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Sunday, October 15, 2017

タダより高いベーシックインカム

希望の党が失速気味です。小池代表の排除発言に世論の反発がある一方、反発する民進党候補者の受け皿として枝野氏による立憲民主党の立ち上げに合流したり無所属で立候補したりという動きが出てきて、それに対する世論の反応はおおむね好意的ということで、野党補票が割れて自公有利の見方がある一方、態度を決めていない無党派層が54%ということで、ますます結果が見通しにくくなりました。

世論の追い風を受けていた希望の党ですが、右派の本音からか踏み絵みたいなことをしたのはわからないところ。自前で候補者を揃えられていなかった希望の党にとって前原氏の提案は渡りに船だった筈。本心は伏せて協力する判断もあったはずですが、そうしなかったのは何故か、正直分かりません。しかしまぁ急ごしらえの新党で若狭氏や細野氏などスタートアップメンバーの実務能力の欠如ぶりを見るにつけ、元々そんな程度の存在だったってことでしょうし、だからこそ逝去後の混乱も含めて選挙向けの乗り物として前原氏にも好都合だったんじゃないでしょうか。前エントリー末尾の希望を捨てないではこの辺を睨んだダブルミーニングではありますが^_^;。

てなわけで、急な選挙で各党急ごしらえの選挙公約を出してきてますが、民主党の09年マニフェストのような練度は望むべくもないですし、特に与党である自民党や公明党が何を打ち出すかと思えば19年の消費税増税分の使途変更で全世代向け社会保障と教育の無償化を打ち出してきました。つまりアジェンダの変更ですが、それなら何故国会を開いてそこで提起しなかったのか?国会論戦で論点を明らかにした上で国民に信を問うとするならば、解散の意義も認められてモリカケ隠しとか敵前逃亡とか言われることはなかったんじゃないでしょうか。

とはいえ所謂三党合意で税収増となる5兆円の使途として4兆円を財政再建に1兆円を社会保障にとした点も、それとは別にアベノミクス第2の矢とやらで財政出動を決めているわけで、このこと自体が財政再建を反故にしているわけですし、もう少し言えば財源の当てもなく法人減税をしているわけです。政府は盛んに「税収は増えている」としていますが、14年の消費税の5%から8%へのアップがあったんですから当然のこと。寧ろ上げ潮路線と称して経済成長で税収増を謳いながら、法人税収は減っています。この辺のゴマカシは言い出すときりがないですが。

それでも希望の党の公約集の発表は、急ごしらえでも有権者の判断材料にはなりますから、それなりに注目する意味はあります。その中でやはりというか、消費税増税凍結を打ち出しています。延期ですからいずれは上げるということですが、その前に消費税制度の矛盾をどうにかすべきです。例えばこれ。

金密輸、狙われる日本 消費増税で「うまみ」  :日本経済新聞
これインボイスを用いない日本の消費税制度の欠陥をあらわにしてます。そもそも金を商品と捉えて消費税をかけてるのは主要国では日本ぐらい。加えてインボイスがなくても消費税を受け取れますから、密輸して日本国内で売れば8%分丸儲けになるわけですね。これこのエントリーで取り上げてますが、欧州の付加価値税では課税事業者を選択しなければ発行できない税額票(インボイス)がなければそもそも取引に応じてもらえないから、この手の不正が防げるわけです。加えて0%を含む複数税率への対応も容易で、金は金融商品として0%扱いすれば、こんなおかしなことは起きないわけです。二重に消費税制度の矛盾が出ているわけで、税率が上がれば矛盾は拡大するわけですから、まずはインボイス導入してから税率の議論が真っ当です。

希望の党が打ち出した政策ではそのほか企業の内部留保課税とタイトルにあるベーシックインカム(BI)があります。内部留保課税については、二重課税の疑いがあり問題ですが、仮に課税すれば配当と役員報酬に配分されるだけで、狙いとされる賃金や設備投資への配分は起こりません。そこを狙うなら法人税増税が効果的です。そんなことすると日本企業の国際競争力ガーという声が聞こえてきそうですが、法人税減税の目的は新興国や中小国で国内の資本蓄積が不十分な国が外国企業を誘致するための政策であって、莫大な累積経常黒字を抱え込む日本ではあまり意味がありません。

加えて海外事業会社の利益配当の国内送金で立地国の税率が日本より低いと連結納税で差額納税を迫られるというのがあり、そのため企業が海外に資金を滞留させることになるというのがありますが、既に麻生政権当時に益金の国内送金分の課税免除が行われております。後は外国企業の日本進出を本当に望むならば、進出外国企業限定の軽減税率を導入すれば良いんで、国内企業向けの法人減税は必要ありません。実際上述の通り法人税収は減っているのが現実であり、これ以上の法人減税は有害無益です。

で、本丸のBIですが、これ実は一部エコノミストの間では以前から出ていた議論で、年金や失業保険や児童手当や生活保護などの社会保障制度を統合して全員に現金給付をすれば、行政コストが最小となるという議論です。1人月5万円年60万円として80兆円弱でっすが、医療分野を除く社会保障給付の合計が大体この水準ということです。

これ税金の負担分は凡そ半分で、残りは年金や雇用保険の保険料や積立金から拠出されているわけで、見方を変えれば年金保険料として納めたはずのお金がBIの給付に回ることで給付が5万円に減額されるって話ですから、加入者の立場からは簡単に賛成できない話です。加えて被用者保険は労使案分で企業負担分もありますから、使途の変更は企業の同意も必要で、ただでさえ医療を含む社会保険料の値上がりで実質増税と言われる中での使途変更で、これほぼ不可能です。

加えて支給対象に国籍条項が入る可能性も指摘できます。現行制度では国籍に関係なく制度に加入すれば支支給を受けられますが、所謂在日を含む外国人を排除するとすれば問題です。差別問題であると同時に現実は既に外国人就労がなければ必要な人が集められない業種も多数存在しますから、GDPを押し下げる要因になります。

似て非なるのが給付付き税額控除でして、日本の税法では所得控除が中心ですが、これを税額控除に振り替えて、納税額が控除額に満たない場合はその差額を現金で給付するという制度です。例えば現状の基礎控除38万円に給与所得控除や個人事業主の青色申告控除で加算される65万円をプラスして103万円となりますが、計算の都合で1000万円として、標準税率プラス社会保険料負担を3割と見込んで年額30万円を申告納税者に対して税額控除するというもの。要件は申告納税だけですから仕組みがシンプルですし、年金などの社会保険制度との調整が要らないので導入しやすいということになります。加えて基礎控除の無い消費税制度との相性も良いということになります。制度の持続可能性の観点から改革不可避ながら利害調整が難しく時間のかかる年金改革を待たずに実施できるという意味でも現実的です。

おまけで年金改革の議論ですが、少子高齢化で年金の給付制限は不可避とされ、支給開始年齢の引き上げが議論されてますが、これ現役世代の制度参加の意欲を失わせます。守るべきは基礎年金部分なのであって、報酬比例年金はおまけと割り切って、支給上限を定めれば、基礎年金部分の給付水準を維持しながら、同時に世代間扶助の仕組みが入ることで現役世代の負担も軽減できますが、何故かこういう議論は出てきません。

年金に関しては旧国鉄債務追加負担問題でも触れましたしみなし積み立て年金についても取り上げました。制度としての持続可能性は十分ににあります。高額年金の受給制限は富裕層には不満もあるかもしれませんが、個人向け確定拠出年金(iDeCo)も制度化されており、これ拠出金は所得控除となる上、運用益非課税プラス年金型の受け取りの場合公的年金と同じ税優遇が受けられますから、そちらへどうぞで問題ないでしょう。

鉄分薄いですが^_^;希望の党の選挙公約を起点にこうした実質的な政策論争が起こるならばそれはそれで悪くはないですが、それを伝えるメディアが理解できていないところがネックです。しょーもねーなー。

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Sunday, February 07, 2016

ダメージ・エコノミクス

日銀のマイナス金利政策ですが、1週間もたずに効果が剥落しました。

マイナス金利、逃げ水の円安効果 決定前逆戻り116円台  :日本経済新聞
問題はそれでも副作用は確実に起きるということです。
マイナス金利、家計に波及 3メガ銀が預金金利下げ  :日本経済新聞
もう無茶苦茶。副作用の強い薬を服用して健康を損なうという最悪の処方ですが、医師なら訴えられますね。

てなわけで、ダメージ・エコノミクス(Damage Economics)略してダメノミクス(DamEnomics)が今回のテーマです。国会論戦でも野党からアベノミクスの失敗を問う声が強いのですが、的外れです。アベノミクスの本質はダメノミクスだから、予想通りの結果というべきなんです。ここまで事態が進んだんですから、確信犯と見るべきです。何故か?その方が危機を煽ってやりたい放題できるからですね。東日本大震災の復興事業がどれだけ食い物にされてきたか。憲法に緊急事態条項を加えようというのも同じ流れです。国の金を好き勝手に差配して結果に責任は持たない。つまるところこういうことです。

そんな中で民間の力で国をねじ伏せたこのニュース。

シャープを鴻海が買収へ 7000億円、機構案上回る  :日本経済新聞
経営不振のシャープを巡る動きですが、経産省が産業革新機構を使った支援策をけって鴻海案に傾いたんですが、元々鴻海は早くからシャープの救済に名乗りを上げていたところへ、技術の海外流出などの難癖をつけて押し留めたのは経産省です。ま、言いがかりも甚だしいのですが、最後は鴻海の資金上積みで決着しました。

ただし水面下ではメガバンクの意向が働いたようで、今回みずほが鴻海案を後押ししたのですが、産業革新機構案で求められていた債権放棄がマイナス金利政策で受け入れられない状況になったというのが本音のようです。政権べったりの現在の日銀ですが、皮肉なことに国策を吹っ飛ばしました^_^;。グッジョブwww。

ま、ここに至るまでのシャープの迷走ぶりはすさまじいものですが、この規模の大企業だと簡単には潰れないのはソニー以来繰り返されていて、資産売却で決算を乗り切れてしまうわけですが、その結果何の会社だか分からなくなってアイデンティティを喪失するのは良くあることです。さて東芝という大物が控えておりますが、こちらはウエスチングハウス社の減損の連結を拒んだまま赤字拡大で7,000億円の損失って、まともに連結したら債務超過が疑われるレベルですが、幻となった革新機構のシャープ救済策では東芝とシャープの家電部門を統合する計画でしたが、弱者連合にしかならない愚策です。

電機業界で自力更生を果たした日立は家電から撤退を決め、パナソニックは救済合併したサンヨーの家電部門と合わせて中国ハイアールへの売却と、国に頼らずに道筋をつけているわけで、それができないシャープは迷走せざるを得なかったわけです。EMS企業の鴻海にとっては、シャープの技術力とブランド力は喉から手が出るほど欲しかったのでしょう。蜜月関係にあったアップルがiPhoneの中国販売の減速もあって先行き不透明な中、いつまでも黒子で居たくないでしょう。むしろ脱アップルを模索していたふしもあります。

