ローカル線

Saturday, May 09, 2026

部活バスの闇

ゴールデンウィーク最終日の6日、磐越道でマイクロバスが事故を起こしました*1。ガードレールにぶつかってバス前部から後部へ貫通しているさまは2012年の関越道ツアーバス事故を思い出させます*2。当時のエントリーではツアーバスによる乗合類似行為問題として取り上げました。当時からレンタカーによるドラーバー付バスレンタルが貸切類似行為ながら、借り手の廉価志向から黙認状態だったこともあり、そうしたレンタカー会社に貸切バス免許を交付して正規の貸切バス事業者にすることで競争条件を整える規制改革が実施されました。その結果貸切バス事業者が増えて競争激化の結果、旅行会社がツアー募集の形で安値で仕入れた貸切バスを用いて催行するツアーバスが都市間運行で乗合バスである高速バスと競合することになり、両者の競争条件の違いから廉価なツアーバスへの批判もあって、高速乗合バスへ寄せる形の規制改革が進められていた時期でもあります。そして関越道でツアーバスが事故を起こしたことから議論が進み、所謂新免事業者による高速バス参入へと繋がりました。

今回の事故は新潟県のバス事業者である蒲原鉄道がレンタカーを手配したもので、学校側から予算を抑えたいとの要望があり、同社名義でレンタカーを手配したものです*3。レンタカーによる貸切類似行為という所謂白バス行為が疑われる案件ですが、幾つか疑問もあります。蒲原鉄道はオールド鉄ちゃんにはおなじみの五泉~村松~加茂を結ぶローカル私鉄が鉄道廃止後バス専業となった会社ですが、ご多分に漏れずのドラーバー不足もあり、自社貸切バスを値引きすることも難しい中で、レンタカー手配を選んだのでしょう。但しレンタカー会社には当該の営業担当者の免許証しか提示しておらず、手配したドライバーは知り合いの紹介で面識はなかったなど杜撰です。しかしレンタカー会社からすればバス事業者の手配だから、本来厳しくチェックされる筈のドライバーの免許証確認をスルーしたかもしれません。

実は部活関連のバス事故は結構起きています。21年悪神奈川県山北町でトレーラーに追突とか、鹿児島県では23年に横転事故を起こしたりということもあります。そして学校の部活では顧問教諭が部活のために大型免許を取得してハンドルを握ることもままあり、その場合はレンタカー利用は出費を抑えられるものの顧問教諭の責任は重くなります。また文科相の部活ガイドラインでも輸送中の安全に関しては記載がなく、この面からもグレーゾーンになっています。背景には文教予算の縮減による学校経営の困難があるかもしれません。

今回は北越高校軟式テニス部の遠征ということですが、名門ということで大会出場や対外試合の機会も多いでしょうから、果たして今回だけの特殊事情なのかもわかりません。少なくとも正規のバス事業者の貸切運賃を負担することは難しかったんじゃないかと思います。そうすると安価なレンタカーで済ませることが常態化していた可能性もあります。そしてバス事業者と学校との間で説明が食い違っていることも、双方の責任回避の姿勢が垣間見えます*4。書面も交わさず事業者は手数料も取らず、学校側も引率教員を添乗させていなかったなど双方に落ち度がありますし、ドライバーは二種免許保持者ではなく事故歴もあったなどいろいろ問題だらけですが、事故が起きて発覚しただけで学校の部活では常態化している可能性はあります。

似たような話として辺野古の転覆事故で修学旅行生に犠牲者が出た事故がありました。こちらはさらにややこしく、部活ではなく修学旅行中の平和教育の一環という学校側の説明があり、また事故船のは元々辺野古の抗議活動船ですが、NPO所有で有償運行ではないということで、その面でも法的にはグレーゾーンです。2022年悪知床半島沖観光船沈没事故を受けて制度化された船舶事業登録は既存事業者の3割止まり。有償運航を前提とした制度なのでそのまま適用は難しいところです。とはいえ死者が出ている以上このままとはいきません。そしてこちらは乗船は教員とNPOの個人的関係から出ているもので謝礼として5,000円支払ったという報道もありますが、儀礼的意味合いはあっても繰り返し集客して謝礼を取っていた訳でもありません。勿論だから安全をないがしろにして良い訳ではありませんし、今回の事故で同様の平和学習は禁止事項になってもやむを得ませんが、政治性からか修学旅行を手配した東武トラベルは無関係なのに一部で叩かれたりしてます。

てことで当事者の蒲原鉄道ですが、明治期の私設鉄道の北越鉄道(→信越本線)と岩越鉄道(→磐越西線)の双方から外れた蒲原地区の中心地村松に鉄道をということで難産の末1922年に免許取得し翌23年に建設着手され同年に磐越西線五泉~村松間を新潟県初の電気鉄道として開業したものの、昭和恐慌真っただ中で第二期線は足踏みの末村松~加茂間が1930年に開業したものの、元々の需要が少なく経営は苦しい状態が続きました。テコ入れ策として直営の冬鳥越スキー場を開設して誘客に努めたもののモータリゼーションで誘客には繋がらず、また貨物輸送も秋のコメ収穫期に偏った需要で経営の支えにならず、1984年には国鉄加茂駅の貨物取扱廃止で貨物営業終了。1985年には村松~加茂間を廃止し一時的には営業的には改善したものの、僅か4.2㎞の営業区間では自家用車やミニバイクへの転移が止まらず、1999年に廃止されバス専業となりました。しかし営業エリアは狭く集客の核も乏しく、昨今のドライバー不足も重荷です。しかしまあ地域密着を地で行くような会社ではあります。故にレンタカー手配も法令違反を承知の上でクライアントの要求に応えたという意味では、善意の対応だった可能性はありそうです。勿論だからといって法令違反が許される訳ではありませんが。

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Sunday, April 26, 2026

EVの壁

製造業の壁*1冒頭の日経平均4万円の壁から1年4か月弱、最高値をつけたものの6万円の壁が立ちはだかります*2。しかも半導体関連が上昇した一方その他株は低調です。ホルムズ海峡封鎖が続く中で先行するNYダウは下げてます*3。週明けの東京市場も下げると見られます。イラン戦争の影響が長引くことを市場が織り込んでいるということです。株価の上昇自体は円安とインフレの結果ですから手放しで喜べませんが。

しかし危機感の薄いわ―くにの政府。日本船籍の船がペルシャ湾に40隻以上足止めされていて、その分輸送力が減っている上に、米国産原油その他の輸送を喜望峰ルートやパナマ運河ルートで迂回輸送することで長い船旅となり輸送効率を下げますから、運航頻度が下がって結果的に輸送力不足になります。実際タンカーや輸送船の争奪戦で運賃が高騰し、パナマ運河通航料も高騰してます。故にアメリカ・カナダ・メキシコ産の原油を代替調達しても輸送コストが上昇してますから、石油関連品の値上がりは避けられません。これインバウンドで混雑が常態化した江ノ電で、12分ヘッドのネットダイヤを維持できずに14分ヘッドに伸びた結果、所要時間が片道4分増えて運行頻度を下げて結果的に輸送力14%減で混雑を助長し、繁忙期には乗車待ちの長い列ができる状況に似ています。輸送路の目詰まりはサプライチェーンの機能を低下させます。

早速こんなニュースも*4。幸いというかバス事業者はドライバー不足で減便が相次いでいてバス自体は余っている状況で、塗装面積の広いバスの生産調整はやり易いとはいえ、現状が続けば自動車生産にも重大な影響が出るということになります。バス・トラックのディーぜルエンジンの排ガス浄化装置尿素SCRに使うアドブルーも不足してますが、これもドライバー不足が救いでも、肥料原料との取り合いは起こります。こうなると追浜と湘南の2工場閉鎖を決めた日産がEVの開発生産を中国に移しますが*5、これが正解になる可能性は指摘しておきます。

