経済・政治・国際

Saturday, May 06, 2017

こどもの日本

北朝鮮のミサイル発射で始まった今年のゴールデンウイークですが、東京メトロの運行見合わせが議論を呼んでいます。報道によれば北朝鮮情勢の緊迫化で4月中旬にミサイル発射の情報があった場合に運行を止めると決めたばかりで、当日テレビニュースを受けて全列車に最寄り駅で運行停止を指令し、その後着弾の事実がないということで運行再開し10分ほどの運行停止でした。そのほかメトロからの連絡で東武鉄道も同様に運行停止したほか、JR西日本が北陸新幹線で一部列車を止めたものの、JR東日本やJR東海は特段の対応はとらなかったということで判断が分かれました。

結果的に過剰反応だったわけで、東京メトロでは、以後Jアラート受信の場合のみの対応とすることを決めています。東京メトロにしてみれば、ミサイル着弾で地上の人が地下鉄駅へ避難すればパニックもあって危険ということで危険回避のためではあるのですが、テレビニュースでの判断は早計だったことを認めた形です。それ以前に冷戦時代に核戦争を想定して地下深くにトンネルを掘り、広い地下空間を確保している東側諸国の地下鉄と日本の地下鉄や地下街とは設計思想が別物なんで、ミサイル飛んできたら地下へ逃げろとか危機感を煽った日本政府が悪いんですけどね。

余談ですが2回続けての北朝鮮のミサイル発射失敗には、2通りの解釈がありまして、1つはアメリカの情報当局が既に北朝鮮のミサイルシステムにマルウエアを仕込んで遠隔操作で失敗させたというもので、もう1つは韓国配備のTHAADなどのミサイル迎撃システムの穴探しのために北朝鮮側がわざと失敗させたというもの。いずれにしても直接日本を狙ったものではないわけで、日本政府の過剰反応は異常です。THAADに関してはコスト負担を巡って米韓で摩擦がある一方、中国を刺激して対韓経済制裁で韓国経済を圧迫していることもあり、北朝鮮を刺激するアメリカに物言える大統領をということで、革新派の文氏支持が拡大している状況で、日本より遥かに冷静です。

別に東京メトロの肩を持つ気はありませんが、首都圏という人口ボリュームゾーンの事業者故の判断という意味では、混乱回避のバイアスはやむを得ないところかもしれません。何しろ東京の満員電車は世界的に知られていて訪日外国人の体験乗車で混雑は飛んで来る状況なんですから^_^;。

5月1日にはJR東日本の豪華クルーズ列車トランスイート四季島の一番列車が上野駅13番線から出発しましたが、13番線は乗客と報道関係者以外は立ち入り禁止で所謂撮り鉄がネットで不満を言えば撮り鉄が悪いの大合唱。クルーズ列車自体はJR九州のななつぼしの成功でJR東日本とJR西日本が追随したとされますが、JR東日本は定期運行を廃止したカシオペアによるツアーや寝台特急あけぼののリバイバル運行などである程度実績があります。

またこの手のクルーズ列車運行はななつぼしもそうですけど。自社沿線の観光活性化が一番の狙いで、観光業の活性化策として富裕層の掘り起こしによるシャワー効果というのはセオリー通りではあります。大人の富裕層がリピーターとなることで一般客が憧れるという構図です。その意味で憧れを拡散するギャラリーの存在は重要なんですが、九州フランチャイズのななつぼしと違って人口ボリュームゾーンの首都圏では、ギャラリーの数が多すぎるから規制せざるを得ないというわけで、クルーズ列車のビジネスモデルはJR東日本にとって最適解だったのだろうかという疑問もあります。例えば若桜鉄道のSL運行のように、過疎地のローカル線で撮り鉄向けのお立ち台を有料提供するアイデアは、首都圏を抱えるJR東日本では難しいわけで、鉄道事業者は立地条件を選べない以上、所与の立地条件の中でビジネスを最適化させるしかないということは言えます。

とはいえ鉄道屋にとっては豪華クルーズ列車ってのは夢でもあるでしょう。トランスイート四季島は10連のEDCで交直流しかも青函区間のAC25kv対応プラス非電化区間用に発電用ディーゼルエンジンまで搭載し、保安装置もATS-P、ATS-Sn、青函ATCまで搭載している一方、寝台やヒノキ風呂などの車内設備も乗っかるわけですから、E5系より重い軸重16tという代物で、一点ものの豪華クルーズトレインでなければあり得ないスペックでもあります。この辺ローカル線向けのリゾートトレインがハイブリッド化されてその技術が仙石東北ラインのHB-E210系に活かされるといったことにはならないわけで、ある意味採算度外視だからできるチャレンジでもあります。JR東日本の規模から言えば許容範囲の道楽という側面も。

その意味ではJR東日本のレゾンデートルと言える次世代通勤車のE235系がやっと量産開始となりましたが、ここに至るまでトラブル続きで、慎重なテストランを繰り返してやっと量産にこぎつけたわけですが、JR東日本のコアコンピタンスとしての大量輸送だからこそ、小さなトラブルも潰しておく必要があります。四季島のような道楽は許されないわけですね。E235系のトラブルも、物見高い首都圏の鉄ちゃんがダメ出ししたとも言えますが^_^;。

てなわけで、生産年齢人口の減少が止まらない日本ですが、だからといって少子化対策ってのは短絡的です。なぜならば万が一出生率が上がって子どもが増えても、労働力化するには凡そ20年のタイムラグがあり、従属人口が増えて現役世代の負担を増すだけだからです。そのせいか急激に教育無償化の機運が高まっているようで、憲法の議論にも飛び火しています。

憲法施行から70年(4)維新、教育テコに首相に加勢 自民と水面下で連携着々 :日本経済新聞
そもそも憲法で教育無償化は禁止事項ではありませんから、憲法改正は無意味です。実際民主党政権で高校無償化は実現しましたが、第2次安倍政権で廃止されました。制約条件は憲法より財源なんですが、財源については建設国債に準じた教育国債の発行が言われておりますが、これ教育を受けた世代が現役世代になってから返済するって意味ですから、現在の現役世代の負担を将来世代にトバすだけの意味しかありません。

一部で相続税の強化も言われてますが、既に民主党政権で強化された結果、大都市圏の親の住宅が評価額から相続税対象となり、改正前はほぼ富裕層限定だった相続税が実質庶民税になった現実がありますが、これがさらに課税強化されれば、遺産相続そのものがほぼ不可能になる一方、富裕層は法人登記して会社を作って資産を委譲し、代表者を世襲することで負担を逃れることができます。結局庶民を食い物にするだけです。政治資金も相続税の対象外ですから、政治家の懐も痛みません。

加えて小泉進次郎議員を中心に自民党若手で議論されている子ども保険ですが、介護保険同様の社会保険制度を作って年金受給者を含む国民全員で広く薄く負担ということですが、待ってほしい。扶養控除の廃止で財源をねん出してスタートした子ども手当が、民主から自公への政権移行のドサクサで減額された上に所得制限付きの児童手当となり、これだけでも実質増税ですが、それに加えて保険料負担ですから、上乗せの増税負担でしかありません。結局負担は国民付け回す子ども騙しです。寧ろ逆進性のある社会保険料負担の緩和のために給付t気税額控除の導入の方が現役世代の負担緩和には効果的です。

安倍政権はこの手のレトリックを多用してあからさまに国民を騙そうとしているわけですが、騙しの手口は経済でも同様です。

日本経済、5期連続プラス成長へ アジア輸出けん引  :日本経済新聞
これ2015年度末の今年1-3月期からGDPの推計方法が変更されて、従来費用に計上されていた研究開発費を投資に計上するようになり、統計の連続性を担保するために遡って数値が改訂されたんですが、その結果改定前はゼロ前後でデコボコだったGDPの数値が、趨勢的に増え続けている研究開発費が乗っかって書き換えられた結果、数値上は5期連続のプラス成長になったわけで、経済実態は変わっていません。経済専門紙である日経は百も承知でこんな記事を載せるんですから、確信犯の政権広報紙ですね。てことで、こどもの日に思う、大人になろうぜ。

p.s.教育無償化の憲法改正はひょっとしたら教育への政治介入の口実になると考えているかもしれません。つまり日本全国みんな森友学園とか。とすれば森友問題をいい加減に終わらせるとまずいですね。

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Sunday, April 23, 2017

忖度弄すと引く大人かい!

世の中不思議いっぱいなんですが、そもそもシリアにアメリカがトマホーク59発も打ち込んだのに、ロシアがシリアに供与したとされる対空ミサイルシステムが働いた気配なし。トラブル?元々ザル?それとも事前通告を受けたロシアが敢えて止めた?

不思議はまだいっぱい。シリア攻撃は北朝鮮への警告と米ペンス副大統領も認めて、シンガポールにいる空母カール・ビンソンを朝鮮半島近海へ派遣もなぜかインド洋へ。北朝鮮のミサイル発射は失敗。北朝鮮核実験場でバレーボール。一方日本の安倍首相は北朝鮮ミサイルにサリン搭載など危機を煽って韓国から不快感。そりゃそうだ。今韓国は大統領選真っ只中。誰が選ばれるかで北朝鮮に対するスタンスも変わるって時に日本国内向けの人気取りは不謹慎。しかも欧米メディアは変な憶測を働かせるし。逆に北朝鮮も大統領選が終わるまでは下手に挑発して敵対的な政権ができたら藪蛇だし。

でもトランプ大統領は喜んでます。なぜならば危機感煽ればリスクオフで円高ドル安になるわけだし。自らの口先介入を安倍首相が補強してくれたんだから感謝っておい!そもそも福一事故で米国民にいち早く退避勧告をした米政府が未だ韓国国内に軍属、非軍属含めて10万人はいる米国民に退避勧告出さずに軍事行動はあり得ません。シリアは直接反撃できないからミサイル打ち込んだけど、同じこと流石に北朝鮮には無理ってもの。トランプ大統領って素人的な危なっかしさはあるけれど、ある種の勘の良さはありそうです。計算通り?まさかね。

北朝鮮危機を煽る安倍首相ですが、森友問題は未だ決着せず。これぐらいのスキャンダルで政権が吹っ飛ばない今の日本の異常さ。森友学園が9億の国有地を8億値引きだけど、加計学園は36億円の土地を無償で入手しかも国家戦略特区を悪用して正規には認められない獣医学科新設というルール破りの権力私物化ですからね。

日米経済対話が始まったけど、日本側の意図に反して貿易問題が前面に出て事実上の日米FTA交渉に。そうならないように根回ししたはずが裏目に。こうなるとアメリカの要求は自動車と農業を中心としたTPP以上の譲歩とTPPでは盛り込まれなかった為替条項。ドル高是正のルール化が必ずテーマになります。