PCにしろスマホにしろ、モデルチェンジが頻繁過ぎるというのが悩みで、大規模設備投資で生産ラインを整備しても、すぐに使われなくなるリスクもあります。その間隙をついて中国小米のような新興企業が、その遊休ラインで格安スマホを製造販売して市場を席巻する一幕もありましたが、結局中国市場では中間所得層の台頭でiPhoneが彼らにとってのステータスシンボルになったことがアップルの直近の業績を押し上げていたわけですから、中国の失速はアップルにとっても痛いけれどEMSの鴻海にとっては死活問題でもあります。鴻海にこの辺の読みがあったかどうかはわかりませんが、アップル依存からの脱却は意識していたのではないかと思います。

余談ですが中国の実体経済は李剋強首相自ら認める中国の経済統計の不確かさから、電力消費量や鉄道貨物輸送量で判断とカミングアウトし、「李剋強指数」と言われますが、iPhone販売数量を見る林檎指数も実用的かも(笑)。

企業再生ではJALの再建がうまくいきました。こちらは国が関与したとはいえ、あくまでも破綻処理であり、会社更生法を適用して経営者、株主、従業員、債権者が相応に責任分担して再上場にこぎつけたわけですが、かつてJALは経営危機を繰り返しては国が救済することが繰り返されてきたわけで、その悪循環を断ち切ったんですから、当時の民主党政権の判断は正しかったし、それ以前の自民党政権ではできなかったことです。一方原発事故で迷走した東京電力は破綻処理を避けて未だに迷走が続いています。

ダメな会社を保護して残すと、そこに貴重な資金や人材が滞留しイノベーションを阻害するというのは、資本主義社会の常識なんで、国が音頭取って行う「国家政略特区」で規制緩和だという「第3の矢」だとかでイノベーションが実現するわけじゃありません。シャープや東芝を巡る経産省ひいては政権の対応は明らかに統制色が強く、イノベーションを阻害し成長を妨げることにしかなりません。やはりダメノミクスなんです。

あと地方創生とやらで地方を補助金漬けにしていますが、補助金で地方が活性化されたケースがあるでしょうか。財政破綻して財政再建団体になった夕張市は、リゾート法その他の補助金を使いまくって廃墟を残したことを指摘しておきます。あるいはコンパクトシティを標榜した青森市ご自慢の青森アウガが、結局財政資金で赤字解消とか頭悪いとしか言いようがありません。地方に必要なのは補助金ではなく自力で付加価値を生み出せる産業です。地方へ拠出する補助金は国の財政を圧迫し国債依存を強めます。それは結局国民の貯蓄に支えられているわけですが、貯蓄が収益性のある事業への融資に向かわず国債消化で地方に負の遺産を増やすだけですから、これも成長力を阻害するダメノミクスです。

そして「貯蓄から投資へ」のウソ。国民が銀行に預けたお金は融資によって企業の投資を助け、金利として還元されるわけで、元々貯蓄=投資なんです。何も家計が自らリスクを取って株式投資とかする必要はないんで、やりたい人が自己責任でやるべきことです。それをGPIFその他の公的なお金を株式で運用した上げ底相場でさらに個人にも株を買わせようというのはどういうことなのか。それで相場が上げても、結局余ったお金が株式市場に張り付くだけの話で、企業のM&Aや議決権行使を前提とした株式保有でない限り、株を買う行為は銀行預金と変わりません。ただ元本保証はなく紙くずになるかもしれないけれど配当がついて値上がりもあるかもしれないというリスク資産を保有するということです。株式投資は経済統計上は貯蓄にカウントされるってのは経済学の教科書にも書いてある高校生レベルの知識です。

で、その株価ですが、大型IPOとして注目された郵政3社の上場ですが、無残な状況です。

郵政上場3カ月(上)熱狂去り 見えた弱点 マイナス金利も逆風 :日本経済新聞
成長戦略も曖昧なまま高配当で釣って個人に競って買わせるという悪質な対応が裏目です。今回のマイナス金利も逆風どころか、郵政審が預入限度額を1,000万円から1,300万円に増やしたものの、むしろ利益を圧迫します。もういろんな意味でダメージしかない。しかも問題はそれに留まりません。
郵政上場3カ月(下)「公平な競争」なお遠く  :日本経済新聞
郵政はユニバーサルサービスを盾に税優遇や集配車の駐車禁止特例などで不公平とヤマト運輸が意見広告したものの無視。ユニバーサルサービスの郵便事業と収益事業の宅配便がリソースを共有していることから、競争条件は不公平で、例えば佐川が撤退したアマゾンの宅配業務を郵政が安値受注していたりします。少子化の影響でドライバー不足に悩まされ、ヤマトもドライバー確保の必要から宅急便の値上げやサービスの見直しに踏み込んでいるだけに、無視できません。同様に預入限度額の拡大は特に地方銀行との競合が避けられないところですし、今後融資業務への進出などでただでさえ利ザヤが薄い低金利状況で値を上げるところもあります。このような不公正競争は市場を歪め経済厚生を低下させますからやはりダメノミクスです。

バス事故のエントリーで日本バス協会(NBA)の前身の日乗協と国鉄バスの対立について述べました。国鉄分割民営化で名実ともに地域の民間バス会社になってからJRバスのNBA加盟が実現したように、イコールフッテイングは重要です。加えて郵政の場合は民営化以降現場従業員の非正規化を進めており、正社員主体のヤマトや佐川を圧迫しているんですから、バス事業における中小零細の新規参入組の性質も備えているわけで、二重の意味で不公正な競争環境と言えます。

ドライバー不足から結果的に高齢ドライバーの就業が増えて事故のリスクが増すということも視野に入れる必要がありますが、それ以上に安定運用を旨とする年金積立金を上記のように株式市場へ突っ込むようなことはやめる伊べきです。年金不安から引退できない高齢者を増やして「1億総活躍」とかって、ブラック企業を助けるだけです。ダメノミクス大爆発です(怒)。

本当にイノベーションを目指すなら、自動運転車の活用とかそっちだろと思います。当然それに伴う法整備も課題ですが、特に人口減少で公共交通の維持が難しい地方の究極の交通インフラとして活用を考えるべきでしょう。世界で広がるライドシェアの活用も、ちょっと待てと言いたいところ。Uberに代表されるオンラインサービスが、実際は様々なトラブルを引き起こし、特にアメリカでは雇用問題として議論になっていることを見るべきでしょう。日本の議論は暇な若者の存在を疑いもない前提としているようですが、ライドシェアのドライバーのリアルとして、過疎地ほど高齢ドライバーとなるのが現実です。

なお、自動運転車の普及は公共交通を圧迫するという側面もありますが、スマホで呼び出していつでも使える自動運転車はカーシェアでの普及が見込まれます。つまり高い維持費をかけて自己保有するインセンティブがなくなるので、結果的に自動車生産台数は4割減るという試算もあります。それでもGoogleはじめ資本力に勝るIT企業が本気で開発している現状から、特にアメリカでは自動車メーカーも渋々動き始めています。つまりマイカーが淘汰されて道路の過剰なトラフィックが減るということになりますので、いきなり大都市でもとはならないまでも、公共交通に少なからぬインパクトを与えるでしょう。

東武東上線のTJライナーや京急のモーニング・ウイング号をはじめ、このところ私鉄の有料着席サービスの話題が続きますが、自動運転車が普及して道路がインテリジェンス化されて渋滞も緩和されてという状況になれば、いつまでも混雑のなくならない現在の都市鉄道も少なからず影響を受けるという意味で、少なくとも着席サービスの選択肢は用意しておきたいという風に先回りしているものと見ることができます。自動運転車に関しては日本では自動車メーカーは運転支援に留まり本気度が低いようですが、鉄道事業者は既に意識し始めています。

長くなりましたが、現状のダメ出しは枚挙に暇がないですね。確実に言えるのは、効かない経済対策で日本経済の成長力は圧迫され、体力を失うということになります。その時に目先をごまかす国際紛争が仕掛けられる可能性が高いのは歴史の教訓です。油断大敵です。

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Sunday, January 31, 2016

引く手あ、まった!

いやはや、黒田日銀の暴走ぶりは留まることがありません。というか、異次元緩和以来、はっきりしたことはただ1つ。何でもありの緩和至上主義で、明言されている目標も曖昧化しているということ。物価目標も緩和継続による裏の目標である円安誘導の方便じゃないかと疑っております。国民にとっては盗っ人に財布を握られたようなもの。アベコベ相場に繰り出した日銀の追加策のしょーもなさが今回のテーマです。まずは政策の概要です

日銀がマイナス金利 その仕組みと揺れた判断:日本経済新聞
端的な解説としてはこれがわかりやすいと思います。つまりはマイナス金利といっても、日銀当座預金の法定準備預金額を超える部分に現在0.1%の利息をつけていますが、今回はその部分は現行通りで触らず、今後増える部分については-0.1%、つまり逆に銀行が日銀に金利を支払うというもので、法定準備額はゼロ金利(当座預金だから当然ですが)、それを超える部分についてプラス部分とマイナス部分を設けるというややこしいものですが、多分激変緩和で、今後の推移次第では見直しも含むものと考えられます。一言で言えば奇策中の奇策で、市場にサプライズを与える以外に効果は殆どない上に、従来の異次元緩和政策とは矛盾した部分もあります。

そもそも当座預金に利息が付くのはおかしなことなんですが、これ量的金融緩和をスムーズに遂行するためのもので、米FRBが始めて白川総裁時代の日銀が取り入れたものですが、要は信用力があって担保価値のある国債を銀行が持ちたがるのを買い上げるわけです。国債は流通市場での値動きはあるものの、満期まで保有すれば元本は保証されますが、それを日銀が買い上げれば金利の付かない当座預金との交換ですから、利ザヤ稼ぎの銀行にとっては痛し痒しなわけですから、見返りにごく低い利息をつけて国債を手放しやすくするという意味があります。加えて誘導目標の金利を残す意味もあります。非伝統的と言われる量的金融緩和でも、中央銀行の政策目標はあくまでも金利であるという基本を失わない意味があります。

それが異次元緩和ではベースマネーを増やしてやれば、人々にインフレ期待が生じてデフレマインドを一掃し2%の物価目標を設定するという風に説明されています。マネー供給を増やせばインフレ期待が生じるというのはおかしな議論なんですが、実際は国債を大量に買い上げて国債流通市場を干し上げることで、国債に張り付いている銀行の資金を融資に振り向けさせる狙いで所謂ポートフォリオリバランスと呼ぶものですが、銀行は日銀の国債を高値で売ってその資金で新発国債を購入しますから、いつまで経っても融資が増えないわけです。そもそも低金利だと銀行の利ザヤの元となる長短金利差も縮まってしまいますから、国債市場を干し上げれば銀行が融資を増やすという経路が説明されてますが、実際は企業の資金需要そのものが乏しく、融資は増えません。マイナス金利もこの面では効果は乏しいと見て良いでしょう。

