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Sunday, February 17, 2019

鈍器法定

統計不正問題がいよいよ森加計問題と酷似してきました。これ統計法違反という明らかな違法行為なんですが、捜査当局は動く気配なし。そして関与した上級官吏は口をそろえてゴマカシや答弁拒否。一方実行部隊の下級官吏からはリーク続々。アベノミクスの成果を良く見せる改編が行われたと考えてほぼ間違いありませんが、ウソノミクス統計135°でさわりは明らかにしてますので、ここでは踏み込まず別の話題。

大林組、増収増益  :日本経済新聞
「受注企業JR東海が差配」 大成と鹿島、無罪を主張 リニア談合初公判 他2社と認否真っ二つ :日本経済新聞
元々大林組が公取委に申告して発覚したものですが、談合を認め処分を軽減した大林組、清水建設に対して、争う姿勢を見せる大成建設、鹿島建設という構図で公判も分離されてますが、主張は真っ向対立してます。

既に分離公判で有罪が確定している大林組ですが、120日間の民間土木工事中止の処分も受けてますが、実は増収増益。つまりリニアは儲からないから逃げ出したってことですね。加えて2025年の大阪万博開催が決まり、関西地盤の大林組は竹中工務店と共に受注が増えることが見込まれます。つまり大手ゼネコンが仕事を選ぶようになったってことです。

これJR東海にとっては痛い話です。というのは、そもそもリニア建設着手は国鉄民営化時に新幹線保有機構からリースする形で、リース料に旧国鉄債務の一部を乗っけたスキームから、JR東日本の上場審査の過程で主たる収益資産が自己保有でないことのリスクを指摘され、同じ立場のJR東海、JR西日本と共に国に譲渡を申し入れたことで、譲渡代金のローンが始まり、それが2017年にほぼ完済されたことから生じる資金余剰があってこその自前整備ですから、逆に言えば予算上限は厳しく管理する必要があります。

それでも当初名古屋まで5.1兆円と言っていた事業費が膨らみ5.4兆円となっているように、ジワジワと膨張しているわけです。当然利益を削られるゼネコンにとっては旨味が少ないのですが、それでも五輪後を睨めば無下にできない訳で、特に五輪関連や豊洲市場など東京都が絡む事業に深く食い込んでいる大成建設や鉄道会社との関係を気にする鹿島建設は断れない。そしてこうなるってことですね。これだけなら民間同士の話ですから、談合事件で公取委が動くことにはならないのですが。

しかし大阪への早期延伸を望む声が与党議員から出てきて財投債で9兆円の融資を決めたことで、公共性ありと判断されて事件化されるんですから、何がどう転ぶかわかりません。それでも談合事件の立件は難しいところ。大林組の申告が渡りに船だったのでしょう。政府が関与するといろいろ不都合が生じるのは森加計問題や統計不正問題ばかりではありません。

JR東日本の整備新幹線区間への追加投資に絡んで、整備新幹線の法定速度って話題がネットに出てきて「法定速度を超えると線路使用料が上がる」などの妄言も見られますが、これ根拠法の全国新幹線網整備法で定義されている設計最高速度が法定速度と誤って理解されているのが実際です。そもそも東海道新幹線の設計最高速度は210km/hですが285km/hで営業運転されてます。東海道新幹線の建設時には整備法は無かったので超法規的に独自規格で作られたもの。その結果を踏まえて全国新幹線網整備に当たって将来の技術革新によるスピードアップを先取りする形で定められた基準がそのまま見直されずに来たというのが実際です。

そもそも新幹線の事業主体は国であり、国の鉄道事業を体現する国鉄がその任に当たるという前提で作られた法律ですから、国の事業である以上恣意的な解釈で骨抜きにすることは許されないということから、設計最高速度やそれに付帯する最急勾配や最小回転半径などの基準が定められたのが実際。それが国鉄分割民営化で事業主体が消滅すると当時の与党議員が騒いで事業主体となる国のところを各旅客会社に読み替えることで延命させた結果です。

しかも財源がないからあの手この手で財源をひねり出すために、並行在来線の切り離しなどでJRに負担をかけないことや、受益者となる地方の負担も定めるなどされたものです。結局整備計画の延命のために恣意的解釈をした訳ですが。尚、最急勾配は九州新幹線や北陸新幹線では事業費圧縮の要請から一部基準を超える急勾配があり、将来のスピードアップの可能性を狭めています。

JR東海も当初は中央リニアを整備新幹線の枠組みで考えていたようですが、現実に存在しないリニア新幹線は基準に適合しないってことで当時の運輸省はほぼ門前払いに近い扱いをしていたようです。当時は所謂整備5線(東北新幹線延伸部、北海道新幹線、北陸新幹線、九州新幹線鹿児島ルート、同長崎ルート)の扱いすら決まっていない状態で、そちらを優先しないと地元選出議員からクレームがつく状態でしたから、中央リニアの整備新幹線化は実現可能性が無かったと言えます。

それが新幹線譲渡に絡んで譲渡代金の産出に時価法の一種である再取得価格法が適用されました。これは現在時点で同等の資産を新たに取得する場合に想定される価格ってことで、地価や建設費などの相場を反映したものですが、仮定の置き方で数値は変わり得るものでもあります。当時の運輸省はこれを利用して資産の非償却部分となる土地やトンネルなどのインフラ部分の数値を嵩上げし、嵩上げ分を新設の鉄道整備基金に持たせて整備新幹線の財源に利用することで財源論に道筋をつけました。数値を操作して財源をねん出した訳で、こういったことがあるから統計不正にリアリティが出てきます。

その結果JR本州3社はローン負担を負う訳ですが、同時に整備新幹線事業の推進力を得ることとなりました。加えて新幹線が自社保有となり、膨大な減価償却費が発生し無税で利益控除できますから、これで得たキャッシュフローで設備投資に弾みを付けます。その結果JR東海は品川新駅開業によるのぞみ中心のダイヤ編成で増収を図り、自己資本による東名間先行の整備計画をぶち上げることになる訳です。

で、JR東海をリニア建設に向かわせた新幹線譲渡代金ローンの終了はJR東日本やJR西日本も同様で、規模の違いはありますが、それぞれ異なった動きを見せています。ウソノミクスでも触れたように一つは東北新幹線盛岡以北の高速化に向けた設備増強ですが、もう一つ大きなプロジェクトも動き出しました。

JR東 都心と羽田空港結ぶ新線、29年度にも開業  :日本経済新聞
羽田空港の国際化と発着枠拡大で今後とも利用Y差は増えると見込んでいる訳ですが、同時に成田スカイアクセスとローコストリムジンバスに食われて劣勢の成田空港輸送の挽回の意図もありそうです。

整備区間の北半分は休止中で遊休化している東海道貨物線の浜松町―東京貨物ターミナル間の線路を活用し、東海道線に合流させて上野東京ラインで埼玉や北関東のアクセスを図るというもの。加えてりんかい線経由で山手西ルートから中央線や埼京線方面、と京葉線や武蔵野線方面の3方向の列車設定を想定しています。千葉県や千葉市が要求する京葉線から総武線への連絡線が実現すれば、羽田空港と成田空港を直結することもあのうになりますから、将来的には成田空港輸送のてこ入れにもなるという訳です。

既存施設を活用するプロジェクトですから、資金手当てが見通せれば実現可能性は高いですが、一つネックとなるのがりんかい線の扱いでしょうか。東京都はJR東日本に東京臨海高速鉄道の引き受けを以前から打診してますが、これが動く可能性はあります。都市興津に関わる新線計画ですから、国と地方に応分の負担を求めることになると思いますが、東京都の負担分を東京臨海高速鉄道の株式で行い、事実上のりんかい線引き受けにつなげる可能性はあります。ただしJR東日本の営業規則上、東京近郊区間に組み込まれることになれば、現在の認可運賃から大幅減額となりますから、それによる減収の評価をどうするか。株式評価を下げて都が実質補償するか、あるいは東京近郊区間から外して現行認可運賃を存続させる形にするか、交渉次第でしょうけど注目されます。

おまけ。リニアで散財するJR東海と対照的に経営基盤強化に資するプロジェクトに選択的に投資するJR東日本ですが、JR西日本はといえば、尼崎事故以後の安全投資優先の影響もあって遅れている老朽車両の更新に回るものと見られます。だから広島に錆びない電車が登場し、大阪環状線もリニューアルされると。

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Sunday, January 27, 2019

統計135°の歪み

ゴーン被告の保釈請求が退けられ、長期恐竜が続いてますが、未だに罪状が理解できません。金商法違反に問われた報酬偽装も会社法違反の特別背任罪とされた為替デリバティブの会社立て替え問題にしろ、東芝の数千億円規模の粉飾決算で誰も逮捕起訴されていないことと比べると些事です。寧ろトップの長期拘留で生産計画の下請けへの通知などの実務が滞っている現状の方が、遥かに投資家の不利益ですし会社に損失を与えてます。どう見ても裏があるとしか思えません。日経のこのコラムが興味深いところ。

