本当の年収の壁
年収の壁のウソ*1を貫き通した玉木国民民主党代表の与党すり寄りです*2。またガソリン税暫定税率廃止も決まりました。こちらは与野党6党で合意してますが*3。AIが壊す社畜エスカレーター*4でも取り上げましたが、国民民主党の支持団体の連合は財政出動を伴う国民民主党の基礎控除拡大などの減税策はインフレを助長すると批判するとともに、同じく組織内候補を立てて支援する立憲民主党との選挙協力をした選挙区では勝利している点を指摘して選挙協力拡大を求めてますが、それを台無しにしています。
国民民主党の玉木代表は、かつて高度経済成長期に毎年賃上げがあっても所得税の超過累進課税で税負担が増えることから、所得減税で基礎控除が見直されてきた所謂サラリーマン減税のことを指摘してますが、オイルショックで税収減に見舞われた1975年の特例国際法成立までは所謂赤字国債の発行はなく、当時の大平蔵相の猛反対もあって1年限りの特例措置として成立したものです。その後慣例で毎年更新が続き、期限も5年に伸びて現在に至りますが、2026年はその5年に1度の更新の年に当たります*5。年明けの通常国会の予算審議で野党の絶好の責めどころですが、国民民主党は基礎控除拡大の見返りに早々と予算案賛成に回り、与党をアシストしてます*6。元々低所得層の税負担は軽く、高所得層に恩恵の大きい基礎控除見直しを実現して「政権交代より政策実現」とドヤ顔して財政悪化を許して円安と金利高を許して国民を裏切ります。それでも選挙で票が取れると踏んでいる訳で、有権者をバカにしてます。
こうした歴史を知らないで「積極財政で成長戦略」とか「賢い支出で強い経済」とか甘い言葉に騙されちゃいけません。財政出動すればGDPの名目値を増やすことはできますが、供給不足のインフレ状況では物価上昇で調整されて、いつまで経っても物価に賃金が追い付かない状況は続きます。つまり結果的にインフレで手取りは実質減少します。それでもインフレは莫大な債務を抱える政府にとっては事実上のインフレ税で負担が軽くなることから、赤字国債発行をためらわない訳です。高度成長期には赤字国債発行しなくても成長できていて、しかしサラリーマン減税で税収を減らしてきたから結局インフレが常態化していて賃上げを相殺していたのですが、それ以上に経済成長して実質成長率もプラスだったから国民も不満を覚えつつ豊かさを実感していたものですが、その成功体験から抜けられないからインフレ=好景気という固定観念で「好循環」を求めてインフレターゲット論やリフレ論から怪しげな現代貨幣理論(MMT)など甘言を弄する論者が絶えませんが、アベノミクスの失敗が示すように全て幻想です。
てことで本来の年収の壁は実は低賃金にあるということと、インフレは賃上げを相殺することを言いたい訳です。元を質せば2002年春闘のトヨタ奥田会長のベアゼロ宣言に始まりますが、3月期にトヨタは史上最高の連結経常利益1兆円を達成して絶好調だったにも関わらず、中国など低賃金で台頭する新興国を睨んでグローバルに戦うには日本の高賃金の是正が必要ということで押し切りました。これに他社が追随して所謂ベアゼロ春闘の始まりです。
当時団塊世代が未だ現役の一方、2007年には定年による大量退職が始まることが見えていました。定期昇給で賃金が高い中高年従業員が抜けて低賃金の若手が補充されるのであれば企業の人件費負担は変わらないのですが、ベースアップを止めれば人件費を抑えられる訳です。それでいて定期昇給は温存されて賃金自体は上がりますから、現役社員の不満は出にくい訳で、また工場の海外移転などの脅しもあって、雇用維持の観点から労組が追認することになります。その後団塊世代大量退職の補充は非正規効用で対応し、当時バブル後の就職氷河期世代が溢れていたことと、雇用維持の約束を反故にする形で工場の海外移転を進めるなど企業側の身勝手な行動で賃金は低位安定して労働分配率は低下の一途を辿り、ゼロ年代で70%から60%まで落ちました。つまり企業は儲かっているのに賃金を抑えた訳で、一方労組の強い欧米では賃上げが続いたので、ぶっちゃけこれが失われた30年の最大の原因です。手取りが増えないのは賃金を抑えたからということですね*7。
しかしその結果企業は莫大な内部留保を抱えることになり、それがアクティビストの標的になっていて、配当や自社株買いなどの株主還元を迫られる形で取り崩されている訳です。特に海外アクティビストの標的となっていて、それが株高をもたらしている一方で円安債券安は留まることを知らず、それがインフレを助長しますから国民生活を圧迫します。という訳でいい加減成果の出ない「成長戦略」やめませんか?
