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Sunday, October 04, 2026

プチボナパルトたち

「…世界史的事件と世界史的人物は二度現れる…一度は悲劇として、もう一度は衝撃として…」という冒頭の有名なセンテンスで始まるマルクスのルイ・ボナパルトのブリュメール18日*1を読む機会がありましt。ライン新聞所属のジャーナリストだったマルクスが、1848年2月革命でルイ・フィリップス王政をを打倒し第二共和政になって以降、12月の大統領選でナポレオンの甥を自称するルイ・ボナパルトが選出され、1851年12月のクーデターで皇帝に即位するまでを詳細に記した著作です。当時のフランスの政治状況を詳細に記してますが、当然21世紀の日本で翻訳で読むには細かすぎて伝わらない^_^;。しかし革命(王殺し)→混乱→独裁に至る政治の構造を炙り出してはいます。

古代ローマの共和制から帝政への移行、フランス革命後のナポレオンの皇帝即位、ロシア革命後のスターリンの独裁、ドイツのヴァイマール共和国時代のナチス台頭と枚挙に暇がありません。この構造はまたBrexitやトランプ現象、欧州の極右政党躍進など、今に至るも続きます。但しそれぞれのプロセスは固有の事情で出現の仕方も異なるのですが、ザックリまとめると民主主義による自由主義の抑圧という文脈は共通しています。この観点からするとバイデン大統領の民主主義復権*2とトランプの再選*3も同様ですし、日本の高市政権の総選挙大勝も同様にみることができます。所謂アンチリベラルの風潮には共通性があるということです。選挙で正しい選択をすれば世の中が良くなると言われますが、実際はそうならず、寧ろディープステートなどの陰謀論に絡めとられてしまうような、どうにもならなさこそが政治ということでもあります。

そんな中で幾つかニュースがあるのですが、インパクトの強さではこれでしょう*4。新任の梁農相が自民党支部会合での「支持しない首長の自治体の道路予算大幅カットした」という発言音声をめぐる週刊誌報道に答えたものです。発言の事実自体は認めたものの、1議員時代の政治活動だからという訳わからない理由ではぐらかしています。実際那須烏山市と那賀川町では予算が大きく削られており、梁氏は国交政務官を務めたことがあり、国交省にも顔が効くという意味で状況証拠はまっ黒ですが、与党からな「簗氏にそんな力はない」というよくわからない援護射撃があったりますが、予算カットの事実がある以上、仮に梁氏のせいではなくても有権者への脅しにはなります。憲法の全体の奉仕者の規定もどこ吹く風、内輪の席の自慢話というノリだったから本音がこぼれたといったところでしょう。小さなボナパルトといったところでしょう。

今の日本を見渡すとこの手のプチボナパルトが結構散見されます。例えば地方首長のパワハラで兵庫県の斎藤知事*5に続いて横浜市の山中市長も出直し選挙。但し対立候補は維新系で山下ふ頭カジノ復活狙いかも*6。横浜市民は究極の選択を迫られます。自治体関連では地味にこんなニュースもあります*7。国勢調査で人口水増ししていたということで富山市職員が刑事告発されました。これ統計法という法律に違反するという罪状なんですが、なんでそんなことをするかといえば人口が減れば国の交付金を減らされるという現実がある訳で、繰り返されていた節もあり、組織的な問題もありそうです。公判で明らかになるのを待ちましょう。加えて自治体に対する国の統制の弊害ということも言えます。

そして民間企業ではこんな話はゾロゾロ。ニデックの不正会計もそうですが、古くは東芝その他多数あります。加えて三菱電機や自動車メーカーの検査不正*8、鉄道業界でも輪軸データ不正ってのがありました*9。似た構図なのがトップ3人が辞任した中部電力の浜岡原発の検査不正です*10。データ改ざんは経営陣からのプレッシャーに応えようとするエンジニアの習性という側面もありますが*11。これ鉄道の輪軸データ不正に似てます。専門家は専門知ゆえに経営の要請に対して何とかしようとするということが指摘されてますが、結果的に期限を切っても結果を出せない検査部門に対して強いプレッシャーをかけてしまうことの有害性を指摘したものです。特に勝野会長は社長時代にカルテル事件でも当事者でした。

カルテルといえばリニア工事の談合事件が結審しました*12。談合事件といっても、当時のJR東海葛西会長の方針で予定価格が低く抑えられている中で大手ゼネコンが利益確保に動いた事件ですが*13、流れとしては長大トンネル工事関連で大成建設がJR東海と技術協議を先行して行っていたことで予定価格の大枠が決まり、入札には大勢建設、鹿島、大林組、清水建設の4社が応札しました。当然トンネル工事に予定価格枠が多めに配分された状態ですから、トンネル工事を得意とする大成と鹿島以外はメリットが少なく、大林組が東京工区を譲るから名古屋工区をくれといったやりとっりがあり、メリットの少ない大林組と清水建設が不満を持って仲間割れしたという流れです。その中で大成建設の担当部長の指示で作成された星取表と呼ばれる工区ごとの落札予定のexelワークシートが動かぬ証拠として提出され決定打になりました。構図としてはJR東海の葛西会長が大ボナパルトで大成建設の担当部長が小ボナパルトという関係ですが、造反によって発覚した訳です。但し罰せられたのは小ボナパルトだけですが。

最後の東武鉄道の新栃木駅構内の作業員死傷事故の続報です⊛14。当初指揮をとる予定だった作業員がいなからと、たまたま視察に来ていた非番の上司が指揮を執ることになったのですが、打ち合わせもないままに作業に入り、見張り員の列車接近の声掛けにも無反応で作業員を線路に入れたけど、怒られそうだからと見張り員はそれ以上の制止はしなかったというミスの連鎖で事故に至ったものです。ヒューマンエラーが重なった事故ですが、急遽指揮を執ることになった非番の上司はおそらく不機嫌だったのでしょう。現場のプチボナパルトとして文句を言わせない態度が招いた悲劇と言えましょう。こうしたプチボナパルトは日常的に結構見かけます。そしてまかり間違えば人命を失うということです。ってことで諸兄は現場できちんと物言えますか?

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Sunday, September 27, 2026

戦争と平和のアイコン

高市首相がまたやらかしてしまいました*1。旧敵国条項とは日本など連合国(=国連、英語イニシャルは共にUN)の敵国だった国の武力行使に対しては無条件に反撃できる加盟国の権利を国連憲章で規定したもので、同時に憲章で侵略戦争への対抗で国連軍が組成されたときには、その統制下で協力する義務も定められています。

故に唯一国連軍が組成された朝鮮戦争では、自衛隊がない時代に海上保安庁の掃海艇が派遣され、機雷掃海の任務にあたり、その過程で1名の戦死者を出しています。朝鮮戦争は同時に国連軍の主力として米軍が日本占領下の駐留米軍による軍事行動でもあったことから、GHQによる日本の国内治安維持の観点から自衛隊の前身の警察予備隊の立ち上げという形で再軍備という日本の占領政策のシフトを引き起こします。当然日本国憲法9条との齟齬が問われましたが、アメリカの占領政策の転換に抗うことはできませんでした。

てことで以下省略しますが、法的にはかなり捻じれたものではありますが、例えばベトナム戦争でアメリカの自衛隊派遣要請を9条を盾に断ったりして直接的な交戦に関わらなかったことなどが認められたことで、事実上の死文化が1995年に国連決議で確認され、中国も賛成しています。つまり条文は残っているけど法的な実効性はないという見解が国際的に共有されている訳です。削除手続きは面倒だけど実効性ないからいいじゃないかってことです。それをわざわざ蒸し返すとどうなるかといえば、メディアは戦後世代中心の世界へ向けてこの旧敵国条項の説明を丁寧に行う必要がありますから、世界に向かって大戦の敵国だったことを拡散することになります。アホです。

そして米中首脳会談ではあたかもそれを当てこするような両首脳の発言が報じられています。但しトランプの一部メディア排除の影響でアメリカのテレビ局の代表取材なしの状況ですから*2、専ら中国側の発表中心という点は割り引く必要はありますが、大戦を共に戦った仲間として連帯を表明しました*3。これに「いや当時日本と戦ったのは中華民国であって中華人民共和国は無関係」という突込みが見られますが、習氏は「中国人民」としか言っておらず、当時国共合作で抗日運動をしていた共産党も当事者ではあります。てことで高市首相の旧敵国条項削除発言は単に墓穴を掘っただけ。寧ろ中国に日本たたきの口実を与えています。アイコンとしてさえ不適切です*4。

