都市間高速鉄道

Sunday, April 09, 2017

トランプ・クリティーク

柄谷行人氏の著書に似せたわけぢゃないんですが^_^;。トランス・クリティークは名著です。

シリア情勢が大きく動きました。4日にシリア政府軍の空爆後に、サリンに似た中毒症状が見られたことで、化学兵器の使用が疑われたことを受けての懲罰ってことのようですが、疑惑段階での軍事行動は問題です。子ブッシュ大統領がイラクが大量破壊兵器を開発中という嘘の情報で開戦したことを思い起こさせます。当時は独仏両国が反対に回ったのに対し、今回西側諸国はこれを歓迎したわけですが、いち早く支持を表明した日本の立場は微妙です。

米中首脳会談が行われている中でのミサイル攻撃ということで、北朝鮮問題に対する警告の意味を指摘されてますが、その割にロシアなどへ行われた事前通告が日本には為されなかったわけで、日本政府の希望的観測の域を出ません。むしろ国連安保理でロシアと連携することが多い中国が口出ししにくい米中首脳会談のタイミングを利用したってのが実際でしょう。実はここにトランプ政権の性格を示す鍵があります。

レーガン大統領に比較されることが多いトランプ大統領ですが、就任後の政権運営を見ると、むしろニクソン大統領に近いと言えます。今回のシリアへのミサイル攻撃で言えば、ジョンソン大統領時代に泥沼化したベトナム戦争を終結させる過程で北爆を強行したりカンボジアへ戦線を拡大したりした迷走あたりと似た対応です。

実際は欧州諸国が主張するアサド政権排除とは一線を画し、深入りを避けています。どうもアサド政権の化学兵器使用に関する官僚のプレゼンに義憤を感じたということのようです。そしてホワイトハウスの政治任用ポストのなり手が見つからず、議会承認も遅れていて空席が多いことが影響してるようです。だから逆にトランプ大統領の脊髄反応的な対応が表へ出たってことのようです。

日本としてはむしろシリア情勢を他山の石として、朝鮮半島有事で米軍の北朝鮮攻撃が起きた時の混乱をシミュレーションする機会でもあります。おそらく韓国国内の反応で賛否が分かれ、日米韓一枚岩の対応は無理でしょう。当然在日米軍基地への北朝鮮からの報復攻撃も起こりますから、日本国内も混乱して収拾がつかなくなることになります。軍事オプションは慎重であるべきですし、対北朝鮮でアメリカが強硬策に出ることは止めないといけません。

思い起こせば大統領選勝利宣言の場でTPP永久離脱を表明したのも、オバマ大統領の任期中に批准できなかったことで、NAFTA再交渉よりもハードルが低いですし、大統領就任後の大統領令連発も、大統領令は問題があれば議会が無効法案を成立させて無効化したり司法が差し止めたりできるので、実効性よりも有権者へのアピールの性格が強いと見ることができます。それが証拠にオバマケア修正法案に関しては議会との調整の果てに撤回しておりますが、これも単純にオバマケアを葬り去りたいのであれば、廃止法案ならば議会多数派の共和党の賛成ですんなり通っただろうに、、修正法案としたために、共和党保守派の賛同が得られず撤回に追い込まれたんですが、その結果、オバマケア継続が決まり、歳出が確定したことで、予算審議はむしろやりやすくなってます。トランプ大統領ってホントは隠れリベラル?

この辺はビジネスマンらしく難易度を意識したリアリズムなんでしょう。同時に従来の保守とリベラルの対立構図の中で経路依存的な議論しかできない政治家たちを戸惑わせているとも見ることができます。ニクソン大統領が米ドルの金交換停止や頭越しの電撃訪中で、オイルショックに始まる産油国カルテルをオイルダラー還流の枠組みで実効支配し、中ソ対立に乗じて一つの中国政策でソビエトとの分断を進め、現在に通じる地政学のフレームを作ったわけですね。日本にとっても沖縄返還交渉関連の密約で深く関わりますし、アメリカ側が沖縄返還のバーターと考えていた日米繊維交渉の約束を破った日本への不信感が、その後80年代以降のジャパンバッシングへとつながったとすれば、当時の佐藤政権の不始末でもあり、その意味で従来の対米追従路線を離れられない日本の安倍政権のしょーもなさにはため息しか出ません。

改革の本丸と目される税制改革ですが、これイギリスのシンクタンクが提案する法人税の仕向け地課税制度が踏襲されると見られますが、これに関してあまり正しく認識されていないようです。法人税の課税方法には大きく分けて居住地課税と源泉地価税の2つがあり、前者は企業の本社所在地での一括課税でアメリカはこれですが、多くの国は付加価値を生み出した地域で課税する後者となります。問題は違う制度が併存する中で企業の多国籍化が進んでいることで、居住地課税国の企業が源泉地価税国に生産拠点を置いて本国へ逆輸入するケースでは二重課税になりますし、逆のケースでは課税逃れにもなり得ます。そこで国境調整として、前者であれば源泉地価税分を控除した差額が居住地で課税されるという形になります。後者に関して源泉地国企業が居住地国に現地法人を置くことで課税逃れを防ぐ必要があります。

更に問題をややこしくしているのが各国の課税ベースの違いと税率の違いで、これらを組み合わせることで、パナマ文書で問題となったタックスヘイブン問題が生じるわけです。タックスヘイブンの場合は付加価値を生み出さない金融取引を利用して低税率国や地域へ富を退避させるわけで、一方で新興国やEUの周縁国などで外資誘致のために法人税減税が競争的に起きていることもあって、各国の税収の空洞化が進んでいます。その結果米企業に生産拠点の海外移転のインセンティブを与える結果となりますし、残る企業も課税特例による政策減税をロビーイングして税の軽減を画策するという複数ルートで税の空洞化が進み、税の所得再配分機能が失われていく現実があります。

それを変え得る課税方法として、仕向け地課税が提案されていて、米共和党で実現の模索がされているものです。WTOルールでEUの付加価値税や日本の消費税など間接税に例外的に認められている税の国境調整の仕組みを法人税に盛り込み、グローバル化に対応して輸出に対しては税の還付を、輸入に対しては公助抜きの課税とすることで国境調整を図る税制で、少なくとも国内で製造可能な製品の海外移転不利にします。加えてキャッシュフロー課税とすることで、形式上直接税となりWTOルール違反の可能性があるという提訴に対して利益課税でなく間接税だと主張できるという目論見です。

キャッシュフロー課税はそれに留まらず、複数年に分けて焼却される減価償却の一括償却と同じ意味になりますし、有形資産に留まらず知財やのれんなどの無形資産も同様ですから、投資全般を阻害しないという意味もあります。加えて人件費も控除対象で、この点が付加価値税と大きく違う点で、つまり低賃金国への生産移転は不利になるという意味で、国内雇用も守るという大統領選の公約と整合性があります。

また国境調整の結果仮にWTO提訴や報復課税がされたとしても、結局有効な報復手段は同じ仕向け地課税を導入するぐらいしかないわけで、それはむしろ望むところ。移転税制で税収確保に苦しむ多くの主権国家にとって問題解決の道になるというわけですね。EUにしろNAFTAにしろ主権国家の上位組織を置くという意味では主権制限の要素があるわけですし、各国の税の空洞化問題も含めて、ある意味クリティカル共同体としての主権国家の復権ということになりますから、反グローバル化という批判も当たりません。

加えてアップルやスターバックスで問題になった税逃れに関しても、未来分は新法人税で捕捉される一方、過去分を10%の軽減税率でみなし課税するリバトリエーション税を課す法案を用意しており、新法人税の前座として議会に諮って成立を目指してます。こちらはオバマケア修正法案で反対に回った共和党保守派も賛成に回ると見られており、トランプ税制改革の成否を占うことになりそうです。

問題はこうして相当額の税収増が見込めるわけですが、それを原資に減税やインフラ投資の財源とする目論見ですが、大統領選で訴えた法人税15%までは届きそうにないということ。共和党案の20%も苦しく、25%程度がせいぜいではないかと言われております。加えてリバトリエーション税で利益の海外留保が無意味化しますから、米企業が一斉に留保資金を本国送金すると、為替がドル高に振れてしまうという点ですが、むしろ新税制で輸入物価にかかる上昇圧力を緩和するとすれば、国民生活的には問題ないということになりそうです。

