地方公営交通

Sunday, September 29, 2019

トランプ・ポリティカル・プロブレム

略してTPP^_^;。トランプ大統領が就任後真っ先に取り組んだのが12ヶ国で合意したTPPからの離脱でした。慌てたのが日本政府です。何故ならばTPP交渉ではアメリカとの合意を最優先し、農産品で大幅譲歩する一方、一番の目玉の筈の自動車関税の撤廃は25年かけてという結果ながら、発効すれば強制力が出ますから、一応成果はあったと強弁できる結果だったのに、それが白紙に戻った訳ですから、頭真っ白になったと察します。

しかし捨てる神あれば拾う神あり、残る11ヶ国で折角合意したんだから、それを活かすべきだという声が上がり、TPP11に仕切り直しされて合意しました。その結果対米向けに譲歩した日本の農産品輸入に関しては、TPP水準を維持したまま対米非関税輸入枠の配分まで受けた、オーストラリアやニュージーランドにワインで売り出すチリなどが恩恵を受ける一方、見返りの減った日本は貧乏くじでした。それでも日本の農産品輸入でアメリカ産が減ればアメリカが音をあげて再度TPPに復帰する筈という、都合の良い展望を掲げた結果、こうなりました。

日本、農産品7800億円分の関税下げ 肉類など:日本経済新聞
つまり農産品はTPP水準+αの譲歩を呑んだ一方、自動車関税の撤廃は25%の報復関税で脅された結果、現状維持がやっとですから、寧ろ防衛ラインが下がりました。TPPの一番の目玉だった筈の自動車関税の撤廃は無くなった訳です。TPP11締結国相手では日本に対抗しうる自動車生産国は見当たりませんから、大局を見失った日本の敗戦です。都営バスが導入したフルフラットバスが豪ボルグレン社製というツッコミはご容赦を^_^;。

しかもこれで終わりじゃなくて、今後医薬品、保険、サービスなどの個別交渉は残ってますし、米議会が求める為替条項も消えた訳じゃありません。為替に関しては米国内法で為替操作国指定をすれば、相手国に通告無しに為替介入ができますから、そのリスクは残ります。既に中国に対しては為替操作国指定をしており、アメリカでは中央銀行に当たるFRBと財務省の外貨準備基金で対応しますが、FRBが同意しなくても基金の運用は政府の判断で可能なので、いずれドル売り元買い介入をするんじゃないかという憶測は絶えません。但しこれやると混乱が予想されますので、簡単には踏み切れないでしょうけど、交渉の脅しには使えます。

米中対立に関しては中国側が長期戦モードで対応してますから、簡単には動じないでしょうけど、同じことやられたら日本は簡単に折れちゃうでしょう。実際農産品関税で成功体験を得たアメリカは、他の分野でも同様のことを仕掛けてくると見るべきでしょう。加えてTPP11でISDS条項を盛り込んでますから、日米での紛争解決手段としてのISDS条項は既に準備されてます。かくして大後悔時代の大企業による主権国家支配が現実のものとなります。既に種子法廃止や水道事業民営化法で準備は整ってますが-_-;。まだまだ毟られます。

トランプ大統領の立ち位置は、グローバル経済の現実の中での国益追及ですが、あくまでも選挙に勝つための短期的利益の追求なので、中国のように長期戦に持ち込まれると対抗できない訳で、同様に目先の選挙しか見えていない日本の政治家は与しやすい相手ですが、中国や原理原則にシビアなEUに対しては厳しいところです。だからBrexitはトランプ的には大歓迎でしょう。他方中国Huaweiの排除では米アップルやクアルコムよりも、ノキアやエリクソンなどの北欧勢が恩恵を受けるなど、必ずしも自国企業や有権者に恩恵が及ばないという実態もありますが、今さら止められない訳です。

一方サウジアラビアの石油施設がドローン攻撃で破壊された事件で世界に衝撃が走りました。イエメンの反政府勢力フーシ派が犯行声明を出しましたが、アメリカとサウジはイランから飛んできたとして混乱してます。真相は藪の中ですが、対イラン経済制裁問題でアメリカとイランの首脳会談実現が言われていた状況に水を差しました。それでもトランプ大統領は軍事行動を控えています。これ殺傷力の高まった兵器性能に加えて先進国の兵士が傷つくことへの世論の反発が強まり、戦争のコストが高くなったことが背景にあります。

対して紛争地域では残念なことですが自爆テロも辞さずといった人命のコストが相対的に低い上に、ドローンなどより低コストで敵に打撃を与えられる手段が登場しています。これ戦争のダウンサイジングと捉えるとわかりやすいんですが、テクノロジーの進化は戦争も無縁ではありません。明らかに時代は変わってきています。中国や北朝鮮のサイバー攻撃やロシアのフェイクニュースによる世論誘導などもこの範疇に入ります。

寧ろバンコデルタアジア銀行の北朝鮮関連口座の凍結が効果的だったことから、金融制裁がアメリカの武器になりつつあります。対イランでは制裁破りした国や企業に対して米国内銀行との取引禁止とすることで、イランから原油を買ってドルで支払った場合、受け取ったイランは自国通貨に両替することも輸出代金支払いに充てることもできないから干上がる訳ですね。イランにとっては死活問題です。逆に言えばイランが首脳会談の可能性を自ら閉ざすような行動に出るとは考え難い一方、アメリカとイランの対立で漁夫の利を得る第三国は多数あります。

他方フーシ派はサウジが支援するイエメン政府と対立し、政府軍を追い込んで実効支配エリアを拡大する一方、サウジは軍事介入でフーシ派攻撃をしてますから、犯行声明を出しているフーシ派の犯行と捉えるのが一番素直な見方ですが、フーシ派はイランが支援していることもあり、フーシ派の犯行で追い込まれる図は何とも皮肉ではあります。ただこの状況で軍事介入を控えている米トランプ政権は歴代政権とは良くも悪くも一線を画します。

その一方で大スキャンダルが発覚します。ウクライナ疑惑です。

米民主、もろ刃の弾劾攻勢 ウクライナ疑惑で:日本経済新聞
ロシア疑惑は大統領選を争う中でロシアの偽ニュースによる選挙介入でクリントン候補への攻撃に利用したのではないかというものですが、結局訴追に至らず、議会民主党も弾劾に慎重でしたが、次期大統領候補のバイデン氏の息子が絡む現職大統領の不正行為として見過ごせないことから、今回は弾劾に本気です。但し/大統領弾劾は下院で成立しても上院の2/3以上の賛成がなければならず、可能性は低いことと、バイデン氏が絡む疑惑なので民主党に跳ね返る要素もあり痛し痒し。

結果法人税増税など反ビジネス的なウォーレン候補が有力視される可能性からNYダウが下落したりとひと騒動ありました。何だかんだ言って無茶苦茶でもトランプは親ビジネスという一点で経済界は親トランプに傾いてるんですね。日本の自動車関税問題のように必ずしも経済界にプラスの働きをしていない安倍政権を経団連がバックアップする図と同じです。

てなわけで、世界の揉め事でトランプが絡まないのはインドとパキスタンのカシミール紛争ぐらいか?環太平洋経済連携協定(TPP)を離脱した結果、トランプ絡みの政治紛争(TPP)は世界へ拡散しましたwwwwwwwwww。おまけ。

リニア、わずか9キロの壁 静岡知事が工事認めず:日本経済新聞
JR東海がリニア建設に意欲を燃やす理由の1つかアメリカへの売り込みですが、そのためには名古屋までの開業はクリアしなければならないのに、静岡県の川勝知事の反対で僅か9㎞の区間の工事着手ができないというニュースです。

これ前から揉めてた事案ですし、既に山梨実験線の工事でも井戸が枯れたなどの報告がされてます。静岡県工区は大井川の源流の水源を断つ可能性が高く、それに対するJR東海の回答がいい加減ということで川勝知事を怒らせてます。駅ができないことに対する条件闘争か?という見方がある一方、川勝知事はあくまでも環境問題として譲歩の姿勢がありません。そして工期が遅れて開業が先延ばしされれば資金計画に狂いが生じて大阪延伸も微妙になりますし、ましてアメリカ輸出は夢のまた夢となります。

アメリカ北東回廊はAMTRAKのメトロライナーの時代から都市間輸送の有望エリアとされ、現在仏アルストム製のプッシュプル編成による"アセラ”が好調で、エアライン合同のワシントン―ニューヨーク間のシャトル便を廃止にするなどアメリカでは珍しく鉄道優位の地域です。そこへリニアを売り込もうって話ですから、まずは日本で開業して現物を見せて、アメリカに買ってもらおうって都合の良いシナリオを描いてますが、あれ?日米貿易交渉と似てないか?

