ローカル線

Saturday, June 15, 2024

これからも失われ続ける日本

円安が止まりません。原因はこれ。

日銀政策決定会合、量的引き締めへ転換 国債購入減額「相応の規模」 - 日本経済新聞
国債買い入れ減額による量的引締めの予告ですが、利上げと共に次回の議題ということで今回は現状維持ということで円安圧力は続きます。日銀の慎重姿勢は金利の大きな変動の悪影響は為替変動の比ではない混乱をもたらしますから動くに動けないのが本音。赤字が常態化した拡張的な財政運営を日銀の実質国債引き受けでファイナンスして為替の円安誘導したものの、国内企業の製造拠点海外移転で輸出は増えず、逆に資源高で貿易赤字が定着したため、財政と貿易の双子の赤字状況になっております。アメリカの80年代を見ればわかる通り、国力の低下による構造的な変化なので、米FRBの利下げで一気に反転する状況にはありません。

賃金ホントに上がってる?で金利を名目で見る短期の投機筋の動きは直ぐに止みますが、日本が未だマイナス圏にある実質金利に反応するのはより期間の長い中期資金ですから、目先のイベントに反応するより腰の入った投資ポジションを採ります。故にこれを反転させるためには米利下げと日本の利上げが複数回続くぐらいのことがなければ実現しません。故にインフレは今後も続きますし財政赤字は財政インフレとなって国民生活を圧迫し続けます。そんな局面での「バターより大砲」の防衛費増額はさらに国民を苦しめます。

産業政策としての半導体ですが、台湾TSMC熊本工場の影響で関連企業の投資も呼び込んでますが、政府の補助金大盤振る舞いが功を奏してるものの、日本企業はあくまでわき役ですし、電力と水を大量消費する半導体産業の成長の持続可能性はいかほどか。AIブームで時価総額が一時アップルを抜いたエヌビディアのGPUの電力消費の大きさから、気候変動問題がAIで解決可能になるか寧ろエネルギー消費を増やして気候変動の原因になるかという議論が既に始まっており、著作権やフェイク問題、さらに労働市場への悪影響など不確定な問題が山積しております。国や財界は円安メリットとしての製造業復権に期待があるようですが、生産年齢人口の減少が立ちはだかります。そこで政府は技能実習生に代わる育成就労を制度化して外国人労働者を増やそうとしてますが、そもそも円安で稼げなくなった日本にわざわざ来る外国人がどれだけいるのか。本当に現実が見えていませんね。こんなニュースも。

企業物価指数、5月2.4%上昇 4カ月連続で伸び率拡大 - 日本経済新聞
消費者物価の先行指標とされる企業物価指数の上昇が続いており、転嫁が進めば消費者物価に波及することは確実です。「物価と賃金の好循環」が如何に空疎かということです。加えてこれは日本だけではありませんが、企業の価格転嫁が便乗値上げの疑いが指摘されております。これはマクロデータのGDPデフレーターに見られるGDPの名目値と実質値の乖離が欧米も含めて大きく、名目値はプラスなのに実質値はマイナスという状況が続いています。つまり企業の強欲が国民を苦しめている訳です。こうした企業にとって心地よい状況を続けるには企業献金やパーティ券購入で政治家に裏金作らせて見返りを求めることは続けたい訳です。

とはいえ労働力不足は簡単には解消できず、特にサービス業の人手不足は深刻で、2024年問題による働き方改革も影響します。特例で長い待機時間を認められていた運輸業も規制対象となります。故により多くの人手を確保しないとサービスを維持できない訳で、運賃値上げの要件緩和もあってJR東日本をはじめ各社が値上げに動いています。DXブームに乗ってみどりの窓口を減らしたり営業時間を短縮したりしたものの、ネット予約や指定席券売機のユーザーインターフェースの使いにくさもあってJR東日本は見直しを宣言しました。複雑な運賃料金制度やマルスシステムの縛りもあってうまくいきません。故に省力化も足踏みとなる訳ですが、そうなると例えば豪雨被害で長期運休中の肥薩線のように、道路予算や河川予算を投入してJR九州の負担を軽減しても、JR九州が渋っているために復旧が手つかずとなってますが、仮に復旧しても赤字路線だし、そこに人手が取られれば全社的にマイナスという判断になる訳です。

よく引き合いに出されるJR東日本只見線では福島県と沿線市町村で54億円を負担して線路を普及した上県が第三種事業者となって第二種免許を受けたJR東日本が運行する上下分離形態で復旧したものの、福島県包括外部監査ではバス転換の方が地域活性化できた可能性があると指摘されるなどしており、これが今後のローカル線維持のロールモデルになるかどうかも不明です。やはり災害で長期運休中の津軽線中小国―三厩間もバス転換が決まりました、但し人手不足が深刻なバスによる転換も今後は困難が予想されます。という訳で政治家や企業のやりたい放題を放置した結果、ドン詰まりの未来しか見えないのが現状です。

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Sunday, April 28, 2024

インフレ定着が意味するところ

インフレは続くよどこまでもで取り上げた米財政支出に対する共和党の反対姿勢が見直され、ウクライナ軍事支援が可能になりました。大統領選を控えてトランプ派が中間層取り込みで妥協した結果ということですから、トランプ氏の再選は厳しいという見方がされているということです。一方パレスチナ問題で若い有権者に嫌われているバイデン氏の再選の確実とは言い難く、本当に五分五分という情勢です。そんな中でこんなニュースです。

麻生太郎・自民党副総裁、トランプ前米大統領と会談 米大統領選後を見据え - 日本経済新聞
もしトラ対策と言われますが、バイデンでもトランプでも日本に対しては「金出せ!」の立場は変わりません。しかも円安でトマホークなどアメリカに「買います」と約束した兵器価格は円建てで上昇する訳ですから日本の財政負担はそれだけ増す訳です。その円安がさらに進んでます。
円安加速で34年ぶり1ドル158円台 米国の高い経済成長率・高インフレ・高金利に歯止め利かず - 日本経済新聞
3月の日銀政策決定会合でマイナス金利解除したときの安心してください時点ではドル円147円台だったから、1か月ほどで10円以上円安に動いた訳です。今回の日銀政策決定会合で追加利上げがあるかどうかが注目されたのですが日銀は動かず、日米金利差が当面続くという観測から当然の動きです。何度も言及してますが、低金利通貨としての円を調達して海外で運用すればそれだけで金利差が手に入りますし、日本の株や債券を買う場合も為替予約してヘッジすることで丸儲けとなるという現状が固定される訳ですから、投機筋にとっては安心材料となります。

唯一為替の円買い介入の有無だけが投機筋には懸念材料ですが、インフレが止まらないアメリカが認める筈もなく日本政府は動けません。仮に為替介入を実施できても効果は一時的で投機筋にちょっとした損失が出るものの、いくらでも取り返せるレベルです。この点は貿易に不利とするトランプ氏が再選されれば変わるでしょうけど、まさかそれだけでトランプ再選期待はあり得ません。

それ以前に日銀は自身のバランスシートを痛める可能性のある利上げや量的緩和終了に動きにくい状況にありますし、それを政府も都合よく利用していると見るべきです。これも繰り返し述べてますが、インフレの最大の受益者は財政赤字を抱える政府です。インフレで貨幣価値が下がればそれJ自体で債務負担が軽くなりますし、所得税、法人税、消費税の基幹3税がいずれも税収上振れとなりますから、逆に財政支出がやり易い状況になっています。所謂インフレ税と呼ばれる現象です。

