経済・政治・国際

Saturday, November 14, 2009

メトロポリタン・アンダーグラウンド

タイトルで地下鉄問題と直感した方、正解です。東京地下鉄株式会社(通称東京メトロ)の中間決算発表会見のニュースで、メディアによってこんなに違います。

東京メトロ、都営地下鉄と統合協議 メトロ社長が言及
東京メトロ社長「09年度中の上場は困難」
東京メトロと都営地下鉄、経営統合で協議
同じ日の同じ会見で、メディアのよってこんなに着眼点が違うことに注目してください。ニュースソースは同じはずなのに全く異なった印象を受けます。

事実関係としては、11日に中間決算発表の会見を開き、その席で09年度中の株式上場が難しいこと、都営地下鉄との経営統合問題を課題として都と協議はしていることを明らかにしたというだけの話です。東京の地下鉄一元化の協議は、営団時代から行われていたことで、特に目新しいことでもありませんし、当時から営団と都の職員の待遇の違いや、都営地下鉄の巨額の累積債務問題が障害となり、協議は前進しませんでした。

そして営団は政府の民営化方針に従って政府と東京都が株式を保有する形態の特殊会社へと改組され、政府は保有株を売却して完全民営化に舵を切ろうとしているのですが、東京都が邪魔しているのは既に述べましたし、メトロ株を狙う法人企業の話もしました。付け加えるならば、三菱地所、三井不動産他の不動産大手や、銀行など、メトロ株に色気を出している法人企業は多数あると考えた方がよいでしょう。

というわけで、上場が難しい理由として、リーマンショック後の株式市場の低迷と主幹事証券の選定遅れを挙げておりますが、公式見解でしかありません。リーマン前の株価水準がグローバルバブルで下駄を履いていただけですから、内需関連で実力勝負できるはずのメトロ株の売却が困難とは考えられません。あと主幹事問題ですが、記憶違いでなければ、営団時代に発行していた地下鉄債券では日興証券が主幹事だったと思いますが、法人部門の日興コーディアル証券の三井住友FGによる買収もあり、主幹事の座をめぐる大手証券の争奪戦があったのかもしれません。この部分はとばっちりといえるかもしれませんが。

いずれにしても、メトロと都営地下鉄の統合は五里霧中と考えるのが正しい見方でしょう。メトロの社長会見では本音は言えないでしょうけど、東京都の株式保有継続の意向が、株式上場の最大の障害であることは明らかです。実際こんなニュースもあります。

石原知事、東京メトロ株「都は売らない」
政権交代でどうなるかと思いきや、前原国交相は株式売却を都に働きかけているということで、予算編成で財源探しに苦労している民主党政権としては、株式売却益は喉から手が出るほど欲しいところでしょう。とはいえ都が株式を持ち続け、経営に影響力を行使する姿勢を見せている限り、話は進みません。

完全民営化されたはずのJALでさえ、政府、与党議員、自治体の圧力に屈して現在の惨状になっているのですから、メトロに都の影響力を残す選択肢はあり得ません。それよりも東京都自身が株式売却益で都営地下鉄の累積債務を繰り上げ償還することを考える方が正解です。そうすれば地下鉄統合の障害の一つが消えますし、運賃をメトロと同水準に下げることも可能でしょう。その上で都が職員の新規採用を停止し、段階的にメトロに業務委託していく形が、おそらく考えられる地下鉄統合の唯一現実的な解です。都営バスでは既に一部民間委託は行われていて、都も出資するはとバスの派遣乗務員が一部路線で乗務しています。これがホントの派都バスなんちゃって<^o^;>。

あと地下鉄統合がなぜ必要かも考えてみましょう。よく言われるのが、乗り継ぎの場合の初乗り運賃二重払い問題で、旧運輸省時代から国の指導もあって、乗り継ぎ割引が制度化されていて、現在は打ち切り合算した運賃から70円引きが乗り継ぎ1回限り適用されるようになっておりますが、特に1駅同士の乗り継ぎなど短距離で割高となります。

実は運賃制度の問題は、経営統合しなくても解決可能なんです。そもそも初乗り運賃が距離比例でない割高水準になっている理由ですが、駅で乗車券を発行し、改札、集札でチェックするために、駅には人を配置し、設備を整えないといけないので、その部分の固定費という考え方です。現在はさらに自動改札やICカード乗車券など営業設備面で初期投資額が大きくなっているので、この傾向は増しています。一方で閑散路線の無人駅はどうなるというご指摘もあるでしょうけど、これは合理化の結果ですし、そもそも運賃取りっぱぐれのリスクがありますから、そのための上乗せとも解釈できますが、後付け感は否めません。

ですが、例えばJRの会社間またがり利用の場合は、運賃が通算されるのはご存じの通りです。三島会社のように賃率の異なる場合には、擬制キロまたは上乗せ運賃で対応し、運賃通算自体は維持されてます。乗車距離の違いや利用者数の違いなどはもちろんありますが、JR同士で可能なことが、首都圏など大都市圏の事業者同士でできない道理はないわけで、その意味で運賃通算のための地下鉄統合という理由付けは、必ずしも妥当とはいえません。

例えばPASMO導入時に改札分離したJR/メトロ西船橋駅の事例など、事業者の都合が優先されましたが、その結果固定費を増やしているとすれば、何のための打ち切り合算、初乗り二重払いなのか疑問です。適切な事業者間の運賃分配が可能ならば、これでもかとばかりの物々しい自動改札ゲートを減らせるわけで、その分コストダウンできますから、運賃を下げて乗客に還元することも考えて欲しいところです。

特に地下鉄統合で見落とされがちな議論ですが、経営統合と運賃共通化を切り離せば、JRや私鉄との運賃共通化のような、世界の大都市では当たり前になりつつある方向へ向かうことも考えられます。具体的には運賃収入を都や事業者が出資する精算機関に集め、SuicaやPASMOの乗車履歴の集合から推定される乗車実績比率で事業者へ分配するなどの方法が考えられますが、事業者の自主性に任せても実現は難しいだけに、行政機関である東京都がイニシアチブをとって行動する必要があります。

というわけで、東京都は完全に立場というか役割を間違っています。ひょっとしたら事業仕訳けが必要なのは東京都かもしれません。とはいえ銀行税問題で二審まで敗訴し、銀行に多額の和解金を支払ったり、公金を投入しながら乱脈融資でどぶに捨てたり、意義が不明確なままオリンピック招致に失敗したりしている石頭都知事じゃ無理か-_-;。

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Sunday, November 08, 2009

意外に可能な温暖化ガス25%削減

三島由紀夫の「美しい星」という作品がありまして、テーマはズバリ「宇宙人」。両親と2人兄妹でそれぞれ水星人、金星人、火星人、木製人を名乗る不思議な一家の話です。まるで鳩山由紀夫、幸夫妻の出現を予想していたかのような内容は笑えます。三島作品で笑えること自体稀有なことですが^_^;、市谷での割腹自殺で狂気の作家と見られがちな三島由紀夫が、実は村上春樹に通底するポストモダンな感性の持ち主であることもわかります。早く生まれすぎて周囲に理解されなかったのかもしれません。

んで鳩山首相の「宇宙人」ぶりは、13日に予定されるオバマ大統領来日時の首脳会談で扱いが注目された普天間移設問題でも如何なく発揮されてます。既に10年以上店ざらしされている問題に、拙速に答を出すよりも、文字通り対等な日米関係を構築する意味で、日本の占領民意識とアメリカの日米安保タダ乗り論を乗り越えるテコにしようとしているようです。つまり同盟強化が狙いであって、優男の風貌でなかなか肝が据わってます。

実は日本の政権交代で一番慌てたのが中国でして、元々78年に鄧小平が改革開放路線へ転換したときに、手本としたのは、自民党長期政権下で高度経済成長を実現した日本です。つまり共産党1党独裁体制を維持しつつの経済成長委は可能という考え方でした。その意味で昨年の北京五輪や2010年の上海万博は、正しく日本の60年代をトレースする意味があるわけですし、欧米からの民主化圧力も、「欧米とアジアは違う、日本を見よ」という理屈になるわけです。

その日本で政権交代が起こり、民主政治の現実が示されたわけですから、予想外だったわけです。中国流解釈では、日米同盟は「ビンの蓋」、戦前の軍国主義へ回帰しないための安全弁として安心感をもたらすものと見られております。温暖化防止でも、中国が経済発展と共に排出量を増大させて国際的な風圧を受ける流れに対して、日本の前政権の消極姿勢は良い風除けでした。それが鳩山首相の温暖化ガス排出25%削減国連演説で覆されたわけですから、中国にとっては痛し痒しです。

それでいて靖国参拝否定や中国といの一番の首脳会談をセットするなど、親中的な対応を取られているので、公に非難することもままならずです。日本の意欲的な目標の表明は、米オバマ政権でも反対派の説得材料に使われているようですから、アメリカの対応如何では中国のCOP15の枠組み参加もあり得ます。ま、実際はそこまで楽観はできないようですが。

で、現時点で公式の数値が見当たらないのですが、2008年の日本のCO2排出量は、かなり減少したらしいのです。なぜならば、リーマンショックで生産が減少したからで、実際には10-12月期の減少によるわけですが、産業部門で年率換算では90年比20%超という水準に達するようです。つまり財界が主張する「乾いた雑巾」論とは違って、元々海外バブルで高止まりしていた生産水準が元に戻っただけで、25%削減の実現可能性は実は高いということを意味します。

ここで重要なのは、世界規模の経済変動でして、円安と低金利でジャパン老いるマネーを海外投資に誘導し、海外バブルに乗じてモノを売ることは持続可能ではないということです。つまり産業部門はリーマン後の生産水準で利益が出るように、過剰設備の償却と人員整理を行う必要があるわけです。その意味で生産を底上げするエコカー減税や補助金、家電のエコポイントなどの政策は、過剰の解消を遅らせるという意味で不適切な政策です。

温暖化防止に逆行するという意味で、高速道路無料化が遡上に上ることが多いですが、渋滞対策と捉えれば、実は全く異なった意味があります。道路は典型的な公共財で、車が1台増えても、他の車の利用を排除しない性質があります。つまり台数が増えて渋滞するレベルまでは、道路の社会的コストは発生しないわけです(保守費などの軽微な負担は除く)。つまり道路の通行料を課金する場合、渋滞が発生するレベルまでは負担を下げられるということです。加えて渋滞対策としての道路整備費用は、渋滞区間の課金で得られる範囲内に留めることで、社会的コストの最小化が図られることになり、民主党政権が掲げる高速道路無料化は、無駄な道路整備を制限する効果が期待できるわけです。

さらに加えて、特に首都圏などの大都市圏での道路整備は、費用の多くが用地買収費に費やされ、加えて環境アセスメント対策として防音壁や環境側道の整備を求められることで更に負担が増えることになり、必要な道路の整備が進まないという現実もあるわけですが、それで破綻しないのは、鉄道による輸送需要の集約が起きている結果と見ることができます。とすると渋滞対策としての鉄道整備という政策スタンスの可能性も考えられるわけです。

とはいえ大都市部での鉄道整備も用地買収と環境アセスメントの壁は存在するわけで、実際首都圏の通勤ラッシュの解消が進まないことに現れております。加えて国鉄民営化によって鉄道が民間事業者に委ねられている点が、問題を難しくします。

JR東日本ではインフラ整備は最小限として車両の更新と湘南新宿ラインに代表される新サービスの開発で、コストをかけずに需要を喚起しつつ、東北縦貫線のようにインフラはボトルネック部分への集中投資で対応してますが、同時に運賃の将来に亘る据え置きを宣言しており、現行の運賃水準で可能な範囲での混雑緩和しか期待できないわけです。この点は私鉄各社でも同様ですが、特に首都圏のように稠密なネットワークが形成されていると、ある部分に集中投資してボトルネックを解消しても、そのことが需要のシフトとなり結果的に混雑を助長してしまうという悩ましい結果となります。

複々線化に後れを取った小田急線が忌避され、輸送改善著しい田園都市線が首都圏最混雑路線というありがたくないタイトルを得たり、横浜市営地下鉄グリーンラインの開業と実質複々線となる目黒線の整備で、東横線の混雑が助長されたりしております。東急では本業重視で積極的なインフラ整備を行った結果、改善どころか悪化してしまったわけですから、混雑解消が如何に難しいかということですね。ちなみに東急は本業だけ見れば増収増益ですが、度重なる設備投資と関連会社のリストラで疲弊し、自己資本比率を悪化させてます。JALとJASの統合も東急の関連会社リストラ策の中での出来事で、今でも東急はJALの筆頭株主ですから、JAL問題の後ろには東急の支援も隠れているわけです。

話がわき道にそれましたが、設備投資して輸送改善しても、混雑解消に至らないのは、全体として鉄道の過去の投資不足に起因するもので、高度経済成長期のインフレ経済で、鉄道運賃が公共料金としてスケープゴートとされた歴史に由来します。それでも人口が増加している間は、ある程度の輸送力増強投資が行われたものの、人口が減少に転じた現在、事業者の自発的な投資上積みは見込めず、公共部門の関与が必要となります。ただし財政が逼迫する中、それも十分な水準に達する保証はありません。

あとはタブー視されている運賃引き上げぐらいしか手段がないのですが、これとて乗客がマイカーへ流れては元も子もないわけですから、単純な値上げは難しいわけで、あとはJR中電区間のグリーン車や通勤ライナー、私鉄の一部にもある通勤特急などで着席サービスを売りに増収をはかり、それを原資にサービスの底上げを図るぐらいしか方法がありません。それ以前に首都圏をはじめとする大都市圏が今後高齢化が進むことを勘案すると、、通勤需要そのものが減少する可能性もあり、政策的な意思決定の難しさがあります。

もう一方で過疎地の問題も考える必要があります。特に沿線に大都市圏を持たないJR四国では、高速道路無料化の影響を強く受けることになりますので、北海道や九州共々何らかの対策が必要でしょう。とはいえサイドバーのAMAZON鉄道書欄でご紹介した時刻表に見るスイスの鉄道―こんなに違う日本とスイス (交通新聞社新書) (新書) に見るスイスの鉄道事情を見れば、それでもまだまだ打つ手はあると映ります。なにしろ最大の都市チューリッヒの人口規模は36万人程度で、四国の各県庁所在都市と同程度で、比べ物にならないほどのサービスの充実ぶりですから。ただし運賃水準は日本と比べてかなり高いですが。

一つの方法論として、噂されるJR九州の株式上場でネックとなりそうな経営安定基金を本体から切り離し、自治体の資金拠出を仰ぎながら地方版鉄道建設公団に改組して上下分離でインフラ整備を行うことは考えられます。三島会社のうちJR九州以外の2社は、青函トンネルと瀬戸大橋開通でブームとなった88年をピークに輸送量を減らしており、その間に整備された高速道路の影響は明らかです。インフラ投資を促進して競争力を高めることが必要です。

あと貨物に関しては、温暖化対策として国の関与を高めることが考えられます。民営化時の基本ルールであるアボイダブルコスト(機会費用)負担方式の線路使用料をも下回る線路使用料の支払い能力しかなく、並行在来線分離三セクへは国の差額支援を得て高額な使用料を支払っているわけですが、JR旅客会社に対しても、少なくとも列車運行で発生する費用+1%のインセンティブ相当の線路使用料を支払わないと、例えばJR東海による貨物への嫌がらせのようなことを防ぐことはできません。逆に国が関与する以上、あからさまな運行妨害には罰則を設けることも考えられます。

ここまでのパッケージを示せれば、高速道路無料化は温暖化防止に反するという批判は成り立たなくなります。加えて鉄道の競争力強化のためのインフラ整備とメンテで、持続的に雇用を生み出すならば、従来のように輸出産業に雇用を依存しない内需型経済への移行とも整合的です。新政権の交通政策がどうなるか、見ていきたいと思います。鉄道回帰は世界の趨勢でもありますし。

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Sunday, November 01, 2009

JAL問題が影を落とすユニバーサルサービスの新作法

この1週間いろいろあって、記事にまとめようとしてもまとまらない^_^;。特にJAL問題で大きな動きがありましたが、やはり政権の命運を左右する大問題という直感は当たったようです。とはいえ問題はより深刻になったんですが-_-;。

そのJAL問題からメディアチェックです。

国交相、日航再生に支援機構の活用表明 再建案公表せず
日航、支援機構にグループの再生支援を依頼
何かよく意味のわからない報道と感じられますが、要は旧産業再生機構OB等の作業部会(タスクフォース)の再建案が断念され、発足したばかりの企業再生支援機構を活用することになったということです。作業部会案はいわゆる事業再生ADRと呼ばれる私的整理の手法で、銀行に条件付で債権放棄を求めるもので、見返りに人員整理や資産売却などのリストラを迫り、企業自身の手で自主再建するもので、法的整理の1歩手前の私的整理と言われます。

とはいえ当初から銀行団は再建案に否定的で、交渉は難航しました。債権放棄して支援しても、収益モデルが不透明で、今までも再三裏切られただけに、すんなりと呑めないということですが、さりとて会社更生手続きなど法的整理に進めば、既に多額の貸し込みをしている銀行団も返り血を浴びるということで、銀行サイドからは早い段階で政府が関与して公的資金による救済を求めていたもようです。

しからばこの1月の作業部会の活動は無意味だったのかといえば、さにあらず、このやり取りの過程でJALが少なくとも2,500億円の債務超過に陥っていたことが明らかになっております。つまり対策を怠れば、97年11月の北海道拓殖銀行のように突然死していた可能性もあります。その意味では作業部会はギリギリのところでJALを救ったことになります。

とはいうものの、支援機構案件となったことで、作業部会が1月かけて実施した資産査定は支援機構の手で再度実施されるわけで、スピード感が問われる中での足踏みはじれったいところですね。加えて元々地方版産業再生機構として設立された企業再生支援機構は、元々地方の埋もれた優良企業の支援を通じ、融資銀行の資産の健全化を目的とするもので、わざわざ第三セクターを対象から外すことで当時野党だった民主党も賛成したものだけに、JALの救済に支援機構を用いることには、正直違和感を禁じ得ません。

それと気になるのが銀行団の頑なな態度ですが、実はリーマンショック以後の銀行の不良債権比率がジワジワ上昇していて、竹中プラン実行直前の2001年ごろの状況に近づいてきているのです。JAL再建案に厳しい態度を示した銀行に、実は余裕がなくなってきている状況が透けて見えます。となれば自主再建に厳しい態度の一方、法的整理には慎重姿勢だった銀行の態度にも説明が付きます。JALに貸し込んだ債権の行内格付けが下がれば、銀行自身が引当金を積み増さなければならないわけで、それだけ銀行の融資余力が下がり、貸し渋り、貸し剥がしが横行しかねないわけで、JAL再建に政府が強く関与せざるを得ないということになったと読み解くことができます。実はJAL問題の裏に金融危機の芽が隠れていたということです。

この問題はそもそも邦銀の資本政策のまずさが根底にありまして、邦銀が世界へ業容を拡大した80年代、欧米銀に比べて預金量は突出しながら自己資本が薄く、不健全なハイレバレッジ融資と見なされたことが、バーゼル委員会による国際決済銀行(BIS)規制につながったのですが、日本の銀行関係者は欧米による日本封じ込めと認識し、勝手なルールを押し付けられて融資を減らさざるを得なくなった「マネー敗戦」論を振りかざして居直っております。

そもそも銀行にとって預金は負債に当たるわけですから、資本に対して過大な預金を保有していたことが、バブル期の不動産融資などへの貸し出し競争を誘発し、海外へも資金が漏出して米ロックフェラーセンタービル買収や英仏ユーロトンネルプロジェクトへの融資とその焦げ付きなど、痛い目に遭っているはずなのに、銀行本来の融資業務は、主に日銀の窓口規制に頼って融資審査などの本来の情報創造を通じた信用創造能力を持たないままに肥大化した邦銀では、高収益のビジネスモデルを開発して、それが資本市場で評価されて株主資本を強化するということを怠ってきました。それによって預金の一部が株式市場を通じて銀行の自己資本強化につながれば、無理な貸し出し競争でバブルを膨らませることもなかったでしょう。つまり「貯蓄から投資へ」の金融改革に失敗したわけで、後付けで郵貯マネーを政治的に弄るのはまやかしです。

JAL自身の経営問題も複雑ですが、国の航空政策の犠牲となった側面も見逃せません。前述の空港特会による過剰な空港整備に留まらず、整備費用捻出のために着陸料も割高だし、路線数が多ければ需要が分散しますから、個別路線の採算性も下がるなど、何一つ良いことはないのですが、地方のおねだりを止められなかった国の対応に問題がありました。

加えて96年の需給調整規制撤廃で、航空事業への新規参入が可能になったものの、結局採算性の高い一部路線での競争激化にしかならず、JAL,ANA,JASの当時の大手3社による過剰防衛と国の羽田発着枠の硬直的な配分で新規参入社は育たず、90年代に欧米で産声を上げ、アジアにも起業熱をもたらしたローコストキャリア(LCC)と呼ばれる格安航空会社も日本には事実上存在しません。元々大都市の大空港が大手エアラインに押さえられ、着陸料の割安な近郊のサブ空港同士を point to point で結ぶことで低価格を実現していたLCCですが、9.11で大空港がセキュリティチェック強化で機能を落とし、テロの恐怖で航空利用が敬遠されたことで hub and spork 型の大量輸送に特化された大手エアラインが軒並み業績を落とした中で、運行を堅持したLCCが存在感を増し、今や業界地図を塗り替える勢いです。羽田のハブ化なんぞで大騒ぎしている日本の航空行政の周回遅れぶりはお笑いの域です。

またJALを破綻させた場合に、それに代わって役割を引き継ぐ存在がないということでもあります。例えばJALを破綻させてANAに路線網を引き継がせるのは不可能です。というのもANA自身がリーマンショックと新型インフルの影響で苦しんでいますから。あとJR東日本による救済案も一部で言われますが、絶対に有り得ません。というのもJR東日本自身、主に北海道地区の余剰人員受け入れで不当労働行為の汚名を着ながら、小売などの関連事業を育てて軌道に乗せて余剰人員を吸収した経緯があり、JALの複雑な労使関係が修復不能なことを見抜いております。余談ですがJRグループ内で本業以外の関連事業育成で実績を上げているのは東日本と九州の2社で、東海や西日本は本業依存度が高く、リーマンショックや新型インフルの影響も受けやすいわけです。とはいえ九州は経営安定基金でどうにか最終黒字を計上するレベルで、一部で言われる九州新幹線博多開業後に株式上場はほぼ不可能です。旧国鉄債務の一部として国が負担する経営安定基金が株主のものとなるというのは、誰がどう見ても具合が悪いですしね。

思えば2002年のJASとの経営統合は早まったのかもしれません。というよりも、その後のJALは、社内融和を優先し統合効果を出すためのリストラを先送りした結果、赤字路線を多数抱え、旧い非効率な機体を多数保有し、関連事業も含めて多数の重複分野を抱え込み、労組も分立して労使協議が成り立たない機能不全に至ります。このあたりはJALの経営の失敗であると共に、公正取引委員会の審査の甘さも指摘できます。結局形ばかりの規制緩和で、実質的な競争政策は採られず、JALの虚弱体質が温存されたわけです。そしてそんな内情は承知していたはずの銀行団が資金を貸し込んだわけですから、銀行による経営のモニタリングが機能せず、上場企業でもありますから、株式市場での健全な相場形成と株主の圧力による経営の監視も機能しなかったわけで、実は資本主義国としての日本の質が問われている問題でもあります。

前原国交相は地方路線について、何らかの形で支援を表明しました。

日航再建、地方路線の支援検討 国交相「飛ばない空港作らず」
国の直接関与は旧国鉄赤字ローカル線と同じ問題を抱えることになりますので、期限を設け、おそらく自治体の関与を引き出す方向でしょう。ただし空港特会の見直しに言及し、少なくとも整備費用は切り離すということですから、着陸料の値下げは期待して良いかもしれません。

赤字ローカル線といえば、JR東海が名松線の家城―伊勢奥津間の廃止を発表しました。

名松線、一部廃止の意向 JR東海、バスに切り替え
台風18号の被害で土砂流入や盛土流出など39ヵ所あった被害箇所のうち38ヵ所が家城―伊勢奥津間に集中したことから、今回あえて復旧工事を行わず、バス輸送に切り替えようということです。台風被害で廃止といえば高千穂鉄道を連想しますが、JR引継ぎ路線ではJR西日本の越美北線が長期運休を乗り越えて復旧した例はあるものの、被災以前から地元自治体による定期券購入補助が行われていたことが復旧の判断につながったのでしょうから、自治体の対応は重要です。

その意味では名松線の場合、そもそも存続区間は近傍を近鉄線が並行し、通学定期の割引率による逆転現象がなければおそらく利用者は皆無という路線立地ですから、近鉄線の駅に接着するバス網を整備していっそ全線廃止の選択も有り得ましたが、地元との軋轢を回避したいのでしょう。無人車両走行の芽は残ります(苦笑)。

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Thursday, October 22, 2009

エコカーバブルで二番底

民主党鳩山政権の支持率が7割を超え、相変わらずの人気ぶりですが、やはりというか、予算編成を巡ってさまざまな火種が見え隠れしております。各省から出された概算要求が総額95兆円と史上最大ですが、政権交代で本気で政策転換をしようとすれば、一時的に予算が膨らむのはやむをえないところですし、政権交代のコストと認識しておけば良いでしょう。とはいえ次年度以降も同様ならば話は変わりますが。

という中で、いち早く八ッ場ダム中止など無駄な公共事業見直しや中止に踏み込んだ前原国交相をトップに国土交通省の成果が目立ちます。ここまで切り込んだら与党議員からも不満が出そうですが「コンクリートから人へ」という新政権の基本コンセプトに忠実です。一方で膨張を続ける社会保障予算を抱えながら目玉政策の子ども手当を抱える厚労省や、農家の個別所得保障を抱える農水省、高校の授業料無料化や奨学金拡充の文科省など、苦しいところも散見されます。

そんな中で経産省がエコカー減税と買い替え補助金の予算請求をしなかったのは見識ですが、復活を狙っているという話も聞こえるなど、やや曖昧なスタンスを感じます。そもそもエコカー減税も補助金も問題山積、基本的に継続はないと見て間違いないでしょう。

とりあえずメディアチェックです。まずは新車販売動向からです。

9月の新車販売、0.2%増 14カ月ぶりプラス、エコカー減税や補助金が効果
リーマンショックで落ち込んだ新車販売ですが、エコカー減税と補助金の効果かプラスへ回復、特に減税対象となるプリウスなどハイブリッド車その他の減税対象車が売れているということで、数字だけ見れば効果があったということになりますが、減税効果が薄く補助金も半額となる軽自動車がマイナスというところに問題の一端が見えます。

そもそもエコカー減税ですが、リーマンショックでメーカーが急速な派遣切りや期間工の雇い止めなどで生産調整をして、いわゆる年越し派遣村で世論の逆風を受けたことから、財政出動で新車販売を督励し雇用を支える目的だったわけです。その際に温暖化防止を前面に出せば世論受けするので、国民に抵抗感の強い財政出動も通りやすいということですね。しかし実際のCO2削減に寄与するとはとても言えません。

日本のメディアはこの辺をナイーブな感情論に流れてきちんと検証しないんですが、要注意です。普通に考えて燃費の良いエコカーの普及はCO2削減に貢献しそうですが、燃費の向上はユーザーにオーバーユースの誘因となることを忘れてはいけません。燃費の向上分は簡単にスポイルされてしまいます。加えてエコカー減税の制度自体にも瑕疵があります。

そもそもエコカー減税の基準ですが、車両重量別に9つに区分された各区分の標準燃費を基準にして改善度でランク付けするのですが、当然重い車ほど基準値が甘いわけです。そのために例えばヴィッツよりアルファードの方が減税幅が大きくなるという矛盾があります。また取得税は重い大型車ほど高いわけですから減税効果も大きくなるわけです。だから上記のように軽自動車はむしろ売れなくなっているのです。

加えてこの制度ではあくまでも車重別に判定されるということで、敢えて重量のあるオプションを装備して上位の重量区分に変更して、甘い基準の恩恵を得ようとメーカー各社は特別仕様車をそろえます。それらの車は重量が増えた分燃費は悪くなるわけですから、どこがエコなんだかという話です。

加えてエコカー補助金ですが、こちらはさらに問題を含みます。元々はドイツなどで始まったスクラップインセンティブ制度を見習ったもので、13年(ドイツでは9年)以上の古い車を燃費性能の良い指定車種へ買い替えたときに補助金を出すというもので、古い車の廃車と引き換えに低燃費車を増やそうということですから、問題なさそうですが、どっこい、通常の下取りと違って廃車が前提ですから、通常ならば中古市場へ流れる車がゴミになるわけで、やはりどこがエコなんだかという話です。

しかもこちらは書類の不備が多く執行が進まないため、3,700億円用意された予算は不発になりそうです。

エコカー補助金「不発」のおそれ、交付実績たったの1割
9月25日時点で199億円しか執行されておらず、今のままならば記事の通り1割程度の消化で期限を迎えそうです。

ま、結局のところ選挙目当ての雑な制度設計だったわけで、前政権のお荷物を背負わされた格好です。エコをうたっても本音はメーカーの販売支援でしかないですし、その結果売れる車に偏りが出て、例えばプリウスは年度内納車は既に不可能、各社今売れる弾が欲しいから、特別装備という錘をつけた"エコカー減税特別仕様車"に熱が入るわけです。こんなことでは温暖化ガス25%削減は遠のきます。

一方で元々民主党はマニフェストで自動車関連諸税の暫定税率廃止を打ち出しているわけですから、新年度から実施されるとすれば、重量税が6,300円から2,500円、取得税が5%から3%に軽減され、車種を問わず納付する税が半減するわけですから、実は現状のように車種が偏った販売動向となるエコカー減税よりもメーカーにもユーザーにも広くメリットがあるわけです。この前提で考えると、エコカー減税は仮に続けるにしても制度を見直さざるを得ず、とても予算編成期限となる年内には間に合いません。ムダ排除の政権のコンセプトからしても、スッパリやめるのが正解でしょう。

しかし頭の痛い問題もあります。エコカー減税で注目されたハイブリッド車を、トヨタは増産を決めております。車種を増やしラインナップを充実、加えて家庭用電源で充電可能なプラグインハイブリッド車の市場投入も決めるなど、前のめりになっておりますが、制度が変わるはざ間でオウンゴールを繰り返す可能性を否定できません。既にドイツやアメリカの新車買い替え補助金は予算を使い切って打ち切られ、輸出が弱含みな中で、エコカーバブル崩壊が直撃する可能性があります。となれば二番底、前政権の雑な制度設計が時限爆弾のように炸裂する可能性があります。トヨタがこけるのは自己責任ですが、新政権にとっては厄介な問題です。

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Sunday, October 04, 2009

尼崎事故調漏洩事件に見る国鉄一家の堕落

ニュースとしては先週の話ですが、メディアとは違った視点で取り上げるという当ブログのコンセプトに従って取り上げます。まずはこの記事から。

尼崎脱線事故調査委、元委員が報告書漏洩 JR西前社長が依頼
JR西日本の歴代トップの責任に言及し、企業体質に問題があったことを認めた山崎前社長ですが、一気に男を下げました。

鉄道事業本部長時代に安全対策を進言し、疎まれて関連会社へ出向させられていた山崎前社長には同情する声もあり、被害者からも評価の声が聞こえただけに、信頼を裏切ったことは重大です。加えて「新型ATSが設置されていれば事故は防げた」とする記述を調査報告書から削除することを求め、それを受けて山口元委員は事故調で発議して否決されたという一連は、事故調の第三者機関としての意味を無力化させるものでもあり、大問題です。

と同時にこの新型ATS問題は神戸地裁に起訴された山崎前社長の公訴事由にもなっているわけですから、それを意識した行動だとすると、更に問題が膨らみます。少なくとも審理以前に心証真っ黒となり、結果墓穴を掘ったことになるかもしれません。

そこまでのことではないとしても、山崎前社は経営者として事故を契機にATS設置基準制定などの規制強化で資金負担が増えることを心配したのかもしれません。鉄道事業の特殊性を考えると無理もないところがあります。というのも、今回の漏洩事件でも当事者は国鉄OBで先輩後輩関係という事情があり、おそらく山崎前社長も山口元委員も当事者意識が希薄だった可能性があります。

以前の記事で国交省の前身の1つである運輸省の問題を取り上げましたが、現業機関としての国鉄が公社として分離され、鉄道事業の国家独占の権限が現業機関である国鉄に帰属した結果、監督官庁であるはずの運輸省は国鉄に対して無力でした。そもそも国鉄による新線建設や改良事業は国鉄自身の意思決定で為され、民間事業者のような免許事業ではなかったんですが、例えばそのことが東海道新幹線が構想段階から反対の大合唱を受けながら実現したこととか、国より格下の東京都による都市計画に定義されない総武快速線の建設や、ローカル線建設に不熱心な国鉄に代わって建設を請負う鉄道建設公団の設立などは、この辺のねじれ現象の結果です。

で、技術面でも鉄道はブラックボックスに喩えられることが多いのですが、日本の場合技術面での国鉄の情報独占といいますか、位置づけはきわめて重かったのです。そのために日本の鉄道車両メーカーは国鉄の下請けを脱し切れず、大手私鉄も部分的ないいとこ取りで「うちのは国鉄より高性能」と言っていたような状況です。気候変動問題で世界で鉄道が見直されるトレンドに乗り切れない原因でもあります。この辺はガラパゴス化と言った方がわかりやすいかも。

その結果鉄道技術は旧国鉄と後身のJR各社が握り、監督官庁である旧運輸省には技術に関する目利きが存在しません。ゆえに福知山線事故のような重大事故が起きると、パニクって規制強化に走るのです。福知山線事故の場合も同様で、当時の北側国交相のコワモテぶりが思い起こされます。そういう意味で山崎前社長が、国交省の規制に影響を及ぼすこと確実な事故調報告の内容を早く知り、できれば規制強化を緩和する方向へ記述を変えて欲しいと考えても無理もないところです。

加えて事故調委員メンバーとして、結局国鉄OBを起用するしかない現状もまた避けられなかったでしょうし、OB同士の気安さが漏洩事件を生んだとすれば、つくづく旧国鉄という存在は罪作りです。明治以来のアンシャンレジュームは一朝一夕には解消しないんですね。

それとそもそも事故調(航空・鉄道事故調査委員会→現運輸安全委員会)の鉄道部会設置が、91年の信楽高原鉄道事故の遺族などでつくる鉄道安全推進会議(TASK)が93年に国に働きかけて発足したもので、信楽の事故でも不起訴ではあったものの、信楽高原鉄道を被告とする公判の審理過程で、滋賀県警が突き止めた亀山CTCセンターの方向優先テコの無届設置と事故後の撤去及び関連マニュアル破棄という重大事実が発覚したことが、専門の第三者機関設置の必要性を認識させたわけで、やはりJR西日本は本来当事者であったわけです。今回の漏洩事件は将にJR西日本の救い難い企業体質をを浮き彫りにしますね。

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Friday, September 25, 2009

高速道1,000円渋滞で鉄道回帰

政権交代が実現し、鳩山首相の外交デビューも順調です。気候変動、核廃絶など、民主党の主張に近い関心が国際社会で広がっていて、丁度国連首脳外交やピッツバーグのG20サミットなどの外交日程が政権交代をアピールするチャンスとなったなど、ラッキーな面はありますが、期待の持てる十分な成果が見られます。

民主党が掲げる内需拡大策の目玉は、何といっても子ども手当と高速道路無料化ですが、まだまだその意義に対する国民的理解は不十分です。とはいえマニフェストに明記され、それを国民が信認して政権を与えた以上、民主党政権はこれを実現する責任があります。実現にあたっては当然生煮えな部分を国会で野党に追及されるわけですから、実現可能性を高めるための修正協議もする必要がありますが、一方で安易な妥協は308議席の与党議員の追求にさらされるわけです。今さらながらマニフェストの重みを思い知らされます。

というわけで興味深いニュースです。

秋の連休、鉄道好調 東海道新幹線、GWより8%増
秋の5連休で渋滞予想から利用者が鉄道へ回帰しているというのです。1,000円高速の影響で減少した利用が戻っただけといえばそれまでですし、JR各社が対抗策で割引キップを出した効果と考えると、ひょっとしたら売上は戻っていない可能性はありますが。

あと航空も同様に利用者が戻っております。春のGWではあの新型インフルエンザ騒動が公共交通利用忌避を招いた部分もありますが、むしろ今、流行が本格化している中で利用が戻っているのですから、この影響は軽微なのかもしれませんが、断定は避けておきます。

一方でオンライン版の記事では省略されてますが、各道路会社によれば高速道路利用はGW時より4%減ということで、明らかに渋滞が忌避されたことが読み取れます。しかし納得がいかない部分もあります。というのは渋滞の発生はむしろ増えた点です。しかも50km超の渋滞が複数個所で発生するなど、見かけ上渋滞はひどくなっているのですが、これは結局利用時間が集中したことの影響のようで、ちょっと時間をずらせば渋滞を回避できたケースも多いようです。ということで、高速道のETC割引による内需喚起という前政権の置き土産で、貴重な社会実験がなされたということになります。

