経済・政治・国際

Saturday, October 12, 2024

三つ子の赤字

この話題から入ります。

【ノーベル平和賞2024に日本被団協】「核廃絶に弾み」被爆者ら喜びの声 - 日本経済新聞
核拡散防止条約(NPT)体制では結局赫々酸を阻止できず、宣言こそしていないものの、イスラエルとイランは事実上の核保有国と見做せますが、両国が今一触即発の状態にあります。反撃に慎重だったイランがミサイル攻撃を仕掛けたことで情勢が混とんとしてますが、イランはあくまでもイスラエルの軍事資質を標的にした弾道ミサイル攻撃で、国際法に則った行動ですが、寧ろイスラエルはヒズボラ掃討を口実にレバノンへの攻撃を続け、遂に国連平和維持軍まで攻撃するという無茶苦茶な事やってます。そのイスラエルをアメリカは擁護し武器供与もしている訳で、対ロシアとのダブルスタンダードで国際世論を敵に回してます。そんな中で日本の被爆者団体のノーベル平和賞受賞がもたらすメッセージは明白で、核の抑止力での平和維持はきっかえさえあればエスカレーションを止められないってことです。集団抑止とか言っている某国も自覚しろってことです。この話題はここまで。
ドイツ、2年連続でマイナス成長へ 「欧州の病人」再び - 日本経済新聞
ドイツ経済の不調ですが、原因はいろいろあります。ロシアのウクライナ侵攻で安価なロシア産原油や天然ガスが利用できなくなったことと、中国の国内景気の悪化が主な理由ですが、前者は中国やインドなどがロシア産原油の買い手となることで、原油や天然ガスの価格は落ち着いてきたので、影響は軽微と見られますが、中国の変調はドイツを直撃します。

EVを戦略分野と知る中国の政策で中国産EVは急成長を遂げましたが、人口が多く経済成長で資本蓄積が進んだ結果、参入企業多数で過当競争となり、政府の補助金支給が止まった途端に国内市場の販売不振となり、輸出シフトがかかった結果、中国産の安価なEVが欧州に大量に流入し、EVシフトを進める欧州メーカーを追い込んでいます。VWが国内工場閉鎖を発表して揉めてますが、それに留まらず世界の完成車メーカーを顧客とするボッシュやコンチネンタルといったメガサプライヤーも劣勢です、このままいくと産業空洞化に至る可能性もあります。

80年代のアメリカ、2000年以降の日本に続いて先進工業国の宿命かもしれません。他国に先駆けて工業化して安価で高品質ま工業製品を世界に売って外需で経済を潤してきたものの、新興工業国の台頭で次第に優越的な地位を失う訳ですが、80年代のアメリカでは国内産業の空洞化で輸入が増える一方、主に産油国のオイルダラー還流で金融所得を増やしてきました。加えてレーガノミクスに代表される減税中心の財政出動もあって貿易と財政の双子の赤字で旺盛な国内消費を支えた訳で、供給能力を超えた消費が続いた訳です。

それが90年代になると冷戦終結によるグローバリゼーションによって中国を含む新興国の工業化への資金提供で金融所得を拡大する一方、パソコンとインターネットの融合によるIT部門で世界をリードした結果、貿易も財政も慢性赤字なのに経済成長を維持しました。日本の場合は97年の金融危機の影響で企業の投資が委縮した一方、金融自由化で海外投資に傾斜した結果、国内の産業空洞化を進めてしまい、投資不測の結果貿易収支は悪化し続け、貿易赤字も珍しくない状況になり、コロナとウクライナ紛争の影響もあって貿易赤字は慢性化します。加えて金融危機後の景気対策として財政出動が慢性化した結果、80年代のアメリカ同様双子の赤字状態になりました。

さらに元々赤字基調だったサービス収支にも変化があり、インバウンドで旅行収支が黒字化した一方、ライセンス料やクラウドサービスなどのデジタル収支赤字が帳消しにしています。インフレでも利上げできない金融政策の歪みもあって金融所得収支も赤字ですから、トータルのサービス収支は赤字ですし、観光公害が言われ人手不足で受け入れ拡大も難しいことから―サービス収支が改善する見込みはありません。つまり今の日本は80年代のアメリカを凌ぐ三つ子の赤字を抱えている訳です。

そこへドイツが仲間入りですが、ドイツの事情はまた異なります。1つは共通通貨ユーロの存在がドイツを助けている点です。とりあえずユーロ圏内への輸出では優位に働きますから、そういうバッファのない日本よりは幾らかマイルドです。加えてIoTや様々なライセンス収入があります。円安でつくばとねり的ライトなリスク で指摘したように、新潟トランシスのGTシリーズや広電グリーンムーバMAXの駆動装置のライセンス料は支払われています。日本で海外からライセンス料が取れる技術は果たしてあるかどうか。これもプラスになるかどうか。

米テキサス新幹線、連邦政府が調査費 鉄道公社も協力 - 日本経済新聞
現地事業会社の資金調達が進杏遅れに遅れたテキサス新幹線にJR東海が日立などの日本企業と共同で出資し、バイデン政権のインフラ投資法事業としてちょすあひがついたというニュースですが、大統領選次第でお蔵入りもあり得ますし、既存技術の積み重ねで且つアメリカの保安基準をロビー活動で変えさせるという形で資金を使っていて今更撤退できないってことでしょうけど、新幹線技術自体にはライセンス料をとれる要素は少なく、結局開業後の営業成績次第ですから、投資案件としては不確実です。JR東海は北東回廊リニアを狙ってリニア技術を無償提供していることもあり、北米事業が利益を生むかどうかは不確実です。国鉄時代のメーカーライセンス開示強制の影響もあり、日本の鉄道技術でライセンス料を稼ぐのは難しいのが現実です。ドル建て名目値とはいえ経済不振のドイツに抜かれるのも無理はないです。

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Saturday, October 05, 2024

地方は創生できない

いしばしをたたいてわたるライブ実演中。

金融政策、揺れる石破首相発言 「火消し」にも市場反応 - 日本経済新聞
総裁選後の為替変動や週明けの株価下落を一部で「石破ショック」と呼んでいるようですが、為替は逆に円安になり一時149円をつけましたし、株価もやや戻しました。乱高下しやすい市場環境のなせる業で、日本の首相選びが影響した訳ではないということは申し上げておきます。

市場の波乱要因としては寧ろイスラエルのヒズボラ掃討軍事行動やイランによる報復としてのミサイル攻撃など、中東情勢の悪化による地政学リスクでエネルギー価格が上昇したり、米港湾ストもあってサプライチェーンの攪乱といったリスクオフ要因に反応したものでしょうし、日本株に関しては一時的な円高の影響と新NISAで資金流入した結果の過剰流動性相場と見ればほぼ説明がつきます。ただインフレ基調なので株価はインフレをヘッジして値上がりするトレンドはありますから、時間はかかるかもしれませんがいずれ回復します。

