第三セクター鉄道

Sunday, August 18, 2019

困難なインフラのトリアージ

2030年の北海道新幹線札幌延伸に伴う並行在来線問題の検討が前倒しされました。

北海道新幹線の並行在来線、「存廃判断」5年前→前倒し  :日本経済新聞
対象区間は沿線人口が少なく、財政力の弱い町村が連なるだけに、調整は相当手間取りそうです。バス化も含めた検討ですから、廃止も有り得る訳ですが、貨物列車をどうするかが悩ましいところです。

JR貨物の問題は東北新幹線延伸のときに並行在来線を三セクで引き受ける時に、ローカル輸送対応ならば複線電化の東北本線の設備は明らかにオーバースペックとなりますから、JR貨物が貨物列車を維持することが困難と発議されました。その際JR貨物が負担する線路使用料がタダ同然の格安だったことから、並行在来線引き受け三セクにとっては負担ばかりになるということで揉めました。結果的にはJR貨物が支払う線路使用料と三セクが受け取るコスト見合いの線路使用料の差額をJR東日本の負担で補填することで決着しました。加えて北斗星やカシオペアの運行に伴う運賃料金収入もあり、それで経営の屋台骨を支えることで決着しました。貨物幹線だけに貨物廃止は無理だった訳です。

JR東日本にとっては整備区間より手前の根元区間の受益があるので、貨物輸送に伴う負担増は受け入れ可能だった訳ですが、同様の問題に直面した九州新幹線の八代―川内間ではこの手は使えず、並行在来線三セクの肥薩オレンジ鉄道にJR貨物が出資することで、貨物列車向けの電化設備等を維持するという方法が採られました。肥薩オレンジ鉄道のローカル列車は軽量ディーゼル車によるワンマン列車です。

北陸のIRいしかわ鉄道とあいの風富山鐡道では、当初検討されたサンダーバードの富山乗り入れは結局JR貨物とのコスト分担問題で実現しませんでした。IGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道が客単価の高い寝台特急の収入を当てにしたのとは対照的です。という具合に並行在来線貨物問題は統一的なスキームはなく個別対応に終始しました。言い換えれば行き当たりばったりだった訳です。

北海道新幹線に関しては、経営危機にあるJR北海道に追加負担を求めるのはそもそも無理ですし、これまで以上に沿線人口が少なく、財政力の弱い町村に負担を強いることになります。貨物廃止してバス転換もあり得る訳ですが、青函トンネル開通で天候に左右されない輸送手段として特に農産物輸送で優位性を発揮する貨物の廃止は、北海道経済に大きな打撃を与えるだけに、簡単にはいきません。

青函トンネルの新幹線と貨物の供用区間が速度と列車本数の制約条件になっていることから、国交省の本音は貨物廃止に傾いているようで、実際船舶へのシフトが検討されてますが、輸送量から言えば可能でも、天候の影響は避けられず、鉄道による安定輸送が北海道産農産品の競争力となっている現実から無理筋でしょう。

加えて東北新幹線の並行在来線三セクであるIGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道にとっては、寝台特急の廃止で旅客収入を減らした上に、JR貨物の線路使用料収入まで減れば、存続が危うくなります。こうなると北海道の都合だけで決めることもできず、着地点が見えなくなります。あとJR貨物自身も国の支援で基盤強化投資を行った結果、黒字転換して株式上場も視野に入る中で、その基盤を国に潰されることになる訳です。この点も将に行き当たりばったりです。

山線区間を除く長万部以南の区間はJR貨物が出資するということも考えられますが、北海道経済に関わる問題だけに、北海道庁が動かなければまとまらない可能性があります。とするとJR北海道に冷たい道庁の対応から見て期待できそうにありませんね。これインフラの積み増しによる維持費拡大問題として指摘しましたが、こうして過剰インフラを抱えると、その廃止も簡単ではないってことで、寧ろ問題を複雑にして解決を困難にします。

一方九州でも問題が起きています。

JR九州「自社株買い」株主総会で否決、青柳社長「今後も対話」  :日本経済新聞
株式上場したばかりに、株主となった投資ファンドからの圧力を受けている訳ですが、同時に豪雨被害で不通の日田彦山線の復旧を巡って関連自治体との間で困難な話し合いが行われています。日田彦山線自体は現状既に都市間輸送も貨物輸送も担っていない純然たるローカル線で、企業経営的には災害復旧するよりバス転換する方が合理的ではあります。

しかし忘れてはいけないのは、JR九州が株式上場に当たって上場基準クリアのために行った経営安定基金を取り崩して新幹線リース料の一括納付と償却資産の減損処理の結果、減価償却費を圧縮して本業の赤字体質を改善した一方、減価償却費の減少は同時にフリーキャッシュフローの減少を意味しますから、災害復旧の資金捻出を困難にしているという側面もあります。言い方は悪いですが、株式上場したために災害復旧もままならなくなったってことです。日経記事では複数のステークホルダーへの対応の困難さと纏めてますが、覚悟がないなら上場なんかするなって言いたいところです。

というわけで公共インフラの民営化は万能薬でも何でもない訳で、例えば大阪メトロや大阪シティバスの民営化の意義は今もって理解に苦しみますが、とりあえずここでは踏み込みません。しかし過剰インフラの淘汰を資本の論理に委ねて良いのかってところはあまり議論されてません。そんな中で北越急行ほくほく線の生き残り策は示唆に富みます。

元々スーパー特急方式を想定していたJR西日本区間の北陸新幹線は、ほくほく線経由で越後湯沢で上越新幹線に乗り継ぐ形が想定されていて、それを前提に北越急行では線路の高速化と共にJR西日本の681/683系を導入し、段階的にスピードアップして160km/hの営業運転を実現した訳ですが、北陸新幹線のフル規格化で梯子を外された形になりました。

そこで利益の一部を基金として内部留保して将来の減収に備える一方、特急廃止でお役御免となる681/683系をJR西日本に売却しローカル輸送に特化します。減収にはなりますが、特急車両の譲渡収入が得られる一方、通過車両キロの減少で保守負担が減少しますから、そこで収支をバランスさせることで存続を図ります。超快速スノーラビットで都市間輸送を維持しつつ、鈍速列車スノータートルという企画列車を走らせるなどして増収に励む一方、2018年12月1日には運賃値上げして収支改善を図ります。万博輸送対応の車両を大阪市に譲渡した北大阪急行と同じ手ですね。

幸いなことに高速化で高規格な線路故にメンテナンスフリーなのと、積雪対策により運休が少ないということで、ローカルな利用者の信頼を得ていることで、安定した収支を実現しています。てことでJR北海道もJR九州の前例を梃子に電化や線路強化や積雪対策などで将来のメンテナンスコストを圧縮することと、運賃改定を併せて収支改善を図るのが、道庁が当てにならない以上必要ではないかと。利子補給されているとはいえ低金利で運用益が期待できない経営安定基金ですが、現物投資は優先順位を間違わなければ本業でのハイリターンが可能です。

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Saturday, June 08, 2019

自動運転にブレーキ? シーサイドラインの逆相事故

仙台日帰りで戻って地元スーパーで仙台みそ買った謎行動の先週末^_^;、謎な事故が起きました。

無人運行の横浜「シーサイドライン」逆走、14人けが (写真=共同) :日本経済新聞
終端駅の新杉田で折り返しの事故編成は、地上側からのATO信号で方向転換の指令を受け、方向転換を地上側に通知し、実際ヘッドライトやテールライトは正常に切り替わっていたのですが、発車してみれば逆走して25m走って車止めに激突して14人負傷という事故となりました。損傷度合いから20km/h程度で衝突したと見られており、非常ブレーキは作動しなかったと見られます。

代行バスの積み残しもあって3日後には社員の動力車運転免許所持者を動員して有人手動運転で運転再開したものの、平常の65%の本数に留まります。その後事故編成の動力系の制御回路に断線が見つかり、動力系だけ方向転換が出来ていなかった可能性があることがわかりました。難航が予想された原因究明ですが、とりあえずこれでかなり絞り込めますが、問題は非常ブレーキが作動しなかったことです。AGTではなく地下鉄ですが、こんな事例があります。

大阪地下鉄逆走 指導役、運転室に同乗 車掌の乗り違え気づかず  :日本経済新聞
大坂地下鉄谷町線大日駅で始発電車に運転士と車掌が乗り込み、普通にドア閉め安全確認合図の一連の後発車してみれば車止め側に走り出し、ATC信号で非常ブレーキがかかって停止したという不可解なミスです。しかも本来の進行方向を運転士と車掌が双方勘違いして逆側に乗務し、普通に発車させたというコントみたいな話です\_\;。加えて運転士の抜き打ち検査のために助役が本来の進行方向の乗務員室に添乗してたんですが、車掌を運転士と勘違いしつつ、ドア閉め合図するさまを漫然と見送り、走り始めて気付いたというおまけつき。間抜けすぎるwwwww。

無人自動であれ有人手動であれ、想定外の事態に対して非常ブレーキを作動させて停止させるという機械的バックアップがあればこそ安全が担保されるのであって、その部分に疑義があるシーサイドラインの有人手動での運転再開は、確率は低いものの、乗務員の勘違いで生じる異常事態のバックアップが働かない可能性があるわけで、当面慎重に対応するとしても、システムの大幅改修がない限り無人自動運転の再開はと言わざるを得ません。

思い当たるトラブルの原因としては、3月に一方の終端駅である金沢八景が仮駅から京急金沢八景駅隣接の新駅へ延伸したことでしょうか。金沢八景駅周辺の区画整理事業が遅々として進まず、16号線手前の複線の高架橋の1線を潰して仮設ホームを設置していたものが、区画整理の進捗と京急金沢八景駅の橋上駅舎化に伴い、当面単線で新駅へ延伸したものですが、この時に進路構成の連動関係を変更したときに何らかの瑕疵が生じた可能性はあります。

