航空

Monday, September 17, 2018

冗長性を高めて強靭化どころか脆弱化まっしぐら

今年は災害の当たり年なのでしょうか。近畿地震、西日本豪雨、猛暑、逆行台風、超大型台風に北海道の地震と息つく暇もありません。トピックはいろいろありますが、直近の2つに絞り込んで、関空の冠水と連絡橋損壊問題と、北海道電力の全系統停電(ブラックアウト)問題に絞ります。というわけでまずは関空から。

猛烈な南風 高潮を増幅 台風21号で関空が冠水 :日本経済新聞
強力な台風で中心気圧が低く海面を持ち上げている上、強い南西の風の影響で海面が寄せ上げられるために、記録的な高潮となった訳ですが、大阪湾は丁度南西に開いた地形ですから、南西風の影響を受けやすく、関空の位置はもろに高波を被る位置にある訳です。台風21号に関して言えば大阪市で3m29㎝、神戸市で2m33㎝を記録してますが、それだけ高波の影響を受けやすい位置に関空が立地していたことは指摘できます。

加えて埋立造成工事のときにも問題となった軟弱地盤問題による地盤沈下ですが、A滑走路で3m40㎝程度の沈下があり、一番低いところで海面から1m40㎝程度しかなく、高潮対策で堰堤の嵩上げはしているものの、航空法の制約もありいずれ限界に達します。不等沈下対策としてターミナルビル他の建屋の基礎にオイルジャッキが組み込まれていて地盤沈下に合わせて高さ調整されていることも知られています。

関空の構想段階で神戸沖案が有力だったことが思い出されます。実際に神戸市に打診されたものの、神戸市は大型船舶の航行に支障するという理由で断っております。その結果、都心から離れていてアクセスに課題がある上、漁業権の買収が必要な泉州沖に決まった経緯があります。加えて埋立工事中から軟弱地盤による地盤沈下に悩まされた訳です。南海トラフ地震の津波に対しても脆弱性があることは明らかです。

あくまでも結果論ですが、当時国際港湾として鳴らしていた神戸港も、釜山港などアジアのライバルの台頭で空洞化し、阪神大震災後、復興に必要として神戸空港建設を強引に進めた訳ですから、最初から関空を神戸沖に作っていればと思いたくなりますが、阪神大震災でポートアイランドなど神戸の埋立地で液状化現象がみられたように、震災で液状化して使えなかった可能性もあった訳で、良し悪しは簡単には決まりません。

寧ろ神戸空港ができたおかげで、連絡橋損傷の影響もあって全面復旧に時間がかかる関空の機能の一部代替が可能になります。関西3空港はコンセッション方式で運営会社が同じなのも幸いです。問題は国際線と貨物ですが、連絡橋の復旧までは貨物の扱い量は制限せざるを得ません。

連絡橋の損傷に関しては、8,000人もの人が取り残され孤立状態になったことが報じられました。神戸港の海上ルートと連絡橋の非損傷側の対面通行で対応したものの時間がかかりました。問題は足止めされた人たちの中に少なからず外国人がいたことです。彼らが帰国後にこの体験を周囲に語る訳で、中身次第で関空が忌避される可能性があります。LCCによってインバウンド需要を大阪にもたらした状況に変化をもたらす可能性はあります。

で、言いたいのは、この機に乗じてインフラの冗長性を言い立てる声があることです。無駄だとしてインフラ投資を抑制すれば、災害に対して脆弱になる、重複を厭わず新幹線も高速道路も空港も作って冗長性を高めるべきだって言うんですが、関空の現実を見ればそもそも大枚ははいて作った海上空港が脆弱だったってことの問題ウィスルーしてます。それと全国に張り巡らされた高速道路がJR在来線に与えたインパクトはかなり大きく、北海道や四国では会社存亡の危機にすら追い込まれてますが、それに留まらず東関東道の、アクアライン、館山道などの影響で房総地区の特急が淘汰された現実を見ると、首都圏と言えども影響大です。

これ他の要因として既存市街地に立地する特急停車駅周辺がシャッター通りになる一方、バイパスやインター周辺の商業集積が出現していて、高速バスはそうした郊外型のSCや道の駅に立ち寄って需要を拾っているという側面もあります。無秩序化インフラ投資の結果、地域の構造変化が起きて鉄道が取り残されてるわけです。やはりインフラ投資は過剰と評価せざるを得ません。

同時にインフラ投資は取捨選択が重要なんで、選択的投資によって相互補完を図ることは重要です。無駄な重複投資の抑制という観点から言えば、民主党政権が打ち出した高速道路無料化は評価されるべきです。北海道のブラックアウト問題でそれが見えてきます。

ブラックアウト3つの謎、問われる北電の説明責任  :日本経済新聞
3つの謎とは①苫東厚真2,4号機の停止後、一部地域王電を遮断して需給を調整する負荷遮断を行う筈。事実厚真町その他いくつかの地域で停電が報告されてますが、適切に行えばブラックアウトは防げた筈.。②2,4号機停止後、北本連携線を通じて本州から送電が開始されたにも拘らずブラックアウトを防げなかった。③苫東厚真2,4号機停止後17分間1号機の運転は続いたがブラックアウトと同時に停止。故に 1号機停止がブラックアウトの原因なのか結果なのかが不明。ということです。つまりブラックアウトの原因そのものは不明ってことです。

これもネットで泊原発が動いていれば防げたとか、安定供給のために再稼働すべきだという声がネットで吹き上がりましたが、そもそもブラックアウトの原因は不明ですし、ブラックアウト自体は電力需給のバラン頭が崩れて発電機に負荷がかかって50hzの安定したを辞できなくなり、それどころか発電機の損傷もあるので、安全装置が働いて停止したものですから、発電量の不足が原因じゃないってことが理解されてません。

加えて泊原発は活断層の存在が疑われて規制委の審査が滞っていて再稼働できない状況にあり、再稼働させるとすれば超法規的な政治判断が必要ですが、現政権にはリスクとなる判断です。寧ろ負荷遮断が中途半端だった原因として泊原発の外部電源喪失を過度に意識して中途半端な対応をした可能性すら疑われます。結果的に外部電源喪失で非常電源に切り替えられたわけで、余計な忖度でトラブルを拡大したのかもしれません。この辺は事実関係に基づく原因究明を徹底するしかありません。

仮に泊原発が動いていて、苫東厚真も1号機を休止していたとすれば、泊の2000万kwと苫東厚真2,4号機の130万kwで合計330万kwで、地震のあった夜間の需要が300万kw程度として、苫東厚真が自身で停止した状況を想定すると、過剰な30万kwは揚水発電所の揚水ポンプを動かして消化していたと思われますから、不足が100万kwで北本連携線からの給電が60万kwですから、苫東厚真1号機の35万kwと揚水発電所の発電開始でぎりぎりブラックアウトが回避された可能性はありますが、繰り返しますがブラックアウトの原因が不明である以上、断定はできません。泊原発稼働中のブラックアウトだとシビアアクシデントの危険すらあるわけです。

寧ろ昔から言われていたのが集中電源方式の送電システムの脆弱性でして、原発であれ大規模火力であれ、基幹電源としてフル稼働で効率性を追求し、出力調整は小規模火力や揚水発電で補うという考え方故に、その基幹電源が停止した時のリカバリーが困難になるわけです。これ電力会社にとっては利益の最大化になるわけですが、ライフラインを担う公益事業としてはあまりにリスキーです。欧州で自然エネルギーがブームになっている理由の1つは小規模発電を集成した分散電源方式の方が脆弱性が低いという考え方が浸透してきたこともあります。

加えて日本では日本では日本では欧州では国境を超えた広域連携が確立しており、電力の輸出入は日常的に行われています。日本では電力会社間の連携もあまりなく、北本連携線の容量も60万kwですから、泊にしろ苫東厚真にしろ基幹電源が停止した時のバックアップとしては心許ない限りです。これも直s津収益を生まないから後回しにされてきたからですが、この辺民営化後合理化で益出しに励んだJR北海道と共通の背景がありますね。

結局やみくもにインフラ投資をしても脆弱なインフラを増やすだけならば、寧ろ災害に弱い国土になるってことです。レジリエンスどころかフラジャイルになるわけです。インフラも分散投資と相互連携が問われます。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, September 02, 2018

社畜の国の人工知能

暑さも峠を越したようですが、この暑さが今年だけのことで終わりそうにないのがつらいところ。ただでさえ高温多湿な日本で40℃は厚い風呂に入っているのと同じです。佇むだけで体力を消耗するレベル。ホントに2020年にオリンピックやるのか?死人出るぞ。

温暖化の影響は指摘されますが、現象はやや複雑で、温暖化による北極海の海氷減少で太陽輻射熱の反射が減って海水温が上昇し、その影響で偏西風が蛇行した結果、大陸のチベット高気圧が居座る一方、太平洋高気圧が押し上げられてチベット高気圧と合体。高気圧が上下に重なる形となり、強烈な下降気流が地表にぶつかる断熱圧縮という現象が起きて、気体の性質上圧力が増すと温度が上がる訳ですから、あの異常な暑さになった訳です。ディーゼルエンジンの原理ですな。多湿の日本だから山火事は起きにくいけど、積乱雲の発生で大雨は起きやすい訳で、利水優先の日本のダム治水の欠点も露呈しました。これ2015年の鬼怒川の決壊のときにも指摘された問題ですが、スルーされた結果の西日本洪水と見れば、人災と考えられます。

2年前のエントリーでお盆に家に帰るご先祖様と社畜についてですが、観念の産物であるご先祖様と違って物理的実体である社畜は、お盆シーズンの混雑や渋滞という外部不経済を引き起こす存在でもあります。ただ固定費負担の大きい鉄道事業者にとっては、長期休暇でビジネス利用が減る部分を帰省客が埋めてくれるありがたい存在でもあります。

新幹線は言うに及ばず、殆ど印刷代ぐらいしかコスト負担の無い青春18キップも、休校シーズンの普通列車の穴埋めになることから、周遊券など国鉄時代から続く企画商品が悉く廃止や見直しがされる中で存続しています。ただし2020年のオリンピックを睨むとこれが大きな障害になりかねないってことで、混雑対策が問題になってきます。まさか2020年夏の青春18は利用規制されるかも。社畜受難の東京五輪かも。

てな状況も生産年齢人口の減少で求人難となってくると、いつまでも社畜に頼る日本経済の持続可能性に疑問符が付くようになります。そこで慌てて子育て支援や外国人労働者の拡大を打ち出すものの、何度の指摘してますが、前者は支援に必要なマンパワーを取られて求人難が酷くなりますし、後者は移民受け入れを伴わない形で労働ビザの発給条件を緩和するものの、5年で国へ帰れってことになると単純労働しかできないし、労働力人口として定着できませんから、結局求人難の緩和にはつながりません。求人難で汲々とするような仕事は海外へアウトソースして付加価値の高い仕事が国内に残るような産業政策で人口が減っても1人当たりGDPの水準を維持するような政策へのシフトが必要です。とはいえこれが難題です。日経の連載コラムでこんなのがあります。

