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Saturday, May 09, 2026

部活バスの闇

ゴールデンウィーク最終日の6日、磐越道でマイクロバスが事故を起こしました*1。ガードレールにぶつかってバス前部から後部へ貫通しているさまは2012年の関越道ツアーバス事故を思い出させます*2。当時のエントリーではツアーバスによる乗合類似行為問題として取り上げました。当時からレンタカーによるドラーバー付バスレンタルが貸切類似行為ながら、借り手の廉価志向から黙認状態だったこともあり、そうしたレンタカー会社に貸切バス免許を交付して正規の貸切バス事業者にすることで競争条件を整える規制改革が実施されました。その結果貸切バス事業者が増えて競争激化の結果、旅行会社がツアー募集の形で安値で仕入れた貸切バスを用いて催行するツアーバスが都市間運行で乗合バスである高速バスと競合することになり、両者の競争条件の違いから廉価なツアーバスへの批判もあって、高速乗合バスへ寄せる形の規制改革が進められていた時期でもあります。そして関越道でツアーバスが事故を起こしたことから議論が進み、所謂新免事業者による高速バス参入へと繋がりました。

今回の事故は新潟県のバス事業者である蒲原鉄道がレンタカーを手配したもので、学校側から予算を抑えたいとの要望があり、同社名義でレンタカーを手配したものです*3。レンタカーによる貸切類似行為という所謂白バス行為が疑われる案件ですが、幾つか疑問もあります。蒲原鉄道はオールド鉄ちゃんにはおなじみの五泉~村松~加茂を結ぶローカル私鉄が鉄道廃止後バス専業となった会社ですが、ご多分に漏れずのドラーバー不足もあり、自社貸切バスを値引きすることも難しい中で、レンタカー手配を選んだのでしょう。但しレンタカー会社には当該の営業担当者の免許証しか提示しておらず、手配したドライバーは知り合いの紹介で面識はなかったなど杜撰です。しかしレンタカー会社からすればバス事業者の手配だから、本来厳しくチェックされる筈のドライバーの免許証確認をスルーしたかもしれません。

実は部活関連のバス事故は結構起きています。21年悪神奈川県山北町でトレーラーに追突とか、鹿児島県では23年に横転事故を起こしたりということもあります。そして学校の部活では顧問教諭が部活のために大型免許を取得してハンドルを握ることもままあり、その場合はレンタカー利用は出費を抑えられるものの顧問教諭の責任は重くなります。また文科相の部活ガイドラインでも輸送中の安全に関しては記載がなく、この面からもグレーゾーンになっています。背景には文教予算の縮減による学校経営の困難があるかもしれません。

今回は北越高校軟式テニス部の遠征ということですが、名門ということで大会出場や対外試合の機会も多いでしょうから、果たして今回だけの特殊事情なのかもわかりません。少なくとも正規のバス事業者の貸切運賃を負担することは難しかったんじゃないかと思います。そうすると安価なレンタカーで済ませることが常態化していた可能性もあります。そしてバス事業者と学校との間で説明が食い違っていることも、双方の責任回避の姿勢が垣間見えます*4。書面も交わさず事業者は手数料も取らず、学校側も引率教員を添乗させていなかったなど双方に落ち度がありますし、ドライバーは二種免許保持者ではなく事故歴もあったなどいろいろ問題だらけですが、事故が起きて発覚しただけで学校の部活では常態化している可能性はあります。

似たような話として辺野古の転覆事故で修学旅行生に犠牲者が出た事故がありました。こちらはさらにややこしく、部活ではなく修学旅行中の平和教育の一環という学校側の説明があり、また事故船のは元々辺野古の抗議活動船ですが、NPO所有で有償運行ではないということで、その面でも法的にはグレーゾーンです。2022年悪知床半島沖観光船沈没事故を受けて制度化された船舶事業登録は既存事業者の3割止まり。有償運航を前提とした制度なのでそのまま適用は難しいところです。とはいえ死者が出ている以上このままとはいきません。そしてこちらは乗船は教員とNPOの個人的関係から出ているもので謝礼として5,000円支払ったという報道もありますが、儀礼的意味合いはあっても繰り返し集客して謝礼を取っていた訳でもありません。勿論だから安全をないがしろにして良い訳ではありませんし、今回の事故で同様の平和学習は禁止事項になってもやむを得ませんが、政治性からか修学旅行を手配した東武トラベルは無関係なのに一部で叩かれたりしてます。

てことで当事者の蒲原鉄道ですが、明治期の私設鉄道の北越鉄道(→信越本線)と岩越鉄道(→磐越西線)の双方から外れた蒲原地区の中心地村松に鉄道をということで難産の末1922年に免許取得し翌23年に建設着手され同年に磐越西線五泉~村松間を新潟県初の電気鉄道として開業したものの、昭和恐慌真っただ中で第二期線は足踏みの末村松~加茂間が1930年に開業したものの、元々の需要が少なく経営は苦しい状態が続きました。テコ入れ策として直営の冬鳥越スキー場を開設して誘客に努めたもののモータリゼーションで誘客には繋がらず、また貨物輸送も秋のコメ収穫期に偏った需要で経営の支えにならず、1984年には国鉄加茂駅の貨物取扱廃止で貨物営業終了。1985年には村松~加茂間を廃止し一時的には営業的には改善したものの、僅か4.2㎞の営業区間では自家用車やミニバイクへの転移が止まらず、1999年に廃止されバス専業となりました。しかし営業エリアは狭く集客の核も乏しく、昨今のドライバー不足も重荷です。しかしまあ地域密着を地で行くような会社ではあります。故にレンタカー手配も法令違反を承知の上でクライアントの要求に応えたという意味では、善意の対応だった可能性はありそうです。勿論だからといって法令違反が許される訳ではありませんが。

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Tuesday, May 05, 2026

大人の事情でNoと言えないこどもの日本

こどもの日本Part3です*1。両エントリー共にミサイルネタですが、関連する話題がイラン戦争関連で英エコノミスト誌のコラムで取り上げられてます*2。戦争状態のホルムズ海峡周辺の衛星写真は西側企業に対しては軍事的理由でシャッターコントロールと呼ばれる規制がされます。撮影場所や解像度を制限することで軍事機密を保持するためです。しかしSNS上には中国企業による鮮明な衛星写真が多数リリースされてます。そしてそれがイランによる湾岸諸国の米軍事施設や石油施設、LNG施設へのミサイルやドローンによる打撃を可能にしている現実があります。中国の衛星画像技術はほぼアメリカと遜色ないレベルということです。

