旅行・地域

Thursday, November 13, 2008

銭トレニャア、ナゴヤはオワリ?

うーん、株価が戻りません。ゆえに買い増しのチャンスという見方を変えた方が良さそうな感じです。原因は複数あって、特に外国人売りの地合いが強いようですが、誤解のないように指摘すれば、主に欧州各国で銀行への公的資金注入が行われた結果、政府主導で国内中小零細企業への貸出増加の圧力がかかり、投資原資として外国資産の処分が行われているもようで、ひと頃言われたジャパンパッシング(日本素通り)とは別の要因です。欧州では社会の装置に過ぎない銀行の救済よりも預金者や融資先の保護に重点が置かれているわけです。

とはいえそれだけで現在の株価が説明できるわけではなく、実際これだけ安くなったのに買いが入らない状況は、プロに言わせればあり得ない話と言われ、実際PER(株価収益率)が5倍とか、PBR(株価資産倍率)が0.5倍といったアンビリーバボーな数値が並びます。後者など会社を廃業して資産を切り売りした方がマシというレベルです。やはり前に指摘した株式持合いの負のスパイラルが原因のようです。悪い予想ばかりが当ります。

で、持合いの中心には銀行が居て、現在の株安を先導している状況をどう見るべきでしょうか。日本では銀行は救っても預金者や融資先は救わないのでしょうか。現在国会審議中の金融機能強化法でも、政府案では公的資金注入に際して経営責任を問わないことになっておりますが、それでいて貸し渋り防止策を謳っているのは矛盾しております。ま、この辺は90年代末の金融危機のときも政府の対応は基本的に変わっていない気がします。担当大臣が外国に「自慢」した公的資金注入にしても、長銀と日債銀の救済策は元々民主党案を丸呑みして実行したもので、こちらは経営陣の更迭と0円評価での全株式取得という形で経営責任と株主責任を問うたものでした。その仕組みを使い回して2002年にりそなへ資金注入したしたことで、政府の関与による金融秩序の回復期待が好感されて7,000円台だった日経平均株価が反転上昇に転じたことで、銀行の保有株が値上がりし、あれほど経済の重石となっていた不良債権問題が嘘のように解消したものでした。いわゆる竹中プランで、大手行に対しては経営責任を強く問いましたが、地方経済への負のインパクトを回避するために、地方銀行の不良債権処理は途半ばとなり、保有株価の上昇で見かけ上の自己資本は回復したわけです。それがリーマンショックの株安連鎖で資本が毀損し、さらに2006年下期以来の不動産不況も重なって、元々建設や不動産関連の融資が多かった地方銀行のバランスシートを傷める結果となっております。つまりは地方銀行に元々隠れていた不良債権問題が顕在化したわけです。

地方銀行でも、破綻すれば影響が大きいと考えられる上位行の足利銀行は、上記のブリッジバンク方式で一時国有化され、再建されて野村グループに転売されたのですが、規模の小さい地銀下位行や第二地銀ではそれは通らない話で、実際不動産不況関連で初めてのペイオフ実施が囁かれてさえいたのですが、世界金融危機に便乗して一転救えという話になりました。いわゆる焼け太りです。同様に流通市場が消滅して値決めできないという実務上の制約から、社債や証券化商品について時価会計を一時凍結しようという気運が欧米で出ると、流通市場が機能していて値決めが可能な株式や国債にまで適用しようと画策する日本政府の姿勢は、むしろ国際的に不信を買います。お願いだから15日の金融サミットでバカなこと言わんでくれ。

そんな中でトヨタショックがあったわけですが、メディアの取り上げ方はかなり一面的です。減収減益の直接的な原因は北米市場の冷え込みですが、メディアの論調としては円高の影響を過大視する傾向があります。既に現地生産比率が高いトヨタですから、為替変動の影響に対しては耐久力があります。実際経常利益7割減とはいっても、去年までの数値がむしろ円安メリットで高めに出ていたと見る必要があります。特にレクサスのように日本で生産して北米で売られる高単価車の寄与が大きかったのであって、その部分が金融バブルと共にしぼんだだけです。そういう意味ではマイナスには違いないですが、元々財務の強いトヨタですから、仮に単年度で赤字転落しても、さらには赤字が数年続いても、存亡の危機にはなりえないので、その辺がビッグ3とは大違いなんです。

とはいえ自動車不況の現実は確実にあるわけで、実体経済への影響は計り知れません。特にトヨタの減益発表のインパクトで怖いのは、納入する部品メーカーへの影響で、既に中部地区では衝撃が走っております。好調時には納入価格を叩かれた上に、不況で減産となれば真っ先に影響を蒙るのは、こういった下請企業群です。トヨタは安泰でも下請け企業は存亡の危機となるわけですが、よくよく考えれば、真に必要なサプライヤーならば、発注元企業が資本を入れれば良いわけですが、そうはせずに公的資金で助けられた銀行の融資や都道府県信用保証協会の保証業務などで延命させると、再度好況に巡り合わせたときに、使える安値受注のサプライヤーを温存できるわけです。つまりトヨタのような親企業だけが富む構図ですね。結果的に国内消費をリードしてきた名古屋景気はしぼみ、中小企業は疲弊する構図です。地域のトヨタ依存が高すぎた反動ですね。

その影響で栄の老舗デパートをなぎ倒したジェイアール名古屋タカシマヤも業績にブレーキ、JR東海の連結業績にも影響しています。さらにこんなところにも変調が。

中部空港、4-9月初の赤字 燃料高痛手に
これ燃料費高騰だけが原因ならば、最近の原油価格の動向でいずれ回復が期待できますが、より構造的な問題として、そもそも国際空港として発着便数を増やせずに、経済の冷え込みでむしろ航空会社の撤退が始まってしまい、空港としての存在感が低下していることが見逃せません。開港当時から航空客より見物客が多いことから、空港付テーマパークとも揶揄されましたが、名古屋景気の冷え込みで見物客の落ち込みも予想されるだけに、業績回復は容易ではないというべきでしょう。

となると気になるのが、空港輸送で息を吹き返した名鉄の動向です。元々クルマ大国の名古屋地区で、それに対抗して登場したパノラマカーが、来年度の全廃が発表され、一時代が終わった感があります。ところがクルマ社会の親分であるトヨタよりも、民営化JRと名古屋市営地下鉄/バスの挟撃という思わぬライバルの出現で乗客を減らした名鉄が、中部国際空港の輸送で得たアドバンスも、先行き不透明です。既に岐阜地区の600V線などローカル区間の撤退も進み、リストラも一巡したところでの地域経済のリセッションは堪えそうです。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Saturday, July 05, 2008

磁気券IC券二重価格in新横浜

同じような話題を以前も取り上げましたが、他社線を介した通過連絡運輸特例に関するものでした。SuicaとPASMOの共通化で複雑になった運賃判定モジュールでは対応できないというのが、一応の理由ということですが、やはり磁気券とIC券で運賃が異なるという点には違和感があります。

今回取り上げるのは、3/15にTOICA、ICOCAとの共通化に関連するものですが、不可思議なのは3/14以前は同じだった運賃が、3/15を境に違ってしまったという点です。対象は、新横浜、菊名と小田原以西各駅(Suicaエリア)間です。概要は1枚の駅貼りチラシによる告知だけです。それも篠原口では目立つよう位置が工夫されてますが、駅ビル内のメイン改札口では、ちょっと目に付きにくい位置に掲示されていて、JR同士でスタンスの違いが示唆されます。

新幹線をめぐる運賃計算は、新幹線駅を並行する在来線駅と見なして、在来線の営業キロで計算するルールですが、例外として新幹線駅が在来線駅と離れている場合で、その駅発着または乗継の乗車券については、新幹線と在来線を別の線として乗車経路どおりの営業キロで計算することになっております。つまり小田原から新横浜までは、新幹線経由と在来線経由とで運賃が異なるわけです。ここまでは本則による部分です。

問題は小田原~新横浜間の新幹線経由の乗車券が東神奈川経由の乗車券より安くなるのですが、新幹線は東京近郊区間に含まれませんから、本則どおりであれば新幹線経由の乗車券で在来線を経路選択するとこはできません。しかし便宜的措置として新幹線経由の乗車券で在来線の経路選択が認められております。多分国鉄時代から乗客とのトラブルが多発し、グレーゾーンでもあるので、乗客の利益を優先した取扱いが慣例化したものと思われます。そして民営化後もこの取扱いは引き継がれます。ただし同じ新横浜発着でも、品川方面間では、このような取扱いはなく、本則どおりです。

そして2001年のSuica導入時点でも、IC券と磁気券を差別することは行われず、Suica利用でも新幹線経由の運賃が引き落とされていたのです。今年の3/14までは。3/15のTOICAとの共通化を機に見直されたわけですが、不思議なのは、磁気券では従来どおり新幹線経由運賃が適用されるのに、IC券では経路どおりの運賃引き落としとなり、結果的にIC券利用の場合のみ運賃が高くなる二重価格状態となったわけです。元々慣例的な便宜的措置だったんですから、IC券に合わせて磁気券も経路どおりとすれば、規則上すっきりしますし、とりあえず乗車経路で運賃計算されるわけですから、乗客に特段の不利益があるわけではないのですから、あとは的確な説明がなされれば良いだけです。しかい実際は磁気券と取扱いが分かれてしまい、ICカード所持者は券売機で磁気券に交換することで、割安な運賃で利用できるのですが、乗客に無意味な手間を求め、結果的に二重価格状態としてしまったわけです。意地悪な見方をすれば、IC券利用者からこっそりふんだくることができてしまうという意味で問題があります。

しかしなんでこんなけったいなことが起こるんだろうかと思っておりましたら、最近TVCMでやたら流れるEX-ICがどうも原因のようです。つまりSuicaなどのIC乗車券とのダブルタッチで利用できる東海道新幹線限定のチケットレスサービスの導入で、新幹線で実際にIC乗車券が利用できるようになり、その際に会社間の取り決めで妥協の産物としてこうなったということなんでしょう。EX-ICでは事前予約をwebで受け付け、新幹線改札にカードをかざす時に利用券を受け取るという形でチケットレスを実現するのですが、ベースとなるエクスプレス予約のスタイルを踏襲し、特定市区エリア発着特例をなくして値引きされており、その分経路特定を厳格化したものと思われます。ただしこれだけではJR東海の収入に直接食い込むわけではないJR東日本の在来線での新幹線経由の割安運賃を放置しても問題ないはずです。

ところが別のところにヒントがありました。在来線の熱海~函南間がTOICAエリアから外されている問題です。そう、IC券だけで在来線ルートで静岡エリアへ行けないんです。新幹線経由でEX-ICを用いる場合だけ、IC券で継続利用できるんですね。つまりかなりセコい新幹線誘導策ということができそうです。こだましか停車しない三島や掛川で新幹線連絡の名目で在来線列車を長時間停車させてるぐらいですから、あり得る話です。

Suica生みの親の椎橋JR東日本IT-Suica事業本部副本部長の著書に明記されてますが、Suicaの最大の功績は、ライトユーザーを囲い込めたことです。従来鉄道をあまり利用しなかった人たちにとって、着駅までの運賃を調べて券売機に小銭を投入し、乗車券を買い求めること自体が負担と感じられていたのが、チャージさえしていればカードを改札でかざすだけで済むことで、鉄道利用の掘り起こしができたということですね。今後高齢化で運転免許を返上する人も増えるでしょうが、そういった人たちの中には、そもそもキップの買い方がわからないという人がいたりします。人口減少が始まって、右肩上がりの将来を展望できない中で、このことの意味は重要です。

例えばスルッとKANSAI各社が導入したPITAPAが、ポストペイ方式を採用し、利用ごとにポイントを付与することで、同一区間の反復利用の場合の引き落とし上限を定期運賃相当とすることで、定期券や回数券を廃止するという画期的な方法を試みておりますが、発行はクレジットカード同様に煩雑なこともあり、普及度合いはSuicaなどのプリペイド陣営ほどではないようです。PITAPAはヘビーユーザー向けサービスと考えた方が良さそうです。それに対して無記名式ならカード販売機で買えるし、定期券タイプも専用発行機が用意されているSuicaの方が、利用者の広がりは大きいといえます。このことはPASMO品切れでも図らずも明らかになりました。

JR東海のEX-ICは、その意味では新幹線利用客の囲い込みという意味で、ヘビーユーザー向けのサービスといえますが、反面ライトユーザー軽視とも取れるだけに、いささか問題のある対応かと思います。意地悪な言い方をすれば、バレなきゃ高く引き落として構わないということですから、JRを信頼して利用する人が知ったら失望するんじゃないでしょうか。

| | Comments (4) | TrackBack (2)

Sunday, August 26, 2007

もう一つの九州新幹線

これはあくまでも未確認情報でして、裏を取ったわけではありませんので、そのつもりでお読みください。DJ誌の最新号でも整備の進捗が取り上げられている九州新幹線ですが、ここに至るまでに紆余曲折があったのは、ご存じの方も多いと思います。

そもそも総延長260kmほどの新線建設を、起点側でなく終点側の新八代~西鹿児島(→鹿児島中央)から着手したことに、ある種の政治的意図があったのだと思います。諸説ありますが、需要のある博多~熊本間を先行させると、採算性に劣る以遠の区間の整備が着手されない可能性があるということがまことしやかに言われたりもしますが、真偽のほどは不明です。また整備新幹線建設スキームに"スーパー特急方式"が取り上げられたことも、当該区間の建設を念頭に置かれたものという見方もあります。ま、いずれにしても整備新幹線自体が、国鉄分割民営化で計画の中断を恐れた複数の政治家の押し込みによるものであることは既に指摘したとおりです。

本来は根拠となっている全国新幹線整備促進法で想定されていなかった事態ですので、計画そのものをゼロベースで見直すべきだったのですが、そのような議論は為されませんでした。「新幹線は票になる」というだけの理由で、苦し紛れの整備促進に向かったのです。それ故に、気がつけば次々と新規着工が進み、スーパー特急やミニ新幹線で計画された区間も、いつのまにかフル規格に化けるということを繰り返し、JR東海を激怒させた既存新幹線買い取り代金への上乗せで無理矢理捻出した鉄道整備基金も2007年で枯渇することとなり、財源の当てもなく漂流する整備新幹線問題は、実にさまざまな問題を抱えながら進められることとなります。

そんな中で、九州新幹線鹿児島ルートに関しては、未確認ながら興味深い情報があります。スーパー特急方式で終点側から整備が始まったことで、西日本鉄道が、整備新幹線事業への参入をほのめかしたことがあるようです。詳細は不明ですが、考えられるところとしては、第二期の船小屋温泉~新八代間の計画を一部変更して大牟田で西鉄大牟田線(→現天神大牟田線)につなげて、鹿児島までの都市間輸送に参入することは考えられます。鹿児島中央までの建設キロは200km程度で、仮に最高速度160km/h、表定速度130km/h程度とすれば、大牟田~鹿児島中央間1時間半程度ですので、福岡(天神)~鹿児島中央間2時間半ということで、十分競争力を発揮できます。となればJR九州にとっては手強いライバルとなるわけで、このことでJR九州は整備新幹線事業に前のめりにならざるを得ない状況になったのではないかと考えられます。ある意味スーパー特急方式の裏をかいた話ではあります。

ま、この辺は無理して延命させた整備計画の隙を突く行動ということになりますが、元々整備新幹線の事業主体となるはずだった国鉄は解体されたわけですから、整備新幹線の事業主体に関しては、元々あいまいなところがあったわけです。一応並行在来線の切り離しを条件づける形で、在来線を管轄する事業者が事業主体となることが想定されていたんでしょうけど、無理して延命させた計画だけに、あいまいさが残ったわけですね。思えば北陸新幹線長野~上越間の着工時に、当時のJR東日本松田社長が、金沢までの一括着工に言及して物議を醸しましたが、その結果北陸新幹線の整備に消極的だったJR西日本の背中を押す形になったことと似ています。

今となっては真相は藪の中、あるいは九州選出の政治家が西鉄に騙らせただけなのかもしれませんが、実は真相はどうあれ、JR九州の立地条件のよさを感じます。西鉄という手強いライバルがいることが、JR九州にとっては重要なんです。元々九州は、北九州と福岡という2つの政令指定都市を抱え、かつ50万クラスの熊本、鹿児島から大中小さまざまな規模の都市が適度の分散していて、鉄道事業にとっては好立地ではあります。その点では札幌一極集中で、必然的に末端の過疎化が進行する北海道や、そもそも大都市が存在しない四国と比べれな、遥かに恵まれた立地ではあります。

が、このことは同時にライバルの存在が不可避であるということでもあります。条件の悪い北海道や四国でJRに挑戦する者が現れる可能性は低いですが、九州では昔から輸送市場が競争的でして、西鉄の前身の九州電気軌道(→北九州線)からして、阪神に倣ってインターアーバン(都市間電車)を目指し、1日数本の汽車ダイヤに、頻繁運転の電車で挑み乗客を奪い繁栄した会社です。また九軌系列の九州鉄道(2代目→天神大牟田線)も、同様に複線電化の高速鉄道に電車を頻発運転し、久留米までの乗客を奪い取った歴史があります。

そういった競争的DNAを持つ西鉄ですが、高速バス事業でも攻勢をかけ、福北ラインの3系統合計10分ヘッドをはじめ、とにかく運行頻度の高さが西鉄流で、スピードで勝る鉄道から客を奪っている状況があります。それゆえにJR九州は競争市場で経営に緊張感を持たざるを得ないわけです。

逆に福岡都市圏輸送では、筑豊本線と篠栗線の電化で福北ゆたか線と称して輸送改善したり、天神大牟田線との並行区間に新駅を作って西鉄の営業基盤を切り崩すような動きもあります。両者切磋琢磨して輸送の質を高めることが、結果的に乗客の利便性を高めているとも言えるわけです。そういう意味では、台湾鉄道当局が関与しなかったためにライバル関係となった台湾高速鉄道の事例に似ています。ま、台湾では高速バスも航空も全てライバルですから、コンペティター(競争者)が増えたところで大勢に影響ないのかもしれませんが。

鉄道事業は地域独占であるといわれますが、現実にはマイカーの普及で完全独占は不可能な状況です。それでも市場占有率が一定以上あれば、独占性が発揮できるんです。一般論では市場占有率40%を超えると独占事業といえるようです。その意味で例えば新幹線の開業と引き換えに航空が撤退するような区間では、本来新幹線の必要性自体に疑問があります。新幹線の対航空の優位性は1にも2にもその卓越した輸送力にあって、航空では代替不能なんですが、逆に航空のような需要に応じた柔軟な輸送サービスは苦手であるわけで、元々需要が旺盛な東名阪を結ぶルートで鉄道と航空が並存しているのは、その結果として乗客のトータルな利便性は高まるんです。そのことを忘れて航空を市場から締め出すためにリニアを建設すべしというのはスジが違うわけです。多様性こそ市場経済の特徴であり尊重されるべき視点です。

とはいえJR九州の経営はけっして楽ではない状況で、立地のよさと3島会社に渡された経営安定基金の存在を根拠に、九州新幹線全通のあかつきには、株式上場を果たして本州会社を凌ぐ優良銘柄になると期待する向きもあるようですが、既に3島会社の株式上場は財務省サイドで諦めているようです。整備新幹線では事業者であるJRの受益のほとんどは、線路使用料として鉄道建設・運輸施設整備支援機構に徴収されてしまうので、新幹線単体での利益貢献の度合いは低いということを押さえておく必要はあります。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

Tuesday, August 14, 2007

鉄道書評、線路にバスを走らせろ

夏休みシーズンで、鉄道関連ブログにも訪問記や旅行記が多数アップされている中で、当ブログ管理人はPC熱と闘いながら(笑)、書斎派鉄の道をまい進しております(苦笑)。

線路にバスを走らせろ 「北の車両屋」奮闘記(朝日新書 56) (朝日新書 56)
国鉄末期からの地方交通線転換によって、多くの営業路線を失い、事業規模を縮小した北海道の鉄道ですが、それでも残った路線の状況は厳しく、営業キロ2,500km中6割はローカル線という状況です。当然存廃が問われる路線も多く、JR北海道発足後にも、池北線の三セク転換と深名線のバス転換が実施されました。赤字路線の分離は、それ自身は経営面で必要なことには違いないのですが、同時に事業規模の縮小を余儀なくされるわけですから、JR北海道にとっては痛し痒しの部分です。

また90年代の金融危機のときに、北海道拓殖銀行が突然の経営破たんに見舞われたように、北海道では地場産業の衰退に直面している実情もあり、鉄道事業の撤退は、地域の衰退に拍車をかけることにもなります。また元々鉄道と共に開拓が進んだ北海道では、鉄道事業そのものもが産業集積として地域雇用を支えていた現実もあります。先日20年越しで和解、決着した旧国鉄職員のJR各社への採用を巡る労使対立も、元をただせば北海道の鉄道事業縮小に伴なう余剰人員の北海道以外の各社への受け入れを巡って、人選に所属労組による差別があったかどうかが争われたものです。

それやこれやで問題を抱えるJR北海道ですが、同時にリゾート列車や高速振り子列車などなど、実に多くの技術開発を行って、鉄道の活性化に取り組んでいるのは、あとがない崖っぷちゆえでしょうけど、ある意味地域分割のプラス面とも評価できます。最果ての大地で鉄路を維持することの意義を考えさせます。

以前、北海道旅行で、日高から襟裳岬を通って十勝へ抜けるルートを取ったときに、札幌からの鉄路乗継は飽きそうだから(笑)、道南バスの直通高速バスで浦河へ向かったのですが、浦河ターミナルで降りて最寄の東町駅へ行って驚いたのは、列車の少なさでした。襟裳岬方面へはどのみち様似でバスに乗り継ぐわけですが、並行する国道のJRバスのバス停を見ると、ほぼ1時間に1本のバスが走っているのですが、「学休日運休」の注意書きがあります。つまりは事実上の通学バスと化しているのですが、そうすると列車は何のために走っているのだろうかと疑問が出てきました。そう、線路がある以上、列車を走らせるしかないのです。

一応襟裳岬へ向かう観光周遊ルートには組み込まれており、様似から襟裳岬方面へのバスは。列車に接続をとっているわけですから、両者が棲み分けているわけです。しかし同じJR北海道同士で、両者の連携がないのは、ただでさえ少ない旅客を分けあう分、収支面では不利になります。北海道には鉄路と並行する整備された道路という似たロケーションのところは多数あります。DMVはそんな北海道では割と自然な発想の産物なのかもしれません。

そういった背景で、DMV開発に着手したわけですが、歴史を紐解けば、同様の発想で何度もトライされ、死屍累々の失敗を積み重ねてきたキワモノでもあるわけです。それを幼稚園の送迎用園児バスを見て「そのまま線路に乗せられそうだ」と発想するところが見事です。しかも軽量で線路を傷めないし、GPSなどの位置情報システムを利用すれば軌道回路を用いた閉そく信号も省略できるとか、行き違いも片方が線路を外れればよいとか、必要に応じて線路から外れた集落などへ運行できるとか、万が一の災害のときにも、線路と道路の復旧している部分を自在に行き来して運行を確保できるなどなど、発想が広がります。そう、DMVは最果てのLRTと考えれば理解が深まりますね。

基本的に引き算による技術革新ということです。鉄道は「金を失う道」といわれるように、線路を設置し維持するのに多額の費用がかかるわけで、需要が見込めないところで成立させるのは難しいわけですが、容赦のない過疎化の進行で乗客が減り続ける最果ての鉄路を残すには、現状に何かを付け足すのではなく、要らないものを削ぎ落として本体を維持するという発想なんですね。JR西日本の富山港線が富山ライトレールとして再生されたのに似ています。整備新幹線事業の着手に関連した富山市の都市計画で富山駅周辺の高架化事業が行われるときに、ローカル線である富山港線を新しい高架駅へ乗り入れさせるには多額に費用が発生するわけですが、アプローチ部分を都市計画道路上の併用軌道とすることで、ローカル線を都市交通に取り込んだわけです。足し算ではなく引き算で成功した事例ですね。そう、ヘビーレールから余分なものを割り引いてライトレールにするのであって、例えば元々低規格で放置されていた東急世田谷線が、軌道回路を用いた閉そく信号機と、連動する旧国鉄ATS-B相当の車内警報装置や列車無線を装備し、冷房付の新車に置き換え、ホーム嵩上げでバリアフリー化するなど、多額の費用をかけて列車定員を減少させ駅での客扱い時間を伸ばしスピードダウンした現実を見ると、技術革新の方向性が誤っていると言わざるを得ません。

大量輸送こそ鉄道の使命ですが、一方で過疎化の進捗で公共交通の維持が難しい地域も多数あり、居住放棄につながる限界集落が増えていると言われます。このままでは国土が荒れ果て、経済的パフォーマンスを低下させる要因にもなりかねない中で、公共交通を維持するソリューションの必要性は高いといいえます。その意味で身の丈にあったイノベーションとして、DMVの行く末を見ていきたいと思います。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

Sunday, July 01, 2007

越美北線と高千穂鉄道の間

日本の原風景を代表する中山間地の2つの鉄道で明暗を分けたニュースです。

JR越美北線が全線開通・3年ぶり
宮崎県の第3セクター高千穂鉄道、全線廃止へ
越美北線は2004年7月の越前豪雨で被災、高千穂鉄道は2005年9月の台風14号による被害です。路線立地の似た両線の明暗を分けたのは、特定地方交通線廃止に揺れた国鉄末期、国鉄に残ってJRへ移行した線区と第三セクター鉄道に転換された線区の明暗という整理は可能です。鉄道事業はスケールメリットがものをいうのは確かです。

しかし決定的に異なるのは、やはり行政の対応でしょうか。過疎化の進む越美北線沿線ですが、その中で沿線の大野市が、以前から住民の定期券購入者に補助金を支給してきたことが効いているのではないかと思います。これもそもそもは、かつて大野市へ達していた京福電気鉄道(現えちぜん鉄道)越前本線の勝山―大野間廃止の苦い経験からきているものです。

大野市はかつて県都福井市へ2本の鉄道が通じていたわけで、地方都市としては破格の好条件でした。私鉄である京福の方が、運転頻度も高く、利便性に勝っていたのが、沿線の過疎化とモータリゼーションとともに経営が苦しくなり、度重なる運賃改定で高くなる一方、国鉄時代の全国一律運賃制度のもと、低廉な運賃が維持された越美北線に、沿線利用者が流れるようになります。結局京福は、生き残りのために勝山から先の区間を廃止して、残る区間の運行に経営資源を集中させる選択をします。私企業としては当然の選択です。

これによって越美北線が唯一の鉄道となった大野市では、特定地方交通線問題で結果的に国鉄に残った越美北線の廃止問題に危機感を持つようになります。で、単なる陳情では廃止は阻止できないという判断があったのでしょう。前記の定期券購入補助を行って、利用者を補助する形で支えていきました。そのことがあったからこそ、越美北線の復旧費用40億円の一部を県が負担することに道がひらけたのでしょう。実際被災当初は県は負担を嫌ってJR単独復旧に言及しておりましたが、結果的に一部負担することになりました。

その間に県レベルでもいろいろありまして、1992年に京福電気鉄道が福井支社管内の鉄道線全廃を打ち出したのに対し、97年に県と沿線市町村で対策協議会を発足させ、行政支援を含む活性化の模索があ始まります。このとき既に京福の廃止表明から5年経過しており、当時の行政の危機感の希薄さが読み取れます。と同時に、需給調整規制撤廃を盛り込んだ改正鉄道事業法の施行で、廃止に際して地元との協議で不調でも1年後に廃止できるいわゆる見切り発車条項が盛り込まれたことで、自治体側が対応せざるを得なくなったというのが本当のところでしょう。

京福も見切り発車に踏み込まず、地元との協議を続けたわけですが、これには整備新幹線の北陸新幹線計画が絡む福井駅付近の連続立体化事業事業をめぐる問題がさらに絡んできたものと思われます。JR北陸本線の高架化にあわせて、京福も高架で福井駅へ乗り入れる形で福井市で都市計画決定されていたこで、路線の存廃が都市計画を不確定にしてしまうという珍しい現象が起きたんですね。またいつになるかわからないけれど、新幹線が福井へくれば、フィーダー輸送で京福の鉄道線が息を吹き返す可能性もあるだけに、特に自治体側が粘ったのでしょう。けれど事態は意外な展開となります。

2000年12月17日に越前本線志比境―東古市間で列車正面衝突、さらに2001年6月24日に保田―発坂間で再度の列車正面衝突事故と、半時に2回の重大事故で全面運休に追い込まれ、復旧のめどがたたない中で、2002年に第三セクターのえちぜん鉄道を発足させて、翌年2月に京福から鉄道資産を譲り受け、同年8月に三国芦原線。10月に越前本線改め永平寺勝山線が営業運転を始めます。福井県は地域として公共交通の危機に直面し、それとともに議論も活発化、福井駅高架化に対しても、既に名鉄から岐阜市内線の中古車を導入してLRT化を指向する福井鉄道との直結を踏まえた高架駅乗り入れ中止へと舵を切ることとなります。

えちぜん鉄道、一部LRT化・福井県が計画変更へ
かくして福井では、公共交通の廃止議論が地域の危機感を強め、鉄道の存続に行政が大きくコミットすることとなりました。ただし越美北線は一部運休の影響もあるでしょうけど、徐々に利用者を減らしている現実があるわけで、とりあえずの復旧、存続ではあります。

高千穂鉄道については、まずは行政が全く腰が引けている状況ですから、存続はそもそも無理筋ではありました。それでもとりあえず観光鉄道としての復旧をめざし、神話高千穂トロッコ鉄道という新会社を発足させ、寄付を募ってきたわけですが、寄付金は予定額を大きく下回り、新会社への資産継承のために休止扱いを続けてきた高千穂鉄道がいつまでも会社清算ができないということで、鉄道資産は新会社に継承されることなく廃止されたわけです。これでほぼ復活の可能性は絶たれました。

善意の寄付による鉄道存続といえば、関東の銚子電鉄の事例が直近で話題となりましたが、首都圏に立地し、関連事業のぬれ煎餅のネット直販サイトがアクセス急増で急遽受付中止となるなどが話題となって、メディアへ露出したことが大きかったですね。こういったことがなければ、善意の寄付だけで必要な資金を集めようというのは、自ずと限界があります。福井でも決して当初から行政は積極的だったわけではなく、地域の存亡にかかわる事態から危機感が生まれ、行政や住民に共有された結果でもあります。悲しいかな目に見えるシンボリックな出来事にしか人々は反応しないわけです。

関連記事:

高千穂鉄道復旧は成るか?
高千穂鉄道復旧は成るか?Part2
高千穂鉄道復旧実質断念、地域経済の袋小路
高千穂鉄道部分復旧の模索は続く

| | Comments (7) | TrackBack (0)

Monday, January 22, 2007

地下鉄談合、名古屋バブルかもしれない

ホントしょーもないニュースです。

名古屋地下鉄談合、刑事告発へ最終調整・公取委
名古屋市地下鉄談合、一両日中に本格捜査・地検
大林組や鹿島、清水建設など一斉捜索・名古屋市地下鉄談合
名古屋市営地下鉄桜通線の野並~徳重間の地下鉄工事を巡る談合事件でゼネコンが捜索されました。刑法の談合罪適用を視野に入れているそうで、ゼネコンへの適用は初となるそうです。

工事区間ですが、名古屋市南東の郊外で、名鉄本線と地下鉄鶴舞線の双方から離れた鉄道空白地で、丘陵地帯の新興住宅地の風情がgooglemapからも読み取れます。一昨年の中部国際空港の開港や愛知万博の開催もあって、絶好調の名古屋経済のフロントエンドともいうべきエリアのようですね。

名古屋駅前にトヨタ本社ビルができて、名古屋で空前の不動産ブームに沸いているようですが、特に首都圏エリアのデベロッパーの進出が相次いでおり、マンションも戸建ても好調なようです。好調なトヨタのフトコロを当てにしたわけですね。

そのことに対して地元ではやや違和感をもって見られているようですが、それでも住宅が好調であれば地域経済へのインパクトも強いわけでして、桜通線の延伸の意思決定も、そういった意味では必要に迫られてのものだったと考えられます。そして談合決別を宣言した大手ゼネコンによって工事が受注されたわけですが、そこで大規模な談合が行われていたというのは、悪い冗談では済まされない話ではあります。

たぶん本社での談合決別宣言が、地方の支社にまで徹底されていなかったのでしょうけど、一部で談合発覚を誤魔化すために工事区間の振り替えまで行う念の入れようからすると、悪質性は高いといえます。以下は個人的な推測であることをお断り申し上げておきます。

好調な名古屋経済を背景とした不動産ブームという状況で、競合が激しくて低値受注が多い民間工事を、公共工事の談合で益出ししてつないできたゼネコンの経営からすると、口で言うほど談合決別は簡単ではないはずです。特に元請となることが多い大手ゼネコンの場合、下請けに泣いてもらってやりくりしている状況で、たまにはいい顔がしたいはずです。そんな状況で好調な名古屋で地下鉄工事となれば、多少おこぼれにあずかってもバチはあたるまいと考えたとしても不思議ではありません。そう、ある種バブルの熱狂がそうさせたのかもしれません。

というわけで、名古屋ひとり勝ちがもたらした談合事件ではないかと愚考いたします。関わった大手ゼネコンは東京と関西の会社ばかりで、名古屋からすればよそ者ばかりです。うーん、やっぱりバブルが忘れられないか-_-;。

こうなるとトヨタの好調も罪作りではありますが、かつてそこら中にいたマーク2三兄弟で大儲けしたトヨタが、やはりアメリカでブレークしたレクサスブランドの国内投入で上級車への買い替えを狙ったのですが、中流意識を反映したマーク2等からの買い替えは、上級シフトはベンツなど輸入車へ流れ、原油高とユーザーのリタイアメントの影響で大半はコンパクトや軽に乗り換えられという具合に、海外の好調を打ち消す体たらくに苦しんでおります。トヨタ神話も絶対ではないのです。

やや気になるのが、トヨタが最近中央リニアに積極姿勢を見せているそうで、曰く「東京~名古屋間40分なら相互に通勤圏になる」そうで、三河から全国へ分散した系列を含めた事業所間の連携強化に期待しているようですが、んなもんビジネスジェット使えよな! JR東海がJR総研から技術者を受け入れ、山梨実験線の延伸を決めるなど、前のめりになっているのも、トヨタの後押しに期待しての行動とすれば合点がいきます。あわれバブルのあだ花となるか(合掌)。

| | Comments (2) | TrackBack (1)