渋滞は利用の集中で起きるわけですから、週末限定のETC割引は、そもそも渋滞を誘発する要因を内包しているわけです。ですから、GWや夏休みの高速道の渋滞を理由に、民主党の言う高速道無料化でもっとひどいことになるということも言われたのですが、その論拠は怪しいわけです。むしろ曜日限定がなくなれば、利用の分散で渋滞は減るという議論も可能です。

あと高速道路無料化は自動車利用を助長しCO2排出を増やすという議論があり、国交省でも他の交通機関からの利用の移転でCO23割増との試算を明らかにしてますが、一方で同じ国交省で並行道路の渋滞緩和でCO2削減効果は4割弱になるという試算もあります。これは計算の前提が違うために起きたミステリーですが、前者は交通機関の選択のみに絞った試算で、後者は渋滞緩和に絞った試算で、他の条件は考慮しておりませんから、実際は両方の効果が相殺されて中立に近い結果となる可能性が高いといえます。

というわけで、マニフェストに明記されていないJAL問題と違って、マニフェストに謳い政権を得た以上、高速道路無料化はやらなければならないことであり、JRや高速バス事業者などから否定的コメントが相次ぐ中、あえて申しあげますが、この程度の競争条件の変化は、経営の責任で対応すべきです。また変化はチャンスでもあるわけで、変化にいち早く対応した者が、多くの果実を得るのがビジネスの世界の鉄則です。各社の奮起を期待します。

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Tuesday, September 22, 2009

グッドJALバッドJAL

やー、前の記事で指摘したように、ホントにJAL問題は新政権の命運を左右する問題になりそうです。

日航の新旧分離要請へ、政投銀など主力行 実質債務超過の恐れ
ソースは明かされておりませんが、おそらく日経の独自取材によるスクープでしょう。元々9月末期限の再建策を見て対応を決めるとしていた日本政策投資銀行他の金融機関ですが、とても追加出資は無理ということで動いたのでしょう。加えて政権交代で、与党族議員などの圧力を受けることなく抜本改革が可能になったという見方もあるのでしょう。前原国交相が24日にJALや金融機関などからヒアリングを予定しているタイミングですから、なんかいきなり生臭い話に発展した感があります。

処理のスキームは米GM支援に似たグッドカンパニーとバッドカンパニーに分離し、前者へ国が支援し、後者は時間をかけて清算処理するというものですが、日本国内の事例としては、国鉄改革で旧国鉄債務を一部を除いて清算事業団によって処理することで、新生JRを身軽な状態で再スタートさせたことに近いといえます。あるいは98年の金融国会で、破綻が心配されていた日本長期信用銀行、日本債権信用銀行の救済策として民主党案を自民政権に丸呑みさせた金融再生法も同様の処理となります。

当時から民主党の政策立案能力に注目していた私としては、時を経て民主党政権が誕生したタイミングでJAL問題に遭遇することの歴史の皮肉を思わざるを得ません。いわゆる民主党の流儀に整合的な処理案であり、金融機関にそれなりの知恵者がいたのかもしれません。とはいえ簡単に進む話でもありません。

というのは、このために特別法を制定する必要があること、当然予算措置も伴いますから、現在政権で進められている補正予算の執行停止を含む見直しで捻出した財源の一部を回さざるを得ないこともあり、政権内でも揉める可能性があります。加えて地方路線の整理を伴いますから、与党議員の造反も予想され、来月の臨時国会は早速大荒れとなりそうです。

結局JAL問題は鳩山首相の帰国を待って判断を仰ぐ話となり、タイムリミットも迫っているだけに、いきなりリーダーシップを試される展開となります。処理を誤れば本当に鳩山新政権が空中分解しかねない話ですし、また外国エアとの出資交渉も事実上ストップせざるを得ません。

2年前のおJALの記事で指摘したとおり、87年に株式公開し、政府全額出資の特殊会社から一般の民間企業になったJALは、同年実施された国鉄改革によるJR発足と関連し、特殊会社でスタートしたJR各社の先行事例としての意味合いもあったわけで、その後小泉構造改革で実施された道路公団民営化、郵政民営化、政府系金融機関改革など一連の民営化策の着地点となるはずだったのですが、その民営化会社が破綻の危機に瀕した場合の先行事例となってしまったわけで、皮肉な話です。同時に郵政見直しを掲げる新政権だけに、おかしな処理をすれば郵政見直しの議論も歪めてしまう可能性があり、本当に取扱い注意の案件になってしまいました。どうなるでしょうか。

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Monday, September 21, 2009

ジャパニーズGM問題、JAL問題を考える

このところJALを巡る報道が数多く露出しております。正直なところ前途不透明、五里霧中といえるこの問題ですが、鳩山新政権の命運を握るほどのインパクトがある問題として考える必要があります。

当ブログでは2年前に既にJAL問題を取り上げておりますが、正直当時からの迷走が未だに続いていることに驚きを禁じえません。今まで一体何をしてきたのでしょうか。

一応さまざまな努力の跡は見られるものの、航空を巡るグローバルな変化に追いつけず、取り残されてしまったさまは、米GMの問題と通底するものがあります。時代はオープンスカイ政策による自由競争の進捗があり、その尖兵だったアメリカでは、既にナショナル・フラッグ・キャリアのパン・アメリカン航空が破綻、時を経て元々国策キャリアの性格が強かったノースウエスト航空も、業界大手のデルタ航空に吸収されて現存しません。欧州でもアリタリアやサベナ・ベルギーなど国策キャリアの経営不振で国境を越えた再編が進む状況で、国策で政府出資の特殊会社としてスタートした日本航空がいかに難しい局面を迎えているかがわかります。

加えて大量輸送を前提に拠点となるハブ空港へ路線を集めて大型機でハブ同士を結ぶ大量輸送前提のビジネスモデルが、米サウスウエストや英バージン、アイルランドのライアン航空など、燃費の良い小型機で着陸料の安い大都市外縁部の空港同士を直行便で結ぶいわゆるローコストキャリアの台頭が、世界中で競争激化をもたらし、かつて二国間協定として航空協定を締結し、運行航空会社を指名する究極の独占市場が消滅したわけですから、今までのやり方を踏襲する限り、危機からの脱却はできない状況です。

その中で世界のエアラインは様変わりしました。歴史を刻んだ大手キャリアは、アライアンスに活路を見い出す方向性を打ち出しました。いわゆるコードシェアや共同運航便の活用で機材と人員の運用を合理化しながら路線網を維持するビジネスモデルへと転換し、特に国内のライバルである全日空では、パンナム破綻後に路線の多くを引き継いだ当時の米最大手ユナイテッドや独ルフトハンザなどをメンバーとするスターアライアンスへの参加をいち早く実行し、自らはその東アジア支部として主に日本対アジアの近距離国際線を充実させることで、国際線航空として後発の不利を逆手に取り、選択と集中を実現しています。その過程で全日空ホテルチェーンの売却など、非中核事業からの撤退も行っており、また羽田第四滑走路完成による24時間化を睨んで整備部門を羽田に集中させ、成田を拠点とするJALを出し抜こうという戦略です。リスクはありますが先を見た経営ができているということです。

それに比べるとJALの対応の周回遅れぶりは目立ちます。ANAのスターアライアンス参加時点から取り沙汰されていたワンワールド(アメリカン、BAなどが参加)への参加を逡巡し、自前運行にこだわり続けて高コスト体質を温存し、経営が怪しくなってから参加して、むしろ顰蹙を買ってしまいました。実は今回のJAL報道の増加のきっかけとなったデルタ航空のアライアンスを超えた出資打診も、ワンワールド内のそんな不協和音に遠因があるかもしれません。

というわけで今回の報道合戦による露出増加の始まりとして、米デルタ航空の出資打診があったわけです。

米デルタ、日航に出資打診 300億~500億円、交渉は流動的
デルタはスカイチームに所属しており、当然出資となればJALのワンワールドからの移行が前提となるわけです。仮に実現すれば、ネットワークの規模で最大のスターアライアンスとスカイチームは肩を並べる存在になり、JALが抜けたワンワールドは弱者連合になりかねないですし、アジア路線が手薄なアメリカン航空にとっては、JALを逃がすわけにはいきません。元々アメリカンとBAが中核で大西洋路線に強みを持つワンワールドですが、世界の成長センターたるアジアへのアクセスで後れを取ることにもなりかねず、かくしてアメリカン航空も出資交渉へと向かいます。
日航出資混沌、アメリカンも交渉へ デルタと綱引き
さらに国内線、国際線の不採算路線からの撤退発表など、JAL自身もリストラ加速を表明し、事態は混沌としております。

とはいえ外国エアラインからの出資打診は300-500億円規模で、年度内に2,000億円規模の資金調達を迫られる状況では焼け石に水の状態です。資金調達のうち1,000億円程度を株式の増資で賄うと考えられますから、その半分相当が外国エアの出資分となれば、他の一般株主への安心感を醸成する効果は期待できますし、銀行サイドの出資態度も軟化することが期待されます。

一方で国交省はデルタとの提携を後押ししている模様です。というのは、元々ノースウエストを併合したデルタの太平洋路線の充実ぶりは凄まじく、JALの路線再編によるリストラ効果がそれだけ高いということがあります。加えてそれによって成田の発着枠が返上されれば、乗り入れ希望が多い成田の発着枠再配分を差配できるという意図も透けて見えます。

そしてこの間に起きた総選挙で実現した政権交代で民主党鳩山政権が誕生したことが、少なからず影響を及ぼしそうです。マニフェストで言及された子ども手当や高速道路無料化は、選挙に勝って政権を得た以上、実現しなければなりませんし、多少の修正の余地はあるにせよ、時間と共に実現に向かうことは間違いありません。ところがJAL問題には直接の言及がなく、今のところ政権としての方針は未定のようです。

マニフェストには航空行政の見直しは盛り込まれており、オープンスカイ政策に舵を切ることが示唆されているものの、羽田、成田の役割分担や発着枠再配分などの具体策には言及がありません。とはいえ羽田、成田共に発着枠の拡大と見直しは確実に行われ、増加分の日米大手への配分はなく、むしろ一部返上さえありうるわけで、その際に最も影響を受けるのが、成田をアジアの拠点空港と位置づけるデルタ航空ということになります。ということで、穿った見方ですが、政権交代がデルタの背中を押した可能性はあります。

一方のJALですが、もう一つの難問として8つの労組が分立し、安全を盾に報酬見直しに後ろ向きな組合問題と、OBの高額年金問題が横たわります。このあたりば米GM問題との相似象といいますか、JALが立ち直るための最大の問題です。

元々国策キャリアとして歴史を刻み、日本人のおもてなし精神を活かした充実した機内サービスで業界標準を確立したJALですが、その代償として高コスト体質が染み付いてしまったのです。かつて究極の独占市場だった国際線航空を主力としていたから可能だったサービスが、むしろ過剰サービスとして忌避される昨今、元々エリートの乗り物だった航空がそれだけ大衆化した証左でもありますが、同時にコスト削減を厳しく求められるようになった時代の変化に対応できないその姿は、省エネどこ吹く風で利幅の大きい大型車ばかり作り続けたGMなど米ビッグ3とそっくりの構図です。

加えて充実した企業年金でOBへの手厚い年金給付を続けた結果、業績を悪化させたいわゆるレガシーコスト問題もあります。ゆえに民主党内では通常の資金支援での立ち直りは難しいとして法的整理をという過激な意見もありますが、米オバマ政権のGM救済策に見るように、公的な支援に踏み込むならば、債権者も痛みを分かち合うべきというのは筋が通ります。債権者には従業員や企業年金受給者も含まれます。実際6月に日本政策投資銀行と銀行団による80%政府保証つきの1,000億円融資が実行された一方、4-6月期決算で990億円の赤字となりチャラになる体たらくです。果たして新政権は的確な問題解決ができるか、見守りましょう。

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Friday, August 14, 2009

地震で盛土崩落の東名高速、意外と脆かった物流インフラ

道路ネタ連発で"道路的部落"と化している当ブログですが^_^;ご容赦ください。まずはメディアチェックです。

静岡で震度6弱、6人の負傷者確認
地震が早朝だったこともあり、地震そのものによる直接被害は少なかったようですが、交通への影響が次第に明らかになります。
東海道新幹線が運転見合わせ 東名高速も一部通行止め
新幹線は営業時間前でもあり、ユレダスが作動してき電停止されてますから、マニュアルどおり目視安全点検後再開となり、始発から2時間後の午前8時に運転再開したわけですが、東名高速の方は実は深刻な事態でした。
東名高速「きょう、明日の復旧は難しい」 国交相
お盆の帰省シーズンであり、週末限定のETC割引を特例で13,14両日にも実施することが決まっていたことから、当然それに復旧を間に合わせようということになりました。
東名高速、13日にも通行止め解除 駿河湾震源の地震
しかし被害は予想以上に大きく、復旧はずれ込みました。
東名復旧、13日午後以降にずれ込み 被害予想より大きく
しかし更にずれ込み、復旧を上下線で分離することで当座を凌ぎました。
東名高速下り線、全面開通 上り線も一部通行止め解除
とりあえず下り線は開通し、それを知らずに中央道へ迂回した車も多数あったことから、スムーズな再開とはなりましたが、上り線の復旧はずれ込み、「行きは良い良い帰りは怖い」状態は続きます。
東名全面開通「15日中」
驚いたのは高速道路の盛土の脆弱さです。特に整備時期が古い東名、名神などでは、耐震強度などはほとんど意識されず、事後的な補強もほとんど行われていなかったし、今回の崩落地点も、復旧工事で搬入した重機の足場が崩れるという形で、予想外の結果となったわけです。それと比べると東名高速より古い東海道新幹線では盛土の崩落はなく、マニュアルどおりに復旧できたことが際立ちます。この差はどこから来たのでしょうか。

結論から言えば、減価償却がされていたか、いなかったかの差ということができます。鉄道事業は営利事業である前提で、事業用固定資産の保全による事業の継続性が求められ、東海道新幹線が開業した1964年から国鉄でも、民間並みに資産の減価償却が行われるようになりました。減価償却はちょっとわかりにくいのですが、企業が事業用資産を取得して操業を続けることで、機械などの現物資産ならば経年で劣化して資産価値を減じることになるのを、会計上一定のルールの下に取得価格の一部を費用化して利益から控除する仕組みです。言い換えれば利益の一部を無税で積み立てて内部留保資金とすることになるわけで、現物資産を部分的に現金資産に交換するという表現がわかりやすいかもしれません。

ルールに従って現金化された資産は、基本的に使途自由ですが、通常は事業の継続性を保証するために、老朽設備の大修繕や交換などに充てます。鉄道のように投資規模の大きい場合は、投資資金の多くが借入金で調達されますから、割賦払いの原資として使うこともできます。また災害復旧の費用に充てることもできます。これらの場合その分会社全体では資産は目減りするわけですから、減価償却で得たキャッシュフローをどのように配分するかは、経営上重要な意思決定といえます。

その辺を踏まえれば、地震の被害が経営に重大な影響を及ぼすことが容易に理解される新幹線では、路盤の補強やP波を検知して本震前にき電を停止するユレダスの設置などの対策が取られたことは当然のことといえます。そのように仕向ける仕組みができていたわけです。

一方の高速道路ですが、道路公団の事業として民間の会計基準によらない特殊な基準で対応されておりました。特に通行料は諸経費を控除後に整備費用の債務償還に回さなければならないわけですから、見かけ上の利益を圧迫する減価償却の仕組みを取り入れることは強い抵抗があったわけです。加えて1996年に東京都日野市が、市域を通過する中央自動車道への固定資産税課税を打ち出したように、高速道路自体が法的にあいまいな位置づけにあることが影響しております。この問題に関しては面白いレポートがネット上で公開されておりますのでご参照ください。

日野市の高速道路課税について
~なぜ政策イノベーションは失敗したか~(pdf)
地方分権も重要なテーマですが、ここではこれ以上立ち入りません。それよりも高速道路が料金プール製の下で永久有料化が決まった1995年の決定を受けて、地方自治体からこのような提案がされたことが重要です。

実は高速道路の料金制を維持することの制度上のリスクが明らかになったわけで、だからこそ道路公団民営化が検討されたときにも、道路会社の直接保有ではなく、JR発足時の新幹線保有機構に倣って(独法)高速道路保有・債務返済機構が保有し、道路会社にリースする仕組みとされたのです。道路公団民営化が、いかに矛盾を糊塗するものであったかということです。

ちなみに新幹線鉄道保有機構は1987年にJR各社と共に発足し、国鉄長期債務の一部を引き継いでJR東・海・西各社のリース料で償還する仕組みだったのですが、JR東日本の上場準備の過程で東京証券取引所の事前審査で「収益の柱となる主要な事業用資産を自己保有していないことはリスク要因」とする見解が示され、特に日本の税法ではリース資産の減価償却は行われないので、資産の保全による事業の継続性に疑義が生じることが指摘されたわけです。そこでJR東日本が東海と西日本に呼びかけ、新幹線資産の買取りを国に求め、1991年に実現して新幹線保有機構は解散されました。この伝でいえば、民営化された道路会社の株式上場は同様に難しいということになります。

ところで、ここまで来ると、じゃあ現在行われている東名高速の盛土崩落の復旧工事の費用は誰が負担するのかという素朴な疑問が出てまいります。おそらくは通常の道路保守費用の範囲内で道路会社が負担することになると思われますが、そうすると今度は、今回の崩落現場以外にも危険箇所は存在するでしょうから、その計画的補修、補強はどうなるかという疑問が出てまいります。おそらく財政資金を投入する以外にないと考えられます。

とすると民主党がマニフェストに盛り込んだ高速道路無料化は難しいのかという疑問も沸きます。これに関しては私個人は楽観しております。その前に、詳細が明らかでなかった民主党の高速道路無料化案の細部が一部明らかとなりました。

高速無料化「首都高・阪神除く」 民主幹事長が明言
今まで具体論には踏み込んでいなかったのですが、2012年時点で首都高、阪神高速を除く全国の高速道路が無料化されるということで、私が考えていたよりも範囲が広いですね。実は東名は無料化から除外される可能性が高いと考えていたもので。

というのも、太平洋ベルト地帯を貫き、物流インフラとして存在感の高い東名の無料化は、首都高などと同様渋滞がひどくなると考えていたのですが、東名だけ有料で残せば、おそらく無料化される中央道へシフトしてしまうだけでしょうから、確かにこの方がすっきりします。

更にオンライン上の記事では割愛されておりますが、紙面上では、高速道路関連の債務35兆円は国が引き取り、国債発行でファイナンスし、60年かけて償還するということで、無理のない返済計画であり、道路の保守費用は首都高と阪神高速の料金収入で賄うことも明らかにしております。つまり債務が消えれば料金収入から保守費用を捻出するのは容易ですので、現実的な解といえます。

そして高速道路保有機構が発行する機関債がなくなるわけです。料金収入が消えてリース料がなくなるわけですから、それを担保に発行される機関債は繰り上げ償還されますが、サブプライムショックで破綻の危機に瀕し、政府が救済した米ファニーメイ、フレディマック両社のように、暗黙の政府保証は、経済情勢次第で隠れ借金として財政にのしかかるリスクがありますので、国債で借り替えるのは、隠れ借金の見える化でもあるわけです。加えて残高800兆円を超える財政状況の中で、35兆円の積み増しは大勢に影響なし、むしろ政府試算で7兆円を超えると言われる無料化の経済効果で税収が増えることも忘れてはなりません。

加えて道路会社の判断に委ねられている高速道路の新規着工が止まる効果が重要です。料金収入があるから借金を積み増して、破綻したら暗黙の政府保証で国に助けてもらうということができなくなるわけですから、中長期の財政再建にも寄与します。

ただ、懸念されるのは東名のように元々物流インフラとして重要度の高い路線の場合、当然無料化は交通量の増大を通じてさまざまな影響があるわけですから、もう少し慎重に考えても良いかもしれません。特に温暖化防止との整合性が問われる部分です。

元々利用度の低い地方の高速道路の無料化は、CO2排出増も知れてますが、東名の交通量が増え、かつ渋滞が増えるとなれば無視できません。むしろ「だから第二東名は必要」という声を増強しかねないし、その可能性の芽を摘む無料化は「間違い」と糾弾されるリスクを民主党は自覚しているでしょうか。そのあたりに一抹の不安があります。

私はこう考えます。第二東名、第二名神の完全整備で物流インフラは確かに増強されますが、そのための費用が10兆円ほどと、何とリニアを大阪まで整備した場合と同等の見積もりとなります。その一方で温暖化対策としてトラック輸送の鉄道貨物へのモーダルシフトを前提とすれば、名古屋の南方貨物線や城北線の整備や変電所増強、着発線有効長延長による列車単位の増強と所要電力を賄う変電所増強など一切合切の合計で1,000億円程度と見積もられており、何と1/100で済むのです。この程度ならば国の財政支援で可能ですから、東名を無料化するなら、ここまでセットでぜひ考えてもらいたいところです。

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Sunday, August 02, 2009

外環道三すくみ、虚妄の民営化

道路ネタが続きますがご容赦を。整備計画の凍結が解除され、着工が決まった東京外郭環状道路(外環道)大泉JCT―世田谷間ですが、事業者選定を巡って椿事が起きています。

外環道事業主体に首都高も名乗り 未着工区間、三つどもえ戦に
元々東日本と中日本の2社は、以前から事業着手に意欲を示していたのですが、そこへ首都高速道路会社が名乗りをあげ、事業者選定が頓挫してしまいました。

背景は今年度末に開業する中央環状線新宿―大橋間の工事終了後の技術系社員600人の処遇問題があるようです。いわばリストラ回避のために新規事業への参入を模索した結果ですから、それ自体は責められるものではありません。

問題は、東日本や中日本ならば既存の高速道路網と一体的に運営できるということで、国交省で両者の表明しか予想しておらず、国交省としては中央道JCTを境に両社に分担させるいわば談合シナリオを描いていたところに、首都高の表明があって、予定が狂ったということにあります。

ややこしいのは、東日本と中日本は、いずれも国100%出資であるのに対して、首都高は都が26%を出資するために、事業者選定に当たって都の意向が無視できないという点です。まるでとなりのメトロの道路版のような話ですが、ちょっと違うのは、メトロが株式上場を控えていて、都の保有株式の扱いが、上場の阻害要因になっているのに対し、外環道は、道路公団民営化でドサクサ紛れに実現した高速道路整備への税金の拠出によって、1兆2,820億円の事業費のうち、道路会社の負担可能額を除いた部分を国と都が分担する仕組みになっており、都の意向が過剰に働く可能性が高いという点です。

元々道路公団民営化では、新規整備は基本的に凍結されることとされ、整備にあたっては道路会社の意向が尊重される仕組みだったのが、上記の財政資金投入によって骨抜きとなったものです。これも元々は小泉政権時代の歳出削減方針によって、2007年度以降道路財源に余剰が出ることが確定したことから、ずっと積み残されていた宿題を、高速道路整備の抜け穴に利用された結果です。

そして国交省が元々東日本と中日本の談合決着を考えていたように、参入希望が増えたからといって、それが即競争によるコストダウンにつながっていないことが、問題をややこしくしています。というのも、国交省が3社に実施したヒアリングで、負担可能額は3社横並びの2,500億円ということで、国交省が想定したように、既存高速道ネットワークとの一体運営に利があるならば、差がつかないはずがないんで、事前の情報漏えいも疑われます。

というわけで、国鉄改革では明確に財産分割がされて、整備新幹線に関しても、並行在来線を保有する旅客会社が事業主体となるように新幹線整備法が読み替えられたのと違って、元々凍結解除時の事業者選定がルール化されていなかったために、事業者選定が頓挫することになったわけです。後先考えずに利権漁りした結果ですね。

そんなことしてる間に、政権交代が起きて、民主党が暫定予算14兆円の執行停止を睨んだ精査を打ち出しておりますから、おそらく引っかかって再凍結となる可能性が高いと考えられます。あるいはそれを嫌って国交省が都の意向を汲んだ政治決着で首都高へ落札し、予算執行を強行する焦土作戦に出る可能性もありますが、その場合、住民説明会が紛糾する可能性もあり、選挙前の予算執行は限りなく可能性0%と考えられます。

一方で、元々基本計画線だった外環道練馬―世田谷間を着工するためには整備計画への昇格が必要だったのに、整備計画線ながら凍結され、今回解除されなかった第二名神の扱いを巡って、例の名物知事は納まらないでしょう。

「新名神、凍結解除に合理性」橋下知事強調
確かに外環道の整備計画線昇格によって、債務の総額は増えるわけで、また国幹会議に提出された資料で費用便益比で外環道と第二名神の未着工区間はほぼ同等とされており、法律家らしい切り込み方です。

というわけで、不透明極まりない意思決定ですが、それもこれも、道路公団民営化がいかにインチキだったかということです。

あと良い機会ですから、民主党の高速道路無料化に関しても見解を述べておきます。民主党の主張の肝は、40兆円を超える高速道路債務の償還方法に関する提案として、財政支出で賄い料金収入によらないことを謳ったものです。現状では各道路会社が収受する料金収入から、保守費や人件費を除いた部分を(独法)高速道路保有機構がリース料として徴収し償還に充てる仕組みですが、保有機構はリース料を裏づけに機関債を発行して資金をファイナンスしているわけです。政府機関ですから、暗黙の政府保証ありと見なされはしますが、政府発行の国債よりは信用度が下がりますから、その分のリスクプレミアムが金利に上乗せされますので、それだったらそれを国債に置き換えて償還した方が、金利負担が下がるから、結果的に国民負担が減るということです。

加えて特に利用度の低い過疎地の路線で道路通行料を無料にすることで、遊休施設の有効活用を図りながら物流費が削減され、企業収益の向上や物価下落による家計消費の拡大が望めるので、税収増を通じて償還財源の手当もされるということになるわけですが、うまくいくかどうかは必ずしも明快ではありません。

ただし今回のマニフェストでは「地方から段階的に無料化」の文言が盛り込まれており、政権交代即全面無料化ではないということで、おそらく料金収入の少ない地方の路線から徐々に実施することになると考えられます。その場合でも、不採算路線が道路会社から切り離されるわけですから、道路会社の収支は改善されます。それを原資に繰り上げ償還や料金引き下げが可能となり、そのルートでも国民負担は減ることになります。問題はその超過利潤を道路会社が内部留保したり随意契約などでファミリー企業に所得移転したりすれば表へ出ないわけで、このような利益隠しを許さない監視体制を取れるかどうか、民主党の政権運営に高いハードルを課します。

といように、メディアはマニフェスト選挙で字面を追い、政党間で中傷合戦の様相となっておりますが、マニフェストは行間も読まなきゃなりません。思えば前回2005年の総選挙でも、郵政民営化は約束されたものの、円安誘導で国民窮乏化による企業を支援とは約束されておりませんし、日銀への圧力で低金利を続けますとも言っておりません。

ま、これは日銀法違反に当たりますから明言できませんが、その結果米国内消費バブルをもたらし、外需でも米国向け輸出に過剰に依存した結果、リーマンショックで一気にクラッシュしたわけですから、「百年に1度の経済危機」と他人事では済まされません。対外収支不均衡や円キャリートレードの肥大化は、巻き戻しが起これば経済に多大なダメージを蒙ることは以前から警告されていたにも拘らず、回避策は一切取られなかったわけですから、不作為責任を問われる事態でもあります。

あとよく言われる財源問題ですが、財源の目途もないままに北海道新幹線札幌―長万部間の着工が決まったものの、着手できない体たらくをどう評価すべきでしょうか。

という具合にマニフェストに書かれて実行されたことされなかったこと以外に、書かれなかったけど実行されたことと実行されなかったことも、併せて評価の対象となるわけで、ゆとり世代記者も現場デビューしている現在のメディアに果たしてその力量があるかも試されているのです。外環道を巡る報道でも、日経新聞でさえ政権交代で無料化されれば外環道も白紙という内容の報道をしておりますが、正確には補正予算の執行見直し過程で凍結の可能性はあるものの、無料化とは別の話です。メトロと都営の経営統合というガセネタを流したTBSや、岐阜県庁の裏金問題で嘘の証言を流したNTVなど、アカンタレやってる場合じゃないぞ。

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Saturday, July 18, 2009

高速千円で貨物繁盛ありがとう嗚呼夏休み

気がつけば夏休みシーズン突入ということで、早速1,000円乗り放題の高速道路は大渋滞です。

3連休の高速道路、初日は57キロ渋滞も 行楽地・ふるさとへ車の列
選挙目当ての票欲しさの人気取りがこの事態を招いているのですが、そこまでして必勝を期した総選挙は投票日8/30で今月21日に解散されるということですが、有権者は盆休みで選挙区を離れますから、人のいない選挙区での議員センセイ方の選挙運動は大変です。加えて渋滞でくたくたで帰ってきたらいきなり投票を迫るとなれば、怒りが与党に向くというもの、夏休みで浮動票が選挙区を離れるところで投票の方が、組織票頼みの与党に有利だったろうに。ま、ここまで事態が悪化すれば関係ないか(苦笑)。

忘れられているかもしれませんが、去年の7月は原油価格が1バレル140ドル台のピークをつけたあと下落、ガソリンの店頭価格はほぼ1月遅れでリッター185円をつけて需要が急減速し、夏の行楽シーズンを直撃しました。その反動もあり石油業界や地方の一部の行楽地はウハウハですが、当然CO2排出は拡大、コペンハーゲンのCOP15が思いやられます。

そして1,000円乗り放題は軽、小型、普通自動車限定で、物流を担う大型トラックは対象外な上に渋滞の影響を受けるということで、トラック業界から悲鳴が上がっておりますが、同時に物流を直撃するわけですから、影響は家計にも企業にも及びます。

というわけでJR貨物では、8月の旧盆期間中の平日4日もETC割引が実施されることを受け、この夏は貨物列車を大増発、荷主企業に営業攻勢をかけております。

JR貨物、お盆期間の貨物列車増発 高速道の渋滞予想踏まえ
記事中にもあるように、天候で出荷量が変動するビールや清涼飲料水も、企業に営業社員を貼り付けて大量出荷にも対応するなど、本気モードバリバリです。ある意味トラック業界の窮地を利用する形ですが、従来取り込めていなかった企業を顧客として取り込むチャンスです。

元々貨物列車はアボイダブルコスト(機会費用)方式で列車の実運行に応じた線路使用料を清算する方式ですから、ダイヤ上は不定期列車として設定し、需要に応じて運行することでコストを抑えているわけですから、新たに列車設定するわけではありません。あくまでも余力を利用する形ですから、JR貨物としてはお盆の増発分はそのまま増収となる構図です。

加えて従来取り込めなかった企業へのお試し期間という意味もあります。従来は輸送の弾力性や運賃面で折り合わなかった企業を定常利用に取り込むことができれば、千円高速様々ということになります。アホな思いつきでも役に立つことはありますね(笑)。

逆にGWの実績では惨敗だったJR旅客各社ですから、臨時列車設定を理由に増発を断る理由もなしで、人口減少で需要低下が予想される近未来の鉄道シーンを先取りするような動きです。今は儲かっていなくても、貨物がレゾンデートルとなった東北新幹線の並行在来線のIGRいわて銀河鉄道や青い森鉄道が結局補助金で下駄を履かせた形ながら、貨物の線路使用料収入で辛うじて収支均衡させているように、温暖化防止を睨めば旅客会社にとっての将来の保険となるわけです。貨物イジメに励む某社も括目すべし。

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Wednesday, July 01, 2009

となりのメトロ

メトロと都営地下鉄の一元化というニュースがTBSで流れましたが、他メディアは追随せず、ガセ確定のようですね。そもそも東京都の言い分を裏も取らずに流すとは、報道のTBSも地に落ちました。

当ブログの読者の皆様は、既にメトロ上場の最大の障害が東京都だということも、大人の事情で遅れていることもお分かりでしょう。実はTBS自身が続報しているように、上場後も国・都が出資維持と報じておりますが、この報道に今回のTBSの迷走の鍵があります。

元々東京メトロの上場を巡っては、丁度英ファンドTCIによるJパワー株買い増し問題があり、公益企業の株式大量保有が問題視されておりました。ですから大量保有規制は外資対策とも見えますが、WTOメンバーで資本移動の自由化を受け入れている日本としては、公式に外資規制はできないんで、政府サイドが外資規制と取られかねない発言をするはずありませんから、都からのヒアリングで記事を起こしていることは明らかです。

で、20%という保有比率は、大量保有規制の上限値として考えられている値で、外資に限らず東京都やJRその他内外ファンドも含めての規制であって、少なくとも公式には外資をターゲットにはできません。いわゆる公平性原則というやつでして、政府のしかるべき立場の人がうっかり喋っちゃえば、海外から叩かれます。

で、都がそんな風だから、今は国が少し保有株が多いから、都の頭を抑えて勝手なことさせないようにしているわけで、その国が株式放出するためには、同程度の都の株式放出を同時にやらなければならないわけですから、その形で株式を放出して都が20%保有となった段階で、国が23%程度の保有となるわけで、都としては20%でも保有を続けてメトロへの影響力を保持したいとすれば、国もそれ以上株式放出できなくなる水準です。当然国の着地点は完全民営化で、保有株式完全放出ですから、この段階で都が足踏みすれば、それ以上は株式を放出できなくなるわけです。おそらく国と都の協議の過程でこういった話は出ているはずですから、それを都の希望を下敷きに解釈すれば報道のようになるという話に過ぎないわけですね。

一方、隠れ鉄雑誌(笑)の週刊東洋経済2009年7月4日号で、東京メトロ上場の想定株価の記事が出ております。

東京メトロ―最強”私鉄”が上場したら、株価はいくら?《鉄道進化論》
というわけで、株価資産倍率(PBR)2倍として1,050円、株式数を掛けて時価総額6,112億円、株価収益率(PER)15.0倍といったところになります。ただし都営地下鉄との統合は考慮せず、都営地下鉄の4,500億円の有利子負債を引き受けない前提での数値です。ということは、都が取るべき態度は明確です。全株売却で都も3,000億円程度の株式売却益が得られますから、これで都営地下鉄の累積債務の繰上げ返済をして、高いと言われる運賃水準をメトロ並みに下げることだろうということです。そこまでやってやっと統合の交渉の余地ができるというものです。

追記ですが、都が議決権を握った状態のメトロとは、新銀行東京になるリスクと背中合わせでもあります。そんな株を買おうという奇特な投資家は少ないでしょう。

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Saturday, June 27, 2009

相鉄ラプソディ

26日、相模鉄道が始発からスト突入、約2時間後に解除されましたが、なかなかわかりにくいニュースです。本題に入る前に、枕話をひとくさり。

カフカの"変身"という小説がありますが、グレゴール・ザムザがある朝、自分が巨大な甲虫に変身していることに気づくという話です。親しい家族に助けを求めようと行動しますが、言葉を発することができませんから、家族からはただ気味悪がられ、遠ざけられます。終いには不都合な現実のある彼の部屋に近づきたくないから、家政婦を雇って部屋の掃除などをやらせるようにさえなります。そして彼は干からびて死に、件の家政婦によって掃き棄てられます。

先日衆議院で可決された臓器移植法改正案で、大した議論もないままに、脳死を人の死とするA案が可決成立したわけですが、心停止と違って脳死は医師による判定でしかわからないし、脳死でも自発呼吸を司る脳幹のみの損傷(脳幹死)と、大脳を含む脳全体が損傷した全脳死とがあり、改正案では全脳死を以て死亡とすることになっておりますが、判定はあくまでも医師が行うわけです。医師はおそらく移植医療推進のバイアスを持っているので、脳死状態の人がグレゴール・ザムザ、その家族を説得してドナーとして臓器提供を勧める医師が家政婦とすれば、カフカが描いたおぞましい世界は、めちゃくちゃリアリティのある話となります。家族は脳死を判定できず、医師の判定を信じて勧めに従うしかないわけです。

結局一般人である家族と医師との間には、埋め難い情報格差があるわけで、こういうのを経済学では「情報の非対称性」と呼び、市場の失敗を条件付けるものとされます。売り手と買い手の間に情報格差が存在する場合、市場は効率的に機能しないわけで、この観点からすれば、改正臓器移植法は大きな問題を孕んでいるということになります。枕が長くなりましたが、今回は「情報の非対称性」がキーワードです。

相模鉄道のストに関しては、メディアの露出度にバラつきがあり、取り上げ方にも疑問がある中で、東京新聞の記事が比較的バランスが良いようです。

ラッシュ直撃は回避 相鉄スト2時間で解除 来月4、5日の第2波も
要は会社側が鉄道事業子会社の分社をしようとして、そのやり方を巡って労組と対立したものです。正直なところ会社側の意図がよくわかりません。持株会社に事業会社をぶら下げる形態の会社は昨今増えており、鉄道会社でも阪急阪神HDなどの例がありますが、「経営の意思決定の迅速化」と説明される場合が多いですし、今回の相鉄でも、会社側の説明はそうなっております。

