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Saturday, February 11, 2023

怪運国債市場の蓋

怪運国債依存症の続編のウンコクサイ話です。

日銀ピボットで株高の死角 共担オペに「追い証」リスク NQN編集委員 永井洋一:日本経済新聞
「毒まんじゅう」とは穏やかではありませんが、取り上げられている共通担保資金供給オペ、略して共担オペを取り上げております。これは12月の日銀のYYCの上限見直し後も10年ものだけ金利が低い屈曲イールドカーブを批判されて10年もの以外の金利も下げるため、民間銀行が保有する国債の担保差し入れで日銀が低利融資するというもので、日銀だけではすべての残存年数国債の買い付けすることには限界があるので、民間銀行に代わりをさせるものです。つまり金利の高い国債を保有したまま低利融資することで利ザヤが稼げる訳で、銀行保有国債の売りを阻止しようということです。

こうすれば金利上昇を睨んだ投機筋カラ売りに必要な国債の現物が市場に出なくなってカラ売りが困難になることを狙ったもので、残存年限によっては市場が干上がっているケースもあり、また日銀自身も2年もの5年もの20年もののなど買い散りオペでイールドカーブ全体を下げる狙いです。その結果多くの銀行が共担オペに入札し恩恵を受ける一方、投機筋の打ち手を封じることになりますが、同時に投機筋は空売りに必要な国債現物を日銀を含む銀行から借り入れていた訳で、当の日銀が投機筋を助けていたという笑えない構図があります。国債の高値買い取りと当座預金の一部にかかる0.1%の利息を稼ぐ必要がある訳です。

結果的に日銀の国債買い取りは過去最高になっており、民間銀行の共担オペ入札で国債市場はほぼ流動性を失った訳ですが、これも痛し痒しで、逆に規模の小さい市場ほど少ない手持ち資金で市場を動かしやすくなりますから、日銀による国債爆買い以上の効果は見込めませんし、銀行も金利上昇による追証追加を迫られるリスクを負う訳で、やり過ぎが銀行を追い込むことになり、それが民間融資を圧迫する可能性もあります。ただでさえゼロゼロ融資の期限で通常融資への借り換えのタイミングでの民間融資圧迫は愚策ですし、既に多くの銀行で貸倒引当金を積み増している状況です。企業倒産が増えることは間違いありません。

日銀の異次元緩和はこうした瑕をもたらす結果を見ればわかる通り大失敗なんですが、さりとて利上げに動けば国債金利の上昇で銀行の信用不安や国債利払いの増加で財政を圧迫したりすることから、急激にシフトという訳にもいかず、とりあえずYYC見直しから徐々に手掛けて市場にショックを与えない配慮が欠かせません。そんな難題を残して黒田日銀総裁は4月8日に任期満了で退任する予定ですが、後継総裁選びは難航してこうなりました。

日銀新総裁に植田和男氏を起用へ 初の学者、元審議委員:日本経済新聞
日銀プロパーで歴代総裁に仕えて陰で支えた本命とされた雨宮正佳副総裁の辞退で人選は難航し、結果的に民間人の学者として初の総裁ということで植田和男氏が浮かんできました。1998年から2005年まで日銀審議委員を務めており、金融政策に明るいとはいえ速水総裁時代のゼロ金利解除で反対票を投じるなどしており、異次元緩和の見直しがどれだけ進むかはわかりませんが、日銀も財務省も後始末の困難さはわかっているので引き受け手がいないというのが実際のところです。学者先生に弾除けになってもらいたいというのが本音でしょう。でも財政拡張は続きます。
経済力こそ国防の基盤 財政政策と国債増発の行方 鎮目雅人・早稲田大学教授:日本経済新聞
防衛費の財源問題が与党内で論争となっておりますが、税であれ国債であれ国内の経済資源を費消することに変わりはない訳で、国民に我慢を強いることにまります。それなのに防衛費増の必要性に関して腑に落ちる説明はなされておりません。はっきり言いますが、アメリカの歴代政権が日本に求めてきて日本の歴代政権がぬらりくらりかわしてきた宿題に対する満額回答をした訳です。

アメリカの国内世論の分断で支持が盤石とは言えないバイデン大統領にとっては外交成果となる一方、日本には財政負担のみならず、例えば島嶼部防衛の名目で南西諸島の陸自配備を決めたら米海兵隊がついてきたということで話が違うと現地は大騒ぎになっていますが、財政以外でも国民に我慢を強いる訳で、どっち向いて政治やってるんだって話です。そもそも台湾は日本もアメリカも国家承認していないので、中台で紛争が勃発しても内戦ですから集団的自衛権の対象にはなりません。この辺のウクライナとの事情の違いを無視しての軍備増強は少なくとも日本にとっては何のメリットもありません。敢えて言えば日米同盟増強による核抑止力の恩恵ぐらいです。

またウクライナでNATO軍が参戦しないように、敵が核保有国の場合アメリカとしては参戦が躊躇される訳で、核保有国の中国と直接交戦は避ける筈です。そうなると反撃能力として日本に配備したトマホークはインテリジェンスをアメリカに依存する限りアメリカの都合で発射ボタンを押される可能性はある訳で、アメリカの参戦は議会が決めることで大統領は助言するにとどまりますから、議会のせいにして中国に対しては日本がやったことにして参戦をためらうことになれば自国兵士を傷つけることなく中国を叩くことができる訳です。そうならないと確約できるのか。日本の自衛隊の指揮命令権が事実として機能しない可能性を否定できない現実があります。

という訳で経済力が落ち目に日本は防衛力強化の前にやるべきことがる筈ですが、デタラメばかりです。例えばこれ。

大阪万博、背を向けるゼネコン 採算低下で入札不成立:日本経済新聞
公共事業の不調は今に始まった話ではありませんが、再来年開催予定の大阪万博に暗雲が漂います。というのも資材費の高騰に加え台湾半導体メーカーTSMC熊本工場建設で熊本県菊陽町が大騒ぎになっており、関連企業を含め企業の投資意欲が旺盛でゼネコンにとってはおいしい状況にある一方、慢性的な人手不足、更に働き方改革の猶予期間が終わる2024年問題、五輪の費用膨張に対する国民の怒りで予算増額ままならず、夢洲の軟弱地盤も,、翻翻、ハネた~_~;。

なにわ無くとも江戸村先五輪ですよから巡り巡って大阪万博のパビリオン建設が進まず工期が迫れば尚のこと入札は難しくなります。うめきた新駅は来月開業しますが、乗り入れ予定のなにわ筋線は未だに事業着手もされず「なにわ無くとも大阪万博」どころか大阪府、大阪市の見通しの甘さからゼネコンにそっぽを向かれている状況です。府や市は国が何とかしてくれることを期待しているようですが、五輪の躓きが行く手を阻みます。

五輪談合、組織委元次長ら4人を逮捕 独禁法違反容疑で:日本経済新聞
コロナ禍の五輪で無茶やったから国も動きにくいし、防衛増税の議論で万博どころじゃないというところでしょう。いや忘れた頃にこっそりやらかす可能性はありますので、国民として開始は怠れません。ホントいい加減にせい!