Sunday, August 13, 2006

神奈川東部方面線で横浜市のフライング

相鉄とJR東日本の相互直通構想が横浜市の横槍で、神奈川東部方面線の構想と合体したのは既報のとおりですが、神奈川県議会の6月定例会の代表質問で、興味深いやりとりがありました。

http://www.pref.kanagawa.jp/gikai/pg/107/d_q.htm
民主党平本さとし議員の質問で取りあげられておりますが、事業費の自治体負担分について自治体間で協議中にかかわらず、横浜市は本年度負担分6億4千万円の2/3相当の額を予算計上することで、フライングしております。

県側は一応理解は示すものの、困惑気味ですね。事業そのものは横浜市域内で完結しますが、大和市や藤沢市なども受益がありますので、県を含めて負担割合を決めなければならないのですが、協議中に決め撃ちで予算措置をするというのは、行政手続き上は強引なやり方と言わざるを得ません。そうまでして新横浜に新線を通したいのはわかりますがね。

新横浜地区のオフィスビルの空室率は確かに高いですし、ラーメン博物館のようなテーマパーク型アミューズメントが成り立つのも、賃料の安さの反映でもあるわけです。また商業施設に関しては、ほとんど何もない状況ですが、開業時点から40年以上新幹線駅があって、なおかつのぞみ停車駅であるにもかかわらずですから、結構お寒い現状といえます。MM線の開業でブームが起きたみなとみらい地区とは大違いです。横浜市の現実として見ておく必要があります。

4日の総務省の発表で人口減が住民台帳上でも確認されましたが、その中で9都道府県では人口増、神奈川県は増加して、やはり増加した大阪府を抜いて人口2位となり、市町村では横浜市がトップという具合に、人口減少の中で勝ち組地域ではあるんですが、いうまでもなく東京のサテライト(衛星都市)としての発展であることは押さえておく必要があります。ちなみに南びわこ駅問題で揺れる滋賀県も人口増となっております。

そういった点を踏まえてみると、自前の市営地下鉄を建設、運営し、4本の環状道路を整備するなど、横浜市の開発スタンスは独立都市を目指すフルセット型の特徴があります。実はそれが実情にあっていないということは言えるのではないかと思います。地下鉄にしても、例えば神戸市が神戸高速鉄道によって既存の鉄道事業者との連携で路線網を強化したのに対し、第三軌条集電の独自規格で1,3号線(ブルーライン)を整備したばかりか、横浜環状鉄道(4号線=グリーンライン)は規格の異なる小断面リニア地下鉄として建設するなど、自前主義で高コスト体質になってしまっている点も気になります。ひとことで言えば戦略性が欠如しているということです。

みなとみらいのブームは、渋谷から直通で30分程度という時間距離がミソです。日産の本社移転も、ビジネスの足場として銀座との比較ですから、地価が安く、湾岸道経由で羽田、成田の両空港へのアクセスにも有利で、誘致企業優遇策を利用できるみなとみらい地区の選択には合理性があります。のぞみが止まるからといって新横浜は選択されないわけです。

人口減少社会への移行によって、人口動態は従来の常識では測れない状況になりつつありますが、滋賀県の場合もそうですが、地域開発には戦略性が問われる時代になってきたといえます。本当に必要な事業をきちんと見極めるとともに、コストパフォーマンスを高めることが問われるわけです。事業者の言い値で事業費を決定することも要注意というわけですね。

| | Comments (4) | TrackBack (1)

Sunday, July 09, 2006

滋賀県知事選で南びわこ駅凍結

何かニュースがミサイル一色になっている感がありますが、そんなことに関係なく社会保険庁の不正は留まらず、福井さんは辞めないし、米国産牛肉は輸入されるしと、何だか騒々しい日々が続きます。スッキリ梅雨明けとはまいりません。「余人をもって替えがたい」福井さんって、どっかの国の将軍様みたいなもんでしょうか^_^;。

話題としては今さらながらなんですが、正直なところ全国区レベルではニュースとしての露出度が低くて実態が見えにくい滋賀県知事選で南びわこ駅を含む公共事業凍結を訴える新人がまさかの勝利、三選をめざす現職がまさかの敗退ということで、特に5月に着工されたばかりの南びわこ駅に関しましては、正直なところよくわかっておりませんでした。とりあえず経緯は朝日新聞地域版の特集に詳しいようです。

【秒読み新駅着工】
「新都心」に視線熱く(上)
【秒読み新駅着工】
右肩上がり強気の試算(中)
【秒読み新駅着工】
是か非か、三者三様 (下)
ここに至る過程で(仮)湖東駅と栗東新駅(南びわこ駅)の2駅設置やびわこ空港構想など、なんともバブリーな計画があったことなどを考えると、今回の選挙結果は、県民の良識が働いた結果と評価できそうです。

慌てたのはJR東海でしょう。記事中にもありますが、元々請願駅として計画され、駅設置費用246億円のうち240億円を地元自治体が分担して負担するのですが、これはあくまでも駅部分だけの話で、周辺の区画整理事業その他の整備事業をあわせて650億円、かつJR草津線に設置予定の連絡駅に関してはJR西日本との協議はこれからの話ということで、どう見ても無理スジに見えます。それでもJR東海にとっては、のぞみのスピードアップのためにはこの位置に退避可能駅を作りたかったはずです。

東海道山陽新幹線をめぐるJR東海とJR西日本の軋轢は以前から指摘されておりますが、昨今輸送シェアがじりじり低下している状況に注目しておきましょう。無駄を指摘された神戸空港の意外な健闘は、実はJR海と西の連携の悪さに起因するニッチな需要の掘り起こしに成功したものと見ることができます。神戸市にとってはJR東海さまさまです^_^;。

で、のぞみの新神戸停車を増やすなど、やっとここへきてJR西日本との連携の必要性を認識したようですが、そのためには京都の手前のこの位置に退避駅がほしいところです。少なくとも京阪神へ向かうのぞみが手前で先行列車に頭を抑えられる状況は解消したいはずです。特にN700系のスピードアップ効果を活かす意味はありますので。

ならばJR東海が自腹で駅を作ればよさそうなものですが、それをすると悪しき前例となって、ほかの駅設置希望地域からの突き上げを受けてしまうのでできないわけです。例えば相模新駅などですが、こちらは地元自治体がまとまる気配がありませんが、南びわこ駅がJR東海単独事業で実現してしまえば、こちらにもという話になるでしょうから、JR東海としてはおいそれと呑めない話になるわけですね。

あと駅予定地が盛土区間であるために、迂回路を作って盛土を撤去し、高架橋を設置するという手順となるために、山陽新幹線厚狭駅や上越新幹線本庄早稲田駅に比べて割高な工事費となっている点にも注意が必要です。東海道新幹線で多い盛土区間ですが、高架橋へ改築されるとすれば、料金上乗せ分を積み立てて行う東海道新幹線の設備更新工事の先取り的な要素もあるわけですが、そうなると請願駅だからということで工事費のほとんどを地元で負担させられる根拠が弱くなる気がします。駅が欲しい人たちには見えない部分かもしれませんが。

ま、ただあくまでも凍結であって、中止ではないわけですから、選挙結果を受けて県議会などで議論されるはずです。ま、どうせオール野党で袋叩き状態でしょうから、まだどう転ぶかはわかりませんが、議会解散などなどの泥仕合に発展すれば、ますます知事派に風が吹くことになりそうですから、結構後々にひびく選挙結果かもしれません。今後も注目してまいりましょう。

| | Comments (6) | TrackBack (1)

Saturday, June 10, 2006

相鉄とJR東日本の相互直通大臣認定

というわけで、前回記事(東急相鉄相互直通、横浜市の横暴相鉄の涙)の続きを新規にアップします。相鉄とJR東日本の相互直通に関して、9日、大臣認定を受けたことで、手続きが前へ進みます。とりあえず西谷-横浜羽沢間2.7kmについての認定ですから、JRとの直通を先行させる形での決着となりました。

http://www.sotetsu-group.co.jp/news_release/archives/PDF/060609_01.pdf
東急との相互直通に関しては、継続して協議中と考えられます。

同時に瀬谷駅の下り待避線設置による構内4線化を行い、横浜海老名間5分程度短縮となる特急運転構想も動き出すこととなります。この結果横浜駅のターミナル集客力を維持し、空洞化を防ぐ狙いがあるものと思われます。この辺も前回記事で触れたとおりの狙いがあると考えられます。とりあえず渋谷行きの電車が自社線を走り出す(東急との直通)前に、特急運転で横浜の地盤沈下を防ごうというわけです。

あと開業時期の問題も重要でして、当面JRとの直通が2015年ですから、保有車両の更新を当面はJR直通可能車(10000形又はその後継?)で進め、予定数がそろったところで東急直通対応の縮小限界、ATOホームドア対応車に切り替えるといった時間差対応が可能となります。“走ルンです”ブラザーズ、東急5000系の色違いで対応となれば、前回記事のSATOさんのご指摘のように、追加費用は許容範囲かもしれません。7000形の6M2T8連への組み直しなど、6000形末期を思わせる変化が見られる状況ですから、これらの置き換えと考えれば、確かに無理のない車両計画になりそうです。

相鉄の本音は、東京都心直通は、とりあえずJRとの直通で達成可能なので、ここで可能な限りの投資リターンを回収し、東急との直通は収支トントンでいこうという意図があると思われます。構想の運転本数の少なさですが、いざとなれば横浜羽沢で5両増結の15連という裏技の可能性は指摘しておきます。東急との直通が始まるまでの短期間限定であれば、増結の5連を別建てで横浜羽沢まで走らせる手が使えます。ついでにグリーン車連結でもすれば、増収効果も高くなりますね。

というわけで、意外にしたたかな相鉄の姿勢ということが言えそうです。大手私鉄中最も小規模なグループに属する同社ですが、規模の点で類似の西の阪神が、例の一件ですっかり評価が地に落ちた一方で、他社との協業で未来を拓こうとする姿勢は見るべきものがあります。結局阪急との経営統合へ進む阪神との対比はこの点でも際立ちますね。

| | Comments (5) | TrackBack (0)

業績好調でも意外と難しいつくばエクスプレスの次の一手

つくばエクスプレスを運行する首都圏新都市鉄道が9日に3月期決算を発表しました。

つくばエクスプレス、営業収益140億円・当初予想上回る
記事にもあるとおり、想定を12%も上回る好調な客足に支えられて、とりあえず好スタートを切った形です。開業が昨年8月ですから、通期の実績は2007年3月期を待たなければなりませんが、償却前黒字ならば現金の流出はありませんから、全くの新規の鉄道としては、文句なしの実績です。営業損益で29億円の赤字ですから、旧国鉄流にいえば営業係数120程度ということで、巨額の減価償却費も年度が進めば減額されてきますから、間違いなく将来の黒字は約束されたことになります。それでも単年度黒字は20年後の見通しですが。

こうなると自治体主導三セクの弱いところで、沿線自治体から東京乗り入れやつくばから先への延伸などの要望が出される可能性がありますが、当面は現状のまま沿線開発を深度化することが重要です。仮に何らかの新規投資をするとしても、沿線開発に資するものに限定すべきです。

といったことを踏まえて公式サイトを覗いて見ますと、秋葉原で駅ビル事業を行うそうで、当面は秋葉原のターミナルとしての補強を考えているということで安心です。それにしてもTXは用地提供だけで、事業主体は阪急電鉄とは驚きです。

参考:

(仮称)TX秋葉原駅開発ビル
餅は餅屋ということでしょうか。

鉄道施設に関しては、新幹線並みの贅沢なインフラですから、当面はメンテナンスも楽でしょうし、これといって問題点は見当たりませんが、逆にそのことが東京駅乗り入れにしろつくばから先への延伸にしろ、難しくしている点は否めません。また黒字化が見込まれる20年後には、設備の老朽化への備えも必要となりますが、贅沢なインフラは更新も出費を覚悟する必要があります。

さらに茨城県内では、TX沿線への開発の集中が、逆にそれ以外の地域の衰退を伴っている点を忘れるべきではないでしょう。鹿島鉄道の廃止問題は、直接的には自衛隊百里基地のジェット燃料輸送のトラックへの切り替えによるものですが、TX開業でつくば線の高速バス減収などで影響を受けた関東鉄道が支援を打ち切る意向によるものである点は見逃せません。全線は無理でも乗客の多い常陸小川までの存続を県が支援するなどの対策は望ましいのですが。

関連記事:

“超優良企業”つくばエクスプレスの謎
つくばエクスプレスで地価下げ止まり?
開業初日にオーバーランのつくばエクスプレス

| | Comments (3) | TrackBack (0)

Saturday, May 27, 2006

東急相鉄相互直通、横浜市の横暴相鉄の涙

かねてより話題の東急と相鉄の相互直通が決まりました。

相鉄と東急、相互乗り入れを申請
詳しくは記事にあるとおりですが、少し目新しい部分は、都市鉄道等利便増進法の枠組みを活用した事業ということで、上下分離を前提とした整備の枠組みなんですが、従来の第三セクターによる線路保有とは別の手法でして、整備新幹線の都市鉄道版とでもいえばピッタリくるものです。これを公設民営と呼ぶかどうかは判断に迷いますが。

基本的に整備事業費を国、自治体、鉄道・運輸機構(旧鉄道建設公団の資産管理部門を引き継いだ独立行政法人)で1/3ずつ負担し、そのうち鉄道・運輸機構支出分を事業者がリース料を支払うことで間接的に負担する仕組みですが、リース期間の定めなどがどうなっているかなど、やや不透明な部分があり、仮に将来事業者が買い取りを希望した場合の取り扱いなどが不明です。JRによる既存新幹線買い取りの場合を前例とすれば、再取得価格(同等の施設を譲渡時点で再度新たに調達すると仮定した場合の時価)ということになりますが、裁量の余地が大き過ぎて、実際整備新幹線建設費捻出のために鉄道整備基金に拠出する目的で約2兆円の上乗せがされて、なおかつその約半分をJR東海が負担させられ、しかも地価の上乗せで処理されたことから、減価償却できずにJR東海の資金繰りを縛ってしまったためにヘソ曲げられちゃいました^_^;。

とまぁことほど左様にあいまいな仕組みで問題があるんですが、元々地価が高いために整備が進まない大都市圏での鉄道整備を促進する意味で、事業者からみれば魅力的な仕組みではあるわけで、2004年8月に相鉄とJR東日本による相互直通計画が発表されたとき、おそらく相鉄関係者は悲願の東京都心直通を少ない負担で実現できるグッドアイデアと胸を張っていたものと推察されます。しかし皮肉なことにこの枠組みを利用するがゆえにハードルが生じてしまいました。

JR・相鉄両者合同の記者会見が予定されながら、横浜市の横槍で突如会見が中止となり、それ以降今日まで関係者の調整が続いてきたわけです。つまり1/3を負担する自治体のうち、神奈川県は当初から賛成表明をしていたわけですが、横浜市が業務地区として開発を進めてきた新横浜を素通りする計画に反発したわけです。

元々神奈川東部方面線の名称で、東横線日吉-大倉山間の線増と大倉山-新横浜-鶴ヶ峰ー二俣川間の新線建設構想は古くからあり、横浜市を中心に協議会を発足させるなどしてきたいきさつがありますが、協議会のメンバーでもある相鉄がJR直通構想を打ち出したことで、事実上神奈川東部方面線の計画は棚上げ状態になってしまいます。それを横浜市が嫌い、一方で東急も新横浜進出を希望していたこともあって、横浜市が東急を抱き込んで相鉄に圧力をかけたというのが、今回のニュースの真相と考えてよいようです。

相鉄は自社沿線特に新線であるいずみ野線沿線の開発の進捗が芳しくないことから、東京直通を希望してはおりましたが、同時に横浜駅西口の駅ビル事業(髙島屋へ賃貸とジョイナス)、地下街(ダイヤモンド地下街)、レジャー事業(ムービル=撤退)など、一連の不動産を管理する立場でもあり、東部方面線が実現した場合の横浜駅のターミナルの空洞化は避けたいのが本音でした。ですから東横線との直通は、商業地区として強力なライバルの渋谷への顧客流出を促すおそれがあるわけで、おいそれと乗れない話ではあります。

一方のJR東日本との直通ですが、横須賀線、湘南新宿ラインへの直通で、ラッシュ時最大4本程度ということで、スピード面も加味して東京直通の恩恵は十分得られて、逆にターミナルとしての横浜の分担率も一定に保てる計画だったわけで、なおかつ相鉄サイドから見れば新線建設区間は2.7kmと少なくて済み、投下資本の少なさと効果の大きさのバランスが絶妙だったわけです。

かつ東横線直通の難点として、東急の車両限界の小ささから、専用の直通車を用意しなければならない点もコストアップ要因ですし、相鉄の最大編成10連に対して東横線8連、噂される目黒線直通の場合は6連ですから、この点でも相鉄側で列車設定に制約が生じてしまうなど、正直なところあまりありがたくない話です。

それでも横浜市が協議に参加してくれないことには、JRへの直通も実現できない以上、相鉄にとっては苦渋の選択だったと考えてよいでしょう。かくして渋々東急との直通計画を呑んだと考えられます。救いは西谷-横浜羽沢間を2015年まで先行開業しJRとの直通を先行させる点でして、横浜羽沢-新横浜-日吉間は2019年開業予定と時間差がある点でして、県や市の財政事情によっては後半はキャンセルもしくは先送りされる可能性がある分、時間差によるリスクヘッジの可能性があるわけです。その間に本線に特急を走らせて海老名での小田急との継送のパイプを太くして、横浜対小田急沿線で需要を掘り起こして横浜のターミナルとしての吸引力を維持する時間も稼げる可能性があります。

というわけで、JRと相鉄のいかにも民間らしい投資効率の良い計画を横浜市が台無しにしたという評価をせざるを得ません。地元企業を大切にしないで地域活性化もないもんですよね。

関連記事

Thursday, January 05, 2006
相鉄と東急、新横浜経由直通報道の読み方

| | Comments (11) | TrackBack (0)

Sunday, May 14, 2006

神話高千穂トロッコ鉄道へ県が支援?

復旧が模索されている高千穂鉄道ですが、こんなニュースが入ってきました。

高千穂鉄道の新社への財政支援、宮崎県知事も「助成検討」
記事によれば、高千穂鉄道の鉄道資産を譲り受けて運行を予定する神話高千穂トロッコ鉄道(以下神話トロッコ鉄道と記す)への資産無償譲渡の可能性について言及したということです。意味するところは、支援ではなく助成というところがポイントです。

つまり直接的な財政支援を必ずしも意味しないと読むべきなんでしょう。県の立場として、運休中の高千穂鉄道の出資者の一員として、神話トロッコ鉄道から高千穂鉄道へ要請されている問題について、鉄道事業法で求められている事業の基本計画書などが判断材料となるわけで、特段目新しい内容でもないんですが、事業の継続性など、将来の全線復旧を含めた事業の見通しを示すというハードルを明らかにしたとおいうことです。というわけで、復旧への一里塚ではありますが、状況が好転したと考えるのは早計です。

神話トロッコ鉄道による復旧の取り組みの困難さは宮崎日日新聞の特集にまとめられておりますが、たとえばJR北海道が開発中のデュアルモードビークル(DMV)に期待するなど、実現性に疑問を持たざるを得ない部分もあります。

DMVに関してですが、道路走行を前提とした車両にとって本来不要な鉄道走行装置を搭載する結果、道路運送法に定められた重量制限をクリアする必要と、鉄道車両としての安全性の両立という難しい課題があり、簡単に実用化とはいかないでしょう。DMVがマイクロバスサイズとなった理由は重量問題からですし、背中合わせの2連となったのは、輸送力を持たせる意味と片側にしか客用扉のないバスボディの流用を前提とした苦肉の策でもあります。そもそもヤナセやコマツが鉄道会社に納入した保線用軌陸車の車検証記載重量の偽装問題で明らかになったように、業務用で低速運転前提の保線用軌陸車でさえ重量問題のクリアに苦慮している現実を見ると、旅客を乗せて安全に運ぶ営業用DMVの開発のハードルはきわめて高いといえます。

現実的なシナリオを考える必要があります。このときにネックとなるのは、鉄道資産の公的所有についての明確な定義がないことです。一応三陸鉄道で鉄道資産のインフラ部、具体的には線路、駅、信号装置などの建造物を取り除いた路盤、橋梁、高架橋などの部分について、公的保有とすることで、固定資産税負担を逃れていて、整備新幹線並行在来線の受け皿となった青い森鉄道でも踏襲されたいわゆる“公設民営”方式が実施されてますが、これは現行法の範囲内での負担軽減策として考えられたものの、元々鉄道資産の固定資産税は“公共性”を理由とし、また生産設備を構成するもので事業が継続する限り転売の可能性がないという理由で評価額を1/3に減免されているのですから、その中の素地部分についてだけ固定資産税負担をなくしたところで、負担減の程度は微々たるものといえます。

宮崎日日の特集にもありますが、とりあえずの復旧区間(槇峰-高千穂間)の無償譲渡を受けたとしても、被災区間である延岡-槇峰間を当面誰が管理するのかという問題は残るわけでして、仮に高千穂鉄道を清算するとなれば、何らかの処分をしなければならないわけで、たとえば道路用地として無償供出されるとしても、その時点で延岡側の復旧の可能性を閉ざしてしまうことになります。保留地として継続的に公的保有されることが望ましいのですが、現行法では難しいところです。本来は鉄道事業法などで公設民営の保有経営形態を定義できればすkっきりしますが。

公的助成といっても、場合によっては財政支出を必ずしも必要としないケースはありうるわけでして、制度を見直すだけで道が拓ける場合があるということを申し上げておきます。少なくとも高千穂鉄道の保有する鉄道用地は、転売できるような資産価値があるとは思えませんが、生きた鉄道として活かされる場合だけ、地域経済の下支え効果によって価値を生む性格のものといえます。地域の自立を制度面で支援することこそ、地方分権であり改革の名に値するものといえるのではないでしょうか。

関連記事

高千穂鉄道が問いかけるもの

| | Comments (5) | TrackBack (0)

Wednesday, May 03, 2006

高千穂鉄道が問いかけるもの

ウォームビズといえば、クールビズの冬版として環境省が提唱した省エネ運動で、室温20℃以下で厚着をすることで省エネを図ろうということでしたが、実は落とし穴があります。六本木ヒルズなどの高層オフィスビルでは、元々蓄熱性の高いコンクリート躯体の体積が大きく、また省エネ設計ということで断熱性能も高いのですが、その結果、IT機器の発熱で躯体が暖められ、冬季夜間の暖房オフ時間の室温が27℃という現実がありまして、ウォームビズのために冬でも冷房をしなければならないという本末転倒な現実があります。土地の高度利用、効率的利用のためには高層化が欠かせないと考えがちですが、実はかように資源浪費的で、果たして経済効率を高められるのかどうかは微妙です。

それでも都市の集積度が高い大都市圏の中心部の局地的なオフィス需要を満たしつつ、周辺の開発を抑制して公園その他の公共空間を作り出す手法としての高層ビル建設自体は意味のあることでしょうし、六本木ヒルズの例で言えば、麻布十番あたりのマンションや商業地としての発展に寄与したという意味での評価は可能です。むしろ問題はどこもかしこも高層ビルを建ててしまうことで、資源浪費を助長することにあると考えます。

しかしここ数年、不動産の証券化による流動性向上や、空中権など条件つきながら容積率緩和などで、高層ビルが次々と建ちあがり、再開発ブームの様相を呈しておりますが、既に高度集積となっている首都圏地域の再開発の結果、集積度をさらに高めても、国全体として見れば首都圏地域の人の移動や物流を非効率なものにする結果、国全体としての経済的パフォーマンスは低下することになります。

こういった観点から高千穂鉄道問題を見ると、首都圏と対極に位置する農山村の現実が浮き彫りになります。大都市部で資源浪費の結果、C02排出量が増えて温暖化が進み、結果的に台風で被害を受けるのは、高千穂鉄道沿線のような末端部となるということです。首都圏地域の再開発による利益はもっぱら首都圏のビジネスパーソンが享受し、開発の結果生じたコストは遠く離れた農山村地域が負うという、ある種自然の搾取と呼ぶべき現実があるわけです。

高千穂鉄道の被害総額は26億円といわれておりますが、これはあくまでも原状回復を前提とする数字でして、同等の水害を想定した高規格化を行う場合は40億円といわれます。首都圏の再開発による開発利益からすれば、けっして大きな数字ではないんですが、それ以前に開業以来赤字基調で推移し、利子収入を期待して積んだ経営安定基金も、長期に亘る低金利で赤字補填を果たせずに取り崩し、被災直前には車両の更新時期を迎えながら財源が得られないということで存廃の議論が始まったいただけに、県による復旧断念は、残念ですが現実的に避けられなかったといえます。そもそも低金利は銀行の不良債権問題があったから長期化したもので、結果的に融資を受けてきた大手企業が救済され、銀行自身もなりふり構わず不良債権の償却を進めて危機を脱した反対側に、高千穂鉄道のようなローカル鉄道の経営難へとしわ寄せされたということがいえます。

格差社会がいわれる昨今、なかには怪しげな議論も多数あるんですが、少なくとも地域間格差の拡大は、間違いなくここ数年拡大しております。格差拡大は市場経済に原理的にビルドインされた仕組みの帰結でもあり、格差を是正する仕組みが機能しなければ、格差拡大は避けられないところです。結果的に農業漁業林業などの第一次産業が疲弊し、補助金漬けで存続させているのですから、格差拡大のコストはむしろ高くなるのですが、三位一体改革でその補助金すらカットしようというのですから、地方の疲弊は留まるはずもありません。少なくともこの部分に関しては、小泉改革の負の側面と断定して差し支えないでしょう。

関連記事

Friday, December 16, 2005
高千穂鉄道部分復旧の模索は続く
Sunday, December 11, 2005
高千穂鉄道復旧実質断念、地域経済の袋小路
Sunday, October 16, 2005
高千穂鉄道復旧は成るか?Part2
Saturday, October 15, 2005
高千穂鉄道復旧は成るか?

| | Comments (4) | TrackBack (0)

Monday, April 17, 2006

新幹線反対派市長当選、佐賀県鹿島市

長崎新幹線の続報です。

新幹線着工“反対派”市長当選 佐賀知事「今後も協議」
というわけで、佐賀県知事は協議を続けるそうですが、鹿島市長への切り崩しは熾烈なものになりそうです。

長崎新幹線問題ですが、武雄温泉-諫早間約45kmの新規着工に伴って、平行在来線区間の肥前山口-諫早間が経営分離されることに対して、平行在来千区間に立地する鹿島市が危機感を募らせるのは当然のことです。しかも長崎新幹線の今回着工区間には2,700億円の事業費がかかる一方、時間短縮効果は28分でしかなく、1分100億円弱という信じられない効率の悪い投資です。公共事業の問題点としてたびたび指摘される非効率な事業といえます。財政再建が議論されているそのときに、このような事業が新規着工されるとすれば、悪い冗談でしかないですし、それだけ中央政界での議論が地域の各論で否定されるのであれば、改革が名ばかりであることの証です。

公共事業であっても、投資効率の高い案件も当然存在しうるわけですが、長崎新幹線はとりわけひどい代物といえます。そもそも九州新幹線鹿児島ルートが実現すれば、ボトルネックとなっている博多-鳥栖間の輸送力増強は果たせるのであって、あえて作る必然性に乏しいのは自明です。推進派の説明としては、鹿児島ルートが博多まで開業すると、博多までの時間距離が逆転し、長崎が置き去りにされるというのですが、対博多で鹿児島と争うという志の低さに唖然とします。

元々徳川幕府の治世で、出島での大陸貿易の独占で栄えた長崎ですが、東シナ海の向こうには、東京より近くに上海があるという好立地なのに、それを活かす発想がないのが不思議です。まさか倒幕に動いた鹿児島への恨みだったりして^_^;。

あとフリーゲージトレインについてですが、長崎新幹線でも、新規着工区間をフル規格で建設し、フリーゲージトレインで新在直通すれば更に10分の時間短縮が可能というとらぬ狸な議論もされてますが、そもそもフリーゲージトレインは現在開発中であって、実用化のメドも立っていないということは忘れてはいけません。レールと車輪の関係に関わる基本技術に関わる技術開発ですから,開発要素が多く、実現のハードルは高いといえます。仮にはーd的には可能性が拓けたとしても、コストが高ければ営業運転には使えないわけですし、どちらかといえば、既存新幹線区間から末端の在来線への新在直通運転を地上線路の軌間変更なしに可能であるという点からすると、導入可能な場面は限られると考えるのが自然です。

というわけで、これから強烈な切り崩しに遭うであろう鹿島市の桑原市長と鹿島市民には、くれぐれも頑張ってほしいところです。

| | Comments (2) | TrackBack (1)

10年で経年劣化?ゆりかもめの苦悩

というわけで、ゆりかもめの続報です。

「ゆりかもめ」タイヤ外れ、金属疲労が原因
通常の加速時に車軸にかかったトルクでねじ切れたものということですから、結構深刻です。前の記事を書いているときも頭をよぎりましたが、オーバーユースによる経年劣化の可能性を疑っていただけに、正直なところ、ホンマカイナという感じです。10年でハブが金属疲労破断するぐらい乗客を運んでやっと黒字ということだとすると、ゴムタイヤ駆動の軌道系システムは結構使えない代物ということになりかねません。

こんなんもありました。

ゆりかもめ、17日始発から運転再開 金属疲労が原因か
ハブの損傷をチェックする磁粉探傷検査を11月に導入しながら、事故車両はその前に検査入場していたので、検査の網にかからなかったということのようです。ま、悪いことが起きるときってこんな感じなんでしょうけど。

対策は検査体制を見直すとともに、早目の部品交換で対応ということになると思いますが、想定外の追加コストを負担するわけですから、既に黒字を重ねているゆりかもめは良いとして、現在工事中の日暮里舎人線などでジワリと影響が出るかもしれません。

愛知万博のときのリニモが混雑でストップしたときにも書きましたが、使い込まれていない新技術は、思わぬところに落とし穴があるもので、特に輸送力を問われる公共交通において、輸送力の上方弾力性が乏しいというのは、致命的な欠点と考えて良いでしょう。鉄車輪と鉄レールの成熟した鉄道技術が見直されることが望ましいと考えます。

| | Comments (2) | TrackBack (1)

Saturday, April 15, 2006

ゆりかもめ、手痛い週末全面運休

ゆりかもめが動きません。

ゆりかもめ急停止、タイヤ外れる・午後8時から全線運休
ゆりかもめ、始発から全線運休・行楽客らの足に影響
ゆりかもめ、運転再開のめど立たず
ゆりかもめ、16日も始発から全線運休
というわけで、前代未聞の週末全面運休となり、行楽客で平日より1割増の稼ぎ時をフイにしてしまいました。

現時点では原因不明ですが、ハブの損傷といえば、三菱ふそうのリコール隠し事件発覚のきっかけとなった横浜市瀬谷区のトレーラー車輪脱落事故を連想させます。歩行者もいる公道の事故と専用の高架軌道上の事故の違いはありますが、死傷者がいなかったのは幸いです。また、非常発報装置が作動して緊急停止という報道を見る限り、無人運転のバックアップ装置が正常作動したということですから、無人運転がかえって安全に寄与したということになりそうです。

システム的には横浜の金沢シーサイドラインと同等の側方案内式ゴムタイヤ駆動新交通システムですが、公道上を走る自動車と違って、走行中のトラブルが許されない専用軌道上を走る新交通システムですから、タイヤもスチールラジアルですし、ホイールやハブの強度や耐久性も考慮されているはずですし、車両保守も作業平準化の目的もあって、計画保守体制が組まれているはずですから、通常ならば考えられない事故ということになります。しかし事故は起きてしまいました。

96年の開業以来好調が続き、02年のりんかい線全通で利用減はあったものの、黒字基調が続き今月豊洲延長もあって、三セク鉄道事業者としては例外的な存在といえるゆりjかもめですが、事故調の調査を優先させての運休ということで、先行き不透明感が漂います。鉄車輪と鉄軌道の通常鉄道であれば、ここまで大事を取る必要もなかったわけで、鉄道という成熟した技術の集積の信頼感の高さを痛感します。

ま、とりあえずはこれぐらいにして、事故調の発表を待ちましょう。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

Sunday, March 05, 2006

長崎新幹線の見果てぬ夢

最近更新が滞っておりますが^_^;、久しぶりの記事で少し動きが見られる長崎新幹線を取り上げます。ここで見えてくる問題は、日本の地方の現実が凝縮されています。ま、ちょっと佐賀県をめぐる問題は複雑なんですが、九州新幹線鹿児島ルート上に新鳥栖駅を設置することになったために、鹿児島ルートに財政負担を求められている一方で、長崎ルートでも当然負担を求められる立場にあるわけです。

長崎新幹線に関しては、長崎県が積極的なのに対して、今回の着工区間である武雄温泉-諫早間では、従来鉄道ルートから外れていた嬉野温泉にしか恩恵がない一方、整備新幹線スキームで、JRから切り離される平行在来線区間として、有明海沿いの肥前山口-諫早間が提示され、この区間の受け皿として自治体出資の第三セクター鉄道会社を立ち上げる必要があるわけですが、幹線ルートから外れて赤字必至となる同区間を抱えることで、負担ばかりが来ることになります。しかも鹿島市をはじめとした並行在来線ルート上の市町に関しては、新幹線の恩恵がないばかりか、事実上の切捨てとなってしまう事情があり、さすがにこれを無視して県として新幹線推進一辺倒ではまずいということなんでしょう。

長崎新幹線問題、在来線赤字JR全額負担
元々JR九州では、在来線ルートの救済策として5往復程度の直通特急を走らせるなどの妥協案を提示しておりましたが、さらに一歩進んで赤字補填まで打ち出したことで、事態が動くことになるのかどうか、注目されます。

元々鹿島特急構想も、JR九州が第三種事業として三セク会社に線路使用料を支払って運行することを念頭においており、事実上の赤字補填のスキームなんですが、ローカル輸送で赤字を出せば、線路そのものの存続に問題があり、反対を堅持する沿線3市町を説得できないということなんでしょう。にしてもそこまでして新幹線を作らなきゃならないのはなぜなんでしょうか。