それと3月に利上げし、年内3回の利上げを示唆して緩和の出口を探るFRBの動き如何では、ドル高が進む可能背もありますが、その根拠となる米景気の回復基調にやや異変が。

米市場の変調、自動車業績に重荷 販売減速・膨らむ奨励金  :日本経済新聞
以前から指摘されていた問題ですが、サブプライム自動車ローンと販売奨励金で新車販売に下駄を履かせた状態が続いた結果、中古市場に車が溢れて値崩れして、元々リセールバリュー頼みのローン利用者にとっては、転売、買い替えのサイクルが停滞するわけですから、それが新車販売に跳ね返っている状態で、丁度不動産サブプライムローンと同じ構図です。ただ規模は小さく、金融危機には至らないと見られていますが、新車販売の停滞は生産の縮小を通じて米景気後退のトリガーにはなり得るわけです。ただしそうなればFRBの利上げスタンスは見直されるでしょうし、むしろ低すぎる失業率でインフラ投資が滞ると言われる中、景気後退は悪い面ばかりではありません。

そうなるとテキサス新幹線や北東回廊リニアの建設を目指すJR東海にチャンス到来?とはいかないのが現実です。トランプ税制では結局建設でも車両製造や保守でも現地調達を基本にしなければなりませんが、高速鉄道の建設や運営をこなせるサプライチェーンを立ち上げるのは困難を伴います。実質貨物鉄道で欧州以上に衝突安全の基準が厳しいアメリカですが、逆に言えば日本式の繊細な構造の高速鉄道の建設は未体験ゾーンとなるわけで、日本のリソースを使うと課税される新税制では不利になるわけです。インフラ輸出に前のめりな日本ですが、そうそううまい話は転がってはいないわけです。東芝が買収したWHの誤算もスリーマイル事故で原発建設が停止した結果、サプライチェーンが崩壊してコストを膨らませたことにあります。無理しても同じ運命が待っているだけでしょう。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, April 02, 2017

JR30周年で国鉄は遠く

JR30周年となったわけですが、つまり国鉄を知らない世代が既に社会人になっているというわけで、そもそも国鉄改革とは何だったのかを知らない人が増えているということでもあります。しかもその30年はスタートがバブル期に重なって好調だった一方、バブル崩壊後の経済停滞で社会はすっかり様変わりしておりますが、上場を果たした本州3社とJR九州に対して、JR北海道は存続の危機とも言える状況に直面しており、JR四国も時間の問題という現状です。

その一方でJR貨物の黒字化で上場が視野に入るという、なんともわかりにくい状況ですが、JR発足以後の日本経済の激変を考えれば、これまでの30年の延長上に未来は描けないのはある意味自明です。加えて言えばバブル期以降の日本を特徴づけるのは低金利ってことです。これ上場して資金調達力を増した本州3社にとっては追い風の一方、経営安定基金の運用益で赤字穴埋めという枠組みの三島会社にとっては逆風になるわけで、その中でJR九州だけが上場にこぎつけた最大の理由は、JR発足後に完成し引き渡された青函トンネルと瀬戸大橋を抱えるJR北海道とJR四国に対して、追加的な負債が発生しなかったってこともあります。

リース料負担のある整備新幹線としての九州新幹線も、経営安定基金取り崩しで一括支払いしており、短期的な負担が北海道や四国より軽いことが指摘できます。ただし長崎ルートは需要面からもお荷物になる可能性があります。加えて経営安定基金の残りで上場前の減損処理で資産圧縮してますから、今後の鉄道事業の設備投資の原資は細くなっており、人口減少でJR北海道と同じ問題はJR九州でも起こり得ます。

本州3社についてもそれぞれリスクを抱えています。業績好調でリニア建設に入れ込むJR東海は、そのリニアがリスク要因です。過去にも何度の指摘しておりますが、リニア単体では赤字の投資であり、しかも人口減少で人手不足が顕在化する中で、労働需給による事業費の上振れは避けられないところですし、加えて南アルプスを青函トンネルより長い長大トンネルで抜ける難工事です。トンネル工事で地下水脈にぶち当たれば国鉄時代の上越新幹線中山トンネルや福岡市営地下鉄七隈線のような水没事故も起こりかねません。

JR東日本や西日本にとっても人口減少による地方線区の維持の困難さは今後も拡大するでしょう。JR東日本では仙石線や常磐線のほか、水害で橋梁が流された只見線や土砂崩れの山田線など災害復旧で課題を抱えています。JR東海の名松線の復旧とJR可部線の廃止区間の一部復活などはありますが、前者は三重県と津市の治山治水事業の進捗に合わせての復活ですし、後者は市街化が進んでいたものの、廃止時点で非電化だったために、電化工事までして残す選択肢は事実上なかったわけで、住民運動が広島市を動かし、それに呼応して鉄道用地の原状回復や売却を留まったJR西日本の間で建設的な対話が実現したことによります。その意味で窮地に立つJR北海道に対する道庁や関連自治体の対応はちょっと残念です。

それでもJR北海道に関しては、JR九州が先鞭をつけた経営安定9基金取り崩しという奥の手は残っています。ただし使途は重要で、要員不足で保守が困難な状況を脱するには、省力化投資が欠かせませんが、JR北海道の経営力強化の意味で、現状の鉄路をそっくり残すことはあきらめるしかないでしょう。具体的には保守負担の大きいディーゼル車を減らすための電化と、保守負担を減らすための軌道強化などですが、JR北海道が自前で残す区間に限定すべきでしょう。そうすれば経営安定基金を取り崩しても償却資産が増える分、キャッシュフローの改善につながりますから、JR九州の新幹線リース料一括支払いより筋の良い取り崩し方になります。JR九州で認めた以上認めないわけにはいきますまい。とすれば石勝線・根室本線の南千歳―帯広間が電化されて、保守が容易な電気車両への置き換えが進むことになります。そしてこの手は将来JR四国の経営が行き詰ったときにも使える手でもあります。

で、残りの区間に関しては自治体出資で線路保有を肩代わりするか、受け皿三セクへの譲渡とするか、あるいは地元バス事業者を巻き込んだバス転換かといった対策を路線や区間毎に自治体と話し合って決めていくしかないでしょう。受け皿三セクに関しては、輸送量次第で肥薩オレンジ鉄道のようにJR貨物の出資もあり得ます。宗谷本線に関してはロシア政府が興味を持つかもwwwww。いずれにしても自治体の対応次第です。名松線も可部線も自治体が動いて復活を果たしたわけですから。逆に自治体との協議を重ね社会実験までして廃止止む無しとなった三江線の例も珍しいものとは言えなくなるでしょう。

ま、いずれにしても人口減少の影響は今は好調な本州3社も安泰ではないわけで、北陸新幹線に入れ込むJR西日本は正直大丈夫か?とも思います。この点は」JR東日本が絡む整備新幹線計画がほぼ完成し、JR東日本のとっては成長分野となったのとは異なります。元々JR東日本も整備新幹線区間単体よりも、既存区間である根本部分の需要増が狙いだったわけで、わざわざ線路を曲げてまで小浜、京田辺経由で新幹線を作るのは意味不明です。加えてJR西日本には新たなリスクの種も。

なにわ筋線30年開通 JR・南海運行、新駅以北は阪急交え協議  :日本経済新聞
なにわ筋線に関しては、大阪維新の目玉政策としての関西空港重視の文脈で、関西財界も乗り気なようですが、今回は阪急も事業参加を申し出て、よくわからない状況になっております。

元々阪急はなにわ筋連絡線構想として十三―梅田北新駅間の路線構想を持っておりましたし、古くから新大阪連絡線として淡路―新大阪―十三間と新大阪―神崎川間の免許を取得し、新大阪駅隣接地に駅用地としてとちをしゅとくしていて、高速バスターミナルや路線バス操車場として使ってたわけですが、紆余曲折を経て十三―新大阪間を除いて免許失効しており、十三―新大阪間も、四つ橋線の十三延伸線と相互直通が計画されていましたが、大阪市営地下鉄の民営化が決まって民営化後に負担となる追加投資が頓挫したことが影響しているようです。てことで大阪部、。大阪市、JR西日本、南海電気鉄道に加えて阪急電鉄も加わる五者協議が始まるそうですが、元々JRと南海の呉越同舟に加えて唯我独尊の阪急が加わるとなると、協議がすんなり進むとは考えにくいところです。

