地方公営交通

Saturday, November 01, 2025

株価以外全部沈没

ほとんど前エントリー*1の続編ですが、事態が動いているのでフォローアップせざるを得ない状況です。

まずガソリン減税ですが、今年12月31日からの暫定税率廃止で与野党が合意しました*2。与野党6党合意ですから国会通過もすんなりいくでしょう。軽油も来年4月1日からということですが、インフレ対策なら物流費に影響する軽油を後回しというのは軽油引取税が地方税で地方から反対の声が上がっていますが、同時にガソリンが安くなることの方が国民へのアピールになるということもあるでしょう。AIが壊す社畜エスカレーター*3でも触れましたが、価格が下がって需要を喚起すると原油の輸入が増えて貿易収支が悪化して円安インフレを招くことになります。

また財源は曖昧なままで、当面税収上振れによる剰余金や法人税の特措法減税の見直しなどとされてますが、特に剰余金は繰り越して次年度の国債発行抑制に用いることが法定されてますから、年度をまたいだ単なるトバシでしかありません。具体的に道路予算削るとか自動車関連税例えば重量税の増税とか、揮発油税の負担がないEVを考慮した走行距離税とか燃料税の炭素税への1本化とかには踏み込まずに済まそうとしている訳です。この調子ですから財政規律の緩みを質そうとはしていない訳で三つ子の赤字*4はますます進みます。

そして自動車半導体を巡るオランダと中国の対立がエスカレートしています*5。ネクスペリアは元々オランダの電機大手フィリップスの半導体部門を独立させた企業ですが、中国資本に買収された結果、オランダ政府から製造技術流出の恐れということで冷戦時代に作られた忘れられた法律で規制をかけたものですが、どうも裏でアメリカが動いているようで、怒った中国政府がネクスペリアの中国にある最終製品工場からの海外出荷を制限した結果、ドイツVWや日本のホンダその他の自動車メーカーが巻き添えになっております。自動車用半導体の世界シェア4割を占める同社の製品の8割は中国工場で最終製品に加工されることから、世界中の自動車メーカーがトバッチリを食っている訳です。これ結局日欧などアメリカの同盟国が傷つくだけの不毛な争いですが、今度はオランダ政府がネクスペリアのシリコンウエハーの中国工場への供給を止めて泥仕合になっています。中国資本のオランダ企業というネクスペリアがまた裂き状態になっている訳で、トランプと習近平がにこやかに握手しても事態は解決しません。中国を除く世界の自動車産業のピンチです。

そのせいか最高値を更新する日本株でも自動車関連はパッとしません。主にAI関連半導体関連の値上がりが支えているようで、相場全体が上げ相場という訳ではありません、円安で割安感があっても海外勢は万遍なく買っている訳ではないということです。高市トレードと言われる株高も一皮むけばという感じですが、特に欧州勢の買いが優勢なのは変わりません。インバウンドやタワマン完売などに見られる安いニッポン現象です。

ほぼ500兆円で動かなかった日本の円建てGDP名目値ですが、ドル建てでは5兆~6兆ドルだったものが、インフレで600兆円を超えた円建て名目値がドル建てでは4兆ドルになっているのが現状な訳で、その分日本の購買力が低下している訳で、一番のインフレ対策は日銀の利上げしかない状況ですが*6、またも日銀は動きませんでした*7。ベッセント国務長官は別に親切心で言っているのではなく、日本政府のドル売り介入を牽制する意図でしょう。実際米ドルは円を除く主要通貨に対して下げており、ユーロ・ポンド・スイスフランなどに対して安値となっていて通貨防衛の意図ですが、欧州の主要通貨は既に米FRBに先駆けて利下げに動いていて、スイスフランに至っては日本よりも低金利なのに上昇してます。そしてFRBも今回は動いたものの*8為替は寧ろ円安に動いてドル円153円台が定着しつつあります。その意味では日銀が利上げしても大勢に影響はないのかもしれませんが、金融正常化の姿勢を示す意味はありますし、利上げを遅らせた分だけ正常化が先送りされます。

てことでインフレ下で株式の高値更新はある程度持続すると思いますが、銘柄ごとに動きはバラバラで、下げている銘柄もあります。例えばリニア事業費倍増で嫌気されたJR東海です*9。財務の健全性は複雑系エントリー*10で指摘した通りですし、財投の3兆円も30年据え置きという破格条件で現状無利子ですから利払いの負担はなく、現状のインフレが続くなら負担にならないかもしれませんが、それ故に居心地の良い現状を抜けられなくなっているとも言えます。東海道新幹線のぞみ増強とインバウンド需要で既にライバルの国内航空便に対しても優位な状況ですから、仮に似リニアが開業しても航空からの移転はほぼ見込めないとも言えます。逆に東海道新幹線の好調でキャッシュを稼ぎ過ぎると自社株買いや配当などの株主還元を求められるから現状煩いアクティビストに狙われることもないということも言えます。この辺は伝統的日本企業的なスタンスで、既に赤字ローカル線の名松線に至るまで線路も車両も更新されこれ以上の投資先が見当たらない贅沢な悩みでもあります。何ならJR西日本が渋っている北陸新幹線米原ルートを整備スキーム無視で自前整備するとか。まあやらないでしょうけど。

一方でインバウンド対応は京阪が始めたプレミアムカーが阪急やJR西日本でも取り入れられ、老舗の近鉄特急も差別化された豪華特急のラインナップを整備してます。そんな中で京阪は更にプレミアムカー2両体制と攻めてます*11。上限運賃が決められていて航空鵜のようなダイナミックプライシングが難しい中でJR東日本の中央線グリーン車や私鉄各社の着席サービスが次々に登場してますが、京阪の場合沿線開発が終わって沿線の高齢化や松下・サンヨーといった大手電機産業の撤退やJR西日本との競争激化もあって乗客が減少する中での増収策ですが、当然一般車の乗車定員を削っている訳で、それに対する批判もありますが、背に腹は代えられないということですね。

同様の動きは関東でもありまして、1つは京成電鉄の空港連絡有料特急の増強計画です*12。成田空港第三滑走路供用と3つのターミナルビル統合を成田空港会社が打ち出し、末端が単線のJRと京成の成田空港線の増強を視野に入れてスカイライナーに加えて押上発着の有料特急を2027にも導入ということで、押上が観光名所でもある東京スカイツリー最寄りで浅草にも近いからインバウンド需要の取り込みが見込めるということですね。アクティビストから将来への追加投資を迫られていた京成が動きを見せた訳ですが、同時に都営浅草線への直通も視野に入っていると考えられます。そしてそれを裏付けるような動きが出ました*13。具体策はこれからですが、JR東日本のN'EXの牙城に切り込む可能性もあります。

両社ともにアクティビストの標的にされており、投資をせがまれてしないなら株主還元を求められているという点で共通しています。加えて都営浅草線を通じて関係も深く保安装置も同じ1号線型ATSの上位互換のC-ATS*14でハードは共通で運用が異なるだけなので擦り合わせは容易です。具体的にダイヤに落とし込むときに現状のインフラの貧弱さがネックになる可能性はありますが、インバウンド対応というところは引っ掛かるものの、とりあえず投資に向かうことは評価できます。殆どシナジーのない新京成電鉄の子会社化と統合とか、系列バス会社の再編とかで守りを固める一方だった京成と、やはり沿線の高齢化と立地企業の撤退で京阪と似た苦境にある京急がアクティビストに促されて動いたということですね。日本の現状は明らかに国内の民間投資が不十分だった結果と言えますから。

その意味で日本政府が合意文書を交わした5500億ドルの対米直接投資はヤバいです*15。というのも同様に対米投資を迫られた韓国のこのニュースです*16。長くなりましたのでさわりだけですが、韓国は外貨準備の80%超に及ぶ3500億ドルの直接投資でウォン安によるインフレ昂進を懸念して抵抗していたもので、それ故自動車関税交渉が遅れたのですが、日本のように自動車関税緩和を優先してやはり確実に円安を招く巨大投資を受け入れたことは、国民生活を犠牲にして大企業を救ったということでもあります。とりあえず今回はここまでにしておきますが追って深掘りします。

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Sunday, August 10, 2025

外国人問題は社畜の怨念?

