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Sunday, June 29, 2008

自動車メーカーの脱クルマ戦略

前の記事に関連しますが、国内自動車市場の縮小に直面する自動車メーカーの話題です。

20世紀はザックリ言って自動車の世紀という言い方が可能でしょう。自動車は工業化社会の象徴ですし、特に20世紀初頭、T型フォードのオートメーション生産がもたらしたイノベーションは、以後の100年を規定するほどの大きな意味がありました。

それまで自動車は町工場で馬車職人の手作りという形で作られていたもので、馬の代わりに内燃機関で動力を得て走らせるということで、馬車の構造を引きずっておりました。オーナーは馬車のキャビンに似た屋根付後部座席に乗車し、御者代わりのドライバー席は屋根なしの雨ざらしということで、オーナードライバー中心の現在のクルマ社会とは違います。それがT型フォードの生産と市場投入で変わったわけです。

気難しい職人に仕事をしてもらうには、報酬を弾むしかないですから、そもそも専属ドライバーを雇える富裕層しか自動車は変えなかったわけですが、それをオートメーション生産で、複数の単能工によるライン生産に切り替えた結果、生産性を高めて価格を劇的に下げる価格革命が可能になったわけです。加えて工場で働く単能工には、いわゆる単純労働ながら相場より高めの賃金を渡すことで、フォードは自社の商品の最初の購買者を育てることにも成功します。実はこれこそが大衆消費社会を切り拓く端緒となったのです。

それを横目に、この仕組みをより効率化しようという動きが現れました。アルフレッド・スローン率いるゼネラルモーターズ(GM)の革新的ビジネスモデルが登場します。町工場中心の前期工業化社会では、所詮家内工業の域を出なかったのですが、生産と管理を分離し、事業に必要な資金調達、売れる商品を生み出すマーケティング、工場の工程管理など、直接生産に携わらない多くの専門家を組織して、多数の傘下工場を稼動させ、規模の経済を追及するというものです。その結果、馬車スタイルが抜け切らない無骨やT型フォードと一線を画す、薄板をプレス加工してフェンダー一体型の滑らかなボディを与えたスタイリッシュな自動車を次々と生み出し、自動車を大衆消費財にしたのでした。

巧みなのは、古くなった工場の生産設備の交換に合わせて、ボディスタイルを見直し、旧モデルを陳腐に見せて買い替えを促す、いわゆるモデルチェンジを行って業績を高め、かくして世界一の自動車メーカーの地保を固め、以後世界に君臨しました。

こうして、常に大衆受けする新しい車が生み出され、市場が刺激され、自動車がリーディングインダストリーとなってアメリカは繁栄し、そればかりか、その見かけ上の豊かさは、世界に憧れをばら撒きました。大衆消費財としての自動車は、頻繁な買い替えが前提ですから、必ずしも高品質である必要はなく、適度に壊れてくれた方が、結果的に買い替えが促進されますし、買い手のユーザーはオーナードライバーであることにステイタスを感じてますから、故障などのトラブルはむしろ地位にあるものの悩みとして受け入れてくれます。かくして最強のビジネスモデルが完成することとなります。

しかしこのビジネスモデルは、石油や鉄などの資源を際限なく浪費することになりますので、アメリカ1国だけであれば成り立つかもしれませんが、他の地域へ拡大すれば、たちどころに資源制約が世界を襲うことになります。70年代のオイルショックは、石油輸出国による価格カルテルの試みだったのですが、日本などで省エネの取組みを誘発し、結果的には不発に終わります。しかし同時に、日本や欧州で資源浪費的でトラブルの多い自動車の燃費改善と品質向上の取組みが始まり、メーカー間の競争環境もあって、自動車は燃費性能を改善し、品質も向上し、故障の確率は劇的に下がりました。そしてアメリカのメーカーはその流れに乗れず、手っ取り早く利益を稼げる車しか作らなくなります。

フォードマスタングは、売れ行きの悪かったコンパクトカー「ファルコン」のシャーシにスポーティなボディを与えただけのチープな車でしたが、若者が飛びつき大ヒットしました。これに味を占めた米自動車メーカーは、その後もライトトラックのシャーシにオフロードカーに似せたボディを与えたSUV、同じくトラックシャーシに大柄のバンボディを与えて、大勢乗れる、たくさん積めるミニバンを開発し、大いに稼いだのです。しかし好事魔多し、すぐさま日欧メーカーの後追いに遭います。

トヨタセリカ、日産シルビア、ホンダプレリュードなどのスペシャルティカーが、量販車のコンポーネントで作られ、同じくSUVも量販車ベースでオフロードカーに似せたなんちゃってオフローダーに、量販車ベースで大柄なバンボディを与えたなんちゃってミニバンなど、ベースが乗用車だけに、トラックベースの米メーカー車とは素性が違いますから、ユーザーは日欧メーカー車に群がります。と同時に日欧メーカーも実は袋小路にはまります。

ユーザーを飽きさせないための新しいクルマの提案が相次いだ結果、かえってユーザーを飽きさせてしまったフシがあります。加えて昨今の原油価格上昇、鉄鋼価格上昇で、メーカーも値上げせざるを得ない状況で消費マインドを冷やします。また皮肉なことに品質向上が極限に達し、故障しなくなったことで、買い替えにブレーキがかかります。

さらに90年代から始まった非正規雇用の拡大、2002年春闘のベアゼロで正規社員も収入が伸びず、ユーザーの購買力を奪います。国内市場は冷え込むばかりです。おそらく簡単には抜け出せないでしょう。しかしこういった逆境こそ、逆転の発想で乗り切るチャンスでもあります。そんな中でのこんなニュースです。

JR北海道のDMV開発、トヨタ・日野が参加
青森県内レンタカー6社、新青森駅に共同基地 新幹線開業時に
まずはDMVからですが、以前の記事でも取り上げました。ベース車は日産シビリアンなんですが、この車、主要コンポーネントをいすゞから調達し、日産車体で組み立てて、日産系、いすゞ系ディーラーへシビリアン/ジャーニーとして供給されているという成り立ちです。特徴としてラダーフレームにキャブオーバーのボデイを架装したフロントエンジン・リアドライブ(FR)レイアウトで、構造単純で軽量、堅牢であるがゆえに、重量物である鉄車輪を装備してレール上を走行可能になります。

しかし昨今のディーゼル排ガス規制や安全装備などで重量が増え、そのためにDMV試作車では乗車定員を減らして総重量を道路運送法の規制値に収める必要があります。それに対してJR北海道は日産に共同開発を申し入れますが、成り立ちの特異性もあり、数が売れる保証もないDMVの開発には慎重姿勢でした。

それに対してトヨタが日野と共同で開発に協力することになったのです。トヨタは世界一の量販バスであるコースターをラインナップしているものの、小型バスでは珍しいモノコック構造で、そのままでは鉄車輪の装備は不可能です。そこで日野のトラックシャーシの活用を考えたものと思いますが、数が読めないニッチな市場へアプローチするトヨタの苦悩が見えます。軽量化で25人以上の乗車定員確保が開発目標となりますが、開発段階で相当数のバックオーダーを得なければ難しいだけに、トヨタの取組みは注目されます。

東北新幹線新青森駅にレンタカー基地というのも、なかなか興味深いニュースです。なにしろ新青森駅は市街地から3km以上離れた郊外の低層住居地域で、市街地とのアクセスに課題がある上、駅前の開発にも制約があるわけですから、そこへレンタカー基地を設けることで、利便性を確保しようということです。同時にやはり、メーカーのニッチ市場攻略という側面もあります。

というわけで、ここまでしないとクルマが売れない日本のメーカーの苦悩は続きます。

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趣味的脱クルマ社会論

更新が滞っておりますが、いまいちノレなかったことを白状いたします。夏風邪で体調不良だったこともありますが、何より6/14の2つのニュースに諸行無常を感じてしまいました。言うまでもなく、1つは副都心線開業であり、もう1つは岩手・宮城内陸地震です。

前者では新線開業で鉄道ファンが集まったようすがニュース映像で流される一方、後者の被害の悲惨さは対照的です。何しろ山が形を変えるほど大きな地すべり等が起きたのですから凄いんですが、それ以上にショックなのは、過疎地だから意外にも人的被害は多くないということです。また公的に把握された被害総額も少ないということで、激甚災害指定されなかったというのも驚きです。ま、被害が少なかったのは良いことではあるんですが、それで済ませられない問題があります。

前置きが長くなりましたが、駒の湯温泉で岸由一郎氏が亡くなられたことにショックを受けております。直接面識はないんですが、鉄道趣味界期待の若手ということで注目しておりました。ご冥福をお祈り申し上げます。

報道によれば、廃止されたくりはら田園鉄道の遺構を利用した地域興しイベントの打ち合わせで現地を訪れ、駒の湯温泉に投宿中に被災したそうで、無念です。またイベントに期待を寄せた地元の人たちも、イベントどころじゃなくなってしまいました。激甚災害指定もなく、国の支援も限られる中で、復興しなければならないのですから、運命を恨みたくもなるところです。国のスタンスは中山間地を切り捨てるに等しいわけです。