真の狙いは国債金利の圧迫で通貨安狙いというわけですね。新年早々進行した円高の阻止で追加緩和を市場からせがまれていた状況で、何もしないわけにはいかなかったのですが、既に2014年10月の追加緩和で国債買い取り額を50兆円から80兆円に増やしており、国債市場の規模からいえば、あと20兆円増やすのが精一杯ですが、それを使えば以後の政策対応の手段がなくなる最後の手でもあり、それは温存したのが日銀の本音です。追加策の使いどころは来年4月の消費税増税にありというわけですね。故にこれまで否定し続けてきたマイナス金利を突然導入するということで、日銀審議委員の中からも「手詰まりを市場に見透かされる」という理由で反対意見が出たぐらいです。

てなわけで、市場も意図を図りかねて乱高下したわけです。サプライズはあったものの、こうした一過性の効果をどれだけ積み重ねても、動き出したリスクオフの動きは止められません。あと、当面のプラス金利とマイナス金利の併用局面では大きな動きはないでしょうけど、銀行にとっては利ザヤの圧縮が進むわけで、ますます融資を渋るようになります。そればかりか、いずれ預金の利息もゼロからマイナスにということもあり得ます。実際マイナス金利を導入したデンマークやユーロ圏諸国などではそうなっています。国民の対抗策は現金を引き出してタンス預金となると、逆効果になるわけですが、そこまで踏み込むかどうかは現時点では不明です。

というわけで、いよいよ迷走する黒田バズーカですが、出口戦略がますます困難になり、正常化は黒田総裁の任期中には無理な状況です。その間に財政再建も進まず通貨の信任を棄損して、将来世代に大きなツケを回すことになります。すでに日本の経済規模は基軸通貨であるドル建てで2/3に減価しており、2010年に逆転された中国とはすでに倍以上の差をつけられている状況を直視すべきです。その中国は現在資金流出が止まらず、人民元安を阻止しようとしています。通貨安が国益に反するからですね。あえて円安にして通貨の信任を棄損し富を減らす日本のありようは異常です。

閑話休題。金利の英訳はi nterest で、利子、金利のほか、興味、関心の意味もあります。通貨当局の暴走にinterest を失わないことが大事です。「黒田バズーカ」を礼賛するリフレ派の議論はすでに破たんしており、例えば原油安で物価が下がったというのは、リフレ派の議論では特定品目の値下がりは他品目の有効需要を押し上げるから一般物価はむしろ上がるというのがありましたが、見事に外れてます。というか、元々値動きの大きい生鮮品とエネルギーは外すのが常識で、所謂コアコア指数というのですが、米FRBはこれを物価指標としています。日銀の異次元緩和ではなぜか生鮮品のみを除外したコア指数を指標としており、元々ここに誤魔化しがあったのですが、裏の目的である円安が実現すれば物価は上がるわけで、実際食料品などは値上がりしており、日銀もそれを理由に成果を強調しています。全くふざけた話です。「黒田バズーカ」からマイナスされたのは interest ではなく intellect (知性)ではないのか。つまり「黒田バカ」^_^;。

日銀が銀行に融資を促すのは、ある意味当然ですが、少なくとも国内には融資案件が見当たらないのが現実です。2003年のソニーショック以来続く日本の電機メーカーの逆風は終わらず、未だに過剰設備に苦しんでいて、しかも産業革新機構のような官製gファンドに助けられて延命している状況をどう見るのか。中国のバブル崩壊と過剰設備は以前から言われておりましたが、中国当局は元高を維持して過剰設備の解消に踏み込んでいます。今の中国の減速はその結果なわけで、痛みを緩和して問題を先送りして結果的に国力を低下させている日本の方が問題です。今回も中国ショックのような言われ方をしていますが、国内の産業構造転換ができない日本の問題なんです。

で、民間投資が増えないから公共投資を増やして景気浮揚というのですが、これは1930年代のような真正デフレのときならともかく、今の日本ではむしろリターンの少ない非効率な投資が行われて結果的に国全体の生産性を下げています。そんな中でこんな救いのないニュースが。

JR北海道が道内全線区で赤字 14年度、札幌圏も26億円  :日本経済新聞
JR北海道の劣化は止まらないばかりか、当面赤字確定の北海道新幹線まで引き受けなければならないわけですが、道庁をはじめ地元自治体はJR北海道に自助努力を求めるばかりです。投資収益逓減の法則はこうした末端で出現し、ジワジワと拡大していくものです。以前から整備新幹線の問題点を指摘し続けてきましたが、将来性のない中途半端な投資を積み重ねても、むしろメンテナンスで足を引っ張るだけというのが如実に現れてます。

JR北海道に関しては以前からローカル輸送からの撤退を提言しております。元々国鉄分割民営化時に安易な値上げはしないという「公約」があって運賃改定もままならず、特に通学定期券の割引率が私鉄やバスより高率なままとなっている一方、JR北海道のように札幌都市圏以外では事実上通学にしか利用されていないローカル列車の維持は原価割れ輸送そのものです。実際割引率の差でJR高山本線と並行する名鉄各務原線や名松線と並行する近鉄大阪線・山田線では、通学利用がJRに流れている現実があります。いずれも収益性の高いJR東海だから維持できているので、JR北海道では無理です。象徴的なニュースとして石北線上白滝駅の最後の1人の女子高生が卒業と共に駅の廃止が決まり、メディアを賑わせましたが、そこからこの通学定期券のよる実質原価割れ輸送の問題に切り込んだ報道は見られません。ここを何とかしないとJR北海道は救われまあせん。

地域の足を守るというなら、イギリスに倣ってフランチャイズ制を導入する手があります。地元自治体やバス会社が出資した三セクで第二種事業者としてローカル列車を運営するわけですが、参入のハードルを下げるために、資産である車両や乗務員はJR北海道への委託を認め、運行管理やメンテナンスはJR北海道で一元化し、運賃は上限だけ定めて自由化するというような形にすれば、バス事業者にとっては鉄道を軸とした路線再編で需要掘り起こしの余地が出てきます。整備新幹線の並行在来線切り離しが認められるなら、これぐらいは可能なはずです。

加えてJR北海道に残る都市間輸送分野も新幹線頼みができない以上別の方法を考えるべきです。そこにこんなニュースが。

(ビジネスTODAY)ハワイ便、運賃競争再燃 ANA、エアバスA380導入を発表 座席数で日航追う :日本経済新聞
これデルタと争ったスカイマーク争奪戦でANAが繰り出した必殺技だったA380引き受けの結果ですが、ANAは抜け目ないというか、発想が戦略的です。欧米などの長距離路線への投入にはたった3機では遣り繰りができませんから、近場の海外と言えるハワイ線で、しかも需要は旺盛な割にJALの6便に対して4便と劣勢な中で、座席集で優位に立とうという戦略です。加えて言えばビジネスユースの強い欧米路線では大型機で便数を集約すると利便性が低下するということもあります。転んでもタダでは起きないですね。教祖の激しい航空業界らしい話です。

これと比較して整備新幹線問題で右往左往するJR各社の近視眼ぶりが残念です。JR北海道本体のてこ入れは航空業界とのコラボが望ましいいのではないでしょうか。昨今北海道を訪れる外国人が増加しているんですから、対東京の速達性よりも外国人観光客の誘致に力を入れたほうが活性化につながるわけで、道庁もHACに肩入れするぐらいなら、JR北海道に資金提供して航空との連携を深める方向で対応すれ良いと思います。あるいは場合によっては航空会社に経営をゆだねることも選択肢になります。整備新幹線問題はドル箱の国内航空を圧迫するものとして対立意識が強いですが、東京から5時間かかる新幹線に期待して財政支出するよりもずっとましな地域活性化策となります。銀行の融資拡大から大幅に逸脱いたしましたが^_^;、リターンの見込めない投資をするぐらいならば見直し引き返すことも重要です。新幹線は魔法の杖でも打出の小槌でもないのです。

それともう1つ。やはりJR北海道がらみですが。

日高線復旧費、8億円増 JR北試算で38億円に  :日本経済新聞
日高線は高波被害で長期運休中でいまだに復旧のめどが立っておりません。運休が長引けば結局鉄道がなくても何とかなるとなって未来が閉ざされるわけですから、危機的です。そういえばJR東海の名松線末端部こそ復旧が決まりましたが、今年3月26日改正でやっと運転再開です。JR東日本では大船渡線、気仙沼線、のBRT化と山田線(宮古-釜石)の三陸鉄道移管による復旧が決まった一方、只見線(会津川口―只見)は放置されています。ローカル線の存続問題はJR北海道だけの問題ではないのですが、結局利益誘導の果てに強引に建設されたローカル線がJRの経営の足を引っ張る構図です。投資案件の取捨選択がいかに重要かいい加減気づけよ(怒)。

おまけ。記事中の貨物新幹線はできの悪い官僚の思い付きに過ぎません。上下50本の貨物列車の存在が営業最高速度140㎞/h制限の理由ですが、それを解消するために貨物列車を200㎞/hで走らせようというわけですが、新幹線の構造規則上、軸重16t*4軸*16両=総重量1,024tの構造物荷重を想定しており、ギリギリ1,000t列車を置き換えられますが、そのためにコンテナの積み替え行う分のロスは考えていないんですね。E5系量産車10連の空車重量が455tで積車重量500t未満と半分以下ですから、そんな列車を200㎞/hで走らせれば線路のメンテナンスに負荷がかかります。フリーゲージ以上に実現可能性は低いと言わざるを得ません。

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Sunday, November 22, 2015

放置国家の呆の支配

先週はパリの同時多発テロで大変でしたが、たちまち世界は9.11後の雰囲気に。当時イラク戦争に反対したフランスのオランド大統領の前のめりぶり概要です。一方議会野党の保守派と急進左派はそろってシリア空爆に反対しているという日本ではわかりにくい構図ですが、それ以上に気になるこのニュースです。

対米協力一歩前へ 首相「南シナ海に自衛隊検討」  :日本経済新聞
米中のパワーゲームに日本も混ぜろとでも言いたいのか。南シナ海へ進出したいのか?

中国の岩礁埋め立てと軍事基地化は確かに問題ですが、似たようなことはほかの国もやっていて、中国だけを責めるわけにはいかないのですが、埋め立て地を起点とする領海の主張は明らかな国際法違反なので、アメリカはそこを指摘し、実際にイージス艦を派遣し航行させたわけですが、事前に米中首脳会談前日の9/24に軍事対話の実施を調印し、イージス艦派遣に際して中国と協議を行っていますし、フィリピンやベトナムの領海エリアも事前通告の上航行しており、中国名指しにならないよう配慮しています。言ってみれば大国同士のさや当てのようなもので、大国同士のパワーゲームに過ぎないのですが、日本の政治家でそれを指摘したのは与野党含めて野田聖子だけっておい、他の奴らキンタマついとんのかい?