そして組合の対応ですが、基本的には分社化そのものに反対しているわけではなく、去年12月のバス分社を巡るストも回避されたわけですし、不動産などの事業分社化も結果的に同意しております。今回の鉄道事業分社化でも、分社化そのものには理解を示す一方、組合との協議を経ずに突然発表され、社員の転籍や株主総会の議案とするなどしたことが、労使協定違反というのが組合側の言い分です。

対して会社側は、組合の主張では組合に経営の意思決定権限があることになるということで却下、結局スト突入に至ったんですが、結局分社化を巡る労使協議を十分行い、スケジュールを十分考慮するという和解案を示して組合が受け入れ、スト解除に至ったわけです。それなら最初からそうしておけば、乗客に無用な混乱をしなくて済むものを。

正直に申しまして、今回のスト騒動、会社側に問題がありそうです。そもそも鉄道事業の分社化ですが、従来鉄道事業を核として進めてきたグループ事業に対して、バス、流通、不動産などはいずれも派生事業だったのに対し、鉄道事業を同列に置くという意味ですから、ある意味組合側の反発は当然です。鉄道会社としてのアイデンティティを棄てるということですから。そしてその結果得られる経営判断の迅速化は、つまるところ鉄道事業からの撤退も迅速に行えるということでもあります。

バス事業の分社化を巡っても、組合との対立から高速バス事業への参入時にタクシー会社の相鉄自動車にバス事業免許を取得させて参入する一方、相鉄バスの分社化に際して事業を移管するなど、組合との協議を避けているようにしか見えないのですが、これが会社側の言うところの「経営判断の迅速化」であれば、組合側が不審に思うのは無理もないところです。そこに見え隠れするのは、経営陣の保身ではないかということです。

正直なところ相模鉄道は今逆風下にあるといえます。主体的に開発してきた横浜西口の商業地としての地盤沈下は著しく、人口減少に転じて沿線開発も滞りがちな中、JRや東急との直通で東京都心へのルートを確保して沿線開発の梃子にしようとしているものの、JRとの直通を決めた後で横浜市からの横槍で、東急との直通も事業化されることになりました。

東横線/目黒線との直通では、車両限界が小さい路線への直通となり、折角11000系投入でJRと同じ2,950mmの最大幅が実現したものの、別規格の専用車を準備しなければなりません。また特にホーム可動柵のある目黒線との直通では、ドア中心間4,820mmの私鉄標準寸法によらなければならず、JR規格の均等割り付けとした11000系とはドア位置がずれます。加えて目黒線では6連ですから、8-10連の相鉄線に6連の目黒線直通電車の乗り入れは、かなり迷惑な話です。また当然西谷―横浜羽沢間だけの建設よりも追加負担も増えるわけです。加えて渋谷の再開発に未来を託す東急とは、横浜西口の商業利用を深化させたい相鉄とはライバル関係ですらあります。とはいえ横浜市の同意なしには事業が進まない相鉄にとっては、呑まざるを得ない話でもあります。

この辺の事情を考えると、相鉄経営陣が鉄道事業経営に意欲を失った可能性を指摘することはできるかもしれませんが、断定は避けておきます。あるいは都心直通構想が実現した後に、鉄道事業の切り売りを考えているかもしれませんね。JR、東急、小田急など、自社の鉄道事業を高く買ってくれそうなところに声をかけるのに、鉄道事業の分社と本体の持株会社化は好都合なわけです。だとすれば会社側は本心は明かしたくないでしょう

これ構図として何かに似てませんか。鳩山前総務省の更迭に発展したかんぽの宿問題とそっくりです。郵政民営化で持株会社の日本郵政に、郵便、窓口、郵貯銀行、かんぽ生命の各事業会社が子会社としてぶら下がっている形ですが、かんぽの宿売却は、かんぽ生命の赤字非中核事業であり、民営化後5年以内の2012年までに売却することが法令で定められております。

年間50億円もの赤字を出すかんぽの宿の早期売却は当然大きな課題ですが、より高値で売却する必要があり、また個別売却であれば採算性の低いものほど後に残って経営を圧迫しますから、一括で高値売却しようとすれば、あの方法しかなかっただろうと思います。そして結果的にオリックス不動産が落札し、西川社長には結果報告されていたはずです。

問題は持株会社方式の場合の、事業会社の経営のモニタリングに関してですが、かんぽの宿売却は、かんぽ生命にいる担当役員の責任で実行されたのに、政府の議決権は100%保有の特殊会社である日本郵政にしか及ばないわけですから、政府としてかんぽの宿売却に疑問を抱いたとしても、直接業務を管掌しない西川社長を攻めるしかないわけで、それが総務相更迭に至るドタバタとなったわけです。実は日本の会社法制では持株会社方式に関するコーポレートガバナンスには不透明な問題があるわけです。持株会社とすることで、社外に対して情報開示が阻害される要因があるわけで、言葉を変えれば経営陣は外野の声を気にせず事業の切り売りや組み換えができるわけで、制度の不備に起因する内外の情報の非対称性が拡大しますから、なるほど「経営判断の迅速化」が図れるわけです。

というわけで、枕話に沿って言えば、救急患者(事業)が脳死(赤字で中核事業といえなくなった)から、家族(株主)の同意を得て臓器移植(事業譲渡)しますという話になるわけです。法人格を備える会社の事業を切り刻むことは、法律上は問題ないですが、労働集約産業である鉄道などの運輸業において、労組との良好な関係は、事業経営にとってかなり重要なファクターです。思えば国鉄分割民営化も、磯崎総裁時代のマル生運動で労使関係が決定的に悪くなったことが起点ですから、今回の騒動が相鉄解体に至ることがないか心配です。

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Sunday, June 21, 2009

東へ向かうおけいはんの心変わり

皇女和宮といえば孝明天皇の異母妹で、公武合体派の策略で有栖川宮との婚約を破棄されて14代将軍家茂に嫁がされた政略結婚の悲劇のヒロインとして語り継がれておりますが、それゆえ江戸へ向かうお輿入れの旅では反対派の奪還を恐れて中山道を辿りました。そして山道を辿り夕暮れにある宿場へ到着し、投宿しようとして宿場の名を尋ねれば「沓掛」ということで「畏れ多くも宮様を足蹴になさるか」と言ったかどうかはわかりませんが、急遽1つ先の宿場を目指したそうです。その1つ先の宿場とは、後に高級リゾート地となる軽井沢です。このエピソードがどれぐらい軽井沢ブランドの成立に寄与したかは定かではありませんが、おそらく意識的にあるいは無意識に利用されたことは間違いないでしょう。

一方で「宮様を足蹴になさった」沓掛に注目し、汚名を濯いだのが後に西武王国を築く堤康次郎です。山林を造成し「中軽井沢」の名を与えて売り出し、ただ同然の土地を金のなる木に変えたわけです。言ってみれば隣接地ブランドのパクリですが^_^;、軽井沢にとってもブランド力の強化となり共に栄えたのですから、土地ブランドとは不可思議です。

戸越銀座を皮切りに、全国の「銀座商店街」が増殖した結果、商業地の中の商業地の地位を得た銀座と似ています。尤も銀座の場合、戦後占領下に日比谷のGHQ本部から夜な夜な繰り出す米軍の将兵に命懸けで堂々と銀座価格の請求をしたことが、「世界のGINZA」というステータスを与えたものでしょうから、パクリだけで成り立つほどブランドはやわではないということでしょう。美術品は贋作が出て真作の評価が上がるにしても、真作に相応のクオリティがなければ話にならないわけです。

枕はこの辺にして本題に入ります。まずはこの報道からです。

京阪電鉄、首都圏で賃貸ビル取得 最大1000億円投資
記事中にもあるとおり、既に大手町のオフィスビル1棟を取得していて、今後3年間で最大1,000億円規模の投資を行う予定です。不動産不況で空室率が上昇傾向にあるオフィスビルを安値で買えるチャンスとみているようです。しかも投資対象は千代田、中央、港の中央3区に限定するということで、相対的な空室率低下=賃料下落が少ないことに注目したものです。

加えて都内でビジネスホテルの開業も予定するなど、従来首都圏での事業展開のなかった京阪電気鉄道にとっては、大きな決断といえます。なぜかといえば、理由は至ってシンプル、既に人口減少が始まり、鉄道事業に行き詰まり感がある中で、中核事業の鉄道事業以外の収益事業を見つけなければならない中で、不動産事業はやはり柱となります。特にオフィスビルを中心とした賃貸事業は、収益の安定性という観点から、鉄道事業との親和性も高いのですが、地元の近畿圏では有力なオフィス立地は限られ、売り物も少ないのが現状ですから、オフィス需要の底堅い首都圏の中央3区への進出となったわけです。

というわけで関西私鉄にとってはなかなか悩ましい決断だったと思われます。ゆえにこんな解説記事もあります。

ほろ苦い関西企業の首都圏買い
言ってみれば自社のフランチャイズエリアの空洞化を半ば受け入れたということでもあります。とはいえ営業エリアを選択できない鉄道会社にとっては、それだけ生き残り条件がシビアであるということです。京阪にとっては沿線有力企業2社(パナソニックとサンヨー)の経営統合でリストラ必至ですから、将来的に輸送需要が下降線を辿ることは避けられないでしょう。産業構造の変革が待ったなしの現状で、かつて炭鉱地帯に多数あった運炭鉄道がことごとく廃止されたような逆風が、私鉄王国の関西にも吹き荒れる可能性があるわけですね。

また京阪単独の事情としては、中之島線の苦戦も影響しているものと思われます。ただし中之島地区の再開発は着手されたばかりで、成果が現れるのは暫く先になりそうです。更に現在の不動産不況は逆に神風になる可能性もあります。

というのは、近接して梅田北ヤード跡地という超大型再開発案件が控えているものの、バブル崩壊で先行き不透明になっている点を指摘しておきます。丁度バブル崩壊で開発が10年凍結された東京汐留の再開発とあまりにもタイミングが似ています。それでも人口増基調の首都圏だから、10年寝かせて何とか形になりましたが、空洞化、人口減少が現実化している関西では、100年ぐらい寝かせないと厳しいかもしれません。加えて再開発の目玉とも言うべき三越伊勢丹の進出は、当の三越伊勢丹の業績悪化もありますし、あべの近鉄や梅田阪急の改装などで大阪地区の百貨店は明らかなオーバーストア状態で、実際心斎橋そごうは撤退を決めておりますが、大丸が店舗買取りを決めており、床面積ベースでは縮小されるわけではないことから、三越伊勢丹の大阪進出は厳しい状況が続きます。

となると相対的に再開発規模の小さい中之島には有利に働く可能性があるわけです。梅田北ヤード地区は順調にいっても5年10年の開発期間がかかりますが、その前に中之島地区の再開発が実現することで、逆に梅田北ヤード地区の再開発にはブレーキがかかる可能性があるわけです。また枕話の地域ブランドという観点からも、大阪のまちづくりの基点となった中之島地区のブランド力は相対的に高いと考えてよいでしょう。日銀大阪支店や大阪市役所を始め、移転の可能性はほぼ皆無で、空洞化を心配する必要はないので、再開発による上乗せ分は純増となるわけですね。というわけで、京阪の執念は実るのでしょうか。

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Tuesday, June 16, 2009

郵政眠永化?

郵政会社が揺れています。かんぽの宿問題、東京中央郵便局舎建替え問題、社長人事問題などなど、いろいろありますが、郵便料金不正割引事件で、厚労省の現役局長が逮捕されるという異例の展開になっております。

厚労省局長を逮捕 郵便不正で証明書偽造の疑い、関与を否認
既に政治家の名前が取り沙汰されている一方、当時の厚労省が障害者自立支援法という重要法案を抱えて野党政治家に貸しを作りたかった背景もあるようですが、今後の捜査の進展を待ちましょう。

それより不可思議なのは、民営化されたはずの郵政会社が、障害者福祉目的で郵便料金の大幅値引きを行っていることへの違和感です。ま、JRや私鉄の通学定期券、特にJRは国鉄時代から私鉄より高い割引率を適用し、民営化後も維持しているわけですが、90年代の旧国鉄年金債務の追加負担問題などで割引率の見直しに言及し抵抗の意を示すなど駆け引きに使われます。

一方の郵便の障害者団体割引制度ですが、実態として企業のDMに利用されていたわけですが、一方で赤字体質の郵便事業の中では、DMは珍しい収益部門でもあります。一般の郵便物が多数のポストを設置し、毎日定時に集荷し局で仕分けするなど。コストのかかる部分を、送り主の持ち込みで一括で受け付けるのでコスト負担が軽いわけですね。しかも一般郵便物は、人口減少と電子メールの利用拡大で構造的に縮小が見込まれる中、B2Cなどのダイレクトマーケティングでむしろ扱い量の増加が見込まれる分野でもあります。だからこそ逆に身障者団体向けに大幅値引きが可能ではあるんですが、民営化で収益力強化が問われるがゆえに、今回の不正が発覚したわけでもありますから、その意味で数少ない民営化の功の部分かもしれません。

元々官業の郵便事業では、コンプライアンス精神は希薄で、DM発送企業のコスト削減要求に対して、代理店があの手この手の裏技を駆使して郵便料金を安くすることは、かなり普通に行われておりました。元々内容物が第三種郵便物の認可条件を満たしているか随時確認できるように開封が条件付けられていたのですが、一旦認可されてしまえば、まず中身の抜き打ち検査のようなことは行われず、制度が形骸化していたことは否めません。ゆえに認可の通りやすい局への持ち込みが行われる傾向があり、今回の事件でも、複数の局へ持ち込んで断られ、注意喚起の回状まで回されたのに、現場レベルの意識にズレがあったことが露呈しました。民営化による意識改革は不十分ですね。

このDMというのが、いわゆる信書便の国家独占を前提とする郵便事業にとっては難物で、内容物によって変わってくるのですが、封書では中身の確認ができないので、ヤマトなどの民間事業者は、郵便では定形外となるカタログなどの発送を定形郵便並みの料金で引き受けるビジネスモデルで攻め込んでおります。結果的に身障者団体向け値引きをする余地が狭まったと言えるわけです。競争市場が問題の発覚を助けたわけです。

ただ同時に民営化された郵政会社の先行きも不透明にしているとも言えるわけです。ゆうパックによる宅配便事業の拡大では郵政が攻める側でヤマトが受けて立つ立場ですが、現状を見ると心許ない限りです。

同様にメガインテグレーターとして国際物流分野への進出を画策しながら頓挫しております。これも競合他社が眠ってくれてでもいない限り、追いつくのは無理ですから、こうして見ると民営化郵政会社のビジネスモデルはことごとく破綻の危機に瀕しているわけです。この辺のことは2005年段階から指摘してまいりましたが、見直しは必至です。

加えてかんぽの宿問題ですが、これはいちゃもんつけた鳩山前総務相の方が無理スジだったのです。確かに不透明な入札が行われた印象はありますが、取得価格が2千億円以上かかったとはいえ、毎年50億円もの赤字を出す資産を100億円以上で買い手が現れたことの方が驚きです。当然買い手はリストラ費用を負担して黒字事業にしなければならないわけですが、この騒動で民間の買い手が現れる可能性は潰れたといえます。

国有財産の民間売却で安値売却は明治時代から繰り返されたことで、その中には信濃川河川敷の国有地払い下げに端を発する田中金脈問題のようなものも含まれますが、多くは官業の失敗に由来します。例えば官営釜石製鉄所のように、ドイツ直輸入の大型高炉3基に原料搬入製品搬出用の専用鉄道まで準備して操業開始したものの、技術の未熟で事故を繰り返し、結局3年で廃業し民間に払い下げられたような事例まであります。ちなみに専用鉄道向けの資材、車両は2ft9in(838mm)ゲージの特殊規格ながら、重量物輸送を前提とした本格的なもので、いわゆる軽便規格ではありませんでした。そこに目をつけて格安で払い下げを受けて営業用鉄道に転用したのが阪堺鉄道、後の南海鉄道です。当時高価だった輸入鉄道資材を格安で譲り受けたわけで、まさに歴史は繰り返します。

というわけで、かんぽの宿問題も鳩山総務相の辞任で幕引きとなりましたが、鳩山氏は最後まで世論は自分の味方と勘違いしていたようですね。起死回生で議員会館近くの清水谷公園辺りで飲んで脱いで騒いで「裸で悪いか」とでもやれば大うけかも^_^;。

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Thursday, June 11, 2009

エコだまし100年に2度の仏の顔

政府は2020年までの温暖化ガス排出削減目標を発表しました。

温暖化ガス15%削減、20年目標 首相表明「国際交渉を主導」
京都議定書が1990年比6%削減なのに対し、2005年比15%としました。分母を変えた理由は、削減率を大きく見せるためでしょうけど、2012年までの京都議定書の削減目標との連続性を否定するのは問題です。05年比-15%は90年比-7%程度にしかなりません。排出権売買を含まない国内の真水の削減だということで、7月のラクイラ・サミットや12月コペンハーゲンで開かれるCOP15での国際交渉の余地を持たせたという意味のようですが、早速国際的に叩かれております。
日本の温暖化ガス削減目標、途上国など「数値は不十分」
日本政府の外交ベタはどうしようもありません。

以前敗け続けるニッポンという記事で、国際決済銀行(BIS)規制で日本代表が押し込んだ銀行保有資産のリスク評価の問題を取り上げまして、主に欧州銀でサブプライム関連の資産の焦げ付きに飛び火したことを取り上げましたが、この手の話は日本が絡む外交交渉では度々出てまいります。温暖化防止関連でも、森林のCO2吸収を認めさせながら、国内排出権売買市場が整備されていないので、生かせないというアホな話になってたりします。この辺は以前にも指摘いたしました。

国際交渉ではWTOの農産物関税問題でも、自由化を迫る米に抵抗する日欧という構図が、欧州が関税を補助金に切り替えて米と妥協したために、日対米欧の対立に変わったりしてますし、国際捕鯨委(IWC)で叩かれているのも、今や船団を組んで遠洋で操業するのは日本の南氷洋調査捕鯨のみで、捕鯨大国のノルウエーやアイスランドも今は自国の近海での操業しかしていません。日本も和田浦や太地の伝統捕鯨保護にシフトすれば国際世論の理解を得られるのに、かたくなに南氷洋の調査捕鯨を続けていることで孤立しているのです。日本が絡む国際交渉は日本政府のKYぶりが目立ちます。

温暖化問題は以前にも地球温暖化と日本の勘違いという記事で取り上げまして、日本の省エネ大国という自己評価は、実は通勤電車のラッシュとウサギ小屋(小さな家)のおかげという話をいたしました。今回の政府目標の基準年を90年→05年としたことで何が変わるのかといえば、バブル真っ盛りの90年よりも輸出好調ながら所得が伸びず内需が冴えなかった05年の方が排出量が増えているわけですが、主に運輸と家庭部門での排出が増えたと言われます。つまりマイカーが増えてウサギ小屋いっぱいに家電が普及したということです。何のことはない、自動車と家電メーカーが商品を売り込んだ結果として排出量が増えたということです。

あとIT革命でコンピュータや通信機器その他の電子機器類が爆発的に増えたことも忘れてなりません。それらの問題をハイブリッド車の普及と原子力や太陽光発電で解決できると考えるのは無理です。車自体を減らすことと、太陽光以外の自然エネルギー利用や家庭用燃料電池など小規模発電の活用などを組み合わせる必要があります。米オバマ政権が掲げるスマートグリッド(賢い送電網)のような仕組みが必要ですが、電力会社の発言力が強く、発電送電一体で大規模発電と遠距離送電が効率的→だから原子力利用が必要という論法から脱却できないのです。例えば風力利用ですが、発電機はモーターと同じ仕組みであることを思い起こして欲しいのですが、大規模発電所に連なる送電網に出力の小さい風力発電機を直接繋ぐと、巨大扇風機になってしまいます(爆笑)。ですから、電力を一時貯蔵するNAS電池や、電力の逆流を防ぐ仕組みが必要で、そのための投資をしたくないのが電力会社の本音です。

別の視点として、そもそも洞爺湖サミットで2050年までに世界で50%削減を謳ったわけですが、これを人口1人当りの排出量で見ると2t/人となります。現在日欧で10t/人、アメリカ20t/人で、中印など新興国も含め、全ての国で削減が必要な水準で、排出を増やせるのはアフリカ諸国ぐらいです。日欧で80%削減、アメリカで90%削減が必要な水準です。こういった長期目標を決めておきながら、中期目標がそれへの橋渡しにならないというのは、論理的におかしいわけですね。

こういった点を踏まえると、いわゆるカイゼンで到達できる目標水準ではないわけですが、気になるのは、50%削減の長期目標決定に関与した人のうち何人2050年時点で生きているかということですね。どうせ自分は生きていないから、思い切った目標を掲げられるんだということならば、単なる先送りの口実にしかなりません。基本的に産業革命に匹敵する産業構造の変革が不可欠ということになります。その意味ではより厳しい目標を設定し、従来とは異なったアプローチを取らざるを得ない状況を作り出すことこそが重要です。

一方で100年に1度といわれる経済危機の中にあって、野心的な目標を掲げる欧州でも、企業サイドから経済危機を理由に規制を緩めて欲しいという声が出ておりますが、各国政府は無視しております。場合によっては温暖化防止が原因で経済が停滞しても良いとさえ考えているフシがあります。それぐらいしないと目先の利益に追われる営利企業が本気にならないという風に考えられているわけです。産業界に甘い日本政府とは大違いですね。

それどころか欧州委では2100年時点での世界の平均気温上昇を2度に抑えるという超長期目標さえ掲げております。将にホトケの顔もここまでよということです^_^;。

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Sunday, May 31, 2009

伝染ルンです乗客減

1月以上のご無沙汰となる久々の更新です。その間、JR東日本E259系E233系2000番台E5系京成新型スカイライナーなどの新車が登場し、過去記事が参照されることで、アクセス数は落ち込まなかったのですが、あえて付け足すことも思いつかず、省エネ運営^_^;を続けてまいりました。

その間に世間ではいろいろな出来事がありましたが、特に新型インフルエンザ騒動に明け暮れた感じがあります。個人的には先週末のさる集まりに参加したのですが、新型インフル警戒で自治体からの中止命令が出る可能性もあっただけに、他人事ではありませんでした。

その集まりで、アメリカから来られた日本人のご婦人のお話しを聞く機会がありまして、オバマ大統領の選挙戦の話が興味深いものでした。アメリカでは既にネット上の選挙活動が解禁され、候補者がさまざまな形で活用しているのですが、オバマ陣営は有権者からさまざまな意見を集め選挙戦を戦ったというのです。具体的にはどこかで演説会をやると告知し、演説内容について有権者の意見を募り、決めていたということで、ネット上で勝手連選挙を展開したものです。それゆえに有権者の参加意識が強く、言ってみれば有権者がオバマをリーダーに押し上げたというところでしょうか。

だからこそ泡沫候補の事前予想を裏切ってのオバマ大統領誕生となったのですが、これはオバマ自身が対話を通じて有権者の意欲を引き出したという見方も可能なんで、既成概念に当てはまらない新しいリーダー像を具現化したものといえます。

この辺はメディアもなかなか把握できていないようで、選挙戦のライバルのヒラリーを国務長官に指名したり、経済危機対応で金融機関やビッグ3への政府支援を迅速に決める一方、金融機関幹部の高額ボーナスを返済させたり、破産法適用を否定し自主再建を促したGMとクライスラーを結局破産法適用で法的整理するなど、一見対応に一貫性が見えないようでいて、関係者の対話の中で結果的に納得性の高い結論を得ているように、ある種対話力のようなものが、オバマの持ち味なんでしょう。

ゆえに一部メディアで「調整型リーダー」の見方もされてますが、日本的な事前根回しによって落としどころへ誘導するタイプとは全く異質ですし、結論を先に打ち出すトップダウン型とも違う新しいリーダーといえます。そしてブッシュ時代にイデオロギーや価値観で国論が二分され国民の連帯感が薄れていたからこそ、このようなリーダーが望まれ、米国民自身が新リーダーを生み出したと見ることが出来ます。

日本でも新自由主義的リーダーとしてトップダウンに近いリーダーシップを発揮した小泉首相の後、3人の首相が登場しては消え、小泉改革の揺り戻しが随所に見えます。かんぽの宿問題で郵政会社が叩かれてますが、そもそもは郵政会社のトップが西川氏を筆頭に旧SMBC人脈と金融庁人脈による進駐軍支配に対する旧郵政官僚の巻き返しを鳩山総務相を通じて行っているもので、郵政改革の愚劣さが表面化しただけのことです。この辺は過去にも繰り返し指摘いたしました。

というわけで、本題は新型インフル騒ぎの影響が鉄道事業にも及んでいるということです。まずはこの記事です。

東海道新幹線、乗客落ち込み震災時上回る 新型インフル響く
更にこんなニュースもあります。
阪急利用全線で25%減、阪神も15%減 新型インフルの影響で
東海道新幹線の落ち込みは景気悪化の影響あるいはETC1,000円割引の影響とも言えますが、阪急阪神の落ち込みは、新型インフル騒動以外に説明がつきません。最近は落ち着いてますが、メディアで連日報道された結果、過剰反応となったのは明らかです。尤もそれ以前に「水際作戦」と称して感染地から到着する航空便の機内検疫を実施した政府の初動に問題があったことは否めません。しかも検疫官の防護服姿も異常でしたが、外側がウイルス汚染されている可能性もある中で、機内検疫の都度消毒されている気配はなく、むしろ感染拡大を助長した可能性もあります。

米オバマ大統領がメキシコ国境の封鎖の可能性を問われて「鳥が飛び出してから納屋の戸を閉めるようなもの」と一蹴したように、検疫で防ごうという発想を退け、感染者の早期発見と感染の封じ込めにマンパワーを割いたのですが、特に欧州ではスペインとイギリスで100人超の感染者が確認された以外は1桁の国ばかりです。一方の日本では既に300人超の感染者が確認され今でも増えているのに、むしろメディアへの露出は減っております。秋以降と言われる二次感染拡大がむしろ不安です。

政府が当てにならない以上、食事睡眠に気をつけてしっかり体調管理して、感染しても重症化しないよう自己防衛するしかなさそうです。つくづくアホな政府は高くつきます。

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Tuesday, April 21, 2009

第三セクターは救うな

えーと、未来を感じる明るいニュースがある一方で残念なニュースから。

無人車両、下り坂を8キロ走行 JR名松線、運転士離れ
突然アクセスが増えて、しかも3年前の同様の事故を起こした記事が閲覧されるという椿事が起きまして、そのとき現場社員のモチベーションの低下を心配したのですが、今回もケアレスミスですから、職場にミスを誘発するファクターがあると考える方が自然です。こんなんじゃリニアどころじゃないだろうに。

で、本題に入る前にもうひとつ。政府は15兆円超の追加経済対策を打ち出しましたが、驚くことにそのほとんどが予算シーリングで削られた案件が並びます。つまり予算枠が増えたから一度は否定された優先度の低いものを復活させたわけです。これで景気回復は絶対無理ですが、バカ殿宰相は自信満々なようですね。何も考えない暗愚なリーダーは恐ろしい。

そもそも今回の経済危機ですが、サブプライムショックに始まりリーマンショックで一気に底が抜けた展開ゆえに、日本ではどこか他人事のところがありますが、その海外バブルに乗っかって、低金利の支えもあって、設備投資を拡大した自動車や電機などの製造業各社が、危機に直面して短期間に生産調整に走ったことで、危機を増幅しています。そして調整は進み、漸く出口が見えてきたというのが現状ですが、問題は海外バブルに乗っかって設備も人員も膨らませてしまったわけですから、少なくとも元の水準(2002年水準が目安)まで設備の廃棄と人員の整理をする必要があるわけで、今から失われた90年代を再現すると考える必要があります。つまり正規雇用者の早期退職や新卒採用の手控えは当分続き、第二就職氷河期となるわけです。

ゆえに欧米と比較しても日本が飛び抜けて経済のマイナス幅が大きいわけで、GDPはザックリ10%縮む計算です。というわけで、たかがGDP比2%の財政出動に効果があるわけがありません。また健全といわれた日本の金融ですが、株式持合いが災いして銀行の自己資本が毀損する事態となっておりますし、事業会社でも急速な業績悪化で税効果会計による繰り延べ税金資産の資本計上分が取り崩しとなる可能性が高まっており、これから発表される上場企業の決算はかなり悲惨なものになりそうです。それはまた株価を押し下げ、銀行の資本を毀損します。

加えて大手銀行こそ資本増強もあって何とか持ちこたえるかもしれませんが、いわゆる竹中プランでも手付かずだった地方銀行には、存続が難しい所も出てきそうです。そもそもリーマンショック以前には、金融庁では多すぎる地方銀行を整理するために、ペイオフまで検討されていたようですが、今回の危機で吹っ飛び、むしろBIS規制の及ばない国内行の自己資本比率4%を守らせるために保有株式の時価評価を緩めてしまいました。こうなると情報の適切な開示が遠のくわけで、再び金融が経済の足かせになる可能性も出てきます。

というわけで、元々オーバーバンキングと言われた日本の銀行で、郵政民営化でゆうちょ銀行という巨大な新規参入者を受け入れ、且つ銀行業免許こそないものの、日本政策投資銀行や日本政策金融公庫などのいわゆる政府系金融の民営化で、企業融資はますます供給過剰となりますから、銀行は儲からないから政策金利を下げて支えるしかなく、預金者の受取利息は削られます。たかが2兆円の定額給付金で仕事した気になるな(怒)。

元々竹中プランでも、大手行と地方銀行を同じ基準で律するのは無理ということで猶予された地方銀行の整理ですが、地方銀行には融資先の地場企業がぶら下がっていて、簡単に整理できないということで、地方版産業再生機構を創設する構想は安倍政権時代からあったわけですが、その後の政権の迷走で棚上げされ続け、そうこうするうちに今回の経済危機で、地方企業の窮状は待ったなしの状況となりました。

また2007年3月の夕張市の財政破綻により自治体財政の早期是正措置が決まり、自治体の出資する第三セクターまで連結対象とされる一方、自治体と微妙な関係にある地方銀行にとっては、三セクへの出資や融資はお荷物だった上に、破綻となれば損失を被るということで、産業再生機構の地方版として(仮)地域力再生機構の創設はこの面がらも期待されておりました。

というわけで、政局の迷走で棚上げされていた問題が動き出したようですが、三セクは対象外となりそうです。

地域力再生機構、地方中堅企業支援に軸足 三セクは対象外に
考えてみれば甘い見通しで事業着手した三セクの後始末を預金保険機構半額出資の機関が面倒見るのも変な話で、自治体の不始末を預金者の負担で救うことには問題があります。三セク処理は地方政治のガバナンスで対応する、つまり地方の納税者の判断に委ねる方が理に適っております。

とすると困った問題として、整備新幹線の並行在来線問題が絡んできます。地方ローカル線に比べて事業規模は大きいけれど、新幹線に都市間需要が移行した後のローカルな需要を満たすのに本線規格の立派な線路を維持しなきゃならないわけで、負担ばかりで将来展望はなし、加えて多数の自治体が関与しますから、足の引っ張り合いも起こりえます。例えばIGRいわて銀河鉄道では、旅客輸送は赤字で、国の補填でJR貨物が支払う線路使用料で辛うじて黒字という状況にある上に、高額の料金収入が得られる夜行列車が、北海道新幹線青函トンネル区間の工事間合い確保のために北斗星1往復が運休となって収入減という皮肉な結果となっております。なまじ新青森までフル規格化したために、新函館延伸の影響を受けてしまったわけですから、出資自治体にとっては辛い話です。

こういった現実が見えてくると、整備新幹線に地域がNOをつきつけるということも考えられます。元々整備新幹線は地方にとっては負担ばかりの話ですが、直轄国道などと同様、元々地方の請願、陳情によって事業化された経緯もありますので、事業をやるために地方負担を一時棚上げが考えられているようですが、一時しのぎで問題を先送りするだけです。基本的には税源委譲で地方に判断を委ねるべきでしょう。

というわけで、メディアの政局報道では見えてきませんが、各論では与野党の歩み寄りも見られる状況です。ただ懸念されるのは、小沢民主党代表の西松献金問題で風向きが変わったことで、折角の歩み寄りがまた棚上げされる可能性もあります。この献金問題にしても、小沢代表は「適法に処理している。(違法と言うなら)公判で決着をつけよう」と言っているわけで、これ以上公明正大な説明はないんですが、「説明責任を果たせ」というメディアの論調は何を意味するのでしょうか。代表を辞任して見えないところで検察と手打ちしなさいというわけでもあるまいに。あるいは政治ショーとして「腹切って見せろ」ということなのか。現実的に公判となればマンパワーの面で小沢氏が代表に留まるのは難しいと思いますが、検察とガチンコの姿勢をとる事で、今まで曖昧に処理されていた迂回献金による実質企業献金に拘束力のある判例が出るわけで、国民としてはそれこそが望ましいことではないでしょうか。最後はやや脱線でした^_^;。

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Sunday, April 12, 2009

KANSAIスルッと箱根越え

先月25日ですから、ニュースとしてはやや旧聞に属しますが、ニュースバリューありと判断し、遅まきながら記事を起こします。

西武と小田急、関西の私鉄と資材共同購入 4月から
西武鉄道、小田急電鉄、箱根登山鉄道の3社がスルッとKANSAI協議会と鉄道事業関係の資材調達の共同化を決め、4月から実施されます。しかも関東3社の取引先も共同購入の斡旋がされるということで、相互性のある提携関係というところがポイントです。スルッとKANSAI協議会のリリース(PDF)(西武、小田急、箱根登山鉄道と連名)もご参照ください。

というわけで、かなり評価の難しいニュースです。というのも、JR東日本のSuicaが提携先を順調に増やしているのに対し、ローカルカード化が心配されるPASMOという構図が隠れているからです。PASMOは元々寄り合い所帯で加盟社局間の連携が不十分という点に関し、当ブログでも度々指摘してまいりました。一例はPASMO品切れバスで取りすぎなどの記事で述べているとおりなんですが、そもそも何のためのICカード乗車券だったのかがはっきりしない中で、サーバをSuicaに依存し、提携ハウスカードで乗客を囲い込むことには熱心でも、システムとしての全体最適は置き去りにされている状況で、加盟予定社局の足並みが揃わない中でのこのニュースですから、つい深読みしたくなるというものです。

元々乗車券カードの共通化に関しては、JR西日本の攻勢にさらされていた関西私鉄各社の取組みが早かったのですが、カードの共通化に留まらず、今回関東3社が加わる資材の共同購入などにも守備範囲を広げ、調達コストを約2割削減するなど成果をあげております。おそらく今回参加した関東3社も、PASMOで同様の取組みが行われていれば、違った対応をしていた可能性がありますが、元々寄せ集め感の強いPASMO参加社局間で足並みが揃うのを待てなかったということなんだろうと思います。特に名義株問題で堤前会長が刑事訴追を受け、東証の内規により上場廃止されて経営再建中の西武鉄道には切実でしょうし、また複々線化の進捗に伴ない減価償却負担が重い小田急電鉄、箱根観光の空洞化に苦しむ箱根登山鉄道ではなおさらでしょう。

ただしPASMOに関しても、Suicaの提携範囲を拡大するJR東日本の前に、PASMOが関東限定のローカルカードになるという危機感はあるようですが、一方で過大な初期投資を要求される中小事業者にとっては、加盟のハードルが高まるエリア拡大には慎重姿勢が強く、加盟社局間の意思統一には至っていない状況です。そんな状況でとてもじゃないけど守備範囲拡大となる資材の共同購入なんて話が割り込む余地はないということですね。

一方で加盟社局間の絆が強いスルッとKANSAIですが、ICカード乗車券のPiTaPaに関してはポストペイというクセ球を投げてきております。いわば少額決済用の簡易クレジットカードとなるわけで、いちいちチャージが必要ない上に、記名式でポイントサービスを充実させやすいなどの特長があります。ゆえに発行に手間がかかる分発行枚数は少ないものの、サービスの充実ぶりは大したもので、回数券や定期券制度まで取り込んでおり、関西エリアのみならず、静岡地区(静岡鉄道)や岡山地区(岡山電気軌道)でも使える上、さらにエリア拡大を狙っているということで、加盟社局間の足並みも揃っており、いずれ首都圏にも攻めてきそうです^_^;。となるとPASMO陣営で個別にPiTaPa導入なんてことも視野に入っているかもしれません。

というわけで、これゲームの理論でよく用いられる囚人のジレンマを連想させます。共犯関係にある犯人同士を隔離して別々に取り調べ、証言すれば刑を免除すると持ちかけると、結局囚人同士全てを証言して揃って刑に服することになるわけですが、最適解は共に完全黙秘して証拠不十分で放免されるシナリオです。いわゆる協力ゲームとすることで利益が最大化するという昨今の行動経済学の基本的なスタンスですが、100年に1度の経済危機に、漢字が読めない首相と秘書逮捕で選挙の票が読めなくなった野党党首の足の引っ張り合いを見るにつけ、ちょっと考えさせるニュースです。