国民の関心事はインフレであり将来不安である訳で、新NISAの好調はそうした不安を反映したものではあります。しかしS&P500やオールカントリーなど米国株中心の海外投信に多くの資金が流れてますから、一種の円キャリートレードとなって円安を助長してインフレ要因になるという矛盾もあります。来年度予算で防衛費や企業向けの補助金や地方交付税の積み増しなどが並ぶ一方、社会保障給付の減額が盛り込まれてますが、これは将来不安を助長するものになります*8。
社会保障費+2%と社会保障関係費以外の+4%はインフレ対応の歳出増ですが、社会保障費の圧縮で高額療養費上限上げ*9やOTC類似品の値上げ*10などが打ち出されてますが、その節約額は2000億円程度*10。一方で会計検査院は省庁が設置する基金の未消化を取り上げてます*11。すべて無駄と言うつもりはありませんが、ほんの少しの見直しで救える命は確実に増えますし、1.5兆円程度とされる暫定税率廃止財源も捻出可能ですし、更に言えば与野党で協議される給付付き税額控除の財源も手当てできる可能性があります。簡単な試算ですが、106万円や130万円の所謂社会保険料の壁対応ならば1人2万円程度で最低限の制度導入する場合、2.5兆円程度の財源があれば可能ということが言えます。
その一方地方交付税交付金、国債費、防衛費は何れも10%超の増額です。国債費は新発国債分の他、借換債発行を睨んだ利払い費の増額があって動かせないところ。既に借換債だけで180兆円規模でしかも長期債の売れ行きが芳しくないから中短期債への借り換えとなってその分償還が早まるから借換債も膨張して金利上昇が反映されるから年度を重ねるごとに負担が増えて政策経費の余地を狭めます。地方交付税交付金の増額は悪評のお米券その他のインフレ対策費として特別交付金が計上されていますが、インフレ対策で消費が増えればインフレを助長します。防衛費も装備品の増額が主体で自衛官の待遇改善は僅かです*12。
そしてほんのちょっとの鉄分^_^;。北陸新幹線の敦賀以西のルート問題で調査費が計上されてます*13。正式決定となる5原則を無視して与党PTだけで決めた小浜京都ルートで前例のない調査費計上を押し込んだ与党PTですが、調査費計上した結果、京都の水問題で環境アセスメントがとん挫し、国交官僚によるB/C比見直しで0.5という絶望的な数字が出た訳で、計上自体はは毎年続いているものの執行は止まっている状況なのは繰り返し取り上げてきましたが、与党に入った維新の意向で見直しされることになり、金額はそのままに新年度予算にも計上されています。しかしほぼ執行の可能性はゼロです。これも繰り返してますが、整備新幹線のスキーム自体が矛盾をはらみ限界になっていることを認めた上で新制度を提案するのが本来ですが、こうした現実を見ない成長戦略が無意味なのは言うまでもありません。
*1年収の壁のウソ 鉄路的部落
*2無風の赤字国債法案、財政に「警鐘」なき通常国会 国民民主が賛成へ - 日本経済新聞
*3株価以外全部沈没 鉄路的部落
*4AIが壊す社畜エスカレーター 鉄路的部落
*5高市政権、5年に1度の国債発行の壁 積極財政のアキレス腱に - 日本経済新聞
*6無風の赤字国債法案、財政に「警鐘」なき通常国会 国民民主が賛成へ - 日本経済新聞
*7100年に1度の成人式 鉄路的部落
*82026年度予算案決定、過去最高122兆円 国債費31兆円 - 日本経済新聞
*9高額療養費、自己負担の上限4〜38%引き上げ 患者配慮で改革縮む - 日本経済新聞
*10ロキソニンやアレグラに上乗せ料金 OTC類似薬、77成分判明 - 日本経済新聞
*11" target="_blank">医療・介護の保険料抑制失速 OTC類似薬・高額療養費で2000億円どまり - 日本経済新聞
*12国費投入49基金で過大積み立てか 支出が計画の半分以下、見通し甘く - 日本経済新聞
*13防衛力強化4年目で装備費2倍超に 隊員不足、人件費は1割増どまり - 日本経済新聞
*14北陸新幹線の調査費に14.5億円 26年度、額は据え置き - 日本経済新聞
| Permalink | 0
「ニュース」カテゴリの記事
- まとめて鉄分補給^_^;(2026.02.08)
- 戦争と社会保障―選挙戦で語られない本当の争点(2026.02.07)
- 日米TACOのプロデューサー(2026.01.31)
- 日米共演の市場TACO踊り(2026.01.25)
- 疑惑の停電事故(2026.01.17)
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- まとめて鉄分補給^_^;(2026.02.08)
- 戦争と社会保障―選挙戦で語られない本当の争点(2026.02.07)
- 日米TACOのプロデューサー(2026.01.31)
- 日米共演の市場TACO踊り(2026.01.25)
- 疑惑の停電事故(2026.01.17)
「鉄道」カテゴリの記事
- まとめて鉄分補給^_^;(2026.02.08)
- 日米TACOのプロデューサー(2026.01.31)
- 日米共演の市場TACO踊り(2026.01.25)
- 疑惑の停電事故(2026.01.17)
- 日出る国の衰退一路(2026.01.11)
「JR」カテゴリの記事
- まとめて鉄分補給^_^;(2026.02.08)
- 日米TACOのプロデューサー(2026.01.31)
- 日米共演の市場TACO踊り(2026.01.25)
- 疑惑の停電事故(2026.01.17)
- 日出る国の衰退一路(2026.01.11)
「都市間高速鉄道」カテゴリの記事
- まとめて鉄分補給^_^;(2026.02.08)
- 日出る国の衰退一路(2026.01.11)
- 新年早々ウヨ曲折(2026.01.04)
- 雪道と自動運転(2025.12.30)
- 本当の年収の壁(2025.12.28)












Comments