あともし仮に南シナ海への自衛隊派遣が実現すると、尖閣諸島の守りが手薄になるのは言うまでもありません。リソースは有限なので、むしろ中国にとってはおいしいところ。それ以前に日米防衛ガイドラインで米軍のプレゼンスが後退していることはほとんどメディアも報じませんが、中国公船の挑発は、アメリカと事を構えたくない中国が、アメリカが出てこないと見ているからなんですが、逆に軍の艦船を派遣しないのは、アメリカの顔色を窺ってはいるわけで、アメリカでも日米安保による巻き込まれ論が保守派内でも言われております。日本の独り相撲です。

近代戦争は国の工業力を背景とした総力戦という性格があり、ww1やww2が典型的です。その結果敵国の工業力を破壊することが戦略上求められるわけで、ww1でドイツ飛行船によるロンドン空爆から始まり、ww2の広島と長崎への原爆投下も同様です。かくして近代戦争は戦勝国も含めて参加国のダメージが大きすぎるということで、戦後東西冷戦もあって大国同士は直接戦争しないという暗黙の了解が成立します。その代り周辺国の代理戦争は収まらず、兵器性能が向上し殺傷能力を高めているだけに、紛争当事国の疲弊は尋常ではない状況になります。

という国際社会のコンテクストを踏まえれば、ロシアがウクライナイに干渉しクリミアを併合したのも、そうした軍事大国同士のある種の相場観から導き出されたもの言えます。そしてロシアのシリア空爆は二正面作戦に割けるリソースを持たないロシアのウクライナへの干渉は低下するし、またダーイシュ(イスラム国)という共通の敵を設定することで、ロシアと西側種国の対立も軟化するという連鎖になります。ロシア機撃墜とパリ同時多発テロで関係はさらに補強されます。おそらくクリミア問題は沙汰止みになるでしょう。そんなロシアに「北方領土返せ」と言って取り合ってもらえないのも無理もないところ。善悪を超越した外交の機微に疎い日本の出番はここにもありません。

で、シリア空爆ですが、ダーイシュ支配地域の石油精製施設への攻撃は、敵の工業力の破壊という戦略になりますが、ダーイシュは石油だけではなく、営利誘拐その他の資金源もあり、また「ユーフラテスの三日月」と言われる穀倉地帯を抑えていて、広大な農地への空爆はほとんど意味がありませんし、地上戦で奪回するにしても、戦線が間延びして対応が難しいということもあります。加えて古代イスラム帝国で異教徒に課した人頭税を徴収していると伝えられています。おそらくこの部分はイラクのバース党残党が担っているのでしょうけど、問題は異教徒の範囲でして、イスラム教シーア派や、スンニ派でもイスラム帝国再興という自分たちの大義に協力しない「堕落した」者たちも含まれてるかもしれません。人頭税を払わなければ容赦なく粛清されるという形で、恐怖の統治が行われているとすれば、難を逃れるシリア難民が大量に出ても不思議ではありません。加えて空爆もありますし。

そのシリア難民をドイツを中心にEUが積極的に植え入れる姿勢を見せていることは、人頭税の減少につながりますからダーイシュにとって面白くないわけで、また空爆への報復の意味も含めて、ロシア民間機やパリの劇場など、攻めやすいところを攻めているという意味で、ダーイシュのテロは戦略的です。殺害された実行犯の1人にシリアの偽造パスポートを持たせたのも、欧州の難民排斥の世論の刺激を狙ったものでしょう。

元々主権国家ならざるダーイシュとの闘いは非対称戦なわけで、ダーイシュは堕落したエジプトの官吏を篭絡したり、若年失業率が高止まりしている欧州で不満を抱く若者をリクルートするなど、ダーイシュ側のリソースをあまり消費せずに犯行に至ったわけです。それを支えるのがSNSなどのネットインフラですが、PS4やⅩboxなどのゲーム機のオンラインゲームのチャット機能を使った情報交換が行われていたという報道もあります。仮に通信を傍受してもネットゲームを楽しんでいるようにしか見えないわけで、犯行を事前に察知することは困難です。

というわけで、パリのテロは背景に先進国の所得格差の拡大があるわけで、結局ここを何とかしないとテロリストに付け込まれるわけです。空爆で解決できる可能性は皆無です。それでもロシアを含む大国同士で共通の敵を作ることで、格差問題のような厄介な国内問題を逸らすことはできるわけで、リベラルなはずのオランド大統領の過剰反応を見ると、暗澹たる気分になります。資本主義社会では所得格差の拡大は不可避で、対策の必要性を指摘したピケティの母国でもあるんですが。国内の格差問題という意味では、日本にとっても対岸の火事とは言えません。

その後の報道で実行犯の若者の実態も明らかになっておりますが、移民でフランス語が不自由でファストフード店ぐらいしか勤務先がなく職業的スキルを身につけるチャンスすらないといった中で、簡単にリクルートされているわけです。元々敬虔なムスリムでも何でもない若者が、イスラムの大義を教条的に吹き込まれればどうなるかということですね。このことの深刻さは、日本で言えば根拠不明の「日本の伝統」にコロッと騙され不満のはけ口を在日韓国人などへのヘイトスピーチで紛らすネトウヨやウソ八百の大阪都構想再びとやりたい放題の橋下シンパみたいなものとでもいえば腑に落ちるところでしょうか。99%役に立たなくても一般教養が重要なのは、簡単に騙されないことと言えます。大阪の人、民度が問われますぞ。

フランスと言えばこんなニュースも。

フランス北東部の高速列車脱線、10人死亡  :日本経済新聞
テロの翌日ということで、テロも疑われたようですが、単なるオーバースピードということでした。不可解なのは高速新線と在来線の連絡船部分で元々速度制限されていたはずですし、保安装置は働かなかったのかなどの疑問はありますが、続報がないので判断がつきません.。報道の通りならかなりお粗末ですが。

ただ日本でも気になるニュースがありました。

「自家用車タクシー」特区で解禁 交通網弱い地域中心、高齢者・訪日客の足に :日本経済新聞
所謂白タク解禁ですが、過疎地の交通に利用って、そもそも過疎地ではマイカーのトラフィック自体が少ないわけですから、ライドシェアが解決策になるわけがありません。むしろ現行の道路運送法78条、79条で自家用自動車の有償運送が定義されており、実際過疎地の乗合バス廃止代替などで活用されています。日本でライドシェアが解禁されていないのは、鉄道やバスなどの公共交通の役割が大きいことと、とマイカーのトラフィックが輻輳する都市部ではタクシーとの利害調整が必要なことに加え、安全輸送が担保できないとか白タクその他の雲助行為の懸念があることなどなどの理由が大きいでしょう。また多くの都市圏でタクシーの台数制限撤廃で過当競争となり安全輸送が脅かされる事態となって、逆に台数制限が課されているのが現状です。おそらくuberを意識した特区構想でしょうけど、現行法がどういう状況なのかを無視して何でもかんでも特区で規制緩和とは法治国家があきれます。

法の支配を価値観として中国に対抗心を燃やす安倍首相ですが、放置国家の呆の支配が実態です。

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Sunday, June 07, 2015

あーせい、こーせい、そーせい

てなわけで、前エントリーのジングウ・ファミリアが迷走してます。結局デザインコンペで選ばれたザハ・ハディドとの契約を解除して、どうやら屋根なしスタジアムに仮設スタンドで当座をしのぐようです。問題の根源にあるザハデザインから離れたのは半歩前進ですが、そもそもデザインコンペ当時から指摘されていた問題に目をつぶったまま突っ走った文科省や体協の責任は重大です。

ザハデザインの実現可能性の低さは、あの屋根が径間500mの橋と考えればわかりやすいのですが、川や海なら別の場所で組み立てた橋桁を船で運んでクレーン船で設置という方法が使えますが、神宮の森では使えない手法ですから、現地に巨大鉄工所を期間限定で設置するしかないですし、大量に鋼材などを搬入するためには、広範な周辺道路の整備も必要です。そのために費やされる費用は3,000億円から1,600億円に減額見直しされた本体建設費を上回るものになる上、神宮の森の保全にも悪影響確実というわけで、実際に着手するまで気付かなかった無能ぶりにうんざりします。負担を断った東京都の対応は正しいと言えます。

てなニュースの一方、今週も起きた重大インシデント。

京浜東北線電車が線路内の看板に衝突、けが人なし 点検作業員、誤って置く? - 産経ニュース
空自ヘリ・ANA機・JTA機、あわやのトラブル 那覇空港 | 沖縄タイムス+プラス
名鉄運行続行に疑問 中部運輸局、停電「本来は故障扱い」:社会:中日新聞
京浜東北線で保線作業員の勘違いで並行する東海道線に設置する筈の作業看板を京浜東北線に置いて電車がと今田もの。2つ目は全国版のニュースで大々的に取り上げられましたが、管制官の離陸指示を自機に対してと勘違いした自衛隊ヘリの過失ですが、異常事態を咄嗟の判断で回避したANAとJTAのパイロットはお見事です。3つ目は電気連結器カバーが外れて雨水侵入によるショートが原因んで電源ダウンした列車がブレーキが作動せずオーバーランしたものですが、名鉄の対応にいろいろ問題が指摘できますが、詳述は避けます。

こういうニュースに接して思うのは、日本の人口減少ン0インパクトが、マンパワー不足による労働力の劣化につながっているのではないかという危惧です。人口減少といっても、生産年齢人口の減少ですから、少子化対策は解決策になりません。むしろ高齢者の増加と共に扶養人口の増加をもたらし、少数の現役世代への負担を加重させる悪手です。以前から指摘していますが、労働力の減少は資本装備の増強である程度カバーできるんですから、その方向で対策を打つ必要があります。新国立競技場のようなリソースの浪費は許されないという自覚が必要です。

同様のリソースの浪費は昨今の地方創生ブームにも感じます。そんな中でこんなニュースを取り上げます。

45年ぶりにSL疾走、ファンら見守る 鳥取の若桜鉄道:朝日新聞デジタル
鳥取県の三セク若狭鉄道の活性化策として、JR西日本から無償譲渡されたC12型SLを活用した沿線活性化策の社会実験ですが、車席がなく従来若狭駅構内の体験運転などに試用されていたものを、本線運転しようというわけで、車籍のないC12を走らせるために本線を線路閉鎖して走らせるという手続き上はトリッキーなやり方です。車籍を取得するには保守検査体制を整えて鉄道事業運転規則に合致した体制を組む必要がありますが、自治体主導の三セク鉄道には高いハードルです。

面白いのは撮影地の所謂お立ち台を有料化したことで、単発のイベント運行ではありますが、定期運行を睨んでキャッシュフローを生み出す努力は評価できます。ただしSL運行自体は大井川鐡道のほかJR山口線、真岡鉄道。秩父鉄道などで定期運行され、それほど新鮮味があるわけではありません。競合がある中で、若桜へ足を運んでもらえるにはどうするか、そこまで考えなければうまくいかないわけで、今回の社会実験が一過性のイベントで終わるか、指定日だけでも定期運行にこぎつけられるかは予断を許しません。そしてSL運行の老舗の大井川鐡道にも容赦のない現実が降りかかります。