(モネータ 女神の警告)それぞれのジレンマ(2)41兆ドル、年金の自縄自縛 運用難、逃げ水の利回り :日本経済新聞
公的年金のジレンマを扱った記事です。これアメリカの話ですが、公的年金に共通するジレンマを表します。これも以前指摘しましたが、高金利時代に制度設計されて見直されないまま規模が拡張した結果、池のクジラとなって債券市場と株式仕様の双方で相場を持ち上げた結果、運用利回りが低下して運用難に陥っている訳です。米FRBが利上げしても長期金利が上がらないのは、ちょっと金利が上がると年金の買いが入って金利が下がってしまう訳です。その結果長短金利差が圧縮され金融仲介機能を低下させているって話です。株式の場合も株価収益率(PER)の低下が顕著ですから、基本的に同じ原理が働いています。

マイナス金利を導入した日本と結果的に似たような状況が出てきている訳ですが、年金の持続可能性への懸念は日本だけの問題じゃないってことです。日本の場合は少子高齢化による年金会計のストレスと解説されがちですが、日本でも大元の原理は同じです。とかく言われる日本の年金制度は賦課方式だからってフレーズに騙されちゃいけません。年金関連法のどこにも賦課方式なんてフレーズはありません。単純に高金利時代の設計で運用利回りを過大に設定した結果、積み立て不足が起きたってことで、アメリカと同じなんです。日本の場合低金利が長期間続いたこともあり、運用利回り自体は見直されてますが、それでも4.1%ですから、日銀の金融政策もあって長期金利が0%程度の現状では逆ザヤは無くなりません。

で、GPIFの国内株式や外国証券投資というリスク資産運用を余儀なくされるわけですが、当然相伴逆回転による損失の可能性がありますし、少しばかり積立金が増えたところで給付が増える可能性はないってことも押さえておきましょう。現状積立金は制度存続のためのバッファとsての資本勘定として機能しているわけですから、無理に積み立て不足を解消しようとせず、寧ろ報酬比例部分の支給上限を設けることで基礎年金部分を保全するのが現実的です。積立金は既に取り崩しが行われており、換金が容易な日本国債はともかく、国内株式や外国証券などは市況によって損失が出ることは避けられません。まして投資規模から言ってもGPIFの売りは相場を押し下げて損卒を拡大します。運用利回りを現実的なレベルに下げることでリスク投資を減らすことが必要です。こういう本質的な議論を避けて年金改革は実現しません。

少子高齢化問題と年金問題のリンクを外せば解決策が見えてきますが、労働力不足の解消をどうするかって話でAIに飛び付く議論が安易になされる現状はやはり問題です。次の2つの記事をご覧ください。

自動運転の波、公共交通に 日の丸交通とZMPが実験  :日本経済新聞
JAL、想定超すAI効果 新システム躍進 今期一転増益も :日本経済新聞
東京で自動運転タクシーの実証実験が始まったって話ですが、バス・タクシーなど公共交通も求人難が深刻化してますが、同時にウーバーやリフトはどのライドシェア対策という側面もあります。個人的ンはギグエコノミーで雇用を圧迫するライドシェアには否定的な立場ですが、いずれ規制緩和で認められるなら先回りってことでしょうけど、この思惑は失敗確実でしょう。

自動運転でも2地点間の単純なシャトル運行ならば、現在の技術水準でも可能なんで、実際大手町―六本木間を4往復というものです。一応ドライバーは乗車していて緊急対応する形ですが、なんでいきなり東京のような大都会でこれやるかなあ。大都市の道路事情は複雑で、アイコンタクトが使えない無人自動運転には不向きです。加えて光源が多くセンサーがノイズを拾いやすい環境でもあります。欧州で実施されている6人乗り自動運転コーチを特定ゾーンで走らせるって方向性が正解なんです。これなら現行の技術で無理なく可能だし、より深刻な過疎地の公共交通問題への対応につながります。

他方ライドシェアは有償運行の記録データが大量に発生することが注目され、トヨタをはじめ世界の有力自動車メーカーが提携に走るわけです。実走行のデータが大量に得られれば、それを解析することで、様々な状況に対応した自動運転ソフトが組めるわけです。世界に技術トレンドを読み間違えているわけです。

もう1つのJALのニュースが示唆するのは、AIの活用法の在り方が示されていることです。破綻後の社内改革で運航部門が各便の予約状況に応じて機材の入れ替えを機動的に行い、空席を減らしつつ機械ロスを最小化する取り組みの結果、機材繰りの最適化という航空会社にとって重要なレベニューマネジメントの基礎データの蓄積がったから、死すt無効親なわせてAIを導入したら、需要の予約精度が上がって搭乗率が向上し収益を改善したものです。しかも座席単価の高いビジネスクラスを減らしてエコノミークラスを増やしたにも拘らず、安売りチケットを減らして増収につながったものです。AIの活用は元データの質に左右されるっている身も蓋もない話ですが、アメーバ経営の浸透故の成果と言えるでしょう。

加えてAIに限らず機械化全般当てはまりますが、並行処理によるマルチタスクの実現が、労働生産性の向上に寄与して1人当たりGDPの水準維持に有効です。そのためにはマルチタスクを可能にする環境整備、IT投資に留まらず、ビジネスプロセス全体の見直しが必要なんですが、日本のマネジメント層はこの分野は無能です。

てことでAIは社畜の置き換えにはならないし、PCやスマホと同じくITリテラシーの有無で差がつくって話です。もっと言えば処理速度で見れば低性能な自分の生身の脳の活用すらできていないでAI活用なんて夢のまた夢。日はまた沈むな。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, May 13, 2018

国敗れて鉄路なし?

加入権維持で今どき意地でADSLでやせ我慢してたら通信障害ですが、NTTも最早メタル回線のメンテナンスをまともにやる気がないらしく、渋々ひかり電話へ切り替えましたが、新年度で引っ越しシーズンってことで工事スケジュールが混み合ってて1箇月を超える空白期間を余儀なくされました。そんな中でスマホのフリック入力でアップした前エントリーの見通し通り、北朝鮮を巡る情勢が急展開しております。南北首脳の本気とノーベル平和賞期待のトランプ大統領の色気が妙にかみ合ってきております。

慌てたのは日本政府。何しろ日米安保体制の前提となる朝鮮戦争の終結につながる話なんで困ってます。朝鮮戦争は現在休戦中ですが、韓国は休戦協定に参加しておらず、頭越しに米朝で休戦というねじれた状況です。元々は北朝鮮の南進に対して安保理決議で朝鮮国連軍が組成され、在日米軍に総司令部を置く形だったのですが、現在の休戦ラインに押し返すのがやっとで、国連軍参加国の撤退が相次いで今の形になった訳ですが、当時の韓国政府が休戦を認めず協定に参加しなかったわけです。

にも拘らず総司令部を米軍が抑えているから韓国軍が独自の軍事行動はできないわけで、事実上韓国軍は米軍の下請け機関のような扱いになっておりました。故にベトナム戦争への参戦も強要されましたし、韓国の世論の不満も大きく、停戦となれば韓国軍はその呪縛から解放されることになります。文在寅大統領への世論の支持はこういう背景があるわけですね。

シンガポールで行われる米朝首脳会談でどこまで踏み込むかはわかりませんが、共同宣言が出されて停戦協定と平和条約の締結のための実務者協議が始まるというあたりが落としどころでしょう。実務者協議がすんなり進むかどうかはともかく、枠組みとして不可逆な形になるということで、停滞はあっても逆戻りは無いという見立ては成り立ちます。

そうなると在韓米軍と在日米軍のの扱いが問題になるのですが、韓国として在韓米軍の全面撤退までは望んでないでしょうけど、朝鮮半島の非核化というのは、核保有国であるアメリカの核持ち込みも無くすってことも含みますから、どういう妥協点を見いだせるかはこれからの話です。

厄介なのが在日米軍でして、朝鮮国連軍総司令部がある三沢基地のほか、在日米軍の相当部分が朝鮮国連軍としての駐留なんで、縮小することになるんでしょうけど、在日米軍の任務は非公開で、どこまでが朝鮮国連軍としての任務なのかはわからないわけです。日本政府がきちんとアメリカと交渉する必要がありますが、黙っていれば事実上アメリカのフリーハンドになりますし、場合によっては北朝鮮のミサイルの標的になるリスクもあります。

一方でアメリカはイラン核合意からの離脱を決めました。今のところ他の5カ国が踏み止まっていて、アメリカの追加制裁も発動までの猶予期間があるということで、市場は安ど感に包まれておりますが、火種であることに変わりはありません。というわけで、市場は膠着し、円高予想はやや肩透かしですが、これドル高が相殺してるだけですね。FRBの利上げとレバトリ税制(米企業の海外留保益金の税制優遇)で資金還流が起きている状況を反映したものですが、マイナス金利にまで踏み込んだ日銀に追加策がないことに変わりはありません。為替水準の予想はあまり意味はありませんけど。

北朝鮮の問題では日本政府の出遅れは明らかですが、ロシアはどうかと言えば、まあ様子見でしょう。中国の出方次第ですが、朝鮮戦争停戦はロシアが以前から狙っていた北朝鮮を介した韓国との鉄道連絡のチャンスでして、中国が中央アジア経由のチャイナランドブリッジを売り込んでますが、バム鉄道とシベリア鉄道を介した欧州連絡ルートができれば強力なライバルになります。そうなるとロシアがオファーしてきたサハリン経由の日ロの鉄道連携は可能性が絶たれます。ここでも日本は後れを取るわけですね。安倍政権の外交政策は悉く裏食ってます。

かように地政学の変化に鉄道も無縁じゃないわけですが、サイドバーの直近の2冊の本を読んで気づいたことがありまして、JR7社の経営トップが国鉄OBで占められていることです。歴代でもJR東日本の初代社長の住田正二氏が運輸省OBで、大臣と対立して退官していた結果スカウトされたのが唯一の例外です。JR九州初代社長の石井幸幸孝氏の本では人口密度と鉄道の収支の関連をグラフで示していて興味深いのですが、人口減少で収支の悪化が避けられない中で、関連事業の強化で鉄道事業のウエートを下げたJR九州の自慢話こそ具体的な一方、新幹線物流などの提言は国鉄OBの思考の枠組みから出られていないと感じます。

