地方公営交通

Saturday, May 18, 2024

裏金のウラ

裏金のウラでこどもの疲弊は高まりそうです。

離婚後も父母で育児 共同親権、「子の幸せ」双方に責任 - 日本経済新聞
結局ろくな国会論戦を経ずに成立した共同親権を認める民法改正ですが、意味不明です。親権は子供を育てる義務を負う権利ですが、子持ち世帯で離婚が発生した場合、経済力のない妻側が親権を取り。経済力のある夫側が養育費を支払うことで離婚を成立させるケースが多い訳ですが、養育費はしばしば支払われないとか、夫の父親としての面会権は法的に担保されているのに誤魔化してそれを梃子に進めたりしてます。加えて既に離婚したカップルにも遡及されるというのも法の非遡及原則に反します。

DV夫の問題などは言われますが、子供のパスポートの取得や受験、手術などに共同親権者の同意が必要になり手続きも煩雑ですし、悪用されれば養育費不払いの口実や児童手当の折半や最悪「イッパツやらせろ」もあり得ます。加えて子連れ再婚も難しくなるし、既に子連れ再婚している場合も生みの親の権利として割り込んでくるとか、寧ろ子育てのコストを高めます。これのどこが子育て支援であり少子化対策なのか?寧ろ婚外子を含むひとり親世帯の子育てを直接支援する方が少子化対策になるのではないでしょうか。

これ以外にも採らぬ狸の戦争の配当で触れたセキュリティクリアランス法や戦争は経営でできているの農業基本法改正などのトンデモ立法が国会をスイスイ通過している現状があります。にも拘らずニュースでは政治資金規正法改正の話題ばかりで、更にNTT法改正や緊急事態対応で政府が地方に命令できる地方自治法改正などのトンデモ立法予備軍が目白押しです。裏金問題が目晦ましになっている訳です。とはいえ裏金問題はこれはこれで無視できない問題だけに、政治が機能せずに政府の暴走が止まらないということでもあります。これ繰り返し述べてますが、戦前の政治不信の果てに戦争へ進んだ歴史に酷似します。

この辺は帝都電鉄物語でも論じてますが、政治不信が行政の統制強化を誘い戦争へといざなった歴史を繰り返すことは避けなければなりません。といった堅い話とは別に、このエントリーで示した戦前のマネーゲームの異常さはこんなことでも見えてきます。

消える新京成電鉄の社名 歴史が生んだ「くねくね路線」 ググっと首都圏 - 日本経済新聞
映画「戦場にかける橋」で有名な泰緬鉄道の建設にも関わった旧陸軍鉄道連隊の演習線跡地の払い下げで誕生した新京成電鉄ですが、軍事施設故にGHQに摂取された旧鉄道連隊跡地を巡っては西武鉄道も動いていたと言われます。裏でどのような動きがあったかは定かではありませんが、当時高田馬場馬起点だった西武線の新宿延伸と引き替えに京成への払い下げが決まったと言われております。戦後早々の利権漁りはGHQから始まりました。

当時は無人の原野だった北総台地ですが、東京に近い立地の良さに加えて地盤が安定していたこともあり、松戸市の常盤平団地を皮切りに、沿線で大規模な宅地開発が続き、輸送力増強に追われながらも親会社の京成電鉄の旧型車の支援もあって経営は好調で、子会社ながら株式上場して投資家から資金を集める独自経営が可能になります。地域的に京成との棲み分けも可能だったこともありますし、都営地下鉄との相互直通運転対応で4ft6in(1,372mm)から4ft8ub1/2(1,435mm)への改軌や1号線規格の新車増備などで資金面で厳しかった京成にとっては子会社上場で身軽になるし、用途廃止の旧型車の引受先としても重宝だったという面もあります。

ところがバブル崩壊後の株式持ち合いが問題視され、親子上場は特に狙い撃ちされやすいということもあります。同時にそれは三井不動産との合弁事業としてスタートしたオリエンタルランドの好業績も狙い撃ちされることになります。そこへコロナ禍で空港輸送激減で京成本体が直撃され、オリエンタルランド(OLC)も不振ですが、地域輸送に特化した新京成は好業績を維持しました。そしてコロナ明けで京成本体とOLCが業績回復すると、投資家からのアタックが強まります。

京成電鉄はOLCの好業績高配当のお陰で利益水準が下駄を履いた状況だった訳ですが、それが無ければ株価収益率(PBR)0.5という資本効率の低さは笑う鬼退治でも指摘しました。京成のOLC保有株の時価が京成自身の時価総額の1.6倍にもなり、一部売却でも大きな資金を手にすることが可能ですが、京成自身は空港輸送というもう一方の金の生る木を抱えていて新たな投資案件が見当たらないということもあり、自社株買いによる株主還元の原資にせよという圧力とも見えます。

それに対して京成が示した回答が新京成電鉄の子会社化による上場廃止と経営統合によるシナジー効果獲得ということで、既にOLC株売却で500億円の営業外収益を得ており、新京成の経営統合の資金に充てるという画を描いた訳です。鉄道事業だけを見れば例えば運賃の一元化は成田空港線運賃やちはら線運賃までは無理だし、京成線と新京成線だけの一元化はさほど意味がないので、寧ろ独自に展開された両社のバス事業や不動産事業の統合に狙いがあると見られます。投資家に迫られて追い込まれてという点は戦前の帝都電鉄に似てますが、統治の透明性が求められる時代故に変なことはできないという訳ですね。ピンクの電車もいずれ過去帳入りするかもしれません。それにつけてもで出口の目見えない裏金問題です。

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Sunday, March 31, 2024

もしトラよりもしドラ、鬼さんこちら

米大統領選でトランプが勝ったら?という要らぬ心配から、もしトラだのほぼトラだのと言われてますが、詳細は省きますが、2016年当時よりもトランプの勝つ確率は低いと見られます。もちろん当選の可能性はゼロとまでは言えませんが。それより日本が直面するもしもドライバーがいなくなったら?を心配した方が良いでしょう。

鬼が笑う2024年笑う鬼退治もうすぐ笑わなくなる鬼その他のエントリーで取り上げた2024年問題がいよいよ明日から本番です。さまざまな変化が既に出てきていますが、一番身近な変化はバスの減便でしょう。サイドバーで紹介した週刊東洋経済 2024年3/2号(ドライバーが消える日)[雑誌] 雑誌 – 2024/2/26の特集に詳しいのですが、トラック、バス、タクシー何れもドライバー不足は変わらないのですが、それぞれ事情は異なります。

トラックは荷主に対しての立場の弱さから運賃値上げがままならないことに留まらず、荷主側の都合で発地着地双方で待機時間が求められたり荷役時間に制限があったり、それでいて機械荷役のできない手積みを求められたりとか、とかく注文が多く無理難題オンパレードだったりします。その結果公道上での待機が発生して交通の障害になったりもします。それでも勤務時間に占める荷役時間は少なく、最大は運転時間ですが、待機時間が多数を占め、生産性を低下させています。

それ故残業時間が長くなるのですが、逆に残業手当があるから低賃金でもそこそこ稼げたりする訳です。この点はバスドライバーと共通ですが、結局残業代が生活給に組み込まれている訳で、そこへ働き方改革で残業時間に上限が設けられると手取りが減って生活できなくなるということになり、それが離職を促すという悪循環が予想されます。故に諸人こぞりて苦しむイブで取り上げた高速道のトラック速度規制を80km/hから90km/hに緩和しても待機時間が減らなければ焼け石に水ですし、事故の多発に繋がりかねません。ドライバーの賃上げを含む待遇改善が必要です。当然運賃値上げが必要になりますし、拘束時間の長くなる長距離輸送が困難になります。

そして運賃値上げはトラック輸送の優位性を損なうことになります。実はここに大きなヒントがあるんですが、海運や鉄道によるモーダルシフトの余地があるということでもあります。特に鉄道貨物は高速道の整備に伴うトラックによる長距離輸送の拡大の影響を受けてきて700㎞以上でないと競争力を発揮できないと言われてきましたが、これが500㎞程度まで下がれば鉄道貨物のシェア拡大が可能になります。つまり需要規模の大きい首都圏と近畿圏の輸送需要を取り込める可能性がある訳です。

震災でわかったJR貨物の実力で取り上げた被災地へのガソリン輸送で磐越西線に臨時貨物列車を走らせて対応したのがこれに当たりますが、非電化区間がある磐越西線でDD51重連で500t列車で効果があった訳ですから1,300t列車が設定できる東海道線の輸送力を活用すれば有効なドライバー不足対策は可能です。但しそのためにはJR貨物にひときわ厳しい態度のJR東海の壁を何とかする必要がありますが。

バスの場合は需給調整規制の緩和で新規参入が増えた結果、底辺への競争でドライバーの賃金が削られて、公務員の身分故にその流れに乗れなかった公営バスが次々に撤退を余儀なくされ、特に収益性の高い高速バスや貸切バスへの新規参入増で大手事業者ほど収支が厳しくなる一方、ドライバーの拘束時間の長くなる長距離の高速バスほど維持が困難になって一般路線維持のために収益部門を縮小するという悪循環に陥っています。故に賃上げも困難でトラックと比べても低賃金レベルにあります。大都市圏でも大阪府富田林市に本社のある金剛自動車の事業撤退など維持困難になっております。