なにわ筋線に関しては、中之島で連絡する京阪電気鉄道も期待しているようです。肝心の大阪維新ですが森友学園問題でもちぐはぐな対応が見られますし、四つ橋線延伸計画を反故にするなど本気度には疑問符が付きます。とはいえJR西日本の単独事業とするには投資額が大きいわけで、新幹線のみならず、コアコンピタンスと見做せる関西アーバンネットワークでの私鉄との相乗りは、JR西日本の難しい立ち位置を示しているとも言えます。

てことで、めでたいようなめでたくないようなJR30周年ではあります。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, March 19, 2017

曲がり角の整備新幹線

森友問題が予想以上に盛り上がっております。どうせメディアが動かないだろうと思っていたら、籠池理事長夫妻のキャラの立ちっぷりや安倍昭恵夫人のノー天気な行動力と随行する官僚の公務か否かとか、総理夫人を私人と閣議決定とか、なんば花月かい!草生えるわ。

てことで数字が取れるとメディアが動いた結果、23日に鍵池理事長の国会証人喚問が決まりましたが、問題の本質は国有地払い下げを巡る値引き問題と教育基本法違反が疑われる私立小学校の認可を巡る大阪府の規制緩和を含む便宜供与問題の2つ。国会に呼ぶべきは当時理財局長だった迫田国税庁長官と松井大阪府知事です。

第一次安倍政権当時の姉歯事件が、永田議員偽メール事件でとん挫して、改ざんを許した大臣認証構造計算ソフト問題、民間検査機関による検査業務とそれに関連して不自然に米国基準を接ぎ木した規制改革などはスルーされ、1建築士の犯罪に矮小化され検査の厳格化だけに終わった轍を踏む可能性があります。籠池氏の証人喚問に何かの仕込みがあるか要警戒です。多分贈収賄事件というよりは、官僚による政権への忖度だろうとは思いますが、だから許されるって話ではありませんね。

この手の忖度は歴史を紐解けば結構あります。古くは東海道新幹線の岐阜羽島駅を巡る問題で、岐阜県選出の大野伴穆代議士の関与が噂されましたが、当時新幹線建設に懐疑的な世論もあり、政治家の関心は高くなかったのですが、反対されると面倒ということで、国鉄側が忖度したものです。

元々東海道新幹線は最高速250km/hで東京―大阪2時間半という目標を掲げて計画がスタートしてます。当時既に民間航空の台頭とモータリゼーションの進捗で挟み撃ちに逢っていた鉄道は、世界的には斜陽産業と見做され、フランス国鉄で331km/hの記録を出しており、枯れた既存技術で200km/h-250km/h程度の営業運転は可能と見られてはいましたが、そのための追加投資に及び腰で、当時の高速列車は最高速160km/h止まりでした。

日本でも民間航空とモータリゼーションは欧米に遅れながら進んでいたのですが、その一方で戦後復興が軌道に乗って旺盛な需要拡大で、特に東海道本線は早晩輸送力増強が必要な状況でしたが、航空とクルマに対して鉄道のシェアを維持するために、世界最高峰の高速鉄道の建設を意思決定します。戦前の弾丸列車計画である程度用地が確保されていたことも背中を押したのでしょう。

そのため可能な限り直線的なルートで計画され、名古屋から米原へは、当初鈴鹿山地をトンネルで抜けて直行するルートで検討されましたが、当時の土木技術水準では長大トンネルは建設費を増大させるということで、計画が具体化する中で、現在の関ヶ原ルートに落ち着きますが、そうなると岐阜県をかすめることになり、駅を造らないで反対されるリスクを回避するため、岐阜羽島駅の設置が決まった経緯があります。余談ですが鈴鹿山地ルートならば関ヶ原の雪に悩まされずに済んだ可能性はあります。

これだけが原因ではありませんが、計画を具体化する過程で妥協を迫られた結果、最高速は巡航速度200km/hプラス10km/hの210km/hとなり、東京―大阪3時間へ。そして京都駅への速達列車停車で3時間10分となります。加えて盛土の安定のために開業時は盛土区間の徐行で4時間となり、1年1か月後に徐行解除という対応が採られました。枯れた技術の集大成とはいえ、世界初の速度域の営業運転ということで、慎重を期したわけです。

結果的に東海道新幹線は沿線の人口と産業の集積を進め、事業としても大成功だったわけですが、一方で会計規則の変更で民間企業並みに減価償却を義務付けられたこともあり、皮肉なことに国鉄は新幹線開業年の1964年から赤字転落し、以後累積赤字を重ねて解体、分割民営化へ進むことになります。東海道新幹線単体で見れば職客後も大幅黒字ですが、電化、ディーゼル化による動力近代化と需要が旺盛な幹線ルートの複線化に、首都圏通勤五方面作戦もあって、償却資産を増やし続けたことで、赤字は拡大の一途をたどります。巷間言われる赤字ローカル線問題はむしろ無償貸与または譲渡で減価償却が発生しませんので、経営への重荷という意味では主たる原因とは言い難いところです。

この頃の国鉄幹部の経営能力はかなり低かったようで、赤字解消のために生産性を上げようとして所謂マル生運動を仕掛けて労組と破局的な対立をしたり、東海道新幹線の好調ぶりに「新幹線なら何とかなるかも」と全国新幹線網を構想して、整備法が国会で成立するのを受けて、とりあえず輸送力が逼迫しつつあった山陽本線の救済名目で山陽新幹線を着工し、岡山開業、博多開業の2段階で事業を進めましたが、この頃には大型機の就航もあって長距離では航空のシェアを切り崩すには至りませんでした。

その一方、整備法の縛りもあって新規着工の新幹線は最高速260km/hで最小曲線半径も東海道の2,500mから4,000mに、軌道中心間隔4.2mから4.3mとグレードアップされましたし、加えて高度経済成長期の年率5%に及ぶインフレもあって、東海道新幹線より減価償却費の負担が重くのしかかる一方、輸送量は東海道の凡そ1/3に留まり、単体で辛うじて黒字も、並行する在来線の赤字転落もあって、国鉄全体の収支改善にはほとんど寄与しませんでした。寧ろ減価償却費の増大はフリーキャッシュフローを生み出しますから、会計上赤字でも現金は潤沢で、身の丈に合わない過剰投資は加速し収支悪化が止まらないわけです。

こうして国鉄解体、分割民営化へと進むわけですが、民営化でJR各社が軒並み収支改善された秘密の1つは、JR各社の国鉄継承資産の圧縮記帳です。旧国鉄勘定で資産の減損処理をして、新会社へは例えば貨物コンテナ1個1円とかで継承し、バランスシートが身軽な状態でスタートしたことによります。ただし本州3社に継承された新幹線だけは例外で、営業権こそJR各社に帰属しますが、資産としては新幹線保有機構という特殊法人に継承させて、JR各社から線路使用料を徴収する形にして、旧国鉄債務の一部として負担させたわけです。しかしこれは見直されます。

対航空で競争力を高めたいJR東海は300系で270㎢/h運転を実現しますが、稼ぎ頭の東海道新幹線でリース料の負担が重い一方、減価償却費が得られず投資の停滞を余儀なくされます。また他社に先駆けて株式上場を目指すJR東日本は、東京証券取引所の助言で、主たる事業資産である新幹線が自己保有ではない状況では、減価償却費による継続投資ができないから、事業継続に疑義があり上場は難しいと指摘されたことを受け、国に新幹線買い取りを提案。東海と西日本も同意して買い取りが決まります。

この時の価格査定で時価法の1種である再取得価格法によります。簡単に言えば同等の資産を現時点で再取得する際にかかる費用ですが、非償却部分の地価部分が膨張しているわけですから、車両更新を進めて対航空の競争力を高めたいJR東海にとっては不満の残る査定となりました。そして後にこれでは東海道新幹線の設備更新が滞ると国に不満をぶつけて、のぞみ料金の上乗せ部分を非課税積み立てして設備更新に備える新幹線版特特法のような仕組みを勝ち取ります。その後工法の見直しで設備更新費用は圧縮され、JR東海は舌出してます。JR東海がリニアに傾斜するのは、それだけ余剰資金が潤沢だということでもありますが、そのリニアでも大阪開業前倒しで利子補給を取り付けるなど、国を騙して利益を得るその手法は、ある意味森友学園よりも悪辣かも。