一方川辺謙一氏の本は、日本の鉄道の特徴として利用客の多さを国際比較の中で明らかにし、要因として人口密度の高さと共に鉄道万能主義の存在を指摘してより客観的に日本の鉄道を見ています。例えばニューヨーク地下鉄の24時間運行について、港湾労働者の通勤の足として始まったことを指摘しています。よくニューヨークでできてなぜ東京でできないか?ということが言われますが、これ謂わば港湾都市としてのニューヨークのレガシーでありそのまま東京に持ち込むことはできません。

他にもいろいろありますが、超電導リニアとハイパーループの比較を取り上げます。旧国鉄時代から半世紀に亘って開発が続けられ、着工にこぎつけたリニアですが、人手不足や談合事件の影響で事業の遅れや事業費の拡大は避けられないところ。一方アイデアとしては古くからあるハイパーループが世界的に注目されてます。

きっかけは2013年にテスラやスペースXのCEOのイーロン・マスク氏の提唱で開発が始まり、2017年には実物大モックアップによる試験運行が始まるという風に急ピッチで開発が進んでいます。元々はサンフランシスコ―ロスアンジェルス間のカリフォルニア高速鉄道プロジェクトの対案として提案されたもので、同区間での事業化が目論まれております。

原理は中を真空近くに減圧した鋼管チューブの中を28人乗り程度のカプセルを搬送させるもので、当初空気浮上の計画を永久磁石による磁気浮上に改め、時速760マイル(1,220km/h)を目指すってことで、音速域でジェット旅客機の1.5倍の速さです。若干の勾配への対応は考えられておりますが、曲線走行は不得手ってことで、日本のように平地が狭く山がちな地形では導入が難しいのですが、広い平野部にまばらな人口密度の大陸国にとっては、これぐらいのスピードで航空客すら取り込むようなものでなければ事業化が難しいという側面はあります。

カリフォルニア高速鉄道の事業費は800億ドルに達すると言われますが、需要面を考慮すれば公的支援抜きの事業化は不可能で、州民の理解も得にくい訳ですが、ハイパーループは高速道路に併設することで100億ドル程度の事業費で実現可能としており、開発費も含めてクラウドファンディングで資金集めをしており、投資家の関心も集めているということで、いかにもアメリカらしい話ですが、欧州の鉄道事業者やサウジアラビアなどの産油国も興味を示していて大化けの気配があります。鉄軌道の高速鉄道よりもコストのかかる超電導リニアのマッチョな時代錯誤ぶりに疑問を感じない石井氏もやはり国鉄OBなんだなあと。

そうそうイランと言えば共和制だったのにアメリカの秘密工作でパーレビ国王という傀儡を立てて親米政策に舵を切った結果、イスラム革命を呼び込んだんですが、そのパーレビ時代にイランに新幹線を作りたいとオファーがあって当時の国鉄は大乗り気だったようですが、イスラム革命でご破算になりました。他方アメリカ製兵器の購入で代金を支払った後でイスラム革命が起きて引き渡しが行われなかった結果、イランによる代金返却が求められ、核合意に関連して返却されたようですが、その一部が北朝鮮に流れたという観測があります。核実験やミサイル実験を繰り返してた資金はイランから?ま、国鉄は実害がなくて結果的には良かったんですが。

あと例えば自動運転車の登場に危機感を口にするJR首脳はいますが、欧州では鉄道事業者が自動運転バスの実証実験に取り組んでたりしてて、やはり周回遅れ感が否めません。自動運転車に関しては法制度の問題の方が大きく、現状でも適切なゾーニングができれば導入できるところはそれなりにあると思いますが、そういった議論は進みませんね。

てなわけで、JR経営陣が国鉄OBで占められている現状に危うさを感じます。いずれJRプロパーのトップが登場するかもしれませんが、幹部社員の学歴面で見ると旧帝大卒中心だった国鉄時代とは様変わりしており、JRのような大組織を動かせる人材が出てくるかどうか。というか国鉄OBの覚え目出度い社員が出世して次世代リーダーになるとすると、申し訳ないけどJRの将来は暗いと感じます。

議論を拡張して今や失敗確実のMRJの何が問題だったのかにも触れておきます。ボーイングとエアバスの2大メーカーのラインナップから外れる100人乗り以下の小型機でボンバルディアとエンブラエルが争う中に割り込もうとしたわけですが、新興国の経済成長と共に低燃費の小型機の需要は確実に拡大すると見込まれますから、狙いはわかりますが、安直じゃないかと。

小型機メーカー2社は母国のカナダもブラジルも国土が広く国内に小型機の巨大市場がある訳で、鉄道のシェアが高く国内市場が当てにできない日本で開発する意味を問うたのか?って疑問が湧きます。開発直後にジェット時代になって時代遅れになったYS11ですら、当時国内ローカル空港のジェット化は夢物語だった時代で、ある程度国内で消化できる見込みがあった訳ですが、それすら怪しいプロジェクトがうまくいくと考えていたとすれば大甘ですね。

一方エアバスではバッテリー駆動のモータープレーンを開発中で、フィンランドその他で導入の検討がされてます。現状バッテリー性能の制約から航続距離は数百km程度ですが、国内線で使うには十分だし再生可能エネルギーの活用で石油輸入を減らせるしCO2排出量も減らせるということでのチャレンジです。MRJもこれぐらいのチャレンジがあっても良かったのでは?

てなわけで、魚と大組織は頭から腐るって同じ結論です^_^;。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, December 31, 2017

台車枠の亀裂

今年もあとわずかですが、このニュースはやはり取り上げるべきだろうと思いまして、こんなタイミングでのアップとなります。

亀裂、あと3センチで破断 新幹線のぞみ台車  :日本経済新聞
「あと3センチで断裂」というきわどい重大インシデントとなりました。最初に疑問に思ったのが、異音を確認しながら3時間も運行を続けたことで、実際JR西日本は非難を浴びましたが、その後岡山から添乗したJR西日本社員が東京指令所の司令員に新大阪駅での床下点検を提案したものの、司令員が上司の指示を受けたていたために聞き逃し、運行を継続した経緯が明らかになります。結構ありふれたヒューマンエラーがあったわけです。

とはいえ司令員の責任を問うのは難しいところで、そもそも頑丈に作られていて入念な点検を受けている台車に亀裂が見つからなかったから出庫して運用されたわけで、目視が困難な程度の亀裂で直ちにに断裂することがないように安全マージンを大きくとっています。点検時点で見つからなかった瑕が台車枠の断裂に至るようなことは想像すらできなかったはずです。現時点で原因は不明ですが、専門家の見方はこれです。

新幹線の「亀裂」はなぜ発見できなかったのか | 新幹線 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
記事の著者の見立てでは、側バリの軸箱近傍の溶接部付近で起きた典型的な疲労破壊ということで、突然発生したものではなく、長時間に亀裂が伸長したものということです。ということで、現時点でも入念に行われている検査体制で発見できなかったわけですから、検査体制の見直しは避けられません。

既にJR東海は従来台車枠では行っていなかった超音波探傷(非破壊検査)を検討すると発表しました。わずかの傷でも重大事故につながる車軸では行われていたものの、台車枠ではそこまでは必要ないということで、通常は目視検査で済ませていたようです。それでこれまで特段のトラブルはなかったわけで、このこと自体は問題ではないんですが、逆にめったに見られない台車枠の亀裂を見る機会そのものが少ないと、特に若い検査員は育たないというジレンマもあります。

この辺日産の完成検査問題で若手の見習い工にわざと不具合を仕込んだ個体を検査させて発見できれば一人統制前といった現場ルールを思い起こさせますが、上記記事で「航空機は故障率が高いので、ダイヤ統制部門は整備士の意見を最重視する」そうですが、元々過大な安全マージンを取っている鉄道の場合、指令員の判断も運行継続に傾きやすいということもあるでしょう。加えて岡山で添乗したJR西日本社員と東京指令所のJR東海の指令員という会社跨りの問題もあるわけで、実際新大阪で引継ぎを受けて添乗したJR東海社員の判断で名古屋で運行を打ち切ったわけで、流れでJR西日本の不始末のように見えてしまったということも指摘すべきでしょう。

似たような問題は東急田園都市線で東武鉄道の車両トラブルで架線事故が発生したってのもありました。こちらは新幹線のように車両の仕様が統一されているわけではありませんから、より問題が複雑です。

加えてもっと気になるのが上記記事でも指摘されている溶接後の熱処理が適切に行われているのかという問題と、記事ではあえて触れられておりませんが、神戸製鋼の品質データ改ざん問題で明るみに出た鋼材の品質問題の可能性も視野に入れておく必要があります。特に両者の合わせ技で、あるはずの過大な安全マージンがほとんどなかったってこともあり得ます。実際台車枠に亀裂が絡むこんな事故がありました。

東武東上線「脱線事故」は、なぜ起きたのか | 通勤電車 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
東武東上線中板橋付近での脱線事故で、30年選手の10000系初期車の事故ですが、台車の亀裂が確認されてます。尤もこの事故では亀裂が事故原因なのか脱線の結果台車に亀裂が生じたのかは不明ですが、鉄道特有の過大な安全マージンが、検査の形骸化を生んでいた可能性もあるわけで、今回の新幹線事故との比較は必要でしょう。

また神戸製鋼の品質データ改ざん問題に代表される素材メーカーの不祥事も、商慣習として定着しJIS法でも認められている特採が言い訳に使われたように、要求品質自体が安全マージンを過大に見積もっていた可能性もあります。ってことで、台車枠の鋼材で勝手特採やられて且つ溶接後の熱処理が不適切だと、結果的に要求性能は大幅に低下します。何が言いたいかというと、川下の素材メーカーから中間の加工メーカーを経て組み立てメーカーへ納入される一連の中で、各社が独自にコスト削減には減むと会社単位での部分最適が追及されて全体最適を失う合成の誤謬が発生する可能性を否定できないってことです。

これユーザーである鉄道事業者自身も技術革新と品質の向上で検査周期の延長を当局に求めているわけですが、川下側の劣化を見過ごして延長が認可されれば、日本の鉄道が自慢とする安全が砂上の楼閣になる危険性があるわけです。この辺自動車の完成検査問題もそうですけど、規制当局である国土交通省がそこまで目利きできるのかということでもあります。規制改革の難しさは実に奥深いところです。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, October 15, 2017

タダより高いベーシックインカム

希望の党が失速気味です。小池代表の排除発言に世論の反発がある一方、反発する民進党候補者の受け皿として枝野氏による立憲民主党の立ち上げに合流したり無所属で立候補したりという動きが出てきて、それに対する世論の反応はおおむね好意的ということで、野党補票が割れて自公有利の見方がある一方、態度を決めていない無党派層が54%ということで、ますます結果が見通しにくくなりました。