加えてトラックとも共通ですが、待機時間の縮小で実働時間に対して長めの拘束時間を設定して営業所で待機させて、状況に応じた臨時便運行や事故や病欠の代理乗務なども制約されることから、通勤通学時間帯のラッシュ輸送にフォーカスして人を配置する都合から、早朝深夜の運行を見直さざるを得なくなり特に終車の繰り上げが繰り返されていて、都区内でも22時台、近郊では21時台だったり土休日は20時台とどんどん使いにくくなっております。

実はこうしたバスの苦境はタクシーにとってはビジネスチャンスでもあります。タクシードライバーは基本フルコミッションの給与体系ですから、需給調整規制の緩和で都市部の増車が認められた結果手取りが減っていた訳ですが、コロナ禍で外出規制が課されるといよいよ稼げなくなって離職者が増えた結果、クルマはあるのにドライバーがいないという状況に陥っていました。それがコロナ5類化で利用が戻った結果、タクシーが捕まらないという状況を生み出した訳ですが、バスの減便や運行時間帯の短縮で寧ろ稼げる職業となりつつあり、離れたドライバーが都市部では徐々に戻りつつあるのが現状です。そうした中でのライドシェア解禁はタクシー業界にとっては寝耳に水だった訳です。ですからライドシェア推進派が言う既得権益の主張というのとはちょっと違います。

元々規制だらけのタクシー業界では、例えば首都圏では白タクは普通に存在していて規制の抜け穴は元からあった訳ですが、捕まるのは大抵通報によるもので特段の取り締まりは行われていませんでした。特にバブル期の終電後の駅ではあからさまな客引きまでしていました。当時は企業も官庁も残業で終電後の帰宅揉めず粗しくなかったし、その場合の帰りのタクシー代も気前よく経費精算されました。故に稼ぎたいタクシードライバーは深夜を狙って営業してましたし、運よく長距離客を乗せればその日の稼ぎが一発でということもあり、この時代の企業タクシードライバーは厚生年金の標準報酬月額の膨張で手厚い老後資金を得て悠々自適してます。白タクはそのおこぼれを得ていた訳で、ある意味共存していたとも言えます。コロナ禍で痛めつけられた今のタクシー業過にとっては当面は損を取り返すのが精一杯の現状です。

特に二種免許の問題は寧ろタクシー業界から要件緩和の要求が以前からあって、故にライドシェア解禁の見返りとして認められたということになります。加えて当面は地域と時間帯を限定してタクシー事業者がドライバーの指導とクルマのメンテナンスと保険に責任を負う形での解禁となりました。但しこれらは都市部での話で、地方の過疎地では以前から自家用自動車の有償運行で最後の足を確保することは行われておりました。それを日本版ライドシェアと呼ぶかどうかは別として、地方ごとの特殊事情から現行制度下での工夫の積み重ねは既に行われております。という具合にタクシーを巡る事情は地域ごとに特殊で、ライドシェアの完全解禁に問題があることは明らかです。

地方ではバスの減便や廃止は以前から進み、オンデマンドバスや乗合タクシーなどの形でバスとタクシーの境界が曖昧になっている現状があります。但しこうしたささやかな取り組みも自治体の補助金で維持されているのが実態ですが、都市部のバス減便はタクシーの出番を増やすことになり、地方で起きているバスとタクシーの境界の曖昧化が波及する可能性はあります。そうするとタクシー主導のライドシェア解禁はバス事業の圧迫という別の問題を引き起こす可能性も含んでいることは指摘しておきます。こうしたことをちゃんと議論せずに拙速に導入して本当に大丈夫なのか?

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Saturday, March 02, 2024

円安でつくばとねり的ライトなリスク

来年度予算の年度内成立が確定しました。

2024年度予算案が衆院通過、年度内成立へ 総額112兆円 - 日本経済新聞
憲法の規定で予算案は衆院優越で衆院で可決成立すれば30日後に自然成立となることから、年度内成立が確定した訳ですが、23年度本予算と補正予算で予備費を大量に積み増して使い残している現状からすれば、予算成立が遅れても執行に影響することはなく、能登半島地震の復旧復興などへの影響はほぼありません。寧ろボランティアに制限をかけたりして足を引っ張っているのは国と石川県です。やるべきことをやらない責任は政府と県にあります。

寧ろ新年度予算の審議が生煮えで成立させたことの方が問題です。それでも強行採決に及んだのは岸田首相の意向が強かったようです。政治とカネ問題で炎上中で、予算審議を質に取っての追求は野党として当然の戦術ですが、衆院成立後に送致される参院の予算委でも追及されることを嫌った模様です。その為の岸田首相の政治倫理審査会への出席だった訳で、早くこの問題に蓋をしたいのが本音です。しかしあれほどキックバックとな還付金とか言っていたのに首相が裏金発言をしたから寧ろ火に油。しかも故安倍元首相が「やめよう」といっていたのに復活した経緯もかなり解像度が上がりました。やめようとしたのは法令違反の認識があったと考えられますし、それが覆った経緯が不透明で寧ろ疑惑を深めました。もはやトカゲのしっぽ切りでは済まなくなりました。

そんな政治の混乱をよそに、日銀のマイナス金利解除は確度を上げています。IMFでも好感を示すレポートが出され、同レポートで政府の財政支出頼みの姿勢は寧ろ批判されています。加えてここへ来ての日本株の好調が、日銀に思わぬ追い風をもたらします。異次元緩和機に大量購入された株式ETFの含み益が拡大しており、異次元緩和で国債市場が機能を失って利ザヤが消失している一方で、ETF売却で益出しできる環境が整った訳です。つまり仮に緩和見直しで保有国債に含み損が出ても、国債ならば期間をかけて償還を待てますが、売れば値を下げる株式ETFの売却問題は日銀にとっては重い宿題でしたが、高すぎる米株式に対して割安感のある日本株への海外マネーの流入は日銀にとってはチャンスな訳です。

あと日本株ETFを大量保有するGPIFも含み益拡大で投資ポートフォリオ見直し売りで益出ししますから、当面日本株は日銀とGPIFという大量保有機関投資家が売りポジションをとる訳で、新NISAで日本株投資を考えている人は、日銀とGPIFを助けたい人以外は考え直した方が良いでしょう。令和の秩禄処分の地雷です。とはいえ日銀の緩和姿勢は簡単には解消されないことも確かで、当面この構図は続くと考えられます。故に円安反転で円高は現時点では心配することではないでしょう。しかし円安の影響は意外なところにも現れています。

栃木の宇都宮LRT、車両追加へ価格7割高の衝撃 増発・検査視野 - 日本経済新聞
現在宇都宮ライトレールが保有する車両HU300形は17編成あり、昼間ダイヤで3編成が休んでいる状況ですが、4月に予定されるスピードアップで13編成で回せるようになる見込みで、利用が好調なこともあり、増発も視野に入ります。しかし問題は開業時に竣工した17編成は2027年に一斉に重要部検査の期限を迎えるため、期限前に一部編成を前倒しで検査入場させて輪番検査の体制を作る必要があり、その為に予備車確保で2編成の増備となった訳ですが、問題は増備車の価格です。新潟トランシス製のGTシリーズはアルストム傘下のドイツ企業のライセンス生産で、そのライセンス料と輸入部品代が円安で高騰し、実に7割高となった訳です。当然ながら今後の増発や西側延伸への対応が難しくなります。また検査時の部品交換も割高となることもあります。そこで国産メーカーで対応できないかということになります。
宇都宮LRT 福井鉄道フクラムライナー・広島電鉄グリーンムーバー改良型導入も一考の余地 - 日本経済新聞
フクラムライナーは阪急阪神グループのアルナ車両製のリトルダンサーと呼ばれる部分低床車、グリーンムーバーマックスは近畿車両、三菱重工、東洋電k製造、広島電鉄の4社共同開発の完全低床車ですが、純国産のリトルダンサーと異なり弾性車輪や駆動装置などドイツのシーメンス製部品が一部使われていて、やはり円安の影響は受けます。

宇都宮ライトレールに関しては開業に至る過程で紆余曲折があり、県と市が対立して足踏みしましたし、地場のバス大手関東自動車の反対もありましたし、自動車交通の阻害や財政支出を巡る市民グループの反対もありました。関東自動車は経営悪化でみちのりHDグループ入りし賛成に転じたものの、工事の遅れや見直しで費用便益比(B/C比)が当初の1.1から0.7へ悪化したことなども問題視されております。そうした市民の不満に対して立憲民主党と共産党が後押ししてますが、あくまでも市民グループの声を掬い上げる議会野党の役割ということで、新年度予算を質に裏金問題を追及することと同じで、国会の新年度予算強行採決の轍を踏まないで議論を重ねることが大事です。

それはさておき、元々宇都宮市の東西軸交通に新交通システム導入を検討したことから始まったLRT事業ですから、西側延伸で東武宇都宮駅に接続することが求められていて、検討過程でモノレールやAGTなどの高架式新交通システムでは事業費が高すぎるということでLRTになった経緯があります。しかし西側延伸の為にはJR宇都宮駅北側の陸橋に軌道を整備して駅西側に至り、メインストリートの大通りを通って東武宇都宮駅前から桜通十文字付近までの事業化が進められております。

