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Saturday, August 06, 2016

社畜人ヤプー

お盆が近づいてますが、お盆に家へ帰るのは、ご先祖様と社畜。盆と正月ぐらいしか長期休暇が取れないから。お盆に家からいなくなるのは、アニオタと鉄ちゃん。アニオタは東京に集まり鉄ちゃんは全国に散らばります。ポケモンGOという新参者は所かまわずwww。アヅー。

相模原市の障がい者施設の殺傷事件は痛ましい出来事ですが、容疑者の言動から明らかなヘイトクライムであることが救いようの無さです。社会はなぜ障がい者を包摂しなければならないか。簡単に言えば彼らを包摂することが人の尊厳を守ることになるからで、しかも護るべき障がい者は社会的には少数者である一方、層の厚い中間層を前提とする民主社会では、包摂の負担は広く薄く多数で担うから過重な負担にならない故に合理的なわけです。

ただし中間層の二極化による所得格差の拡大は世界的傾向として見られ、日本も例外ではないわけです。中間層の二極化で所得を減らした中間層の一方で租税回避に励む富裕層で、結果税負担はむしろ増えて、怒りが弱者に向かうという構図になるわけですが、それ以前に弱者の包摂の意義が日本社会でどの程度共有されていたのか、疑問なしとは言えません。こんなニュースがそれを示します。

小池都知事:韓国人学校用地の有償貸与計画「白紙に戻す」 - 毎日新聞
元々舛添前都知事時代に決定したものですが、辞任に伴う都知事選で小池氏は白紙撤回を訴えて当選したから当然ということですが、舛添都知事を辞任に追いやった民進・共産の都議団はどう責任を取るつもりか。舛添氏に都知事として頑張ってもらった方が、両党の理念に近い都政ができたんじゃないのか。後の祭りだが。小池氏に投票した都民も考えてほしいところですが、外国人対する不寛容が堂々と選挙戦で主張されるってのは異常です。

日本社会が抱える差別性というのは、あまり意識されてませんが、結構深刻じゃないか。そもそも正規非正規の雇用者間の待遇差は以前から指摘されてきたところですが、正社員といっても大企業と中小零細企業ではやはり待遇差がありますし、最近顕著なのが元請けと下請けの関係でして、元請け企業は社員への待遇を維持するために下請け企業にコストカットを強要し、下請け企業はやむなく雇用者の賃金に手を入れる。そのためにはキーマンとなる技術者を独立させて1人親方にして人件費を削る。その結果下請けも技術力が低下して横浜の傾きマンションのような事件が起きるわけです。

これ建築業界だけの話じゃないんです。例えばIT技術者。NTTを中心とするNECや富士通などの電々ファミリーに多数いたITや通信の技術者も、多くが希望退職でリストラされたものの、中小のソフトハウスや通信事業者に転職すると所得が減ってしまうということで、彼らの多くは半ばセミリタイア気味に他業種へ転職し、その間の技術革新もフォローできずにスキルを腐らせましたし、同様のことは家電業界でも起きて、台湾、韓国、中国のメーカーに高待遇で迎えられ、日本の家電メーカーを追撃しことごとく撃破したわけです。つまり何が言いたいかと言えば、日本においては転職はほぼ減給方向でしか実現しないわけですから、よく言われる雇用の流動化によるミスマッチ解消は進まず、むしろ正社員はいつまでも会社にぶら下がって高待遇を維持したいということになり、これは仕事に自信のない人ほど顕著なんですから、希望退職もスルーしてとにかく残りたい人の中から選ばれたサラリーマン社長がまともな経営判断なんかできるわけがないんです。結果は東芝や三菱自動車が端的に示します。

逆に三菱自動車へ電光石火で出資を決めた日産のゴーン会長の見事さは舌を巻きます。燃費データ改ざんで株価ダダ下がりのタイミングで出資を決めてますから、日産が33.4%出資のための金額は元の株価水準なら4,000億円と見積もられるところを2,370億円と4割引きで手に入れたわけです。もちろんこういう判断は一方でひそかに三菱自動車への出資の可能性を探っていたから可能だったんでしょうけど、いざというときに決断する難しさはあるわけで、凡百の日本人経営者とは格の違いを見せつけました。もちろんこの出資劇が成功するためには三菱自動車自身が立ち直る必要がありますから賭けではありますが。で、三菱自動車に日産流のコミットメント経営を移植しようとしているわけですが、上位下達の企業文化が強い三菱自動車で可能かは未知数っておいwww。

やや脱線しましたが、日本の正社員というのは、業務を特定せず雇用主である会社に大きな人事権があるメンバーシップ型と呼ばれる雇用形態で、これが実は問題なんです。アベノミクスでとにかく金融を緩和し財政出動もやって公共工事は増えたけど車外へ出した職人は仕事が選べるから高給を取れる一方、若手の育成は10年以上かかりますが、社外へ出しちゃったからOJTもままならず若手は育たない。そもそも少子化で若年人口が減っている中で10年修行しろじゃ不人気で若手は集まらない。高給取りの可能性があるのはIT関連だけど日本ではIT土方と言われるぐらい元請け下請け関係が根強くアメリカのITベンチャーのようなわけにはいかないし、そもそもクライアントの無理解で納期までのデスマーチ状態でやっつけ仕事になるからバグが多いし、働く方も心身を健康に保てない。かくしてブラック企業のオンパレードとなるわけです。ジョブズは出てこないわな。

メンバーシップ型雇用を見直すという意味では、民主党政権時代の2012年改正労働者派遣法が画期的だったということは以前にも述べましたが、正規非正規という一種身分制のようなものを前提にするのではなく、労働者派遣法の改正を通じて常用雇用の代替防止とジョブ型雇用へのシフトと企業の事業見直し促進を狙ったのですが、その意欲的な内容は特に企業側は殆ど理解できなかったようで、政府に要請して現状の3年ごとに人を入れ替えれば派遣労働は続けられるという風に改悪されました。業務内容によって仕事が評価されれば、転職もスムーズになりますから、雇用の流動性を高めてミスマッチを解消するという課題も解決可能ですが。

それをつぶした現政権が今になって「はたらき方改革」なんてこと言ってますがチャンチャラおかしい。正社員には残業ゼロ法案というご褒美が待ってます。それでも正社員になりたいとすれば、名作小説「家畜人ヤプー」の世界を夢見ているのかい?

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Sunday, August 25, 2013

青春18還暦鉄

いやはや、自分がこんなタイトルの記事を書く歳になろうとは。でも事実ですから、包み隠さず白状しちゃいましょう。本音を言えば暑くて自宅にも居られないから、ひたすら乗り鉄涼みしたいなぁと。というわけで、久々に青春18キップを入手し、あちらこちら出没しましたが、その顛末はともかくとして、久々に乗車したムーンライトながらで、年恰好の似たおっさんおばさんばっかだったのが新鮮でした。中には夫婦と思しきカップルも。老いらくの青春18キップってをい^_^;。

ま、今や若者の貧乏旅行の友はバスに取って代わられたってことですね。当ブログでも再三取り上げてまいりました。そして8月1日から新高速乗合バスとして一本化されたのは喜ばしいところですが、積み残した問題も多数あり、今後も注視していく必要はありますが、同時に、ツアーバス由来の新規参入組が、既存事業者と異なった発想の新サービスを具現化している面もあり、公正な競争の結果として双方が洗練されていくことを期待したいと思います。旅客サイドから見れば、間違いなく選択肢が増えて価格もこなれ、新規需要も掘り起こされてミクロ経済学の価格形成メカニズムに則った消費者余剰が実現しているわけですから、とりあえずポジティブに評価すべきでしょう。

