第三セクター鉄道

Sunday, March 19, 2017

曲がり角の整備新幹線

森友問題が予想以上に盛り上がっております。どうせメディアが動かないだろうと思っていたら、籠池理事長夫妻のキャラの立ちっぷりや安倍昭恵夫人のノー天気な行動力と随行する官僚の公務か否かとか、総理夫人を私人と閣議決定とか、なんば花月かい!草生えるわ。

てことで数字が取れるとメディアが動いた結果、23日に鍵池理事長の国会証人喚問が決まりましたが、問題の本質は国有地払い下げを巡る値引き問題と教育基本法違反が疑われる私立小学校の認可を巡る大阪府の規制緩和を含む便宜供与問題の2つ。国会に呼ぶべきは当時理財局長だった迫田国税庁長官と松井大阪府知事です。

第一次安倍政権当時の姉歯事件が、永田議員偽メール事件でとん挫して、改ざんを許した大臣認証構造計算ソフト問題、民間検査機関による検査業務とそれに関連して不自然に米国基準を接ぎ木した規制改革などはスルーされ、1建築士の犯罪に矮小化され検査の厳格化だけに終わった轍を踏む可能性があります。籠池氏の証人喚問に何かの仕込みがあるか要警戒です。多分贈収賄事件というよりは、官僚による政権への忖度だろうとは思いますが、だから許されるって話ではありませんね。

この手の忖度は歴史を紐解けば結構あります。古くは東海道新幹線の岐阜羽島駅を巡る問題で、岐阜県選出の大野伴穆代議士の関与が噂されましたが、当時新幹線建設に懐疑的な世論もあり、政治家の関心は高くなかったのですが、反対されると面倒ということで、国鉄側が忖度したものです。

元々東海道新幹線は最高速250km/hで東京―大阪2時間半という目標を掲げて計画がスタートしてます。当時既に民間航空の台頭とモータリゼーションの進捗で挟み撃ちに逢っていた鉄道は、世界的には斜陽産業と見做され、フランス国鉄で331km/hの記録を出しており、枯れた既存技術で200km/h-250km/h程度の営業運転は可能と見られてはいましたが、そのための追加投資に及び腰で、当時の高速列車は最高速160km/h止まりでした。

日本でも民間航空とモータリゼーションは欧米に遅れながら進んでいたのですが、その一方で戦後復興が軌道に乗って旺盛な需要拡大で、特に東海道本線は早晩輸送力増強が必要な状況でしたが、航空とクルマに対して鉄道のシェアを維持するために、世界最高峰の高速鉄道の建設を意思決定します。戦前の弾丸列車計画である程度用地が確保されていたことも背中を押したのでしょう。

そのため可能な限り直線的なルートで計画され、名古屋から米原へは、当初鈴鹿山地をトンネルで抜けて直行するルートで検討されましたが、当時の土木技術水準では長大トンネルは建設費を増大させるということで、計画が具体化する中で、現在の関ヶ原ルートに落ち着きますが、そうなると岐阜県をかすめることになり、駅を造らないで反対されるリスクを回避するため、岐阜羽島駅の設置が決まった経緯があります。余談ですが鈴鹿山地ルートならば関ヶ原の雪に悩まされずに済んだ可能性はあります。

これだけが原因ではありませんが、計画を具体化する過程で妥協を迫られた結果、最高速は巡航速度200km/hプラス10km/hの210km/hとなり、東京―大阪3時間へ。そして京都駅への速達列車停車で3時間10分となります。加えて盛土の安定のために開業時は盛土区間の徐行で4時間となり、1年1か月後に徐行解除という対応が採られました。枯れた技術の集大成とはいえ、世界初の速度域の営業運転ということで、慎重を期したわけです。

結果的に東海道新幹線は沿線の人口と産業の集積を進め、事業としても大成功だったわけですが、一方で会計規則の変更で民間企業並みに減価償却を義務付けられたこともあり、皮肉なことに国鉄は新幹線開業年の1964年から赤字転落し、以後累積赤字を重ねて解体、分割民営化へ進むことになります。東海道新幹線単体で見れば職客後も大幅黒字ですが、電化、ディーゼル化による動力近代化と需要が旺盛な幹線ルートの複線化に、首都圏通勤五方面作戦もあって、償却資産を増やし続けたことで、赤字は拡大の一途をたどります。巷間言われる赤字ローカル線問題はむしろ無償貸与または譲渡で減価償却が発生しませんので、経営への重荷という意味では主たる原因とは言い難いところです。

この頃の国鉄幹部の経営能力はかなり低かったようで、赤字解消のために生産性を上げようとして所謂マル生運動を仕掛けて労組と破局的な対立をしたり、東海道新幹線の好調ぶりに「新幹線なら何とかなるかも」と全国新幹線網を構想して、整備法が国会で成立するのを受けて、とりあえず輸送力が逼迫しつつあった山陽本線の救済名目で山陽新幹線を着工し、岡山開業、博多開業の2段階で事業を進めましたが、この頃には大型機の就航もあって長距離では航空のシェアを切り崩すには至りませんでした。

その一方、整備法の縛りもあって新規着工の新幹線は最高速260km/hで最小曲線半径も東海道の2,500mから4,000mに、軌道中心間隔4.2mから4.3mとグレードアップされましたし、加えて高度経済成長期の年率5%に及ぶインフレもあって、東海道新幹線より減価償却費の負担が重くのしかかる一方、輸送量は東海道の凡そ1/3に留まり、単体で辛うじて黒字も、並行する在来線の赤字転落もあって、国鉄全体の収支改善にはほとんど寄与しませんでした。寧ろ減価償却費の増大はフリーキャッシュフローを生み出しますから、会計上赤字でも現金は潤沢で、身の丈に合わない過剰投資は加速し収支悪化が止まらないわけです。

こうして国鉄解体、分割民営化へと進むわけですが、民営化でJR各社が軒並み収支改善された秘密の1つは、JR各社の国鉄継承資産の圧縮記帳です。旧国鉄勘定で資産の減損処理をして、新会社へは例えば貨物コンテナ1個1円とかで継承し、バランスシートが身軽な状態でスタートしたことによります。ただし本州3社に継承された新幹線だけは例外で、営業権こそJR各社に帰属しますが、資産としては新幹線保有機構という特殊法人に継承させて、JR各社から線路使用料を徴収する形にして、旧国鉄債務の一部として負担させたわけです。しかしこれは見直されます。

対航空で競争力を高めたいJR東海は300系で270㎢/h運転を実現しますが、稼ぎ頭の東海道新幹線でリース料の負担が重い一方、減価償却費が得られず投資の停滞を余儀なくされます。また他社に先駆けて株式上場を目指すJR東日本は、東京証券取引所の助言で、主たる事業資産である新幹線が自己保有ではない状況では、減価償却費による継続投資ができないから、事業継続に疑義があり上場は難しいと指摘されたことを受け、国に新幹線買い取りを提案。東海と西日本も同意して買い取りが決まります。

この時の価格査定で時価法の1種である再取得価格法によります。簡単に言えば同等の資産を現時点で再取得する際にかかる費用ですが、非償却部分の地価部分が膨張しているわけですから、車両更新を進めて対航空の競争力を高めたいJR東海にとっては不満の残る査定となりました。そして後にこれでは東海道新幹線の設備更新が滞ると国に不満をぶつけて、のぞみ料金の上乗せ部分を非課税積み立てして設備更新に備える新幹線版特特法のような仕組みを勝ち取ります。その後工法の見直しで設備更新費用は圧縮され、JR東海は舌出してます。JR東海がリニアに傾斜するのは、それだけ余剰資金が潤沢だということでもありますが、そのリニアでも大阪開業前倒しで利子補給を取り付けるなど、国を騙して利益を得るその手法は、ある意味森友学園よりも悪辣かも。

一方国鉄が事業主体となる前提の新幹線網整備法も有名無実化する可能性があったわけですが、分割民営化時点で既に基本計画から整備計画へ昇格していた5路線の整備スキームが検討され、現在の所謂整備新幹線スキームになるわけです。元々国鉄の存在を前提とした法律を民営化JRに担わせるために、国と地方が2:1の比率で助成し、JRの負担も30年リースで償還するというもので、事業費圧縮のためにフル規格の他にミニ新幹線とスーパー特急という3メニューを用意して、国、地方、JRの3者の合意に基づいて着工という手順が決まりました。その際並行在来線はJRの経営から分離することと、分離に伴う貨物やローカル輸送由来の赤字負担がなくなる部分も加えたJRの受益分がリース料の算定基準とされました。

これJR東日本の上場時の東証の助言から言えば、九州新幹線を抱えるJR九州の上場はやや違和感があるわけですが、JR九州の場合不動産や流通など関連事業の好調で鉄道事業の比率がJR各社中最低の49%ということもありますが、鉄道事業でも経営安定基金を取り崩して新幹線リース料の一括支払いとその他の鉄道資産の減損処理を上場前に済ませて、上場後の負担を軽くしたわけで、JR発足時の圧縮記帳を繰り返したわけで、ルール上はかなりきわどいことをやってます。

一方赤字圧縮のために大幅な路線廃止を打ち出したJR北海道にとっての北海道新幹線は、貨物との共用の制約もあって共用区間の最高速140km/hで並行在来線切り離しは函館本線函館―新函館北斗と江差線五稜郭―木古内で受益が少ない上、函館本線に関しては電化して新車まで入れて三セクに渡すという追加費用も発生してますし、共用区間は並行在来線ではないので、JR貨物の割安な線路使用料はそのままということで、実態として経営改善にはほとんど寄与していないですし、むしろ青函トンネル自体の老朽化もあって保守費用の負担は今後も増えると見込まれます。上場どころか事業継続の危機ともいうべき状況です。

JR北海道は北海道新幹線の札幌延伸に期待を繋いでいるようですが、東京から5時間超では上記の4時間の壁問題で航空からの移転は期待できません。それでも並行在来線切り離しの受益は見込めますが、人口の希薄な北海道では北陸新幹線つるぎのような近距離利用も期待薄です。整備新幹線自体がリース資産で減価償却がありませんから、スピードアップのための追加投資の原資が得られないわけで、この点は一括支払いを済ませた九州新幹線にも当てはまります。こうして見ると整備新幹線は未来のない中途半端な存在ということができます。加えて政治性が機能の低下を後押しします。

北陸新幹線の全ルート確定 敦賀以西31年着工  :日本経済新聞
小浜―京都ルートも驚きですが、京田辺市(学園都市線松井山手付近)経由の南回りルートとこちらもう回路です。京阪間で料金不要の新快速よりも遅いわけで、何のための新幹線なんでしょうか。小浜―京都ルートに関しては、京都と若狭地区の繋がりの深さを指摘する向きもありますが、そういうローカルな需要はバスの若江線(近江今津―上中)の在来線鉄道建設で満たせるはずで、新幹線である必要はありません。事業性を考えたら米原ルート一択だった筈。しかも北海道新幹線札幌延伸後の2031年まで財源なしですし、そもそも並行在来線をどうするのか。まさか湖西線を切り離すじゃ受益のない滋賀県が同意するはずもないですし。政治に忖度して岐阜羽島駅を作った東海道新幹線のツケがこういう形で跳ね返るとは。つくづく日本の統治システムの醜怪さに眩暈がします。