その一方で米中間ではドル高を是正したいアメリカと元安による資金流出を抑えたい中国の思惑が一致しており、両国間で為替協定を結ばれたら日本は手も足も出ないまま円高を受け入れることになります。原油価格も上昇基調にあり日本にとって円高は歓迎すべきなんですがね。G20財務省会合でも金融政策はデフレなど国内問題の解決のためのもので、為替誘導ではないと敢えて強弁しなきゃならないところに日本政府の苦しさが滲みます。

その一方で事実上とん挫したTPPは11カ国で新たな協定として発効させる方向性を打ち出したものの、アメリカを説得して迎え入れるという殆ど不可能なたわごとを言い始めました。アメリカ抜きなら日本に有利な交渉ができるとでも思っているようですが、12カ国の交渉でアメリカの立場を代弁するような対応を取った日本はむしろ警戒されていると見るべきです。農業分野でライバルのアメリカが抜けたことで、オーストラリアやニュージーランドは寧ろ攻勢を強めさえするでしょう。結果11カ国TPPでも農業分野は攻め込まれます。日米二国間と併せて日本は得るものなしです。

この日本政府の無能さですが、地方や民間企業も同じかも。地方でいえば存続の危機にあるJR北海道問題で北海道庁の対応のまずさ。最近やや柔軟化したようで、バス化も含めて協議に応じる姿勢は見せるものの、上下分離には否定的で、運賃値上げには理解を示すものの、JR貨物の線路使用料値上げや青函トンネル保守費用の低減を国に求めるということで、結局国と乗客に負担を求め、自らは負担しないって話です。虫が良すぎます。

民間はといえば東芝の迷走が相変わらずですが、実は買収した海外子会社の不祥事や損失で本体も傷ついたのは東芝に限らず、中国子会社の不正で損失を被ったLIXIL、人口減少で国内じり貧だからと買収したブラジル企業で躓いたキリンとか、成長分野を海外事業に求めてシナジーを得られなかった日本郵政とか。共通しているのは高値掴みしてのれん代償却が重荷になる一方、それっをカバーするシナジー効果は得られていないという同じ構図。日本の企業経営者はよほど無能なんだ。

同じ原発事業を抱える三菱重工と日立製作所ですが、海外案件がことごとく中止になって受注分のコスト上振れも低負担で切り抜けられたという意味で、ある意味運が良かったと。こうなればWHの破たん処理で原発事業から事実上撤退する東芝のおかげで国内の廃炉事業で出番が増える漁夫の利。実質国有化された東電の福一事故賠償を国が面倒を見る現在のスキームではコストの上振れは国が面倒見てくれるし電力料金への転嫁で国民につけ回しできるしで、ハイリスクの海外案件は無理に手出しする必要なし。国有企業をコントロールして構造改革を主導する手法は中国と同じです。いやむしろ習近平の反腐敗政策があれば森友や加計のような問題は起きないか^_^;。中国なら安倍晋三も問題閣僚も死刑かも。それはそれで問題だが。

てなことはいろいろあるんですが、こんなニュースに引っかかりました。

。ロボットと仕事競えますか 日本は5割代替、主要国最大  :日本経済新聞
これそもそも前提がおかしい。経済学では労働力の資本による代替を進めると資本収益力が逓減するという命題があります。実際求人難で賃金が高止まりしていたバブル期に、海外市場を睨んだ強気の判断もあって日本企業はこぞって設備投資に走り、過剰投資で資本収益力を低下させて、90年代半ばからは供給過剰の是正を雇用調整で行って益々資本収益力はじり貧になり、一方過剰設備投資のツケで設備の更新投資が滞り、外資の力を借りて最新設備を手に入れた新興国の台頭に伴い競争力を失ったわけです。

そこへもってきての人口減少です。生産年齢人口自体は90年代半ばから減少に転じたんですが、丁度日本企業が雇用調整を始めたタイミングと重なったこともあり、人手不足が顕在化するまでに凡そ20年かかったわけですが、今後人手不足は深刻化の一途をたどります。JR北海道問題に即していえば、そもそも地域の人口げ減っている中で、鉄路を維持するための要員が確保できないわけで、それを回避するためには、電化や軌道強化などの設備更新でメンテナンス負担を減らし、各種センサーを活用したインテリジェント化など相当な設備投資が必要なんで、その資金を地元で負担できないなら、鉄道廃止止む無しです。これ民間企業も同様なんですが、ロボットやAIはあくまでも労働生産性を高めるためのツールとして活用して、資本と労働の投入バランスを是正することで、付加価値創出力を高める必要があるわけです。

この観点から言えば政府が進める働き方改革も全く見当違いで、そもそも仕事の繁閑を残業で調整しようとするから無理が生じるんでAIを活用して短時間で成果が出る仕組みを作ることが必要なんで、その意味では現状の残業規制は緩すぎて企業に投資インセンティブをもたらさないと言えます。

折しもヤマト運輸のドライバー不足問題やセブンイレブンなどコンビニの人件費負担増などの問題が顕在化して、対策として無人自動運転の解禁が言われますが、実現するまで人手不足は待ってくれません。ヤマト運輸では運賃値上げや時間帯サービスの縮小や宅配ボックスの設置などを進める考えを示してますが、そういうことなんですね。単純衣労働力を資本であるロボットやAIに置き換えるんではなくて、新しいテクノロジーを取り入れながら、顧客から受け入れられるサービスの在り方を模索していく以外に出口はありません。良い子にプレゼントを運ぶサンタさんもそりを引くトナカイがいなけりゃ成り立ちません。てなわけで迂遠ながら季節外れのダジャレ完成^_^;。

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Sunday, April 09, 2017

トランプ・クリティーク

柄谷行人氏の著書に似せたわけぢゃないんですが^_^;。トランス・クリティークは名著です。

シリア情勢が大きく動きました。4日にシリア政府軍の空爆後に、サリンに似た中毒症状が見られたことで、化学兵器の使用が疑われたことを受けての懲罰ってことのようですが、疑惑段階での軍事行動は問題です。子ブッシュ大統領がイラクが大量破壊兵器を開発中という嘘の情報で開戦したことを思い起こさせます。当時は独仏両国が反対に回ったのに対し、今回西側諸国はこれを歓迎したわけですが、いち早く支持を表明した日本の立場は微妙です。

米中首脳会談が行われている中でのミサイル攻撃ということで、北朝鮮問題に対する警告の意味を指摘されてますが、その割にロシアなどへ行われた事前通告が日本には為されなかったわけで、日本政府の希望的観測の域を出ません。むしろ国連安保理でロシアと連携することが多い中国が口出ししにくい米中首脳会談のタイミングを利用したってのが実際でしょう。実はここにトランプ政権の性格を示す鍵があります。

レーガン大統領に比較されることが多いトランプ大統領ですが、就任後の政権運営を見ると、むしろニクソン大統領に近いと言えます。今回のシリアへのミサイル攻撃で言えば、ジョンソン大統領時代に泥沼化したベトナム戦争を終結させる過程で北爆を強行したりカンボジアへ戦線を拡大したりした迷走あたりと似た対応です。

実際は欧州諸国が主張するアサド政権排除とは一線を画し、深入りを避けています。どうもアサド政権の化学兵器使用に関する官僚のプレゼンに義憤を感じたということのようです。そしてホワイトハウスの政治任用ポストのなり手が見つからず、議会承認も遅れていて空席が多いことが影響してるようです。だから逆にトランプ大統領の脊髄反応的な対応が表へ出たってことのようです。

日本としてはむしろシリア情勢を他山の石として、朝鮮半島有事で米軍の北朝鮮攻撃が起きた時の混乱をシミュレーションする機会でもあります。おそらく韓国国内の反応で賛否が分かれ、日米韓一枚岩の対応は無理でしょう。当然在日米軍基地への北朝鮮からの報復攻撃も起こりますから、日本国内も混乱して収拾がつかなくなることになります。軍事オプションは慎重であるべきですし、対北朝鮮でアメリカが強硬策に出ることは止めないといけません。

思い起こせば大統領選勝利宣言の場でTPP永久離脱を表明したのも、オバマ大統領の任期中に批准できなかったことで、NAFTA再交渉よりもハードルが低いですし、大統領就任後の大統領令連発も、大統領令は問題があれば議会が無効法案を成立させて無効化したり司法が差し止めたりできるので、実効性よりも有権者へのアピールの性格が強いと見ることができます。それが証拠にオバマケア修正法案に関しては議会との調整の果てに撤回しておりますが、これも単純にオバマケアを葬り去りたいのであれば、廃止法案ならば議会多数派の共和党の賛成ですんなり通っただろうに、、修正法案としたために、共和党保守派の賛同が得られず撤回に追い込まれたんですが、その結果、オバマケア継続が決まり、歳出が確定したことで、予算審議はむしろやりやすくなってます。トランプ大統領ってホントは隠れリベラル?

この辺はビジネスマンらしく難易度を意識したリアリズムなんでしょう。同時に従来の保守とリベラルの対立構図の中で経路依存的な議論しかできない政治家たちを戸惑わせているとも見ることができます。ニクソン大統領が米ドルの金交換停止や頭越しの電撃訪中で、オイルショックに始まる産油国カルテルをオイルダラー還流の枠組みで実効支配し、中ソ対立に乗じて一つの中国政策でソビエトとの分断を進め、現在に通じる地政学のフレームを作ったわけですね。日本にとっても沖縄返還交渉関連の密約で深く関わりますし、アメリカ側が沖縄返還のバーターと考えていた日米繊維交渉の約束を破った日本への不信感が、その後80年代以降のジャパンバッシングへとつながったとすれば、当時の佐藤政権の不始末でもあり、その意味で従来の対米追従路線を離れられない日本の安倍政権のしょーもなさにはため息しか出ません。

改革の本丸と目される税制改革ですが、これイギリスのシンクタンクが提案する法人税の仕向け地課税制度が踏襲されると見られますが、これに関してあまり正しく認識されていないようです。法人税の課税方法には大きく分けて居住地課税と源泉地価税の2つがあり、前者は企業の本社所在地での一括課税でアメリカはこれですが、多くの国は付加価値を生み出した地域で課税する後者となります。問題は違う制度が併存する中で企業の多国籍化が進んでいることで、居住地課税国の企業が源泉地価税国に生産拠点を置いて本国へ逆輸入するケースでは二重課税になりますし、逆のケースでは課税逃れにもなり得ます。そこで国境調整として、前者であれば源泉地価税分を控除した差額が居住地で課税されるという形になります。後者に関して源泉地国企業が居住地国に現地法人を置くことで課税逃れを防ぐ必要があります。