雨で凌ぎやすくはなりましたが、お熱うございます。社畜の帰省シーズン*1ですが、コロナ禍での帰らざる社畜2*の変化で様変わりしました。バーチャルなご先祖様はは変わらず帰って来るけれど、居なくなるアニオタはコミケの復活で元に戻り、寧ろ推し活や聖地巡礼で活性化されており鉄ちゃん顔負けです。一方鉄ちゃんは青春18きっぷアップデート*3で様子が変わり、売上3割減だそうで、使い勝手の良かった旧青春18きっぷユーザーは一部離れたようです。

とはいえJR東日本の来春の値上げ*4に見るようにコロナ禍の減収がリモートワーク普及で戻らない一方、インフレによる調達価格上昇もあり、これまで維持してきた国鉄末期の運賃体系で発生していた超過利潤が減少し、割引の原資が細った結果、割引きっぷの見直しも避けられないところですし、上記エントリーで指摘したように青春18きっぱーの増加で現場の負担が増えたこと、地方の過疎化でそもそも通学列車も減っていて企画きっぷ発売の趣旨も薄れてきてますし、また旅客6社の売上配分が利用者アンケートの結果に基づく推計値による案分というアナログな方法でこれも負担になっていたと考えられますから、自動改札の入出場記録に基づく実数値で配分できる分バックオフィスの負担も減ります。

てことですっかり様変わりしたお盆の風景ですが、もう1つ変わったのが円安を背景としたインバウンドの外国人観光客の増加です。特に社畜の帰省とは需要がバッティングします。加えてインバウンド客の大きな荷物が座席や通路を塞いでトラブルが頻発しており、観光地のオーバーツーリズムと相まって課題が明らかになってきてます。それなのにJR東海は定員減を嫌って荷物スペースを増やすといった対応を取っていませんし、予約荷物スペースが予約外の荷物で埋まったりしています。外国人観光客が荷物スペースの予約ができることをJR東海がどれだけ告知しているかが問われるところですが、一見さんの観光客にとって使いにくいシステムになっていないかといったところも問われます。

これJR東日本のえきねっとや指定席券売機の使いにくいユーザーインターフェース(くそUU)の問題*5とか、JR東海のスマートEXと別建てだったり、折角全国で使えるようにしたIC乗車券も敢えて仕様を変えて共通仕様から離脱したり*6、合理化でみどりの窓口縮小したら行列ができたり*7、クレジットカードのタッチ決済やQRコード決済の取り組みもバラバラ*8。先に検討していたJR東日本を出し抜いた格好です。混雑を前提に動作の確実性を求められる首都圏に対して、IC乗車券でも先行するSuica/PASMO陣営に対して仲間を増やす横展開で優位にあるICOCA*9と似た構図です。Suica経済圏危うし。JR東日本はみどりの窓口改革としてAI導入を打ち大sていますが*10、AIはあくまで道具で使い方次第です*11。

要注意なのはAIの電力消費の大きさで、単純に社畜の代替を目指すと人口減少下の高エネルギー消費で知恵熱地獄*12になるし、ろくなことになりません。あとマクドナルドのハッピーセット問題*13ですが、ちいかわでも起きたことの反省や対策も無しにポケモンカードのようなプレミアム性のあるキャラクターグッズを景品として配布して客を吊る企業姿勢にこそ問題があり、外国人のみならず日本人もいると思われる転売ヤーのせいにするというのはいただけません。「悪いのは外国人」というのは間違っています。

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Saturday, July 05, 2025

TIXY選挙の後始末

ティックトック、インスタグラム、エックス、ユーチューブを略してTIXYと呼ぶそうですが、SNSのショートムービー拡散機能を選挙活動に利用して、一方的な断定調の主張を有権者に届けるTIXY選挙が物議を醸しているのは都知事選の石丸現象*1や兵庫県の斎藤知事再選*2に留まらず、高齢者バッシング*3や年収の壁問題*4や氷河期世代煽ったり*5外国人の社会保険タダ乗りのフェイク*6などで支持を伸ばす国民民主党*7の躍進はSNSの拡散力によるものです。AIで見た目を整えることも容易になり、N党、れいわ、参政党などもSNS拡散を取り入れており、街頭演説中心の既存政党と異なった選挙戦術で自らを目立たせようとしてます。

その結果見た目のウケ狙いが目立つようになり、例えば野党各党が揃って消費税減税に言及し、与党の自公も給付金で対抗するという*8眩暈のする状況です。いずれもインフレ対策として打ち出してますが、総需要を賄える供給力が衰えた中での財政出動はインフレ要因になるだけで無意味です*9。税収の上振れが喧伝されますが、インフレの影響である以上、時差を伴って国債金利の上昇による国債の利払い費増が迫る中で、上振れ分は国庫に戻して国債発行の圧縮に使うべきものです。特に長期債の金利上昇は顕著で*10、低金利時代に増えた長期債をこれ以上増やせず、短期債で凌ぐしかない状況です。その結果国債に借換えが増えて借換え時の入札で決まる金利の上昇の影響を長期間受けることになります。つまり現役世代や将来世代へのツケ回しが膨張することになります。こうした財政の仕組みを知れば高齢者バッシングは無意味だし消費税減税や給付金も問題だと理解できるでしょう。

TIXY選挙で報道姿勢が批判された所謂オールドメディアがインフレ対策を「最大の争点」と報じるのですが、経済学上の常識としてインフレはマクロ経済現象であり、対策は日銀の利上げと財政出動の縮小による総需要抑制策しかないことぐらいきちんと指摘して欲しいです。逆にこの点を曖昧にしたままの選挙戦ではまともな結果が出るとも思えません。実際都議選では自民公明の議席は減ったものの都民ファーストが伸びて小池知事与党は盤石という結果になりました。自民党は都連の裏金問題で票を減らした模様ですが、都ファに票が流れたんじゃ意味がないです。寧ろ都の開発行政の不透明さは温存されて地価は上がる一方で家賃も上昇してもはや地方の若者を受け入れる余地は減ってます。

週刊東洋経済2025年6/21号の第二特集で東京の湾岸副都心を取り上げております*12。既に公募も取りやめ東京ドーム4個分の都有地が宙に浮いています。臨海副都心の開発は主に三菱地所が手掛けてきたのですが、1996年予定の都市博の中止*13で狂いが生じたものです。ご存じ青島幸雄氏が都市博中止を掲げて都知事選に立候補して当選し、逡巡はあったようですが民意を尊重して都市博中止を実行しました。規模としては開催中の大阪関西万博を上回る大規模博覧会を起爆剤に開発に弾みをつけようとしたようです。これ古くは1940年の幻の東京五輪と東京万博を想定して晴海展示場が整備されたものの戦争で中止した流れと同じですが、どのみちバブル崩壊で博覧会どころじゃなかったでしょう。とはいえ都有地の造成費用は支払われている訳で、税金で負担されていることは指摘しておきます。

