるからです*17。1975年、赤字国債発行を嫌う当時の大平蔵相の肝いりで押し切った1年ごとの特例公債法成立以来、毎年予算審議に絡めて更新され続けた法律ですが、赤字国債が発行できないと予算の執行が止まるということで、以来野党の要求を呑ませる攻防戦に使われました。2011年には当時の民主党菅首相の辞職と引き替えに通し、2012年には野田政権の与野党三党合意で解散総選挙と引き替えに期限4年とする改正法案が通され、後に5年に伸びて今に至り、来年度改正周期を迎えます。これがアベノミクスの積極財政で財政規律を棄損した一方、衆院の過半数は確保したものの与党の劣勢で野党の格好の責めどころとなります。アメリカの債務上限の所謂財政の崖問題の与野党攻防と同じような状況が予想され、荒れる予算審議に高市政権は耐えられるかどうか。尤も野党からして減税要求ばかりで財政規律はどこへやら。高市ショックは必然かも。

*1オウンゴールの国自BANG!―――黄金の国の誤変換 鉄路的部落
*2中国軍J15戦闘機が自衛隊F15戦闘機にレーダー照射2回 小泉防衛相、強く抗議 - 日本経済新聞
*3中国側から訓練の事前情報なし 小泉進次郎防衛相、レーダー照射巡り反論 - 日本経済新聞
*4戦狼は続くよどこまでも 鉄路的部落
*5TACOの知性とDeepSeek 鉄路的部落
*6田代の水は山をも越すが水に流せぬ大井川 鉄路的部落
*7岐阜・リニア中央新幹線工事で「地下水位低下」問題の経緯 JR東海に打つ手なし - 日本経済新聞
*8仲良きことは美しき哉かな? 鉄路的部落
*9品川区のリニア工事現場付近で路面が隆起 JR東海が関係調査 - 日本経済新聞
*10日流ふてほど 鉄路的部落
*11【FOMC】FRBが3会合連続利下げ決定 反対3票、来年は「1回」予想に - 日本経済新聞
*12長期金利上昇、18年ぶり1.9%台 利上げ観測強まる - 日本経済新聞
*13積極財政の支えは家計か 金利上昇で個人向け国債販売18年ぶり高水準 - 日本経済新聞
*14欧州国債、日本への示唆 イタリア・メローニ財政は市場の信認重視 - 日本経済新聞
*15供給制約に悩むドイツ 財政拡張は万能にあらず - 日本経済新聞
*16トラス・ショックに後日談 減りゆく英国債の買い手 - 日本経済新聞
*17高市政権、5年に1度の国債発行の壁 積極財政のアキレス腱に - 日本経済新聞

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