第三セクター鉄道

Tuesday, December 30, 2025

雪道と自動運転

今年はいろいろあって取りこぼした話題が多数ありますが、全てではありませんが年内に片づけたいものを取り上げます。まずは自BANGのオウンゴール*1の後日談*2。記事ではアメリカの台湾への武器売却も一因としてますが、明らかに高市失言に端を発する戦狼外交*3の一環です。一番迷惑しているのは台湾ですが。今回は自衛隊はスクランブルをかけませんでした。しかしそうなると前回のスクランブルはどういうプロセスで行われたかに疑問が残ります。軍事演習の情報収集ならば非武装の偵察機で行うのが国際的な慣例ですし。

で、本題ですが、先週関越道で重大事故が起こりました*4。続報で単独事故で中央分離帯に乗り上げたトラックに別のトラックが追突して炎上し、後続車がそれを避けようとして多重衝突に至り、完全に車線を塞いだという流れのようです。復旧を急ぐために細かな現場検証はスキップされたようで詳細は尚不明ですが、当時積雪による路面凍結と吹雪で50km/h規制がかかっていたようですが、SNSで停止したトラックに猛スピードで突っ込むトラックの動画が流れたりしていて、おそらく単独事故のトラックを後続のトラックが避けきれずに追突したと見られます。規制が守られていなかった疑いがある訳です。

自重の重いトラックは乗用車に比べて滑りにくく雪道でもあまりスローダウンせずに走ることは可能ですが、滑った時のダメージが大きいだけに、本来はスローダウンした流れに合わせて走るべきところを無理をしたと推察されます。ドライバー不足と年末の繁忙期で焦りがあった可能性があります。加えて後続車のうちにはレベル2以上の自動運転車も含まれていたと思いますが、事故時の振舞いがどうだったかが気になります。

滑って転んで壺ッター大草原*5でも取り上げましたが、雪道や凍結路ではタイヤのトラクションが極端に低下しますので、それに合わせて急加速急ハンドル急ブレーキはご法度。フェザータッチのアクセルワークとシフトダウンとダブルクラッチによるエンジンブレーキ活用とソフトなポンピングブレーキを前提にスローダウンして走らせることが求められますが、現時点での自動運転車に雪道モードは実装されているとは考えられませんから、後続車が自動運転オンで走らせていれば事故回避はほぼ不可能。そうでなくても雪に不慣れなドライバーも多数いるでしょうから、たった1台のトラックの単独事故が後続車多数を巻き込む今回のような事故は再現性があることを意味します。雪が降ったら乗らないのが一番の回避策です。

とはいえ物流を担うトラックを減らすのは簡単ではありませんから、政府も新東名や新名神でのトラックの自動運転実装を目指してますが、雪道に対応できなければ大事故のリスクがあるし、それを防ぐにはドライバー手配か運休ということになります。安定輸送を考えれば政策的なモーダルシフトでトラック自体を減らすことを考えるべきでしょう。その意味で鉄道貨物の役割は重大なんですが、熊くまクマ*6のJR貨物のクマ被害という伏兵もあって難しいところですが、クマを含む野生動物の線路進入を防ぐ対策が求められます。しかし雪道の事故を考えれば道路予算で費用負担しても良いのではないでしょうか。

例えば物流を止めるな*7で取り上げた北海道新幹線の並行在来線問題で、国交省は青函トンネルの貨物ルート存続を前提に長万部以南の並行在来線の維持を模索してますが、並行在来線三セクの営業赤字が30億円規模で沿線自治体がしり込みする中で、北海道庁はダンマリを決め込んでいます。ならば国が線路を保有して上下分離する提案があっても良いと思いますが、あくまでも地域の問題としてそこまでは踏み込まずにいます。道庁の姿勢に問題はありますが、鉄道貨物の分担率の高い北海道対本州の輸送インフラとして国が面倒を見る余地はあります。おそらく他の並行在来線三セクとの扱いの違いを言われたくないのでしょうけど、逆に敦賀から先のルートで揉めている北陸新幹線でも湖西線の並行在来線切り離しはルートに関わらず不可避でしょうから、重要な物流インフラとして国が関与する判断はあり得ます。そしてこれらは民生インフラとして国民生活を支えるものでもあります。

まあ高市政権では新安保3文書で装備品輸出拡大を成長戦略というたわごとを言ってますが*8、ぶっちゃけ民生よりも軍事、バターより大砲と言っている訳ですが、工場の海外移転と人口減少で国内の供給能力が低下してインフレになっている中で、防衛装備品を輸出して稼ごうって話です。円安で装備品価格が上がっていることから輸入代替の産業政策で量産効果による価格競争力向上も狙っている訳ですが、既に枯れて縮小している国内工業生産力を軍事に割り当てれば民生需要を満たす輸入が増えて輸入インフレで国民生活を困窮化させます。ナチスの軍事ケインズ主義が失敗した歴史の教訓を見ていませんね。身近なところでは北朝鮮の先軍政治で国民が窮乏しています。対して中国は経済成長に比例して装備強化されていて、日本の高度経済成長期の防衛費と同じ展開です。決定的な差がある訳ですね。

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Sunday, November 16, 2025

鹿の敵討ち

高市首相が国会答弁でやらかしました*1。国際問題化してます*2。「能力のない頑張り屋はただただ迷惑*3」という予想が残念ながら当たりました。問題は歴代政権のあいまい戦略を無視して手の内を晒したこと。台湾有事への自衛隊の対応は公然の秘密であってもとぼけてれば相手が勝手に疑心暗鬼になる心理戦こそ抑止力なのに、よりによって国会答弁で、しかも質問通告に沿って官僚が無難な答弁書を用意しながら、無視して勝手に発言した結果、秘密が取れて公然になった訳です^_^;。

スパイ防止法の必要性を主張しながらの体たらく。元々国家公務員法や地方公務員法で守秘義務違反は刑事犯罪と定義され、トクリュウへの捜査情報漏洩で警視庁警部補が逮捕されてます*4。国家公務員の場合はさらに特定秘密保護法もあり、民間人もセキュリティクリアランス法の指定を受ければ同様です。それに加えて屋上屋を架す立法事実が存在するのでしょうか?特別公務員の議員や首長が外国のカルト宗教に便宜を図るエージェント行為、所謂壺議員を放置していることから、法律の不備より刑事司法の不作為の問題では?それよりコメ安くしてくれ!

中国の姿勢も今回は強硬ですが、幾つかか理由が考えられます。10月30日に韓国で行われた米中首脳会談で合意した関税と対抗措置の延期です*5。とりあえず米中の対立が一時休戦となった訳ですが、先に仕掛けたアメリカに対してひるまずレアアース輸出規制や米国産大豆輸入制限で対抗した結果、アメリカの方が音を上げてクリンチに逃れたのが実態です。つまりアメリカを屈服させた中国の外交的勝利ということになりますが、副産物として日本の存在感は隅に押しやられた訳です。その自信が日本への強硬姿勢をもたらしたと言えます。

加えて四中全会で党幹部の欠席者多数という事態があります*6。反腐敗運動で処分されたり拘束されたりした幹部多数で、ほとんどが習近平体制で登用された幹部ということで、イエスマンで固めた独裁体制の綻びを示します。泣いて馬謖を切った結果、反主流派のウエートが高まり、習近平総書記に逆風が見られました。それが戦狼外交へのシフトとなって現れ、日本叩きで反主流派のガス抜きを狙ったと考えられます。そして日本への渡航自粛の呼びかけとなったと考えられます。

但しあくまでも渡航禁止ではなく自粛要請ということで、実質的にどの程度の影響が出るかは何とも言えないところ。厳しい態度を見せつつ中国も落としどころを探っているとは言えます。これで中国人観光客が減れば京都などの観光公害も緩和されますし、奈良の鹿虐待も減るかもwww。まさか狙いは鹿の敵討ち?へずまりゅうレベルの愚か者だわ*8。

最後はAIのフーガ*9のフーガ(輪唱)wwwww。田園都市線梶が谷駅事故で国交省が全国の鉄道事業者に連動装置の点検を指示した結果、10事業者15駅で見つかりました。人間のやることには見落としが付きもの。ヒューマンエラーを前提とした対策が必要です。高市発言もヒューマンエラー?