但しこの区間は利用が見込める一方、バス路線が集中する区間でもあり、東側同様に並行バス路線をバッサリ切ることの難易度ははるかに高いと言えます。実際宇都宮大学陽東キャンパス、清原地区市民センター前、芳賀町工業団地管理センターの3カ所でアクセスバスとの乗り継ぎが図られ、ローカルIC乗車券のtotraで乗継割引サービスが導入されてますが、昼間12分ヘッドのライトレールに対して1時間1本のバスへの乗り継ぎははかばかしくないようです。利便性の乏しいアクセスバスよりもマイカーで停留所付近の駐車場に停めて乗り継ぐ方が利便性は高い訳で、西側の時のように関東自動車がバス路線再編に協力してくれるかどうかはわかりません。当然乗り継ぎによるバスの利便性低下は客離れを起こす可能性もあります。また資材費の高騰や建設2024年問題による人手不足もあり、すんなり進むとは限りません。

一方で宇都宮ライトレールの営業成績は上々で、開業半年の乗客数が予想の200万人を超える220万人に達し、月間の乗客数も開業景気が落ち着いて直近では37,000人程度で、これも想定の31,000人程度から2割増しですから上出来ですが、これが素直に喜べないのは、タイトルのつくばとねり的リスクってことです。つくばエクスプレス(TX)が好業績ながら沿線開発が急すぎて輸送力増強に追われ、車両増備、ダイヤ見直し、座席のロングシート化による収容力強化に追われて、構想にある東京駅延伸がいつまでたっても果たせず、寧ろ8連化に伴うホーム延伸や車両入れ替えで追加投資を余儀なくされてます。

また都営日暮里舎人ライナーも、やはり沿線開発が急で輸送力増強に追われこちらは収容力の大きいロングシートの新車への入れ替えで凌いでおり、既に限界に達し、コロナ禍で通勤ラッシュが緩和傾向にある中で混雑率ワーストとなったことは戻らない混雑で指摘した通りです。日暮里舎人ライナーは沿線にめぼしい集客施設がなく片輸送の非効率もあって2023年度の黒字転換予定が果たせずにいます。

TXも舎人ライナーも車両増備だけでは足らず車両のロングシート化で収容力を高めて対応するところまで追い込まれ、舎人ライナーではゴムタイヤの荷重制限から軽量化した新形車に入れ替えるという追加費用をかけた結果の収支見通しの悪化ですが、これ宇都宮ライトレールのHU300形がタイヤハウスの位置にボックスシートの背もたれを配置する構造からロングシート化は不可能ですから、車両の収容力強化のための入れ替えすらあり得るということですね。TX、舎人ライナー、ライトラインの豊作貧乏トリオになりかねないリスクはある訳です。業績の好調をただ喜んではいられないってことですね。

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Sunday, January 21, 2024

帝都電鉄物語

ガバナンス不在の政治で解散総選挙を模索していた岸田首相は岸田派解散という奇策に出ました。確か岸田派離脱を表明していた筈なのに派閥の解散権はあるのか?それはともかく安倍派と二階派は追随した一方、茂木派は態度を示さず麻生派は解散を否定しました。つまり会計責任者の略式起訴または一部議員の逮捕で傷を負った派閥が解散を表明した訳ですが、これ目先のゴマカシです。

ぶっちゃけ派閥を解散して事務所を畳んでも、政治資金規正法で献金者の氏名が開示されない少額献金で裏金が作れる制度上の瑕疵が温存されていれば、議員同士での裏金のやり取りまでは捕捉できません。適当な任意団体を作って実務を秘書に丸投げすれば実態は変わらず、寧ろ表に出にくくなる訳ですね。そして世論を睨んでしれっと元に戻るということですね。政治資金規正法の厳格化と連座制導入までしないと防げません。

とはいえ議員本人が訴求されない現行法下でも検察の不起訴処分に対しては検察審査会で起訴相当または不起訴不当の評決がされれば再度検察に戻され追加捜査が行われますし、当然略式起訴の会計責任者から得られる情報から新たな証拠が出てくることもありますし、一部弁護士による公益に基づく刑事告発もあるでしょう。それ以上にこうした司法手続きイベントの度に報道されて世論が喚起される訳ですから、今回は簡単に「忘れてくれる」ことにはならないでしょう。どう転んでも政権にとっては茨の道です。

という訳で政治不信が極まる状況ですが、よく似た状況が戦前にもあったことは留意する必要があります。政治不信の結果満州利権に連なる拡張主義的革新官僚や財界人、それに軍部への国民の期待が反比例して高まった結果、戦争への道へ突き進んだことを忘れてはいけません。革新官僚の代表といえる岸信介は戦後も影響力を保ちましたし、革新官僚の主張は経済安保や電力利権に連なる経産官僚とイメージが重なります。一方権力機構である検察の暴走はそれはそれで問題です。

サイドバーのアマゾン鉄道書で取り上げた鉄道ピクトリアル 2024年 03 月号 [雑誌] の京王電鉄井の頭線特集号のの歴史過程の澤口一晃氏の記事は、コンパクトにまとめられた通史として秀逸です。元々小田急系列だった帝都電鉄が小田急に吸収され戦時統合で大東急の一員となり戦後の大東急解体で経営基盤の弱い京王に渡った歴史故に外様的で京王の正史よりも小田急の正史の方が詳しいという捩れた存在ですが、澤口氏は当時の政治経済状況を踏まえて東洋経済新報やダイヤモンドなど経済誌の記事まで参照して背景から明らかにしています。

記事の冒頭で鉄道疑獄事件から始まるのも趣味誌としてはチャレンジングですが、当時は戦前の所謂疑似二大政党制時代と言われる時代で、立憲政友会と民政党・憲政会が交代で政権を担っていた時代です。但し当時は内閣総理大臣に衆議院の解散権は認められておらず、内閣総辞職後で野党が少数与党内閣を組閣し、次の衆院選で多数派を得るよう努めるという流れです。その結果選挙対策による利権政治がはびこるのは避けられず、様々な利権絡みの疑獄事件が横行していた時代です。震災後の東京郊外の発展が、所謂郊外電車熱を生み出し多数の免許出願があって鉄道省当局が扱いに苦慮していたこともあり、放射鉄道6路線と環状鉄道2路線が想定され、それに近い路線出願を優先する方針でした。

そんな時代に帝都電鉄の前身の東京山手急行電鉄が設立され、大井町―洲崎間を梅が丘、中野、板橋、巣鴨、北千住を経て山手線の外側を巡る路線が鉄道省が想定した環状鉄道1号線に近い計画として免許を取得したものの、後に政治家の暗躍が明らかになります。この辺の事情は政治の我田引鉄として現在の整備新幹線事業と通じるものがありますね。

加えて東京の郊外開発ブームもあって鉄道株は株式上場によるプレミアムが付きやすいこともあり、電鉄ブームを後押ししましたし、昭和恐慌による不況期は却って電鉄熱を煽りました。この辺株価プレミアムが政治家の懐を温めたでしょうから、リクルート事件も連想させます。故に実現可能性に疑問符がつくものも多数あり、実際に東京山手急行電鉄の免許路線は実現しませんでした。計画では1,435㎜の標準機と1,067㎜の狭軌の三線軌で標準機を旅客、狭軌を貨物が使うという形で貨物輸送を指定していたのは当時の物流事情によるのでしょうが、洲崎で東京市が東京高速鉄道に譲渡した地下鉄計画線の八重洲―洲崎間の路線への乗り入れを想定していて標準軌、そして全線掘割構造で踏切無しの計画を打ち出しており、第三軌条集電が想定されていたかもしれません。

壮大な計画で株式は人気を博したものの資金不足で事業遂行が出来ず、鬼怒川水力電気と小田原急行鉄道の経営者の利光鶴松を社長に迎えて体制立て直しを図ります。一方で井の頭線の路線免許は渋谷急行電鉄という別会社が申請し、こちらは鉄道省想定の放射鉄道2号線相当の路線として免許されたものの、やはり資金調達がうまくいかず、東京横浜電鉄への身売りを画策したものの果たせず、やはり利光鶴松に助けを求めます。かくして両社は東京山手急行を継続会社とする形で合併し、株価プレミアムで得た資金を実現可能性の高い渋谷急行の路線に投入し、社名を東京郊外電鉄に改めたものの、東京市の市域拡大でほぼ全線が東京市内になることから帝都電鉄に改称し開業に至ります。

東京山手急行の掘割路線のコンセプトは継承されたものの、資金難で全線踏切無しにはならず、また法面防護もなく排水設備も貧弱で雨の度に線路寒水となるし、変電所が1カ所しかないから当時最新鋭の電車も電圧降下でまともに走れず、パラレル禁止のシリーズ運転でゆっくりしか走れない散々なスタートでした。しかも当時の沿線は閑散としていて営業成績も振るわなかったのですが、それでも住宅開発の進捗で収支は徐々に改善するものの、利子分を除く利益を減価償却費に計上してその中から山手急行建設利息として無税で配当するという今ならコンプライアンス上問題のある処理をしていましたが、それでも山手急行時代のプレミアムで膨れ上がった資本金がネックで2回にわたる減資で利益をひねり出すというトリッキーな会計処理をして凌ぐ状況で株主から不評を買います。故に最後には小田急による救済合併となります。