この問題では、平成の大合併といわれる市町村合併が影響しております。沿線七市町のうち三市町が脱落、一町も議会が同意し町長が反対と又裂き状態にあるわけですが、市町村合併で状況変化があって結果的に切り崩されているというのが実態でして、ゆえに鹿島市は嬉野町と合併したら^_^;という笑えないジョークまで飛び出しております。さらに地方制度改革として道州制が打ち出されておりますが、市町村合併の現実を直視すれば、またしてもまがい物改革か、と気が重くなります。

少なくとも長崎新幹線問題では、一部市町の反対で前へ進めない佐賀県の立場は消滅するわけで、新幹線のような大型公共事業は進めやすくなるわけです。また中央省庁の地方局を道州へ移譲することで、行政組織がスリム化するという議論がありますが、つまりは国家公務員としてカウントされる公務員数を見かけ上減らすために地方へ押し付けるという話なんで、騙されちゃいけませんね。

長崎新幹線に関しては、元々時間短縮効果が少なく、過大な投資であるという指摘は以前からされてました。肥前山口以西が単線で、線形も悪く、いわゆる投資不足状態ではありますが、投資効果を考えれば、幹線鉄道活性化事業で対応すべきケースでしょう。それを何が何でも新幹線でというのは、結局のところ補助率が新幹線の方が高く、国からたくさん予算が下りてくるからなんです。都市交通分野でもモノレール等と比べて補助率が高かった地下鉄建設にバイアスが働いたために補助率を揃えたのですが、幹線鉄道に関しては、そうなっていないわけです。しかも整備新幹線自身が国の整備計画に基づいた事業ですから、ルートなど国の一存で決まるしそのために政治家の口利きが横行することになります。こういった構造を見直すことが先決ですね。

またJRにとっては、平行在来線経営切り離しが実においしい利権なんです。国と地方の財政負担で、収益部門である幹線都市間輸送分野の資本装備を増強して競争力を高められる上に、重荷となっているローカル輸送を合法的に切り離せんるんですから、平行在来線三セクの赤字補填ぐらいしても、まだお釣りがきます。ただし新幹線のストロー効果で大都市圏(九州では福岡)への一極集中が進めば、結局片輸送となって輸送効率をさげてしまいますから、長期的にはJRにとってもマイナスになると考えられます。特に経営の苦しい三島会社ならばなおさらで、札幌一極集中で苦しむJR北海道の姿に近づくのは得策とは思えませんが。

| | Comments (5) | TrackBack (1)

Monday, January 16, 2006

特特法事業で輸送力増強後混雑率悪化で次の手が問われる京王線

耐震強度偽装事件絡みで京王プレッソインの記事を書きましたところ、京王線のラッシュ輸送の問題に関して複数のコメントをいただきました。お隣の小田急線が複々線化事業を推進中で、何かと比較される京王線ですが、2005年度新造予定の9000系10連の日車豊川からの甲種輸送が14日に行われ、おそらく週明けにも若葉台へ搬入されるなどの動きが出てまいりました。このタイミングで、京王線のこれからを考察しておくのも面白いと思います。

大手私鉄中間決算の記事でも取り上げましたが、通期見込みで1.2%の利用増を見込む京王電鉄は、本業の好調さが目立ちますが、その一方で特特法事業で長編成化による輸送力増強を実現し、一旦は168%まで緩和された最混雑率の数字を170%に悪化させております。特特法による積立金の取り崩しによる運賃値下げと、久々のスピードアップを伴う準特急を登場させたダイヤ改正が功を奏して、沿線でマンション建設ラッシュが続き、ひところ減少に転じた沿線人口が再度増加するなど、好調な反面、複々線化を見合わせたために次の手が見えない状況にあります。

一方都営新宿線の新型ATC導入を期に都営新宿線で車両置き換えが進む中、6000系後継車両という位置づけの9000系20両登場が2005年度事業計画で発表され、タイミングからいって老朽化の進む6000系30番台直通車の置き換えになるのは間違いないところですが、10連で登場というのが10連固定編成とすれば、当面朝ラッシュ終了後に入庫することになりますから、運用面では制約のある状態になります。ただし中間運転台のなくなる分だけは乗客スペースが増えるわけですから、そうまでしなければならない京王線の苦しい状況を反映しているといえます。

小田急では複々線化事業を推進中も、ラッシュ輸送の改善が進まなかった結果、東急田園都市線や京王相模原線など他社線ルートへの乗客逸走が見られ、沿線人口が増加しながら利用減という事態に至り、大規模投資の元を取る意味で積極策に出て、千代田線直通の多摩急行の設定で多摩ニュータウンで競合する京王から乗客を奪うなどの事態となり、京王も都営線直通急行の設定で巻き返しをはかって対抗するなど、どちらかといえば競争的でないといわれた関東私鉄で競争が活性化された中で、京王線の劣勢が傾向として読みとれます。

大規模工事としては調布市内連続立体化事業を推進中で、国領、布田、調布の3駅が地下化され、特に調布駅の相模原線分岐部の平面交差が解消される予定なので、実現すればダイヤ白紙改正が考えられますが、調布での京王線と相模原線の下り方向への折り返しができなくなるなど、新たな制約事項が加わります。そんな中でどのように輸送改善されるのかは見えておりません。

車両面では7000系のVVVF改造が進捗中ですが、こうなると6000系の淘汰は加速せざるを得なくなると考えられます。同時にVVVF車が出揃った段階で現行の加速度2.5km/h/sを3.0km/h/s程度に見直して運転時分を見直すことは考えられます。また都営新宿線のデジタルATC化に関連して京王線のATC化もしくは現行の多変周点制御ATSを入力装置としたATCによるバックアップ(デジタルATCでパターン制御が可能になる)などで余裕時分を生み出すといった改良は考えられます。ここまで来れば地上線車と直通車の区分はなくなる可能性もあり、時間帯で8連と10連を使い分けるなどで柔軟な運用が可能になると考えられます。ただしピーク時の増発やスピードアップまでは難しいですから、余裕時分の増加で遅延防止になる程度でしょう。

やはり最終的には複々線化へと進まざるを得なくなる気がします。ただし投資の原資をどうひねり出すかは難しいところです。京王が有利なのは現行運賃の安さですが、設備投資のために運賃値上げを利用客に理解してもらうのは難しいところです。当面は現在の特特法による積立金取り崩しを原資とする運賃値下げの期限が2007年12月になり、値下げ分をなくした若干の運賃値上げが予告されてます。この時点で考えられる選択肢は次の通りです。

1.利用増による増収分を反映させて現行の値引き運賃を維持
2.予告通り上限運賃を値上げするが、当面は現行水準の値引きを維持
3.予定通り運賃値上げ
4.特特法事業を申請して上乗せ運賃で複々線化の原資を得る
といったところが考えられます。逆に言えばこの部分のアクションである程度方向性は見えてくるということもできます。

京王線の複々線化では、同時施工される連続立体化事業に実は問題が隠されておりまして、連続立体化事業の条件となる都市計画道路2箇所以上との立体化という条件を満たすのが難しいという問題があります。環七、環八、赤堤通りとは既に立体化されており、沿線の世田谷区や杉並区の都市計画道路整備が進まない状況下では事業化の目処すら立ちません。

一方東武線竹ノ塚の踏切事故で、いわゆる開かずの踏切問題がクローズアップされ、代田橋-仙川間が重点踏切立体化事業として認められる可能性はあります。そうなれば何らかの形で複々線化への道筋が示されるのではないかと思います。あるいは井の頭通りとの立体化で明大前駅周辺の区画整理事業に着手されれば、とりあえず現在ネックとなっている明大前の混雑解消のための構内線増など部分改良が実現する可能性はひらけるかもしれません。

というわけでファンの間では輸送力増強打ち止めと見られている京王線ですが、まだまだどうなるかわからないところかと思います。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

Friday, December 23, 2005

SuicaとPASMO相互利用でどう変わる?

遅ればせながら^_^;ビッグニュースを取り上げます。

ICカード:SuicaとPASMO、07年3月から相互利用OK
以前からパスネットとバス共通カードのIC化共通化と、JRSuikaとの相互利用に関してはアナウンスされていたわけですが、単なる磁気カードからICカードへの変更に留まらない注目すべき変化が読みとれます。

元々交通系の磁気カードとしては、券売機で乗車券と引き替えるタイプのプリペイドカードとしてJRのオレンジカードなどのプリペイドカードとしてスタートするわけですが、交通事業者にとっては先払いによる回転差資金を得られる利点があったものの、利用者にとってはあまりメリットはなく、ゆえに高額カードを中心にプレミアムをつけて割安感を訴求したのですが、単純な磁気カードゆえに偽造がはびこり、特に高額カードの偽造は事業者のリスクも大きくなるために急速に取扱いを縮小、廃止せざるを得ない現実に直面します。

一方で直接自動改札機に投入して乗車券として利用できるストアードフェアカードにすれば、乗客にとってもメリットがあるということで、阪急のラガールスルーを嚆矢としてJR東日本のイオカードなどで実現しますが、同じプリペイドカードでも乗車券タイプとするためには、発駅、経由地、着駅などルートを特定する機能が必要となり、書き込まれる磁気情報もそれだけ複雑化しますし、紙の乗車券のように検札なども困難で偽造防止の必要性からセキュリティレベルを高める必要があることもあって、鉄道事業者に高度な設備投資を強いることになります。

それゆえに複数社局で共通化することで、投資のスケールメリットを追求する必要があるわけです。技術革新を伴う設備投資ゆえに量産効果を働かせる必要があるわけです。それゆえにプレミアムは見送られ、また鉄道営業規則上の乗車券という扱いとなることから、事実上の割引となるプレミアムはつけられなかったという側面もあります。磁気カード乗車券が登場したこと自体が営業規則にとって想定外だったとはいえ、やや硬直的な感は否めません。また期待されたイオカードとパスネットとの共通化も、セキュリティレベルの違いから当面は見送られることとなり、次世代のICカードでの実現に向けて協議を重ねることとされたのですが、十分説明が尽くされたとは言い難いところでした。

一方でバス共通カードの方は元々紙の回数券を置き換える目的の回数券カードだったことから、回数券の割引に相当するプレミアムがつけられたのですが、バスの場合は元々回数券が金額式であったことと、車上で乗務員が運賃収受するシステムなので、磁気券への書き込みが鉄道の乗車券カードほど複雑ではないことと、現金扱いよりも客扱いが容易で営業所へ戻ってからの精算業務が簡単ということもあって、プレミアム付で磁気化され急速に共通化されたものの、今度は鉄道の乗車券カードとの共通化を難しくしてしまいました。

ICカード化することで、磁気カードよりも多くの情報を短時間で読み書きできることから、これらの課題をクリアしやすくなるわけですが、バスカードのプレミアム部分の扱いについては、現段階では明確ではありません。おそらく利用実績に応じたポイントを付与してチャージに回せるようにするなどの対応が取られるものと思います。

また乗車券としての決済機能を援用することで、電子マネーとしての機能を付与できるということもあって、今回のPASMOではSuicaの電子マネー機能も共通化されますが、既にSuicaと共通化されたピタパやICOCAなどが乗車券カードとしての共通化に留まっているよりも一歩踏み込んでます。

そのほか定期券機能、子どもカード、記名式カードなど応用範囲が広く、自動チャージ機能などクレジットカード並の信用取引も可能など、サービスも充実し利用者サイドから見れば多機能で使い勝手は良さそうです。この辺はICカードならではといえます。

ただし乗車券カードとしての本質は変わっておりませんので、幾つか細部の詰めが必要です。例えばノーラッチ接続点が複数あるJRとメトロの間でのルートの特定法などですが、似た状況にあるメトロと東急ではパスネット利用に限って事実上の最短経路適用となっているなど、単純に紙の乗車券の置き換えでは済まない部分がありますので、詳細は実施前に発表があると思いますが、どうなりますか注目されます。

更に進んでひょっとしたら日本では難しいと言われた共通運賃制へと進む可能性も指摘しておきます。ICカードによって改札業務が精算など後方業務を含めて省力化されれば、現行の事業者ごとの独自運賃で複数事業者間で接続駅での運賃打ち切り合算の根拠とされる出改札業務の固定費負担分という理屈が成り立たなくなる可能性が出てきます。また人口減少社会にあって、運賃制度面でのわかりやすさやシームレス化が利用を誘発する効果を期待できるなど、事業者にとっては増収のインセンティブとなる可能性があるという点も指摘しておきます。ただし当面は設備投資資金の回収が優先される可能性はありますが。

更に無人駅へのセンサー設置による事実上のセルフ方式への可能性も拓けます。取りこぼしの有無に関する実証データが蓄積されれば、例えば都内の駅でも時間帯でまたは終日無人化というようなことすら考えられますから、鉄道のユーザーインターフェースが将来激変するかもしれませんね。

| | Comments (2) | TrackBack (8)

Friday, December 16, 2005

高千穂鉄道部分復旧の模索は続く

高千穂鉄道に関する気になる情報がネット上に流布しているようですが、ちょっとした情報攪乱が見られるようですので、引いた視点で論評いたします。

「高千穂鉄道全線復旧断念と、部分運転に関するアンケート」
読売新聞のローカル版で記事として取り上げられたようですが、槇峰-高千穂間の部分復旧に対する県の不支持を補強するようなタイミングで記事にされた点で、悪意あるリークの可能性を指摘しておきます。アンケート結果だけを見れば沿線住民が存続を希望しながら利用しないと表明したように読めるので、利用しないものを残すために財政支出はできないという県の言い分に合致します。

しかし注意が必要なのは、高千穂鉄道沿線は都市部ではなく、平野ですらなく、元々人口の少ない農山村であって、集落から離れた標高の高い山の斜面に茶畑や果樹園や山林などがあるわけですが、これらは地域にとっては生産の場であり、住民にとっては仕事場であるということを押さえておく必要があります。集落にある自宅から距離と標高差のある仕事場へ向かうには、自動車が必需品ですから、日常的に鉄道を利用する生活でないとしても不思議ではありませんし、そのことを責めるいわれはありません。

それでも買い物や通院では鉄道を利用するかもしれないし、子や孫がいれば通学に鉄道が利用できることの安心感は強いでしょう。まして良い学校へ入れたいと思うならば、通学手段の有無は重大です。このあたりは私も含めて都会生活をしていると見えにくいところです。

以前の記事でも述べておりますが、軽便規格の旧日之影線部分については、川沿いの集落を縫うようなルートとなっており、山の中腹を通る整備された国道が集落を通らないのと対照的です。このことは、代替交通としてバスを走らせるにしても、鉄道ルートをトレースすることを困難たらしめているわけで、ただでさえ足の遅いバスの使い勝手を更に悪くする懸念があるに留まらず、鉄道の復旧工事に必要な大型トラックや重機の搬入も困難なため、復旧費用を押し上げるなど、悪条件を重ねることとなります。平地の岐阜や日立にして代替バスへの乗客移行が30%に留まる中で、バス代替は無理と言わざるを得ません。余談ですが、道路特定財源の一般財源化の議論で、生活インフラとしての道路はまだまだ不十分といわれますが、五ヶ瀬川流域地域に見られるように、実際は整備された道路は通過交通を利するだけで、地域に恩恵を与えるものではないという現実は踏まえておきましょう。

かくして地域の鉄道復活への熱意は衰えないようです。

台風被害の高千穂鉄道、部分的運行再開を検討
高千穂鉄道、台風被害で全面復旧を断念・部分運行探る
高千穂鉄道社長「部分再開しても経営成り立たず」
一応時系列に並べてみましたが、部分復旧にしても、受け皿となる新会社設立と現三セク解散まで視野に入れて検討されているなど、本気度の高さに驚かされます。

無理もないところですが、鉄道がなくなることで、地域にとっての明るい未来を描けるならば廃止やむなしで済むんですが、実際は上記の通り鉄道の廃止は居住放棄すら引き起こしかねない重大事です。さらにいえば傾斜地の農地にせよ山林にせよ、人の手が入っているからこそ、適度な保水力を保持し、大雨のときには緑のダムとして機能するわけですが、耕作放棄されれば保水力が落ち、大雨が降れば洪水や土石流を引き起こす可能性が高まります。当然次は下流の延岡市が被害を受ける構図です。これをくい止めるための緑の公共事業としての地域再生という視点も必要なのではないでしょうか。

以下は余談なんですが、昨今の緑茶飲料ブームで、原料茶葉が不足しているそうで、特に普及品の機械摘み二番茶の不足で茶葉価格が高騰しているのだそうですが、高千穂鉄道沿線地域でも、茶葉生産に向いた斜面を利用して茶畑が造成されていて、大手飲料メーカーの伊藤園と契約栽培寸前まで交渉が進んだところで台風被害に遭い、話が流れたそうですが、情報がないので後日談までは把握しておりませんが、仮に茶葉が売れて沿線地域に現金収入がもたらされ、それを原資に新会社設立というような流れになれば、伊藤園のお茶を飲むことで高千穂鉄道を応援できるかもしれません。更に踏み込んで、この際伊藤園にも出資してもらって、地域再生ファンドでも立ち上げて、高千穂鉄道の受け皿となる新会社の資金をファイナンスするなんて夢物語が実現しないかなと思う今日このごろです。

| | Comments (1) | TrackBack (3)

Sunday, December 11, 2005

高千穂鉄道復旧実質断念、地域経済の袋小路

高千穂鉄道の復旧の話題ですが、当ブログでは二度に亘って取り上げました。その続報ですが、残念な結果になりました。

高千穂鉄道、台風被害で全面復旧を断念・部分運行探る
記事によれば、槇峰-高千穂間の観光鉄道としての部分復旧に含みを残しているようですが、陸の孤島となる同区間だけの普及で採算をとることは不可能に近く、事実上の事業廃止が確定したものと受け止められています。

復旧費用に関しては高千穂鉄道の公式ページをご参照いただくとして、橋梁の復旧工事は国の災害復旧予算で対応する前提で、高千穂鉄道としての負担が27億円ということですが、注記にもありますように、今回の水害水位に対応した復旧の場合は、さらに加算されるということで、確かに費用面では絶望的なわけです。ただしこのことは事前にわかっていたことではあります。

問題はそれで済むのかどうかです。少なくとも延岡-日之影温泉間の旧日之影線区間では、国道筋からはずれた川沿いの集落を結んでいる高千穂鉄道が、母都市の延岡と結ぶ生命線であるわけで、採算が合いませんから廃止では事実上沿線集落を見捨てることになってしまいます。実際他のローカル線と比較すると旅客の平均乗車距離が長く、地域社会の生活を支えるインフラとしての意味合いは強く、沿線集落の生活は事実上否定されてしまうという現実に直面するわけです。

もちろん順調に復旧されたとしても3年7ヶ月を要するのであれば、復旧まで不便を強いられることに変わりはなく、住民の流出が起きてしまえば、費用をかけて復旧する意味を問われてしまうわけですから、現実的には廃止やむなしとなるのでしょう。

特に高千穂鉄道が自治体主導型第三セクターで、特に広域行政を司る県の意向に左右される組織である点は、この場合不幸な方向へ舵を切ることになります。県単位で考えると、延岡市はあくまでも宮崎市、都城市に続く県内第三の都市であって、その更に後背地となる高千穂鉄道沿線地域は、県内では完全な周辺地域となって、行政的なフォローが及びにくいところと言えます。輪をかけて延岡市が旭化成の企業城下町で、従来は立地企業の税収でそれなりに金回りの良い地域だったことも、県のフォローを鈍らせているのでしょう。旭化成自身は既に10年間新卒採用もなく、地域経済にとってはむしろ重荷になりつつあるのが実状です。企業依存のモノカルチャーが裏目に出ているわけです。

そんな延岡都市圏の中で、高千穂鉄道沿線地域は、五ヶ瀬川沿岸の伝統的農山村地域ですが、地域の特長を活かした経済活動が見られます。農業、林業、観光開発に留まらず、積極的な企業誘致などで地域の特長を打ち出しております。過疎化の進行の中で、地域興しは待ったなしの状況ですが、けっして諦めていないのは、高千穂鉄道のページのリンク集から辿るとよくわかります。高千穂鉄道の廃止が、このようなやる気のある地域を見捨てることになりはしないか、その点が気がかりです。

企業城下町である延岡は、中央とのつながりを重視する傾向が強く、宮崎空港線建設と日豊線高速化で空港まで1時間としたことで満足しているのでしょうが、延岡からさらに五ヶ瀬川沿いに遡るこの地域は、山を越えて熊本や福岡へ結びつく動きも考えられます。実際日之影町で県都宮崎市よりも熊本市の方が時間距離的に近いという状況ですから、事実上県に見捨てられたならば、熊本や福岡への結びつきを強めるのが現実的な選択となるでしょう。結果的に宮崎県全体の活力は低下しますが、そのような意思決定が行われた以上仕方ありませんね。

| | Comments (0) | TrackBack (4)

Thursday, December 08, 2005

小田急線高架化訴訟で原告適格の範囲拡大

えーと、この話題ですが、別に私自身高架複々線化に反対しているわけではありませんし、反対運動をしている沿線住民とてそうだろうと思います。問題の訴訟は、あくまでも都市計画法に基づく国の事業認可が適法に行われたかどうかを問う行政訴訟であって、従来狭く解釈されていた原告適格の要件が緩和された改正行政事件訴訟法(4月施行)を受けて、最高裁で原告適格の範囲を拡大する判断が下されたもので、訴えそのものが結審したわけではありませんので、誤解のないようにお願いいたします。今回の訴訟でいえば、従来は事業用地内の地権者にしか認められていなかった原告適格が、都条例に基づく環境アセスメント地域内の住民37名に原告適格が認められたということであって、地裁、高裁で共に「原告適格がない」として門前払いされていた扱いが変わり、引き続き最高裁で審理を続けるということになります。ですからまだ結論は出ていないわけですね。

ということで、新聞報道をチェックしましょう。まずは日経です。

小田急線高架訴訟、沿線住民にも訴えの資格・最高裁初判断
小田急高架化訴訟、最高裁が地権者以外も原告適格認める
続いて朝日です。
原告適格、沿線住民に拡大 小田急高架化訴訟で最高裁
やや詳しい記述が見られます。続いて読売です。
小田急訴訟、アセス地域住民に原告適格…最高裁認める
ほぼ同程度の記述です。

都市計画法という法律は、私権の制限を伴うわけで、自然の地形や様態の変更、用途地域の変更、官民を問わず開発行為などで住民の利害が交錯するわけですから、当然といえば当然なんですが、どのように調整されるのが合理的なのかについては、必ずしも自明ではありません。従来ともすれば公共性という曖昧な表現で押し切られるケースが多かったわけですが、公共性自体、立場によって見方が別れるものであり、唯一の正解があるわけではありません。結局事前に当事者間で話し合って妥協点を探り、法令手続きに従って合意形成するしかないわけですが、往々にして行政側が独断専行し、反対されても力で押し切るケースが多かったわけです。そして訴訟となれば原告適格を問うことで、司法による門前払いを狙うという構図だったわけです。

今回のケースで言えば、小田急線の複々線化事業そのものは、混雑緩和のための必要性があるわけですが、高架化に関しては、厳密に言えば連続立体化事業であって、道路予算が投入される別の事業なんですね。ただ線増されて列車本数が増えると、既存の踏切がすべからく開かずの踏切になってしまいますので、同時に連続立体化する必要から都市計画決定されるわけですが、道路との立体化に関しては、高架方式も地下方式も考えられますし、実現性はともかくとして鉄道を地上に残して道路をアンダーパスやオーバーパスにする方法も考えられます。

実際には地形や地質や地下水脈の様態などを加味し、また鉄道事業法で定められた勾配制限の範囲内で実現可能なプランを作る必要があるわけですから、高架か地下かといった二者択一で選択できるわけではありません。ただ実際の都市計画は30年も前に基本計画で高架化で計画され、都条例に基づく環境アセスメントなどの手続きを経て工事実施計画が策定されるという手順となります。今回はこの課程で住民側から地下方式の希望が出されたのに対して、高架方式との比較検討がなされずに、基本計画段階から高架方式で進んできた流れのままに都市計画決定され事業認可された行政手続きを違法として訴えを起こしたものです。

まぁ正直申し上げまして、私も地下方式は難しいとは思うんですが、問題は高架方式との比較検討がされないままに、基本計画で高架方式としたことを踏襲して手続きを進めてしまったことは、やはり問題だろうと思います。比較検討の結果、事業費が膨張して例えば事後に運賃が高くなるなどの点を住民に説明できていれば、違っていたんじゃないかと思います。ま、実際は万人を納得させることは無理でしょうけど、合意形成にどれだけ手間をかけたかは重要です。

というわけで、今回はあくまでも原告適格の条件緩和だけの判断ですので、本来の訴訟の審理は続くわけですが、一審の東京地裁では側道用地の地権者のみを原告適格として都市計画事業認可の取り消し、事業中止を命じており、二審では原告団全員の原告適格を認めず門前払いした関係で、訴訟内容に関しては判断されていないので、最高裁で原告適格が認められた結果、最高裁で一審の判断の是非を判断するという流れになりますが、これに関してはどちらに転ぶかはわかりません。ただし一審の判断が踏襲されたとしても、既に工事が終わっている区間ですから、一審判決でも原状回復までは求めていないので、あとは原告住民に対する補償をどうするかといった話になるかと思います。別に負けても複々線じゃなくなるわけじゃないんで、むしろ正しい行政手続きを経ないと却って高くつくという経験を行政や事業者にさせる意味合いの方が重要でしょう。いずれにしても最高裁の判断が注目されます。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, November 06, 2005

都営地下鉄、大江戸線効果で乗客増加

やや地味目なニュースですが、こんな記事見つけました。

(11/5)都営大江戸線の乗客数、上期は4.8%増
汐留など沿線の再開発が寄与したもので、都営地下鉄全体で見ても2.4%増ということですから、増加のボリュームは大きいと言えます。

2000年12月の全線開業時には、駅が深くて地上から遠く不便なこともあって空いていた同線ですが、既に麻布十番など沿線でマンション建設が活発化していて、人口の都心回帰の流れを加速する形となりました。更に遅れて開業した汐留駅周辺の再開発進捗によって、利用者数を押し上げる結果となったようです。

この辺の評価は悩むところなんですが、元々旧国鉄遊休地を中心とした汐留地区の再開発そのものは、バブル崩壊のあおりを受けて停滞していて、再開発地の分譲が進まずお荷物扱いだった上に、官鉄新橋駅の遺跡発掘などもありました。結果的にこの遅れが、地価下落による値頃感と共に、IT革命による通信網のブロードバンド化でオフィスのインテリジェンス化のニーズが顕在化し、容積率などの規制緩和もあって六本木ヒルズなどの都心再開発ブームに火がついて、その波に乗ることができたという意味で怪我の功名だったといえます。また記事にある通り開業後3年で利用者の伸びが止まっていたこれまでの傾向と異なった動きとなったわけです。

大江戸線38駅中、汐留駅が増加率27.7%増加人数4,000人で共にトップで、増加率2位の新御徒町(17.7%)、増加数2位の新宿(2,000人)を大きく上回ることとなりました。ま、元々何もなかったと言ってしまえば身もふたもありませんが^_^;。新御徒町は明らかにつくばエクスプレスの効果でしょう。

ただ、大江戸線が環状路線で、他線との乗換駅が23駅もあることが認知されて利用が増えたという側面もあります。再開発ブームがいつまで続くかは定かではありませんが、大江戸線が第2の環状線として機能し始めたということは言えそうです。

以前記事にしましたが、

商業施設と病院の立地規制?
規制のためなら縦割りも何のその
で郊外開発規制を模索する動きについて述べましたが、大江戸線の現実は、容積率などの規制緩和はあったものの、都市中心部における公共交通整備が、結果的に中心部の集積度を上げることの証左といえます。東京以外でも、横浜のみなとみらい地区も、みなとみらい線の開業までは更地で放置されていたことを思い起こしてほしいところです。

しかし中心市街地活性化法などで再開発を試みた地方都市では、大規模郊外型商業施設への対抗上、中心市街地の道路整備や駐車場整備などの事業が行われることが多いんですが、実際には駅前大通地下に公共駐車場を整備しても、中心街の商店が営業不振で撤退した跡を更地化してコイン駐車場を整備する動きによって、駐車場の供給過剰から値崩れを起こして、公金で整備された公共駐車場が最も料金が高いという笑えない状況になっているのを見かけます。地方に限らず、大船あたりでもコイン駐車場が増えて、遂に100円/60分というところまで出現し、決して駅に近くない松竹跡地のヨーカドー&三越の駐車場や鎌倉芸術館の駐車場が割高になるなどの状況が見られます。思えば岐阜の名鉄線廃止も同じ文脈です。車依存の発想から抜け出さない限り、こんな状況が続くのでしょう。

あと余談ですが、現在検討が進められている郊外立地規制が、都市計画法と建設基準法の見直しで進められている点を危惧します。時限的な特別法によるのではなく、私権の制限を伴う一般法に滑り込ませて規制を恒久化しようという話です。私権の制限は憲法の定めに従って公共の秩序と善良な風俗を犯すものに限定されるはずですが、国民の監視が働かない未熟な民主制下では、利権の隠れ蓑に公共性を持ち出される可能性を指摘しておきましょう。前の総選挙でメディアも国民もコイズミに騙される現状ですからねぇ。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

Thursday, October 27, 2005

市営地下鉄計画「支持を得た」? 川崎市の財政再建と開発行政の矛盾

参議院の補選が行われた10/23ですが、同日川崎市長選が行われ、現職の安部市長が2選を果たしました。でもって市営地下鉄計画について支持を得たのだそうです。川崎市民ではない私には、選挙戦で争点となっていたかどうかは定かではありませんが、何だか先日の郵政民営化を争点らしく装った総選挙とダブります。

川崎市の地下鉄計画ですが、これまでの経過は省略いたしますが、二転三転しながらゾンビのごとく継承された計画です。安部市長も当初は見直しも含めた再検討を市民の意見を募りながら、結局一部ルートの見直しによって実施する方向に舵を切りました。このあたりの経緯は川崎縦貫高速鉄道のページでご確認ください。ちなみにルート変更は久末以東で、東横線元住吉接着を武蔵小杉接着に変更するものとなります。

武蔵小杉は09年に横須賀線に駅を設置する計画が発表されており、地下鉄から継走で東京都心への速達ルートとする意図が見られ、元の計画よりは戦略的に優れているとはいえます。また武蔵小杉を交通結節点として位置付けて再開発に弾みをつける発想も優れているのですが、建設に多額の費用がかかり、事業としての採算性はまず論外といっていいほど厳しい事業です。それでも沿線開発によって開発利益が税収増などの形で還元されるならば、いわゆる先行投資としての意義はあるわけですが、果たして川崎市営地下鉄計画はそう言えるでしょうか。

これはあくまでも川崎市民の選択の問題ですから、外野からとやかく言うべきことではありませんが、私の結論としては、都心直結のつくばエクスプレスでさえも沿線開発は決してうまくいっていない現状からすれば、新たな開発用地を創り出し地域間競争を激化させる新線建設は無謀と評価します。

東京と横浜に挟まれ、民間資本によって京浜臨海部の埋立地に工業地帯が造成されて以来、日本の産業資本主義のフロンティアであり続けたわけですが、国家総動員法をはじめとする戦時体制への移行と、戦後それを引き継ぐ産業優先政策によって、常に市民生活は二の次に置かれ続けた川崎市は、確かに交通インフラ整備が遅れていて、市民生活は快適とはいえないのですが、同時に市に多大な税収をもたらしてもくれたわけで、市民の不満を和らげる意味でも福祉中心のバラマキ型市政にならざるを得ませんでした。これは一面企業の超過利潤を市民に還元する数少ないルートでもあったわけです。

しかし国際競争の激化による企業のリストラの進捗によって税収が減り、この体制は持続不可能なものとなります。当然市の行政のリストラも求められます。そんなタイミングで財政再建をスローガンに掲げて当選を果たしたのが安部市長でした。実際市職員の千人規模のリストラを敢行し、赤字の第三セクターを破綻処理しという具合に、敗戦処理を重ねたわけで、この点では一定の成果があったと評価することはできます。しかし安部市長が言う高度経済成長期にできたはずの交通インフラ整備ですが、産業優先で走っていた当時に可能だったとは思えません。加えて国鉄の身勝手が地域のニーズに無頓着でもありました。

当時の国鉄は公社形態の事業体でしたが、国の現業機関としての権限を保有していたので、運輸省の免許を受けることなく、国家独占の名の元に自らの意思で事業を展開できる存在でした。それ故に東京との都市計画を無視した総武快速線を建設しながら、総武線の混雑が限界と見るや営団東西線の東陽町~西船橋間の延伸を要請し、東京都以外の地域に路線延伸の権限を持たなかった営団に対して運輸省が国鉄が事業化しないことを根拠に免許が交付されるという、監督官庁をすら凌ぐ権限を持っていた国鉄が、川崎市の陳情を聞き入れる可能性はかなり小さかったといえます。

その時代のやり残しを今になってやろうということのようですが、人口減少局面で負担ばかり重くなる開発型行政から抜け出せないのが、保守系革新派の特徴でしょうか。思えば小泉政権になってから整備新幹線の新規着工は加速された感がありますし、これ以上無駄な道路を作らないはずの道路公団改革も骨抜きですし、国から地方への改革であるはずの三位一体改革は、最も地方の独自性が生かせるはずの公共事業費を最初から外して議論するから、果たして意味があるのかどうか定かではない義務教育費の国庫負担分の移譲など、数字合わせに終始しているのですが、川崎市のケースでも、地下鉄は作るけど社会保障は切り下げられるとすれば、果たして市民の選択として賢明だったのかどうか疑わしい限りです。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

Sunday, October 16, 2005

高千穂鉄道復旧は成るか?Part2

前の記事で思い切り脱線しちゃいました^_^;。しかし高千穂線のうちの旧日之影線部分について語るには避けて通れない部分でもあります。国の直轄事業だった戦前の国鉄の、末期の建設線の多くは、旧日之影線のようないわゆるローカル線でした。もちろん地元選出議員による利益誘導の結果だったのでしょうけど、いわゆる建主改従で鉄道の恩恵を国土の隅々に行き渡らせようという意思決定が為された結果と見ておきましょう。