更に問題をややこしくしているのが各国の課税ベースの違いと税率の違いで、これらを組み合わせることで、パナマ文書で問題となったタックスヘイブン問題が生じるわけです。タックスヘイブンの場合は付加価値を生み出さない金融取引を利用して低税率国や地域へ富を退避させるわけで、一方で新興国やEUの周縁国などで外資誘致のために法人税減税が競争的に起きていることもあって、各国の税収の空洞化が進んでいます。その結果米企業に生産拠点の海外移転のインセンティブを与える結果となりますし、残る企業も課税特例による政策減税をロビーイングして税の軽減を画策するという複数ルートで税の空洞化が進み、税の所得再配分機能が失われていく現実があります。

それを変え得る課税方法として、仕向け地課税が提案されていて、米共和党で実現の模索がされているものです。WTOルールでEUの付加価値税や日本の消費税など間接税に例外的に認められている税の国境調整の仕組みを法人税に盛り込み、グローバル化に対応して輸出に対しては税の還付を、輸入に対しては公助抜きの課税とすることで国境調整を図る税制で、少なくとも国内で製造可能な製品の海外移転不利にします。加えてキャッシュフロー課税とすることで、形式上直接税となりWTOルール違反の可能性があるという提訴に対して利益課税でなく間接税だと主張できるという目論見です。

キャッシュフロー課税はそれに留まらず、複数年に分けて焼却される減価償却の一括償却と同じ意味になりますし、有形資産に留まらず知財やのれんなどの無形資産も同様ですから、投資全般を阻害しないという意味もあります。加えて人件費も控除対象で、この点が付加価値税と大きく違う点で、つまり低賃金国への生産移転は不利になるという意味で、国内雇用も守るという大統領選の公約と整合性があります。

また国境調整の結果仮にWTO提訴や報復課税がされたとしても、結局有効な報復手段は同じ仕向け地課税を導入するぐらいしかないわけで、それはむしろ望むところ。移転税制で税収確保に苦しむ多くの主権国家にとって問題解決の道になるというわけですね。EUにしろNAFTAにしろ主権国家の上位組織を置くという意味では主権制限の要素があるわけですし、各国の税の空洞化問題も含めて、ある意味クリティカル共同体としての主権国家の復権ということになりますから、反グローバル化という批判も当たりません。

加えてアップルやスターバックスで問題になった税逃れに関しても、未来分は新法人税で捕捉される一方、過去分を10%の軽減税率でみなし課税するリバトリエーション税を課す法案を用意しており、新法人税の前座として議会に諮って成立を目指してます。こちらはオバマケア修正法案で反対に回った共和党保守派も賛成に回ると見られており、トランプ税制改革の成否を占うことになりそうです。

問題はこうして相当額の税収増が見込めるわけですが、それを原資に減税やインフラ投資の財源とする目論見ですが、大統領選で訴えた法人税15%までは届きそうにないということ。共和党案の20%も苦しく、25%程度がせいぜいではないかと言われております。加えてリバトリエーション税で利益の海外留保が無意味化しますから、米企業が一斉に留保資金を本国送金すると、為替がドル高に振れてしまうという点ですが、むしろ新税制で輸入物価にかかる上昇圧力を緩和するとすれば、国民生活的には問題ないということになりそうです。

それと3月に利上げし、年内3回の利上げを示唆して緩和の出口を探るFRBの動き如何では、ドル高が進む可能背もありますが、その根拠となる米景気の回復基調にやや異変が。

米市場の変調、自動車業績に重荷 販売減速・膨らむ奨励金  :日本経済新聞
以前から指摘されていた問題ですが、サブプライム自動車ローンと販売奨励金で新車販売に下駄を履かせた状態が続いた結果、中古市場に車が溢れて値崩れして、元々リセールバリュー頼みのローン利用者にとっては、転売、買い替えのサイクルが停滞するわけですから、それが新車販売に跳ね返っている状態で、丁度不動産サブプライムローンと同じ構図です。ただ規模は小さく、金融危機には至らないと見られていますが、新車販売の停滞は生産の縮小を通じて米景気後退のトリガーにはなり得るわけです。ただしそうなればFRBの利上げスタンスは見直されるでしょうし、むしろ低すぎる失業率でインフラ投資が滞ると言われる中、景気後退は悪い面ばかりではありません。

そうなるとテキサス新幹線や北東回廊リニアの建設を目指すJR東海にチャンス到来?とはいかないのが現実です。トランプ税制では結局建設でも車両製造や保守でも現地調達を基本にしなければなりませんが、高速鉄道の建設や運営をこなせるサプライチェーンを立ち上げるのは困難を伴います。実質貨物鉄道で欧州以上に衝突安全の基準が厳しいアメリカですが、逆に言えば日本式の繊細な構造の高速鉄道の建設は未体験ゾーンとなるわけで、日本のリソースを使うと課税される新税制では不利になるわけです。インフラ輸出に前のめりな日本ですが、そうそううまい話は転がってはいないわけです。東芝が買収したWHの誤算もスリーマイル事故で原発建設が停止した結果、サプライチェーンが崩壊してコストを膨らませたことにあります。無理しても同じ運命が待っているだけでしょう。

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Sunday, April 02, 2017

JR30周年で国鉄は遠く

JR30周年となったわけですが、つまり国鉄を知らない世代が既に社会人になっているというわけで、そもそも国鉄改革とは何だったのかを知らない人が増えているということでもあります。しかもその30年はスタートがバブル期に重なって好調だった一方、バブル崩壊後の経済停滞で社会はすっかり様変わりしておりますが、上場を果たした本州3社とJR九州に対して、JR北海道は存続の危機とも言える状況に直面しており、JR四国も時間の問題という現状です。

その一方でJR貨物の黒字化で上場が視野に入るという、なんともわかりにくい状況ですが、JR発足以後の日本経済の激変を考えれば、これまでの30年の延長上に未来は描けないのはある意味自明です。加えて言えばバブル期以降の日本を特徴づけるのは低金利ってことです。これ上場して資金調達力を増した本州3社にとっては追い風の一方、経営安定基金の運用益で赤字穴埋めという枠組みの三島会社にとっては逆風になるわけで、その中でJR九州だけが上場にこぎつけた最大の理由は、JR発足後に完成し引き渡された青函トンネルと瀬戸大橋を抱えるJR北海道とJR四国に対して、追加的な負債が発生しなかったってこともあります。

リース料負担のある整備新幹線としての九州新幹線も、経営安定基金取り崩しで一括支払いしており、短期的な負担が北海道や四国より軽いことが指摘できます。ただし長崎ルートは需要面からもお荷物になる可能性があります。加えて経営安定基金の残りで上場前の減損処理で資産圧縮してますから、今後の鉄道事業の設備投資の原資は細くなっており、人口減少でJR北海道と同じ問題はJR九州でも起こり得ます。

本州3社についてもそれぞれリスクを抱えています。業績好調でリニア建設に入れ込むJR東海は、そのリニアがリスク要因です。過去にも何度の指摘しておりますが、リニア単体では赤字の投資であり、しかも人口減少で人手不足が顕在化する中で、労働需給による事業費の上振れは避けられないところですし、加えて南アルプスを青函トンネルより長い長大トンネルで抜ける難工事です。トンネル工事で地下水脈にぶち当たれば国鉄時代の上越新幹線中山トンネルや福岡市営地下鉄七隈線のような水没事故も起こりかねません。

JR東日本や西日本にとっても人口減少による地方線区の維持の困難さは今後も拡大するでしょう。JR東日本では仙石線や常磐線のほか、水害で橋梁が流された只見線や土砂崩れの山田線など災害復旧で課題を抱えています。JR東海の名松線の復旧とJR可部線の廃止区間の一部復活などはありますが、前者は三重県と津市の治山治水事業の進捗に合わせての復活ですし、後者は市街化が進んでいたものの、廃止時点で非電化だったために、電化工事までして残す選択肢は事実上なかったわけで、住民運動が広島市を動かし、それに呼応して鉄道用地の原状回復や売却を留まったJR西日本の間で建設的な対話が実現したことによります。その意味で窮地に立つJR北海道に対する道庁や関連自治体の対応はちょっと残念です。

それでもJR北海道に関しては、JR九州が先鞭をつけた経営安定9基金取り崩しという奥の手は残っています。ただし使途は重要で、要員不足で保守が困難な状況を脱するには、省力化投資が欠かせませんが、JR北海道の経営力強化の意味で、現状の鉄路をそっくり残すことはあきらめるしかないでしょう。具体的には保守負担の大きいディーゼル車を減らすための電化と、保守負担を減らすための軌道強化などですが、JR北海道が自前で残す区間に限定すべきでしょう。そうすれば経営安定基金を取り崩しても償却資産が増える分、キャッシュフローの改善につながりますから、JR九州の新幹線リース料一括支払いより筋の良い取り崩し方になります。JR九州で認めた以上認めないわけにはいきますまい。とすれば石勝線・根室本線の南千歳―帯広間が電化されて、保守が容易な電気車両への置き換えが進むことになります。そしてこの手は将来JR四国の経営が行き詰ったときにも使える手でもあります。

で、残りの区間に関しては自治体出資で線路保有を肩代わりするか、受け皿三セクへの譲渡とするか、あるいは地元バス事業者を巻き込んだバス転換かといった対策を路線や区間毎に自治体と話し合って決めていくしかないでしょう。受け皿三セクに関しては、輸送量次第で肥薩オレンジ鉄道のようにJR貨物の出資もあり得ます。宗谷本線に関してはロシア政府が興味を持つかもwwwww。いずれにしても自治体の対応次第です。名松線も可部線も自治体が動いて復活を果たしたわけですから。逆に自治体との協議を重ね社会実験までして廃止止む無しとなった三江線の例も珍しいものとは言えなくなるでしょう。

ま、いずれにしても人口減少の影響は今は好調な本州3社も安泰ではないわけで、北陸新幹線に入れ込むJR西日本は正直大丈夫か?とも思います。この点は」JR東日本が絡む整備新幹線計画がほぼ完成し、JR東日本のとっては成長分野となったのとは異なります。元々JR東日本も整備新幹線区間単体よりも、既存区間である根本部分の需要増が狙いだったわけで、わざわざ線路を曲げてまで小浜、京田辺経由で新幹線を作るのは意味不明です。加えてJR西日本には新たなリスクの種も。

なにわ筋線30年開通 JR・南海運行、新駅以北は阪急交え協議  :日本経済新聞
なにわ筋線に関しては、大阪維新の目玉政策としての関西空港重視の文脈で、関西財界も乗り気なようですが、今回は阪急も事業参加を申し出て、よくわからない状況になっております。

