地方公営交通

Saturday, November 04, 2023

笑う鬼退治

鬼が笑う2024年で取り上げたインボイス問題のニュースです。

インボイス導入1カ月「想定以上に負担」 混乱続く企業:日本経済新聞
サラリーマンの経費精算でインボイスの有無の確認作業で現場負担があることは国税庁も認識していて1万円以下の取引でインボイスが省略できる経過措置を決めたりしましたが、ネット取引での登録ナンバー確認など次々に面倒な問題が湧いて出てますし、ドライバー不足なのに運送大手が委託先の多重下請けが仇となって委託先の登録の有無を把握しきれないなどの問題も起きています。独禁法違反が疑われる委託切りも見られるなど混乱しています。

これらはインボイス自体の問題というよりも説明不足や日本的な商慣習故の問題だったりしますが、ただでさえ働き方改革の2024年問題でドライバー不足が言われる中で、タイミングが悪かったとは言えますが、欧州付加価値税制度では機能している制度が日本ではこうなってしまうというのは、日本社会が抱える問題と見るべきでしょう。欧州でも当てない民主政治で損くらってますで取り上げたギリシャショックのようにヤミ営業でインボイス発行しない脱税が横行していたなんて例もありますから、明示された法令も社会の受容次第で機能を失うことは同じではありますが。

ギリシャショックは同時に財政破綻のリアルを示しており世界最悪の日本財政の反省材料にもなります。長期金利が7%になると財政が持続可能でなくなることを明らかにしました。今の日本の減税議論に違和感しかありません。それも所得減税に拘ったために実現は来年6月という役に立たないものですし、1年限りなら後に増税が待っている訳で、リカードの中立定理が働く故に減税くそメガネになります。減税うそメガネとも言われているようですが^_^;。だからといって恒久減税は論外ですが。

別の視点ですが今回の減税は税収の上振れ分の還元を謳っている訳ですが、その根拠となるのが22年度の10兆円超の税収上振れでして、円安による企業業績の上昇による法人税収とインフレによる消費税収が主なもので、7:3の割合です。昨年円相場が激しく動いた結果ですが、今年は150円前後で膠着しており、去年のような上振れが起きるとは言えませんし、インフレは税収増をもたらすと同時に政府支出も増やします。今年度の予算は当然インフレを踏まえて連動する社会保障費は拡大しますし、人件費や資材費の上昇は公共事業費も上振れさせますから、年度をまたいだ歳出増で消化されます。故に減税財源にはならない訳です。

日銀、長期金利1%超容認 植田総裁「大幅に上回らず」:日本経済新聞
日銀がYCC見直しに動きましたが、1%変動枠に長期金利が近づいて維持困難と判断して限度からめどへと表現を変え1%超の金利を容認する姿勢を見せました。但し急激な変動は抑えるということで緩和継続を謳っておりますが、実態は市場の圧力に押されての判断ということですね。それでも不十分ということで為替は円安に振れて150円のバリアを突破しており円安傾向は続きます。

とはいえ変動幅は小さいですから、上述のように法人税収の上振れ効果は限られます。但しインフレ要因ですから消費税収の上振れはある程度発生しますが、政府支出増を上回る水準になるかどうかは微妙です。ということは税収上振れを見込んだ減税は財源的には微妙ってことです。増税メガネと悪口言われたから減税を打ち出すとか、思いつきで政治をやるなということですね。

岸田政権の打ち出す政策は。例えば少子化対策と称して児童手当の拡充を打ち出し高校生も対象に加えてますが、一方で自民税調で高校生の扶養控除圧縮が議論されているという具合に目先を誤魔化す姿勢が見られます。基本的に国民をなめているとしか思えません。手当拡充よりより高校無償化の方が効果的ですし予算も少なくて済みます。という具合に目につくところをやったフリで乗り切って選挙の票稼ぎというあざとい姿勢は国民に見透かされてます。桃太郎よろしく鬼退治しても宝は得られません。桃太郎は岡山だけど。

2024年の働き方改革で人手不足が言われている中で少子化対策でバラまくというのは本当の問題解決にはならないばかりか、仮に出生率が上がって子供が増えたところで家庭内のケア労働を増やして特に女性の就労を圧迫しますから、人手不足は悪化します。持続可能な賃上げを打ち出して法人減税をしても法人税を払っていない赤字企業は蚊帳の外ですし、仮に賃上げが定着しても企業の人件費上昇は価格転嫁に繋がりますから賃金インフレで結局実質賃金は伸びないですし、新NISAで家計貯蓄を資産運用へという画を描いても、今の市場環境では国内株式に資金が回る保証はありません。日銀のETF購入で下駄を履かせた官製市場の現在の株価では個人投資家が得られる利益は限られます。一方でそれでも株価が上がらない日本企業はアクティビストの草刈り場です。

京成電鉄、ディズニーでゆがむPBR 実態は「1倍割れ」 - 日本経済新聞
お業績好調なオリエンタルランド株の保有分の時価が1.6兆円と自信の時価総額を上回る水準にあり、OLC株を除いた本体のPBRは0.5倍程度と見積もられ、英アクティビストファンドから一部売却を迫られております。京成電鉄の場合コロナ禍で空港輸送が大打撃を受けた不運はありますが、逆に空港輸送の1本足打法の脆弱性が露呈した訳で、オリエンタルランドのような優良企業を連結対象にしていることがリスク要因となっている訳です。

京成電鉄には新京成電鉄という優良企業をグループ内に抱えており地域輸送に特化した事業環境もあってコロナ禍の影響も軽微だった訳ですが、その結果コロナに勝てない国で取り上げたように完全子会社化して元々の保有分の含み益由来の負ののれんで益出しするなどしてきましたが、そんな一過性のことでは事態は改善せず次のステップを踏みます。

京成電鉄が傘下・新京成を吸収合併へ 25年4月 - 日本経済新聞
継続的に利益を計上して株価を上げるには、経営統合して運営面で規模の経済を狙うしかない訳ですが、悩ましいのは運賃の共通化問題です。共通化して運賃通算すると初乗り運賃の二重取りが無くなり乗客にはメリットがありますが、運賃収入の減少は避けられず寧ろネガティブな評価になりかねません。故に当面現行運賃を維持するということになりました。

別運賃自体は現行制度で禁止されておりませんし、京成自身もちはら線と成田空港線(スカイアクセス)は別運賃です。それぞれ歴史的事情があって、ちはら線は元々小湊鉄道が東京直通を狙って京成千葉(現千葉中央)―海土有木間の地方鉄道免許を申請して交付されたことに始まります。京成線を通じて東京進出を図った訳ですが、4ft8in1/2(1,435㎜)電化の京成と3ft6in(1,067㎜)非電化の小湊では直通はできない訳で、長らく免許更新を続けながら棚ざらしになっておりました。京成との合弁で千葉急行電鉄を設立して事業化を模索したものの進まず、沿線予定地の宅地開発が具体化して途中の千原台(仮)までの事業化が動き出し実現しました。しかしバブル期の仇花で宅地分譲は遅々として進まず、業績が上がらずに京成が救済合併して京成ちはら線となりましたが別運賃は維持されました。故に対都心でJRに乗り換える場合には千葉中央と京成千葉の間の京成線運賃の合算が重荷になりますが、赤字路線を引き受けた京成としては簡単に運賃を弄れないわけです。

成田空港線は元々三セクの北総開発鉄道(現北総鉄道)の路線を利用していて、小室以東は千葉県営鉄道由来の宅地開発公団線として別運賃だったこともあり、高運賃で利用が低迷しました。宅開公団は小泉改革の特殊法人改革で統廃合や名称変更の結果、鉄道事業を切り離すことになって京成が引き受け第三種事業者の千葉ニュータウン鉄道となり北総が第二種事業者となって一体化されたものの高運賃は改善されず、住民訴訟にまで発展しました。結果的には成田新幹線ルートを利用した北総ルート(成田スカイアクセス)が整備され北総線の運賃の見直しをすることで和解しましたが、それ故に北総線と共通化された成田空港線運賃も安易に動かせない政治性を帯びた訳で、やはり解消は困難です。

という訳で、新鎌ヶ谷で接続する新京成線と成田空港線の運賃統合はやはり無理となると、京成津田沼での京成本線・千葉線との運賃通算に限られる訳ですが、これも新京成線が新津田沼でJRと乗換可能で船橋乗換からシフトすることになると京成にとっては減収要因になります。船橋乗換の場合も東京メトロ東西線に向かう場合はJR線を挟んで初乗り運賃の重複負担となりますが、東京メトロの低運賃に助けられています。京成西船に優等列車を停めないのはJRに気を遣っているのかも^_^;。

