大手私鉄

Saturday, May 18, 2024

裏金のウラ

裏金のウラでこどもの疲弊は高まりそうです。

離婚後も父母で育児 共同親権、「子の幸せ」双方に責任 - 日本経済新聞
結局ろくな国会論戦を経ずに成立した共同親権を認める民法改正ですが、意味不明です。親権は子供を育てる義務を負う権利ですが、子持ち世帯で離婚が発生した場合、経済力のない妻側が親権を取り。経済力のある夫側が養育費を支払うことで離婚を成立させるケースが多い訳ですが、養育費はしばしば支払われないとか、夫の父親としての面会権は法的に担保されているのに誤魔化してそれを梃子に進めたりしてます。加えて既に離婚したカップルにも遡及されるというのも法の非遡及原則に反します。

DV夫の問題などは言われますが、子供のパスポートの取得や受験、手術などに共同親権者の同意が必要になり手続きも煩雑ですし、悪用されれば養育費不払いの口実や児童手当の折半や最悪「イッパツやらせろ」もあり得ます。加えて子連れ再婚も難しくなるし、既に子連れ再婚している場合も生みの親の権利として割り込んでくるとか、寧ろ子育てのコストを高めます。これのどこが子育て支援であり少子化対策なのか?寧ろ婚外子を含むひとり親世帯の子育てを直接支援する方が少子化対策になるのではないでしょうか。

これ以外にも採らぬ狸の戦争の配当で触れたセキュリティクリアランス法や戦争は経営でできているの農業基本法改正などのトンデモ立法が国会をスイスイ通過している現状があります。にも拘らずニュースでは政治資金規正法改正の話題ばかりで、更にNTT法改正や緊急事態対応で政府が地方に命令できる地方自治法改正などのトンデモ立法予備軍が目白押しです。裏金問題が目晦ましになっている訳です。とはいえ裏金問題はこれはこれで無視できない問題だけに、政治が機能せずに政府の暴走が止まらないということでもあります。これ繰り返し述べてますが、戦前の政治不信の果てに戦争へ進んだ歴史に酷似します。

この辺は帝都電鉄物語でも論じてますが、政治不信が行政の統制強化を誘い戦争へといざなった歴史を繰り返すことは避けなければなりません。といった堅い話とは別に、このエントリーで示した戦前のマネーゲームの異常さはこんなことでも見えてきます。

消える新京成電鉄の社名 歴史が生んだ「くねくね路線」 ググっと首都圏 - 日本経済新聞
映画「戦場にかける橋」で有名な泰緬鉄道の建設にも関わった旧陸軍鉄道連隊の演習線跡地の払い下げで誕生した新京成電鉄ですが、軍事施設故にGHQに摂取された旧鉄道連隊跡地を巡っては西武鉄道も動いていたと言われます。裏でどのような動きがあったかは定かではありませんが、当時高田馬場馬起点だった西武線の新宿延伸と引き替えに京成への払い下げが決まったと言われております。戦後早々の利権漁りはGHQから始まりました。

当時は無人の原野だった北総台地ですが、東京に近い立地の良さに加えて地盤が安定していたこともあり、松戸市の常盤平団地を皮切りに、沿線で大規模な宅地開発が続き、輸送力増強に追われながらも親会社の京成電鉄の旧型車の支援もあって経営は好調で、子会社ながら株式上場して投資家から資金を集める独自経営が可能になります。地域的に京成との棲み分けも可能だったこともありますし、都営地下鉄との相互直通運転対応で4ft6in(1,372mm)から4ft8ub1/2(1,435mm)への改軌や1号線規格の新車増備などで資金面で厳しかった京成にとっては子会社上場で身軽になるし、用途廃止の旧型車の引受先としても重宝だったという面もあります。

ところがバブル崩壊後の株式持ち合いが問題視され、親子上場は特に狙い撃ちされやすいということもあります。同時にそれは三井不動産との合弁事業としてスタートしたオリエンタルランドの好業績も狙い撃ちされることになります。そこへコロナ禍で空港輸送激減で京成本体が直撃され、オリエンタルランド(OLC)も不振ですが、地域輸送に特化した新京成は好業績を維持しました。そしてコロナ明けで京成本体とOLCが業績回復すると、投資家からのアタックが強まります。

京成電鉄はOLCの好業績高配当のお陰で利益水準が下駄を履いた状況だった訳ですが、それが無ければ株価収益率(PBR)0.5という資本効率の低さは笑う鬼退治でも指摘しました。京成のOLC保有株の時価が京成自身の時価総額の1.6倍にもなり、一部売却でも大きな資金を手にすることが可能ですが、京成自身は空港輸送というもう一方の金の生る木を抱えていて新たな投資案件が見当たらないということもあり、自社株買いによる株主還元の原資にせよという圧力とも見えます。

それに対して京成が示した回答が新京成電鉄の子会社化による上場廃止と経営統合によるシナジー効果獲得ということで、既にOLC株売却で500億円の営業外収益を得ており、新京成の経営統合の資金に充てるという画を描いた訳です。鉄道事業だけを見れば例えば運賃の一元化は成田空港線運賃やちはら線運賃までは無理だし、京成線と新京成線だけの一元化はさほど意味がないので、寧ろ独自に展開された両社のバス事業や不動産事業の統合に狙いがあると見られます。投資家に迫られて追い込まれてという点は戦前の帝都電鉄に似てますが、統治の透明性が求められる時代故に変なことはできないという訳ですね。ピンクの電車もいずれ過去帳入りするかもしれません。それにつけてもで出口の目見えない裏金問題です。

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Saturday, April 13, 2024

採らぬ狸の戦争の配当

インボイス始めましたで取り上げたMLB大谷選手の通訳水原氏の供述で大谷選手の賭博関与疑惑は晴れました。疑惑の大谷選手の口座取引も水原氏のなりすましというシンプルなもので、アメリカでは銀行口座開設も面倒ですから水原氏が代理で手続きして銀行からの問い合わせにもなりすまして答えていたという訳です。水原氏はギャンブル依存症を拗らせていて、大選手の専属通訳となってある意味金づるを掴んだ結果深みにはまったと見られます。故にギャンブル依存症治療のカウンセリングを受ける条件で保釈されましたが、欧米ではこれが普通のこと。インフレは続くよどこまでもの大川原化工機冤罪事件のような人質司法がまかり通る日本の常識とは違います。てことでこのニュースにツッコミます。

岸田文雄首相とバイデン米大統領の日米首脳会談・共同記者会見の要旨 - 日本経済新聞
日米同盟強化で在日米軍と自衛隊の指揮・統制の枠組み見直しということですが、アメリカの本音はは明らかです。ウクライナでロシアの攻勢にさらされイスラエルの暴走で中東も問題を抱えて動けない米軍に代わって台湾有事よろしくってことですね。朝鮮半島有事で朝鮮国連軍の名目を持つ在韓米軍に韓国軍が指揮・統制される枠組みに準じて台湾有事には自衛隊が対処する枠組みです。

とはいえ朝鮮半島と台湾では国際法上の枠組みが異なります。朝鮮戦争は現在休戦中ですが、元々国連憲章に基づく国連軍による紛争解決という枠組みで北朝鮮の侵攻を食い止め押し返したものですが、当時常任理事国のソビエトが票決を棄権した結果拒否権発動無しに西側諸国が参戦したものですが、休戦と共に各国は群を引き揚げて米軍だけが残ったものです。

故に韓国軍は安保理決議に基づく指揮・統制権の制限を受け続けており、韓国では主に革新派がこの点を問題視していた訳で、文在寅政権で南北融和が模索され朝鮮半島終結に向かったのはこうした背景があります。尚、国連憲章で敗戦国の日本は敵国条項を盾に国連軍への協力を義務付けられており、朝鮮戦争当時は存在しなかった海上自衛隊代わりに海上保安庁が機雷掃海に駆り出されて誤爆による死者も出ています。戦争放棄の戦後日本でも戦死者が出た訳です。

一方の台湾ですが、元々国民党政府と共産党の内戦の結果敗走した国民党が台湾に敗走して臨時政府を台北に置いたことが始まりで、国連決議によって台湾問題は中国の国内問題とする所謂1つの中国論が国際的な合意事項になり安保理常任理事国も北京政府に譲ることになったものです。よく「台湾は親日的」と言われますが、国共内戦で敗走した外省人の国民党政府が独裁体制を敷いて台湾の内省人を抑圧したことから、清朝、日本政府、国民党政府と圧制を受けたことから、近代化が進んだ日本統治時代が相対的にマシに見えるというのが本当のところです。

ちなみに南シナ海の領有権問題のそもそもの発端は、WW1後の戦後処理で日本が島嶼部を国際連盟委任統治領としてリン鉱石採掘などの経済活動も行われていました。当時の日本政府は便宜上台湾統監府の所属としたことから、上述の1つの中国の原則に則って中国が領有権を主張しているもので、日本の台湾統治時代の落とし物です。という訳でやり方には問題がありますが、中国の主張も一応法の支配に則った国際法の枠組みに適います。

つまり国際法上は内戦扱いとなる中台紛争にどう対応するかという法的枠組みは未定ですから、アメリカとしては可能な限り台湾の防衛力強化の協力はするけれど、いざというときの対処法は決まっていない訳です。加えて実際に米軍を動かすには議会の承認が要りますが、ウクライナへの腰の引けた対応に見るように議会が賛成するとは限りません。それでも小競り合いから紛争に巻き込まれる可能性はありますが、その時には日本の自衛隊のせいにしてバックレることも可能です。アメリカだって核保有国の中国と事を構えたいわけではありませんから。

