ローカル線

Sunday, November 01, 2009

JAL問題が影を落とすユニバーサルサービスの新作法

この1週間いろいろあって、記事にまとめようとしてもまとまらない^_^;。特にJAL問題で大きな動きがありましたが、やはり政権の命運を左右する大問題という直感は当たったようです。とはいえ問題はより深刻になったんですが-_-;。

そのJAL問題からメディアチェックです。

国交相、日航再生に支援機構の活用表明 再建案公表せず
日航、支援機構にグループの再生支援を依頼
何かよく意味のわからない報道と感じられますが、要は旧産業再生機構OB等の作業部会(タスクフォース)の再建案が断念され、発足したばかりの企業再生支援機構を活用することになったということです。作業部会案はいわゆる事業再生ADRと呼ばれる私的整理の手法で、銀行に条件付で債権放棄を求めるもので、見返りに人員整理や資産売却などのリストラを迫り、企業自身の手で自主再建するもので、法的整理の1歩手前の私的整理と言われます。

とはいえ当初から銀行団は再建案に否定的で、交渉は難航しました。債権放棄して支援しても、収益モデルが不透明で、今までも再三裏切られただけに、すんなりと呑めないということですが、さりとて会社更生手続きなど法的整理に進めば、既に多額の貸し込みをしている銀行団も返り血を浴びるということで、銀行サイドからは早い段階で政府が関与して公的資金による救済を求めていたもようです。

しからばこの1月の作業部会の活動は無意味だったのかといえば、さにあらず、このやり取りの過程でJALが少なくとも2,500億円の債務超過に陥っていたことが明らかになっております。つまり対策を怠れば、97年11月の北海道拓殖銀行のように突然死していた可能性もあります。その意味では作業部会はギリギリのところでJALを救ったことになります。

とはいうものの、支援機構案件となったことで、作業部会が1月かけて実施した資産査定は支援機構の手で再度実施されるわけで、スピード感が問われる中での足踏みはじれったいところですね。加えて元々地方版産業再生機構として設立された企業再生支援機構は、元々地方の埋もれた優良企業の支援を通じ、融資銀行の資産の健全化を目的とするもので、わざわざ第三セクターを対象から外すことで当時野党だった民主党も賛成したものだけに、JALの救済に支援機構を用いることには、正直違和感を禁じ得ません。

それと気になるのが銀行団の頑なな態度ですが、実はリーマンショック以後の銀行の不良債権比率がジワジワ上昇していて、竹中プラン実行直前の2001年ごろの状況に近づいてきているのです。JAL再建案に厳しい態度を示した銀行に、実は余裕がなくなってきている状況が透けて見えます。となれば自主再建に厳しい態度の一方、法的整理には慎重姿勢だった銀行の態度にも説明が付きます。JALに貸し込んだ債権の行内格付けが下がれば、銀行自身が引当金を積み増さなければならないわけで、それだけ銀行の融資余力が下がり、貸し渋り、貸し剥がしが横行しかねないわけで、JAL再建に政府が強く関与せざるを得ないということになったと読み解くことができます。実はJAL問題の裏に金融危機の芽が隠れていたということです。

この問題はそもそも邦銀の資本政策のまずさが根底にありまして、邦銀が世界へ業容を拡大した80年代、欧米銀に比べて預金量は突出しながら自己資本が薄く、不健全なハイレバレッジ融資と見なされたことが、バーゼル委員会による国際決済銀行(BIS)規制につながったのですが、日本の銀行関係者は欧米による日本封じ込めと認識し、勝手なルールを押し付けられて融資を減らさざるを得なくなった「マネー敗戦」論を振りかざして居直っております。

そもそも銀行にとって預金は負債に当たるわけですから、資本に対して過大な預金を保有していたことが、バブル期の不動産融資などへの貸し出し競争を誘発し、海外へも資金が漏出して米ロックフェラーセンタービル買収や英仏ユーロトンネルプロジェクトへの融資とその焦げ付きなど、痛い目に遭っているはずなのに、銀行本来の融資業務は、主に日銀の窓口規制に頼って融資審査などの本来の情報創造を通じた信用創造能力を持たないままに肥大化した邦銀では、高収益のビジネスモデルを開発して、それが資本市場で評価されて株主資本を強化するということを怠ってきました。それによって預金の一部が株式市場を通じて銀行の自己資本強化につながれば、無理な貸し出し競争でバブルを膨らませることもなかったでしょう。つまり「貯蓄から投資へ」の金融改革に失敗したわけで、後付けで郵貯マネーを政治的に弄るのはまやかしです。

JAL自身の経営問題も複雑ですが、国の航空政策の犠牲となった側面も見逃せません。前述の空港特会による過剰な空港整備に留まらず、整備費用捻出のために着陸料も割高だし、路線数が多ければ需要が分散しますから、個別路線の採算性も下がるなど、何一つ良いことはないのですが、地方のおねだりを止められなかった国の対応に問題がありました。

加えて96年の需給調整規制撤廃で、航空事業への新規参入が可能になったものの、結局採算性の高い一部路線での競争激化にしかならず、JAL,ANA,JASの当時の大手3社による過剰防衛と国の羽田発着枠の硬直的な配分で新規参入社は育たず、90年代に欧米で産声を上げ、アジアにも起業熱をもたらしたローコストキャリア(LCC)と呼ばれる格安航空会社も日本には事実上存在しません。元々大都市の大空港が大手エアラインに押さえられ、着陸料の割安な近郊のサブ空港同士を point to point で結ぶことで低価格を実現していたLCCですが、9.11で大空港がセキュリティチェック強化で機能を落とし、テロの恐怖で航空利用が敬遠されたことで hub and spork 型の大量輸送に特化された大手エアラインが軒並み業績を落とした中で、運行を堅持したLCCが存在感を増し、今や業界地図を塗り替える勢いです。羽田のハブ化なんぞで大騒ぎしている日本の航空行政の周回遅れぶりはお笑いの域です。

またJALを破綻させた場合に、それに代わって役割を引き継ぐ存在がないということでもあります。例えばJALを破綻させてANAに路線網を引き継がせるのは不可能です。というのもANA自身がリーマンショックと新型インフルの影響で苦しんでいますから。あとJR東日本による救済案も一部で言われますが、絶対に有り得ません。というのもJR東日本自身、主に北海道地区の余剰人員受け入れで不当労働行為の汚名を着ながら、小売などの関連事業を育てて軌道に乗せて余剰人員を吸収した経緯があり、JALの複雑な労使関係が修復不能なことを見抜いております。余談ですがJRグループ内で本業以外の関連事業育成で実績を上げているのは東日本と九州の2社で、東海や西日本は本業依存度が高く、リーマンショックや新型インフルの影響も受けやすいわけです。とはいえ九州は経営安定基金でどうにか最終黒字を計上するレベルで、一部で言われる九州新幹線博多開業後に株式上場はほぼ不可能です。旧国鉄債務の一部として国が負担する経営安定基金が株主のものとなるというのは、誰がどう見ても具合が悪いですしね。

思えば2002年のJASとの経営統合は早まったのかもしれません。というよりも、その後のJALは、社内融和を優先し統合効果を出すためのリストラを先送りした結果、赤字路線を多数抱え、旧い非効率な機体を多数保有し、関連事業も含めて多数の重複分野を抱え込み、労組も分立して労使協議が成り立たない機能不全に至ります。このあたりはJALの経営の失敗であると共に、公正取引委員会の審査の甘さも指摘できます。結局形ばかりの規制緩和で、実質的な競争政策は採られず、JALの虚弱体質が温存されたわけです。そしてそんな内情は承知していたはずの銀行団が資金を貸し込んだわけですから、銀行による経営のモニタリングが機能せず、上場企業でもありますから、株式市場での健全な相場形成と株主の圧力による経営の監視も機能しなかったわけで、実は資本主義国としての日本の質が問われている問題でもあります。

前原国交相は地方路線について、何らかの形で支援を表明しました。

日航再建、地方路線の支援検討 国交相「飛ばない空港作らず」
国の直接関与は旧国鉄赤字ローカル線と同じ問題を抱えることになりますので、期限を設け、おそらく自治体の関与を引き出す方向でしょう。ただし空港特会の見直しに言及し、少なくとも整備費用は切り離すということですから、着陸料の値下げは期待して良いかもしれません。

