第三セクター鉄道

Monday, January 11, 2021

トランピスト総動員の後始末

アメリカが大変なことになりました。

トランプ支持者、議会占拠 大統領選出が一時中断:日本経済新聞
米議会へのトランプは野乱入で混乱し、景観を含む5人の死者を出す騒ぎとなりました。しかもトランプ大統領自らSNSで扇動した結果ということで、事態は重大です。

1月5日に上院で行われる選挙人投票の集計結果を認定して新大統領制出を確定する手続きに対して、上院で議長を務めるペンス副大統領に圧力をかけて阻止しようとしたものの、当然ながらペンス氏は従わず手続きに入ったことで裏切り者呼ばわりされた一方、最後の手段として支持者へ実力行使を訴えた結果の出来事ですが、SNS各社は大統領のアカウントを凍結するなどしたものの、Qアノンなどの陰謀論者やネオナチなどの極右を中心に武装して乱入したものです。

トランプ大統領自身はイデオロギーに基づいてというより、単純に負ければ在任中の数々の不法行為が訴追の対象になることを回避するための行動で合理的エゴイストたるレントシーカーに過ぎない訳ですが、不満を抱えた国民の分断を利用した暴挙ではあります。

しかし密な支持者集会を繰り返し自らコロナに感染し風邪と共に去るかに見えたものの、ステロイド剤服用までしてドラッグで大復活してますます支持者を喜ばせた訳で、ハイブリッド・シビル・ウォーの現実が顕れたと見ることができます。問題なのは狂信的な支持者ほどバイデン新大統領が不正によって選ばれた正当性のない大統領という見解を持つ訳で、国民の文題は今後も続き、バイデン氏の政策実現は難しくなります。

但し議事堂乱入はある意味建国以来の国体を傷つける行為で、日本で喩えれば天皇に不敬を働いたに等しい行為として糾弾されますから、かなり徹底した訴追と掃討が行われると見られ、寧ろ現場での実力行使を封じる方向へ変化するとも見られます。ジョージア州の上院選再投票でも民主党が2議席確保で結果的に伯仲しながらでもトリプルブルーともブルーウエーブとも呼ばれる大統領と上下院の民主党独占が成った訳で、バイデン氏にとってはやり易い形ではあります。

但し対中制裁の見直しなどは当面行わず、香港やウイグルなどの中国の人権問題への厳しい対応も考えられ、交渉カードとして温存されると考えられます。中国は経済的なライバルであり安全保障面でも無視できないけれど、是々非々の対応で成果を導き出そうとするでしょう。また経済界などが期待するTPP復帰も、国内の労働者への配慮から見送られるでしょうし、既に貿易協定ではTPPと同等の権利を得ているから今のままでしょう。寧ろ米議会がオバマ政権時に議決した為替条項盛り込みの要求がありますから逆にヤブヘビの可能性もあります。

てことで表面上は平静を取り戻すものの、対立の構図は深く潜航する訳で、特に狂信的な支持者はたとえ訴追され罰を受けても独自の世界観を捨てずにバイデン政権の不当性を信じ続けるでしょう。つまり広く国民に共有される正史とは異なるアナザーヒストリーの誕生となって対立がイデオロギー的にロックインされる訳で前途多難です。

一方でトランプ現象と並び称されたBrexitですが、こちらは土壇場で英EUFTA合意が成立し、明けて1月1日から発効しています。一説によれば年末のコロナ変異種が英国内で発見されEU側が緊急に国境を閉じた結果物流が滞り、Brexitの予行演習^_^;になったと言われております。結果的にイギリスはEUの関税同盟に留まりながら独立を勝ち取った形ですが、大幅譲歩を余儀なくされております。北アイルランド問題では当面EUルール適用としたほか、英EEZ内の漁業権問題でも譲歩を迫られました。これは主にフランス漁船の操業継続に対して経過措置を設けて当面維持するもので、当初案の漁獲割り当てをイギリスが一方的に決められるルールから譲歩したものです。

最後まで揉めたEU規制の英国内適用問題は、関税同盟に残るのであれば競争条件を揃えるイコールフッティングの主張ですが、本音はロンドンの金融機能の代替の狙いと言われます。ダブリン、フランクフルト、アムステルダム、ルクセンブルク、パリなどが名乗りを上げていましたが、何れもロンドンの機能を代替するには規模の点で劣り実現可能性はほとんど無いと言えます。この辺香港の代替を狙う東京と同様で、政治的思惑では進まないところです。

関税同盟に留まったとはいえ通関手続きは始まった訳で、これが原因の物流の滞貨が生じていて現場は混乱していますが、これは主にイギリス側のインフラ整備の遅れに起因しますので、いずれ解消へ向かうと思われます。思えばBrexitに注文付けていたのは主にEU内の拠点としてイギリスに生産拠点を置いた日本企業が中心だった訳ですが、Brexitの結果日英EPAの締結に至りBrexit後も関税同盟に留まって一安心でしょうが、別の問題も起きています。

これはEPAの原産国証明の問題で、自動車で7年の経過措置を得たものの、従来のように日本から部品を輸出して現地で組み立てる形は見直しを迫られます。加えて2030年のEV規制でガソリン車ディーゼル車の新車販売が出来なくなり、日本メーカーもEVシフトを迫られる中でのことですから、下手すればサプライチェーンをそっくり現地化せざるを得ないことも視野に入れるべきです。イギリスの交渉上手の伝統は生きているようですが、裏を返せば日本の交渉下手でもある訳です。

ただ指摘しておきたいのは、トランプ現象もBrexitも背景として労働者の反乱の産物という点で共通しています。Brexitは保守党キャメロン政権の緊縮財政への拒否感から出てきたものですし、トランプ現象も所謂ラストベルトの白人労働者の支持があったこと「は見落とせません。これは元々労働者の支持を得ていた左派陣営の変質に由来するもので、アメリカで言えばクリントン政権の経済重視や英ブレア政権の第三の道で置き去りにされたと労働者が感じたことが起点です。

サッチャーやレーガンに始まった新自由主義とグローバル化の流れを去派指導者が追認し経済成長に軸足を置いた結果、支持層の国内労働者が置き去りにされた構図です。この面では独シュレーダー政権の労働市場改革も同じ文脈に属します。その結果東西統合が経済の重石となっていてEUのお荷物だったドイツは一転EUの優等生に変身し豊かにはなりましたが、そこまで踏み込めない他国の労働市場を圧迫し、ギリシャ危機を初めとする経済危機を呼び起こした訳で、Brexitもその帰結の1つと見ることができますし、東欧のポピュリズム政治もそうですね。

これ結局左派がエリート主義を脱却できないことに由来すると考えられます。左派のエリート主義の起点は2つありまして、1つはレーニンのボルシェビキですね。マルクスの言うプロレタリア革命はパリコミューンの住民自治にヒントを得た労働者による自覚的な解放運動ですが、レーニンはロシアの後進性から労働者bの自覚を待てないことから、意識の高い職業革命家による扇動で大衆を分極化し騒乱の中で政権を奪取することを構想し実現した訳ですが、これが左派の成功体験として広く共有された結果、エリート主義が肯定された訳です。

もう1つはケインズのハーベイロードの賢人主義とも言うべきもので、もろにエリート主義を肯定しています。結果広い意味で左派とされるマルクス主義者もケインズ主義者もエリート主義に毒されてしまった訳です。余談ですが、日本は元々保守派もエリート主義に凝り固まっていて、40年代の革新官僚による国家総動員体制で戦争へ突き進んだ訳ですが、同時に戦前非合法だった日本共産党もボルシェビズムを受け入れて中央の指導への従順さを求めており、この点は今も変わりません。とはいえ格差拡大でネトウヨの出現など大衆の分極化が見られる日本の現状で美装闘争を仕掛けないから武装闘争放棄は本気でしょうが、日本の労働者に寄り添っているのかは疑問を禁じ得ません。

最後にこの話題。北陸道など一時1200台動けず 富山・福井が災害派遣要請:日本経済新聞年末の関越道の混乱と同じことが北陸道でも起きました。元々寒波で日本海側の広い範囲で豪雪の予想があったわ訳ですが、通行止めの判断が遅れた訳です。今回は高度な雪対策がされた筈の北陸新幹線まで止まるぐらいですから、より大きな災害ということになりますが、高速道路会社にとっては通行料収入を失う通行止めの判断は出しにくいと考えられます。高速道路民営化が私たちを幸せにしたのでしょうか?