しかし東京都は諦めず石原知事時代の東京五輪招致で競技施設を湾岸に集め、1964年の国立競技場その他の既存施設と連携したコンパクト五輪を構想するも選に漏れ、その後紆余曲折の果てに2020年東京五輪として招致されたものの、再利用される筈の国立競技場が建て替えられ*14、震災復興もそっちのけで容積率変更の既成事実づくりで強行され*15、コロナ禍で無観客になったり、事後的に五輪を巡る不正が明らかになったりしながら、新国立競技場を露払いにして神宮外苑の再開発が進んでいるのは周知のとおりです*16。つまり未利用の都有地を放置して風致地区指定の民有地の再開発を進める都の異常な開発行政です。そして神宮外苑の地権者には三井不動産や神社本庁が名を連ね、隣接地の伊藤忠本社ビル建て替えに伴う空中権売買まで行われております。都が造成費用を負担した臨海副都心は放置され、民間の大口地権者の利益誘導を図った訳です。しかも神宮外苑は都心の貴重な森で、都市部のヒートアイランド現象による気温上昇を抑える役割もあるのにお構いなし。熱中症で倒れる人が増えても知らん顔ってことです*17。こうした開発行政に信任を与えたことになる訳で、森喜朗元総理と萩生田光一議員が差配したことも明らかですが*18、元々流動人口が多く選挙への関心が低い東京都議選ではこうなってしまう訳です。ある意味TIXY選挙がやり易いと言えますが、参院選ではどうなるでしょうか。

それでも流石に臨海副都心の都有地は何とかしたいから8号北上線(豊住線)*19や臨海地下鉄*20でアクセスに弱点のある臨海副都心のアクセス改善を狙っているんでしょうけど、神宮外苑に留まらずそこここで再開発ガシガシ進めている中で意味あんのかってのが正直なところです。加えて再開発を阻むもろもろの要素も顕在化しております。この点は別項にて取り上げたいと思います。

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Saturday, April 19, 2025

大転け・完敗万博

大阪・関西万博が始まりましたが、予想通りというか、泥縄が露呈しています。

大阪万博、地下鉄は何度も入場規制 バスは予約優先 - 日本経済新聞
万博会場の夢洲はごみ埋め立て地の人工島で、アクセス手段が限られており、不安視されていました。地下鉄中央線夢洲駅と東ゲートが直結されており、メインルートとなるほか、JR桜島線桜島駅から路線バスタイプのシャトルバスで向かうサブルートの他、主要駅からの観光バスタイプのシャトルバスや指定駐車場からのシャトルバスで向かうパークアンドライドなど多様なアクセス手段を用意していましたが、実際は地下鉄中央線に見学客が集中し、JR大阪環状線乗換駅の弁天町の地下鉄駅で混雑から改札が入場規制されるなどで見学客の遅延が生じ、また東ゲートの入場ゲートのセキュリテイィチェックが手間取り、携帯基地局のキャパオーバーでチケットのQRコードがスマホに表示されないトラブルもあり、完全予約制で混雑のない万博を標榜したことが、2時間遅れで予約時間に間に合わないとか、帰宅時間の夢洲駅の混雑で行列で1時間待ちで「入るには入れず帰るに帰れない」と不満。加えて悪天候で雨宿りする場所がない、巨大リンクの大屋根も風雨の吹き込みでびしょ濡れ。バスアクセス中心の西ゲートではシャトルバスを予約制にしたのに、万博チケットと別の交通系サイトの目立たないメニュー表示でそもそも辿り着く人も少なく予約はガラ空きなのに、帰宅希望の予約外客が殺到して予約客優先のオペレーションで大混乱助長といった具合です。そして道路アクセスも橋と海底トンネルの2ルートだけで、しかもシャトルバスの優先運行故に事実上タクシーが使えない。地場のタクシー業界から改善を求められているのに対応せずという具合です。

アクセス交通の混乱は、実は4月6日のテストランでも見られたことで、交通アクセスの弱点は明らかでした*1。テストランでは予約より早く来た人が多く、ゲートの混雑による一時滞留で夢洲駅の混雑が課題とされましたが、テストラン参加が5万人の一方初日13日の入場者数13万人で倍以上とはいえ、半年の期間中2800万人の入場者数を達成しなければ赤字確定で、1日平均15万人の入場が必要ですが、当然日のよって変動がありますから、少なくとも倍の30万人の入場も視野に入れなければならない訳です。初日の入場ゲートの混乱の解消から言えばかなりハードルは高いと言えます。初日の弁天町駅の入場制限のように思わぬ場所に混乱が生じる可能性もありますし、地下鉄中央線が事故等で運休した場合の混乱もあり得ます。そして初日の大雨のような悪天候もありますし、これから暑くなるシーズンで会場に日よけが乏しく熱中症対策が難しいこと*2もまた問題です。そしてトイレのトラブルやメタンガス問題などまかり間違えば大惨事になりかねない問題*3を抱え、始まったばかりなのにすでに終わっている-_-;。そもそも夢洲開発はカジノ構想ありき*3でタイムスケジュールから2025年の大阪万博開催というタイトなスケジュール*4になった訳です。大量の公費投入でカジノ企業を誘致する大阪維新の姿勢はレントシーキングのカモフラージュでもあります。

比較される1970年の大阪万博と何が違うのかですが、時代背景と会場の立地と交通アクセスの違いがかなりあります。70年万博の会場となった千里丘陵は大阪の市街地にほど近い山林地帯で未利用の土地が多かったし、広さもあったから、白紙に近い状態で開発が計画されました。御堂筋を北へ延ばした新御堂筋と大阪郊外の環状道路の中央環状線の整備に伴い、新御堂筋に付帯する地下鉄1号線(御堂筋線)の延伸が同時施工で整備が計画されましたが、市営故に大阪市境をちょっと超えた吹田市江坂までが都市計画に盛り込まれたものの、その先は大阪府による千里ニュータウン計画ということで、府市の管轄の壁があったことは確かですが、同時に京阪神急行電鉄(現阪急電鉄)の営業エリアで阪急バスが京都線や千里線などの鉄道駅へのフィーダー輸送を担っていました。そこへ新御堂筋が通り、地下鉄が伸びてくるとなると穏やかではいられません。そこで阪急は大阪府や関連自治体の出資を仰いで北大阪急行電鉄(北急)を立ち上げ、御堂筋線と直通する鉄道の権益を得た訳です。所謂第三セクターの走りですが、自治体の出資は従であり阪急グループ色の強い企業です。

一方で大阪市内の交通を巡る熾烈な争いがあって、京阪電気鉄道がターミナルの天満橋から淀屋橋へ延伸して都心乗入れの先鞭をつけましたが、大阪市内の鉄道事業は大阪市が地下鉄網を整備して私鉄の進出を抑えようとする一方、在阪各社は都心進出の機会を窺っていました。近鉄は上本町から難波への延伸、阪神は戦前の急行線複々線化構想の落とし子の伝法線を難波へ延伸して近鉄との直通を模索し、千鳥橋、西九条と小刻みに開業させて西大阪線に改称という動きをしました。阪急は新京阪線のターミナルだった天神橋から堺筋を南下する構想を持っていましたが、大阪市の地下鉄6号線(堺筋線)、南海電気鉄道も堺筋を北上する構想を持っていて競願状態で当時の運輸省鉄道局は3社局で協議して結論を得るまで免許交付しないという立場を取り、協議の結果天神橋ー動物園前間を大阪市が整備し、阪急と南海が相互直通するということでまとまり、とりあえず万博関連事業として万博会場近傍を通る阪急千里線との相互直通を優先して軌間4ft8in・1/2(1,435㎜)の阪急に合わせて整備されることになりました。そして北急を中央環状線に併設される中国自動車道を対面通行2車線の暫定開通として4車線化の用地を利用して線路を敷いて万国博中央口までの期間限定の会場線に利用し、会場西ゲート近くを通る阪急千里線に臨時駅の万国博西口駅を設置することになり、鉄道2路線でアクセスが確保されていたことで、混雑を分散できた訳です。結果的に万博輸送を阪急は独占したことになります。そして大阪のミナミに対するキタの比較優位が確立します。