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Saturday, March 14, 2009

京王アイボリー時代

京王のイメージカラーはアイボリーということになるんでしょうけど、実は間もなく終焉を迎えます。2010年度までに鋼製車の6000系が淘汰されますので、京王からアイボリーカラーが消える(?)ということになります。実際は7000~9000系の前面に残りますし、そもそも井の頭線では7色のレインボーカラーですから、アイボリーがコーポレートカラーと言えるのかどうかは微妙ですが、「あいぼりー」という広報誌を配布したりしてます。とまぁ曖昧な書き出しですが^_^;、間もなく終焉を迎える6000系に焦点を当てます。

6000系を語る上で、名車の誉れ高い5000系を取り上げないわけにはまいりません。5000系の登場が1963年ですから、6000系の終焉をもって消えるアイボリー時代は優に半世紀に迫ります。それ以前の緑色の旧型車(カルダン駆動車もいたのですが^_^;)とは一線を画す5000系のデビューは鮮烈でした。

1963年は京王線が大変化を遂げた年でした。4月に新宿地下駅が開業、それまでの甲州街道上の併用軌道区間といかにも仮設のバラック駅舎の新宿駅が地上から消え、暗渠化された玉川上水の下へトンネルを通してルートも変わり、新宿駅へ進入するR60の急カーブはR110に緩和され、後の車両大型化を支えることになります。新宿地下駅は階段部分でX型にクロスした柱で、後に建設される京王百貨店の基礎工事が準備されておりました。見慣れた風景には理由があるわけですね。

8月には架線電圧を600Vから1500Vへ昇圧、それまで主力だった京王電軌由来の14m級中型車はサハ化され、おしどりユニットで昇圧対応した2000系や2010系のユニット間に挟み込まれたサンドイッチ編成が幅を利かせる中で、昇圧後に登場した1500V専用車として5000系が登場しました。

ここで5000系のザックリおさらいですが、4連の基本編成と2-3連の付属編成(+100番)があり、それぞれ最終的に4タイプに分類されます。以下にまとめます。

タイプA:5701F~5706F,5101F~5106F=最大幅2,744mm付属2連非冷房
タイプB:5707F~5710F,5107F~5112F=最大幅2,844mm付属2連非冷房
タイプC:5711F~5717F,5113F~5118F=最大幅2,844mm付属3連改造冷房車
タイプD:5718F~5723F,5119F~5125F=最大幅2,844mm付属3連新製冷房車
57xxが4連基本編成、51xxが2-3連付属編成で、4連のタイプA,Bが主電動機出力130kw*4、タイプC,Dが150kw*4、付属2連のタイプA,Bは上記サンドイッチ編成の中型車サハの置換えをデハ2700の改造で充当した結果発生したツリカケ駆動の足回り流用(110kw*4)、3連タイプCは主電動機出力130kw*4、3連タイプDは主電動機出力150kw*4という風に分類されます。タイプAの最大幅2,744mmは、地方鉄道法準拠の山岳トンネル規格で作られた新宿地下駅アクセス区間に合わせ、それまで京王電軌中型車由来の最大幅2,644mmより100mm拡幅されたため、すそ絞りスタイルとなりました。タイプB以降では側窓開口制限を条件に特認で100mm拡幅が認められ、混雑緩和に寄与します。車体幅は2,800mmで手すりの張出し部分が最大幅となるのですが、このことが6000系で重要な意味を持ちます。

6000系は1972年に一次車が登場しますが、既に都市計画10号線相互直通運転が決定していたことを受けて、10号線規格を先取りして、京王初の20m級4扉車として登場します。ただしなぜか10号線規格では最大幅2,800mmとなるため、せっかく5000系で特認を得た2,844mmは使えないということで、手すり取り付け部分に窪みをつけて最大幅2,800mmに収めます。また新宿駅進入部分のR110で20m級車体では偏倚による干渉もあって、車体幅は20mm縮めて2,780mmとしました。それでも室内有効幅を5000系広幅車と同じにするために、側構え厚を100mmから90mmに圧縮したために、後に剛性不足に悩まされることになります。そのために車体がゆるく、走る度に窓がバタつくことになり、常磐緩行線203系と並び称される騒音電車となります。一説によれば、元々ステンレス車として計画されていたのが、相模原線や京王新線の建設で多額の建設費を負担したため、予算不足で鋼製車となったとも言われますが、真偽のほどは定かではありません。そういえば203系も国鉄時代の予算不足が仇となったので似ています。

あと1次車に関しては、5000系最終増備車の足回りを基本的に踏襲し、ブレーキを電気指令式としたもので、発電ブレーキでした。しかも18m級7連を20m級6連で置換え、デハ4両をデハ3両としたわけですから、元々エコノミー設計だったとはいえます。しかしさすがにこのままでは地下鉄直通車としては不適格ということで、2次車以降は界磁チョッパ制御となり、マスコンキーで減流値を切り替えて高加速モードの運転を可能とするように改良されました。ゆえに1次車を組み替えて5+3連の分割編成とするときには、抵抗制御車と界磁チョッパ制御車の混結となることから、1,2次車混成の特別編成を組んで試運転を行い、特性を合わせたなんてこともありました。なお、マスコンキーで加速モードを変換すると同時に、京王ATSと都営ATC、列車無線チャンネルの変換も同時に行う仕様とし、9000系に至るまで踏襲されます。ただし都営車は加速モード変換がないので、都営車の京王線内運用はぬるい走りです(笑)。

6000系の淘汰によって、京王線の在籍車両はVVVF車で統一され、待望のATC化も実現するわけですが、その前に、高機能と言われる現在の京王ATSについて解説します。基本的に信号機直下の地上子による多変周信号式で、絶対停止okm/h、警戒25km/h、注意45km/h、減速75km/hで作動し、絶対停止では確認ボタンを押して15km/hで確認運転可能、その他の速度段ではATCのように速度計に制限速度が現示される仕組みで、それゆえ「ATC並み」と言われるのですが、一旦ATS信号で速度制限を受けると、前方進路が開通しても次のATS信号を受けるまで解除できない仕組みで、あくまでも運転士による信号機目視確認による先回り制御であって、絶対停止機能で運転士の目視ミスをバックアップするものですから、ATCと同等の機能があってもATSの範疇に留まります。ただし京王の10連2分ヘッドという究極の高密度運転を支えるために、閉そく割りを細かく設定していて、中には重要踏切の開時間確保のために敢えて踏切検知点外方に信号機を設置して列車を抑止するようなことまでやってますので、乗務員支援の目的で高機能化したと考えられます。

というわけで、ATSとしてはハイスペックで、京王では5000系から車上子が設置されました。高機能なので、動作の確実性がある電磁直通ブレーキ車が選ばれたわけですが、グリーンの在来車も電磁直通ブレーキに改造され、初期には改造車を5000系に合わせてアイボリー塗装され、主に急行系列車で運用されましたが、改造が進むにつれてグリーンに戻されました。番外で中型車に井の頭線の発生品で電装して昇圧後の支線運用に就いた220系もアイボリー塗装されましたが、こちらは単に動物園線で特急接続とする運用からイメージを合わせただけですね。

2010年には在籍車のVVVF化完了でATC化されます。最新のデジタルATCですので、停止または速度制限地点までの一段減速が可能になり、保安装置としてはさらに高機能化されるわけですが、同時にVVVF化でマスコンキーによる加速度切替の機能も意味を失うわけですから、京王線内での高加速運転が実現するものと考えられます。おそらく2012年の調布市内連続立体化事業の完成を待ってスピードアップが図られるでしょう。京王のチャレンジは続きます。

あとおまけですが、京王電鉄の新たな沿線活性化策で取り上げた高齢者の住みかえ支援による沿線活性化の仕組みですが、残念ながら現時点では大きな成果につながっていないようです。持ち家を賃貸して一般社団法人 移住・住みかえ支援機構(JTI)が所得保障することで、都心のマンションや地方の別荘などを購入または賃借して移住することで、子育て世代を支援する仕組みですが、高齢者から見ても、持ち家を最後は担保に差し出すリバースモーゲージなどより使い勝手も良く、新たな住宅購入の場合でも、通常高齢者では不可能なローンが組めるわけですから、内需拡大策の目玉になりうるインパクトを秘めているのに、政府も銀行もサッパリ不熱心です。今後暫くはローンで購入することが前提となる高額品として、マイホーム、自動車、高級家電は売れなくなることは間違いないですから、高齢者の住宅ストックからフローを生み出すこの仕組みを有効活用することが望まれます。将にジャパン老いるマネー活用法です。

加えて多摩ニュータウンの初期の開発エリアである諏訪団地や永山団地で、5階建ての集合住宅の上層階を撤去して自重を減らし、それで得た耐震強度を利用して構造壁の一部撤去を行うことで、3階建てに改築する「減築」が取り組まれております。元々経年の集合住宅は、老朽化で不人気となり、居住者が減る傾向がありますが、これを逆手に取って総戸数を減らすことで低予算で住宅としての品質を高める取組みです。これなどは耐震強度に不安のある老朽マンションの建て替えの代案として、安全圏内まで自重を減らすという観点から魅力的です。高齢化、人口減少という現実の中で、総戸数が減ることは障害になりません。むしろ高価格な200年住宅などよりも、ずっと現実的な住宅政策といえます。

ニュースでは与謝野財務相がG20財務相会合で財政出動GDP比2%を約束しちゃったようですが、いよいよ小渕政権時代の総合経済対策の愚を繰り返す気でしょうか。対外公約を口実に無駄な公共事業が強行される方便には辟易します。

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Tuesday, February 17, 2009

ジャパン老いるマネー

中川大臣が辞任しました。政界では以前から飲兵衛で酒乱で知られていた人ですが、醜態が世界に配信されちゃ辞めるしかありません。にしても日本の恥ですね(怒)。中央リニア5.1兆円の記事の冒頭でも振れましたが、昨年8月以来の貿易収支赤字化で、日本がいよいよ高齢化社会本番を迎え、産業構造を見直さなければならないときに、緊張感まるでなし、他人事のように「米国の景気対策をオバマにお願い」したり、以前にも日本の金融危機の不始末を自慢した財務金融相のズレた感覚はどうしようもありません。

おさらいですが、高齢者が増えるとなぜ輸出が減るかというと、高齢化して現役をリタイアする人が増えるわけですから、この人たちは生産に従事せずに消費のみを行うことになりますので、国全体では貯蓄が減って消費が増えることになります。で、貯蓄は投資に回ってさまざまな生産活動を支えるわけですので、貯蓄が減り、また現役世代の減少で労働力の投入量も減りますから、国全体の貯蓄の減少は生産の減少を通じて国際収支の黒字縮小となるわけです。これはどう逆立ちしても避けられないことです。

それを無理に輸出を増やそうとすれば、資本装備を高めた上で労働力の投入量を減らすしかないわけです。これを技術革新によって、例えばIT化で生産性を高めることで実現できるならば良いのですが、実際にはIT化で実現できる生産性向上は、主に管理部門など生産現場以外の場所では効果が期待できるものの、人手が必要な生産現場では、人件費の抑制でしか実現できません。その結果正社員はベアゼロでサービス残業という事実上の労働強化と、非正規雇用者を増やして雇用を流動化し、人件費を固定費から流動費にすることなど、主に労働分配率を下げる形でしか実現不可能なんです。結果的に若年層の購買力を奪い、車が売れなくなったんですから世話ありません。

加えて2003-2004年の大規模為替介入による円安政策にも助けられていたわけですが、加えて輸出で稼いだドルを海外投資に回し、それでも足りずに「貯蓄から投資」の掛け声の下、金融自由化の流れに乗って内外の株式や債券やそれらを組み合わせた投資信託を銀行や郵便局の窓口で販売し、家計貯蓄をリスク資産に移転させる政策もとられました。その結果海外へ流出したジャパンマネーがドルやユーロ建ての金融商品に投資され、欧米諸国の中央銀行に代わって流動性供給をした結果、海外で生じたバブルに乗って輸出を加速させたわけです。つまり高齢者世代の貯蓄を海外流出させて米欧のバブルを後押ししたわけで、米政府やFRB関係者の中には、アメリカのバブルはアジアの過剰貯蓄が原因と、暗に日本や中国に責任転嫁する論調も見られます。

もちろん日本人としては違和感のある見方ですが、自動車や電機をはじめ、輸出企業の対応も「売れりゃいいじゃん」というもので、実際自動車は海外市場重視でモデルチェンジの度にサイズアップして国内では使いにくくなってますし、電機業界では高付加価値を狙って不必要な高機能を与え、結果として消費者の離反を招き、また自動車とは逆に世界の趨勢に乗れずにいわゆるガラパゴス化してしまう体たらくです。薄型TVやデジカメなどのデジタル家電も、北京五輪特需が空振りだったという不幸はあるものの、結局在庫を積み増して価格競争の消耗戦を繰り返しているんですから世話ないです。ジャパン老いるマネーで売上を作っていたわけですね。

元々高齢者は若者ほど消費しないと言われます。理由はいろいろあるんですが、一番は若いころからいろいろなものを購入し、既に多くのものを持っているので、新たに買い増すものは少ないということと、若いころから老後を睨んで貯蓄を重ね富裕層に移行することで、消費性向を減らすという説明もあります。ただしこれは社会福祉の充実した欧州では必ずしもあてはまらないようです。日本では老後資金として3,000万円程度は必要と言われますが、欧州では100万円もあれば十分といわれます。

とすると、実は高齢者福祉というのは、消費性向の低い高齢者の消費を呼び起こすことで内需を活性化させる政策ということができます。加えて老後資金の貯蓄の必要性も減るわけです。医療や介護など高齢者向けサービスを充実させれば、そこに雇用が生まれ、富裕な高齢者から福祉で雇用される若年層へのサービスを媒介した所得移転となるわけです。とすると財政支出は増えても、医療や介護へもっと多くを配分することこそが、閉塞感漂う現状を打開することになるわけですね。

あと加えて、高齢化は必然的にマイカーを手放す人も増えるわけで、公共交通の必要性が高まるわけですが、実際は規制緩和で競争激化の結果、参入退出の自由度が増し、事業採算性だけで路線の改廃が起きて、多くのローカル鉄道やバスが廃止される流れにもなっています。野放図に補助すべきだとは思いませんが、高齢者に消費を促すならば、モビリティの向上は重要といえます。無意味に道路を作り続けるのではなく、地域の生活圏の利便性を高めることに焦点を当てるべきですね。

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Sunday, February 15, 2009

鉄道投資を加速する世界停滞する日本

世界が鉄道投資へと舵を切っております。

鉄道投資、世界で加速 日本企業に商機 18兆円市場
細かい話はいろいろあるんですが、元々鉄道投資に積極的だった欧州では、例えば仏TGV計画の前倒しは、重電メーカー+車両メーカーとしてのアルストム支援の意味がありますし、日立が優先交渉権を得た英高速鉄道計画にしても、英国内への車両工場設置や車両リース会社立ち上げなど、国内の雇用対策の色彩が強く、内需主導で経済を立て直そうとしていることが読み取れます。中国も内需振興のための経済政策で、鉄道投資を重視する姿勢を見せております。
中国鉄道省、インフラ投資を倍増 09年
アメリカでもカリフォルニアの高速鉄道計画着手に必要な90億ドルの起債住民投票で認められました
カリフォルニア州、住民投票で高速鉄道建設にゴーサイン
いずれもキーワードは内需と環境ということで、米オバマ政権が打ち出したグリーンニューディール政策に沿った考え方が共通しております。

しかるに日本はという話になるわけですが、まずはこんなニュースからです。

新幹線建設の負担増を新潟県知事が拒否 他自治体に波及も
さらに並行在来線問題で禁じ手を用いた佐賀県でも同様の対応となりました。昨年の資源高騰による原材料費の上昇分を転嫁しようとして反発されたものですが、国の直轄事業として推進される整備新幹線事業の矛盾が露呈した形です。整備新幹線の問題点は再三指摘しておりますので繰り返しませんが、整備新幹線を含む国の直轄事業としての公共事業が、地方財政の逼迫でブレーキがかかったわけで、野放図な公共事業の積み増しの成れの果てです。

一方で2009年度予算では、またも整備新幹線の新規着工が盛り込まれようとしております。

整備新幹線の未着工区間、9億円を追加要求 国交省
特に問題なのは北海道新幹線の札幌―長万部間です。なぜならば、新青森―新函館間で着工された区間とつながらない区間の先行着工となるわけで、ただでさえ予算がないなかで、直ちに収益を生まない区間の事業着手を先行させたわけですから、正気の沙汰ではありませんね。

既に特別会計である鉄道整備基金の元金(新幹線の本州会社による買取り価格への上乗せにより捻出)が枯渇し、一方で開業に伴なうリース料収入で長期間にわたって償還されるわけですから、特会に資金が戻るのを待ってから事業着手すれば問題は少ないのですが、なし崩しで新規着工を積み増した結果、資金の償還が先へずれることになりますので、償還を待てなくなったわけですから、ある意味自業自得なんです。またリース料を担保に債券発行や銀行借り入れで資金調達する手はありますが、これはリース料を利払いで配当することになりますので、その分資金の償還が遅れ、トータルの利払いは増えるわけで、その負担は国民に付け回しされるだけです。もういい加減こんなことはやめるべきです。

ただでさえJR北海道の事業環境は厳しいわけで、整備新幹線のスキームでは、JRの受益の中身として、並行在来線の切り離しによる部分と、既開業区間の利用積み増しとなる培養効果の部分があるわけです。並行在来線問題では、東北でも噴出しましたが、旅客輸送だけでは赤字必至で、東北のいわて銀河鉄道と青い森鉄道では、JR貨物からの線路使用料収入で黒字化している状況です。しかもコスト負担力のないJR貨物へはJR東日本が支払う新幹線リース料に上乗せして得た財源で、JR貨物に負担増分を補填することで成り立っており、事実上JR東日本の財務余力を頼みとしているわけです。JR北海道に同じことを要求するのは困難です。加えて新青森が会社境界となる北海道新幹線の場合、いわゆる培養効果による根元受益はJR北海道には落ちないわけですから、結局並行在来線のうち、特に長万部―札幌間の山線区間のうち非電化の小樽までは、切捨てられること必至でしょう。この区間は仮に廃止されても、室蘭千歳回りで貨物ルートが形成されますから、結果的に倶知安やニセコなどの地域は見捨てられることになると考えられえます。それでいいのかどうかですね。

世界を見渡せば内需そして環境がキーワードとなって、各国が経済対策を積み上げているときに、日本だけが旧態依然のバラマキ政策しか取れないとすれば、世界で最後まで経済停滞に悩まされる国になるということです。定額給付金なんぞで政治が機能不全になっている場合か(怒)。

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Monday, January 12, 2009

100年に1度の成人式

ハッピーマンデー制度により、成人の日が1月第2月曜日に移動したのが2000年からですが、一方で正月休みでないと新成人が集まりにくい地方の事情もあって、三が日中に行う自治体や、結果的に生じる3連休の頭(今年は10日(土))にやったりということで、ややぼやけた感のある成人の日ですが、今年は新成人に祝いの言葉をかけるのも気が引けます。経済グチャグチャで明るい話題なし、新年早々から年越し派遣村のニュースが流れる現状に、新成人の門出を祝う気分がそがれます。

事態の深刻さからワークシェアリングが議論の俎上にのぼったものの、今までも労使共に乗り気でなかったものが具体化する可能性はほぼゼロに等しいでしょう。この国は「大人の事情」で若者に冷たい国なのです。そもそも派遣切り問題でも、派遣労働者が増えている状況を知りながら、組合員として取り込むわけでもなく放置した連合と傘下組合に、問題解決能力があろう筈はありません。派遣切りの本質は労労対立です。若年労働者を解雇しやすくする初期雇用契約法をゼネスト打って撤回させたフランスの労組とは大違いです。

加えて経営者側も、会社への忠誠心を梃子に個別業務の責任範囲を曖昧にしてきたから、仕事を分割する術を知らず、また労働基準法36条の労使協定、いわゆる36協定でサービス残業を追認してきた日本の労働慣行では、責任範囲が曖昧な方が会社にとって好都合だったのです。結果的にグローバル競争の激化とともにサービス財業は増加の一途を辿り、正社員も楽じゃないのが現実です。今後は正社員の雇用調整も確実です。サービス残業するぐらいなら、その分人を増やせっての(怒)。

しかし企業の内部留保は増え続け、2000年代だけでも大手企業で20兆円にものぼり、株主配当も増やしています。ゆえに「そんな金があるなら派遣切りなどするな!」の声もありますが、株価下落で株主も責任を取らされた形でして、株式持合いの弊害と断言します。それもこれも経営者の自己防衛的買収防衛策の結果ですから、株主重視が問題というよりは、投資マインドの弱い日本の企業経営者に問題があります。

元を辿れば2001年のベアゼロ春闘をトヨタがリードしたことに端を発します。バブル期をピークに労働分配率(企業が付加価値を人件費に充てる比率)は70%程度あったのですが、現在は60%です。しかも若年層ほど非正規雇用の比率が高く、正社員は年功賃金で高給取りとなった人たちですから、若者の手取りはより少ないわけです。その中で、トヨタ首脳が「最近の若者はクルマを欲しがらない」と言い、若者へのアピールとしてF1参戦したりしたんですが、そもそも若者の所得を奪っておいて「買ってくれない」はおかしいです。結果としてトヨタの売上の79%は海外売上といことになるわけです。その結果例えばカローラもヴィッツも海外需要に対応してサイズアップして行き、ますます国内ユーザーのニーズから離れます。こういったチグハグをやっていて、GMの不振で世界一が見えてきたというのは皮肉です。トヨタは堕ちるべくして堕ちたのです。

米ビッグ3の不振も、元々は他社よりも高給かつ企業年金や企業医療保険などの充実した福利厚生で人を集めてきたわけですし、雇用調整は有給のレイオフによっているわけで、どう見ても持続可能なやり方ではありません。労組寄りと目されるオバマ新政権ですが、公的資金で救済する以上、雇用へ切り込むことは間違いないでしょう。ビッグ3不振は日本の派遣切りと同じように、労組の既得権問題なんです。

現在へ通じる近代自動車工業の嚆矢となったT型フォードの発売が1907年ですから、実は自動車産業はたかだか100年の歴史しかないわけですが、燎原の火の如く広がったモータリゼーションの波は、新興国へ波及する段階で、エネルギー資源の制約と地球環境問題に直面し、持続可能性に疑問符がつけられているということはできます。大波乱のうちに明けた2009年ですが、次の100年に思いをはせるチャンスかもしれません。その意味で道路特定財源の一般財源化をうたいながら道路予算を増やす政府の対応も問題あります。一方で定額給付金バラマキを生活支援とうたうのですからめちゃくちゃです。こんなことなら暫定税率を失効させておけばよかったんです。

というわけで、自動車に追い込まれ続けた鉄道の復権にとって重要な年となるかもしれませんが、2008年には京都市営地下鉄東西線延伸に始まり、横浜市営地下鉄グリーンライン、東京都営新交通日暮里舎人ライナー、東京メトロ副都心線、京阪中之島線と新線開業の当たり年だったことと比べると、2009年は阪神なんば線、平成筑豊鉄道和布刈公園線、富山地方鉄道富山市内環状線といったところで、小粒感は否めません。来年には成田空港新アクセスや東北新幹線新青森開業などの大物が控えてますが。

いずれも公的支援を得ての整備であるのはご他聞に漏れずですが、気になるのが計画段階での輸送目標をことごとく下回っていることです。もちろんだから無駄だと言うつもりはありませんが、公的支援を得る以上、事業としての客観的な評価は大きな課題です。例えば北海道新幹線札幌~長万部間の新規着工のような事業をどう捉えるかですが、東京とつながってナンボの新幹線の部分着工は投資効率を下げる愚策です。

というわけで、正直なかなか新年を祝う気分になれなかったのですが、本年もよろしくお願いいたします。

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Wednesday, December 31, 2008

2008年さてはナンピン弾腐れ

東京証券取引所大納会の30日、波乱の1年が終わりました。

08年日経平均、戦後最大の42%下落 終値8859円
1年の締めくくりとしては残念なニュースですが、これが現実ですから致し方ありません。42%下落でほぼ全銘柄が値下がりしてますので、ご他聞に漏れず私も損こいてます^_^;。年初にこんな記事を書いてますが、結果的に株で損したことを白状いたします。

しかし損失の程度は4割ほどですから、丁度日経平均の下落率と同等ということで、あくまでも現時点での評価としてですが、銘柄選択は大きく間違えてはいなかったということはできます。決算のない個人投資家の強み、あくまでも10年後に笑おうというコンセプトです。

しかし実際には値下がりで押し目買い(ナンピン買いとも言います)して損失を膨らませた人も多数いるようです。また逆に早めに売り抜けて損切りを成功させた人もいるようです。いずれも投資家間の損得勘定はゼロサムゲームの範囲内ですから、それ自身は自己責任の範囲です。それよりも相場全体が下げたことによる、社会全体への影響の波及を考えると、この程度の損失、しかも売らない限り実現しない損失で済んでいるとも言えるわけです。

一方でこの状況でも多くの企業が配当は続けているし、よほどのことがない限り今後も続ける意向であると発表しております。その結果日銀の利下げや株安による質への逃避による国債金利低下で、結果的に株式の配当利回りが相対的に高まっているので、持ち続けていれば、配当は受け取れるわけです。もちろん今後はどうなるかわかりませんし、一方で派遣切りなど雇用にしわ寄せが及んでいる中で、批判もありますが、株安はむしろ投資家の離反を恐れて企業の配当性向を高めるものと考えられます。

というのも、株安で本当に打撃を蒙ったのは、投資家よりも企業自身であるということです。言うまでもなく株式持合いの影響です。株価半減で減損処理を迫られる新会計基準の下で、多数の企業が保有株式の値下がりに苦しんでおります。そしてその中心に銀行が居る構図は、90年代の金融危機当時と似ています。株安で大手銀行保有株の含み益は800億円程度と推計されてますが、もう一段下げれば含み損となり、国際決済銀行(BIS)規制の自己資本比率を維持できなくなる恐れが出てきました。2007年のサブプライムショック以来、「日本の金融機関は健全」と言われてきたのですが、それが怪しくなっているのです。

そして株価の今後の動向ですが、グローバルオウンゴールで指摘したとおり、昨今の経済成長が世界規模のバブルによるものだったわけですから、その巻き戻しが起きることは避けられず、少なくともバブル以前の2002年レベルまでは戻すと考えるべきでしょう。となると株価は7,000円台ということで、一段の下げがあるということです。

またこの間日本は実質10%ほどの経済成長が見られましたので、それが巻き戻すということは、仮に誰かが言うように「全治3年」としても、3%超のマイナス成長が3年続くということになります。もうちょっとマイルドな2%マイナス成長ならば5年かかるわけで、その間の実体経済の冷え込みを考えると、株価の底割れ懸念は消えません。

結局株安は銀行の健全性を損ない、いわゆる貸し渋りを引き起こしているのですが、2つ経路がありまして、1つは株安の連鎖によるCPなどの社債市場の機能低下で、社債発行で資金調達してきた大手企業が新規発行が難しくなって、銀行に融資を申し込むという構図です。この場合担保余力の高い大企業が大量の資金を需要しますから、その結果中小企業への貸し出しが圧迫されるわけです。もう一つが上記の通り銀行自身の自己資本の毀損による貸し出し資産の圧縮です。そもそも欧米では利益相反が起きるとして銀行の株式保有は原則禁止されていて、BISの自己資本規制での株式含み益の算入は、邦銀に有利なルールとして日本が押し込んだものですが、90年代に続いて同じ過ちを繰り返すならば、日本も欧米並みに銀行の株式保有を原則禁止とすべきでしょう。そうすれば企業間の株式持合いの必要性も薄れ、株式市場が本来の投資家のためのものという性格を強めるはずです。それこそが金融ビッグバンで目指したものではなかったでしょうか。

加えて政府ですが、この緊急事態に緊張感ゼロの対応にめまいがします。税収減による財政赤字は避けられませんし、経済浮揚のための財政出動も求められますが、それは定額給付金のようなバラマキや、億ション購入ぐらいでしかメリットのない住宅ローン減税や、道路予算増額や整備新幹線新規着工などの旧来型公共事業の積み増しでもありません。輸出依存ではない新産業の創出による雇用吸収こそが求められます。

その意味でドサクサ紛れに札幌~長万部間の整備新幹線新規着工なんて話が出てくるんですから驚きです。電力浪費して空気を運ぶつもりかい(怒)。政府のナンピン買いみたいなもんです。

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Sunday, December 21, 2008

バブルよさらば、グローバルオウンゴール

トヨタショックの後日談として、来年3月期決算予想が赤字転落、加えてホンダも下期赤字予想を発表しました。ナゴヤはオワリどころじゃなくなりました。事態は自動車不況と呼ぶべき状況です。しかし、サブプライムショックやリーマンショックなどの金融危機のせいだけにできない、自動車メーカー固有の問題も見え隠れしております。

元々日本国内では、バブル期に700万台超の新車販売のピークをつけた後、数を減らしながら90年代半ばから500万台超の水準で新車登録台数が推移しておりました。クルマは既に欲しい人に行き渡り、以後は買い替え需要にシフトしたわけです。その結果新車登録台数が横ばいになったわけですが、同時にグローバル化の進展で日本の中古車が海外へ流れ、特に中国やロシアなどの新興国へまとまった数が流れた結果、国内の中古車市場の下支え効果があったと考えられます。その分中古車の価格メリットが出にくいわけで、新車販売の底上げ効果もあったものと考えられます。それが今年春の上海株ショックを契機に剥げ落ちて、中古車シフトが起きたと考えれば、今年の500万台割れ水準は当面の均衡レベルを示唆するものの可能性があります。つまりは当面国内市場は窮屈なまま、商業者メーカーを含めて2桁の完成車メーカーがひしめく構図となります。というわけで、これだけを見ても、自動車メーカーの復活は遠いわけですね。

加えて、リーマンショック後の10月以降、北米市場の急速な冷え込みに襲われ、度重なる決算予想の下方修正となり、いわゆる派遣切りが起こることとなります。その北米市場の回復の可能性も、以下に記すように難しいのが実情ですから、今後は海外拠点も含めて正規雇用者のリストラも避けられない事態を覚悟する必要があります。いやはや「日はまた沈む(sunset)」どころは「日は真っ直ぐ落ちる(sunfall)」事態になりそうです。ホンダが「F1どころじゃない」というのもよくわかります。

脱線しますが、元々欧州の草の根のクラブマンレースの最高峰という位置づけだったF1への量販車メーカーの関与が、開発費の暴騰となってメーカー自身を苦しめた現実も知っておくべきでしょう。大メーカーの撤退はむしろモータースポーツ本来の姿に戻るのであって、ホンダの撤退は英断と評しておきます。

さて、アメリカ国内の自動車市場の規模ですが、年間新車登録台数1,200万台ぐらいで推移していたのですが、2000年代に入ってから、特に9.11ショック後の消費ブームあたりから右肩上がりとなり、1,700万代近くまで増えていきました。この頃から米ビッグ3で始まったゼロ金利キャンペーンが、そもそものスタート地点だったと考えられます。

いわゆるテロとの戦いで愛国心を鼓舞された国民が「消費を控えればテロリストの思う壺」というフレーズに踊らされて消費ブームが演出されたのですが、ビッグ3が一役買ったわけですね。元々新車購入者の8割がローンを組んで購入するアメリカで、ゼロ金利キャンペーンは事実上の値引きであり、メーカーがディーラーへ新車販売のインセンティブ(販売奨励金)として配る形で実施されたわけです。ここまでする理由ですが、単なる消費底上げというよりは、輸入車攻勢にさらされていたビッグ3が体力勝負を仕掛けたという方が実態に近かったと考えられます。

その結果、皮肉なことにビッグ3は財務体力をすり減らし、今、存亡の危機にあるわけですが、同時に環境技術など、未来志向の技術開発への資本投下もままならず、ビッグ3の得意分野としてライトウエートトラックへの比重を高めることとなります。ベースとなるピックアップトラックは、本来農場などで作業用に使われる廉価な車ですが、車関連の諸税の安さもあって、若者のエントリーカーとしてももてはやされる存在でもありました。そのためにオフロード用バンパーやフォグライトその他のオプションを揃えて高く売れるし、ラダーフレームにボディを載せるシンプルな作りが幸いし、オフローダーに似せたSUVや大柄なバンボディを載せたミニバンなどの派生車種を簡単に作れることもあり、利益率が高い上に、輸入車との差別化にもなるということで、とりわけ販売に力が入りました。

しかし日本メーカーがアメリカ国内で現地生産してこの市場に切り込んできて、競争状態にさらされます。加えて日本メーカーはハイブリッド車などビッグ3が持たない商品でも攻めますから、ますますビッグ3は守勢に立たされるわけで、期間限定のはずのゼロ金利キャンペーンが、いつしか通常の値引きとなり、エンドレスの体力勝負に巻き込まれます。

で、2003年~2004年の日本のドル売り大介入による円安で、トヨタで言えばプリウスやレクサスなどのハイブリッド車や高級車などの現地生産されない高価なクルマが、さらに円安メリットで利益が上乗せされたわけですから、トヨタに限らず日系メーカーもゼロ金利キャンペーンで応酬、円安という事実上の輸出補助金を得て体力勝負を跳ね返してこられたわけですから、ビッグ3といえども、対抗のしようがないです。で、ここがアメリカらしいところですが、さまざまな金融技術を駆使して、クルマ販売を督励することとなります。

例えばホームエクイティローンですが、米住宅バブルを背景に、マイホームの値上がりによって発生した担保余力を利用して耐久消費財の購入に充てる仕組みですが、このおかげでマイカーや薄型テレビなどが多数売れたわけです。あとリース販売というのもありまして、日本でもトヨタが残価設定形ローンと称して国内販売のてこ入れを狙った仕組みです。購入する新車の3年後の残価を設定し、新車価格との差額分を36回元利金等払いで返済し、3年後は残価で買い取る事も、中古車市場で売却することも選べるというもので、残価が中古車の市場価格を上回っている限り、ユーザーは安いローンで3年ごとに新車に乗り換えられるというのが魅力でした。しかしこれが問題を引き起こします。

リース販売の拡大は、中古車市場への供給過剰を生み、中古車価格を押し下げます。すると当然ながら中古車価格が残価を下回る事態となるわけで、そうなると、ユーザーはディーラーに車を返して、よりどりみどりの安い中古車を物色するようになります。となるとディーラーにはリース販売で返品された中古車がたまるわけで、やむなく中古車市場で損切り処分してますます中古車市場を押し下げる悪循環となり、気がつけば誰も新車を買わなくなったということです。リース販売に関しては、日系メーカーも遅れて参入して、いまやどっぷり首まで浸かった状態ですから、9月までは普通に売れていたアメリカの新車販売が急激にストップするのも無理もないところです。サブプライムショックのカーボンコピーのような現実は、つまるところ、メーカー自体がバブルにどっぷり浸かっていたわけで、まさしくグローバルオウンゴールなわけです。

もっと大きな視点で見れば、そもそも上海株ショックも、新興国の経済成長期待で生じたバブルが、原油価格上昇で持続可能性に疑義が生じたことで弾けたものです。当時の中国は北京オリンピック前の高揚感よりも、急速な工業化の弊害による環境悪化やインフレなどのネガティブな話題が多かったのですが、特にチベット騒乱やウイグル人によるテロ騒動などは、つまるところ天安門事件と同じ国内インフレに原因が求められます。その結果元々統制価格だった中国のガソリン価格が、原油価格上昇分を転化できず、原油価格上昇を増長するに及び、資源制約が意識されたものと見ると、新興国経済の成長がアメリカ経済のリセッションをカバーするというデカップリング論の期待がくじけ、9月のリーマンショックに至ったと考えると、そもそものきっかけは原油価格上昇にあったわけで、その大元をたどればイラク戦争に行き着くわけです。間もなく退任するブッシュ大統領の外交政策と、それを支えた日本の歴代政権は、散々ピッチ上を走り回ったあげくのオウンゴールという、何とも腹の立つ結末です。

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Thursday, November 13, 2008

銭トレニャア、ナゴヤはオワリ?