赤字ローカル線といえば、JR東海が名松線の家城―伊勢奥津間の廃止を発表しました。

名松線、一部廃止の意向 JR東海、バスに切り替え
台風18号の被害で土砂流入や盛土流出など39ヵ所あった被害箇所のうち38ヵ所が家城―伊勢奥津間に集中したことから、今回あえて復旧工事を行わず、バス輸送に切り替えようということです。台風被害で廃止といえば高千穂鉄道を連想しますが、JR引継ぎ路線ではJR西日本の越美北線が長期運休を乗り越えて復旧した例はあるものの、被災以前から地元自治体による定期券購入補助が行われていたことが復旧の判断につながったのでしょうから、自治体の対応は重要です。

その意味では名松線の場合、そもそも存続区間は近傍を近鉄線が並行し、通学定期の割引率による逆転現象がなければおそらく利用者は皆無という路線立地ですから、近鉄線の駅に接着するバス網を整備していっそ全線廃止の選択も有り得ましたが、地元との軋轢を回避したいのでしょう。無人車両走行の芽は残ります(苦笑)。

| | Comments (6) | TrackBack (0)

Tuesday, April 21, 2009

第三セクターは救うな

えーと、未来を感じる明るいニュースがある一方で残念なニュースから。

無人車両、下り坂を8キロ走行 JR名松線、運転士離れ
突然アクセスが増えて、しかも3年前の同様の事故を起こした記事が閲覧されるという椿事が起きまして、そのとき現場社員のモチベーションの低下を心配したのですが、今回もケアレスミスですから、職場にミスを誘発するファクターがあると考える方が自然です。こんなんじゃリニアどころじゃないだろうに。

で、本題に入る前にもうひとつ。政府は15兆円超の追加経済対策を打ち出しましたが、驚くことにそのほとんどが予算シーリングで削られた案件が並びます。つまり予算枠が増えたから一度は否定された優先度の低いものを復活させたわけです。これで景気回復は絶対無理ですが、バカ殿宰相は自信満々なようですね。何も考えない暗愚なリーダーは恐ろしい。

そもそも今回の経済危機ですが、サブプライムショックに始まりリーマンショックで一気に底が抜けた展開ゆえに、日本ではどこか他人事のところがありますが、その海外バブルに乗っかって、低金利の支えもあって、設備投資を拡大した自動車や電機などの製造業各社が、危機に直面して短期間に生産調整に走ったことで、危機を増幅しています。そして調整は進み、漸く出口が見えてきたというのが現状ですが、問題は海外バブルに乗っかって設備も人員も膨らませてしまったわけですから、少なくとも元の水準(2002年水準が目安)まで設備の廃棄と人員の整理をする必要があるわけで、今から失われた90年代を再現すると考える必要があります。つまり正規雇用者の早期退職や新卒採用の手控えは当分続き、第二就職氷河期となるわけです。

ゆえに欧米と比較しても日本が飛び抜けて経済のマイナス幅が大きいわけで、GDPはザックリ10%縮む計算です。というわけで、たかがGDP比2%の財政出動に効果があるわけがありません。また健全といわれた日本の金融ですが、株式持合いが災いして銀行の自己資本が毀損する事態となっておりますし、事業会社でも急速な業績悪化で税効果会計による繰り延べ税金資産の資本計上分が取り崩しとなる可能性が高まっており、これから発表される上場企業の決算はかなり悲惨なものになりそうです。それはまた株価を押し下げ、銀行の資本を毀損します。

加えて大手銀行こそ資本増強もあって何とか持ちこたえるかもしれませんが、いわゆる竹中プランでも手付かずだった地方銀行には、存続が難しい所も出てきそうです。そもそもリーマンショック以前には、金融庁では多すぎる地方銀行を整理するために、ペイオフまで検討されていたようですが、今回の危機で吹っ飛び、むしろBIS規制の及ばない国内行の自己資本比率4%を守らせるために保有株式の時価評価を緩めてしまいました。こうなると情報の適切な開示が遠のくわけで、再び金融が経済の足かせになる可能性も出てきます。

というわけで、元々オーバーバンキングと言われた日本の銀行で、郵政民営化でゆうちょ銀行という巨大な新規参入者を受け入れ、且つ銀行業免許こそないものの、日本政策投資銀行や日本政策金融公庫などのいわゆる政府系金融の民営化で、企業融資はますます供給過剰となりますから、銀行は儲からないから政策金利を下げて支えるしかなく、預金者の受取利息は削られます。たかが2兆円の定額給付金で仕事した気になるな(怒)。

元々竹中プランでも、大手行と地方銀行を同じ基準で律するのは無理ということで猶予された地方銀行の整理ですが、地方銀行には融資先の地場企業がぶら下がっていて、簡単に整理できないということで、地方版産業再生機構を創設する構想は安倍政権時代からあったわけですが、その後の政権の迷走で棚上げされ続け、そうこうするうちに今回の経済危機で、地方企業の窮状は待ったなしの状況となりました。

また2007年3月の夕張市の財政破綻により自治体財政の早期是正措置が決まり、自治体の出資する第三セクターまで連結対象とされる一方、自治体と微妙な関係にある地方銀行にとっては、三セクへの出資や融資はお荷物だった上に、破綻となれば損失を被るということで、産業再生機構の地方版として(仮)地域力再生機構の創設はこの面がらも期待されておりました。

というわけで、政局の迷走で棚上げされていた問題が動き出したようですが、三セクは対象外となりそうです。

地域力再生機構、地方中堅企業支援に軸足 三セクは対象外に
考えてみれば甘い見通しで事業着手した三セクの後始末を預金保険機構半額出資の機関が面倒見るのも変な話で、自治体の不始末を預金者の負担で救うことには問題があります。三セク処理は地方政治のガバナンスで対応する、つまり地方の納税者の判断に委ねる方が理に適っております。

とすると困った問題として、整備新幹線の並行在来線問題が絡んできます。地方ローカル線に比べて事業規模は大きいけれど、新幹線に都市間需要が移行した後のローカルな需要を満たすのに本線規格の立派な線路を維持しなきゃならないわけで、負担ばかりで将来展望はなし、加えて多数の自治体が関与しますから、足の引っ張り合いも起こりえます。例えばIGRいわて銀河鉄道では、旅客輸送は赤字で、国の補填でJR貨物が支払う線路使用料で辛うじて黒字という状況にある上に、高額の料金収入が得られる夜行列車が、北海道新幹線青函トンネル区間の工事間合い確保のために北斗星1往復が運休となって収入減という皮肉な結果となっております。なまじ新青森までフル規格化したために、新函館延伸の影響を受けてしまったわけですから、出資自治体にとっては辛い話です。

こういった現実が見えてくると、整備新幹線に地域がNOをつきつけるということも考えられます。元々整備新幹線は地方にとっては負担ばかりの話ですが、直轄国道などと同様、元々地方の請願、陳情によって事業化された経緯もありますので、事業をやるために地方負担を一時棚上げが考えられているようですが、一時しのぎで問題を先送りするだけです。基本的には税源委譲で地方に判断を委ねるべきでしょう。

というわけで、メディアの政局報道では見えてきませんが、各論では与野党の歩み寄りも見られる状況です。ただ懸念されるのは、小沢民主党代表の西松献金問題で風向きが変わったことで、折角の歩み寄りがまた棚上げされる可能性もあります。この献金問題にしても、小沢代表は「適法に処理している。(違法と言うなら)公判で決着をつけよう」と言っているわけで、これ以上公明正大な説明はないんですが、「説明責任を果たせ」というメディアの論調は何を意味するのでしょうか。代表を辞任して見えないところで検察と手打ちしなさいというわけでもあるまいに。あるいは政治ショーとして「腹切って見せろ」ということなのか。現実的に公判となればマンパワーの面で小沢氏が代表に留まるのは難しいと思いますが、検察とガチンコの姿勢をとる事で、今まで曖昧に処理されていた迂回献金による実質企業献金に拘束力のある判例が出るわけで、国民としてはそれこそが望ましいことではないでしょうか。最後はやや脱線でした^_^;。

| | Comments (3) | TrackBack (1)

Sunday, June 29, 2008

自動車メーカーの脱クルマ戦略

前の記事に関連しますが、国内自動車市場の縮小に直面する自動車メーカーの話題です。

20世紀はザックリ言って自動車の世紀という言い方が可能でしょう。自動車は工業化社会の象徴ですし、特に20世紀初頭、T型フォードのオートメーション生産がもたらしたイノベーションは、以後の100年を規定するほどの大きな意味がありました。