ということで、当面車両の共通化や乗務員も含めた運営の柔軟化などで地道に益出ししたり、それぞれが抱えるバス事業の再編などで合理化を進めるぐらいしか打つ手はない訳で、アクティビストの納得を得るハードルは高いといえます。こうした問題を抱えて身動きが取れない日本企業は数多くあり、海外投資家を通じた国富の流出を助けるだけです。鬼たちも大爆笑-_-;。

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Sunday, July 30, 2023

本気の気候変動対策

豪雨の梅雨が明けて猛暑の夏となりましたが、豪雨の影響は多岐に亘ります。

大雨、排水能力超え 秋田大雨1週間「どこの都市でも」:日本経済新聞
秋田市の水害は典型的な内水叛乱です。かがやきを失った北陸新幹線 で取り上げた川崎市のタワーマンション被害のように、豪雨で雨水が下水道の処理能力を超えて流入した場合、逆流して住宅等に被害をもたらすもので、内水氾濫と呼びます。タワマンの場合電気設備を地下に置くケースが多く、水没して停電という被害が起きた訳ですが、停電するとエレベーターが使えず揚水ピンプで水道水をくみ上げて落とす給水設備も使えなくなりますから地獄です。戸建てでも床上浸水もありますし、都市部ならどこでも起こり得るものです。河川の越提氾濫と違って見た目で危険がわかりにくいし、自治体のハザードマップに記載されているとは限りません。

とはいえ地下の下水道の能力増強は簡単ではありませんし、当然多額の費用が掛かります。例えば東京都で大規模な地下調整池を設けたりしてますが、東京都の財政力だから可能ということもありますし、それすら想定外の豪雨が続けば氾濫は起こり得ます。つまり完全な備えは難しい訳です。また確率の低い豪雨への備えにどれだけ公費を使うかについての合意形成も困難です。また人口減少下では公費負担を簡単には増やせません。

そもそも都市化で人口が集積するから下水道を整備しなければならなくなる訳ですが、例えば開発に適さない低湿地を公費で購入して調整池にするとかして、過剰開発を抑制する方向で考えて下水道への雨水流入を抑える方が安上がりで現実的になるんじゃないかと思います。上記かがやきエントリーで北陸新幹線の車両基地が低湿地に立地していたこともありますが、作っちゃいけないところに車両基地を作っちゃったということも言えます。財源制約が強い整備新幹線故に安い底地買いで被害を受けたとも言えます。

てことで苦い経験をしたJR東日本ですが、国鉄時代に建設された東海道新幹線の大阪運転所のように近くに天井川があって、当初から水害対策が考慮され、民営化後も車両を盛土上の本線に避難させる訓練を積み重ねてきた訳で、その経験はJR東日本に引き継がれなかった訳です。とはいえJR東海は水害対策が万全かと言えばそんなことはなく、名古屋の天白川の氾濫で当時の葛西敬之社長の運行継続の指示で多数の列車が立往生して車内泊を強いられましたし、今年の6月豪雨では早めに規制をかけたものの混乱しました。

東海道新幹線、大雨混雑防げ ダイヤや情報伝達改善へ:日本経済新聞
東海道新幹線の約半分の区間が盛土で、パイプを埋め込んで水抜きしたり土留めの擁壁で法面崩落を防いだりといった対策はされてますが、雨量が植えれば盛土が緩んで路盤や法面の崩落は起こり得ます。列車の通過に伴う振動がきっかけになることもあり、沿線の雨量計を見ながら徐行や運休などの規制を決める訳ですが、問題は情報伝達の拙さで駅に乗客が滞留し混乱したことです。JR西日本のように予報段階から計画運休するぐらいしないと結局混乱は避けられないんじゃないでしょうか。

山陽以降の全幹法規格の新幹線では高架橋主体で盛土は取付部などに限られますが、それでも豪雨による混乱は完全には避けられない訳ですから、盛土の多い東海道新幹線ではより慎重な対応が求められます。しかしのぞみ増発で輸送能力を高めてしまったが故に運休の判断が難しくなっているということも言えます。JR東海はそれ故に中央リニアを作るんだとしていますが、輸送力は東海道新幹線には及びませんし、第一難工事で開業の見通しが立たない状況です。

一方の北陸新幹線も敦賀で当面足踏みの状況が続きそうです。やはり難工事が予想される小浜京都ルートに拘らず、早期開業が見通せて事業費も少ない米原ルートで実現することで代替ルートは確保できます。但しJR東海の孤立主義が問題を難しくしている面があります。また豪雨にしろ猛暑にしろ気候変動の影響と見るのが妥当ですし、欧米やオーストラリアなどでも熱波や山火事を気候変動に絡めて報道されることが増えてますが、日本では見られません。正直言って人口減少に対応した開発抑制はCO2排出削減にもなりますし、実際電力需要は縮小しており、再エネ転換がやり易い状況になってきています。政府が言うGXの本気度が疑われます。

水害じゃありませんが首都圏ではこんな輸送障害がありました。

山手線全線で運転再開、11万人に影響 信号装置が故障:日本経済新聞
月曜朝の輸送障害で混乱しましたが、原因は信号トラブル。しかも大崎の東京総合車両センターの本線出口部分の機器トラブルで主要車両を本線に出せずに運休という致命的なもんです。思い出されるのは2015年の籠原駅の地落事故で電留線から車両を出せなくなった輸送障害ですが、今回は信号システムが原因です。

首都圏ではATOSと呼ばれる運行管理システムで列車の進路選定や遅延時の指令業務から駅の案内表示に至る一連の自動化がされている訳ですが、車両基地の出口のトラブルで車両を本線上に出せなければどうにもなりません。勿論システムを解除してマニュアル操作することは可能ですが、その場合車両基地に収容された車両を1編成ずつ手作業で進路を選定し、手旗などで合図しながら動かすことになりますから、大量の要員を確保して慎重に行う必要があります。当然処理能力は落ちますから、早めの復旧はしたものの平常の6割程度の運行に留まった訳です。JR東日本はそれなりに努力した結果です。

但し乗客への告知や案内は徹底しており、大きな混乱は見られませんでした。山手線は京浜東北線との並走区間の代替輸送と共に地下鉄網による代替輸送が可能という立地もありますから、元々冗長性が確保されているとも言えますし、加えてコロナ禍によるリモートワークでピーク輸送量が減っていたことも幸いしました。金融危機は核より怖いで取り上げた通勤定期運賃値上げの影響もあるかもしれません。つまり需要抑制のための値上げを実施ている訳で、こうした冗長性の確保はトラブル対応にも有効ということですね。効率重視一辺倒は見直す時代と言えます。

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Saturday, April 29, 2023

東京五輪の落とし物

ジングウ・ファミリアでケチがついた新国立競技場は二転三転、Undoしたい大草原wwwの小さな森で森元首相が黒幕で五輪の目的は都市計画変更による神宮の森の再開発だったことも五輪霧中で指摘しました。ザックリ言えば日本初の風致地区指定で開発が制限されていた神宮外苑ですが、一部国有地はあるものの私有地に開発制限をかけることに対する地権者の不満はくすぶっていて、都もそれに応えるべく密かに再開発計画を作っていたものです。二転三転はあったものの、思惑通り再開発にこぎ着けた現在です。

「神宮外苑を、未来につないでいく。」神宮外園地区まちづくりの広告に大竹が一ツッコミ「大きな木切って、小さい木を植えますって本数かい!」:文化放送
利権のふえる訳ワカメちゃんでも取り上げましたが、故坂本龍一氏が都知事に宛てた手紙が話題になり、イチョウ並木の伐採などで反対運動が拡大中で、大手新聞のカラー一面広告を出して火消しに走った訳ですが、大手紙にこのサイズのカラー広告を出せる金銭的湯裕があるところを見せつけて、暗に記事掲載停止を示唆するメディア報道への圧力でもあります。実際殆どのメディアでは取り上げておりません。

それに伴って神宮球場や秩父宮ラグビー場などの建て替えや高層ビルや商業ビル建設も言われておりますが、これだけの大規模開発を都民の同意を得ずに密かに進めたことが問題です。ザハ案で揺れた新国立競技場のドタバタも、高さ制限解除の口実だったということですね。しかも制限解除に伴って容積率も緩和されますが、容積率の余剰の所謂空中権転売によって、近隣の伊藤忠本社ビルの建て替えで伊藤忠から代金が支払われるというおまけつき。試算では1,300億円ぐらいと言われます。故に一部で言われる神宮の森の維持費で明治神宮も大変なんだという説も大ウソってことです。

