大手私鉄

Tuesday, May 05, 2020

出口が見えないアベノ自粛

予想されたこととはいえ、緊急事態宣言の延長が決まりました。そしてプロンプター読んでるんだけの「台本営発表」とも謂われる首相記者会見で、緊急事態宣言の解除の基準は語られませんでした。8日を8月に読み違えたみたいですが^_^;。出口が見えないという意味でアベノミクスと同じです。加えて検査体制の拡充が未だに実現できていないために、そもそも出口を判断できるデータがないという現実もあります。

この辺統計135°の歪みで指摘した統計不正問題に通じますが、現状を正しく把握できないから緊急事態宣言解除のような責任のかかる決断が出来ない訳です。あと内緒ですが伝染ルンですアベノミクスで指摘した消費指標を家計調査ではなく商業統計に切り替えてインバウンド消費が二重計上されていた疑惑ですが、コロナ禍でこっそり見直されてます。嘘が下手な嘘つきの典型的対応です。

あと「新しい生活様式」とかいう大きなお世話を専門家会議が発表しましたが、これ政府の諮問に基づいた助言機関がなぜ国民向けにこんな発表するのかですが、助言に基づいて責任を負うべき側に責任を負う姿勢が見えず、専門家会議に丸投げしている状況が透けて見えます。政府への助言が暖簾に腕押しでは、国民に語り掛けて協力を得るしか手段がない訳で、余計なことをさせられている訳です。当然専門家会議としては責任を負えず安全側へ判断が偏りますから、出口の判断はますます遅れます。

てことで巣篭りは長引きそうです。そうなるとリモートワークの範囲が拡大することになります。既に通勤定期券の払い戻しが増えており、加えて年度替わりで買い替えが多い4月もおよそ3割減ということで社畜の国で指摘した企業の通勤手当支給見直しがさらに進むことになります。その結果鉄道事業者が苦境に陥ております。

記者の目 JR東、コロナで見えた鉄道の盲点 3割減収なら利益ゼロ  証券部 堤健太郎:日本経済新聞
JR東日本だけの問題じゃないんですが、大都市圏の通勤需要で支えられている事業者にとっては、割引とはいえ前払いで収益を現金化できる定期券売上は経営安定のキモであり、経営の基礎体力をもたらします。記事で指摘されている固定費のかなりの部分を定期券売上でカバーし昼間や土休日の定期外客で上乗せすることで利益の最大化を図る訳ですが、こちらも外出自粛で激減している訳ですから、JR東日本と言えども1-3月期に赤字転落してますし、現状では4-6月はもっと悲惨です。

収益構造から言えば、運輸収入の依存度の高いJRの方が関連事業収入が多い大手私鉄より厳しい訳です。例外的に関連事業比率の高いJR九州は安泰かと言えば、ライバルの西鉄と比べれば生活関連事業で沿線にドミナント形成という水準には達しておらず、営業エリアが広すぎるから仕方ないんですが、トータルな経営体力では苦しいところです。

加えて整備新幹線が重荷になります。整備新幹線は30年リースで負債を計上している訳で、特に整備新幹線区間が長いJR東日本には重荷でしょう。救いは水害で水没した北陸新幹線E7系廃車に伴って延命されたE4系を廃車して減便することである程度出費を防げますが、リース料は固定費としてのしかかります。鉄道・運輸機構による債務繰り延べの可能性は、リース料が北海道新幹線などのの整備費用として見込まれており整備を止めることになりますから、難しいでしょう。

それでも莫大な減価償却費があり、JR東日本でおよそ2,000億円規模ですから、投資の抑制によってキャッシュアウトを防ぐことは可能ですが、ホームドア設置やバリアフリー化などは減らせませんから、車両更新や新線建設が抑制されると考えられます。航空業界の逆風もありますから、羽田空港アクセス線は幻の新線計画になる公算大でしょう。

この流れで言えば関空アクセス輸送を睨んだ大阪のなにわ筋線もヤバいかも。泉北線と市営地下鉄の売却益で府市共に財源確保してメトロの稼ぎ頭の御堂筋線のライバル路線を作るという倒錯が起きる訳ですから。

JR東海も稼ぎ頭の東海道新幹線で8割減ですから、長引けばリニアを諦めることになりそうです。名古屋リニヤだがや以来疑問を指摘してきた中央リニアも幻になる訳です。それでも財務体質の強いJR東海はある程度持ち堪えるでしょう。JR西日本は赤字ローカル線の整理に活路を見出すと考えられます。中国地方の路線網はかなり整理されそうです。JR九州は上場時に経営安定基金を取り崩して資産の減損処理と整備新幹線リース料の前倒し支払いで負担を減らしてますが、やはり赤字ローカル線整理に踏み込むことになるでしょう。本州3社と比べて財務体質の弱さは否めません。そしてJR四国ですが。

JR四国に国が改善指導 自立経営阻む2つの「老い」:日本経済新聞
コロナショックで真っ先に連想されるのはJR北海道でしょうけど、札幌都市圏への経営資源集中を前提とした再建策で先が読めるJR北海道に対して、エリアに大都市圏が存在せず、過疎化と高齢化が止まらないJR四国の方がより深刻です。とはいえ関係の深いJR西日本に助けを求めたくてもその余裕はなく、そこへ外出自粛が重なる訳ですから、出口が見当たりません。四国だけ三蜜解禁してお遍路さん呼び込むか?

鉄道として残すならば何らかの財政支援が必要ですが、JR北海道でも見られるように、結局交通政策基本法で謳われた地元自治体の関与が無いから国が動かないという倒錯が起きる可能性があります。JRでこれですから、過疎地の地方ローカル私鉄で持ち堪えられないところはちらほら出てくるでしょう。アベノ自粛は公共交通を枯れさせる可能性大です。

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Sunday, April 26, 2020

不要不急の黄金律

Zoomを200mと空目して、ソーシャル・ディスタンシングってそこまで離れないといけないの?と勘違いした人もしなかった人も、お元気でしょうかwwww。私はと言えば、元々引きこもりのボッチですから、あまり変化ありませんが、流石に接触機会が増える乗り鉄は自粛してます。

しかし不要不急が叫ばれるけど、何を以て不要なのか不急なのかは曖昧です。例えばパチンコ規制ですが、開店前の行列に始まり、店内の密集度も高いし、換気が十分かどうかも不明で、しかもプレイ時間もそれなりに長い訳ですから、入場制限や間隔を空けるなどは必要かもしれませんが、補償無しの自粛要請には無理があります。そして自粛に応じなければ店名公表するとして大阪市などでは公表されましたが、これ逆に人を集める効果があるので、あまり意味がありませんし寧ろ逆効果です。欧米のように休業補償を条件に強制力を持たせるべきところです。

現行憲法でも強制力を持たせること自体は可能ですが、補償したくないから曖昧にしている訳です。旧憲法下で国家総動員法などと共に成立した陸上交通事業調整法で、東京の私鉄統合が行われたのは空飛ぶ都営交通でも取り上げましたが、東武野田線の柏以南は京成エリアですし、東上線は西武エリアですが、路線移管は行われず、中央線以南の西南部が東急に統合されたに留まりますが、西武に統合された多磨鉄道はそのままだし、実際は資本の論理による乗っ取り(京浜)や電力国家管理による独立維持の放棄(小田急、京王)の結果ですし、南武、鶴見臨港は国有化だし相鉄は相模線の国有化で東急への経営委託はしたものの旧神中線のみで独立存続してます。

