ニュース

Saturday, January 11, 2025

製造業の壁

一時4万円越えしたものの2日続落で結局日経平均4万円越えはならず、壁―Nイノセ氏の誤算、以下略の最後に記したように、4万円の壁は強固なようです。そんなことを踏まえつつこのニュース。

日本製鉄「労組・競合と結託」主張 米国のバイデン大統領ら複数提訴 - 日本経済新聞
日本製鉄によるUSスチール買収をバイデン大統領が大統領令で停止命令を出したことを受けての提訴ですが、日本企業が米大統領を提訴する異例の展開です。米側の言い分としては安全保障上の懸念ということですが、バイデン政権で製造業復活を謳い、同盟国資本の米国内投資を奨励していた立場を覆したという意味では日鉄の提訴は理にかなったものです。

とはいえ実際は大統領選で労組票を取り込みたい意図は隠しようがありません。全米鉄鋼連盟(USW)の反対姿勢の前には、労組票を逃す訳にはいきませんし、共和党トランプ候補が反対表明していたから尚更ですが、こうして政治案件化した結果、米当局の官僚に判断を巡るプレッシャーがかかり、バイデン大統領に政治判断を仰いだ形になりました。既に大統領選の結果は出てトランプ次期大統領体制の中で判断しきれなかったとはいえ、バイデン大統領も今さら覆してもどうにもならないし、今後の選挙の票を考えたら労組の意向を無視できなかったのはやむを得ないところでしょう。

しかし日鉄も米国の労組の政治力を過小評価して労組の取り込みを十分に行わなかったとは言えます。米労組は企業横断の産業別組織ですが、週によっては州法で活動が制限されていたりするので、欧州の産別労組ほどの力はないとはいえ、日本の企業別組合のようにはいかない訳で、そこを甘く見たと考えられます。だからUSWも提訴対象となっています。

確かに組合員にはライバルのクリーブランド・クリフスの従業員もいて、クリフスは過去にUSスチールに買収提案したものの、反トラスト法に抵触するとして差し止められた過去があり、トランプ政権での規制緩和を睨んでクリフス経営陣とUSWが通じている可能性はありますが、そこまで公判で明らかにするとなると、公判自体が長期化することになり、日鉄にとっても得るものは少ないと思います。まして退任するバイデン大統領への提訴は意味があるのかどうか?

日鉄のUSスチール買収にいろいろな狙いがあるようですが、USスチールの電炉事業へのアクセスが大きいようです。コークスを還元剤とする高炉製鉄は脱炭素の観点から見尚祖が避けられないとはいえ、次世代製鉄と言われる水素製鉄の技術開発はこれからで、当面は電炉製鉄で凌ぐことになりますが、電炉の場合原料の回収鉄製品から不純物を排除することが難しく、自動車用高張力鋼板のような高付加価値品には不向きとなりますが、USスチールは電炉投資で先を行っていてそれを取り込みたいということのようです。しかも労働規制の緩いテキサス州に立地していて、実はUSWにとってはセンシティブな問題です。つまりいずれペンシルベニアの高炉を廃止してテキサスに電炉作るんだろ、という疑念です。だから単なるナショナリズムの暴走とも言い切れない訳です。

また中国の不動産バブル崩壊で国内需要が冷え込んでおり、中国国内の鉄鋼事業が過剰供給力を抱えて輸出攻勢に出ていて鉄鋼製品の国際価格が下落しており、規模の拡大で対抗することが急務となっているということもあります。そして米国内に製造拠点を持つことはもしトラのトランプ関税回避の狙いもあったでしょう。もしトラは実現しちゃいましたから、バイデン政権のうちに進めたかったけれど、頼みのバイデン大統領が停止命令を出すという皮肉な結果となりました。中国はEVでも攻勢を仕掛けており、製造業の中国プロブレムは共通しています。

例えば自動車ですが、中国は外資導入の条件として単なるノックダウン生産ではなく技術移転を重視してきましたが、外資側は中国の労働力の低廉さは魅力ですし、人口大国で工業化に伴う内需の伸びも期待していたからこそ中国事業に熱心だった訳ですが、工業化した中国がライバルになることはあまり考えていなかったようです。特にEVに特化した中国政府の産業政策もあり、バッテリーやパワー半導体やモーター用永久磁石に必要な希少資源も多くが国内調達可能という優位性を活かした戦略性があり、米テスラでさえ中国事業は重要な位置づけです。

自動車に関してはCASEと言われ、Conekuted,Autonomy,Shareing,Electric の次世代車開発に世界中のメーカーが動きましたが、結果的にテスラと中国メーカーが勝者に名乗りを上げているのが現在です。そして今Software Defined Viecle が主戦場になっています。ハードとしての車本体はシンプルな構造で量産効果を最大化した上で、ソフトウェアのアップデートで機能の追加や性能向上を図るビジネスモデルが出現した結果、テスラと中国EVを除く世界の自動車メーカーが置いてけぼりになっている現状です。

わかりやすく言えばテスラをアイフォン、中国EVをアンドロイド、その他の自動車メーカーはガラケーメーカーに喩えることができます。自動車メーカーはクルマを高く売りたいからハードの作り込みをしがちで、ハイテク技術も機能を内蔵することで、高機能だけど使い勝手は必ずしも良くない上に、それを付加価値と見て値付けするから値段も上がり買い替え周期が伸びてしまいます。その点SDVはソフトウェアの有償アップデートで販売後の収益化が実現している訳です。

加えて内燃エンジン車と比べて技術革新のスピードが早く、その分陳腐化が避けられず、リセールバリューが期待できないというパソコンやスマホと同じ傾向が顕著なため、時間をかけて作り込む自動車メーカーの対応が後手後手になるということもあります。故にテスラが典型的ですが、車本体はシンプルな作りでロボット多用の量産技術もあり、クルマ作りの思想自体が異なる訳です。壁は成長する?の日産ホンダの経営統合も追い込まれた結果です。

日産株を保有するルノーもEV開発に注力したものの単独では苦しいようで、ステランティスとの統合話が出ています。そのルノーに鴻海が日産株譲渡を申し入れたという報道もあり、鴻海もEV事業進出を狙っているということです。ゴーン氏も指摘してますが、日産とホンダでは日米欧中国と市場が競合している上、売れ筋のセレナとステップワゴン、ノートとフィットの競合関係があり、統合のシナジーを見出しにくいということもあり、特に日産の救済ではなく日産は自前再建が統合の前提とされ、工場閉鎖や人員整理を迫られることを考えると、工場が欲しい鴻海の方がパートナーとして理に適っているかもしれません。この辺USスチール買収に拘る日鉄にも言えますが、判断の基準がズレている気がします。で。ズレている鉄話を最後に。

福井県知事、北陸新幹線敦賀―新大阪間で小浜先行開業を提案 - 日本経済新聞
一言「論外」そもそも大阪に繋がらない小浜部分開業ではJR西日本の受益は殆どなく、ほぼ全額公費負担となりますが、B/C比も当然悲惨なものとなり、少なくとも国の予算はつかないでしょう。福井県など地方だけで負担するなら可能ですし、原発で潤っている税収を充てるなら議会も通しやすいかもしれませんが、それで既成事実作ったところで京都の環境問題の壁で大阪延伸はほぼ不可能。誰も喜ばない寝言の初夢です。