てことは日本の防衛力強化で反撃能力としてミサイル配備が進む状況ってのは無効じゃないかってことですね。仮に存立危機事態になったとしてもミサイル基地は先に潰される可能性が高い訳です。また湾岸の米軍基地が攻撃されたように、日米安保による国内米軍基地も攻撃対象になることを示します。こどもでもわかる話ですね。しかし大人の事情でそれを指摘する話はメディアにもほとんど載りません。しかし1973年の第一次オイルショックでは事情が違いました。当時の田中角栄首相がキッシンジャーに「文句あるならアメリカの石油を寄越せ」(意訳)と言い放ったことは指摘されてます*3。親イスラエルのニクソン政権にアラブ寄りの外交姿勢を懸念されてのやり取りですが、当時の田中首相は緊急事態の認識から危機対応としてこういう舵取りをしたもので、政敵の福田赳夫氏を大蔵大臣に任命し、持論の日本列島改造論を封印して総需要抑制策を認め、経済分野の全権委任をしたものです。以後公共事業の抑制や東北、上越新幹線の建設凍結などで狂乱物価を収め、国民に省エネ自粛を呼び掛けました。

田中氏にとっては不本意な意思決定でしたが、状況に応じたプランBという意味で今こそ参照されるべきですが高市政権は景気腰折れ懸念を公言して対応しません。高市首相は19年前に科学技術庁長官時代に「イノベーション25」と呼ばれる文書に記述した技術力に対する強いこだわりを反映した危機管理を成長につなげる方針として展開されてます*4。

ここで思い出されるのが石原慎太郎氏と盛田昭夫氏の共著[Noと言える日本」*5で盛田氏が指摘した日本の半導体なしにアメリカのハイテク兵器は造れないというくだりです。時は日米半導体摩擦の最中で日本の半導体産業が世界をリードしていましたが、その後失速して今に至ります。その現実をアップデートできていないのでしょう。危機管理を安保防衛と狭く認識して日本抜きでアメリカの兵器産業も成り立たないと二重に現実とズレた認識だから、1973年の第一次オイルショック以上の今そこにある危機を認識できず*6、安保防衛で成長という妄想に取りつかれているとしか思えません*7。こんな高市首相が目指す憲法改正での緊急事態条項が如何なるものか。防衛を口実にした独裁にしかならないのは言うまでもありません。

石原氏はその後都知事になって金融危機対応として都出資の新銀行を設立して銀行の貸し渋り対策を打ち出しましたが、素人判断の甘い融資審査で不良債権の山を築き負の遺産を残しました。その新銀行東京の資産を継承したきらぼし銀行が都出資の優先株400億円の年内返済を発表しました*8。これも日銀の利上げで金利復活したから融資の利幅が増えて実現したことでもあり、低金利政策が終わったことも影響してます。リーダーの思い込みの後始末が如何に厄介かを示します。

そして高市首相ですが、一方で明らかに現実認識が変なところが見られます。成長17分野を巡る民間との認識のずれがあります*9。南海フェリーの代替新造船はコスト高で断念されるけど*10防衛関連で政府が買う艦船建造は取り上げられている一方で、自動車は除外されて業界から驚きの声、EVの壁*11はガン無視。食糧安保上重要なコメ増産は見直すのに高く売れるイチゴは注力とかチグハグ過ぎて眩暈がします。

てことで最後に鉄分補給^_^;。難工事で遅れている北海道新幹線の事業費膨張で財政審議会がB/C比を見直した結果「中止すべき水準」と*12。但し便益(分子のB)はそのままに費用(分母のC)だけを見直した結果ですが、重金属残土の処理や硬い岩石層で切羽の破損とかトンネル工事に伴う不確実性から更に費用は膨張する可能性がある一方、インフレによる上振れでJR北海道の受益に基づく線路使用料の増額がどこまで可能かとか、外部経済効果の上振れとかは計算されていないので、片手落ちの議論とは言えますが、現在の整備新幹線スキームでは解決困難なことも確かです。例えば燃油高騰で苦境にあるエアラインのコードシェアを解禁してJR北海道以外からの線路使用料収受と共に、経営悪化確実なエアラインの救済策を便益に加えるというような工夫が必要と考えます。

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Saturday, May 02, 2026

債務の壁

日銀の4月利上げは確実視されてましたが、結局見送られました*1。行間を読ませる良記事です。本当は利上げしたかったけど大人の事情で見送りを決めたと読めます。政権の牽制発言もですが、国債の買い手不在という現実が重くのしかかります*2。債券市場はインフレ警戒モードなのにお構いなしに財政拡大で国債発行を増やすから、日銀が動けない状況です。つまり米FRBや欧州ECBのように量的引締め(QT)でベースマネーを減らしてから利上げという手順を踏めないから、未だに減らしてはいるものの日銀の国債買い入れを続けざるを得ない状況があります。ベースマネーは民間銀行が口座を持つ日銀当座預金に積み上がっており、政策金利の指標となる銀行間の短期市場が機能せず、超過準備に付利することでしか金利操作ができず、日銀の収支悪化で債務超過さえ起こしかねない状況です。

しかも政府は財政拡大基調意を変える気さらさらなし。例えばこのニュースです*3。防衛費増強も消費減税もガソリン補助金も問い欲張っている訳ですが、既にガソリン補助金が巨額になって予備費を食い尽くす勢いです*4。ホルムズ海峡封鎖は長引きそうですし、仮に解除されても石油施設やLNG施設の破壊もあり、歳出量は減りますし、現状足止めされている船舶が目的地で荷降ろししてまた戻るという行程は相応の時間を要します。その間に備蓄が尽きたりすれば打つ手を失います。その時には補正予算となってますます財政拡大となり、国債消化が厳しくなって長期金利上昇となります。よりタイトな化成品は中国からの輸入が増えております*5。コロナの時のマスクを彷彿させますが、安価な中国製品の輸入は国産メーカーの市場を奪う可能性があり、レアアースのようなチョークポイントにもなり得ます。尚、中国はこの状況でも備蓄放出を行わず寧ろ増やしています。

そして伝家の宝刀の為替介入が行われました*6。160円70銭まで進んだ円安が一気に155円台まで戻し、投機筋にダメージを与えた模様ですが、これで留飲を下げてるのは問題です。日本国債の消化で海外投資家へのセールスが行われていて徐々に増えているのですが、彼らにとっては弱い日本円の投資は為替ヘッジとセットであり、実は投機筋の正体は彼らだったりする訳ですが、為替介入で噂させたら彼らも国債買わなくなりますよね。愚かです。国内勢は日銀をはじめ銀行は過去の大量買いが災いして特に地方銀行で金利上昇による評価損を抱えている状況で、買い増しは厳しいですし、生保なども同じような状況でとても買い増しは無理です。買い手の居ない公債を発行し続ければ長期金利はさらに上がります。そうすると国債の利払い費が上昇して更に財政を圧迫します。八方ふさがりになる訳です。

