地方公営交通

Sunday, February 23, 2025

MAGA不思議

石橋を叩いて渡る日米同盟とは裏腹に暴走トランプは止まりません。ウクライナ戦争停戦交渉を米ロで進めてウクライナの頭越しというのは、WW1戦後を規定するベルサイユ体制を崩壊させたチェコスロバキアのズデーデン地方のドイツ領有を認めたミュンヘン合意と同じ構図です。英仏伊独4か国で英チェンバレン首相がナチスドイツのこれ以上の軍事行動を起こさないという約束を信じて一方の当事国のチェコスロバキアの意見も聞かずに決めた結果、ナチスドイツに軍事侵攻の成功体験を与えてWW2へと突き進んだ歴史の転換点ですが、トランプ大統領はウクライナにレアアースの権益をよこせと言っており、世界平和のために融和を図った英チェンバレン首相のお人好しぶりと違って悪辣です。

寧ろWW2の戦後処理を話し合ったクリミアのヤルタ会談の方が構図が近いかもしれません。英チャーチル、米ルーズベルト、ソ連スターリンの3首脳が秘密会談でドイツ降伏後3か月以内にソ連が対日参戦することを決め、その為に海軍力の弱かった当時のソ連に対して軍事訓練やロジスティクス支援まで約束していました。当時の日本は泥沼化する戦況で本土決戦まで視野に入れながら、ソ連に和平仲介を求めていたのですから浮かばれません。結果的にソ連参戦で南樺太や北方4島を失った日本ですが、アメリカから無理難題を押し付けられるウクライナの立場は深刻です。そしてロシアの軍事的膨張を止める手立てをアメリカ抜きで見出さなければならない欧州も大変です。

てことでトランプ流MAGA政策の狂気は留まることを知りません。関税連発でインフレ助長が心配されている一方、インフレでFRBが利上げすれば金利差からドル高になってインフレを抑制するから心配ないという政権スタッフも居たりしますし、財政膨張はマスク氏のDOGEのリストラで回避できるとか、奇妙な経済理論?で大統領令連発で連邦政府をリストラし足を引っ張る官僚をクビにして、逆に政府機能を弱体化させて呼び戻したりしてます。そんなアメリカとの向き合い方を各国は迫られます。てことでこのニュース。

米国、日本の「非関税障壁」問題視 車の安全基準など - 日本経済新聞
日米首脳会談の安全運転ぶりでもこれですから、覚悟しといたほうがいいでしょう。勿論交渉材料という面もありますから、脊髄反応で余計な約束をしないことが大事です。そして仮に関税かけられても、対象は完成車に留まらず部品等のサプライ品もありますから、寧ろ米ビッグ3が割を食うということも言われております。関税回避を焦らず、寧ろ米国内の混乱を黙って見てりゃいい。その意味でこのニュース。
鴻海、ホンダに協業を提案 日産・三菱自含む4社で陣営 - 日本経済新聞
製造業の壁で解説しましたが、もはやガラケー化した既存の自動車メーカーの生存戦略は狭き道になっております。日産の再建を待てずに子会社化を言い出してぶち壊れた統合話ですが、ホンダも単独では対応できないことはわかっていて、日産との統合話も寧ろプラグインハイブリッド車を持つ三菱自動車が狙いだったとも言われます。しかし三菱は早々に統合に参加しないことを決め、日産が煮え切らない中で子会社化して三菱を間接支配というシナリオだったんでしょう。元々経産省がお膳立てした話ってこともホンダには乗り気になれなかったかも。

鴻海の狙いはアイフォンの受託生産で実現した成長モデルをEV事業で再現することですが、既存の自動車メーカーは自前主義でなかなか話に乗ってこないから事業を進められないということで、鴻海のEVトップが日産出身の関潤氏ということもあり、内情を知る日産に接近するためにルノーの日産株譲渡を打診したのですが、関氏は日産内田社長とトップを争ったライバルでもあり、ゴーン事件でガタガタになった日産の立て直しでトップ候補としては寧ろ前評判が高かったけど経産省OBの豊田社外取お気に入りの内田氏に決まった経緯もあり、内輪揉めの延長戦として経産省に助けを求めてホンダとの経営統合を指導されたという一連が見えてきます。逆にホンダが欲しがる三菱のプラグインハイブリッド技術を活かそうとしなかった経営判断は、日産に欠けているものを浮き彫りにします。イノベーションに背を向けている訳です。

鴻海としては早くEV生産に参入して実績を作りたい訳で、工場閉鎖が避けられない日産の現状からすれば、工場を鴻海に託してEV向けに作り直してもらえばリストラも進めやすくなるし、新車開発と販売というマーケティングの川上と川下を押さえておけば高付加価値の事業環境が整うという風に再建の道筋も見えてきます。経営陣の内輪揉めで袋小路に入るより遥かにマシですし、加えて言えばアジア連合でアメリカの25%関税に打ち勝つクルマ作りぐらいの構想は持ってほしいところです。ウクライナで示したようにイザとなればトランプ政権は台湾を見捨てることすらあり得る訳ですから。

JR東と岩手県北自動車、山田線とバスの共同経営に認可 - 日本経済新聞
突然ドメスティックな話題ですが、グローバル企業もドメスティック企業も事業環境の激変に晒されているのは同じで、その中でイノベーションを怠れば存続が危ういということにもなります。鉄ちゃん的には岩手県北自動車の106急行は山田線を追い込み、行き違い駅の棒線化などで列車間隔も伸びて劣勢になるなど恨みを感じるところでしょうけど、盛業に見えるバス事業も人口減少とドライバー不足で事業環境は悪化しており、このままではじり貧になりかねない訳で、少ない客を取り合っている場合ではない訳です。

鉄道とバスの共通乗車はJR祖国牟岐線と本四間の高速バスの末端区間でJR乗車券で高速バスに乗れるようになっていて実績はありますが、本数の多い106急行/特急バスとの提携はJR山田線の廃止を睨んでいるのかとさえ勘繰られますし、記者会見でも質問されてJR東日本は否定しています。事業として認可を受けていますから、単純な共通乗車に留まらずダイヤ調整や共同での観光客誘致や企画商品開発なども視野に入っていると思いますが、JRからすれば宮古への足の利便性が増せば例えば東北新幹線との通し乗車券の売上が伸びて広域にメリットが出るでしょうし、岩手県北自動車から見ればJRの広域集客力を利用できる訳でwin-winの関係を構築できる訳です。

キモは独占禁止法の例外扱いとしての認可というところで。単純な規制緩和ではなく既存の法令規制を踏まえた例外としての認可ということで、米DOGEのような力づくの制度破壊ではない制度イノベーションと言えます。実は欧州の都市交通で広範に見られる運輸連合方式の運賃共通化も同じロジックで行われており、例えば東京のメトロと都営の運賃共通化のようなことも視野に入るものでもあります。そして欧州で進むMaaSも運輸連合がプラットフォームとして機能していることも指摘できます。道交法にねじ込んだLuupのようなジャパニーズMaaSとは似て非なるものです。

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Saturday, February 08, 2025

石橋を叩いて渡る日米同盟

石橋を叩いて渡る安全運転はアメリカも同じだった?