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Sunday, October 19, 2025

日出ずる国のたそがれの副首都

日本維新が自民党との連立協議で12項目の要求の中で、連立離脱した公明党が要求していた企業献金規制より厳しい企業献金廃止を打ち出しましたが*1、結果的に高市首班に乗ることになりました*2。そして12項目には含まれるものの緊急性の乏しい議員定数削減が前面に出てきました*3。企業献金廃止はどこへやら、厳しい要求を示して見せて有権者にアピールしつつシレっと論点をずらしてしまう維新流のゴマカシ。元々自民党大阪府連の内ゲバでできた大阪維新の会としては本気で自民党を追い詰める気はサラサラなかった訳で、大阪で対立していた公明党の政権離脱は逆にチャンスでもあった訳です。維新変身は以心伝心-_-;。

実はこれ大阪府や大阪市では議員定数削減が行われていて、1人区が増えて維新議員ばかりが増えて地方の二元代表制が事実上停止した結果、議会の行政監視機能が低下して維新の首長のやりたい放題になっています。味をしめた維新は他府県でも同様のことをやって兵庫県のようにパワハラ知事が職員や県議を自死に追い込む事態となりました*4。国政に移植すれば比例票頼みの小政党が議席を減らす一方、大阪の小選挙区を独占している維新は無傷で身を切らないし、人口減少で合区が続く地方の代表が減るし、国会議員になるハードルが高くなって議員が特権化するし何もいいことありません。本気で身を切るなら議員歳費を削れよ!

こうした政局が有権者の目が届かないところで動くのは今に始まった話ではありませんが、国民を愚弄するものでもあります。そして維新と国民民主党に政権交代の為の連立協議を模索した立憲民主党は、結果的に失敗しましたが連立協議を通じて表に出にくい各党の本音を可視化した点で評価できます。メディアの取り上げ方はは政権交代を目的化した数合わせというものが多かったのですが、政治家のウソを暴くのはメディアの役割なのに時として敢えてナイーブになる政治報道にウンザリです*5。しかも議員定数削減を自民執行部は吞んだ一方、所属議員には慎重派がいます*6。また維新が席巻する大阪の小選挙区で自民党候補に反維新の意思表示で投票した有権者も裏切っていることも指摘しておきます。

同じく12項目にある副首都構想も自民執行部は理解を示したようで、大阪銘柄が思惑買いで株価を上げてます*7。阪急阪神HD、京阪HD、近鉄グループHDといった私鉄株の他、建設株の淺沼組や金融株の池田泉州HDなど幅広い銘柄が買われてます。短期的には大阪関西万博終了に伴うパビリオン解体工事や跡地再開発と、既に着手されているIR誘致などとりあえず再開発案件が多数あり、鉄道関連では工事中のなにわ筋線*8の他JR西日本桜島線の夢洲延伸、京阪中之島線延伸、阪急なにわ筋新大阪連絡線、近鉄特急の地下鉄中央線乗入れを狙った架線・第三軌条のハイブリッド集電車両開発などがあり、近鉄以外はなにわ筋線関連ですが、事業者によってスタンスに濃淡はあります。

副首都構想の欺瞞は首都機能移転が既に国会で決議され法令も整備されていますが、中央省庁の移転というよりも東京の首都機能のミラーリングによる災害等のバックアップ体制整備であり、大阪とは限らないと言いながら同時被災の可能性が低い人口集積地という意味で大阪が有力候補にある訳で、この点にゴマカシがありますし、ミラーリングですから基本的に二重化によるレジリエンス確保なので行政の効率性は低下しますがそれには言及せずにいる訳です。そのくせ議員定数削減でもそうですが、公的部門の非効率をあげつらって批判している訳で矛盾します。どこでもいいんだったら本土決戦を想定して大本営の移転地とされた長野県松代でもいい筈です。突貫工事で整備された巨大地下壕を活用することが可能ですし、万が一の核戦争でシェルターになる可能性もあります。

この手の施設は今でも結構残ってたりしますが、例えば旧国鉄大船工場跡地も元を質せばやはり本土決戦を睨んだ横須賀海軍工廠の移転先として接収された土地を戦後国鉄工場に転用されたもので、JR東日本に継承され鎌倉総合車両センター深沢事業所となった後工場集約で「廃止され、跡地を巡って藤沢市域の東海道線村岡新駅計画と連動して鎌倉市役所移転その他の開発計画が市議会で2度の否決でとん挫してます*9。長くなりましたけど真に必要なのは地方分権による地方の自立であって中央省庁の二重化ではないということです。レジリエンスは自律分散型の身の丈に合った自立した地方の自治の深化と役割分担こそ重要です。例えば原発のような大規模電源よりも地産地消型の小規模分散電源の方がレジリエンスが優れているということですね*10。

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Sunday, September 14, 2025

案外シンプルに終わりそうな複雑系経済学

90年代に日本でブームになった複雑系経済学ですが、米サンタフェ研究所を中心に科学分野のパラダイムシフトとしての複雑系の科学から、元々多様なパラメータで非線形的な変化が見られることから経済学への援用が試みられ、多数の試みがなされましたが、ゲーム理論のような定着した理論に昇華されることなく、最近ではあまり顧みられておりません。そんな中でここではスタンフォード大のブライアン・アーサー教授が提唱した収益逓増のJ経済学に注目します。

同教授は性能の優れたアップルのマッキントッシュよりも性能の劣るIBM-PCのMS-DOSが優位に立ち、GUI実装版のWindowsで駆逐された現象に注目し、コピーが容易なデジタル分野では主流派経済学の常識とされる収益逓減の法則が成り立たず、逆に収益逓増が見られることで、所謂ロックインと呼ばれる経路依存現象として注目されました。簡単に言えば収益逓減は例えば農地は広い平地で土壌が肥沃で市場へのアクセスが容易なところから農地になりますが、徐々に条件の悪いエリアに拡大することで投資収益が低下するという現象で、デジタル世界ではロックインによる経路依存で逆にに収益が拡大逓増するというもので、本来の複雑系の科学の視点からはシンプル過ぎるきらいはあります。しかし勃興するデジタル経済の説明に好都合ということでブームになった訳です。そしてこれが株式市場にも影響し、多くのIT企業が競い合って株式上場して資金を集め、アイデアを競い合ったものの、その多くは赤字決算で期待だけで株価を押し上げていて、2000年代のITバブル崩壊へつながる訳です。

前エントリー*1の続きになりますが、現在のAIブームが相似相のフラクタル現象*2に見えてしまいます。その帰結はバブル崩壊ってことですが。先週の米株式市場でも相変わらずAI関連株が買われています。しかもその中身がエヌビディアやアルファベットなどのテック大手に限らず、例えば需要増が見込める通信や電力などのインフラ関連株まで買われるようになっています。