という訳で、五輪のレガシーは金まみれで、しかも新国立競技場のように使用料が高すぎて稼働率が低迷して赤字垂れ流しですが、再開発に群がった利権屋はそんなことお構いなしに自分たちだけで儲けて山分けの世界です。しかも政権与党に圧力をかける神社本庁のような宗教団体を利する形で旧統一教会問題で関心を集める政治と宗教の不適切な関係をもたらしている訳です。ツケは国民に回ります。

レガシーというのも憚られるこんな落とし物だらけの五輪で国民は不幸です。金満五輪のレガシーとしては選手村を改装して売り出された晴海フラッグの問題もありますが、こちらは地場相場より安い売り出し価格故に売れ行き好調ですが、1人で多数の区分を購入する明らかな富裕層の投資と思われるものが多く、相場に見合う利益を上乗せして転売されることは確実です。ここでも五輪は食い物にされてます。

そして地味ながら五輪には間に合わなかった東京BRTという落とし物もあります。元々五輪前に開通予定だった環状2号線を専用連接バスで運行する計画で、現時点では陸の孤島となっている晴海フラッグの住民輸送及び豊洲市場など湾岸と都心を結ぶ新交通として計画され、当初国産FCV連接バスを予定していたものの、車両開発も間に合わず、とりあえず対車体型の国産FCVバスのトヨタSORAと、いすゞのHEV連接バスが用意され、五輪期間中の選手輸送に活用した後に公募の運行事業者に運行委託ということで、京成バスが選ばれ東京BRTという別会社を設立してとりあえずプレ運行中です。ルートは現状3路線です。

幹線ルート:’(虎ノ門ヒルズバスターミナル)―新橋⋯東京テレポート
晴海ルート:虎ノ門ヒルズバスターミナルー晴海BRTー豊洲市場(ミチノテラス豊洲)
勝どきルート:新橋―勝どきBRT
勝どきルートは他の2ルートと完全に重複しておりますが、おそらく本格運行時に晴海フラッグに乗り入れると共に、東京駅延伸の含みもあるようです。新橋、勝どきBRT、豊洲市場(ミチノテラス豊洲)は乗継停留所に指定されており、ICカード乗車券で最初の乗車から60分以内で乗継成立としており、大人220円、小人110円で一定エリアの面の輸送をサポートしている点が一般路線バスと異なります。

湾岸のマンション地帯故にそれなりに利用されてはいますが、連接バスが必要な程の需要は現時点では見られず、また虎ノ門ヒルズバスターミナルや新橋のバス停がわかりにくいなどの課題もあります。そして豊洲市場に関しては都営バス市01系統が新橋駅前のJR駅前から210円で運行しており、豊洲市場が目的地なら利便性で勝ります。加えて都営バスのICカード90分ルールで他系統との乗継で100円引きの割引が受けられます。

将来はつくばエクスプレスとの直通が示唆される湾岸地下鉄の建設に繋げたいところでしょうけど、現状では地下鉄建設が必要な程の需要はなさそうです。それでも晴海フラッグの資産価値維持のためには強行される可能性があります。何とも重たい五輪の落とし物です。

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Sunday, April 16, 2023

成長しないこどもの日本

こどもの日本でJアラート発令を受けての東京メトロの運休措置で議論がありましたが、今回も議論を呼ぶ結果となりました。

北海道新幹線など一時運転見合わせ 北朝鮮ミサイルで:日本経済新聞
政府発表では7時半ごろには発射を確認していたものの、Jアラート発令は7:55で30分近いタイムラグがありますが、その間に軌道予想して落下点を割り出して北海道南西部の陸地に落下する可能性があると判断しての発令ということで、過剰反応とされた2017年の東京メトロとは違うとは言えますが、議論を呼んでおります。

東京メトロの場合は地下鉄駅へ人々が避難して混乱することを避ける為だったようですが、繰り返しますが日本の地下鉄には核シェルターの役割はなく、寧ろ人が殺到することによる混乱の方が怖いのは確かです。故に東京都が緊急避難場所として指定した地下鉄駅も東京メトロと都営地下鉄のやや閑散な駅が中心で、都心の大規模駅は外されております。地下鉄駅と直結のビル等との調整が困難なこともあるようです。つまりJアラートが発令されても殆どの場合逃げ場がないのが現実です。

一方で今回の北朝鮮のミサイルは固体燃料ICBMということで、発射のための燃料注入などの事前準備情報が得られない上に、今回さらに発射後の軌道修正もあったようですし、また日本側のレーダーが見失うという失態もありました。つまり北朝鮮のミサイルは確実に進化していて、迎撃も困難だし発射準備段階を捉えて敵基地を叩くということも困難ということで、ミサイル防衛システムや敵基地攻撃能力が無効ということでもあります。

加えてJアラート発令の迅速化も進められていたのですが、今回も発射から発令までのタイムラグが大きいのも気になります。そもそもJアラートは総務省消防庁所轄の災害警報システムで、地震や津波など時間的猶予の少ない自然災害で避難を促す目的がある訳ですが、当然ながらミサイルのレーダー追尾は所轄外な訳で、防衛省から官邸を経て総務省に指示が出るという形となる訳ですから、発令にタイムラグが出るのも仕方ないのでしょう。今の形だと国民の命を守る機能は心許ない状況です。という具合に何か釈然としない政府の対応です。

やはり国民の命よりもアメリカからの防衛力強化要請の方が優先されているのが現実です。これはウクライナ戦争で標的にされたチェルノブイリやザボリージャの原発の危険性は明らかなのに、原発再稼働に前のめりになれることに通底します。例えばこれ。

敦賀原発2号機の安全審査を再中断 規制委、資料不備で:日本経済新聞
日本原電敦賀発電所2号機は原子炉直下には活断層があると指摘されて停止しておりますが、日本原電はそれを否定して再稼働しようとしておりますが、当然ながら活断層があるという指摘を否定するエビデンスを示す必要がある訳です。規制委も門前払いせずに申請を受け付けたものの、書類の不備で却下され、再提出されたけど再度却下というのがこれまでの経緯です。「書類の不備」と報じられてますが、実態は数値の改ざんであって悪質です。これ東電の柏崎刈羽の不祥事で審査中断された経緯と似ています。

日本原電は電力9社と電源開発が出資する発電専業の民間会社ですが、敦賀の他東海第二原発も保有しており、こちらは周辺自治体の同意を得る過程で杜撰な避難計画がすっぱ抜かれていて物議を醸しています。つまり現状原発は休眠状態で稼働していない訳ですが、そんな中での政府の原発活用方針の打ち出しです。やはり国民の命よりも原発再稼働優先という訳ですね。こんな会社に原発動かして欲しくないです。

脱炭素目標の欺瞞で取り上げたように、稼働中の9基(運転停止中の高浜4号機を含む)で電源構成比6%で目標が22%ですから、許可済み7機と申請中11基を含む27基全てを稼働させても足りず、40年超の高浜1号機などで再稼働が計画されております。目標達成には30基程度が必要なので、政府は元々原発活用に舵を切るつもりだった訳で、最初から欺瞞だった訳です。

しかも目標年度は2030年度であと7年しかない訳ですから、いかに無理な数字かということです。但し成長率1.7%という高めの想定ですから、2015年以降の実績値である0.24%とすれば総需要が抑えられて原発は10基程度で済みます。つまり謎の運転停止中の高浜4号機を除外しても、規制委の許可を得た7基中2基程度が稼働すれば当面の需要は賄えます。故に原発再稼働を急ぐべきだという議論はミスリードです。そもそも再エネ38%もドイツで既に達成した水準ですし、アメリカでも再エネ活用が進んでいます。

米国の発電量、再エネが石炭を初めて抜く 2022年:日本経済新聞
欧州のようにFITで政策誘導した訳ではなく、しかも戸建てや工場の屋根のパネルの発電分は含まないですから、実態として再エネ活用が進んでいる訳です。インフレ対策法で再エネ投資が促進される状況もあり、日本より先を進んでいます。日本では実現可能性を無視した議論がまかり通る現状ですが、想定のように成長できていない現実を直視すべきです。同様のことはこちらにも。
大阪のIR認定へ、政府調整 14日にも推進本部で議論:日本経済新聞
詳述は避けますが、人気テーマパークUSJを上回る利用客を想定していて実現可能性に疑問符がつきます。府知事と市長のダブル選挙のみならず議会の単独過半数を得た維新のいい加減な計画に民意のお墨付きを与えたことで、大阪の未来が心配です。怪運国債市場の蓋 で指摘したように万博も微妙だし。