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Sunday, February 19, 2017

ワールド・アナザー・ヒストリー

21世紀の世界で暗殺事件?いやはや驚きです。実行犯の女性2人と男性1人に加え、北朝鮮籍の男性1人も逮捕され、北朝鮮からは遺体引き渡しが矢の催促で、状況証拠から北朝鮮工作員の犯行は間違いないでしょう。それでも北朝鮮と国交のあるマレーシア政府は慎重姿勢です。通常ならば暗殺のような手段を取った北朝鮮に対して、アメリカを中心とする西側陣営は報復として金正恩の暗殺を仕掛ける可能性が高いですが、どうも足並みが揃ってません。トランプ劇場でアメリカ国内の混乱が続いてます。むしろ中国とロシアがこの問題に強く反応を見せております。

大統領令を乱発するトランプ政権ですが、イスラム圏7カ国の入国制限令は現在司法によって差し止められています。大統領側近のバノン氏の意向で進められました。

トランプ氏側近・バノン氏に発言力 政策を左右、省庁も無視 (写真=ロイター) :日本経済新聞
この7カ国は2015年11月のパリ同時多発テロを受けてビザ免除38カ国の国民を含め渡航歴のある人に特別ビザの取得を求めた法律のテロ懸念国7カ国が対象ですが、司法省に事前審査も発効前の告知期間もなかったために混乱しました。司法省の事前審査があれば7カ国の渡航歴のある人の入国制限との関係が問われるでしょうから、そうなると大統領令に手を入れられてしまうため、それを嫌った可能性があります。

推測ですが、オバマ政権時代に連邦議会が決めたテロ懸念国7カ国からの入国を制限することで、テロ防止の水際作戦を演出したかったんでしょう。結果いきなり現場にペーパーだけ降りてきて、現場毎の解釈の違いもあって混乱に拍車をかけたようです。確かに問題のあるやり方ですが、一方で差別批判がIT企業から吹き上がります。

「テロ懸念国」の入国禁止、米IT業界が懸念強める  :日本経済新聞
米IT企業の多くは、トップを含めて多数の移民が働いていて、入国制限は直接的に業務に支障が出るということですが、暗に差別主義批判といった政治的メッセージが含意されてます。ただしこれを以て「アメリカの民主主義は健在」とは思わない方が良いでしょう。アメリカが移民を受け入れるから一流の人材が集まるとはよく言われますが、これ移民の中のひと握り、せいぜい1%で、残りはサービス業など低賃金労働に就業するワーキングプア層ということで、移民かどうかに拘らず進む格差拡大の結果と変わりません。ってことで、移民受け入れを善とする所謂リベラル派の言説はこうしたゴマカシを内包しているわけで、クリントンが大統領選で負けたのも頷けますし、一方で移民を止めても問題は解決しないってことでもあります。格差拡大は移民やグローバル化よりもIT化による機械化、自動化、省力化の影響と見るべきでしょう。

続いて国家安全保障担当のフリン補佐官の辞任も痛手です。

「ロシア」米政権を揺るがす フリン氏辞任 (写真=ロイター) :日本経済新聞
昨年12月に駐米ロシア大使と電話で接触したということですが、政権移行前で問題ってことなんで、移行後に新政権の意向を受けて接触する分には問題ないわけで、トランプ氏が関与していたかどうかなど不明の点もありますが、むしろ駐米外交官との接触自体はパイプ作りという意味合いもありますし、結局対ロシア経済制裁解除など中身の問題です。それより情報源が米情報機関からメディアへのリークのようで、これ日本では政治家や官僚の観測気球として結構利用されているやり方ですが、アメリカでもと思うと複雑な心境です。むしろトランプ政権と情報機関の間に不信感があると見られることが不気味です。
トランプ氏、情報機関と亀裂広がる 組織のあり方検討へ  :日本経済新聞
アメリカの歴代大統領は4人暗殺されてますし、メディアに不正を暴かれて辞任したニクソン大統領の例もありますし、情報機関とメディアとの敵対はこういった連想を想起します。金正男の次はトランプ?

北朝鮮の情報機関が一般人を巻き込んだと見られるマレーシアの事件ですが、アメリカの情報機関が本気になればこれ以上のアナザー・ヒストリーを演出することは可能でしょう。何しろスノーデン氏が暴露したように、政治犯に限らず個人情報を集めまくっていて、日本でもNSAから日本人の個人情報を集めたいと申し出があり、日本政府が法令違反で無理と断ったら、違反にならない法律を作れと返したということで、それが今国会審議中の共謀罪なんですね。こんなもん通したら一般市民が米情報機関の演出するアナザー・ストーリーに巻き込まれる可能性があります。で情報機関と対立しているトランプ政権でこの法律を通しても、トランプ政権に恩を売ることにはならないことに注目すべきです。ついでに言えばオバマ政権が種まいた南スーダンPKOも今なら撤退してもアメリカの顔を潰すことにはならないんですが。

てなわけで、日米会談を大成功と自画自賛する安倍政権ですが、日米経済対話でFTAを封印したつもりになっていると痛い目を見ます。為替問題という爆弾を抱えていることは日本政府もわかっているでしょうけど、日米会談で言及がなくむしろドイツや中国に矛先が向かうと考えると大間違いです。

(羅針盤)通貨安批判、同意のドイツ  :日本経済新聞
ドイツにしてみれば、金融緩和がECBがやっていることで、ドイツ自身は南欧諸国の財政規律が緩むからと反対し続けているわけで、金融緩和で為替操作と言われても「は?」てな話です。その点日本の過剰反応ぶりはむしろ心配です。
財務相、異例の為替水準言及 円安ラインは120円?  :日本経済新聞
G20為替ルールに抵触する可能性のある財務相発言ですが、それだけ為替問題が敏感な問題ということです。トランプ政権との通商交渉では譲歩を引き出すネタにされること間違いないでしょう。

で、アメリカに日本の資金で新幹線やリニアをという話にあんるんですが、そんな金あればJR北海道を何とかせいと言いたいところです。それに関連してこんなニュース。

トラック人手不足追い風 JR貨物、初の鉄道黒字  :日本経済新聞
JR貨物に関しては、温暖化対策もあって(独法)鉄道建設・運輸施設整備支援機構から融資を受けて経営基盤強化の途上にあり、2018年度の黒字化を公約していたので、2年前倒しの達成となり、株式上場が視野に入ってきます。ただし線路使用料問題がネックになります。

JR貨物の線路使用料は貨物列車運行にかかる追加費用プラス1%のインセンティブを基本ルールとし、具体的な金額は線路を保有する旅客会社との相対交渉で決めることになっておりますが、JR発足当時、赤字基調が確実視されていたこともあり、機関車1両あたりの単価を設定するという便法で大幅値引きされています。それもあって機関車の重連運用を単機運用に置き換える目的でDD51重連→DF200単機、ED79重連→EH500単機、EF64重連→EH200単機といった形で新型機に置換を進めてきたわけですが、特に北海道のDD51重連からDF200単機への置き換えは、軸重が14tから16tに増えたこともあり、JR北海道の線路保守の負担になっていることは間違いありません。黒字化なら当然線路使用料の値上げが打診されるはずですが、そうなるとJR貨物の黒字を維持できるのかという問題になるわけで、うまくいきません。

そこで別の方法として、北海道では線路を痛めない軽軸重の小型機関車での小単位輸送という方法で保守費用の負担を軽減することも考えたいところです。これ震災関連でリージョナルカーゴトレインの可能性について言及したことがありますが、今ならハイブリッド技術を用いて構内入替をバッテリー駆動で行い、本線上を高速走行するときはディーゼル発電でバックアップすることで、例えば臨海鉄道のような三セク貨物鉄道を立ち上げて担わせるといった応用が可能ではないかと思います。JR貨物にとってはリスク分散になり、出資自治体にとっては貨物鉄道を保持することで大規模農業を含む産業立地に助けになり、国の温暖化対策事業の補助金も使えるわけで、旅客鉄道としての存続が難しい北海道の路線の存続策になり得るんじゃないかと愚考します。

これヒントはアメリカが貨物鉄道大国で、アムトラックなどの旅客鉄道が線路を借りて営業しているという日本と逆の形ですが、貨物鉄道のインフラ保持が実現できれば、軽量のローカル旅客列車の存続は容易になります。これ地域の産業政策と抱き合わせで道庁が動くしかないですが、今に至る道庁のスタンスでは実現可能性は限りなく低いと言わざるを得ません。

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Sunday, December 25, 2016

死ななきゃ治らないナントカ

クリスマスです。ハロウインのときのエントリーで指摘したように、日ロ首脳会談での領土交渉の進展はありませんでした。これロシア側からのサインが出てましたが、予備交渉の過程で引き渡し後の領土に米軍基地が置かれる可能性を問われて有り得るとした返答で態度を硬化したとされますが、ソビエト時代から言われていたことの確認に過ぎませんし、沖縄の普天間基地の移転先の辺野古の反対運動や北部訓練場変換に関連した高江ヘリパッドの建設強行に対する反対運動に対して、日本政府が強行している姿勢を見て、日本への主権の引き渡しは無理と判断されたというのが実際のところです。日ロ関係は日米関係に規定されるのが現実です。

加えて言えば択捉島へのミサイル配備問題ですが、これ地対艦ミサイルってところがミソです。つまり標的はあくまでもオホーツク海での外国軍用船の軍事行動をけん制するためで、ロシアの核戦略と関連します。ロシアは保有する核弾頭の数を保持しつつSLBMへの転換を発表しております。オホーツク海にはSLBM搭載原潜を潜ませており、その太平洋側の出口ということですね。これがあるからシリアでのロシア軍の軍事行動に対してアメリカも文句を言えないわけで、核抑止力を効かせながら局地戦を睨んだロシア軍の部隊編成の小規模化とも連動します。そして支援を得たシリア政府軍による反政府勢力の制圧は時間の問題というところまで来ています。正邪の判断を横に置けば、ロシア軍改革は大成功といえます。

あと鉄ちゃん的蛇足ですが、津軽海峡を国際海峡とするためにここだけ領海3カイリに設定しているのは津軽海峡を潜航航行するソビエトの核搭載原潜の通過を現実的に阻止できないことから便宜的にそうしているわけで、現在もロシア原潜の日本海から東シナ海への航路として機能させることが、海洋進出を進める中国へのけん制になるので、維持されています。青函トンネルは日本の鉄道で唯一施政権外エリアを通過する存在としての意味があるわけですが、有事の輸送路となるインフラのメンテナンスを経営不振なJR北海道へ丸投げってのも危ういところです。