トランプ大統領が認めた「日本の価値」 日米首脳会談、視線は中国 - 日本経済新聞
アンチ地球の歩き方の尹大統領の弾劾と内乱罪容疑で韓国が当てにならず、北朝鮮の金正恩総書記の韓国敵対政策もあって1期目のような対話も無理ということで、対中国では日本を取り込むことが必要という判断でしょう。故に岸田政権の防衛三文書見直しで防衛費倍増を打ち出したことに「ありがとう」と言われるなど、石破首相の成果と言えないことまで褒められております。

一方気になるのがLNG爆買いの約束です。LNGは保存性に問題があり、輸出国側の冷却プラント、低温輸送船、輸入国側の受入れ態勢が揃う必要があり、その為に長期契約で相対で値決めすることになります。日本の場合、オーストラリア、カタール、ロシア、アメリカの4か国からの輸入が多い現状で、対ロシア制裁の意味からロシアからの輸入分をアメリカにシフトする限りでは問題ありませんが、今後追加投資を迫られるなら慎重になる必要があります。

日鉄によるUSスチール買収問題も買収を投資と言い換えただけとも言えますが、バイデン政権の否定になるということもあるでしょう。加えてトヨタといすゞの工場建設計画もタイミングが良かったことで、日本の資金でアメリカを豊かにするというナラティブで世論対策にもなるという訳ですね。USWやクリフスが納得するかどうかは定かではありませんが。あと首脳会談で触れられなかった問題がこちら。

トランプ大統領「アメリカがガザを所有」 イスラエルのネタニヤフ首相と会談 - 日本経済新聞
中東のリビエラとしてトランプ大統領の娘婿のクシュナー氏が再開発アイデアを披露していて米国内では知られていたようですが、イスラエルとの首脳会談で公式化されて国連はじめ周辺国や欧州中国にまで非難されました。石破首相はあえて触れなかったんでしょうけど、日本の国会でも野党から指摘されて岩谷外相が曖昧な答弁してましたが、明らかに再開発で上書きしてパレスチナの痕跡を消す訳ですから、安倍政権以来の価値観を共有する同盟とか法の支配といった御託のウソがバレバレです。同時にトランプ大統領の不動産屋というかデベロッパー的な発想の恐ろしさは止めなきゃヤバいよってことは言えます。

日本でも東京五輪の落とし物の神宮外苑再開発が典型ですが、再開発のために国立競技場を建て替えて明治天皇を偲ぶメモリアルパークを商業化したり、その過程で都営霞ヶ丘住宅の住民を退去させたり、大阪五輪のリベンジ兼カジノ開発を睨んだ大阪万博開催もゴミ捨て場の上書きです。しかし怪運国債市場の蓋で指摘したように国主催の国際イベントがTSMC熊本工場建設という民間工事に阻まれ、それでも能登半島地震の復興を押しのけて進む暴力性はあります。

万博を押しのけたTSMC熊本工場も開業し、従業員の通勤問題が出ていますが、その結果JR九州管内の混雑率トップに豊肥本線肥後大津ー熊本間の121%(数字でみる鉄道2024より)という異変が起きています。熊本といえば壁は成長する?で取り上げた全国共通ICカード乗車券から離脱して話題になりましたが、元々九州産業交通の経営破綻から始まるバス再編の流れでクレカ決済でコスト削減狙いですし、昨今は熊本市電や熊本電気鉄道の乗務員の非正規化で運行継続が危ぶまれていたりしている中で単線の豊肥本線の輸送力増強を迫られている訳ですが、政令市で企業誘致に成功した経済が好調な地域なのに課題を抱えている訳です。

これまでにも再三指摘してきた生産年齢人口の減少による人手不足の結果です。まさか地方創生の成功例なんて言わないですよね>石破さん。

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Sunday, December 15, 2024

壁―Nイノセ氏の誤算、Yコイケ氏の悪事、Yタマキ氏の欺瞞

韓流ふてほどの尹大統領の弾劾訴追決議案が可決し失職。憲法裁判所で罷免の是非が審理されます。但し最大180日と時間がかかりますが、罷免後30日以内の大統領選で新大統領が選出され就任するまでは韓首相が職務を代行します。というわけで特に外交面での政治空白を心配する日本政府ですが、オウンゴールの国自BANG!の徴用工問題にしても、文在寅政権でも官民で設立した財団で日本企業の賠償金を肩代わりする提案がされたものの当時の安倍政権がガン無視していたものですから、これがチャラにされるということはないでしょう。元々政治問題化したのは日本の方なんですから。

一方尹大統領は告発を受けて内乱罪の被疑者にもなっている訳で、こちらは国とソウル市の警察庁長官が逮捕されるなど外堀が埋められつつあります。内乱罪は大統領の不逮捕特権の例外で、最高刑は死刑という過酷なものです。一部で軍や警察の服務規程があるから大統領の命令を断れないので法治主義上問題とする議論がありますが、それを言えば憲法まで変えて権限拡大したロシアのプーチン大統領も肯定される訳で、最高権力者といえども法に服する法の支配の原則が韓国では生きているということです。法治主義と法の支配の違いです。

てことで「ふてほど」の後で今年の漢字「金」が発表され、オリンピックイヤーの恒例で5回目ということが言われてますが、清水寺で発表された字が草書体で将棋の金将の駒の裏の表記ということで、裏金を表すという漢字検定協会のエスプリです。そんなこんなでこのニュースです。

都議会自民も収入不記載か パーティー券、経緯調査 - 日本経済新聞
政治資金規正法は地方の首長や地方議員も対象ですから、当然不記載は違法ですし、それによって裏金を手にすれば、それを国会議員、首長、地方議員で遣り取りしてもわからない訳で、裏でどんな利益誘導がされていたのかわかったもんじゃない訳です。当然これは都だけの話ではなく全国で行われていると見られますが、都の予算規模から言えば他の地方より大きな金額が動いていることは間違いないでしょう。五輪霧中の神宮外苑再開発事業や晴海フラッグの転売差益や築地市場跡の再開発その他多数の再開発事業で三井不動産などの大手デベロッパーが名を連ね、小池知事や自民都連や都内選出国会議員のパーティ券購入に勤しんでいるという構図が見えてきます。そんな中で千代田線北綾瀬支線の北綾瀬駅前の再開発でも三井不動産の名前が出てますし、おそらくタワマンたわわで8号豊住線建設マジ卍?にも絡んでいるでしょう。豊洲市場もそうですし、埋立地開発は三井不動産が得意とするところですが、公有水面埋立の認可権限は都道府県が握っている訳で、知事や地方議会へのアプローチは欠かせない訳です。しかし政府や国会と比べればメディア露出も少なく、こっそりと進められるというおいしさもある訳です。晴海フラッグ絡みでなこんなニュースも。
晴海フラッグ「謎のキーボックス」 内覧競い業者取り付け - 日本経済新聞
上記エントリー時点では豊住線は第三セクターが建設して東京メトロが運営受託というスキームが考えられていたようですが、結局東京メトロが南北線品川延伸と共に自ら建設することで決着しました。高圧経済のワナで指摘したように、東京メトロ株の売り出しを50%に制限し、国と都の持ち分比率を維持したまま支配株主の立場を維持したことで、都が国に要請して地下鉄補助金を出すことを条件にしたことで、建設を渋っていた東京メトロとしては逆らえない状況になったってことです。東京メトロ株の上値が重い訳です。