それよりも本人の発言がブレブレで、修正発言に対しても市場が反応するということで、結局経済政策に大きな変更はないことが明らかになり、いずれ落ち着きでしょう。それよりも地方重視の目玉が地方創生交付金の倍増というのですから呆れます。結局中央の大手コンサルの助言で要らない事業がなされ、コンサルにさや抜きされただけ。地方に必要なのは自治に必要な財源と権限です。つまり地方創生ではなく地方分権こそが必要なんですが、与党国会議員が裏金で地方議員を操って与党の地位を維持する体制が崩れるからできない訳です。その結果が能登半島の惨状や再稼働で揺れる原発立地自治体です。これ返礼品競争でコンサルやまとめサイトにさや取りされたふるさと納税に似てません?企業版ふるさと納税ではこんなことまで起きてます。

福島県国見町にみる「企業版ふるさと納税」の課題 日経グローカル 地方自治を考える - 日本経済新聞
人口減少で救急搬送体制維持が困難な地方で、近隣自治体への救急車派遣事業を資金提供を約束したコンサルの提案で着手し、事業者の入札をしたけど入札は1件だけで、しかもコンサルの関連会社だったということが同町議会の100条委員会で明らかになりました。入札条件が多岐に亘り、事実上コンサル関連会社しか参加できないものだったことや、入札前に救急車の製造に着手されていた事実まで明らかになっています。事業はとん挫し、コンサルが提供した資金で関連会社に金を落とす形で自治愛を食い物にした悪質な事例です。

元を質せば現在日本郵政社長の増田達也氏が「消滅可能性自治体」をリストアップして自治体の危機案を煽ったことが始まりで、ふるさと農政制度も都市部に偏在する税源を地方へ振り向ける目的だった筈ですが、あっという間にコンサルの悪知恵で返礼品競争になり,返礼品手配やまとめサイト掲載などのパッケージ提供の見返りに多額の手数料がさや抜きされていて、実際には寄付額の半分も自治体に入らない現実があります。元々寄付税制で寄付額kから2,000円を引いた額の50%(国税40%地方税10%)が税額控除されていたので、その活用を告知するだけでよかった筈ですし、自治体クラウドファンディングとして国が無償掲載できるサイトを立ち上げるとかすればよかった筈です。ふるさと納税も地方創生も地方が民間に食い物にされる手垢のついた愚策です。話題を変えます。

鉄道輪軸データ改ざん、50事業者の車両で確認 国交省 - 日本経済新聞
JRの掟?の続報ですが、国交省の調査では鉄道事業者50事業者でデータ改ざんが確認され、全て総合車両製作所(JREC)か京王重機整備(以下京王重機)に輪軸組立を委託していたもので、結局データ改ざんはJTRECと京王重機で実施されていたということです。JTRECは東急車輛製造時代からだと思いますが、京王重機共々関東を中心に他社の輪軸組立を請負ってきた訳です。つまり輪軸組立という鉄道独自の保守作業ですが、規模の大きいJRはともかく各社が自前で設備と人員を保有するよりも、外注してアセットライトな経営で資本コストを下げたい誘因はある訳で、逆に受託側は規模の経済で効率性を高められますから、受託手数料を取っても委託側から見れば安上がりということになります。まるで国見町の救急車肺炎事業のような構図ですが、民間同士ならば契約に基づいて行うだけでそれ自体は問題にはなりません。

但しそもそも輪軸組立時のデータの上限値と下限値はJIS規格で定められているようですが、元々現場の経験や勘に支えられてきた職人芸的なスキルを継承する若手が減ってきている一方、報道で見る限り、調査した輪軸の中にはデータのないものも多数あり、つまりデータ保存が始まったのは結構最近のことで、おそらくベテラン職人は経験的な属人的スキルで対応してきたものの、若手の育成にはデータの活用が欠かせないとなり、データを取ってみると外れ値が意外と多いけど、ベテランの経験則でスルーしても安全と見ることができるグレーゾーンが存在しているということでしょう。その一方で収益化されることで歩留まりを高めないと利益が出ないという別の問題もある訳で、安全に問題ないレベルの外れ値は改ざんでクリアすることが行われるようになったと推測されます。とするとかなり根深い問題です。

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Saturday, September 28, 2024

いしばしをたたいてわたる

海外からは殆ど注目されない日本の選挙、しかも自民党総裁選という党内のリーダー選びですが、今回は珍しく注目されました。

自民党新総裁に石破茂氏 1回目と決選投票の結果詳報 自民党総裁選2024 投開票速報 - 日本経済新聞
1回目投票で高市氏トップが報じられると、アベノミクス継承で金融緩和と積極財政ということで為替が円安に振れた一方、決選投票で石破氏当選が報じられると円高に揺り戻すという形で市場が反応しました。日本の選挙ではほぼ見られなかったことですが、主に海外勢による経済政策変更の有無に反応したと見られております。加えて今回は米金融筋の資産運用立国政策が継承されるのかとか、岸田政権で進んだ日米同盟強化がどうなるかで米政府高官の発言があったりしています。正直言いますと高市氏にしろ石破氏にしろ先行き不透明という本音が漏れたということでしょう。

市場の反応に関しては新NISAの影響とみています。新NISAで日本の家計貯蓄2,000兆円の一部が株式市場に流れ込み、オールカントリー(略称オルカン)と呼ばれるパッシブ型株式投信に流入した結果、日米ともに株式市場が好調ながら、逆にパッシブ投信故に相場の僅かな変化を拾って過剰反応してしまうということですね。8月相場はそれですし、9月も変動幅こそ小さくなりましたが、上げ下げが続く落ち着かない相場になっています。加えて日米ともに国債金利が上昇傾向にあります。利上げした日本に留まらず積極財政の続くアメリカでも長期金利は上昇しており、市場金利は日米ともに上昇傾向ですから、一部の投資家は株式から債券に乗り換えるという動きもあり、こうした資金シフトも株価を不安定にします。

そして普通なら個人的には無視する政局ですが、流石に石破氏の当選は意外感があり、不人気な森首相の辞任を受けた後継に小泉純一郎氏が選ばれたことが言われてますが、今回その役割は小泉進次郎氏に託されていた筈で、元々が解散総選挙を睨んだポスター映えのする総裁を選びたかったけど、巧みにプロデュースされていながらボロを出して「進次郎じゃだめだ」となって保守層に人気のある高市氏が票を集めたけれど、流石に右派過ぎて推せないことと、裏金議員が推してるしインフレに苦しむ国民にもアベノミクスの副作用の認識が広がったといったことも影響したと見られます。何より有権者は変化を求めている訳で、高市氏では戦えないというのが本音でしょう。その意味ではロッキード事件で逮捕され失職した田中角栄氏の後継に三木武夫氏が指名されたことの方が類似性がtあるといえます。変化を見せる自民党流疑似政権交代の演出という目晦ましです。