製造業の壁でも指摘したようにテスラと中国のEVメーカー以外の自動車メーカーはガラケーメーカー化していますが、それを最も実感しているのがリーフで量産EVの先陣を切った日産ということですね。特に中国のモーターやインバーターやバッテリーの進化は、中国政府の産業政策もあって爆発的なイノベーションを引き起こし、テスラも中国製造拠点でその恩恵に預かった結果、伝統的自動車社メーカーを後塵に追いやった訳です。そのキモは早すぎる技術革新に尽きます。最先端の技術を取り込むには新車開発を短期間に行う必要がある一方、市場投入後により新しい技術を纏って後追いするライバルが出る訳ですから、必然的に陳腐化が早まり中古車のリセールバリューを低下させます。それを防ぐ為にはソフトウエアでアップグレードできるようにする必要があり、CASEと言われた自動車産業の変化がSDV(Software Defind Vehicle)へと必然的に進化せざるを得なくなったということです。わかりやすく言えばパソコンやスマホのように進化が早い一方でソフトウエアの更新で性能アップすることで、ハードとしてのEV販売後の収益機会をメーカーにもたらすことになります。クルマ作りのアーキテクチャーの根本的な変化です。対応するには新車開発を短期間で行うと同時に統合車載ソフトの拡張性を持たせることが必要ということです。

その為にはモジュール単位の電子制御ユニット(EPU)を統合して最終的には高性能EPUで全体を制御するという形まで視野に入れる必要があり、単独でそこまで出来るのは日本ではトヨタがギリギリというところでしょう。その意味では結構重要かもしれないニュースはこれです*6。デンソーは既にEPUやインバーター向けパワー半導体を生産してますが、EV化を睨んでのM&A提案をロームに断られました。尚、ロームとのパワー半導体統合を目指す東芝は阪急電鉄、三菱電機は大阪市交という鉄道のローンチカスタマーに育てられたパワー半導体大手です。これがトヨタの電動化に影響する可能性はあります。一方一時は日産救済の期待を背負ったホンダは大変なことになってます*7、ソニーとの合弁解消で自動運転も遅れを取ることになります。こうなったのは実は2輪車の不振が影響しています。元々4輪車は赤字体質だったけど2輪車の世界王者故の趙あk利潤で穴埋めされていたから競争力を維持できていたのが、アジアの新興勢が電動化で躍進して市場を奪われて狂いが生じました。50㏄原付規制に護られて対応が遅れたことも影響していると言えます。

中国の産業政策を補助金漬けと見るのは間違いで、実は計画経済の流れで政府が産業の方向性にコミットして民間企業を動員するというソビエト型から進化した市場型功利主義的計画経済と言えるもので、実はお手本は高度経済成長時代の日本です。当時ブレトンウッズ体制で1ドル360円の固定相場に護られ、安価な原材料資源を輸入して国内で加工して付加価値をつけて輸出するという加工貿易立国の前提で、主要輸出先はアメリカだから太平洋ベルト地帯に生産拠点を集め港湾を整備するという方向性は明らかでした。故に国鉄が東海道新幹線の建設を決断できました。そして実は産業政策の担い手は日銀でした。当時の金融政策は固定相場維持の必要から国内景気が過熱したら直ちに公定歩合を上げて民間融資による信用創造を抑制し、景気が冷えれば下げて融資を促進するというシンプルなものでした。その日銀が窓口規制という銀行の融資指導も行っていて、当時の通産省の助言に沿って優先融資先を産業単位で示すということをやっていました。それに沿って民間銀行が個別企業に競って融資する形で、鉄鋼、機械、自動車、石油精製、化学などの製造業を後押ししていて、丁度中国の功利主義的計画経済とそっくりでした。

政府が後押すする産業分野に優先的に融資された結果、銀行預金主体の家計貯蓄をリスクマネーに変換するという金融の基本が機能していた訳です。だから「貯蓄から投資へ」なんて誰も言わないし銀行融資による現物投資のリターンは利息の形で預金者にも還元されていました。故に中国は米ドルの通貨覇権に対抗すべく人民元の国際化を模索してますが、IMF-SDR的な通貨バスケット連動には踏み込んだけど変動相場制への移行は足踏みしている訳です。その突破口として中央銀行仮想通貨(CBDC)のデジタル人民元による貿易拡大を狙い、ウクライナ戦争で窮地のロシアやイラン戦争関連もイラン産石油取引やホルムズ海峡通行料もデジタル人民元を推していると言われています。

こういう状況ですから地獄への道のEVMJ*8が生産委託した新興企業には怪しげなものがあっても不思議ではありません。EVMJに見る目がなかっただけです。幸い地元の江ノ電バスは実績のあるBYDの大型と小型を導入しており、その完成度の高さは実車で実感しております。たかがEVされどEV。目利き力って大事です。

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Saturday, February 21, 2026

市場の失敗政治の失敗

まずビッグニュースです。タリフマン敗訴です*1。民主党系知事などが原告となって国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠法として議会の承認なしに発出した相互関税を、法の趣旨を逸脱し関税に関する大統領権限を否定するものとする最高裁判決が出されました。自動車や鉄鋼など分野別関税は別の根拠法なので当面続きますし、とりあえず1974年通商法を根拠とする10%関税を全ての国に150日間課す代替策を発動するとしています。こちらは15%以内で150日間という制限があり、延長は議会の承認が必要となります。早速市場は反応し、企業負担減期待から株高になる一方、財政問題から国債は売られ債券安になりました*2。

とすると日本をはじめ二国間交渉が何だったんだってことになります。ラトちゃんアカちゃんの関税交渉で決まった5,500億ドルの対米投資*3の360億ドル相当の1号案件が承認されましたが*4、激戦州のオハイオのガス火力発電、テキサスの石油積出港、半導体製造に欠かせない人工ダイヤモンドの3件です。日本は20社程度の企業が参加するということですが、中間選挙を睨み、且つ関税を巡る最高裁判決が出る前の滑り込みで、トランプ政権の焦りを滲ませます。ガス火力はAIデータセンター向けで電力需要が上がって料金が急上昇していることから有望とされ、テキサスの石油積出港はアメリカのシェールオイルの欧州向け輸出でロシア産石油の代替とする狙いで、人工ダイヤモンドは中国産が世界を席巻している中での戦略物資ということで政治臭プンプンの案件です。当然リスクはあります。

てことで日本に限らず世界中の国がアメリカを怒らせないように気を遣う中で、中国やロシアはアッケラカンとアメリカに異を唱えて軟化させてます。台湾問題を巡る高市発言もアメリカはネタにして中国からレアアース輸入規制延期を取り付け、アメリカ産大豆の輸入規制も撤廃してもらってホクホクなのがトランプ政権の本音で、中国はアメリカがレアアースの売り先になるから日本向け輸出を絞っても困らない状況です。中国もそこを見越して日本にだけ厳しい態度を取っています*5。その一方でオーストラリアやカナダのレアアース開発に加えて日本の南鳥島周辺海底泥精製のようにコスト的に厳しい資源開発もやらなきゃならない訳で、日本だけがリスクを負う不都合ですが、言ってみればアメリカの都合を日本に押し付けるロビー活動のレントシーキングということができて、国民そっちのけの利益誘導ですが高市政権は前のめりです。ヤレヤレ。