こういうことが頭に入っていれば、今回の日ロ交渉で領土問題が1ミリも動かないのは自明というわけです。期待をにじませるメディア報道はおそらく官邸からのリークでしょうけど、逆に領土問題の解決困難を国民に印象付けたわけで、結果的に領土抜きの経済連携となりました。クリミア編入を巡る対ロ経済制裁を一部緩和した形ですが、全面解除ではないからロシアから見ても不満の残る結果であり、大盤振る舞いした割には成果の少ないものになりました。

誤解のないように申し上げますが、私自身はそれでも極東やシベリアの開発を巡る日ロの連携はやるべきだという立場です。できれば日ロ間のガスパイプラインや電力連携線の整備は、日本のエネルギー政策に革新をもたらします。是非やるべきです。むしろ今回のことで領土領土とうるさいめんどくさいウヨどもを黙らせることができれば成果あったと言えます。あれ、安倍政権褒めてるwwwwwww。

一方混迷を深める南スーダンを巡って異変が。

南スーダンへの武器禁輸決議案、安保理で否決  :日本経済新聞
南スーダン情勢の緊迫化で大量虐殺の可能性ありとする武器禁輸の安保理決議で中ロと共に日本が棄権に回り、8ヶ国の棄権で必要な得票数に届かず秘訣されました。アメリカからは棄権しないよう働きかけがあったにも関わらずですから、アメリカからは非難されてます。日本政府の言い分は武器禁輸で南スーダン政府を刺激する方が危険というロジックですが、自衛隊をPKO派遣しているからということですね。

しかしそもそもPKO法では戦闘地域への派遣は禁止事項ですし、現地情勢次第で撤退を決断しなければならない局面なのに、国連が派遣する文民を警護するという変な理屈で所謂駆け付け警護(意味不明な用語ですが)を新たな任務とするという逆の対応を取っています。同じくPKO部隊を派遣する中国に対するライバル心からか、既成事実の積み上げか意図は不明ですが、現地で起きているのは石油利権のイスラム勢力との分離を狙ってアメリカが後押しした謂わば傀儡政権の南スーダン政府の暴走の結果であり、アメリカの尻拭いを中国と共同で日本の自衛隊が担うって構図はどう考えてもおかしいわけで、頭壊れてないか?

この構図は欧米が関与した紛争の多くで見られるもので、ジョージア(グルジア)紛争といいウクライナ紛争といい、親欧米派の裏に米保守派議員やCIAの関与が指摘されてます。またアラブの春に乗じたリビアの反政府勢力への英仏の支援で結果的にカダフィ政権を排除し、シリアでも反政府勢力へのCIAによる支援はもはや公然の秘密で、資金や兵器がダーイシュ(イスラム国)に流れて混乱しているわけです。大量破壊兵器のウソが暴かれたイラク戦争もですが、こういうろくでもないことを繰り返してきた欧米流リベラリズムへの懐疑が、Brexitやトランプ大統領を生んだわけで、大手メディアによる反Brexitや反トランプキャンペーンもこの文脈で見ると読み解けます。加えて欧米諸国のこの手の工作は昨今必ずしもうまくいっていないことも。時代は確実に変わりつつあります。

あと原発関連でいくつかありますが、これを取り上げます。

三菱重工と原燃、アレバに出資で最終調整  :日本経済新聞
福一事故を受けて安全対策の強化が求められて原発事業の採算性が悪化した結果、こういう妙なことが起きます。儲からないからといってやめられない。確かに廃炉や廃棄物処分などでやめられちゃ困るんだけど、コスト面で原発が事業として成り立たなくなってきています。もんじゅの廃炉も決まりましたが、高速炉は廃棄物を減らせる可能性があるということで開発は続けるというのですが、日本が大量のプルトニウムを保有する理由がなくなるという方が大きいのでしょう。もう一つこれ。
東電の原子力事業、再編相手公募へ 経産省有識者会議が提言  :日本経済新聞
f福島の賠償と廃炉で青息吐息の東電と組むメリットはほぼ皆無です。天然ガスなどの燃料調達のために東電と合弁でJERAを設立した中部電力からして東電と組んだことを死ぬほど後悔してるってのに、公募で再編相手が見つかると考える有識者とやらの眠たい議論を続けるのは、東電を破綻処理しなかった結果です。あーうましか。

一方でこんなニュースも。

鉄道が送電会社になる日 電線そのまま活用  :日本経済新聞
実は以前、このエントリーでJRの直流送電網を利用した電力託送事業の可能性を指摘したことがあります。記事はえちぜん鉄道の事例で、沿線の過疎化で収益確保が困難なTローカル私鉄の新たな収益源としての取り組みですが、うまくいけば大手私鉄やJRへ波及することも期待できます。

背景として元々鉄道は負荷変動が大きいがゆえに、電力会社から嫌われ不利な契約条件を余儀なくされているのですが、加えて技術革新で回生ブレーキが常用されるようになり、古い饋電システムではむしろ負荷変動を助長することもあり、固定買い取り制度(FIT)でも鉄道の回生電力は除外されました。そんな中で大手私鉄は変電所にNAS電池やキャパシタなどの蓄電装置を置いて負荷の平準化をしたりしてますが、ローカル私鉄ではそういった設備投資も単独では難しい中で、送電事業で託送料徴収して収益源とすることでクリアしようということです。ささやかなチャレンジですが、直流送電の特徴を生かして直流発電となる太陽光の電力を受け入れるなどして量の確保ができれば、結構使えるビジネスモデルになります。

九電ショックで売り先を失った太陽光発電の受け皿となれば、萎んだ太陽光発電の再活性化の可能性もあります。そして大手やJRにまで波及すればですが、原発の廃炉費用を託送料へ上乗せしようという経産省と電力会社のゴマカシを阻止できる可能性もあります。加えて隠れたメリットも。

電力回生ブレーキでせっかく省エネを実現しても、それを活かせない現在の直流饋電システムですが、例えば3,000Vの高圧直流で饋電してDC-DCコンバータで降圧して架線に供給する直流版AT饋電のようなシステムが可能ならば、変電所の集約と複数の機電区分への電力供給によって、負荷変動自体を平準化するシステムの可能性です。設備の合理化メリットと共に、大電力故に制御が難しくエアーセクション事故のような饋電系トラブルが増えている首都圏のJRにおいて、防止策になるということが期待できるんじゃないかということです。饋電系トラブルの多いJR東日本がチャレンジしてくれないかな。

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Sunday, August 14, 2016

戦争を知らない大人たち

本題に入る前に天皇の生前退位問題。

象徴 その心(3) 天皇に「私」はないのか 人権巡り国会で議論 :日本経済新聞
いろいろ言われますが、論点はこれです。すでに戦後の帝国議会で新皇室典範の審議で三笠宮殿下が意見を述べてます。つまり天皇の人権問題が本質なんですが、伝統ガーな人たちの反対で積み残したまま現在に至るわけです。これ女帝問題や女系宮家問題も同様なんですが、戦前の帝国憲法を前提とする旧皇室典範に対して新憲法とのすり合わせげ十分に行われてこなかったってことですね。

そして先日の天皇のビデオレターでの意見表明ですが、憲法が求める象徴天皇として初の皇位継承者となった明仁天皇が指摘したのは、終身制を前提とする限り、服喪と即位の同時進行というある種のカオスをもたらすという点。これ皇位継承の経験者故の視点と言えます。だから特例法での対応は望んでいないわけです。同時に憲法第2条〔皇位の継承}で「皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。」とある通り、皇室典範の改正以外でこの問題を対処できないと憲法で規定されています。女帝や女系宮家に議論が及ぶと、小泉政権時代から反対し続けてきた安倍晋三にとっては面白くないってことで、この問題を安倍政権はどう扱うか、注目されます。おまけ。

SMAP、年末に解散 事務所が発表  :日本経済新聞
SMAPは1月にも解散騒動があって、その後テレビでLIVE謝罪というセレモニーを経て沈静化されたものの、水面下ではやり取りがあったようです。ただしプロダクションの移動は無しということで、本人の意思が通しにくい芸能人の人権問題に天皇の人権問題が道しるべになるとすれば、結構重要な意味があります。

ついでに言えば伝統ガーな人たちはそもそも人権がお嫌いなようで、天賦人権説をキリスト教的な価値観をベースとしていて日本の伝統的な価値観に合わないと批判しているようですが、一夫一婦制もキリスト教的価値観に依拠していて、しかもお金持ちは公然と妾を囲っていて、西武鉄道二代目の堤義明が妾腹なのはつとに有名なように、明らかに日本の伝統的価値観に合わないですがね。冗談はさておいて、天賦人権説が王権神授説の対抗言論ということを知っていれば、キリスト教的価値観を捨象して国家主権の対抗概念としての人権という風に普遍化できます。つまり主権国家が主権国家たるためには人権を前提にするから国民の負託を得られるわけです。

で、改憲論者の小池都知事がいろいろぶち上げてくれてますが、まずはこれ。

小池新知事は新国立のサブトラック問題を解決できるか|inside|ダイヤモンド・オンライン
元々陸上競技場であるはずの国立競技場ですから、国際大会開催基準としてサブトラックの設置は当然だったところ、サッカー協会やラグビー協会からワールドカップ級の国際大会の開催基準を満たす8万人収容スタンドが要請され、サブトラックは外に作るとしてザハ案に見られる巨大スタンドとして結実し、その後コスト問題で白紙撤回されて再コンペで隈研吾案で決着したのは五輪霧中で指摘したように、風致地区第1号で15mの高さ制限が課せられてた神宮の森の高さ制限撤廃の露払いとしてザハ案の新国立競技場という点で、地権者とサッカー協会、ラグビー協会の共犯関係がある一方、サブトラック問題が生じたわけで、陸連にとっては寝耳に水というわけで、軟式野球場へ仮説する方向ですが、数億円かかるので常設にできないかという意見がある一方、地権者は稼働率の高い軟式野球場がなくなるのは困るというわけです。そこで秩父宮ラグビー場への併設案があるものの、ラグビー協会が反対とはいえ、元々大スタンドをごり押しした手前もありと、エゴのぶつかり合いが解決を困難にしています。環状2号線の湾岸延伸着工とスケジュールが絡む築地市場の豊洲移転問題もあり、難題山積。憲法改正どころじゃない現実です。あとこれ。
都知事公約「満員電車ゼロ」は、こう実現する | 通勤電車 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
岐阜にも関わったトンデモ鉄道コンサル氏でツッコミどころ満載ですが、余裕時分を削った結果、ダイヤ改正翌日に東中野事故を起こしたJR東日本や尼崎で脱線転覆事故を起こしたJR西日本が、その後保安装置の強化などの安全投資を深化させたプロセスを無視してます。別に都が財政支援するわけでもなさそうですから、事業者の自助努力を促すってだけ。小池知事の政策スタンスをよく示してます。