ツアーバスの始まりは1981年4月から、稚内市の北都観光という旅行会社が主催し、系列の貸切事業者、道北観光バスが運行するはまなす号が始まりと言われます。その後道内バス事業活性化の思惑から道運輸局が督励したこともあり、会員制ツアーバスがブームとなりますが、札幌―留萌線で乗合路線バスを運行する北海道中央バスが乗合類似行為として異議申し立てをしたこともあり、運輸局は態度を改め、当時の道路運送法24条の2に準拠した貸切バスによる乗合運行として免許取得を促すよう指導しますが、一部貸切事業者が指導に従わず係争状態になるなどしました。しかし結果的には道内の高速道路整備進捗もあって、道内の高速乗合バス事業自体が活性化された側面もあります。

一方で2000年仁道路運送法の改正法が公布され2002年1月から施行されます。いわゆる需給調整規制の撤廃が行われ、バスタクシー事業への新規参入が容易になりますが、その結果、タクシー事業者などの貸切バス事業への参入により競争が激化します。ただでさえ団体旅行の減少で需要が停滞する中での新規参入ですから、価格競争が激化し、国交省への届出運賃が有名無実化している状況です。特に貸切バスに関しては、以前からレンタカーのドライバー付レンタルなどのいわゆる白バス行為も横行し、旅行会社も違反を承知で安値を求める旅客の求めに従って利用していた経緯がありますから、規制緩和でそれらが合法化される結果、ダンピングはある意味起こるべくして起きたと言えるものです。

その結果燃料費の高騰もあり、運行を担当する貸切バス事業者では整備不良や乗務員の超過勤務が常態化することになり、昨年の関越道事故を招くに至ったわけです。その結果、既に行われていた高速ツアーバスと高速乗合バスの一本化の議論が加速されることになり、今年8月施行の新高速バス制度へということになります。ただし法改正は伴わず、省令改正による制度の運用見直しによるもので、そもそも貸切事業者の急増によるダンピング問題などは積み残されたままという意味では途半ばに過ぎないですし、イベント輸送やインバウンド(訪日外国人観光客)輸送などのグレーゾーンも残っており、これら価格訴求要素が強い分野でダンピングが続く可能性は否定できません。高速バス自体は安全になったとしても、同じ道路を走る貸切バスの安全性が高まったわけではないということです。

ま、これらの話題は始めるとキリがないのでこれぐらいにしておきますが、青春18鉄で久々に利用したムーンライトながらを待つ名古屋駅で、時間があったのであちこち見て回って、いくつか気づいたことがあります。まずは太閤口のJRバス待合所が冷房が効いて涼しかったのですが、JRバス利用者以外お断りの注意書きがありましたのでそそくさと表へ出ると、旅行鞄を持った大勢の人が列をなしています。新規参入組の高速バス利用者で、便別に標識を立てて列を作り、案内係がマイクもなしに利用客に伝達事項を伝える場面です。なるほどJRバス待合室の注意書きの意味が理解できました。同時に鉄道準拠で乗車券を発券し交付するJRバスでは窓口で端末を叩いて対応し、出発便は出発順にLED表示器で案内されるなど、この点も鉄道並で、ただでさえ地価の高い大都市ターミナルで重装備ですから、元ツアーバス組の新規参入社にとってターミナル負担は大きいのだなということが実感できます。

一方でweb予約中心の元ツアーバスでは、そもそも乗車券の発券という発想はなく、係員が点呼して確認し、該当便に案内するという仕組みで、丁度航空便のチェックインに近いやり方ですが、駅前広場という公共空間で人海戦術で対応というかなり対照的な姿を見ることができました。案内係の人たちも若くてカジュアルな服装ですから、多分時間給のアルバイトなんでしょうけど、そうやって人件費をかけても、予約発券で高価な端末を用意する必要もなく、乗合バス移行で高速道路料金も安くなる分を原資として対応できているというところなんでしょう。本来は専用待合室を確保したいところでしょうけど、大都市圏ではかなり高いハードルではあります。

ついでだjから名鉄バスセンターの方も覗いてみましたが、こちらはビルの中ということもあり、全くの別世界でした。元ツアー組利用客を排除する必要もないというわけですね。構内でファミマが営業していて、狭いながらも待合室もあり、太閤口の喧騒とは無縁というわけです。

で、ふと鉄道の待合室はどうなってるのかというと、結論から言えば特になしということで、、まぁ元々インフォメーションは充実してはいるものの、くつろげるロビーやラウンジがあるわけではないので、ある意味鉄道は高速バス以下かいというオチになりそうですが、マックやドトールでお茶してくれということかも。高速バスの変貌振りを見ると、それ自身問題を抱えてはいるものの、鉄道だけが取り残されているような感覚を否定できないのは困ったものです。もちろん輸送力の違いから、中途半端な待合室の設置は難しいのも確かです。

あと実際に乗車したムーンライトながらは波動輸送用の189系10連ですが、側面表示器の故障で一部号車は「団体列車」表示と場末感漂う列車で、青春18キップ対応もあって乗車後の車内検察というアナログな方法が取られています。ま、乗客はほとんど青春18キップ利用者で、ルール上日付変更後最初の停車駅(上りの場合は豊橋)までは別途乗車券が必要など、乗客自身が承知していて特段のトラブルもなく粛々とチェックが進む様を見ると、鉄道とバスの違いを更に実感してしまいます。ある意味青春18シーズンの季節臨ムーンライトは、旅慣れた鉄オヤジに支えられ、ローコスト運行ができているということで、清酒18キップと共に、車両の代替わりはあっても当面はなくならないのだなと確信できます。

ついでの話題で、別の日の早朝に富山駅北口で見た光景を。ロータリーに面したバス停ポールに多数の新高速バスが発着するのですが、夜の早い地方のバス停ですから、路線車との競合はないものの、逆にマイカー送迎を助長しているため、折角確保したバス停にマイカーが停められていて支障する場面が頻繁に起きます。名古屋のような大都市とは違った問題ですが、バス事業者も係員を立たせているわけでもなく、その分乗務員の負担になっていないか心配です。まして事前調整が可能な出発便と違って、到着便は重複も起きるので、更に面倒ですが、チェックイン重視の新規参入社では、到着便のために人を配置することはまずないでしょうから、改善されない可能性があります。地域の問題として自治体が対応することも視野に入れる必要があるかもしれません。

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Saturday, August 20, 2011

節電でテレビを消して電車で涼

関西電力堺港火力発電所の故障で関電エリアの電力需給が逼迫しております。原発止めれば電力が不安定になるという電力会社の主張が現実になったかのごとき状況ですが、当然からくりがあります。

そもそも13ヶ月毎に定期点検を義務付けられている原発には、休止期間中のバックアップ電力が必要なんですが、稼働率が低いという理由で、老朽火力を除却、解体せずに残すことで対応してきたのですが、それが裏目となったわけです。減価償却済みで保有コストが低いから低稼働でも経営上の重荷にはならないのですが、老朽化した石炭火力で燃費も悪く、長時間稼動で不具合が出る可能性が高く、今回それが表面化したわけです。つまり原発依存を前提にそれ以外の投資を極限まで絞ってきた結果でもあるわけです。原発依存が投資に歪みをもたらしたわけです。