これやはり普通鉄道ですが、あの信楽高原鉄道事故では、信楽駅の場内信号機を停止(R)定位として、下り列車が接近して手前の地上子を通過することで列車を検知し注意(Y)信号に切り替わるという連動を、届け出なく変更して(Y)定位にした一方。信楽を信用していなかったJR西日本がやはり届け出も信楽側への通告も無しに亀山CTCセンターに信楽線内の方向優先テコを設置した結果、信号システムが誤作動したケースが思い出されます。加えて誤出発検知装置を過大評価して出発を強行した信楽側のヒューマンエラーが重なったものですが、システム改修時の僅かなバグが他の因子と偶然に重なって事故につながるケースはままあります。その辺も含めてクリアな事故原因究明が望まれます。

実は焦っているのがJR東日本なんですが、シーサイドラインに関しては車両メーカーのJTRECが東急車輛時代から関わっていて、事故車の2000系は開業2代目でステンレスボディや内装もE233系など新系列車によく似ています。信号システムはかかわりが薄いとはいえ、動力系制御回路の断線は車両側の欠陥が疑われます。加えて山手線の自動運転にも暗雲が漂います。

勿論山手線でシーサイドラインのような無人自動運転までは考えていないでしょうけど、添乗員付きは考えているフシがあります。というのも、運転士と車掌の職制の区分の廃止を打ち出しているからですが、動力車運転免許という国家資格取得が必要で運転士の養成はコストがかかりますし、専門職として高給優遇が必要になります。それを車掌レベルの保安要員で済ませられれば、労務コストを下げられるわけです。うがった見方ですがスットコドッコイな組合潰しはこの狙いもあるかも。

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Saturday, May 25, 2019

佐賀と滋賀で「詐欺だ!」

Brexitが迷走しております。

メイ英首相、辞任を表明 EU離脱混迷で引責 (写真=ロイター) :日本経済新聞
EUと合意した離脱案が議会で承認されず、残留派が求める国民投票の再実施を、盛り込んだ離脱案を議会に提出したことで、与党からそっぽ向かれた結果です。残留派の多い自民党や労働党との譲歩を狙ったけど、寧ろ与党陣営から不信感を持たれたってことですね。

とはいえ与党の離脱派に戦略があるという訳ではなく、強制離脱しても大丈夫という楽観論以上のアイデアはないようです。強硬姿勢のEUから譲歩を引き出せなかったことで弱腰外交と言われ、強硬論に勢いを与えてしまいました。よく見ればEUでも強硬論を唱えるのは専らマクロン仏大統領で、他国は寧ろ強硬離脱のダメージを心配しているのが実際です。フランスはWW1の戦後処理でドイツに法外な戦後賠償を課してナチスの台頭をもたらした歴史がありますが、同じ愚を繰り返すのか?ここまでボタンの掛け違いが起きると、解決は困難になります。

てな世界の動きと比べっるとずっと小さなスケールでのボタンの掛け違いが起きているのが我が日本です。フリーゲージトレイン(FGT)という和製英語で呼ばれる軌間可変車(GCT)の開発を当てにして当初狭軌のスーパー特急方式で整備を予定していた長崎新幹線がGCTの開発断念で、全線フル規格化を求めるJR九州と長崎県に対して、佐賀県がNoを突きつけた結果佐賀県バッシングが起きているという小さな話です。国家主権に関わるスケールのBrexitに比べると、ローカルな綱引きで揉めてるってのはある意味日本らしいですが。

整備新幹線としての九州新幹線は当初スーパー特急方式を前提に鹿児島ルートの八代市―鹿児島市間が先行整備されましたが、整備途上で度々見直され、八代以南の工事途上で船小屋温泉―八代間の工事着手が決まり、更に博多―船小屋温泉間も着手し、しかもフル規格に変更されました。その際、当初駅設置予定の無かった佐賀県にも建設キロ案分で負担を求められ、佐賀県は抵抗したものの押し切られ、せめて駅を作ってくれということで、当初予定されていなかった新鳥栖駅の設置が決まった経緯があります。

一方の長崎ルートは武雄温泉―諫早間のスーパー特急方式のまま着工順位待ち状態だったところ、鹿児島ルートの全線フル規格化で長崎県が熊本に後れを取りたくないとフル規格化と早期着手を求めるようになりましたが、有明海の堆積土で軟弱地盤の佐賀県が、事業費膨張による負担を嫌って反対します。

加えてルートから外れる鹿島市など3市町で反対の声が上がり、反対派首長が選出される事態となりました。並行在来線として肥前山口ー諫早間が切り離されることになりますから当然の声ですね。その中で国が開発中だったGCTの採用で佐賀県に配慮することになり、また並行在来線も県が線路保有してJRが第2種事業者として当面営業し、博多―肥前鹿島間の特急を走らせるなどの譲歩の結果、整備区間のフル規格化と諫早―長崎間の追加整備も決まり、工事着手されて2022年開業予定となっております。見果てぬ夢
が曲りなりに動き出した訳です。

しかしGCTの開発は無理と踏んで車輪の下で論じましたが、案の定GCTの開発はました。GCTは車軸に沿って車輪をスライドさせストッパーで所定の位置に固定する仕組みですが、その分余分な部品が必要で重量増となりますし、しかも高速走行で振動に晒されるバネ下重量の増加ですから、その分線路を痛めます。加えて相当な強度を求められますから、それも重量増の要因となり、実用レベルのものにするのは困難な訳です。バネ下重量が大きいためにモーター筐体や歯車装置がゴツくなる吊り掛け駆動が淘汰されたのと同じ問題です。

加えて山陽新幹線に乗り入れて新大阪まで走る前提ということで、当時のぞみで主力の300系に合わせて270km/hで安定走行の開発目標だったのですが、その後500系が300km/h、700系が285km/hとスピードアップされたため、270km/hの目標をクリアしても山陽新幹線を走れないということになります。とはいえ元々バランスの難しいGCTでは簡単にスピードアップはできません。加えてGCTならではの欠点も明らかになります。

1つは新幹線での高速走行を前提とするが故に、在来線に比べてホームが高く、それに合わせて床を高くしなければならないことになります。これは高速走行のための大出力モーターの架装の必要性もある訳ですが、そうすると車輪径を大きくするとかもバネ下重量増の要因になりますし、同時に台車軸距を伸ばさないと狭軌の車輪間に納める大出力モーターの架装が難しくなります。

この点は標準軌のミニ新幹線とは異なる訳で、JR東日本の400系、E3系、E6系ではヨーダンパを二重化して短軸距で高速安定性を担保しながらカーブの多い在来線区間の滑らかな走行を両立させてますが、GCTでは軸距を伸ばさざるを得ず、台車枠が大柄になってこれも重量増の要因になりますし、在来線区間での滑らかな走行を望むべくもなく、それどころかフランジとレールにかかる横圧が大きくなり線路を痛めます。故にGCT走行区間の在来線は軌道強化を余儀なくされますし、曲線通過速度も10km/hから30km/h程度の減速を余儀なくされます。余談ですが解決策として炭素繊維車輪なんてもんが開発され、熊本電気鉄道で採用されてますが、軌道が弱いローカル私鉄にとっては光明でも、購買力を考えると開発費の回収は難しいでしょう。

そして軌間可変部分の部品の劣化で頻繁な交換が必要ということが明らかになり、メンテナンスコストを押し上げます。結局これが決め手となり、JR九州が採用見送りを決め、全線フル規格化を要求することになります。GCT開発に入れ込む国(鉄道・運輸機構)に対しては民主党政権時代の事業仕分けにかけられ、あわや開発中止の可能性もありましたが押し切られました。ここで引導を渡していれば、少なくとも拗れることはなかったかもしれません。国の問題もありますが、鉄道のプロとしてのJR九州の不見識も問題です。

そもそも佐賀県は地方創生の成功例と言われる福岡都市圏に木菟する訳で、新幹線の直接的な恩恵はあまりありません。この辺東海道新幹線の南びわこ駅問題でJR東海にNoを突きつけた滋賀県と似ています。滋賀県は元々近畿圏アーバンネットワークの勝ち組で、転入人口増で潤っている訳で、財政負担してまで新幹線駅を作る必要はない訳です。北陸新幹線の延伸問題で滋賀県を避けたルートが取り沙汰される一方で、並行在来線として湖西線の切り離しなんて話が出てきて滋賀県は態度を硬化させてます。佐賀共々こう叫びたいでしょう。「詐欺だ!」関連してこんな記事を紹介しましょう。

隣の大都市と補完 山形・大津・佐賀市の活性化策  :日本経済新聞
奇しくも大津と佐賀の事例が出てますが、隣接大都市との補完関係を築くことで活性化が図れるってことです。地域活性化のための新幹線って、結局並行在来線の引き受けまで視野に入れると、地域に負担がのしかかることも忘れてはいけません。そしてこれ。
九州・北陸新幹線、建設中の区間で「投資効果<費用」  :日本経済新聞
人件費の上昇で費用対効果比が悪化しているって話です。長崎ルートに関してはGCT開発失敗の影響もありますが、現状ではJR九州が引き受けを渋っています。勿論全線フル規格着工に誘導するための条件闘争でしょうけど、GCTも代共々JR九州の見識を疑います。

元々投資収益逓減の法則で、後発案件ほど費用対効果比は悪化するんですが、整備新幹線もご多分に漏れずってことです。元々需要の旺盛なところから事業着手される一方、完成後の経済活性化で需要の弱いところの経済効果が厳しくなります。元々新幹線売却代金に上乗せされて発足した鉄道整備基金ですが、鉄道・運輸機構に引き継がれてますが、別に新幹線財源に限定したものではなく、つくばエクスプレスの建設でも使われています。基金ですから基本は低利融資なんで、完成引き渡し後30年で償還される前提ですが、それじゃ足りないと与党サイドの声を反映して財務省が償還期間を50年に延ばそうとしてますが、整備新幹線の受益の範囲の負担というルールを無視してます。

