地方公営交通

Sunday, June 04, 2017

ハケンからシュケンへ

トランプ大統領のパリ協定離脱が波紋を呼んでいます。

パリ協定離脱を正式表明「米国に不利益」  :日本経済新聞
離脱といっても手続き上は4年間は離脱できない仕組みですが、パリ協定自体が参加国が自主目標を持ち寄って相互検証などの国際ルールを決めるっていうユルユルな枠組みですから、実質的にはオバマ大統領時代に約束した緑の気候基金への30億ドル拠出の中止と国際会議への不参加ってことで、TPPと違ってパリ協定自体が漂流することはなさそうです。

この辺過去エントリーで繰り返し述べてきたことですが、トランプ大統領の政策は、ザックリ言えばアメリカが覇権国家から降りて強い主権国家になるというコンテクストの話であって、この観点から見れば、何の意外性もないニュースです。資金の拠出や国際会議への参加などの法的義務は負わないということですね。加えて大統領選当時から反オバマ政権の主張を繰り返して当選したわけですから、オバマ大統領のレガシーの否定に意図的に舵を切ったという意味でもあります。どのみち予想されたことです。

ただ日本にとってはちょっと痛いところがあります。京都議定書でも子ブッシュ大統領の離脱があって、危機感を抱いた欧州が、それまでとかく対立しがちだった日本に譲歩して森林のCO2吸収を認め、森林認証の仕組みなどを決めたことです。ある意味日本は漁夫の利を得て実際2008-2013年の実績でマイナス6%の目標を達成しています。それでもポスト京都の枠組みが決まらず期間延長が濃厚になると、震災による原発停止を口実に離脱した訳で、その結果ロシアなどの追随もあり、欧州主導で機能していた排出権売買市場を枯らしてしまうなどして不信を買いました。

パリ協定でも米中両国の積極姿勢と裏腹に様子見を決め込んで出遅れた上に、今回の米離脱宣言で、石炭火力と原子力に頼る日本のエネルギー政策をアメリカが援護射撃する構図は見込めなくなりました。加えて今回はBrexitの影響で揺れる欧州で、ドイツのメルケル首相が敢えて米英を頼れないという発言でEUの求心力を高める意図を明らかにしております。中国インドその他途上国も含めた枠組みですから、仮に日本が抜けても大勢に影響なし。日本のプレゼンスは下がりっぱなしです。

アメリカにしてみればシェール革命で資源国の側面が強くなっており、自国第一で考えれば敢えて国際協調は必要ないって点も見逃せません。トランプ流最強の主権国家の枠組みってことですね。シリアや北朝鮮の問題も、シリアにトマホークを打ち込んだのは直積反撃する能力がないからで、北朝鮮への圧力も意図してはいますが、反撃能力があるかもしれない、少なくともそれを目指してミサイル開発を続ける北朝鮮への直接攻撃は避けたわけです。トランプ大統領自身「同盟国への重大な脅威」とコメントし、対北朝鮮では戦争当時国なのに当事者意識は皆無。寧ろ日本政府が焚きつけた面もあります。

中東でも似た構図があって、G7へ向かう中で立ち寄った中東ではサウジアラビアと急接近して反イランの立場を鮮明にしています。おそらく米国内のシェール産業との協調がこれから始まるでしょう。技術革新でコスト競争力をつけたシェールオイルですが、ここへきて米国内の雇用がタイトになってコストアップに転じてきているので、原油価格上昇を狙ってOPECとの協調はリアルに可能性があります。その文脈で言えばロシアとの和解は既定路線ってことになりますが。自由貿易を標榜してきたアメリカが石油カルテルに参加って、時代は変わったな。アメリカが消費国から資源国へシフトってことは、消費国である日本のアメリカ追随は国益的にはマイナスです。

そんな四面楚歌の中、国内では森加計問題がくすぶっています。世界史的な地政学的大変動期にあって、日本政府の絶望的な頭の悪さには眩暈がします。てなわけで、この話題。

「今回はプロセスに問題」 前川前次官インタビュー  :日本経済新聞
規制緩和は結構なんですが、意思決定のプロセスの透明性が問題です。前川氏が言うように、獣医学科の新設を必要とする農水省のデータは示されず、首相案件として進められた実態が語られてます。そもそも獣医学科は設置校でも定員60名が最大で、全国合計でも1,000名程度のところに、160名定員の獣医学科新設の申請ですから、需要面の根拠が示されないままの申請はあり得ません。

これ法の支配を標榜して法曹人口を増やすという名目で始まった法科大学院と構図が似ています。結果どうなったかと言えば、法科大学院新設の申請が殺到し、実際始まってみれば力量のある教員の確保がままならず、対応する新司法試験で合格率が低迷し、合格ラインを下げるという議論に対して各地の弁護士会から反丹が相次ぎました。そりゃそうです。数を充足させるために質を担保しないというのは本末転倒です。結局華々しくスタートした法科大学院も学生が集まらず廃止が相次ぐ事態となりました。

その意味でj地場で畜産が盛んなわけでもない今治に160名定員の獣医学科設置は普通に考えて無理です。大学誘致を望んでいる今治市にしても、卒業生が地元に留まらない学科の新設は定住人口の増加にもつながりません。加えて獣医師は医師のように大病院の勤務医でとりあえず実務に就けるわけでもなく、個人で開業もハードルが高いなど、受け皿もない。一応輸出競争力のある畜産のためというお題目のようですが、実際日本では畜産業は廃業オンパレードで規模の縮小が続いている状況で、関税の縮小撤廃で劣勢にあるのが現実です。少なくとも獣医師が足りないから輸出競争力が高まらないってのは、論理的につながらないですよね。

また特区制度の問題もいろいろあるんですが、元々小泉政権で始まった構造改革特区の精度は、地域の特徴を引き出して地方の自立を促す意味で、全国一律の規制が邪魔になるなら、地域限定で規制緩和しましょうという制度で、狙いとしては地域限定の一国二制度状況を作って規制改革につなげようということだったようですが、そのための検証を厳格に行えば、規制が原因で成長できないという事例はさほど多くないので、結局規制改革につながる事例は殆どないのが現実です。

てことで、政府主導でトップダウンの形で進める国家戦略特区制度が第2次安倍政権で始まったんですが、実は加計学園の獣医学科新設問題は構造改革特区時代に何度も申請され、検討段階で却下が続いた案件でした。それが安倍政権になって急転直下前進したわけですから、これを正当とするなら、よほど納得感のある説明が必要ですが、政府からはむしろ内部通報者となった前川前文科省次官の個人攻撃を公然とやってます。文科省天下り斡旋問題での引責辞任だったこともあり、私怨による仕返しと取ったようです。

また出会い系バー通いが読売新聞と週刊新潮で報道されましたが、前川氏に助けられたという女性の証言が週刊文集に載るなどしています。読売や新潮の報道はおそらく官邸のリークでしょうけど、それを裏も取らずに貴人してしまうメディアの無節操ぶりに呆れます。加えて個人的なことが報道される怖さというか、官僚の弱みを握るための身体検査の結果でしょうけど、共謀罪が成立すれば対象は一般国民に拡大します。頭悪い癖に悪知恵だけは長けているわけです。

規制と経済成長との関係は単純ではないってのは度々取り上げておりますが、こんな過去エントリーが参考になります。

特区の昔の24時間
百鬼夜行の公共性
ミザリーハロウイン
これ政府の規制改革会議で公共交通の終夜運行が提案され、それを受けて当時の猪瀬都知事が渋谷駅―六本木間で終夜運行を開始したものの、都知事選のときに徳洲会から5,000億円の資金供与を受けて政治資金収支報告主へ記載しなかったという疑惑で辞任し、後任の舛添都知事によって都営バスの終夜運行が止められました。公選の行政長が前任者を否定したがるのはトランプ大統領と共通です。

皮肉なことに運行最終日はハロウインで仮装した一般客が殺到して時ならぬ混雑になりました。これつまりスタートは政府の規制改革会議だったわけですが、別に日本の法律で終夜運行は規制されているわけではなく、単純に収支に合うだけの需要がなかったってのが結論です。もちろん多少の赤字ならアジェンダ実現のためのコストと割り切ることは可能ですが、その際に問われる公共性の説明ができていなかったから、都知事の交代であっさり葬り去られたわけです。

この辺既視感ありますが、例えば川崎市の市営地下鉄構想と、それに連動した京急大師線の地下化が市長の後退でとん挫したのですが、旧いすゞ自動車工場跡地を中心に先端産業集積地として再開発が進む殿町プロジェクトとの関連で、産業道路の踏切解消のために末端区間だけの地下化工事が進捗してます。加えて一旦沙汰止みになった羽田空港神奈川口計画の橋建設工事が始まっていて、環八から国際線ターミナルへの分岐付近に接着する予定ですが、アジェンダが曖昧なために時間を浪費した事例です。宇都宮市のLRT計画にも同じ匂いがするのは気のせいかな?