但しこれらのレガシー企業の投資マインドはかなり異なります。そもそも時間軸からして投資から回収までの期間が長いし、リスクも大きいから必然的に保守的な投資スタンスとなります。テック企業が競争環境の中で先んじて投資を加速するのとは異なったスタンスになる訳です。故にAI投資として行われるデータセンター投資が加速する一方、その電力需要増に備えた電源や送電網の投資はなかなか着手されない結果、ミスマッチが起きてAI投資にブレーキとなる可能性はあります。これ日本でも同様の問題があって、例えば関西電力の美浜原発敷地内への次世代革新炉建設の実現可能性の疑義が指摘されてます*3。反原発派ではない中立的な論者の指摘だけにリアリティがあります。

そしてもう1つ指摘したいのは経路依存による収益逓増が持てはやされた理由として、グローバル化の進捗による国境を越えた水平分業の拡大を後押しした面もあります。特に半導体やソフトウエアのように物理的に軽い一方付加価値の高い財が国境を越えt流通した結果、ハードウエアなどのレガシーな製造部門を外注して付加価値率を高める動きを後押ししました。その結果垂直統合の権化のようなアップルでさえ製造部門を切り離してファブレス企業となり高収益化するという動きを見せます。所謂アセットライト経営です。

所謂選択と集中で自社のコアコンピタンスをOSやアプリなどのソフトウエア及びそのプラットフォームとなるハードウエアのアーキテクチャの開発に置いて再定義した訳です。これでWindows陣営に対する競争力を回復するに留まらず、iPodから始まる携帯デバイスと音楽配信を進化させiPhoneに結実させるなどして世界をリードします。更に開発キットを公開して社外の開発者が開発したアプリをAppStoreで販売するというビジネスモデルで飛躍します。

それに対してGAFAMと呼ばれるテック大手はアップル以外はAI向けのデータセンター投資に余念がないのですが、アセットライト経営という意味ではマイクロソフト、フェイスブック、グーグル共に製造部門を持たないアセットライト経営だった訳で、その各社が自前のデータセンターを建設しエヌビディアのGPUを大量購入している訳で、インフラ企業化しています。つまり過大な資産を抱えることになる一方、AIの競争環境の中でレッドオーシャン化して収益逓減に直面する訳です。当然ながらどこかで淘汰の嵐が起きることになります。インフラ企業の宿命を背負う訳です。

てことで伝統的インフラ企業の鉄道においても、JR東日本の2代目社長の故山之内秀一郎氏がJR東日本のコアコンピタンスとして首都圏を中心とした高速大量輸送の技術とオペレーションを掲げていたことが思い出されます。その流れで東北の50系客車の後継にオールロングシートの701系を投入して鉄ちゃんに悪口言われましたが、首都圏の大量輸送を基準にすればこうなる訳です。勿論乗客の反応が良くなかったこともあり、E731系では国鉄以来の伝統的な3扉セミクロスシートになりました。また電車化でスピードアップが実現したことはあまり評価されなかったようです。しかしIGR銀河鉄道や青い森鉄道でも701系が使われているように、結局ローカル需要を前提に低コストで実現可能な輸送サービスとしては意味があるとは言えます。

最近ではコロナ禍をきっかけとした大都市輸送の低迷で内部補助に頼れなくなった赤字ローカル線問題が顕在化しており、幾つかの動きが出てますが、1つは電化区間の電化設備撤去でありもう1つはBRT化です*4。非電化化では磐越西線会津若松~喜多方間と奥羽本線新庄~院内間で実施されましたが、特に後者は9か月かかった災害復旧で非電化になったもの。JR東日本の説明では災害復旧の迅速化が謳われてます。これも一種のアセットライト経営と言えますが、BRTなら更に迅速化できますし、一般道迂回で見做し復旧も可能という意味で、地方線区の災害復旧や存続のメニューとして上下分離や並行在来線のような三セク鉄道化と並び自治体へ提案できるというものです。元々需要が先細りの中で、現実的な選択肢を増やす取り組みということはできます。JR西日本でも美祢線の災害復旧で地元協議会でBRT方式が有力になっています*5。

その意味では整備新幹線も整備費用を国と地方が公金を負担する一方で受益の範囲のリース資産として負債計上するという意味ではアセットライト経営の一形態という見方もできます。しかし西九州と北陸のミッシングリンクのようにスキーム自体が機能しなくなってくると見直しは避けられません。その意味では石破首相の国会答弁で示され、経済財政諮問会議の「骨太の方針」にも明記された中速鉄道構想はまじめに考えてみる余地はあります*6。

例えばJR東日本が改良を表明した山形新幹線福島~米沢間で県境を峠トンネルで越える大掛かりな改良工事が予定されてますが、可能な限りの曲線緩和と踏切除去で現行130km/hを160~200km/h程度にスピードアップする事業を整備新幹線と同等のスキームで実現するあたりが初めの1歩になりそうです。フル規格と比べれば低コスト且つ短時間で可能です。また例えば踏切のないJR西日本湖西線でサンダーバードの160㎞/h化のようなつなぎの対策にも使えます。財政規律を考えればこの辺が妥当なやり方ではないかと思います。

最後にJR東海は赤字ローカル線問題どこ吹く風で東海道新幹線の収益をリニア工事で溶かしまくってますが、財投の3兆円を負債計上して資産圧縮していて財務の健全性を見せていますが、開業が見通せず投資額が膨らんでいる中で名古屋まで開業して完成引き渡しされた時点で地獄に落ちます。だから現状のダラダラと資金を溶かす状況はある意味居心地は良いんですが、将来を展望することか困難です。それでも経営が傾かないのは立地条件が良く戦前の弾丸列車計画で取得した用地を利用できたことによるもので、山陽以降の新幹線が東海道新幹線と比べれば収益は1/3という明らかな収益逓減法則が働いていることは付記しておきます。

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Saturday, August 16, 2025

民営化ドミノの現在地

通常国会期末に衆議院を通過して参議院で否決されたガソリン税の暫定税率廃止法案ですが、参院選の与党敗北を受けて与野党協議で年内実施の方針が打ち出されました。衆参双方で少数与党となった石破政権としては対応せざるを得ないのですが、議論を野党に投げて、財源その他の課題の解決策を出させようということですね。謂わばクリンチ作戦です。

大きな課題は「財源」「ディーゼル」「買い控え・反動増」*1と3つあって、ややこしいのはガソリン税は国税でディーゼルの軽油引取税は地方税で前者は消費税課税対象となる一方後者はかからないし、地方税収減を地方交付税で穴埋めするとすれば、その財源を手当てする必要があり、制度設計が複雑になることから、今回はガソリン税限定となりそうです。その場合の財源は1兆円程度で、予算の議論に絡めて実現可能性を探ることになります。但しそうするとガソリンと軽油の価格が逆転することになり、特にインフレ対策なら物流費等で波及効果の大きい軽油の暫定税率をそのままでは趣旨に反します。この辺の着地点をどうするか、実は野党の方が試されるものになります。

そもそもは道路特定財源とされたガソリン税と軽油引取税がオイルショックによる経済失速で財源難となったことから、2年の期限付きでガソリン25.1円、軽油17.1円の暫定税率を定め、道路財源を確保する目的でしたが、その後紆余曲折はあったものの延長が繰り返され半世紀を超えて存続して現在に至ります。2008年には与野党ねじれ国会で参院で一旦失効した後、衆院の再可決で復活し、2009年には道路特定財源の一般財源化で一般財源となり、使途の制限はなくなりましたが、逆に社会保障費や地方交付税にも回されるようになって寧ろ暫定税率廃止が難しくなり現在に至ります。とはいえ一般財源化されても予算のシーリングで道路予算の比重は高いままなので、一般財源化は寧ろ財政を窮屈にしてしまったうらみはあります。その一端を示す新聞連載記事を紹介します。