それまで自動車は町工場で馬車職人の手作りという形で作られていたもので、馬の代わりに内燃機関で動力を得て走らせるということで、馬車の構造を引きずっておりました。オーナーは馬車のキャビンに似た屋根付後部座席に乗車し、御者代わりのドライバー席は屋根なしの雨ざらしということで、オーナードライバー中心の現在のクルマ社会とは違います。それがT型フォードの生産と市場投入で変わったわけです。

気難しい職人に仕事をしてもらうには、報酬を弾むしかないですから、そもそも専属ドライバーを雇える富裕層しか自動車は変えなかったわけですが、それをオートメーション生産で、複数の単能工によるライン生産に切り替えた結果、生産性を高めて価格を劇的に下げる価格革命が可能になったわけです。加えて工場で働く単能工には、いわゆる単純労働ながら相場より高めの賃金を渡すことで、フォードは自社の商品の最初の購買者を育てることにも成功します。実はこれこそが大衆消費社会を切り拓く端緒となったのです。

それを横目に、この仕組みをより効率化しようという動きが現れました。アルフレッド・スローン率いるゼネラルモーターズ(GM)の革新的ビジネスモデルが登場します。町工場中心の前期工業化社会では、所詮家内工業の域を出なかったのですが、生産と管理を分離し、事業に必要な資金調達、売れる商品を生み出すマーケティング、工場の工程管理など、直接生産に携わらない多くの専門家を組織して、多数の傘下工場を稼動させ、規模の経済を追及するというものです。その結果、馬車スタイルが抜け切らない無骨やT型フォードと一線を画す、薄板をプレス加工してフェンダー一体型の滑らかなボディを与えたスタイリッシュな自動車を次々と生み出し、自動車を大衆消費財にしたのでした。

巧みなのは、古くなった工場の生産設備の交換に合わせて、ボディスタイルを見直し、旧モデルを陳腐に見せて買い替えを促す、いわゆるモデルチェンジを行って業績を高め、かくして世界一の自動車メーカーの地保を固め、以後世界に君臨しました。

こうして、常に大衆受けする新しい車が生み出され、市場が刺激され、自動車がリーディングインダストリーとなってアメリカは繁栄し、そればかりか、その見かけ上の豊かさは、世界に憧れをばら撒きました。大衆消費財としての自動車は、頻繁な買い替えが前提ですから、必ずしも高品質である必要はなく、適度に壊れてくれた方が、結果的に買い替えが促進されますし、買い手のユーザーはオーナードライバーであることにステイタスを感じてますから、故障などのトラブルはむしろ地位にあるものの悩みとして受け入れてくれます。かくして最強のビジネスモデルが完成することとなります。

しかしこのビジネスモデルは、石油や鉄などの資源を際限なく浪費することになりますので、アメリカ1国だけであれば成り立つかもしれませんが、他の地域へ拡大すれば、たちどころに資源制約が世界を襲うことになります。70年代のオイルショックは、石油輸出国による価格カルテルの試みだったのですが、日本などで省エネの取組みを誘発し、結果的には不発に終わります。しかし同時に、日本や欧州で資源浪費的でトラブルの多い自動車の燃費改善と品質向上の取組みが始まり、メーカー間の競争環境もあって、自動車は燃費性能を改善し、品質も向上し、故障の確率は劇的に下がりました。そしてアメリカのメーカーはその流れに乗れず、手っ取り早く利益を稼げる車しか作らなくなります。

フォードマスタングは、売れ行きの悪かったコンパクトカー「ファルコン」のシャーシにスポーティなボディを与えただけのチープな車でしたが、若者が飛びつき大ヒットしました。これに味を占めた米自動車メーカーは、その後もライトトラックのシャーシにオフロードカーに似せたボディを与えたSUV、同じくトラックシャーシに大柄のバンボディを与えて、大勢乗れる、たくさん積めるミニバンを開発し、大いに稼いだのです。しかし好事魔多し、すぐさま日欧メーカーの後追いに遭います。

トヨタセリカ、日産シルビア、ホンダプレリュードなどのスペシャルティカーが、量販車のコンポーネントで作られ、同じくSUVも量販車ベースでオフロードカーに似せたなんちゃってオフローダーに、量販車ベースで大柄なバンボディを与えたなんちゃってミニバンなど、ベースが乗用車だけに、トラックベースの米メーカー車とは素性が違いますから、ユーザーは日欧メーカー車に群がります。と同時に日欧メーカーも実は袋小路にはまります。

ユーザーを飽きさせないための新しいクルマの提案が相次いだ結果、かえってユーザーを飽きさせてしまったフシがあります。加えて昨今の原油価格上昇、鉄鋼価格上昇で、メーカーも値上げせざるを得ない状況で消費マインドを冷やします。また皮肉なことに品質向上が極限に達し、故障しなくなったことで、買い替えにブレーキがかかります。

さらに90年代から始まった非正規雇用の拡大、2002年春闘のベアゼロで正規社員も収入が伸びず、ユーザーの購買力を奪います。国内市場は冷え込むばかりです。おそらく簡単には抜け出せないでしょう。しかしこういった逆境こそ、逆転の発想で乗り切るチャンスでもあります。そんな中でのこんなニュースです。

JR北海道のDMV開発、トヨタ・日野が参加
青森県内レンタカー6社、新青森駅に共同基地 新幹線開業時に
まずはDMVからですが、以前の記事でも取り上げました。ベース車は日産シビリアンなんですが、この車、主要コンポーネントをいすゞから調達し、日産車体で組み立てて、日産系、いすゞ系ディーラーへシビリアン/ジャーニーとして供給されているという成り立ちです。特徴としてラダーフレームにキャブオーバーのボデイを架装したフロントエンジン・リアドライブ(FR)レイアウトで、構造単純で軽量、堅牢であるがゆえに、重量物である鉄車輪を装備してレール上を走行可能になります。

しかし昨今のディーゼル排ガス規制や安全装備などで重量が増え、そのためにDMV試作車では乗車定員を減らして総重量を道路運送法の規制値に収める必要があります。それに対してJR北海道は日産に共同開発を申し入れますが、成り立ちの特異性もあり、数が売れる保証もないDMVの開発には慎重姿勢でした。

それに対してトヨタが日野と共同で開発に協力することになったのです。トヨタは世界一の量販バスであるコースターをラインナップしているものの、小型バスでは珍しいモノコック構造で、そのままでは鉄車輪の装備は不可能です。そこで日野のトラックシャーシの活用を考えたものと思いますが、数が読めないニッチな市場へアプローチするトヨタの苦悩が見えます。軽量化で25人以上の乗車定員確保が開発目標となりますが、開発段階で相当数のバックオーダーを得なければ難しいだけに、トヨタの取組みは注目されます。

東北新幹線新青森駅にレンタカー基地というのも、なかなか興味深いニュースです。なにしろ新青森駅は市街地から3km以上離れた郊外の低層住居地域で、市街地とのアクセスに課題がある上、駅前の開発にも制約があるわけですから、そこへレンタカー基地を設けることで、利便性を確保しようということです。同時にやはり、メーカーのニッチ市場攻略という側面もあります。

というわけで、ここまでしないとクルマが売れない日本のメーカーの苦悩は続きます。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

Saturday, November 03, 2007

JR北海道MAHV開発の狙いは?