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Sunday, April 02, 2017

JR30周年で国鉄は遠く

JR30周年となったわけですが、つまり国鉄を知らない世代が既に社会人になっているというわけで、そもそも国鉄改革とは何だったのかを知らない人が増えているということでもあります。しかもその30年はスタートがバブル期に重なって好調だった一方、バブル崩壊後の経済停滞で社会はすっかり様変わりしておりますが、上場を果たした本州3社とJR九州に対して、JR北海道は存続の危機とも言える状況に直面しており、JR四国も時間の問題という現状です。

その一方でJR貨物の黒字化で上場が視野に入るという、なんともわかりにくい状況ですが、JR発足以後の日本経済の激変を考えれば、これまでの30年の延長上に未来は描けないのはある意味自明です。加えて言えばバブル期以降の日本を特徴づけるのは低金利ってことです。これ上場して資金調達力を増した本州3社にとっては追い風の一方、経営安定基金の運用益で赤字穴埋めという枠組みの三島会社にとっては逆風になるわけで、その中でJR九州だけが上場にこぎつけた最大の理由は、JR発足後に完成し引き渡された青函トンネルと瀬戸大橋を抱えるJR北海道とJR四国に対して、追加的な負債が発生しなかったってこともあります。

リース料負担のある整備新幹線としての九州新幹線も、経営安定基金取り崩しで一括支払いしており、短期的な負担が北海道や四国より軽いことが指摘できます。ただし長崎ルートは需要面からもお荷物になる可能性があります。加えて経営安定基金の残りで上場前の減損処理で資産圧縮してますから、今後の鉄道事業の設備投資の原資は細くなっており、人口減少でJR北海道と同じ問題はJR九州でも起こり得ます。

本州3社についてもそれぞれリスクを抱えています。業績好調でリニア建設に入れ込むJR東海は、そのリニアがリスク要因です。過去にも何度の指摘しておりますが、リニア単体では赤字の投資であり、しかも人口減少で人手不足が顕在化する中で、労働需給による事業費の上振れは避けられないところですし、加えて南アルプスを青函トンネルより長い長大トンネルで抜ける難工事です。トンネル工事で地下水脈にぶち当たれば国鉄時代の上越新幹線中山トンネルや福岡市営地下鉄七隈線のような水没事故も起こりかねません。

JR東日本や西日本にとっても人口減少による地方線区の維持の困難さは今後も拡大するでしょう。JR東日本では仙石線や常磐線のほか、水害で橋梁が流された只見線や土砂崩れの山田線など災害復旧で課題を抱えています。JR東海の名松線の復旧とJR可部線の廃止区間の一部復活などはありますが、前者は三重県と津市の治山治水事業の進捗に合わせての復活ですし、後者は市街化が進んでいたものの、廃止時点で非電化だったために、電化工事までして残す選択肢は事実上なかったわけで、住民運動が広島市を動かし、それに呼応して鉄道用地の原状回復や売却を留まったJR西日本の間で建設的な対話が実現したことによります。その意味で窮地に立つJR北海道に対する道庁や関連自治体の対応はちょっと残念です。

それでもJR北海道に関しては、JR九州が先鞭をつけた経営安定9基金取り崩しという奥の手は残っています。ただし使途は重要で、要員不足で保守が困難な状況を脱するには、省力化投資が欠かせませんが、JR北海道の経営力強化の意味で、現状の鉄路をそっくり残すことはあきらめるしかないでしょう。具体的には保守負担の大きいディーゼル車を減らすための電化と、保守負担を減らすための軌道強化などですが、JR北海道が自前で残す区間に限定すべきでしょう。そうすれば経営安定基金を取り崩しても償却資産が増える分、キャッシュフローの改善につながりますから、JR九州の新幹線リース料一括支払いより筋の良い取り崩し方になります。JR九州で認めた以上認めないわけにはいきますまい。とすれば石勝線・根室本線の南千歳―帯広間が電化されて、保守が容易な電気車両への置き換えが進むことになります。そしてこの手は将来JR四国の経営が行き詰ったときにも使える手でもあります。

で、残りの区間に関しては自治体出資で線路保有を肩代わりするか、受け皿三セクへの譲渡とするか、あるいは地元バス事業者を巻き込んだバス転換かといった対策を路線や区間毎に自治体と話し合って決めていくしかないでしょう。受け皿三セクに関しては、輸送量次第で肥薩オレンジ鉄道のようにJR貨物の出資もあり得ます。宗谷本線に関してはロシア政府が興味を持つかもwwwww。いずれにしても自治体の対応次第です。名松線も可部線も自治体が動いて復活を果たしたわけですから。逆に自治体との協議を重ね社会実験までして廃止止む無しとなった三江線の例も珍しいものとは言えなくなるでしょう。

ま、いずれにしても人口減少の影響は今は好調な本州3社も安泰ではないわけで、北陸新幹線に入れ込むJR西日本は正直大丈夫か?とも思います。この点は」JR東日本が絡む整備新幹線計画がほぼ完成し、JR東日本のとっては成長分野となったのとは異なります。元々JR東日本も整備新幹線区間単体よりも、既存区間である根本部分の需要増が狙いだったわけで、わざわざ線路を曲げてまで小浜、京田辺経由で新幹線を作るのは意味不明です。加えてJR西日本には新たなリスクの種も。

なにわ筋線30年開通 JR・南海運行、新駅以北は阪急交え協議  :日本経済新聞
なにわ筋線に関しては、大阪維新の目玉政策としての関西空港重視の文脈で、関西財界も乗り気なようですが、今回は阪急も事業参加を申し出て、よくわからない状況になっております。

元々阪急はなにわ筋連絡線構想として十三―梅田北新駅間の路線構想を持っておりましたし、古くから新大阪連絡線として淡路―新大阪―十三間と新大阪―神崎川間の免許を取得し、新大阪駅隣接地に駅用地としてとちをしゅとくしていて、高速バスターミナルや路線バス操車場として使ってたわけですが、紆余曲折を経て十三―新大阪間を除いて免許失効しており、十三―新大阪間も、四つ橋線の十三延伸線と相互直通が計画されていましたが、大阪市営地下鉄の民営化が決まって民営化後に負担となる追加投資が頓挫したことが影響しているようです。てことで大阪部、。大阪市、JR西日本、南海電気鉄道に加えて阪急電鉄も加わる五者協議が始まるそうですが、元々JRと南海の呉越同舟に加えて唯我独尊の阪急が加わるとなると、協議がすんなり進むとは考えにくいところです。

なにわ筋線に関しては、中之島で連絡する京阪電気鉄道も期待しているようです。肝心の大阪維新ですが森友学園問題でもちぐはぐな対応が見られますし、四つ橋線延伸計画を反故にするなど本気度には疑問符が付きます。とはいえJR西日本の単独事業とするには投資額が大きいわけで、新幹線のみならず、コアコンピタンスと見做せる関西アーバンネットワークでの私鉄との相乗りは、JR西日本の難しい立ち位置を示しているとも言えます。

てことで、めでたいようなめでたくないようなJR30周年ではあります。

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Saturday, January 07, 2017

タックス・ウォーが始まる

トランプ劇場は年を越えて続いておりますが、就任前からこれほど楽しませてくれる、もとい^_^;話題の多い米大統領は稀有の存在です。ま、歳も改まりましたし、今年の展墓ぷらしきことを書いとくか。まずはこれ。

初夢トランプ占い(5)税制 法人税下げ競争 再燃 規制緩和は国内優先か :日本経済新聞
天下の日経新聞が良くもこんな恥ずかしい記事を載せるなあ。トランプ税制に関して幾つか断片的な情報は耳に入りますが、それを理解してイメージを構成する力量が日経に記者にはないようです。簡単に言えば予告されている法人税減税の中身が、単なる税率下げではないってことです。いやこれアメリカに限らず、欧州やアジアで法人税減税を競い合うような状況はあるんですが、自国の税収を減らすことが簡単にできないことぐらいわかりそうなもの。税収中立の原則に従って税制そのものを見直しているんですが、日経を含め日本のメディアではその部分がすっぽり抜けていて、税率だけを比べるような表層的な報道ばかりです。

アメリカでも直近の歴代政権はほぼ例外なく法人税減税の論点整理をしており、子ブッシュ政権時代にはスウェーデンなどの法人付加価値税まで俎上に載せられましたが、主に議会のねじれがあり、また保守、リベラルを問わず議員がロビー活動に晒される中、結局実現しませんでした。しかし論点の掘り下げ作業そのものは行われているので、トランプ氏のようなぽっと出の大統領でもまともなプランをまとめられるし、議会を説得できれば実現可能性はそれなりにあります。幸いというか、大統領選と同時に行われた議会選挙で共和党が上下両院で過半数を占めており、加えて中身次第で民主党議員の賛同も得られる可能性のあるプランならば議会を通る公算はあります。

で、トランプ氏のこれまでの主張から敷衍して、トランプ氏が狙うのは国内産業の復活であって、ある意味わかりやすいですし、加えてアップルやスターバックスで問題になったアメリカ企業の租税回避策をやめさせることです。ブッシュ政権時代の対テロ戦争で資金源を断つ目的で規制強化して、例えばマカオのバンコ・デルタ・アジアの北朝鮮関連の預金を封鎖して金正日政権に打撃を与えたりしたわけですが、その流れでマネーロンダリングの拠点としてのタックスヘイブンの金融機関にアメリカ国籍の個人と企業の口座情報開示を迫り、見える化されたことで、アップルやスタバの租税回避まで明るみに出たわけです。あと例のパナマ文書のリークですが、これがいろいろ謎な部分がありまして、中国接近を狙うイギリスへの牽制のほか、プーチンや習近平の身内や知人、アイスランドの現職首相などの個人名が晒されましたが、いずれも当時のオバマ政権と対立したり意に添わなかったりする人物ばかりというところに政治的な意図が見え隠れします。ただしこれが英国民にBrexitを決断させた可能性もありますが。