実際ウクライナでは体勢を立て直しつつあるロシアに対してウクライナは劣勢です。というのも米議会共和党のウクライナ支援への消極姿勢もありますが、それ以上に冷戦終結に伴う平和の配当でアメリカが国防費を削減した結果、軍産複合体と言われたアメリカの兵器産業も生産縮小を余儀なくされていたところでのウクライナ戦争ですから、アメリカも兵器の在庫が枯渇しつつあり、これ以上の支援は難しくなっています。そこでじゃあ日本で兵器作りましょうってのが武器輸出三原則の見直しであり日英伊の兵器共同開発でありということで、それに関連してライセンス生産の急所となるセキュリティ対策としてのセキュリティクリアランス法ですね。自民裏金問題の裏ですんなり通っちゃいました。

ロシア側から見ても兵器産業が集積するウクライナの独立はロシアにとっては痛手で、その意味で取り返したかったけど、当初の目論見と違って予想以上のウクライナの反撃で後退を余儀なくされました。故にロシアも国内の兵器製造能力を落としている訳ですが、それを補っているのが北朝鮮でありイランでありという訳です。一方で西側諸国で唯一平和の配当と無縁だったのがイスラエルで、ウクライナ戦争で潤っている西側でほぼ唯一の国です。

他方ロシアは近年石油や天然ガスなどの資源輸出で経済を回してきた訳ですが、それ故にウクライナ侵攻でも石油や天然ガスを止めれば欧米は困るだろうという読みがありましたが、実はガザ沖の有望な海底ガス田があることが英企業の調査で判明し、これを利用すれば現在ライフラインをイスラエルに依存するパレスチナ自治政府にとっては自前のエネルギー源を持って経済自立して独立というシナリオが可能になる訳ですが、イスラエルはこれを徹底的に邪魔し続けてますし、それどころか海底ガス田の利権を我が物にすらしようと狙っている訳で、そうなるとガザへの容赦のない攻撃の意図が別にあることが疑われます。ハマスのせん滅のみならずガザの住民を追い出してイスラエルの実効支配を確立したい訳です。資源国イスラエルとなれば国際的な発言力は増します。またアメリカのみならずロシアの資源禁輸で苦しんだ欧州でもあてにする国が出てきている訳です。

一方で欧米の国民はイスラエルの暴走に怒っていて反イスラエルデモが起こり、特に大統領選を控えるアメリカにとっては支持者離れを防ぐ意味からイスラエルに自制を求めるようになりますが、そうするとアメリカの支援が離れないようにイスラエルはシリアのイラン公館を空爆してイランを巻き込み、アメリカが関与せざるを得ないようにしようとしています。親イランと言われるイエメンフーシ派による船舶攻撃でスエズ運河の利用が困難になり米海軍が艦船を排煙して抑え込もうとしているように、イランが絡めば米軍が動くことを狙ったものです。

世界の紛争地帯の多くがこうして線で繋がる訳で、兵器産業にとってはまたとないビジネスチャンスですが、一般国民の経済厚生の向上に寄与するものではありません。ある意味冷戦終結によるグローバル化の進捗は平和の配当の具現化という側面は確実にあった訳で、例えば米国防総省ARPAnetが一般公開されてインターネットが始まり、それがネットコンピューティングと連携してIT革命が起きたし、先進国に追いつけなかった途上国が新興工業国として台頭することを助けました。その典型が中国です。という訳で中国の台湾進攻は現時点ではほぼ無いと見て間違いないでしょう。

アメリカも自国の兵器産業を増強することなく兵器を手に入れてライセンス料は取り、連邦予算はインフラ投資法やIRA法で民生部門の国内投資を促進して「大砲よりバター」路線なのに日本は真逆を行っている訳です。アメリカは大喜びですが、こうしたバイデン政権の政策が成果を上げているとは言い難く、例えばボルティモア港の橋落下事故のようにインフラの老朽化、脆弱化は止まりません。そして平和の配当としてのネットにも暗雲が漂います。

規制の緩さで巨大化した大手IT企業への規制が議論されてますが、既にアップルやグーグルはやり玉に挙げられています。一方ネット企業には中国の影が忍び寄ります。TikTokは議会が問題視して規制法が作られてますが、一方で格安ECサイトのTEMUが凄い勢いでユーザーを増やしてアマゾンを凌駕する勢いです。実は中国企業なんですが、巧みにそれを隠し、インフレによる割高感も手伝って安さで攻めています。人種差別にナイーブなアメリカでは経営者が中国人というだけでは規制できず、中国企業としての実態が問われる訳ですが、その中国では国営企業優先で民間企業が苦しんでいる中で、アメリカ市場への参入意欲は高い状況です。加えて中国資金による米企業への投資までは規制のしようがありません。気が付けばオーナーは中国人という事態は進むでしょう。

まあこの点は日本ではもっと愚かな政策が進んでいます。NTT法改正で外国人株主の制限が解除されます。つまり中国人も買える訳ですが、通信インフラを売り渡してそのお金で兵器を買って中国抑止ってどこまで愚かなのか-_-;。震災復興予算に使うことが法律で定められた東京メトロの株式上場も、国の保有分が復興に使われるかどうかは要注意です。何故ならば予算の余剰分や税収の上振れ分を防衛費に充てる防衛予算確保法が成立しており、わざと余らせて防衛費に回すことが可能になります。株高で懸案だった東京メトロの株式上場が進むのは良いのですが、能登半島地震の対応でも見られるように、災害復興予算をケチって防衛費に回すって典型的な「バターより大砲」の愚策です。そんな愚かの日本の捕らぬ狸の皮算用は如何に?

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Saturday, March 02, 2024

円安でつくばとねり的ライトなリスク

来年度予算の年度内成立が確定しました。

2024年度予算案が衆院通過、年度内成立へ 総額112兆円 - 日本経済新聞
憲法の規定で予算案は衆院優越で衆院で可決成立すれば30日後に自然成立となることから、年度内成立が確定した訳ですが、23年度本予算と補正予算で予備費を大量に積み増して使い残している現状からすれば、予算成立が遅れても執行に影響することはなく、能登半島地震の復旧復興などへの影響はほぼありません。寧ろボランティアに制限をかけたりして足を引っ張っているのは国と石川県です。やるべきことをやらない責任は政府と県にあります。

寧ろ新年度予算の審議が生煮えで成立させたことの方が問題です。それでも強行採決に及んだのは岸田首相の意向が強かったようです。政治とカネ問題で炎上中で、予算審議を質に取っての追求は野党として当然の戦術ですが、衆院成立後に送致される参院の予算委でも追及されることを嫌った模様です。その為の岸田首相の政治倫理審査会への出席だった訳で、早くこの問題に蓋をしたいのが本音です。しかしあれほどキックバックとな還付金とか言っていたのに首相が裏金発言をしたから寧ろ火に油。しかも故安倍元首相が「やめよう」といっていたのに復活した経緯もかなり解像度が上がりました。やめようとしたのは法令違反の認識があったと考えられますし、それが覆った経緯が不透明で寧ろ疑惑を深めました。もはやトカゲのしっぽ切りでは済まなくなりました。

そんな政治の混乱をよそに、日銀のマイナス金利解除は確度を上げています。IMFでも好感を示すレポートが出され、同レポートで政府の財政支出頼みの姿勢は寧ろ批判されています。加えてここへ来ての日本株の好調が、日銀に思わぬ追い風をもたらします。異次元緩和機に大量購入された株式ETFの含み益が拡大しており、異次元緩和で国債市場が機能を失って利ザヤが消失している一方で、ETF売却で益出しできる環境が整った訳です。つまり仮に緩和見直しで保有国債に含み損が出ても、国債ならば期間をかけて償還を待てますが、売れば値を下げる株式ETFの売却問題は日銀にとっては重い宿題でしたが、高すぎる米株式に対して割安感のある日本株への海外マネーの流入は日銀にとってはチャンスな訳です。

あと日本株ETFを大量保有するGPIFも含み益拡大で投資ポートフォリオ見直し売りで益出ししますから、当面日本株は日銀とGPIFという大量保有機関投資家が売りポジションをとる訳で、新NISAで日本株投資を考えている人は、日銀とGPIFを助けたい人以外は考え直した方が良いでしょう。令和の秩禄処分の地雷です。とはいえ日銀の緩和姿勢は簡単には解消されないことも確かで、当面この構図は続くと考えられます。故に円安反転で円高は現時点では心配することではないでしょう。しかし円安の影響は意外なところにも現れています。

栃木の宇都宮LRT、車両追加へ価格7割高の衝撃 増発・検査視野 - 日本経済新聞
現在宇都宮ライトレールが保有する車両HU300形は17編成あり、昼間ダイヤで3編成が休んでいる状況ですが、4月に予定されるスピードアップで13編成で回せるようになる見込みで、利用が好調なこともあり、増発も視野に入ります。しかし問題は開業時に竣工した17編成は2027年に一斉に重要部検査の期限を迎えるため、期限前に一部編成を前倒しで検査入場させて輪番検査の体制を作る必要があり、その為に予備車確保で2編成の増備となった訳ですが、問題は増備車の価格です。新潟トランシス製のGTシリーズはアルストム傘下のドイツ企業のライセンス生産で、そのライセンス料と輸入部品代が円安で高騰し、実に7割高となった訳です。当然ながら今後の増発や西側延伸への対応が難しくなります。また検査時の部品交換も割高となることもあります。そこで国産メーカーで対応できないかということになります。
宇都宮LRT 福井鉄道フクラムライナー・広島電鉄グリーンムーバー改良型導入も一考の余地 - 日本経済新聞
フクラムライナーは阪急阪神グループのアルナ車両製のリトルダンサーと呼ばれる部分低床車、グリーンムーバーマックスは近畿車両、三菱重工、東洋電k製造、広島電鉄の4社共同開発の完全低床車ですが、純国産のリトルダンサーと異なり弾性車輪や駆動装置などドイツのシーメンス製部品が一部使われていて、やはり円安の影響は受けます。

