旅行・地域

Wednesday, November 25, 2009

京急油壺延長は波高し

京急久里浜線の油壺延長が、2005年に事業廃止届提出で免許返上となり、見直しされることになったことは以前の記事で取り上げましたが、地元の方からコメントをいただき、動きがあるようなので、現地を見てきました。前回記事時点では、何か驚くべき新しい開発計画を打ち出すのではないかと期待をこめておりましたが、どうも逆の意味で驚くべき計画になりそうです。というのは、かなり陳腐な宅地開発計画になりそうなのです。しかも無理スジです。波静かな油壺とは真逆のようです。

現地の状況は
航空写真"でご覧ください。場所的には三崎口駅から1km程度の距離で、深い谷戸の地形で、底は湿地になっているようです(既に囲いがあって中には入れません)。計画ではここを発生土処分場として湿地を埋め立て、7年半後に土地区画整理事業を行うという計画になっているそうです。以下寄せられたコメントから明らかなことをまとめますと、

1.39年前の計画時点より地価は半減し三浦市の人口も減少が予想される中新駅設置で商業地への指定がえで付加価値をつける必要がある。
2.そもそもこの地域は第一種低層住宅専用地域であり、本来は発生土処理施設など作れる場所ではない。
3.元々1995年に県と市と京急で1駅延進して駅周辺を商業地域に指定換えすることが合意されていた。
4.しかし2005年に京急が事業免許を返上してしまった。
5.ゆえに商業地域にすることはできず宅地開発の前提となる発生土処分場はできない。
6.そうすると宅地開発と一体の鉄道延伸のための事業認可再申請はできない。
とまぁ堂々巡りになってしまうわけです。とはいえ発生土処理は始まっており、鉄道延伸への道すじがついているのかどうか、現時点では不明ですが、単なる既成事実の積み上げであるならば、あまりにも馬鹿馬鹿しい話です。つまり宅地開発も鉄道延伸も実現せず、環境破壊だけが行われるという愚かな可能性があるわけですね。

航空地図のスケールで確認していただければ明らかですが、場所は三崎口駅から1km程度で、徒歩でも10-20分程度の距離です。おそらく戸建て住宅中心でしょうから、完売されたとしても1,000戸程度、人口4,000人規模といったところでしょうか。都心からの距離を考えるとこれでもかなり高いハードルだと思いますが。常識的にはバスで十分、そこへ鉄道を通して駅を作るというんですから、まともに考えたら事業認可の可能性は限りなくゼロに近いと思うのですが、京急のこの行動は謎です。

2005年の免許返上も、国の強力な指導によるらしいのですが、詳細は不明です。既に工事実施計画まで認可され、着工されていた事業ですが、用地買収難と環境保護を求める反対運動で工事が進まず、三崎口から先は着手されておりませんでした。

その間に1999年の鉄道事業法改正があり、需給調整規制が撤廃され、従来の免許制度が認可制度に緩和されたのですが、旧制度で未着手のまま期間延長を続けていた油壺延長線を国が整理しようとしたのだと思います。というのは、そもそも免許制度は鉄道事業の国家独占を根拠とし、民間や自治体など国以外の主体が事業に参入するのに、国による当面の整備計画がない路線、区間で、国が求めたときには買収に応じるなどの条件を基に、事業の独占権を与える性格のものですから、権利性、財産性があると見られるわけです。ですから実現しなくても延長手続きを繰り返す限りは、免許路線、区間への他社の参入はないわけです。いわゆる免許維持というやつですが、おそらく国としては旧法による免許で未実現のものがある限り、事務手続きの窓口は残さなければならないわけですから、京急1社のためにそんなことはできないという判断があったのかもしれません。

とはいえ免許廃止を願い出た事業で再度認可を得るハードルは高いと思うのですが、京急はそうは考えず、規制緩和で事業の採算性だけで判断されるならば、一旦取り下げて再申請した方が手っ取り早いと考えたのだと思います。とはいえ開発規模からいえば採算性にも疑問符がつきます。鉄道事業全体で採算が合えばよいのかもしれませんが、その辺の国の判断基準は必ずしも明確ではありません。

そもそも鉄道の独占性は道路整備その他、交通機関の多様な発展によって事実上失われております。だから資本費負担が大きくリスクの高い鉄道事業への新規参入は難しいわけで、それを補うために整備新幹線や京阪中之島線、阪神なんば線などで採用された償還型上下分離方式などで、公的な支援が制度化されたわけですが、この場合は国交大臣の事業認定が必要です。ただし実績として大都市中心部の鉄道整備など、公共性が明らかで整備費用が民間の負担に耐えられない水準にある事業でしか認められる可能性はないでしょうから、油壺延長線への適用は考えにくいところです。

日本の人口は2005年にピークアウトしたことは知られておりますが、その先の人口が底を打って増加に転じるのが何時になるかはあまり意識されていないように思います。結論から言えば、現在の人口減少は高齢化によって死亡年齢に達する人が増えたことによりますから、今後も高齢化の進捗と共に人口減少は続くわけです。

しかも出産年齢の女性人口も年々減少してますから、多少出生率が上向いても誤差範囲でしかなく、人口減少は相当長期間続くことになります。ザックリ言って人口の多い団塊ジュニア世代が死亡年齢に達する2050年ごろまではこの傾向は続きます。当面の出生率はその後の回復スピードに多少影響する程度ということで、実は少子化対策はほとんど無意味なんです。

加えて人口減少で労働力不足を心配し、移民を受け入れるべきという議論もありますが、人口統計に影響するレベルということで、仮に20代若者に限り1,000万人単位で移民を受け入れたとして、40年後には高齢者にプラスされるので、高齢化のピークアウトを遅らせ、人口減の底打ちを遅らせるだけです。一方その1,000万人に日本語、文化、法制度など社会生活に必要な最低限の教育が必要ですが、そのコストを誰が負担するのでしょうか。所詮安い労働力を欲しがる企業の我が儘です。

というわけで、都心から離れた三浦市で鉄道と一体で整備されるような大規模ニュータウンを開発したところで、誰が住むのかというところです。金をドブに捨てるようなものですから、仮に事業認可の目途があるとしてもやるべきじゃないですね。無理をすればおJALへの道^_^;へ迷い込みます。

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Thursday, November 13, 2008

銭トレニャア、ナゴヤはオワリ?