ゴーン元会長が落ちたわな 編集委員 滝田 洋一 :日本経済新聞
特別背任とされた16億円ですが、日産の内規で報酬を日本円でしか受け取れないことから、銀行が提供する為替デリバティブを購入してリスクヘッジしていたところをリーマンショックによる円高が襲い、担保不足で追証を求められたのですが、ゴーン氏の証言から元々日産株式を証拠金代わりに差し出していたのが、日産株自体の減価で金額が膨らんだのが16億円ということです。約定日の日産株式1,400円が一時400円まで減価していた訳ですから、成る程追証の金額が跳ね上がり、ゴーン氏の個人マネーでは対応できなかった訳で、これ会社に損失を与える目的とは違います。実際立て替え分は返して日産には損失を与えていない訳ですし。同様のデリバティブ購入は当時銀行各行が企業経営者に猛烈に営業かけて売りまくったものでもあります。ゴーン氏は被害者の側面もある訳です。

一方日ロ平和条約締結交渉の膠着が報道されてますが、不思議なのは領土問題に煩い保守派から「2島引き渡しは現実的な落としどころ」という声が上がる一方、リベラル派から「領土ガー」の大合唱という捻れが起きています。個人的には誰得の領土問題で述べた通り、2島周辺のコンブやウニの漁業権が確立できれば大成功。加えて国境線確定後の経済交流に道筋をつけ、例えばロシア極東地域と日本の北海道を相互にピザ無し渡航できるようにすれば、当面は大成功と言えます。そもそもヤルタ・ポツダム体制の下でロシアが領土を渡す訳が無いんで。

他方で日韓関係が微妙になっております。こちらは軍事機密に触れるので、日韓双方共に全ての情報を公開しているわけではありません。こちらもヤルタ・ポツダム体制で日本は朝鮮国連軍(他国の撤退で事実上米軍とイコール)への後方支援が求められ、休戦中とはいえ戦時下にある韓国軍は朝鮮国連軍の指揮下にあります。つまり日本の自衛隊は朝鮮半島有事には韓国軍を助ける立場なんですが、外交問題化したことで場外乱闘の風情となっております。あくまでもテクニカルな問題なんですから、双方の現場同士で話し合って手打ちすれば終わってた話。外交問題化したのは日本の方なんで、徴用工裁判問題同様、日本政府が余計なことして拗らせた話ですね。

更に南北融和で有事が遠のいたことも、韓国側から日本との関係を取り繕う動機が無いってことですね。面白いのは日ロ関係と真逆の保守派とリベラル派の反応というのも何ともはや。結局保守派は日米同盟堅持、リベラル派は9条を守れで平行線の戦後レジームだけは健在という変われない国日本の思考停止状態は続きます。

そんな中で内政は政府統計の不正問題で揺れています。その酷さは前エントリーでも取り上げましたが、厚労省だけの問題じゃない点は重ねて指摘しておきます。背景には予算削減の煽りで人員の補充やシステムの構築ができなかったということはあるようですが、それだけじゃない複雑な事情もあります。これ毎月勤労統計に留まらず、政府統計全般に言えるんですが、かつて高度成長期は統計の不備やミスはさほど大事にならなかったのですが、7-9%とか年度によっては2桁とかって成長率だと、統計に多少の不具合があっても表には出にくいですが、成長率が1%を割っている現状ではちょっとした誤差で結果が様変わりするようになりますから、それが発覚につながったということで、2004年以前は正常だったことを意味しない訳です。つまり昔からこんなもんだった可能性がある訳です。

実際総務省が設置した統計委員会の西村委員長は、元々日銀マンで白川総裁時代の副総裁を務めた人ですが、それ故に政府統計の正確性に疑問を呈し現職にある訳ですが、元々の問題意識は金融緩和でデフレ脱却ができないことに対して、統計が実態を反映していない可能性を探求することでして、特にデジタル経済では音楽配信やシェアリングエコノミーなど、政府統計で捉えにくくなっていることから、正確な統計を求める立場だったんですが、調査の網に引っかかったのが厚労省の毎勤統計の不正だったという笑えない結果になったものです。

不正に手を染めた上、誤魔化すために数値を3倍にして2018年に賃金が跳ね上がったのみならず事業所のサンプルの入れ替えまで行われていました。理由は統計数値の段差を解消するために本来は遡って過去の年度も併せて数値を改定すべきところ、それをやると年度によって賃金が下がる年が出現してしまうという不都合な状況が発生するためとか。つまり低成長下で数値のゴマカシやったために矛盾が生じた訳です。ま、ここまやっといて意図的ではないとか組織的関与はないは通用しません。

真実に少しウソを混ぜるだけで意味が様変わりする典型です。他の統計数値とあまりに違う振舞いがあるため、ウソが発覚した訳で、実は毎勤統計以外の統計数値でも同様の疑惑はいろいろ指摘されてます。いっそ全てウソで固めれば矛盾はないでしょうし、全てウソなら逆を取れば真実が見えます。180°ならぬ135°のズレでアサッテの方向へずれる時空の歪みを生んじゃうんですね、笑えないけど。

ウソとは言えないけどいい加減な計画でとん挫しそうなのがこちら。

人工島アクセス、視界不良 25年に大阪万博 鉄道・道路とも未整備 :日本経済新聞
夢洲というのは大阪湾の一番沖合の埋立地で、アクセスが弱点ですが、道路も地下鉄もこれから作ろうっていう泥縄ぶり。実は来場者が上振れした場合のシミュレーションもできてないとか、ツッコミどころ満載の計画です。加えて軟弱地盤で建設工事の難航も予想されてます。これ関空と同様高潮や津波のリスクも大きい立地ですし、万が一会期中に被災して人が取り残されるなんて事態も予想されます。防災計画とか大丈夫か?民営化された地下鉄を伸ばして新駅と高層ビル作るって言ってるけど、地下鉄会社の経営も心配です。

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Saturday, January 19, 2019

ウソノミクス発覚

ひでーなー。政府統計のウソが発覚しました。

勤労統計調査ミス、長期放置か 復元加工は昨年分のみ  :日本経済新聞
厚労省の毎月勤労統計で、5~499人の事業所は無作為抽出によるサンプル調査ですが、500人以上の事業所では全数調査するところを、2004年以降東京都分の500人以上の1,400余りの事業所の内500事業所しか調査していなかったことが発覚したものです。

一般論として大規模事業所の方が賃金水準が高く、特に東京都は他地域より賃金水準が高い訳ですから、結果的に高賃金事業所が調査対象から外れて統計数値が過少に計上されていた訳です。同統計は雇用保険の失業給付の基準となるので、2004年以降の給付対象者延べ約2,000万人で530億円の過少給付となっていて、その修正のために閣議決定済みの19年度予算案を組み直す異例の事態となりました。

閑話休題。499人以下の事業所が無作為抽出によるサンプル調査なのは、数が多いことと数値のバラツキが多く異常値が混入する可能性があることと、統計調査への回答を行う事務処理能力が欠けるケースもあり、全数調査よりサンプル調査が適当です。逆に大規模事業所は事務処理能力の余裕もあり、毎月定例の調査ですから、ルーティン化できるし回答スキルも上がって正確な数値が期待できます。全数調査をしない理由は見当たらない訳です。

加えて同統計は政府のGDP算出や景気判断にも使われていた訳ですし、日銀の金融政策や民間企業も参照する重要な基幹統計だったからさあ大変。加えてOECDやILOへの報告にも使われますから、日本政府の国際的信用にも関わるものと、その影響範囲は甚大です。もう中国のこととやかく言えませんね。

しかも発覚の経緯が酷くて、数値を実態に近づけるために東京都分を3倍にする復元加工をした結果、18年度の賃金が不自然にハネ上がっておかしいと突っ込まれてバレたっていうんですからもう滅茶苦茶。厚労省といえば労基法改正でも裁量労働制の方が労働時間が短いとするウソのデータを国会に提出して大炎上したことが思い出されます。加えてこのエントリーで取り上げたこの記事も見てみましょう。

(真相深層)政府統計、信頼に揺らぎ GDPなど、日銀が精度に不信感 :日本経済新聞
ここでも毎日勤労統計への疑義が指摘されてますが、他にも指摘された統計データのおかしさがあります。厚労省叩いて済む問題じゃなく、他の統計も見直す必要があり、まだまだ影響は拡大すると予想されます。

2004年と言えば小泉政権で社会保障改革と称して年金保険料の毎年度のアップと給付制限の為のマクロ経済スライドの導入及び積立金の一部取り崩しを決めた年です。小泉政権では膨張する社会保障支出をプラス2,200億円以内に抑える歳出キャップをかけていて、失業給付に連動する毎月勤労統計を過少算出する動機は存在します。加えて派遣労働解禁に舵を切り、失業が増え非正規労働者が増えた時期とも符合しますから、失業給付の減額はその面からも求められます。そしてアベノミクスの成果を示したいと賃金の伸びが弱いことを突かれて復元加工とすれば、始まりも終わりも政治圧力の結果と見ることができます。将にアベノミクスならぬウソノミクスです。今月始まる通常国会はいきなり政局です。