てなドロドロの状況で、漏れ聞こえるトランプ税制では、法人税率が35%から20%になるとか、キャッシュフロー課税になるとか、輸出分の売り上げを除外できるとか、逆に輸入は海外現地法人が立地国に支払った税金の還付を認めないとか、いずれも断片情報としては聞こえてきます。はっきり申し上げますが、この程度の断片情報からトランプ税制の枠組みを再構成することは、アメリカを含む世界で進む税制に関する議論をフォローできていれば可能です。上記の日経記事が恥ずかしいというのはそういう意味です。

法人税率を下げるために課税ベースの拡大は世界の常識で、日本でも民主党政権時代に、虫食い状に課税ベースを蝕んでいる租税特措法減税の見直しが議論されましたが、当時の経団連とメディアが叩いて阻止されました。租税特措法減税は例えば設備投資減税にしろ研究開発減税にしろ、企業の申告によっていますから、実態が見えにくく、当局も当該企業も国民の批判に晒されることのない聖域だったわけですが、そこを踏んだ民主党政権がバッシングされたわけです。しかし世界の常識とはかけ離れた話です。加えて法人減税は海外からの投資を呼び込む意図もあるわけで、その意味では日本のように租税特措法で当局と阿吽の呼吸が取れる国内企業に有利な仕組みの見直しは避けて通れません。

でトランプ税制で法人税率を20%に下げるのも、課税ベースの拡大によって行われるわけですが、その際にキャッシュフロー課税が導入されるんじゃないかという観測がされてます。これ簡単に言えば減価償却による無税の資金留保は認めない代わりにキャッシュアウトを伴う設備投資は奨励されるから、設備投資が活性化して国内産業の復活を後押しするというわけです。

あと輸出の売上計上除外は事実上輸出分の法人税減免になり、日本の消費税に相当する付加価値課税がなく輸出還付金がないアメリカにとっては、言ってみれば貿易のイコールフッテイング税制となるわけで、高関税を課せばWTOに提訴されて敗ける可能性もあり、現実的には難しいですが、国内税制を弄って同等の効果を狙うのはあり得ます。仮にこれがWTOに提訴されても、そのときは付加価値税の輸出還付を行っている国を逆提訴して対抗するつもりでしょう。当然日本も対象になります。

そして輸入課税ですが、これアップルやスタバなど海外で資金留保している多くの米多国籍企業にとっては、海外生産を見直さざるを得なくなる上、米連邦政府にとっても、莫大な税収増をもたらす可能性があります。これを原資に老朽化が進むインフラ投資を積極化するというシナリオにリアリティが出てくるわけです。そんな背景を日本のパワーエリート達は理解できているのでしょうか。

トランプ氏介入、トヨタにも メキシコ投資に「あり得ない!」  :日本経済新聞
これ日本財界の賀詞交歓会でトランプ景気でイケイケムードの中、豊田章男社長がそれでもメキシコ工場への投資は予定通り行うと述べた直後のツイートだったってこともあり、一転財界人を慌てさせたようですが、上記の背景が見えていれば、フォードがメキシコへの工場移転を撤回した理由と共に、違った反応になったはずです。とりあえずトヨタはトランプ氏にアメリカ経済のメンバーと認められたとも取れ、ある意味メキシコに工場作ると損するぞという忠告と受け取ることも可能です。「メキシコに工場を作っても米国内の雇用は減らない」といった反論をしてますが、トランプ氏はそんなこと聞いてないんで、アメリカ国内に投資を呼び込もうということです。ある意味そのための法人税減税でもあるわけです。はっきり申し上げて、日本以外のグローバルエリートにとって自明のことすら、日本のパワーエリート達は理解していないということがバレちゃったわけです。企業の租税回避は各国とも悩みの種だけど、こうして自国に税収を引っ張ろうとしている状況はあるわけで、これ恥ずかしいを通り越して日本の未来が危ないぞ。

ただ誤解のないように申し上げておきますが、私自身はトランプ支持でも何でもないですし、おそらくトランプ改革は失敗するんじゃないかと踏んでます。特にインフラ投資に関しては、既に完全雇用に近い現在のアメリカで、財政出動で公共工事を積み増しても、震災後の日本と同じように深刻な人手不足に見舞われるだけの可能性があります。ただしアメリカは従来移民受け入れで人手不足をクリアしてきたわけですから、移民排斥を公言するトランプ氏はわざわざそれを難しくしているわけです。公共事業拡大の必要性と難しさを示すこんな報道も。

NYで列車脱線、100人超負傷 大半が軽傷か  :日本経済新聞
NYメトロノース傘下のロングアイランド鉄道は昨年10月にも事故を起こしておりまして、しかも今回と似たようなターミナル駅での暴走事故で、日本のATSに相当する保安装置があれば防げた可能性がありますが、収益に結びつかないということで鉄道会社は投資に及び腰です。連邦政府の補助が必要ではないでしょうか。一方でこんな話題も。
「幻の地下鉄」に学ぶインフラ投資の試練  :日本経済新聞
100年前に構想されたNY地下鉄セカンド・アベニュー線ですが、大恐慌やww2で計画が中断。戦後も市財政の破綻で事業化が遅れに遅れてやっと2007年に着工されたものの、人手不足で工事はべた遅れ。クォモ市長が発破をかけて昼夜突貫工事の末、異例の元旦開業となり、試乗したニューヨーカーたちも驚きとともに喜びを分かち合ったということですが、これだけならいい話で終わりですが、既に人手不足は顕在化していて、今後公共事業の拡大の困難さを示してもいるわけで、喜びも半ばということになります。こんなことも踏まえながら、トランプのアメリカがどうなっていくか、興味は尽きません。

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Sunday, November 13, 2016

トランプ・ポリティカル・パートナーシップ

いや米大統領選面白かった。何が面白いって、米大手メディアはほとんどクリントン優勢と伝え、日本のメディアもほとんど追跡取材なしにそれをうのみにした結果、慌てているってところです。日本のメディアコントロール問題はある意味わかりやすく、政治的な圧力に対して忖度して勝手に自主規制するから、その辺が良く見えますが、アメリカは?というと、政権がどうこうよりもより大きなエスタブリッシュメントが黒子として存在しているってことですね。ある意味日本より巧妙ですが、今回その一端が見えたわけです。

具体的にはトランプ氏のトンデモ発言ばかりが露出していたり、特に10年以上前のセクハラスキャンダルをわざわざ掘り起こして報じるなど、最近日本でも目につくネットデマゴーグばりのことをNYTみたいな大手紙が報じるあたりに垣間見えます。加えて民主党議員のセクハラメール事件で押収したパソコンからクリントン氏の公式アカウントから発信された大量の私用メールが見つかってFBIが再捜査に乗り出したのに対して、報道では現れませんが、オバマ大統領二任命されたFBI長官におそらく圧力がかかって立件見送りとなった経緯など、日本みたいな-_-;展開が見られたあたり、ほんとアメリカかい?とさえ思いました。

てなわけですから、報道以上にトランプ氏の支持は広がっていると見てましたし、一方でバイアスのかかったメディア報道もありますから、どちらで決着するにせよ相当な接戦となると見ていたわけです。案の定有権者の得票数では勝っていたクリントン氏に対して、間接選挙の特殊なルールで獲得選挙人数でトランプ氏が勝利したわけです。正確には来月の選挙人投票で決まるわけで、不誠実な選挙人が心変わりするって可能性は皆無ではありませんが、そんな報道が出てくるぐらい不都合なトランプ氏の当選だったってことで、現実的には無いでしょう。

ま、ある意味アメリカ国民の本音が出たわけですが、前代未聞の候補者同士の誹謗中傷合戦の罵り合いも、意図的だったとしたら(私はそう思ってますが)トランプ氏の術中にはまったってことです。日本でも「自民党をぶっ壊す」と叫んだ小泉劇場があったぢゃないですか。もう少し遡ればアメリカでもB級ハリウッドスターで泡沫候補と見做されていたロナルド・レーガンが現職のカーター大統領を破って政権の座についたことがあります。このとき政策スタッフとしてシカゴ大学経済学部を中心とする保守派の経済学者が関わって、それまでのケインズ主義的なマクロ経済運営を新自由主義的な方向へシフトしたわけです。トランプ大統領の出現はその意味でエポックメークな出来事となる可能性があります。

一言で言えばパクス・アメリカーナの終焉といいますか、アメリカが唯一の覇権国として国際社会を取り仕切る意思と能力を放棄するってことで、これからはアメリカの国益第一の本音の外交をするぞってことです。ですが、既にオバマ政権下でもシリア内戦への勘よに慎重だったり、南シナ海で中国と握って対立を演出したりしているわけで、外交面では今までとあまり変わらないと見るべきでしょう。TPPに関しても、とりあえず大統領選と同時に行われた議員選挙で共和党が多数派を維持したことから、オバマのレガシー作りに協力する必要はないってことです。トランプ大統領就任後どうなるかはわかりません。

ただし気になるのが、昨年の大筋合意自体が日米両国の強引に決めたことですし、日米間では詰まっている、といっても医療や農業で日本が譲歩した一方、自動車などアメリカの譲歩項目は時間的猶予が与えられるなど非対称なものですが、一方ニュージーランドが提案した乳製品の貿易ルールに関する動議は決着を見ないままですから、どのみち再交渉は避けられないわけですから、今批准を急ぐことは、アメリカの背中を押すというよりは、アメリカに足許を見られる結果になる可能性の方が高いといえます。特に「FTAは二国間で」とするトランプドクトリン?が公言されているわけで、TPPの日米交渉でアメリカに押し込まれた条件が再交渉で更に押し込まれることは覚悟した方が良いです。アメリカが本音で通商交渉に臨めば

米:日本はTPPでの約束を守れよな。
日:アメリカも約束守ってください。
米:よく聴こえないが?
てなことになりますわな。てことで Trump's Political Partnership でTPP成立ってあれ?