一方国鉄が事業主体となる前提の新幹線網整備法も有名無実化する可能性があったわけですが、分割民営化時点で既に基本計画から整備計画へ昇格していた5路線の整備スキームが検討され、現在の所謂整備新幹線スキームになるわけです。元々国鉄の存在を前提とした法律を民営化JRに担わせるために、国と地方が2:1の比率で助成し、JRの負担も30年リースで償還するというもので、事業費圧縮のためにフル規格の他にミニ新幹線とスーパー特急という3メニューを用意して、国、地方、JRの3者の合意に基づいて着工という手順が決まりました。その際並行在来線はJRの経営から分離することと、分離に伴う貨物やローカル輸送由来の赤字負担がなくなる部分も加えたJRの受益分がリース料の算定基準とされました。

これJR東日本の上場時の東証の助言から言えば、九州新幹線を抱えるJR九州の上場はやや違和感があるわけですが、JR九州の場合不動産や流通など関連事業の好調で鉄道事業の比率がJR各社中最低の49%ということもありますが、鉄道事業でも経営安定基金を取り崩して新幹線リース料の一括支払いとその他の鉄道資産の減損処理を上場前に済ませて、上場後の負担を軽くしたわけで、JR発足時の圧縮記帳を繰り返したわけで、ルール上はかなりきわどいことをやってます。

一方赤字圧縮のために大幅な路線廃止を打ち出したJR北海道にとっての北海道新幹線は、貨物との共用の制約もあって共用区間の最高速140km/hで並行在来線切り離しは函館本線函館―新函館北斗と江差線五稜郭―木古内で受益が少ない上、函館本線に関しては電化して新車まで入れて三セクに渡すという追加費用も発生してますし、共用区間は並行在来線ではないので、JR貨物の割安な線路使用料はそのままということで、実態として経営改善にはほとんど寄与していないですし、むしろ青函トンネル自体の老朽化もあって保守費用の負担は今後も増えると見込まれます。上場どころか事業継続の危機ともいうべき状況です。

JR北海道は北海道新幹線の札幌延伸に期待を繋いでいるようですが、東京から5時間超では上記の4時間の壁問題で航空からの移転は期待できません。それでも並行在来線切り離しの受益は見込めますが、人口の希薄な北海道では北陸新幹線つるぎのような近距離利用も期待薄です。整備新幹線自体がリース資産で減価償却がありませんから、スピードアップのための追加投資の原資が得られないわけで、この点は一括支払いを済ませた九州新幹線にも当てはまります。こうして見ると整備新幹線は未来のない中途半端な存在ということができます。加えて政治性が機能の低下を後押しします。

北陸新幹線の全ルート確定 敦賀以西31年着工  :日本経済新聞
小浜―京都ルートも驚きですが、京田辺市(学園都市線松井山手付近)経由の南回りルートとこちらもう回路です。京阪間で料金不要の新快速よりも遅いわけで、何のための新幹線なんでしょうか。小浜―京都ルートに関しては、京都と若狭地区の繋がりの深さを指摘する向きもありますが、そういうローカルな需要はバスの若江線(近江今津―上中)の在来線鉄道建設で満たせるはずで、新幹線である必要はありません。事業性を考えたら米原ルート一択だった筈。しかも北海道新幹線札幌延伸後の2031年まで財源なしですし、そもそも並行在来線をどうするのか。まさか湖西線を切り離すじゃ受益のない滋賀県が同意するはずもないですし。政治に忖度して岐阜羽島駅を作った東海道新幹線のツケがこういう形で跳ね返るとは。つくづく日本の統治システムの醜怪さに眩暈がします。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, December 11, 2016

トランプラリーが終わるとき

更新サボってましたが、トランプラリーと呼ばれる謎のリスクオン相場のおかげで安定したPVが続いております。選挙前はトランプショックとさえ言われ、実際一時的に相場は下げましたが、当選後のコメントが意外とまとも^_^;ってことで、むしろ減税や公共事業拡大を好感されてということのようですが、ま、スタート台が低いから普通のこと言えば評価されるってイリュージョンですね。就任後は当然期待が剥がれますから、下げは覚悟しといた方が良いです。

それと不安材料もチラホラ。FRBの今月の利上げはほぼ確実視されてますが、それぐらい今のアメリカの経済は好調ですが、既にピークアウトした疑いがあり、2017年には景気の谷が来る可能性があります。それでもFRBはむしろそうなったときの政策余地を確保する意味でも利上げをすると考えられますが、来年の利上げは微妙になります。というのは、トランプ政権下で成長が鈍化すればFRBの利上げのせいにされてトランプ大統領があからさまな圧力発言をする可能性があり、FRBの独立性が損なわれる可能性があります。丁度第二次安倍政権発足のときに当時の白川日銀総裁を読んであからさまな圧力をかけたことがアメリカで起こるってことです。てことで、基本的にトランプの政策運営はアベノミクスをなぞる形になると思います。格差拡大を批判して大統領になったトランプが格差を助長するってことです。

元々製剤成長率が4%あると言われたアメリカ経済ですが、直近で成長の裏付けとなる生産性向上が停滞し始めており、日本と似た状況になりつつあります。こういう状況で大規模な財政出動をしても、インフレになるだけの話です。加えて移民政策の見直しが行われれば、公共事業を拡大しても人手が集まらず、人件費だけが高騰するという震災後の日本と同じ状況になるだけです。加えて金利差によるドル高がマイナスです。おそらく対米大幅黒字国の日本と中国に為替操作国と非難を浴びせ、外貨準備で積み上げたドルを売るように迫ると思います。その時日本政府はどーする?

一方火種は欧州にもあります。

イタリア首相が辞意 国民投票で改憲否決  :日本経済新聞
これ反EUとか反グローバリズムや保護主義といった問題と見るべきではないんで、イタリアはレンツィ首相の下経済改革を進めてきていたのですが、議会の上院と下院が同党の権限を持つために反対派の抵抗が大きかったということで、上院の権限を縮小する憲法改正案を発議し国民投票にかけたところ、これを否決されレンツィ首相が辞意表明ということですが、今のところ与党出身のマッタレッラ大統領が待った^_^;ってことで足踏み状態ですが、最大の懸案はイタリアの銀行第3位のモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナの公的資金による救済問題ですが、政治の空白で金箔した状況です。そこに立ちはだかるECB。
欧州中銀、イタリア3位銀行の増資延期認めず ロイター報道  :日本経済新聞
モンテパスキの増資引受先が見つからず自主再建が難しくなったのですが、公的資金注入にはペイルインというハードルがあります。仮にも税金で民間銀行を救済するなら、株主や銀行劣後債購入者などの投資家に一部損失負担をさせるというルールですが、この銀行債が問題で、イタリアでは国民に広く保有されており、ペイルインを適用すれば多くの国民が損失を被るということで、政治的には困難な課題です。憲法改正否決もこれが影響したのでしょう。銀行の不良債権問題は元々リーマンショックの後始末の積み残しでもあり、モンテパスキだけの問題ともイタリアだけの問題とも言えないところがあり、仮に破たんすれば欧州全域に連鎖破たんが広がる可能性があります。とはいえ合議の上決めた銀行同盟の中心的なルールだけに、例外を認めにくいということもあり、多分来年には何か目に見えた危機が顕在化すると見るべきでしょう。