前置きが長くなりましたが、サイドバーの「戦争の社会学」ですが、改めて戦争とは?平和とは?ということを考える上で戦争の歴史や意味をを体系的に説明した格好の入門書です。紹介コメントでも書きましたが、奇妙な日本軍に関して章1つを当てて考察してますが、そのトンデモぶりに驚きます。例えばクラウゼヴィッツの戦争論では兵力と兵站の重要性を説いている一方、精神面の重要性を指摘してますが、これを兵力で劣っても精神力で跳ね返すと曲解したり、真珠湾攻撃のような奇襲は短期決戦で迅速に敵国と和平交渉に入るのがセオリーながら和平交渉が準備されておらず、長期戦になって力尽きたわけです。日本は戦争の仕方を知らなかったと。そんな歴史を彷彿とさせる出来事が現在進行中です。

マイナス金利、効果道半ば 導入半年  :日本経済新聞
思い出していただきたいんですが、13年4月の黒田バズーカは、2年で21&のインフレ目標達成のための短期決戦だったはず。ところが一向に物価は上がらず、ズルズルと目標年次の先延ばしと追加策という戦力の逐次投入を繰り返すばかり。そもそも出口論も議論せずというスタンスで、日米開戦時の日本軍と何と似ていることか。それどころか今年に入ってマイナス金利政策を導入し長期金利の低下は目論見通りとしても、円高を防げず、それどころか銀行の離反を招くなど散々です。
マイナス金利で減益3000億円 日銀に懸念伝達  :日本経済新聞
遂には金融庁のツッコミも。足並みも乱れさしずめミッドウエー海戦の様相でしょうか。一応9月の日銀政策決定会合でマイナス金利政策の検証を約束したものの、言い訳を重ねるだけなのは目に見えてます。

マイナス金利の成果として住宅着工の増加が指摘されてますが、これ中身は賃貸アパートの建設ラッシュなんで、マイナス金利の恩恵はあるかもしれませんが、むしろ実家の相続対策としてのアパート建設と見るべきです。所謂空き家対策法の施行で空き家になった実家を放置できなくなったことと、アパートの課税特例で固定資産税1/6、都市計画税1/3でトータルで1/5ほどに負担減となることから、親が生きていても実家をアパートに建て替えて負担減を目羅うというものですが、その結果民間賃貸空宅の空室率が高くなっています。結果家賃が下落し、持ち家の帰属家賃を含めれば消費者物価指数の2割ほどのウエート付けがされているわけですから、そら物価は上がりませんわ。不都合な真実ですが日銀は認めるでしょうか。

戦争と金融政策は違うと言われるかもしれませんが、短期の作戦として始めた政策が未達で長期戦にずれ込んだ時点で戦略の練り直しが必要なのは同じです。勝てない戦争はしない。戦況が劣勢ならば速やかに退却するってのが戦争のセオリーですが、日銀は未だ出口論を封印しています。思えば東芝もシャープもこうして傷口を広げて立ち行かなくなったわけですし、日本の様々な組織にこうした撤退下手とでも言うべき病弊が蔓延しているようです。関連でこのニュース。

夕張市、JR北に地域振興の協力要請 路線廃止容認の条件に  :日本経済新聞
財政再建団体となった夕張市としては、」実際これしか選択肢はないと思います。加えて夕張支線の場合夕張市単独で意思決定できる稀有な条件もあったということです。他の路線は複数自治体に跨っていて自治体間の意思のすり合わせだけでひと仕事になります。実質道庁が動かなければ動かないでしょうけど、道庁は動く気配はありません。

あと青森方式というか、道が線路保有して自治体出資三セクに貸し付ける方式も、あくまでも整備新幹線の並行在来線だから、新幹線というインフラの見返りとして県単位で同意を得やすかったってこともありますから、路線の維持だけがテーマの北海道では無理な話です。おまけで言えば青森方式よりも、事業者のIGRいわて銀河鉄道による線路取得費を事後的に県が肩代わりし、沿線自治体に固定資産税を納めさせる一方、自治体側でその税収分を積み立てて保守費用に充てる基金とするというクレバーなやり方をしてます。実質公的な減価償却をやってるわけです。

というわけで、実際に協議が始まれば新たなアイデアが出てくる可能性はあります。ただ気になるのが夕張市長が自身のブログで示したコンパクトシティ構想です。正直言って県庁所在地の青森でさえ明らかに失敗したものが夕張で可能なのか、疑問を禁じ得ません。一応清水沢付近に都市機能を集約しようということのようですが、新たな玄関口となる新夕張駅からは離れてます。炭鉱の廃坑でどんづまりの旧市街をたたむのかどうかはわかりませんが、地理的にもほぼ発展の可能性は皆無ですから、基本的には撤退戦だということを肝に命ずるべきでしょう。

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Sunday, July 31, 2016

リオでじゃねえだろ!

都知事選当日で投票率が今までよりも高いらしい。関心が高まっているのは結構なんだけど、それだけ無党派層の票が結果あを左右するわけで、そうなると組織票頼みの増田、鳥越両氏の苦戦で小池知事の可能性が高いということになります。その場合ダメージが大きいのは鳥越氏の方ですね。ホント日本の左翼わぁ-_-;。

元々知名度で不利だった増田氏は落選しても都知事選に乗っかって名前を売った分だけ講演料アップでハッピー。弁護士の宇都宮氏を辞退させてまで野党統一候補に拘った結果、宇都宮氏の支持層まで離反というのは、米大統領選の民主党サンダース候補の辞退でやはり若い有権者が離反していることとパラレルですが、違いはサンダース氏が予備選を戦った結果、クリントン氏が主張をかなり修正せざるを得なかったこと。選挙戦は言論を闘わせることで有権者に判断の材料を提供するから意味があるんで、知名度で勝負がつく都知事選の不毛さはどうしようもないところです。

ま、誰が都知事になってもちゃんと都民のために働いてくれれば良いんですが、そもそも五輪霧中の中、競技施設整備の見直しに踏み込んだ舛添前知事が謎のバッシングを受けて辞任したのが今回の選挙なわけで、本来自公は選挙やりたくなかったんだけど、民進、共産両党が世論を煽って追い込んだ結果、掟破りの首相指示で辞任に追い込まれたものでした。その意味で都民のためにリスクを取って働いた舛添知事を辞めさせた以上、民進、共産両党は息のかかった都知事を当選させなければ二重の意味で都民を裏切ったことになります。民進が宇都宮氏に乗っかれば話が早かったんですが、共産が先に支持表明したことを嫌ったんですね。党派性まる出し。ホントしょーもなー。

あとは都知事として働いてもらうことですが、選挙戦で小池氏が対立を煽った都議会自民党は、法人税国税化で反対したにもかかわらず増田氏に乗っかったように変わり身が身上。小池氏も「てへぺろ」で和解となると、都議会野党が頑張らないと都民のために働いてくれいないでしょう。本来改憲派の小池氏が都政に関わることで改憲にタッチできなくなるなら護憲派としては歓迎すべきことですが、都知事選の勢いに乗じて小池新党という声も。中身はおおさか維新のカーボンコピーで、関西に比べて支持率の低い首都圏で改憲勢力を掘り起こしててなことをさせないためにも、都議の働きが重要ですが、舛添前知事のリオ行きを批判しながら都議団でリオ五輪視察がリークされて叩かれて中止じゃ、期待できんわな。リオでじゃねえだろ!

てな前置きとは無関係の北海道の話題です。まずはこれ。

「持続可能な交通体系のあり方」について
「持続可能な交通体系のあり方」について(PPT版)
JR北海道が自助では限界と地元自治体へ協議を訴えるプレスリリースですが、メディアも含めて地元の反応は冷ややか。そもそもJR北海道にお一連の不祥事がコストダウンの行き過ぎによるものなのに、一段のコストダウンを要求されても、死ねと言われてるようなもの。加えて重大な勘違いの可能性も。熊本地震で運休を余儀なくされた南阿蘇鉄道運転再開のニュースです。
南阿蘇鉄道が一部再開 地震で被災、3カ月半ぶり  :日本経済新聞
わずか7㎞ほどで本数も1/3というささやかなものですが、こうして自助の姿勢を示した上で出資者でもある自治体も支援して初めて、国による支援が検討されるという形で、自助、共助、公助の段階を踏むのが交通政策基本法の考え方です。北海道のように自治体がそっぽを向く限り、国の支援は出てこないわけです。この辺移動権という憲法の基本的人権と紐づけされた権利を定義した民主党案の交通基本法の内容を後退させた結果じゃないかと思います。考え方としての自助、共助、公助という部分は条文中に盛り込まれてはいるものの、元々理念法の性格が強いと言われる日本国憲法の規範性の強化という観点からは、憲法と紐づけされた立法というのは重要な視点です。

実は改憲を目指すとされる現政権ですが、例えば理念性の強い9条よりも、国会、内閣、裁判所などの権能を規定した規範法の部分で「原則として」の5文字を入れるだけで骨抜きにされます。そもそも憲法が原則を定めているのは当然だからあえて明記されていないだけで、例外事項は個別法で定義するのが立憲主義憲法のあり方なんで、それを骨抜きにするってことは、国権の最高機関であり立法府である国会の権能を否定することになります。事実上憲法破棄に等しいわけで、絶対乗ってはいけない議論です。

話を戻しますが、JR北海道では一応乗車密度2,000人以上が持続可能なラインと考えていて、札幌都市圏の例えば札沼線のように複線電化で乗客が増えている路線や区間もあるわけで、私企業である以上、こうした増収が見込める分野への選択的投資は欠かせないところですが、一連の安全対策投資の結果、投資の原資をひねり出す余裕もなくなってしまうわけです。みすみす収益機会を逃せば企業としての持続可能性は低下することになります。

あと貨物輸送との関係もJR北海道にとっては重要でして、青函トンネル区間の新幹線と貨物の線路共用で新幹線が140km/hの速度制限を受けているい上に、落下した金属片が三線軌条の信号回路を短絡させるトラブルもあり、メンテナンス上も負担となっていますが、そんな中で貨物撤退論が囁かれていました。

青函トンネル「貨物撤退」はなぜ封印されたか | ローカル線・公共交通 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
記事によると青函トンネルの貨物撤退の議論は国交省によって封じられたと。元々線路を痛める貨物列車の走行に対して旅客会社に支払う線路使用料が割安に設定されている一方、鉄道貨物のシェアそのものは高くないということで、フェリーの新造船投入で代替可能という議論ですが、貨物幹線であるJR貨物の経営の息の根を止める判断はできなかったのでしょう。そもそもJR北海道のトラブルの原因はJR北海道自身による列車の高速化と共に、軸重も重いDF200型ディーゼル機の投入による部分もあります。元々線路規格が低いまま民営化を迎えた北海道の鉄路にとっては負担ですが、今回のJR北海道のプレスリリースでは触れられておりません。

結局JR北海道の問題ははJR貨物をどうするかという問題ともリンクしていて、簡単に解決策を見いだせない状況に陥っております。ただ鉄道貨物の放棄はCO2削減策としてのモーダルシフト政策に反しますし、ドライバー不足のトラック業界の現状からも鉄道貨物の活用の可能性は大きいわけで、簡単には決められません。来られも含めて国が大方針を示す必要がありますが、リニアや整備新幹線と違って票にならないから政権の関心は低いまま。その一方でおそらくJR北海道より経営環境が厳しいと見られるロシアのサハリン州の鉄道がロシアンゲージの1,529㎜に改軌して本土と車両の共通化を図るという大改良をすると言います。領土としての北海道という観点からいえば、現状はあまりに冷たいというか。これじゃ北方四島の領土交渉でロシアが日本の本気度を疑うというものです。

