経済・政治・国際

Monday, February 24, 2020

伝染ルンですアベノミクス

予想はしてましたが、新型肺炎問題がオオゴトになっております。特に横浜港のダイヤモンドプリンセスで防疫体制の弱さを露呈したことで世界から非難されてます。最早感染拡大を遅らせるしか打つ手が無くなった訳ですが、専門家の意見も聞かずに水際作戦に拘った政府の対応がひどいとはいえ、通常の風邪やインフルエンザと同様にうがい手洗いの徹底で感染を防げる可能性が高いのは既に指摘しております。

DMATの一員として参加した岩田健太郎神戸大教授の告発動画が物議を醸してますが「守秘義務違反」と「勇気ある内部告発」と評価が分かれております。とはいえ船内の酷い実体を知らしめて事態を動かしたという意味では後者の評価が妥当でしょう。酷い実態を秘密にすることの方が犯罪的です。まあ情報が錯綜してますし、医療面は素人がこれ以上首突っ込む話でもありませんが、経済への影響はかなり深刻です。

「有事の円買い」の終わり 円安呼ぶ日本の不安  編集委員 小栗太:日本経済新聞
これ簡単に言えば日米金利差で円安誘導の結果、低金利通貨として円建てで資金調達してアメリカなど外国資産への投資を行う流れから、投資家がリスクを取れば円は売られ円安になり、逆にリスク回避に動けば円が買い戻されて円高になるということで、リスクオンの円安リスクオフの円高というのが昨今の相場感でした。

それが米FRBの低金利政策で金利差が縮まり、インフレ補正すればほぼドル円の金利差が消滅した一方、ECBのマイナス金利政策の長期化でユーロがキャリートレードの主役となったことで構図が崩れました。加えて今回の新型肺炎問題では、日本は完全に当事国の扱いとなりますから、外国人投資家の資金引き揚げは避けられないところとなる訳です。こうなるとアベノミクスの初期からあった円暴落シナリオが現実味を増す訳で、深刻な事態です。加えてこれ。

GDP年率6.3%減 5四半期ぶりマイナス 10~12月:日本経済新聞
これ前期(10-12月期)の数値であり、消費税増税の影響は当然ある訳ですが、マイナス4%程度とされた民間予想を下回る悪い数値が出た訳です。これも裏がありまして、成長率の分母はあくまでも前四半期の数値が分母になる訳ですが統計135°で指摘した統計不正で目一杯それを膨らましたもんで、マイナス幅が大きくなったと見られます。加えて各四半期の日数の違いを季節調整と称して調整しますから、日数の多い10-12月期の数値は下方修正されますし、更に四半期ベースの数値を年率換算する訳で、見かけ上の数値を大きく見せてしまいます。

そして鉱工業生産指数、機械受注など製造業関連の一次推計の数値が弱い一方、何故か消費関連は好調だったんですが、これも家計調査の推計値から正確性が高いという理由で商業統計の推計値が採用されてますが、これインバウンド消費が含まれている可能性があり、そうなると国際収支に含まれる旅行収支の推計値と二重計上されている可能性があります。それが日韓事変で韓国からの訪日客が減少した影響が出て、なまじ二重計上されているからマイナス幅も大きくなる訳です。故に見かけほどマイナス幅は大きくないと見ておりますが、そんな事情は知ったこっちゃない外国勢から見れば悪い数字だけが見られる訳です。誤魔化しの果てのオウンゴールです。

そして新型肺炎で中国人の訪日客が激減しており、国慶節需要も空振りですから、1-3月期も悲惨な数字を覚悟する必要があります。更にマスク不足で日本のアパレル各社の下請けの中国縫製工場がマスク生産でアパレル品後回しという状況で春物商戦に暗雲が漂います。そして相次ぐイベントの中止や延期もあり、オリパラもロンドンが代理開催に名乗りを上げる状況で本当に開催が危ぶまれています。

鉄道業界でも既にミシュラン三ツ星の高尾山を擁する京王電鉄が通期見込みを下方修正しており、東海道新幹線も目に見えて利用客が減少しております。新型肺炎の終息は恐らく1年以上かかるでしょうから、今年はホントにヤバい年になりそうです。やってるふりのパフォーマンスばかりで実体を伴わず、バレそうになると公文書を隠したり破棄したり改ざんしたり、統計を細工したりの嘘八百はモリカケや桜と変わらずですが、人命がかかる感染症問題で国民を危険にさらした訳で、アベノミクスに感染した日本には地獄が待ってます。

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Sunday, February 16, 2020

貧テック鈍テック

新型肺炎問題での日本政府の対応に内外から疑問が突き付けられております。無意味な水際作戦は所詮政権のパフォーマンスに過ぎず、結果的に国内感染がジワジワ拡がっていて死者まで出ています。しかも該当の神奈川県の80代女性は不調を訴えながら渡航歴がないことを理由にウイルス検査は行われていなかったとか・国立感染症研究所の人手と予算の制約から1日300人しか検査できないそうですが嘘っぱちです。SARSの時のように民間製薬会社提供の検査キットを配布して対応すれば簡単に能力を増やせるのに、金の出し惜しみをしているんですね。

前エントリーの時点より多くの情報が明らかになり、政府の対応に内外から批判の声が上がっております。既に日本は感染地域とされて渡航制限を課す国も現れましたし、ダイヤモンドプリンセス号の対応の迷走に業を煮やしたアメリカは、乗船中のアメリカ人の帰国のためにチャーター便を仕立てており、流石に日本政府も対応を見直さざるを得なくなりました。感染症対策はれっきとした安全保障問題であり、グローバル化でいつ起きてもおかしくない状況なのに、まともな対応ができないってのは、これまでも山梨の豪雪、熊本地震、西日本豪雨、昨年の台風などいずれも初動の失敗で対応が後手に回った訳ですが、安倍政権はよほど危機管理が苦手らしいです。これ非常時のロジステイックス問題ですから、9条を改正して軍隊を持っても、まともに動かせず負け戦必至です。

東京オリパラに関してはおそらくIOCが中止を判断することはないでしょうけど、感染が収束しなければ無観客試合となる可能性はあります。米NOBCの放映軽量が入ればIOCは潤いますが、開催コストを負担する東京都は大赤字で何のためのオリパラか?それがどうも変な感じに。

新潟・南魚沼で少雪、五輪の暑さ対策ピンチ:日本経済新聞
問題視される東京オリパラの暑さ対策として豪雪地帯の南魚沼の雪を使う計画が暖冬による雪不足で狂いが生じています。何だかどんどん漫画チックになっているような気が\_^;。