久々の更新は鉄ネタでいきます。タイトルのとおりですが、JR北海道のプレス発表をご参照ください。メカの話に入る前に、試作車がキハ160-1の改造車であることに注目いたします。

キハ160は、いわゆる新潟鉄工製軽気動車(NDC)で、1997年に、日高本線で運用されていたやはりNDCのキハ130の事故廃車の代替車として1両投入されたのですが、キハ130の残りの車両は、12年の減価償却期間を終えたところで、国鉄型のキハ40に置き換えられたために、1形式1両となってしまいました。NDC自体は、南阿蘇鉄道を皮切りに全国の第三セクターローカル鉄道に導入され、ライバルの富士重工LEカー/-DCとともに、国鉄末期に始まった特定地方交通線転換鉄道各社に導入が進み、JRでも西日本のキハ120と北海道のキハ130で採用されましたが、キハ130は短命に終わりました。

元々NDCはバスや建機の汎用部品を多用して、従来の国鉄型よりも軽量高性能でローコストといいことづくめという触れ込みでしたが、鉄道車両としては耐久性に課題があったようです。特に初期車の老朽化は、経営が苦しい三セクローカル鉄道でも、車両更新が課題となっているようです。キハ160については、初期車の実績に基づいて仕様変更されているようですが、キハ130の代替車として本採用されなかったところをみると、やはり北海道で使うには問題があったのでしょう。そういうわけでキハ160-1は取り残されてしまったわけですね。

ここで少し視点を変えますが、鉄道の動力駆動システムは、交流電化、直流電化、ディーゼルの3方式が棲み分けている状況です。電化路線に対して非電化路線ではほぼ世界的にディーゼルが主流ですが、動力の駆動は発電機で電気に変換してモータを回す電気式が主流です。日本とドイツだけがトルクコンバータを用いた液体式駆動が使われていたのですが、ほぼローカル線向けレールバスが中心のドイツに対し、幹線用大型機関車にまで液体式を用いる日本のあり方は、世界的にはかなり突出した存在でした。それでも日本国鉄で用いていたディーゼルエンジンが、船舶用を出自とする低回転ローパワー型だったことで、変速機の直結段を1段で済ませるなど、簡素なシステム構成が可能だったということはいえます。

それが国鉄時代でも新系列といわれるDML30系列の高出力機関が開発されると、直結2段の変速機が開発され、それなりに使われてはおりましたが、やはりメンテナンス面から特定区所への投入に留まり、それに留まらずリミッターで出力を制限したり(キハ66系)、シリンダーを半減したり(キハ40系)していたのが、いわゆる国鉄型の歴史過程です。これには後日談もありまして、JR東日本で機関換装してカミンズなどの高出力機関を採用したものの、変速機の能力を勘案してリミッターで出力制限をかけておりました。

それに対して富士重や新潟鉄工の軽気動車は、汎用品の活用でハイパワーエンジンと複数段変則機の採用で、国鉄型を上回るパワーウエイトレシオを実現し、その意味では大きな技術革新を実現したのではありますが、同時期の電気車の技術革新は凄まじく、三相交流誘導モータとVVVF制御によって、軽量、高出力、高粘着をローコストで実現でき、電気接点を持たないので機器もコンパクトになりメンテナンスフリーを実現し、かつ電力回生ブレーキの活用で省エネまで実現してしまうという優れもので、実績として電力費半減まで実現してしまったのですから、燃費半分とはならないディーゼル車との技術革新の不均衡は明らかです。かつターボ、インタークーラー、コモンレールなどの新技術はメンテナンスはむしろ難しくなりますし、動力駆動装置としての変速機の負担も高くなります。

このことの意味するところは、電化と非電化を分ける境界線が電化側へシフトしたことを意味しますが、一方で電化のためには地上側に多額の設備投資を要求されることに変わりはないわけで、車両レベルでのローコスト化が即電化進捗とはならないわけで、逆に現時点で非電化の鉄道は、存続がますます難しくなるということになるわけです。となれば、車両レベルで凄まじい発展を遂げている電気車の技術を移植し活用しようとするのは自然です。鉄道車両の場合、電気駆動そのものは、手馴れた技術ではあるわけですし。

もう一つの文脈として、電気車両の方の問題もあります。特に直流電気車の回生失効問題です。商用周波数交流をコンバータで直流変換してインバータで三相交流を生成する2段階の電力変換を行う交流電気車の場合、現時点では停止用回生ブレーキはほぼ完成したシステムといえる段階にありますが、架線電圧に制約される直流電気車では、実は回生失効問題は無視できない問題なのです。高速域では高圧電流が自車の機器を損傷するおそれがあるので、保護リレーが働いて回生が失効するし、一定以下の低速域では主回路電圧が架線電圧を下回ってやはり回生失効となるわけです。ですから電力回生ブレーキで省エネとはいっても、元々大電流の制御で苦労している大都市通勤線のピーク電力抑制には役立つにしても、温暖化防止への貢献度は言われるほどは高くない可能性があります。その意味でやはり蓄電という発想が出てくること自体は自然なことです。

というわけで、やっとハイブリッドの話となりますが、JR東日本のキハE200が電車ベースのハイブリッドシステムという特徴があるのに対し、JR北海道のMAハイブリッドシステムでは、変速機に誘導モータを組み込んでトルコンと摩擦クラッチを代替するという、ディーゼル車ベースのシステム構成となっているのが面白いところです。極寒地の北海道では、地上の電路設備のメンテナンスも困難が伴う上に、札幌一極集中で人口密度が低く鉄道に不向きな条件があるわけですから、今後も電化区間が延びる可能性は低く、むしろ車両に熱源があるディーゼル車の走破性の高さは評価されるべきです。その意味でJR東日本とは全く異なるハイブリッドシステムの開発と相成るわけです。

当然着地点も異なり、JR東日本がおそらく将来の燃料電池駆動を視野に入れ、地上側の電化非電化の別に拘束されない車両の出現が示唆されますが、JR北海道のシステムは、あくまでもディーゼル車の範疇での電気車両のいいとこ取りという感じで、ハイブリッドの本来の意味である混血、雑種、合いの子というニュアンスに近い感じです。蓄電への注目という意味では、鉄道総研が提案するバッテリートラムというのも同じ文脈で捉えると明らかですが、動力源として全面的にバッテリーに依存できるとは思えませんが、たとえば郊外の専用軌道区間で集電しながら蓄電し、市街地のトランジットモールでは架線レスでバッテリー走行とか、たとえば現状では技術的必然性の乏しいガイドウエーバスに応用して、ガイドウエー区間では集電しながら蓄電し、道路走行時にはバッテリー駆動とするなどが考えられ、技術的可能性が広がります。いずれにしても現状では電池性能が大きなボトルネックであり、実車レベルではバッテリー交換で省エネ効果もメンテナンスフリー効果も相殺されてしまう状況ですが、電池技術を進化させるには実車走行を行う以外に方法がないわけで、まだまだテスト段階ということです。

その意味でJR北海道がもてあましているキハ160-1を改造して試作車としたことは、懐事情もさることながら^_^;、まだまだ超えるべきハードルを認識しているということでもあります。また電気車とディーゼル車の技術革新の不均衡が生んだあだ花の軽気動車が任用されたという意味でも意味深な出来事ですね。

関連記事:

走ルンです合いの子、キハE200
非電化の星? キハE200

| | Comments (0) | TrackBack (1)

Sunday, September 02, 2007

三セク地獄が始まる?

市場が休みの土曜日、日経夕刊のトップ記事は、ホットなニュースというよりも、長期的視点から重要な記事が多い気がします。そんな記事から話題を拾います。

三セク累損100億円超は18社、前期末・地方や鉄道で処理遅れ
web版には掲載されておりませんが、本紙には累損100億円超の主な10社が表で掲載されております。そのうち鉄道関連は次のとおりです。
東葉高速鉄道(累損84,330百万円)
東京臨海高速鉄道(49,320百万円)
埼玉高速鉄道(累損43,510百万円)
北総鉄道(累損35,174百万円)
神戸新交通(累損21,076百万円)
首都圏新都市鉄道(累損20,560百万円)
このうち2007年度単年度黒字を計上しているのは、北総鉄道と神戸新交通のみで、他は累積損失を今も積み増しているということになります。

鉄道事業の場合、建設に10~20年という時間がかかる上に、事業費の規模も大きいので、当初は事業資金の借入金の金利支払で利益を食い潰してしまう傾向はあります。同時に資産の減価償却費も高額になるため、帳簿上は赤字になりやすいのですが、これは内部に現金が留保されるわけですから、必要ならば資本の毀損の穴埋めに使うことも可能なので、あえて考慮しないことにします。

全数調査ではないので、これで傾向を見るのは注意が必要ですが、見事に大都市圏の三セクが並んでいるのは、事業費の規模が大きくならざるを得ないがゆえということはいえます。鉄道事業にとって悩ましいのは、鉄道建設計画が明らかになった時点で、沿線地域で将来の値上がりを予想した動きが出てしまうことで、その結果事業用地の取得費用が増大してしまうということですね。東葉高速鉄道ではあからさまな用地買収費の吊り上げまで行われたのは周知のとおりです。土地取引をめぐるこの手の"錬金術"は、つまるところ土地政策の不在を反映したものです。日本の土地は流動性が低く、売り物が滅多に出ないから相場形成が歪み、相続、開発、公共事業のいずれかでしか動かない状況になっております。そこへつけ込む者が利得を得る構図で、そのツケ回しとして三セクの赤字という傾向ははっきり見て取れます。