日本では直下型地震はどこでも起こり得ることを図らずも示してしまいました。緊急地震速報が流れたとはいえ、震源の浅い直下型地震では、P波とS波の伝播速度の違いを利用し、P波を検知して速報を流す仕組み自体に限界を抱えております。また雨期で地盤が水分を多く含んでいたことが、大規模な地すべりにつながったとの見方もあります。林業の衰退で山林が荒れていたことも影響している可能性があります。つまるところ、かつて生産の場であった中山間地が、産業構造の変化の中で見捨てられた結果、被害を大きくした可能性はあります。その意味で大都市の地下鉄新線開業のニュースの対極にある場所の災害といえます。というわけで、モヤモヤした気分が抜けなかったわけです。

都市への集積自体は、経済合理性に基づくことですが、東京のような大都市になると、むしろ集積の不経済が目に付きます。例えばヒートアイランド現象ですが、熱源が増えることで局地的に大気の対流による熱交換がうまくいかなくなるのですが、屋上緑地化や開発事業者への緑化義務を課すなどしておりますが、問題は集積による熱源の集中ですから、付け焼刃の対策では解決しません。工場など製造拠点が多いわけではない東京の熱源というのは、電力消費に由来するものです。高校物理で習う熱力学第1法則(エネルギー保存の法則)で明らかですが、電力の消費は電気エネルギーを熱エネルギーに変換する過程と整理できます。また人工的に秩序付けられたエネルギー(電力)を無秩序なエネルギー(熱)に変換するわけですから、熱力学第2法則(エントロピー増大法則)でも説明できます。大気の対流で可能な排熱水準を超えた熱を放出しているわけです。解決するには開発の抑制が必要です。

厄介なのは、このこと自体はいわゆる地球温暖化とは別のメカニズムなんですが、局地的な熱の蓄積は空調で熱交換を行っても、排出された熱は循環せずに地域に留まりますから、空調を運転した分だけ電力消費が増える、イコール熱量が増加するということで、変化を順方向へ加速させるポジティブフィードバックが働いてしまいます。その結果電力消費が増大すれば、化石燃料消費を通じてCO2を排出し、温暖化を進めることにもなります。

ほかにも地価の上昇や道路の渋滞などの弊害も指摘されます。前者は土地の利用度が高まった結果でもあるわけですが、そのために絶えず再開発して高層化を進めるとなると、常に重機、建機が動いている状況となるわけです。重機や建機もCO2を排出しており、しかも都市としての定常的なエネルギー消費と別枠ですから、開発行為が盛んであるということは、それだけ温暖化を進めてしまうということにもなります。クールビズで可能な温暖化防止なんて知れてます。

ガソリン税暫定税率問題で注目された道路特定財源ですが、東京のような大都市の場合、地価の上昇で道路建設単価も高騰しますから、渋滞していても直ちに道路整備ができないわけですが、それでも都は道路整備を進めようとしています。なぜならば都市計画法や建築基準法などの法令で、開発用地の接道義務が課されていることによります。道路に接しない土地は開発行為ができません。また道路幅員によって容積率が決まり、日陰規制などその他の規制にも影響しますから、低層建築の多い地域ほど道路を通さないと再開発できないということで道路整備が止まらないのですが、それで高層建築がされると集積度が高まって道路に車が増えるという悪循環から抜けられず、気がつけば開発業者だけが潤っているという状況をどう考えるか、このあたりを真剣に考えるべきときなんでしょう。オリンピックなんてやってる場合じゃないんです。

それでは道路をやめて鉄道へシフトすればよいかというと、例えば副都心線ですが、明治通りの拡幅が困難な中、混雑緩和への期待がされますが、東京のように稠密な鉄道ネットワークが形成されたところで、そのネットワークが強化されると、その分集積度が高まって人口集中が起きてしまうので、結局混雑をいくらか緩和はするけれど、解消には至らないということになります。単純なモーダルシフト論には落とし穴があるわけです。

結局のところ大都市圏以外の場所は次第に過疎化が進み、防災上必要な山林の手入れすらできなくなるというわけです。本当はこういった地域へてこ入れが重要なんですが、それには無力かもしれないけれど、廃止された鉄道を地域興しの核に据えようとすることには意味があります。というのも、趣味の世界に変化が見られるからです。

以前西武鉄道の名義株問題が発覚し、オーナーの堤義明会長が逮捕され、会長を辞任、西武グループ自体も上場廃止から再編され、再上場を目指しているところですが、堤義明が鉄ちゃんだったらといような記事を書いたことがあります。ま、たわ言ですが^_^;、堤家の使用人意識が抜けない社員の啓発と団結を狙ってスマイルトレインプロジェクトが実行され、事務職の女子社員まで動員されて30000系で結実しました。後藤社長の狙いは、社員の自立ということで、鉄道事業者として天の声を待つのではなく自前の判断で事業を進められることを重視したものです。成果は定かではありませんが、間違いなく社員のモチベーションを高める効果は期待できます。

ある意味仕事が趣味的になってきたともいえるわけですが、元々社会インフラである鉄道を趣味対象とするのは、欧米では普通に見られますし、鉄道発祥国イギリスでは、貴族が気前良く寄付金を出し、ボランティアメンバーが運営する公共保存鉄道が存在するなど、文化と称して良いレベルにあります。日本はというと、つい最近まで「鉄ヲタ=暗い、ウザい、ダサい」といった印象が強かったのですが、最近は若い女性が新線初乗りやレア物追っかけすることも珍しくなくなり、社会的には定着した感があります。元々社会インフラである鉄道は、個人では所有できず、自由に操作することも叶わないわけですから、どんなに高くてもお金出せば買えるクルマとは違うわけで、そんなものを趣味の対称にするというのは相当な変わり者と見られていたわけです。それが変わってきているわけですね。

といううわけで、副都心線に鉄ちゃんが群がるのは、趣味として社会的に認知された証しと見れば、冒頭のモヤモヤした気分もいくらか晴れる気がします。

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Thursday, June 05, 2008

山手線ホームドア設置、安全を阻む混雑

JR東日本から、山手線29駅へのホームドア設置が発表されました。

山手線への可動式ホーム柵の導入について(PDF)
3月に発表された「グループ経営ビジョン2020-挑む-」について(PDF)の中で、「導入に取り組む」とされていた安全対策の具体化です。新聞報道でも日本経済新聞5/12付で記事があります。
山手線全駅にホーム柵、転落防止へ17年までに
混雑線区への導入ゆえ、円滑な工事や運行遅れなどの課題もあります。

とりあえず目黒、恵比寿両駅で先行導入するもので、2008年度からホーム構造改良工事を行い、可動柵の基礎を構築し、その後可動柵を設置し、2010年度から稼動させて3年間の検証期間を経て、13年から本格整備し、17年度までに終わらせる予定ということです。かなり慎重な姿勢ですね。

可動柵自体は既に地下鉄や私鉄の一部線区で導入されておりますが、後付した都営三田線や東京メトロ丸の内線などでは、駅停車時間が伸び気味で、ダイヤ維持に苦労があるようです。開業時からホームドアを採用した東京メトロ南北線も含め、客扱い時間は延びる傾向があるようです。

それゆえ、危険性を指摘されながらホームドアや可動柵の設置は進まなかったのですが、広域に路線のあるJRの場合、人身事故でどこかの線区が止まることが結構頻繁に起きている状況に背中を押されての取組みとなったようです。前記の南北線では、元々混雑の程度が少ないと見積もられていたことが、ホームドア設置を決断させたわけですが、客扱い時間の伸びを踏まえて最高速を他線よりも速い80km/hに設定するなどして、トータルな運行時間を圧縮する努力はされております。その一方で可動柵を後付した三田線や丸の内線では苦労があるわけです。

それでもワンマン運行が可能になり、混雑時に駅員をホームに立たせて安全監視するなどの人海戦術を取っていた部分の省力化にはなるわけですから、ホームの基礎工事や柵の設置で初期投資も決して少なくないながら、メリットもあるわけです。

ただホームドアにせよ可動柵にせよ、車両のドア位置が揃っていることが前提となりますので、定員制優等列車が走ったり、他社線との直通運転が行われていたりする場合、現実的には導入は難しいわけです。そこで他線との直通がない山手線で導入というわけです。しかし田端~田町間の京浜東北線の併走区間では、非常時に京浜東北線の電車が走る可能性があるという理由で、現在7,10号車に組み込まれている6扉車は全て4扉車へ取替えられるということです(目黒、恵比寿駅での検証期間中は該当号車部分の可動柵未設置で対応)。これで自動的に京浜東北製への6扉車導入の目はなくなったわけですね。ただし衝突安全を考慮したE233系先頭車のドア位置のずれにどう対応するのかは不明です。

というわけで、実施計画は発表されたものの、まだまだ課題山積の状況ですが、ホームへの駅員配置による安全監視という人海戦術での安全対策というのも、今後は人員の確保も難しくなりますから、この面でも成果は期待できます。