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Sunday, August 25, 2019

誤算だらけ

イトーヨーカドー創業者の伊藤正敏氏が思い付きで「セブンイレブン各店に銀行ATMを置けば便利で喜ばれるんじゃないか」と言ったことを耳にしたセブン-イレブン・ジャパン(SEJ)トップの鈴木敏文氏は、俄かに険しい表情になり「そんな強盗を呼び寄せるようなことをやりたければ、俺を頸にしてからにしろ!」と凄んだというエピソードがあります。

若い人には違和感があるでしょうけど、後にセブン銀行で銀行業に参入しセブンイレブン各店にATMを置いた訳で、しかも銀行業参入は社内で猛反対されながら鈴木氏が強行したんですから、宗旨替え?まさか中の人が入れ替わった?(笑)という疑問は当然ですね。種明かしすればかつて護送船団行政で事実上新規参入が不可能だったのが、バブル期に積み上げた不良債権の処理が進まず拓銀破綻などの金融危機を招いたことと、大蔵省の不祥事もあって財金分離で銀行行政が金融監督庁(後の金融庁)に切り出され、競争促進の意味もあって参入規制が緩和されたことによります。加えて店舗のセキュリティ体制が強化されたこともあります。

鈴木氏はSEJの事業を「変化対応業」述べておりましたが、将にそれを実践レベルでやってのけた訳です。故にヨーカドーの子会社でスタートした時から、固定観念を持ったグループからの人材を受け入れず、中途採用者も流通以外の他業種から選考し、新しい事業として育成してきた訳です。その中でPOSシステムの導入やタブレット型ハンディターミナル電子発注システムなど、他社にまで波及した様々なものの先鞭をつけた訳です。

銀行業については、護送船団時代はATMは銀行の資産で店舗はスペースを提供して賃料を得るだけでしたし、他行カードの共通利用も限られていたし、そもそも利用実績が問われますから、簡単に設置できる代物ではなかった訳です。それが自前で銀行業に参入して、しかも規制緩和で事業の自由度が増したこともあり、他行口座の入出金で銀行間の手数料収入を柱にするという新しいビジネスモデルを作り上げました。フルセットの銀行機能を持たないナローバンクであり、加えて加盟店の売上金送金に利用することで、現金補充を減らせますから、コストのかかる現金輸送を減らせる訳です。

7payの蹉跌を見ると、こうした鈴木氏の強烈なビジネスマインドは継承されていないことが見て取れます。実際SEJ社員の中には今回の件を「ホールディングスの問題でしょ」と他人事だったりします。こんなニュースがそれを裏付けます。

「また余計な仕事が」 嘆きのセブン加盟店(ルポ迫真)  :日本経済新聞
7payの終了を知らせるチラシを加盟店のマルチコピー機に通信で送って、それを店舗で印刷して掲示するという手際の良い対応をした訳ですが、そもそも「余計な仕事」だった訳で、IT化システム化して余計なことしているってのは、他の日本企業にも多数見られます。残念ながら。生産性が上がらない訳です。

ゴーン氏を追い出してグダグダになってる日産自動車も同様ですね。ゴーン氏は新興国市場の成長性を取り込むために、世界規模で生産拠点を配置して体制を固めたんですが、日本とアメリカの市場が他の国産メーカーと比べて弱く、販売奨励金頼みから抜け出せなかったんですが、様々な証言からゴーン氏がルノーのCEOに就任してからの変化が大きかったと言います。

ゴーン氏が日産にもたらしたものとして日経ビジネスの記事で取り上げたのが、クロスファンクショナルチーム、コミットメント、ダイバーシティであり、また新車開発責任者としてプログラムダイレクター(PD)という職制を設けたことなどを指摘しましたが、これ実は全て会議体の改革として一連のものです。

日産リバイバルプランで各セクションから代表者を集めて問題点を抽出したクロスファンクショナルチームでは、ファシリテーターを置いて中立的な議事進行を行うことで、安心して問題点を出し合うことが可能になり、お互いの誤解も解けて解決策が共有されました。それに伴って各セクションに降ろす数値目標も共有された訳で、これがコミットメント(数値目標)ですが、トップダウンの数値目標ではなく、チームのメンバーで共有された共通のゴールイメージでした。そしてダイバーシティはセクションの代表者を選ぶ時に、男性女性や年齢、社歴など、可能な限り多様性を持たせることで、ありがちな中年男性社員だけの会議にしない工夫だったってことです。

日産リバイバルプランでの実績に基づいて、大胆な会議体改革が行われた訳で、その結果、例えば新車開発であれば、従来は商品企画部門だ稟議書を起こしてハンコ集めしていたという非効率な仕組みで、しかも回議過程で回議者の追加意見が積み上がって、当初のコンセプトがぼやけてよくわからない車に仕上がるという悪弊を脱せずにいましたが、新車開発プロセスに責任を負うPDを指名し、開発コンセプトやアジェンダを決めて関連セクションから集めたチームで議論するスタイルに変わりました。その際に指名されたファシリテーターが中立の立場で会議を進行
し意思決定賢者のPDは離籍するという日産スタイルを確立します。つまりゴーン改革は日産の潜在力を引き出すためにロジカルに組み立てられたものだったんですね。

しかしゴーン氏がルノーCEOに就任した頃から、フランス政府との摩擦に直面し、ゴーン氏の日産へのコミットが薄まります。そのゴーン氏に指名された志賀氏にしろ西川氏にしろ、ゴーン氏ほどの強靭なビジネスマインドを持ち合わせていなかったようで、結局実績を上げられず日産を低迷させます。気の毒なのは系列ディーラーですが、今や三菱自動車から供給される軽自動車の販売で繋いでいる状況で、これも三菱自動車の買収を電撃的に決めたゴーン氏の決断が助けている訳です。ルノーからの圧力に対抗する日産のルノー株買い増しなどを盛り込んでフランス政府から日産を守ったのもゴーン氏です。

てな訳で、中興の祖とも言うべきトップを追い出したという意味で7%iと日産は共通してますが、販売不振が止まらない日産は99%減益の体たらくで、製造拠点の見直しを余儀なくされますが、整理対象は主に人件費の安い新興国中心で、人件費の高い日米拠点は温存されます。つまりリストラしても日産リバイバルプランのときのようなV字回復は望めないでしょう。加えて米中摩擦で中国市場が冷え込んできている上、アメリカ景気も失速気味。日本も消費税増税を控えながら駆け込みが起きていないなど逆風です。ノートe-POWERのような車を生み出せる力のある日差の潜在力を活かせずに沈むのは悲しいですね。

その日産自動車グローバル本社のある横浜で騒ぎが起きました。

横浜市がIR誘致へ 山下ふ頭を候補地に  :日本経済新聞
市民の反対が根強いカジノ誘致を選挙のときには「白紙」として言及せず、今になってこうして有権者を裏切るって、辺野古移転反対を掲げて当選して一転容認した沖縄県の仲井間知事をはじめ枚挙に暇がありませんが、そもそもカジノが儲かると考えている時点で愚かです。一応富裕層のインバウンド需要狙いとされてますが、カジノがあれば富裕層が来てくれる訳じゃないのは、世界の富裕層が集まるスイスのサンモリッツにカジノが無いことで明らかでしょう。

カジノの経済効果って結局限られたエリアで解禁されるから人が集まり集積ができるってもので、その結果周辺のヒトモノカネを引き寄せて周辺を窮乏化させるものですし、加えて治安の悪化という外部不経済をもたらします。つまり周辺を含めた地域に根付いた市民生活や文化を破壊するだけです。

また本当に経済効果があるのなら、寧ろ人口密集地から距離を置いた場所に置いて地域活性化するならまだわかりますが、既に人口密集地である首都圏に立地する意味はこの面からもありません。その意味では長崎(ハウステンボス)に置く方が合理的です。クルーズ船も寄港できますし。ただしクルーズ船の乗客が爆買いしている中国人だったりしますから、本当に富裕層が来てくれる保証はありませんが。

横浜繋がりでこのニュースを取り上げます。

相鉄・JR東、直通運転の概要発表 全列車新宿方面に  :日本経済新聞
11月1日開業予定の相鉄都心直通線の運航計画の概要が発表されました。具体的なダイヤは未定ですが、今わかっている範囲では新宿―海老名間が基本で朝ラッシュ時の一部列車は大宮方面へ直通。1日46往復92本で朝ラッシュ時上りは1時間4本。種別は特急と各停。分岐駅の西谷は新たに特急と快速が停車。漁ラッシュ時各停のみだったいずみ野線で新たに通勤特急を設定し二俣川で新宿方面の直通列車と接続といったところです。

相鉄12000系はJR東日本E233系7000番台と同性能でJR東日本もE233系7000番台を1本増備しており、新宿折り返し基本となるから運用増ってことだと思います。但し朝ラッシュ時は新宿駅の在線時間を通りれないってことでしょう。故に相鉄12000系も埼京線の無線式保安装置ATACSを搭載されてます。

東急との直通時には1時間最大10本で、東横線へ4本巡路線へ6本の配分となり、目黒線、東京メトロ南北線、都営三田線は編成を8連に増強されるということで、個別ルート毎の本数は少ないものの、特に海老名は始発駅でY着席狙いが可能なので、既に海老名駅周辺の地価は20%程度上がっているようです。限界都市川崎で指摘した通り、折角の直通列車増発でも、武蔵小杉には満員でやってきます。武蔵小杉駅利用者には誤算ですね。

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Sunday, August 18, 2019

困難なインフラのトリアージ

2030年の北海道新幹線札幌延伸に伴う並行在来線問題の検討が前倒しされました。

北海道新幹線の並行在来線、「存廃判断」5年前→前倒し  :日本経済新聞
対象区間は沿線人口が少なく、財政力の弱い町村が連なるだけに、調整は相当手間取りそうです。バス化も含めた検討ですから、廃止も有り得る訳ですが、貨物列車をどうするかが悩ましいところです。

JR貨物の問題は東北新幹線延伸のときに並行在来線を三セクで引き受ける時に、ローカル輸送対応ならば複線電化の東北本線の設備は明らかにオーバースペックとなりますから、JR貨物が貨物列車を維持することが困難と発議されました。その際JR貨物が負担する線路使用料がタダ同然の格安だったことから、並行在来線引き受け三セクにとっては負担ばかりになるということで揉めました。結果的にはJR貨物が支払う線路使用料と三セクが受け取るコスト見合いの線路使用料の差額をJR東日本の負担で補填することで決着しました。加えて北斗星やカシオペアの運行に伴う運賃料金収入もあり、それで経営の屋台骨を支えることで決着しました。貨物幹線だけに貨物廃止は無理だった訳です。

JR東日本にとっては整備区間より手前の根元区間の受益があるので、貨物輸送に伴う負担増は受け入れ可能だった訳ですが、同様の問題に直面した九州新幹線の八代―川内間ではこの手は使えず、並行在来線三セクの肥薩オレンジ鉄道にJR貨物が出資することで、貨物列車向けの電化設備等を維持するという方法が採られました。肥薩オレンジ鉄道のローカル列車は軽量ディーゼル車によるワンマン列車です。