うーん、株価が戻りません。ゆえに買い増しのチャンスという見方を変えた方が良さそうな感じです。原因は複数あって、特に外国人売りの地合いが強いようですが、誤解のないように指摘すれば、主に欧州各国で銀行への公的資金注入が行われた結果、政府主導で国内中小零細企業への貸出増加の圧力がかかり、投資原資として外国資産の処分が行われているもようで、ひと頃言われたジャパンパッシング(日本素通り)とは別の要因です。欧州では社会の装置に過ぎない銀行の救済よりも預金者や融資先の保護に重点が置かれているわけです。

とはいえそれだけで現在の株価が説明できるわけではなく、実際これだけ安くなったのに買いが入らない状況は、プロに言わせればあり得ない話と言われ、実際PER(株価収益率)が5倍とか、PBR(株価資産倍率)が0.5倍といったアンビリーバボーな数値が並びます。後者など会社を廃業して資産を切り売りした方がマシというレベルです。やはり前に指摘した株式持合いの負のスパイラルが原因のようです。悪い予想ばかりが当ります。

で、持合いの中心には銀行が居て、現在の株安を先導している状況をどう見るべきでしょうか。日本では銀行は救っても預金者や融資先は救わないのでしょうか。現在国会審議中の金融機能強化法でも、政府案では公的資金注入に際して経営責任を問わないことになっておりますが、それでいて貸し渋り防止策を謳っているのは矛盾しております。ま、この辺は90年代末の金融危機のときも政府の対応は基本的に変わっていない気がします。担当大臣が外国に「自慢」した公的資金注入にしても、長銀と日債銀の救済策は元々民主党案を丸呑みして実行したもので、こちらは経営陣の更迭と0円評価での全株式取得という形で経営責任と株主責任を問うたものでした。その仕組みを使い回して2002年にりそなへ資金注入したしたことで、政府の関与による金融秩序の回復期待が好感されて7,000円台だった日経平均株価が反転上昇に転じたことで、銀行の保有株が値上がりし、あれほど経済の重石となっていた不良債権問題が嘘のように解消したものでした。いわゆる竹中プランで、大手行に対しては経営責任を強く問いましたが、地方経済への負のインパクトを回避するために、地方銀行の不良債権処理は途半ばとなり、保有株価の上昇で見かけ上の自己資本は回復したわけです。それがリーマンショックの株安連鎖で資本が毀損し、さらに2006年下期以来の不動産不況も重なって、元々建設や不動産関連の融資が多かった地方銀行のバランスシートを傷める結果となっております。つまりは地方銀行に元々隠れていた不良債権問題が顕在化したわけです。

地方銀行でも、破綻すれば影響が大きいと考えられる上位行の足利銀行は、上記のブリッジバンク方式で一時国有化され、再建されて野村グループに転売されたのですが、規模の小さい地銀下位行や第二地銀ではそれは通らない話で、実際不動産不況関連で初めてのペイオフ実施が囁かれてさえいたのですが、世界金融危機に便乗して一転救えという話になりました。いわゆる焼け太りです。同様に流通市場が消滅して値決めできないという実務上の制約から、社債や証券化商品について時価会計を一時凍結しようという気運が欧米で出ると、流通市場が機能していて値決めが可能な株式や国債にまで適用しようと画策する日本政府の姿勢は、むしろ国際的に不信を買います。お願いだから15日の金融サミットでバカなこと言わんでくれ。

そんな中でトヨタショックがあったわけですが、メディアの取り上げ方はかなり一面的です。減収減益の直接的な原因は北米市場の冷え込みですが、メディアの論調としては円高の影響を過大視する傾向があります。既に現地生産比率が高いトヨタですから、為替変動の影響に対しては耐久力があります。実際経常利益7割減とはいっても、去年までの数値がむしろ円安メリットで高めに出ていたと見る必要があります。特にレクサスのように日本で生産して北米で売られる高単価車の寄与が大きかったのであって、その部分が金融バブルと共にしぼんだだけです。そういう意味ではマイナスには違いないですが、元々財務の強いトヨタですから、仮に単年度で赤字転落しても、さらには赤字が数年続いても、存亡の危機にはなりえないので、その辺がビッグ3とは大違いなんです。

とはいえ自動車不況の現実は確実にあるわけで、実体経済への影響は計り知れません。特にトヨタの減益発表のインパクトで怖いのは、納入する部品メーカーへの影響で、既に中部地区では衝撃が走っております。好調時には納入価格を叩かれた上に、不況で減産となれば真っ先に影響を蒙るのは、こういった下請企業群です。トヨタは安泰でも下請け企業は存亡の危機となるわけですが、よくよく考えれば、真に必要なサプライヤーならば、発注元企業が資本を入れれば良いわけですが、そうはせずに公的資金で助けられた銀行の融資や都道府県信用保証協会の保証業務などで延命させると、再度好況に巡り合わせたときに、使える安値受注のサプライヤーを温存できるわけです。つまりトヨタのような親企業だけが富む構図ですね。結果的に国内消費をリードしてきた名古屋景気はしぼみ、中小企業は疲弊する構図です。地域のトヨタ依存が高すぎた反動ですね。

その影響で栄の老舗デパートをなぎ倒したジェイアール名古屋タカシマヤも業績にブレーキ、JR東海の連結業績にも影響しています。さらにこんなところにも変調が。

中部空港、4-9月初の赤字 燃料高痛手に
これ燃料費高騰だけが原因ならば、最近の原油価格の動向でいずれ回復が期待できますが、より構造的な問題として、そもそも国際空港として発着便数を増やせずに、経済の冷え込みでむしろ航空会社の撤退が始まってしまい、空港としての存在感が低下していることが見逃せません。開港当時から航空客より見物客が多いことから、空港付テーマパークとも揶揄されましたが、名古屋景気の冷え込みで見物客の落ち込みも予想されるだけに、業績回復は容易ではないというべきでしょう。

となると気になるのが、空港輸送で息を吹き返した名鉄の動向です。元々クルマ大国の名古屋地区で、それに対抗して登場したパノラマカーが、来年度の全廃が発表され、一時代が終わった感があります。ところがクルマ社会の親分であるトヨタよりも、民営化JRと名古屋市営地下鉄/バスの挟撃という思わぬライバルの出現で乗客を減らした名鉄が、中部国際空港の輸送で得たアドバンスも、先行き不透明です。既に岐阜地区の600V線などローカル区間の撤退も進み、リストラも一巡したところでの地域経済のリセッションは堪えそうです。