元々阪急はなにわ筋連絡線構想として十三―梅田北新駅間の路線構想を持っておりましたし、古くから新大阪連絡線として淡路―新大阪―十三間と新大阪―神崎川間の免許を取得し、新大阪駅隣接地に駅用地としてとちをしゅとくしていて、高速バスターミナルや路線バス操車場として使ってたわけですが、紆余曲折を経て十三―新大阪間を除いて免許失効しており、十三―新大阪間も、四つ橋線の十三延伸線と相互直通が計画されていましたが、大阪市営地下鉄の民営化が決まって民営化後に負担となる追加投資が頓挫したことが影響しているようです。てことで大阪部、。大阪市、JR西日本、南海電気鉄道に加えて阪急電鉄も加わる五者協議が始まるそうですが、元々JRと南海の呉越同舟に加えて唯我独尊の阪急が加わるとなると、協議がすんなり進むとは考えにくいところです。

なにわ筋線に関しては、中之島で連絡する京阪電気鉄道も期待しているようです。肝心の大阪維新ですが森友学園問題でもちぐはぐな対応が見られますし、四つ橋線延伸計画を反故にするなど本気度には疑問符が付きます。とはいえJR西日本の単独事業とするには投資額が大きいわけで、新幹線のみならず、コアコンピタンスと見做せる関西アーバンネットワークでの私鉄との相乗りは、JR西日本の難しい立ち位置を示しているとも言えます。

てことで、めでたいようなめでたくないようなJR30周年ではあります。

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Sunday, March 19, 2017

曲がり角の整備新幹線

森友問題が予想以上に盛り上がっております。どうせメディアが動かないだろうと思っていたら、籠池理事長夫妻のキャラの立ちっぷりや安倍昭恵夫人のノー天気な行動力と随行する官僚の公務か否かとか、総理夫人を私人と閣議決定とか、なんば花月かい!草生えるわ。

てことで数字が取れるとメディアが動いた結果、23日に鍵池理事長の国会証人喚問が決まりましたが、問題の本質は国有地払い下げを巡る値引き問題と教育基本法違反が疑われる私立小学校の認可を巡る大阪府の規制緩和を含む便宜供与問題の2つ。国会に呼ぶべきは当時理財局長だった迫田国税庁長官と松井大阪府知事です。

第一次安倍政権当時の姉歯事件が、永田議員偽メール事件でとん挫して、改ざんを許した大臣認証構造計算ソフト問題、民間検査機関による検査業務とそれに関連して不自然に米国基準を接ぎ木した規制改革などはスルーされ、1建築士の犯罪に矮小化され検査の厳格化だけに終わった轍を踏む可能性があります。籠池氏の証人喚問に何かの仕込みがあるか要警戒です。多分贈収賄事件というよりは、官僚による政権への忖度だろうとは思いますが、だから許されるって話ではありませんね。

この手の忖度は歴史を紐解けば結構あります。古くは東海道新幹線の岐阜羽島駅を巡る問題で、岐阜県選出の大野伴穆代議士の関与が噂されましたが、当時新幹線建設に懐疑的な世論もあり、政治家の関心は高くなかったのですが、反対されると面倒ということで、国鉄側が忖度したものです。

元々東海道新幹線は最高速250km/hで東京―大阪2時間半という目標を掲げて計画がスタートしてます。当時既に民間航空の台頭とモータリゼーションの進捗で挟み撃ちに逢っていた鉄道は、世界的には斜陽産業と見做され、フランス国鉄で331km/hの記録を出しており、枯れた既存技術で200km/h-250km/h程度の営業運転は可能と見られてはいましたが、そのための追加投資に及び腰で、当時の高速列車は最高速160km/h止まりでした。

日本でも民間航空とモータリゼーションは欧米に遅れながら進んでいたのですが、その一方で戦後復興が軌道に乗って旺盛な需要拡大で、特に東海道本線は早晩輸送力増強が必要な状況でしたが、航空とクルマに対して鉄道のシェアを維持するために、世界最高峰の高速鉄道の建設を意思決定します。戦前の弾丸列車計画である程度用地が確保されていたことも背中を押したのでしょう。

そのため可能な限り直線的なルートで計画され、名古屋から米原へは、当初鈴鹿山地をトンネルで抜けて直行するルートで検討されましたが、当時の土木技術水準では長大トンネルは建設費を増大させるということで、計画が具体化する中で、現在の関ヶ原ルートに落ち着きますが、そうなると岐阜県をかすめることになり、駅を造らないで反対されるリスクを回避するため、岐阜羽島駅の設置が決まった経緯があります。余談ですが鈴鹿山地ルートならば関ヶ原の雪に悩まされずに済んだ可能性はあります。

これだけが原因ではありませんが、計画を具体化する過程で妥協を迫られた結果、最高速は巡航速度200km/hプラス10km/hの210km/hとなり、東京―大阪3時間へ。そして京都駅への速達列車停車で3時間10分となります。加えて盛土の安定のために開業時は盛土区間の徐行で4時間となり、1年1か月後に徐行解除という対応が採られました。枯れた技術の集大成とはいえ、世界初の速度域の営業運転ということで、慎重を期したわけです。

結果的に東海道新幹線は沿線の人口と産業の集積を進め、事業としても大成功だったわけですが、一方で会計規則の変更で民間企業並みに減価償却を義務付けられたこともあり、皮肉なことに国鉄は新幹線開業年の1964年から赤字転落し、以後累積赤字を重ねて解体、分割民営化へ進むことになります。東海道新幹線単体で見れば職客後も大幅黒字ですが、電化、ディーゼル化による動力近代化と需要が旺盛な幹線ルートの複線化に、首都圏通勤五方面作戦もあって、償却資産を増やし続けたことで、赤字は拡大の一途をたどります。巷間言われる赤字ローカル線問題はむしろ無償貸与または譲渡で減価償却が発生しませんので、経営への重荷という意味では主たる原因とは言い難いところです。

この頃の国鉄幹部の経営能力はかなり低かったようで、赤字解消のために生産性を上げようとして所謂マル生運動を仕掛けて労組と破局的な対立をしたり、東海道新幹線の好調ぶりに「新幹線なら何とかなるかも」と全国新幹線網を構想して、整備法が国会で成立するのを受けて、とりあえず輸送力が逼迫しつつあった山陽本線の救済名目で山陽新幹線を着工し、岡山開業、博多開業の2段階で事業を進めましたが、この頃には大型機の就航もあって長距離では航空のシェアを切り崩すには至りませんでした。

その一方、整備法の縛りもあって新規着工の新幹線は最高速260km/hで最小曲線半径も東海道の2,500mから4,000mに、軌道中心間隔4.2mから4.3mとグレードアップされましたし、加えて高度経済成長期の年率5%に及ぶインフレもあって、東海道新幹線より減価償却費の負担が重くのしかかる一方、輸送量は東海道の凡そ1/3に留まり、単体で辛うじて黒字も、並行する在来線の赤字転落もあって、国鉄全体の収支改善にはほとんど寄与しませんでした。寧ろ減価償却費の増大はフリーキャッシュフローを生み出しますから、会計上赤字でも現金は潤沢で、身の丈に合わない過剰投資は加速し収支悪化が止まらないわけです。

こうして国鉄解体、分割民営化へと進むわけですが、民営化でJR各社が軒並み収支改善された秘密の1つは、JR各社の国鉄継承資産の圧縮記帳です。旧国鉄勘定で資産の減損処理をして、新会社へは例えば貨物コンテナ1個1円とかで継承し、バランスシートが身軽な状態でスタートしたことによります。ただし本州3社に継承された新幹線だけは例外で、営業権こそJR各社に帰属しますが、資産としては新幹線保有機構という特殊法人に継承させて、JR各社から線路使用料を徴収する形にして、旧国鉄債務の一部として負担させたわけです。しかしこれは見直されます。

対航空で競争力を高めたいJR東海は300系で270㎢/h運転を実現しますが、稼ぎ頭の東海道新幹線でリース料の負担が重い一方、減価償却費が得られず投資の停滞を余儀なくされます。また他社に先駆けて株式上場を目指すJR東日本は、東京証券取引所の助言で、主たる事業資産である新幹線が自己保有ではない状況では、減価償却費による継続投資ができないから、事業継続に疑義があり上場は難しいと指摘されたことを受け、国に新幹線買い取りを提案。東海と西日本も同意して買い取りが決まります。

この時の価格査定で時価法の1種である再取得価格法によります。簡単に言えば同等の資産を現時点で再取得する際にかかる費用ですが、非償却部分の地価部分が膨張しているわけですから、車両更新を進めて対航空の競争力を高めたいJR東海にとっては不満の残る査定となりました。そして後にこれでは東海道新幹線の設備更新が滞ると国に不満をぶつけて、のぞみ料金の上乗せ部分を非課税積み立てして設備更新に備える新幹線版特特法のような仕組みを勝ち取ります。その後工法の見直しで設備更新費用は圧縮され、JR東海は舌出してます。JR東海がリニアに傾斜するのは、それだけ余剰資金が潤沢だということでもありますが、そのリニアでも大阪開業前倒しで利子補給を取り付けるなど、国を騙して利益を得るその手法は、ある意味森友学園よりも悪辣かも。

一方国鉄が事業主体となる前提の新幹線網整備法も有名無実化する可能性があったわけですが、分割民営化時点で既に基本計画から整備計画へ昇格していた5路線の整備スキームが検討され、現在の所謂整備新幹線スキームになるわけです。元々国鉄の存在を前提とした法律を民営化JRに担わせるために、国と地方が2:1の比率で助成し、JRの負担も30年リースで償還するというもので、事業費圧縮のためにフル規格の他にミニ新幹線とスーパー特急という3メニューを用意して、国、地方、JRの3者の合意に基づいて着工という手順が決まりました。その際並行在来線はJRの経営から分離することと、分離に伴う貨物やローカル輸送由来の赤字負担がなくなる部分も加えたJRの受益分がリース料の算定基準とされました。

これJR東日本の上場時の東証の助言から言えば、九州新幹線を抱えるJR九州の上場はやや違和感があるわけですが、JR九州の場合不動産や流通など関連事業の好調で鉄道事業の比率がJR各社中最低の49%ということもありますが、鉄道事業でも経営安定基金を取り崩して新幹線リース料の一括支払いとその他の鉄道資産の減損処理を上場前に済ませて、上場後の負担を軽くしたわけで、JR発足時の圧縮記帳を繰り返したわけで、ルール上はかなりきわどいことをやってます。

一方赤字圧縮のために大幅な路線廃止を打ち出したJR北海道にとっての北海道新幹線は、貨物との共用の制約もあって共用区間の最高速140km/hで並行在来線切り離しは函館本線函館―新函館北斗と江差線五稜郭―木古内で受益が少ない上、函館本線に関しては電化して新車まで入れて三セクに渡すという追加費用も発生してますし、共用区間は並行在来線ではないので、JR貨物の割安な線路使用料はそのままということで、実態として経営改善にはほとんど寄与していないですし、むしろ青函トンネル自体の老朽化もあって保守費用の負担は今後も増えると見込まれます。上場どころか事業継続の危機ともいうべき状況です。