これ思い当たるニュースがありまして、東葉高速鉄道の債務危機問題です*7。営業収支は黒字ながら2000億円の債務を抱えており、金利上昇で利払い費が増えれば資金が枯渇して所謂黒字倒産状態になります。回避策は東京地下鉄、京成電鉄と沿線自治体による資本増強と運賃値上げですが、後者は元々高運賃で寧ろ値下げを求められており*8、これ以上上げれば今でさえ見有られる利用忌避が進んで逆効果ですから、結局資金支援となりますが、自治体出資の三セク鉄道故に協議がまとまるかどうかは微妙です。それでいて船橋市に請願駅が建設中*9。請願駅ですから船橋市が負担する100億円は別枠ですが、支援を求められる各自治体の協議を複雑にする可能性はあります。

以下蛇足。東葉高速鉄道の莫大な債務は工事時期がバブル期に当たり、用地買収難で事業費が膨らんだことが響いています。鉄道建設公団のP線工事という枠組みで、工事主体は鉄建公団ですが、実際には低利の資金提供で利子補給受けられるものの、実費である元本への支援はなく事業費の膨張がこの結果を生んだ訳です。債務の壁が立ちはだかる状況はわーくにの縮図です。

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Thursday, April 30, 2026

AIの壁

壁はEVだけじゃない*1。中国の計画経済はAIも同様です。特にフィジカルAIの進化著しく、ハーフマラソンで男子世界記録を更新しました*2。チャイナスピードと呼ばれるハイテク分野のスピード進化ですが、フィジカルAIは際立ちます。SDVの究極であるロボタクシーは複数都市で稼働している一方、ヒト型ロボットでは抜きんでた存在です。ハーフマラソンの成果はつまるところヒトの身体能力を超えたということを示す重大なマイルストーンです。

AIは大量のデータを学習に用いますが、ネット上のデータを使う生成AIは早くもデータを食い尽くしてしまっています。どれだけ大量でもネット上のデータ自体は有限なのに処理能力の進化で早くも天井に突き当たっている訳です。しかも元々玉石混交と言われ真偽が定かではないデータも多数あるので、下手すればウソ製造機になりかねない訳ですが、リアル世界からデータを取得するフィジカルAIならそういう問題もなく優れたデータを大量に学習できる訳です。そしてヒト型ロボットならば労働の代替に使うことも可能な訳ですが、その時に問題になるのが発熱です。制御の半導体も駆動のモーターも電気で動く訳で、抵抗熱を生みます。そして熱は半導体にとってもモーターにとっても性能劣化の原因となります。故に長距離の持久走をこなすには冷却システムが肝になる訳で、ハーフマラソンを走ったヒト型ロボットはそこを改良して結果を出したということになります。バッテリー容量の問題も制約条件になります。その意味で生身のヒトのエネルギー源は糖質などのバイオ燃料ですからロボットよりも環境ににやさしいとは言えます^_^;。

既に中国では政府補助金を得て複数社から量産型のヒト型ロボットが売り出されており、採用企業にも補助金が出る仕組みがあります。これEV普及機の販売補助金と同じですが、産業の立ち上がりを支援していずれ終わらせるという形です。この結果初期には多くのプレーヤーが補助金目当てで参入して競争を繰り広げる一方、ある段階で補助金を止めて以後市場競争に任せて淘汰を経てチャンピオンを育成するという手順となります。巨大な中国の国内市場で競争で鍛えられて勝ち残った企業はその時点で世界的大企業になるということです。

加えてメーカーのみならずユーザーにも補助金を出すことで普及を早め、EVロボタクシーのような新ビジネスにつなげるという巧みな戦略という訳です。ヒト型ロボットもいろいろな使われ方をして例えば茶摘みのような高スキルを求められる肉体労働現場にも導入されているとか。家事労働や介護などケア労働も当然視野に入りますが、一方で葬式の進行役とかコスプレなどエンタメ分野と、よくわからないところにも使われているようですが、そうしていろいろな現場で試されて最適解が求めらてそれがメーカーにフィードバックされれば好循環を生むことにもなります。人手不足で苦しむアメリカや韓国が開発を後追いしてますが、中国国内市場の圧倒的なボリューム感の前には劣勢です。但し現状AIの最先端はアメリカの生成AIにあり。中国は未だDeepSeekなどでキャッチアップする位置付けです*3。しかしAIの社会実装の観点からは中国の進め方は理に適っています。

それなのに後追いしかできないわーくに*4。27日に日経平均株価が終値で初の6万円台をつけましたが、フィジカルAI関連でファナックなど産業ロボット銘柄が買われました。日本が得意とする分野ですが、狙われてるのは現場データだったりします。今のままでは米韓企業の下請けに甘んじる可能性が高いと言えます。それでいいのか?また雇用情勢にも変化が起きています*5。AIのビジネス利用で学習コストが高いのに少子化で希少化して初任給が上昇している新卒採用を抑えようという日本企業の姿勢です。但しそうなるとAIエンジニアやデータサイエンティストが足りないから中途採用で補充しようということですね。これが横並びで起きるとどうなるかと言えば即戦力の中途採用者の待遇が上がる一方、新卒の売り手市場が終わる可能性があります。

既にアメリカでは雇用慣行の違いもあって若年失業率が高止まりしていましたが、それどころか高給取りのプログラマーやSEの解雇にまで踏み込んでいます。日本の場合はゼネラリストとして採用される文系事務職の採用減という形で現れることになります。しかしそれで得られる間接部門の合理化だけではAI活用とは言えない訳で、それによる生産性向上も限られたものとなりますし、ヒト型ロボットのところで触れたAIのエネルギー消費問題がAIデータセンターの電力爆食い問題でも生じます*6。人がこなしていた事務仕事をエネルギー消費の激しいAIで代替すればエネルギー自給率の低い日本の交易条件を悪化させて円安インフレで国民生活を窮乏化させることになります。食料自給率も低いですがエネルギーよりは輸入依存は低いし増産余地はあります。どっちがマシ?