かように日本の官僚機構は政治圧力に弱い存在で、よく「日本の官僚は優秀だ」と言われますが、どうもメッキが剥がれてきたようです。それが見えなかったのは単に公文書を残さないで情報を秘匿していたからというのが実際のようです。そして公文書管理の杜撰さ故にどうもろくな引継ぎが行われず、チグハグな対応になってしまうということですね。そしてそこへ付け込んで与党が政治圧力をかけて、ツケは国民へっていい加減にして欲しい(怒)。例えば整備新幹線。この仕組みも国鉄民営化で宙に浮く新幹線整備法を与党の圧力で延命させたものですが、それ故の矛盾も。例えばこのニュース。

東北新幹線、盛岡以北の高速化検討 JR東が騒音対策  :日本経済新聞
最高速320km/hのE5系が盛岡以北の整備新幹線区間で260km/hで運行していることに対して、国の線路使用料増額がネックなどといった議論がある訳ですが、変節黒田節で取り上げたように、整備新幹線が自社保有ではないことがネックであることは間違いありませんが、今回JR東日本が自前で投資するって話です。これの資金手当てですが、一つ心当たりがありまして、株式上場に備えてJR東日本が発議した新幹線譲渡代金のローンが17年3月に終わるってことです。

これJR東海が5.1兆円の負担を終えて余剰資金をリニアに注ぎ込むのと同じスキームですね。JR東日本の所謂1号債務は凡そ2,1兆円で、91年10月以来年1,000億円規模の債務償還が続いてきたんですが、18年3月でなくなる訳で、この部分のキャッシュフローが充当できるってことですね。これ大宮以南の最高速130km/h化や秋田新幹線の大規模改良などで投資を充実させていることとも符合します。

そして背景としてE5系の走行データが蓄積されてきたってこともあります。最高速260km/hとされる整備新幹線区間でも騒音対策を強化すればとりあえず320km/hまでは何とかなりそうという判断なんでしょう。減価償却されないインフラ部分は触らず、追加設備は自前で減価償却すれば、資金を回転させて継続的な設備改良に道が開けます。但し法的な所有者である国(鉄道・運輸機構)の同意は必要ですが、新幹線の財源探しに鵜の目鷹の目の与党政治家たちが横槍入れて線路使用料増額をねじ込む危険性はあります。北陸新幹線の大阪延伸や長崎新幹線のフル規格化などで財源探しに躍起となってますから。

そしてこのキャッシュフローの余剰を利益計上せずに設備投資に振り向けたJR東日本の判断は評価できます。利益を増やして法人税が増えるなら、投資へ回そうってのは民間企業として真っ当な判断です。やや蛇足ですが距離が長くスピ度アップ効果が見込める東北新幹線へは追加投資を厭わない一方、上越新幹線は最高速240km/hのままと選択と集中もされてます。この観点から言えば法人税減税が設備投資を促すって大ウソだってわかりますよね。ここにもウソノミクスです。ホント腹立つ!

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Sunday, January 06, 2019

林檎が落ちると

世界が混乱します。少なくとも短期的には。そんな波乱の新年をいかがお過ごしでしょうか。発端は2日のアップル社の売上高下方修正ですが、中国でのiPhone販売不振が理由ですから、アップルショックというよりは実質チャイナショックです。中国の経済減速がはっきり見えてきたってことですね。

加えてiPhoneが拓いたスマホ市場の飽和が背景にあります。アップルはハイエンド化による高価格政策で対応している訳ですkが、ローエンド品も性能が上がれば差別化が難しくなるから、結局ハイエンド化による高価格戦略は長続きしない訳です。これ悉く縮小均衡に陥った日本の家電メーカーと同じ袋小路に入ったってことですね。

一方でFRBの金融政策への批判も相次ぎました。先月のFOMCで年4回目の利上げを決めて、更に引き締め継続を示唆したことで、市場関係者の批判を浴び、トランプ大統領もパウエル議長解任を示唆するなどゴタゴタしました。そうした中で4日にパウエル議長が講演で利上げ一時停止を示唆したことが好感され、4日のNY市場は反発しました。「FRBプット健在」と好感された訳です。ただし3-5年物の国債金利が短期物より低いイールドカーブの矛盾はそのままです。これ投資家の質への逃避の心理を反映したもので、リスクオフ相場の特徴鮮明です。これによって為替は円高に振れますから、週明けの東京市場は期待しない方が良いでしょう。

よく言われる「長期停滞で財政赤字が大きい日本がなぜ買われるのか?」という疑問ですが、350兆円と言われる累積経常黒字がある限り、買われるのは当然。むしろ実体はそれだけの余剰資金があるから、リスク投資を手仕舞いすると自動的に円が買われるので、不思議でも何でもありません。これつまり国内の貯蓄過剰が海外投資へ向かっていたからで、海外投資へ向かう過程で売られた円が買い戻されるってことです。所謂貯蓄投資バランス問題なんですが、解決策は内需拡大により貯蓄過剰を解消することですが、これに失敗し続けて長期停滞から抜け出せないのが現在の日本です。

その日本を後追いしてきたのがアジア諸国ですが、その中で最大の国が中国です。その中国は日本の長期停滞を研究して回避策を探ってきたのですが、結果的にはリーマンショック対策で地方政府を中心に過剰な開発投資を重ねた結果、日本のバブル崩壊の教訓を生かせず、水面下で債務超過を拡大して身動きが取れなくなっています。そこへ米中貿易摩擦が加わり、問題を大きくしています。つまり中国は日本の轍を踏んじゃった訳です。この辺は前々エントリー
もご参照ください。

しかし中国の経済的ウエートは大きい上、日本のバブル崩壊後の停滞を埋めるように90年代以降の中国の台頭があった訳ですが、中国の停滞を埋める例えばインドの台頭は未だ力不足なので、当面の経済停滞はかなり深刻なものにならざるを得ません。世界は長いトンネルに入ります。ただしそれだけ石油など資源価格へのストレスは低下しますから、円高と相まって交易条件が改善しますから、日本経済にとっては悪いことばかりではありません。これを機に内需を深掘りして過剰貯蓄が国内投資に向かうようになれば、とりあえず目先の様々な問題には解決の糸口となります。

例えば高齢化自体は解決できないんですが、かつて若年人口の多かった日本で貯蓄性向が高かったのが、高齢化でリタイアが増えれば過去の貯蓄が取り崩されますから、自然に過剰貯蓄は解消に向かうのに、人手不足を理由に高齢者の労働力化を進めるのは、過剰貯蓄を増やす上に労働市場を圧迫して低賃金化を促しますから、寧ろ若年層の負担増となって逆効果となります。年金制度を安定させて安心してリタイアできる環境を整えることが重要です。

その意味で消費税増税問題ですが、野田政権当時の三党合意で消費税を社会保障目的税にするという約束を反故にする大盤振る舞いは問題です。社会保障に使われるならということで消費税増税を渋々認めた国民を欺くことです。選挙で思い知らせてやりましょう。

という訳で、2019年という年は明るい展望が描きにくいのですが、過去に遡れば1997年の消費税3%から5%へアップしたときとよく似た局面です。この年アジア経済危機と山一證券、拓銀などの破綻に端を発する金融危機があった年で、日本経済は大きく足踏みしました。これを全て消費税増税の栄養と捉えるのは間違いです。僅か2%英率アップで、所得効果はマイナス1.9%です。しかし同時に社会保障改革と称して年金保険料が値上げされており、それを加味した所得効果はマイナス3%を超えます。加えて企業の採用手控えもあって所謂ロスジェネ問題でより負担感が強まったことも指摘できます。

結論としては97年の足踏みは果たして消費税増税のせいなのか?ってことには大いに疑問があります。元々の経済ファンダメンタルズの弱体化に加えて年金保険料アップを含む公的負担増が重なった結果と見るべきでしょう。その意味では経済の停滞の中での増税という意味で97年の再現となる可能性はかなり高いと言えます。

但し違いもあります。1つは労働市場の現状ですが、企業の採用手控えこそないものの、高プロ導入や入管難民法改正による外国人労働者の導入拡大などで労働市場に圧力がかかる制度改正がありますから、制度の運用次第では97年よりひどい状況もあり得ます。加えて年金の支給減額や後期高齢者医療保険の負担増など実質的な公的負担の増加は消費税に留まりません。こうした中で一時的なバラマキで乗り切ろうとしている政府の姿勢では、結局単なる問題先送りに留まらず、需要の先食いを助長して却って混乱します。

人口減少下での消費拡大は主にサービス部門の拡大になりますから、モノは売れない訳で、工業セクターの生産性改善では解決できません。逆にサービスは生産と消費が同時に起こる特徴があり、在庫が効かない訳ですが、ITによるマッチング機能の進化で生産性改善の可能性が見えてきています。