その一方でJR東日本は川崎火力発電所に、ガスタービン・コンバインドサイクル発電機を設置し、自前電力を強化しております。都市ガスを燃料にガスタービンを回して発電し、さらに排気熱で蒸気タービンを回してそちらでも発電するもので、熱効率が高く従来の2倍以上の燃費の良さを誇ります。加えて出力調整も容易で、起動して1時間後には最大出力に達しますし、燃料のガス供給を止めれば直ちに停止しますから、原発のように暴走する心配もないわけで、仮に脱原発を目指すならば、当面の主力となる発電システムです。既に電力以外の企業は動き始めているのです。

元々日本の火力発電は老朽化が進んでおり、非効率だったんですが、原子力依存ゆえに設備投資が止まってしまっていたわけで、これで電力の安定供給とは片腹痛い話です。元々日本のエネルギ消費に占める電力の割合(電化率)は25%程度で、先進国標準の20%を上回りますが、その7割は産業用電力であり、住宅用は3割に満たないので、国民に節電を求めてもあまり意味はないのです。

加えて電力を作り出すためのエネルギー投入量で見ると45%に達します。早い話が発電段階でのエネルギーロスが莫大なんで、ここをせめて半分に圧縮できれば、エネルギー消費量を1割程度削減できますし、比例してCO2排出量も減らせますから、国際ルールとして認められている途上国の省エネ投資や国内外の森林整備による排出量クレジット取得と組み合わせれば、日本が国際公約したCO2排出25%削減も不可能な目標ではないわけです。

また再生エネルギーの活用を図る意味でも、出力制御が容易な火力発電に一定に依存する必要はあるんですが、その際上記のガスタービン・コンバインドサイクル発電はキラーテクノロジーとなり得るものですが、ガス燃料を拡大すると電力会社の独占を脅かすと考えたのか、徹底的に背を向けてきました。かくして原子力依存を高めてCO2削減というフィクションが語られたんですが、チェックするはずのメディアの無知でスルーされ続けました。そもそも出力制御が難しく、制御電力に3割も自家消費してしまう原子力発電は非効率なんですが。

あと先月の新潟、福島の豪雨による水力発電所の被災で、東北電力も需給が逼迫しておりますが、水害の多い日本では、ダムによる大規模水力発電への依存は既に限界に達しており、また当然ながら水力発電はダムに水が貯まらないと発電できないわけですから、需給調整は火力に頼る必要があります。

というわけで、日本全国節電ムードで、ピーク電力と無関係の夜間照明が落とされて引ったくり犯罪が増加したり、冷房の自粛で熱中症で死者が出たりと物騒な話になっているのですが、電力会社に責任の自覚がないばかりか、電気使用量予想を流して節電をアピールするテレビ局も問題です。午後のピークタイムはどうせ再放送ドラマか韓流ドラマか低予算バラエティかゴールデンの番宣という具合に、そもそもスポンサー集めにも苦労している体たらくなんだから、地上波放送だけでも止めれば良いと思うのは私だけでしょうか。少なくとも冷房止めるならテレビ止めましょう。命が惜しければ-_-;。

そんな中で、タイトルのような提案をしたいと思います。幸い首都圏では、JRの東京近郊区間が大幅に拡大された事もあり、大回り乗車で八高線、両毛線、水戸線、内房線、外房線なども巡る事が可能となりました。ただし終電までに戻らなきゃいけませんし、途中出場はできませんから、食事も用足しも全てラッチ内で済ませる必要があります。これが案外難しい^_^;。

それからSuicaは4時間ルールで出場時エラーとなる可能性があるので、あらかじめ隣駅までの磁気券に引き換えておき、時間制限エラー回避のために、出場時は有人レーンで「大回り乗車」である事を告げるなどの対策が必要ですが、それさえ守れば、乗車中は冷房の効いた車内で過ごせ、乗り鉄三昧を楽しめます。エリア内のJR各線はほぼ毎時2本以上の運行頻度がありますから、案外乗り継ぎもスムーズで、結構いろいろ回れます。あとあくまでも大回りは便宜的措置ですから、復乗は認められず、一筆書きルートに限られます。

こんな事ができるのは、JRの路線網の充実ぶりと同時に、運賃計算ルールの最短経路特例によるわけですが、そもそも自動改札とストアードフェアカード導入で乗客個々のチェックイン、チェックアウトが厳格に管理できるようになった結果、車内改札を省略できるという意味でJRにもメリットがあるわけですが、それが結果的に乗客の利便を向上させるわけです、こういう現象を「ネットワークの外部性」と呼びます。

JRの最短経路特例は、山陽本線岩国ー櫛ヶ浜間(岩徳線経由適用)など幹線ルートでも見られますが、路線網が輻輳する東京近郊区間、大阪近郊区間、福岡近郊区間では国鉄時代もから行われていて、JR化後は区間の拡大もあって現在に至ります。また2004年11月27日から新潟近郊区間も設定されております。ただし新幹線に関しては、原則は対象外ですが、国鉄時代には在来線との同一扱いルールもあり、JR化後の改廃もあって複雑ですが、当然ながら大回り乗車の対象にはなりませんね。

という意味で結構ずくめの運賃の最短経路特例ですが、JRと並行路線を持つ私鉄にとっては痛し痒しのところもあり、評価が難しいところがあります。例えば群馬県の上毛電気鉄道ですが、かつては両毛線が非電化で本数も少なかったし、運賃水準も同等だった事もあり、前橋―桐生間の都市間輸送ので国鉄より優位だったものが、1968年に電化と小駅4駅の廃止でスピードアップされたことと、上電の運賃値上げで運賃差が生じたことで逆転し、さらにマイカーの普及もあり、ご存じの通り群馬県は一時マイカー普及率で都道府県トップだったこともあって大幅に利用が減ったわけですが、その一方で両毛線はJR化後も本数が増加し、不完全ながら昼間20分ヘッドダイヤで利便性も高まり、Suica導入と東京近郊区間組み入れで、マイカー王国の群馬県で存在感を高めておりますが上電は立つ瀬がなくなります。

上電に関しては、中央前橋―前橋間を併用軌道で延伸してLRT化とか、上越線新前橋―群馬総社間の前橋公園付近に新駅を設置して上電を延伸する構想などが検討されておりますが、いずれにしても公的な支援なしには実現できないでしょうし、上電の運賃の高さがネックとなる可能性もあります。東京の地下鉄一元化高運賃の北総線問題など、地域の交通問題は根が深いです。

一方で、JR東海、四国、北海道の各社はネットワーク志向は希薄です。元々過疎地帯の路線立地で路線密度が低い四国や北海道はともかく、東海道新幹線に収益の8割を依存するJR東海の微妙な対応は理解不能です。例えばこだましか停車しない三島や掛川での新在連絡というのがあり、沼津から三島乗換えで静岡までの企画券を売り出したりしてますが、ニーズがあるとは思えません。静岡都市圏では快速運転の代わりに乗車率の低い新幹線こだまに誘導したいということなんでしょう。

一方で名古屋都市圏では、名鉄や近鉄など並行私鉄に果敢に競争を仕掛け、乗客を増やしております。見える敵から客を奪う戦略はJR西日本のアーバンネットワークと同様ですが、大回り乗車ができるような路線網にはなっていないのが大きな違いです。例えば民営化で国鉄から継承した未成線として引き継いだ瀬戸線(勝川―枇杷島)を系列の東海交通事業に丸投げして、しかも当初は尾張星の宮―枇杷島間を欠き孤立した非電化路線としたように、まるで「利用するな」と言わんばかりです。

