第三セクター鉄道

Thursday, November 23, 2023

勤労感謝にAIは勝つ?

「心配ないからね」とはいかないAI開発を示したオープンAIの騒動はこうなりました。

OpenAI、サム・アルトマン氏がCEO復帰 理事会大幅刷新へ - 日本経済新聞
元々汎用AI開発をで人類への貢献をミッションに掲げるNPO法人として発足し、大手ハイテク企業の市場独占や軍事利用、サルとロバの法螺吹き合戦で触れたデマ拡散などのネガティブなものを排除して人類に貢献するというその姿勢に賛同した多くのITエンジニアが集まりました。

当初はその名の通りオープンソースでの開発を目指し、開発過程をオープンにすることで悪意ある開発を排除し、競争環境でハイテク寡占の弊害を除去できるという見通しを示したものの、少数でも悪意あるエンジニアが開発に関与することでミッションが台無しになるというジレンマに気付きます。故にソースを公開しない形の開発にシフトする訳ですが、この点には賛同できないエンジニアもいる訳で、オープンソースでボランティア的に開発することで低コストで開発できるというメリットも失われます。

という訳でNPOが研究開発費を手当てするために営利目的の子会社を設立して営利部門を担わせる形になり、その子会社にマイクロソフトが提携のために出資するという形で関係が築かれ、大規模言語モデルの生成AIとしてGPTを開発しリリースした訳ですが、そうなると開発のスピードが速まって、しかもマイクロソフトという大手IT企業を利する形で事態が進捗することにNPOの理事たちが不安を覚えてブレーキをかけたということのようです。

マイクロソフトとしては折角掴んだ金の卵をやすやすと手放す訳にもいかずNPOの理事たちの説得と共にアルトマン氏を研究員として雇用するなどして動いた訳ですが、そこへオープンAIの従業員からアルトマン氏復帰を求める声が上がり、9割超の署名が集まりました。アルトマン氏はエンジニアの人望が厚かったようです。結果的に理事会が折れて決着し、加えて6人の理事の半数の3人を入れ替え、1人はマイクロソフトから送り込み、ガバナンスを安定させる手当もした訳です。

この一連のニュースで感じたのは、AI開発でアメリカが世界を大きくリードしている現実です。中国に限らず日本でもAI開発でアメリカを追う訳ですが、そこで語られることが例えば日本では人口減少をカバーする生産性向上策だったり、人間は労働から解放されると言われる一方、労働者から労働を奪うと反対されるなどのレベルの議論が中心ですが、アメリカではその先を行っていて、人類に貢献するAI開発というミッションと本気で格闘している人たちがいるということです。おそらく中国も日本もこの領域に達することは困難でしょう。

という訳で、勤労感謝の日だし、AIが労働市場にどんな変化をもたらすかという視点で見ると、AIへの期待は主に人口減少に伴う労働力不足の代替ということになります。経済学で言うところの資本装備率を高めて労働生産性を高める効果が期待される訳ですが、工場労働がロボットで代替されたように頭脳労働がAIに代替される訳ではありません。AIは単なるアルゴリズムですから、それ自体には創造性はなく、創造性が求められる頭脳労働は原則代替できません。

わかりやすい例として進化著しい自動翻訳で見てみると、マニュアルや技術解説書のようなものは自動翻訳の後に人間がチェックすることでほぼ問題ないレベルの翻訳が可能ですが、機微が表現される文学作品などは難しいということになります。故に翻訳家の仕事は無くなりませんが、従来はそれ故にハイスキルを求められていた翻訳家ですが、スキルの低い人が参入できる分野ができることで翻訳家は増えて結果的にハイスキルの翻訳家も含めて競争激化で報酬が下がるということが起きる訳で、AIに労働が奪われることはないとしても賃金は下がるということになります。これ事務仕事でも営業職でも結局ハイスキルの人ほどAIによる労働生産性効果が得られず、ライバルが増えて賃金が減ることを意味します。日本の場合で言えば連合などの労働団体こそAI問題に向き合う必要がありますが、現実はお寒い限りです。

そしてドライバー不足から自動運転への期待も高まりますが、気になる動きがあります。

自動運転事故、刑事責任の基準作成へ 実用化へ懸念払拭 - 日本経済新聞
記事にもあるようにあくまでも企業の参入障壁の緩和に力点がある訳で、ドライバー不足を錦の御旗に緩和を模索する動きです。ドライバー不足問題は働き方改革の例外扱いが2024年で終了することに伴って注目されましたが、それ以前に生産年齢人口の減少と需給調整規制撤廃による参入自由化の影響で賃金が下がり、そもそもなり手が減っていた中で、経過措置として2024年まで猶予され、企業は様々な対策を講じているものの、報酬アップだけはスルーされています。低報酬故に残業でやっと稼げるのに残業の上限が規制されれば収入源となる訳で、そこには手をつけずに対応すしようとするから無理がありますし、当然若者も免許取得のコストに見合わないから担い手は枯れる一方で、ドライバーの高齢派だけは進むという状況です。簡単にはいかない現実があります。

そもそも道路は公共空間な訳で、公共空間の私的利用には当然ながらルールが必要なんですが、オリガルヒの叛乱で取り上げた電動キックボードの解禁もレンタル事業者の便宜を優先した結果ですし、ユニコーンの馬脚で取り上げたライドシェア問題もそうですが、公共空間を利用した営利事業に規制がかかるのは当然のことです。実際ロンドンをはじめ欧州の大都市では営業許可を採取れていなかったり、規制のないアメリカでもライドシェア絡みの事故は多数報告されています。故にドイツの後塵で取り上げたカリフォルニアの自動運転車の事故に関わらずウーバーよりは安全と評価されてたりします。ライドシェアにしろ自動運転にしろ上述の翻訳家の例のように結果的に低報酬化をもたらすものについては、労働団体が問題意識をっ持つことが必要です。

公共空間としての道路という視点ではどうする縦割りで取り上げた宇都宮ライトレール(以下ライトラインと記す)の問題も関わってきます。同エントリーで記したようにライトラインは新設軌道に見える区間も道路扱いで全線併用軌道となっており、故に軌道法の規制で目視運転を前提とする40km/h規制を受けている訳ですが、出かけて試乗してみました。

とりあえずは40㎞/h規制でゆっくり走っており、交差点信号に黄↑赤×の二位式軌道信号が併設され、その他両終端のシーサスクロッシングと平石、グリーンスタジアム前のポイント部に軌道信号がありましたが、閉そく信号に相当する信号は見当たらず、列車間隔を制御するシステムはどうなっているのかはわかりませんでした。また信号に引っかかることもあり、電車優先信号が設置されているようにも見えません。現状では電車の表定運行時分に合わせて交通信号を調整しているだけのように見えます。現状はLRTというより通常のトラムの域を出ておりません。

現状道路上の目視運転で自動車の軌道敷内通行を規制している状況ですが、公共空間として緊急車両の通行帯として軌道敷が利用されることなどを踏まえれば目視運転のままのスピードアップは問題があります。おそらく何らかの対応は取られるのでしょうけど、ならば何故開業時から併用軌道50km/h新設軌道70km/hで開業しなかったのか、その辺の事情が明らかになっておりません。当然ながら専用路を走る鉄道と違って自動運転は簡単ではありません。自動車の自動運転が俎上に上る中でのライトラインの評価には難しさがあります。

また並行バス路線をバッサリ切って宇都宮大学陽東キャンパス、清原地区市民エンター前、芳賀工業団地管理センター前で途中乗り換えとしたことに対する評価は時間がかかるとしても結果的に公共交通利用が増えて渋滞が解消することがゴールということも踏まえておく必要があります。地元のバス事業者の関東自動車は出資と共にバス路線再編でドライバー不足が緩和されたとしてますが、乗換を嫌って乗客が減るようであれば本末転倒なのは言うまでもありません。未だに市民や鉄ちゃんの試し乗りと思しき乗客が見られるのが気がかりです。当然ライトライン自体の運行維持という新たな負担も負う訳です。

という訳でAI時代になっても労働力不足を解消できる訳ではなく、労働から解放されるといった楽観論がいかに非現実的かということは間違いなく言えます。AIもLRTもシステムとして社会にどう実装されるのかが大事ってことです。

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Saturday, November 11, 2023

ユニコーンの馬脚

ちょっとだけ中東のニュース。

米軍、シリアのイラン関連施設を空爆 「自衛目的」 - 日本経済新聞
中東に多数ある米軍施設にイラン系の墓相組織が攻撃を仕掛けたから報復したという公式発表。イスラエルとハマスの紛争中にややこしいことをしますが、あくまでも米国の問題ということです。欧米の対テロ戦争回帰で指摘したようにイスラエルはアメリカの劣化コピー版ですね。自衛権を反撃権に読み替えているとしか思えません。そんな国からミサイル買うぞと意気込む日本ですが、反撃能力のリアルはこれだぞ!
米WeWork破綻 金利上昇の重圧、不振企業の倒産増 - 日本経済新聞
資本主義と民主主義の微妙な関係で取り上げたWeWorkが遂に破綻しました。伝説の一角獣ともてはやされた会社が実はロバだった^_^;。ニューヨークなど大都市のオフィスをシリコンバレーのハイテク企業に倣ってカフェ風のお洒落なレンタルオフィスに改装してビジネスパーソンの交流を促し、イノベーションをもたらすという狙いだったようですが、賃料の高い大都市でド田舎だから可能なシリコンバレーのゆとりあるビジネス環境というのはどう見ても無理があります。所詮低金利カネ余り時代の仇花だったってことですね。