驚くのは首都圏新都市鉄道(つくばエクスプレス)が名を連ねている点でして、資本が厚いので破綻の心配はないとはいえ、本来自己資本比率が高く、無利子融資などさまざまな特典により有利子負債が少ない超優良企業であっても、単年度黒字を達成できず、累損を積み増しているという点です。投資規模がそれだけ大きかったということなんでしょうけど、東急田園都市線をモデルにしたはずの整備計画なのに、実際の開発利益は沿線の土地を保有するデベロッパーに落ちているという矛盾が見えてしまいます。手の込んだ補助金バラマキと評されても仕方ないところです。

とはいえ、将来の沿線開発である程度回復可能な大都市圏三セク鉄道はまだましなのかもしれません。事業規模がそこそこ大きく、多数の自治体が関与せざるを得ない整備新幹線の並行在来線受け皿三セク鉄道の場合には、沿線開発による増収はほぼ可能性ゼロであり、負担だけがのしかかる構図ですから、より深刻な問題だと思うんですが、論点が錯綜しますので、ここでは振れないことにします。

記事にもあるように、08年度決算から自治体財政が連結でチェックを受けることになるので、損失を三セクに飛ばして表面を繕うことができなくなります。いわゆる夕張シンドロームに備えた早期是正措置の一環です。しかしそうすると多額の負債を抱えた三セクの損失処理が問題になります。既に宮崎県のフェニックスリゾートが産業再生機構の案件として処理され転売されていますが、同様に損失を抱えた三セクは全国に多数あり、一方産業再生機構は既に解散している中で、同様のスキームで損失処理しようという話になるんですね。

地方版再生機構創設へ・政府方針、3セク処理も対象
というわけで、今後とも本来公的債務にカウントされるべき負債が白日のもとにさらされることになると思うんですが、同時に安易な三セク事業に対するブレーキの役割も期待したいところです。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Tuesday, August 14, 2007

鉄道書評、線路にバスを走らせろ

夏休みシーズンで、鉄道関連ブログにも訪問記や旅行記が多数アップされている中で、当ブログ管理人はPC熱と闘いながら(笑)、書斎派鉄の道をまい進しております(苦笑)。

線路にバスを走らせろ 「北の車両屋」奮闘記(朝日新書 56) (朝日新書 56)
国鉄末期からの地方交通線転換によって、多くの営業路線を失い、事業規模を縮小した北海道の鉄道ですが、それでも残った路線の状況は厳しく、営業キロ2,500km中6割はローカル線という状況です。当然存廃が問われる路線も多く、JR北海道発足後にも、池北線の三セク転換と深名線のバス転換が実施されました。赤字路線の分離は、それ自身は経営面で必要なことには違いないのですが、同時に事業規模の縮小を余儀なくされるわけですから、JR北海道にとっては痛し痒しの部分です。

また90年代の金融危機のときに、北海道拓殖銀行が突然の経営破たんに見舞われたように、北海道では地場産業の衰退に直面している実情もあり、鉄道事業の撤退は、地域の衰退に拍車をかけることにもなります。また元々鉄道と共に開拓が進んだ北海道では、鉄道事業そのものもが産業集積として地域雇用を支えていた現実もあります。先日20年越しで和解、決着した旧国鉄職員のJR各社への採用を巡る労使対立も、元をただせば北海道の鉄道事業縮小に伴なう余剰人員の北海道以外の各社への受け入れを巡って、人選に所属労組による差別があったかどうかが争われたものです。

それやこれやで問題を抱えるJR北海道ですが、同時にリゾート列車や高速振り子列車などなど、実に多くの技術開発を行って、鉄道の活性化に取り組んでいるのは、あとがない崖っぷちゆえでしょうけど、ある意味地域分割のプラス面とも評価できます。最果ての大地で鉄路を維持することの意義を考えさせます。

以前、北海道旅行で、日高から襟裳岬を通って十勝へ抜けるルートを取ったときに、札幌からの鉄路乗継は飽きそうだから(笑)、道南バスの直通高速バスで浦河へ向かったのですが、浦河ターミナルで降りて最寄の東町駅へ行って驚いたのは、列車の少なさでした。襟裳岬方面へはどのみち様似でバスに乗り継ぐわけですが、並行する国道のJRバスのバス停を見ると、ほぼ1時間に1本のバスが走っているのですが、「学休日運休」の注意書きがあります。つまりは事実上の通学バスと化しているのですが、そうすると列車は何のために走っているのだろうかと疑問が出てきました。そう、線路がある以上、列車を走らせるしかないのです。

一応襟裳岬へ向かう観光周遊ルートには組み込まれており、様似から襟裳岬方面へのバスは。列車に接続をとっているわけですから、両者が棲み分けているわけです。しかし同じJR北海道同士で、両者の連携がないのは、ただでさえ少ない旅客を分けあう分、収支面では不利になります。北海道には鉄路と並行する整備された道路という似たロケーションのところは多数あります。DMVはそんな北海道では割と自然な発想の産物なのかもしれません。

そういった背景で、DMV開発に着手したわけですが、歴史を紐解けば、同様の発想で何度もトライされ、死屍累々の失敗を積み重ねてきたキワモノでもあるわけです。それを幼稚園の送迎用園児バスを見て「そのまま線路に乗せられそうだ」と発想するところが見事です。しかも軽量で線路を傷めないし、GPSなどの位置情報システムを利用すれば軌道回路を用いた閉そく信号も省略できるとか、行き違いも片方が線路を外れればよいとか、必要に応じて線路から外れた集落などへ運行できるとか、万が一の災害のときにも、線路と道路の復旧している部分を自在に行き来して運行を確保できるなどなど、発想が広がります。そう、DMVは最果てのLRTと考えれば理解が深まりますね。

基本的に引き算による技術革新ということです。鉄道は「金を失う道」といわれるように、線路を設置し維持するのに多額の費用がかかるわけで、需要が見込めないところで成立させるのは難しいわけですが、容赦のない過疎化の進行で乗客が減り続ける最果ての鉄路を残すには、現状に何かを付け足すのではなく、要らないものを削ぎ落として本体を維持するという発想なんですね。JR西日本の富山港線が富山ライトレールとして再生されたのに似ています。整備新幹線事業の着手に関連した富山市の都市計画で富山駅周辺の高架化事業が行われるときに、ローカル線である富山港線を新しい高架駅へ乗り入れさせるには多額に費用が発生するわけですが、アプローチ部分を都市計画道路上の併用軌道とすることで、ローカル線を都市交通に取り込んだわけです。足し算ではなく引き算で成功した事例ですね。そう、ヘビーレールから余分なものを割り引いてライトレールにするのであって、例えば元々低規格で放置されていた東急世田谷線が、軌道回路を用いた閉そく信号機と、連動する旧国鉄ATS-B相当の車内警報装置や列車無線を装備し、冷房付の新車に置き換え、ホーム嵩上げでバリアフリー化するなど、多額の費用をかけて列車定員を減少させ駅での客扱い時間を伸ばしスピードダウンした現実を見ると、技術革新の方向性が誤っていると言わざるを得ません。

大量輸送こそ鉄道の使命ですが、一方で過疎化の進捗で公共交通の維持が難しい地域も多数あり、居住放棄につながる限界集落が増えていると言われます。このままでは国土が荒れ果て、経済的パフォーマンスを低下させる要因にもなりかねない中で、公共交通を維持するソリューションの必要性は高いといいえます。その意味で身の丈にあったイノベーションとして、DMVの行く末を見ていきたいと思います。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

Sunday, July 01, 2007

越美北線と高千穂鉄道の間

日本の原風景を代表する中山間地の2つの鉄道で明暗を分けたニュースです。

JR越美北線が全線開通・3年ぶり
宮崎県の第3セクター高千穂鉄道、全線廃止へ
越美北線は2004年7月の越前豪雨で被災、高千穂鉄道は2005年9月の台風14号による被害です。路線立地の似た両線の明暗を分けたのは、特定地方交通線廃止に揺れた国鉄末期、国鉄に残ってJRへ移行した線区と第三セクター鉄道に転換された線区の明暗という整理は可能です。鉄道事業はスケールメリットがものをいうのは確かです。