例えば裏金議員の公認問題という踏み絵が待ち受けます。厳しくすれば党内から不満が出て三木おろしならぬ石破おろしが動きますし、甘くすれば野党から突っ込まれます。どっちに転んでも叩かれる訳です。加えてインフレ対策や能登半島豪雨の復旧などの課題が待ち受けますが、石破氏自身がインフレ対策で補正予算を組むと述べる一方、能登南東豪雨関連は予備費で対応としています。言い分としては補正予算を組むより素早く動けるそうですが、1月の能登半島地震の復旧が進まなかったのは、予備費なら閣議決定だけで支出を決められるとしておりますが、その結果個別に財務省の査定で削られて道路も堤防も仮復旧で震災瓦礫も片付かない状態で豪雨で二次被害を出している訳です。

ちなみに内閣の方針で予算の使い残しや税収上振れによる次年度繰越金の一部を防衛費に充てることが法律で定められ、25年度プライマリーバランス黒字化も堅持する方針が示されている以上、財務省が予備費の使い残しを増やそうとするのは当然のことですから財務省悪玉論は見当違いです。予算化することで各省庁の執行権限が確定する訳ですから、財源は予備費でも補正予算組んで動きやすくすることは重要です。被災者よりもアメリカ製の旧式兵器を買うことを優先した内閣の方針の犠牲ということです。一方で選挙を睨んだ経済政策は党内バランスでバラマキ色が強く実効性が乏しい傾向があります。こんなところに選挙管理内閣の限界がある訳です。という訳で川柳。

石破氏を叩いて渡る自民党
お粗末www。
東北新幹線はやぶさ・こまちの車両分離、金属片でスイッチ誤作動と推定 - 日本経済新聞
赤字3Kの掟?の東北新幹線列車分離事故の続報です。調査の結果こまち編成E3系の運転台にある連結器開放スイッチの接点部分に金属片が張り付いていて、回路短絡でスイッチが作動したらしいと推定います。スイッチは連結がうまくいかなかったときの為の開放スイッチで、通常は使わないバックアップシステムですが、他の編成も緊急点検した結果、同様の金属片が複数の編成から見つかったことも報告されてます。

メーカーのヒアリングで金属片は製造時の金属クズ由来ではないかと言われ、同システムの使用を停止してバックアップは手動対応とするということですが、バックアップシステムを含む自動化の難しさでもあります。人手不足で省力化は避けられませんが、非常時には人勧製術を取らざるを得ないとすると、トラブルの回復に時間がかかることを意味します。悩ましいところですが、フェイルセーフ原則順守の鉄道としては石橋を叩いて渡る対応をとらざるを得ないことは忘れてほしくないところです。

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Sunday, September 08, 2024

試練の9月

波乱の8月に乱高下した株価も落ち着きましたが一進一退のさえない値動きが続きます。独り勝ち状態で絶好調のアメリカで景気減速のサインが出てきて、FRBの利下げ確実と言われる除隊ですから無理もないところ。連れて動く日本株がさえないのも当然です。また米大統領選に絡む政治の先行きの不透明感も経済を押し下げます。日本でも自民党総裁選と立憲民主党代表選が同時並行で進行中ですが、令和のコメ騒動関連でこんなニュースも。

1〜7月のコメ輸出最高 国内不足も海外用の転用に壁 - 日本経済新聞
国内のコメ不足にもかかわらず海外の日本食ブームでコメ輸出が増加しているという違和感ですが、輸出米は補助金を受けているから国内に出荷できないというオチです。つまりコメの国内価格維持のために資料米や加工米と同様に差額を補助金で埋めている訳ですが、そのために流通市場を窮屈にして今回のようなコメ具足をもたらした訳です。どうせ補助金出すなら農家の個別所得表をしつつ市況を見ながら自由に流通できる体制であればコメ不足は起きなかった訳です。与党の票田の農協を温存したいがために起きたコメ騒動です。補助金はWTOが禁止する輸出補助金の疑いがあります。

という訳で自民党も立憲民主党も立候補者が増えて見通しにくい状況ですが、これだけ候補者が乱立すると目立たないと埋没するという訳で、出馬表明時に他の候補との違いを演出しなければならないから総裁選大喜利状態です。笑えるかどうかは知らんけど^_^;。目についたのは河野太郎の言いたい放題と小泉進次郎の意外なしたたかさです。河野太郎はおそらく最後は麻生派の後押しで優位にあるというおごりが見えますが、一方トートロジーばかりの進次郎構文と揶揄されてましたが、そうした批判もさわやかに受け止めつつ、付箋だらけのカンペを笑顔で読み上げる役者ぶりは親譲りかも。侮れません。但し河野太郎のコレは注目に値します。

河野太郎氏、全納税者が確定申告案「税の使い道に厳しい目を」 自民党総裁選 - 日本経済新聞
欧米では当たり前の全員確定申告ですが、日本では年末調整で雇用主に代理させている訳で、その結果給与所得者の納税者の自覚が高まらないから政府の財政運営に厳しい目が向かないということですね。河野氏は寧ろ企業の事務負担を問題視しているようですが、政府が副業を推奨していて2つ以上の雇い主から給与を受け取る人も増えてますし、また社保改革で短時間労働者の厚生年金加入が増えていることもあります。その是非はとりあえず横に置きますが、自民党の裏金問題が炎上したのはインボイス始めましたで指摘したように消費税のインボイス制度導入で国民の意識が変わったことが大きいんですよね。総裁選を派閥頼みで闘う河野氏は気付いていない?^_^;

実は全員確定申告は税務上は国民の資金フローを国税庁が把握する度合いが増えますから、マイナンバーに頼らない納税者の名寄せが可能になります。逆に言えば納税者としては健康保険証その他の個人情報をマイナンバーに紐付けすることは国に丸裸にされるリスクを負う訳で、国民から見たマイナカードの存在意義を低下させます。是非やってくれ!それから金融課影響下は石破氏が打ち出してひっこめましたが、NISAで非課税枠が設定されたんですから、累進課税は難し鵜くても税率を高める手はあります。本業が低所得の場合は総合課税を選択すればよいですから、殆どの個人投資家は回避策がある訳です。加えて企業の保有株の課税免除も見直せば良いです。

あと解雇規制緩和を複数の候補者が発言してますが、いったいどの法律で規制され、それをどう変えるのかに踏み込んだ発言はありません。当然なんですが、労働基準法による不当解雇の禁止は謳われてますが、どう変えれば規制緩和になるのでしょうか。実際は日本企業の所謂メンバーシップ型雇用による企業の過大な人事権を前提にした裁判所の判例の積み重ねが企業の解雇を阻んでいる訳で、司法判断の積み重ねですから、それを変えるには新法を作らなきゃいけません。そうなると解雇を正当とする条件を条文に書き込まなきゃいけないくなりますが、そんな縛りを企業は嫌う筈です。言ってみただけ以上の意味はないですね。政治が絡むとこういうことは往々にして起こります。例えばアメリカでも。

