ローカル線

Sunday, May 17, 2020

マスク、マスク、マスク

私自身はマスクする習慣は無いし、感染を防ぐ効果が乏しいので、マスク無しで通そうと思っておりましたが、取引先でマスク着用を要請されて已む無く入手した布マスクを着用し、毎日手洗いしております。あーメンドクさ。ちなみにアベノマスクではありません。届いてないし。

医療品、海外依存度高く 感染爆発の備えに不安:日本経済新
マスク問題はコロナゲートウエイでも取り上げました。その際に情報の攪乱によるナッシュ均衡(囚人のジレンマ)で説明いたしましたが、yamanotesenさんのコメントで「合成の誤謬じゃないか」というツッコミもいただきました。まあ双方の要素がある訳で、現実の事象ではこうしたことは珍しくありません。

合成の誤謬の典型的な事例は貯蓄投資バランスの問題で見られます。社会の構成員が全員貯蓄に励むと、借り手不在でリターンを期待できない一方、全員が貯蓄を取り崩して借金に頼ると、貸し手不在で金利が跳ね上がり経済を冷やす訳で、日本でデフレと称された現象は前者に該当します。故にアベノミクスや黒田バズーカでデフレ脱却という議論は寧ろ逆効果で如何にバカバカしいかがわかります。

マスクに悲してはグローバル化に伴うサプライチェーンの拡大による国際分業の影響が背景にあります。医療品は元々輸入超過状態で、医薬品は国内メーカーの有力特許失効と多額の開発費を費やした海外メーカーの高額医薬品の差がある一方、マスクや防護服などの消耗品は中国を中心に海外生産が定着していた訳ですが、その中国の武漢で爆発的感染が起きて国内需要が爆発的に増えた結果、日本向けに生産されたものも中国港内で消費され日本に回らなくなりました。何のことはない生産の中国依存の必然的結果なんです。

加えて一部は東南アジアなどへ生産拠点を移す分散化も進んではいたものの、規模は小さく、加えて遅れて感染拡大しいてやはりマスク輸出が差し止められる事態になり、結局品薄の解消には至りませんでした。とはいえ中国を含むアジア地域の感染は落ち着いてきており、また内外で増産がかけられた結果、徐々に供給量が増えて入手可能になってきました。結局需給の均衡によってしか解消しない問題です。

その意味で「布マスク配布を決めたから、マスクバブルが弾けて転売ヤーが涙の投げ売り」というストーリーを語る人々の頓珍漢ぶりも指摘できます。未だ5%しか配布されていないアベノマスクを過大評価したいだけの妄言です。そういや安倍首相も国会答弁で言ってたな。おまけですが、多くの日本人にとっては未経験の、夏のマスク地獄が待ち受けています。くれぐれも熱中症には注意しましょう。ことほど左様に国民生活と乖離した政府の姿勢は困ったものです。

マイナンバー、10万円給付で注目だが… 活用で海外と差  税財政エディター 小滝麻理子:日本経済新聞
マイナンバーカードを用いた電子申請がスタートした結果、自治体窓口に人が殺到して密状態という笑えないことが起きています。政府としては10万円の特別支給を梃子に20%しかないマイナンバーカードの発行を増やそうとしたものの、当然これを機にマイナンバーカードを作ろうとする人が自治体窓口に殺到する訳ですが、それに留まらずオンライン申請手続きがうまくいかなくて問い合わせが殺到しているという状況です。

1つは意外なことにマイナンバーを発行した人の年齢層が高齢者に偏っていてITスキルが必ずしも高くなく、二重パスワード認証などの仕組みを理解できていないとか、専用カードリーダー若しくは対応スマホが必要だけど、ガラケーのみでPCすら持っていないとか、マイナンバーカードを巡るお寒い現実の壁に直面している訳です。

三蜜で即身成仏で指摘したように自治体の課税台帳使えばマイナンバーカードは要りません。個人または勤務先の何れかで申告納税していれば漏れはないですし、扶養家族などの情報も把握されてますから、あとは通信事務で世帯全員の氏名と指定振り込み口座を通知してもらうだけで非接触で手続きできます。既存の制度インフラを使い尽くせってことですね。

マイナンバーカードに関しては、国による個人情報取得への拒否感が国民側にありますから、何故必要なのかを本質的なところで説明する必要がありますが、これまで国の説明ではワンストップでコンビニで手続きできて便利といった枝葉の部分が強調されており、国民の納得を得られておりません。この辺古くは納税者カード(グリーンカード)や住基カードの失敗の総括が出来ていないってことでもあります。

グリーンカードに関しては資産課税を含む総合課税のインフラになるとして当時の大蔵省と社会党がタッグを組んで推進し、専用コンピューターセンターまで作られましたが、結局法案成立に至らず実現しませんでした。住基カードは記憶に新しいですが、マイナンバーカードとの重複で無意味化しています。

何故こうなるかというと、結局アベノマスクやアベノコラボが側近の官邸官僚の提案だったように、現場を知らない人間の思い付きでことを進めている結果だってことでしょう。そして普及率の上がらないマイナンバーカードの普及促進という雑音に流されて現場はパニックってことですね。そういう意味で密かに注目しているニュースがあります。

JR四国、コロナで業績悪化 4月の損失「残り11カ月で補えない」:日本経済新聞
前エントリーで取り上げたJR四国の資金繰りが悪化し6月にもアウトという状況です。交通政策基本法の定めるところにより事業者と自治体の協議を経て国に助けを求める手続きとなりますが、現実はそこまで持たないほどひっ迫しています。加えて忘れてならないのはJR四国はJR北海道やJR貨物と同様国全額出資の根拠法に基づく特殊会社であるため、勝手に全業廃業したり解散したりできない立場ってことですね。国は株主として資本注入なり融資なり債務保証なり何らかの姿勢を示す必要があります。こういった法律の建付けを政府は理解しているかどうか。検察官の定年を勝手に延長するような遵法精神欠如が見られる現政権ではまともな対応は期待できないかも。
#検察庁法改正案に抗議します
検察庁法改正案の強行採決に反対します

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Tuesday, May 05, 2020

出口が見えないアベノ自粛

予想されたこととはいえ、緊急事態宣言の延長が決まりました。そしてプロンプター読んでるんだけの「台本営発表」とも謂われる首相記者会見で、緊急事態宣言の解除の基準は語られませんでした。8日を8月に読み違えたみたいですが^_^;。出口が見えないという意味でアベノミクスと同じです。加えて検査体制の拡充が未だに実現できていないために、そもそも出口を判断できるデータがないという現実もあります。

この辺統計135°の歪みで指摘した統計不正問題に通じますが、現状を正しく把握できないから緊急事態宣言解除のような責任のかかる決断が出来ない訳です。あと内緒ですが伝染ルンですアベノミクスで指摘した消費指標を家計調査ではなく商業統計に切り替えてインバウンド消費が二重計上されていた疑惑ですが、コロナ禍でこっそり見直されてます。嘘が下手な嘘つきの典型的対応です。

あと「新しい生活様式」とかいう大きなお世話を専門家会議が発表しましたが、これ政府の諮問に基づいた助言機関がなぜ国民向けにこんな発表するのかですが、助言に基づいて責任を負うべき側に責任を負う姿勢が見えず、専門家会議に丸投げしている状況が透けて見えます。政府への助言が暖簾に腕押しでは、国民に語り掛けて協力を得るしか手段がない訳で、余計なことをさせられている訳です。当然専門家会議としては責任を負えず安全側へ判断が偏りますから、出口の判断はますます遅れます。

てことで巣篭りは長引きそうです。そうなるとリモートワークの範囲が拡大することになります。既に通勤定期券の払い戻しが増えており、加えて年度替わりで買い替えが多い4月もおよそ3割減ということで社畜の国で指摘した企業の通勤手当支給見直しがさらに進むことになります。その結果鉄道事業者が苦境に陥ております。