寧ろ例えばJR北海道の体質改善投資など、より必要性の高い投資にシフトすることが望ましいところですが、肝心の道知事が鉄道廃止上等のスタンスなのが残念です。

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Sunday, April 07, 2019

鏡の国のアベノミクス

不思議の国の続編はやっぱ鏡の国でしょ。ってことで、あれこれ始めます。

塚田前国交副大臣の発言「でも私は忖度」→「おわびする」  :日本経済新聞
渦中の副大臣が忖度したかどうかは些末なことでして、11年前、福田政権時代に費用対効果が不十分として却下された下関北九州道路の事業が国の直轄事業として調査費が計上されたことの不透明さが本質です。現状R2関門国道トンネルと高速道の関門橋の2ルートがありますが、老朽化で国道トンネルは10年に1度の大修繕による通行止めが毎年行われるようになっていて、国土強靭化による災害対策のための二重化という議論があるのですが、そのために2,000億円をかけることが妥当かどうか冷静な判断が必要です。

ルートの二重化はメンテナンスの負担増を意味します。相応の経済効果があるならば良いのですが、関門橋の通行量も予定の半分の水準で、国道トンネルの通行止めの影響を吸収可能な現状からすれば、大した経済効果は見込めません。そうなるとメンテナンス費用のかかる国道トンネルの閉鎖も視野に入り、唐戸水産市場のある下関市東部の経済的な地盤沈下をもたらす可能性もあります。それでもやるのかってあたりの議論がきちんとされてるようには見えないんですよね。

この手の話は日本中にありまして、東日本大震災の津波被害を受けた地域でも、大規模防潮堤建設の是非が議論になった結果、人の住んでないところばかり工事が進んでしまい、いったい誰を守る防潮堤なのかって現状があります。福島第一原発事故関連でもいい加減な除染作業で復興予算が食いつぶされたり、がれき処理を広域処理と称して持ち出した結果、焼却工場を木質バイオマス発電につなげようという地元の構想が頓挫したりとか、土建屋ベースで物事が進む現状がそこかしこにあります。

国土強靭化の名の下に経済効果が十分検討されない公共事業がそこら中で復活したり新たに立ち上がったりしてますが、そのための予算が赤字国債発行を前提にしているわけで、アベノミクスの第2の矢として機動的な財政出動が謳われてもおりますが、経済効果のない公共事業をやる余裕が日本の政府財政にはありません。90年代の財政出動で赤字を累積していて政府予算の最大費目が国債費でその半分は借換債ですから、過去の赤字の清算ができていないのに赤字を重ねる訳ですね。しかも既にケインズの言う乗数効果も1倍即ち有効需要を生まない水準なのは政府も認めています。

加えてここへ来て深刻な人手不足で折角予算が付いた公共工事も人が集まらず未執行となり財政出動不発となる現状があり、2020年の東京オリパラ関連で人手が取られて震災復興も遅れている状況です。五輪関連は元々旧国立競技場の改修をはじめ既存施設を活用し半径8㎞以内で実施という計画だったものが、招致が決まった途端に新競技施設の建設が次々に決まり、加えて築地市場の豊洲移転と環状2号線の整備が強行されました。これも都知事選で争点化した後に迷走し、結局環状2号線は仮設状態でつながったものの、晴海の選手村からの移動がネックになるのは確実です。ここを京成バスが受託した環2BRTが走るらしいですが、混乱は確実です。加えて五輪後の地下鉄計画も。

銀座から臨海部へ都が地下鉄、羽田直結目指す : 国内 : 読売新聞オンライン
これTBSのメトロ都営統合報道を思い出させる観測気球ですね。実態はこれから検討という段階ですが、一方で豊洲移転の遅れで政治路線化したマジ卍な豊住線はメトロが作るのが望ましいとしていますが、1日13万人の利用を見込む豊住線よりこの臨海部地下鉄を都としては優先するってことです。5㎞で1日5万人ってザックリ言って東急世田谷線レベルの輸送規模ですが、それに2,500億円、キロ500億円の事業費を見込むってのは採算性は関係ないって頭おかしいレベルです。

この臨海部地下鉄構想ですが、言い出しっぺは中央区で、当初環2LRTが五輪輸送を睨んだ暫定BRTとして上記のように京成バスの受託に至ったんですが、一方で2020年五輪招致が決まったところで地下鉄構想を唐突に主張し、交通政策審議会の2016年答申に滑り込ませた経緯があります。明らかに五輪絡みの利権漁りの気配があります。

直通運転が示唆されるつくばエクスプレスについては、沿線開発が急過ぎて混雑緩和対策に追われた結果、懸案の東京駅延伸の事業費1,000億円をねん出できない状況ですが、更に銀座まで伸ばすとすれば同じぐらいの事業費が上乗せされますから、ほぼ不可能でしょう。羽田直通はJR東日本によるりんかい線引き受け問題との絡みで、可能性はあると言えばありますが、地下駅の国際展示場駅をジャンクションに改造するのは相当な事業費の上振れの覚悟が要りますので、やはり実現可能性は薄いでしょう。しかも都営地下鉄として整備とは言っていません。つくばエクスプレスかJR東日本に丸投げのつもりでしょう。

政治家にとっては公共事業による利益誘導はわかりやすい有権者へのアピールになるんでしょうけど、それに留まらず土建屋の集票能力への依存の意味なんでしょう。採算性が問われる鉄道事業でさえ採算度外視の計画が動いてしまう危うさは要注意ですが、別の面から言えば、それだけ土建業会は労働集約産業としての性格が強いってことでもあります。そこで気づいたんですが、公共事業の乗数効果の低下はこれが原因じゃないかと思い当たります。

つまり公共事業に依存しなければ存続が難しいゾンビ的な土建業に栄養を与え続ければ、そこへ雇用が張り付いて国全体の生産性を下げてしまうという点です。日本の低生産性は公共事業依存の結果なのかも。しかも人口減少で人手不足は若年労働力の確保が難しくなりますから、外国人を入れないと回らないってことで、入管法改正を急いだわけですね。加えてこのニュース。

ジャパンディスプレイ株が急伸 台中勢傘下で再建進展の期待  :日本経済新聞
政府系ファンドによる国内企業の救済策は死屍累々で外資に売り渡した途端に株価が上がるって、これ公的資金でゾンビ企業を延命させている結果と見れば、公共事業と同じように日本の生産性を低下させる元凶と言えるでしょう。結局ゾンビ退治ができないから生産性が下がって成長できないけれど、それがバレると選挙で勝てないから統計弄って誤魔化すことになります。その結果アベノミクスは迷走しっぱなし。鏡の国の迷宮に迷い込んだアリスの如しです。

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Sunday, July 29, 2018

タワマンたわわで8号豊住線建設マジ卍?

台風一過、暑さが戻った日曜日ですが、連日の暑さから2年後の東京オリンピックの危険性も指摘され、また鉄道や塘路の混雑も予想される中、2年後の予定された災害の声すら聞こえる東京のスットコドッコイです。

地下鉄有楽町線の延伸論、再び熱 豊洲移転に配慮  :日本経済新聞
有楽町分岐線とか北進線とか言われていて、地元江東区ががかねてより建設を希望していた都市計画8号線豊洲―住吉間の建設が動き出したのですが、これが難問だらけで迷走が予想されています。記事のタイトルにある通り築地市場の豊洲移転を巡る迷走で都と対立した江東区への配慮ってことで、きな臭さ漂います。

豊洲市場移転は二転三転して遅れに遅れたわけですが、長くなるのでそこへは立ち入らないことにします。問題は豊洲移転を巡るゴタゴタの結果、都が江東区に対して配慮せざるを得なくなった結果、8号豊住線の建設が決まるという完全な政治路線となることです。江東区としてはタワーマンションが乱立して人口が膨張する湾岸地域を抱え、小学校が足りないなどの弊害が顕在化する一方、洲崎(東陽)や錦糸町といった伝統的繁華街が取り残されており、バランス上南北方向の交通インフラ整備は切実な問題ではあります。

加えて小田急小田原線の複々線化完成で小田急のみならず広域で並行する東急田園都市線などの混雑も緩和され、混雑率ワーストとして東京メトロ東西線、JR総武線、JR京葉線が並ぶ状況で、8号豊住線による分散効果を期待しているわけですが、東京メトロは既に新たな新線建設を行わないと宣言しており、事業者が同意しない限り建設は不可能なわけです。

そこで都が何らかのスキームで建設を行う検討を約束した訳ですが、江東区のレポートによれば、第三セクターが整備主体となって路線を建設し東京メトロが営業主体となって運行を行うことが想定されているようです。都市鉄道利便増進事業費補助制度を用いた受益活用型上下分離ですが、その場合建設費1,420億円を整備主体’三セク)と国と地方がそれぞれ1//3を負担する形で、営業主体の東京メトロの受益が整備主体の必要施設使用料を下回り事業収支が成立しません。

地下鉄補助を適用した場合は整備主体の収支は30年以内に黒字化するものの、営業主体のその他の路線での減収の調整が必要ということで、こちらも営業主体の東京メトロの同意が得られる可能性はありません。整備費用だけで1,400奥苑を超えるのに乗車人員27万人の需要予想ですから、基本的な収支構造から言って、整備スキームを弄ってどうにかなるレベルではありません。

