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Sunday, August 14, 2022

コロナは万病の素らしい

社畜人ヤプーで帰省とコミケと青春18キッパーを取り上げましたが、コロナの自粛モードが、行動制限のない今年はかなり戻っているようです。それでもJR各社の指定席予約はコロナ前の6割水準ということで、戻りは限られます。コミケは台風直撃、豪雨や台風で足止めされた18キッパー死屍累々。

第7波渦中ですから無理もないところで、オミクロン派生のBA.5が猛威を振るう中、感染者の若年層への拡大と感染者の急増で「祖父母のために帰って来るな」と言われたケースもあるようです。実際ワクチン接種が進まない若年層の児童生徒が学校から持ち帰ったウイルスで一家全滅とか、エッセンシャルワーカーの職場内クラスター感染などで、例えば小田急バスの大減便とか宅配便の遅配とか、もっと深刻なのは只でさえコロナ禍で逼迫する医療現場の人手不足など、ウィズコロナを模索する政府の対応を難しくしています。

根拠薄れた感染対策、見直し急務 ウィズコロナへ岐路 岸田改造内閣の課題②:日本経済新聞
岸田首相は第7波終了後の見直しに言及してますが、第7波渦中の現在、既に医療逼迫が起きており、検査キットの不足もあって綱渡りの現実があります。実際行動制限は求められていなくても、帰省を断念した人も少なからずいた訳で、感染拡大のアナウンス効果によると思われます。その意味で全数検査を無くすことは歯止めが無くなるという意味で時期尚早です。そもそも全数検査と言っても陽性率が3割とか5割とかの水準では検査件数が過小と評価せざるを得ません。つまり公称の感染者数は実数に満たないと考えられます。

そもそもコロナで日本が世界に誇る医療の皆保険制度がマイナスに働いた今回のコロナ禍ですが、その見直しの議論は停滞し、感染症に有効なオンライン診療の解禁も進まず、またイギリスの家庭医に相当する制度もなく、小規模な医療機関が乱立した中でのフリーアクセス制では発熱外来設置は風評になると尻込みされたり、指定を受けても非公開だったりで、実際の感染者を早期発見早期治療する体制は確立されず、見なし陽性とか自主隔離とか医療放棄ともとれる現実がある訳です。

イギリスの家庭医制度は日常的な健康相談など日本の保健所の機能を家庭医が担い、不具合が見つかれば専門医へ紹介するという制度ですから、電子化されていなくてもカルテが共有され、患者側から見れば最適な医療が受けられる体制です。それでも財政再建のために予算が削られたことから、コロナ対策は後手に回り多くに犠牲者を出しました。その意味でジョンソン首相が当初打ち出した集団免疫作戦は背に腹は代えられなかった結果とも言えます。

それでもカルテの共有で多くの疫学データが抽出され、各国のコロナ対策にプラスになりました。特にワクチンの効果を巡る問題では、mRNAワクチンの有効性の高さやオミクロン株で見られたブレークスルー感染でも重症化回避の効果があることなど、多くの知見を得られました。それに引き換え混乱し機能しなかった日本のコロナ対策ではデータ活用すらお寒い状況です。イギリスの家庭医に倣ったかかりつけ医を医師会は推奨してますが、法的位置づけが曖昧ですし、そもそも初期医療のための専門教育を受けていない一般診療所の医師では役割を果たせず、結局専門医へ直接診療できるフリーアクセス制を見直すことはできません。

あと日本ではあまり議論されておりませんが、コロナ後遺症の問題はほぼ手付かずです。コロナ感染し重症化して死亡するケースでも、肺炎が死因となるケースは半数ほどで、他は心筋症や血栓症など別の死因です。また回復後の味覚障害やコロナ鬱と言われる神経疾患も報告されておりますし、回復後の帯状疱疹の発症が有意に増えていて、且つ若年化しているという報告もあります。帯状疱疹自体は水痘の原因ウィルスとされるヘルペスウィルスが回復後も体内に潜伏し、高齢化による免疫力の低下など何らかのきっかけで発症すると言われる疾病ですが、コロナ感染がトリガーになる可能性が示唆されます。

このようにまだよくわかっていないところですが、コロナ感染がトリガーとなって他の疾病を誘発する可能性はそれなりにあると見るべきでしょう。特にオミクロン株では喉など上気道での感染が見られ、それが若年者の感染拡大をもたらしている可能性もあります。生育途上で免疫力も相対的に弱い子供への感染は、例えばサイトカインストームのような免疫の暴走で他の疾病を呼び込む可能性もあり、実際若年層の重症化自体は増えています。将に万病の素ですね。

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Sunday, July 03, 2022

梅雨明けの徒然大草原www

インフレを終わらせるには日銀の政策変更が必要なんですが、その日銀が炎上黒田節hl でインフレ対策眼中になしの姿勢を見せている訳ですが、第三次オイルショックエントリーで指摘したように、世界はスタグフレーションに向かいつつあります。第一次第二次のオイルショックは何れも戦争が契機となっている点に共通点があり、今回が第三次オイルショックと呼べるほど酷似しておりますが、同時にオイルショックに先立つ1973年のニクソンショックで米ドルと金の交換がストップし、戦後のブレトンウッズ体制が崩壊したことの影響も指摘できます。

結果的に金の裏付けを失った米ドルの信認は低下する一方、当時の米FRBの緩和的金融政策もあって米ドルが大量に発行されました。その結果ドル建てで決済される石油取引に影響し、ドル建ての原油価格急騰となった訳です。加えて対ドルで上昇圧力のかかる他国通貨は為替相場維持が困難になり、特に日本円と西ドイツマルクには厳しい状況となり、当時の日銀とブンデスバンクは米FRB以上の金融緩和を迫られます。その結果世界にマネーは溢れバブル状態になっていた訳です。

今回もリーマン後から続き各国中銀の緩和措置によるコロナバブルの渦中ですから、金融政策面から見ても第三次オイルショックと呼ぶべき類似性があります。これが是正されるのは80年代米FRBボルガ―議長の高金利政策によるインフレ退治と、高金利でドル高ととなり米国経済を圧迫したことから85年のプラザ合意でドル売り協調介入した結果やっと落ち着き、米経済が成長軌道に乗る90年代半ばまで待たなければなりませんでした。

つまり危機を抜けるのに20年ほどかかっている訳ですから、今回もそれぐらいの時間軸で見る必要があります。加えて日本が半導体産業で先行しながら他国に追いぬかれたIT関連産業の興隆という産業構造の世界規模の転換が起きた訳ですから、それを考慮すれば今やるべきことは脱炭素に舵を切り産業構造を大転換することでしか出口は見いだせないという見通しも得られます。

一方日本ではまさかの6月中の梅雨明けでいきなり猛暑で電力逼迫ですが、よく考えたら6月は年間で最も日射量が多いシーズンですから、太陽光発電の出力を活用することで対応は可能なんですね。ですから注意報も太陽光の発電力がピークアウトする午後から夕刻の節電って話でして、実際は朝から太陽光の過剰出力を揚水発電所のポンプを作動させて上流調整池を満水にして備えていた訳ですから、結果的にやや大げさな煽りになった点は否めません。平年だと梅雨という雨季で太陽光の出力を当てにできない一方で、今年は梅雨明けが早まったことが幸いしたということは言えます。

寧ろ日射量の少ない冬期の寒波襲来時の厳しさの方が深刻です。電気が足りない訳じゃない 21年1月の電力危機の再現はあり得ます。よく言われる原発再稼働も、東日本で最も早い東北電力女川原発で24年度見込みですから、どう頑張ってもこの冬には間に合いません。故に老朽火力の高稼働で対応せざるをえなせんが、それは同時に老朽火力のトラブルを増やします。

福島・勿来火力発電所が停止 姉崎5号機は再稼働:日本経済新聞
東北電力では東電への電力融通をしていた中でのトラブルですが、より古い東電姉ヶ崎火力へ火を入れる結果となった訳です。元々原発の13か月ごとの法定点検時のバックアップ電源として温存された老朽火力は燃費も悪いしメンテナンスも手がかかる厄介者なのに、原発再稼働を前提とするからつなぎで稼働率を高めてトラブルを呼び込む悪循環なんですね。そんなところに金掛けるならNAS電池やグリーン水素+燃料電池で蓄電設備を拡充することの方が緊急度は高いと言えます。その分エネルギー輸入を減らせますし、脱炭素にも貢献します。
5月の鉱工業生産7.2%マイナス 自動車など低下:日本経済新聞
サプライチェーンの混乱で鉱工業生産指数が低下しております。これつまり日本の製造業の生産能力が低下し、輸出余力が減ったことを意味します。つまり円安で輸出企業の利益拡大も望めない訳で、円安を活かした製造業の国内回帰も円安で設備投資の直達面の制約が増すことになります。円安メリットは悉く失われます。唯一工場稼働率の低下は電力逼迫を緩和しますから、悪いことばかりではないということは付言します。