インフレでGDPの名目値が上昇すればそれに伴って税収は増える訳ですから、政府は名目値だけ見ていればよい訳で、日銀が動けないから利払い増も当面あまり心配いらないし、実質GDPがどれだけ悲惨な状況であっても知らん顔していればよい訳で、過大な財政赤字を抱える日本政府にとってはインフレは神風のようなものです。故に国民や野党がどれだけ騒ごうがアメリカから高い武器を買って国民負担を増やして知らん顔できる訳です。故に防衛費や子育て支援でもどうにか目先を誤魔化しながら、明示的な増税は回避することが政府としての最適解となる訳です。「増税メガネ」とか「ザイム真理教」とか騒いでる人たちが見落としているのはこういうことです。

こうなるのは結局政治が機能していないからで、もしトラで騒いでるアメリカはそれでも政権交代が頻繁にあるから物事がギクシャクしながらでも大外れはしない訳ですが、それがない日本はある意味外国から見ればわかりやすくつけ込みやすい訳で、結局バイデンでもトランプでも日本に対しては「金出せ!」で済む訳です。ここは国民が奮起して政治状況を変えるしかありません。その意味で国を動かすのは大変ですが、手前の自治体を動かすことは難易度は低いと言えます。そんなニュースです。

滋賀・近江鉄道、「上下分離」スタート ICカード導入へ - 日本経済新聞
滋賀県と沿線自治体が支援して近江鉄道の上下分離が実現しました。滋賀県の三日月知事は選挙戦で交通税導入を公約して当選した訳で、増税を約束して当選というのは面白いところです。有権者に身近な課題を提示して信を問うという教科書通りの出来事ですが、地方レベルではこうしたことができる余地があるということでもあります。政府が信用できなくても、身近な自治体を選挙で有権者がコントロールできればやれることはそれなりにあるということでもあります。またこれは赤字ローカル線存続のロールモデルになり得るという意味でも注目です。

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Saturday, March 23, 2024

インボイス始めました

確定申告が終わって一息つきました。やはりというか、物価上昇の影響で経費が膨張して課税所得は激減です。インフレが憎い-_-;。また昨年10月1日付で適格請求書発行事業者に登録されて消費税の納税義務も負いましたから、所得税と消費税の2回の確定申告となりました。消費税に関しては1-9月の非課税事業者期間と10-12月の課税事業者期間があって区分経理で仕分けがメンド臭かったけれど、インボイスの電子帳票保存などは経過措置で紙で良いということになりましたので、当面紙で対応して電帳対応はゆっくりやればよいということで助かってます。

とはいえインボイス対応は零細企業や個人事業主の事務負担を高めたことも確かで、自民党の裏金問題に厳しい目を向けられるのはタイミングですね。昨年末の発覚時は安倍派中心でその影響力を受ける岸田政権にとってはチャンスでもあったのですが、他派へ波及し、特に岸田派の会計責任者の訴追で捨て身の派閥解散でサプライズを演出するも、世論の逆風が収まらなかったのは確定申告の時期に当たったこともあるでしょう。好事魔多しですね。

米ドジャースの大谷選手の専属通訳水原氏の事件は意外でしたが、野球も賭博対象となるアメリカでプロ選手が違法賭博に関わったってのは、本人の関与の有無に関わらず重大事件になります。ドジャース移籍でプロアスリート世界最高年俸を得て結婚し、公私にわたって絶好調だっただけに痛いところです。日本の国税庁にあたる内国歳入庁(IRS)とFBIが捜査に動き、MLBも本人から聴取するということで最悪身柄拘束もあり得ます。

てなことに関係なく円安株高は続きます。日銀政策決定会合の後で米FOMCで利下げ示唆があって米国株が値上がりした流れで日本株も上げてますが、日銀はマイナス金利解除でも緩和的と言いFRBは利下げするけどまだ先と言い、結局枠組みは変わらないということで安心してくださいで指摘した通りの展開です。但し日本株はともかく米株はバブルの水準ですから、この相場がいつまでも持続する訳ではありません。外国人相場の日本株もいつ資金が引き上げられるかはわかりません。円安相場では利益確定の売り逃げで終わると見るべきでしょう。

てことで特に新NISA出で株始めた人は要注意。損切りで売却損が出た場合、普通口座や特定口座なら確定申告で配当所得との損益通算ができますし、本業が低所得なら総合課税を選ぶことで配当控除が使えます。非課税のNISA口座ではできません。また配当所得は年20万円以下は課税免除となります。故に非課税だからといった理由ではなく、自分に合った投資スタイルを見つけることが大事です。基本的に資金力の乏しい個人投資家は株を長く持って配当を受け取ったり株主優待を受けたりしてメリットを得るといった狙いで良いでしょう。その意味では明らかに高値の現状で株を仕込むのは悪手でお勧めできません。

あと蛇足的ニュース。

国際機関の拠出金、当初予算で未確保 円安が外交に影 - 日本経済新聞
当初予算の想定為替レートを超える円安で拠出額が不足してしまい、補正予算でカバーすることが検討されています。つまり税金の一部が海外へ流出することになる訳で、その分政府支出を圧迫し行政サービスを低下させる訳ですね。こうなるとただでさえ遅れが指摘される能登半島の復興が進まなくなるでしょう。それでいて武器購入や五厘や万博には景気良く税金を投入するのですから救われません。特に自衛隊の出動を怒らせたりボランティアの現地入り自粛を求めたりと疑問だらけの対応ばかりで政府によるプッシュ型支援打ち切りとかひどいことばかりです。

そんな中で被害の大きかったのと鉄道の能登中島―穴水間が4月6日に復旧し全線運行されるのは朗報です。ボランティアの現地入りもやり易くなります。但し未だに宿泊場所がないから、例えば金沢などからの通いで対応となり移動時間分だけ作業時間が圧迫される訳です。当然ながら観光客を受け入れる余裕はありません。その一方で北陸新幹線敦賀延伸開業で観光客を呼び込もうとしているなど、政府や県の対応はチグハグです。そもそも自衛隊の災害復旧というのは前線補給のロジスティクス能力の活用な訳で、それがうまくいっていないのは実際の戦闘能力に疑義があるってことでもあります。これで国を守れるのか?