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Sunday, March 26, 2023

金融危機は核より怖い

何かいろんなニュースが流れてますが、違和感てんこ盛りです。例えば放送法文書を巡る国会論戦ですが、問題の本質は政府による報道機関への介入問題で、当時の磯崎陽輔首相補佐官の「政治的公平性」への説明を求めていたとされる問題ですが、放送法の「政治的公平性」は放送局の自主的な取り組みを定義したもので、政府による介入はロシアや中国のような報道規制と変わらない訳で、この点をこそ問題にすべきなのに、高市大臣の進退問題に争点がズレていることが気になります。

事実なら「法の支配」を掲げてロシアや中国を批判できない問題ってことです。そして岸田首相がウクライナ政府の招きを受けてキーウ訪問した際にも「法の支配」を連発してましたが、言葉の意味わかってるかい?強力な国家主権を法で縛るという原則を「法の支配」と呼ぶのであって、ロシアや中国はそれに反したことをしている訳で、放送法文書問題はそれに疑義を生じているということなんだけど。

岸田首相のキーウ訪問に関しても報道で公開されてセキュリティへの言及が言われますが、バイデン大統領のキーウ訪問と同じ行程を辿ったようにウクライナ政府の主導っで行われたもので、外国要人来訪の通知はロシア政府にもされていると考えられます。勿論ロシアが無視して攻撃することはあり得ますが、相互承認で外交関係を築くという主権国家の原理から言えば、他国の首脳を死傷させる可能性のある行動は外交上の孤立を招く愚行となる訳で、ロシアもその辺は理解しています。

それより偶然なんでしょうけど習近平総書記のモスクワ訪問と日程が被ったことで、いろいろ憶測を呼んでますが、中ロ接近のニュースを薄めたという意味で一番メリットを得たのはウクライナ政府でしょう。そして中ロの首脳会談で見えてきたのは戦況が劣勢のロシアにとってはある意味渡りに船ではあります。形式的な中立地帯を設定して休戦して兵や装備を立て直す時間稼ぎがしたいのが本音でしょう。但しウクライナ政府が同意するかどうかは微妙ですが、中国にとってはアメリカが失敗した和平協議を中国主導で行ってマウント取るだけでも意味があります。

中国の本音はウクライナが一帯一路の出口に当たり権益を確保したいと同時に、二正面作戦に動けない米軍の弱点として紛争が続く現状は実は有難い訳ですし、またロシア産原油などの資源を安価に買い叩けるし貿易決済に人民元を用いることでロシアを経済的に従属させることすら可能ということでいいことずくめです。先端半導体の供給制限は確かに痛いけれど、自国開発の時間稼ぎになりますし、更に言えば宇宙戦争は終わらないで取り上げたロシアの濃縮ウランの中国への供給というオプションもあり得ます。

とはいえ中国はアメリカでさえ明言できない核の先制使用や非核国への核攻撃の禁止を明言しており、ロシアに対しても核兵器使用をけん制している訳で、中ロ接近は寧ろロシアの核攻撃の可能性を低くしたと見ることができます。そして悪性インフレで成長が鈍化しつつある先進国と比べて尚成長余地があり経済力を縮めてくる訳です。「戦わずして勝つ」孫氏の兵法を百も承知の中国による台湾への軍事行動は当面ないということですね。

他方欧米で同時多発的な銀行不安が広がっております。米シリコンバレー銀行(SVB)破綻に始まる米地方銀行の破綻ですが、FRBが最後の貸し手機能を発動し、連邦政府も預金保護を打ち出して沈静化を図ってますが、事態は予断を許しません。SVBの破綻は典型的な取り付け騒ぎですが、SNS時代の情報拡散スピードがもたらした問題でもあります。

テック・金融が負の共振 米、SVBなど2行の全預金保護:日本経済新聞
SVBはシリコンバレーのテック企業やベンチャーキャピタル(VC)が預金者に名を連ねますが、有望とされるスタートアップ企業は余剰資金を投資に回すから損益は赤字だったりする訳で、通常の銀行はなかなか取引してくれない訳ですが、SVBはそんなテック企業の預金を集めて決済サービスなどの機能を提供してきた訳です。

テック企業やVBは低金利もあって投資資金は社債や株式で調達するから、融資は主に運転資金中心でしたが、スタートアップの株式公開(IPO)で大金を手にしたテック企業やVCの預金が膨張した結果、運用先に困って債券投資を拡大したのですが、FRBの利上げで保有債券に評価損が生じて含み損を抱えた結果、格付けが下がる懸念から債券を売って減損処理をした上、増資を発表したところ、逆に危ないんじゃないかといううわさがSNSで拡がって預金者の企業やVBが預金引き出しに動いたという流れです。続いて破綻したシグネチャー銀行は暗号資産関連の取引が多かったことから価格の乱高下で不安が広がったものです。共にテックと金融の負の連鎖がもたらしたと言えます。

少し長い目で俯瞰すると、リーマンショック以来の金融緩和の継続でマネー流通量が増加し、余剰マネーは資産価格を押し上げた訳で、その結果がスタートアップ企業のIPOでの資金調達を容易にしたということは言えます。低金利で運用先に困ったマネーがVCを通じてスタートアップ企業に流れ込みIPOでさらに膨張という循環が所謂ユニコーンブームをもたらしたとも言えます。FRBの金融引締めや利上げがそれを逆回転させたということですね。但し金融引締めが間違いという意味ではありません。

日本のバブル崩壊も元はといえばプラザ合意から始まる円高対応で日銀が低金利政策を続けた結果、余剰マネーが株や不動産に集まって膨らんだバブルが、国の不動産融資規制と日銀のバブル退治の利上げで弾けたものですが、そもそも長期間の金融緩和でもたらされた余剰マネーは簡単には解消せず、利上げ局面で予想外の動きをする訳です。つまり繰り返されてきたバブル崩壊の始まりと捉えることができます。一方クレディ・スイスの破綻は全く異なる展開です。

サウジファンド、クレディ・スイスで損失 運営に危うさ:日本経済新聞
サウジアラビアのサルマン皇太子による脱産油国政策で、石油精製や石油化学工業の国内立地促進による近代化と共に、金融への傾斜でクレディ・スイスに接近しました。米銀に頼っていては自前の金融業育成はままならず、サウジ・ナショナル銀行(SNB)がクレディ・スイスの株主となって影響力を行使し、国営ファンドの資金運用に注文を付けていたのですが、高利回りを追い求めるハイリスク投資を強要された一方、ECBの利上げでやはり含み損を抱えたものの、SNBは救済を否定し破綻に至ったものです。

但しこちらの破綻処理は問題を孕んでまして、AT1債の無価値化を発表して混乱しています。AT1債とは銀行の中核的的自己資本'(Tier1)としてバーセル銀行委員会によって認められた永久劣後債で、利回りが良い一方、一定条件で減損されたり株式転換されたりするハイリスク債券ですが、弁済順位下位のTier1債権の中で株式が保護されてAT1債が無価値化されるのは、SVBの保有株式の毀損や希薄化を回避したものと見られていて債券保有者の一部が法的手段に訴えるとしています。産油国の無茶な資金運用がもたらした災難ですが、破綻処理にも不透明さを見せております。

そしてAT1債は他の欧州銀行でも多数発行しており、やはりその連想で銀行不安が広がっているという状況にあります。という訳で米と欧州とそれぞれ異なった展開で銀行不安が広がっている訳ですが、邦銀はといえば、やはり爆弾を課開けています。特に地方銀行の行き詰まりは深刻で、金融庁主導で経営統合が進んでますが、地方の過疎化と経済停滞でそもそも融資先が見当たらず、日本国債は日銀の爆買いで市場から締め出され、已む無く外債投資に傾斜してますが、円安で緩和されているとはいえやはり欧米の利上げで含み損を抱えております。ただ日本の場合日銀にリスクが集中しており、超弩級の時限爆弾となっております。