という訳で電力問題では早い梅雨明けは言われるほどの影響はないと言えますが、もう一つ終わらないコロナの観点から言えば別の面が見えてきます。元々欧米に比べてアジアの感染者が少なめなのは、雨季の影響があると思われますが、雨季が早く終わるということは、次の感染拡大を警戒すべき状況と言えます。実際こんなニュースが。

東京都、新型コロナ警戒度上げ 感染者が増加傾向:日本経済新聞
実際人が動いていて感染機会は増える傾向に会否めません。ワクチンのブースター接種が進んである程度感染拡大は抑えられるでしょうし、重症化を防ぐ効果から言えば、緊急事態宣言やまん延等防止措置の発動による行動変容の必要性は低いと言えますが、同時に熱中症との取り合いで医療逼迫が起きる可能性は高い訳で、警戒は必要です。マスクに関しては35℃以上でウイルスは活動できなくなりますから、屋外で外すのは問題ないと思いますし、熱中症予防の観点からもマスクは外した方がリスクは減らせますが、逆に空調の効いた屋内や交通機関利用時は引き続きマスクは必要でしょう。てことで乗り鉄はマスク着用で。
ミサイル攻撃の避難先は地下鉄駅 自治体の指定数3.5倍:日本経済新聞
これも繰り返し指摘していますが、キーウ市民が地下鉄駅へ避難したのは元々核シェルター機能を持った社会主義国仕様の地下鉄だからということですね。日本の地下鉄とは設計思想に違いがあります。寧ろ狭い地下空間へ人が殺到スタ時の危険性は顧みられていません。梅雨の後先の男たちに騙され続ける純真なカフェ女給の君江ですが、いい加減政治家や役人に騙されることから卒業しないと不幸なままですね。

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Monday, June 27, 2022

インフレを終わらせるには

電力危機キタ━(゚∀゚)━!

電力逼迫で初の注意報 経産省、27日に東電管内:日本経済新聞
いきなり梅雨明けで電力危機です。特に太陽が傾く夕方の太陽光発電の出力低下時が危ないということで、油断できません。また予報より気温上昇が上振れすれば警報に変更も有り得るということですから、とりあえず節電に励みましょう。電気代も上がったし。

ウクライナ情勢は膠着の度合いを強めております。ロシアは練度の低い徴兵の兵士を前線へ送り兵士の被害甚大なんですが、ナポレオン戦争やww2の独ソ戦でもそうでしたが、兵士の減耗をあまり顧みていないようです。逆に弾薬等は大量にあるので、ミサイル攻撃は今後も続くでしょう。一方で欧米の支援で応戦するウクライナ軍は士気は高いけど武器弾薬の補給で凌いでいるものの、ロシア軍を押し返すには至らず、応戦疲れの気配もあります。加えて支援する欧米諸国ではインフレに国民の関心が移りつつあり、ウクライナ支援の足並みの乱れが見られます。対ロシアの経済制裁で石油も禁輸に近い制限がかかるとか、ガスやその他の資源類も制限対象として検討されています。つまり資源インフレの傾向は続くと考えられます。

アメリカもバイデン大統領を支える与党民主党の中間選挙の苦戦が伝えられており、ガソリン税免除の立法を議会に要請しております。ガソリン高が米国民にはインフレを意識させる度合いが高いからですが、それ以上の対応は考えられておりません。インフレ対策はFRBの金融政策が本命であって、その独立性を尊重する立場から、政府不介入の立場を鮮明にしております。そのFRBパウエル議長は1年前の判断ミスを自覚しておりインフレファイターに変身しました。そして日銀は?

日銀、インフレなお「一時的」 利上げの欧米と開く距離:日本経済新聞
FRBパウエル議長の1年前の発言と同じフレーズが日銀から飛び出した訳ですが、パウエル議長の判断ミスこそこの「インフレは一時的」という見立てで利上げを遅らせたことにあります。その結果インフレが昂進し制御が難しくなって利上げを急いでいる状況で、政策を見直した訳です。日銀の政策見直しは難しいのは確かですが、だからインフレを放置してよいということにはなりません。こんなニュースもあります。
利上げドミノ、市場揺らす スイスが震源に:日本経済新聞
スイス中銀は伝統的に相対的低金利と通貨安への誘導のため緩和的な金融政策を取る傾向がありますが、ECBの利上げに押されて利上げを決めました。理由は低金利でキャリートレードが拡大して通貨安を助長するからというもの。通貨安によるインフレから国民生活を守るためにキャリートレードをけん制する狙いと言われます。主要国で緩和継続はほぼ日本だけという状況になった訳です。これつまり緩和継続の日本円のキャリートレードの拡大が見込まれる訳で、円安要因となります。

これリーマンショック前のゼロ年代の日本だけゼロ金利の時代とほぼ同じ状況になった訳ですが、大きく違うのは当時は貿易黒字が続いていたことです。つまり実需としての貿易決済取引で円高圧力がかかる状況で、金利差によるキャリートレードがそれを中和した訳です。それぐらいキャリートレードの影響は大きいのですが、それでも円高は抑えられず、円売り介入も行われました。今回の輸入インフレは貿易赤字の中で起きている訳ですから、インフレを抑えるには日銀が動いて緩和を終わらせることが必要な訳です。

という訳で、インフレ対策はあくまでも中央銀行の役割ということは踏まえられている訳で、選挙でインフレ対策が連呼される日本の状況は異常です。それも石油元売りへの補助金だったり、財政出動を伴う給付金や減税だったりということですが、輸入インフレに対応するには輸入を減らして貿易赤字を解消するしかない訳で、財政を使って需要を喚起する政策は寧ろインフレを昂進させる逆効果となります。故に日本が政策的に対応できる手段は、繰り返しになりますが金融緩和の縮小と財政支出の抑制による総需要抑制策しかありません。

第三次オイルショックエントリーで取り上げた第二次オイルショック時の総需要抑制策に倣って公共事業やその他公共投資の一時凍結で財政を圧縮し、国債の償還に合わせて日銀保有の国債の償還を進めることなどが必要になります。異次元緩和が長く続いたので、当面これを続けて徐々に国債を減らすしかないのが日本の現状です。

その一方で電力危機解消のために送電網の整備や蓄電システムの構築などへの補助金を出して民間投資を促すのはアリです。公共投資は抑制すべきですが、必要な民間投資は利子補給の形で補助することで輸入エネルギー依存を下げることで貿易収支改善につながります。その意味では原発再稼働も選択肢にはなりますが、それが困難な状況は繰り返し述べてきた通りで、政治判断でどうにかなる訳ではありません。寧ろ稼働していない原発の容量分の空きが送電網にある訳ですから、それを活用して需給調整に生かす方が短期的な対策としては有効です。

ということで、鉄ちゃん的暑さ対策は乗り鉄でしょう^_^;。家にいなければエアコン使わなくて済みますしwww。

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Sunday, May 15, 2022

西武鉄道サステナ車両の徒然

やはりというか大型連休終わったけど コロナ感染はじわじわ増えています。国内死者が3万人越えと、決して終わっていない現実は受け止めるべきでしょう。それでもワクチン接種が進んでいることで、重症化予防で医療崩壊を防げて入るものの、オミクロン株では若年層の感染者が増えた一方、高齢者の死亡が増えていることから、軽症で済む若年層が高齢者へ感染させるルートが考えられます。

欧米ではウィズコロナで規制を緩める動きもありますが、深刻な後遺症の報告も多数あり、まだまだ警戒を怠ることはできません。加えて中国等のゼロコロナ政策の破綻が見えてきており、結局世界のどこかで感染拡大が続く限り、新たな変異株の出現と置き換わりは続くと見るべきです。その意味で気になるニュースです。

北朝鮮、コロナ発熱52万人 金正恩氏「建国以来の大動乱」:日本経済新聞
経済の生命線の筈の中朝国境を度々封鎖までして国内感染を防いできた筈の北朝鮮が、公式に国内感染を認めたというのは大ニュースです。しかも中国製ワクチンすら拒否してきただけに、免疫保持者はほぼ皆無ですから、相当深刻な状況と考えられます。韓国の政権交代を踏まえた核実験の予測もありますが、恐らくそれどころじゃない国内状況だと思います。そして医療の脆弱さもありますし、感染爆発は新たな変異株の出現も心配です。コロナ禍は続きます。

話題は変わって西武鉄道の22年3月期決算の添付資料が話題になっております。

西武鉄道、無塗装・VVVFインバータのサステナ車両導入で“黄色い電車”を置き換え。省電力化で固定費削減へ:トラベルWatch
無塗装VVVF制御車の中古車を「サステナ車両」と呼称して他社から購入するとしており、早速ネットではどの社のどの車両かと詮索が始まっておりますが、現時点では複数社と協議中で、とりあえず22年度中の導入はないというのが公式発表ですので、当分この話題は鉄ちゃん的には楽しめます。