その一方で西名古屋港貨物線の旅客化事業として名古屋臨海高速鉄道あおなみ線へ路線を譲渡しましたが、本来名古屋市都市計画高速鉄道東部線として金城埠頭―笹島―丸田町ー星ヶ丘―岩崎というルートが計画されていたものの、事業化に至らず、あおなみ線はやはり孤立路線として利用が伸びず、昨年7月に債務超過から事業再生ADRで名古屋市に追加支援を求めるなど不振が続きます。これは出資する名古屋市の中途半端な対応にも問題があり、市営交通との乗り継ぎ割り引きなどは事業再生ADR後にやっとですが、JR東海の名古屋都市圏輸送に対する冷淡な姿勢を示しているとも言えるでしょう。JR西日本では財政支援を得ながらですが、JR東西線やおおさか東線などネットワーク強化のための新線整備を行っているのとは対照的です。

この辺は中央リニアの長野県内駅を飯田線と共同使用駅としない姿勢と通底するのかもしれません。事実として新幹線の収益が大きく、名古屋都市圏も含めて在来線の旅客収入は取るに足らないと感じているのでしょう。名古屋都市圏の私鉄競合路線のやる気(笑)は、私鉄側の度重なる運賃値上げで逆転現象が起きたことが追い風となったという見方も可能で、単に勝てる勝負を仕掛けただけとも取れます。逆に名松線では無人走行事故2度も引き起こすなど、モチベーションが感じられません。

攻め込まれるライバルの名鉄は、JRとの競合がない犬山線や常滑線でが稼ぎ頭という状況ですが、元々前身の名古屋電気鉄道の名古屋市内電車が名古屋市に買収されて市電となり、企業存続のために郊外線を建設して初代名古屋鉄道となった歴史もあり、地域交通ネットワークとしての意識が強いのが特徴です。面白いのは、市電を元祖とする名古屋市交通局の地下鉄線との関係ですが、鶴舞線や上飯田連絡線の相互直通運転や名鉄―市交―名鉄の通過連絡運輸(名鉄部分の運賃通算)など一体感が見られる点も特徴です。同様の制度は孤立線の瀬戸線にも存在し、瀬戸線栄町と本線新名古屋(現名鉄名古屋)又は金山との乗り継ぎの場合の運賃通算の規定がありましたが、こちらは市交の乗車券とセットではなく、現在は取り扱いが廃止されています。

とはいえ市交桜通線では名鉄本線の市内区間を侵食するなどして、岐阜の600v区間をはじめとする末端のローカル区間を持ちきれずに廃止しているわけで、私有私営原則の日本の鉄道事業の中に、営利目的でない地方公営交通が混在する矛盾があります。東京の地下鉄統合の議論で抜け落ちている論点です。

ちなみにJR東海と名鉄の連絡運輸は豊橋駅を介した東海道線浜松―名鉄鳴海間の範囲内のみで、広範に連絡運輸が行われている首都圏の状況から見るとちょっとびっくりします。

というわけで、大回り乗車で涼を楽しめる首都圏エリアはありがたいところですが、昨日の雨で急に涼しくなってしまいました^_^;。グダグダ書いているうちにいろいろなことがあって、ややタイムリーさに欠ける結果となったかもしれません。

その間に天竜船下りの事故のニュースも流れました。事業者は天竜浜名湖鉄道で、国鉄二俣線を引き受けた三セクローカル私鉄で、経営が苦しい中での集客と収益機会の拡大のために事業参入したものの、安全管理に難があったようです。鉄道事業者の関連事業としては残念なところです。ただし救命具の着用に関しては、法令の不備もあり、また特に子どもの着用に関しては、暑さで嫌がると、親も同調してしまうなどで、現場で不徹底となる要素は元々あると思います。いわゆるモンスターペアレント問題ですが、社会的に必要なルールの遵守は、子どもに社会性をもたらす躾けでもあるわけで、今回の事故自体は不幸なことですが、レジャーもルールの中で楽しむべきものであるのは言うまでもありません。というわけで、首都圏の大回り乗車も、ルールの範囲内で3大いに楽しみましょう。うまくまとまったかな^_^;。

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Saturday, July 09, 2011

いたみを伴う大阪副首都構想の迷走

九州電力玄海原発の運転再開を巡って迷走してますが、1つは九電のやらせメール事件の発覚、もう1つは唐突な全原発のストレステスト実施の2つです。詳述は避けますが、そもそも原発推進を国是としてきた中で、福島の事故が起きたことから続く迷走劇で、国のエネルギー戦略が揺さぶられているのですが、そもそも戦略と言えるような戦略があったのかどうか疑問です。政府の場当たり的な対応は、ある意味その結果ともいえます。そして情報が小出しにされる中、国民自身もあまり深く考えてこなかったということでもあります。

そんな中で注目したニュースはこちらです。

関空・伊丹運営権で国交政務官「民間売却は困難」 橋下知事は不満 - MSN産経ニュース
ちょっと解説が必要ですが、そもそもは行政刷新会議による事業仕分けで、関西国際空港への国からの多額の補助金拠出が問題視され,それを受けて国交省が成長戦略会議で提案した関空と伊丹の経営統合を軸とする一体運用を提案し、5月17日に国会で法案が成立したことを受けて、国交省市村浩一政務官が橋下大阪府知事を訪問し会談したというニュースです。

事業仕分け自体は、折角問題点を明らかにしながら、その後事業の復活が相次ぎ、例えばこの間演算速度で世界一となったスパコン"京"も、そうして復活したものです。やや脱線しますが、そもそも軍事利用の可能性が皆無である日本で、スパコンで世界一を取る意味はほとんどありません。"京"にしても、民間利用で投資を回収できるメドは立っておらず、遠からず無駄を指摘される可能性が高く、やはり戦略性の欠如が指摘できますが、この話はここまでにしておきます。

そんな事業仕分けで動いた珍しい案件として(笑)関空の経営問題があるのですが、そこで市村政務官が現状での運営権の民間売却(コンセッション)が難しいとの見解を示したのですが、それに橋下知事が不満を顕わにしたというニュースです。伊丹廃港論を唱える橋下知事としては面白くないということですね。とはいえ伊丹廃港論自体も兵庫県や地元経済界などから反対論がある中で、廃港するにしてもコンセンサスを得るのは容易ではないのですが、橋下知事がコンセッションで期待したのは、伊丹の廃港と跡地再開発にあると思われますので、元々同床異夢であったとも言えます。今回それが明らかになっただけと言えばそれまでですが。

とはいえ経営統合の対象ではない神戸空港まで持ち出して検討するというのは、コンセッションの意味付けとしてどうなのかということもあり、この点は橋下知事の言い分にも一理あるんですが、議論の前提が違いすぎて話がかみ合わないわけです。

伊丹と関空の事業統合については、大雑把に言えば伊丹の黒字で関空の赤字を内部補助するスキームと整理する事ができますが、それを可能とするのは、伊丹の利便性と、裏腹な時間制限と便数制限その他の制限の関係によるものです。加えて過去に騒音訴訟で被害者救済のための多額の補償金が地元に配られていることもありますが、現在でも30-50億円規模の対策費が国によって計上されております。これが新会社発足後は新会社の負担となるわけで、伊丹の収支がどうなるかは、必ずしも楽観できないという見方も根強くあります。

加えて2045年にはリニアが大阪まで開業するから、伊丹の高収益は終わるという議論もあり、このあたりは前原氏が国交相時代に言及していたり、橋下知事も伊丹廃港の根拠として述べるなどしておりますが、民間単独事業である中央リニアが果たして大阪に到達できるのかは現時点で未知数です。