具体的にはこのエントリーで取り上げたMaaSが典型ですが、移動のサービス化で複数の交通機関をスマホアプリでシームレスに利用できて決済まで可能となる方向性が見えています。これ必ずしも自動運転の実現などを待たずとも、需給のマッチングで従来不可能とされてきたサービス部門の労働生産性向上が可能になります。その意味で時代錯誤なこのニュース。

2019年 展望 時速360キロで試運転、輸出も JR東海社長 金子慎氏 :日本経済新聞
鉄道にとってのスピードアップは、単位時間当たりの輸送人キロを拡大しますから重要なんですが、人口減少下では顕在化している需要だけを見ていても先細りにしかならない訳で、潜在需要の掘り起こしという点でMaaSの可能性は大きい訳で、こういうマッチョなスピード至上主義は必ずしも正解とは言えません。まして東海道新幹線のスピードアップよりも技術的優位を示して輸出を狙うってのがもうダメ。外需依存ではなく内需の深掘りで過剰貯蓄を消費に結びつけて且つ国内投資に向かわせることで、長期停滞の原因と言える過剰貯蓄が解消されるんですが、全く逆行してます。ヤレヤレ。

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Monday, December 31, 2018

日産ワンエイト(108)

大晦日です。企業不祥事テンコ盛りの2018年を終えて、ソフトバンクIPO失速やNY株安の連鎖で日経平均2万円割れなど、明らかに経済が失速に向かっております。日銀がETF買い増しで辛うじて終値の2万円割れは防げたものの、リスクオンからリスクオフへの資金シフトは明らかです。異次元緩和から始まったアベノミクスの逆回転が始まります。

始まる前からうまくいかないと指摘したアベノミクスですが、ゴマカシゴマカシで来た結果、いよいよ誤魔化しようがなくなってきました。変節黒田節時点では不明としましたが、五輪後までは持つと見られていた景気の失速は早そうです。その場合追加緩和の手段が限られるため、景気の失速に打つ手がない最悪の状態になるってことも指摘しておきます。況や万博をや(-人-)チーン。そしてこのニュース。

大阪知事・市長、出直し選へ 19年統一地方選と同日か  :日本経済新聞
大阪都構想の亡霊が出てきました。都構想のキモは府市統合で都道府県民税と市町村民税の双方を都が徴税するということです。つまりカネと権限の集中ですね。流石に権限を失うと気付いた堺市は離脱しましたが。そして民営化された地下鉄でも散在が。
大阪メトロ、万博会場の夢洲にタワービル 1000億円超  :日本経済新聞
内緒ですが、夢洲は軟弱地盤が指摘されてます。関空の高潮被害どこ吹く風です。ついでですが、沖縄県名護市辺野古の新基地建設でも、軟弱地盤が指摘されていて、県が認可した公有水面埋め立て申請の工法では土地造成ができないのに国が工事を強行していて、明らかに嫌がらせです。話を戻しますが、維新が拘る都構想は金目当てと断定できます。そしてこれね。
商業捕鯨、展望見えず IWC脱退へ 豪州など非難  :日本経済新聞
捕鯨産業の経済規模は70億円強で40億円は政府補助金です。つまりGDP比0.001%余りのほとんど終わった産業です。それを止められないのは利権絡みです。一般財団法人日本鯨類研究所がその中心なんですが、農水省の外郭団体なのに独立行政Dどころか公益法人の認可も得ていないところに税金が投入され官僚が天下りしているんですね。

研究所を名乗ってますが、査読対象となる論文などは発表しておらず、専ら商業捕鯨再開のためのプロパガンダやロビーイングばかりやってます。南極などの調査捕鯨発生品の鯨肉を売って活動費にしてますが、売れてないからどんどん在庫が連騰倉庫に積みあがっている状況で、皮肉ですがIWCを脱退して調査捕鯨ができなになっても当面在庫処分で凌げるという笑えない状況です。この利権には山口県選出の安倍首相や和歌山県選出の二階幹事長が絡んでます。森加計問題と通底します。

その結果日本に非難が集まっており、ゴーン氏逮捕と長期拘留の問題も絡めて五輪ボイコットの機運まで出てきています。2020年が幻になるか?

ゴーン氏の問題では当初有価証券報告書虚偽記載の5年分50億円で20日間拘留後、それ以外の年度分の40億円で再逮捕して10日後の拘留延長を地裁に却下された結果、おそらく本命事件の会社法違反の特別背任罪で再逮捕となりました。特別背任には関与していないケリー氏は一転保釈が認められました。そのケリー氏が取り調べで一貫して「取締役会の決議事項であり虚偽記載には当たらない」と供述していて、これ正論です。またゴーン氏の長期拘留に海外から批判の声が上がったこともあり、地裁の拘留延長を認めない判断はそれを忖度したわれてますが、それはそれで問題です。

加えて言えば、海外メディアの報道では推定無罪原則を踏まえた報道がされてますが、記者クラブ発表を垂れ流す日本のメディアの報道姿勢が国際標準並みになれば、地裁判断も変わる可能性もある訳で、モヤモヤします。

最後に、毀誉褒貶はあるものの、日産を立ち直らせたゴーン氏の手腕は評価されるべきです。おそらく轢断トップの誰よりも現場に足を運んで潜在力を引き出したことは間違いありません。その点後継の志賀前社長や西川現社長はやはり現場に足が向かなかったのか、徐々に日産の業績も頭打ちになり、そればかりか不祥事を見過ごしていたという訳です。今回の件も更迭を恐れた西川社長の個人的動機も指摘されています。ましてケリー氏が言うように、問題があれば取締役会で指摘することはできた筈。司法取引で公権力を使っての権力闘争はどう転んでも後味の悪さを払しょくできません。

てなわけで、煩悩に凝り固まった日産幹部の魂は除夜の鐘で浄められるか?ゴーン(-人-)WWWW

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Sunday, December 16, 2018

COCOMしてますか?

華為技術(Huawei)を巡るニュースが連日報じられてますが、1987年の東芝機械COCOM規制違反事件と似ています。時あたかも日米貿易摩擦真っ盛りですし、安全保障問題を梃子にしている点も似ています。

東芝子会社の東芝機械がノルウェー企業と組んでソビエト向けに輸出した工作機械と制御ソフトが、冷戦期の対共産圏輸出規制委員会(COCOM)の規制に違反したとして問題になった事件です。規制品目は軍需品、高度工業製品、原子力関連品などとされ、東芝機械のこの取引が原因でソビエトの原子力潜水艦のスクリュー音が静かになり、アメリカの脅威が増したとされ、政治家による東芝製TVやラジカセのハンマー打ち壊しなどのパフォーマンスが大々的に行われました。

COCOM自体は正式な条約ではなく法的拘束力はありませんが、加盟各国は国内法で輸出規制の根拠法を制定し対応しており、日本では外国為替管理法で規制されてました。そのためアメリカの指摘を受けて日本で外為法違反で訴追され有罪判決を受け、親会社の東芝の会長と社長のトップ2人も辞任します。また議会へのロビー活動を活発に行いどうにか収集しましたが、肝心のソビエト原潜の静粛化に関する証拠開示は行われず、当時の日米貿易摩擦のネタにされたのではないかとの見方も根強くあり真相は藪の中です。

日本がCOCOMに加盟したのは1952年ですが、この年都営トロリーバス101系統今井線(上野公園―今井)が開業しました。開業時に登場した50型が実は中国天津市向けの輸出品がCOCOM規制により差し止められた結果、注文流れで東京都交通局が買うことになります。右側通行の中国向けを左側通行の国内向けに改造するという荒業ですが、朝鮮戦争の勃発もあり、何らかの政治力学が働いたのでしょう。

Huaweiに関してはいろいろと噂されてますが、少なくとも中国製だからセキュリティに問題があるということはありません。ネットや携帯やスマホにバックドアが仕掛けられていることは、スノーデン氏のリークで明らかにされてますが、あくまでもアメリカ政府の話。だから中国も同じこと考えるってことでしょうし、実際その可能性は否定しませんが、これらはソフトのバグを利用したハッキングが中心で、どこの国の製品であれ多かれ少なかれバグはありますから、敢えて言えば中国企業製品はアメリカ製品とはハッキングの勝手が違うってことはあるでしょう。それ以上でも以下でもない。つまり殆ど言いがかりです。ハッキング合戦となればマンパワーの投入量の違いがものを言う訳で、人口大国中国をアメリカが脅威と感じる訳です。

この辺のロジックは例えば中距離核戦力(INF)撤廃条約を巡るロシアの違反を理由としたアメリカの脱退にも見えますが、ロシアは核装備の近代化の一環で言いがかりと反論してます。これも実は中国や北朝鮮の中距離ミサイルが実戦配備されている現状から、ロシアの違反を口実に中国をターゲットにしていると見ることができます。延長線上には日本国内への核ミサイル配備もあり得ます。その時「事前協議」で日本が拒否権を発動できるでしょうか?アメリカに一言「COCOMしてますか?」www