道路延びても7割で交通量減少 ずさんな費用対効果試算 - 日本経済新聞
高速道路、利用半減でも4車線化 「整備ありき」遠のく無料化 - 日本経済新聞
ガラガラの自治体有料道、補塡2124億円 予測甘く負担増 - 日本経済新聞
人口減少を無視した甘いB/C比評価。民主党政権下で試行された高速道路無料化が終わって通行量激減しても対面通行解消の4車線化が進み、料金償還は遠のくばかりの高速道路利権。甘い事業見通しで作られた地方有料道路が償還を諦めて無料化される矛盾。過大な予算を所与とする道路の既得権は強固です。但しバスタ新宿*2や肥薩線復旧予算や宇都宮ライトレール*3のように道路予算の使い方は柔軟化してはいますが。尚、肥薩線の復旧が進まないのはJR九州が自己負担分の支出を渋っている結果です。

という具合に現状を過去からの文脈で見ないと見えない問題というものはあります。例えば富山地鉄の一部路線廃止問題です*4。過疎化による末端区間の利用が減っているのに93.2㎞という大手私鉄並みの路線長で保守負担が大きく、実際脱線事故なども起きていて、自治体の支援がなければ一部区間の廃止はやむを得ない状況です。しかし同時に特に本線に関しては並行する北陸本線が北陸新幹線開業で三セク鉄道あいの風とやま鉄道に移管され、車両も新しくなり本数も増えて利便性を増したことで地鉄の利用客を奪ったことも影響していると考えられます。つまり整備新幹線ドミノです。とすれば沿線自治体にとっては複雑な意思決定を迫られることになります。

実は似たような話は、例えば国鉄末期から民営化後にかけて鹿児島本線の列車増発で利便性を増した結果、西鉄北九州線が廃止に追い込まれたり、JR西日本のアーバンネットワークの輸送改善で並行私鉄から乗客を奪ったり、JR東海の攻勢で名鉄が劣勢に立たされたりといったことが起きています。つまり民営化ドミノと見ることもできます。元々国鉄は都市間や地域間を結ぶ幹線輸送、私鉄は地域内完結の輸送というザックリとした役割分担が、地域分割を前提に私鉄の事業領域に国鉄/JRが進出した結果とも言えます。そして整備新幹線は国鉄から引き継いだ幹線輸送を新幹線に譲り、並行在来線切り離しで貨物輸送の負担も無くせる訳で、民営化後の整備新幹線スキームの負の側面が出てきたとも言えます。

整備新幹線の根拠法は全国新幹線鉄道整備法(全幹法)で国鉄時代は建設主体は国鉄と鉄道建設公団で営業主体は国鉄と法定されていて、運輸大臣の指示で東北、上越新幹線が建設され開業しました。それが国鉄改革で分割民営化されれば事業主体を失ってしまう訳ですが、既に整備新幹線として東北新幹線(盛岡市―青森市)、北海道新幹線(青森市―札幌市)、北陸新幹線東京都―大阪市)、九州新幹線(福岡市―鹿児島市)、西九州新幹線(福岡市―長崎市)の5路線が基本計画線から整備計画線に指定されていて、その扱いが問題になり、全幹法も鉄道建設・運輸施設整備促進機構(鉄道・運輸機構)が建設主体で営業主体は分割後の旅客6社が自社エリアを引き受ける一方、分割会社への負担にならない仕組みとして並行在来線の切り離しと受益分を除く事業費を国と地方が負担することとなりました。

但しこの時点では財源が決まっておらず、与党議員からは公共事業費として予算確保が求められましたが果たせず、結果的には1992年のJR東日本の株式上場時にJR3社が国に要望した新幹線の買い取り代金に上乗せされた鉄道整備基金からの出資と運輸省分の一般財源で財源確保し、開業後の線路使用料でJRが返済するという形で事業スキームが決まり、また限られた予算ということでフル規格の他に在来線改軌によるミニ新幹線とフル規格の路盤に当面狭軌で開業するスーパー特急方式が提案され、B/C比に基づく優先配分で当面長野五輪対応の北陸新幹線高崎~長野間が着手されました*5。

その後のあれこれはありますが、このB/C比が曲者で、例えば九州新幹線は当初八代~西鹿児島間をスーパー特急方式で開業し在来線直通特急で新幹線区間で狭軌200km/h営業運転という技術的に未知の領域を前提としてB/C比を高く見せて優先度を上げたりしてましたが、結局B/Cを問えば最高速260㎞/hのフル規格が良い数字を出しますし、北陸新幹線も当初軽井沢~長野間ミニ新幹線だったものがフル規格に変わり、また低金利故に開業後のリース債権を担保に借入れで資金調達するなどしてフル規格に化けていきました。しかし軌間可変車前提の西九州新幹線は開発中止で佐賀県区間の見通しが立たなくなりましたし*5、やはり軌間可変車活用を考えて敦賀までフル規格で開業した北陸新幹線の敦賀の乗換地獄や大阪延伸を巡る小浜京都ルートと米原ルートの争いなど分割民営化の悪い面が出ていて、新幹線が迷惑施設化して佐賀と滋賀で「詐欺だ!」*6ってことになります。

国土軸形成の骨に当たる新幹線に佐賀と滋賀のミッシングリンクを作ってしまったのは国鉄分割民営化への対応が中途半端だったためにJR旅客会社に振り回された国の失敗ですし、更に地方の有力交通事業者を追い込んでいるという構図ですが、もう1つ懸念があります。それは並行在来線を含めて三セク鉄道の職員も国鉄/JRのOBの再就職で賄われてきましたが、JRも自身の合理化で職員数が減っている上、高齢化で退職した後の若手の補充が人口減少で困難になりつつあるのが現実です*7。富山地鉄への支援をケチってあいの風とやま鉄道も人手不足で減便となるような未来はすでに現実化しています*7。地域開発に資する筈の新幹線が地域を衰退させるという寒い話です。

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Saturday, July 05, 2025

TIXY選挙の後始末

ティックトック、インスタグラム、エックス、ユーチューブを略してTIXYと呼ぶそうですが、SNSのショートムービー拡散機能を選挙活動に利用して、一方的な断定調の主張を有権者に届けるTIXY選挙が物議を醸しているのは都知事選の石丸現象*1や兵庫県の斎藤知事再選*2に留まらず、高齢者バッシング*3や年収の壁問題*4や氷河期世代煽ったり*5外国人の社会保険タダ乗りのフェイク*6などで支持を伸ばす国民民主党*7の躍進はSNSの拡散力によるものです。AIで見た目を整えることも容易になり、N党、れいわ、参政党などもSNS拡散を取り入れており、街頭演説中心の既存政党と異なった選挙戦術で自らを目立たせようとしてます。

その結果見た目のウケ狙いが目立つようになり、例えば野党各党が揃って消費税減税に言及し、与党の自公も給付金で対抗するという*8眩暈のする状況です。いずれもインフレ対策として打ち出してますが、総需要を賄える供給力が衰えた中での財政出動はインフレ要因になるだけで無意味です*9。税収の上振れが喧伝されますが、インフレの影響である以上、時差を伴って国債金利の上昇による国債の利払い費増が迫る中で、上振れ分は国庫に戻して国債発行の圧縮に使うべきものです。特に長期債の金利上昇は顕著で*10、低金利時代に増えた長期債をこれ以上増やせず、短期債で凌ぐしかない状況です。その結果国債に借換えが増えて借換え時の入札で決まる金利の上昇の影響を長期間受けることになります。つまり現役世代や将来世代へのツケ回しが膨張することになります。こうした財政の仕組みを知れば高齢者バッシングは無意味だし消費税減税や給付金も問題だと理解できるでしょう。