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Saturday, July 05, 2008

磁気券IC券二重価格in新横浜

同じような話題を以前も取り上げましたが、他社線を介した通過連絡運輸特例に関するものでした。SuicaとPASMOの共通化で複雑になった運賃判定モジュールでは対応できないというのが、一応の理由ということですが、やはり磁気券とIC券で運賃が異なるという点には違和感があります。

今回取り上げるのは、3/15にTOICA、ICOCAとの共通化に関連するものですが、不可思議なのは3/14以前は同じだった運賃が、3/15を境に違ってしまったという点です。対象は、新横浜、菊名と小田原以西各駅(Suicaエリア)間です。概要は1枚の駅貼りチラシによる告知だけです。それも篠原口では目立つよう位置が工夫されてますが、駅ビル内のメイン改札口では、ちょっと目に付きにくい位置に掲示されていて、JR同士でスタンスの違いが示唆されます。

新幹線をめぐる運賃計算は、新幹線駅を並行する在来線駅と見なして、在来線の営業キロで計算するルールですが、例外として新幹線駅が在来線駅と離れている場合で、その駅発着または乗継の乗車券については、新幹線と在来線を別の線として乗車経路どおりの営業キロで計算することになっております。つまり小田原から新横浜までは、新幹線経由と在来線経由とで運賃が異なるわけです。ここまでは本則による部分です。

問題は小田原~新横浜間の新幹線経由の乗車券が東神奈川経由の乗車券より安くなるのですが、新幹線は東京近郊区間に含まれませんから、本則どおりであれば新幹線経由の乗車券で在来線を経路選択するとこはできません。しかし便宜的措置として新幹線経由の乗車券で在来線の経路選択が認められております。多分国鉄時代から乗客とのトラブルが多発し、グレーゾーンでもあるので、乗客の利益を優先した取扱いが慣例化したものと思われます。そして民営化後もこの取扱いは引き継がれます。ただし同じ新横浜発着でも、品川方面間では、このような取扱いはなく、本則どおりです。

そして2001年のSuica導入時点でも、IC券と磁気券を差別することは行われず、Suica利用でも新幹線経由の運賃が引き落とされていたのです。今年の3/14までは。3/15のTOICAとの共通化を機に見直されたわけですが、不思議なのは、磁気券では従来どおり新幹線経由運賃が適用されるのに、IC券では経路どおりの運賃引き落としとなり、結果的にIC券利用の場合のみ運賃が高くなる二重価格状態となったわけです。元々慣例的な便宜的措置だったんですから、IC券に合わせて磁気券も経路どおりとすれば、規則上すっきりしますし、とりあえず乗車経路で運賃計算されるわけですから、乗客に特段の不利益があるわけではないのですから、あとは的確な説明がなされれば良いだけです。しかい実際は磁気券と取扱いが分かれてしまい、ICカード所持者は券売機で磁気券に交換することで、割安な運賃で利用できるのですが、乗客に無意味な手間を求め、結果的に二重価格状態としてしまったわけです。意地悪な見方をすれば、IC券利用者からこっそりふんだくることができてしまうという意味で問題があります。

しかしなんでこんなけったいなことが起こるんだろうかと思っておりましたら、最近TVCMでやたら流れるEX-ICがどうも原因のようです。つまりSuicaなどのIC乗車券とのダブルタッチで利用できる東海道新幹線限定のチケットレスサービスの導入で、新幹線で実際にIC乗車券が利用できるようになり、その際に会社間の取り決めで妥協の産物としてこうなったということなんでしょう。EX-ICでは事前予約をwebで受け付け、新幹線改札にカードをかざす時に利用券を受け取るという形でチケットレスを実現するのですが、ベースとなるエクスプレス予約のスタイルを踏襲し、特定市区エリア発着特例をなくして値引きされており、その分経路特定を厳格化したものと思われます。ただしこれだけではJR東海の収入に直接食い込むわけではないJR東日本の在来線での新幹線経由の割安運賃を放置しても問題ないはずです。

ところが別のところにヒントがありました。在来線の熱海~函南間がTOICAエリアから外されている問題です。そう、IC券だけで在来線ルートで静岡エリアへ行けないんです。新幹線経由でEX-ICを用いる場合だけ、IC券で継続利用できるんですね。つまりかなりセコい新幹線誘導策ということができそうです。こだましか停車しない三島や掛川で新幹線連絡の名目で在来線列車を長時間停車させてるぐらいですから、あり得る話です。

Suica生みの親の椎橋JR東日本IT-Suica事業本部副本部長の著書に明記されてますが、Suicaの最大の功績は、ライトユーザーを囲い込めたことです。従来鉄道をあまり利用しなかった人たちにとって、着駅までの運賃を調べて券売機に小銭を投入し、乗車券を買い求めること自体が負担と感じられていたのが、チャージさえしていればカードを改札でかざすだけで済むことで、鉄道利用の掘り起こしができたということですね。今後高齢化で運転免許を返上する人も増えるでしょうが、そういった人たちの中には、そもそもキップの買い方がわからないという人がいたりします。人口減少が始まって、右肩上がりの将来を展望できない中で、このことの意味は重要です。

例えばスルッとKANSAI各社が導入したPITAPAが、ポストペイ方式を採用し、利用ごとにポイントを付与することで、同一区間の反復利用の場合の引き落とし上限を定期運賃相当とすることで、定期券や回数券を廃止するという画期的な方法を試みておりますが、発行はクレジットカード同様に煩雑なこともあり、普及度合いはSuicaなどのプリペイド陣営ほどではないようです。PITAPAはヘビーユーザー向けサービスと考えた方が良さそうです。それに対して無記名式ならカード販売機で買えるし、定期券タイプも専用発行機が用意されているSuicaの方が、利用者の広がりは大きいといえます。このことはPASMO品切れでも図らずも明らかになりました。

JR東海のEX-ICは、その意味では新幹線利用客の囲い込みという意味で、ヘビーユーザー向けのサービスといえますが、反面ライトユーザー軽視とも取れるだけに、いささか問題のある対応かと思います。意地悪な言い方をすれば、バレなきゃ高く引き落として構わないということですから、JRを信頼して利用する人が知ったら失望するんじゃないでしょうか。

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Sunday, August 26, 2007

もう一つの九州新幹線

これはあくまでも未確認情報でして、裏を取ったわけではありませんので、そのつもりでお読みください。DJ誌の最新号でも整備の進捗が取り上げられている九州新幹線ですが、ここに至るまでに紆余曲折があったのは、ご存じの方も多いと思います。