そしてこんな企業をユニコーンと持て囃してソフトバンクが出資して損している訳ですが、追加出資したものの、コロナ禍でリモートワークが拡大して利用者が減り、回復しないまま賃料は上がる一方で、FRBの利上げで借入金の金利上昇で事業継続が困難になり破綻処理となりました。ソフトバンクグループは英半導体企業のアームの上場で潤っており、やっと赤字脱却が見えてきたとはいえ、孫正義氏の目利き力はこんなもんなのかも。

そしてやはりユニコーンと持て囃されたウーバーも日本では食事宅配のウーバーイーツがメインという状況で、コロナ禍による外食規制で寧ろ追い風だったようですが、本業のライドシェアは日本の道路運送事業法に阻まれて事業展開が滞っております。それがここへ来て日本でも地方のタクシードライバー不足問題から規制改革会議で議論されており、政府も前のめりなのは減税くそメガネで記しました。

ポンド飛び出し円の切れ目で取り上げた京丹後市久美浜町のウーバーの事業に関しては地方のタクシードライバー不足を言うならいの一番に参照すべき事例ですが実績が公表されていない一方、国家戦略特区として特認を得た兵庫県養父市の「やぶくる」で河野行革相がこんなこと言ってます。

地域交通「喫緊の課題」 河野デジタル相、兵庫の特区視察 - 日本経済新聞
流石に国家戦略特区の指定事業なので非公表という訳にはいかなかったようで、視察時の記者会見で年間400人の利用があったことが明かされました。1日平均1人強という微妙な数字です。300余の基礎自治体の一定割合が視察したとすると、この程度の数字は行政関係者の視察でかなりの部分を占めると考えられますから、一般利用者の実数はかなり悲惨なものと言えます。過疎化で需要自体が蒸発したとしか言えません。

元々過疎化でバスの撤退が問題化していて、多くの自治体でデマンド交通の取り組みが行われております。ザックリ言えばバスとタクシーに中間的なモードで、会員登録した住民が電話や専用端末やスマホアプリで目的地と希望到着時刻を告げて呼び出し、小型バスやワゴン車が予約状況に最適のルートで利用者を拾い目的地へ届けるというもので、会員制乗合タクシーのような存在です。その中の幾つかは道路運送事業法の自家用車有償運行特例によっております。

ライドシェアは配車ベンダーがシステムを提供するのでシステム負担は減りますが、当然ながら利用が少なければ売り上げが少なく、手数料も稼げません。加えて本当の狙いであるデータ収集も非効率なので、本音は都市部への参入ですが、当然ながら都市部ではタクシーと競合する訳で、反対もありますし、参入規制の緩和で台数規制が緩められてタクシードライバーの収入が減っていた訳で、コロナ禍の利用低迷で離職したドライバーも多数います。その結果都市部でもドライバー不足は進行している訳ですが、逆に現役ドライバーにとっては残存者利益を享受できる状況になっている訳ですから簡単に認める訳にもいきません。そんな中で都市部でも動きが出てきています。

横浜の三和交通、タクシー運転手に副業人材 実証実験 - 日本経済新聞
横浜でタクシー会社と配車アプリベンダーのコラボで二種免許保持者を対象とした副業人材活用の実証実験ですが、ドライバー不足をライドシェア導入の口実にされることを睨んだ動きとも取れます。同時にライドシェアの問題点がタクシーとの競合といった狭い領域の問題ではないことも示唆します。

都市部でライドシェアが解禁されれば、当然ながら本業を持った人のスキマ時間活用に使われます。例えばパパの車使い放題の専業主婦やドラ息子、売れないタレント、大学教員の非正規化で生活苦の若き学者の卵たち、正規雇用でも賃金の少ない人たち、おそらくその中には社用車で営業する剛の者も現れるでしょう。そしてスキマ時間で無理な営業をすれば事故のリスクが高まりますが、ただでさえ事故時の責任の所在があいまいな上にドライバーが車のオーナーではない事例では当て脱げ逃亡の可能性もある訳です。それでも解禁すべきとするならウーバーのような配車ベンダーの利益にしか貢献しません。つまり新たな利権漁りでしかない訳です。加計学園の獣医学部新設に見られるように規制改革会議が利権を誘導したことを忘れてはいけません。

ギグ老いるショックで指摘したようにアメリカでは2016年の大統領選でヒラリー・クリントン候補がギグエコノミー問題として取り上げましたが、アメリカでは事実上ほぼ規制なしです。一方欧州ではロンドン市で問題が多すぎるとして営業許可を取り消してますし、同様に規制緩和に慎重な都市が多数あります。アジアでもほぼ規制なしですが、やはり問題は多数報告されてます。ライドシェアを世界標準のように言うのは間違いです。

公共交通で寧ろ今問題になっているのは通信のようなユニバーサルサービスが欠如していることで、例えば北海道新幹線の並行在来線問題のようにバス転換も困難ですし、上述のデマンド交通も極限的な効率を追求しながら採算性は悲惨で自治体の持ち出しで維持されてます。国や自治体がどのように関与すべきかといった枠組みを考えて実現することが必要です。

NTT問題ともオーバーラップしますが、通信のユニバーサルサービスは持ち株会社のNTTとNTT東西が負っていますが、政府保有株放出となればNTT東西を公的保有とするなどして担保する必要があります。そうでなければデータ通信や無線通信もNTT東西が持つ光回線に各通信事業者が依存している現状の通信事情でNTTグループに便宜が図られれば公正な競争環境が損なわれます。まあこれは防衛費倍増の為の株式放出なんですから、ミサイル買うのやめれば済む話でもありますが。通信も交通も加えて防衛も、大元の議論がそもそも欠如しております。

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Saturday, November 04, 2023

笑う鬼退治

鬼が笑う2024年で取り上げたインボイス問題のニュースです。

インボイス導入1カ月「想定以上に負担」 混乱続く企業:日本経済新聞
サラリーマンの経費精算でインボイスの有無の確認作業で現場負担があることは国税庁も認識していて1万円以下の取引でインボイスが省略できる経過措置を決めたりしましたが、ネット取引での登録ナンバー確認など次々に面倒な問題が湧いて出てますし、ドライバー不足なのに運送大手が委託先の多重下請けが仇となって委託先の登録の有無を把握しきれないなどの問題も起きています。独禁法違反が疑われる委託切りも見られるなど混乱しています。

これらはインボイス自体の問題というよりも説明不足や日本的な商慣習故の問題だったりしますが、ただでさえ働き方改革の2024年問題でドライバー不足が言われる中で、タイミングが悪かったとは言えますが、欧州付加価値税制度では機能している制度が日本ではこうなってしまうというのは、日本社会が抱える問題と見るべきでしょう。欧州でも当てない民主政治で損くらってますで取り上げたギリシャショックのようにヤミ営業でインボイス発行しない脱税が横行していたなんて例もありますから、明示された法令も社会の受容次第で機能を失うことは同じではありますが。

ギリシャショックは同時に財政破綻のリアルを示しており世界最悪の日本財政の反省材料にもなります。長期金利が7%になると財政が持続可能でなくなることを明らかにしました。今の日本の減税議論に違和感しかありません。それも所得減税に拘ったために実現は来年6月という役に立たないものですし、1年限りなら後に増税が待っている訳で、リカードの中立定理が働く故に減税くそメガネになります。減税うそメガネとも言われているようですが^_^;。だからといって恒久減税は論外ですが。

別の視点ですが今回の減税は税収の上振れ分の還元を謳っている訳ですが、その根拠となるのが22年度の10兆円超の税収上振れでして、円安による企業業績の上昇による法人税収とインフレによる消費税収が主なもので、7:3の割合です。昨年円相場が激しく動いた結果ですが、今年は150円前後で膠着しており、去年のような上振れが起きるとは言えませんし、インフレは税収増をもたらすと同時に政府支出も増やします。今年度の予算は当然インフレを踏まえて連動する社会保障費は拡大しますし、人件費や資材費の上昇は公共事業費も上振れさせますから、年度をまたいだ歳出増で消化されます。故に減税財源にはならない訳です。

日銀、長期金利1%超容認 植田総裁「大幅に上回らず」:日本経済新聞
日銀がYCC見直しに動きましたが、1%変動枠に長期金利が近づいて維持困難と判断して限度からめどへと表現を変え1%超の金利を容認する姿勢を見せました。但し急激な変動は抑えるということで緩和継続を謳っておりますが、実態は市場の圧力に押されての判断ということですね。それでも不十分ということで為替は円安に振れて150円のバリアを突破しており円安傾向は続きます。