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Saturday, September 17, 2022

物流を止めるな

コロナショックは従来の経済ショックと異なる面があります。大恐慌やリーマンショックなどは金融の混乱で消費が委縮したことで起きた需要ショックと言えますが、70年代の2度の石油ショックは石油の供給不安からの供給ショックと言えます。第三次オイルショックエントリーで指摘したように、需要ショックに対しては所謂ケインズ効果を狙った財政出動で需給ギャップを埋める政策が合理的です。一方供給ショックに対しては、需要喚起するとインフレが進んで経済を圧迫しますから、基本的には市場に委ねて需給調整するのが合理的です。その意味では総需要抑制策で市場調整を促す政策に合理性がある訳で、実際日本では福田政権でそれを実証している訳です。

コロナショックはロックダウンや行動制限などによる需要の蒸発という意味では需要ショックですが、一方で医療や物流などの供給側に供給制約を課す供給ショックの側面もあります。それ故に各国政府の対応も混乱した訳ですが、需要ショックの側面で見れば、旅行や外食が需要蒸発した一方、巣篭り需要で食品スーパーや電子商取引(EC)に需要シフトした訳ですから、経済セクター毎に影響はまだら模様で、またそのことが給付金を巡る混乱や不正などに繋がった訳です。勿論医療も影響を受けますが、初期に複数の医療機関でクラスター感染が発生したこともあり、一般診療は激減した一方、PCR検査やコロナ診療やワクチン接種という特需も享受しています。そんな中で考えさせられるこのニュース。

医療費、再び過去最高に 21年度4.6%増の44.2兆円:日本経済新聞
検査精度の高いPCR検査ですが、何故か日本では忌避論が言われました。出所はどうやら厚労省の医系技官らしいんですが、なるほどPCR検査はそれなりにコストがかかりますから、医療費の膨張で財務省からつつかれるのを嫌がったってことだとつじつまが合います。ぶっちゃけ保身ですね。

一方でコロナ病床確保の補助金を受け取りながらコロナ患者を受け入れない病院の問題などが報じられましたが、陰圧室や別棟で専門スタッフを置くといった対応が出来なければ院内感染の恐れがある訳で、受け入れが難しいのも確かです。だからコロナ受け入れを大病院に集約して専門スタッフも集約するということが必要でしたが、それだとコロナ関連の補助金が小規模病院に行き渡らない訳で、医師会がいい顔しない訳で、本来その辺を差配すべき医系技官がまともに働かなかったってことですね。

というう具合にコロナによる経済ショックは一筋縄ではいかない訳で、ある程度混乱はやむを得ない部分はあります。但し一方で疫学データも出揃ってきているのですから、経過観察期間の短縮や行動制限緩和や海外からの入国制限の緩和なども必要に応じて行うこと自体は必要な事なんですが、それに伴う見直しの根拠に完成手は納得のいく説明がされていないし冬に予想される第8波の備えもはっきりしないという状況です。

物流の混乱は主にアメリカのコロナ感染拡大に伴う港湾労働者の人手不足が原因ですが、裏には港湾労働者を含む低所得労働者の感染爆発がある訳で、それに加えてECの拡大による巣篭り需要で、主にアジア地域からの輸入が増えて西海岸のロスアンジェルス港やロングビーチ港にコンテナ船が殺到して、荷役が進まないから沖合待機させられて、世界中の海運が滞る事態になった訳です。つまり需要の拡大に供給が追い付かないという意味での供給ショックが起きた訳です。ちなみにアメリカの対中貿易赤字も拡大していますから、米中デカップリングどこ吹く風の現実が垣間見えます。その意味でこのニュースは結構重大です。

米国、鉄道スト警戒強まる 長距離路線はキャンセルに:日本経済新聞
スト自体はバイデン大統領の仲介で回避されましたが、実施されれば国内物流の30%を分担する鉄道貨物が止まる訳ですから、その影響はかなり大きい訳です。故に大統領が仲介して事なきを得ましたが、鉄道各社は従業員の賃上げや待遇改善を約束されました。当然運賃へ波及しますからインフレを助長しかねない訳ですが、賛否は分かれます。

トランプ時代にデタラメだったコロナ対策を立て直して経済を回復させたものの、その結果賃金上昇でインフレが止まらない事態を招いている訳ですが、何もしなければより大きな経済ショックを招きかねない中で、批判を覚悟の決断だったと思います。こういうことが所謂政治決断というやつで、目先の批判は受け入れるけど信念を以て動くというのは日本ではなかなか見られないことではあります。逆に政治家が邪魔して要らぬ災難を招く例は枚挙に暇はありません。

KADOKAWAの角川歴彦会長を逮捕 五輪汚職、贈賄容疑:日本経済新聞
アンダーコントロールのウソで招致し、旧国立競技場や都営霞ヶ丘住宅を解体して神宮の森を利権まみれにしてコロナ禍で無観客で経済効果無しの東京五輪ですが、出るわ出るわの五輪利権汚職です。被害者や国民だということは忘れてはいけません。スポーツ界からは札幌五輪招致への影響を危惧する声が聞こえますが、そういう問題じゃないだろ(怒))。一応予定では北海道新幹線札幌開業のタイミングですから、北海道としてもやりたいでしょうけど、その前に北海道新幹線の並行在来線問題が未解決なのは衰退途上国の在り方l で指摘しましたが、続報が出ました。
青函の貨物維持、国主導でJR貨物・JR北海道と協議へ:日本経済新聞
これは並行在来線引き受けを巡る自治体との協議とは別に、現実的な落としどころを探る動きです。現実問題として船舶へのシフトは難しいし、また例えば同島産のジャガイモはJR貨物で熊谷貨物ターミナルに運ばれてそこから仕向け地にトラック輸送される形で物流倉庫などが整備されている訳で、船舶シフトは受け入れる関東側のインフラも整備する必要がある訳です。JR貨物がみずほ総研に依頼した試算の経済損失は主に北海道の話ですから、こうした需要地側の経済損失もまた考える必要がある訳です。

また同試算で並行在来線三セクが毎年30億円規模の赤字ということもあり、自治体の協議がフリーズしている状況を打開する必要もあります。資産に貨物調整金が反映されているかどうかは定かではありませんが、財源は新幹線リース慮負担後のJR旅客会社の受益分ですから、元々収益性の弱い北海道新幹線では十分な負担が出来ない可能性はあります。実際北陸新幹線金沢開業でサイダーバードの富山乗り入れが無くなったのも、JR西日本の負担能力でカバーしきれない結果と言える訳です。

国が動いたことで、国交省は鉄道貨物を残す方向性を明らかにした訳ですが、北海道庁は動く気配がありません。沿線市町村だけでは毎年30応円の赤字を出す並行在来線三セク鉄道について協議しろと言っても無理ですし、国が助け船を出すとしても交通政策基本法の趣旨に照らせば地元からの働きかけが無いと動けない訳で、道が取りまとめに動くのが望ましいのですが、目先の経済損失よりも五輪招致の方が大事なのかな?だとすればそんな道知事や道議は落選させるべきです。道(どう)が道(みち)を誤らないことを祈ります。

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Sunday, July 10, 2022

東京メトロのコロナ減便

安倍元首相が狙撃されて死亡しました。誰であれ人の命を奪う行為は許されないことは当然ですが、釘を刺しておきたいことが幾つかあります。報道によれば犯人は元自衛官で手製の銃器を使った犯行ということで、捜査当局のコメントとして政治的意図ではなく宗教団体と見られる特定団体への恨みということで、現時点では不明ですが噂レベルで統一教会の名前が取り沙汰されております。

オウム真理教事件を起こした日本ですが、それでもカルト宗教への対応はあまり見直されません。宗教が集票マシンとして有効なのと宗教活動にかこつけた政治活動として有効ということで、少なからぬ政治家が関わっている結果ですが、身内がカルト宗教に入信してトラブルを抱える家族は少なからず存在しており、今回もそうした問題からくる怨恨犯罪のようです。とすると政治的意図のテロではないし、民主主義への挑戦というのも当たりません。恨みを拗らせた結果の犯行ということですね。

あとSPを含む警察官の対応に疑問が寄せられております。1発目が外れた時点で警護対象者を押し倒し覆い被さって命を守るのが鉄則ですが、犯人確保に動いた結果、2発目の凶弾で犠牲になった訳で、警護の不備を言われても仕方ない状況です。当然宗教団体と繋がっている政治家にとっては居心地の悪さを感じるでしょう。ある意味警察の不始末が政治と宗教の不透明な関係を可視化する結果となるなら皮肉な話です。私自身は以前から宗教的背景のない候補にしか投票しておらず、今回も同様です。これだけは言っておきます。

さて梅雨明けの徒然大草原wwwの猛暑も落ち着いて寧ろ雲の多い天候ですが、予想通りコロナ感染者は増えています。恐らくこのまま第7波になるのでしょう。但し軽症者が多く自宅療養で対応できているので医療逼迫には至っておりませんが、油断はできません。ウィズコロナは茨の道です。そんなニュースがこれ。