世論の追い風を受けていた希望の党ですが、右派の本音からか踏み絵みたいなことをしたのはわからないところ。自前で候補者を揃えられていなかった希望の党にとって前原氏の提案は渡りに船だった筈。本心は伏せて協力する判断もあったはずですが、そうしなかったのは何故か、正直分かりません。しかしまぁ急ごしらえの新党で若狭氏や細野氏などスタートアップメンバーの実務能力の欠如ぶりを見るにつけ、元々そんな程度の存在だったってことでしょうし、だからこそ逝去後の混乱も含めて選挙向けの乗り物として前原氏にも好都合だったんじゃないでしょうか。前エントリー末尾の希望を捨てないではこの辺を睨んだダブルミーニングではありますが^_^;。

てなわけで、急な選挙で各党急ごしらえの選挙公約を出してきてますが、民主党の09年マニフェストのような練度は望むべくもないですし、特に与党である自民党や公明党が何を打ち出すかと思えば19年の消費税増税分の使途変更で全世代向け社会保障と教育の無償化を打ち出してきました。つまりアジェンダの変更ですが、それなら何故国会を開いてそこで提起しなかったのか?国会論戦で論点を明らかにした上で国民に信を問うとするならば、解散の意義も認められてモリカケ隠しとか敵前逃亡とか言われることはなかったんじゃないでしょうか。

とはいえ所謂三党合意で税収増となる5兆円の使途として4兆円を財政再建に1兆円を社会保障にとした点も、それとは別にアベノミクス第2の矢とやらで財政出動を決めているわけで、このこと自体が財政再建を反故にしているわけですし、もう少し言えば財源の当てもなく法人減税をしているわけです。政府は盛んに「税収は増えている」としていますが、14年の消費税の5%から8%へのアップがあったんですから当然のこと。寧ろ上げ潮路線と称して経済成長で税収増を謳いながら、法人税収は減っています。この辺のゴマカシは言い出すときりがないですが。

それでも希望の党の公約集の発表は、急ごしらえでも有権者の判断材料にはなりますから、それなりに注目する意味はあります。その中でやはりというか、消費税増税凍結を打ち出しています。延期ですからいずれは上げるということですが、その前に消費税制度の矛盾をどうにかすべきです。例えばこれ。

金密輸、狙われる日本 消費増税で「うまみ」  :日本経済新聞
これインボイスを用いない日本の消費税制度の欠陥をあらわにしてます。そもそも金を商品と捉えて消費税をかけてるのは主要国では日本ぐらい。加えてインボイスがなくても消費税を受け取れますから、密輸して日本国内で売れば8%分丸儲けになるわけですね。これこのエントリーで取り上げてますが、欧州の付加価値税では課税事業者を選択しなければ発行できない税額票(インボイス)がなければそもそも取引に応じてもらえないから、この手の不正が防げるわけです。加えて0%を含む複数税率への対応も容易で、金は金融商品として0%扱いすれば、こんなおかしなことは起きないわけです。二重に消費税制度の矛盾が出ているわけで、税率が上がれば矛盾は拡大するわけですから、まずはインボイス導入してから税率の議論が真っ当です。

希望の党が打ち出した政策ではそのほか企業の内部留保課税とタイトルにあるベーシックインカム(BI)があります。内部留保課税については、二重課税の疑いがあり問題ですが、仮に課税すれば配当と役員報酬に配分されるだけで、狙いとされる賃金や設備投資への配分は起こりません。そこを狙うなら法人税増税が効果的です。そんなことすると日本企業の国際競争力ガーという声が聞こえてきそうですが、法人税減税の目的は新興国や中小国で国内の資本蓄積が不十分な国が外国企業を誘致するための政策であって、莫大な累積経常黒字を抱え込む日本ではあまり意味がありません。

加えて海外事業会社の利益配当の国内送金で立地国の税率が日本より低いと連結納税で差額納税を迫られるというのがあり、そのため企業が海外に資金を滞留させることになるというのがありますが、既に麻生政権当時に益金の国内送金分の課税免除が行われております。後は外国企業の日本進出を本当に望むならば、進出外国企業限定の軽減税率を導入すれば良いんで、国内企業向けの法人減税は必要ありません。実際上述の通り法人税収は減っているのが現実であり、これ以上の法人減税は有害無益です。

で、本丸のBIですが、これ実は一部エコノミストの間では以前から出ていた議論で、年金や失業保険や児童手当や生活保護などの社会保障制度を統合して全員に現金給付をすれば、行政コストが最小となるという議論です。1人月5万円年60万円として80兆円弱でっすが、医療分野を除く社会保障給付の合計が大体この水準ということです。

これ税金の負担分は凡そ半分で、残りは年金や雇用保険の保険料や積立金から拠出されているわけで、見方を変えれば年金保険料として納めたはずのお金がBIの給付に回ることで給付が5万円に減額されるって話ですから、加入者の立場からは簡単に賛成できない話です。加えて被用者保険は労使案分で企業負担分もありますから、使途の変更は企業の同意も必要で、ただでさえ医療を含む社会保険料の値上がりで実質増税と言われる中での使途変更で、これほぼ不可能です。

加えて支給対象に国籍条項が入る可能性も指摘できます。現行制度では国籍に関係なく制度に加入すれば支支給を受けられますが、所謂在日を含む外国人を排除するとすれば問題です。差別問題であると同時に現実は既に外国人就労がなければ必要な人が集められない業種も多数存在しますから、GDPを押し下げる要因になります。

似て非なるのが給付付き税額控除でして、日本の税法では所得控除が中心ですが、これを税額控除に振り替えて、納税額が控除額に満たない場合はその差額を現金で給付するという制度です。例えば現状の基礎控除38万円に給与所得控除や個人事業主の青色申告控除で加算される65万円をプラスして103万円となりますが、計算の都合で1000万円として、標準税率プラス社会保険料負担を3割と見込んで年額30万円を申告納税者に対して税額控除するというもの。要件は申告納税だけですから仕組みがシンプルですし、年金などの社会保険制度との調整が要らないので導入しやすいということになります。加えて基礎控除の無い消費税制度との相性も良いということになります。制度の持続可能性の観点から改革不可避ながら利害調整が難しく時間のかかる年金改革を待たずに実施できるという意味でも現実的です。

おまけで年金改革の議論ですが、少子高齢化で年金の給付制限は不可避とされ、支給開始年齢の引き上げが議論されてますが、これ現役世代の制度参加の意欲を失わせます。守るべきは基礎年金部分なのであって、報酬比例年金はおまけと割り切って、支給上限を定めれば、基礎年金部分の給付水準を維持しながら、同時に世代間扶助の仕組みが入ることで現役世代の負担も軽減できますが、何故かこういう議論は出てきません。

年金に関しては旧国鉄債務追加負担問題でも触れましたしみなし積み立て年金についても取り上げました。制度としての持続可能性は十分ににあります。高額年金の受給制限は富裕層には不満もあるかもしれませんが、個人向け確定拠出年金(iDeCo)も制度化されており、これ拠出金は所得控除となる上、運用益非課税プラス年金型の受け取りの場合公的年金と同じ税優遇が受けられますから、そちらへどうぞで問題ないでしょう。

鉄分薄いですが^_^;希望の党の選挙公約を起点にこうした実質的な政策論争が起こるならばそれはそれで悪くはないですが、それを伝えるメディアが理解できていないところがネックです。しょーもねーなー。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

Sunday, February 07, 2016

ダメージ・エコノミクス

日銀のマイナス金利政策ですが、1週間もたずに効果が剥落しました。

マイナス金利、逃げ水の円安効果 決定前逆戻り116円台  :日本経済新聞
問題はそれでも副作用は確実に起きるということです。
マイナス金利、家計に波及 3メガ銀が預金金利下げ  :日本経済新聞
もう無茶苦茶。副作用の強い薬を服用して健康を損なうという最悪の処方ですが、医師なら訴えられますね。

てなわけで、ダメージ・エコノミクス(Damage Economics)略してダメノミクス(DamEnomics)が今回のテーマです。国会論戦でも野党からアベノミクスの失敗を問う声が強いのですが、的外れです。アベノミクスの本質はダメノミクスだから、予想通りの結果というべきなんです。ここまで事態が進んだんですから、確信犯と見るべきです。何故か?その方が危機を煽ってやりたい放題できるからですね。東日本大震災の復興事業がどれだけ食い物にされてきたか。憲法に緊急事態条項を加えようというのも同じ流れです。国の金を好き勝手に差配して結果に責任は持たない。つまるところこういうことです。

そんな中で民間の力で国をねじ伏せたこのニュース。

シャープを鴻海が買収へ 7000億円、機構案上回る  :日本経済新聞
経営不振のシャープを巡る動きですが、経産省が産業革新機構を使った支援策をけって鴻海案に傾いたんですが、元々鴻海は早くからシャープの救済に名乗りを上げていたところへ、技術の海外流出などの難癖をつけて押し留めたのは経産省です。ま、言いがかりも甚だしいのですが、最後は鴻海の資金上積みで決着しました。

ただし水面下ではメガバンクの意向が働いたようで、今回みずほが鴻海案を後押ししたのですが、産業革新機構案で求められていた債権放棄がマイナス金利政策で受け入れられない状況になったというのが本音のようです。政権べったりの現在の日銀ですが、皮肉なことに国策を吹っ飛ばしました^_^;。グッジョブwww。

ま、ここに至るまでのシャープの迷走ぶりはすさまじいものですが、この規模の大企業だと簡単には潰れないのはソニー以来繰り返されていて、資産売却で決算を乗り切れてしまうわけですが、その結果何の会社だか分からなくなってアイデンティティを喪失するのは良くあることです。さて東芝という大物が控えておりますが、こちらはウエスチングハウス社の減損の連結を拒んだまま赤字拡大で7,000億円の損失って、まともに連結したら債務超過が疑われるレベルですが、幻となった革新機構のシャープ救済策では東芝とシャープの家電部門を統合する計画でしたが、弱者連合にしかならない愚策です。

電機業界で自力更生を果たした日立は家電から撤退を決め、パナソニックは救済合併したサンヨーの家電部門と合わせて中国ハイアールへの売却と、国に頼らずに道筋をつけているわけで、それができないシャープは迷走せざるを得なかったわけです。EMS企業の鴻海にとっては、シャープの技術力とブランド力は喉から手が出るほど欲しかったのでしょう。蜜月関係にあったアップルがiPhoneの中国販売の減速もあって先行き不透明な中、いつまでも黒子で居たくないでしょう。むしろ脱アップルを模索していたふしもあります。