TIXY選挙で報道姿勢が批判された所謂オールドメディアがインフレ対策を「最大の争点」と報じるのですが、経済学上の常識としてインフレはマクロ経済現象であり、対策は日銀の利上げと財政出動の縮小による総需要抑制策しかないことぐらいきちんと指摘して欲しいです。逆にこの点を曖昧にしたままの選挙戦ではまともな結果が出るとも思えません。実際都議選では自民公明の議席は減ったものの都民ファーストが伸びて小池知事与党は盤石という結果になりました。自民党は都連の裏金問題で票を減らした模様ですが、都ファに票が流れたんじゃ意味がないです。寧ろ都の開発行政の不透明さは温存されて地価は上がる一方で家賃も上昇してもはや地方の若者を受け入れる余地は減ってます。

週刊東洋経済2025年6/21号の第二特集で東京の湾岸副都心を取り上げております*12。既に公募も取りやめ東京ドーム4個分の都有地が宙に浮いています。臨海副都心の開発は主に三菱地所が手掛けてきたのですが、1996年予定の都市博の中止*13で狂いが生じたものです。ご存じ青島幸雄氏が都市博中止を掲げて都知事選に立候補して当選し、逡巡はあったようですが民意を尊重して都市博中止を実行しました。規模としては開催中の大阪関西万博を上回る大規模博覧会を起爆剤に開発に弾みをつけようとしたようです。これ古くは1940年の幻の東京五輪と東京万博を想定して晴海展示場が整備されたものの戦争で中止した流れと同じですが、どのみちバブル崩壊で博覧会どころじゃなかったでしょう。とはいえ都有地の造成費用は支払われている訳で、税金で負担されていることは指摘しておきます。

しかし東京都は諦めず石原知事時代の東京五輪招致で競技施設を湾岸に集め、1964年の国立競技場その他の既存施設と連携したコンパクト五輪を構想するも選に漏れ、その後紆余曲折の果てに2020年東京五輪として招致されたものの、再利用される筈の国立競技場が建て替えられ*14、震災復興もそっちのけで容積率変更の既成事実づくりで強行され*15、コロナ禍で無観客になったり、事後的に五輪を巡る不正が明らかになったりしながら、新国立競技場を露払いにして神宮外苑の再開発が進んでいるのは周知のとおりです*16。つまり未利用の都有地を放置して風致地区指定の民有地の再開発を進める都の異常な開発行政です。そして神宮外苑の地権者には三井不動産や神社本庁が名を連ね、隣接地の伊藤忠本社ビル建て替えに伴う空中権売買まで行われております。都が造成費用を負担した臨海副都心は放置され、民間の大口地権者の利益誘導を図った訳です。しかも神宮外苑は都心の貴重な森で、都市部のヒートアイランド現象による気温上昇を抑える役割もあるのにお構いなし。熱中症で倒れる人が増えても知らん顔ってことです*17。こうした開発行政に信任を与えたことになる訳で、森喜朗元総理と萩生田光一議員が差配したことも明らかですが*18、元々流動人口が多く選挙への関心が低い東京都議選ではこうなってしまう訳です。ある意味TIXY選挙がやり易いと言えますが、参院選ではどうなるでしょうか。

それでも流石に臨海副都心の都有地は何とかしたいから8号北上線(豊住線)*19や臨海地下鉄*20でアクセスに弱点のある臨海副都心のアクセス改善を狙っているんでしょうけど、神宮外苑に留まらずそこここで再開発ガシガシ進めている中で意味あんのかってのが正直なところです。加えて再開発を阻むもろもろの要素も顕在化しております。この点は別項にて取り上げたいと思います。

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Tuesday, May 06, 2025

雷都の晴れ間のライトライン

GW真っ只中ながら人出の多い観光地(地元がそうですが)へ行く気にもなれず、それならばライトラインの現状を見てみるかと久々に宇都宮へ出かけました。いろいろ発見がありましたが、その前に前エントリー*1関連ニュース。

説明しない厚労省 SNS炎上、年金底上げ策の削除招く - 日本経済新聞
消費税減税を巡る立憲民主党の迷走*2に似た状況ですが、このままでは氷河期世代の基礎年金実質30%減額となることから見直しが検討されたものの、制度を理解しない非難によるSNS炎上で自民党内からの批判もあり撤回ということで、同世代を1700万票の票数でしか見ていない政治が不作為を生じさせています。

で、本題。昨年3月にスピードアップされたライトラインで併用軌道区間50km/h専用軌道*3区間70km/hと謳われておりましたが、乗車時の体感では70km/hは出ていない感じで、また列車間隔を制御する閉そく信号機も見当たらないところから、流石に目視運転では70㎞/hは無理ということでしょう。HU300形の走行安定性の問題もあるかもしれません。そして開業直後の訪問時には気づきませんでしたが、副本線のある平石とグリーンスタジアム前で軌道に地上子が設置されていて、おそらく後付けなのでしょう。推測ですがおそらく快速運転に備えた列車選別装置で、先行の各停の通過を検知して副本線側に進路設定し、副本線の地上子で入線を検知して本線側に進路設定して快速を通すのでしょう。快速出発後、後続の各停はフランジ割出しで進路を作形成し、一定時間後に自動復帰するように設定されているとして、最小限の設備追加で快速運転が可能です。目視運転を基本としつつ朝の2本だけの快速運転ですから、鉄道並みの保安装置設置よりもリーズナブルな対応と言えます。

バスとの結節の実態も知りたいところで、休日は参考にならないかもしれませんが、芳賀工業団地管理センター前で降りたところ、もう1人降りてバス乗り場へ向かう人がいて、横断歩道を2度渡るためタイムラグはあるものの、その人はバス乗り場に併設された待合室へ入りました。バスポールの時刻表を確認しつつ電停へ戻るときにも電停からバス乗り場へ向かう人がいて、それなりに結節点として機能していることはわかります。時刻表で確認した限りでは、本数は少ないものの茂木方面へ向かうバスもあり、真岡鉄道とセットで行程を組むのも一興です。同様の結節点は清原地区市民センター前と宇都宮大学陽東キャンパス(ベルモール前)が案内されてますが、それぞれバスの本数の少なさはあるものの実態はどうなのか、興味は尽きません。ちなみに駅へ戻るときに数少ない並行路線のバスが並走してパッと見席が埋まる程度の乗車が確認できました。関東自動車の旧年式車でしたが、駅直通便の需要も根強いのでしょう。

休日ということもあり、IC乗車券を持たない乗客も多数いて、降車の多い停留所では最前部ドアで現金支払いに時間がかかっていました。この辺は定時運行を妨げるほどではないようですが、交通信号に引っかかる機会が増えてしまうことは避けられないようで、実際そういう場面も見られました。とはいえ乗客が定着したことは間違いないようで、GW中ということもあり、家族連れの利用が目立ちましたが、家族そろって現金払いとかも見られました。ともかく盛業であることは間違いありません。