地方でも1県1事業者を模索されましたが、ほぼ実現した富山と福岡は、事業者同士の自主的な統合の結果ですし、富山では県営鉄道や富山市電まで富山地方鉄道へ統合する徹底ぶりでしたが、一方で県内の交通統合の音頭を取った熊本では、熊本電気鉄道と熊延(ゆうえん)鉄道(後の熊本バス)が応じず中途半端になりました。近畿圏でも関西急行鉄道と南海鉄道が統合して近畿日本鉄道が成立した一方、南海傍系の高野山電気鉄道は独立を維持して戦後の南海電気鉄道の分離独立の受け皿となりましたし、力業の統合の阪神急行電鉄と京阪電気鉄道は、やはり旧京阪が分離独立してますが、新京阪線は阪急に残り京都線になるなど混乱しました。コロナ対応がうまくいかないのは憲法は関係ありません。

そして国家総動員体制下で鉄道事業者に求められたのが不要不急線の休廃止と資材の供出でしたが、こちらは国鉄白棚線(白河―磐城棚倉)をはじめ全国の多くの鉄軌道で行われ、軍需品増産や兵員輸送に必要な路線建設に回されたり、金属類は兵器生産に回されたケースもあるようです。という訳で鉄ちゃん的にはこれを連想してしまいますが、基本的に未補償でした。国鉄白棚線は路盤を専用道にして国鉄バス路線として存続しただけマシではありました。戦時BRTですね。

てことでコロナ問題での政府の対応は大いに不満のあるところです。炎上したアベノマスクにしろアベノコラボにしろ、官邸の1人の経産省出身秘書官の発案だそうで、いずれも内閣支持率の低下に焦って提案したものだそうですが、検査を増やすとか衛生用品の増産などの実質的な対策ではなく人気取りに走るところが国民から見透かされている訳です。また1世帯30万円給付も無条件に1人10万円に変更されましたが、これ公明党がが意地を見せた訳じゃなくて支持母体の創価学会からの突き上げで仕方なくって話で、単なる自己保身です。こんな連中が言う不要不急には違和感しかありません。今一番の不要不急は五輪だろ。その一方で感染爆発した欧米は次のフェーズへ進みます。

米欧のコロナ感染、公表値の10倍も 抗体検査で判明  人口6割で「集団免疫」 まだ遠く 精度向上に課題
PCR検査に精度の問題があることは確かですが、とにかく感染の実態を把握するには検査を増やすしかない一方、出口となる集団免疫の獲得進行度を見る意味もあり、遺伝子検査であるPCR検査に留まらず血液を採って抗体の有無を調べる抗体検査へと進み、疫学データを拡充しています。結果はPCR検査の陽性反応で確認された感染者数を大幅に上回る感染率であることが分かった一方、集団免疫獲得と言える60%には全く届かないということで、終息にはまだまだ時間がかかることが明らかになりました。また1度回復して再発症するケースも報告されており、その場合重症化するケースが多いということもあり、免疫の暴走が疑われています。つまり集団免疫獲得が本当に出口になるかどうかもわからないってことですね。

加えて国内感染が終息しつつある中国では帰国者を原因とする感染拡大が見られるなど、今後第2波第3波の感染拡大も警戒する必要があります。しかもそのタイミングが国毎にズレてますから、一旦落ち着いても油断できない状況は続く訳です。1年後に五輪開催できると考えるのはあまりに楽観的です。

最後にちょっと臭い話。鉄道を巡る戦時体制で特筆すべきは戦時下の食糧増産計画でして、人口密集地の東京では住民の糞便が大量に出ることに注目した当局が、郊外の営農地帯への堆肥供給のために鉄道各社に汚わい輸送を要請したものの、乗客の評判を気にして各社尻込みする中で、唯一要請に応じたのが西武鉄道ですが、戦時体制でただでさえ要員が徴用されて人手不足の中、御大堤康次郎の陣頭指揮で大混乱に陥ったという逸話があります。所謂西武鉄道黄金列車伝説です^_^;。

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Sunday, April 05, 2020

社畜の国のリモートワーク

予想通り東京がえらいことになっております。前エントリーで指摘した指数関数的な感染拡大が現実となってきています。流石にヤバいんで、私も自粛して渋谷の銀座線ホーム見物や高輪ゲートウエイ駅訪問やアーバンパークライン全線急行乗車や発着枠増加に関連してターミナルを刷新した羽田空港見に行ったりは断じてしておりません(汗)。

首都圏 鉄道利用7割減 小池知事「爆発的な感染増への岐路」:日本経済新聞
先週末は小池知事の脅しと寒さや雪など悪天候も手伝って人手は大幅に落ちたようです。平日はどうなのかは鉄道通勤をしない立場になって久しい私の知るところではありませんが、リモートワークの拡大で減ってはいるようです。てことで今回はリモートワークを取り上げますが、その前にアベノマスク(笑)。

これ経産省系の官邸官僚の進言を受け入れたものらしいんですが、「国民に喜ばれる」という言葉を真に受けたものらしい。人気取りのつもりが炎上案件となった訳ですが、この唐突な思い付きを誰も止めなかったというのが現政権の病巣を示します。最早官邸には国民の気持ちを理解できている者がいない訳で、なるほど、これじゃ私権制限を伴う緊急事態宣言なんか出しようがない訳です。

とはいえ法的拘束力は限られていて医療機関に対して指定医療機関に指名するなどの権限が生じる一方、外出制限などは要請の域を出ない訳ですが、既に医療部門に負荷がかかっていて医療従事者の感染も見られますし、そうなると濃厚接触者も含めて自宅待機となって逼迫したマンパワーを更に追い込む悪循環です。故に厳しい現実に直面する医療関係者から「緊急事態宣言を出すべき」の声が上がってますが、そんな現状認識も出来てないってことです。という訳で今週末は不本意ながら本気の乗り鉄自粛です。

ただこの状況でも中国をはじめ感染症診療の有効性が実証された遠隔診療は医師会が難色を示して厚労省が反対している現状です。勿論対面診療と同等とはいきませんが、命に係わる重症者以外は自宅で経過観察とすることで、医療現場での感染拡大が防げて医療崩壊を防げる訳で、既に医療部門が悲鳴を上げているのに医師会トップが渋い顔って構図です。

これ貧テック鈍テックでも指摘しましたが、日本では遠隔診療どころか医療機関横断で共有可能な電子カルテも未導入ですし、電子処方箋も無いし処方箋薬のネット購入も限定的にしか認められない現状ですが、その結果どういうことが起きているかというと、同一人物が異なった医療機関を受診し同じ薬を処方されて飲みきれないほどの薬を抱える現実があります。医療のフリーアクセスが原則の日本ではこれ防ぎようがありません。

そして処方箋の期限を迎えて追加の薬欲しさに受診して処方箋を受け取りのエンドレスですが、特に高齢者で回復の見込みがない人ほどこういう行動に陥りがちな一方、医師が継続して処方箋を出さなければ別の医療機関に行って同じ薬の処方を受けますから、所謂薬漬け状態に陥る訳で、保険診療の負荷を高めている一方、薬の処方箋欲しさに通院するから院内感染のリスクを知らずに負っている訳で、医療情報が共有されていないから生じる無駄ですし、当人にとっても無駄な通院を誘発し想定外のリスクを負っている訳ですね。これ結局医療機関にとっては保険点数稼ぎになりますから放置しても困らない訳で、改革の動機づけが乏しい訳です。

今回のような感染症に対してこういった日本の医療体制が脆弱なのが問題なんですが、感染の実態を知るための検査すら「医療崩壊につながる」と反対の声が上がるって、結局現状維持したいだけだろって話です。その結果医療崩壊が避けられない事態になって緊急事態宣言をおねだりするってのも大概です。しかし事態は確実に切迫してきています。

てことで本題ですが、リモートワークにもいろいろ落とし穴がありまして、例えば会社印が必要な契約は結局押印のために出社する必要がありますし、その会社印を管理する部門も当然出社していなければなりません。こうしたリモートワーク不可能な事務仕事ってのは意外とありまして、結局リモートワークは一部に限る訳です。しかも契約を扱う営業社員は書類づくりは自宅で出来ても、こうして節目節目で出社しなければならない訳ですから、場合によっては寧ろ負担が増える場合もあります。