日本国内では台風25号の豪雨被害でまたも千葉県に大きな被害が出ております。被害は多岐にわたりますが、印旛沼の堤防決壊でJR成田線と京成本線が止まりました*5。高架の成田スカイアクセス線は生きていましたが、北総台地を縦貫する同線はいわば上流部であり、その開発が裏目の可能性があります。どういうことかといえば、開発によってアスファルトやコンクリートで地面が被覆されると、雨水の土壌浸透が減ってその分が下水道へ流入し、短時間に水量を増やした結果、調整池としての印旛沼が破綻した可能性があります*6。また開発に伴う樹木の伐採も樹木の根による遮水効果を下げますから、その分下流への水流を増やします。元々地盤が強固で標高も高く災害に強い優良住宅地として開発されたはずの千葉ニュータウンが今データセンター開発が集中しているということを考えると、なんとも複雑な心境です。当然冷却水は下水道に流されます。

そして別の側面として、台地上の優良住宅地は開発が早かった分高齢化が進み、空き家も増えているという不都合な現実もあります。一方で不動産価格の上昇で値ごろ感のある住宅ということで、水害リスクの高いエリアの宅地開発が進んでいて、寧ろそうしたエリアの方が人口も増えているという恐ろしい現実もあります。これだけ豪雨被害が増えている中で、従来の開発行政の見直しが必要ではないかと思います。

あと千葉では内房線の土砂災害も深刻です*7。内房線では複数個所で土砂崩れで線路が埋まり、姉ケ崎~木更津間で運休が続きますが、深刻なのは復旧工事の手配が進まず、復旧に最低3か月かかるということです。これ災害と戦争*8で指摘したように結局復旧はロジスティクス能力によるし軍隊の強さを規定すると指摘しました。しかも東京の通勤圏の地域で、社会的な重要性の高い復旧作業が滞るってのはそのまま国力の低下を意味します。加えて道路も被災していることや、バス代行もバスが集まらず今日現在見通しが立たない状況で、これもロジスティクスの問題です。房総半島の高地も道路が寸断されてJR久留里線や小港鉄道も被災してますが、それも含めて復旧作業の長期化は避けられません。中国に喧嘩売ってる場合じゃないんだが。

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Sunday, September 20, 2026

物乞いのアイコン

インフレで縮む不思議の国*1の秘密を知りたいと願う今日この頃ですが、その前に日銀の利上げを取り上げます*2。一方インフレ率2%割ってるじゃないかという声もありますが、ガソリンやガス電気のエネルギー補助金で抑えこまれているだけ*3。中東情勢の悪化で原油価格は上昇基調にあり、しかもタンカー運賃や保険料その他の輸入コストも増えており*4、しかも金融商品に組み込まれており、当面下がる可能性は低いと言えます。高い石油を買い続ける結果、当然ながら貿易収支は悪化し為替を円安へ向かわせます。日銀の利上げが効かない訳です。焦った政府はアメリカをまねてレートチェックで介入を匂わせて一時的に円高に反転させますが*5、すぐに円安反転して連休を睨んで2度目まで*6。HONEBUTOやめないと休日も寛げない政府です。

てことで本題ですが、沖縄県知事選挙が終わり、新人の古謝氏が現職の玉城知事を破りました。選挙結果ついてはここでは論じませんが、玉城知事に対する誹謗中傷のSNS拡散が酷かったことは言われております*7。昨今多い誹謗中傷のSNS拡散ですが、元々選挙では出どころ不明の「紙爆弾」ともいわれる怪文書がばらまかれるのは昔からですが、ネット利用でコストが下がり拡散が容易になったことなどがあります。本来は公職選挙法で規制する必要はありますが、当選した側が成功体験を持つ限り、残念ながら議論は進まないでしょう。

それより例えばサナエトークン関連で総選挙で野党議員の中傷動画拡散で指摘しましたが*8、インフルエンサーは単にPV稼ぎ狙いでシノギを得ているのですが、反知性的で陰謀論拗らせた情弱ネトウヨが激しく反応するから効率良く稼げるだけです。脳の報酬系に作用してドーパミン分泌を促しますから、デマ拡散自体が娯楽化している訳です。同エントリーで指摘したマルクスの「ルンペンプロレタリアート」が形を変えたものとも言えます。

さて、そうした簡単に動員されてしまう精神貧者の物乞いたちに、ウケ狙いで犬笛を吹く某高橋洋一のようなインチキ経済学者を頼りに「責任ある背局財政」やってるわけですが、それで成長できるのかと言えばまず無理なんですけど、例えば新幹線輸出の連勝連敗で石破政権でトップセールスしたインド高速鉄道の信号システムが欧州式となって、E10系売込みに暗雲が漂うのは非対称な日米協調介入*9でも取り上げました。結局輸出は台湾高速鉄道の1例のみで、しかも増発用の増備車入札もすんなりいきませんでした。将来の車両更新は茨の道でしょう。

なぜ勝てないかといえば日本の新幹線システムの高コストにあります。これは東海道新幹線の圧倒的な成功体験が影響しています。戦災復興で経済成長が始まった日本の鉄道では、慢性的な輸送力不足で混雑が常態化していて、特に東海道本線の輸送ひっ迫は待ったなしの状況でした。そんな中で東海道本線の輸送力増強が検討されましたが、当時世界的には自動車と航空の発展の狭間で利用客を減らしていた鉄道は斜陽産業とさえみなされ、貨物と都市交通以外は厳しい状況でした。そんな中で欧州ではTrans Europa Express(TEE)と呼ばれる国際列車で主に対航空輸送に対応したものの劣勢でした。

その中でフランスでギア比を変えた特別仕様の電気機関車で331km/hの速度記録を樹立するということがあり、鉄道の高速化の余地があることが示されました。逆算すれば200km/h~250km/hレベルの営業速度の可能性が示されたとして検討がされましたが、結局欧州ではコスト面で厳しいということで当時の最高速列車の160km/hからのスピードアップは見送られました。しかし日本では道路事情から自動車の普及は阻まれ、航空輸送もアメリカの占領政策で航空機生産を禁止され、高価なアメリカの機材を輸入するしか方法がないから運賃も高くてとても使えない状況でした。故に当時の国鉄は鉄道のシェア維持の観点から標準軌別線による線増で200km/h~250㎞/h営業運転が検討されました。

当初は標準機新線で250km/hで東京~大阪2時間半を狙ったものの、1939年の東京オリンピック開催に間に合わせるためには確実性から200km/hで3時間と目標を敢えて下げて現実路線を模索します。同時に輸送力を持たせるために欧州標準の全副2.9mを3.4mとして横2+3列で座席数確保を狙ったのですが、これが特殊規格故の高コストの原因となります。折角の高速新線なのだから既存の固定観念にとらわれずに独自規格でやろうということになり、その結果のちにJR東日本の山形新幹線に始まる新在直通運転を困難にしました。

新幹線の発想の大本は戦前の弾丸列車計画があり、既に新丹奈トンネルや日本坂トンネルは着工され日本坂は貫通してとりあえず在来線用に供されてもいましたが、その弾丸列車計画に基づいた大型車体に合わせた特殊限界が制定され、在来線のそれとは互換性のないものになりました。そのため重心が高くなり300km/hレベルでは車体傾斜装置で補正する必要がありますし、在来線限界を採用していれば末端で在来線を改軌して直通するとか、中間駅を増やしてローカル列車と併用するといった柔軟な対応が可能だったわけで、だから東海道新幹線の成功を受けて全国新幹線網整備に進むにあたって全国新幹線網整備法(全幹法)でさらに高規格な260km/h対応となり線路中心間隔も4.2mから4.3mでインフラも東海道新幹線の盛土から高架橋とグレードアップされ、名古屋新幹線騒音訴訟敗訴で70dbの騒音規制も付けられとコストが膨らみます。