記者の目 JR東、コロナで見えた鉄道の盲点 3割減収なら利益ゼロ  証券部 堤健太郎:日本経済新聞
JR東日本だけの問題じゃないんですが、大都市圏の通勤需要で支えられている事業者にとっては、割引とはいえ前払いで収益を現金化できる定期券売上は経営安定のキモであり、経営の基礎体力をもたらします。記事で指摘されている固定費のかなりの部分を定期券売上でカバーし昼間や土休日の定期外客で上乗せすることで利益の最大化を図る訳ですが、こちらも外出自粛で激減している訳ですから、JR東日本と言えども1-3月期に赤字転落してますし、現状では4-6月はもっと悲惨です。

収益構造から言えば、運輸収入の依存度の高いJRの方が関連事業収入が多い大手私鉄より厳しい訳です。例外的に関連事業比率の高いJR九州は安泰かと言えば、ライバルの西鉄と比べれば生活関連事業で沿線にドミナント形成という水準には達しておらず、営業エリアが広すぎるから仕方ないんですが、トータルな経営体力では苦しいところです。

加えて整備新幹線が重荷になります。整備新幹線は30年リースで負債を計上している訳で、特に整備新幹線区間が長いJR東日本には重荷でしょう。救いは水害で水没した北陸新幹線E7系廃車に伴って延命されたE4系を廃車して減便することである程度出費を防げますが、リース料は固定費としてのしかかります。鉄道・運輸機構による債務繰り延べの可能性は、リース料が北海道新幹線などのの整備費用として見込まれており整備を止めることになりますから、難しいでしょう。

それでも莫大な減価償却費があり、JR東日本でおよそ2,000億円規模ですから、投資の抑制によってキャッシュアウトを防ぐことは可能ですが、ホームドア設置やバリアフリー化などは減らせませんから、車両更新や新線建設が抑制されると考えられます。航空業界の逆風もありますから、羽田空港アクセス線は幻の新線計画になる公算大でしょう。

この流れで言えば関空アクセス輸送を睨んだ大阪のなにわ筋線もヤバいかも。泉北線と市営地下鉄の売却益で府市共に財源確保してメトロの稼ぎ頭の御堂筋線のライバル路線を作るという倒錯が起きる訳ですから。

JR東海も稼ぎ頭の東海道新幹線で8割減ですから、長引けばリニアを諦めることになりそうです。名古屋リニヤだがや以来疑問を指摘してきた中央リニアも幻になる訳です。それでも財務体質の強いJR東海はある程度持ち堪えるでしょう。JR西日本は赤字ローカル線の整理に活路を見出すと考えられます。中国地方の路線網はかなり整理されそうです。JR九州は上場時に経営安定基金を取り崩して資産の減損処理と整備新幹線リース料の前倒し支払いで負担を減らしてますが、やはり赤字ローカル線整理に踏み込むことになるでしょう。本州3社と比べて財務体質の弱さは否めません。そしてJR四国ですが。

JR四国に国が改善指導 自立経営阻む2つの「老い」:日本経済新聞
コロナショックで真っ先に連想されるのはJR北海道でしょうけど、札幌都市圏への経営資源集中を前提とした再建策で先が読めるJR北海道に対して、エリアに大都市圏が存在せず、過疎化と高齢化が止まらないJR四国の方がより深刻です。とはいえ関係の深いJR西日本に助けを求めたくてもその余裕はなく、そこへ外出自粛が重なる訳ですから、出口が見当たりません。四国だけ三蜜解禁してお遍路さん呼び込むか?

鉄道として残すならば何らかの財政支援が必要ですが、JR北海道でも見られるように、結局交通政策基本法で謳われた地元自治体の関与が無いから国が動かないという倒錯が起きる可能性があります。JRでこれですから、過疎地の地方ローカル私鉄で持ち堪えられないところはちらほら出てくるでしょう。アベノ自粛は公共交通を枯れさせる可能性大です。

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Sunday, April 26, 2020

不要不急の黄金律

Zoomを200mと空目して、ソーシャル・ディスタンシングってそこまで離れないといけないの?と勘違いした人もしなかった人も、お元気でしょうかwwww。私はと言えば、元々引きこもりのボッチですから、あまり変化ありませんが、流石に接触機会が増える乗り鉄は自粛してます。

しかし不要不急が叫ばれるけど、何を以て不要なのか不急なのかは曖昧です。例えばパチンコ規制ですが、開店前の行列に始まり、店内の密集度も高いし、換気が十分かどうかも不明で、しかもプレイ時間もそれなりに長い訳ですから、入場制限や間隔を空けるなどは必要かもしれませんが、補償無しの自粛要請には無理があります。そして自粛に応じなければ店名公表するとして大阪市などでは公表されましたが、これ逆に人を集める効果があるので、あまり意味がありませんし寧ろ逆効果です。欧米のように休業補償を条件に強制力を持たせるべきところです。

現行憲法でも強制力を持たせること自体は可能ですが、補償したくないから曖昧にしている訳です。旧憲法下で国家総動員法などと共に成立した陸上交通事業調整法で、東京の私鉄統合が行われたのは空飛ぶ都営交通でも取り上げましたが、東武野田線の柏以南は京成エリアですし、東上線は西武エリアですが、路線移管は行われず、中央線以南の西南部が東急に統合されたに留まりますが、西武に統合された多磨鉄道はそのままだし、実際は資本の論理による乗っ取り(京浜)や電力国家管理による独立維持の放棄(小田急、京王)の結果ですし、南武、鶴見臨港は国有化だし相鉄は相模線の国有化で東急への経営委託はしたものの旧神中線のみで独立存続してます。

地方でも1県1事業者を模索されましたが、ほぼ実現した富山と福岡は、事業者同士の自主的な統合の結果ですし、富山では県営鉄道や富山市電まで富山地方鉄道へ統合する徹底ぶりでしたが、一方で県内の交通統合の音頭を取った熊本では、熊本電気鉄道と熊延(ゆうえん)鉄道(後の熊本バス)が応じず中途半端になりました。近畿圏でも関西急行鉄道と南海鉄道が統合して近畿日本鉄道が成立した一方、南海傍系の高野山電気鉄道は独立を維持して戦後の南海電気鉄道の分離独立の受け皿となりましたし、力業の統合の阪神急行電鉄と京阪電気鉄道は、やはり旧京阪が分離独立してますが、新京阪線は阪急に残り京都線になるなど混乱しました。コロナ対応がうまくいかないのは憲法は関係ありません。

そして国家総動員体制下で鉄道事業者に求められたのが不要不急線の休廃止と資材の供出でしたが、こちらは国鉄白棚線(白河―磐城棚倉)をはじめ全国の多くの鉄軌道で行われ、軍需品増産や兵員輸送に必要な路線建設に回されたり、金属類は兵器生産に回されたケースもあるようです。という訳で鉄ちゃん的にはこれを連想してしまいますが、基本的に未補償でした。国鉄白棚線は路盤を専用道にして国鉄バス路線として存続しただけマシではありました。戦時BRTですね。

てことでコロナ問題での政府の対応は大いに不満のあるところです。炎上したアベノマスクにしろアベノコラボにしろ、官邸の1人の経産省出身秘書官の発案だそうで、いずれも内閣支持率の低下に焦って提案したものだそうですが、検査を増やすとか衛生用品の増産などの実質的な対策ではなく人気取りに走るところが国民から見透かされている訳です。また1世帯30万円給付も無条件に1人10万円に変更されましたが、これ公明党がが意地を見せた訳じゃなくて支持母体の創価学会からの突き上げで仕方なくって話で、単なる自己保身です。こんな連中が言う不要不急には違和感しかありません。今一番の不要不急は五輪だろ。その一方で感染爆発した欧米は次のフェーズへ進みます。

米欧のコロナ感染、公表値の10倍も 抗体検査で判明  人口6割で「集団免疫」 まだ遠く 精度向上に課題
PCR検査に精度の問題があることは確かですが、とにかく感染の実態を把握するには検査を増やすしかない一方、出口となる集団免疫の獲得進行度を見る意味もあり、遺伝子検査であるPCR検査に留まらず血液を採って抗体の有無を調べる抗体検査へと進み、疫学データを拡充しています。結果はPCR検査の陽性反応で確認された感染者数を大幅に上回る感染率であることが分かった一方、集団免疫獲得と言える60%には全く届かないということで、終息にはまだまだ時間がかかることが明らかになりました。また1度回復して再発症するケースも報告されており、その場合重症化するケースが多いということもあり、免疫の暴走が疑われています。つまり集団免疫獲得が本当に出口になるかどうかもわからないってことですね。