中古車とはいえ無塗装VVVF制御車の活用は、償却済みであれば車両価格自体はタダ同然で、運送費と自社線適合改修費用をかけても格安で車両調達ができる訳ですし、運送費や改修費も取得価格に含まれますから動産として減価償却対象となりますので、費用負担の面を考えれば合理的ですし、また車両としての使用価値の残っている車両の活用は資源配分上も望ましいし、また車両新製時に生じるCO2排出などの環境負荷軽減にもつながりますので、サスティナビリティの観点からも望ましいことになります。総合車両製作所(JTREC)のステンレス車ブランドと紛らわしい命名ではありますが^_^;。

背景は言うまでもなくコロナ禍による運賃収入の減少ですが、多摩湖線や多摩川線の101系や本線系統に多数残る2000系の置き換えに高価な40000系では時間もかかるし、また車両数の見直しも併せて実施するということですが、時期や規模は今のところ明らかではありません。数の上では2000系の置き換えの方が急がれますし、省電力効果も大きいことと、加えて車両自体の経年状況から地方私鉄への譲渡の可能性も高く、コスト圧縮効果が大きいということは押さえておくべきでしょう。

大手私鉄の中古車導入は驚きを以て見られておりますが、元々西武鉄道は戦災国電その他の旧型国電の大量払い下げで戦後の輸送力増強を進めた実績があります。西武鉄道は戦災の影響は軽微で被災車両はゼロであったものの、資材不足と酷使で稼働車両の確保が難しい戦後混乱期には西武にに限らずどこも同じでした。

そこで当時の運輸省は国鉄に戦時設計のモハ63を大量投入し、戦災車、事故車、老朽木造車の私鉄払い下げを行う一方、地方鉄道法準拠の運輸省規格型電車を大手私鉄等に割り当て、代わりに在籍車の一部を地方私鉄に譲渡するという形で、国内の車両製造工場をフル稼働させて車両不足解消を図りました。所謂選択と集中を国ぐるみで行った訳です。

モハ63に関しては一部私鉄にも割り当てられ、東武鉄道、東京急行電鉄、名古屋鉄道、近畿日本鉄道、山陽電気鉄道の各社に割り当てられました。東急は大東急時代で小田急線と経営受託中の相模鉄道線へ、近鉄は戦時統合中の南海線へ配属し、山陽は唯一の標準軌線だったので広軌63の俗称で呼ばれました。定かではありませんが、運輸省は車両限界の大きい新京阪線改め阪急京都線への配給も打診したものの断られたと言われております。幻の広軌63だった可能性はあります。大柄なモハ63導入に当たって各社は限界拡張や橋梁などの構造物荷重の補強を行ったものの、支障物が多い名鉄の初代モ3700ク2700は使いどころを見出せず、後に東武鉄道へ14両、東急分離後の小田急電鉄へ6両を譲渡しています。

西武鉄道もやはり打診されたものの、在籍車の地方転出の強制など運輸省の規制を嫌ってモハ63も規格型電車も導入せず、専ら戦災車や事故車の復旧車を中心に車両を補強し、また木造国電まで払い下げを受けてなりふり構わない姿勢を見せます。後に木造国電は国鉄モハ50と同型の車体に乗せ換えたり、新車の一部を木造車鋼体化名義として車籍流用されて姿を消しています。モハ63は入れなかったけど、結果的に地方鉄道規格から国鉄規格に車両限界を拡大した結果、高度成長期の輸送力増強を助けることにもなりました。更にカルダン駆動車の時代にも国鉄クモハ11400番台を払い下げを受けてクモハ371としたりしており、国鉄標準の制御器CS5で統一されていたことが好都合だったという面もあります。

戦災国電等の復旧車は東武鉄道、京成電鉄、東京急行電鉄、小田急電鉄、相模鉄道などでも見られましたが、特に東急は西武に次ぐ37両の払い下げを受けております。面白いエピソードとしてはJTRECの前身の東急車両で復旧工事を実施したデハ3600を神武寺経由で菊名の渡り線で東横線へ発送するに際して車体の形式表記の頭に6を書き足して636XXとしてモハ63配給に偽装したところ、車体長が短いし緑色だしということで不審に思った国鉄職員の通報で発覚し大層怒られたとか。当然今なら犯罪行為として立件されるところですが、怒られただけで済んだとは暢気なものでした。

あと大手私鉄の中古車譲受では名鉄のも3880ク2880とモ3790ク2790もあります。前者は東急デハ3700クハ3750で、第一次オイルショックによるガソリン価格上昇でクルマ天国の中京圏でも電車通勤へのシフトが見られ、混雑が激しくなったことから導入されたものです。同型が選ばれたのは上述の運輸省規格型でモ3800とメカやスペックが同等ということで、1975年に3連4本12両、1980年委3連3本9両が成就され、クハ1両の不足分は東急クハ3671が当てられ合計21両が揃いました。

後者は水害で橋梁流出のため休止から廃止に至った東農鉄道駄知線のモハ110クハ210を引き取ってモ3790ク2790として築港線で運用しました。東農モハ110クハ210は元は西武鉄道モハ151クハ1151で1927年から8年にかけて製造された川崎造船所製のオールドタイマーですが、災害で廃止した系列会社の救済の意味もあったのでしょう。同年美濃町線に札幌市電A830改めモ870もも導入しており、美濃町線すら輸送力増強が必要だったようです。過去を遡れば岐阜市内線の北陸鉄道金沢市内線のボギー車を受け入れるなどしております。大手私鉄としては異端の存在だったんですね。

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Sunday, March 13, 2022

帝国が終わるとき

ロシアのウクライナ侵攻は続きます。ロシアの誤算はエネルギー供給でロシア依存が強い欧州の結束でしょう。応手向けを中国がある程度カバーするとしても、それだけではカバーしきれない経済の収縮が起きます。

当然ロシアの攻勢が長引けばそれだけ国内経済は困窮します。ロシアデカップリング進行中以後の動きもいろいろあり、例えば事業撤退や停止した外国企業の資産没収とか知的財産権の無効化をロシアが打ち出しておりますが、一方でG7を中心にWTOの最恵国待遇停止で特に工業製品の関税が跳ね上がりますから、接収した工場で操業を続けても輸出は困難な訳で、SWIFT排除と共に経済のデカップリングが進みます。

ネットではロシアが金本位制採用でドル覇権が終わるという謎な書き込みがありますが、逆にロシアの金取引に応じる国はおそらく中国ぐらいでっようから、結局中国への金流出で人民元経済圏に取り込まれるだけというロシアにとってはありがたくない結果になるでしょう。BRICsと言われ持てはやされたロシアですが、実態は資源国としての躍進だった訳で、それが丁度ロシア危機後の経済成長を支え、またエリツィン政権を継承したプーチン政権で花開いたことがプーチン人気の原点でしょう。

実際オリガルヒと呼ばれる新興財閥はエネルギー企業が多く、プーチン政権に働きかけて有利に事業を進めてきたように、政府の関与でエネルギー輸出国の道をひた走った訳ですが、所謂オランダ病の喩え通り、資源国のジレンマに陥って経済が停滞した訳です。外資の導入で国内製造業の育成を図ろうとしてもエネルギー輸出で容易に外貨を稼げる状況では工業化による産業育成はうまくいかず、寧ろ利益配当や特許権料などの知財でマネーが流出する流れが止まりません。つまりロシアは自らの経済政策の失敗で追い込まれていた訳です。

更に核を含む軍備の負担がのしかかり、大国としての責任を問われる状況に耐えがたいストレスがもたらされていたという訳ですね。その一方でブダペスト覚書で核放棄したウクライナは、元々穀倉地帯として穀物輸出国として存在感が高かったうえに、帝政ロシア、ソビエト時代を通じて産業革命の舞台となり工業化も進んでおり、軽軍備で経済的な重石も取れて多くの外国企業が注目することとなり、欧米諸国に加えて中国まで積極種出する状況にありました。

1人当たりGDP水準はロシアにも及ばずモルドバやアルメニアと並ぶ欧州最貧国の1つですが、潜在的なポテンシャルは高い訳で、経済が停滞するロシアにとっては元々同じ国だったんだから外国勢の好きにさせたくないという動機を持ったとしても不思議ではありません。加えて言えば2014年のクリミア併合も連絡橋整備その他の公共投資で負担となり、経済的には失敗と評価されるような状況だった訳で、プーチン政権の取り得る選択肢はどんどん狭まりました。てことでロシアが音をあげてゲームオーバーの確率が最も高い訳です。勿論確率は低いけど核戦争となって人類が絶滅に危機に瀕し、生存者も核の冬に耐える状況もあり得ますが、現時点でそれを展望してもあまり意味がありませんね。てことでこのニュース。