さてそうすると、美濃部都政時代から都が要請していてバカの壁、壁が取れても残るバカの猪瀬知事の地下鉄統合問題は脇に置かれたことになります。元々猪瀬案の地下鉄統合は東京メトロと都営地下鉄の財務状況から無理筋だったのですが、株式売却益を都営地下鉄の財務改善に使うならともかく、小池知事はどうやらその気はなさそうです。故に豊住線や南北線延伸に留まらず懸案湾岸地下鉄と再開発の原資として株式売却益を使うつもりでしょう。バカの壁に拘った猪瀬ン都さんはまだ都民を見ていましたが、みどりのたぬきの悪だくみは都民不在です。そして壁いろいろ。

年収103万円の壁、25年から引き上げ 自公国が合意 - 日本経済新聞
補正予算正るつの為に自公が折れた形ではありますが、その後能登半島復興予算を予備費から1千億円付け替える立憲民主党の修正案に自公が乗る形で成立した訳で、国民民主党との約束アh事実上空手形となりました。103万円の壁見直し来年からは実現するにしても、来年の通常国会の税法改正が前提ですから、そうなると少数野党の国民民主の出番は減ります。
厚生年金、年収「106万円の壁」要件は撤廃へ 厚労省調整 - 日本経済新聞
実際の年収の壁として過酷な厚生年金の加入要件から年収要件を撤廃することで壁撤廃ですが、加えて労使協議の同意を条件に雇用主負担を増やすことで年収減を回避する厚労省案が出されています。但しこれは雇用主との力関係で殆ど実効性は無いでしょう。寧ろ社会保険料冨tなんで生じる手取り減を国庫で補填する立憲民主党案で概算7千億英程度の予算措置で可能ということで実現可能性はあります。というか、玉木氏の年収の壁問題は聞けば聞くほど雇用主の立場を代弁しているとしか見えません。

最後に年末4万円超が期待された東証日経平均株価ですが、年内の4万円の壁突破は困難と見られています。コーポレートガバナンス改革期待もむなしく海外投資家が消極的な一方、新NISAで増えた日本の個人投資家はオルカンやS&P500などの海外株式投信に流れていて日本株への流入は限られています。資産運用立国の掛け声で貯蓄をリスクマネーに振り向けても日本株に向かわない現実に日本が直面する壁があるということですね。壁でまとめてみました^_^;。

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Saturday, November 16, 2024

高圧経済のワナ

インフレ下の政治混乱は続きます。

ドイツのショルツ連立政権が瓦解、景気不安が導火線 早期総選挙へ - 日本経済新聞
ドイツのシュルツ首相が自由民主党(FDP)党首のリントナー財務相を解任したことでFDPが連立を離脱して一転少数与党となったことで、来年2月の総選挙と総選挙前のショルツ首相の信任投票が行われる運びとなりました。ウクライナ戦争で安価なロシア産天然ガスが利用できなくなったこと、アメリカが消極的なウクライナへの兵器支援、中国の内需失速による自動車メーカーの販売不振、加えて中国EVメーカーの欧州攻勢でEU域内販売も不振と悪条件が重なる中で、財政による経済の下支えをしたいシュルツ首相と健全財政の原則を譲らないリントナー財務省の対立の結果ですが、一時10%を超えたインフレによる国民の不満が背景にあります。
アメリカ、下院も共和党が多数派 トランプ新政権「トリプルレッド」に - 日本経済新聞
元々伯仲していた上院の逆転は予想されていましたが、下院も共和党が多数派となりトリプルレッドとなりました。とはいえ議会共和党はトランプ派一辺倒ではないので、移行後の政権運営の追い風となるかどうかはわかりませんが、インフレで国民の怒りを買った民主党は完全な敗戦です。イエレン財務長官がFRB議長時代からの持論だった高圧経済論がインフレを助長したことは間違いありませんから、共和党のネガキャンのせいとは一概に言えないところがあります。具体的にはインフラ投資法やインフレ抑制法(IRA法)の撤廃までは難しいとしても予算の圧迫は避けられないところ。三つ子の赤字でテキサス新幹線の連邦政府の調査費がついたものの真っ先にキャンセルされそうです。JR東海の北米事業は今のところ成果なしとなりそうです。高圧経済のワナに嵌った訳です。

但しトランプ氏の関税強化や富裕層減税はインフレをもたらしますから、結局米国民は引き続きインフレに苦しめられますから、2年後の中間選挙で逆転の可能性はあります。となると米FRBはインフレ抑止のために再利上げに追い込まれますし、財政負担が増すことで長期金利も上昇しますから、金利差で円安が進むことになります。今週の円安はその辺を先取りした動きですし、北米市場依存の強い日本の自動車メーカーも高関税の逆風を受けます。そうなると円安だから儲かるという図式が変わってきます。ドイツなど欧州勢もこの点は同じですが。

という訳で、大統領選前からトランプトレードということで株が上がったりしてますが、日本株はこれまでのような連れ高とはいかのいようです。逆に円安で割安感の出た日本企業はM&Aやアクティビストの標的になりやすいということもあります。例えば西武そごうの売却を巡って労組と対立してストまで打たれたセブン’アンドアイHDですが、経営の迷走が続いてアクティビストに狙われるの留まらず、同業のカナダ社アリマンタシオン・クシュタール(ACT)から買収提案を受けるに至りました。国内最大手の小売りグループが海外企業から買収提案を受けるのは円安の影響といえます。セブンは対応策として祖業のイトーヨーカドーなどスーパー事業を中間持ち株会社化して外部資本を入れて上場させるとしていましたが、親子上場復活は悪手ですし、ACTはスーパー込みでの買収提案ですから対抗策としては弱いということで、創業家等の資金によるMBOで非上場化というところまで追い込まれました。とはいえ資金が集まる可能性は低いと思いますが。