うーん、株価が戻りません。ゆえに買い増しのチャンスという見方を変えた方が良さそうな感じです。原因は複数あって、特に外国人売りの地合いが強いようですが、誤解のないように指摘すれば、主に欧州各国で銀行への公的資金注入が行われた結果、政府主導で国内中小零細企業への貸出増加の圧力がかかり、投資原資として外国資産の処分が行われているもようで、ひと頃言われたジャパンパッシング(日本素通り)とは別の要因です。欧州では社会の装置に過ぎない銀行の救済よりも預金者や融資先の保護に重点が置かれているわけです。

とはいえそれだけで現在の株価が説明できるわけではなく、実際これだけ安くなったのに買いが入らない状況は、プロに言わせればあり得ない話と言われ、実際PER(株価収益率)が5倍とか、PBR(株価資産倍率)が0.5倍といったアンビリーバボーな数値が並びます。後者など会社を廃業して資産を切り売りした方がマシというレベルです。やはり前に指摘した株式持合いの負のスパイラルが原因のようです。悪い予想ばかりが当ります。

で、持合いの中心には銀行が居て、現在の株安を先導している状況をどう見るべきでしょうか。日本では銀行は救っても預金者や融資先は救わないのでしょうか。現在国会審議中の金融機能強化法でも、政府案では公的資金注入に際して経営責任を問わないことになっておりますが、それでいて貸し渋り防止策を謳っているのは矛盾しております。ま、この辺は90年代末の金融危機のときも政府の対応は基本的に変わっていない気がします。担当大臣が外国に「自慢」した公的資金注入にしても、長銀と日債銀の救済策は元々民主党案を丸呑みして実行したもので、こちらは経営陣の更迭と0円評価での全株式取得という形で経営責任と株主責任を問うたものでした。その仕組みを使い回して2002年にりそなへ資金注入したしたことで、政府の関与による金融秩序の回復期待が好感されて7,000円台だった日経平均株価が反転上昇に転じたことで、銀行の保有株が値上がりし、あれほど経済の重石となっていた不良債権問題が嘘のように解消したものでした。いわゆる竹中プランで、大手行に対しては経営責任を強く問いましたが、地方経済への負のインパクトを回避するために、地方銀行の不良債権処理は途半ばとなり、保有株価の上昇で見かけ上の自己資本は回復したわけです。それがリーマンショックの株安連鎖で資本が毀損し、さらに2006年下期以来の不動産不況も重なって、元々建設や不動産関連の融資が多かった地方銀行のバランスシートを傷める結果となっております。つまりは地方銀行に元々隠れていた不良債権問題が顕在化したわけです。

地方銀行でも、破綻すれば影響が大きいと考えられる上位行の足利銀行は、上記のブリッジバンク方式で一時国有化され、再建されて野村グループに転売されたのですが、規模の小さい地銀下位行や第二地銀ではそれは通らない話で、実際不動産不況関連で初めてのペイオフ実施が囁かれてさえいたのですが、世界金融危機に便乗して一転救えという話になりました。いわゆる焼け太りです。同様に流通市場が消滅して値決めできないという実務上の制約から、社債や証券化商品について時価会計を一時凍結しようという気運が欧米で出ると、流通市場が機能していて値決めが可能な株式や国債にまで適用しようと画策する日本政府の姿勢は、むしろ国際的に不信を買います。お願いだから15日の金融サミットでバカなこと言わんでくれ。

そんな中でトヨタショックがあったわけですが、メディアの取り上げ方はかなり一面的です。減収減益の直接的な原因は北米市場の冷え込みですが、メディアの論調としては円高の影響を過大視する傾向があります。既に現地生産比率が高いトヨタですから、為替変動の影響に対しては耐久力があります。実際経常利益7割減とはいっても、去年までの数値がむしろ円安メリットで高めに出ていたと見る必要があります。特にレクサスのように日本で生産して北米で売られる高単価車の寄与が大きかったのであって、その部分が金融バブルと共にしぼんだだけです。そういう意味ではマイナスには違いないですが、元々財務の強いトヨタですから、仮に単年度で赤字転落しても、さらには赤字が数年続いても、存亡の危機にはなりえないので、その辺がビッグ3とは大違いなんです。

とはいえ自動車不況の現実は確実にあるわけで、実体経済への影響は計り知れません。特にトヨタの減益発表のインパクトで怖いのは、納入する部品メーカーへの影響で、既に中部地区では衝撃が走っております。好調時には納入価格を叩かれた上に、不況で減産となれば真っ先に影響を蒙るのは、こういった下請企業群です。トヨタは安泰でも下請け企業は存亡の危機となるわけですが、よくよく考えれば、真に必要なサプライヤーならば、発注元企業が資本を入れれば良いわけですが、そうはせずに公的資金で助けられた銀行の融資や都道府県信用保証協会の保証業務などで延命させると、再度好況に巡り合わせたときに、使える安値受注のサプライヤーを温存できるわけです。つまりトヨタのような親企業だけが富む構図ですね。結果的に国内消費をリードしてきた名古屋景気はしぼみ、中小企業は疲弊する構図です。地域のトヨタ依存が高すぎた反動ですね。

その影響で栄の老舗デパートをなぎ倒したジェイアール名古屋タカシマヤも業績にブレーキ、JR東海の連結業績にも影響しています。さらにこんなところにも変調が。

中部空港、4-9月初の赤字 燃料高痛手に
これ燃料費高騰だけが原因ならば、最近の原油価格の動向でいずれ回復が期待できますが、より構造的な問題として、そもそも国際空港として発着便数を増やせずに、経済の冷え込みでむしろ航空会社の撤退が始まってしまい、空港としての存在感が低下していることが見逃せません。開港当時から航空客より見物客が多いことから、空港付テーマパークとも揶揄されましたが、名古屋景気の冷え込みで見物客の落ち込みも予想されるだけに、業績回復は容易ではないというべきでしょう。

となると気になるのが、空港輸送で息を吹き返した名鉄の動向です。元々クルマ大国の名古屋地区で、それに対抗して登場したパノラマカーが、来年度の全廃が発表され、一時代が終わった感があります。ところがクルマ社会の親分であるトヨタよりも、民営化JRと名古屋市営地下鉄/バスの挟撃という思わぬライバルの出現で乗客を減らした名鉄が、中部国際空港の輸送で得たアドバンスも、先行き不透明です。既に岐阜地区の600V線などローカル区間の撤退も進み、リストラも一巡したところでの地域経済のリセッションは堪えそうです。

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Saturday, October 25, 2008

中央リニア5.1兆円JR東海が自己負担の意味

またしても週末に金融危機です。しかも今回の主役は日本です。

円急騰、欧州市場で一時90円台
2003-2004年の大規模為替介入の結果、日本の外貨準備資金として1兆ドルに及ぶ残高を抱えていることは、コイズミノミクスの反動としてのコイズミジレンマとして既に指摘しました。またそれが輸出企業への輸出補助金として企業を助ける一方、国民生活を窮乏化させるものであること、さらに国の外貨準備の肥大化が、低金利の円を借りて高金利国債券で運用するいわゆる円キャリートレードに暗黙の保証を与えた結果、家計貯蓄をリスクにさらしたことも昨年の記事で指摘しました。また長く続いた日銀の低金利政策が世界規模のクレジットバブルの戦犯であり、巻き戻しの危険性があることも以前に指摘しました。今回はアクション自体は欧州発ですが、それだけ欧州各国で円キャリートレードが盛んだったということで、その巻き戻しが起きてしまったんですね。もはや対岸の火事ではありません。

簡単に言いますと、低金利の円資金を調達して、為替市場で投資先国の通貨に交換してそれぞれの債券等の金融商品に投資するという流れで、特に通貨フォリントが対ユーロで最高値から25%も下落したハンガリーでは、個人の住宅ローンにまで円資金で調達した資金が使われたほか、いわゆるサムライ債が多数の国て発行されていた状況で、金融危機で借り手が手仕舞って資金を返済する動きが出てきたものと考えられます。そのために返済資金の円を買う動きが世界的に広がったわけですから、為替介入で押し戻すことは不可能ですし、国際的にも非難を浴びます。

問題はそうやって買われた円が株式の購入などに回ってくれれば良いんですが、長く輸出企業優遇を続けた結果、円高は輸出企業の輸出減速で実体経済の先行き不安を連想させますから、円資金は単純に返済に回り、市場から消え失せるわけです。内需振興を図らなかったツケがまわったわけですね。

そもそもなぜ内需振興かといえば、高齢化が関係します。簡単に申し上げますと、工業化社会ではすべからく高齢化は進んでおります。ただ日本では高度成長の結果として高齢化のスピードが欧米より急なことが特徴です。逆に欧米の後追いですから、欧米の失敗を教訓にできる立場でもありますし、より重要なのは、韓国や中国を含め、アジア各国の経済成長が日本モデルの後追いとなっていることから、将来的に日本同様の高齢化に直面することは確実なわけで、この面でも日本が一定のお手本を示せるかどうかが問われております。

高齢化世代はいつまでも労働市場に留まらず、ある時点で退場するわけですが、それはとりもなおさず現役時代に蓄積した貯蓄を取り崩す生活への移行となります。厳密には公的年金制度の有無などで違ってくるのですが、議論が煩雑になりますので省きます。高齢化自体は公衆衛生の改善と医療の進化によるものですが、工業化の進捗による経済成長の結果として医療への支出が増やせるのもまた事実でして、結果的に救える命が増え、高齢化へと向かうのは必然です。その結果労働力の供給が不可能な高齢者が増えて、彼らは生産せずに消費だけを行う存在ですから、高齢者が増えるということは、国のマクロレベルでは貯蓄が減って消費が増えることを意味します。言葉を変えれば国内消費が国内生産を上回るということです。

これを人為的に回避しようとする試みは欧米で主に移民政策として実行されましたが、これがどういった結果となったかは、今回のサブプライムショックでわかるでしょう。アメリカは中南米のヒスパニック系移民の受け入れが契機となって住宅バブルを生じたわけですし、欧州でもイギリスやスペインは同様です。遡ってドイツでは主にトルコ系移民を受け入れた結果、非熟練労働市場が移民中心に切り離され、社会不安を起こしておりますし、またトルコ系移民の定住によって、彼らの高齢化の面倒を見る羽目に陥ります。重要なのは自国民も移民も等しく齢をとるのであって、移民政策は高齢化の解決策にはならないのです。

その結果貿易収支は赤字基調となるわけです。この部分が理解しにくいでしょうけど、国内消費が国内生産で賄えなければ必然的にそうなります。いわゆる国際競争力云々とは無関係です。ただ実際の貿易収支は為替変動で相殺されますから、その国が偏りのないマクロ経済政策を実行できていれば、貿易収支(実際はサービス収支を加えた経常収支)は、均衡水準を維持できるはずです。そのためには製造業では資本装備の充実による生産性向上が重要なんですが、実際には賃下げや非正規雇用の拡大による労働分配率の低下で対応し、むしろ設備投資も抑制的でした。結果的に日本企業はキャッシュフルになり、外資から買収を狙われることになったわけですね。

実際の日本の直近の貿易収支を見ると、8月に小赤字、9月に小黒字ということで、80-90年代に政治問題化したような状況とは様変わりしております。何が変わったかといえば、それだけ当時よりグローバル化が進んで、貿易収支や為替水準などが世界の人々の関心事ではなくなってきたということです。2003-2004年の日本の大規模介入も、だからこそできたのでしょう。また当時は世界的に経済は好調だったので、非難されることはなかったのでしょう。同じことを金融危機の今やろうとすれば、袋叩き間違いなしですが^_^;。

というわけで、貿易統計から見て奇妙な均衡状態にある今の日本ですが、ここ暫くの政策運営如何で、均衡状態を維持できるかどうかで変わってくると思われます。具体的には資本効率が低いと言われる日本企業の資本効率を高め、労働者1人当りの資本装備率を高め付加価値を拡大することが重要です。外需頼みで国民窮乏化政策を取るのか、高齢化を睨んだ消費主導型経済に舵を切るのかが問われております。その意味で今回の危機に立ち向かうには、バカ殿様宰相では無理でしょう。早く選挙やってくれ。

というわけでやっとリニアですが^_^;、JR東海はリニアの輸出に意欲を示しているということで、日本車輌を子会社化したわけで、理由としてリニア開発の技術情報の秘密保持を掲げております。どうも本気でリニアを売り込む算段のようですが、経済の客観情勢は上記の通り最悪です。そもそも今後の輸出は外貨稼ぎよりもグローバル化のプロセスとしての意味合いの方が重要です。高齢化が進む日本では、為替市場での円高維持こそが重要なんです。そうすれば資源が安く買えて国内消費市場が活性化されるわけです。

その意味でリニアに未来があるかどうかですが、まず欧米では圧倒的に鉄道ストックの厚みがある中で、部分的な改良や高速新線の建設は行われるものの、基本は既存ストックの活用がメインということで、日本流の新幹線ですら出番なしです。そういった意味で欧州方式の線路に日本製車両という組み合わせとなった台湾高鉄で、日本の新幹線技術を欧米流のデファクトスタンダードに摺り合わせるチャンスだったにも拘らず、途中で放り投げてしまいました。JR東海贔屓と見られる曽根悟教授でさえ、鉄道のグローバル化の意義を認め、相互に技術を理解して良いとこ取りすることを"国際化"と定義しているのです。リニアでいかに高度な技術を実現したとしても、システム全体がブラックボックス化された高価なソリューションになれば買い手は現れません。日本の家電や携帯で言われる"ガラパゴス化"になりかねません。

この辺は今までも散々指摘してきたところではありますが、鉄道ジャーナル12月号の佐藤信之氏の論文でヒントとなる部分がありまして、新たにこの記事を書き起こしました。つまり東京―名古屋間の中央リニアの整備費用と言われる5.1兆円の謎についてです。佐藤氏が指摘するのは、1992年10月にJR本州各社が新幹線保有機構から新幹線施設を買い取ったわけですが、その際にJR東海が支払った買取り代金が5.1兆円で妙な符合があるという点です。

このうち4.5兆円は25.5年、残り0.6兆円は60年の半年賦元利均等払いとなるわけで、4.5兆円分の支払が2017年3月で終了するということが重要です。その分のキャッシュフローが余剰となるわけですから、これをリニア実現に利用しようということのようです。ということで、ザックリ言って5.1兆円で実現可能なリニアから逆算された結果としての東名間最短ルート建設ということであれば、JR東海の意図が見えてきます。

つまり全額自己資金での費用負担の上限を示すことで、長野県から出ている伊那谷経由で駅も増やして欲しいという要望や将来出るであろう大阪延伸の要望などに対して、自己負担の限界を示すことで補助金を引き出そうとしている可能性があります。つまり敢えて政治圧力を利用しようということですね。それを証明するような動きもあります。

JR東海、リニア3ルート併記 経路綱引き本格化
リニア新幹線、直線ルート軸に協議 JR東海が国交省に報告
本来は新幹線整備は法令により国の事業とされるので、手続上は後者の国交省への報告が必要なんですが、それ以前に報告内容を明らかにし、自民党の部会へ説明したりしているのです。政治的意図ありありです。またこのような行動は企業としていささか不謹慎でもあります。というわけで、リニアと長崎の間の記事で指摘しなかった視点ですが、整備新幹線は政治新幹線だと確信する次第です。

ま、狙いとしては、政治圧力を利用するとともに、世論喚起して事業推進の後押しにと考えているのでしょうけど、間違ってもガラパゴス化を来すような企業の投資行動に公的支援なんかしちゃいけませんね。

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Sunday, October 19, 2008

資本主義の聖地を目指す京阪電車

金融危機に揺れる2008年秋ですが、大阪の中之島に鉄道が乗り入れます。厳密には4本もの地下鉄が通過する大阪中之島ですが、軟弱地盤に阻まれて駅の設置はできませんでした。意外な鉄道空白地帯ゆえに今回の京阪中之島線の開業は、大阪にとって大きなニュースといえます。

前の記事で中途半端に取り上げましたが、中之島といえば江戸時代の廻船問屋の集積地であり、主にコメの取引で財を成したのですが、江戸時代のコメは各藩が集めた年貢の一部を幕府に上納、幕府も藩も家臣にコメを禄として配分していたわけで、国家財政を司る貨幣の役割もありました。

武家は禄として受け取ったコメを廻船問屋に売却し、金子を得て家を維持していたわけですが、間抜けなのは、そうして収穫期にはまとまった売り物がでますから買い叩かれ、得た金子で日常食用のコメを買っていたわけで、わざわざ商人に儲けさせていたわけです。儲けの分だけ搾取されていたわけですから、武家は常に火の車、加えて幕府から普請(土木工事)の命令を受けて散財させられていたのですからたまりません。国の公共事業に付合わされて財政を悪化させる地方自治体の如しです^_^;。

言うまでもなく諸藩の謀反を恐れた幕府の統治政策ゆえですが、こうして藩に普請を押し付けていた徳川幕府はさぞかし裕福だったと思いきや、藩からの上納米は役人への報奨で消えて、財政難にあえいでおりました。それゆえ度々コメ相場で財を成した廻船問屋などの商人から借金をしていたわけですが、当然付加価値を生まない近世の統治システムでは返す当てがあろう筈はなく、かくして度々小判の改鋳(通貨切り下げに相当)が行われ、必然的に悪性インフレに悩まされておりました。その結果財政はむしろ悪化して、最後はデフォルト(債務不履行)で切り抜けるということが繰り返されました。いわゆる徳政令です。ま、不定期の法人税と捉えれば、それなりに制度インフラと見なすことも可能ですが。うーん、何か日本の統治機構って、当時とあんまし変わらんなぁ。

これを商人の側から見れば、ある種政治的なデフォルトリスクと見なせます。また当時の農業は基本的に封建的制度下での地縁的労働集約に依存して維持されていたわけですから、働き手の必要な農家は基本的に多産で、過剰人口を抱えていたのですが、当然年貢米を召し上げられている状況で、十分な食糧確保は難しかったわけです。また農業技術も未熟で、風水害などで当てにしていた収穫が不足することも度々あったわけで、そうなれば年貢米の取立てが圧迫され、藩や幕府から借金の申し出も増えるわけで、貸すのはいいけど貸出が増えれば当然デフォルトリスクも高まるわけで、かくして毎年の各地の作付け状況や生育状況、風水害の有無などの情報を頼りに、リスクヘッジの必要性が高いコメ取引の先物市場が形成されます。世界初のデリバティブ取引と言われます。

かように金融先進国だったはずの日本ですが、1940年ごろからのいわゆる戦時体制で伝統をかなぐり捨て、中央官僚による規制と計画経済の体制へ移行、戦後も続きます。特に銀行の護送船団方式方式は改正日銀法が施行される98年まで続いた窓口規制で、民間の商業銀行といえども、日銀の指導に従って融資先を選別すればよい仕組みでしたので、金融機関に求められるリスクテイク能力が失われ、バブル崩壊後の長期にわたる経済停滞を招きました。今回の金融危機でも、直接金融中心で債券での運用が主体の欧米銀で、疑心暗鬼で市場機能が毀損した現状に対する緊急避難策として時価会計の凍結措置がとられたのですが、融資が中心で債券よりも株式保有が多い邦銀の間から歓迎の声が漏れるのが情けないですね。融資や株式は凍結対象ではありませんし、そもそも邦銀の財務は健全ではないのかい。さすが現役閣僚が90年代の日本の不始末を自慢する国だけのことはあります(笑)。

というように工業化以前の近世にまで遡る日本の資本主義ですが、中之島はその中心だったわけです。現在も日銀大阪支店や造幣局を中心に銀行が多数店舗を構える金融街です。当然多数の通勤者がいるはずですが、従来は近隣駅からの徒歩通勤とならざるを得なかったわけです。そこへ直接乗り入れる新線ですから、注目度は高いわけですね。

今年開業の新線の中では、東京メトロ副都心線との対比が適切でしょうか。こちらも従来はJR山手線で結ばれていた東京西側の池袋、新宿、渋谷の3つのターミナルを結ぶ路線という意味で従来とは毛色の違う路線ですが、こちらはどちらかといえば再開発ブームに乗った大江戸線現象のコンテクストで見ることが可能ですが、軟弱地盤で既に金融街が形成され、一方東京の副都心ほど商業エリアとしての意味は薄い中之島は、見方によっては阪神福島などで進む再開発事業との関連性もあるのかもしれませんが、ややニュアンスが異なります。路線立地からいって、開業日の19日は本来の利用者が見込めない日曜日でもありますし、開業後何ヶ月かしてからの平日の状況で判断する必要があります。

同時に京阪にとっては、寝屋川信号所までの複々線が天満橋で途切れていて、複々線の輸送力を活用し切れていなかった状況の打開という意味があり、潜在的な需要は期待できるわけです。従来、京橋でJRへ流出していた利用者を梅田至近の新設4駅に運ぶと考えれば、ターミナル容量拡大による需要掘り起こしは期待できます。その意味で大阪市営地下鉄千日前線と競合する阪神なんば線よりも有望と考えられます。

元々京阪はインターアーバンを目指していたのですが、日本の大都市では市内交通の市営主義が強く、20世紀初頭にアメリカで爆発したインターアーバン(都市間電車)が、都市中心部へ直接乗り入れていたのに対し、京阪でいえば天満橋での市電との連絡で我慢せざるを得なかった歴史があります。戦前にも梅田進出を画策して果たせず、子会社の新京阪鉄道も、国鉄との競合を理由に鉄道省から京阪本体とターミナルの分離が求められて大阪天神橋(*)と京都大宮というやや中途半端なターミナル立地に甘んじていたのですが、これが阪急との戦時統合後、戦後分離時に路線がつながっていないことを理由に阪急に召し上げられてしまうという不幸な歴史を重ねた京阪です。

*= かつての天神橋駅は、駅ビルを要する2面2線のコンパクトなターミナルでしたが、駅ビル正面ファサード部は壁が抜ける構造になっていて、都心方向への延伸の意思が認められます。
というわけで、興味深い新線の開業ですが、今後に注目したいところです。

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Saturday, October 11, 2008

気がつけば半値、株安が止まらない

最近、母が保有する株を売却したんですが、そのときの話から始めます。母は自ら株を買うような人ではなく、保有株も父が生前に名義変更で母に持たせたものだったのです。高齢で要介護の母にとっては、株で持っていても意味がないわけで、年金暮らしで急な出費に備える意味から、現金化するということで、私の証券口座で売却したんですが、これが面倒な手続きオンパレードで、結局2ヶ月もかかってやっと終わったのです。

四半世紀前に購入した株ですから、まずは履歴を調べて、取得日の終値を取得価格と見なすことで特定口座へ入庫、名義変更も売却目的ということで、母の株主履歴を引き継ぐことで、贈与税を免除されます。このときの証券窓口でのやりとりで、見なし取得価格が使える一般口座を利用すれば、手続きも簡単だし、見なし取得価格が高めに設定されているので、納付税額も少なくて済むと言われたんですが、ホント証券窓口の尾根遺産^H^H^H^Hお姉さんはわかってないです^_^;。

確定申告して申告納税すれば、確かに国税は安くなりますが、確定申告自体の手間もありますし、確定申告すると、申告内容が地方にも共有されて事後的に住民税が課されたり、年金天引きの介護保険や高齢者医療保険が増額されるわけですから、その方が困るわけです。源泉分離課税を選択する方が合理的なんですが、目先の金額の大小しか見ていないんですね。

日本の金融関係者にはこの手の話は多数ありまして、フローとストックは別物という常識が通用しないことにめまいを覚えました。四半世紀前に取得した株式は、価格はおおむね4倍相当になっておりまして、確かに納付税額は決して小さい額ではないんですが、現行軽減税率で10%(本則20%)が売却益から天引きされて処理が終わる特定口座取引の方が、手続上もメリットがありますし、通常の貯蓄と比べても、配当を受け取りながら期間中の物価上昇率を超えるキャピタルゲインが得られているのですから、多少の現金の目減りは問題ではありませんし、むしろ生活の糧となっているフローとしての年金受給額の手取りが減少する方が痛手です。この辺の当たり前の感覚を投資家と共有できない金融マンが多すぎます。むしろ投資家のはやる気持ちを抑えつつ、喜ばれる結果を得ることの方が重要ではないでしょうか。、ま、現実は上から言われたノルマに追われているんでしょうけど。

元々個人の株式保有の理由は、貯蓄の代替であるわけで、いくら株式を持っていても、またいくら保有株式が値上がりしても、それで直接食べ物や衣料が買えるわけではありません。売って現金に換えて初めて使えるのであって、今回の株安でも、お金が消えたかの如く言う人がいますが誤りです。株、債券、不動産などの資産は、貨幣の価値の貯蔵の側面を代替するのが本来の姿です。

しかし上場大企業同士ならば相互の信用情報が既知であるという前提で、相対で保有する資産を直接交換することも可能ですし、実際に例えば株式市場に無用な圧力を与えない目的で市場外取引は結構頻繁に行われます。つまりは価値の交換手段としての貨幣の機能を一部代替しているわけですね。米国発金融危機というのは、ザックリ言ってこの企業間の信用に基づく相対取引が、相手の信用情報に不信が芽生え機能不全に陥ったということです。中央銀行がいくら資金供給しても追いつかないほど非正規の信用創造がされていたわけです。

そんな中で流れた株式全面安のニュースですが、今回はパニックになっているようですね。米金融危機の連鎖ではあるんですが、今回の日本では大和生命の破綻のニュースが不安心理をかきたてた結果と考えられます。前日には上場REIT(不動産投資信託)の投資法人破綻がありましたし、不安材料は確かにあるんですが、それぞれ個別問題であって、連鎖の可能性はほとんどありません。

というわけで、今回も株の仕込みのチャンスかもしれません。特に相対的に高値で掴んだ金融株の買い増しを狙っておりますが、これは同時に平均購入価格を下げる意味もありますので、相場の状況を見極めたいところです。

ただし日本株の注意事項は、持ち合い株問題があるということです。安定株主対策の美名のもと、事業会社同士が株式を持ち合うことで、市場に出回る株式数が制限されれば、受給がタイトになって株価が下支えされますし、昨今は買収防衛策としても持ち合いがされているのですが、そもそも買収を仕掛けられる企業は、キャッシュフルだったり資本効率が低くて利益率が低かったり、場合によっては保有資産額を下回る時価総額しかなかったりで、経営の不在にこそ理由があるんですが、お構いなしに持ち合いを増やしてきた現実があります。

今回の株安はその結果企業の株式含み損を拡大することとなり、株価半減ならば減損処理で損失を確定させなければなりませんから、当然決算予想の下方修正を迫られ、それがさらに株安を助長するという負のスパイラルに陥る可能性があります。今回の株安もそれで助長された側面があると考えられます。持ち合いに使うお金があったら、自社の将来に備えた投資をすべきなのに、そういう意識が希薄なのは困った問題です。

今月は京阪中之島線が19日に開業します。中之島といえば、江戸時代は廻船問屋の集積地だったところです。廻船問屋というのは、船会社と商社を合わせたような業態ですが、主にコメの売買で収益をあげておりました。このあたりはフラット化する日本の黄金律という記事で取り上げましたが、コメの流通を通じて実現した資本蓄積が、日本の近代に多大な貢献をしたものです。今、地盤沈下がいわれる大阪経済浮揚の起爆剤になるかどうかは定かではありませんが、大都市圏の交通ネットワーク強化という意味で、副都心線や来春の阪神なんば線などと共通点があります。

ただし従来鉄道駅のなかった中之島ですから、既存線との連絡は渡辺橋駅と地下鉄四つ橋線肥後橋駅との地下連絡通路接続のみですから、直接的なネットワーク強化にはなっていないのですが、JR東西線北新地も徒歩圏ですし、中野島駅もJRと阪神の福島駅と徒歩範囲という微妙な位置関係ですから、特に駅勢圏の競合するJR片町線との間で乗客の転移が起こる可能性はあります。開業後どのような変化があるか見ものです。

将来構想として西九条延伸さらに新桜島から北興テクノポート線構想に沿ってWTC延伸などが取り沙汰されておりますが、現時点ではもちろん何も決まっておりません。WTC(ワールドトレードセンター)といえば赤字三セク全国ワースト1の大阪市のお荷物ですが、先日橋下知事が県庁新築計画を凍結してWTCへ入居という注目すべき発言をしております。実現すれば、既存施設の活用で大阪府、大阪市双方の懸案が解決することになりますし、オリンピック招致がコケて開発が滞っているウォーターフロント開発が活性化する可能性もあります。

というわけで金融危機のさなかではありますが、将来の新たな予感を含む京阪中之島線は、楽しみな存在といえそうです。

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Tuesday, September 30, 2008

小さな政治

米国発同時株安が続きます。きっかけは米金融安定化法案を下院が否決したことです。

金融安定化法案の修正案、週内策定めざす 米政権
選挙前ということもありますが、不人気な政策が議会を通りにくいのはいずこも同じのようです。この結果NYダウ777ドル安と大幅に下げたのを皮切りに、欧州、アジアと軒並み下げて東京市場でも、日経平均が年初来安値です。
日経平均大幅続落、終値483円安の1万1259円 金融危機で全面安
市場の混乱は丁度世界を一巡りしたわけです。

しかし総額75兆円の金融安定化策ですが、金融機関の不良資産買取りで事態が沈静化するかといえば答は否です。不良資産の元となる住宅価格の下落が続いている状況では、今は健全でも時間の経過と共に不良資産化するものが次々と出てきますから、問題解決にはなりません。それでも政府がコミットする姿勢を示すことで、変化をマイルドにするぐらいの効果はあるかもしれません。

今回の金融危機ですが、メディアは相変わらず意味も分からず騒いでおりますが、1930年代の金融恐慌の再来のように危機感を煽る姿勢は疑問です。金融恐慌は集団心理による現象であり、現在のように情報が大量にかつ迅速に流通する状況ではありえません。当時と比べてあれもこれもこんなに似ているというのは、あまりにも近視眼的な見方です。今回はそんな話です。

貨幣の物理的特性は非線形的です。少額のコインと紙幣は非連続ですし、紙幣でも額面による発行コストの違いは大きくありませんから、高額紙幣ほど通貨発行益(シニョレッジと言います)は大きくなります。そして100枚単位の帯封留の紙幣は見る機会があるかもしれませんが、その量的ボリュームから億単位の紙幣でも、手提トランクに納まる程度であり、銀行支店やATMへの補充などは現金輸送車で間に合うわけです。

それが兆円単位になれば、それでは間に合わなくなり、コンテナに収めて輸送する必要があります。当然セキュリティも含めてコストがかかりすぎて、実際に動かすことは困難です。こうなると現物貨幣は不便な代物なんですが、例えば小切手ならば書き込む数字の桁数でいくらでも大きな金額を指定できます。もちろん決済に使う当座預金口座に残高がなければ不渡りになりますが、現金輸送車やコンテナを使わなくても運搬できる使い勝手の良さはあるわけです。

さらに進むと、銀行口座同士で残高の数字をやり取りすればもっと容易に高額のお金を動かせるわけですが、それもかつては元帳からカーボンコピーされた伝票でやり取りしていたものが、口座自体がデジタルデータとなり、さらに銀行間オンライン通信が可能になり、通信速度も処理速度もどんどん速くなり、流通速度が増すわけです。

しかしこのことは、同時に貨幣以外の財貨の流通速度との相対的な速度差を増すことを意味します。兆円単位の決済でもクリックだけで一瞬のうちに可能な一方、例えば小麦を同額分運搬するとなれば、大型船舶が何隻も必要となりますし、発地と着地の距離のよっては1月以上の時間も必要です。また国境を越えるときは、通関や検疫で足止めされます。

人に関しても、国家間で移動が制限されているのが普通ですし、特に労働力としてはなおさらです。さらに技術となれば、複数年の研修期間を経て習得されるわけですから、ますます流通速度が下がります。また社会的文化的制約から受け入れが滞る種類の技術もありますので、場合によっては世代交代を伴なう形でしか流通しないものもあります。

このことは、貨幣を媒介として自由に財の交換ができる資本主義社会においては、流通速度の異なる財の交換は必然的に生じる時間差に裁定機会が存在することを意味します。つまり将来高い確率でこうなるという事がらに対して資金を提供してリターンを得ることが可能になります。その意味でとかく批判の対象とされているサブプライムローンやデリバティブや証券化商品などは、グローバル化とIT化の必然的な帰結として登場したものといえます。これらの新しい金融手法を悪者にする議論は馬鹿げてます。

そしてこの流れをリードしたのがアメリカだったのですが、その結果世界の投資資金がアメリカへ集まる事態となったのです。元々基軸通貨国で他国より優位にあるアメリカで、ベルリンの壁崩壊による平和の配当が後押ししてIT革命が起き、さらに新自由主義的な金融自由化と相まって、貨幣の流通速度が増して他国より多くの投資機会を生み出したわけです。その結果が双子の赤字の拡大による消費ブームだったのです。経常赤字で海外へ流出したドル貨幣は、黒字をため込む貿易相手国の国内投資では消化できず、アメリカへ還流する流れとなり、いくら借金しても次々と資金がファイナンスされる状況が続いたわけです。その結果としての住宅バブルであったわけですが、このアメリカにとって都合の良いシステムは当然ながら持続不可能であり、いつか破綻するしかなかったのです。

逆に言えば破綻の解消のためには住宅価格が底値をつけるだけでは足りず、アメリカの巨大な経常赤字が解消されて初めて、歪みが取れて正常化するものでもあります。それは必然的に円ドルレートを円高へ向かわせるものとなります。つまり外需依存の強い今の日本では、当面の経済停滞は避けられないということです。しかも米経常赤字の解消には時間を要しますので、1.8兆円程度の財政出動で下支えできる程度の停滞ではないと断言できます。つまり政府が打ち出している総合経済対策は全く無意味です。

既に世界の中央銀行は、流動性の供給に奔走しておりまして、特に通貨スワップ協定によって日銀など世界の10の中銀でドル供給を開始しました。

日銀、2兆円の即日供給オペを通知――10日連続の即日供給
欧米金融機関のドル調達が滞る中、円で調達して外為市場でドルに換える動きが日本円の流動性にも影響していることからの協調行動ですが、政治的に為替の円高介入や円高誘導を意図した利上げがやりにくい状況の中、円で調達した資金でドルを買う動きが外為市場のノイズとなってドル相場を押し上げる動きを封じる意味もあります。中長期的にはドルの減価を進めるしか手立てがないわけです。日米共に小さな政府を志向して小さな政治に成り下がってしまったようですね。

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Saturday, September 20, 2008

米米蔵負

タイトルは"こめこめくらぶ"と読んでください^_^;。もちろん事故米問題です。当ブログの過去記事でこの問題を取り上げております。要旨は消費されないミニマムアクセス米が腿蔵されていて、税金の無駄遣いになっており、処分法として援助米に回っているというものです。この観点からすれば、現在の事故米問題は北朝鮮向け経済制裁が長引いたからか(苦笑)。

冗談はさておきまして、そもそも食用として消費されないコメをなぜに輸入しなければならないか、それも税金でという謎があるわけです。そもそもの始まりは1993年、冷夏と風水害でコメの作況が悪化し、店頭からコメが減り、外食などでもコメの確保が困難になったことから、緊急輸入の措置がとられたことに始まります。

時あたかもGATTウルグアイラウンドの交渉中で、特に各国で保護対象としている農産物の自由化のステップとして、非関税障壁の関税化による貿易促進が提案されておりました。これに各国が反発していたんですが、欧米では農業分野の補助金を廃止して関税化することへの抵抗であったのに対し、日本をはじめとするアジア諸国の多くではそもそも農産物を自由貿易の枠組みから外すことを主張し、議論は全く噛み合っていなかったのです。

そんな中での日本のコメの緊急輸入ですから、当然日本の立場は微妙でした。それまでは「コメは1粒たりとも入れない」と息巻いていたんですから、他国からのツッコミはおそらく過酷なものだったと推察されます。結局工業製品を中心に自由貿易の恩恵を享受している日本は押し込まれ、関税化と最低輸入義務、いわゆるミニマムアクセスを受け入れることとなります。

ですから関税化は輸入義務とワンセットで、かつ時間をかけた関税の引き下げと輸入拡大の義務も含意されていたのですが、その部分は頑なに無視し、むしろ関税化に抗って農業補助金を廃止しない欧米へのけん制はちゃっかり行うというスタンスを取り続けました。その矛盾がミニマムアクセス米の腿蔵となって現れているわけです。腿蔵されれば当然水没したりカビが生えたりして食用にならないものも出ますし、さらに当初行っていなかった残留農薬検査を在庫分も含めて実施して、メタミドホス汚染米が発見されたわけです。食用にするつもりなら最初からやっとけっての。

その結果、腿蔵されたコメの処分に困るようになってきたんです。とにかく輸入は毎年のことですから、それに見合うだけ消費されないと倉庫が無限に必要になるわけですから、農水省は焦っていたわけです。まともに流通させようとすれば、保護しているはずの農業関係者から裏切り者呼ばわりされてしまうわけですから、できるだけ目立たないようにこっそり処理する必要があったわけです。また廃棄すれば輸入ワクから外される恐れがあるので、食べられなくても棄てることもできなかったわけです。

本来はミニマムアクセスを受け入れた以上、それを消費市場へ届ける流通の整備は欠かせないはずですが、この部分ではむしろ規制緩和の流れに乗ってコメ卸売業への参入を届出制にすることとしたんですが、その結果新規参入が増えて、部分的には競争強化でコメ価格が下がるなどはしたものの、輸入米には高関税がかけられた状態での競争ですkら、国産信仰の強い日本の消費者に輸入米を直接売ることは叶わず、価格差がなければ国産米が売れるのは道理です。かくしてコメ農家は所得を減らし、流通の規制緩和で少しだけ安くはなったものの、関税に守られて国際価格より高いコメを消費者は買わされ、あまつさえ流通業者の増加で市場規律も緩みがちで、以前から食用米への加工用くず米の混入は指摘されてました。スーパーなどでバーゲンで売られる安いコメには、粒が小さかったり割れていたりするものが見られました。多数の業者でやり取りする間に混ぜてしまえばわからないわけで、流通業者に偽装のインセンティブを与えたわけです。

というわけで、大臣や事務次官が辞めたぐらいで幕引きできる問題ではなくなりました。結局農業者、消費者、流通業者全てを不幸にする三方丸損状態となるわけです。というわけで、日本が受け入れた関税化ですが、当事国が関税引き下げや輸入拡大に努力しないのであればうまくいくわけがないんで、欧米式の農業補助金の方が良かったのではないでしょうか。この際問題になるのは、補助金を得て安値となった農産物が輸出されて途上国の農業を直撃することですが、これは基本的に事後的な援助と農業技術移転の促進などで対応するようルール化されることが望ましいと考えます。援助であれ何であれ、保存が利かない農産物を適切に消費することは重要で、農業補助金を交付する場合、貧困国への援助も織り込んだ対応とすることは、結局農業を助けます。

あとこのように農業で食えない状況を放置すると、農業の継承が難しくなる点も問題です。実際日本の農業はボロボロです。その結果農地の地価は収量を反映して安値となりますから、農地保有者には常に農地の転用の期待を抱かせることになります。そして相続などで実際に財産権を盾に転用され、平地で市場アクセスの良好な北関東などの農地でさえ、虫食い状に開発されて農地の生産性を下げています。本来は農地の転用は原則禁止とすべきです。農地であれば相続税は猶予されますが、独立して都市に住まう2代目に営農の意思がなければ農地として安値で売るよりも、相続税を払っても高値で売れる転用は魅力的です。加えて公共事業であれ民間事業であれ、開発行為によって営農が継続しがたい状況になれば、合法的に農地の転用が可能になるわけですから、地方の公共事業のおねだりは、土建屋を潤すに留まらず、地権者である農業者への掴み金となることも指摘できます。ゆえに公共事業をおらが村に運ぶ政治家先生が尊ばれるわけですし、公共民間を問わず開発行為で多額の用地買収費を要するから事業は進まないで非効率になりますし、土地が化ける可能性が土地の流動性を極端に下げているわけです。日本の地価が高い理由です。

というわけで基準地価が発表されました。

基準地価の下落率拡大 全国平均、08年1.2% 3大都市圏は伸び鈍化
昨年と比べて下落傾向が強まっているわけですが、それをサブプライムショックによる外資の撤退に求めるとすれば木を見て森を見ずです。むしろ実態は国内外を問わず地価の上昇は限られた地域の限られた土地だけで、いずれもバブルといえるものだったわけです。それとの対比で日本の大都市圏の中心地は割安と見られていただけの話で、バブルが弾けてみればそうでもなかったし、むしろ昨年段階で上がりすぎていたと見るべきでしょう。

といいますのは、例えばマンションですが、2006年下半期から新築マンションが値上げされ、それと期を一にしてマンションの販売にブレーキがかかりました。また再開発ラッシュが続いた去年までは、再開発による古いビルの取り壊しのために仮オフィス需要が強かったことが、オフィス賃料の上昇トレンドとなっていただけで、一巡すれば仮需要は剥げ落ち、空室率が高まってきたわけです。

元々人口減少が始まった日本において、住宅需要が将来高まることはありませんし、現在世帯総数の2割増の住宅ストックが既に存在している状況で、いつまでも新築マンションが売れること自体あり得ない話です。これからは住み替え促進などで世代間で住宅ストックを再配分することで、大量の建築廃材を生み出す建て替えをなくすことが望ましいわけで、その意味で京王電鉄の取組みは注目されます。

またグローバル化の中で新興国が台頭する中、工業分野は省力化と規模の経済による集約化が進みますから、この面でも土地の需要は減ります。などなど、日本の地価の今回の下落傾向は、バブル崩壊により長期トレンドが顕在化したものと見ることができます。つまりサブプライムショック以来のアメリカの経済混乱が収まるまで景気は回復しないなんて言っていたら、アメリカといっしょに沈みかねません。

80年代後半のバブル崩壊は、アメリカの貯蓄投資組合(S&L)の破綻にしろ、日本や北欧諸国にしろ、国内問題だったわけですが、その後急速にグローバル化が進み、バブルの後始末を3年ほどで終えた米や北欧がその後の世界経済のけん引役となった一方、処理に手間取って15年もの時を失った日本は、外需依存とりわけアメリカ依存を強めた結果、今回のようにアメリカがこけたらどうしようもなくなるわけです。世界中に大量にばら撒かれたドルの信認に瑕がついたわけですから、事態はドルショックとオイルショックとバブル崩壊が同時に起こったようなもので、外需頼みでは浮上できません。

というわけで「コメとアメリカ、2つの米で道を誤った日本」がタイトルのココロなのだ^_^;。

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Monday, September 15, 2008

ロス列車事故は対岸の火事?