新神瀬が止まるぐらいですから、鉄道は全滅、一般道も使えないで、結局交通は全滅状態です。これも気候変動による海水温の上昇が原因と考えられます。前エントリーのカーボンニュートラルで経済成長は無理でも、こうして経済損失を被ることを考えると、経済成長以上の経済損失が発生して台無しということは考えられます。経済成長に結びつくかどうかに関わらずカーボンニュートラルは進める必要があります。

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Sunday, December 20, 2020

スベってコロナで大痛い政権

結局 Gp To t中止で年末年始の稼ぎ時を逸した観光関連の混乱が起こり、キャンセル料補償を余儀なくされた政府ですが、既に年末年始に備えて人を雇ったり食材等を仕入れたりしている訳で、Go To を当てにしていた事業者を振り回す結果となりました。愚かです。加えて寒波襲来で関越道が大変なことになりました。

関越道 最大2100台立ち往生 相次ぐ雪害まひ 教訓生かせず 週末再び大雪警戒:日本経済新聞
元々海水温が上昇していたところへ寒波が来て温度差で大量の水蒸気を抱えた状態で上越国境の山々で雪雲を形成したため、経験則で測りきれない大量の降雪があり被害を大きくした訳で、気候変動の影響を見て取れます。

雪国では寒さから降った雪が解けずに根雪となって春まで残るので、冬の間にドライバーの雪道スキルが向上することで日常生活が成り立ちますが、シーズン初めの初雪では半年間の乾いた路面でスキルを失ったドライバーがそこら中でスベりまくります。よく言われると「東京ではちょっとの雪で混乱すする」というのは、実は雪国でも初雪では同じです。その状態での大量降雪ですから、無事な方が奇跡ってことになります。

ぶっちゃけ1台がスベって横向きになって道路を塞ぐと、後続車は停止を余儀なくされますが、降雪量が多いと停止中の車が雪に埋もれて動けなくなりますから、状況が文字通り雪ダルマ式に悪化します。そうなると先頭の横向きの車を撤去しただけでは復旧せず、除雪を強いられますが、当然除雪車は使えませんから、スコップで人海戦術の除雪作業になり、前の車から順繰りに進路を確保して動かすという作業を延々と続けるしかありません。故に多数の車が長時間閉じ込められる事態となった訳ですね。

一方JRの上越新幹線は何事もなかったように平常運行してますし、在来線も遅延はしたものの、運行はされていました。勿論このことが鉄道一般が雪に強いことを示す訳ではありません。上越新幹線はトンネル区間が多く、明かり区間も雪対策がされているので運行に支障がなかった訳ですが、在来線。はそうでもない訳です。在来線規格の北越急行ほくほく線は新設時に雪対策をしていたので雪に強く、年間運休日の少なさから過疎地に関わらず沿線需要を掘り起こすことに成功しています。要は備えがあるかどうかで変わってくる訳です。

とはいえ占有空間が巨大な高速道路で例えばスノーシェルターで覆うとかは現実的に難しいですし、降雪量が多いと除雪も間に合わないとなると、結局状況に応じてチェーン等のすべり止め規制をしたり事前告知して通行止めにするかしか手段はありません。今回も東日本高速道路が除雪で対応可能とした判断が甘く事前告知の通行止め措置を取らなかったことがこの事態を招いたと言うことはできます。その東日本高速道路はこちらでもトラブルを抱えます。

東京・調布の陥没、工事との因果関係認める 東日本高速:日本経済新聞
調布の外環道工事と陥没の因果関係を結局認めてこれから補償交渉となります。専門家からは、1つは切羽のドリルが岩盤層に当たって振動が生じた結果の砂礫層の液状化と、直径15mのトンネル躯体が地下水脈を遮って地下水位のバランスが崩れて隆起と沈下が起こったという2点が指摘されています。後者は工事個所を境に広範に隆起と沈下が認められる衛星観測の結果とも一致しており、共に蓋然性が高いということで認めざるを得なかったという流れです。

つまり鉄道に比べて高速道路の占有空間の巨大さが災いしたとも言える訳で、その分道路整備は巨額の費用が掛かる訳ですが、実際道路と鉄道では財源にも大きな開きがあります。これ風邪と共に去りぬでも指摘しましたが、災害復旧でも予算規模の差を見せつけられる結果となっています。道路の負荷を抑える意味で道路予算を鉄道投資に回すことは合理性がありますが、日本では全く顧みられません。前エントリーで指摘したようにEV普及のみならずモーダルシフトも視野に入れなければ温室効果ガス排出削減も難しいですし。

一方密を避けるということで車利用は増える傾向にありますが、関越道のマヒもその影響が出た可能性はあります。そして年末年始の帰省シーズンですが、自粛の掛け声の一方、お盆も帰らなかったからと車帰省へのシフトも考えられます。但しそれでも無症状の陽性者が実家の高齢の両親に感染させるリスクはある訳で、慎重に対応すべきと考えます。てことで私も正月の親族の集まりは自粛です。

しかし政府の無策ぶりはどうしたものか。「Go TO 止めない」と言っていた前言を翻したりニコ動で「ガースーです」と言ってみたり5人以上の会食自粛を言いながら8人の会食をしかもハシゴとかスベりまくってます。スベり芸なのか?笑えないけど-_-;。

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Sunday, December 13, 2020

コロナ禍に対峙するローカル私鉄のキャッシュフロー経営

湧く珍ラリーエントリーで取り上げた島原鉄道の赤字ボールペン販売ですが、他社でもいろいろな取り組みが見られます。

地域鉄道「資源」フル活用 車両にファン宿泊/踏切音を配信/手すり販売、人口減・コロナ禍で活路:日本経済新聞
車掌スイッチや手すりの販売など部品即売イベントは昔からありましたが、オンライン販売が今風且つコロナ禍らしいところ。踏切警報音のオンライン配信も時流でしょうか。中でも出色なのが岳南電車の電車内宿泊でしょうか。サービス電源確保やセキュリティ対策などは必要ですが、追加費用は僅かで、手持ちのリソースを活かして現金収入が得られるという意味でアイデア賞ものです。

過疎化とコロナ禍のダブルのマイナス要因で追い込まれる地方のローカル私鉄ですが、日々の現金売上の減少は資金繰りに直結するだけに苦しいところです。千葉県の銚子電気鉄道のタイ焼きや濡れせんべいは有名ですが、逆に言えば規模の小さいローカル私鉄ではその程度の現金収入で維持費を稼げるということでもあります。それでもレール交換や踏切保安装置の更新などでは寄付を募って乗り切るなど苦しい状況は続きます。設備が古く減価償却が終わっているから、ギリギリ経営は維持できる一方、減価償却で生まれるキャッシュフローは当てにできないジレンマもあります。

てことで、元々固定費の高い鉄道の維持は困難な課題ではありますが、維持する上で重要なのは最終損益の黒字赤字よりも日々の資金繰りにあるということですね。実はこの点で言えばローカル私鉄は昔から似たようなことをしていましたし、今でも様々なキャッシュフロー獲得作戦が展開されています。

例えば国鉄時代の連絡運輸で、私鉄駅発の国鉄連絡運賃の収受というのがああります。これつまり買掛金になる訳で、一定期間手元に残る資金ですから、小規模な私鉄にとってはバカになりません。北海道の運炭鉄道はこのお陰でキャッシュリッチ経営だったことから、最盛期には税金対策で儲からない旅客輸送用の新型ディーゼルカーをバンバン投入するようなことも行われておました。埼玉県の秩父鉄道のように大手私鉄に先駆けてWNドライブの高性能電車を投入したのもこの流れですね。

同様のことはニシン漁に沸いた北海道の寿都鉄道やミカン輸送の送り出しで稼いだ和歌山県の有田鉄道、山口県の運炭鉄道の舟木鉄道などもあります。もっと新しい事例としては成田空港ジェット燃料輸送を担った鹿島臨海鉄道で神栖線の旅客営業を手掛けたことがありましたが、流石に利用が伸びず後に廃止されます。しかしその経験があったから、建設線の大洗鹿島線の引き受けという大きな決断に繋がったとは言えます。

後日談としてニシンの不漁で火が消えた寿都鉄道は廃業して恐らく意図的な国鉄運賃預り金の踏み倒しをしてますし、舟木鉄道ではやはり意図的な精算遅延で手元資金を厚くしていたなんてこともありました。個々には金額は少なかったとしても、国鉄の赤字体質にはこんな裏事情もあった訳です。

整備新幹線の並行在来線三セクや伊豆急など国鉄/JRと関係の深い路線のマルス設置による指定券販売ってのもこの類型ですが、伊豆急のようにSuicaの委託販売とバーターでシステム整備など新たな関係も見られます。また全国の臨海鉄道で見られるJR貨物の構内入替の受託など国鉄改革後も様々なことが行われております。鉄道貨物の今後次第ではJ貨物列車の運行受託などもあり得ます。

