MAGA不思議
石橋を叩いて渡る日米同盟とは裏腹に暴走トランプは止まりません。ウクライナ戦争停戦交渉を米ロで進めてウクライナの頭越しというのは、WW1戦後を規定するベルサイユ体制を崩壊させたチェコスロバキアのズデーデン地方のドイツ領有を認めたミュンヘン合意と同じ構図です。英仏伊独4か国で英チェンバレン首相がナチスドイツのこれ以上の軍事行動を起こさないという約束を信じて一方の当事国のチェコスロバキアの意見も聞かずに決めた結果、ナチスドイツに軍事侵攻の成功体験を与えてWW2へと突き進んだ歴史の転換点ですが、トランプ大統領はウクライナにレアアースの権益をよこせと言っており、世界平和のために融和を図った英チェンバレン首相のお人好しぶりと違って悪辣です。
寧ろWW2の戦後処理を話し合ったクリミアのヤルタ会談の方が構図が近いかもしれません。英チャーチル、米ルーズベルト、ソ連スターリンの3首脳が秘密会談でドイツ降伏後3か月以内にソ連が対日参戦することを決め、その為に海軍力の弱かった当時のソ連に対して軍事訓練やロジスティクス支援まで約束していました。当時の日本は泥沼化する戦況で本土決戦まで視野に入れながら、ソ連に和平仲介を求めていたのですから浮かばれません。結果的にソ連参戦で南樺太や北方4島を失った日本ですが、アメリカから無理難題を押し付けられるウクライナの立場は深刻です。そしてロシアの軍事的膨張を止める手立てをアメリカ抜きで見出さなければならない欧州も大変です。
てことでトランプ流MAGA政策の狂気は留まることを知りません。関税連発でインフレ助長が心配されている一方、インフレでFRBが利上げすれば金利差からドル高になってインフレを抑制するから心配ないという政権スタッフも居たりしますし、財政膨張はマスク氏のDOGEのリストラで回避できるとか、奇妙な経済理論?で大統領令連発で連邦政府をリストラし足を引っ張る官僚をクビにして、逆に政府機能を弱体化させて呼び戻したりしてます。そんなアメリカとの向き合い方を各国は迫られます。てことでこのニュース。
米国、日本の「非関税障壁」問題視 車の安全基準など - 日本経済新聞日米首脳会談の安全運転ぶりでもこれですから、覚悟しといたほうがいいでしょう。勿論交渉材料という面もありますから、脊髄反応で余計な約束をしないことが大事です。そして仮に関税かけられても、対象は完成車に留まらず部品等のサプライ品もありますから、寧ろ米ビッグ3が割を食うということも言われております。関税回避を焦らず、寧ろ米国内の混乱を黙って見てりゃいい。その意味でこのニュース。
鴻海、ホンダに協業を提案 日産・三菱自含む4社で陣営 - 日本経済新聞製造業の壁で解説しましたが、もはやガラケー化した既存の自動車メーカーの生存戦略は狭き道になっております。日産の再建を待てずに子会社化を言い出してぶち壊れた統合話ですが、ホンダも単独では対応できないことはわかっていて、日産との統合話も寧ろプラグインハイブリッド車を持つ三菱自動車が狙いだったとも言われます。しかし三菱は早々に統合に参加しないことを決め、日産が煮え切らない中で子会社化して三菱を間接支配というシナリオだったんでしょう。元々経産省がお膳立てした話ってこともホンダには乗り気になれなかったかも。
鴻海の狙いはアイフォンの受託生産で実現した成長モデルをEV事業で再現することですが、既存の自動車メーカーは自前主義でなかなか話に乗ってこないから事業を進められないということで、鴻海のEVトップが日産出身の関潤氏ということもあり、内情を知る日産に接近するためにルノーの日産株譲渡を打診したのですが、関氏は日産内田社長とトップを争ったライバルでもあり、ゴーン事件でガタガタになった日産の立て直しでトップ候補としては寧ろ前評判が高かったけど経産省OBの豊田社外取お気に入りの内田氏に決まった経緯もあり、内輪揉めの延長戦として経産省に助けを求めてホンダとの経営統合を指導されたという一連が見えてきます。逆にホンダが欲しがる三菱のプラグインハイブリッド技術を活かそうとしなかった経営判断は、日産に欠けているものを浮き彫りにします。イノベーションに背を向けている訳です。
鴻海としては早くEV生産に参入して実績を作りたい訳で、工場閉鎖が避けられない日産の現状からすれば、工場を鴻海に託してEV向けに作り直してもらえばリストラも進めやすくなるし、新車開発と販売というマーケティングの川上と川下を押さえておけば高付加価値の事業環境が整うという風に再建の道筋も見えてきます。経営陣の内輪揉めで袋小路に入るより遥かにマシですし、加えて言えばアジア連合でアメリカの25%関税に打ち勝つクルマ作りぐらいの構想は持ってほしいところです。ウクライナで示したようにイザとなればトランプ政権は台湾を見捨てることすらあり得る訳ですから。
JR東と岩手県北自動車、山田線とバスの共同経営に認可 - 日本経済新聞突然ドメスティックな話題ですが、グローバル企業もドメスティック企業も事業環境の激変に晒されているのは同じで、その中でイノベーションを怠れば存続が危ういということにもなります。鉄ちゃん的には岩手県北自動車の106急行は山田線を追い込み、行き違い駅の棒線化などで列車間隔も伸びて劣勢になるなど恨みを感じるところでしょうけど、盛業に見えるバス事業も人口減少とドライバー不足で事業環境は悪化しており、このままではじり貧になりかねない訳で、少ない客を取り合っている場合ではない訳です。
鉄道とバスの共通乗車はJR祖国牟岐線と本四間の高速バスの末端区間でJR乗車券で高速バスに乗れるようになっていて実績はありますが、本数の多い106急行/特急バスとの提携はJR山田線の廃止を睨んでいるのかとさえ勘繰られますし、記者会見でも質問されてJR東日本は否定しています。事業として認可を受けていますから、単純な共通乗車に留まらずダイヤ調整や共同での観光客誘致や企画商品開発なども視野に入っていると思いますが、JRからすれば宮古への足の利便性が増せば例えば東北新幹線との通し乗車券の売上が伸びて広域にメリットが出るでしょうし、岩手県北自動車から見ればJRの広域集客力を利用できる訳でwin-winの関係を構築できる訳です。
キモは独占禁止法の例外扱いとしての認可というところで。単純な規制緩和ではなく既存の法令規制を踏まえた例外としての認可ということで、米DOGEのような力づくの制度破壊ではない制度イノベーションと言えます。実は欧州の都市交通で広範に見られる運輸連合方式の運賃共通化も同じロジックで行われており、例えば東京のメトロと都営の運賃共通化のようなことも視野に入るものでもあります。そして欧州で進むMaaSも運輸連合がプラットフォームとして機能していることも指摘できます。道交法にねじ込んだLuupのようなジャパニーズMaaSとは似て非なるものです。
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