食われる公共
AIの投資考*1の中傷動画問題で公開された動画の一部に総裁選前の画像が確認されたということで、文春と共同通信が動画公開を見合わせました*2。高市シンパをぬか喜びさせたネタですが、週刊文春今週号記事で種明かしされてます。疑惑の動画20本中4本以外は問題はなく、疑惑は微塵もゆるぎないものです。またサナエトークンの無許可販売は明確な違法行為であり、金融庁がどう動くかはわかりませんが、動画制作者とされる松尾氏が週刊現代の取材には応じず文春に持ち込んだのもサナエトークンでの訴追を逃れるための目くらましの可能性があります。首相案件だけに金融庁は動きにくいとしてもデジタルチンピラのマネタイズに利用された脇の甘さは指摘できます。ちなみにゴーン事件の訴追は金融商品取引法違反で拘束されてますから、扱いが非対称です*3。
そんな中で郵政事業をめぐるこんなニュースもあります*4。郵政民営化の後退というよりも、郵政を支えてきた金融事業の利権切り出しの結果、郵政事業の赤字体質が顕在化したってことです。とはいえ郵便条約で公的に維持する必要があるから公金を投入するというわけですね。こうなることはわかってましたが。結局新自由主義的な民営化路線は、公共部門の事業を民間が儲かるように切り出して食い物にするだけです。そして五輪や万博のような国際イベントも、公共部門が音頭を取って民間に儲けさせるだけってことです。経済成長の結果、投資収益逓減の法則で利益率が傾向的に低下して儲からなくなる一方、新興国の工業化で追いあげられる中で、税金その他で公共部門に集まる公金を狙ったビジネスにシフトしていくという構図です。
これ国鉄分割民営化でも同様のことが起きています。リニアひろば*5の都市計画道路音大のように民営化JRに自治体が便宜を図るような倒錯が起きるわけです。そもそもJR東海の単独事業だったはずのリニア中央新幹線ですが、財投資金3兆円投入も30年低利据え置き後の返済という民間融資ではありえない優遇です。その結果最高益更新という好調ぶりですが、これにはカラクリがあります。ダイヤモンドオンラインで記事になってますが*5、細かい説明は省きますが、静岡工区を含む工事の遅れで余ったお金を金銭信託して資金繰りしていることが明らかになっています。B/Sの右の負債の中に財投資金3兆円が含まれる一方、工事の進捗で支払われる代金は左の資産の部では建設仮勘定で計上されてます。固定資産の一部ですが、当面利益を生まないものとして処理されており、既に財投資金3兆円の一部が充当されています。一方工事遅れによる余剰資金は金銭信託として運用されて配当を得ているわけで、低利の財投資金との利ザヤを稼げるわけですね。静岡工区未着工のおかげでかなりまとまった金額になっているわけです。故に本音は「川勝前知事アザース」となります^_^;。
話変わって整備新幹線問題ですが、北陸新幹線の敦賀~新大阪間のルート問題で国土交通省が新たな試算を与党に示しました*6。紙面に載った表を見て絶句したんですが、一体評価と個別評価を並べて示しており、後者でB/C比0.5の小浜京都ルートが前者では1.1となっていてます。一体評価というのは東京~新大阪間を一体としてみた場合ということですが、つまり従来は事業化される区間だけの評価だったものを、既開業区間を含めた評価ということです。つまり既開業区間の受益を乗っけた結果ってことですが、分母にあたる費用は事業区間の範囲で負担されるわけですから、全くのインチキです。とはいえ京都市の水問題などで反対されてますし、これでまとまる可能性はほぼ皆無です。
そしてリニアと北陸新幹線双方に絡むややこしい問題もあります。2031年開業予定のなにわ筋線関連で阪急が計画するなにわ筋連絡線と新大阪連絡線の事業化が動き出しました*7。阪急としては関空及び新幹線と自社沿線を結ぶ意図ですが、同時に十三の再開発の狙いもあります。しかしリニアと北陸新幹線の新大阪駅の位置が決まらないから新大阪連絡線に関しては駅位置未定のままの見切り発車です。つまりリニアと北陸新幹線が足踏みする限り、手を付けられないってことです。それでも十三の再開発で資金回収は可能という判断なんでしょう。
一方リニアの残土処理でもめる岐阜県御嵩町で結局名鉄広見線の廃止が決まりました*8。みなし上下分離というのは所有権移転せず固定資産税収を線路保守などの費用に充てること上下分離と同等の効果を狙ったもので、並行在来線三セクのIGRいわて銀河鉄道でさ採用されてます。他方文字通りの上下分離で黒字転換したのが近江鉄道です*9。ローカル線存続に関しては民間への利益供与よりも住民の利便性維持が狙いですが、結果的に自治体次第ということです。企業を救うか住民を救うかには大きな違いがあります。
*1AIの投資考 鉄路的部落
*2高市首相陣営の「中傷動画」問題、共同通信がオンライン向け写真を削除…事実関係に疑義 : 読売新聞
*3お水の都大阪 鉄路的部落
*4郵便局に国費年650億円、
郵政民営化の後退鮮明 改正法案が成立へ - 日本経済新聞
*5JR東海は「リニア建設遅れ」で余ったお金をどうしているのか?【決算書で解説】 | ビジネスに効く!「会計思考力」 | ダイヤモンド・オンライン
*6北陸新幹線の延伸「小浜・京都」優位に 環境懸念で沿線の足並み乱れ - 日本経済新聞
*7阪急2路線実現へ前進 北梅田―十三と十三―新大阪 - 日本経済新聞
*8名鉄広見線、新可児駅―御嵩駅が廃止へ みなし上下分離は協議終了 - 日本経済新聞
*9近江鉄道130周年、上下分離で黒字転換 次の10年見据える「地域の足」 - 日本経済新聞
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