あとは他線区への波及があるかどうかですが、これは難しそうです。ドア位置が揃っていなければ難しいので、中央快速線や中電各線は難しいでしょう。また山手線は保安装置がATCなので、TASC(定位置停止装置)を付加することで対応可能ですが、一段減速が可能でも、あくまでも運転士の操作のバックアップが目的であるATS-Pで同等の停止位置精度を持たせるのは難しいでしょう。TASCでは±350mm以内の設定ですが、ATS-Pの前提となる運転士のブレーキ操作の場合は±1,000mmとアバウトです。これでも試験合格水準であることは電車の運転―運転士が語る鉄道のしくみ (中公新書 1948)にもあるとおりです。

より簡便な方法としては、転落すると危険な車両の連結部のみをカバーする簡易柵の設置などの方法は考えられます。既に一部私鉄のターミナル駅では実績がありますが、元々過走余裕がなく進入速度が低いから可能なのかもしれません。なかなか決め手は見つかりません。そもそもホームが混雑するから柵などで防護する必要が出てくるのですが、その混雑が安全対策の最大の阻害要因というところに悩みがあるわけですね。

とはいえ安全対策をできない理由を並べても仕方ないわけで、とりあえず可能なところからでも取り組むことは重要です。丁度こんな報道がされました。

福知山線脱線事故、JR西役員ら書類送検へ 業過致死傷容疑
当ブログでは以前からJR西日本幹部を訴追すべきだと申し上げてまいりましたが、捜査当局が一歩を踏み出したことは評価したいと思います。と共に、今後鉄道事業者の安全輸送への圧力は増すものと考えられますので、逃げずに答えを模索して欲しいところです。

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Sunday, May 11, 2008

設備投資を加速させる京王電鉄

京王電鉄の2008年度経営計画が発表されました。

オフィシャルサイトのプレスリリース(PDF)
冒頭の基本方針に
「住んでもらえる、選んでもらえる沿線」を目指し、
「鉄道事業の安全性の向上」と「沿線価値向上への取組み」に
注力してまいります。
とあります。鉄道事業への投資額549億円(対前年20%増)、うち安全性向上には433億円(対前年14%増)ということで、これは2010年に予告されている調布市内連続立体化事業にあわせてATC導入と所属車両省エネ化(VVVF化)を加速させるものです。

具体的には相模原線のATC地上設備の設置を完了させ、車両改造を進めるほか、京王線60両井の頭線25両の車両代替と在来車改造を含めて117両のVVVFインバータ制御車を登場させることになります。そのほか地下駅の火災対策強化や駅のバリアフリー対応工事を進めるとしております。

車両面では85両の新造というのが目立ちます。京王線の60両は9000系30番台10連6本と考えられ、これで10連14本が揃いますので、都営線直通運用を9000系だけで賄える数がそろいます。当然6000系は代替廃車が進むことになります。5扉車や2連など、一部残る可能性はありますが、JR常磐緩行線203系と双璧の窓のバタつく電車の過去帳入りは近いですね。そういえばJR東日本も本年からE233系2000番台による置換えが始まりますね。

名車の誉れ高い5000系の後継車でありながら、京王新線の呪縛でコストダウンを余儀なくされた粗製乱造車の6000系ですが、それだけに時代を映す車だったといえます。この苦境があればこそ、バブルに踊らず線増ではなく長編成化で混雑緩和に取り組み、大手私鉄随一の財務体質を獲得したわけですから、感慨深いものがあります。かつて冷房化に抵抗し続けた^_^;2010系などの"グリーン車"と蔑称された旧型車の途をなぞるようですが、"アイボリー車"とでも呼べばよいでしょうか。

一方の井の頭線でも1000系の久々の増備となりますが、これでやはり昼間に関しては完全に1000系で統一でき、3000系はラッシュ専用となりそうです。ここでも"グリーン車"現象^_^;が進みます。同時に3000系でも増備の都度改良が重ねられてきた歴史に倣えば、どんな仕様で登場するかも注目です。京王線9000系が日車ブロック工法で小田急3000系京成新3000系と一派を築いていますが、1000系のすそ絞りスタイルは対応できない可能性があります。となると小田急の千代田線直通車に倣って東急車輛製のツーシート工法へのシフトも考えられ、"走ルンです京王"^_^;が登場するかもしれませんね。注目です。

あと関連事業では、京王電鉄の新たな沿線活性化策で取り上げましたが、移住・住みかえ支援機構(JTI)を活用した、沿線の高齢者を都心の賃貸マンションに誘導し、持ち家を子育て若年世代へ賃貸することで、沿線の若年人口増加への取組みを進めるほか、学生マンションや企業向け独身寮事業などで、一味違った沿線活性化策が謳われております。計画書にはありませんが、高幡不動駅前の子育て支援マンションの成果も興味深いですね。

人口減少で、鉄道事業を核として沿線開発で不動産部門で利益を得る従来型の私鉄経営のビジネスモデルが行き詰まりを見せる中、いち早く次の時代を睨んだ事業を展開しているわけで、その成果が注目されます。

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Saturday, May 03, 2008

楢山節考―老いの矜持

楢山節考といえば深沢七郎の名作小説ですが、既に絶版となって手に入りにくくなってます。高齢化の進む現在、老いを正面から捉えた稀有な作品だけに、復刻を期待したいところです。

厳しい山村の口減らしの掟である楢山へ行くことを心待ちにするおりん婆さんという設定が秀逸です。にもかかわらず年老いてなお歯が丈夫なことを気に病んでいるおりんさん、自ら歯をへし折って、血を流しながら歓喜する場面が作品の基本モチーフです。老いは誰しも抗えないけれど、自然にそれを受け入れ、運命として楢山へ赴くというテーマは、泣かせるほど現代的です。もちろん掟の冷徹さは微塵もゆるぎなく、楢山への道行きで抵抗した隣のじさまが実の倅に谷底へ突き落とされるシーンが最後にくるなど、なかなか巧みな構成です。

今ならば老人虐待と捉えられるべきことですが、近代以前ならばありえたのではないかと思わせる自然さこそがこの小説の味わいです。ポストモダンの始祖にして構造主義の泰斗レヴィ=ストロースがパンセ・ソバージュ(野生の知性)で明らかにした禁忌(タブー)の構造が感じられます。若い人にこそ読んで欲しいですね。

それとともに、老いを生きて死に至る人生の終局をいかに生きるべきか考えさせられます。掟に従って楢山へ赴こうとするおりんさんの何といきいきとしたことか。老醜をさらさず、子や孫の幸せを願って別れを告げる潔さは、私のような若輩者でもかくありたいと思わせます。

察しの良い方ならおわかりでしょうけど、今回は政局を揺さぶる後期高齢者医療制度について考えます。医療の問題というのは、やや複雑なんですが、この制度のスジの悪さはひどいですね。あまりにつっこみどころ満載で、どこから手をつけてよいものやらわかりませんが、目的は高齢化による医療費の増大を抑制することのようですから、まさしく楢山節考の舞台の山村の掟と同じ口減らしが狙いです。ターゲットは団塊世代ということですね。日本は近代以前であったか-_-;。

日本の医療保険制度ですが、被用者向けの組合健保に政府管掌健保、自治体管掌の国民健保と3本立てで、特に組合健保は職域のさまざまな単位でそれぞれ独自に管掌されていて料率が異なるなど、年金同様つぎはぎだらけの制度ですが、結果的に医療への安定的な支出を支えることで、医療があまねく国民に共有され、医療費の対GDP比でも先進国中最も少ない良好なパフォーマンスを示しており、民間の医療保険中心で負担力のある高額所得者による医療サービスの独占で、医療費が高騰しているアメリカでも、日本の制度を参考に皆保険制度へ移行しようという試みが繰り返されております。ヒラリー・クリントンが大統領夫人時代に実現しようとして頓挫したことが知られております。彼女が大統領の地位に執念を燃やすのは、このときのリベンジだといわれております。

ただ問題もありまして、特に組合健保は、母体となる職域の事業体の事情によって料率が異なるのですが、団塊世代が若かった時代は、掛け金が多くて使う高齢者が少数でしたから、低い掛け金で済んでいたわけです。このあたり厚生年金と似てますが、厚生年金はあくまでも政府が保険者として管掌する制度ですから、職域基盤の弱い中小企業でも、基本的に同じ制度が適用されていたのに対し、健康保険では大企業等が自社の福利厚生の一環として有利な条件で運用してきたこともあり、中小企業中心の政府管掌健保は、料率面で不利でしたし、農業者や自営業者中心の国民健保では、自治体住民の年齢構成や財政力に左右されるため、地方ほど厳しい現実があります。逆に若年人口の厚い大都市圏では、独自に高額医療費の助成制度などを制定し、医療費の負担感は低かったのです。

こういった背景がありますから、診療報酬として保険金を受け取る医療サイドも大都市圏ほど厚みのあるサービス体制となり、近年の過疎化で地方の病院は、経営的にも苦境にあります。いわゆる医療崩壊が徐々に進行しているわけです。

本来ならば、命に直結する公的医療保険制度こそ、公平性を最大限担保すべきですし、また保険である以上、加入者数が多いほど、分母が大きいほど、料率面で有利になるわけですから、国が管掌して1本に統合することで無駄を省く余地はあるはずですが、実際に国が打ち出したのは、別建ての保険制度とするというもので、明らかに逆行しております。やはり上記の通り口減らしだったわけでしょう。