しかし決定的に異なるのは、やはり行政の対応でしょうか。過疎化の進む越美北線沿線ですが、その中で沿線の大野市が、以前から住民の定期券購入者に補助金を支給してきたことが効いているのではないかと思います。これもそもそもは、かつて大野市へ達していた京福電気鉄道(現えちぜん鉄道)越前本線の勝山―大野間廃止の苦い経験からきているものです。

大野市はかつて県都福井市へ2本の鉄道が通じていたわけで、地方都市としては破格の好条件でした。私鉄である京福の方が、運転頻度も高く、利便性に勝っていたのが、沿線の過疎化とモータリゼーションとともに経営が苦しくなり、度重なる運賃改定で高くなる一方、国鉄時代の全国一律運賃制度のもと、低廉な運賃が維持された越美北線に、沿線利用者が流れるようになります。結局京福は、生き残りのために勝山から先の区間を廃止して、残る区間の運行に経営資源を集中させる選択をします。私企業としては当然の選択です。

これによって越美北線が唯一の鉄道となった大野市では、特定地方交通線問題で結果的に国鉄に残った越美北線の廃止問題に危機感を持つようになります。で、単なる陳情では廃止は阻止できないという判断があったのでしょう。前記の定期券購入補助を行って、利用者を補助する形で支えていきました。そのことがあったからこそ、越美北線の復旧費用40億円の一部を県が負担することに道がひらけたのでしょう。実際被災当初は県は負担を嫌ってJR単独復旧に言及しておりましたが、結果的に一部負担することになりました。

その間に県レベルでもいろいろありまして、1992年に京福電気鉄道が福井支社管内の鉄道線全廃を打ち出したのに対し、97年に県と沿線市町村で対策協議会を発足させ、行政支援を含む活性化の模索があ始まります。このとき既に京福の廃止表明から5年経過しており、当時の行政の危機感の希薄さが読み取れます。と同時に、需給調整規制撤廃を盛り込んだ改正鉄道事業法の施行で、廃止に際して地元との協議で不調でも1年後に廃止できるいわゆる見切り発車条項が盛り込まれたことで、自治体側が対応せざるを得なくなったというのが本当のところでしょう。

京福も見切り発車に踏み込まず、地元との協議を続けたわけですが、これには整備新幹線の北陸新幹線計画が絡む福井駅付近の連続立体化事業事業をめぐる問題がさらに絡んできたものと思われます。JR北陸本線の高架化にあわせて、京福も高架で福井駅へ乗り入れる形で福井市で都市計画決定されていたこで、路線の存廃が都市計画を不確定にしてしまうという珍しい現象が起きたんですね。またいつになるかわからないけれど、新幹線が福井へくれば、フィーダー輸送で京福の鉄道線が息を吹き返す可能性もあるだけに、特に自治体側が粘ったのでしょう。けれど事態は意外な展開となります。

2000年12月17日に越前本線志比境―東古市間で列車正面衝突、さらに2001年6月24日に保田―発坂間で再度の列車正面衝突事故と、半時に2回の重大事故で全面運休に追い込まれ、復旧のめどがたたない中で、2002年に第三セクターのえちぜん鉄道を発足させて、翌年2月に京福から鉄道資産を譲り受け、同年8月に三国芦原線。10月に越前本線改め永平寺勝山線が営業運転を始めます。福井県は地域として公共交通の危機に直面し、それとともに議論も活発化、福井駅高架化に対しても、既に名鉄から岐阜市内線の中古車を導入してLRT化を指向する福井鉄道との直結を踏まえた高架駅乗り入れ中止へと舵を切ることとなります。

えちぜん鉄道、一部LRT化・福井県が計画変更へ
かくして福井では、公共交通の廃止議論が地域の危機感を強め、鉄道の存続に行政が大きくコミットすることとなりました。ただし越美北線は一部運休の影響もあるでしょうけど、徐々に利用者を減らしている現実があるわけで、とりあえずの復旧、存続ではあります。

高千穂鉄道については、まずは行政が全く腰が引けている状況ですから、存続はそもそも無理筋ではありました。それでもとりあえず観光鉄道としての復旧をめざし、神話高千穂トロッコ鉄道という新会社を発足させ、寄付を募ってきたわけですが、寄付金は予定額を大きく下回り、新会社への資産継承のために休止扱いを続けてきた高千穂鉄道がいつまでも会社清算ができないということで、鉄道資産は新会社に継承されることなく廃止されたわけです。これでほぼ復活の可能性は絶たれました。

善意の寄付による鉄道存続といえば、関東の銚子電鉄の事例が直近で話題となりましたが、首都圏に立地し、関連事業のぬれ煎餅のネット直販サイトがアクセス急増で急遽受付中止となるなどが話題となって、メディアへ露出したことが大きかったですね。こういったことがなければ、善意の寄付だけで必要な資金を集めようというのは、自ずと限界があります。福井でも決して当初から行政は積極的だったわけではなく、地域の存亡にかかわる事態から危機感が生まれ、行政や住民に共有された結果でもあります。悲しいかな目に見えるシンボリックな出来事にしか人々は反応しないわけです。

関連記事:

高千穂鉄道復旧は成るか?
高千穂鉄道復旧は成るか?Part2
高千穂鉄道復旧実質断念、地域経済の袋小路
高千穂鉄道部分復旧の模索は続く

| | Comments (7) | TrackBack (0)

Saturday, May 26, 2007

非電化の星? キハE200

以前の記事でも取り上げましたキハE200形の実車が登場し、今夏から小海線で営業運転が始まります。既に趣味誌でも紹介記事が出ておりますので、分かりにくかった詳細が明らかになりました。ひとことで申し上げてなかなかの意欲作といえるかと思います。

ハイブリッドシステムについても明らかになりましたが、都合8つの走行モードを切り替えるもので、鉄道車両用ハイブリッドシステムとしては、なかなか良く考えられている感じです。走行モードは以下のとおりです。

1.駅出発時:バッテリー→モーター(ディーゼル特有の起動時騒音をなくす)
2.力行時:バッテリー/ディーゼル発電機→モーター(ディーゼルエンジン効率運転+バッテリー電力で補完)
3.上り坂走行時:バッテリー/ディーゼル発電機→モーター(ディーゼルエンジン全出力)
4.上り坂走行時:ディーゼル発電機→モーター(ディーゼルエンジン全出力)
5.下り坂走行時:モーター→バッテリー/ディーゼル発電機(バッテリー充電+エンジン排気ブレーキ)
6.下り坂走行時:モーター→ディーゼル発電機(エンジン排気ブレーキ)
7.ブレーキ時:モーター→バッテリー(回生ブレーキでバッテリー充電)
8.駅停車時モーター→ディーゼル発電機(エンジン排気ブレーキ)
鉄道車両としての基本性能を満たしつつ、省エネを実現するものとして、よく考えられています。

やはり駅発車時には電車のようにモーター音やインバータ転動音はするものの、エンジン音なしにスタートするわけで、また一歩電車に近づいた感じです。力行時のディーゼル発電機にバッテリー電力を補完させて短時間の過負荷運転を容認するあたりは、E233系の記事でご紹介した走ルンですコンセプトが生きていますね。力行時と上り坂走行時のエンジン出力の使い分けも興味深いところですが、勾配区間で運用することを考えると、納得できるところです。

逆に下り坂走行時に回生電力のバッテリー充電とディーゼル発電機のエンジン排気ブレーキの併用は、連続下り勾配での抑速制動を意図したものですね。駅停車時にエンジン排気ブレーキを使うのは、動力ブレーキとして低速域で不安定になる回生ブレーキよりも確実性を優先させたものといえます。ひょっとすると駅発車時よりもノイジーな感じかもしれませんね^_^;。

当面はキハ110系との混用となるわけですが、110系が基本的な動力システムこそ旧来型の液体式ディーゼル車ながら、制御回路を電車に準拠させて、方向固定、全電気指令式ブレーキとしたものだったわけで、この辺は電車との部品共用によるメンテナンスコスト削減に狙いがあったものと思われますが、キハE200ではさらに進化して^_^;電車に近づいています。実はディーゼル車を使う非電化路線の弱点を現しているものでもあるのです。