あとここでは踏み込みませんがAIにはその他にも様々な不都合があります。その1つが日本のAI規制の緩さ、特に著作権を巡る緩さです*7。詳細はここでは踏み込みませんが、欧米でAI規制が議論されている一方で日本は基本ビジネスの邪魔はしないというスタンスです。故にデータ爆食い電力爆食いのAIデータセンターを米テック企業が日本に作ろうとしています。その結果TSMC熊本第二工場でAI向け最先端品の生産を決めたり、ラピダスの先端品の売り先として有望視されてます。しかしこれ日本のデータを搾取するに留まらず、半導体生産に欠かせない電力や水の搾取でもある訳です。しかも日本でAIを利用すればライセンス料でデジタル赤字が拡大することになります*8。日本はますますビンボまっしぐら。他にも様々な壁のあるAI分野ですが、別の機会に取り上げます。

当然日本は中国とは社会課題が異なるから日本独自の社会実装を目指す形でAIを活用する余地はあります。そんなニュースがこれです*9。欧州鉄道カンパニー発のHMAXと呼ばれるAIソリューションを横展開して送電網やビル管理に横展開するというもの。現場発のデータを生かして課題解決するものです。日本でも課題解決型のAIスタートアップは登場してますが、死の谷を越えて離陸するのを待たずに、日立のような大手企業がこうした取り組みをすることは注目されます。

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Sunday, April 26, 2026

EVの壁

製造業の壁*1冒頭の日経平均4万円の壁から1年4か月弱、最高値をつけたものの6万円の壁が立ちはだかります*2。しかも半導体関連が上昇した一方その他株は低調です。ホルムズ海峡封鎖が続く中で先行するNYダウは下げてます*3。週明けの東京市場も下げると見られます。イラン戦争の影響が長引くことを市場が織り込んでいるということです。株価の上昇自体は円安とインフレの結果ですから手放しで喜べませんが。

しかし危機感の薄いわ―くにの政府。日本船籍の船がペルシャ湾に40隻以上足止めされていて、その分輸送力が減っている上に、米国産原油その他の輸送を喜望峰ルートやパナマ運河ルートで迂回輸送することで長い船旅となり輸送効率を下げますから、運航頻度が下がって結果的に輸送力不足になります。実際タンカーや輸送船の争奪戦で運賃が高騰し、パナマ運河通航料も高騰してます。故にアメリカ・カナダ・メキシコ産の原油を代替調達しても輸送コストが上昇してますから、石油関連品の値上がりは避けられません。これインバウンドで混雑が常態化した江ノ電で、12分ヘッドのネットダイヤを維持できずに14分ヘッドに伸びた結果、所要時間が片道4分増えて運行頻度を下げて結果的に輸送力14%減で混雑を助長し、繁忙期には乗車待ちの長い列ができる状況に似ています。輸送路の目詰まりはサプライチェーンの機能を低下させます。

早速こんなニュースも*4。幸いというかバス事業者はドライバー不足で減便が相次いでいてバス自体は余っている状況で、塗装面積の広いバスの生産調整はやり易いとはいえ、現状が続けば自動車生産にも重大な影響が出るということになります。バス・トラックのディーぜルエンジンの排ガス浄化装置尿素SCRに使うアドブルーも不足してますが、これもドライバー不足が救いでも、肥料原料との取り合いは起こります。こうなると追浜と湘南の2工場閉鎖を決めた日産がEVの開発生産を中国に移しますが*5、これが正解になる可能性は指摘しておきます。

製造業の壁でも指摘したようにテスラと中国のEVメーカー以外の自動車メーカーはガラケーメーカー化していますが、それを最も実感しているのがリーフで量産EVの先陣を切った日産ということですね。特に中国のモーターやインバーターやバッテリーの進化は、中国政府の産業政策もあって爆発的なイノベーションを引き起こし、テスラも中国製造拠点でその恩恵に預かった結果、伝統的自動車社メーカーを後塵に追いやった訳です。そのキモは早すぎる技術革新に尽きます。最先端の技術を取り込むには新車開発を短期間に行う必要がある一方、市場投入後により新しい技術を纏って後追いするライバルが出る訳ですから、必然的に陳腐化が早まり中古車のリセールバリューを低下させます。それを防ぐ為にはソフトウエアでアップグレードできるようにする必要があり、CASEと言われた自動車産業の変化がSDV(Software Defind Vehicle)へと必然的に進化せざるを得なくなったということです。わかりやすく言えばパソコンやスマホのように進化が早い一方でソフトウエアの更新で性能アップすることで、ハードとしてのEV販売後の収益機会をメーカーにもたらすことになります。クルマ作りのアーキテクチャーの根本的な変化です。対応するには新車開発を短期間で行うと同時に統合車載ソフトの拡張性を持たせることが必要ということです。

その為にはモジュール単位の電子制御ユニット(EPU)を統合して最終的には高性能EPUで全体を制御するという形まで視野に入れる必要があり、単独でそこまで出来るのは日本ではトヨタがギリギリというところでしょう。その意味では結構重要かもしれないニュースはこれです*6。デンソーは既にEPUやインバーター向けパワー半導体を生産してますが、EV化を睨んでのM&A提案をロームに断られました。尚、ロームとのパワー半導体統合を目指す東芝は阪急電鉄、三菱電機は大阪市交という鉄道のローンチカスタマーに育てられたパワー半導体大手です。これがトヨタの電動化に影響する可能性はあります。一方一時は日産救済の期待を背負ったホンダは大変なことになってます*7、ソニーとの合弁解消で自動運転も遅れを取ることになります。こうなったのは実は2輪車の不振が影響しています。元々4輪車は赤字体質だったけど2輪車の世界王者故の趙あk利潤で穴埋めされていたから競争力を維持できていたのが、アジアの新興勢が電動化で躍進して市場を奪われて狂いが生じました。50㏄原付規制に護られて対応が遅れたことも影響していると言えます。

中国の産業政策を補助金漬けと見るのは間違いで、実は計画経済の流れで政府が産業の方向性にコミットして民間企業を動員するというソビエト型から進化した市場型功利主義的計画経済と言えるもので、実はお手本は高度経済成長時代の日本です。当時ブレトンウッズ体制で1ドル360円の固定相場に護られ、安価な原材料資源を輸入して国内で加工して付加価値をつけて輸出するという加工貿易立国の前提で、主要輸出先はアメリカだから太平洋ベルト地帯に生産拠点を集め港湾を整備するという方向性は明らかでした。故に国鉄が東海道新幹線の建設を決断できました。そして実は産業政策の担い手は日銀でした。当時の金融政策は固定相場維持の必要から国内景気が過熱したら直ちに公定歩合を上げて民間融資による信用創造を抑制し、景気が冷えれば下げて融資を促進するというシンプルなものでした。その日銀が窓口規制という銀行の融資指導も行っていて、当時の通産省の助言に沿って優先融資先を産業単位で示すということをやっていました。それに沿って民間銀行が個別企業に競って融資する形で、鉄鋼、機械、自動車、石油精製、化学などの製造業を後押ししていて、丁度中国の功利主義的計画経済とそっくりでした。

政府が後押すする産業分野に優先的に融資された結果、銀行預金主体の家計貯蓄をリスクマネーに変換するという金融の基本が機能していた訳です。だから「貯蓄から投資へ」なんて誰も言わないし銀行融資による現物投資のリターンは利息の形で預金者にも還元されていました。故に中国は米ドルの通貨覇権に対抗すべく人民元の国際化を模索してますが、IMF-SDR的な通貨バスケット連動には踏み込んだけど変動相場制への移行は足踏みしている訳です。その突破口として中央銀行仮想通貨(CBDC)のデジタル人民元による貿易拡大を狙い、ウクライナ戦争で窮地のロシアやイラン戦争関連もイラン産石油取引やホルムズ海峡通行料もデジタル人民元を推していると言われています。

こういう状況ですから地獄への道のEVMJ*8が生産委託した新興企業には怪しげなものがあっても不思議ではありません。EVMJに見る目がなかっただけです。幸い地元の江ノ電バスは実績のあるBYDの大型と小型を導入しており、その完成度の高さは実車で実感しております。たかがEVされどEV。目利き力って大事です。

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Saturday, April 18, 2026

地獄への道は善意で敷き詰められている

サプライチェーンが出鱈目だった*1EVMJが民事再生手続きを申し立てました*2。果たしてホワイトナイトは現れるか?