JR北海道は北海道新幹線の札幌延伸に期待を繋いでいるようですが、東京から5時間超では上記の4時間の壁問題で航空からの移転は期待できません。それでも並行在来線切り離しの受益は見込めますが、人口の希薄な北海道では北陸新幹線つるぎのような近距離利用も期待薄です。整備新幹線自体がリース資産で減価償却がありませんから、スピードアップのための追加投資の原資が得られないわけで、この点は一括支払いを済ませた九州新幹線にも当てはまります。こうして見ると整備新幹線は未来のない中途半端な存在ということができます。加えて政治性が機能の低下を後押しします。

北陸新幹線の全ルート確定 敦賀以西31年着工  :日本経済新聞
小浜―京都ルートも驚きですが、京田辺市(学園都市線松井山手付近)経由の南回りルートとこちらもう回路です。京阪間で料金不要の新快速よりも遅いわけで、何のための新幹線なんでしょうか。小浜―京都ルートに関しては、京都と若狭地区の繋がりの深さを指摘する向きもありますが、そういうローカルな需要はバスの若江線(近江今津―上中)の在来線鉄道建設で満たせるはずで、新幹線である必要はありません。事業性を考えたら米原ルート一択だった筈。しかも北海道新幹線札幌延伸後の2031年まで財源なしですし、そもそも並行在来線をどうするのか。まさか湖西線を切り離すじゃ受益のない滋賀県が同意するはずもないですし。政治に忖度して岐阜羽島駅を作った東海道新幹線のツケがこういう形で跳ね返るとは。つくづく日本の統治システムの醜怪さに眩暈がします。

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Sunday, February 19, 2017

ワールド・アナザー・ヒストリー

21世紀の世界で暗殺事件?いやはや驚きです。実行犯の女性2人と男性1人に加え、北朝鮮籍の男性1人も逮捕され、北朝鮮からは遺体引き渡しが矢の催促で、状況証拠から北朝鮮工作員の犯行は間違いないでしょう。それでも北朝鮮と国交のあるマレーシア政府は慎重姿勢です。通常ならば暗殺のような手段を取った北朝鮮に対して、アメリカを中心とする西側陣営は報復として金正恩の暗殺を仕掛ける可能性が高いですが、どうも足並みが揃ってません。トランプ劇場でアメリカ国内の混乱が続いてます。むしろ中国とロシアがこの問題に強く反応を見せております。

大統領令を乱発するトランプ政権ですが、イスラム圏7カ国の入国制限令は現在司法によって差し止められています。大統領側近のバノン氏の意向で進められました。

トランプ氏側近・バノン氏に発言力 政策を左右、省庁も無視 (写真=ロイター) :日本経済新聞
この7カ国は2015年11月のパリ同時多発テロを受けてビザ免除38カ国の国民を含め渡航歴のある人に特別ビザの取得を求めた法律のテロ懸念国7カ国が対象ですが、司法省に事前審査も発効前の告知期間もなかったために混乱しました。司法省の事前審査があれば7カ国の渡航歴のある人の入国制限との関係が問われるでしょうから、そうなると大統領令に手を入れられてしまうため、それを嫌った可能性があります。

推測ですが、オバマ政権時代に連邦議会が決めたテロ懸念国7カ国からの入国を制限することで、テロ防止の水際作戦を演出したかったんでしょう。結果いきなり現場にペーパーだけ降りてきて、現場毎の解釈の違いもあって混乱に拍車をかけたようです。確かに問題のあるやり方ですが、一方で差別批判がIT企業から吹き上がります。

「テロ懸念国」の入国禁止、米IT業界が懸念強める  :日本経済新聞
米IT企業の多くは、トップを含めて多数の移民が働いていて、入国制限は直接的に業務に支障が出るということですが、暗に差別主義批判といった政治的メッセージが含意されてます。ただしこれを以て「アメリカの民主主義は健在」とは思わない方が良いでしょう。アメリカが移民を受け入れるから一流の人材が集まるとはよく言われますが、これ移民の中のひと握り、せいぜい1%で、残りはサービス業など低賃金労働に就業するワーキングプア層ということで、移民かどうかに拘らず進む格差拡大の結果と変わりません。ってことで、移民受け入れを善とする所謂リベラル派の言説はこうしたゴマカシを内包しているわけで、クリントンが大統領選で負けたのも頷けますし、一方で移民を止めても問題は解決しないってことでもあります。格差拡大は移民やグローバル化よりもIT化による機械化、自動化、省力化の影響と見るべきでしょう。

続いて国家安全保障担当のフリン補佐官の辞任も痛手です。

「ロシア」米政権を揺るがす フリン氏辞任 (写真=ロイター) :日本経済新聞
昨年12月に駐米ロシア大使と電話で接触したということですが、政権移行前で問題ってことなんで、移行後に新政権の意向を受けて接触する分には問題ないわけで、トランプ氏が関与していたかどうかなど不明の点もありますが、むしろ駐米外交官との接触自体はパイプ作りという意味合いもありますし、結局対ロシア経済制裁解除など中身の問題です。それより情報源が米情報機関からメディアへのリークのようで、これ日本では政治家や官僚の観測気球として結構利用されているやり方ですが、アメリカでもと思うと複雑な心境です。むしろトランプ政権と情報機関の間に不信感があると見られることが不気味です。
トランプ氏、情報機関と亀裂広がる 組織のあり方検討へ  :日本経済新聞
アメリカの歴代大統領は4人暗殺されてますし、メディアに不正を暴かれて辞任したニクソン大統領の例もありますし、情報機関とメディアとの敵対はこういった連想を想起します。金正男の次はトランプ?

北朝鮮の情報機関が一般人を巻き込んだと見られるマレーシアの事件ですが、アメリカの情報機関が本気になればこれ以上のアナザー・ヒストリーを演出することは可能でしょう。何しろスノーデン氏が暴露したように、政治犯に限らず個人情報を集めまくっていて、日本でもNSAから日本人の個人情報を集めたいと申し出があり、日本政府が法令違反で無理と断ったら、違反にならない法律を作れと返したということで、それが今国会審議中の共謀罪なんですね。こんなもん通したら一般市民が米情報機関の演出するアナザー・ストーリーに巻き込まれる可能性があります。で情報機関と対立しているトランプ政権でこの法律を通しても、トランプ政権に恩を売ることにはならないことに注目すべきです。ついでに言えばオバマ政権が種まいた南スーダンPKOも今なら撤退してもアメリカの顔を潰すことにはならないんですが。

てなわけで、日米会談を大成功と自画自賛する安倍政権ですが、日米経済対話でFTAを封印したつもりになっていると痛い目を見ます。為替問題という爆弾を抱えていることは日本政府もわかっているでしょうけど、日米会談で言及がなくむしろドイツや中国に矛先が向かうと考えると大間違いです。

(羅針盤)通貨安批判、同意のドイツ  :日本経済新聞
ドイツにしてみれば、金融緩和がECBがやっていることで、ドイツ自身は南欧諸国の財政規律が緩むからと反対し続けているわけで、金融緩和で為替操作と言われても「は?」てな話です。その点日本の過剰反応ぶりはむしろ心配です。
財務相、異例の為替水準言及 円安ラインは120円?  :日本経済新聞
G20為替ルールに抵触する可能性のある財務相発言ですが、それだけ為替問題が敏感な問題ということです。トランプ政権との通商交渉では譲歩を引き出すネタにされること間違いないでしょう。

で、アメリカに日本の資金で新幹線やリニアをという話にあんるんですが、そんな金あればJR北海道を何とかせいと言いたいところです。それに関連してこんなニュース。

トラック人手不足追い風 JR貨物、初の鉄道黒字  :日本経済新聞
JR貨物に関しては、温暖化対策もあって(独法)鉄道建設・運輸施設整備支援機構から融資を受けて経営基盤強化の途上にあり、2018年度の黒字化を公約していたので、2年前倒しの達成となり、株式上場が視野に入ってきます。ただし線路使用料問題がネックになります。

JR貨物の線路使用料は貨物列車運行にかかる追加費用プラス1%のインセンティブを基本ルールとし、具体的な金額は線路を保有する旅客会社との相対交渉で決めることになっておりますが、JR発足当時、赤字基調が確実視されていたこともあり、機関車1両あたりの単価を設定するという便法で大幅値引きされています。それもあって機関車の重連運用を単機運用に置き換える目的でDD51重連→DF200単機、ED79重連→EH500単機、EF64重連→EH200単機といった形で新型機に置換を進めてきたわけですが、特に北海道のDD51重連からDF200単機への置き換えは、軸重が14tから16tに増えたこともあり、JR北海道の線路保守の負担になっていることは間違いありません。黒字化なら当然線路使用料の値上げが打診されるはずですが、そうなるとJR貨物の黒字を維持できるのかという問題になるわけで、うまくいきません。

そこで別の方法として、北海道では線路を痛めない軽軸重の小型機関車での小単位輸送という方法で保守費用の負担を軽減することも考えたいところです。これ震災関連でリージョナルカーゴトレインの可能性について言及したことがありますが、今ならハイブリッド技術を用いて構内入替をバッテリー駆動で行い、本線上を高速走行するときはディーゼル発電でバックアップすることで、例えば臨海鉄道のような三セク貨物鉄道を立ち上げて担わせるといった応用が可能ではないかと思います。JR貨物にとってはリスク分散になり、出資自治体にとっては貨物鉄道を保持することで大規模農業を含む産業立地に助けになり、国の温暖化対策事業の補助金も使えるわけで、旅客鉄道としての存続が難しい北海道の路線の存続策になり得るんじゃないかと愚考します。

これヒントはアメリカが貨物鉄道大国で、アムトラックなどの旅客鉄道が線路を借りて営業しているという日本と逆の形ですが、貨物鉄道のインフラ保持が実現できれば、軽量のローカル旅客列車の存続は容易になります。これ地域の産業政策と抱き合わせで道庁が動くしかないですが、今に至る道庁のスタンスでは実現可能性は限りなく低いと言わざるを得ません。

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Sunday, January 15, 2017

リスクを恐れない迷惑な人々

トランプラリーもやっと一服ですが、止めたのは?