また渋滞解消という政策目標の実現も実証データが示されました*4。宇都宮大学などの調査結果では車利用が70%から62%へ8%減で、率の話ですがザックリ実数でも1割程度は減ったと見られます。交通量の1割減は大抵の渋滞が解消できる水準ですから効果はあったということです。但しだからLRT整備は大成功と結論付けるのはどうでしょうか。着手後の見直しや工事の遅れで事業費が膨らんで費用便益比(B/C比)が悪化したこともありますし、同等の渋滞解消策としての道路拡幅やバイパス整備の場合との比較でどうだったかこそ問われるべき問題です。また渋滞を嫌ったり、時刻を確認しないと利用しづらいバス利用と比べてほぼ定時で頻繁運行される都市型公共交通による需要誘発効果もありますので、それが母数を増やして車利用率を下げた要素もあります。これは宇大等の調査でも言及されているようですが、単純な数値比較では見えない部分があるということは言えます。但し外出の誘発は消費に繋がりますし、ウェルビーイングの観点からも望ましいことでもあります。単純な数値比較に陥りやすいB/C比の議論の戒めとしたいところです*5。そして懸案の西側延伸も動き出しました。

宇都宮LRT、大通り1車線は自動車乗り入れ禁止への布石 - 日本経済新聞
地域限定記事且つ会員限定記事ですが、全文を読むことをお勧めします。キモは現状3車線の大通りの1車線化で、その為に南北の並行道路の拡幅による迂回路整備で一般車を迂回させることにあります。3車線の1車線化は批判を呼ぶことになりますが、工事のために前倒しで実施して、中央車線を軌道にして左側車線はバス停や貨物車荷捌きレーンに充てて1車線化して工事スペースを生みつつ一般ドライバーを慣れさせる狙いもあります。大通り区間は混雑対策で軌道中央の島式ホームでホーム幅を確保して車いすやベビーカー利用にも配慮します。これは東側で問題になった混雑時のホームの手狭さの反省と共に、圧倒的に集積度が高い西側では、停留所間隔も短くして分散を図ると共に乗客の安全確保にもなるということですね。そしてその先には国内では前例のないトランジットモールの実装の先駆けという狙いもあります。そしてほぼ全区間道路併設の併用軌道で東側の鬼怒川橋梁前後の専用軌道区間のような用地買収も不要で土木工事上のネックもほぼ無い*6ことから、今年度に決めて26年着工で30年開業はほぼ可能という展望です。しかし課題はあります。

詳細は省きますがまず西口停留所の混雑対策が不十分*7で見直しが避けられないことがあります。計画見直しの結果事業費が上振れしたり手続きが遅れたりすれば東側の鬼怒川前後区間の轍を踏む可能性があります。また資材費や人件費の高騰による建設費の上振れもあり、400億円とされた見積りが600億円超と1.5倍以上になる可能性もあります*8。西口混雑対策とも絡んで手続き上西側分断整備の可能性も示唆されています。但しその場合新潟トランシス製HU300形の弱点とされる高価な車両価格や混雑対策の困難さや走行安定性の不安*9などから国産車両の導入が検討されているとか*10。そして大通りトランジットモールによる中心市街地活性化の一方で抱える中心市街地のレガシー東武百貨店の扱いと東武宇都宮線*11。

というわけで、帰路は西口バスターミナルから東武駅前までバス移動して東武宇都宮線ワンマン列車で南栗橋からスカイツリーラインのルートを辿りました。駅西側は東武鉄道のバス事業撤退があり東野交通の関東自動車への経営統合とライトライン開業に絡むJRバス関東の実質的撤退で事実上駅西側は関東自動車の独占エリアですが、関東自動車の新旧カラーにEV専用カラーに旧東野交通カラーとカラフル。また前後扉のツーステップ車から最新ノンステップ車やEVまでとバリエーション豊富でバスファンにもお勧めです。西側延伸で大通りのバス3割減が求められる一方、東側同様バス結節点の整備も構想されており、今後の変化も大きいという意味でも注目されます。

東武駅前から東武宇都宮駅までは100mほど離れており、ターミナルデパートの東武百貨店もお世辞にも活気あると言えず、売り場も典型的地方百貨店のような冴えないもので、仮に大通りトランジットモールが実現してもタイムスリップしたような一画として温存される公算大です。西側には小規模ながらバスターミナルがありますが、発着便は少なく人気のない空間になっています。ライトラインと東武宇都宮線の相互直通も示唆されますが、その場合大通りと東武宇都宮駅を繋ぐ軌道の整備と共に東武百貨店の建て替えは必至ですし、盛土上の東武宇都宮線との接続も課題ですし、架線電圧がDC1.5kvで750vのライトラインとの直通には複電圧車が必要になりますが、HU300形での対応は難しいところですし、まして走行安定性に不安を抱えるから尚更です。日比谷線直通車転用の20000系ワンマン列車に揺られながらつらつら思うGWでした。

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Saturday, April 26, 2025

Suica甘いか消費税の鬼が笑う減税ドミノ

Suica甘いか消費税のインプレゾンビの迷走ぶりが笑えない状況になっています。

参院選にらみ減税ドミノ 立憲民主・野田氏が一転容認、財源論後回し - 日本経済新聞
先に断っておきますが、減税反対の立場で書いております。減税派が言う「できない理由」を並べるのではなく、上記エントリー*1で指摘したように無意味だし減税すべきではないという立場です。そして野党各党が消費税減税を掲げ、更に与党も自民党の積極財政派のみならず公明党からも減税論が出てきている中で、立憲民主党だけが減税論に流されずにいたところでの日和見ということで、ガッカリしています。その結果自民党幹部から「財源の裏付けなし」という正論を言われてしまうという倒錯*2が起きています。

財源論を持ち出すと財務省の回し者呼ばわりされますが、インフレ環境での財政出動は英トラスショック*3の二の舞になり、国民生活を困窮させます。別に財務省のレクで洗脳された訳じゃなくて、経済学上の常識に属します。マクロ環境のインフレ―ションというのは総需要に対する総供給の不足から生じていて、供給に見合わない需要の強さが原因ですから、需要を喚起する政策は事態を悪化させます。また貿易収支が赤字転落し、財政赤字が大きい中での赤字財政が続き債務残高がGDPの200%超の日本では、トリプル安はいつ起きても不思議ではない状況です*4。

立憲民主党の日和見の問題は、参院選を控えて党内の減税論を抑えきれなくなったもののようですが、それ故に枝野元代表がさいたま市内の講演で減税ポピュリズムとして釘を刺しました*5。責任政党としての矜持として野田代表へのアピールでもありますし、昨年の総選挙でも消費税減税を引っ込めて給付付き税額控除の導入を打ち出したのですが、党内ですら理解が進んでいなかった中で選挙が近づいて来だがゆえに、意思統一を図ったものです。故に党分裂にならないように意見のすり合わせを求めたものですが、減税派に押されたのか、来年度1年限りの食品ゼロ減税と将来の給付付き税額控除導入という何ともわけわからない着地点となりました。来年の話は鬼が笑います^_^;。

財源論の問題があるので、仮に消費税減税を行うとしても、法律を通して来年度からの実施となる訳で、故に例えば与党の公明党のように減税に先立って年度内に給付金も実施するという分かりやすすぎる選挙目当ての議論もある中で、1年限定としたものの、経済情勢如何での延長圧力が働きますから、結果的に1年じゃ済まなくなりますし、また食品全般を対象とするのか?コメや野菜など価格高騰して生活を圧迫するもの限定とするか、あるいは小売り段階だけのゼロ減税とするのかなどの論点も詰められておりませんし、それらを勘案すると政治的リソースをかなり減耗させる一方、各党が減税を主張する中では集票効果も限られますから、選挙対策としても愚策です。寧ろ悪目立ちしても良いから給付付き税額控除で勝負かけた方が、有権者には響きます。