宇都宮ライトレールに関しては開業に至る過程で紆余曲折があり、県と市が対立して足踏みしましたし、地場のバス大手関東自動車の反対もありましたし、自動車交通の阻害や財政支出を巡る市民グループの反対もありました。関東自動車は経営悪化でみちのりHDグループ入りし賛成に転じたものの、工事の遅れや見直しで費用便益比(B/C比)が当初の1.1から0.7へ悪化したことなども問題視されております。そうした市民の不満に対して立憲民主党と共産党が後押ししてますが、あくまでも市民グループの声を掬い上げる議会野党の役割ということで、新年度予算を質に裏金問題を追及することと同じで、国会の新年度予算強行採決の轍を踏まないで議論を重ねることが大事です。

それはさておき、元々宇都宮市の東西軸交通に新交通システム導入を検討したことから始まったLRT事業ですから、西側延伸で東武宇都宮駅に接続することが求められていて、検討過程でモノレールやAGTなどの高架式新交通システムでは事業費が高すぎるということでLRTになった経緯があります。しかし西側延伸の為にはJR宇都宮駅北側の陸橋に軌道を整備して駅西側に至り、メインストリートの大通りを通って東武宇都宮駅前から桜通十文字付近までの事業化が進められております。

但しこの区間は利用が見込める一方、バス路線が集中する区間でもあり、東側同様に並行バス路線をバッサリ切ることの難易度ははるかに高いと言えます。実際宇都宮大学陽東キャンパス、清原地区市民センター前、芳賀町工業団地管理センターの3カ所でアクセスバスとの乗り継ぎが図られ、ローカルIC乗車券のtotraで乗継割引サービスが導入されてますが、昼間12分ヘッドのライトレールに対して1時間1本のバスへの乗り継ぎははかばかしくないようです。利便性の乏しいアクセスバスよりもマイカーで停留所付近の駐車場に停めて乗り継ぐ方が利便性は高い訳で、西側の時のように関東自動車がバス路線再編に協力してくれるかどうかはわかりません。当然乗り継ぎによるバスの利便性低下は客離れを起こす可能性もあります。また資材費の高騰や建設2024年問題による人手不足もあり、すんなり進むとは限りません。

一方で宇都宮ライトレールの営業成績は上々で、開業半年の乗客数が予想の200万人を超える220万人に達し、月間の乗客数も開業景気が落ち着いて直近では37,000人程度で、これも想定の31,000人程度から2割増しですから上出来ですが、これが素直に喜べないのは、タイトルのつくばとねり的リスクってことです。つくばエクスプレス(TX)が好業績ながら沿線開発が急すぎて輸送力増強に追われ、車両増備、ダイヤ見直し、座席のロングシート化による収容力強化に追われて、構想にある東京駅延伸がいつまでたっても果たせず、寧ろ8連化に伴うホーム延伸や車両入れ替えで追加投資を余儀なくされてます。

また都営日暮里舎人ライナーも、やはり沿線開発が急で輸送力増強に追われこちらは収容力の大きいロングシートの新車への入れ替えで凌いでおり、既に限界に達し、コロナ禍で通勤ラッシュが緩和傾向にある中で混雑率ワーストとなったことは戻らない混雑で指摘した通りです。日暮里舎人ライナーは沿線にめぼしい集客施設がなく片輸送の非効率もあって2023年度の黒字転換予定が果たせずにいます。

TXも舎人ライナーも車両増備だけでは足らず車両のロングシート化で収容力を高めて対応するところまで追い込まれ、舎人ライナーではゴムタイヤの荷重制限から軽量化した新形車に入れ替えるという追加費用をかけた結果の収支見通しの悪化ですが、これ宇都宮ライトレールのHU300形がタイヤハウスの位置にボックスシートの背もたれを配置する構造からロングシート化は不可能ですから、車両の収容力強化のための入れ替えすらあり得るということですね。TX、舎人ライナー、ライトラインの豊作貧乏トリオになりかねないリスクはある訳です。業績の好調をただ喜んではいられないってことですね。

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Saturday, February 24, 2024

令和の秩禄処分

漂流する世界と日本で株価の上昇を好感すべきではないことを述べましたが、こんなニュースの後でも基本的な見解は変わりません。

日経平均最高値、「34年で株価10倍」142社 ゼンショーなど - 日本経済新聞
22日の東証終値で日経平均株価の終値が34年ぶりに最高値を更新しましたが、記事にあるように値上がりを主導したのは新興勢で伝統的大企業は寧ろ足を引っ張っている現実があります。34年間に米NY株は10倍、独DAXも6倍に上昇していて、日本だけが株価の低迷から抜け出せなかった現実が寧ろ明らかです。

日経平均株価は225の指定優良銘柄の単純平均であり、採用銘柄は定期的に入れ替えられますし、合併や上場廃止による入替もありますから、連続性のある指標とは言えませんが、その時点の日本の優良企業の成績表という側面はある訳です。そして新興勢は米国並みの値上がりがある一方、伝統的大企業の多くは株式の持ち合い解消もあって値上がりとは縁遠く、最近になってやっと事業の見直しが進んできたものの、未だ将来展望を描けていないってことですね。逆に言えば米株式市場は出入りが激しく、結果的に新興勢が相場の主力になっている訳で、古い企業の淘汰が進んだ結果とも言えます。つまり日本の産業構造の改革が停滞した結果です。

あと直近の動きとしては米エヌビディアなど半導体主導は相変わらずですし、大型株の値上がりで平均値を上げており、おそらく新NISAで株式投信が売れた結果と考えることができます。加えて言えばウクライナ、ガザ、政治家裏金問題などのバッドニュースが多い中で、受けの良いニュースというメディア側の事情もあって大きく取り上げられているということは言えます。加えて広告主としての金融業界への忖度ですね。

とはいえ株価水準としてはやはり高すぎるというのが正直なところ。エヌビディアの株価収益率(PER)30倍は異常です。PERとは株価が1株利益の何倍に当たるかを示す指標で、平常値は14-16倍程度と言われ、全てが株主に還元される訳ではありませんが、成長投資の継続を前提に投資回収にザックリ30年ということになりますが、当然ながら30年先を予測することは困難ですから、実演可能性は疑われます。AIブームによるGPU需要の上振れという意味でバブルの水準です。

また「貯蓄から投資へ」の掛け声で過剰と言われる家計貯蓄を株式投資へ振り向ける政府の政策誘導もあります。日本でも新興企業には勢いがある訳で、その流れを作る意味でスタートアップへのリスク資金提供の狙いは以前から言われていましたが、所謂ベンチャーキャピタルのようなものは育たずうまくいきません。それ以前にスタートアップ自身が株式公開で資金を集めたら上がりで継続的な投資を止めてしまう傾向もあり、うまくいきません。

そして岸田政権では「新しい資本主義」とやらで「資産所得倍増」「資産運用立国」という言葉が躍ります。これ意味合いとしては資産運用で公的社会保障のバックアップとすることで「分配重視、自己責任で、テヘペロ^_^;」ってところに重心が移っているようです。つまり社会保障を充実させるには増税や社会保険料値上げなどの受けの悪い政策で「増税メガネ」と言われるから、自分で資産を増やす方向へ誘導したいってことでしょう。高齢者の資産取り崩しの意味するところで取り上げた老後資産2,000万円レポートの流れという訳です。国民の不評でレポートは撤回されましたが、ゾンビ的な復活劇です。

という訳で、新NISAはタイトルの秩禄処分の令和版じゃないかってことになります。秩禄処分とは1871年(明治4年)の版籍奉還、廃藩置県の後の明治政府の政策です。明治維新で明治政府が成立した後も諸藩の統治は続いていた訳ですが、勅令によって大名に版籍奉還を求めたもので、大名と武士が地位を失い、藩に代わって地域を統治する国の出先機関として府県が設置されました。その際藩の負債は明治政府が引き取る一方、米切手支給による禄に代わる給付金を華士族に禄高に応じて支給するようになります。これが秩禄です。

しかし当然ながら継続的に支給すると政府財政を圧迫しますから、どこかで止めなければならないですが、支給金を元手に事業を興して経済的に自立することを狙ったけれど、元々支配階級として頭の高い武家の商法がうまくいく訳もなく、特に禄高の低い下級士族ほど支給金を蕩尽するだけの厄介者となります。そこで秩禄5年分相当の公債を交付して、かつて武士たちが米切手を売りに行った米市場のような公債流通市場を整備して自由に売買させることで、まとまった資金を持たせて起業を促そうとしたようです。つまりインフレで実質賃金が減ってる一方で資産運用、自己責任で何とかしろという令和の今の新NISAは当時をなぞっているように見えます。