とはいえ変動幅は小さいですから、上述のように法人税収の上振れ効果は限られます。但しインフレ要因ですから消費税収の上振れはある程度発生しますが、政府支出増を上回る水準になるかどうかは微妙です。ということは税収上振れを見込んだ減税は財源的には微妙ってことです。増税メガネと悪口言われたから減税を打ち出すとか、思いつきで政治をやるなということですね。

岸田政権の打ち出す政策は。例えば少子化対策と称して児童手当の拡充を打ち出し高校生も対象に加えてますが、一方で自民税調で高校生の扶養控除圧縮が議論されているという具合に目先を誤魔化す姿勢が見られます。基本的に国民をなめているとしか思えません。手当拡充よりより高校無償化の方が効果的ですし予算も少なくて済みます。という具合に目につくところをやったフリで乗り切って選挙の票稼ぎというあざとい姿勢は国民に見透かされてます。桃太郎よろしく鬼退治しても宝は得られません。桃太郎は岡山だけど。

2024年の働き方改革で人手不足が言われている中で少子化対策でバラまくというのは本当の問題解決にはならないばかりか、仮に出生率が上がって子供が増えたところで家庭内のケア労働を増やして特に女性の就労を圧迫しますから、人手不足は悪化します。持続可能な賃上げを打ち出して法人減税をしても法人税を払っていない赤字企業は蚊帳の外ですし、仮に賃上げが定着しても企業の人件費上昇は価格転嫁に繋がりますから賃金インフレで結局実質賃金は伸びないですし、新NISAで家計貯蓄を資産運用へという画を描いても、今の市場環境では国内株式に資金が回る保証はありません。日銀のETF購入で下駄を履かせた官製市場の現在の株価では個人投資家が得られる利益は限られます。一方でそれでも株価が上がらない日本企業はアクティビストの草刈り場です。

京成電鉄、ディズニーでゆがむPBR 実態は「1倍割れ」 - 日本経済新聞
お業績好調なオリエンタルランド株の保有分の時価が1.6兆円と自信の時価総額を上回る水準にあり、OLC株を除いた本体のPBRは0.5倍程度と見積もられ、英アクティビストファンドから一部売却を迫られております。京成電鉄の場合コロナ禍で空港輸送が大打撃を受けた不運はありますが、逆に空港輸送の1本足打法の脆弱性が露呈した訳で、オリエンタルランドのような優良企業を連結対象にしていることがリスク要因となっている訳です。

京成電鉄には新京成電鉄という優良企業をグループ内に抱えており地域輸送に特化した事業環境もあってコロナ禍の影響も軽微だった訳ですが、その結果コロナに勝てない国で取り上げたように完全子会社化して元々の保有分の含み益由来の負ののれんで益出しするなどしてきましたが、そんな一過性のことでは事態は改善せず次のステップを踏みます。

京成電鉄が傘下・新京成を吸収合併へ 25年4月 - 日本経済新聞
継続的に利益を計上して株価を上げるには、経営統合して運営面で規模の経済を狙うしかない訳ですが、悩ましいのは運賃の共通化問題です。共通化して運賃通算すると初乗り運賃の二重取りが無くなり乗客にはメリットがありますが、運賃収入の減少は避けられず寧ろネガティブな評価になりかねません。故に当面現行運賃を維持するということになりました。

別運賃自体は現行制度で禁止されておりませんし、京成自身もちはら線と成田空港線(スカイアクセス)は別運賃です。それぞれ歴史的事情があって、ちはら線は元々小湊鉄道が東京直通を狙って京成千葉(現千葉中央)―海土有木間の地方鉄道免許を申請して交付されたことに始まります。京成線を通じて東京進出を図った訳ですが、4ft8in1/2(1,435㎜)電化の京成と3ft6in(1,067㎜)非電化の小湊では直通はできない訳で、長らく免許更新を続けながら棚ざらしになっておりました。京成との合弁で千葉急行電鉄を設立して事業化を模索したものの進まず、沿線予定地の宅地開発が具体化して途中の千原台(仮)までの事業化が動き出し実現しました。しかしバブル期の仇花で宅地分譲は遅々として進まず、業績が上がらずに京成が救済合併して京成ちはら線となりましたが別運賃は維持されました。故に対都心でJRに乗り換える場合には千葉中央と京成千葉の間の京成線運賃の合算が重荷になりますが、赤字路線を引き受けた京成としては簡単に運賃を弄れないわけです。

成田空港線は元々三セクの北総開発鉄道(現北総鉄道)の路線を利用していて、小室以東は千葉県営鉄道由来の宅地開発公団線として別運賃だったこともあり、高運賃で利用が低迷しました。宅開公団は小泉改革の特殊法人改革で統廃合や名称変更の結果、鉄道事業を切り離すことになって京成が引き受け第三種事業者の千葉ニュータウン鉄道となり北総が第二種事業者となって一体化されたものの高運賃は改善されず、住民訴訟にまで発展しました。結果的には成田新幹線ルートを利用した北総ルート(成田スカイアクセス)が整備され北総線の運賃の見直しをすることで和解しましたが、それ故に北総線と共通化された成田空港線運賃も安易に動かせない政治性を帯びた訳で、やはり解消は困難です。

という訳で、新鎌ヶ谷で接続する新京成線と成田空港線の運賃統合はやはり無理となると、京成津田沼での京成本線・千葉線との運賃通算に限られる訳ですが、これも新京成線が新津田沼でJRと乗換可能で船橋乗換からシフトすることになると京成にとっては減収要因になります。船橋乗換の場合も東京メトロ東西線に向かう場合はJR線を挟んで初乗り運賃の重複負担となりますが、東京メトロの低運賃に助けられています。京成西船に優等列車を停めないのはJRに気を遣っているのかも^_^;。

ということで、当面車両の共通化や乗務員も含めた運営の柔軟化などで地道に益出ししたり、それぞれが抱えるバス事業の再編などで合理化を進めるぐらいしか打つ手はない訳で、アクティビストの納得を得るハードルは高いといえます。こうした問題を抱えて身動きが取れない日本企業は数多くあり、海外投資家を通じた国富の流出を助けるだけです。鬼たちも大爆笑-_-;。

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Sunday, October 22, 2023

減税くそメガネ

ガザの病院空爆でアラブ諸国がイスラエルを非難した後、イスラエルは否定してハマスの自作自演まで言い出す水掛け論、別のテロ組織による攻撃説まで出てますが、これ戦場のリアルとして見ればこの手の話はどれも可能性があります。従軍経験のある古老の話として、戦場では弾は前からばかりでなく横からも後ろからも飛んでくるものとされますし、湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争でも米軍のピンポイント攻撃で民間人誤爆が報じられた事例も多数あり、戦場はカオスであり、検証もしようがないので、いつまでたっても水掛け論になります。

話題を変えて岸田首相を「増税メガネ」と呼ぶネット言説が拡散しました。出所はアベノミクス妄信の情弱ネトウヨ界隈らしいのですが、いつのまにか「くそ」が挿入されて一般化しました。一方で安倍政権下での2回の消費税増税を挙げて「岸田政権は増税していない」という擁護言説も流れましたが、これ正直目くそ鼻くそです。とはいえ内閣支持率低迷もあって本人は気にしているとか。そうした背景でこういうことになるんでしょう。

首相が所得減税を指示、定額検討 宮沢氏「1年が常識」:日本経済新聞
時限措置としての所得減税を検討しているようですが、1年期限の定額減税で低所得者世帯には恩恵がないということで、非課税世帯への給付金と組み合わせるということらしいのですが、それ一律給付金と変わらないし、行政手続き上は一律給付の方が簡素で低コストですし、家計補助は需要を刺激してインフレの昂進に繋がるという意味で問題があります。仮に実現しても「減税くそメガネ」と言われるだけですね。インフレ抑制は金融政策で対応するものですが、金融政策を担う日銀の動きは緩慢ですが、流石に変化も見えます。
日銀、金利操作の再修正論 長期金利「上限」1%接近で:日本経済新聞
日銀は緩和継続しながら異次元緩和の出口を模索する姿勢ですが、米長期金利上昇による日米金利差拡大による円安と中東情勢の緊迫化による原油価格の上昇圧力もあり、市場はそれを織り込んで動きますから、結果的に長期金利1%の猶予枠を超える可能性が出てきてYCC見直しを余儀なくされそうな気配です。長く続いた異次元緩和で手足を縛られている事情はありますが、市場に押されて渋々動く姿勢ではタイムリーな政策を打つことはできません。

という訳で日銀が当てにならない中で政府が経済対策を打ち出そうとしている訳ですが、財源は曖昧にしており、予備費の未執行分や税収上振れ分で対応することを検討しているようです。これらは剰余金として次年度に繰り越され、財政法で半分は次年度の新発国債発行を圧縮することに使われます。それを補正予算で使う訳ですから、次年度の国債発行額を押し上げますし、今年度予算で国債発行で調達された予算の使い残しという意味では国債を財源にすることと変わりはありません。