また新御堂筋と中央環状線の整備でシャトルバスによる広域アクセスが可能になり、特に国鉄茨木駅・阪急茨木市駅からの中央環状線のシャトルバスはバス事業で阪急より優勢な京阪バスや当時直営の近鉄バスが参入し、独占エリアとはいえ阪急単独でのシャトルバス運行は無理だったけれど、万博関連で協業ができた訳です。今回の大阪・関西万博では市営バス改め大阪バスと京阪バスが特に力を入れているようですが、ドライバー不足のご時世で交野市の京阪バス撤退という事態もあり、関西でも批判を浴びています。公費を投入したイベントで不便になることは許容されることではありません。

70年万博関連では近鉄難波線と鳥羽線の開業、三重電気鉄道由来の志摩線の改軌と万博輸送に直接関わらなかった近鉄が集中投資で経営基盤を強化しました。並行する地下鉄5号線(千日前線)とは同時施工で並行して整備されましたが、万博に伴う外国人観光客来阪対策で通りました。一方そうした流れに乗れなかった阪神西大阪線の延伸は地下鉄5号線との競合故に進まずなんば線として結実するのに長時間を要しましたし、南海は中央環状線アクセスの阪神高速松原線と同時整備された地下鉄2号線(谷町線)の南進に伴って大阪軌道線の平野線が廃止され、堺筋線の天下茶屋延伸で天王寺支援が廃止、更に地下鉄御堂筋線のなかもず越境延伸とエリアを侵食されています。70年万博の経済効果は均等ではなかったのです。その意味で今回の大阪・関西万博の経済効果3兆円は鵜呑みにできません。また関西のGDPシェアは70年万博の100.78%をピークに低下しており、イベント依存の限界でもあります*5。

南海に関しては関西空港連絡輸送で外国人見学客の渡航需要を受けられるとはいえ、直接的なメリットはあまりなく、やはり万博には縁が無いのか?なにわ筋線が開業していれば南海も恩恵があったかもしれませんが、やっと事業着手の段階ですから間に合う筈もありません。なにわ筋線の建設には実は南海も関わってまして、大阪市の市営地下鉄民営化構想に連動して大阪府出資の第三セクターの大阪府都市開発(OTK)の持ち分売却を行いOTKの事業部門だった泉北高速鉄道の売却で揉めて最後は南海電気鉄道に売却されました*6。そしてその売却益はなにわ筋線の整備主体となる関西高速鉄道の資本増強に回すことになっていたので、間に合っていれば南海の泉北線買い取りの資金回収が早まったことになります。これ70年万博で北急が万博輸送対応で大量発注した大阪市営地下鉄規格の電車を、万博終了後に大阪市に売却して元を取って資本費負担を軽減した結果低運賃を維持して最大限メリットを享受したことと対照的です。またなにわ筋線絡みでは京阪中之島線がなにわ筋線開業を睨んだ事業ですし、阪急のなにわ筋連絡線(大阪~十三)と新大阪連絡線(十三~新大阪)構想もありますが*7、後者は南海との直通運転を構想しながら具体的な協議が行われておらず、仮に梯子を外されれば堺筋線の二の舞になります。という訳で欲得絡みの関西鉄道業界事情は比較的摩擦の少ない首都圏の業界事情と大きく異なります。中之島線にしろなにわ筋線にしろ鉄道整備にも公費が投入される中で、公正さが担保されているか?維新絡みではいろいろあり過ぎて疑問を禁じ得ません。

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Saturday, April 05, 2025

MAGAのリアル

MAGA不思議なアメリカが本格始動しました。

アメリカ公表の「相互関税」全リスト 日本24%、中国34% - 日本経済新聞
とりあえず各国一律10%関税が始まり。国別の上乗せは9日からとしてますが、その間の各国の反応を見る為です。早速中国とカナダは報復関税を課すし、EUも米国内投資の停止指令を出して対抗する姿勢を示す一方、メキシコは様子見と国毎に対応が分かれます。日本はと言えば除外を懇願するという対応ですが、これ一番まずい対応です。理由を以下に述べます。

そもそも相互関税というのは二国間で協調して相互に関税を下げる場合の用語法ですが、今回はアメリカが一方的に関税を課す訳ですから相互関税と呼ぶのは誤りです。しかも各国の関税率は10%の最低ラインを前提に各国の対米貿易状況を「貿易赤字高÷輸入高×100÷2」という雑な数式で導き出しているものです。つまり輸入に占める貿易赤字の百分率の半分ということで、輸入超過分はアメリカが搾取されたものと見做しつつ、半分にまけてやるという意味です。つまり二国間交渉の土俵をアメリカが用意している訳で、それに乗れば確実に負けます。

また米中対立でチャイナプラスワンとして投資が集中し漁夫の利を得た東南アジアのベトナムやカンボジアの関税率が高い訳です。関税回避の為のサプライチェーン見直しを迂回貿易と捉えている訳で、大ぐくりで言えばターゲットは中国ということになります。しかし日本企業の多くが中国の拠点を東南アジアに移しつつある中で出口を塞がれたということでもあります。仮に日本だけ除外してもらっても日本企業は救えません。報道によると日産が関税回避で国内生産の米国内移管を検討というニュースもあり、存亡の危機の日産には言い訳が立ち神風かも^_^;。とはいえ株は大変なことに。

NYダウ急落、2231ドル安 関税応酬で史上3番目下げ幅 - 日本経済新聞
新聞の株式欄がストップ安で真っ黒という見慣れない椿事ですが、冗談抜きに経済のブロック化で国際貿易縮小し大恐慌へ発展し、各国の対立激化で果ては世界大戦ということも心配した方が良さそうです。防衛費3%と言われなくて良かったとか、逆にディールのカードとして米製兵器買いますとか言っちゃまずいってことです。特にハイテク株の下げが目立ちますがDeepSeekショックで指摘したようにAI開発に資金突っ込み過ぎた結果のバブルが今回の関税騒動で剥落したとすれば、相場が戻る可能性は低いと言えます。

てことでMAGA勢の動きを止めるとすれば皮肉にも市場の圧力ということになりそうですが、トランプ政権の高官が「デドックス」と表現するようにMAGA勢はバイデン政権の政策の否定をテーマにしていて、政権移行初期の今なら不都合なことは全て前政権のせいにすることも可能と見ている訳です。安倍政権が「悪夢の民主党政権」と言ってデタラメやったことを見倣っている訳です。つまりアメリカは今後衰退する道に入る可能性が高い訳で、関税まけて欲しさに安易な譲歩はすべきではない訳です。同時に今回の関税問題は反対派を混乱させる情報戦の意味もあります。

そして株式以外の市場もいろいろ動いておりまして、株式市場との裁定で債券市場は上昇し金利低下しており、日米金利差も縮まって円高に振れました。所謂リスクオフ相場で高リスクの株式から低リスクの債券に式がシフトしてリスクオフの円高となっておりますが、この動きは早晩止まると見られます。米FRBにとっては関税はインフレを呼ぶことになりますから利下げが止まり、寧ろ利上げシフトすらあり得る一方、日銀は先行きの不透明感から利上げに動きにくくなります。加えて日銀ETFの含み損で財務が傷つき、踏み込んだ利上げがやりにくくなります。故に日米金利差は寧ろ拡大に向かうと考えられます。オマケですが年金運用のGPIFも含み損が発生してますから、去年の年金財政検証はやり直すべきです。