そもそも総延長260kmほどの新線建設を、起点側でなく終点側の新八代~西鹿児島(→鹿児島中央)から着手したことに、ある種の政治的意図があったのだと思います。諸説ありますが、需要のある博多~熊本間を先行させると、採算性に劣る以遠の区間の整備が着手されない可能性があるということがまことしやかに言われたりもしますが、真偽のほどは不明です。また整備新幹線建設スキームに"スーパー特急方式"が取り上げられたことも、当該区間の建設を念頭に置かれたものという見方もあります。ま、いずれにしても整備新幹線自体が、国鉄分割民営化で計画の中断を恐れた複数の政治家の押し込みによるものであることは既に指摘したとおりです。

本来は根拠となっている全国新幹線整備促進法で想定されていなかった事態ですので、計画そのものをゼロベースで見直すべきだったのですが、そのような議論は為されませんでした。「新幹線は票になる」というだけの理由で、苦し紛れの整備促進に向かったのです。それ故に、気がつけば次々と新規着工が進み、スーパー特急やミニ新幹線で計画された区間も、いつのまにかフル規格に化けるということを繰り返し、JR東海を激怒させた既存新幹線買い取り代金への上乗せで無理矢理捻出した鉄道整備基金も2007年で枯渇することとなり、財源の当てもなく漂流する整備新幹線問題は、実にさまざまな問題を抱えながら進められることとなります。

そんな中で、九州新幹線鹿児島ルートに関しては、未確認ながら興味深い情報があります。スーパー特急方式で終点側から整備が始まったことで、西日本鉄道が、整備新幹線事業への参入をほのめかしたことがあるようです。詳細は不明ですが、考えられるところとしては、第二期の船小屋温泉~新八代間の計画を一部変更して大牟田で西鉄大牟田線(→現天神大牟田線)につなげて、鹿児島までの都市間輸送に参入することは考えられます。鹿児島中央までの建設キロは200km程度で、仮に最高速度160km/h、表定速度130km/h程度とすれば、大牟田~鹿児島中央間1時間半程度ですので、福岡(天神)~鹿児島中央間2時間半ということで、十分競争力を発揮できます。となればJR九州にとっては手強いライバルとなるわけで、このことでJR九州は整備新幹線事業に前のめりにならざるを得ない状況になったのではないかと考えられます。ある意味スーパー特急方式の裏をかいた話ではあります。

ま、この辺は無理して延命させた整備計画の隙を突く行動ということになりますが、元々整備新幹線の事業主体となるはずだった国鉄は解体されたわけですから、整備新幹線の事業主体に関しては、元々あいまいなところがあったわけです。一応並行在来線の切り離しを条件づける形で、在来線を管轄する事業者が事業主体となることが想定されていたんでしょうけど、無理して延命させた計画だけに、あいまいさが残ったわけですね。思えば北陸新幹線長野~上越間の着工時に、当時のJR東日本松田社長が、金沢までの一括着工に言及して物議を醸しましたが、その結果北陸新幹線の整備に消極的だったJR西日本の背中を押す形になったことと似ています。

今となっては真相は藪の中、あるいは九州選出の政治家が西鉄に騙らせただけなのかもしれませんが、実は真相はどうあれ、JR九州の立地条件のよさを感じます。西鉄という手強いライバルがいることが、JR九州にとっては重要なんです。元々九州は、北九州と福岡という2つの政令指定都市を抱え、かつ50万クラスの熊本、鹿児島から大中小さまざまな規模の都市が適度の分散していて、鉄道事業にとっては好立地ではあります。その点では札幌一極集中で、必然的に末端の過疎化が進行する北海道や、そもそも大都市が存在しない四国と比べれな、遥かに恵まれた立地ではあります。

が、このことは同時にライバルの存在が不可避であるということでもあります。条件の悪い北海道や四国でJRに挑戦する者が現れる可能性は低いですが、九州では昔から輸送市場が競争的でして、西鉄の前身の九州電気軌道(→北九州線)からして、阪神に倣ってインターアーバン(都市間電車)を目指し、1日数本の汽車ダイヤに、頻繁運転の電車で挑み乗客を奪い繁栄した会社です。また九軌系列の九州鉄道(2代目→天神大牟田線)も、同様に複線電化の高速鉄道に電車を頻発運転し、久留米までの乗客を奪い取った歴史があります。

そういった競争的DNAを持つ西鉄ですが、高速バス事業でも攻勢をかけ、福北ラインの3系統合計10分ヘッドをはじめ、とにかく運行頻度の高さが西鉄流で、スピードで勝る鉄道から客を奪っている状況があります。それゆえにJR九州は競争市場で経営に緊張感を持たざるを得ないわけです。

逆に福岡都市圏輸送では、筑豊本線と篠栗線の電化で福北ゆたか線と称して輸送改善したり、天神大牟田線との並行区間に新駅を作って西鉄の営業基盤を切り崩すような動きもあります。両者切磋琢磨して輸送の質を高めることが、結果的に乗客の利便性を高めているとも言えるわけです。そういう意味では、台湾鉄道当局が関与しなかったためにライバル関係となった台湾高速鉄道の事例に似ています。ま、台湾では高速バスも航空も全てライバルですから、コンペティター(競争者)が増えたところで大勢に影響ないのかもしれませんが。

鉄道事業は地域独占であるといわれますが、現実にはマイカーの普及で完全独占は不可能な状況です。それでも市場占有率が一定以上あれば、独占性が発揮できるんです。一般論では市場占有率40%を超えると独占事業といえるようです。その意味で例えば新幹線の開業と引き換えに航空が撤退するような区間では、本来新幹線の必要性自体に疑問があります。新幹線の対航空の優位性は1にも2にもその卓越した輸送力にあって、航空では代替不能なんですが、逆に航空のような需要に応じた柔軟な輸送サービスは苦手であるわけで、元々需要が旺盛な東名阪を結ぶルートで鉄道と航空が並存しているのは、その結果として乗客のトータルな利便性は高まるんです。そのことを忘れて航空を市場から締め出すためにリニアを建設すべしというのはスジが違うわけです。多様性こそ市場経済の特徴であり尊重されるべき視点です。