中間持ち株会社といえば小田急電鉄が箱根地区の事業を統括する小田急箱根HDを立ち上げて箱根塗材鉄道、箱根登山バス、箱根ロープウエー、箱根観光船他の事業会社を子会社とする形で実現してますし、やはりアクティビストにオリエンタルランド株売却を迫られて新京成電鉄の子会社化と傘下バス事業者を京成電鉄バスHDという中間持ち株会社傘下で再編したり、関東鉄道を子会社化して京成電鉄茨木HDとして事業会社としての関東鉄道と関鉄バスその他のバス事業再編に進んでいます。規模を膨らませて外資のアタックを避けようってことですね。

で、インフレ下の政治混乱の自粛解禁wwwで東京メトロを取り上げますが、売り出し価格1,200円に対して1,630円をつけ、その後も買い優勢で一時時価層が置く1兆円越えという幸先の良いスタートとなったものの、その後の足踏みが続いています。立地条件の良さから鉄道企業としては収益性抜群で、高配当や株主優待の期待があって個人中心に幅広く買われ、新NISA後初の大型上場でもあり、買われた理由ははっきりしてますが、成長戦略が見えないことは指摘しておきます。有楽町北進線や南北線品川延伸で運輸収入が増える要素はありますが、関連事業で成長を目指すという成長戦略は具体性がありません。

通常の鉄道会社なら郊外の開発で開発利益を生む田園都市線方式や国鉄分割民営化で誕生したJRなら高輪ゲートシティのように鉄道用地の余剰を活用した再開発事業を自ら手掛ける余地がありますし、JR東日本では開発後にファンドへ売却して得た資金を次の不動産開発に充てる形で事業を成長させるというビジネスモデルが可能ですが、鉄道用地の余剰が殆どない地下鉄では同じ手は使えません。保有物件は主に地上出口や通風口などと若干の保守ヤードぐらいで、単独での開発事業の余地はほぼ無く、大手デベロッパーとの協業か相互直通社の沿線開発など限られております。

東日本大震災の復興資金にするとされた株式売却益も東京都の意向で国と都の保有比率を維持した形で50%だけの売り出しですから、国庫に入った資金は半分になった訳ですし、国と都が支配株主として残る形で一般株主は個人中心となるとまともなコーポレートガバナンスが働かない可能性があります。上場後のの新線建設は将にそれで、恩恵を受けるのは地権者とデベロッパーばかりで東京メトロのメリットは見えません。そして今少数株主となる一般株主は高配当と株主優待で満足しろという形になる訳です。そしてアクティビストも手を出しにくい訳ですが、その辺を睨むと今の株価水準はあまり上がり目がないということになります。

東京メトロでは都市鉄道の運営受託の事業化も考えているようですが、日本の鉄道事業者の高品質だけど高コストで参入は簡単ではありません。但し円安は若干プラスかもしれませんが、海外事業に熱心なJR東日本でも成長分野というには至っておりません。都市鉄道分野では香港地下鉄が東京メトロ以外では唯一の民間事業者で同様の事業を展開してますが、実績のない中での後追いはかなりしんどい道のりと覚悟すべきです。

あと株式売却益の東京都分が何に使われるかが不透明です。単年度黒字を実現したものの累積債務返済に喘ぐ都営地下鉄の債務償還に使うなら、将来の地下鉄統合へ向けた前向きな話になりますが、東京都は東京-有明間の湾岸地下鉄の実現に回す可能性があります。その為に事業主体とされる東京臨海高速鉄道の増資に回すということか?そうするとJR東日本が希望するりんかい線編入が微妙になる訳で簡単ではありません。いずれにしてもこれらの事業は開発主体となる三井不動産などの民間デベロッパーにいいとこ取りされる訳で、三井不動産は小池知事や都議会自民党議員や萩生田光一議員などのパーティ券購入で助けている訳で、神宮外苑再開発に見られるように都民から見れば明らかな利益相反です。裏金議員を許しちゃいけない理由はこういうところです。

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Saturday, October 19, 2024

Suica甘いか消費税のインプレゾンビ

ウヨ曲説がインプレゾンビに進化(退化?)して、総選挙で立憲民主党を除く野党の消費税減税公約に釘を刺しておきたいと思います。ウヨ曲説エントリーで示した鉄道運賃の事例がわかりやすいと思いますが、消費税が下がったからといって事業者が国から認可を受けた上限運賃は変わりません。同様に一般商品も総額表示の場合は税率が下がって消費税額が減るだけで、その分事業者の取り分が増えるだけです。つまりインフレ対策としてはほとんど意味がない訳です。

何故そうなるかといえば、間接税は担税者と納税義務者が分離していて、納税義務者である事業者は裁量の範囲で値決めできるのが原則ですから、消費税減税で物価が下がる余地はほぼ無く、単に税収が減るだけとなる訳です。そしてそれは社会保障財源を棄損して社会保障の圧縮や社会保険料値上げの口実にされるだけで国民には何もメリットはありません。また国債発行など財政赤字でファイナンスすると三つ子の赤字 の影響でインフレがますます進みます。

その意味では国民民主党が主張するガソリン税の暫定税率を免除するトリガー条項にも同様の問題はありますが、少し異なるのは納税義務者は川上の石油元売りで、トリガー条項発動で卸値を下げることはありますが、販売店であるガソリンスタンドには高く仕入れた在庫がある訳で、トリガー条項発動しても直ちに値下げできる訳ではありません。店舗の競争環境次第では仕入れの値下がりを先取りする形で値下げするGSはあるでしょうけど、結局将来の値上げ圧力を緩和する程度の効果しかありません。

但し納税義務者である石油元売りにインフレ対策として値下げ補助金を支出している訳ですから話は微妙になります。トリガー条項を発動してもGSへ卸す卸値を下げる義務はない訳ですが、補助金も同様です。実際元売り各社は補助金を製油所の統廃合などのリストラ資金に流用していて、値下げまではタイムラグがありました。政府がトリガー条項を発動すると価格が乱高下して混乱すると説明してますが、補助金すら流用される現実を見れば大ウソってことですね。筋から言えば元売りに補助金を出すお金があるならトリガー条項でも問題なかった筈です。また補助金であれ減税であれその財源が国債なら結局財政インフレの形で国民生活に跳ね返ってきます。一旦インフレが始まると価格転嫁の連鎖でスパイラルが生じて止まらなくなります。インフレがいつまでも収まらないインフレゾンビ?^_^;

てことで裏金問題で与党にお灸を据えたいからといって、消費税減税を公約にするような野党への投票は考えものです。但し選挙区事情がありますから、各自しっかり考えて投票してください。そういえば来週日曜日が投票日なのにまだ投票券も選挙公報も届いてないけど総選挙ホントにやるんだよな?

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Saturday, September 21, 2024

赤字3Kの掟?