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Sunday, March 10, 2024

徒然に大草原wwwwwwww

8日の大雪予想は外れてくれて助かりました。滑って転んでばかりはいられません。しかし滑りっぱなしの政権の迷走は続きます。例えば減税。

減税の事務負担、企業・自治体が反発 政権浮揚効果に影響 - 日本経済新聞
賃上げ時期の実施で手取りが増えて見える効果を狙ったもpのですが、その結果ただでさえ賃上げに伴う給与計算見直しの事務負担がある時期に減税までやらなきゃならないため、企業や自治体が悲鳴を上げています。ホント岸田政権は現場感覚皆無の思いつきばかりです。
経済安保情報、明確な基準を要求 関連法案で経団連提言 - 日本経済新聞
これザックリ言えば特定秘密保護法の民間版です。特定秘密は公務員が対象でしたが、経済安保情報は民間企業や個人が対象で、厳罰化の一方で基準が明確ではないため、第二第三の大川原化工機事件になりかねないだけに、財界が基準の明確化を政府に要請したってことです。民間に疑心暗鬼が広がればイノベーションを阻害することにもなります。中国の反スパイ法のように経済活動を抑制しかねません。
離婚後の「共同親権」導入、民法改正案を閣議決定 - 日本経済新聞
一緒に居られない、あるいは居たくない事情があって別れた両親が共同で子育てって現実的にあり得ません。子どもの養育費の未払いを防ぐ方法としては公正証書作成で縛りを入れることは可能ですし、公正証書作成を義務付けて違反した場合の厳罰化など実情に即した見直しの方法はありますし、親権を持たない側の面会権は現行法でも認められております。そして両親が共同して子育てや教育の方針を決められるならそもそも別れる必要もありません。子どもの教育方針で対立した場合や子連れ再婚の阻害要因にもなりかねず、これらの解決の困難さは結局子どもが被害者となる訳で、何一つメリットはありません。子育て支援にも逆行します。明らかな悪法です。おそらく母が親権を得ることが多いことを快く思わない壺系議員の父権パターナリズムを喜ばせるだけです。
少子化対策の支援金、負担額「月1000円超の可能性」 加藤こども相 - 日本経済新聞
その子育て支援の財源に健保などの社会保険料に上乗せして確保する訳ですが、これ子育て世代の負担が増えるってことです。でも賃上げと減税で実質負担はないというのが政府の説明です。つまり賃上げも減税も行って来いのお金で手元に残らないってことです。インフレ下では実質マイナスです。
<子育てとお金>大学資金、まず預金・国債で - 日本経済新聞
満18歳または高校卒業までの児童手当でカバーできない大学資金は結局貯蓄で賄うしかないのが現実です。大学の学費や教材費が高すぎるのがネックになっている訳で、大学の学費無償化や奨学金制度の見直しの方が子育て支援には有効です。
公共工事の費用対効果、5割で悪化 着工後も増額頻発 - 日本経済新聞
ライトなリスクでもライトラインの公費部分の費用便益比(B/C比)悪化が指摘されてますが、昨今の公共事業は押しなべてB/C比が悪化してます。R20八王寺南バイパスでは鉄道との立体交差部分での鉄道会社との調整不足で工事費が見直されたように事業費の見積りの甘さが指摘されてますし、R103奥入瀬バイパスでは3,200台/日の需要予測に対して実績が2,700台/日でB/C比が1.0から0.7に悪化したりと需要面の見積りの甘さが指摘されてます。インフレや人手不足で事業費が膨張する傾向はあるものの、簡単に増額を認めるのも問題です。経済効果マイナスの公共事業はマクロ経済にとってもマイナスです。
送電ロスなし「超電導」、伊豆箱根鉄道に 営業路線で世界初 - 日本経済新聞
最後ぐらいは草生えない話題・JR総研が伊豆箱根鉄道駿豆線大仁駅近くで13日から超電導送電の営業稼働を始めるというニュースです。ささやかな1歩ですが、送電ロス無しに直流電気を遠距離送電することが可能になしますし、電圧降下を防げますから、将来的には変電所の集約も可能になります。その結果1セクション内の列車数が増える訳で、力行と回生のマッチングも容易になり副次的な節電効果も期待できます。大電流に悩まされる首都圏の通勤路線で採用されれば効果絶大ですし、一方で地方路線では出力調整で余っている再エネ電力を利用した地産地消も可能になるなど可能性は広がります。リニアより汎用性の高い超電導技術の可能性が開けます。

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Saturday, March 02, 2024

円安でつくばとねり的ライトなリスク

来年度予算の年度内成立が確定しました。

2024年度予算案が衆院通過、年度内成立へ 総額112兆円 - 日本経済新聞
憲法の規定で予算案は衆院優越で衆院で可決成立すれば30日後に自然成立となることから、年度内成立が確定した訳ですが、23年度本予算と補正予算で予備費を大量に積み増して使い残している現状からすれば、予算成立が遅れても執行に影響することはなく、能登半島地震の復旧復興などへの影響はほぼありません。寧ろボランティアに制限をかけたりして足を引っ張っているのは国と石川県です。やるべきことをやらない責任は政府と県にあります。

寧ろ新年度予算の審議が生煮えで成立させたことの方が問題です。それでも強行採決に及んだのは岸田首相の意向が強かったようです。政治とカネ問題で炎上中で、予算審議を質に取っての追求は野党として当然の戦術ですが、衆院成立後に送致される参院の予算委でも追及されることを嫌った模様です。その為の岸田首相の政治倫理審査会への出席だった訳で、早くこの問題に蓋をしたいのが本音です。しかしあれほどキックバックとな還付金とか言っていたのに首相が裏金発言をしたから寧ろ火に油。しかも故安倍元首相が「やめよう」といっていたのに復活した経緯もかなり解像度が上がりました。やめようとしたのは法令違反の認識があったと考えられますし、それが覆った経緯が不透明で寧ろ疑惑を深めました。もはやトカゲのしっぽ切りでは済まなくなりました。

そんな政治の混乱をよそに、日銀のマイナス金利解除は確度を上げています。IMFでも好感を示すレポートが出され、同レポートで政府の財政支出頼みの姿勢は寧ろ批判されています。加えてここへ来ての日本株の好調が、日銀に思わぬ追い風をもたらします。異次元緩和機に大量購入された株式ETFの含み益が拡大しており、異次元緩和で国債市場が機能を失って利ザヤが消失している一方で、ETF売却で益出しできる環境が整った訳です。つまり仮に緩和見直しで保有国債に含み損が出ても、国債ならば期間をかけて償還を待てますが、売れば値を下げる株式ETFの売却問題は日銀にとっては重い宿題でしたが、高すぎる米株式に対して割安感のある日本株への海外マネーの流入は日銀にとってはチャンスな訳です。

あと日本株ETFを大量保有するGPIFも含み益拡大で投資ポートフォリオ見直し売りで益出ししますから、当面日本株は日銀とGPIFという大量保有機関投資家が売りポジションをとる訳で、新NISAで日本株投資を考えている人は、日銀とGPIFを助けたい人以外は考え直した方が良いでしょう。令和の秩禄処分の地雷です。とはいえ日銀の緩和姿勢は簡単には解消されないことも確かで、当面この構図は続くと考えられます。故に円安反転で円高は現時点では心配することではないでしょう。しかし円安の影響は意外なところにも現れています。

栃木の宇都宮LRT、車両追加へ価格7割高の衝撃 増発・検査視野 - 日本経済新聞
現在宇都宮ライトレールが保有する車両HU300形は17編成あり、昼間ダイヤで3編成が休んでいる状況ですが、4月に予定されるスピードアップで13編成で回せるようになる見込みで、利用が好調なこともあり、増発も視野に入ります。しかし問題は開業時に竣工した17編成は2027年に一斉に重要部検査の期限を迎えるため、期限前に一部編成を前倒しで検査入場させて輪番検査の体制を作る必要があり、その為に予備車確保で2編成の増備となった訳ですが、問題は増備車の価格です。新潟トランシス製のGTシリーズはアルストム傘下のドイツ企業のライセンス生産で、そのライセンス料と輸入部品代が円安で高騰し、実に7割高となった訳です。当然ながら今後の増発や西側延伸への対応が難しくなります。また検査時の部品交換も割高となることもあります。そこで国産メーカーで対応できないかということになります。
宇都宮LRT 福井鉄道フクラムライナー・広島電鉄グリーンムーバー改良型導入も一考の余地 - 日本経済新聞
フクラムライナーは阪急阪神グループのアルナ車両製のリトルダンサーと呼ばれる部分低床車、グリーンムーバーマックスは近畿車両、三菱重工、東洋電k製造、広島電鉄の4社共同開発の完全低床車ですが、純国産のリトルダンサーと異なり弾性車輪や駆動装置などドイツのシーメンス製部品が一部使われていて、やはり円安の影響は受けます。

宇都宮ライトレールに関しては開業に至る過程で紆余曲折があり、県と市が対立して足踏みしましたし、地場のバス大手関東自動車の反対もありましたし、自動車交通の阻害や財政支出を巡る市民グループの反対もありました。関東自動車は経営悪化でみちのりHDグループ入りし賛成に転じたものの、工事の遅れや見直しで費用便益比(B/C比)が当初の1.1から0.7へ悪化したことなども問題視されております。そうした市民の不満に対して立憲民主党と共産党が後押ししてますが、あくまでも市民グループの声を掬い上げる議会野党の役割ということで、新年度予算を質に裏金問題を追及することと同じで、国会の新年度予算強行採決の轍を踏まないで議論を重ねることが大事です。