とはいえJR九州の経営はけっして楽ではない状況で、立地のよさと3島会社に渡された経営安定基金の存在を根拠に、九州新幹線全通のあかつきには、株式上場を果たして本州会社を凌ぐ優良銘柄になると期待する向きもあるようですが、既に3島会社の株式上場は財務省サイドで諦めているようです。整備新幹線では事業者であるJRの受益のほとんどは、線路使用料として鉄道建設・運輸施設整備支援機構に徴収されてしまうので、新幹線単体での利益貢献の度合いは低いということを押さえておく必要はあります。

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Tuesday, August 14, 2007

鉄道書評、線路にバスを走らせろ

夏休みシーズンで、鉄道関連ブログにも訪問記や旅行記が多数アップされている中で、当ブログ管理人はPC熱と闘いながら(笑)、書斎派鉄の道をまい進しております(苦笑)。

線路にバスを走らせろ 「北の車両屋」奮闘記(朝日新書 56) (朝日新書 56)
国鉄末期からの地方交通線転換によって、多くの営業路線を失い、事業規模を縮小した北海道の鉄道ですが、それでも残った路線の状況は厳しく、営業キロ2,500km中6割はローカル線という状況です。当然存廃が問われる路線も多く、JR北海道発足後にも、池北線の三セク転換と深名線のバス転換が実施されました。赤字路線の分離は、それ自身は経営面で必要なことには違いないのですが、同時に事業規模の縮小を余儀なくされるわけですから、JR北海道にとっては痛し痒しの部分です。

また90年代の金融危機のときに、北海道拓殖銀行が突然の経営破たんに見舞われたように、北海道では地場産業の衰退に直面している実情もあり、鉄道事業の撤退は、地域の衰退に拍車をかけることにもなります。また元々鉄道と共に開拓が進んだ北海道では、鉄道事業そのものもが産業集積として地域雇用を支えていた現実もあります。先日20年越しで和解、決着した旧国鉄職員のJR各社への採用を巡る労使対立も、元をただせば北海道の鉄道事業縮小に伴なう余剰人員の北海道以外の各社への受け入れを巡って、人選に所属労組による差別があったかどうかが争われたものです。

それやこれやで問題を抱えるJR北海道ですが、同時にリゾート列車や高速振り子列車などなど、実に多くの技術開発を行って、鉄道の活性化に取り組んでいるのは、あとがない崖っぷちゆえでしょうけど、ある意味地域分割のプラス面とも評価できます。最果ての大地で鉄路を維持することの意義を考えさせます。

以前、北海道旅行で、日高から襟裳岬を通って十勝へ抜けるルートを取ったときに、札幌からの鉄路乗継は飽きそうだから(笑)、道南バスの直通高速バスで浦河へ向かったのですが、浦河ターミナルで降りて最寄の東町駅へ行って驚いたのは、列車の少なさでした。襟裳岬方面へはどのみち様似でバスに乗り継ぐわけですが、並行する国道のJRバスのバス停を見ると、ほぼ1時間に1本のバスが走っているのですが、「学休日運休」の注意書きがあります。つまりは事実上の通学バスと化しているのですが、そうすると列車は何のために走っているのだろうかと疑問が出てきました。そう、線路がある以上、列車を走らせるしかないのです。

一応襟裳岬へ向かう観光周遊ルートには組み込まれており、様似から襟裳岬方面へのバスは。列車に接続をとっているわけですから、両者が棲み分けているわけです。しかし同じJR北海道同士で、両者の連携がないのは、ただでさえ少ない旅客を分けあう分、収支面では不利になります。北海道には鉄路と並行する整備された道路という似たロケーションのところは多数あります。DMVはそんな北海道では割と自然な発想の産物なのかもしれません。

そういった背景で、DMV開発に着手したわけですが、歴史を紐解けば、同様の発想で何度もトライされ、死屍累々の失敗を積み重ねてきたキワモノでもあるわけです。それを幼稚園の送迎用園児バスを見て「そのまま線路に乗せられそうだ」と発想するところが見事です。しかも軽量で線路を傷めないし、GPSなどの位置情報システムを利用すれば軌道回路を用いた閉そく信号も省略できるとか、行き違いも片方が線路を外れればよいとか、必要に応じて線路から外れた集落などへ運行できるとか、万が一の災害のときにも、線路と道路の復旧している部分を自在に行き来して運行を確保できるなどなど、発想が広がります。そう、DMVは最果てのLRTと考えれば理解が深まりますね。

基本的に引き算による技術革新ということです。鉄道は「金を失う道」といわれるように、線路を設置し維持するのに多額の費用がかかるわけで、需要が見込めないところで成立させるのは難しいわけですが、容赦のない過疎化の進行で乗客が減り続ける最果ての鉄路を残すには、現状に何かを付け足すのではなく、要らないものを削ぎ落として本体を維持するという発想なんですね。JR西日本の富山港線が富山ライトレールとして再生されたのに似ています。整備新幹線事業の着手に関連した富山市の都市計画で富山駅周辺の高架化事業が行われるときに、ローカル線である富山港線を新しい高架駅へ乗り入れさせるには多額に費用が発生するわけですが、アプローチ部分を都市計画道路上の併用軌道とすることで、ローカル線を都市交通に取り込んだわけです。足し算ではなく引き算で成功した事例ですね。そう、ヘビーレールから余分なものを割り引いてライトレールにするのであって、例えば元々低規格で放置されていた東急世田谷線が、軌道回路を用いた閉そく信号機と、連動する旧国鉄ATS-B相当の車内警報装置や列車無線を装備し、冷房付の新車に置き換え、ホーム嵩上げでバリアフリー化するなど、多額の費用をかけて列車定員を減少させ駅での客扱い時間を伸ばしスピードダウンした現実を見ると、技術革新の方向性が誤っていると言わざるを得ません。

大量輸送こそ鉄道の使命ですが、一方で過疎化の進捗で公共交通の維持が難しい地域も多数あり、居住放棄につながる限界集落が増えていると言われます。このままでは国土が荒れ果て、経済的パフォーマンスを低下させる要因にもなりかねない中で、公共交通を維持するソリューションの必要性は高いといいえます。その意味で身の丈にあったイノベーションとして、DMVの行く末を見ていきたいと思います。

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Sunday, July 01, 2007

越美北線と高千穂鉄道の間

日本の原風景を代表する中山間地の2つの鉄道で明暗を分けたニュースです。

JR越美北線が全線開通・3年ぶり
宮崎県の第3セクター高千穂鉄道、全線廃止へ
越美北線は2004年7月の越前豪雨で被災、高千穂鉄道は2005年9月の台風14号による被害です。路線立地の似た両線の明暗を分けたのは、特定地方交通線廃止に揺れた国鉄末期、国鉄に残ってJRへ移行した線区と第三セクター鉄道に転換された線区の明暗という整理は可能です。鉄道事業はスケールメリットがものをいうのは確かです。