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Sunday, June 12, 2016

ポンド飛び出し円の切れ目

サミットも終わり「新しい判断」とやらで世界経済リスクを理由に消費税増税延期が決まった日本ですが、世界から見ればヤバいのは日本だったりします。こんなニュースが案外重要です。

三菱UFJ銀、国債離れ 入札の特別資格返上へ  :日本経済新聞
プライマリー・ディーラーを降りることを検討中ということですが、新発国債を引き受ける義務と引き換えに当局に意見が言える権利で、大手銀行以外にも証券・生保などがメンバーで、市場環境を睨みながら国債の安定消化を支えてきた仕組みですが、メガバンクの一角の三菱東京UFJ銀行が離脱するということですから、穏やかではありません。

今のところ他のメガバンクや証券・生保などは様子見で追随の動きはありませんが、最大手の三菱東京UFJ銀が動いたわけですし、そうなるのも無理もない現実があります。言うまでもなく日銀が導入したマイナス金利政策の影響です。日銀の説明ではあくまでも新規受け入れ分だけに限定したマイナス金利適用で影響は軽微としてきたわけですが、実際は家計消費の低迷と企業の内部留保拡大で預金が増えている状況で、日銀の大量買い付けで利回りがマイナスになった国債を買うか、日銀に預けてマイナス金利を甘受するかという究極の選択となっているわけで、こんなことやってられないわけです。

加えて消費税増税延期で格付けを下げられた日本国債の大量保有は、国際銀行規制でリスク負担を求められ、資本の積み増しを求められることになります。また当然日本国債の担保価値も低下しますから、海外展開で必要な外貨調達でジャパンプレミアムとでも呼ぶべき上乗せ金利を要求されることになり、海外事業の利ザヤまで圧迫されるわけですから、遅かれ早かれこう動かざるを得ない状況にあったといえます。さてそうなると銀行が引き受けた新発国債を日銀が高値で買い取ることでベースマネーを増やす政策が入口のところで経路が切れるわけですから、日銀の異次元緩和(QQE)への影響は避けられません。実際日銀審議委員の中曾副総裁からこんな発言が。

BOJ点描 中曽副総裁「国債市場の機能維持が重要」 国債離れに危機感も  :日本経済新聞
銀行の反乱がどう決着するかはわかりませんが、日銀の強面は続かないということは言えそうです。そんな日銀が期待していた米FRBの利上げは、米雇用統計の発表で予想外の弱さが明らかになり、イエレン議長のこんな発言につながります。
FRB議長、米利上げ時期特定せず 雇用悪化に「失望」  :日本経済新聞
景気は上向いているはずなのに雇用は増えない。正確には予想を下回る増え方しかしないということですが、これが結果的にドル高回避につながり、あえて動かなくても米利上げで緩和効果を期待していた日銀の読みが外れたわけです。それでも追加緩和に動けないのは、メガバンクの反乱だけでなく、イギリスのEU離脱問題という頭の痛い問題が立ちはだかっており、今は動きにくい局面です。所謂BREXIT問題ですが、当のイギリスでは国内対立が大きくなっています。
疲弊する英国の地方都市、EU離脱論が噴出  :日本経済新聞
まるでTPPを巡る中央と地方の対立に酷似します。グローバル化と称する経済連携のメリットは中央の大企業や金融機関が受ける一方、EU由来の規制は地方が負担していて、何も良いことがないという状況です。TPP交渉で大幅譲歩した日本の農林水産業の未来図が垣間見えます。BREXITは対岸の火事ではありません。巷間言われる経済停滞も、影響を被るのはシティの金融機関だけだとすると、イギリス全体ではマイナスかどうかは微妙です。むしろEU離脱を心配するのは独仏など直接利害のある国に留まらず、EU域内の拠点としてイギリスに現地法人を置くアメリカや日本の企業にとっては悩ましいところ。実際はスイスやノルウェーのようにEUとの個別協定が結ばれるはずですから、その内容次第では影響は限られますし、移行期間の特例もあるはずですが、結局中身が決まるまでイギリスへの新規投資は手控えられることにはなります。これがリーマン級の経済ショックをもたらすかといえば、出口があるだけに一時的停滞はあっても答えはNoでしょう。

むしろEUが恐れているのは、厳しい加盟条件を突きつけられている東欧諸国の不満が噴出することでしょう。ギリシャ問題で南欧諸国への対応の甘さを見せているだけに、イギリスの残留のためにEUがさらに譲歩するようなことはできにくいわけです。加えてイギリス同様に各国内に離脱を訴える愛国右派を抱えていますから尚更です。結局EUは動けずどちらに転んでも混乱は避けられない。とすると案外震源地のイギリスが一番安定するという変なことも起こりそうです。ただ日銀にとっては金融の混乱はリスクオフ要因で円高となりますから、祈るような思いで見ていることでしょう(苦笑)。

てなわけで日本に戻りますが、消費税増税延期と経済対策としても財政出動を打ち出した安倍政権ですが、日銀が追加緩和に動きにくい状況での財政出動ですから、財政健全化は後退を余儀なくされるわけで、これリカードの等価性定理そのままに、財政悪化は将来の増税を連想させて消費を冷やしますから、結局消費は回復せずむしろ家計は貯蓄に励みますが、三菱東京UFJ銀の反乱で、預金の増加分を国債で吸収する回路が細くなるわけで、いよいよアベノミクスが構造的に動かなくなる局面ということですね。それでも財政出動で経済を争点に選挙で勝つシナリオを描いているんですからおめでたい。例えばリニア。

リニアに3兆円支援 鉄道網整備へ政府マネー拡大  :日本経済新聞
これ2027年予定の名古屋開業後8年のインターバルを置いて大阪延伸を着工するところを8年前倒しだけですから、最速2037年の大阪延伸という話であって、目先の経済に直接プラスになる話じゃないです。むしろ財投債という政府保証債を用い、これ事実上の国債で民間資金より低利で調達できるってだけの話です。むしろこれを突破口として整備新幹線の財源に同じ手法を用い、前倒し着工することが狙いでしょう。現状既に整備区間の開業で発生するリース料まで財源に充ててまだ足りず、着工区間の開業後のリース料を担保に民間から借り入れて手当てしている状況を政府保証債に切り替えて安定財源にしようということです。例えばJR北海道の経営不振で札幌延伸が間に合わない可能性があるわけで、これで首の皮1枚ということでしょうけど、その前にJR北海道助けてやれよ。そもそも青森県の惨状を見れば、新幹線は開業しても観光地へアクセスする二次交通が枯渇していては無意味です。地方を救うのはむしろこちらかも。
ウーバー、京都で始動 地方創生をネット企業が支援  :日本経済新聞
ウーバーに代表されるライドシェア問題は、過去に放置国家の呆の支配ギグ老いるショックなどのエントリーで指摘してきましたが、記事は京都府京丹後市久美浜町でNPO法人がウーバーの相乗り配車アプリを活用して地域の足を確保するということで特区構想に名乗りを上げたものですが、結果的には道路運送法第78条、第79条で定義される自家用自動車の有償運行として認可を受ける形で実現しました。京丹後市といえば北近畿タンゴ鉄道の経営不振から入札によりウィラーの支援で京丹後鉄道として再出発したところですが、鉄道は残ってもタクシー会社すら撤退して二次交通壊滅状態だったわけで、78条運行は一応理に適ってます。

ウーバーとしてはこれを突破口に都市部への進出を狙っているようですが、むしろ世界中のユーザーが直接配車アプリを使うことで、どれだけ域外の観光客を呼び込めるかが注目点でしょう。それ次第で公共交通の衰退で観光客すら呼べない地方の起爆剤になる要素はあります。ただし日本では結局地方のタクシー会社との提携などの形に落ち着くんじゃないかと思います。というのは、京丹後市でも問題になりましたが、自家用車が任意保険に入っているかなどの問題で規制をせざるを得ない状況がありますので、それならば地方の法人タクシーがリスクテイクする形の方が法的にもすっきりします。世界的なネット企業といえども日本の法の支配は尊重すべきことは言うまでもありません。

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Sunday, January 31, 2016

引く手あ、まった!

いやはや、黒田日銀の暴走ぶりは留まることがありません。というか、異次元緩和以来、はっきりしたことはただ1つ。何でもありの緩和至上主義で、明言されている目標も曖昧化しているということ。物価目標も緩和継続による裏の目標である円安誘導の方便じゃないかと疑っております。国民にとっては盗っ人に財布を握られたようなもの。アベコベ相場に繰り出した日銀の追加策のしょーもなさが今回のテーマです。まずは政策の概要です

日銀がマイナス金利 その仕組みと揺れた判断:日本経済新聞
端的な解説としてはこれがわかりやすいと思います。つまりはマイナス金利といっても、日銀当座預金の法定準備預金額を超える部分に現在0.1%の利息をつけていますが、今回はその部分は現行通りで触らず、今後増える部分については-0.1%、つまり逆に銀行が日銀に金利を支払うというもので、法定準備額はゼロ金利(当座預金だから当然ですが)、それを超える部分についてプラス部分とマイナス部分を設けるというややこしいものですが、多分激変緩和で、今後の推移次第では見直しも含むものと考えられます。一言で言えば奇策中の奇策で、市場にサプライズを与える以外に効果は殆どない上に、従来の異次元緩和政策とは矛盾した部分もあります。

そもそも当座預金に利息が付くのはおかしなことなんですが、これ量的金融緩和をスムーズに遂行するためのもので、米FRBが始めて白川総裁時代の日銀が取り入れたものですが、要は信用力があって担保価値のある国債を銀行が持ちたがるのを買い上げるわけです。国債は流通市場での値動きはあるものの、満期まで保有すれば元本は保証されますが、それを日銀が買い上げれば金利の付かない当座預金との交換ですから、利ザヤ稼ぎの銀行にとっては痛し痒しなわけですから、見返りにごく低い利息をつけて国債を手放しやすくするという意味があります。加えて誘導目標の金利を残す意味もあります。非伝統的と言われる量的金融緩和でも、中央銀行の政策目標はあくまでも金利であるという基本を失わない意味があります。

それが異次元緩和ではベースマネーを増やしてやれば、人々にインフレ期待が生じてデフレマインドを一掃し2%の物価目標を設定するという風に説明されています。マネー供給を増やせばインフレ期待が生じるというのはおかしな議論なんですが、実際は国債を大量に買い上げて国債流通市場を干し上げることで、国債に張り付いている銀行の資金を融資に振り向けさせる狙いで所謂ポートフォリオリバランスと呼ぶものですが、銀行は日銀の国債を高値で売ってその資金で新発国債を購入しますから、いつまで経っても融資が増えないわけです。そもそも低金利だと銀行の利ザヤの元となる長短金利差も縮まってしまいますから、国債市場を干し上げれば銀行が融資を増やすという経路が説明されてますが、実際は企業の資金需要そのものが乏しく、融資は増えません。マイナス金利もこの面では効果は乏しいと見て良いでしょう。