一方で原油価格は値下がりしており、これは関税発動前の駆け込みでOPEK+が増産した結果の値下がりで、輸入に頼る日本にとっては助かります。逆に値崩れでシェール増産が難しくなるアメリカにとっては誤算ですが、原油の値崩れは戦費調達をエネルギー輸出に頼るロシアを苦しめます。これでウクライナ停戦が実現するなら瓢箪から駒ですが、資源権益とバーターとなるウクライナの苦しみは続きます。それを間近に見るグリーンランド住民の反発は当然ながら、最大の在外米軍基地がグリーンランドにある以上、アメリカはNATOから抜けられないし、資源権益も欲しいから諦めないでしょう.故に米欧の対立は長期化する可能性があります。こう考えると日米同盟を前面に立てる日本政府の対応は危ういと言えます。

以下鉄ちゃん的蛇足。ストップ安で真っ黒な中で内需株、特に関税の影響を受けない鉄道株は寧ろ買われています。こういう点からも外需依存を減らして内需関連に投資をシフトすることで難局を回避することはもっと考えられた良いと言えます。但し生産年齢人口の減少下ですから、投資案件の選択は重要です。例えばこれはどうでしょう。

新空港線「蒲蒲線」、国が東急の構想認定 今夏にも具体案 - 日本経済新聞
蒲蒲線と呼ばれる新空港線事業を国が認可したもので、とりあえず第一期区間の矢口渡―京急蒲田間の1.7㎞の事業区間で。蒲田と京急蒲田の800mのミッシングリンク解消となりますが、事業費1000億円で京急蒲田駅地下の乗入れる形で当面乗換対応となります。故に北陸新幹線敦賀問題のような高低差乗換が発生することになります。

しかも空港利用客がガラガラ引いて乗換ですから相当なストレスとなります。とはいえ大鳥居までの第二期の事業化は、軌間や車両サイズや保安装置の違いがある上、そもそも京急は乗り気ではなくめどは立っておらず、この点も北陸新幹線に似ます。米原ルートの東海道新幹線乗り入れより厄介かも。加えて現状で羽田空港連絡輸送は需給面で余裕がある一方、JR東日本の羽田空港アクセス線も事業化されており、供給過剰が心配されます。そもそも羽田空港発着枠にも限りがありますし、成田空港も第三滑走路整備と共用時間帯の拡大で発着便数を増やすとされており、関連して京成電鉄が相互車庫拡張で空港連絡輸送強化を打ち出すなど、高度成長期さながらの需要追随型投資を競っていますが、果たして必要な投資なのか?

あと敦賀の乗換は未体験ですが、東京で追体験できそうなところとしては東京駅京葉線ホームや下北沢駅の小田急線急行ホームと京王井の頭線ホームとの乗換、東京メトロ日比谷線と都営大江戸線六本木駅といったところでしょうか。京急蒲田駅はどうなる?

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Saturday, March 29, 2025

金券政治の笑えない現実

" target="_blank">いしばしをたたいてわたる政局ドラマは続いています。石破首相は批判を浴びて謝罪したものの、法令違反はないという見解を維持しています。訴追されて公判に至るかどうかはともかく、商品券は金券として換金可能ですし、ポケットマネーで負担したとしても、個人としての石破氏が新人議員に対して事実上の個人献金をしたことになりますし、ポケットマネーであることを証明することはできない訳で、不信を払拭するには至らず疑惑は残ります。当然使途非公開の官房機密費からの支出も疑われます。

また1年生議員に対する選挙戦慰労の趣旨としても、公人である首相からの金券配布であり、官房長官も出席した食事会のお土産である以上、政治活動ではないというのは無理があります。元々弱小派閥のリーダーだったから与党内に見方が少ない首相が、新人に撒き餌をしたとも取れる訳で、政治的意図はないというには無理があります。加えて岸田前首相をはじめ歴代首相も同様の商品券配布を行っていたという与党議員の証言も、後に発言撤回されたとはいえ、寧ろ慣例化を疑わせる疑惑をもたらします。加えて受け取った新人議員も政治資金じゃない以上、受け取ったら雑所得として申告しなければならない訳で、発覚のタイミングが裏金問題と同様確定申告期間に被っていたことも、国民の怒りを買うことになります。

もっと言えば商品券は発行の記録は残りますが、人から人へ渡り古物商で換金されれば流通の記録に残らないから政治家にとっては使い勝手が良いということで、昔から銀座の一流テーラーの仕立券やビール券その他各種の商品券のやり取りは普通に行われていたことも確かですが、石破政権時に発覚したのは偶然なのか?田中金権政治ならぬ石破金券政治をネタに叩こうとした政治的意図はおそらく働いたでしょう。しかし国民にここまで恨まれると都議選や参院選も厳しくなります。そしてこうなります。

石破内閣支持35%、5ポイント低下 商品券「説明納得せず」7割 - 日本経済新聞
選挙に勝てる見込みが立たない焦りから、与党内から予算成立後のインフレ対策の要望が強く、早期の補正予算に言及したことを公明党斎藤代表がバラしちゃってこれも炎上。しかし与党からも野党からも退陣要求は出ておらず、国民も望んでいないというヘビの生殺し状態が続いています。これ民意の発現と捉えておきましょう。結果的にいしばしをたたいてわたれで取り上げた高額療養費問題が凍結されたように、国民の疑問を放置できなくなっております。高額療養費問題に関する論考を紹介します。
高額療養費は患者の負担抑制こそ真の課題 安藤道人氏 - 日本経済新聞
制度見直しを上限引き上げで対応しようとしたことは破滅的医療支出の増加、言い方を変えれば難病ガチャによる家計の破綻を招くという意味で重大な一方、確かに高額療養費が増えている事実もありますが、その実質GDP費は+0.1%程度でしかなく、医療保険改革の観点から言っても効果は薄いものです。寧ろ薬局で手に入るOTC類似医薬品の保険適用除外とか、フランスやイギリスに倣って薬価に対して薬効が低い医薬品の保険適用除外などの方が効果的ですし、そもそも医療のフリーアクセス制が過剰診療、過剰投薬の温床になっているのに、医師会の圧力でここを見直せない訳です。

既得権が強力だから手を付けられないということです。それでも医療保険に手をつけなきゃならなかったのはおそらく絶望の少子化対策で取り上げた岸田政権時代の異次元の少子化対策の財源を社会保障費全般の支出見直しに求めたことで、対策を求められた厚労省の答案ということでしょう。役に立たない少子化対策のために国民の命を犠牲にするということです。それに比べりゃ交通分野の規制緩和はたやすいってことでしょうけど、その結果は悲惨なものになりつつあります。

都営バス、平日236便減便 利用者減の赤字路線中心に - 日本経済新聞
との公式発表では利用者減少いよる赤字路線の減便としてますが、公営交通としては比較的頑張っている都営バスでもドライバー不足による路線維持の困難さは同じで、一部民間委託で人件費を削ったものの、もはや民間の引き受け手も見当たらない中で、ドライバーの働き方改革による減便が利用者を減らしというスパイラルに陥ったと見るべきでしょう。特に昼間の大幅減便は苦肉の策とはいえ利用者減少を更に進めることになるでしょう。

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Sunday, February 23, 2025

MAGA不思議

石橋を叩いて渡る日米同盟とは裏腹に暴走トランプは止まりません。ウクライナ戦争停戦交渉を米ロで進めてウクライナの頭越しというのは、WW1戦後を規定するベルサイユ体制を崩壊させたチェコスロバキアのズデーデン地方のドイツ領有を認めたミュンヘン合意と同じ構図です。英仏伊独4か国で英チェンバレン首相がナチスドイツのこれ以上の軍事行動を起こさないという約束を信じて一方の当事国のチェコスロバキアの意見も聞かずに決めた結果、ナチスドイツに軍事侵攻の成功体験を与えてWW2へと突き進んだ歴史の転換点ですが、トランプ大統領はウクライナにレアアースの権益をよこせと言っており、世界平和のために融和を図った英チェンバレン首相のお人好しぶりと違って悪辣です。