政府が原発活用を打ち出していることから、国交省ではなく経産省の方の産業政策としての国庫金投入を裏金議員がまとめるとかの流れは可能性としては皆無ではないけどもちろん論外です。そもそも製造業の衰退で電力需要が減少している中で、EVやAI関連の大型データセンターで電力需要が増えるという前提で原発活用を言う訳ですが、そのEVもAIも世界に劣後している今の日本ではたわごとの域を出ません。そもそも人口減少の中で熱源となるデータセンターぶん回してまで対応が必要な需要がいかほどあるのか?またこの辺の発想もハード重視の日本的発想の域を出ておりません。五輪や万博に匹敵する時代錯誤です。

| | | Comments (0)

Saturday, January 04, 2025

B/C比の誤解

夢見るDX国を葬る?などで取り上げたB/C比について記します。ネットでは北陸新幹線大阪延伸で小浜京都ルートと米原ルートでバトルが見られ、その中でB/C比が言及されてますが、特に小浜京都ルート推しの立場の議論に明らかな誤解があるようです。B/C比で言えば米原ルート一択で議論の余地はないのですが、これはあくまでも国と地方が負担する公費の部分の話で、整備新幹線事業が全幹法に基づく国の事業だから問題視されるのですが、「米原ルートだとJR西日本の収益がJR東海に流出する」というような見当はずれの批判が見られます。民間企業であるJR西日本の事業収益面での採算性とは別の議論です。

事業主体となるJR各社の事業費負担は新幹線開業に伴う受益の範囲で算定された30年リース料で、それでカバーできない部分が公費負担になる訳です。そしてこの公費負担部分のB/C比が問われている訳でJRの採算性とは別の話ですし、受益の範囲の負担で採算性は担保されており、理論上ルート選択に対するJR西日本の採算性は中立です。で、国の事業である以上、公費部分のB/C比が問われる訳です。とはいえB/C比は様々な前提条件に基づいて算出される推計値であって実数ではない訳で、恣意性は排除できませんし、万能という訳ではありません。

本来は政策実現のための複数選択肢の比較のためのツールであって、北陸新幹線の事例で言えば米原ルートと小浜京都ルートの選択で同一前提条件での算出で比較することに意味がある訳です。故に先に算出された米原ルートと後から算出された小浜京都ルートとでは厳密には比較できないのですが、それでもB/C比で倍以上の差が出ている訳で、B/C比から見れば米原ルート一択となるのは自明といえます。また京都府と京都市が環境問題から国に見直しを要請したり、早期実現の観点から石川県からも米原ルートへの見直しの意見が出ている現状です。つまり事業主体となるJRと国と地方の3者合意という大前提が揺らいでいる訳で、どのみちこのままでは事業化は不可能です。

前提条件を揃えるというのは、イコールフッティングとも言いますが、例えばスウェーデンのストックホルム―マルメ間の高速鉄道建設のときに在来線改良や高速道路整備など複数案からの選択に用いられた方法で、日本のように省庁の所轄による縦割りを前提とせずにゼロベースで検討するもので、B/C比の数値自体を問題にするのではなく、政策実現のための意思決定の透明化が狙いです。それが日本では数値が問題視されるのは、主に財務省との予算折衝で使われるという日本だけのローカルルールによる歪みといえます。

その弊害は例えば本州四国連絡橋で顕著ですが、計画段階で提案された明石鳴門ルート、児島坂出ルート、尾道今治ルートの3ルートの提案に対する査定で、B/C比が横並びとなって3ルート全てが整備されるという形で決着したことに表れています。明石鳴門と児島坂出は道路鉄道併用橋で尾道今治は道路専用橋ですし、児島坂出は新幹線と在来線の両方を通すという風に条件が違う中での意思決定ということで、3案同時進行を意図したものとの疑いがあります。故に国交省が小浜京都ルートのB/C比悪化を敢えて発表したのは、逆に国交省は小浜京都ルートを潰したい意図があるということでしょう。同時に米原ルートの試算をしなかったのは、小浜京都ルートに調査費の予算付けをしたことが仇となったかも。

上記エントリーで取り上げた宇都宮ライトレールの事例で言えば、難工事による遅延や工法変更でB/C比が悪化するなどして政争の具となったように、本来の意思決定の透明性に疑義を生じたことが問題です。結果的には沿線開発の活性化や移住人口増で開業前のB/C比より実数ベースでは改善したと思いますが、だから結果オーライという議論は乱暴です。東側延伸で市中心部へ乗り入れる将来構想の実現でまた揉める火種を残している訳です。立民と共産が反対に回ったのも意思決定過程に問題があったからであって、今後の事業展開のためには対立をほぐしておく必要があります。あくまでも意思決定の透明性の問題ということは重ねて申し上げておきます。

Continue reading "B/C比の誤解"

| | | Comments (0)

Sunday, December 29, 2024

青春18アップデートの不可避

今年冬からの青春18きっぷの改変に一部鉄ちゃんがイチャモンつけてます。JRを弁護する気は更々ありませんが、これも時代かなとは思います。訃報がありましたがJR東海初代社長の須田寛氏が国鉄営業局長時代に1982年のフルムーングリーパスという企画商品をヒットさせた成功体験に基づき、年代別の企画商品として1983年に中年女性向けのナイスミディパス、そして1982年に若者向けの青春18のびのびきっぷとして発売されたものが形を変えて民営化後も存続してきたものです。

国鉄時代には乗車券だけで乗れる長距離普通列車が多数走っていて、その多くは旧型客車を連ねた機関車牽引の客車列車でした。客車は動力を持たないし、当時は寝台車やグリーン車を除いて冷房もなく、客用扉は手動の開戸でドアエンジン不要、照明は車軸発電機電源ですから引き通し線も要らないし自動ブレーキ管と暖房スチーム管を繋ぐだけで組成できるというシンプルな作り故にメンテナンスが容易なこともありますし、機関車は貨物と併用で済ませますから、料金を取れない普通列車には多く使用されていました。また長距離を走りますからラッシュ時間帯にかかる区間もあり、その需要に応える意味で長編成で運用されますから、メンテナンス負担が少ないことは寧ろメリットでもありました。また夜行普通列車も多数存在し、山陰線経由京都―下関間や鹿児島長崎佐世保大村線経由門司港―長崎間の夜行風通は寝台車が組み込まれていて、マルス収容のために「山陰」「ながさき」の愛称名までついていました。

これらの列車の多くは民営化後のJR各社の合理化策で縮小、廃止されましたが、青春18きっぷは春夏冬の休校期間の通学列車の余剰輸送力対策として存続することになります。加えて国鉄時代に関越高速バス運行開始に対抗して安価な夜行列車として新宿―新潟間に座席指定快速ムーンライトえちごが設定され、EF64牽引の14系客車で運行開始され、JR化後も車両の変化はあるものの定期列車として存続し、東海道線の通称大垣夜行もJR化後にムーンライトながらとなる流れとなります。当時はまだJR東海も唯我独尊ではなかったようです。また北海道の函館―札幌間快速ミッドナイトも定期運行されてJR化後も残りましたし、JR化後特にJR西日本を中心に臨時快速ムーンライトを青春18シーズンに運行するなどしてJR各社の連携でユーザーを掘り起こしたという意味はありました。しかし定期夜行快速は青春18シーズン以外の乗車率の悪化で季節臨に格下げされ、臨時ムーライトも含めて廃止に至ります。