そして電力国家管理で鬼怒川水電を失い、陸上交通事業調整法に基づく戦時統合で小田急は大東急に統合されます。結果的には弱点だった変電所増強や車両の融通で助けられ、特に東京大空襲で永福町車庫が壊滅的打撃を受けて稼働車両が7両となったこともあり、戦後復興で東横線向けのデハ3550がデハ1700、京浜線向けクハ5350がデハ1710として井の頭線に竣工し、何れも東横が湘南電鉄乗入れを想定して準備した電装品と長軸台車を履いていて、後に京王線への転用に生かされました。

更に京王時代には安普請の掘割法面の改修や排水設備の強化や路盤のかさ上げが行われたり、オールステンレス車の3000系投入やTTCと呼ばれる運行管理システムの実装でも先行するなどしましたが、路線延長が長く沿線開発が旺盛な京王線では混雑解消が優先されて井の頭線の旧型車転用で凌がざるを得なかったとも言えます。変電所は小田急時代に強化され東急時代に車両が補充されと、マネーゲームに翻弄されて内実を伴わなかった帝都電鉄の負の遺産の解消には多大な時間を要しました。

そして急行運転が戦後の一番のエポックでしょう。元々渋谷と吉祥寺を結ぶ路線として国鉄線のバイパス効果が期待されていたものの、時間がかかり過ぎてバイパス機能が果たせていないことから急行運転が計画され、結果的に通過客の増加で潤ったという意味で大成功になりました。そして東急がこれを参考に大井町線の急行運転を行い田園都市線のバイパス機能を強化したのは周知のとおりです。そんな井の頭線とは縁もゆかりもない千葉の話題です。

JR東日本、京葉線朝の上り快速2本を継続 千葉市が要望 - 日本経済新聞
元々東京外環状線の一部として計画された京葉線ですが、旅客輸送開始と東京駅乗り入れで混雑路線の総武線と地下鉄東西線の混雑緩和が狙いだったこともあり、東京延伸時から快速運転が起こ案われ、特に朝夕新木場のみ停車の通勤快速が2往復設定され、快速も頬終日運行、武蔵野線直通も快速運行で休日は停車駅を変えてディズニーランド輸送に特化するなど柔軟なダイヤを組んでいました。

その後沿線開発が進み、また車両更新もあって各駅停車もスピードアップもありなどして快速の停車駅が増やされ京葉快速は海浜幕張以遠各停の遠近分離型になり、武蔵野快速も各停化されと変化する中で、朝夕の通勤快速は内房線君津及び外房線/東金線の上総一ノ宮/成東への乗り入れで一部総武快速線のバイパスの役割も担ってきた関係で存続してきたものの、列車毎の混雑率のばらつきを解消するために見直しは避けられなかったというのがJR東日本の言い分です。快速通過駅の乗車機会確保が目的ということです。しかし極端から極端に振れたことは問題で、通勤快速の停車駅を徐々に増やすといったプロセスを飛ばして反発されたと言えます。

沿線開発が先行して固定客で安定していた井の頭線が急行運転に踏み切ってバイパス機能を強化したのとは逆の展開ですが、元々貨物バイオパスとして計画され、旅客化も混雑路線の救済でバイパス機能が重視された京葉線と真逆ですが、井の頭線の源流である東京山手急行電鉄が外環状線として計画されたことと併せて示唆に富みます。交通機関整備と都市開発の関係は意図した通りには進まないものですね。


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Saturday, November 04, 2023

笑う鬼退治

鬼が笑う2024年で取り上げたインボイス問題のニュースです。

インボイス導入1カ月「想定以上に負担」 混乱続く企業:日本経済新聞
サラリーマンの経費精算でインボイスの有無の確認作業で現場負担があることは国税庁も認識していて1万円以下の取引でインボイスが省略できる経過措置を決めたりしましたが、ネット取引での登録ナンバー確認など次々に面倒な問題が湧いて出てますし、ドライバー不足なのに運送大手が委託先の多重下請けが仇となって委託先の登録の有無を把握しきれないなどの問題も起きています。独禁法違反が疑われる委託切りも見られるなど混乱しています。

これらはインボイス自体の問題というよりも説明不足や日本的な商慣習故の問題だったりしますが、ただでさえ働き方改革の2024年問題でドライバー不足が言われる中で、タイミングが悪かったとは言えますが、欧州付加価値税制度では機能している制度が日本ではこうなってしまうというのは、日本社会が抱える問題と見るべきでしょう。欧州でも当てない民主政治で損くらってますで取り上げたギリシャショックのようにヤミ営業でインボイス発行しない脱税が横行していたなんて例もありますから、明示された法令も社会の受容次第で機能を失うことは同じではありますが。

ギリシャショックは同時に財政破綻のリアルを示しており世界最悪の日本財政の反省材料にもなります。長期金利が7%になると財政が持続可能でなくなることを明らかにしました。今の日本の減税議論に違和感しかありません。それも所得減税に拘ったために実現は来年6月という役に立たないものですし、1年限りなら後に増税が待っている訳で、リカードの中立定理が働く故に減税くそメガネになります。減税うそメガネとも言われているようですが^_^;。だからといって恒久減税は論外ですが。

別の視点ですが今回の減税は税収の上振れ分の還元を謳っている訳ですが、その根拠となるのが22年度の10兆円超の税収上振れでして、円安による企業業績の上昇による法人税収とインフレによる消費税収が主なもので、7:3の割合です。昨年円相場が激しく動いた結果ですが、今年は150円前後で膠着しており、去年のような上振れが起きるとは言えませんし、インフレは税収増をもたらすと同時に政府支出も増やします。今年度の予算は当然インフレを踏まえて連動する社会保障費は拡大しますし、人件費や資材費の上昇は公共事業費も上振れさせますから、年度をまたいだ歳出増で消化されます。故に減税財源にはならない訳です。

日銀、長期金利1%超容認 植田総裁「大幅に上回らず」:日本経済新聞
日銀がYCC見直しに動きましたが、1%変動枠に長期金利が近づいて維持困難と判断して限度からめどへと表現を変え1%超の金利を容認する姿勢を見せました。但し急激な変動は抑えるということで緩和継続を謳っておりますが、実態は市場の圧力に押されての判断ということですね。それでも不十分ということで為替は円安に振れて150円のバリアを突破しており円安傾向は続きます。

とはいえ変動幅は小さいですから、上述のように法人税収の上振れ効果は限られます。但しインフレ要因ですから消費税収の上振れはある程度発生しますが、政府支出増を上回る水準になるかどうかは微妙です。ということは税収上振れを見込んだ減税は財源的には微妙ってことです。増税メガネと悪口言われたから減税を打ち出すとか、思いつきで政治をやるなということですね。

岸田政権の打ち出す政策は。例えば少子化対策と称して児童手当の拡充を打ち出し高校生も対象に加えてますが、一方で自民税調で高校生の扶養控除圧縮が議論されているという具合に目先を誤魔化す姿勢が見られます。基本的に国民をなめているとしか思えません。手当拡充よりより高校無償化の方が効果的ですし予算も少なくて済みます。という具合に目につくところをやったフリで乗り切って選挙の票稼ぎというあざとい姿勢は国民に見透かされてます。桃太郎よろしく鬼退治しても宝は得られません。桃太郎は岡山だけど。

2024年の働き方改革で人手不足が言われている中で少子化対策でバラまくというのは本当の問題解決にはならないばかりか、仮に出生率が上がって子供が増えたところで家庭内のケア労働を増やして特に女性の就労を圧迫しますから、人手不足は悪化します。持続可能な賃上げを打ち出して法人減税をしても法人税を払っていない赤字企業は蚊帳の外ですし、仮に賃上げが定着しても企業の人件費上昇は価格転嫁に繋がりますから賃金インフレで結局実質賃金は伸びないですし、新NISAで家計貯蓄を資産運用へという画を描いても、今の市場環境では国内株式に資金が回る保証はありません。日銀のETF購入で下駄を履かせた官製市場の現在の株価では個人投資家が得られる利益は限られます。一方でそれでも株価が上がらない日本企業はアクティビストの草刈り場です。

京成電鉄、ディズニーでゆがむPBR 実態は「1倍割れ」 - 日本経済新聞
お業績好調なオリエンタルランド株の保有分の時価が1.6兆円と自身の時価総額を上回る水準にあり、OLC株を除いた本体のPBRは0.5倍程度と見積もられ、英アクティビストファンドから一部売却を迫られております。京成電鉄の場合コロナ禍で空港輸送が大打撃を受けた不運はありますが、逆に空港輸送の1本足打法の脆弱性が露呈した訳で、オリエンタルランドのような優良企業を連結対象にしていることがリスク要因となっている訳です。

京成電鉄には新京成電鉄という優良企業をグループ内に抱えており地域輸送に特化した事業環境もあってコロナ禍の影響も軽微だった訳ですが、その結果コロナに勝てない国で取り上げたように完全子会社化して元々の保有分の含み益由来の負ののれんで益出しするなどしてきましたが、そんな一過性のことでは事態は改善せず次のステップを踏みます。

京成電鉄が傘下・新京成を吸収合併へ 25年4月 - 日本経済新聞
継続的に利益を計上して株価を上げるには、経営統合して運営面で規模の経済を狙うしかない訳ですが、悩ましいのは運賃の共通化問題です。共通化して運賃通算すると初乗り運賃の二重取りが無くなり乗客にはメリットがありますが、運賃収入の減少は避けられず寧ろネガティブな評価になりかねません。故に当面現行運賃を維持するということになりました。

