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Sunday, September 08, 2024

試練の9月

波乱の8月に乱高下した株価も落ち着きましたが一進一退のさえない値動きが続きます。独り勝ち状態で絶好調のアメリカで景気減速のサインが出てきて、FRBの利下げ確実と言われる除隊ですから無理もないところ。連れて動く日本株がさえないのも当然です。また米大統領選に絡む政治の先行きの不透明感も経済を押し下げます。日本でも自民党総裁選と立憲民主党代表選が同時並行で進行中ですが、令和のコメ騒動関連でこんなニュースも。

1〜7月のコメ輸出最高 国内不足も海外用の転用に壁 - 日本経済新聞
国内のコメ不足にもかかわらず海外の日本食ブームでコメ輸出が増加しているという違和感ですが、輸出米は補助金を受けているから国内に出荷できないというオチです。つまりコメの国内価格維持のために資料米や加工米と同様に差額を補助金で埋めている訳ですが、そのために流通市場を窮屈にして今回のようなコメ具足をもたらした訳です。どうせ補助金出すなら農家の個別所得表をしつつ市況を見ながら自由に流通できる体制であればコメ不足は起きなかった訳です。与党の票田の農協を温存したいがために起きたコメ騒動です。補助金はWTOが禁止する輸出補助金の疑いがあります。

という訳で自民党も立憲民主党も立候補者が増えて見通しにくい状況ですが、これだけ候補者が乱立すると目立たないと埋没するという訳で、出馬表明時に他の候補との違いを演出しなければならないから総裁選大喜利状態です。笑えるかどうかは知らんけど^_^;。目についたのは河野太郎の言いたい放題と小泉進次郎の意外なしたたかさです。河野太郎はおそらく最後は麻生派の後押しで優位にあるというおごりが見えますが、一方トートロジーばかりの進次郎構文と揶揄されてましたが、そうした批判もさわやかに受け止めつつ、付箋だらけのカンペを笑顔で読み上げる役者ぶりは親譲りかも。侮れません。但し河野太郎のコレは注目に値します。

河野太郎氏、全納税者が確定申告案「税の使い道に厳しい目を」 自民党総裁選 - 日本経済新聞
欧米では当たり前の全員確定申告ですが、日本では年末調整で雇用主に代理させている訳で、その結果給与所得者の納税者の自覚が高まらないから政府の財政運営に厳しい目が向かないということですね。河野氏は寧ろ企業の事務負担を問題視しているようですが、政府が副業を推奨していて2つ以上の雇い主から給与を受け取る人も増えてますし、また社保改革で短時間労働者の厚生年金加入が増えていることもあります。その是非はとりあえず横に置きますが、自民党の裏金問題が炎上したのはインボイス始めましたで指摘したように消費税のインボイス制度導入で国民の意識が変わったことが大きいんですよね。総裁選を派閥頼みで闘う河野氏は気付いていない?^_^;

実は全員確定申告は税務上は国民の資金フローを国税庁が把握する度合いが増えますから、マイナンバーに頼らない納税者の名寄せが可能になります。逆に言えば納税者としては健康保険証その他の個人情報をマイナンバーに紐付けすることは国に丸裸にされるリスクを負う訳で、国民から見たマイナカードの存在意義を低下させます。是非やってくれ!それから金融課影響下は石破氏が打ち出してひっこめましたが、NISAで非課税枠が設定されたんですから、累進課税は難し鵜くても税率を高める手はあります。本業が低所得の場合は総合課税を選択すればよいですから、殆どの個人投資家は回避策がある訳です。加えて企業の保有株の課税免除も見直せば良いです。

あと解雇規制緩和を複数の候補者が発言してますが、いったいどの法律で規制され、それをどう変えるのかに踏み込んだ発言はありません。当然なんですが、労働基準法による不当解雇の禁止は謳われてますが、どう変えれば規制緩和になるのでしょうか。実際は日本企業の所謂メンバーシップ型雇用による企業の過大な人事権を前提にした裁判所の判例の積み重ねが企業の解雇を阻んでいる訳で、司法判断の積み重ねですから、それを変えるには新法を作らなきゃいけません。そうなると解雇を正当とする条件を条文に書き込まなきゃいけないくなりますが、そんな縛りを企業は嫌う筈です。言ってみただけ以上の意味はないですね。政治が絡むとこういうことは往々にして起こります。例えばアメリカでも。

米クリフス、日本製鉄による買収失敗なら「USスチールの資産買収」 - 日本経済新聞
日鉄の買収提案の前に米同業のクリフスが買収を検討したものの市場占有率から反トラスト法違反の疑いがあるということで沙汰止みあった経緯があり、日本企業の日鉄による買収提案は経営陣にとっては渡りに船だったんですが、労組の同意が得られず、それ故にトランプ氏がソシエを打ち出し、対抗上ハリス氏も懸念を表明し、バイデン大統領も任期中の阻止を打ち出すという連鎖になっております。劇先週のペンシルベニア州に立地する故に政治イシューになってしまったのですが、そうなるとUSスチール経営陣は製鉄所閉鎖を示唆して牽制する訳ですが、それによって閉鎖される製鉄所などの資産をクリフスが引き受ける形で漁夫の利を得ようという訳ですね。政治が絡むと経済原則通りには運ばない訳で、日本のコメ問題にも通じます。話を日本に戻します。
公益通報制度、機能せず 兵庫県知事は告発者捜し優先 - 日本経済新聞
おねだり知事などとワイドショーで面白おかしく取り上げられてますが、問題の本質は公益通報者保護法で通報された当事者である知事が通報者を探してもみ消しを図った法令違反問題です。公益通報でも悪い噂を集めた誹謗中傷の可能性が皆無ではありませんが、それを判断するのは当事者ではなく第三者であり、そのための手続きが決められているのにそれを無視した訳です。

こうした制度が重要なのは官公署や企業の不祥事が絶えないことがあります。鹿児島県警の内部告発事件もそうですし、BIGモーターの不祥事や三菱電機の検査不正、不正を生む会社の掟の三菱自動車燃費不正から始まりほぼ全メーカーを巻き込んだ自動車の検査不正や小林製薬の紅麹サプリ問題など、公益通補制度が機能していれば回避できた可能性のある出来事が目白押しです。意味するところは発言の安全性が担保されていない現場が多いってことです。不祥事が絶えない訳です。こうした中で日本経済を浮揚させるのは正直難しいでしょう。加えてこれから人手不足本番ですから、賃金は上昇圧力がかかる訳ですが、それを喜べない現実があります。