大統領選報道の一方で、日本では大事故が起きました。

博多駅前で道路陥没=地下鉄延伸工事が原因-空港などで停電も・福岡:時事ドットコム
現場は福岡市営地下鉄七隈線延伸工事の現場で、早朝、現場作業員からの110番通報があり、警察が迅速に道路閉鎖した結果、これだけの規模の陥没事故で死傷者ゼロと不幸中の幸いに。加えて福岡市の情報開示の徹底もあって、混乱はかなり防げたのですが、いろいろと課題も見えました。原因は地下水の流入による岩盤の崩落ということで、事前の地質調査が十分だったのかなどが問われますが、岩盤が粘土質で地下水で軟化していたとか、地震で岩盤が動いたとか、いろいろと言われておりますが、現時点では詳細は不明です。

ただ地下工事での道路陥没って結構な頻度で起きてはいます。東京でも常磐新線(つくばエクスプレス)工事でJR御徒町駅近くで大規模な陥没事故を起こしてますし、他都市でも少なからず起きてます。今回現場責任者の対応が早かったから結果的に死傷者ゼロで済んだものの、地下工事の危険性を認識させる事故ではあります。これ横浜の傾きマンション事件とも関連しますが、土木工事って、結局掘ってみないとわからないというのが実際で、その場合設計変更が欠かせないところ。

横浜のケースでも2人の杭打ち工事責任者のうち1人はこまめに異常報告して設計変更したわけですが、当然工期も伸びるし予算も膨張するということで、スルーされることもあって、竣工後に不具合が発覚することも珍しくはありません。それでも適切にメンテナンスされていれば、事後的に補強その他不具合を除去する手立てもありますが、問題は工事にしろメンテナンスにしろ、職人芸的な属人的なスキルに頼っている点です。しかもゼロ年代の建設不況でスキルの継承は断絶しており、今後少子化で若手の育成も難しく、日本のように不安定な地盤の土地ではロボットなどで対応するのも難しいところです。

私が公共工事の拡大に疑問なのも、また中央リニアに懐疑的なのも、1つにはこの問題があります。例えば2週に亘って渋谷駅の線路切り替え工事で週末区間運休の東京メトロ銀座線ですが、営業線の切り替えで困難な工事ではありますが、線路切り替えなどの大規模工事は結局人海戦術で対応せざるを得ないけれど、最近は人集めに苦労する状況で、コスト面もあって運休して工事間合い時間を取らざるを得ないようになってきたって面もあります。幸い東京のように成熟した大都市では、一部運休してもう回路はいくらでもありますから、事前告知で混乱は避けられますが、リニアにしろ整備新幹線にしろ、これから作るものに関しては、メンテナンスも含めて破綻の可能性もあり慎重な対応が必要です。

最後は閑話休題。銀座線の区間運休ですが、渡り線の関係で浅草―溜池山王間と青山一丁目―表参道間の区間運転という方法がとられました。後者に関してはA線(浅草→渋谷)は青山一丁目から表参道まで営業運転して回送で折り返し、B線(渋谷→浅草)では逆に表参道から青山一丁目まで営業運転して折り返し回送という運行形態を採っています。所謂指導式(腕章を付けた指導員添乗を条件に運行)の代用閉そくですが、すべての駅が相対式ホームで乗客案内上逆線走行の営業運転の混乱を避けたと思われます。そのため12分ヘッドと運転間隔が開いており、神宮外苑下車駅の外苑前は週末イベント等も多く、結構な混雑ぶりでした。島式ホームなら逆線営業運転で運転間隔を詰められたかもしれません。その神宮外苑では木製ジャングルジム火災で子供1人死亡という痛ましい事故も-_-;。中を明るく照らそうとした学生の機転が裏目に出たわけですが「常識的にわかりそうなこと」という前にナレッジの共有と継承はかくもということも指摘できます。

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Sunday, September 04, 2016

ガラクタ経済列島

略してガラケー列島-_-;。やっとメディアも注目し始めた築地市場の豊洲移転問題ですが、数箇月の延期では済まない事情があるようです。

豊洲新市場、移転延期でも解決できない根本的欠陥|Close Up|ダイヤモンド・オンライン
土壌汚染の問題や店舗が狭隘といった問題点に留まらず、既に姿を現している建物躯体そのものの問題があるという指摘です。

1つは動線計画が滅茶苦茶。生鮮品の荷卸しはスピードが勝負なのに側面荷降ろしではなく後面荷降ろし前提のトラックバースとか、5層に分かれるフロア間の移動用リフトの不足とか、フォークリフトやターレットの通路の不備など。もう1つは床面荷重が700㎏/m^2で4tのフォークや2tのターレを支えられるかという問題。フォークを使う場合1.5tの耐荷重が普通なのにその半分にも満たず、使えるのか?という問題。他の問題がクリアになっても、工事が進んでいる現状で今更手直しもできないと。

原因は現場のニーズを無視して日建設計にプロポーサル契約で丸投げした結果だというのですから、お粗末すぎます。日建設計といえば新国立競技場デザインコンペでザハ事務所の下請けで協力し、再コンペで隈研吾氏の下請けに横滑りした会社です。お粗末な顛末も含めて新国立競技場問題と似ています。横浜の傾斜マンション問題も含め、この辺設計事務所も含めて業界の劣化が疑われるところです。

元々移転問題も二転三転の歴史がありまして、築地た手狭であることと、アスベスト問題もあって改築工事が困難ということもありますが、移転すれば移転先の工事と跡地の再開発で工事が発生するわけですから、公共事業の削減で干上がっていたゼネコンがメディアの監視が緩い東京都に都議を通じてアプローチしたとしても不思議ではありません。

それ以前にチェーンストアや通販などで産地直送販売が増えてきて、築地のような公設市場のシェアは低下してきた流れがあり、ネット通販の拡大もあり、公設市場の位置づけそのものが問われている現状もあります。もちろんだから簡単に廃止はできないわけですが、民営化やIT活用など市場そのものの改革も問われる中で、ハードの議論ばかりが先行した結果、使えない新市場ができたんだとすれば、笑えない話です。公共事業の増加や都市再開発の増加で有卦に入ってバブル越えのゼネコン業界ですが、中身の劣化は如何ともし難く、このままでは全国にガラクタの山を築くんじゃないかと危惧します。

東京都の悪口ばかりでは何ですから、神奈川関連も取り上げます。

都と川崎市、羽田跡地と殿町を「特定再生地域」に指定申請  :日本経済新聞
10年前に「神奈川口構想」の名で計画が浮上した羽田連絡道路が、紆余曲折を経て実現というと、喜ばしいところですが、神奈川県や川崎市の上滑りで対岸の大田区側の同意を得られずお蔵入りしたものですが、丁度羽田空港国際線ターミナルの対岸に位置する殿町地区の再開発を諦められない中で国家戦略特区の指定を受けたことで流れが変わってきたということですが、R357の整備より優先度が高いのかという疑問は大田区側にはあるようです。
羽田連絡道路の行方は 神奈川口構想から10年/川崎|カナロ …
にしても事業費の半分を国の補助金でってのがどうなのか。川崎市は市営地下鉄構想やそれに関連した京急大師線の地下化や、南武支線の川崎駅連絡線構想や浮島の再開発計画など空振りが多いのですが、企業のリストラで空洞化が進む中、税収確保に四苦八苦しているのが見て取れます。浮島再開発では手塚治虫ワールド誘致を掲げて実現せず「手つかずワールド」と揶揄されたりと散々です。大師線地下化も産業道路大踏切除去を優先して産業道路―小島新田間の末端の地下化が先行する形で進んでますが、あとは未定というていたらくです。というか、現状ここに橋がかかっても使いにくいのが正直なところ。殿町地区限定では空港アクセスの利便性は勝るけど川崎市中心部からは利用しにくいというヘンテコな計画です。それ以前に日本の空の空洞化が心配なところ。
デルタが東京~NY線撤退、成田空港離れが加速中|Close-Up Enterprise|ダイヤモンド・オンライン
日米航空協定はデルタ航空の成田空洞化の懸念から遅れていましたが、今年になって、利用しにくい深夜早朝枠の昼間への移行プラス日米1便ずつの増枠で決着し、日本はANAへ、アメリカはユナイテッドへの配分となったわけですが、その結果デルタ2便に対してJAL+アメリカンが3便ANA+ユナイテッドが4便と劣勢になり、且つANAが羽田―ニューヨーク線を開設する一方、デルタが競争力低下を嫌って東京(成田)-ニューヨーク線から撤退というもの。以遠権のある成田はデルタにとってアジアのハブだったはずなのに、日本を飛び越してアジア各地へ直行便を飛ばす形で戦略転嫁してきたわけです。長距離を飛べる中型機の登場でハブ空港の見直しが始まったわけですが、同時にそれは太平洋路線における日本のプレゼンスの低下でもあるわけです。思えばスカイマークがデルタ陣営に入っていれば、違ってたかも。

この辺JAL憎し外資憎しの偏狭な日本の航空行政の結果とも言えるわけで、つくづく政治家も官僚も先を見る目が無いんだなと思い知らされます。それでいて公共事業をドッカンドッカンの大盤振る舞いであとはお構いなしというわけで、首都圏に限らず日本全国ガラクタの山を築いて国力を低下させるディストピア。ホントしょーもなー。

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Sunday, May 08, 2016

壊れかけの Nation

鼻グジュグジュ状態で書いたエントリーをなぞる安倍首相。

財政出動 協調に壁 首相欧州歴訪終了、独英と温度差  :日本経済新聞
ホントわかりやすいけど、独英首相にクギを刺された格好です。ロシアのプーチン大統領との会談も成果は出ず、結局何しに行ったの?プーチン大統領は安倍首相訪ロの4日前に北方四島を含む極東振興のための土地「分与法」の署名し、返す気さらさらないところを見せております。日本のメディアはガン無視ですが。それでもプーチン大統領が安倍首相に会うのは金づるだから?