にも拘らず自宅勤務はタイムカードなど勤務時間を客観的に示す証拠が得にくい訳で、社印押印のための出社にかかる移動時間は通勤時間と見做されて勤務時間にカウントされず、結果的にリモートワークで残業カットという会社にとっては美味しい事態が生じますから、コロナ禍が去ってもリモートワークは続く可能性はあります。社畜の国あるあるですね^_^:。

それと社内会議のビデオ会議化にも落とし穴がありまして、パソコンやスマホの画面を見ながらのやり取りで会議を行うこと自体は可能であっても、特に利害対立のある面倒な案件で腹落ちする落としどころを探して確実なアウトプットを得ることが可能かどうかは微妙です。ツールとしてはスカイプやズームなど手軽に使えるものが出てきてますが、ただでさえ空気に流されやすいと言われる日本人が果たしてモニター越しに本音をぶつけ合えるでしょうか。特におっかない上司に対して。この辺は会議の進行役となるファシリテーターの実力次第ではありますが、こういった訓練を重ねた人材がどれだけ居るかというとお寒いですね。

加えて社外秘の扱いやセキュリティがデリケートな問題を孕みます。そもそも会社支給のPCを自宅に持ち帰ることを認めるかどうか?あるいは社員の私物のPCで会社のネットワークへの接続を認めるかどうか?そしてビデオ会議も含めてそもそも社員の自宅のネット環境のセキュリティが適切かどうか?またビデオ会議の発言が外部へ洩れないか?他にも考えられますが、この辺の問題をクリアするのは結構ハードルが高いと言えます。しかし確実い言えるのは、万が一情報漏洩があればリモートワークに励む社員に責任転嫁されるだろうということです。

そして微妙だなと思うのが通勤手当の扱いです。これも最悪の想定をすれば、リモートワークを理由に通勤手当の支給を渋る企業が出てくる可能性はあります。その場合社印押印などで出社した時の交通費精算をその都度行うならば問題ないですが、それをシステムがカバーしているとは限らない訳で、下手すると経費の自己申告のために出社せよってばかげた話もあり得ます。今は非常時ってことでどさくさ紛れに始めた会社ほど、この辺は要注意です。

てことで先週末の乗客減だけで7割減ったと即断はできませんが、コロナ禍が終わってもリモートワークが続く可能性は、会社にとっての好都合である限り一定に存在します。仮に7割減までには至らずとも5割減ぐらいになれば首都圏でも快適通勤が実現する可能性はありますが、その場合現在の輸送力水準が維持される前提でって話になりますから、当然鉄道事業者にとっては逆風です。あまり想像したくはありませんが、通勤手当不支給が広がれば割引運賃ながら先払いの安定収入となる定期券の売上減少は鉄道事業者の経営にボディーブローのように効きます。そうなると現行の輸送力水準の維持が難しくなる訳で、輸送力の減量に踏み込む可能性はあります。

それを防ぐための増収策があれば現状維持はある程度可能でしょうけど、例えば通勤ライナーのような着席サービスは、混雑が緩和されたときにどこまで有効かという問題を抱えます。あとMaaSによるラストマイル輸送との連携で付加価値を生む方向性は考えられますが、欧州でのMaaSの実現例は都市圏の運輸連合方式による共通運賃制度がプラットホームの役割を果たしていることから、事業者が多くそれぞれ沿線の囲い込みに余念がない日本でうまく機能するかどうかの疑問は残ります。あるいは戦後ほとんど見られなかった事業者の合従連衡に進む可能性も指摘できますが、阪急阪神の経営統合で大騒ぎしたぐらいですから、簡単ではありません。

あとは東京メトロなどで社会実験が行われた宅配便荷物の客貨混載が進む可能性はあります。ドライバー不足が背景にある一方、感染症対策としてのECの拡大に対応する必要から宅配事業者側の都合で実現する可能性が高まるという点もあります。その反面鉄道沿線の商業施設の利用が忌避されるとすれば儲けの大きい定期外客を減らすことと裏腹となりますので、プラスマイナスは微妙です。

一方トヨタがNTTと組んで静岡県裾野市に建設するスマートシティ構想を推進すると発表しています。つまりこれ自動車メーカーのトヨタがまちづくりを事業化するって話なんですが、CASEの繋がる、自動化、シェア、電動化のいずれも開発費負担が重くて利益見通しが持てない中で、トヨタ流のMaaSを実現して付加価値を得ようって話です。ある意味日本では大手私鉄の専売特許に近かったまちづくり事業への参入となる訳で、トヨタ自身にも迷いがあると思われるので、直ちに手強いライバルになるとは限りませんが、鉄道事業者の連携や合従連衡無しに太刀打ちできるとも思えません。

そして高輪ゲートウエー駅開業でまちづくりに乗り出したJR東日本ですが、安中榛名や喜連川の宅地開発分譲でコケたJR東日本にとっては、まちづくりは未踏の分野です。しかもグローバル化を前提とした職住近接の国際都市というコンセプトも、コロナ後を睨むと見直した方が良いと思います。特に最近の地価上昇をけん引してきたホテル関連がコロナ禍でブレーキになると、緩和マネーで膨らんだ土地バブルも終わる可能性が高まります。まちづくりの経験豊富な東急やこの地域に根を張る京急や西武との連携を図る方が賢明ですが、果たしてそういう判断ができるでしょうか。COVID-19の後始末は簡単ではないでしょう。

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Saturday, March 28, 2020

感染路は続くよ何処までも

海越え街越え時越えて遥かな世界へ僕たちの見えない未来をつないでる~♪
元歌はアメリカの労働歌で、大陸横断鉄道の建設工事に駆り出された建設労働者が、来る日も来る日も人里離れた荒野でツルハシを振るい、時にはインディアンの襲撃にさらされる命がけの終わりの見えない過酷な労働への恨み節でした。その歌にNHKが旅へのあこがれを表す日本語の歌詞をつけてみんなのうたて紹介したため、日本では全く異なった印象で受け止められてますが、皮肉にも元歌に近い現実に直面する私たちです。

武漢から始まったCOVID-19の感染が世界に拡大し、遂にアメリカの感染者数が中国を抜いて収拾がつかない状況です。COVID-19のような感染力の強い感染症は大都市で感染拡大するのはある意味当然で、中国でも人口1,100万人の武漢市で爆発的感染拡大に見舞われましたし、イタリアでも7ミラノなどの大都市に集中しています。日本でも札幌市がそうでしたし、感染拡大が見られる大阪府や兵庫県、それに東京都もですが、明らかに爆発的感染拡大の兆候が見られます。感染症は指数関数的に感染拡大する訳ですから、いつかはこうなる訳ですが、厚労省の報告書を思い切り誤読して阪神間の往来自粛を呼び掛けたり、唐突に首都閉鎖も有り得ると脅しをかけたりしてパニックを煽る知事たちにうんざりです。

新型コロナ感染者、米は10万人突破 全世界の17%に:日本経済新聞
アメリカの感染者が10万人を超えて中国を抜き世界一となった訳ですが、アメリカでも4割は大都市を抱えるニューヨーク州に集中しており、大変な状況ですが、クオモ州知事の州民向けの演説が評判を呼んでいます。自身が対応に疲れたことを告白するとともに、自分以上に最前線で対応し疲れている人がいることに言及し、非常事態への対応への協力を求めたものですが、病院ベッドの不足や人工呼吸器の不足などの具体的な問題点を明らかにして、パニックにならないように冷静な対応を求めたものです。この演説に好感して株式市場も一時的に上げたぐらいですから、人々に与えた安心感は相当なものでしょう。