7月の実質賃金プラス、ボーナス増が寄与 基本給はなお物価上昇率を下回る - 日本経済新聞
6月に続き7月も実質賃金プラスとなりましたが、6月は公務員一部企業、7月は殆どの企業のボーナス月で、しかも円安効果で業績が上振れした企業が成果給として支給している訳ですから、基本給で見ればマイナスということで、賃金ホントに上がってる?
成田空港、トラック負担減に知恵 鉄道代替や時間予約 - 日本経済新聞
第三滑走路整備で貨物便受け入れが増えることを見越した国際貨物拠点整備がトラックのドライバー不足で視界不良ということで、鉄道貨物代替を検討しているというニュースです。成田空港周辺には航空貨物フォワーダーの事業所が多いですが、ドライバー不足と共にコロナ明けでネット通販利用が一服したこともあり、業績が良くない中でドラーバーの待遇改善は進まず、こうした動きになる訳です。成田空港に関しては石油元売りのリストラでタンクローリーが不足して航空燃料調達が滞っているということもあり、航空燃料輸送の復活もあるかも。いずれにしても試練の中での新たな動きです。ドライバーの待遇改善が進むかどうか。

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Saturday, August 31, 2024

迷子の台風

本題に入る前に令和のコメ騒動の続きです。

坂本哲志農相、お米の円滑流通を卸業者に要請 備蓄米放出は慎重 - 日本経済新聞
政府は対応する気なし。卸業者に円滑な流通を促してますが、流通が滞っている状況で政府備蓄米の放出はしないで、もうすぐ新米出るからそれで解決というスタンスです。しかし問題は新米は割高というか、値上がり確実です。というのも農協が生産者に支払う前払いの概算金が増額されていて、小売り段階で2~4割高くなると見込まれています。新米と古米の価格差が大きくなるのは仕方ないですが、スーパーの棚からコメが消える、つまり今必要なコメが手に入らない状況の改善こそ必要な筈です。

ここからは裏の取れていない話ですが、元々コスト上昇で農協が生産者に支払う概算金は上がっているのに、コロナ禍で需要が減って値崩れしていたことから、卸が利益確保のための価格つり上げの動機はある訳で、本来ならばそうした流通の不全を解消するため平成のコメ騒動を受けて成立した政府備蓄米制度じゃないのか?ってことですね。加えて市況によって生産者に概算金の上振れ分として加算金を支払う場合もあります。勘の良い方ならお判りでしょうけど、自民党総裁選の後に信を問う解散総選挙という段取りを睨むと、農協を通じてコメ農家にアメを与えることで票の離反を防ぐ狙いが読み取れます。農政改革を打ち出した立民枝野氏はその辺意識してるかも。

東海道新幹線、29日の運転取りやめ 静岡県内の大雨影響 - 日本経済新聞
東海道新幹線は沿線の雨量計が規制値を超えたことから29日の運休を決め、明日9月1日も運休と長引いていますが、それもこれも台風の動きが遅いからです。豪雨に弱い盛土構造も災いしてますが、こればかりはやむを得ません。

台風の動きが遅いのは台風を動かす動力となる太平洋高気圧が弱いのと、偏西風の蛇行で日本列島付近は北へ偏っていて台風10号はうまく乗れなかったから近畿地方で停滞している訳です。そして台風の北側にある秋雨前線に湿った暖かい風を送り込んで活発化させているから東海から関東にかけての広範囲に雨を降らせている訳です。気球の地政学で中国製とみられる観測気球が大きくコースを外れて北米に達して議会の突き上げで撃墜された事件がありましたが、将に偏西風の蛇行を実証しております。ちなみに23年5月に撃墜した気球の残骸を調査した米政府から軍事観測気球でなかったことがこっそり発表されてます。

一方今回は空の便は九州発着便が大量運休したものの、首都圏対関西などは飛んでいますから、輸送力は比較になりませんがある程度受け皿になったと考えられます。故に輸送力に差のある北陸新幹線も米原に繋げば機能するってことです。自民党総裁選出馬表明が遅れてメディア露出を増やしたい与党陣営には水を差された感があるかもしれませんが、脱炭素をサボり石炭火力依存でCO2出しまくった結果、上述のように偏西風が惰行して台風が停滞した訳で、ある意味自業自得です。福島第一原発事故で原発が全停止したから仕方がないと言訳されてますが、このニュースも仕方がないんでしょうか。

原発新増設、誰ができるのか? 技術継承へ細る人材 原発 誰が動かす(上) - 日本経済新聞
東海大学が原子力学科の募集を停止するという記事ですが、福島の事故で受験生が減って定員割れ状態で維持できなくなったわけです。つまり若手の原子力エンジニアが育っていないから、政府方針で原発新増設を決めたところで作る人も動かす人も足りないという状況になる訳です。世界を見渡せばアメリカもスリーマイル事故以来新設が止まり、やはり技術的なブランクを埋められずに迷走してますし、イギリスやフランスも同様です。世界を見渡せば新増設はほぼロシアと中国に偏っており、脱炭素電源として新設を希望する新興国もロシアや中国の企業に頼っているという状況です。いずれ日本もその列に並ぶかも^_^;。建設だけでも10年はかかり立地選定や環境アセスメント、原子力規制委の承認や住民避難計画策定と地元同意とスケジュールこなすうちに2050年来ちまいます。

更に言えばアメリカは原子力産業の空洞化で既存原発のウラン燃料をロシアから輸入していて、ウクライナ戦争の制裁対象にもなっていません。更に悲報ですが安全性が高いと言われる新型炉の中でも有望とされる小型モジュール炉(SMR)に使われる高濃縮ウラン燃料は、現時点でロシアのみが商業供給可能とされており、実際シベリアの北極海沿岸で実用炉が稼働しています。まあロシアが保有する濃縮ウランを発電で減らせるという意味で悪いことばかりではありませんが、冷戦時代に過剰生産されたソビエト時代のレガシー資産は膨大で、とても発電だけでは消化しきれません。核燃料の調達面では欧州も似たり寄ったりの状態です。

日本では核燃料サイクル事業で「国産」を謳いますが、その六ケ所村の核燃料サイクル事業1997年稼働開始の予定をトラブルで27回も変更されていていつできるかもわからないし、そもそももんじゅの開発失敗で高速増殖炉の開発を放棄した結果、プルトニウムを含むMOX燃料を軽水炉で燃やすプルサーマルでお茶を濁してますが、増殖炉と違って高レベル放射性廃棄物を増やす厄介者ですし、既存原発で使う場合、放射線被爆で躯体の劣化が進むと考えられますから、折角動いている既存原発の経年劣化を早めるだけで、メンテナンスコストも上がります。