それはさておき、元々宇都宮市の東西軸交通に新交通システム導入を検討したことから始まったLRT事業ですから、西側延伸で東武宇都宮駅に接続することが求められていて、検討過程でモノレールやAGTなどの高架式新交通システムでは事業費が高すぎるということでLRTになった経緯があります。しかし西側延伸の為にはJR宇都宮駅北側の陸橋に軌道を整備して駅西側に至り、メインストリートの大通りを通って東武宇都宮駅前から桜通十文字付近までの事業化が進められております。

但しこの区間は利用が見込める一方、バス路線が集中する区間でもあり、東側同様に並行バス路線をバッサリ切ることの難易度ははるかに高いと言えます。実際宇都宮大学陽東キャンパス、清原地区市民センター前、芳賀町工業団地管理センターの3カ所でアクセスバスとの乗り継ぎが図られ、ローカルIC乗車券のtotraで乗継割引サービスが導入されてますが、昼間12分ヘッドのライトレールに対して1時間1本のバスへの乗り継ぎははかばかしくないようです。利便性の乏しいアクセスバスよりもマイカーで停留所付近の駐車場に停めて乗り継ぐ方が利便性は高い訳で、西側の時のように関東自動車がバス路線再編に協力してくれるかどうかはわかりません。当然乗り継ぎによるバスの利便性低下は客離れを起こす可能性もあります。また資材費の高騰や建設2024年問題による人手不足もあり、すんなり進むとは限りません。

一方で宇都宮ライトレールの営業成績は上々で、開業半年の乗客数が予想の200万人を超える220万人に達し、月間の乗客数も開業景気が落ち着いて直近では37,000人程度で、これも想定の31,000人程度から2割増しですから上出来ですが、これが素直に喜べないのは、タイトルのつくばとねり的リスクってことです。つくばエクスプレス(TX)が好業績ながら沿線開発が急すぎて輸送力増強に追われ、車両増備、ダイヤ見直し、座席のロングシート化による収容力強化に追われて、構想にある東京駅延伸がいつまでたっても果たせず、寧ろ8連化に伴うホーム延伸や車両入れ替えで追加投資を余儀なくされてます。

また都営日暮里舎人ライナーも、やはり沿線開発が急で輸送力増強に追われこちらは収容力の大きいロングシートの新車への入れ替えで凌いでおり、既に限界に達し、コロナ禍で通勤ラッシュが緩和傾向にある中で混雑率ワーストとなったことは戻らない混雑で指摘した通りです。日暮里舎人ライナーは沿線にめぼしい集客施設がなく片輸送の非効率もあって2023年度の黒字転換予定が果たせずにいます。

TXも舎人ライナーも車両増備だけでは足らず車両のロングシート化で収容力を高めて対応するところまで追い込まれ、舎人ライナーではゴムタイヤの荷重制限から軽量化した新形車に入れ替えるという追加費用をかけた結果の収支見通しの悪化ですが、これ宇都宮ライトレールのHU300形がタイヤハウスの位置にボックスシートの背もたれを配置する構造からロングシート化は不可能ですから、車両の収容力強化のための入れ替えすらあり得るということですね。TX、舎人ライナー、ライトラインの豊作貧乏トリオになりかねないリスクはある訳です。業績の好調をただ喜んではいられないってことですね。

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Saturday, February 24, 2024

令和の秩禄処分

漂流する世界と日本で株価の上昇を好感すべきではないことを述べましたが、こんなニュースの後でも基本的な見解は変わりません。

日経平均最高値、「34年で株価10倍」142社 ゼンショーなど - 日本経済新聞
22日の東証終値で日経平均株価の終値が34年ぶりに最高値を更新しましたが、記事にあるように値上がりを主導したのは新興勢で伝統的大企業は寧ろ足を引っ張っている現実があります。34年間に米NY株は10倍、独DAXも6倍に上昇していて、日本だけが株価の低迷から抜け出せなかった現実が寧ろ明らかです。

日経平均株価は225の指定優良銘柄の単純平均であり、採用銘柄は定期的に入れ替えられますし、合併や上場廃止による入替もありますから、連続性のある指標とは言えませんが、その時点の日本の優良企業の成績表という側面はある訳です。そして新興勢は米国並みの値上がりがある一方、伝統的大企業の多くは株式の持ち合い解消もあって値上がりとは縁遠く、最近になってやっと事業の見直しが進んできたものの、未だ将来展望を描けていないってことですね。逆に言えば米株式市場は出入りが激しく、結果的に新興勢が相場の主力になっている訳で、古い企業の淘汰が進んだ結果とも言えます。つまり日本の産業構造の改革が停滞した結果です。

あと直近の動きとしては米エヌビディアなど半導体主導は相変わらずですし、大型株の値上がりで平均値を上げており、おそらく新NISAで株式投信が売れた結果と考えることができます。加えて言えばウクライナ、ガザ、政治家裏金問題などのバッドニュースが多い中で、受けの良いニュースというメディア側の事情もあって大きく取り上げられているということは言えます。加えて広告主としての金融業界への忖度ですね。

とはいえ株価水準としてはやはり高すぎるというのが正直なところ。エヌビディアの株価収益率(PER)30倍は異常です。PERとは株価が1株利益の何倍に当たるかを示す指標で、平常値は14-16倍程度と言われ、全てが株主に還元される訳ではありませんが、成長投資の継続を前提に投資回収にザックリ30年ということになりますが、当然ながら30年先を予測することは困難ですから、実演可能性は疑われます。AIブームによるGPU需要の上振れという意味でバブルの水準です。

また「貯蓄から投資へ」の掛け声で過剰と言われる家計貯蓄を株式投資へ振り向ける政府の政策誘導もあります。日本でも新興企業には勢いがある訳で、その流れを作る意味でスタートアップへのリスク資金提供の狙いは以前から言われていましたが、所謂ベンチャーキャピタルのようなものは育たずうまくいきません。それ以前にスタートアップ自身が株式公開で資金を集めたら上がりで継続的な投資を止めてしまう傾向もあり、うまくいきません。

そして岸田政権では「新しい資本主義」とやらで「資産所得倍増」「資産運用立国」という言葉が躍ります。これ意味合いとしては資産運用で公的社会保障のバックアップとすることで「分配重視、自己責任で、テヘペロ^_^;」ってところに重心が移っているようです。つまり社会保障を充実させるには増税や社会保険料値上げなどの受けの悪い政策で「増税メガネ」と言われるから、自分で資産を増やす方向へ誘導したいってことでしょう。高齢者の資産取り崩しの意味するところで取り上げた老後資産2,000万円レポートの流れという訳です。国民の不評でレポートは撤回されましたが、ゾンビ的な復活劇です。

という訳で、新NISAはタイトルの秩禄処分の令和版じゃないかってことになります。秩禄処分とは1871年(明治4年)の版籍奉還、廃藩置県の後の明治政府の政策です。明治維新で明治政府が成立した後も諸藩の統治は続いていた訳ですが、勅令によって大名に版籍奉還を求めたもので、大名と武士が地位を失い、藩に代わって地域を統治する国の出先機関として府県が設置されました。その際藩の負債は明治政府が引き取る一方、米切手支給による禄に代わる給付金を華士族に禄高に応じて支給するようになります。これが秩禄です。

しかし当然ながら継続的に支給すると政府財政を圧迫しますから、どこかで止めなければならないですが、支給金を元手に事業を興して経済的に自立することを狙ったけれど、元々支配階級として頭の高い武家の商法がうまくいく訳もなく、特に禄高の低い下級士族ほど支給金を蕩尽するだけの厄介者となります。そこで秩禄5年分相当の公債を交付して、かつて武士たちが米切手を売りに行った米市場のような公債流通市場を整備して自由に売買させることで、まとまった資金を持たせて起業を促そうとしたようです。つまりインフレで実質賃金が減ってる一方で資産運用、自己責任で何とかしろという令和の今の新NISAは当時をなぞっているように見えます。