PCにしろスマホにしろ、モデルチェンジが頻繁過ぎるというのが悩みで、大規模設備投資で生産ラインを整備しても、すぐに使われなくなるリスクもあります。その間隙をついて中国小米のような新興企業が、その遊休ラインで格安スマホを製造販売して市場を席巻する一幕もありましたが、結局中国市場では中間所得層の台頭でiPhoneが彼らにとってのステータスシンボルになったことがアップルの直近の業績を押し上げていたわけですから、中国の失速はアップルにとっても痛いけれどEMSの鴻海にとっては死活問題でもあります。鴻海にこの辺の読みがあったかどうかはわかりませんが、アップル依存からの脱却は意識していたのではないかと思います。

余談ですが中国の実体経済は李剋強首相自ら認める中国の経済統計の不確かさから、電力消費量や鉄道貨物輸送量で判断とカミングアウトし、「李剋強指数」と言われますが、iPhone販売数量を見る林檎指数も実用的かも(笑)。

企業再生ではJALの再建がうまくいきました。こちらは国が関与したとはいえ、あくまでも破綻処理であり、会社更生法を適用して経営者、株主、従業員、債権者が相応に責任分担して再上場にこぎつけたわけですが、かつてJALは経営危機を繰り返しては国が救済することが繰り返されてきたわけで、その悪循環を断ち切ったんですから、当時の民主党政権の判断は正しかったし、それ以前の自民党政権ではできなかったことです。一方原発事故で迷走した東京電力は破綻処理を避けて未だに迷走が続いています。

ダメな会社を保護して残すと、そこに貴重な資金や人材が滞留しイノベーションを阻害するというのは、資本主義社会の常識なんで、国が音頭取って行う「国家政略特区」で規制緩和だという「第3の矢」だとかでイノベーションが実現するわけじゃありません。シャープや東芝を巡る経産省ひいては政権の対応は明らかに統制色が強く、イノベーションを阻害し成長を妨げることにしかなりません。やはりダメノミクスなんです。

あと地方創生とやらで地方を補助金漬けにしていますが、補助金で地方が活性化されたケースがあるでしょうか。財政破綻して財政再建団体になった夕張市は、リゾート法その他の補助金を使いまくって廃墟を残したことを指摘しておきます。あるいはコンパクトシティを標榜した青森市ご自慢の青森アウガが、結局財政資金で赤字解消とか頭悪いとしか言いようがありません。地方に必要なのは補助金ではなく自力で付加価値を生み出せる産業です。地方へ拠出する補助金は国の財政を圧迫し国債依存を強めます。それは結局国民の貯蓄に支えられているわけですが、貯蓄が収益性のある事業への融資に向かわず国債消化で地方に負の遺産を増やすだけですから、これも成長力を阻害するダメノミクスです。

そして「貯蓄から投資へ」のウソ。国民が銀行に預けたお金は融資によって企業の投資を助け、金利として還元されるわけで、元々貯蓄=投資なんです。何も家計が自らリスクを取って株式投資とかする必要はないんで、やりたい人が自己責任でやるべきことです。それをGPIFその他の公的なお金を株式で運用した上げ底相場でさらに個人にも株を買わせようというのはどういうことなのか。それで相場が上げても、結局余ったお金が株式市場に張り付くだけの話で、企業のM&Aや議決権行使を前提とした株式保有でない限り、株を買う行為は銀行預金と変わりません。ただ元本保証はなく紙くずになるかもしれないけれど配当がついて値上がりもあるかもしれないというリスク資産を保有するということです。株式投資は経済統計上は貯蓄にカウントされるってのは経済学の教科書にも書いてある高校生レベルの知識です。

で、その株価ですが、大型IPOとして注目された郵政3社の上場ですが、無残な状況です。

郵政上場3カ月(上)熱狂去り 見えた弱点 マイナス金利も逆風 :日本経済新聞
成長戦略も曖昧なまま高配当で釣って個人に競って買わせるという悪質な対応が裏目です。今回のマイナス金利も逆風どころか、郵政審が預入限度額を1,000万円から1,300万円に増やしたものの、むしろ利益を圧迫します。もういろんな意味でダメージしかない。しかも問題はそれに留まりません。
郵政上場3カ月(下)「公平な競争」なお遠く  :日本経済新聞
郵政はユニバーサルサービスを盾に税優遇や集配車の駐車禁止特例などで不公平とヤマト運輸が意見広告したものの無視。ユニバーサルサービスの郵便事業と収益事業の宅配便がリソースを共有していることから、競争条件は不公平で、例えば佐川が撤退したアマゾンの宅配業務を郵政が安値受注していたりします。少子化の影響でドライバー不足に悩まされ、ヤマトもドライバー確保の必要から宅急便の値上げやサービスの見直しに踏み込んでいるだけに、無視できません。同様に預入限度額の拡大は特に地方銀行との競合が避けられないところですし、今後融資業務への進出などでただでさえ利ザヤが薄い低金利状況で値を上げるところもあります。このような不公正競争は市場を歪め経済厚生を低下させますからやはりダメノミクスです。

バス事故のエントリーで日本バス協会(NBA)の前身の日乗協と国鉄バスの対立について述べました。国鉄分割民営化で名実ともに地域の民間バス会社になってからJRバスのNBA加盟が実現したように、イコールフッテイングは重要です。加えて郵政の場合は民営化以降現場従業員の非正規化を進めており、正社員主体のヤマトや佐川を圧迫しているんですから、バス事業における中小零細の新規参入組の性質も備えているわけで、二重の意味で不公正な競争環境と言えます。

ドライバー不足から結果的に高齢ドライバーの就業が増えて事故のリスクが増すということも視野に入れる必要がありますが、それ以上に安定運用を旨とする年金積立金を上記のように株式市場へ突っ込むようなことはやめる伊べきです。年金不安から引退できない高齢者を増やして「1億総活躍」とかって、ブラック企業を助けるだけです。ダメノミクス大爆発です(怒)。

本当にイノベーションを目指すなら、自動運転車の活用とかそっちだろと思います。当然それに伴う法整備も課題ですが、特に人口減少で公共交通の維持が難しい地方の究極の交通インフラとして活用を考えるべきでしょう。世界で広がるライドシェアの活用も、ちょっと待てと言いたいところ。Uberに代表されるオンラインサービスが、実際は様々なトラブルを引き起こし、特にアメリカでは雇用問題として議論になっていることを見るべきでしょう。日本の議論は暇な若者の存在を疑いもない前提としているようですが、ライドシェアのドライバーのリアルとして、過疎地ほど高齢ドライバーとなるのが現実です。

なお、自動運転車の普及は公共交通を圧迫するという側面もありますが、スマホで呼び出していつでも使える自動運転車はカーシェアでの普及が見込まれます。つまり高い維持費をかけて自己保有するインセンティブがなくなるので、結果的に自動車生産台数は4割減るという試算もあります。それでもGoogleはじめ資本力に勝るIT企業が本気で開発している現状から、特にアメリカでは自動車メーカーも渋々動き始めています。つまりマイカーが淘汰されて道路の過剰なトラフィックが減るということになりますので、いきなり大都市でもとはならないまでも、公共交通に少なからぬインパクトを与えるでしょう。

東武東上線のTJライナーや京急のモーニング・ウイング号をはじめ、このところ私鉄の有料着席サービスの話題が続きますが、自動運転車が普及して道路がインテリジェンス化されて渋滞も緩和されてという状況になれば、いつまでも混雑のなくならない現在の都市鉄道も少なからず影響を受けるという意味で、少なくとも着席サービスの選択肢は用意しておきたいという風に先回りしているものと見ることができます。自動運転車に関しては日本では自動車メーカーは運転支援に留まり本気度が低いようですが、鉄道事業者は既に意識し始めています。

長くなりましたが、現状のダメ出しは枚挙に暇がないですね。確実に言えるのは、効かない経済対策で日本経済の成長力は圧迫され、体力を失うということになります。その時に目先をごまかす国際紛争が仕掛けられる可能性が高いのは歴史の教訓です。油断大敵です。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, January 31, 2016

引く手あ、まった!

いやはや、黒田日銀の暴走ぶりは留まることがありません。というか、異次元緩和以来、はっきりしたことはただ1つ。何でもありの緩和至上主義で、明言されている目標も曖昧化しているということ。物価目標も緩和継続による裏の目標である円安誘導の方便じゃないかと疑っております。国民にとっては盗っ人に財布を握られたようなもの。アベコベ相場に繰り出した日銀の追加策のしょーもなさが今回のテーマです。まずは政策の概要です

日銀がマイナス金利 その仕組みと揺れた判断:日本経済新聞
端的な解説としてはこれがわかりやすいと思います。つまりはマイナス金利といっても、日銀当座預金の法定準備預金額を超える部分に現在0.1%の利息をつけていますが、今回はその部分は現行通りで触らず、今後増える部分については-0.1%、つまり逆に銀行が日銀に金利を支払うというもので、法定準備額はゼロ金利(当座預金だから当然ですが)、それを超える部分についてプラス部分とマイナス部分を設けるというややこしいものですが、多分激変緩和で、今後の推移次第では見直しも含むものと考えられます。一言で言えば奇策中の奇策で、市場にサプライズを与える以外に効果は殆どない上に、従来の異次元緩和政策とは矛盾した部分もあります。

そもそも当座預金に利息が付くのはおかしなことなんですが、これ量的金融緩和をスムーズに遂行するためのもので、米FRBが始めて白川総裁時代の日銀が取り入れたものですが、要は信用力があって担保価値のある国債を銀行が持ちたがるのを買い上げるわけです。国債は流通市場での値動きはあるものの、満期まで保有すれば元本は保証されますが、それを日銀が買い上げれば金利の付かない当座預金との交換ですから、利ザヤ稼ぎの銀行にとっては痛し痒しなわけですから、見返りにごく低い利息をつけて国債を手放しやすくするという意味があります。加えて誘導目標の金利を残す意味もあります。非伝統的と言われる量的金融緩和でも、中央銀行の政策目標はあくまでも金利であるという基本を失わない意味があります。

それが異次元緩和ではベースマネーを増やしてやれば、人々にインフレ期待が生じてデフレマインドを一掃し2%の物価目標を設定するという風に説明されています。マネー供給を増やせばインフレ期待が生じるというのはおかしな議論なんですが、実際は国債を大量に買い上げて国債流通市場を干し上げることで、国債に張り付いている銀行の資金を融資に振り向けさせる狙いで所謂ポートフォリオリバランスと呼ぶものですが、銀行は日銀の国債を高値で売ってその資金で新発国債を購入しますから、いつまで経っても融資が増えないわけです。そもそも低金利だと銀行の利ザヤの元となる長短金利差も縮まってしまいますから、国債市場を干し上げれば銀行が融資を増やすという経路が説明されてますが、実際は企業の資金需要そのものが乏しく、融資は増えません。マイナス金利もこの面では効果は乏しいと見て良いでしょう。