日本の鉄道は草創期から国土の骨格として位置づけられておりましたから、国有化以前の私設鉄道の時代から、官設鉄道への連絡が免許条件として課され、日本鉄道が東京の市街地を避けて建設した官鉄連絡線が後の山手線となるなど、幹線鉄道網の整備に重点が置かれていたわけです。その集大成として第一次鉄道国有化で有力私鉄が官鉄に併合され、以後民営の鉄道は、一地方の需要に応じて建設されるいわゆる地方鉄道と定義されたわけです。

その一部は大都市部に立地し、都市の発展と呼応しながら発展し、合従連衡を経て、現在の大手私鉄各社が形成されたわけですが、それ以外の地域では、地元の零細な資本を集めて、脆弱な装備で鉄道事業を行うものが多かったのです。そしてそのような零細な鉄道は、昭和期には勃興するバス事業の挑戦にあえなく敗退して、事業廃止に至るものすら出てくるようになります。それでも地方が鉄道を渇望し、中には資本を集められない地方もある中で、国鉄による地方線区の建設が行われることになります。当然予算制約の中での建設ですから、幹線筋と比べてグレードを下げざるを得ないわけで、旧日之影線のような脆弱な鉄道施設をお守りしながら維持することとなります。

それに比べて戦後、しかも鉄道建設公団による建設線として作られた路線は、財政投融資で潤沢な資金を得られたこともあって、渓谷を跨ぐ高高架のコンクリート橋のような、ローカル線にしては立派すぎる贅沢な造りとなっております。しかし今回の台風被害ではそれが明暗を分けました。被害を受けたのが、主に旧日之影線区間に集中しているのは、決して偶然ではありません。路線のハードの成り立ちが、そのまま災害リスクの差となって出現してしまったわけです。

また多くのローカル線が、鉄道施設の更新投資の原資を稼ぎ出せずにいるために、建設時期の事情で低グレードで建設された路線では特に、設備更新の重荷が大きく、、鉄道の存続に影を落としています。奇しくも高千穂鉄道でも、発足時に積んだ経営安定基金が取り崩されて残高が減り、在籍車両が耐用年数を迎えて車両更新をする費用すらままならない状況が既にあったわけですから、冷たい言い方ですが、台風で被災するまでもなく、存廃を取り沙汰されるのは時間の問題というところにいたわけです。

救いは災害救援資金の援助が得られる点で、流出した橋梁や路盤の復旧は、国と地方の折半で地方財政への負担にはなるものの、普及の道筋はつけられそうですが、上ものの線路や信号機やまして車両までは面倒見てもらえないわけで、実際こうして廃止に追い込まれたローカル私鉄は数多あります。ま、この先は知恵の絞りどころなんですが、考え方をほんの少しずらせば、そもそも設備更新の費用すら稼ぎ出せずに、線路や車両の保守に余分な支出を余儀なくされていた鉄道を、災害復旧を名目に資本増強して存続させようという話ならば、それほど無謀な話とも言い切れません。実際高千穂線として延長開業した区間は無事で、観光鉄道として先行復旧させようという話が出ているぐらいです。

以前神岡鉄道の記事でこのように書いてます。

発想を変えて通過トン数の極端な少なさを逆手に取って、軌道狂いの少ない重軌条化やスラブ軌道化などで10年単位の無保守軌道構造とするなどして延命する方が、結果的に長期に存続が可能になると思うんですが、日本ではローカル線イコール低規格が当たり前で、むしろ保守費用が嵩む現実に直面するわけです。事業者への運営費補助が納税者の理解を得にくい日本だからこそ、資本増強による劇的な高規格化でメンテナンスフリーを実現するという発想がほしいところです。この場合は沿線住民や企業から株主を公募するなど、必ずしも自治体が絡まなくても可能ですが、株式公募をやりやすくするための支援策には工夫の余地があります。財政負担を伴わずに路線を維持しようという甘い考えは捨てた方が良いでしょう。同時に安価な高規格軌道を実現できる技術開発が望まれます。
ローカル線が大都市通勤線や新幹線と決定的に異なるのは、通過トン数の少なさなんです。ということは、それを逆手に取って、軌道狂いの少ない頑丈な線路を高くない頻度で軽量ディーゼル車で走らせる分には、線路保守の劇的な省力化が可能ということです。このように発想すれば、むしろ高千穂鉄道の存続問題は、新しい鉄道を創るという夢のある話になるということです。もちろん実現には資金面の裏付けが必要で、決してハードルは低くはないのですが、実現不可能とはあながち言えないでしょう。

最近欧米では、治水目的のダムの廃止や河川の護岸の撤去により元の自然状態に戻す緑の公共事業が行われるようになりました。経済学でも自然の贈与という言葉がありますが、経済学ではそれにプラス人間の働きが価値を生み出すと教えます。とすれば自然の資源の中から人間にとっての有用物を取り出すのが経済活動ということで、その結果元の自然が疲弊して人間にさまざまな不利益を与えるならば、元の自然を回復することもまた人間にとって有用といえるわけです。いわゆるオルタナティブな世界、もう一つの世界という考え方ですが、経済成長のモノカルチャーに犯された日本では、未だ少数派に留まります。そんなことを考えさせる高千穂線問題といえます。今後は私たちの選択にかかっているのかもしれません。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

Saturday, October 15, 2005

高千穂鉄道復旧は成るか?

先月の台風14号で五ヶ瀬川の橋梁2箇所を含む路盤流出などの被害で運休中の高千穂鉄道ですが、復旧の模索が始まっております。

まずは高千穂鉄道の公式ページで確認しましょう。台風被害状況報告の写真が、被害の凄まじさを伝えます。特に建設年次の古い延岡~日之影温泉間で五ヶ瀬川に寄り添うように走る部分で、冠水や路盤流出の被害がひどい状況が読みとれます。

旧国鉄日之影線として建設され、1939年に全通したのですが、沿線には鉱山や発電所はありますが、基本的に農業と林業を主体とする地域で、おそらく鉄道開業前は五ヶ瀬川の水運に依存していた地域なのでしょう。それゆえ川沿いの集落を結ぶために五ヶ瀬川を4回渡り、川ともつれあいようなルートになっております。川の増水でひとたまりもなかったわけです。道路交通は国道202号線がほぼ並行しているようですが、バイパス整備で集落を通らないなどで、地域の足としては鉄道への依存度は高いといえそうです。

こういった山間の農林業依存地域は、まず例外なく過疎化と高齢化の影響をもろに受けているわけですが、そういった地域の天然災害は、考えさせられるものがあります。そもそも森林も山間の棚田も、緑のダムといわれるように、保水力に優れ、豪雨による川の増水を受けとめて、流域の生活を護ってきたはずです。しかし同時に労働集約的で生産性が低いので、工業化の進展に伴って、働き手を確保できずに荒廃し衰退を余儀なくされているという説明がなされますが、本当でしょうか。

実際は政策ミスによる人災といえます。農地の物理的拡大が困難な日本では、食料増産の要請もあって農地の転売、転貸、転用には厳しい制限が課されました。さらに旧民法から新民法への移行で、長子相続の原則から兄弟姉妹の均等割りへと移行した結果、農地の相続で齟齬が発生します。相続人の頭数で割ってしまえば農地として生産性を維持できなくなりますから、価格評価して相続人の誰かが引き継ぐことになるわけですが、若貴の相続騒動に見られるように、家督を継ぐ者が結果的に金銭的に少ない配分に甘んじることとなります。その結果農地にしがみついて生計を立てる必要があるわけで、結果的に彼らが政治的保護を求めるようになり、日本の農業は緩慢な死滅へと向かうこととなります。

誰もあえて貧乏くじは引きたくありませんから、例えば親の世代の相続を背中越しに眺めた二代目たちは、兄弟間で家督の譲り合いとなりますから、後継者が名乗りでない状況となり、高齢化した親がいつまでも現役で農地を支えるしか道がないということになります。農山村の高齢化と過疎化というのは、そういう意味があるんですね。加えて過疎地の高齢化は、医療や介護といった高齢者向けサービスの生産性を阻害し、受益者に高いサービス価格を押しつけるという側面もあります。医療制度改革で医療費の上限の議論がされてますが、今後高齢化で主に都市部で高齢化が進むことを考えますと、現時点での上限設定は、過疎地の高齢者のサービス受給の切り下げになるという点は忘れてはなりません。

農業分野への株式会社参入が制限されている現状では、農地を会社へ現物出資して、会社の事業として継続性を持たせるといったことができません。また受動的にでも所有者の居る農地にあえて仕事を求めてくる若者は居ません。ですから時間の経過と共に農地も山林も手入れができきれずに荒廃し、本来持っている保水力などの環境面での特長を発揮できなくなります。結果的にすべて洪水で押し流されてしまうとすれば、これはいったい誰のせい?と問いたくなるところです。

というわけで、長くなりましたので一旦話を切りますが、高千穂鉄道の復活の可否は、かなり大きな問題を含んでいるといえます。関連サイトとして

がんばれ! 高千穂鉄道!と沿線の町!
hinokage-ouen.fruitblog.net
をご紹介しておきます。リンクを辿ればいろいろな動きがあることをご理解いただけるかと思います。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, October 09, 2005

油壺延長計画を諦めない京浜急行

というわけで、気になるニュースがいろいろありますが、近場の話題です。

(10/8)京急、油壺駅への延伸計画を見直し(日本経済新聞)
確かに免許は保持し続けてきた京急の油壺延長計画ですが、三浦半島の風致地区をかすめるだけに、用地買収の難航と環境保全の声に押されたこともあって、当初計画されなかった三崎口駅まで開業したわけですが、ここへきて計画を見直すことにしたようです。

具体的にどうなるのかはこれからの話ですが、沿線開発と一体で新計画を策定する方針は明らかになっていますから、何か新機軸を打ち出すのではないかと思われます。現行の計画では延伸区間は2km程度の距離ですが、ルート変更や中間駅設置なども考えているのかどうか、注目されます。おそらく横須賀リサーチパークで見せたようなユニークな開発計画になるのではないかと期待されます。

単純な宅地開発であれば、都心から離れた地形も険しく地滑り地帯でもある三浦市が適地とはいえませんし、ただでさえ地価下落で都心回帰が進み、人口減少で需要そのものも先細りが見えている現状ですから、別の何かということになるでしょうか。

記事によれば

京急は「現在の延伸計画は1970年代に作ったため古く、バリアフリー整備など現在のニーズを満たす計画に変更する必要がある」と説明している
のだそうで、考えられるのは富裕な高齢者向けの介護付住宅や医療サービス施設などで、個性的な老後の提案を目論んでいるといったところでしょうか。だとすれば目の付け所がいいですね。

以前地域活性化の新潮流、年金富裕者を囲い込めという記事をアップいたしましたが、鉄道会社が自社沿線に富裕な高齢者を囲い込み、ターミナルデパートのお得意さんに育てれば、新しいビジネスモデルになり得るわけです。それを自治体ではなく鉄道会社が行うとすれば新しいものとなるわけで、この辺、羽田空港の国際化を睨んで世界へアピールを目論む京急らしい発想です。

あと面白いのは、このような計画見直しも、元の鉄道事業免許があればこその話で、京急の油壺延長計画も30年以上にわたって免許更新を繰り返し、費用と手間をかけてきて、実現の目処は立たないままだったわけです。営利企業としては痛し痒しな話ですが、免許制度はいわば事業の独占を国が保証する制度であって、他社の参入が容易ではないことによって、鉄道会社は中長期の視点で投資計画を作って実行できるわけですし、その結果沿線地域の経済的厚生が向上すれば、地域に多大な利益をもたらすことにもなります。

法的に独占を認める制度ですから、競争抑制的であるなどの批判はあり得ますが、地域開発の観点から積極的に利用できる可能性を指摘しておきます。ただし現行制度では免許の交付は国が行うことになっておりますが、自治体レベルに権限委譲されれば、もっと地域開発に活かせる制度になり得るといえます。名鉄の撤退に為す術がなかった岐阜市の悲劇や、台風被害で橋梁流失や路盤流失の被害を受けて存亡の危機にある高千穂鉄道が救えない現状に対して、地域の自己決定を促す制度として活用の可能性があります。

地方分権、三位一体改革を叫ぶ政権が、税源移譲で義務教育費の国庫負担の廃止を打ち出すことに不思議と疑問の声が聞こえませんが、国庫負担をなくして義務教育と言えるのか、就学年齢児童への教育サービスが国家の義務であり、親権者も労役などで児童の教育を受ける権利を侵害しない義務を負うから義務養育なんですが、児童にとっては権利です。これを児童が教育を受ける義務と勘違いする人が多く、そういう考えだから、教育とは洗脳と同義とばかりに都合良く書き換えられた歴史を教えようとする人が後を絶たないんですね。

| | Comments (2) | TrackBack (3)

Thursday, October 06, 2005

JR東日本E233系の読み方

既に多くのブログで取り上げられておりますが、遅ればせながらアップします。

JR東日本のニュースリリースによりますと、中央快速線と青梅五日市線の201系を新形式E233系に置き換えると発表されました。従来、車両故障、信号トラブル、人身事故と、とかくストレスフルでユーザーフレンドリーとは程遠かった中央快速線ですが、大幅な輸送改善を予感させるニュースといえます。

中央快速線は首都圏JR各線でも最も高密度輸送を強いられている路線で、伝統的に固定閉そく長が短く、ラッシュ時など走る度にATSが鳴る^_^;名うての運転難易度の高い路線でした。それだけに国鉄時代から先進的な取り組みがなされ、オール電動車編成で高加減速を狙った101系は、変電所容量不足に躓いてT車込みで旧型車並の加速度に甘んじたものの、そこそこの高速性能と高ギヤ比で勾配走行もこなす万能車として重宝されました。逆にそのことが後輩の103系の中央快速線への運用を阻み、後年フラッシュオーバー事故対策で絶縁強化されるのを待たなければなりませんでした。

70年代、2度のオイルショックで省エネへの関心が高まり、鉄道の世界では地下トンネルでの放熱対策の意味もあって、主回路に抵抗器を挿入して電気エネルギーを熱に変えて捨てていた抵抗制御から、半導体による主回路のオンオフで制御するサイリスタチョッパ制御が実用化されましたが、加減速が頻繁で高速走行の機会が少ない地下鉄では経済性を発揮しても、素子価格が高く高速で巡航する地上の鉄道では、なかなか採用に至りませんでした。

ですが元々変電所容量がボトルネックとなって高性能車101系のスペックダウンを余儀なくされた中央線ならば、チョッパ車のメリットを活かせるかもしれないし、また大量発注をかけることで、高価な素子価格を下げることも期待して、201系を送り出したのですが、これがまた大ゴケとなります^_^;。

結果的に素子価格は下がらず、同時期に登場の117系や185系に合わせて耐候性鋼板を用いた高級素材の丈夫すぎる車体とも相まって、高価な車両となってしまいました。なおかつ登場後数年で国鉄解体、JR移管となったわけですが、国鉄が公的主体で定額法償却しか選べないこともあって償却が進まず、高い簿価でJRに引き取られた結果、民間会社となったJRとしては使い倒すしか選択肢はありませんでした。

あと厄介なことに、国鉄時代の前例主義が災いして、海側にチョッパ制御器本体を配置した結果、東西に伸びる中央線では直射日光の輻射熱にあてられ、また中野以西ベタ停車で加減速が頻繁だったこともあって排熱が間に合わず、突然ブラックアウトするトラブルに悩まされます。いわゆるサイリスタ日照りです。対策としてチョッパ制御器を収めたケースを白く塗って輻射熱を少しでも少なくという涙ぐましい努力がなされ、また保守の経験を積んだ三鷹、武蔵小金井、豊田の各区から離れられずに時を経ます。

とはいえ民営化後18年、電車の減価償却期間は13年ですから、会計上は捨てられるようになった201系ですが、より古くガタがきている103系の淘汰が先行したこともあって、首都圏の最重要路線でありながら、車両更新が後回しとなった中央快速線にやっと順番が回ります。その間にもいろいろありまして、ATOS(首都圏列車運行管理システム)の導入と車両トラブルと信号トラブルに、人身事故と降雪の影響まで重なって、1箇月に正常運行数日なんてことがあったり、高架化工事で仮線切り替えしたら、国鉄から引き継いだ信号配線図に間違いがあって復旧が遅れて半日止まったりとトラブルが重なります。これらの経験がフィードバックされてE233系の仕様に反映されたものと考えられます。

青梅五日市線や富士急行線へも運用される都合で、6+4の分割編成が必要となるため、10連、6連、4連の3種類の編成が用意されていて、10連で6M4Tとなるなど、中央快速線の環境に特化したマイナーチェンジ車という性格が読みとれます。

不可解なのが688両の新製で201系710両を置き換えるという点でして、JR東海よりはマシ^_^;とはいえ、減車となる点です。考えられるのはMT比見直しによるスピードアップで運用減となるか、トラブルの多い201系で元々予備車を多く抱えていた分を削ったかですが、後者の可能性が高いと考えられます。

E233系は主回路や保安装置の二重化によるトラブル回避を特長としています。システム全体を冗長にして、部分的なトラブルで全体が齟齬しないシステムを狙っていると考えられます。とするとMT比の変更も、単純な加速度向上でスピードアップということではなく、ユニットカット時の性能確保にむしろ狙いがあると考えられます。つまり4M6Tで正常運行可能なダイヤで車両故障の影響を軽減するということです。もちろん正常なときの遅延回復力向上の狙いも合わせてでしょうけど。高密度運転で地下鉄並にトラブル回避を考えなければならないという考え方に立ったものと考えられます。

あと688両という両数の中途半端さですが、6連と4連の数が揃っていないことを意味します。おそらく4連が2本多いパターンではないかと思います。根拠は、四季彩として運用されている201系4連の車内改装車も置き換え対象とすれば、該当編成だけセミクロスでワンマン用ドアスイッチとモニター装置を装備して登場という可能性も考えられますし、その運用実績次第では、豊田区に残る山スカ115系の置き換えへと進む可能性も考えられます。両者を共通運用とすることで、予備車を圧縮する効果も期待できます。E233系が意表をついた高運転台の近郊タイプで半自動ドアという仕様で登場したあたり、大月までの運用だけを考えているわけではないと思いますが、果たしてどうなりますか目が離せません。

| | Comments (9) | TrackBack (6)

Tuesday, October 04, 2005

大船駅改良工事進捗

丁度1年前に大船駅改良工事の話題をアップいたしましたが、1年越しの続報です。

大まかな概要ですが、現在の橋上駅舎と東京寄りにある乗り換え専用跨線橋を結び、北口改札を設けて乗客を分散させると共に、原駅舎と結ぶ増床部分に各ホームへのエスカレーターとエレベーターを設置して、バリアフリー対応を取るというものです。北口改札外の通路は、大東橋際の横浜市栄区側に階段とエレベーターで地上に降りるようになります。従来ヤマダ電機前の東口バスターミナルから現駅舎へ車道へはみ出して歩く歩行者が解消されるわけですが、ルミネ前の東口交通広場との分裂関係は固定化されるわけで、大東橋の架かる砂押川で別れる横浜市と鎌倉市の都市計画の不整合で分裂するエキソト^_^;を統合しつつバリアフリーにも対応するという巧みな改良工事です。

で、本日10/3から現駅舎と建設中の新駅舎とを結ぶ増床部分の一部が供用開始され、5-10番線へのエスカレーターが同時に供用開始されました。7-8番線へ降りる東京側階段は閉鎖され、増床部分の通路スペースを確保しつつ進む感じで工事が本格化しそうです。旅客案内でも大型LEDパネルが設置され、東海道線、横須賀線、湘南新宿ラインと3ルートに別れて停車駅もまちまちの上り列車を発車順に停車駅案内まで一覧できるようになっています。これは既に設置されてましたが、湘南新宿ラインの運行開始以来言われ続けた誤乗防止に一役買いそうです。あとは魅力的なエキナカショップに期待したいところです^_^;。

というわけで、本日はガードマンがメガホン片手に乗客への周知を呼びかけておりました。北口駅舎も棟上げが終わって工事も終盤というところです。完成が楽しみです。

| | Comments (0) | TrackBack (2)

Sunday, September 18, 2005

デフレに翻弄されるつくばエクスプレスの正念場

開業景気が一段落して、早速空気輸送となりつつあるようですが^_^;、つくばエクスプレスに関しては、まだまだ語り尽くせていないことが多くあります。しかし輸送の実数を見るには半年なり1年なりの期間を見る必要があり、まだ話題にするには早いと思いますので、周辺の話題を取り上げます。

人口の都心回帰による地価下落を払拭して、地価下げ止まりから開発促進へと期待を膨らませる茨城県と関連自治体ですが、東京延長を主張する守谷市とまずは沿線開発とするつくば市という具合に、早速意見が分かれているようです。ま、当ブログで再三指摘してきた自治体主導三セクのイニシアチブ不在が顕在化したようです。

その前にデフレに関して世間に流布する俗説を修正しておきます。失われた90年代に進行した物価の連続的な下落ですが、主に以下の3つの力が働いて起きたものといえます。

1.バブル崩壊に伴う地価や株価などの資本ストックの価格調整
2.国際競争の激化と日本の構造調整の進捗による内外価格差の解消
3.IT関連を中心とした技術革新による生産性向上がもたらした相対価格の変更
これらがほぼ同時進行で同じベクトルで重なり合った結果、世上デフレといわれる現象が起きたわけですが、いずれも相対価格の変動であって、経済的には普通の現象であり、貨幣的現象ではありませんので、いくら日銀が貨幣供給量を増やしても、防ぐことはできません。

元々バブル期に常磐新線として計画され整備に着手されたつくばエクスプレスは、この流れに翻弄されることになります。東急田園都市線をモデルとして事業主体の首都圏新都市鉄道(株)によって鉄道用地と再開発用地の先買いが大幅に認められたわけですが、結果的にこのことがバブルの余韻が残るうちは用地取得を遅らせることとなり、97年の事業見直しで開業年度を2000年度から2005年度へと変更を余儀なくされました。

ただしこれは結果的に地価の下落で事業費の圧縮に寄与することとなり、工事の遅れが事業費を拡大させる従来の鉄道建設工事との違いが際立ちます。と同時に沿線開発を遅らせることとなり、開業後の乗客見込みを38万人→27万人へ下方修正されることとなり、単年度黒字まで10-20年、累積赤字解消に40年という厳しい見通しとせざるを得ず、事業の行く末を不透明なものにしています。

一方でトンネルのシールドマシンが従来1.2mごとに内壁を構築していたのを1.5mごとに見直したり、マクラギの形状変更で寸法を詰めたりなど、技術革新によって建設費も圧縮されました。結果的に97年当時で1兆500億円といわれた総事業費は、開業前の段階で9,400億円、更に最終的には8,300億円まで圧縮される見通しとなり、元々資本金1,850億円と潤沢な上に、国や自治体の無利子融資で有利子負債がほとんどない財務体質の良さもあって、経営上の重荷は少ないスタートではあります。

ただしこのことが上記の東京延伸へ余剰資金を投入すべしという一部の自治体の声となっているわけですが、呉越同舟の経営で足並みは揃わず、沿線開発の遅れを問題視する声の他にも、資金調達に協力した自治体へ返還すべきとの声もあり、結局何も決められないようです。当然有利子負債の一括返済でとりあえず利子負担をなくすという選択肢もあり得ます。

今後ですが、原油価格の高騰でデフレ終息期待が一部であるようですが、おそらくは石油製品の値上がりが消費の冷え込みとなって、一般物価の上昇は一部に留まると考えられます。またつくばエクスプレスで地価下げ止まり?でも指摘しました通り、下げ止まりは一部地域の一時的現象であって、また周辺地域の空洞化、地価下落を伴うものであることを申し上げておきます。

| | Comments (4) | TrackBack (0)

Saturday, September 03, 2005

埼玉高速鉄道、岩槻延伸で東武野田線に直通?

かつて当ブログでも取り上げました、労使対立で運行停止寸前まで追い込まれた埼玉高速鉄道ですが、延伸計画の模索は続いているのですね。

(9/2)埼玉高速鉄道延伸、東武野田線と相互運転を検討(日本経済新聞)

野田線といえば、かつて大宮駅の乗り換えの混雑を緩和するということで、隣接する京浜東北線と一体化して直通運転できないかという話が出たことがありますが、京浜東北線の10連を受け入れるためのホーム延伸などの投資が過大ということで沙汰止みになったことがあります。その点では埼玉高速鉄道との直通運転であれば、同じ6連同士ということで可能性はひらけますが、ATOによるワンマン運転でホームドア設置となれば、やはり簡単ではありません。車両側に東武ATSを搭載して車掌乗務とすることも考えられますが、半蔵門線との相互乗り入れのときに、試運転中に営団8000系の誘導障害で踏切鳴動装置の誤作動が起きて手直しに苦労したなど、新たなトラブルを掘り起こす可能性はあります^_^;。

記事によれば、その辺の課題について検討した上で東武鉄道との交渉にはいるということですので、現時点では流動的な話ではありますが、本来地下駅となる予定の埼玉高速岩槻駅を既設の野田線岩槻駅への乗り入れとすることで、投資額を圧縮できる点に事業者としてメリットがあるということのようです。

そして岩槻からどちら方向へ直通するのか定かではありませんが、仮に大宮側へとなれば、交通結節点としての大宮から埼玉スタジアムへの新ルートを形成できるという意味で、観客輸送の掘り起こしは期待できるかもしれません。となるとさいたま市独自計画の大宮~さいたま新都心~埼玉スタジアム間のLRT計画とバッティングしてしまいますが、その辺がどのように調整されるんでしょうか。さいたま市の増資引受となると簡単にはまとまらないでしょう。また当然蓮田延伸計画は遠のくことにもなります。

いずれにしてもまずは既開業区間の債務償還が先決であることに変わりはないわけで、延伸によってそれ自身の投資回収に留まらず、増収効果で累積債務の償還が早まるのでなければ、出資している県や各自治体の同意を得るのは難しいと思うんですが。

| | Comments (3) | TrackBack (2)

Saturday, August 20, 2005

祝、愛知万博1,500万人突破!

以前こんな記事を書いておいて何ですが^_^;、本当に目出度いと思っております。とにかく多くの人が名古屋を訪れ、万博会場に足を運んだことで、万博のために注ぎ込まれた資金が無駄にはならなかったんですから、素直に喜びたいと思います。とりあえず公式ページに敬意を表しておきます。
 要因はいろいろあると思いますが、昨今景気が上向きだそうで、企業が人件費を増やして家計の給与所得が増えていることから、ある種プチ消費ブームが起きているというのがマクロ的な見方になるんだろうと思います。そしてそれを牽引しているのは輸出主導の製造業だそうで、前向きな設備投資も出てきて、政府発表でも景気は回復基調にあって、踊り場を迎えて云々の文言もはずされているところですから、何か未来は明るいような錯覚を覚えます。しかしご安心ください。錯覚なんですから(笑)
 人件費が増えているのも事実ですし、設備投資も出てきているのは間違いないんですが、中身を見ると人件費は主に派遣社員の増加と正社員への賞与の配分の増加に由来します。当然好調なうちは問題が出にくいですが、例えば好調な輸出にかげりが出れば、簡単にカットされる部分の増加であるという点には注意が必要です。
 そしてその輸出にはかげりが見え始めております。ひとつは米国のFF金利の小刻みな上昇で米国消費にブレーキがかかりつつあること、そしてもうひとつは中国の通貨政策の変更の影響です。
 共に解説を端折りますが、いずれも国内経済の過熱をさます狙いがある以上、日本がなんぼ文句を言っても、この方向へ向かうことは止められませんし、実際昨年あたりから輸出は減速傾向にあります。
 ということで、個人的には実感を伴わないんですが^_^;、消費が活発らしいので、国内海外を問わず旅行が活発化しているそうで、天候に恵まれた点も大きいといえます。
 そしてやっぱトヨタでしょう。何しろトヨタが新技術をあれこれプレゼンする場として万博を利用してますから、世界中から集まるトヨタ詣での人々を引きつけるわけですね。トヨタは環境技術で競争優位を確立しようとしてますから、燃料電池バスをはじめいろいろ見せてくれてますが、既に市販車として欧州の一部の都市で営業運転しているベンツの燃料電池バスと、半年ほど博覧会場をデモ走行するトヨタの燃料電池バスのどちらに高得点をつけるかは判断が別れます。ましてアイスランドのレイキャビークのように、テストプラントながら地熱発電の電力を利用した電気分解水素プラントを立ち上げてわずか2台ながら営業車を走らせて、事実上CO2排出を無くす領域で事業展開が進む欧州の事情からすれば、トヨタのプレゼンも日本の現状の遅れを際立たせるだけかもしれません。
 IMTSについても、いわゆるタイヤトラムの一種と考えると、評価軸が見えてきます。オランダで国家プロジェクトとして実用試験段階に達したフィリアスという交通システムが、やはり道路に磁気マーカーを埋め込んでバスを自動運転させるものが開発中ですが、2連接や3連接で輸送力をつけようとしている分、シンプルなシステムです。IMTSのソフト連結によるいわゆるカルガモ走行ですが、制御が複雑な分、輸送力とコストの見合いが厳しいのではないかと思います。ま、この辺は名古屋のガイドウエーバスでも指摘できるところですが、莫大なコストをかけて、それに見合う生産性向上が見られるかどうかで評価が決まるものだけに、現状は博覧会向けのイロモノの感は拭えません。
 この辺にそこはかとなくトヨタの限界が見えてしまうんですが、技術的には完成度も高く、さすがトヨタと思わせるものなんですが、何と言いますか、ギミックを誇るだけのプレゼンならば、江戸時代のからくり人形と同じで、それはけっして明日を拓くものにはならないということは申し上げておきたいと思います。もっと大事なのは背景にある哲学なんですが、トヨタはこの部分が弱いと同時に、日本企業の多くの弱点といえるかもしれません。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, August 07, 2005

つくばエクスプレスで地価下げ止まり?

タイトルのような特集を日本経済新聞地域版で発見いたしました。
(8/2)茨城県内路線価7.5%下落――TX沿線、下げ止まり感、13年連続下げ
というわけで、相続税などの評価基準となる路線価が発表され、茨城県もご多分に漏れず下げたわけですが、下げ幅が縮小し、栃木や長野を下回り、その原因としてつくばエクスプレス沿線地域の一部で下げ止まりが見られるということです。結構なことなんですが、路線価の評価法は確か92年から収益還元法を取り入れた方式にに変わっているわけで、法令の後押しもあって開業前から沿線地域では区画整理事業が活発化しているわけですから、造成されて土地の利用度が高まった結果なわけで、ある意味当然のことなんですけど^_^;。
 実際茨城県の平均路線価は47都道府県中44位で現評価法となった92年の47%の水準に留まるなど、厳しい状況にあります。なお、たまたま路線価の発表される8月の開業ということで、タイムリーな話題にリンクして記事が書かれたものと思いますが、本来実勢価格がわかれば良いはずなのに、さまざまな理由で土地の価格が4種類も存在するバーチャルな状況は、土地に対する特に行政サイドの特別なスタンスが影響しています。だから路線価が関連話題となったこと自体には大した意味はないんですが。
 重要なのは茨城県がリソースをTX沿線に集中させていることなんですけど、以前にも指摘したとおり特定地域への開発リソースの集中は、結果的にそれ以外の近隣の地域の地価を押し下げる効果があるという点に注意が必要なことは、大都市圏で再開発地域とその近隣の関係にも見られる現象です。茨城県でいえばTX沿線から外れた水海道や石下、下妻など常総線沿線や江戸崎や玉造など霞ヶ浦沿岸地域などが特に影響を受けることになると思います。
 ということになると、このエリアをフランチャイズとする関東鉄道の経営への打撃はかなり大きいといえます。もちろん影響は単純ではなく、守谷付近で宅地開発が進めば、商業集積のある取手への買い物客が増えることで常総線の利用客は増やせるでしょうし、逆に通勤通学客が減少すれば、保守費が嵩むディーゼルカーをピーク時に合わせて多数保有する必要がなくなる分、コストダウンが可能になるなど、プラス要素もありますが、水海道以北のローカル化が更に進むなど、状況は厳しいといえます。さらに自衛隊百里基地のジェット燃料輸送を失った系列の鹿島鉄道を支えられなくなることは考えておく必要があります。必要ならば茨城県は第三セクターによる経営引き受けなどの対応を迫られます。
 JR常磐線への影響も単純ではありません。
(7/23)JR東、TXに対抗――常磐線、土浦以南6駅美化
JR東日本の7月改正でE531系新車による特快新設やフレッシュひたちの増発など、TXを意識した改正と言われておりますが、単純な競争関係と考えるのは早計です。元々TX自体が常磐新線として常磐線の混雑緩和を目的とした路線であったわけで、関鉄常総線と同様にピーク時の混雑緩和に寄与するならば歓迎すべきことのはずです。しかしTX沿線で開発が進むことで、常磐線沿線市街の空洞化が進むようであれば、それをくい止める必要があるわけで、新車投入やスピードアップに留まらず駅の美化までして旅客を誘致することは重要なことといえます。
 一方のTXも新しい鉄道として旅客誘致には意欲を見せます。
(7/15)TX車内で無線LAN、動画配信・TV電話可能に
つくば市など学園都市であり官庁や企業の研究施設が立地する地域ということもあり、また今後も研究開発型の施設誘致に特化されると予想されるだけに、TX利用者のビジネス利用を重視して、さまざまなアイデアで旅客を引きつけようとしています。当初は予定されていなかったTX2000形のボックス席手すりにテーブルを仕込んだりして、無線LANでノートPC利用を想定しています。果たしてこの辺のユーザーの評価はどう出るでしょうか。
 ただしTXにも弱点はあります。全駅ホーム柵と車両ドア連動のホームドアを設置しておりますが、この方式は安全面では優れていても、混雑対応に弱点があり、開業後の試し乗りでダイヤが乱れることが予想されます。一時的な開業景気だけならば良いのですが、開業後のピークタイム対応やイベント輸送など、混雑に対する対応如何では使えないとの厳しい評価もあり得ます。
 また守谷以北のデッドセクションと交流電化によって、ある意味バブルの頃の混雑緩和に苦しんでいた常磐線の悩みを引きずることになります。つまり茨城県内で開発事業が成功し、TXに旅客が集中したときに、機動的に高価な交直両用車が増備されるかどうかという問題です。一応TXを運営する首都圏新都市鉄道(株)は資本余力がありますので問題はないとは思いますが、JR東日本が資本参加しなかった同社経営陣に、的確な経営判断が可能かどうかは未知数です。あるいは自治体主導三セクの悪弊で、例えば茨城県のために高価な車を追加するなら茨城県と関連自治体で増資を引き受けよなどともめて、意思決定がうまくいかない可能性はあります。
 あくまでも推測の域を出ない話なんですが、このあたりの事情は、JR東日本が出資を断って経営参画しなかったことにも通ずるものがあるかもしれません。元々開業年度を2000年度と設定して事業に着手され、流山市以南では区画整理も順調で、都区内は主に地下を通ることもあって、全くの新線には珍しく都心側で工事が進んでいたのですが、柏市内とつくば市内で区画整理事業が大幅に遅れ、開業年度を2005年度に変更し、都心側の工事をスローダウンさせた経緯があります。前後関係は精査しておりませんが、JR東日本が出資を断った次期と符合します。
 状況から言えば、2000年頃に流山市以南で部分開業の目はあり得たと思うんですが、そうならなかったのはなぜなのかということなんです。車両はJRで廃車が進む103系を一時借用し、三郷市の旧武蔵野操車場跡地の再開発地域など仮の車庫を確保して、とりあえず開業して利用者を引きつけることができれば、投下資本の回収が早まるばかりでなく、全線開業後の旅客誘致にも有利なわけで、総事業費を抑制して利益を生み出せるわけですが、あくまでも推測であるとお断りしておきますが、この辺の意思決定を巡ってJR東日本と茨城県及び関連自治体との間に、抜き差しならない対立が発生したのではないかと睨んでおります。
 そう考えると、時期的にniftyの鉄道フォーラムで常磐新線は標準軌で新幹線サイズというガセネタが、会社関係者の意向として流れたことなどが思い出されます。免許上はあくまで常磐新線は狭軌で守谷以南DC1,500v、守谷の北のデッドセクション以北AC20kv電化で変更はされておらず、いかにも素人っぽい夢物語が関係者の証言として出てきたあたりに、自治体主導三セクの性を見てしまうのですが。ただしくどいようですが、これらはあくまでも推測の域を出ませんので、そのようにお読みください。

| | Comments (0) | TrackBack (2)

Saturday, July 30, 2005

JR東海313系増備、車両更新で減車とは?

