日出る国の衰退一路
新年早々の騒がしさは続きます*1。米ミネソタ州で国境警備局(ICE)捜査官による講義市民への発砲事件で死者が出ました*2。府負傷と報じられてますが夫人は死亡しており動画も拡散されていて、事実上の射殺と見られておりますが、メディアは当局に忖度してか表現を弱めてます。射殺に至らないICEの銃撃事件は他の州でも起きています*3。オレゴン州では州知事が連邦レベルのもみ消しを危惧して、FBIの捜査を拒否して州警察に捜査を命じました。アメリカが壊れています。
他国の国家元首を拘束してアメリカの国内法で裁くのも大概ですが、父ブッシュ時代の1989年のパナマ侵攻で当時のノリエガ将軍を国内法で裁いており*4、前例を盾にトランプ政権は正当化しています。取ってつけたようなコカイン密輸疑惑は前例に倣ったものでしょう。しかし本当の狙いは石油なのは明らかです。設備投資不足で生産がが落ち込んでいるベネズエラの石油が中国へ渡っていることと、石油収入がキューバへの支援に回っていることを問題視していたようですが、それに留まらず別の意図もあるようです。
エクソンのトップがベネズエラへの投資に慎重な一方*5、シェブロンなどのアメリカ国内の古い製油所の活用が示唆されています*6。ベネズエラ産の原油は硫黄分の多いドロドロの重質油で、アメリカ国内の製油所も重質油向けの設備だったものが、シェール革命で生産される原油はガソリン成分の多い軽質油である意味性能の無駄遣いだったことと、昨今の原油安で新規のシェール開発が滞っている結果、国内の製油所の稼働率が低下していることから、ベネズエラ産原油の精製に活用するレガシー活用術ということです。つまり原油をカリブ海を挟んだアメリカ南部に運べばアメリカ国内にお金が落ちる訳です。裏返すとベネズエラは原油を搾り取られるだけで経済的メリットは薄くなりますが、汚職や腐敗がまん延するマドゥロ政権の残党なら賄賂で動かせるって計算ですね。故に反政府運動でアメリカが推してノーベル平和賞を受賞したマチャド氏ではなくロドリゲス暫定大統領との取引を選んだということです。エグい計算高さです。
そしてグリーンランドへの言及も、本音はレアアースなどの資源と考えられます。中国のレアアース輸出規制で懲りたのでしょう。レアアースを止められれば兵器も作れないということで、こんな動きもしてます*7。コンゴ民主共和国はリチウムやコバルトといった希少資源の宝庫で、中国が深く入り込んでますが、そこへアメリカが進出を目論んでます。隣国ルワンダとの紛争解決を仲介したのもそのためですが、やはり腐敗しきった政府機関への対応は困難で、中国を越える利権獲得は難しいと考えられます。また日本の南鳥島周辺の海底泥からのレアアース採取も日本の資金で進めようとしてますが、水深6.000mの海底泥採取も困難だし本土へ輸送して精錬するとコスト面で中国産に対抗できるかどうかも不明。しかも最低10年以上の時間が必要で、現実的に中国依存回避は困難です。
そんな日本に中国は戦狼外交第二弾を繰り出します*8。これ「デュアルユース」がミソで、第三国で加工されて日本に輸出されて軍需品になる可能性のあるものに投網をかけている訳で、個別品目は明示されていません。故に民間事業者や第三国政府が中国当局の顔色を窺いながら対応するしかないので、影響はかなり遅れてジワジワと真綿で締められるように出てくると考えられます。いやこれは民生用自動車向けだという言い訳も通らない可能性があり、回避策は中国国内で民生向けの最終製品に仕上げるしかないことになります。国産メーカーが中国産の輸入車を売る事態もあり得ます。それもこれも高市失言の影響です*9。
第一弾が日本への渡航自粛などで、日本への団体旅行催行中止や中国エアラインの日本路線運休などでしたが、実は羽田便は殆ど運休しておらず、ビジネス利用は減っていません。運休すると羽田の発着枠を失うこともありますが、経済関係はそれほど冷えていないことを示します。逆にLCC中心の関空は中国便大減便で影響をモロに受けており、その結果観光バス需要が消滅する事態が起きています*10。万博効果で事業者は潤っていたとしても、逆に万博対応で過剰な車両を抱えた状態で稼働率を下げることになれば、ドライバーの雇用にも影響します。ノー天気なウヨは中国人が来ないなら日本人で穴埋めすれば良いとお気楽ですが、インバウンドによる外貨獲得を国内消費で代替すればそれが円安要因となってインフレを招きます。インバウンドは国外インフレを国内に持ち込む面もありますから、どっちに転んでも国民経済は苦しくなります。アベノミクスの帰結となる弊害です。羽田便が生きていれば中国の個人観光客は羽田から関西へ移動できますから、東海道新幹線はあまり影響を受けないとしても、インバウンドで盛り上がっていた関西経済の先行きに暗雲が漂います。
そしてさらに日本にとってはマイナスにしかならない残念なニュースです*11。第一報が読売ってことで観測気球の可能性濃厚ですが、党内基盤の弱い高市首相としては内閣支持率が高い裡に解散を打ちたいのが本音でしょう。但し公明党が連立離脱して維新との連立となったものの、参議院での過半数割れは解消せず、予算審議は難航が予想されます。加えて維新のゴリ押しに党内からも批判が上がっている状況ですから、おそらく連立相手を国民民主党に組み替えれば参院過半数も実現できるという計算はあると思います。但し国民民主党の連立与党入りは支持母体の連合の反対がありますから簡単ではありません。