加えて国内感染が終息しつつある中国では帰国者を原因とする感染拡大が見られるなど、今後第2波第3波の感染拡大も警戒する必要があります。しかもそのタイミングが国毎にズレてますから、一旦落ち着いても油断できない状況は続く訳です。1年後に五輪開催できると考えるのはあまりに楽観的です。

最後にちょっと臭い話。鉄道を巡る戦時体制で特筆すべきは戦時下の食糧増産計画でして、人口密集地の東京では住民の糞便が大量に出ることに注目した当局が、郊外の営農地帯への堆肥供給のために鉄道各社に汚わい輸送を要請したものの、乗客の評判を気にして各社尻込みする中で、唯一要請に応じたのが西武鉄道ですが、戦時体制でただでさえ要員が徴用されて人手不足の中、御大堤康次郎の陣頭指揮で大混乱に陥ったという逸話があります。所謂西武鉄道黄金列車伝説です^_^;。

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Sunday, February 16, 2020

貧テック鈍テック

新型肺炎問題での日本政府の対応に内外から疑問が突き付けられております。無意味な水際作戦は所詮政権のパフォーマンスに過ぎず、結果的に国内感染がジワジワ拡がっていて死者まで出ています。しかも該当の神奈川県の80代女性は不調を訴えながら渡航歴がないことを理由にウイルス検査は行われていなかったとか・国立感染症研究所の人手と予算の制約から1日300人しか検査できないそうですが嘘っぱちです。SARSの時のように民間製薬会社提供の検査キットを配布して対応すれば簡単に能力を増やせるのに、金の出し惜しみをしているんですね。

前エントリーの時点より多くの情報が明らかになり、政府の対応に内外から批判の声が上がっております。既に日本は感染地域とされて渡航制限を課す国も現れましたし、ダイヤモンドプリンセス号の対応の迷走に業を煮やしたアメリカは、乗船中のアメリカ人の帰国のためにチャーター便を仕立てており、流石に日本政府も対応を見直さざるを得なくなりました。感染症対策はれっきとした安全保障問題であり、グローバル化でいつ起きてもおかしくない状況なのに、まともな対応ができないってのは、これまでも山梨の豪雪、熊本地震、西日本豪雨、昨年の台風などいずれも初動の失敗で対応が後手に回った訳ですが、安倍政権はよほど危機管理が苦手らしいです。これ非常時のロジステイックス問題ですから、9条を改正して軍隊を持っても、まともに動かせず負け戦必至です。

東京オリパラに関してはおそらくIOCが中止を判断することはないでしょうけど、感染が収束しなければ無観客試合となる可能性はあります。米NOBCの放映軽量が入ればIOCは潤いますが、開催コストを負担する東京都は大赤字で何のためのオリパラか?それがどうも変な感じに。

新潟・南魚沼で少雪、五輪の暑さ対策ピンチ:日本経済新聞
問題視される東京オリパラの暑さ対策として豪雪地帯の南魚沼の雪を使う計画が暖冬による雪不足で狂いが生じています。何だかどんどん漫画チックになっているような気が\_^;。

一方前エントリーで指摘したように、中国では既にウイーチャットを用いた遠隔診療が行われているとか。これを実現するためにはおびただしい数の画像サンプルをAIに学習させる必要がありますが、医師会の反対で電子カルテによる診療データ共有すらできない日本のなんと遅れていることか。新型肺炎のような感染症診療は特に感染者と医師の接触が避けられるだけに重要です。これガラパゴス・スモールブラザーズに加えたいですね。加えて後れを取っているのは対中国だけじゃありません。

英フィンテック、手数料変革迫る 送金・外貨両替で:日本経済新聞
英国がBrexitで強気な理由の1つがこれです。元々大手銀行の寡占で手数料がバカ高かった英国では、国の法律で銀行にフィンテック企業へのAPI公開を義務付けたことで、フィンテックで世界をリードしています。API公開とは、銀行が保有する決済などのシステムへのアクセス制限を課しているため、フィンテック企業はユーザーの委託で口座へアクセスするのにユーザーからパスワードの通知を受けて行う訳ですが、当然セキュリティが甘いとハックされて外部流出して結果的に不正アクセスにつながる訳ですが、フィンテック企業に直接アクセス権を与えて限定的にユーザーの代理人としての権限を与えれば、問題を回避できます。ユーザーは銀行窓口へ出向くことなく振り込みや海外送金などのサービスを受けられ、競争環境で手数料も割安になるということになります。

ただしこれマイナス金利で青息吐息の日本の銀行はなかなかAPI公開を認めず、国内フィンテック企業が育ちません。そこへ英国フィンテック企業が黒船として襲来するって話です。ただしガラパゴス・スモールブラザーズで指摘したNTTデータの通信網の独占問題が絡みますので、簡単ではありませんが、公正取引委員会が調査を始めており、結果如何では風穴が開く可能性はあります。

そのときに力を持った英国勢に国内フィンテック企業た太刀打ちできるかって問題はあります。またやむを得ない部分ですが、COBOLで記述された基幹業務システムを維持改良しながらセキュリティ対策を取る銀行システムの維持費が高止まりしていることも問題なんですが、さりとてコストダウンのためにクラウドに乗り換えることが簡単にできない悩みもありますし、みずほのシステム統合でトラブったように、特に経営統合機運が強まる地方銀行にとっては頭の痛い問題です。で、基幹業務システム問題は実はJRにも頭の痛い問題でもあります。

タッチしやすい改札機 JR東、新宿駅などで実証実験:日本経済新聞
JR東日本が首都圏で自動改札機を本格導入したのが1990年ですが、この時点でSuicaの開発計画が進行中だったこともあり、10年後をめどにSuica対応機が開発され予定通り更新されました。2010年にはマイナーチェンジ版の現行モデルに交換されてはや10年。次世代モデルを新宿と高輪ゲートウエイ駅で試験導入してテストを行うというものです。

目玉はQRコード読み取り装置を装備してQRコード決済のテストを行うものですが、Felicaシステムはコイルによる電磁誘導の仕組みを使って無電源で瞬時に読み取りが可能なのに対し、QRコードは光学的に読み取って変換する関係で動作に遅延が生じるため、特に混雑する首都圏の駅では動作に問題がないかどうかを慎重に見極める必要があります。加えてユーザーがスマホを操作してアプリを立ち上げる必要があり、混雑する駅で混乱しないかも見極める必要があります。ただしSuicaであれQRコードであれ、固有のID番号を読み取って処理する部分に違いはありません。

とするとQRコード導入の意図は何かってことになりますが、1つは将来的に磁気券の廃止を視野に入れているのでしょう。既に航空の搭乗口では搭乗券をスマホへダウンルードするか紙にQRコードを印刷してゲートの読み取り口にかざす形になっており磁気券の搭乗券は過去のものになっています。となると駅の自動券売機が空港の自動チェックイン機のような形になってユーザーのスマホにダウンロードされる形が考えられます。メリットとしては情報量を盛り込めますから新幹線を含む特急券などとのセット券も簡単に対応できますから、Suicaより汎用性が高まります。

2つ目はローカル線のチケットレス化が低コストで可能になる点でしょうか。ローカル線の場合首都圏のような混雑はあまり考える必要がなく、また読み取り機とクラウドで簡単にシステムが構築できるなどコスト面で有利ということもあります。ただしこれはSuicaの裏側で動く鉄道の基幹業務システムとは異質のシステムなので、ローカル私鉄が単独で導入するならともかく、JRが導入する場合は現行の基幹業務システムとの整合性が問われることになります。JRにとっては構築してきた基幹業務システムを簡単に変更できないだけに、悩みの種になるでしょう。

一方、MaaSを視野に入れると、戸口から駅、駅から戸口のラストマイル輸送との連携でSuica対応はコスト面で課題がありますから、それを睨むとQRコードシステムに優位性がある訳で、両者をどう繋ぐかは大きな課題です。銀行とフィンテックの関係に似た構図が見えてきます。