東証大引け、反落 トランプ氏会見後の円高嫌気 医薬品が大幅安  :日本経済新聞
11日のトランプ氏自身の記者会見でした。しかも話題の中心は経済ではなくロシア。
トランプ氏、米メディアと対決姿勢 CNNなどを批判  :日本経済新聞
CNNの記者の質問に答えず「お前のところは嘘つきメディア」などと非難。CNN記者も食い下がりますが、この辺予定調和の日本の記者クラブ会見とは大違いです。とはいえ質問にまともに答えないとすれば、報道するメディア側も打つ手がないのが現実です。トランプ流メディアコントロールだとすれば問題ですが。

ただしCNN記者が問題視していたのが、トランプ氏がロシアに弱みを握られているという醜聞に関するものであり、言ってみれば出所不明の噂ですから、fact check という意味でメディア側の態度にも疑問は残りますが、ロシアによる大統領選介入に関してはトランプ氏も認めており、真偽よりも遺恨試合的に尾を引きそうです。アメリカ流の報道の自由にとっては課題が残ります。それでも日本よりはマシなのかな。

トランプ氏会見、サイバー攻撃「ロシア関与」  :日本経済新聞
米情報当局絡みですから、真偽は藪の中として、情報当局としてもこんな発表をすることになろうとは思っていなかった筈。トランプ氏の大統領選勝利はそれぐらい想定外だったんでしょうけど、同時にアメリカの民主主義制度の中心に外国ハッカーが介入できる脆弱性があるなんて発表のシュールさは何とも。逆にアメリカ情報当局による外国選挙への介入は噂レベルでも多数あり、日本の自民党にCIA秘密資金が渡っていたことは既に公文書公開で明らかになっています。当時と違ってアメリカの圧倒的な力の優位は失われ、ロシアが同じことができるレベルに追いついてきている現実を見せつけました。ましてマンパワーに勝る中国は?

蛇足ですが、従来「関税」と訳されてきた border tax を日経が「国境税」と訳したことで、やっと現実に追いついてきたかと。WTOルールでは輸出品に対する税還付は間接税に限って認められており、担税者と納税者が形式上一致することから直接税に分類される法人税では不可能という見解もありますが、世界的に多国籍企業の法人税逃れが問題視される中、税の専門家の間では法人税の本来の担税者は法人なのか?という議論が進みます。

元々事業所得としての最終利益に課税されるわけですから、ザックリ言えば営業余剰の配分を巡って国(税金)と株主(配当)と経営者(役員報酬)の間の利害調整に過ぎない問題です。法人税減税で直接利益を得るのは株主と経営者ってわけで、法人税収の減少は国家財政を圧迫する形で国民に転嫁されるわけですから、当然「法人税減税で賃金が上がる」という議論は成り立ちませんし、話を戻しますが、こうした隠れた担税者を視野に入れれば、法人税を間接税と見做すことは可能です。問題は数値を的確に把握し課税できるのか?という実務面のハードルです。貿易インボイスのようなものが導入される可能性もありますが。

ってことで、トランプ政権の政策的な目玉はこんなところでしょう。対米貿易黒字の大きい中国やメキシコは反発するかもしれませんし、メキシコに生産拠点を持つ日本企業にとっても影響はあるでしょうけど、騒ぐほどの問題じゃありません。それより自動車ならばカリフォルニアのZEV規制で2018年にもPHV以外のハイブリッド車がZEV指定を取り消されるとか、そっちでしょ。VWのディーゼル排ガス不正をきっかけに次世代環境車の本命はEVで確定しており、EV投資を考えたら、アメリカ国内への投資は避けられないところです。てなことを頭に置けば、こんなニュースも見方が変わります。

トヨタ「トランプ対策」奏功するか 米で1.1兆円投資  :日本経済新聞
トヨタにしてみれば5年間で100億ドルのアメリカ国内投資はわけないところ。それでトランプ政権へのリップサービスになるなら安いもの。トランプ氏にとっても「あのトヨタを動かしてやったぜ。ウェーイ!」と支持者にアピールできます。しかもこれエビデンス不要です。実勢を追跡するような支持者はいないってことですね。アメリカでは政策のエビデンスが強く求められ、オバマ大統領もそれゆえ思い通りの政権運営ができなかったんですが、トランプ流だと名指しされた企業がこういう反応をする限り、支持者から「トランプ氏スゲー!」の反応が返り支持率が上がるという構図です。これこんなのと同じになるってことです。
見えた?GDP600兆円 計上分野広く、五輪特需も  :日本経済新聞
アベノミクスで2020年に名目GDP600兆円達成を掲げていますが、それとは別に国連勧告に則った算定基準の改定があり、研究開発費等のGDP算入が2016年度中に実施と予告され、2016年10-12月期改定値から適用されました。新基準は過去に遡って適用されますから、GDP数値目標を設定したときの数字が隠れてしまい、比較不能になってエビデンスが成り立たなくなるわけです。

元々フローの数字に過ぎない名目GDPで数値目標自体意味がないんですが、税収に波及しますから、名目GDPの目標達成は歳入増による財政再建というストーリーとして上書きされるわけで、増税や歳出削減などの痛みを伴う対策なしに財政健全化をアピールするというレトリックなんですが、そんなアベノミクスをトランプ政権が見習っているとすれば、米欧二極でエビデンス不在の経済政策が進められることを意味します。今年最大のリスク要因でしょう。

日本に関しては変化なしではあるんですが、問題は必ず訪れる日銀の緩和政策の限界です。ただでさえトランプ相場で長期金利に上昇圧力がかかる中、既にマイナス金利水準=元本より高く買っている国債は満期まで保有しても損失が出ますから、それを見越した損失引当金を積んでいる状況ですが、元々低金利でほとんど金利収入が消えている中実際に金利上昇局面になれば引き当てが追い付かなくなり損失を出す可能性があります。そうなれば中央銀行発の大規模な金融パニックは避け難く、リーマンショックを簡単に超える水準の信用不安になります。日銀の緩和政策でリスクを集中させた結果ですから如何ともし難いところです。迷走する東芝

東芝、原発事業で陥った新たな泥沼:日経ビジネスオンライン

ややこしい構図なんですが、米原子力子会社WHの建設協力会社であるCB&Iの原発部門S&Wを巡る新たな減損が数千億円規模ということで、完全に再生シナリオが狂いました。そもそもCB&IがS&Wを切り離したのは原発建設を巡る規制強化で工事が度々中断し工期が遅れコストが増える中、WHとの間でも事業費の増額を巡って係争していたのを、S&WをWHが買い取ることで目先の損失を回避したんですが、資産査定の結果、追加減損が発生したわけです。CB&Iにとっては原発リスクを切り離せた一方WHは当座の損失は回避できたもののリスクを背負い込んだわけで、結果としてのリスク集中がそもそも問題なのですが。「原発は儲かる」は幻に。

話題を変えますが、本日1月15日は軽井沢のスキーバス事故から1年にあたります。

バス会社社長ら現場で献花 軽井沢事故1年  :日本経済新聞
事故を受けて再発防止策が講じられ改正道路運送事業法も施行され、貸切バス運賃の値上げなども行われたものの、違反は後を絶たず、特に基準を下回る低運賃請負はなくなりません。だからドライバーの待遇改善も進まずドライバー不足は解消されない状況です。それどころかインバウンドブームに乗じてバスの台数そのものは増えており、安値受注合戦はなくならないという悪循環です。バス会社にしてみればブームに乗っかれってことなんでしょうけど、その結果が事故などのリスクを大きくしているのだとすれば救われません。リスクを恐れないのは迷惑なんだってことを声を大にして言いたいところです。

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Saturday, January 07, 2017

タックス・ウォーが始まる

トランプ劇場は年を越えて続いておりますが、就任前からこれほど楽しませてくれる、もとい^_^;話題の多い米大統領は稀有の存在です。ま、歳も改まりましたし、今年の展墓ぷらしきことを書いとくか。まずはこれ。

初夢トランプ占い(5)税制 法人税下げ競争 再燃 規制緩和は国内優先か :日本経済新聞
天下の日経新聞が良くもこんな恥ずかしい記事を載せるなあ。トランプ税制に関して幾つか断片的な情報は耳に入りますが、それを理解してイメージを構成する力量が日経に記者にはないようです。簡単に言えば予告されている法人税減税の中身が、単なる税率下げではないってことです。いやこれアメリカに限らず、欧州やアジアで法人税減税を競い合うような状況はあるんですが、自国の税収を減らすことが簡単にできないことぐらいわかりそうなもの。税収中立の原則に従って税制そのものを見直しているんですが、日経を含め日本のメディアではその部分がすっぽり抜けていて、税率だけを比べるような表層的な報道ばかりです。

アメリカでも直近の歴代政権はほぼ例外なく法人税減税の論点整理をしており、子ブッシュ政権時代にはスウェーデンなどの法人付加価値税まで俎上に載せられましたが、主に議会のねじれがあり、また保守、リベラルを問わず議員がロビー活動に晒される中、結局実現しませんでした。しかし論点の掘り下げ作業そのものは行われているので、トランプ氏のようなぽっと出の大統領でもまともなプランをまとめられるし、議会を説得できれば実現可能性はそれなりにあります。幸いというか、大統領選と同時に行われた議会選挙で共和党が上下両院で過半数を占めており、加えて中身次第で民主党議員の賛同も得られる可能性のあるプランならば議会を通る公算はあります。

で、トランプ氏のこれまでの主張から敷衍して、トランプ氏が狙うのは国内産業の復活であって、ある意味わかりやすいですし、加えてアップルやスターバックスで問題になったアメリカ企業の租税回避策をやめさせることです。ブッシュ政権時代の対テロ戦争で資金源を断つ目的で規制強化して、例えばマカオのバンコ・デルタ・アジアの北朝鮮関連の預金を封鎖して金正日政権に打撃を与えたりしたわけですが、その流れでマネーロンダリングの拠点としてのタックスヘイブンの金融機関にアメリカ国籍の個人と企業の口座情報開示を迫り、見える化されたことで、アップルやスタバの租税回避まで明るみに出たわけです。あと例のパナマ文書のリークですが、これがいろいろ謎な部分がありまして、中国接近を狙うイギリスへの牽制のほか、プーチンや習近平の身内や知人、アイスランドの現職首相などの個人名が晒されましたが、いずれも当時のオバマ政権と対立したり意に添わなかったりする人物ばかりというところに政治的な意図が見え隠れします。ただしこれが英国民にBrexitを決断させた可能性もありますが。

てなドロドロの状況で、漏れ聞こえるトランプ税制では、法人税率が35%から20%になるとか、キャッシュフロー課税になるとか、輸出分の売り上げを除外できるとか、逆に輸入は海外現地法人が立地国に支払った税金の還付を認めないとか、いずれも断片情報としては聞こえてきます。はっきり申し上げますが、この程度の断片情報からトランプ税制の枠組みを再構成することは、アメリカを含む世界で進む税制に関する議論をフォローできていれば可能です。上記の日経記事が恥ずかしいというのはそういう意味です。