北陸のIRいしかわ鉄道とあいの風富山鐡道では、当初検討されたサンダーバードの富山乗り入れは結局JR貨物とのコスト分担問題で実現しませんでした。IGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道が客単価の高い寝台特急の収入を当てにしたのとは対照的です。という具合に並行在来線貨物問題は統一的なスキームはなく個別対応に終始しました。言い換えれば行き当たりばったりだった訳です。

北海道新幹線に関しては、経営危機にあるJR北海道に追加負担を求めるのはそもそも無理ですし、これまで以上に沿線人口が少なく、財政力の弱い町村に負担を強いることになります。貨物廃止してバス転換もあり得る訳ですが、青函トンネル開通で天候に左右されない輸送手段として特に農産物輸送で優位性を発揮する貨物の廃止は、北海道経済に大きな打撃を与えるだけに、簡単にはいきません。

青函トンネルの新幹線と貨物の供用区間が速度と列車本数の制約条件になっていることから、国交省の本音は貨物廃止に傾いているようで、実際船舶へのシフトが検討されてますが、輸送量から言えば可能でも、天候の影響は避けられず、鉄道による安定輸送が北海道産農産品の競争力となっている現実から無理筋でしょう。

加えて東北新幹線の並行在来線三セクであるIGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道にとっては、寝台特急の廃止で旅客収入を減らした上に、JR貨物の線路使用料収入まで減れば、存続が危うくなります。こうなると北海道の都合だけで決めることもできず、着地点が見えなくなります。あとJR貨物自身も国の支援で基盤強化投資を行った結果、黒字転換して株式上場も視野に入る中で、その基盤を国に潰されることになる訳です。この点も将に行き当たりばったりです。

山線区間を除く長万部以南の区間はJR貨物が出資するということも考えられますが、北海道経済に関わる問題だけに、北海道庁が動かなければまとまらない可能性があります。とするとJR北海道に冷たい道庁の対応から見て期待できそうにありませんね。これインフラの積み増しによる維持費拡大問題として指摘しましたが、こうして過剰インフラを抱えると、その廃止も簡単ではないってことで、寧ろ問題を複雑にして解決を困難にします。

一方九州でも問題が起きています。

JR九州「自社株買い」株主総会で否決、青柳社長「今後も対話」  :日本経済新聞
株式上場したばかりに、株主となった投資ファンドからの圧力を受けている訳ですが、同時に豪雨被害で不通の日田彦山線の復旧を巡って関連自治体との間で困難な話し合いが行われています。日田彦山線自体は現状既に都市間輸送も貨物輸送も担っていない純然たるローカル線で、企業経営的には災害復旧するよりバス転換する方が合理的ではあります。

しかし忘れてはいけないのは、JR九州が株式上場に当たって上場基準クリアのために行った経営安定基金を取り崩して新幹線リース料の一括納付と償却資産の減損処理の結果、減価償却費を圧縮して本業の赤字体質を改善した一方、減価償却費の減少は同時にフリーキャッシュフローの減少を意味しますから、災害復旧の資金捻出を困難にしているという側面もあります。言い方は悪いですが、株式上場したために災害復旧もままならなくなったってことです。日経記事では複数のステークホルダーへの対応の困難さと纏めてますが、覚悟がないなら上場なんかするなって言いたいところです。

というわけで公共インフラの民営化は万能薬でも何でもない訳で、例えば大阪メトロや大阪シティバスの民営化の意義は今もって理解に苦しみますが、とりあえずここでは踏み込みません。しかし過剰インフラの淘汰を資本の論理に委ねて良いのかってところはあまり議論されてません。そんな中で北越急行ほくほく線の生き残り策は示唆に富みます。

元々スーパー特急方式を想定していたJR西日本区間の北陸新幹線は、ほくほく線経由で越後湯沢で上越新幹線に乗り継ぐ形が想定されていて、それを前提に北越急行では線路の高速化と共にJR西日本の681/683系を導入し、段階的にスピードアップして160km/hの営業運転を実現した訳ですが、北陸新幹線のフル規格化で梯子を外された形になりました。

そこで利益の一部を基金として内部留保して将来の減収に備える一方、特急廃止でお役御免となる681/683系をJR西日本に売却しローカル輸送に特化します。減収にはなりますが、特急車両の譲渡収入が得られる一方、通過車両キロの減少で保守負担が減少しますから、そこで収支をバランスさせることで存続を図ります。超快速スノーラビットで都市間輸送を維持しつつ、鈍速列車スノータートルという企画列車を走らせるなどして増収に励む一方、2018年12月1日には運賃値上げして収支改善を図ります。万博輸送対応の車両を大阪市に譲渡した北大阪急行と同じ手ですね。

幸いなことに高速化で高規格な線路故にメンテナンスフリーなのと、積雪対策により運休が少ないということで、ローカルな利用者の信頼を得ていることで、安定した収支を実現しています。てことでJR北海道もJR九州の前例を梃子に電化や線路強化や積雪対策などで将来のメンテナンスコストを圧縮することと、運賃改定を併せて収支改善を図るのが、道庁が当てにならない以上必要ではないかと。利子補給されているとはいえ低金利で運用益が期待できない経営安定基金ですが、現物投資は優先順位を間違わなければ本業でのハイリターンが可能です。

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Saturday, July 20, 2019

オウンゴールの国自BANG!―――黄金の国の誤変換

日韓関係が拗れまくってます。徴用工裁判問題と半導体材料の輸出審査美那雄祖問題が同時並行で進んでいて、日本政府の公式見解も別らしいですが、寒みー場外乱闘で指摘した通り、世耕経産相が徴用工裁判問題に言及してます。故に世界のメディアは徴用工裁判問題の報復として「日本もトランプ流」と報じました。実はそれがまずいことなんですね。

昨日も河野外相が駐日韓国大使を呼んで「無礼者」呼ばわりしましたが、徴用工裁判はあくまでも民事の紛争ですから、そもそも政府同士の約束である条約で無効にはできませんし、あくまでも訴えた国の裁判所がその国の法律に基づいて判断するものです。例えばトヨタの米現地法人の役員がセクハラで訴えられた裁判では、米国法で被告の経済力に応じた懲罰的賠償金が認められていますから、億単位の賠償命令を受けてますが、「それは不当だから撤回しろ」と日本政府が言えばおかしいですよね。そのおかしなことを日本政府は韓国政府に要求している訳です。日本政府は国際紛争処理機関への提訴を準備中らしいですが、相手国の韓国が無視すれば事態は動きません。

対して輸出手続きの見直し問題を日本政府の関係者は判で押したように「制裁ではない」と言ってますが、これ韓国がWTOに提訴すれば日本の意向に関わらず紛争解決パネルで判断が下されます。その際に世界のメディアが「日本もトランプ流」と報じて制裁扱いしていることが、日本の心象を悪くするってことで、徴用工裁判との関連を否定し、あくまでも手続きの見直しだと異口同音に発言している訳です。とはいえ世耕経産相の発言は記録として残ってますから、否定しようが何しようが事実は消えません。

加えて日本政府の言い分に様々な矛盾が見られる点も気になります。複数の政府高官が言う「不適切な事案があった」なら、韓国当局にその情報を伝えて摘発を促すならわかりますが、事件化できるほどの証拠はなく、単に疑わしいってだけなら物は言いようで後付けの理屈にも見えます。「安全保障上の問題」と言うならWTOではなく国連安保理に諮るべきじゃないのか?ってこともあります。少なくとも日韓で揉めて一番喜んでるのは間違いなく北朝鮮の金正恩氏でしょう。

問題の純度が高いとされる日本製フッ化水素ですが、既にサムスンなど韓国企業は代替品を探しており中国やロシアが調達先に浮上しているようですが、同等の純度のものが手に入るかどうかは微妙なようです。エッチング剤ですから、微小な回路を刻むのに純度は大事で、結果として半導体製造の歩留まりが改善して高品質と低コストが両立する訳です。純度が下がればそこがどうなるかは分からない訳で、確かに韓国企業は困るでしょう。だけど困るのはそれだけじゃないんですよね。

韓国の半導体メーカーが日本製化学製品で実現した高品質と低コストを何故日本企業が実現できなかったかというと、ムーアの法則に鍵があります。インテルの創業者の1人のゴードン・ムーア氏が提唱したICチップの搭載トランジスタ数が凡そ2年で2倍になるという経験則です。つまり技術革新が指数関数的に進むってことですが、これが意味するのは技術の陳腐化が早くて絶えざる技術革新の連続でしか競争力を維持できないってことでして、言い出しっぺのインテルはそれを根拠に日本製の高品質低コストの汎用メモリのDRAMへの台頭で撤退し、プロセッサに特化してIBM、マイクロソフトと組んで所謂ウィンテル連合でPC市場を席巻し、且つ研究開発を強化して市場をリードしてきた訳です。所謂選択と集中ですね。

その過程で汎用品しか作れない日本の半導体メーカーは価格のたたき合いで多くが自滅します。加えてバブル期の強気の設備投資が設備過剰となり、その後の技術革新に合わせたタイムリーな設備投資を阻害します。かくして台湾や韓国の半導体メーカーが入れ替わるように台頭し現在に至る訳ですが、日本製半導体の高品質低コストを支えた日本製化成品が支えになった訳で、逆に言えばこの入れ替わりがあったから、日本の化成品メーカーは顧客を失わずに済んだ訳です。早い話日本の半導体メーカーの戦略不在の結果ですね。

結果的には日韓企業の強みの組み合わせで世界に高品質で低コストの半導体が供給され、多くの危機に実装されて革新的な成否が多数市場に送り出されてきた訳ですが、その構造に余分なストレスを与えることに何の意味があるのか、日本政府は答えていません。何しろ徴用工裁判問題に対する制裁じゃないそうですから、韓国に何を求めているのかがわかりません。結果誰得だよってことですね。

喜んでるのは専ら日本国内のウヨ的な人たちばかりで、問題の着地点も見えません。ま、そもそも制裁じゃないし、だから交渉するつもりはないし、場合によっては品目を増やすことも有り得るそうですから、韓国国内では経済への影響を心配する声はあるものの打つ手はないし、日本と妥協的な保守派も含めて文在寅政権支持の世論が形成されてます。長期的には日本依存のリスクが意識され、調達先の多様化や国産化、あるいは韓国企業の製造拠点の海外移転などで、寧ろ日本の方が損失を被ることになりかねません。こうなるとメンヘラ自傷行為にしかなりませんね。バカなのか?