というわけで、問題だらけの世界ですが、なぜか日本は好調ですが、陰りも見えます。

GDP1.3%増に下方修正 7~9月、設備投資減で  :日本経済新聞
一応3四半期連続のプラスですが、下方修正の要因が先行指標出る設備投資の下方修正ですから、ピークアウトの兆しです。一方で住宅着工と公共工事は好調ですが、中身は相続対応の賃貸アパートが中心で、大都市圏でも今後人口減少が見込まれる中、空き家を増やすことになります。また公共工事もオリンピック関連など事業費の膨張が問題になっているように、増えたことを素直に評価できるものではありません。加えてこんなニュースも。
都市農地、覆う2022年問題
宅地転用で空き家増加?: NIKKEI STYLE
1992年にスタートした生産緑地制度ですが、主に大都市圏で地価対策として農地の宅地並み課税が施行された一方、営農を希望する農家に営農継続を条件に30年間の特例で低税率とした制度ですが、30年後に自治体に農地の買い取りを申請できるとしたものの、自治体も財政難でこれを渋っており、多くの生産緑地が農地指定を外れて宅地などに転用されると見られております。そうなれば宅地の地価は下がりますから、低金利が続くとして住宅着工ブームが訪れ価格破壊デスマーチになると見られます。大都市圏にも農地を残し地産地消でというきれいごとも吹っ飛び、単なる価格破壊に留まらず、マイナス成長の真正デフレに陥るんじゃないかと。日銀の金融政策じゃ回避できないどころか助長します。

そもそも競争力のある大規模圃場を物理的に確保可能な平地はほぼ大都市圏に限られる日本では、農地より宅地等に転用した方が地価が上がりますから、関東平野などで見られる水田地帯に散在する住宅や工場が建ち、小規模農家も土地の転用を夢見て手放さないから大規模化が進まずで、競争力のある農業の可能性は東北の一部と北海道に限られます。TPP対策費で補助金ばら撒いても大規模化は進みません。そもそもトランプ氏のTPP離脱宣言で発行の可能性のないTPPの関連法を強引に成立させるって、意味ねー。その北海道の農業にも暗雲が。

JR北海道、全路線の半分「維持困難」  :日本経済新聞
農業の競争力で大規模化はよく言われますが、それと共に市場アクセスの優位性も重要で、北海道の場合青函トンネルの開通で鉄路で首都圏に直送できるようになったことの影響が大きく、それゆえ北海道新幹線の青函トンネル貨物共用問題でも貨物の撤退は議論から外され経緯があります。農業へのダメージが大きすぎるというわけです。でこれ。
JR貨物、「上場準備へ」 経常益100億円達成見通しで  :日本経済新聞
JR北海道の経営危機を尻目にJR貨物が上場準備ってわかりにくいニュースですが、JR北海道の線路保守の劣化はJR北海道自身による高速化のほか、JR貨物が軸重14tのDD51重連を軸重16tのDF200に置き換えたことの影響もあります。JR貨物は線路を旅客会社から借りて列車運行していて、所謂アボイダブルコスト方式といって、貨物列車運行によって発生する限界費用のみの負担で良いという仕組みで、一応限界費用+1%のインセンティブを原則とし、実際は旅客会社との相対で金額を決めるということになっており、元々縮小均衡前提だったこともあり、実際は機関車の両数を代理変数とするタダ同然の格安水準でスタートしたわけですから、重連を単機に置き換えればむしろ線路使用料は下がるわけです。それでも設立以来赤字続きで旅客会社も値上げを言える状況ではなかったわけで、特に貨物輸送比率の高いJR北海道にとっては重荷だったわけです。そんな事情でEF64重連置換用のEH200はJR東海が入線を拒否しています。

それが鉄道・運輸機構の融資もあり、競争力強化投資とCO2削減やドライバー不足で企業荷主の鉄道回帰もあって、輸送量が下げ止まり、鉄道・運輸機構の融資条件である2018年黒字転換が見通せるようになったということで、上場という話になるわけですが、今まで赤字だったkら値引きされていた線路使用料が現在の水準のままとなれば旅客会社から文句も出るわけで、とりわけJR北海道には死活問題でしょう。鉄道の廃止を巡っては自治体の反発や道庁の不作為もありますが、国として農業インフラとしての鉄道という視点での援助は必要ではないかと思います。ま、安倍政権じゃどうせやらないだろうけど。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, November 13, 2016

トランプ・ポリティカル・パートナーシップ

いや米大統領選面白かった。何が面白いって、米大手メディアはほとんどクリントン優勢と伝え、日本のメディアもほとんど追跡取材なしにそれをうのみにした結果、慌てているってところです。日本のメディアコントロール問題はある意味わかりやすく、政治的な圧力に対して忖度して勝手に自主規制するから、その辺が良く見えますが、アメリカは?というと、政権がどうこうよりもより大きなエスタブリッシュメントが黒子として存在しているってことですね。ある意味日本より巧妙ですが、今回その一端が見えたわけです。

具体的にはトランプ氏のトンデモ発言ばかりが露出していたり、特に10年以上前のセクハラスキャンダルをわざわざ掘り起こして報じるなど、最近日本でも目につくネットデマゴーグばりのことをNYTみたいな大手紙が報じるあたりに垣間見えます。加えて民主党議員のセクハラメール事件で押収したパソコンからクリントン氏の公式アカウントから発信された大量の私用メールが見つかってFBIが再捜査に乗り出したのに対して、報道では現れませんが、オバマ大統領二任命されたFBI長官におそらく圧力がかかって立件見送りとなった経緯など、日本みたいな-_-;展開が見られたあたり、ほんとアメリカかい?とさえ思いました。

てなわけですから、報道以上にトランプ氏の支持は広がっていると見てましたし、一方でバイアスのかかったメディア報道もありますから、どちらで決着するにせよ相当な接戦となると見ていたわけです。案の定有権者の得票数では勝っていたクリントン氏に対して、間接選挙の特殊なルールで獲得選挙人数でトランプ氏が勝利したわけです。正確には来月の選挙人投票で決まるわけで、不誠実な選挙人が心変わりするって可能性は皆無ではありませんが、そんな報道が出てくるぐらい不都合なトランプ氏の当選だったってことで、現実的には無いでしょう。

ま、ある意味アメリカ国民の本音が出たわけですが、前代未聞の候補者同士の誹謗中傷合戦の罵り合いも、意図的だったとしたら(私はそう思ってますが)トランプ氏の術中にはまったってことです。日本でも「自民党をぶっ壊す」と叫んだ小泉劇場があったぢゃないですか。もう少し遡ればアメリカでもB級ハリウッドスターで泡沫候補と見做されていたロナルド・レーガンが現職のカーター大統領を破って政権の座についたことがあります。このとき政策スタッフとしてシカゴ大学経済学部を中心とする保守派の経済学者が関わって、それまでのケインズ主義的なマクロ経済運営を新自由主義的な方向へシフトしたわけです。トランプ大統領の出現はその意味でエポックメークな出来事となる可能性があります。

一言で言えばパクス・アメリカーナの終焉といいますか、アメリカが唯一の覇権国として国際社会を取り仕切る意思と能力を放棄するってことで、これからはアメリカの国益第一の本音の外交をするぞってことです。ですが、既にオバマ政権下でもシリア内戦への勘よに慎重だったり、南シナ海で中国と握って対立を演出したりしているわけで、外交面では今までとあまり変わらないと見るべきでしょう。TPPに関しても、とりあえず大統領選と同時に行われた議員選挙で共和党が多数派を維持したことから、オバマのレガシー作りに協力する必要はないってことです。トランプ大統領就任後どうなるかはわかりません。

ただし気になるのが、昨年の大筋合意自体が日米両国の強引に決めたことですし、日米間では詰まっている、といっても医療や農業で日本が譲歩した一方、自動車などアメリカの譲歩項目は時間的猶予が与えられるなど非対称なものですが、一方ニュージーランドが提案した乳製品の貿易ルールに関する動議は決着を見ないままですから、どのみち再交渉は避けられないわけですから、今批准を急ぐことは、アメリカの背中を押すというよりは、アメリカに足許を見られる結果になる可能性の方が高いといえます。特に「FTAは二国間で」とするトランプドクトリン?が公言されているわけで、TPPの日米交渉でアメリカに押し込まれた条件が再交渉で更に押し込まれることは覚悟した方が良いです。アメリカが本音で通商交渉に臨めば

米:日本はTPPでの約束を守れよな。
日:アメリカも約束守ってください。
米:よく聴こえないが?
てなことになりますわな。てことで Trump's Political Partnership でTPP成立ってあれ?