しかし時は流れ若者向けとはいえ特に年齢制限のない青春18きっぷのユーザーも歳を取り、若者は割安な夜行バスに流れて当初の若者向け企画商品としての性格は失われていきます。11年前のエントリーですが、青春18還暦鉄の時点で、既に青春18きっぷの役割は変わり、青春を懐かしむ老いらくの旅の傾向が強まっていました。また同エントリーでも述べましたが、ムーンライト車内での検札でかなりの手間をかけていることや、自動改札化が進んでも磁気券ではないので有人改札に人が列をなすなどJRの現場への負担も大きくなってますし、整備新幹線開業に伴う並行在来線三セク化によるJR路線の分断もあり、ユーザーの使い勝手も悪くなっています。そういう意味で見直しは避けられなかったということはできます。加えてそもそも地方の人口減少で通学生も減って通学列車の余剰輸送力活用という前提も崩れてきています。そしてコロナ禍がJR各社の余力を奪ったことも。

ということで、今回の改変は事実上別の企画商品への変更となりますが、現場負担軽減のための磁気券化というのが一番の狙いでしょう。その結果期間中の任意の日の利用や2人以上の同時利用は制限せざるを得なくなりますし、出発日指定はおそらく磁気定期券のシステムを流用したってことでしょう。それ故に連続使用しかできなくなりますが、割引企画商品のために大規模なシステム改修を行うのは本末転倒ですし、寧ろ3日券という新たな選択肢を用意して購入しやすくする工夫も見られます。そうまでして残したこと自体は評価しておきます。

とはいえやっと磁気券になった段階ですが、栗鼠殺し?木から落ちたサルで取り上げたように、既にJR東日本では磁気券を無くしてQRコード乗車券を導入する検討を始めてますし、またVISAカードで始まったオープンループというNFCタッチ決済システムが関西私鉄や関東でも東急や東京メトロ、一部のバスやタクシーで導入が進み、Felicaシステム前提の全国共通ICカード乗車券から熊本の5事業者が離脱したことは壁は成長する?でも取り上げました。これらの変化を加味して未来の青春18きっぷをイメージできるかというところを考えてみたいのですが、結論から言えばあまり期待できないと考えられます。

JR東日本では半導体不足の影響で相変わらず無記名式Suicaの新規発行を停止中ですが、その代わりにモバイルSuicaを推奨しています。手持ちのスマホでネットで会員登録すれば即利用可能で500円のデポジットも不要で乗車ポイントをカードの場合の200円毎から50円毎と優遇して誘導しています。しかし事実上無記名でのSuica購入はできなくなるということですから、個人情報をJR東日本に預けることになります。それを受け入れたくない人も一定数いる訳ですから、一部利用者の排除となる可能性があります。TOIKAの壁ならぬSuicaの壁という訳ですね。加えてこのニュース。

JR東、スイカ大幅刷新 上限2万円から上げ コード決済 - 日本経済新聞
半導体不足でFelicaチップが入手困難になったこともあり、Suicaをスマホアプリ化して発行コストを下げると共にユーザー情報も取得し、更にJREバンクとも連携して予約、決済、乗車のみならず日常の買い物から旅先の宿泊や食事などまで含め、更に個人信用情報に基づくポストペイシステムまで実装してスーパーアプリ化というところまで見据えていると考えられます。これユーザーから見れば便利かもしれないけど、JR東海のスマートEXが東海道新幹線への利用誘導に使われるような形で、結局技術革新が壁を成長させるジレンマを予感させます。そうなると青春18きっぷなんぞ過去の遺物として排除される未来もあり得ます。草ならぬ壁生えるわwall-AI。

| | | Comments (0)

Saturday, December 21, 2024

壁は成長する?

安倍公房の壁―S・カルマ氏の犯罪で主人公を診るドクトルとパパによく似たユルバン教授による「成長する壁調査団」が主人公の中を探索しようとする描写があります。何のメタファーなのかは謎ですが、実は壁って成長するんだというのはリアルな話ということで、例えばトランプ大統領返り咲きで、バイデン政権下で止まっていたアメリカとメキシコの国境の壁は成長確実です^_^;。てことで壁―以下略の続きです。

ホンダ・日産が経営統合へ 持ち株会社設立、三菱自動車の合流視野 - 日本経済新聞
小型ロケット「カイロス」打ち上げ失敗 3分後に飛行中断 - 日本経済新聞
一見何の関係もない2つのニュースですが、スペースワンの社長が台風と共に去ったメディアの公共性で取り上げた日産ゴーン事件当時の社外取締役で、通産審議官からキャノン電子その他の民間企業の取締役も務めた元経産審議官というキャリア官僚で、安倍政権当時の官邸に近い人物で特に管官房長官とは近かったということでキナ臭いですね。ゴーン事件も未だに謎なのは当初はゴーン氏の退任後の顧問料支払予定が有価証券報告書に記載されていないという金融商品取引法違反ですが、取締役会に議決を経て決まったことですから、ゴーん氏個人ではなく法人としての日産自動車の問題だし、刑事訴追するにしても金融庁との連携とかがない中での検察の動きは不可解でした。

当時フランスのマクロン政権下でルノーの支配権を強化する法案が可決されて日産が飲み込まれるということで、日本政府もフランス政府を非難していたこともあり、ルノー/日産の会長を兼任するゴーン氏を追い落とすことを目的とした国策捜査も疑われました。結局ゴーン氏の逃亡で真相は藪の中ですが、ゴーン氏に後継指名された志賀氏とその後の西川氏の不仲もありましたし、西川氏も取締役会決議で社長職を解任されたのですが、豊田氏はそれを助けて院政を後押しした疑惑もデジタル経済はビッグブラザーの夢を見る?で指摘した通りです。スペースワンの出資者はキャノン電子、IHIエアロスペース、日本政策投資銀行などが名を連ねる官製ベンチャーですが、JAXAには三菱重工が食い込んでいるから敢えてライバル企業に粉かけてという経産官僚らしいと言えばらしいやり方ですが、宇宙ビジネスに壁を作るつもり?