米クリフス、日本製鉄による買収失敗なら「USスチールの資産買収」 - 日本経済新聞
日鉄の買収提案の前に米同業のクリフスが買収を検討したものの市場占有率から反トラスト法違反の疑いがあるということで沙汰止みあった経緯があり、日本企業の日鉄による買収提案は経営陣にとっては渡りに船だったんですが、労組の同意が得られず、それ故にトランプ氏がソシエを打ち出し、対抗上ハリス氏も懸念を表明し、バイデン大統領も任期中の阻止を打ち出すという連鎖になっております。劇先週のペンシルベニア州に立地する故に政治イシューになってしまったのですが、そうなるとUSスチール経営陣は製鉄所閉鎖を示唆して牽制する訳ですが、それによって閉鎖される製鉄所などの資産をクリフスが引き受ける形で漁夫の利を得ようという訳ですね。政治が絡むと経済原則通りには運ばない訳で、日本のコメ問題にも通じます。話を日本に戻します。
公益通報制度、機能せず 兵庫県知事は告発者捜し優先 - 日本経済新聞
おねだり知事などとワイドショーで面白おかしく取り上げられてますが、問題の本質は公益通報者保護法で通報された当事者である知事が通報者を探してもみ消しを図った法令違反問題です。公益通報でも悪い噂を集めた誹謗中傷の可能性が皆無ではありませんが、それを判断するのは当事者ではなく第三者であり、そのための手続きが決められているのにそれを無視した訳です。

こうした制度が重要なのは官公署や企業の不祥事が絶えないことがあります。鹿児島県警の内部告発事件もそうですし、BIGモーターの不祥事や三菱電機の検査不正、不正を生む会社の掟の三菱自動車燃費不正から始まりほぼ全メーカーを巻き込んだ自動車の検査不正や小林製薬の紅麹サプリ問題など、公益通補制度が機能していれば回避できた可能性のある出来事が目白押しです。意味するところは発言の安全性が担保されていない現場が多いってことです。不祥事が絶えない訳です。こうした中で日本経済を浮揚させるのは正直難しいでしょう。加えてこれから人手不足本番ですから、賃金は上昇圧力がかかる訳ですが、それを喜べない現実があります。

7月の実質賃金プラス、ボーナス増が寄与 基本給はなお物価上昇率を下回る - 日本経済新聞
6月に続き7月も実質賃金プラスとなりましたが、6月は公務員一部企業、7月は殆どの企業のボーナス月で、しかも円安効果で業績が上振れした企業が成果給として支給している訳ですから、基本給で見ればマイナスということで、賃金ホントに上がってる?
成田空港、トラック負担減に知恵 鉄道代替や時間予約 - 日本経済新聞
第三滑走路整備で貨物便受け入れが増えることを見越した国際貨物拠点整備がトラックのドライバー不足で視界不良ということで、鉄道貨物代替を検討しているというニュースです。成田空港周辺には航空貨物フォワーダーの事業所が多いですが、ドライバー不足と共にコロナ明けでネット通販利用が一服したこともあり、業績が良くない中でドラーバーの待遇改善は進まず、こうした動きになる訳です。成田空港に関しては石油元売りのリストラでタンクローリーが不足して航空燃料調達が滞っているということもあり、航空燃料輸送の復活もあるかも。いずれにしても試練の中での新たな動きです。ドライバーの待遇改善が進むかどうか。

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Saturday, August 31, 2024

迷子の台風

本題に入る前に令和のコメ騒動の続きです。

坂本哲志農相、お米の円滑流通を卸業者に要請 備蓄米放出は慎重 - 日本経済新聞
政府は対応する気なし。卸業者に円滑な流通を促してますが、流通が滞っている状況で政府備蓄米の放出はしないで、もうすぐ新米出るからそれで解決というスタンスです。しかし問題は新米は割高というか、値上がり確実です。というのも農協が生産者に支払う前払いの概算金が増額されていて、小売り段階で2~4割高くなると見込まれています。新米と古米の価格差が大きくなるのは仕方ないですが、スーパーの棚からコメが消える、つまり今必要なコメが手に入らない状況の改善こそ必要な筈です。

ここからは裏の取れていない話ですが、元々コスト上昇で農協が生産者に支払う概算金は上がっているのに、コロナ禍で需要が減って値崩れしていたことから、卸が利益確保のための価格つり上げの動機はある訳で、本来ならばそうした流通の不全を解消するため平成のコメ騒動を受けて成立した政府備蓄米制度じゃないのか?ってことですね。加えて市況によって生産者に概算金の上振れ分として加算金を支払う場合もあります。勘の良い方ならお判りでしょうけど、自民党総裁選の後に信を問う解散総選挙という段取りを睨むと、農協を通じてコメ農家にアメを与えることで票の離反を防ぐ狙いが読み取れます。農政改革を打ち出した立民枝野氏はその辺意識してるかも。

東海道新幹線、29日の運転取りやめ 静岡県内の大雨影響 - 日本経済新聞
東海道新幹線は沿線の雨量計が規制値を超えたことから29日の運休を決め、明日9月1日も運休と長引いていますが、それもこれも台風の動きが遅いからです。豪雨に弱い盛土構造も災いしてますが、こればかりはやむを得ません。

台風の動きが遅いのは台風を動かす動力となる太平洋高気圧が弱いのと、偏西風の蛇行で日本列島付近は北へ偏っていて台風10号はうまく乗れなかったから近畿地方で停滞している訳です。そして台風の北側にある秋雨前線に湿った暖かい風を送り込んで活発化させているから東海から関東にかけての広範囲に雨を降らせている訳です。気球の地政学で中国製とみられる観測気球が大きくコースを外れて北米に達して議会の突き上げで撃墜された事件がありましたが、将に偏西風の蛇行を実証しております。ちなみに23年5月に撃墜した気球の残骸を調査した米政府から軍事観測気球でなかったことがこっそり発表されてます。

一方今回は空の便は九州発着便が大量運休したものの、首都圏対関西などは飛んでいますから、輸送力は比較になりませんがある程度受け皿になったと考えられます。故に輸送力に差のある北陸新幹線も米原に繋げば機能するってことです。自民党総裁選出馬表明が遅れてメディア露出を増やしたい与党陣営には水を差された感があるかもしれませんが、脱炭素をサボり石炭火力依存でCO2出しまくった結果、上述のように偏西風が惰行して台風が停滞した訳で、ある意味自業自得です。福島第一原発事故で原発が全停止したから仕方がないと言訳されてますが、このニュースも仕方がないんでしょうか。

原発新増設、誰ができるのか? 技術継承へ細る人材 原発 誰が動かす(上) - 日本経済新聞
東海大学が原子力学科の募集を停止するという記事ですが、福島の事故で受験生が減って定員割れ状態で維持できなくなったわけです。つまり若手の原子力エンジニアが育っていないから、政府方針で原発新増設を決めたところで作る人も動かす人も足りないという状況になる訳です。世界を見渡せばアメリカもスリーマイル事故以来新設が止まり、やはり技術的なブランクを埋められずに迷走してますし、イギリスやフランスも同様です。世界を見渡せば新増設はほぼロシアと中国に偏っており、脱炭素電源として新設を希望する新興国もロシアや中国の企業に頼っているという状況です。いずれ日本もその列に並ぶかも^_^;。建設だけでも10年はかかり立地選定や環境アセスメント、原子力規制委の承認や住民避難計画策定と地元同意とスケジュールこなすうちに2050年来ちまいます。