真の狙いは国債金利の圧迫で通貨安狙いというわけですね。新年早々進行した円高の阻止で追加緩和を市場からせがまれていた状況で、何もしないわけにはいかなかったのですが、既に2014年10月の追加緩和で国債買い取り額を50兆円から80兆円に増やしており、国債市場の規模からいえば、あと20兆円増やすのが精一杯ですが、それを使えば以後の政策対応の手段がなくなる最後の手でもあり、それは温存したのが日銀の本音です。追加策の使いどころは来年4月の消費税増税にありというわけですね。故にこれまで否定し続けてきたマイナス金利を突然導入するということで、日銀審議委員の中からも「手詰まりを市場に見透かされる」という理由で反対意見が出たぐらいです。

てなわけで、市場も意図を図りかねて乱高下したわけです。サプライズはあったものの、こうした一過性の効果をどれだけ積み重ねても、動き出したリスクオフの動きは止められません。あと、当面のプラス金利とマイナス金利の併用局面では大きな動きはないでしょうけど、銀行にとっては利ザヤの圧縮が進むわけで、ますます融資を渋るようになります。そればかりか、いずれ預金の利息もゼロからマイナスにということもあり得ます。実際マイナス金利を導入したデンマークやユーロ圏諸国などではそうなっています。国民の対抗策は現金を引き出してタンス預金となると、逆効果になるわけですが、そこまで踏み込むかどうかは現時点では不明です。

というわけで、いよいよ迷走する黒田バズーカですが、出口戦略がますます困難になり、正常化は黒田総裁の任期中には無理な状況です。その間に財政再建も進まず通貨の信任を棄損して、将来世代に大きなツケを回すことになります。すでに日本の経済規模は基軸通貨であるドル建てで2/3に減価しており、2010年に逆転された中国とはすでに倍以上の差をつけられている状況を直視すべきです。その中国は現在資金流出が止まらず、人民元安を阻止しようとしています。通貨安が国益に反するからですね。あえて円安にして通貨の信任を棄損し富を減らす日本のありようは異常です。

閑話休題。金利の英訳はi nterest で、利子、金利のほか、興味、関心の意味もあります。通貨当局の暴走にinterest を失わないことが大事です。「黒田バズーカ」を礼賛するリフレ派の議論はすでに破たんしており、例えば原油安で物価が下がったというのは、リフレ派の議論では特定品目の値下がりは他品目の有効需要を押し上げるから一般物価はむしろ上がるというのがありましたが、見事に外れてます。というか、元々値動きの大きい生鮮品とエネルギーは外すのが常識で、所謂コアコア指数というのですが、米FRBはこれを物価指標としています。日銀の異次元緩和ではなぜか生鮮品のみを除外したコア指数を指標としており、元々ここに誤魔化しがあったのですが、裏の目的である円安が実現すれば物価は上がるわけで、実際食料品などは値上がりしており、日銀もそれを理由に成果を強調しています。全くふざけた話です。「黒田バズーカ」からマイナスされたのは interest ではなく intellect (知性)ではないのか。つまり「黒田バカ」^_^;。

日銀が銀行に融資を促すのは、ある意味当然ですが、少なくとも国内には融資案件が見当たらないのが現実です。2003年のソニーショック以来続く日本の電機メーカーの逆風は終わらず、未だに過剰設備に苦しんでいて、しかも産業革新機構のような官製gファンドに助けられて延命している状況をどう見るのか。中国のバブル崩壊と過剰設備は以前から言われておりましたが、中国当局は元高を維持して過剰設備の解消に踏み込んでいます。今の中国の減速はその結果なわけで、痛みを緩和して問題を先送りして結果的に国力を低下させている日本の方が問題です。今回も中国ショックのような言われ方をしていますが、国内の産業構造転換ができない日本の問題なんです。

で、民間投資が増えないから公共投資を増やして景気浮揚というのですが、これは1930年代のような真正デフレのときならともかく、今の日本ではむしろリターンの少ない非効率な投資が行われて結果的に国全体の生産性を下げています。そんな中でこんな救いのないニュースが。

JR北海道が道内全線区で赤字 14年度、札幌圏も26億円  :日本経済新聞
JR北海道の劣化は止まらないばかりか、当面赤字確定の北海道新幹線まで引き受けなければならないわけですが、道庁をはじめ地元自治体はJR北海道に自助努力を求めるばかりです。投資収益逓減の法則はこうした末端で出現し、ジワジワと拡大していくものです。以前から整備新幹線の問題点を指摘し続けてきましたが、将来性のない中途半端な投資を積み重ねても、むしろメンテナンスで足を引っ張るだけというのが如実に現れてます。

JR北海道に関しては以前からローカル輸送からの撤退を提言しております。元々国鉄分割民営化時に安易な値上げはしないという「公約」があって運賃改定もままならず、特に通学定期券の割引率が私鉄やバスより高率なままとなっている一方、JR北海道のように札幌都市圏以外では事実上通学にしか利用されていないローカル列車の維持は原価割れ輸送そのものです。実際割引率の差でJR高山本線と並行する名鉄各務原線や名松線と並行する近鉄大阪線・山田線では、通学利用がJRに流れている現実があります。いずれも収益性の高いJR東海だから維持できているので、JR北海道では無理です。象徴的なニュースとして石北線上白滝駅の最後の1人の女子高生が卒業と共に駅の廃止が決まり、メディアを賑わせましたが、そこからこの通学定期券のよる実質原価割れ輸送の問題に切り込んだ報道は見られません。ここを何とかしないとJR北海道は救われまあせん。

地域の足を守るというなら、イギリスに倣ってフランチャイズ制を導入する手があります。地元自治体やバス会社が出資した三セクで第二種事業者としてローカル列車を運営するわけですが、参入のハードルを下げるために、資産である車両や乗務員はJR北海道への委託を認め、運行管理やメンテナンスはJR北海道で一元化し、運賃は上限だけ定めて自由化するというような形にすれば、バス事業者にとっては鉄道を軸とした路線再編で需要掘り起こしの余地が出てきます。整備新幹線の並行在来線切り離しが認められるなら、これぐらいは可能なはずです。

加えてJR北海道に残る都市間輸送分野も新幹線頼みができない以上別の方法を考えるべきです。そこにこんなニュースが。

(ビジネスTODAY)ハワイ便、運賃競争再燃 ANA、エアバスA380導入を発表 座席数で日航追う :日本経済新聞
これデルタと争ったスカイマーク争奪戦でANAが繰り出した必殺技だったA380引き受けの結果ですが、ANAは抜け目ないというか、発想が戦略的です。欧米などの長距離路線への投入にはたった3機では遣り繰りができませんから、近場の海外と言えるハワイ線で、しかも需要は旺盛な割にJALの6便に対して4便と劣勢な中で、座席集で優位に立とうという戦略です。加えて言えばビジネスユースの強い欧米路線では大型機で便数を集約すると利便性が低下するということもあります。転んでもタダでは起きないですね。教祖の激しい航空業界らしい話です。

これと比較して整備新幹線問題で右往左往するJR各社の近視眼ぶりが残念です。JR北海道本体のてこ入れは航空業界とのコラボが望ましいいのではないでしょうか。昨今北海道を訪れる外国人が増加しているんですから、対東京の速達性よりも外国人観光客の誘致に力を入れたほうが活性化につながるわけで、道庁もHACに肩入れするぐらいなら、JR北海道に資金提供して航空との連携を深める方向で対応すれ良いと思います。あるいは場合によっては航空会社に経営をゆだねることも選択肢になります。整備新幹線問題はドル箱の国内航空を圧迫するものとして対立意識が強いですが、東京から5時間かかる新幹線に期待して財政支出するよりもずっとましな地域活性化策となります。銀行の融資拡大から大幅に逸脱いたしましたが^_^;、リターンの見込めない投資をするぐらいならば見直し引き返すことも重要です。新幹線は魔法の杖でも打出の小槌でもないのです。

それともう1つ。やはりJR北海道がらみですが。

日高線復旧費、8億円増 JR北試算で38億円に  :日本経済新聞
日高線は高波被害で長期運休中でいまだに復旧のめどが立っておりません。運休が長引けば結局鉄道がなくても何とかなるとなって未来が閉ざされるわけですから、危機的です。そういえばJR東海の名松線末端部こそ復旧が決まりましたが、今年3月26日改正でやっと運転再開です。JR東日本では大船渡線、気仙沼線、のBRT化と山田線(宮古-釜石)の三陸鉄道移管による復旧が決まった一方、只見線(会津川口―只見)は放置されています。ローカル線の存続問題はJR北海道だけの問題ではないのですが、結局利益誘導の果てに強引に建設されたローカル線がJRの経営の足を引っ張る構図です。投資案件の取捨選択がいかに重要かいい加減気づけよ(怒)。

おまけ。記事中の貨物新幹線はできの悪い官僚の思い付きに過ぎません。上下50本の貨物列車の存在が営業最高速度140㎞/h制限の理由ですが、それを解消するために貨物列車を200㎞/hで走らせようというわけですが、新幹線の構造規則上、軸重16t*4軸*16両=総重量1,024tの構造物荷重を想定しており、ギリギリ1,000t列車を置き換えられますが、そのためにコンテナの積み替え行う分のロスは考えていないんですね。E5系量産車10連の空車重量が455tで積車重量500t未満と半分以下ですから、そんな列車を200㎞/hで走らせれば線路のメンテナンスに負荷がかかります。フリーゲージ以上に実現可能性は低いと言わざるを得ません。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, November 22, 2015

放置国家の呆の支配

先週はパリの同時多発テロで大変でしたが、たちまち世界は9.11後の雰囲気に。当時イラク戦争に反対したフランスのオランド大統領の前のめりぶり概要です。一方議会野党の保守派と急進左派はそろってシリア空爆に反対しているという日本ではわかりにくい構図ですが、それ以上に気になるこのニュースです。

対米協力一歩前へ 首相「南シナ海に自衛隊検討」  :日本経済新聞
米中のパワーゲームに日本も混ぜろとでも言いたいのか。南シナ海へ進出したいのか?

中国の岩礁埋め立てと軍事基地化は確かに問題ですが、似たようなことはほかの国もやっていて、中国だけを責めるわけにはいかないのですが、埋め立て地を起点とする領海の主張は明らかな国際法違反なので、アメリカはそこを指摘し、実際にイージス艦を派遣し航行させたわけですが、事前に米中首脳会談前日の9/24に軍事対話の実施を調印し、イージス艦派遣に際して中国と協議を行っていますし、フィリピンやベトナムの領海エリアも事前通告の上航行しており、中国名指しにならないよう配慮しています。言ってみれば大国同士のさや当てのようなもので、大国同士のパワーゲームに過ぎないのですが、日本の政治家でそれを指摘したのは与野党含めて野田聖子だけっておい、他の奴らキンタマついとんのかい?