まだ震災も収束の気配はないし、保育園の待機児童問題も解決の道筋が見えない中での外遊で成果なし。内緒ですが伊勢志摩サミット開催が決まって伊勢志摩地区のホテルが閑古鳥とか。早々観光客が自粛したそうな。テロ警戒で警備も大変だし、サミットで手を上げるところなくなるかも。

待機児童問題が解決しないのは、構造問題があり、解決は困難です。具体的に言えば、待機児童問題が表面化しているのは専ら都市部であって、農村部などでは見られないですが、理由は単純で、都市部に雇用が偏っており、それだけ女性の労働力率が高くなるわけで、都市部に需要が集まるわけです。加えて重要なのが、保育士は今でこそ男性もいますが、女性が多く、故に本人の妊娠・出産を機に退職となります。保育士の低待遇が問題視されてますが、表向き退職理由のトップは妊娠・出産です。そしてそれゆえ賃金が上がらず、また育児後の復職も難しくなるわけです。所謂キャリアの中断が避けられず、それを口実とした低賃金ということですね。単純に賃金上げて解決とはならないわけです。日本の性差別の根は深いです。同時に少子化対策が労働力不足と競合するという点は既に指摘しています。この政権は安保や改憲には熱心でも、国民が直面する問題の解決には興味なしです。

ニュースクリップを続けます。

トランプ氏、共和党候補指名確実に クルーズ氏撤退  :日本経済新聞
トランプ氏に関しては様々な論評がありますが、共和党の保守本流の崩壊と見るべきでしょう。常識的にはこれで民主党クリントン候補が大統領となる可能性が高くなったということは言えますが、エスタブリッシュに近いクリントン氏が若者に人気がないということで、若者のリベラル票はサンダース氏に流れており、格差拡大による不満がサンダース氏を善戦に導いた一方保守の共和党系ではトランプ氏がその役割を担っており、しかも他の有力候補をことごとく駆逐してしまったということですね。実はトランプ氏は差別的、排外的発言ばかりが取り上げられますが、富裕層への累進課税などリベラレル的な主張もしており、特に失業率の高い白人男性の若者層の支持を集めており、むしろ茶会党系のクルーズ氏の方がタカ派的だったり市場原理主義的だったりします。アメリカの保守派が示す処方箋に国民が懐疑的になりつつある一方、だからといってリベラルへは行けないで取り残された国民が多数いるということです。アメリカが壊れかけている?

実はイギリスのEU離脱問題も同様の火種があります。キャメロン首相自身は残留派といわれますが、党内や支持者からの突き上げでガス抜きを迫られての国民投票なんですが、パリやブリュッセルのテロ事件もあり、離脱派が勢いを増している状況です。保守派の分裂が意味するところは、先行きに対する国民の不安の反映と捉えると、実は深刻なのかもしれません。EU離脱論はイギリスに留まらず、最も恩恵を受けていると見られるドイツですら反EUの政治勢力が伸びています。グローバル化が行きつくところ、主権国家が主権を制限される局面が増えていることに対する不満と不安が背景にありそうです。ある意味改憲派が牛耳る日本の現政権もそんな流れの中に位置づけられるのかもしれません。「9条を守れ」しか言わない日本のリベラル陣営は本当に事態を理解していない。多分主権国家が資本主義と共に解体過程に入ったかも。壊れかけの Nation がキーワードかも。

もうちょい身近な話題。

バスと車衝突、母子死傷 福島・常磐道  :日本経済新聞
またしてもバス事故ですが、場所が問題です。福島第一原発事故で放射線空間染料が高く、全域が避難区域に指定されているエリアに開通させた高速道路で事故です。最悪なのは元々一般道と区分されたクローズドサーキットで、しかも2車線対面通行ですから、事故当時者に留まらず、足止めされた車も多数あるわけです。線量の高いエリアで長時間の足止めで、車内に留まって復旧を待つしかないわけです。車外へ出るよりはマシとはいえ、放射性核種を遮断するほど高性能なフィルターは車に備わっていないことは指摘しておきます。こういう事態を想定できていれば、常磐道の開通を急ぐ意味はあったのかどうか。自衛策としては近づかないことしかありません。事故は乗用車が反対車線に突っ込んだもので、バス側の原因ではないのはせめてもですが、該当の桜交通のバスは池袋発相馬行きの便ということで、運転手含め41名乗車ということですから、GW中でほぼ満席だったわけですね。高速バスにとっては稼ぎ時であるとともに、渋滞や不慣れなドライバーによるもらい事故のリスクもあり、厳しい現実を見せつけます。

そんな高速バス界隈の話題としては先月開業したバスタ新宿でしょう。新宿駅周辺19か所に分散していた高速バス乗り場が集約されたことで、乗客の利便性は高まりましたし、何よりバスの客扱いによる西口広場を中心とする道路渋滞とR20甲州街道のJR陸橋上の客待ちタクシーの車列の解消による効果もあり、渋滞解消には一定の効果が認められます。ま、上り車線中央のバスタ新宿右折路に迷い込んで進入路信号で強引に直進する困った一般車がちらほら。事故が心配です。

実はバスタ新宿の建設には道路予算が使われているのですが、R20甲州街道の国道整備事業という名目で渋滞解消は事業の目的になっております。それゆえJR・京王などの既存バス事業者に留まらず,WILLERなどの新免事業者まで収容する巨大バスターミナルが実現したわけです。バスターミナルと言えばバス事業者単独あるいは複数事業者の合弁事業が多かったのて、バスタ新宿はその意味で新しい整備手法ではあります。またJR新南口と一体で交通結節機能を重視している点も事業目的にうたわれております。ただこの点は課題もあります。

JRからなら新南口新南改札を出れば、2F-4F直通エスカレーターが目の前で、昇るとロビー入口というアクセスの良さですが、JR以外からは意外とアクセスしにくい位置関係にあります。特に小田急と京王からは悩ましいところ。小田急の場合は南口改札を出れば甲州街道を挟んで向かいの位置関係ながら、陸橋上に1箇所しかない横断歩道を渡るしかありません。サザンテラスへ渡るミロード橋も選択肢にはなりますが、結局階段でサザンテラスへ降りるしかありません。そしてシースルーのエスカレーターで3Fタクシーフロアへ出て折り返し、4Fへのエスカレーターへ乗り継ぐのですが、ロビーから遠いCエリアとDエリアの角に出て、狭い通路を辿ってロビーを目指すことになります。むしろJR連絡改札から中央東改札を出て地上へ上り、R20陸橋下からアクセスする方が楽かもしれません。

京王の場合は新線新宿出口2からR20陸橋上へ出るのが早いけれどわかりにくいですね。特に安田生命第二ビルにあった旧新宿高速バスターミナルと比べると、遠くなったことは間違いありません。で、ややこしいのは京王系の高速バスは到着便は旧ターミナルにほど近い26番ポールを使っていて、多客期の増発便では出発便もあるということで、案内上混乱が予想されます。そんな中リムジンバスは京王百貨店前(成田便)と安田生命第二ビル前(羽田便)のバス停を維持しており、空港アクセスバスという特殊性はあるものの、クレバーな対応です。

地下鉄の場合は新宿三丁目の方が物理的に近いのですが、案内上はタカシマヤを目指してということになりますから、慣れないと使いにくいかも。ま、不慣れな人の裏技はタクシー拾って「バスタ新宿」が吉。特に荷物のある時は有力な選択肢です。

乗客案内では予約分を含む発券の分かりにくさは指摘できます。ロビーの発券カウンターはハイウエイバス・ドットコム(京王系)、高速バスネット(JR系)、発車オーライネット(独立系)で窓口が分かれており、不慣れな人を迷わせます。さらにアクアライン系統など近距離路線は自由席で直接乗り場へと案内され乗車券発券はなし。ICカード利用可否も路線や事業者ごとにバラバラ。新免含む一部事業者では乗り場でチェックインでやはりロビーでの発券はなし。この辺は不慣れな人ほど迷うところですが、こういった縦割り体質はバス業界の業なのでしょうか。

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Sunday, August 30, 2015

TOICAの壁

北陸新幹線の開業で並行在来線が切り離されたことで、青春18きっぷの使い勝手がかなり変わりました。首都圏からだと、中央線、信越線又は大糸線経由のルートは使えなくなり、JR東海エリアを通る必要がありますが、青春18シーズン特有の混雑と乗り継ぎに辟易しなければならないわけで、どうせならTOICAの壁で日常的に足が向かないJR東海エリアを中心に消化しようというのが、この夏の戦略でした。