しかも悪質だと思うのは、対象となる高齢者の多くが加入していると思われる国民健保が市町村単位であるのに対して、新制度は都道府県単位の広域連合が保険者として管掌するという形になっている点です。市町村では負担が大きくなる場合があるからと説明されてますが、それならば都道府県にやらせても良いはずなのに、広域連合という新たな行政組織をこの制度のためだけに立ち上げたのですから、これでは国、県、市町村の三重行政どころか四重行政になって無駄を重ねることになります。当然保険者として独自に保険事務費を負担しなければならないわけですから、どう転んでも制度全体としては負担増にしかなりません

そしてやはりというか、一時7~8割の高齢者は負担が軽くなると複数の政府与党関係者が口にしていたのに、突っ込まれると「実は調査しておりません」ですから呆れます。何かこれ、失われた年金記録問題に通じますが「3月までに突き合わせを完全実施して全てを明らかにします」といって、その3月にいい加減な報告を上げて「まだ終わったわけではないので、引き続き努力します」といって、無為に時間と費用を浪費してますが、今回も「あらゆるケースを精査します」といって時間稼ぎに精出して、そのうち国民が諦めるか忘れるかしてくれるだろうという意図見え見えで、厚生労働省という役所はよくよく腐ったところです(怒)。

元々公的医療保険制度というのは、保険なんですから、「保険料払って使わないのは損」という考え方は成り立ちません。使わないに越したことはないけれど、万が一のときに医療サービスを受けられるためには、安定した医療支出が支えになるわけです。傷病リスクは誰しもあるわけですが、実際に病気や怪我をした者の自己責任ということにすると、金持ちしか医療サービスを受けられず、結果的に社会的ニーズが顕在化しないために、医療の希少化でアメリカのように医療費が高騰してしまうわけです。それを広く薄く国民全体で支えることで負担感が減り規模の経済も働きますから国民皆保険の意味はその辺にあるわけです。

また医療の特徴として、技術革新によってより高度な検査や医療が可能になるわけですが、それは同時に常に研究開発投資と設備投資が続くわけで、この部分が肥大化することは避けられないところです。医療費の高騰は高齢化のせいではなく、医療分野の技術革新の成せる業であるわけです。おかげで結核や癌なども不治の病ではなくなり、人々はより長く生きられるわけですから、高齢化はむしろその成果でもあるわけです。同時に医療従事者にとっても、以前より初期投資が増えて参入障壁が高くなっているし、一方で医療現場は複雑になる一方ですから、医療事故や訴訟リスクも負うことになりますので、それが結果的に医師をしてリスク回避のスタンスを取らせますので、需要に応じた医療サービスを受けることを難しくしております。

そういった意味で医療保険制度が曲がり角にきていることは間違いありませんが、制度の一本化や医療機関同士の連携や後発薬の活用による負担減など、まだまだほかにやるべきことは山のようにあります。ただしこの辺は利害を持つ既得権益者がいるところでもあり、改革するには相応に血を流さなければならないでしょうから、国は安易な道を選んだんだと思います。誤魔化されないようにしなければいけませんね。

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Wednesday, April 30, 2008

道路は続くよ何処までも

道路特定財源の暫定税率復活がが衆議院の再可決で決まりました。政府与党としては予定通りなんでしょうけど、直前の衆院山口補選での大敗北もなんのその、政権にしがみつく執念だけは凄まじいですね。この問題は度々取り上げてまいりましたし、国鉄改革との比較でも取り上げました。いわゆる道路公団改革の結果として、それまで料金収入と借入金だけしか財源のなかった高速道路の整備に道路特定財源が投入できるようになったいわゆる焼け太り問題も指摘させていただきました。ことほど左様に改革を標榜しながらその実内容はむしろ後退しているケースは、郵政民営化と軌を一にします。

ガソリン値下げはうたかたの夢に終わったわけですが、昨今の行動経済学の実証研究で、人は同額の利益と損失を蒙ったときに、損失の方が利益より2~2.5倍大きく感じるというのがあります。いわゆる損失回避バイアスと呼ばれるものですが、ガソリン税が元に戻ったことで2.6兆円の税収を取り戻したと政府が考えるならば、とんでもないことです。国内消費で5兆円超のマイナスインパクトを受けたのと同じということです。当然経済は停滞し、税収も不足します。ま、そもそも20兆円に及ぶ赤字国債の発行が決まっているなかで、2.6兆円の未来への付回しをするなというのは、どう見てもブラックジョークです。

ま、元々私はこれ以上道路は造るなと申し上げてきたわけです。実際洞爺湖サミットで地球温暖化問題をテーマとしたい意向があるようですが、道路を作って必要以上に生活空間を間延びさせることの弊害を真剣に考えるべきですね。昨今欧州から始まった鉄道復権の動きは、まさに温暖化防止に対する欧州の真剣さの表われなのですが、鉄道の通らない洞爺湖町でサミットという時点で、日本の本気度が疑われます。ちなみに、以前から鉄道ネタが多い週刊東洋経済の4/19号で鉄道革命が特集されてます。鉄道の今をコンパクトにまとめられており、おススメです。購入はこちらから。

実際には人口密度の低い欧州での鉄道復権は、平坦な途ではなく、公的助成なしには成り立たないのが鉄道事業の常識でした。しかし欧州の鉄道政策は、オープンアクセスを原則とする過激なもので、鉄道線路保有者に列車運行を希望する事業者の参入を妨げてはならないというもので、いわゆる上下分離原則なんですが、これによって各国鉄道が国境を越えた列車設定を行ったり、独カールスルーエのように都市交通事業者へ線路を開放するとか、ドイツ鉄道(DB)がとりわけ熱心な国際貨物列車などにより活性化されてます。そして人口密度の高いアジアへの売り込みも熱心ですが、国内事業の厳しさゆえに国外での事業機会を求め、規模の利益を追求しているわけです。台湾新幹線をフルターンキー(一括受注)ではないからやだ、と投げ出した某社の空気の読めてなさ加減が知れます。


翻って日本ですが、鉄道活性化は事業者ベースでの取り組みに留まり、整備新幹線のように将来展望の定かでない事業に拘泥するなど、欧州に後れを取っていることを認めざるを得ません。アジアが今後の鉄道プロジェクトの中心となりそうですが、事業規模からいってフルターンキーでの受注は難しく、本来台湾での欧州システムとのすり合わせの経験は貴重なものの筈ですが、あっさり捨ててしまいました。あれこれあった台湾高速鉄道ですが、ベトナムやインドなどアジア地域の先行事例としてコンサルタントとして台湾高鉄が名乗りをあげようという気運もあるようです。

あと税収不足で予算を執行できないと騒いだ自治体ですが、当ブログで地方独自課税にも言及しましたが、それと同等のことを発言したのは東京都の石原知事だけという体たらくです。地方の首長の本気度はこんなもんです。

後期高齢者医療問題もあって、当分解散もできない福田政権ですが、つまるところ政治の空白だけは今後とも続くわけで,JAPAiN(日本の苦痛)ならぬJAPAM(日本のジャンクメール)と言われかねない状況は続きます。

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Sunday, April 13, 2008

未来へ翔る新型スカイライナー

N'EXの車両更新を取り上げた以上、こちらも取り上げないとバランスが悪いですね。E259系がが2009年登場ですから、ある意味2010年の成田空港新アクセス完成によるニュースカイライナーを迎え撃つためということも言えます。両者は現状でも棲み分けられてはいるのですが、スカイライナーのてこ入れで、勢力図が変わる可能性は十分あります。

まずは現状ですが、JR東の253系は、3連及び6連合計111両で30分ヘッド、スカイライナーはAE100形8連7本でピーク時30分ヘッドですから、JRは新宿や横浜など広域に運行して集客しているのに対し、京成スカイライナーはひたすら上野、日暮里と成田空港を往復するだけですので、半分以下の車両数で対応できているわけです。編成定員も400名超でその意味で意外と生産性は高いかもしれません。ただしターミナル立地の劣勢は拭えず、JRやリムジンバスの後塵を拝する結果となっています。

一方で京成グループとしては、ちはら線を直営化した後、北総線が悩みの種でした。千葉ニュータウン計画自体、北総線のほか、千葉県営鉄道北千葉線(仮称)、成田新幹線を通し、それをテコに大規模開発を目論んでいたのですが、北千葉線については結局県営鉄道としては実現せず、北総と重複しない小室以東の区間が紆余曲折を経て京成の子会社である千葉ニュータウン鉄道を第三種事業者とする北総鉄道の第二種事業区間として現在に至ります。またオイルショックを契機とする政府の総需要抑制策によって、建設が内示されていた成田新幹線は凍結され、2度と復活することはありませんでした。