しかし当然ながら下級士族の不満は大きく、それが爆発して西南戦争のような内戦に発展します。明治政府はその制圧に財政を浪費してしまいます。列強の植民地支配を逃れるための富国強兵、殖産興業政策が立往生します。特に文明開化の分かりやすいシンボルとしての鉄道事業への資金配分の不足は顕著でした。特に東と西の両京連絡鉄道構想のとん挫は避けたいところですし、軍部からの要請で艦砲射撃の標的になる海岸沿いの東海道鉄道ではなく中山道鉄道を優先するということになり、そのためには東京―横浜間の官営鉄道はルートから外れ、別途東京から北へ向かう鉄道を建設する必要に迫られますが、西南戦争などで財政が疲弊してとても資金を賄えないということで、井上勝などの鉄道国有方針を退けて民間資本の活用に舵を切ります。

その結果岩倉具視をはじめとする有力華族や裕福な士族が秩禄公債を売却した資金を出して日本鉄道株式会社を設立し、中山道鉄道の一部となる東京―高崎間の建設に乗り出します。資金拠出した華士族は株主となって配当やキャピタルゲインを得られるという意味で誘導して士族の不満を抑える効果も期待できます。とはいえ交付公債由来の資金で出所は政府ですから、ある意味今に至る借金財政の始まりとも言えます。また資金こそ民間に依存しながら官営鉄道の工事部門が施工したり、借入金の利子補給したりと実際は半官半民的な企業でした。TSMCの誘致に補助金大盤振舞いみたいなことやってた訳です。

当時の両毛地区は養蚕が盛んで、官営富岡製糸場が作られて絹織物の加工業が両毛地区で盛んになります。当時の日本の外貨獲得は専ら絹織物の輸出に依存しており、故に日本鉄道は利根川対岸の前橋仮駅まで延伸し、赤羽から品川への山手線で官鉄に接続して横浜港から海外へ出荷という流れが出来て、客貨ともに好調で民間の鉄道投資熱を誘発し、山陽鉄道や九州鉄道などの長距離私鉄の出現に繋がります。所謂第一次鉄道ブームです。

とはいえ鉄道国有方針は撤回した訳ではなく、民間による鉄道建設に法律の網をかぶせます。後に私設鉄道法となる条例制定で、鉄道は国の権限で建設運営される原則を維持する意味で、民間の鉄道事業に対して国が事業の適格性を審査して免許を交付する形で制度化されます。故に官営鉄道との接続と車両直通とか、資金の確実性、事業採算性などが審査された訳ですが、この仕組みは法令のアップデートで細部の変化あるものの基本的に現行の鉄道事業法に至るまで続きます。

そして大正期の鉄道国有化によってほとんどの私設鉄道は官営鉄道に統合される訳ですが、鉄道国有原則は貫徹されます。国の組織も鉄道院から鉄道省と変化し、鉄道省は事業主体としての現業部門と陸海空の民間等の交通事業の監督行政の双方を担う存在になります。故に現業部門は監督部門と並列の存在で監督権限が及ばず、寧ろ地方鉄道法で国の買収提案を事業者は断れない建付けになっていました。これが後の戦時買収の根拠となります。

そして戦後にGHQ命令で現業部門を公社として切り離して日本国有鉄道とし、独立採算の義務を負わせる制度改革が行われましたが、鉄道国有原則は維持され、監督部門の運輸省の監督権限は及ばない存在となりました。こうして見ると国鉄分割民営化に合わせて成立した鉄道事業法でJR各社も国から免許交付を受ける事業者となった訳ですから、鉄道国有原則の廃棄という意味で大きな改革ではありました。故に赤字ローカル線存続で揺れる現状ですが、地域公共交通活性化再生法などで地方と事業者の合意の下での国の関与という形になるのはある意味必然ではあります。

という訳で、長くなりましたのでまとめますが、帝都電鉄物語で取り上げた電鉄ブームもそうですが、鉄道事業は今で言えばデジタル関連のような熱狂の中にあって民間資金を集めやすい事業だったってことですね。ゼロ年代のITバブルや10年代のweb3、昨今のDXやAIブームなど何度かの波が来て民間資金が大きく動いたものの、成熟産業になる将来の姿は現時点では見えません。当然淘汰される流れもありますから、人口減少による需要減や人手不足、ローカル線存続困難など鉄道が直面するようなことがデジタル界隈でも起こり得るということは肝に銘じておきましょう。

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Sunday, January 21, 2024

帝都電鉄物語

ガバナンス不在の政治で解散総選挙を模索していた岸田首相は岸田派解散という奇策に出ました。確か岸田派離脱を表明していた筈なのに派閥の解散権はあるのか?それはともかく安倍派と二階派は追随した一方、茂木派は態度を示さず麻生派は解散を否定しました。つまり会計責任者の略式起訴または一部議員の逮捕で傷を負った派閥が解散を表明した訳ですが、これ目先のゴマカシです。

ぶっちゃけ派閥を解散して事務所を畳んでも、政治資金規正法で献金者の氏名が開示されない少額献金で裏金が作れる制度上の瑕疵が温存されていれば、議員同士での裏金のやり取りまでは捕捉できません。適当な任意団体を作って実務を秘書に丸投げすれば実態は変わらず、寧ろ表に出にくくなる訳ですね。そして世論を睨んでしれっと元に戻るということですね。政治資金規正法の厳格化と連座制導入までしないと防げません。

とはいえ議員本人が訴求されない現行法下でも検察の不起訴処分に対しては検察審査会で起訴相当または不起訴不当の評決がされれば再度検察に戻され追加捜査が行われますし、当然略式起訴の会計責任者から得られる情報から新たな証拠が出てくることもありますし、一部弁護士による公益に基づく刑事告発もあるでしょう。それ以上にこうした司法手続きイベントの度に報道されて世論が喚起される訳ですから、今回は簡単に「忘れてくれる」ことにはならないでしょう。どう転んでも政権にとっては茨の道です。

という訳で政治不信が極まる状況ですが、よく似た状況が戦前にもあったことは留意する必要があります。政治不信の結果満州利権に連なる拡張主義的革新官僚や財界人、それに軍部への国民の期待が反比例して高まった結果、戦争への道へ突き進んだことを忘れてはいけません。革新官僚の代表といえる岸信介は戦後も影響力を保ちましたし、革新官僚の主張は経済安保や電力利権に連なる経産官僚とイメージが重なります。一方権力機構である検察の暴走はそれはそれで問題です。

サイドバーのアマゾン鉄道書で取り上げた鉄道ピクトリアル 2024年 03 月号 [雑誌] の京王電鉄井の頭線特集号のの歴史過程の澤口一晃氏の記事は、コンパクトにまとめられた通史として秀逸です。元々小田急系列だった帝都電鉄が小田急に吸収され戦時統合で大東急の一員となり戦後の大東急解体で経営基盤の弱い京王に渡った歴史故に外様的で京王の正史よりも小田急の正史の方が詳しいという捩れた存在ですが、澤口氏は当時の政治経済状況を踏まえて東洋経済新報やダイヤモンドなど経済誌の記事まで参照して背景から明らかにしています。

記事の冒頭で鉄道疑獄事件から始まるのも趣味誌としてはチャレンジングですが、当時は戦前の所謂疑似二大政党制時代と言われる時代で、立憲政友会と民政党・憲政会が交代で政権を担っていた時代です。但し当時は内閣総理大臣に衆議院の解散権は認められておらず、内閣総辞職後で野党が少数与党内閣を組閣し、次の衆院選で多数派を得るよう努めるという流れです。その結果選挙対策による利権政治がはびこるのは避けられず、様々な利権絡みの疑獄事件が横行していた時代です。震災後の東京郊外の発展が、所謂郊外電車熱を生み出し多数の免許出願があって鉄道省当局が扱いに苦慮していたこともあり、放射鉄道6路線と環状鉄道2路線が想定され、それに近い路線出願を優先する方針でした。

そんな時代に帝都電鉄の前身の東京山手急行電鉄が設立され、大井町―洲崎間を梅が丘、中野、板橋、巣鴨、北千住を経て山手線の外側を巡る路線が鉄道省が想定した環状鉄道1号線に近い計画として免許を取得したものの、後に政治家の暗躍が明らかになります。この辺の事情は政治の我田引鉄として現在の整備新幹線事業と通じるものがありますね。

加えて東京の郊外開発ブームもあって鉄道株は株式上場によるプレミアムが付きやすいこともあり、電鉄ブームを後押ししましたし、昭和恐慌による不況期は却って電鉄熱を煽りました。この辺株価プレミアムが政治家の懐を温めたでしょうから、リクルート事件も連想させます。故に実現可能性に疑問符がつくものも多数あり、実際に東京山手急行電鉄の免許路線は実現しませんでした。計画では1,435㎜の標準機と1,067㎜の狭軌の三線軌で標準機を旅客、狭軌を貨物が使うという形で貨物輸送を指定していたのは当時の物流事情によるのでしょうが、洲崎で東京市が東京高速鉄道に譲渡した地下鉄計画線の八重洲―洲崎間の路線への乗り入れを想定していて標準軌、そして全線掘割構造で踏切無しの計画を打ち出しており、第三軌条集電が想定されていたかもしれません。