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Sunday, January 26, 2020

気候変動の経済リスクに向き合う欧米当局

タイトルはそうじゃない某日本国を揶揄してるんですが^_^;。

気候変動がもたらす金融リスク、欧米当局が分析開始*:日本経済新聞
主なリスクは2つあって、異常気象や海面上昇による自然災害の増加により土地価格の低下による融資の担保割れや、保険金支払いの増加による保険会社の経営悪化などと、温暖化対策としてのCO2削減対策の結果として化石燃料価格が下落して、油田ガス田や石炭火力発電が座礁資産となり不良債権化することなどが挙げられます。

前者は日本でも台風被害で現実のものと認識されるようになってきましたが、後者に関しては認識が弱いどころか、内外で石炭火力発電所の新設計画を進めていて、世界的に非難されてます。飛び恥のグレタ・トゥンベリさんからも厳しく叱責されてます。

舌鋒鋭いグレタさんの発言に対しては、様々な反応が見られますが、欧米では多くの若者が共感している一方、日本ではあまり見られないのが不思議です。勿論現在の産業構造の大転換を伴い、時間も費用もかかる話ですが、現在の富を生み出す仕組みを温存する結果、その後始末のコストが将来世代へ先送りされるという構図で見れば、グレタさんに代表される若年世代が不満を表明するのは自然なことです。

それに耳を傾けられないとすれば、それは現在世代のエゴでしかない訳で、気候変動に限りませんが、環境問題は突き詰めれば現役世代と将来世代間の富の分配に関わる問題であり、社会制度として解決が求められるものであって、科学技術の進化で解決できるという性格の問題ではないということは押さえておきましょう。灼熱の氷河急行で取り上げた2009年のCRUメール流出事件で騒がれたデータ捏造が、結局捏造の証拠なしとなり、寧ろCO2原因説を強化した経緯に見られるように、今利益を得ている人達による言いがかりは後を絶ちません。

その意味で小泉環境相の石炭火力見直し発言は妥当なものですが、政府与党からは困惑する声が聴かれます。確かに原発を「重要なベースロード電源」と位置付ける政府のエネルギー基本計画を前提とする限り、13か月ごとに運転停止して点検が義務付けられている原発のバックアップ電源として、大出力石炭火力は必要不可欠ですし、まして安全対策の追加費用が重荷で原発の再稼働が進まない現状では、石炭火力を主力電源とせざるを得ないのが大手電力会社の事情としてある訳ですが、将来の重荷を背負わされる若者がそんなこと忖度する必要はないです。

そんな中で欧米の金融当局が気候変動リスクを意識し始めたのは、時代の変化の帰結と見ることもできます。特にECBはIMF専務理事だったラガルト新総裁が金融政策の見直しを宣言し、これまでの2%インフレ目標のための量的緩和やマイナス金利政策と共に、気候変動リスクへの対応も検討中ということで注目されます。昨今金融政策の限界説が言われ、低成長が常態化している中で、効果が乏しい一方副作用が目立つ量的緩和やマイナス金利の見直しは避けて通れませんが、加えて気候変動リスクを金融政策に織り込む模索が始まった訳です。

具体策はわかりませんが、化石燃料関連への融資を抑制して再生可能エネルギー関連へ資金シフトを促す方向性が打ち出される可能性はあります。但し悩ましいのは、これ高度経済成長時代の日銀の窓口規制と同じようなものになるとすれば、これまで模索されてきた中央銀行の政治に対する独立性の議論を揺り戻すことになりかねないだけに、議論を呼びそうです。QQEで出口戦略を封印し緩和継続しか選択肢のない日銀にとっては議論に参加すらできない訳です。

そんな日本にも変化の兆しはあります。

再生エネ、地域越え連携 太陽光など一括制御に免許制:日本経済新聞
太陽光など分散する多数の小規模電源を束ねて仮想発電所(VPP)とする事業を免許制として参入を受け付けるというもの。地産地消のマイクログリッドの制度化ですが、台風被害で長期停電を余儀なくされたこともあり、分散電源の重要性を政府も認めた形です。関連してこんな記事も。
停電下、ともった明かり 台風で分散型電源の強み証明  電力、代わる主役(中):日本経済新聞
千葉県睦沢町の町営住宅や道の駅に給電する同町出資のCHIBAむつざわエナジーが地元産天然ガス発電で給電した結果「停電に気付かなかった」と。繰り返し述べてますが、分散電源による地産地消型のマイクログリッドの災害に対する強靭さを証明しました。これ太陽光や風力など、その地域で調達可能なエネルギー源を用いれば、かなり応用範囲が広いと言えます。

加えて言えばえちぜん鉄道の最エネ電力託送事業がヒントになりますが、需要者としての鉄道事業者が地域の分散電源を束ねてマイクログリッドの核となる形で事業参入の可能性が出てくる訳です。これ運賃収入以外の収益源が得られることに留まらず、災害時でも停電リスクのが低減できることを売りに沿線への移住を促す効果も期待できますし、需要者としての鉄道の省電力技術で、例えば回生ブレーキ電力を蓄電してVPP電源の一翼を担うという形でコスト削減と収益確保の両立も狙えるなど可能性が広がります。

問題は相応の設備投資が必要なので、経営が苦しい地方私鉄には参入ハードルが高いですが、自治体が支援して融資先の乏しい地銀の融資を引き出せれば、過疎化で苦しむ地方の課題を解決する可能性もあります。逆に大電流の制御に四苦八苦している首都圏のJRや大手私鉄では制御の困難が伴うだけに小規模に始められる地方私鉄に比較優位があると思います。是非チャレンジしてほしいところです。

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Saturday, December 14, 2019

これから始まるBrexit

米中雪解けと英総選挙での保守党単独過半数を好感して世界的に株価が上昇してます。これ冷静に見ればアメリカが勝手にいちゃもんつけて喧嘩売っといて「今のなし」って話ですから、単なる材料にされてるだけです。そんな中で中国でのiPhone販売不振のアップルと737MAXの安全問題で中国の緊急輸入の恩恵を受けられないボーイングは蚊帳の外。香港人権法の大統領署名で揉めるんじゃないかと言われましたが、実際は運用次第であって、抜かずの伝家の宝刀の意味です。中国も面子上内政干渉を言い立てますが、通商交渉で実を取るのは既定路線。つまり株高はご祝儀相場以上の意味はありません。

一方のBrexitはこれからが本番。EUの譲歩を引き出したジョンソン首相の思惑通りの展開ですが、関連法を成立させなければ1月末の強硬離脱の可能性は残っています。加えで北アイルランドの扱いは今後の対EU通商交渉と4年毎の北アイルランド住民の意思確認に委ねられますから、具体策はこれから決めるって話です。この辺資本主義と民主主義エントリーで指摘しましたが、メイ前首相が火だるまになりながら取りまとめたEU離脱案を下敷きにしながらの課題解決という、ある意味歩きながら考える英国流の民主主義が機能した結果です。

こうなることは予想してましたが、最大の理由は英国の政府や議会が本気で課題解決に取り組んだ一方、EU側は英国への厳しい態度を示す一方、Brexit撤回を期待するなど、英国民から見れば責任逃れにしか見えない態度に終始しました。だからとにかく前へ進もうというジョンソン首相の呼びかけが効いた訳です。ここまでの混乱で英国民も経済的には厳しい状況を理解していると思いますが、ある意味EUに愛想をつかした訳です。

こうなると英EU通商交渉も英国が強気に出られる一方、強硬派の仏マクロン大統領に対してドイツは醒めてるし、イタリアその他多くの国で反EUの世論が抑えきれない現状では、EUがまともに対応できるとも思えません。EU各国にはギリシャ危機のときの生々しい記憶もあり、まとまりを欠いたまま交渉に臨む訳ですから、かなり高い確率で英国に押し込まれると見ます。

一方スコットランドの独立問題などで英国が連合王国の現体制を維持できずに解体されるんじゃないかという人がいますが、元々英国は国内バラバラで、スコットランドは昔からイングランドへの対抗心が強いし、イングランドでもロンドンの金融街シティはエリザベス女王も許可を得なければ入れないという独立性の強いエリアで、丁度中国と香港の関係のような断絶があり、イングランドのはずれの田舎では、ロンドンは嫌悪や蔑みの対象ですらあります。