てことで市場と政府の関係がやや複雑怪奇になってます。近代経済学の核心にある功利主義で資源配分を市場に委ねるのが最も効率的な分配方法であるという前提をケインズが覆して市場は必ずしも万能とは言えず、政府による介入が必要な場合があるということを明らかにしました。これ単なる不況期の財政出動だけの話ではなく、そもそも市場は不完全で売り手と買い手の間には情報の非対称性があるから、往々にして売り手有利による格差の拡大などで市場が必ずしも効率的とは言えないということを含意しています。故に積極財政で不況脱出は可能だけど経済成長に資することはないとしており、経済成長は企業家のアニマルスピリットによるもので、市場が機能するためには起業家のアニマルスピリットを引き出す公正なルールの整備が必要になります。

しかし日本もそうですが、アメリカでも企業に雇われたロビイストによるロビー活動で恣意的に規制が課されたり緩和されたりして市場をかく乱しています。その結果アメリカで顕著なのがAIで世界をリードしながら自動車も船も作れないし兵器も輸入資源への依存度が高まっている状況があります。これ日本も例えばコロナ禍で露呈したマスクや医薬品の輸入依存問題*6や令和のコメ騒動*7で主食のコメすら自給がままならない現実を見せました。だからアメリカは世界中の国にレントシーキングを仕掛けている訳で、特に同盟国が被害を受ける構図となります。但し企業による政府へのロビーではなく政府間の力関係によるロビーですから敵対国よりも同盟国の方が被害が大きくなる訳です。政府間のロビーはつまるところ重商主義による近隣窮乏化政策ですから、従米言いなりでは日本はますます貧乏になります。

アメリカでも資本はAI開発に熱狂する一方で消費者が求める安くて壊れないクルマは造れないとか、それどころかアメリカンドリームの象徴とも言える持ち家も不動産価格の上昇で手に入らないし、病気になればバカ高い医療費で破産するしという状況ですし、日本でもローカル鉄道の存続危機とかドライバー不足によるバス減便廃止が大都市圏にも波及する事態です。将に国民生活に密着したところで持続可能性に疑義が生じる事態です。そんな中で低解像度社会*8の続報です*9。やや長い引用をします。J

R東によると、切れたのは茨城県の古河駅と栃木県の野木駅間の架線。2023年4月に架線を検査した際に摩耗を確認したため張り替えを計画した。同じ図面を使った打ち合わせをしなかったことなどから社員間で認識の違いが生じて別の架線を張り替えたため、今回切れた架線はそのままになっていた。
また、専用車両にカメラやレーダーを搭載して架線の異常を検知するシステムを24年4月から導入し、画像上やデータ上は摩耗していることは判別できたが、データを確認する社員が見落としていた。
23年4月に架線の損傷を確認して工事手配したけど別の架線を交換してたとか、24年4月から導入した検査システムでデータ上は確認できたが社員が見落としていたとか、何だか組織として終わっているというか、検査を含めてシステムも新しくなっているのに確認ミスが起きたということで、職人的な属人的スキルで支えられてきたものが継承されていない現実を露呈しました。

それだけではなく赤字3Kの掟?*10で取り上げたはやぶさ/こまちの走行中分離事故にも続報があります*11。これ当初はこまちE6系の連結開放テコスイッチに製造時に出る金属片が張り付いて短絡した誤作動と説明されていたものが、その後分離事故が繰り返され謎の誘導電流による誤作動と訂正されたものの、E6系のテコスイッチが頻繁に不規則に動いていた証拠が見つかって、国の事故調査委員会で原因究明が滞っているという報道です。疑われるのがJR東日本が提示したデータの信ぴょう性です。つまり事故調への非協力的対応の可能性を疑わせます。JR東日本の企業組織としてのガバナンスの問題を示しているようで不気味です。

国鉄分割民営化の是非は未だに蒸し返されますが、民営化自体は終わった話で今さら元には戻せませんが、東海道新幹線の好調や整備新幹線の開業による国内線航空への圧迫や立地条件の違いによるJR各社の格差拡大など、お世辞にも市場の失敗を政府がフォローできているとは言い難い現実があります。そして心配なのがこうした不都合が中国のせい、インバウンド外国人のせい、あるいは少子高齢化による世代間対立のせいと他責的に対立が煽られている点です。1930年代の大恐慌が経済の国際化を阻みブロック化して各国が競って重商主義的になって近隣窮乏化が進んだ結果の第二次大戦というプロセスをトレースしている点です。問題は政治なのに政治の失敗が戦争に至るのが歴史の教訓です。民主主義か独裁主義かという二項対立はクソの役にも立たない論点です。

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Sunday, February 08, 2026

まとめて鉄分補給^_^;

鉄分抜き*1ではクラクラするので補給します^_^;。どうせ雪で外出もままならないし。期日前投票済ませといてよかった。

JR東日本とJALの旅行協定のニュースです*2。コロナ禍が明けてからのJR東日本の回復の遅さが明らかになっております。JR東日本では以前に岩手県北自動車との提携*3や西武HDとの包括提携*4などもありますが、遂にJALとの提携に踏み込んだ訳です。旅行商品の共同開発やコードシェアなどが検討されており、日本でも遂に鉄道と航空のアライアンスが実現するかもしれません。両社を動かしたのはコロナ明けの業績不振。リモート革命によるビジネス客の減少は共通ですが、JR東日本は稼ぎ頭の首都圏輸送の戻りが遅く、製造業比率の高い中京圏や近畿圏と違ってリモートワークの影響を強く受けていることと、人口減少が厳しくインバウンドの恩恵も少ない東北地方を抱える影響もあります。その結果既にバリアフリー対応と特定区間見直しによる2度の運賃値上げをしたものの、地方ローカル線を抱え災害復旧による負担増もあって3月に本州JR初の幹線運賃と地方交通線運賃の値上げを実施します。

一方でビジネス客の減少をインバウンドでカバーして絶好調のJR東海ではいち早くコロナ明けの黒字化を達成し*5、また渡航制限解除によるインバウンド需要の取り込みもあって絶好調の結果お得なきっぷの見直しを発表します*6。ビジネス需要の減少を補って余りあるインバウンド需要の影響で、従来ガラ空きだったこだままで混雑するようになって、短区間利用対象の割引を無くす結果となりました。その裏にはのぞみ増発の影響で利用が増えてもこだまの増発は寧ろ制限される訳で、割引の意味が失われた訳です。

実はJR東海の財務の強さはリニア工事の遅れが寄与していまして、ザックリ言えば2016年の財投資金3兆円投入で、無担保30年据え置きで金利0.8%程度の低利融資という破格の条件で資金を得ました。JR東海はそれを負債勘定で計上しているので、コロナ禍で苦しむ他社が社債発行や融資拡大で凌いでいた中で、リニア工事の遅れで使途を失った財投資金を流用できたことがあります。特に静岡工区の未着工に注目が集まったことで静岡県を悪者にしてリニア工事遅れの批判をかわしていた訳です。JR東海の本音は「川勝前知事ありがとう」です。

その結果700系の改良と保安装置の改良で積み上げたダイヤの余力をのぞみ増発に充ててピーク時1時間13本を実現した訳です。しかも繁忙期全車指定席でのぞみ料金がガッツリ稼げますからこだまの混雑はスルーどころか割引の見直しで制限するという具合です。さらに在来線の車両更新も進めて民営化初期に大量発注された211系と自社設計発注車311系を淘汰してJR初の全車VVVF制御車を達成するし、しなのやひだなどの特急車の置換えなどのカネ余りッぷりです。その結果逆に資本効率は低下し、JR唯一のPBR1倍割れ企業となる訳です。それでも自社株買いなどを求めるアクティビストの餌食にならないのは資本規模が大きいからで、JR九州の規模だと狙われて災害復旧もままならない現実があります。