という具合に話はまとまりそうにないんですが、一点共通しているのは、関西に副首都機能を持たせようという議論です。これが曲者なんですが、当事者たちは大真面目です。一応首都直下地震でも機能を失わないためのバックアップという位置づけで、過去の首都機能移転とはやや趣を異にしますが、基本的には大規模公共事業の口実と断言できます。

そもそも首都機能移転の議論は、東京の異常な地価上昇を抑えられないことから、東京一極集中を見直すために首都機能の一部を地方に移管しようということで、国会決議までされて候補地も明らかにされながら、バブル崩壊で首都圏の地価が下落したことで沙汰止みになりました。その後90年代半ばに生産年齢人口が減少に転じ、2005年には総人口も減少に転じるいわゆるデフレ現象により、首都機能移転の必要性も霧散しました。ここで言うデフレはマクロ経済現象としてのデフレーションのことではなく、生産年齢人口の減少による国民所得の減少の意味ですので念のため。

それとは別個に、近畿地区選出の国会議員などによる副首都構想というのがありまして、2004年、現民主党副代表の石井一議員(兵庫県選出:衆議院)が伊丹空港を廃港して跡地の国有地を利用して防災都市を建設し、国会、首相官邸、皇居などの分室を設置するというものです。95年の阪神大震災を契機に、同様の直下型地震が首都圏で発生したときの備えの必要性を痛感した石井議員が、廃港跡の国有地に世界の投資ファンドから資金調達して事業化するという構想を明らかにしたものです。

当時は小泉政権時代で、郵政民営化のほか都市再生を掲げて条件付きで容積率や建築基準の規制緩和を行った結果、首都圏では地価下落に伴い値ごろ感が出てきたタイミングとも重なり、再開発ブームが起きた一方、首都圏以外の地域は取り残された感がありました。そうした中で出てきた発想ということが言えます。

とはいえ首都圏の再開発ブームはいろいろ問題含みで進み、例えば耐震偽装事件は建築基準法の改正で強度検査が民間開放に併せて簡素化された結果起きた事件ですし、また国内製造業の製造拠点の統合、閉鎖による用地の供給増もあり、結果的に東京都心に多数の高層マンションが林立し、人口の都心回帰が起きる状況で、首都圏でも都心から離れたエリアや利便性に劣るエリアでは人口減が始まるなどして、例えば沿線人口の減少に歯止めのかからない相模鉄道のJR、東急と結んだ都心直通構想に踏み出すなどにつながります。

また耐震強度審査の厳格化によるビルの新規着工の滞留と相前後して再開発ミニバブルもはじけ、期待された地方都市への波及は結局幻に終わりました。これはリーマンショック以前に起きたことで、とりあえず再開発が一巡し生まれ変わった東京に対して、関西の再開発は燻り続けてきたという流れがこれまででした。

再開発を模索する動きとして京阪中之島線の開業と朝日新聞大阪本社やフェスティバルホールなどの建て替え構想と、梅田北ヤード跡地開発がありますが、前者は完全に失敗と評価できますし、後者も鳴り物入りで開業したJR三越伊勢丹の不調が影を落とします。つまりぶっちゃけ大阪の再開発は頓挫しそうな局面にあるということで、だからこそ中之島線で痛い思いをした京阪は、オフィス賃貸やホテル業で首都圏進出したり、果ては現地の投資ファンドと組んでベトナムへ進出したりして、ある意味大阪を諦める選択をしております。

その一方で東日本大震災で首都機能のバックアップの必要性にリアリティが出てきたとするのが、最近の議論ですが、結局大阪の再開発が進まないことに対する危機感の裏返しとも言えます。結局震災にかこつけたバブル待望論の域を出ません。しかし普段は使い道のないバックアップ施設の建設は、経済効果はほぼゼロ。むしろ維持費分マイナスと見るべきです。というか実際機能していない政府の機能をバックアップしても無駄だと思うが(笑)。

というわけで、この議論の大筋は、リニア開業で伊丹廃港→跡地に防災都市を建設し首都機能バックアップ→関空へ航空需要を集約しハブ機能強化、という流れです。この流れで関空と伊丹の経営統合を評価すれば、伊丹の廃港と再開発までコンセッションの視野に入れているということですが、やはり兵庫県選出の市村政務官は、神戸空港を含む関西3空港の役割分担で関西地区の航空需要を最大化することが、コンセッションの条件という現実的な見解を示したわけで、橋下知事の不満の原因というわけです。とはいえ副首都構想そのものは否定せず、むしろそのためにも航空需要を取り込んで関西地区の浮揚に繋げたいと考えていたわけです。

この辺が副首都構想派の政治家が一枚岩になれない部分ですが、例えば既に民間企業の多くが、関西に本社機能のバックアップ体制を構築していますし、国家機関でも日銀なら大阪支店がありますし、皇室は京都御所その他宮内庁関連の資産は元々関西に多いわけですから、改めて新しいハコモノは不要という考え方もあるわけです。現存する資産の活用策として首都機能のバックアップを行うということであれば、見えてくる景色はかなり違います。

あと重要な指摘としては、直下型地震のリスクは首都圏に限りませんし、内海で津波被害の心配がない東京湾沿岸の方が防災上優位にあるともいえます。大阪は津波が来ればほぼ逃げ場がありません。というわけで、震災を食い物にする議論はホントいい加減にして欲しいと思います。というわけで伊丹を伴う副首都構想でした^_^;。

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Sunday, June 29, 2008

自動車メーカーの脱クルマ戦略

前の記事に関連しますが、国内自動車市場の縮小に直面する自動車メーカーの話題です。

20世紀はザックリ言って自動車の世紀という言い方が可能でしょう。自動車は工業化社会の象徴ですし、特に20世紀初頭、T型フォードのオートメーション生産がもたらしたイノベーションは、以後の100年を規定するほどの大きな意味がありました。

それまで自動車は町工場で馬車職人の手作りという形で作られていたもので、馬の代わりに内燃機関で動力を得て走らせるということで、馬車の構造を引きずっておりました。オーナーは馬車のキャビンに似た屋根付後部座席に乗車し、御者代わりのドライバー席は屋根なしの雨ざらしということで、オーナードライバー中心の現在のクルマ社会とは違います。それがT型フォードの生産と市場投入で変わったわけです。

気難しい職人に仕事をしてもらうには、報酬を弾むしかないですから、そもそも専属ドライバーを雇える富裕層しか自動車は変えなかったわけですが、それをオートメーション生産で、複数の単能工によるライン生産に切り替えた結果、生産性を高めて価格を劇的に下げる価格革命が可能になったわけです。加えて工場で働く単能工には、いわゆる単純労働ながら相場より高めの賃金を渡すことで、フォードは自社の商品の最初の購買者を育てることにも成功します。実はこれこそが大衆消費社会を切り拓く端緒となったのです。

それを横目に、この仕組みをより効率化しようという動きが現れました。アルフレッド・スローン率いるゼネラルモーターズ(GM)の革新的ビジネスモデルが登場します。町工場中心の前期工業化社会では、所詮家内工業の域を出なかったのですが、生産と管理を分離し、事業に必要な資金調達、売れる商品を生み出すマーケティング、工場の工程管理など、直接生産に携わらない多くの専門家を組織して、多数の傘下工場を稼動させ、規模の経済を追及するというものです。その結果、馬車スタイルが抜け切らない無骨やT型フォードと一線を画す、薄板をプレス加工してフェンダー一体型の滑らかなボディを与えたスタイリッシュな自動車を次々と生み出し、自動車を大衆消費財にしたのでした。