仮にスコットランドが独立してEUに加盟するとすれば、スコットランドとイングランドとの間に国境線を引く必要があるため、結局これアイルランドと北アイルランドの関係をブリテン島に持ち込むだけで、混乱に輪をかけるだけですね。実現可能性はほぼ皆無でしょう。様々な矛盾を抱えながら前へ進む英国流民主主義は強固です。

それより深刻なのは日本です。例えばこのニュース。

増税後の景気見通せず 10~12月は下げ公算:日本経済新聞
統計の胡麻化しなんかするから、今景気が良いのか悪いのか判断できなくなってます。実態は相当悪いんですが、昨年秋ごろにはピークアウトしていたと見れば、統計を化粧してよく見せていたけど、誤魔化し切れなくなったってのが現実です。特に貿易統計で顕著に表れてますが、ここのところ輸出が減少してますが、それ以上に輸入が減って結果の貿易黒字を計上してますが、輸入の減少は内需の弱さの証拠で誤魔化しようがありません。これ消費増税の前後とも変わらぬトレンドです。貿本主義も民主主義もダメなニッポン-_-;。更にダメダメなこのニュース。
与党税制改正大綱の要旨:日本経済新聞
ベンチャーを騙る反社会的勢力が企業を食い物にする税制、展望なき5G投資、そもそもこれらが何故デフレ脱却になるのか?OECDでデジタル課税が話し合われている現状で、どこ向いてんだか。ま、標的とされるグローバル企業に日本企業が入っていないから他人事なんでしょう。私的年金やNISAの見直しも結構なんだけど、これ結局公的年金への国民の不安の解消とセットでなければ意味がない。納税手続きの電子化ってマイナンバーカードの強制を含む普及促進ですが、セキュリティへの不安解消が前提です。ま、細部はいろいろありますが、これで経済成長できる根拠がわかりません。

加えて言えば、水害に見舞われた今年、温暖化の影響は明らかなのに、炭素税の導入などは議論されず、欧米との意識のギャップは救いがたいところ。3度目の化石賞と相成りました。これ繰り返しになりますが、原発と石炭火力を前提とした大規模電源主義を見直せない以上仕方ないところです。グレタ・トゥンベリさんに叱ってもらいましょう^_^;。

そのグレタさんが流行らせた「飛び恥」。これうまく使えば鉄道復権につながるんだけど。例えばJR北海道問題ですが、丘珠発着便を廃止して鉄道輸送に切り替えるのに使えそうです。JR北海道の都市間列車を北海道エアシステム(HAC)のコードシェア便として運行するといった方法を何故北海道は考えないのか?あるいは都市間バスの運行事業者とコードシェアするとかですが、そのための環境整備として道と関連自治体が出資して線路保有機関を設置するとかですね。

JR北海道には鉄道施設を現物出資させてオフバランス化して経営の負担を軽減する一方、低金利でほとんど機能しない経営安定基金は線路保有機関への国(鉄道・運輸機構)の出資分として保守と設備更新と投資の基金にするといったことですが、鈴木道知事は利用促進以外での自治体負担を求めないとしてiいます。やっぱりJR北海道潰して経営安定基金を長崎新幹線に回すつもり?英国流オープンアクセスを試すなら北海道なんですがね。

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Sunday, October 06, 2019

痺れて関電

関電役員の金品受け取り問題が連日報道されてますが、受け手としてリテラシーの問われるニュースです。というのも、発覚の経緯がかなり特異であることです。その意味で注目すべき記事はこれです。

税務調査後に1.6億円返却  受領額の半額 関電、元助役側に:日本経済新聞
高浜町の吉田開発という建設会社に金沢税務署の強制税務調査が入ったのが18年1月。その直後に高浜町元助役の森山氏に受領した金品の返却が集中している訳です。これ森山氏と吉田開発の関係を知っていて受領した金品の出どころもわかってたからですね。つまり発覚を恐れて証拠隠滅に動いたわけで、総額3.2億円の半額相当の1.6億円がこの時に返却されている訳です。加えてこれ。
関電監査役会、金品受領を昨秋把握  監視機能働かず 工事の7割、元助役に情報:日本経済新聞
ちょうど1年前の18年秋、税務調査の半年後には関電の監査役会も事実を把握しながら、取締役会に諮らなかったんですね。つまりこの時点では世間には知られていなかった訳で、スルーして見て見ぬふりしたわけです。ガバナンスが働かなかった訳で、これ自体も問題ですが、結局思わぬところから外部へ洩れます。

今年3月に森山氏が死去し、遺族による遺産相続の過程で故人のメモが出てきて、関電幹部の名前と金額が出てきてしまい、隠しきれなくなって今に至る訳です。発覚の発端となった金沢税務署の税務調査から1年半を経過していた訳で、既に多くの証拠は散逸していると見るべきでしょう。ですからチラホラ名前の取りざたされる政治家もいますが、身に覚えのある者は既に処置済みで高みの見物でしょう。モリカケ問題で学習してますから。

こうなるとあからさまな自己保身に走る関電幹部がヒール役を一手に引き受けてくれますから、世論に迎合して一緒に叩いて涼しい顔してる巨悪がいるってことですね。とにかく地元負担でローカル線の小浜線を電化しちゃうぐらいの資金力が原子力界隈にはありますから、3億なんて氷山の一角のはした金です。小物を血祭りにあげてガス抜きまでできちゃうからたまりませんね。

閑話休題、関西電力といえば2018年まで鉄道事業者でした。長野県大町市の扇沢と黒部ダムを結ぶ関電トンネルのトロリーバスは関電の直営で鉄道事業法準拠の第一種鉄道でしたが、バッテリー電気バスに置き換えられて終焉しました。資本規模で言えばおそらく日本最大の鉄道会社だった?トロッコ電車でお馴染みの黒部渓谷鉄道は関西電力100%出資の子会社ですが直営ではありません。

関電の黒部川水系の水利権は、戦前の日本電力から戦時統合の国策会社日本発送電を経て1951年に関西電力に移管されたものですが、地域分割で9大電力に再編された中で、需要地である関西向けに豊富な北陸の水力資源の一部を持たせた訳ですね。黒部川沿いの日電歩道の名前に名残があります。似たようなことは中部電力エリアの長野県の高瀬川の水利権を得た東電が首都圏向けに電源開発を行いましたが、これは戦後の話で、戦前からの歴史を引き継ぐ関電の黒部川とは異なります。最近は寧ろ福島第一第二や柏崎刈羽など原発の域外立地が目立ちます。

実はこのビジネスモデルは日本電力がもたらしたもので、北陸の豊富な水力資源を利用して遠距離高圧送電で東名阪の需要地に安い電気を売り込もうという目論見で関西地盤の宇治川電気の子会社として発足した会社ですが、庄川水系の電力を中京圏で販売して東邦電力と競合し、電力兼営の小田原電気鉄道を買収して電力部門を残して7ヶ月後に箱根登山鉄道として分離し、残った信濃川水系の電力を首都圏で販売して東京電灯と競合し、果ては親会社の宇治川電気が大同電力の電力供給を受けていたために関西エリアで親子バトルまでしてしまうという破天荒な存在で、後に過当競争を理由とした電力国家管理の扉を開くことになります。

第一次大戦と第二次大戦の戦間期は日本の工業化が進んだ時代でもあり、工業化と共に電力需要の拡大が見込まれたことで、それまでは需要地の近くに小規模な火力発電所を構えて限られたエリアに配電していた電灯電力事業を、現代に通じる大規模電源と遠距離高圧送電で効率性を追求した系統電力事業に進化させたイノベーション期だった訳です。ところが昭和恐慌で一転需要が縮小し、余剰電力の処理に困った事業者は、熾烈な競争に巻き込まれていきます。その過程で大口需要者として電気鉄道の存在が意識されます。