大井川鉄道、再生支援申請へ 沿線の地域づくりに影響  :日本経済新聞
70年代に名鉄が資本参加し、SL運行で観光鉄道として集客力を発揮し、ローカル私鉄の勝ち組とも目されていましたが、沿線人口の減少には抗えず、また関越道事故を契機とするツアーバス規制強化で、新金谷から大井川鐡道へ乗り継ぐツアーバスが激減し、経営の屋台骨が揺らぎ、利用の少ない一般列車の減便に至ったのですが、島田市をはじめとする地元自治体への支援要請も不発で、政府系ファンドへの支援要請となりました。スポンサーとして北海道のホテル事業者のエクリプス日高が出資する一方、名鉄は撤退します。

地元自治体との関係でいえば、観光鉄道としての成功体験故に自治体が動かなかった可能性があります。つくづく交通政策基本法の元となった交通基本法の民主党案にあった移動権が盛り込まれなかったことが残念です。観光鉄道としての成功は決して鉄道の未来を保障するわけではなく、地域との関係を定義できなければ、生きた鉄道としての命運は開けないということですね。移動権に関しては憲法に定める基本的人権の拡張概念として定義することで、憲法に紐付されれば、憲法そのものの改正をよりやりにくくする意味もあり、現在安保法制絡みで国会が迷走してますが、所謂護憲派も「憲法を守れ」だけではなく、憲法を生かした立法を心掛けてこなかった結果が今の混迷ということですね。ちなみに安保法制に関しては、9条だけが問題ではなく、内閣の権能を定義した73条に軍事に対する指揮権が明記されていないことも問題になります。

ま、こんな状況ですから、某大都市の名物市長ご執心の都市鉄道三セクでのSL列車運行の協力要請を大井川鉄道が断ったのは当然ですね。それどころじゃないわけですから。

というわけで、大都市と地方との関係でいえば無視できないニュースがあります。

25年の東京圏、介護施設13万人分不足 創成会議、41地域へ移住提言 政府、交付金で後押し :日本経済新聞
首都圏の高齢者集中で施設が不足するから、施設に余裕のある地方へ高齢者の移住を促すというのですが、高齢者ほど住み慣れた地域を離れたくないものですし、ましてインフラが整備された大都市部ほど生活しやすいということもあります。むしろ問題は地価が高いがゆえに施設の整備が思い通りに進まないし、介護職の賃金が低すぎて、地価が高い東京では生活できないなどといったことが問題なんで、これは例えば今後建設されるマンションを高齢者対応の医療や介護施設のテナント誘致を義務付けるとか、介護保険からの介護報酬以外に、都などが上乗せするとかやりようがあります。要は実際のニーズに合った社会保障サービスを実現させることであって、数合わせの移住計画などうまく行くわけないです。ま、こんなところに地方創生を打ち出す現政権の統制的な性格がにじみ出ています。あーせい、こーせい、そーせいじゃうまく行かんわ。


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Sunday, April 19, 2015

インシデント週間

山手線で重大インシデントがありました。12日に神田駅近くの山手線と京浜東北線の併走区間で更新により撤去予定の架線柱が倒れ、線路を死傷したものでs、数分前に営業列車が通過していたことから、重大事故につながりかねないインシデントとなりました。朝6時に発生し休日で工事スタッフが集まらないこともあり、復旧は15時と9時間に及ぶ運休となりました。

とはいえ休日だったから混乱はそこそこで済んだ面もあります。山手線は田町―田端―池袋間で運休。京浜東北線は蒲田―東十条間で運休とし、後に蒲田―品川間で運転再開するも、折り返し設備の制約もあり、運転間隔は開きました。それでも並行する中央線と東海道線、上野東京ラインは生きており、地下鉄への振替輸送も行われました。平日だったらもっと混乱したかもしれません。

その後の報道でJR東日本は10日時点でポールの傾きを認識していて13日終電後に撤去工事を予定していたのですが、週末を挟んだから対応が遅れた面もあるわけですが、同時に異常を発見しても直ぐに工事に取り掛かれない現実もあり、この辺の時系列の微妙さは頭に入れておく必要があります。

そもそもは2本のポールに横梁(ビーム)を渡した状態で、架線にも張力が掛かっているわけですから、微妙な構造計算が必要なのではと思っていたら、案の定同様の工事では構造計算して上司の承認を得ることがマニュアルに定められていたということで、何故マニュアル違反が生じたかが根本の問題です。加えて異常を認識し工事を手配するバックアップがどこまで可能なのか、特に昨今保守部門は外注化されていて、指示命令系統に齟齬が生じやすい背景はあったわけです。リカバリーにも課題があるわけです。マニュアル違反という意味ではJR北海道の青函トンネル列車発煙事故と共通ですが、こちらは正社員で運転保安要員である車掌の判断の問題があり、しかも記者会見で社長がそれを適切とするなど、事後の対応にも疑問があり、より深刻です。

14日には今度は広島空港でアシアナ航空機の着陸失敗という事故が起こりました。広島空港は天候の急変で霧による視界不良があるということで、カテゴリー3の無線誘導装置(ILS)が設置されていたものの、西側だけで、当日は風向きの都合でで管制官に東側からの着陸となり、着陸に失敗したものですが、パイロットのミスとする見方と悪天候によるダウンバーストの影響とする見方があります。

事故機はエンジンを接地してバウンドして滑走路を外れており、まかり間違えば火災による爆発炎上の可能性もあったほか、フェンスの外は崖になっていて、運が悪ければ機体ごと滑落もあり得たなど、大惨事の可能性がありました。また照明が落ちて搭乗客の避難が混乱したり、客室乗務員がパニックになってシューターによる搭乗客の避難を補助しなかったとか、いろいろ問題点も出てきております。パイロットのミス、管制官の判断の正否、数十億円と言われるILSの完全設置、客室乗務員の対応など論点はいろいろあり、経営の苦しい地方空港故に、ILS設置も簡単ではないですし、そもそも世界規模のパイロット不足に加えて客室乗務員の適正な訓練など、航空業界が抱える様々な問題が横たわります。頼みの西側ILSも損傷しており、17日に仮復旧したものの、悪天候時には欠航となる暫定運用で混乱は続きます。

というような一連を見ていると、人材の枯渇、労働力の劣化が通底する問題として浮上します。人口減少が続く日本ですが、韓国を始めアジア諸国も同様の傾向が見られます。このことに意味するところは、人口減少による労働力不足を移民で補充することの困難を示します。政府が進める介護労働を外国人実習生で補充というのもまず無理といえます。そもそもトラブルの多い日本の実習生制度は低賃金や長時間労働などで国際機関からも改善勧告されていますし、正規雇用であっても円安で日本への出稼ぎに妙味がなくなっていることを自覚すべきでしょう。政府のやっていることは何の解決にもならないわけです。

ただ気になるのは、人口減少による労働力の希少化が、素直に賃金の上昇につながるのかに疑問があります。というのは、潜在成長率0.6%と先進国中最低の日本ですが、生産年齢人口1人当たりで見ると1.6%程度の成長率になるわけで、実は欧米を凌駕する水準にあります。それだけ労働生産性が高いのかといえば、時間当たりの労働生産性は欧米に大きく後れを取っており、実態は長時間労働の深刻さを伺わせます。実は日本人雇用者も実態は外国人実習生に引けを取らない劣悪な状況に置かれているわけです。実は日本の労働市場は新興国並みというお寒い状況です。

生産年齢人口が減少するんですから、本来は労働生産性を高めなければならないわけです。労働生産性は単位時間当たりの付加価値創出力で測られますから、高付加価値労働へのシフトが重要なのに、現実的には逆の現象が起きているわけです。付加価値が低いから長時間労働で埋め合わせなければ国際競争に勝てないという悲しい現実です。

高付加価値というと必要性の薄い高機能多機能を詰め込んだ結果、世界から忘れられたガラパゴス携帯が典型的ですが、必要性を超えた高性能高機能高品質を付加価値と勘違いしているのが日本のリーダーたちです。付加価値というのはユーザー目線での評価の総体ですから、ユーザーである消費者の購買力に依存し、その消費者の大多数は労働者であるという当たり前の現実が見えていないのでしょう。無駄な高性能高品質よりも、ブランドやサービスで差別化することこそ重要です。言い換えればサービスの高価格化ということです。

新興国の工業化の進捗で供給過剰な工業製品で勝負すれば低価格に泣くわけで、そこを認識できない日本の無能なリーダーたちは、値下げしないと物が売れないと「デフレだ、日銀何とかしろ!」てなことで、責任転嫁するわけですが、それで問題が解決するわけがありません。必要なのは産業構造の転換を伴う本来の構造改革ですが、既得権層の反対で進まないばかりか、政府が既得権層におもねっているのですから、日本経済は沈みっぱなしにならざるを得ないわけですね。これ以上続けると落ち込みますからこの辺にしときます。

てな中で、交通分野でも人手不足は確実に事業環境を侵食するわけですが、ちょっと面白い傾向が先日開業した北陸新幹線で見られます。

乗客2.7倍、乗車率は50%割る 北陸新幹線1カ月  :日本経済新聞
これぶっちゃけ航空の便数維持の結果、平日のビジネス客の移転が進まず、北陸新幹線の乗車率を低めているわけです。つまり観光がメインの新幹線ということで、航空は機材の小型化もあって搭乗率100%近い、つまり相当数の利用を断っている状況ですが、運賃を安く設定しても燃費の良い小型機材で席を埋めている状況は採算性も高いと言えます。逆に言えば東京対北陸のビジネス利用は航空でカバーできるオーダーしかないというわけです。北陸新幹線は料金を高めに設定してますし、グランクラスを設定し3等級制として客単価を上げてますから、乗車率の低さはカバーできるでしょう。逆に需要の季節波動の多きい観光輸送では乗車率の低さは機会損失の低減につながるわけですから、おそらくこのまま役割分担が定着すると考えられます。

これは従来新幹線の開業が航空の撤退につながる傾向とは異なり、結果的にJRも航空も付加価値を高めたわけです。もちろん新幹線に関しては引き換えに並行在来線切り離しで三セクに負担をかけていることには注意が必要ですが。新在通算で付加価値が高まるかどうかは現時点では何とも言えません。

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Sunday, April 05, 2015

日本劣等強権化計画

古賀古館バトルの後日譚がまたアレなんですが、古賀氏のカミングアウトで報道ライブ番組にもシナリオがあることがバラされてしまいました。言うこと決まってんなら収録でやれば編集が利くわけで、最新ニュースを反映させる意味があるならコメンテーターなんか置かずにひたすらにユース原稿読んでれば良いです。合いの手が欲しいなら音声再生ボタンで自動化すりゃあいい。その方が出演料省けてコストダウンになるし。

そもそもこの手のハプニングは報道番組には付き物。ゲストで呼ばれてうっかり口滑らせたり横柄な態度を見せたりして政治生命を縮めた政治家も数知れずです。その緊張感があるからテレビ報道のライブ番組には意味がある。そういやTBSの選挙特番でイヤホン外した安倍首相の映像も流れました。これらが国民にとっては貴重な政治家の本音を探る材料になるんですね。