銀座線・丸ノ内線など減便 東京メトロ、平日9時台2割減も:日本経済新聞
春ダイヤ改正で既に減便と終電繰上げによる運行時間帯の縮小は実施積みですが、ラッシュ時の乗客の戻りが予想以上に少なく、平日ラッシュ時を中心とした減便に踏み込みました。痛いのは各線で車両の置換え更新を進めてきたために、特に他線転属が不可能な銀座線と丸ノ内線は痛いところ。東西線は05系初期車を代替なしに廃車すれば済みますし、千代田線も当面保安装置更新の予備車確保が容易になるなどやりくりの余地はありますが、車両更新を精力的に進めた結果の余剰車両です。

まあ仮に乗客が戻れば増発は容易ですし、車両走行キロが減れば保守費用も削減されるし延命で次回の車両更新を先送りできるなどのプラス面もありますが、東京メトロにとっては痛い現実です。こうなったのは1つは90年代末からの人口の都心回帰がリモートワークの普及で郊外志向が強まったことと密防止でラッシュ時利用を避ける傾向の両方の影響があるようです。実際東京都区部の人口は転出超過に転じております。

但しあくまでも郊外移転であって、地方移転でないことは注意が必要です。首都圏の巨大集積は寧ろ維持強化されており、郊外でも全て転入超過になっている訳ではなく、選択的に斑模様になっている訳です。この傾向は首都圏で顕著ですが、近畿圏や中京圏ではあまり見られず、恐らく製造業比率の違いがもたらしていると見られます。つまりリモートワークがやり易い業種が多いってことですね。製造業立地の少ない東急線の乗客減が顕著なのも同様です。

とすると都心の再開発にブレーキがかかる可能性がある訳で、例えば高輪ゲートシティや五輪選手村を改装して売り出される晴海フラッグにも暗雲が漂います。これ銀座―有明管の湾岸地下鉄構想にも影響が出る可能性があります。そしてスポーツ施設建て替えと高層ビル建設が明らかになった神宮外苑の再開発にも影響が出る可能性があります。銀杏並木を含む樹木の伐採で反対の声が盛り上がっておりますが、構想自体は落選中の萩生田光一案が自民都議を通じて都職員から五輪招致委トップの森元首相にプレゼンして絶賛されたことが週刊ダイヤモンドの報道で明らかになっております。

利権のふえる訳ワカメちゃんでも取り上げましたが、五輪招致にかこつけて国立競技場の建て替えを口実に高さ制限を緩和している訳で、五輪をダシに利権を生み出した構図です。元々明治天皇をしのぶメモリアルパークとして構想され、地権者の協力や一般市民の寄進で造成された「神の領域」を再開発の名の下に蹂躙する事業で、且つ神社本庁の関与まで指摘されております。宗教と政治家の不透明な関係の1つとも言えますし、現人神とまで言われた天皇に対するリスペクトはそんなもんなの?とも思います。

銚子電鉄が6年ぶり黒字、純利益21万円 副業の物販好調:日本経済新聞
東京メトロとは真逆の話題です。6年ぶりの黒字ですが、副業の物販、つまり濡れせんべいの販売でカバーして黒字化したという訳です。これ地元の特産である醤油を活かした取り組みであるとともに、巨大な首都圏の人口の支えでもあり、存廃を問われるローカル線全般に当てはまる訳ではありませんが、銚電クラスのローカル私鉄はコロナ禍に対峙するローカル私鉄のキャッシュフロー経営でも指摘した通りです。

最後に鉄路的蛇足。銚子電気鉄道の前史は1914年12月に開業し1917年11月に廃止されたの銚子遊覧鉄道の線路施設一式を居抜きで取得して開業した銚子鉄道が後年電化で銚子電気鉄道となったというのは知る人ぞ知るところですが、元々需要が多い訳じゃない区間で、それでもその結果初期投資を圧縮できたことで存続に有利に働いたということは言えます。但し保守費用捻出に苦労して運休することもあり、東京陸運局の問題児ではあります。

似たような事例は実は結構ありまして、近鉄南大阪線の前身の2代目大阪鉄道の最初の開業区間は初代大阪鉄道(後の関西鉄道へ併合)の柏原―古市間を1898年委開業させた河陽鉄道が翌年営業不振で解散し、河南鉄道に再編され河内長野まで延伸されました。後に道明寺から大阪天王寺(現大阪阿部野橋)へ延伸して電化したもので、甲武鉄道の支線的存在の川越鉄道が高田馬場への電気鉄道延伸で姿を変えた旧西武鉄道と酷似します。

大沼公園―鹿部間の大沼電鉄は戦時中の函館本線の緩和勾配迂回線の砂原線の1945年6月の開業と引き替えに廃業しましたが、砂原線鹿部駅が鹿部市街から遠いということで、1948年に銚子口駅前―鹿部間を復活させております。大沼電鉄の事例では線路のみならず車両も残っていたことから、復活のハードルは低かったとは言えます。それでも道路整備の進捗と共に利用が減り1952年に2度目の廃業をしています。

直近の事例では2001年、半年に2度の衝突事故を起こして休止から廃止を余儀なくされた京福電気鉄道福井支社の越前本線富国粟原線を譲り受けて2003年に開業した三セク鉄道のえちぜん鉄道の事例があります。休廃止期間中はバス代行輸送が行われましたが、漸弱な沿線道路事情から渋滞が深刻化し鉄道復活の機運が高まったこともありますが、それでも東古市―永平寺間の永平寺線は譲渡されず復活しませんでした。えちぜん鉄道といえば再エネ電力託送事業でも注目されます。

という訳で都市鉄道よりも厳しい状況にあるローカル私鉄ですが、地元の取り組み次第で存続の可能性もあるということは言えます。その意味でhは滋賀県が近江鉄道の存続を期して県税として交通税導入を打ち出しておりますが、注目すべき動きです。「改革」と称してとかく減税の議論ばかり目立ちますが、社会的課題解決のための税制という視点は重要です。

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Saturday, April 09, 2022

利権のふえる訳ワカメちゃん

神宮の森の再開発がそろり動き始めています。東京・神宮外苑、再開発へ号砲 集客期待も景観保全課題 News潜望展望:日本経済新聞" target="_blank">五輪霧中で取り上げた新国立競技場建設を巡る都市計画変更の狙いがこれだったってことですね。1919年制定の都市計画法で、都市内外の自然美の維持を目的とした風致地区制度の適用第1号が神宮外苑でした。自然景観の保全のために、私有地であっても樹木の伐採や建物の建設に一定の制限が課されるもので、神宮外苑も明治神宮その他の地権者の私有地で、旧国立競技場をはじめ15mの高さ制限が課されていた訳ですが、新国立競技場建設を巡って都市計画変更されて、高層ビル建設が可能になりました。

一応高層ビル建設の条件として一定規模の緑地や公園の設置が義務付けられておりますが、その為に新国立競技場の日影規制に抵触するという理由で霞ヶ丘都営住宅が居住者を追い出して解体されるというチグハグなことまで起きていますが、メディアの扱いが少なく、あまり知られておりません。そうしてできた新国立競技場ですが、高い維持費を捻出するために貸出料が高騰したためスケジュールがスカスカで赤字を垂れ流す存在となっております。スポーツ大会に限らず各種イベントにも使うために立派すぎるハコモノ作っちゃったわけですね。しかもサブトラックが無いから世界陸上などの世界大会には使えません。

何だか無責任の連鎖ですが、金融緩和で溢れるマネーの受け皿としてこうしたことが起きている訳です。2025年の万博を控える大阪も同じですし、カジノが否定された横浜市の山下ふ頭再開発など、どさくさ紛れの利権漁りの種は尽きません。しかも新国立競技場が典型ですが、必ずしも経済効果を生んでいないどころか、負の遺産として国民にツケが回っている状況です。利権に群がった連中はしっかり稼いでいる一方でです。

こうした現実を見ると、昨今の大都市鉄道の整備計画にも不安が募ります。例えばゆくΔくるΟで取り上げた東京メトロ豊住線(8号分岐線:豊洲―住吉間)やつくばエクスプレスとの直通が示唆される湾岸地下鉄(銀座―有明管)、南北線品川延伸、キッシーの温故知新で取り上げた東京メトロ南北線品川延伸、コロぶナ大阪トトで取り上げた大阪メトロ中央線夢洲延伸やなにわ筋線などが計画されてますが、コロナ禍で激減したインバウンド需要でどこまで需要が見込めるのかは不明です。