そんな中で攻めの姿勢を見せるのがJR西日本です*7。サバ養殖や宇宙旅行など攻めの姿勢を見せていますが、スマホを用いた線路モニタリングシステムです*8。汎用システムを利用した線路保守への応用ですが、新幹線のみならずローカル線への応用も可能で、自社ローカル線への適用のみならず大手私鉄や経営の厳しい地方私鉄などへの外販も視野に入っている点に感心します。JR西日本はICOCAでも車載型端末の開発などでやはり外販攻勢をかけており*9、ICカード乗車券でも先行するSuicaを凌ぐ結果となっています。最近はQRコード決裁やクレジットカードによるタッチ決済も普及しており、JR東日本は乱立していたポイント事業の統合やBaaS事業のJREバンク参入などでSuica経済圏の囲い込みに余念がないものの、イノベーションの停滞に陥っている傾向はあります。

実はビジネス客の減少は鉄道より国内線航空への影響も大きく、JALもANAも渡航制限解除で国際線は好調ながら国内線が足を引っ張る状況です。ANAは国内線の減便や廃止の一方で国際線強化を打ち出してますが、JALは国内線の収支改善のためにライバルのANAとの連携やFDAとのコードシェアなどで国内線のてこ入れを模索します。しかし上客のビジネス客の減少は座席の安値販売に頼らざるを得ず、結果的にLCCがしわ寄せを受けます*10。JAL系LCCジェットスタージャパンの合弁相手の豪カンタスが保有株式全株を日本政策投資銀行へ譲渡して撤退を決めました。その結果ジェットスターのブランドが使えなくなり名称変更を余儀なくされます。一方ANA系のピーチは元気満点で嵐コンサートでホテル不足を防ぐ為に関空~千歳臨時便を運航するというもの。なるほどアイドルの追っかけ客はLCC向きと言えますから、ブランドの売り込みは有効策という訳ですね。

結局JR東海ののぞみ攻勢で少ないビジネス客を奪われ、インバウンド狙いの国際線コードシェアで席を埋めている状況で航空側の打つ手は限られ、円安で燃油代などコストはドル建てなのに売り上げは円建てで利益は細るばかりで事実上白旗状態という訳です。JR東海のゴリゴリのマッチョなのぞみ増強がもたらした結果ですが、これ逆に言えばリニア要らないってことではあります。リニア工事の遅れで続くうたかたの春もいずれ見直しを迫られるかも。

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Sunday, November 16, 2025

鹿の敵討ち

高市首相が国会答弁でやらかしました*1。国際問題化してます*2。「能力のない頑張り屋はただただ迷惑*3」という予想が残念ながら当たりました。問題は歴代政権のあいまい戦略を無視して手の内を晒したこと。台湾有事への自衛隊の対応は公然の秘密であってもとぼけてれば相手が勝手に疑心暗鬼になる心理戦こそ抑止力なのに、よりによって国会答弁で、しかも質問通告に沿って官僚が無難な答弁書を用意しながら、無視して勝手に発言した結果、秘密が取れて公然になった訳です^_^;。

スパイ防止法の必要性を主張しながらの体たらく。元々国家公務員法や地方公務員法で守秘義務違反は刑事犯罪と定義され、トクリュウへの捜査情報漏洩で警視庁警部補が逮捕されてます*4。国家公務員の場合はさらに特定秘密保護法もあり、民間人もセキュリティクリアランス法の指定を受ければ同様です。それに加えて屋上屋を架す立法事実が存在するのでしょうか?特別公務員の議員や首長が外国のカルト宗教に便宜を図るエージェント行為、所謂壺議員を放置していることから、法律の不備より刑事司法の不作為の問題では?それよりコメ安くしてくれ!

中国の姿勢も今回は強硬ですが、幾つかか理由が考えられます。10月30日に韓国で行われた米中首脳会談で合意した関税と対抗措置の延期です*5。とりあえず米中の対立が一時休戦となった訳ですが、先に仕掛けたアメリカに対してひるまずレアアース輸出規制や米国産大豆輸入制限で対抗した結果、アメリカの方が音を上げてクリンチに逃れたのが実態です。つまりアメリカを屈服させた中国の外交的勝利ということになりますが、副産物として日本の存在感は隅に押しやられた訳です。その自信が日本への強硬姿勢をもたらしたと言えます。

加えて四中全会で党幹部の欠席者多数という事態があります*6。反腐敗運動で処分されたり拘束されたりした幹部多数で、ほとんどが習近平体制で登用された幹部ということで、イエスマンで固めた独裁体制の綻びを示します。泣いて馬謖を切った結果、反主流派のウエートが高まり、習近平総書記に逆風が見られました。それが戦狼外交へのシフトとなって現れ、日本叩きで反主流派のガス抜きを狙ったと考えられます。そして日本への渡航自粛の呼びかけとなったと考えられます。

但しあくまでも渡航禁止ではなく自粛要請ということで、実質的にどの程度の影響が出るかは何とも言えないところ。厳しい態度を見せつつ中国も落としどころを探っているとは言えます。これで中国人観光客が減れば京都などの観光公害も緩和されますし、奈良の鹿虐待も減るかもwww。まさか狙いは鹿の敵討ち?へずまりゅうレベルの愚か者だわ*8。

最後はAIのフーガ*9のフーガ(輪唱)wwwww。田園都市線梶が谷駅事故で国交省が全国の鉄道事業者に連動装置の点検を指示した結果、10事業者15駅で見つかりました。人間のやることには見落としが付きもの。ヒューマンエラーを前提とした対策が必要です。高市発言もヒューマンエラー?

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Sunday, September 14, 2025

案外シンプルに終わりそうな複雑系経済学

90年代に日本でブームになった複雑系経済学ですが、米サンタフェ研究所を中心に科学分野のパラダイムシフトとしての複雑系の科学から、元々多様なパラメータで非線形的な変化が見られることから経済学への援用が試みられ、多数の試みがなされましたが、ゲーム理論のような定着した理論に昇華されることなく、最近ではあまり顧みられておりません。そんな中でここではスタンフォード大のブライアン・アーサー教授が提唱した収益逓増のJ経済学に注目します。

同教授は性能の優れたアップルのマッキントッシュよりも性能の劣るIBM-PCのMS-DOSが優位に立ち、GUI実装版のWindowsで駆逐された現象に注目し、コピーが容易なデジタル分野では主流派経済学の常識とされる収益逓減の法則が成り立たず、逆に収益逓増が見られることで、所謂ロックインと呼ばれる経路依存現象として注目されました。簡単に言えば収益逓減は例えば農地は広い平地で土壌が肥沃で市場へのアクセスが容易なところから農地になりますが、徐々に条件の悪いエリアに拡大することで投資収益が低下するという現象で、デジタル世界ではロックインによる経路依存で逆にに収益が拡大逓増するというもので、本来の複雑系の科学の視点からはシンプル過ぎるきらいはあります。しかし勃興するデジタル経済の説明に好都合ということでブームになった訳です。そしてこれが株式市場にも影響し、多くのIT企業が競い合って株式上場して資金を集め、アイデアを競い合ったものの、その多くは赤字決算で期待だけで株価を押し上げていて、2000年代のITバブル崩壊へつながる訳です。

前エントリー*1の続きになりますが、現在のAIブームが相似相のフラクタル現象*2に見えてしまいます。その帰結はバブル崩壊ってことですが。先週の米株式市場でも相変わらずAI関連株が買われています。しかもその中身がエヌビディアやアルファベットなどのテック大手に限らず、例えば需要増が見込める通信や電力などのインフラ関連株まで買われるようになっています。

但しこれらのレガシー企業の投資マインドはかなり異なります。そもそも時間軸からして投資から回収までの期間が長いし、リスクも大きいから必然的に保守的な投資スタンスとなります。テック企業が競争環境の中で先んじて投資を加速するのとは異なったスタンスになる訳です。故にAI投資として行われるデータセンター投資が加速する一方、その電力需要増に備えた電源や送電網の投資はなかなか着手されない結果、ミスマッチが起きてAI投資にブレーキとなる可能性はあります。これ日本でも同様の問題があって、例えば関西電力の美浜原発敷地内への次世代革新炉建設の実現可能性の疑義が指摘されてます*3。反原発派ではない中立的な論者の指摘だけにリアリティがあります。