翻って小池知事美首都閉鎖発言はインパクトは大きいけれど基本的に脅しですから、それに反応して多くの人がスーパーに殺到して買いだめに走る訳で、SNSに蔓延るデマと変わりません。情報攪乱が市場経済を機能不全に陥れることは前エントリーで指摘した通りです。しかもタイミングが東京五輪の1年延期が決まった後ということで憶測を呼んでいます。まあ五輪に限らず様々なスポーツイベントが中止または延期が相次ぐ中で、今年予定通りに開催できる訳はないんで、見直しは当然ですし、スケジュールが狂った各競技団体にしてもどのみちスケジュールの見直しは必要ですから、調整自体は不可能ではないでしょう。しかし問題は1年後に沈静化しているかどうか不明ということです。

[FT]英の新型コロナ対策、「最善願い最悪に備える」:日本経済新聞
英国ジョンソン首相が集団免疫を打ち出して批判を浴びて引っ込めたという風に報じられていますが、国民の大多数が感染して免疫を獲得すれば、新規感染者が減ってCOVID-19も普通の風邪の1つになり落ち着く訳で、国民の60%が免疫獲得が目安となるということで、それまでの長い道のりを乗り越えるよう国民に協力を呼び掛けたもので、既に市中感染が見られ水際作戦での封じ込めが不可能という現実を示したものです。結果批判を浴びたものの、飲食店等の休業補償や納税猶予や国民への現金配布などの対策を打って理解を求めました。

何だか国も地方も出鱈目なのは日本だけと落ち込みたくなりますが、ここで注目すべきは60%という集団免疫の目安です。既に欧米アジアから南米やアフリカまで感染拡大が見られる現状からすれば、今さら封じ込めは現実的ではない訳で、いずれ世界各地で順繰りに爆発的感染を経験しながら世界全体が終息に向かうのに1年で済むのか?ということです。世界のどこかで感染拡大の混乱が続く限り、公正な世界大会なんか開けない訳で、そう考えると1年後の仕切り直しで突っ走るのはどうかと思います。そもそも人命が関わる問題でスポーツどころじゃないだろうって訳ですが、商業イベント化したオリンピックは簡単に中止できないのもまた現実です。問題の軽重を取り違えてないかってことですね。

それととりあえず3,000億円と試算される延期に伴う追加負担の問題ですが、現状10Cと都と国で押し付け合いしている現状です。これも実際はいくらかかるか想像もつかないのが実際で、事態の進捗に伴って隠れたコストが明らかになることは覚悟しといた方が良いでしょう。この辺福島第一原発の廃炉問題や汚染水問題でも見せられている現実です。こういった計算違いは正常化バイアスが働く以上必然的に生じます。所謂希望的観測に流される訳です。仮に上記のように1年後にも終息していなければ、延期のために負担したコストは無駄になり更に追加負担を覚悟しなきゃならないとなると、五輪の経済効果とは何だったのか?って話になります。

それよりも当面の経済的な落ち込みをどうするかですが、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリアなど欧米諸国に加えて韓国や香港でも国民への現金配布が行われる一方、日本では所得の落ち込んだ世帯に限りというような制限を課すようですが、それをどのように判定するつもりなんでしょうか。しかも時期は5月になるとか言ってる訳ですが、コロナショックによる自粛で職を失ったり所得を失った人はとても待てませんし、消費の落ち込みは更に経済を冷やす訳で、条件付けずに全員に配布する方がコストもかからず迅速に実行できます。

財源は震災復興増税のように事後的に増税して回収すれば良いですし、所得税に税率を上乗せすれば高額納税者ほど負担する訳で結果的に回収されますから所得制限は不要です。一部で言われる消費税減税ですが、そのために法改正して鉄道運賃など公共料金の改定でシステム変更のコストもかかりますから、緊急対応としては不適格です。加えて地方消費税も減る訳ですから、住民サービスを担う自治体が干上がることも忘れてます。それも含めて制度としての消費税の是非や適切な税率の議論は平時に行うべきであり、どさくさ紛れにやるべきではありません。そして与党内の議論で和牛商品券やお魚券といったトンデモ議論があるようですが、非常事態に利権漁りとはお下劣です。ま、こんな連中を選ぶ国民も大概ですが。

それでも流石に公共事業の積み増しは出てこないようです。人手不足による入札不調で執行が約1年遅れの現状では、公共事業を積み増しても経済効果が出ないことが明らかなので、持ち出しにくいんでしょう。その一方で結果的に建設費の相場が上がって民間工事も割高になって所謂民間活用も難しくなり、加えて五輪を睨みインバウンドを睨み活況にあったホテル建設が一転不良債権の山になりそうな中で、ゼネコンは請け負う工事を選別してます。

このコンテクストで今公判中のリニア談合事件でゼネコン各社の暴露合戦が繰り広げられています。既に分離公判で有罪が確定している大林組がJR東海幹部の指示で星取表と呼ばれる工区ごとの予算と受注企業の一覧をExcelで作成したことを暴露しており、談合の物証になると共に被害者である筈のJR東海の関与が明らかになりました。これ鈍器法定で指摘したように、事業費の上限が決まっている中で、ゼネコン各社の過酷な値下げ要求をした挙句のゼネコン同士の仲間割れって構図です。この辺無罪を主張する大成建設も技術的な相談に乗ったつもりが企業秘密の開示につながったことを認めています。

大林組は地元のうめきたやなにわ筋線などもあるし大阪万博も控えているしで、もうけがショボいリニアに過度に付き合うつもりはない一方、五輪関連の受注をほぼ独占してきた大成建設にとってはポスト五輪でリニアは外せなかったという構図です。なにわ無くとも五輪の大成とその逆の大林組という対立構図があからさまで与党の集票マシンだったゼネコンの仲間割れは与党の公共事業への関心も醒めさせたかもしれません。加えてリニア談合事件の影響で各社入札停止処分も受けておりますし。ま、ある意味無駄な公共事業が出来にくくなったとは言えますが。

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Sunday, March 01, 2020

日出ずる国のサンセットクルーズ

アベノミクスを感染症に喩えたら重症化しちゃいました。

首相、感染連鎖阻止へ異例の要請 小中高の臨時休校:日本経済新聞
北海道で小児の感染が出て札幌市を除く公立学校の臨時休校を決めたことに倣ったんだと思いますが、検査件数が相対的に多く、クラスター感染が疑われる状況から判断されたものですが、検査体制が不十分なまま全国に拡大することにエビデンスは示されておりません。北海道でも休校の影響で看護師が勤務できなくなって休業する医療機関が出て逆効果だったりという副作用が現れてますが、国民に不利益を強いる一方、感染拡大に繋がる公共交通機関の混雑は放置されたまま。無意味なパフォーマンスでやってるふりはアベノミクスの文脈そのものですが、今回は流石に国民から大ブーイングを受けてます。

ネットに溢れる検査の精度問題ですが、確かに偽陰性や擬陽性で正確な診断が難しいのですが、それでも感染拡大の可視化という意味で検査データを集める意味はあります。実際北海道ではさっぽろ雪まつりの直後に感染拡大が確認され、所謂クラスター感染の可能性が見えたことで、イベントの自粛や公立学校の臨時休校の判断につながった訳で、傾向を掴んで対策を打つ意味では検査体制の拡充こそ最優先事項である筈です。加えて国民の不安に寄り添う意味もあります。

後者は無発症や軽症で自分が気付かずにウイルスをばら撒いている可能性もある訳で、その不安からマスクを求める仮需要が爆発して店頭からマスクが消えた訳ですが、検査で陰性ならマスクはとりあえず必要ないと判断できる訳で、検査を行うこと自体が情報公開の一環でもある訳です。情報が伏せられれば7デマに惑わされて必要以上にマスクを買い占めたりする行動を助長する訳ですから、マスクが消えたような混乱は情報開示の不備からくると纏められます。