寧ろWW2の戦後処理を話し合ったクリミアのヤルタ会談の方が構図が近いかもしれません。英チャーチル、米ルーズベルト、ソ連スターリンの3首脳が秘密会談でドイツ降伏後3か月以内にソ連が対日参戦することを決め、その為に海軍力の弱かった当時のソ連に対して軍事訓練やロジスティクス支援まで約束していました。当時の日本は泥沼化する戦況で本土決戦まで視野に入れながら、ソ連に和平仲介を求めていたのですから浮かばれません。結果的にソ連参戦で南樺太や北方4島を失った日本ですが、アメリカから無理難題を押し付けられるウクライナの立場は深刻です。そしてロシアの軍事的膨張を止める手立てをアメリカ抜きで見出さなければならない欧州も大変です。

てことでトランプ流MAGA政策の狂気は留まることを知りません。関税連発でインフレ助長が心配されている一方、インフレでFRBが利上げすれば金利差からドル高になってインフレを抑制するから心配ないという政権スタッフも居たりしますし、財政膨張はマスク氏のDOGEのリストラで回避できるとか、奇妙な経済理論?で大統領令連発で連邦政府をリストラし足を引っ張る官僚をクビにして、逆に政府機能を弱体化させて呼び戻したりしてます。そんなアメリカとの向き合い方を各国は迫られます。てことでこのニュース。

米国、日本の「非関税障壁」問題視 車の安全基準など - 日本経済新聞
日米首脳会談の安全運転ぶりでもこれですから、覚悟しといたほうがいいでしょう。勿論交渉材料という面もありますから、脊髄反応で余計な約束をしないことが大事です。そして仮に関税かけられても、対象は完成車に留まらず部品等のサプライ品もありますから、寧ろ米ビッグ3が割を食うということも言われております。関税回避を焦らず、寧ろ米国内の混乱を黙って見てりゃいい。その意味でこのニュース。
鴻海、ホンダに協業を提案 日産・三菱自含む4社で陣営 - 日本経済新聞
製造業の壁で解説しましたが、もはやガラケー化した既存の自動車メーカーの生存戦略は狭き道になっております。日産の再建を待てずに子会社化を言い出してぶち壊れた統合話ですが、ホンダも単独では対応できないことはわかっていて、日産との統合話も寧ろプラグインハイブリッド車を持つ三菱自動車が狙いだったとも言われます。しかし三菱は早々に統合に参加しないことを決め、日産が煮え切らない中で子会社化して三菱を間接支配というシナリオだったんでしょう。元々経産省がお膳立てした話ってこともホンダには乗り気になれなかったかも。

鴻海の狙いはアイフォンの受託生産で実現した成長モデルをEV事業で再現することですが、既存の自動車メーカーは自前主義でなかなか話に乗ってこないから事業を進められないということで、鴻海のEVトップが日産出身の関潤氏ということもあり、内情を知る日産に接近するためにルノーの日産株譲渡を打診したのですが、関氏は日産内田社長とトップを争ったライバルでもあり、ゴーン事件でガタガタになった日産の立て直しでトップ候補としては寧ろ前評判が高かったけど経産省OBの豊田社外取お気に入りの内田氏に決まった経緯もあり、内輪揉めの延長戦として経産省に助けを求めてホンダとの経営統合を指導されたという一連が見えてきます。逆にホンダが欲しがる三菱のプラグインハイブリッド技術を活かそうとしなかった経営判断は、日産に欠けているものを浮き彫りにします。イノベーションに背を向けている訳です。

鴻海としては早くEV生産に参入して実績を作りたい訳で、工場閉鎖が避けられない日産の現状からすれば、工場を鴻海に託してEV向けに作り直してもらえばリストラも進めやすくなるし、新車開発と販売というマーケティングの川上と川下を押さえておけば高付加価値の事業環境が整うという風に再建の道筋も見えてきます。経営陣の内輪揉めで袋小路に入るより遥かにマシですし、加えて言えばアジア連合でアメリカの25%関税に打ち勝つクルマ作りぐらいの構想は持ってほしいところです。ウクライナで示したようにイザとなればトランプ政権は台湾を見捨てることすらあり得る訳ですから。

JR東と岩手県北自動車、山田線とバスの共同経営に認可 - 日本経済新聞
突然ドメスティックな話題ですが、グローバル企業もドメスティック企業も事業環境の激変に晒されているのは同じで、その中でイノベーションを怠れば存続が危ういということにもなります。鉄ちゃん的には岩手県北自動車の106急行は山田線を追い込み、行き違い駅の棒線化などで列車間隔も伸びて劣勢になるなど恨みを感じるところでしょうけど、盛業に見えるバス事業も人口減少とドライバー不足で事業環境は悪化しており、このままではじり貧になりかねない訳で、少ない客を取り合っている場合ではない訳です。

鉄道とバスの共通乗車はJR四国牟岐線と本四間の高速バスの末端区間でJR乗車券で高速バスに乗れるようになっていて実績はありますが、本数の多い106急行/特急バスとの提携はJR山田線の廃止を睨んでいるのかとさえ勘繰られますし、記者会見でも質問されてJR東日本は否定しています。事業として認可を受けていますから、単純な共通乗車に留まらずダイヤ調整や共同での観光客誘致や企画商品開発なども視野に入っていると思いますが、JRからすれば宮古への足の利便性が増せば例えば東北新幹線との通し乗車券の売上が伸びて広域にメリットが出るでしょうし、岩手県北自動車から見ればJRの広域集客力を利用できる訳でwin-winの関係を構築できる訳です。

キモは独占禁止法の例外扱いとしての認可というところで。単純な規制緩和ではなく既存の法令規制を踏まえた例外としての認可ということで、米DOGEのような力づくの制度破壊ではない制度イノベーションと言えます。実は欧州の都市交通で広範に見られる運輸連合方式の運賃共通化も同じロジックで行われており、例えば東京のメトロと都営の運賃共通化のようなことも視野に入るものでもあります。そして欧州で進むMaaSも運輸連合がプラットフォームとして機能していることも指摘できます。道交法にねじ込んだLuupのようなジャパニーズMaaSとは似て非なるものです。

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Saturday, February 08, 2025

石橋を叩いて渡る日米同盟

石橋を叩いて渡る安全運転はアメリカも同じだった?

トランプ大統領が認めた「日本の価値」 日米首脳会談、視線は中国 - 日本経済新聞
アンチ地球の歩き方の尹大統領の弾劾と内乱罪容疑で韓国が当てにならず、北朝鮮の金正恩総書記の韓国敵対政策もあって1期目のような対話も無理ということで、対中国では日本を取り込むことが必要という判断でしょう。故に岸田政権の防衛三文書見直しで防衛費倍増を打ち出したことに「ありがとう」と言われるなど、石破首相の成果と言えないことまで褒められております。

一方気になるのがLNG爆買いの約束です。LNGは保存性に問題があり、輸出国側の冷却プラント、低温輸送船、輸入国側の受入れ態勢が揃う必要があり、その為に長期契約で相対で値決めすることになります。日本の場合、オーストラリア、カタール、ロシア、アメリカの4か国からの輸入が多い現状で、対ロシア制裁の意味からロシアからの輸入分をアメリカにシフトする限りでは問題ありませんが、今後追加投資を迫られるなら慎重になる必要があります。

日鉄によるUSスチール買収問題も買収を投資と言い換えただけとも言えますが、バイデン政権の否定になるということもあるでしょう。加えてトヨタといすゞの工場建設計画もタイミングが良かったことで、日本の資金でアメリカを豊かにするというナラティブで世論対策にもなるという訳ですね。USWやクリフスが納得するかどうかは定かではありませんが。あと首脳会談で触れられなかった問題がこちら。