ただHuaweiが対イラン経済制裁をすり抜けて通信機器を提供してきたことは子ブッシュ政権当時から指摘されていましたから、制裁を科したアメリカの国内法には抵触するということで、司法当局が動きましたが、トランプ政権の政治介入の動きに対しては牽制されました。こういうところは腐ってもアメリカです。

つまり一皮めくれば現在進行中の米中貿易摩擦は80年代の日中貿易摩擦とさほど変わらない訳で、当時の日本が唯唯諾諾譲歩したのに対し、中国政府は対決姿勢を見せてますが、いずれ折れないとアメリカの強硬姿勢は変わらないでしょう。中国にとっては痛手ですが、人口大国であることによるネットワーク効果が国内だけでも働くということを考えると、寧ろ中国が力を付けるきっかけになる可能性は否定できません。ただし日の出の勢いだった高度成長は終わり、日本と同様の長期停滞に陥る可能性は高いですが。

アメリカは冷戦でソビエトに勝利し、日米摩擦で日本を停滞させという風に、これまでのところ戦略は成功しており、その成功体験があるから対中国の強硬姿勢も続くと考えられます。しかも今回は軍事面で同盟国の負担増を要請しながら、Huawei排除では同盟国の協力を呼びかけるというご都合主義してるわけで、逆に言えばアメリカと言えども中国を追い込むには単独では難しいってことなんですね。で、中国の停滞の影響はアメリカよりも元々関係の深い日本やEUが被る訳で、日本にとっては損なディールです。矛先が中国に向いてるうちは日本は安泰なんて浅はかです。日本の長期停滞は続きます。

喧伝される中国異質論ですが、これも早い話80年代の日本異質論の焼き直しです。相手が異形の大国であれば、アメリカはあらゆる選択肢を否定しないというスタンスになるわけです。中国の陰で日本が相手にされないのは、日本のプレゼンスが低下したからってことですね。てことで、日本としては本当は鬼の居ぬ間の洗濯のチャンスなんですが、政府はどっち向いてんだか。

いつまでも対米輸出で経済成長を目指そうとするから大変なんで、もっと国内の再分配を進めて個人消費拡大を通じた内需拡大策へシフトするべき局面です。そうせずに消費税を10%に上げようとするから、所得効果でマイナス1.8%の消費縮小がある訳で、一時的なバラマキで平準化は無意味です。逆にたったマイナス1.8%なんです。その分の賃上げ、所得向上が見通せれば消費は増えるのにそうしないからまたデフレへ逆戻りになる訳です。

基本的な考え方は2005年元旦のエントリーから変わっておりません。もう少し解説すると、国際収支の黒字は国内貯蓄によるものです。生産されて消費されなかった分が国外で消費されて国際収支の黒字になる訳ですから、国内に貯蓄過剰を抱える訳です。貯蓄過剰状態ではいくら金融緩和しても消費も投資も伸びない訳です。

ゼロ年代以降のベアゼロ春闘や小泉改革で拡大された非正規雇用によって所得格差が拡大してますが、高所得層ほど貯蓄性向が高く消費しないので、格差拡大が貯蓄過剰をもたらしているわけです。所得再分配で消費性向の高い低所得層へ所得移転することが、消費拡大には必要になります。まして生産年齢人口が減少過程にある訳ですから、年金など社会保障の削減は高齢富裕層の貯蓄性向を助長する一方、低所得者も消費抑制を余儀なくされますから、貯蓄過剰を助長します。故に税金の使い道は所得再分配重視で公共投資は既存ストックを活用した投資効率の高いものに絞る必要がある訳です。で、上記過去エントリーで取り上げた相鉄都心プロジェクトに動きが出ました。

相鉄・東急接続路線「新横浜線」に  :日本経済新聞
相鉄、東急双方共に「新横浜線」の線区名で統一したのは、案内上の問題もありますが、東急が目黒線の延長と位置付けていないことも意味があります。直通は東横線と目黒線の両睨みってことですね。相鉄が直通車20000系を10連で登場させたことも、東横線直通を想定したものですし、加えて保安装置をソフトで読み替えてメトロ、東武、西武にも対応するものになっており、秩父や森林公園まで走れる訳です。

ただ困ったことに2018年のJRとの直通開始時点では相鉄新横浜線は新横浜には行かないので、案内上混乱が予想されます。おそらくJRと共通の路線系統愛称をつけると思われますが、E電以来ネーミング地獄のJR東日本うからねえwwwwwwww。「相鉄新宿ライン」かな?

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Sunday, December 09, 2018

CASE by MaaS

前エントリーの続きですが、フランスのマクロン政権がデモの影響で燃料税増税を断念しました。東名ルノー日産問題でフランス政府の干渉は防げそうですが、日産には別の問題が持ち上がっています。

自動車産業の激変が予想される中、日産の検査不正が新たに発覚しました。今回はブレーキなど安全に関わる部分の不正という重大なもので、ゴーン氏の報酬チョロマカシよりもガバナンス上の問題は大きいですし、ゴーン体制に責任を負わせるわけにはいきません。

完成検査の無視覚検査は、法令違反とは言え悪質性の程度は低かったし、そもそも制度自体が曖昧で非関税障壁の疑いもあるものでしたが、今回は国交省の業務改善命令を受けて現場調査する中で発覚したもので、検査不正は相当広範囲に行われていた模様です。ルノーとのアライアンスで海外製造拠点への投資が優先された事情から、その分国内製造拠点への投資や人員配置が手薄になったのは否めませんが、こうした製造現場の実態を把握できていなかった日産経営陣の責任は重大です。

検査不正の背景に。検査場の狭さとか検査員の不足といった事情があったようで、その中で増産体制が組まれた結果、検査部門がボトルネックとなり、検査で引っかかるとたちまち検査品で検査場が埋め尽くされてしまうため、右から左に流すしかなかったというような事情があったようです。それに対してスペースや人員の拡充を求める現場の声は経営陣に届かず放置された結果ということで、役員報酬を巡る金商法違反などより重大なガバナンスの欠如と言えます。必要な投資が行われなかったという意味で、経営陣の責任は重大です。

それはさておき、自動車産業を巡る変化予想でCASEというキーワードが語られます。繋がる(Connected)、自動化(Autonomy)、共有化(Shareing)、電動化(Electrical)です。これ相互に関連があって、車をスマホのようにネットにつなぐことで、付加的なサービスや機能が提供されるに留まらず、自動運転との関連で車間通信で衝突回避しますし、自動運転が実現すれば、稼働率の低いマイカーという保有形態が見直され、必要な時だけスマホで呼び出して使うことが可能になりますし、電動化は自動運転との相性が良く、また部品点数も減って特にエンジンのような作り込みも要らないから価格低下が予想され、自動車メーカーの優位性がなくなると言われます。

そのため自動車各社は優位性を維持するための投資を求められますが、例えば自動運転に関してはグーグル系列のウェイモが先行していて後追いになっている現状があります。電動化に関してもトヨタがハイブリッドシステムで世界をリードしたものの、特許で囲い込んだために追随するメーカーが現れず、米カリフォルニア州のZEV規制からも外されて焦っております。トヨタとしては究極のエコカーとして燃料電池車(FCV)を想定し、ハイブリッド車はつなぎという位置づけだったのですが、本命のFCVも水素供給網の整備が進まず、他方バッテリーEV向けの急速充電器の設置は進んでおり、またVWのディーゼル不正問題もあって自動車各社のEVシフトが鮮明になる中、トヨタは梯子を外された格好です。

EVに関しては日産が先行してますが、ビジネス的には大成功には至らず、新興企業の米テスラモーターズの先行を許しています。テスラモーターズ自体は典型的なガレージメーカーからスタートしたもので、ZEV規制が示すように環境意識の高いカリフォルニアでマイカーを電動化するガレージメーカーは多数存在しましたが、その中でイギリスのライトウエートスポーツ車のロータスエリートのプラットフォームを利用して、ノートPC用のリチウムイオン電池など汎用部品を使って世界初の量産EVとなるロードスターを世に問い成功を収めます。

バッテリーの搭載量で性能が規定されるEVです。とはいえ重量の嵩むバッテリーを大量に搭載すれば良いとはいきません。その意味で実用的なセダンではなく2シーターのロードスターならばパッケージしやすいし、趣味性故に高く売れるわけですね。こうして投資資金を上手に回収しながら技術を磨き、高級セダンのタイプSやクロスオーバーSUVのタイプXへと展開した戦略は見事です。加えてソーラー発電や家庭用バッテリーなどの事業化でシナジーを追求してEVのバリューを高めます。日本でも日産リーフが同様の訴求をしてますが、普及には至っておりません。

そして量産型セダンのタイプ3では製造ラインの自動化でコスト圧縮に挑みます。これは必ずしもうまくいかなかったのですが、マスク氏は製造現場との徹底した対話で解決策を見出し軌道に乗せます。この辺は日産幹部にとっては耳の痛い話でしょう。同時に自動車産業の雇用創出力という観点からは、従来通りとはいかない厳しい現実を示してもいるわけです。