えちぜん鉄道や岳南電車では電力託送事業に取り組んでおりますが、風力、太陽光、コ・ジェネ電力など再生可能エネルギーを利用したマイクログリッド事業は新たな収入源となる可能性があります。大規模電源を前提とする系統電力系の送電線が稼働していない原発や非効率な石炭火力の利用枠で押さえられていて再生可能エネルギーの利用が進まない中で、地域に根差した新たなビジネスの可能性があるだけに期待したいところです。但し電力設備を持つ電気鉄道限定ですが、ビジネスモデルが進化すれば非電化路線の電化まで視野に入るかもしれません。

マイクログリッド事業に関しては、脱炭素を打ち出した政府が補助金を付けることが期待されますが、現政権の本音は原発の新設やリプレースかもしれません。既存原発の再稼働と違って鉄子コンクリートの塊となる原発の新設は、鉄やセメントの製造工程でのCO2排出もありますし、鉄の熱処理やセメントの凝固過程での化学反応でもCO2を排出します。ライフサイクルアセスメントに注目すれば脱炭素に逆行します。再生エネ活用が王道と知るべきです。

おまけで燃料電池活用も期待されてますが、現時点で供給される水素は化石燃料由来です。再生エネ電力で水を電気分解することで得られるカーボンフリー水素でなければ意味がありません。加えてEV普及も後押しするようですが、石炭火力に依存する日本の現状ではCO2排出削減効果は限られます。寧ろEV普及は電力需要を押し上げるので、需要増をカーボンフリー電源で賄うのでなければ、寧ろ排出を増やす可能性があります。

てことで管政権が打ち出したカーボンフリー宣言は具体策で必ず躓くと言えます。寧ろ車社会を見直してモーダルシフトを推進する方が排出削減効果が大きいということは指摘しておきます。最後はやや脱線気味でした^_^:。

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Sunday, November 29, 2020

飛べないジョナサン

まずは地を這う話題です。

台車亀裂で溶接部に欠陥 南海ラピート、安全委報告:日本経済新聞
南海ラピートの台車枠亀裂問題で運輸安全委員会の報告書が出ました。報告書によると2005年にメーカーの住友金属(現日本製鉄)が実施した台車枠の補強で溶接不良があってそれが亀裂の原因というものです。これ結構深刻な問題じゃないでしょうか。

台車は鉄道車両の荷重を支え安定走行を支える重要パーツであり、当然強度を求められる一方、重量が嵩むため、軽量化の要請も大きく、実際かつてのボルスタ台車からボルスタレス台車への変化もありますし、阪急や東京メトロなどのボルスタ台車も、車体直結の上揺れ枕と台車枠へ荷重を伝える下揺れ枕で心皿と左右の側受の3点支持で下揺れ枕と台車枠の間に枕ばねを置くものではなく、車体と上揺れ枕の間に枕ばねを置いて下揺れ枕と台車枠を一体化して水平方向の偏倚を拘束するボルスタアンカーと呼ばれるリンク装置を備えたものになっており、軽量化が図られています。

そのため台車枠にかかる応力も複雑化している訳で、何らかの理由で補強が必要になったとしても、ユーザー施工は難しく、メーカー施工にならざるを得ないのですが、その頼みのメーカー施工で補強プレートの溶接が原因で亀裂が生じた訳ですからユーザーである鉄道会社としてはどう捨て良いのかって話ですね。溶接熱による歪みが残って金属疲労が生じたと考えられます。これつまりユーザーから見たプロダクツのブラックボックス化の中で、頼みのメーカーの技術に疑問符が付くことを意味します。しかし企業経営者にその認識があるかどうか。7現場力に頼って無茶ぶりして凌いできた企業ほど根深い問題です。その文脈でこのニュース。

三菱重工、国内3000人配置転換 国産ジェット事実上凍結:日本経済新聞
コロナ禍で透明航空機需要の回復が見込めないということで、MRJ改めMSJの開発を凍結し社員の配置転換を行うというニュースですが、重要ン阿野は中止ではなく凍結ということです。国産ジェット旅客機の開発は国家プロジェクトとして国の資金も拠出しているため、国(経産省)が許さないということで、プロジェクトは継続されますが、開発の遅れの間にブラジルのエンブラエルの旅客既部門をボーイングが買収することが発表され、ボーイングの販売網を当てにしていた三菱重工を慌てさせました。737MAXの墜落事故とコロナ禍でそれどころじゃなくなって見直されましたが、コロナ後の需要回復も見通せませんし、中国が国産ジェット旅客機の開発を先行しており、コスト面で対抗は難しいと見られます。

しかも開発の遅れは米GE製の新型エンジンで省燃費を売りにする予定が遅れたため、ライバルのエンブラエルやボンバルディアに燃費性能で追いつかれており、市場環境も厳しさを増しています。そして米FAAの型式証明の取得が躓きの石となりました。日本企業にとっては初めてのことで対応が後手後手になった訳ですが、そのため外国人技術者を大量採用して開発現場に投入したら、現場で飛び交う言語が英語に変わり、日本人技術者を困惑させ、現場のコミュニケーションを破壊して更に遅れを増長しました。

これ長崎造船所のダイヤモンドプリンセス号建造の時の混乱と同じ轍を踏んだ訳です。経験のない豪華クルーズ船の建造を請け負ったものの、不慣れな作業で遅れたため、外国人技術者を投入してスピードアップを図った結果、建造中の火災事故を引き起こすというトラブルで、結局納期を守れず追加のコスト負担もあって結果的に赤字受注となった訳です。頭痛くなってきた。

てことで飛べない国産ジェット旅客機の顛末ですが、長崎と言えば前エントリーで軽く触れた飛べないかもめもありますね^_^:。22年秋頃に九州新幹線長崎ルートの武雄温泉―長崎間が暫定開業しますが、和製英語のフリーゲートレインと呼ばれる軌間可変車(GCT)の採用断念をJR九州が決めたことで、フル規格の孤立線として暫定開業を迎えます。

長崎新幹線の問題は散々取り上げましたが、おさらいすると元を質せば鹿児島ルートで佐賀県域を通過することから負担を求められ、当初予定されていなかった新鳥栖駅の設置を滑り込ませる苦肉の策で対応したものの、この時点から佐賀県の不信感はありました。加えて長崎ルートは当初スーパー特急案で進んでいたこともあり、佐賀県の負担は軽微でした。この点はGCT採用でも基本的には変わらなかったのですが、一方で肥前山口―諫早間が並行在来線として切り離し対象となったことに鹿嶋市など切り離し区間の沿線自治体が反対して揉めて、結果的には上下分離でJR線として維持することで決着しました。

という具合にトラブルが絶えませんでした。加えて元々有明海沿いの軟弱地盤問題があって、費用負担が大きくなる危惧があり、また福岡都市圏で必ずしも新幹線を必要としていない立地条件もあり、GCT導入で在来線を維持する条件で同意したという経緯があったのに、JR九州のGCTっ導入見直しでフル規格化を言われても同意できない訳です。そもそもGCTは技術的には無理があり、実現不可能と考えておりましたので、JR九州の対応も国(鉄道・運輸機構)の甘言に乗せられたとも言えますが、南海ラピートの台車枠の亀裂問題に見るように、足回りの無理な限界設計は安全に直結する問題を孕みます。とはいえ佐賀県から見ればご都合主義もいいところで、態度を変えることは難しいでしょう。

ってことで飛べないかもめのジョナサンは神になり損ねた?また並行在来線問題は大村―諫早―長崎間でも不確定で、上下分離となれば自治体負担が出てきます。まだまだ揉める要素は残っている訳ですね。

おまけ、大村市内に新設予定の新駅が新幹線併設の新大村ともう1つ大村車両基地だそうで、後者h駅前に県ろう学校があるところで、一瞬五方面作戦の闇で取り上げた常磐線北柏や天王台のように車両基地建設のバーターかと頭をよぎりましたが、建設費は大村市が負担ということで、通常の請願駅でした。とはいえ駅前は県立ろう学校という立地で特に開発計画がある場所でもなさそうですし、そもそも駅名にふさわしいランドマークが無いから大村車両基地を駅名にせざるを得なかったということのようです。

新大村駅を含めて市の北側に位置し、新幹線駅と長崎空港が至近ということもあり、開発の重点を北へずらすことは考えられている可能性はあります。とはいえ孤立線のフル規格新幹線とコロナ禍で激減した航空需要と視界不良の現実が立ちはだかりますが。

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Saturday, September 19, 2020