そして検査体制の拡充が遅れた理由としては、国立感染症研究所の処理能力に限界があり、しかも安倍政権で予算削減が行われていたこととか、今回の新型コロナウイルスの検査試薬が未承認だったり、感染研が試薬を独自開発する一方、独自開発されtたロシュの試薬に使用をためらったこととか、様々なことが言われてますが、水際作戦にかまけて検査体制の拡充を後回しにしたことは間違いありません。政治的に重大な判断ミスです。それが顕著に表れたのがクルーズ船ダイヤモンドプリンセスの検疫の不始末です。

ダイヤモンドプリンセスに関しては、国際海洋法の旗国主義の制約で日本政府が十分な対応が出来なかったという議論があります。確かにダイヤモンドプリンセスは英国船籍で運航会社はアメリカだけど専ら日本を含む東アジアでクルーズ航海をしているけど、管轄権のある英政府はこの問題では何もしていないという訳です。

しかし国際海運の世界では、船員の人件費や税制などで維持費の低い国で船籍を取ることは昔から行われてまして、日本の船会社の所有船がリベリア船籍だったりしますし、旗国主義は実際には空洞化しています。また実際問題として旗国から遠いエリアを航行する船舶に管轄権を行使することは困難です。故に今回の感染症検疫のような非常事態への対応として沿岸国が管轄権を行使することは普通に行われてますし、貧困国や途上国ならいざ知らず、豊かな先進国である日本が対応できて当たり前、できなきゃ恥ずかしいというのが通り相場です。

故にダイヤモンドプリンセスの船内足止め問題は国際的に批判を浴びた訳です。とにかく1日300件のキャパしかない検査体制で乗客乗員3,700名のウイルス検査じゃ、足止めされている間に船内で感染が蔓延するのは素人でもわかる道理です。結果的に3,700名中700名の感染確認がされて5人に1人以上の感染という結果を招いた訳ですから日本政府の責任は重いと言えます。

ダイヤモンドプリンセスは元々日本の顧客開拓の期待もあって三菱重工長崎造船所に発注された船で、乗客乗員に多数の日本人が乗船していた絵ですし、またインバウンドを国家戦略として謳ってた日本政府としては大失態と言える訳です。とはいえ受注した三菱重工はクルーズ船の敬遠が乏しく、特にホテル並みに複雑な船内設備に苦労して、挙句に建造中に火災事故を起こして納期を遅らせるなど散々な結果となり大赤字で、折角のチャンスを活かせませんでした。そして挙句にこれです。

横浜港 クルーズ船の寄港取りやめ相次ぐ:NHK NEWS WEB
これ横浜港に限らずクルーズ船寄港地として日本が忌避されている現実があります。贔屓目に見ても感染の終息が見込めないうちはクルーズ船が戻ってくることはないでしょう。しかも日本政府は相変わらずエビデンス無視のやってるふりで迷走してますから、当分この傾向は続くと見るべきでしょう。20202オリパラも最悪中止もあり得ます。

そして愛ある成長戦略でカジノを含むIR誘致も微妙になります。IR誘致に関しては、ハマのドンが猛反対とも伝えられてますが、横浜市は目のめりで、昨年秋にみなとみらいに本社を移転した京浜急行電鉄もIR誘致に期待感用命しております。裏付けのない噂レベルの話なんですが,横浜市がIR誘致を予定する山下ふ頭へ京急が新線建設を構想しているということで、これがハマのドンの怒りを買ったと言われております。

みなとみらいへの本社移転は日産グローバル本社の場合でも横浜市による便宜供与を含む強力な誘致活動があったと言われておりますが、京急に対しては山下ふ頭へのIR誘致を早い段階で知らせていたとしても不思議ではありません。そして京急はこれまでも支線の活性化に熱心なところがあります。過去エントリーでも取り上げましたが、空港線の羽田空港ターミナル延伸が大成功を収めた京急ならあり得る話です。そしてIR新線が京急誘致のエサになったとすると、東京からいきなり来た新参者が利権をさらう構図としてハマのドンの怒りを買ったというストーリーはあり得ます。

京急としては当面は羽田空港の発着枠拡大への対応と対岸の川崎殿町プロジェクトの最寄り駅として小島新田が変貌を遂げる可能性がある訳ですから、支線による活性化の成功体験を積み重ねる環境委にあります。逆に言えば元々開発地が少なく人口の高齢化や産業構造の転換もあって本線筋の成長余地がないだけに、横浜市が示したエサに食いついた可能性はあります。単純に山下ふ頭に鉄道通したいなら、みなとみらい線を伸ばす方が簡単なはずですが、それじゃ京急にメリットがない訳です。

というようなインサイドストーリーがありそうな横浜市のIR誘致ですが、今回のダイヤモンドプリンセスの失態で遠のいたと見て良いでしょう。日本国をサンセットクルーズにいざなうアベノミクスいいとこなしです。

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Monday, February 24, 2020

伝染ルンですアベノミクス

予想はしてましたが、新型肺炎問題がオオゴトになっております。特に横浜港のダイヤモンドプリンセスで防疫体制の弱さを露呈したことで世界から非難されてます。最早感染拡大を遅らせるしか打つ手が無くなった訳ですが、専門家の意見も聞かずに水際作戦に拘った政府の対応がひどいとはいえ、通常の風邪やインフルエンザと同様にうがい手洗いの徹底で感染を防げる可能性が高いのは既に指摘しております。

DMATの一員として参加した岩田健太郎神戸大教授の告発動画が物議を醸してますが「守秘義務違反」と「勇気ある内部告発」と評価が分かれております。とはいえ船内の酷い実体を知らしめて事態を動かしたという意味では後者の評価が妥当でしょう。酷い実態を秘密にすることの方が犯罪的です。まあ情報が錯綜してますし、医療面は素人がこれ以上首突っ込む話でもありませんが、経済への影響はかなり深刻です。

「有事の円買い」の終わり 円安呼ぶ日本の不安  編集委員 小栗太:日本経済新聞
これ簡単に言えば日米金利差で円安誘導の結果、低金利通貨として円建てで資金調達してアメリカなど外国資産への投資を行う流れから、投資家がリスクを取れば円は売られ円安になり、逆にリスク回避に動けば円が買い戻されて円高になるということで、リスクオンの円安リスクオフの円高というのが昨今の相場感でした。

それが米FRBの低金利政策で金利差が縮まり、インフレ補正すればほぼドル円の金利差が消滅した一方、ECBのマイナス金利政策の長期化でユーロがキャリートレードの主役となったことで構図が崩れました。加えて今回の新型肺炎問題では、日本は完全に当事国の扱いとなりますから、外国人投資家の資金引き揚げは避けられないところとなる訳です。こうなるとアベノミクスの初期からあった円暴落シナリオが現実味を増す訳で、深刻な事態です。加えてこれ。

GDP年率6.3%減 5四半期ぶりマイナス 10~12月:日本経済新聞
これ前期(10-12月期)の数値であり、消費税増税の影響は当然ある訳ですが、マイナス4%程度とされた民間予想を下回る悪い数値が出た訳です。これも裏がありまして、成長率の分母はあくまでも前四半期の数値が分母になる訳ですが統計135°で指摘した統計不正で目一杯それを膨らましたもんで、マイナス幅が大きくなったと見られます。加えて各四半期の日数の違いを季節調整と称して調整しますから、日数の多い10-12月期の数値は下方修正されますし、更に四半期ベースの数値を年率換算する訳で、見かけ上の数値を大きく見せてしまいます。

そして鉱工業生産指数、機械受注など製造業関連の一次推計の数値が弱い一方、何故か消費関連は好調だったんですが、これも家計調査の推計値から正確性が高いという理由で商業統計の推計値が採用されてますが、これインバウンド消費が含まれている可能性があり、そうなると国際収支に含まれる旅行収支の推計値と二重計上されている可能性があります。それが日韓事変で韓国からの訪日客が減少した影響が出て、なまじ二重計上されているからマイナス幅も大きくなる訳です。故に見かけほどマイナス幅は大きくないと見ておりますが、そんな事情は知ったこっちゃない外国勢から見れば悪い数字だけが見られる訳です。誤魔化しの果てのオウンゴールです。