一方前エントリーで指摘したように、中国では既にウイーチャットを用いた遠隔診断が行われているとか。これを実現するためにはおびただしい数の画像サンプルをAIに学習させる必要がありますが、医師会の反対で電子カルテによる診療データ共有すらできない日本のなんと遅れていることか。新型肺炎のような感染症診断は特に感染者と医師の接触が避けられるだけに重要です。これガラパゴス・スモールブラザーズに加えたいですね。加えて後れを取っているのは対中国だけじゃありません。

英フィンテック、手数料変革迫る 送金・外貨両替で:日本経済新聞
英国がBrexitで強気な理由の1つがこれです。元々大手銀行の寡占で手数料がバカ高かった英国では、国の法律で銀行にフィンテック企業へのAPI公開を義務付けたことで、フィンテックで世界をリードしています。API公開とは、銀行が保有する決済などのシステムへのアクセス制限を課しているため、フィンテック企業はユーザーの委託で口座へアクセスするのにユーザーからパスワードの通知を受けて行う訳ですが、当然セキュリティが甘いとハックされて外部流出して結果的に不正アクセスにつながる訳ですが、フィンテック企業に直接アクセス権を与えて限定的にユーザーの代理人としての権限を与えれば、問題を回避できます。ユーザーは銀行窓口へ出向くことなく振り込みや海外送金などのサービスを受けられ、競争環境で手数料も割安になるということになります。

ただしこれマイナス金利で青息吐息の日本の銀行はなかなかAPI公開を認めず、国内フィンテック企業が育ちません。そこへ英国フィンテック企業が黒船として襲来するって話です。ただしガラパゴス・スモールブラザーズで指摘したNTTデータの通信網の独占問題が絡みますので、簡単ではありませんが、公正取引委員会が調査を始めており、結果如何では風穴が開く可能性はあります。

そのときに力を持った英国勢に国内フィンテック企業た太刀打ちできるかって問題はあります。またやむを得ない部分ですが、COBOLで記述された基幹業務システムを維持改良しながらセキュリティ対策を取る銀行システムの維持費が高止まりしていることも問題なんですが、さりとてコストダウンのためにクラウドに乗り換えることが簡単にできない悩みもありますし、みずほのシステム統合でトラブったように、特に経営統合機運が強まる地方銀行にとっては頭の痛い問題です。で、基幹業務システム問題は実はJRにも頭の痛い問題でもあります。

タッチしやすい改札機 JR東、新宿駅などで実証実験:日本経済新聞
JR東日本が首都圏で自動改札機を本格導入したのが1990年ですが、この時点でSuicaの開発計画が進行中だったこともあり、10年後をめどにSuica対応機が開発され予定通り更新されました。2010年にはマイナーチェンジ版の現行モデルに交換されてはや10年。次世代モデルを新宿と高輪ゲートウエイ駅で試験導入してテストを行うというものです。

目玉はQRコード読み取り装置を装備してQRコード決済のテストを行うものですが、Felicaシステムはコイルによる電磁誘導の仕組みを使って無電源で瞬時に読み取りが可能なのに対し、QRコードは光学的に読み取って変換する関係で動作に遅延が生じるため、特に混雑する首都圏の駅では動作に問題がないかどうかを慎重に見極める必要があります。加えてユーザーがスマホを操作してアプリを立ち上げる必要があり、混雑する駅で混乱しないかも見極める必要があります。ただしSuicaであれQRコードであれ、固有のID番号を読み取って処理する部分に違いはありません。

とするとQRコード導入の意図は何かってことになりますが、1つは将来的に磁気券の廃止を視野に入れているのでしょう。既に航空の搭乗口では搭乗券をスマホへダウンルードするか紙にQRコードを印刷してゲートの読み取り口にかざす形になっており磁気券の搭乗券は過去のものになっています。となると駅の自動券売機が空港の自動チェックイン機のような形になってユーザーのスマホにダウンロードされる形が考えられます。メリットとしては情報量を盛り込めますから新幹線を含む特急券などとのセット券も簡単に対応できますから、Suicaより汎用性が高まります。

2つ目はローカル線のチケットレス化が低コストで可能になる点でしょうか。ローカル線の場合首都圏のような混雑はあまり考える必要がなく、また読み取り機とクラウドで簡単にシステムが構築できるなどコスト面で有利ということもあります。ただしこれはSuicaの裏側で動く鉄道の基幹業務システムとは異質のシステムなので、ローカル私鉄が単独で導入するならともかく、JRが導入する場合は現行の基幹業務システムとの整合性が問われることになります。JRにとっては構築してきた基幹業務システムを簡単に変更できないだけに、悩みの種になるでしょう。

一方、MaaSを視野に入れると、戸口から駅、駅から戸口のラストマイル輸送との連携でSuica対応はコスト面で課題がありますから、それを睨むとQRコードシステムに優位性がある訳で、両者をどう繋ぐかは大きな課題です。銀行とフィンテックの関係に似た構図が見えてきます。

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Saturday, February 08, 2020

風邪は寝て治せ

新型コロナウイルスで世界が大騒ぎしてます。2003年のSARSのときのことが思い出されますが、当時世界のGDPの4%に過ぎなかった中国も今や16%のシェアとなり、しかも経済のグローバル化でグローバルバリューチェーンによる国際分業の深化もあり、将に中国が風邪ひくと世界が震える状況と言えます。例えばイラン情勢の悪化で跳ね上がった原油価格は中国経済の低迷を織り込んで下落し、1バレル50ドルを付けるなどしてます。シェール革命でアメリカが石油の純輸出国となった結果、世界最大の石油輸入国となった訳ですから、無理もない話です。

今回の新型肺炎の特徴は、感染力が強い一方、致死率は1%に満たないと見られていて、健康な若者では未症状や軽症で回復するなどしており、そもそも診断が難しく発見が困難なんです。但し持病持ちの高齢者などで重症化が見られ死者も出ている訳ですから、警戒は必要です。その意味で日本の対応は疑問だらけですが。

新型肺炎告発、中国の医師死去 処分から一転英雄扱い:日本経済新聞
いち早く警鐘を鳴らした中国人医師は「デマを拡散した」として武漢市の公安当局から処分を受けましたが、それでも混乱の中医療査読誌に論文を発表し世界に知らせた結果、北京政府やWTOを動かした訳です。結果的に2003年のSARSのときより的確な情報開示がされました。

驚いたのは中国ではSNSのウィーチャットで遠隔診断が可能になっていて、多くの肺炎患者は遠隔診断で対応されていることです。日本じゃ医師会の反対で実現できていませんが、日本に比べて広い国土と巨大な人口を抱え医療セクターが相対的に弱い中国では、それをハイテクで補うことが普通に行われていて、軽症者は自宅待機を命じられ、病院には来させないようにしているそうです。風邪は寝て治せって訳ですね。勿論重症者は命にかかわりますから対応されますが、日本のように医療へのフリーアクセスが当たり前だと、寧ろ元気な感染者が病院に集まって院内感染を助長する恐れがあります。