JRの掟?の続きのニュース。

東北新幹線、走行中に連結外れる 国交省が原因究明指示 - 日本経済新聞
300km/h超で総胸中の列車分離という重大事故です。連結器には損傷がなく、システムj上5km/h以下でしか作動しない筈の連結器開放テコが動いたとしか考えられない事故です。新幹線でも通常の電連付き密着連結器が使用されていて、開放テコは運転席からの遠隔操作で自動化されてますが、走行中はロックされている訳で誤操作の可能性もほぼ無い訳ですが、1974年9月12日の新幹線品川事故で当時の品川運転所部機器部でATC建屋内に車両洗浄機用のトランスが置かれていて、電磁誘導で信号電流類似の異常電流が流れて信号が乱れたもので、言ってみれば偶然発生したノイズ電流がキャンセルされずにシステムが信号電流と認識した事故が思い出されます。

列車分離後は非常ブレーキで停止してけが人は出なかったのですが、JR東日本によると分離した編成の非常ブレーキの方が強く作動するようになっていて、300m離れて停止したということで、フェイルセーフが働いたとは言えます。災害の備えと憂いの東海道新幹線の保守車両事故のところで説明した自動ブレーキというのは、圧搾空気を封入した加圧管を編成全体に引き通し、列車分離すると圧力が下がってブレーキシリンダ―が動いて停止するという仕組みですが、電気指令式になっても同様の仕組みは組み込まれております。しかし高速走行中であり、誤作動の可能性があることが分かった訳ですから、原因究明が大事なのは言うまでもありません。そして輪軸組立でも新展開です。

京王電鉄系「京王重機整備」、車軸1786本の数値改ざん 京王・都営で使用 - 日本経済新聞
JR貨物で発覚した輪軸組立工程のデータ改ざん問題が私鉄にも飛び火してます。東京メトロで傘下企業の不正が発表され、東京都からも都営地下鉄で発表がありましたが、都営地下鉄の輪軸組立は京王電鉄系列の京王重機整備に委託していて、更に関東を中心に多くの中小私鉄からも委託されていて大ごとになってきています。そして京王重機は特装車の製造や戦車を含む自衛隊車両のメンテナンスなども請け負っており、東京特殊車体名義のオーダーメードバスではとバスなどの事業者に納入されております。

鉄道のメンテナンス部門は言うまでもなくコストセンターで、固定費の重い鉄道事業にとってはコスト削減が重要なのですが、規模の小さい中小私鉄にとっては重荷ですが、大手私鉄でも中規模の京王電鉄でもやはり重荷です。そこで他社のメンテナンスや車両改造、更新修理などを請負って規模を確保した上で委託事業者から受け取る委託料も入るという訳で、京王グループにとっては欠かせない事業ですが、それ故にコスト削減圧力も強かった可能性があります。加えて言えば輪軸組立の圧力データの関するルールも曖昧なところがあって、基準値を超えても超音波探傷などの非破壊検査で不具合は確認できるということでスルーされやすいというか、結果オーライで済ます傾向はあるかもしれません。民間事業では赤字は悪という意識は強いですし。

一方で公共部門でかつて赤字3Kと呼ばれた事業があります。国鉄、健保、国民年金の頭文字Kをとって呼ばれたものですが、国鉄はそれを理由に分割民営化されてJRになり、健保、正確には中小零細企業対象の政府管掌健保ですが、47都道府県の広域連合としての健康保険協会を立ち上げて保険者が政府から協会へシフトして、謂わば体よく地方に押し付け、国民年金は今も制度としては存続してますが、1985年の年金改革で基礎年金が制度化され、財政規模が大きく余裕のある厚生年金からの会計間扶助で悪名高い第3号被保険者制度が作られ、今に至るもそのままです。以後5年ごとの財政検証が行われ、2004年には100年安心プランが打ち出され、現在に至ります。今年も財政検証が行われましたが、詳細は別の機会に取り上げます。

国鉄の赤字は赤字ローカル線のせいだということで、国鉄時代に赤字83線区廃止が打ち出され実行されたものの国鉄の赤字は解消するどころか累積し、次いで特定地方交通線切り離しでバス転換、私鉄、三セク鉄道引き受けなどが進められ、民営化後も続きました。そしてJR北海道と四国の慢性的赤字やJR東海を除くJR旅客会社の線区別営業係数公表などで地方ローカル線の存続問題が出てきていますが、厄介なのは特に上場3社の場合は全行黒字故に公的支援を受けられないことです。地方中小私鉄や地法交通線転換三セクは公的補助を受けやすいし、JR北海道や四国も鉄道・運輸機構への預託による利子補給や基盤整備補助などで事実上の公的補助を受けています。それでも出口の見えない厳しい状況は続きます。

JR北海道の4〜6月、札幌圏が黒字転換 新幹線は赤字縮小 - 日本経済新聞
唯一黒字転換の可能性のある札幌圏の黒字転換と北海道新幹線を含む赤字縮小で全体的には収支が改善したものの、札幌圏の内部補助で全体を支えることは不可能です。北海道新幹線の札幌延伸も遅れているし収支完全効果もどの程度か?並行在来線の切り離しで改善はするでしょうけど、鉄道ネットワークを維持するには至らないでしょう。加えて老朽車両取り換えで新車を多数投入してますが、その減価償却費が重荷となります。公共部門の赤字を理由とした民営化の限界は確実に見えています。

一方でかつての食糧管理制度の赤字は問題視されることなく、減反に伴う添削補助金や資料米その他の食用米との差額補助はされてコメ不足でも備蓄米は出さずと、国民生活をないがしろにしながら国民生活を支える公的な赤字は許さない、そんな政府は変えたいですね。

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Sunday, August 25, 2024

令和のコメ騒動

災害の備えと憂いは東京も例外ではありません。

東海道新幹線、大雨で一時運転見合わせ 山手線も - 日本経済新聞
港区などで連続150㎜の雨量となって東海道新幹線が規制値越えで運転見合わせ。また山手線など首都圏各線も止まりました。一方、SNSで南北線市ヶ谷駅コンコースの水没や都営大江戸線六本木駅の地上階段から雨水が滝のように流れ込む動画が拡散されたりしてますたが、地下鉄各線は一部地上出口の閉鎖で乗り切り、列車運行は続けていたとか。地下鉄の排水能力の高さを見せました。同時に排水を受ける公共下水道の能力も高い訳ですが。とはいえ帰宅ラッシュのタイミングでのハプニングは影響が大きかったとは言えます。

ノイジーサマーで指摘したように、地震や台湾有事などの軍事的緊張よりも、水害リスクは発生確率から言えば重大です。さりとて全国で東京都並の対策が可能かといえば難しいし、本当のところは原因である気候変動対策としての脱炭素を進めることが重要でしょう。脱炭素の観点から言えばクラウド上で働くAIは大量の電力消費を伴いますから、この観点からも規制が必要ですし、ましてエネルギー資源をほぼ全量輸入に頼る日本に勝ち目はありません。一方で今は落ち着いている電力需要がAIで上振れするという妄言で脱原発を主張していた河野太郎議員が宗旨替えしました。愚かです。