JR東海のニュースリリースによりますと、5年ぶりに在来線車両の置き換えを行うということで、在来線在籍車両の81%がJR化後の新製車となるものですので、輸送改善の効果が期待できます。
 投入線区は東海道線全線、中央線、身延線、御殿場線などとなっていて、平たく言えばJR東海の直流電化路線のうち飯田線を除くほぼ全線に配置されることになりそうです。5年ぶりの登場となることもあって、車椅子対応トイレなどバリアフリーの深度化がうたわれておりますが、必然的にトイレスペースが拡大され、短編成を前提とする限り、収容力を確保するために車内レイアウトが見直されるのかどうか、つまり有り体に言えば転換クロスシートを諦めて、座席数の確保が容易なボックスシートやロングシートなどの選択肢を採用するかどうかあたりが注目点でしょうか。特に今回は名古屋都市圏以外の地域に配置されると考えられますので、並行私鉄との競争がないなど、マーケット特性の違いもありますし、乗客サイドの嗜好も異なると考えられますので、その辺をJR東海がどう考えているかが明らかになります。
 あとメーカーは日車主体となるんでしょうけど、小田急3000系や京王9000系、京成3000系や名鉄のステンレス新車群に見られるブロック工法の車体が採用されるかどうかなど、5年の空白による技術革新要素の現車への反映がどのようになるかも興味深いところです。
 で、本題なんですが、旧型車234両の置き換えに204両の新製ということで、差引30両の減車となるわけですが、これをどう評価するかという点です。素直に考えて、現車が登場する今年秋の時点では、愛知万博も終わってますから、ポスト万博輸送という観点からは、減車は妥当な判断となるわけです。おそらくJR東日本との乗り入れを減らして捻出した113系T編成の分が該当するんだと思います。JR東日本で113系置き換えが加速している現状を考えると、これも妥当なところかとは思います。
 問題はその先でして、ここまではあくまでも現状で需要に見合った輸送サービスが実現していることを前提とする限りは、問題ないと思いますが、例えば御殿場線の国府津口で313系ワンマン列車の乗車率を見ていると、どうも疑わしいところです。E231系5連の山北ローカルがほぼ完全着座で利用されている現状を見ると、短編成化やワンマン化などで合理化の果実を得るのに乗客サービスにしわ寄せがされているように感じざるを得ません。折角新車が入るというのに、なぜか素直に喜べないところです。
 設備投資額250億円としており、1両あたり1.25億円になりますが、JR東日本の新系列車で0.9億円/両を実現していて、それを当てはめると同じ予算で280両増備可能ですし、一般的な1億円/両で計算しても250両の増備が可能なんですが、それだけ車両単価の高い新車を入れることと、同じ予算で車両単価を抑制して新車を多数入れることと、どちらが正しい判断なのか、にわかには判断がつきません。
 このあたりの論点はJR西日本の321系についても述べましたが、車両更新は鉄道会社として重要な問題であり、またコストダウンは私企業としての鉄道会社として避けて通れないテーマであるわけです。会社としての考え方が最も端的に出る部分ということで、注目すべきものといえます。

| | Comments (8) | TrackBack (1)

Saturday, July 23, 2005

地震からの帰還、2時間のはずが5時間でした

というわけで、21時過ぎに無事帰宅となりましたが、しかし凄かった^_^;。
電車ストップ道路渋滞 首都圏(共同通信)
 そもそも週末に仕事が入って、朝から北千住へ向かったんですが、滅多に向かわない常磐線で、朝から415系500番台の土浦行きをゲットして、つくば万博で乗ったことを思い出し、くたびれた車体に時の流れを感じつつ何か得した気分だったんですが、仕事を終えて16時過ぎ、要介護の母の食事介助の日課をこなすのに間に合うタイミングだったこともあって、足取りも軽くホームへ向かうと、E501系の快速上野行きを引き当てるなど、レアものに満足しながらの家路でした。
 上野に着いて山手京浜東北の3,4番線へ向かい、折しも京浜東北の蒲田行きが入線というタイミングでグラリ、一瞬足を取られて立ちくらみかいと自分ツッコミしたら、頭上で番線表示が揺れていて、地震に気付いてそれにしてもなんという大揺れかと思いつつ、到着してドアの開いた電車に乗り込んだら、地震で点検のため発車見合わせの放送がホームに入って、やれやれと思いつつも、この時点ではこれほどの大ごとになろうとは思いもよらずというのが正直なところでした。構内放送で震度5が伝えられ、なるほど揺れたわけだ。
 ま、それでも電車が動くまで待つしか術はないわけで、母の食事介助は親族に電話で依頼して、とりあえず復旧を待つこと1時間、動く気配はないけれど、とりあえず東北線と高崎線は徐行運転ながら復旧したのを横目に、他社線の復旧状況もわからず、改札で汗して乗客を応対しているJR社員氏に話を聞いてみると、情報が不十分ながら東海道線、横須賀線、湘南新宿ラインは止まっている由、東京メトロは全滅ながら都営地下鉄と京浜急行が復旧ということで、上野御徒町まで歩けば、何とか横浜までは行けそうなことがわかり、振替乗車を訪ねると、全社全線で止まっているために、振替乗車の扱いについて合意ができていないということで曖昧な返事。ま、とにかく上野駅では東海道方面の情報が十分ではないようなので、18時頃にとりあえず歩いて南を目指すことといたしました。
 途中御徒町と秋葉原に立ち寄って、最新情報を確認しつつ、それでも東京まで行けばもう少し情報が入るかもしれないと思いつつ、結構道を歩く人が多いのも同じ考え方だろうと励まされながらの道行きでした。そして秋葉原で振替乗車について、とりあえず他社線の乗車券でも乗せることになったとの情報を得、また東京メトロ銀座線、日比谷線の復旧ということで、日比谷線秋葉原駅へ向かいます。途中電気店店頭のテレビに人だかりが。地震で交通がストップしたニュースが流れてました^_^;。でも渦中にあるととにかく情報が欲しいんで、とりあえず足を止めて眺めると、未だ東京メトロは全線ストップのままで、やはり現場の方が情報が早いんですね。
 とりあえず日比谷線で人形町へ、そこから都営浅草線を介して横浜まで京浜急行で向かうことにします。すると人形町でやってきた電車はKEIKYU BLUE SKYのN1000形8連の快特三崎口行きでした。こんな日に限ってまたレアものを引き当てるとは(笑)。
 泉岳寺や京急蒲田で抑止がかかりながらも、20時には横浜へ到着、京浜間をほぼ1時間かけてですから、普段の倍ですが、ここまで来れば先が見えてきます。LED案内表示を見ると16:56発快速アクティー小田原行き、帰宅してから時刻表を見れば3767Mで地震の時刻には新橋~品川簡を運行中だったんですが、駅間か品川駅かどちらかで抑止をかけられ、やっと復旧しても25km/hで徐行運転で、やっとこの時刻に横浜に到着したことになります^_^;。お疲れさま。
 横浜から先は通常の運転速度での運行となり、順調に大船に達しましたが、バスターミナルでびっくり。横須賀線が止まっているので、バス停には長蛇の列が。それにしてもバスで運びきれるでしょうか。出迎えの車も多数出て時ならぬ渋滞に、バスも時刻が乱れっぱなし、這々の体での帰宅と相成りました。
 全体的には足止めを食った乗客も落ち着いてましたし、JR東日本の社員が、熱心に情報提供を行っている姿勢にも好感が持てました。家に帰ってからテレビニュースを見ると「震度5でストップとは脆弱、大地震に対して不安」などという報道がなされてましたが、どうせインタビューの仕方で回答を誘導しているんでしょう。現場は至って冷静というのが私の印象です。それよりも帰宅して読んだ夕刊のエジプトのテロ事件に驚きました。日本人は地震には慣れていて冷静でいられたかもしれませんが、過日のロンドンのテロ事件のときのイギリス政府や国民の冷静さを見るにつけ、事実に反した報道で煽る日本のメディアのしょーもなさに暗澹たる気分にさせられます(怒)。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Wednesday, July 13, 2005

相鉄自動車、空港リムジンへ参入

相鉄自動車、沿線から初の羽田行き高速バス運行(日本経済新聞)
 というわけで、二俣川駅~羽田空港間のリムジンバスを7/20より京急バスと相鉄自動車の共同運行で運行開始となります。相鉄沿線からの空港路線は初めてです。
 で、このニュースのニュースバリューはというと、赤字のバス部門の分社化を巡って労使対立が続く相模鉄道で、タクシーと貸切バスの相鉄自動車による路線開設という点にあります。しかも河口湖線も申請中ということで、高速バス用大型バスを6台導入して対応します。当然バス分社を巡る労使交渉にも影響するものとなるでしょう。
 労組の切り崩しと言ってしまえばミもフタもない話なんですが、グループ連結経営を標榜する以上、バス部門の赤字を放置できず、分社して給与体系を鉄道本体から切り離すことは、避けられない話ではあります。実際分社化されて相鉄バスに移行し独自の給与体系となった綾瀬営業所は、単独黒字を達成しています。
 労組にとっては悩ましい話なんですが、鉄道直営である限り、鉄道の黒字でバスの赤字が穴埋めされてしまう状況で収支均衡が可能かどうかという問題は直視する必要があります。鉄道との収支通算を前提に現在の待遇が決まっているときに、それを与件としてバス事業の収支均衡を図ろうとすれば、路線の縮小や減便など縮小均衡へ向かい、結局スケールメリットが効かないレベルまで縮小して長期的には事業廃止しか道がなくなるわけです。
 これに対して現役乗務員の自然退職をあえて補充しない形で徐々に鉄道直営のバス事業を縮小させていく方法はあり得ます。しかし京王電鉄などで試みられたこの方法は、結局時間がかかりすぎて、その間に経済情勢が変化して計画に狂いが出るなどの問題をクリアできず、結局労使対立の中待遇切り下げを伴って直営バス部門の切り離しが行われました。結果としてバス事業の収支均衡は達成されましたが、社員の定着率の低下は見られたようですので、安全運行のために望ましい長期雇用への回帰が次の課題ですが、外科手術を避けて縮小均衡へ向かうのとどちらが正解だったのかは、かなり悩ましい問題です。
 いろいろ背景はあるんですが、そもそも鉄道直営のバス部門の意義というのは、日本の行政の縦割り体質に根拠があります。60~70年代の公共料金抑制政策で鉄道運賃は意図的に低く抑えられ、5%程度のインフレと相まって大手私鉄といえども運賃改定後3年もすれば利益が無くなってしまう状況で、運賃改定周期が異なり改定の査定基準も異なるバス事業を直営で持つことの意味は大きかったといえます。現在から見ると考えられないような話ですが、縦割り行政の実態はあまり変わっていない気がします^_^;。
 現実にはマイカーの増加で利用客が減少し道路渋滞で定時運行が阻害され、更に客離れが続く路線バス事業を鉄道直営では持ちきれなくなってきてます。また80年代後半からブームとなって、一般路線に比べて生産性が高く高収益な高速バス事業で一息ついたのもつかの間、90年代には需給調整規制撤廃の流れを受けてダブルトラック、トリプルトラックなど競争激化で価格破壊へと向かい、一方で人件費が高止まりする中、利益確保が難しくなってきています。
 あと頭の痛い問題は、貸切バスによる格安ツアー運行という路線バス類似行為の横行で、取り締まる法規もなく野放しとなっている問題があります。実はこれ例えば北海道で始まって当時の運輸省の指導で貸切ツアーバスへ追認的に路線免許を交付して、安全運行などの面で縛りを課すなどが過去に行われたんですが、当時と比べても価格競争で過酷な乗務員の勤務実態や車両の整備不良などがあるにも関わらず競争促進の見地からか放置されております。
 本来は安全の見地から国が規制に乗り出すべきですが、路線バスと貸切バスは別物という縦割りの論理が優先するようです。そんな中で浸食される路線バスの側が労使対立していては、ますます事態が悪化するだけになりかねません。これだけ経済情勢が変化している中での鉄道直営バス部門の乗務員の待遇維持は、諦めざるを得ないのではないかと思います。むしろ長期雇用を軸に安全をアピールできる体制づくりに労使が取り組み、悪質な格安ツアーバスの駆逐に動いて国を動かして欲しいと思います。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Monday, July 11, 2005

“超優良企業”つくばエクスプレスの謎

JR常磐線のダイヤ改正の話題でネット上も賑わっておりますが、今改正の誘因といわれるつくばエクスプレスの開業を来月に控えて競争もヒートアップという論調が多い中で、当ブログでは少し視点を変えて掘り下げてみたいと思います。
 そもそもは国鉄時代の通勤新幹線構想に端を発する計画として構想されました。東京の旺盛な通勤需要の増加に対して、通勤五方面作戦と称する輸送力増強計画が実施中でしたが、中央線の高架複々線工事で都市景観の悪化、日照障害、騒音振動被害などが影響して反対に遭い、土地の収容を巡って反対に遭いと遅々として進まず、また折角線増で輸送力を増強しても、沿線開発を誘発して混雑したりという具合で、大規模投資に見合う効果はなかなか得られませんでした。
 一方1964年に開業した東海道新幹線が、そのスピードと輸送力で在来線との比較で劇的に生産性を高め、高収益路線となったことで、新幹線なら何とかなるという認識が国鉄内部に芽生えます。その高生産性を首都圏の通勤輸送に利用できれば、通勤輸送の劇的な改善が可能ではないかということで、主に東京から100km圏の拠点都市を東京と直結することで、大規模な開発用地を創り出せれば、旺盛な需要の先回りが可能ではないかと考えたとしても不思議ではありません。また開業当初、東海道新幹線で1駅間利用が多かったことも、このプロジェクトに自信を与えるものと考えられておりました。
 そこで全国新幹線網とは別個に、東京から小田原、甲府、高崎、宇都宮、水戸への通勤新幹線計画を立ち上げることとなりました。最高速160km/hで表定速度120km/h程度を想定し、新幹線より規格を下げて地価の高い地域での用地買収をやりやすくし、最大乗車時間が1時間を切ることから立席を容認した詰め込み設計で運賃を安くするなど、実現を視野に入れた構想が練られていて、結構本気だったようです。
 しかし実際に日の目を見ることはありませんでした。当時の国鉄が政治の干渉を受けやすい組織だったことから、票につながらない通勤輸送の改善は優先順位を下げられることとなり、また開業時多かった新幹線の1駅間乗車も、東名高速道路の開通とマイカーの普及で減少し、東海道、東北、上越と新幹線が開業してみれば、朝の上りは列車のない空白の時間帯となり、下りの始発駅への送り込み回送を兼ねた通勤列車の設定が可能なことがわかると、わざわざ通勤目的の新幹線を作る意味も見出せず、ということでいつしか立ち消えとなったわけです。
 時は移りバブル真っ盛りの頃、地価上昇を背景に東京の通勤圏で土地の仕入れ値から開発可能地が限定される中、また五方面作戦で都心アクセスを地下鉄千代田線に依存したためにサービスが硬直化し、柿岡の地磁気観測所の影響で取手以北が交流電化となって、高価な交直両用車を必要とするなど、特殊事情が災いして輸送改善が進まない常磐線の混雑緩和を兼ねて、東急田園都市線をモデルとした鉄道新線を中心に沿線開発と関連事業で自立採算を目指す事業として、鉄道のない研究学園都市つくばと東京を直結し、沿線開発のために中間駅を設置した仮称常磐新線として事業化が計画されました。通勤新幹線構想はここへ来てコンセプトの変更がなされたわけです。
 とはいえ60km弱の高規格新線の建設と沿線の広大な開発用地の取得、同時に区画整理事業による鉄道用地捻出を兼ねた土地の先買いなどで、かなりの資本規模を必要とする事業であり、国鉄末期の財政事情や労使関係のもとでは実現は難しく、また分割民営化が実行段階に至ってなかなか事業化の機会を得られずに推移します。事業の概要は茨城県の公式ページに要領よくまとめられておりますので、ご参照ください。
 何事も行間が重要でして(笑)、いくつかのポイントがあるんですが、89年の「大都市地域における宅地開発及び鉄道整備の一体的推進に関する特別措置法」という長ったらしい名称の法律が成立し、事業主体となる第三セクターに開発用地と線路用地を兼ねた土地の先買いを認め、民間地権者を巻き込んだ区間整理事業を推進することができるようになりました。また都市鉄道整備に関する無利子融資の受け皿となることも盛り込まれるなど、法令によって事業推進の権限を得ることとなり、91年に事業主体となる第三セクター「首都圏新都市鉄道株式会社」を設立し、翌92年に第一種鉄道事業免許を取得し、動き出すこととなります。
 とまぁここまでで既に通常の第三セクター鉄道と際立った違いがありますが、株主構成も特異でして、沿線4都県と12市区町村と、金融機関や沿線企業を合わせた207社の民間株主という構成で、民間に特に有力な大株主が見あたらず、自治体主導型第三セクターといえるんですが、驚くべきはその資本金で、1,850億円という資金を集めております。この金額はJR東日本の2,000億円には及ばないもののJR東海の1,200億円をはるかに上回る日本の鉄道事業者としては2番目の規模となります。当然その分借入金の比率は低く、無利子融資も受けられることから総事業費9,400億円中6%相当の有利子負債しか保有しないという大手私鉄も真っ青な健全すぎる財務体質です^_^;。当然開業後の利子負担も軽いわけで、高速バスより安い認可普通運賃を裏付けております。
 首都圏の複数自治体が結集して余剰金を持ち寄れば、これぐらいの資金が集まるというのは驚きですが、もちろん近隣自治体とのお付き合いで地方債を発行して得た資金で出資している自治体も中にはあるでしょう。この場合事業者である第三セクターに代わって金利を負担することになりますが、開発利益が還元されればそれで良しという割り切りも可能です。また当初予定されていたJR東日本が出資を見送り、穴埋めに広く企業の出資を募った裏にも自治体の苦労があったと思われますが、注目すべきは、事業主体となる第三セクターを軸に各自治体の行政権限が鉄道整備と沿線の一体開発というベクトルで束ねられ、事業推進のイニシアチブを生み出している点です。上記のホニャララ一体的推進法^_^;が効いているものと思われます。制度が資金を集め制度が事業推進のイニシアチブを生み出すというのは、これまでの地域開発には見られない希有な出来事ではないでしょうか。
 もちろんこのことが事業の採算性まで保証するものではなく、営業成績は蓋を開けてみなければわからないのですが、潤沢な資金を背景に真っ直ぐな高架橋にスラブ軌道という新幹線を彷彿とさせる高規格な線路にATC,ATO装備にホーム柵完備のワンマン運転仕様という贅沢なハードで、速度も編成質量も新幹線の半分ですから、1列車あたりの軌道破壊量は1/4かつ新幹線ほどの保守精度は必要ありませんから、極限的な省力化体制で営業できる点は、利子負担の少なさと共に有利ではあります。それでもJR東日本が降りた理由でもある地価下落による居住人口の都心回帰という現実の前で、目論見通りの沿線開発が可能かどうかは未知数ではあります。
 つくばエクスプレスが事業として成功するかどうかはともかく、地域の公共交通整備に大きなヒントを与えてはくれます。ホニャララ一体的推進法^_^;の地方版のような例えば(仮)まちづくり推進法のような法律を制定し、沿線の一体的開発に加えてパークアンドライドやロードプライシングまで制度として定義すれば、地方都市でLRTを整備したりローカル鉄道を存続させたりする可能性がひらけると思うんですが。岐阜市や常陸太田市が為す術なく鉄軌道の廃止を受け入れ、地域交通を衰弱させた不幸を繰り返さないで済み、あるいは神岡鉄道の不幸に際して指摘した高規格なハードでメンテナンスフリーを狙う意味でのテストケースでもあり、また新たな公共交通整備が可能となるならば、バブルの落とし子みたいなつくばエクスプレスですが、地域交通の整備に新たな可能性をひらくものとなりうるのではないでしょうか。
 その意味で開業が待たれますが、昨今の首都圏の新線開業の傾向から、初乗りラッシュは避けられず、ホームドアが仇になってダイヤ乱れっぱなしのスタートが予想されます。ほとぼりが冷めてから普段着の姿を見たいところです。

| | Comments (2) | TrackBack (6)

Saturday, July 02, 2005

神岡鉄道廃止に見るローカル鉄道廃止と存続の狭間

またひとつローカル鉄道の廃止が決まりました。神岡鉄道の廃止が6/30に報じられ、既にネット上でも話題になっております。
 同社は神岡鉱業の貨物輸送に依存していたのですが、昨年10月にトラック輸送への切り替えによって、既にカウントダウン状態になっていたとはいえます。元々旅客輸送需要が旺盛とはいえない地域に立地するだけに、鉄道としての存続は難しいとはいえます。
 ただ行政の対応には疑問が残るところでして、例えばこんな記事があります。あとJR福知山線事故の影響で安全対策の強化を求められたことも響いているのは、この記事からも読みとれます。
 まぁ実際存続は難しいわけですが、神岡鉱業の親会社の三井金属に依存して生き残った線だけに、行政としては寝耳に水の感もあるとは思いますが、地域の交通をどうするのかについて、明確な方針も持たないおざなりな行政の対応にはうんざりさせられます。
 気になったのが飛騨市という自治体ですが、平成の大合併で2町2村が合併して発足した市であるわけですが、発足から1年少々で早くも自治体として存在意義を突きつけられた格好です。地域コミュニティの実体がどうなっているかを私は知る立場にはありませんが、市の中心機能が旧古川町エリアに存在するであろうと推察され、国道41号線がこの流れに合った交通ルートである点から見て、神岡鉄道が地域交通としていかほど活用されていたかは疑問が残ります。あるいは県境を越えて富山市の広域エリアに位置づけられていた可能性はありますが、それでも旧神岡町エリアにしか恩恵のない路線であれば、旧古川町エリアの住民に財政負担を強いる話は難しいわけです。合併特例債のアメをちらつかせてまで行った平成の大合併が、地域社会に何の恩恵も与えない典型例として記憶に留めておきましょう。
 それでも日本の現行の制度の中で、財政支援を効果的に行って路線存続をはかる手はあります。地方自治体で認められた目的外税の活用によって、例えば神岡鉄道沿線住民と沿線立地企業に“交通税”などの名目で課税することは可能です。わかりやすい受益者負担です。
 でまぁこれを直接事業者に補助金として渡すのは能がないですし、年を追うごとに設備更新や安全対策などの投資が必要な鉄道事業においては、基本的に増収の難しいローカル線では年々欠損の額が大きくなる傾向は避けられません。つまり年々税負担も増えることになります。いくら受益者負担の原則をふりかざしても、納税者の同意を得るのは難しいでしょう。
 以前わたらせ渓谷鐵道の全線年間定期の話題でも申し上げましたが、定期券制度を逆手に取って、納税者に定期券を配ってしまうというのが、ひとつの解となります。輸送統計上は毎日1往復の利用とカウントされますから、利用実態を底上げすることになります。もちろん単なるバーチャルな数字づくりに留まらず、実際に定期券で沿線住民に利用していただくことも狙いのひとつとなります。加えて全国の鉄道ファン向けに通信販売でもすれば、値段にもよりますが、購入する人は出てくるでしょう。過疎地のローカル鉄道は、これぐらいしないと維持できません。
 同時にこれは優れて過疎地のコミュニティ確保政策となります。意図的に鉄道利用を誘導することで、地域コミュニティが保たれ、特に高齢者の孤立を防ぎ医療や介護などの生産性向上に寄与できれば、市町村合併による行政効率の向上を上回る便益を住民は得られます。このあたりは地方分権と交通政策の記事でも触れました。
 最近話題の郵政民営化ですが、過疎地の局の維持が盛り込まれたことで、有名無実な民営化となったわけですが、最近の過疎地の郵便局員の仕事として、配達や郵貯、簡保の勧誘よりも過疎地の孤立老人への声かけや見守りなど、自治体の民生委員のような役割を担っております。本来は自治体の役割であるはずの部分が合併で行政区域が拡大した結果、目が届かなくなって、民営化されて営利を求める郵政会社に肩代わりさせるという変な話になってしまいます。まさに地方では長生きも命がけです。
 またサービスを維持する仕組みとして実質的に財政投融資の仕組みを受け継ぐ郵政会社の自主運用に名を借りた高利貸しで独立行政法人や自治体からかすめ取った利子を充てるんですから、この面からも行政効率が高まるわけがありません。
 あとローカル線はどうしても維持に力点が置かれる結果、往々にして必要な設備投資を抑制されたり、線路の保守精度を落としてコストダウンをはかるなどで、無理な益出しや赤字圧縮で結果的に時を経て弱体化される傾向にあり、私鉄のみならず例えばJR西日本の中国山地の非電化ローカル線では保守精度を下げて15km/h制限などということすら行われておりますが、結果的に利用者にそっぽを向かれてじり貧になり赤字幅が拡大するわけです。
 発想を変えて通過トン数の極端な少なさを逆手に取って、軌道狂いの少ない重軌条化やスラブ軌道化などで10年単位の無保守軌道構造とするなどして延命する方が、結果的に長期に存続が可能になると思うんですが、日本ではローカル線イコール低規格が当たり前で、むしろ保守費用が嵩む現実に直面するわけです。事業者への運営費補助が納税者の理解を得にくい日本だからこそ、資本増強による劇的な高規格化でメンテナンスフリーを実現するという発想がほしいところです。この場合は沿線住民や企業から株主を公募するなど、必ずしも自治体が絡まなくても可能ですが、株式公募をやりやすくするための支援策には工夫の余地があります。財政負担を伴わずに路線を維持しようという甘い考えは捨てた方が良いでしょう。同時に安価な高規格軌道を実現できる技術開発が望まれます。

| | Comments (0) | TrackBack (3)

Tuesday, June 14, 2005

地方分権と交通政策

ちょっとつかみどころのないタイトルですが、最近思うところが多い論点でもありますので、考えをまとめておきたいと思います。当ブログの悪い癖ではありますが^_^;、少々ややこしい論点に立ち入りますので、長文必至ですがよろしくおつきあいください(笑)。
 4/1付で廃止された名鉄岐阜地区600V線区と日立電鉄ですが、その後代替バスの利用者が大幅に減少したり、岐阜に至っては大野町などで岐阜市へ向かう代替バスよりもJR穂積駅へ向かう路線バスに乗客が流出し、岐阜市の空洞化が深刻化するなどの影響が出ているのですが、行政の対応は後手を踏むばかりか、問題点の把握すらできていないていたらくとなっております。市民生活に大きな影響が出ている現実に自治体が責任を負えないというおかしな現実をどう考えるべきなのでしょうか。
 岐阜といえば市民による廃止反対運動やLRT特区申請、仏コネックス社による買収提案など話題豊富だったんですが、終わってみれば最悪の結末となりました。市当局が結局問題を把握できなかったのか、その市当局の仲介がなければ買収交渉に応じないとした名鉄のかたくなな態度が問題だったのか、いろいろ見方はありましょう。しかし現行制度のもとではこれがたぶん精一杯だったのではないかと思います。
 岐阜市では同じ4/1付で、2003年度から岐阜バスへの移管が進められていた市営バスの移管も終了し、くしくも同日に岐阜市の交通体系はほぼ岐阜バスに一本化される形になったわけです。結局名鉄の岐阜地区からの撤退と地方財政の悪化による地方公営交通の縮小の2つが同時進行で起きたという点に、岐阜の特長が表れています。平たく言えば市営バスの撤退方針が実行段階にある岐阜市は、いかに市民が廃止反対を叫ぼうが名鉄の撤退問題で既に当事者能力を喪失していたといえます。
 地方公営交通の問題点は、結構複雑なんですが、昨今は全国的に見直しの動きが活発で、岐阜市と同日に熊本県荒尾市でも市営バスの民間事業者(産交バス)への移管完了で姿を消してますし、免許上は公営でも業務委託されたケースは東京都や京都市などの大都市にさえ顕れています。公営という経営形態ゆえの非効率が言われ、例えば乗務員の高給問題などが語られることが多いんですが、確かにある時期同一地域の民間事業者に比べて年収ベースで100万円高いということはあったようで、市民による指摘もされたわけですが、その後は賃金の切り下げや嘱託職員の採用などで人件費抑制はかなりの程度進んでいます。ただ同時期に民間事業者でも同等の動きがあった関係で、官民格差是正に至っていないケースが見られることもあります。
 それでも相変わらず公営ゆえの非効率で語られるケースが見られますが、現実はかなり変わってきています。蛇足ながら浜渦副知事更迭問題で揺れる東京都の石原知事も、就任当初都営交通の民営化方針を打ち出しましたが、その後の労使協議で一部営業所を東京都も出資する一応民間事業者のはとバスへ委託したにとどまります。公営では赤字でも民営ならば納税までするということも言われますが、公営でも余剰金を一般会計に繰り入れれば同じですから、経営形態が問題の本質ではないということは、郵政問題と同じです^_^;。
 むしろ公営特有の問題は、鉄軌道事業において顕著な問題です。例えば国家資格である動力車運転免許ですが、三セクを含む民間事業者では必須ですが、公営鉄軌道事業者では免除されます。明治期に確立したいわゆる鉄道事業の国有化原則の残滓なんですが、本来国の専管事項である鉄道事業を行おうとする民間事業者の場合は、国の事業としての鉄道事業と競合することなく補完することが求められ、そのことの認定を受けた証しとして事業免許が交付されるという法体系となっております。加えて実務においても営利を優先して安全無視をしないように動力車の運転を国が認める有資格者に制限し、事業年度ごとの収支報告を国に対して行うなどの細かい規制を行ったわけです。日本初のインターアーバンの阪神電気鉄道が路線の一部が道路併設の併用軌道だったことを隠れ蓑に官営鉄道の並行路線の認可を軌道事業として受けたのは有名な話です。当時軌道は道路交通の一部と見なされ、鉄道と比べて規制が緩かったのです。
 地方公営交通は、基本的に都市内の軌道事業がほとんどで、官営鉄道との競合は考えられず、むしろ鉄道利用者を駅に運ぶフィーダー輸送の担い手として相互補完関係にあるものと見なされました。また民間同様に事業免許の交付を義務づけられ一般財源と切り離した特別会計による収支報告を求められたものの、公営ゆえに民間事業者のように営利優先の安全無視も心配ないということで、現在に至る動力車運転免許の免除は生き続けたわけです。この辺は尼崎事故の制度的側面の記事でも触れましたが、時代の変化に取り残された制度的な抜け穴として指摘しておきます。
 バス事業は当然民間同様の規制を受けるわけですが、岐阜市のように鉄軌道事業を手がけたことのない自治体においても、財政事情が許すならば民間事業者の買収などで鉄軌道事業への参入をうかがったことはあると考えて良いでしょう。実際名古屋市も民間である名古屋電気鉄道(名電)の事業を買収したものでしたし、名電も買収を見込んで郊外線を建設し買収後はそちらを中心に事業を継承し(第一次)名古屋鉄道となる歴史を踏んでいます。公営交通事業は都市のステータスと考えられていたわけです。
 時代は下り、今や全国の自治体は財政悪化に歯止めがかからない状況で、その原因は別途いろいろあるんですが、そうなると赤字を一般財源で補填する公営交通事業がやり玉にあげられることになってしまいます。前述のように人件費の見直しなどはかなり進んではいるのですが、一方でモータリゼーションの進展による中心街の空洞化、いわゆるスプロール現象によって中心部に路線が偏在する公営バスは大きな影響を受けます。同時にバスゆえに増加するマイカーによる道路渋滞で定時運行もままならず、乗客からも見放されることにもなります。
 かつて都市のステータスとして参入した市営バスを維持できない岐阜市に名鉄の撤退はあまりに荷が重い問題だったといって良いでしょう。そればかりか電車優先運行への無配慮やノーガード電停の放置など、市内交通の利便性向上にはついぞ目が向かなかった行政の無能力ぶりに驚かされます。
 また市営バスの廃止と併せて考えると、市内の電車とバスの事業の独占権を要求したコネックス社の主張にも違った意味が見いだせます。彼らは日本の制度は良く知らなかったかもしれませんが、結果的に岐阜バスが市内交通全ての受け皿となる実態を意外にも正確に把握していた可能性はあります。少なくとも岐阜バスよりも自分たちの方がうまくやれると考えていた可能性はあります。
 ま、それでも提案に乗れなかった岐阜市には、そもそも権限がなかったわけです。バス事業も含めて交通事業の免許の交付は国の専管事項であって、岐阜市どころか岐阜県も手が出せない問題ですから仕方ないところです。
 既に廃止された岐阜の名鉄線ですが、生活圏の交通のあり方をその地域で自己決定できない現実は何を意味するんでしょうか。以前にも指摘したことがありますが、そろそろ国の権限で行われる交通事業の免許制度を見直し、地域交通については自治体レベルに権限を委譲してはどうかと思います。免許制度がそもそも鉄道事業の国家独占の産物ならば、地方分権で地域の交通に関して地域で自己決定できるようにすることは、先の見えない三位一体改革よりも実効性のある改革だと思うんですがね。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