加えて防衛費倍増と異次元の子育て対策を打ち出しており、その財源議論も先送りしていますから、将来の増税は避けられない事情があります。一方で防衛族議員からはトマホーク配備の前倒しの要求が出されております。旧式でよければトマホークは今買って配備を前倒しできるというですが、これ米中デカップリングのリアルで取り上げた無人偵察機グローバルホークの旧式を掴まされた話に懲りてないというか、何のための防衛なのかが問われます。加えて財源が確保されない中での前倒しは事実上国債を財源にすることと同じ意味ですから単なるゴマカシです。

異次元の少子化対策も財源を曖昧にしてますが、国会審議を必要としない社会保険料の値上げで対応しようとしているようです。これ事実上の増税ですが、負担と給付の関係を整理して対応すべきことです。絶望の少子化対策でも指摘しましたが、少子化対策は結局現役世代の負担増を通じた窮乏化で寧ろ少子化を促進します。繰り返しになりますが、労働力の減少を前提とした資本装備増強による1人当たりGDPの水準維持が重要です。

あと時限的減税ならば消費税減税が手っ取り早いのですが、その為にはインボイス制度が定着する必要があります。ですからインボイスに反対する一方で消費減税をを求める議論はインチキですし、欧州の消費減税はコロナ化などの非常事態対応で限定的に行われています。期間限定の減税という意味では所得税よりも適切とは言えますが、需要喚起はインフレを悪化させますから、現時点で適切とは言えません。

寧ろ財政需要拡大は将来の増税に繋がる訳で、財政赤字が結局将来に備えた消費をを抑制するメカニズムが働くことも指摘しておきます。これリカードの中立命題と呼ばれる確立した命題ですが、ケインズの財政政策があくまでも需要不足解消の時限的な財政出動ですから中長期では矛盾はありません。課題解決に奇策はありません。その意味で考えさせられるニュースです。

岸田首相、臨時国会でライドシェア導入の検討を表明へ:日本経済新聞
管前首相や河野デジタル相を中心に急浮上したライドシェア解禁ですが、特にタクシードライバー不足が言われ、特に地方で顕著ということですが、これ白タク認めろって話ですから、慎重に検討すべきです。東京など大都市部では台数規制撤廃で稼働率が下がってドライバーの収入を押し下げていた現実もある訳で、寧ろ稼働率が上がって生産性が改善している訳です。その意味では全面解禁は疑問です。

ポンド飛び出し円の切れ目で取り上げた京都府京丹後市久美浜町で車両運送事業法第78条を根拠とする自家用自動車有償運送特例による特認という形で現行制度内で対応しました。つまり地方限定ならば現時点でも参入可能性はある訳で、地域の実情を見ながら対応することは可能でしょう。法的整合性の意味で第二種免許所持者限定で車両も商用車登録で毎年車検とか旅客運送対応の保険加入など参入のハードルはありますが、安全輸送を優先すべきなのは言うまでもありません。ネギ背負ったカモで取り上げた電動キックボード解禁のような乱暴なことはしてほしくありません。ホンダ、日本で無人タクシー 移動難民を解消するか:日本経済新聞ホンダが提携関係にあるGMのクルーズの自動運転車を使って2026年にレベル4の無人タクシーを始めるというニュースです。いずれ大都市部にもドライバー不足は波及するでしょうから、それに備えた技術革新は理にかなっておりますが、レベル4の無人運転は海外の一部で認可されているものの、日本にそのまま導入するハードルはあります。特に法令改正を伴う部分で今の日本のような課題先送りの姿勢がネックになる可能性はあります。

技術的には完成度も高くなりつつある自動運転ですが、事故時の責任分担などの問題は技術よりも法的な課題として議論を深める必要があります。有償運行を前提とする以上、安全性ののりしろを大きく取ることになるでしょうけど、そうすると有人運転の他車ドライバーから見れば「かったるいのろま」になることを意味しますので、案外この辺が導入のネックになるんじゃないかと思います。加えて例えば信号が変わるタイミングでの停止と通過の判断や優先関係の曖昧な交差点や見通しの悪い曲線路でのレベル4同士の出会い頭では両者停止状態でフリーズするといったデッドロック現象も対策を求められます。この点は道路側の改良が必要となるケースも考えられます。とすると導入条件は案外厳しいものになりそうです。

こうした点からJR東日本が山手線で実現を目指す鉄道のドライバレス運行が先に実現するかもしれません。専用走行路を走る鉄道ならではのアドバンスですが、同時に併用軌道を走ろ宇都宮ライトラインのような軌道線では目視運転前提ですので、ドライバレスは不可能となります。とするとLRTのアドバンスは微妙になるということでもあります。この辺はどのように推移するか見通しにくいところではありますが。

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Sunday, October 01, 2023

インフレは続くよどこまでも

有り難くないタイトルですが、中国バブル崩壊の次はアメリカの話題です。米国債金利の上昇で円安が進む昨今、米連邦政府閉鎖の危機が今度ばかりは避けられない情勢でしたが、ギリギリのタイミングで回避されることになりました。

米下院、超党派のつなぎ予算案可決 政府閉鎖回避へ前進:日本経済新聞
10/1から始まる新年度の予算執行のためのつなぎ予算が下院で否決されたことに端を発する騒動ですが、下院多数派の共和党の強硬姿勢で民主党案が否決された後、マッカーシー下院議長の修正案が提案されたものの、民主党のみならず共和党からも反対が出て否決となり、絶望的な状況ということで、バイデン台帳量も政府閉鎖準備を指示せざるを得ない状況となりました。結果的にはマッカーシー議長案の修正で下院を通過したものです。

ここまで揉めたのは米国内の分断の深刻さを示すものです。元々新年度予算は民主、共和両党で合意済みですが、下院多数派の共和党が執行段階でブレーキをかけた格好です。共和党が嫌うリベラル的政策の予算を削り、不法移民対策としてのメキシコ国境のフェンス建設に予算を回せというのがザックリした主張ですが、既に合意済みの予算を削れというのは無理筋です。但し今回のつなぎ予算も45日間ですから、同じような騒動は繰り返されると見ておくべきでしょう。

これにはいろいろな背景があるんですが、共和党地盤の南部諸州にとって不法移民問題が重荷になっていることは確かな一方、東部エスタブリッシュメントや西海岸のハイテク地帯に強い民主党の移民に甘い姿勢は許せないという感情が前に出る訳です。その一方でヒスパニック系移民の増加で人口が増えており、移民の出生率の高さから人口の低年齢化も進んでいて、それが南部の生産年齢人口の厚みとなって工業化が進んだ面もあります。加えて共和党ステートの労働規制のユルユルさもあり、組合運動を認めないテスラの工場などが立地しております。それが別の問題を引き起こしていることも見ておきます。

米自動車スト拡大 新たに7000人、GMとフォード工場で:日本経済新聞
全米自動車労連(UAW)のストでGM、フォード、ストランティス(クライスラー)のビッグ3の工場がスト突入で生産が滞っております。UAWの主張はエンジン車からEVへのシフトは避けられず、自動車関連の労働者の数が減ることを睨んで、EV用バッテリーなどの製造工場の労働者もUAWに加盟させて保護を受けられるようにすべきだという主張です。産業構造の転換を理由に労働者が不利益を被ることは避けるべきということです。

ややこしいのはバイデン大統領が集会に参加して連帯を表明したことで、組合側が勢いづいていることで、結果的に火に油を注いだ形になってしまったことです。2016年大統領選で組合票がトランプ氏に流れたこともあり、組合票の囲い込みに動いた形です。不法移民が雇用を圧迫して産業が停滞したというトランプ流ナラティブの否定と共に、暗に南部諸州の労働規制の緩さを批判している訳です。同時に政権のEV政策も関わります。

トランプ時代のバイアメリカン法に触らずにインフレ抑制法(IRA法)を成立させた結果、米国内で販売されるEVは基本北米地域で生産されることを条件とされてしまいます。その結果EVシフトを進める欧州メーカーからWTO違反ではないかと言われごたついています。狙いとしてはバッテリー製造で世界をリードする中国への牽制なんですが、欧州やアジアのメーカーも引っかかる訳で、故に韓国現代なども米国内にEV製造拠点を設置を表明し、SKハイニックスなどバッテリーメーカーも追随しております。

当然欧州メーカーにも同様の動きがある訳ですが、製造拠点が置かれるのは労働規制の緩い南部諸州だったりメキシコだったりすると、結果的にビッグ3中心のUAWにとっては放置できない問題でもあり、出来れば連邦法で規制して欲しいというのが本音です。IRA法の狙いは気候変動対策と共に経済安全保障という面もあり、気候変動を重視するなら地産地消で可能な限り国内で生産して販売するのが正しいし、化石燃料依存の低減は経済安全保障の側面も持ちますが、同時に中国リスクも意識されており、中国産バッテリーの排除の狙いもあります。WTO提訴は現状上級委員の指名をアメリカが拒否していて機能していないですが、トランプ時代のそれを引き継いでいるのは、やはり提訴されたくないのでしょう。