サハリン2で板挟み 三井物産・三菱商事、安保か制裁か:日本経済新聞
上記のことを踏まえれば、損切してでも撤退し、戦後処理で権益を取り戻すというのがリアリティのある対応ってことでしょう。おそらく撤退が続く欧米企業はその辺を見切っての行動と考えられます。ただサハリン2は日本政府もコミットしており政投銀融資の対象にもなっている訳ですから、民間企業の判断だけで決められないジレンマはありますが、だからこそ政府が判断を示す必要がります。とはいえこれまでの岸田政権の対応を見る限り、こうしたリスクを伴う決断は期待薄でしょうけど。

これから先はオマケの話ですが、チェチェン紛争をはじめ国内も強権で抑え込んできたロシアのプーチン政権ですから、プーチン後を考えると地方の独立志向が強まる可能性があります。特にウラル地方のイスラム回廊は鉄路的地政学でも指摘したように元々不安定な地域であり、仮に独立して上海協力機構へ加盟となれば中国の影響力が強まり、ロシアに力を借りたカザフスタンの立場が微妙になったりとこれはこれで不安定な着地点となります。あとシベリア地区では気候変動による温暖化を見越して中国からの移住者が増えている状況もあり、ロシアの中国依存が強まれば実質的に中国に切り取られる可能性すらあります。つまり大ロシア帝国は終焉を迎える可能性がある訳ですね。私たちは帝国の終焉に立ち会えるかもしれません。

そもそも帝国とは?という話もありますが、広大な領域を統治するシステムと捉えれば、歴史的にはローマ帝国の興亡や歴代中華帝国、イスラム帝国、モンゴル帝国、オスマン帝国、ムガール帝国などが浮かびます。共通点は包摂(inclusin)で表されます。つまり広大な領域を統治するためには多数の民族や宗教の存在を前提とする以外あり得ない訳です。

例えばローマはラテン系民族が中心だったけど、農業中心の産業構造で労働力確保の為に周辺蛮族を攻撃して多数の異民族を抱えますし、ギリシャ譲りの多神教だったのが古代ヘブライ人の一神教を取り込み、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教への繋がりが出来ますし、特に邪教とされたキリスト教がローマ帝国衰退の中で国教となり、後の欧州文明の基盤を形成する訳です。

中国でも多数の異民族との関係で歴史が動き、また天下が割れて戦乱が続いたりと複雑な経過をたどりますが、加えて道教、儒教とインド伝来の仏教との関係が興味深く、道教が民間信仰的で儒教は統治者のイデオロギーの性格があったものの、徳を重んじる両者の倫理規範には共通性があり、互いに影響し合いましたし、仏教の解脱と二教の特の共通性の理解もあり、所謂三教でも影響し合う関係が見られ、多様性の包摂に寄与していました。尚歴代王朝は三教の何れかに肩入れしましたし、清代の太平天国のようにキリスト教を独自解釈するようなことも起きる訳です。

インドから地中秋沿いにまで広がったイスラム帝国もアラビア人中心だったけど多数の異民族を抱えてましたし、ユダヤ教、キリスト教をはじめインド由来の宗教も含め多数の異教徒との共存で成り立っていた訳ですが、それ故に異教徒の包摂に綻びだ出て分割されました。その一方、モンゴル帝国の成立で一部のモンゴル人が入信したこともあり、ウイグルからトルコに至る広範なイスラム回廊の形成に繋がります。その一方で中国の統治システムに乗っかった元王朝もあり、モンゴル自身も多様性を内包していました。それがオスマン帝国やムガール帝国の出現にもつながるなどしておりますが、共通するのは多様性の包摂とそれ故の分断、解体という流れです。今ロシアがその際にあると見ることは可能です。

ロシアの場合は中核のロシア人の少子化傾向と逆にイスラム系民族の人口増加が同時進行しており、プーチン政権初期の経済成長も専らロシア人が恩恵を受ける一方、多数の少数民族は取り残されてきた訳で、それが国内の格差拡大をもたらし治安を悪化させた訳です。こうした構造変化を強権的に抑え込んだ結果が今のロシアですから、包摂性が綻び統治の遠心力が働く環境が整ってきた訳です。

一方で大英帝国に代表される帝国主義ですが、本国はあまり大きくないけど、英東インド会社によるインド植民地経営に見られるように、強権的な権力を用いずに民間企業に特権を与えることで最適化する分割統治システムに特徴があります。それに倣ったのがアメリカであり戦前の日本ですが、後発国の日本は既に列強の権益を押さえられた後に割り込んだ関係で摩擦を生じる訳ですが、そのことで国家意識を拗らせて世界戦に向かう愚を犯しました。

所謂グローバル化も先進国に対する新興国のキャッチアップの機会を提供することで、新興国の成長力を取り込んだ世界秩序という意味で、帝国的包摂性を有する訳ですが、その中で一時優等生だったロシアは経済政策の失敗で行き場を失い戦争を仕掛けたと見れば戦前の日本とそっくりですね。という訳でコロナ自粛中で鉄分不足気味ですが、陽気も良くなるし春ダイヤネタを拾いに出ることを目論んでおりますが、そんな呑気なエントリーを書ける環境が早く来てほしいですね。

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Sunday, January 17, 2021

電気が足りない訳じゃない

緊急事態宣言の中いかがお過ごしでしょうか。しかしアメリカやイギリスに比べれば2桁少ない感染者数で医療崩壊が叫ばれる日本の現状はどうしたものか。要因はいろいろありますが、医療機関に占める公立病院比率が2割程度で残りは民間という日本の医療体制が災いしているようです。

政府は各病院にコロナ病床の設定を要請していますが、風評を恐れる民間病院は申し訳程度の病床数でお茶を濁し、公立病院にしわ寄せがされている状況です。民間病院では1桁の病床数しか用意されていないtころが多いですが、そのために呼吸器感染症専門医や看護師、保健師張り付かせる訳ですから、勢力が分散して非効率になる訳です。加えて経営の要請で病床を空けておくわけにはいかず、他の疾病の患者を入院させるなどしていざというときに使えなかったりしますし、また救急車が電話で受け入れ病院を探すシステムが災いしてコロナが疑われる救急患者の受け入れ拒否も頻発している状況です。

ならば公立病院に専門医、看護師、保健師を応援に出して集中的に対応した方が効率よく受け入れられそうなものですが、その公立病院が赤字体質をたたかれて予算が縮減されてやはり対応を困難にしているという面もあります。例えば民間病院にコロナ受け入れの免除の見返りとして医師、看護師、保健師の人的支援を求めるといった対策が取られれば良いのですが、国の支援が無ければこれも難しいということで、医療制度改革で疲弊した医療体制が災いしている訳です。

公立病院の比率や状況はそれでも地域差がありますし、専門スタッフも偏在している状況ですから、そもそも国が差配するのは難しい訳ですが、ならば緊急事態宣言の発出は都道府県知事の権限として必要な予算は国が提供する制度が望ましい訳で、法制度の問題です。また当初から言われ続けてきた検査体制の問題も「医療崩壊を防ぐために検査を絞る」という謎理論で抑制されてきましたが、これも未症状や軽症の人向けの隔離施設として地域のホテルを借り上げて食事提供と医療チーム派遣で対応することでホテルの支援にもなりGo To で無理くり需要を作り感染拡大で蒸発という混乱を考えたら遥かにマシは支援策です。

Go To に関しても緊急事態宣言で県境を越えた移動を制限しても、状況が許せば県内 Go To といった形で対応するなど地方の実情に合わせた対応が可能なのに、そうした建付けになっておらず、結果的に国の迷走に振り回されてしまう訳です。政府は国民を不幸にするばかりです。

ついでながら予想通りイギリス、南アフリカ以外の地域からもコロナ変異種が見つかりました。元々不安定なRNAウイルスですから、世界規模で感染拡大すれば多数の変異種が顕れることは必然です。変異は全方位に出現しますが、生き残るのは免疫迂回などでより感染力を増した変異種となりますから、更に警戒を強める必要があります。一方弱毒化の証拠は見当たらず、今後も未知の変異種の出現を見込む必要があります。世界から人を呼ぶ五輪を止めないというのは、商業イベントの方が国民の命より大事ってことになりますが-_-;。

で、コロナも怖いけど寒さも怖いということで、先日の大雪以外にも問題山積です。

新電力、料金2倍に高騰も 需給逼迫で卸価格が急上昇:日本経済新聞
世界規模の大寒波で天然ガスの需要が上振れしており、特にLNGの調達が困難になっている結果、燃料不足で発電量が制約された結果、卸電力取引所(JPEX)の価格が高騰し、自前電源を持たない新電力の料金が跳ね上がっています。元々大手電力が余剰電力を出し惜しみしていて、市場規模が小さいため、燃料需給のひっ迫で価格が跳ね上がってしまうという構造的欠陥が明らかになったものです。