加えてやはり疎遠な静岡、浜松、名古屋の都市交通にも触れておきたいということで、5日分のうち3日分をJR東海エリアに割り当て、ついでにシャッター街と化した後に復活が伝えられた小田原駅の地下街や伊東線でリゾート21乗車などのオプションを睨みつつ、いつもながらの行き当たりばったりですが、なかなか実り多いものとなりました。

名古屋では愛環、リニモ、城北線、ゆとりーとライン、基幹バス新出来町線などの初乗車を楽しむ一方、廃止が取り沙汰される養老鉄道もと欲張りました。養老鉄道に関しては、過去に逆上下分離疑惑を指摘しました。正直裏は取れておりませんが、当時の日本企業のコンプライアンス意識からいえば否定できないところです。

その養老鉄道の廃止ですから、地元にとっては面白くない話ですが、線形が悪くインフラがぜい弱な一方、複数の市町村に跨ることから、同時に分離されたものの、伊賀市内で完結する伊賀鉄道が公的支援を得つつ東急の中古の投入ながら老朽車両の更新を実現しているのに対し、厳しい状況です。元々国鉄貨物の通過輸送で稼いでいた路線ですが、国鉄の車扱貨物の撤退で翻弄され、車社会の名古屋都市圏の外延で需要にも合致しないルートなど悪条件が重なっています。とはいえバスで代替するには距離が長くスピードダウンのマイナスを考えると解決は簡単ではありません。

名古屋にj関しては、初乗りのリニモ9で、なるほど丘陵地帯でアップダウンが激しいことから、非粘着駆動のリニアはありかもしれないとは思います。また荷重制限があることから、大量輸送向きではなく、海上の森の開発問題で揉めた愛知万博の経緯からも、輸送インフラのキャパによる開発抑制効果も評価すべきでしょう。インフラ整備に伴う環境負荷の面でもプラスでしょうし、とにかく首都圏と比べれば都市規模の違いから適正な輸送インフラの考え方も違ってくるわけですね。この辺は新出来町線やゆとりーとラインも同様です。その新出来町線は優先信号が導入されていないので、ほぼ交差点毎、停留所毎に信号につかまってしまいますが、おそらくバス優先にすれば混乱するということなのでしょう。

そういう意味でゆとりーとラインの発想は自然なんだと思います。ガイドウエー区間では結構なスピードを出しますし、駅間も長く、郊外から都心へのアクセス手段としてはうまく考えられています。ただし案内輪の収納問題からツーステップ車なのは惜しいところ。バリアフリー対策は悩ましいところです。それでもここまで高度化されたバス輸送システムという意味で、BRTと称して良いでしょう。ゆとりーとライン利用は名鉄瀬戸線小幡駅からゆとりーとライン小幡緑地まで徒歩連絡したんですが、落ち着いた郊外住宅地で、都心との距離を考えると首都圏から見てうらやましい限りです。都市の実情をフィジカルに知るにはまち歩きは重要です。

てことでやっと本題ですが、青春18きっぷで西に向かうと、JR東海エリアの駅で首都圏からカード1枚で突撃してきた乗客の精算所の長い列は恒例でしたが、いつからかは定かではありませんが、とりあえず東海道線の東京―熱海間プラス山手線内乗車に限り、駅の自動精算機で精算可能になっていました。さすがに精算でマンパワーを消費するわけにはいかないわけです。ただし逆は不可というわけで、券売機で磁気券購入が必要です。また沼津下で乗り入れるJR東日本の普通列車グリーン車ではSuicaグリーン券に対応しておらず、改札外で磁気グリーン券を事前購入する必要があります。

いろいろ調べると、名古屋地区のmanacaで実施される乗継割引に非対応で、都営バスの90分ルール割引やバス得ポイントなどSuicaとPASMOで共通化されているのとは異なります。名鉄とラッチ内でつながる豊橋と弥富では乗継専用タッチセンサーを設置、PiTaPa陣営の近鉄との共同使用駅である桑名では専用のゲートのない自動改札機(こんなもん初めて見ましたが)を跨線橋上に設置して乗継客にタッチさせるなどしてあくまでも改札分離して自社だけで独立ブロックを形成するその姿勢は孤立主義的傾向の強いJR東海らしいと言えばらしいですが、乗客の利便性は置き去りです。尚、JRと近鉄の共同使用駅である津はTOICAエリア外なので特別な対応はないようです。

一方新幹線専用カードのEX-ICとは併用可能で、新幹線を使えばエリア外もカードだけで利用可能ということで、なるほどあくまでも新幹線利用への誘導なのかということですね。加えTOICAエリアの三島―岐阜羽島間で、新富士を富士、岐阜羽島を富士に置き換えて新幹線停車駅2駅以上の区間でTOICA定期円を所持する場合は、普通車自由席乗車に限り特急料金をカード残高から引き落とすことが可能という具合に新幹線への利用誘導が露骨です。

ま、そんなこんなでちょっと気になったのが、いくつかの駅で改札外へ出てみて、駅前が結構悲惨な状況なのが目につきました。決して人口は少なくないのに、車社会で郊外型店舗でにぎわいが駅前から消えたということなんでしょうけど、特に四日市と近鉄四日市の駅前の違いを見ると、終わってるという感じです。新幹線で稼いでローカル輸送はおざなりということでしょうか。ま、あれこれ考えさせられます。

近鉄に限らず、静岡鉄道が自社系列のジャストラインと連携したり、遠州鉄道が中間駅の整備された駅前広場に自社バスを乗り入れたりして一貫輸送を意識している一方で、JR東海は駅の外は異界とばかりの冷淡さです。また系列企業であるはずの東海交通事業城北線の扱いも酷いですね。勝川は数百m離れた高架線上の無人駅で、JR駅への乗り入れは可能な造りですが敢えて繋がずですし、枇杷島も貨物線を通じて名古屋までレールは繋がっており、折り返しのホームを確保できれば乗り入れ自体は可能ですが、そんな気はさらさらなさそうです。沿線は人口も張り付いており、利便性を高めればもっと利用されそうですが。

車両面では主力の313系は良くできた車両ですが、とにかく編成が短く、青春18シーズンのせいもあるかもしれませんが、混雑までは無「なくても立客は当たり前というのも、違和感を覚えます。JR東日本で上野東京ラインの開業で話題となった10連の混雑があれだけ悪評なのですから、輸送力の余裕は大事です。その一方かつてのスター311系は発進時のショックが大きく乗り心地を損なっています。同じカム軸制御の211系がマイルドなのと比べると不思議ですが、これにあたるとハズレ感があります。てなわけでJR東海disな話になりましたが、見たまま感じたままですので悪しからず。

青春18きっぷは元々学校の休暇シーズンの余剰輸送力を活用して追加コストがほとんどかからないから実現できている格安な企画商品ですから、受益をリース料で召し上げられる整備新幹線のスキームを前提とする限り、今後も利用エリアが縮小せざるを得ないわけで、来春の北海道新幹線開業で青函間の特例もなくなること確実です。そんな中で北陸新幹線に新たな動きです。

北陸新幹線延伸で新ルート「小浜・京都」案 JR西  :日本経済新聞
従来の3ルートに対する第4のルートの提案です。従来の3案は基本計画線に8沿った小浜ルート、軌間可変電車(FGT)を前提とする湖西線ルート、東海道新幹線乗り入れを前提とする米原ルートですが、コスト面で有望とされる米原ルートはJR東海が内職を示しますし、アーバンネットワークに組み入れられた並行在来線の扱いで地元との合意形成が難しいということもあり、JR西日本は湖西ルートでの整備を検討していましたが、北陸新幹線による観光需要の誘発効果を目の当たりにしてか、若狭湾の中心都市小浜と京都をルートに組み入れ、将来は大深度地下で大阪延伸というものです。

この場合並行在来線は小浜線敦賀―小浜間が想定されますが、原発銀座のリッチな自治体の助けで小浜線の電化を実現した柳の下のドジョウ狙いでしょうか。とすれば原発の順調な再稼働が前提となりますが、逆にだから国も後押しが期待できるという読みもあるかもしれませんがちとキナ臭いところです。原発と新幹線といえば川内を連想させますが、原発関係者は京阪神から通勤が可能になり、小浜がシャッター街になるという微妙さが隠れています。また恩恵のない滋賀県が騒ぎ出すということで、すんなりいきそうもありません。あーあ。

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Monday, July 20, 2015

Undoしたい大草原wwwの小さな森

いやもうあまりにも面白いので、新国立競技場のネタ続けます。まずは当事者のインタビュー記事です。

新国立、安藤氏「頼まれたのはデザイン案の選定まで」  :日本経済新聞
【新国立競技場】森喜朗氏「生牡蠣がドロッと垂れたみたい」(発言詳報)
今回のキーマン2人が揃いも揃って他人事コメント。意訳すれば「ボク悪くないもん」というわけです。ザハ案を強く推したのは安藤氏であることは、様々な証言から明らかであり、今回の一件で安藤氏の名声は地に落ちたと言えます。コストを無視したデザイン選定はあり得ません。

また2019年のラグビーW杯を新スタジアムのこけら落としにしようとした森元首相は元々ザハ案が嫌いだったとのたまう始末。ノミの心臓サメの脳みそと言われる御仁だけに、無い知恵を絞っての釈明は、それ故に本質をついているところもあります。例えば責任は文部科学省にありという部分。実際の事業主体は(独法)日本スポーツ振興センター(JSC)ですが、こういう大きな公共インフラを手掛けたことはなく、不慣れだったことを指摘しています。確かにそうでしょう。

あとザハ案が嫌いだったという発言ですが、巨大キールアーチ構造の施工の困難さを指摘していることはあまり報じられておりません。橋なら船で運べるけど、陸上の大径間アーチは現地組み立てを余儀なくされ、形状が複雑だから大変だし、櫓を組んで仮受けする必要もあるなど、安藤氏よりよほど構造設計に詳しかったりします。さすが土建族。北陸新幹線を巡る談合事件が報じられてますが、関与は?