という訳で政府閉鎖とストというリスクを抱えたアメリカで国債金利が上昇するのは当然となる訳です。分断による政治リスクが解消される見通しは立たず、また労組の強化は賃金を押し上げることにもなりますから、今後もインフレは収まらずFRBの追加利上げも現実味を増す訳です。となると低金利政策から抜け出せずにいる日本円の減価は避けられず、円安は進みますから、輸入物価上昇に伴う消費者物価上昇は今後も続くってことです。日銀の政策見直しが無ければ更にこの傾向は続きます。

経済安保は日本も取り組んでいる訳ですが、2020年の外為法改正の結果、妙なことが起きています。NHKスペシャルで取り上げられた大川原化工機の起訴取消事件の顛末のお粗末さが示す寒い現実です。

起訴取り消し事件「捏造」 訴訟出廷の警部補が発言:日本経済新聞
捜査官が捏造を認めたことも驚きですが、大川原化工機が輸出したのは液体噴霧乾燥機で、液体を噴霧して乾燥させることで粉末化する機械で、インスタントコーヒーや粉ミルクの製造装置になる訳ですが、警視庁公安部は生物兵器転用可能として無許可輸出を違法として刑事訴追した訳ですが、根拠となる証拠を捏造して会社幹部3名を長期間収監して1人はガンが進行して死亡するというとんでもない事件です。

警視庁公安部が動いた理由は推測ですが、法改正で実刑が定義されたことを受けて、捜査の指針となる判例を確定させたかったのでしょう。その為には抵抗力のある大企業よりも中小企業を追い込んで立件すれば手っ取り早いってことですね。狙い撃ちされた大川原化工機にとってはただただ迷惑な話ですが、特に経済安全保障絡みの政治性の強い法律故に、判例を確立させて捜査に睨みを利かせる所謂一罰百戒を狙ったと考えられます。それが今回のような人質司法の冤罪事件を生む訳です。現れ方の違いはありますが、政治が絡むとろくなことにならないのは日本も同様です。

JR北海道の札幌圏赤字急減、「黄線区」は拡大 4〜6月:日本経済新聞
コロナ禍前の水準に戻ってきたというニュースですが、記事中延慶損益を見ると、北海道新幹線並行在来線区間の函館―長万部間の赤字額が長万部―小樽間の赤字額の3倍以上あり、営業キロの違いがありますが、貨物列車運行の重荷を感じさせます。ま、それ言えば絶対額では北海道新幹線が絶対額では断トツで、青函トンネル区間という特殊区間ではありますが、札幌延伸後の収支改善も厳しさを匂わせます。

札幌都市圏以外は収支均衡は絶望的と言えます。その中で並行在来線協議を進める訳ですから厳しい現実ですが、加えて余市―小樽間で並行路線を持つ北海道中央バスがドライバー不足からバス転換を渋っていますし、それどころか事前に何の相談もなくバス転換を打ち出した北海道に対する不信感もあるようです。

鈴木知事が夕張市長だった時代に夕張支線の廃止に道筋をつけたことが成功体験となっているのでしょうけど、地元事業者の夕張鉄道が引受に動いたことでまとまったものの、ドライバー不足からバス便の維持は困難を極めており、鉄道時代を受け継ぐ伝統の長距離路線の新札幌夕張線の運行停止など満身創痍です。バス転換が選択肢にならない時代に直面しているってことです。

アメリカでペンセントラル鉄道が破綻したときの連邦政府の素早い対応と比べると、本当に危機感がないですね。ペンセントラル鉄道の場合は、結局連邦政府が線路保有機構としてコンレールを立ち上げて上下分離で運行継続を図りました。東方回廊とシカゴをエリアに持つペンセントラル鉄道が運行停止されると大量の貨物の滞留が起きるということでの緊急避難だったんですが、結果的に経営の苦しい他の民間鉄道も合流して鉄道ネットワーク維持に寄与しました。

コンレールはその後民間入札でサザンパシフィック鉄道に売却されて所謂北米5大ネットワークの一角を占めますが、それぐらい鉄道貨物の重要性が高いってことでっすね。結果的に旅客部門は都市圏毎の交通営団が引き受け、長距離列車はアムトラックが引き受ける形で現状となります。線路保有が貨物会社で旅客会社が線路を借りるという日本と逆の形になりました。この形態が基本ですから、なるほど日本の新幹線のような高速鉄道の整備のハードルは高い訳で、鉄道好きと言われるバイデン大統領がIインフラ整備法で約束したものの、財政支出を巡る共和党との綱引きで進んでおりません。政治はリスクの時代と自覚するしかないのかな。

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Sunday, September 17, 2023

国際問題になった東京五輪の落とし物

東京五輪の落とし物の続きですが、ユネスコの諮問機関のNGOイコモスから神宮外苑の再開発撤回が要求されました。

神宮外苑再開発、イコモスが撤回要求 事業者や東京都に:日本経済新聞
富士山をはじめ世界遺産登録でお世話になったイコモスからの撤回要求ですから、スルーはできないでしょう。

おさらいですが、神宮外苑は明治天皇の崩御を悼む日本国民の寄進によって実現したもので、国民にとっては倒幕で維新、開化を実現させた偉い人程度の認識でしょうけど、広く国民から敬われていた存在でした。そんな国民の声を踏まえて当時の政府は開発制限で地権者の権利を制限する風致地区を制度化してその指定第1号としました。その結果緑地の保全や建設物の高さ制限が課されており、神宮球場や秩父宮ラグビー場、国立競技場などのスポーツ施設もその規制の範囲内で作られたものでした。

Undoしたい大草原wwwの小さな森のザハ案撤回騒動を覚えている人は多いと思いますが、あまり報じられておりませんが、当初旧国立競技場を改修して使うとしていた五輪招致がいつの間にか新国立競技場建設となり、旧国立競技場はあれよあれよと解体されて、工事の難易度が高いザハ案が撤回されたものの、同じ規模の隈研吾案に落ち着いたというアレですね。

実は事前に神宮外苑エリアの高さ制限緩和の都市計画変更が行われていて、謂わば新国立競技場はその露払いで、故にあの規模の新競技場が必要だったってことです。お陰でキャパが大きすぎてレンタル料も高く稼働率スカスカのお荷物になった訳ですが、高さ制限緩和で高層ビル建設が可能になれば。商業施設を誘致して高額のテナント料が稼げますから、少数の民間地権者を利する訳です。

実際三井不動産が高層ビル建設を表明してますし、一方で高層化を快く思わない明治神宮に対しては高さ制限緩和で生み出された容積率の過剰分を隣接する伊藤忠商事に譲渡して譲渡益を得ることで黙らせるという具合に実に悪知恵の詰まった再開発計画です。立案したのは萩生田光一議員で五輪招致委員長の森喜朗が後押ししたものです。ちなみに五輪汚職で招致委員などの刑事訴追がされてますが、萩生田光一も森喜朗もお咎めなしで単なるガス抜きですね。

こういう事情があるので、コロナ禍で1年延期してしかも無観客でも、五輪をやらないわけにはいかなかったし、その裏でこうした悪事が進行していたけど、スポーツを餌にメディアも沈黙していたしで、結局国民の知らないところで進んだ再開発計画というところもイコモスも問題視しています。五輪をダシにした再開発が問われます。

イコモスに関しては世界胃酸でとろける文化散財万歳で取り上げた軍艦島の世界遺産登録で英文の説明に韓国がクレームをつけたことで揉めたこともありましたが、一応日本の主張に沿った決着を見ております。その意味でイコモスからのクレームへの対応は難しいところがあります。

国際ルールを盾に政府の姿勢を正当化する姿勢はALPS処理水海洋放出でIAEAを利用したりしてますが、IOCも利用されただけってことで、国際ルールの都合の良いチェリーピッキングということが言えます。国も都も対応を誤れば国際世論を敵に回すことになりかねません。どうなるでしょうか。

一方五輪汚職で電通の指名停止もあって工程管理がグダグダになっている大阪万博ですが、怪運国債市場の蓋で述べたように工事が進まずいよいよ開催が危ぶまれてます。しかも夢洲の地盤沈下で土壌改良が追い付かないってはて、これ辺野古と同じような状況で土壌改良しないとパビリオン建設も困難ですし、建設資材の搬入路は橋とトンネルが1ずつですし電気もガスも水道も無いからトイレも浄化槽が必要と何だかウンコ臭い現状です。地下鉄中央線の公示も滞っております。

こうして見ると維新のザル頭ぶりが目につきます。所詮底の浅い小悪党で関西財界も腰が引けてます。政府が乗り出してゼネコンへの協力要請をしたりしてますが、図面すら開示されない工事を請負うことはできません。結局政府と大阪府/大阪市の責任のなすり合いになりそうですね。なにわ無くとも江戸村先五輪ですよで示唆したように、どこか間抜けな維新です。まあ阪神のアレで浮かれとりゃええわい。フランチャイズを失うヤクルトの優勝は遠のくでしょうから、留飲を下げられます。