脱炭素燃料として水素やアンモニアも注目されてますが、何れも現時点で石油由来の発生品だから脱炭素にならないし、再エネ由来の水素などはコスト面で商業化は程遠い現状です。アンモニアも当面石炭火力の併燃で対応ですから、結局石炭火力の延命にしかなりません。また日本製の石炭火力は高効率だという議論もありますが、それでもガス火力などに比べてCO2排出量は多いし、新設した場合30~50年の稼働期間を睨めばカーボンゼロ宣言の2050年を越えて稼働させるのかということですね。その前に停止を余儀なくされる座礁資産にしかならない訳です。

てことで停滞する迷子の台風は日本が生み出した日本の写し鏡かもしれませんね。

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Sunday, August 25, 2024

令和のコメ騒動

災害の備えと憂いは東京も例外ではありません。

東海道新幹線、大雨で一時運転見合わせ 山手線も - 日本経済新聞
港区などで連続150㎜の雨量となって東海道新幹線が規制値越えで運転見合わせ。また山手線など首都圏各線も止まりました。一方、SNSで南北線市ヶ谷駅コンコースの水没や都営大江戸線六本木駅の地上階段から雨水が滝のように流れ込む動画が拡散されたりしてますたが、地下鉄各線は一部地上出口の閉鎖で乗り切り、列車運行は続けていたとか。地下鉄の排水能力の高さを見せました。同時に排水を受ける公共下水道の能力も高い訳ですが。とはいえ帰宅ラッシュのタイミングでのハプニングは影響が大きかったとは言えます。

ノイジーサマーで指摘したように、地震や台湾有事などの軍事的緊張よりも、水害リスクは発生確率から言えば重大です。さりとて全国で東京都並の対策が可能かといえば難しいし、本当のところは原因である気候変動対策としての脱炭素を進めることが重要でしょう。脱炭素の観点から言えばクラウド上で働くAIは大量の電力消費を伴いますから、この観点からも規制が必要ですし、ましてエネルギー資源をほぼ全量輸入に頼る日本に勝ち目はありません。一方で今は落ち着いている電力需要がAIで上振れするという妄言で脱原発を主張していた河野太郎議員が宗旨替えしました。愚かです。

その河野太郎議員は自民党総裁選に出馬の意向だそうですが、前回小石河連合と呼ばれ河野氏支持に回った小泉氏や石破氏はそれぞれ出馬の意向を示しております。河野氏は唯一解散していない麻生派の支援でということでしょう。小泉氏の後ろには菅義偉前首相がついていると言われ、石破氏は独自に推薦人を集めて出馬表明しています。二階派出身でコバホークと呼ばれる小林鷹之議員は甘利昭氏が裏についていて安倍派に多い4回生以下の若手議員票の分散が狙いらしく、噛ませ犬というか当て馬ということのようです。更に出馬意向の議員は多く、党員票の比重が増すことになりますが、党員票も医師会その他の業界団体の影響下にありますから、誰が選ばれても自民党の金権体質は温存されると見るべきです。

一方立憲民主党の代表選で若手が出てこないという嘆きの声がありますが、劣勢の野党第一党で議員数が少ない中で20人の推薦人を集められるのはベテランになりますし、まして影の首相として政権交代を迫る政治手腕も問われますから、ベテラン同士の争いで寧ろ政権構想や政策論争を闘わせることで有権者の関心が高まり次期総選挙に繋げることが狙いですから、単なる権力闘争の自民党の総裁選とはそもそも意味が違います。そして自民支持の業界団体も必ずしも一枚岩ではないので、与党支持層の切り崩しにもつながります。例えばこんなニュース。

米が揺さぶる物価高 7月17.2%上昇、20年ぶり伸び幅 - 日本経済新聞
古米と新米の端境期で昨年の猛暑の不作やインバウンド需要で外食のコメ消費が伸びたとかいろいろ言われてますが、確かに急な値上がりではありますが、水準としては20年前に戻っただけ。その間減反で供給を絞って価格維持をしながら需要がそれ以上に減って価格低下傾向にあったコメ価格ですが、実は卸し倉庫には十分な在庫があると言われております。価格維持で高値で仕入れたコメですが、ウクライナ戦争や円安で輸入小麦が値上がりし、パンやパスタや即席めんが軒並み値上げとなったことから便乗値上げが疑われます。

ウクライナ戦争は長引き為替の円安が定着する中で、相対的に安値の国産米には輸出の目が出てきている訳ですし、民主党時代に打ち出した農家の個別所得補償が有効な局面です。コメの価格維持ではなく農家の所得を補償することで、国内販売価格も下がるし円安と相まって輸出競争力も増す訳ですから、それを梃子に食料自給率を高めるというオーソドックスな食料安保政策になりますし、自民党の票田の農協を切り崩すことにもなります。立憲民主党の代表選ではこうした文字通り骨太の政策論争を期待します。

ノイジーサマーの北陸新幹線関連でも動きがありまして、与党PTが北陸新幹線小浜京都ルート早期着工を画策して25年度予算で事項請求をいいだしているとか。事項請求というには防衛費などで多用されてますが、金額を明示せず事項を明示するもので、執行段階で予備費等から付け替える狙いです。そのため実は防衛費GDP1%はとっくに突破していたりします。同じことを整備新幹線でやろうとしていますが、こうなると整備新幹線着工5原則無視どころか、財政民主主義に反する権力の暴走と言わざるを得ません。こんな与党は早く下野してくれ。

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Sunday, August 18, 2024

災害の備えと憂い

バイデン不出馬のプランBで大統領選を混戦に持ち込んだ米民主党に倣った訳ではないでしょうけど、キッシーも総裁選不出馬を決めました。早速出馬に名乗りを上げる自民党議員が複数出てきてメディアはそれらしく報じてますが、騙されちゃいけません。プランBエントリーでも指摘したように、公職選挙法の縛りがなく実弾飛び交う自民党総裁選がまともな選挙になる筈がありません。派閥が解散しても派閥資金は宙に浮いている訳で、これがどう動くかで決まるだけの目晦ましです。寧ろ出馬に必要な推薦人20人の顔ぶれや唯一解散していない麻生派の動きに注目です。

検証 政治とカネ (岩波新書 新赤版 2021) 新書 – 2024/7/22 上脇 博之 (著)で詳しく解説されてますが、自民党の裏金問題はそもそも法の不備で抜け穴だらけで、通常国会で成立した改正政治資金規正法もザル法で意味がないことが国民にバレているのに、岸田では選挙に勝てないとばかりに顔を変えれば勝てると勘違いしているのが今の自民党という訳です。どうしようもない政治的茶番劇です。