別運賃自体は現行制度で禁止されておりませんし、京成自身もちはら線と成田空港線(スカイアクセス)は別運賃です。それぞれ歴史的事情があって、ちはら線は元々小湊鉄道が東京直通を狙って京成千葉(現千葉中央)―海土有木間の地方鉄道免許を申請して交付されたことに始まります。京成線を通じて東京進出を図った訳ですが、4ft8in1/2(1,435㎜)電化の京成と3ft6in(1,067㎜)非電化の小湊では直通はできない訳で、長らく免許更新を続けながら棚ざらしになっておりました。京成との合弁で千葉急行電鉄を設立して事業化を模索したものの進まず、沿線予定地の宅地開発が具体化して途中の千原台(仮)までの事業化が動き出し実現しました。しかしバブル期の仇花で宅地分譲は遅々として進まず、業績が上がらずに京成が救済合併して京成ちはら線となりましたが別運賃は維持されました。故に対都心でJRに乗り換える場合には千葉中央と京成千葉の間の京成線運賃の合算が重荷になりますが、赤字路線を引き受けた京成としては簡単に運賃を弄れないわけです。

成田空港線は元々三セクの北総開発鉄道(現北総鉄道)の路線を利用していて、小室以東は千葉県営鉄道由来の宅地開発公団線として別運賃だったこともあり、高運賃で利用が低迷しました。宅開公団は小泉改革の特殊法人改革で統廃合や名称変更の結果、鉄道事業を切り離すことになって京成が引き受け第三種事業者の千葉ニュータウン鉄道となり北総が第二種事業者となって一体化されたものの高運賃は改善されず、住民訴訟にまで発展しました。結果的には成田新幹線ルートを利用した北総ルート(成田スカイアクセス)が整備され北総線の運賃の見直しをすることで和解しましたが、それ故に北総線と共通化された成田空港線運賃も安易に動かせない政治性を帯びた訳で、やはり解消は困難です。

という訳で、新鎌ヶ谷で接続する新京成線と成田空港線の運賃統合はやはり無理となると、京成津田沼での京成本線・千葉線との運賃通算に限られる訳ですが、これも新京成線が新津田沼でJRと乗換可能で船橋乗換からシフトすることになると京成にとっては減収要因になります。船橋乗換の場合も東京メトロ東西線に向かう場合はJR線を挟んで初乗り運賃の重複負担となりますが、東京メトロの低運賃に助けられています。京成西船に優等列車を停めないのはJRに気を遣っているのかも^_^;。

ということで、当面車両の共通化や乗務員も含めた運営の柔軟化などで地道に益出ししたり、それぞれが抱えるバス事業の再編などで合理化を進めるぐらいしか打つ手はない訳で、アクティビストの納得を得るハードルは高いといえます。こうした問題を抱えて身動きが取れない日本企業は数多くあり、海外投資家を通じた国富の流出を助けるだけです。鬼たちも大爆笑-_-;。

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Sunday, July 30, 2023

本気の気候変動対策

豪雨の梅雨が明けて猛暑の夏となりましたが、豪雨の影響は多岐に亘ります。

大雨、排水能力超え 秋田大雨1週間「どこの都市でも」:日本経済新聞
秋田市の水害は典型的な内水叛乱です。かがやきを失った北陸新幹線 で取り上げた川崎市のタワーマンション被害のように、豪雨で雨水が下水道の処理能力を超えて流入した場合、逆流して住宅等に被害をもたらすもので、内水氾濫と呼びます。タワマンの場合電気設備を地下に置くケースが多く、水没して停電という被害が起きた訳ですが、停電するとエレベーターが使えず揚水ピンプで水道水をくみ上げて落とす給水設備も使えなくなりますから地獄です。戸建てでも床上浸水もありますし、都市部ならどこでも起こり得るものです。河川の越提氾濫と違って見た目で危険がわかりにくいし、自治体のハザードマップに記載されているとは限りません。

とはいえ地下の下水道の能力増強は簡単ではありませんし、当然多額の費用が掛かります。例えば東京都で大規模な地下調整池を設けたりしてますが、東京都の財政力だから可能ということもありますし、それすら想定外の豪雨が続けば氾濫は起こり得ます。つまり完全な備えは難しい訳です。また確率の低い豪雨への備えにどれだけ公費を使うかについての合意形成も困難です。また人口減少下では公費負担を簡単には増やせません。

そもそも都市化で人口が集積するから下水道を整備しなければならなくなる訳ですが、例えば開発に適さない低湿地を公費で購入して調整池にするとかして、過剰開発を抑制する方向で考えて下水道への雨水流入を抑える方が安上がりで現実的になるんじゃないかと思います。上記かがやきエントリーで北陸新幹線の車両基地が低湿地に立地していたこともありますが、作っちゃいけないところに車両基地を作っちゃったということも言えます。財源制約が強い整備新幹線故に安い底地買いで被害を受けたとも言えます。

てことで苦い経験をしたJR東日本ですが、国鉄時代に建設された東海道新幹線の大阪運転所のように近くに天井川があって、当初から水害対策が考慮され、民営化後も車両を盛土上の本線に避難させる訓練を積み重ねてきた訳で、その経験はJR東日本に引き継がれなかった訳です。とはいえJR東海は水害対策が万全かと言えばそんなことはなく、名古屋の天白川の氾濫で当時の葛西敬之社長の運行継続の指示で多数の列車が立往生して車内泊を強いられましたし、今年の6月豪雨では早めに規制をかけたものの混乱しました。

東海道新幹線、大雨混雑防げ ダイヤや情報伝達改善へ:日本経済新聞
東海道新幹線の約半分の区間が盛土で、パイプを埋め込んで水抜きしたり土留めの擁壁で法面崩落を防いだりといった対策はされてますが、雨量が植えれば盛土が緩んで路盤や法面の崩落は起こり得ます。列車の通過に伴う振動がきっかけになることもあり、沿線の雨量計を見ながら徐行や運休などの規制を決める訳ですが、問題は情報伝達の拙さで駅に乗客が滞留し混乱したことです。JR西日本のように予報段階から計画運休するぐらいしないと結局混乱は避けられないんじゃないでしょうか。

山陽以降の全幹法規格の新幹線では高架橋主体で盛土は取付部などに限られますが、それでも豪雨による混乱は完全には避けられない訳ですから、盛土の多い東海道新幹線ではより慎重な対応が求められます。しかしのぞみ増発で輸送能力を高めてしまったが故に運休の判断が難しくなっているということも言えます。JR東海はそれ故に中央リニアを作るんだとしていますが、輸送力は東海道新幹線には及びませんし、第一難工事で開業の見通しが立たない状況です。

一方の北陸新幹線も敦賀で当面足踏みの状況が続きそうです。やはり難工事が予想される小浜京都ルートに拘らず、早期開業が見通せて事業費も少ない米原ルートで実現することで代替ルートは確保できます。但しJR東海の孤立主義が問題を難しくしている面があります。また豪雨にしろ猛暑にしろ気候変動の影響と見るのが妥当ですし、欧米やオーストラリアなどでも熱波や山火事を気候変動に絡めて報道されることが増えてますが、日本では見られません。正直言って人口減少に対応した開発抑制はCO2排出削減にもなりますし、実際電力需要は縮小しており、再エネ転換がやり易い状況になってきています。政府が言うGXの本気度が疑われます。

水害じゃありませんが首都圏ではこんな輸送障害がありました。

山手線全線で運転再開、11万人に影響 信号装置が故障:日本経済新聞
月曜朝の輸送障害で混乱しましたが、原因は信号トラブル。しかも大崎の東京総合車両センターの本線出口部分の機器トラブルで主要車両を本線に出せずに運休という致命的なもんです。思い出されるのは2015年の籠原駅の地落事故で電留線から車両を出せなくなった輸送障害ですが、今回は信号システムが原因です。

首都圏ではATOSと呼ばれる運行管理システムで列車の進路選定や遅延時の指令業務から駅の案内表示に至る一連の自動化がされている訳ですが、車両基地の出口のトラブルで車両を本線上に出せなければどうにもなりません。勿論システムを解除してマニュアル操作することは可能ですが、その場合車両基地に収容された車両を1編成ずつ手作業で進路を選定し、手旗などで合図しながら動かすことになりますから、大量の要員を確保して慎重に行う必要があります。当然処理能力は落ちますから、早めの復旧はしたものの平常の6割程度の運行に留まった訳です。JR東日本はそれなりに努力した結果です。

但し乗客への告知や案内は徹底しており、大きな混乱は見られませんでした。山手線は京浜東北線との並走区間の代替輸送と共に地下鉄網による代替輸送が可能という立地もありますから、元々冗長性が確保されているとも言えますし、加えてコロナ禍によるリモートワークでピーク輸送量が減っていたことも幸いしました。金融危機は核より怖いで取り上げた通勤定期運賃値上げの影響もあるかもしれません。つまり需要抑制のための値上げを実施ている訳で、こうした冗長性の確保はトラブル対応にも有効ということですね。効率重視一辺倒は見直す時代と言えます。