枝野氏は講演で「キャッシュバック」という言い方で給付付き税額控除を説明してますが、消費税の最大の問題は逆進性にある訳で、それを緩和するために所得税から税額控除し、税額が控除額を下回る場合は差額を給付するという形で「負の所得税」とも言われ、欧州やカナダなど複数の国で採用されている制度であり、金額にもよりますが制度の議論が進めばそれを受ける形で補正予算で年度内実施も可能性があります。加えて控除対象を社会保険料に拡張すれば、所謂年収の壁問題もほぼ解決しますし、世帯人数分の控除が受けられますから、扶養控除と置き換える形での導入ならば財源問題もクリアできます。勿論この辺は制度設計次第ではありますが、国民民主党の基礎控除引き上げや維新の高校無償化よりも社会的包摂性は高まります。その辺の理解が進めば与党が相乗りする可能性もあります。参院選は政権選択ではなく、勝敗は政権交代に直結する訳ではありませんから、だからこそ少数与党の相乗りを誘って政策実現を図る方が国民を助けることに繋がります。ポピュリズムに勝者はいません。

大阪メトロ中央線で一時運転見合わせ 万博会場そばの夢洲駅混雑 - 日本経済新聞
前エントリー*6関連ですが唯一の鉄道アクセスの地下鉄中央線の運休で万博の帰りの足止めという事態が起きた訳です。思いつきで万博やって泥縄で混乱するポンコツぶりは何より政治のポピュリズムの成れの果てです。こうならないためには我々国民がしっかり政治を監視しなければマズいってことです。

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Saturday, April 19, 2025

大転け・完敗万博

大阪・関西万博が始まりましたが、予想通りというか、泥縄が露呈しています。

大阪万博、地下鉄は何度も入場規制 バスは予約優先 - 日本経済新聞
万博会場の夢洲はごみ埋め立て地の人工島で、アクセス手段が限られており、不安視されていました。地下鉄中央線夢洲駅と東ゲートが直結されており、メインルートとなるほか、JR桜島線桜島駅から路線バスタイプのシャトルバスで向かうサブルートの他、主要駅からの観光バスタイプのシャトルバスや指定駐車場からのシャトルバスで向かうパークアンドライドなど多様なアクセス手段を用意していましたが、実際は地下鉄中央線に見学客が集中し、JR大阪環状線乗換駅の弁天町の地下鉄駅で混雑から改札が入場規制されるなどで見学客の遅延が生じ、また東ゲートの入場ゲートのセキュリテイィチェックが手間取り、携帯基地局のキャパオーバーでチケットのQRコードがスマホに表示されないトラブルもあり、完全予約制で混雑のない万博を標榜したことが、2時間遅れで予約時間に間に合わないとか、帰宅時間の夢洲駅の混雑で行列で1時間待ちで「入るには入れず帰るに帰れない」と不満。加えて悪天候で雨宿りする場所がない、巨大リンクの大屋根も風雨の吹き込みでびしょ濡れ。バスアクセス中心の西ゲートではシャトルバスを予約制にしたのに、万博チケットと別の交通系サイトの目立たないメニュー表示でそもそも辿り着く人も少なく予約はガラ空きなのに、帰宅希望の予約外客が殺到して予約客優先のオペレーションで大混乱助長といった具合です。そして道路アクセスも橋と海底トンネルの2ルートだけで、しかもシャトルバスの優先運行故に事実上タクシーが使えない。地場のタクシー業界から改善を求められているのに対応せずという具合です。

アクセス交通の混乱は、実は4月6日のテストランでも見られたことで、交通アクセスの弱点は明らかでした*1。テストランでは予約より早く来た人が多く、ゲートの混雑による一時滞留で夢洲駅の混雑が課題とされましたが、テストラン参加が5万人の一方初日13日の入場者数13万人で倍以上とはいえ、半年の期間中2800万人の入場者数を達成しなければ赤字確定で、1日平均15万人の入場が必要ですが、当然日のよって変動がありますから、少なくとも倍の30万人の入場も視野に入れなければならない訳です。初日の入場ゲートの混乱の解消から言えばかなりハードルは高いと言えます。初日の弁天町駅の入場制限のように思わぬ場所に混乱が生じる可能性もありますし、地下鉄中央線が事故等で運休した場合の混乱もあり得ます。そして初日の大雨のような悪天候もありますし、これから暑くなるシーズンで会場に日よけが乏しく熱中症対策が難しいこと*2もまた問題です。そしてトイレのトラブルやメタンガス問題などまかり間違えば大惨事になりかねない問題*3を抱え、始まったばかりなのにすでに終わっている-_-;。そもそも夢洲開発はカジノ構想ありき*3でタイムスケジュールから2025年の大阪万博開催というタイトなスケジュール*4になった訳です。大量の公費投入でカジノ企業を誘致する大阪維新の姿勢はレントシーキングのカモフラージュでもあります。

比較される1970年の大阪万博と何が違うのかですが、時代背景と会場の立地と交通アクセスの違いがかなりあります。70年万博の会場となった千里丘陵は大阪の市街地にほど近い山林地帯で未利用の土地が多かったし、広さもあったから、白紙に近い状態で開発が計画されました。御堂筋を北へ延ばした新御堂筋と大阪郊外の環状道路の中央環状線の整備に伴い、新御堂筋に付帯する地下鉄1号線(御堂筋線)の延伸が同時施工で整備が計画されましたが、市営故に大阪市境をちょっと超えた吹田市江坂までが都市計画に盛り込まれたものの、その先は大阪府による千里ニュータウン計画ということで、府市の管轄の壁があったことは確かですが、同時に京阪神急行電鉄(現阪急電鉄)の営業エリアで阪急バスが京都線や千里線などの鉄道駅へのフィーダー輸送を担っていました。そこへ新御堂筋が通り、地下鉄が伸びてくるとなると穏やかではいられません。そこで阪急は大阪府や関連自治体の出資を仰いで北大阪急行電鉄(北急)を立ち上げ、御堂筋線と直通する鉄道の権益を得た訳です。所謂第三セクターの走りですが、自治体の出資は従であり阪急グループ色の強い企業です。

一方で大阪市内の交通を巡る熾烈な争いがあって、京阪電気鉄道がターミナルの天満橋から淀屋橋へ延伸して都心乗入れの先鞭をつけましたが、大阪市内の鉄道事業は大阪市が地下鉄網を整備して私鉄の進出を抑えようとする一方、在阪各社は都心進出の機会を窺っていました。近鉄は上本町から難波への延伸、阪神は戦前の急行線複々線化構想の落とし子の伝法線を難波へ延伸して近鉄との直通を模索し、千鳥橋、西九条と小刻みに開業させて西大阪線に改称という動きをしました。阪急は新京阪線のターミナルだった天神橋から堺筋を南下する構想を持っていましたが、大阪市の地下鉄6号線(堺筋線)、南海電気鉄道も堺筋を北上する構想を持っていて競願状態で当時の運輸省鉄道局は3社局で協議して結論を得るまで免許交付しないという立場を取り、協議の結果天神橋ー動物園前間を大阪市が整備し、阪急と南海が相互直通するということでまとまり、とりあえず万博関連事業として万博会場近傍を通る阪急千里線との相互直通を優先して軌間4ft8in・1/2(1,435㎜)の阪急に合わせて整備されることになりました。そして北急を中央環状線に併設される中国自動車道を対面通行2車線の暫定開通として4車線化の用地を利用して線路を敷いて万国博中央口までの期間限定の会場線に利用し、会場西ゲート近くを通る阪急千里線に臨時駅の万国博西口駅を設置することになり、鉄道2路線でアクセスが確保されていたことで、混雑を分散できた訳です。結果的に万博輸送を阪急は独占したことになります。そして大阪のミナミに対するキタの比較優位が確立します。