日銀が異次元緩和を続ける過程で財務をか悪化させているのは周知のとおりです。その結果インフレになっても利上げが出来ない現実がある訳で、日本は輸入インフレに直面しております。欧米の銀行不安を受けて為替は円高方向へ動きましたが、22年初頭の115円水準に及ばない129円ですから円安の地合いは変わっておりません。貿易赤字は常態化しており、実需の円安は変わらない訳です。加えて春闘の賃上げ大盤振舞いですが、背景に人手不足がありますが、その結果次なるインフレをもたらすという意味で欧米と同じ状況になりつつあります。

加えて働き方改革2024年問題で運輸業や建設業などの猶予期間終了が目前に迫っております。働き手確保には賃上げしかない状況になってきており、それを先取りするように大都市圏でもバスの減便が相次いでいます。それに留まらず一部バス会社で運賃値上げされており、これまで安定していた交通運賃も値上げラッシュです。

首都圏鉄道7社、運賃一斉値上げ 初乗り10円程度 バリアフリー投資増や需要減に対応:日本経済新聞
JR東日本ではバリアフリー対応上乗せ委運賃10円を電車特定区間に敵将したほか、需要の減少した通勤定期券を値上げする一方で安価なオフピーク定期券を発売して需要誘導を図り輸送力増強投資の抑制を図っております。バリアアフリー課金は東急を除く大手各社も対応する一方、東急は通常運賃の値上げとなります。今回見送った京王、京急も秋に羽和えを予定しております。あと4月には関西各社も値上げを予定しており、やはり今回見送りの南海も秋には値上げ予定です。

その結果値上げに地方議会の同意が必要な公営地下鉄が取り残されるという珍事になり、東京メトロと都営地下鉄の初乗り運賃が久しぶりに揃います。輸入インフレが国内要因にシフトする構図は欧米と共通です。加えて言えば日本が先取りした実質賃金の低下は欧米でも賃上げがインフレ率に追いつかないという形で実現しています。賃上げラッシュの日本でも殆どインフレ率には追い付いておりませんが。

ってことで金融危機の可能性の低さでは中国が頭1つ抜けております。不動産バブルはどうなんだというツッコミはあるでしょうけど、財政も金融も健全度は高いですし、何より経済成長の余地があるので何とかなると見通せます。ということで、核戦争より怖い金融危機が進行中ということですね。潜在成長率が1%割れの日本とは事情が違います。同時にGDP比2%の防衛費増強が如何に無意味かがわかります。あと有事の備えとして平時の財政健全化は欠かせません。高橋是清の財政拡大も平時に戻って縮小しようとして226で暗殺されタガが外れた結果、戦時経済の窮乏化と戦後のハイパーインフレをもたらしたことは重ねて申し上げておきます。

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Sunday, March 12, 2023

失敗に学ばない国

1日遅れですが、3.11から12年が経ちました。被災地の現状は未だに復興途上ですが、特に福島では放射能汚染の問題もあって、ハード面の整備は進んだものの未だに3万人以上が避難中で人は戻っておりません。避難先で仕事を得て生活基盤が確立すれば、現実的には戻るに戻れない訳です。12年という時間軸の重みです。

一方40年かかると言われた福島第一原発の廃炉事業は停滞しており、予定通りならばあと28年で終わる筈ですが、実際は未だに「40年」と言い続けていて具体的には進んでおらず逃げ水の「40年」のお題目となっております。「処理水放出」が進んでいるという報道ですが、これも単に地上に置くタンクのスペースが無くなったからという理由で、トリチウム以外の核種を含む汚染水を再度フィルターに通して海水で希釈して海底トンネル経由で100m沖へ放出するというものです。「科学的に安全」だそうです。希釈しても放出される汚染物質の総量は減らない訳で、こんな基本を無視した「科学」って何ですか?

そもそも汚染水は福一建屋に地下水が流入することで発生している訳で、その元を絶たなきゃ増えるのは当然のこと。故に凍土壁で遮断するとして国費345億円を投じて1,500本の冷却管を建屋周囲に設置して稼働させたものの、効果は限定的で汚染水の発生はその後も続き、年間数十億円の維持費もかかります。最初からコンクリート止水壁を作る方が結果的に安上がりだったのではないかというのは計画段階から指摘されていてその通りになった訳ですし、汚染水の保管も小型タンクを地上に置くのではなく石油タンクのような大型タンクに貯めて100年後に放出ならば半減期から無害化されますが、コスト減を優先した結果の失敗です。

そして殆ど報道されませんが、フィルターに残るスラッジと言われる固形物の保管問題が実は大変なんです。当然放射性核種を含むスラッジは放置できないので専用容器に入れて保管されておりますが、その保管スペースも逼迫しておりますが、今のところ処分方法も不明です。汚染水保管場所が逼迫するから放出しますと言っても、汚染物質は濃縮された形で残ります。つまり既に次の失敗の種がある訳です。行き当たりばったりで事態は複雑化して解決困難になります。

そんな状況で事故後に決まった原発の原則40年最大60年の期限撤廃が決められました。原発は動かしたいけど新設やリプレースには時間がかかるから今ある原発をとにかく動かそうってことですね。やはりコスト減が狙いですが、つまり老朽化が進む老朽原発を動かす訳で、福島の失敗から何を学んだんだ?しかも脱炭素やエネルギー安全保障や電力逼迫といったトピックをまぶして正当化しようとしていますが、何れも嘘八百です。

老朽原発を安全に動かすには補修が必要ですが、鉄とセメントの塊の原子炉の補修は鉄とセメントの投入が避けられずその製造段階で発生するCO2はカウントされていません。つまり原発で脱炭素は嘘ってことです。エネルギー安全保障を言うならば再エネこそ純国産エネルギーなのにそこはスルーしてます。加えて電力逼迫も嘘が含まれます。

電気が足りない訳じゃないで取り上げた大手電力の既得権が問題を起こしているだけで、実際接続拒否で利用されず捨てられている再エネ電力と、大手電力の先発権で実はガラ空きの送電線がある訳で、需給調整の仕組みを整えれば問題は解決可能なんですが、例えば地域間の連携線整備は進まず、原発再稼働が滞る東電管内では原発需給調整用の揚水発電を利用して再エネを受け入れているものの、その一方で原発のバックアップ用に敢えて残した老朽大型火力発電所は高稼働でダウンしたり、出力調整が容易なガス火力も高稼働で保守点検のスケジュールが重なったりという行き当たりばったりの結果としての予備率低下ということで、原発再稼働以外の対応策がない訳ではありません。

実はエネルギー価格上昇に伴う新電力の廃業ドミノの結果、行き場を失った契約者の補償で大手電力の採算が悪化したことで、なりふり構わず原発再稼働に向かっているという構図です。その結果赤字決算オンパレードとなった訳ですが、これもそもそもLNG価格上昇で予備率が低下して大手電力が自家発電を持つ工場などの余剰電力を卸電力取引所(JEPX)へ出す前に買い取った結果、JPEXの相場高騰で採算悪化して新電力の廃業ドミノが起きた訳である意味自業自得です。加えてこんなニュース。

看板倒れの発送電分離 電力大手の情報漏洩、罰則強化も:日本経済新聞
送電線を大手電力の傘下に残したのは、上述の先発権の担保に留まらず再エネ電力の託送料を高額にして自社系列の発電部門を利する利益相反もありますし、新電力と競合関係となる小売り部門でも新電力の契約者情報にアクセス可能だった結果やはり利益相反を生んでいる訳で、そもそも制度設計の失敗です。どうすればよかったか、実は中国に答えがありました。
「結果オーライ」の再エネ振興 中国の産業政策のいま 丸川知雄・東京大学教授 経済教室:日本経済新聞
欧州のFITに対応して太陽光パネルを増産したものの、輸出攻勢でダンピング関税を課され、更にFIT期間終了もあって過剰生産能力を持て余して企業救済のために国内普及を促し、また内陸部に偏在する電源と需要地の沿岸部を結ぶ送電線の増強を行った結果、世界一の再エネ大国になったという結果オーライだったということです。

ある意味行き当たりばったりだったとはいえ、元々原材料のポリシリコンは国内調達だし人件費は安いしで、ダンピング関税は明らかに欧州の自国産業保護でもある訳で、その結果窮地に陥り国立銀行の融資の焦げ付きを防ぐ為に国内へ普及させた訳ですが、ウイグルや内モンゴルなど元々土地が広く日照条件の良かった内陸部で普及したものの、やはり送電線接続拒否問題が起きたのは日本と同じですが、国が主導して送電線増強で対応したところが中国らしいところです。歴史的経緯で大手電力の既得権に切り込めない日本が停滞する訳です。