とはいえ東海道新幹線の営業的成功で欧州でも鉄道見直しの機運が高まり、在来線の整備で200km/h営業運転を実現します。但し条件の良いところだけのスピードアップですから、東海道新幹線ほどのインパクトはありません。しかし鉄道高速化の研究開発は活発になり、フランスでは専用ガイドウェーを空気浮上で走るアエロトランが試験線まで作られました。言ってみれば軌道式ホパークラフトでしょうか。しかしガスタービン動力で騒音が激しくとても実用できないし、鉄道のように連結して輸送力を持たせるのも困難と早々に撤退します。ドイツでは常電導電磁石吸引式磁気浮上鉄道が研究され、トランスラピートが開発されました。これなら連結運転も可能だし騒音も低いということで日本ではライセンスを利用したHSSTが開発されて愛知のリニモで実現し、中国では上海空港連絡輸送に供されたりしましたが、ドイツで試験車両の火災事故があり開発断念されました。日本でも浮上式鉄道として超電導リニアが開発されたのは周知のとおりです。

浮上式が研究されたのは、鉄車輪鉄レールの転がり摩擦で駆動される通常鉄道では300km/hあたりが限界ではないかという見方があったことによります。一方で通常鉄道の高速化も模索され、アメリカとフランスではガスタービン動力が試され、ユナイテッド・エアクラフト社がターボトレインを開発し、ニューヘブン鉄道とカナダ国鉄で採用されました。ニューヘブン鉄道は後にペンセントラル鉄道に吸収され、ペンセントラルの破綻でAMTRACに運行が引き継がれましたがやはり騒音問題がネックなのとメンテナンス問題もあったようです。

フランスはローカル用ディーゼル動車にガスタービンエンジンを搭載して200km/hを実現し、リージョナルな都市間輸送で使われました。更にアメリカとイランに輸出され営業に供されましたが、やはり騒音とメンテナンスに難点があり短命でした。フランスはさらに日本の新幹線に倣って高速新線建設を模索しますが、コストダウン狙いで非電化ガスタービン動力で初代TGV試験車を作ったりしましたが、やはり騒音とメンテナンスがネックとなり、AC50hz25kvの商用周波数電化に見直され、パリ近郊のDC1.5kv区間直通で2電源で実現します。都市部の路線新設はコストが嵩むし既存ターミナルが共用できるから新幹線より低コストで実現した訳です。イタリアやイギリスやドイツでもそれぞれ高速化が模索されましたが、ここでは省略します。ただ陸続きの欧州では国際列車で他国へ乗り入れるし、自国内だけでは市場が限られるから輸出も視野に入れた開発がされてます。

てことで東海道新幹線の成功がその後の新幹線の整備計画を縛り、高コストを解決できないまま輸出の道を断たれている訳です。どこかで見直して輸出を睨んだ汎用性を持たせることはできなかったのか?実際近郊列車用ですがClass395に始まる日立の鉄道カンパニーの活躍はあるものの、国内向けにはガラパゴスな日本の新幹線規格の車両を作っている訳ですが、規格が違い過ぎるので輸入車両の採用の可能性はほぼ皆無というぬるま湯につかっている訳です。しかも北陸新幹線の大阪延伸を巡って、低コストで実現可能な米原ルートは東海道新幹線と北陸新幹線の保安装置の違いなどで直通できないとか言っている訳です。それじゃコストは上がる一方で新幹線は伸びないということになります。東洋経済オンラインの記事でタイやオーストラリアの高速鉄道計画でも厳しいという展望を示しています*10。

だから整備新幹線の整備メニューを運輸省が示したフル規格、ミニ新幹線、スーパー特急の3方式も、公表されていないB/C比の算出基準が不透明で、結局速度の速いフル規格が数字が良くなることからどんどんフル規格に化けて、結果的に限られた予算を窮屈にしているとも言えます。そして金利上昇で整備計画自体が厳しい状況になりつつあります。ザックリ言えば金利上昇は分子の便益(B)の割引率控除と分母の費用(C)の利払い増という形で数値を悪化させます。故に与党で合意した小浜京都(桂川)ルートの実現可能性は限りなくゼロに向かうということです。そういったリアルを考えずにとにかく新幹線、それもフル規格でとなれば実現困難なのは致し方ないところ。それでも作れというのは高度成長期の太平洋ベルト地帯に倣って単なる地域のアイコンとしての新幹線を物乞いしているだけとも言えます。

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Sunday, September 13, 2026

インフレで縮む不思議の国

イラン情勢がとんでもないことになってます。ホルムズ海峡のう回路として整備されたパイプラインが攻撃を受けて稼働停止しました*1。ホルムズ海峡では相変わらずアメリカとイランの敵方タンカー攻撃が散発し、通過する船は僅かですが、サウジアラビアが半島横断のパイプラインでペルシャ湾から紅海に運び、イエメンのフーシ派がインド洋側出口のバベルマンデブ海峡を押さえていても、スエズ運河側から世界へ出荷できるルートが潰された形です。

その結果原油価格は上昇し、1バレル100ドルを超えました。中東原油のサプライチェーンが機能しないんですから当然こうなります。中東依存の強かった日本やアジア諸国には打撃です。「アメリカが原油売ってくれるから大丈夫」とはいかないのは、原油は精製して加工しないと使えいないけど、原油は産地によって品質が異なっていて、精製を行う製油所は産地に合わせたチューニングが行われていて、国内製油所はほぼ中東産の重質油対応で、しかも産油国や途上国にも製油所を整備して競争状態にある訳で、国内製油所は数を減らしていて尚且つ中東産原油に特化していて補助金で需要を上振れされたガソリンに対してナフサ由来の石油製品は不足を余儀なくされます。ナフサ騒動の顛末です。

またアメリカでは自国の原油備蓄を大幅に取り崩して日本や欧州への輸出に回した結果、特に軽油の不足が顕在化して1ガロン6ドルと売王。日本ではガソリンとともに補助金で価格調整されてますが、それがないアメリカでは輸送用トラックや大農場を支える納期が動かせないということで経済の混乱容認になっています。もはや第3次石油危機というべき深刻な事態です。それでもアメリカではAI投資を中心に民間投資が活発で経済は強く、雇用統計も良い数字が出ているしコアインフレ率も高く、ここへ来てFRBの今月の利上げ観測が出て起案した*2。今月は日銀も利上げが見込まれてますが、日米金利差は縮まらず年内追加利上げを迫られる展開になりそうです。まあこんな状況ですから投機筋も動きにくく、円キャリートレードの巻き戻しと見られる動きが出てます*3。ドル以外のユーロなど他通貨に対しても独歩高でしかも動きが膠着的なので、明らかに介入とは違った動きで投機筋が方向感を見失っています。

日銀の利上げに先んじてFRBが利上げすれば金利差は縮まらず円安は進むように見えますが、大きく異なるのはアメリカは投資拡大に伴う雇用拡大がインフレを招いている一方、日本はインフレ率も金利も下回っているものの、インフレ自体はより深刻なのに危機感が乏しいのが不思議です。4~6G付きのGDP改定値G年率1プラス1.4%と上方修正されましたが、最大の要因は輸入の減少で。更に国内消費支出減、住宅投資減、企業の設備投資減、公共投資減によって需要が減ったことの結果です。需要が弱いのは賃金がインフレに追いつかず、不動産価格の上昇と金利上昇で住宅は売れず、企業は国内の設備投資に及び腰で、公共投資も人件費と物件費の上昇で入札不調により執行が滞っているということで、ぶっちゃけインフレが経済を下押ししているのが実態です。しかも原油価格の上昇は先行きのインフレ期待を大きくしますし、例えば企業物価は7.6%上昇しており、これはナフサ不足が回り回ってきた結果で、今後小売価格への転嫁が進むことは避けられません*4。つまり曲がりなりにも経済が拡大基調にあるアメリカと、インフレ圧力で事実上縮小過程にある日本とな大違いというわけです。