とはいえ大手電力各社は節電要請は出しておりません。その一方で企業保有の工場などの自家発電設備からの電力買い取りを進め、また地域間の連携線で大手同士の電力融通は行われており、結果的に電力不足は起きていない訳です。加えて石炭火力の重油併燃で出力アップして凌ぐなどしており、脱炭素に逆行しています。これは電力自由化に逆行する行為です。2020年実施の電力自由化で大手電力の送電部門の法的分離が実現した訳ですが、これ単なる分社ですから、親会社の大手電力のガバナンスに委ねられている訳です。

加えて先発権が認められており、稼働していない原発の容量枠は空いていますし、本来原発のバックアップ電源の筈の石炭火力の容量まで上乗せされていたりしていて、言ってみれば既得権の塊となっております。そんな中で新電力が再生可能エネルギー電源の託送を求まる場合、必要な容量アップのための送電線増強投資は原因者たる新電力に求められる訳ですから、資本力の劣る新電力は担いきれず、送電線はがら空きなのに利用できないという不条理がある訳です。

一方大手電力同士の連携線を通じた電力融通には好都合な訳で、これで電力自由化とは笑わせます。結局大手電力の既得権を守り新電力の参入障壁となっている訳です。大手電力が涼しい顔して節電要請を見送るのはこういうからくりなんですね。あと公式な連携線とは別に、東電と東北電力のエリア間には未使用の送電線が休眠しています。福島と柏崎刈羽から首都圏へ向けての送電線です。発送電分離を前倒しした東京d燃力パワーグリッドに東北電力の送電網を移管する話が進んでいるそうで、巨大送電網となりそうです。

裏には完成間近で3.11以後止まっている東通原発の完成推進の狙いがあると言われており、これに関電の美浜3号と高浜1,2号機の40年超の再稼働の条件として福井県から使用積み燃料増やさないことが条件づけられ、この関連で青森県むつ市の中間貯蔵施設への移管受け入れの決定があると言われております。裏には原発事業集約の狙いがあり、それに反発する関電に貸しを作るためとか。東電は実質国有化状態にあり、電力自由化の陰で政府の影響力を拡大する意図が透けて見えます。

新たな電力国家管理と見ることもできますが、政府は沈黙しており、実際は単なる行き当たりばったりでしょう。未だにエネルギー基本計画も明らかにされない中でトップダウンでカーボンニュートラルの方針が示されたことから、原発利権が動き出したとも言えます。リソースの集約の観点から原発集約自体は反対はしませんが、この辺は注意深く見ていく必要があります。

そしてもう1つ、カーボンニュートラルに反応したニュースがこちらです。

日本郵船、鉄道で車を大規模輸送 CO2排出半減【イブニングスクープ】:日本経済新聞
中国から中央アジアを経て中東から欧州へと通じる鉄路のチャイナランドブリッジを利用した自動車輸送ですが。日本郵船が実施というところがミソです。

船会社にとって頭が痛いのは燃費の悪い老朽船の代替問題ですが、アンモニアや水素などの燃料動力にシフトする必要がある一方、技術開発はこれからで船舶も燃料も当面高価なのは避けられないことから、輸送の一部を鉄道に振り替えることで、老朽船を廃船して資産を圧縮しながらCO2削減を図る繋ぎの施策ということですね。カーボンニュートラルには程遠いけど、とりあえずできることからってことですね。同様に国内の鉄道貨物の見直しが進めばJR貨物にとっては朗報ですし、JR東日本やJR北海道が計画するカーゴ新幹線も有望ってことにはなります。

但しE5系ベースの10連で積載量は70t程度ということで、コキ20連の標準的な1,000t貨物列車で12ftコンテナ5t換算での積載量500tの1/7に過ぎず、運賃が高くなることは避けられません。つまり在来線貨物の代替にはなりませんが、元々積載量の少ない航空貨物に対しては競争力があると見られます。貨物もフリュグスカムの時代を拓くかもしれません。

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Sunday, August 09, 2020

帰らざる社畜

お盆に家に帰るのはご先祖様と社畜で、家から居なくなるのがアニオタと鉄ちゃんと書いた社畜人ヤプーから4年。コロナ禍で様変わりしました。バーチャルなご先祖様はコロナ禍に無縁ですが、感染拡大の心配から帰省を自粛する社畜たちは、せめてネット動画で孫の姿を両親に見せるリモート帰省がせいぜいです。お盆に限りませんが、両親の介助と妊婦の安心感から選択される帰省出産もままならず、少子化は促進されるでしょう。もはや日本では消費をリードする中間層の再生産が成り立たなくなりつつあります。

コミケの中止はやむを得ないとしても、コロナ禍が無くてもオリパラで東京ビッグサイトが使えないから、アニオタは巣篭りしてネット動画チェックで本来のオタク道に回帰するから家から居なくならないけど、鉄ちゃんは相変わらず全国に散っています。帰省ラッシュ消滅でラッキーですらあります。臨時快速ムーンライトは走らないけど。

てことでご先祖様と鉄ちゃんは変わらないってことで、共に尊い?(笑) 社畜とアニオタは共に巣篭りだけど前者は強制後者は自発と中身は大違いで、ニューノーマル(新常態)での社畜人ヤプーの幸福はいずこ?

所定外給与24.6%減 6月、過去2番目の下げ幅:日本経済新聞
これ正規雇用者の残業の減少とボーナスの削減が原因ですが、非正規雇用者の雇い止めやアルバイト・パートの時間短縮を反映しておりませんから、消費へのマイナスインパクトはより大きい訳です。そんな中でのGo To トラベル強行はそもそも消費喚起効果が限られます。正規雇用者の残業減少も、不況による調整の意味に留まらず在宅ワークによる残業代ゴマカシも含まれますし、通信費や水道光熱費の負担増による消費のマイナスも考慮する必要があります。

結局旅行業界のロビーイングの成果なんでしょう。JTB、HIS、KNT、日旅の旅行業大手4社の5月の取扱高前年比が軒並み1-3%という惨憺たる状況です。これ前年比ですからね。しかも旅行業者は旅客と運輸、宿泊その他の事業者との仲介で手数料率は10%程度ですから、もはや社員の給料の支払いさえ覚束ない逆風です。

旅行業界では所謂団体扱いってのがありまして、国鉄→JRをはじめ運輸、宿泊、その他施設でも団体利用の割引料金が存在します。実際に日本人の旅行形態は戦後長らく団体旅行が主流でしたし、個人旅行のニーズ自体は60年代後半にやっと顕在化するといったレベルでした。しかも個人旅行の発生手配は手間ばかりで僅かなマージンしか得られないから旅行会社には歓迎されないものです。

ただ旅行業法で旅行会社は主催旅行を催行できることから、団体扱いで運輸や宿泊を割引料金で仕入れて、それを組み合わせて個人向けに販売するパック旅行という旅行商品を企画販売できます。しかも大手ほどバイイングパワーを駆使して相対取引で値下げを要求できますから、仕入れを安くして利益を乗せて個人向けには個別手配と同等若しくはやや割安程度でもワンストップで申し込めて旅客側の手間が省けますし、加えて一部の史跡や施設で団体のみの見学客受け入れというところを組み込めれば、付加価値としてアピールできます。

勘の良い人はお気づきでしょうけど、ツアーバスの仕組みがこれなんですね。旅行会社が団体旅行のオフシーズンに当たる盆暮れに貸切バスを割引価格で仕入れて、主催旅行として個人客を募集し運行する形です。しかも旅行業法で最少催行人数以下の場合は催行中止が出来ますからノーリスクな訳で、乗合免許で旅客の有無に関わらず運行する義務を負う高速乗合バス事業者から不公正と是正を求められ、関越道の事故で注目を集めました。

本題に戻しますが、加えて旅行会社は旅客から前払いで代金を収受し、乗車券や航空券など大手キャリア向けの仕入れに一部使いますが、宿泊などは事後精算となりますから、国の支援を梃子にパックツアーが売れるなら、資金繰りの助けにはなります。Go To トラベルの場合、個人で支援条件を見極めて個別手配するのは手間がかかりますが、条件を踏まえた旅行商品を組むのは旅行会社にとってはお手のものですから、結局旅行会社のパックツアー利用に誘導されます。ワンストップが活かせるわけです。

その一方で宿泊を提供する旅館やホテルは感染防止策が求められ、館内消毒や従業員の手指消毒に留まらず、大部屋での食事提供やバイキングとはいかず、個室配膳となると手間が増えますしで、追加費用も発生します。いくら国が支援するとはいえ、儲けにつながるかは微妙で、実際Go To 便乗値上げのような動きも見られます。

てことで旅行会社にはメリットがあるかもしれませんが、そもそも消費の前提となる雇用者報酬が縮んでいるんだから効果は知れてますし、運輸や宿泊に留まらず裾野が広いから経済効果が大きいとのたまう経済学者がいますが、現場を知らないにも程があります。