真の狙いは国債金利の圧迫で通貨安狙いというわけですね。新年早々進行した円高の阻止で追加緩和を市場からせがまれていた状況で、何もしないわけにはいかなかったのですが、既に2014年10月の追加緩和で国債買い取り額を50兆円から80兆円に増やしており、国債市場の規模からいえば、あと20兆円増やすのが精一杯ですが、それを使えば以後の政策対応の手段がなくなる最後の手でもあり、それは温存したのが日銀の本音です。追加策の使いどころは来年4月の消費税増税にありというわけですね。故にこれまで否定し続けてきたマイナス金利を突然導入するということで、日銀審議委員の中からも「手詰まりを市場に見透かされる」という理由で反対意見が出たぐらいです。

てなわけで、市場も意図を図りかねて乱高下したわけです。サプライズはあったものの、こうした一過性の効果をどれだけ積み重ねても、動き出したリスクオフの動きは止められません。あと、当面のプラス金利とマイナス金利の併用局面では大きな動きはないでしょうけど、銀行にとっては利ザヤの圧縮が進むわけで、ますます融資を渋るようになります。そればかりか、いずれ預金の利息もゼロからマイナスにということもあり得ます。実際マイナス金利を導入したデンマークやユーロ圏諸国などではそうなっています。国民の対抗策は現金を引き出してタンス預金となると、逆効果になるわけですが、そこまで踏み込むかどうかは現時点では不明です。

というわけで、いよいよ迷走する黒田バズーカですが、出口戦略がますます困難になり、正常化は黒田総裁の任期中には無理な状況です。その間に財政再建も進まず通貨の信任を棄損して、将来世代に大きなツケを回すことになります。すでに日本の経済規模は基軸通貨であるドル建てで2/3に減価しており、2010年に逆転された中国とはすでに倍以上の差をつけられている状況を直視すべきです。その中国は現在資金流出が止まらず、人民元安を阻止しようとしています。通貨安が国益に反するからですね。あえて円安にして通貨の信任を棄損し富を減らす日本のありようは異常です。

閑話休題。金利の英訳はi nterest で、利子、金利のほか、興味、関心の意味もあります。通貨当局の暴走にinterest を失わないことが大事です。「黒田バズーカ」を礼賛するリフレ派の議論はすでに破たんしており、例えば原油安で物価が下がったというのは、リフレ派の議論では特定品目の値下がりは他品目の有効需要を押し上げるから一般物価はむしろ上がるというのがありましたが、見事に外れてます。というか、元々値動きの大きい生鮮品とエネルギーは外すのが常識で、所謂コアコア指数というのですが、米FRBはこれを物価指標としています。日銀の異次元緩和ではなぜか生鮮品のみを除外したコア指数を指標としており、元々ここに誤魔化しがあったのですが、裏の目的である円安が実現すれば物価は上がるわけで、実際食料品などは値上がりしており、日銀もそれを理由に成果を強調しています。全くふざけた話です。「黒田バズーカ」からマイナスされたのは interest ではなく intellect (知性)ではないのか。つまり「黒田バカ」^_^;。

日銀が銀行に融資を促すのは、ある意味当然ですが、少なくとも国内には融資案件が見当たらないのが現実です。2003年のソニーショック以来続く日本の電機メーカーの逆風は終わらず、未だに過剰設備に苦しんでいて、しかも産業革新機構のような官製gファンドに助けられて延命している状況をどう見るのか。中国のバブル崩壊と過剰設備は以前から言われておりましたが、中国当局は元高を維持して過剰設備の解消に踏み込んでいます。今の中国の減速はその結果なわけで、痛みを緩和して問題を先送りして結果的に国力を低下させている日本の方が問題です。今回も中国ショックのような言われ方をしていますが、国内の産業構造転換ができない日本の問題なんです。

で、民間投資が増えないから公共投資を増やして景気浮揚というのですが、これは1930年代のような真正デフレのときならともかく、今の日本ではむしろリターンの少ない非効率な投資が行われて結果的に国全体の生産性を下げています。そんな中でこんな救いのないニュースが。

JR北海道が道内全線区で赤字 14年度、札幌圏も26億円  :日本経済新聞
JR北海道の劣化は止まらないばかりか、当面赤字確定の北海道新幹線まで引き受けなければならないわけですが、道庁をはじめ地元自治体はJR北海道に自助努力を求めるばかりです。投資収益逓減の法則はこうした末端で出現し、ジワジワと拡大していくものです。以前から整備新幹線の問題点を指摘し続けてきましたが、将来性のない中途半端な投資を積み重ねても、むしろメンテナンスで足を引っ張るだけというのが如実に現れてます。

JR北海道に関しては以前からローカル輸送からの撤退を提言しております。元々国鉄分割民営化時に安易な値上げはしないという「公約」があって運賃改定もままならず、特に通学定期券の割引率が私鉄やバスより高率なままとなっている一方、JR北海道のように札幌都市圏以外では事実上通学にしか利用されていないローカル列車の維持は原価割れ輸送そのものです。実際割引率の差でJR高山本線と並行する名鉄各務原線や名松線と並行する近鉄大阪線・山田線では、通学利用がJRに流れている現実があります。いずれも収益性の高いJR東海だから維持できているので、JR北海道では無理です。象徴的なニュースとして石北線上白滝駅の最後の1人の女子高生が卒業と共に駅の廃止が決まり、メディアを賑わせましたが、そこからこの通学定期券のよる実質原価割れ輸送の問題に切り込んだ報道は見られません。ここを何とかしないとJR北海道は救われまあせん。

地域の足を守るというなら、イギリスに倣ってフランチャイズ制を導入する手があります。地元自治体やバス会社が出資した三セクで第二種事業者としてローカル列車を運営するわけですが、参入のハードルを下げるために、資産である車両や乗務員はJR北海道への委託を認め、運行管理やメンテナンスはJR北海道で一元化し、運賃は上限だけ定めて自由化するというような形にすれば、バス事業者にとっては鉄道を軸とした路線再編で需要掘り起こしの余地が出てきます。整備新幹線の並行在来線切り離しが認められるなら、これぐらいは可能なはずです。

加えてJR北海道に残る都市間輸送分野も新幹線頼みができない以上別の方法を考えるべきです。そこにこんなニュースが。

(ビジネスTODAY)ハワイ便、運賃競争再燃 ANA、エアバスA380導入を発表 座席数で日航追う :日本経済新聞
これデルタと争ったスカイマーク争奪戦でANAが繰り出した必殺技だったA380引き受けの結果ですが、ANAは抜け目ないというか、発想が戦略的です。欧米などの長距離路線への投入にはたった3機では遣り繰りができませんから、近場の海外と言えるハワイ線で、しかも需要は旺盛な割にJALの6便に対して4便と劣勢な中で、座席集で優位に立とうという戦略です。加えて言えばビジネスユースの強い欧米路線では大型機で便数を集約すると利便性が低下するということもあります。転んでもタダでは起きないですね。教祖の激しい航空業界らしい話です。

これと比較して整備新幹線問題で右往左往するJR各社の近視眼ぶりが残念です。JR北海道本体のてこ入れは航空業界とのコラボが望ましいいのではないでしょうか。昨今北海道を訪れる外国人が増加しているんですから、対東京の速達性よりも外国人観光客の誘致に力を入れたほうが活性化につながるわけで、道庁もHACに肩入れするぐらいなら、JR北海道に資金提供して航空との連携を深める方向で対応すれ良いと思います。あるいは場合によっては航空会社に経営をゆだねることも選択肢になります。整備新幹線問題はドル箱の国内航空を圧迫するものとして対立意識が強いですが、東京から5時間かかる新幹線に期待して財政支出するよりもずっとましな地域活性化策となります。銀行の融資拡大から大幅に逸脱いたしましたが^_^;、リターンの見込めない投資をするぐらいならば見直し引き返すことも重要です。新幹線は魔法の杖でも打出の小槌でもないのです。

それともう1つ。やはりJR北海道がらみですが。

日高線復旧費、8億円増 JR北試算で38億円に  :日本経済新聞
日高線は高波被害で長期運休中でいまだに復旧のめどが立っておりません。運休が長引けば結局鉄道がなくても何とかなるとなって未来が閉ざされるわけですから、危機的です。そういえばJR東海の名松線末端部こそ復旧が決まりましたが、今年3月26日改正でやっと運転再開です。JR東日本では大船渡線、気仙沼線、のBRT化と山田線(宮古-釜石)の三陸鉄道移管による復旧が決まった一方、只見線(会津川口―只見)は放置されています。ローカル線の存続問題はJR北海道だけの問題ではないのですが、結局利益誘導の果てに強引に建設されたローカル線がJRの経営の足を引っ張る構図です。投資案件の取捨選択がいかに重要かいい加減気づけよ(怒)。

おまけ。記事中の貨物新幹線はできの悪い官僚の思い付きに過ぎません。上下50本の貨物列車の存在が営業最高速度140㎞/h制限の理由ですが、それを解消するために貨物列車を200㎞/hで走らせようというわけですが、新幹線の構造規則上、軸重16t*4軸*16両=総重量1,024tの構造物荷重を想定しており、ギリギリ1,000t列車を置き換えられますが、そのためにコンテナの積み替え行う分のロスは考えていないんですね。E5系量産車10連の空車重量が455tで積車重量500t未満と半分以下ですから、そんな列車を200㎞/hで走らせれば線路のメンテナンスに負荷がかかります。フリーゲージ以上に実現可能性は低いと言わざるを得ません。

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Sunday, August 30, 2015

TOICAの壁

北陸新幹線の開業で並行在来線が切り離されたことで、青春18きっぷの使い勝手がかなり変わりました。首都圏からだと、中央線、信越線又は大糸線経由のルートは使えなくなり、JR東海エリアを通る必要がありますが、青春18シーズン特有の混雑と乗り継ぎに辟易しなければならないわけで、どうせならTOICAの壁で日常的に足が向かないJR東海エリアを中心に消化しようというのが、この夏の戦略でした。

加えてやはり疎遠な静岡、浜松、名古屋の都市交通にも触れておきたいということで、5日分のうち3日分をJR東海エリアに割り当て、ついでにシャッター街と化した後に復活が伝えられた小田原駅の地下街や伊東線でリゾート21乗車などのオプションを睨みつつ、いつもながらの行き当たりばったりですが、なかなか実り多いものとなりました。

名古屋では愛環、リニモ、城北線、ゆとりーとライン、基幹バス新出来町線などの初乗車を楽しむ一方、廃止が取り沙汰される養老鉄道もと欲張りました。養老鉄道に関しては、過去に逆上下分離疑惑を指摘しました。正直裏は取れておりませんが、当時の日本企業のコンプライアンス意識からいえば否定できないところです。