法人税率を下げるために課税ベースの拡大は世界の常識で、日本でも民主党政権時代に、虫食い状に課税ベースを蝕んでいる租税特措法減税の見直しが議論されましたが、当時の経団連とメディアが叩いて阻止されました。租税特措法減税は例えば設備投資減税にしろ研究開発減税にしろ、企業の申告によっていますから、実態が見えにくく、当局も当該企業も国民の批判に晒されることのない聖域だったわけですが、そこを踏んだ民主党政権がバッシングされたわけです。しかし世界の常識とはかけ離れた話です。加えて法人減税は海外からの投資を呼び込む意図もあるわけで、その意味では日本のように租税特措法で当局と阿吽の呼吸が取れる国内企業に有利な仕組みの見直しは避けて通れません。

でトランプ税制で法人税率を20%に下げるのも、課税ベースの拡大によって行われるわけですが、その際にキャッシュフロー課税が導入されるんじゃないかという観測がされてます。これ簡単に言えば減価償却による無税の資金留保は認めない代わりにキャッシュアウトを伴う設備投資は奨励されるから、設備投資が活性化して国内産業の復活を後押しするというわけです。

あと輸出の売上計上除外は事実上輸出分の法人税減免になり、日本の消費税に相当する付加価値課税がなく輸出還付金がないアメリカにとっては、言ってみれば貿易のイコールフッテイング税制となるわけで、高関税を課せばWTOに提訴されて敗ける可能性もあり、現実的には難しいですが、国内税制を弄って同等の効果を狙うのはあり得ます。仮にこれがWTOに提訴されても、そのときは付加価値税の輸出還付を行っている国を逆提訴して対抗するつもりでしょう。当然日本も対象になります。

そして輸入課税ですが、これアップルやスタバなど海外で資金留保している多くの米多国籍企業にとっては、海外生産を見直さざるを得なくなる上、米連邦政府にとっても、莫大な税収増をもたらす可能性があります。これを原資に老朽化が進むインフラ投資を積極化するというシナリオにリアリティが出てくるわけです。そんな背景を日本のパワーエリート達は理解できているのでしょうか。

トランプ氏介入、トヨタにも メキシコ投資に「あり得ない!」  :日本経済新聞
これ日本財界の賀詞交歓会でトランプ景気でイケイケムードの中、豊田章男社長がそれでもメキシコ工場への投資は予定通り行うと述べた直後のツイートだったってこともあり、一転財界人を慌てさせたようですが、上記の背景が見えていれば、フォードがメキシコへの工場移転を撤回した理由と共に、違った反応になったはずです。とりあえずトヨタはトランプ氏にアメリカ経済のメンバーと認められたとも取れ、ある意味メキシコに工場作ると損するぞという忠告と受け取ることも可能です。「メキシコに工場を作っても米国内の雇用は減らない」といった反論をしてますが、トランプ氏はそんなこと聞いてないんで、アメリカ国内に投資を呼び込もうということです。ある意味そのための法人税減税でもあるわけです。はっきり申し上げて、日本以外のグローバルエリートにとって自明のことすら、日本のパワーエリート達は理解していないということがバレちゃったわけです。企業の租税回避は各国とも悩みの種だけど、こうして自国に税収を引っ張ろうとしている状況はあるわけで、これ恥ずかしいを通り越して日本の未来が危ないぞ。

ただ誤解のないように申し上げておきますが、私自身はトランプ支持でも何でもないですし、おそらくトランプ改革は失敗するんじゃないかと踏んでます。特にインフラ投資に関しては、既に完全雇用に近い現在のアメリカで、財政出動で公共工事を積み増しても、震災後の日本と同じように深刻な人手不足に見舞われるだけの可能性があります。ただしアメリカは従来移民受け入れで人手不足をクリアしてきたわけですから、移民排斥を公言するトランプ氏はわざわざそれを難しくしているわけです。公共事業拡大の必要性と難しさを示すこんな報道も。

NYで列車脱線、100人超負傷 大半が軽傷か  :日本経済新聞
NYメトロノース傘下のロングアイランド鉄道は昨年10月にも事故を起こしておりまして、しかも今回と似たようなターミナル駅での暴走事故で、日本のATSに相当する保安装置があれば防げた可能性がありますが、収益に結びつかないということで鉄道会社は投資に及び腰です。連邦政府の補助が必要ではないでしょうか。一方でこんな話題も。
「幻の地下鉄」に学ぶインフラ投資の試練  :日本経済新聞
100年前に構想されたNY地下鉄セカンド・アベニュー線ですが、大恐慌やww2で計画が中断。戦後も市財政の破綻で事業化が遅れに遅れてやっと2007年に着工されたものの、人手不足で工事はべた遅れ。クォモ市長が発破をかけて昼夜突貫工事の末、異例の元旦開業となり、試乗したニューヨーカーたちも驚きとともに喜びを分かち合ったということですが、これだけならいい話で終わりですが、既に人手不足は顕在化していて、今後公共事業の拡大の困難さを示してもいるわけで、喜びも半ばということになります。こんなことも踏まえながら、トランプのアメリカがどうなっていくか、興味は尽きません。

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Sunday, December 25, 2016

死ななきゃ治らないナントカ

クリスマスです。ハロウインのときのエントリーで指摘したように、日ロ首脳会談での領土交渉の進展はありませんでした。これロシア側からのサインが出てましたが、予備交渉の過程で引き渡し後の領土に米軍基地が置かれる可能性を問われて有り得るとした返答で態度を硬化したとされますが、ソビエト時代から言われていたことの確認に過ぎませんし、沖縄の普天間基地の移転先の辺野古の反対運動や北部訓練場変換に関連した高江ヘリパッドの建設強行に対する反対運動に対して、日本政府が強行している姿勢を見て、日本への主権の引き渡しは無理と判断されたというのが実際のところです。日ロ関係は日米関係に規定されるのが現実です。

加えて言えば択捉島へのミサイル配備問題ですが、これ地対艦ミサイルってところがミソです。つまり標的はあくまでもオホーツク海での外国軍用船の軍事行動をけん制するためで、ロシアの核戦略と関連します。ロシアは保有する核弾頭の数を保持しつつSLBMへの転換を発表しております。オホーツク海にはSLBM搭載原潜を潜ませており、その太平洋側の出口ということですね。これがあるからシリアでのロシア軍の軍事行動に対してアメリカも文句を言えないわけで、核抑止力を効かせながら局地戦を睨んだロシア軍の部隊編成の小規模化とも連動します。そして支援を得たシリア政府軍による反政府勢力の制圧は時間の問題というところまで来ています。正邪の判断を横に置けば、ロシア軍改革は大成功といえます。

あと鉄ちゃん的蛇足ですが、津軽海峡を国際海峡とするためにここだけ領海3カイリに設定しているのは津軽海峡を潜航航行するソビエトの核搭載原潜の通過を現実的に阻止できないことから便宜的にそうしているわけで、現在もロシア原潜の日本海から東シナ海への航路として機能させることが、海洋進出を進める中国へのけん制になるので、維持されています。青函トンネルは日本の鉄道で唯一施政権外エリアを通過する存在としての意味があるわけですが、有事の輸送路となるインフラのメンテナンスを経営不振なJR北海道へ丸投げってのも危ういところです。

こういうことが頭に入っていれば、今回の日ロ交渉で領土問題が1ミリも動かないのは自明というわけです。期待をにじませるメディア報道はおそらく官邸からのリークでしょうけど、逆に領土問題の解決困難を国民に印象付けたわけで、結果的に領土抜きの経済連携となりました。クリミア編入を巡る対ロ経済制裁を一部緩和した形ですが、全面解除ではないからロシアから見ても不満の残る結果であり、大盤振る舞いした割には成果の少ないものになりました。

誤解のないように申し上げますが、私自身はそれでも極東やシベリアの開発を巡る日ロの連携はやるべきだという立場です。できれば日ロ間のガスパイプラインや電力連携線の整備は、日本のエネルギー政策に革新をもたらします。是非やるべきです。むしろ今回のことで領土領土とうるさいめんどくさいウヨどもを黙らせることができれば成果あったと言えます。あれ、安倍政権褒めてるwwwwwww。

一方混迷を深める南スーダンを巡って異変が。

南スーダンへの武器禁輸決議案、安保理で否決  :日本経済新聞
南スーダン情勢の緊迫化で大量虐殺の可能性ありとする武器禁輸の安保理決議で中ロと共に日本が棄権に回り、8ヶ国の棄権で必要な得票数に届かず秘訣されました。アメリカからは棄権しないよう働きかけがあったにも関わらずですから、アメリカからは非難されてます。日本政府の言い分は武器禁輸で南スーダン政府を刺激する方が危険というロジックですが、自衛隊をPKO派遣しているからということですね。

しかしそもそもPKO法では戦闘地域への派遣は禁止事項ですし、現地情勢次第で撤退を決断しなければならない局面なのに、国連が派遣する文民を警護するという変な理屈で所謂駆け付け警護(意味不明な用語ですが)を新たな任務とするという逆の対応を取っています。同じくPKO部隊を派遣する中国に対するライバル心からか、既成事実の積み上げか意図は不明ですが、現地で起きているのは石油利権のイスラム勢力との分離を狙ってアメリカが後押しした謂わば傀儡政権の南スーダン政府の暴走の結果であり、アメリカの尻拭いを中国と共同で日本の自衛隊が担うって構図はどう考えてもおかしいわけで、頭壊れてないか?