しかし当然ながら下級士族の不満は大きく、それが爆発して西南戦争のような内戦に発展します。明治政府はその制圧に財政を浪費してしまいます。列強の植民地支配を逃れるための富国強兵、殖産興業政策が立往生します。特に文明開化の分かりやすいシンボルとしての鉄道事業への資金配分の不足は顕著でした。特に東と西の両京連絡鉄道構想のとん挫は避けたいところですし、軍部からの要請で艦砲射撃の標的になる海岸沿いの東海道鉄道ではなく中山道鉄道を優先するということになり、そのためには東京―横浜間の官営鉄道はルートから外れ、別途東京から北へ向かう鉄道を建設する必要に迫られますが、西南戦争などで財政が疲弊してとても資金を賄えないということで、井上勝などの鉄道国有方針を退けて民間資本の活用に舵を切ります。

その結果岩倉具視をはじめとする有力華族や裕福な士族が秩禄公債を売却した資金を出して日本鉄道株式会社を設立し、中山道鉄道の一部となる東京―高崎間の建設に乗り出します。資金拠出した華士族は株主となって配当やキャピタルゲインを得られるという意味で誘導して士族の不満を抑える効果も期待できます。とはいえ交付公債由来の資金で出所は政府ですから、ある意味今に至る借金財政の始まりとも言えます。また資金こそ民間に依存しながら官営鉄道の工事部門が施工したり、借入金の利子補給したりと実際は半官半民的な企業でした。TSMCの誘致に補助金大盤振舞いみたいなことやってた訳です。

当時の両毛地区は養蚕が盛んで、官営富岡製糸場が作られて絹織物の加工業が両毛地区で盛んになります。当時の日本の外貨獲得は専ら絹織物の輸出に依存しており、故に日本鉄道は利根川対岸の前橋仮駅まで延伸し、赤羽から品川への山手線で官鉄に接続して横浜港から海外へ出荷という流れが出来て、客貨ともに好調で民間の鉄道投資熱を誘発し、山陽鉄道や九州鉄道などの長距離私鉄の出現に繋がります。所謂第一次鉄道ブームです。

とはいえ鉄道国有方針は撤回した訳ではなく、民間による鉄道建設に法律の網をかぶせます。後に私設鉄道法となる条例制定で、鉄道は国の権限で建設運営される原則を維持する意味で、民間の鉄道事業に対して国が事業の適格性を審査して免許を交付する形で制度化されます。故に官営鉄道との接続と車両直通とか、資金の確実性、事業採算性などが審査された訳ですが、この仕組みは法令のアップデートで細部の変化あるものの基本的に現行の鉄道事業法に至るまで続きます。

そして大正期の鉄道国有化によってほとんどの私設鉄道は官営鉄道に統合される訳ですが、鉄道国有原則は貫徹されます。国の組織も鉄道院から鉄道省と変化し、鉄道省は事業主体としての現業部門と陸海空の民間等の交通事業の監督行政の双方を担う存在になります。故に現業部門は監督部門と並列の存在で監督権限が及ばず、寧ろ地方鉄道法で国の買収提案を事業者は断れない建付けになっていました。これが後の戦時買収の根拠となります。

そして戦後にGHQ命令で現業部門を公社として切り離して日本国有鉄道とし、独立採算の義務を負わせる制度改革が行われましたが、鉄道国有原則は維持され、監督部門の運輸省の監督権限は及ばない存在となりました。こうして見ると国鉄分割民営化に合わせて成立した鉄道事業法でJR各社も国から免許交付を受ける事業者となった訳ですから、鉄道国有原則の廃棄という意味で大きな改革ではありました。故に赤字ローカル線存続で揺れる現状ですが、地域公共交通活性化再生法などで地方と事業者の合意の下での国の関与という形になるのはある意味必然ではあります。

という訳で、長くなりましたのでまとめますが、帝都電鉄物語で取り上げた電鉄ブームもそうですが、鉄道事業は今で言えばデジタル関連のような熱狂の中にあって民間資金を集めやすい事業だったってことですね。ゼロ年代のITバブルや10年代のweb3、昨今のDXやAIブームなど何度かの波が来て民間資金が大きく動いたものの、成熟産業になる将来の姿は現時点では見えません。当然淘汰される流れもありますから、人口減少による需要減や人手不足、ローカル線存続困難など鉄道が直面するようなことがデジタル界隈でも起こり得るということは肝に銘じておきましょう。

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Saturday, February 17, 2024

キャッシュフルなキャッシュレス社会

滑って転んでアップした後で気づいたんですが、桐島容疑者と自民党裏金政治家の共通点に気付きました。どちらも現金決済の匿名性のスキマに生存空間がある点です。現金つまり日銀券などの現物貨幣は名前が書かれている訳ではなく、人から人へと渡り歩く訳で、その動きを後追いして調べるのは困難です。これを現金の匿名性と呼びます。対して銀行などの口座取引やカード、電子マネー、QRコードなどのキャッシュレス決済は取引記録が残る訳で、犯罪捜査などで所謂アシがつく訳です。つまり政治家や派閥のパーティ券が現金で売られるのは、政治家や派閥にとっても、買う側の個人や企業にとっても都合が良い訳です。関係があるかどうかわかりませんがこのニュース。

「年越しお札」125兆円、13年連続で最高更新 - 日本経済新聞
記事では銀行のATM手数料課金が増えた影響などを指摘してます。また年末年始のお年玉や初詣の賽銭などで現金需要が増える時期ではありますが、年越しの日銀券が毎年増えていることは確かです。キャッシュレス社会のキャッシュフルな現実というのが何を意味するのかは謎です。例えばマフィア経済の比重が大きかったかつてのイタリアや麻薬ビジネスが横行する中南米などのようなインフォーマル経済では現金が動きます。果たして今の日本は?

1つ押さえておきたいのはインフレの影響です。物価上昇は結果的に現金需要を押し上げますから、その意味では整合的ですが、一方で政府発行の補助通貨である硬貨の発行は減っている訳で、キャッシュレス決済拡大と整合的です。その一方で日銀券が増えているのは謎です。利息の付かない日銀券の保有は銀行金利がほぼゼロならば所謂タンス預金として合理的ですが、それでも盗難や焼失などのリスクもある訳です。ましてインフレならば実質購買力の低下による価値の毀損がある訳ですから、インフレ下での日銀券増加はやはり謎です。表に出せない金が増えているのか?

記載漏れ3,500万円で書籍購入した二階氏の購入書籍の内訳を公開しました。二階氏のヨイショ本5,000冊他ですが、出版不況でベストセラー本でも1万冊、初刷1,000冊が今や業界標準の時代に5,000冊とはそれだけで出版社を動かせるし著者や自らへの印税もあり、また支持者へ配布することで世論への働きかけにもなります。加えて書店で平積みされて一般客の目にも触れやすくなります。取り締まる法律はありませんが、金の力で言論を買う行為は憲法で保障された言論の自由とは相いれません。民間の営利事業ならば禁止されているステルスマーケティングに当たります。

裏金問題では他にも地雷多数で、例えば政治資金団体としての派閥を解散しても、残金をどうするかは難問です。法令上は構成員による山分けで問題はないんですが、そうなるとそれを受け取った議員個人の政治資金団体側で収支報告書に記載し公開しなければなりません。これも炎上の種になります。故に解散手続きを先送りして忘れた頃にとなりますが、世間が忘れてくれるならシレっと派閥復活の芽もある訳です。いずれにしても当面動かせない金が塩漬けになる訳ですね。メディアはこの辺も注視してほしいところです。