更に言えばアメリカは原子力産業の空洞化で既存原発のウラン燃料をロシアから輸入していて、ウクライナ戦争の制裁対象にもなっていません。更に悲報ですが安全性が高いと言われる新型炉の中でも有望とされる小型モジュール炉(SMR)に使われる高濃縮ウラン燃料は、現時点でロシアのみが商業供給可能とされており、実際シベリアの北極海沿岸で実用炉が稼働しています。まあロシアが保有する濃縮ウランを発電で減らせるという意味で悪いことばかりではありませんが、冷戦時代に過剰生産されたソビエト時代のレガシー資産は膨大で、とても発電だけでは消化しきれません。核燃料の調達面では欧州も似たり寄ったりの状態です。

日本では核燃料サイクル事業で「国産」を謳いますが、その六ケ所村の核燃料サイクル事業1997年稼働開始の予定をトラブルで27回も変更されていていつできるかもわからないし、そもそももんじゅの開発失敗で高速増殖炉の開発を放棄した結果、プルトニウムを含むMOX燃料を軽水炉で燃やすプルサーマルでお茶を濁してますが、増殖炉と違って高レベル放射性廃棄物を増やす厄介者ですし、既存原発で使う場合、放射線被爆で躯体の劣化が進むと考えられますから、折角動いている既存原発の経年劣化を早めるだけで、メンテナンスコストも上がります。

脱炭素燃料として水素やアンモニアも注目されてますが、何れも現時点で石油由来の発生品だから脱炭素にならないし、再エネ由来の水素などはコスト面で商業化は程遠い現状です。アンモニアも当面石炭火力の併燃で対応ですから、結局石炭火力の延命にしかなりません。また日本製の石炭火力は高効率だという議論もありますが、それでもガス火力などに比べてCO2排出量は多いし、新設した場合30~50年の稼働期間を睨めばカーボンゼロ宣言の2050年を越えて稼働させるのかということですね。その前に停止を余儀なくされる座礁資産にしかならない訳です。

てことで停滞する迷子の台風は日本が生み出した日本の写し鏡かもしれませんね。

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Sunday, August 25, 2024

令和のコメ騒動

災害の備えと憂いは東京も例外ではありません。

東海道新幹線、大雨で一時運転見合わせ 山手線も - 日本経済新聞
港区などで連続150㎜の雨量となって東海道新幹線が規制値越えで運転見合わせ。また山手線など首都圏各線も止まりました。一方、SNSで南北線市ヶ谷駅コンコースの水没や都営大江戸線六本木駅の地上階段から雨水が滝のように流れ込む動画が拡散されたりしてますたが、地下鉄各線は一部地上出口の閉鎖で乗り切り、列車運行は続けていたとか。地下鉄の排水能力の高さを見せました。同時に排水を受ける公共下水道の能力も高い訳ですが。とはいえ帰宅ラッシュのタイミングでのハプニングは影響が大きかったとは言えます。

ノイジーサマーで指摘したように、地震や台湾有事などの軍事的緊張よりも、水害リスクは発生確率から言えば重大です。さりとて全国で東京都並の対策が可能かといえば難しいし、本当のところは原因である気候変動対策としての脱炭素を進めることが重要でしょう。脱炭素の観点から言えばクラウド上で働くAIは大量の電力消費を伴いますから、この観点からも規制が必要ですし、ましてエネルギー資源をほぼ全量輸入に頼る日本に勝ち目はありません。一方で今は落ち着いている電力需要がAIで上振れするという妄言で脱原発を主張していた河野太郎議員が宗旨替えしました。愚かです。

その河野太郎議員は自民党総裁選に出馬の意向だそうですが、前回小石河連合と呼ばれ河野氏支持に回った小泉氏や石破氏はそれぞれ出馬の意向を示しております。河野氏は唯一解散していない麻生派の支援でということでしょう。小泉氏の後ろには菅義偉前首相がついていると言われ、石破氏は独自に推薦人を集めて出馬表明しています。二階派出身でコバホークと呼ばれる小林鷹之議員は甘利昭氏が裏についていて安倍派に多い4回生以下の若手議員票の分散が狙いらしく、噛ませ犬というか当て馬ということのようです。更に出馬意向の議員は多く、党員票の比重が増すことになりますが、党員票も医師会その他の業界団体の影響下にありますから、誰が選ばれても自民党の金権体質は温存されると見るべきです。

一方立憲民主党の代表選で若手が出てこないという嘆きの声がありますが、劣勢の野党第一党で議員数が少ない中で20人の推薦人を集められるのはベテランになりますし、まして影の首相として政権交代を迫る政治手腕も問われますから、ベテラン同士の争いで寧ろ政権構想や政策論争を闘わせることで有権者の関心が高まり次期総選挙に繋げることが狙いですから、単なる権力闘争の自民党の総裁選とはそもそも意味が違います。そして自民支持の業界団体も必ずしも一枚岩ではないので、与党支持層の切り崩しにもつながります。例えばこんなニュース。

米が揺さぶる物価高 7月17.2%上昇、20年ぶり伸び幅 - 日本経済新聞
古米と新米の端境期で昨年の猛暑の不作やインバウンド需要で外食のコメ消費が伸びたとかいろいろ言われてますが、確かに急な値上がりではありますが、水準としては20年前に戻っただけ。その間減反で供給を絞って価格維持をしながら需要がそれ以上に減って価格低下傾向にあったコメ価格ですが、実は卸し倉庫には十分な在庫があると言われております。価格維持で高値で仕入れたコメですが、ウクライナ戦争や円安で輸入小麦が値上がりし、パンやパスタや即席めんが軒並み値上げとなったことから便乗値上げが疑われます。

ウクライナ戦争は長引き為替の円安が定着する中で、相対的に安値の国産米には輸出の目が出てきている訳ですし、民主党時代に打ち出した農家の個別所得補償が有効な局面です。コメの価格維持ではなく農家の所得を補償することで、国内販売価格も下がるし円安と相まって輸出競争力も増す訳ですから、それを梃子に食料自給率を高めるというオーソドックスな食料安保政策になりますし、自民党の票田の農協を切り崩すことにもなります。立憲民主党の代表選ではこうした文字通り骨太の政策論争を期待します。

ノイジーサマーの北陸新幹線関連でも動きがありまして、与党PTが北陸新幹線小浜京都ルート早期着工を画策して25年度予算で事項請求をいいだしているとか。事項請求というには防衛費などで多用されてますが、金額を明示せず事項を明示するもので、執行段階で予備費等から付け替える狙いです。そのため実は防衛費GDP1%はとっくに突破していたりします。同じことを整備新幹線でやろうとしていますが、こうなると整備新幹線着工5原則無視どころか、財政民主主義に反する権力の暴走と言わざるを得ません。こんな与党は早く下野してくれ。