元々トルクコンバーター(以下トルコンと略す)を用いた液体式駆動は、トルコンの特性を利用して、発車時に大きなトルクを必要とする鉄道車両では、車軸の負荷で推進軸と車軸の回転数に差が出ることでトルクを発生させてスムーズに発車させるわけですが、30km/h程度以上になると負荷が減少して車軸と推進軸の回転差がなくなり、動力伝達上はむしろ非効率になるので、この時点で車軸と推進軸を直結して以後はディーゼルエンジンのトルク特性を利用した加速となるわけです。元々船舶用エンジンからスタートした国鉄標準型のDMH17系エンジンでは、トルクカーブがフラットで扱いやすい反面、回転数があがらない特性でした。ある意味トルコン向きだったとはいえます。

一方で80年代の国鉄特定地方交通線転換第三セクター鉄道を中心に、新潟鉄工(→新潟トランシス)や富士重工業(鉄道車両製造から撤退)が、従来の国鉄型より高性能なエンジンと軽量車体を組み合わせた高性能な軽快気動車を売り込みました。エンジンもトラックバス用や重機用その他高性能な汎用品が用いられるようになりますと、直結後の速度制御を円滑にするために、ギアを切り替えて2段3段の変速を行う必要が生じました。それ以前にも国鉄が開発したDML30系列の高性能エンジン搭載車は、直結2段でエンジン性能を引き出していたのですが、一般型への波及という意味では、地交線向け軽快気動車を取り上げておいた方が良いでしょう。実際民営化を睨んだ国鉄末期の各形式でも考え方が踏襲され、JR化後に登場した各社のローカル線向け車両も基本的なメカニズムは同じです。JR東日本のキハ100系110系も走行メカニズム自体は軽快気動車のそれと変わりません。

液体式ディーゼル車の場合、トルコンにクラッチ、変速ギア、逆転機などなど、電車と比べて動力伝達装置が複雑になり、これが保守上の弱点となるわけです。それで液体式駆動は日本とドイツ以外ではあまり用いられず、主にディーゼルエンジンで発電してモーターで駆動する電気式が主流でした。加えて三相かご型誘導モーターを用いたVVVFインバーター制御が実現すると、電気式の弱点だった電力の抵抗ロスや、起動時のショックによる空転も防ぎやすいということで、大量の液体式ディーゼル車を使い続けているのはほぼ日本だけという状況になりつつあります。その意味ではキハE200は大きな世界の潮流に乗ったものと見ることも可能です。

そう考えると、方向固定など無意味と登場時に批判された電車の制御システムの導入の意味合いが変わってきます。実際電気指令ブレーキの採用で加圧空気管のような保守の厄介なパーツは激減し、電車と部品の共用も可能になります。さらに進んで駆動装置も電車と共用できれば、メンテナンスコストの削減効果はかなり大きいといえます。加えてハイブリッドシステムの採用で燃費が改善されれば、直接的な動力費の削減となるわけです。

加えてハイブリッドシステムの試験車だったキハE991は、その後燃料電池試験車へと新たな使命を得たように、ディーゼル電気ハイブリッドシステムは、燃料電池駆動への移行が比較的容易という点も見逃せません。水素供給システムに課題はありますが、こうなると車両面での非電化路線の弱点はかなりの程度克服されることとなります。

当ブログでも地方ローカル線の話題はたびたび取り上げておりますが、高性能を売り物とした軽快気動車群ですが、汎用部品が多用されたこともあって、鉄道車両としても耐久性に問題があり、導入した三セクローカル私鉄に車両更新の課題を突きつけている現状があります。こうなると非電化のローカル線向けに在来型の液体式ディーゼル車を使い続ける意味合いを考え直す必要があるかもしれません。かといって非電化路線を電化するというのは、小浜線のようによほど地域が原発成金にでもならないと無理ですから、それも含めてJR東日本の示した方向性の意味は大きいのではないでしょうか。

| | Comments (4) | TrackBack (1)

Sunday, May 13, 2007

JR北海道秩父別駅積み残し事件

えー、リニア問題に揺れた当ブログですが(笑)、全く無関係の話題で久々の更新です^_^;。まずはメディアチェックです。

秩父別駅 客26人乗れぬまま発車 JR運転士「奥に詰めて」 デッキの高校生ら動かず(05/09 14:09)
JRなど乗車指導 秩父別駅 生徒は「車両増やして」(05/10 14:06)
マナー問題なし、列車混雑のため 秩父別乗り遅れ JRに反論の声(05/10 09:24)
JRと当事者の高校生や指導にあたった高校教師との間で、見解が割れていますが、地方ローカル線の現状を如実に現した事件ですね。

国鉄時代から指摘されていたことですが、過疎地のローカル線の乗客は、高校生を中心とした通学生が中心で、始業時間に間に合う列車は限られますから、該当する通学列車は混雑するのですが、赤字体質の国鉄では、輸送改善の対応は取りようがありませんでした。また忘れてならないのが、通学定期券の問題でして、国の機関だった国鉄ゆえに、教育支援の国策に沿って、高率の割引率が適用されていた通学定期券が、ただでさえ劣悪な収支状況をより悪化させる役割も果たしていたわけで、JRも基本的に運賃制度を国鉄から引き継いでいて、運賃改定はあったものの、基本的にこの構図は継承されております。

この辺は、3島会社だけの問題というわけではないんですが、分割民営化で鉄道ネットワークの末端を受け持つことになった3島会社ほど強く傾向が出る問題であるとともに、内部補助の原資の少なさゆえに、支えきれなくなる可能性はより高いわけです。

さらに昨今の少子化で、通学生そのものが減少している中、列車の運行を支えるJR各社としても、合理化待ったなしですから、ワンマン化などを行わざるを得ないわけです。かくして今回の事件となったわけですが、以上の問題点を踏まえれば、マナー問題に矮小化してよい話ではないというのは自明ではないでしょうか。

事業会社としてのJRの立場としては、赤字を続けながらの列車運行はいつまでも可能なわけがないので、いずれ事業の撤退も視野に入れざるを得ないわけですが、公共性の呪縛で簡単ではないわけです。鉄道事業法の改正で、需給調整規制が撤廃され、鉄道事業でも基本的には参入退出は自由化されたわけですが、公共性にかんがみて、地元自治体と協議して同意を得る必要があります。それでも地元協議が難航した場合に、1年後には同意なしに廃止できる、いわゆる「見切り発車」条項が設けられて事実上自由化され、実際にローカル路線の廃止は相次いでいるわけです。話題のDMVも、どちらかといえばここまでやっても鉄道を維持できないことを地元に説明するために開発されているという側面が強いのです。

JRに関しては、地元協議のハードルを高くして、安易に廃止を強行できないようにはなっておりますが、最終的に見切り発車は可能でして、JR西日本可部線の可部以北が廃止されたのは周知のとおりです。とはいえ鉄道事業の比重の高いJR各社にとっては、路線の廃止は即事業規模の縮小を意味するわけですから、何とか維持したいのもまた確かでして、それ故に例えば旧国鉄時代の周遊券その他の企画商品の見直しが行われる中で、どう見ても持ち出し必至の大盤振る舞い商品の青春18キップが期間を学休期に限定して継続販売されている理由も、実は学休期の通学列車の運行維持に狙いがあることがわかります。

仮に運休したとすると、車両の集中保守などで運行経費を圧縮することは可能でしょうけど、同時に毎日運行で決まった時間に列車に乗れることからくる信頼性という公共交通としての自己否定でもあるわけで、過疎地ゆえに存在感を失う恐れがあり踏み込めない部分です。逆に首都圏では、中央線の連続立体化に伴なう線路切り替えなどで計画運休しても、休日で代替ルートがあるという条件で、大きな問題にならないのと事情が違うわけですね。

で、この通学定期券の割引率問題に焦点を当てると、教育のための家計への補助を営利企業が行っている構図となるわけで、こうなると毎年300億円規模の赤字を計上し、経営安定基金の運用益で穴埋めしている状況のJR北海道ですから、赤字路線の廃止・縮小局面で必ず問題視される部分となります。