この辺の構図ですが、かつて指摘したICカードのソニーの失敗にも通じます。元々秘密保持を必要とする工場や事業所のセキュリティ対策として、センサーにタッチしてゲート開放や開錠する社員証やゲストカードとして開発されたFeliCaシステムに注目して交通系ICカード兼電子マネーに応用したのが香港の八達通'OctopusCard)で、その利便性と高機能を知ってソニー開発を要請したのがJR東日本のSuicaです。

そして開発過程でソニーが独自に開発したEdyのSuicaへの搭載をJR東日本は提案しますが、ソニーは断ってしまいます。JR東日本の狙いは決済システムは1つで良いし、センサー設置などを短期間で普及させるための機能統合としう戦略判断だったんですが、ソニーはそれを理解できず、Edyを独自に育てる選択をします。しかし所謂おサイフ携帯販売のために通信キャリアのNTTドコモに売り渡してしまいます。そのNTTドコモも持て余して楽天に転売してしまいます。かくして普及できないまま交通系カードにに電子マネー機能が追加され、nanacoなど流通系カードの参入もあってEdyは忘れられた存在になります。かくしてただでさえ高コストなFelicaシステムの各種カードが乱立してしまい、7payの蹉跌を生むことになる訳ですから、根深い問題です。

その7payの蹉跌も日本政府の消費税増税に伴うキャッシュバックなんてアホなことするから起きたことだし、そもそもバーコード決済も所謂二次元バーコード(QRコード)を開発して無償公開したのはデンソーですが、それを利用して決済システムを構築したのは中国のアリババや微博(Weibo)ってFeliCaと構図が似てます。そして電子決済を一気に普及させようとして混乱を招いている日本政府って-_-;。かくして黄金の国は誤変換の果てにオウンゴールの国になる?

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Sunday, July 14, 2019

間違いだらけの消費税

3度目の正直な消費税で予想した通り、今年10月の消費税増税は動きませんでした。野党は増税撤回を掲げて争う姿勢ですが、大勢は与党有利と言われています。選挙が終われば「国民の信任を得た」として消費税増税は確実に実施されるでしょう。上記のエントリーでも指摘しましたが、消費税を巡る議論が生煮えで、単純に消費税増税、是か非か、といった議論は今更感があります。寧ろ準備が粛々と進んでいます。そんなこのニュース。

鉄道運賃、消費増税で2%上げ 山手線初乗り136円に  :日本経済新聞
国交省の指針で値上げ幅を消費税増税分の範囲内に納めることを求めており、JR東日本で平均1.852%で、他社もほぼ同水準とされております。一応便乗値上げはありませんが、民営化後30年以上、消費税転嫁分の転嫁を除く運賃値上げは実施されておりませんので、低インフレもありそれなりに超過利潤は増えていると見られますが、その見直しまでは無いってことですね。

加えて鉄道運賃は事業者をまたぐ連絡運輸もあり、IC乗車券のようなストアードフェアシステムが普及していることもあり、バックオフィスのシステム改修にはかなりのコストがかかると思われますから、合理化による増益分は多分大した足しにはならないのでしょう。その一方でJRのライナー列車や複数私鉄の有料着席サービスなど付加サービスのの料金は届出制で自由度がありますから、今後も拡大するんじゃないかと思います。逆に存亡の危機にあるJR北海道は収支改善のための値上げを消費税増税部込みで申請済みで、カツカツの厳しい状況は続きます。

他方運賃制度の自由度が高い航空やバスに関しては、予約時期や路線や便毎に柔軟な運賃設定が可能なので、こうして見ると鉄道運賃にも一定の柔軟性が認められても良い気がします。例えばJR北海道のケースでは札幌都市圏とそれ以外で別運賃にするとかですね。あるいはJRは都市間列車に特化して特急料金込みとし、ローカル輸送はイギリスのフランチャイズ制に倣って地元自治体やバス事業者の参入を促し運賃を別建てにするとかでしょうか。

消費税本体の話からややそれましたが、消費税転嫁の値上げは価格カルテルから除外するという独禁法の例外になっていることを述べたかったんですが、鉄道運賃のように元々が規制価格でネットワークの外部性が強く働く分野はともかく、それ以外の商品一般に関して、この例外扱いが妥当なんだろうか?ってことです。

だから鉄道のような規制業種に限らず一斉値上げになりやすく、駆け込み需要が発生しますし、規制業種以外では便乗値上げも見られますし、食品などで見られる内容量を減らしたステルス値上げも常態化している訳ですね。逆に言えば消費税増税に伴う価格の段差を無くすには、一斉値上げを防ぐシステムを考えれば良い訳で、プレミアム商品券やキャッシュレス決済でポイントバックみたいなことは、寧ろ混乱を助長することになります。

付加価値税率15%以上とされるEUではどうかと言えば、一斉値上げはほとんど見られず、事業者は税率アップを見越して事前値上げしたり、透明値上げを見送って値上げ先送りしたり、コスト削減で吸収したりと、様々な対応を取って税率改定前後の期間平均で収支を調整しています。ある意味価格据え置きはシェア拡大のチャンスでもある訳で、より戦略的な価格政策が定着している訳です。

またインボイスの導入によって税率が変わる前の仕入れ分の低税率は控除額も少ない訳で、中間事業者の節税策が無力化される効果もある訳で、増税による駆け込み需要対策ならインボイス導入こそやるべきことですし、中小零細事業者の対応のためのシステム補助なら1回こっきりのシンプルな補助制度になり、ポイント還元のような大掛かりな仕組みも不要です。しかも2022年をメドにインボイス導入の方針もある訳ですから、それを前倒しするならともかく、今回増税の影響w軽減するという名目で大規模なバラマキをすれば、これが悪しき前例となって今後機動的な税率改定が難しくなるという副作用もあります。全くいいとこ無しです。

前エントリーで取り上げた7pay不正アクセス問題も、コンビニなど大手チェーンの加盟店は2%還元となる一方、地方スーパーを中心に資本金を5,000万円以下に減資して5%還元の対象事業者になってシステム投資の補助金まで取ろうとする動きが目立っており、7-11は対抗上3%分を本部負担で加盟店支援をしようとした訳ですが、セキュリティの強固なFelicaベースのnanacoの高コストがネックで、一方オムニセブンから派生した7iDのシステムが宙に浮いていて、それを利用したセブンアプリというポイントシステムに衣替えして、更にそれを土台に決済システムを構築した結果、元の7iDのガバガバなセキュリティが災いしたということのようですね。ベンダーの尻叩いて安上がりに済まそうとした結果でもありますが、同日にスタートしたファミpayでは問題が起きたという報告はありませんから、手抜きが高くついたってことですね。お粗末。

そもそも消費税は高齢化に伴う社会保障費の膨張に対して、安定した財源であり、社会全体で広く薄く負担するってのが本来の意義だった筈ですが、その一方で年金も健保も保険料が値上げされている訳で、保険料の値上げは現役世代に負担が集中するので、負担と給付の見直しの中で利的な選択だった筈ですが、実際は97年の3%→5%の増税と同時に保険料も値上げされ、年金の100寝南進プランでも年金保険料の値上げとマクロ経済スライドによる実質給付の圧縮が図られ、健保も後期高齢者保健創設による国保、協会健保、組合健保などとも財政調整の結果H権料は毎年値上がりしている訳で、本来は消費税増税の代わりに保険料は固定するといった議論があってしかるべきですが、全くありません。

この辺の不誠実さが日本政治の現状です。その意味では税と社会保障の一体改革を打ち出して3党合意を纏めた野田政権はまだしも誠実だったとは言えます。その後解散総選挙d絵民意を問うて政権を失い戦犯扱いされてますが、とりあえず議論の俎上に載せたことは間違いありません。ただしここにもゴマカシがありまして、一つは地方消費税が5%時代はその内1%で税収額比20%だったものが、8%中1.7%で税収額比21.5%となりました。10%時には2.2%で税収額比22%になり、軽減税率8%に対しても1.76%(税収額比22%)と地方への配分が増えてます。

勿論社会保障負担が増えるのは地方も同じでよりシビアなので、これはこれで良しとすることは可能ですが、残る国税収入でも社会保障費に直接充当されるのは2割相当で残りは財政再建と政府消費による政府負担分の消費税負担増で消えるという笑えない話なんです。結局年金100年安心プランで約束しながら財源が見つからずに先送りされていた給付の国の負担割合を1/3→1/2の財源に充当されて終わりで、社会保障改革とは程遠い内容です。特に財政再建は過去の公共事業や減税などの財政出動の結果の財政悪化なんですから、素直に歳出削減と赤字国債圧縮を行うべきで、消費税で賄おうというのは筋悪です。

更に自公政権で導入が決まった軽減税率が問題でして、運用の混乱もさることながら、インボイス導入までは区分経理による帳簿管理とされており、錯誤や不正の温床になりますし、事務負担も増えます。インボイスが導入されれば複数税率への対応は容易ですが、それに留まらず、非課税とされる医療や一部の公共サービスを0%税率として申告に基づいて還付することも可能になりますから、制度としてはかなりスッキリします。また税率の変更も容易にになるのは上述の通りです。これを制度インフラとして適正な税率を国民目線で決めていくことが重要です。財政再建のためという増税議論なら国民の判断で止められる訳です。