江東区は以前同区間を6連のワンマン列車で折り返し運転し、改札分離して割増運賃を取ることで収支均衡を狙った計画も出したことありますが、それだと果たして利用者がいるかどうかという問題もあります。ぶっちゃけ改札分離が可能なら、都営地下鉄として建設すれば問題はクリアできますが、ネットワーク効果による東西線などの混雑緩和は期待できません。鉄ちゃん的蛇足ですが、車両は三田線と共用で、高島平―元住吉―市ヶ谷―豊洲のルートで回送することは一応可能です。

ウルトラCがあるとすれば、メトロと都営の統一運賃が実現可能ならば、こういった問題はクリアされますが、その場合メトロ都営双方で減収がある程度発生すると考えられますから、その保障措置をどうするかとかややこしい議論になります。個人的見解としては思い切って初乗り200円程度で最高額500円程度に値上げしてプール精算する仕組みを作り、車両営業走行キロなどの代理変数で配分するなどでしょうか。まあそこまでやる気はメトロにも都営にも無いでしょうけど。

利便性だけを考えれば、いっそゆりかもめの延伸で対応するのも手です。その場合当然運賃も割高になりますし、輸送力も落ちますが、例えば新駅構想として豊洲―東陽町間の新駅(枝川?)のJR京葉線潮見駅接続の希望が現状では難しいですが、AGTのゆりかもめならルートの自由度も高まりますから、双方に駅設置ということも可能です。

その他にJR小名木川貨物線のLRT化構想ってのもありまして、やはり鉄道空白地帯の小名木川周辺の再開発狙いで遊休貨物線を活用し、明治通りに沿って新木場まで伸ばし、亀戸へアクセスする計画ですが、こちらは具体化していないようです。事業費の圧縮を考えるなら有力な案ではありますが。

築地市場の豊洲移転を巡っては、築地市場跡地は当面オリンピック対策としてバスプールに使われ、事後に食のテーマパークとして再開発するという構想ですが、これ今のところ口約束だけで何の裏付けもありませんが、こちらも中央区が希望する環状2号線ルートの銀座―有明間の地下鉄を実現するという話になっているようです。こちらは豊住線の半分程度の13万人の乗車人員見込みですから、普通ならまず実現可能性はありませんが、市場移転を巡るずさんな計画の結果、政治路線として建設されるとすれば、今は地方交付税不交付団体の東京都も将来は怪しくなります。

そもそも論として都心再開発花盛りですが、これ90年代頃から続く容積率規制の段階的緩和の結果です。その結果特に湾岸地域に多数のタワーマンションが建って人口が急増したわけですが、タワーマンションの建設にはいろいろ問題もあります。マンションの高層化は地価の高い都心エリアに安価に住宅を提供できる結果、所謂職住近接による交通ラッシュの解消などの狙いはある訳ですが、眺望を売りにできる人気の高層階は高単価な上に軽量化の狙いもあって区分所有面積も広いため高額であり、安価な低層階の住民との断絶がしんぱいされます。

これ管理組合の意見集約が難しいわけで、10年程度で実施する大修繕の費用負担の問題や将来の建て替えの問題で必ず揉めます。つまり人口が増えて税収増で自治体もハッピーとはいかないわけで、一体感の無い分断された地域社会でトラブルだけが頻発するってことです。しかも所得階層の上下はあるけど建設時期による年齢層は近接しており、それが小学校の不足などの特定年齢層増加に伴う問題を引き起こすわけです。

加えて新築志向が強く中古住宅流通が貧弱な日本の住宅市場でjは、年齢の近接した住民がそのまま高年齢化するわけで、小学校の次は中学校、そして高校と不足の連鎖が生じますし、就職や結婚で独立して親元を離れっれば、残るのは高齢の親世代だけとなり、社会保障負担がのしかかる訳です。だから新線を作って新たな再開発を手掛けて人口流入を続けるしかない訳ですが、今や人口減少で全国の住宅の1/3は空き家という状況です。これ以上の人口流入は郊外や地方の人口流出を促すだけで、地方を疲弊させます。こんなことは続けられません。

最後に一言、マジ卍?

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Monday, July 16, 2018

北のスットコドッコイ

前エントリーの続きです。本題に入る前にこのニュース。

人口、最大の37万人減 生産年齢人口は6割切る  :日本経済新聞
死亡数と出生数の差の自然減が39万人で海外との転出入を加えて37万人の減少ってことです。当然ながら15-64歳の生産年齢人口の減少はもっと多いわけです。都道府県別では東京、埼玉、千葉、神奈川、の首都圏4都県と愛知県と沖縄県のみ増加ですが、そのうち自然増は沖縄県だけで、他の5都県は転入超過による社会増ですから、その分地方の人口減の勾配もきついわけです。

あと外国人の増加が16万人ってことですが、いろいろ問題が指摘される外国人技能実習生だけでも25万人を受け入れていて、その他留学生や高度スキルの就労ビザ対象者もいるわけですから、純増が16万人ってことは相当数の帰国外国人がいるってことです。移民や永住権取得が難しいからこうなるわけで、人手が足りないから外国人就労を拡大といっても、現実の生産年齢人口の減少には追い付かないわけです。人口減という現実を受け入れるしかないわけです。

この状況を踏まえて以下をお読みいただきたいんですが、事故や不祥事が重なって先行きが危ぶまれているJR北海道に未来はあるか?っていう話です。JR北海道もJR総連系のJR北海道労組が組織率8割を超える中で、JR東日本と明らかに異なる労使関係があるわけです。

元々赤字基調だからってことで経営安定基金が与えられ、その運用益で赤字を補填するスキームだったわけですが、90年代半ば以降の低金利によって赤字補填が果たせなくなり、基金の積み増しをした上で現状(独)鉄道建設運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)への預託で高金利運用という事実上の利子補給による補助金でどうにか最終赤字を回避している状況です。

加えて事故の原因となった老朽設備の更新も国の支援を得ながら進めている状況なのですが、事故や不祥事の背景として、JR北海道は益出しのために努力してきたんですが、その結果必要な人手確保がままならなくなり、それが事故の遠因となったり、データの錯誤に見られる不祥事につながったわけですね。その意味で強面の労組は役割を果たせなかった訳です。

JR北海道で起きていたのはおそらく労使の癒着だったと思われます。それ故現場の人手不足もゴマカシがまかり通る状況だったと考えられます。そんな状況を変えようとしたのが自殺した中島社長って話がここへきて出てきています。

そのために島田現社長を総務部長に据えて労組との交渉窓口の一本化を狙ったものの、JR北海道労組は反発して険悪になった状況で、事故や不祥事が重なって国交省の立ち入り検査を受けることになり、JR北海道労組も協力を約束していたものの、直後に札幌労基署による本社社員の36協定違反の摘発があり、労組側が態度を硬化して島田総務部長の関連会社出向を余儀なくされたという経緯がありました。それで追い詰められての自殺ではないかという見立てです。

本社社員もJR北海道労組に所属していたのだから、労組側が知らなかった筈はないと言われてますが、おそらくこれ本社社員だけの問題じゃなかったんじゃないでしょうか。各現場で人手不足が起きていて、36協定順守ところじゃなかったとすれば、そりゃ事故や不祥事も起きるし、労組側からの改善要求もあったはずです。しかし増収とコストカットに励む経営陣を動かせなかったという意味で、労組側からすればスルー出来ない問題ではあります。労使の癒着自体は日本の大企業で結構見られますが。

というわけで、国主導で島田氏の社長指名と設備更新補助金の交付が決まったものの、覆水盆に返らず、労使関係は険悪なまま、後ろ盾のない島田社長は指導力発揮もままならない中で、自力での維持が困難な線区を発表し、自治体にボールを投げたのが現状です。ただ現実的には冒頭の人口減のニュースに見られるように、北海道で言えば札幌都市圏以外の地域の人口減少は今後も続くと見るべきですから、その中でJR北海道が必要な人手を確保して現在の規模を維持できると考えるのは現実的ではありません。人口動態に合わせて身を縮めるのはほぼ唯一の現実解でしょう。

自治体にとっては青天の霹靂でしょう。元々人口減少が止まらず、財政再建団体に指定された夕張市はいち早く廃止を受け入れ、JR社員の出向など条件闘争で実を取った形ですが、夕張支線のように単一自治体だからという面もあります。廃止若しくは公的支援を求めるエリアは広大で、広域自治体としての北海道の対応が待たれますが、高橋知事は経済や人口の状況が分割民営化時と著しく変化していることを理由に国に対応を求めています。財政負担を警戒してという側面はあるものの、経営安定基金による赤字補填もままならず、沿線人口の減少も収まらない中で、交通政策基本法を盾に対応を迫られても受け入れられないってのは正論です。

加えて国絡みの問題も多数あります。例えば北海道新幹線の札幌延伸問題も、JR北海道は自治体との合意を得て国に要望してきたものの、時期の問題が見通せないまま、札幌駅の新幹線駅スペースと見込まれていた駅南の用地に駅ビル(JRタワー)を建てたことで、道庁などから非難されましたが、商業スペースとして価値の高い遊休地の有効活用は当然の話ですし、建設時点で札幌延伸は決まっていませんでした。

その結果新幹線札幌駅の位置問題が二転三転して大東案に決まったのは最近のことです。北海道新幹線の札幌延伸が前進して2030年開業が決まったものの、駅をどうするかで迷走したわけです。当初北口側に新ホームを作って順繰りに振って1,2番線を新幹線用に転用する案が提案されたものの、既に北口の開発が進んで支障する建物が多数あると断念され、西案、東案、地下駅案が検討されたものの何れも却下され、修正東案として1番線南にギリギリ設置可能な1線分のスペースを新幹線上りに充て、1番線を新幹線下りに転用した上で東へ延伸して在来線とずらして設置する修正東案に落ち着いたものの、これも東日本大震災を受けて耐震補強が必要となり、結局在来線駅から離れた元の東案を大東案として決まったものです。位置的には札幌市営パーキングがあるということで、新幹線ターミナル駅設置のスペースも十分な上、駅前に新たな再開発ビル建設の可能性もあり、JR北海道の経営にもプラスと評価されますが、地権者の札幌市の意向は現時点で不明です。