で今回名指しされた菅官房長官が記者会見で圧力を事実無根としながら、同じ席で放送法に言及しテレビ局の対応を見守りたいと発言しましたが、典型的なポジショントークですね。ポジショントークというのは、地位や立場を利用したパワートーク、圧力発言の類いで、会社の会議でお偉いさんの一言で議論が低調になるなんざ勤め人なら何度も見ている風景です。こういうとき会議を進行するファシリテーターはそのお偉いさんの発言を止めなきゃいけないわけで、プロセスはともかく発言自粛や退席を促すもんです。この辺例えば日産自動車など一部の民間企業では決定権者の会議中座ルールとして取り決められていたりします。そうして会議メンバーに発言を促すわけです。菅氏の対応は見事その逆というわけで、自ら圧力の存在を証明してしまったわけです。

まぁこんな風だからイランの核放棄という歴史的合意には経済制裁中のロシアを含む国連安保理常任理事国プラスドイツの6か国が参集した一方、日本には声すらかからないわけです。これで常任理事国入りを目指すって、寝言は夜だけにしろ。逆にドイツはウクライナ問題でもメルケル首相の獅子奮迅の努力が高く評価されてます。外交力というのはどうやらあるらしい。

アジアインフラ投資銀行(AIIB)を巡る混乱も日本の立ち位置の微妙さを示します。既に日米主導のアジア開発銀行((ADB)が融資実績を重ねていて、歴代総裁を日本から排出している状況ですから、AIIBに関しては慌てる必要はないものの、留意点はあります。ADBは審査が厳しいこともあり、投資家から低利の資金を集められる状況で、またそれ故にADB融資は優良プロジェクトの証として評価されるわけですが、融資を受ける側にとっては審査が厳しすぎる不満もあり、人事を日本に握られていることの不満もあります。それ故にADBの審査に漏れた案件をAIIBが拾う形で棲み分ける可能性はありますが、それはとりもなおさず金利にプレミアムが付くことを意味します。これが逆に利回りを求める投資家に評価される可能性もあり、ADBとは競合関係になるわけです。それでも両者の競争でアジアのインフラ投資が活性化されるなら基本ウェルカムではあります。

別の観点から見れば、AIIBを明代の鄭和の朝貢外交の現代版とする見方があります。明の永楽帝の時代の武人で宦官出身の変わり種ですが、永楽帝の命によりアジアからインド、中東、アフリカ東岸に至る各国に大船団を従えて6度にわたる航海で朝貢を要請した人物です。ただし朝貢した相手には所謂数倍のお返しがjあるわけで、統治者が儒教的な徳を見せるためのものと言われます。つまり華夷ヒエラルキーの中華思想の具現化でもあるわけで、このような動きは中国の歴史上は安定期に向かう時期の特徴です。南シナ海など周辺国との摩擦も見られますが、基本的に今の中国に軍事的野心はないと見て良いでしょう。歴代王朝で軍事的膨張が見られるのは元や清など異民族の征服王朝時代の特徴でもあり、この時代はむしろ中華思想は否定されます。

というわけで、中華思想そのものは国際法の基本となっている西欧主権国家による相互主義と普遍主義とは相容れず、AIIBが中国主導で動き始めれば、それに伴うトラブルも見込まれ、国際社会との調整コストはそれなりに覚悟が要りますが、逆に言えば、それを引き受けさえすれば、中国が軍事的に膨張する懸念は後退するわけです。G7メンバーでいの一番に参加表明したイギリスの目敏さは健在です。「尖閣ガー、ホルムズ海峡ガー」と騒ぐどっかの国とは大違い、相手の軍事的膨張の妄想に囚われていては本質を見失います。ま、イギリスを含む欧州勢はIMF改革に後ろ向きなアメリカに不満があるという側面もありますが。

しかし一方で気候変動問題では米中両国に歩み寄りが見られます。思えば2009年のCOP15コペンハーゲン会議で1990年比マイナス25%という意欲的な目標を掲げた日本ですが、同会議では中国の強硬姿勢でぶちこわされたものの、その後中国自身の姿勢に変化が見られます。これはEUが東欧圏の旧式石炭火力を高効率ガス火力などにリプレースすることで削減量を稼いだことを中国で再現できるという意味で日本にとってもチャンスなんですが、原発事故で目標を取り下げ、さらに京都議定書の延長の際に離脱してしまいました。結果京都メカニズムと呼ばれるクリーン開発メカニズム(CDM)の利用が難しくなってしまいました。排出権クレジットの取得はコストがかかりますが、中国から見れば排出削減プラントの値引きと同じですから、日本企業にとってはおいしい話のはずが、原発再稼働を優先する愚かな選択です。

別に原発再稼働そのものには反対しませんが、前エントリーで指摘したように、福島、新潟と首都圏、福井と近畿圏を結ぶ送電線を連系線に転用することで再生エネ活用が可能で原発再稼働とトレードオフ関係にあることを指摘したように、原発再稼働ありきでは道を誤る可能性があります。現状では再稼働は10基前後がせいぜいでしょうけど、これが決まらないから温暖化ガス削減目標が決まらない体たらくです。年末のパリ会議の前に、6月のG7ベルリンサミットの主要議題になると見られ、それまでに腹を決めなければなりません。

しかし今のところ決まっているのが川内原発3,4号機の2基だけです。地元が再稼働に積極的な姿勢ではありますが、九電関係者は新幹線で鹿児島から通勤とかで、地元にお金が落ちずシャッター通りになっています。逆に言えば万が一の事故や災害の時に、住民避難に新幹線が使えるということでもあり、この点はアドバンスと考えて良いでしょう。逆に同じ炉型でも玄海原発は人口密集地の福岡に被害をもたらす可能性があり、再稼働は簡単ではなさそうです。

逆にこういった諸条件を加味して10基程度の原発を再稼働指名して技術者を結集させるとかしないと、マンパワーも含めて再稼働そのものが進まない可能性もあります。よほどリーダーの肝が据わってないと難しいですが、安全審査を規制委に丸投げしている現状では望むべくもありません。

あと沖縄の民意を踏みにじる辺野古問題ですが、反対派を暴力的に排除する姿勢は成田闘争の再現を思い出させます。下総御料牧場と小岩井農場を中心に用地買収が軽微で済むことと、隣接地が開拓農家で土地への執着が弱いという見立てで強引に事業化された結果、激しい抵抗にあいました。そもそも開拓農家の営農思考が弱いという見立てが現実に合わないもので、作物が良く育つ地力の強い土地に農民の愛着は強く、暴力的な対応でボタンの掛け違いを繰り返し、不信感を拡大させた教訓を忘れたのでしょうか。しかも犠牲を払って完成した空港は予定より小規模で内陸で時間制限もあり、何より都心から遠い不便さもあって中途半端なものになりました。羽田の国際化で空洞化しないように深夜早朝枠を除く羽田の国際線を運航するエアラインに成田縛りの規制を課し、羽田進出を狙っていた英ヴァージンが両空港への就航は無理として撤退してしまいました。農民の土地を取り上げてこんな中途半端な空港しか作れない愚策です。

政府は基地がなくなれば沖縄経済は保たないと高をくくっているようですが、以前にも取り上げた通り、47都道府県で出生率ダントツ首位で東京など移転による人口増を除けば唯一人口が自然増過程にある沖縄は、少子化にあえぐ本土より成長力があって、むしろ基地の存在が成長を抑えているという認識が県民に広がっていることを見ていません。政府の目論見が間違っているという点で成田闘争とよく似ています。

ってなわけで、鉄道ネタに戻しますが、JR北海道がまたしてもトラブルです。

青函トンネルで特急発煙 乗客120人歩いて避難、2人搬送  :日本経済新聞
最新の789系で、しかもモーター配線という主回路のトラブルです。設計上の瑕疵かメンテナンスの問題かはわかりませんが、それ以上に絶望的なのは、トラブルを発見した車掌の対応です。床下からの発煙を確認した車掌が、非常ブレーキを引いて停止させたのですが、北陸トンネル列車火災以来、車両火災時のトンネル内での停止は運転規則で禁止され、トンネル出口まで走り抜けることになっています。つまり車掌は規則違反してしまったわけです。

そのために乗客を線路伝いに避難誘導させる結果となり、時間もかかるし体調不良を訴える人も出てきます。それより怖いのが石勝線事故のときのように爆発的に延焼した場合です。石勝線でも列車を止めてしまったんですが、煙の中で避難は困難を極めました。トンネル出口に近かったので、犠牲者は出ませんでしたが、今回の事故で同様の延焼があればガス中毒を免れず大惨事になっていたはずです。

しかもトンネル内の線路を当該列車が塞いでいて、救護用のディーゼル機関車(DE10)で救援するまで運転再開できず影響を拡大したわけです。本来運転士と指令に通報し、救護手配の上津軽今別駅まで運転継続し、該当号車の乗客を他号車へ誘導しなければならなかったはずです。運転保安要員としての車掌業務がちゃんとできないというのは、石勝線の前科もあり、会社に問題アリと評価せざるを得ません。これでは来年開業の北海道新幹線が心配です。結局政権肝いりでトップ交代したものの、改善が見られないわけです。

で、結論、バカ安倍早く辞めろ[怒]。

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Sunday, March 29, 2015

かがやきの電源

基本テレビ見ないんで、法ステの古賀古館バトル見てないんですが、番組降板のタイミングでの古賀氏の生放送での官邸圧力暴露は、政権のメディアコントロールの酷さを晒しました。これまでも政権によるメディアコントロールはありましたが、テレ朝への免許剥奪まで踏み込んだ圧力は、もはや民主国家のそれではありません。安倍マンセー\^o^/。

JR福知山線尼崎事故で二審でも山崎前社長への無罪判決が出ました。速度走査機能を持つ新型ATS(ATS-P)を設置しなかったことに絞って業務上過失致死での立件を目指したのですが、以前にも取り上げた通り、元々無理筋です。結局事故の予見可能性という問題に矮小化され、事故をもたらしたJR西日本の企業体質には切り込めなかったわけです。日本の刑事司法制度では個人しか訴追できず、英国の法人故殺罪のような組織罰が規定されていないことが問題なんで、敢えてそこを争点とする訴訟で立法府へのけん制とする訴訟もあり得たんですが、日本の刑事司法はそこまで踏み込みません。あるいは民事で被告が企業の場合負担力に応じて高額賠償が判例として確立しているアメリカの例もあり、日本企業は結構カモられてます(小声)。だから福島第一原発事故でも誰も訴追されないみたいなことになるんですが。

事故といえば独ルフトハンザ系列のLCCジャーマンウイングス機の墜落事故がありました。こちらは若い副操縦士が故意に墜落させたことがほぼ明らかになっております。副操縦士は精神疾患で精神科の診断書を取得しながら破棄して会社に報告しなかったということですが、会社に報告しにくいことだけに、本人と雇用主の会社との関係は問われるところです。それ以上に安全に定評のあったルフトハンザ系列のエアラインでこれですから、難しい問題があります。機材のダウンサイジングとLCCの台頭で世界規模でパイロット不足が深刻化している状況で、若手パイロットの育成を急ぎ過ぎていないかという点は注意が必要です。加えて鉄道と航空の棲み分けにも影響するかもしれません。