この辺の対応を単に強権的な監視社会といったステレオタイプな見方をしてしまうとおぞましく感じますが、極めて合理的な対応がされてます。それでも封じ込めに失敗している訳で、今回の新型肺炎の影響力は相当大きいと見るべきです。その意味で日本政府の対応は完全に後手に回ってます。それを象徴するこんなニュース。

船旅ならではの環境が要因か クルーズ船集団感染:日本経済新聞
横浜港のダイヤモンドプリンセス号ですが、クルーズ船という閉鎖空間で多くの乗客乗員が足止めされてますが、これ院内感染ならぬ船内感染を助長しているんじゃないかと思います。それが証拠に感染者が増え続けている訳で、乗船中の乗客乗員はさぞかし不安なことでしょう。

重症化しやすい高齢者も多数乗船していて、持病のクスリが切れそうだという声に応えて医薬品も搬入されてますが、量が足りないだけでなく、外国人から日本で未承認のクスリのリクエストもあり対応に困っているといいます。こういう人は指定病院の隔離病棟へ移した上で、未発症の人は暫くの自宅待機を条件に下船させ、船を消毒することで、逆に今後の発症者の隔離先にも使える訳ですね。ホテル三日月の洋上版です。しかしクルーズ船の受け入れ拒否が広がり,彷徨えるクルーズ船が行き場を失っております。これで船内感染を拡大させたら、だれが責任を取るのでしょうか?

あと感染が疑われる外国人の入国拒否とか、水際作戦は無意味です。上述のように無症状や軽症で回復する人が多く、そもそも発見が困難である以上、ある程度の感染拡大は防ぎようがありません。しかし軽症者が多いってことは、通常の風邪やインフルエンザ程度の対応で、短期間の自宅待機などで感染拡大自体はある程度防げる訳で、死に至る可能性のある重症者へのケアを重点的に行うべきでしょう。軽症の感染者が病院に殺到して院内感染が拡大するようじゃ寧ろ事態は悪化します。

SARSのときは有効な治療法も確定しないまま8か月ほどで終息しましたが、今回の感染拡大の様子を見ると、それ以上の影響を覚悟する必要あります。場合によってはオリンピック、パラリンピックも中止を余儀なくされることも考えられます。逆に適切な対応で早めに終息する可能性もあります。中国のハイテク医療の実態はSARS当時と大違いです。

発生が確認されたのが武漢市というのも感染拡大を後押ししています。武漢市は長江中流域唯一のメガシティで人口1,000万人を超える大都市で、位置的には大陸中国のへそと呼べるところで、長江の水運があり、また北京―広州間と上海ー重慶間を結ぶ高速鉄道の交点に位置する交通の要衝です。つまり主要都市との移動が便利な場所ってことで客貨の往来が多く、自動車や電子部品など製造業の集積地となっています。喩えればアメリカのシカゴや日本の名古屋のような位置づけですが、人口は巨大です。肺炎封じ込めに失敗したと批判される武漢市当局ですが、1千万都市を封鎖するような決断はそりゃ国家主席クラスじゃなきゃ無理ってもんです。

そして製造業の操業停止が相次いでおり、再開のめどは立っておりません。長引けば中国経済の低迷を通じて世界経済の足を引っ張ります。既に中国人民銀行は利下げを決めており、軟着陸を模索しますが、気になるのは武漢市で死者が多いこと。これ致死率が同じとすれば、結局分母の感染者総数が把握しきれないほど多いことを示唆します。短期間の終息は期待薄でしょう。

中国の高速鉄道はある意味日本の新幹線のコンセプトに忠実で、高速鉄道を整備して旅客列車を移し、空いた在来線の貨物輸送を強化するというもので、かつて田中角栄氏が日本列島改造論で示した構想が実現している訳です。長江の水運と共に活発な貨物輸送を鉄道が支えている訳ですが、武漢市の製造業集積が止まれば貨物輸送も減る訳で、中国の実体経済の指標として李国境首相が唱えた所謂李国境指数でも貨物輸送量が取り上げられたほど、鉄道貨物の位置づけは大きなものです。翻って日本の整備新幹線は鉄道貨物にストレスばかり与えてますが^_^:。

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Sunday, January 26, 2020

気候変動の経済リスクに向き合う欧米当局

タイトルはそうじゃない某日本国を揶揄してるんですが^_^;。

気候変動がもたらす金融リスク、欧米当局が分析開始*:日本経済新聞
主なリスクは2つあって、異常気象や海面上昇による自然災害の増加により土地価格の低下による融資の担保割れや、保険金支払いの増加による保険会社の経営悪化などと、温暖化対策としてのCO2削減対策の結果として化石燃料価格が下落して、油田ガス田や石炭火力発電が座礁資産となり不良債権化することなどが挙げられます。

前者は日本でも台風被害で現実のものと認識されるようになってきましたが、後者に関しては認識が弱いどころか、内外で石炭火力発電所の新設計画を進めていて、世界的に非難されてます。飛び恥のグレタ・トゥンベリさんからも厳しく叱責されてます。

舌鋒鋭いグレタさんの発言に対しては、様々な反応が見られますが、欧米では多くの若者が共感している一方、日本ではあまり見られないのが不思議です。勿論現在の産業構造の大転換を伴い、時間も費用もかかる話ですが、現在の富を生み出す仕組みを温存する結果、その後始末のコストが将来世代へ先送りされるという構図で見れば、グレタさんに代表される若年世代が不満を表明するのは自然なことです。

それに耳を傾けられないとすれば、それは現在世代のエゴでしかない訳で、気候変動に限りませんが、環境問題は突き詰めれば現役世代と将来世代間の富の分配に関わる問題であり、社会制度として解決が求められるものであって、科学技術の進化で解決できるという性格の問題ではないということは押さえておきましょう。灼熱の氷河急行で取り上げた2009年のCRUメール流出事件で騒がれたデータ捏造が、結局捏造の証拠なしとなり、寧ろCO2原因説を強化した経緯に見られるように、今利益を得ている人達による言いがかりは後を絶ちません。

その意味で小泉環境相の石炭火力見直し発言は妥当なものですが、政府与党からは困惑する声が聴かれます。確かに原発を「重要なベースロード電源」と位置付ける政府のエネルギー基本計画を前提とする限り、13か月ごとに運転停止して点検が義務付けられている原発のバックアップ電源として、大出力石炭火力は必要不可欠ですし、まして安全対策の追加費用が重荷で原発の再稼働が進まない現状では、石炭火力を主力電源とせざるを得ないのが大手電力会社の事情としてある訳ですが、将来の重荷を背負わされる若者がそんなこと忖度する必要はないです。