その一方で正月の能登半島地震の復興は進まず、先日の日向灘地震が南海トラフ地震の震源域に当たるということで注意情報が出されて一部で海水浴場閉鎖などの措置が取られたりした中で、台風7号の直撃予報で東海道新幹線の16日終日運休を決めました。結果的に進路が東へ逸れて直撃はなく、一部で終日運休が批判されてますが、余地が困難な地震と違って予報の精度が高まっている天候の異変に先回りすることは、結果的に空振りに終わったとしても咎められるべきことではありません。

去年も本気の気候変動対策のように東亜気道新幹線が豪雨被害で運休となり、除却が駅に溢れ変更や払い戻しでみどりの窓口に長蛇の列ができて混乱しました。JR西日本はいち早く計画運休を決めていたことから判断を遅らせ情報提供も不十分だったJR東海は批判されました。その意味では今回のJR東海の判断は妥当なものと言えます。予知の困難な地震と違って予報精度の高い天候の異変に対しては、事前対策で災害の被害を減らすタイムライン防災の考え方が定着してきたということです。ましてJR東海は災害は忘れた頃にで取り上げた2000年水害の失態もありますから、よくぞ決断したと褒めたい気分です。

勿論JRにとっては稼ぎ時のお盆シーズンの終日運休は収益面ではマイナスですが、動かすことによる被害を回避することで余分なコストを減らす意味もあります。というか、そう考えざるを得ない程気候変動の影響が大きくなっているということでもあります。コストを言い訳に脱炭素をサボってきた結果でもあり、愚かです。

JR東海はプランBエントリーで取り上げた保守車両事故による運休もありました。このときはJR東日本が北陸新幹線に臨時列車を増発したり、ANAが臨時便を飛ばしたりしましたが、今回は北陸新幹線も列車を間引き、羽田成田発着便を中心に航空便も運休が相次ぎ、代替手段がなく前後の日に変更したり諦める人が殆どだったようです。関空連絡橋のタンカー衝突事故を受けて大型船舶の東京湾入湾規制まで実施されたぐらいですから、今回は仕方がないと言えます。一方保守車両事故の続報です。

衝突の新幹線保守用車、ブレーキ機能低下 点検に甘さ - 日本経済新聞
当該保守車両の一部に点検の不備が見つかりました。鉄道の世界で自動ブレーキと言われるもので、コンプレッサーで作った圧縮空気を空気溜めに溜めてホースで各車両に渡した加圧空気管でブレーキシリンダを緩め位置に保持し、ブレーキレバーで加圧管の空気を抜いてブレーキシリンダを込め位置に動かしてロッドで繋がったブレーキシューを車輪に押し付けて摩擦で止めるという仕組みですが、一部の保守車両で圧力不足でブレーキシューが込め位置のまま動かしていて過剰摩耗でスキマができていたということです。

営業車両では電気指令式が主流となっている中で、圧搾空気を用いる自動ブレーキが保守車両では残っていた訳で、また非営業で車籍のない保守車両故に点検に甘さがあった可能性はあります。技術の進化が不均衡なことを思い知らされますが、同時に盛土路盤にバラスト道床の東海道新幹線の特殊性があります。盛土路盤は豪雨時の緩みもありますから、保守精度を求められる高速鉄道の路盤として維持管理が負担になるんじゃないかとも思います。営業車両の一部へのセンサー搭載で2025年にドクターイエローの退役が発表されており、より多くのデータ収集が可能になるとしても、実際の保守作業が旧態依然ではこれがネックになる可能性もあります。

一方予知が困難と言われる地震も知見が増えており、日本列島はすごい-水・森林・黄金を生んだ大地 (中公新書 2800) 新書 – 2024/4/22 伊藤 孝 (著)で詳しく解説されてますが、大陸プレートと海洋プレートのぶつかり合う周縁部で比重の差から海洋プレートが沈み込み、その際に境界部が動いて地震が起きるし、また海水が地層に取り込まれて圧力の不均衡からマグマだまりができやすく火山が多数あり、温帯地域の大陸東端の多雨地帯であることもマグマだまりを形成するという不安定な日本列島で人工工作物の老い大都市の集積のリスクと共に、それ故に豊かな自然にはぐくまれた日本列島の特性を生かし切れていない現状からすると、集積を加速するリニアは不要だし建設は困難というリアルを直視すべきですね。故にリニアはプランBになり得ません。

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Sunday, August 11, 2024

ノイジーサマー

株価の乱高下が続いております。おそらく新NISAデビューの人にとっては初めての経験でしょうけど、一方で日向灘で地震があり台風5号が東北直撃の予報です。秋田県で豪雨被害が起きたばかりなのに台風直撃の東北地方。お盆の帰省シーズンに水を注す自然災害に比べたら、株安なんぞかすり傷レベルではあります。

ネギ背負ったカモその他のエントリーで繰り返してますが、新NISAデビューの人はショックでしょうけど、個人投資家のスタンスとしては株は買ったら忘れろです。積立NISAの場合は特にですが、時価の変動は無視して積立を続けることで、複利運用の効果を高めますし、成長投資枠で個別銘柄を購入した人も、いずれ株価は戻りますから、配当を受け取りながら気長に待つというスタンスで良いと思います。但し自らの投資スタンスを見直すなら、いい機会ではあります。

積立NISAで購入者が多いと言われるオールカントリー株式投信(通称オルカン)などの積立株式投信は所謂パッシブ運用の投信で、上場株式の時価総額に合わせて個別銘柄を売買して市場のパフォーマンスをなぞることで手数料を安くできてリターンが多いし、昨今はアルゴリズム取引で自動化されていたりもします。その意味で合理的な選択ですが、残高が増えれば市場取引のウェートが増えて、株価に影響する様々なパラメータを参照しますから、今回の米雇用者統計の数値が予測値を下回ったり、インテルの業績悪化などのイベントに反応して自動的に売り込んで下げを増幅してしまうということが起きます。

見方を変えれば人が介在しない機械取引として謂わばAIが実装されているようなもので、そのAIがノイズを拾った結果の過剰反応ということが言えます。そしてノイズで拡がったボラティリティの着地点は容易に見つからず、上げと下げを繰り返すことになります。それに夏季休暇の薄商いがありますから、落ち着くまでには時間がかかりそうです。パッシブ運用の比重が高まればこういうことは起きやすいとも言えます。機械の過剰反応でも借株による信用取引をしている投資家は下げ幅が下限を越えれば追証を求められ、払い込まなければ自動解約されますから、更に株価を下げてしまい、最後は個人によるパニック売りで損を被るという流れです。こうした株式市場の特性を踏まえながら、個人の投資目的に合った投資スタイルの見直しをするのはあり得ます。損は高い授業料と割り切りましょう。