あと消費税に合わせた所得税や法人税の見直しも必要です。制度の整合性を図るなら両税も付加価値型Hにすればスッキリします。所得税ならば1人当たりの給付付き税額控除額を決めて本人と扶養家族の人数分を税額控除し、税額が下回る場合は差額を給付することにすれば、仮に所得ゼロでも控除税額分の給付が受けられますから、社会保障費の圧縮が可能になります。法人税は人件費を含む付加価値を課税対象として、人件費に含まれる個人所得税と社会保険料を控除するという仕組みが考えられます。課税ベースが拡大しますから、税率は下げられます。低消費税率国との底辺への競争となる現在の法人減税の議論は必然的に財源を誤魔化すことになり、結果的に消費税収が充当されてましたってことも防げます。

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Saturday, June 22, 2019

地方の地雷

物騒なタイトルですが、最早地雷を抱えたと言っても過言ではない日本の地方について考えます。その前に前エントリーの香港の逃亡犯引き渡し条例改正ですが、100万人デモでG20前の揉め事を回避したい当局が折れました。勿論お手本の日本で第一次安倍政権で批判を浴びて撤回されたホワイトカラーエグゼンプション制度が高度プロフェッショナル制度に名前を変えて復活し成立したことを忘れちゃいけませんね。

そもそも香港の行政制度はイギリス統治時代を踏襲していて、宗主国がイギリスから中国に変わった形ですが、逃亡犯引き渡し条例でイギリスなどへの引き渡しは既に制度化されている訳で、本国で犯罪を犯して植民地へ逃亡するってのは昔からあって問題だった訳ですから、中国国内で犯罪を犯しても香港へ逃げればセーフってのは、中国サイドから見れば問題ではあります。

とかく独裁体制を批判され、法治ではなく人治だと言われてきた中国ですが、習近平政権の反腐敗運動もあって、法整備が進み、法の支配が確立しつつあるのも確かなので、香港の存在は犯罪者を助けるセキュリティホールになるという意味で、穴をふさぐ必要はありますが、香港市民は言論の自由がなくなることへの危機感があります。確かに政治犯弾圧に使えるツールですが。

そういう意味で落としどころが非常に難しいのですが、元々イギリス統治時代からの植民地型統治を見直して、大幅な自治権を認めることとのバーターは考えられます。そうするとウイグル、内モンゴル、チワワン、チベットの4自治区との釣り合いが取れなくなるから、4自治区の自治権の拡大も課題になるなど、困難が伴います。

個人的には自治区に留まらず、省や独立都市も含めて地方政府の自治権拡大を通じて、中国自体をEUのような連邦共同体に変化させるぐらいしか出口は無いと考えます。そうなればそこへ台湾が参加する流れも可能になります。人口大国で世界最大の民主国家と言われるインドの混乱と停滞が示すように、通常の国民国家型の民主主義体制は人口大国ではそもそも無理じゃないかと考えております。中国は日本よりEUを見倣うべし。

その意味でBrexitやイタリアの財政問題や右傾化など、EUも問題を抱えて苦しんでますが、例えばデンマークはEUに加盟しながら独自通貨を発行し、自治領のグリーンランドとフェロー諸島はEU非加盟ですし、EU非加盟で独自通貨発行しながらシェンゲン協定には加盟しているスイスやノルウェーとか、EUにもシェンゲン協定にも非加盟なのに通貨はユーロというモナコ公国など、欧州の多様性は複雑怪奇ですが、それでもまとまっているところを見せることで、中国に好影響を与えることが期待できます。その意味でBrexitやイタリアの財政問題でもう少し柔軟な対応をしても良いと思いますが。そもそもリスボン条約で定義された補完性原理に反する気がします。

そんなEUの補完性原理を見倣って欲しいのは、中央集権の強い日本です。できれば憲法の地方自治条項へ追加して欲しいです。地方の時代が言われながら、逆に地方自治が停滞若しくは後退している現実はひとえに溜息です。そうれを象徴するこのニュース。

ふるさと納税の矛盾 「人気自治体」二重取りに賛否  :日本経済新聞
ふるさと納税は制度としては寄付税制なので、ふるさと納税は税収にカウントされず、地方交付税は減額されません。一方、税収を失う自治体は東京23区をはじめ税収の多い不交付団体が主であり、取られ損ですし、高額納税者ほど控除を受けられますから、税収減の影響は大きい訳です。加えて交付団体の税収減は地方交付税でカバーされますから、トータルでは公費が増えることになります。

だから高額返礼品が可能になり、それが過熱して寄付額の3割までという規制の導入に至りました。そもそも同じ税源を奪い合う仕組みですから、問題のある制度です。寄付文化の乏しい日本に寄付文化を定着させる意図もあるようですが、寄付先進国と言われるアメリカでは、富裕層子女入学とバーターで大学に寄付というような、半ば公認賄賂制度となっている現実もあります。

税収制約から自治体が対応できない問題を解決するにしても、意義をアピールしてクラウドファンディングで資金集めすることなら、法律変えなくても可能です。自治体の本気度という意味からもその方が望ましいところです。法律変えるなら国の権限と税源を移譲することこそが地方分権の王道です。

例えば国の出先機関の地方局を都道府県への移譲を行うことが以前から指摘され、名鉄岐阜地区の廃止問題の論考の過去エントリーでも指摘しましたが、実現してませんし、交通政策基本法で公共部門の責任が定義されたものの、あくまでも地方と事業者の話し合いで問題解決することが求められ、それを前提に国の予算が投入されるって立て付けでして、税源も財源も国が握っています。岐阜市は名鉄線の存続を望み競合する市営バスを廃止したりしている訳ですが、権限も財源もない中で成す術がなかった訳です。

例えばJR北海道の問題で「国が悪い、JRが悪い」と言って協議に応じない北海道庁ですが、使える税源があって許認可の権限が国から渡されていれば、もっと主体的に動けるんじゃないかと思いますし、自家用車によるライドシェアを導入した京丹後市のケースでも、当初特区申請がされましたが、道路運送事業法の特例を使って自家用自動車の有償運行事業として認可されました。これも地域の実情に詳しい京都府に許認可権限があれば、特区申請のようなメンドクサイことしなくても済んだ訳で、加計学園問題で噴出した国家戦略特区の諸問題を考えると、国家戦略特区なんて制度も直ちにやめて、地方への権限移譲こそ取り組むべきです。

京丹後市のケースのように、人口減少でタクシー配車ゼロという地域が現実に起きています。それに留まらずそもそも地方に就職先がないから若者の流出が止まらないし、銀行の不良債権処理を通じて再編されたメガバンクを尻目に温存された地方銀行が日銀の異次元緩和とマイナス金利政策の影響で収益悪化が止まらず、地元の融資先が衰退する中、越境営業で低利融資競争の地獄となっていて、最早地元の有料就職先とは言えない状況です。

地方銀行の優等生スルガ銀行も、元々米ウエルスファーゴを手本に個人向けリテールバンクとして業態転換を図り、企業融資で低利に泣く他行を尻目に高金利融資を実現した結果、他行の低利借り換え営業のターゲットになり、新たな収益事業としてアパートローンに進出したものの、やはり低利借り換え営業の餌食になり、追い込まれて融資書類捏造へ走った訳で、地方銀行の整理を先送りしたツケが来ています。フィンテックも未だ形にならず、袋小路の金融事情は地方の疲弊を助長します。スルガ銀行問題の真の原因はオーバーバンキングにある訳です。とはいえ地銀の統合は独禁法に抵触する押しレがあり、判断が難しいところですが、都道府県レベルで地域の実情を踏まえて判断できれば望ましいですね。

加えて最低賃金問題も地雷です。

最低賃金引き上げ、世界で論争(真相深層)  :日本経済新聞
元々英ブレア政権のマニフェストで採用され経済界の反対を押し切って実行されましたが、雇用が減るという批判は当たらず、寧ろ賃金上昇を好感して労働市場への参入が増えた結果、経済の活性化に寄与したことで、アメリカでもオバマ政権で目指され、州レベルでは実施されているところもチラホラあります。一方、韓国では文在寅政権で大幅アップされたものの、人件費増加で企業倒産や廃業が相次ぎ失敗と評価されています。

実証研究で分かれ目は賃金中央値の60%らしいということが分かってきました。イギリスは下回り韓国は上回った結果という訳です。日本はというと、現状が40%程度であり、最低賃金上昇の効果は間違いなく見込めます。ザック立憲民主党が提唱する1,300円あたりの水準と考えられます。但し問題もありまして、元々地方の賃金相場は概して低く、全国一律に上げると地域によっては60%の水準を超える可能性があります。別途賃金の地域差を縮小する策を講じないと、最低賃金上昇が地方の地雷になる恐れがあります。

この問題は結局地域が生み出す付加価値の増加しか解決策はありませんから、大胆な権限移譲で地方に自主的判断を促すことでしか出口は見えません。例えばインバウンドでも北海道ニセコ町のように雪質の良さでスキーリゾートとして世界に知られる存在になったように、一見マイナス要因でも、見方を変えればプラスに転じます。そんな地方の自主的な取り組みを促すことこそが本来の意味での地方の時代です。地雷は御免ですよね。

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Saturday, June 15, 2019

高齢者の資産取り崩しの意味するところ

何だかよくわからないニュースが多い今日この頃です。1つはイランを巡る緊迫ですが、安倍首相がイランを訪問し最高指導者ハメネイ氏にトランプ大統領の「会談しようぜ」のメッセージを伝えて断られてます。ガキの使いか!同じ日にホルムズ海峡で民間商船2隻が砲撃を受けるという事件が起きて、アメリカはイランの責任を言い、イランはそれを否定という構図ですが、謎の多い事件です。