ついでに欧州も見ておきますと、ECBはすでに利上げで先行し、さらに追加利上げも視野に入れています*5。通貨当局が「驚き」を口にするほどの経済世強さですが、欧州の場合は地政学リスクにさらされている状況から軍備増強が求められ、ドイツの再軍備も含めた財政支出の拡大があり、また域内に相応の軍事産業が立地していることから、民間設備投資も強いということですね。そして雇用確保でこんな動きもあります*6。但し軍事支出の増加は民生需要を圧迫しますから、長い目で見れば生活の圧迫要因ではありますが、生産能力が保全されているから軍事シフトも可能で、アメリカや日本と大きく異なります。その意味で財政規律重視を捨ててまで再軍備を決めたドイツで反移民の極右政党AfDの地方選での躍進に揺れるドイツですが、AfDの躍進は東部諸州に偏っていて、ドイツ統一後の経済格差是正がうまくいっていないことによる不満が移民に向いているもので、しかも親ロシア反EUという点から、統一前の東ドイツ回帰のメンタリティも働いている可能性があり、ウクライナのための軍備増強にも否定的です*7。一方自動車などの製造業は軒並み中国企業の輸出攻勢で不振でもあり、単純な再分配政策の強化も難しいところですが、そんな難題を抱えながら日本よりはマシに見えのはAfDの主張とは裏腹にEUの恩恵とも言えます。Brexit後のイギリスがそれを示します。

てことで先進国の中でインフレで経済が縮んでいるのはほぼ日本だけなんですが、HONEBUTOどころじゃないのに*8無意味な財政出動でベッセントに怒られ*9、それでも懲りない日本政府というか高市政権はホントどうしようもないところです。12兆円の成長投資枠もただ金額を積んだだけで具体策は無く,安易な企業の逆選択をもたらすだけです*10。それもこれもバブルの後始末の過剰債務に苦しめられた日本企業が投資を手控え債務を圧縮して内部留保をため込んだ結果、下手な投資をするより預金や資産運用で稼ぐほうが確実となって国内投資に及び腰になっている現状があります。

その結果目をつけられたのが都心のタワーマンションを頂点とする投資目的のマンション取得で、それを賃貸に出すならまだしも、実際は短期転売でキャピタルゲインを狙うものが多数あり、人が住んでいないと言われる晴海フラッグのような相場より安値で売り出された物件は、それが顕著に表れています。つまりマンションが投機対象となって住みたい希望者を遠ざけて都心の一等地に空き家が出現し、しかも徐々に増えている所謂都市のスプロール化が内部で起きている訳です。しかも徐々に郊外や地方にも広がっています。これ過疎地の民家の話ではなくて大都市部のマンションの話なんですが、個人では手が出ない高額物件が空き家だらけという状況は民間の再開発事業の限界を意味します。

その意味で気になるニュースがいくつかありますが、まずは民泊です。法改正で年間180日を上限とする民泊事業の自治体条例による規制が可能となり、早速新宿区や大田区で民泊を事実上禁止することになりました*11。民泊は法的には複雑で、旅館業法の簡易宿泊所の認可を受ける場合は営業日数その他の規制はありませんが、住居地域等では認可されません。住居地域向けには民泊法が適用になりますが、年間営業日180日の規制があります。しかしインバウンドの外国人などと住民とのトラブルが絶えず、自治体に追加規制を行う権限が与えられて早速新宿区と大田区で営業日0日の事実上の禁止となった訳です。個人や法人などで複数個所有している場合には固定資産税その他の保有コストを回収する手段になる訳ですが、そのトバッチリを住民が受けるのは問題なわけで、遅すぎる規制と言えます。

そしてJR東日本の社宅廃止のニュースです*12。社宅といっても国鉄時代に建てられた古い建物で、耐震基準も古いままで設備も老朽化して不人気で、入居率は半分程度ということで、社宅を廃止して首都圏中心に再開発の種地として活用するというものです。気になるのがマンション価格の上昇で再開発しても人が住まない街になる可能性もあり、本業の運輸業にどれだけ貢献できるかは微妙なところです。加えて今の出生率が続けばいずれ首都圏でも人口減少が現実化します。再開発がいつまでも打ち出の小槌であり続けられるかは微妙です。

関連して東京都のこの動きを取り上げます*13。国鉄時代の五方面作戦の積み残しの中央線三鷹~立川間の複々線化ですが、現状最混雑区間が中野~新宿間の上りで混雑率158%ですが、三鷹以西の複々線化では解決しない問題です。加えて言えば東京でも人口減少が始まれば混雑率は下がりますし、リモートワークも普及しているし、マンション価格高騰や民泊問題にもリンクしますが、スプロール化で都市構造が変わる可能性がある中で、実際常磐緩行線の我孫子~取手間は列車が走らなくなるなど需給の変化もあり、JR東日本がリスクを取ることはないでしょう。そもそも国鉄末期に複々線化計画を発表して都市計画決定を要請した時には知らんぷりでしたし。まあこれは国鉄が地方を下に見て東京都の都市計画を無視していた過去がありどっちもどっちではありますが、それ以上に東京都が株主で残る東京メトロには有楽町北進線(豊住線)や南北線品川延伸などの事業を押し付けてやらせたり、やはり支配権のある東京臨海高速鉄道に東京~有明間の湾岸地下鉄を作らせようとしたりと、相変わらずの再開発行政が続きますが、その弊害がマンション高騰や民泊問題などに表れています。そして皮肉なことに混雑率では都営交通の日暮里舎人ライナーの方が酷いという現実もあります。どこ見てんだよ小池。

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Saturday, September 05, 2026

AIの無知に耐える債券市場

愛の鞭というと家畜人ヤプー*1を連想するのですが、2000年後の宇宙帝国イースに連れ去られたクララと麟一郎の物語で、白人支配のイース社会に順応するクララと、人権を認められない知能を持った家畜として成長していく麟一郎が対照的に描かれています。そのおぞましさはオーウェルの1984やハックスリーのすばらしい新世界に引けを取らないディストピア小説ですが、正体不明の作者沼正三によれば「マゾヒズム小説で寧ろユートピア」だそうで、倒錯の極致です。早くから三島由紀夫、澁澤龍彦、奥野健男どに見いだされた作品ですが、AI時代の今読むと同じおぞましさを感じます。AIが拓く未来を喧伝される一方、現実はディストピアに向かっているように感じられる今の時代感覚に妙に共鳴してしまいます。

大規模言語モデル(LLM)で著しい進化を見せつけるAIですが、社会実装のイメージは未だ不透明です。事務仕事はほぼ代替されるといわれてますが、ハルシネーションでゴマカシをしたりしますし、仮にそれを克服できたとしてもそれだけなら単なる省力化で価値創造にはつながりません。故に現在進行中の大規模投資が妥当なものかどうかは不明です。寧ろ認知戦やAI兵器*2のように、情報攪乱や効率的な敵の殺傷や破壊と目的がはっきりしている軍事目的には使いやすいし、政府の財布が当てにできるから民間投資も呼び込んでいるというのが実態に近いところではないかという疑念があります。あと認知戦やサイバー攻撃など戦闘以外の使い方もあります。その観点から気になるニュースがこれ*3。AI1200体が協働してサイバー攻撃、トクリュウかい!こうした現実を見ないふりしてAIが明るい未来を約束するというナラティブに浸るのはナイーブ過ぎるでしょう。またAIウォッシングと言われる効率化による生産性向上を伴わないレイオフがアメリカで話題です*4。AIを口実に業績不振を隠して労働分配率を下げることが現実に起きています。

さらに現実は動き安全資産と言われる米国債市場の異変が起きています。ベッセント財務長官がキレ散らかしていてG20財務相中央銀行総裁会議の記者会見で日本に厳しい注文を突きつけました*5。これ伏線がありまして、1月のダボス会議で片山財務相に財政出動批判をしてこれ以上の円安阻止すべくレートチェックまでして日本の円安をけん制し*6、日銀の利上げをけん制して4月の利上げが見送られて円安に振れてGWの円買い介入に走り*7、HONEBUTOで財政拡大をうたい*8、日銀7月会合でも利上げ見送りで仕方なく日米協調介入に付き合い*9、忠告を聞かずリフレ政策を続ける日本政府にブチキレた訳です。減税ばかりで財政ガタガタのアメリカには言われたくないところですが、基軸通貨国の特権で安全資産として外国政府が買ってくれるから危機感が薄かったのですが、中国狙い撃ちの半導体輸出制限などの制裁や産油国のドル離れで中国や産油国のドル資産圧縮もあり、加えてAIテック企業が発行する社債購入のために米国債保有を減らす金融機関といった問題が重なって国債消化が滞っていることが背景にあります。それも100兆円とか日本の国家予算レベルのボリュームですから、その分国債は買われなくなります。円安に苦しむ日本まで米国債を売られたら大惨事ですし、日本経済のメルトダウンすらあり得ます。