これ生成AUがフェイクを吐き出すのも同じ原理といえます。フェイクを拡散するには好都合ですが、余計なノイズを拾うこと自体は無くならないでしょう。故に使い方は要注意ですが、AIで生産性が上がるかといえば、有効なノイズキャンセル機能を実装しない限り、アウトプットの有効性の評価に人が関わることで生産性を下げてしまうことが多いと考えられます。これ古典的な情報理論でも説明できますが、情報の正誤が50%の時に意味のある情報伝達は成り立たないカオスになるというもので、逆に必ず間違えるなら寧ろ有効性があるという評価になります。そもそも人の聴覚構造が自然音から音声言語を峻別することで意味を捉えるように、ノイズキャンセル機能が備わっている訳です。将棋や囲碁のようにパラメータが限られていればともかく、現実の多くのパラメータを参照する以上、ノイズの混入は避けられません。それでこのニュース。

北陸新幹線、延伸費用は最大5.3兆円試算 物価高で増加 - 日本経済新聞
物価高でというよりも、京都駅アプローチの具体化によって精緻化した結果の事業費膨張です。インフレは税収を増やしますから、B/C比の悪化はある程度緩和される筈ですが、小浜京都ルートに付きまとうトンネル難工事問題や地下水問題に対する見かけ上の回避策を示す一方、事業費の膨張を示すことで、小浜京都ルートをごり押しする与党PTを国交省が諦めさせようとしていると見ます。ところがB/C比なんか無視していいとか、計算方法を見直せと言っているトンデモ議員たちには響かない。何しろ座長の西田議員はネギ背負ったカモエントリーで触れた電動キックボード解禁をゴリ押しした粒議員です。言ってみれば生身のノイズテーカーにノイズキャンセルを試みる官僚の構図が読み取れます。しかもほとんど無意味なな桂川案を安く提示しているし^_^;。ノイズキャンセルしないと寧ろ生産性を下げるのはAIと変わりませんね。

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Saturday, August 03, 2024

波乱の8月

プランBで指摘した日米金乳政策の方向性の違いは予想通りでしたが、日米で株価下落が起こり、波乱のスタートとなった8月です。為替も円高へ動き、円安メリットが縮小したことや円安に助けられた日本株の株価押し上げ効果も剥落し、早速日銀の利上げにイチャモンですが、直接的にはには無関係です。そもそも今年年初は130円前後で、150円を割った今の水準は3月の日銀YCC終了時の水準とほぼ同じです。日経平均4万円台もこのときにつけました。今回の下落は別の原因です。

そもそもは米半導体大手インテルの業績不振とそれに伴う1,5万人規模の人員削減が発表され、半導体を中心としたテック株が売り込まれたことがきっかけですが、突然喰らうド障害の混乱や生成AIブームに陰りが見えてきたこともあります。加えて米雇用統計が予想を下回り、米景気にマイナス面が見えてきたことで、9月FOMCで利下げはほぼ確実視されながら、金利低下の恩恵を受ける筈のテック企業に逆風が吹き始めたってことです。AIバブルが弾けたと言っても良いでしょう。ムーアの法則で半導体業界牽引してきたインテルですが、微細化の壁に突き当たりました。先を行く台湾TSMCや韓国サムスンも手詰まりなのは同じで、寧ろ米中デカップリングで販路を狭められています。

米景気に関しては既に悪化しているという分析もありまして、実際インフレで賃上げが追い付かず実質賃金が下落する場面もありましたが、インフレの鎮静化で追いついてきたとはいえ、逆に企業の負担は増す訳ですし、堅調と言われる国内消費も、コロナ給付金の大盤振る舞いで支えられていただけで、家計の余剰資金は底を尽きつつあり、低価格品に消費がシフトしているとも言われます。加えてもしトラで低金利、減税、高関税、規制緩和なんぞしようものならインフレ再燃は避けられず、米経済も失速を余儀なくされるでしょう。中国の減速もあり外需依存の強い今の日本で株価が下がるのは当たり前です。そんな中で気になるニュースです。

JR東日本、Suica販売停止1年 ガラパゴス仕様で半導体作れず - 日本経済新聞
一時半導体不足から販売停止に追い込まれたSuicaとPASMOですが、半導体供給が増えて半導体市況を悪化させているにも拘らず、Felica用半導体はSuica販売停止を受けてメーカーの撤退が相次ぎ、今は1社のみとなっている現状です。一方で地方向けICカード乗車券やnanacoやWAONなどの流通系カードは販売されているのですが、販売量の違いから、十分な在庫がないと安定販売が出来ないということで販売開始に踏み切れず、そのためにメーカーの増産が難しいというジレンマに陥っております。故にインバウンド客へのSuica提供ができずに取りこぼしている訳です。

突然喰らうド障害エントリーで取り上げた国際規格のOpenLoopの台頭を許すことになりかねず、JR東日本にとっては頭の痛い問題です。そもそもは香港のオクトパスカードに始まったFelica系カードですが、ソニーが経営再建途上でEDYをNTTに売り、更に楽天に転売して袋小路に迷い込んだ結果、国際化を果たせず、量産効果によるコストダウンも実現できずということで、シャープやエルピーダメモリやジャパンディスプレイなど死屍累々の山を築いた日本企業の失敗の歴史をなぞっているとも言えます。折角香港で普及しているんだから中国や東南アジアで仲間を増やすことは出来た筈です。Felicaカードなら経済安全保障面でストップがかかる心配もないですし、寧ろ中国企業の参入でコストダウンしてたかも。

という訳で、こんな日本企業には円安でもなければ海外勢は見向きもしないという現実を認識できないで日銀に恨み言言っても始まりません。政府もTSMCやラピダスに補助金突っ込むよりもはるかに安上がりなFelicaチップ増産助けてやれよ。別のニュースです。

敦賀原発2号機不合格へ、日本原子力発電の経営に影響 大手電力負担重く - 日本経済新聞
福島の事故後発電停止された13年間、電力供給契約を結ぶ電力5社から基本料金として1.4兆円を受け取って黒字経営という日本原電ですが、東海第2は不祥事続きで地元同意が得られず、敦賀第2は活断層で審査停止で、流石に電力各社も契約見直しに動きそうということですが、再エネ賦課金が明細に記載されている一方、こちらの拠出金は明細には記載されておりません。同様に奉加帖方式で各電力会社に割り振られている福島の廃炉費用も明示されておりません。当然国民はその分高い電気料金を負担している訳です。