壮大な計画で株式は人気を博したものの資金不足で事業遂行が出来ず、鬼怒川水力電気と小田原急行鉄道の経営者の利光鶴松を社長に迎えて体制立て直しを図ります。一方で井の頭線の路線免許は渋谷急行電鉄という別会社が申請し、こちらは鉄道省想定の放射鉄道2号線相当の路線として免許されたものの、やはり資金調達がうまくいかず、東京横浜電鉄への身売りを画策したものの果たせず、やはり利光鶴松に助けを求めます。かくして両社は東京山手急行を継続会社とする形で合併し、株価プレミアムで得た資金を実現可能性の高い渋谷急行の路線に投入し、社名を東京郊外電鉄に改めたものの、東京市の市域拡大でほぼ全線が東京市内になることから帝都電鉄に改称し開業に至ります。

東京山手急行の掘割路線のコンセプトは継承されたものの、資金難で全線踏切無しにはならず、また法面防護もなく排水設備も貧弱で雨の度に線路寒水となるし、変電所が1カ所しかないから当時最新鋭の電車も電圧降下でまともに走れず、パラレル禁止のシリーズ運転でゆっくりしか走れない散々なスタートでした。しかも当時の沿線は閑散としていて営業成績も振るわなかったのですが、それでも住宅開発の進捗で収支は徐々に改善するものの、利子分を除く利益を減価償却費に計上してその中から山手急行建設利息として無税で配当するという今ならコンプライアンス上問題のある処理をしていましたが、それでも山手急行時代のプレミアムで膨れ上がった資本金がネックで2回にわたる減資で利益をひねり出すというトリッキーな会計処理をして凌ぐ状況で株主から不評を買います。故に最後には小田急による救済合併となります。

そして電力国家管理で鬼怒川水電を失い、陸上交通事業調整法に基づく戦時統合で小田急は大東急に統合されます。結果的には弱点だった変電所増強や車両の融通で助けられ、特に東京大空襲で永福町車庫が壊滅的打撃を受けて稼働車両が7両となったこともあり、戦後復興で東横線向けのデハ3550がデハ1700、京浜線向けクハ5350がデハ1710として井の頭線に竣工し、何れも東横が湘南電鉄乗入れを想定して準備した電装品と長軸台車を履いていて、後に京王線への転用に生かされました。

更に京王時代には安普請の掘割法面の改修や排水設備の強化や路盤のかさ上げが行われたり、オールステンレス車の3000系投入やTTCと呼ばれる運行管理システムの実装でも先行するなどしましたが、路線延長が長く沿線開発が旺盛な京王線では混雑解消が優先されて井の頭線の旧型車転用で凌がざるを得なかったとも言えます。変電所は小田急時代に強化され東急時代に車両が補充されと、マネーゲームに翻弄されて内実を伴わなかった帝都電鉄の負の遺産の解消には多大な時間を要しました。

そして急行運転が戦後の一番のエポックでしょう。元々渋谷と吉祥寺を結ぶ路線として国鉄線のバイパス効果が期待されていたものの、時間がかかり過ぎてバイパス機能が果たせていないことから急行運転が計画され、結果的に通過客の増加で潤ったという意味で大成功になりました。そして東急がこれを参考に大井町線の急行運転を行い田園都市線のバイパス機能を強化したのは周知のとおりです。そんな井の頭線とは縁もゆかりもない千葉の話題です。

JR東日本、京葉線朝の上り快速2本を継続 千葉市が要望 - 日本経済新聞
元々東京外環状線の一部として計画された京葉線ですが、旅客輸送開始と東京駅乗り入れで混雑路線の総武線と地下鉄東西線の混雑緩和が狙いだったこともあり、東京延伸時から快速運転が起こ案われ、特に朝夕新木場のみ停車の通勤快速が2往復設定され、快速も頬終日運行、武蔵野線直通も快速運行で休日は停車駅を変えてディズニーランド輸送に特化するなど柔軟なダイヤを組んでいました。

その後沿線開発が進み、また車両更新もあって各駅停車もスピードアップもありなどして快速の停車駅が増やされ京葉快速は海浜幕張以遠各停の遠近分離型になり、武蔵野快速も各停化されと変化する中で、朝夕の通勤快速は内房線君津及び外房線/東金線の上総一ノ宮/成東への乗り入れで一部総武快速線のバイパスの役割も担ってきた関係で存続してきたものの、列車毎の混雑率のばらつきを解消するために見直しは避けられなかったというのがJR東日本の言い分です。快速通過駅の乗車機会確保が目的ということです。しかし極端から極端に振れたことは問題で、通勤快速の停車駅を徐々に増やすといったプロセスを飛ばして反発されたと言えます。

沿線開発が先行して固定客で安定していた井の頭線が急行運転に踏み切ってバイパス機能を強化したのとは逆の展開ですが、元々貨物バイオパスとして計画され、旅客化も混雑路線の救済でバイパス機能が重視された京葉線と真逆ですが、井の頭線の源流である東京山手急行電鉄が外環状線として計画されたことと併せて示唆に富みます。交通機関整備と都市開発の関係は意図した通りには進まないものですね。


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Saturday, December 30, 2023

根拠なき楽観論に警戒

29日の東証大納会の終値が34年ぶりの高値だそうですが、それでもバブル期の1989年につけた最高値を更新できていない状況です。実際は前場で取引の終わる大納会は元々薄商いになりやすく実際は前日終値から若干下げて終わったものです。明るいネタ探しの結果でしょうけど、何かおかしな風潮です。

10年続いた異次元緩和でも達成できなかったとされるデフレ脱却がいよいよ来るという文脈のようですが、諸人こぞりて現実を見ないのはどうかしてます。株価が示すように失われた30年は克服できておらず、寧ろ円安によるコストプッシュインフレに国民生活が圧迫されている中で、未だに脱デフレで来年の春闘の賃上げ期待でインフレ目標を達成して日銀の緩和政策の正常化というシナリオがまことしやかに語られてますが違和感があります。高度経済成長時代の再現を夢見ているとすれば裏切られます。

衰退途上国からの脱却 「積極財政で成長」幻想、捨てよ - 日本経済新聞
高度経済成長を理論的に支えた経済学者下村治氏が石油危機後に示したゼロ成長論を下敷きにした失われた30年の論考ですが、転職で所得が上がる社会というのは所謂ジョブ型雇用と同じ意味ですが、産業別や職種別組合がなく企業横断的な労働市場の存在しない日本で実現するのは難しく、安直な積極財政依存は淘汰されるべき低生産性企業を温存して雇用を塩漬けにして高生産性企業への転職を阻害してしまうので、寧ろ国全体の生産性を下げてしまい企業の付加価値創出力を奪い、結果的に経済を停滞させてゼロ成長に陥り、長寿社会を支える負担が困難になるという論旨です。

有名な話ですがかのケインズも積極財政で景気浮揚はできても経済成長はできない、経済成長に必要なのはアニマルスピリットだと述べております。下村氏のゼロ成長論も似ていて、積極財政に頼らずに企業のイノベーションで企業の付加価値創出力で成長を目指すというものです。実際石油危機の時にはエネルギー消費の多い重化学工業から半導体などの省エネ産業への転換が叫ばれ実践され、ジャパンアズナンバーワンの80年代を実現させました。

しかしバブル期の過剰投資が災いして過剰生産能力を抱えた状態でバブル崩壊による銀行の不良債権問題が顕在化、これは借り手の企業側から見れば過剰債務を意味しますから、その解消に苦しむ中で債務返済を優先した結果、投資が停滞して景気を冷やした一方、積極財政による景気浮揚に頼った結果、低成長に陥った訳で、失われた30年にそのまんま当てはまります。特にアベノミクスの10年は異次元緩和による円安誘導と金利圧迫による財政規律の喪失と低生産性企業の温存が顕著でした。

故にアベノミクスを実質的に継承する岸田政権の新しい資本主義でも問題は解決しない訳です。巷間ザイム真理教とかいう面妖な議論もありますが、防衛力強化にしろ異次元の少子化対策にしろ財源を示さない岸田政権の姿勢の欺瞞は減税くそメガネでも取り上げた通りです。目先の減税で誤魔化しても将来の増税が待っていることに国民は気付いています。

あと成長戦略として新NISAが話題になっておりますが、ネギ背負ったカモでも取り上げましたが、2,000兆円を超える家計貯蓄を株式投資に振り向けてリスクマネーにしようという発想はバブル期から繰り返し試みられて失敗を重ねております。但し今回は期限が撤廃され非課税枠の拡大もあり、また著名アナリストのほったらかし投資が注目されており、若者が関心を示していてムーブメントの予兆があります。

高齢者の資産取り崩しエントリーで取り上げた老後資産2,000万円レポートの影響で若者の資産形成の関心は高まっていますが、これ裏返せば老後不安からくる訳で、公的年金の将来への悲観がある訳です。その結果消費をリードする筈の若者が消費を控えてしまう訳で、その結果ただでさえ生産年齢人口の減少で現役世代が減っている中で、消費を冷やすことになります。公的年金が信頼できる制度ならば起きないことですが。公的年金を充実させるためには現役世代の収入を増やす必要がある訳ですが、財政頼みの日本企業にはその能力がないことが問題です。

となると不都合な問題が起きてきます。著名アナリストが言うように、個人の資産運用は長期投資で福利効果を狙うのが王道で、その為には拠出可能額の範囲で毎月一定額を拠出するつみたてNISAで米S&P500連動ETFを買って忘れろってことになります。個人投資家としては合理的な選択ですが、毎月推計2,000億円と試算される円売りりドル買いの為替取引が連続的に起こることを意味しますから、円安方向への圧となります。つまり個人投資家としての合理的行動が円安インフレを継続させる結果となる訳で、輸入物価上昇による生活の困窮をもたらすことになります。経済学で言うところの合成の誤謬が起きる訳です。