情報が少ないんですが Busrama誌211 に掲載されたEVMJ社長インタビューで、元々インバータやバッテリーのメーカーのスタートアップ企業で自社技術を盛り込んだEVバスやトラックの製造販売を目論み、製造は中国メーカーに託すファブレス企業としてスタートし、ゆくゆくは北九州市の本社工場で最終組み立てまで行うということで、現時点で製造はすべて中国の協力会社に委ねている状況です。つまり技術系スタートアップながら自動車生産の経験はなく、中国の協力企業もBYDや吉利のような大手ではなく必ずしも実績があったわけではないようです。

EVの開発はスマホなどで見られるアジャイル開発の要素はあるし、技術革新のスピードが早く、とにかく意思決定の速さが求められることも確かですが、実車の販売となれば越えなければならないハードルは高い訳で、国内12社の自動車メーカーでもてこずっていて、特に大型商用車ではFCVバスのトヨタSORAはあるものの、耐久財の乗用車と違って産業財となりますから頑丈で長期間の使用に耐えてトラブルも少ないなどさらに高いハードルとなります。その意味でファブレスでアジャイル開発という着眼点は良いのですが、中国の複数ある協力企業の実力が伴っていなかったようで、インパネのデザインやスイッチ類の不統一とか性能のバラツキで国内向けのチューニングに苦労したようです。つまりNVIDEAのようなファブレス企業はTSMEのような高度な技術の協力工場がなければ画に描いた餅になりかねない危うさはあったと言えます。

つまり協力工場選びで躓いて実績のない中国企業に製造委託したばかりか、中国当局の保安検査でも不合格だったのに国内向けではないからと認可され、また経緯はわからないけどBYDに決まりかけた万博バスを「国産」の謳い文句で逆転して採用が決まり、実力不相応の大量受注してしまったが故に、国交省の型式認証も甘くなって以下略という流れです。大阪では府と市の危機管理が甘かったと議会で突き上げられてますが、はっきりした悪党が見当たらないという意味で、タイトルの欧州の古い諺(英語表記では The road to hell is paved with good intentions)ですが、良かれと思って悪い結果をもたらすということです。尚 Busrama も折に触れてEVMJを取り上げて所謂提灯記事かという記事を掲載してますが、メディアの性格上広告主であり業界を統べる日本バス協会が推すEVMJを悪く書けないという忖度はあったと考えられます。情報の受け手としてそれを推察できるリテラシーは大事だと気づかされます。

これオルツの循環取引事件で見られた上場スタートアップ故の数字で結果を示せという市場の圧に負けたことに似ていて、EVで劣後する日本のバス業界の期待の星という圧がこうさせたと見ることもできます。そして日本ではスタートアップが育たないという残念な現実もあります*3。おそらく政府肝いりの半導体メーカーのラピダスもこうなるかも。失われた30年は必然の結果です。

そして70年代の2度のオイルショックを上回ると見られるイラン戦争を巡る政府の危機感のなさも大概です。こんなニュースに眩暈がします*4。これ制服自衛官が国歌歌っただけなら問題ないんですが、自民党大会という政治イベントの場で、しかも制服着用でとなると自衛隊法違反を問われる問題です。「法的に問題ない」と強弁するも世論に叩かれ自民党内からも「軽率」の批判が出て高市首相も小泉防衛相も「事前に知らされていなかった」と言い逃れ。事実だとすれば文民統制に疑義が生じるし「私人としてノーギャラで」となると休暇中の自衛官歌手が呼ばれてボランティアとして制服徴用して歌ったということになってますますヤバい話になるのだが。こちらの善意はどす黒い。

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Sunday, April 12, 2026

前門の虎mp後門のsen狼獅子身中のmushi

ゾンビの性*1のナフサ不足の影響は既にサプライチェーンに表れてます。まず答え合わせ*2。87年に67%まで低下した中東依存度はその後増えますが、官民の協力で中国やインドネシアからの輸入を増やしたものの、両国の経済成長で国内需要にシフトして輸出が減り、価格上昇し相対的に安価な中東産への依存度が上がります。加えて自動車の燃費改善でガソリン需要の低下があって輸入自体は減りますが、その結果石油元売りの合従連衡と製油所の統廃合でナフサの国内調達は4割に留まり、不足するナフサなどは中東やアジアからの輸入で補完して今に至ります。輸入ナフサも大半は中東由来なのでホルムズ海峡封鎖の影響を受けます。

石油由来の溶剤などが既に出荷制限がかかり始めています。影響は多岐に亘り、塗装、包装、洗剤その他に影響が出始めています。ホルムズ海峡封鎖が続く限り供給難は避けられず、そうなると取り合いで高く売れる分野、つまり価格転嫁が容易なものに流れて、逆に価格転嫁が難しいものほど不足して限界費用が高くなるということになります。既に建材の値上がりがあり*3、住宅メーカーが悲鳴を上げてますが、出荷側は先行き不透明だから値上げして出荷調整で需要抑制を図っている訳で、今後洗剤などの日用品の生産が止まる可能性があります。また医療関連は保健医療で事実上の公定価格故に市場で干される可能性が高いと言えます。それに留まらず塗料系の供給難から自動車生産が止まる可能性すらあります。なのに政府の危機感は希薄です*4。

てことでトランプにおべっか遣って自衛隊派遣などの無理難題を回避しても*5、台湾有事発言以来の中国との関係悪化は続き*6、前門の虎後門の狼ばりの泣きっ面に蜂。しかも週刊誌ネタですが自衛隊派遣に乗り気だった高市首相を今井内閣参与が止めたとか*7。与党議員や官僚から「人の話を聞かない」「答弁書も書き換える」「一人で決めたがる」という声が聞こえることのリアルです。こんな獅子身中の虫(無視?)がいたらまともな対応は期待できません。しかしJR貨物による石油輸送という民間対応は油売りに翻弄される汗っかきの在り方でもあります。