トランプ大統領「アメリカがガザを所有」 イスラエルのネタニヤフ首相と会談 - 日本経済新聞
中東のリビエラとしてトランプ大統領の娘婿のクシュナー氏が再開発アイデアを披露していて米国内では知られていたようですが、イスラエルとの首脳会談で公式化されて国連はじめ周辺国や欧州中国にまで非難されました。石破首相はあえて触れなかったんでしょうけど、日本の国会でも野党から指摘されて岩谷外相が曖昧な答弁してましたが、明らかに再開発で上書きしてパレスチナの痕跡を消す訳ですから、安倍政権以来の価値観を共有する同盟とか法の支配といった御託のウソがバレバレです。同時にトランプ大統領の不動産屋というかデベロッパー的な発想の恐ろしさは止めなきゃヤバいよってことは言えます。

日本でも東京五輪の落とし物の神宮外苑再開発が典型ですが、再開発のために国立競技場を建て替えて明治天皇を偲ぶメモリアルパークを商業化したり、その過程で都営霞ヶ丘住宅の住民を退去させたり、大阪五輪のリベンジ兼カジノ開発を睨んだ大阪万博開催もゴミ捨て場の上書きです。しかし怪運国債市場の蓋で指摘したように国主催の国際イベントがTSMC熊本工場建設という民間工事に阻まれ、それでも能登半島地震の復興を押しのけて進む暴力性はあります。

万博を押しのけたTSMC熊本工場も開業し、従業員の通勤問題が出ていますが、その結果JR九州管内の混雑率トップに豊肥本線肥後大津ー熊本間の121%(数字でみる鉄道2024より)という異変が起きています。熊本といえば壁は成長する?で取り上げた全国共通ICカード乗車券から離脱して話題になりましたが、元々九州産業交通の経営破綻から始まるバス再編の流れでクレカ決済でコスト削減狙いですし、昨今は熊本市電や熊本電気鉄道の乗務員の非正規化で運行継続が危ぶまれていたりしている中で単線の豊肥本線の輸送力増強を迫られている訳ですが、政令市で企業誘致に成功した経済が好調な地域なのに課題を抱えている訳です。

これまでにも再三指摘してきた生産年齢人口の減少による人手不足の結果です。まさか地方創生の成功例なんて言わないですよね>石破さん。

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Sunday, December 15, 2024

壁―Nイノセ氏の誤算、Yコイケ氏の悪事、Yタマキ氏の欺瞞

韓流ふてほどの尹大統領の弾劾訴追決議案が可決し失職。憲法裁判所で罷免の是非が審理されます。但し最大180日と時間がかかりますが、罷免後30日以内の大統領選で新大統領が選出され就任するまでは韓首相が職務を代行します。というわけで特に外交面での政治空白を心配する日本政府ですが、オウンゴールの国自BANG!の徴用工問題にしても、文在寅政権でも官民で設立した財団で日本企業の賠償金を肩代わりする提案がされたものの当時の安倍政権がガン無視していたものですから、これがチャラにされるということはないでしょう。元々政治問題化したのは日本の方なんですから。

一方尹大統領は告発を受けて内乱罪の被疑者にもなっている訳で、こちらは国とソウル市の警察庁長官が逮捕されるなど外堀が埋められつつあります。内乱罪は大統領の不逮捕特権の例外で、最高刑は死刑という過酷なものです。一部で軍や警察の服務規程があるから大統領の命令を断れないので法治主義上問題とする議論がありますが、それを言えば憲法まで変えて権限拡大したロシアのプーチン大統領も肯定される訳で、最高権力者といえども法に服する法の支配の原則が韓国では生きているということです。法治主義と法の支配の違いです。

てことで「ふてほど」の後で今年の漢字「金」が発表され、オリンピックイヤーの恒例で5回目ということが言われてますが、清水寺で発表された字が草書体で将棋の金将の駒の裏の表記ということで、裏金を表すという漢字検定協会のエスプリです。そんなこんなでこのニュースです。

都議会自民も収入不記載か パーティー券、経緯調査 - 日本経済新聞
政治資金規正法は地方の首長や地方議員も対象ですから、当然不記載は違法ですし、それによって裏金を手にすれば、それを国会議員、首長、地方議員で遣り取りしてもわからない訳で、裏でどんな利益誘導がされていたのかわかったもんじゃない訳です。当然これは都だけの話ではなく全国で行われていると見られますが、都の予算規模から言えば他の地方より大きな金額が動いていることは間違いないでしょう。五輪霧中の神宮外苑再開発事業や晴海フラッグの転売差益や築地市場跡の再開発その他多数の再開発事業で三井不動産などの大手デベロッパーが名を連ね、小池知事や自民都連や都内選出国会議員のパーティ券購入に勤しんでいるという構図が見えてきます。そんな中で千代田線北綾瀬支線の北綾瀬駅前の再開発でも三井不動産の名前が出てますし、おそらくタワマンたわわで8号豊住線建設マジ卍?にも絡んでいるでしょう。豊洲市場もそうですし、埋立地開発は三井不動産が得意とするところですが、公有水面埋立の認可権限は都道府県が握っている訳で、知事や地方議会へのアプローチは欠かせない訳です。しかし政府や国会と比べればメディア露出も少なく、こっそりと進められるというおいしさもある訳です。晴海フラッグ絡みでなこんなニュースも。
晴海フラッグ「謎のキーボックス」 内覧競い業者取り付け - 日本経済新聞
上記エントリー時点では豊住線は第三セクターが建設して東京メトロが運営受託というスキームが考えられていたようですが、結局東京メトロが南北線品川延伸と共に自ら建設することで決着しました。高圧経済のワナで指摘したように、東京メトロ株の売り出しを50%に制限し、国と都の持ち分比率を維持したまま支配株主の立場を維持したことで、都が国に要請して地下鉄補助金を出すことを条件にしたことで、建設を渋っていた東京メトロとしては逆らえない状況になったってことです。東京メトロ株の上値が重い訳です。

さてそうすると、美濃部都政時代から都が要請していてバカの壁、壁が取れても残るバカの猪瀬知事の地下鉄統合問題は脇に置かれたことになります。元々猪瀬案の地下鉄統合は東京メトロと都営地下鉄の財務状況から無理筋だったのですが、株式売却益を都営地下鉄の財務改善に使うならともかく、小池知事はどうやらその気はなさそうです。故に豊住線や南北線延伸に留まらず懸案湾岸地下鉄と再開発の原資として株式売却益を使うつもりでしょう。バカの壁に拘った猪瀬ン都さんはまだ都民を見ていましたが、みどりのたぬきの悪だくみは都民不在です。そして壁いろいろ。

年収103万円の壁、25年から引き上げ 自公国が合意 - 日本経済新聞
補正予算正るつの為に自公が折れた形ではありますが、その後能登半島復興予算を予備費から1千億円付け替える立憲民主党の修正案に自公が乗る形で成立した訳で、国民民主党との約束アh事実上空手形となりました。103万円の壁見直し来年からは実現するにしても、来年の通常国会の税法改正が前提ですから、そうなると少数野党の国民民主の出番は減ります。
厚生年金、年収「106万円の壁」要件は撤廃へ 厚労省調整 - 日本経済新聞
実際の年収の壁として過酷な厚生年金の加入要件から年収要件を撤廃することで壁撤廃ですが、加えて労使協議の同意を条件に雇用主負担を増やすことで年収減を回避する厚労省案が出されています。但しこれは雇用主との力関係で殆ど実効性は無いでしょう。寧ろ社会保険料冨tなんで生じる手取り減を国庫で補填する立憲民主党案で概算7千億英程度の予算措置で可能ということで実現可能性はあります。というか、玉木氏の年収の壁問題は聞けば聞くほど雇用主の立場を代弁しているとしか見えません。