日産のゴーン改革がうまくいったのは、元々部門間の壁が厚く不仲だった当時の日産の各現場から選抜したクロスファンクショナルチームで本音をぶつけ合うことで、部門間の壁を取っ払い会社全体をワンチームにするという教科書通りのチームビルディングの成功事例だったのですが、ポストゴーン体制で経営陣に亀裂があったことで、豊田社外取が余計なことをしてぶち壊した結果、米中で苦戦する日産の対応能力の低下を招いたと見ることができます。壊したはずの壁が再度成長してしまった訳です。

その一方で当時プジョー・シトロエングループ(PSA)がフィアット・クライスラー(FCA)との統合を決めてストランティスとなるなど欧米の自動車産業の合従連衡は進んでいて、PSAは本当はルノーとの統合を希望していたけれど、ルノーと日産のゴタゴタでFCAに切り替えたとも言われます。とすればフランス政府も余計なことをしたことになるかも。日本メーカーは規模で劣る状況が続いてきた訳ですが、今回のホンダ/日産の統合でさらに三菱自自動車の合流も囁かれる中で、日本もやっとトヨタとホンダ/日産の2系列に収斂されたということは言えますが、統合後の会社の壁は残りますからまだまだどうなるかはわかりません。

まあ結果的にメーカーが多すぎると言われた日本の自動車産業ですから前向きにとらえることは可能ですが、メディアの報道姿勢はやはり楽観的というか何というか。既に商用車メーカーはベンツ系の三菱ふそうがトヨタの持ち分は残るとはいえ日野の救済に動いていて、ボルボ系列のいすゞ/UDの2系列に収斂しており、何れも外資が支配株主です。自動車が日本のリーディングインダストリーの時代は去ったのかもしれません。大型バスに関しては三菱ふそうといすゞ/日野合弁のJバスとちょっと捩れた資本関係にはなりますが、ヒュンデやBYDなど韓国や中国の輸入バスも存在感を増しています。

でやっと鉄ネタですが磁気券IC券二重価格in新横浜でも取り上げたおそらくJR東海が意図的に仕組んだTOICAの壁問題です。東海道本線の熱海―函南間と御殿場線の国府津—御殿場間がTOIKAエリアから外されており、一方EX-ICから進化した独自アプリで乗客を東海道新幹線に誘導している訳ですが、その結果アプリを利用しない盆暮れの観光客や帰省客が水害による運休で乗変や払戻で窓口に殺到したことは台風直撃のお盆が示した課題でも述べました。JR東海が増収策で乗客間に壁を作っている訳ですが、公益企業として問題があります。またSuica互換のPASMO協議会に加盟する伊豆箱根鉄道が大雄山線のみIC化している一方、東京からの直通客の多い駿豆線では導入できないという困った状況もあります。ちなみに伊豆急行はPASMOには加盟せずJR東日本の資金援助でSuica委託販売を条件にシステムを導入して対応していますが、これが可能なのはTOICAエリアからの直通客が壁で存在しないからですね。皮肉です。

とはいえSuicaにも課題があって、導入エリア拡大でシステム上経由地の特定はできませんから、首都圏、新潟近郊、仙台近郊とエリアを分けて敢えて間を繋がない形にしていますが、それでも流動の多い区間例えば常磐線いわきや中央篠ノ井線松本などを首都圏近郊区間に組み込んだりしている訳ですが、その結果途中下車すると打切り計算になるし有効期間が当日中になるなどの問題もあり、国鉄時代から引き継いだ旅客営業規則と整合性が取れなくなってきているということもあります。加えてコロナ禍によるサプライチェーン混乱でFelicaチップが入手困難となってSuicaの新規発行を止める事態となるなど逆風もあります。更にこのニュース。

熊本のバス・電車5社、交通系ICカードを11月15日で廃止 - 日本経済新聞
全国共通ICカード乗車券から熊本の5社が離脱し、来年3月をめどにクレジットカード決済のシステムを導入するとしております。国が音頭を取って共通カードが導入されたものの、導入時こそ補助金が交付されたものん、機器の更新時期になっても補助金はなく事業者の自己負担となることから、追随する地域が出ることが予想されますが、熊本の場合は「くまもんのICカード」と呼ばれる地域振興カードのみ利用可能で、発行主体は肥後銀行ということですが、TSMC効果で人口増の熊本県地盤の地方銀行の強気が決断に繋がったのでしょう。とすると他の地方でおいそれと追随とはいかない可能性もありますが、JR東日本の銀行参入と逆に銀行の交通事業者取り込みという意味では興味深いとはいえ、結局利用客の囲い込みで壁を作ることに変わりはありません。こうして事業者間の連携が乱れると公共交通の利用者を遠ざける可能性もあります。

| | | Comments (3)

Sunday, December 15, 2024

壁―Nイノセ氏の誤算、Yコイケ氏の悪事、Yタマキ氏の欺瞞

韓流ふてほどの尹大統領の弾劾訴追決議案が可決し失職。憲法裁判所で罷免の是非が審理されます。但し最大180日と時間がかかりますが、罷免後30日以内の大統領選で新大統領が選出され就任するまでは韓首相が職務を代行します。というわけで特に外交面での政治空白を心配する日本政府ですが、オウンゴールの国自BANG!の徴用工問題にしても、文在寅政権でも官民で設立した財団で日本企業の賠償金を肩代わりする提案がされたものの当時の安倍政権がガン無視していたものですから、これがチャラにされるということはないでしょう。元々政治問題化したのは日本の方なんですから。

一方尹大統領は告発を受けて内乱罪の被疑者にもなっている訳で、こちらは国とソウル市の警察庁長官が逮捕されるなど外堀が埋められつつあります。内乱罪は大統領の不逮捕特権の例外で、最高刑は死刑という過酷なものです。一部で軍や警察の服務規程があるから大統領の命令を断れないので法治主義上問題とする議論がありますが、それを言えば憲法まで変えて権限拡大したロシアのプーチン大統領も肯定される訳で、最高権力者といえども法に服する法の支配の原則が韓国では生きているということです。法治主義と法の支配の違いです。

てことで「ふてほど」の後で今年の漢字「金」が発表され、オリンピックイヤーの恒例で5回目ということが言われてますが、清水寺で発表された字が草書体で将棋の金将の駒の裏の表記ということで、裏金を表すという漢字検定協会のエスプリです。そんなこんなでこのニュースです。

都議会自民も収入不記載か パーティー券、経緯調査 - 日本経済新聞
政治資金規正法は地方の首長や地方議員も対象ですから、当然不記載は違法ですし、それによって裏金を手にすれば、それを国会議員、首長、地方議員で遣り取りしてもわからない訳で、裏でどんな利益誘導がされていたのかわかったもんじゃない訳です。当然これは都だけの話ではなく全国で行われていると見られますが、都の予算規模から言えば他の地方より大きな金額が動いていることは間違いないでしょう。五輪霧中の神宮外苑再開発事業や晴海フラッグの転売差益や築地市場跡の再開発その他多数の再開発事業で三井不動産などの大手デベロッパーが名を連ね、小池知事や自民都連や都内選出国会議員のパーティ券購入に勤しんでいるという構図が見えてきます。そんな中で千代田線北綾瀬支線の北綾瀬駅前の再開発でも三井不動産の名前が出てますし、おそらくタワマンたわわで8号豊住線建設マジ卍?にも絡んでいるでしょう。豊洲市場もそうですし、埋立地開発は三井不動産が得意とするところですが、公有水面埋立の認可権限は都道府県が握っている訳で、知事や地方議会へのアプローチは欠かせない訳です。しかし政府や国会と比べればメディア露出も少なく、こっそりと進められるというおいしさもある訳です。晴海フラッグ絡みでなこんなニュースも。
晴海フラッグ「謎のキーボックス」 内覧競い業者取り付け - 日本経済新聞
上記エントリー時点では豊住線は第三セクターが建設して東京メトロが運営受託というスキームが考えられていたようですが、結局東京メトロが南北線品川延伸と共に自ら建設することで決着しました。高圧経済のワナで指摘したように、東京メトロ株の売り出しを50%に制限し、国と都の持ち分比率を維持したまま支配株主の立場を維持したことで、都が国に要請して地下鉄補助金を出すことを条件にしたことで、建設を渋っていた東京メトロとしては逆らえない状況になったってことです。東京メトロ株の上値が重い訳です。