という具合に昨今民業圧迫が目につく中国ですが、民間企業が力を持つ弊害を抱える日本が優れていると言えない皮肉な現実です。新自由主義的に民営化すればうまくいくというロジックも不具合が目につく昨今ですが、そんな観点から注目したいニュースがあります。

地下鉄運賃下げたら乗客数3割増 神戸の「北神線」おカネ知って納得:日本経済新聞
グローバルコロナショックで取り上げた北神急行電鉄の神戸市買収による市営地下鉄編入の後日談ですが、コロナ禍にありながら乗客3割増しという驚くべき結果です。勿論上記エントリーで指摘した市営バス再編絡みで乗客を集約できたという側面はあると思いますが、運賃が下がったことのインパクトの大きさを示します。粟生線の乗客減に苦しむ神戸電鉄にとっては乗客減の影響はあるかもしれませんが、寧ろ有馬三田地区からの三宮へのアクセス向上は地域活性化に繋がる訳で、粟生線とは事情が異なります。新開地起点でターミナル立地が必ずしも良くない神戸電鉄にとっては寧ろビジネスチャンスかもしれません。「民から公へ」が成功する可能性は注目されます。

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Sunday, February 19, 2023

気球の地政学

トルコ・シリア国境地帯の地震はその規模の大きさも破格ですが、建物の倒壊が酷い状況です。災害は忘れた頃にやってきます。建物被害の原因がトルコでは賄賂が横行して耐震帰省が守られていなかったことが指摘されています。日本でも耐震強度偽造事件がありました。所謂姉歯事件ですが、大臣認証強度計算ソフトのコピペによるデータ改ざんで、デジタルオンチな日本の官僚のバグですが、五輪不正などでは日本もヤバいかも。

一方のシリアですが、被災地が反政府勢力の支配地域で政府軍による空爆で建物が破壊され、壁や天井の穴を天幕で補修して人が住んでいる状況故、耐震強度云々以前の弱さが災いしております。戦闘の激烈さにおいてはウクライナ以上かもしれませんが、内戦であり欧州から離れていることもあって報道が少なくその悲惨さはあまり認識されておりません。

反政府軍の中の自由シリア軍はアメリカをはじめ西側諸国の支援を得ていますが、必ずしもシリア国民の支持を得ている訳ではありませんし、また内戦故に怪運国債市場の蓋で示したように大っぴらに支援しにくいということもあります。故にアメリカは日本の防衛増強で防波堤になってほしいのが本音なんです。国民にとっては迷惑な話です。

そんな中で中国発の気球が物議を醸しておりますが、思い出されるのが通信傍受でワシントン混線さすで取り上げたスノーデン事件です。米NSCの下請け企業のITエンジニアだったスノーデン氏が米諜報活動の手口や実態を暴露して世界中が大騒ぎした事件です。米国内に留まらず各国から非難の嵐で当時のオバマ大統領は苦境に立たされました。

9.11後に成立した愛国者法で令状なしで通信傍受が可能になり、民間人に紛れるテロリストをあぶり出すためと言われたものの、実態は同盟国を含む各国首脳の通話まで傍受されていたということで、当時の独メルケル首相が不快感を露にするなどのことがありました。そして各国はそうれに反応して様々なことをする訳ですが、ロシアはサイバー攻撃やSNSを通じた米大統領選への介入などで「反撃」しており、トランプ政権誕生を後押ししてある意味わかりやすい反応です。

欧州は人権侵害を重視してEUがGDPR規制をかけています。個人情報の収集と利用を原則本人の承認を経なければならないとする原則に従って加盟各国で国内法制定が相次いでいます。EUは国際ルールとすることを主張し、民間企業の帰省を嫌うアメリカと対立してますが、アメリカも国内法で同等の規制をかける検討は進んでいます。

中国はスノーデン事件にショックを受けると共に,アメリカがそこまでやるならとばかりにデジタル技術を駆使した監視システムを構築し、チベットやウイグルを含む国内ではほぼ完成させたことはコロナ禍による暴力的規制の画像が世界に拡散して周知の事実となっております。一方でゼロコロナに対する抗議運動が全国で同時多発的に発生すると情報量によるバグで修正を余儀なくされました。アメリカの情報機関のようなプロファイリングの技術は持ち合わせていなかった訳ですが、事後的なデータ解析で獲得する可能性はあります。中国の民主化は遠い。

その一方でトランプ政権による経済制裁で特に5G技術を擁するHuqweiの通信機器の使用が多くの国で禁止されたことで、おそらく中国政府が想定していたHuaweiの通信機器へのバックドア設置がブロックされ、更にバイデン政権による先端半導体の輸出規制でより困難な状況から、気球を飛ばして情報収集することにしたってことでしょう。バイデン大統領がオバマ政権で副大統領だったことから、中国への容赦のない締め付けに躊躇はないのでしょう。

中国も複数の静止衛星を打ち上げていて当然偵察に使われていると思いますが、情報解析のためには別ルートの情報も欲しい訳で、バックドアによる通信傍受がダメなら別の方法でということでしょう。そして戦時中の日本の風船爆弾を彷彿させる偵察気球に行き着いたという仮説は成り立ちます。実際中国はアメリカの撃墜の対応に反応してますし、結構正直です^_^;。とはいえ失敗ではありますが。

米中、高まる偶発リスク 米軍が中国偵察気球を撃墜:日本経済新聞
ワシントンポストの記事が紹介されてますが、それによると気球は海南島で打ち上げられ、偏西風に乗ってグアムなど太平洋島嶼部の米軍基地の情報収集を狙ったものの、偏西風の蛇行で針路が北へずれてアリューシャン列島から米航空鵜識別圏入りしたもので、狙いを外した訳です。

偏西風の蛇行は気候変動で説明されており、CO2排出量の多い北米、欧州、東アジアの3カ所で気温差から大きく南へずれており、逆にCO2排出が少なく吸収源でもある海洋部分で押されて北へずれるということで、図らずも偏西風の蛇行を実証して見せた訳です。折しもシベリアの寒気で東アジアを寒波が襲うタイミングとも符合します。温暖化で寒波?という懐疑派の疑問への回答にもなります。ってことで、気候変動という人類全体の危機にあって戦争やってる場合かいという感想を持ちます。

中国「エネルギー消費」再起動 世界のインフレ左右 チャートは語る:日本経済新聞
エネルギー地政学から言えばミサイル買うより再エネによる地産地消体制構築こそ喫緊の課題の筈です。原発再稼働は手続き上直ぐには無理ですし、60年超の稼働を認めても安全対策投資が嵩んで寧ろ不経済ですが、サンクコストを損切出来ない電力会社の都合が優先されてます。サンク苦労すのプレゼント要らね。事故も災害も忘れた頃にやってくることを肝に銘ずるべきです。
舎人ライナー事故、地震で側面車輪浮き脱線 運輸安全委:日本経済新聞
コロぶナ日本で取り上げた日暮里舎人ライナーの脱線事故の運輸安全委の報告です。地震の揺れで案内輪がガイドレールから外れて脱線ということで、防ぎようのない事故だったようです。新幹線のように売れを検知したら自動停止するぐらいの対策が必要でしょうけど、無人運転によるコスト削減を狙ったAGTとしては追加コスト負担はつらいところです。まして戻らない混雑で示したように混雑対策でによる出費で赤字脱却できないとなれば尚更です。地方も含めて日本の官僚にはバグが多い。

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Tuesday, January 03, 2023

戻らない混雑

コロナ禍で初の行動制限のない年末年始ですが、銀座や梅田の人出はコロナ前の2割減と元には戻りません。実際感染者数も死者数も増え、救急搬送の滞りが報じられる中では無理もありません。コロナを克服できていない現実です。そして生産年齢人口の減少で通勤客も減る傾向はありますから、コロナ禍が収束してもこれが新常態ぐらいに考えておくべきでしょう。そんな中で都市通勤鉄道の混雑率に異変が起きています。

日暮里・舎人ライナー、混雑率トップで赤字 東京都に誤算:日本経済新聞
混雑率1位は日暮里舎人ライナー(赤土小学校―西日暮里)144%、2位は西鉄貝塚線(名島―貝塚)140%、3位JR武蔵野線Z((東浦和―南浦和)137%、4位JR埼京線(板橋―池袋)131.8%、5位JR可部線(可部―広島)131.6%と様変わり。常連だった東京メトロ東西線も東急田園都市線も出てきません。コロナ禍がもたらした大異変を実感します。