そんな中で欧米の金融当局が気候変動リスクを意識し始めたのは、時代の変化の帰結と見ることもできます。特にECBはIMF専務理事だったラガルト新総裁が金融政策の見直しを宣言し、これまでの2%インフレ目標のための量的緩和やマイナス金利政策と共に、気候変動リスクへの対応も検討中ということで注目されます。昨今金融政策の限界説が言われ、低成長が常態化している中で、効果が乏しい一方副作用が目立つ量的緩和やマイナス金利の見直しは避けて通れませんが、加えて気候変動リスクを金融政策に織り込む模索が始まった訳です。

具体策はわかりませんが、化石燃料関連への融資を抑制して再生可能エネルギー関連へ資金シフトを促す方向性が打ち出される可能性はあります。但し悩ましいのは、これ高度経済成長時代の日銀の窓口規制と同じようなものになるとすれば、これまで模索されてきた中央銀行の政治に対する独立性の議論を揺り戻すことになりかねないだけに、議論を呼びそうです。QQEで出口戦略を封印し緩和継続しか選択肢のない日銀にとっては議論に参加すらできない訳です。

そんな日本にも変化の兆しはあります。

再生エネ、地域越え連携 太陽光など一括制御に免許制:日本経済新聞
太陽光など分散する多数の小規模電源を束ねて仮想発電所(VPP)とする事業を免許制として参入を受け付けるというもの。地産地消のマイクログリッドの制度化ですが、台風被害で長期停電を余儀なくされたこともあり、分散電源の重要性を政府も認めた形です。関連してこんな記事も。
停電下、ともった明かり 台風で分散型電源の強み証明  電力、代わる主役(中):日本経済新聞
千葉県睦沢町の町営住宅や道の駅に給電する同町出資のCHIBAむつざわエナジーが地元産天然ガス発電で給電した結果「停電に気付かなかった」と。繰り返し述べてますが、分散電源による地産地消型のマイクログリッドの災害に対する強靭さを証明しました。これ太陽光や風力など、その地域で調達可能なエネルギー源を用いれば、かなり応用範囲が広いと言えます。

加えて言えばえちぜん鉄道の最エネ電力託送事業がヒントになりますが、需要者としての鉄道事業者が地域の分散電源を束ねてマイクログリッドの核となる形で事業参入の可能性が出てくる訳です。これ運賃収入以外の収益源が得られることに留まらず、災害時でも停電リスクのが低減できることを売りに沿線への移住を促す効果も期待できますし、需要者としての鉄道の省電力技術で、例えば回生ブレーキ電力を蓄電してVPP電源の一翼を担うという形でコスト削減と収益確保の両立も狙えるなど可能性が広がります。

問題は相応の設備投資が必要なので、経営が苦しい地方私鉄には参入ハードルが高いですが、自治体が支援して融資先の乏しい地銀の融資を引き出せれば、過疎化で苦しむ地方の課題を解決する可能性もあります。逆に大電流の制御に四苦八苦している首都圏のJRや大手私鉄では制御の困難が伴うだけに小規模に始められる地方私鉄に比較優位があると思います。是非チャレンジしてほしいところです。

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Sunday, January 12, 2020

赤恥のアホかい

飛び恥逃げ恥の後は赤恥でした。ゴーン氏がプレゼンテーション能力を見せつけた会見で日本の人質司法を非難して世界に拡散した一方、森法相が異例の早朝会見で反論したものの、「ゴーン氏は日本の法廷で潔白を証明すべき」とした発言に外国人記者が「日本の司法制度は推定無罪が無いのか」と突っ込まれて炎上しました。

日本の人質司法問題はかねてより弁護士会が問題視してましたし、国連からも指摘されてましたが、日本の司法制度の正当性を言い立てるばかりの会見の異常さは、寧ろ日本はやはりおかしいと見られてしまいます。被告に潔白の証明は必要なく、検察に挙証責任があるのは刑事司法の常識です。弁護士資格のある現役の法相が知らないとすれば恥ずかしいし、知っていて意図的に世論誘導を意図したとすれば悪質です。しかも突っ込まれて炎上って恥の上塗り。閣僚がこれで日本大丈夫か?

米イラン対立はイランの報復がありましたが、事前通告の上人のいないところを狙ったもので、イランもアメリカとの全面対決は望まないし、人的被害がなかったとしてトランプ大統領も予告していた反撃を自重しました。国家間の軍事衝突のコストが高くなった結果、双方寸止めはとりあえず安堵ですが、イラン革命防衛隊によるウクライナ機の撃墜という不幸な出来事が起こりました。当初アメリカが指摘しイランは否定していたものの、一転認めて謝罪という異例の展開ですが、対立構図だけは残ります。

思えば冷戦時代にはソビエトによる大韓航空機撃墜とかありましたし、最近でもマレーシア航空機のロシア軍の誤射と見られる撃墜とか、トルコ軍によるロシア軍機撃墜などがありますが、軍事的対立の結果起きた訳で、こういったトバッチリは今後も起こり得ます。アラブに派遣される自衛隊艦船大丈夫か?内緒ですが、日米安保条約第5条の定めるところにより、日本の施政権下にあるエリアへの攻撃以外では米軍の防衛義務はありませんから、米軍は助けてくれません。

話題を戻しますが、ゴーン氏問題に関連してこのニュース。

IRインフラで企業側に助言 秋元議員、収賄容疑再逮捕へ:日本経済新聞
愛ある成長戦略で取り上げた秋元元国交副大臣が現在進行形で日本の人質司法にはまってます。特捜の狙いはわかりませんが、とりあえず微罪で身柄を確保し勾留期限が来たら別件で再逮捕と容疑を細切れ小出しにして、結果的に先進国ではありえない長期勾留になります。

罪を否認したり黙秘したりすれば延々と勾留が続き、保釈請求も認めないという姿勢ですが、これ被告に認められた法的権利なんですがお構いなし。検察が考えるストーリーに沿った自白を強要されます。それでも認めないと証拠の捏造までしてしまうことが、2009年の障碍者郵便制度悪用事件で逮捕された厚労省局長の村木厚子氏の冤罪事件で明らかになりました。奇しくも弁護士はゴーン氏と同じ弘中惇一郎弁護士でした。