巧みなのは、古くなった工場の生産設備の交換に合わせて、ボディスタイルを見直し、旧モデルを陳腐に見せて買い替えを促す、いわゆるモデルチェンジを行って業績を高め、かくして世界一の自動車メーカーの地保を固め、以後世界に君臨しました。

こうして、常に大衆受けする新しい車が生み出され、市場が刺激され、自動車がリーディングインダストリーとなってアメリカは繁栄し、そればかりか、その見かけ上の豊かさは、世界に憧れをばら撒きました。大衆消費財としての自動車は、頻繁な買い替えが前提ですから、必ずしも高品質である必要はなく、適度に壊れてくれた方が、結果的に買い替えが促進されますし、買い手のユーザーはオーナードライバーであることにステイタスを感じてますから、故障などのトラブルはむしろ地位にあるものの悩みとして受け入れてくれます。かくして最強のビジネスモデルが完成することとなります。

しかしこのビジネスモデルは、石油や鉄などの資源を際限なく浪費することになりますので、アメリカ1国だけであれば成り立つかもしれませんが、他の地域へ拡大すれば、たちどころに資源制約が世界を襲うことになります。70年代のオイルショックは、石油輸出国による価格カルテルの試みだったのですが、日本などで省エネの取組みを誘発し、結果的には不発に終わります。しかし同時に、日本や欧州で資源浪費的でトラブルの多い自動車の燃費改善と品質向上の取組みが始まり、メーカー間の競争環境もあって、自動車は燃費性能を改善し、品質も向上し、故障の確率は劇的に下がりました。そしてアメリカのメーカーはその流れに乗れず、手っ取り早く利益を稼げる車しか作らなくなります。

フォードマスタングは、売れ行きの悪かったコンパクトカー「ファルコン」のシャーシにスポーティなボディを与えただけのチープな車でしたが、若者が飛びつき大ヒットしました。これに味を占めた米自動車メーカーは、その後もライトトラックのシャーシにオフロードカーに似せたボディを与えたSUV、同じくトラックシャーシに大柄のバンボディを与えて、大勢乗れる、たくさん積めるミニバンを開発し、大いに稼いだのです。しかし好事魔多し、すぐさま日欧メーカーの後追いに遭います。

トヨタセリカ、日産シルビア、ホンダプレリュードなどのスペシャルティカーが、量販車のコンポーネントで作られ、同じくSUVも量販車ベースでオフロードカーに似せたなんちゃってオフローダーに、量販車ベースで大柄なバンボディを与えたなんちゃってミニバンなど、ベースが乗用車だけに、トラックベースの米メーカー車とは素性が違いますから、ユーザーは日欧メーカー車に群がります。と同時に日欧メーカーも実は袋小路にはまります。

ユーザーを飽きさせないための新しいクルマの提案が相次いだ結果、かえってユーザーを飽きさせてしまったフシがあります。加えて昨今の原油価格上昇、鉄鋼価格上昇で、メーカーも値上げせざるを得ない状況で消費マインドを冷やします。また皮肉なことに品質向上が極限に達し、故障しなくなったことで、買い替えにブレーキがかかります。

さらに90年代から始まった非正規雇用の拡大、2002年春闘のベアゼロで正規社員も収入が伸びず、ユーザーの購買力を奪います。国内市場は冷え込むばかりです。おそらく簡単には抜け出せないでしょう。しかしこういった逆境こそ、逆転の発想で乗り切るチャンスでもあります。そんな中でのこんなニュースです。

JR北海道のDMV開発、トヨタ・日野が参加
青森県内レンタカー6社、新青森駅に共同基地 新幹線開業時に
まずはDMVからですが、以前の記事でも取り上げました。ベース車は日産シビリアンなんですが、この車、主要コンポーネントをいすゞから調達し、日産車体で組み立てて、日産系、いすゞ系ディーラーへシビリアン/ジャーニーとして供給されているという成り立ちです。特徴としてラダーフレームにキャブオーバーのボデイを架装したフロントエンジン・リアドライブ(FR)レイアウトで、構造単純で軽量、堅牢であるがゆえに、重量物である鉄車輪を装備してレール上を走行可能になります。

しかし昨今のディーゼル排ガス規制や安全装備などで重量が増え、そのためにDMV試作車では乗車定員を減らして総重量を道路運送法の規制値に収める必要があります。それに対してJR北海道は日産に共同開発を申し入れますが、成り立ちの特異性もあり、数が売れる保証もないDMVの開発には慎重姿勢でした。

それに対してトヨタが日野と共同で開発に協力することになったのです。トヨタは世界一の量販バスであるコースターをラインナップしているものの、小型バスでは珍しいモノコック構造で、そのままでは鉄車輪の装備は不可能です。そこで日野のトラックシャーシの活用を考えたものと思いますが、数が読めないニッチな市場へアプローチするトヨタの苦悩が見えます。軽量化で25人以上の乗車定員確保が開発目標となりますが、開発段階で相当数のバックオーダーを得なければ難しいだけに、トヨタの取組みは注目されます。

東北新幹線新青森駅にレンタカー基地というのも、なかなか興味深いニュースです。なにしろ新青森駅は市街地から3km以上離れた郊外の低層住居地域で、市街地とのアクセスに課題がある上、駅前の開発にも制約があるわけですから、そこへレンタカー基地を設けることで、利便性を確保しようということです。同時にやはり、メーカーのニッチ市場攻略という側面もあります。

というわけで、ここまでしないとクルマが売れない日本のメーカーの苦悩は続きます。

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趣味的脱クルマ社会論

更新が滞っておりますが、いまいちノレなかったことを白状いたします。夏風邪で体調不良だったこともありますが、何より6/14の2つのニュースに諸行無常を感じてしまいました。言うまでもなく、1つは副都心線開業であり、もう1つは岩手・宮城内陸地震です。

前者では新線開業で鉄道ファンが集まったようすがニュース映像で流される一方、後者の被害の悲惨さは対照的です。何しろ山が形を変えるほど大きな地すべり等が起きたのですから凄いんですが、それ以上にショックなのは、過疎地だから意外にも人的被害は多くないということです。また公的に把握された被害総額も少ないということで、激甚災害指定されなかったというのも驚きです。ま、被害が少なかったのは良いことではあるんですが、それで済ませられない問題があります。

前置きが長くなりましたが、駒の湯温泉で岸由一郎氏が亡くなられたことにショックを受けております。直接面識はないんですが、鉄道趣味界期待の若手ということで注目しておりました。ご冥福をお祈り申し上げます。

報道によれば、廃止されたくりはら田園鉄道の遺構を利用した地域興しイベントの打ち合わせで現地を訪れ、駒の湯温泉に投宿中に被災したそうで、無念です。またイベントに期待を寄せた地元の人たちも、イベントどころじゃなくなってしまいました。激甚災害指定もなく、国の支援も限られる中で、復興しなければならないのですから、運命を恨みたくもなるところです。国のスタンスは中山間地を切り捨てるに等しいわけです。

日本では直下型地震はどこでも起こり得ることを図らずも示してしまいました。緊急地震速報が流れたとはいえ、震源の浅い直下型地震では、P波とS波の伝播速度の違いを利用し、P波を検知して速報を流す仕組み自体に限界を抱えております。また雨期で地盤が水分を多く含んでいたことが、大規模な地すべりにつながったとの見方もあります。林業の衰退で山林が荒れていたことも影響している可能性があります。つまるところ、かつて生産の場であった中山間地が、産業構造の変化の中で見捨てられた結果、被害を大きくした可能性はあります。その意味で大都市の地下鉄新線開業のニュースの対極にある場所の災害といえます。というわけで、モヤモヤした気分が抜けなかったわけです。