そして新型肺炎で中国人の訪日客が激減しており、国慶節需要も空振りですから、1-3月期も悲惨な数字を覚悟する必要があります。更にマスク不足で日本のアパレル各社の下請けの中国縫製工場がマスク生産でアパレル品後回しという状況で春物商戦に暗雲が漂います。そして相次ぐイベントの中止や延期もあり、オリパラもロンドンが代理開催に名乗りを上げる状況で本当に開催が危ぶまれています。

鉄道業界でも既にミシュラン三ツ星の高尾山を擁する京王電鉄が通期見込みを下方修正しており、東海道新幹線も目に見えて利用客が減少しております。新型肺炎の終息は恐らく1年以上かかるでしょうから、今年はホントにヤバい年になりそうです。やってるふりのパフォーマンスばかりで実体を伴わず、バレそうになると公文書を隠したり破棄したり改ざんしたり、統計を細工したりの嘘八百はモリカケや桜と変わらずですが、人命がかかる感染症問題で国民を危険にさらした訳で、アベノミクスに感染した日本には地獄が待ってます。

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Saturday, November 30, 2019

ガラパゴス・スモールブラザーズ

ただでさえ忙しい月末の新線開業ですが、結構な人が出てました。そして羽沢横浜国大駅に難民多数wwwww。人が住んでる羽沢団地からも横浜国大からも遠く、JR羽沢貨物駅と横浜環状2号線に挟まれていて、民家も疎らな新駅に大勢の人がいたのには笑いました。直近コンビニ1km、既存路線の最寄り駅は相鉄上星川と市営地下鉄三ツ沢上町ですが、どちらもろくな道がない。そして毎時2本の列車本数ですから、試しに降りたはいいけれど、やることなくてホームで電車待ちを余儀なくされた人多数ってことですね。

新たな都心ルートを得て沿線活性化につなげたい相鉄はこれからが正念場ですが、JR東日本との相互直通は貨物幹線の東海道貨物線の線路容量の制約から本数増は見込めず、22年に予定される新横浜経由の東急東横線・目黒線との直通が始まれば列車本数は増えますが、都心側が3ルートに分かれますから、個々のルートの本数の少なさは大きな制約条件になりそうです。面白いのは親会社の相鉄HDの筆頭株主の小田急電鉄とは競合することですね。日本の鉄道会社って必ずしも資本の論理で動いていません。

そんな日本でこんな経営統合が発表されました。

ヤフーとLINE統合 「米中に次ぐ第三極に」:日本経済新聞
いや第三極は無理。時価総額100億円超のGAFAやBATを向こうに回してせいぜい時価総額3兆円の企業連合で何ができるのか?まともな勝負にはなりません。唯一可能性があるのは国内のガリバーになることです。何しろ最強の非関税障壁(笑)、日本語がありますから^_^;。つまり楽天やメルカリからは頭1つ抜け出せるとしてもそこまでです。これビッグブラザーならぬスモールブラザーにはなれるかもしれないってことです。但し英語が公用語にならないことが前提ですが。

この辺古代の曽我氏と物部氏の争いに始まり、天皇の地位を争った壬申の乱や平安末期の源平合戦、鎌倉幕府に対する朝廷の巻き返しを図った承久の乱、室町初期の南北朝、天下分け目の関ヶ原の戦いなど、世界とは無関係に国内で争った歴史を繰り返しているようで興味深いところです。いにしえの東夷の小帝国と現代の極東の先進国。世界の端っこだからという地政学的な特徴なんでしょう。

ただしそんな日本も世界の影響は受けてるし、逆に世界に影響を与えてもいるのですが、その点に無自覚なのも昔から変わらないようです。そんなニュースを幾つか。

外資規制強化、株1%以上に届け出義務 外為法改正へ:日本経済新聞

欧米ではやっていると説明されてますが、外資の出資事前規制はほぼ例がありません。加えて出資比率1%は有価証券報告書提出義務のラインなので、欧米の投資ファンドが締め出されるか?と反応してます。株式市場の7割は外国勢という東京市場ですから、当然の反応ですね。外資が引き揚げたら株価下がるぞ。
キャッシュレス、少額・コンビニ中心 政策目的とずれ  ポイント還元制度1万人調査 :日本経済新聞
消費税増税に絡めてポイント還元を政府が支援することでキャッシュレス決済を中小零細事業者に普及させようとしたところ、実際の利用はコンビニ中心という結果です。これ予想してたんですが、日本でキャッシュレス決済が普及しない最大の理由は店が負担する手数料の高さなんですが、これアメリカなどではクレジット会社が直接展開している決済ネットワークを日本ではほぼNTTデータが独占的に供給していて、高い手数料を利用企業に課していることが根底にあります。

上記のヤフーとラインの経営統合でQRコード決済サービスの統合も噂されますが、結局根元の部分の利権に切り込まなきゃ解決しません。アリババのアリペイの場合、元々中国国内の中小零細企業向けのECサービスを展開していたアリババが、参加企業の利便性向上のために開発したものが、使い勝手の良さで爆発的に普及したもので、政府の関与がほとんどないからできたこと。逆に国策会社の利権が温存されてる日本ではそうならない訳です。この場合NTTデータもスモールブラザーと言えるかもしれません。そしてこれ。

再生エネ、送電網使えず 東日本で5割「空きなし」:日本経済新聞
関電問題のエントリーで指摘しましたが、原発のような大規模電源を保有する電力会社に送電網を管理させれば、大規模電源はダウンした時のバックアップ電源を必要としますから、それを大出力火力で充てている体制では、結局双方の電力の合計が先発枠として抑えられてますから、利用率50%といった非効率な事が起きる訳です。分散電源ならば一部が停止しても全体でバックアップ可能なんで、送電線の容量に無駄が無くなる訳ですね。世界の趨勢は完全にこれです。いやーガラパゴスなスモールブラザー達です-_-;。おまけ。
手数料ゼロが招く歪み 証券会社と高速取引業者の蜜月:日本経済新聞
個人投資家の注文情報が株式の高速取引業者(HFT)に漏れてたって問題です。何が問題かと言えば、個人の指値注文を見て先回りができるから、個人投資家にとっては利益を横取りされることになる訳です。ネット証券の普及で手数料の値引き合戦で証券会社は収入が取れないから、HFTに情報を売っていたってことです。個人投資家がおかしいと声をあげて発覚しました。何ともセコいディストピア。スモールブラザーズの末席に置いときます。

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Thursday, November 14, 2019

京急の安全対策は疑問だらけ

京急の神奈川新町の踏切事故で大きな動きがありました。600m手前で視認可能としていた踏切障害物の発光信号が見えなかったと京急が説明を覆しました。

600メートル手前で信号見えず 踏切事故、京急の説明一転:日本経済新聞
これだけでも大ニュースですが、続きがあります。
京急事故の背景に「安全意識のマズさ」、再発防止策からも浮き彫りに:ダイヤモンドオンライン
日経の記事では論点が見えませんが、ダイヤモンドオンラインの記事で明らかになります。京急の当初の説明では踏切の異常を知らせる発光信号機の最遠方のものが340m手前で600m手前から視認可能としていたのですが、実は390mの地点に設置されていて、視認可能な距離は570mになることが明らかになり、当初の説明と食い違います。

京急は120km/h時の非常制動距離を520m弱としており停止可能ではあるけど余裕が少ないことは問題です。詳しくは記事に譲りますが、実はこれ最高速105Km/h時代の基準に沿って設置されたもので、95年の最高速120km/hへのスピードアップの時も見直されていないということです。つまり安全対策の見落としの可能性が示唆されます。