もう一つゴーン氏の事件で特筆すべきは日本版司法取引の適用2例目という点です。1例目は三菱日立パワーシステムズ(MHPS)のタイ火力発電事業を巡る幹部3人の外国公務員贈賄事件で、法人としてのMHPSが告発し3人は在宅起訴で有罪になる一方、MHPSは起訴猶予となったものですが、会社のために働いた幹部社員を刺したという意味で腑に落ちない事件です。また司法取引導入の本来の目的である企業犯罪や組織犯罪で末端の行為者の罪を軽減することで証言を得て組織罰に迫ることが想定されていた筈なのに、逆に企業を守るために適用されたという意味で、法の趣旨に反します。

ゴーン氏の事件では日本での公判が事実上不可能になったことから、捜査段階での司法取引の実態は不明なままですが、MHPSの事例から類推すると、ゴーン氏に罪を被せる構図はあり得ます。特にルノーとの経営統合に拒否感を示していた日産幹部からすれば、フランス政府の圧力でマーチの欧州版マイクラの製造をインドで行う予定をフランス政府の圧力でフランス国内のルノーの工場に変更されたことがありました。

加えて長期保有株主の議決権を2倍にするフロランジェ法を成立させて、フランス政府のルノーの議決権を15%から30%に倍増させたこともあり、ルノーCEO兼務となったゴーン氏はフランス政府とのやり取りに忙殺されていた訳ですが、ある時点でルノーと日産の経営統合を口にするようになり、裏切られたと感じた日産幹部によるクーデターの可能性は排除できません。

しかし実際にはゴーン氏はフランス政府の日産への直接関与を阻止し、日産によるルノー株を通告なしで15%から25%に買い増すことを認めさせるなど、日産を守ろうとしていたように見えます。しかも日産保有のルノー株式も一部フロランジェ法が適用されますから、実質22%相当の議決権を保有していて、僅か3%の調達でルノーの日産に対する議決権を消せる訳です。ある意味日産を守った恩人なのですが。同時に周辺をイエスマンで固めて強引に事を進める姿勢もあって、その恐怖心からゴーン氏パージに動いた可能性はあります。

しかし冷静に考えれば新たに選任された3トップの内2人はルノー人脈でゴーン氏と無縁。残る生え抜きエースの関氏は日本電産にスカウトされて日産を去ることになりました。人事面では寧ろルノー支配が強まっていて、しかもフランス政府に楯突いたゴーン氏はいないって、フランス政府の思惑通りの展開です。ただしこのゴタゴタで業績は下がる一方。3社連合のシナジーどころか主導権争いで消耗するのは目に見えてます。クーデター説が正しいとすれば、目先しか見えてない日産幹部のガバナンス能力の絶望的な欠如ですね。

一方日本が誇るトヨタですが、CASEの時代で明らかに出遅れています。ハイブリッド車の成功の一方、関連特許をガチガチに固めたために外国勢を含めハイブリッド車にそっぽを向かれ、仲間づくりに失敗します。一方日産は量産EVのリーフを出して電動化で先んじており、自動運転技術でも過去からの研究の蓄積があって他社に先行してます。加えて米ウェイモとの提携も発表しており、CASEのS(シェア)以外で先行している状況です。

この構図はかつてブルーバードとコロナのBC戦争やサニーとカローラのSC戦争と同じ構図なんですね。技術的に日産が先行し資金力のあるトヨタが後追いする形で日本のモータリゼーションが活性化されたのですが、日産が元気を失えばトヨタは海外勢との競争になりますが、実はトヨタ車が売れている地域は日本と北米に限定されていて、欧州では劣勢ですし、アジアでもシェアを伸ばしているとはいえ、価格帯が高く普及は限られているという中で苦戦を強いられています。そしてトヨタの迷いを示すこのニュース。

トヨタ、街づくり実験を静岡で:日本経済新聞
いかに資金力のあるトヨタとはいえ、100年に1度と言われる自動車の変革期の技術革新を自前で展開するのは大変なことですが、ハイブリッド車の失敗が示すように仲間づくりの下手な企業体質でもありますし、トヨタと釣り合う戦略パートナーは得難い現実もあり、トヨタ自身で結果を出すしかない訳です。しかしそのコストは膨大でマネタイズに自信が持てない。一方閉鎖した裾野市の工場跡地の有効利用にもなり研究開発減税の恩恵もある訳で、この辺のトヨタの抜け目なさは健在です。

そして実物を作って不具合を徹底的にダメ出しして、お得意のカイゼンプロセスで収益化の展望を得ようってことですから、トヨタとしては大きな賭けでもありますし、過去の成功体験から離れられない面もあるという訳です。何かに似ている気がしますが、JR東海の中央リニアが単体での収益性に疑問がある中で、実物がないと本命のアメリカへの売り込みが出来ないと巨額投資に走る構図と似ています。どちらも名古屋の会社ですが、メンタリティが似てるのかな。

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Sunday, January 05, 2020

新年早々葬送草草

暮れに膝痛めたのに、新年早々Wifiルーターご臨終で仕方なく足引き摺って買いに行った散々な年末年始ですが、飛び恥に続いて逃げ恥とわ。

ゴーン元会長、無断出国か レバノンに入国:日本経済新聞
弁護団から見れば、ケリー被告と共に法人としての日産自動車も被告として訴追されていて、日本の刑事司法では分離公判で日産に先に有罪判決を言い渡して既成事実を作って、本丸のゴーン氏の反論を封じるって常套手段でして、リニア談合で大林組が先に刑を確定させて大成、清水を追い込むアレです。それを阻止すべく統一公判を仕掛けて主張の異なる被告同士を公判で論戦させる枠組みを実現させた弁護団が意図的に逃がす訳がありません。この手の雑音は無視しましょう。

勿論保釈中の逃亡は犯罪ですが、実際に長期勾留されて弁護士や家族との接見も制限される日本の刑事司法手続きの異常さは世界から注目されています。故に逃げるのも無理もないという世界の反応になっています。それどころか倒産寸前の日本企業を救った外国人経営者への仕打ちという意味で、今後日本企業のために働こうという外国人が減る可能性もあります。これ結構深刻な問題ですが。一応お断りしておきますが、ゴーン氏が正しいというつもりは更々ありません。推定無罪の原則に従っているまでです。

思えば2018年大晦日のエントリーでも取り上げてましたから、何だか縁があるのかしらん。同時に2018年の東証大納会で株価が下がったことも思い出されますが。2019年も下げたものの下げ幅は小さく、寧ろ株価の堅調ぶりが目立ちます。但し宴はここまでかもしれません。株式市場のざわつきが見られます。

TOPIX改革、日銀緩和に波紋 ETF購入巡り:日本経済新聞
東証改革で一部市場を分割してプライム市場を創設して3部体制とする方向で話が進んですが、その銘柄選択がどうなるかでざわついている一方、1部市場全銘柄対象だった東証株価指数TOPIXをより流動性の高い銘柄に絞り込む案が検討されており、実現すれば日銀のETF購入の意義が問われる事態となります。多数の銘柄が上場している1部市場全銘柄対象だから、緩和資金を広く行き渡らせるという理屈が通用していたのに、流動性の高い銘柄に限定されれば、より相場操縦の意味合いが強くなり、政策の正当性に疑義が生じます。八百長株式市場もこれまでか。