しかし決定的に異なるのは、やはり行政の対応でしょうか。過疎化の進む越美北線沿線ですが、その中で沿線の大野市が、以前から住民の定期券購入者に補助金を支給してきたことが効いているのではないかと思います。これもそもそもは、かつて大野市へ達していた京福電気鉄道(現えちぜん鉄道)越前本線の勝山―大野間廃止の苦い経験からきているものです。

大野市はかつて県都福井市へ2本の鉄道が通じていたわけで、地方都市としては破格の好条件でした。私鉄である京福の方が、運転頻度も高く、利便性に勝っていたのが、沿線の過疎化とモータリゼーションとともに経営が苦しくなり、度重なる運賃改定で高くなる一方、国鉄時代の全国一律運賃制度のもと、低廉な運賃が維持された越美北線に、沿線利用者が流れるようになります。結局京福は、生き残りのために勝山から先の区間を廃止して、残る区間の運行に経営資源を集中させる選択をします。私企業としては当然の選択です。

これによって越美北線が唯一の鉄道となった大野市では、特定地方交通線問題で結果的に国鉄に残った越美北線の廃止問題に危機感を持つようになります。で、単なる陳情では廃止は阻止できないという判断があったのでしょう。前記の定期券購入補助を行って、利用者を補助する形で支えていきました。そのことがあったからこそ、越美北線の復旧費用40億円の一部を県が負担することに道がひらけたのでしょう。実際被災当初は県は負担を嫌ってJR単独復旧に言及しておりましたが、結果的に一部負担することになりました。

その間に県レベルでもいろいろありまして、1992年に京福電気鉄道が福井支社管内の鉄道線全廃を打ち出したのに対し、97年に県と沿線市町村で対策協議会を発足させ、行政支援を含む活性化の模索があ始まります。このとき既に京福の廃止表明から5年経過しており、当時の行政の危機感の希薄さが読み取れます。と同時に、需給調整規制撤廃を盛り込んだ改正鉄道事業法の施行で、廃止に際して地元との協議で不調でも1年後に廃止できるいわゆる見切り発車条項が盛り込まれたことで、自治体側が対応せざるを得なくなったというのが本当のところでしょう。

京福も見切り発車に踏み込まず、地元との協議を続けたわけですが、これには整備新幹線の北陸新幹線計画が絡む福井駅付近の連続立体化事業事業をめぐる問題がさらに絡んできたものと思われます。JR北陸本線の高架化にあわせて、京福も高架で福井駅へ乗り入れる形で福井市で都市計画決定されていたこで、路線の存廃が都市計画を不確定にしてしまうという珍しい現象が起きたんですね。またいつになるかわからないけれど、新幹線が福井へくれば、フィーダー輸送で京福の鉄道線が息を吹き返す可能性もあるだけに、特に自治体側が粘ったのでしょう。けれど事態は意外な展開となります。

2000年12月17日に越前本線志比境―東古市間で列車正面衝突、さらに2001年6月24日に保田―発坂間で再度の列車正面衝突事故と、半時に2回の重大事故で全面運休に追い込まれ、復旧のめどがたたない中で、2002年に第三セクターのえちぜん鉄道を発足させて、翌年2月に京福から鉄道資産を譲り受け、同年8月に三国芦原線。10月に越前本線改め永平寺勝山線が営業運転を始めます。福井県は地域として公共交通の危機に直面し、それとともに議論も活発化、福井駅高架化に対しても、既に名鉄から岐阜市内線の中古車を導入してLRT化を指向する福井鉄道との直結を踏まえた高架駅乗り入れ中止へと舵を切ることとなります。

えちぜん鉄道、一部LRT化・福井県が計画変更へ
かくして福井では、公共交通の廃止議論が地域の危機感を強め、鉄道の存続に行政が大きくコミットすることとなりました。ただし越美北線は一部運休の影響もあるでしょうけど、徐々に利用者を減らしている現実があるわけで、とりあえずの復旧、存続ではあります。

高千穂鉄道については、まずは行政が全く腰が引けている状況ですから、存続はそもそも無理筋ではありました。それでもとりあえず観光鉄道としての復旧をめざし、神話高千穂トロッコ鉄道という新会社を発足させ、寄付を募ってきたわけですが、寄付金は予定額を大きく下回り、新会社への資産継承のために休止扱いを続けてきた高千穂鉄道がいつまでも会社清算ができないということで、鉄道資産は新会社に継承されることなく廃止されたわけです。これでほぼ復活の可能性は絶たれました。

善意の寄付による鉄道存続といえば、関東の銚子電鉄の事例が直近で話題となりましたが、首都圏に立地し、関連事業のぬれ煎餅のネット直販サイトがアクセス急増で急遽受付中止となるなどが話題となって、メディアへ露出したことが大きかったですね。こういったことがなければ、善意の寄付だけで必要な資金を集めようというのは、自ずと限界があります。福井でも決して当初から行政は積極的だったわけではなく、地域の存亡にかかわる事態から危機感が生まれ、行政や住民に共有された結果でもあります。悲しいかな目に見えるシンボリックな出来事にしか人々は反応しないわけです。

関連記事:

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高千穂鉄道部分復旧の模索は続く

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Monday, January 22, 2007

地下鉄談合、名古屋バブルかもしれない

ホントしょーもないニュースです。

名古屋地下鉄談合、刑事告発へ最終調整・公取委
名古屋市地下鉄談合、一両日中に本格捜査・地検
大林組や鹿島、清水建設など一斉捜索・名古屋市地下鉄談合
名古屋市営地下鉄桜通線の野並~徳重間の地下鉄工事を巡る談合事件でゼネコンが捜索されました。刑法の談合罪適用を視野に入れているそうで、ゼネコンへの適用は初となるそうです。

工事区間ですが、名古屋市南東の郊外で、名鉄本線と地下鉄鶴舞線の双方から離れた鉄道空白地で、丘陵地帯の新興住宅地の風情がgooglemapからも読み取れます。一昨年の中部国際空港の開港や愛知万博の開催もあって、絶好調の名古屋経済のフロントエンドともいうべきエリアのようですね。