千葉ニュータウンについては、誇大と思われる開発計画から逆算されたのでしょうけど、北総鉄道は初期投資が過大となり、それが運賃へ跳ね返って首都圏通勤鉄道の常識を超える高運賃ゆえに、沿線開発は一向に進まず、累積赤字を垂れ流す結果となりました。昨今ようやく沿線に大規模商業施設がオープンするなど、開発が徐々に進み、単年度で黒字を出すには至ったものの、累損一掃には程遠い状況です。一方で成田新幹線ですが、構想線は土屋(信)~成田空港間が成田空港高速鉄道としてJR成田線と京成線が乗り入れる形で実現し、東京~西船橋間は京葉線都心ルートとして実現しているのですが、千葉ニュータウンを通過する区間は当然実現しておりません。ですが都心から遠い成田空港の鉄道アクセスに利用しようという構想は度々浮かんでは消えしました。中には京葉線都心ルートで実現した区間と、着工の目途が立たない有楽町分岐線(亀有ルート)とをつなぎ、押上から京成線、高砂から北総線を通り、印旛松虫(仮称、現印旛日本医大)から成田新幹線ルートを通って成田空港へ至るものなどもありました。当然、京葉線都心ルートと成田空港高速鉄道が実現して、構想は消えたわけですが。

その意味で成田新幹線ルートを用いた成田空港アクセス鉄道のアイデア自体には、それほど新しい要素はないのですが、今回の北総ルート活用では、山手線上のターミナル(日暮里)から30分台という具体的な目標を掲げて練られた計画であるという点に新しさがあります。併せて北総線のてこ入れ策でもあるという点も見逃せません。
詳しくは新型スカイライナーwebサイトをご参照ください。またニュースリリース(PDF)もご参照ください。

現状と比べ、15分の時間短縮とピーク時20分ヘッド運行がアナウンスされてます。つまりは時間短縮と折り返し間合いの見直しで、現行の最大運用数で対応できるわけで、ここがキモです。つまり成田新幹線の落とし児である北総ルートを活用することで、生産性を劇的に高められるわけです。スピードアップによる集客増とともに、おそらく現行と同等の運賃料金でサービスレベルを高められるわけですね。加えて同じ北総ルートで一般車両によるアクセス列車を20分ヘッドで設定でき、既存の京成線ルートからも20分ヘッドで併せて1時間最大9本の列車設定が可能になるわけです。あと裏技ですが、第1.第2ターミナルの中間に位置する東成田駅を活用すれば、さらに上乗せが可能なわけですから、盆暮れ春秋連休などの需要期への対応力も高まるわけで、京成としては力が入りますね。実際新型スカイライナーは8連8本を投入予定ということで、おそらく高速運転で走行距離を稼いでしまうことから、検査予備を余分に見込んでいるものと思われます。

となると、あとの興味として一般車両によるアクセス列車がどういったものになるかですが、いわゆるエアポート快特が京成線内快速に格下げされ、佐倉止まりになるなど、成田―羽田連絡の実態を失っている状況ですが、北総ルートによる復活があるかどうか、興味は尽きません。ただし一般車両使用ですと、最高速160km/hというわけにはいかないでしょうから、成田―羽田間、直通1時間には程遠いといえます。それでもダイヤ上の制約は減ります。

いわゆるインフラ投資で、前の記事でも指摘しましたが、新線効果が長続きしない状況にあるわけですが、人口減少が始まっている以上、避けられない問題です。その一方で成田空港新アクセスのような事業では、既存ストックに付加価値をつけることができるわけで、今後のインフラ整備のあり方を示すものといえましょう。元々成田闘争という負の歴史を背負っている千葉県ですが、高度成長が去った今、改めて身近な資源を有効活用していく知恵が求められます。

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Saturday, April 05, 2008

つくばみらい市の憂鬱、新線効果の限界

東京圏の住宅地の下落率上位市区町村

(単位 : %)


1 2 3 4 5
市区町村 茨城県
利根町
茨城県
龍ヶ崎市
埼玉県
五霞町
茨城県
つくばみらい市
茨城県
境町
△5.9 △4.7 △3.8 △3.5 △3.2

国土交通省の公示地価に関する発表の中から、こんな表を発見いたしました。東京圏の住宅地の下落率上位市町村ワースト5中4つまでが茨城県という結果です。ま、外縁部から下落が始まるのは仕方ないところでしょうけど、その中で異彩を放つのが4位のつくばみらい市です。言うまでもなくつくばエクスプレス沿線です。

つくばエクスプレス沿線の他の自治体については、おおむね上昇しているようなので、つくばみらい市の数値は目立ちます。ま、前の記事でも指摘しましたが、そもそも公示地価そのものがフィクション性を含んでいるので、他の自治体でも下落が始まっている可能性は留保する必要があるかもしれませんが、断定は控えておきます。

しかし計測された標準地のワースト10ランキングを見ると、1~4,6,8位につくばみらい市の標準地がランクインしており、下落率の高さはそれ以前の地価水準が高かった可能性があります。つまり新線開業効果を織り込んで形成された相場が腰折れした可能性が高く、2005年8月の開業以来、順調に利用を延ばしているつくばエクスプレスですが、わずか2年半で足許ではこのような現象がおきているのですね。新線開業で住宅地の供給が増えた一方で、既に選別が始まっているわけです。

ここで気になるのが、先月末に開業した新線2路線です。日暮里・舎人ライナーと横浜市営地下鉄グリーンラインです。いずれも鉄道空白地を埋める形の新線で、しかも共に公営交通であるという点も共通です。前者はゆりかもめなどと同じニイガタトランシス製新交通システムであり、先日ハブ設計ミスが指摘されたばかりですが、その分メンテナンスコストを余分に見積もる必要はあります。横浜市営グリーンラインはリニアミニ地下鉄ですが、民営化検討委でも指摘された既存のブルーラインと異なった規格の新線としたことがどう出るか、悩ましいところです。

一応グリーンラインに関しては、リニアミニ地下鉄としたことで、事業費を200億円ほど圧縮されたようですが、元の計画が日吉で東急新東横線(仮称、現目黒線)との相互直通を構想していたわけですから、その元計画に対して200億円圧縮では、開業後の収支にほとんど影響しませんから、ブルーラインとの共通規格によるスケールメリットを考えると疑問が残ります。

とはいえ新線開業で人の流れが変われば、そこに商機は生まれるわけで、沿線への商業施設の進出などは活発化しており、港北ニュータウンにコーナンモールなど、地域活性化には寄与するにしても、それだけ競争激化するわけです。そうでなくても新横浜駅ビルオートモール・トレッサ横浜など近隣に商業施設の新設が相次ぎ、局地的にはオーバーストア気味なだけに、今後に課題は残ります。

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Thursday, March 27, 2008

東北縦貫線と公示地価の不況和音

東北縦貫線の工事日程が発表されました。

宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れ工事の着手について(PDF)
5月に着工し2013年度完成予定ということで、今年6月開業予定の東京メトロ副都心線共々、首都圏の鉄道ネットワークは充実します。それと密接に関連する再開発ブームも、新たな局面が見えてきました。そんな中で発表された公示地価ですが、見てみましょう。
08年の公示地価、2年連続上昇・全国伸び率、1.7%に拡大
違和感を持たれる方が多いと思うんですが、どう考えても、既に8月のサブプライムショックの影響で、明らかに地価は下落へとシフトして潮目が変わっているのですが、公示地価は2年連続上昇、かつ伸び率も高くなっているのです。いわゆる1物6価といわれる地価のフィクション性がかなり出た結果です。

国交省発表の公示地価と、都道府県発表の基準地価は、それぞれ毎年1/1(公示地価)と7/1(基準地価)時点の数値で、計測地点が異なるので、相互補完関係にあります。そしてこれらが、公共事業の用地買収費の基準となるわけです。それが実態を反映していないというのは、今に始まった話ではないんですが、特に都市部の公共事業における用地買収費の比率は高いわけですから、税で集めた資金が土地所有者へ配分される仕組みとして捉えると、実勢価格とのズレの意味は即富の配分を左右することになります。ぶっちゃけ富の東京一極集中が加速し、都内の土地の多くを所有する大企業を利することになります。

こんな観点から地価の推移を長期的に見ると、面白い傾向が見えます。

<図>地価はまだバブル前の水準
グラフは1974年の全国平均の地価水準を100とする指数ですが、商業地に関しては、バブル期はおろか1974年水準にも達していないという事実です。言うまでもなく東京都心などの地価水準は高止まりしているわけですから、それだけ地方の商業地の価格が下がっているということでもあります。シャッター通りの実態の反映ですね。

つまりは一部のブランド地域以外では、土地の収益性の低下に合わせて地価も下落しているわけです。そして大都市でもサブプライムショックで、主に不動産私募ファンドや上場REITに入っていた外資が売りに転じたもので、株と同じ構図です。同じ大企業でも、トヨタ効果が期待された名古屋駅前などは、むしろオフィス空室率が高くなって、早や地価下落傾向が見えております。名古屋浮揚にはリニヤだがや

冗談はさておきまして、土地の収益性が低下すれば地価が下がるのは株と同じで、つまるところ、一部を除いて日本の商業地の収益性がそれだけ下がってきたということでもあるわけです。今後人口減少とともに、この傾向は動かしがたいところです。

一方で住宅地は、商業地に比べれば基準年(1974年)の1.5倍強ですから、商業地ほどには下がっていないことになります。ま、それだけ大都市圏への人口集中が激しく、住宅地の地価を押し上げている側面はあろうかと思いますが、それ以上に、住宅地の場合は、特に日本のように持ち家が推奨される国では、国民の購買力を反映した水準になっているということはいえそうです。実はこの点に、日本経済の浮揚策が見えてきます。