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Saturday, August 06, 2016

社畜人ヤプー

お盆が近づいてますが、お盆に家へ帰るのは、ご先祖様と社畜。盆と正月ぐらいしか長期休暇が取れないから。お盆に家からいなくなるのは、アニオタと鉄ちゃん。アニオタは東京に集まり鉄ちゃんは全国に散らばります。ポケモンGOという新参者は所かまわずwww。アヅー。

相模原市の障がい者施設の殺傷事件は痛ましい出来事ですが、容疑者の言動から明らかなヘイトクライムであることが救いようの無さです。社会はなぜ障がい者を包摂しなければならないか。簡単に言えば彼らを包摂することが人の尊厳を守ることになるからで、しかも護るべき障がい者は社会的には少数者である一方、層の厚い中間層を前提とする民主社会では、包摂の負担は広く薄く多数で担うから過重な負担にならない故に合理的なわけです。

ただし中間層の二極化による所得格差の拡大は世界的傾向として見られ、日本も例外ではないわけです。中間層の二極化で所得を減らした中間層の一方で租税回避に励む富裕層で、結果税負担はむしろ増えて、怒りが弱者に向かうという構図になるわけですが、それ以前に弱者の包摂の意義が日本社会でどの程度共有されていたのか、疑問なしとは言えません。こんなニュースがそれを示します。

小池都知事:韓国人学校用地の有償貸与計画「白紙に戻す」 - 毎日新聞
元々舛添前都知事時代に決定したものですが、辞任に伴う都知事選で小池氏は白紙撤回を訴えて当選したから当然ということですが、舛添都知事を辞任に追いやった民進・共産の都議団はどう責任を取るつもりか。舛添氏に都知事として頑張ってもらった方が、両党の理念に近い都政ができたんじゃないのか。後の祭りだが。小池氏に投票した都民も考えてほしいところですが、外国人対する不寛容が堂々と選挙戦で主張されるってのは異常です。

日本社会が抱える差別性というのは、あまり意識されてませんが、結構深刻じゃないか。そもそも正規非正規の雇用者間の待遇差は以前から指摘されてきたところですが、正社員といっても大企業と中小零細企業ではやはり待遇差がありますし、最近顕著なのが元請けと下請けの関係でして、元請け企業は社員への待遇を維持するために下請け企業にコストカットを強要し、下請け企業はやむなく雇用者の賃金に手を入れる。そのためにはキーマンとなる技術者を独立させて1人親方にして人件費を削る。その結果下請けも技術力が低下して横浜の傾きマンションのような事件が起きるわけです。

これ建築業界だけの話じゃないんです。例えばIT技術者。NTTを中心とするNECや富士通などの電々ファミリーに多数いたITや通信の技術者も、多くが希望退職でリストラされたものの、中小のソフトハウスや通信事業者に転職すると所得が減ってしまうということで、彼らの多くは半ばセミリタイア気味に他業種へ転職し、その間の技術革新もフォローできずにスキルを腐らせましたし、同様のことは家電業界でも起きて、台湾、韓国、中国のメーカーに高待遇で迎えられ、日本の家電メーカーを追撃しことごとく撃破したわけです。つまり何が言いたいかと言えば、日本においては転職はほぼ減給方向でしか実現しないわけですから、よく言われる雇用の流動化によるミスマッチ解消は進まず、むしろ正社員はいつまでも会社にぶら下がって高待遇を維持したいということになり、これは仕事に自信のない人ほど顕著なんですから、希望退職もスルーしてとにかく残りたい人の中から選ばれたサラリーマン社長がまともな経営判断なんかできるわけがないんです。結果は東芝や三菱自動車が端的に示します。

逆に三菱自動車へ電光石火で出資を決めた日産のゴーン会長の見事さは舌を巻きます。燃費データ改ざんで株価ダダ下がりのタイミングで出資を決めてますから、日産が33.4%出資のための金額は元の株価水準なら4,000億円と見積もられるところを2,370億円と4割引きで手に入れたわけです。もちろんこういう判断は一方でひそかに三菱自動車への出資の可能性を探っていたから可能だったんでしょうけど、いざというときに決断する難しさはあるわけで、凡百の日本人経営者とは格の違いを見せつけました。もちろんこの出資劇が成功するためには三菱自動車自身が立ち直る必要がありますから賭けではありますが。で、三菱自動車に日産流のコミットメント経営を移植しようとしているわけですが、上位下達の企業文化が強い三菱自動車で可能かは未知数っておいwww。

やや脱線しましたが、日本の正社員というのは、業務を特定せず雇用主である会社に大きな人事権があるメンバーシップ型と呼ばれる雇用形態で、これが実は問題なんです。アベノミクスでとにかく金融を緩和し財政出動もやって公共工事は増えたけど社外へ出した職人は仕事が選べるから高給を取れる一方、若手の育成は10年以上かかりますが、社外へ出しちゃったからOJTもままならず若手は育たない。そもそも少子化で若年人口が減っている中で10年修行しろじゃ不人気で若手は集まらない。高給取りの可能性があるのはIT関連だけど日本ではIT土方と言われるぐらい元請け下請け関係が根強くアメリカのITベンチャーのようなわけにはいかないし、そもそもクライアントの無理解で納期までのデスマーチ状態でやっつけ仕事になるからバグが多いし、働く方も心身を健康に保てない。かくしてブラック企業のオンパレードとなるわけです。ジョブズは出てこないわな。

メンバーシップ型雇用を見直すという意味では、民主党政権時代の2012年改正労働者派遣法が画期的だったということは以前にも述べましたが、正規非正規という一種身分制のようなものを前提にするのではなく、労働者派遣法の改正を通じて常用雇用の代替防止とジョブ型雇用へのシフトと企業の事業見直し促進を狙ったのですが、その意欲的な内容は特に企業側は殆ど理解できなかったようで、政府に要請して現状の3年ごとに人を入れ替えれば派遣労働は続けられるという風に改悪されました。業務内容によって仕事が評価されれば、転職もスムーズになりますから、雇用の流動性を高めてミスマッチを解消するという課題も解決可能ですが。

それをつぶした現政権が今になって「はたらき方改革」なんてこと言ってますがチャンチャラおかしい。正社員には残業ゼロ法案というご褒美が待ってます。それでも正社員になりたいとすれば、名作小説「家畜人ヤプー」の世界を夢見ているのかい?

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Sunday, August 25, 2013

青春18還暦鉄

いやはや、自分がこんなタイトルの記事を書く歳になろうとは。でも事実ですから、包み隠さず白状しちゃいましょう。本音を言えば暑くて自宅にも居られないから、ひたすら乗り鉄涼みしたいなぁと。というわけで、久々に青春18キップを入手し、あちらこちら出没しましたが、その顛末はともかくとして、久々に乗車したムーンライトながらで、年恰好の似たおっさんおばさんばっかだったのが新鮮でした。中には夫婦と思しきカップルも。老いらくの青春18キップってをい^_^;。

ま、今や若者の貧乏旅行の友はバスに取って代わられたってことですね。当ブログでも再三取り上げてまいりました。そして8月1日から新高速乗合バスとして一本化されたのは喜ばしいところですが、積み残した問題も多数あり、今後も注視していく必要はありますが、同時に、ツアーバス由来の新規参入組が、既存事業者と異なった発想の新サービスを具現化している面もあり、公正な競争の結果として双方が洗練されていくことを期待したいと思います。旅客サイドから見れば、間違いなく選択肢が増えて価格もこなれ、新規需要も掘り起こされてミクロ経済学の価格形成メカニズムに則った消費者余剰が実現しているわけですから、とりあえずポジティブに評価すべきでしょう。

ツアーバスの始まりは1981年4月から、稚内市の北都観光という旅行会社が主催し、系列の貸切事業者、道北観光バスが運行するはまなす号が始まりと言われます。その後道内バス事業活性化の思惑から道運輸局が督励したこともあり、会員制ツアーバスがブームとなりますが、札幌―留萌線で乗合路線バスを運行する北海道中央バスが乗合類似行為として異議申し立てをしたこともあり、運輸局は態度を改め、当時の道路運送法24条の2に準拠した貸切バスによる乗合運行として免許取得を促すよう指導しますが、一部貸切事業者が指導に従わず係争状態になるなどしました。しかし結果的には道内の高速道路整備進捗もあって、道内の高速乗合バス事業自体が活性化された側面もあります。

一方で2000年仁道路運送法の改正法が公布され2002年1月から施行されます。いわゆる需給調整規制の撤廃が行われ、バスタクシー事業への新規参入が容易になりますが、その結果、タクシー事業者などの貸切バス事業への参入により競争が激化します。ただでさえ団体旅行の減少で需要が停滞する中での新規参入ですから、価格競争が激化し、国交省への届出運賃が有名無実化している状況です。特に貸切バスに関しては、以前からレンタカーのドライバー付レンタルなどのいわゆる白バス行為も横行し、旅行会社も違反を承知で安値を求める旅客の求めに従って利用していた経緯がありますから、規制緩和でそれらが合法化される結果、ダンピングはある意味起こるべくして起きたと言えるものです。