えーと、どうにも悲惨な事故ですが、情報が錯綜しております。

通勤列車側が信号見落とし 米衝突事故、死者25人に
信号無視原因か ロス列車衝突
米列車衝突、原因は通勤列車の信号見落とし…死者25人に
運転士、信号見落としか=事故1分前にメール送信-米加州
おそらくニュースソースは海外通信社の配信記事で同じなんでしょうけど、メディアごとに取り上げ方が微妙に違います。現場はU字カーブで見通し悪く、手前に行違い信号場があったそうで、鉄道を知っていれば、これだけで通勤列車側が何らかの理由で停止信号を冒進して貨物列車と正面衝突した事故とわかります。現場の見通しの悪さは直接的には事故には関係しません。

また事故1分前に携帯メールを送っていたことが証言されてますが、このことと信号見落としの関連性については、現時点では断定は避けるべきでしょう。それよりもATSが未設置だったことで、安全対策の不備が疑われます。またそこには同じ線路を複数の事業者が共同使用する米国の鉄道事情もあります。加えて日本の鉄道事業法では、設置基準こそ尼崎事故以後ですが、ATS設置が義務付けられておりましたから、鉄道事業に対する政府の関与の度合いに違いがあります。当局は30年前から設置を推奨しながら、コスト負担を嫌った事業者の不作為で放置されていたわけです。

日本でも先日JR西日本山崎社長をはじめとする関係者10人が兵庫県警から書類送検され、検察が起訴するかどうかが注目されてますが、米国での事故の責任の取り方には興味があります。

JR西社長ら書類送検 尼崎脱線事故、業過致死傷容疑で10人
と同時に、この事故を契機にATS設置基準が定められ、私鉄各社は速度照査機能を持たせた保安装置の更新計画を発表し準備にかかっておりますし、従来予防安全重視の立場から、軽視されがちだった衝突安全についても、JR東日本E233系のクラッシャブルゾーン設定やJR西日本の223系でも今年7月落成分から車体強度向上仕様となるなどの変化が出ておりますが、他社への波及はこれからでしょうか。ただし元々衝突安全を重視していたアメリカの構造規則で作られたメトロリンクの客車が、外観は維持しながら機関車が食い込んで中身がグチャグチャになったように、車体強度強化の効果は過大評価できないこともまた抑えておくべきでしょう。

あとロス通勤列車の運転士が下請会社社員だった件ですが、いかにもアメリカらしい労働市場の流動性の産物と見ることも可能ですが、むしろ斜陽産業だった鉄道事業ゆえの問題とも見れます。鉄道事業従事者とりわけ運転要員については、専門性が高く育成に長い時間と費用がかかる点はどこの国でも同じです。年功序列が崩壊したと言われる昨今の日本でも、こと鉄道に関しては徒弟制度が健在です。新入社員は現場に配属されると、その現場のベテラン社員を師匠としてみっちり基礎を仕込まれた上で、本人の希望と能力に応じて、地上職から列車乗務職へ、車掌から運転士へとキャリアアップする仕組みで、その中で必要なスキルを身につけるわけです。

この仕組みは、若い社員にコストをかけて育成するわけですから、鉄道事業者の負担は重いわけですから、人口増で右肩上がりの需要増を見込めるうちは良いとして、需要増を見込めない成熟段階になると、即戦力の中途社員や定年後の嘱託社員を多用することで、当面の負担の軽減に走りたくなるわけです。実際国鉄改革の前後で新規採用が手控えられたJR各社では、30代40代の中堅社員が手薄で、定年間近の高齢社員と経験不足の若手社員で技術継承に齟齬を来す状況が見られました。思い出して欲しいんですが、JR尼崎事故の高見運転士の若さが事故を引き起こす要因の一つであったことです。

あとあまり知られておりませんが、2005年春に阪急電鉄などから運転士などの労働者派遣法の規制緩和要求が出されていたんですが、尼崎事故後に国土交通省が門前払いをしたことで沙汰止みになりました。もし認めらていれば、日本でも派遣運転士が登場したかもしれないですが、認めるべきではありません。人材育成は企業の責任です。鉄道事業のような公共性の高い事業の場合、人材育成は事業継続のための投資でもあるわけで、これを外部に依存すれば、むしろ事業の継続性を阻害します。会計規則上従業員の技能などはバランスシートに反映されないのですが、事業は人の格言は、1分前メール送信でわかるモチベーションの低さから、ロス列車事故でも明らかでしょう。

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Saturday, September 13, 2008

川崎重工イーエフセット開発、日車とは違います

結構ビッグニュースです。

時速350キロの高速鉄道車両、川崎重工が開発着手
世界市場向け350km/h新型高速鉄道車両「efSET」の自社開発について
川崎重工は鉄道車両メーカーとしては珍しく、自らリスクを取って市場開拓を行う姿勢が強いですが、ついに高速車両まで自社開発することとなりました。商社の助けを借りながらの海外展開も熱心で、ニューヨーク市地下鉄の車両更新をほぼ独占受注するなどの実績を重ねておりますが、それだけに海外市場の難しさを知りつつ、国内では為し得ない高収益も可能というのをわかっているのでしょう。

海外向け高速鉄道車両では、日立の英国向けClass395電車が既に納入され、2009年12月予定の高速新線CTRLで営業開始予定です。日立のそれはAtrain技術を応用した廉価版で、IC225の置換え用という位置づけですが、efSETは350km/hという世界最高峰の高速運転を前提としたものということで、基本設計を2010年3月までに終え、設計検証も行うということですから、多分試験車両が作られるものと思います。さて試運転はどこでやるんでしょうか。

世界的に鉄道の復権は進んでおりますが、ひとり日本だけがその波に乗り遅れていた感があります。それが川崎重工のチャレンジで変わるかどうか、楽しみです。世界に目を向ければ、仏アルストムのAGVや独シーメンスのICE3などに留まらず、スペインもAVE350と称するタルゴトレインの改良型を独の協力を得て実現してますし、伊フィアットのペンドリーノやETR500、スウエーデンABBのX2000など百花繚乱です。今後BRICsやその他の新興国、資源国などで鉄道投資が続くのは確実で、既に陣取り合戦は始まっているといえます。

その中で台湾新幹線を投げ出した某社は、リニアを夢見る引きこもり自閉症児がごとき対応ですが、川重の試験車両の試運転には協力しないだろうなあ。伝え聞くところでは、リニアをアメリカに輸出したいらしいという話はありますが、アメリカでは既に貨物鉄道の保有する線路を利用した旅客輸送を行っている地域があり、事故報道で話題のメトロリンクも、カリフォルニア州南部のロスアンジェルス近郊輸送を担う旅客鉄道事業者で、いわゆるモーダルシフト政策で公的支援を得ております。

アメリカは貨物鉄道がインフラを保有し、Amtrakやメトロリンクなどが線路使用料を支払って旅客列車を運行するという日本のネガフィルムのような鉄道事情ですが、貨物鉄道はランドブリッジと称される産業インフラでもあり、船舶やトラックに対して圧倒的な競争力を持っている存在でもあり、新たにインフラ投資する必要は低いでしょう。世界を見ればリニアの入り込む余地はあまりありません。

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Thursday, September 04, 2008

リニアで低炭素社会実現のウソ

何か首相が辞めたらしいんだけど、そのドサクサでこんなニュースが流れてます。

リニア中央新幹線:年内本格調査へ 政府、慎重姿勢を転換
うーん、事態はあんまり変わらんと思うぞ。

そもそも総合経済対策ってのが曲者でして、この言葉は小渕政権以来でしょうか。当時の小渕首相は「私は世界一の借金王」とシニカルに語っていたように、現在に至る財政赤字のかなりの部分を作った政策です。当時山一證券の破綻など金融危機で実体経済が冷え込んでいたことから、下支えのために大規模財政出動が行われたわけですが、効果はありませんでした。そりゃそうです。これだけ大盤振る舞いすれば、後に大増税が待ち受けていると誰しも感じます。それに備えて貯蓄に励むだけですから、消費は低迷し、株価も冴えないということになります。そういえば景気後退を政府も認めたように、状況は似ています。

公明党発案の地域振興券なんてのもありましたが、今回も定額減税が提案されております。しかも規模も財源も決まってなくて、ただやるということと、財源その他は年内に決めるということを決めただけというんですから、ほとんど選挙向けのリップサービスです。そもそも11.7兆円という規模を謳いながら、補正予算を睨んで、いわゆる真水の財政出動規模は1.8兆円、これを赤字国債発行せずにやろうということです。そのためになにやら怪しげなものがゾロゾロと潜んでいて、季節はずれの納涼ミステリーです。

それなら財政出動の1.8兆円だけ言えばいいものですが、総合経済対策と言うからには、景気の良い数字が並んでないとカッコつかないということです。しかも中身は各省庁の作文をホチキスで綴じただけ、例えば中小企業対策で資金繰り支援のための信用保証制度ですが、元々中小企業金融公庫の制度融資としてあるものを、信用保証枠を拡大しただけです。これは実は中小企業の救済にはならない制度でして、銀行が窓口ですから、中小企業が相談に行って、自行では貸せないからと斡旋するケースが多いんです。悪質な場合は斡旋して融資が実行されて手にした資金を自行向け債務の一括返済に回させ、事実上の融資の付け替えをするケースまであります。つまりは銀行の貸し渋り、貸しはがしを助け、リスクを移転して破綻したら税金で補填というとんでもない制度です。それもこれもバーゼルIIの自己資本規制で資産の格付けに応じたリスク度合いで引き当てる制度の弊害でして、景気悪化で融資先の格付け低下で自己資本比率を守らなければならないのですが、このルール自体日本の押し込んだものです

あといわゆる財政出動の真水部分の1.8兆円も、赤字国債には頼らないけど建設国債ならオッケー(与謝野経済財政担当相談)というから呆れます。赤字国債と建設国債の違いって、前者は新規発行を法令によって定めなければならない(ゆえにねじれ国会では実現が難しい)のに対し、公共事業の円滑な執行のための後者はその必要がなく、金利が建設利息として事業費に盛り込まれているということですが、もちろん借金に違いはなく、野放図な発行が財政に負荷を与えるのも同じです。あとは予備費の充当などが考えられているようですが、それだけでは足りず、一部特別会計からの繰り入れも使うようですが、いわゆる霞ヶ関埋蔵金論争に火をつけそうなので、明示できないのでしょう。

あとこれも申し上げておきたいんですが、燃料費高騰に苦しむとされる農業、漁業、運送業への支援が謳われているんですが、運送業への支援を今言うならば、なぜに道路特定財源の暫定税率を強引に復活させたのでしょうか。また高速道路料金の値下げで道路の借金返せるんかい。加えて農業や漁業で使う燃料の軽油引取税は猶予されていることも忘れてはなりません。元々負担を逃れていた者をなぜに政府が助けるのか(怒)。

とまあツッコミどころ満載の官僚作文の中に、リニアが紛れ込んでいたわけです。笑っちゃいますね。ま、報道のように手続きとして一歩前進ではあるんですが、基本計画線である中央新幹線を整備計画線に格上げするための調査について、現時点では地質・地形調査に限定しているものを、全般的な調査を認めるという内容でして、確かに財政出動は必要なく、命令に応じてJR東海が自費で実施するわけですから、財政は痛まないし、低炭素社会実現をアピールできるし、良い事ずくめに見えます。それに飛びついたのが辞めた人だったというオチですね^_^;。

リニアが低炭素社会実現に寄与しないという反論は一応真面目にしておきます。一番重要な点は、既に日本では人口減少が始まっていて、かつグローバル化でかつて日本の得意分野だった工業製品の生産、輸出に新興国が低賃金を武器に参入してきていて、現在の産業構造を維持できない局面にあるわけです。いわゆる工業化の果実の収穫の持続可能性に疑義が生じている状況で、実際、工業集積地の東海道ベルト地帯を貫く東海道新幹線の利用者の実数も長らく横ばいが続く中、新たな固定設備を設けても、需要がそれに追いつかないのは明白です。つまりは中央リニアは東海道新幹線と需要を食い合うだけの存在にしかなりません。

にもかかわらず電力消費量が新幹線の3倍と言われております。つまり電力消費の絶対値は純増する一方、需要が追いつかなければエネルギー効率はそれだけ落ちるわけです。クールアース実現を謳いながらアースヒーターにしかならないわけです。

もう一つ指摘しておきますが、東海道新幹線建設時に、中部電力管内の電力不足解消を目的に建設されたのが浜岡原発です。新幹線の3倍の電力消費を賄うためには、ザックリ浜岡の3倍見当の発電所が新たに必要になるわけです。仮に原子力発電所を建設するとして、東海地震などの警戒地域が被る中央新幹線沿線では難しいでしょう。かといって他地域に建設するとなれば、尚のこと反対に遭う可能性が高くなります。結果的に電力確保を火力に依存せざるを得なくなるとすれば、ほら、CO2増えちゃいました。省エネ逆行ですね。

というわけで、あんまり辞めた人を悪く言うつもりはないけれど、しょせんは思いつきレベルの話です。しょーもなー。ところで辞めたの誰でしたっけ?

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Tuesday, August 26, 2008

北神急行電鉄経営支援の不思議

公共料金と見なされる鉄道運賃ですが、いろいろと不思議なことがあります。今回はそんな話です。まずは報道チェックです。

兵庫県など3者、北神急行支援継続 路線存続に危機感
この北神急行電鉄という会社は、かなり変わった会社でして、新神戸で神戸市営地下鉄山手線と接続し相互直通していて、第三セクターのような雰囲気ですが、実は純民間企業で、阪急電鉄と神戸電鉄が出資、その後神鉄が2007年に不動産評価損発生で支援停止し、阪急阪神ホールディングスの連結子会社となっております。

とはいえ経営は苦しく、特に高運賃ゆえに利用者が伸びないことが悩みでした。とにかく営業キロ7.5kmで430円という高運賃で、且つ三宮へは市営地下鉄運賃が合算されるので、割高感はかなりあります。そこで1999年に県と市による年間5.4億円の支援を得て運賃を80円値下げし、350円としました。それでも割高ではありますが。

さらに2002年、トンネルを含む鉄道施設を神戸高速鉄道に譲渡し、自らは第ニ種鉄道事業者となることで、資産圧縮を行いました。第三セクターである神戸高速鉄道が第三種事業者として線路保有することで、固定資産税が減免されますから、この面でも支援策の性格があります。

記事にもありますように、1999年からの財政支援は10年間の予定だったわけですが、北神が3億円の経常利益を計上していることもあり、県は09年以降は支援しないと断言して協議会が休止していたものが、ここへ来て復活したわけです。支援がなくなって運賃再値上げとなれば、路線の存続も危ぶまれるということでの歩み寄りのようです。

そもそも北神線は計画段階から不思議テンコ盛りの路線でして、布引(新神戸)から東へ向かって市バス石屋川車庫付近の原田(阪急王子公園駅付近)までの地下鉄計画だったものが、なぜか北へ向きを変えて六甲山へ向かったのです。ゆえに市営地下鉄新神戸駅自体も、当初は新幹線と並行に東西方向に駅ができるはずだったのですが、南北方向に変更され、しかも新幹線下部の施工には旧国鉄から厳しい条件までつけられています。それでも建設され、1988年に開業しました。何らかの政治力学が働いた可能性はありそうです。

阪急と言えば、1970年大阪万博関連で、北大阪急行電鉄でひと山当ててます。北急は一応第三セクターですが、阪急グループが過半数の株式を保有する民間主導の会社で、江坂~千里中央~万国博中央口間のうち、千里中央~万国博中央口間は、計画中の中国自動車道の本線車道予定地に線路を設置し、万博終了後に線路を撤去する計画でした。車両も大阪市営30系の同型車を導入し、万博終了後に大阪市に車両を買い取ってもらう計画でした。それによって固定費負担の嵩む開業直後に特需で投資を回収し、車両売却で資産圧縮してますから、運賃を低廉に抑え、市営地下鉄と合算となる直通客にも負担の少ない運賃水準を維持しています。

この辺は大阪市の市営モンロー主義を逆手に取った感があります。江坂以北は吹田市域に属しますから、市の資産を市外で持つことに対する議会筋への説明が必要です。加えて万博輸送と千里ニュータウン開発関連輸送で、千里線を延伸して箕面線とつないで環状線とする構想を持っていた阪急にとっては、市営地下鉄の北進は自社エリアの侵食と映っていたようです。結果的に第三セクター設立で譲歩したものの、大阪市の株式保有割合を抑え込んで主導権を握ります。

あくまでも推測ですが、この成功体験が阪急を北神線建設に駆り立てたのではないかと思います。既に自動車道の新神戸トンネルが1976年に開通し、市営バスが三宮と箕谷地区を結んでいた状況を、関係が深まっていた神鉄沿線への侵食と映っていたかもしれません。加えて地下鉄の原田延伸は神戸線の並行路線となるわけですから、これを阻止した上で新神戸トンネルのバスに対抗することを考えたのではないでしょうか。加えてウッディータウンなど神戸市北部から三田市にかけての開発計画で発生する輸送需要を、神鉄だけでは捌ききれない可能性があるということで、神鉄谷上駅と三宮を直結する構想が浮上したものと思われます。ニュータウン開発が絡みますので、鉄道建設公団P線工事の指定を受け、利子補給を受けて建設が進みました。

しかし中間駅なしでトンネルだけの鉄道ですから、沿線開発の余地はなく、ひたすら神鉄沿線から発生する利用客を吸収するしかありません。乗客の獲得はあくまでも乗客自身によるルート選択の問題となります。となると7.5kmで430円という高運賃が大きなネックとなるわけです。

こういったケースでは、常磐快速線と緩行線の選択や東急新玉川線開業時のルート選定などで、運賃が高くても速くて利便性に優れたルートが選択される傾向がありましたが、北神線の運賃水準はおそらくそれを突き抜けたレベルだったのでしょう。利便性に優れていても高運賃の北神線ルートは選択されませんでした。さらに神鉄沿線からだと新神戸の市営地下鉄との運賃合算に神鉄運賃の合算が加わりますので、割高感が増すことになります。三田からだと、JRで大阪へ出て三宮へ向かった方が速くて安いなんてことにもなります。かくして県と市による運賃値下げのための財政支援という異例の事態となったわけです。

とはいえ劇的に安くなったわけではありませんので焼け石に水、それでも経常利益を出すまでにはなりましたが、累積債務が300億円以上ある中では、存続がやっとというのが実際です。その間に兵庫県では三セク鉄道の三木鉄道の廃止があり、県が支援を打ち出せないまま廃止を公約した市長が選ばれて廃止が実行されたわけですから、とりあえず利益を出している純民間企業への支援は、県としては納税者への説明がつきにくい状況です。

思えば神戸三田地区の開発計画は、バブルの時代の徒花だったかもしれません。気がつけば国際貿易港としての神戸の地位は低下し、近畿圏の中心都市である大阪市の求心力も長期低落傾向が否めない中で、東京の地価上昇が遅れて地方へ波及した結果、ある種の周回遅れ現象が起きているわけです。20年経ってもバブルの後遺症はなくならないのですから、地方の浮揚は道険しです。

それと東急新玉川線のケースを根拠に、鉄道運賃は価格弾力性が低いから、運賃を上げて線増などのインフラ投資を行うべきという議論が一部にありますが、北神線のケースで見る限り、かなりあやしい話となります。実際には乗客が感じる価格差の程度で、価格弾力性が出たり出なかったりするに過ぎないと見る方がよさそうです。そして価格弾力性が出ない水準でのインフラ投資による輸送改善では、改善による乗客の選択が混雑を助長する可能性すらあります。例えば東急田園都市線が段階的に輸送改善を重ねた結果、首都圏私鉄の最混雑路線になったというありがたくない結果が生じております。

大都市圏以外の地域では、実質的にクルマ社会となっておりますので、鉄道運賃よりもガソリン価格の方が影響が大きいかもしれませんが、最近明らかに値下がりしております。お盆シーズンの需要の落ち込みがよほど激しかったものと思いますが、結果的に小売在庫が拡大して値下げを余儀なくされたようです。その一方で軽油は下がっておりませんから、価格差が縮まっております。日本では乗用車はガソリン、トラックなど商用車はディーゼルという棲み分けがされてますので、マイカーの利用が手控えられた一方、手控えが効かない商用車向けの軽油は下がらないということでしょう。ここにも価格弾力性の差が見られます。乗客の選択でしか利用を増やせない北神の運賃補助がやめられない理由が透けて見えますね。

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Sunday, August 17, 2008

JR東海が日本車輌を子会社化

えー、北京五輪で電波ジャック状態の日本ですが、その間に世界が動いております。とりわけグルジア紛争の先行きはキナ臭いのですが、とりあえず当事国の和平文書調印でひと区切りです。

グルジア和平が発効、ロシア大統領署名 撤退は流動的
とはいえ北京五輪を狙ったかのような今回の紛争です。悪しき前例とならないよう欧米の外交攻勢は凄まじいものがあります。日本にとっては遠い国の話かもしれませんが、欧州向けの石油や天然ガスの供給源としてアゼルバイジャンなどカスピ海沿岸地域の比重は重く、グルジアはロシアを経由しないパイプラインの経由地ですから、そこがロシアと対立すると、当然エネルギー市況を悪化させる可能性があります。こういうニュースを見過ごして、事後的に原油が上がったと大騒ぎするんですから、日本も困った国です。アメリカ議会では2014年のロシアのソチ五輪の開催地変更の決議までされて、モスクワ五輪の悪夢再来の予感すらあります。
ソチ冬季五輪の開催地変更を要求 米議員が決議案
あとパキスタンの政情不安など、世界は揺れ動いております。そんなときに五輪フィーバーの日本のメディアのしょーもなさが情けないです。せめて特番の合間の通常の報道ワクぐらいは、五輪の扱いを減らすべきです。その他のニュースを知りたい視聴者の存在を無視してます。

前置きはさておき、鉄道界のビッグニュースです。

JR東海、日本車両を買収 リニア総合体制整える
記事にもあるとおり、現在日車株1.8%を保持するJR東海が、TOB(株式公開買い付け)によって50.1%まで保有比率を上げ、買い付け価格は1株370円ということで、必要資金最大282億円ということで、リニア開発の秘密保持が狙いのようです。このあたりにJR東海らしさが出ています。

鉄道事業者と車輌メーカーの関係でいえば、JR東日本が直営の新津車輌センターを保有し、ほぼ1日1両ベースでロールアウトする量産体制を採り、実は国内メーカー中断トツの実績です。ただし製造技術面では東急車輛の指導下にあって、特許なども共同で取得する体制を築いているなど、緊密な関係にあります。おそらく国鉄時代に職権で特許公開を迫ったことに対する負い目があるのかもしれません。

その一方で同じく川崎重工と日立製作所も有力車輌ベンダーですが、特に川崎重工ではJR化後の205系大量発注を1社で受注するなど、気を吐いておりますが、これもJR東日本の方針で、国鉄時代のように設計まで済ませてメーカーへ発注する形態だと、メーカーは単なる組立屋になってしまい、技術革新にメーカーの力を使えないということで、国鉄時代の慣行を敢えて覆したものです。このようにJR東日本は車輌発注も基本的にオープン化戦略を取っており、敢えてメーカーの育成を行ってビジネスパートナーとする戦略です。

それに対して今回のJR東海の戦略は、少々古臭い垂直統合型戦略といえそうです。日車自身は名門企業で技術力もありますが、メーカー間の力関係は大分変わってしまい、劣勢は否めないところです。そういった意味では日車にとっても今回のTOBは事業の再構築のチャンスではあります。

元々系列に車輌メーカーを持つ戦略は、多くの私鉄で取られていたわけで、東急車輛(東急)、近畿車輛(近鉄)、アルナ工機(阪急)、武庫川車輌(阪神)などがありましたし、西武鉄道のように自社工場で車輌製造を手がける例もありました。それらが今は整理淘汰され、国鉄解体でJR各社も競争入札でメーカーを決めるようになり、小規模メーカーはコスト面で太刀打ちできなくなります。既にアルナは路面電車部門をグループ外へ切り出して解散、武庫川車輌も量産メーカーとなって鋼製車に対応できなくなった川崎重工の下請けの組立屋のようなことをしていて、車輌メーカーとしての実態は失われています。JR東日本と関係を深めた東急車輛ですが、一時西武鉄道へ納入したり、日立メインの相鉄をJR東日本と共同で肩代わりしたりして販路を確保してますし、近畿車輛もJR西日本や阪神などへ販路を拡げて私鉄系列色は薄まっている感があります。

時代の流れは明らかにオープン化に傾きつつあるわけで、その流れの中でこのニュースに接すると、何だか時代錯誤の感も拭えないのですが、果たして吉と出るか凶と出るか、推移を見守りたいですね。

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Saturday, August 02, 2008

副都心線現象?

副都心線開業から1月半、度々列車遅延が生じたり、利用者が想定を下回ったりと、開業前の期待がやや後退した感のある副都心線ですが、真価を発揮するのは、2012年に予定される東急東横線との相互直通運転開始以降でしょうから、今はまだ助走期間と見ておきましょう。

副都心線自体は、都市計画13号線として以前から計画されていた路線ですが、それ以前の都市計画で8号線の一部と位置づけられていたこともあって、都計8号線を具体化した有楽町線の一部として小竹向原~営団成増(現地下鉄成増)間が最初の開業区間となります(1987年8月)。この時点で池袋~小竹向原間は上下2層の地下トンネルが構築されていて、既に13号線の準備がされていたわけですが、混雑緩和対策として西武との相互直通が本格化する1998年3月の練馬駅高架化に先駆けて、1994年12月に有楽町新線として開業、途中駅の要町と千川は通過とされました。新線池袋駅が既存各駅から離れていたこともあり、新線はいつも空いていて、帰宅時の着席乗車狙いの裏技に利用されていたようです。副都心線開業でそれがなくなったわけですから、東武鉄道がTJライナーで定員制着席サービスを開始したことは、理に適っているといえます^_^;。

ただ、実際に13号線渋谷延伸が都市計画決定されたのは、2001年5月、翌6月には着工という時系列の動きが特異な印象です。94年に有楽町新線として開業した時点で、渋谷延伸まで見通せていたというと、疑問が残ります。というのも、当時の帝都高速度交通営団(以下営団と記す)自身が、旧国鉄に倣って民営化される予定があったため、微妙な時期であったことを指摘しておきます。

当時、2000年に南北線全通と東急目黒線との相互直通運転、半蔵門線押上延伸と東武伊勢崎線との相互直通化工事がたけなわの頃であり、民営化を睨めば東京の地下鉄新線に打ち止め感が漂っておりました。それ故に87年時点からトンネルや駅の構造物は完成しながら、利用されていなかった13号線施設の有効利用は、追加費用をかけずにできる混雑緩和策という性格のものといえます。

さて、13号線延伸が都市計画決定されスピード着工された2001年時点ですが、前年に南北線が全通し東急目黒線との相互直通を開始し、半蔵門線押上延伸が継続されていたわけですから、営団時代の建設線2線の原則に照らせば、13号線の新規着工はその延長線上とも取れますが、既に営団の民営化方針が具体化しており、実際半蔵門線開業後の2004年に民営化され、東京地下鉄株式会社(通称東京メトロ)がスタートしたわけですから、13号線着工は不自然な感があります。

よく考えて見れば、その直前の2001年4月、小泉政権が発足し、「官から民へ」のキャッチフレーズで小気味よさをアピールしていたわけです。とするとますます13号線着工は逆行イメージですが、同時に「都市再生」もよく使われたフレーズです。そう、従来の公共工事で国の資金を地方へばら撒くのではなく、民間資金による都市活性化もまた小泉政権の政策の目玉だったわけです。つまり民営化されればとても自前で新線建設なんて無理な営団に、地下鉄建設補助が使えるうちに新線を作らせて、沿線の再開発の呼び水にしようという思惑があったものと思われます。実際、2000年全通の南北線や都営大江戸線沿線では、大規模な再開発ラッシュが起きていたわけですから、その効果を持続させることは考えられたと思います。そう考えると、地方のローカル線同様の政治路線と言えなくもないですね。この辺は以前の記事でも取り上げました。

もちろんその経済効果に疑問のある地方の赤字ローカル線に比べれば、遥かに経済効果は多きいわけですが、同時に行われた容積率緩和などの一連の規制緩和策と相まって、民間デベロッパーへの補助金的性格もあるわけです。その結果、民間設備投資が活発化して景気回復が演出されたわけですから、政治家としての人気取り効果は抜群でした。実際2005年の郵政選挙では、元々民主党が強かった都市部の選挙区ほど雪崩を打って与党が大勝したわけです。

とはいえ以前から指摘しておりますように、再開発ブームも一巡すれば終わるわけで、その後の展望があるわけではありません。特に住宅に関しては、団塊ジュニア世代の購買が一巡すれば、それ以後の就職氷河期世代にはそもそも購買力がありませんし、また過去の持ち家政策の結果として、質を問わなければ大量の住宅ストックが積み上がっている状況で、いわゆる分譲マンションでも個別区分所有者による賃貸が常態化していて、マンション管理組合にも隠れ切支丹ならぬ隠れ賃貸住民の意向が反映される傾向もあります。ま、その方が住民目線での管理の質は向上しますから、結果的に区分所有者にもプラスなんですが。

というわけで、副都心線の開業後のトラブルも、少し違った見方が可能です。営団改め東京メトロにとっては、民営化前の駆け込みであっても、従来の地下鉄建設補助を枠組みが利用できることで、民営化後の自社の資産価値を高められますし、特にネットワークの外部性が働くという点で、他の大手私鉄とは立場の違いがあるわけです。また目の前にはJR東日本というお手本があるわけで、たとえ民営化前の駆け込みであっても、継承資産の強化は大都市圏の事業者として優位に立てるわけです。問題はその有効利用であって、これこそ民営化後の新会社の特徴を打ち出せる部分と考えたわけです。

実際に湘南新宿ラインで既存鉄道ストックの有効利用のお手本を見せられたメトロにとって、東武東上線、西武池袋線とともに、東急東横線の相互直通希望は渡りに船だったはずです。渋谷から先につながることで、メトロのネットワーク強化は、他社線を培養路線とすることで、ある意味広域路線を維持しなければならないJR東日本より優位ですらあるということですね。

ま、その辺のもろもろで、営団時代に民営化を睨んだ布石として、副都心線のあり方が決定されたと考えられます。それがホームドア設置とワンマン運転、東新宿に待避線を設けての急行運転など、営団時代には考えられなかったチャレンジへと向かわせたのでしょう。その結果はスタートから躓くことになりますが。

東京メトロ副都心線でまた遅れ
路線の成り立ちから木に竹を接ぐが如し直通運転で、メトロと乗入各社は新線向けの新車で揃えることが適わず、在来車の改造で対応した結果、例えば定位置停止装置(TASC)の精度調整などで未消化の問題を抱えていたのでしょう。この辺はライバルの山手線のホームドア設置にも教訓を残しました。

それと、後から建設される地下鉄新線の常として、トンネルが深い位置になり、駅へのアクセス性が悪化することは避けられないところです。

副都心線渋谷駅公開・地下5階乗り換え大変?・JRから距離
この辺は実際に利用して見ると顕著です。JRをはじめ既存各線との乗換が不便です。東横線とは12年の相互直通開始で解消されますが、東急としては渋谷へ買い物客の取り込みという点で、現状はあまりプラスになっておりません。また東急文化会館跡地の高層ビルへの東急デパート入居が予定されておりますが、皮肉なことに、東横線との相互直通開始は、池袋のデパートが直面する素通りの危機をなぞる恐れがあります。加えて東横店撤退後予定される駅ビル計画の進捗如何では、例えばルミネなどJR系列の商業施設の進出も考えられますので、渋谷の再開発に対する東急の期待は裏切られる可能性もあります。加えて再開発の全体計画が終了するまでに20年以上を要することから、常に工事が行われる状況で集客しなければならないわけですから、下手すれば東急の失速の懸念も無しとはいえません。