その河野太郎議員は自民党総裁選に出馬の意向だそうですが、前回小石河連合と呼ばれ河野氏支持に回った小泉氏や石破氏はそれぞれ出馬の意向を示しております。河野氏は唯一解散していない麻生派の支援でということでしょう。小泉氏の後ろには菅義偉前首相がついていると言われ、石破氏は独自に推薦人を集めて出馬表明しています。二階派出身でコバホークと呼ばれる小林鷹之議員は甘利昭氏が裏についていて安倍派に多い4回生以下の若手議員票の分散が狙いらしく、噛ませ犬というか当て馬ということのようです。更に出馬意向の議員は多く、党員票の比重が増すことになりますが、党員票も医師会その他の業界団体の影響下にありますから、誰が選ばれても自民党の金権体質は温存されると見るべきです。

一方立憲民主党の代表選で若手が出てこないという嘆きの声がありますが、劣勢の野党第一党で議員数が少ない中で20人の推薦人を集められるのはベテランになりますし、まして影の首相として政権交代を迫る政治手腕も問われますから、ベテラン同士の争いで寧ろ政権構想や政策論争を闘わせることで有権者の関心が高まり次期総選挙に繋げることが狙いですから、単なる権力闘争の自民党の総裁選とはそもそも意味が違います。そして自民支持の業界団体も必ずしも一枚岩ではないので、与党支持層の切り崩しにもつながります。例えばこんなニュース。

米が揺さぶる物価高 7月17.2%上昇、20年ぶり伸び幅 - 日本経済新聞
古米と新米の端境期で昨年の猛暑の不作やインバウンド需要で外食のコメ消費が伸びたとかいろいろ言われてますが、確かに急な値上がりではありますが、水準としては20年前に戻っただけ。その間減反で供給を絞って価格維持をしながら需要がそれ以上に減って価格低下傾向にあったコメ価格ですが、実は卸し倉庫には十分な在庫があると言われております。価格維持で高値で仕入れたコメですが、ウクライナ戦争や円安で輸入小麦が値上がりし、パンやパスタや即席めんが軒並み値上げとなったことから便乗値上げが疑われます。

ウクライナ戦争は長引き為替の円安が定着する中で、相対的に安値の国産米には輸出の目が出てきている訳ですし、民主党時代に打ち出した農家の個別所得補償が有効な局面です。コメの価格維持ではなく農家の所得を補償することで、国内販売価格も下がるし円安と相まって輸出競争力も増す訳ですから、それを梃子に食料自給率を高めるというオーソドックスな食料安保政策になりますし、自民党の票田の農協を切り崩すことにもなります。立憲民主党の代表選ではこうした文字通り骨太の政策論争を期待します。

ノイジーサマーの北陸新幹線関連でも動きがありまして、与党PTが北陸新幹線小浜京都ルート早期着工を画策して25年度予算で事項請求をいいだしているとか。事項請求というには防衛費などで多用されてますが、金額を明示せず事項を明示するもので、執行段階で予備費等から付け替える狙いです。そのため実は防衛費GDP1%はとっくに突破していたりします。同じことを整備新幹線でやろうとしていますが、こうなると整備新幹線着工5原則無視どころか、財政民主主義に反する権力の暴走と言わざるを得ません。こんな与党は早く下野してくれ。

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Sunday, July 21, 2024

突然喰らうド障害

世界を揺るがしたシステム障害がありました。

世界の大規模システム障害、復旧へ 米国など影響なお - 日本経済新聞
世界中Windows系OSシステムで障害が起きて航空鵜予約システムや店舗のPOSレジなどが使えなくなり、復旧は進んでますが、未だ障害が続いているところもあるということです。原因はWindowsクラウド向けのクラウドストライク社製セキュリティソフトの19日未明の一斉更新にバグがあり、修正版が配布されたものの、ユーザー側で補正作業が必要なため、復旧に時間がかかったとされております。しかし同じシステムベンダー製予約システムを用いながら、JAL系のジェットスタージャパンで障害が起きた一方ANA系は障害なしとか不可解なこともあり、本当の原因はわかっておりません。

みずほのシステム障害とか、最近では三菱UFJ銀行の障害などもありますが、銀行の勘定系などはメイフレーム時代にCobolという言語で記述された基幹業務システムで、Cobolが使えるエンジニアの退職で年々メンテナンスが負担になっている一方でFintechでAPI公開とかやっていて、システムが複雑になり過ぎた面があります。故にセキュリティ面は強固なんですが、メンテナンスコストは高くなり、維持が難しくなっている面があります。

一方でクラウドはネット上で仮想的に複数のサーバーを束ねて処理する分散型で、ユーザーから見ればセキュリティも含めて使用料を支払って使うという意味で初期投資もランニングコストも安価ということで普及し、アマゾン、グーグル、マイクロソフトなどの大手が注力してユーザーを増やしてきました。ユーザーから見れば自社システムの維持費やセキュリティ費用を気にせずシステム構築できて、最新のセキュリティ環境が提供されるから安全性も高いという触れ込みでしたか、今回は裏目に出ました。

ふと思い出したのが木から落ちたサルで取り上げたJR東日本のSuicaシステムのクラウド移行ですが、各駅にステーションコントローラーを置いて分散処理することで処理速度を高める自前の分散処理システムをクラウド上の仮想センターサーバーに移行するという話題です。コスト削減になる一方、処理速度の問題は残る訳ですが、5Gなど通信環境の進化で遅延が縮小していることや計画中のQRコード乗車券システム導入との整合性を考えると正常進化とは言えるかもしれません。但し今回のようなトラブルに巻き込まれるリスクはある訳ですが。

その一方で楽天銀行との提携でJREバンクと呼ばれるBaaS事業への参入もあり、QRコード乗車券の決済をJREバンクの口座を使うとすれば、寧ろSuicaシステムの存在理由が希薄化する可能性もありますし、下手するとハウスカードのVIEWカードも楽天カードに置き換えられる可能性もあります。現時点でVIEWカードがJR東日本の経営資源としての貢献度がいかほどかはわかりませんが、JR東日本の金融事業が楽天グループと接近することは避けられないでしょう。そしてそれは別の面でSuicaの将来を左右します。

栗鼠殺し?で取り上げたオープンループが国内でも徐々に拡大しており、大手私鉄では南海電気鉄道がいち早く導入したほか、東急が続き、その他地方の公営交通やバスを中心に導入が続いております。特に東急ではVISA限定ではなく他社カードも受け入れておりますが、それに関連するかどうかわかりませんが、こんなニュースもあります。

VISAに公正取引委員会が立ち入り検査 他社の信用システム使用制限か - 日本経済新聞
東急のケースが該当するかどうかはわかりまっせんが、VISA以外のカード会社もVISAのシステムが使用されているとすると、VISAへの手数料の支払いが発生する訳で、独禁法違反の恐れがあるということになります。特にインバウンド需要の取り込みで外国人の利用が見込まれるオープンループでVISAが優越的地位を乱用したと見られれば、他社カードの相乗りが進んで結果的に楽天カードが相乗りとなると、ますますSuicaの存在意義は薄れます。今後は見通しにくいですが、ソニーのFelicaシステムが国際規格のNFCに置き換わることを意味します。ソニーとJR東日本がタッグを組んでEDYとSuicaが一本化されて導入コストを下げることが出来ていればまた違ったのでしょうが、日本企業発の規格が国際規格に駆逐されてまたひとつ日本の敗戦確定です。そういやEDYも楽天が買ったけど放置されております。何故こうなる?