その養老鉄道の廃止ですから、地元にとっては面白くない話ですが、線形が悪くインフラがぜい弱な一方、複数の市町村に跨ることから、同時に分離されたものの、伊賀市内で完結する伊賀鉄道が公的支援を得つつ東急の中古の投入ながら老朽車両の更新を実現しているのに対し、厳しい状況です。元々国鉄貨物の通過輸送で稼いでいた路線ですが、国鉄の車扱貨物の撤退で翻弄され、車社会の名古屋都市圏の外延で需要にも合致しないルートなど悪条件が重なっています。とはいえバスで代替するには距離が長くスピードダウンのマイナスを考えると解決は簡単ではありません。

名古屋にj関しては、初乗りのリニモ9で、なるほど丘陵地帯でアップダウンが激しいことから、非粘着駆動のリニアはありかもしれないとは思います。また荷重制限があることから、大量輸送向きではなく、海上の森の開発問題で揉めた愛知万博の経緯からも、輸送インフラのキャパによる開発抑制効果も評価すべきでしょう。インフラ整備に伴う環境負荷の面でもプラスでしょうし、とにかく首都圏と比べれば都市規模の違いから適正な輸送インフラの考え方も違ってくるわけですね。この辺は新出来町線やゆとりーとラインも同様です。その新出来町線は優先信号が導入されていないので、ほぼ交差点毎、停留所毎に信号につかまってしまいますが、おそらくバス優先にすれば混乱するということなのでしょう。

そういう意味でゆとりーとラインの発想は自然なんだと思います。ガイドウエー区間では結構なスピードを出しますし、駅間も長く、郊外から都心へのアクセス手段としてはうまく考えられています。ただし案内輪の収納問題からツーステップ車なのは惜しいところ。バリアフリー対策は悩ましいところです。それでもここまで高度化されたバス輸送システムという意味で、BRTと称して良いでしょう。ゆとりーとライン利用は名鉄瀬戸線小幡駅からゆとりーとライン小幡緑地まで徒歩連絡したんですが、落ち着いた郊外住宅地で、都心との距離を考えると首都圏から見てうらやましい限りです。都市の実情をフィジカルに知るにはまち歩きは重要です。

てことでやっと本題ですが、青春18きっぷで西に向かうと、JR東海エリアの駅で首都圏からカード1枚で突撃してきた乗客の精算所の長い列は恒例でしたが、いつからかは定かではありませんが、とりあえず東海道線の東京―熱海間プラス山手線内乗車に限り、駅の自動精算機で精算可能になっていました。さすがに精算でマンパワーを消費するわけにはいかないわけです。ただし逆は不可というわけで、券売機で磁気券購入が必要です。また沼津下で乗り入れるJR東日本の普通列車グリーン車ではSuicaグリーン券に対応しておらず、改札外で磁気グリーン券を事前購入する必要があります。

いろいろ調べると、名古屋地区のmanacaで実施される乗継割引に非対応で、都営バスの90分ルール割引やバス得ポイントなどSuicaとPASMOで共通化されているのとは異なります。名鉄とラッチ内でつながる豊橋と弥富では乗継専用タッチセンサーを設置、PiTaPa陣営の近鉄との共同使用駅である桑名では専用のゲートのない自動改札機(こんなもん初めて見ましたが)を跨線橋上に設置して乗継客にタッチさせるなどしてあくまでも改札分離して自社だけで独立ブロックを形成するその姿勢は孤立主義的傾向の強いJR東海らしいと言えばらしいですが、乗客の利便性は置き去りです。尚、JRと近鉄の共同使用駅である津はTOICAエリア外なので特別な対応はないようです。

一方新幹線専用カードのEX-ICとは併用可能で、新幹線を使えばエリア外もカードだけで利用可能ということで、なるほどあくまでも新幹線利用への誘導なのかということですね。加えTOICAエリアの三島―岐阜羽島間で、新富士を富士、岐阜羽島を富士に置き換えて新幹線停車駅2駅以上の区間でTOICA定期円を所持する場合は、普通車自由席乗車に限り特急料金をカード残高から引き落とすことが可能という具合に新幹線への利用誘導が露骨です。

ま、そんなこんなでちょっと気になったのが、いくつかの駅で改札外へ出てみて、駅前が結構悲惨な状況なのが目につきました。決して人口は少なくないのに、車社会で郊外型店舗でにぎわいが駅前から消えたということなんでしょうけど、特に四日市と近鉄四日市の駅前の違いを見ると、終わってるという感じです。新幹線で稼いでローカル輸送はおざなりということでしょうか。ま、あれこれ考えさせられます。

近鉄に限らず、静岡鉄道が自社系列のジャストラインと連携したり、遠州鉄道が中間駅の整備された駅前広場に自社バスを乗り入れたりして一貫輸送を意識している一方で、JR東海は駅の外は異界とばかりの冷淡さです。また系列企業であるはずの東海交通事業城北線の扱いも酷いですね。勝川は数百m離れた高架線上の無人駅で、JR駅への乗り入れは可能な造りですが敢えて繋がずですし、枇杷島も貨物線を通じて名古屋までレールは繋がっており、折り返しのホームを確保できれば乗り入れ自体は可能ですが、そんな気はさらさらなさそうです。沿線は人口も張り付いており、利便性を高めればもっと利用されそうですが。

車両面では主力の313系は良くできた車両ですが、とにかく編成が短く、青春18シーズンのせいもあるかもしれませんが、混雑までは無「なくても立客は当たり前というのも、違和感を覚えます。JR東日本で上野東京ラインの開業で話題となった10連の混雑があれだけ悪評なのですから、輸送力の余裕は大事です。その一方かつてのスター311系は発進時のショックが大きく乗り心地を損なっています。同じカム軸制御の211系がマイルドなのと比べると不思議ですが、これにあたるとハズレ感があります。てなわけでJR東海disな話になりましたが、見たまま感じたままですので悪しからず。

青春18きっぷは元々学校の休暇シーズンの余剰輸送力を活用して追加コストがほとんどかからないから実現できている格安な企画商品ですから、受益をリース料で召し上げられる整備新幹線のスキームを前提とする限り、今後も利用エリアが縮小せざるを得ないわけで、来春の北海道新幹線開業で青函間の特例もなくなること確実です。そんな中で北陸新幹線に新たな動きです。

北陸新幹線延伸で新ルート「小浜・京都」案 JR西  :日本経済新聞
従来の3ルートに対する第4のルートの提案です。従来の3案は基本計画線に8沿った小浜ルート、軌間可変電車(FGT)を前提とする湖西線ルート、東海道新幹線乗り入れを前提とする米原ルートですが、コスト面で有望とされる米原ルートはJR東海が内職を示しますし、アーバンネットワークに組み入れられた並行在来線の扱いで地元との合意形成が難しいということもあり、JR西日本は湖西ルートでの整備を検討していましたが、北陸新幹線による観光需要の誘発効果を目の当たりにしてか、若狭湾の中心都市小浜と京都をルートに組み入れ、将来は大深度地下で大阪延伸というものです。

この場合並行在来線は小浜線敦賀―小浜間が想定されますが、原発銀座のリッチな自治体の助けで小浜線の電化を実現した柳の下のドジョウ狙いでしょうか。とすれば原発の順調な再稼働が前提となりますが、逆にだから国も後押しが期待できるという読みもあるかもしれませんがちとキナ臭いところです。原発と新幹線といえば川内を連想させますが、原発関係者は京阪神から通勤が可能になり、小浜がシャッター街になるという微妙さが隠れています。また恩恵のない滋賀県が騒ぎ出すということで、すんなりいきそうもありません。あーあ。

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Sunday, June 07, 2015

あーせい、こーせい、そーせい

てなわけで、前エントリーのジングウ・ファミリアが迷走してます。結局デザインコンペで選ばれたザハ・ハディドとの契約を解除して、どうやら屋根なしスタジアムに仮設スタンドで当座をしのぐようです。問題の根源にあるザハデザインから離れたのは半歩前進ですが、そもそもデザインコンペ当時から指摘されていた問題に目をつぶったまま突っ走った文科省や体協の責任は重大です。

ザハデザインの実現可能性の低さは、あの屋根が径間500mの橋と考えればわかりやすいのですが、川や海なら別の場所で組み立てた橋桁を船で運んでクレーン船で設置という方法が使えますが、神宮の森では使えない手法ですから、現地に巨大鉄工所を期間限定で設置するしかないですし、大量に鋼材などを搬入するためには、広範な周辺道路の整備も必要です。そのために費やされる費用は3,000億円から1,600億円に減額見直しされた本体建設費を上回るものになる上、神宮の森の保全にも悪影響確実というわけで、実際に着手するまで気付かなかった無能ぶりにうんざりします。負担を断った東京都の対応は正しいと言えます。

てなニュースの一方、今週も起きた重大インシデント。

京浜東北線電車が線路内の看板に衝突、けが人なし 点検作業員、誤って置く? - 産経ニュース
空自ヘリ・ANA機・JTA機、あわやのトラブル 那覇空港 | 沖縄タイムス+プラス
名鉄運行続行に疑問 中部運輸局、停電「本来は故障扱い」:社会:中日新聞
京浜東北線で保線作業員の勘違いで並行する東海道線に設置する筈の作業看板を京浜東北線に置いて電車がと今田もの。2つ目は全国版のニュースで大々的に取り上げられましたが、管制官の離陸指示を自機に対してと勘違いした自衛隊ヘリの過失ですが、異常事態を咄嗟の判断で回避したANAとJTAのパイロットはお見事です。3つ目は電気連結器カバーが外れて雨水侵入によるショートが原因んで電源ダウンした列車がブレーキが作動せずオーバーランしたものですが、名鉄の対応にいろいろ問題が指摘できますが、詳述は避けます。

こういうニュースに接して思うのは、日本の人口減少ン0インパクトが、マンパワー不足による労働力の劣化につながっているのではないかという危惧です。人口減少といっても、生産年齢人口の減少ですから、少子化対策は解決策になりません。むしろ高齢者の増加と共に扶養人口の増加をもたらし、少数の現役世代への負担を加重させる悪手です。以前から指摘していますが、労働力の減少は資本装備の増強である程度カバーできるんですから、その方向で対策を打つ必要があります。新国立競技場のようなリソースの浪費は許されないという自覚が必要です。

同様のリソースの浪費は昨今の地方創生ブームにも感じます。そんな中でこんなニュースを取り上げます。

45年ぶりにSL疾走、ファンら見守る 鳥取の若桜鉄道:朝日新聞デジタル
鳥取県の三セク若狭鉄道の活性化策として、JR西日本から無償譲渡されたC12型SLを活用した沿線活性化策の社会実験ですが、車席がなく従来若狭駅構内の体験運転などに試用されていたものを、本線運転しようというわけで、車籍のないC12を走らせるために本線を線路閉鎖して走らせるという手続き上はトリッキーなやり方です。車籍を取得するには保守検査体制を整えて鉄道事業運転規則に合致した体制を組む必要がありますが、自治体主導の三セク鉄道には高いハードルです。