あとJR貨物問題もあります。北海道の農産物を消費地の首都圏や近畿圏に輸送する上でJR貨物の役割は大きいのですが、それが結果的に線路を痛める原因にもなっております。加えてJR貨物は国の支援を得て設備強化投資をした結果、ドライバー不足によるトラック輸送からの移転もあって黒字転換が見込まれる状況ですから、格安な線路使用料を強いられてきたJR北海道には見逃せない問題です。まして株式上場まで取り沙汰されてますから尚更です。

温暖化の影響もあって北海道が稲作適地になりつつある現状もあり、競争力のある農業が叫ばれる中、その競争力を維持する意味で市場アクセスに欠かせないインフラとしての貨物鉄道という視点から、国の関与を強める余地はあります。貨物輸送のためにJR北海道の路線の一部を国の所有としてJR貨物やJR北海道に留まらず、自治体出資の三セクが第二種事業者としてローカル輸送に参入する余地を持たせるあたりに着地点があると思いますが、国が動く気配はありませんね。

加えて訪日外国人が増えている中、北海道観光人気で新千歳空港の利用が増えており、千歳線支線(南千歳―新千歳空港)が単線で空港駅も1面2線のため、対応しきれていない状況にあります。そこで新千歳空港駅を移転して3面4線とし、外側2線を千歳線につなげ、途中で単線を分岐して石勝線につなげる改良案が提案され、2022年の完成を目指すとされてますが、事業費は1,000億円規模になるということで、費用負担を巡ってひと悶着ありそうです。

実現すれば複線のまま空港新駅へ入れるだけでなく、苫小牧方面や帯広方面からも直接アクセスできるようになり、輸送力面に留まらず利便性も改善されますが、よく考えたら自衛隊と共用時代の千歳空港ターミナルビルとこ線橋で直結だった千歳空港駅(現南千歳駅)の機能を取り戻すだけであり、民間空港分離で誕生した新千歳空港のターミナルビルが離れた位置に作られたから仕方なく単線の空港支線を作った訳で、ここでも国の政策に翻弄された現実があります。しかも費用負担の問題でおそらく国の支援制度活用となるでしょうけど、JR北海道の事業縮小構想もあり自治体との調整は微妙です。また滑走路下のトンネル工事など難工事も予想されます。

あとこの問題は思わぬところへ飛び火しております。コメントを頂いたはまださんにご指摘いただいた日本ハムファイターズの北広島ボールパーク構想です。ダルビッシュや大谷をメジャーリーグへ送り出しながら若手の育成で実力を維持し、人気球団となったファイターズですが、不自由な札幌ドームに不満を抱いていたわけですが、ポスティングの補償金を得てそれを活かしたボールパーク構想を発表し、自治体向けに誘致コンペを行うというスキームを打ち出したところ、応札して勝ち抜いたのが北広島市です。

元々市民運動公園整備を構想し広い用地を確保していたところへ、ファイタースのコンペでボールパークをコア施設としてアクセスも千歳線に新駅を作って直結というもので、JR北海道にとっては増収策になるから大歓迎かといえば、空港輸送で線路容量に余裕のない状況では、寧ろ負担になりかねないということでご議論を呼んでいます。竣工予定は2023年3月ですが、空港新駅がそれまでに完成している確率はかなり低いと言えます。

さて、一番のスットコドッコイは誰?

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Sunday, April 02, 2017

JR30周年で国鉄は遠く

JR30周年となったわけですが、つまり国鉄を知らない世代が既に社会人になっているというわけで、そもそも国鉄改革とは何だったのかを知らない人が増えているということでもあります。しかもその30年はスタートがバブル期に重なって好調だった一方、バブル崩壊後の経済停滞で社会はすっかり様変わりしておりますが、上場を果たした本州3社とJR九州に対して、JR北海道は存続の危機とも言える状況に直面しており、JR四国も時間の問題という現状です。

その一方でJR貨物の黒字化で上場が視野に入るという、なんともわかりにくい状況ですが、JR発足以後の日本経済の激変を考えれば、これまでの30年の延長上に未来は描けないのはある意味自明です。加えて言えばバブル期以降の日本を特徴づけるのは低金利ってことです。これ上場して資金調達力を増した本州3社にとっては追い風の一方、経営安定基金の運用益で赤字穴埋めという枠組みの三島会社にとっては逆風になるわけで、その中でJR九州だけが上場にこぎつけた最大の理由は、JR発足後に完成し引き渡された青函トンネルと瀬戸大橋を抱えるJR北海道とJR四国に対して、追加的な負債が発生しなかったってこともあります。

リース料負担のある整備新幹線としての九州新幹線も、経営安定基金取り崩しで一括支払いしており、短期的な負担が北海道や四国より軽いことが指摘できます。ただし長崎ルートは需要面からもお荷物になる可能性があります。加えて経営安定基金の残りで上場前の減損処理で資産圧縮してますから、今後の鉄道事業の設備投資の原資は細くなっており、人口減少でJR北海道と同じ問題はJR九州でも起こり得ます。

本州3社についてもそれぞれリスクを抱えています。業績好調でリニア建設に入れ込むJR東海は、そのリニアがリスク要因です。過去にも何度の指摘しておりますが、リニア単体では赤字の投資であり、しかも人口減少で人手不足が顕在化する中で、労働需給による事業費の上振れは避けられないところですし、加えて南アルプスを青函トンネルより長い長大トンネルで抜ける難工事です。トンネル工事で地下水脈にぶち当たれば国鉄時代の上越新幹線中山トンネルや福岡市営地下鉄七隈線のような水没事故も起こりかねません。

JR東日本や西日本にとっても人口減少による地方線区の維持の困難さは今後も拡大するでしょう。JR東日本では仙石線や常磐線のほか、水害で橋梁が流された只見線や土砂崩れの山田線など災害復旧で課題を抱えています。JR東海の名松線の復旧とJR可部線の廃止区間の一部復活などはありますが、前者は三重県と津市の治山治水事業の進捗に合わせての復活ですし、後者は市街化が進んでいたものの、廃止時点で非電化だったために、電化工事までして残す選択肢は事実上なかったわけで、住民運動が広島市を動かし、それに呼応して鉄道用地の原状回復や売却を留まったJR西日本の間で建設的な対話が実現したことによります。その意味で窮地に立つJR北海道に対する道庁や関連自治体の対応はちょっと残念です。

それでもJR北海道に関しては、JR九州が先鞭をつけた経営安定9基金取り崩しという奥の手は残っています。ただし使途は重要で、要員不足で保守が困難な状況を脱するには、省力化投資が欠かせませんが、JR北海道の経営力強化の意味で、現状の鉄路をそっくり残すことはあきらめるしかないでしょう。具体的には保守負担の大きいディーゼル車を減らすための電化と、保守負担を減らすための軌道強化などですが、JR北海道が自前で残す区間に限定すべきでしょう。そうすれば経営安定基金を取り崩しても償却資産が増える分、キャッシュフローの改善につながりますから、JR九州の新幹線リース料一括支払いより筋の良い取り崩し方になります。JR九州で認めた以上認めないわけにはいきますまい。とすれば石勝線・根室本線の南千歳―帯広間が電化されて、保守が容易な電気車両への置き換えが進むことになります。そしてこの手は将来JR四国の経営が行き詰ったときにも使える手でもあります。

で、残りの区間に関しては自治体出資で線路保有を肩代わりするか、受け皿三セクへの譲渡とするか、あるいは地元バス事業者を巻き込んだバス転換かといった対策を路線や区間毎に自治体と話し合って決めていくしかないでしょう。受け皿三セクに関しては、輸送量次第で肥薩オレンジ鉄道のようにJR貨物の出資もあり得ます。宗谷本線に関してはロシア政府が興味を持つかもwwwww。いずれにしても自治体の対応次第です。名松線も可部線も自治体が動いて復活を果たしたわけですから。逆に自治体との協議を重ね社会実験までして廃止止む無しとなった三江線の例も珍しいものとは言えなくなるでしょう。

ま、いずれにしても人口減少の影響は今は好調な本州3社も安泰ではないわけで、北陸新幹線に入れ込むJR西日本は正直大丈夫か?とも思います。この点は」JR東日本が絡む整備新幹線計画がほぼ完成し、JR東日本のとっては成長分野となったのとは異なります。元々JR東日本も整備新幹線区間単体よりも、既存区間である根本部分の需要増が狙いだったわけで、わざわざ線路を曲げてまで小浜、京田辺経由で新幹線を作るのは意味不明です。加えてJR西日本には新たなリスクの種も。

なにわ筋線30年開通 JR・南海運行、新駅以北は阪急交え協議  :日本経済新聞
なにわ筋線に関しては、大阪維新の目玉政策としての関西空港重視の文脈で、関西財界も乗り気なようですが、今回は阪急も事業参加を申し出て、よくわからない状況になっております。

元々阪急はなにわ筋連絡線構想として十三―梅田北新駅間の路線構想を持っておりましたし、古くから新大阪連絡線として淡路―新大阪―十三間と新大阪―神崎川間の免許を取得し、新大阪駅隣接地に駅用地としてとちをしゅとくしていて、高速バスターミナルや路線バス操車場として使ってたわけですが、紆余曲折を経て十三―新大阪間を除いて免許失効しており、十三―新大阪間も、四つ橋線の十三延伸線と相互直通が計画されていましたが、大阪市営地下鉄の民営化が決まって民営化後に負担となる追加投資が頓挫したことが影響しているようです。てことで大阪部、。大阪市、JR西日本、南海電気鉄道に加えて阪急電鉄も加わる五者協議が始まるそうですが、元々JRと南海の呉越同舟に加えて唯我独尊の阪急が加わるとなると、協議がすんなり進むとは考えにくいところです。