実際は太陽光を中心に再エネ電力が猛暑の夏の需要をカバーしていて電力不足は起きていません。AI普及田将来電力需要が増すとも言われますが、そのAIブームが著作権やフェイク問題などで規制が検討され、また電力消費で温暖化を促進するリスクも言われ、見直しでAIブームが踊り場にあるのは上述のとおりです。つまりAIで人類滅亡を早めるかもという微妙な問題がある訳です。

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Sunday, July 21, 2024

突然喰らうド障害

世界を揺るがしたシステム障害がありました。

世界の大規模システム障害、復旧へ 米国など影響なお - 日本経済新聞
世界中Windows系OSシステムで障害が起きて航空鵜予約システムや店舗のPOSレジなどが使えなくなり、復旧は進んでますが、未だ障害が続いているところもあるということです。原因はWindowsクラウド向けのクラウドストライク社製セキュリティソフトの19日未明の一斉更新にバグがあり、修正版が配布されたものの、ユーザー側で補正作業が必要なため、復旧に時間がかかったとされております。しかし同じシステムベンダー製予約システムを用いながら、JAL系のジェットスタージャパンで障害が起きた一方ANA系は障害なしとか不可解なこともあり、本当の原因はわかっておりません。

みずほのシステム書具合とか、最近では三菱UFJ銀行の障害などもありますが、銀行の勘定系などはメイフレーム時代にCobolという言語で記述された基幹業務システムで、Cobolが使えるエンジニアの退職で年々メンテナンスが負担になっている一方でFintechでAPI公開とかやっていて、システムが複雑になり過ぎた面があります。故にセキュリティ面は強固なんですが、メンテナンスコストは高くなり、維持が難しくなっている面があります。

一方でクラウドはネット上で仮想的に複数のサーバーを束ねて処理する分散型で、ユーザーから見ればセキュリティも含めて使用料を支払って使うという意味で初期投資もランニングコストも安価ということで普及し、アマゾン、グーグル、マイクロソフトなどの大手が注力してユーザーを増やしてきました。ユーザーから見れば自社システムの維持費やセキュリティ費用を気にせずシステム構築できて、最新のセキュリティ環境が提供されるから安全性も高いという触れ込みでしたか、今回は裏目に出ました。

ふと思い出したのが木から落ちたサルで取り上げたJR東日本のSuicaシステムのクラウド移行ですが、各駅にステーションコントローラーを置いて分散処理することで処理速度を高める自前の分散処理システムをクラウド上の仮想センターサーバーに移行するという話題です。コスト削減になる一方、処理速度の問題は残る訳ですが、5Gなど通信環境の進化で遅延が縮小していることや計画中のQRコード乗車券システム導入との整合性を考えると正常進化とは言えるかもしれません。但し今回のようなトラブルに巻き込まれるリスクはある訳ですが。

その一方で楽天銀行との提携でJREバンクと呼ばれるBaaS事業への参入もあり、QRコード乗車券の決済をJREバンクの口座を使うとすれば、寧ろSuicaシステムの存在理由が希薄化する可能性もありますし、下手するとハウスカードのVIEWカードも楽天カードに置き換えられる可能性もあります。現時点でVIEWカードがJR東日本の経営資源としての貢献度がいかほどかはわかりませんが、JR東日本の金融事業が楽天グループと接近することは避けられないでしょう。そしてそれは別の面でSuicaの将来を左右します。

栗鼠殺し?で取り上げたオープンループが国内でも徐々に拡大しており、大手私鉄では南海電気鉄道がいち早く導入したほか、東急が続き、その他地方の公営交通やバスを中心に導入が続いております。特に東急ではVISA限定ではなく他社カードも受け入れておりますが、それに関連するかどうかわかりませんが、こんなニュースもあります。

VISAに公正取引委員会が立ち入り検査 他社の信用システム使用制限か - 日本経済新聞
東急のケースが該当するかどうかはわかりまっせんが、VISA以外のカード会社がVISAのシステムが使用されているとすると、VISAへの手数料の支払いが発生する訳で、独禁法違反の恐れがあるということになります。特にインバウンド需要の取り込みで外国人の利用が見込まれるオープンループでVISAが優越的地位を乱用したと見られれば、他社カードの相乗りが進んで結果的に楽天カードが相乗りとなると、ますますSuicaの存在意義は薄れます。今後は見通しにくいですが、ソニーのFelicaシステムが国際規格のNFCに置き換わることを意味します。ソニーとJR東日本がタッグを組んでEDYとSuicaが一本化されて導入コストを下げることが出来ていればまた違ったのでしょうが、日本企業発の規格が国際規格に駆逐されてまたひとつ日本の敗戦確定です。そういやEDYも楽天が買ったけど放置されております。何故こうなる?

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Sunday, July 07, 2024

イノベーションの可能性

イノベーションを阻むものばかりが目に付くのですが、こんなニュースも。

金融庁が三菱UFJ銀行など処分、銀証連携の規制緩和に影 - 日本経済新聞
型式指定検査の不合理の見直しに消極的だったトヨタとは逆に、銀証分離のファイアーウォール規制見直しを政府に求めてきたメガバンクトップの不正です。利益相反が起きやすい銀行と証券の顧客情報共有は原則禁止されてますが、三菱UFJは傘下証券2社の顧客企業情報を同意なしに銀行と共有していたもので、例えば顧客企業が社債を発行する場合の幹事社選任で銀行が圧力をかけるなどしていた訳で、銀行の優越的地位の乱用が問題視されました。つまりファイアーウォール規制緩和で何がやりたいのかをばらしちゃった訳です。身勝手にも程があります。他方こんなニュースも。
ASEANの再生可能エネルギー広域送電網を支援 首相、中国関与にらみ - 日本経済新聞
供給地と需要地が地理的に離れる再エネ電力の活用には送電網の強化が欠かせません。特に限界費用ほぼゼロの太陽光の活用に道を開く訳で、意義ある投資ですが、わかってるなら国内先にやれよって話です。国内でやれば電気料金が下がるしグリーン電力比率が上がって国内投資の呼び水になります。つまり国内でやればイノベーションになることなのに、地域分割体制で再エネ電力の増加が自社発電所の稼働率低下につながり独占利益を損なうからやらない訳です。そしてこうなります。
1〜3月期GDP、実質2.9%減に修正 建設統計の改定反映 - 日本経済新聞
下方修正の原因は建設総合統計が実態より高く計上されていたのを遡って修正した結果、公共投資の減額や住宅リフォームの減額が反映されたものですが、従来景気対策とされた公共投資と住宅政策が景気対策として効かなくなっていることを意味します。積極財政が無意味なことを示した訳です。そしてそこには構造要因があります。