さてそうすると、美濃部都政時代から都が要請していてバカの壁、壁が取れても残るバカの猪瀬知事の地下鉄統合問題は脇に置かれたことになります。元々猪瀬案の地下鉄統合は東京メトロと都営地下鉄の財務状況から無理筋だったのですが、株式売却益を都営地下鉄の財務改善に使うならともかく、小池知事はどうやらその気はなさそうです。故に豊住線や南北線延伸に留まらず懸案湾岸地下鉄と再開発の原資として株式売却益を使うつもりでしょう。バカの壁に拘った猪瀬ン都さんはまだ都民を見ていましたが、みどりのたぬきの悪だくみは都民不在です。そして壁いろいろ。

年収103万円の壁、25年から引き上げ 自公国が合意 - 日本経済新聞
補正予算正るつの為に自公が折れた形ではありますが、その後能登半島復興予算を予備費から1千億円付け替える立憲民主党の修正案に自公が乗る形で成立した訳で、国民民主党との約束アh事実上空手形となりました。103万円の壁見直し来年からは実現するにしても、来年の通常国会の税法改正が前提ですから、そうなると少数野党の国民民主の出番は減ります。
厚生年金、年収「106万円の壁」要件は撤廃へ 厚労省調整 - 日本経済新聞
実際の年収の壁として過酷な厚生年金の加入要件から年収要件を撤廃することで壁撤廃ですが、加えて労使協議の同意を条件に雇用主負担を増やすことで年収減を回避する厚労省案が出されています。但しこれは雇用主との力関係で殆ど実効性は無いでしょう。寧ろ社会保険料冨tなんで生じる手取り減を国庫で補填する立憲民主党案で概算7千億英程度の予算措置で可能ということで実現可能性はあります。というか、玉木氏の年収の壁問題は聞けば聞くほど雇用主の立場を代弁しているとしか見えません。

最後に年末4万円超が期待された東証日経平均株価ですが、年内の4万円の壁突破は困難と見られています。コーポレートガバナンス改革期待もむなしく海外投資家が消極的な一方、新NISAで増えた日本の個人投資家はオルカンやS&P500などの海外株式投信に流れていて日本株への流入は限られています。資産運用立国の掛け声で貯蓄をリスクマネーに振り向けても日本株に向かわない現実に日本が直面する壁があるということですね。壁でまとめてみました^_^;。

| | | Comments (0)

Sunday, December 08, 2024

韓流ふてほど

タイトルだけで通じると思いますが^_^;。

韓国の尹錫悦大統領「非常戒厳」宣言、4日未明に解除 軍を撤収 - 日本経済新聞
少数与党の韓国尹錫悦大統領が憲法に基づく非常戒厳を宣言し、6時間後に解除されたということで、韓国人を含めて多くの人には寝て起きてこうなってたというニュースですが、韓国メディアを含む海外メディアがリアルタイムで報じた一方、日本のメディアは音無し。現地記者はSNSなどで個人で配信していたので、現場は動いていたのですが、メディアの編成は動かなかったということです。隣国で交流人口も多い韓国の大事件をスルーというのはいただけません。まるで兵庫県知事選の選挙期間中のようなオールドメディアの不作為が再現されました。不適切にもほどがある!じゃなくて不適切報道な「ふてほど」です。

韓国の政治体制は大統領制プラス一院制で日本の地方自治体と似た二元代表制ですが、元検事総長の尹大統領は日本に譲歩し過ぎと言われて就任後人気を落として4月の総選挙で与党大敗し、300議席の国会で192議席を野党系が占める少数与党となって政権運営に行き詰まった結果の暴走と見られますが、軍事や災害による非常事態ではなく政治対立を理由としたもの。結果的には迅速に動いた与野党議員が国会封鎖に軍隊が派遣された中をかいくぐって190人が議場に入り、その場で憲法に基づく戒厳解除決議をして収拾されましたが、戒厳下でも国会の封鎖は憲法に定めがなく、軍を動員しての国会封鎖を指令した訳ですからクーデター未遂事件といえます。しかも尹大統領は一部を除いて閣僚にも告げずに進めていたことから事後に閣僚の辞任が相次ぎ、政権は死に体になりました。大統領弾劾決議は成立しませんでしたが、政治空白は続く状況です。

で、日本のメディアは早速日韓関係が見通せなくなったと嘆いてますが、そもそも国民の支持を得られない政権トップとの約束が有効と考える日本政府の代弁に勤しむ姿勢には呆れます。権力者の暴走を止めた国会議員や国会周辺に集まった4,000人の一般市民の姿こそ民主政治の証であり、韓国の政治がそれだけ成熟していることを示すものですが、それを報じると森加計さくらレイプ赦免リニア3兆円アベノマスクとやりたい放題の10年間を許したことが際立つから具合が悪いのかもしれませんね。あと日本の憲法議論の緊急事態条項が何をもたらすかを示したとも言えます。

そもそも「日韓の懸案」も徴用工問題でオウンゴールの国自BANG!の化成品輸出ホワイト国認証取消をしたことに端を発する訳で、文字通り日本のオウンゴールが始まりだった訳ですから、韓国側から見れば尹大統領の日本への譲歩が世論の逆風に遭うことは避けられない訳です。勿論北朝鮮と対峙する上で日米間の連携が必要なのは言うまでもありませんが、韓国の司法手続きにイチャモンつける日本政府の対応には問題がある訳です。辞任した閣僚からは尹大統領が4月総選挙を不正選挙とする陰謀論ユーチューバーを評価し閣僚にも視聴を勧めていたことが語られました。何のことはないショート動画に感化された日本のシニア情弱ネトウヨと同じじゃん。そら日本政府にはいい大統領だわ-_-;。

サイドバーで紹介している国家はなぜ衰退するのか 上下2冊 ハヤカワで、国家の繁栄と衰退、格差の拡大の原因を探る研究で今年のノーベル経済学賞を受賞した著者たちの代表的な著作ですが、結局国家の繁栄と衰退の差は制度の包括性(inclusive)と収奪性の違いで説明できるというもので、包括的制度は中央集権的権力が形成された一方で多くの利害関係者の権力アクセスによって分散されることで形成され、法の支配で権利が保護された中でイングランドの産業革命をもたらし世界に広がった一方、その成果の受容には制度の違いが影響するというもの。この観点から言えば日本より韓国の方が今後は繁栄するという推論が成り立ちます。実際ほんの10年前まで1人当たりGDPで日本の半分だった韓国が今は並び、間もなく追い抜きます。

新幹線「のぞみ」の自由席削減、観光需要逃さず 駅の混雑緩和にも - 日本経済新聞
近頃鉄ちゃんが騒ぐネタがあれこれあるんですが、今回はこれ。JR東海は公式には着席乗車の希望が多いからと説明してますが、コロナ明けの需要回復で混雑がコントロール不能になってきているというのが実際です。特に観光シーズンの繁忙期には不慣れな乗客が多いし、インバウンドで外国人利用も増え、不評だったジャパンレールパスののぞみ解禁もあって現場が混乱しているってことですね。戦後の混乱期に国鉄が乗車を断る口実として導入した指定券制度への先祖返りに近いです。制度上航空鵜や高速バスのようなダイナミックプライシングの導入が難しい中での対応ですが、ビジネス客中心で安定していた東海道新幹線も観光客を当てにせざるを得ない環境変化は指摘しておきます。インバウンドで労働集約的な観光業を当てにしても、人口減少が避けられない日本のリーディングインダストリーにはなり得ません。

| | | Comments (0)