そしてもう1つ指摘したいのは経路依存による収益逓増が持てはやされた理由として、グローバル化の進捗による国境を越えた水平分業の拡大を後押しした面もあります。特に半導体やソフトウエアのように物理的に軽い一方付加価値の高い財が国境を越えt流通した結果、ハードウエアなどのレガシーな製造部門を外注して付加価値率を高める動きを後押ししました。その結果垂直統合の権化のようなアップルでさえ製造部門を切り離してファブレス企業となり高収益化するという動きを見せます。所謂アセットライト経営です。

所謂選択と集中で自社のコアコンピタンスをOSやアプリなどのソフトウエア及びそのプラットフォームとなるハードウエアのアーキテクチャの開発に置いて再定義した訳です。これでWindows陣営に対する競争力を回復するに留まらず、iPodから始まる携帯デバイスと音楽配信を進化させiPhoneに結実させるなどして世界をリードします。更に開発キットを公開して社外の開発者が開発したアプリをAppStoreで販売するというビジネスモデルで飛躍します。

それに対してGAFAMと呼ばれるテック大手はアップル以外はAI向けのデータセンター投資に余念がないのですが、アセットライト経営という意味ではマイクロソフト、フェイスブック、グーグル共に製造部門を持たないアセットライト経営だった訳で、その各社が自前のデータセンターを建設しエヌビディアのGPUを大量購入している訳で、インフラ企業化しています。つまり過大な資産を抱えることになる一方、AIの競争環境の中でレッドオーシャン化して収益逓減に直面する訳です。当然ながらどこかで淘汰の嵐が起きることになります。インフラ企業の宿命を背負う訳です。

てことで伝統的インフラ企業の鉄道においても、JR東日本の2代目社長の故山之内秀一郎氏がJR東日本のコアコンピタンスとして首都圏を中心とした高速大量輸送の技術とオペレーションを掲げていたことが思い出されます。その流れで東北の50系客車の後継にオールロングシートの701系を投入して鉄ちゃんに悪口言われましたが、首都圏の大量輸送を基準にすればこうなる訳です。勿論乗客の反応が良くなかったこともあり、E731系では国鉄以来の伝統的な3扉セミクロスシートになりました。また電車化でスピードアップが実現したことはあまり評価されなかったようです。しかしIGR銀河鉄道や青い森鉄道でも701系が使われているように、結局ローカル需要を前提に低コストで実現可能な輸送サービスとしては意味があるとは言えます。

最近ではコロナ禍をきっかけとした大都市輸送の低迷で内部補助に頼れなくなった赤字ローカル線問題が顕在化しており、幾つかの動きが出てますが、1つは電化区間の電化設備撤去でありもう1つはBRT化です*4。非電化化では磐越西線会津若松~喜多方間と奥羽本線新庄~院内間で実施されましたが、特に後者は9か月かかった災害復旧で非電化になったもの。JR東日本の説明では災害復旧の迅速化が謳われてます。これも一種のアセットライト経営と言えますが、BRTなら更に迅速化できますし、一般道迂回で見做し復旧も可能という意味で、地方線区の災害復旧や存続のメニューとして上下分離や並行在来線のような三セク鉄道化と並び自治体へ提案できるというものです。元々需要が先細りの中で、現実的な選択肢を増やす取り組みということはできます。JR西日本でも美祢線の災害復旧で地元協議会でBRT方式が有力になっています*5。

その意味では整備新幹線も整備費用を国と地方が公金を負担する一方で受益の範囲のリース資産として負債計上するという意味ではアセットライト経営の一形態という見方もできます。しかし西九州と北陸のミッシングリンクのようにスキーム自体が機能しなくなってくると見直しは避けられません。その意味では石破首相の国会答弁で示され、経済財政諮問会議の「骨太の方針」にも明記された中速鉄道構想はまじめに考えてみる余地はあります*6。

例えばJR東日本が改良を表明した山形新幹線福島~米沢間で県境を峠トンネルで越える大掛かりな改良工事が予定されてますが、可能な限りの曲線緩和と踏切除去で現行130km/hを160~200km/h程度にスピードアップする事業を整備新幹線と同等のスキームで実現するあたりが初めの1歩になりそうです。フル規格と比べれば低コスト且つ短時間で可能です。また例えば踏切のないJR西日本湖西線でサンダーバードの160㎞/h化のようなつなぎの対策にも使えます。財政規律を考えればこの辺が妥当なやり方ではないかと思います。

最後にJR東海は赤字ローカル線問題どこ吹く風で東海道新幹線の収益をリニア工事で溶かしまくってますが、財投の3兆円を負債計上して資産圧縮していて財務の健全性を見せていますが、開業が見通せず投資額が膨らんでいる中で名古屋まで開業して完成引き渡しされた時点で地獄に落ちます。だから現状のダラダラと資金を溶かす状況はある意味居心地は良いんですが、将来を展望することか困難です。それでも経営が傾かないのは立地条件が良く戦前の弾丸列車計画で取得した用地を利用できたことによるもので、山陽以降の新幹線が東海道新幹線と比べれば収益は1/3という明らかな収益逓減法則が働いていることは付記しておきます。

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Sunday, September 07, 2025

米雇用統計悪化で終わる世界

不毛な国内政局が進行中ですが、自民党総裁選前倒しして誰が総裁になったところで、臨時国会の首班指名選挙が関門になります。逆に言えば新総裁に石破さんが選ばれない限り、冒頭解散という奥の手が残されています。そんなコップの中の嵐にお構いなく世界は動いています。そして日米関税交渉で自動車関税等の懸案が解決した一方、5500億ドル(80兆円)対米投資に関わる覚書が交わされ、驚きの中身が明らかになりました*1。アメリカ側から発議されて日米で協議して合意した後にアメリカ側が承認するという流れはまるで日米合同委員会の経済版。日本が拒否権を発動しにくい建付けです。

ラトちゃんアカちゃんの交渉がこんな形で着地するとすると、少なくともトランプ政権期間中はほぼ言いなりのATM状態になりかねません。仮に石破首相続投でも、臨時国会は間違いなく荒れます。相互関税特例や自動車J関税の大統領令署名のためとはいえTACOでも烏ー賊の軟体ポチ*2に成り下がり、おそらく日本の財投資金を米国内の投資に充てる形になりますが、ある意味口約束で密約化するよりはマシとはいえとんでもない地雷を抱え込むことになります。自動車メーカー保護のために国民を犠牲にしてアメリカの国内投資に資金を提供するということですね。

経済好調なアメリカも、ここへ来て変調を来しており、それだけ日本の対米投資を本気であてにしているということです。まず7月発表の雇用統計で予想に届かない結果となりました*3。しかも5~6月の速報値の下方修正もあってFRBの9月利下げが確実視されました。その結果株価上昇と長期金利低下と先取りされ、さらに8月の雇用統計でも予想に届かず、6月の数値もさらに下方修正されてマイナスになり、失業率もマイナス1%となりました*4。これでFRBの9月利下げは確実視されただけでなく、あと2回のFOMCでも利下げが続くかもという展望が出てきました。景気悪化で株高という奇妙な現象ですが。