大統領選報道の一方で、日本では大事故が起きました。

博多駅前で道路陥没=地下鉄延伸工事が原因-空港などで停電も・福岡:時事ドットコム
現場は福岡市営地下鉄七隈線延伸工事の現場で、早朝、現場作業員からの110番通報があり、警察が迅速に道路閉鎖した結果、これだけの規模の陥没事故で死傷者ゼロと不幸中の幸いに。加えて福岡市の情報開示の徹底もあって、混乱はかなり防げたのですが、いろいろと課題も見えました。原因は地下水の流入による岩盤の崩落ということで、事前の地質調査が十分だったのかなどが問われますが、岩盤が粘土質で地下水で軟化していたとか、地震で岩盤が動いたとか、いろいろと言われておりますが、現時点では詳細は不明です。

ただ地下工事での道路陥没って結構な頻度で起きてはいます。東京でも常磐新線(つくばエクスプレス)工事でJR御徒町駅近くで大規模な陥没事故を起こしてますし、他都市でも少なからず起きてます。今回現場責任者の対応が早かったから結果的に死傷者ゼロで済んだものの、地下工事の危険性を認識させる事故ではあります。これ横浜の傾きマンション事件とも関連しますが、土木工事って、結局掘ってみないとわからないというのが実際で、その場合設計変更が欠かせないところ。

横浜のケースでも2人の杭打ち工事責任者のうち1人はこまめに異常報告して設計変更したわけですが、当然工期も伸びるし予算も膨張するということで、スルーされることもあって、竣工後に不具合が発覚することも珍しくはありません。それでも適切にメンテナンスされていれば、事後的に補強その他不具合を除去する手立てもありますが、問題は工事にしろメンテナンスにしろ、職人芸的な属人的なスキルに頼っている点です。しかもゼロ年代の建設不況でスキルの継承は断絶しており、今後少子化で若手の育成も難しく、日本のように不安定な地盤の土地ではロボットなどで対応するのも難しいところです。

私が公共工事の拡大に疑問なのも、また中央リニアに懐疑的なのも、1つにはこの問題があります。例えば2週に亘って渋谷駅の線路切り替え工事で週末区間運休の東京メトロ銀座線ですが、営業線の切り替えで困難な工事ではありますが、線路切り替えなどの大規模工事は結局人海戦術で対応せざるを得ないけれど、最近は人集めに苦労する状況で、コスト面もあって運休して工事間合い時間を取らざるを得ないようになってきたって面もあります。幸い東京のように成熟した大都市では、一部運休してもう回路はいくらでもありますから、事前告知で混乱は避けられますが、リニアにしろ整備新幹線にしろ、これから作るものに関しては、メンテナンスも含めて破綻の可能性もあり慎重な対応が必要です。

最後は閑話休題。銀座線の区間運休ですが、渡り線の関係で浅草―溜池山王間と青山一丁目―表参道間の区間運転という方法がとられました。後者に関してはA線(浅草→渋谷)は青山一丁目から表参道まで営業運転して回送で折り返し、B線(渋谷→浅草)では逆に表参道から青山一丁目まで営業運転して折り返し回送という運行形態を採っています。所謂指導式(腕章を付けた指導員添乗を条件に運行)の代用閉そくですが、すべての駅が相対式ホームで乗客案内上逆線走行の営業運転の混乱を避けたと思われます。そのため12分ヘッドと運転間隔が開いており、神宮外苑下車駅の外苑前は週末イベント等も多く、結構な混雑ぶりでした。島式ホームなら逆線営業運転で運転間隔を詰められたかもしれません。その神宮外苑では木製ジャングルジム火災で子供1人死亡という痛ましい事故も-_-;。中を明るく照らそうとした学生の機転が裏目に出たわけですが「常識的にわかりそうなこと」という前にナレッジの共有と継承はかくもということも指摘できます。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, October 30, 2016

波浪院莫頭迂迦居士

近所の小さなお社でハロウインやってて、笑っちゃいました。そういやクリスマスシーズンにはツリーにイルミネーションも。神仏耶蘇混仰は日本の伝統芸かもwww。タイトルの読みは「はろういんばずうかこじ」ってことで、ミザリーハロウィンから2年、物価は上がらず、リフレ派は息してる?って心配なんで、いい加減成仏して欲しいんで、戒名考えてみますた(笑)。

豊洲問題の迷走は留まるところを知らずですが、気になるのは犯人探しになっている点。重要なのは今後どうするかなんですが、盛土せずに地下ピットを設置した一方、液状化対策として基礎杭のズレを防ぐ地下梁を設置しなかったので、耐震強度が設計上の数値と異なり、結果的に耐荷重性能を低下させた疑いが出てきました。ややこしいんですが、盛土前提で耐震構造計算されていた設計図面を見直す過程で、本来盛土に乗っかっているはずの床のコンクリート層2㎝とか、砂利を含むコンクリート構造物としてあり得ない数値になっていて、現状は15㎝といった具合で設計図面と現物の違いが明らかになってきました。

コンクリート層が厚ければ建物自体の重量が設計図面の数値より増えるわけですから、構造強度を低く見積もらなければならないわけで、姉歯事件同様の耐震偽装の可能性が出てきたってことです。しかも設計事務所最大手の日建設計の手によってということになれば、同社が手掛けた他の建築物にも飛び火しかねないという深刻な事態です。仮にベンゼン等の安全基準をクリアできても豊洲新市場の建物を使うには上層階の減築が必要になるということでもあり、そもそも手狭で耐震補強も困難とされた築地市場の移転の必要性の議論から見ても皮肉です。ますます着地点が見通せない中、こんな動きも。

水産卸「さらば豊洲」 大田市場への入居急増  :日本経済新聞
元々羽田空港が近く、地方や海外に販路を求めるには好立地ということで、既に事実上水産棟の空きはない状況ですが、予定もはっきりしない次の募集に期待が集まっている状況です。豊洲の解決に時間がかかるならば、大田市場の増強も有力な代案ではありますが、ネックは道路の渋滞。東京港トンネルの一般道R357部分の台場→大井方向のみ開通して高速湾岸線の渋滞が緩和してますから、大井→台場方向の開通で改善の可能性はあります。それでも築地移転を前提とした環状2号線の着手の遅れを取り戻すのは困難ですが。オリンピックやめる?

話は変わりますが、JR九州の株式上場ですが、本業の鉄道事業が赤字ながら、不動産など関連事業の好調で上場にこぎつけました。その際経営安定基金を取り崩して九州新幹線の線路使用料一括支払いなどで強引に益出しするなど、問題のある対応をしてますが、ほとんど報道されておりません。加えて駅みどりの窓口の閉鎖や無人駅化など目先の収支改善も目につきます。繰り返しますが経営安定基金の原資は旧国鉄債務に加算されていて、JR本州3社の負担分を除いて国民負担となっているわけで、国民の財布をちょろまかして誤魔化しているわけです。

そして株式上場ですから、一般投資家への還元重視で所謂コーポレートガバナンスコードでROE8%ってことです。あの絶対王朝にも喩えられたセブンアンドアイの鈴木会長を解任したアレですが、米投資ファンドのサードポイントが求める百貨店と通販のニッセンの整理に続いて創業家が深く関わる祖業の総合スーパー(GMS)事業にメスが入れられるかで株価が上下してます。JR九州の祖業の鉄道事業も投資家の求めに応じて整理縮小されるのは自然の流れです。その時に交通政策基本法の趣旨に沿って地元自治体の支援などの対応を引き出せなければ廃止という流れになるわけで、JR北海道で今起きていることがJR九州で再現されるということです。

JR北海道も北海道新幹線が開業して観光客が増えたものの、地元の受け入れ態勢が整わず、新函館北斗駅から先の所謂二次交通の不備で手つかずの観光資源は生かされず、それどころか函館市内の湯の川温泉の旅館街では人手不足で宿泊客を断ったり、あるいは従業員不足でバタバタ状態でおもてなしもへったくれもなく、リピーター獲得もままならず、過疎化で地域のマンパワー不足でどうにもならない状況です。そういえば九州新幹線や北陸新幹線でも2年目は輸送人員が減少しており、観光面から言えば新幹線の恩恵は生かされていないと言えます。九州も北陸もビジネス利用が一定数見込めますからそれでもマシで、北海道新幹線の前途は多難です。

北海道といえば、日ロ間で交渉が進捗して、領土交渉のバーターで北海道の鉄道とシベリア鉄道を繋いて云々といった話も流れましたが、アホラシ。1,520㎜のロシアンゲージへの対応をどうするつもりなのか。繋ぐのは新幹線、在来線どっち?個人的には貨物輸送の連携は有望だろうけど、むしろ日本規格で低規格のサハリンの鉄道を1,067㎜時代から路盤強化、軌道強化を地道に続け、現在ロシアンゲージへの改軌を進行中と維持困難な過疎地寒冷地の鉄道を確実にグレードアップしているロシアの鉄道運営のノウハウを学ぶ意味でJR北海道へのロシアの出資をお願いした方が良いんじゃないかと。ついでに道内都市間輸送は仏アルストム製のロシアンペンドリーノでも導入すれば?