Saturday, November 23, 2024

オールドメディアの不作為

兵庫県知事選の結果が世間を騒がせてます。地方首長の選挙であり、現地の事情を知る立場にありませんが、ポリティカル・マーケティングに繋がる選挙の裏が可視化された出来事です。

SNSの功罪映した兵庫県知事選挙 斎藤元彦氏が「主戦場」制す - 日本経済新聞
斎藤元彦知事のパワハラ内部告発に始まった一連の報道で県議会の全員一致で辞職勧告による失職を受けての県知事選という流れは全国でニュースになっていた訳で、内部告発者保護法に反して第三者委による事実確認もせずに告発者を特定し個人情報を晒そうとして内部告発者を自死に至らしめたということは知られていただけに、意外なニュースと受け止められましたが、県議会が立ち上げた100条委員会も継続中で第三者委員会設置の話もあったけれど、ローカルニュースや政見放送に触れることにできない他の地方の人にとっては、何が起きていたかわからない状況で、何故か選挙戦終盤で斎藤前知事の支持が盛り返して当選し、立花N国党党首のアシストがあったことなどは選挙後に知ることになりました。

その間斎藤氏や立花氏はSNSの動画投稿でパワハラは捏造という根拠のない情報を垂れ流し、それに多くの有権者が反応した結果らしいということすが、斎藤氏のネット戦略を担当した民間企業トップが自慢げにブログ投降して公職選挙法で禁止されている買収に当たると指摘されて炎上中ということで、都知事選の時よりも裏方が表へ出たという意味でも注目の選挙となりました。

斎藤知事支持者と見られる人たちはウソばかりのオールドメディアに真実を突き付けたネットメディアの勝利と湧いてますが、寧ろ公職選挙法や放送法で謳われる公正中立を狭く解釈して自主規制したオールドメディアの不作為による不戦敗と言えます。少なくとも裏付けのないネットメディアの情報拡散をファクトチェックで検証するとか、刑事事件の可能性があるパワハラ疑惑を事件報道として取り上げるなど、やれることは多数あったし、ネット上ではそうした投稿も見られたけれど、ネット社会とはいえ社会的な影響力はマスメディアが勝る訳で、今後の検証報道をきちんとやってほしいところです。

米大統領選のトランプ現象とパラレルに語られる部分もありますが、元々マスメディアが旗幟鮮明にしているアメリカと、事なかれ主義で踏み込んだ報道ができない日本とではメディア事情はかなり異なります。アメリカでも民主党系メディアほど大接戦と報じてましたから、トランプ支持者の実態に対する見落としはあったと思われますが、メディアの独立性はずっと強いので同一視できません。トランプ支持でも同床異夢の部分はあり、今後それが米国内政局を動かすことになるでしょう。そもそも他所の国の民主主義の危機を心配するよりも足元の日本の選挙のお寒い事情を心配すべきだろ!

てことで心配なニュース2件。

東京・町田の民家で水と気泡、リニア工事中断 JR東海 - 日本経済新聞
大井川の水問題だけじゃないリニアの不都合な真実。岐阜県瑞浪市の地下水枯渇に続いて東京都町田市小野路地区で水と気泡が地上へ出てリニア工事の影響が疑われて工事中断中ということで、掘れば出てくるトラブル多数。また残土処理もめどが立っていないなど、見Kり発車で問題抱えてます。
JR北海道、約220踏切でレール再検証 貨物列車脱線受け - 日本経済新聞
今月16日に起きた函館本線森~石倉間の貨物列車打線事故で、レール腹部の腐食による破断が原因らしいということで、緊急点検となりました。超音波探傷で強度を弱める表面のキズは超音波探傷で確認できますが、腹部の腐食は盲点ということで、鉄道総研の享禄を得て対応するということです。考えられるののは梅雨がない謂われる北海道でも夏の雨量が増えていることで、踏切部の履工で湿潤状態のまま冬の土壌凍結で水分が保持されて春に溶けてもまた雨といった気候変動の影響があるかもしれません。加えて重量のある貨物列車の運行で傷んだ線路の目視や打音点検や補修が人手不足で追いついていないといった事情も考えられます。ともあれ貨物幹線の維持が困難となれば北海道経済には打撃です。

| | | Comments (0)

Saturday, November 16, 2024

高圧経済のワナ

インフレ下の政治混乱は続きます。

ドイツのショルツ連立政権が瓦解、景気不安が導火線 早期総選挙へ - 日本経済新聞
ドイツのシュルツ首相が自由民主党(FDP)党首のリントナー財務相を解任したことでFDPが連立を離脱して一転少数与党となったことで、来年2月の総選挙と総選挙前のショルツ首相の信任投票が行われる運びとなりました。ウクライナ戦争で安価なロシア産天然ガスが利用できなくなったこと、アメリカが消極的なウクライナへの兵器支援、中国の内需失速による自動車メーカーの販売不振、加えて中国EVメーカーの欧州攻勢でEU域内販売も不振と悪条件が重なる中で、財政による経済の下支えをしたいシュルツ首相と健全財政の原則を譲らないリントナー財務省の対立の結果ですが、一時10%を超えたインフレによる国民の不満が背景にあります。
アメリカ、下院も共和党が多数派 トランプ新政権「トリプルレッド」に - 日本経済新聞
元々伯仲していた上院の逆転は予想されていましたが、下院も共和党が多数派となりトリプルレッドとなりました。とはいえ議会共和党はトランプ派一辺倒ではないので、移行後の政権運営の追い風となるかどうかはわかりませんが、インフレで国民の怒りを買った民主党は完全な敗戦です。イエレン財務長官がFRB議長時代からの持論だった高圧経済論がインフレを助長したことは間違いありませんから、共和党のネガキャンのせいとは一概に言えないところがあります。具体的にはインフラ投資法やインフレ抑制法(IRA法)の撤廃までは難しいとしても予算の圧迫は避けられないところ。三つ子の赤字でテキサス新幹線の連邦政府の調査費がついたものの真っ先にキャンセルされそうです。JR東海の北米事業は今のところ成果なしとなりそうです。高圧経済のワナに嵌った訳です。

但しトランプ氏の関税強化や富裕層減税はインフレをもたらしますから、結局米国民は引き続きインフレに苦しめられますから、2年後の中間選挙で逆転の可能性はあります。となると米FRBはインフレ抑止のために再利上げに追い込まれますし、財政負担が増すことで長期金利も上昇しますから、金利差で円安が進むことになります。今週の円安はその辺を先取りした動きですし、北米市場依存の強い日本の自動車メーカーも高関税の逆風を受けます。そうなると円安だから儲かるという図式が変わってきます。ドイツなど欧州勢もこの点は同じですが。