日本の国民は、例えば20坪の土地いっぱいの建売で数千万円の省エネ住宅(ウサギ小屋とも言う^_^;)など相対的に高い住宅を購入しているのですが、その資金が住宅購入から開放されれば、他の分野の消費に回ることが期待できます。そして人口減少によって、将来需要される住宅は減りますから、既存の住宅ストックを活用することで、価格を押し下げることが可能になります。逆に購入する場合には、リセールバリューを意識せざるを得なくなるわけで、中古住宅に値段がついて、住宅ローンの担保割れなんてこともなくなります。住宅が実質資産となるわけで、この面でも消費マインドを高めます。その結果国内商業が活性化すれば、商業地の収益力が回復することになります。

結果的に日本のGDPが押し上げられます。先進国中最も個人消費が弱い日本ですが、ここを掘り起こすことができれば、年率数パーセントの経済成長も十分可能です。ま、そのためには年金や医療などの社会保障が充実して、安心して消費できる環境が必要なんですがね。

あと現状のサブプライムショックは、日本のバブル崩壊後の金融不安と同じように世界で信用収縮が起きているのですが、それによるアメリカの実体経済の減速は避けられないところです。そしてその影響は4月以降に来ると思われます。さらに欧州でもイギリスやスペインなどで土地バブルに崩壊の兆しが見えますので、欧州経済の変調も早ければ年内に始まるでしょう。それでも当面はBRICsなど新興国が牽引することで、急減速は避けられるでしょうが、影響は長期にわたると覚悟した方が良いですね。経済は時間差を以て波及するものです。いわば不況のカノン(輪唱)が始まるということか。

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Sunday, March 23, 2008

似て非なる道路と国鉄

まずはサイドバーでご紹介した国鉄最後のダイヤ改正―JRスタートへのドキュメントについてですが、特に貨物関連の記述が焦眉です。赤字の元凶として国鉄部内からの安楽死説が言われる中で、再建監理委でもまとめきれず、結局国鉄自身で民営化後の適切な事業規模から逆算して、貨物列車のトレインアワーを各地域へ割り振ることで、否応なくヤード系から直行系輸送システムへ移行させたことで、逆に貨物は存続できたわけです。

本州3社+3島会社+全国1社の貨物会社の7社体制という方針は決まっても、具体的な肉付けは国鉄再建監理委の手に余るものでしたので、当時の国鉄幹部による旅客会社の分割境界の設定や直通列車に関する取り決めその他、国鉄自身で決めざるを得なかったのです。また、実際に国鉄が回答を用意しなければ、役人に踏み込まれて現場が掻き回されるという危機感も共有されていたことが読み取れます。つまりは国鉄自身が変わらなければならないという思いを抱いていたわけで、国鉄改革が成果をあげ得たことはこの点に尽きるといえます。

それから20年、私たち国民の前に、道路公団と郵政の民営化の茶番を見せ付けられたのですが、いずれも国鉄改革とはかなり事情が違います。郵政に関しては、過去にも何度も取り上げておりますが、今回は道路問題について考えます。

改革続行の試金石は道路財源で指摘したとおり、道路財源問題は、元々小泉政権、安倍政権時代からの積み残しで、流れとしては、いわゆる道路公団民営化関連で、大赤字の本四公団の債務償還に道路特定財源を充てた結果、2007年度から道路特定財源に約7,000億円の余剰が出るので、それを一般財源化しようという話だったんですが、安倍政権時代に道路計画を積み増して、余剰金額を圧縮した上での形ばかりのものになりました。

その上、そもそも道路公団民営化の仕組みそのものにも、道路特定財源の使途拡大の仕組みが組み込まれております。元々道路公団が手がける高速道路は、料金収入と借入金で整備し、道路特定財源は一般道の整備に使われるものとして、全く別立てだったのですが、道路公団改革で、いわゆる新直轄方式と呼ばれる仕組みが導入されて、高速道路建設に道路特定財源を投入できる制度の道すじができたものです。

簡単に申し上げますと、道路公団改革では、高速道路の資産と負債は、(独法)日本高速道路保有・債務返済機構が管理し、各高速道路会社は、営業権を付与されて高速道路の料金収受やSA・PAのテナント料収入などのフローを得、機構にリース料を支払う存在となっております。つまり資産も負債も持たず、キャッシュフローの管理だけを行う機関を株式会社化したわけで、トップは旧公団や国交省の天下り役人ですから、何のことはありません、実態は高速道路利権の山分け機関に過ぎないのです。また上記の新直轄方式によって、従来は高規格自動車専用国道など、例外的な扱いだった直轄方式とは異なり、機構に道路特定財源を入れることで、高速道路整備を継続できる仕組みとなったわけです。

国鉄改革を見てきた私たちとしては、何か悪い夢を見ているような感じですが、JR発足当初に新幹線を新幹線保有機構が保有し、本州会社各社がリース料を支払って、それを機構が債務返済に充てるという上下分離の仕組みを取り入れたのですが、これは後にJR各社の発議によって、重要な事業用資産として直接管理すべきということで売却され、現在はJRの資産となり、対応する負債もJRへ移されました。その際に資産価格の査定を細工して、非償却部分への上乗せで2兆円ほどの鉄道整備基金の財源を確保し、整備新幹線その他の鉄道整備に国の支出分として拠出し、リース料で償還する仕組みが作られ、国鉄改革で宙に浮いていた整備新幹線の財源が確保されたわけですが、道路公団改革でとられた手法というのは、いわば新幹線の上下分離に別財源で整備新幹線の整備財源を投入できる仕組みとしたことになります。この仕組みを用いれば、道路特定財源を、抑制するはずだった高速道路整備にいくらでも回せるわけで、つまりは道路特定財源に余剰が出ればいくらでも箇所付けできてしまうわけです。

元々道路会社は資産も負債も持たず、料金収入などのフローの管理だけを担当するわけですから、公的な財源投入で作られる新路線はむしろ増収効果があるわけで、反対する理由もないし、また法令上も反対できない仕組みです。ほんとアントキノ猪瀬直樹のインチキぶりに腹が立ちます。かくして全国の知事から暫定税率廃止反対の大合唱となるわけです。

自前の資産で利益をあげて税などで社会へ還元するからこそ、民営化は意味があるわけですし、採算性を度外視した投資は、利益に貢献しない不良資産を抱え込み利益を食い潰すことになるからこそ、無駄な投資の抑制効果があるわけですが、道路公団改革にはそれがないどころか、従来なかった道路財源の投入を可能とすることによって、破滅的に無駄遣いにまい進することになるわけです。というわけで、JRが新幹線の資産買い取りをしたことは、民間企業として健全経営を維持する意味で重要だったこともまた再確認できます。

というわけで、多少の混乱は予想されますが、暫定税率の時間切れ廃止は、民主政治のコストと割り切ることで、国民的には容認できることといえるのではないでしょうか。

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Saturday, March 01, 2008

ゆりかもめのハブ損傷は設計ミス

2006年4月に起きました新交通ゆりかもめのハブ損傷事故で事故調の報告書が出ました。

新交通ゆりかもめ事故、金属疲労でハブが破断・事故調
報告書の要旨はこちらです。なお、48pに及ぶ調査報告書(PDF)に詳細が記されてますが、容量が大きいので直接リンクはいたしません。また、当ブログの記事は以下になります。
ゆりかもめ、手痛い週末全面運休
10年で経年劣化?ゆりかもめの苦悩
過去記事でも触れておりますが、10年で経年劣化というのは、そもそも公共交通システムとして問題ありですが、経年劣化による応力金属疲労を設計で考慮されていなかったということですから、設計ミスという評価になったわけですね。

ちょっと気になるのが、ゆりかもめのシステムは新潟鉄工の手になる点です。ご存じのとおり新潟鉄工は破綻し、輸送用機器事業を富士重工の鉄道車両製造事業と統合の上、新潟トランシスとして再生されたわけですが、これによって旧新潟鉄工と富士重工という、旧国鉄時代の気動車メーカー2社が合流した点に因果を感じます。

JR東日本顧問の山之内秀一郎氏の回顧録の中で、アルカディア号の火炎事故問題を取り上げておりまして、そもそもエンジンの設計が戦前の古いものだったことから、この事故をきっかけにエンジン換装が行われ、入札によってカミンズが採用されたのでした。寿命半分、値段半分、重さ半分の電車(いわゆる"走ルンです"シリーズ)の開発が、談合との決別を意図したものであったことを明らかにしてますが、気動車では前記2社の寡占状態だったことを考えると、破綻した新潟鉄工には、談合体質が染み付いていたといえるかもしれません。

新交通システムにしても、モノレール等のインフラ補助は、補助金事業として今話題の^_^;道路特定財源が充当されるという意味で、談合が日常化していると考えられますし、そういった中で、安全性が置き去りにされたのだとすると、何ともやりきれないものを感じます。今月30日には、同じシステムを採用した都営新交通日暮里舎人ライナーの開業が控えておりますが、ゆりかもめの事故を教訓として、安全運行を願ってやみません。