建設業界の構造変化が進み、ゼネコンと呼ばれる総合建設業からサブコンと呼ばれる型枠工や鉄筋工その他の専門領域を持つ会社に下請けに出す業界慣行が崩れてきています。サブコンを支える職人の不足からゼネコンから下請けされる仕事をサブコンが選んでいるというのがザックリとしたところで、サブコンに断られた案件は公共工事であっても期日までに執行できずに遅れるということが起きている訳です。そこへ2024年問題の働き方改革が重なって専門職人の人手不足を助長している訳です。怪運国債市場の蓋で万博工事の遅れの原因の1つとしてTSMC熊本工場建設を上げましたが、政府の補助金もあって潤沢な資金で金払いの良いTSMC関連に人手を取られた結果、万博工事は進まないという構図ですね。

この構図は事業費がJR東海の資金繰りに依存するリニア工事にも当てはまります。またトンネル工事が多いから残土搬出や最終処分などの問題も未解決のまま見切り発車しているため、今後も遅れが見込まれます。人手不足によるサブコン優位が続けば工期の管理は事実上不可能ですから、いつまで経っても終わらない工事で資金を溶かし続けることになります。東海道新幹線の儲けをつぎ込んで終わらない工事を続けるなら、財投資金3兆円の借金のカタにリニアを放棄するというのも選択肢になります。国にとってはドライバー不足対策としてリニアトンネルを活用した物流施設整備に活用することが可能です。例えば梶ヶ谷貨物ターミナルと名古屋貨物ターミナルを結ぶ貨物専用鉄道整備へ転用とかです。40/1,000の勾配がネックですが、1軸1,000kwのH級機で8,000kwとすればEF210重連相当の出力で1,000t列車牽引なら可能性はあります。そして貨物幹線の東海道本線の貨物列車は1.300t列車を残して新貨物線に回せばJR東海が不満を持つ静岡地区のダイヤ編成の自由度が増しますから、地域密着サービスで静岡工区着工のバーターになり得ます。

あと鈴木知事が設置を希望する静岡空港新駅ですが、掛川駅と近すぎる問題はこだまは通過扱いで一部のぞみを停車させるという解決策はあり得ます。元々首都圏第三空港狙いですから、それで不都合はありませんし、静岡県内のぞみ停車の要望にも応えたことになります。まあこの辺は話し合い次第でしょうけど、不可能ではないということは言えます。こうした積み重ねが実はイノベーションの実践なんです。この点は強調しておきたいと思います。

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Saturday, June 29, 2024

鉄路的連結列車はどこ行き?

怪運国債市場の蓋でYCC末期の悪足搔きから黒田日銀の後継総裁に植田氏の名が挙がったことに加えて、大阪万博の工事遅れで開催が危ぶまれていることを指摘しましたが、案の定万博関連のトラブルは絶えません。

大阪万博はうっすらウンコ臭い? “腐った卵”硫化水素が流出も「対策これから」の体たらく―日刊ゲンダイ
ゴミ埋め立て地の夢洲故に地中で発生したメタンガスが爆発してトイレが吹っ飛んだ事故を受けて、地中にパイプを挿してガス抜き対策がされてますが、その結果硫化水素が検出されてリアルにウンコクサイことに^_^;。比重の大きい硫化水素はガス抜きしても拡散せず地面近くに滞留します。高濃度だと死に至る毒性があるだけに追加の対策が必要ですが何も決まっていないとか。そんなところに人集めて大規模イベントの狂気。いっそ東京五輪に倣ってネット中継で無観客開催したらwww。東京五輪の落とし物で取り上げた神宮外苑再開発はゲートシティ開発で発掘された高輪築堤に続いて2年連続イコモスからクレーム。そしてその続きがこれ。
北九州の「初代門司駅」鉄道遺構保存を イコモスが緊急要請の発出検討 - 日本経済新聞
世界遺産登録に積極的な一方、タイ政府が申請する泰緬鉄道クワイ川鉄橋は裏金のウラで見たように反対して歴史戦を気取る国交省ですが、おひざ元の国内で門司港駅周辺の再開発絡みでイコモスが懸念を示し、3年連続のヘリテージ・アラート発出という不名誉の可能性も。再開発優先で文化遺産保護が置き去りにされています。そしてこれも国交省が関わります。
インフラ海外展開の官民ファンド 累計損失が955億円に - 日本経済新聞
アベノミクスの成長戦略としてインフラ輸出が掲げられ、促進のためにJOINという官民ファンドが立ちあげられましたが大赤字。テキサス高速鉄道のように米政府のインフラ投資法事業として補助金が決まったにもかかわらず事業者となる現地企業が債務不履行に陥り停滞しています。ちなみにJR東海が関与していて安倍元首相との親密さは知られているところです。8連で国際規格準拠のN700Iがデビューする筈だったのですが、人件費が高くコロナ後も人手不足が続くアメリカでは難しいかも。もしトラなら補助金自体キャンセルの可能性も。
角川歴彦前会長、国を提訴 「人質司法で精神的苦痛」 - 日本経済新聞
一連の五輪不正疑惑で訴追された大物ですが、黒幕視される森元首相に代わる当て馬の疑惑があります。公判が楽しみです。裏金問題も森元首相の関与が確実視されているにも拘らずこちらも今のところお咎めなしです。厚労省村木事件や大川原化工J機事件に留まらず長期勾留で長時間の取り調べで言質を取る人質司法の闇が明らかになる可能性があります。
黒川弘務元東京高検検事長の定年延長文書、一部開示認める 大阪地裁 - 日本経済新聞
地裁レベルですが、司法にも変化の兆しはあります。黒川東京高検検事長の定年延長を決めた閣議決定の関連公文書家事を拒否した国を訴えた裁判ですが、全面開示を命じています。当時森友学園、加計学園にさくらを見る会疑惑と追い込まれていた当時の安倍首相が、権力に甘いと言われる黒川氏を検事総長にするための定年延長と言われました。結果的に黒川氏の賭けマージャン暴露で辞任に追い込まれ実現しませんでしたが、裏金問題の対応で今でも甘い検察の態度が更に甘くなった可能性はあります。裏金問題に関しては安倍元首相はやめようとしたけどやめられなかった経緯がありますが、自身の疑惑で手一杯で派閥議員を掌握できていなかったのでしょう。他方でこれ。
東京大学・安田講堂に学生侵入 警備員けが、周辺で集会 - 日本経済新聞
学費値上げを発表した東京大学の安田講堂前の芝生植え込みで東大生がキャンプを張って反対運動しているもので、警備員とのもみ合いはあったようですが、警備員がケガした事実は確認されておりません。大学当局が警察を呼んだものですが、さしずめいちご白書を東大もということか。学術会議指名拒否や科研費削除など大学の自治権を削る政府の姿勢が学生をないがしろにするということです。国内ではまともな学びが受けられないとなればこの国はどうなることやら。