という訳でインフレに苦しむ庶民とは無縁の世界でまともな政策が実行されない訳です。その一方でやはり庶民には無縁の株価上昇が起きていて、バブル期の最高値に迫る場面もありましたが、これだけ生活実感とかけ離れた株価上昇がなぜ起きるのかといえば、基本的にはインフレの影響です。

インフレが呼ぶGDP「5%成長」 32年ぶりの恩恵と錯覚 - 日本経済新聞
2023年の暦年でGDP5%成長という数値だけで海外投資家の日本株への関心が高まっています。つまりインフレで生活実感が悪化している日本国民の苦しみとは無縁の海外投資家が相場を押し上げている訳で、しかも米NY株上昇を受けての動きですが、個別銘柄を細かく見ると日米で共通の動きがあります。いずれも半導体が主導したものという点で共通します。最高値に迫った16日よりも15日(NYは14日)が典型ですが、多くの銘柄が値下がりする中で、米半導体メーカーのエヌビディアが値上がりし、日本では英アーム株を保有するソフトバンクグループ(SBG)が評価益拡大で値を上げて相場を主導しました。いずれも時価総額の大きい大型株故に相場を押し上げたもので、特殊要因が働いたと言えます。故に今回の相場の持続性には疑問符がつきます。

一方インフレによる名目GDP上昇は株価に連動しますから、株価上昇が国民の生活実感と乖離しているのはひとえに政策の不整合によるもので、具体的には日銀の金融政策を引き締めにシフトすることが必要ですが、そうなるとインフレで財政負担が減じている政府の債務に金利上昇圧力をかけることになり、財政政策との整合性が取りづらいということもあり、中途半端な対応に甘んじております。異次元緩和と積極財政で事実上の財政ファイナンスを10年続けたアベノミクスの後遺症です。インフレに苦しむ国民を救うなら政府の財政出動は寧ろインフレの原因になりますので、公共事業の一時凍結などによる総需要抑制策こそが王道です。当然大阪万博や明治神宮再開発なども止めるべきです。

しかし懲りないのは政府だけではないところが頭の痛いところで、例えばマンション価格が上昇しても主に外国人と思われる投資用の需要が旺盛で民間事業も盛んですから、公共事業を止めたぐらいでは効果は薄いし、当然ながら2024年問題も解決しません。寧ろ202年もd内は賃金上昇圧力をもたらしますから、賃金インフレは続くことになります。そして名目賃金は上がってもインフレを後追いするのが精一杯で実質賃金は低下するばかりです。売れるから高価なマンションの建設が止まらないし、それ故に人件費や資材費も上昇してインフレを助長する訳です。神子ぐ延焼に悩む日本に必要な住宅は数の上では充足されている訳で、寧ろ既存ストックを活用した低価格の公営住宅を供給するなどの方が国未生活の支えになります。また能登半島地震のような自然災害の復旧復興も遅れることになります。関連ニュースです。

のと鉄道、一部区間で再開 利用客「ありがたい」 - 日本経済新聞
JR西日本七尾線の七尾―和倉温泉間と同区間を共有するのと鉄道の七尾―能登中島間が2月15日に復旧し営業再開しました。能登中島―穴水間も4月中旬に再開予定ですが、穴水―珠洲間はまだ見通しが立ちません。鉄道の再開は復旧復興を後押しするだけに遅々として進まないのはじれったいところですが、未だに水道も復旧しない状況で優先順位を差配するのは困難ではあります。

その一方で北陸新幹線の敦賀延伸は3月16日に開業予定で、それに合わせて北陸応援割という50%オフの観光キャンペーンを政府は打ち出し、それに関連して避難所不足で域外避難した被災者を受け入れたホテル旅館を空けるために追い出しかけるという鬼畜の所業が行われます。災害復興よりも新幹線開業に合わせた観光振興を優先するってのは違うだろって話です。しかも旅行会社や旅行サイトの手数料が手厚いから、被災地の復興に直接公金を入れるよりも被災地への波及は限られますし、寧ろ被災者の生活再建を遅らせることにもなります。3.11後の2011年3月12日に博多―新八代間を開業した九州新幹線が放映予定のTVCMをJR九州が自粛したことと比べてもひどい話です。この構図は円安インフレで株価上昇の恩恵に預かる企業を潤し、生活が窮乏する国民を置き去りにする構図と相似形ですね。怒ろう!

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Sunday, January 14, 2024

ガバナンス不在の政治

諸人こぞりて苦しむイブの続きですが、悪夢は続きます。

自民党安倍派「裏金」、幹部聴取は週内に終結 立件見送り公算 - 日本経済新聞
まあ予想通りの展開ですが、政治資金規正法で不記載は会計責任者の責任と定義されていて、公職選挙法で「秘書がやった」の穴を塞ぐ連座制のような規定がない以上、会計責任者の在宅起訴で幕引きとなることはやむを得ない部分があります。

一方インフレは続くよどこまでもの大川原化工機事件のように、証拠を捏造してまで冤罪事件を起こしたのも検察ですから、検察のダブルスタンダードですが、あまりここを突っ込みすぎると選挙で選ばれた議員を同様に追い込んでよいということにもなりかねず問題があります。政治資金規正法の改正で穴を塞ぐ立法府の出番ということで、26日召集の通常国会が注目されますが、能登半島地震の対応も含めて政権にとっては茨の道になりそうです。加えて検察の立件空振りで国民の怒りが収まらない状態で選挙はしたくないでしょうから、解散風を吹かせて政局をコントロールすることもままなりません。どうするキッシー?

その能登半島地震ですが、これまでにも増してデマ情報がSNSで拡散されていて問題ですが、そもそも正確な情報が少なく、被害の程度が酷いものだということが後になって明らかになる傾向から憶測を呼ぶことになると考えられます。典型的なのがれいわ新鮮組の山本太郎議員の被災地入りを巡るバッシングですが、被災地入りした政治家は山本議員だけではなく、複数の議員が被災地入りしており、政府発表やニュースでは伝えられない情報を発信していて、これによって情報の解像度が上がる訳で、叩く理由はありません。その中で山本議員1人だけを叩くというのはおかしなことです。

一方北陸電力志賀原発を巡る放射能漏れ疑惑のような言説も流布しておりますが、政府がドローン飛行禁止を打ち出したり、モニタリグポストの機能していないことを以て、重大な事態を隠しているんじゃないかという疑惑がエスカレートしているようですが、現時点で放射能漏れが起きているという事実は確認されておりません。とはいえ地震直後に「異常なし」の発表があった後にトラブルが発覚するという福島第一原発事故を彷彿させる情報隠蔽姿勢がこうした流言を生み出したとも言えます。