Sunday, May 22, 2005

横浜高速鉄道営業黒字、MM線開業後初の通期決算

タイトルの通りなんですが、5/21付け日本経済新聞首都圏経済欄の記事によりますと、MM線開業後初の通期決算となる05年3月期決算で7億円の営業黒字を計上しました。ただし支払利息の負担が大きく、経常損益は20億3,100万円の赤字となり、建設費の嵩む昨今の新線の問題点を浮き彫りにしています。
 営業収益は74億5,900万円で1日あたりの平均利用人数約121,000人で計画より約16,000人ショートで、通勤客の利用が伸び悩んだものですが、その分定期客の比率が低く、営業黒字となったものと思われます。今後は沿線の官公庁や企業に利用を働きかけるそうですが、定期券割引率の高いJR根岸線が近隣で並行している現状では、転移は難しいのではないでしょうか。定期券限定で他社線との大幅な乗り継ぎ割引を行うなどをしないと、職場で通勤定期代の申請がしにくい状況ではないかと思います。むしろ観光需要を取り込むべく、北千住や浦和美園からの臨時列車を走らせるなどして観光客の集客に励んだ方が、増収の期待もできると思うんですがね。
 細かい数字は、今のところ公式ページでも発表されておりませんが、当面は営業黒字も利払いで吹っ飛ぶ状況が続きますので、天気晴朗なれど波高しなMM線といったところでしょうか。将来は東京地下鉄13号線の開業で集客範囲を拡大できますから、さまざまなところから元町・中華街行きの電車を走らせることで、活性化に期待ができます。
 また沿線開発も課題を抱えつつながら進んでおりますので、将来は明るさを感じさせます。そういう意味で、本牧延長などの夢は当面おあずけにして、足元の営業をしっかりとやってほしいところです。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

Thursday, May 19, 2005

215系快速伊豆号運転

湘南新宿ライン大増発の12月改正で職場を追われたオール2階建て電車の215系ですが、下り5/14,5/21,5/28、上り5/15,5/22,5/29限定で全車座席指定の臨時快速伊豆号として運転されます。以下JR東日本えきねっとを参考に運転時刻を掲載します。





東京品川横浜大船国府津小田原湯河原熱海網代伊東
 8:398:589:189:4910:0510:2510:3210:4410:55
8:318:409:049:199:5910:0710:2610:3310:45





伊東網代熱海湯河原小田原国府津大船横浜品川東京
16:3716:5316:5917:1717:2417:5518:1018:2618:34
16:2816:3716:5417:0017:1817:2517:5518:1018:26

 下りの横浜や国府津での長時間停車に苦労のあとが見られますが、2扉で客扱いに時間がかかる上に、211系と同等品の足回りに重たいダブルデッカーの車体を載せた215系では、スジを入れるのも一苦労といったところでしょうか。湘南新宿ラインに運用されていた頃は、遅れの元凶となっていた同車ですから無理もありません。
 逆に上りは停車時間を切り詰めてますが、基本的に乗せたら降ろすだけですので、これで何とかなるのでしょう。にしても定期列車のスキマに突っ込んだ感じの設定です。
 元々着席通勤の切り札として期待されたダブルデッカーのライナー専用車の215系ですが、快速アクティやホリデー快速に使われたものの、2扉で車内に階段があることも手伝って客扱いに時間がかかるために、使いどころに苦労が見えます。ライナー列車ならば乗るか降りるかだけですから何とかなるのでしょう。
 そういえば常磐線にも1形式1両のクハ415-1901がいますが、現在は混雑時間帯を避けた限定運用が組まれていて、やはり持て余している現状があります。
 それに比べれば一応ライナー列車とはいえラッシュ時間帯に定期運用が組まれている215系はまだましなのかもしれませんが、今後踊り子用の185系が置き換えられる頃には、ライナー兼用で運用効率を高めようとするかもしれませんので、案外短命に終わる可能性もあります。団体輸送や予定臨に使うにしても、今となっては座席数を増やすために採用されたボックスシートではかえって使いにくいかもしれません。
 現在首都圏操配用に使われている183系も、今は旧国鉄形ということで人気ですが、車齢は高いので、いずれは置き換えが取り沙汰されると思います。それと踊り子用の185系に、JR東海から乗り入れる特急東海の乗車率の悪さと、青春18シーズンを除けば空席も見られるムーンライトながらの予定臨格下げも噂される中で373系の運用変更も噂が絶えないところです。時期が来ればこの辺に大きな変化が起こる可能性はありそうです。

p.s.小田急ロマンスカーの注目される話題で盛り上がったところで、小田急グループ3社の名義株のニュースが流れて残念です。西武の場合と違って、グループの株式持ち合いの実態を隠すものだったのですが、日本ではあまり悪いことと認識されていなかったかもしれません。それがこうして表へ出るようになったこと自体が、日本の経済社会の望ましい変化の兆候と見るべきなのかもしれません。

| | Comments (4) | TrackBack (0)

Wednesday, May 04, 2005

ユーザーのふそう離れ? 気になる近所のバス

久々のバスネタです。
 神奈中の舞岡営業所に日野ブルーリボンシティが登場しました。小型限定路線用のリエッセを除けば、大型バスとしては久々の日野車の登場となります。舞岡もリエッセ以外はオール三菱ふそう車の陣容だっただけに、日野車の登場はニュースバリューのある話題かと思います。神奈中全社で見ても、おそらく日野車の新車はモノコック時代まで遡る話になると思いますから、かれこれ20年ぶりぐらいでしょうか。しかもCNG車ですから、排ガス規制の影響で三菱ふそうバスの新車発売ができなかった影響は直接無関係だと思います。ま、単に日野のディーラーがうまくセールスしただけかもしれませんが。
 と思いきや、やはり三菱ふそうが圧倒的に多数派である江ノ電バス鎌倉営業所(平島)でも、いすゞエルガの新車が登場しております。標準尺のワンステップのようです。ま、江ノ電の場合は、少数派とはいえいすゞ車は元からおりました。ただ富士重ボディなんでぱっと見わかりにくいんですが、特に鎌倉には7EボディのLV324の長尺車がいまして、全国区でも結構な珍車だと思います。ということで、ひょっとしてタイトルのような事態(ユーザーのふそう離れ)が起きているのではないかと思った次第です。
 実際問題として新車の型式認証問題で国土交通省から待ったをかけられていたので、セールスの空白期間があったかもしれませんし、全国のユーザーを見たわけではないんで、即断は禁物ということにしておきましょう。しかしそれぐらい神奈中の日野車デビューは椿事といえます。
 ただこれも繰り返しになりますが、型式認証問題でも触れましたが、元々90年頃と比べれば新車登録台数が半減に近い需要の冷え込みを、ディーゼル排ガス規制による買い換え需要で無理に押し上げているからかろうじて維持されている大型メーカー4社体制ですが、逆に排ガス規制対策で開発費用が嵩張った結果が、メーカーの収益を悪化させている現実も見ておく必要があります。その結果ユーザーは買い換えによる出費を強いられ、メーカーは車は売れるものの、3年ごとに新規制に合わせた新エンジンの開発費で利益を食いつぶし、経営が疲弊しているときに、メーカーの負担となるリコールを内々に処理しようという誘因が働かないといえば嘘でしょう。実際は制度面で無理を重ねているといえます。
 そうはいっても他の3社はリコール隠しを少なくとも表面的にはやらずに凌いでいるわけですから、三菱ふそうの責任は免れないのは言うまでもありません。何が三菱ふそうをそうさせたんでしょうか?
 “零戦の三菱”として名高い名門企業三菱重工の自動車部門が分離独立した三菱自動車の大型車部門を分社した三菱ふそうというややこしい位置づけですが、リコール隠し問題で販売不振となった三菱自動車から役員を引き揚げ距離を取り始めたダイムラーが、三菱ふそうには社長を送り込んでまで守ろうとしているわけですが、リコール隠しの中身は主に分離前の大型車部門が中心だったわけですから、何か奇妙な気がします。逆に言えば三菱は大型車こそ国内トップの地位にあり、国際的にも知られた存在だったので、ダイムラーとしては今さら手放すわけにはいかないわけです。分離後の三菱自動車こそいい面の皮だったわけです。
 三菱ふそうも当初はダイムラーのライバルのボルボに身売りされたのですが、ボルボの撤退と共にダイムラーの傘下におさまるわけですが、この辺の不透明な経過は、結局自らを高く身売りするための分社だった疑いがあります。つき合わされたダイムラーは散財を余儀なくされたわけですね。
 そこまで権謀術策を弄してまでも存続に意欲を燃やす三菱自動車と三菱ふそうなんですが、元々乗用車部門はパジェロなどの人気車はあったものの、他社に対して劣勢は否めなかったんですから、選択と集中で強い大型車部門に経営資源を集中させていれば、リコール隠しのような“ずる”をするまでもなく地位を築き、外資へ身売りも防げたように思いますが、名門意識がフルラインメーカーへのこだわりを捨てきれないまま、ずるずると来てしまったのでしょう。
 同様に「トヨタ、日産と肩を並べる名門」と自負するいすゞが、それでもジェミニやアスカの自社生産は早々にあきらめながら、SUVのビッグホーンの生産継続にこだわって経営悪化した図に酷似します。さらに欧州の乗用車市場を中心に小型ディーゼルエンジンの需要が増しており、実際欧州のエンジン工場は好調なんですが、こういう好調部門をGMに手渡し、利益の出ていない国内生産部門を自前で残すなどチグハグが目立ちます。最終組立を諦めてエンジンメーカーとして集中すれば、おそらくアイシンやデンソーに匹敵するワールドワイドなコンポーネントメーカーになれたかもしれません。90年代にリコール隠しで存亡の危機に立ったやはり名門の富士重工が、レガシイをはじめとしたプレミアムカーメーカーに特化し、バスボディや鉄道車両から撤退して業績を高めたのとは対照的です。
 いすゞは大型車メーカーとしても劣勢は否めず、日野との経営統合も両者の業績の乖離もあってまとまらず、やっとバス最終組立のJバス設立に至ったものの、未だメルファ/ガーラミオの中型観光車の統合に留まり、両者のラインナップの穴埋めに一部車種の相互供給に留まっている現状は、先行きの厳しさを暗示します。一方の当事者の日野は、中型路線車のレインボーHRがノンステップ専用車台だったために継続生産されていたレインボーRJ/RRをエルガミオのOEMのレインボーIIに切り替え、ちゃっかり合理化してトヨタグループらしい抜け目なさを発揮してます。
 日産ディーゼルは中型用エンジンを日野から供給を受けることで、経営資源を大型車の開発に集中した結果、国内メーカーで唯一黒字決算を重ねて経営再建に成功し、遅れていた排ガス対策も尿素触媒技術で一気に優位に立ち、リコール隠し問題で出遅れた三菱ふそうへの技術供与まで決まって地位を築いたことと考え合わせると、企業の盛衰の妙を感じます。

| | Comments (1) | TrackBack (0)

Friday, April 29, 2005

鎌倉総合車両所の変なE217系

鎌倉総合車両所の岡本の方の事業所つーか旧大船電車区といった方が話が早いですが^_^;、一番本線寄りのところにE217系が留置されてるんですが、これが変なんです。何か中途半端な長さなんですね。
 よく見ると4~7号車が抜かれてるんですが、ダブルデッカーのサロ2両と上り側隣接のサハ2両が抜かれて7連になっているんですが、一体いずこへ?
 おそらくサロにSuikaグリーン券用のセンサーなどを取り付ける改造をしているんだと思いますが、しからばなぜサハも一緒なんでしょうか? 単に棒連結器でつながっているからかもしれません。
 昨年12月の改正で湘南新宿ラインに振り替えられた関係で、E217系は2本余剰が出ているわけで、どこかに転用されるのではないかと注目されておりまして、湘南新宿ラインの増強に回るとか、サロを抜いて房総へ回るとか噂されているのですが、当面余剰車を利用してサロの改造を進めるということなんでしょう。
 そうすると必然的にサロを抜かないで転用されることが前提になっているということですから、湘南新宿ラインの増強に回る可能性が高いことになります。ただし幾つかの疑問が残ります。
 E217系は現在基本11連付属4連で15連を組成する編成ですが、国府津と小山のE231系は基本10連付属5連で、なおかつ付属編成の連結位置が逆になっています。これは逗子駅で付属編成を切り離す現在の運用形態から出たもので、電留線が下り側にあって、有効長の関係もあって、付属編成は4連で下り側に連結するようになっているわけです。これを湘南新宿ラインに合わせるためには基本編成からサハ1両を抜き取って付属編成に組み込むと共に、自動増解結装置の付け替え(基本編成下り側→上り側、付属編成上り側→下り側)、帯色の湘南色化、側面客用ドアの半自動化、E231系との協調運転対応改造などが考えられます。
 でもそこまで手を入れるでしょうか。何しろ“寿命半分”の走ルンですですから^_^;。もう一つの可能性として、抜かれたサロとサハは、そのままE231系の新製車に組み込まれて、7連と4連で房総地区へ転用の線も捨てがたい気がします。ただし難点は2本ぐらいの転用では使いにくいということですが。大穴はさらにサハ1両を抜いて京葉線の分割快速(東京~茂原・成東)に使うかといったところでしょうか。いずれにしても目が離せないところです。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Saturday, April 09, 2005

名古屋が中心! と愛知で叫ぶ

首都圏にいますと、報道量が少なくて状況がわかりにくいですが、愛・地球博の入場者数が伸び悩んでいるようです。そもそも何のための万博だったのか、コンパクトにまとめた裏ガイドブック(笑)がありますが、知っておくと愛・地球博を256倍楽しめます^_^;。一般書店では入手が難しいようですから、Booksアフィリエイトで注文してくださいましm(_ _)m。
 ライバルはセントレアだそうで^_^;、高い入場料より見学だけはタダ、冷凍マンモスよりもお風呂、弁当持参でも取り上げられないなどなど(笑)、「花より団子」状態の愛知の春であります。
 さて、何でこうなってしまったんでしょうか。セントレア開港時の記事でも書きましたが、セントレア自体の優位性は単なる後出しじゃんけんの強みであって、間違っても中部が日本の中心になるという話ではありません。名古屋空港の代替で国内線が充実しているのは当然として、国際線の誘致はこれからというところでして、万博開催には間に合ったものの、実際にセントレアを窓口として世界から愛知へ万博見学に人が来るというイメージとはほど遠い現実が横たわります。
 セントレアの売りは、確かに充実した国内線ですし、国際線と国内線の乗り継ぎが便利なコンパクトさなんですが、それが成田や関空や、最拡張で国際化を睨む羽田に対して持つ優位性は限定的であることを自覚すべきでしょう。確かにトヨタにとっては使い勝手が良いかもしれませんが、人口も企業立地も群を抜いて多い首都圏からは利用しにくいですし、近畿圏からの距離感も微妙です。貨物分野も同様で、結局のところは立地面の優位性は相対評価であって、地域の経済活動の反映としての優位性に過ぎないんです。
 翻って、確かに現在中部経済は好調です。特に毎期増益記録を更新するトヨタの強さは盤石に見えます。ですが、逆に言えばトヨタの好調がそのまま地域経済の好調へと反映されてしまう程度の規模というのが、中部経済の実像だともいえます。日産自動車の好調ぐらいでは持ち上げられない首都圏経済や松下の好調ぐらいでは浮揚しない関西経済とは比較のしようがないんです。逆に言えばトヨタ依存の強すぎる中部経済は脆弱であるともいえます。ただし電子化の進む自動車でトヨタ系列のアイシンやデンソーがキーデバイスを握って他社へも供給を拡げている状況ですから、万が一トヨタの販売不振が起きたとしても、それぐらいでは中部自体が沈む心配は薄いことは申し上げておきます。
 それよりもトヨタを筆頭に輸出企業に偏った産業構成の方がリスク要因と考えられます。輸出企業の好調は、あくまでも現行の為替水準だからこそ実現しているのであって、特にアメリカの利上げでややドル高に振れている現状は、輸出企業にとっては増益要因となります。トヨタでも利益の7割は北米市場で得ている一方で、国内販売の不振は止まらず、競争の激しい欧州ではユーロ高に関わらず未だ利益を得るに至っていないんで、アメリカのくしゃみでどうにかなってしまう脆弱さ(中部に留まらず日本全体がそうですが-_-;)は自覚しておいた方が良いでしょう。
 あと中部企業の無借金経営の伝統が強さの秘密とよく言われますが、トヨタグループほか大手企業では確かにその傾向は見られます。その結果大手都市銀行の存在感の弱さが伝統的にあって、故に中部を地盤とする旧東海銀行は地元で貸し出し実績を延ばせずに首都圏や近畿圏に無理スジで出ていって、バブルにまみれてしまいました。結果的に三和銀行と経営統合されてUFJ銀行となったんですが経営規模の拡大は一層の中部離れを引き起こし、その結果中部圏は大手メガバンクの手薄な地域として地方銀行が元気付くことになります。このことで金融危機で全国的に貸し渋りが起きた97~98年頃でも中小企業向け融資が機能した結果、他地域よりも良好なパフォーマンスを得ることができたわけです。巡り合わせが良かったわけです。
 ただし将来にわたって良い巡り合わせが続くとは限りません。記事の冒頭の愛・地球博の収支次第では重荷を負うことになりますし、日本一の借金企業JR東海の存在が重石となると考えられます。実際に中京圏近郊輸送でのJR東海の攻勢が、名鉄を苦しめて岐阜地区600v線区を廃止に追いやったといえますし、JR名古屋高島屋の好調は名古屋中心部の商業的な地盤沈下のきっかけになりかねない危うさを秘めています。
 というわけで、まだ結末はわかりませんが、宴の後に“せかちゅう”同様“なごちゅう”が泣ける話になりますかどうか^_^;、見守ってまいりましょう。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

Sunday, April 03, 2005

わたらせ渓谷鐵道年間パスに見る地方私鉄の生き残り戦略

前の記事で速報しましたわてつの年間パス発行検討の話題ですが、地方私鉄の生き残り策として見るべきものがありますので、もう少し論評したいと思います。
 テクニカルな問題なんですが、国土交通省に報告される輸送実績の公式統計で、定期券は名義人が指定区間を平休日に関わらす毎日1往復するものとして処理されます。いわゆる輸送密度などの統計指標の基となる数値ですが、定期券部分は実数ではなくみなしで処理されるわけです。その結果定期券比率の高い路線は、実数以上に利用されているような数値の出現の仕方になるわけです。
 国鉄の地方交通線切り離しのときもそうでしたが、通学定期券利用者が多い線区で「最混雑時片道1,000人/時以上の利用がある」などの理由で除外されたりしてますので、割引が多くて儲からない定期客が、実は“公共性”を主張する根拠として機能するということです。仮に存続のために公的助成が必要として、それを主張しやすくすることはできるわけです。
 果たしてわてつのケースでこういった考え方をしたのかどうかは定かではありませんが、少なくともルール上そのように扱われるのであれば、裏技的ではありますが使わない手はありません。ただし現実は厳しく、既に度重なる運賃値上げと定期券割引率の引き上げの結果、定期券自体が手軽に買える値段ではなくなってしまった現実が横たわります。その結果マイカーが使える通勤利用者の一層の離反を招き、車の運転ができない高校生以下の通学利用者も少子化の影響で年々減少していくことによって、輸送実績の数値は年を追って悪化に歯止めがかからないことになってしまったわけです。こうなると公的助成を求めることも難しくなってしまいます。
 となると、後に残された手段は、いかなる手を使ってでもとにかく乗ってもらうことしかないわけで、定期運賃が高くて手が出ないならば、「おつきあい」で買える水準までディスカウントしてでも、乗ってもらうための動機付けとすることに活路を見出そうとするのも頷けます。さらにこの値段ならば沿線外のサポーター向けに売ることも可能でしょう。ネックはJR東日本のホリデーパスの域外なんでアクセスの出費がつらいですが^_^;。いずれJR東や東武鉄道とのタイアップも考えてほしいところです^_^;。
 かつて大井川鉄道の社長を務められた白井明氏が「うち(大井川鉄道)には1億2千万人の富裕なカスタマーがいます」と発言されたことがありますが、名言です。ふらっと訪れて出札窓口で入場券を求める鉄ちゃんに対して珍しいキップを熱心にセールスする窓口氏という光景をよく見かけます。未使用キップもみなしで輸送実績に加算されることを知った上での対応でしょう。またトラストトレインの受け皿を引き受けているのも、トラストトレインを支えるボランティアが繰り返し訪ねてくれることを見込んでのことといえます。大井川鉄道ではSL復活運転をはじめ70年代から取り組んでいた営業政策ですが、三セクローカル私鉄でもやっと意識が追いついてきたというべきでしょうか。
 ローカル私鉄の生き残り策としては、沿線住民の利用を促すことも大事ですし沿線外からの訪問者も大事です。わてつの場合、日本の産業公害の原点ともいえる足尾を沿線に抱えており、山林の復活のための地道なボランティア活動が行われ、徐々にではありますが成果が出始めているところでもあります。この辺とリンクしてわてつを売り込むのも悪くありません。環境問題の生きた教材として愛・地球博よりもずっと意義深いものがあります。この辺を踏まえて地域興しとして考えてみても面白いと思います。健闘を祈ります。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

Saturday, April 02, 2005

わたらせ渓谷鐵道サポーター向け格安定期券

日本経済新聞社会面のニュースです。今ならここで記事が閲覧できます。
 10月をめどに1万円で全線乗り放題の定期券を発売し、名義人を含む家族4人までの同行乗車を認めるというもので、従来の定期券は廃止となります。現行定期運賃の1駅間よりも安い格安な設定となっています。
 狙いは車利用の多い沿線住民に乗車機会を提供しようというもので、経営不振にあえぎながら、必死で存続を狙う大胆な施策です。もちろん首都圏のファンにも広く販売したいということで、事実上サポーターチケットというべきものになりそうです。
 以前から地方ローカル私鉄の生き残り策として、定期券の通信販売みたいなことができないかと考えておりましたが、わたらせ渓谷鐵道でよりリーズナブルな形で実現しそうということで、とりあえず速報させていただきました。1万円でわてつサポーターになれるチャンスです^_^v。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

Wednesday, March 23, 2005

JR駅直結デパートの1人勝ち、中心街は空洞化

札幌に大丸が進出して2年目、増収となり好調ぶりを見せますが、一方では大通地区の地盤沈下が顕在化し、地域経済にとっては痛し痒しというところです。
 大型商業施設の開業2年目は、一般論では飽きられて売上低迷となることが多いのですが、JRタワーの人気は衰えず、札幌駅の乗降客の増加傾向も続き、文字通りターミナルデパートとして機能している状況が読みとれます。ま、本業を助けるという意味では、成功と評して良いわけです。
 同様に開業4年目のJR名古屋高島屋も、毎年2桁成長を続け、3年目に名鉄百貨店、4年目に三越名古屋栄店を抜いて、矢場町の松坂屋に次ぐ名古屋地区2位となり、04年2月期に累積損失を一掃する好調ぶりです。
 ここで思い出されるのが、97年開業のJR京都伊勢丹ですが、京都高島屋や大丸京都店に売上では及ばないものの、昨年11月まで61ヶ月連続増収を記録するなど、やはり好調です。
 広域集客が可能なJR駅直結の商業施設ですから、自治体単位で見たときの経済効果はあるわけですが、その結果中心街が衰退して空洞化してしまえば、いわゆるモノカルチャーの街となって中長期には衰退を余儀なくされる現実に直面します。表面上は成功に見えるだけに深刻な問題です。横浜などはまさにそうなってます。
 伊勢佐木町に立地する横浜松坂屋は、元々“のざわや”の名で知られた地場の伝統百貨店だったんですが、横浜駅周辺の開発が進んだ結果、衰退を余儀なくされて松坂屋の軍門に下ったわけですが、最近は“ゆず”コンザートで脚光を浴びるぐらいしか話題になりません。それどころか中心街を追い込んだ片割れである横浜三越も、横浜そごうの出店以来低迷が続き、今春撤退が決まっています。
 かように相似象を見せる商業地の盛衰ですが、JR駅直結の商業施設で広域に集客するまでは良いとして、そこから中心市街地へ人を誘導する知恵が現在のところ見られないのが残念です。特に札幌の状況は深刻そうです。
 横浜の場合で言えば、伊勢佐木町あたりの中心街が賑わっていたのは市電時代の話でして、手軽なアクセス手段の有無が影響しているのではないかと思います。確かに根岸線や地下鉄はできたものの、駅直結ではありませんので、街路を走る市電に比べてアクセス手段として中途半端な感は否めません。
 このあたりの事情を見ていくと、中心市街地活性化の手段としてのLRTというのは、一定の説得力を持っていると感じます。残念ながら日本ではまだまだマイナーな考え方ではありますが。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, March 20, 2005

やっぱ起こったリニモの荷重制限停止

タイトルの通りなんですが、愛・地球博の内覧会2日目の19日、東部丘陵線(リニモ)の3カ所ほどで発車できないトラブルが発生しました。
 原因は乗客が先頭車両に集中したために荷重10トンを越えると自動的に運転停止するシステムが作動したためということで、駅員が後部車両へ乗客を誘導して9分遅れで発車したそうですが、やっぱ新線は“かぶりつき”でというのが仇になったようです^_^;。
 東京のゆりかもめでも、乗客の集中で停止するトラブルがありましたが、特にイベント輸送などで乗客が集中することはあり得るわけで、ゴムタイヤ式や常電導リニアのような荷重に適応性の乏しいシステムを採用したことが、今さらながら悔やまれます。
 新しもん好きは結構ですが、期間限定のイベント輸送への対応であればこそ、実績のあるシステムの採用が望ましいわけです。たぶん正解は地下鉄東山線の延伸だったと思いますが、諸般の事情で実現が難しかったのもまた確かでしょう。また万博後のことを考えると、乗客の減少でランニングコストのかからないシステムが望ましいわけで、万博輸送という“神風”を利用してインフラなどイニシャルコストの負担を担い、事後の負担を軽減するという考え方は理解できますが、ゆりかもめの例を引くまでもなく、間違いが繰り返されてしまうのはどうしたことなんでしょうか。
 ま、そもそも万博をのようなイベントを利用してインフラ整備しようという発想は、古くは東京オリンピックの頃まで遡りますが、このあたりは途上国の発想なんで、先進国ではもっと日常的な住民の便益を最大化する努力が地道に行われている中で、日本だけは相変わらずというのは悲しい限りです。当然こういったコンテクストが岐阜の名鉄線を廃止に追いやったわけで、イベントを誘致しないとまちづくりができないというのがそもそもおかしいんです。
 愛・地球博にしても、構想段階で海上の森(かいしょのもり)という里山を潰して会場設営をしようとして反対運動に遭ってしまい、万博開催の意義を含めて見直された結果が、環境をテーマとした万博開催だというんですが、何かとってつけたような印象は拭えません。環境を言うならば無意味な開発行為を抑制することが先決です。
 リニモは確かに磁気浮上で非粘着駆動ですから、走行抵抗が小さく環境に優しい要素はあります。また非粘着駆動故に、鉄車輪と鉄レールの粘着力で駆動する普通鉄道より勾配に強いなどでルート選定の自由度は増すわけですから、自然の地形を改変する土木工事量を減らして環境負荷を低めることにもなるでしょう。その意味で地下鉄東山線の延伸とどちらが良かったかは確かに即断はできません。それ以前に臨時的な輸送需要を生み出してしまうイベント開催そのものの意義はどうだったのか、問われるところかと思います。
 リニモもそうですしデモ運行される水素駆動燃料電池バスもそうですが、要素技術としては一定の正義があるものを並べても、それをどう活かすかという視点が欠けていれば、むしろ不正義になるんです。
 例えば燃料電池も次世代の動力源として注目されてますが、燃料となる水素を取り出す課程で化石燃料を消費します。わかりやすく言えば、水の電気分解で水素を得てそれを使って燃料電池を駆動した場合、電気分解で投入された電力量と燃料電池で発生する電力量を比較すると、後者は前者の70%止まりなんです。ま、それでも半分は熱で逃げて50%を越えるエネルギー効率を実現できない内燃機関に比べれば効率は高いわけですが、逆に言えば内燃機関と燃料電池の差はたったそれだけなんです。しかも水素は気体ですから、運搬、保管にも特段の配慮は必要です。とりあえず圧縮してボンベに詰める形になってますが、圧縮の課程でエネルギー投入が必要ですし、ボンベ自体も強度を要求されますから、現状では重量を軽減するにも限度があり、ボンベを背負って走る車はそれだけ余分な荷重を負ってエネルギーを浪費するわけで、自動車としてのパッケージングはさほど簡単ではありません。
 まぁこの辺はいずれ技術のブレークスルーで改善の可能性はありますが、要素技術段階での正義は要注意であることに変わりはありません。今や自動車のガソリンエンジンで常識と化している直噴と可変バルブタイミングの技術で、自動車の燃費は向上しましたが、ミニバンブームなどで車体が大きく重くなった結果、ガソリンの絶対的な消費量は増えてしまった現実を反省する必要があります。初代プリウスでユーザーから寄せられた高速走行時のダルさを改善した結果“ハイブリッドシナジードライブ”ならぬ“ガソリンエンジンお節介ドライブ”^_^;となって燃費を悪化させた2代目プリウスなど、やはり失敗を重ねている現実をどう評価すべきなのか、私たちにつきつけられた課題は重いといえます。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

Tuesday, March 08, 2005

湘南町屋駅新駅舎供用開始

かねてより工事が行われていました湘南モノレール湘南町屋駅の駅舎新築工事ですが、3/1に供用開始いたしました。現在、旧階段の撤去その他の残工事を行っております。
 新駅舎は地上階(実際は土手の法面に張り出した人工地盤)上に作られていて、券売機2台に明らかに自動改札機を設置可能な改札スペースにレーンを仕切る柵が設置された無人駅で、改札内(?)に男女トイレ(手すりあり)があって、地上3階相当のホーム階へは、幅が拡がった階段とエレベーターが設置されており、多数設置された監視カメラや非常ベルと共に、バリアフリー対応工事として行われたわけですが、やはりというか、将来の合理化を織り込んだつくりとなっております。
 この工事は、鎌倉市移動円滑化基本構想に基づく事業として行われたもので、構想としては湘南深沢と西鎌倉の両駅が次の候補になっているようです。スペース的には駅直下に駅舎設置が可能な西鎌倉はいいとして、道路上に駅のある湘南深沢が難題でしょう。車庫と本社ビルのあるところへ駅自体を移転すればスペースは取れるでしょうけど、そこまでの大工事は考えづらいですし、どうなるか目が離せません。富士見町はもっと厳しいわけですが^_^;。
 一応鎌倉市の事業ですから、片瀬山、目白山下の両駅は対象ではなく、藤沢市が同等事業を行うかどうかも未確認ですが、湘南モノレールとしては、予算の付くところから順次やればよいわけで、機が熟してから親会社の京浜急行から中古品の自動改札機を譲り受けて安上がりに済ますことが考えられます。Suika対応してくれると利用しやすくなるんですが。
 ま、それでも補助金は貰えるにしても自己負担もあるわけで、徐々に慎重に進めていくということになるのでしょう。新車を投入し、ATC、列車無線、デッドマン装置を装備、全駅ホームの嵩上げまでして、おそらくワンマン化まで睨んでいてあえてスピードダウンまでしながら、上町駅下りホームと乗車口の隙間が原因で合理化が中途半端になってしまった東急世田谷線の轍は踏みたくないでしょう。湘南モノレールの場合は、3連で貫通路はあっても安全上の理由で常時施錠せざるを得ないので、これがネックになる可能性はあります。大規模な資本投下は慎重にならざるを得ないところです。

| | Comments (2) | TrackBack (1)