とはいえテスラの成功はあくまでも所得水準の高い先進国の話でして、新興国への波及はむしろシェアリングが中心になると考えられます。そのときのキーワードがMaaSです。Mobility as a Serviceの略で、クラウド上のソフトウエアを利用するSoftware as a Serviceのもじりでもあります。言い換えれば移動(mobility)のサービス化でもあります。これ喩えればPCからスマホへの変化に相当します。これつまりハードとしての自動車のコモディティ化を意味します。

ただしMaaS技術的ハードルは決して低くはないので、先進国で先行して新興国へ波及する流れもスマホと同じと考えられます。そうすると自動車メーカーはまず利益の取れる先進国市場の劣化を余儀なくされるわけで、先進国にとっては雇用の縮小と共に格差拡大を覚悟しなきゃならないってことでもあります。

逆に言えば輸送サービスを提供する運送業にとっては劇的な生産性向上のチャンスでもあり、生産性格差で人手不足を余儀なくされる現状を良い方向へ転換できるチャンスではあります。但しあくまでもチャンスであって、AI自動運転で人手不足が解消するという発想では未来は開けません。

例えば自動運転が実現すれば移動中に仕事するとか就寝中に移動するとかが可能になるわけで、これある意味交通機関に求めらR3エルスピードの概念が変わることを意味します。朝の懐疑に間に合わせるために早起きして始発に乗るとか、前泊するとかが必要なくなるわけですから、この観点から言えばスピードを訴求するリニアは無用の長物になる可能性があります。公共交通にも変化をもたらす訳です。

そんな中で京浜急行が富岡地区の住宅地でゴルフ用電動カートを用いた興味深い社会実験を行いました。

「電動カート」は郊外住宅地の新交通になるか | ローカル線・公共交通 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
ゴルフ場用の電動カートを用いた輸送サービスの実験です。京急沿線には丘陵地帯を切り開いた住宅地が多数存在しますが、道路が狭く勾配も急ということで、バス路線の設定が難しく、高齢化で居住を諦めたり相続放棄で放置されたりして空き家が増えている訳ですが、20km/h以下の低速ながら勾配に強い電動カートを用いて最寄りのバス停やスーパーまでの輸送サービスを行ったものです。

面白いのはスマホアプリの京急バスナビに連動させることで、モードの異なる交通システムをシームレスにつないだ点で、システム開発には横浜国大やベンチャー企業も関与する形で、謂わばオープン化が実現している点です。住宅地内のラストマイルの交通手段ですが、MaaSの要素が揃っています。京急にとっては高齢化が進む沿線住宅地のてこ入れではありますが、鉄道がラストマイルの戸口輸送にアプローチする流れは東急田園都市線や江ノ島電鉄などでも無人運転バスの実証実験の事例があり今後活発化すると見られます。

この観点から注目なのがJR東日本の品川新駅です。先日「高縄ゲートウェイ」の駅名決定を発表しネット上ではいろいろ言われてますが、これかつて東海道上にあった高輪大木戸と呼ばれる簡易関所に因んだ名前だそうです。そうなら駅名は「高縄大木戸」にして英語名をTakanawaGatewayと案内すれば特に外国人の混乱するカタカナ駅名を避けられたし、地域の歴史文化を踏まえた新しい街づくりとしての重厚感も演出できたはず。JR東日本のネーミングセンスはホント酷いです。

これE電騒動以来繰り返されてますが、もう少し何とかならなかったかと思います。ただしゲートウェイに込めた玄関口の意味は分かります。先進的な職住近接開発を目論んでいる訳ですが、新駅を起点にしたMaaSを考えているとすれば、JR東日本の思い入れが偲ばれます。そこは理解できるけど、ネーミングセンスは残念過ぎます。

MaaSと直接関係はありませんが、東武鉄道のTJライナーやリバティ、西武鉄道のSトレイン、京王電鉄のけ京王ライナー、意外性の東急Qシートと有料続いています。JR東日本は元々グリーン車や通勤ライナーのサービスを行っていましたが、これ首都圏だけの話ではなく、京阪電気鉄道のプレミアムカーのように関西でも見られます。

京阪の合インバウンドで特急列車の混雑が常態化しており、着席サービスの導入を求める声があったようですが、この辺大量輸送を得意としながら過去の投資不足もあって混雑解消が進まない中で、公共交通と言えども将来安泰とは言えない時代を迎えるということで、選択的優良着席サービスは輸送の質を求めるユーザーを取りこぼさず増収機会も得られ、駅から先のラストマイル輸送との一貫性を持たせる意味も考えられます。そう見ると興味深い動きではあります。

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Sunday, December 02, 2018

大後悔時代そしてインド

日産ゴーン逮捕その後。

報酬先送り文書、効力巡り攻防 ゴーン元会長と特捜部  :日本経済新聞
逮捕容疑の有価証券報告書虚偽記載が退任後に受け取る株価連動報酬で、それを記載した報酬文書が日産の秘書櫃の秘密の金庫に保管されてたそうで、その記載内容によっては報酬を約した契約文書と見做され、未記載は違法性があるということらしい。つまりまだ受け取っていない報酬の約束が未記載ってことで、概算年10億円でその内5年分が逮捕容疑の50億円とか。

これやっぱ無理筋です。もちろんゴーン氏が隠そうとしたことは間違いないとしても、報酬文書の解釈問題という微妙な問題でいきなり逮捕ですから、やはりバランスが悪い。おそらく特別背任罪を視野に入れてるんでしょうけど、2兆円企業の日産にとっての50億円です。会社ぐるみで数千億円規模の粉飾をした東芝とは2桁違うし、会社の利益を棄損する意思が証明されなければ特別背任罪に問えません。やはり森友問題で籠池夫妻を長期拘留した時と同じような不透明感が漂います。

一方韓国では、三菱重工業の徴用工訴訟の判決が確定しました。先日の新日鉄住金の訴訟と同様、2012年に原告敗訴とした下級審の判断の見直しを迫り大審院が差し戻した差し戻し審の上告審ですから、よほどのことがない限り、覆る可能性は無かった訳で,和解すれば終わった話です。2012年は大統領選で李明博大統領から朴朴槿恵大統領に保守同士で政権交代した年で、文在寅現大統領は大統領候補として戦って敗れた訳で、韓国司法の判断は一貫しており、一部報道で見られる進歩派政権に忖度した判決ではありません。

加えて言えば昨今の国際公法と国際私法の関係に関する考え方の変化も見逃せません。例えばナチス占領下のアウシュビッツ輸送に協力したとしてオランダ国鉄が賠償に応じるなど、政府間の条約や協定と私人同士の債務債券関係は別とする考え方が広がっています。政府間の協定である1968年の日韓請求権協定は私人同士の請求権を含まないという韓国司法の判断は妥当です。

あとおまけ。「韓国と戦争だ!」と叫ぶ威勢の良いこと言う人いますが、日韓共にアメリカと軍事同盟を結んでますが、仮に日韓で紛争が勃発したとしたらアメリカはどう動くか?答えは国連憲章第53条第1項後段の「敵国条項」により、アメリカは国連安保理に通告することなく日本を攻撃します。北朝鮮問題で連携が必要なのに何やってんだか。そんな日本の首相に米中の仲裁の期待が語られるって何の冗談?

そのG30もトランプ旋風が話題ですが、皮相的な対立は本質ではありません。このニュース。

トランプ関税、米製造業に跳ね返る GMが北米5工場停止 (写真=共同) :日本経済新聞
トランプ大統領の意図に反してアメリカの製造メーカーが国内工場のリストラを発表したもの。特にGMは中国市場のウエートが高く、またEVやコネクテッドか―などへの投資のために売れないセダン工場を閉じるというもの。輸入原料や部品の関税による値上げで利幅が圧迫される中、EVやコネクテッドカーなど100年に1度と言われるイノベーションに鎬を削る自動車メーカーとしては、儲からない製造拠点を維持する理由はありません。これ日産ルノー問題にも通底しますが、企業が国を選ぶ時代が顕在化したってことです。

この構造が何かに似てると薄ス感じてましたが、これ英東インド会社のビジネスモデルですね。大英帝国のベルエポックを画した会社ですが、世界各国の貿易に関与して利益を上げていた点は日本の商社のようでもありますが、決定的に異なるのが武装の特権を得ていて、場合によっては略奪行為も辞さない存在でした。昂じてインドの植民地経営を仕切る存在となりましたが、インド各地を統治するマハラジャを賄賂で篭絡して有利な条件で交易をした、所謂分割統治の主体でした。

つまり、昨今謂われるグローバリゼーションの正体は、巨大化した多国籍企業が主権国家をインドのマハラジャよろしく選別し有利な条件を引き出すことと見れば解けます。これが例えば諸国間の法人税減税競争だったりFTAやEPAなど自由貿易を促進すると言われる国際協定だったりします。当然TPPや日欧EPAも含みますし、アジアのRCEPも同様です。いずれも主権国家の主権を制限する協定という点で、企業に有利に働きます。