あともし仮に南シナ海への自衛隊派遣が実現すると、尖閣諸島の守りが手薄になるのは言うまでもありません。リソースは有限なので、むしろ中国にとってはおいしいところ。それ以前に日米防衛ガイドラインで米軍のプレゼンスが後退していることはほとんどメディアも報じませんが、中国公船の挑発は、アメリカと事を構えたくない中国が、アメリカが出てこないと見ているからなんですが、逆に軍の艦船を派遣しないのは、アメリカの顔色を窺ってはいるわけで、アメリカでも日米安保による巻き込まれ論が保守派内でも言われております。日本の独り相撲です。

近代戦争は国の工業力を背景とした総力戦という性格があり、ww1やww2が典型的です。その結果敵国の工業力を破壊することが戦略上求められるわけで、ww1でドイツ飛行船によるロンドン空爆から始まり、ww2の広島と長崎への原爆投下も同様です。かくして近代戦争は戦勝国も含めて参加国のダメージが大きすぎるということで、戦後東西冷戦もあって大国同士は直接戦争しないという暗黙の了解が成立します。その代り周辺国の代理戦争は収まらず、兵器性能が向上し殺傷能力を高めているだけに、紛争当事国の疲弊は尋常ではない状況になります。

という国際社会のコンテクストを踏まえれば、ロシアがウクライナイに干渉しクリミアを併合したのも、そうした軍事大国同士のある種の相場観から導き出されたもの言えます。そしてロシアのシリア空爆は二正面作戦に割けるリソースを持たないロシアのウクライナへの干渉は低下するし、またダーイシュ(イスラム国)という共通の敵を設定することで、ロシアと西側種国の対立も軟化するという連鎖になります。ロシア機撃墜とパリ同時多発テロで関係はさらに補強されます。おそらくクリミア問題は沙汰止みになるでしょう。そんなロシアに「北方領土返せ」と言って取り合ってもらえないのも無理もないところ。善悪を超越した外交の機微に疎い日本の出番はここにもありません。

で、シリア空爆ですが、ダーイシュ支配地域の石油精製施設への攻撃は、敵の工業力の破壊という戦略になりますが、ダーイシュは石油だけではなく、営利誘拐その他の資金源もあり、また「ユーフラテスの三日月」と言われる穀倉地帯を抑えていて、広大な農地への空爆はほとんど意味がありませんし、地上戦で奪回するにしても、戦線が間延びして対応が難しいということもあります。加えて古代イスラム帝国で異教徒に課した人頭税を徴収していると伝えられています。おそらくこの部分はイラクのバース党残党が担っているのでしょうけど、問題は異教徒の範囲でして、イスラム教シーア派や、スンニ派でもイスラム帝国再興という自分たちの大義に協力しない「堕落した」者たちも含まれてるかもしれません。人頭税を払わなければ容赦なく粛清されるという形で、恐怖の統治が行われているとすれば、難を逃れるシリア難民が大量に出ても不思議ではありません。加えて空爆もありますし。

そのシリア難民をドイツを中心にEUが積極的に植え入れる姿勢を見せていることは、人頭税の減少につながりますからダーイシュにとって面白くないわけで、また空爆への報復の意味も含めて、ロシア民間機やパリの劇場など、攻めやすいところを攻めているという意味で、ダーイシュのテロは戦略的です。殺害された実行犯の1人にシリアの偽造パスポートを持たせたのも、欧州の難民排斥の世論の刺激を狙ったものでしょう。

元々主権国家ならざるダーイシュとの闘いは非対称戦なわけで、ダーイシュは堕落したエジプトの官吏を篭絡したり、若年失業率が高止まりしている欧州で不満を抱く若者をリクルートするなど、ダーイシュ側のリソースをあまり消費せずに犯行に至ったわけです。それを支えるのがSNSなどのネットインフラですが、PS4やⅩboxなどのゲーム機のオンラインゲームのチャット機能を使った情報交換が行われていたという報道もあります。仮に通信を傍受してもネットゲームを楽しんでいるようにしか見えないわけで、犯行を事前に察知することは困難です。

というわけで、パリのテロは背景に先進国の所得格差の拡大があるわけで、結局ここを何とかしないとテロリストに付け込まれるわけです。空爆で解決できる可能性は皆無です。それでもロシアを含む大国同士で共通の敵を作ることで、格差問題のような厄介な国内問題を逸らすことはできるわけで、リベラルなはずのオランド大統領の過剰反応を見ると、暗澹たる気分になります。資本主義社会では所得格差の拡大は不可避で、対策の必要性を指摘したピケティの母国でもあるんですが。国内の格差問題という意味では、日本にとっても対岸の火事とは言えません。

その後の報道で実行犯の若者の実態も明らかになっておりますが、移民でフランス語が不自由でファストフード店ぐらいしか勤務先がなく職業的スキルを身につけるチャンスすらないといった中で、簡単にリクルートされているわけです。元々敬虔なムスリムでも何でもない若者が、イスラムの大義を教条的に吹き込まれればどうなるかということですね。このことの深刻さは、日本で言えば根拠不明の「日本の伝統」にコロッと騙され不満のはけ口を在日韓国人などへのヘイトスピーチで紛らすネトウヨやウソ八百の大阪都構想再びとやりたい放題の橋下シンパみたいなものとでもいえば腑に落ちるところでしょうか。99%役に立たなくても一般教養が重要なのは、簡単に騙されないことと言えます。大阪の人、民度が問われますぞ。

フランスと言えばこんなニュースも。

フランス北東部の高速列車脱線、10人死亡  :日本経済新聞
テロの翌日ということで、テロも疑われたようですが、単なるオーバースピードということでした。不可解なのは高速新線と在来線の連絡船部分で元々速度制限されていたはずですし、保安装置は働かなかったのかなどの疑問はありますが、続報がないので判断がつきません.。報道の通りならかなりお粗末ですが。

ただ日本でも気になるニュースがありました。

「自家用車タクシー」特区で解禁 交通網弱い地域中心、高齢者・訪日客の足に :日本経済新聞
所謂白タク解禁ですが、過疎地の交通に利用って、そもそも過疎地ではマイカーのトラフィック自体が少ないわけですから、ライドシェアが解決策になるわけがありません。むしろ現行の道路運送法78条、79条で自家用自動車の有償運送が定義されており、実際過疎地の乗合バス廃止代替などで活用されています。日本でライドシェアが解禁されていないのは、鉄道やバスなどの公共交通の役割が大きいことと、とマイカーのトラフィックが輻輳する都市部ではタクシーとの利害調整が必要なことに加え、安全輸送が担保できないとか白タクその他の雲助行為の懸念があることなどなどの理由が大きいでしょう。また多くの都市圏でタクシーの台数制限撤廃で過当競争となり安全輸送が脅かされる事態となって、逆に台数制限が課されているのが現状です。おそらくuberを意識した特区構想でしょうけど、現行法がどういう状況なのかを無視して何でもかんでも特区で規制緩和とは法治国家があきれます。

法の支配を価値観として中国に対抗心を燃やす安倍首相ですが、放置国家の呆の支配が実態です。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, June 07, 2015

あーせい、こーせい、そーせい

てなわけで、前エントリーのジングウ・ファミリアが迷走してます。結局デザインコンペで選ばれたザハ・ハディドとの契約を解除して、どうやら屋根なしスタジアムに仮設スタンドで当座をしのぐようです。問題の根源にあるザハデザインから離れたのは半歩前進ですが、そもそもデザインコンペ当時から指摘されていた問題に目をつぶったまま突っ走った文科省や体協の責任は重大です。

ザハデザインの実現可能性の低さは、あの屋根が径間500mの橋と考えればわかりやすいのですが、川や海なら別の場所で組み立てた橋桁を船で運んでクレーン船で設置という方法が使えますが、神宮の森では使えない手法ですから、現地に巨大鉄工所を期間限定で設置するしかないですし、大量に鋼材などを搬入するためには、広範な周辺道路の整備も必要です。そのために費やされる費用は3,000億円から1,600億円に減額見直しされた本体建設費を上回るものになる上、神宮の森の保全にも悪影響確実というわけで、実際に着手するまで気付かなかった無能ぶりにうんざりします。負担を断った東京都の対応は正しいと言えます。

てなニュースの一方、今週も起きた重大インシデント。

京浜東北線電車が線路内の看板に衝突、けが人なし 点検作業員、誤って置く? - 産経ニュース
空自ヘリ・ANA機・JTA機、あわやのトラブル 那覇空港 | 沖縄タイムス+プラス
名鉄運行続行に疑問 中部運輸局、停電「本来は故障扱い」:社会:中日新聞
京浜東北線で保線作業員の勘違いで並行する東海道線に設置する筈の作業看板を京浜東北線に置いて電車がと今田もの。2つ目は全国版のニュースで大々的に取り上げられましたが、管制官の離陸指示を自機に対してと勘違いした自衛隊ヘリの過失ですが、異常事態を咄嗟の判断で回避したANAとJTAのパイロットはお見事です。3つ目は電気連結器カバーが外れて雨水侵入によるショートが原因んで電源ダウンした列車がブレーキが作動せずオーバーランしたものですが、名鉄の対応にいろいろ問題が指摘できますが、詳述は避けます。

こういうニュースに接して思うのは、日本の人口減少ン0インパクトが、マンパワー不足による労働力の劣化につながっているのではないかという危惧です。人口減少といっても、生産年齢人口の減少ですから、少子化対策は解決策になりません。むしろ高齢者の増加と共に扶養人口の増加をもたらし、少数の現役世代への負担を加重させる悪手です。以前から指摘していますが、労働力の減少は資本装備の増強である程度カバーできるんですから、その方向で対策を打つ必要があります。新国立競技場のようなリソースの浪費は許されないという自覚が必要です。

同様のリソースの浪費は昨今の地方創生ブームにも感じます。そんな中でこんなニュースを取り上げます。

45年ぶりにSL疾走、ファンら見守る 鳥取の若桜鉄道:朝日新聞デジタル
鳥取県の三セク若狭鉄道の活性化策として、JR西日本から無償譲渡されたC12型SLを活用した沿線活性化策の社会実験ですが、車席がなく従来若狭駅構内の体験運転などに試用されていたものを、本線運転しようというわけで、車籍のないC12を走らせるために本線を線路閉鎖して走らせるという手続き上はトリッキーなやり方です。車籍を取得するには保守検査体制を整えて鉄道事業運転規則に合致した体制を組む必要がありますが、自治体主導の三セク鉄道には高いハードルです。