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Saturday, April 29, 2023

東京五輪の落とし物

ジングウ・ファミリアでケチがついた新国立競技場は二転三転、Undoしたい大草原wwwの小さな森で森元首相が黒幕で五輪の目的は都市計画変更による神宮の森の再開発だったことも五輪霧中で指摘しました。ザックリ言えば日本初の風致地区指定で開発が制限されていた神宮外苑ですが、一部国有地はあるものの私有地に開発制限をかけることに対する地権者の不満はくすぶっていて、都もそれに応えるべく密かに再開発計画を作っていたものです。二転三転はあったものの、思惑通り再開発にこぎ着けた現在です。

「神宮外苑を、未来につないでいく。」神宮外園地区まちづくりの広告に大竹が一ツッコミ「大きな木切って、小さい木を植えますって本数かい!」:文化放送
利権のふえる訳ワカメちゃんでも取り上げましたが、故坂本龍一氏が都知事に宛てた手紙が話題になり、イチョウ並木の伐採などで反対運動が拡大中で、大手新聞のカラー一面広告を出して火消しに走った訳ですが、大手紙にこのサイズのカラー広告を出せる金銭的湯裕があるところを見せつけて、暗に記事掲載停止を示唆するメディア報道への圧力でもあります。実際殆どのメディアでは取り上げておりません。

それに伴って神宮球場や秩父宮ラグビー場などの建て替えや高層ビルや商業ビル建設も言われておりますが、これだけの大規模開発を都民の同意を得ずに密かに進めたことが問題です。ザハ案で揺れた新国立競技場のドタバタも、高さ制限解除の口実だったということですね。しかも制限解除に伴って容積率も緩和されますが、容積率の余剰の所謂空中権転売によって、近隣の伊藤忠本社ビルの建て替えで伊藤忠から代金が支払われるというおまけつき。試算では1,300億円ぐらいと言われます。故に一部で言われる神宮の森の維持費で明治神宮も大変なんだという説も大ウソってことです。

という訳で、五輪のレガシーは金まみれで、しかも新国立競技場のように使用料が高すぎて稼働率が低迷して赤字垂れ流しですが、再開発に群がった利権屋はそんなことお構いなしに自分たちだけで儲けて山分けの世界です。しかも政権与党に圧力をかける神社本庁のような宗教団体を利する形で旧統一教会問題で関心を集める政治と宗教の不適切な関係をもたらしている訳です。ツケは国民に回ります。

レガシーというのも憚られるこんな落とし物だらけの五輪で国民は不幸です。金満五輪のレガシーとしては選手村を改装して売り出された晴海フラッグの問題もありますが、こちらは地場相場より安い売り出し価格故に売れ行き好調ですが、1人で多数の区分を購入する明らかな富裕層の投資と思われるものが多く、相場に見合う利益を上乗せして転売されることは確実です。ここでも五輪は食い物にされてます。

そして地味ながら五輪には間に合わなかった東京BRTという落とし物もあります。元々五輪前に開通予定だった環状2号線を専用連接バスで運行する計画で、現時点では陸の孤島となっている晴海フラッグの住民輸送及び豊洲市場など湾岸と都心を結ぶ新交通として計画され、当初国産FCV連接バスを予定していたものの、車両開発も間に合わず、とりあえず対車体型の国産FCVバスのトヨタSORAと、いすゞのHEV連接バスが用意され、五輪期間中の選手輸送に活用した後に公募の運行事業者に運行委託ということで、京成バスが選ばれ東京BRTという別会社を設立してとりあえずプレ運行中です。ルートは現状3路線です。

幹線ルート:’(虎ノ門ヒルズバスターミナル)―新橋⋯東京テレポート
晴海ルート:虎ノ門ヒルズバスターミナルー晴海BRTー豊洲市場(ミチノテラス豊洲)
勝どきルート:新橋―勝どきBRT
勝どきルートは他の2ルートと完全に重複しておりますが、おそらく本格運行時に晴海フラッグに乗り入れると共に、東京駅延伸の含みもあるようです。新橋、勝どきBRT、豊洲市場(ミチノテラス豊洲)は乗継停留所に指定されており、ICカード乗車券で最初の乗車から60分以内で乗継成立としており、大人220円、小人110円で一定エリアの面の輸送をサポートしている点が一般路線バスと異なります。

湾岸のマンション地帯故にそれなりに利用されてはいますが、連接バスが必要な程の需要は現時点では見られず、また虎ノ門ヒルズバスターミナルや新橋のバス停がわかりにくいなどの課題もあります。そして豊洲市場に関しては都営バス市01系統が新橋駅前のJR駅前から210円で運行しており、豊洲市場が目的地なら利便性で勝ります。加えて都営バスのICカード90分ルールで他系統との乗継で100円引きの割引が受けられます。

将来はつくばエクスプレスとの直通が示唆される湾岸地下鉄の建設に繋げたいところでしょうけど、現状では地下鉄建設が必要な程の需要はなさそうです。それでも晴海フラッグの資産価値維持のためには強行される可能性があります。何とも重たい五輪の落とし物です。

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Sunday, April 16, 2023

成長しないこどもの日本

こどもの日本でJアラート発令を受けての東京メトロの運休措置で議論がありましたが、今回も議論を呼ぶ結果となりました。

北海道新幹線など一時運転見合わせ 北朝鮮ミサイルで:日本経済新聞
政府発表では7時半ごろには発射を確認していたものの、Jアラート発令は7:55で30分近いタイムラグがありますが、その間に軌道予想して落下点を割り出して北海道南西部の陸地に落下する可能性があると判断しての発令ということで、過剰反応とされた2017年の東京メトロとは違うとは言えますが、議論を呼んでおります。

東京メトロの場合は地下鉄駅へ人々が避難して混乱することを避ける為だったようですが、繰り返しますが日本の地下鉄には核シェルターの役割はなく、寧ろ人が殺到することによる混乱の方が怖いのは確かです。故に東京都が緊急避難場所として指定した地下鉄駅も東京メトロと都営地下鉄のやや閑散な駅が中心で、都心の大規模駅は外されております。地下鉄駅と直結のビル等との調整が困難なこともあるようです。つまりJアラートが発令されても殆どの場合逃げ場がないのが現実です。

一方で今回の北朝鮮のミサイルは固体燃料ICBMということで、発射のための燃料注入などの事前準備情報が得られない上に、今回さらに発射後の軌道修正もあったようですし、また日本側のレーダーが見失うという失態もありました。つまり北朝鮮のミサイルは確実に進化していて、迎撃も困難だし発射準備段階を捉えて敵基地を叩くということも困難ということで、ミサイル防衛システムや敵基地攻撃能力が無効ということでもあります。

加えてJアラート発令の迅速化も進められていたのですが、今回も発射から発令までのタイムラグが大きいのも気になります。そもそもJアラートは総務省消防庁所轄の災害警報システムで、地震や津波など時間的猶予の少ない自然災害で避難を促す目的がある訳ですが、当然ながらミサイルのレーダー追尾は所轄外な訳で、防衛省から官邸を経て総務省に指示が出るという形となる訳ですから、発令にタイムラグが出るのも仕方ないのでしょう。今の形だと国民の命を守る機能は心許ない状況です。という具合に何か釈然としない政府の対応です。

やはり国民の命よりもアメリカからの防衛力強化要請の方が優先されているのが現実です。これはウクライナ戦争で標的にされたチェルノブイリやザボリージャの原発の危険性は明らかなのに、原発再稼働に前のめりになれることに通底します。例えばこれ。

敦賀原発2号機の安全審査を再中断 規制委、資料不備で:日本経済新聞
日本原電敦賀発電所2号機は原子炉直下には活断層があると指摘されて停止しておりますが、日本原電はそれを否定して再稼働しようとしておりますが、当然ながら活断層があるという指摘を否定するエビデンスを示す必要がある訳です。規制委も門前払いせずに申請を受け付けたものの、書類の不備で却下され、再提出されたけど再度却下というのがこれまでの経緯です。「書類の不備」と報じられてますが、実態は数値の改ざんであって悪質です。これ東電の柏崎刈羽の不祥事で審査中断された経緯と似ています。

日本原電は電力9社と電源開発が出資する発電専業の民間会社ですが、敦賀の他東海第二原発も保有しており、こちらは周辺自治体の同意を得る過程で杜撰な避難計画がすっぱ抜かれていて物議を醸しています。つまり現状原発は休眠状態で稼働していない訳ですが、そんな中での政府の原発活用方針の打ち出しです。やはり国民の命よりも原発再稼働優先という訳ですね。こんな会社に原発動かして欲しくないです。

脱炭素目標の欺瞞で取り上げたように、稼働中の9基(運転停止中の高浜4号機を含む)で電源構成比6%で目標が22%ですから、許可済み7機と申請中11基を含む27基全てを稼働させても足りず、40年超の高浜1号機などで再稼働が計画されております。目標達成には30基程度が必要なので、政府は元々原発活用に舵を切るつもりだった訳で、最初から欺瞞だった訳です。

しかも目標年度は2030年度であと7年しかない訳ですから、いかに無理な数字かということです。但し成長率1.7%という高めの想定ですから、2015年以降の実績値である0.24%とすれば総需要が抑えられて原発は10基程度で済みます。つまり謎の運転停止中の高浜4号機を除外しても、規制委の許可を得た7基中2基程度が稼働すれば当面の需要は賄えます。故に原発再稼働を急ぐべきだという議論はミスリードです。そもそも再エネ38%もドイツで既に達成した水準ですし、アメリカでも再エネ活用が進んでいます。