ゴムタイヤ駆動のAGTで荷重制限のある日暮里舎人ライナーの144%はおそらく改札制限を伴う水準と考えられます。その結果車両増備や座席のロングシート化などの輸送力増強に追われ、当初計画の2023年度単年度黒字化は実現できない状況で、加えて初期車両の更新時期になり費用の負担で当面黒字転換は見込めない状況です。事業者の東京都交通局にとっては大誤算です。

都交通局は地下鉄都営大江戸線の勝どき駅の予想外の混雑が思い出されますが、沿線に集客スポットを複数抱える大江戸線と比べると、沿線にこれといった集客スポットがなく、専ら日暮里や西日暮里でJRや地下鉄に乗り継ぐ片輸送の通勤客ばかりで所謂集中率の高い非効率な路線という点でも不利な条件です。寧ろこの点は旧国鉄香椎操車場跡地開発で潤った西鉄貝塚線にも見劣りります。

その西鉄貝塚線も宮地岳線と呼ばれていた時代の香椎ヤード再開発で、都市計画による連続立体化事業での150億円の自己負担が重いということで、市営地下鉄秋塚線との相互直通を示唆されながら、追加負担を回避して相互直通を諦めたのですが、単線で増発が困難なこともあり、他線が混雑率を下げた中で残ったってことでしょう。混雑路線として名高い埼京線が辛うじて残ったものの、時代の変化を実感します。

そんな中で地方の崩壊で取り上げたように都市鉄道整備計画が目白押しなのが気になります。これから整備される路線は元を取るのが困難になると見込まれます。その中で今年3月開業の東急/相鉄新横浜線の動向は注目されます。新横浜線の場合は集客拠点としての新横浜がありますから、ある程度の営業成績は残せると思いますが、同エントリーで取り上げた豊住線や南北線延伸、湾岸地下鉄などは厳しい現実が待ち受けます。一方で関西の動きです。

JR西日本、奈良線増便や着座サービス拡大 23年春から:日本経済新聞
奈良線複線化による増発と梅田貨物駅跡地開発のうめきた2期で新地下駅開業となり、うめきた新駅は大阪駅と地下通路で繋がり、特急はるかやくろしおが停車する外、おおさか東線が新大阪から延長して折り返すことなど、運行体制が大きく変化します。他にも快速電車の有料着席サービス拡大などもあり、増収を睨んだ攻めも部分もありますが、全体としては微減というメリハリ型のダイヤ改正です。

これはJR西日本に留まらずJR東日本でも在来線特急の拡充などが見られ、明らかに客単価アップを狙ったものですが、乗客減が明らかな中では民間企業としてこの方向性は納得できます。加えてコロナ減便でリソースに余裕があるということでもあります。運輸業の収支好転が見込みにくい中で攻めているとは言えますが、同時に減便もしている訳で、この傾向は今後も続くと考えられます。

気になるのがうめきた新駅はなにわ筋線が乗り入れる予定なんですが、JRと南海の協議が続いており、2018年に環境アセスメント手続きが始まりましたが、事業着手はまだ先ですから、当然2025年の大阪万博には間に合いません。それどころかトンネル躯体が完成済みと言われる大阪メトロ中央線の夢洲延伸も怪しい雲行きです。

というのも予算が限られていてゼネコン各社が及び腰になっていることと、CGで示された構想図に基づいて具体化されたため、細かな詰めが出来ておらず、施工困難な部分も多数あるという状況です。加えて生産年齢人口の減少による作業員確保の問題もあり、万博パビリオンもできるのかどうか危ぶまれております。大阪地盤の大林組と竹中工務店が積極的ではないようで、万博関連で入札不調が相次いでいます。ど素人のお絵かきには付き合いきれないってことですね。

そして気になるのがなにわ筋線は大阪メトロの稼ぎ頭である御堂筋線と競合することです。只でさえ乗客が減少する中で、競合路線の開業は下手すれば赤字転落もあり得る訳で、大阪市の地下鉄民営化と大阪府の泉北高速鉄道売却で得た資金が投入されることを考えると、明るい展望を描けません。生産年齢人口の減少は輸送需要の低下のみならず、インフラ投資を困難にするという両面で経済を下押しします。

この辺リニア60年のウヨ曲折の工事の遅れも同じ背景ですし、それ以上に完成後の輸送需要の見込み違いもある訳です。人口減少下では労働力の減少を資本装備でカバーして生産性を高め賃金を上げる必要がありますが、資本装備強化のための投資は主に省力化が中心となります。新たなインフラを作ってもメンテナンスする人がいなければ経済を寧ろ冷やします。

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Sunday, November 20, 2022

底抜け脱線ゲーム

京成高砂駅の脱線事故による長時間運休を取り上げます。

京成高砂駅で回送電車脱線 けが人なし、内規違反か:日本経済新聞
回送電車の入庫で運転士が指令の指示と異なる番線に進入したことで、後進した結果、8両目がポイント部でr脱線したということで、内規違反が原因とされてますが、運転士は異線親友に気付いた時点で停止して指令に通知し判断を仰ぐのが正しい対応です。しかしそんな初歩的なミスがなぜ起きたのかは現時点ではわかりません。

真っ先に連想したのは1973年2月21日の東海道新幹線大阪運転所脱線事故です。こちらは大阪運転所から本線へ出庫する新幹線車両の脱線事故で、本線上を高速走行中の営業列車が迫っていてあわや大惨事の可能性のある重大事故です。概要は新大阪へ向かう回送列車が出庫線から本線へ出る時にATCの停止信号を無視して冒進して本線進入し、運転士の判断で400m離れた後方運転台に移動して戻ろうとしてポイント欠損部で脱線したものです。ノーズ可動式の本線合流ポイントが災いしたものです。

信号冒進の原因ははっきりしませんが、出庫戦の曲線部に設置された軌条塗油器の影響が指摘されました。レールと車輪フランジの接触による走行抵抗軽減と摩耗防止のために列車通過時にスポイトでレールとフランジの間に油を飛ばして車輪の回転で潤滑させるものですが、塗油器の油でレールが湿潤状態になっていたことで、スリップで停止できなかったのではないかと言われておりますが未だに原因ははっきりしません。本線進入の結果本線のATC信号は絶対停止の00信号に切り替わって迫っていた営業列車が緊急停止した結果、衝突は免れましたが、停止位置は437m手前というきわどい位置でした。

加えて高架上の勾配区間という足場の悪さで復旧に時間がかかり長時間運休を余儀なくされたという点でも京成高砂事故と似ています。京成の場合復線作業に手間取っていて、事故対応のまずさも指摘されています。その観点から注目したいのがこのニュースです。

鉄道車両分解して検査、組み立て 京王電鉄若葉台基地 探訪 ググッと首都圏:日本経済新聞
京王電鉄若葉台車両基地では、年に1回脱線車両の復線作業などの非常時対応訓練を行うもので、事故そのものは防げない可能性はある訳で、それに備えて訓練を行うというものです。決めつけはできませんが、京成電鉄の事故対応がどうだったかは検証の必要があります。そしてこんなニュースも。
LRT試運転中に脱線 宇都宮市、けが人なし:日本経済新聞
宇都宮LRTで採用された新潟トランシス製ブレーメンタイプの低床車両ですが、ボンバルディアのライセンス生産で熊本市電や岡山電気鉄道、万葉線、富山地方鉄道軌道線、福井鉄道、えちぜん鉄道で採用され、前後車体の台車が連接部の円盤とリンクで結ばれていて、前後台車と円盤の相対位置で車体が連接する構造で、挙動が不安定化しやすいという特性はあります。

ドイツなど海外のLRTでは高規格で軌道狂いの少ない線路を走行する前提ですので問題は起きにくいのですが、40km/hの速度制限があり軌道構造も簡易なものが多い日本の場合は問題が顕在化するリスクがある訳です。快速運転や将来のスピードアップを視野に入れていると言われる宇都宮LRTにとっては座視できないトラブルです。カーブの緩和曲線不足見直しや気道狂いの許容度の見直しなどで事業採算性に影響する可能性もあります。ただでさえ工事の遅れで事業費が膨張しているだけに見逃せません。

話変わって米中間選挙のニュースです。

米中間選挙、下院は共和が多数派奪還 ねじれ議会に:日本経済新聞
トランプ政権時の18年中間選挙でもねじれは起きている訳で、ある意味米政治の年中行事みたいなもんですが、バイデン人気の低迷でレッドウェーブと称する共和党の地滑り的勝利は幻に終わりました。妊娠中絶問題を争点化した民主党の作戦勝ちですが、同時にトランプ氏の大統領選出馬観測が中間層の危機感をもたらし若者を中心に中間選挙としては異例の投票率となったとも言われます。

分断が言われ民主主義の危機さえ言われるアメリカですが、ギリギリ踏ん張ったってことでしょう。しかし妊娠中絶のような価値観の衝突問題で冷静な判断を示した米中間層ですが、対して同性婚や選択的府不別姓問題二賛成する若者が、それを認めない自民党に投票する日本の方が病んでいるのかもしれません。民主主義の脱線は日本の方が深刻かも。ある意味底が抜けてます。

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Saturday, October 15, 2022

栗鼠殺し?