という中で、日本でも北陸新幹線が開業し、迎え撃つ航空側は新幹線の普通車指定席を下回る格安チケットで対抗し、小松も富山も機材の小型化で便数は維持という姿勢です。輸送量では鉄道に分がありますが、逆に需要が喚起されれば共存は可能と見ているわけですね。これは多分北陸新幹線の特急料金設定が予想以上に高いことが影響していると思いますが、根本受益を期待できないJR西日本区間の特急料金が高く設定されていることによるわけで、来年の北海道新幹線でも同様ではないかと思います。この辺は九州新幹線でも博多で打ち切りの料金体系になっていたりして、今後の整備新幹線は採算面で料金が高めになるとすれば、新幹線の開業が即航空の撤退につながらない可能性を示唆します。日本のパイロット不足も続くということですね。

で、本題の電源問題なんですが、北陸新幹線の特徴として、50hzと60hzの周波数の異なるエリアにまたがっている点があります。東海道新幹線では東電エリアで50hzを60hzに変換する周波数変換所を設置して全線60hzの電力供給としているのに対し、北陸新幹線では分岐する上越新幹線が50hzである一方、基本計画上大阪までの路線ということもあり、また技術革新で車両側を2電源対応とすることが可能になったこともあり、周波数切替セクションという前代未聞の設備が登場します。しかも複数。わかりやすく以下に列記します。

高崎―軽井沢    東京電力 50hz
軽井沢―上越妙高 中部電力 60hz
上越妙高―糸魚川 東北電力 50hz
糸魚川―金沢    北陸電力 60hz
それぞれ駅西方にセクションがあり見事なつぎはぎですが、ルートの関係で4電力会社にまたがりますからこうなるわけです。車両側が2電源に対応してますから、とりあえずは問題はないんですが。でも4電力から受電というのは、新幹線としては異例の多さです。電力の地域独占体制は強固です。

余談ですが、福島第一第二と柏崎刈羽が立地するのは東北電力エリアで首都圏への大容量送電線が遊休化しています。東北や新潟で再生可能エネルギー発電して首都圏に販路を求めるときに使えるインフラです。同様に福井県の原発銀座も北陸電力エリアで近畿圏への大容量送電線が空いているわけです。2018年の電力自由化までに原発再稼働しないと難しくなるということで、推進派は焦っているというわけです。自由化しても送電網のイニシアチブは失いたくないわけです。そうすれば新規電力は競争劣位に置かれますから、自由化は骨抜きにされ、今まで通りコストを料金に付け回し放題になります。

元々国鉄時代の東北、上越新幹線の計画では、東京駅7番ホーム(14,15番線)を北へ延ばして東京駅北方にセクションを設けて60hzから50hzへ切り替える計画で、東海道新幹線とは直通も計画されていて200系以来2電源対応可能な車両システムだったのですが、耐雪構造など東海道新幹線との仕様が違い過ぎて直通は断念され、その後の国鉄分割民営化で別会社となったことで、東京での直通の可能性はほぼなくなりましたが、西へ延びて大阪を目指す以上、2電源対応は避けられないし、まして東海道新幹線ほどの需要も見込めず高価な周波数変換所のような地上設備の設置はあり得ないということでこうなったわけです。

で、思い出していただきたいのは、整備新幹線で優先着工とされた高崎―長野間の当初計画では高崎―軽井沢間がフル規格、軽井沢―長野間が在来線改軌のミニ新幹線だったことです。在来線の信越本線は直流1,500v電化ですから、計画通りならば交直両用の2電源車が必要だったわけで、それはそれで興味深い存在になったと思いますが、在来線区間は新幹線区間より低速ですから部分出力でも問題ないわけで、コストダウンの余地があるわけです。見てみたかった^_^;。一方2周波数対応はお預けに。

そしてJR西日本区間は糸魚川―魚津(現黒部宇奈月)間と石動―金沢間は新幹線規格の路盤に狭軌の線路を敷くスーパー特急方式で、加えて踏切のない湖西線と北陸トンネル内を併せて160㎞/hの高速運転が構想され160㎞/h対応車として681系を登場させました。対東京ではほくほく線経由で越後湯沢で上越新幹線に乗り継いで時間短縮という計画でした。これは軽井沢―長野間がオリンピック対応でフル規格に変更された後も変わりませんでした。とはいえ長野開業時に長野新幹線とするネーミングにクレームがついたように、フル規格での北陸延伸の政治圧力は存在していました。

そして長野―上越間のフル規格事業にJR東日本が同意したことで、スーパー特急を主張するJR西日本が孤立し以下略となるわけです。JR西日本は、並行在来線切り離しで孤立する城端線、氷見線、高山本線(猪谷―富山)、大糸線(南小谷―糸魚川)の切り離しを主張し抵抗しましたが、押し切られました。ただし貨物幹線となる北陸本線で三セク移行後の貨物問題では、東北本線の場合と違って、三セクの旅客列車とJR貨物の貨物列車の車両走行キロによる比例配分で保守費負担というルールになり、これがトワイライトエクスプレスの廃止やサンダーバードの富山乗り入れを断念させる原因となりました。

今回えちごトキめき鉄道で混乱がありました。JR東日本から引き継いだ妙高はねうまライン(妙高高原―直江津間)とJR西日本から引き継いだ日本海ひすいライン(市振―直江津)で、前者はET127系(JR東日本E127系譲受)で2連ワンマン基本、後者はET122系(JR西日本キハ122同形新造)で1連ワンマン基本と、電化路線で気動車を投入するわけですが、糸魚川―梶屋敷間の交直でんっどセクションを境に西が交流60hz電化となり、高価な交直両用車を避けたわけです。国鉄時代の電化区分を引き継ぐために生じた矛盾ですが、元々沿線人口が少ない過疎地でJR時代より増発を狙ったことと、メーカーが地元企業の新潟トランシスで収益機会となること、地元メーカーでメンテナンスが安心といった理由がありますが、開業記念でフリー切符を売りまくった結果、大混雑で積み残しを出す騒ぎがありました。特にキハ単行の日本海ひすいラインがひどかったようですが、さりとて2連非ワンマン運行はすぐ手配できるわけでもないですからやむを得ないところ。地元利用が定着すれば笑い話になると期待しましょう。

正直なところJR東日本の飯山線も含めて、孤立してシナジー効果を失った赤字ローカル線が直営で存続し、貨物ルートとしての公共性を理由に並行在来線が三セクで存続って、何か変ですよね。今後人口減少で地方のローカル輸送はますます存続が難しくなる中、欧州式にオープンアクセス制で、自治体が運行に関与するフランチャイズ制導入とか考えるべきでしょう。これ整備新幹線の並行在来線に留まらず、例えば三島会社で上場まで視野に入れる好調なはずのJR九州でさえ、個別線区で黒字は篠栗線だけとか、トラブル続きのJR北海道では千歳線以外全て赤字線という現状は、ローカル輸送では福岡都市圏や札幌都市圏など大都市近郊以外稼げない現実を示します。欧州式にオープンアクセス制でローカル輸送をフランチャイズへ移行するということを考えないと、JR直営ではコストダウンのための減便を受け入れるしかないということになるのではないでしょうか。

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Sunday, February 22, 2015

ブラックバレンタイン

確定申告モードでパフォーマンス低下中です^_^;。てなわけでまずはこれです。

GDP実質年率2.2%増 10~12月、増税後初のプラス :主要金融ニュース :マーケット :日本経済新聞
2014年10-112月期のGDP速報値ですが、事前予想では4%前後だったので、またしても予想が外れたわけです。予想が外れる理由は明確で、前年同期の水準に届くには、実質で+1%年率y換算+4%程度が必要ということで、希望的観測の結果です。同様の展開は7^9月期のGDPでも見られ、ほとんどのエコノミストが+4%程度を予想したもののまさかのマイナス成長となり、改定値でも下方修正となって消費税増税先送りとなりました。

そして財務省出身の黒田日銀総裁の下、10月末の政策決定会合で追加緩和を決め、増税延期をけん制したのはミザリーハロウインのエントリーで指摘したとおりですが、なんだか政権に根に持たれているようで、ここへ来てすれ違いを思わせる出来事が見られます。

すれ違う首相と日銀総裁 蜜月に試練(真相深層)  :日本経済新聞
元々無理のある異次元緩和ですが、金融政策は時間稼ぎに過ぎないんで、財政再建にいつまでも取りかからない政府に対してモノ申しておくべきと考えたんでしょう。格付け会社による格下げで国債が売り込まれて金利が急騰すれば、財政再建どころじゃなくなるのはギリシャを見ればわかる通りですが、それに対して「なら格付け会社に働きかけろ」という信じられない首相の返答に、さすがにまずいと思ったのか、議事要旨から削除され、かん口令が敷かれました。これ2月12日の経済財政諮問会議での出来事です。「私はバカです」と公言するに等しいんですから、そりゃ伏せられるのも無理もありませんが、一国の宰相が財政に対してこんな認識ということが驚きです。

私自身は元々アベノミクスには否定的で、早くやめてくれという立場ですが、見方によってはデフォルトと紙一重の金融圧迫までして政府を支えているのに、こんな仕打ちを受ける黒田総裁の心中やいかに。黒田総裁の就任以来の蜜月関係にずれが生じてきています。これ戦前に恐慌脱出のために財政出動と日銀による国際直接引き受けという禁じ手を行使した大蔵大臣の高橋是清を思い起こさせます。リフレ政策が成果を上げて財政の引き締めに舵を切ろうとしたときに、軍部や官僚たちの大反対に逢い、財界からもバッシングされた挙句、2.26の反乱将校の手にかかり命を落とすのですが、以後ブレーキ役を失った日本は戦争へとまっしぐらとなります。当時とあまりにも似すぎていて不気味です。

GDP統計の実質年率+2.2%というのは、上記のように前年同期比ではマイナスですから、以前からの私の見方である昨年松に景気の山を過ぎ、景気後退が始まったとする見方を裏付けます。それでも前期比プラスとなったのは、原油安に助けられたと見るべきでしょう。1バレル100ドルを超えていたものがほぼ半値で、日本の輸入量から見れば7兆円相当のプラス効果があるんですから、実体経済は上向いて当然です。これ消費税率にして3%相当ですから、4月の消費税アップをほぼ帳消しにする水準です。それでも前年同期比マイナスということですから、ことの深刻さは自覚すべきでしょう。

おかげで貿易収支は改善が見られますが、尚赤字基調で、円安による輸出拡大で黒字化は遠いと言えます。まして原発停止による化石燃料輸入増の影響はせいぜい3兆円程度ですから、原油安のおかげで原発再稼働は急ぐ意味がありません。なし崩しで進みそうですが、電力会社の経営上の要請によるものでしかありません。ちなみに原発再稼働が見通せない東電が5,000億円規模の黒字見通しというのが笑えますが、実質国有化でコスト削減を義務付けられた結果、調達コストが下がった結果です。加えて福一1-4号の廃炉に伴う減損処理や老朽火力のリプレースによる効率アップも寄与していると考えられます。原発に拘らない方が儲かるというわけです。