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Sunday, August 18, 2024

災害の備えと憂い

バイデン不出馬のプランBで大統領選を混戦に持ち込んだ米民主党に倣った訳ではないでしょうけど、キッシーも総裁選不出馬を決めました。早速出馬に名乗りを上げる自民党議員が複数出てきてメディアはそれらしく報じてますが、騙されちゃいけません。プランBエントリーでも指摘したように、公職選挙法の縛りがなく実弾飛び交う自民党総裁選がまともな選挙になる筈がありません。派閥が解散しても派閥資金は宙に浮いている訳で、これがどう動くかで決まるだけの目晦ましです。寧ろ出馬に必要な推薦人20人の顔ぶれや唯一解散していない麻生派の動きに注目です。

検証 政治とカネ (岩波新書 新赤版 2021) 新書 – 2024/7/22 上脇 博之 (著)で詳しく解説されてますが、自民党の裏金問題はそもそも法の不備で抜け穴だらけで、通常国会で成立した改正政治資金規正法もザル法で意味がないことが国民にバレているのに、岸田では選挙に勝てないとばかりに顔を変えれば勝てると勘違いしているのが今の自民党という訳です。どうしようもない政治的茶番劇です。

その一方で正月の能登半島地震の復興は進まず、先日の日向灘地震が南海トラフ地震の震源域に当たるということで注意情報が出されて一部で海水浴場閉鎖などの措置が取られたりした中で、台風7号の直撃予報で東海道新幹線の16日終日運休を決めました。結果的に進路が東へ逸れて直撃はなく、一部で終日運休が批判されてますが、余地が困難な地震と違って予報の精度が高まっている天候の異変に先回りすることは、結果的に空振りに終わったとしても咎められるべきことではありません。

去年も本気の気候変動対策のように東亜気道新幹線が豪雨被害で運休となり、除却が駅に溢れ変更や払い戻しでみどりの窓口に長蛇の列ができて混乱しました。JR西日本はいち早く計画運休を決めていたことから判断を遅らせ情報提供も不十分だったJR東海は批判されました。その意味では今回のJR東海の判断は妥当なものと言えます。予知の困難な地震と違って予報精度の高い天候の異変に対しては、事前対策で災害の被害を減らすタイムライン防災の考え方が定着してきたということです。ましてJR東海は災害は忘れた頃にで取り上げた2000年水害の失態もありますから、よくぞ決断したと褒めたい気分です。

勿論JRにとっては稼ぎ時のお盆シーズンの終日運休は収益面ではマイナスですが、動かすことによる被害を回避することで余分なコストを減らす意味もあります。というか、そう考えざるを得ない程気候変動の影響が大きくなっているということでもあります。コストを言い訳に脱炭素をサボってきた結果でもあり、愚かです。

JR東海はプランBエントリーで取り上げた保守車両事故による運休もありました。このときはJR東日本が北陸新幹線に臨時列車を増発したり、ANAが臨時便を飛ばしたりしましたが、今回は北陸新幹線も列車を間引き、羽田成田発着便を中心に航空便も運休が相次ぎ、代替手段がなく前後の日に変更したり諦める人が殆どだったようです。関空連絡橋のタンカー衝突事故を受けて大型船舶の東京湾入湾規制まで実施されたぐらいですから、今回は仕方がないと言えます。一方保守車両事故の続報です。

衝突の新幹線保守用車、ブレーキ機能低下 点検に甘さ - 日本経済新聞
当該保守車両の一部に点検の不備が見つかりました。鉄道の世界で自動ブレーキと言われるもので、コンプレッサーで作った圧縮空気を空気溜めに溜めてホースで各車両に渡した加圧空気管でブレーキシリンダを緩め位置に保持し、ブレーキレバーで加圧管の空気を抜いてブレーキシリンダを込め位置に動かしてロッドで繋がったブレーキシューを車輪に押し付けて摩擦で止めるという仕組みですが、一部の保守車両で圧力不足でブレーキシューが込め位置のまま動かしていて過剰摩耗でスキマができていたということです。

営業車両では電気指令式が主流となっている中で、圧搾空気を用いる自動ブレーキが保守車両では残っていた訳で、また非営業で車籍のない保守車両故に点検に甘さがあった可能性はあります。技術の進化が不均衡なことを思い知らされますが、同時に盛土路盤にバラスト道床の東海道新幹線の特殊性があります。盛土路盤は豪雨時の緩みもありますから、保守精度を求められる高速鉄道の路盤として維持管理が負担になるんじゃないかとも思います。営業車両の一部へのセンサー搭載で2025年にドクターイエローの退役が発表されており、より多くのデータ収集が可能になるとしても、実際の保守作業が旧態依然ではこれがネックになる可能性もあります。

一方予知が困難と言われる地震も知見が増えており、日本列島はすごい-水・森林・黄金を生んだ大地 (中公新書 2800) 新書 – 2024/4/22 伊藤 孝 (著)で詳しく解説されてますが、大陸プレートと海洋プレートのぶつかり合う周縁部で比重の差から海洋プレートが沈み込み、その際に境界部が動いて地震が起きるし、また海水が地層に取り込まれて圧力の不均衡からマグマだまりができやすく火山が多数あり、温帯地域の大陸東端の多雨地帯であることもマグマだまりを形成するという不安定な日本列島で人工工作物の大井大都市の集積のリスクと共に、それ故に豊かな自然にはぐくまれた日本列島の特性を生かし切れていない現状からすると、集積を加速するリニアは不要だし建設は困難というリアルを直視すべきですね。故にリニアはプランBになり得ません。

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Sunday, August 11, 2024

ノイジーサマー

株価の乱高下が続いております。おそらく新NISAデビューの人にとっては初めての経験でしょうけど、一方で日向灘で地震があり台風5号が東北直撃の予報です。秋田県で豪雨被害が起きたばかりなのに台風直撃の東北地方。お盆の帰省シーズンに水を注す自然災害に比べたら、株安なんぞかすり傷レベルではあります。

ネギ背負ったカモその他のエントリーで繰り返してますが、新NISAデビューの人はショックでしょうけど、個人投資家のスタンスとしては株は買ったら忘れろです。積立NISAの場合は特にですが、時価の変動は無視して積立を続けることで、複利運用の効果を高めますし、成長投資枠で個別銘柄を購入した人も、いずれ株価は戻りますから、配当を受け取りながら気長に待つというスタンスで良いと思います。但し自らの投資スタンスを見直すなら、いい機会ではあります。

積立NISAで購入者が多いと言われるオールカントリー株式投信(通称オルカン)などの積立株式投信は所謂パッシブ運用の投信で、上場株式の時価総額に合わせて個別銘柄を売買して市場のパフォーマンスをなぞることで手数料を安くできてリターンが多いし、昨今はアルゴリズム取引で自動化されていたりもします。その意味で合理的な選択ですが、残高が増えれば市場取引のウェートが増えて、株価に影響する様々なパラメータを参照しますから、今回の米雇用者統計の数値が予測値を下回ったり、インテルの業績悪化などのイベントに反応して自動的に売り込んで下げを増幅してしまうということが起きます。