面白いのは撮影地の所謂お立ち台を有料化したことで、単発のイベント運行ではありますが、定期運行を睨んでキャッシュフローを生み出す努力は評価できます。ただしSL運行自体は大井川鐡道のほかJR山口線、真岡鉄道。秩父鉄道などで定期運行され、それほど新鮮味があるわけではありません。競合がある中で、若桜へ足を運んでもらえるにはどうするか、そこまで考えなければうまくいかないわけで、今回の社会実験が一過性のイベントで終わるか、指定日だけでも定期運行にこぎつけられるかは予断を許しません。そしてSL運行の老舗の大井川鐡道にも容赦のない現実が降りかかります。

大井川鉄道、再生支援申請へ 沿線の地域づくりに影響  :日本経済新聞
70年代に名鉄が資本参加し、SL運行で観光鉄道として集客力を発揮し、ローカル私鉄の勝ち組とも目されていましたが、沿線人口の減少には抗えず、また関越道事故を契機とするツアーバス規制強化で、新金谷から大井川鐡道へ乗り継ぐツアーバスが激減し、経営の屋台骨が揺らぎ、利用の少ない一般列車の減便に至ったのですが、島田市をはじめとする地元自治体への支援要請も不発で、政府系ファンドへの支援要請となりました。スポンサーとして北海道のホテル事業者のエクリプス日高が出資する一方、名鉄は撤退します。

地元自治体との関係でいえば、観光鉄道としての成功体験故に自治体が動かなかった可能性があります。つくづく交通政策基本法の元となった交通基本法の民主党案にあった移動権が盛り込まれなかったことが残念です。観光鉄道としての成功は決して鉄道の未来を保障するわけではなく、地域との関係を定義できなければ、生きた鉄道としての命運は開けないということですね。移動権に関しては憲法に定める基本的人権の拡張概念として定義することで、憲法に紐付されれば、憲法そのものの改正をよりやりにくくする意味もあり、現在安保法制絡みで国会が迷走してますが、所謂護憲派も「憲法を守れ」だけではなく、憲法を生かした立法を心掛けてこなかった結果が今の混迷ということですね。ちなみに安保法制に関しては、9条だけが問題ではなく、内閣の権能を定義した73条に軍事に対する指揮権が明記されていないことも問題になります。

ま、こんな状況ですから、某大都市の名物市長ご執心の都市鉄道三セクでのSL列車運行の協力要請を大井川鉄道が断ったのは当然ですね。それどころじゃないわけですから。

というわけで、大都市と地方との関係でいえば無視できないニュースがあります。

25年の東京圏、介護施設13万人分不足 創成会議、41地域へ移住提言 政府、交付金で後押し :日本経済新聞
首都圏の高齢者集中で施設が不足するから、施設に余裕のある地方へ高齢者の移住を促すというのですが、高齢者ほど住み慣れた地域を離れたくないものですし、ましてインフラが整備された大都市部ほど生活しやすいということもあります。むしろ問題は地価が高いがゆえに施設の整備が思い通りに進まないし、介護職の賃金が低すぎて、地価が高い東京では生活できないなどといったことが問題なんで、これは例えば今後建設されるマンションを高齢者対応の医療や介護施設のテナント誘致を義務付けるとか、介護保険からの介護報酬以外に、都などが上乗せするとかやりようがあります。要は実際のニーズに合った社会保障サービスを実現させることであって、数合わせの移住計画などうまく行くわけないです。ま、こんなところに地方創生を打ち出す現政権の統制的な性格がにじみ出ています。あーせい、こーせい、そーせいじゃうまく行かんわ。


| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, April 19, 2015

インシデント週間

山手線で重大インシデントがありました。12日に神田駅近くの山手線と京浜東北線の併走区間で更新により撤去予定の架線柱が倒れ、線路を死傷したものでs、数分前に営業列車が通過していたことから、重大事故につながりかねないインシデントとなりました。朝6時に発生し休日で工事スタッフが集まらないこともあり、復旧は15時と9時間に及ぶ運休となりました。

とはいえ休日だったから混乱はそこそこで済んだ面もあります。山手線は田町―田端―池袋間で運休。京浜東北線は蒲田―東十条間で運休とし、後に蒲田―品川間で運転再開するも、折り返し設備の制約もあり、運転間隔は開きました。それでも並行する中央線と東海道線、上野東京ラインは生きており、地下鉄への振替輸送も行われました。平日だったらもっと混乱したかもしれません。

その後の報道でJR東日本は10日時点でポールの傾きを認識していて13日終電後に撤去工事を予定していたのですが、週末を挟んだから対応が遅れた面もあるわけですが、同時に異常を発見しても直ぐに工事に取り掛かれない現実もあり、この辺の時系列の微妙さは頭に入れておく必要があります。

そもそもは2本のポールに横梁(ビーム)を渡した状態で、架線にも張力が掛かっているわけですから、微妙な構造計算が必要なのではと思っていたら、案の定同様の工事では構造計算して上司の承認を得ることがマニュアルに定められていたということで、何故マニュアル違反が生じたかが根本の問題です。加えて異常を認識し工事を手配するバックアップがどこまで可能なのか、特に昨今保守部門は外注化されていて、指示命令系統に齟齬が生じやすい背景はあったわけです。リカバリーにも課題があるわけです。マニュアル違反という意味ではJR北海道の青函トンネル列車発煙事故と共通ですが、こちらは正社員で運転保安要員である車掌の判断の問題があり、しかも記者会見で社長がそれを適切とするなど、事後の対応にも疑問があり、より深刻です。

14日には今度は広島空港でアシアナ航空機の着陸失敗という事故が起こりました。広島空港は天候の急変で霧による視界不良があるということで、カテゴリー3の無線誘導装置(ILS)が設置されていたものの、西側だけで、当日は風向きの都合でで管制官に東側からの着陸となり、着陸に失敗したものですが、パイロットのミスとする見方と悪天候によるダウンバーストの影響とする見方があります。

事故機はエンジンを接地してバウンドして滑走路を外れており、まかり間違えば火災による爆発炎上の可能性もあったほか、フェンスの外は崖になっていて、運が悪ければ機体ごと滑落もあり得たなど、大惨事の可能性がありました。また照明が落ちて搭乗客の避難が混乱したり、客室乗務員がパニックになってシューターによる搭乗客の避難を補助しなかったとか、いろいろ問題点も出てきております。パイロットのミス、管制官の判断の正否、数十億円と言われるILSの完全設置、客室乗務員の対応など論点はいろいろあり、経営の苦しい地方空港故に、ILS設置も簡単ではないですし、そもそも世界規模のパイロット不足に加えて客室乗務員の適正な訓練など、航空業界が抱える様々な問題が横たわります。頼みの西側ILSも損傷しており、17日に仮復旧したものの、悪天候時には欠航となる暫定運用で混乱は続きます。

というような一連を見ていると、人材の枯渇、労働力の劣化が通底する問題として浮上します。人口減少が続く日本ですが、韓国を始めアジア諸国も同様の傾向が見られます。このことに意味するところは、人口減少による労働力不足を移民で補充することの困難を示します。政府が進める介護労働を外国人実習生で補充というのもまず無理といえます。そもそもトラブルの多い日本の実習生制度は低賃金や長時間労働などで国際機関からも改善勧告されていますし、正規雇用であっても円安で日本への出稼ぎに妙味がなくなっていることを自覚すべきでしょう。政府のやっていることは何の解決にもならないわけです。

ただ気になるのは、人口減少による労働力の希少化が、素直に賃金の上昇につながるのかに疑問があります。というのは、潜在成長率0.6%と先進国中最低の日本ですが、生産年齢人口1人当たりで見ると1.6%程度の成長率になるわけで、実は欧米を凌駕する水準にあります。それだけ労働生産性が高いのかといえば、時間当たりの労働生産性は欧米に大きく後れを取っており、実態は長時間労働の深刻さを伺わせます。実は日本人雇用者も実態は外国人実習生に引けを取らない劣悪な状況に置かれているわけです。実は日本の労働市場は新興国並みというお寒い状況です。

生産年齢人口が減少するんですから、本来は労働生産性を高めなければならないわけです。労働生産性は単位時間当たりの付加価値創出力で測られますから、高付加価値労働へのシフトが重要なのに、現実的には逆の現象が起きているわけです。付加価値が低いから長時間労働で埋め合わせなければ国際競争に勝てないという悲しい現実です。

高付加価値というと必要性の薄い高機能多機能を詰め込んだ結果、世界から忘れられたガラパゴス携帯が典型的ですが、必要性を超えた高性能高機能高品質を付加価値と勘違いしているのが日本のリーダーたちです。付加価値というのはユーザー目線での評価の総体ですから、ユーザーである消費者の購買力に依存し、その消費者の大多数は労働者であるという当たり前の現実が見えていないのでしょう。無駄な高性能高品質よりも、ブランドやサービスで差別化することこそ重要です。言い換えればサービスの高価格化ということです。

新興国の工業化の進捗で供給過剰な工業製品で勝負すれば低価格に泣くわけで、そこを認識できない日本の無能なリーダーたちは、値下げしないと物が売れないと「デフレだ、日銀何とかしろ!」てなことで、責任転嫁するわけですが、それで問題が解決するわけがありません。必要なのは産業構造の転換を伴う本来の構造改革ですが、既得権層の反対で進まないばかりか、政府が既得権層におもねっているのですから、日本経済は沈みっぱなしにならざるを得ないわけですね。これ以上続けると落ち込みますからこの辺にしときます。

てな中で、交通分野でも人手不足は確実に事業環境を侵食するわけですが、ちょっと面白い傾向が先日開業した北陸新幹線で見られます。

乗客2.7倍、乗車率は50%割る 北陸新幹線1カ月  :日本経済新聞
これぶっちゃけ航空の便数維持の結果、平日のビジネス客の移転が進まず、北陸新幹線の乗車率を低めているわけです。つまり観光がメインの新幹線ということで、航空は機材の小型化もあって搭乗率100%近い、つまり相当数の利用を断っている状況ですが、運賃を安く設定しても燃費の良い小型機材で席を埋めている状況は採算性も高いと言えます。逆に言えば東京対北陸のビジネス利用は航空でカバーできるオーダーしかないというわけです。北陸新幹線は料金を高めに設定してますし、グランクラスを設定し3等級制として客単価を上げてますから、乗車率の低さはカバーできるでしょう。逆に需要の季節波動の多きい観光輸送では乗車率の低さは機会損失の低減につながるわけですから、おそらくこのまま役割分担が定着すると考えられます。

これは従来新幹線の開業が航空の撤退につながる傾向とは異なり、結果的にJRも航空も付加価値を高めたわけです。もちろん新幹線に関しては引き換えに並行在来線切り離しで三セクに負担をかけていることには注意が必要ですが。新在通算で付加価値が高まるかどうかは現時点では何とも言えません。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

より以前の記事一覧