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Saturday, May 18, 2024

裏金のウラ

裏金のウラでこどもの疲弊は高まりそうです。

離婚後も父母で育児 共同親権、「子の幸せ」双方に責任 - 日本経済新聞
結局ろくな国会論戦を経ずに成立した共同親権を認める民法改正ですが、意味不明です。親権は子供を育てる義務を負う権利ですが、子持ち世帯で離婚が発生した場合、経済力のない妻側が親権を取り。経済力のある夫側が養育費を支払うことで離婚を成立させるケースが多い訳ですが、養育費はしばしば支払われないとか、夫の父親としての面会権は法的に担保されているのに誤魔化してそれを梃子に進めたりしてます。加えて既に離婚したカップルにも遡及されるというのも法の非遡及原則に反します。

DV夫の問題などは言われますが、子供のパスポートの取得や受験、手術などに共同親権者の同意が必要になり手続きも煩雑ですし、悪用されれば養育費不払いの口実や児童手当の折半や最悪「イッパツやらせろ」もあり得ます。加えて子連れ再婚も難しくなるし、既に子連れ再婚している場合も生みの親の権利として割り込んでくるとか、寧ろ子育てのコストを高めます。これのどこが子育て支援であり少子化対策なのか?寧ろ婚外子を含むひとり親世帯の子育てを直接支援する方が少子化対策になるのではないでしょうか。

これ以外にも採らぬ狸の戦争の配当で触れたセキュリティクリアランス法や戦争は経営でできているの農業基本法改正などのトンデモ立法が国会をスイスイ通過している現状があります。にも拘らずニュースでは政治資金規正法改正の話題ばかりで、更にNTT法改正や緊急事態対応で政府が地方に命令できる地方自治法改正などのトンデモ立法予備軍が目白押しです。裏金問題が目晦ましになっている訳です。とはいえ裏金問題はこれはこれで無視できない問題だけに、政治が機能せずに政府の暴走が止まらないということでもあります。これ繰り返し述べてますが、戦前の政治不信の果てに戦争へ進んだ歴史に酷似します。

この辺は帝都電鉄物語でも論じてますが、政治不信が行政の統制強化を誘い戦争へといざなった歴史を繰り返すことは避けなければなりません。といった堅い話とは別に、このエントリーで示した戦前のマネーゲームの異常さはこんなことでも見えてきます。

消える新京成電鉄の社名 歴史が生んだ「くねくね路線」 ググっと首都圏 - 日本経済新聞
映画「戦場にかける橋」で有名な泰緬鉄道の建設にも関わった旧陸軍鉄道連隊の演習線跡地の払い下げで誕生した新京成電鉄ですが、軍事施設故にGHQに摂取された旧鉄道連隊跡地を巡っては西武鉄道も動いていたと言われます。裏でどのような動きがあったかは定かではありませんが、当時高田馬場馬起点だった西武線の新宿延伸と引き替えに京成への払い下げが決まったと言われております。戦後早々の利権漁りはGHQから始まりました。

当時は無人の原野だった北総台地ですが、東京に近い立地の良さに加えて地盤が安定していたこともあり、松戸市の常盤平団地を皮切りに、沿線で大規模な宅地開発が続き、輸送力増強に追われながらも親会社の京成電鉄の旧型車の支援もあって経営は好調で、子会社ながら株式上場して投資家から資金を集める独自経営が可能になります。地域的に京成との棲み分けも可能だったこともありますし、都営地下鉄との相互直通運転対応で4ft6in(1,372mm)から4ft8ub1/2(1,435mm)への改軌や1号線規格の新車増備などで資金面で厳しかった京成にとっては子会社上場で身軽になるし、用途廃止の旧型車の引受先としても重宝だったという面もあります。

ところがバブル崩壊後の株式持ち合いが問題視され、親子上場は特に狙い撃ちされやすいということもあります。同時にそれは三井不動産との合弁事業としてスタートしたオリエンタルランドの好業績も狙い撃ちされることになります。そこへコロナ禍で空港輸送激減で京成本体が直撃され、オリエンタルランド(OLC)も不振ですが、地域輸送に特化した新京成は好業績を維持しました。そしてコロナ明けで京成本体とOLCが業績回復すると、投資家からのアタックが強まります。

京成電鉄はOLCの好業績高配当のお陰で利益水準が下駄を履いた状況だった訳ですが、それが無ければ株価収益率(PBR)0.5という資本効率の低さは笑う鬼退治でも指摘しました。京成のOLC保有株の時価が京成自身の時価総額の1.6倍にもなり、一部売却でも大きな資金を手にすることが可能ですが、京成自身は空港輸送というもう一方の金の生る木を抱えていて新たな投資案件が見当たらないということもあり、自社株買いによる株主還元の原資にせよという圧力とも見えます。

それに対して京成が示した回答が新京成電鉄の子会社化による上場廃止と経営統合によるシナジー効果獲得ということで、既にOLC株売却で500億円の営業外収益を得ており、新京成の経営統合の資金に充てるという画を描いた訳です。鉄道事業だけを見れば例えば運賃の一元化は成田空港線運賃やちはら線運賃までは無理だし、京成線と新京成線だけの一元化はさほど意味がないので、寧ろ独自に展開された両社のバス事業や不動産事業の統合に狙いがあると見られます。投資家に迫られて追い込まれてという点は戦前の帝都電鉄に似てますが、統治の透明性が求められる時代故に変なことはできないという訳ですね。ピンクの電車もいずれ過去帳入りするかもしれません。それにつけてもで出口の目見えない裏金問題です。

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Sunday, March 31, 2024

もしトラよりもしドラ、鬼さんこちら

米大統領選でトランプが勝ったら?という要らぬ心配から、もしトラだのほぼトラだのと言われてますが、詳細は省きますが、2016年当時よりもトランプの勝つ確率は低いと見られます。もちろん当選の可能性はゼロとまでは言えませんが。それより日本が直面するもしもドライバーがいなくなったら?を心配した方が良いでしょう。