但し終わらないコロナで指摘した円安スパイラルで日本の不動産市場への外資の投資はやり居やすくなりますから、資金だけはファイナンスされて完成後の需要がどうなろうが事業は進む可能性が高いと言えます。五輪も万博も利権屋を太らせるだけで負の遺産を増やすだけの訳ワカメちゃんに終わりそうです。

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Sunday, January 23, 2022

リア充爆発感染で草生えるwww徒然

ゆくΔくるΟが進みます。予想通りデルタ株からオミクロン株への置き換えで感染爆発となりました。一部に弱毒化の指摘もあり、その根拠として従来株では肺にしか見られなかった感染部位が喉や上部気道に見られ、その分潜伏期間が短くなっていることが挙げられています。つまりウィルスが肺に達する前に発症するので重症化しにくいというロジックですが、だから軽症で済むわけではなく、感染者の増加に伴い重症化も増えており、死亡者数も今後増えるでしょう。有効な治療薬が無い状況は変わらず、また検査体制の拡充が追い付かないレベルの新規感染者増では、未知の陽性者との遭遇の恐れがある訳で、第5派までと同じ心理的不安は解消されません。当然医療逼迫も時間の問題です。

これまでの経過を見ると人が動いたり集まったりすると感染が拡大するということを繰り返している訳で、言うなればリア充感染症という傾向を示している訳で、国民としては自粛せざるを得ない状況が続きます。但し感染力の強さはそれだけ感染拡大のスピードが上がる分、終息も早い可能性があり、早ければ2月中旬にも終息となる可能性があります。とはいえウィルスが消滅した訳ではありませんから、年度替わりの異動シーズンでまた次の波が立ち上がる可能性はあります。コロナとは長い付き合いにならざるを得ないようです。

一方地政学エントリーで取り上げたように中国のゼロコロナ下の北京五輪開催がどうなるかが注目されます。東京五輪のときの経験則から言えばゼロコロナ下でも感染拡大を抑え込むことは難しいと考えられます。但し失敗が明らかになっても中国当局がそれを認めるかという問題もあり、評価の難しい問題でもあります。そして実際中国経済は確実に冷え込んでおり、人民銀行による利下げが繰り返されていることがそれを示します。

一方米国経済は順調とは言えそれ故にFRBの緩和縮小と早期の利上げ警戒から株価は下げております。特に我が世の春を謳ったハイテク株の高値が意識され始めており、巨大ハイテク企業への規制強化の動きと相まって先が読みにくくなっております。ただ米利上げは新興国からの資本逃避を呼び起こすため、それを阻止するために利上げを余儀なくされます。ただでさえコロナで経済が痛んでいる中での利上げは経済にマイナスです。

そしてこの点は実は日本も他人事ではありません。最近の円安傾向が進みドル円120円の水準を突破すれば、日本でも同じ問題が起こる可能性があります。アベノミクスによる異次元緩和や財政の拡大で円の信任が低下しており、そこへインフレが襲う訳ですから、国民生活を圧迫します。故にアフターコロナの回復は見込みにくい状況です。但し世界3位の経済大国であることには変わりなく、2,000兆円に達する国内貯蓄は陰に日に海外から狙われることになります。

例えば防衛費の拡大は米軍産複合体にとっては美味しい話です。軍事機密を理由に防衛装備品は日米政府間取引として扱われ、防衛企業から米政府が買い取って日本政府に売るスタイルで、価格は言い値プラス保守契約と秘密保持契約締結を義務付けられます。つまりリバースエンジニアリング不可で国産化も出来ず、自国防衛をアメリカの軍産複合体に依存する状況になる訳です。

これに限らず政府支出が国債で調達される状況は、つまるところ国内貯蓄でファイナンスされることですから、国民の家計防衛が米政府と企業を太らせる訳です。そうしてジワジワと蓄えた富を侵食される訳です。その変化は劇的ではありませんが、それ故に気づかないうちに貧乏になっていたということになります。

あと米利上げでハイテク株下落の結果、損失を抱えた人は日本にも少なからずいる筈です。日本株のさえない状況から米国株にシフトした投資家は、結果的に米経済を支えて損失を被ったと見ることもできます。一方日本株に投資してきた海外勢はここへ来て資金を引き揚げております。高値で手の出しにくい米国株に比べてリーズナブルだし低金利の米債券に比べればリターンも見込めるということで買われてきた訳ですが、米利上げでその構図も変わります。つまり米投資家に配当を貢いだ挙句に使い捨てられた構図です。

インバウンド観光がコロナで打撃を受けてますが、これも簡単には回復しないでしょう。というか、結局円安で日本の物価の相対的な安さが訪日客を増やしただけで、特に中国からの訪日客は富裕層より中間層中心で、所謂爆買いも物価の安さが後押ししたもので、リフレ派が目の敵にしてきた「デフレ」のお陰なんですよね。その結果京都などで観光公害が顕在化して国民生活を圧迫しております。という具合に様々なルートで日本の富が海外に流出している訳です。結局アベノミクスは日本大安売りの経済政策で国民を不幸にしました。

加えて脱炭素で自動車産業のゲームチェンジが避けられない中で、そのことに対する国内メーカーの意識が追い付いていないことが気がかりです。砂を嚙む半導体争奪戦でも指摘しましたが、欧州メーカーを中心に自動車産業のゲームチェンジが進行中で、電動化でHEVが除外されたことにトヨタが憤っていて内燃機関養護発言をしていますが、ベンツのツウェッチェCEOが言い出したことですが、単なる電動化ではなく自動化やシェアリングを同時進行させるもので、自動車産業の在り方を変えてしまおうということです。

特にシェアリングが重要なんで、自動車は耐久消費財からモビリティのツールとして資産となる訳です。故に販売数は激減し価格も上がるけど、稼働率は上がるしメンテナンスやソフトウエアのアップデートを通じて販売後も収益化されるし、生産量の減少はライフサイクルアセスメントでも脱炭素になる訳で、現在のマイカーはよほどの金持ちの道楽になるということですね。そして選択される車はベンツのようにブランドが確立しているメーカーほど有利ですし、販売減少による販売価格の上昇はリセールバリューの上昇でチャラにできるということですね。

トヨタのEV戦略はHEVを含む全方位戦略で、特にアジア地域での内燃動力の優位性を主張しているように、明らかに量の拡大を狙っている訳で、それ自体が脱炭素に反するって視点がないんですね。てことで日本の最後の砦とも言える自動車産業もガラパゴス化が見られます。また五輪選手村内での自動運転バスとパラ選手の接触事故でも「信号があるべき場所になかった」と自己弁護しましたが、それも公的に否定されました。

記事公開が終わってますが、日経記事ではトヨタの自動運転バスは横断歩道横断中の視覚障害者の選手を認識しながら、添乗していたトヨタ社員のオペレーターが誘導員の存在から選手を「制止してくれると思った」として発車ボタンを押した結果の事故ということで、完全な人為ミスです。信号機の有無は関係ありません。この程度の安全認識で自動運転に挑戦とはあまりにもお粗末です。

一方でJR東日本のドライバレス自動運転は本気度が高く、2030年頃をメドにとりあえず手前のワンマン運転は実現するつもりのようです。鉄道事故では被害が大きいこともあって安全意識が高いのは当然ではありますが、モビリティサービスの提供者としての経験値の違いは大きいと言えます。ただトヨタの場合は生産技術は高い水準にある訳で、台湾TSMCのようなOEMメーカーとしての生き残りの可能性はあると思いますが、自社ブランドでの販売は厳しいかもしれません。

貧すれば鈍すというか、衰退国企業は生き残りも茨の道かもしれません。但し別のところに面白い現象が見られます。

EVシフト、地方が先行 岐阜・愛知は東京の2倍普及 データで読む地域再生:日本経済新聞
過疎化でガソリンスタンドの維持が難しい地方でEVによる活性化が進みます。電力は過疎地にも届くし、災害時にはEVのバッテリーが非常用電源にもなりますし、また再エネ電力で地産地消という形での活性化にもつながります。この辺が案外現実解かもしれません。