という訳で、大統領選前からトランプトレードということで株が上がったりしてますが、日本株はこれまでのような連れ高とはいかのいようです。逆に円安で割安感の出た日本企業はM&Aやアクティビストの標的になりやすいということもあります。例えば西武そごうの売却を巡って労組と対立してストまで打たれたセブン’アンドアイHDですが、経営の迷走が続いてアクティビストに狙われるの留まらず、同業のカナダ社アリマンタシオン・クシュタール(ACT)から買収提案を受けるに至りました。国内最大手の小売りグループが海外企業から買収提案を受けるのは円安の影響といえます。セブンは対応策として祖業のイトーヨーカドーなどスーパー事業を中間持ち株会社化して外部資本を入れて上場させるとしていましたが、親子上場復活は悪手ですし、ACTはスーパー込みでの買収提案ですから対抗策としては弱いということで、創業家等の資金によるMBOで非上場化というところまで追い込まれました。とはいえ資金が集まる可能性は低いと思いますが。

中間持ち株会社といえば小田急電鉄が箱根地区の事業を統括する小田急箱根HDを立ち上げて箱根塗材鉄道、箱根登山バス、箱根ロープウエー、箱根観光船他の事業会社を子会社とする形で実現してますし、やはりアクティビストにオリエンタルランド株売却を迫られて新京成電鉄の子会社化と傘下バス事業者を京成電鉄バスHDという中間持ち株会社傘下で再編したり、関東鉄道を子会社化して京成電鉄茨木HDとして事業会社としての関東鉄道と関鉄バスその他のバス事業再編に進んでいます。規模を膨らませて外資のアタックを避けようってことですね。

で、インフレ下の政治混乱の自粛解禁wwwで東京メトロを取り上げますが、売り出し価格1,200円に対して1,630円をつけ、その後も買い優勢で一時時価層が置く1兆円越えという幸先の良いスタートとなったものの、その後の足踏みが続いています。立地条件の良さから鉄道企業としては収益性抜群で、高配当や株主優待の期待があって個人中心に幅広く買われ、新NISA後初の大型上場でもあり、買われた理由ははっきりしてますが、成長戦略が見えないことは指摘しておきます。有楽町北進線や南北線品川延伸で運輸収入が増える要素はありますが、関連事業で成長を目指すという成長戦略は具体性がありません。

通常の鉄道会社なら郊外の開発で開発利益を生む田園都市線方式や国鉄分割民営化で誕生したJRなら高輪ゲートシティのように鉄道用地の余剰を活用した再開発事業を自ら手掛ける余地がありますし、JR東日本では開発後にファンドへ売却して得た資金を次の不動産開発に充てる形で事業を成長させるというビジネスモデルが可能ですが、鉄道用地の余剰が殆どない地下鉄では同じ手は使えません。保有物件は主に地上出口や通風口などと若干の保守ヤードぐらいで、単独での開発事業の余地はほぼ無く、大手デベロッパーとの協業か相互直通社の沿線開発など限られております。

東日本大震災の復興資金にするとされた株式売却益も東京都の意向で国と都の保有比率を維持した形で50%だけの売り出しですから、国庫に入った資金は半分になった訳ですし、国と都が支配株主として残る形で一般株主は個人中心となるとまともなコーポレートガバナンスが働かない可能性があります。上場後のの新線建設は将にそれで、恩恵を受けるのは地権者とデベロッパーばかりで東京メトロのメリットは見えません。そして今少数株主となる一般株主は高配当と株主優待で満足しろという形になる訳です。そしてアクティビストも手を出しにくい訳ですが、その辺を睨むと今の株価水準はあまり上がり目がないということになります。

東京メトロでは都市鉄道の運営受託の事業化も考えているようですが、日本の鉄道事業者の高品質だけど高コストで参入は簡単ではありません。但し円安は若干プラスかもしれませんが、海外事業に熱心なJR東日本でも成長分野というには至っておりません。都市鉄道分野では香港地下鉄が東京メトロ以外では唯一の民間事業者で同様の事業を展開してますが、実績のない中での後追いはかなりしんどい道のりと覚悟すべきです。

あと株式売却益の東京都分が何に使われるかが不透明です。単年度黒字を実現したものの累積債務返済に喘ぐ都営地下鉄の債務償還に使うなら、将来の地下鉄統合へ向けた前向きな話になりますが、東京都は東京-有明間の湾岸地下鉄の実現に回す可能性があります。その為に事業主体とされる東京臨海高速鉄道の増資に回すということか?そうするとJR東日本が希望するりんかい線編入が微妙になる訳で簡単ではありません。いずれにしてもこれらの事業は開発主体となる三井不動産などの民間デベロッパーにいいとこ取りされる訳で、三井不動産は小池知事や都議会自民党議員や萩生田光一議員などのパーティ券購入で助けている訳で、神宮外苑再開発に見られるように都民から見れば明らかな利益相反です。裏金議員を許しちゃいけない理由はこういうところです。

| | | Comments (0)

Saturday, November 02, 2024

年収の壁のウソ

もう一つの高齢化問題で世代間対立を煽る国民民主党の姿勢を指摘しましたが、今度は103万円の壁を持ち出して与党に飲ませようとしております。「選挙中から手取りを増やす」という公約を掲げていたことからきているのでしょうけど、重大なウソがあります。

年収の壁問題はブルシットジョブ型雇用の国で解説しましたが、103万円の壁は事実上存在しません。法改正されて現状は基礎控除48万円+給与所得控除55万円で合計103万円ですが、年収103万円を超えると所得税が課税されることは確かですが、最低税率の5%が課されるだけで超過1万円毎に500円というレベルです。つまり働いた分手取りは増える訳ですが、社会保険料負担が生じる106万円または130万円の壁ではいきなり保険料負担が来て具体的に手取りが減りますから、103万円の壁とは状況が異なる訳です。

社会保険料は負担の一方で給付と紐付けされている訳で、厚生年金に加入すれば老後の年金受給額が増えたり妊娠出産一時金などもあります。この辺の説明が不十分ではありますが、国民民主党が言うような給与調整という意味では、寧ろ社保加入で雇い主の負担が増えることの方が勤務時間短縮に影響している方が大きいと思います。高齢者の尊厳死を持ち出してまで「手取りを増やす」から社会保険料も見直せと言っている訳ですが、それなら事実上制度にただ乗りしている第3号被保険者制度の見直しが先です。

元々第3号被保険者制度の始まりは1985年の基礎年金制度で導入されたものですが、戦前に始まった厚生年金が世帯単位の加入なのに対して、国民年金は主に農家を含む個人事業主向けで個人加入と異なるスタイルの制度ですが、高度経済成長期の工業化の進捗で農家の余剰労働力を吸収してきた一方、所謂脱サラで商売始める人も少数いてザックリ言えば個人事業主は雇用の調整弁の役割だった訳です。故に赤字3Kの掟?で指摘したように赤字体質だった訳で、1985年の年金改革で基礎年金制度として加入者が増えていて余裕のある厚生年金や共済年金からの会計間扶助を狙い「国民皆年金達成」を謳った訳です。第3号被保険者制度はこのときに始まったものです。