都市への集積自体は、経済合理性に基づくことですが、東京のような大都市になると、むしろ集積の不経済が目に付きます。例えばヒートアイランド現象ですが、熱源が増えることで局地的に大気の対流による熱交換がうまくいかなくなるのですが、屋上緑地化や開発事業者への緑化義務を課すなどしておりますが、問題は集積による熱源の集中ですから、付け焼刃の対策では解決しません。工場など製造拠点が多いわけではない東京の熱源というのは、電力消費に由来するものです。高校物理で習う熱力学第1法則(エネルギー保存の法則)で明らかですが、電力の消費は電気エネルギーを熱エネルギーに変換する過程と整理できます。また人工的に秩序付けられたエネルギー(電力)を無秩序なエネルギー(熱)に変換するわけですから、熱力学第2法則(エントロピー増大法則)でも説明できます。大気の対流で可能な排熱水準を超えた熱を放出しているわけです。解決するには開発の抑制が必要です。

厄介なのは、このこと自体はいわゆる地球温暖化とは別のメカニズムなんですが、局地的な熱の蓄積は空調で熱交換を行っても、排出された熱は循環せずに地域に留まりますから、空調を運転した分だけ電力消費が増える、イコール熱量が増加するということで、変化を順方向へ加速させるポジティブフィードバックが働いてしまいます。その結果電力消費が増大すれば、化石燃料消費を通じてCO2を排出し、温暖化を進めることにもなります。

ほかにも地価の上昇や道路の渋滞などの弊害も指摘されます。前者は土地の利用度が高まった結果でもあるわけですが、そのために絶えず再開発して高層化を進めるとなると、常に重機、建機が動いている状況となるわけです。重機や建機もCO2を排出しており、しかも都市としての定常的なエネルギー消費と別枠ですから、開発行為が盛んであるということは、それだけ温暖化を進めてしまうということにもなります。クールビズで可能な温暖化防止なんて知れてます。

ガソリン税暫定税率問題で注目された道路特定財源ですが、東京のような大都市の場合、地価の上昇で道路建設単価も高騰しますから、渋滞していても直ちに道路整備ができないわけですが、それでも都は道路整備を進めようとしています。なぜならば都市計画法や建築基準法などの法令で、開発用地の接道義務が課されていることによります。道路に接しない土地は開発行為ができません。また道路幅員によって容積率が決まり、日陰規制などその他の規制にも影響しますから、低層建築の多い地域ほど道路を通さないと再開発できないということで道路整備が止まらないのですが、それで高層建築がされると集積度が高まって道路に車が増えるという悪循環から抜けられず、気がつけば開発業者だけが潤っているという状況をどう考えるか、このあたりを真剣に考えるべきときなんでしょう。オリンピックなんてやってる場合じゃないんです。

それでは道路をやめて鉄道へシフトすればよいかというと、例えば副都心線ですが、明治通りの拡幅が困難な中、混雑緩和への期待がされますが、東京のように稠密な鉄道ネットワークが形成されたところで、そのネットワークが強化されると、その分集積度が高まって人口集中が起きてしまうので、結局混雑をいくらか緩和はするけれど、解消には至らないということになります。単純なモーダルシフト論には落とし穴があるわけです。

結局のところ大都市圏以外の場所は次第に過疎化が進み、防災上必要な山林の手入れすらできなくなるというわけです。本当はこういった地域へてこ入れが重要なんですが、それには無力かもしれないけれど、廃止された鉄道を地域興しの核に据えようとすることには意味があります。というのも、趣味の世界に変化が見られるからです。

以前西武鉄道の名義株問題が発覚し、オーナーの堤義明会長が逮捕され、会長を辞任、西武グループ自体も上場廃止から再編され、再上場を目指しているところですが、堤義明が鉄ちゃんだったらといような記事を書いたことがあります。ま、たわ言ですが^_^;、堤家の使用人意識が抜けない社員の啓発と団結を狙ってスマイルトレインプロジェクトが実行され、事務職の女子社員まで動員されて30000系で結実しました。後藤社長の狙いは、社員の自立ということで、鉄道事業者として天の声を待つのではなく自前の判断で事業を進められることを重視したものです。成果は定かではありませんが、間違いなく社員のモチベーションを高める効果は期待できます。

ある意味仕事が趣味的になってきたともいえるわけですが、元々社会インフラである鉄道を趣味対象とするのは、欧米では普通に見られますし、鉄道発祥国イギリスでは、貴族が気前良く寄付金を出し、ボランティアメンバーが運営する公共保存鉄道が存在するなど、文化と称して良いレベルにあります。日本はというと、つい最近まで「鉄ヲタ=暗い、ウザい、ダサい」といった印象が強かったのですが、最近は若い女性が新線初乗りやレア物追っかけすることも珍しくなくなり、社会的には定着した感があります。元々社会インフラである鉄道は、個人では所有できず、自由に操作することも叶わないわけですから、どんなに高くてもお金出せば買えるクルマとは違うわけで、そんなものを趣味の対称にするというのは相当な変わり者と見られていたわけです。それが変わってきているわけですね。

といううわけで、副都心線に鉄ちゃんが群がるのは、趣味として社会的に認知された証しと見れば、冒頭のモヤモヤした気分もいくらか晴れる気がします。

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Sunday, October 09, 2005

富士重工、トヨタと提携はGM救済、それとも?

GMというタニマチを得て、プレミアムメーカーへの道を邁進するかに見えた富士重工ですが、ついにというか、トヨタの資本が入ることになりました。思えば同じ日本興業銀行の有力取引先という縁で日産と業務提携して以来、提携相手を変えながら存続してきた富士重工という会社は、なかなか不思議な存在です。

当初ニュースが流れたときに、業績不振のGM救済にトヨタが動いたと見られました。というのも無理もない話でして、富士重工は技術力をウリにしてきたメーカーながら、例えば水平対抗エンジンは、それ自身は工作精度を要求されるものの、汎用性に乏しく流用が難しいですし、軽自動車に関しては既にダイハツが首位のスズキを追撃できる実力を蓄えた現状では、あまり魅力はないですし、他社に先駆けて実用化したCVTも既に系列のアイシン精機で独自開発されているわけですから、トヨタはあまり得るものがない提携と見られていたわけです。

またトヨタの首脳にとっては、80年代の日米自動車摩擦の記憶が生々しいようで、GM救済のために米国で販売する車の値上げを真剣に考えたぐらいですから、GMが持て余す富士重工を引き取ることぐらいは考えそうです。ただし値上げを言ったトヨタに対して、現地生産が進む日産とホンダは冷ややかな反応をしたんですが、このあたりにトヨタの置かれている現状が透けて見えます。

巷間GMとトヨタの首位交代に注目が集まりがちなんですが、経常利益1兆円の超優良企業も、一皮めくれば北米市場で利益の7割を稼ぎ出す重大な偏りが悩みなんですね。で、これがレクサスブランドやハイブリッド車を中心に日本で生産してアメリカで高く売れる車種が好調なことの反映なんです。つまり北米現地生産が遅れていることの反映でもあって、逆にGMやフォードは値引き合戦の消耗戦で自滅しているわけですから、トヨタも現地生産で供給力を高めたいのが本音なんです。それが結果的に利益率を下げることになるとしても、現地生産ならば日米摩擦の再現もかわせるわけで、トヨタの焦りがそこにはあります。