コロぶナ大阪トト

忘れかけてた大阪都構想が再起動した模様です。大阪府議会と大阪市議会が大阪都構想の賛否を問う条例を可決成立させて、再度住民投票が実施されることになりました。10月12日公示11月1日投票で、賛成多数なら2025年1月1日から新制度へ移行するというスケジュールです。大阪都構想自体は2015年5月17日の住民投票で格差で否決されましたが、今回は公明党が賛成に回っており、支持母体の有権者が動く可能性が高く、可決成立の可能性が高いと言われております。

立場を明確にする意味で、先に見解を述べておきますが、大阪都構想は天下の愚策です。地方自治法で大きな権限を与えられている政令指定都市を廃止して、権限が限定される4つの特別区にするという話ですから、普通に言えば大阪市域の住民サービスは劣化します。但し住民税などの税源は都に移行する訳ですから、府改め都は財政規模を拡大できる訳で、それが狙いと仮定すれば推進派の正体がわかります。大阪都構想は大阪市を廃止して権限を取り上げる構想ってことですね。

東京都との比較で言えば、東京都の人口1,400万人の内、区部が凡そ840万人で7割ですから、単独の市としては規模が大きすぎますし、昼間人口は区部だけで1,500万人を越えますから、単独の自治体として上下水道などのライフラインの維持管理だけでも大変な負担になりますので、広域自治体として都が肩代わりする意味はあります。

一方大阪府の人口は凡そ900万人で大阪市が275万人ですから約3割と東京とは真逆の人口分布です。勿論大阪市も昼間人口が多いとは言えますが、その規模は東京よりずっと小さく354万人と横浜市よりやや多い程度で、広域自治体としての都が肩代わりする必要性は乏しいと言えます。二重行政云々は従来も府市協議会で調整されてきましたし、人口82万人の政令指定都市堺市が抜けていて行政の一体化は最初から穴あきです。

てことで冷静に考えれば大阪都構想は否決されるべきですが、全国区のニュースになりにくい一方で、在阪メディアは大きく取り上げながらネガティブな情報には触れないということで、可決成立の可能性が高まっている訳です。これ安倍首相辞任から始まる謎な内閣支持率上昇と同じ構図ですね。国会も開かず記者会見も開かず巣篭りしていてメディア露出が減っていたところでの辞任報道でメディア露出が一気に増えた結果、安倍内閣の支持率が跳ね上がり、また早々管官房長官の後継が取り沙汰されやはりメディアを賑わせた結果、やはり新内閣は高い支持率となってます。いろいろ言われますが、オールドメディアの影響力は大きい訳です。

でも未だにコロナ禍が収まらず、大阪府だけでも60-70人規模の感染者が毎日報告されている中での住民投票です。普通に考えればコロナ対策を優先すべきところを、敢えて住民投票を行うというのはリスクもあります。実際コロナ禍で大阪市の財政赤字は拡大しています。自粛による税収減だけで500億円規模に加えて、市営地下鉄民営化で誕生した大阪市100%出資の大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)のコロナ禍による赤字転落で、見込んでいた配当金64億円の税外収入もなくなる一方、コロナ対策で歳出が拡大している状況です。

にも拘らず2025年からの大阪都の財政見通しを黒字として、その根拠として大阪メトロの配当金を挙げている訳で、矛盾だらけです。しかも大阪メトロ社長には知らされておらず、記者会見で記者からの質問で知って逆に赤字転落なのでとりあえず今期の配当は無理とした上で、2025年以降の収支を前提とした議論だから、今はわからないと逃げるのが精いっぱいだったというギャグのような話になってます。

これアベノ自粛エントリーで指摘したことですが、大阪府は大阪府都市開発(OTK)の事業の一部だった泉北高速鉄道を売却し、大阪市は地下鉄とバスの市営交通の民営化で得た資金を投じてなにわ筋線の事業費を負担することで、大阪メトロの稼ぎ頭の御堂筋線のライバルを整備するという倒錯したことをしている訳で、2025年以降の安定配当の見込みはかなり怪しい訳です。

大阪市交通局の民営化も、地下鉄事業に関しては2003年に単年度黒字を達成し、2010年には累積赤字も一掃して多額の利益剰余金を市財政にもたらした一方、フェスティバルゲートやオスカードリームなどの関連事業の不振とバス事業の赤字転落で苦しんでいたことは確かですし、何らかの見直しは必要ではありました。オスカードリームについては市有地の財産信託事業を受託したみずほ信託銀行から提訴され裁判で敗れて受託金支払いを命じられました。

交通局に留まらず咲洲地区のコスモスクエア地区でワールドトレードセンタービル(WTC)やアジア太平洋トレードセンタービル(ATC)など第三セクター方式によるビル建設でテナントが埋まらず赤字を垂れ流すなどしていて、それらを批判して台頭したのが大阪維新の会でした。同様に泉佐野市のりんくうゲートタワービルが同時期に建てられ、やはり大赤字となって泉佐野市の財政悪化の原因となりましたが、維新系の市長によるふるさと納税制度の高額返礼品問題に見るように、バブル後の大規模開発の失敗に乗じて台頭した維新の性格がよくわかります。

とはいえ例えば万博会場とされる夢洲への地下鉄中央線延伸のような投資案件を抱え、加えて仮称夢洲駅にはタワービルを建てる計画まで発表してます。財政を悪化させた大阪市の轍を踏もうとしている訳ですね。違いは大阪メトロは株式会社ですから、タワービル事業がコケても株主の有限責任原則で大阪市改め大阪都が直接被ることは無いってことですね。勿論それじゃすまないでしょうけど、あとは野となれで逃げるが勝ちと、アベノミクスそっくりの構図が見えます。

しかしコロナ禍で様子が変わってきております。特に維新をバックアップしてきた関西財界にさざ波が立ち始めております。関西財界をのまとめ役とされる関西経済連合会(関経連)の副会長職にある近鉄と阪急の両トップが腰が引け始めています。前エントリーでも触れましたが、大阪市進出を表明していた米カジノ事業者MGMがコロナ禍で自国の本業にブレーキがかかって白紙撤回した結果、大阪万博の実現可能性を巡って悲観論が出てきていることによります。

地下鉄延伸もタワービル構想もIR誘致を巡ってMGMに事業費負担を打診していたものが消えた訳ですから、その分の負担が関経連企業に奉加帳方式で負担が来ることを危惧する声が出てきている訳です。特に阪急と近鉄は1970年の大阪万博を利用して経営基盤を強化した成功体験があるだけに前のめりでしたが、流石に今回はヤバいと思い始めているようです。

阪急は大阪市域外への延伸だった御堂筋線の江坂以北の区間を阪急主導の三セクで北大阪急行電鉄を設立し、大阪中央環状線と同時整備されつつ未開通だった中国自動車道の本線車道に線路を敷いて会場線として万博中央口へのメインルートを押さえる一方、千里線の万博西口ゲート近くに臨時駅を設置して万博関連の鉄道輸送をほぼ独占し投資回収に励む一方、万博後不要となった北急の余剰車を市交に売却して資産圧縮して超優良企業になりましたし、近鉄は万博関連事業で訪日外国人の広域観光推進で補助金を得て近鉄難波線と鳥羽線を建設し、志摩線の改軌で大阪と伊勢志摩を結ぶ観光ルートを確立しました。

てことで、実は住民投票の裏で関西財界の微妙な対応で万博開催もどうなるかわからない状況ですが、それを悟られないためのイベントとしての住民投票というのはうがった見方でしょうか?しかもメディアはそこを突かないから裏の動きはほとんど気づかれていない訳です。ある意味大博打の住民投票なんで、言ってみれば大阪トトとでも呼びたいところです。それでもベットしますかね?

