プチボナパルトたち
「…世界史的事件と世界史的人物は二度現れる…一度は悲劇として、もう一度は衝撃として…」という冒頭の有名なセンテンスで始まるマルクスのルイ・ボナパルトのブリュメール18日*1を読む機会がありましt。ライン新聞所属のジャーナリストだったマルクスが、1848年2月革命でルイ・フィリップス王政をを打倒し第二共和政になって以降、12月の大統領選でナポレオンの甥を自称するルイ・ボナパルトが選出され、1851年12月のクーデターで皇帝に即位するまでを詳細に記した著作です。当時のフランスの政治状況を詳細に記してますが、当然21世紀の日本で翻訳で読むには細かすぎて伝わらない^_^;。しかし革命(王殺し)→混乱→独裁に至る政治の構造を炙り出してはいます。
古代ローマの共和制から帝政への移行、フランス革命後のナポレオンの皇帝即位、ロシア革命後のスターリンの独裁、ドイツのヴァイマール共和国時代のナチス台頭と枚挙に暇がありません。この構造はまたBrexitやトランプ現象、欧州の極右政党躍進など、今に至るも続きます。但しそれぞれのプロセスは固有の事情で出現の仕方も異なるのですが、ザックリまとめると民主主義による自由主義の抑圧という文脈は共通しています。この観点からするとバイデン大統領の民主主義復権*2とトランプの再選*3も同様ですし、日本の高市政権の総選挙大勝も同様にみることができます。所謂アンチリベラルの風潮には共通性があるということです。選挙で正しい選択をすれば世の中が良くなると言われますが、実際はそうならず、寧ろディープステートなどの陰謀論に絡めとられてしまうような、どうにもならなさこそが政治ということでもあります。
そんな中で幾つかニュースがあるのですが、インパクトの強さではこれでしょう*4。新任の梁農相が自民党支部会合での「支持しない首長の自治体の道路予算大幅カットした」という発言音声をめぐる週刊誌報道に答えたものです。発言の事実自体は認めたものの、1議員時代の政治活動だからという訳わからない理由ではぐらかしています。実際那須烏山市と那賀川町では予算が大きく削られており、梁氏は国交政務官を務めたことがあり、国交省にも顔が効くという意味で状況証拠はまっ黒ですが、与党からな「簗氏にそんな力はない」というよくわからない援護射撃があったりますが、予算カットの事実がある以上、仮に梁氏のせいではなくても有権者への脅しにはなります。憲法の全体の奉仕者の規定もどこ吹く風、内輪の席の自慢話というノリだったから本音がこぼれたといったところでしょう。小さなボナパルトといったところでしょう。
今の日本を見渡すとこの手のプチボナパルトが結構散見されます。例えば地方首長のパワハラで兵庫県の斎藤知事*5に続いて横浜市の山中市長も出直し選挙。但し対立候補は維新系で山下ふ頭カジノ復活狙いかも*6。横浜市民は究極の選択を迫られます。自治体関連では地味にこんなニュースもあります*7。国勢調査で人口水増ししていたということで富山市職員が刑事告発されました。これ統計法という法律に違反するという罪状なんですが、なんでそんなことをするかといえば人口が減れば国の交付金を減らされるという現実がある訳で、繰り返されていた節もあり、組織的な問題もありそうです。公判で明らかになるのを待ちましょう。加えて自治体に対する国の統制の弊害ということも言えます。
そして民間企業ではこんな話はゾロゾロ。ニデックの不正会計もそうですが、古くは東芝その他多数あります。加えて三菱電機や自動車メーカーの検査不正*8、鉄道業界でも輪軸データ不正ってのがありました*9。似た構図なのがトップ3人が辞任した中部電力の浜岡原発の検査不正です*10。データ改ざんは経営陣からのプレッシャーに応えようとするエンジニアの習性という側面もありますが*11。これ鉄道の輪軸データ不正に似てます。専門家は専門知ゆえに経営の要請に対して何とかしようとするということが指摘されてますが、結果的に期限を切っても結果を出せない検査部門に対して強いプレッシャーをかけてしまうことの有害性を指摘したものです。特に勝野会長は社長時代にカルテル事件でも当事者でした。
カルテルといえばリニア工事の談合事件が結審しました*12。談合事件といっても、当時のJR東海葛西会長の方針で予定価格が低く抑えられている中で大手ゼネコンが利益確保に動いた事件ですが*13、流れとしては長大トンネル工事関連で大成建設がJR東海と技術協議を先行して行っていたことで予定価格の大枠が決まり、入札には大勢建設、鹿島、大林組、清水建設の4社が応札しました。当然トンネル工事に予定価格枠が多めに配分された状態ですから、トンネル工事を得意とする大成と鹿島以外はメリットが少なく、大林組が東京工区を譲るから名古屋工区をくれといったやりとっりがあり、メリットの少ない大林組と清水建設が不満を持って仲間割れしたという流れです。その中で大成建設の担当部長の指示で作成された星取表と呼ばれる工区ごとの落札予定のexelワークシートが動かぬ証拠として提出され決定打になりました。構図としてはJR東海の葛西会長が大ボナパルトで大成建設の担当部長が小ボナパルトという関係ですが、造反によって発覚した訳です。但し罰せられたのは小ボナパルトだけですが。
最後の東武鉄道の新栃木駅構内の作業員死傷事故の続報です⊛14。当初指揮をとる予定だった作業員がいなからと、たまたま視察に来ていた非番の上司が指揮を執ることになったのですが、打ち合わせもないままに作業に入り、見張り員の列車接近の声掛けにも無反応で作業員を線路に入れたけど、怒られそうだからと見張り員はそれ以上の制止はしなかったというミスの連鎖で事故に至ったものです。ヒューマンエラーが重なった事故ですが、急遽指揮を執ることになった非番の上司はおそらく不機嫌だったのでしょう。現場のプチボナパルトとして文句を言わせない態度が招いた悲劇と言えましょう。こうしたプチボナパルトは日常的に結構見かけます。そしてまかり間違えば人命を失うということです。ってことで諸兄は現場できちんと物言えますか?
| Permalink | 0
| Comments (0)


Recent Comments