三浦半島全域に生息域を広げた外来種のタイワンリスを餌付け禁止から害獣として駆除にシフトするという話ではなくて、最近「リスキリング」という単語が新聞の見出しに目立ちます。ということでタイトルのような連想をしてしまいます^_^;。

再教育の意味だそうですが技術革新で労働者のスキルと企業が求めるスキルにズレが生じており、所謂雇用のミスマッチを解消しようということで、特に日本ではITエンジニアやデータサイエンティストが手薄ということもあり、ミスマッチ解消で生産性を高めて賃金アップに繋げたいとい「あたらしい資本主義」の最優先課題として人材投資が叫ばれているという文脈ですが、誰が誰に何を教えてどんな成果を期待しているのかは不明です。

70年代に資本金1億円以下の中小企業で社会人キャリアをスタートさせた私自身は文系に属しますが、数学は得意科目でしたし、また会社のオフィスオートメーションの取り組みで社外の有料プログラミング講座をを受講させてもらったり、それ以外にも外部講師を招いての社内講習や職場内教育(OJT)もありました。大手企業に比べて知名度や待遇面で社員の定着率が低い中小企業故に社員教育は大事だったのでしょう。プログラミングは実務で役立つことはありませんでしたが、システム思考を理解できたという意味で感謝しています。後の大手流通企業での営業現場でPOSシステムの導入を経験しましたが、現場レベルでのシステムへの理解の重要性を体験しています。

文系理系の壁は日本だけの現象とは言い難いものがありまして、アメリカでもザックリ言えば官僚や企業経営者といったテクノクラートと技術者(エンジニア))の双方を効率的に育成する教育システムが機能してきたことに変わりはありません。変化はIT革命によってもたらされました。ごく大雑把に言えば文系テクノクラートも金融工学などで理系的な知識が求められるようになる一方、多くの事務仕事がIT化でスキルが陳腐化し、他方特にITスキルへの需要が増した結果、希少なITエンジニアの争奪戦となっており、テクノクラートとエンジニアの立場が逆転した訳ですが、そんな世界の趨勢とかけ離れた国があります。日本ていうんですけど。

保険証、24年秋にマイナンバーカードと一体化 政府発表:日本経済新聞
マスク、マスク、マスクで軽く触れましたが、そもそもマイナンバーカードとは何者か?が十分説明されておりません。

70年代にグリーンカードという制度の導入が閣議決定されました。アメリカの社会保障カードに倣ったもので当時の大蔵省は「総合課税に必要」というロジックで当時の野党第一党の社会党を巻き込みましたが、国民の拒否感が強く結局見送られました。マイナンバーも制度としては野田政権時代に税と社会保障の一体改革を自民公明の賛成を取り付けて実現した流れで、制度としては導入されましたが、マイナンバーカードは保有を推奨するけど任意という扱いでした。

米社会保障カードの機能を持たせるだけなら、行政機関が保有する個人データへの物理的アクセスキーとしてのカードであればバーコード付きプラ板で必要かつ十分な筈ですが、NFCチップを搭載した多機能カードとしたことで、住基カードと同じ袋小路に舞い込みます。NFCチップを搭載することでセキュリティ問題が起きる訳です。

スキミングの危険性がありますから常時携帯には適しません。しかもNFC周りを含むシステム開発も複雑化し、カード発行には二重パスワードで厳重になりますから、初期設定に時間も費用もかかります。故に汚破損や紛失に伴う再発行も簡単には行えず、現時点で申請から発行まで2か月のタイムラグが存在します。この辺は住基カードでも問題視されてシステム自体が頓死状態になっています。同じ過ちを繰り返した訳です。リスキリングが必要なのは政治家や官僚では?

一応カードを持たなくても保険診療を受けられる代替策は検討されるようで。何らかの証明書のようなものが発行されるらしいですが、保険証を廃止してまでやる意味があるのかどうか?しかも医療現場にNFCリーダーと連動したシステムを導入しなければなりませんから、その費用負担もあります。自然災害やコロナ禍で縦割りの壁が言われ、省庁別にシステムが統一されていないことから「横櫛を入れる」という議論もありますが、アクセスキーが共通化されていればデータアクセス自体はは可能なんで、省庁別のシステムの違いは問題になりません。省庁間の相互参照は特別な場合のみに限定されるべきであることは言うまでもなく、寧ろ法令で厳格に規制すべきです。別のニュースです。

厚生労働省、10年備えた感染把握システム採用せず:日本経済新聞
コロナ以前から厚労省ではFFHSという感染症対策システムを開発し、テストを重ねて完成度を高めていたんですが、事務方トップにも政治家にも情報は上げられず、HER-SYSという俄か作りのシステムを立ち上げましたが、このHER-SYSが入力が面倒な上に不具合の手直しに追われてデータ活用にも至らず散々な結果だった訳です。FFHSだと疑い例を含めて入力は1分で終わり、データ活用も可能だったと言われており、詳細は不明ですが意思決定の闇を感じます。

デタラメトランスフォーメーションなCOCOA騒動もありましたが、流れから言うとITベンダーに仕事を流す意図が感じられます。もっと言えばETCカードもそうですが、諸外国では本線車道の門型ゲートを通過した車のバーコードを読んで後日請求というシステムが主流なのに、やはり日本だけの無線通信規格カードを作ってます。新車にはほぼETCついてますから、諸費用の中にセットアップ料金が含まれてます。利権の臭いがしますね。

正確に言えばNFCが問題なのではなく、NFCを搭載したために生じるエトセトラが問題なんですが、例えばVISAなどの国際カードにはNFCは当たり前のように搭載されてます。国内カードの場合は交通系ICカードで普及したFelicaが主流ですが、カード会社では不正使用が疑われる場合は決済を止めますし、利用者に損害が生じた場合の補償もします。つまり決済に伴う信用を補完する仕組みがある訳ですが、国が管理する個人情報で同様の仕組みはありません。例えば特定個人のデータを調べて犯罪の濡れ衣を着せるようなことも可能な訳です。その部分について「国を信用しろ」だけでは国民としてh納得できない訳ですね。

てことでここまで鉄分ゼロですが、最後にオープンループの話題です。

オープンループ乗車システムはSuicaの地位を塗り替えるのか?:Impress Watch
元々ロンドン市交通局が交通系カードの Oister のコスト負担に悲鳴を上げて導入されVISAのクレジットカードやデビットカード決済で乗客の利便性を維持することを意図して導入されたもので、現在はニューヨークやシンガポールなど世界450事業者に拡大しています。機能としてはカードに搭載されたNFCで決済するもので、日本でも複数事業者で試験を含む導入が始まっております。国際カード保有の外国人旅行者にとっては便利なサービスです。またSuicaなどのFelica系交通ICカードも導入や運営のコストが高いことがネックで地方に拡がりません。

但し課題もありまして、あくまでもVISAのサービスであってそれ以外のカードは使えないですし、日本限定ですがNFCカードリーダーの設置が必要なのでコスト面の優位性は一部スポイルされます。またデータ読み書きのスピード重視のFelica系カードに比べると読み書きが遅く、混雑する大都市の都市交通には導入しにくいということもあります。またSuicaを開発したJR東日本は全く関心を示しておりませんので、特に東日本の事業者にとってはメリットを見出しにくい状況です。但し外国人利用が多い空港連絡バスやタクシーなどではメリットもありますので、部分的な共存の可能性はあるでしょう。

JR東日本は寧ろ磁気乗車券に代わるQRコード乗車券の導入を目指しており、自動改札の搬送ベルトのメンテナンスを省略することを狙っています。こちらもクラウド環境で迅速な処理が可能なのかどうかは開発途上で、こちらに注力すればオープンループ派の関与は薄まらざるを得ないというところでしょう。今後は見通しにくいですが、気が付けばFelicaシステムがガラパゴス化の可能性もあります。

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