« ネオ油売りに媚びる汗っかき | Main | 甘くないサプライチェーン攪乱 »

Sunday, March 29, 2026

戦争で沈む日本経済

総選挙直前のエントリーで選挙戦で語られない戦争と社会保障を取り上げましたが*1、まさかのアメリカとイスラエルのイラン攻撃で現実が追いつくとは思いもよりませんでした。そして高市政権の危険性も明らかになってきました。例えば自衛官の不祥事です*2。相前後して婦女暴行や全裸俳諧などもありましたが、国際法で治外法権を持つ外交官に対する現役制服自衛官のテロ未遂事件という超ド級の不祥事です。しかし政府もメディアも反応が弱いのが気になります。閣僚の遺憾発言で済ましてますが、本来公式に謝罪すべき事案を「残念]で済ませている訳です*3。大事に至らなかったとはいえ大使に危害が加えられればただ事では済まなかった筈です。サラエボ事件が第一次大戦の契機となったことを学ばなかったのか?中国も今の日本政府がまともな謝罪をしないことも計算済みでしょう。実際には情報戦を仕掛けています*4。国内向けの渡航自粛勧告ですが、これがニュースとして世界へ流れれば、日本への国際社会の見方に影響します。所謂戦狼外交*5ですが、台湾有事発言と同様に日本が何らかの譲歩を示せば終わる話でもあります。

てことで戦争を選んじゃった日本の有権者にとってはイランを巡る紛争の長期化で危機的状況なのですが、政府に危機感は乏しく、原油の戦略備蓄放出や補助金支給による目先の価格圧縮ばかりで、70年代の石油危機時のような省エネ自粛や総需要抑制策には踏み込みません。その結果円安が進み原油高と相まって国民生活を苦しめます*6。それなのにアメリカにホルムズ海峡の機雷掃海を約束したりしてますが、停戦が先だろ!今や安全保障上の最大のリスクはアメリカであり、ミドルパワー国の団結が叫ばれ、また力をつけてきたグローバルサウスとの連携を考えればアメリカべったりはリスクです。

今回の円安は有事のドル買いの反映でもあり、動きは小刻みでもかなりしぶとく続くと考えられます。その理由は複数ありますが、1つは原油高によるアメリカのインフレ再燃でFRBの利下げ観測が終わり、寧ろ金利上昇局面になっていること、株式でAI相場が堅調ながら実際に利益を出しているのがエヌビディアだけで先行きに疑問が持たれており、一方SaaSの死と言われるソフトウエア企業の淘汰の可能性とか、逆にキャタピラーや電力会社などがAIデータセンター関連で買われたりと、様々なトピックスに反応していて落ち着きません。加えて債券が売られ有事なのに高止まりした金が利益確定で売られて買い戻されたりとか、プライベートクレジットと呼ばれる低格付け債券ファンドから主に個人の資金が流出したりで金融市場が落ち着かずボラティリティが高い状態が続いています。投資家には動きやすさから手元資金を厚くする動きが見られ、日本株に流入していた海外勢が資金を引き揚げた結果日本株が売られ、リスクヘッジの為替予約のポジションを手仕舞いして円が売られということですね。

てことですでに手遅れかもしれませんが、国民生活を強く豊かにするどころか窮乏化が止まらない状況が加速しそうです。そんな中で社会保障国民会議で税と社会保障の改革の議論が始まりましたが、議論の流れとしては消費税減税よりも給付付き税額控除にウエイトが移っています。議論の前提となる国民所得の動きで看過できない傾向が見られます*7。給与所得で見ると過去30年に亘って中央値も90%点も99%点もほぼ変化がなく、このデータからだけでは巷間謂われる格差拡大はなく、ジニ係数も変わらないということになります。給与所得だけの結果ですから全数とは言えませんが、より範囲の広い税務申告個票データで見ても同様の傾向が見られます*8。つまり傾向から言えば日本は全所得層が円安を通じて購買力を低下させているということになります。但し税務個票データでも農業、不動産、金融所得などの分離課税があり、例えば富裕層が多く保有していると見られる金融資産所得は源泉分離課税で個票データに反映されていない点は注意が必要です。結論から言えば国全体が貧しくなったということです。市場の失敗を克服できず、企業のアニマルスピリットを引き出せなかった政治の失敗です*9。社会保障の充実のためには富裕層課税はほぼ無意味で社会保障財源としての消費税の減税は消費額の多い富裕層ほど利得があり問題で、給付付き税額控除が望ましいということになります。加えて企業経営者の競争による価値創造や教育や就労の機会の平等の確保が求められます。