逆に既に国民民主党は所得税の基礎控除引き上げとガソリン暫定税率の廃止を実現したことで、政府予算案に反対する理由が無くなっている訳で、ならば参議院の過半数割れもネックにはならない筈ですが、維新地方議員の国保逃れスキャンダル*12で社会保険改革の機運がしぼむことも避けられないということもあるでしょう。600人も理事がいる事業実態が不明な一般社団法人で定額報酬を得る形で社会保険に加入すれば、議員の高額報酬で課される国民健康保険の高い保険料を減らせるという意味で脱法行為ですが、あくまで維新の公式発表だけで第三者の検証はないので真実は不明です。こんな連中が高額療養費やOTC類似品価格に手をつけようとしている訳です。自身の統一教会関与も疑われている高市首相としては縁を切りたいかも。
しかし現実は冷徹です。このニュースに市場が反応しました*13。そのココロは解散総選挙を経ても自民党過半数割れは解消せず、野党の要求を呑んで財政規律を守れなくなるという読みです。勿論予算成立の遅れもリスクとして意識されていると考えられます。石破おろしの総裁選で国民生活そっちのけで9月を浪費したのに*14、またしても政局に時間を浪費する懲りない面々です。そしてさらに残念なニュース*15。財界きっての中国通として要人人脈も豊富で民間人初の駐中国大使になりながら、尖閣問題で翻弄されながら良好な関係を維持して中国からも惜しまれた丹羽宇一郎氏の訃報です。伊藤忠社長時代に種まきした中国事業は確実に伸びて商社トップに上り詰める礎を築きました。残念ながら今の財界人にはこういう人は見当たりません。
習近平体制で所謂内巻と呼ばれる内需不振を外需で埋めようとしている現代中国ですが、加えて世界の先を行く資源外交も、突き詰めれば一帯一路政策で国外輸送路を整備した結果と言えます。ここは長期停滞で先んじる日本と大きく違う部分で、このままでは国力は開く一方です。一帯一路ならぬ衰退一路の日本です。
*1新年早々ウヨ曲折 鉄路的部落
*2米西部で国境警備局発砲、夫婦負傷 不法移民捜査か - 日本経済新聞
*3相次ぐ米移民警察の発砲、緊張高まる オレゴンでは州が捜査開始 - 日本経済新聞
*4パナマ侵攻 ウィキペディア
*5エクソンCEO、ベネズエラ投資「現時点で不可能」 トランプ氏に伝達 - 日本経済新聞
*6世界最大産油国アメリカ、ベネズエラ産確保の狙いはレガシー設備活用 - 日本経済新聞
*7米、コンゴ民主で鉱物開発の野望(The Economist) - 日本経済新聞
*8中国がレアアースで対日規制か、車・機械「禁輸なら影響重大」 - 日本経済新聞
*9鹿の敵討ち 鉄路的部落
*10中国の渡航自粛要請1カ月 大阪の観光バス予約ゼロ、東北にも波及 - 日本経済新聞
*1123日召集の国会冒頭解散案、高市首相「選択肢」 予算遅れに慎重論 - 日本経済新聞
*12維新、地方議員4人が「国保逃れ」公表 国会議員は見つからず - 日本経済新聞
*13円急落、衆院解散報道で1年ぶり安値 財政リスク再燃し1時間で80銭下落 - 日本経済新聞
*1410月の鹿 鉄路的部落
*15伊藤忠商事元社長の丹羽宇一郎氏が死去 民間初の駐中国大使 - 日本経済新聞
| Permalink | 0
« 新年早々ウヨ曲折 | Main | 疑惑の停電事故 »
「ニュース」カテゴリの記事
- まとめて鉄分補給^_^;(2026.02.08)
- 戦争と社会保障―選挙戦で語られない本当の争点(2026.02.07)
- 日米TACOのプロデューサー(2026.01.31)
- 日米共演の市場TACO踊り(2026.01.25)
- 疑惑の停電事故(2026.01.17)
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- まとめて鉄分補給^_^;(2026.02.08)
- 戦争と社会保障―選挙戦で語られない本当の争点(2026.02.07)
- 日米TACOのプロデューサー(2026.01.31)
- 日米共演の市場TACO踊り(2026.01.25)
- 疑惑の停電事故(2026.01.17)
「鉄道」カテゴリの記事
- まとめて鉄分補給^_^;(2026.02.08)
- 日米TACOのプロデューサー(2026.01.31)
- 日米共演の市場TACO踊り(2026.01.25)
- 疑惑の停電事故(2026.01.17)
- 日出る国の衰退一路(2026.01.11)
「バス」カテゴリの記事
- まとめて鉄分補給^_^;(2026.02.08)
- 日出る国の衰退一路(2026.01.11)
- 熊くまクマ(2025.12.21)
- 株価以外全部沈没(2025.11.01)
- 案外シンプルに終わりそうな複雑系経済学(2025.09.14)
「航空」カテゴリの記事
- まとめて鉄分補給^_^;(2026.02.08)
- 疑惑の停電事故(2026.01.17)
- 日出る国の衰退一路(2026.01.11)
- 日流ふてほど(2025.12.06)
- AIのフーガ(2025.11.08)
「JR」カテゴリの記事
- まとめて鉄分補給^_^;(2026.02.08)
- 日米TACOのプロデューサー(2026.01.31)
- 日米共演の市場TACO踊り(2026.01.25)
- 疑惑の停電事故(2026.01.17)
- 日出る国の衰退一路(2026.01.11)
「都市間高速鉄道」カテゴリの記事
- まとめて鉄分補給^_^;(2026.02.08)
- 日出る国の衰退一路(2026.01.11)
- 新年早々ウヨ曲折(2026.01.04)
- 雪道と自動運転(2025.12.30)
- 本当の年収の壁(2025.12.28)












Comments