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Sunday, September 10, 2023

どうする縦割り

ジャニーズ問題ですがBSJストラクチャーで取り上げたビックモーター問題と似ています。非公開のオーナー企業でオーナー社長が役職を退いてイエスマンの雇われ社長を立てたところはそのまんまですね。ソーセージ問題の応酬などの話題性は流石芸能事務所、エンタメを忘れていない^_^:。同時に性加害問題の根の深さも露になりました。

芸能界は人々に娯楽を与えるという意味で公娼制度の延長線上にあり、その意味で性的虐待や性的搾取が起こりやすいのは洋の東西を問いません。某NHK元会長が「慰安婦も当時合法だった公娼だ」と言い、欧州で現存する公娼制度を引き合いに出したことがありました。但し彼が見落としていたのは、現存する欧州の公娼制度は感染症防止のための健康診断の義務付けや、反社会勢力が入り込みやすい斡旋人などの性的搾取の防止に力点が置かれていて娼婦の人権擁護法としてアップデートされていることをご存じなかったようです。つまり慰安婦もジャニーズも人権問題という認識が希薄なメディアの報じ方や政府の対応なども問題です。

早速JALなど一部企業でジャニーズタレント起用の見直しの動きが出ています。海外事業にコミットする企業にとっては途上国の劣悪な労働環境や児童労働などで投資家から圧力を受けており、人権問題は経営課題と認識されている訳ですが、問題はドメスティックなメディア企業です。元々噂はあったし、90年代の所属タレントの実名告発を一部メディアは報じたものの特に放送メディアは沈黙しました。

報道部門は後追い取材はしたのでしょうけど採用されず没となれば記者もモチベーションを失います。大手芸能事務所の機嫌を損ねれば番組やイベントのタレントのブッキングや情報提供で割を食うということですね。放送事業者が利害を持つ利益相反がある訳で、ビッグモーター問題で明らかになった自動車販売店が自賠責保険の斡旋で損保会社に優位な立場だったこととも似ています。報道機関としてよりも視聴率競争で優位に立ちたい企業論理が前に出ました。そして日本的な横並び主義も災いしました。また報道機関としての編集権の独立も日本には存在しないことも。そういやNHK大河ドラマの主役誰だっけ?どうするNHK。

台風直撃のお盆が示した課題で懲りたJR東海は台風13号の進路次第では東海道新幹線の運休ありと示唆しました。幸い進路は東へ逸れて事なきを得ましたが多客期のダイヤ混乱は懲りたようで国交省への報告書でも取り上げました。

JR東海、国交省に検証結果報告 台風ダイヤ混乱で:日本経済新聞
16日の豪雨で山陽新幹線との直通運転を止めた結果、新大阪駅に多数の編成が滞留し、車両基地に収容できなかった結果、17日始発の出発準備が遅れて混乱となったもので、再発防止策として運行や混乱の状況全体を把握する担当者を置いたり車両基地の在線状況に応じて京都駅や米原駅に退避させるなどを示しています。

よく考えると国鉄時代は一体だった東海道山陽新幹線が分割民営化で新大阪で分割された結果、新大阪で滞留した編成を山陽側に送り込むことが出来ずに起きた混乱とも言えます。分割民営化の検討段階では新幹線の一体性を重視した本州2社+三島会社+貨物の6社体制案もありましたが、西日本会社の規模が過大になり地域分割の意義が薄れるということで現行案に落ち着いた経緯があります。

歴史にifは禁物ですが、同案が実現していればかなり異なった展開となり、東海道新幹線の一本足打法というJR東海の特異性もなく、今回のような混乱もおきなかったでしょうし、実現が見通せない北陸新幹線の関西延伸もすんなり米原ルートで実現に動いていたでしょうし、敢えてリニアを作ることもなかったでしょう。また東北新幹線東京延伸時にJR東日本が要請した東海道新幹線との直通運転も実現していた可能性もあります。地域分割がもたらした縦割りの弊害が如実です。

宇都宮LRT、市街地へ20分の利便性を生かせぬジレンマ 30年越しの悲願 宇都宮LRT④:日本経済新聞
鬼怒川両岸の広大な土地は農地を中心とした市街化調整区域で都市計画変更しないと開発できないジレンマがあります。元々駅東側から芳賀町に至る道路の渋滞対策として計画されたLRTで都市計画とは別建てだったこともあり、また地権者の同意も必要ということで、現時点で具体的な開発計画はありません。また水害が頻発する昨今、開発してよいものかどうかの判断も難しいところです。30年に亘る計画故にコンパクトシティのコンセプトより前だったこともあります。故に開発はベルモールのある宇都宮大学陽東キャンパスまでの区間に集中しており、マンションラッシュとなっております、ある意味結果オーライのコンパクトシティと言えなくもないですが、他にゆいの杜中央最寄りの新興住宅地が新幹線とLRTの組み合わせで移住者に人気ということです。

あと処理水海洋放出で見えた「新しい戦前」で取り上げた軌道法縛り問題ですが、宇都宮ライトレールでは上上下分離を実現するために全区間宇都宮市道、芳賀町道として整備されており、見かけ上新設軌道の鬼怒川橋梁前後区間や車両基地も道路予算で整備された併用軌道という法的位置づけで、開業後の事業収支を支えています。これ国交省予算の柔軟化で可能になったもので、例えばバスタ新宿がR20甲州街道の環境整備事業として道路予算が使われたり、肥薩線復旧事業への道路予算や河川予算支出が提案されていることともつながり、部分的に縦割りが解消されてはいますが、別問題もあります。

つまり鬼怒川橋梁前後を含む全区間が法令上併用軌道区間となり40km/h規制を受けることになります。一方いいとこ取りで道慮予算を多用した結果B/C比を悪化させた訳ですし、公金の支出として説明責任を果たす必要も大きいのですが、反対派を説得できていない以上果たしたと言えないところは残念です。鉄ちゃんの間では昭和レトロの反対派というレッテル貼りが横行しておりますが、行政側の対応に課題があることは指摘しておきます。

おそらく特認を受けて併用軌道区間50km/h、鬼怒川橋梁前後区間70km/hのスピードアップ実現時を前提にB/C比を計算したのでしょうけど、用地買収や土地改良で事業費の上振れがあったとはいえ、かなりメンドクサイ手続きを経てやっと実現した宇都宮ライトレールがLRT新設の先行事例となることは現状では期待薄でしょう。根拠法規の軌道法をアップデートして鉄道事業法の参入規制を緩和した軽快鉄道事業法のような形にすることで、もろもろのメンドクサイ手続きを簡素化することは考えられます。そうすることでLRT新設に留まらずローカル線の地元引受などにも活用できる汎用性が得られます。例えばローカル線の末端区間で40km/h規制を受け入れる代わりに無閉そく目視運転容認とか第四種踏切容認とか道路予算による上下分離に応用できます。

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Sunday, September 03, 2023

戦争を知らない大人たち

「新しい戦前」の続きですが、国際海洋法で汚染物質の海洋放出は禁止事項です。ALPS処理水の放出でも問われることとなって現れるるところで、当然ながら外交問題になります。故に過剰反応とはいえ中国の海産物禁輸措置には根拠があります。ALPS処理水問題を国内問題から外交問題にしてしまった、しかも政府の意思決定を経てということですから外交の失敗なんです。

これ例えば民主主義対権威主義では見えない本音で取り上げた盧溝橋事件を巡る近衛文麿首相の判断ミスと似ています。第二次国共合作で反転攻勢を決めていた中国(南京政府)に対して陸軍増派という判断ミスを犯して日本を戦争へいざなった構図が思い出されます。台湾問題で火種を抱える中国に外交的な口実を与えることに無頓着すぎます。

同エントリーで取り上げたように近衛首相は国家総動員法を成立させて戦時体制構築に一歩を標したこともあり、それが戦後処理を通じて再編され固定化された産業秩序が戦後の高度経済成長で機能したことと、その成功体験故に強固な既得権となって今の日本の長期停滞をもたらしていることも指摘しました。つまり社会構造として戦前と戦後は連続性がある訳で、逆にその体制が行き詰まることで日本社会に与えられるストレスは容易に排外主義に転じやすい性格を有します。

そして問題なのは戦争を知っている大人たちが鬼籍に入り少なくなっていることです。アジアの周辺国が日本に倣って経済重視に舵を切り追いついてきた結果、追いつかれてきている訳で、それが嫌韓や反中となって現れております。以前から指摘しておりますが、韓国も中国も日本の後追いなんだから、いずれ日本と同じ長期停滞のワナに嵌ると申し上げてきましたが、実際にそうなりつつあります。

例えば中国の不動産バブル問題は典型的ですが、融資平台と呼ばれるノンバンクの不良債権問題は住専問題など日本の不動産バブル崩壊と同じような展開を見せております。但し制度や社会体制の違い、人口規模の違いなどで異なった展開になると考えておりますが、長くなりますので別の機会に有りますが、この状況を「それ見たことか」とばかりに喜んでいる人たちには、中国の経済停滞が日本や世界に与えるマイナスインパクトを考えていません。