例えば宇治川電気は兵庫電気軌道と神戸姫路電気鉄道を傘下に収め、両者の直通運転で神戸姫路間の電気鉄道を実現します。後の山陽電気鉄道ですが、その際に車両限界の小さい兵庫電軌に車両サイズを合わせた関係で、神姫電鉄の1型がお役御免となりましたが、滋賀県のローカル私鉄の近江鉄道を傘下に収めて電化してそちらへ回します。関東でも東京市電気局に電力供給していた鬼怒川水力電気が小田原急行鉄道と帝都電鉄を開業させて事業拡大と販路確保をしたりという動きもありましたし、逆に京王電気軌道のように電力事業の方が寧ろ収益性が高かったなんて事例もあります。電気鉄道もイノベーションの一翼を担っていた訳です。

しかし直流き電で電力変換が必要なうえ、負荷変動が激しく安定しない電気鉄道は、地域分割で地域独占企業となった戦後の9大電力時代には寧ろ嫌われます。系統電力は工業用の電力供給が主たる目的ですから、電力の安定が最優先ということで、大口需要者向けの安い料金は適用されず、割高な電力料金を負担してきました。ま、これがサイリスタチョッパ制御やVVVF制御などの省電力技術へのインセンティブとなり、連敗続きの日本の半導体でパワー半導体では世界をリードする存在になっているのかもしれません。大口電力需要者である国鉄が直営の信濃川発電所を持っていたことは東電を助けていたかも。

そして時代は進み、再生可能エネルギーの利用の観点からマイクログリッドが求められる時代になると、系統電力網は下手すればサンクコスト(埋め込み費用)の塊になりかねないのですが、分散電源のタイムリーなマッチングう意味でスマートグリッドを実現することで生き残る可能性はありますが、そのためには原発のような大規模電源が寧ろ邪魔になります。分散電源ならば電源のトラブルは多数の別電源でカバーできますから、寧ろ安定します。その意味で原発をこれ以上引っ張るのは得策とは言えませんね。

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Sunday, August 18, 2019

困難なインフラのトリアージ

2030年の北海道新幹線札幌延伸に伴う並行在来線問題の検討が前倒しされました。

北海道新幹線の並行在来線、「存廃判断」5年前→前倒し  :日本経済新聞
対象区間は沿線人口が少なく、財政力の弱い町村が連なるだけに、調整は相当手間取りそうです。バス化も含めた検討ですから、廃止も有り得る訳ですが、貨物列車をどうするかが悩ましいところです。

JR貨物の問題は東北新幹線延伸のときに並行在来線を三セクで引き受ける時に、ローカル輸送対応ならば複線電化の東北本線の設備は明らかにオーバースペックとなりますから、JR貨物が貨物列車を維持することが困難と発議されました。その際JR貨物が負担する線路使用料がタダ同然の格安だったことから、並行在来線引き受け三セクにとっては負担ばかりになるということで揉めました。結果的にはJR貨物が支払う線路使用料と三セクが受け取るコスト見合いの線路使用料の差額をJR東日本の負担で補填することで決着しました。加えて北斗星やカシオペアの運行に伴う運賃料金収入もあり、それで経営の屋台骨を支えることで決着しました。貨物幹線だけに貨物廃止は無理だった訳です。

JR東日本にとっては整備区間より手前の根元区間の受益があるので、貨物輸送に伴う負担増は受け入れ可能だった訳ですが、同様の問題に直面した九州新幹線の八代―川内間ではこの手は使えず、並行在来線三セクの肥薩オレンジ鉄道にJR貨物が出資することで、貨物列車向けの電化設備等を維持するという方法が採られました。肥薩オレンジ鉄道のローカル列車は軽量ディーゼル車によるワンマン列車です。

北陸のIRいしかわ鉄道とあいの風富山鐡道では、当初検討されたサンダーバードの富山乗り入れは結局JR貨物とのコスト分担問題で実現しませんでした。IGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道が客単価の高い寝台特急の収入を当てにしたのとは対照的です。という具合に並行在来線貨物問題は統一的なスキームはなく個別対応に終始しました。言い換えれば行き当たりばったりだった訳です。

北海道新幹線に関しては、経営危機にあるJR北海道に追加負担を求めるのはそもそも無理ですし、これまで以上に沿線人口が少なく、財政力の弱い町村に負担を強いることになります。貨物廃止してバス転換もあり得る訳ですが、青函トンネル開通で天候に左右されない輸送手段として特に農産物輸送で優位性を発揮する貨物の廃止は、北海道経済に大きな打撃を与えるだけに、簡単にはいきません。

青函トンネルの新幹線と貨物の供用区間が速度と列車本数の制約条件になっていることから、国交省の本音は貨物廃止に傾いているようで、実際船舶へのシフトが検討されてますが、輸送量から言えば可能でも、天候の影響は避けられず、鉄道による安定輸送が北海道産農産品の競争力となっている現実から無理筋でしょう。

加えて東北新幹線の並行在来線三セクであるIGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道にとっては、寝台特急の廃止で旅客収入を減らした上に、JR貨物の線路使用料収入まで減れば、存続が危うくなります。こうなると北海道の都合だけで決めることもできず、着地点が見えなくなります。あとJR貨物自身も国の支援で基盤強化投資を行った結果、黒字転換して株式上場も視野に入る中で、その基盤を国に潰されることになる訳です。この点も将に行き当たりばったりです。

山線区間を除く長万部以南の区間はJR貨物が出資するということも考えられますが、北海道経済に関わる問題だけに、北海道庁が動かなければまとまらない可能性があります。とするとJR北海道に冷たい道庁の対応から見て期待できそうにありませんね。これインフラの積み増しによる維持費拡大問題として指摘しましたが、こうして過剰インフラを抱えると、その廃止も簡単ではないってことで、寧ろ問題を複雑にして解決を困難にします。

一方九州でも問題が起きています。

JR九州「自社株買い」株主総会で否決、青柳社長「今後も対話」  :日本経済新聞
株式上場したばかりに、株主となった投資ファンドからの圧力を受けている訳ですが、同時に豪雨被害で不通の日田彦山線の復旧を巡って関連自治体との間で困難な話し合いが行われています。日田彦山線自体は現状既に都市間輸送も貨物輸送も担っていない純然たるローカル線で、企業経営的には災害復旧するよりバス転換する方が合理的ではあります。

しかし忘れてはいけないのは、JR九州が株式上場に当たって上場基準クリアのために行った経営安定基金を取り崩して新幹線リース料の一括納付と償却資産の減損処理の結果、減価償却費を圧縮して本業の赤字体質を改善した一方、減価償却費の減少は同時にフリーキャッシュフローの減少を意味しますから、災害復旧の資金捻出を困難にしているという側面もあります。言い方は悪いですが、株式上場したために災害復旧もままならなくなったってことです。日経記事では複数のステークホルダーへの対応の困難さと纏めてますが、覚悟がないなら上場なんかするなって言いたいところです。

というわけで公共インフラの民営化は万能薬でも何でもない訳で、例えば大阪メトロや大阪シティバスの民営化の意義は今もって理解に苦しみますが、とりあえずここでは踏み込みません。しかし過剰インフラの淘汰を資本の論理に委ねて良いのかってところはあまり議論されてません。そんな中で北越急行ほくほく線の生き残り策は示唆に富みます。

元々スーパー特急方式を想定していたJR西日本区間の北陸新幹線は、ほくほく線経由で越後湯沢で上越新幹線に乗り継ぐ形が想定されていて、それを前提に北越急行では線路の高速化と共にJR西日本の681/683系を導入し、段階的にスピードアップして160km/hの営業運転を実現した訳ですが、北陸新幹線のフル規格化で梯子を外された形になりました。

そこで利益の一部を基金として内部留保して将来の減収に備える一方、特急廃止でお役御免となる681/683系をJR西日本に売却しローカル輸送に特化します。減収にはなりますが、特急車両の譲渡収入が得られる一方、通過車両キロの減少で保守負担が減少しますから、そこで収支をバランスさせることで存続を図ります。超快速スノーラビットで都市間輸送を維持しつつ、鈍速列車スノータートルという企画列車を走らせるなどして増収に励む一方、2018年12月1日には運賃値上げして収支改善を図ります。万博輸送対応の車両を大阪市に譲渡した北大阪急行と同じ手ですね。