見方を変えれば人が介在しない機械取引として謂わばAIが実装されているようなもので、そのAIがノイズを拾った結果の過剰反応ということが言えます。そしてノイズで拡がったボラティリティの着地点は容易に見つからず、上げと下げを繰り返すことになります。それに夏季休暇の薄商いがありますから、落ち着くまでには時間がかかりそうです。パッシブ運用の比重が高まればこういうことは起きやすいとも言えます。機械の過剰反応でも借株による信用取引をしている投資家は下げ幅が下限を越えれば追証を求められ、払い込まなければ自動解約されますから、更に株価を下げてしまい、最後は個人によるパニック売りで損を被るという流れです。こうした株式市場の特性を踏まえながら、個人の投資目的に合った投資スタイルの見直しをするのはあり得ます。損は高い授業料と割り切りましょう。

これ生成AUがフェイクを吐き出すのも同じ原理といえます。フェイクを拡散するには好都合ですが、余計なノイズを拾うこと自体は無くならないでしょう。故に使い方は要注意ですが、AIで生産性が上がるかといえば、有効なノイズキャンセル機能を実装しない限り、アウトプットの有効性の評価に人が関わることで生産性を下げてしまうことが多いと考えられます。これ古典的な情報理論でも説明できますが、情報の正誤が50%の時に意味のある情報伝達は成り立たないカオスになるというもので、逆に必ず間違えるなら寧ろ有効性があるという評価になります。そもそも人の聴覚構造が自然音から音声言語を峻別することで意味を捉えるように、ノイズキャンセル機能が備わっている訳です。将棋や囲碁のようにパラメータが限られていればともかく、現実の多くのパラメータを参照する以上、ノイズの混入は避けられません。それでこのニュース。

北陸新幹線、延伸費用は最大5.3兆円試算 物価高で増加 - 日本経済新聞
物価高でというよりも、京都駅アプローチの具体化によって精緻化した結果の事業費膨張です。インフレは税収を増やしますから、B/C比の悪化はある程度緩和される筈ですが、小浜京都ルートに付きまとうトンネル難工事問題や地下水問題に対する見かけ上の回避策を示す一方、事業費の膨張を示すことで、小浜京都ルートをごり押しする与党PTを国交省が諦めさせようとしていると見ます。ところがB/C比なんか無視していいとか、計算方法を見直せと言っているトンデモ議員たちには響かない。何しろ座長の西田議員はネギ背負ったカモエントリーで触れた電動キックボード解禁をゴリ押しした粒議員です。言ってみれば生身のノイズテーカーにノイズキャンセルを試みる官僚の構図が読み取れます。しかもほとんど無意味なな桂川案を安く提示しているし^_^;。ノイズキャンセルしないと寧ろ生産性を下げるのはAIと変わりませんね。

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Saturday, August 03, 2024

波乱の8月

プランBで指摘した日米金乳政策の方向性の違いは予想通りでしたが、日米で株価下落が起こり、波乱のスタートとなった8月です。為替も円高へ動き、円安メリットが縮小したことや円安に助けられた日本株の株価押し上げ効果も剥落し、早速日銀の利上げにイチャモンですが、直接的にはには無関係です。そもそも今年年初は130円前後で、150円を割った今の水準は3月の日銀YCC終了時の水準とほぼ同じです。日経平均4万円台もこのときにつけました。今回の下落は別の原因です。

そもそもは米半導体大手インテルの業績不振とそれに伴う1,5万人規模の人員削減が発表され、半導体を中心としたテック株が売り込まれたことがきっかけですが、突然喰らうド障害の混乱や生成AIブームに陰りが見えてきたこともあります。加えて米雇用統計が予想を下回り、米景気にマイナス面が見えてきたことで、9月FOMCで利下げはほぼ確実視されながら、金利低下の恩恵を受ける筈のテック企業に逆風が吹き始めたってことです。AIバブルが弾けたと言っても良いでしょう。ムーアの法則で半導体業界牽引してきたインテルですが、微細化の壁に突き当たりました。先を行く台湾TSMCや韓国サムスンも手詰まりなのは同じで、寧ろ米中デカップリングで販路を狭められています。

米景気に関しては既に悪化しているという分析もありまして、実際インフレで賃上げが追い付かず実質賃金が下落する場面もありましたが、インフレの鎮静化で追いついてきたとはいえ、逆に企業の負担は増す訳ですし、堅調と言われる国内消費も、コロナ給付金の大盤振る舞いで支えられていただけで、家計の余剰資金は底を尽きつつあり、低価格品に消費がシフトしているとも言われます。加えてもしトラで低金利、減税、高関税、規制緩和なんぞしようものならインフレ再燃は避けられず、米経済も失速を余儀なくされるでしょう。中国の減速もあり外需依存の強い今の日本で株価が下がるのは当たり前です。そんな中で気になるニュースです。

JR東日本、Suica販売停止1年 ガラパゴス仕様で半導体作れず - 日本経済新聞
一時半導体不足から販売停止に追い込まれたSuicaとPASMOですが、半導体供給が増えて半導体市況を悪化させているにも拘らず、Felica用半導体はSuica販売停止を受けてメーカーの撤退が相次ぎ、今は1社のみとなっている現状です。一方で地方向けICカード乗車券やnanacoやWAONなどの流通系カードは販売されているのですが、販売量の違いから、十分な在庫がないと安定販売が出来ないということで販売開始に踏み切れず、そのためにメーカーの増産が難しいというジレンマに陥っております。故にインバウンド客へのSuica提供ができずに取りこぼしている訳です。

突然喰らうド障害エントリーで取り上げた国際規格のOpenLoopの台頭を許すことになりかねず、JR東日本にとっては頭の痛い問題です。そもそもは香港のオクトパスカードに始まったFelica系カードですが、ソニーが経営再建途上でEDYをNTTに売り、更に楽天に転売して袋小路に迷い込んだ結果、国際化を果たせず、量産効果によるコストダウンも実現できずということで、シャープやエルピーダメモリやジャパンディスプレイなど死屍累々の山を築いた日本企業の失敗の歴史をなぞっているとも言えます。折角香港で普及しているんだから中国や東南アジアで仲間を増やすことは出来た筈です。Felicaカードなら経済安全保障面でストップがかかる心配もないですし、寧ろ中国企業の参入でコストダウンしてたかも。

という訳で、こんな日本企業には円安でもなければ海外勢は見向きもしないという現実を認識できないで日銀に恨み言言っても始まりません。政府もTSMCやラピダスに補助金突っ込むよりもはるかに安上がりなFelicaチップ増産助けてやれよ。別のニュースです。