名古屋駅前にトヨタ本社ビルができて、名古屋で空前の不動産ブームに沸いているようですが、特に首都圏エリアのデベロッパーの進出が相次いでおり、マンションも戸建ても好調なようです。好調なトヨタのフトコロを当てにしたわけですね。

そのことに対して地元ではやや違和感をもって見られているようですが、それでも住宅が好調であれば地域経済へのインパクトも強いわけでして、桜通線の延伸の意思決定も、そういった意味では必要に迫られてのものだったと考えられます。そして談合決別を宣言した大手ゼネコンによって工事が受注されたわけですが、そこで大規模な談合が行われていたというのは、悪い冗談では済まされない話ではあります。

たぶん本社での談合決別宣言が、地方の支社にまで徹底されていなかったのでしょうけど、一部で談合発覚を誤魔化すために工事区間の振り替えまで行う念の入れようからすると、悪質性は高いといえます。以下は個人的な推測であることをお断り申し上げておきます。

好調な名古屋経済を背景とした不動産ブームという状況で、競合が激しくて低値受注が多い民間工事を、公共工事の談合で益出ししてつないできたゼネコンの経営からすると、口で言うほど談合決別は簡単ではないはずです。特に元請となることが多い大手ゼネコンの場合、下請けに泣いてもらってやりくりしている状況で、たまにはいい顔がしたいはずです。そんな状況で好調な名古屋で地下鉄工事となれば、多少おこぼれにあずかってもバチはあたるまいと考えたとしても不思議ではありません。そう、ある種バブルの熱狂がそうさせたのかもしれません。

というわけで、名古屋ひとり勝ちがもたらした談合事件ではないかと愚考いたします。関わった大手ゼネコンは東京と関西の会社ばかりで、名古屋からすればよそ者ばかりです。うーん、やっぱりバブルが忘れられないか-_-;。

こうなるとトヨタの好調も罪作りではありますが、かつてそこら中にいたマーク2三兄弟で大儲けしたトヨタが、やはりアメリカでブレークしたレクサスブランドの国内投入で上級車への買い替えを狙ったのですが、中流意識を反映したマーク2等からの買い替えは、上級シフトはベンツなど輸入車へ流れ、原油高とユーザーのリタイアメントの影響で大半はコンパクトや軽に乗り換えられという具合に、海外の好調を打ち消す体たらくに苦しんでおります。トヨタ神話も絶対ではないのです。

やや気になるのが、トヨタが最近中央リニアに積極姿勢を見せているそうで、曰く「東京~名古屋間40分なら相互に通勤圏になる」そうで、三河から全国へ分散した系列を含めた事業所間の連携強化に期待しているようですが、んなもんビジネスジェット使えよな! JR東海がJR総研から技術者を受け入れ、山梨実験線の延伸を決めるなど、前のめりになっているのも、トヨタの後押しに期待しての行動とすれば合点がいきます。あわれバブルのあだ花となるか(合掌)。

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Sunday, August 13, 2006

神奈川東部方面線で横浜市のフライング

相鉄とJR東日本の相互直通構想が横浜市の横槍で、神奈川東部方面線の構想と合体したのは既報のとおりですが、神奈川県議会の6月定例会の代表質問で、興味深いやりとりがありました。

http://www.pref.kanagawa.jp/gikai/pg/107/d_q.htm
民主党平本さとし議員の質問で取りあげられておりますが、事業費の自治体負担分について自治体間で協議中にかかわらず、横浜市は本年度負担分6億4千万円の2/3相当の額を予算計上することで、フライングしております。

県側は一応理解は示すものの、困惑気味ですね。事業そのものは横浜市域内で完結しますが、大和市や藤沢市なども受益がありますので、県を含めて負担割合を決めなければならないのですが、協議中に決め撃ちで予算措置をするというのは、行政手続き上は強引なやり方と言わざるを得ません。そうまでして新横浜に新線を通したいのはわかりますがね。

新横浜地区のオフィスビルの空室率は確かに高いですし、ラーメン博物館のようなテーマパーク型アミューズメントが成り立つのも、賃料の安さの反映でもあるわけです。また商業施設に関しては、ほとんど何もない状況ですが、開業時点から40年以上新幹線駅があって、なおかつのぞみ停車駅であるにもかかわらずですから、結構お寒い現状といえます。MM線の開業でブームが起きたみなとみらい地区とは大違いです。横浜市の現実として見ておく必要があります。

4日の総務省の発表で人口減が住民台帳上でも確認されましたが、その中で9都道府県では人口増、神奈川県は増加して、やはり増加した大阪府を抜いて人口2位となり、市町村では横浜市がトップという具合に、人口減少の中で勝ち組地域ではあるんですが、いうまでもなく東京のサテライト(衛星都市)としての発展であることは押さえておく必要があります。ちなみに南びわこ駅問題で揺れる滋賀県も人口増となっております。

そういった点を踏まえてみると、自前の市営地下鉄を建設、運営し、4本の環状道路を整備するなど、横浜市の開発スタンスは独立都市を目指すフルセット型の特徴があります。実はそれが実情にあっていないということは言えるのではないかと思います。地下鉄にしても、例えば神戸市が神戸高速鉄道によって既存の鉄道事業者との連携で路線網を強化したのに対し、第三軌条集電の独自規格で1,3号線(ブルーライン)を整備したばかりか、横浜環状鉄道(4号線=グリーンライン)は規格の異なる小断面リニア地下鉄として建設するなど、自前主義で高コスト体質になってしまっている点も気になります。ひとことで言えば戦略性が欠如しているということです。

みなとみらいのブームは、渋谷から直通で30分程度という時間距離がミソです。日産の本社移転も、ビジネスの足場として銀座との比較ですから、地価が安く、湾岸道経由で羽田、成田の両空港へのアクセスにも有利で、誘致企業優遇策を利用できるみなとみらい地区の選択には合理性があります。のぞみが止まるからといって新横浜は選択されないわけです。

人口減少社会への移行によって、人口動態は従来の常識では測れない状況になりつつありますが、滋賀県の場合もそうですが、地域開発には戦略性が問われる時代になってきたといえます。本当に必要な事業をきちんと見極めるとともに、コストパフォーマンスを高めることが問われるわけです。事業者の言い値で事業費を決定することも要注意というわけですね。

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Sunday, July 09, 2006

滋賀県知事選で南びわこ駅凍結

何かニュースがミサイル一色になっている感がありますが、そんなことに関係なく社会保険庁の不正は留まらず、福井さんは辞めないし、米国産牛肉は輸入されるしと、何だか騒々しい日々が続きます。スッキリ梅雨明けとはまいりません。「余人をもって替えがたい」福井さんって、どっかの国の将軍様みたいなもんでしょうか^_^;。