安倍首相のイラン訪問を意識した可能性はあるとしても、意図が分からない。単純に混乱を演出するということか。アメリカはイラン革命防衛隊所属線による機雷回収の映像を公開してますが、被害船の1隻を保有する国華産業という日本の海運会社は、飛来物目撃の船員の証言を明らかにしていて矛盾します。結果的にトランプ大統領も「会談は時期尚早」と態度を変えたわけで、謎の攻撃主体が混乱拡大を意図したとすれば、それは成功したということになります。真相はどうあれ原油価格の上昇は避けられないところです。

香港では逃亡犯条例制定に反対する市民の大規模デモが起きて欧米諸国から人権配慮の意見が寄せられております。今のところ日本政府は態度を明らかにしておりませんが、多分スルーでしょう。天安門事件の時と同じ構図です。実は日本のこういうところを中国政府はよく見ています。というよりも、もっと有体に言えば参考にしているとさえ言えます。

天安門事件は中国政府にとっては未だにトラウマになっていてます。鄧小平の改革開放路線に舵を切って経済成長を目指したのは、勿論清吾日本の奇跡の復興を参考にしてますが、同時に経済成長は民主化をもたらすという欧米中心に見られる見方への対応も日本を参考にしているのです。経済成長と民主化の関係で言えば、韓国やインドネシアなど開発独裁で経済成長した後に民主化で独裁者を倒す事例が多数見られますが、当然中国もそれを分かっていて、実際天安門事件では胡耀邦総書記のように天安門に集った若者に共感を示して更迭された幹部もいます。

にも拘らず軍隊に当たる人民解放軍を投入して鎮圧したのは、経済成長しても長期政権が続く日本の自民党を見倣えば良いという判断ですね。60年安保闘争のデモ隊鎮圧を見倣った訳です。ただし1つ誤算があって、軍隊を動かしたことでハンガリー動乱やプラハの春でソ連軍が動いたことの連想で欧米が拒否感を示したことです。だから今回はそれを踏まえて人民解放軍の投入はしない。訳です。警察権力による鎮圧ならばセーフって感覚ですね。

余談ですが、97年総選挙での政権交代による民主党政権誕生は、中国政府にとっても誤算だったわけで、実際尖閣問題などで却って関係がぎくしゃくしました。野党時代には双方で交流があったから、寧ろ中国政府にとっては尖閣問題での民主党政権の筋論はショックを大きくしたとも言えます。逆に民主党政権が安定していれば、中国の民主化は進んだかも。同時に今のままなら中国はいずれ日本が躓いた問題に躓き行き詰ることになります。米中摩擦は将にそれです。

で、やっと本題。日本の行き詰まりを示すこんなニュース。

「老後資産2000万円」問題、私的年金の議論に冷や水  :日本経済新聞

金融審議会ワーキンググループによる報告書を巡って炎上してます。56pの報告書は人口減少と高齢化で金融事業の環境変化を論じていますが、まあツッコミどころ満載で、炎上すべくして炎上していると言えます。ワーキンググループに名を連ねる多数の識者たちにしても意に沿わない纏め方じゃないかと思いますが、結局事務局が描いたシナリオが先にあるのがこの手の審議会の常ですし、委員も名が売れて謝礼が出るから意に介さないかもしれませんが、これは恥だぞ。

問題になっているのは厚労省提供の年金生活の高齢者世帯の実態調査で、年金受給額プラス5万円の生活費というところから、65歳時点で95歳まで生きると仮定した場合に、資産取り崩しで充当される5万円を賄うためには2,000万円の資産形成が必要と結論付けて、iDeCoやNISAなどで若いうちから資産形成すべきと結論付けております。これまんま出来の悪い証券マンのセールストークそのものです。事務局の官僚の劣化甚だしいところです。

そもそも厚労省が示したデータは夫婦2人世帯のものですから、厚生年金や共済年金といった被用者年金加入世帯が対象で、高齢者全世帯ではないですし、既に資産形成に成功した世帯とそうでない世帯を含みますから、少数の資産残高の高い世帯ほど取り崩し額が大きく、平均値を押し上げている訳です。平均値で見るべきでないデータを平均値で丸めて単純計算したら2,000万円って話です。統計学の基礎の基礎ができてない。せいぜい言えるのは、資産残高の高い世帯ほど資産を取り崩すってことぐらいです。つまり老後も贅沢したきゃ金貯めろってことですね。これを承認した審議会メンバーも恥ずかしいけど、1度は公表を認めた麻生大臣も恥ずかしい。ま、恥を自覚する知性がないだけかもしれませんがwww。

ですから論旨としては公的年金の問題を取り上げた訳ではないんですが、公的年金の支給減額の見通しを随所で記述しており、減額があたかも既成事実のように扱われているというのはありますが、野党の追及も含めて寧ろそちらに力点が移っているようですが、主たる論点ではありません。

年金に関してはあくまでも保険ですから、損得を言えば長生きすればたくさん支給されるし、支給年齢前に不慮の死を遂げれば貰えないってことで、保険の原理で動いているので、本質的な問題は4.1%という割引率の高さです。割引率が高ければ少ない保険料で大きな給付が受けられますから、お得感を演出できますが、実現するために株式などのリスク資産への投資を余儀なくされる訳で、本来は元本保証のある国債投資に限定すべきです。この誤魔化しを是正するところからが、本来の年金改革です。

付け加えれば、公的年金制度の安定性は現役世代の実質所得に依存しますから、実質賃金が上昇していれば問題ないんですが、国がデータを公表できないほど悪化している
訳ですから、見通しが暗いのは間違いありませんが-_-;。

金融審議会の報告書ですから、そこへ触れないのは仕方ないとしても、悪質なのは公的年金の不安を煽ってiDeCoなどの私的年金へ誘導しようとする意図見え見えな点です。この辺が上記の「出来の悪い証券マンのセールストーク」たるゆえんです。つまり議論を取りまとめた事務局の官僚たちによる金融業界への利益誘導ってことですね。これこそが問題なんですが、またそのレベルが低すぎるというか、こんな証券マンに騙される人はそもそも投資には向きません。やめた方が良い。これがかつて優秀とされた日本の官僚なのか?

もう1つ言えば、マクロ経済的にはライフサイクル仮説ってのがありまして、若年時には将来に備えて貯蓄する一方、リタイア後はその貯蓄を取り崩すってのがありまして、日本の高度経済成長は若年人口の厚み故に国内貯蓄で企業が容易に投資資金を調達できたことで説明できますが、高齢化に伴う金融環境の変化を言うなら、高齢世帯の資産取り崩しは当然のことであると共に、若年世代の貯蓄性向を緩和するような方向性、つまり公的年金制度の安定性こそが重要なんで、その意味からもトンチンカンな報告書ってことですね。

つまりこのニュースが示すのは日本の政府統治の劣化ぶりを何重にも露わにしたってことです。付言しますがこのレポートを真に受けて消費を売政商とすれば、所謂合成の誤謬で経済はさらに冷え込みます。こんな日本をお手本にする中国を脅威論で警戒することの無意味さも指摘しておきます。本来は課題先進国として中国も見倣うような将来を見せることの方が大事です。

てな訳の分かんないニュースが溢れる中で、わかりやすいニュースを1つ。

横浜市営地下鉄で脱線 撤去忘れの装置に乗り上げか (写真=共同) :日本経済新聞
シーサイドラインに続いて横浜市の出来事ですが、保線車両を収納庫から出して本線レールに乗せる横取り装置と呼ばれるアダプターの撤去忘れってことで、他社でも同様の事故はそれなりに起きてますし、その結果撤去忘れ防止のための警報装置が装備されたりもしてますが、横浜市営地下鉄では装備されていなかったし、手順書への記載もなかったってことで、交通局は見直しを宣言してます。

鉄道の世界では起きた事故や重大インシデントに対しては時に過剰な対応を取る一方、起きていないけど可能性のある問題はスルーされやすいう傾向があります。今回が将にそれです。加えて事故現場に脱線車両を復線させる十分なスペースが不足していて復旧に手間取ったってこともあります。この辺も見直しが必要ですが、時間とコストがかかります。

おまけですが、復旧作業にはJR東日本と東急の支援があったそうで、こうした鉄道事業者同士の横の繋がりはそれなりにある訳ですが、事故の予防にも活かして欲しいところです。

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Thursday, May 02, 2019

平静装い礼は要らん

10連休をいかがお過ごしでしょうか。元号フィーバーで浮かれるメディアのお陰で世界で起きていることの扱いが軽くなっていると感じられるところですが、元号が変わっても時代は1ミリも動かない一方、世界を揺るがすニュースはあります。

ベネズエラ、「クーデター」不発か 野党、大規模デモ再び呼びかけ (写真=AP) :日本経済新聞
米、イラン原油禁輸で適用除外を撤廃 中国は反発、輸入継続も (写真=ロイター) :日本経済新聞
内政が不安定化しているベネズエラでクーデター未遂ですが、ロシアがマドゥロ政権の支援を打ち出していて、丁度シリアと同じ構図になっています。違うのはアメリカがかなりあからさまに手を突っ込んでいる点です。

チャペス政権時代に油田を強引に国有化したことで外資が引き揚げた結果、油田の設備更新が滞り生産量が減っているのは確かですが、それに留まらず米銀との取引を制限する経済制裁により国内経済が壊滅的な打撃を受けたものです。原油取引が米ドル建てである故に、米銀との取引制限は事実上の輸出規制と同じです。石油輸出しか外貨獲得手段のないベネズエラにとっては致命的です。で、アメリカのメディア報道をなぞるだけの日本のメディア報道は最初から偏ってますから、それを踏まえて見ていく必要があります。その観点から、反政府勢力は軍隊を掌握できなかったってことですね。この辺も欧米が支援する自由シリア軍が劣勢なシリアと似ています。