にも拘らず危機感の薄い日本政府です。27年度予算の概算請求が出そろいました*10。26年度本予算+補正予算の相場観でまとめられたようですが、火だねが3つあります。事項請求、国債利払い費の膨張、想定外で補正予算が必要になる場面の3つですが、いずれも予算の上振れ要因です。事項請求というのは事項だけで金額を明示しない請求で、具体化した時点で金額をはめ込む形になりますから、幾らになるかわからない訳です。特に防衛と国土強靭化関連で防衛相と国土交通省が多く計上しています。

そして戦略17分野を睨んだ成長投資枠12兆円も盛り込まれております。官民ファンドに出資して民間投資の誘因とする政策は失敗の連続で、クールジャパン機構の焦げ付きと廃止が決まったばかりなのに懲りません。何故うまくいかないかの検証がされてませんが、国の出資や補助金を当てにして民間が単独では絶対しない高リスク投資をするわけですから、そもそも最初から逆選択になっていて成功は必ずしも目指されないということですね。ラピダスへの民間出資の傾向はまさにそれで、故に成功が危ぶまれています。逆に生産拠点の国内回帰を狙った韓国では企業に海外資金の国内還流策を促し、SKハイニクスが応じました*11。民間企業が調達したドル資金を国内投資に使うというもので、為替介入より低コストで通貨安対策できるし政治的な軋轢もないという賢いやり方です。内部留保ため込んでる日本企業がやれば効果絶大ですが。

AIも戦略分野としてますが、EUがAIの問題点を重視して規制の乗り出し、アメリカもAIの危険性を認識して公開に待ったをかけたりしている一方、規制を緩めて誘致しようとか暢気な日本政府は救われません。例えばこのニュース*12。マイクロソフトやグーグルの欧州拠点誘致で驚異の急成長を達成したアイルランドですが、国内に多数のデータセンターが建てられ、電力バク食いで料金爆上がりで「電力税だ」と国民が反発しています。日本で同じことするつもりか?無知にもほどがある。

そして国交省の事項請求で気になるのが整備新幹線絡みの動きです。国土強靭化で災害復旧予算を積み増すんじゃなくて、整備新幹線の貸付料を値上げして今後の整備計画の財源にしようという意図をHONEBUTOエントリーでも取り上げましたが、北陸新幹線の敦賀延伸と北海道新幹線の難工事で事業費が膨張しており、また今後整備区間に格上げされるのは採算も厳しくB/C比も人件費、資材費の高騰に留まらず金利上昇でも悪化することが見込まれ、このままでは新たな整備区間格上げは困難という状況です。加えて北陸と西九州のミッシングリンク解消という課題もあり、新たな財源確保が必要という判断があるようです*13。

国の言い分としては開業前に受益の範囲として査定された貸付料では実際の受益が上振れしているケースが多いことや、延伸区間の場合根元区間の培養効果による受益が無視されているという所謂根元受益論で、特に北陸新幹線延伸でJR東日本区間の受益を問題視している模様です。しかし実際は列車増発に伴う保安装置の改良や車両増備、線路保守の増加などのコスト増もあり、言われるほどの恩恵はありません。また貸付料の値上がりは原価上昇となり総括原価の上限運賃改定の根拠となりますから、山手線の乗客の負担で例えば北陸新幹線の事業費を支えるという不都合な問題にもなります。また受益の上振れはJRの企業努力の成果でもある訳で、それを召し上げるとすると元々の整備新幹線スキームの肝であるJRに過度の負担を強いて第2の国鉄にしないという趣旨にも反します*14。詳しくは大坂氏の記事に詳しいので省きますが、元々国鉄分割民営化時にJRに過度な負担をかけず、第2の国鉄にならない仕組みとして導入されたスキームを反故にするのは許されません。

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Sunday, August 30, 2026

ガチ中華の認知戦で踊るTACO

AIの推中華:1だけじゃない不都合なリアル。日本の選挙でも中国の認知戦と見られる動きがあります*2。総選挙前、中国人アカウントと見られるSNS投稿で日本の社会保障負担拡大による現役世代の苦しさを煽って、選挙終了後アカウントは削除されました。世代分断を狙った可能性があります。その影響か選挙戦では野党の消費減税攻勢もあり、与党自民党も消費減税を打ち出しました。これ自体は選挙でみられる争点つぶしで、終わればテヘペロでどこ吹く風の豹変はこれまでもたびたび見られました。

それが国民会議で与野党が専門家を交えて協議した結果、消費減税の効果に疑問があり、またシステム改修で税率ゼロが困難ということで、国民会議の成果は不調でした。それを受けて選挙で消費減税を掲げた野党より引っ込みがつかなくなった政権側が積極的に推進し、野党が慎重姿勢という逆転が起きます。政権にとっては支持率が下がる中での巻き返しの意図でしょうけど、踊らされてないか?

選挙をめぐる認知戦が注目されたのは2016年の米大統領選挙で、ロシア関連の認知戦と思しきSNS投稿が見られたことで注目されましたが、米CIAなどは昔から外国の世論工作をやってたし、日本もその対象として1955年の保守合同に資金提供したことは行政文書の開示で明らかにされてます。当時の日本は左派の躍進や労働運動の激化で冷戦下ソビエト陣営に接近することを阻止したかったわけですが。しかしそれ以来自民党はアメリカにものが言えなくなってしまいました。田中角栄首相などの例外はありますが。

それに留まらず高市首相の台湾有事発言*3を受けての「新型軍国主義キャンペーン」も日本の世論を挑発する意図があると考えられます。アメリカからの防衛費増強要求もあり、政府は無定見に防衛費を増やしてます。予算編成で事項請求として金額を入れないとか姑息なことをやってますが、それが日本の財政を蝕み国力を低下させることを狙った挑発に見えます。というのは中国自身が米中軍事演習に誘われてその実力差を見せつけられたことで、装備の近代化や核兵器増強、海軍力の強化といった軍備増強を行っている訳で、アメリカはそうして中国の国力を圧迫する意図があったのですが、経済成長著しい中国では大した負担にはならず、寧ろ米中の軍事バランスを危うくしたことで焦っています。それでも米中は大国同士のディールで着地点を見いだせますが、衰退が始まった日本には重荷になることを承知の上での挑発と見るのは穿ちすぎでしょうか。

実際こんなニュースがあります*4。ウクライナとイランで兵器を蕩尽しているのに生産が追い付かず、価格上昇でせっかく防衛費を増やしても装備強化にならない現実があります。ますます防衛費が国民生活を圧迫することになる訳です。さらにAI活用まで言っている訳で、パランティアのシステム導入を進める方針を明らかにしてます。パランティアはアメリカのテック企業でイスラエルのガザ地区の監視網やモサドの諜報活動で実績を積む軍事ベンダーです。イラン攻撃ではパランティアのシステムで収集したイラン要人の行動パターンをアンソロピックのAI解析によって、絶妙なタイミングで攻撃を仕掛けてハメネイ師ほかの要人殺害に成功しています。公式には初めてのAI戦争と言われます。実際は最近のロシアの自爆ドローンにはAIが搭載されていて自律的に攻撃目標を決める仕様になっていて、遠隔操作を邪魔する妨害電波が効かないという形でAIが戦争に使われているようですが。戦争の形が変わりつつあります。現実がそこまで来ているとすれば、いつその矛先が私たちに向くかわかったもんじゃありません。戦争は一部の企業を富ませるかもしれませんが、一般国民を貧しくするだけです。

そしてAIの副作用はそれだけじゃありません。このニュースにはあきれるばかりです*5。与党を助ける野党って何だよ。しかも物価高対策の資産とか、プロンプト次第でウソを返すハルシネーションもあるし、高市さんみたいに思い込みが強くて人の話を聞かないと、かなりとんでもない結果をもたらします。やっぱTACOを止めなければ。しかし悲報です*6。誰がTACOを止めるんだよ*7。ゴリラも台無し。与党から連立離脱した公明は退路を断って立憲民主と合流して政権交代可能な塊を作るべくリスクを取った訳ですが、立憲民主の新旧幹部の暢気な不作為が台無しにしてしまいました。思えば昨年の立憲民主党の所y日税減税への政策シフトあたりから見られるか暗部のブレブレの姿勢から続く組織当地の弱さが出たと言えます*8。立憲民主党は地方議員の合流慎重姿勢が強いことを理由に挙げてますが*9、地方議員も野党第一党の立憲民主党の支援で当選した訳だし、地方では与党に留まっていることが多い公明党との意思疎通に努力したかを問いたいところです。