経営者の競争という観点からJR東日本とJR東海を取り上げてみます。目先の業績で見ればコロナ明けの回復が早かったJR東海に対して稼ぎ頭の首都圏輸送で需要が戻らず民営化後初の運賃値上げに踏み込んだJR東日本*10では差は歴然ですが、実は東京~熱海間で在来線運賃が新幹線運賃より高くなるという珍事が起きています。故に従来どちらにも乗れた普通乗車券が分離された訳です。しかも100km超の東京山手線内発着や200㎞超の東京都区内、横浜市内発着の特例はそのままですから、新幹線特急料金はかかるものの新幹線利用がお得という逆転が起きています。

ならばJR東海も同じ幅で値上げすればといってもゾンビエントリーで説明したように、JR東日本は向こう3年平均の欠損の可能性を示して認可を得ました。鉄道運賃の基本はコスト積み上げ方式に2%の標準報酬率を乗せた総括原価の認可を受けるのに凡そ2年を擁しているように直ちに追随はできない仕組みです。逆にヤードスティック規制で同等と見做されるJR旅客会社同士で他社と比べて合理化努力が不十分と見做されれば値上げ幅を圧縮されるのですが、その点は逆に無線式クロージングイン保安装置のATACS導入*11やドライバレス自動運転への挑戦などで人口減少による省力化と共に需要減少に対する間引きなど輸送品質の劣化を防ぐという攻めの姿勢が認められ、その為の投資で借入金が増える一方でインフレによる金利の復活で利払いが増えるという合理化努力の枠外の不可抗力もあります。加えて国鉄時代から続く通勤定期運賃や通学定期運賃の割引率の適正化が認められるなどしていて、ピーク時間帯の定期客比率が高い一方でそれに合わせた輸送力増強投資が迫られる一方で閑散時間帯の過剰設備遊休化という構造的な問題に対する主張が認められました。つまり需要抑制のための運賃改定に道筋をつけた訳です。

ところが新幹線のぞみ増強で絶好調なJR東海は欠損可能性を証明できないから運賃値上げ申請自体が困難で経営陣から「努力した者が報われない」の恨み節ですが、困難な行政手続きで自社の主張を認めさせてリスクを取って借入金で投資を重ねるJR東日本に対して、リニア工事の遅れをいいことにリニア向けの低利の財投資金3兆円を流用してマッチョなのぞみ増強で増収を達成したJR東海*12のどちらがリスクを取ったと言えるのかというのは微妙です。そしてその観点から言えば微妙なニュースとしてリニア静岡工区も話題があります*13。あくまでも県の容認方針というだけで、各自治体の承認を得ている訳ではありませんが、大井川の水問題が典型ですが*14、大井川の渇水など工事の影響を心配する自治体の指摘に対して全量戻しを約束しながら後に工事が終わったらとテヘペロして自治体を怒らせた強引で不誠実な対応が原因の未着工だった訳で、自治体との協議が進んで目途が立ったという県の方針ですが、協議自体が決着した訳ではありません。加えて他の工区でもトラブル多数な上人件費や資材費の高騰で事業費の膨張も止まらないし、ホルムズ海峡封鎖でカタール産ヘリウムの供給不安もありと前途多難。寧ろ勇気ある撤退も考える必要があります。まあ無理でしょうけど。

*1戦争と社会保障―選挙戦で語られない本当の争点 鉄路的部落
*2在日本中国大使館に「自衛隊幹部」が不法侵入 中国外務省が発表 - 日本経済新聞
*3中国「遺憾表明では不十分」 自衛官の中国大使館侵入巡り説明要求 - 日本経済新聞
*4中国、日本渡航自粛を改めて要請 自衛官の中国大使館侵入「悪質」 - 日本経済新聞
*5戦狼は続くよどこまでも 鉄路的部落
*6NY円相場、続落 1ドル=160円25〜35銭 1年8カ月ぶり安値 有事のドル買い続く - 日本経済新聞
*7格差より沈滞の日本、底上げは経営者の競争こそ 楡井誠氏 - 日本経済新聞
*8データで見る日本の格差、富裕層の富裕化は観察されず 森口千晶氏 - 日本経済新聞
*9市場の失敗政治の失敗 鉄路的部落
*10ゾンビの性(SAGA) 鉄路的部落
*11ア・イ・シ・テ・ルのサイン 鉄路的部落
*12まとめて鉄分補給^_^; 鉄路的部落
*13リニア静岡工区、県着工容認へ 2036年開業へ官民「加速」の協議決着 - 日本経済新聞
*14田代の水は山をも越すが水に流せぬ大井川 鉄路的部落

| |

« ネオ油売りに媚びる汗っかき | Main | 甘くないサプライチェーン攪乱 »

ニュース」カテゴリの記事

経済・政治・国際」カテゴリの記事

鉄道」カテゴリの記事

JR」カテゴリの記事

都市間高速鉄道」カテゴリの記事

都市交通」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« ネオ油売りに媚びる汗っかき | Main | 甘くないサプライチェーン攪乱 »