この構図は欧米が関与した紛争の多くで見られるもので、ジョージア(グルジア)紛争といいウクライナ紛争といい、親欧米派の裏に米保守派議員やCIAの関与が指摘されてます。またアラブの春に乗じたリビアの反政府勢力への英仏の支援で結果的にカダフィ政権を排除し、シリアでも反政府勢力へのCIAによる支援はもはや公然の秘密で、資金や兵器がダーイシュ(イスラム国)に流れて混乱しているわけです。大量破壊兵器のウソが暴かれたイラク戦争もですが、こういうろくでもないことを繰り返してきた欧米流リベラリズムへの懐疑が、Brexitやトランプ大統領を生んだわけで、大手メディアによる反Brexitや反トランプキャンペーンもこの文脈で見ると読み解けます。加えて欧米諸国のこの手の工作は昨今必ずしもうまくいっていないことも。時代は確実に変わりつつあります。

あと原発関連でいくつかありますが、これを取り上げます。

三菱重工と原燃、アレバに出資で最終調整  :日本経済新聞
福一事故を受けて安全対策の強化が求められて原発事業の採算性が悪化した結果、こういう妙なことが起きます。儲からないからといってやめられない。確かに廃炉や廃棄物処分などでやめられちゃ困るんだけど、コスト面で原発が事業として成り立たなくなってきています。もんじゅの廃炉も決まりましたが、高速炉は廃棄物を減らせる可能性があるということで開発は続けるというのですが、日本が大量のプルトニウムを保有する理由がなくなるという方が大きいのでしょう。もう一つこれ。
東電の原子力事業、再編相手公募へ 経産省有識者会議が提言  :日本経済新聞
f福島の賠償と廃炉で青息吐息の東電と組むメリットはほぼ皆無です。天然ガスなどの燃料調達のために東電と合弁でJERAを設立した中部電力からして東電と組んだことを死ぬほど後悔してるってのに、公募で再編相手が見つかると考える有識者とやらの眠たい議論を続けるのは、東電を破綻処理しなかった結果です。あーうましか。

一方でこんなニュースも。

鉄道が送電会社になる日 電線そのまま活用  :日本経済新聞
実は以前、このエントリーでJRの直流送電網を利用した電力託送事業の可能性を指摘したことがあります。記事はえちぜん鉄道の事例で、沿線の過疎化で収益確保が困難なTローカル私鉄の新たな収益源としての取り組みですが、うまくいけば大手私鉄やJRへ波及することも期待できます。

背景として元々鉄道は負荷変動が大きいがゆえに、電力会社から嫌われ不利な契約条件を余儀なくされているのですが、加えて技術革新で回生ブレーキが常用されるようになり、古い饋電システムではむしろ負荷変動を助長することもあり、固定買い取り制度(FIT)でも鉄道の回生電力は除外されました。そんな中で大手私鉄は変電所にNAS電池やキャパシタなどの蓄電装置を置いて負荷の平準化をしたりしてますが、ローカル私鉄ではそういった設備投資も単独では難しい中で、送電事業で託送料徴収して収益源とすることでクリアしようということです。ささやかなチャレンジですが、直流送電の特徴を生かして直流発電となる太陽光の電力を受け入れるなどして量の確保ができれば、結構使えるビジネスモデルになります。

九電ショックで売り先を失った太陽光発電の受け皿となれば、萎んだ太陽光発電の再活性化の可能性もあります。そして大手やJRにまで波及すればですが、原発の廃炉費用を託送料へ上乗せしようという経産省と電力会社のゴマカシを阻止できる可能性もあります。加えて隠れたメリットも。

電力回生ブレーキでせっかく省エネを実現しても、それを活かせない現在の直流饋電システムですが、例えば3,000Vの高圧直流で饋電してDC-DCコンバータで降圧して架線に供給する直流版AT饋電のようなシステムが可能ならば、変電所の集約と複数の機電区分への電力供給によって、負荷変動自体を平準化するシステムの可能性です。設備の合理化メリットと共に、大電力故に制御が難しくエアーセクション事故のような饋電系トラブルが増えている首都圏のJRにおいて、防止策になるということが期待できるんじゃないかということです。饋電系トラブルの多いJR東日本がチャレンジしてくれないかな。

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Sunday, December 11, 2016

トランプラリーが終わるとき

更新サボってましたが、トランプラリーと呼ばれる謎のリスクオン相場のおかげで安定したPVが続いております。選挙前はトランプショックとさえ言われ、実際一時的に相場は下げましたが、当選後のコメントが意外とまとも^_^;ってことで、むしろ減税や公共事業拡大を好感されてということのようですが、ま、スタート台が低いから普通のこと言えば評価されるってイリュージョンですね。就任後は当然期待が剥がれますから、下げは覚悟しといた方が良いです。

それと不安材料もチラホラ。FRBの今月の利上げはほぼ確実視されてますが、それぐらい今のアメリカの経済は好調ですが、既にピークアウトした疑いがあり、2017年には景気の谷が来る可能性があります。それでもFRBはむしろそうなったときの政策余地を確保する意味でも利上げをすると考えられますが、来年の利上げは微妙になります。というのは、トランプ政権下で成長が鈍化すればFRBの利上げのせいにされてトランプ大統領があからさまな圧力発言をする可能性があり、FRBの独立性が損なわれる可能性があります。丁度第二次安倍政権発足のときに当時の白川日銀総裁を読んであからさまな圧力をかけたことがアメリカで起こるってことです。てことで、基本的にトランプの政策運営はアベノミクスをなぞる形になると思います。格差拡大を批判して大統領になったトランプが格差を助長するってことです。

元々製剤成長率が4%あると言われたアメリカ経済ですが、直近で成長の裏付けとなる生産性向上が停滞し始めており、日本と似た状況になりつつあります。こういう状況で大規模な財政出動をしても、インフレになるだけの話です。加えて移民政策の見直しが行われれば、公共事業を拡大しても人手が集まらず、人件費だけが高騰するという震災後の日本と同じ状況になるだけです。加えて金利差によるドル高がマイナスです。おそらく対米大幅黒字国の日本と中国に為替操作国と非難を浴びせ、外貨準備で積み上げたドルを売るように迫ると思います。その時日本政府はどーする?

一方火種は欧州にもあります。

イタリア首相が辞意 国民投票で改憲否決  :日本経済新聞
これ反EUとか反グローバリズムや保護主義といった問題と見るべきではないんで、イタリアはレンツィ首相の下経済改革を進めてきていたのですが、議会の上院と下院が同党の権限を持つために反対派の抵抗が大きかったということで、上院の権限を縮小する憲法改正案を発議し国民投票にかけたところ、これを否決されレンツィ首相が辞意表明ということですが、今のところ与党出身のマッタレッラ大統領が待った^_^;ってことで足踏み状態ですが、最大の懸案はイタリアの銀行第3位のモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナの公的資金による救済問題ですが、政治の空白で金箔した状況です。そこに立ちはだかるECB。
欧州中銀、イタリア3位銀行の増資延期認めず ロイター報道  :日本経済新聞
モンテパスキの増資引受先が見つからず自主再建が難しくなったのですが、公的資金注入にはペイルインというハードルがあります。仮にも税金で民間銀行を救済するなら、株主や銀行劣後債購入者などの投資家に一部損失負担をさせるというルールですが、この銀行債が問題で、イタリアでは国民に広く保有されており、ペイルインを適用すれば多くの国民が損失を被るということで、政治的には困難な課題です。憲法改正否決もこれが影響したのでしょう。銀行の不良債権問題は元々リーマンショックの後始末の積み残しでもあり、モンテパスキだけの問題ともイタリアだけの問題とも言えないところがあり、仮に破たんすれば欧州全域に連鎖破たんが広がる可能性があります。とはいえ合議の上決めた銀行同盟の中心的なルールだけに、例外を認めにくいということもあり、多分来年には何か目に見えた危機が顕在化すると見るべきでしょう。

というわけで、問題だらけの世界ですが、なぜか日本は好調ですが、陰りも見えます。

GDP1.3%増に下方修正 7~9月、設備投資減で  :日本経済新聞
一応3四半期連続のプラスですが、下方修正の要因が先行指標出る設備投資の下方修正ですから、ピークアウトの兆しです。一方で住宅着工と公共工事は好調ですが、中身は相続対応の賃貸アパートが中心で、大都市圏でも今後人口減少が見込まれる中、空き家を増やすことになります。また公共工事もオリンピック関連など事業費の膨張が問題になっているように、増えたことを素直に評価できるものではありません。加えてこんなニュースも。
都市農地、覆う2022年問題
宅地転用で空き家増加?: NIKKEI STYLE
1992年にスタートした生産緑地制度ですが、主に大都市圏で地価対策として農地の宅地並み課税が施行された一方、営農を希望する農家に営農継続を条件に30年間の特例で低税率とした制度ですが、30年後に自治体に農地の買い取りを申請できるとしたものの、自治体も財政難でこれを渋っており、多くの生産緑地が農地指定を外れて宅地などに転用されると見られております。そうなれば宅地の地価は下がりますから、低金利が続くとして住宅着工ブームが訪れ価格破壊デスマーチになると見られます。大都市圏にも農地を残し地産地消でというきれいごとも吹っ飛び、単なる価格破壊に留まらず、マイナス成長の真正デフレに陥るんじゃないかと。日銀の金融政策じゃ回避できないどころか助長します。

そもそも競争力のある大規模圃場を物理的に確保可能な平地はほぼ大都市圏に限られる日本では、農地より宅地等に転用した方が地価が上がりますから、関東平野などで見られる水田地帯に散在する住宅や工場が建ち、小規模農家も土地の転用を夢見て手放さないから大規模化が進まずで、競争力のある農業の可能性は東北の一部と北海道に限られます。TPP対策費で補助金ばら撒いても大規模化は進みません。そもそもトランプ氏のTPP離脱宣言で発行の可能性のないTPPの関連法を強引に成立させるって、意味ねー。その北海道の農業にも暗雲が。

JR北海道、全路線の半分「維持困難」  :日本経済新聞
農業の競争力で大規模化はよく言われますが、それと共に市場アクセスの優位性も重要で、北海道の場合青函トンネルの開通で鉄路で首都圏に直送できるようになったことの影響が大きく、それゆえ北海道新幹線の青函トンネル貨物共用問題でも貨物の撤退は議論から外され経緯があります。農業へのダメージが大きすぎるというわけです。でこれ。
JR貨物、「上場準備へ」 経常益100億円達成見通しで  :日本経済新聞
JR北海道の経営危機を尻目にJR貨物が上場準備ってわかりにくいニュースですが、JR北海道の線路保守の劣化はJR北海道自身による高速化のほか、JR貨物が軸重14tのDD51重連を軸重16tのDF200に置き換えたことの影響もあります。JR貨物は線路を旅客会社から借りて列車運行していて、所謂アボイダブルコスト方式といって、貨物列車運行によって発生する限界費用のみの負担で良いという仕組みで、一応限界費用+1%のインセンティブを原則とし、実際は旅客会社との相対で金額を決めるということになっており、元々縮小均衡前提だったこともあり、実際は機関車の両数を代理変数とするタダ同然の格安水準でスタートしたわけですから、重連を単機に置き換えればむしろ線路使用料は下がるわけです。それでも設立以来赤字続きで旅客会社も値上げを言える状況ではなかったわけで、特に貨物輸送比率の高いJR北海道にとっては重荷だったわけです。そんな事情でEF64重連置換用のEH200はJR東海が入線を拒否しています。

それが鉄道・運輸機構の融資もあり、競争力強化投資とCO2削減やドライバー不足で企業荷主の鉄道回帰もあって、輸送量が下げ止まり、鉄道・運輸機構の融資条件である2018年黒字転換が見通せるようになったということで、上場という話になるわけですが、今まで赤字だったkら値引きされていた線路使用料が現在の水準のままとなれば旅客会社から文句も出るわけで、とりわけJR北海道には死活問題でしょう。鉄道の廃止を巡っては自治体の反発や道庁の不作為もありますが、国として農業インフラとしての鉄道という視点での援助は必要ではないかと思います。ま、安倍政権じゃどうせやらないだろうけど。

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