所謂2024年問題による物流ドライバー不足問題ですが、予想ほどの混乱は起きなかったという分析があります*8。要因は大きく2つ。1つはコロナ明けの需要減。外出自粛でオンライン取引が増えたものの自粛解除で鎮静化したこと。2つ目は出荷企業を中心に共同配送や待機時間短縮などの最適化が模索されたことですが、一方で荷受け企業側の対応は不十分で未だに待機時間を減らせていません。逆に言えばこの部分の最適化が進めば改善の可能性はあるものの、ドライバーの年齢構成が50代中心で若年層の参入が少ないことから、先行きは最大25%の輸送力不足が見込まれています。そして物流企業の対応として長時間勤務になりやすい長距離便からの撤退が進んでいることも寄与しています。これ長距離ほどコスト面で有利になるモーダルシフトによる鉄道貨物や内航海運へのシフトを政策誘導する余地があるということでもあります。

にも拘らずこういったニュースが流れます*9。南海電気鉄道伝統の四国連絡輸送を担う南海フェリーの撤退です。特急四国号→サザンとの継送と自動車航送で長らく続いたルートですが、本四連絡橋開通もあり、コロナ禍で利用低迷の結果欠損を出すようになり債務超過状態に加えて船舶の老朽化で新造船への置換えもコスト面で無理ということで撤退が決まったものです。これ国内造船業の高コスト故の問題でもあり、造船業からの大手の撤退で中国や韓国に敵わない現実もあります。アメリカではすでに造船業は枯れてしまいましたが、日本も同じ轍を踏んでいる訳です。造船は軍民デュアルユースの重要なピースの筈ですが、現実は厳しいものがあります。

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Sunday, April 05, 2026

甘くないサプライチェーン攪乱

前エントリーの続きですが*1、イラン侵攻でアメリカに対抗するホルムズ海峡封鎖ですが、ボチボチ通過船舶が見られます*2。船毎に個別にイラン政府と交渉している模様です。狭い場所で33㎞のホルムズ海峡ですが、一応国連の国際海峡に指定されているものの、沿岸国のイラン、UAE、オマーンの各国は認めておらず、各国の領海に跨る航路が設定されております。喫水線下が深いタンカーが通れる航路は限られており、中央が深いスエズ運河に似ています*3。故にイランによる航行船舶の管理も容易で、機雷を撒かなくても封鎖が可能で原油高に苦しむアメリカのチョークポイントになる一方、中国船などは通すという風に選択的に対応できる訳です。攻撃用ドローンという兵器の進化も関わりますが。

とはいえ通過船舶は少なくペルシャ湾で足止めの船舶もまだ多数ある上、イランの反撃で石油施設やLNG施設も破壊されていますから、中東産原油やLNGその他の資源の搬出量は減少します。その影響は多岐に亘り、アジアを中心にサプライチェーンを攪乱させます。既にベトナムやフィリピンなどではガソリンの品切れや停電などの影響が出ていますが、ガソリン高を補助金で抑え込むわーくにの危機感のなさ。しかしさすがに遅ればせながら動きが見られます*4。とりあえず石油関連に偏ってますが、LNG不足は電力危機に繋がるし、尿素やアンモニアは化学肥料の供給難で農業も影響します。またヘリウムショックも*5。医療機器のMRIで使われAI半導体製造にも欠かせないヘリウムですが、天然ガス精製過程の副産物でアメリカ、ロシア、カタールが生産国ですが、そのうちの1つが戦火で供給停止となれば世界で取り合いになります。リニアの実現可能性も低下します。

てことで今までも災害その他でサプライチェーン攪乱はありましたが、今回は異次元と言えるものがあります。例えば中越沖地震でエンジンのピストンリングのトップメーカーのリケンの被災で川下の自動車メーカーは直ちに生産停止して各社からリケンの復旧の応援に人員を派遣して1週間で復旧させました。見事な危機管理ですが、生産停止期間には売り上げは立たない訳ですが、その損失を考慮してもサプライチェーンの回復に集中した方が被害が少ないという判断です。ホルムズ海峡封鎖でさまざまな産業に支障が出る中で、政府の対応は適切かは問われます。なのにこんなことばっかり*6。ペルシャ湾で足止めされている船舶の安全通航をイラン政府と交渉することや需要抑制のための省エネ自粛ではなく公務員を予備自衛官にする法案作りって、どこまでチグハグなのか?戦争したいの?他国は現実的な対応に動いてます*7。加えて日本の自動車メーカーには悲報です*8。トランプ政権のEV補助金停止で関税のマイナスを打ち消したのも束の間、ガソリン高でEVシフトを求められています。遅れている日本メーカーには負担です。

そしてEVつながりでこれも取り上げます*9。大阪関西万博輸送で万博協会が購入し万博輸送に供して終了後大阪メトロ傘下の大阪バスが引き取る予定の150台がリコールで動かせずにいるというもの。元々国産EVバスをということでエルガEVを開発中だったいすゞに打診しましたが、試作段階で量産は無理ということで、大量受注可能で国内でも採用実績のある中国BYDのEVバスに決まりかかったところで当時の西村経産相からEVモータースジャパン(EVMJ)が推されたという経緯があるようです。EVMJは北九州市に本社のある国内企業ですが、生産は中国の新興企業に外注して販売とアフターサービスを国内で行うということで起業し、一部で納入されたもののサプライチェーンは確立しておらず、150台の大量受注ができるだけの実態は備わっていませんでした。外注先の中国新興企業も生産実績のない企業で中国の型式認証も得られず、輸出向けだからと中国当局の規制をすり抜け、日本の国交省も万博に間に合わせる為に手抜きしてという日中当局の不作為もありました。お陰でブレーキホースが露出していて小石を撥ねた程度で傷がついてエアが抜けるレベルの雑な作りでした。それでいてBYDのバスより割高で大阪府などが40億円の補助金を支出しており返還交渉中です。EVMJはおそらく潰れるでしょう。EV後進国という現実を無視した愚かな顛末です。

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Sunday, March 29, 2026

戦争で沈む日本経済

総選挙直前のエントリーで選挙戦で語られない戦争と社会保障を取り上げましたが*1、まさかのアメリカとイスラエルのイラン攻撃で現実が追いつくとは思いもよりませんでした。そして高市政権の危険性も明らかになってきました。例えば自衛官の不祥事です*2。相前後して婦女暴行や全裸俳諧などもありましたが、国際法で治外法権を持つ外交官に対する現役制服自衛官のテロ未遂事件という超ド級の不祥事です。しかし政府もメディアも反応が弱いのが気になります。閣僚の遺憾発言で済ましてますが、本来公式に謝罪すべき事案を「残念]で済ませている訳です*3。大事に至らなかったとはいえ大使に危害が加えられればただ事では済まなかった筈です。サラエボ事件が第一次大戦の契機となったことを学ばなかったのか?中国も今の日本政府がまともな謝罪をしないことも計算済みでしょう。実際には情報戦を仕掛けています*4。国内向けの渡航自粛勧告ですが、これがニュースとして世界へ流れれば、日本への国際社会の見方に影響します。所謂戦狼外交*5ですが、台湾有事発言と同様に日本が何らかの譲歩を示せば終わる話でもあります。