面白いのは撮影地の所謂お立ち台を有料化したことで、単発のイベント運行ではありますが、定期運行を睨んでキャッシュフローを生み出す努力は評価できます。ただしSL運行自体は大井川鐡道のほかJR山口線、真岡鉄道。秩父鉄道などで定期運行され、それほど新鮮味があるわけではありません。競合がある中で、若桜へ足を運んでもらえるにはどうするか、そこまで考えなければうまくいかないわけで、今回の社会実験が一過性のイベントで終わるか、指定日だけでも定期運行にこぎつけられるかは予断を許しません。そしてSL運行の老舗の大井川鐡道にも容赦のない現実が降りかかります。

大井川鉄道、再生支援申請へ 沿線の地域づくりに影響  :日本経済新聞
70年代に名鉄が資本参加し、SL運行で観光鉄道として集客力を発揮し、ローカル私鉄の勝ち組とも目されていましたが、沿線人口の減少には抗えず、また関越道事故を契機とするツアーバス規制強化で、新金谷から大井川鐡道へ乗り継ぐツアーバスが激減し、経営の屋台骨が揺らぎ、利用の少ない一般列車の減便に至ったのですが、島田市をはじめとする地元自治体への支援要請も不発で、政府系ファンドへの支援要請となりました。スポンサーとして北海道のホテル事業者のエクリプス日高が出資する一方、名鉄は撤退します。

地元自治体との関係でいえば、観光鉄道としての成功体験故に自治体が動かなかった可能性があります。つくづく交通政策基本法の元となった交通基本法の民主党案にあった移動権が盛り込まれなかったことが残念です。観光鉄道としての成功は決して鉄道の未来を保障するわけではなく、地域との関係を定義できなければ、生きた鉄道としての命運は開けないということですね。移動権に関しては憲法に定める基本的人権の拡張概念として定義することで、憲法に紐付されれば、憲法そのものの改正をよりやりにくくする意味もあり、現在安保法制絡みで国会が迷走してますが、所謂護憲派も「憲法を守れ」だけではなく、憲法を生かした立法を心掛けてこなかった結果が今の混迷ということですね。ちなみに安保法制に関しては、9条だけが問題ではなく、内閣の権能を定義した73条に軍事に対する指揮権が明記されていないことも問題になります。

ま、こんな状況ですから、某大都市の名物市長ご執心の都市鉄道三セクでのSL列車運行の協力要請を大井川鉄道が断ったのは当然ですね。それどころじゃないわけですから。

というわけで、大都市と地方との関係でいえば無視できないニュースがあります。

25年の東京圏、介護施設13万人分不足 創成会議、41地域へ移住提言 政府、交付金で後押し :日本経済新聞
首都圏の高齢者集中で施設が不足するから、施設に余裕のある地方へ高齢者の移住を促すというのですが、高齢者ほど住み慣れた地域を離れたくないものですし、ましてインフラが整備された大都市部ほど生活しやすいということもあります。むしろ問題は地価が高いがゆえに施設の整備が思い通りに進まないし、介護職の賃金が低すぎて、地価が高い東京では生活できないなどといったことが問題なんで、これは例えば今後建設されるマンションを高齢者対応の医療や介護施設のテナント誘致を義務付けるとか、介護保険からの介護報酬以外に、都などが上乗せするとかやりようがあります。要は実際のニーズに合った社会保障サービスを実現させることであって、数合わせの移住計画などうまく行くわけないです。ま、こんなところに地方創生を打ち出す現政権の統制的な性格がにじみ出ています。あーせい、こーせい、そーせいじゃうまく行かんわ。


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Sunday, April 19, 2015

インシデント週間

山手線で重大インシデントがありました。12日に神田駅近くの山手線と京浜東北線の併走区間で更新により撤去予定の架線柱が倒れ、線路を死傷したものでs、数分前に営業列車が通過していたことから、重大事故につながりかねないインシデントとなりました。朝6時に発生し休日で工事スタッフが集まらないこともあり、復旧は15時と9時間に及ぶ運休となりました。

とはいえ休日だったから混乱はそこそこで済んだ面もあります。山手線は田町―田端―池袋間で運休。京浜東北線は蒲田―東十条間で運休とし、後に蒲田―品川間で運転再開するも、折り返し設備の制約もあり、運転間隔は開きました。それでも並行する中央線と東海道線、上野東京ラインは生きており、地下鉄への振替輸送も行われました。平日だったらもっと混乱したかもしれません。

その後の報道でJR東日本は10日時点でポールの傾きを認識していて13日終電後に撤去工事を予定していたのですが、週末を挟んだから対応が遅れた面もあるわけですが、同時に異常を発見しても直ぐに工事に取り掛かれない現実もあり、この辺の時系列の微妙さは頭に入れておく必要があります。

そもそもは2本のポールに横梁(ビーム)を渡した状態で、架線にも張力が掛かっているわけですから、微妙な構造計算が必要なのではと思っていたら、案の定同様の工事では構造計算して上司の承認を得ることがマニュアルに定められていたということで、何故マニュアル違反が生じたかが根本の問題です。加えて異常を認識し工事を手配するバックアップがどこまで可能なのか、特に昨今保守部門は外注化されていて、指示命令系統に齟齬が生じやすい背景はあったわけです。リカバリーにも課題があるわけです。マニュアル違反という意味ではJR北海道の青函トンネル列車発煙事故と共通ですが、こちらは正社員で運転保安要員である車掌の判断の問題があり、しかも記者会見で社長がそれを適切とするなど、事後の対応にも疑問があり、より深刻です。

14日には今度は広島空港でアシアナ航空機の着陸失敗という事故が起こりました。広島空港は天候の急変で霧による視界不良があるということで、カテゴリー3の無線誘導装置(ILS)が設置されていたものの、西側だけで、当日は風向きの都合でで管制官に東側からの着陸となり、着陸に失敗したものですが、パイロットのミスとする見方と悪天候によるダウンバーストの影響とする見方があります。

事故機はエンジンを接地してバウンドして滑走路を外れており、まかり間違えば火災による爆発炎上の可能性もあったほか、フェンスの外は崖になっていて、運が悪ければ機体ごと滑落もあり得たなど、大惨事の可能性がありました。また照明が落ちて搭乗客の避難が混乱したり、客室乗務員がパニックになってシューターによる搭乗客の避難を補助しなかったとか、いろいろ問題点も出てきております。パイロットのミス、管制官の判断の正否、数十億円と言われるILSの完全設置、客室乗務員の対応など論点はいろいろあり、経営の苦しい地方空港故に、ILS設置も簡単ではないですし、そもそも世界規模のパイロット不足に加えて客室乗務員の適正な訓練など、航空業界が抱える様々な問題が横たわります。頼みの西側ILSも損傷しており、17日に仮復旧したものの、悪天候時には欠航となる暫定運用で混乱は続きます。

というような一連を見ていると、人材の枯渇、労働力の劣化が通底する問題として浮上します。人口減少が続く日本ですが、韓国を始めアジア諸国も同様の傾向が見られます。このことに意味するところは、人口減少による労働力不足を移民で補充することの困難を示します。政府が進める介護労働を外国人実習生で補充というのもまず無理といえます。そもそもトラブルの多い日本の実習生制度は低賃金や長時間労働などで国際機関からも改善勧告されていますし、正規雇用であっても円安で日本への出稼ぎに妙味がなくなっていることを自覚すべきでしょう。政府のやっていることは何の解決にもならないわけです。

ただ気になるのは、人口減少による労働力の希少化が、素直に賃金の上昇につながるのかに疑問があります。というのは、潜在成長率0.6%と先進国中最低の日本ですが、生産年齢人口1人当たりで見ると1.6%程度の成長率になるわけで、実は欧米を凌駕する水準にあります。それだけ労働生産性が高いのかといえば、時間当たりの労働生産性は欧米に大きく後れを取っており、実態は長時間労働の深刻さを伺わせます。実は日本人雇用者も実態は外国人実習生に引けを取らない劣悪な状況に置かれているわけです。実は日本の労働市場は新興国並みというお寒い状況です。

生産年齢人口が減少するんですから、本来は労働生産性を高めなければならないわけです。労働生産性は単位時間当たりの付加価値創出力で測られますから、高付加価値労働へのシフトが重要なのに、現実的には逆の現象が起きているわけです。付加価値が低いから長時間労働で埋め合わせなければ国際競争に勝てないという悲しい現実です。

高付加価値というと必要性の薄い高機能多機能を詰め込んだ結果、世界から忘れられたガラパゴス携帯が典型的ですが、必要性を超えた高性能高機能高品質を付加価値と勘違いしているのが日本のリーダーたちです。付加価値というのはユーザー目線での評価の総体ですから、ユーザーである消費者の購買力に依存し、その消費者の大多数は労働者であるという当たり前の現実が見えていないのでしょう。無駄な高性能高品質よりも、ブランドやサービスで差別化することこそ重要です。言い換えればサービスの高価格化ということです。

新興国の工業化の進捗で供給過剰な工業製品で勝負すれば低価格に泣くわけで、そこを認識できない日本の無能なリーダーたちは、値下げしないと物が売れないと「デフレだ、日銀何とかしろ!」てなことで、責任転嫁するわけですが、それで問題が解決するわけがありません。必要なのは産業構造の転換を伴う本来の構造改革ですが、既得権層の反対で進まないばかりか、政府が既得権層におもねっているのですから、日本経済は沈みっぱなしにならざるを得ないわけですね。これ以上続けると落ち込みますからこの辺にしときます。

てな中で、交通分野でも人手不足は確実に事業環境を侵食するわけですが、ちょっと面白い傾向が先日開業した北陸新幹線で見られます。

乗客2.7倍、乗車率は50%割る 北陸新幹線1カ月  :日本経済新聞
これぶっちゃけ航空の便数維持の結果、平日のビジネス客の移転が進まず、北陸新幹線の乗車率を低めているわけです。つまり観光がメインの新幹線ということで、航空は機材の小型化もあって搭乗率100%近い、つまり相当数の利用を断っている状況ですが、運賃を安く設定しても燃費の良い小型機材で席を埋めている状況は採算性も高いと言えます。逆に言えば東京対北陸のビジネス利用は航空でカバーできるオーダーしかないというわけです。北陸新幹線は料金を高めに設定してますし、グランクラスを設定し3等級制として客単価を上げてますから、乗車率の低さはカバーできるでしょう。逆に需要の季節波動の多きい観光輸送では乗車率の低さは機会損失の低減につながるわけですから、おそらくこのまま役割分担が定着すると考えられます。

これは従来新幹線の開業が航空の撤退につながる傾向とは異なり、結果的にJRも航空も付加価値を高めたわけです。もちろん新幹線に関しては引き換えに並行在来線切り離しで三セクに負担をかけていることには注意が必要ですが。新在通算で付加価値が高まるかどうかは現時点では何とも言えません。

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