幸いなことに高速化で高規格な線路故にメンテナンスフリーなのと、積雪対策により運休が少ないということで、ローカルな利用者の信頼を得ていることで、安定した収支を実現しています。てことでJR北海道もJR九州の前例を梃子に電化や線路強化や積雪対策などで将来のメンテナンスコストを圧縮することと、運賃改定を併せて収支改善を図るのが、道庁が当てにならない以上必要ではないかと。利子補給されているとはいえ低金利で運用益が期待できない経営安定基金ですが、現物投資は優先順位を間違わなければ本業でのハイリターンが可能です。

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Saturday, July 27, 2019

減耗する固定資本に沈む夕陽

参院選が終わり、投票率は5割を切って「盛り上がらなかった」「投票しない奴が悪い」類の話がありますが、選挙期間中に法定の政見放送以外に特段の選挙特番を打たなかったんだから、関心が薄いのはある意味当然です。おそらく固定票を持つ自民公明両党の支持者も大勢に影響なしと投票所に行かなかった可能性があります。

一方で諸派の泡沫候補としてマスメディアがガン無視したれいわ新選組が2議席を確保したばかりか、NHKから国民を守る党も1議席、存亡の危機にあった社民党も1議席確保して、共に選挙区の得票率で政党要件を満たすという椿事も起きています。れいわとN党はYoutubeとSNSを駆使したネット発信で票を獲得し、資金はクラウドファンディングで集めるという形で、既存メディアに依存しない選挙戦を展開しました。

6年前に東京選挙区でトップ当選したれいわの山本太郎氏を泡沫とは言えないでしょうけど、合区で選挙区を失った与党議員の救済策として押し込まれた比例区の特別枠を利用して重度障碍者2名を擁立したれいわの戦略は、結果的に票の掘り起こしに寄与して2議席確保して政党要件を満たしました。代表の山本氏は議席を失っても、党代表として足場が出来た訳で、作戦は成功しました。尤もこれは感性に訴えるポピュリストの手法という批判はありますが、この点に関する論評は避けます。ただ確実に言えるのは、電波メディアを中心とするマスメディアの衰退は確実に進んでいるってことです。

山本氏に関しては明仁天皇に手紙を手渡ししたことが天皇の政治利用だとして批判された過去もありますが、ふけいざいエントリーで指摘したように、憲法第16条の請願権の行使と見れば問題ありません。ただし政治に関わらない象徴天皇ですから、天皇は規定に従って手紙を内閣に回送しましたが、内閣は請願に対して誠意を以て回答することが義務付けられているのに、回答があったという話は聞こえてきません。

対する安倍首相の選挙遊説は動員がかけられて周りを固める一方、一般人は近づけないようにしていました。そんな中で札幌のヤジ排除事件が起きました。道警とSPの連携だそうですが、当初公職選挙法違反を発表したら弁護士会などから拡声器も使わない1人の肉声は選挙妨害に当たらないという最高裁判例を引いて批判が出たため、混乱を避けるためという風に改めました。しかし憲法第16条の請願権の行使と見れば、これもれっきとした憲法違反です。

それはともかく、選挙戦に関するマスメディアの露出が少なかった一方、頻繁に流れる自民党のCMスポット。選挙特番で声高に放送法第4条の二の公平性を言い立てるのは専ら政権党の自民党ってこともあり、選挙期間中の特番はメンドクサイものと放送事業者が忌避した結果、自民党CMが目立つ結果になってます。この辺を考慮すると、改選議席を減らして憲法改正発議に必要な2/3を割り込んだのは、結構ショックだったかもしれません。という具合に非対称が目立った参院選でした。

ただ政権選択ではない参院選ですから、長期的視点から問題提起して論戦に結び付ける議論があまりなかったのは残念です。少なくとも野党はアベノミクスの出口戦略できちんと議論して欲しかった。例えば3年前の参院選後のアベノミクスの出口に関する論考をアップしましたが、野党の関心は1人区を中心とした選挙協力に終始していた感じで、各党の思惑には残念ながらズレが見られます。この辺を深めておかないと、結局参院選ではまとまっても衆院選では不発の可能性があります。

例えばふけいざいエントリーでも取り上げましたが、GDP500兆円の日本で固定資本減耗が107兆円あり、しかも増え続けている現実があります。これ企業会計で言えば減価償却費に当たる資本の維持費なんですが、経済規模に対して大き過ぎないかってことを申し上げたい訳です。これ民間資本なら当該企業の減価償却費て手当てできますが、公共投資で作られるインフラに関しては、維持管理のための予算措置が必要になりますから、過剰な公共投資は皮肉にも公共投資の原資となる予算を長期間にわたって圧迫することになります。例えば五輪のレガシーと称する競技施設の数々ですが、維持管理して未来へつなぐ戦略は見られません。

こういうところをもっと突くべきだし、その方が有権者への訴求力も増したんじゃないかと思います。思い返せば2009年総選挙の前には、この手の議論がそれなりにありましたし、そうした中から「コンクリートから人へ」といったキャッチ―なフレーズで闘えたんですね。ま、政権交代後に露呈した未熟さで台無しにはなりましたが。

例えば、佐賀の乱で孤立線になる長崎新幹線ですが、事業仕分けで軌間可変車両の実現可能性を厳しく査定できなかった結果、拗れてしまいました。佐賀県区間のフル規格化を与党議員が画策してますが、財源の壁が立ちはだかります。とにかく今使える財源は30年の北海道新幹線札幌開業まで決まっており、尚且つ人件費増など事業費の拡大で危うい綱渡りをしています。

てことで、気になるのがJR北海道なんです。帳簿上JR北海道に属する6,822億円の経営安定基金ですが、実際は鉄道・運輸機構に預託されておりますが、アベノミクスの低金利のお陰で損失補填は果たせず、とはいえ旅客会社法で定義された特殊会社たるJR北海道は一存で処分もできません。

以下は仮定の話ですが、JR北海道の経営がいよいよ成り立たなくなって、何らかの対応を迫られたときに政府がどうするかですが、未上場企業で一般株主が居ませんから、政府の一存で潰すことも選択肢になります。経営再建のための再国有化という名目で、JR北海道が策定したリストラ策を維持しながら、経営安定基金を切り離して旧鉄道整備基金の勘定に入れれば、あら不思議財源が出来た-_-;。後は佐賀県の同意が得られれば着工となります。

気になるのが高橋前北海道知事が「国の問題」としてJR北海道の再建に後ろ向きだったことも、政権との阿吽の呼吸があった可能性を示唆します。鈴木新知事に代わって変化があるかどうかですが、夕張市長時代に夕張支線の廃止に道筋をつけたとはいえ、夕張市だけの都合で動けた条件闘争に過ぎず、広域自治体として関連自治体を調整しまとめ上げる立場で何ができるかは不明です。寧ろ政権との近さを考えると、高橋道政の継承となる可能性があります。

つまり北海道からお金取って九州へ回すってことですが、北のスットコドッコイで指摘した総連系労組が力を持つJR北海道は潰しても惜しくないでしょう。何しろJR東労組を挑発して窮地に追い込んだぐらいですから。JR北海道がこれを回避するには、鉄道ジャーナルの枝久保氏のコラムにあるように、JR北海道自身が経営安定基金を経営強化策に使う策を明らかにすることでしょう。

本題に戻しますが、公共投資の拡大は、固定資本減耗の拡大で国民生活を圧迫します。これも仮定の話ですが、財政出動を拡大して公共投資を増やして仮にGDPを600兆円に増やせたとしても、固定資本減耗が200兆円とかになれば、結局国民生活へのメリットはほぼありません。寧ろ公共投資の拡大は民間投資を圧迫しますし、折角の公共インフラも乗数効果が無ければただ生産性を下げるだけの存在になります。

一応直近の民間投資はGDP比16%ありますが、減価償却費を引いた純投資は1%です。結局バブル期の過剰投資で稼働率低下を招いたトラウマで思い切った投資ができない一方、余った投資資金は銀行にブタ積みされ国債投資を通じて公共投資で無駄に経済を圧迫することになります。野党の議論もこの辺まで踏み込んで欲しいところです。この悪循環を抜け出せなければ、ボロボロの公共インフラに夕陽が沈む光景を力なく見る未来が待っています。