話題としては今さらながらなんですが、正直なところ全国区レベルではニュースとしての露出度が低くて実態が見えにくい滋賀県知事選で南びわこ駅を含む公共事業凍結を訴える新人がまさかの勝利、三選をめざす現職がまさかの敗退ということで、特に5月に着工されたばかりの南びわこ駅に関しましては、正直なところよくわかっておりませんでした。とりあえず経緯は朝日新聞地域版の特集に詳しいようです。

【秒読み新駅着工】
「新都心」に視線熱く(上)
【秒読み新駅着工】
右肩上がり強気の試算(中)
【秒読み新駅着工】
是か非か、三者三様 (下)
ここに至る過程で(仮)湖東駅と栗東新駅(南びわこ駅)の2駅設置やびわこ空港構想など、なんともバブリーな計画があったことなどを考えると、今回の選挙結果は、県民の良識が働いた結果と評価できそうです。

慌てたのはJR東海でしょう。記事中にもありますが、元々請願駅として計画され、駅設置費用246億円のうち240億円を地元自治体が分担して負担するのですが、これはあくまでも駅部分だけの話で、周辺の区画整理事業その他の整備事業をあわせて650億円、かつJR草津線に設置予定の連絡駅に関してはJR西日本との協議はこれからの話ということで、どう見ても無理スジに見えます。それでもJR東海にとっては、のぞみのスピードアップのためにはこの位置に退避可能駅を作りたかったはずです。

東海道山陽新幹線をめぐるJR東海とJR西日本の軋轢は以前から指摘されておりますが、昨今輸送シェアがじりじり低下している状況に注目しておきましょう。無駄を指摘された神戸空港の意外な健闘は、実はJR海と西の連携の悪さに起因するニッチな需要の掘り起こしに成功したものと見ることができます。神戸市にとってはJR東海さまさまです^_^;。

で、のぞみの新神戸停車を増やすなど、やっとここへきてJR西日本との連携の必要性を認識したようですが、そのためには京都の手前のこの位置に退避駅がほしいところです。少なくとも京阪神へ向かうのぞみが手前で先行列車に頭を抑えられる状況は解消したいはずです。特にN700系のスピードアップ効果を活かす意味はありますので。

ならばJR東海が自腹で駅を作ればよさそうなものですが、それをすると悪しき前例となって、ほかの駅設置希望地域からの突き上げを受けてしまうのでできないわけです。例えば相模新駅などですが、こちらは地元自治体がまとまる気配がありませんが、南びわこ駅がJR東海単独事業で実現してしまえば、こちらにもという話になるでしょうから、JR東海としてはおいそれと呑めない話になるわけですね。

あと駅予定地が盛土区間であるために、迂回路を作って盛土を撤去し、高架橋を設置するという手順となるために、山陽新幹線厚狭駅や上越新幹線本庄早稲田駅に比べて割高な工事費となっている点にも注意が必要です。東海道新幹線で多い盛土区間ですが、高架橋へ改築されるとすれば、料金上乗せ分を積み立てて行う東海道新幹線の設備更新工事の先取り的な要素もあるわけですが、そうなると請願駅だからということで工事費のほとんどを地元で負担させられる根拠が弱くなる気がします。駅が欲しい人たちには見えない部分かもしれませんが。

ま、ただあくまでも凍結であって、中止ではないわけですから、選挙結果を受けて県議会などで議論されるはずです。ま、どうせオール野党で袋叩き状態でしょうから、まだどう転ぶかはわかりませんが、議会解散などなどの泥仕合に発展すれば、ますます知事派に風が吹くことになりそうですから、結構後々にひびく選挙結果かもしれません。今後も注目してまいりましょう。

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Saturday, June 10, 2006

相鉄とJR東日本の相互直通大臣認定

というわけで、前回記事(東急相鉄相互直通、横浜市の横暴相鉄の涙)の続きを新規にアップします。相鉄とJR東日本の相互直通に関して、9日、大臣認定を受けたことで、手続きが前へ進みます。とりあえず西谷-横浜羽沢間2.7kmについての認定ですから、JRとの直通を先行させる形での決着となりました。

http://www.sotetsu-group.co.jp/news_release/archives/PDF/060609_01.pdf
東急との相互直通に関しては、継続して協議中と考えられます。

同時に瀬谷駅の下り待避線設置による構内4線化を行い、横浜海老名間5分程度短縮となる特急運転構想も動き出すこととなります。この結果横浜駅のターミナル集客力を維持し、空洞化を防ぐ狙いがあるものと思われます。この辺も前回記事で触れたとおりの狙いがあると考えられます。とりあえず渋谷行きの電車が自社線を走り出す(東急との直通)前に、特急運転で横浜の地盤沈下を防ごうというわけです。

あと開業時期の問題も重要でして、当面JRとの直通が2015年ですから、保有車両の更新を当面はJR直通可能車(10000形又はその後継?)で進め、予定数がそろったところで東急直通対応の縮小限界、ATOホームドア対応車に切り替えるといった時間差対応が可能となります。“走ルンです”ブラザーズ、東急5000系の色違いで対応となれば、前回記事のSATOさんのご指摘のように、追加費用は許容範囲かもしれません。7000形の6M2T8連への組み直しなど、6000形末期を思わせる変化が見られる状況ですから、これらの置き換えと考えれば、確かに無理のない車両計画になりそうです。

相鉄の本音は、東京都心直通は、とりあえずJRとの直通で達成可能なので、ここで可能な限りの投資リターンを回収し、東急との直通は収支トントンでいこうという意図があると思われます。構想の運転本数の少なさですが、いざとなれば横浜羽沢で5両増結の15連という裏技の可能性は指摘しておきます。東急との直通が始まるまでの短期間限定であれば、増結の5連を別建てで横浜羽沢まで走らせる手が使えます。ついでにグリーン車連結でもすれば、増収効果も高くなりますね。

というわけで、意外にしたたかな相鉄の姿勢ということが言えそうです。大手私鉄中最も小規模なグループに属する同社ですが、規模の点で類似の西の阪神が、例の一件ですっかり評価が地に落ちた一方で、他社との協業で未来を拓こうとする姿勢は見るべきものがあります。結局阪急との経営統合へ進む阪神との対比はこの点でも際立ちますね。

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