もう1つの論点のブレーキ操作問題ですが、これちょっと信じ難いところです。法令上の問題以上に、鉄道事業者としての安全意識の問題として
どうなのかってことです。鉄道は鉄車輪と鉄レールの転がり摩擦の少なさを活かして、少ないエネルギーで重量物を高速に動かすことができる特徴がある訳ですが、それ故に走行中の列車の運動エネルギーは甚大で、制動距離も伸びるし事故のダメージも大きくなる訳です。

だから線路という専用空間を確保して線路上に支障物がないことを確認して運行する訳です。仮に線路上に何らかの支障物があることを確認したら、とにかく止めて衝突を回避すべきだし、仮に衝突しても速度が下がっていればダメージも小さくなる訳で、そのために非常ブレーキが装備されているという構造になっている訳です。

ところが非常ブレーキは停止するまで緩解できないから頻繁に使えばダイヤが乱れる可能性がある訳です。緩解できないというのはメカ的な面の他、運転規則で禁止されている場合もあります。非常ブレーキを引くような事態に対しては安全確認後にしか動かせない決まりという訳ですね。京急では発光信号を確認した場合には、常用ブレーキで停止し、止まり切れない時だけ非常ブレーキを使うという内規が存在していて、事故後見直され直ちに非常ブレーキを使うと改められたそうです。

京急に関しては先頭電動車主義に疑問を呈しましたし、折角ATSをアップグレードしたのに、踏切障害物検知装置との連動を取っていないおかしさは指摘してきました。ATSとの連動は他社では普通にやっていることであり、遅まきながら京急でも検討を始めるということですが、どこまでカバーされるかはわかりません。

そしてこうなると運転士だけに刑事責任を問うことの問題が浮上します。鉄道では伝統的に組合の団結が強く、組合員を擁護する姿勢からこういったケースで組合が会社に様々な提案を行いますし、それ以前に現場から上がる危険個所の是正やシステムや規定の見直しを申し入れることは珍しくありません。例えば東中野事故の時のJR東労組のケースですが、そのJR東労組を含め、労組の切り崩しが見られる現状で、鉄道の安全はどうなるでしょうか。

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Sunday, November 03, 2019

デジタル経済はビッグブラザーの夢を見る?

FCAとPSAが経営統合することになりました。車メーカーの合従連衡は続きますが、FCAは元々ルノーとの統合を希望してました。欧州では強いけど北米南米で弱いルノーにとっては渡りに船ですが、FCAは口には出さないけど量産EVを持つ日産とのアライアンスも睨んでいたことは間違いないでしょう。加えて弱いアジア市場の相互補完もあるし。

しかしルノーに対するフランス政府の干渉に辟易して断念。加えて日産が経営統合のルノー取締役会の評決を棄権したことも断念の理由となりました。日産はこれをルノーとの資本関係見直しのための交渉カードにしようとしました。おそらく元経産審議官の豊田正和氏が描いたシナリオでしょうけど、無駄になりました。つまり政府の干渉を受けたルノーと日産の双方が袖にされたってことです。また新経営陣もルノーとの関係が深いけどゴーン氏の息がかかっていない顔ぶれで、結局ルノーの意向に沿ったものになりました。そんな中で西川前社長が毎日出勤してあれこれ意見して院政を敷こうとしているとか。豊田氏が後押ししているようです。こんなこっちゃ日産は東芝の轍を踏むでしょうね。残念だけど。

自動車と共に変化の予兆があるのがIT関連企業です。特にGAFAと言われる巨大プラットホーム企業への逆風が吹き始めてます。元々個人情報保護に厳しいEUはGDPRで規制の網をかけましたし、アメリカでも独占の弊害が認識され分割論まで出てきている現状です。おそらく大恐慌時代にグラス・スティーガル法で商業銀行と投資銀行を分離してJPモルガンとモルガン・スタンレーが分離したような変化が始まる可能性はあります、元々自由度の高かった金融が規制業種になった経緯をなぞる可能性はあります。

笑い話なんですが、トランプ大統領がリーマンショックを受けてオバマ政権で規制強化された金融部門の規制緩和をぶち上げたら、金融企業幹部たちは「アマゾンが参入するからやめてくれ」と言ったとか言わないとか。今や大銀行よりも力を得た巨大IT企業の現実があります。銀行も低金利で利ザヤが稼げないから弱っている訳ですが。

例えばアマゾンのレコメンデーション・システムではユーザーの購買履歴を分析して推奨品を提案しますが、マッチングが重視されるので、提案される価格がユーザーごとに異なっていてもわからないです。つまりこのユーザーならこのジャンルの商品が高くても購買につながるという形でプレミアムを付けていてもわからないシステムです。これの意味するところは消費者余剰の搾取なんですよね。

標準的なミクロ経済理論では、価格と効用で説明されますが、効用は需要側がその商品に支払っても良いと考える価格と言い換えられます。それが実際の市場価格との比較で購買につながったりつながらなかったりする訳です。商品に高い値付けをするユーザーは少数で多数派は安い価格を望みますから、需要曲線は右肩下がりになる訳です。

一方供給曲線は売れる価格が高いほど供給側にインセンティブが働いて市場投入量を増やしますから供給曲線は右肩上がりになり、両者の好転が市場の均衡価格となります。そして市場の条件が同じなら均衡価格は一意に決まりますから一物一価が成り立つわけです。市場が開かれていて情報の非対称性が存在しないことを前提にすれば、ユーザーが均衡点以上の効用を認める限り、所謂お値打ち感を味わい顧客満足が得られます。逆に均衡点以下の効用しか認めないユーザーは購買しないから不満はない訳です。

しかしレコメンデーションでプレミアムがつけられていれば、この消費者余剰は売り手の超過利潤に化けるわけですね。つまり公開市場ならより安価に購買できた商品が割高になる訳で、それだけ売り手は儲けが大きくなる訳です。つまりシステムをブラックボックス化することで、情報の非対称性を作り出し、市場の失敗を実現する訳です。更にIoTで商品自体がオーダーメードになると、ますます公開市場の均衡価格が曖昧になり、情報の非対称性は拡大します。一方売り手は注文を受けてから商品を手配すれば良いから、在庫を持たずに済みますから、低リスクで超過利潤を得られます。この辺気付いている人はまだ少ないと思いますが。見方を変えればデジタル計画経済じゃないかと。AI”ビッグブラザー”が統治するディストピアかも。

実は交通の世界でも航空や都市間バスの分野ではダイナミックプライシングと呼ばれて実装が始まってます。利用日の相当前から予約を受け付け、予約の入込を見ながら価格を変動させるものですが、逆に予約を誘発するための大胆な割引運賃で訴求して選に漏れた人にやや高い価格ならまだ空きがありますと誘導したりといったことも可能になります。つまり安値狙いのバーゲンハンターを釣ってサクラにするというと言い過ぎかもしれませんが、輸送キャリアがその中身を公開することはないですからわかりません。その辺を踏まえてのこのニュース。

JR東日本、首都圏で年内にもMaaS導入へ:日本経済新聞
詳細は不明なので、現時点での評価は難しいですが、恐らく地域限定でタクシーやレンタサイクルと連携したサービスを始めるということでしょう。おそらくサブスクリプションのイメージなんでしょうけど、定額で一定回数のサービスが受けられるというものから始めて、定着してきたら内容に多様性を持たせユーザーに選択させるという形になるんじゃないかと思います。

サービス内容と価格の見合いになりますが、ユーザー獲得のために戦略的な低価格を提示する可能性はあります。一番の狙いはユーザーの利用履歴の取得じゃないかと睨んでおります。というのも、JR東日本はSuicaの利用履歴データをユーザーに無断で外販して提供していたことが発覚し、謝罪に追い込まれたことがあります。2013年7月25日に謝罪と共にユーザーに除外手続きを呼びかけましたが、これも関連会社経由の受付で不透明と批判を浴び、利用履歴データの活用は足踏みしています。MaaSで新たに会員募集するなら、利用規約に履歴の活用の許諾を条件にすることで、これを突破しようと考えても不思議ではありません。