米国の発電量、再エネが石炭を初めて抜く 2022年:日本経済新聞
欧州のようにFITで政策誘導した訳ではなく、しかも戸建てや工場の屋根のパネルの発電分は含まないですから、実態として再エネ活用が進んでいる訳です。インフレ対策法で再エネ投資が促進される状況もあり、日本より先を進んでいます。日本では実現可能性を無視した議論がまかり通る現状ですが、想定のように成長できていない現実を直視すべきです。同様のことはこちらにも。
大阪のIR認定へ、政府調整 14日にも推進本部で議論:日本経済新聞
詳述は避けますが、人気テーマパークUSJを上回る利用客を想定していて実現可能性に疑問符がつきます。府知事と市長のダブル選挙のみならず議会の単独過半数を得た維新のいい加減な計画に民意のお墨付きを与えたことで、大阪の未来が心配です。怪運国債市場の蓋 で指摘したように万博も微妙だし。

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Sunday, March 26, 2023

金融危機は核より怖い

何かいろんなニュースが流れてますが、違和感てんこ盛りです。例えば放送法文書を巡る国会論戦ですが、問題の本質は政府による報道機関への介入問題で、当時の磯崎陽輔首相補佐官の「政治的公平性」への説明を求めていたとされる問題ですが、放送法の「政治的公平性」は放送局の自主的な取り組みを定義したもので、政府による介入はロシアや中国のような報道規制と変わらない訳で、この点をこそ問題にすべきなのに、高市大臣の進退問題に争点がズレていることが気になります。

事実なら「法の支配」を掲げてロシアや中国を批判できない問題ってことです。そして岸田首相がウクライナ政府の招きを受けてキーウ訪問した際にも「法の支配」を連発してましたが、言葉の意味わかってるかい?強力な国家主権を法で縛るという原則を「法の支配」と呼ぶのであって、ロシアや中国はそれに反したことをしている訳で、放送法文書問題はそれに疑義を生じているということなんだけど。

岸田首相のキーウ訪問に関しても報道で公開されてセキュリティへの言及が言われますが、バイデン大統領のキーウ訪問と同じ行程を辿ったようにウクライナ政府の主導っで行われたもので、外国要人来訪の通知はロシア政府にもされていると考えられます。勿論ロシアが無視して攻撃することはあり得ますが、相互承認で外交関係を築くという主権国家の原理から言えば、他国の首脳を死傷させる可能性のある行動は外交上の孤立を招く愚行となる訳で、ロシアもその辺は理解しています。

それより偶然なんでしょうけど習近平総書記のモスクワ訪問と日程が被ったことで、いろいろ憶測を呼んでますが、中ロ接近のニュースを薄めたという意味で一番メリットを得たのはウクライナ政府でしょう。そして中ロの首脳会談で見えてきたのは戦況が劣勢のロシアにとってはある意味渡りに船ではあります。形式的な中立地帯を設定して休戦して兵や装備を立て直す時間稼ぎがしたいのが本音でしょう。但しウクライナ政府が同意するかどうかは微妙ですが、中国にとってはアメリカが失敗した和平協議を中国主導で行ってマウント取るだけでも意味があります。

中国の本音はウクライナが一帯一路の出口に当たり権益を確保したいと同時に、二正面作戦に動けない米軍の弱点として紛争が続く現状は実は有難い訳ですし、またロシア産原油などの資源を安価に買い叩けるし貿易決済に人民元を用いることでロシアを経済的に従属させることすら可能ということでいいことずくめです。先端半導体の供給制限は確かに痛いけれど、自国開発の時間稼ぎになりますし、更に言えば宇宙戦争は終わらないで取り上げたロシアの濃縮ウランの中国への供給というオプションもあり得ます。

とはいえ中国はアメリカでさえ明言できない核の先制使用や非核国への核攻撃の禁止を明言しており、ロシアに対しても核兵器使用をけん制している訳で、中ロ接近は寧ろロシアの核攻撃の可能性を低くしたと見ることができます。そして悪性インフレで成長が鈍化しつつある先進国と比べて尚成長余地があり経済力を縮めてくる訳です。「戦わずして勝つ」孫氏の兵法を百も承知の中国による台湾への軍事行動は当面ないということですね。

他方欧米で同時多発的な銀行不安が広がっております。米シリコンバレー銀行(SVB)破綻に始まる米地方銀行の破綻ですが、FRBが最後の貸し手機能を発動し、連邦政府も預金保護を打ち出して沈静化を図ってますが、事態は予断を許しません。SVBの破綻は典型的な取り付け騒ぎですが、SNS時代の情報拡散スピードがもたらした問題でもあります。

テック・金融が負の共振 米、SVBなど2行の全預金保護:日本経済新聞
SVBはシリコンバレーのテック企業やベンチャーキャピタル(VC)が預金者に名を連ねますが、有望とされるスタートアップ企業は余剰資金を投資に回すから損益は赤字だったりする訳で、通常の銀行はなかなか取引してくれない訳ですが、SVBはそんなテック企業の預金を集めて決済サービスなどの機能を提供してきた訳です。

テック企業やVBは低金利もあって投資資金は社債や株式で調達するから、融資は主に運転資金中心でしたが、スタートアップの株式公開(IPO)で大金を手にしたテック企業やVCの預金が膨張した結果、運用先に困って債券投資を拡大したのですが、FRBの利上げで保有債券に評価損が生じて含み損を抱えた結果、格付けが下がる懸念から債券を売って減損処理をした上、増資を発表したところ、逆に危ないんじゃないかといううわさがSNSで拡がって預金者の企業やVBが預金引き出しに動いたという流れです。続いて破綻したシグネチャー銀行は暗号資産関連の取引が多かったことから価格の乱高下で不安が広がったものです。共にテックと金融の負の連鎖がもたらしたと言えます。

少し長い目で俯瞰すると、リーマンショック以来の金融緩和の継続でマネー流通量が増加し、余剰マネーは資産価格を押し上げた訳で、その結果がスタートアップ企業のIPOでの資金調達を容易にしたということは言えます。低金利で運用先に困ったマネーがVCを通じてスタートアップ企業に流れ込みIPOでさらに膨張という循環が所謂ユニコーンブームをもたらしたとも言えます。FRBの金融引締めや利上げがそれを逆回転させたということですね。但し金融引締めが間違いという意味ではありません。

日本のバブル崩壊も元はといえばプラザ合意から始まる円高対応で日銀が低金利政策を続けた結果、余剰マネーが株や不動産に集まって膨らんだバブルが、国の不動産融資規制と日銀のバブル退治の利上げで弾けたものですが、そもそも長期間の金融緩和でもたらされた余剰マネーは簡単には解消せず、利上げ局面で予想外の動きをする訳です。つまり繰り返されてきたバブル崩壊の始まりと捉えることができます。一方クレディ・スイスの破綻は全く異なる展開です。

サウジファンド、クレディ・スイスで損失 運営に危うさ:日本経済新聞
サウジアラビアのサルマン皇太子による脱産油国政策で、石油精製や石油化学工業の国内立地促進による近代化と共に、金融への傾斜でクレディ・スイスに接近しました。米銀に頼っていては自前の金融業育成はままならず、サウジ・ナショナル銀行(SNB)がクレディ・スイスの株主となって影響力を行使し、国営ファンドの資金運用に注文を付けていたのですが、高利回りを追い求めるハイリスク投資を強要された一方、ECBの利上げでやはり含み損を抱えたものの、SNBは救済を否定し破綻に至ったものです。

但しこちらの破綻処理は問題を孕んでまして、AT1債の無価値化を発表して混乱しています。AT1債とは銀行の中核的的自己資本'(Tier1)としてバーセル銀行委員会によって認められた永久劣後債で、利回りが良い一方、一定条件で減損されたり株式転換されたりするハイリスク債券ですが、弁済順位下位のTier1債権の中で株式が保護されてAT1債が無価値化されるのは、SVBの保有株式の毀損や希薄化を回避したものと見られていて債券保有者の一部が法的手段に訴えるとしています。産油国の無茶な資金運用がもたらした災難ですが、破綻処理にも不透明さを見せております。

そしてAT1債は他の欧州銀行でも多数発行しており、やはりその連想で銀行不安が広がっているという状況にあります。という訳で米と欧州とそれぞれ異なった展開で銀行不安が広がっている訳ですが、邦銀はといえば、やはり爆弾を課開けています。特に地方銀行の行き詰まりは深刻で、金融庁主導で経営統合が進んでますが、地方の過疎化と経済停滞でそもそも融資先が見当たらず、日本国債は日銀の爆買いで市場から締め出され、已む無く外債投資に傾斜してますが、円安で緩和されているとはいえやはり欧米の利上げで含み損を抱えております。ただ日本の場合日銀にリスクが集中しており、超弩級の時限爆弾となっております。

日銀が異次元緩和を続ける過程で財務をか悪化させているのは周知のとおりです。その結果インフレになっても利上げが出来ない現実がある訳で、日本は輸入インフレに直面しております。欧米の銀行不安を受けて為替は円高方向へ動きましたが、22年初頭の115円水準に及ばない129円ですから円安の地合いは変わっておりません。貿易赤字は常態化しており、実需の円安は変わらない訳です。加えて春闘の賃上げ大盤振舞いですが、背景に人手不足がありますが、その結果次なるインフレをもたらすという意味で欧米と同じ状況になりつつあります。