なにわ筋線に関しては、中之島で連絡する京阪電気鉄道も期待しているようです。肝心の大阪維新ですが森友学園問題でもちぐはぐな対応が見られますし、四つ橋線延伸計画を反故にするなど本気度には疑問符が付きます。とはいえJR西日本の単独事業とするには投資額が大きいわけで、新幹線のみならず、コアコンピタンスと見做せる関西アーバンネットワークでの私鉄との相乗りは、JR西日本の難しい立ち位置を示しているとも言えます。

てことで、めでたいようなめでたくないようなJR30周年ではあります。

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Sunday, March 19, 2017

曲がり角の整備新幹線

森友問題が予想以上に盛り上がっております。どうせメディアが動かないだろうと思っていたら、籠池理事長夫妻のキャラの立ちっぷりや安倍昭恵夫人のノー天気な行動力と随行する官僚の公務か否かとか、総理夫人を私人と閣議決定とか、なんば花月かい!草生えるわ。

てことで数字が取れるとメディアが動いた結果、23日に鍵池理事長の国会証人喚問が決まりましたが、問題の本質は国有地払い下げを巡る値引き問題と教育基本法違反が疑われる私立小学校の認可を巡る大阪府の規制緩和を含む便宜供与問題の2つ。国会に呼ぶべきは当時理財局長だった迫田国税庁長官と松井大阪府知事です。

第一次安倍政権当時の姉歯事件が、永田議員偽メール事件でとん挫して、改ざんを許した大臣認証構造計算ソフト問題、民間検査機関による検査業務とそれに関連して不自然に米国基準を接ぎ木した規制改革などはスルーされ、1建築士の犯罪に矮小化され検査の厳格化だけに終わった轍を踏む可能性があります。籠池氏の証人喚問に何かの仕込みがあるか要警戒です。多分贈収賄事件というよりは、官僚による政権への忖度だろうとは思いますが、だから許されるって話ではありませんね。

この手の忖度は歴史を紐解けば結構あります。古くは東海道新幹線の岐阜羽島駅を巡る問題で、岐阜県選出の大野伴穆代議士の関与が噂されましたが、当時新幹線建設に懐疑的な世論もあり、政治家の関心は高くなかったのですが、反対されると面倒ということで、国鉄側が忖度したものです。

元々東海道新幹線は最高速250km/hで東京―大阪2時間半という目標を掲げて計画がスタートしてます。当時既に民間航空の台頭とモータリゼーションの進捗で挟み撃ちに逢っていた鉄道は、世界的には斜陽産業と見做され、フランス国鉄で331km/hの記録を出しており、枯れた既存技術で200km/h-250km/h程度の営業運転は可能と見られてはいましたが、そのための追加投資に及び腰で、当時の高速列車は最高速160km/h止まりでした。

日本でも民間航空とモータリゼーションは欧米に遅れながら進んでいたのですが、その一方で戦後復興が軌道に乗って旺盛な需要拡大で、特に東海道本線は早晩輸送力増強が必要な状況でしたが、航空とクルマに対して鉄道のシェアを維持するために、世界最高峰の高速鉄道の建設を意思決定します。戦前の弾丸列車計画である程度用地が確保されていたことも背中を押したのでしょう。

そのため可能な限り直線的なルートで計画され、名古屋から米原へは、当初鈴鹿山地をトンネルで抜けて直行するルートで検討されましたが、当時の土木技術水準では長大トンネルは建設費を増大させるということで、計画が具体化する中で、現在の関ヶ原ルートに落ち着きますが、そうなると岐阜県をかすめることになり、駅を造らないで反対されるリスクを回避するため、岐阜羽島駅の設置が決まった経緯があります。余談ですが鈴鹿山地ルートならば関ヶ原の雪に悩まされずに済んだ可能性はあります。

これだけが原因ではありませんが、計画を具体化する過程で妥協を迫られた結果、最高速は巡航速度200km/hプラス10km/hの210km/hとなり、東京―大阪3時間へ。そして京都駅への速達列車停車で3時間10分となります。加えて盛土の安定のために開業時は盛土区間の徐行で4時間となり、1年1か月後に徐行解除という対応が採られました。枯れた技術の集大成とはいえ、世界初の速度域の営業運転ということで、慎重を期したわけです。

結果的に東海道新幹線は沿線の人口と産業の集積を進め、事業としても大成功だったわけですが、一方で会計規則の変更で民間企業並みに減価償却を義務付けられたこともあり、皮肉なことに国鉄は新幹線開業年の1964年から赤字転落し、以後累積赤字を重ねて解体、分割民営化へ進むことになります。東海道新幹線単体で見れば償却後も大幅黒字ですが、電化、ディーゼル化による動力近代化と需要が旺盛な幹線ルートの複線化に、首都圏通勤五方面作戦もあって、償却資産を増やし続けたことで、赤字は拡大の一途をたどります。巷間言われる赤字ローカル線問題はむしろ無償貸与または譲渡で減価償却が発生しませんので、経営への重荷という意味では主たる原因とは言い難いところです。

この頃の国鉄幹部の経営能力はかなり低かったようで、赤字解消のために生産性を上げようとして所謂マル生運動を仕掛けて労組と破局的な対立をしたり、東海道新幹線の好調ぶりに「新幹線なら何とかなるかも」と全国新幹線網を構想して、整備法が国会で成立するのを受けて、とりあえず輸送力が逼迫しつつあった山陽本線の救済名目で山陽新幹線を着工し、岡山開業、博多開業の2段階で事業を進めましたが、この頃には大型機の就航もあって長距離では航空のシェアを切り崩すには至りませんでした。

その一方、整備法の縛りもあって新規着工の新幹線は最高速260km/hで最小曲線半径も東海道の2,500mから4,000mに、軌道中心間隔4.2mから4.3mとグレードアップされましたし、加えて高度経済成長期の年率5%に及ぶインフレもあって、東海道新幹線より減価償却費の負担が重くのしかかる一方、輸送量は東海道の凡そ1/3に留まり、単体で辛うじて黒字も、並行する在来線の赤字転落もあって、国鉄全体の収支改善にはほとんど寄与しませんでした。寧ろ減価償却費の増大はフリーキャッシュフローを生み出しますから、会計上赤字でも現金は潤沢で、身の丈に合わない過剰投資は加速し収支悪化が止まらないわけです。

こうして国鉄解体、分割民営化へと進むわけですが、民営化でJR各社が軒並み収支改善された秘密の1つは、JR各社の国鉄継承資産の圧縮記帳です。旧国鉄勘定で資産の減損処理をして、新会社へは例えば貨物コンテナ1個1円とかで継承し、バランスシートが身軽な状態でスタートしたことによります。ただし本州3社に継承された新幹線だけは例外で、営業権こそJR各社に帰属しますが、資産としては新幹線保有機構という特殊法人に継承させて、JR各社から線路使用料を徴収する形にして、旧国鉄債務の一部として負担させたわけです。しかしこれは見直されます。

対航空で競争力を高めたいJR東海は300系で270㎢/h運転を実現しますが、稼ぎ頭の東海道新幹線でリース料の負担が重い一方、減価償却費が得られず投資の停滞を余儀なくされます。また他社に先駆けて株式上場を目指すJR東日本は、東京証券取引所の助言で、主たる事業資産である新幹線が自己保有ではない状況では、減価償却費による継続投資ができないから、事業継続に疑義があり上場は難しいと指摘されたことを受け、国に新幹線買い取りを提案。東海と西日本も同意して買い取りが決まります。

この時の価格査定で時価法の1種である再取得価格法によります。簡単に言えば同等の資産を現時点で再取得する際にかかる費用ですが、非償却部分の地価部分が膨張しているわけですから、車両更新を進めて対航空の競争力を高めたいJR東海にとっては不満の残る査定となりました。そして後にこれでは東海道新幹線の設備更新が滞ると国に不満をぶつけて、のぞみ料金の上乗せ部分を非課税積み立てして設備更新に備える新幹線版特特法のような仕組みを勝ち取ります。その後工法の見直しで設備更新費用は圧縮され、JR東海は舌出してます。JR東海がリニアに傾斜するのは、それだけ余剰資金が潤沢だということでもありますが、そのリニアでも大阪開業前倒しで利子補給を取り付けるなど、国を騙して利益を得るその手法は、ある意味森友学園よりも悪辣かも。

一方国鉄が事業主体となる前提の新幹線網整備法も有名無実化する可能性があったわけですが、分割民営化時点で既に基本計画から整備計画へ昇格していた5路線の整備スキームが検討され、現在の所謂整備新幹線スキームになるわけです。元々国鉄の存在を前提とした法律を民営化JRに担わせるために、国と地方が2:1の比率で助成し、JRの負担も30年リースで償還するというもので、事業費圧縮のためにフル規格の他にミニ新幹線とスーパー特急という3メニューを用意して、国、地方、JRの3者の合意に基づいて着工という手順が決まりました。その際並行在来線はJRの経営から分離することと、分離に伴う貨物やローカル輸送由来の赤字負担がなくなる部分も加えたJRの受益分がリース料の算定基準とされました。

これJR東日本の上場時の東証の助言から言えば、九州新幹線を抱えるJR九州の上場はやや違和感があるわけですが、JR九州の場合不動産や流通など関連事業の好調で鉄道事業の比率がJR各社中最低の49%ということもありますが、鉄道事業でも経営安定基金を取り崩して新幹線リース料の一括支払いとその他の鉄道資産の減損処理を上場前に済ませて、上場後の負担を軽くしたわけで、JR発足時の圧縮記帳を繰り返したわけで、ルール上はかなりきわどいことをやってます。