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Saturday, September 12, 2020

愛なき成長戦略

愛ある成長戦略の秋元司議員が保釈中に偽証依頼で再逮捕されました。呆れてものが言えませんが、秋元議員は二階派所属ですが、時期総理と目される菅義偉官房長官が進めていたIRでの汚職ということで注目されます。

そのIRですが、中心となるカジノは元々クラスター効果で集積を創る効果が期待されていた訳ですが、コロナ禍で見直しは避けられません。実際日本進出を狙っていた米カジノ事業者は本国の事業失速でそれどころじゃなくなり撤退を表明しています。一方で無観客開催が続くJRAの競馬は勝ち馬投票券の売上が過去最高となっています。場外馬券売り場の再開とネット投票の増加が寄与したものですが、これ他のプロスポーツでも参考になります。

カジノを誘致するぐらいなら、ブックメーカーを公認する方がリモートの時代にはふさわしいし、現実的に欧州ブックメーカーのサイトを利用する日本人ユーザーが少なからず存在する現実を見れば、国内ブックメーカーの存在は資金流出を抑止する効果もありますし、逆に海外ユーザーの取り込みも期待できます。だけど新政権はカジノを捨てないだろうなあ。

また管氏はアベノミクスの継承を公言してますが、前エントリーの続きですが、三本の矢の三本目の成長戦略を今度こそと期待する向きもありますが、それは不可能です。一本目と二本目の矢で日本の潜在成長力はむしろ低下してますし、止めを刺せば下手に成長軌道に乗れば資金需要の逼迫で金利が跳ね上がり、それを呼び水にハイパーインフレを呼び込む可能性もありますし、それ以前に利払いの増加で政府財政が急速に悪化すます。ギリシャショックと同じ構図です。

日本の場合国内の貯蓄過剰がありますから、やや事情は違いますが、金利上昇を強引に抑え込む日銀の異次元緩和を続けざるを得ませんから、結局それが成長の足を引っ張り低成長に甘んじることになります。加えて日本の大企業がこぞって銀行の融資枠を設定してもらったり、社債発行が相次いでいるように、低金利故に可能な資金繰りが金利上昇で一転阿鼻叫喚地獄になる訳で、過剰債務は銀行にとっては不良債権になる訳ですから、バブル崩壊後の金融危機に逆戻りです。意地悪い見方をすればバブル崩壊当時はまだ日本の成長力は健在だったからバブル崩壊につながったとも言えます。アベノミクスの一本目二本目の矢も低成長だったから可能だったとも言えます。

管氏の発言からは成長戦略へのコミットを強める姿勢が見えますが、そのために官僚への締め付けは強まるでしょうし、秋元議員に留まらず河合夫妻の疑惑解明も進まないと見るべきでしょう。検察や司法がどこまで迫れるかは未知数ですが、河合夫妻の事件では収賄側の地方議員等100名ほどが全員不起訴となっています。ゴーン事件同様司法取引を悪用した可能性があり、がさ入れまでした自民党本部も訴追されず、河合夫妻だけを断罪する構図は違和感を拭えません。

てことでDXを中心に生産性向上を図るってのが中心になりそうですが、早速冷水を浴びせる事件が発覚しました。

ドコモ口座、全35行で新規登録停止 異業種連携に穴:日本経済新聞
これセブンペイの不正と同じ構図で、消費増税を機にキャッシュレス決済を普及させようと政府が旗振りした結果、セキュリティがガバガバなシステムが出来上がった訳です。しかも既に同じ手口でりそな銀行の不正引き出しが発覚していたにも関わらずNTTドコモはシステムを見直さず、本人確認が緩いまま被害を拡大しました。

今回の不正は更に複数の銀行で過去に口座情報が漏洩していた点も問題です。口座名と名義人がわかれば4桁のキャッシュカード暗証番号を解明することで本人に成りすますことができます。実際今回被害に遭った人はドコモユーザーは少なかった訳で、逆にだから発覚が遅れたとも言えます。こんなんでフィンテックのオープンAPIなんて無茶な話です。貧テック鈍テックな低成長国家に甘んじる現実が見えてしまいました。

それと気になるのが高給取りと言われる銀行マンもご多分に漏れず非正規化が進んでいて、非正規行員には待遇への不満も蓄積していると見られます。加えて見なし正社員ルールを盾に雇用期間も細切れとなれば、不満を理由に銀行の口座情報を外部へ漏らす退職者が現れても不思議ではありません。ただでさえ低金利にあえいでいる銀行で、行員のモラルが低下すればどうなるかということですね。これアルバイトのバカッター騒ぎや東京女子医大病院のボーナス不支給を巡る看護師の大量退職騒動などと同様、人件費を削るとろくなことが起きないってことでもあります。

その観点から言えば、JR北海道やJR四国の置かれている状況も似ています。特に厳寒で路盤を支える土壌も弱いJR北海道の場合、幹線でも線路等級が低く軌道負担力が弱いため、例えば大型蒸機C62の北海道転属の時にボイラー交換して軸重を下げたなんてことまでしてます。有名なスワローエンジェル©622号機もオリジナルではない訳です。

そんな調子ですから、北海道の鉄道マンの苦労は大変なもので、それでも長年の熟練で何とか対応してきたものの、国鉄分割民営化以前にローカル線の廃止も進みJR北海道へ継承された路線は規模を縮小し、熟練社員の多くは余剰人員として国鉄を去った一方、残った社員も高齢化で退職し、一方補充の若手は少なく、技術の継承が困難になりました。その結果保守が行き届かず度重なるトラブルにつながった訳です。

更に言えば国鉄からの資産継承時に資産価格を低く査定した結果、減価償却費の減少で利益は出やすくなりますが、設備更新は進まず脆弱な線路を振り子式高速ディーゼル車が走って線路を痛め、更にJR貨物のDF200型投入も線路を痛める原因になっている訳で、早晩行き詰ることは避けられなかった訳です。なるほどJR北海道自身が北海道新幹線に熱心だったのは、並行在来線切り離しで負担が減ることへの期待もあったのでしょう。

新幹線札幌延伸まで10年 並行在来線に3つのポイント:日本経済新聞
JR北海道にとっては整備新幹線のスキームで国と地方の資金を得ながら設備更新して重荷となる並行在来線を切り離せますから、効率追求の建前からも北海道新幹線は必須だったのでしょう。しかし切り離される並行在来線の厳しい現実も明らかになりました。函館―長万部間は道南いさり火鉄道を受け皿に議論が進んでますが、これはJR貨物の免許区間でJR貨物調整金が当てにできることが前提にあります。

この調整金は東北新幹線盛岡以北でJR貨物の指摘で問題になったJR貨物の格安な線路使用料の維持と並行在来線引き受け三セクの費用負担のギャップを鉄道・運輸機構\が差額補助するもので、原資は整備新幹線の貸付料に上乗せしてJR旅客会社が負担するものですが、逆に言えばそれぐらいしか並行在来線三セクを支える原資は無いってことです。一方の長万部―小樽間は貨物調整金が無く沿線人口も少ないことから、鉄道としての維持は困難と見られます。加えて言えば青函トンネル区間の速度制限解除のために貨物の船便シフトの計画が国交省で練られてますが、実現すれば函館―長万部間の鉄道維持も困難になる訳で、実現は困難です。

しかし心配なのが新政権で効率優先を旗印に政府が干渉する可能性があり、地元の調整を頭越しに無視する可能性も指摘できます。そうった強権主義の片鱗は例えば地方銀行の数が多すぎると合併促進に言及したりする姿勢にも見えます。加えて鉄道維持にビタ1銭出し惜しみをする北海道庁の姿勢もあり、愛なき決着の可能性を高めています。油断できませんね。

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Sunday, June 21, 2020

Suica甘いか消費税のウヨ曲説

県境越えの移動自粛解除で迎えた初の週末ですが、電車は以前と比べれば空いています。一方駅へ向かうバスは渋滞にはまってましたから、密を避けてマイカーで出かけた人が相対的に多かったってことでしょう。公共交通にとっては逆風です。東京都では2桁の感染者が出てますし、決して終息した訳じゃありませんから、警戒は続けざるを得ませんが、電車に乗るのにマスク必須となるとは夢にも思いませんでした。

てことで疫病退散祈願のために鎌ヶ谷大仏を訪ねて手を合わせてきました。慎ましくコンパクトな大仏様でした。元々仏教は日本では呪術として天皇家を含む支配層に浸透したものですから、本来の在り方ではあります。三蜜エントリーで取り上げた密教は典型的です。鎌ヶ谷市内高架化した新京成線探訪はついでです^_^;。しかし立派な高架橋も初富駅前後の急カーブで減速を強いられる一方、鎌ヶ谷大仏に向かって高架橋を地上へ駆け下りた途端に動揺が始まったのはご愛敬。安定した自然路盤上をゆっくり走るから敢えて高規格化する必要がない訳ですね。

かくして高架下のプレハブ然とした新京成線新鎌ヶ谷駅も高架上で隣りの北総線/成田スカイアクセス線と肩を並べましたが、大きく立派な割に人が疎らな北総線/スカイアクセス線よりも新京成線の方が人の出入りが多い現実があります。実は新京成電鉄は京成グループ随一の優良企業なんですね。本体がコロナ禍による国際線航空の蒸発で減収著しい一方、地域密着で安定した利用があります。加えて沿線地域のバス事業の寄与も大きく、鎌ヶ谷大仏はバスの拠点にもなっています。

そして乗っていて感じるのが短距離利用が多い点です。松戸、八柱、新鎌ヶ谷。北習志野、新津田沼、京成津田沼で他社線と接続していますから、所謂フィーダー輸送中心で賃率の高い短距離利用が多く、しかも利用が分散されますから、効率よく稼げる構造になっています。地味ながら侮れない実力者です。