つまり貯蓄のリスクマネー化の結果として資本流出をもたらす訳で、マイルドなキャピタルフライトとなる訳です。回避策があるとすれば東証TOPOX連動ETFがS&P500より投資妙味が高くなる必要がありますが、東証プライム市場の半数がPBR1倍割れでは無理な話です。ちなみにもうすぐ笑わなくなる鬼でも触れたように鉄道業界でもJR東海や京成電鉄が該当します。つまり貯蓄をリスクマネーに転換しても国内企業には恩恵がない訳です。これでどうやって成長しろってことでしょうか?しかも財政資金は成長とは縁のないところに大量に流れています。例えばこれ。

辺野古移設、国が初の「代執行」 24年1月着工 - 日本経済新聞
国の法定受託事務としての公有水面埋め立ての知事承認を知事が承認しないから国が強制代執行という法律論的にも問題のある判断ですが、それを横に置いても大浦湾の軟弱地盤で工法の変更を余儀なくされた杜撰な計画で工事が遅れていて、普天間の返還が最短15年後というベタ遅れの事態を招いた国の責任を問わず承認しない知事を責めるのは、国と地方の対等な関係を定義した地方自治法の趣旨に反しています。

はっきり言えば米海兵隊の本体は既にグアム移転が決まっていて、補給の中継点としての機能が求められる普天間の代替施設としては計画の半分の規模でも可能なんで、難工事の大浦湾の埋立を凍結して暫定整備する方が普天間の返還を早めることになる筈ですが、そうした県側の意見を聞かずに強行している訳です。しかも事業費も膨張しています。その結果宜野湾市の市街地に立地する普天間基地返還で市街地再開発が進めばそれによる経済効果が見込める一方、いつまでも完成しない新基地建設に拘る限りそれは見込めない訳で、経済合理性を考慮してもあり得ない判断です。

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Saturday, December 16, 2023

もうすぐ笑わなくなる鬼

鬼が笑う2024年から間もなく半年。いよいよ鬼が笑わなくなります^_^;。しかし笑う鬼退治は進まず、人手不足倒産が現実味を帯びます。後手後手の後出しジャンケンで窮地の政権には問題解決能力を期待できません。加えて海外にも波乱要因はあります。

FRB、3会合連続利上げ見送り 2024年は利下げ3回分を予想 - 日本経済新聞
FRBが利上げ打ち止めと共にパウエル議長が利下げを示唆したということで為替が動いてドル円が140円近辺に上がりました。但しこれは同時に日銀のマイナス金利解除など金融正常化との見合いということで、日米金利差が縮小するというシナリオに基づきますが、注意が必要です。というのは利上げ打ち止め後も量的引締め(QT)は継続しており、国債市場に上昇圧力がかかっている状況には変わりはなく、引締め的な状況が続く中で、状況に応じた微調整程度の話です。米政府の財政支出拡大傾向は続いていて国債を消化しきれずに市場金利が高騰するリスクがあり、その調整が迫られることを織り込んだということです。

加えて労働市場の軟化でインフレ鈍化が言われてますが、昨年の7%超のインフレ水準を分母とする今年の3%程度のインフレは、それ自体家計への負担となっていて、実質賃金はマイナスのままです。つまりインフレの鈍化イコール終結ではないということで、FRBは油断できない状況にあります。楽観論者が言うようなソフトランディングシナリオにはなりません。故に外需頼みのの今の日本も影響を受けます。同じ3%程度のインフレでアメリカは実質金利でプラス、一方日本はYCC見直しで1%の市場金利ですから実質マイナス金利で為替は140円台に戻ったものの円安の地合いは変わりません。

加えて大統領選次第でアメリカ自身が迷走するリスクがあり、ウクライナとパレスチナへのアメリカの関与の姿勢も変わります。ザックリ言えばウクライナを見捨ててパレスチナ問題ではイスラエルへのコミットを深めることになります。そうなると原油や天然ガスを中東に依存する日本の立場が微妙になります。日本に留まらずEUもアメリカを当てにできない状況を睨んでウクライナとモルドバのEU加盟交渉開始を決めました。これはEUのロシアとの決別を意味します。日本もサハリン2見直しを迫られるでしょう。

てことで嵐の予感の2024年が間もなく始まりますが、経済的混乱や停滞は必至なのに有効な対策を打てないのが今の日本政府です。それでいて2025年の万博がパビリオン建設もままならず開催に間に合わないことは確実ですが、未だに中止も延期も打ち出せずに、一方で追加負担は続き事業費は倍増しております。ま、万博は年が明けても鬼が笑う範疇に留まりますがwww。見通しが立たないのはこちらも同じです。

静岡・川勝知事、リニアで「全工区の工事計画明示を」 - 日本経済新聞
大井川の水問題に解決の可能性が見えてきたとはいえ、南アルプストンネルの作業ヤードや作業用道路の整備を巡るJR東海の静岡県アセスメント条例違反は解消された訳ではなく、直ちに着工とはいかない静岡工区です。

JR東海は開業年度の2027年予定を取り下げたものの、何時まで延期とは発表せず、静岡工区の未着工で遅れていることを際立たせようとしていますが、実際は大手ゼネコンの談合事件や工事現場のコロナクラスター感染による停止や調布市の外環道トンネル工事の陥没事故で大深度地下トンネル区間も未着手だし、岐阜県のトンネル落盤事故もあり、実際にはあちこちで工事が遅れているのですが、そうした情報提供はせずに静岡県を悪者に仕立てようと意図していると川勝知事は訴えている訳です。ちょっと遡りますが、国交省が示した懐柔策がこちらです。

静岡県にリニア新幹線効果1679億円 観光消費増で、国交省試算 - 日本経済新聞
川勝知事は東海道線の静岡空港新駅設置を希望していると言われますが、掛川駅と近過ぎてこだまの連続停車でダイヤ編成上ネックとなることから無理ということで実現可能性はありません。それ故静岡県にメリットのないリニア工事で負担ばかりということに対して国交省の官僚が示した答案がこれです。

加えて静岡県が以前から求めていたのぞみの静岡県内停車ではなくのぞみの一部の需要がリニアに移るからひかりやこだまが便利になるというロジックです。リニアは毎時10本程度で座席定員が1,000人程度とのぞみ16両編成の3/4ですし、当面名古屋止まりということもあってのぞみのリニアへの全面移行は無理ですから、のぞみの静岡素通りは続くと考えられますし、ダイヤ編成権はJR東海にありますから、国交省が何を言おうがJR東海がそれを忖度して実行するとは限りません。

というかそもそもJR東海のリニア中央新幹線計画は、新幹線保有機構からのリース料に国鉄長期債務の一部を乗せて償還させるスキームをJR東日本の株式上場時に主たる事業用資産が自己保有ではないことの弱点を東京証券取引所に指摘されて国に買い取りを求めた結果、再取得価格という時価評価に整備新幹線などに充てる鉄道整備基金の原資を乗せて25年ローンで返済というスキームに変更し、2017年にローンが終了し、その分キャッシュフローの余剰が生じることから、それを活用してローン総額の5.1兆円をベースに資金繰りして整備するという自己資金スキームを打ち出して国庫負担が無いということで政府が承認したものです。

そのために事業費に事実上キャップがかけられており、それが各工区に割り振られた予算の厳格な管理から受注するゼネコンに談合を呼び込んだんだし、予算制約から無理な工事も散見されており、決して工事は順調ではありません。しかも大阪延伸の前倒しという名目では3兆円の財投資金融資を政府が決めましたが、この融資条件がユルユルで30年据え置きその後10年で返済という超破格のスキームですが、加えて大阪延伸前倒しを示唆しながら融資条件にはなっていないということです。

つまり財投の3兆円は破格につなぎ資金となっており、リニアちゃん気をつけてで指摘したように財投資金を資本制資金として計上した結果、JR上場4社の中で株価が高いJR東海のみがPBR1倍割れとなったと見られます。勿論リニア事業が順調に進んで開業し事業用資産として利益を生むようになれば問題はないんですが、現時点でその見通しは立たない訳で、故に資本効率の改善にはつながらない訳です。ちなみに当初5.1兆円とした事業費はその後膨張し、現時点で7兆円となっております。つまり既に財投資金3兆円の半分以上は投入されている訳で、何時になるかわからない開業までは資本効率の改善は無理という訳です。

これ上記笑う鬼退治エントリーで指摘した京成電鉄のオリエンタルランド依存の結果の実質PBR1倍割れ問題とも似ています。OLCや東海道新幹線のような金の生る木をなまじ持っているがために苦労している訳ですね。

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Saturday, November 04, 2023

笑う鬼退治

鬼が笑う2024年で取り上げたインボイス問題のニュースです。

インボイス導入1カ月「想定以上に負担」 混乱続く企業:日本経済新聞
サラリーマンの経費精算でインボイスの有無の確認作業で現場負担があることは国税庁も認識していて1万円以下の取引でインボイスが省略できる経過措置を決めたりしましたが、ネット取引での登録ナンバー確認など次々に面倒な問題が湧いて出てますし、ドライバー不足なのに運送大手が委託先の多重下請けが仇となって委託先の登録の有無を把握しきれないなどの問題も起きています。独禁法違反が疑われる委託切りも見られるなど混乱しています。