てことで戦争を選んじゃった日本の有権者にとってはイランを巡る紛争の長期化で危機的状況なのですが、政府に危機感は乏しく、原油の戦略備蓄放出や補助金支給による目先の価格圧縮ばかりで、70年代の石油危機時のような省エネ自粛や総需要抑制策には踏み込みません。その結果円安が進み原油高と相まって国民生活を苦しめます*6。それなのにアメリカにホルムズ海峡の機雷掃海を約束したりしてますが、停戦が先だろ!今や安全保障上の最大のリスクはアメリカであり、ミドルパワー国の団結が叫ばれ、また力をつけてきたグローバルサウスとの連携を考えればアメリカべったりはリスクです。

今回の円安は有事のドル買いの反映でもあり、動きは小刻みでもかなりしぶとく続くと考えられます。その理由は複数ありますが、1つは原油高によるアメリカのインフレ再燃でFRBの利下げ観測が終わり、寧ろ金利上昇局面になっていること、株式でAI相場が堅調ながら実際に利益を出しているのがエヌビディアだけで先行きに疑問が持たれており、一方SaaSの死と言われるソフトウエア企業の淘汰の可能性とか、逆にキャタピラーや電力会社などがAIデータセンター関連で買われたりと、様々なトピックスに反応していて落ち着きません。加えて債券が売られ有事なのに高止まりした金が利益確定で売られて買い戻されたりとか、プライベートクレジットと呼ばれる低格付け債券ファンドから主に個人の資金が流出したりで金融市場が落ち着かずボラティリティが高い状態が続いています。投資家には動きやすさから手元資金を厚くする動きが見られ、日本株に流入していた海外勢が資金を引き揚げた結果日本株が売られ、リスクヘッジの為替予約のポジションを手仕舞いして円が売られということですね。

てことですでに手遅れかもしれませんが、国民生活を強く豊かにするどころか窮乏化が止まらない状況が加速しそうです。そんな中で社会保障国民会議で税と社会保障の改革の議論が始まりましたが、議論の流れとしては消費税減税よりも給付付き税額控除にウエイトが移っています。議論の前提となる国民所得の動きで看過できない傾向が見られます*7。給与所得で見ると過去30年に亘って中央値も90%点も99%点もほぼ変化がなく、このデータからだけでは巷間謂われる格差拡大はなく、ジニ係数も変わらないということになります。給与所得だけの結果ですから全数とは言えませんが、より範囲の広い税務申告個票データで見ても同様の傾向が見られます*8。つまり傾向から言えば日本は全所得層が円安を通じて購買力を低下させているということになります。但し税務個票データでも農業、不動産、金融所得などの分離課税があり、例えば富裕層が多く保有していると見られる金融資産所得は源泉分離課税で個票データに反映されていない点は注意が必要です。結論から言えば国全体が貧しくなったということです。市場の失敗を克服できず、企業のアニマルスピリットを引き出せなかった政治の失敗です*9。社会保障の充実のためには富裕層課税はほぼ無意味で社会保障財源としての消費税の減税は消費額の多い富裕層ほど利得があり問題で、給付付き税額控除が望ましいということになります。加えて企業経営者の競争による価値創造や教育や就労の機会の平等の確保が求められます。

経営者の競争という観点からJR東日本とJR東海を取り上げてみます。目先の業績で見ればコロナ明けの回復が早かったJR東海に対して稼ぎ頭の首都圏輸送で需要が戻らず民営化後初の運賃値上げに踏み込んだJR東日本*10では差は歴然ですが、実は東京~熱海間で在来線運賃が新幹線運賃より高くなるという珍事が起きています。故に従来どちらにも乗れた普通乗車券が分離された訳です。しかも100km超の東京山手線内発着や200㎞超の東京都区内、横浜市内発着の特例はそのままですから、新幹線特急料金はかかるものの新幹線利用がお得という逆転が起きています。

ならばJR東海も同じ幅で値上げすればといってもゾンビエントリーで説明したように、JR東日本は向こう3年平均の欠損の可能性を示して認可を得ました。鉄道運賃の基本はコスト積み上げ方式に2%の標準報酬率を乗せた総括原価の認可を受けるのに凡そ2年を擁しているように直ちに追随はできない仕組みです。逆にヤードスティック規制で同等と見做されるJR旅客会社同士で他社と比べて合理化努力が不十分と見做されれば値上げ幅を圧縮されるのですが、その点は逆に無線式クルージングイン保安装置のATACS導入*11やドライバレス自動運転への挑戦などで人口減少による省力化と共に需要減少に対する間引きなど輸送品質の劣化を防ぐという攻めの姿勢が認められ、その為の投資で借入金が増える一方でインフレによる金利の復活で利払いが増えるという合理化努力の枠外の不可抗力もあります。加えて国鉄時代から続く通勤定期運賃や通学定期運賃の割引率の適正化が認められるなどしていて、ピーク時間帯の定期客比率が高い一方でそれに合わせた輸送力増強投資が迫られる一方で閑散時間帯の過剰設備遊休化という構造的な問題に対する主張が認められました。つまり需要抑制のための運賃改定に道筋をつけた訳です。

ところが新幹線のぞみ増強で絶好調なJR東海は欠損可能性を証明できないから運賃値上げ申請自体が困難で経営陣から「努力した者が報われない」の恨み節ですが、困難な行政手続きで自社の主張を認めさせてリスクを取って借入金で投資を重ねるJR東日本に対して、リニア工事の遅れをいいことにリニア向けの低利の財投資金3兆円を流用してマッチョなのぞみ増強で増収を達成したJR東海*12のどちらがリスクを取ったと言えるのかというのは微妙です。そしてその観点から言えば微妙なニュースとしてリニア静岡工区も話題があります*13。あくまでも県の容認方針というだけで、各自治体の承認を得ている訳ではありませんが、大井川の水問題が典型ですが*14、大井川の渇水など工事の影響を心配する自治体の指摘に対して全量戻しを約束しながら後に工事が終わったらとテヘペロして自治体を怒らせた強引で不誠実な対応が原因の未着工だった訳で、自治体との協議が進んで目途が立ったという県の方針ですが、協議自体が決着した訳ではありません。加えて他の工区でもトラブル多数な上人件費や資材費の高騰で事業費の膨張も止まらないし、ホルムズ海峡封鎖でカタール産ヘリウムの供給不安もありと前途多難。寧ろ勇気ある撤退も考える必要があります。まあ無理でしょうけど。