逆に中国の経済停滞を台湾進攻が近づいたと騒いでますが、歴代王朝時代から経済に問題を抱えた状態で軍事オプションを用いることはありません。上海のゼロコロナ抵抗運動のように、巨大な人口を抱えるがゆえに民の圧が政権を揺さぶる構造は今も変わりません。そして中国政府は巨大な国内市場を戦略的に利用することを覚えた訳で、日本産海産物禁輸は典型的です。当然ながら他国漁船の日本近海の水揚げ分は対象外ですから迂回路はある訳です。

戦争を知らない大人たちは日本だけの問題ではなく、例えばアメリカではベトナム戦争のトラウマがある訳で、バイデン大統領がウクライナ支援に慎重姿勢鵜を見せる理由でもあります。ベトナム戦争当時の若者世代だった訳で、戦争と同時進行で若者たちが反戦歌を歌い抵抗した歴史があります。故にアメリカはまだ戦争を知ってる大人たちが顕在なんですが、例えば子ブッシュ大統領のように親の七光で兵役を回避したりした同性代も存在します。トランプも多分同類です。

そのバイデン大統領が日本には軍備増強を求めるのは、ベトナムへの自衛隊派兵を日本政府が断ったことがアメリカの外交課題となっていた訳で、満額回答した岸田首相はやはり令和の近衛文麿と呼ぶべき暗愚なリーダーです。戦争を知っているバイデン大統領故に、中国の軍事オプション発動をアメリカ単独で抑えることは不可能と知っており、故に日本や韓国との連携強化に動いた訳ですが、日本と韓国の国内世論はちと面倒です。

特に韓国ですが、保守派の尹錫悦大統領の支持率が低く、国内世論でも反共保守的な政治姿勢に反対の声があり、次期政権が革新派になれば約束が反故にされるリスクもあります。そんな不安定な同盟関係を梃子に本気で中国に対峙しようってのは無理です。また台湾とは外交関係がなく主権国家と見做されません。一つの中国の原則からすれば台湾有事は内戦に当たりますから、集団的自衛権行使の対象にならないという法的な壁もあります。それでいて「今はバターより大砲だ」と言わんばかりの軍備増強の意思決定は本当に戦争を知らないんだなと-_-;。

それでいて面倒な問題は先送りして意思を曖昧にしている訳で、ALPS処理水問題も典型ですが、安全性を考えれば自然乾燥による水蒸気放出が望ましいところです。水蒸気の水分子に含まれるトリチウムは少量であれば有害性は低いですし、そもそも福島第一原発20㎞圏は住民避難でほぼ無人ですから、環境への影響は少ないのですが、最初から海洋放出ありきで進めてきた経緯があります。決め手は蒸発後の残留する放射性汚泥の処理問題が難題ということです。

当初は凍土壁で地下水流入を抑えて処理水は数年で海洋放出を終える計画でしたが、凍土壁の遮水効果は限られ、今でも地下水流入は続き汚染水を増やし続けています。それでも当初日量500~800tあった地下水流入が200t程度の抑えられてはおりますが、当然凍土壁の経年劣化による性能低下は避けられない訳で、そうなると折角海洋放出で処理水を減らしても汚染水が増えるという事態は避けられません。結果的に海洋放出期間を30年としておりますが、その為には推定880tあると言われる燃料デブリの撤去が終わる必要がありますが、全く見通しは立っておりません。

加えてALPSで濾し取った放射性汚泥の処理方法が決まっておらず、専用容器に詰めて専用建屋に格納してますが、そちらもいっぱいいっぱいで、建屋増築が必要になっており、そのスペースねん出のためにALPS処理水の海洋放出は必要というロジックなんですが、これ自然乾燥による水蒸気放出で残る放射性汚泥と原理的に同じものです。つまり深く考えずに目先のコストで意思決定した結果の行き当たりばったりが実態ってことです。失敗を総括し軌道修正する知恵は存在しません。

台風直撃のお盆が示した課題で示した静岡県内の豪雨による徐行でJR東海の司令員の正常化バイアスが働いたことによる混乱を思い出していただきたいのですが、刻々と変わる状況を的確に判断して対処する能力は問われます。この点はJR東海も認識した模様です。

「運行管理に課題」 台風時のダイヤ混乱でJR東海社長:日本経済新聞
変化する状況に的確に対応することの重要性を認識させる出来事ですが、福島第一原発の廃炉事業を40年と見積もったことで、既に12年経っていて進まない廃炉事業を見直すのではなく行き当たりばったりで対応するから、あと30年弱で廃炉を終えるからALPS処理水の海洋放出期間は30年とぎゃkす案しているだけってことですね。こんなt頃からも国や東電のウソが見えます。

あとオマケ。8/26開業の宇都宮ライトレールが大盛況で団子運転が見られたようですが、これ東海道新幹線の豪雨による徐行の結果の列車渋滞と原理的には変わりません。恐らく不慣れな乗客による客扱い時間の延びが影響しているでしょうし、ある意味軌道系交通システムの弱点でもあります。その宇都宮ライトレールは当面40㎞/hでの営業運転ですが、これ併用軌道運行の軌道法に準拠した規制なのは前エントリーで指摘した通りです。

一方来年3月のダイヤ改正でスピードアップと増発と快速運転がアナウンスされてます。併用軌道区間50km/h、新設軌道区間70km/hとしておりますが、無閉そくの目視運転前提の40km/h規制ですから、スピードアップ実現のためには相応の保安装置の設置が必要です。水準としては京阪大津線と同等となる訳ですが、そうすると起動回路を使いにくい併用軌道区間でも閉そく運転をするのかどうか、あるいは何らかの安全対策で特任を受ける予定なのか、そして現時点で保安装置が設置されているのかどうかなどが興味をそそります。団子運転が報告されてますから、現時点では目視運転と思われますが、落ち着いたら現地で確認したいところです。

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Saturday, August 26, 2023

処理水海洋放出で見えた「新しい戦前」

タイトルの「新しい戦前」という表現は好きじゃありません。GHQの占領政策で強制された「戦後民主主義」が実感のないまま形骸化した現実を見せられて寧ろ後者こそイリュージョンではないかと突っ込みたくなります。勿論主権者たる国民の自覚が足りない結果ですが、戦前の統治システムを温存してきた現実が顕在化したことは、統治する側のなりふり構わない姿勢を露骨にしています。

サイドバーで取り上げた特捜検察の正体 (講談社現代新書)で著者の弘中惇一郎氏は村木厚子事件やゴーン事件の弁護を受任した弁護士で、多くの特捜事件を受任した経験をまとめて強引な操作姿勢を明らかにしておりますが、電気が足りない筈ではで取り上げた秋本真利議員の贈収賄疑惑でも日本風力開発社長が証言を覆したことがおそらく検察のリークで報じられました。村木事件の関係者の自白調書が公判で本人から否定されたり証拠捏造されたプロセスに似ています。

背景として秋田県などの洋上風力事業の1回目入札で陸上風力で実績のある日本風力開発やデンマーク風力大手べスタスなどが有力視されていた中で、三菱商事グループが安値落札で案件を独占したことに端を発します。発電単価が日本風力開発の半値程という明らかな赤字落札で、権益独占に意図があると見られておりました。その結果業界団体で内輪揉めとなり2回目の入札を延期して基準を見直したうえでやり直しとなる直前の東京地検特捜部の告発ということで、匂います。

脱炭素でエネルギービジネスの見直しが避けられない総合商社の利権保護よりも、実績のある内外の風力会社に担わせて風車など現時点では輸入に頼らざるを得ない中で、円安で輸送費も含めて割高となる輸入品よりも、国内メーカーの育成という観点からも、商社系の事業者よりも経験値のある専業会社の方がふさわしいと思うんですが、とりあえず訴訟を抱えた日本風力開発は2回目入札を降りざるを得なくなり、結果的に商社系が漁夫の利を得ます。

こうした不透明な問題は多数ありますが、何故という問いを発することは忘れてはいけません。それによって隠れていた問題点が表に出ることはままある訳ですし。上記エントリーでリンクを張ったハーバービジネスオンラインの記事でトリチウム以外の核種が遺っていることが河北新報にすっぱ抜かれて公聴会が大荒れになり、漁協の同意なしには放出はしないと約束したこともスルーして政府と東電の言い分だけを伝えるメディアの対応は疑問だらけです。

「廃炉」目標まで30年、原発処理水の放出開始:日本経済新聞
廃炉作業を40年で終える目標に対して、現時点で処理水問題がハードルになっていることは確かですが、元々はメルトダウンした燃料デブリに地下水や雨水が接触して汚染水になった訳で、地下水流入を防ぐ目的で凍土壁が作られたものの遮断には至らず、今でも増え続けており、タンクの置き場がないと騒いでいる訳ですが、最初から石油備蓄用の大型タンクを用意すれば問題をクリアできましたし、そもそもALPSで処理しきれないのはトリチウムだけではないという重要情報を敢えて説明せずにトリチウムの安全性ばかり強調している訳で、それによって問題にフィルターがかけられてしまうことが問題なんです。