また新御堂筋と中央環状線の整備でシャトルバスによる広域アクセスが可能になり、特に国鉄茨木駅・阪急茨木市駅からの中央環状線のシャトルバスはバス事業で阪急より優勢な京阪バスや当時直営の近鉄バスが参入し、独占エリアとはいえ阪急単独でのシャトルバス運行は無理だったけれど、万博関連で協業ができた訳です。今回の大阪・関西万博では市営バス改め大阪バスと京阪バスが特に力を入れているようですが、ドライバー不足のご時世で交野市の京阪バス撤退という事態もあり、関西でも批判を浴びています。公費を投入したイベントで不便になることは許容されることではありません。

70年万博関連では近鉄難波線と鳥羽線の開業、三重電気鉄道由来の志摩線の改軌と万博輸送に直接関わらなかった近鉄が集中投資で経営基盤を強化しました。並行する地下鉄5号線(千日前線)とは同時施工で並行して整備されましたが、万博に伴う外国人観光客来阪対策で通りました。一方そうした流れに乗れなかった阪神西大阪線の延伸は地下鉄5号線との競合故に進まずなんば線として結実するのに長時間を要しましたし、南海は中央環状線アクセスの阪神高速松原線と同時整備された地下鉄2号線(谷町線)の南進に伴って大阪軌道線の平野線が廃止され、堺筋線の天下茶屋延伸で天王寺支援が廃止、更に地下鉄御堂筋線のなかもず越境延伸とエリアを侵食されています。70年万博の経済効果は均等ではなかったのです。その意味で今回の大阪・関西万博の経済効果3兆円は鵜呑みにできません。また関西のGDPシェアは70年万博の100.78%をピークに低下しており、イベント依存の限界でもあります*5。

南海に関しては関西空港連絡輸送で外国人見学客の渡航需要を受けられるとはいえ、直接的なメリットはあまりなく、やはり万博には縁が無いのか?なにわ筋線が開業していれば南海も恩恵があったかもしれませんが、やっと事業着手の段階ですから間に合う筈もありません。なにわ筋線の建設には実は南海も関わってまして、大阪市の市営地下鉄民営化構想に連動して大阪府出資の第三セクターの大阪府都市開発(OTK)の持ち分売却を行いOTKの事業部門だった泉北高速鉄道の売却で揉めて最後は南海電気鉄道に売却されました*6。そしてその売却益はなにわ筋線の整備主体となる関西高速鉄道の資本増強に回すことになっていたので、間に合っていれば南海の泉北線買い取りの資金回収が早まったことになります。これ70年万博で北急が万博輸送対応で大量発注した大阪市営地下鉄規格の電車を、万博終了後に大阪市に売却して元を取って資本費負担を軽減した結果低運賃を維持して最大限メリットを享受したことと対照的です。またなにわ筋線絡みでは京阪中之島線がなにわ筋線開業を睨んだ事業ですし、阪急のなにわ筋連絡線(大阪~十三)と新大阪連絡線(十三~新大阪)構想もありますが*7、後者は南海との直通運転を構想しながら具体的な協議が行われておらず、仮に梯子を外されれば堺筋線の二の舞になります。という訳で欲得絡みの関西鉄道業界事情は比較的摩擦の少ない首都圏の業界事情と大きく異なります。中之島線にしろなにわ筋線にしろ鉄道整備にも公費が投入される中で、公正さが担保されているか?維新絡みではいろいろあり過ぎて疑問を禁じ得ません。

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Saturday, March 22, 2025

答え合わせあれこれ part2

答え合わせあれこれの続編です。

関税がアメリカの農家直撃、綿花4年ぶり安値 トランプ氏「我慢を」 - 日本経済新聞
カナダ次期首相カーニー氏 トランプ氏に挑む「危機の男」 - 日本経済新聞
トランプ関税を巡る対決姿勢を中国とカナダが見せていることですが、トランプ大統領が単純に対米黒字の多い国を標的にした結果、敵対国のみならず同盟国も敵に回しました。そしてともに対決姿勢です。元々制裁関税が課されている中国の場合は追加関税なのでより負担が大きいし、問答無用で適用されるのに対して、同盟国のカナダには猶予期間を与えて交渉余地を残してはいますが、相応の見返りを求めてきます。それに対するカナダ政府の対応は英イングランド銀行総裁を務めた実務家のカーニー氏を首相に指名して報復関税も辞さずの姿勢を見せています。

EUと日本はそこまでの姿勢は見せていませんが、EUの場合はウクライナ問題が絡みますし、中国の輸出攻勢で域内産業が窮地にある点はアメリカと同じということもあり曖昧な対応ですが、バイデン時代の非課税枠を持ち出して例外扱いを狙う日本の姿勢は大甘です。とはいえ中国の米農最物報復関税では米農家が損失を受けると反発し、自動車や鉄鋼アルミの一律関税はテスラを含む米自動車メーカーも損失を被りますが、トランプ大統領は意に介さずです。

堅調米景気、関税で暗雲 トランプ氏「過渡期」発言波紋 - 日本経済新聞
トランプ関税で不利益を被るのは過度期の一時的な現象で我慢しろということですが、これで株価が下がったことも確かです。しかも従来米株価と連動していた欧州や日本の株価が逆に上がったりしています。明らかに黒字国から還流していたドル資金の動きが変化しています。またDeepSeekショックの後、低コストの蒸留方式の生成AIも先端半導体との組み合わせでパフォーマンスを高められるなら米国優位は揺るがないというロジックで買い戻されたエヌビディアなどの米テック株もここへきて変調、更にDOGEトップでやりたい放題のマスク氏への反発からテスラ車のボイコットによる販売不振や販売店への放火事件でテスラ株ダダ下がり。その結果がこのニュース。
テスラのマスク氏、放火や不買運動は「理不尽で異常」 - 日本経済新聞
放火などのテロ行為は問題ですが、それだけ恨みを買っていた結果です。しかし発言の趣旨は株を持っている従業員や投資家に向けた「株を売るな」という謂わば口先介入。part1 の「トランププット」が図らずも実現した形です。同時に米経済を痛めて何がやりたいのかという疑問も湧きます。まるでアリババの金融部門のアントの上場停止を命じ、ゼロコロナ政策で国内経済を困窮させた中国習近平政権と同じです。違いがあるとすれば中国は国有企業優先で民間企業を圧迫する一方、今のアメリカは民間の巨大企業が政府を乗っ取った形ですが、その結果民間経済を強権で圧迫しているのは同じです。世界を荒野に変えてそれでも俺らがチャンピオンと威張るつもりでしょうか。
北海道新幹線延伸遅れ JR北海道へ膨らむ政府支援、自立遠く - 日本経済新聞
最後に国内鉄ネタですが、JR北海道が掲げていた2031年度の単年度黒字転換の再建計画が北海道新幹線の工事遅れで狂いが生じています。在来線の存続困難路線と新幹線の並行在来線切り離しで身軽になって出直す筈が、並行在来線の切り離しが遅れる訳で、それを前提とした車両置き換え計画が見直しを余儀なくされますから、事実上仕切り直しを迫られますし、それを前提とした国の支援策も狂います。金利上昇で政府財政も厳しくなる一方、経営安定基金の運用益は増えることが期待できますが、それでどうにかなる問題でもありません。課題の並行在来線貨物問題も解決先送りは可能になりますが、人口減少が続く中で現状維持すら困難な中での再建計画見直しです。、民間任せでは解決困難な問題をどうするか。トランプ騒動を対岸の火事と見ずに他山の石として政府の役割を見直す機会です。

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