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Saturday, January 15, 2022

鉄路的地政学

前エントリーで取り上げた中国ゼロコロナリスクが現実になりました。

中国・天津、1400万人PCR検査 北京五輪控え厳戒:日本経済新聞
北京五輪間近で厳戒態勢です。天津にあるトヨタ自動車の工場の操業停止に留まらず、港湾都市の天津ですから、国際的な海運のひっ迫を助長する可能性もありますし、高速鉄道で30分という北京との近さも気になります。感染力の強いオミクロン株感染者も確認されております。

繰り返しになりますが、中国のゼロコロナリスクは、それによって都市封鎖などで経済が止まり、サプライチェーンが分断されることで、世界規模の影響があることが問題なんで、米中デカップリングのリアルがより深刻になる訳です。他人事ではない訳です。

そのアメリカが18年に制定した輸出管理改革法で、米技術を組み込んだ半導体製品の特定国(主に中国)への輸出に外国企業も米商務省の許可が必要になり、日本製半導体の輸出が減ったのですが、それを穴埋めするように米国産半導体チップの輸出が増えている現実があります。経済安保を口実とした国内産業保護策になっている訳です。

半導体に関して言えば日本産半導体は汎用品主体で市況により値動きが大きい旧世代のものが中心ですが、台湾TSMCの駒本工場誘致に4千億円も補助して、それでもTSMCが渋ったのは、市況悪化による値崩れリスクを嫌ったからで、ソニーとデンソー以外の日本企業に出資を求めたのもそのためです。高額補助金で外国企業に来てもらうのにも苦労しているのは砂を噛む半導体争奪戦で指摘した通りですが、無理が通れば道理が引っ込む経済安保問題です。

この構図は三菱電機の検査不正で似たことが起きています。三菱電機は鉄道車両用機器で実質国内トップ企業で、空調機やコンプレッサーの他パワー半導体その他の重要機器も取り扱い、海外輸出も行われていますが、海外企業が検査項目や詳細な内容を契約書に記載する一方、国内向けには記載がなく、一応国の基準で検査を行うことになっていますが、海外企業向けの検査はきちんとやっている一方、国内向け出荷分は検査数値を書き換えたり省略したりという状態になっていたことが第三者委員会の報告書で明らかになっております。つまり煩いい相手には対応し馴れ合いの国内企業向けで手抜きをしていた訳です。これ日本企業にありがちなことで笑えません。

背景としてそもそも検査部門はコスト部門としてコストカット対象ですから、人員の補強も検査機器の導入も後回しで、現実的に出荷全数を検査できる能力が欠けていたことが背景にあります。更に言えば行政改革で保健所が減らされた結果、コロナ禍で保健所がボトルネックになったこととも共通した問題点があります。社会が壊れつつある衰退国でトップダウンで物事を進めようとするとこうなる訳です。そんな中でちょっと希望が持てるかなというニュースです。

送電ロスなし「超電導」実用へ JR系、脱炭素を後押し 【イブニングスクープ】:日本経済新聞
以前から超電導技術はリニアより送電線でも実用化が先と見ておりましたが、JR総研が実用化にめどをつけた模様です。コイルに用いる新素材によって-269℃から-196℃都より高温で超電導が実現する結果、液体ヘリウムの1/10の価格の液体窒素を冷媒として利用可能になりコスト削減が可能になる訳です。既に鉄道数社が興味を示しています。DC1,500V電化路線での回生ブレーキによる負荷変動や大電流問題は既に指摘しましたが、変電所間隔を空けてコストダウンになるに留まらず、複数饋電区分間の電流制御で回生電流を遠く離れた力行列車へ回すといったことも考えられます。

またヘリウムはアメリカの天然ガス由来のもが世界唯一の商業輸出品ですが、シェールガスにはほとんど含まれず近年生産量が減っている一方、半導体洗浄などハイテク分野で使われることから、米政府が輸出規制を強めており、ディズニーランドのミッキーマウス風船が姿を消したのもそのためですが、リニアの超電導コイルに使うには量の確保が欠かせず、リニアの実現可能性に疑問符がつく要素の1つでもあります。今回の技術が即大出力の超電導コイルに応用できるかどうかはわかりませんが、クエンチの問題は引き続き残ります。

一方安全保障問題ではウクライナとカザフスタンが火種になっており、何れもロシアが絡みます。ウクライナ問題の背景としてソビエト崩壊で冷戦が終結したときに、NATOと対峙してきたワルシャワ条約機構(WTO)は共に不要ということで相互に解散と申し合わせられ、WTOは解散しましたがNATOは残り、旧ユーゴ紛争ではベオグラード空爆など軍事行動を取っている訳で、ロシアからすれば「約束が違う」という話なのですが、EUの東欧圏への拡大までは容認できても軍事同盟のNATOへの加盟は容認できないし、ましてウクライナは隣国でもあります。

勿論東部ウクライナへの介入がそれで正当化される訳ではありませんが、NATOの東方進出禁止はそれでもロシアからすれば譲歩なんですね。また譲歩を引き出すための高めの要求という面もあります。加えてアメリカの中国シフトでロシアへの圧が弱まっている面もあります。鬼の居ぬ間の洗濯でもあります。

中央アジアのカザフスタンの紛争でもロシア軍を送り込んで鎮圧しましたが、産油国でもあるカザフスタンが石油価格上昇で国内向けに低価格で出荷していたのをやめた結果の国民の不満が爆発したもので、ロシアが介入する謂れはなく、こちらの方が問題ですが、米欧の利害に絡まないからなんでしょう。実は慌てているのは中国でして、国境を接し石油供給源でもあるに留まらず、中国と欧州を結ぶチャイナランドブリッジと呼ばれる鉄道輸送路の要でもあります。ルートはウイグルからカザフスタンを経てカスピ海北側ルートではロシアからポーランドを経てドイツに至るもので、日通が日本発の船と鉄道の継走ルートとして売り込んでいます。

カスピ海南側ルートではイランからトルコを経て欧州へということですが、カザフスタンとロシアは1,520㎜のロシアンゲージであり、国境でコンテナの積み替えが発生するものの、スエズ運河経由の船便で40日かかるルートを25日程度で結ぶということで、スエズ運河座礁事故のときも生きていたルートです。

カザフスタンで内戦となればこのルートが使えなくなり、中国経済にも打撃となる訳で、中国は気が気じゃなかったでしょう。加えて言えばカザフスタンを含む中央アジア諸国と中国、ロシアは上海協力機構という同盟を結んでおり、今回のロシアの行動はそれも無視している訳で、機構を主導する中国に顔を潰すことにもなります。そういう意味で西側諸国は「勝手のやっとれ!」ってことなのかもしれませんが、民主主義や普遍的価値を理由に中国に圧力をかける西側諸国のダブルスタンダードではあります。

一方でウイグルから中央アジア、ロシア南部を経てイラン、トルコに至る地域はイスラム回廊でもあり、中国、ロシア、イランの反米同盟という上部構造とイスラムという下部構造の乖離もあり、元々火種を抱えているということも言えますが、米欧にとっては触らぬ神に祟りなしが本音かもしれません。最後にこれ。タイに延びない中国「一帯一路」鉄道 すれ違う思惑 アジア総局長 高橋徹:日本経済新聞一帯一路構想で昆明から南下してラオスに至る高速鉄道が整備され、客貨両用で整備されたのですが、それに繋がる筈のタイの高速鉄道がタイの計画変更で旅客専用となり、しかもラオス国境に至らない可能性が出てきたということです。

中国の思惑としてはタイからマレーシアを経てシンガポールまでの構想で客貨両用が前提だったものが、タイ政府が一方的に計画を変更したもの。建設や技術指導は中国に依存するものの、中国の思惑は崩れることになります。タイ政府が中国に伍してこうした動きを見せているように、米中のはざまで振り回されるだけじゃないしたたかさは日本も見習うべきところがあります。日本にとってはつらいオチだ-_-:。