しかし雇用統計の数字には複雑な要素があり、DOGEによる連邦職員のリストラやAI活用によるITエンジニアの解雇によって減っている一方、不法移民取り締まりによる労働力不足もあり、失業率はさほど下がっていない現実があります。高給取りが減った一方、非熟練工やサービス部門は相変わらず人手不足でミスマッチが起きていることになります。加えてバイデン政権時代に投資を決めた韓国現代自動車のバッテリー工場では建設工やエンジニアの就労ビザを発給せず、仕方なく観光ビザで入国して作業に当たった韓国人が不法就労で摘発されて、韓国では対米不信から投資を引き揚げろという世論に火がついています*5。対米投資でも意に添わなければ平気で潰す訳です。つまり投資先としてはリスクが高い訳です。

というわけで米経済の先行きは不透明なままですが、FRBが利下げに動く一方、日銀は利上げを模索しています。つまり日米の金融政策は逆向きで、通常ならば円高ドル安に振れそうなものですが、ドル円はあまり動いていません。理由は日本の政治情勢から財政拡大が連想され、インフレが予想されるからです。その一方トランプ関税で心配されたアメリカのインフレは今のところ落ち着いており、結局両国のインフレ率が為替を動かしていることになります。コップの中の嵐をしている場合ではありません。日銀の利上げをやり易くするには財政規律の確保が重要です。しかしインフレは当然政府支出も増やしますから、26年度予算の概算要求は122兆円と過去最高で、せめて不要なバラマキを抑制して今年度予算を使い残して決算繰越金を増やすJことが必要な財政運営となります。それを怠ればインフレで調整される一方、国債金利の上昇で日銀の手足を縛ることになります。

財政運営の泥縄はアメリカも同じで、トランプ減税の恒久化で関税を財源のあてにしてますが、交渉で決まる関税は貿易の阻害要因でもあり二重に歳入の不安定化をもたらします。そうなると米国債の引き受けが難しくなりますし、対ロ制裁や中国の人民元決済拡大などでドル離れが進むし、銀行は既発債の評価損 で新発債の引き受けを躊躇するとなると、新たな引受先を見つける必要があります。そんな中でアメリカでステープルコイン法が下院で成立しました*6。余談ですがトランプのファミリービジネスで仮想通貨に深くコミットしており、利益相反の可能性はあります*7。「ドル基軸の維持」も空々しい。

発行事業者には預金または短期国債の裏付け資産の保有を義務付ける内容で、財政ひっ迫で長期債発行が難しくなる中で、短期債シフトを睨んだものと言えます。従来主に銀行が担っていた役割を拡大する狙いですが、当然ながら銀行と競合する事業ですから、銀行預金がステープルコインにシフトして銀行の信用創造システムを棄損する可能性があります。そうすると主に民間融資に回っていた資金が国債買い支えに回り、AI投資として自前のデータセンター投資にまい進するテック大手の投資を抑制することになります。しかし低金利通貨としての日本円が維持されるならばキャリートレードの種銭になりますからドルの信認を安い円が支える構図が固定化される可能性があり、そうなると日本のインフレは民間投資資金の海外移転で供給力拡大が進まず止まらなくなります。

てことでやっと鉄道ネタですが、JR各社のローカル線廃止議論と無縁のJR東海がリニア工事の遅れで資金とかしまくっているにも拘らず、財務は盤石の謎です。大井川の水問題は鈴木新知事に変わってから協議が進み和解が成立しましたが、残る生態系への影響や作業ヤードと取付道路の着工、重金属を含む要管理残土の処理問題など静岡工区だけでも未解決問題はありますし、加えて人件費や資材費の高騰や人手不足で着工83工区中31工区で2027年の開業に間に合わない状況ですし、同様の問題は静岡工区以外でも抱えています。故に更に遅れる可能性もありますが、JR東海はあまり困っておらず、財務的にも盤石です。

理由は東海道新幹線の好調で大量のキャッシュフローを生み出しており、そのまま利益計上すれば株主還元や法人税課税で削られるところですが、工事の遅れを口実にリニアで溶かすことで免れます。遅れる工区は逆に敢えて遅れを容認し、その間に地域との対話を進めて工事の障害を減らしたり、問題の解決策を探る時間を得ることが可能ということで、寧ろ前向きに捉えられています。住民対話が進むことは悪くはありませんが、最初からやれよ。但し名古屋開業がいつになるかわからない状況は続く訳です*8。故にJR旅客各社が抱える赤字ローカル線問題も災害復旧問題も無縁で、在来線も含めた車両更新が進みJR化初期車両も淘汰されています。

但し名古屋開業が見通せない限り大阪延伸は具体化しませんから実現可能性は遠のきます。財投融資3兆円は無駄になりそうです。リニアで溶かした資金がJR旅客各社の赤字ローカル線延命や災害復旧に回ることは当然ない訳で、ただただ国民生活と無縁の資金循環でしかありません。国民を助ける国内投資が不振な中で国民を豊かにすることもなく、先が見通せないという意味では米テック大手のAI投資と双璧です。

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Saturday, August 16, 2025

民営化ドミノの現在地

通常国会期末に衆議院を通過して参議院で否決されたガソリン税の暫定税率廃止法案ですが、参院選の与党敗北を受けて与野党協議で年内実施の方針が打ち出されました。衆参双方で少数与党となった石破政権としては対応せざるを得ないのですが、議論を野党に投げて、財源その他の課題の解決策を出させようということですね。謂わばクリンチ作戦です。

大きな課題は「財源」「ディーゼル」「買い控え・反動増」*1と3つあって、ややこしいのはガソリン税は国税でディーゼルの軽油引取税は地方税で前者は消費税課税対象となる一方後者はかからないし、地方税収減を地方交付税で穴埋めするとすれば、その財源を手当てする必要があり、制度設計が複雑になることから、今回はガソリン税限定となりそうです。その場合の財源は1兆円程度で、予算の議論に絡めて実現可能性を探ることになります。但しそうするとガソリンと軽油の価格が逆転することになり、特にインフレ対策なら物流費等で波及効果の大きい軽油の暫定税率をそのままでは趣旨に反します。この辺の着地点をどうするか、実は野党の方が試されるものになります。

そもそもは道路特定財源とされたガソリン税と軽油引取税がオイルショックによる経済失速で財源難となったことから、2年の期限付きでガソリン25.1円、軽油17.1円の暫定税率を定め、道路財源を確保する目的でしたが、その後紆余曲折はあったものの延長が繰り返され半世紀を超えて存続して現在に至ります。2008年には与野党ねじれ国会で参院で一旦失効した後、衆院の再可決で復活し、2009年には道路特定財源の一般財源化で一般財源となり、使途の制限はなくなりましたが、逆に社会保障費や地方交付税にも回されるようになって寧ろ暫定税率廃止が難しくなり現在に至ります。とはいえ一般財源化されても予算のシーリングで道路予算の比重は高いままなので、一般財源化は寧ろ財政を窮屈にしてしまったうらみはあります。その一端を示す新聞連載記事を紹介します。

道路延びても7割で交通量減少 ずさんな費用対効果試算 - 日本経済新聞
高速道路、利用半減でも4車線化 「整備ありき」遠のく無料化 - 日本経済新聞
ガラガラの自治体有料道、補塡2124億円 予測甘く負担増 - 日本経済新聞
人口減少を無視した甘いB/C比評価。民主党政権下で試行された高速道路無料化が終わって通行量激減しても対面通行解消の4車線化が進み、料金償還は遠のくばかりの高速道路利権。甘い事業見通しで作られた地方有料道路が償還を諦めて無料化される矛盾。過大な予算を所与とする道路の既得権は強固です。但しバスタ新宿*2や肥薩線復旧予算や宇都宮ライトレール*3のように道路予算の使い方は柔軟化してはいますが。尚、肥薩線の復旧が進まないのはJR九州が自己負担分の支出を渋っている結果です。