志賀原発が過去様々なトラブルを重ねて運転停止を繰り返し、情報開示も問題だらけという点も憶測を生んだ原因でしょう。以下wikiからざっと拾ってみます。

1993年2月に能登半島沖地震発生、7月に1号機運転開始
1997年には配管溶接部のトラブルと使用済み燃料輸送容器に関するデータ不正が発覚
1998年1月に復水器細管漏洩で手動停止
19999年6月に非常用ディーゼル発電機のクランク軸ひび割れ、更に定期点検中の臨界事故でデータ改ざん、対外報告を怠り8年間隠蔽、原子炉自動停止後の必要な措置を行わないなどの不正
2000年1月にy2kでシステム障害
2003年6月に定期検査中に配管の水があふれて作業員が浴びる事故
2004年6月に廃棄物処理施設洗浄中に水漏れで160万ベクレルの放射線漏れ
2005年3月に国の地震調査委員会が建設中の2号機炉心近くの断層の危険性を指摘、4月に地滑りで送電線鉄塔倒壊
2006年1月には試運転中の2号機で原子炉隔離冷却系の開閉試験で全閉できず運転停止、3月それでも2号機営業運転開始、直後に金沢地裁が運転差し止め請求訴訟で差し止め命令、6月に原子力安全・保安院が中部電力浜岡原発5号機ののタービン羽損傷を受けて同型の志賀原発2号機の点検を指示し7月に運転停止して点検の結果ひび割れが確認され、9月に2号機高圧タービン室に粒状金属発見、11月に1号機定期点検中に発電機付属装置の冷却ファンに記録用紙が吸い込まれ一部が残り運転監視中に異常振動で手動停止、同月2号機の耐震裕度向上工事着手
2007年3月に能登半島地震で1号機の使用済み燃料貯蔵プールで45リットルの水飛散、放射線量約750万ベクレル、7月に新潟県中越沖地震発生で志賀原発でも震度4でも1,2号機とも運転停止中
2008年に2号機の再起動も気体廃棄物の水素濃度上昇で出力低下で手動停止の後再起動、7月に1号機の耐震裕度向上工事着手
2003月3月に大阪高裁金沢支部が2号機運転差し止め請求を棄却、1号機の再起動を申し入れ起動、4月に気体廃棄物処理系でキセノン133が通常の10倍も監視運転継続して好感度オフガスモニタの異常値で通常の約200倍で出力を下げて漏洩燃料の範囲特定作業、石川県と志賀町も立ち入り検査、11月に調整運転中の2号機の非常用ディーゼル発電機で潤滑油洩れ、12月にも再度の潤滑油洩れ
2010年10月に2号機運転差し止め訴訟で最高裁により住民側の敗訴確定
2011年1月に2号機の原発格納容器内の冷却器凝縮水量が低下して手動停止、2月に1号機の原子炉再循環軸封部の第2段シール圧力増加で部品交換のため運転停止、3月の東日本大震災時には2号機の定期点検で1,2号機とも運転停止中、4月に福島第一原発級の緊急時対応訓練実施、8月に北陸電力が破砕帯周辺の地殻変動と地震発生状況の報告書提出
2012年6月に石川県と富山県の住民から1,2号機の運転差し止め請求訴訟で金沢地裁に提訴、7月に原子力安全・保安院が破砕帯の調査計画提出を命じる
2013年5月に1号機の低圧タービンにひび割れを確認7月に新しい規制基準が施行、12月に前年い保安院から指示された破砕帯調査の最終報告書提出
2014年8月に原資慮億規制委員会に2号機の適合性審査を申請
2015年3月に原子力規制委の有識者調査団が敷地内断層が活断層の可能性を指摘、9月に2号機建屋内に雨水侵入
22019年7月に構内の防災敷材倉庫付近で電源車火災が発生し自主消火
2021年8月に2号機安全装置不具合を発表、主蒸気隔離弁の基板故障で7月に警報を確認していた
2022年6月に能登半島で地震発生、令和6年地震に連なる群発地震の始まり
2023年3月に原子力規制委が2号機の敷地内断層を活断層でないとする北陸電力の主張を妥当と判断、5月に能登地方で地震
2024年1月に令和6年能登半島地震発生
今回の地震の原因と見られているのは地層の流体上昇圧力によるものと見られております。太平洋プレートがユーラシアプレートの下に潜り込むときに一定量の海水も取り込み、地価の高温高圧に晒されることで上昇圧力がかかるもので、その結果タイル状に並ぶ隣接地殻を繋ぎ止める目地が壊れて地震になる訳で、今回は能登半島北部の未知の断層が動いたものとされております。当然ながら近隣の断層にストレスがたまりますから、今後も余震が続くということになる訳です。

正月早々の躓きで見たように志賀原発のトラブルは多発しており、今後の群発地震の影響もありますから、補修計画も作りにくいですし、北陸電力が規制委から得た「活断層ではない」というお墨付きもチャラになり断層の調査はやり直しです。とにかく地殻が大きく動いて最大4m隆起し水平方向に1.2mズレた訳で、その結果海岸線の形が変わり、多数の港が接岸不能となって災害支援活動を支障している状況です。

しかも北陸電力は今回の震源地のほぼ真上に当たる珠洲に原発を作ろうとしていた訳で、仮に完成し稼働していたら、福島どころじゃないシビアアクシデントになっていた可能性もあります。加えて道路の寸断で避難計画の実効性もなかったことが明らかになりました。今後志賀原発の廃炉が議論の対象となることは避けられません。

当然ながら鉄道の被災も深刻で、JR七尾線と三セクののと鉄道も路盤のずれで線路が曲がり復旧が困難な状況が続いています。その中でのこのニュース。

【能登半島地震】JR七尾線、羽咋まで15日再開 七尾は22日以降 - 日本経済新聞
高松以北が運休となっていたJR七尾線は15日に羽咋まで復旧、七尾までは22日以降ですが、和倉温泉までは見通しが立っておりません。当然ながら線路を共有するのと鉄道も復旧の見通しが立っていない状況です。JR西日本とのと鉄道の資金力の差も気になりますが、一方で北陸新幹線敦賀延伸開業が3月に迫る中で、並行在来線絡みの動きもあります。
富山の城端・氷見線再構築案決定 北陸、残る4線が次の課題に - 日本経済新聞
並行在来線としての切り離しを免れた北陸のローカル線のうち城端線と氷見線をあいの風とやま鉄道が引き受ける形でJRから切り離されます。同様の問題は七尾線、高山本線、越美北線、小浜線でも浮上しております。小浜線の場合は孤立線ではないですが、新大阪延伸時の小浜京都ルートを想定した並行在来線となる訳ですが、小浜ルートに固執する福井県の対応が見ものです。

七尾線に関してはIRいしかわ鉄道の引受ですんなり決まりそうですが、七尾―和倉温泉間を共有するのと鉄道との調整をどうするかが難問です。加えてサンダーバードの和倉温泉直通もなくなる訳です。逆に言えばJR西日本は早く決着をつけたい筈です。しかし震災復興にはマイナスですし、ましてのと鉄道の存続も危ぶまれます。石川県の判断はどうなるでしょうか。

かつて水害で長期運休した越美北線も、当時は北陸新幹線の金沢以西が事業化の見通しすらなかった時代に、沿線自治体が住民の定期券購入補助を行うなどの条件で西日本JRバスの専用営業所を現地に設置して代替輸送を行うなどした路線ですから、ここへ来ての切り離しには当然抵抗があるでしょう。なまじフル規格で整備したために地域に難問がのしかかります。政治のガバナンス不在はこんなところにも影響している訳ですね。

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Sunday, December 10, 2023

後手後手の後出しジャンケン

ドイツの後塵に留まらず順調に衰退しています。

揺らぐ世界最大の債権国 日本円に2つの2024年問題 - 日本経済新聞
過去の経常収支黒字の累積としての債権国日本ですが、その世界一の地位もドイツに明け渡します。ユーロ圏のドイツと違って自前の通貨を発行する日本にとっては、通貨の信任を担保する要素が1つ減ることを意味します。これは円安要因です。

経常収支黒字は続いてますが、貿易収支は赤字と黒字の行き来するイーブンの水準に後退してます。電機産業の衰退で特にパソコンやスマホといったハイテク製品の輸入超過に加えて、コロナ禍の影響もあってワクチンや医薬品などの医療品の輸入超過で帳消しとなっております。加えてサービス収支の悪化もあります。これは主にクラウドサービスなどデジタル関連サービスの海外(主にアメリカ)依存の結果で、水準としてはインバウンドによる旅行収支黒字の倍の赤字です。国内企業や個人の海外資産の配当に当たる所得収支の黒字で辛うじて経常栗字を維持している状況です。つまり国内の稼ぐ力が減衰していて実需でも円安が定着していることを意味します。それを踏まえて見るべきニュースです。