日本ではあまり報道されませんが、通商を巡る国際協定ではほとんど最恵国条項が盛り込まれています。これ締約国、加盟国の1国が示した通商交易条件の最も低い水準が他国にも波及するってことでして、例えばTPP加盟国でもあり個別FTAも結ぶチリのワイン関税はTPP加盟各国に留まらず日欧EPAで欧州産にも波及するし、逆に欧州に譲歩した乳製品に関してはTPP加盟国にも波及するという関係になります。こうしてFTAやEPAのネットワークを通じて関税や障壁がどんどん押し下げられていくって話です。このコンテクストで種子法廃止や水道民営化法、農業や漁業への企業参入の自由化など、今将に国会で揉めている数々の法案の成立を政府が急ぐ理由でもあります。いずれもTPPや日欧EPAの関連法ってことですね。

この観点から言えば、例えばBrexitはイギリスの主権回復の主張から出てきた話ではありますが、イギリス自身がスコットランドの独立問題やBrexitの障害になっている北アイルランドの扱いなどで言ってみればバラバラでして、それに留まらず例えば女王陛下がロンドンシティに足を入れる場合には市長の事前承認が必要だったり、一方オートレースで有名なマン島は王族領(王族の私有財産)とされ治外法権扱いとなっていますし、加えて英連邦に所属するインド、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど一応独立した主権国家ながら女王陛下を元首とするコモンウェルス(共和国)があり、その他に未だに存在する植民地や自治領が世界にあり、ある意味本国も含めて分割統治されていたようなものです。この複雑怪奇さがBrexitをもたらしたとも見えます。

更にトランプ現象ですが、アメリカも東海岸と中西部、南部と西海岸とそれぞれ別の国のように住民意識が異なります。前2者は共和党、後2社は民主党の地盤ということで、かなりはっきりとした分断が見られる中で、トランプ大統領が誕生しました。元々州政府の権限が強いアメリカでは、連邦政府のみならず州政府へのロビーイングが盛んです。その結果州政府にロビーして通した政策が企業を利すると、他州も倣ったり連邦政府も結果的に動いたりしますから、ある意味企業にとっては天国のような国です。だからトランプの強面は企業にとってはちっとも怖くない訳で、ここに注目すると裏で起きている企業による主権国家の無力化に目が行かなくなります。

で、日本にいると気が付きにくいんですが、分割統治はイギリスやアメリカだけの問題じゃないんで、Brexitの一方の当事者であるEUも、加盟する主権国家の上部組織として定義されており、やはり主権を制限するという意味でイギリスやアメリカの分割統治システムと似たフラクタル構造にあります。ユーロの番人であるECBは米FRBを手本にしてますし、関税同盟、通貨同盟に加えて移動の自由を保障するシェンゲン協定で労働力の国境を越えた移動を可能としてます。

結果的にEUと加盟国の関係がアメリカの連邦政府と州政府の関係と酷似することになります。ギリシャやイタリアの南欧問題とか、近ごろ民族主義の台頭著しい東欧問題とか、統合によって分断が顕在化しており、アメリカとの相似相が見られます。幸いなのはEUはまだ米連邦政府ほどの力を持たないからトランプが出現しませんが、汎西欧主義を謳うフランスのマクロン大統領が打ち出したEUによる安全保障構想はEUの統治機能強化とセットですから、ある意味隠れたトランプかも。日産ルノー問題で対峙する日本政府は頼りない。あと内緒ですが、地方政府に北京政府=共産党が君臨する中国も相似相ですね。

国鉄分割民営化で鉄道改革で世界をリードしたと言われますが、欧州の鉄道改革で手本とされたのは、むしろアメリカです。1970年のペン・セントラル鉄道の破綻後、紆余曲折を経て国有化され、鉄道資産保有公社のコンレールとなり、経営悪化の鉄道会社の多くもコンレールに合流し、上下分離して鉄道会社は線路使用料を払って鉄道運営する存在になり、州をまたぐ長距離列車は連邦運輸公社(AMTRAK)へ移管されました。

アメリカでは民間での再建に失敗し国有化して、再度民間に売却したり、規制緩和で路線の改廃再編が行われたりと紆余曲折はありましたが、欧州では元々国ごとに地域分割されていて国境をまたぐ国際列車も多数運行されていたこともあり、アメリカの上下分離を取り入れてオープンアクセスで新規参入を促す形になりました。貨物を除いて上下一体の日本の国鉄改革は参考にならなかった訳ですが、寧ろJR北海道問題に見るように、日本が上下分離をせざるを得ない現状では寧ろ日本が欧州を手本にせざるを得ません。

長くなりましたが、今後MaaSの時代には鉄道と自動車産業の境界も曖昧になり、ハイブリッドな産業進化が見込まれます。一方で人手不足で都営バスにまで減便の波が押し寄せる現状でもあります。3万点の部品を集成するアセンブリ―産業ですそ野が広く雇用創出力の高い自動車産業の変化は片方で雇用不安を呼び起こす一方、生産性向上に制約のある運輸などのサービス産業は人手不足に悩まされ、産業間の労働力移転も困難です。結局この問題を解決しない限り、社会の分断は無くならない訳です。規制緩和すれば良しとはいきません。グローバル時代の後の大後悔時代は暫く続きそうです。

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Sunday, November 25, 2018

お水の都大阪

カルロス・ゴーン会長逮捕に始まり、大阪万博開催決定に至る騒がしい1週間でした。一方で問題だらけの入管難民法改正案や水道民営化法案の審議が始まりましたが、こちらのメディアでの扱いは小さく、しかも的外れなものが多く、困ったものです。そんな目晦ましに惑わされず、事実関係を掘り起こすことは大事です。

ゴーン氏逮捕の報に拭えない違和感があります。罪状は有価証券報告書虚偽記載で、ゴーン氏自身の役員報酬を50億円過少申告したとして金融商品取引法違反を問われております。実は有価証券報告書の虚偽記載自体はありふれた事件で、例えば西武鉄道を上場廃止に追い込んだ株式名義貸し事件で、堤義明会長を失い迷走した西武鉄道の事件などは日産の今後に対して示唆に富むものですが、それより気になるのは、虚偽記載と言っても粉飾とは言えない今回の事件でいきなり逮捕っていうのがよくわからないところです。

上場企業の通信簿である有価証券報告書の虚偽記載は確かに許されることではありませんが、粉飾ではないということは指摘しておくべきでしょう。報酬を誤魔化したとはいえ、別の費目に付け替えているから、決算数字自体は変わらない訳です。この辺会長派中心の日本人取締役達による粉飾決算を告発しようとした外国人社長を解任したオリンパスの事例でも、原子力事業を巡る損失隠しで粉飾した東芝の事例でも、逮捕者は出ていない訳で、いきなりの逮捕という今回の事件がこれらより悪質性が高いとはとても言えません。

それどころか公判を維持できるのかという疑問があります。例えばより重罪の特別背任に問うとすると、ゴーン氏が会社に損害を与える意図をもって虚偽記載したことを挙証しなければなりませんが、報道された投資名目の付け替えや自宅購入、成果インセンティブなどは、投資は成果が出るまでにタイムラグがありますし、自宅などの不動産購入も、転売目的の投資で、値が下がったから使っていたという釈明が可能ですから、それを崩すのは容易ではありません。何だかリニア談合事件のような地検特捜部の勇み足の気配があります。

しかも司法取引が行われたということで、日産の取締役が対象だそうですが、両罰規定による法人としての日産も免訴されるとすれば、西川社長は会見で否定したものの、事実上のクーデターと見做すことができます。そして限られた拘留期間で取り調べがどこまでできるのか。保釈交渉で住所をどうするなど難題山積です。加えてゴーン氏の会長職解任はできたけど、西川氏の後任会長人事はルノー系取締役の反対で決められず、取締役の補充すら流動的です。

ましてこの体制で、刑事罰は免訴されても、株主代表素養など民事の訴訟は免訴されませんから、片肺飛行状態で対応を迫られることになります。加えてフランス政府肝いりのルノーとの経営統合問題への対応もありますし、クーデター説に説得力はあるものの、脇が甘いと言いますか、本当にこの経営陣で難局を乗り切れるのか、疑問は尽きません。

そして与野党対決法案の入管難民法改正案の審議入りと継続審議の水道民営化法の国会審議の報道露出の少なさを考えると、政治介入の疑惑が頭をもたげます。内部告発の内偵段階はともかく、ゴーン氏逮捕の報が事前に官邸にもたらされていた可能性はあるのではないでしょうか。

あるいはルノーとの経営統合問題でフランス政府と対峙を迫られる決断を、ゴーン氏の悪だくみを見逃し司法取引でも民事は別と考えが及ばない現経営陣がこんな重大な決断ができたのは何故か?例えば日産株43%を保有するルノーの議決権を無効化するために日産のルノー株補修比率を15%から25%に買い増すための資金供与を日本の政策金融を動員するといった裏の約束があったとすれば、日産経営陣の背中を押すことになるんじゃないかとか。裏で画を描いた奴が居る気がします。