日本の場合は日銀やGPIFの爆買いが問題視されてますが、一方世界では企業が余剰資金を使った自社株買いが盛んで、やはり市場を歪めています。本来の株式市場は企業にとっては資金調達の場である筈で、事業の拡大など新規投資の資金を公募増資で集めることで、銀行融資などの借り入れを減らせる訳ですが、この場合株式市場に資金が流入することになり、成長に繋がる一方、自社株買いは株価上昇を通じて余剰資金を投資家に渡すことに他ならない訳で、株式市場から資金が流出していることを意味します。だから株価は高くても成長には繋がらず、市場を歪めてます。企業の余剰資金はFRBなど金融当局の量的緩和の結果であり、回り回ってということで、日銀のETF買いと違って直接買い入れではないだけの違いかもしれません。

あとユニコーンなどのベンチャー投資も、投資家にとってはIPOが出口となりそこで資金回収がされますから、上場した株式を買う投資家は高値掴みとなり、保有する旨みに乏しいことになります。ベンチャー投資家も結局中銀の量的緩和の恩恵で低利の資金を手当てできますから思い切り利益の先食いができる訳です。やはり市場に異変が起きていると見るべきでしょう。

英サッチャー政権で打ち出した大衆資本主義は、国民に株式保有を勧め、公営企業の民営化を通じて個人株主を増やしました。それを後押しすべく非課税枠を設定したISA制度が定着しましたが、結局国民は少し株価が上がるとすぐ売って利益確定に走るため、長期保有は必ずしも定着しませんでした。その一方で投資ファンドは大量の資金を用いて相場の変動からさや取りしますから、結局株式市場は安定せず、徐々に個人株主の居場所を狭めます。その結果池のクジラの競演となり、ますます個人のウエートは減っていきます。

その果てにHFTなどで個人取引に先回りして利食いするてなことすら起きる訳ですから、株式市場から個人投資家が出て行くことになります。NISAや積み立てNISAやiDeCoなどのメニューを揃えて老後2,000万円と切れ気味レポートを出したところでこの傾向は変わらないでしょう。資本主義は結局マネーゲームに行きつき、国民の経済厚生を置き去りにする。Brexitやトランプ現象が示すのは、結局資本主義と民主主義が両立しない現実が為せる業ということですね。

そしてトランプがイランことしてしまいました。革命防衛隊のヒーローで国民的には大統領より知られていたソレイマニ司令官が米軍の攻撃で死亡しました。宣戦布告なしに軍人を攻撃し殺害した訳ですから、無茶です。イランは将軍を葬送し、報復を宣言してます。新年早々草も生えんわ。

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Monday, December 30, 2019

フリュグスカム

2019年を表すキーワードはやっぱ飛び恥でしょう。世界的には英語のフライトシェイム(flight shame)ですが、ムーブメントの起点となったスウェーデン語のフリュグスカム(Flygskam)で記します。実際この言葉がSNSを通じて世界に拡散しており、知っておいて損はありません。

たった1人のストライキで注目を集めたグレタ・トゥンベリさんの飛行機移動批判が始まりらしいんですが、ちょっと疑問に思ってます。というのもスウェーデン国民の環境意識の高さという背景が見えにくくなるからです。実際複数の著名人が言及し、グレタさんを含む共同署名記事で飛行機ボイコットを呼び掛け、Flygskemと名付けたのが始まりですが、元々機運があったからこその署名記事であり、また実際広く受け入れられ、1-3月のスウェーデン国内の航空利用が15%減った一方、鉄道利用は12%増となり、スカンジナビア航空(SAS)の幹部が不快感を表明するほどになっています。

影響はスウェーデン国内に留まらず、また観光旅行に留まらずビジネス利用でも広がっていて、飛行機ならば日帰り可能なフランクフルトなどへの出張でも24時間かけて鉄道移動が選択されるという状況にまでなっています。勿論欧州では国際夜行列車が未だに健在で選択肢が存在していたゆえに可能なことであり、サンライズを除いて定期夜行列車が淘汰された日本ではこうはいきませんが。

またKLMオランダ航空ではアムステルダム―ブリュッセル便1便をTGVタリスと提携して列車に振り替えており、更に振替を進めるとしており、エールフランスも同様に一部便をタリス振替している状況です。これから始まるBrexitで触れた列車による航空便コードシェアは既に実現している訳です。

欧州の国際夜行列車というと、オリエントエクスプレスのような豪華寝台列車を連想しますが、昨今は2等扱いのクシェット(簡易寝台)や座席車も併結し、座席車は貧乏旅行のバッグパッカー御用達で、日本の夜行高速バスのような役割も担っています。歴史過程の違いもあるので一概には言えませんが、日本ではブルートレインの相次ぐ廃止があり、まさかの北斗星とカシオペアまで廃止された訳ですが、開放寝台主体だった日本では個室化と共に料金も高くなり、また定員減で鉄道の強みである大量輸送の機能もスポイルしている訳で、客単価アップを狙った戦略ミスの可能性は指摘できます。

日本では4時間の壁が言われ、鉄道対航空の構図で語られることが多いですが、正直なところ航空各社はさほど意識しておらず、鉄道側の自意識過剰じゃないかと見ております。実際東海道新幹線が大量輸送の威力を示す東京―大阪間でも毎日片道60便以上の航空便が定期運航されてます。正規運賃は割高ですが、web予約を通じたダイナミックプライシングで搭乗率を高めて高収益をあげてます。寧ろ国内線へのビジネスクラス導入や快適な空港ラウンジ整備などで差別化しており、固定客を掴んでいます。

こういう現実を見ると、JR東海の中央リニアエクスプレスは対航空の切り札にならないでしょう。そもそも名古屋開業時点では航空側に影響ないですし、大阪まで開業しても、総額9,1兆円超の事業費の償還をしながら、現行新幹線の3倍の電力消費を負担する訳ですから、航空側から見ればわざわざコスト負担を増やしている訳ですから、価格競争を仕掛けられる心配がなくなる訳で、差別化に磨きをかけることで対応すると見られます。

これ北陸新幹線開業まで航空の独壇場だった東京対北陸の航空輸送でも見られますが、ANAの富山便こそ1便減便されましたが、福井からもアクセスのあるJALの小松便は機材の小型化で便数は維持しています。寧ろ機材の小型化は燃費の向上と搭乗率の改善もあって、売り上げは減ったけど収益性は高まっており、元々航空利用が定着していたこともあり、固定客を繋ぎ止めています。あと新幹線のない山陰は航空のドル箱で、運賃も高めに設定されています。ライバルのサンライズ出雲の輸送力と料金水準によるある種殿様商売です。