本来は家計への教育補助は自治体の役割なんですが、自治体財政の逼迫で、現実的には難しいわけですが、さりとて放置すれば鉄道が廃止され、代替バスも過疎地では走り続ける保証はないですから、いずれ自治体でスクールバスを走らせるなどの対応が迫られ、最後には通学生を抱えた世帯の他地域への移転によって、無人地帯になる可能性まで視野に入れる必要があります。かくして第二第三の夕張がそこかしこに-_-;。

地域間格差がいわれ、夏の参院選でまたぞろ公共事業のバラマキ話が沸き起こると思うんですが、このような地域に新しい道路を作っても、財政悪化に拍車をかけるだけなんですね。なぜ既存の鉄道があるならば、それを存続させて有効活用しないのかですね。通学生向けの営利を無視したディスカウントは今すぐ止めるべきですし、それによって負担を増す家計に対しては、自治体が補助してやればよいはずです。少なくともJRは民営化20年で経過措置も終わって固定資産税を満額支払っているわけですから、沿線自治体はその部分で税収増を実現しているはずなんです。それを住民への補助を通じてJRへ還元して地域の基盤を維持することの方が重要なはずです。

あと通学定期券というのは、利用者を限定した事実上のIDカードです。地方ローカル線では所持者を個人レベルで特定できるはずですね。SuicaやPASMOのようなICカード化は無理としても、例えば学校が発行する学生証に定期券機能を付加して事務手続きを簡略化するとか、また乗車時にもいちいち提示を求めるのではなく、例えばシリアルナンバーをバーコード化してリーダーにかざすことでチェックするなどの方法もあるわけで、特に2扉キハの後扉締切扱いで前扉だけで客扱いして、奥へ詰めてくれないから乗れなかったというもの感心しませんね。欧州流のセルフ方式がある意味やりやすい環境でもあるはずです。それも無理なら通学列車の時間帯限定で自治体か学校の職員を駅に立たせるでも良いかもしれませんね。いずれにしても、これぐらい考えないと、3島会社の鉄道事業は厳しいと思うんですが。

| | Comments (5) | TrackBack (3)

Monday, December 18, 2006

改正中心市街地活性化法認定、富山と青森が名乗り

改正まちづくり3法の1つである中心市街地活性化法の認定1号として、富山市と青森市が名乗りをあげたそうです。

富山市と青森市、認定第1号に・地方都市の中心市街活性化
1万m^2を超える商業施設の立地に自治体が独自に網をかけるもので、中心市街地として自治体が指定した地域以外への大型商業施設や病院などの立地が規制されるとともに、中心市街地活性化の名目で補助金も出るということで、改革とは名ばかりのバラマキ行政、大店法の復活などなどとも言われる困ったものです。

当ブログでもたびたび取り上げてまいりましたが、そもそも郊外への集客施設の流出は、自治体自身が仕掛けてきたことでもあります。最初は工業団地の造成などで企業誘致をはかるために郊外が開発されたのですが、グローバル化の流れで以前のように企業が来てくれないどころか、進出企業の製造拠点見直しによって工場閉鎖さえ起こるようになるなどで、その尻拭いに病院や公共施設、場合によっては役所自体も移転するなどしたり、積極的にイオンなどのSCを誘致したりしてきたのは、自治体自身です。そういう意味でいえば、とりあえず新法の認定に名乗りをあげた2市は、どちらかといえばそういった流れとは距離を置いてきたグループに属しますが、それぞれに問題を抱えております。

富山市については、道路整備の結果として空洞化が進んだ総曲輪などの中心街の空洞化に歯止めをかけたいということで、LRTの路線整備などの意欲的な計画を持っており、注目されております。それに先立ってJR富山港線のLRT化事業が行われ、富山ライトレールの名で運行開始した結果、従来より運行頻度が高く、停留所も増えて利用しやすくした結果、目に見えて利用者が増えたわけで、都市計画でJR富山駅の高架化が行われるのを期に、既存の富山地鉄市内線との直通及び路線の新設によって、空洞化した中心街の活性化を図ろうというもので、意欲的であると共に、鉄道愛好家としても注目される計画ではあります。

富山市としては北陸新幹線の延伸に期待しつつも、新幹線ができれば切り離される並行在来線問題もあって、決断したものと思います。というのは、JR西日本の意向もあって、当初スーパー特急方式で在来線列車を一部区間で乗せ換える計画だったものが、度重なる見直しでフル規格にシフトしたのですが、その過程で並行在来線の北陸本線が切り離されたときに孤立する支線の同時切り離しをJR西日本が求めました。その結果、大糸線(南小谷~糸魚川、富山港線、高山本線(猪谷~富山)、城端線、氷見線などの存続が不透明な状況に置かれ、地元は反発しますが、JR西日本は一方で地方都市近郊のローカル線のLRT化を提案し、候補として岡山の吉備線と共に富山港線が取り上げられたわけです。

富山市は提案を前向きに受け止めて、結果的に富山ライトレールの開業へと至るわけですが、面白いのは、沿線開発を集客施設に頼るのではなく、住環境の優れた低層住宅を立地させることで実現しようとしている点です。高齢化の進む地方都市で、住みやすい家から乗りやすい電車でまちへ出るというライフスタイルを提案している点は評価できます。いわゆるコンパクトシティを志向しているわけです。結果として住みやすさが住民の流入を促し、人口増化特に年金給付世代の流入は、地域に消費をもたらしますから、企業誘致に勝るとも劣らない経済効果が期待できます。富山市で起きたことは、つまるところ意図せざる新幹線ドミノなのかもしれません。

青森市の場合も新幹線と無縁ではありません。東北新幹線は既に新青森まで着工されており、昨年北海道新幹線も新青森~新函館(仮称、渡島大野付近)が着工されたのですが、青森市にとっては頭の痛い問題があります。それは新青森の立地に関わる問題です。

青森市も以前からコンパクトシティを標榜し、公共施設や商業施設を青森駅周辺に集中的に配置することをしてきたのですが、国鉄時代の東北新幹線のルート選定で、青函トンネルルートで北海道へつなぐ構想を持っていた国鉄が、一方的に新青森に新幹線駅の設置を決め、奥羽本線に新青森駅を開業させたのですが、市街地外れの閑静な住宅地で、青森市も特段の開発計画を持たない地点への駅設置でしたので、当時青森市から見直しが要請されましたが、国の機関たる国鉄は無視しました。他の自治体ならば、国からの天の声とばかりに用途地域を変更して開発計画をごり押しするところでしょうけど、青森市はそれをせず、未だに新青森駅周辺は住居専用地域のまま変更されず、新青森駅も片面ホームの無人駅のままという状況が続いております。このままでは新幹線駅周辺が開発できないということになるわけです。

あと北海道新幹線に関しては、並行在来線問題も複雑で、特に本州側の津軽線がJR東日本の路線で、事業主体のJR北海道と異なるために、切り離し対象ではないですし、また新幹線とトンネルを共用するJR貨物のアプローチ路線でもあるので、実際的に廃止できないのですが、この津軽線が新青森を通らないからまたややこしい話になります。津軽線自体も青森市の近郊路線としての存在感はあるわけで、青森駅周辺に都市機能が集中するだけに、乗車密度は意外と高かったりします。また並行在来線として切り離される東北本線も、青森駅へ接着するわけですから、新幹線が開業しても、青森市街が取り残される可能性があるわけです。特に受け皿となる第三セクター「青い森鉄道」が新幹線に接着できないとなると、経営問題に波及し存廃が取り沙汰される事態すら心配されるわけです。青森県が六ヶ所村の核廃棄物再処理施設受け入れまでしてフル規格を勝ち取ったがために、実は青森市が割を食う事態となったわけです。「北海道延伸のためにもフル規格で」という主張も、墓穴を掘る結果となったわけです。

というわけで、地元で囁かれているのが、東北新幹線の新青森~青森延長線構想だそうです。東北新幹線新青森から、Uの字状に路線を引いて津軽線油川付近に至り、津軽線と並行させて青森駅へアクセスする構想が浮上しているということです。つまり新幹線が北海道へ延びたとしても、一部は青森駅へ向かって終着となるわけで、そうするとJR北海道及び北海道側の自治体との調整が大変だと思うのですが、とりあえず新法で出る補助金を使えば、新幹線の青森駅アクセスぐらいは青森市の単独事業でやっちゃえ! という話になるかもしれません。ああここも新幹線ドミノなんですな。アホラシ。

| | Comments (5) | TrackBack (1)