2/24には湘南モノレール西鎌倉駅のオーバーラン事故がありました。こちらは三菱電機製のシステムで、今まで大きなトラブルもなく運行しておりましたが、突然の不可解な事故で、間引き運転が続いております。こちらはブレーキトラブルということで、駅手前の下り急勾配が影響したのでしょうが、ゴムタイヤで粘着性能が高いことから急勾配を採用したことが仇になった可能性があります。

ま、湘南モノレールは純民間事業ですから直接関係はないんですが、湘南モノレールと同じシステムが千葉都市モノレールに採用されたことは知られております。純民間事業である湘南モノレールは収支好調ですが、千葉都市モノレールはいわゆる赤字三セクです。湘南モノレールはいわばショールームで、コストの一部を千葉につけ回すこともできてしまう状況というのもあるわけです。ま、この辺は憶測の域を出ませんが、補助金があるから自治体がモノレールや新交通システムの導入を考え、談合でシステムが決定するとすると、時間の長短はあるかもしれませんが、モノレールや新交通システムで不具合が発生する可能性は指摘しておきます。

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Saturday, February 23, 2008

川崎市、公共事業で外資から資金調達

連日サブプライム報道が続きますが、要するに米住宅バブルの崩壊で、一時的に信用収縮が起きているのであって、こういうときは、従来と異なった資金の流れを作り出すチャンスでもあります。そういう文脈で読むべきニュースです。

川崎市、外資系金融機関から初の直接資金調達
私自身は川崎市民ではありませんので、対象となっている事業の是非について論じる立場ではありませんが、記事によれば中原消防署に併設されるホテル施設ということで、いわゆる行政機関の資産の高度利用といったたぐいの事業ということで、単純なハコモノではないですね。場所がJR横須賀線駅設置が決まっている武蔵小杉駅の近くということで、マンション建設ラッシュに沸く地域ですし、昨年、首都圏で最も地価上昇が顕著だった地域ですから、行政機関といえども、バランス上土地の高度利用は考える必要があります。

一方で小泉政権時代の三位一体改革とやらで、国からの交付金や補助金が一方的に削られた地方自治体にとっては、ただでさえ地価上昇で資金手当が難しくなる地域での公共事業は、資金難で取り組みにくいという事情もあります。今、国会で審議されていて、当ブログでも度々取り上げた道路特定財源問題でも、地方はもうこれ以上補助金を削られたくない一心で反対しているのですが、そうやっていつまでも国に頼っているから、ますます国に足許を見られて自立できず、画に描いた餅の地方自治が続きます。そんな中で、自治体が民間資金を調達して事業を行うという発想がなぜ出てこないのかと思っていただけに、今回のニュースには注目したいと思います。

ついでですけど、道路特定財源の中でも、今、国民の関心は暫定税率の問題に集中しているかと思います。これも筋からいえば一旦は国民に返すべき税源であると思います。と同時に、国税の減税分というのは、地方で独自財源として比較的容易に課税できる税源でもあるわけです。本当に道路が必要ならば、具体的な整備計画を明示した上で、地方で課税することを考えるべきです。当然、地方によって税率はバラつくはずですから、足の投票という地方自治の大原則に照らして事業費の圧縮圧力が働くはずですので、国の減税分がそっくり地方で課税される事態にはならないはずで、このあたりに落としどころがありそうに思います。

思うに、日本の低金利政策が、本来は2003~2004年の大規模為替介入の援護射撃の意味合いがあったようで、当時の米財務次官のジョン・テーラー氏が回顧録で明らかにしてますが、米政府は日本の為替介入に市場重視の原則論から難色を示していたのですが、ドル買い介入資金の非不胎化(ドル買いに用いた円資金を中央銀行が事後的に吸収せずに市場に存置してマネーサプライを増やす政策)で量的緩和政策を後押しするという日本側の説明に渋々承諾したのですが、実際にこれで円/ドル相場は円安へ振れ、事実上の輸出企業への補助金としたことで、企業業績が回復して国民が貧乏になったことを指摘しておきます。この結果、小泉政権下で公共事業に頼らずに景気回復を実現できたわけです。コイズミノミクスの正体です。ちなみにテーラー氏の交渉相手だった当時の溝口財務官は、2007年の統一地方選挙で島根県知事に当選しております。ま、政権への協力の論功行賞なんでしょう。

しかしその結果、日本の外貨準備は100兆円にも及ぶ規模となり、さすがに追加的に為替介入するわけにもいかなくなりました。元々介入資金は政府保証短期債券を発行して集めた民間資金ですから、やりすぎると資金需要が逼迫して市場金利を押し上げる要因になりますので、円高傾向が見えてきても打つ手がない状況ということです。コイズミノミクスがコイズミジレンマを生んだわけです。しかもサブプライム問題で米国の実体経済が冷え込みそうな現状ですから、さすがに日銀は利上げに動けない上に、たった0.5%の金利水準では利下げも無意味、それどころか原油高でさすがに物価に上昇圧力がかかり始めて、デフレ退治を口実とした金融緩和にも動けないということで、こちらもジレンマです。逆に言えば日本の低金利政策は、国際的な裁定取引の結果、今までと逆に円高圧力となるわけで、このことが外資にとっては、低金利でも為替差益で埋め合わせできる環境が整ったということで、今回の川崎市の事例に結びついたのかもしれません。

ということで、国の補助金を当てにする地方にとっては、外資を利用できる可能性が高まったわけで、これをチャンスに国に頼らない財政運営に舵を切る自治体が出現することを願ってやみません。例えば整備新幹線の新規着工問題ですが、国の補助金を当てにするのではなく、外資を利用することで活路を開くことを考えて欲しいです。ドル安の影響を受けるアラブの王族に、リスクヘッジを説得すれば可能性は十分あると思うのですがいかがでしょうか。

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Saturday, February 09, 2008

NEXT N'EX E259系

久々の更新です。これほど更新頻度の低い当ブログですが、毎日コンスタントに500ヒットペースを維持しているのは、私自身驚いております。どうもはてブほかのオンラインブックマークに多数登録されているらしく、古いエントリーも満遍なく読まれているということで、完全保存版品質が要求されているというプレッシャーを感じます。というわけで、更新はなかなか億劫になります。以上言い訳でした^_^;。

というわけで、成田エクスプレス(N'EX)用253系の2009年秋の置換えがJR東日本から公式にリリースされました。当ブログとしては、速報性は追わずに、長期間購読に耐える視点の提供を心がけることにしたいと思います。

そもそも253系が登場した1991年ですが、前年の不動産融資総量規制の影響でバブル景気にかげりが見えていたものの、未だ好調な消費に支えられていた時代といえます。日経トレンディのヒット商品ランキングトップがカルピスウォーターですが、20位にN'EXがランクインしております。先発の京成スカイライナーより割高ながら、ゆったりした室内が好評という評価になっておりますが、JRにとっては国鉄時代を通じて未経験だった空港連絡輸送への参入だったわけで、マーケティングに腐心した跡が見られます。

ここでやや脱線しますが^_^;、連日報道されるいわゆるサブプライム問題ですが、本質は日本のバブル崩壊と同じで、アメリカの場合はNAFTA(北米自由貿易協定)の影響で、主にメキシコからの移民が増加していたわけですが、いわゆるヒスパニック系移民への持ち家推奨のために考え出されたのがサブプライムローンであり、当初は「移民にアメリカンドリームを」というキャッチフレーズで好意的に捉えられていたのですが、その結果として住宅ブームが起き、住宅価格が上昇を続けたのですが、ローンが滞り始めて、逆に担保差押えで主を失った中古住宅が大量に出て不動産市況が悪化し、それがさらに住宅の値下がりを助長し値上がりを想定した無理なローンの延滞を生み出す負のスパイラルになっているので、不動産融資総量規制後の日本とそっくりです。ただし事後の対応の素早さは全く異なります。また拡大EU27カ国で労働力移動規制が撤廃されたことにより、やはりイギリスやスペインで移民向け住宅を中心にバブルが発生しており、遠からずはじけると考えられます。

思えばバブル時代の日本は、ある意味世界のトップランナーだったわけですが、その自覚がないままにバブルを生成しはじけさせ、敗戦処理を先送りし続けた結果の失われた90年代だったのです。そのころアメリカから銀行の不良債権処理や内需拡大の矢の催促に辟易していた日本が、今度はそれ見たことかとばなりに、G7で日本の経験を語るというのですが、間違っちゃいけないのは、日本はバブル経済で世界をリードしながら、処理を誤って貧乏まっしぐらへ向かっているのであって、そんな日本の失敗は、欧米各国は既にわかっています。そしてサブプライムが対岸の火事であるはずの日本で、国内要因で景気後退が現実のものになりそうなのです。

当時のJR東日本にとって、成田空港鉄道アクセスを京成との単線並列によってシェアすることの意味は重かったと考えられます。なにしろ末端のバス連絡はあるものの、京成は成田開港以来の実績があるわけですし、JRにとっては根古屋信号場までの長い単線区間に2本の着発線という物理的制約を課されることでもあるわけですから、列車設定の自由度は遥かに見劣りする状況だったわけです。