そしてイラン制裁で日本を含む8ヶ国で猶予していたイラン原油輸入規制の猶予が2日で終了しました。日本はサウジやUAEからの輸入を増やしてイラン原油から切り替えましたが、中国は継続を表明し、インドやトルコも対応は不明です。加えてロシアもイランを後押ししてます。その結果ベネズエラ問題と相まって原油相場を押し上げると見られており、日本国内でもガソリン価格がジリジリ値上がりしています。ガソリン価格上昇は米トランプ政権にとってもマイナスなので、サウジなどOPEC諸国に増産を求めてますが、原油価格を上げたいOPEC諸国はイラン輸出分の肩代わりを超える増産はしたくない一方、非OPECのロシアなども減産方向で協調しているという石油を巡るねじれが起きています。

で、日本ですが、原油価格上昇は輸入物価上昇でただでさえさえない国内消費を確実に冷やします。しかも上がるのはガソリンだけじゃないってことですね。電気ガスなどのエネルギー価格はもちろん、工業製品全般にとってコストアップ要因ですし、農業もハウス栽培物のコストを上げますし、漁業も燃油価格上昇で確実にコストアップになります。これで10月の消費税増税が待ち受けるんですから、どう転んでも経済は停滞に向かいます。

しかも日銀の異次元緩和が続いている現状では追加緩和の余地は殆どありません。つまり経済が停滞しても打つ手がない訳ですね。この辺次の経済停滞を睨んで資産圧縮と利上げを粛々と進めてきた米FRBとは大違いです。そのFRBもトランプ大統領からのあからさまな圧力がかかってきてます。しかしパウエル議長は毅然としてます。

パウエルFRB議長、政治の意向「考慮せず」 (写真=ロイター) :日本経済新聞
この問題は市場関係者もトランプ大統領と同調していて、会見後に株式は失望売りを浴びせられましたが、パウエル議長は意に介してません。あくまでも中央銀行の独立性を維持する姿勢です。実はFRBの利上げで日米金利差から円安を期待していた日銀が一番困ってるとか。円安誘導という隠れミッションのために金融政策の自由度を失った訳で、金融のトリレンマから当然こうなるんですが。

それに留まらず日銀は株価指数連動投信(ETF)と不動産投信(REIT)の購入も大規模に行っており、遂にGPIFの保有高をも上回る水準が見えてきました。

日銀、日本株の最大株主に 来年末にも  :日本経済新聞
ETFは指数連動となるので値がさ株ほど多く組み入れられますから、個別企業で見れば既に日銀が筆頭株主になっていたりします。これつまり元々個人が買いにくい値がさ株が更に個人が買いにくくなるということで、寧ろ個人の株式投資を遠ざけます。加えて上場ETFの7-8割が日銀とGPIFの保有ですから、手数料が安く個人向けと言われるETFが却って個人の買い難さをもたらすという矛盾もあります。

ここで若い人にヒントですが、iDeCoや積立NISAで金融機関からETFを勧められたら、日銀やGPIFが保有してるかどうか尋ねて、回避しましょう。そしてETFに組み込まれていないバリュー株を見つけて投資しましょう。日銀やGPIFが保有するETFは将来売りに出されて必ず値下がりします。みすみす損するとわかっているものには手を出さないことが大事です。逆にETFに組み込まれていない銘柄はかなり高い確率で安値で放置されてますから、事業内容を見極めて投資する妙味があります。但し自分の知識としてその業界に関する詳細な情報が得られていることが大事です。分からないものには手を出さない慎重さは投資家として必須の資質です。鉄ちゃんならば鉄道株はありでしょう。

とはいえ昨今のインバウンド景気で既に値上がりしていると見られますので、鉄道株に関しては今が買い時かと言えばやや疑問です。加えてMaaSで将来も見通しにくいところがあります。MaaSに関しては欧州で既に始まってますが、欧州の場合都市交通分野で運輸連合方式による共通運賃制が実現していることで、運輸連合がそのままMaaSのプラットフォームに使える状況があることが指摘できます。この点は日本は全くと言っていいほど遅れています。せめて東京の2つの地下鉄の共通運賃化ぐらいはすぐにでも検討を始めるべきでしょう。

てなわけで平成の枠組みから1歩も抜け出せない令和にいきなりイラン原油輸入が止まり原油価格上昇で国内消費を冷やす訳です。タイトルはダジャレでわない(汗)。

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Sunday, April 07, 2019

鏡の国のアベノミクス

不思議の国の続編はやっぱ鏡の国でしょ。ってことで、あれこれ始めます。

塚田前国交副大臣の発言「でも私は忖度」→「おわびする」  :日本経済新聞
渦中の副大臣が忖度したかどうかは些末なことでして、11年前、福田政権時代に費用対効果が不十分として却下された下関北九州道路の事業が国の直轄事業として調査費が計上されたことの不透明さが本質です。現状R2関門国道トンネルと高速道の関門橋の2ルートがありますが、老朽化で国道トンネルは10年に1度の大修繕による通行止めが毎年行われるようになっていて、国土強靭化による災害対策のための二重化という議論があるのですが、そのために2,000億円をかけることが妥当かどうか冷静な判断が必要です。

ルートの二重化はメンテナンスの負担増を意味します。相応の経済効果があるならば良いのですが、関門橋の通行量も予定の半分の水準で、国道トンネルの通行止めの影響を吸収可能な現状からすれば、大した経済効果は見込めません。そうなるとメンテナンス費用のかかる国道トンネルの閉鎖も視野に入り、唐戸水産市場のある下関市東部の経済的な地盤沈下をもたらす可能性もあります。それでもやるのかってあたりの議論がきちんとされてるようには見えないんですよね。

この手の話は日本中にありまして、東日本大震災の津波被害を受けた地域でも、大規模防潮堤建設の是非が議論になった結果、人の住んでないところばかり工事が進んでしまい、いったい誰を守る防潮堤なのかって現状があります。福島第一原発事故関連でもいい加減な除染作業で復興予算が食いつぶされたり、がれき処理を広域処理と称して持ち出した結果、焼却工場を木質バイオマス発電につなげようという地元の構想が頓挫したりとか、土建屋ベースで物事が進む現状がそこかしこにあります。

国土強靭化の名の下に経済効果が十分検討されない公共事業がそこら中で復活したり新たに立ち上がったりしてますが、そのための予算が赤字国債発行を前提にしているわけで、アベノミクスの第2の矢として機動的な財政出動が謳われてもおりますが、経済効果のない公共事業をやる余裕が日本の政府財政にはありません。90年代の財政出動で赤字を累積していて政府予算の最大費目が国債費でその半分は借換債ですから、過去の赤字の清算ができていないのに赤字を重ねる訳ですね。しかも既にケインズの言う乗数効果も1倍即ち有効需要を生まない水準なのは政府も認めています。

加えてここへ来て深刻な人手不足で折角予算が付いた公共工事も人が集まらず未執行となり財政出動不発となる現状があり、2020年の東京オリパラ関連で人手が取られて震災復興も遅れている状況です。五輪関連は元々旧国立競技場の改修をはじめ既存施設を活用し半径8㎞以内で実施という計画だったものが、招致が決まった途端に新競技施設の建設が次々に決まり、加えて築地市場の豊洲移転と環状2号線の整備が強行されました。これも都知事選で争点化した後に迷走し、結局環状2号線は仮設状態でつながったものの、晴海の選手村からの移動がネックになるのは確実です。ここを京成バスが受託した環2BRTが走るらしいですが、混乱は確実です。加えて五輪後の地下鉄計画も。

銀座から臨海部へ都が地下鉄、羽田直結目指す : 国内 : 読売新聞オンライン
これTBSのメトロ都営統合報道を思い出させる観測気球ですね。実態はこれから検討という段階ですが、一方で豊洲移転の遅れで政治路線化したマジ卍な豊住線はメトロが作るのが望ましいとしていますが、1日13万人の利用を見込む豊住線よりこの臨海部地下鉄を都としては優先するってことです。5㎞で1日5万人ってザックリ言って東急世田谷線レベルの輸送規模ですが、それに2,500億円、キロ500億円の事業費を見込むってのは採算性は関係ないって頭おかしいレベルです。

この臨海部地下鉄構想ですが、言い出しっぺは中央区で、当初環2LRTが五輪輸送を睨んだ暫定BRTとして上記のように京成バスの受託に至ったんですが、一方で2020年五輪招致が決まったところで地下鉄構想を唐突に主張し、交通政策審議会の2016年答申に滑り込ませた経緯があります。明らかに五輪絡みの利権漁りの気配があります。

直通運転が示唆されるつくばエクスプレスについては、沿線開発が急過ぎて混雑緩和対策に追われた結果、懸案の東京駅延伸の事業費1,000億円をねん出できない状況ですが、更に銀座まで伸ばすとすれば同じぐらいの事業費が上乗せされますから、ほぼ不可能でしょう。羽田直通はJR東日本によるりんかい線引き受け問題との絡みで、可能性はあると言えばありますが、地下駅の国際展示場駅をジャンクションに改造するのは相当な事業費の上振れの覚悟が要りますので、やはり実現可能性は薄いでしょう。しかも都営地下鉄として整備とは言っていません。つくばエクスプレスかJR東日本に丸投げのつもりでしょう。

政治家にとっては公共事業による利益誘導はわかりやすい有権者へのアピールになるんでしょうけど、それに留まらず土建屋の集票能力への依存の意味なんでしょう。採算性が問われる鉄道事業でさえ採算度外視の計画が動いてしまう危うさは要注意ですが、別の面から言えば、それだけ土建業会は労働集約産業としての性格が強いってことでもあります。そこで気づいたんですが、公共事業の乗数効果の低下はこれが原因じゃないかと思い当たります。