一方赤字圧縮のために大幅な路線廃止を打ち出したJR北海道にとっての北海道新幹線は、貨物との共用の制約もあって共用区間の最高速140km/hで並行在来線切り離しは函館本線函館―新函館北斗と江差線五稜郭―木古内で受益が少ない上、函館本線に関しては電化して新車まで入れて三セクに渡すという追加費用も発生してますし、共用区間は並行在来線ではないので、JR貨物の割安な線路使用料はそのままということで、実態として経営改善にはほとんど寄与していないですし、むしろ青函トンネル自体の老朽化もあって保守費用の負担は今後も増えると見込まれます。上場どころか事業継続の危機ともいうべき状況です。

JR北海道は北海道新幹線の札幌延伸に期待を繋いでいるようですが、東京から5時間超では上記の4時間の壁問題で航空からの移転は期待できません。それでも並行在来線切り離しの受益は見込めますが、人口の希薄な北海道では北陸新幹線つるぎのような近距離利用も期待薄です。整備新幹線自体がリース資産で減価償却がありませんから、スピードアップのための追加投資の原資が得られないわけで、この点は一括支払いを済ませた九州新幹線にも当てはまります。こうして見ると整備新幹線は未来のない中途半端な存在ということができます。加えて政治性が機能の低下を後押しします。

北陸新幹線の全ルート確定 敦賀以西31年着工  :日本経済新聞
小浜―京都ルートも驚きですが、京田辺市(学園都市線松井山手付近)経由の南回りルートとこちらもう回路です。京阪間で料金不要の新快速よりも遅いわけで、何のための新幹線なんでしょうか。小浜―京都ルートに関しては、京都と若狭地区の繋がりの深さを指摘する向きもありますが、そういうローカルな需要はバスの若江線(近江今津―上中)の在来線鉄道建設で満たせるはずで、新幹線である必要はありません。事業性を考えたら米原ルート一択だった筈。しかも北海道新幹線札幌延伸後の2031年まで財源なしですし、そもそも並行在来線をどうするのか。まさか湖西線を切り離すじゃ受益のない滋賀県が同意するはずもないですし。政治に忖度して岐阜羽島駅を作った東海道新幹線のツケがこういう形で跳ね返るとは。つくづく日本の統治システムの醜怪さに眩暈がします。

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Sunday, February 19, 2017

ワールド・アナザー・ヒストリー

21世紀の世界で暗殺事件?いやはや驚きです。実行犯の女性2人と男性1人に加え、北朝鮮籍の男性1人も逮捕され、北朝鮮からは遺体引き渡しが矢の催促で、状況証拠から北朝鮮工作員の犯行は間違いないでしょう。それでも北朝鮮と国交のあるマレーシア政府は慎重姿勢です。通常ならば暗殺のような手段を取った北朝鮮に対して、アメリカを中心とする西側陣営は報復として金正恩の暗殺を仕掛ける可能性が高いですが、どうも足並みが揃ってません。トランプ劇場でアメリカ国内の混乱が続いてます。むしろ中国とロシアがこの問題に強く反応を見せております。

大統領令を乱発するトランプ政権ですが、イスラム圏7カ国の入国制限令は現在司法によって差し止められています。大統領側近のバノン氏の意向で進められました。

トランプ氏側近・バノン氏に発言力 政策を左右、省庁も無視 (写真=ロイター) :日本経済新聞
この7カ国は2015年11月のパリ同時多発テロを受けてビザ免除38カ国の国民を含め渡航歴のある人に特別ビザの取得を求めた法律のテロ懸念国7カ国が対象ですが、司法省に事前審査も発効前の告知期間もなかったために混乱しました。司法省の事前審査があれば7カ国の渡航歴のある人の入国制限との関係が問われるでしょうから、そうなると大統領令に手を入れられてしまうため、それを嫌った可能性があります。

推測ですが、オバマ政権時代に連邦議会が決めたテロ懸念国7カ国からの入国を制限することで、テロ防止の水際作戦を演出したかったんでしょう。結果いきなり現場にペーパーだけ降りてきて、現場毎の解釈の違いもあって混乱に拍車をかけたようです。確かに問題のあるやり方ですが、一方で差別批判がIT企業から吹き上がります。

「テロ懸念国」の入国禁止、米IT業界が懸念強める  :日本経済新聞
米IT企業の多くは、トップを含めて多数の移民が働いていて、入国制限は直接的に業務に支障が出るということですが、暗に差別主義批判といった政治的メッセージが含意されてます。ただしこれを以て「アメリカの民主主義は健在」とは思わない方が良いでしょう。アメリカが移民を受け入れるから一流の人材が集まるとはよく言われますが、これ移民の中のひと握り、せいぜい1%で、残りはサービス業など低賃金労働に就業するワーキングプア層ということで、移民かどうかに拘らず進む格差拡大の結果と変わりません。ってことで、移民受け入れを善とする所謂リベラル派の言説はこうしたゴマカシを内包しているわけで、クリントンが大統領選で負けたのも頷けますし、一方で移民を止めても問題は解決しないってことでもあります。格差拡大は移民やグローバル化よりもIT化による機械化、自動化、省力化の影響と見るべきでしょう。

続いて国家安全保障担当のフリン補佐官の辞任も痛手です。

「ロシア」米政権を揺るがす フリン氏辞任 (写真=ロイター) :日本経済新聞
昨年12月に駐米ロシア大使と電話で接触したということですが、政権移行前で問題ってことなんで、移行後に新政権の意向を受けて接触する分には問題ないわけで、トランプ氏が関与していたかどうかなど不明の点もありますが、むしろ駐米外交官との接触自体はパイプ作りという意味合いもありますし、結局対ロシア経済制裁解除など中身の問題です。それより情報源が米情報機関からメディアへのリークのようで、これ日本では政治家や官僚の観測気球として結構利用されているやり方ですが、アメリカでもと思うと複雑な心境です。むしろトランプ政権と情報機関の間に不信感があると見られることが不気味です。
トランプ氏、情報機関と亀裂広がる 組織のあり方検討へ  :日本経済新聞
アメリカの歴代大統領は4人暗殺されてますし、メディアに不正を暴かれて辞任したニクソン大統領の例もありますし、情報機関とメディアとの敵対はこういった連想を想起します。金正男の次はトランプ?

北朝鮮の情報機関が一般人を巻き込んだと見られるマレーシアの事件ですが、アメリカの情報機関が本気になればこれ以上のアナザー・ヒストリーを演出することは可能でしょう。何しろスノーデン氏が暴露したように、政治犯に限らず個人情報を集めまくっていて、日本でもNSAから日本人の個人情報を集めたいと申し出があり、日本政府が法令違反で無理と断ったら、違反にならない法律を作れと返したということで、それが今国会審議中の共謀罪なんですね。こんなもん通したら一般市民が米情報機関の演出するアナザー・ストーリーに巻き込まれる可能性があります。で情報機関と対立しているトランプ政権でこの法律を通しても、トランプ政権に恩を売ることにはならないことに注目すべきです。ついでに言えばオバマ政権が種まいた南スーダンPKOも今なら撤退してもアメリカの顔を潰すことにはならないんですが。

てなわけで、日米会談を大成功と自画自賛する安倍政権ですが、日米経済対話でFTAを封印したつもりになっていると痛い目を見ます。為替問題という爆弾を抱えていることは日本政府もわかっているでしょうけど、日米会談で言及がなくむしろドイツや中国に矛先が向かうと考えると大間違いです。

(羅針盤)通貨安批判、同意のドイツ  :日本経済新聞
ドイツにしてみれば、金融緩和がECBがやっていることで、ドイツ自身は南欧諸国の財政規律が緩むからと反対し続けているわけで、金融緩和で為替操作と言われても「は?」てな話です。その点日本の過剰反応ぶりはむしろ心配です。
財務相、異例の為替水準言及 円安ラインは120円?  :日本経済新聞
G20為替ルールに抵触する可能性のある財務相発言ですが、それだけ為替問題が敏感な問題ということです。トランプ政権との通商交渉では譲歩を引き出すネタにされること間違いないでしょう。

で、アメリカに日本の資金で新幹線やリニアをという話にあんるんですが、そんな金あればJR北海道を何とかせいと言いたいところです。それに関連してこんなニュース。

トラック人手不足追い風 JR貨物、初の鉄道黒字  :日本経済新聞
JR貨物に関しては、温暖化対策もあって(独法)鉄道建設・運輸施設整備支援機構から融資を受けて経営基盤強化の途上にあり、2018年度の黒字化を公約していたので、2年前倒しの達成となり、株式上場が視野に入ってきます。ただし線路使用料問題がネックになります。

JR貨物の線路使用料は貨物列車運行にかかる追加費用プラス1%のインセンティブを基本ルールとし、具体的な金額は線路を保有する旅客会社との相対交渉で決めることになっておりますが、JR発足当時、赤字基調が確実視されていたこともあり、機関車1両あたりの単価を設定するという便法で大幅値引きされています。それもあって機関車の重連運用を単機運用に置き換える目的でDD51重連→DF200単機、ED79重連→EH500単機、EF64重連→EH200単機といった形で新型機に置換を進めてきたわけですが、特に北海道のDD51重連からDF200単機への置き換えは、軸重が14tから16tに増えたこともあり、JR北海道の線路保守の負担になっていることは間違いありません。黒字化なら当然線路使用料の値上げが打診されるはずですが、そうなるとJR貨物の黒字を維持できるのかという問題になるわけで、うまくいきません。