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Sunday, January 09, 2022

走れコロナ

コロナ走っちゃ困るんですが年始早々の予想は当たりました。しかも沖縄、山口、広島の3県にまん延防止等重点措置ということで、何れも米軍基地から漏れ出たと疑われております。その結果日米地位協定の話に飛び火しておりますが、オミクロン株対策で水際対策強化した時点で日米合同委員会に諮ってアメリカに協力を求めるのが筋ですが、やってなかったってことで、日本政府の不作為でもあります。林外相がアメリカに注文付けましたが、公式文書が残るだけで実効性はどうでしょうか。やったふりのアリバイ作りの域を出ないんじゃないでしょうか。てことで医療体制が整わないうちに第6派が始まります。

第5波収束から3カ月、準備なお不足 医療体制やワクチン:日本経済新聞
第5波までの教訓は何だったんでしょうか。特に保健所原則って何?検査や入院の診断は医療行為の筈なのに、未知の感染症を恐れて保健所に丸投げした医療機関が多数あって、結果的に保健所の業務が激増したのであって、この部分を変えなければ第5波のような医療崩壊が起きる可能性はあります。第5波は結局医療のキャパシティの不足によって重症化が進んだ結果と捉えることができます。

そうなったのは保健所の煩雑な手続きの連鎖による業務集中で処理に時間がかかったことが指摘されます。東京オリパラの影響も当然あります。そうした現場レベルの問題点を洗い出すこともしないで、思い付きのように水際対策強化やワクチン3回目接種や内服薬利用に期待して何とかなると楽観視していたのではないかと疑われます。喉元過ぎれば熱さをを忘れる喩え通りですね。アメリカやイギリスでは日本のより感染者数が増えているのに規制を緩めているじゃないかと言われますが、感染拡大時の医療体制が整っているからできることです。それでも厳しくなると「マスクしてくれ」「ワクチン打ってくれ」とお願いするバイデン氏やジョンソン氏のニュースが流れる訳です。国のトップが現場を把握していることを意味しますから、日本の現状にはため息しかありません。

その一方でひとりゼロコロナ政策を続ける中国ですが、北京五輪でどうなるかも注目されますが、米シンクタンクのユーラシアグループが22年の世界の10大リスクに中国のゼロコロナリスクをトップに取り上げたのはなるほどと思います。同社は覇権国不在のGゼロを予想したりして地政学的視点からの予想に定評がありますが、ゼロコロナの結果デルタ株やオミクロン株などの変異種への対応で後手を踏み、現在でも入国制限を続けている状況です。また武漢や西安など1千万都市レベルのハードロックダウンを躊躇なく行うため、それに伴う経済停滞やサプライチェーン分断に世界が振り回されるということです。尚、冒頭の米軍基地発の感染拡大は、日米の規制を含む国内事情の違いによる部分が大きいことではあります。

米中デカップリングのリアルでも指摘しましたが、中国問題というと台湾海峡有事にばかり言及されるのですが、実際は両国ともに国内問題で手一杯で、とても軍事行動を起こせるような状況にはありません。だからゼロコロナリスク自体は台湾海峡有事の可能性を下げることになるという意味では喜ばしいことですが、経済的に巨大になった中国がアメリカすら振り回している現実を見ると、やはり大きなリスクと言えます。中国恒大問題が小さく見えます。という訳で、太宰治作品の有名フレーズに倣います。

コロナに政治はわからぬ
という訳で、コロナはかなり深い部分で世界に分断をもたらしたかもしれません。分断は世界に留まらず各国国内でもあります。とりあえず Go To 再開は遠のいたと見て間違いないでしょう。鉄道や航空などの輸送サービス業の回復も展望できません。そんな中でこんなニュースです。
東急電鉄、23年の運賃値上げは13% 国交省に申請:日本経済新聞
東急電鉄にとっては Go To はあまり恩恵はないでしょうけど、リモートワークの普及で通勤利用が減ったことで余力が失われたってことです。一方ホームドア設置などの安全対策の設備投資は継続する訳で、その為には現行運賃では厳しいってことですね。

JR東日本は国交省のバリアフリー対尾策新法を利用した現行電車特定区間運賃への上乗せで対応するのに対し、東急は認可運賃そのものの値上げで距離帯によって10-60円程度の値上げを申請しました。コロナ後の回復はないと見たのでしょう。また沿線の所得水準が比較的高く、リモートワークしやすい人が多いってこともあります。同様の沿線環境の阪急がコロナの影響は軽微として運賃値上げは考えていないというのは、JR西日本との競合路線を抱える中で、首都圏に先行して通勤需要が減少に転じたこともあり影響が軽微だった可能性と、JRとの運賃差も小さく、値上げ余地が限られるという事情もありそうです。

一方で京阪電気鉄道は基本ヘッドを10分ヘッドから15分ヘッドにする減量ダイヤで対応を発表しており、ここでも判断が分かれています。恐らく並行JR線が15分ヘッドだからここまでは減らせるという判断なのでしょう。当然その分車両や要員を減らせますから、コストダウンになる訳ですが。比較的横並び意識が強い鉄道業界で今回は判断が分かれて様々な対応が見られます。

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Sunday, December 05, 2021

草生えるwww師走の徒然

徒然に師走になりました。

脱炭素へ私鉄加速 京急、まず1日400本の空港線 小田急、再エネのロマンスカー:日本経済新聞
京急はとりあえず空港線で、小田急はロマンスカーVSE2編成分で限定的ながら再エネ電力を導入し、東急では世田谷線で19年4月に導入済み、西武はAGTの山口線で来年4月からの予定と、限定的ながら鉄道事業者の再エネ電力によるCO2排出削減が動き出しました。これが拡大して再エネに消極的な電力会社を動かせるようになれば良いですが道のりは遠そうです。

一方でGAFAのカーボンゼロ宣言やトヨタの再エネ電力買収などの動きもあり、石炭火力依存の日本の電力ガラパゴス化が進行中です。規模の大きすぎるJRは更にハードルが高い訳で、自ら電力事業を立ち上げるとかしないと追いつかない可能性もあります。

日本の設備、停滞の20年 総量1割増どまり チャートは語る:日本経済新聞
分配問題で日本の固定資本減耗の微増と営業余剰の増加の一方、雇用者報酬が減少していることを裏付ける結果です。企業は辛うじてキャッシュフローの範囲内を少し超える設備投資はしているものの、生産性を改善するレベルには達せず、賃金の低迷を招いている訳です。というよりもゼロ年代のベアゼロ春闘かや非正規雇用の拡大で労働市場を圧迫し続けた結果、企業が国内設備投資のインセンティブを失ったという方が実態に近いと言えます。

つまり固定資本減耗を減らして営業余剰を増やした訳です。これを賃上げの原資にしなかったから国内消費市場が委縮してしまう訳です。あるいは再エネ電力など脱炭素投資の原資にするならばそこを起点に新たな雇用も生まれるものを、むざむざ経営者と株主で山分けした訳です。汗っかきと油売りのニューノーマルの時代でもあり脱炭素が産業競争力を規定する現実を見てコロぶナ日本変異ウイルス命名、中国に配慮? 米FOXニュース:日本経済新聞WHOが習さんに忖度?そんな声が聞こえること自体がWHOの命名判断に繋がった訳ですが、日本じゃ「尾身苦労」とか言われてます。尾身さんにも忖度しろってこと?www

中国「北京五輪、予定通り開催」 開幕まで2カ月:日本経済新聞
その中国の北京五輪が注目されています。オミクロン株の感染が世界に拡大する中で、東京のバブル方式を参考により厳格化して開催という算段ですが、その結果待機期間28日とかアスリートには致命的な拘束期間が設定されたりしています。フィギュアスケートのグランプリファイナル中止など選手選考元何処る中で実施できるのか?状況は東京大会以上に厳しいものがあります。それでも開催にこぎつけて感染対策も万全だったとなれば東京のバブル方式がザルだった証明になりますし、逆に感染拡大につながればやはり東京大会は中止すべきだったことの証明になります。