鬼が笑う2024年笑う鬼退治もうすぐ笑わなくなる鬼その他のエントリーで取り上げた2024年問題がいよいよ明日から本番です。さまざまな変化が既に出てきていますが、一番身近な変化はバスの減便でしょう。サイドバーで紹介した週刊東洋経済 2024年3/2号(ドライバーが消える日)[雑誌] 雑誌 – 2024/2/26の特集に詳しいのですが、トラック、バス、タクシー何れもドライバー不足は変わらないのですが、それぞれ事情は異なります。

トラックは荷主に対しての立場の弱さから運賃値上げがままならないことに留まらず、荷主側の都合で発地着地双方で待機時間が求められたり荷役時間に制限があったり、それでいて機械荷役のできない手積みを求められたりとか、とかく注文が多く無理難題オンパレードだったりします。その結果公道上での待機が発生して交通の障害になったりもします。それでも勤務時間に占める荷役時間は少なく、最大は運転時間ですが、待機時間が多数を占め、生産性を低下させています。

それ故残業時間が長くなるのですが、逆に残業手当があるから低賃金でもそこそこ稼げたりする訳です。この点はバスドライバーと共通ですが、結局残業代が生活給に組み込まれている訳で、そこへ働き方改革で残業時間に上限が設けられると手取りが減って生活できなくなるということになり、それが離職を促すという悪循環が予想されます。故に諸人こぞりて苦しむイブで取り上げた高速道のトラック速度規制を80km/hから90km/hに緩和しても待機時間が減らなければ焼け石に水ですし、事故の多発に繋がりかねません。ドライバーの賃上げを含む待遇改善が必要です。当然運賃値上げが必要になりますし、拘束時間の長くなる長距離輸送が困難になります。

そして運賃値上げはトラック輸送の優位性を損なうことになります。実はここに大きなヒントがあるんですが、海運や鉄道によるモーダルシフトの余地があるということでもあります。特に鉄道貨物は高速道の整備に伴うトラックによる長距離輸送の拡大の影響を受けてきて700㎞以上でないと競争力を発揮できないと言われてきましたが、これが500㎞程度まで下がれば鉄道貨物のシェア拡大が可能になります。つまり需要規模の大きい首都圏と近畿圏の輸送需要を取り込める可能性がある訳です。

震災でわかったJR貨物の実力で取り上げた被災地へのガソリン輸送で磐越西線に臨時貨物列車を走らせて対応したのがこれに当たりますが、非電化区間がある磐越西線でDD51重連で500t列車で効果があった訳ですから1,300t列車が設定できる東海道線の輸送力を活用すれば有効なドライバー不足対策は可能です。但しそのためにはJR貨物にひときわ厳しい態度のJR東海の壁を何とかする必要がありますが。

バスの場合は需給調整規制の緩和で新規参入が増えた結果、底辺への競争でドライバーの賃金が削られて、公務員の身分故にその流れに乗れなかった公営バスが次々に撤退を余儀なくされ、特に収益性の高い高速バスや貸切バスへの新規参入増で大手事業者ほど収支が厳しくなる一方、ドライバーの拘束時間の長くなる長距離の高速バスほど維持が困難になって一般路線維持のために収益部門を縮小するという悪循環に陥っています。故に賃上げも困難でトラックと比べても低賃金レベルにあります。大都市圏でも大阪府富田林市に本社のある金剛自動車の事業撤退など維持困難になっております。

加えてトラックとも共通ですが、待機時間の縮小で実働時間に対して長めの拘束時間を設定して営業所で待機させて、状況に応じた臨時便運行や事故や病欠の代理乗務なども制約されることから、通勤通学時間帯のラッシュ輸送にフォーカスして人を配置する都合から、早朝深夜の運行を見直さざるを得なくなり特に終車の繰り上げが繰り返されていて、都区内でも22時台、近郊では21時台だったり土休日は20時台とどんどん使いにくくなっております。

実はこうしたバスの苦境はタクシーにとってはビジネスチャンスでもあります。タクシードライバーは基本フルコミッションの給与体系ですから、需給調整規制の緩和で都市部の増車が認められた結果手取りが減っていた訳ですが、コロナ禍で外出規制が課されるといよいよ稼げなくなって離職者が増えた結果、クルマはあるのにドライバーがいないという状況に陥っていました。それがコロナ5類化で利用が戻った結果、タクシーが捕まらないという状況を生み出した訳ですが、バスの減便や運行時間帯の短縮で寧ろ稼げる職業となりつつあり、離れたドライバーが都市部では徐々に戻りつつあるのが現状です。そうした中でのライドシェア解禁はタクシー業界にとっては寝耳に水だった訳です。ですからライドシェア推進派が言う既得権益の主張というのとはちょっと違います。

元々規制だらけのタクシー業界では、例えば首都圏では白タクは普通に存在していて規制の抜け穴は元からあった訳ですが、捕まるのは大抵通報によるもので特段の取り締まりは行われていませんでした。特にバブル期の終電後の駅ではあからさまな客引きまでしていました。当時は企業も官庁も残業で終電後の帰宅も珍しくなかったし、その場合の帰りのタクシー代も気前よく経費精算されました。故に稼ぎたいタクシードライバーは深夜を狙って営業してましたし、運よく長距離客を乗せればその日の稼ぎが一発でということもあり、この時代の企業タクシードライバーは厚生年金の標準報酬月額の膨張で手厚い老後資金を得て悠々自適してます。白タクはそのおこぼれを得ていた訳で、ある意味共存していたとも言えます。コロナ禍で痛めつけられた今のタクシー業界にとっては当面は損を取り返すのが精一杯の現状です。

特に二種免許の問題は寧ろタクシー業界から要件緩和の要求が以前からあって、故にライドシェア解禁の見返りとして認められたということになります。加えて当面は地域と時間帯を限定してタクシー事業者がドライバーの指導とクルマのメンテナンスと保険に責任を負う形での解禁となりました。但しこれらは都市部での話で、地方の過疎地では以前から自家用自動車の有償運行で最後の足を確保することは行われておりました。それを日本版ライドシェアと呼ぶかどうかは別として、地方ごとの特殊事情から現行制度下での工夫の積み重ねは既に行われております。という具合にタクシーを巡る事情は地域ごとに特殊で、ライドシェアの完全解禁に問題があることは明らかです。

地方ではバスの減便や廃止は以前から進み、オンデマンドバスや乗合タクシーなどの形でバスとタクシーの境界が曖昧になっている現状があります。但しこうしたささやかな取り組みも自治体の補助金で維持されているのが実態ですが、都市部のバス減便はタクシーの出番を増やすことになり、地方で起きているバスとタクシーの境界の曖昧化が波及する可能性はあります。そうするとタクシー主導のライドシェア解禁はバス事業の圧迫という別の問題を引き起こす可能性も含んでいることは指摘しておきます。こうしたことをちゃんと議論せずに拙速に導入して本当に大丈夫なのか?

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