てことで意思疎通と言えばこれも問題です*10。東武日光線新鹿沼駅事故の続報ですが、中継見張り員2人が現場から315m手前の所定位置に移動中で、作業開始を把握していなかったとか。重大な手順ミスがあった模様です。これが記者会見の「意思疎通できる状態になかった」の意味なのか?意思疎通の齟齬が人命を奪う現実は重い。

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Sunday, August 23, 2026

TACOを止めるには

日米TAOのプロデューサー*1のベッセント財務長官のレートチェック以来、ベッセント氏由来の市場サプライズをベッセント・プットと呼ぶようですが、その神通力も徐々に低下しています*2。ベッセント氏が気にするのは長期金利の上昇で、これは米国債が売られていることを意味します。特に30年債などの超長期債は生命保険などの限られた機関投資家しか持たず、低金利時代には高利回り故に需要があったものの、金利上昇で新発債の引き受けは期待できず、一方で償還が進むに従って市場が薄くなり流動性が低下することで、ちょっと売られただけで市場が大きく動くということもあり、流動性調整のために買い戻し償却(バイバック)が行われますが、災害と戦争*3で取り上げたバイバック倍増発表で市場は動いたもののすぐに戻しました*4。基軸通貨ドルの信認低下を防ぎたいけど、アメリカもトランプ政権下で財政悪化が止まらず、ベッセント氏の奇策でも回避できない状況になりつつあります。

加えてイラン戦争による石油危機も目先は備蓄放出やアメリカの輸出どらオブでしのいでいるものの、そのアメリカが備蓄を減らして国内ガソリン価格が高止まりした結果、輸出を絞っています*5。秋以降の世界規模の大インフレは避けられない状況です。それなのに危機感のない日本政府は消費減税に動き出しています。長くなるのでここではマクロ経済的な問題には踏み込みませんが、官民大合唱の賃上げムーブメントも、目先ガソリンや電力ガスの補助金で強引に物価を下げて実質賃金上昇を演出してますが、それどころじゃない値上げが待ち受けています。残念ながら現状回避策はありません。またドルの信認低下でビットコインが買われています*6。金銀と違って裏付け資産の無いビットコインが買われるって末期症状と言えます。早くTACOを止めないと。

TACOの役債は経済に留まらず国際社会を揺さぶります。トランプ大統領は国際刑事裁判所(ICC)の赤根所長にけ3位罪制裁を科しましたが、アメリカに何も言えない弱腰の日本です*7。ICCは米中ロなど主要国は非加盟ながら国連が承認した正規の国際機関であり、戦争ハンザ愛や人道犯罪を犯した個人を訴追する国際法廷で、対象となる個人は加盟国以外も含む立て付けになっております。アメリカは外国での軍事行動を制約されるという立場から反対してますが、これ構想の原型はニュルンベルク裁判や東京栽培に求められます。ドイツも日本も当時戦争犯罪を裁く国内法がなく(日本は今でも)、代わりに国際法廷で人道への罪として裁いたことから、紛争に伴う人権の棄損を裁く国際法廷として立ち上げられたもので、戦後処理をリードしたアメリカの法理に言っている法の支配を体現した組織です。日米TACOに鈴をつけられるか?

てことで国内のドメスティックな話題にシフトします。東武鉄道日光線新鹿沼駅で起きた除草作業員4人が事故で死亡したものです*8。報道では新鹿沼駅構内で除草作業中に停車予定の上り特急が進入して作業員4人を撥ねて死亡させたということです。現場は右カーブで見通しが悪く、現場前後約315m地点に中継見張り員2人を前後に置き駅付近に列車見張り員1人を置き、手旗で合図する形で作業員に列車接近を知らせて退避させる体制でした。そして特急列車運転士は見張り員の合図に警笛で応答して通常通りの速度で構内に進入し、作業員を目視して急ブレーキをかけたが間に合わなかったと証言しています。一方で中継見張り員は「列車見張り員と意思疎通できる状態ではなかった」と言っていると東武鉄道の記者会見で明らかにしており、何らかの意思疎通の齟齬があったとみられます。加えて続報ですが*9、運転士の警報合図が通常2回のところ1回しか確認できていないということです。見張り員間の意思疎通の齟齬の結果と見られます。

東武鉄道のような大規模鉄道でアナログなやり方をしていることも驚きですし、また駅ホームが古い盛土式のままで作業員の退避スペース確保が十分だったのかも論点になります。例えばJR東日本ではATOSという運行管理システムで現場責任者に持たせた端末で直接システムにアクセスして線路閉鎖をかけて安全に作業ができるようになっていて、昼間でもマルチブルタイタンパーを出動させたりする光景が見られますが、こうしたシステム的なバックアップが無い訳です。もちろん故に複雑なマニュアルが制定されていてミスが絶えないことも確かで*10、また危険を伴う線路作業員も人手不足で集まりにくいこともあり、業務の習熟もままならない現実がある訳です。JR西日本ではではより進化した保線部門DXで改善が進んでいるようですが、ここでは踏み込みません。

危険であると同時に専門性も求められるのにそれに見合った待遇になっていないことが推測されますが、このままではシステム的に破綻します。待遇改善のための原資が乏しいとはいえ、株価維持のための自社株買いやパーティ券購入などの政治献金は出せるのに下請け作業員の待遇改善に後ろ向きではいずれ立ち行かなくなります。これ鉄道会社だけの問題ではありません。やはり建設作業員が集まらない建設業でも同様の問題がありますが、その中でこのニュースです*11。万博の大屋根リンク施工を分担した竹中工務店中心のJVの現場監督が下請けに水増し請求させてキックバックした背任の疑いで逮捕され、竹中工務店も家宅捜索されました。建設業界ではありがちな事件ですが、こうして不透明な会計で裏金を作って利得を得ることは広く行われ、その幾ばくかは裏金として政治家に渡ったりもしています。そんな余地があるなら下請けの賃金アップで作業員を集めやすくする余地はある訳です。同様に輸出頼みの自動車その他の製造業でも、原材料費アップや人件費アップに由来する値上げを認める余地はある訳で、そうした形で国全体の賃上げ体制を整備する形で新たな競争政策のルールを定めることが政府の役割として浮上します。競争政策の組み換えですから、基本的に財政出動を伴わない形で可能です。但しそのためには雇用主に対峙する組合を強くする必要があります。

ということで、政治の世界にも新たな動きが出てきて注目しています*12。総選挙で落選した中道元議員の政治団体立ち上げです。リベラル特有の分派活動の疑いもありますし、枝野氏による立憲民主党結党当時のようなブームになるかどうかも微妙ですが、略称「ゴリラ」は組合関係者への説明の中での若い組合員からの提案を採用したもので、組合の支持を集められるならば面白い動きになる可能性はあります。3党合流を目指す中道、立民、公明にとっては水を差す動きになる可能性はありますが、どのみちじり貧で、特に創価学会信者の高齢化で支持を減らしている公明にとっては、今さら与党復帰も無理ですし、労組という支持層を獲得することのメリットを中道幹部や立民が示せていない中での新たなムーブメントとして注目される動きです。原発反対など乗れない労組もあるでしょうが、ナショナルセンターとしての連合は原発容認などで与党にすり寄る国民民主を重大な分派活動としてけん制もしており、連合を通じて大きな塊を作ることは可能です。とはいえ現実的にはすべての人を包摂することは独裁者でも不可能なのはマルクスの「ルイ・ボナパルトのブリュメール18日」にも記されている通り、上部構造である政治過程であらゆる問題を解決することは不可能という歴史的教訓をかみしめてほしいところです。対立を隠すのではなく認めたうえで話し合って止揚する弁証法的解決が模索されるべきです。