円乱高下、一時141円台 4カ月ぶり高値 - 日本経済新聞
為替が円高に振れて円安の終了という見方がされてますが、円安の地合いは変わりません。相場が乱高下したのは米FRBの利上げ打ち止め観測によるドル高ポジションの修正と日銀の緩和修正先取りという投資家の2つの動きが重なった結果ですが、141円台まで円高が進んだ後144円台まで戻しているように、結果的に相場の修正は起きたものの、円安傾向を逆転するほどの話ではありません。超インフレでも経済成長しているトルコリラ以上に円の実質実効レートは下がっています。故にこうなります。
消費の再点火、成長持続の条件に 7〜9月期GDP下方修正 - 日本経済新聞
個人消費の弱さから下方修正されたものですが、円安によるインフレに賃上げが追い付かず実質賃金が下がっている状況では当然の結果です。しかもガソリン、電力、ガスの補助金や原油価格の下落があっての結果ですから深刻です。日銀政策変更は来年の春闘後と考えられますが、インフレ率を越えるとなれば5~6%程度の賃上げ水準が必要ですが、そうなると賃上げを原因とする供給制約によるコストプッシュインフレが起きます。2024年問題で人手不足が深刻化するとしても達成が困難な水準ですし、仮に達成されてもインフレは寧ろ進むことになります。つまりどのみち日銀は緩和修正を迫られます。

という訳で後出しジャンケンで後手を踏むドツボに嵌っているようにしか見えない状況は減税くそメガネで予想した通りで、世論を気にして所得減税を打ち出したら叩かれ、地方選挙の江東区長選でSNS広告打って選挙違反を問われ、更に派閥パーティを巡る裏金疑惑という決定的な問題で政権は迷走しています。

安倍派パーティー「裏金」数億円か 週内に捜査本格化 - 日本経済新聞
法的には派閥パーティのパーティ券の議員個人の販売ノルマを超えた分のキックバック自体は違法ではないのですが、それを個人の政治資金収支報告書に記載しなかったことが問題視され地検特捜部が捜査している状況です。パーティ券販売自体は野党議員もやっていることで、立憲安住議員の30万円の記載漏れも報じられましたが、安倍派議員の記載漏れの金額が数百万から一千万単位という数字で、仮に1千万円とすれば1人5万円のパーティ券を200人分余分に売ったことになりますから、1回のパーティでは無理な数字ですからうっかり記載漏れという言い訳は通用せず、何回も意図的に不記載を繰り返していたとしか考えられない訳で、その分が裏金となっている訳でかなり悪質です。

また法的にはパーティで政治資金を集めることは禁止されていませんが、まとまった額を得ようとすれば構成員の多い企業や団体に頼ることになりますから、政党向け以外は禁止されている企業団体献金の抜け穴になっている可能性もある訳で、そうして恩を売られた議員はパーティ券を引き受けた特定の企業団体に便宜を図ることになる訳で、利権政治の温床でもあります。故に真っ直ぐ問題解決に繋がらず、寧ろ特定利害を保護する骨抜きがされる訳です。例えば旧統一教会の解散命令前の財産保全を狙った法整備でもそうなりました。こうして既得権益が保護された結果の日本の停滞ならば、選挙で変えられるということでもあります。例えばこんなことも。

公共工事、物価高超す増額頻発 国発注の4割で計5.2兆円 - 日本経済新聞
資材高や人手不足で事業費が膨張すること自体はやむを得ないことですが、問題は過程が不透明なこと。事業ごとに相対で増額が決まるもので、物価スライドのようなルールに則ったものではありません。例えば辺野古の新基地建設や大阪関西万博関連などのようにどんどん予算が増額する一方、再三取り上げてますがローカル線の存続や都市部でも顕著なドライバー不足によるバス減便など、国民生活にリアルに支障が出ている問題に対しては予算がつかない現実があります。あるいは事故起こしたオスプレイには予算がつき意味のないトマホーク購入も予算化されようとしている訳です。流れを変えるには主権者たる国民が覚醒する必要があります。

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Sunday, December 03, 2023

遅れるのは万博だけじゃない

田代の水で取り上げた大井川の水問題が前進しました。

リニア新幹線、静岡県の川勝平太知事が「JR田代ダム案」賛意回答へ - 日本経済新聞
川勝静岡県知事も同意しており、一つ問題がクリアされたとは言えます。但しこれで着工とはいきません。南アルプストンネルの湧水量を調べるボーリング調査の結果如何では、湧水量が想定を超える可能性もあり、そうなると田代ダムを管理する東電の同意が微妙になります。故に静岡県は調査の継続をJR東海に求めて釘を刺しております。基本的な方向性が決まってもすんなり着工とはなりません。

加えて静岡工区以外の工事遅れの問題もあります。工事現場のコロナクラスター感染や仲良きことの調布市の外環道トンネル工事の陥没事故の影響で東京や名古屋の大深度地下トンネル区間の工事も止まりましたし、怪運国債市場の蓋のウンコクサイ万博工事と同じ2024年の働き方改革問題もあります。当然事業費の膨張もある訳で、当初名古屋まで5.1兆円大阪まで9.1兆円として見積もった事業費では足りず、大阪延伸前倒しのための財投資金3兆円にも手を付けてる状況です。大井川の水問題で遅れているというメディア報道とは裏腹に見通しの立たない状況に変わりはありません。

加えて東海道新幹線の乗客数がコロナ前の水準に戻らず、こうなるとリニアが本当に必要なのかすら問われます。私は元々人口減少下で将来の需要増は見込めず無駄になるという立場でしたが、コロナ禍で変化が前倒しされた形です。それでも週末の観光利用が好調で採算面の回復はあります。特に京都観光の外国人によるインバウンド需要は旺盛ですが、ジャパンレールパスによるのぞみ乗車を認めなかったことや予約の取り方などの不案内もあって、外国人は安くて空いてるこだま自由席の利用に流れています。ジャパンレールパスの制限は見直されたものの、この傾向は続いているようです。つまりビジネス利用が減ってスピードは必ずしも問われず、寧ろ車窓の変化が売りになる東海道新幹線の方が観光客にはうけるサービスってことです。明かり区間の少ないリニアでは取り込めない需要です。一方でJR東海以外のJR各社のローカル線問題が深刻度を増しており、今年もJR東日本と西日本で線区別乗車密度と営業係数が発表されました。

東北のJR東日本ローカル線、22年度も利用低迷 - 日本経済新聞
JR西日本の中国地方路線、経営依然厳しく 20〜22年度収支 - 日本経済新聞
何れも自治体との協議を模索しており、国も法改正して後押しっしておりますが、廃止ありきを警戒する自治体との協議は進んでおりません。そして国鉄時代のローカル線問題以上に厄介なのはバス事業の苦境です。
バス路線、都市に迫る崩壊の波 失われる「生活の足」 - 日本経済新聞
コロナ禍による乗客減に加えて燃料高やドライバー不足と四面楚歌状態で都市部でも減便が相次ぐ中で、過疎地の鉄道を廃止してバス転換することが困難な状況になっている訳です。特にバスドライバーは大型二種必須と資格条件が厳しい一方、年収ベースで全産業平均の2割安という賃金水準ですから人口減少は核より怖いでも取り上げたように若手が目指さないから新陳代謝が進まず高齢化で先細り確実という状況です。そうなると京都以外の観光地に観光客が行きたくても行けない状況となって地域の衰退を助長することにもなります。

観光の観点からは仮に開業すればリニアの体験乗車である程度需要は稼げるでしょうけど、それだったら現在の山梨実験線で営業すればプラチナチケットとして高く売れるでしょう。つまり現状でもマネタイズは可能となればリニアを完成させる意義はますます曖昧になります。人口減少の現実を踏まえればリニアは本当に必要か?という問いを発せざるを得ません。

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