で、交通政策基本法の成立をうけて、交通政策基本計画が閣議決定されました。何故か経済産業省からのリリースです。

交通政策基本計画が閣議決定されました(METI/経済産業省)
興味のある方はリンクを辿ってPDFファイルをダウンロードしてください。ただしつまんないですけど^_^;。予想通りのお題目で、具体的に何をどうするかははっきりしません。国土強靭化や成長戦略と関連付けながらということで、この辺財政再建どこ吹く風なニュアンスもあります。

航空に関しては羽田と成田の国際線拡充を謳ってますが、現時点で日米航空協定のとん挫や成田縛りのルールを嫌って羽田に就航しない海外エアラインなど、言行不一致も甚だしいところです。整備新幹線に関しては財源措置を講じて開業前倒しなどが謳われてますが、既に整備区間のリース料を担保にした借り入れやリース料そのものの充当は動き始め、JR九州の株式上場による株式売却益などを当てにするなどの動きがあり、それらをまとめてホチキスで止めたという以上の意味はなさそうです。せっかくの基本計画なんですから、整備新幹線の最高速260㎞/hの見直しに踏み込んでもよさそうですが記述なし。相変わらずの志の低さです。これで新幹線を輸出しようというんですから笑えます。

で、そんな中で海外でほぼ唯一、日本の新幹線技術を移植した台湾高速鉄道が経営不振にあえいでいます。

日本輸出の台湾新幹線、「破綻」は必然だった | グレーターチャイナ縦横無尽 | 東洋経済オンライン
台湾高速鉄道に関しては、そもそも独仏連合の欧州勢が先に契約し、インフラは欧州基準で作られたものの、地震もあって地震に強い日本の技術を取り入れたいということで、急転直下車両と信号システムの導入を日本に打診し、JR東海を中心として技術指導を行い、開業にこぎつけたのですが、欧州基準のインフラとのすり合わせに手間取り、開業が1年遅れ、開業後リーマンショックの洗礼を受けるという不幸なスタートでした。

しかもJR東海の不熱心で開業前に技術者を帰国させてしまうというようなこともありました。当時はJR東海は輸出に消極的で、別途JR東日本が進めていた中国本土の高速鉄道計画を批判したりしていました。それでも大彎高鉄は日本の指導に従い安全運行を重ねたものの、利用客が予想を下回っています。上記記事中にもありますが、予想があまりにも楽観的だったと言えるでしょう。加えて国民党―民進党―国民党と政権交代があってたな晒しされた面もあり、台湾政府としても破たんを待っている気配もあります。

皮肉なことに杜撰な運行管理で大事故を起こした中国の高速鉄道ですが、こちらは事故を教訓にスピードを下げ、また過大な整備計画も見直されています。技術流出の問題などもありますが、日本の新幹線とドイツのICEを同一レベルで評価し、日本のものに高評価を与えています。本気で輸出を目指すなら、コスト面も考慮すれば日中合弁が現実的かもしれません。まあ今の政権じゃ無理だろうけど。

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Sunday, February 01, 2015

愛死す愛知るダァ一緒

シリア日本人人質事件が最悪の結膜を迎えました。いろいろ考えさせられる事件です。

そもそも湯川氏は8月、後藤氏は11月に身柄を拘束されていました。テロ組織による営利誘拐ですから、当然身代金要求のためのコンタクトはあったわけで、日本政府も把握していたはずです。秘密裡に交渉が行われたのでしょうけど、この段階で取り戻すことはできなかったわけです。だからイスラム国側は身代金目的から政治的駆け引きのカードとして人質の位置づけを変えたというのが、ここまでの流れと見て良いでしょう。

おそらく日本政府は、アメリカの「テロ組織とは交渉しない」というドクトリンを字義通り解釈して対応したと思われますが、その結果状況を悪化させたわけで、人質交換でヨルダン政府を巻き込んだわけで、ヨルダンはサウジアラビアと共にイスラム国掃討の空爆に参加する有志連合に属していて、その足並を乱れさせる狙いがあるのでしょう。これも行き来のあるトルコではなくヨルダンに対策本部を置いたことを逆手に取っているわけで、完全に翻弄されています。

で、アメリカの態度ですが、「テロ組織と交渉しない」というのは、相手が主権国家ではない、つまり対等ではないことが含意されているわけで、その非対称性を公式に表明することで、相手に立場を与えないことが狙いで、人質解放のために秘密交渉まで認めないとは言っていないわけですから、日本が主権国家として人質となった邦人の救出に主体的に努力することを封じるものではありません。またイギリスもそうですが、人質の所在が分かれば特殊部隊を送り込んで強引に奪回するオプションを含みます。その場合、当然相手との秘密交渉で時間稼ぎが必要になるわけですから、公式見解とは裏腹に秘密交渉は行っているわけですね。

ですから特殊部隊を持たず、このオプションのない日本が、アメリカと同じスタンスを表明しても問題は解決しないわけです。というわけで、国家安全保障会議(日本版NSC)を立ち上げたものの、仕組みを作ってもスキルがないわけで、それを暴露してしまったという意味でも大失態というわけです。

この辺のプロセスは現時点では公開できないでしょうけど、施行された特定秘密保護法の下では、事後的な検証も叶わないわけです。今回の失敗も、プロセスが共有されれば、同様の事案でもっとうまくやれるわけですから、その可能性を閉ざす特定秘密保護法は、結果的に日本のインテリジェンス能力を奪うことになることを危惧します。

そもそもイスラム国なる存在を日本政府はどう捉えているのか、政治家の勇ましい発言を聞くと不安になります。相手はテロリストであり主権国家じゃない、このシンプルな原理を理解できていないんじゃないかと危惧します。だからこの非常時にイスラム国という呼称がどうか?アメリカ流にISILとすべきとか、そこまでポチアピールかい-_-;。

ま、確かに呼称の混乱はあるんですが、アラビア語のダウラ・アル・イスラミーアの日本語訳です。日本語で「イラクとシャームのイスラム国」を意味する旧称のイニシャルから、ダーイシュとも呼ばれますが、こちらは良からぬ意味の単語に似ているということで、蔑称のニュアンスがあるようです。これを英語訳した略称がISISですが、シャームというのがシリアおよび地中海東岸地域を指し、レバントとも呼ばれることからISILとも呼ばれます。ただしレバントという単語は複数の概念を表す単語で、訳語として不適切とする専門家もいます。ただいずれの呼称を用いるにしろ出典はほぼ同じで指し示すものも同じなんで、拘らないで良いでしょう。

で、そもそもイスラム国の台頭の背景を考えると、度重なるアメリカの中東政策の失敗に行きつきます。イラク戦争でフセイン政権を排除した結果の混乱であるとともに、チュニジアで始まったアラブの春の挫折、というよりもサウジアラビアやカタールなどで強権的に抑え込んでしまったことで、失望した若者がイスラム国に集まっている現実があります。同様に欧米の格差拡大やイスラムヘイトなどの風潮もあります。それ以上に問題だと思うのが、シリアのアサド政権を排除しようとする周辺国の動きです。

シリアは国土の東半分に首都を始め油田や産業集積などが集中していて、西は砂漠地帯です。とはいえ[ユーフラテスの三日月」と言われる穀倉地帯を含んでいて、イスラム国はその気になれば自給自足で凌ぐ能力があると見るべきでしょう。こうなったのは自由シリア軍などの反政府勢力と対峙するために、シリア正規軍がダマスカス周辺に集められ、守りを固めている状況があります。いわば内戦による権力の空白に居ついたということです。

そして自由シリア軍などの反政府勢力は、アサド政権を排除したいサウジなどの周辺国が兵器や資金を提供して後押ししているわけです。つまり実態は現地調達の傭兵組織のようなものですが、訓練されたシリア正規軍に比べれば弱い存在で士気も低いですから、イスラム国は専ら強い正規軍ではなく反政府勢力を攻撃して兵器や資金を奪い、状況によって兵士のリクルートまでしているわけです。

つまり周辺国が支援する反政府軍に支援すればするほど、その能力はイスラム国の手に落ちるという形で台頭してきたわけです。イラク戦争のようにアメリカが手を出さなくても、原油高で資金を手にした周辺国がアメリカに倣って気に入らない隣国の政権を排除しようとした結果が現在というわけです。ザックリ整理すれば、民主政治の失敗がテロリストを生むと言って良いでしょう。

日本政府が集団的自衛権を行使してイスラム国掃討作戦の有志連合に加わるとすれば、こういった一連の失敗の尻拭いをすることを意味します。それは同時に日本がのっぴきならない当事者になり、泥沼にはまるわけで、日本人がテロの標的として狙われ続けることを意味します。テロで犠牲者を出した現状ですが、手を出すべきではないですね。以前にも指摘しましたが、日本などの先進国ができる最も効果的な対策は、QEを止めて金融を引き締め、産油国経由でテロリストに流れる資金を止めることでしょう。

ことほど左様に現政権の外交政策は出鱈目ですが、内政でも迷走は続きます。

スカイマーク、民事再生法申請へ ファンドが当面の資金  :日本経済新聞
スカイマーク15%減便 新社長会見、共同運航の協議継続  :日本経済新聞
以前のエントリーで予想したSKYの破たんが現実になりました。投資ファンドのインテグラルが手を差し伸べて、運航停止は免れたものの、元を質せば国交省がJALとの提携を認めずANAとの協議を押し込んだ結果です。そしてANAとの提携交渉が早速難航し、西久保前社長が「うちをつぶす気か」と切れたと言います。

そりゃANAにしてみればSKYが破たんして羽田の36便の発着枠が再配分されるのがベストシナリオですから、想定通りです。ANAにししても資本参加を望んでいたとはいえ、20%以上保有すれば持ち分法適用会社としてANAの発着枠にカウントされて再配分となれば痛し痒しですから、SKYには破たんして欲しかったと見るべきでしょう。腐りきってます。

しかし捨てる神あれば拾う神ありで、インテグラルが救済に乗り出したわけです。代表者の佐山展生氏といえば、村上ファンドの買収騒動で揺れた阪神の救済で、阪急の代理人を務めた人物です。人口減少とJRの攻勢で守勢にある関西私鉄ですが、合従連衡は起こらず停滞に甘んじる中で、経営統合を実現できたことは評価されます。あ、私自身はこの経営統合がうまく行くか懐疑的でしたし、統合効果があるかと問われればNoと答えたいところではありますが。

で、エアバスの大型機材の導入を独断専行で決めて、今日の経営危機を招いた西久保社長の解任やA330の運行停止でB737だけの運航へ戻し、大手2社の寡占市場へ独自のポジションを模索する原点回帰を決めたりも、おそらく佐山氏の意向が働いているのでしょう。継続企業の前提(Going concern)を重視し、企業の公益性を考えれば、ワンマン社長は早晩行き詰まる典型というところでしょうか。

加えて言えばイエスマンに囲まれた宰相の独断は国を危うくすると敷衍して言えるのではないでしょうか。そんなアホな政府を頂く日本ですが、民間に優れた人物がいることは救いと言えるかもしれません。

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