最後に年末4万円超が期待された東証日経平均株価ですが、年内の4万円の壁突破は困難と見られています。コーポレートガバナンス改革期待もむなしく海外投資家が消極的な一方、新NISAで増えた日本の個人投資家はオルカンやS&P500などの海外株式投信に流れていて日本株への流入は限られています。資産運用立国の掛け声で貯蓄をリスクマネーに振り向けても日本株に向かわない現実に日本が直面する壁があるということですね。壁でまとめてみました^_^;。

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Saturday, November 16, 2024

高圧経済のワナ

インフレ下の政治混乱は続きます。

ドイツのショルツ連立政権が瓦解、景気不安が導火線 早期総選挙へ - 日本経済新聞
ドイツのシュルツ首相が自由民主党(FDP)党首のリントナー財務相を解任したことでFDPが連立を離脱して一転少数与党となったことで、来年2月の総選挙と総選挙前のショルツ首相の信任投票が行われる運びとなりました。ウクライナ戦争で安価なロシア産天然ガスが利用できなくなったこと、アメリカが消極的なウクライナへの兵器支援、中国の内需失速による自動車メーカーの販売不振、加えて中国EVメーカーの欧州攻勢でEU域内販売も不振と悪条件が重なる中で、財政による経済の下支えをしたいシュルツ首相と健全財政の原則を譲らないリントナー財務省の対立の結果ですが、一時10%を超えたインフレによる国民の不満が背景にあります。
アメリカ、下院も共和党が多数派 トランプ新政権「トリプルレッド」に - 日本経済新聞
元々伯仲していた上院の逆転は予想されていましたが、下院も共和党が多数派となりトリプルレッドとなりました。とはいえ議会共和党はトランプ派一辺倒ではないので、移行後の政権運営の追い風となるかどうかはわかりませんが、インフレで国民の怒りを買った民主党は完全な敗戦です。イエレン財務長官がFRB議長時代からの持論だった高圧経済論がインフレを助長したことは間違いありませんから、共和党のネガキャンのせいとは一概に言えないところがあります。具体的にはインフラ投資法やインフレ抑制法(IRA法)の撤廃までは難しいとしても予算の圧迫は避けられないところ。三つ子の赤字でテキサス新幹線の連邦政府の調査費がついたものの真っ先にキャンセルされそうです。JR東海の北米事業は今のところ成果なしとなりそうです。高圧経済のワナに嵌った訳です。

但しトランプ氏の関税強化や富裕層減税はインフレをもたらしますから、結局米国民は引き続きインフレに苦しめられますから、2年後の中間選挙で逆転の可能性はあります。となると米FRBはインフレ抑止のために再利上げに追い込まれますし、財政負担が増すことで長期金利も上昇しますから、金利差で円安が進むことになります。今週の円安はその辺を先取りした動きですし、北米市場依存の強い日本の自動車メーカーも高関税の逆風を受けます。そうなると円安だから儲かるという図式が変わってきます。ドイツなど欧州勢もこの点は同じですが。

という訳で、大統領選前からトランプトレードということで株が上がったりしてますが、日本株はこれまでのような連れ高とはいかのいようです。逆に円安で割安感の出た日本企業はM&Aやアクティビストの標的になりやすいということもあります。例えば西武そごうの売却を巡って労組と対立してストまで打たれたセブン’アンドアイHDですが、経営の迷走が続いてアクティビストに狙われるの留まらず、同業のカナダ社アリマンタシオン・クシュタール(ACT)から買収提案を受けるに至りました。国内最大手の小売りグループが海外企業から買収提案を受けるのは円安の影響といえます。セブンは対応策として祖業のイトーヨーカドーなどスーパー事業を中間持ち株会社化して外部資本を入れて上場させるとしていましたが、親子上場復活は悪手ですし、ACTはスーパー込みでの買収提案ですから対抗策としては弱いということで、創業家等の資金によるMBOで非上場化というところまで追い込まれました。とはいえ資金が集まる可能性は低いと思いますが。

中間持ち株会社といえば小田急電鉄が箱根地区の事業を統括する小田急箱根HDを立ち上げて箱根塗材鉄道、箱根登山バス、箱根ロープウエー、箱根観光船他の事業会社を子会社とする形で実現してますし、やはりアクティビストにオリエンタルランド株売却を迫られて新京成電鉄の子会社化と傘下バス事業者を京成電鉄バスHDという中間持ち株会社傘下で再編したり、関東鉄道を子会社化して京成電鉄茨木HDとして事業会社としての関東鉄道と関鉄バスその他のバス事業再編に進んでいます。規模を膨らませて外資のアタックを避けようってことですね。

で、インフレ下の政治混乱の自粛解禁wwwで東京メトロを取り上げますが、売り出し価格1,200円に対して1,630円をつけ、その後も買い優勢で一時時価層が置く1兆円越えという幸先の良いスタートとなったものの、その後の足踏みが続いています。立地条件の良さから鉄道企業としては収益性抜群で、高配当や株主優待の期待があって個人中心に幅広く買われ、新NISA後初の大型上場でもあり、買われた理由ははっきりしてますが、成長戦略が見えないことは指摘しておきます。有楽町北進線や南北線品川延伸で運輸収入が増える要素はありますが、関連事業で成長を目指すという成長戦略は具体性がありません。

通常の鉄道会社なら郊外の開発で開発利益を生む田園都市線方式や国鉄分割民営化で誕生したJRなら高輪ゲートシティのように鉄道用地の余剰を活用した再開発事業を自ら手掛ける余地がありますし、JR東日本では開発後にファンドへ売却して得た資金を次の不動産開発に充てる形で事業を成長させるというビジネスモデルが可能ですが、鉄道用地の余剰が殆どない地下鉄では同じ手は使えません。保有物件は主に地上出口や通風口などと若干の保守ヤードぐらいで、単独での開発事業の余地はほぼ無く、大手デベロッパーとの協業か相互直通社の沿線開発など限られております。

東日本大震災の復興資金にするとされた株式売却益も東京都の意向で国と都の保有比率を維持した形で50%だけの売り出しですから、国庫に入った資金は半分になった訳ですし、国と都が支配株主として残る形で一般株主は個人中心となるとまともなコーポレートガバナンスが働かない可能性があります。上場後のの新線建設は将にそれで、恩恵を受けるのは地権者とデベロッパーばかりで東京メトロのメリットは見えません。そして今少数株主となる一般株主は高配当と株主優待で満足しろという形になる訳です。そしてアクティビストも手を出しにくい訳ですが、その辺を睨むと今の株価水準はあまり上がり目がないということになります。

東京メトロでは都市鉄道の運営受託の事業化も考えているようですが、日本の鉄道事業者の高品質だけど高コストで参入は簡単ではありません。但し円安は若干プラスかもしれませんが、海外事業に熱心なJR東日本でも成長分野というには至っておりません。都市鉄道分野では香港地下鉄が東京メトロ以外では唯一の民間事業者で同様の事業を展開してますが、実績のない中での後追いはかなりしんどい道のりと覚悟すべきです。

あと株式売却益の東京都分が何に使われるかが不透明です。単年度黒字を実現したものの累積債務返済に喘ぐ都営地下鉄の債務償還に使うなら、将来の地下鉄統合へ向けた前向きな話になりますが、東京都は東京-有明間の湾岸地下鉄の実現に回す可能性があります。その為に事業主体とされる東京臨海高速鉄道の増資に回すということか?そうするとJR東日本が希望するりんかい線編入が微妙になる訳で簡単ではありません。いずれにしてもこれらの事業は開発主体となる三井不動産などの民間デベロッパーにいいとこ取りされる訳で、三井不動産は小池知事や都議会自民党議員や萩生田光一議員などのパーティ券購入で助けている訳で、神宮外苑再開発に見られるように都民から見れば明らかな利益相反です。裏金議員を許しちゃいけない理由はこういうところです。

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