北総線との関係で言えば、北初富―小室間の一次開業時、地上駅の北初富で平面分岐して北総二期区間の高架橋を潜って上り勾配で当時の新鎌ヶ谷信号場で合流するルートで、新京成と当時の北総開発鉄道が相互直通で松戸―小室間を結んでおりました。北総は1号線規格で冷房車の7000系に対して新京成は非冷房の吊り掛け車というアンバランスで、北総二期開業(京成高砂―新鎌ヶ谷間)で解消するまで続きました。北総線は高運賃で利用が伸びず、成田スカイアクセスはある意味北総線のてこ入れでもありました。コロナ禍で先が見えなくなりましたが。

で、本題。れいわ新鮮組の山本太郎氏が都知事選に立候補しましたが、何でも持論の消費税5%を打ち出さない宇都宮けんじ氏への不満かららしいとか、自分が立つから降りてくれと告げて宇都宮氏を激怒させたとか聞こえてきます。真相はわかりませんが、都知事選に立つと言っても勝算がある訳ではなく、次の国政選挙を睨んだ話題作りなんですよね。

元々東京都は転入人口が多く、特に大学生や新卒会社員など若い世代の転入が多いため、彼らへのアピールという意味では知名度が決定的に重要な選挙になります。故に青島幸雄に始まってタレントの立候補が続いています。一応政治家としてキャリアを積んだ小池知事をタレント呼ばわりはどうかなとは思いますが、テレビキャスター出身でメディア露出が巧みな小池氏はやはり政治家としては特異な存在です。コロナ禍の初動の失敗を悟らせずにメディアで発信しているあたり、本当に巧みです。褒めてませんけど。

逆に言えば地方の首長選としては異例ながら全国区でメディアが取り上げますし、知名度を上げるにはうってつけ。300万円の供託金払えば公共の電波使った政見放送で言いたい放題言えるという訳で、今回も22人の立候補者が立ちました。しかもコロナ禍で集会などはやりにくいけど、テレビやネットでうまくアピールすれば、在宅ワークの有権者への露出はそれなりに可能ってこともあります。尚、このところの内閣支持率がダダ下がりなのは、在宅でネットの国会中継を視聴する機会が増えたからと言われてます。安倍政権の化けの皮がはがれてきてる訳です。

そんな中での山本太郎氏の立候補ですから、端から勝つ気はないでしょう。それより消費税下げろと主張して有権者にアピールしたいのが本音ですね。この点で山本氏は評価できません。消費税減税論者が見落としているか意図的にスルーしている問題があるからです。例えばSuica甘いか消費税で取り上げた鉄道運賃の改定に伴うシステムの改修問題です。

消費税が下がれば鉄道運賃の値下げはは期待されるでしょうけど、コストかけて値下げする義務が鉄道事業者にあるかどうかは微妙です。勿論世論の圧力で値下げの可能性は皆無ではありませんが、コロナ禍で密を避ける人々の行動で利用者が減る中で、寧ろ負担増の要因もありますから、それを理由に値上げも考える局面でもあります。となると消費税減税で負担が減った分で値上げ回避という理屈が成り立ちます。この辺政府がどう判断するかにもよります。

ちなみに消費税に当たる付加価値税減税を打ち出したドイツですが、欧州の付加価値税は日本の消費税と違って税額票(インボイス)を用いていて複数税率に対応可能な上、価格表示が総額表示ですから、税率を下げても事業者は値下げの義務を負いません。勿論値下げしても良いですが、全て事業者の判断に委ねられます。今回のコロナ禍では寧ろ事業者への補助金の意味合いが強いと言えます。

それと日本の消費税制度は社会保障財源として紐付けされてますから、消費税減税は社会保障財源の縮小を意味し、それを口実に社会保障給付を減らされることもあります。実際そうして年金も医療保険も給付を削られ逆に保険料を値上げされているのが実際です。消費税を下げればますますこの傾向は強まる訳です。

加えて地方消費税のことも語らないですよね。間違いだらけの消費税で指摘した通り、税収比22%相当は地方消費税として自治体に配分されます。つまり消費税減税すると地方税収が減るという不都合がありますが、減税論者はこの点もスルーしてます。

翻って東京都は財政的には恵まれた存在ですが、それ故に地方交付税不交付な一方、ふるさと納税制度で税源が流出する一方、地方税の法人事業税の一部の地方配分を強要されるなど、このところ税源の棄損が目立つ一方、五輪でコスト負担もあり、今に至っては開催でも中止でも都の負担は避けられませんし、コロナ禍に伴う営業自粛の協力金などで積立金を取り崩しており,更に第2派の感染拡大でもあればどうなるかわかりません。故に次期都知事はどのみち敗戦処理しかない訳です。それなのに地方消費税減らしてよいというのは暴論です。

勿論今消費税を上げる議論は論外ですが、法改正して多大なコストをかけてまでやるべきことか?ってのは冷静に考えればわかります。寧ろ緩んだ財政規律を考えれば、事後的な増税も視野に入ります。消費税と共に基幹税とされる所得税と法人税の増税と累進課税の強化が王道ですが、法人税の租税特例の見直しや炭素税やデジタル税の導入など、議論すべき問題は寧ろそちらです。

そして最後に、消費税減税論者は藤井聡京大教授など保守派の論客が好んで仕掛けております。上記の社会保障の圧縮の口実になる点を踏まえると、実は何でも減税の保守派の議論なんです。てことでウヨ曲説に騙されるな!と申し上げたいです。

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Tuesday, May 05, 2020

出口が見えないアベノ自粛

予想されたこととはいえ、緊急事態宣言の延長が決まりました。そしてプロンプター読んでるんだけの「台本営発表」とも謂われる首相記者会見で、緊急事態宣言の解除の基準は語られませんでした。8日を8月に読み違えたみたいですが^_^;。出口が見えないという意味でアベノミクスと同じです。加えて検査体制の拡充が未だに実現できていないために、そもそも出口を判断できるデータがないという現実もあります。

この辺統計135°の歪みで指摘した統計不正問題に通じますが、現状を正しく把握できないから緊急事態宣言解除のような責任のかかる決断が出来ない訳です。あと内緒ですが伝染ルンですアベノミクスで指摘した消費指標を家計調査ではなく商業統計に切り替えてインバウンド消費が二重計上されていた疑惑ですが、コロナ禍でこっそり見直されてます。嘘が下手な嘘つきの典型的対応です。

あと「新しい生活様式」とかいう大きなお世話を専門家会議が発表しましたが、これ政府の諮問に基づいた助言機関がなぜ国民向けにこんな発表するのかですが、助言に基づいて責任を負うべき側に責任を負う姿勢が見えず、専門家会議に丸投げしている状況が透けて見えます。政府への助言が暖簾に腕押しでは、国民に語り掛けて協力を得るしか手段がない訳で、余計なことをさせられている訳です。当然専門家会議としては責任を負えず安全側へ判断が偏りますから、出口の判断はますます遅れます。

てことで巣篭りは長引きそうです。そうなるとリモートワークの範囲が拡大することになります。既に通勤定期券の払い戻しが増えており、加えて年度替わりで買い替えが多い4月もおよそ3割減ということで社畜の国で指摘した企業の通勤手当支給見直しがさらに進むことになります。その結果鉄道事業者が苦境に陥ております。

記者の目 JR東、コロナで見えた鉄道の盲点 3割減収なら利益ゼロ  証券部 堤健太郎:日本経済新聞
JR東日本だけの問題じゃないんですが、大都市圏の通勤需要で支えられている事業者にとっては、割引とはいえ前払いで収益を現金化できる定期券売上は経営安定のキモであり、経営の基礎体力をもたらします。記事で指摘されている固定費のかなりの部分を定期券売上でカバーし昼間や土休日の定期外客で上乗せすることで利益の最大化を図る訳ですが、こちらも外出自粛で激減している訳ですから、JR東日本と言えども1-3月期に赤字転落してますし、現状では4-6月はもっと悲惨です。

収益構造から言えば、運輸収入の依存度の高いJRの方が関連事業収入が多い大手私鉄より厳しい訳です。例外的に関連事業比率の高いJR九州は安泰かと言えば、ライバルの西鉄と比べれば生活関連事業で沿線にドミナント形成という水準には達しておらず、営業エリアが広すぎるから仕方ないんですが、トータルな経営体力では苦しいところです。