一方党幹部からの性暴力を暴露したテニス選手の安否を巡る問題もあり米主導で外交ボイコットが呼びかけられておりますが、IOCバッハ機長とのビデオ面談で寧ろ疑惑を深める四面楚歌です。バッハ会長の人望のなさもあるでしょうけど^_^;。気になるのが日本の政治家やメディアの人権問題への意識でして、中国に問題があることは確かなんですが、そもそも人権は人間が自然状態で自由であるというルソーの社会契約論からきている概念で、元々主権者は国民であり国民国家はその国民から社会液役によって負託を受けて主権を行使できる存在であり、主権行使が国民に害をなす場合はそれに対抗できるとする権力対抗概念です。

その意味で人権問題がない国は無く「BLMやコロナ禍でアジア人虐待するアメリカに言う資格なし、単なる内政干渉」という中国の言い分にも一理ある訳です。但し国民国家を前提とする現在の国際社会では国を超えた普遍概念故に、その観点から中国を説得しなければならないんですが、対決姿勢を取ってしまうから説得にならないという悪循環に陥っております。オミクロン株命名に関する習さん忖度論と同根の問題があります。

鉄道車両の防犯カメラ、設置にばらつき 国が基準整備へ:日本経済新聞
予想された動きですが、防犯カメラと言っても位置や台数をどうするか?音声ありなし?指令への転送機能を持たせるか?費用負担はどうするなど論点多数でまとまるには時間がかかります。加えて画像は事後的な編集が可能なんで厚労省村木さん事件のような検察による証拠捏造による冤罪の可能性もある訳で、中途半端な議論では済みません。ハロウィンの魔物は簡単には退散しませんね。
日大理事長逮捕 マンモス大学トップ、利権構造解明へ:日本経済新聞
少子千万!国公立大学の法人化で学費が上がり私学との差が縮まっている一方、私学は補助金を得ながらもコロナ禍でも学費値上げをしており、そのために奨学金という借金を学生に背負わせ、親元離れてアパート暮らしで生活費はアルバイトで稼ぎ、そのアルバイトもコロナ禍でシフトが減らされと痛めつけられている学生を食い物にする私学の闇が問われます。背信行為での立件は難易度が高いと見て国税とタッグ組んで脱税で立件を目指しますが、文教予算を削り続けてきた政府の対応も問題です。思い切って膿を出して欲しいところです。
需要読めず負担重く 横浜市の「上瀬谷ライン」暗雲:日本経済新聞
最後は Go To リベンジ幻想で取り上げた上瀬谷ラインAGTの話題です。米軍上瀬谷通信施設跡地に巨大テーマパーク建設で相鉄が乗り出したもののコロナ禍で断念。その後三菱地所が開発事業者として検討を重ねるものの具体策が見えず、横浜市がAGT運営を依頼した横浜シーサイドラインが検討の結果降りることになり年内要諦の事業者選定が困難になりました。計画自体に無理があるし事業の見直しは避けられませんね。

つーことで師走も草生えるわ!

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Saturday, October 30, 2021

砂を嚙む半導体争奪戦

台湾TSMCの誘致でソニーとの合弁で熊本に工場建設が進められてますが、いろいろ問題があるようです。

TSMC誘致、日本が問われる「良い補助金」:日本経済新聞
記事では中国などの国有企業への補助金問題で批判的な立場にある日本が、TSMCの工場誘致で費用の半額とされる数千億円の補助金を負担することへの違和感と共に、「良い補助金」になるかどうかの不確実性が指摘されてます。前者はWTO違反として提訴される可能性もありますし、中国などの国有企業向け補助金を批判してきた日本政府の立場とも不整合であることから、政府内でも言われていることです。後者は補助金の意味に関わります。

TSMCの工場建設に関してはいろいろ問題がありますが、そもそも最先端の5ナノメートル(nm)レベルの半導体生産ではなく22-28nmレベルの旧世代半導体の生産が予定されているそうで、だとすれば最先端の生産設備という政府の説明はおかしい訳です。ソニーが合弁に名のりを上げた理由は、元々イメージセンサー用の28nmロジック半導体の生産委託をしており、それを国内拠点に移すことでサプライチェーンのリスク管理をやり易くする思惑と見られます。これは同時にTSMCの台湾の工場の生産能力を他へ振り向けられる訳ですからTSMCにもメリットがある訳です。

そして自動車向け半導体も同じ世代のものなので、日本国内の需要を満たすには必要かつ十分なものではあります。しかしそれは最先端半導体をふんだんに使うスマホで国内メーカーが全敗したことと裏腹な訳で、何とも複雑な気分です。そしてこの世代の半導体は国内メーカーでも生産されており、旧世代故に製造装置の減価償却も終わって安価に供給できる訳ですが、逆にそれ故に新たな設備投資を伴う増産体制は取りにくく、故に海外ファウンドリーへの生産委託が進んだという事情があります。

故にTSMCも渋った訳ですが、それを投資の半額補助という破格の条件で何とかまとめようという話です。だったら国内メーカーに補助金出しても良さそうなものですが、この辺は謎です。考えられるのはエルピーダメモリ―の失敗やジャパンディスプレイの迷走で国内メーカー支援に懲りた?それともアメリカがTSMC誘致を強力に進めるから付き合った?中国包囲網の意味から台湾企業を助けたい?いずれにしてもこれ自体で経済成長を狙えるような投資ではないらしいことは察せられます。

韓国サムスンとの技術開発競争で世界最先端の生産技術を身に着け、米インテルやクァルコムなどを追い落としたTSMCとしては今更旧世代半導体工場の建設にメリットは乏しい訳で、その意味でソニーの合弁の申し出は渡りに船ですが、ソニー以外のユーザー企業、特に自動車メーカーの反応が鈍いことに不満があるようです。ただでさえ100年に1度の大変革期と言われ先が読めない業界事情がある中で、24年の生産開始時点での需要動向も不明な中での判断ですから、自動車メーカーへリスク分散を求めるのは尤もな話ですが、自動車メーカーは東南アジアのデルタ株感染拡大による部品工場の操業停止もあり、今はそれどころじゃないってことなんでしょう。

つまり日本企業のガラパゴス化が鮮明になった訳です。電機産業の凋落ぶりはもちろんですが、トップのトヨタを含めて強い筈の自動車産業にも陰りが見えます。そしてトヨタトップの豊田彰男自工会会長が吠えました。

豊田章男会長「敵は炭素、内燃機関ではない」 自工会で:日経クロステック
CASEの時代の自動車産業の未来に対する展望がこれ?脱炭素で電動化は避けて通れない変化ですし、欧米でハイブリッド車が電動車から除外されていることへの苛立ちもあるのでしょうし、内燃機関のアナログなチューニングの技術が自動車メーカーのコアコンピタンス故に簡単に捨てられなものわかります。しかし下請けの雇用問題を質に取って正当化はいただけません。加えてオリンピック選手村内の自動運転EVの事故責任の否定もどうでしょう。「信号があるべき交差点で無かった」ことを言い訳にするんじゃCASE時代を担うメーカーとしての自覚が疑われます。

CASE by MaaSで指摘しましたが、繋がる、自動化、共有、電動化の頭文字を表すCASEは相互に関連してまして、クルマがネットに繋がりソフトのバージョンアップが行われ現在位置や目的地への経路を自動選択するというデジタルな技術革新との相性から言えばアナログな内燃機関動力は相性が悪く電動車に優位性がある訳です。しかもシェアリングを視野に入れれば個人で購入する意味すらも失われ、生産台数は4割減という観測もあります。

つまりクルマを売るという従来のビジネスモデルが否定され、モビリティサービスを提供することが求められる訳です。日本でも住宅地や観光地で試行が始まったMaaSに近づく訳です。そのことは裾野市の工場跡地でウーブンシティ開発を計画するトヨタも理解している筈ですが、どこか唯我独尊と言いますか、独りよがり感が拭えないところがあります。実際地元の裾野市は困惑しています。言い換えれば工業化社会の常識だったプロダクトアウトの発想から抜けられずマーケットインの発想が乏しい訳です。MaaSは公共交通の弱点と言えるラストマイル輸送の改善とシームレス輸送というコンセプトが明確です。実際JR東日本、東急、京浜急行電鉄などで取り組みが進んでいます。これはバッテリー製造過程でのCO2排出問題でも量的に影響が軽減されるという面もあります。

