AIの壁
壁はEVだけじゃない*1。中国の計画経済はAIも同様です。特にフィジカルAIの進化著しく、ハーフマラソンで男子世界記録を更新しました*2。チャイナスピードと呼ばれるハイテク分野のスピード進化ですが、フィジカルAIは際立ちます。SDVの究極であるロボタクシーは複数都市で稼働している一方、ヒト型ロボットでは抜きんでた存在です。ハーフマラソンの成果はつまるところヒトの身体能力を超えたということを示す重大なマイルストーンです。
AIは大量のデータを学習に用いますが、ネット上のデータを使う生成AIは早くもデータを食い尽くしてしまっています。どれだけ大量でもネット上のデータ自体は有限なのに処理能力の進化で早くも天井に突き当たっている訳です。しかも元々玉石混交と言われ真偽が定かではないデータも多数あるので、下手すればウソ製造機になりかねない訳ですが、リアル世界からデータを取得するフィジカルAIならそういう問題もなく優れたデータを大量に学習できる訳です。そしてヒト型ロボットならば労働の代替に使うことも可能な訳ですが、その時に問題になるのが発熱です。制御の半導体も駆動のモーターも電気で動く訳で、抵抗熱を生みます。そして熱は半導体にとってもモーターにとっても性能劣化の原因となります。故に長距離の持久走をこなすには冷却システムが肝になる訳で、ハーフマラソンを走ったヒト型ロボットはそこを改良して結果を出したということになります。バッテリー容量の問題も制約条件になります。その意味で生身のヒトのエネルギー源は糖質などのバイオ燃料ですからロボットよりも環境ににやさしいとは言えます^_^;。
既に中国では政府補助金を得て複数社から量産型のヒト型ロボットが売り出されており、採用企業にも補助金が出る仕組みがあります。これEV普及機の販売補助金と同じですが、産業の立ち上がりを支援していずれ終わらせるという形です。この結果初期には多くのプレーヤーが補助金目当てで参入して競争を繰り広げる一方、ある段階で補助金を止めて以後市場競争に任せて淘汰を経てチャンピオンを育成するという手順となります。巨大な中国の国内市場で競争で鍛えられて勝ち残った企業はその時点で世界的大企業になるということです。
加えてメーカーのみならずユーザーにも補助金を出すことで普及を早め、EVロボタクシーのような新ビジネスにつなげるという巧みな戦略という訳です。ヒト型ロボットもいろいろな使われ方をして例えば茶摘みのような高スキルを求められる肉体労働現場にも導入されているとか。家事労働や介護などケア労働も当然視野に入りますが、一方で葬式の進行役とかコスプレなどエンタメ分野と、よくわからないところにも使われているようですが、そうしていろいろな現場で試されて最適解が求めらてそれがメーカーにフィードバックされれば好循環を生むことにもなります。人手不足で苦しむアメリカや韓国が開発を後追いしてますが、中国国内市場の圧倒的なボリューム感の前には劣勢です。但し現状AIの最先端はアメリカの生成AIにあり。中国は未だDeepSeekなどでキャッチアップする位置付けです*3。しかしAIの社会実装の観点からは中国の進め方は理に適っています。
それなのに後追いしかできないわーくに*4。27日に日経平均株価が終値で初の6万円台をつけましたが、フィジカルAI関連でファナックなど産業ロボット銘柄が買われました。日本が得意とする分野ですが、狙われてるのは現場データだったりします。今のままでは米韓企業の下請けに甘んじる可能性が高いと言えます。それでいいのか?また雇用情勢にも変化が起きています*5。AIのビジネス利用で学習コストが高いのに少子化で希少化して初任給が上昇している新卒採用を抑えようという日本企業の姿勢です。但しそうなるとAIエンジニアやデータサイエンティストが足りないから中途採用で補充しようということですね。これが横並びで起きるとどうなるかと言えば即戦力の中途採用者の待遇が上がる一方、新卒の売り手市場が終わる可能性があります。
既にアメリカでは雇用慣行の違いもあって若年失業率が高止まりしていましたが、それどころか高給取りのプログラマーやSEの解雇にまで踏み込んでいます。日本の場合はゼネラリストとして採用される文系事務職の採用減という形で現れることになります。しかしそれで得られる間接部門の合理化だけではAI活用とは言えない訳で、それによる生産性向上も限られたものとなりますし、ヒト型ロボットのところで触れたAIのエネルギー消費問題がAIデータセンターの電力爆食い問題でも生じます*6。人がこなしていた事務仕事をエネルギー消費の激しいAIで代替すればエネルギー自給率の低い日本の交易条件を悪化させて円安インフレで国民生活を窮乏化させることになります。食料自給率も低いですがエネルギーよりは輸入依存は低いし増産余地はあります。どっちがマシ?
あとここでは踏み込みませんがAIにはその他にも様々な不都合があります。その1つが日本のAI規制の緩さ、特に著作権を巡る緩さです*7。詳細はここでは踏み込みませんが、欧米でAI規制が議論されている一方で日本は基本ビジネスの邪魔はしないというスタンスです。故にデータ爆食い電力爆食いのAIデータセンターを米テック企業が日本に作ろうとしています。その結果TSMC熊本第二工場でAI向け最先端品の生産を決めたり、ラピダスの先端品の売り先として有望視されてます。しかしこれ日本のデータを搾取するに留まらず、半導体生産に欠かせない電力や水の搾取でもある訳です。しかも日本でAIを利用すればライセンス料でデジタル赤字が拡大することになります*8。日本はますますビンボまっしぐら。他にも様々な壁のあるAI分野ですが、別の機会に取り上げます。
当然日本は中国とは社会課題が異なるから日本独自の社会実装を目指す形でAIを活用する余地はあります。そんなニュースがこれです*9。欧州鉄道カンパニー発のHMAXと呼ばれるAIソリューションを横展開して送電網やビル管理に横展開するというもの。現場発のデータを生かして課題解決するものです。日本でも課題解決型のAIスタートアップは登場してますが、死の谷を越えて離陸するのを待たずに、日立のような大手企業がこうした取り組みをすることは注目されます。
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