加えて整備新幹線が重荷になります。整備新幹線は30年リースで負債を計上している訳で、特に整備新幹線区間が長いJR東日本には重荷でしょう。救いは水害で水没した北陸新幹線E7系廃車に伴って延命されたE4系を廃車して減便することである程度出費を防げますが、リース料は固定費としてのしかかります。鉄道・運輸機構による債務繰り延べの可能性は、リース料が北海道新幹線などのの整備費用として見込まれており整備を止めることになりますから、難しいでしょう。

それでも莫大な減価償却費があり、JR東日本でおよそ2,000億円規模ですから、投資の抑制によってキャッシュアウトを防ぐことは可能ですが、ホームドア設置やバリアフリー化などは減らせませんから、車両更新や新線建設が抑制されると考えられます。航空業界の逆風もありますから、羽田空港アクセス線は幻の新線計画になる公算大でしょう。

この流れで言えば関空アクセス輸送を睨んだ大阪のなにわ筋線もヤバいかも。泉北線と市営地下鉄の売却益で府市共に財源確保してメトロの稼ぎ頭の御堂筋線のライバル路線を作るという倒錯が起きる訳ですから。

JR東海も稼ぎ頭の東海道新幹線で8割減ですから、長引けばリニアを諦めることになりそうです。名古屋リニヤだがや以来疑問を指摘してきた中央リニアも幻になる訳です。それでも財務体質の強いJR東海はある程度持ち堪えるでしょう。JR西日本は赤字ローカル線の整理に活路を見出すと考えられます。中国地方の路線網はかなり整理されそうです。JR九州は上場時に経営安定基金を取り崩して資産の減損処理と整備新幹線リース料の前倒し支払いで負担を減らしてますが、やはり赤字ローカル線整理に踏み込むことになるでしょう。本州3社と比べて財務体質の弱さは否めません。そしてJR四国ですが。

JR四国に国が改善指導 自立経営阻む2つの「老い」:日本経済新聞
コロナショックで真っ先に連想されるのはJR北海道でしょうけど、札幌都市圏への経営資源集中を前提とした再建策で先が読めるJR北海道に対して、エリアに大都市圏が存在せず、過疎化と高齢化が止まらないJR四国の方がより深刻です。とはいえ関係の深いJR西日本に助けを求めたくてもその余裕はなく、そこへ外出自粛が重なる訳ですから、出口が見当たりません。四国だけ三蜜解禁してお遍路さん呼び込むか?

鉄道として残すならば何らかの財政支援が必要ですが、JR北海道でも見られるように、結局交通政策基本法で謳われた地元自治体の関与が無いから国が動かないという倒錯が起きる可能性があります。JRでこれですから、過疎地の地方ローカル私鉄で持ち堪えられないところはちらほら出てくるでしょう。アベノ自粛は公共交通を枯れさせる可能性大です。

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Sunday, March 08, 2020

グローバルコロナショック

アジア中心だった新型肺炎COVID-19が欧米に飛び火しています。欧州ではイタリアで感染拡大し、徐々に他国へ広がっていますし、アメリカでも感染が拡大し、世界規模の感染症となった感があります。

世界史的には感染症が歴史を変えた事例は多数あり、中世欧州のペスト禍はもちろん、スペインの新大陸植民地化では旧大陸住民には免疫があった天然痘の新大陸住民への感染拡大がもたらしたと言われます。とすると湖北省を除いて感染者の減少が見られ、免疫獲得が推定されるる中国が勝者になるのかなあ?

そんな河北省を除く中国を韓国と共に新たに入国制限を課した日本の対応はズレまくりです。しかも第三国経由は本人の自己申告で制限という意味のない水際作戦で、喜ぶのはネトウヨぐらいのもんです。これも臨時休校要請と共にエビデンスに基づかない官邸の独断だってことで、どこまでアホなんだ。

大変なのは主婦でして、臨時休校の子供とテレワークで在宅勤務になったダンナの世話をしなきゃならなくなって大忙し。専業主婦ならまだしも看護師、介護士、保育士などで出勤が難しくなって病院や介護施設や保育園が人手不足で回らなくなったり、また学校は休みだけど学童保育は実施されていて、しかも放課後限定から全日となり人手が足りないと学校の先生も駆り出される事態になり、こうなると休校とはいえ授業をやらないだけで、しかも特定の教室にすし詰めで濃厚接触を助長するという笑えない事態になっています。

病院での院内感染防止は確かに大きな課題ですが、それを理由に検査体制の拡大に反対するってのはどうかしてます。受付や病室を分けるとか受付時間や診察時間をずらすなどの可能な対応を取った上で、街のクリニックでも検査できるようにするなど可能なことはあります。また介護士の人手不足は高齢者の多い介護現場での感染拡大を助長する恐れがあります。施設に預けた高齢者を引き取って一家で感染とかあり得ます。

テレワークがまた問題でして、今までは掛け声だけで進んでいなかっただけに、急にテレワークが増えてビデオ会議やろうとしたらトラフィックの急増で繋がらないトラブルが多発という笑えない現実があります。何事も準備が大事なのは政府に限らずです。一方、ビデオ会議アプリの米ズームはコロナショックによる株安の中で株価を上げてますし、物事は備えが大事だと改めて気づかされます。そして政府は余計なことはせず必要な資金を予算化するのが最大の役割です。その意味で注目するのがこのニュースです。

公共事業、人手不足で滞る 入札不成立4年連続増へ:日本経済新聞
人手不足で公共事業の執行が滞っていて、現在18年度補正予算の執行に目途がついて19年度本予算上期分の入札が始まったものの入札不調続きで執行が滞る流れですが、つまり予算の計上と執行がほぼ1年ズレている訳です。これつまり予算上の事業年度を執行の実態に合わせてズラせばほぼ1年分の資金が捻出できる訳で、その規模は6兆円超となります。これ全部でなくても、民間検査機関や大学まで動員してPCR検査の拡大の体制を作ることは可能でしょう。ま、地元に公共事業引っ張って有権者にアピールするのが仕事と勘違いしている政治家はやりたくないでしょうけど。

こんな状況で東京五輪が重荷になっていることは度々指摘してきましたが、その五輪にも暗雲が漂います。COVID-19の世界への拡大は当然五輪開催の可否を左右します。既にIOCとWTOのビデオ会議で東京五輪の無観客開催が議論されたそうで、貧テック貪テックで予想したような事態になってきてます。そうなると臨時休校要請やイベント自粛要請までして開催にまい進する日本政府は、非常事態宣言を可能とする新特措法と相まって、国民を押さえつけて戒厳令下の五輪という歴史に汚点を残しそうです。

マーケットも異変が起きています。株価の下落に対しては、日によって戻したりはしてますが、乱高下で下げ基調という荒れた状況ですが、これまで金融当局の緩和期待で起きていた低金利下の株高が変調を来してFRBの緊急利下げにもほとんど反応しませんでした。所謂適温相場が終わった訳で、リーマンショックを上回る経済ショックはいよいよ現実のものになりそうです。

しかもコロナショックでは主に航空や自動車などの下げが主体ですが、裏にもっと重大な問題が潜んでいます。それを示すのがこのニュース。

OPECプラス決裂、背後にサウジ皇太子の指令? 客員編集委員 脇祐三:日本経済新聞
これ当面原油安が続くってことですが、この点がリーマンショックの時と大違いなんですね。

リーマンショックの時はアメリカを起点にショックが波及しましたが、成長途上にあった中国を筆頭とする新興国経済は好調だった訳で、石油需要の先高観から原油価格は一時1バレル140ドルまで上がりました。それが結果的に欧米のエネルギー関連企業の株価を下支えし、米株式の早い回復を実現した訳ですが、今回はその中国経済にブレーキがかかって原油価格も60ドル前後から40ドル近くまで下がった訳ですから、事情が異なります。

中国に限らず例えば中東の産油国でも石油精製や石油化学工業の国内立地が進んでます。つまり工業立地の世界への拡散が進んで新たなフロンティアが見当たらない状況にある訳です。加えて欧州中心に再生可能エネルギーの普及もあって、基礎的な需要の将来的な縮小が見込まれる一方、米シェール革命で供給力は増えているという四面楚歌状況ってことです。謂わば逆オイルショックってことですね。余談ですが150万バレルの減産目標の内50万バレルをロシアに割り当てると独断で決めてロシアの怒りを買ったサウジ皇太子ですが、どっかの国の愚鈍なリーダーと似ています。