というわけで、東京一極集中もほぼ限界でしょうか。

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Sunday, May 11, 2008

設備投資を加速させる京王電鉄

京王電鉄の2008年度経営計画が発表されました。

オフィシャルサイトのプレスリリース(PDF)
冒頭の基本方針に
「住んでもらえる、選んでもらえる沿線」を目指し、
「鉄道事業の安全性の向上」と「沿線価値向上への取組み」に
注力してまいります。
とあります。鉄道事業への投資額549億円(対前年20%増)、うち安全性向上には433億円(対前年14%増)ということで、これは2010年に予告されている調布市内連続立体化事業にあわせてATC導入と所属車両省エネ化(VVVF化)を加速させるものです。

具体的には相模原線のATC地上設備の設置を完了させ、車両改造を進めるほか、京王線60両井の頭線25両の車両代替と在来車改造を含めて117両のVVVFインバータ制御車を登場させることになります。そのほか地下駅の火災対策強化や駅のバリアフリー対応工事を進めるとしております。

車両面では85両の新造というのが目立ちます。京王線の60両は9000系30番台10連6本と考えられ、これで10連14本が揃いますので、都営線直通運用を9000系だけで賄える数がそろいます。当然6000系は代替廃車が進むことになります。5扉車や2連など、一部残る可能性はありますが、JR常磐緩行線203系と双璧の窓のバタつく電車の過去帳入りは近いですね。そういえばJR東日本も本年からE233系2000番台による置換えが始まりますね。

名車の誉れ高い5000系の後継車でありながら、京王新線の呪縛でコストダウンを余儀なくされた粗製乱造車の6000系ですが、それだけに時代を映す車だったといえます。この苦境があればこそ、バブルに踊らず線増ではなく長編成化で混雑緩和に取り組み、大手私鉄随一の財務体質を獲得したわけですから、感慨深いものがあります。かつて冷房化に抵抗し続けた^_^;2010系などの"グリーン車"と蔑称された旧型車の途をなぞるようですが、"アイボリー車"とでも呼べばよいでしょうか。

一方の井の頭線でも1000系の久々の増備となりますが、これでやはり昼間に関しては完全に1000系で統一でき、3000系はラッシュ専用となりそうです。ここでも"グリーン車"現象^_^;が進みます。同時に3000系でも増備の都度改良が重ねられてきた歴史に倣えば、どんな仕様で登場するかも注目です。京王線9000系が日車ブロック工法で小田急3000系京成新3000系と一派を築いていますが、1000系のすそ絞りスタイルは対応できない可能性があります。となると小田急の千代田線直通車に倣って東急車輛製のツーシート工法へのシフトも考えられ、"走ルンです京王"^_^;が登場するかもしれませんね。注目です。

あと関連事業では、京王電鉄の新たな沿線活性化策で取り上げましたが、移住・住みかえ支援機構(JTI)を活用した、沿線の高齢者を都心の賃貸マンションに誘導し、持ち家を子育て若年世代へ賃貸することで、沿線の若年人口増加への取組みを進めるほか、学生マンションや企業向け独身寮事業などで、一味違った沿線活性化策が謳われております。計画書にはありませんが、高幡不動駅前の子育て支援マンションの成果も興味深いですね。

人口減少で、鉄道事業を核として沿線開発で不動産部門で利益を得る従来型の私鉄経営のビジネスモデルが行き詰まりを見せる中、いち早く次の時代を睨んだ事業を展開しているわけで、その成果が注目されます。

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Sunday, May 04, 2008

走ルンdeおフランス、AGV

姥捨ての次はおフランスざんす^_^;。AGVがプレス発表されたのは、今年2月のことですが、日本では報道が少なくて、いったいいつ営業運転を始めるのか、どこの路線に投入されるのかなども知られておりません。実はAGVはアルストム社が開発主体となった次世代高速鉄道車両で、AGVのAはアルストムのイニシャルとまで説明されています。

フランス国鉄(SNCF)とアルストムとの関係は、日本の国鉄と鉄道車両メーカーの関係と似ていて、発注者であるSNCFが設計に関与してアルストムに製造を請け負わせるものでした。高速列車のTGVにしても同様で、あくまでも開発主体はSNCFだったわけですが、ここへきて事情が変わってきています。

仏アルストムは、今でこそ独シーメンス、加ボンバルディアと並ぶ鉄道車両メーカーのビッグ3の一角を占めますが、SNCF以外への売り込みは、必ずしも熱心だったわけではなく、近隣のベルギー、オランダ、ポルトガルなどには納入されていましたが、シーメンスやボンバルディア(元々は独アドトランツなどダイムラーベンツの鉄道部門をはじめ、複数の欧州系鉄道メーカーを買収)に比べれば、外国への売り込みは熱心ではありませんでした。というよりは、伊フィアットやスウェーデンABBにさえ後れを取っていたという方が正しいかもしれません。

一方で欧州の鉄道政策により、オープンアクセスで活性化が図られ、ペンドリーノやX2000が廉価な高速車両として売り込まれている状況に対して、SNCF絡みのユーロスターやTARIS、一括受注のスペインAVEや在来線バージョンのユーロメッドなどで受注に成功はしたものの、スペインはペンドリーノも買っているし、独自技術でTARGOの300km/hバージョンを開発するなどしていて、油断できません。

一方で重電部門でABBから譲り受けた発電用大型ガスタービンで欠陥が発生したり、鉄道部門でもイギリスでの取引で採算割れを起こし、果ては財政難で銀行融資を断られるなど追い込まれ、03年~05年の3年間赤字決算を余儀なくされました。そういえば仏TGVに日本製車両なんて話題もありましたが、アルストムが危機を脱した後のタイミングですから意味深です。アルストムの経営危機のときには、本当に日本から車両を買うことも考えられていた可能性はあります。またそのことがAGV開発のバネになったのかもしれませんね。

それを救ったのが当時財務大臣だったニコラ・サルコジでした。1民間企業であるアルストムへの資本支援や4年間の支払延期などの了解を欧州委員会から取り付け、文字通り獅子奮迅ぶりを見せた結果、アルストムは立ち直り、車両メーカーとして自前で高速車両を開発できるまでに実力を蓄えたのでした。特定民間企業への支援ですから、当然反対もあったでしょうし、政治家としてはリスキーな行動だったはずです。しかしサルコジはそれをやり遂げたわけですから、なかなか侮れないリーダーシップの持ち主といえます。ただの毛深い絶倫オヤジではなかったんですね^_^;。

政治家は結果責任を問われるわけで、彼の国ではそれなりに覚悟のいる職業なんでしょう。ガソリンが上がっても、老人が悲鳴を上げても、どこか他人事で、あまつさえ「苦渋の決断」を演出するあざとささえ見せるどこかの国の宰相とは大違いですね。

で、最高速360km/hというAGVのスペックは、くしくもJR東日本がFASTECH360で開発目標とした速度と同じですが、FASTECH360が東北新幹線延伸を睨んだ高速化という具体的な想定があるのに対して、AGVは投入線区を特に明示しておりません。日本の鉄道関係者には信じ難いところでしょうけど、アルストムはAGVを大真面目に世界中に売り込もうとしているのです。

とりあえず発表されたところでは、納入先は伊NGV社という会社です。2010年により深度化する欧州のオープンアクセス政策の下、大陸で初の高速鉄道運行事業者となる会社で、11連25編成(10編成の追加オプション付)を30年の保守契約込みで受注しており、とりあえずイタリアでまず走ります。当面最高速は300km/hということです。360km/hで走るためには、線路側の改良を待つ必要はあるのでしょう。

しかし伊ディレティッシマ線(高速新線)を皮切りに、仏TGV新線、独ICE新線などの高速輸送インフラを着実に整備している欧州のことですから、いずれ360km/hの営業運転が始まる可能性はあります。その最初の候補は、仏国内で整備が進んだTGV新線でしょう。高速車両は傷みが早いですから、TGVの車両更新は喫緊の課題となるはずです。SNCFから自立したとはいえ、アルストムもそこに照準を合わせてAGVを開発しているはずです。SNCFからの大口受注、さらにEU域内の鉄道から、中国などアジアまで睨んで、商機をうかがっていると考えられます。

何かこれJR東日本の新系列通勤車が旧国鉄型車両を淘汰する課程の再現に見えなくもないですね。JR東の新系列も同型車が私鉄に納入されるなどしている点にも共通性があります。

話はそこに留まらず、360km/hの性能を発揮できる線区では、表定速度300km/h超となるわけですから、ざっと1,000kmの距離を3時間程度で結べるわけで、パリ起点でアムステルダムやバルセロナが射程に入り、航空需要を侵食するはずです。となると在来技術の延長線上で燃費改善してもCO2削減が難しい航空から鉄道へのシフトが鮮明となり、温暖化防止を経済のテコにしようとする欧州の環境戦略にも合致します。

翻って日本に当てはめれば、360km/hは東京起点で博多、札幌が射程権に入る速度ということがいえますので、FASTECH360が開発目標としてこの速度を選んだ理由も明白です。後ろ向きの某社はどう見るか。

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Saturday, May 03, 2008

楢山節考―老いの矜持

楢山節考といえば深沢七郎の名作小説ですが、既に絶版となって手に入りにくくなってます。高齢化の進む現在、老いを正面から捉えた稀有な作品だけに、復刻を期待したいところです。

厳しい山村の口減らしの掟である楢山へ行くことを心待ちにするおりん婆さんという設定が秀逸です。にもかかわらず年老いてなお歯が丈夫なことを気に病んでいるおりんさん、自ら歯をへし折って、血を流しながら歓喜する場面が作品の基本モチーフです。老いは誰しも抗えないけれど、自然にそれを受け入れ、運命として楢山へ赴くというテーマは、泣かせるほど現代的です。もちろん掟の冷徹さは微塵もゆるぎなく、楢山への道行きで抵抗した隣のじさまが実の倅に谷底へ突き落とされるシーンが最後にくるなど、なかなか巧みな構成です。

今ならば老人虐待と捉えられるべきことですが、近代以前ならばありえたのではないかと思わせる自然さこそがこの小説の味わいです。ポストモダンの始祖にして構造主義の泰斗レヴィ=ストロースがパンセ・ソバージュ(野生の知性)で明らかにした禁忌(タブー)の構造が感じられます。若い人にこそ読んで欲しいですね。

それとともに、老いを生きて死に至る人生の終局をいかに生きるべきか考えさせられます。掟に従って楢山へ赴こうとするおりんさんの何といきいきとしたことか。老醜をさらさず、子や孫の幸せを願って別れを告げる潔さは、私のような若輩者でもかくありたいと思わせます。

察しの良い方ならおわかりでしょうけど、今回は政局を揺さぶる後期高齢者医療制度について考えます。医療の問題というのは、やや複雑なんですが、この制度のスジの悪さはひどいですね。あまりにつっこみどころ満載で、どこから手をつけてよいものやらわかりませんが、目的は高齢化による医療費の増大を抑制することのようですから、まさしく楢山節考の舞台の山村の掟と同じ口減らしが狙いです。ターゲットは団塊世代ということですね。日本は近代以前であったか-_-;。

日本の医療保険制度ですが、被用者向けの組合健保に政府管掌健保、自治体管掌の国民健保と3本立てで、特に組合健保は職域のさまざまな単位でそれぞれ独自に管掌されていて料率が異なるなど、年金同様つぎはぎだらけの制度ですが、結果的に医療への安定的な支出を支えることで、医療があまねく国民に共有され、医療費の対GDP比でも先進国中最も少ない良好なパフォーマンスを示しており、民間の医療保険中心で負担力のある高額所得者による医療サービスの独占で、医療費が高騰しているアメリカでも、日本の制度を参考に皆保険制度へ移行しようという試みが繰り返されております。ヒラリー・クリントンが大統領夫人時代に実現しようとして頓挫したことが知られております。彼女が大統領の地位に執念を燃やすのは、このときのリベンジだといわれております。

ただ問題もありまして、特に組合健保は、母体となる職域の事業体の事情によって料率が異なるのですが、団塊世代が若かった時代は、掛け金が多くて使う高齢者が少数でしたから、低い掛け金で済んでいたわけです。このあたり厚生年金と似てますが、厚生年金はあくまでも政府が保険者として管掌する制度ですから、職域基盤の弱い中小企業でも、基本的に同じ制度が適用されていたのに対し、健康保険では大企業等が自社の福利厚生の一環として有利な条件で運用してきたこともあり、中小企業中心の政府管掌健保は、料率面で不利でしたし、農業者や自営業者中心の国民健保では、自治体住民の年齢構成や財政力に左右されるため、地方ほど厳しい現実があります。逆に若年人口の厚い大都市圏では、独自に高額医療費の助成制度などを制定し、医療費の負担感は低かったのです。

こういった背景がありますから、診療報酬として保険金を受け取る医療サイドも大都市圏ほど厚みのあるサービス体制となり、近年の過疎化で地方の病院は、経営的にも苦境にあります。いわゆる医療崩壊が徐々に進行しているわけです。

本来ならば、命に直結する公的医療保険制度こそ、公平性を最大限担保すべきですし、また保険である以上、加入者数が多いほど、分母が大きいほど、料率面で有利になるわけですから、国が管掌して1本に統合することで無駄を省く余地はあるはずですが、実際に国が打ち出したのは、別建ての保険制度とするというもので、明らかに逆行しております。やはり上記の通り口減らしだったわけでしょう。

しかも悪質だと思うのは、対象となる高齢者の多くが加入していると思われる国民健保が市町村単位であるのに対して、新制度は都道府県単位の広域連合が保険者として管掌するという形になっている点です。市町村では負担が大きくなる場合があるからと説明されてますが、それならば都道府県にやらせても良いはずなのに、広域連合という新たな行政組織をこの制度のためだけに立ち上げたのですから、これでは国、県、市町村の三重行政どころか四重行政になって無駄を重ねることになります。当然保険者として独自に保険事務費を負担しなければならないわけですから、どう転んでも制度全体としては負担増にしかなりません

そしてやはりというか、一時7~8割の高齢者は負担が軽くなると複数の政府与党関係者が口にしていたのに、突っ込まれると「実は調査しておりません」ですから呆れます。何かこれ、失われた年金記録問題に通じますが「3月までに突き合わせを完全実施して全てを明らかにします」といって、その3月にいい加減な報告を上げて「まだ終わったわけではないので、引き続き努力します」といって、無為に時間と費用を浪費してますが、今回も「あらゆるケースを精査します」といって時間稼ぎに精出して、そのうち国民が諦めるか忘れるかしてくれるだろうという意図見え見えで、厚生労働省という役所はよくよく腐ったところです(怒)。

元々公的医療保険制度というのは、保険なんですから、「保険料払って使わないのは損」という考え方は成り立ちません。使わないに越したことはないけれど、万が一のときに医療サービスを受けられるためには、安定した医療支出が支えになるわけです。傷病リスクは誰しもあるわけですが、実際に病気や怪我をした者の自己責任ということにすると、金持ちしか医療サービスを受けられず、結果的に社会的ニーズが顕在化しないために、医療の希少化でアメリカのように医療費が高騰してしまうわけです。それを広く薄く国民全体で支えることで負担感が減り規模の経済も働きますから国民皆保険の意味はその辺にあるわけです。

また医療の特徴として、技術革新によってより高度な検査や医療が可能になるわけですが、それは同時に常に研究開発投資と設備投資が続くわけで、この部分が肥大化することは避けられないところです。医療費の高騰は高齢化のせいではなく、医療分野の技術革新の成せる業であるわけです。おかげで結核や癌なども不治の病ではなくなり、人々はより長く生きられるわけですから、高齢化はむしろその成果でもあるわけです。同時に医療従事者にとっても、以前より初期投資が増えて参入障壁が高くなっているし、一方で医療現場は複雑になる一方ですから、医療事故や訴訟リスクも負うことになりますので、それが結果的に医師をしてリスク回避のスタンスを取らせますので、需要に応じた医療サービスを受けることを難しくしております。

そういった意味で医療保険制度が曲がり角にきていることは間違いありませんが、制度の一本化や医療機関同士の連携や後発薬の活用による負担減など、まだまだほかにやるべきことは山のようにあります。ただしこの辺は利害を持つ既得権益者がいるところでもあり、改革するには相応に血を流さなければならないでしょうから、国は安易な道を選んだんだと思います。誤魔化されないようにしなければいけませんね。

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Wednesday, April 30, 2008

道路は続くよ何処までも

道路特定財源の暫定税率復活がが衆議院の再可決で決まりました。政府与党としては予定通りなんでしょうけど、直前の衆院山口補選での大敗北もなんのその、政権にしがみつく執念だけは凄まじいですね。この問題は度々取り上げてまいりましたし、国鉄改革との比較でも取り上げました。いわゆる道路公団改革の結果として、それまで料金収入と借入金だけしか財源のなかった高速道路の整備に道路特定財源が投入できるようになったいわゆる焼け太り問題も指摘させていただきました。ことほど左様に改革を標榜しながらその実内容はむしろ後退しているケースは、郵政民営化と軌を一にします。

ガソリン値下げはうたかたの夢に終わったわけですが、昨今の行動経済学の実証研究で、人は同額の利益と損失を蒙ったときに、損失の方が利益より2~2.5倍大きく感じるというのがあります。いわゆる損失回避バイアスと呼ばれるものですが、ガソリン税が元に戻ったことで2.6兆円の税収を取り戻したと政府が考えるならば、とんでもないことです。国内消費で5兆円超のマイナスインパクトを受けたのと同じということです。当然経済は停滞し、税収も不足します。ま、そもそも20兆円に及ぶ赤字国債の発行が決まっているなかで、2.6兆円の未来への付回しをするなというのは、どう見てもブラックジョークです。

ま、元々私はこれ以上道路は造るなと申し上げてきたわけです。実際洞爺湖サミットで地球温暖化問題をテーマとしたい意向があるようですが、道路を作って必要以上に生活空間を間延びさせることの弊害を真剣に考えるべきですね。昨今欧州から始まった鉄道復権の動きは、まさに温暖化防止に対する欧州の真剣さの表われなのですが、鉄道の通らない洞爺湖町でサミットという時点で、日本の本気度が疑われます。ちなみに、以前から鉄道ネタが多い週刊東洋経済の4/19号で鉄道革命が特集されてます。鉄道の今をコンパクトにまとめられており、おススメです。購入はこちらから。

実際には人口密度の低い欧州での鉄道復権は、平坦な途ではなく、公的助成なしには成り立たないのが鉄道事業の常識でした。しかし欧州の鉄道政策は、オープンアクセスを原則とする過激なもので、鉄道線路保有者に列車運行を希望する事業者の参入を妨げてはならないというもので、いわゆる上下分離原則なんですが、これによって各国鉄道が国境を越えた列車設定を行ったり、独カールスルーエのように都市交通事業者へ線路を開放するとか、ドイツ鉄道(DB)がとりわけ熱心な国際貨物列車などにより活性化されてます。そして人口密度の高いアジアへの売り込みも熱心ですが、国内事業の厳しさゆえに国外での事業機会を求め、規模の利益を追求しているわけです。台湾新幹線をフルターンキー(一括受注)ではないからやだ、と投げ出した某社の空気の読めてなさ加減が知れます。


翻って日本ですが、鉄道活性化は事業者ベースでの取り組みに留まり、整備新幹線のように将来展望の定かでない事業に拘泥するなど、欧州に後れを取っていることを認めざるを得ません。アジアが今後の鉄道プロジェクトの中心となりそうですが、事業規模からいってフルターンキーでの受注は難しく、本来台湾での欧州システムとのすり合わせの経験は貴重なものの筈ですが、あっさり捨ててしまいました。あれこれあった台湾高速鉄道ですが、ベトナムやインドなどアジア地域の先行事例としてコンサルタントとして台湾高鉄が名乗りをあげようという気運もあるようです。

あと税収不足で予算を執行できないと騒いだ自治体ですが、当ブログで地方独自課税にも言及しましたが、それと同等のことを発言したのは東京都の石原知事だけという体たらくです。地方の首長の本気度はこんなもんです。

後期高齢者医療問題もあって、当分解散もできない福田政権ですが、つまるところ政治の空白だけは今後とも続くわけで,JAPAiN(日本の苦痛)ならぬJAPAM(日本のジャンクメール)と言われかねない状況は続きます。

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Sunday, April 13, 2008

未来へ翔る新型スカイライナー

N'EXの車両更新を取り上げた以上、こちらも取り上げないとバランスが悪いですね。E259系がが2009年登場ですから、ある意味2010年の成田空港新アクセス完成によるニュースカイライナーを迎え撃つためということも言えます。両者は現状でも棲み分けられてはいるのですが、スカイライナーのてこ入れで、勢力図が変わる可能性は十分あります。

まずは現状ですが、JR東の253系は、3連及び6連合計111両で30分ヘッド、スカイライナーはAE100形8連7本でピーク時30分ヘッドですから、JRは新宿や横浜など広域に運行して集客しているのに対し、京成スカイライナーはひたすら上野、日暮里と成田空港を往復するだけですので、半分以下の車両数で対応できているわけです。編成定員も400名超でその意味で意外と生産性は高いかもしれません。ただしターミナル立地の劣勢は拭えず、JRやリムジンバスの後塵を拝する結果となっています。

一方で京成グループとしては、ちはら線を直営化した後、北総線が悩みの種でした。千葉ニュータウン計画自体、北総線のほか、千葉県営鉄道北千葉線(仮称)、成田新幹線を通し、それをテコに大規模開発を目論んでいたのですが、北千葉線については結局県営鉄道としては実現せず、北総と重複しない小室以東の区間が紆余曲折を経て京成の子会社である千葉ニュータウン鉄道を第三種事業者とする北総鉄道の第二種事業区間として現在に至ります。またオイルショックを契機とする政府の総需要抑制策によって、建設が内示されていた成田新幹線は凍結され、2度と復活することはありませんでした。

千葉ニュータウンについては、誇大と思われる開発計画から逆算されたのでしょうけど、北総鉄道は初期投資が過大となり、それが運賃へ跳ね返って首都圏通勤鉄道の常識を超える高運賃ゆえに、沿線開発は一向に進まず、累積赤字を垂れ流す結果となりました。昨今ようやく沿線に大規模商業施設がオープンするなど、開発が徐々に進み、単年度で黒字を出すには至ったものの、累損一掃には程遠い状況です。一方で成田新幹線ですが、構想線は土屋(信)~成田空港間が成田空港高速鉄道としてJR成田線と京成線が乗り入れる形で実現し、東京~西船橋間は京葉線都心ルートとして実現しているのですが、千葉ニュータウンを通過する区間は当然実現しておりません。ですが都心から遠い成田空港の鉄道アクセスに利用しようという構想は度々浮かんでは消えしました。中には京葉線都心ルートで実現した区間と、着工の目途が立たない有楽町分岐線(亀有ルート)とをつなぎ、押上から京成線、高砂から北総線を通り、印旛松虫(仮称、現印旛日本医大)から成田新幹線ルートを通って成田空港へ至るものなどもありました。当然、京葉線都心ルートと成田空港高速鉄道が実現して、構想は消えたわけですが。

その意味で成田新幹線ルートを用いた成田空港アクセス鉄道のアイデア自体には、それほど新しい要素はないのですが、今回の北総ルート活用では、山手線上のターミナル(日暮里)から30分台という具体的な目標を掲げて練られた計画であるという点に新しさがあります。併せて北総線のてこ入れ策でもあるという点も見逃せません。
詳しくは新型スカイライナーwebサイトをご参照ください。またニュースリリース(PDF)もご参照ください。

現状と比べ、15分の時間短縮とピーク時20分ヘッド運行がアナウンスされてます。つまりは時間短縮と折り返し間合いの見直しで、現行の最大運用数で対応できるわけで、ここがキモです。つまり成田新幹線の落とし児である北総ルートを活用することで、生産性を劇的に高められるわけです。スピードアップによる集客増とともに、おそらく現行と同等の運賃料金でサービスレベルを高められるわけですね。加えて同じ北総ルートで一般車両によるアクセス列車を20分ヘッドで設定でき、既存の京成線ルートからも20分ヘッドで併せて1時間最大9本の列車設定が可能になるわけです。あと裏技ですが、第1.第2ターミナルの中間に位置する東成田駅を活用すれば、さらに上乗せが可能なわけですから、盆暮れ春秋連休などの需要期への対応力も高まるわけで、京成としては力が入りますね。実際新型スカイライナーは8連8本を投入予定ということで、おそらく高速運転で走行距離を稼いでしまうことから、検査予備を余分に見込んでいるものと思われます。

となると、あとの興味として一般車両によるアクセス列車がどういったものになるかですが、いわゆるエアポート快特が京成線内快速に格下げされ、佐倉止まりになるなど、成田―羽田連絡の実態を失っている状況ですが、北総ルートによる復活があるかどうか、興味は尽きません。ただし一般車両使用ですと、最高速160km/hというわけにはいかないでしょうから、成田―羽田間、直通1時間には程遠いといえます。それでもダイヤ上の制約は減ります。

いわゆるインフラ投資で、前の記事でも指摘しましたが、新線効果が長続きしない状況にあるわけですが、人口減少が始まっている以上、避けられない問題です。その一方で成田空港新アクセスのような事業では、既存ストックに付加価値をつけることができるわけで、今後のインフラ整備のあり方を示すものといえましょう。元々成田闘争という負の歴史を背負っている千葉県ですが、高度成長が去った今、改めて身近な資源を有効活用していく知恵が求められます。

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Saturday, April 05, 2008

つくばみらい市の憂鬱、新線効果の限界

東京圏の住宅地の下落率上位市区町村

(単位 : %)


1 2 3 4 5
市区町村 茨城県
利根町
茨城県
龍ヶ崎市
埼玉県
五霞町
茨城県
つくばみらい市
茨城県
境町
△5.9 △4.7 △3.8 △3.5 △3.2

国土交通省の公示地価に関する発表の中から、こんな表を発見いたしました。東京圏の住宅地の下落率上位市町村ワースト5中4つまでが茨城県という結果です。ま、外縁部から下落が始まるのは仕方ないところでしょうけど、その中で異彩を放つのが4位のつくばみらい市です。言うまでもなくつくばエクスプレス沿線です。

つくばエクスプレス沿線の他の自治体については、おおむね上昇しているようなので、つくばみらい市の数値は目立ちます。ま、前の記事でも指摘しましたが、そもそも公示地価そのものがフィクション性を含んでいるので、他の自治体でも下落が始まっている可能性は留保する必要があるかもしれませんが、断定は控えておきます。

しかし計測された標準地のワースト10ランキングを見ると、1~4,6,8位につくばみらい市の標準地がランクインしており、下落率の高さはそれ以前の地価水準が高かった可能性があります。つまり新線開業効果を織り込んで形成された相場が腰折れした可能性が高く、2005年8月の開業以来、順調に利用を延ばしているつくばエクスプレスですが、わずか2年半で足許ではこのような現象がおきているのですね。新線開業で住宅地の供給が増えた一方で、既に選別が始まっているわけです。

ここで気になるのが、先月末に開業した新線2路線です。日暮里・舎人ライナーと横浜市営地下鉄グリーンラインです。いずれも鉄道空白地を埋める形の新線で、しかも共に公営交通であるという点も共通です。前者はゆりかもめなどと同じニイガタトランシス製新交通システムであり、先日ハブ設計ミスが指摘されたばかりですが、その分メンテナンスコストを余分に見積もる必要はあります。横浜市営グリーンラインはリニアミニ地下鉄ですが、民営化検討委でも指摘された既存のブルーラインと異なった規格の新線としたことがどう出るか、悩ましいところです。

一応グリーンラインに関しては、リニアミニ地下鉄としたことで、事業費を200億円ほど圧縮されたようですが、元の計画が日吉で東急新東横線(仮称、現目黒線)との相互直通を構想していたわけですから、その元計画に対して200億円圧縮では、開業後の収支にほとんど影響しませんから、ブルーラインとの共通規格によるスケールメリットを考えると疑問が残ります。

とはいえ新線開業で人の流れが変われば、そこに商機は生まれるわけで、沿線への商業施設の進出などは活発化しており、港北ニュータウンにコーナンモールなど、地域活性化には寄与するにしても、それだけ競争激化するわけです。そうでなくても新横浜駅ビルオートモール・トレッサ横浜など近隣に商業施設の新設が相次ぎ、局地的にはオーバーストア気味なだけに、今後に課題は残ります。

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Thursday, March 27, 2008

東北縦貫線と公示地価の不況和音

東北縦貫線の工事日程が発表されました。

宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れ工事の着手について(PDF)
5月に着工し2013年度完成予定ということで、今年6月開業予定の東京メトロ副都心線共々、首都圏の鉄道ネットワークは充実します。それと密接に関連する再開発ブームも、新たな局面が見えてきました。そんな中で発表された公示地価ですが、見てみましょう。
08年の公示地価、2年連続上昇・全国伸び率、1.7%に拡大
違和感を持たれる方が多いと思うんですが、どう考えても、既に8月のサブプライムショックの影響で、明らかに地価は下落へとシフトして潮目が変わっているのですが、公示地価は2年連続上昇、かつ伸び率も高くなっているのです。いわゆる1物6価といわれる地価のフィクション性がかなり出た結果です。

国交省発表の公示地価と、都道府県発表の基準地価は、それぞれ毎年1/1(公示地価)と7/1(基準地価)時点の数値で、計測地点が異なるので、相互補完関係にあります。そしてこれらが、公共事業の用地買収費の基準となるわけです。それが実態を反映していないというのは、今に始まった話ではないんですが、特に都市部の公共事業における用地買収費の比率は高いわけですから、税で集めた資金が土地所有者へ配分される仕組みとして捉えると、実勢価格とのズレの意味は即富の配分を左右することになります。ぶっちゃけ富の東京一極集中が加速し、都内の土地の多くを所有する大企業を利することになります。

こんな観点から地価の推移を長期的に見ると、面白い傾向が見えます。

<図>地価はまだバブル前の水準
グラフは1974年の全国平均の地価水準を100とする指数ですが、商業地に関しては、バブル期はおろか1974年水準にも達していないという事実です。言うまでもなく東京都心などの地価水準は高止まりしているわけですから、それだけ地方の商業地の価格が下がっているということでもあります。シャッター通りの実態の反映ですね。

つまりは一部のブランド地域以外では、土地の収益性の低下に合わせて地価も下落しているわけです。そして大都市でもサブプライムショックで、主に不動産私募ファンドや上場REITに入っていた外資が売りに転じたもので、株と同じ構図です。同じ大企業でも、トヨタ効果が期待された名古屋駅前などは、むしろオフィス空室率が高くなって、早や地価下落傾向が見えております。名古屋浮揚にはリニヤだがや

冗談はさておきまして、土地の収益性が低下すれば地価が下がるのは株と同じで、つまるところ、一部を除いて日本の商業地の収益性がそれだけ下がってきたということでもあるわけです。今後人口減少とともに、この傾向は動かしがたいところです。

一方で住宅地は、商業地に比べれば基準年(1974年)の1.5倍強ですから、商業地ほどには下がっていないことになります。ま、それだけ大都市圏への人口集中が激しく、住宅地の地価を押し上げている側面はあろうかと思いますが、それ以上に、住宅地の場合は、特に日本のように持ち家が推奨される国では、国民の購買力を反映した水準になっているということはいえそうです。実はこの点に、日本経済の浮揚策が見えてきます。

日本の国民は、例えば20坪の土地いっぱいの建売で数千万円の省エネ住宅(ウサギ小屋とも言う^_^;)など相対的に高い住宅を購入しているのですが、その資金が住宅購入から開放されれば、他の分野の消費に回ることが期待できます。そして人口減少によって、将来需要される住宅は減りますから、既存の住宅ストックを活用することで、価格を押し下げることが可能になります。逆に購入する場合には、リセールバリューを意識せざるを得なくなるわけで、中古住宅に値段がついて、住宅ローンの担保割れなんてこともなくなります。住宅が実質資産となるわけで、この面でも消費マインドを高めます。その結果国内商業が活性化すれば、商業地の収益力が回復することになります。

結果的に日本のGDPが押し上げられます。先進国中最も個人消費が弱い日本ですが、ここを掘り起こすことができれば、年率数パーセントの経済成長も十分可能です。ま、そのためには年金や医療などの社会保障が充実して、安心して消費できる環境が必要なんですがね。

あと現状のサブプライムショックは、日本のバブル崩壊後の金融不安と同じように世界で信用収縮が起きているのですが、それによるアメリカの実体経済の減速は避けられないところです。そしてその影響は4月以降に来ると思われます。さらに欧州でもイギリスやスペインなどで土地バブルに崩壊の兆しが見えますので、欧州経済の変調も早ければ年内に始まるでしょう。それでも当面はBRICsなど新興国が牽引することで、急減速は避けられるでしょうが、影響は長期にわたると覚悟した方が良いですね。経済は時間差を以て波及するものです。いわば不況のカノン(輪唱)が始まるということか。

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Sunday, March 23, 2008

似て非なる道路と国鉄

まずはサイドバーでご紹介した国鉄最後のダイヤ改正―JRスタートへのドキュメントについてですが、特に貨物関連の記述が焦眉です。赤字の元凶として国鉄部内からの安楽死説が言われる中で、再建監理委でもまとめきれず、結局国鉄自身で民営化後の適切な事業規模から逆算して、貨物列車のトレインアワーを各地域へ割り振ることで、否応なくヤード系から直行系輸送システムへ移行させたことで、逆に貨物は存続できたわけです。

本州3社+3島会社+全国1社の貨物会社の7社体制という方針は決まっても、具体的な肉付けは国鉄再建監理委の手に余るものでしたので、当時の国鉄幹部による旅客会社の分割境界の設定や直通列車に関する取り決めその他、国鉄自身で決めざるを得なかったのです。また、実際に国鉄が回答を用意しなければ、役人に踏み込まれて現場が掻き回されるという危機感も共有されていたことが読み取れます。つまりは国鉄自身が変わらなければならないという思いを抱いていたわけで、国鉄改革が成果をあげ得たことはこの点に尽きるといえます。

それから20年、私たち国民の前に、道路公団と郵政の民営化の茶番を見せ付けられたのですが、いずれも国鉄改革とはかなり事情が違います。郵政に関しては、過去にも何度も取り上げておりますが、今回は道路問題について考えます。

改革続行の試金石は道路財源で指摘したとおり、道路財源問題は、元々小泉政権、安倍政権時代からの積み残しで、流れとしては、いわゆる道路公団民営化関連で、大赤字の本四公団の債務償還に道路特定財源を充てた結果、2007年度から道路特定財源に約7,000億円の余剰が出るので、それを一般財源化しようという話だったんですが、安倍政権時代に道路計画を積み増して、余剰金額を圧縮した上での形ばかりのものになりました。

その上、そもそも道路公団民営化の仕組みそのものにも、道路特定財源の使途拡大の仕組みが組み込まれております。元々道路公団が手がける高速道路は、料金収入と借入金で整備し、道路特定財源は一般道の整備に使われるものとして、全く別立てだったのですが、道路公団改革で、いわゆる新直轄方式と呼ばれる仕組みが導入されて、高速道路建設に道路特定財源を投入できる制度の道すじができたものです。

簡単に申し上げますと、道路公団改革では、高速道路の資産と負債は、(独法)日本高速道路保有・債務返済機構が管理し、各高速道路会社は、営業権を付与されて高速道路の料金収受やSA・PAのテナント料収入などのフローを得、機構にリース料を支払う存在となっております。つまり資産も負債も持たず、キャッシュフローの管理だけを行う機関を株式会社化したわけで、トップは旧公団や国交省の天下り役人ですから、何のことはありません、実態は高速道路利権の山分け機関に過ぎないのです。また上記の新直轄方式によって、従来は高規格自動車専用国道など、例外的な扱いだった直轄方式とは異なり、機構に道路特定財源を入れることで、高速道路整備を継続できる仕組みとなったわけです。

国鉄改革を見てきた私たちとしては、何か悪い夢を見ているような感じですが、JR発足当初に新幹線を新幹線保有機構が保有し、本州会社各社がリース料を支払って、それを機構が債務返済に充てるという上下分離の仕組みを取り入れたのですが、これは後にJR各社の発議によって、重要な事業用資産として直接管理すべきということで売却され、現在はJRの資産となり、対応する負債もJRへ移されました。その際に資産価格の査定を細工して、非償却部分への上乗せで2兆円ほどの鉄道整備基金の財源を確保し、整備新幹線その他の鉄道整備に国の支出分として拠出し、リース料で償還する仕組みが作られ、国鉄改革で宙に浮いていた整備新幹線の財源が確保されたわけですが、道路公団改革でとられた手法というのは、いわば新幹線の上下分離に別財源で整備新幹線の整備財源を投入できる仕組みとしたことになります。この仕組みを用いれば、道路特定財源を、抑制するはずだった高速道路整備にいくらでも回せるわけで、つまりは道路特定財源に余剰が出ればいくらでも箇所付けできてしまうわけです。

元々道路会社は資産も負債も持たず、料金収入などのフローの管理だけを担当するわけですから、公的な財源投入で作られる新路線はむしろ増収効果があるわけで、反対する理由もないし、また法令上も反対できない仕組みです。ほんとアントキノ猪瀬直樹のインチキぶりに腹が立ちます。かくして全国の知事から暫定税率廃止反対の大合唱となるわけです。

自前の資産で利益をあげて税などで社会へ還元するからこそ、民営化は意味があるわけですし、採算性を度外視した投資は、利益に貢献しない不良資産を抱え込み利益を食い潰すことになるからこそ、無駄な投資の抑制効果があるわけですが、道路公団改革にはそれがないどころか、従来なかった道路財源の投入を可能とすることによって、破滅的に無駄遣いにまい進することになるわけです。というわけで、JRが新幹線の資産買い取りをしたことは、民間企業として健全経営を維持する意味で重要だったこともまた再確認できます。

というわけで、多少の混乱は予想されますが、暫定税率の時間切れ廃止は、民主政治のコストと割り切ることで、国民的には容認できることといえるのではないでしょうか。

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Saturday, March 08, 2008

日銀総裁人事の国民的意味とは?