どうせ日米安保体制下では領土返還の可能性は皆無ですし、むしろ資本や人の相互交流を進めて実質的な国境を低くすることの方が重要です。ただしこれは日本には前科がありまして、サハリンの天然ガス開発で三井物産など日本の資本が投じられ、販路確保の意味でサハリン―東京間のガスパイプラインが構想されたんですが、中東カタールから割高なLNGを購入し、原発の低コストを喧伝していて、また熱源としてライバル関係にあるガス会社を利するということで、電事連が反対して流れました。ロシアからは以前から極東ロシアの余剰電力を連携線で北海道に供給したいという希望もありましたが、これも日本はスルーしてきました。原発村の面々は絶対同意しませんね。

関連しますが、米中がいち早く同意し、EUが加盟国の批准を待たずに批准を決めたことで、気候変動パリ協定の年内発効が確実な状況で、発行に伴う相互検証のルール作りで後手を踏む日本ですが、これも原発再稼働を前提としたエネルギー政策で、電力の20%と、休止している国内原発のほとんどすべてを再稼働しなければ不可能な数値を掲げているのに、再稼働は進まないので、日本は後回しにせざるを得なかったのが実態です。優先度で言えばTPP批准にょり上なのに、やってることは逆。米大統領候補が反対し、議会筋も反対派多数のTPPを日本が急いで批准する意味はないんですが「アメリカの背中を押す」という意味不明の理屈。それが通るなら日米安保の地位協定はとっくに見直されているはず。

その一方で笑えるのがJR東海が進める米ボルティモア―ワシントン間のリニア建設で、安倍首相はオバマ大統領に建設費の半分にあたる70億ドルの負担を3度提案するもスルー。そりゃ未だ営業運行の実績のないリニアを金出すから作ろうといっても、寝言言うなって話ですね。日ロ間とは逆の対応をされているわけです。

てな具合に21世紀の今の日本には怨霊がはびこっているようです。しかもお菓子目当てのいたずらならぬ利権目当ての屁理屈がまかり通る日本版ハロウイン。笑えないのが大阪万博構想。会場は夢洲って、幻の大阪五輪の亡霊ぢゃないか。成仏せえよ-人-チーン。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, July 31, 2016

リオでじゃねえだろ!

都知事選当日で投票率が今までよりも高いらしい。関心が高まっているのは結構なんだけど、それだけ無党派層の票が結果あを左右するわけで、そうなると組織票頼みの増田、鳥越両氏の苦戦で小池知事の可能性が高いということになります。その場合ダメージが大きいのは鳥越氏の方ですね。ホント日本の左翼わぁ-_-;。

元々知名度で不利だった増田氏は落選しても都知事選に乗っかって名前を売った分だけ講演料アップでハッピー。弁護士の宇都宮氏を辞退させてまで野党統一候補に拘った結果、宇都宮氏の支持層まで離反というのは、米大統領選の民主党サンダース候補の辞退でやはり若い有権者が離反していることとパラレルですが、違いはサンダース氏が予備選を戦った結果、クリントン氏が主張をかなり修正せざるを得なかったこと。選挙戦は言論を闘わせることで有権者に判断の材料を提供するから意味があるんで、知名度で勝負がつく都知事選の不毛さはどうしようもないところです。

ま、誰が都知事になってもちゃんと都民のために働いてくれれば良いんですが、そもそも五輪霧中の中、競技施設整備の見直しに踏み込んだ舛添前知事が謎のバッシングを受けて辞任したのが今回の選挙なわけで、本来自公は選挙やりたくなかったんだけど、民進、共産両党が世論を煽って追い込んだ結果、掟破りの首相指示で辞任に追い込まれたものでした。その意味で都民のためにリスクを取って働いた舛添知事を辞めさせた以上、民進、共産両党は息のかかった都知事を当選させなければ二重の意味で都民を裏切ったことになります。民進が宇都宮氏に乗っかれば話が早かったんですが、共産が先に支持表明したことを嫌ったんですね。党派性まる出し。ホントしょーもなー。

あとは都知事として働いてもらうことですが、選挙戦で小池氏が対立を煽った都議会自民党は、法人税国税化で反対したにもかかわらず増田氏に乗っかったように変わり身が身上。小池氏も「てへぺろ」で和解となると、都議会野党が頑張らないと都民のために働いてくれいないでしょう。本来改憲派の小池氏が都政に関わることで改憲にタッチできなくなるなら護憲派としては歓迎すべきことですが、都知事選の勢いに乗じて小池新党という声も。中身はおおさか維新のカーボンコピーで、関西に比べて支持率の低い首都圏で改憲勢力を掘り起こしててなことをさせないためにも、都議の働きが重要ですが、舛添前知事のリオ行きを批判しながら都議団でリオ五輪視察がリークされて叩かれて中止じゃ、期待できんわな。リオでじゃねえだろ!

てな前置きとは無関係の北海道の話題です。まずはこれ。

「持続可能な交通体系のあり方」について
「持続可能な交通体系のあり方」について(PPT版)
JR北海道が自助では限界と地元自治体へ協議を訴えるプレスリリースですが、メディアも含めて地元の反応は冷ややか。そもそもJR北海道にお一連の不祥事がコストダウンの行き過ぎによるものなのに、一段のコストダウンを要求されても、死ねと言われてるようなもの。加えて重大な勘違いの可能性も。熊本地震で運休を余儀なくされた南阿蘇鉄道運転再開のニュースです。
南阿蘇鉄道が一部再開 地震で被災、3カ月半ぶり  :日本経済新聞
わずか7㎞ほどで本数も1/3というささやかなものですが、こうして自助の姿勢を示した上で出資者でもある自治体も支援して初めて、国による支援が検討されるという形で、自助、共助、公助の段階を踏むのが交通政策基本法の考え方です。北海道のように自治体がそっぽを向く限り、国の支援は出てこないわけです。この辺移動権という憲法の基本的人権と紐づけされた権利を定義した民主党案の交通基本法の内容を後退させた結果じゃないかと思います。考え方としての自助、共助、公助という部分は条文中に盛り込まれてはいるものの、元々理念法の性格が強いと言われる日本国憲法の規範性の強化という観点からは、憲法と紐づけされた立法というのは重要な視点です。

実は改憲を目指すとされる現政権ですが、例えば理念性の強い9条よりも、国会、内閣、裁判所などの権能を規定した規範法の部分で「原則として」の5文字を入れるだけで骨抜きにされます。そもそも憲法が原則を定めているのは当然だからあえて明記されていないだけで、例外事項は個別法で定義するのが立憲主義憲法のあり方なんで、それを骨抜きにするってことは、国権の最高機関であり立法府である国会の権能を否定することになります。事実上憲法破棄に等しいわけで、絶対乗ってはいけない議論です。

話を戻しますが、JR北海道では一応乗車密度2,000人以上が持続可能なラインと考えていて、札幌都市圏の例えば札沼線のように複線電化で乗客が増えている路線や区間もあるわけで、私企業である以上、こうした増収が見込める分野への選択的投資は欠かせないところですが、一連の安全対策投資の結果、投資の原資をひねり出す余裕もなくなってしまうわけです。みすみす収益機会を逃せば企業としての持続可能性は低下することになります。

あと貨物輸送との関係もJR北海道にとっては重要でして、青函トンネル区間の新幹線と貨物の線路共用で新幹線が140km/hの速度制限を受けているい上に、落下した金属片が三線軌条の信号回路を短絡させるトラブルもあり、メンテナンス上も負担となっていますが、そんな中で貨物撤退論が囁かれていました。