そういう意味では航空各社にとっては整備新幹線やリニアよりも、飛び恥が怖い筈。ムーブメントが日本に波及すれば、バスのドライバー不足問題もありますし、インバウンド需要によるホテル不足で宿泊料金高騰もあり、夜行列車復権の目もあり得ます。寧ろ新幹線に留まらず、効率性を追求するあまり、サービスの選択肢を狭めている感も否めず、そうなるとコスト優先で儲からないサービスはどんどん切られて鉄道の魅力を削いでいる可能性もあります。飛び恥を波及させるためには、相応の魅力ある選択肢を鉄道が示せるかどうかにかかっています。

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Thursday, December 26, 2019

愛ある成長戦略

暮れの押し詰まったこのタイミングで東京地検特捜部が動きました。

秋元議員を逮捕、IR参入巡る収賄容疑 東京地検:日本経済新聞
国会議員が300万円の収賄容疑って、安すぎませんか?福井県高浜町の田舎助役ですら億の金動かしてるのに、いったいどんな容疑なんでしょうか?事実関係はともかくパーティー券販売名目で政治資金収支報告書に乗せれば疑われない金額です。身柄拘束された贈賄側とされる中国企業の500ドットコム側の関係者の証言によるんでしょうけど、こちらも元々は国内への現金持ち込みによる外国為替管理法違反ってことで、典型的な別件逮捕ですが、時期的な問題も含めて日産ゴーン事件を思い出させます。どちらも当事者間の水掛け論になり公判維持は困難です。

500ドットコムはオンラインでクジを販売する事業を手掛ける会社でカジノ事業者ではありませんが、本国の中国の規制強化で事業の継続が難しくなる中で、カジノ誘致を打ち出した日本への進出を決め、特に北海道のカジノ誘致にコミットしてロビー活動いたようです。北海道の候補地はルスツリゾートと苫東地区が噂されてましたが、先日北海道の鈴木知事が見送りを表明しましたから、結果は失敗だった訳です。てことでますます賄賂性の証明が難しくなります。

カジノは誘致賛成派はカジノじゃなくてIRだと言いますが、これは正直誤魔化しの議論です。カジノって結局法律で犯罪とされている賭博行為を地域限定で要件を満たした場合に解禁するって話ですから、結果的にヒトモノカネのリソースを引き寄せるクラスター効果が期待できるのですが、当然周辺からリソースを吸引するから、周辺地域を窮乏化したり治安を悪化させたり、ギャンブル依存症を生んだりという外部不経済をもたらします。故にラスベガスが典型ですが、人口密集地から十分な距離を置いて、ヒトモノカネは世界中から集めるという前提で初めて成り立つものです。IRはそのカジノを核としたものですから、カジノ抜きのIRはあり得ません。

だから横浜のような場所は不適格なんで、その意味では長崎のハウステンボスと共に北海道は有力な立地条件を備えてはいます。但しマカオやシンガポールとの競合はありますから、それを上回る魅力がなければ意味がないですが。ハウステンボスと長崎空港、苫東と新千歳空港という風に空港アクセスが良く、また大型客船が接岸できる港がある一方、大都市へのアクセスは必ずしも良くないといううロケーションは適しているとは言えます。海外富裕層がちょっと寄って楽しむ一方、国内からは行きにくいバリアがある訳ですね。その意味で長崎新幹線はつながらない方が良いことになりますが^_^:。

あとルスツリゾートはスキー客の減少で苦しむ一方、ニセコのような国際リゾートにもなり損なったことからカジノ誘致に飛びついたんだと思いますが、ニセコで今何が起きているかを知れば、インバウンド依存の問題点が見えてきます。

安いニッポン(中)暴騰ニセコ、それでも世界31位 外需頼みの成長にもろさ:日本経済新聞
国際的リゾートとして大ブレイク中のニセコですが、地価高騰の結果、家賃が上がってリゾート施設従業員が隣町からクルマ通勤という矛盾が起きています。インバウンド促進は結局格差拡大しかもたらさないほろ苦い現実です。アベノミクスの成長戦略はこんなんばっか!

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Saturday, December 14, 2019

これから始まるBrexit

米中雪解けと英総選挙での保守党単独過半数を好感して世界的に株価が上昇してます。これ冷静に見ればアメリカが勝手にいちゃもんつけて喧嘩売っといて「今のなし」って話ですから、単なる材料にされてるだけです。そんな中で中国でのiPhone販売不振のアップルと737MAXの安全問題で中国の緊急輸入の恩恵を受けられないボーイングは蚊帳の外。香港人権法の大統領署名で揉めるんじゃないかと言われましたが、実際は運用次第であって、抜かずの伝家の宝刀の意味です。中国も面子上内政干渉を言い立てますが、通商交渉で実を取るのは既定路線。つまり株高はご祝儀相場以上の意味はありません。

一方のBrexitはこれからが本番。EUの譲歩を引き出したジョンソン首相の思惑通りの展開ですが、関連法を成立させなければ1月末の強硬離脱の可能性は残っています。加えで北アイルランドの扱いは今後の対EU通商交渉と4年毎の北アイルランド住民の意思確認に委ねられますから、具体策はこれから決めるって話です。この辺資本主義と民主主義エントリーで指摘しましたが、メイ前首相が火だるまになりながら取りまとめたEU離脱案を下敷きにしながらの課題解決という、ある意味歩きながら考える英国流の民主主義が機能した結果です。

こうなることは予想してましたが、最大の理由は英国の政府や議会が本気で課題解決に取り組んだ一方、EU側は英国への厳しい態度を示す一方、Brexit撤回を期待するなど、英国民から見れば責任逃れにしか見えない態度に終始しました。だからとにかく前へ進もうというジョンソン首相の呼びかけが効いた訳です。ここまでの混乱で英国民も経済的には厳しい状況を理解していると思いますが、ある意味EUに愛想をつかした訳です。

こうなると英EU通商交渉も英国が強気に出られる一方、強硬派の仏マクロン大統領に対してドイツは醒めてるし、イタリアその他多くの国で反EUの世論が抑えきれない現状では、EUがまともに対応できるとも思えません。EU各国にはギリシャ危機のときの生々しい記憶もあり、まとまりを欠いたまま交渉に臨む訳ですから、かなり高い確率で英国に押し込まれると見ます。