Sunday, March 06, 2005

藤沢市“ツインライナー”の可能性Part2

前の記事で書ききれなかった部分の補足です。主に車両にスポットを当てます。
 まずは運行会社の神奈中の公式ページでリリースを見てみましょう。車両はネオプランN4421というノンステップ連接バスで、全長18mで定員130人とほぼ通勤電車1両分の輸送能力を持ち、MAN製エンジンを最後部に搭載したリアエンジンレイアウトで、国内初の採用となります。
 連接バスといえば、つくば万博シャトルバスに採用されたボルボB10Mというミッドシップレイアウトのアンダーフロアエンジンバスベースの連接バスが国内初で、富士重工がボディ架装をしたことでも話題となりました。この車の一部は東京空港交通でTCAT~成田空港間のリムジンバスとして運行された後、99年に北海道の旭川電気軌道に3台が引き取られ、朝ラッシュ限定の通学バスとして使用されています。
 国内2例目は、千葉の新都心幕張線で京成電鉄が採用したものが98年12月に登場して5年を経過しておりますが、こちらもボルボB10Mシャーシに富士重工7E類似のボディを架装したもので、排ガス対策を別にすれば、メカ的にはつくばの連接バスと変わりません。ミッドシップシャーシですから低床化はできず、ツーステップで後部に連接構造を持たせて後部車体を牽引し、後部車体を支える最後輪は逆相にステアリングして第2輪をトレースすることで、取り回しを良くしています。バリアフリー対策は、後部車体の第3扉に長大な電動スロープを仕込んでいて、かなりスペースに余裕がないと利用できないつくりです。
 国内3例目にしてノンステップ車というのは、時代の要請であるとともに、フィーダーバスとの乗り継ぎを含めて乗り易さがプロジェクトの成否を決める重要な要素となっているので、選択の余地はあまりなかったといえます。リアエンジンで第3軸が駆動軸となるわけですから、後部車体が前部車体を押す形になるわけで、日本の道路事情下での走行安定性は未知といえますが、海外で実績のある方式ですし、一般道路を通常速度で路線限定で走らせる分には、問題ないでしょう。
 問題なのは、つくばに始まる連接バスの運行認可が、今回も含めて特認の形になっている点です。路線限定はやむを得ないとしても、事前に連接バスなど道路運送車両規則の規格外の車両の導入についてガイドラインを明示しておいて、要件を満たすものは原則認可するようにすべきと考えます。例えば東京駅とつくばセンターを結ぶ高速バスに導入された15m級超長尺ダブルデッカーバス“メガライナー”では、1号車がJRバス関東に納入されてから実際の運行開始に至るまでに1年待たされているんですが、未確認情報によれば、事前に国土交通省への相談なしに現車を輸入したことで逆鱗に触れたのだそうです。事実関係は闇の中ですが、このような「憶測」が生じること自体が、制度の不透明に由来するといえます。まして地域交通の改善策として国と自治体の補助事業となっている今回のケースでは、なおさら透明性は重要です。
 思うに国内メーカーで対応できないために輸入に頼らざるを得ない国内規格外の車両が野放図に増えることを警戒して国内メーカー保護のつもりでやっているのかもしれませんが、結果的に規格外車両の開発インセンティブが働かず、必要な場合はユーザーが輸入に頼らざるを得ない状況を作り出しているように見えます。米作農家を補助金漬けにして競争力を失わせている農業政策に似た構図が透けて見えます。
 また道路運送車両規則で決められた規格を前提に道路整備が行われた結果、高さ制限3.8mをクリアするために天井の低いダブルデッカーで居住性を犠牲にしています。同様に海上コンテナの輸送効率アップで高さを増したハイキューブコンテナが増えてくると、そのままトレーラーに積んで需要地へ配送できないなどの弊害も指摘されています。この辺は新幹線以前から精力的にスピードアップに取り組んでいた国鉄が、結局新幹線を作ることでしかブレークスルーができなかった事情に似ています。このあたりで新たなルールが必要と感じます。
 例えば規格外車両の特定路線での運行を計画する事業者に自らの負担で道路インフラの改築をやらせ、代わりに課税面で優遇するなどの方法が取れるならば、今回のツインライナーを軸とする新しい輸送システムの汎用性が高まり、採用する地域や自治体も増えるでしょうし、ある程度の規模が見込めるならば、自動車メーカーによる国産化の道筋も見えてきます。愛・地球博のシャトルバスでデモ運行を予定する水素燃料の燃料電池バスなどに比べれば、ずっと開発可能性が高く応用範囲も広い技術が開発されない現実をどう考えたらよいのでしょうか。あるいはほとんど広島電鉄しかユーザーが見込めない国産超低床LRVのULRV(グリーンムーバーMAX)の開発費を国庫補助するぐらいなら、税制優遇を通してユーザーのやる気を引き出す方が効率的な補助制度になると思うんですが、私たちはまだまだ非効率な政府のもとで眠りこけるしか術がないとすれば、あまりに悲しい現実といえます。

| | Comments (0) | TrackBack (2)

Saturday, March 05, 2005

藤沢市“ツインライナー”の可能性

既にニュース等で流れてますが、地域交通の整備に関する取り組みとして、注目すべき点があります。
 導入のいきさつなど詳しくは藤沢市の公式ページを参照していただくとして、マイカーからの積極的な転移を促す仕組みに新しさがあります。ひとことでいえば利便性をいかに高めるかに工夫があるわけです。
 小田急湘南台駅に相鉄いずみ野線と横浜市営地下鉄が乗り入れたのは99年のことですが、その結果同駅の利用が増大し、特に駅西口ロータリーを中心に渋滞が日常化していたわけですが、家人による送迎利用の多さがこの事態を招いているわけで、駅までバス利用に切り替えてもらうにはどうすればよいかがポイントとなります。
 バス利用をためらう理由としては、バス運賃の負担が生じるが、対価として時間通りに来るかどうかわからないバスを待ち、混雑していたりドアステップを昇るのがおっくうだったりと、心理的バリアが多数存在するわけで、少なくともマイカーを保有し送迎を担当する家人がいる家庭においては、少ない追加負担で利用できるわけですから、バス側でよほど利便性を高めなければ利用してもらえないわけです。
 そこで収容力の大きい連接バスでしかもバリアフリー対応のノンステップ車を採用し、GPS車載機とナビゲーションシステムを導入して利用者へ運行情報を提供し、バス待ちの心理負担を軽減するとともに、警察との連携で優先信号などで運行支援するPTPS(公共車両優先システム)の導入で定時運行を確保します。あと注目すべきは、急行運転によって連接バスの回転を高めて運行コストを抑える点で、現行の普通バスとは別個に、純粋に増発の形で運行されるので、乗客側にとってはスピードアップの恩恵もあり、利用に関わる心理的抵抗を軽減します。
 そして慶應義塾大学以西の交通不便エリアには“ふじみ号”の名でフィーダーバスを走らせます。バス同士の乗り継ぎは、従来の常識でいえば不安なところですが、PTPSによって定時性が高まればこそ可能性がひらけます。そして乗り継ぎの時間ロスは急行運転で取り返せるので、トータルな利便性は維持できるという考え方になります。フィーダーバスで集めた乗客を乗り継ぎターミナルで連接バスに乗り換えてもらえれば、末端の乗客が希薄なエリアで狭隘路も多いエリア向けの小型バスが多数駅前ロータリーを目指す非効率の解消となり、結果的に交通流をスムーズにするわけです。ま、この辺は実際に機能するかどうか運行開始を待たなければ何ともいえないところではあります。
 こういったケースですと、従来はモノレールや新交通システムなどの軌道系交通システムが提案されることが多かったと思いますが、車両と乗り継ぎターミナルと車載システムと警察の協力などで、既存の資源を有効活用して改善をはかるというのがミソといえましょう。実際藤沢市では軌道系交通システムの導入も検討されたようですが、投資額が莫大で財政難の自治体にとっては高いハードルだったようです。藤沢市の人口は40万人規模で、名鉄600V線の廃止問題を抱える岐阜市と人口規模は同等ですが、城下町の岐阜ほどには都市としての集積度は高くありません。そして市内の最も居住密度の低いエリアの話なんですが、岐阜市が廃止を阻止できなかったのは、あまりにも利便性の低い現状では行政のテコ入れに大義名分が立たない点です。もちろん過去の投資不足の結果ですから何を今さらなんですが、藤沢市の場合には、密集度の低いエリアであえて公共交通による需要の集約に乗り出したわけで、意欲的な取り組みといえます。3月14日の運行開始が楽しみです。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

Thursday, February 24, 2005

川崎市営地下鉄 武蔵小杉経由に

川崎市営地下鉄ですが、当ブログの川崎市営地下鉄 武蔵小杉経由も検討?で既報の通り、ルート変更を打ち出しておりまして、国土交通省から難癖つけられたわけですが、結局川崎市が押し切って武蔵小杉経由にルート変更するとともに、JR横須賀線に武蔵小杉駅を設置で取り上げた横須賀線(正式には東海道本線別線)武蔵小杉駅を07年度にも設置し、武蔵小杉を1大ジャンクションにしようという計画が動き始めました。
 既に駅周辺の遊休地を中心に土地取引が活発化し始めているようで、商業施設や企業の事業所にと引き合いが出ているようです。武蔵小杉はとりあえず第1期の地下鉄整備区間の起点になるわけで、新百合ヶ丘で小田急多摩線との相互直通を打ち出してますから、現在は便利とは言い難い黒川のマイコンシティあたりも、武蔵小杉経由で東京都心へのアクセスが改善する可能性がありますので、実現すれば、確かに元住吉経由の元の計画よりも高いパフォーマンスは期待できます。
 しかし課題は整備費用です。市は事業費負担6,000億円で24万人/日の利用を見込みますが、仮に客単価を200円として年間運賃収入が170億円程度となります。年利4%で計算すると、初年度金利が240億円で元本が減らないどころか累積債務を積み上げることになってしまいます。計算上は事業として成り立ちません。しかもこれはあくまでも市の負担分だけの話で、国の補助金がほぼ同額ありますから、とてもじゃないですけど事業化は無謀です。ましてや補助金目当ての事業であれば、国の財政事情がらいっても許されない話です。
 というわけで、整備費用がネックとなってまだまだ実現のハードルは高いと思いますが、武蔵小杉を交通拠点として位置づけるなど、この辺の考え方は、鉄道空白地帯を埋めるだけの元の計画よりはずっとマシとはいえます。ちょうど秋には市長選挙があり、市民の意見を聴きながら事業推進という立場に立つ阿部市長が二選出馬の意向を示しております。果たして市民の判断やいかに、注目されます。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

“さくら”散る2005年の春

桜の開花もいまだしのこの時期ですが、ちまたでは“さくら”“あさかぜ”の廃止で鉄ちゃん胸騒ぎの今日このごろです。東京駅などでは駅撮り鉄ちゃんと駅員のバトルはあるは、沿線でも望遠片手に“お立ち台”争奪戦はあるは、果てはヘッドマーク盗難事件までと、鉄道関連の廃止イベントの要素テンコ盛り状態です^_^;。
 個人的には東戸塚の抜け道沿いにある土手にへばりついた三脚担いだカメラマンの姿を目撃して、「そういえば廃止だっけ?」と思い出す程度なんですが、以前記事にした夜行列車の生きる道で述べた通り、20系を知る世代としては、14系登場の時点で、20系に比べて省力化優先の安直な造りに失望し、既に今日を予見できたことを述べております。
 以後さまざまなテコ入れ策が講じられたにもかかわらず、結局は生き残れなかったわけですが、同時にサンライズや北斗星・カシオペアなどに、夜行列車生き残りのヒントがあることも指摘させていただきました。ただし九州夜行で実現することの難しさもあります。
 サンライズタイプの列車の難しさは、九州が交流電化であるために、交直両用車を必要とするのに対して、サンライズでは極限までスペースユティリティを追求した結果、交流20kvに対応した絶縁空間の確保が難しいという問題に直面します。解決不可能ではないでしょうけど、サンライズでさえ単独では収支が合わないといわれる中で、車両の開発費を誰が負担するかで躓きます。
 カシオペアタイプの列車は、結局のところ旅行会社の主催旅行でほとんど予約を押さえられているツアー客中心の利用実態があるわけで、今のところは富裕な高齢者世代が中心です。そして旅行先としての北海道人気に支えられているから存続できているというのが実態です。でも九州もかつては人気を集めた地域なんですが、新幹線や航空の利便性が、旅情を否定してしまうようで、カシオペアタイプの列車は望み薄と言わざるを得ません。
 あと可能性があるとすれば、外国人観光客を対象とした国際観光列車としての生き方です。特にアジア地域の経済発展によって、韓国や中国に富裕層が出現し、彼らの旅行先として日本は人気が高いようなので、彼らを受け入れるツアーの行程に組み入れることを前提とした列車設定というのは、考える余地があるかもしれません。それも例えばかつてのオリエントエクスプレスのようなヨーロッパの旧い寝台客車に狭軌台車を履かせて走らせるなど、できるだけ初期投資を抑えた形で実現できれば面白いと思います。本当は20系を復刻して走らせたいところですが、それだと初期投資が嵩む気がします。
 ま、いずれも絵空事なんですが、特に外国人向け観光列車では、ハードもさることながら海外での集客やクルーの接客、受け入れ先の観光地との連携など、JRだけで取り組めるものでもありませんし、全体をうまくコーディネートするのは結構難しいかもしれません。しかしこういうソフトパワーでこそ、日本はアジアをリードする立場だと思うんですが、悲しいかな現段階では鉄ちゃんの妄想の域を出ません。いつしか実現する日は来るでしょうか?

| | Comments (0) | TrackBack (2)

Saturday, February 19, 2005

中部国際空港(セントレア)開港で変わる?日本の空

2月17日、中部国際空港(以下愛称のセントレアと表記)が開港しました。成田、関空に次ぐ第3の国際拠点空港だそうですが、3空港それぞれに課題を抱える現実が、これから始まるわけです。言い換えれば3つの欠陥空港^_^;の時代が始まるわけです。
 セントレアの特長は、国内線の発着路線数、便数共に成田、関空を上回っている点ですが、既存の名古屋空港の代替ということで、在来路線、便を引き継いだ結果でもあるわけで、伊丹の代替で計画されながら伊丹を閉鎖しなかったためにその伊丹に国内便を取られた関空と違いを見せます。しかも名古屋空港が自衛隊小牧基地に同居していたので、緊急着陸先としては引き続き小牧も使えるわけですから、使い勝手の良さは抜群です。その一方で国際線の便数が少なく、誘致が今後の課題です。
 ターミナルをT字型に配置して両翼を国内線と国際線で使い分けるレイアウトで、テナントをそろえてショッピングその他で乗り継ぎ時間をつぶせるなど、国内線と国際線の乗り継ぎに配慮した作りですが、羽田と成田の乗り継ぎに鉄道やリムジンバスを使わなければならない現状に対してアドバンスを訴えています。この辺は後にできた空港だけに、最初から空港間競争を前提として差別化をはかっているあたり、民間主導で整備された空港らしいところを見せます。
 この辺が世界市場で競争にもまれ続けるトヨタらしさですが、競争には何か相手より少しでも勝っているところがあれば有利になるわけで、それを最初から意識している分、セントレアは成田や関空に対して優位といえます。いわば後出しじゃんけんのうま味があるわけです。
 でもこれって、成田や関空で政府が失敗したことが、ベースにあるわけです。成田は羽田の拡張と比較されたあげくに事業化が突然決定されて、今も続く歴史的反対運動を引き起こし、そのために羽田の拡張によって現実味を増した国際化がすんなり行えない事情を作り出しているんですから、最初から羽田の拡張で進めば、もっとスムーズに進んだのではないかという可能性を否定できません。同様に関空も伊丹の閉鎖が行われないまま宙ぶらりん状態では、国内線と国際線の乗り継ぎを想定した国際ハブ空港になれるわけがありません。
 空港整備で選択と集中ができなかったために、中途半端な空港が複数できて、図らずも役割分担をせざるを得なかった現実が、逆に民間事業として空港事業を成り立たせる隙間をつくったといえます。そういったところで事業を行うトヨタ自動車という会社は、なかなか目先の利いた利に賢い企業といえます。本業の自動車も、日本で組み立ててアメリカで売る車で全体の利益の7割を稼ぎ出しているように、現在の為替水準に適合したビジネスモデルが強さの秘密であって、そういった流れに乗るうまさのたまものといえるかと思います。しかしそんなことができるのも、国を管理しているつもりの政府の愚かさがあればこそ、活躍の場ができるんですから、国民にとっては迷惑であっても、トヨタにとってはすばらしい政府なんですね-_-;。「セントレアで銭湯」なんてさぶいギャグとばしてる場合だろうか。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Friday, February 11, 2005

城下町考、岐阜の場合

3月限りで廃止が決まった岐阜地区の名鉄600v区間ですが、結局代替交通機関も決まらぬまま、最後の日へ向けてのカウントダウンが続きます。
 細かい内容はよそ者の私には知る由もありませんが、地元住民も自治体も「名鉄だから大丈夫」という油断があったような印象はあります。これは岐阜地区だけの問題ではないんですが、いわゆるフリーライダー問題なんですが、公共交通の廃止のときに、必ず言われる「公共性」について、なぜか私企業である交通事業者(今回は名鉄)に対して求められてしまうんですが、変な話です。
 公共交通機関といっても、国鉄解体後の日本では、私有私営が一応の原則ですから、公共交通インフラの維持は、利用者の支払う運賃によってなされるわけで、運賃で維持費がまかなえないならば、それは社会的に存在が否定されたものとみなせるという考え方が基本なわけで、「公共性」も採算割れによって否定されるはずです。
 しかしそれでは実際に維持可能な公共交通インフラは激減するわけです。実際名鉄岐阜地区についても、赤字基調は今に始まった話ではなく、他線の黒字で赤字を穴埋めするいわゆる内部補助によって存続していたのが実態です。つまり単体としては既に存続不可能だったものを、名鉄の収益路線である犬山線・常滑線・津島線などの乗客の運賃収入で支えていたわけで、本来支えるべき岐阜の市民や岐阜市などの関連自治体は、負担を免れて「ただ乗り」していたというのがフリーライダー論の論旨です。
 ただ実際は当事者にそのような意識は乏しく、議論は迷走を余儀なくされるわけです。存続するにせよ廃止するにせよ、今まで自分たちの懐を痛めずに供給されていた交通サービスをどうするかを、いきなりつきつけられて混乱したわけですね。まぁそれでも利用者ならば存続のための多少の負担増は受け入れる余地はあるでしょうけど、市街地の商店主たちにとっては、大駐車場を備えた郊外店に客を取られて電車のせいとばかりに八つ当たりの対象でしょうから、廃止は当然、負担なんかとんでもない話なんでしょう。
 岐阜市は過去に地方博の観客輸送のシャトルバス運行に支障するという理由で市内本線の徹明町~長良北町間を廃止に追い込んだ前科があります。しかしその結果柳ヶ瀬あたりににぎわいが戻ったという話は聞きません。自治体の判断に商店主側に与するバイアスの存在が推定されます。
 そもそも城下町である岐阜の市街地をモータリゼーションに適合させ、マイカーを誘致しようとすれば、現在の町並みを全て更地にして作り直す必要がありますが、そんなことすれば当の商店主たちが真っ先に反対に回るでしょう。
 城下町の集積は近世の武家政治の結果で、徒歩交通を前提とした狭い街路、軍事上の要請による枡形と呼ばれるクランク状の道路つけ、密集した低層家屋など、およそ自動車交通を寄せ付けない条件てんこ盛りです。基本的には非生産部門である武士による統治の場所ということで、政治的に生成された集積で、いわゆる法人税など商工業者への税負担は存在しませんでしたから、皮肉ですが近代以上に商業資本主義が発展した時代にできた集積で、だからこそ地域の中核都市として明治以降の近代化の時代に、地域をリードできたわけですし、中央政府にとっても、城下町を押さえれば地域を掌握できるわけで、猥雑で不便な現状の街並みこそ、歴史的に生成された遺産なんですね。そこで商売するのに郊外店と力の勝負を試みてもうまくいくはずがありません。
 そういう意味でこの歴史的集積を前提としたまちづくりに知恵を出すのが重要なんです。歴史的街並みの中の個性的な商店にお客さんに電車で来店してもらうという発想がなぜ出てこないのか不思議です。
 といいつつ私の地元の鎌倉市でも、正月三が日の初詣客対応のための市内交通規制で、鎌倉駅周辺からマイカーを閉め出してますが、おかげでバスが時間通り走ってくれるので、1年中正月だとありがたい^_^;などとばちあたりなこと考えちゃいます。でも商工会は交通規制の時期の拡大に頑迷に反対を続けております。マイカーを規制すると売上が下がるんだそうな。しかしほとんどの商店は正月三が日に年間最大売上を記録するんで、何か矛盾してますが^_^;。
 それでも鎌倉は都市規模が小さく、いざとなれば徒歩で十分観光できますし、長谷大仏も江ノ電とバスでカバーできますから、むしろマイカーを規制したほうがうまく行くと思うんですが。
 岐阜の場合、より都市規模は大きくなりますが、中心市街地へのアクセスとして電車を活用できれば、魅力のあるまちづくりが可能だと思います。忠節や日野橋あたりに駐車場を確保して電車に乗り換えてもらう、いわゆるパークアンドライドなどで、とかく画一的になりがちな郊外店に個性で対抗できる目が出てきます。だからこそ仏コネックス社が引き受けたいと名乗りを上げる場面も出たわけです。でも結局空振りでした。
 思うにコネックス社が「市内電車と市内バスの独占営業権」を要求したあたり、欧州との制度の違いを痛感させられます。彼の地では公共交通サービスは電気・ガス・水道と同等の公益サービスであって、自然独占となる業種なので、事業者への事業免許は、同時に独占の容認を意味するということです。独占事業であるから、公共部門の監督干渉が肯定され、公共部門は事業の公益性に鑑みて補助金など必要な支援を行う一方、適切な合理化努力がなされているか監査していくという形で、自治体と事業者が契約して事業を行うという形になるんでしょう。国鉄改革の忘れ物みたいない日本の免許制度とはかなり異なった考え方です。
 で、結局日本側ではコネックス社の申し出を「名鉄にこそその権利がある」などと的外れな対応でつぶしてしまったわけです。だからといって廃止後の受け皿となる第三セクターの設立などの具体策は一切なしで、結局時間切れと相成るわけですが、世界標準となりつつあるLRTを外資の専業会社にやらせてみて、制度上の不備も含めて問題点を洗い出すチャンスを逸してしまったわけです。
 歴史に裏付けられた街並みは大事にしないし世界標準にも背を向けて、この国はいったい何をめざすんでしょうか。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

Wednesday, February 09, 2005

“愛・地球博”は岐阜を救わない

最近、更新をサボってますが^_^;、書きたいネタはあるものの、なかなかまとまらない今日この頃です。
 ま、でも一部では話題になっている愛・地球博ですが、地元以外の地域での関心がいまいちという感じです。トヨタ自動車を筆頭に好調な中部経済を誇示するがごとき雰囲気が醸し出されて、長期停滞に疲弊した他地域の視線は冷ややかになるのは致し方ないところでしょう。
 地元にとっては、博覧会自体の経済効果もさることながら、世界へのプレゼンのチャンスでもあり、また博覧会を契機とした公共インフラ整備もあって、否応なく気分が高まるわけで、交通関係だけでも星ヶ丘~万博八草間のリニモ(HSSTと呼ばれる常伝導吸引式浮上リニアモーターカー)の開業と愛知環状鉄道のJRとの直通運転に伴う増強もあって、関心を集めているものと思います。また、直接万博には関係ありませんが、中部国際空港(セントレア)の開港が間に合い、名鉄常滑線の空港延伸も実現し、とりあえず空港関係者の輸送を始めています。
 リニモは名古屋都心に乗り入れていないので、星ヶ丘で地下鉄東山線からの乗り換えで乗客を継送することになっていますが、乗り換えがネックとなって万博輸送の全量をまかなうのは無理ということで、JR中央線愛環を結ぶ名古屋~高蔵寺~万博八草間の直通列車と、万博八草でリニモに乗り換えて万博会場へという2つのルートが用意されました。輸送能力から後者が一応のメインルートという位置づけになります。
 リニモは建設線当時“東部丘陵線”と呼ばれていた路線で、いつからか常伝導リニアで建設することになっていましたが、元々は名古屋市都市計画1号線(東山線)の長久手延伸として構想されていたのですが、名古屋市の財産を市域外に取得する場合は地方自治法の縛りで議会の承認を得る必要があるので、おそらく話が進まなかったのでしょう。加えて名古屋市営地下鉄が中途半端な小型サイズの車両規格で路線を作ってしまったために、輸送能力面で延伸が難しいということもあるでしょう。実際、東山線の補完目的で桜通線が建設され、実現性はともかく若宮大通経由で笹島から丸田町を経て上飯田連絡線とあおなみ線を結ぶ線が構想されていたりしている状況で、現実的に東山線の延伸という選択はあり得なかったと見るべきでしょう。にしても万博終了後が心配なところです。
 前置きが長くなりましたが、タイトルのとおり岐阜地区の名鉄600v区間は3月いっぱいで廃止が決まっています。愛知は万博で開業オンパレードに対して、あまりに対照的な現実といえます。70年の大阪万博では北大阪急行電鉄が万博輸送で債務償還をおおかた終えて、さらに万博輸送後不要となる車両を大阪市へ売り抜けて好業績を維持した成功体験があり、大阪市も地下鉄網を一気に整備し、近鉄はじめ在阪私鉄各社も、万博で来阪した観光客で大いに潤い、関西全体が恩恵を受けたわけですが、成長経済の時代と様変わりした現在、愛知と岐阜という隣県で明暗が出てしまうわけですから、時代の変化は残酷です。元々中部圏の密集度では名古屋への一極集中が起きればまわりが枯れるのは致し方ないところです。中部圏という狭い範囲でも名古屋及びトヨタの地元の三河が勝ち組でほかは負け組になってしまうわけです。
 何ともやりきれない春を迎える中部圏ですが、果たして万博が地元ではどのように受け入れられているか、他地域に住む私にはわからないところです。長くなりましたので、とりあえずこの辺で。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Wednesday, February 02, 2005

みなとみらい線(MM線)1周年

2月1日でみなとみらい線(以下「MM線」と記す)開業1周年となりました。1年前の開業時には、初乗りに大勢の利用者が殺到し、改札制限はおろか警察官まで出て駅の階段規制までして混乱のスタートとなりましたが、とりあえずブームは去って、普段着の姿となったといえます。
 営業成績などはこれから発表されると思いますが、当初の目論見より定期客が少なく、定期外客が多い傾向は相変わらずというところでしょう。
 ただし開業後にいろいろ動きがありまして、ランドマークタワーやクイーンズタワーなどのオフィスビルのテナントの入居率が高まり、日産自動車が新高島駅最寄りに本社移転を決めるなど、MM地区の業務地としての評価は高いようです。渋谷から最短35分で東京都区部の半分の賃料ということで人気を呼んでいるようです。東横線と相互直通運転の効果といえると思います。
 商業地区としてもクイーンズスクエアを中心に活気づき、新たにヤマダ電気などの進出も予定されるなど、まだまだ活発に動きそうです。そして沿線にマンション建設ラッシュがおきるなど、MM線が新たな需要を生み出す傾向も見えてきてます。
 しかし、その一方で横浜駅西口では三越が撤退し、相鉄ジョイナスでもテナントの入れ替えが激しく、野毛地区も地盤沈下が見られるなど、周辺の衰退と裏腹なようです。また元町や中華街では個店ごとに人気に偏りが出て、必ずしも沿線あげて好調とはいかないようです。
 さらに負の側面として週末の道路渋滞をあげておきます。上記のヤマダ電気の出店も、道路渋滞の予想がつかないということで、市の審査が長引いて用地取得が遅れている状況です。これは横浜駅前のそごうなど既存の商業施設の駐車場待ち渋滞が深刻なうえ、MM地区全体でも駐車場スペースに余裕があることもあって、マイカーでの訪問が多いことが原因で、解決は困難といえます。MM線開業以前から走る市バスの100円循環バスが、週末には駐車場待ちの車に行く手を阻まれて進めず、歩行者に追い抜かれて満員の車内から「歩けば良かった」の声が出る状況ですから^_^;、深刻です。日本一割高な100円バスといえましょう。
 またマンションの増加で新住民と地元とのあつれきも出ているようです。何より子どもが増えて学校が足りない状況ということで、都市計画の想定を超えた動きに市当局も四苦八苦というところでしょうか。
 ということで、あれこれ課題を乗せてではありますが^_^;、MM線は快走を続けています。

| | Comments (2) | TrackBack (2)

Thursday, January 06, 2005

支線が元気な京浜急行

日本経済新聞1/6朝刊12面によると、京浜急行電鉄は羽田空港新国際線ターミナルに直結する地下駅の新駅を2009年12月に開業させるそうです。
 新国際線ターミナル自体は、A滑走路とB滑走路に挟まれたエリアに整備が予定されており、新設予定の第4滑走路による発着枠拡大と共に、主にアジア向けの国際定期便受け入れのための施設としてPFI方式(*)で整備が予定されています。東京モノレールも新駅設置を検討しているということで、駅周辺の整備も含めて両者の協議が05年度中にも始まる予定ということで、空港連絡輸送を巡ってほぼ半々にシェアを分け合っている両者の凌ぎ合いは続きます。

* PFI:Private Finance Initiativeの略で、わかりやすくいえば財政資金を使って民間からサービスを購入することに よる社会資本整備の手法。事業主体はあくまでも民間が担い、財政支出額を固定することで、民間のリスクとコスト管理によって、余剰金は利益に繰り入れが可能なので、それをインセンティブとして低コストで公共サービスを提供できるといわれている。

 沿線開発も一段落し、乗客の減少で電鉄各社の経営が苦しい中、増収増益を続ける京浜急行電鉄の躍進の素である空港線をさらに増収へと結びつけようとするわけです。空港を軸に羽田から全国へ“沿線”を拡張しようとばかりに、札幌や福岡の街中や地下鉄車内で広告を展開する京急ですが、新駅開業のあかつきにはソウルや上海でも広告が見られるかもしれません^_^;。
 京急といえば中間ターミナルの横浜での乗客の逸走で、東京側のターミナルである品川の存在感の薄さがあり、また京浜工業地帯の立地企業のリストラで他社に先駆けて乗客減少に直面した苦しい歴史があります。それを空港線延伸で跳ね返した格好ですが、かつては町工場の中を縫う場末感漂う都会のローカル線だった空港線を見事に生き返らせたばかりか、今や経営の柱にまで育ったわけですから、何が幸いするかわかりません。
 というよりも、何か京急は伝統的に支線が重要な役割を演じてきた感じがします。何より大師線ですが、六郷橋~川崎大師間が京急の全身の大師電気鉄道の最初の開業路線で、元々参拝客輸送を目的とした路線だったわけですが、人力車夫の組合からのクレームで川崎駅前へ乗り入れられなかったために、六郷川を越えて大森で官鉄線に接着を図ったことが、後のインターアーバンへの道をひらいたわけです。
 時代は下って昭和になると川崎や鶴見の埋立地に多数の近代工場が立地し、工員輸送を狙って傍系の海岸電軌を設立して川崎大師~総持寺(現京急鶴見と花月園前の中間)に路線を新設したものの、ほぼ並行する貨物専業の鶴見臨港鉄道が旅客輸送を開始することになって、海岸電軌は同社へ身売りされ同社の軌道線となった後に廃止されました。
 戦時中は国家総動員体勢で大師から桜本まで延伸され、再び工員輸送に沸いたものの、戦後川崎市による市電が別ルートで桜本へ達し、塩浜までの区間を市に摂取されて路線短縮を余儀なくされました。川崎市の構想としては大師線全線を譲受して環状線にするつもりだったようですが、京急は手放さずに凌ぎました。その後国鉄による新貨物駅(現川崎(タ))構想によって浜川崎から貨物線が延伸されることになり、ルートが重複する市電の桜橋~池上新田間は市電を単線化して貨物線用地を捻出したものの、池上新田から先は新貨物駅構内に飲み込まれて廃止、大師線も小島新田から先の廃止を余儀なくされました。後に市電は廃止され、大師線は残ったわけですから、なかなか皮肉な歴史のあやを感じます。
 そして川崎市は川崎縦貫高速鉄道の構想に大師線を組み込み、更に六郷川を越えて羽田空港へのアクセスを構想するも、財政難でとん挫する間に京急蒲田でのスイッチバックによる直通ルートが開設され、より低コストに実現させました。民間企業の面目躍如といったところでしょうか。
 大師線そのものは、やはり沿線立地企業のリストラの影響もあって、近年けっして営業成績が良いわけではありませんが、初詣輸送では大活躍します。割引の定期客ではなく、正規の運賃を払ってくれる優良客をまとめて輸送し、車両や要員はラッシュ輸送のない正月期間ゆえに本線から応援も出せますから、ほとんど追加コストをかけずに稼ぎ時を凌ぐわけですから、京急が大師線を手放さない理由はわかる気がします。
 そういえば三崎口へ達する路線も“久里浜線”と称する支線なんですが、どうも支線が元気というのは、京急の伝統なのかもしれません。

| | Comments (3) | TrackBack (0)

Saturday, December 18, 2004

湘南町屋に駅舎建設

10月頃から工事が始まっておりますが、タイトルの通り湘南モノレールの湘南町屋駅に駅舎ができます。
 現在は片面ホームで地上と結ぶ階段を昇るといきなりホームとなり、券売機がホーム上に2台置いてあるというあっさりとした造りですが、鉄骨造2階建ての駅舎を脇に建設します。
 元々三菱電機鎌倉製作所の最寄り駅で通勤や商用利用が多い同駅ですが、地上と結ぶ階段が道路の狭い歩道を塞ぐように設置されていて、通行人にも不便な上に階段も狭く不便な状況にあります。
 加えてバリアフリー対応としてエスカレーターやエレベーターを設置しようにもスペースがないということで、駅舎設置が決まったのだと思います。幸いホーム北側は斜面になっていて、そこに基礎を打って鉄筋コンクリート造の人工地盤を設置し、その上に鉄骨造の駅舎を組み立てるもので、既に骨格は明らかになってきています(画像でもあればわかりやすいんですが^_^;)。他の駅へ波及するかどうかは現時点では不明です。
 地域交通として定着した感のある湘南モノレールですが、懸垂式モノレールの弱点として車両間の貫通路の挙動が不安点で常時施錠状態にあるために、保安上ワンマン化が難しいんですが、たとえばCCDカメラとセンサーを組み合わせて乗務員が監視するなどしてクリアすることは考えられます。その場合、中間駅が無人であるために、現在車掌が駅毎に前後に移動して行っている集札が問題になります。これをクリアするには駅に自動改札機を設置するのが一番確実ですが、現状は湘南町屋を筆頭にとてもスペースがとれないわけです。そこへ交通バリアフリー法で一定の補助金のもと、交通事業者にバリアフリー対策を義務づけることになったわけで、そのためにエスカレーターやエレベーターを設置するには、現在のように地上から直接階段でホームへ昇る駅のスタイルでは無理なんで、これを機に中間駅に駅舎を整備すると考えたとしても不思議ではありません。無人駅の自動改札機を遠隔監視することは、既に多く行われております。
 上記の推論が正しいとすれば、数年かけて各駅に駅舎を整備することが考えられます。とりあえず来年3月に終了予定の湘南町屋駅舎建設の後、ほかの駅に波及するかどうか、注目したいと思います。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