敦賀原発2号機不合格へ、日本原子力発電の経営に影響 大手電力負担重く - 日本経済新聞
福島の事故後発電停止された13年間、電力供給契約を結ぶ電力5社から基本料金として1.4兆円を受け取って黒字経営という日本原電ですが、東海第2は不祥事続きで地元同意が得られず、敦賀第2は活断層で審査停止で、流石に電力各社も契約見直しに動きそうということですが、再エネ賦課金が明細に記載されている一方、こちらの拠出金は明細には記載されておりません。同様に奉加帖方式で各電力会社に割り振られている福島の廃炉費用も明示されておりません。当然国民はその分高い電気料金を負担している訳です。

実際は太陽光を中心に再エネ電力が猛暑の夏の需要をカバーしていて電力不足は起きていません。AI普及田将来電力需要が増すとも言われますが、そのAIブームが著作権やフェイク問題などで規制が検討され、また電力消費で温暖化を促進するリスクも言われ、見直しでAIブームが踊り場にあるのは上述のとおりです。つまりAIで人類滅亡を早めるかもという微妙な問題がある訳です。

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Sunday, July 28, 2024

プランB

ここへ来て為替が円高に動いています。きっかけはトランプ銃撃事件からの一連でもしトラがほぼトラじゃないかという観測から始まった所謂トランプラリーらしいのですが、加えて今月末の日銀政策決定会合での利上げ観測と、同時に行われる米FOMC関連で9月会合での利下げ観測を示唆する発言が出るかどうかあたりから、日米金利差が縮まるかもしれないという見方です。加えて言えば8月の円高傾向という経験則もあります。これは米財務省債の償還が8月に集中することから、受け取ったドルを売って円に替える傾向があると言われています。そして長く見られなかった日本時間の昼間の円買いが増えていることも指摘できます。つまりこれまで海外で稼いだドルを海外法人に内部留保していた日本企業が、円高が進行する前にドルを売って益出ししている結果です。円安インフレに苦しむ国民のをよそに利益追求に勤しむ日本企業の頭隠して尻丸出しの姿勢によるものです。

そして突然喰らうド障害でシステム復旧が遅れた企業が多数あり、その中には自動化が進んだテスラのEV工場も。DXだのIOTだのといっても、こうした大規模障害の可能性までは考慮されておらず、プランBが存在しなかった訳です。経済安保を謳ってもロシアなどのサイバー攻撃で機能不全に案る可能性はある訳でプランBは重要です。そしてAIブームもあって絶好調だったテック系企業の株価が調整局面に入ったこともあります。

大統領選に関してはインフレ定着が意味するところでいずれにしろ対日本では誰がなっても「金出せ!」に変わりはないですが、パレスチナ政策ではイスラエルに厳しいと見られるハリス氏に期待します。バイデン大統領の出馬辞退を受けてのことですが、トランプ氏銃撃事件から共和党大会で副大統領候補にバンス氏指名とメディア露出の増える局面での民主党の作戦勝ちのハリス旋風でトランプ氏有利を少なくともほぼ互角まで切り返しました。これを狙っていたという説もありますが、高齢のバイデン大統領の健康問題は以前からわかっていたことですから、最初から狙っていた訳ではなくあくまでもプランBのシナリオと見るべきでしょう。それにひきかえ日本では。

堀井学衆議院議員、香典「違法性を認識」供述 地検聴取に - 日本経済新聞
裏金議員の橋本聖子議員の子分で小物ですが、元スポーツ選手で地元に地盤のない落下傘候補故に有権者の慶弔事への祝金や香典は大事だけど、本人持参という法の縛りがある一方、高齢化で弔事が増えて議員本人が動けないから家族や秘書が代理でということで、本人も違法性を認識していたということで万事休す。こういうところに裏金が使われていたのでしょう。但し香典だけで千万単位にはならない訳で、大口裏金議員は何に使っていたのでしょうか?

小泉劇場で新自由主義に舵を切り福祉切り捨てに走ったことで離反した自民党員が多く、党員が支払う党費が減ったことで裏金の重要性が高まりました。特に派閥資金は公職選挙法の対象にならない自民党総裁選で飛び交う実弾の原資となります。今回は派閥解散が相次ぎましたが、派閥が管理する政治資金は残っている訳で、実弾飛び交う総裁選が展開されます。故に国民的には人気の高い石破氏や小泉氏には可能性はない訳で、あとは不人気な岸田氏に代わる若手が出るかどうかですが、いずれにしてもカネまみれの総裁選で事態を打開できると考えているなら甘いですね。プランBはなさそうです。故に野党の出番ですが、野党同士の足の引っ張り合いが続いており、政権交代もすんなりとは進まない感じです。プランBはあるか?そして日本でもリアルなトラブルが。

東海道新幹線が運転見合わせ、再開は夜以降 保守車脱線 - 日本経済新聞
22日未明に東海道新幹線豊橋―三河安城間で粗酒車両の脱線という第一報だったのですが、詳細がわかると保守車両同士の衝突事故で双方動けない状態で復旧に時間がかかることが次第に明らかになりました。これ福島の原発事故のように、当初は過小な事故のように報じて徐々に大事になるという情報開示姿勢の悪しき慣習ですが、実際はバラスト散布車編成とバラスト突き固めのマルチブルタイタンパー、通称マルタイの衝突事故で、チオ国マルタイの損傷がひどくて現地解体を余儀なくされたことが復旧を遅らせた原因ですが、幾つかの疑問があります。

バラスト軌道は新幹線では東海道新幹線のみで、山陽以降の全幹法準拠の新幹線とは軌道構造が異なります。三尿以降の新幹線は高架橋主体でコンクリートスラブと称する鉄筋コンクリート板をコンクリート路盤に防振ゴムを介して固定する構造でメンテナンスフリーなんですが、盛土区間が多く不等沈下があるので、微調整が可能なバラスト軌道にせざるを得ない上、16連285km/hの高速列車が3~4分間隔で走る訳ですから、軌道破壊の修復を高頻度で行う必要があります。しかも0時~6時の保守間合いの間に行う必要があります。現場作業はかなりタイトになる訳です。故にバラスト散布車両とマルタイが同じ線路上で作業ということになるんでしょうけど、信号回路はoffで基本目視確認ですが、夜間作業でもあり、保守車両にはGPS連動のふれーきが装備され、また当該乗務員もブレーキ操作をしたにもかかわらず止まれなかったということで、原因はわかりませんが、作業員の確保も含めて保守作業が困難になっている可能性はあります。スラブ軌道は無理でも何らかのメンテナンスフリー対策を考える必要があるように思います。ぶっちゃけのぞみ増発で無理をしている可能性はありそうです。回避の為のプランBは開業時期が見えないリニア?

そしてプランBとしてがぜん注目されたのが、先日敦賀まで開業した北陸新幹線ですが、東海道からシフトした乗客は全車指定のかがやきではなく自由席のあるはくたかに集中した結果、通路まで埋まる大混雑となりました。こうなると敦賀乗換が恨めしい。中途半端な敦賀開業を急ぐより当面乗換でもいいから米原まで開業していれば混乱はある程度緩和されたでしょう。レジリエンスを叫ぶ某京大教授が整備に時間のかかる小浜京都ルートを押してますが、画に描いたプランBでは意味がありません。

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