その結果燃料費の高騰もあり、運行を担当する貸切バス事業者では整備不良や乗務員の超過勤務が常態化することになり、昨年の関越道事故を招くに至ったわけです。その結果、既に行われていた高速ツアーバスと高速乗合バスの一本化の議論が加速されることになり、今年8月施行の新高速バス制度へということになります。ただし法改正は伴わず、省令改正による制度の運用見直しによるもので、そもそも貸切事業者の急増によるダンピング問題などは積み残されたままという意味では途半ばに過ぎないですし、イベント輸送やインバウンド(訪日外国人観光客)輸送などのグレーゾーンも残っており、これら価格訴求要素が強い分野でダンピングが続く可能性は否定できません。高速バス自体は安全になったとしても、同じ道路を走る貸切バスの安全性が高まったわけではないということです。

ま、これらの話題は始めるとキリがないのでこれぐらいにしておきますが、青春18鉄で久々に利用したムーンライトながらを待つ名古屋駅で、時間があったのであちこち見て回って、いくつか気づいたことがあります。まずは太閤口のJRバス待合所が冷房が効いて涼しかったのですが、JRバス利用者以外お断りの注意書きがありましたのでそそくさと表へ出ると、旅行鞄を持った大勢の人が列をなしています。新規参入組の高速バス利用者で、便別に標識を立てて列を作り、案内係がマイクもなしに利用客に伝達事項を伝える場面です。なるほどJRバス待合室の注意書きの意味が理解できました。同時に鉄道準拠で乗車券を発券し交付するJRバスでは窓口で端末を叩いて対応し、出発便は出発順にLED表示器で案内されるなど、この点も鉄道並で、ただでさえ地価の高い大都市ターミナルで重装備ですから、元ツアーバス組の新規参入社にとってターミナル負担は大きいのだなということが実感できます。

一方でweb予約中心の元ツアーバスでは、そもそも乗車券の発券という発想はなく、係員が点呼して確認し、該当便に案内するという仕組みで、丁度航空便のチェックインに近いやり方ですが、駅前広場という公共空間で人海戦術で対応というかなり対照的な姿を見ることができました。案内係の人たちも若くてカジュアルな服装ですから、多分時間給のアルバイトなんでしょうけど、そうやって人件費をかけても、予約発券で高価な端末を用意する必要もなく、乗合バス移行で高速道路料金も安くなる分を原資として対応できているというところなんでしょう。本来は専用待合室を確保したいところでしょうけど、大都市圏ではかなり高いハードルではあります。

ついでだから名鉄バスセンターの方も覗いてみましたが、こちらはビルの中ということもあり、全くの別世界でした。元ツアー組利用客を排除する必要もないというわけですね。構内でファミマが営業していて、狭いながらも待合室もあり、太閤口の喧騒とは無縁というわけです。

で、ふと鉄道の待合室はどうなってるのかというと、結論から言えば特になしということで、、まぁ元々インフォメーションは充実してはいるものの、くつろげるロビーやラウンジがあるわけではないので、ある意味鉄道は高速バス以下かいというオチになりそうですが、マックやドトールでお茶してくれということかも。高速バスの変貌振りを見ると、それ自身問題を抱えてはいるものの、鉄道だけが取り残されているような感覚を否定できないのは困ったものです。もちろん輸送力の違いから、中途半端な待合室の設置は難しいのも確かです。

あと実際に乗車したムーンライトながらは波動輸送用の189系10連ですが、側面表示器の故障で一部号車は「団体列車」表示と場末感漂う列車で、青春18キップ対応もあって乗車後の車内検察というアナログな方法が取られています。ま、乗客はほとんど青春18キップ利用者で、ルール上日付変更後最初の停車駅(上りの場合は豊橋)までは別途乗車券が必要)など、乗客自身が承知していて特段のトラブルもなく粛々とチェックが進む様を見ると、鉄道とバスの違いを更に実感してしまいます。ある意味青春18シーズンの季節臨ムーンライトは、旅慣れた鉄オヤジに支えられ、ローコスト運行ができているということで、清酒18キップと共に、車両の代替わりはあっても当面はなくならないのだなと確信できます。

ついでの話題で、別の日の早朝に富山駅北口で見た光景を。ロータリーに面したバス停ポールに多数の新高速バスが発着するのですが、夜の早い地方のバス停ですから、路線車との競合はないものの、逆にマイカー送迎を助長しているため、折角確保したバス停にマイカーが停められていて支障する場面が頻繁に起きます。名古屋のような大都市とは違った問題ですが、バス事業者も係員を立たせているわけでもなく、その分乗務員の負担になっていないか心配です。まして事前調整が可能な出発便と違って、到着便は重複も起きるので、更に面倒ですが、チェックイン重視の新規参入社では、到着便のために人を配置することはまずないでしょうから、改善されない可能性があります。地域の問題として自治体が対応することも視野に入れる必要があるかもしれません。

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Saturday, August 20, 2011

節電でテレビを消して電車で涼

関西電力堺港火力発電所の故障で関電エリアの電力需給が逼迫しております。原発止めれば電力が不安定になるという電力会社の主張が現実になったかのごとき状況ですが、当然からくりがあります。

そもそも13ヶ月毎に定期点検を義務付けられている原発には、休止期間中のバックアップ電力が必要なんですが、稼働率が低いという理由で、老朽火力を除却、解体せずに残すことで対応してきたのですが、それが裏目となったわけです。減価償却済みで保有コストが低いから低稼働でも経営上の重荷にはならないのですが、老朽化した石炭火力で燃費も悪く、長時間稼動で不具合が出る可能性が高く、今回それが表面化したわけです。つまり原発依存を前提にそれ以外の投資を極限まで絞ってきた結果でもあるわけです。原発依存が投資に歪みをもたらしたわけです。

その一方でJR東日本は川崎火力発電所に、ガスタービン・コンバインドサイクル発電機を設置し、自前電力を強化しております。都市ガスを燃料にガスタービンを回して発電し、さらに排気熱で蒸気タービンを回してそちらでも発電するもので、熱効率が高く従来の2倍以上の燃費の良さを誇ります。加えて出力調整も容易で、起動して1時間後には最大出力に達しますし、燃料のガス供給を止めれば直ちに停止しますから、原発のように暴走する心配もないわけで、仮に脱原発を目指すならば、当面の主力となる発電システムです。既に電力以外の企業は動き始めているのです。

元々日本の火力発電は老朽化が進んでおり、非効率だったんですが、原子力依存ゆえに設備投資が止まってしまっていたわけで、これで電力の安定供給とは片腹痛い話です。元々日本のエネルギ消費に占める電力の割合(電化率)は25%程度で、先進国標準の20%を上回りますが、その7割は産業用電力であり、住宅用は3割に満たないので、国民に節電を求めてもあまり意味はないのです。

加えて電力を作り出すためのエネルギー投入量で見ると45%に達します。早い話が発電段階でのエネルギーロスが莫大なんで、ここをせめて半分に圧縮できれば、エネルギー消費量を1割程度削減できますし、比例してCO2排出量も減らせますから、国際ルールとして認められている途上国の省エネ投資や国内外の森林整備による排出量クレジット取得と組み合わせれば、日本が国際公約したCO2排出25%削減も不可能な目標ではないわけです。

また再生エネルギーの活用を図る意味でも、出力制御が容易な火力発電に一定に依存する必要はあるんですが、その際上記のガスタービン・コンバインドサイクル発電はキラーテクノロジーとなり得るものですが、ガス燃料を拡大すると電力会社の独占を脅かすと考えたのか、徹底的に背を向けてきました。かくして原子力依存を高めてCO2削減というフィクションが語られたんですが、チェックするはずのメディアの無知でスルーされ続けました。そもそも出力制御が難しく、制御電力に3割も自家消費してしまう原子力発電は非効率なんですが。

あと先月の新潟、福島の豪雨による水力発電所の被災で、東北電力も需給が逼迫しておりますが、水害の多い日本では、ダムによる大規模水力発電への依存は既に限界に達しており、また当然ながら水力発電はダムに水が貯まらないと発電できないわけですから、需給調整は火力に頼る必要があります。

というわけで、日本全国節電ムードで、ピーク電力と無関係の夜間照明が落とされて引ったくり犯罪が増加したり、冷房の自粛で熱中症で死者が出たりと物騒な話になっているのですが、電力会社に責任の自覚がないばかりか、電気使用量予想を流して節電をアピールするテレビ局も問題です。午後のピークタイムはどうせ再放送ドラマか韓流ドラマか低予算バラエティかゴールデンの番宣という具合に、そもそもスポンサー集めにも苦労している体たらくなんだから、地上波放送だけでも止めれば良いと思うのは私だけでしょうか。少なくとも冷房止めるならテレビ止めましょう。命が惜しければ-_-;。