これらはインボイス自体の問題というよりも説明不足や日本的な商慣習故の問題だったりしますが、ただでさえ働き方改革の2024年問題でドライバー不足が言われる中で、タイミングが悪かったとは言えますが、欧州付加価値税制度では機能している制度が日本ではこうなってしまうというのは、日本社会が抱える問題と見るべきでしょう。欧州でも当てない民主政治で損くらってますで取り上げたギリシャショックのようにヤミ営業でインボイス発行しない脱税が横行していたなんて例もありますから、明示された法令も社会の受容次第で機能を失うことは同じではありますが。

ギリシャショックは同時に財政破綻のリアルを示しており世界最悪の日本財政の反省材料にもなります。長期金利が7%になると財政が持続可能でなくなることを明らかにしました。今の日本の減税議論に違和感しかありません。それも所得減税に拘ったために実現は来年6月という役に立たないものですし、1年限りなら後に増税が待っている訳で、リカードの中立定理が働く故に減税くそメガネになります。減税うそメガネとも言われているようですが^_^;。だからといって恒久減税は論外ですが。

別の視点ですが今回の減税は税収の上振れ分の還元を謳っている訳ですが、その根拠となるのが22年度の10兆円超の税収上振れでして、円安による企業業績の上昇による法人税収とインフレによる消費税収が主なもので、7:3の割合です。昨年円相場が激しく動いた結果ですが、今年は150円前後で膠着しており、去年のような上振れが起きるとは言えませんし、インフレは税収増をもたらすと同時に政府支出も増やします。今年度の予算は当然インフレを踏まえて連動する社会保障費は拡大しますし、人件費や資材費の上昇は公共事業費も上振れさせますから、年度をまたいだ歳出増で消化されます。故に減税財源にはならない訳です。

日銀、長期金利1%超容認 植田総裁「大幅に上回らず」:日本経済新聞
日銀がYCC見直しに動きましたが、1%変動枠に長期金利が近づいて維持困難と判断して限度からめどへと表現を変え1%超の金利を容認する姿勢を見せました。但し急激な変動は抑えるということで緩和継続を謳っておりますが、実態は市場の圧力に押されての判断ということですね。それでも不十分ということで為替は円安に振れて150円のバリアを突破しており円安傾向は続きます。

とはいえ変動幅は小さいですから、上述のように法人税収の上振れ効果は限られます。但しインフレ要因ですから消費税収の上振れはある程度発生しますが、政府支出増を上回る水準になるかどうかは微妙です。ということは税収上振れを見込んだ減税は財源的には微妙ってことです。増税メガネと悪口言われたから減税を打ち出すとか、思いつきで政治をやるなということですね。

岸田政権の打ち出す政策は。例えば少子化対策と称して児童手当の拡充を打ち出し高校生も対象に加えてますが、一方で自民税調で高校生の扶養控除圧縮が議論されているという具合に目先を誤魔化す姿勢が見られます。基本的に国民をなめているとしか思えません。手当拡充よりより高校無償化の方が効果的ですし予算も少なくて済みます。という具合に目につくところをやったフリで乗り切って選挙の票稼ぎというあざとい姿勢は国民に見透かされてます。桃太郎よろしく鬼退治しても宝は得られません。桃太郎は岡山だけど。

2024年の働き方改革で人手不足が言われている中で少子化対策でバラまくというのは本当の問題解決にはならないばかりか、仮に出生率が上がって子供が増えたところで家庭内のケア労働を増やして特に女性の就労を圧迫しますから、人手不足は悪化します。持続可能な賃上げを打ち出して法人減税をしても法人税を払っていない赤字企業は蚊帳の外ですし、仮に賃上げが定着しても企業の人件費上昇は価格転嫁に繋がりますから賃金インフレで結局実質賃金は伸びないですし、新NISAで家計貯蓄を資産運用へという画を描いても、今の市場環境では国内株式に資金が回る保証はありません。日銀のETF購入で下駄を履かせた官製市場の現在の株価では個人投資家が得られる利益は限られます。一方でそれでも株価が上がらない日本企業はアクティビストの草刈り場です。

京成電鉄、ディズニーでゆがむPBR 実態は「1倍割れ」 - 日本経済新聞
お業績好調なオリエンタルランド株の保有分の時価が1.6兆円と自身の時価総額を上回る水準にあり、OLC株を除いた本体のPBRは0.5倍程度と見積もられ、英アクティビストファンドから一部売却を迫られております。京成電鉄の場合コロナ禍で空港輸送が大打撃を受けた不運はありますが、逆に空港輸送の1本足打法の脆弱性が露呈した訳で、オリエンタルランドのような優良企業を連結対象にしていることがリスク要因となっている訳です。

京成電鉄には新京成電鉄という優良企業をグループ内に抱えており地域輸送に特化した事業環境もあってコロナ禍の影響も軽微だった訳ですが、その結果コロナに勝てない国で取り上げたように完全子会社化して元々の保有分の含み益由来の負ののれんで益出しするなどしてきましたが、そんな一過性のことでは事態は改善せず次のステップを踏みます。

京成電鉄が傘下・新京成を吸収合併へ 25年4月 - 日本経済新聞
継続的に利益を計上して株価を上げるには、経営統合して運営面で規模の経済を狙うしかない訳ですが、悩ましいのは運賃の共通化問題です。共通化して運賃通算すると初乗り運賃の二重取りが無くなり乗客にはメリットがありますが、運賃収入の減少は避けられず寧ろネガティブな評価になりかねません。故に当面現行運賃を維持するということになりました。

別運賃自体は現行制度で禁止されておりませんし、京成自身もちはら線と成田空港線(スカイアクセス)は別運賃です。それぞれ歴史的事情があって、ちはら線は元々小湊鉄道が東京直通を狙って京成千葉(現千葉中央)―海土有木間の地方鉄道免許を申請して交付されたことに始まります。京成線を通じて東京進出を図った訳ですが、4ft8in1/2(1,435㎜)電化の京成と3ft6in(1,067㎜)非電化の小湊では直通はできない訳で、長らく免許更新を続けながら棚ざらしになっておりました。京成との合弁で千葉急行電鉄を設立して事業化を模索したものの進まず、沿線予定地の宅地開発が具体化して途中の千原台(仮)までの事業化が動き出し実現しました。しかしバブル期の仇花で宅地分譲は遅々として進まず、業績が上がらずに京成が救済合併して京成ちはら線となりましたが別運賃は維持されました。故に対都心でJRに乗り換える場合には千葉中央と京成千葉の間の京成線運賃の合算が重荷になりますが、赤字路線を引き受けた京成としては簡単に運賃を弄れないわけです。

成田空港線は元々三セクの北総開発鉄道(現北総鉄道)の路線を利用していて、小室以東は千葉県営鉄道由来の宅地開発公団線として別運賃だったこともあり、高運賃で利用が低迷しました。宅開公団は小泉改革の特殊法人改革で統廃合や名称変更の結果、鉄道事業を切り離すことになって京成が引き受け第三種事業者の千葉ニュータウン鉄道となり北総が第二種事業者となって一体化されたものの高運賃は改善されず、住民訴訟にまで発展しました。結果的には成田新幹線ルートを利用した北総ルート(成田スカイアクセス)が整備され北総線の運賃の見直しをすることで和解しましたが、それ故に北総線と共通化された成田空港線運賃も安易に動かせない政治性を帯びた訳で、やはり解消は困難です。

という訳で、新鎌ヶ谷で接続する新京成線と成田空港線の運賃統合はやはり無理となると、京成津田沼での京成本線・千葉線との運賃通算に限られる訳ですが、これも新京成線が新津田沼でJRと乗換可能で船橋乗換からシフトすることになると京成にとっては減収要因になります。船橋乗換の場合も東京メトロ東西線に向かう場合はJR線を挟んで初乗り運賃の重複負担となりますが、東京メトロの低運賃に助けられています。京成西船に優等列車を停めないのはJRに気を遣っているのかも^_^;。

ということで、当面車両の共通化や乗務員も含めた運営の柔軟化などで地道に益出ししたり、それぞれが抱えるバス事業の再編などで合理化を進めるぐらいしか打つ手はない訳で、アクティビストの納得を得るハードルは高いといえます。こうした問題を抱えて身動きが取れない日本企業は数多くあり、海外投資家を通じた国富の流出を助けるだけです。鬼たちも大爆笑-_-;。

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Sunday, September 17, 2023

国際問題になった東京五輪の落とし物

東京五輪の落とし物の続きですが、ユネスコの諮問機関のNGOイコモスから神宮外苑の再開発撤回が要求されました。

神宮外苑再開発、イコモスが撤回要求 事業者や東京都に:日本経済新聞
富士山をはじめ世界遺産登録でお世話になったイコモスからの撤回要求ですから、スルーはできないでしょう。

おさらいですが、神宮外苑は明治天皇の崩御を悼む日本国民の寄進によって実現したもので、国民にとっては倒幕で維新、開化を実現させた偉い人程度の認識でしょうけど、広く国民から敬われていた存在でした。そんな国民の声を踏まえて当時の政府は開発制限で地権者の権利を制限する風致地区を制度化してその指定第1号としました。その結果緑地の保全や建設物の高さ制限が課されており、神宮球場や秩父宮ラグビー場、国立競技場などのスポーツ施設もその規制の範囲内で作られたものでした。