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Sunday, July 14, 2019

間違いだらけの消費税

3度目の正直な消費税で予想した通り、今年10月の消費税増税は動きませんでした。野党は増税撤回を掲げて争う姿勢ですが、大勢は与党有利と言われています。選挙が終われば「国民の信任を得た」として消費税増税は確実に実施されるでしょう。上記のエントリーでも指摘しましたが、消費税を巡る議論が生煮えで、単純に消費税増税、是か非か、といった議論は今更感があります。寧ろ準備が粛々と進んでいます。そんなこのニュース。

鉄道運賃、消費増税で2%上げ 山手線初乗り136円に  :日本経済新聞
国交省の指針で値上げ幅を消費税増税分の範囲内に納めることを求めており、JR東日本で平均1.852%で、他社もほぼ同水準とされております。一応便乗値上げはありませんが、民営化後30年以上、消費税転嫁分の転嫁を除く運賃値上げは実施されておりませんので、低インフレもありそれなりに超過利潤は増えていると見られますが、その見直しまでは無いってことですね。

加えて鉄道運賃は事業者をまたぐ連絡運輸もあり、IC乗車券のようなストアードフェアシステムが普及していることもあり、バックオフィスのシステム改修にはかなりのコストがかかると思われますから、合理化による増益分は多分大した足しにはならないのでしょう。その一方でJRのライナー列車や複数私鉄の有料着席サービスなど付加サービスのの料金は届出制で自由度がありますから、今後も拡大するんじゃないかと思います。逆に存亡の危機にあるJR北海道は収支改善のための値上げを消費税増税部込みで申請済みで、カツカツの厳しい状況は続きます。

他方運賃制度の自由度が高い航空やバスに関しては、予約時期や路線や便毎に柔軟な運賃設定が可能なので、こうして見ると鉄道運賃にも一定の柔軟性が認められても良い気がします。例えばJR北海道のケースでは札幌都市圏とそれ以外で別運賃にするとかですね。あるいはJRは都市間列車に特化して特急料金込みとし、ローカル輸送はイギリスのフランチャイズ制に倣って地元自治体やバス事業者の参入を促し運賃を別建てにするとかでしょうか。

消費税本体の話からややそれましたが、消費税転嫁の値上げは価格カルテルから除外するという独禁法の例外になっていることを述べたかったんですが、鉄道運賃のように元々が規制価格でネットワークの外部性が強く働く分野はともかく、それ以外の商品一般に関して、この例外扱いが妥当なんだろうか?ってことです。

だから鉄道のような規制業種に限らず一斉値上げになりやすく、駆け込み需要が発生しますし、規制業種以外では便乗値上げも見られますし、食品などで見られる内容量を減らしたステルス値上げも常態化している訳ですね。逆に言えば消費税増税に伴う価格の段差を無くすには、一斉値上げを防ぐシステムを考えれば良い訳で、プレミアム商品券やキャッシュレス決済でポイントバックみたいなことは、寧ろ混乱を助長することになります。

付加価値税率15%以上とされるEUではどうかと言えば、一斉値上げはほとんど見られず、事業者は税率アップを見越して事前値上げしたり、透明値上げを見送って値上げ先送りしたり、コスト削減で吸収したりと、様々な対応を取って税率改定前後の期間平均で収支を調整しています。ある意味価格据え置きはシェア拡大のチャンスでもある訳で、より戦略的な価格政策が定着している訳です。

またインボイスの導入によって税率が変わる前の仕入れ分の低税率は控除額も少ない訳で、中間事業者の節税策が無力化される効果もある訳で、増税による駆け込み需要対策ならインボイス導入こそやるべきことですし、中小零細事業者の対応のためのシステム補助なら1回こっきりのシンプルな補助制度になり、ポイント還元のような大掛かりな仕組みも不要です。しかも2022年をメドにインボイス導入の方針もある訳ですから、それを前倒しするならともかく、今回増税の影響を軽減するという名目で大規模なバラマキをすれば、これが悪しき前例となって今後機動的な税率改定が難しくなるという副作用もあります。全くいいとこ無しです。

前エントリーで取り上げた7pay不正アクセス問題も、コンビニなど大手チェーンの加盟店は2%還元となる一方、地方スーパーを中心に資本金を5,000万円以下に減資して5%還元の対象事業者になってシステム投資の補助金まで取ろうとする動きが目立っており、7-11は対抗上3%分を本部負担で加盟店支援をしようとした訳ですが、セキュリティの強固なFelicaベースのnanacoの高コストがネックで、一方オムニセブンから派生した7iDのシステムが宙に浮いていて、それを利用したセブンアプリというポイントシステムに衣替えして、更にそれを土台に決済システムを構築した結果、元の7iDのガバガバなセキュリティが災いしたということのようですね。ベンダーの尻叩いて安上がりに済まそうとした結果でもありますが、同日にスタートしたファミpayでは問題が起きたという報告はありませんから、手抜きが高くついたってことですね。お粗末。

そもそも消費税は高齢化に伴う社会保障費の膨張に対して、安定した財源であり、社会全体で広く薄く負担するってのが本来の意義だった筈ですが、その一方で年金も健保も保険料が値上げされている訳で、保険料の値上げは現役世代に負担が集中するので、負担と給付の見直しの中で合理的な選択だった筈ですが、実際は97年の3%→5%の増税と同時に保険料も値上げされ、年金の100年安心プランでも年金保険料の値上げとマクロ経済スライドによる実質給付の圧縮が図られ、健保も後期高齢者保健創設による国保、協会健保、組合健保などとも財政調整の結果保険料は毎年値上がりしている訳で、本来は消費税増税の代わりに保険料は固定するといった議論があってしかるべきですが、全くありません。

この辺の不誠実さが日本政治の現状です。その意味では税と社会保障の一体改革を打ち出して3党合意を纏めた野田政権はまだしも誠実だったとは言えます。その後解散総選挙で民意を問うて政権を失い戦犯扱いされてますが、とりあえず議論の俎上に載せたことは間違いありません。ただしここにもゴマカシがありまして、一つは地方消費税が5%時代はその内1%で税収額比20%だったものが、8%中1.7%で税収額比21.5%となりました。10%時には2.2%で税収額比22%になり、軽減税率8%に対しても1.76%(税収額比22%)と地方への配分が増えてます。

勿論社会保障負担が増えるのは地方も同じでよりシビアなので、これはこれで良しとすることは可能ですが、残る国税収入でも社会保障費に直接充当されるのは2割相当で残りは財政再建と政府消費による政府負担分の消費税負担増で消えるという笑えない話なんです。結局年金100年安心プランで約束しながら財源が見つからずに先送りされていた給付の国の負担割合を1/3→1/2の財源に充当されて終わりで、社会保障改革とは程遠い内容です。特に財政再建は過去の公共事業や減税などの財政出動の結果の財政悪化なんですから、素直に歳出削減と赤字国債圧縮を行うべきで、消費税で賄おうというのは筋悪です。

更に自公政権で導入が決まった軽減税率が問題でして、運用の混乱もさることながら、インボイス導入までは区分経理による帳簿管理とされており、錯誤や不正の温床になりますし、事務負担も増えます。インボイスが導入されれば複数税率への対応は容易ですが、それに留まらず、非課税とされる医療や一部の公共サービスを0%税率として申告に基づいて還付することも可能になりますから、制度としてはかなりスッキリします。また税率の変更も容易にになるのは上述の通りです。これを制度インフラとして適正な税率を国民目線で決めていくことが重要です。財政再建のためという増税議論なら国民の判断で止められる訳です。

あと消費税に合わせた所得税や法人税の見直しも必要です。制度の整合性を図るなら両税も付加価値型にすればスッキリします。所得税ならば1人当たりの給付付き税額控除額を決めて本人と扶養家族の人数分を税額控除し、税額が下回る場合は差額を給付することにすれば、仮に所得ゼロでも控除税額分の給付が受けられますから、社会保障費の圧縮が可能になります。法人税は人件費を含む付加価値を課税対象として、人件費に含まれる個人所得税と社会保険料を控除するという仕組みが考えられます。課税ベースが拡大しますから、税率は下げられます。低法人税率国との底辺への競争となる現在の法人減税の議論は必然的に財源を誤魔化すことになり、結果的に消費税収が充当されてましたってことも防げます。

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