加えて働き方改革2024年問題で運輸業や建設業などの猶予期間終了が目前に迫っております。働き手確保には賃上げしかない状況になってきており、それを先取りするように大都市圏でもバスの減便が相次いでいます。それに留まらず一部バス会社で運賃値上げされており、これまで安定していた交通運賃も値上げラッシュです。

首都圏鉄道7社、運賃一斉値上げ 初乗り10円程度 バリアフリー投資増や需要減に対応:日本経済新聞
JR東日本ではバリアフリー対応上乗せ委運賃10円を電車特定区間に敵将したほか、需要の減少した通勤定期券を値上げする一方で安価なオフピーク定期券を発売して需要誘導を図り輸送力増強投資の抑制を図っております。バリアアフリー課金は東急を除く大手各社も対応する一方、東急は通常運賃の値上げとなります。今回見送った京王、京急も秋に羽和えを予定しております。あと4月には関西各社も値上げを予定しており、やはり今回見送りの南海も秋には値上げ予定です。

その結果値上げに地方議会の同意が必要な公営地下鉄が取り残されるという珍事になり、東京メトロと都営地下鉄の初乗り運賃が久しぶりに揃います。輸入インフレが国内要因にシフトする構図は欧米と共通です。加えて言えば日本が先取りした実質賃金の低下は欧米でも賃上げがインフレ率に追いつかないという形で実現しています。賃上げラッシュの日本でも殆どインフレ率には追い付いておりませんが。

ってことで金融危機の可能性の低さでは中国が頭1つ抜けております。不動産バブルはどうなんだというツッコミはあるでしょうけど、財政も金融も健全度は高いですし、何より経済成長の余地があるので何とかなると見通せます。ということで、核戦争より怖い金融危機が進行中ということですね。潜在成長率が1%割れの日本とは事情が違います。同時にGDP比2%の防衛費増強が如何に無意味かがわかります。あと有事の備えとして平時の財政健全化は欠かせません。高橋是清の財政拡大も平時に戻って縮小しようとして226で暗殺されタガが外れた結果、戦時経済の窮乏化と戦後のハイパーインフレをもたらしたことは重ねて申し上げておきます。

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Sunday, March 12, 2023

失敗に学ばない国

1日遅れですが、3.11から12年が経ちました。被災地の現状は未だに復興途上ですが、特に福島では放射能汚染の問題もあって、ハード面の整備は進んだものの未だに3万人以上が避難中で人は戻っておりません。避難先で仕事を得て生活基盤が確立すれば、現実的には戻るに戻れない訳です。12年という時間軸の重みです。

一方40年かかると言われた福島第一原発の廃炉事業は停滞しており、予定通りならばあと28年で終わる筈ですが、実際は未だに「40年」と言い続けていて具体的には進んでおらず逃げ水の「40年」のお題目となっております。「処理水放出」が進んでいるという報道ですが、これも単に地上に置くタンクのスペースが無くなったからという理由で、トリチウム以外の核種を含む汚染水を再度フィルターに通して海水で希釈して海底トンネル経由で100m沖へ放出するというものです。「科学的に安全」だそうです。希釈しても放出される汚染物質の総量は減らない訳で、こんな基本を無視した「科学」って何ですか?

そもそも汚染水は福一建屋に地下水が流入することで発生している訳で、その元を絶たなきゃ増えるのは当然のこと。故に凍土壁で遮断するとして国費345億円を投じて1,500本の冷却管を建屋周囲に設置して稼働させたものの、効果は限定的で汚染水の発生はその後も続き、年間数十億円の維持費もかかります。最初からコンクリート止水壁を作る方が結果的に安上がりだったのではないかというのは計画段階から指摘されていてその通りになった訳ですし、汚染水の保管も小型タンクを地上に置くのではなく石油タンクのような大型タンクに貯めて100年後に放出ならば半減期から無害化されますが、コスト減を優先した結果の失敗です。

そして殆ど報道されませんが、フィルターに残るスラッジと言われる固形物の保管問題が実は大変なんです。当然放射性核種を含むスラッジは放置できないので専用容器に入れて保管されておりますが、その保管スペースも逼迫しておりますが、今のところ処分方法も不明です。汚染水保管場所が逼迫するから放出しますと言っても、汚染物質は濃縮された形で残ります。つまり既に次の失敗の種がある訳です。行き当たりばったりで事態は複雑化して解決困難になります。

そんな状況で事故後に決まった原発の原則40年最大60年の期限撤廃が決められました。原発は動かしたいけど新設やリプレースには時間がかかるから今ある原発をとにかく動かそうってことですね。やはりコスト減が狙いですが、つまり老朽化が進む老朽原発を動かす訳で、福島の失敗から何を学んだんだ?しかも脱炭素やエネルギー安全保障や電力逼迫といったトピックをまぶして正当化しようとしていますが、何れも嘘八百です。

老朽原発を安全に動かすには補修が必要ですが、鉄とセメントの塊の原子炉の補修は鉄とセメントの投入が避けられずその製造段階で発生するCO2はカウントされていません。つまり原発で脱炭素は嘘ってことです。エネルギー安全保障を言うならば再エネこそ純国産エネルギーなのにそこはスルーしてます。加えて電力逼迫も嘘が含まれます。

電気が足りない訳じゃないで取り上げた大手電力の既得権が問題を起こしているだけで、実際接続拒否で利用されず捨てられている再エネ電力と、大手電力の先発権で実はガラ空きの送電線がある訳で、需給調整の仕組みを整えれば問題は解決可能なんですが、例えば地域間の連携線整備は進まず、原発再稼働が滞る東電管内では原発需給調整用の揚水発電を利用して再エネを受け入れているものの、その一方で原発のバックアップ用に敢えて残した老朽大型火力発電所は高稼働でダウンしたり、出力調整が容易なガス火力も高稼働で保守点検のスケジュールが重なったりという行き当たりばったりの結果としての予備率低下ということで、原発再稼働以外の対応策がない訳ではありません。

実はエネルギー価格上昇に伴う新電力の廃業ドミノの結果、行き場を失った契約者の補償で大手電力の採算が悪化したことで、なりふり構わず原発再稼働に向かっているという構図です。その結果赤字決算オンパレードとなった訳ですが、これもそもそもLNG価格上昇で予備率が低下して大手電力が自家発電を持つ工場などの余剰電力を卸電力取引所(JEPX)へ出す前に買い取った結果、JPEXの相場高騰で採算悪化して新電力の廃業ドミノが起きた訳である意味自業自得です。加えてこんなニュース。

看板倒れの発送電分離 電力大手の情報漏洩、罰則強化も:日本経済新聞
送電線を大手電力の傘下に残したのは、上述の先発権の担保に留まらず再エネ電力の託送料を高額にして自社系列の発電部門を利する利益相反もありますし、新電力と競合関係となる小売り部門でも新電力の契約者情報にアクセス可能だった結果やはり利益相反を生んでいる訳で、そもそも制度設計の失敗です。どうすればよかったか、実は中国に答えがありました。
「結果オーライ」の再エネ振興 中国の産業政策のいま 丸川知雄・東京大学教授 経済教室:日本経済新聞
欧州のFITに対応して太陽光パネルを増産したものの、輸出攻勢でダンピング関税を課され、更にFIT期間終了もあって過剰生産能力を持て余して企業救済のために国内普及を促し、また内陸部に偏在する電源と需要地の沿岸部を結ぶ送電線の増強を行った結果、世界一の再エネ大国になったという結果オーライだったということです。

ある意味行き当たりばったりだったとはいえ、元々原材料のポリシリコンは国内調達だし人件費は安いしで、ダンピング関税は明らかに欧州の自国産業保護でもある訳で、その結果窮地に陥り国立銀行の融資の焦げ付きを防ぐ為に国内へ普及させた訳ですが、ウイグルや内モンゴルなど元々土地が広く日照条件の良かった内陸部で普及したものの、やはり送電線接続拒否問題が起きたのは日本と同じですが、国が主導して送電線増強で対応したところが中国らしいところです。歴史的経緯で大手電力の既得権に切り込めない日本が停滞する訳です。

という具合に昨今民業圧迫が目につく中国ですが、民間企業が力を持つ弊害を抱える日本が優れていると言えない皮肉な現実です。新自由主義的に民営化すればうまくいくというロジックも不具合が目につく昨今ですが、そんな観点から注目したいニュースがあります。

地下鉄運賃下げたら乗客数3割増 神戸の「北神線」おカネ知って納得:日本経済新聞
グローバルコロナショックで取り上げた北神急行電鉄の神戸市買収による市営地下鉄編入の後日談ですが、コロナ禍にありながら乗客3割増しという驚くべき結果です。勿論上記エントリーで指摘した市営バス再編絡みで乗客を集約できたという側面はあると思いますが、運賃が下がったことのインパクトの大きさを示します。粟生線の乗客減に苦しむ神戸電鉄にとっては乗客減の影響はあるかもしれませんが、寧ろ有馬三田地区からの三宮へのアクセス向上は地域活性化に繋がる訳で、粟生線とは事情が異なります。新開地起点でターミナル立地が必ずしも良くない神戸電鉄にとっては寧ろビジネスチャンスかもしれません。「民から公へ」が成功する可能性は注目されます。

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