といった背景を踏まえて見つけたのが

(10/7)トヨタ、富士重の米工場で生産へ・07年にも年10万台(日本経済新聞)
という記事です。さすが転んでもタダでは起きないトヨタ魂です^_^;。SIA(Subaru Isuzu Automobil)といえばいすゞとの合弁で北米現地生産に乗り出した富士重工の米国生産拠点ですが、いすゞの撤退で大幅に能力を持て余していたところにトヨタが目を付けたということですね。ついでにGMにも恩が売れるわけですからオイシイ話です。

富士重工にとっても、余剰生産力をトヨタに利用させることで、高コスト体質を払拭できるわけですから渡りに船といえます。思えば日産との提携当時、カローラとしのぎを削ったサニーの生産を受託した歴史の再現ですね。隣のラインではレガシイの前身車スバル1000を組み立てていて、チープな造りの車の隣で手の込んだ造りの車を組み立てて、前者の儲けで後者の道楽をやってたわけです^_^;。でも今度の提携相手はかなり手強いですね。なにしろトヨタとは企業風土の全く異なるダイハツと日野の2社を30年以上かけてトヨタ流に鍛え上げたわけですから、鷹揚なタニマチだったGMのぬるさとは比べるべくもないところです。

とはいえプライドの高い富士重工が果たしてトヨタ流をどこまで受け入れるか、結構見物です。というわけでこんな記事があります。

(10/8)富士重、トヨタに欧州向け小型車の供給を要請へ(日本経済新聞)
ということで、富士重工としても売るタマがほしいわけで、SIAでトヨタ車を生産する見返りを要求しているあたり、トヨタの下請けではさして儲からないという読みなんでしょう。かくして道楽路線まっしぐらな富士重工のアイデンティティは簡単には変わらないのでしょう^_^;。

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Saturday, September 10, 2005

JR鎌倉総合車両センター展示車両メモ速報

クモハ11248 旧モハ31 何故か後ろ向き(笑) 自重41.8tは走ルンですの2倍(爆笑)
ナハネフ221 何故か寝台セット状態
クモハ204+205−1003 ご存じ南武支線用ワンマン車
クモハ100(No.不明)+クモハ101−130 南武支線の先代のワンマン車 行先幕は「稲城長沼」と「試運転」
101の屋根布一部はがれている
検査棟内
E217系F−68編成(付属4連)
113系(千マリ80編成、6連) 「 旭 」黄幕
113系(S104編成) 「通勤快速」幕
E231系(S27編成)
その他
211系
183系国鉄色

モブログはメンドい。

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Thursday, November 18, 2004

旅行貯金者の聖地はクマと出会う素敵なところ

奈良県上北山村に旅行貯金者あこがれの聖地があります。某レールウエーライター氏が広めた旅行貯金ですが、紀伊山地の奥深く、1962年完成の坂本ダムで水没を免れた8戸の住民のために残った東の川簡易郵便局がそうなんですが、既にわずかな住民も10年以上前に移転し、今は無人の集落に、旅行貯金取り扱いだけのために郵便局が残っていて、平日5日間住み込みの局長代行氏が常駐します。曰く「1週間人に会わないことも珍しくないが、クマやイノシシはよく局の前に来る」そうな。命がけのお仕事です^_^;。
 国費で旅行貯金者のための局を維持するという酔狂な話ですが、果たしてこのような局が廃止になることが「地方の切捨て」になるんでしょうか。ユニバーサルサービスの実態とはかくなるものか腹が立ちます。民間金融機関がカバーできない過疎地を補完する機能は必要でしょう。そのことには同意しますが、そのために全国津々浦々郵便局が必要か? このあたりに議論のすり替えがあります。彼らが守るべきと言っているのは郵政ファミリーの利権なんです。
 確かに過疎地では民間金融機関の窓口サービスが受けられないエリアがありますが、いまどきパソコンとブロードバンド回線があれば決済サービスは受けられます。テクノロジーの進化でケータイバンキングさえ夢ではありません。要はサービスの隙間を埋める補完機能があれば良いわけで、そのためのインフラ整備に知恵を出して公費を投入して「地方を切り捨てない」工夫が大事なのではないでしょうか。
 この冗談みたいな無人地帯の簡易局、いっそクマさん相手にドングリ貯金でも始めては?

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Saturday, October 23, 2004

西武王国激震、鉄道屋になれなかった堤義明

つーことで旬の話題です。
 発表だけではあいまいな部分があって、今ひとつピンとこないニュースですが、株式公開企業としてのモラルを問われていることは間違いありません。
 そもそも株式を公開する意味は、企業が事業を続ける上で、必要な資金を広く一般の投資家から募ることにあるわけですが、他人に資本を依存することでもありますから、投資家保護の観点からさまざまな上場のルールがあるわけです。少なくとも購入しようとする銘柄に対するプラスマイナス両面のさまざまな情報が開示されていて、投資家を騙してお金を集めるようなことがないようにしなければ、安心して株を買えないわけです。
 今回は特定少数株主の持株比率上限の80%を実質的に上回っていた可能性があるというのが、堤会長の辞任の理由になっているわけですが、ややこしいのは、この基準はあくまでも新規上場企業に対するものであって、既に上場している企業の明示的な上場停止基準としては存在しません。もちろん、だからといって問題がないわけではないんですが。
 で、東証が上場停止をにらんで西武鉄道株を管理ポスト送りにした理由というのが、有価証券報告書の虚偽記載というので、またまたややこしくなります。中味は「個人株で実質保有分がある」ということですが、わけわかりません^_^;。
 どうも堤家の相続対策というのが答えのようです。つまり創業者の康次郎から義明に全ての財産を相続し、西武コクドグループの支配権を永久に確立するための工作として、中心企業を資本金1億円の非公開企業として個人の支配権を確立して、グループ企業を全てその傘下に収めることで対応したものです。そのときに東証の80%ルールに抵触しないように、社員の個人名義を借りて西武鉄道株など傘下企業株を実質保有し続けてきたということのようです。つまりは当初から有価証券報告書には虚偽の記載がされていたということになります。東証の対応も頷けます。
 でもなぜ、今それが発覚したんでしょうか。思うに名義借りの場合のテクニカルな問題点として、株主配当の扱いがあるわけですが、仮に名義を貸した個人が受け取るとすれば、事実上の贈与となるわけで、その辺に関する情報が税務当局にもたらされ、内偵が始まったことを西武コクド首脳が察知したことで、配当はコクドが受け取っていて贈与の事実がないことを明らかにする必要に迫られた結果ではないかと考えられます。
 それを裏付けるように、事態を察知したコクドは、件の個人名義株を急遽他社に転売しており、それが「上場基準抵触の可能性に関する説明がなかった」かどでインサイダー取引の可能性を指摘され、買い手企業の買い戻し訴訟に発展するという具合に、見事にドつぼにはまってます^_^;。
 このあたり悪いことという認識のない事柄をこっそり処理しようとしたふしが見られます。結局二代目経営者というよりは世間知らずの究極のおぼっちゃま君という感じです。
 経営者として見ても、収益性の高いプリンスホテルの事業には熱心だったんですが、規制業種で収益性の低い鉄道事業には関心がもてなかったようで、かつてのライバル東急が鉄道事業を核として沿線開発に積極的なのに対し、西武鉄道沿線の開発度は概して低いままで、現状は大差をつけられているといえます。
 歴史にIFは禁物ですが、「もしも堤義明が鉄ちゃんだったら」^_^;という問いかけをしたい気持ちを抑えられません。少なくとも相続のためのマネーゲームに狂騒するよりは、マシな結果を期待できる気がするのですが^_^;;。

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