そもそもコスト感覚が希薄だったのではないかと思われます。求められている機能は国際大会の開ける陸上競技場であって、サッカー国際試合用の8万人収容のスタンドも、コンサート会場として音漏れ防止や全天候型のための開閉式屋根などは必ずしも求められていないわけで、むしろサブグラウンドがないなどがアスリートから指摘されている始末。事業の目的を忘れて盛り過ぎということで、この部分はデザイン案に関わらずコストを押し上げる要因になっています。

事業費の膨張も、具体化と共にジワジワとで、本来は1,000億円程度だったはずが、震災復興や円安の影響で資材費が値上がりし、人手不足による人件費高騰もあって1,300億円に見直された経緯もあります。つまり文科省やJSCが事業費膨張の理由として説明しているこの部分は、1,300億円に盛り込まれているはずで、その後の膨張は、設計の具体化や施工希望のゼネコンの意見などによるわけで、入札もされていないわけです。

しかもゼネコンの意見は日本の公共事業で慣例化している事後的な予算の増額が含意されていると見るべきで、2,520億円で終わりという話ではないと考えられます。杜撰すぎるプロジェクトの進行でこうなったわけですから、安藤氏や森氏を含む当プロジェクトに関わったメンバーは更迭し、新しいメンバーでプロジェクトをやり直すべきです。一応プロジェクトマネジメントに経験豊富な国交省が関与するようですから、少しはマシな展開になるかもしれません。とはいえ都に負担を求めたりToTo収益金など別サイフに付け替えるだけで誤魔化す可能性もありますから、引き続き国民の監視は必要です。

そして白紙見直しとなったわけですが、安保法制の強行採決で支持率が低下したことから、目晦ましとの指摘がある一方、最終選考に残ったザハ案以外の2案でも概算で事業費が減らないということで、白紙見直ししか手がないということもあります。コンペのやり直しなども言われますが、今回の件で国際的に信用を失ったプロジェクトに応募してくれる得る奇特な建築家が現れるかどうか。実際ザハ・ハディド・アーキテクツが公式にコストアップがデザインのせいではないとのコメントを出しています。

また別の論点として旧国立競技場の残存基礎や地下鉄大江戸線を含む地下埋葬物の支障問題も指摘されていますが、なぜか関連する資料は公開されておりません。そもそもこれでまともなデザインコンペができるわけがないですし、工事が始まれば地雷のように立ちはだかる可能性があります。再コンペやるならこの点の情報公開も必要でしょう。

ま、というわけで、鉄分少な目の今回のエントリーですが、大規模公共工事はまかり間違えばとんでもないことになるという教訓を得ることはできます。事業費査定が甘い中央リニアに幸あれ。

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Sunday, November 02, 2014

ミザリーハロウイン

日銀が追加緩和を決めました。長期国債30兆円買い増しや投信の追加購入などで、年間70兆円のマネタリーベースの増加を80兆円まで増やすというもの。厚労省のGPIFによる株式買い増しの発表と重なったこともあり、市場は大きく反応しました。

日銀が追加緩和 国債購入30兆円増、物価上昇の鈍化懸念
2014/11/1 1:38:日本経済新聞
緩和効果は順調で、追加緩和は不要と自信満々だったものが、4月の消費税増税以来消費の戻りが弱く、物価がなかなか上がらないことに危機感を持ったようです。早い話うまくいっていないということですが、元々デフレ脱却という政策目標が妥当だったのかという議論はなされず、目先のサプライズを演出したものです。そのためにタイミングを図ったようで、ハロウイン サプライズというところでしょうか。

思い出されるのが白川前総裁時代の2012年2月の追加緩和をバレンタイン プレゼントとして市場が反応したことですが、このときは当の白川総裁自身が面喰っていたようで、後に緩和拡大の政治圧力を増すことになり、翌年4月の任期途中の辞任となり、任期途中で引き継いだ黒田総裁の下で異次元緩和に踏み込んだわけですが、同じようなサプライズでもコンテクストはまるで異なります。

世界を見渡せば米FRBは逆にQE3終了を予定通り実行し、当面ゼロ金利は継続されるものの、世界中に拡散した米ドル資金は還流するものとみられており、経済規模の小さい新興国はダメージに身構えますが、米国内ではまだ早すぎるという議論もあり、そんなときに日銀が追加緩和を発表したわけですから、金融筋が歓迎するのは当然です。加えて欧州ECBの量的緩和への期待もありますが、こちらはユーロ参加国間の足並みがそろわず、特にドイツが強硬に反対している状況ですから、日銀のこのタイミングでの追加緩和はウエルカムということでしょう。つまり日銀の追加緩和は国内の信用創造でマネーストックを増やすことなく、外資系金融にいいとこ取りされるだけです。

長期国債の買い増しの意味するところは、日銀の保有国債の償還期間が伸びることを意味します。実際平均残存期間を現在の7年程度から10年程度に延ばすことを算段してます。これで一番喜んでいるのは国債を管理する財務省で、既発債の借り換えをより長期のものに変えても、日銀が買い取ってくれるならば、銀行も積極的に引き受けてくれます。長期債は当然金利も有利ですし、その上日銀が適宜高値で買い取ってくれれば、長短金利差で利ザヤが稼げて銀行にミルク(利ざや)を与えられます。これでますます民間向けの融資は減ることになりそうですが。

保有国債の残存期間が伸びることで、緩和縮小がさらに難しくなります。下手に市場で売却すれば値崩れして長期金利をはね上げてしまいますから、結局期限まで保有して償還を待つしかなくなります。金利操作の手段としては日銀当座預金の超過準備の利息で調整するしかなくなりますが、それは民間融資の一段の圧縮となり、経済に与える悪影響は甚大です。とはいえここまで踏み込んでしまった以上後戻りはできませんから、どう転んでも経済が縮小する未来を確定することになります。今年4月に国会の同意を得て5年の任期を得た黒田総裁でも任期中に正常化はできないわけで、無責任極まりない話です。

2012年3月の日銀政策決定会合では、白川総裁の下金融政策の変更はなかったんですが、1人の委員から追加緩和の提案があって否決されたのですが、4月に総裁副総裁の3名が入れ替わり、例の異次元緩和が決まった時には全員賛成票を投じ、改選されなかった6人中5人の審議委員の心変わりが指摘されましたが、今回は5対4の僅差ということで、いくらなんでも追加緩和は無謀とか、実務的に限界といった意見も出ており、今回は一応政治的に圧力があったわけではなさそうで、せめてもの救いですが、独立性を重んじるべき中央銀行が政治に屈した歴史は消せません。あーしょーもなー。

というわけで、ミザリー(惨め)なハロウインとなったわけですが、同様にほろ苦い思いを感じさせるこんなニュースもあります。

最終バスは満員御礼 都営終夜運行
2014年11月1日 夕刊:東京新聞
都営バスの終夜バスに関しては、以前のエントリーで取り上げましたが、当時危惧したように、アジェンダ(政策課題)が不明確で、現状のどういう問題をどう解決するのかという点が詰められていなかった結果、知事が変わって赤字を理由に簡単に廃止されてしまったわけです。アジェンダが明確で、政策評価ができていれば、赤字は課題解決のコストとして一般財源から補てんして良い話ですが、そこがはっきりしなかったということと、終電後の足という意味では、郊外へ向かう路線こそ本命だったはずで、その意味で民間事業者が手掛ける深夜急行バスの終夜運行のようなものこそ求められていたのではないかという気がします。

また終夜運行のためにバス3台を要していたというのが納得いかないんですが、おそらくバス故に輸送力の限界から多客時の対応を図ったのかもしれません。とすれば最初から運行頻度を上げて利便性に配慮した方が良かったかもしれませんし、多客時でも次の便の待ち時間がそこそこならば、積み残しご免でも良かったかもしれません。この辺は都営バスで運行するかどうかも含めて、今後に生かしていければ良いのですが。

というわけで、猪瀬前知事の思いつき以上のものにはならなかったわけです。元々ニューヨークなどアメリカの大都市で地下鉄の終夜運行を知ったことからの発想だったらしいのですが、おそらく帰国後交通局に打診して夜間保守間合いがあるから無理という回答を得て、それならバスでとなったのではないかと思います。この辺は日本の鉄ちゃんでもあまり知られておりませんが、そもそも日本と欧米とでは保守の考え方が大きく異なります。

欧米ではある程度損傷が進んでから集中保守を行うという形ですから、所謂日常保守がないわけで、それなら終夜運行も問題ないわけですが、代わりに集中保守のときは長時間運休して徹底的に治すということをやるわけです。そのためにハード自体がかなりハイスペックに作られていてメンテナンスフリーになっており、また人件費の高い欧米で、人の集まりにくい夜間作業を回避するという面もあるわけです。それを言うなら日本だってそうですし、少子化で今後ますます厳しくなるわけなんですが、日本では伝統的に予防保全の考え方で、損傷が進まないうちに手を入れて劣化を防ぐという考え方です。