その中で、単純に輸送力を考えれば、総武快速線列車の成田空港直通を中心に据える輸送計画が、最もオーソドックスな解だったでしょうし、おそらく国鉄が民営化されていなければ、そうなった可能性は高かったと考えられます。その意味でノンストップ運転の特急列車で尚且つ全車座席指定の完全定員制列車というN'EXのコンセプトは革新的なものでした。

またスカイライナー以上に手強いライバルとして、箱崎のTCATから頻発運転されるリムジンバスの存在もあります。上野起点のスカイライナーに対して、東京都心からのアクセスタイムで優位に立ち、運賃もスカイライナーの運賃料金よりも高額ながら、輸送実績では上回っていたわけですから、そこへ通勤輸送用の113系の快速で参入しても、場違い感があります。

また当時はまだバブルを引きずっていた時期ですし、そもそもバブルの前提として国際化の進捗で東京が国際金融都市になるという期待があったわけですから、国際線空港である成田の鉄道アクセスに求められるものは、国内の送り出しと海外からの入り込み双方共に、エグゼクティブクラスの利用者を想定することができるわけで、量の競争では実績のあるリムジンバスやスカイライナーに譲るとしても、客単価を高めて効率輸送に徹する路はありうるわけです。逆に列車設定に制約があるからこそ、また競合市場で棲み分けが可能であるからこそ、N'EXのような革新的なコンセプトが実現したと考えられますし、253系はそれを具現化したものと捉えることが可能です。

とはいえJRにとっては未知の分野であり、単純な東京と成田空港とのシャトル輸送だけで集客する自信も乏しく、ならばJRの路線網を活かして複数ターミナルからの集客をしようということになったと考えられます。そこで新宿と横浜から来た列車を品川で併合して東京を経て成田空港へ至るという運行形態が考えられ、また需要がつかみきれなかったから、3連単位で増結できるようにして、需要変動に対応しようという考え方をとったのでしょう。これが国鉄時代ならば特急型=ボンネットスタイルの高運転台という既成概念で難しかったと思われますし、当時保安装置にATCを採用していた横総線トンネル区間では、トンネルの規格は山岳トンネル準拠ながら、国鉄時代に自主規制で地下鉄並みの不燃化A-A基準準拠の縛りを課したために、全編成貫通とする必要があり、貫通ホロまで自動化した自動解結装置を装備することと相成りました。実際は鉄道事業法の下では鉄道車両構造規則でそこまでは規制されていなかったのですが、3連単位で多数ユニットの併結という運用の実態からすれば、中間ユニットの非常時の避難路確保の必要性は高かったので、これはこれで意味があったといえます。

で、置換え用のE259系ですが、イメージバースではJR北海道の789系に似ているように見えます。貫通路の有無までは不明ですが、6連基本で2編成併結ならば省略も可能でしょうから、特殊装備の253系に比べてコストダウン要因となります。またE233系のように電気機器や保安装置の二重化するということで、VVVF制御ながら4M2T編成となり、冗長性を持たせたものとなっています。両数も132両で253系111両を置き換えるわけですから、固定編成長の変更はあるものの、現在よりも余裕のある運用が可能になると考えられ、オフピーク時の集中保守作業により盆暮れや春秋連休の海外旅行ピーク時には、予備車まで動員してより広範囲に集客するということも考えられます。

一方退場する253系ですが、かなり特殊な造りの車両ですし、2002年登場の200番台を除けば走行距離も稼いでおり、車体にヤレが目立つこともありますので、このまま廃車となる公算が高いと考えられます。これも好調なN'EXゆえと考えれば、やはり稼いでナンボ、長期低落傾向のレガシー特急(笑)踊り子に普通電車より遅い185系を使い続ける悩みは深いですね。

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Saturday, January 26, 2008

リニアに下げてふり向けば東日本

しばらく株価動向が気になって、更新をサボっておりました^_^;。ま、やっと落ち着いて、ふり返る余裕も出てまいりましたが、個人的には、今まで手が出せなかった値嵩株を仕込むことができて満足しております。早速株価は戻して数パーセントのキャピタルゲインということで、株はやめられません^_^;。

てなこと言うと石が飛んできそうですが、最近の株価報道はどうもパニックを煽っているだけにしか見えません。ま、おかげで安値で拾えたから個人的には良いんですが^_^;、報道する側が意味を理解しているのだろうかという疑問がわきます。そんな中でこんなニュースです。

(1/24)仏銀大手ソシエテが1兆円の損失・不正取引、1人で7600億円
いわゆるサブプライム問題とは直接関係のない、銀行員個人の詐欺事件なんですが、その規模の大きさが目を引きます。当然、内部的に不正を見抜けなかった、あるいは当局も異常に気づかなかったなどの問題もあるんですが、むしろこれだけの損失を計上しながら、銀行がつぶれないことが驚きです。

サブプライム問題で連日さまざまな報道がされていて、特に米金融機関の巨額損失に驚かされますが、シティの2兆円超とかメリルの1兆円超などの損失を出しながら、日本の金融危機時に問題になった、銀行への公的資金注入の議論が聞こえないのはなぜかということを考えさせます。簡単に言ってしまえば、それだけの損失を出しても倒れないだけの資本の厚みがあるからなんですね。そしてそれゆえにバーゼル会議で決められた国際決済銀行(BIS)規制でも、銀行に対して自己資本比率規制を課しているわけです。

欧米銀は国際的な合従連衡の果てに自己資本の厚みを増していて、今回のサブプライムローン問題でも、リスクのある証券への投資ができた理由ですし、また厚い資本に対して十分なリターンを求められる立場でもあるからこそ、邦銀がほとんど手を出さなかったサブプライム関連の金融商品への投資へと向かわせたわけでもあります。つまるところ金融機関の利益の源泉はリスクテイクであるということを地でいっているだけの話です。逆にこの流れに乗れなかった邦銀の方が周回遅れなんですね。

で、実際に損失を確定させて危機を乗り切ろうとする動きが、米銀を中心に起きているわけですが、この課程でアブダビ投資庁やドバイ、シンガポール、ロシア、ノールウエーなどの政府系ファンド、いわゆる国富ファンド(SWF)の存在がクローズアップされました。昨年ハイリゲンダムサミットで懸念を共有されたはずのSWFに助けを求めるというあたりに、米銀のなりふり構わぬ姿勢が見えます。これは、金融機関にとって自己資本はとりもなおさず損失発生のときのバッファであるということが身にしみているからこそ、毀損した資本を早急に回復しようとするわけです。で、この辺に事業に対する覚悟のすごさがにじみ出ておりますね。

で、繰り返しになりますが、銀行にとって生命線ともいえる自己資本に関する国際ルールを、日本は邦銀の都合でたびたび捻じ曲げているのは、これまでも指摘してきたとおりですが、特にバーゼルIIで押し込んだ民間格付け機関による格付けを資産評価に反映させるルールは、国債などの債券保有の多い邦銀にとっては、自己資本を良く見せることができる、言葉を変えればお化粧を施せるルールということなんですが、それでも日本のメガバンクは、国際業務へなかなか復帰できないでいるわけで、当の銀行自身が、自らの実力をわきまえているということなのでしょう。にしてもいつまで膾を吹くつもりかい

で、日本では、銀行に限らず、生保や年金基金などのいわゆる機関投資家まで同じことをしていて、ここ数年株式を売り越して債券を買い越すということをしてきた結果、日本の株価を大きく下げたわけですが、それを救ったのが、海外の機関投資家たちです。いわゆる外国人投資家と呼ばれる彼らは、低リターンの国内債券には目もくれず、国内株式を買い続けてくれたおかげで、日本の株価は下支えされてきたわけですが、そのために奇妙なことが起きてしまったのです。最近の株価トレンドをドルベースで見ると、ニューヨークと東京の株式相場のトレンドがほぼピッタリ一致するのです。彼等はあくまでもドル建てて相場を見ていて、ニューヨークで買えない銘柄(ほとんど全ての日本株が該当)を分散投資の一環で購入していただけということです。ですからサブプライム問題のような信用不安が発生すると、当然のように保有株式を持ち換えるわけで、サブプライム問題にほとんどコミットしていないはずの日本株が揺さぶられる構図となるわけです。

で、奇妙なというのは、マクロに見て、国内投資家が主に内外の債券を保有する一方、海外勢は内外の株式を保有し、特にニューヨークと東京の株価が同じトレンドで動く状況下では、株価が上がれば上がるほど、マクロで見たネットのキャピタルゲインが海外へ流出するわけで、実は東京の株価上昇は国富の喪失でもあるという悩ましい状況にあります。こう考えると、株価が戻ってメデタシという報道はノーテンキです。

といっても、個別銘柄でいえば、こういった国際金融情勢に無関係に上げ下げがあるわけで、基本的には株価は企業業績の先行きを反映したものですから、特に内需関連となる陸運、特に鉄道株はそうなんですが、ここのところ大きく下げている銘柄がありますね。言うまでもなくJR東海です。例のリニア自力整備発表以来下げ止まりません。150万円に届くかという最高値をつけたことがあり、昨年だけでも120万円超あった高値水準も、リニア発表以来下げが続き、100万円を割って、90万円前後で推移するJR東日本に迫られております。元々JR本州各