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Sunday, March 22, 2026

ネオ油売りに媚びる汗っかき

ゾンビ*1の次は汗っかきと油売り*2のニューバージョンです。まずは答え合わせ*3。ガソリンの店頭価格を下げるために元売りへ19日から30円の補助金を復活させました。結果は店頭価格で20円程度下げてますが、またしてもさや抜きされてます。つまりゾンビを生かすだけ。しかしゾンビの弊害はそれに留まりません。日米首脳会談で日本政府が打診したアラスカ原油増産による輸入拡大を巡る問題です*4。アラスカ産石油の増産はアメリカの歴代政権で検討が続けられてきましたが、積出港へ至るパイプライン整備がコスト面でネックとなっており、特にパイプライン建設には根強い反対論があって簡単ではありません。また大型タンカーが接岸できる港湾もなくタンカー輸送の非効率を克服するには港湾整備も必要で、コスト面の課題が山積しています。加えて国内製油所の統廃合で中東産重質油に特化している中で、アラスカ産中質油に対応させるチューニングにもコストがかかります。それ以前にアメリカ政府が戦略物資としている原油の輸出拡大に応じるかどうかもわかりません。

一つ可能性がある突破口としては、ウクライナ問題でロシア上空を飛べない日欧間の航空便で、今回のイラン紛争で中継ハブとして機能していたドバイ国際空港が使えない状況で、かつての北回りルートのハブだったアラスカのアンカレッジのハブ復活が可能ならば、航空燃料の給油需要を賄うには使える可能性はあります。つまり航空燃料の給油拠点をドバイからアンカレッジに移すということですが、これも大掛かりな設備投資を伴います。その費用を日本が負担するかどうかという話にでもならないと前に進まないんじゃないかと。中国系エアラインは現状でもロシア上空を飛んでますから、ANAやJALへの支援という形になりますが、経産省と国交省という日本の縦割り官僚機構の下ではよほど政治家がリードしないと実現はできないでしょう。その意味で無能な働き者と言える高市首相*4には荷が重いか。台湾有事発言*5でアメリカからも懸念された*6もののとりあえず無難に首脳会談をこなしました*7。実は首脳会談の2時間前に日欧でホルムズ海峡を巡る合意が成立していたので、日本への圧が下がった可能性はあります*8。官僚の事前根回しに助けられたとは言えます。シェール革命で産油国となったアメリカには逆らわず媚を売る悪い汗っかき路線です。

台湾有事関連ではアメリカのシンクタンクが面白いレポートを出しています*9。アメリカが求める台湾の防衛費増が足踏みしているのは親中的な国民党の反対のせいという俗説を否定するもので、財源の壁が原因としています。そもそも財政規模が対GDP比14%程度の台湾政府にとって防衛費5%は財政資金の4割を突っ込む話ですから無理があります。財政拡大には増税か行政サービスの縮小かということになり実現可能性はほぼゼロですし、未承認国家故にIMF非加盟で財政赤字拡大は重大なリスクとなります。仮に財政破綻となれば北京政府が支援に乗り出して以下略、ということになる訳です。ホルムズ海峡封鎖でも中国はこんなこと言ってます*10。中国船は海峡封鎖の影響を受けていないことと共に、台湾の窮地は中国に非軍事的な介入の口実を与えることになり、その場合は有事ではないからアメリカは手を出せないことになります。かつて大戦後の国共内戦でもソビエトの支援を受けていた共産党に対して、日中戦争の戦費調達で財政を悪化させていた国民党政府は為す術なく敗北した歴史もレポートでは触れており、健全財政はマストであるということです。これ財政悪化が止まらない日本にとっても耳が痛い話ですが。

そして日本は首脳会談のお土産として対米直接投資第2段を打ち出しました*11。第1弾と合わせて17兆円超と他国に対して突出したもので、新型原発の小型モジュール炉(SMR)やデータセンター併設のガス火力発電などで、エネルギー関連です。SMRに関してはロシア北極圏で商業発電が始まっていますが、日米共に未知の技術で、ネックは燃料ウランは軽水炉の低濃縮ウランではなく高濃縮ウランが必要で、現状商業生産できているのはロシアだけで、安全面も加味した技術開発に難問が残ります。データセンター併設のガス火力発電はAIで上振れする電力需要を緩和する目的で系統電力に依存しない電源とすることで、老朽化したアメリカの系統電力網の負荷を下げて電力料金の値上げを抑える目的です。何れも受益者はアメリカ国民で、投資資金を出す日本のメリットは限られますし、採算性にも疑問があります。これは第1弾でも同様ですが。そして投資資金が国内に落ちないことで「強い経済」が実現できると考えているのでしょうか?

そもそも成長17分野が総花的で絞り込みが足りないとは言われてますが、安保や国土強靭化に偏っていて、AIその他新産業創出に繋がり中長期で供給力を高めるものが弱い点も指摘されてます*12。悪い汗っかき路線です。そして対米投資を断れない理由としてはホンダの赤字決算に象徴される日本の製造業の最後の砦と言える自動車産業の窮状です*13。ホンダと日産の経営統合*14は結果不調に終わりましたが、日本の自動車メーカーの再編に進めなかったのは残念なところ。ホンダのEV戦略撤回はトランプ政権による補助金停止のトバッチリとは言えますが、単独で闘えると過信していた経営判断のミスでもあります。今や生き残れるのはトヨタ1社とさえ言われる状況です。4社あった商用車メーカーは2陣営に整理されて既に全て外資の傘下にあり、乗用車メーカーも中国を含むアジアと欧州で中国メーカーの攻勢に晒されて市場を失い、国内は軽しか売れないしで、今や北米市場が生命線という状況でアメリカの無茶振りを断れないということです。これ電機メーカーが陥ったガラパゴス化の構図と同じです。

中国のBYDは既に世界を席巻する勢いですし、乗用車のみならず大型トラックやバスまでラインナップしていて、特にEVバスは日本でも多数採用されています。国内メーカーではいすゞがエルガEVとして市販を開始しましたが、大量生産には至らないし定員が少なく使いにくく、とてもライバルと言える水準にはありません。三菱ふそうが鴻海と合弁でバス製造に乗り出すとしてますが、市場投入はまだ先です。そしてなんちゃって国産バスとして大阪万博で売り込んだEVモーターズジャパン(EVMJ)のトンデモ顛末もあります*15。公費を食い物にした問題ですがここでは踏み込みません。

とまあネガティブな話が続きましたが、最後に鉄ネタ。JR貨物が石油輸送に臨時列車を走らせました*16。東日本大震災でも輸送路を寸断された被災地への石油輸送で貨物列車の設定のない磐越西線に臨時貨物列車を走らせたことがありますが*17、その時より難易度は低いもののこうした利用法があることこそ国土強靭化の実践でもあります。新しいインフラを作るのではなく、既存インフラを柔軟に運用することで機能を高めていく。人口減少が続く日本だからこそ、こうしたところにこそ成長戦略の重点が見出せるのではないかということは言えます。

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