そんな中で、タイトルのような提案をしたいと思います。幸い首都圏では、JRの東京近郊区間が大幅に拡大された事もあり、大回り乗車で八高線、両毛線、水戸線、内房線、外房線なども巡る事が可能となりました。ただし終電までに戻らなきゃいけませんし、途中出場はできませんから、食事も用足しも全てラッチ内で済ませる必要があります。これが案外難しい^_^;。

それからSuicaは4時間ルールで出場時エラーとなる可能性があるので、あらかじめ隣駅までの磁気券に引き換えておき、時間制限エラー回避のために、出場時は有人レーンで「大回り乗車」である事を告げるなどの対策が必要ですが、それさえ守れば、乗車中は冷房の効いた車内で過ごせ、乗り鉄三昧を楽しめます。エリア内のJR各線はほぼ毎時2本以上の運行頻度がありますから、案外乗り継ぎもスムーズで、結構いろいろ回れます。あとあくまでも大回りは便宜的措置ですから、復乗は認められず、一筆書きルートに限られます。

こんな事ができるのは、JRの路線網の充実ぶりと同時に、運賃計算ルールの最短経路特例によるわけですが、そもそも自動改札とストアードフェアカード導入で乗客個々のチェックイン、チェックアウトが厳格に管理できるようになった結果、車内改札を省略できるという意味でJRにもメリットがあるわけですが、それが結果的に乗客の利便を向上させるわけです、こういう現象を「ネットワークの外部性」と呼びます。

JRの最短経路特例は、山陽本線岩国ー櫛ヶ浜間(岩徳線経由適用)など幹線ルートでも見られますが、路線網が輻輳する東京近郊区間、大阪近郊区間、福岡近郊区間では国鉄時代もから行われていて、JR化後は区間の拡大もあって現在に至ります。また2004年11月27日から新潟近郊区間も設定されております。ただし新幹線に関しては、原則は対象外ですが、国鉄時代には在来線との同一扱いルールもあり、JR化後の改廃もあって複雑ですが、当然ながら大回り乗車の対象にはなりませんね。

という意味で結構ずくめの運賃の最短経路特例ですが、JRと並行路線を持つ私鉄にとっては痛し痒しのところもあり、評価が難しいところがあります。例えば群馬県の上毛電気鉄道ですが、かつては両毛線が非電化で本数も少なかったし、運賃水準も同等だった事もあり、前橋―桐生間の都市間輸送ので国鉄より優位だったものが、1968年に電化と小駅4駅の廃止でスピードアップされたことと、上電の運賃値上げで運賃差が生じたことで逆転し、さらにマイカーの普及もあり、ご存じの通り群馬県は一時マイカー普及率で都道府県トップだったこともあって大幅に利用が減ったわけですが、その一方で両毛線はJR化後も本数が増加し、不完全ながら昼間20分ヘッドダイヤで利便性も高まり、Suica導入と東京近郊区間組み入れで、マイカー王国の群馬県で存在感を高めておりますが上電は立つ瀬がなくなります。

上電に関しては、中央前橋―前橋間を併用軌道で延伸してLRT化とか、上越線新前橋―群馬総社間の前橋公園付近に新駅を設置して上電を延伸する構想などが検討されておりますが、いずれにしても公的な支援なしには実現できないでしょうし、上電の運賃の高さがネックとなる可能性もあります。東京の地下鉄一元化高運賃の北総線問題など、地域の交通問題は根が深いです。

一方で、JR東海、四国、北海道の各社はネットワーク志向は希薄です。元々過疎地帯の路線立地で路線密度が低い四国や北海道はともかく、東海道新幹線に収益の8割を依存するJR東海の微妙な対応は理解不能です。例えばこだましか停車しない三島や掛川での新在連絡というのがあり、沼津から三島乗換えで静岡までの企画券を売り出したりしてますが、ニーズがあるとは思えません。静岡都市圏では快速運転の代わりに乗車率の低い新幹線こだまに誘導したいということなんでしょう。

一方で名古屋都市圏では、名鉄や近鉄など並行私鉄に果敢に競争を仕掛け、乗客を増やしております。見える敵から客を奪う戦略はJR西日本のアーバンネットワークと同様ですが、大回り乗車ができるような路線網にはなっていないのが大きな違いです。例えば民営化で国鉄から継承した未成線として引き継いだ瀬戸線(勝川―枇杷島)を系列の東海交通事業に丸投げして、しかも当初は尾張星の宮―枇杷島間を欠き孤立した非電化路線としたように、まるで「利用するな」と言わんばかりです。

その一方で西名古屋港貨物線の旅客化事業として名古屋臨海高速鉄道あおなみ線へ路線を譲渡しましたが、本来名古屋市都市計画高速鉄道東部線として金城埠頭―笹島―丸田町ー星ヶ丘―岩崎というルートが計画されていたものの、事業化に至らず、あおなみ線はやはり孤立路線として利用が伸びず、昨年7月に債務超過から事業再生ADRで名古屋市に追加支援を求めるなど不振が続きます。これは出資する名古屋市の中途半端な対応にも問題があり、市営交通との乗り継ぎ割り引きなどは事業再生ADR後にやっとですが、JR東海の名古屋都市圏輸送に対する冷淡な姿勢を示しているとも言えるでしょう。JR西日本では財政支援を得ながらですが、JR東西線やおおさか東線などネットワーク強化のための新線整備を行っているのとは対照的です。

この辺は中央リニアの長野県内駅を飯田線と共同使用駅としない姿勢と通底するのかもしれません。事実として新幹線の収益が大きく、名古屋都市圏も含めて在来線の旅客収入は取るに足らないと感じているのでしょう。名古屋都市圏の私鉄競合路線のやる気(笑)は、私鉄側の度重なる運賃値上げで逆転現象が起きたことが追い風となったという見方も可能で、単に勝てる勝負を仕掛けただけとも取れます。逆に名松線では無人走行事故2度も引き起こすなど、モチベーションが感じられません。

攻め込まれるライバルの名鉄は、JRとの競合がない犬山線や常滑線でが稼ぎ頭という状況ですが、元々前身の名古屋電気鉄道の名古屋市内電車が名古屋市に買収されて市電となり、企業存続のために郊外線を建設して初代名古屋鉄道となった歴史もあり、地域交通ネットワークとしての意識が強いのが特徴です。面白いのは、市電を元祖とする名古屋市交通局の地下鉄線との関係ですが、鶴舞線や上飯田連絡線の相互直通運転や名鉄―市交―名鉄の通過連絡運輸(名鉄部分の運賃通算)など一体感が見られる点も特徴です。同様の制度は孤立線の瀬戸線にも存在し、瀬戸線栄町と本線新名古屋(現名鉄名古屋)又は金山との乗り継ぎの場合の運賃通算の規定がありましたが、こちらは市交の乗車券とセットではなく、現在は取り扱いが廃止されています。

とはいえ市交桜通線では名鉄本線の市内区間を侵食するなどして、岐阜の600v区間をはじめとする末端のローカル区間を持ちきれずに廃止しているわけで、私有私営原則の日本の鉄道事業の中に、営利目的でない地方公営交通が混在する矛盾があります。東京の地下鉄統合の議論で抜け落ちている論点です。

ちなみにJR東海と名鉄の連絡運輸は豊橋駅を介した東海道線浜松―名鉄鳴海間の範囲内のみで、広範に連絡運輸が行われている首都圏の状況から見るとちょっとびっくりします。

というわけで、大回り乗車で涼を楽しめる首都圏エリアはありがたいところですが、昨日の雨で急に涼しくなってしまいました^_^;。グダグダ書いているうちにいろいろなことがあって、ややタイムリーさに欠ける結果となったかもしれません。

その間に天竜船下りの事故のニュースも流れました。事業者は天竜浜名湖鉄道で、国鉄二俣線を引き受けた三セクローカル私鉄で、経営が苦しい中での集客と収益機会の拡大のために事業参入したものの、安全管理に難があったようです。鉄道事業者の関連事業としては残念なところです。ただし救命具の着用に関しては、法令の不備もあり、また特に子どもの着用に関しては、暑さで嫌がると、親も同調してしまうなどで、現場で不徹底となる要素は元々あると思います。いわゆるモンスターペアレント問題ですが、社会的に必要なルールの遵守は、子どもに社会性をもたらす躾けでもあるわけで、今回の事故自体は不幸なことですが、レジャーもルールの中で楽しむべきものであるのは言うまでもありません。というわけで、首都圏の大回り乗車も、ルールの範囲内で3大いに楽しみましょう。うまくまとまったかな^_^;。

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