そしてグローバリゼーションと共に世界に拡散した新自由主義ですが、その流れに逆行するような動きが日本で起きました。

北神急行線と市営地下鉄との一体的運行(市営化)について:神戸市交通局
北神急行電鉄の経営不振は以前にも取り上げましたが、2008年時点では高運賃対策として上下分離して神戸高速鉄道を第三種事業者として北神は第二種事業者となって資産圧縮を図り、神戸高速が当時三セクだったこともあって固定資産全減免対象だったので、線路使用料負担を軽くした上で、神戸市と兵庫県の補助金で運賃を430円から350円に下げた訳ですが、それでも三宮へは市営地下鉄との運賃合算となり550円となる訳で、割高であることに変わりはありませんでした。

更に状況は変わり第三種事業者の神戸高速鉄道の神戸市の持ち分が圧縮され阪急阪神HDに譲渡されて関連会社となったことで上下分離の意義が薄れたこともあり、北神は阪急阪神HDのお荷物であり続けました。そこへ神戸市が2018年に北神の運賃低廉化の検討について協議を開始し、翌19年に資産譲渡の申し入れを行い、阪急阪神HDも三宮地区の活性化に資するとして応じたものです。しかも北神の認可運賃を捨てて神戸市営地下鉄と一体の運賃制度とすることで、三宮まで280円とほぼ半減の水準まで下げます。

加えてバス乗り継ぎの定期券割引制度を拡充し、谷上駅―神戸北町間に市バス路線を新設するということですから、従来新神戸トンネル経由で運行されていた三宮駅―神戸北町間の路線の見直しということですね。ドライバー不足で都市部でも減便を余儀なくされる路線バスの合理化も併せて行うということのようです。

三セクですらない純民間事業者の北神急行電鉄を市営地下鉄と一体化するという珍しい動きですが、一方で大ゴケの海岸線を抱える神戸市としては苦しいところでしょうけど、震災を機に国際港湾としての評価を失った神戸市としては中心部の活性化は待ったなしの課題なんでしょう。カジノ誘致で迷走する横浜市より遥かに誠実です。

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Sunday, August 18, 2019

困難なインフラのトリアージ

2030年の北海道新幹線札幌延伸に伴う並行在来線問題の検討が前倒しされました。

北海道新幹線の並行在来線、「存廃判断」5年前→前倒し  :日本経済新聞
対象区間は沿線人口が少なく、財政力の弱い町村が連なるだけに、調整は相当手間取りそうです。バス化も含めた検討ですから、廃止も有り得る訳ですが、貨物列車をどうするかが悩ましいところです。

JR貨物の問題は東北新幹線延伸のときに並行在来線を三セクで引き受ける時に、ローカル輸送対応ならば複線電化の東北本線の設備は明らかにオーバースペックとなりますから、JR貨物が貨物列車を維持することが困難と発議されました。その際JR貨物が負担する線路使用料がタダ同然の格安だったことから、並行在来線引き受け三セクにとっては負担ばかりになるということで揉めました。結果的にはJR貨物が支払う線路使用料と三セクが受け取るコスト見合いの線路使用料の差額をJR東日本の負担で補填することで決着しました。加えて北斗星やカシオペアの運行に伴う運賃料金収入もあり、それで経営の屋台骨を支えることで決着しました。貨物幹線だけに貨物廃止は無理だった訳です。

JR東日本にとっては整備区間より手前の根元区間の受益があるので、貨物輸送に伴う負担増は受け入れ可能だった訳ですが、同様の問題に直面した九州新幹線の八代―川内間ではこの手は使えず、並行在来線三セクの肥薩オレンジ鉄道にJR貨物が出資することで、貨物列車向けの電化設備等を維持するという方法が採られました。肥薩オレンジ鉄道のローカル列車は軽量ディーゼル車によるワンマン列車です。

北陸のIRいしかわ鉄道とあいの風富山鐡道では、当初検討されたサンダーバードの富山乗り入れは結局JR貨物とのコスト分担問題で実現しませんでした。IGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道が客単価の高い寝台特急の収入を当てにしたのとは対照的です。という具合に並行在来線貨物問題は統一的なスキームはなく個別対応に終始しました。言い換えれば行き当たりばったりだった訳です。

北海道新幹線に関しては、経営危機にあるJR北海道に追加負担を求めるのはそもそも無理ですし、これまで以上に沿線人口が少なく、財政力の弱い町村に負担を強いることになります。貨物廃止してバス転換もあり得る訳ですが、青函トンネル開通で天候に左右されない輸送手段として特に農産物輸送で優位性を発揮する貨物の廃止は、北海道経済に大きな打撃を与えるだけに、簡単にはいきません。

青函トンネルの新幹線と貨物の供用区間が速度と列車本数の制約条件になっていることから、国交省の本音は貨物廃止に傾いているようで、実際船舶へのシフトが検討されてますが、輸送量から言えば可能でも、天候の影響は避けられず、鉄道による安定輸送が北海道産農産品の競争力となっている現実から無理筋でしょう。

加えて東北新幹線の並行在来線三セクであるIGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道にとっては、寝台特急の廃止で旅客収入を減らした上に、JR貨物の線路使用料収入まで減れば、存続が危うくなります。こうなると北海道の都合だけで決めることもできず、着地点が見えなくなります。あとJR貨物自身も国の支援で基盤強化投資を行った結果、黒字転換して株式上場も視野に入る中で、その基盤を国に潰されることになる訳です。この点も将に行き当たりばったりです。

山線区間を除く長万部以南の区間はJR貨物が出資するということも考えられますが、北海道経済に関わる問題だけに、北海道庁が動かなければまとまらない可能性があります。とするとJR北海道に冷たい道庁の対応から見て期待できそうにありませんね。これインフラの積み増しによる維持費拡大問題として指摘しましたが、こうして過剰インフラを抱えると、その廃止も簡単ではないってことで、寧ろ問題を複雑にして解決を困難にします。

一方九州でも問題が起きています。

JR九州「自社株買い」株主総会で否決、青柳社長「今後も対話」  :日本経済新聞
株式上場したばかりに、株主となった投資ファンドからの圧力を受けている訳ですが、同時に豪雨被害で不通の日田彦山線の復旧を巡って関連自治体との間で困難な話し合いが行われています。日田彦山線自体は現状既に都市間輸送も貨物輸送も担っていない純然たるローカル線で、企業経営的には災害復旧するよりバス転換する方が合理的ではあります。

しかし忘れてはいけないのは、JR九州が株式上場に当たって上場基準クリアのために行った経営安定基金を取り崩して新幹線リース料の一括納付と償却資産の減損処理の結果、減価償却費を圧縮して本業の赤字体質を改善した一方、減価償却費の減少は同時にフリーキャッシュフローの減少を意味しますから、災害復旧の資金捻出を困難にしているという側面もあります。言い方は悪いですが、株式上場したために災害復旧もままならなくなったってことです。日経記事では複数のステークホルダーへの対応の困難さと纏めてますが、覚悟がないなら上場なんかするなって言いたいところです。

というわけで公共インフラの民営化は万能薬でも何でもない訳で、例えば大阪メトロや大阪シティバスの民営化の意義は今もって理解に苦しみますが、とりあえずここでは踏み込みません。しかし過剰インフラの淘汰を資本の論理に委ねて良いのかってところはあまり議論されてません。そんな中で北越急行ほくほく線の生き残り策は示唆に富みます。

元々スーパー特急方式を想定していたJR西日本区間の北陸新幹線は、ほくほく線経由で越後湯沢で上越新幹線に乗り継ぐ形が想定されていて、それを前提に北越急行では線路の高速化と共にJR西日本の681/683系を導入し、段階的にスピードアップして160km/hの営業運転を実現した訳ですが、北陸新幹線のフル規格化で梯子を外された形になりました。

そこで利益の一部を基金として内部留保して将来の減収に備える一方、特急廃止でお役御免となる681/683系をJR西日本に売却しローカル輸送に特化します。減収にはなりますが、特急車両の譲渡収入が得られる一方、通過車両キロの減少で保守負担が減少しますから、そこで収支をバランスさせることで存続を図ります。超快速スノーラビットで都市間輸送を維持しつつ、鈍速列車スノータートルという企画列車を走らせるなどして増収に励む一方、2018年12月1日には運賃値上げして収支改善を図ります。万博輸送対応の車両を大阪市に譲渡した北大阪急行と同じ手ですね。

幸いなことに高速化で高規格な線路故にメンテナンスフリーなのと、積雪対策により運休が少ないということで、ローカルな利用者の信頼を得ていることで、安定した収支を実現しています。てことでJR北海道もJR九州の前例を梃子に電化や線路強化や積雪対策などで将来のメンテナンスコストを圧縮することと、運賃改定を併せて収支改善を図るのが、道庁が当てにならない以上必要ではないかと。利子補給されているとはいえ低金利で運用益が期待できない経営安定基金ですが、現物投資は優先順位を間違わなければ本業でのハイリターンが可能です。

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