そこで別の方法として、北海道では線路を痛めない軽軸重の小型機関車での小単位輸送という方法で保守費用の負担を軽減することも考えたいところです。これ震災関連でリージョナルカーゴトレインの可能性について言及したことがありますが、今ならハイブリッド技術を用いて構内入替をバッテリー駆動で行い、本線上を高速走行するときはディーゼル発電でバックアップすることで、例えば臨海鉄道のような三セク貨物鉄道を立ち上げて担わせるといった応用が可能ではないかと思います。JR貨物にとってはリスク分散になり、出資自治体にとっては貨物鉄道を保持することで大規模農業を含む産業立地に助けになり、国の温暖化対策事業の補助金も使えるわけで、旅客鉄道としての存続が難しい北海道の路線の存続策になり得るんじゃないかと愚考します。

これヒントはアメリカが貨物鉄道大国で、アムトラックなどの旅客鉄道が線路を借りて営業しているという日本と逆の形ですが、貨物鉄道のインフラ保持が実現できれば、軽量のローカル旅客列車の存続は容易になります。これ地域の産業政策と抱き合わせで道庁が動くしかないですが、今に至る道庁のスタンスでは実現可能性は限りなく低いと言わざるを得ません。

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Sunday, December 25, 2016

死ななきゃ治らないナントカ

クリスマスです。ハロウインのときのエントリーで指摘したように、日ロ首脳会談での領土交渉の進展はありませんでした。これロシア側からのサインが出てましたが、予備交渉の過程で引き渡し後の領土に米軍基地が置かれる可能性を問われて有り得るとした返答で態度を硬化したとされますが、ソビエト時代から言われていたことの確認に過ぎませんし、沖縄の普天間基地の移転先の辺野古の反対運動や北部訓練場変換に関連した高江ヘリパッドの建設強行に対する反対運動に対して、日本政府が強行している姿勢を見て、日本への主権の引き渡しは無理と判断されたというのが実際のところです。日ロ関係は日米関係に規定されるのが現実です。

加えて言えば択捉島へのミサイル配備問題ですが、これ地対艦ミサイルってところがミソです。つまり標的はあくまでもオホーツク海での外国軍用船の軍事行動をけん制するためで、ロシアの核戦略と関連します。ロシアは保有する核弾頭の数を保持しつつSLBMへの転換を発表しております。オホーツク海にはSLBM搭載原潜を潜ませており、その太平洋側の出口ということですね。これがあるからシリアでのロシア軍の軍事行動に対してアメリカも文句を言えないわけで、核抑止力を効かせながら局地戦を睨んだロシア軍の部隊編成の小規模化とも連動します。そして支援を得たシリア政府軍による反政府勢力の制圧は時間の問題というところまで来ています。正邪の判断を横に置けば、ロシア軍改革は大成功といえます。

あと鉄ちゃん的蛇足ですが、津軽海峡を国際海峡とするためにここだけ領海3カイリに設定しているのは津軽海峡を潜航航行するソビエトの核搭載原潜の通過を現実的に阻止できないことから便宜的にそうしているわけで、現在もロシア原潜の日本海から東シナ海への航路として機能させることが、海洋進出を進める中国へのけん制になるので、維持されています。青函トンネルは日本の鉄道で唯一施政権外エリアを通過する存在としての意味があるわけですが、有事の輸送路となるインフラのメンテナンスを経営不振なJR北海道へ丸投げってのも危ういところです。

こういうことが頭に入っていれば、今回の日ロ交渉で領土問題が1ミリも動かないのは自明というわけです。期待をにじませるメディア報道はおそらく官邸からのリークでしょうけど、逆に領土問題の解決困難を国民に印象付けたわけで、結果的に領土抜きの経済連携となりました。クリミア編入を巡る対ロ経済制裁を一部緩和した形ですが、全面解除ではないからロシアから見ても不満の残る結果であり、大盤振る舞いした割には成果の少ないものになりました。

誤解のないように申し上げますが、私自身はそれでも極東やシベリアの開発を巡る日ロの連携はやるべきだという立場です。できれば日ロ間のガスパイプラインや電力連携線の整備は、日本のエネルギー政策に革新をもたらします。是非やるべきです。むしろ今回のことで領土領土とうるさいめんどくさいウヨどもを黙らせることができれば成果あったと言えます。あれ、安倍政権褒めてるwwwwwww。

一方混迷を深める南スーダンを巡って異変が。

南スーダンへの武器禁輸決議案、安保理で否決  :日本経済新聞
南スーダン情勢の緊迫化で大量虐殺の可能性ありとする武器禁輸の安保理決議で中ロと共に日本が棄権に回り、8ヶ国の棄権で必要な得票数に届かず否決されました。アメリカからは棄権しないよう働きかけがあったにも関わらずですから、アメリカからは非難されてます。日本政府の言い分は武器禁輸で南スーダン政府を刺激する方が危険というロジックですが、自衛隊をPKO派遣しているからということですね。

しかしそもそもPKO法では戦闘地域への派遣は禁止事項ですし、現地情勢次第で撤退を決断しなければならない局面なのに、国連が派遣する文民を警護するという変な理屈で所謂駆け付け警護(意味不明な用語ですが)を新たな任務とするという逆の対応を取っています。同じくPKO部隊を派遣する中国に対するライバル心からか、既成事実の積み上げか意図は不明ですが、現地で起きているのは石油利権のイスラム勢力との分離を狙ってアメリカが後押しした謂わば傀儡政権の南スーダン政府の暴走の結果であり、アメリカの尻拭いを中国と共同で日本の自衛隊が担うって構図はどう考えてもおかしいわけで、頭壊れてないか?

この構図は欧米が関与した紛争の多くで見られるもので、ジョージア(グルジア)紛争といいウクライナ紛争といい、親欧米派の裏に米保守派議員やCIAの関与が指摘されてます。またアラブの春に乗じたリビアの反政府勢力への英仏の支援で結果的にカダフィ政権を排除し、シリアでも反政府勢力へのCIAによる支援はもはや公然の秘密で、資金や兵器がダーイシュ(イスラム国)に流れて混乱しているわけです。大量破壊兵器のウソが暴かれたイラク戦争もですが、こういうろくでもないことを繰り返してきた欧米流リベラリズムへの懐疑が、Brexitやトランプ大統領を生んだわけで、大手メディアによる反Brexitや反トランプキャンペーンもこの文脈で見ると読み解けます。加えて欧米諸国のこの手の工作は昨今必ずしもうまくいっていないことも。時代は確実に変わりつつあります。

あと原発関連でいくつかありますが、これを取り上げます。

三菱重工と原燃、アレバに出資で最終調整  :日本経済新聞
福一事故を受けて安全対策の強化が求められて原発事業の採算性が悪化した結果、こういう妙なことが起きます。儲からないからといってやめられない。確かに廃炉や廃棄物処分などでやめられちゃ困るんだけど、コスト面で原発が事業として成り立たなくなってきています。もんじゅの廃炉も決まりましたが、高速炉は廃棄物を減らせる可能性があるということで開発は続けるというのですが、日本が大量のプルトニウムを保有する理由がなくなるという方が大きいのでしょう。もう一つこれ。
東電の原子力事業、再編相手公募へ 経産省有識者会議が提言  :日本経済新聞
f福島の賠償と廃炉で青息吐息の東電と組むメリットはほぼ皆無です。天然ガスなどの燃料調達のために東電と合弁でJERAを設立した中部電力からして東電と組んだことを死ぬほど後悔してるってのに、公募で再編相手が見つかると考える有識者とやらの眠たい議論を続けるのは、東電を破綻処理しなかった結果です。あーうましか。

一方でこんなニュースも。

鉄道が送電会社になる日 電線そのまま活用  :日本経済新聞
実は以前、このエントリーでJRの直流送電網を利用した電力託送事業の可能性を指摘したことがあります。記事はえちぜん鉄道の事例で、沿線の過疎化で収益確保が困難なTローカル私鉄の新たな収益源としての取り組みですが、うまくいけば大手私鉄やJRへ波及することも期待できます。

背景として元々鉄道は負荷変動が大きいがゆえに、電力会社から嫌われ不利な契約条件を余儀なくされているのですが、加えて技術革新で回生ブレーキが常用されるようになり、古い饋電システムではむしろ負荷変動を助長することもあり、固定買い取り制度(FIT)でも鉄道の回生電力は除外されました。そんな中で大手私鉄は変電所にNAS電池やキャパシタなどの蓄電装置を置いて負荷の平準化をしたりしてますが、ローカル私鉄ではそういった設備投資も単独では難しい中で、送電事業で託送料徴収して収益源とすることでクリアしようということです。ささやかなチャレンジですが、直流送電の特徴を生かして直流発電となる太陽光の電力を受け入れるなどして量の確保ができれば、結構使えるビジネスモデルになります。

九電ショックで売り先を失った太陽光発電の受け皿となれば、萎んだ太陽光発電の再活性化の可能性もあります。そして大手やJRにまで波及すればですが、原発の廃炉費用を託送料へ上乗せしようという経産省と電力会社のゴマカシを阻止できる可能性もあります。加えて隠れたメリットも。

電力回生ブレーキでせっかく省エネを実現しても、それを活かせない現在の直流饋電システムですが、例えば3,000Vの高圧直流で饋電してDC-DCコンバータで降圧して架線に供給する直流版AT饋電のようなシステムが可能ならば、変電所の集約と複数の機電区分への電力供給によって、負荷変動自体を平準化するシステムの可能性です。設備の合理化メリットと共に、大電力故に制御が難しくエアーセクション事故のような饋電系トラブルが増えている首都圏のJRにおいて、防止策になるということが期待できるんじゃないかということです。饋電系トラブルの多いJR東日本がチャレンジしてくれないかな。

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