残留核種の完全除去(少なくとも検出限界以下)とすることが事実上難しい中で、とりあえず「安全な水」から放出して、世論の関心のある間は海水検査で「基準を超える汚染はありません」と言い続ければいずれ世間は忘れてくれるってことですね。WHOやIAEAの検査もサンプル水を東電が提供しヒアリングしただけですから、科学的な反証可能性を満たしません。中国や韓国のみならず核実験で汚染された南太平洋の島嶼国も反発しています。加えて中国の水産品禁輸で漁業犯傾斜が悲鳴を上げてます。

中国の禁輸、豊洲動揺 ホタテ3割安「影響いつまで」:日本経済新聞
量販店やネット販売でシェアが低下する水産市場の頼みの綱が輸出拡大だった訳ですが、完全に冷水を浴びせられました。中国の過剰反応とはいえ事前に警告していた中でも日本政府の意思決定の結果ですから、中国をせめても仕方ありません。寧ろ東電のために民間の企業努力を潰したとも言えます。

また中国の原発でトリチウム水を海洋放出しており、濃度は福島より高いということも度々取り上げられてますが、正常運転されている原発の冷却水に中性子照射の結果として発生するトリチウムと、燃料デブリに触れた汚染水をフィルターで処理したものを同列に見ても意味がありません。問題なのはトリチウム以外の多種多様な残留核種なんですから。言ってみれば日本のメディアは政府と東電の思惑通りにトリチウム安全キャンペーンをしているようなもので、米NYタイムズでは「薄めた汚染水」と報じており、寧ろ正確な情報を伝えています。

てことでここまで日本のメディアは劣化したってことです。都合の悪いことは報じずまるで戦前の大本営発表ではないかってことです。本来政府発表に疑問を持ち突っ込んで取材し報道するのがメディアの本来の役割です、その意味では処理水問題での河北新報やアルプスの盛土ハイキでリニア工事の不都合な真実を報じた信濃毎日新聞など地方紙にはまだ社会の木鐸としての気概が残っているようです。

鉄道誕生から延々つづく「二重行政」とは!? 役人の縄張り争いに"手打ちの条件"…非効率生んだ「2つの法律」:乗り物ニュース
気概を感じる若き鉄道ライターの枝久保氏の論考ですが、鉄道と軌道の2つの法律のせめぎあいに見る中央省庁の角逐をザックリ整理していて目の付け所が秀逸です。奇しくも本日宇都宮ライトレールの開業日ですが、75年ぶりの路面電車新規開業で軌道法の呪縛が復活しました。モノレールやAGTなど鉄道事業法と軌道法のいいとこ取りが見られる一方、併用軌道前提の路面電車では最高速40km/h縛りで本来の性能を発揮できないばかりか、将来のスピードアップを見込んで作った鬼怒川橋梁前後の新設軌道区間が結果的に事業費を押し上げB/C比を悪化させたのに、新設軌道区間も40㎞/h縛りです。

というのは鉄道事業法が軽便鉄道法から地方鉄道法を経て国鉄民営化で鉄道事業法へと時代毎に見直され進化した一方、軌道法は大正時代の古い条文のまま大した見直しもされずにきたツケが出ました。富山で成功した上下分離も寧ろ公金のB/C比縛りで反対の声が出るなどして難産となりました。元を質せば役所同士の縄張り争いの結果ですが、課題を残します。

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Saturday, August 05, 2023

BSJストラクチャー

巷で話題のビッグモーターですが、ありがちな企業のコンプライアンス問題で見るよりブルシットジョブ型雇用の国の視点で捉えるとわかりやすい構造化されたブルシットジョブ(以下BSJと略す)ということです。過剰な修理ノルマが達成できないと降格されるからクルマに傷をつけるとか、落ち葉1枚で降格されるから除草剤撒いて街路樹を枯れさせるとか、典型的なBSJですが、これらによってお金が動いてGDPだの成長率だのといった経済統計に反映されていることは指摘しておきます。

細部には立ち入りませんが、過剰修理で修理代金は保険料から支払われるから確実ですし、保険料を支払った保険会社も、事後に契約者の等級を変えて保険料を値上げして回収しますから、自らの懐は痛まない訳で、特に損保ジャパンとの関係が密だったといわれておりますが、保険会社がどこまで意識的にコミットしたかは不明です。加えて未公開の同族企業ですから、オーナーの役職退任で雇われ新社長が矢面に立つだけで実質的にガバナンスは変わりません。BSJで成長に下駄を履かせることは可能ですが、国民経済的にはマイナスなのは言うまでもありません。てことでこのニュースを取り上げます。

マイナ証明書誤交付、裏に「富士通のスパゲティコード」 混乱マイナンバー(3):日本経済新聞
こちらも話題のマイナンバーカードですが、システムベンダーの富士通が作ったシステムが典型的なスパゲティコードであることが指摘されてます。麺のように絡み合って複雑なプログラムを指す言葉ですが、原因はITに疎いお偉いさんの思いつきによる口出し。本来厳格な要件定義に従って行われるシステム開発がグチャグチャになって本来の機能を発揮できなくなるというもので、度々指摘してきたようにシステムがポンコツだから直しようがないってことです。

これITあるあるなんですが、システム開発の失敗には必ずこうした問題が隠れていて、しかもIT土方と言われる多重下請け構造の中で現場のエンジニアがどれだけ涙したかは計り知れません。こんなですからDXがうまくいかない訳です。マイナンバーカードは言ってみれば導入をしくじった住基カードののシステムを下敷きにして政治サイドから数々の注文が付けられたという開発環境で、まともなものが出来る訳がありません。当然エンジニアの待遇も劣悪で、気の利いた人は海外企業に転職し、ストックオプションを含む高額報酬で活躍します。

故に米カリフォルニア州で起きたのが、シリコンバレーの企業が従業員送迎バスドライバーを高額報酬で募集した結果、公共の乗合バスドライバーが転職して減便を余儀なくされました。日本でもドライバー不足による減便は都市部でも進行してますが、公共事業や都市再開発でダンプドライバーが大量募集された結果、バスやトラックのドライバーが転職しました。結果は似ていてもBSJストラクチャーは国によって異なった構造があります。公共事業は最早民間事業を圧迫しているとも言えますし、また民間資本で行われる再開発事業も問題だらけです。

民需なき「官製再開発」広がる 3割で自治体が施設購入 ゆがむ官製都市 NIKKEI Investigation:日本経済新聞
民間事業者の参入が必要な再開発事業ですが、民間誘致のために国や自治体が補助金を付けて誘致することも行われ、そうしてできた再開発ビルにテナントが集まらず、自治体が一部床面を買い取って辻褄を合わせるといったことが起きていて、誘致の補助金と事後の床面買い取り費用で二重負担になっているケースが出てきています。

小泉構造改革の目玉として民間資本による都市再開発の活性化を狙い、容積率緩和などの促進策を採り、公共事業依存の強い建設業の民需シフトを狙った訳ですが、その結果談合が横行した公共事業と違ってコストにシビアな民間事業では入札で叩かれて価格下落に見舞われます。地価との連動性が高かった建設費は地価下落の影響も受けました。加えての日銀の低金利政策で再開発は盛んになりました。鉄道ではつくばエクスプレスが建設費が少なく済んだことで開業後の好業績を支えてますし、一方で沿線開発が急で開業後の追加投資に追われ、懸案の東京駅延伸は地価の上昇と建設費、資材費の高騰で困難になっているというジレンマを抱えています。そして低金利政策の検証を宣言した植田日銀が3回目の政策決定会合で動きました。

日銀、金利操作を修正 長期金利0.5%超え容認:日本経済新聞
タイミングとしては米FOMCの0.25%利上げを発表した直後ですから、ここで動かなければ日銀の政策検証の本気度も問われかねないところでやっと動いた訳ですが、その後の動きを見ると遅きに失した感があります。日銀発表では緩和継続のニュアンスが強く出ており、YCCは見直されたものの停止には至らず、単に変動幅越え容認に留まっていていかにも中途半端です。故に見直しの根拠としての円安阻止の効果は薄く、やはり欧米に比べて緩和姿勢が維持されていて円安の地合いは変わらずということになりました。

寧ろフィッチによる米交差格下げの影響もあって米長期金利が上昇して効果を相殺してしまいました。ただ米国債の格下げは新興国にとっては資本逃避の抑制になりますし、インフレ率の低下もあって利下げにシフトし始めたことで、寧ろ欧米の高金利が際立つ状況になり鶴あります。しかも高金利下での再エネ投資やEV投資という経済的に負荷のかかることをやっている訳で、今のところリーマンショック後の緩和マネーが残っているからやり繰り出来ている訳ですが、大変なやせ我慢ではあります。ある意味緩和マネーでバブルを膨らませるよりはマシなあり方ではあります。本気の気候変動対策は社会的有用労働の度合いを増してBSJストラクチャーを縮小させる効果は期待できます。

例えば怪運国債市場の蓋で取り上げて今になって「間に合わない」と騒ぎ始めた大阪万博のドタバタや、あるいは東京五輪の落とし物に見るBSJストラクチャーの深刻さ。よく考えたら東京都がやっていることは街路樹枯らしたビッグモーターと何が違うんだって話です。てことで鉄分はつくばエクスプレスのみですが^_^;。

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