今回は鉄ネタ抜きでまいります。まずはこのニュースです。

日銀人事で民主、政府案反対の構え――空白回避へ駆け引き
今月19日に任期を終える福井総裁ですが、結局金利正常化道半ばでの退任となるわけですが、後任人事を巡る与野党のせめぎ合いが続きます。メディアの論調は、ほぼ「任期満了までに後任人事が決まらず空白になる、えらいこっちゃ」という感じですが、ちょっと待って欲しいです。国民の視点を忘れるなと言いたいです。

そもそも日銀総裁などの国会同意人事ですが、従来は政権与党の数の論理で粛々と決められていて、国民の関心を引くこともまずなかったことですが、与野党ねじれ国会ゆえに、国会の同意をめぐる攻防によって国民的関心が喚起され、国民注視のもとでの候補者選びや衆参両院での所信聴取などの手続きが決まり、民主化プロセスに乗っかってきたことこそが、国民的には意義のあることではないでしょうか。少なくともこのような決定プロセスを踏むことで、誰がなるにせよ、今までのように政府与党関係者の利上げけん制などの圧力発言はできにくくなるという意味で、やっと日本でも中央銀行の独立性が担保される可能性が出てきたわけです。

にも拘らず「決まらなかったら大変だ」という政権を代弁するような報道しか見られないのが残念ですね。仮に決まらずに空位になったとしても、半年1年ならともかく、1週間や10日程度なら実務への影響もないし、それならば国民レベルで納得できる人選をする方が優先されるべきではないでしょうか。その辺は経済専門紙であるはずの日経からして駄目です。確かに中銀総裁を決められないというのは、政権にとってはかなりみっともない話ではありますが、そんな政権のメンツと国民合意のどちらが大切なのかということですね。そういった意味から、この問題に関しては、民主党には簡単に妥協してほしくないですね。

ま、どちらにしても利上げにも利下げにも動けない日銀の現状は動かしがたく、コイズミジレンマで身動きが取れない政府共々、身動きが取れないのですから、ミニ掲示板のヨタじゃないですが、あの白い犬にでも代役をさせるか(笑)。就任会見で「ボーイズ・ビー・アンビシャス^・A・^」というか「ありえないっす^・A・^」というか。「メール受信タダじゃないぞ!」だったりして^_^;;;。

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Saturday, March 01, 2008

ゆりかもめのハブ損傷は設計ミス

2006年4月に起きました新交通ゆりかもめのハブ損傷事故で事故調の報告書が出ました。

新交通ゆりかもめ事故、金属疲労でハブが破断・事故調
報告書の要旨はこちらです。なお、48pに及ぶ調査報告書(PDF)に詳細が記されてますが、容量が大きいので直接リンクはいたしません。また、当ブログの記事は以下になります。
ゆりかもめ、手痛い週末全面運休
10年で経年劣化?ゆりかもめの苦悩
過去記事でも触れておりますが、10年で経年劣化というのは、そもそも公共交通システムとして問題ありですが、経年劣化による応力金属疲労を設計で考慮されていなかったということですから、設計ミスという評価になったわけですね。

ちょっと気になるのが、ゆりかもめのシステムは新潟鉄工の手になる点です。ご存じのとおり新潟鉄工は破綻し、輸送用機器事業を富士重工の鉄道車両製造事業と統合の上、新潟トランシスとして再生されたわけですが、これによって旧新潟鉄工と富士重工という、旧国鉄時代の気動車メーカー2社が合流した点に因果を感じます。

JR東日本顧問の山之内秀一郎氏の回顧録の中で、アルカディア号の火炎事故問題を取り上げておりまして、そもそもエンジンの設計が戦前の古いものだったことから、この事故をきっかけにエンジン換装が行われ、入札によってカミンズが採用されたのでした。寿命半分、値段半分、重さ半分の電車(いわゆる"走ルンです"シリーズ)の開発が、談合との決別を意図したものであったことを明らかにしてますが、気動車では前記2社の寡占状態だったことを考えると、破綻した新潟鉄工には、談合体質が染み付いていたといえるかもしれません。

新交通システムにしても、モノレール等のインフラ補助は、補助金事業として今話題の^_^;道路特定財源が充当されるという意味で、談合が日常化していると考えられますし、そういった中で、安全性が置き去りにされたのだとすると、何ともやりきれないものを感じます。今月30日には、同じシステムを採用した都営新交通日暮里舎人ライナーの開業が控えておりますが、ゆりかもめの事故を教訓として、安全運行を願ってやみません。

2/24には湘南モノレール西鎌倉駅のオーバーラン事故がありました。こちらは三菱電機製のシステムで、今まで大きなトラブルもなく運行しておりましたが、突然の不可解な事故で、間引き運転が続いております。こちらはブレーキトラブルということで、駅手前の下り急勾配が影響したのでしょうが、ゴムタイヤで粘着性能が高いことから急勾配を採用したことが仇になった可能性があります。

ま、湘南モノレールは純民間事業ですから直接関係はないんですが、湘南モノレールと同じシステムが千葉都市モノレールに採用されたことは知られております。純民間事業である湘南モノレールは収支好調ですが、千葉都市モノレールはいわゆる赤字三セクです。湘南モノレールはいわばショールームで、コストの一部を千葉につけ回すこともできてしまう状況というのもあるわけです。ま、この辺は憶測の域を出ませんが、補助金があるから自治体がモノレールや新交通システムの導入を考え、談合でシステムが決定するとすると、時間の長短はあるかもしれませんが、モノレールや新交通システムで不具合が発生する可能性は指摘しておきます。

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Saturday, February 23, 2008

川崎市、公共事業で外資から資金調達

連日サブプライム報道が続きますが、要するに米住宅バブルの崩壊で、一時的に信用収縮が起きているのであって、こういうときは、従来と異なった資金の流れを作り出すチャンスでもあります。そういう文脈で読むべきニュースです。

川崎市、外資系金融機関から初の直接資金調達
私自身は川崎市民ではありませんので、対象となっている事業の是非について論じる立場ではありませんが、記事によれば中原消防署に併設されるホテル施設ということで、いわゆる行政機関の資産の高度利用といったたぐいの事業ということで、単純なハコモノではないですね。場所がJR横須賀線駅設置が決まっている武蔵小杉駅の近くということで、マンション建設ラッシュに沸く地域ですし、昨年、首都圏で最も地価上昇が顕著だった地域ですから、行政機関といえども、バランス上土地の高度利用は考える必要があります。

一方で小泉政権時代の三位一体改革とやらで、国からの交付金や補助金が一方的に削られた地方自治体にとっては、ただでさえ地価上昇で資金手当が難しくなる地域での公共事業は、資金難で取り組みにくいという事情もあります。今、国会で審議されていて、当ブログでも度々取り上げた道路特定財源問題でも、地方はもうこれ以上補助金を削られたくない一心で反対しているのですが、そうやっていつまでも国に頼っているから、ますます国に足許を見られて自立できず、画に描いた餅の地方自治が続きます。そんな中で、自治体が民間資金を調達して事業を行うという発想がなぜ出てこないのかと思っていただけに、今回のニュースには注目したいと思います。

ついでですけど、道路特定財源の中でも、今、国民の関心は暫定税率の問題に集中しているかと思います。これも筋からいえば一旦は国民に返すべき税源であると思います。と同時に、国税の減税分というのは、地方で独自財源として比較的容易に課税できる税源でもあるわけです。本当に道路が必要ならば、具体的な整備計画を明示した上で、地方で課税することを考えるべきです。当然、地方によって税率はバラつくはずですから、足の投票という地方自治の大原則に照らして事業費の圧縮圧力が働くはずですので、国の減税分がそっくり地方で課税される事態にはならないはずで、このあたりに落としどころがありそうに思います。

思うに、日本の低金利政策が、本来は2003~2004年の大規模為替介入の援護射撃の意味合いがあったようで、当時の米財務次官のジョン・テーラー氏が回顧録で明らかにしてますが、米政府は日本の為替介入に市場重視の原則論から難色を示していたのですが、ドル買い介入資金の非不胎化(ドル買いに用いた円資金を中央銀行が事後的に吸収せずに市場に存置してマネーサプライを増やす政策)で量的緩和政策を後押しするという日本側の説明に渋々承諾したのですが、実際にこれで円/ドル相場は円安へ振れ、事実上の輸出企業への補助金としたことで、企業業績が回復して国民が貧乏になったことを指摘しておきます。この結果、小泉政権下で公共事業に頼らずに景気回復を実現できたわけです。コイズミノミクスの正体です。ちなみにテーラー氏の交渉相手だった当時の溝口財務官は、2007年の統一地方選挙で島根県知事に当選しております。ま、政権への協力の論功行賞なんでしょう。

しかしその結果、日本の外貨準備は100兆円にも及ぶ規模となり、さすがに追加的に為替介入するわけにもいかなくなりました。元々介入資金は政府保証短期債券を発行して集めた民間資金ですから、やりすぎると資金需要が逼迫して市場金利を押し上げる要因になりますので、円高傾向が見えてきても打つ手がない状況ということです。コイズミノミクスがコイズミジレンマを生んだわけです。しかもサブプライム問題で米国の実体経済が冷え込みそうな現状ですから、さすがに日銀は利上げに動けない上に、たった0.5%の金利水準では利下げも無意味、それどころか原油高でさすがに物価に上昇圧力がかかり始めて、デフレ退治を口実とした金融緩和にも動けないということで、こちらもジレンマです。逆に言えば日本の低金利政策は、国際的な裁定取引の結果、今までと逆に円高圧力となるわけで、このことが外資にとっては、低金利でも為替差益で埋め合わせできる環境が整ったということで、今回の川崎市の事例に結びついたのかもしれません。

ということで、国の補助金を当てにする地方にとっては、外資を利用できる可能性が高まったわけで、これをチャンスに国に頼らない財政運営に舵を切る自治体が出現することを願ってやみません。例えば整備新幹線の新規着工問題ですが、国の補助金を当てにするのではなく、外資を利用することで活路を開くことを考えて欲しいです。ドル安の影響を受けるアラブの王族に、リスクヘッジを説得すれば可能性は十分あると思うのですがいかがでしょうか。

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Saturday, February 09, 2008

NEXT N'EX E259系

久々の更新です。これほど更新頻度の低い当ブログですが、毎日コンスタントに500ヒットペースを維持しているのは、私自身驚いております。どうもはてブほかのオンラインブックマークに多数登録されているらしく、古いエントリーも満遍なく読まれているということで、完全保存版品質が要求されているというプレッシャーを感じます。というわけで、更新はなかなか億劫になります。以上言い訳でした^_^;。

というわけで、成田エクスプレス(N'EX)用253系の2009年秋の置換えがJR東日本から公式にリリースされました。当ブログとしては、速報性は追わずに、長期間購読に耐える視点の提供を心がけることにしたいと思います。

そもそも253系が登場した1991年ですが、前年の不動産融資総量規制の影響でバブル景気にかげりが見えていたものの、未だ好調な消費に支えられていた時代といえます。日経トレンディのヒット商品ランキングトップがカルピスウォーターですが、20位にN'EXがランクインしております。先発の京成スカイライナーより割高ながら、ゆったりした室内が好評という評価になっておりますが、JRにとっては国鉄時代を通じて未経験だった空港連絡輸送への参入だったわけで、マーケティングに腐心した跡が見られます。

ここでやや脱線しますが^_^;、連日報道されるいわゆるサブプライム問題ですが、本質は日本のバブル崩壊と同じで、アメリカの場合はNAFTA(北米自由貿易協定)の影響で、主にメキシコからの移民が増加していたわけですが、いわゆるヒスパニック系移民への持ち家推奨のために考え出されたのがサブプライムローンであり、当初は「移民にアメリカンドリームを」というキャッチフレーズで好意的に捉えられていたのですが、その結果として住宅ブームが起き、住宅価格が上昇を続けたのですが、ローンが滞り始めて、逆に担保差押えで主を失った中古住宅が大量に出て不動産市況が悪化し、それがさらに住宅の値下がりを助長し値上がりを想定した無理なローンの延滞を生み出す負のスパイラルになっているので、不動産融資総量規制後の日本とそっくりです。ただし事後の対応の素早さは全く異なります。また拡大EU27カ国で労働力移動規制が撤廃されたことにより、やはりイギリスやスペインで移民向け住宅を中心にバブルが発生しており、遠からずはじけると考えられます。

思えばバブル時代の日本は、ある意味世界のトップランナーだったわけですが、その自覚がないままにバブルを生成しはじけさせ、敗戦処理を先送りし続けた結果の失われた90年代だったのです。そのころアメリカから銀行の不良債権処理や内需拡大の矢の催促に辟易していた日本が、今度はそれ見たことかとばなりに、G7で日本の経験を語るというのですが、間違っちゃいけないのは、日本はバブル経済で世界をリードしながら、処理を誤って貧乏まっしぐらへ向かっているのであって、そんな日本の失敗は、欧米各国は既にわかっています。そしてサブプライムが対岸の火事であるはずの日本で、国内要因で景気後退が現実のものになりそうなのです。

当時のJR東日本にとって、成田空港鉄道アクセスを京成との単線並列によってシェアすることの意味は重かったと考えられます。なにしろ末端のバス連絡はあるものの、京成は成田開港以来の実績があるわけですし、JRにとっては根古屋信号場までの長い単線区間に2本の着発線という物理的制約を課されることでもあるわけですから、列車設定の自由度は遥かに見劣りする状況だったわけです。

その中で、単純に輸送力を考えれば、総武快速線列車の成田空港直通を中心に据える輸送計画が、最もオーソドックスな解だったでしょうし、おそらく国鉄が民営化されていなければ、そうなった可能性は高かったと考えられます。その意味でノンストップ運転の特急列車で尚且つ全車座席指定の完全定員制列車というN'EXのコンセプトは革新的なものでした。

またスカイライナー以上に手強いライバルとして、箱崎のTCATから頻発運転されるリムジンバスの存在もあります。上野起点のスカイライナーに対して、東京都心からのアクセスタイムで優位に立ち、運賃もスカイライナーの運賃料金よりも高額ながら、輸送実績では上回っていたわけですから、そこへ通勤輸送用の113系の快速で参入しても、場違い感があります。

また当時はまだバブルを引きずっていた時期ですし、そもそもバブルの前提として国際化の進捗で東京が国際金融都市になるという期待があったわけですから、国際線空港である成田の鉄道アクセスに求められるものは、国内の送り出しと海外からの入り込み双方共に、エグゼクティブクラスの利用者を想定することができるわけで、量の競争では実績のあるリムジンバスやスカイライナーに譲るとしても、客単価を高めて効率輸送に徹する路はありうるわけです。逆に列車設定に制約があるからこそ、また競合市場で棲み分けが可能であるからこそ、N'EXのような革新的なコンセプトが実現したと考えられますし、253系はそれを具現化したものと捉えることが可能です。

とはいえJRにとっては未知の分野であり、単純な東京と成田空港とのシャトル輸送だけで集客する自信も乏しく、ならばJRの路線網を活かして複数ターミナルからの集客をしようということになったと考えられます。そこで新宿と横浜から来た列車を品川で併合して東京を経て成田空港へ至るという運行形態が考えられ、また需要がつかみきれなかったから、3連単位で増結できるようにして、需要変動に対応しようという考え方をとったのでしょう。これが国鉄時代ならば特急型=ボンネットスタイルの高運転台という既成概念で難しかったと思われますし、当時保安装置にATCを採用していた横総線トンネル区間では、トンネルの規格は山岳トンネル準拠ながら、国鉄時代に自主規制で地下鉄並みの不燃化A-A基準準拠の縛りを課したために、全編成貫通とする必要があり、貫通ホロまで自動化した自動解結装置を装備することと相成りました。実際は鉄道事業法の下では鉄道車両構造規則でそこまでは規制されていなかったのですが、3連単位で多数ユニットの併結という運用の実態からすれば、中間ユニットの非常時の避難路確保の必要性は高かったので、これはこれで意味があったといえます。

で、置換え用のE259系ですが、イメージバースではJR北海道の789系に似ているように見えます。貫通路の有無までは不明ですが、6連基本で2編成併結ならば省略も可能でしょうから、特殊装備の253系に比べてコストダウン要因となります。またE233系のように電気機器や保安装置の二重化するということで、VVVF制御ながら4M2T編成となり、冗長性を持たせたものとなっています。両数も132両で253系111両を置き換えるわけですから、固定編成長の変更はあるものの、現在よりも余裕のある運用が可能になると考えられ、オフピーク時の集中保守作業により盆暮れや春秋連休の海外旅行ピーク時には、予備車まで動員してより広範囲に集客するということも考えられます。

一方退場する253系ですが、かなり特殊な造りの車両ですし、2002年登場の200番台を除けば走行距離も稼いでおり、車体にヤレが目立つこともありますので、このまま廃車となる公算が高いと考えられます。これも好調なN'EXゆえと考えれば、やはり稼いでナンボ、長期低落傾向のレガシー特急(笑)踊り子に普通電車より遅い185系を使い続ける悩みは深いですね。

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Saturday, January 26, 2008

リニアに下げてふり向けば東日本

しばらく株価動向が気になって、更新をサボっておりました^_^;。ま、やっと落ち着いて、ふり返る余裕も出てまいりましたが、個人的には、今まで手が出せなかった値嵩株を仕込むことができて満足しております。早速株価は戻して数パーセントのキャピタルゲインということで、株はやめられません^_^;。

てなこと言うと石が飛んできそうですが、最近の株価報道はどうもパニックを煽っているだけにしか見えません。ま、おかげで安値で拾えたから個人的には良いんですが^_^;、報道する側が意味を理解しているのだろうかという疑問がわきます。そんな中でこんなニュースです。

(1/24)仏銀大手ソシエテが1兆円の損失・不正取引、1人で7600億円
いわゆるサブプライム問題とは直接関係のない、銀行員個人の詐欺事件なんですが、その規模の大きさが目を引きます。当然、内部的に不正を見抜けなかった、あるいは当局も異常に気づかなかったなどの問題もあるんですが、むしろこれだけの損失を計上しながら、銀行がつぶれないことが驚きです。

サブプライム問題で連日さまざまな報道がされていて、特に米金融機関の巨額損失に驚かされますが、シティの2兆円超とかメリルの1兆円超などの損失を出しながら、日本の金融危機時に問題になった、銀行への公的資金注入の議論が聞こえないのはなぜかということを考えさせます。簡単に言ってしまえば、それだけの損失を出しても倒れないだけの資本の厚みがあるからなんですね。そしてそれゆえにバーゼル会議で決められた国際決済銀行(BIS)規制でも、銀行に対して自己資本比率規制を課しているわけです。

欧米銀は国際的な合従連衡の果てに自己資本の厚みを増していて、今回のサブプライムローン問題でも、リスクのある証券への投資ができた理由ですし、また厚い資本に対して十分なリターンを求められる立場でもあるからこそ、邦銀がほとんど手を出さなかったサブプライム関連の金融商品への投資へと向かわせたわけでもあります。つまるところ金融機関の利益の源泉はリスクテイクであるということを地でいっているだけの話です。逆にこの流れに乗れなかった邦銀の方が周回遅れなんですね。

で、実際に損失を確定させて危機を乗り切ろうとする動きが、米銀を中心に起きているわけですが、この課程でアブダビ投資庁やドバイ、シンガポール、ロシア、ノールウエーなどの政府系ファンド、いわゆる国富ファンド(SWF)の存在がクローズアップされました。昨年ハイリゲンダムサミットで懸念を共有されたはずのSWFに助けを求めるというあたりに、米銀のなりふり構わぬ姿勢が見えます。これは、金融機関にとって自己資本はとりもなおさず損失発生のときのバッファであるということが身にしみているからこそ、毀損した資本を早急に回復しようとするわけです。で、この辺に事業に対する覚悟のすごさがにじみ出ておりますね。

で、繰り返しになりますが、銀行にとって生命線ともいえる自己資本に関する国際ルールを、日本は邦銀の都合でたびたび捻じ曲げているのは、これまでも指摘してきたとおりですが、特にバーゼルIIで押し込んだ民間格付け機関による格付けを資産評価に反映させるルールは、国債などの債券保有の多い邦銀にとっては、自己資本を良く見せることができる、言葉を変えればお化粧を施せるルールということなんですが、それでも日本のメガバンクは、国際業務へなかなか復帰できないでいるわけで、当の銀行自身が、自らの実力をわきまえているということなのでしょう。にしてもいつまで膾を吹くつもりかい

で、日本では、銀行に限らず、生保や年金基金などのいわゆる機関投資家まで同じことをしていて、ここ数年株式を売り越して債券を買い越すということをしてきた結果、日本の株価を大きく下げたわけですが、それを救ったのが、海外の機関投資家たちです。いわゆる外国人投資家と呼ばれる彼らは、低リターンの国内債券には目もくれず、国内株式を買い続けてくれたおかげで、日本の株価は下支えされてきたわけですが、そのために奇妙なことが起きてしまったのです。最近の株価トレンドをドルベースで見ると、ニューヨークと東京の株式相場のトレンドがほぼピッタリ一致するのです。彼等はあくまでもドル建てて相場を見ていて、ニューヨークで買えない銘柄(ほとんど全ての日本株が該当)を分散投資の一環で購入していただけということです。ですからサブプライム問題のような信用不安が発生すると、当然のように保有株式を持ち換えるわけで、サブプライム問題にほとんどコミットしていないはずの日本株が揺さぶられる構図となるわけです。

で、奇妙なというのは、マクロに見て、国内投資家が主に内外の債券を保有する一方、海外勢は内外の株式を保有し、特にニューヨークと東京の株価が同じトレンドで動く状況下では、株価が上がれば上がるほど、マクロで見たネットのキャピタルゲインが海外へ流出するわけで、実は東京の株価上昇は国富の喪失でもあるという悩ましい状況にあります。こう考えると、株価が戻ってメデタシという報道はノーテンキです。

といっても、個別銘柄でいえば、こういった国際金融情勢に無関係に上げ下げがあるわけで、基本的には株価は企業業績の先行きを反映したものですから、特に内需関連となる陸運、特に鉄道株はそうなんですが、ここのところ大きく下げている銘柄がありますね。言うまでもなくJR東海です。例のリニア自力整備発表以来下げ止まりません。150万円に届くかという最高値をつけたことがあり、昨年だけでも120万円超あった高値水準も、リニア発表以来下げが続き、100万円を割って、90万円前後で推移するJR東日本に迫られております。元々JR本州各社の株価水準は、各社の収益力を反映しておりましたから、リニア建設に対する投資家の不信任の表れですね。

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Saturday, January 19, 2008

地球温暖化と日本の勘違い

えー、日本は間違いなく先進国中ではGDP対比のエネルギー消費量が少ない省エネ先進国なんですが、その割には環境意識が低いのはなぜかという話をします。

先に種明かしをしますと、まず先進国で比較すれば低緯度に位置していて、特に削減が難しい冬の暖房のエネルギー消費が際立って少ないことは踏まえておきましょう。そして部門別には家庭と運輸の両部門のCO2排出量が少ない特徴があります。その一方でオイルショック以来産業部門の省エネが進み、CO2排出量を減らしている一方、オフィス、家庭、運輸の各部門で排出量を増やしている状況です。つまりは日本の省エネは、温暖な気候の比較優位条件と、欧米に比べて住宅が狭くエネルギー投入量が少なく済むこと、それに鉄道網の発達で、特に大都市圏の限界的な大量輸送がエネルギー効率を高めているわけで、言い換えると、ウサギ小屋に住んで通勤ラッシュに揉まれた結果の栄誉ということになります^_^;。

製造部門は省エネが進んだのですが、IT化でハイテク武装されたオフィスの電力消費量が爆発的に増加してますし、家電品の省エネが進んだ結果、ウサギ小屋でも多数の家電品が使えるようになったし、道路特定財源のおかげで道路整備が進む一方、燃費性能の高まったクルマは一方でベーシックカーからミドルクラスへ、あるいは重いミニバンやSUVへとシフトし、公共交通の恩恵がない地方では、いまやクルマは1人1台となり、そうなれば日常行動はクルマ中心となるので、買い物もパーキングを備えた郊外型SCへと向かい、中心街はシャッター通りと化すことになります。となると人口も郊外へ拡散し、その分電気ガス上下水道通信線などのライフライン整備も広域化して絶えずどこかで道路を掘り起こすということになり、地方財政は疲弊することになります。

その結果、京都議定書で日本が国際公約したCO2-6%(1990年比)の削減目標に対し、直近の2007年で+6.4%となっており、産業界からは「これ以上は無理、あとはほかで削ってくれ」の声が聞かれるのですが、世界の趨勢をリードするEUでは、域内限定ながら排出量の数値目標を定め、過不足を企業間で取引できるキャップアンドトレードの仕組みをつくり、先日のCOP13(バリ会議)でも国際的な数値目標の導入を主張しましたが、日米中印などの反対で流れました。

さて、日本の取るべき道はいかに。それ以前に京都議定書で定められた温暖化ガス削減量ですが、政治的妥協の産物として、森林のCO2吸収効果を算入して良いというルールがあります。これは実は科学的には異論があるところでして、森林は植物の光合成で確かにCO2を吸収するのですが、同時に生命活動の場でもあり、特に生命活動の活発な熱帯林や温帯域の自然林では、CO2排出量も無視できないレベルとなります。むしろ寒冷地のツンドラ(永久凍土)地帯の方が、光合成で固定された炭素が分解されずに地層に留まることから、吸収源としては重要なんですが、海洋や地層の吸収効果は測定が難しいですし、また温暖化が一定レベル進むと、永久凍土もバクテリア分解が進む可能性があり、そうなるとむしろ排出源となるし、海洋も海水温上昇で吸収効果を低下させる可能性があるなど、不確実性が高いので、あえてカウントしないというのが温暖化防止を巡る国際的コンセンサスのはずなんですが、森林については日本が強硬に主張したこともあり、吸収源として認められました。その結果森林の吸収量は-5.4%と算定されたわけで、結果的に実質の削減目標は-0.6%というのが、日本が京都で得た"成果"?だったわけです。うーむバーゼルIIに似ている。つまり直近の実績を踏まえれば-7%の削減が必要というわけですね。

ここまで書くと、もうほとんど結論は出たようなものですが、これ以上地方の道路整備を進めて居住人口を拡散させることは、温暖化防止の観点から問題ありということで、道路特定財源のあり方は根本的に変えるべきです。財源がある以上、それを使う誘因は常に働きますから、いつまでたっても「必要な道路」は増殖することになります。特に人口減少が始まり、社会保障負担は年を追って加重されると考える必要がありますから、インフラ整備は早く打ち止めにする必要ありということです。

あえて申し上げますが、それで「地方じゃ暮らせない」というならば、特に地方には高齢者が多いのですし、息子や娘を頼って都会暮らしすれば、人口の多い都市部で充実した介護サービスを受ける機会も得られますし、何より施設でなく在宅の介護は、結果的に社会保障負担を圧縮できます。かくして大都市に寄り添って省エネライフというのが、日本らしい取組みということになります。またそもそも大都市部ならばクルマも必需品ではありませんので、カーシェアリングなどで台数を制限するなどの方法も取りやすくなり、渋滞も起きにくくなり、運輸部門の省エネは進みます。

あともう一つですが、運輸部門でも旅客は鉄道利用のシェアが高いのですが、貨物のシェアが低い点は指摘しておきます。その意味では、運輸部門での追加的なCO2排出削減を考えるならば、整備新幹線やリニアなどよりも、貨物のモーダルシフトの方が重要であって、並行在来線問題を抱える整備新幹線問題も、貨物輸送インフラを毀損しないことを原則とすべきでしょう。その辺で一歩を踏み出さないと、得意なはずの環境問題で日本は世界の孤児になる可能性があります。ココロしてかかるべし。

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Sunday, January 06, 2008

今年はいい年? 悪い年?

や、年越し論争で新年のごあいさつも未だしですが^_^;、本当は株価が気になって記事どころじゃなかったらしい^_^;。なにしろ新年早々こんなトップニュースですから。

日経平均、終値616円安の1万4691円・昨年来安値に
いや、別に株が下げて損したわけじゃなくて、PER(株価収益率)が16倍を割って、理論上割安といえる水準にある日本株の買い時を探っているんですが、これがなかなか難しいんです。なにしろこんなニュースが続くんですから。
米国発株安、年明け後も日欧市場揺さぶる
週明けに一段の値下げ必至の状況で、いかに理論上割安であっても、買うに買えないというところです。というわけで、私自身は株安には動じておりませんで、買いの好機と見ているんですが、なけなしの資金ですから、ふんぎりがつかないんですね^_^;。

でも、買えない理由はそれだけじゃなくて、為替相場との関連をバーゲンエコノミーで述べましたが、年末にOECD加盟国中1人当たりGDPで日本が18位になったというニュースが流れ、かつて世界一豊かだった日本もいよいよ並みの豊かな国に成り下がったわけで、悲しい予想の的中と相成りました。そんな状況に斉藤東証社長も危機感を募らせます。

「東京市場、魅力失いつつある」・斉藤東証社長が年頭あいさつ
国際競争力を維持するために、賃カツ、リストラ、サービス残業、非正規雇用で凌いでいたはずなのに、ただただ国民をビンボにしただけでした(怒)。購買力を失った国民は節約を心がけりゃ,モノが売れないデフレだと騒ぎ、低金利で国民から利子所得すら奪い、円安と相まって企業はぼろ儲けしていたのに、税金払いたくないから法人税まけろの大合唱、財源確保で消費税増税とは、どこまでも虫の好い日本企業です。

でもだからといって儲けを株主に配当などで還元する気はさらさらなく、ひたすら蓄財に余念がないのでした。今回の株価下落で配当利回りが1.6%と、久々に10年物国債の利回りを上回ったそうですが、日本企業の配当性向の低さは絶句です。そりゃ外国人投資家には魅力がないわQ-o-フッ。というわけで、なかなか買いのタイミングがつかめないのでした。

鉄ちゃん的には、今年は新線開業の当たり年ということで、3月の横浜市営地下鉄グリーンラインと都営新交通日暮里舎人ライナー(ベタなネーミングだ^_^;)、6月の東京メトロ副都心線渋谷開業に東急目黒線日吉延伸と、首都圏だけで4線ということになります。んが、よく考えたらグリーンラインと日暮里舎人ライナーは公営交通だし、東京メトロは株式会社化されたとはいえ、未だ国と東京都が出資する特殊会社で上場もこれからです。唯一民間路線である東急目黒線ですが、東横線の線増扱いとなりますので、営業キロは変化なしというわけで、うーむ、よく考えたら日本経済並みに上げ底だったりして^_^;。

横浜市営地下鉄は民営化されるはずだったのですが、中田市長の選挙違反疑惑などで話が進んでいる形跡はなし、同時に民営化が答申された市営バスは民営化見送りで、路線ごとの切り売りでリストラ進行中。分社化でもめた相鉄のバス部門共々横浜のバス事情は波乱含みですね。そもそも全体の営業規模も大きくない横浜市営地下鉄で、規格の異なる新線というのは、どう考えても愚策です。

むしろ関西のJRおおさか東線と京阪中之島線に期待がかかりますが、いずれも三セク方式の上下分離路線でやっぱ上げ底か^_^;。とケチばかりつけていても仕方ないのですが、大阪のような大都市圏での鉄道整備は公的助成なしには進まないのも現実です。かといって第三セクター方式は問題のある方式であることも次第に明らかになりつつあり、地方版産業再生機構がターゲットにしていると噂されます。困ったときの三セク頼みは通用しなくなります。ま、それでも近鉄の逆上下分離よりはましか。

というわけで、とりとめがなくなってまいりましたが、本年もよろしくお願いいたします。m_ _m

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Monday, December 31, 2007

中国高速鉄道に新幹線型車両

寒い年末を迎え、新しい年が波乱含みの予感で語られることが多いように感じますが、やや遡って、このニュースを取り上げないわけには参りますまい。

高速鉄道車両、中国が新幹線型採用・川重など技術供与
北京―天津間に来年8月開業予定の高速鉄道新線用の車両ということで、全線高架の旅客専用線ですから、限りなく日本の新幹線に近い形態の路線です。

記事中にあるとおり、当初独シーメンス製の車両の投入が予定されていたのですが、車両の落成が遅れているために、上海地区で投入されて実績のある子弾頭^_^;タイプの車両を投入し、シーメンス製と半々の割合になるということですから、記事中にある福田首相訪中の見返りという見方は当たらないでしょう。何しろ中国にとっては"国産"なんですから。

とはいえ日本の技術供与による車両の採用は、日本にとっては重要です。付加価値の高い部品レベルの輸出となりますから、利益レベルは高く、前の記事でも明らかにしたように、日本にとってはおいしい話なんです。一応最高速300km/hで営業運転を行うということで、足回りや電装品は”子弾頭"より強化されており、いわゆる"はやて"型車両としては初の速度域となるわけですから、この面でも注目されます。本家の日本では、東北新幹線新青森開業を待って投入される次世代型車両で320km/hが予告されている状況ですから、それに先駆けての300km/h運転となるわけですね。

ま、それをいえば台湾高速鉄道でも、本家の日本で285km/h運転に留まっていた700系をベースに出力増強型の700T型を導入して300km/h運転を行っており、本家に先行したわけですが、このように技術的に可能であっても国内では試すことのできないことを海外で経験するというのは、実は大変重要なんですが、日本の鉄道関係者の中には、そういった点を評価できない人たちが存在するようで、台湾高鉄では、開業を控えて派遣していた技術者を引揚げるという醜態をさらしました。こんなことしていては、世界の成長センターたるアジアでのビジネスチャンスを失いかねません。

思えばサブプライム問題で揺れた2007年も終わり、震源地のアメリカでは、地価下落や金融不安で先行き不透明ながら、産油国などの国富マネーの流入で株価が持ち直しているのに対し、サブプライムの影響がないはずの日本では、株価が下げ止まりません。この問題も以前に為替レートとの関連で取り上げたことがありますが、円/ドルレートの下げが1割弱に対し、日経平均株価の下落は1割超で、為替の調整幅以上に株価が下がっている状況です。それだけ日本の株式市場に魅力が乏しいことの証左であるわけですが、世界の成長センターであるアジアとの連携で下手撃っている間に、世界は日本を見放しつつあるということですね。

自己資金でリニア建設をうたったJR東海の株価が下げたままなのも、世界の投資家がリニアを魅力ある投資案件と見ていないということです。また非上場をいいことに、並行在来線の赤字負担までして長崎新幹線建設に舵を切るJR九州には上場の目がなくなったわけですが、地場企業が国の補助金を当てにするのと、世界の投資資金をひきつけるのとでは、どちらが地域経済の浮揚に貢献できるか、小学生でもわかる理屈ですね。

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Wednesday, December 26, 2007

リニアと長崎を結ぶ線

まずは余談ですが、昨日、東急新6000系が神武寺から長津田へ発送されました。走ルンですファミリー増殖中ですね^_^;。

で、本題ですが、本日のニュースはこれですね。

JR東海、リニア新幹線を自己負担で建設・総事業費5兆円
取締役会で決定したということですから、企業としての機関決定はされたわけですが、前途多難ではあります。ちなみに株式市場の評価は辛口です。終値ベースで前日比-1000,000円、8.85%の下げという結果です。元々4月に松本社長が記者会見で発表してますので、既定方針どおりですが、今回企業組織として正式に取り組むこととなったわけです。

当ブログでは既にこの時点で取り上げておりまして、改めて付け加えることはないんですが、来年の株主総会が荒れそうですね^_^;。加えて新幹線については国の関与という面倒な問題もあります。というのも、70年代に施行された全国新幹線鉄道整備法によって、新幹線鉄道は国が基本計画を策定し、各種調査の後に整備計画を決定し、建設指示、工事実施計画作成の後に着工という風に手順が決まっております。これは新幹線の事業主体が国の機関である国鉄であることを暗黙の前提としていて、国(運輸省)が国鉄に指示