この違いを文化的なものと捉えるとそこで思考停止になってしまいますが、日本の都市鉄道の輸送密度の異常な高さが影響しているのではないかと思います。よくよく考えれば日本でも道路では舗装や埋葬物の保守で不定期に車線を閉鎖して工事やってますから、欧米では鉄道も同様なんでしょう。ただし今の日本でそうれをやろうとすると、大混乱が予想されます。日本の鉄道の定時運行率の高さとも関連しますが、結局定時運行しないと輸送力が落ちて積み残しが出てしまう状況だから、定時運行の要請が強まり、結果的に日常保守で正常な状態を保つことにならざるを得ないということでしょう。加えて岩盤の上の表土が厚く、水分含有量も多い中で、欧米のように堅牢なハードを整備することも難しいということはあります。それも最近は技術革新されてきてますが、既存インフラの作り直しには多大なコストがかかるために、そこは触らずに済ませたいということもあるかもしれません。

というわけで、同様の問題で揺れているのが北海道新幹線の整備で青函トンネルを通過する寝台列車が廃止される問題も、結局新幹線になると0-6時の長大保守間合いの確保が規則で求められていることからきているわけで、高速新線といえども貨物列車の運行を考慮せざるを得ない欧州の高速鉄道とは条件が異なるわけで、海外からは Garden rail (箱庭鉄道)と揶揄される結果になるわけです。当然海外へ輸出となれば高コストの問題もあり競争上不利なわけですが。

最後に、猪瀬前知事は徳洲会から受け取ったとされる5,000万円の現金で追い込まれたわけですが、内閣改造で誕生した新閣僚が次々と疑惑をもたれている現状は猪瀬氏にどう見えているのか興味深いところです。悪質性では比較にならないほど今の方がひどいですし、特に小渕氏に関しては、本人は知らなかったようですが、ほかの人が形式犯と言える政治資金規正法の問題であるのと違って、公職選挙法に抵触するのではないかと言われ、市民有志の告発で東京地検が動く事態となっております。そういやハツ場ダムもこの人の選挙区だったなあ。

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Sunday, October 05, 2014

Suica甘いか消費税再び

アベノミクスの雲行きが怪しくなっております。ま、当ブログでは当初からこうなると指摘し続けてきたわけですから、今さら付け加えることはないんですが、敢えて言えば、日本の潜在成長率の低下がいよいよどうにもならなくなってきたということでしょうか。過去20年の平均値が0.9%で直近10年は0.7%と漸減傾向なんですが、おそらく今は0.5%にも達していないと考えられます。

その中で金融政策や財政政策で経済を底上げしようとしても、例えば公共工事が軒並み入札不調で執行できず、成長が制約されてうまくいかないわけです。4-6月期のGDP改定値が年率換算で実質マイナス7.1%と0.3%の下方修正となりましたが、速報値では予算執行を満額で仮置きしていた結果の下方修正ということで、事態の深刻さを表します。ま、これも以前から指摘されていた問題ではありますが、生産年齢人口の減少が始まった日本では、そもそも潜在成長率は低下せざるを得ないんで、それを無理して財政出動でGDPを押し上げようとすればこうなるというだけの話です。しかも育成に10年はかかる職人の不足ですから、人手不足が直ちに雇用の創出にはつながらないわけで、所謂雇用のミスマッチですから、このことが雇用者全体の賃上げへ波及することもないわけです。

というわけで、Suica甘いか消費税再びということなんですが、景気を見ながら必要ならば追加の経済政策を打つというのが既定路線のようですが、当時のエントリーを読み返しても、税収の上振れ分を補正予算に回す議論が当時から行われておりました。当時は民主党政権でしたが、政権が代わってもこの辺のスタンスが変わらないのに溜息が出ます。むしろ党内の反対派に配慮していわゆる景気条項を盛り込んだことが、今安倍政権の判断に注目が集まる理由になっているというコンテクストの綾は何とも微妙です。実際衆議院予算委の質疑ではこんなやり取りもありました。

衆院予算委:アベノミクス攻防…民主「賃金低迷」首相反論
毎日新聞 2014年10月04日 01時31分
TVニュースでも取り上げられたやり取りですが、アベノミクスの失敗と消費税率アップをリンクさせた民主党の作戦勝ちです。民主党自身は三党合意で消費税率アップを決めたことで国民にそっぽを向かれたわけで、政府が税率を上げることそのものには反対しにくい事情がありますが、アベノミクスの失敗で事情が変わったとするならば、攻めに転じられるわけです。消費税問題に限定すれば、野党で足並を揃えやすいということもあります。

少し補足しますが、円安でも輸出が伸びないことは、最初から分かっていたことで、既に製造拠点の海外移転は以前から進んでいて、2005年には貿易収支の黒字を所得収支の黒字が上回る逆転現象が起きています。長年の黒字の累積で海外資産が拡大した結果、その利益配当が拡大したわけで、これ自体は自然な流れですが、注意が必要なのは貿易収支はGDPに直ちに反映されますが、所得収支は税や消費や投資の形で国内で移転されない限りGDPに反映されないということです。

企業保有の現物資産ならば、その利益を株主配当で還元したり、従業員に賃金として配分配分しない限り、単なる貯蓄にしかならないし、企業貯蓄の増大は、銀行融資の減少と対ですから、いくら日銀が金融緩和でマネー供給を増やしても、その先へ出て行かない限り意味がないわけで、むしろ企業は過去の融資を返済さえしますから、実際には融資の減少すなわち信用収縮が起きているわけです。金融政策では解決できない問題です。

先進国で海外で稼いだお金の活用法として、株主など投資家への還元を重視して逆に資金集めに使えば英米型の金融資本主義になりますし、賃金の形で労働者へ手厚く分配する大陸欧州型にしろ、政府が介在して社会保障の形で国民に還元する北欧型高福祉社会にしろ、海外所得の国内還元策として見ると、日本はどの観点からも中途半端という評価になります。ちなみに1人当たりGDP成長率で見る限り、社会保障重視の北欧型が最も成功している社会モデルです。スコットランドの独立運動が社会変革を目指していたのも、身近にお手本があったということは言えます。

で、本題ですが、消費税を2014年4月に5%→8%に、2015年10月に8%→10%と2段階で増税を決めた結果、JRなど鉄道事業者から、ICカード乗車券システムの改修が二度手間になることが懸念され、特に利用の多い近距離の運賃で端数処理の都合で価格転嫁がやりにくいということもあり、JR東日本がICカード乗車券に限って1円単位の端数処理とする現金とICの2本立ての運賃が申請され、首都圏を中心に他社も追随しました。

ただし詳細は事業者によって判断が分かれています。JR東日本では山手線内その他の特定割引区間を含む電車特定区間の新運賃を現金は10円単位の切り上げ処理とし、IC運賃が必ず現金運賃を下回るようにした一方、東海、西日本と共通となる幹線運賃、地方交通線運賃は10円単位の四捨五入としたため、IC運賃が現金運賃を上回る区間が発生しております。JR東日本の公式見解として、3社共通運賃なのでやむを得なかったとしています。

在京私鉄各社は、JR電車区間に倣って現金運賃を切り上げとしたところと四捨五入としたところに分かれたようですが、後者の場合でもIC運賃が上回る区間ではIC運賃を現金運賃に合わせて減額する一方、IC運賃が安くなる区間の端数に上乗せして全体を調整するというややこしいことをしています。対応が分かれた理由ですが、おそらく消費税の2度目のアップの時に、現金運賃とIC運賃の二元運賃を解消する意図があると思います。こうすることで値上げの印象をわかりにくくしようということだろうと考えます。つまり現在の8%はあくまでも過渡期という考え方なんでしょう。とすると消費税が上がらないと、現在の現金とICの二元運賃が固定化される可能性はあります。

バスでも首都圏では1円単位のIC運賃は普及してますが、運賃表示機はそのままで、現金運賃のみの表示となっております。そのためにICカードで運賃支払いすると、思わぬ端数が出て???となることも多々ありますが、一応バス停やバス車内の広告枠で現金とICの双方の階段表を掲示したりはしていますが、いちいち見る人はほとんどいません。で、バス特のバスポイントも端数が出るわけですから、月替わりで端数が出ると損した気分になります^_^;。セコいですが、精神衛生上はよろしくないところです。

そんな中で意外な事業者がこの問題に答えを示しました。バス専業最大手の神奈川中央交通ですが、従来のLED式運賃表示機に代わって大型のカラー液晶パネルの新表示機に交換されています。カラー表示で現金運賃のほかにIC運賃も表示しており、文字が大きく視認性も良いなど、神奈中らしからぬ^_^;親切仕様です(笑)。まぁ首都圏でも高齢化が進んで、バスの乗客も高齢者に比率が高まっていますから、ここまでしないといけない時代なのかとちょっと驚きです。加えて藤沢。茅ヶ崎両営業所で中ドア乗車後払い式に乗降方法が変更され、まるで神奈中じゃないみたいです(爆)。前払い式の他営業所でも表示機は交換されているようなので、今後波及するのかもしれませんが、つくずく乗り合いバスの装備品はどんどん複雑になります。古典的な手動式運賃箱と両替機を備えた鎌ヶ谷観光の生活バスちばにうがむしろ新鮮に見えます(笑)。当然ICカードは使えませんが。

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