それはさておき、問題だらけの水道民営化問題ですが、何が問題かというと、様々ある民営亜手法の中で、敢えてコンセッション方式を推奨し、補助金付けて誘導している点です。立法事実として人口減少による料金収入減少で設備の維持が困難になっている点、故に老朽化が進んで漏水などが増えている点、また地震対策として耐震菅への交換が進んでいないこと等から、自治体毎の事業を広域化する必要があるけれど、それがなかなか進まないことから、民間活力を活用して問題解決しようということで、一見よさそうな話に見えますが、問題大ありです。

まずコンセッション方式とは、設備の所有権の公共部門に残して長期に亘る運営権を民間に売却するって仕組みですが、日本では民主党政権時代の2011年6月のPFI法改正で取り入れられ、関空など関西3空港の民営化で採用された手法です。思い出していただきたいのは今年の台風24号の上陸で関空が冠水し船舶の衝突で連絡橋が破損し、8,000人もの人が取り残されたことです。インフラ保有部門と運営する民間部門の連携のまずさが露呈したものですが、コンセッション方式にはこの手の問題があるということは押さえておきましょう。

水道事業は現在地方公営企業が担っていますが、基本的に料金収入で設備投資から運営、保守、設備更新までも一貫して行い、原則税金の投入はありません。事業が黒字の場合は剰余金が自治体の歳入に繰り入れられ、赤字の場合は欠損が自治体から補助されるので、地方議会のチェックは受けるものの、民間に準じた複数年度会計で減価償却も行われますから、結果的に市民の共有財産のような形になっています。

ただし職員は地方公務員の身分なので、条例で定員が定められていたりして、広域化の妨げとなってもいます。素直に考えれば地方公営企業をそのまま株式会社化できれば、複数自治体で事業を統合して自治体が株式を持ち合う形にできれば広域化は問題ないはずで、敢えてコンセッション方式を推奨し、補助金で誘導する理由はありません。で、水道事業民営化で先行したフランス、パリ市は、コンセッション方式は問題が多いとして再公有化されましたし、世界的にも見直しの機運が高まっており、日本は完全に周回遅れです。このタイミングでの水道民営化は再公営化で事業機会を失ったフランスのヴェオリア、スエズ両社を助ける意味しかありません。はて、そうすると政府は日産をルノーに売り渡すつもりかも。

で、地方公営企業繋がりで、公営交通の民営化も留まるところがありません。元々高待遇の地方公務員の身分故に高給取りになったバス運転士への批判が起きたことと、一方で民間事業者では分社化により組合の強い本体から切り離した新規採用者の賃金圧縮が進んだ結果、高賃金で赤字体質の公営交通に批判が集まり、路線の民間移譲、株式会社化、運営の民間委託など手法は様々ながら実質的な公営交通縮小が進みました。万博開催が決まった大阪市の地下鉄やバスの民営化は記憶に新しいところです。その大阪市でこのニュース。

自治体の貯金、大阪市が最多2400億円 2位は江戸川区  :日本経済新聞
橋下市政時代から、とにかく金が無い金が無いの連呼で学校給食を安物弁当に変えたり文楽協会への補助金削ったりしてた大阪市ですが、」実はたっぷり貯金してます。これ剰余金を基金として積み立てているんですが、よく考えたら歳入不足で地方交付税の交付を受けている大阪市が蓄財するっておかしい訳で、これ大阪市に限らず多くの自治体で同じようなことやってます。何故かと言えば人口減少で税収が伸びない中、夕張市のように破綻して財政再建団体になれば大変だという恐怖心からです。夕張市への国の対応が厳しすぎたってことです。

加えて大阪市では地下鉄とバスの民営化で資産売却益が得られたことで、基金が膨らみました。そこへ2025年の万博開催決定の報ですから要注意です。会場の夢洲への地下鉄整備その他の万博関連事業で基金が蒸発すること間違い無し。市民サービスを犠牲にして得た基金が蒸発するのを市民は指をくわえて見なきゃならない。訳です。ですから万博開催をおめでとうと祝う言葉は言いません。ご愁傷さま。

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Sunday, November 18, 2018

誰得な領土問題

日ロ首脳会談で二島返還って話。様々な評価がネットで見られますが、報道でも取り扱いが難しいようです。

日ロ領土問題、思惑にずれ (写真=共同) :日本経済新聞
冷静に考えれば日米安保条約第5条で米軍は日本が領有権を有する地域のどこへでも基地を置く権利があり、日本側に拒否権は定義されていません。辺野古見ればわかりますが。故にソビエト時代から進まなかった領土交渉ですが、今回の首脳会談の意義は、改めてそのことが明らかになったってことです。これ領土問題に煩い一団の人々を黙らせられるという意味で、安倍首相以外では不可能な着地点です。たまには褒めてやるwwwwwww。

冗談はさて置いて,実質的に歯舞色丹二島周辺は良い昆布の漁場でして、ロシア人は昆布を食用しませんから、ここに日本の漁業権が設定できるなら、主権云々は横に置いて成果として評価することは可能です。というか、元々地元では密漁が横行していた訳で、それが合法化されるなら地元にとっては歓迎されるでしょう。しかも煩い一団の人々が文句言わないなら尚良しです。

また昆布以外でも、例えば花咲ガニのロシア漁船による水揚げが90年代から増えている現実があります。ロシア漁船だって高く売れる方へ持って行く訳です。勿論乱獲による資源枯渇のリスクと裏腹ですが、日本政府のウナギやクロマグロの漁獲制限が実質制限にならないガバガバな水準にあって資源枯渇が現実化している状況からいえば誤差範囲かと。

でもね、前エントリーで取り上げた入管難民法改正あ審議で法務省が提出した技能実習生の失踪問題に関するデータに重大なミスありました。

入管法改正案、実質審議入り先送り 調査ミスに野党反発  :日本経済新聞
これExelの操作ミスと言い訳されてますが、失踪理由として「より高い賃金を求めて」として集計されたデータが最低賃金以下、明示された賃金以下、低賃金の3つのデータを合算した結果の集計ミスであり、しかも実習生側の都合に見える言い換えまでされているという意味で、通常国会の厚労委員会で問題になった裁量労働制のデータ改ざんに通底する法改正のために都合の良い粉飾がされているところが問題です。官邸がウソつきだと官僚が忖度する構図は森加計問題以来続きます。官邸のウソつきぶりは身内の日銀からも指摘されてます。
(真相深層)政府統計、信頼に揺らぎ GDPなど、日銀が精度に不信感 :日本経済新聞
これ2016年のGDP推計の改定で研究開発費や特許権の資本勘定算入その他の新基準が適用され、1994年まで遡って数値が改定されました。この改定は基準が曖昧との指摘が以前からありましたが、賃金データの動きが不自然ということで、日銀からクレームがついたってことなんですが、デフレ脱却を目標にする日銀にとっては賃金推移のデータは重要なだけに、内科k府に元データの開示を要求したところ拒否されたという展開です。ま、ぶっちゃけGDP数値の捏造疑惑ってことです。

これ改定に伴って直近の成長率が高く出た一方、2009-12年の民主党政権時代の成長率が相対的に低くなっているということで、疑惑がもたれていましたが、内閣府は元データの開示を拒んで否定し続けていました。それが遂に身内の筈の日銀からも疑惑の目が向けられた訳です。アベノミクス自体がインチキだった可能性がある訳ですね。

で、領土問題も結構なんですが、以前から指摘しているように、地方の疲弊が止まらない中で、内なる領土の消失とも言うべきことが起きていることにもっと目を向けるべきですね。北方領土間近の北海道がどうなっているか。札幌圏への人口集中の一方で、道東道北の輸送インフラのJR北海道が瀕死の状態です。年間400億円の欠損ってのはもうシャレになりません。しかも100億円は北海道新幹線から発生している訳で、残念ながら新幹線の札幌延伸による延命効果も疑問符が付く状態です。北海道新幹線をJR北海道から切り離して例えばJR東日本に移譲するとかできれば良いんですが、整備新幹線故にそれも難しいところです。

その一方で小樽―新千歳空港間を結ぶ空港快速は15分ヘッドでも大混雑で、座席指定のuシートもプラチナチケットになっている状況です。これインバウンド需要による外国人観光客の増加が寄与しているんですが、この増強が喫緊の課題なのにできない。理由は南千歳から分岐する空港支線が単線で6連しか入れないから、今以上の輸送力増強はできない訳で、北のスットコドッコイで取り上げた新ターミナル駅への移転を待たざるを得ませんが、公費負担を含めて具体化は進んでいません。

あくまでも個人の見解ですが、かつて千歳空港ターミナルビルと直結だった南千歳駅を国の航空政策で失ったことに対する原状回復の保障措置として、全額公費負担でJR北海道の経営支援するぐらいの対応が望ましいところです。てことで、誰得の領土問題よりも地方の過酷な現実こそ目を向けるべきです。

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