つまり最初から厚生年金等の被用者年金に寄生する形の制度だった訳で、現役世代の手取りを問題視するなら真っ先に見直すべきです。今年も行われた年金会計検証でもスルーされた一方、国民年金加入期間の5年延長や支給開始年齢の繰り下げなどは毎回検討課題に挙げられるなどしており、今の現役世代にとっては負担は増えて給付は遠くなるという話です。加えて言えば被用者年金が世帯単位の加入であるために、所得代替率の算出も正社員の夫と専業主婦に子ども2人の標準世帯の試算としていますが、現実はそれでは家計が賄えないから共働きが増えている訳ですが、夫婦とも正社員の場合の世帯所得が標準世帯と同等の場合は単身世帯2人分として年金支給額は標準世帯と同じになるよう調整されてます。つまり第3号被保険者は完全にタダ乗り状態です。年収の壁は専業主婦がパートなどで家計補助する場合に問題になる訳ですが、第3号被保険者制度がなく専業主婦が国民年金に加入していれば保険料負担はある訳で、社会保険加入で国民年金保険料負担が無くなることで実質的に年収の壁が無効になるというのがすっきりした解決策ですが、そこへ踏み込まない国民民主党は不誠実です。

選挙期間が短く上記のような説明は伝わりにくいからキャッチ―なスローガンで有権者にアピールして票を集めるというのは選挙戦術としてはあり得ますが、選挙後に取って付けたような103万円の壁を持ち出す時点で有権者を騙したに等しいと言えます。28名と議席を4倍増して20代30代の指示が多かったと分析されてますが、これポリティカル・マーケティングの都知事選の石丸現象の再現ですね。難しいこと言わずにキャッチ―なフレーズで自らをキャラ立ちさせれば票が取れるということです。どうも石丸氏と同じ選挙参謀が裏にいるようです。

東京メトロ上場、時価総額1兆円に 個人活況で売買首位 - 日本経済新聞
長くなりましたので、東京都繋がりでこのニュースを取り上げます。売り出し価格1,200円に対して初値1,630円がついて現状も1,600円台半ばあたりで割と安定した推移でまずまずのスタートですが、課題もいろいろあります。東京都の対応が国を振り回した結果、完全民営化は見送られました。それを含めて今の株価水準は正直割高と見ております。詳しくは別に機械に譲ります。

| | | Comments (0)

Sunday, October 27, 2024

もう一つの高齢化問題

高齢化社会と言われて久しく、人口に占める高齢者の比率も高まる一方で、それを支える現役世代の負担増問題は深刻ですが、それをネタに「高齢者は早く死んでくれ」と言わんばかりに尊厳死に言及する国民民主党玉木代表のような議論も出てきますが、当然ながら論外です。国民民主党は選挙公約で「手取りを増やす」として社会保険料減額や年収の壁対策を訴えています。20代30代の支持層が多いことの反映でしょうけど、世代間対立を煽るだけで寧ろ解決を困難にします。

よく言われる年金の世代間扶助は元々賦課方式年金では形式上そうなる訳ですが、高齢者の増加の一方で現役世代の人口減少で負担が増すことに対してはマクロ経済スライドなどの対策で対応中ですが、誤解の多い所得代替率は年金支給開始時点での現役世代の所得が基準であって、本人の現役時代の所得が基準ではないという点です。つまり現役世代の所得が高ければその分年金支給額は増える訳で、支える現役世代の所得を増やせれば問題は解決します。真の問題はその現役世代の所得を増やす展望が開けない点にあるということです。

保健医療に関しても、高齢者の医療費を現役世代が負担するのは不公平と言われますが、高齢化の進捗と共に高齢者医療比が増えること自体は避けられませんが、この裏には高齢者医療のボリュームが増えることから、それを当て込んだ新薬や医療技術の開発が活発になり、その結果膨らんだ開発費を価格転嫁した高額医療が増えていることが影響している訳で、簡単な解決策はありませんが、基本的にはウェルビーイングで健康寿命を延ばし高齢者を元気にすることが大事です。その意味では薬やサプリメントの過剰摂取による腸内環境の劣化が指摘されるように、そもそも現状が過剰医療である可能性があり、その辺の意識改革に解決の糸口を見出すことが大事です。

てことで本題。減耗する固定資本に沈む夕陽の続編です。

道路陥没、3週間で3回も 老いるインフラ「保全技術」課題 - 日本経済新聞
水戸市の市道で3週間に3度の道路陥没が起きました。地価の老朽化した下水道管の破損が原因ということで、通行止めにして補修工事を実施したのですが、公共インフラの老朽化は全国的な問題で、しかも自治体財政の逼迫と人手不足で補修や更新が追い付いていない現実があります。つまり公共インフラの維持管理という悩ましい問題が顕在化している訳です。

固定資本減耗というのはマクロ経済で言うところの資本の維持費で、GDPの三面合一の分配面から見た恒等式「GDP=雇用者報酬+固定資本減耗+営業余剰」で表されます。上記エントリーでも触れましたが、GDPの名目値がほぼ変わらなかったゼロ年代で見るとほぼ107兆円程度の水準で推移しており、一方雇用者報酬は減り営業余剰が増えています。

雇用者報酬は企業会計で言うところの人件費に相当し、固定資本減耗は減価償却費に相当し、残余が営業余剰となり、これが投資資金、役員報酬、株主還元、納税の原資となります。そして固定資本減耗は過去の投資資金の回収の意味合いがありますから、通常は投資によって増えていく筈ですが、変わらないということは過去の投資回収分を超える投資が行われなかったことを意味します。そりゃ長期停滞する筈だわ。

その一方で公共投資はバブル後の90年代以来増え続けてゼロ年代で停滞したことは確かですが、アベノミクスで増やされ、財政を圧迫する訳ですが、一方で人手不足で公共事業の執行段階での入札不調の影響で停滞したこともあり、上記エントリーで危惧した公共インフラの固定資本減耗の膨張は制限された面はありますが、一方で補修や更新も滞るということになった訳です。

地震で盛土崩落の東名高速でも指摘しましたが、元々単年度主義の公会計では減価償却は考慮されず、それに準じた高速道路通行料でも減価償却費は計上されていなかったから、東名の地震による盛土崩落や中央道笹子トンネルの天井板落下のようなことが起きる訳で、流石にまずいということで補修費の計上が増やされるようになりましたが、作業員を確保0できなければ補修工事も進まない訳です。そしてこれらの費用は税金で賄われる訳ですから、リタイヤした高齢者ではなく現役世代の負担となる訳です。社会保障費で世代間対立を煽るのがバカバカしくなりませんか?

こうした現状は災害復旧にも影を落とします。阪神大震災や東日本大震災と比べて能登半島の復旧遅れは深刻ですが、東日本と比べても人手不足は深刻になっている訳で、災害復旧に時間がかかるようになっている構造問題もあります。鉄道関連でも球磨川氾濫で長期運休中の肥薩線が未だに復旧工事に着手できていません。国が道路予算や河川予算を使った支援策を打ち出してもJR九州が渋っている現実がある訳で、復旧しても大赤字でそこへ社員を張り付けるのも難しいということで、JRのローカル線問題が単なる赤字問題ではくくれなくなっていることを示します。同様の問題は芸備線、米坂線などにもありますが、ハードの復旧費を手当てするだけでは済まない問題です。

加えて言えば今後はインフラの補修や更新が課題となり、財政を圧迫することは確実です。そうした状況での新規のインフラ投資は慎重であるべきです。少なくとも費用便益比(B/C比)が相当高い案件に絞るべきです。その観点からB/C比ではっきり差が出ている北陸新幹線の延伸ルートは小浜京都ルートではなく米原ルートを選ぶのが合理的です。

| | | Comments (0)

より以前の記事一覧