つまり公共事業に依存しなければ存続が難しいゾンビ的な土建業に栄養を与え続ければ、そこへ雇用が張り付いて国全体の生産性を下げてしまうという点です。日本の低生産性は公共事業依存の結果なのかも。しかも人口減少で人手不足は若年労働力の確保が難しくなりますから、外国人を入れないと回らないってことで、入管法改正を急いだわけですね。加えてこのニュース。

ジャパンディスプレイ株が急伸 台中勢傘下で再建進展の期待  :日本経済新聞
政府系ファンドによる国内企業の救済策は死屍累々で外資に売り渡した途端に株価が上がるって、これ公的資金でゾンビ企業を延命させている結果と見れば、公共事業と同じように日本の生産性を低下させる元凶と言えるでしょう。結局ゾンビ退治ができないから生産性が下がって成長できないけれど、それがバレると選挙で勝てないから統計弄って誤魔化すことになります。その結果アベノミクスは迷走しっぱなし。鏡の国の迷宮に迷い込んだアリスの如しです。

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Sunday, February 24, 2019

限界都市川崎

別に川崎に悪意がある訳じゃないんですが^_^;、サイドバーの書籍からお題を頂きました。同じくサイドバーの週刊東洋経済の通勤電車特集から、最強の通勤電車ランキング32路線中32位のワーストに選ばれた横須賀線のE217系の置き換えにE235系投入が発表され、普通車がオールロングシートになることがネット上で話題になりましたが、横須賀線のワーストの理由が混雑率の悪化ってことで、実は武蔵小杉のタワーマンション群に原因があるのでした。

ご存じの通り横須賀線は湘南新宿ラインと線路を共用しており、旧蛇窪信号場の平面交差もあって増発が困難なことが原因なんですが、加えて相鉄都心プロジェクトで今年度下期には相鉄からの乗り入れも始まりますから、その枠も確保しなきゃならない訳です。こちらも埼京線との相互直通ですから、品川東京方面への増発は当面見込めません。となれば当然車両レベルで収容力を高める必要がある訳で、オールロングシートにするしか手がない訳です。

長期的には蛇窪の立体交差化が課題ですが、直ぐには実現できません。とにかく朝ラッシュ時には改札入場待ちの列が伸びて危険ってことで臨時改札を設けたけれど、今度はホームが混雑して危険ということで、ホームの増設を決めましたが、完成は2023年で、未だ建設中のマンソンも多く、当面改善は見込めません。大江戸線勝どき駅の二の舞ですね。加えて若い子育て世代の流入で待機児童は増える一方。タワマンたわわな江東区を再現しています。当然小学校、中学校と順繰りに生徒数の増加に悩まされるわけです。

都市部で依然 待機児童多く  :日本経済新聞
待機児童問題は煎じ詰めると都市部固有の問題で、再開発で同じ世代の人口が急増することで起きる訳ですが、それでも都市再開発の流れは止まらず、寧ろ開発を促すために容積率の緩和が行われる状況です。そして世代の多様性がないから将来はそっくり高齢化して空き家候補になる訳です。将に限界都市まっしぐらです。

川崎というと工業都市のイメージが強いのですが、新興財閥の浅野財閥による川崎鶴見の埋立地開発に遡ります。元々多摩川の砂利輸送を意図した南武鉄道と奥多摩地区の石灰石採掘から派生した青梅鉄道(後に青梅電気鉄道)、五日市鉄道が立川で繋がったことで、京浜運河沿いの埋立地に浅野セメントが工場を作り、奥多摩からセメント工場への一気通貫の輸送体系を形作ります。加えて隣接する鶴見の埋立地が造成され工場が建ち、原材料や製品の輸送を担う鶴見臨港鉄道が開業し、当初貨物専業でしたが、工場が増えて従業員輸送の要請から旅客営業を始めます。何れも戦時買収で国鉄に編入され青梅線、五日市線、南武線、鶴見線になります。東京や横浜の港湾は政府の手によるものですが、埋立から民間資本で形成されたのが京浜工業地帯の特徴です。

蛇足ですが、南武鉄道のバス部門が小田急グループの立川バス、青梅電気鉄道のバス部門は奥多摩振興から京王グループの西東京バスへ併合、鶴見臨港鉄道は川崎鶴見臨港バスとなり京急グループに属します。歴史にIFは禁物ですが、戦時買収が無ければ大東急の一員となって小田急、京王、京急に分割されたか、相模鉄道のように東急に経営委託しながら独立を維持したかなど興味をそそられます。

加えて戦時体制で南武線沿線には通信機器などの軍需工場が立地し発展しました。大師参拝輸送からインターアーバンに進化した京浜電気鉄道や省電時代のスター京浜線は目いっぱい恩恵を受けた訳です。特に省電京浜線は東京本社の幹部による工場視察の便宜を図って二等車(現グリーン車に相当)が連結されていました。モータリゼーション夜明け前の当時、二等車は社用車の役割を担っておりました。

しかしそれ故に環境悪化で住宅地としては不人気でしたが、グローバル化で工場の海外移転や競争激化による撤退もあり、広大な工場跡地が残されます。これが種地となって再開発が進み、特に横須賀線武蔵小杉駅の開業で利便性を高めた武蔵小杉は人気エリアとしてタワマンが多数つくられて人口急増した訳です。

これは川崎市にとってもJR東日本にとっても計算外だったと思われますが、東京の大江戸線沿線やAGTの新堀舎人ライナー沿線など、交通インフラの整備に伴って開発が過熱して需要が想定を上回る事態が続きます。しかも多様な業務都市が画一的な住宅都市へ変貌することで矛盾を抱え込んでしまうことになります。この観点から二荒山神社の隣にタワマンが建って景観を損なうなど物議を醸す宇都宮市ですが、LRTで沿線開発が誘発されると、寧ろ都市のスプロール化か進み限界都市化という懸念があることは指摘しておきます。一方明るい話題もあります。

横浜地下鉄の延伸予定区間を歩く 住宅地に募る期待  :日本経済新聞
同じ川崎市でも多摩丘陵の住宅地に地下鉄ができるって話です。横浜市営地下鉄ブルーラインの新百合ヶ丘延伸ですが、自前の地下鉄に拘り事業認可まで受けながら、財政事情から断念した川崎市が、横浜市と協定を結んで実現したところが新しいところです。

公営地下鉄の越境自体は都営新宿線の本八幡(千葉県市川市)、大阪市営御堂筋線の江坂(吹田市)となかもず(堺市)の例がありますが、政令市同士の協定というのは前例がありません。尚、御堂筋線のなかもず延伸は1987年で堺市の政令指定都市化は2006年ですし、堺市は中百舌鳥堺線の構想はあったものの具体化はされず寧ろ阪堺電軌を軸とした公共交通活性化に取り組むなどしていて、川崎市とは事情が異なります。

川崎市内のルートが未定で、駅設置と絡んで3ルートが提案されてますが、最も新百合ヶ丘から距離があり、周辺バスの本数や乗車率の高い東ルートのヨネッティ王禅寺案が有力です。ヨネッティ王禅寺はゴミ焼却工場に併設された市営スポーツ施設で市民の人気スポットであると共に、近くに田園調布学園のキャンパスがあり通学需要も見込めます。そしておそらく自前の地下鉄構想が尻手黒川道路ルートだったことから、断念された地下鉄計画でも駅設置が考えられていたと考えられます。

そして横浜市内の剣山は戸建て中心の住宅地に付随する商業集積があり、すすきのはすすきの団地最寄りで隣接する川崎市域の虹ヶ丘団地も駅勢圏で、既に成熟した街で開発余地はあまりありませんが、その方が武蔵小杉のような想定外の事態を招くこともなさそうです。

川崎市の地下鉄構想は元々武蔵野南線の旅客化とセットで構想され、川崎―武蔵小杉間と梶ケ谷貨物ターミナル―新百合ヶ丘間を建設するというものだったのですが、武蔵野南線の旅客化は具体化せず、尻手黒川道路ルートで自前建設を目指し、横須賀線武蔵小杉駅開業で武蔵小杉経由に変更して事業認可を受けて断念という経過を辿るんですが、川崎市でもう一つ具体化した京急大師線の地下化による連続立体化事業が大いに振り回されました。川崎駅で地下鉄と大師線は繋がる形の構想が描かれてましたが、この辺が曖昧で、一方新百合ヶ丘で小田急線との乗り入れも検討されという具合に軸が定まっていなかったので、結局実現は無理だったでしょう。

京急大師線の地下化は市役所通り地下を東へ進み(仮)宮前を経て川崎競馬場地下でS字カーブしてR409に合流する地点に港町駅を設置して川崎大師駅で現在線ルートに合流し産業道路東側で地上へ出て地上駅の小島新田に至るというルートですが、地下鉄との関係が詰められないから工事が度々延期される一方、アクアラインの開通で浮島へ向かうルートを支障する産業道路の踏切は解消されず、また旧いすゞ自動車工場跡地を中心に羽田空港へ渡る橋とセットで先端企業誘致の再開発となる殿町プロジェクトの具体化もあって仕方なく東門前―小島新田間を先行着手することになりました。尚、京急川崎―川崎大師間の地上線は回送線として残りますが、地下鉄計画がなくなった結果、地下化に伴うルート変更の意味も問われます。

川崎市は例えば神奈川臨海鉄道浮島線の旅客化や南武支線の川崎駅連絡線や東海道貨物線を利用した羽田空港アクセスなどいろいろ構想を思い付きのように発信しておりますが、実現に向かって具体化はしておりません。産業構造の変化に翻弄される苦しさはありますが、もう少ししっかりしたビジョンを持つべきでしょう。自前の地下鉄を断念したんですから、次はJR東日本と協定を結んで区画整理事業と連動した南武線の立体化や長編成化など、現実的な都市開発を模索する方が良いように思います。以上非住民の外野のたわごとかもしれませんが。

 

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