もちろんそれだけあ理由ではなく、東京でもドライバー不足でフィーダー輸送を担うバスの減便が始まっており、また20年代には東京も人口減少に転じると見られており、鉄道事業者もラストマイルの集客を自前でやらなければならない時代が訪れる訳です。この面でも先手を打とうということでしょう。

しかし他社が追随した時にサービスが輻輳してますます複雑になり、ユーザー側から見て情報の非対称性が拡大する可能性はあります。それが複数事業者間の健全な競争となって整理淘汰を経て落ち着くなら悪くはありませんが、逆に鉄道各社の関連事業を絡めて複雑化が進む可能性もあります。この辺ユーザー側の目利きも問われます。

MaaS先進地域は圧倒的に欧州ですが、これは都市圏の運輸連合による共通運賃制が下敷きになっており、地域限定のプラットフォーマーの役割をしていることが大きいと言えます。この場合運賃自体は市場価格ではありませんが、公定価格がサービスの良否を図る公開情報として機能しているから、不透明感を持たれず実行できるってことなんでしょう。そう考えると事業者単位のMaaSより前に共通運賃制の実現があった方がユーザーには望ましいと言えますが、メトロと都営地下鉄の運賃共通化すらままならない現状では望み薄ですね。

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Sunday, October 06, 2019

痺れて関電

関電役員の金品受け取り問題が連日報道されてますが、受け手としてリテラシーの問われるニュースです。というのも、発覚の経緯がかなり特異であることです。その意味で注目すべき記事はこれです。

税務調査後に1.6億円返却  受領額の半額 関電、元助役側に:日本経済新聞
高浜町の吉田開発という建設会社に金沢税務署の強制税務調査が入ったのが18年1月。その直後に高浜町元助役の森山氏に受領した金品の返却が集中している訳です。これ森山氏と吉田開発の関係を知っていて受領した金品の出どころもわかってたからですね。つまり発覚を恐れて証拠隠滅に動いたわけで、総額3.2億円の半額相当の1.6億円がこの時に返却されている訳です。加えてこれ。
関電監査役会、金品受領を昨秋把握  監視機能働かず 工事の7割、元助役に情報:日本経済新聞
ちょうど1年前の18年秋、税務調査の半年後には関電の監査役会も事実を把握しながら、取締役会に諮らなかったんですね。つまりこの時点では世間には知られていなかった訳で、スルーして見て見ぬふりしたわけです。ガバナンスが働かなかった訳で、これ自体も問題ですが、結局思わぬところから外部へ洩れます。

今年3月に森山氏が死去し、遺族による遺産相続の過程で故人のメモが出てきて、関電幹部の名前と金額が出てきてしまい、隠しきれなくなって今に至る訳です。発覚の発端となった金沢税務署の税務調査から1年半を経過していた訳で、既に多くの証拠は散逸していると見るべきでしょう。ですからチラホラ名前の取りざたされる政治家もいますが、身に覚えのある者は既に処置済みで高みの見物でしょう。モリカケ問題で学習してますから。

こうなるとあからさまな自己保身に走る関電幹部がヒール役を一手に引き受けてくれますから、世論に迎合して一緒に叩いて涼しい顔してる巨悪がいるってことですね。とにかく地元負担でローカル線の小浜線を電化しちゃうぐらいの資金力が原子力界隈にはありますから、3億なんて氷山の一角のはした金です。小物を血祭りにあげてガス抜きまでできちゃうからたまりませんね。

閑話休題、関西電力といえば2018年まで鉄道事業者でした。長野県大町市の扇沢と黒部ダムを結ぶ関電トンネルのトロリーバスは関電の直営で鉄道事業法準拠の第一種鉄道でしたが、バッテリー電気バスに置き換えられて終焉しました。資本規模で言えばおそらく日本最大の鉄道会社だった?トロッコ電車でお馴染みの黒部渓谷鉄道は関西電力100%出資の子会社ですが直営ではありません。

関電の黒部川水系の水利権は、戦前の日本電力から戦時統合の国策会社日本発送電を経て1951年に関西電力に移管されたものですが、地域分割で9大電力に再編された中で、需要地である関西向けに豊富な北陸の水力資源の一部を持たせた訳ですね。黒部川沿いの日電歩道の名前に名残があります。似たようなことは中部電力エリアの長野県の高瀬川の水利権を得た東電が首都圏向けに電源開発を行いましたが、これは戦後の話で、戦前からの歴史を引き継ぐ関電の黒部川とは異なります。最近は寧ろ福島第一第二や柏崎刈羽など原発の域外立地が目立ちます。

実はこのビジネスモデルは日本電力がもたらしたもので、北陸の豊富な水力資源を利用して遠距離高圧送電で東名阪の需要地に安い電気を売り込もうという目論見で関西地盤の宇治川電気の子会社として発足した会社ですが、庄川水系の電力を中京圏で販売して東邦電力と競合し、電力兼営の小田原電気鉄道を買収して電力部門を残して7ヶ月後に箱根登山鉄道として分離し、残った信濃川水系の電力を首都圏で販売して東京電灯と競合し、果ては親会社の宇治川電気が大同電力の電力供給を受けていたために関西エリアで親子バトルまでしてしまうという破天荒な存在で、後に過当競争を理由とした電力国家管理の扉を開くことになります。

第一次大戦と第二次大戦の戦間期は日本の工業化が進んだ時代でもあり、工業化と共に電力需要の拡大が見込まれたことで、それまでは需要地の近くに小規模な火力発電所を構えて限られたエリアに配電していた電灯電力事業を、現代に通じる大規模電源と遠距離高圧送電で効率性を追求した系統電力事業に進化させたイノベーション期だった訳です。ところが昭和恐慌で一転需要が縮小し、余剰電力の処理に困った事業者は、熾烈な競争に巻き込まれていきます。その過程で大口需要者として電気鉄道の存在が意識されます。

例えば宇治川電気は兵庫電気軌道と神戸姫路電気鉄道を傘下に収め、両者の直通運転で神戸姫路間の電気鉄道を実現します。後の山陽電気鉄道ですが、その際に車両限界の小さい兵庫電軌に車両サイズを合わせた関係で、神姫電鉄の1型がお役御免となりましたが、滋賀県のローカル私鉄の近江鉄道を傘下に収めて電化してそちらへ回します。関東でも東京市電気局に電力供給していた鬼怒川水力電気が小田原急行鉄道と帝都電鉄を開業させて事業拡大と販路確保をしたりという動きもありましたし、逆に京王電気軌道のように電力事業の方が寧ろ収益性が高かったなんて事例もあります。電気鉄道もイノベーションの一翼を担っていた訳です。

しかし直流き電で電力変換が必要なうえ、負荷変動が激しく安定しない電気鉄道は、地域分割で地域独占企業となった戦後の9大電力時代には寧ろ嫌われます。系統電力は工業用の電力供給が主たる目的ですから、電力の安定が最優先ということで、大口需要者向けの安い料金は適用されず、割高な電力料金を負担してきました。ま、これがサイリスタチョッパ制御やVVVF制御などの省電力技術へのインセンティブとなり、連敗続きの日本の半導体でパワー半導体では世界をリードする存在になっているのかもしれません。大口電力需要者である国鉄が直営の信濃川発電所を持っていたことは東電を助けていたかも。

そして時代は進み、再生可能エネルギーの利用の観点からマイクログリッドが求められる時代になると、系統電力網は下手すればサンクコスト(埋め込み費用)の塊になりかねないのですが、分散電源のタイムリーなマッチングう意味でスマートグリッドを実現することで生き残る可能性はありますが、そのためには原発のような大規模電源が寧ろ邪魔になります。分散電源ならば電源のトラブルは多数の別電源でカバーできますから、寧ろ安定します。その意味で原発をこれ以上引っ張るのは得策とは言えませんね。

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