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Sunday, August 16, 2026

災害と戦争

熊本地震*1で爆発事故を起こした嘉島町のイオンモール熊本の続報です*2。郊外型SCでは災害に強いからという理由であえてLPガスを使用するとか。補充可能で都市ガスのように長期間停止となる心配がないということですが、家庭用と違って大型タンクに貯蔵して館内配管で供給されるので、配管の損傷はあり得ます。故に揺れを検知して弁で遮断する保安装置やガス漏れ警報器なども備えられているはずですが、想定を超える揺れの場合作動しないこともあり得るし、ガス漏れ警報器も比重の大きいLPガスの場合は低い位置に設置しないと検知できないなどの問題があり、その辺はとりあえず刑事責任を問わない前提での調査に委ねるしかありません。SNSでは館内に戻ったことを叩くとか、それを命じたテナント企業や許可したイオンの対応への批判もありますが、まずは原因を特定し、問題があればそれを見直して今後に生かすことが重要で、法的な責任追及はその後の話です。イキって見せても何の解決にもなりません。

そして関東では台風15号の上陸と千葉県の豪雨に見舞われました。東から西へ向かい関東直撃という台風は過去にあまり例はなく、また台風通過後もすっきりしない天気が続きましたが、結果的に台風本体よりものちの豪雨被害のほうが大きくなりました。これ特殊な気圧配置の影響だそうで*3、東南アジアの季節風と台風が影響しあってモンスーンジャイアという巨大な渦が太平洋上に出現し、大量の水蒸気を含んだ風をまき散らした結果、台風15号を生み、また湿った暖かい風を関東へ運んだわけです。動きの遅かった台風13号がもたらしたらしいのですが、関東に吹き寄せた熱く湿った風は地形の影響で上昇して上空の-6℃の寒気に触れて積乱雲を連続的に発生させて線状降水帯ととなって大量の雨を降らせたものです。千葉県に被害が多いのは、北総台地や房総半島中央の台地に中小河川が渓谷を刻む地形ゆえに、渓谷に沿って上昇気流となる訳で、24時間で300mmと8月の平年値の3倍を超える豪雨となった訳です。同様に埼玉県南部の入間や飯能、東京都でも武蔵野台地を刻む善福寺川、野川、仙川流域の警報が出されたことも指摘できます。

加えて都市排水の処理能力を超えた内水氾濫でマンホールが飛んだりアンダーパスが水没したりして被害を拡大しました。道路は寸断され鉄道もほぼすべて運休という状況になり、成田空港では足止め客600人とか。そんな中で千葉都市モノレールは正常運行を維持しました。湘南モノレールと同じサフェージュ式懸垂モノレールですが、雨や雪に強い特性が生かされました。そういえば湘南モノレールでも台風で町屋付近の土砂崩れで下道の京急バスが1か月運休したときも正常運行でカバーしました。これ京急バスの大船地区からの撤退の遠因なのかも。5月の京急バス撤退後、江ノ電バスが肩代わりしたものの、昼間2時間間隔という運行頻度はそのままで、船5諏訪ヶ谷循環は鎌倉山止まりとなり、カバーしていた西鎌倉地区から大船駅へ直接行けなくなりました。

こうした自然災害は元々多かった日本ですが、逆にそれ故に太平洋戦争も災害感覚だった為に国の加害責任を強く問われなかったということなのかもしれません。後のノーベル賞受賞日本人学者にとっての太平洋戦争がそれを示唆します*4。学究肌の湯川秀樹はすぐには役に立たない素粒子理論を極めつつ、役に立つ成果を出せないことに葛藤していたとか。アメリカも疑った秘かな核兵器開発は無かったわけですが、当時の時世の一般国民と変わらない意識だったことが見て取れます。学者だから政治的転向は意識しなかったと思いますが、多くの日本人がシレっと転向したことが三島由紀夫を皇道派のような反動に駆り立て、吉本隆明をして大衆の無責任を語る戦後世相に大学者といえども例外ではなかったということですね。今は国立大学の独法化や科研費の削減や重点化などで政府がコントロールしようとしている状況は危ういと言えます。日本学術会議の独法化も要注意です。

ってことでかなり遠回りしましたが、実は災害も安全保障の一部ですし、発生確率で言えば戦争よりも遥かに高い訳で、国民の生命と財産を守るという視点からは、自衛隊は災害出動こそ本分と言って良いですし、災害救助に期待される理由は、戦争の勝敗を分ける兵站、つまりロジスティックス能力故ということです。前線へ兵器や食料などの物資及び兵員を効率よく送り込む能力が、被災地への支援に使えるということですね。そのための現地の情報収集であり具体的な支援策でありということであり、首相の現地入りや防衛相の悪目立ちは無意味どころは被災地の足を引っ張るものですらあるということです。てことはさ、防衛費増額を防衛所予算と紐づけるんじゃなくて例えば設置法が成立した防災庁に予算を持たせて防衛費にカウントするとか、欧州でもスペインやイタリアで堂々とやっていることをすれば国民の理解も得られるし、少なくとも米国製の高価なミサイル買うよりは道理にかないます。アメリカから文句言われたら「軍民デュアルユースです」とシレっと言い放てば良いですし^_^;。H3のみちびき打ち上げ成功も防衛費に入れちゃえばよいです。

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Sunday, August 09, 2026

非対称な日米協調介入

前エントリー*1冒頭で取り上げた為替の日米協調介入について報道が出そろいました。時系列に沿って振り返ります。日本時間の7月31日早朝に第一報です*2。ドル円164円を窺うタイミングでの日銀の円買い介入ですが、ほぼ同時にNY連銀によるレートチェックが行われたこともあり、相場は大きく動いて157円台を付けました。相場はすぐに158円台から159円を窺う水準に戻りましたが、米財務省の異例の円買い介入の予告もあり*3、その後も日銀は波状介入する一方、米NY連銀はユーロ売り円買いで呼応しました*4。日銀の介入資金もFIMAレポ・ファシリティーズという外国政府等への国債担保のドル融資という枠組みを用い、NY連銀もドルを売らずユーロを売って円を買うという異例の動きです*5。

国際決済通貨ドルの信認を守るために、ドル資金の調達に行き詰まった外国政府等を救済する枠組みのFIMAレポですが、金融危機等の非常時に備えた枠組みで、1998年のアジア津優香機器時に東南アジア諸国の救済などで発動されましたが、今回はそれに匹敵する危機感がアメリは側にはあったってことです。円安なのに高市政権の積極財政姿勢は変わらず、日本が大量保有する米国債の売却を止めたかったってことですね。その結果日本はドル建て借金で為替市場にポジションをとるというリスキーなことをしでかしました。しかも波状介入で総額11.7兆円相当の介入です。介入資金はいずれ返済する訳ですが,その時にはドルを買い戻すことになる訳で、タイミングによっては為替差損が発生します。

一方のアメリカはドルではなくユーロを売って円買いした訳で、保有外国通貨の振り替えにすぎませんし、規模も1兆円程度と少なく、協調介入と言いながら非対称です。加えてECB理事の一部からは「聞いてないよー」のクレームも。それでもそれに乗らざるを得なかった日本がアメリカにせがんで実現したものではあります。そしてタイミングを合わせたように食品消費税減税の閣議決定です*6。年間5兆円の財源が必要な一方、効果は国民1人当たり年間3.6万円の減税と限定的ですし、インフレで実質便乗値上げは確実ですから、国民負担の軽減にはほとんどなりません。しかも財源に外為特会活用とか、本当に何もわかってないです。

今回の円買い介入で得た11.7兆円の円資金は外為特会の元入金調達で発行された政府短期証券の返済資金になります。利子や為替差益による剰余金は一定の会計処理後に一般財源に繰り入れられますが、とても年間5兆円レベルに達しないどころかFIMAレポのドル債務の利払いや為替リスクで減額の可能性すらあります。つまり財源にはならない訳です*7。てことでアメリカからも日本の財政悪化にクレームつけられてます*8。アメリカの財政を滅茶苦茶にしているトランプに言われるのは大概ですが、今回の協調介入が決して日本を助けた訳じゃないってことです。それなのに日本の危機感の無さは本当に心配です。

それでも円安是正が必要ということは理解しているようですが、繰り返しますが30年にわたる日本の交易条件の悪化が円安の構造的原因であって、それに対する対策は何もない以上、これからも過度な円安をアメリカに泣きついて助けてもらうしかないってことですね。そして円安はいろいろな弊害をもたらしてますが、一番の問題は外需依存の大手企業にとっては円安は最終利益のかさ上げになることから危機感が乏しいことでしょうか。そのために例えばEVで後れを取っている現実があります*9。