一方スコットランドの独立問題などで英国が連合王国の現体制を維持できずに解体されるんじゃないかという人がいますが、元々英国は国内バラバラで、スコットランドは昔からイングランドへの対抗心が強いし、イングランドでもロンドンの金融街シティはエリザベス女王も許可を得なければ入れないという独立性の強いエリアで、丁度中国と香港の関係のような断絶があり、イングランドのはずれの田舎では、ロンドンは嫌悪や蔑みの対象ですらあります。

仮にスコットランドが独立してEUに加盟するとすれば、スコットランドとイングランドとの間に国境線を引く必要があるため、結局これアイルランドと北アイルランドの関係をブリテン島に持ち込むだけで、混乱に輪をかけるだけですね。実現可能性はほぼ皆無でしょう。様々な矛盾を抱えながら前へ進む英国流民主主義は強固です。

それより深刻なのは日本です。例えばこのニュース。

増税後の景気見通せず 10~12月は下げ公算:日本経済新聞
統計の胡麻化しなんかするから、今景気が良いのか悪いのか判断できなくなってます。実態は相当悪いんですが、昨年秋ごろにはピークアウトしていたと見れば、統計を化粧してよく見せていたけど、誤魔化し切れなくなったってのが現実です。特に貿易統計で顕著に表れてますが、ここのところ輸出が減少してますが、それ以上に輸入が減って結果の貿易黒字を計上してますが、輸入の減少は内需の弱さの証拠で誤魔化しようがありません。これ消費増税の前後とも変わらぬトレンドです。貿本主義も民主主義もダメなニッポン-_-;。更にダメダメなこのニュース。
与党税制改正大綱の要旨:日本経済新聞
ベンチャーを騙る反社会的勢力が企業を食い物にする税制、展望なき5G投資、そもそもこれらが何故デフレ脱却になるのか?OECDでデジタル課税が話し合われている現状で、どこ向いてんだか。ま、標的とされるグローバル企業に日本企業が入っていないから他人事なんでしょう。私的年金やNISAの見直しも結構なんだけど、これ結局公的年金への国民の不安の解消とセットでなければ意味がない。納税手続きの電子化ってマイナンバーカードの強制を含む普及促進ですが、セキュリティへの不安解消が前提です。ま、細部はいろいろありますが、これで経済成長できる根拠がわかりません。

加えて言えば、水害に見舞われた今年、温暖化の影響は明らかなのに、炭素税の導入などは議論されず、欧米との意識のギャップは救いがたいところ。3度目の化石賞と相成りました。これ繰り返しになりますが、原発と石炭火力を前提とした大規模電源主義を見直せない以上仕方ないところです。グレタ・トゥンベリさんに叱ってもらいましょう^_^;。

そのグレタさんが流行らせた「飛び恥」。これうまく使えば鉄道復権につながるんだけど。例えばJR北海道問題ですが、丘珠発着便を廃止して鉄道輸送に切り替えるのに使えそうです。JR北海道の都市間列車を北海道エアシステム(HAC)のコードシェア便として運行するといった方法を何故北海道は考えないのか?あるいは都市間バスの運行事業者とコードシェアするとかですが、そのための環境整備として道と関連自治体が出資して線路保有機関を設置するとかですね。

JR北海道には鉄道施設を現物出資させてオフバランス化して経営の負担を軽減する一方、低金利でほとんど機能しない経営安定基金は線路保有機関への国(鉄道・運輸機構)の出資分として保守と設備更新と投資の基金にするといったことですが、鈴木道知事は利用促進以外での自治体負担を求めないとしてiいます。やっぱりJR北海道潰して経営安定基金を長崎新幹線に回すつもり?英国流オープンアクセスを試すなら北海道なんですがね。

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Sunday, December 08, 2019

AI→上を、ククッ

桜を見る会問題、政府与党は逃げ切ったと考えているようですが、寧ろ疑惑を増してます。さっさと名簿提出して幕引きすりゃ済むところを、公文書廃棄など証拠隠滅を疑わせることすりゃ寧ろ疑われるってことですね。ホントつけるクスリ無いわ。始まる前から批判してきた現政権がなかなか終わらないのは支えるサクラがいるからってことで、サクラを可視化したという意味では名は体を表してるwww。# そういうこと言わない

デジタル公文書の扱い課題 「桜を見る会」で浮上:日本経済新聞
シンクライアントって結局サーバーにデータは残るしバックアップも取られてるから簡単に消去もできないんだけど、苦し紛れに「バックアップデータは公文書に非ず」という珍説まで出てくる始末。こりゃ日本がハイテク分野で米中韓に後れを取るの無理もないわ。で、これ。
日本の15歳「読解力」15位に後退 デジタル活用進まず:日本経済新聞
「教育改革」と称して散々制度を弄り倒してこの結果ですが、読解力って、自然言語の処理能力と見れば最も人工知能(AI)が苦手な分野であり、AI時代に最も必要とされるスキルなのにこれですから、日本の未来は大丈夫か?SNSの普及で本や新聞を読まない若者が増えていると言われますが,まあ政府がこんなじゃ無理もないか。

AIに関しては様々な誤解があるようですが、単に取得したデータを基にパラメータを書き換えるプログラムってだけの話で、以前なら時間がかかって使えないレベルだったのが、ムーアの法則でハードの性能が著しく改善された結果可能になったってだけの話です。これ人間が行うトライ&エラーを機械にやらせようって話ですから、コンピュータは間違えないという前提が無くなるってことでもあります。

昔は手書きの表で縦計横計を電卓叩いて検算してたけど、エクセルで作った表でそれやる人はいません。AIって間違えるコンピュータって乱暴な整理も可能です^_^;。そんなAIに付き合う人間は、文脈に沿ってツッコミを入れられるか?という能力が問われる訳で、そこを鍛えないと将来確実にAIに仕事を奪われる側になるってことです。AIの上を行くアイウエオが大事^_^;。この観点から言えばドライバレスの自動運転は簡単ではないってことがわかります。JR東日本が山手線で実現を目指してますが、鉄道の場合少なくとも障害物の線路内侵入を防ぐ物理的対策が別途必要でしょう。

あと現在のコンピュータは基本的に複雑な計算も足し算引き算で対応している訳で、2掛ける3は2+2+2と計算する訳ですが、人間の脳の処理能力より早いのでこれで問題ないんですが、当然複雑な計算になるとそれなりに時間がかかります。人間は処理能力を節約するために九九という形で掛け算のデータベースを保持して対応している訳で、更に複雑な計算に対応するために様々なツールを場合場合で使い分けることで対応している訳です。こう考えるとコンピュータって案外バカってことです。これは人間がそういう特性を知った上でうまく使いこなすことが重要ってことです。

つまり教育の基本は読み書き算盤。アイウエオと九九が基本ってことです。

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