Thursday, December 09, 2004

JR横須賀線に武蔵小杉駅を設置

12/9日本経済新聞朝刊39面によると、横須賀線に武蔵小杉駅を設置し、南武線、東急東横線、目黒線との乗り換えを可能とする構想が動き始めました。
 川崎市が費用負担しJR東日本に設置を求める請願駅となるもので、JR側も前向きということです。横須賀線(通称:もちろん正式には東海道本線の別線区間で「品鶴線」などとも呼ばれる。以下「横須賀線」で表記を統一)と東海道新幹線が並行して南武線と交差する付近に有効長300m超の島式ホーム1面を設置し、南武線など既存駅との間300mを連絡通路で結ぶ計画です。
 2004年度中に結論を出し、JR東日本に調査を依頼、できれば2007年には着工したいというのが市の意向です。横須賀線はもちろん湘南新宿ラインや成田エクスプレスや踊り子の停車にも期待を寄せ、実現すれば一大交通結節点となり47階建て高層マンション建設を予定する再開発計画にも好材料ということで、市の期待は膨らみます。
 で、川崎市といえば市営地下鉄計画で二転三転の末、迷走を続けておりますが、やっと現実的な開発計画を打ち出したということで、評価できます。ただ武蔵小杉地区を川崎駅周辺、新百合ヶ丘地区に続く第三の都心と位置づけているそうで、あくまでも開発優先の考え方なんで頭痛いです。ま、構想として持つこと自体は良いでしょうけど、既存の鉄道の接続の改善だけでも、市民のモビリティは向上しますから、川崎市民にとっては朗報でしょう。
 南武線沿線は戦前軍需工場が多数立地したことがあって、多くのメーカーの工場が立地していて、今後メーカーの合理化や生産拠点の見直しで、かなりの規模の再開発用地が発生するものと思われます。しかし東京都心からのアクセスが悪く、また私鉄買収線であるためにインフラが弱く長編成化もままならず、主要道路との平面交差も多いなど、都市型路線として多くの課題を抱えています。
 横須賀線と並行する尻手と武蔵小杉の間で、道路は横須賀線と東海道貨物線を陸橋で越えるクランクカーブに続いて南武線の踏切で遮断され、日常的な交通渋滞を引き起こしています。かつて国鉄時代に川崎~登戸間に地元の要望で快速を走らせたところ、踏切遮断時間が伸びて地元が悲鳴をあげ、結局快速運転を中止しました。市内の連続立体化も武蔵小杉~武蔵溝ノ口間で行われたものの、そのほかの区間は手つかずですが、逆に言えばこれらの問題を改善すれば、南武線沿線は開発に適した好立地になるということです。これはとりもなおさず地下鉄計画の見直しの可能性も秘めているわけで、川崎市の本心はよくわかりませんが、結果として良い方向へ進むことを期待しておきます。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

Tuesday, November 30, 2004

小田急新型ロマンスカープレス公開

TX「ワールドビジネスサテライト」で小田急電鉄の新型ロマンスカー50000系VSE車のお披露目のニュースが取り上げられました。
 箱根観光は長期低落傾向が続き、ピーク時の86%の水準で横這いというのが現状ですが、箱根といえば長らく小田急グループと西武コクドグループが骨肉の争いを演じてきた地域でもあり、箱根観光の不振から顧客無視の抗争をやっている場合ではないということで、歴史的和解が成立し、バス停名称の統一や系列外の施設へのバス乗り入れ、企画キップの相互販売などなど、ゆっくりながら協調体制がとられてつつある中で、例の西武鉄道の有価証券報告書虚偽記載問題が発覚するという間の悪さなんですが、小田急は改めて箱根観光の経営資源としての価値を再認識し、夢を売るロマンスカーでテコ入れを図ろうという原点回帰の姿勢を見せたわけです。
 白い車体にオレンジ帯の明るい外装に空調機を床下架装して天井を高くして空間にゆとりを持たせ、背ずりを薄くしてスペース効率を高めた椅子と木目調の内装が相まって、ゆとりの空間を演出しています。HiSE10000系以来の前面展望室の復活も観光特急らしさを演出するもので、EXE30000系で小田急版ライナー列車になりかかったロマンスカー自体も原点回帰しているのが面白いですね。
 しかし一方でHiSEでは観光バスに倣ったハイデッカー構造が、VSEでは一部ドアとホームの段差をなくしてバリアフリー対応をするなど、時代の流れを感じさせます。
 11車体連接で編成定員358名、2編成で約35億円の投資となります。運行開始は来年3月の予定ということで、当面試運転で走り込みをすることになろうかと思いますが、かつてあこがれの存在だったロマンスカーの復活なるか、注目されます。
 

| | Comments (2) | TrackBack (4)

Thursday, November 18, 2004

旅行貯金者の聖地はクマと出会う素敵なところ

奈良県上北山村に旅行貯金者あこがれの聖地があります。某レールウエーライター氏が広めた旅行貯金ですが、紀伊山地の奥深く、1962年完成の坂本ダムで水没を免れた8戸の住民のために残った東の川簡易郵便局がそうなんですが、既にわずかな住民も10年以上前に移転し、今は無人の集落に、旅行貯金取り扱いだけのために郵便局が残っていて、平日5日間住み込みの局長代行氏が常駐します。曰く「1週間人に会わないことも珍しくないが、クマやイノシシはよく局の前に来る」そうな。命がけのお仕事です^_^;。
 国費で旅行貯金者のための局を維持するという酔狂な話ですが、果たしてこのような局が廃止になることが「地方の切捨て」になるんでしょうか。ユニバーサルサービスの実態とはかくなるものか腹が立ちます。民間金融機関がカバーできない過疎地を補完する機能は必要でしょう。そのことには同意しますが、そのために全国津々浦々郵便局が必要か? このあたりに議論のすり替えがあります。彼らが守るべきと言っているのは郵政ファミリーの利権なんです。
 確かに過疎地では民間金融機関の窓口サービスが受けられないエリアがありますが、いまどきパソコンとブロードバンド回線があれば決済サービスは受けられます。テクノロジーの進化でケータイバンキングさえ夢ではありません。要はサービスの隙間を埋める補完機能があれば良いわけで、そのためのインフラ整備に知恵を出して公費を投入して「地方を切り捨てない」工夫が大事なのではないでしょうか。
 この冗談みたいな無人地帯の簡易局、いっそクマさん相手にドングリ貯金でも始めては?

| | Comments (0) | TrackBack (1)

Wednesday, November 17, 2004

湘南新宿ライン 利用者倍増

10/16改正で大増発された湘南新宿ラインですが、11/17日本経済新聞朝刊首都圏経済欄の記事によれば、ラッシュ時間帯の増発が特に利いて、利用者12万人と倍増という結果となりました。
 JR東日本で調査の結果、3割は私鉄からの定期券買い替えによって移転したもので、この傾向は続きそうということです。どうりで最近座れないわけだ^_^;。
 京阪神など関西地区と比べて、鉄道会社間の棲み分けがされていて競争が少ないと言われた首都圏で、思わぬ形で競争が活性化しているところが面白いところです。しかも全般的な競争というよりも、渋谷~横浜間、新宿~小田原間、新宿~藤沢間など、ピンポイント的な狭いセグメントでの競争となっているのが新傾向でしょうか。
 もちろん例えば東急東横線で渋谷~横浜間を利用する客には、東横線の運賃優位から渋谷からさらにJRで新宿や池袋へ向かう人も含まれていたと思われますが、東横特急の26分に対して湘南新宿ラインで最速22分と速さで圧倒して乗換の手間を省くなど、利用者サイドから見た利点が評価された結果といえます。
 これは反面JRの高運賃を忌避していた客が戻ったとも言えるわけです。その結果、従来特に宣伝してこなかった東急サイドで、東横特急のイメージポスターの掲出などが見られるようになり、小田急では複々線工事の進捗に伴う12月のダイヤ改正で快速急行を設定、新宿~藤沢間で従来の湘南急行(57分)より5分短縮(JR最速は47分)という対抗策を打ち出しています。
 小田急で面白いのは、併せて多摩線の輸送改善も行い、従来多摩ニュータウン地域の輸送を独占してきた京王に多摩センター駅改装などの対抗策を採らせるなど、私鉄間にも競争が拡がっている点が、従来にない傾向といえます。結果として乗客側の選択肢が増えることで、需要が掘り起こされ、少子高齢化で減少傾向が見え始めた首都圏の鉄道輸送が活性化することが望ましいといえます。
 一方JR東日本サイドでは、2012年度予定の地下鉄13号線と東横線との相互直通運転によって、東横線から池袋まで直通客を運ばれることに対する危機感が湘南新宿ラインの強化へ向かわせたように、地下鉄との相互直通運転や複々線化など鉄道施設の増強で競争条件が変化した結果として、競争が誘発されたとも言えるわけで、ペンディングしている京王線調布までの複々線化なども、沿線住民や自治体の対応如何ではありますが、可能性の目は消えていないという見方も可能です。
 京王の場合はとりあえず調布市内連続立体化事業に付随する調布駅平面交差解消時に、最高速や加速度の見直しによる攻めのダイヤ改正の可能性は高いといえますから、その結果如何で展開が変わってくるかもしれません。丁度京急が京浜間の沿線人口減少と工場のリストラで輸送実績を下げたときに、空港連絡に活路を求めたように、鉄道会社が本業への投資へと回帰していくことで、全体としての利便性が高まり市場が活性化していくという好循環は期待できるかもしれません。

| | Comments (2) | TrackBack (2)

Monday, November 08, 2004

湘南新宿ライン 特快は速かった

というわけで、11/6の土曜日は、野暮用で西の方へお出かけとなりまして、帰りにいろいろあって、小田原16:00発の3670E特快高崎行きに乗ったんですが、これが速いんだわ^_^;。
 乗車したのは藤沢までなんで、わずか24分間の乗車時間なんですが、営業キロ32.8kmですから区間表定速度82km/hという激走ぶりになります。一応快速アクティを補完する形で走っているものの、快速アクティが同区間35分を要しているわけで、まるで走りが違います。
 やっと首都圏にも京阪神の新快速に比肩しうる速度の速達列車が登場したと喜ぶべきなんでしょうけど、これだけ速度差があると、快速アクティときれいに等間隔とはいかず、たまたま時間帯が合えば速達サービスが受けられるという運任せというあたりに、首都圏のJRの苦悩があります。
 やっぱダイヤが混んでるんで、この辺が精一杯ということなんでしょう。今回の改正でE231系限定でのスピードアップが実現したわけですが、国府津区にE231系が揃うのは来春あたりですし、快速アクティを全て置き換えることになるかどうかは定かではありません。ましてL特急(*)踊り子(スーパービューじゃない185系のやつ)より速いとなると、違いは接客設備だけか? いや制度が変わって利用しやすくなったBグリーン車使えば快適性も上を行くとなると、踊り子の立場って・・・-_-;。正規の特急料金を払って乗る人って、よほどの鉄ちゃんか人間嫌いってことだらうか^_^;。
 ま、それでも特急料金払って乗ってくれる羽振りのよい客がいるのが東海道線なんですが、特に伊豆方面へ向かう道路事情に助けられているといえるかもしれません。でもこれって、昨今の伊豆観光の地盤沈下の一因でもあるような気がします。

* JR東日本では既に正規の呼称としては使われておりませんが、ここではスーパービューと区別する意味で使わせていただきました。ちなみにこの場合のLは、Local(地方、地域、鉄道用語で普通列車)、Legacy(遺産)、Legend(伝説)などの意か。要するに旧くてヘボいってことです^_^;。

 東急の完全子会社化で再建を進める伊豆急行がJRから国鉄型車両を払い下げを受けている図は、寂しさを禁じ得ません。いっそ踊り子は全部リゾート21で走らせて、東京での集客の目玉にでもするかなど、次の手を考える必要があるのではないかと思います。
 しかしE231の激走ぶりは見事です。大量増備で首都圏の輸送改善に寄与するところ大といえます。走ルンです万歳!!!^_^;

| | Comments (3) | TrackBack (0)

Saturday, October 16, 2004

高速バス規制緩和、富士交通の失敗

都合により運休中^_^;の鉄路的部落ですが、台風にもめげず、再開いたします。いきなり反則技のバスネタですが^_^;。
 2002年の道路運送法改正で参入規制が緩和されたバス事業ですが、新規参入のケーススタディとして、仙台市の富士交通の事例は考えさせられます。
 元々規制緩和が先行した貸切バスの事業者であった富士交通ですが、自身も後発参入の新参者で、十分な営業基盤があるとは言いがたい中、次々と新規参入が続く貸切バス事業一本では、価格競争で十分な利益を出せず、目をつけたのが高速バス事業だったわけです。
 仙台を拠点に郡山、福島を結ぶ2路線をまず開設し、既存事業者より安い運賃で同等の頻度で運行し、サービスの一環としてバスガイドを乗務させるなどの差別化政策を取るなど、意欲的なものでした。結果は惨憺たるもので、既存事業者がすぐ値下げで対抗し、富士交通も値下げで対抗、さらに既存事業者も再値下げと叩きあいの値下げ合戦となり、疲弊することになります。その間には福島駅前への乗り入れなど、既存事業者の妨害に遭いながら、公取委への摘発などで対抗しながら良く戦ったのではあります。
 さらに事態を打開すべく仙台~山形間にも参入したものの、やはり既存事業者との値下げ合戦となって、劣勢のまま8月、民事再生法適用を申請、便数削減やガイド常務中止など事業内容を見直しての再スタートとなりました。富士交通の挑戦は何が失敗だったのでしょうか。
 そもそもバス事業の中の高速バス事業ですが、一般道を走る一般路線バスと法令上の差異はありません。運賃は事業者の認可運賃が適用されるのが原則です。しかし一般路線よりも長距離であり、速度も高いので単位時間あたりの走行距離も稼げますから、実際は正規の賃率から値引きを行って、例えば並行する鉄道線の普通運賃程度の金額を恣意的に決めるというケースが多いわけです。
 その結果、高速バスは収益性が一般路線よりも高くなり、元々値下げの可能性は十分あったといえます。とりわけ片道2時間程度の路線では、ワンマン運行で1台1日2往復が可能ですから、1便14名程度の乗車で損益分岐点を越えるわけですから、乗車率の高い路線では、結構な超過利潤を得ているということです。
 だからこそ富士交通は勝算ありと判断しての高速バス参入だったはずなんですが、実はこの超過利潤が曲者でして、既存事業者にとっても値下げの原資になりうるものといえます。そして実際に既存事業者は値下げと増便で対抗し、富士交通を返り討ちにしています。
 ここで独禁法上問題になるのは、既存時業者側の値下げが不当廉売(ダンピング)にあたるかどうかですが、超過利潤がある場合、その範囲内での値下げは原価割れにはなりませんので、独禁法上は問題ないことになります。そしてそのことが富士交通の最大の誤算だったといえます。
 しかし結果として超過利潤は値下げで利用客に還元され、増便までされて利用客の利便性は高められたわけですから、誤算に泣いた富士交通の挑戦は、企業会計上は失敗であっても、国民経済上は得がたい得点といえます。結果として当該都市間の流動が活発になれば、地域経済へもポジティブな影響が出るわけです。競争政策の重要性はいささかも揺るぎないといえます。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Monday, October 04, 2004

小田急箱根ホールディングス

事情により記事作成が滞っておりますが、忘れないうちにアップしておきます。
 小田急電鉄は10/1から箱根地区の事業会社を統括する持株会社を発足させました。全額出資子会社の箱根登山鉄道を10/1付で純粋持株会社の「小田急箱根ホールディングス」に改組し、旧箱根登山鉄道の鉄道事業は子会社として新設の「箱根登山鉄道」へ移管し、箱根登山バス、箱根観光船、箱根ロープウエーといった各事業会社を持株会社の傘下に収め、分散していた本社オフィスを小田原市内に集約します。言ってみれば管理部門のリストラですが、事業会社相互間の調整の迅速化など、入込みの細っている箱根観光のてこ入れを狙うものでもあります。
 既に長年競合関係にあった西武コクドグループとの歴史的和解など、てこ入れは行われていますが、観光地としての箱根の地盤沈下に有効な営業政策を打ち出すのが今後の課題といえます。
 一方の西武コクドグループですが、JR東日本の企画商品「踊り子箱根フリーきっぷ」で提携し、小田原、真鶴、湯河原、熱海から伊豆箱根バスが利用可能で都区内発4,600円横浜市内発4,000円(共に2日間有効)というものを出すなど、二股かけて^_^;集客に励んでます。
 小田急としては前面展望を復活させた新ロマンスカーで売り込みをかけようということになると思いますが、果たしてどのような結果となるでしょうか。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

Tuesday, September 28, 2004

渋谷再開発に賭ける東急、百貨店を完全子会社化

経営再建計画を実施中の東急ですが、2005年3月で計画が終わるのを期に、渋谷再開発で攻めに転じます。
 9/28の日本経済新聞朝刊によれば、2012年度予定の東横線渋谷駅の地下移転後に予定される再開発事業へ向けて、機動的な意思決定をはかるために、百貨店を完全子会社化するものです。
 大まかには現東横線渋谷駅跡地の一部をJR渋谷駅の拡張用地に差し出して、代わりにJR駅上空に建設予定の再開発ビルの権利を得るといったアウトラインになると思われます。丁度西口で営団、京王電鉄と共同で取り組んだ渋谷マークシティの開発手法を大掛かりにしたイメージでしょうか。当然百貨店(東横店)の増床計画を絡めることになるわけですから、意思決定の迅速化の意味は大きいと言えます。
 そのために手元資金200億円で百貨店株の公開買い付けと不足分は電鉄株との株式交換で賄う予定です。そして次年度からの攻めの経営に移行するために、ハンズ株の売却を決定、あと福利厚生施設の売却益などを確定拠出年金移行に伴う特別損失に充当し、2000年度に多摩田園都市の未開発地売却に始まる一連のリストラを終えるということです。
 バブル期に肥大化し、グループ各社で事業部門の重複が目立つなど、ケイレツの非効率が目立つようになった東急ですが、やっと整理がついて次のステップへと言いたいところなんですが、例えば百貨店では優良店の日本橋店を身売りしての再建計画が買い手がつかずに手こずったり、観光客の減少に苦しむ伊豆急行の救済のための完全子会社化など、チグハグな感は否めないところでして、今回のハンズ株売却も、業績好調で株式上場間近と言われるものを現時点で売却することについての疑問はあります。
 渋谷の再開発事業そのものも、2012年の渋谷駅地下化以降に取り掛かるものですし、その成果が出るのはさらに後の話ですから、かなりきわどい賭けの要素があります。
 とはいえ渋谷は東急にとっては事業の核となる場所でもあり、マークシティ開発で低年齢化に歯止めをかけようという意図はある程度成功とみてよいでしょう。そのあたりで自信を取り戻しているのかもしれません。結果が出るのは先の話ではありますが。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Saturday, September 25, 2004

埼玉高速、賃金見直し失敗で改革に「待った!」

週刊ダイヤモンド9/18号に埼玉高速鉄道新社長の杉野 正氏のインタビューが載っています。杉野氏といえば田中康夫知事の要請でエイチアイエスから派遣されしなの鉄道社長に就任し、1年で単年度黒字に回復させた敏腕経営者です。今回埼玉県の上田知事に乞われて埼玉高速鉄道社長に就任したもので、熱い抱負を語っていました。
 鉄道事業の素人であることで、しがらみの無さから成功したしなの鉄道再建でしたが、今回の埼玉高速鉄道の場合は、素人であることがもたらした失敗といえます。
 日本経済新聞9/25朝刊首都圏経済欄の記事によりますと、東京地下鉄(東京メトロ)から出向後転職した61歳以上の運輸部門の社員の給与を700万円台から300万円台へ半減させる改革プランを杉野社長は7月末に打ち出したところ、社員の猛反発にあって該当する社員から雇用契約期限の9.21で退職を通告され、運行停止の危機に陥り、社長の謝罪文と共に案を撤回して事なきを得たということで、前代未聞の運輸社員の退職による運行停止を辛うじて回避したそうです^_^;。
 営業費に閉める人件費の比率が3割強という状況では、人件費にメスを入れること自体は避けられないところですが、該当する47人の社員は、全社員の2割程度ながら、運輸部門の中枢である指令部門に偏っていたことが、運行停止の危機を生み出すことになりました。技術部門などでも同様の事情があり、また事実上東京メトロ南北線の延長線であるという特殊な路線立地の影響もあります。
 東京メトロでは「土屋前知事の要請で株主にもなり、人的協力もしてきた」と憤り、埼玉高速には転職者以外にも39人の出向者を派遣している状況での性急な改革が、問題をこじらせたといえます。専門性の高い鉄道事業では、プロパーの現業社員の育成に3年程度の時間がかかります。新規開業の鉄道の場合、当初は他社の人的支援に頼らざるを得ない弱点が、性急な改革で露呈したわけです。
 この問題は、大都市近郊三セク鉄道に固有の問題といえます。東京メトロの前身の帝都高速度交通営団は、ご存じ特殊法人で、首都東京のの地下鉄の建設と運営を行う主体ということで、旧国鉄と東京都などの出資で設立された経緯から、都県境を越える路線の新設には制約があります。とはいえ東西線と有楽町線はそれぞれ千葉県と埼玉県に路線を伸ばしてますが、前者は公社時代の国鉄の要請で当時の総武線の混雑緩和のための緊急避難として建設され、後者は主に東武東上線との接点を和光市駅に求めた結果で、本八幡1駅だけのはみ出しに都議会の承認が必要だった都営新宿線のケースと決定的に違うのは、国の機関として超越的に振舞う権限を有していたということです。
 えと、まわりくどい話で恐縮なんですが^_^;、もろもろの制約を取っ払って営団自身で浦和美園までの路線を作ることはあり得たかどうかと考えてみればわかりやすいんですが、収益性の高い路線ならば、営団自身で理由をつけて作った可能性は否定できないんで、特殊法人改革で民営化された東京メトロではなおさらといえます。その意味で埼玉高速の不振は、元々収益性の低い路線を無理に建設してしまったことにあって、多少の経営改革で簡単に直る類の話ではないわけです。
 都心側の路線の事実上の郊外延長線という路線立地では、整備にかかる追加コストが相対的に低く、また都心側の路線の培養線としての意味があるなど、スケールメリットが活かせるという意味で、同一事業体による延伸の方が合理性があるわけです。それを敢えて行わなかったことの意味というか重みというか、そういうものが都市近郊鉄道に固有の難しさといえるかと思います。同様の路線立地の北総開発鉄道や東葉高速鉄道が軒並み不振にあえいでいるのは偶然ではありません。
 ただ実際都市近郊でも路線新設にかかる費用は莫大で、一般論として既に民間ベースの採算事業にはなりえない状況があり、鉄道の公益的性格からいって公的な資金を活用することそのものは、考えられてしかるべきでしょう。でも三セク鉄道が解答ではないことははっきりしているといえます。鉄道建設の資本費負担の大きさを考えると、上下分離に解があるのは自明かと思われますが、日本の法体系では基本的に鉄道への助成は公的主体に限定されている傾向があり、補助金を得る方便としての第三セクターという側面が強いために、鉄道への公的助成のあり方についての議論が深まりません。
 ま、上田知事にしてみれば、土屋前知事の負の遺産の後始末での躓きというのは面白くないでしょうけど、功をあせらないことが肝心でしょう。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Monday, September 20, 2004

地域活性化の新潮流、年金富裕者を囲い込め

日本経済新聞9/20の月曜特集で取り上げられてましたが、北海道伊達市と島根県西ノ島町(隠岐諸島)の取り組みです。
 過疎化に悩む地方にとっては、定住者を増やすことが喫緊の課題ですが、団塊世代の年金受給開始をにらんで、定年退職者を定住者として呼び込もうという取り組みが始まりました。
 伊達市では北海道としては温暖な気候を生かして、乗合タクシーや高齢者向け住宅など、高齢者が住みやすいまちづくりを目指すもので、民間主体で取り組んで採算事業にするという意欲的なもの。既に人口が5年で700人増加し、昨年住宅地の基準地価上昇率が全国トップになるなど、効果が現れています。
 一方の西ノ島町では、現役世代のUターンIターンを狙っても魅力のある雇用の場を提供できずうまくいかないところを、年金生活者ならば働かなくても生活に困らないという逆転の発想から、都市生活経験のあるスキルを持った退職者を招いて産業基盤を育成しようというものです。離島のハンデで現役世代定住者の取り合いは難しいけど地域の弱点を見据えた上での、身の丈に合ったやり方といえます。
 地域活性化というのは、つまるところ地域にお金を落とし、落ちたお金を地域で循環させることです。工場誘致、企業誘致だけが手段ではありません。むしろ工場誘致で地域活性化を狙った多くの地域が、中国の台頭など製造業の空洞化で廃墟を抱える羽目に陥りつつある現在、従来の常識では福祉負担の元凶のようにマイナスイメージで語られることが多い高齢者を敢えて迎え入れることで、活性化を達成しようというのは、見逃せない変化といえます。
 少子高齢化、人口減少社会というと、国の将来が危うい、手を打たないと大変なことになるという論調で語られることが多いんですが、このような変化を捉えて対応していくことで、実は肥沃な大地が広がっているということを見過ごしてはいないでしょうか。
 特に団塊世代は高度経済成長下で青春を過ごし、元々消費性向の高い世代といえます。加えて破綻寸前と言われる公的年金制度の中では「勝ち逃げ」を果たす世代でもあり、彼らが生産を離れたときに、かねてから言われていた内需主導の経済成長が本当に始まるのだろうと思います。ただし変化に対応するためには、古い殻を脱ぎ捨てる必要があります。伊達市のケースでは民間主体が事業を行いやすいように規制緩和で側面支援することが公的部門の役割という認識があって、初めて可能な話です。こういったことが本当の意味での「構造改革」なんですけどね。今後他地域へ広がることを期待したいと思います。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Saturday, September 11, 2004

神奈川の新線計画はどのように変更されたか

webmasterさんにいただいたトラックバックへの反応が遅れている間に、JR東と相鉄の相直の報道がありました。これで神奈川の新線計画はまた変更を余儀なくされるわけですが、変更の歴史を紐解けば、神奈川に、横浜や川崎に固有の問題が見えてくるかもしれません。というわけでこの記事を書くことにいたします。
 旧運輸省の都市交通審議会横浜・川崎部会の初めての答申が出されたのが1966年7月。建設すべき5路線と検討すべき1路線が答申されました。

   1号線  伊勢佐木町~吉野町~上大岡~戸塚~湘南台
   2号線  神奈川新町~横浜~吉野町~磯子~屏風ヶ浦
   3号線  本牧~山下町~伊勢佐木町~横浜~新横浜~勝田~元石川
   4号線  鶴見~末吉橋~日吉~勝田
   5号線  大師河原~川崎~末吉橋~元住吉~宮前平~百合ヶ丘
   6号線  東京~勝田~二俣川~湘南台~平塚

 事業主体は1~4号線が横浜市、5号線が川崎市、6号線は未定とされていました。この答申に基づいて、横浜市は1号線伊勢佐木町~上大岡間と3号線伊勢佐木町~横浜間の免許を取得、事業主体の決まっていない6号線の二俣川~平塚間を相模鉄道が免許を取得し、それぞれ整備を開始します。
 1号線と3号線の接続駅である伊勢佐木町は、首都高速神奈川1号線との調整で根岸線西側から東側に変更され、関内となります。また3号線本牧方面への分岐を想定した上下2層ホームとなりましたが、本牧延伸は実現せず、後に計画されたみなとみらい21線によって可能性が絶たれます。本牧方面への分岐線の線路スペースはホーム拡張に使われました。
 横浜~新横浜間も、当初計画ではほぼ直進する形で、おそらく六角橋付近を通るものだったと思われますが、民地下を通るルートで地上権設定が必要なため住民の同意を得られず新横浜通り地下を通る現行ルートに変更されました。
 港北ニュータウン開発計画の進捗に伴って具体化した新横浜から先のルートですが、結局勝田は通らず茅ヶ崎町付近にセンター北駅が設置されて4号線との接続が想定されました。さらに終点の元石川も、おそらく当初は新横浜元石川線と田園都市線の交点付近が想定されていたようですが、田園都市線にあざみ野駅が開業すると、たまプラーザとあざみ野の中間点となってしまうため、たまプラーザ接続かあざみ野接続かで東急と対立、そのしこりからあざみ野は地下鉄接続後も急行が通過しておりました。横浜市の言い分では、たまプラーザでは市境に近く恩恵を受ける横浜市民が少ないということだったようですが、結果として利用者の利便性が犠牲にされたのは残念です。
 2号線は京浜急行線の混雑緩和のための別線線増線ですが、輸送量の増加が他線より早く頭打ちとなり必要性が薄れて立ち消えになりました。
 4号線も計画は二転三転、目蒲線改良と東横線線増計画(目黒線として実現)に連動して東横線日吉からセンター北・センター南を経て中山方面へ向かい、相互直通を行う計画となりました。港北ニュータウンと東京都心を直結することで、港北ニュータウン開発に弾みをつけようというなかなかバブリーな計画でした^_^;。結局陽の目を見ず、現在リニアミニ地下鉄として整備が始まった横浜環状鉄道計画へとシフト、日吉~センター北~中山間が工事中です。しかし元々第三軌条集電でトンネル断面の小さい横浜市営地下鉄と別規格の新線を建設するってのは、トンネル断面縮小による多少の工事費削減効果以上に、スケールメリットを活かせないマイナスが大きいと思うんですが、きちんと検討された形跡は見当たりません。都営大江戸線では汐留と浅草線新橋を結ぶ回送線を作ってバッテリーカー牽引で馬込工場へ入場させるなど苦労してますが、横浜市でもセンター北かセンター南に渡り線を作って新羽にでも持ってくつもりでしょうか。中山方面も途中は農村地帯で、地下鉄が似合わないエリアです^_^;。
 5号線もまた数奇な経過を辿ります。1985年の運輸政策審議会で国鉄貨物線の活用が提言され、武蔵野南線の旅客化が検討されることになりました。財源を得られずに全く具体化しなかった5号線計画が、武蔵野南線梶ヶ谷ターミナルから分岐して新百合ヶ丘までの「川崎縦貫高速鉄道」計画に衣替えしました。一見既存ストックの活用でリーズナブルな新線計画に見えますが、東急田園都市線と小田急線の駅勢エリアで東京都心につながらない新線が具体化することはなく、また有数の貨物幹線である武蔵野南線の旅客化も全く具体化することなくバブル崩壊を迎えます。そして再度市営地下鉄として川崎~元住吉~宮前平~新百合ヶ丘のルートで事業化が模索されますが、市長選挙の争点にまでなりながら、市民へのヒアリングで計画の見直し作業が行われ、特に利用客の想定の甘さが露呈して頓挫しています。当分具体化の気配はありません。
 そして6号線ですが、二俣川~平塚間の免許を取得した相鉄では、二俣川~いずみ野間を開業させ、いずみ中央への延伸を経て湘南台までは開業しましたが、先への延長は頓挫しています。元々湘南台の西方に大規模ニュータウン計画があったのですが、バブル崩壊で頓挫し、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスに化けました。緑園都市で見せたように沿線開発で開発利益を還元しながら新線建設を進めるビジネスモデルが頓挫したわけですから、現在も免許を保持する平塚への延長線は、実現可能性は低いといえます。それどころか駅前ロータリーが営業マンのパーキングエリア(笑)と化しているいずみ野駅周辺の開発も止まってしまい、東京直通に活路を見いだしたい相鉄ですが、やはりバブル時代に計画された神奈川東部方面線(大倉山~新横浜~鶴ヶ峰~二俣川及び新横浜~尻手~川崎→羽田空港方面)では投資額が大きくて実現は難しいところだったわけです。そういう意味で今回のJR東との相直運転は渡りに船といえましょう。
 実現までに長期間を要する鉄道新線計画ではありますが、二転三転する神奈川地区の計画は、自治体の開発計画の不確実さに翻弄された点が特徴的といえます。「独立型都市を目指す」横浜市の意気やよしですが、東京の衛星都市としての現実に対する認識が弱いのではないかと思わずにはいられません。ヤレヤレ-o-。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

Thursday, September 09, 2004

JR東と相鉄の相直続報、中田横浜市長「これから検討」

日本経済新聞9/9朝刊によれば、やはりというか、神奈川東部方面線との関係から、即答を避けたようです。
 横浜市と東急、相鉄の実務者レベルでは、昨夏から研究会を発足させて計10回開催されており、今回のJR東と相鉄の相互直通運転が事業に影響するかどうか、東急では次回の研究会で調査するとしています。相鉄は神奈川東部方面線については「相当難しい」としておりますので、市長発言は梯子を外された格好の東急への配慮が滲みます。
 前回記事でも書きました通り、今回の事業が実現すれば、間違いなく神奈川東部方面線の実現可能性は断たれます。しかし事業主体となるはずの相鉄は、明らかに今回の事業の実現に軸足を移しており、横浜市としては東急がOKしてくれればGOサインを出すつもりでしょう。目の前の実現可能な計画といつになるかわからない計画とのトレードオフですから、普通に考えれば結果は明らかです。
 あと考えられるのは、東海道貨物線が業務エリアの新横浜を掠めて素通りすることについて、地元自治体として言い分があるかもしれませんが、次善の策として横浜線と交差する大口付近に乗換駅を設置するなどの手はあります。ただしJR東日本のスタンスとしては駅新設は全額地元負担を前提にしか協議に応じないと思いますので、その辺で揉める要素を孕んでいるといえます。
 あとPrimeraさんのコメントにもありますように、グリーン車込み15連の横須賀線と10連の相鉄線の相互直通運転については、なお細部の調整が必要になります。特に湘南新宿ラインの増発でタイトになる大崎(旧蛇窪信号場)~新川崎間に相鉄直通列車を割り込ませることが可能か、特に大崎の平面交差分岐がダイヤ上ネックにならないかなど、詰めるべき問題は多数あります。あとE231系相鉄版の10000系は問題ないとして、9000系以前の在来形式は入選試験や乗務員のハンドル訓練なども必要になりますし、伊豆急リゾート21を特急「リゾート踊り子」として週末に東京へ乗り入れさせるときに、ブレーキ増圧改造が行われたことがありますが、週1往復の特急ならいざ知らず、毎日何十本も乗り入れる通勤電車では、改造費用が大きくなることも考えられ、10000系への置き換えが加速する可能性はあります。
 というわけで、現段階ではまだまだ不確定要素を含む話といえます。続報に注目しましょう。

| | Comments (1) | TrackBack (0)