Undoしたい大草原wwwの小さな森のザハ案撤回騒動を覚えている人は多いと思いますが、あまり報じられておりませんが、当初旧国立競技場を改修して使うとしていた五輪招致がいつの間にか新国立競技場建設となり、旧国立競技場はあれよあれよと解体されて、工事の難易度が高いザハ案が撤回されたものの、同じ規模の隈研吾案に落ち着いたというアレですね。

実は事前に神宮外苑エリアの高さ制限緩和の都市計画変更が行われていて、謂わば新国立競技場はその露払いで、故にあの規模の新競技場が必要だったってことです。お陰でキャパが大きすぎてレンタル料も高く稼働率スカスカのお荷物になった訳ですが、高さ制限緩和で高層ビル建設が可能になれば。商業施設を誘致して高額のテナント料が稼げますから、少数の民間地権者を利する訳です。

実際三井不動産が高層ビル建設を表明してますし、一方で高層化を快く思わない明治神宮に対しては高さ制限緩和で生み出された容積率の過剰分を隣接する伊藤忠商事に譲渡して譲渡益を得ることで黙らせるという具合に実に悪知恵の詰まった再開発計画です。立案したのは萩生田光一議員で五輪招致委員長の森喜朗が後押ししたものです。ちなみに五輪汚職で招致委員などの刑事訴追がされてますが、萩生田光一も森喜朗もお咎めなしで単なるガス抜きですね。

こういう事情があるので、コロナ禍で1年延期してしかも無観客でも、五輪をやらないわけにはいかなかったし、その裏でこうした悪事が進行していたけど、スポーツを餌にメディアも沈黙していたしで、結局国民の知らないところで進んだ再開発計画というところもイコモスも問題視しています。五輪をダシにした再開発が問われます。

イコモスに関しては世界胃酸でとろける文化散財万歳で取り上げた軍艦島の世界遺産登録で英文の説明に韓国がクレームをつけたことで揉めたこともありましたが、一応日本の主張に沿った決着を見ております。その意味でイコモスからのクレームへの対応は難しいところがあります。

国際ルールを盾に政府の姿勢を正当化する姿勢はALPS処理水海洋放出でIAEAを利用したりしてますが、IOCも利用されただけってことで、国際ルールの都合の良いチェリーピッキングということが言えます。国も都も対応を誤れば国際世論を敵に回すことになりかねません。どうなるでしょうか。

一方五輪汚職で電通の指名停止もあって工程管理がグダグダになっている大阪万博ですが、怪運国債市場の蓋で述べたように工事が進まずいよいよ開催が危ぶまれてます。しかも夢洲の地盤沈下で土壌改良が追い付かないってはて、これ辺野古と同じような状況で土壌改良しないとパビリオン建設も困難ですし、建設資材の搬入路は橋とトンネルが1ずつですし電気もガスも水道も無いからトイレも浄化槽が必要と何だかウンコ臭い現状です。地下鉄中央線の公示も滞っております。

こうして見ると維新のザル頭ぶりが目につきます。所詮底の浅い小悪党で関西財界も腰が引けてます。政府が乗り出してゼネコンへの協力要請をしたりしてますが、図面すら開示されない工事を請負うことはできません。結局政府と大阪府/大阪市の責任のなすり合いになりそうですね。なにわ無くとも江戸村先五輪ですよで示唆したように、どこか間抜けな維新です。まあ阪神のアレで浮かれとりゃええわい。フランチャイズを失うヤクルトの優勝は遠のくでしょうから、留飲を下げられます。

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Sunday, July 30, 2023

本気の気候変動対策

豪雨の梅雨が明けて猛暑の夏となりましたが、豪雨の影響は多岐に亘ります。

大雨、排水能力超え 秋田大雨1週間「どこの都市でも」:日本経済新聞
秋田市の水害は典型的な内水叛乱です。かがやきを失った北陸新幹線 で取り上げた川崎市のタワーマンション被害のように、豪雨で雨水が下水道の処理能力を超えて流入した場合、逆流して住宅等に被害をもたらすもので、内水氾濫と呼びます。タワマンの場合電気設備を地下に置くケースが多く、水没して停電という被害が起きた訳ですが、停電するとエレベーターが使えず揚水ピンプで水道水をくみ上げて落とす給水設備も使えなくなりますから地獄です。戸建てでも床上浸水もありますし、都市部ならどこでも起こり得るものです。河川の越提氾濫と違って見た目で危険がわかりにくいし、自治体のハザードマップに記載されているとは限りません。

とはいえ地下の下水道の能力増強は簡単ではありませんし、当然多額の費用が掛かります。例えば東京都で大規模な地下調整池を設けたりしてますが、東京都の財政力だから可能ということもありますし、それすら想定外の豪雨が続けば氾濫は起こり得ます。つまり完全な備えは難しい訳です。また確率の低い豪雨への備えにどれだけ公費を使うかについての合意形成も困難です。また人口減少下では公費負担を簡単には増やせません。

そもそも都市化で人口が集積するから下水道を整備しなければならなくなる訳ですが、例えば開発に適さない低湿地を公費で購入して調整池にするとかして、過剰開発を抑制する方向で考えて下水道への雨水流入を抑える方が安上がりで現実的になるんじゃないかと思います。上記かがやきエントリーで北陸新幹線の車両基地が低湿地に立地していたこともありますが、作っちゃいけないところに車両基地を作っちゃったということも言えます。財源制約が強い整備新幹線故に安い底地買いで被害を受けたとも言えます。

てことで苦い経験をしたJR東日本ですが、国鉄時代に建設された東海道新幹線の大阪運転所のように近くに天井川があって、当初から水害対策が考慮され、民営化後も車両を盛土上の本線に避難させる訓練を積み重ねてきた訳で、その経験はJR東日本に引き継がれなかった訳です。とはいえJR東海は水害対策が万全かと言えばそんなことはなく、名古屋の天白川の氾濫で当時の葛西敬之社長の運行継続の指示で多数の列車が立往生して車内泊を強いられましたし、今年の6月豪雨では早めに規制をかけたものの混乱しました。

東海道新幹線、大雨混雑防げ ダイヤや情報伝達改善へ:日本経済新聞
東海道新幹線の約半分の区間が盛土で、パイプを埋め込んで水抜きしたり土留めの擁壁で法面崩落を防いだりといった対策はされてますが、雨量が植えれば盛土が緩んで路盤や法面の崩落は起こり得ます。列車の通過に伴う振動がきっかけになることもあり、沿線の雨量計を見ながら徐行や運休などの規制を決める訳ですが、問題は情報伝達の拙さで駅に乗客が滞留し混乱したことです。JR西日本のように予報段階から計画運休するぐらいしないと結局混乱は避けられないんじゃないでしょうか。

山陽以降の全幹法規格の新幹線では高架橋主体で盛土は取付部などに限られますが、それでも豪雨による混乱は完全には避けられない訳ですから、盛土の多い東海道新幹線ではより慎重な対応が求められます。しかしのぞみ増発で輸送能力を高めてしまったが故に運休の判断が難しくなっているということも言えます。JR東海はそれ故に中央リニアを作るんだとしていますが、輸送力は東海道新幹線には及びませんし、第一難工事で開業の見通しが立たない状況です。

一方の北陸新幹線も敦賀で当面足踏みの状況が続きそうです。やはり難工事が予想される小浜京都ルートに拘らず、早期開業が見通せて事業費も少ない米原ルートで実現することで代替ルートは確保できます。但しJR東海の孤立主義が問題を難しくしている面があります。また豪雨にしろ猛暑にしろ気候変動の影響と見るのが妥当ですし、欧米やオーストラリアなどでも熱波や山火事を気候変動に絡めて報道されることが増えてますが、日本では見られません。正直言って人口減少に対応した開発抑制はCO2排出削減にもなりますし、実際電力需要は縮小しており、再エネ転換がやり易い状況になってきています。政府が言うGXの本気度が疑われます。

水害じゃありませんが首都圏ではこんな輸送障害がありました。

山手線全線で運転再開、11万人に影響 信号装置が故障:日本経済新聞
月曜朝の輸送障害で混乱しましたが、原因は信号トラブル。しかも大崎の東京総合車両センターの本線出口部分の機器トラブルで主要車両を本線に出せずに運休という致命的なもんです。思い出されるのは2015年の籠原駅の地落事故で電留線から車両を出せなくなった輸送障害ですが、今回は信号システムが原因です。

首都圏ではATOSと呼ばれる運行管理システムで列車の進路選定や遅延時の指令業務から駅の案内表示に至る一連の自動化がされている訳ですが、車両基地の出口のトラブルで車両を本線上に出せなければどうにもなりません。勿論システムを解除してマニュアル操作することは可能ですが、その場合車両基地に収容された車両を1編成ずつ手作業で進路を選定し、手旗などで合図しながら動かすことになりますから、大量の要員を確保して慎重に行う必要があります。当然処理能力は落ちますから、早めの復旧はしたものの平常の6割程度の運行に留まった訳です。JR東日本はそれなりに努力した結果です。

但し乗客への告知や案内は徹底しており、大きな混乱は見られませんでした。山手線は京浜東北線との並走区間の代替輸送と共に地下鉄網による代替輸送が可能という立地もありますから、元々冗長性が確保されているとも言えますし、加えてコロナ禍によるリモートワークでピーク輸送量が減っていたことも幸いしました。金融危機は核より怖いで取り上げた通勤定期運賃値上げの影響もあるかもしれません。つまり需要抑制のための値上げを実施ている訳で、こうした冗長性の確保はトラブル対応にも有効ということですね。効率重視一辺倒は見直す時代と言えます。

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