という具合に現状を過去からの文脈で見ないと見えない問題というものはあります。例えば富山地鉄の一部路線廃止問題です*4。過疎化による末端区間の利用が減っているのに93.2㎞という大手私鉄並みの路線長で保守負担が大きく、実際脱線事故なども起きていて、自治体の支援がなければ一部区間の廃止はやむを得ない状況です。しかし同時に特に本線に関しては並行する北陸本線が北陸新幹線開業で三セク鉄道あいの風とやま鉄道に移管され、車両も新しくなり本数も増えて利便性を増したことで地鉄の利用客を奪ったことも影響していると考えられます。つまり整備新幹線ドミノです。とすれば沿線自治体にとっては複雑な意思決定を迫られることになります。

実は似たような話は、例えば国鉄末期から民営化後にかけて鹿児島本線の列車増発で利便性を増した結果、西鉄北九州線が廃止に追い込まれたり、JR西日本のアーバンネットワークの輸送改善で並行私鉄から乗客を奪ったり、JR東海の攻勢で名鉄が劣勢に立たされたりといったことが起きています。つまり民営化ドミノと見ることもできます。元々国鉄は都市間や地域間を結ぶ幹線輸送、私鉄は地域内完結の輸送というザックリとした役割分担が、地域分割を前提に私鉄の事業領域に国鉄/JRが進出した結果とも言えます。そして整備新幹線は国鉄から引き継いだ幹線輸送を新幹線に譲り、並行在来線切り離しで貨物輸送の負担も無くせる訳で、民営化後の整備新幹線スキームの負の側面が出てきたとも言えます。

整備新幹線の根拠法は全国新幹線鉄道整備法(全幹法)で国鉄時代は建設主体は国鉄と鉄道建設公団で営業主体は国鉄と法定されていて、運輸大臣の指示で東北、上越新幹線が建設され開業しました。それが国鉄改革で分割民営化されれば事業主体を失ってしまう訳ですが、既に整備新幹線として東北新幹線(盛岡市―青森市)、北海道新幹線(青森市―札幌市)、北陸新幹線東京都―大阪市)、九州新幹線(福岡市―鹿児島市)、西九州新幹線(福岡市―長崎市)の5路線が基本計画線から整備計画線に指定されていて、その扱いが問題になり、全幹法も鉄道建設・運輸施設整備促進機構(鉄道・運輸機構)が建設主体で営業主体は分割後の旅客6社が自社エリアを引き受ける一方、分割会社への負担にならない仕組みとして並行在来線の切り離しと受益分を除く事業費を国と地方が負担することとなりました。

但しこの時点では財源が決まっておらず、与党議員からは公共事業費として予算確保が求められましたが果たせず、結果的には1992年のJR東日本の株式上場時にJR3社が国に要望した新幹線の買い取り代金に上乗せされた鉄道整備基金からの出資と運輸省分の一般財源で財源確保し、開業後の線路使用料でJRが返済するという形で事業スキームが決まり、また限られた予算ということでフル規格の他に在来線改軌によるミニ新幹線とフル規格の路盤に当面狭軌で開業するスーパー特急方式が提案され、B/C比に基づく優先配分で当面長野五輪対応の北陸新幹線高崎~長野間が着手されました*5。

その後のあれこれはありますが、このB/C比が曲者で、例えば九州新幹線は当初八代~西鹿児島間をスーパー特急方式で開業し在来線直通特急で新幹線区間で狭軌200km/h営業運転という技術的に未知の領域を前提としてB/C比を高く見せて優先度を上げたりしてましたが、結局B/Cを問えば最高速260㎞/hのフル規格が良い数字を出しますし、北陸新幹線も当初軽井沢~長野間ミニ新幹線だったものがフル規格に変わり、また低金利故に開業後のリース債権を担保に借入れで資金調達するなどしてフル規格に化けていきました。しかし軌間可変車前提の西九州新幹線は開発中止で佐賀県区間の見通しが立たなくなりましたし*5、やはり軌間可変車活用を考えて敦賀までフル規格で開業した北陸新幹線の敦賀の乗換地獄や大阪延伸を巡る小浜京都ルートと米原ルートの争いなど分割民営化の悪い面が出ていて、新幹線が迷惑施設化して佐賀と滋賀で「詐欺だ!」*6ってことになります。

国土軸形成の骨に当たる新幹線に佐賀と滋賀のミッシングリンクを作ってしまったのは国鉄分割民営化への対応が中途半端だったためにJR旅客会社に振り回された国の失敗ですし、更に地方の有力交通事業者を追い込んでいるという構図ですが、もう1つ懸念があります。それは並行在来線を含めて三セク鉄道の職員も国鉄/JRのOBの再就職で賄われてきましたが、JRも自身の合理化で職員数が減っている上、高齢化で退職した後の若手の補充が人口減少で困難になりつつあるのが現実です*7。富山地鉄への支援をケチってあいの風とやま鉄道も人手不足で減便となるような未来はすでに現実化しています*7。地域開発に資する筈の新幹線が地域を衰退させるという寒い話です。

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Sunday, July 20, 2025

折れたつばさ

参院選投票日当日ですが、ひどいTIXY選挙*1でした。政策よりも目先のアテンションで有権者アピールしてまともな政策論争もないまま過ぎました。それでも選挙報道姿勢を問われたオールドメディアは不十分ながらファクトチェックで姿勢を変えております。従来選挙運動を隠れ蓑に酷いヘイト発言し放題だったことに比べればマシにはなってますが、ヘイト発言に喝采する有権者はそもそもオールドメディアはウソだらけと信じ込んでますから響かない。故に従来投票したことがないような無関心層を動員して議席を得れば解散のない参院で6年の任期を得て少数与党に恩を売りながらうまい汁吸うことができちゃう訳です。

とはいえ政権選択選挙ではない参院選後には原則首班指名選挙は行われませんから、仮に与党が参院で少数転落しても、石破氏が自ら辞めない限り政局にはならないです。そして日米関税交渉の膠着が、アメリカ政府から見れば協議を重ねてきた石破政権が交代すると一からやり直しになるから、選挙が終わるまでは石破政権にマイナスにならないよう配慮してます。そして選挙後の赤沢経財相の8度目の訪米がアナウンスされています*2。つまり石破さん辞める気さらさらなしです。関税協議が政権延命の鍵という倒錯^_^;。とはいえ既に連邦歳入で法人税に次ぐ規模となった関税で税収が調達されている状況*3では交渉の余地は殆どありません。

それに背中を押されたのか日産が追浜、湘南の2工場の閉鎖を決めました*4。ブランド力の弱い日産としては関税の価格転嫁もままならず*5米国内工場を温存して他社製品の受託生産で量を確保する一方、国内工場は縮小せざるを得ない状況に追い込まれた訳です。財務状況が悪い日産としては関税分の値引きの原資がもたない訳です。立地から高く売れる可能性のある工場の閉鎖はそれだけ追い込まれているということです。そしておそらく高く売りたいから、工場ごと居ぬきで買える相手となると鴻海が有力候補になりそうです*6。鴻海はEV事業への本格参入を狙っており、乗用車に留まらずEVバスへの参入もアナウンスしております。国産EVバスはいすゞエルガEVのみで、BYDやヒュンデなど中国や韓国の輸入車頼み故に勝算ありと見たのでしょう。

そして前エントリー*7でも指摘しましたが、通貨当局が動けない中で日米両国のインフレ率の差が為替を動かすことを指摘しました。その結果為替はこう動きました*8。与野党のバラマキ合戦の影響もありますが、自動車を始め関税分を価格転嫁できていないことがアメリカのインフレ率を抑えている可能性も指摘できます。いずれ関税分の価格転嫁が進んで日米のインフレ率が逆転する可能性もあります。実際日本のインフレ率はコメの備蓄米放出やガソリン補助金で抑えられておりますが、それでも日本のインフレ率が高い結果です。今後も微妙な展開が予想されますが、政策的な価格抑制は財政の拡大で結局インフレを呼び込みます。この点はアメリカも似たり寄ったりなので、予想を難しくしています。まあ製造業での経済成長の可能性は日米共に殆どありませんが。