東京繋がりですが町田は東京都 です。この巨大な公設掲示板ジャックが話題ですが、選挙のマネタイズという意味で不快感を表す見解が見られますが、選挙でばら撒き裏金で回収する自民党の方が悪質ですね。選挙そのものがイベント化してメディアもおこぼれ頂戴している現状で、法改正の議論には違和感があります。逆に公職選挙法で発言や表現が保護されているから、300万円の供託金払えばやりたい放題ですが、選挙以外の日常の政治活動や社会活動は世間の目とやらで自主規制される現状のおかしさこそが問題です。

そういえば表現の自由を謳ってヌードポスターを公設掲示板に張った候補もいましたが、表現の自由が実はエロ解禁で、ポスターは東京都迷惑防止条例違反の疑いがあるということで警察が注意して外されました。これを警察の選挙妨害というのは無理があります。条例は法律を越えられない原則がありますから、当該候補者がそれを公選法の自由妨害として拒否する可能性もあったでしょうけど、そうしなかった程度の主張だったとは言えます。但し公選法でも表現の自由が公序良俗に反しない限りという但し書きはありますが。

てことで行先の分からない列車に乗っているようなこの国の現状です。鉄路的リンク(連結)集でした。

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Saturday, June 15, 2024

これからも失われ続ける日本

円安が止まりません。原因はこれ。

日銀政策決定会合、量的引き締めへ転換 国債購入減額「相応の規模」 - 日本経済新聞
国債買い入れ減額による量的引締めの予告ですが、利上げと共に次回の議題ということで今回は現状維持ということで円安圧力は続きます。日銀の慎重姿勢は金利の大きな変動の悪影響は為替変動の比ではない混乱をもたらしますから動くに動けないのが本音。赤字が常態化した拡張的な財政運営を日銀の実質国債引き受けでファイナンスして為替の円安誘導したものの、国内企業の製造拠点海外移転で輸出は増えず、逆に資源高で貿易赤字が定着したため、財政と貿易の双子の赤字状況になっております。アメリカの80年代を見ればわかる通り、国力の低下による構造的な変化なので、米FRBの利下げで一気に反転する状況にはありません。

賃金ホントに上がってる?で金利を名目で見る短期の投機筋の動きは直ぐに止みますが、日本が未だマイナス圏にある実質金利に反応するのはより期間の長い中期資金ですから、目先のイベントに反応するより腰の入った投資ポジションを採ります。故にこれを反転させるためには米利下げと日本の利上げが複数回続くぐらいのことがなければ実現しません。故にインフレは今後も続きますし財政赤字は財政インフレとなって国民生活を圧迫し続けます。そんな局面での「バターより大砲」の防衛費増額はさらに国民を苦しめます。

産業政策としての半導体ですが、台湾TSMC熊本工場の影響で関連企業の投資も呼び込んでますが、政府の補助金大盤振る舞いが功を奏してるものの、日本企業はあくまでわき役ですし、電力と水を大量消費する半導体産業の成長の持続可能性はいかほどか。AIブームで時価総額が一時アップルを抜いたエヌビディアのGPUの電力消費の大きさから、気候変動問題がAIで解決可能になるか寧ろエネルギー消費を増やして気候変動の原因になるかという議論が既に始まっており、著作権やフェイク問題、さらに労働市場への悪影響など不確定な問題が山積しております。国や財界は円安メリットとしての製造業復権に期待があるようですが、生産年齢人口の減少が立ちはだかります。そこで政府は技能実習生に代わる育成就労を制度化して外国人労働者を増やそうとしてますが、そもそも円安で稼げなくなった日本にわざわざ来る外国人がどれだけいるのか。本当に現実が見えていませんね。こんなニュースも。

企業物価指数、5月2.4%上昇 4カ月連続で伸び率拡大 - 日本経済新聞
消費者物価の先行指標とされる企業物価指数の上昇が続いており、転嫁が進めば消費者物価に波及することは確実です。「物価と賃金の好循環」が如何に空疎かということです。加えてこれは日本だけではありませんが、企業の価格転嫁が便乗値上げの疑いが指摘されております。これはマクロデータのGDPデフレーターに見られるGDPの名目値と実質値の乖離が欧米も含めて大きく、名目値はプラスなのに実質値はマイナスという状況が続いています。つまり企業の強欲が国民を苦しめている訳です。こうした企業にとって心地よい状況を続けるには企業献金やパーティ券購入で政治家に裏金作らせて見返りを求めることは続けたい訳です。

とはいえ労働力不足は簡単には解消できず、特にサービス業の人手不足は深刻で、2024年問題による働き方改革も影響します。特例で長い待機時間を認められていた運輸業も規制対象となります。故により多くの人手を確保しないとサービスを維持できない訳で、運賃値上げの要件緩和もあってJR東日本をはじめ各社が値上げに動いています。DXブームに乗ってみどりの窓口を減らしたり営業時間を短縮したりしたものの、ネット予約や指定席券売機のユーザーインターフェースの使いにくさもあってJR東日本は見直しを宣言しました。複雑な運賃料金制度やマルスシステムの縛りもあってうまくいきません。故に省力化も足踏みとなる訳ですが、そうなると例えば豪雨被害で長期運休中の肥薩線のように、道路予算や河川予算を投入してJR九州の負担を軽減しても、JR九州が渋っているために復旧が手つかずとなってますが、仮に復旧しても赤字路線だし、そこに人手が取られれば全社的にマイナスという判断になる訳です。

よく引き合いに出されるJR東日本只見線では福島県と沿線市町村で54億円を負担して線路を普及した上県が第三種事業者となって第二種免許を受けたJR東日本が運行する上下分離形態で復旧したものの、福島県包括外部監査ではバス転換の方が地域活性化できた可能性があると指摘されるなどしており、これが今後のローカル線維持のロールモデルになるかどうかも不明です。やはり災害で長期運休中の津軽線中小国―三厩間もバス転換が決まりました、但し人手不足が深刻なバスによる転換も今後は困難が予想されます。という訳で政治家や企業のやりたい放題を放置した結果、ドン詰まりの未来しか見えないのが現状です。

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