似たような話は鉄道でもありまして、例えば台湾高速哲翁の増備車で2回にわたる入札不調です*10。新幹線輸出のほぼ唯一の成功例と言える台湾高速鉄道で旺盛な需要で増備車投入が決まり、JR東海700S系ベースの700ST系で入札したものの予定価格を上回るということで2回の入札不調が続き、結果的には円安に救われたという事例です。台湾高速鉄道は開業までにいろいろありまして*11、欧州連合が受注して線路や信号システムは欧州方式で作られた一方、地震の多い台湾側の意向で日本の新幹線方式に変更された結果、車両はJR東海700系ベースの台湾向け車両ながら、信号その他のシステムのすり合わせに手間取って、JR東海が技術者を引き上げるといった顛末もありましたが、在来線直通を考えなくてよいことから何とか開業にこぎつけました。しかしこの経験はその後に生かされませんでした。

仏TGVや独ICEなど最初から高速新線と在来線を直通させるシステムとしたのは、元々在来線も4ft8in・1/2(1,435㎜)の国際標準軌だったということもありますが、日本の新幹線が在来線と異なる規格故にネットワーク形成がうまくいっていないことを反面教師とした結果です。日本が誇る有責事故ゼロも、独自規格の箱庭鉄道(GardenRail)故と容赦ない評価で、特に外国への売り込みではコスト面で有利ということをセールスポイントにしています。逆に日本の新幹線方式は高コスト故に各国の商談で連敗続き。特に中国の高速鉄道技術のキャッチアップもあってさらに不利になっている現実があります。石破政権で売り込みに成功したといわれるインド高速鉄道も、欧州勢の巻き返しで信号システムも欧州式とすることで、E10系の売込みに暗雲が漂っています。日本のメディアはあまり報じませんが。

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Sunday, August 02, 2026

東京以外全部副首都

HONEBUTOの骨粗しょう症*1を見てられないとばかりにアメリカが手を差し伸べました*2。詳しい検証は当局の発表を待ちますが、米財務省が30日にレートチェックし、31日には円買いユーロ売りの為替介入を実施し、事実上の協調介入となりました。しかしこれ日本を助けたというよりも円の信認低下に巻き込まれて米国債が売られることをブロックしたもので、ユーロ売りで穴埋めしたのは、もはや単独で日本の財政破綻を受け止めきれないのか、ドル覇権維持になりふり構ってられないってことでしょう。

てことで本題ですが、世界的には地価上昇による住居費の高騰を受け、首都圏地域からの人口流出が世界のトレンドになりつつあります*3。コロナ禍を契機としたリモートワークの拡大も理由の1つですが、行き過ぎた人口集積がむしろ渋滞その他の経済損失を生むことから、郊外への人口移転や都市機能の分化による連邦的自律分散など、国によって異なる形ですが、例えばやはり一極集中が言われるフランスでも、パリ近郊を含むイル・ド・フランス地域で人口の域外移転が見られる一方、日本と韓国の首都圏地域では相変わらず転入超過が続いていて一極集中が止まりません。

要因はいろいろあるようですが、一つは大企業の集中で待遇面の優位があることが考えられます。実際にアンケートで「給与が高くなる」という回答が多かったようです。それでも住居費の上昇はそれをスポイルすることになりますが、それでも首都圏転入が止まらない理由の1つが首都圏と地方のジェンダーギャップも指摘されます。地方は女性の就労機会が限られるばかりか家事分担も進まず女性の流出が多いということになります。これは少子化の要因にもなります。同時に地方の最低賃金上昇で首都圏と地方の待遇差をなくす取り組みも必要ということです。こうした点を踏まえると、維新が強引にねじ込んで成立させた副首都法案は問題解決に寄与しない可能性が高いと言えます。

副首都法案自体は首都圏が大規模災害で機能を失った時に備えてレジリエンスを意図したものということで、バックアップ機能を持たせるとしていて、公共投資や民間の本社移転への税優遇や交通網の整備などが言われてます。実際熊本で10年ぶりの大地震が起きて、もしも首都圏だったら?という議論はあり得ますが、やや飛躍した議論です。というのは、首都圏の地価上昇の原因でもある再開発で、首都圏の建物は概して新しい耐震基準に準拠したものが多いという点は指摘しておきます。寧ろ水道の耐震化など地方ほど進んでいないということもあって、能登半島でもそうでしたけど、熊本でも同様の問題が起きています。

今回の地震は10年前の震源地の南西で、同じ日奈久断層の割れ残りということです。10年前の地震で割れなかった部分に逆にエネルギーが蓄積して今回割れたということです。断層が動くということのメカニズムは複雑で予見可能性はほぼありません。ということで、備えが重要なのに地方ほどそれができていない現実がある訳で、副首都とか言う前に、地方のインフラの見直しこそ重要です。実際市町村役場などの公共施設は建て替えや耐震強化が徐々に進んではいますが、問題は民間の建物で、これは首都圏でも同じですが、強度不足でも耐震強化や建て替えに至らない建物が旧市街地に残るケースが見られます。一方でイオンモールなどの郊外型モールは築年が新しいだけに耐震強度は高かったりします。故に防災拠点として自治体と協定を結んだりしていて、広い駐車場にとりあえず避難できるし、状況によっては商品を支援物資として振り替えることなども可能で、爆発事故を起こした嘉島町のイオンモール熊本は防災協定が締結されていただけに、ショックな事故です*4。爆発事故の原因はわかっていませんが、相応の強度を持った建物の床が抜けるほどの爆発事故が保安装置付き配管からのガス漏れ程度で起きるというのも考えにくいところ。まるで福島第一原発の建屋内のようなドローン映像は謎です*5。また客とスタッフの計4,500人を30分で避難させたイオンの対応はお見事です。爆発事故が想定外だったということです。

今回の被害状況のまとめです*6。日本製紙八代工場の煙突折損は長周期振動が疑われてます。東日本大進さんでも東京の高層ビル群で大きな長周期の揺れが続いたということがありましたが、軟弱地盤などで地震動を受けて共鳴した振動が起きるらしいです。豆腐を振ると遅れて大きく震えるような感じでしょうか。建物は壊れなくても中の人や物は大きく揺さぶられるわけで、高層ビルによる野放図な再開発は見直したほうが良いかもしれません。そして被災地域には多くの工場が立地しており、サプライチェーンの攪乱が問題になります*7。TSMC熊本工場は新しいだけに建物の損傷は見られない一方、精密加工故に機械設備のチューニングがボトルネックになりそうです。自動車関連は九州以外の三菱自動車水島工場の稼働停止など影響大。また八代港と九州道の被災で物流に支障が出ています*8。特に九州道では断層前後の橋脚がズレて桁に段差が生じており、復旧は時間がかかりそうです*9。鉄道は新幹線も在来線も熊本以南の復旧の見通しが立たず、八代駅構内ではJR貨物の停車中の貨物列車が横転したままだったりして、高速道のう回路としても使えない状況です。

それでも地方や民間は助け合って乗り切ろうとしてますが、政府の動きが鈍いのが気になります。例えば自衛隊輸送機でクーラー300台を送り込んだものの、電源が取れないから使えないとか、あるいは犠牲者の数が県の発表と食い違ってたりとか*10、むしろ混乱させてます。体育館の空調とか避難所のプライバシー問題とかは、毎回繰り返されてますが、法律を定めて予算取って確実に執行するのが政府の役割で、それができてないのに目先のやったふりは選挙目当てのステマかい?副首都だって首都機能移転の国会決議に基づいて1992年に国会等移転法が可決成立しているのに、徳島の消費者庁や京都の文化庁ぐらいしか動かない。というかそもそも省庁の官僚は事務屋なんだし地方局もあるし、メールやリモートの活用で非常時の職務継続は可能なはずです。最大のネックは国会だと思いますが、国会議事堂が使えない状況での暫定議事堂を指定する手順を決めるとかやりようはある訳です。一番の問題は官僚による政治家へのレクチャーの都合で国会に近いところにいないと仕事にならないってことか?政治家がまともならこうはならないでしょう。

しかし一方で今回の副首都砲では札幌、福岡、名古屋が名乗りを上げ、大阪と争う姿勢ですが、それに留まらず広島県と群馬県まで表明してます*11。かくして東京以外全部副首都wwwwww^_^;。

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