そんな折れたつばさを共有する両国ですが、それでも金融とITで稼げるアメリカに対して、自動車も袋小路でどうするということで半導体に注目が集まりますが、TSMC熊本工場で生産された半導体は殆どエヌビディアやアップルが買い手という現実が影を落とします。2ナノの試作品製造に成功した北海道千歳市のラピダスも同様の問題を抱えており、仮に先端品の営業出荷が可能になっても国内に買い手がいないという現実が待ち受けます*9。SuicaなどのIC乗車券や電子マネーに欠かせないFelicaシステムも今やソニーも見捨てたレガシー技術というぐらいイノベーションの周期が早い半導体のエコシステム構築は技術を磨くだけでは果たせず、寧ろアメリカのバイデン政権のスモールヤードハイフェンス政策で先端半導体が手に入らない現実を受け入れてレガシー技術を磨いて先端品と同等の性能を実現した中国の手堅さが、国内需要に押された結果という点は示唆に富みます。歩留まりが悪く採算が難しい先端品に拘る日本の在り方は、結局熊本の渋滞激化や豊肥本線混雑率ワースト*10という負のインパクトを地域にもたらしています。

そして半導体関連で山形新幹線つばさE8系のトラブルは原因究明が進まず、東京直通を止めて福島乗換で対応が続きます*11。報道では補助ん電源装置の半導体の不具合ということですが、思い出されるのが国鉄時代の中央快速線201系のサイリスタ日照り*12です。おさらいすると国鉄が中央快速線向けに開発した201系が、走行中に度々主回路がブラックアウトするトラブルに見舞われ、原因はサイリスタ素子の過熱と突き止められました。地下鉄では制御器の抵抗熱対策でサイリスタチョッパ制御が導入された一方、回生ブレーキ対策が必要な地上の鉄道では導入が進まない中で、国鉄一の高密度輸送輸送線区の中央快速線で回生電力の有効利用と量産効果によるサイリスタ素子の価格低減を狙ったものの、制御器は海側という抵抗制御時代の慣例で配置を決めた結果、東西に延びる中央線では日中直射日光を浴びて輻射熱の影響でサイリスタ素子が機能を失うことと、中野以西のベタ停車で加減速が頻繁で走行風による冷却効果も限られた結果でした。対策として制御器箱を白く塗って輻射熱を反射させるなどして安定させたものの、他線区への導入のブレーキになりました。例外は京阪神緩行線で駅間が長く高速走行で冷却効果があって同様のトラブルはありませんでした。

それでも国鉄がユーザーとしてメーカーを育てようとした結果の失敗ですから、その後のパワーエレクトロニクスの成長には貢献できたとは言えます。同様に常磐緩行線の207系900番台*13のセコい失敗もありますが^_^;、最強ユーザーとしての国鉄の存在感は大きなものでした。民営化後のJR各社は半導体も汎用品でコストダウンに励む方向へシフトしてメーカーとの結びつきが弱まったきらいがあります。例えば209系のVVVF制御器がトラブル続きで継続使用を断念して「寿命半分」が実現してしまうといったことですが、その流れでE8系のトラブルを見ると、トラブル発生日の気温が高かったことから、半導体が熱にやられた可能性はあると思います。厄介なのはかつてのパワー半導体と比べても回路構成が複雑化しており、チップ上に電流安定のためのセラミックコンデンサが組み込まれたりしていて、どこに不具合があるかが見えにくくなっていることはあります。また半導体製造のサプライチェーンは長く、その各段階に不具合が混入する機会は増えているということもあります。巨大化した米IT大手のようにサプライチェーンへの影響力を行使する力は弱まっていると考えられます。てことで原因究明は困難を極め、折れたつばさは当分続くと覚悟する必要があります。

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Saturday, May 24, 2025

ア・イ・シ・テ・ルのサイン

時事ネタは売るほどある*1けど今回はスルーします。おコメを買ったことはありますが*2。

最近気づいたんですが、ポンピングブレーキしてるクルマを見かけなくなった気がします。私の年代だと教習所で口すっぱで言われたポンピングブレーキですが、最近は教えているのでしょうか。ポンピングブレーキとは減速や停止のときのブレーキ操作でブレーキペダルをリズミカルに数回に分けて踏むことで、ブレーキが車輪のドラムやディスクにブレーキシューを押し付けて車輪の回転の運動エネルギーを摩擦で熱に変換して待機中に熱を放散することで制動力を得る仕組みですが、多用すると熱放散が間に合わずに過熱して制動力が低下する所謂フェード現象を回避する意味があります。加えて過熱によるブレーキオイルが気化して油圧伝達ができなくなるべーハーロック現象になればほぼノーブレーキ状態になる危険もあり、実際それらが疑われる事故は今も起きています*3。

とはいえクルマのブレーキ性能も昔に比べて改善されていることも確かで、大型バス/トラックでは元々エンジンブレーキの強力なディーゼルエンジンですし、真空ブレーキが下り勾配の抑速ブレーキ的な使い方もできますし、さらに強力なリターダなどの補助ブレーキ装置を搭載したものもあります。また大型車ではエアブレーキが主流でべーハーロックも無縁です。そして乗用車でも電動車は回生ブレーキが使えるので摩擦ブレーキの負担は減っているとは言えます。故にフェード現象の心配は減ったとも言えますが、ポンピングブレーキの効用はそれに留まらないものがあります。

一段ブレーキで強いブレーキをかけるとスリップの可能性があり、路面状況やタイヤの摩耗度によっては危険なケースもありますが、ポンピングだと断続的に強めのブレーキをかけることでスリップを回避する所謂再粘着を図ることでトータルの制動距離を縮めることも可能です。通常ブレーキ時でもソフトタッチの断続で徐々に減速することで乗員や積み荷へのストレスを減らせ、ブレーキシューの摩耗も減らせます。他にも意外な効用があります。

最近気づいたのは、後ろから煽られたときに、チョンチョンと軽くブレーキングすると高い確率で後続車が車間を空けます。先行車のブレーキランプに反応してブレーキを踏むのでしょう。西成活裕教授の名著*4で解明した自然渋滞のメカニズムは、先行車のブレーキランプに反応して後続車がブレーキを踏み、それが後ろへ伝搬する連鎖反応で団子状態になるということですね。歌の文句じゃないけれど「ア・イ・シ・テ・ルのサイン」が後方へ情報として伝わる訳です。回避策は先行車のブレーキに反応しなくて済むバッファとしての車間を取ること(40m)も示されています。これ鉄道のクロージングイン(移動閉そく)の原理じゃないかと^_^;。てことで広く共有したい興味深い記事があります。

「これが日本の鉄道技術か…」海外も注目するJR東日本の「信号機不要」の制御システムとは | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン
ATACSについては過去のも取り上げてますが*5、JR東日本が地道な開発を続けた結果、ほぼ開発目標をクリアでき、試験を続けていた仙石線への導入を皮切りに首都圏の埼京線への導入に続いていよいよ山手線と京浜東北線への導入を決めました。山手線向けはさらに高度化されたドライバレスシステムを目指してます。またコストダウンの観点から携帯電話の公衆回線を用いた簡易システムも開発の視野に入っているようで、地方線区への展開もあり得ます。地方線区ではJR九州の香椎線で既にATACSではない別のシステムが実装されてますが、JR東日本が狙うのは日本発の世界標準ということで、Felicaシステムを利用したSuicaが挫折気味なだけに、JR東日本にとっては捲土重来になるかもしれません。楽しみです。

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