但し言うは易しで自動化にしてもセンサーの性能や通信の遅延縮小など技術的課題はいろいろありますし、ネットに繋がればセキュリティの強化も欠かせません。逆に言えば自動車でもスマホ並みに高微細半導体が必要になる可能性は高い訳で、3年後に生産開始する半導体工場で作る半導体に自動車メーカーとしてのコミットメントを示せないとすると、日本の自動車工業の未来はガラパゴスまっしぐらに見えてしまいます。そんな工場に政府は補助金大盤振舞いしようというんですから、政府が助けた電機産業の凋落を自動車産業が後追いする「いつか来た道」に見えます。

ただ半導体自体は今後とも需要拡大は続くでしょうから、国内に生産工場を誘致することそのものは無駄とは言い切れませんが、3年後生産開始の半導体工場で旧世代半導体を作るってのは戦略不在としか言いようがありません。加えて言えばシリコンやゲルマニウムなどの半導体材料や還元剤に使われるマグネシウムなど中国産のシェアが高い状況からすると、米中摩擦が続く限り半導体供給に制約がかかる可能性があります。そうなると新素材の開発など研究開発を強化した方が遠回りのようで最適解になる可能性もあります。実際太陽光パネル原料がウイグル産80%とも言われ、パネル製造が滞っているという現実もあります。

自動車メーカーが内燃機関を捨てても、風力発電など新たな機械工業の分野は拓けるし、内燃機関に拘るなら寒冷地向けコ・ジェネレーションシステムなど活用できるニッチな分野を開拓という方向性もあります。大手が手掛けにくい小規模なニッチ市場は寧ろ中小企業が取り組み易いと考えられます。ってことで半導体工場を誘致して砂を噛む未来は望ましいものかどうか?

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Sunday, October 10, 2021

コロぶナ日本

コロナの新規感染者数が減少に転じ、緊急事態宣言も解除されましたが、病床使用率も重症者数も高水準にあり、また冬に向かって感染再拡大の心配もあり、警戒は続けざるを得ません。そんな中で総裁選で述べたコロナ対策を早期に実現するなら、予算委員会開いて補正予算と関連法を通せば良さそうなものを、首班指名と代表質問が終わったら解散総選挙で、しかも投開票日を最大限前倒しして10?31だそうで、選挙結果如何に拘わらず事後の招集される国会でまた首班指名と代表質問を繰り返す訳で、コロナ対策はいつまでも実現できません。

メディアの政局報道では支持率が高い裡にとか言われますが、支持率は50%程度と低く、しかも株価まで下げて岸田ショックと言われる始末。それでもコロナの新規感染者数が減少に転じた今が選挙のチャンスという訳ですね。どこまでも自分たちの都合で動く自公政権です。当然こうした中で体制が整わないうちに開催されるCOP26への備えは穴だらけということで、さてどんな批判を浴びるでしょうか?

100年に2度の目標が対策しなければ4℃上昇のところをせめて2℃という妥協の産物という点は前エントリーでも触れましたが、正確には既に現時点で産業革命前から1℃の温度上昇が実現している訳で、許容範囲はあと1℃ということです。同時に1℃の上昇でも既に異常気象が日常的に観測され、旱魃や風水害の被害が顕在化している訳で、2℃目標の達成でも厳しい現実は変わらないし、まして4℃、IPOOの最新のシミュレーションによる4.4℃上昇がいかに地獄かは想像を絶します。しかしそれに直面するのは20歳未満の若者たちということで、その意味でグレタさんの怒りは正当なものです。大人たちはどうすべきか真剣に考える必要があります。

真鍋氏「研究、ただ心から楽しんだ」 米大で記者会見:日本経済新聞
ノーベル物理学賞を受賞した真鍋氏がただ好奇心から没頭した研究が気候モデルの数理解析で、現在のIPCCの議論の下敷きになっておりますが、氏曰く「コンピューターを使いたいだけ使え、好きな研究ができた」と日米の研究環境の違いに言及する一方「私にとってはノーベル平和賞」と述べ、気候変動で苦しむ人々の救済を訴えています。ただ好奇心から始まった研究で大きな政治的影響力をもたらしたことへの率直な感想です。

研究者の海外流出は昔からあった訳で真鍋氏の場合協調性を求められる日本の学界が苦手だったようですが、更に政府による科研費の圧縮で研究者は研究費の確保に煩わされてますます研究環境を悪化させている訳です。しかも「役に立つ研究」が重視され好奇心に基づく基礎研究はないがしろにされております。これ例えば水俣病を告発した医師が村八分に遭ったように「役に立つ」の中身は結局マネタイズ可能かどうかにある訳で、その意味では真鍋氏のような研究は歓迎されないという点では今も昔も変わらないのかもしれませんね。人文科学軽視も同じ文脈です。

というかコロナ禍でのオリパラ開催強行に見られるように、そもそも科学軽視なのかもしれません。この夏の感染拡大を見ると明らかにオリパラ開催期間に新規感染者数も病床使用率も上昇しており、無関係と強弁されてますがおかしな話です。スポーツ関連ではこんなニュースも。

F1日本GP、2年連続で中止 関係者入国確実にならず:日本経済新聞
欧州中心に開催されるF1サーカスですが、豪、シンガポールなど欧州以外の開催地は軒並みコロナ禍の影響を受けて中止が相次ぎます。入国後2週間の自主待機となると殆どにチームは日本に来れないということですね。厳格な検疫を重視するならオリパラは開催すべきではなかったってことです。五輪は良くて四輪はアウトというヨタも囁かれましたが^_^;。そして地震です。
地震で日暮里・舎人ライナー脱輪 女性2人が転倒し軽傷:日本経済新聞
水平の案内輪で左右の誘導板に沿って走行するAGTで脱線?という疑問は報道写真で解けました。ポイント部で起きたものですが、標準AGTでは四輪操舵でポイントは分岐部の案内板を少しだけ動かして先頭部の案内輪を誘導してセルフステアリングする仕組みなので、ポイント部に誘導板のない区間が存在します。この事故では舎人公園駅の出発側で副本線からの合流があり、地震発生を受けて地上職員による非常停止ボタン押下で急停止した結果、たまたま先頭車がポイント部にあって走行路を外れたということのようですね。

これは同時にドライバレスのAGTだから起きた事故ということも言えます。急停止のタイミングが悪かったと言えばそれまでですが、通常の鉄道ならば運転士の判断で安全に停止させることは可能ですが、ドライバレスだとそれがないってことです。自動ウン転エントリーの続きの議論になりますが、鉄道におけるドライバレスの実現のハードルは高いってことです。

そしてゴムタイヤ走行のAGTの脱線は同時に低速域でゴムタイヤ走行する超電導リニアの問題にも波及します。垂直方向の支持輪と水平方向の案内輪の組み合わせとなる原理はAGTと変わりませんが,U字型ガイドウエーに収まるリニアでは同様の脱線はないものの、浮上走行を前提に支持輪も案内輪も浮上走行時には折り畳んで収納される仕組みです。地震による緊急停止時に電力供給が止められフラップによる空力ブレーキで減速し収納していた支持輪案内輪を出して着地する仕組みです、高速走行からの着地ですからそれ自体大きな衝撃を受ける可能性があり場合によっては破損も有り得るでしょうし、支持輪案内輪が出てこないで直接着地もあり得ます。その場合に備えて鉄製のローラーがついていますが、相当大きな衝撃があるでしょう。そう考えると活断層だらけの危険地帯を走るリニアは正直乗りたくないですね。そしてオマケ。

消毒用アルコールを検知 JR西日本、ロッカーで漏れる:日本経済新聞
JR東海は運転士の体調不良でも列車を停めなかったけど、JR西日本は乗務予定の運転士と車掌のアルコール検知で一部運休の判断をしました。結果は消毒用アルコールの誤検知だった訳ですが、安全側に判断したJR西日本の対応は褒められるべきでしょう。

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