青函トンネル「貨物撤退」はなぜ封印されたか | ローカル線・公共交通 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
記事によると青函トンネルの貨物撤退の議論は国交省によって封じられたと。元々線路を痛める貨物列車の走行に対して旅客会社に支払う線路使用料が割安に設定されている一方、鉄道貨物のシェアそのものは高くないということで、フェリーの新造船投入で代替可能という議論ですが、貨物幹線であるJR貨物の経営の息の根を止める判断はできなかったのでしょう。そもそもJR北海道のトラブルの原因はJR北海道自身による列車の高速化と共に、軸重も重いDF200型ディーゼル機の投入による部分もあります。元々線路規格が低いまま民営化を迎えた北海道の鉄路にとっては負担ですが、今回のJR北海道のプレスリリースでは触れられておりません。

結局JR北海道の問題ははJR貨物をどうするかという問題ともリンクしていて、簡単に解決策を見いだせない状況に陥っております。ただ鉄道貨物の放棄はCO2削減策としてのモーダルシフト政策に反しますし、ドライバー不足のトラック業界の現状からも鉄道貨物の活用の可能性は大きいわけで、簡単には決められません。来られも含めて国が大方針を示す必要がありますが、リニアや整備新幹線と違って票にならないから政権の関心は低いまま。その一方でおそらくJR北海道より経営環境が厳しいと見られるロシアのサハリン州の鉄道がロシアンゲージの1,529㎜に改軌して本土と車両の共通化を図るという大改良をすると言います。領土としての北海道という観点からいえば、現状はあまりに冷たいというか。これじゃ北方四島の領土交渉でロシアが日本の本気度を疑うというものです。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, July 24, 2016

アセット・バブル・イグジット

欧州がえらいことになってますが、単発的なテロが重なって体感治安の悪化は避けられないところも、対応が国にによって異なることが注目されます。シャルリ事件の影響もあるとはいえ、パリ同時多発テロでフランス政府が間髪入れず非常事態宣言をして大統領権限を強化し、以後期間延長を繰り返しながら現在に至ります。その一方でミュンヘン銃撃事件で犯人は単独犯でテロ組織との関係を否定したドイツ政府の冷静な対応が目立ちます。もちろん被害の程度の違いはあるんですが、戦前のナチスの台頭を許したドイツでは、慎重さが身についているのでしょう。

そんな観点からトルコのクーデター未遂事件を見ると、ちょっと待てと言いたくなります。トルコでもクーデターの1週間前にイスタンブールの空港のテロ事件などテロが頻発しています。紛争地のシリアやイラクと国境を接している関係でやむを得ないところはありますが、現政権の対応にも問題はあります。

欧米のダーイシュ(イスラム国、以下ISと記す)掃討作戦で、アメリカの空爆に空軍基地を提供するなど協調路線を取る一方、シリア・イラクで欧米が頼みとする勇猛なクルド人に対しては独立志向が強いということでトルコ国内に対立があり、クルド労働者党(PKK)をテロ組織と見做して弾圧しているわけで、ねじれがみられます。クルド人問題はEU加盟を希望するトルコに対するEUの人権問題批判もあり、複雑です。今回のクーデター未遂も、世俗主義の民主国家という現在のトルコの建国の精神に対して、エルドアン大統領がイスラム色を強めていることと共に、クルド人への弾圧も軍が問題視したと言われます。トルコでは政権の独走に軍がクーデターでストップをかけるということが度々起きており、軍自体は民主主義の守護者として国民の信任を得ている存在ではあります。

しかし不可解なことだらけです。

トルコの邦人「爆音、怖い」 軍反乱、抗議の市民が広場に大挙  :日本経済新聞
「エルドアン大統領は現政権への支持を示すため街頭に繰り出すよう国民に呼び掛けており」とあるように、丸腰の国民を武装した軍隊と対峙させて人間の盾にしたわけです。結果的に犠牲者とされる247人のうち160人以上が民間人という結果です。しかも民間人犠牲者を国民の反クーデター感情に訴えて非常事態宣言を正当化しているわけで、無茶苦茶です。こんな報道もあります。
トルコ大統領、軍反乱時に難逃れる 現地報道  :日本経済新聞
「当日の経緯を知る軍OBは「なぜクーデター勢力の戦闘機が(ミサイルを)発射しなかったのかはミステリーだ」とロイター通信に語った。」そうで、クーデター自体が狂言の可能性もあることを示唆します。一方それ以前に軍幹部の世俗派の更迭が相次ぎ、軍内部に不満がたまっていたという事情もあり、軍の組織統率力が低下していたとする見方もあります。クーデターの失敗はその結果だと。しかしそうするとトルコ軍の弱さを世界に晒したことになるわけで、加えて軍に留まらず司法や行政の政権に批判的な勢力を一掃して結果6万人超の拘束・解任で、むしろテロ対策は手薄になると見られています。シリアやイラクで劣勢のISのテロリストの越境でむしろテロを呼び込むとすれば皮肉です。

重要なのはトルコの大統領は選挙で選ばれる公職ではあるものの、トルコ憲法では名誉職で政治的な権能を持たないとされているにも拘らず、イエスマンで固めた現政権はエルドアン大統領の意のままに動いている点です。エルドアン大統領は大統領権限拡大を狙った憲法改正を目指しているそうですが、憲法改正するまでもなくこんなことができてしまうわけです。はて、東アジアの某国に似てないか?安倍政権が目指す憲法への非常事態条項の追加は危険だということと共に、トルコの場合現政権を支える与党は2015年6月の総選挙で過半数に達せず、必ずしも盤石ではありません。衆参双方で与党に2/3を与えた日本大丈夫か?安倍首相の支持層には神道系宗教の成長の家からスピンアウトした日本会議が。うーむ-_-;;。

思えばBREXITの背景に反移民感情があったとされますが、シリア難民の大量流入で離脱に傾いた英国有権者は少なからずいたでしょう。ただし不可解なのが元々EUに加盟してもシェンゲン協定には参加ぜず国境管理を続けていたイギリスがどの程度影響を受けていたかは明らかではありません。むしろ旧植民地を中心としたイギリス連邦の結びつきで多数の移民を迎え、しかも独自文化を尊重し多様性を強みに変えてきたイギリスで反移民というのはどうも残留派の印象操作のプロパガンダだったんじゃないかと疑われます。むしろEUの拡大で主権国家に屋上屋をかけるようなEU委員会の官僚主義に対する反発の方が大きかったんじゃないかと。とするとBREXITは必然だった?

EU自体が今直面している問題として、リーマンショックを受けた金融を巡る問題があります。バブル崩壊後の金融危機で銀行の整理統合が進んだ日本やリーマン後に公的資金で支えられながら再生したアメリカの銀行に対して、欧州では中小銀行が乱立し整理統合が進まない現状があります。EUによる預金保険制度の統一やECBによる銀行監督など金融統合が話し合われてますが、同時にバーゼル委員会の銀行規制強化で資本増強が求められ、破綻処理で民間に負担を分担させるペイルインを盾に公的資金注入ができにくい中で、金融危機時代の日本同様貸し渋り現象が起きているわけで、マイナス金利にまで踏み込んだECBの緩和策はそれを後押しする意図もあるわけです。

ただし実際は相対的に弱いイタリアなど南欧の銀行が緩和環境で淘汰を免れ延命する一方、好調なドイツでは金余りで設備投資が進むからますます格差は拡大するわけです。とはいえドイツ自身の貿易相手国としてのイギリスのプレゼンスの大きさから、メルケル首相はイギリスの立場も理解してEUのユンケル委員長のような強硬意見は言わないわけです。それでも先が見通せない中で投資を抑制する傾向は欧州全体で強まりますから、当分欧州の低迷は避けられないところです。

アジアでは中国の減速が結果的に日台韓やASEAN諸国にも影を落としますから、アジアも足踏みという中で、独りアメリカが気を吐く状況ということになります。実際FRBは量的緩和を終わらせ、利上げにまで踏み込んでいます。アセットバブルから出口へ進んだわけです。それでも利上げは遅々として進まず、むしろ利上げ延期が好感されて株価を押し上げるというヘンテコな状況で一進一退です。このアメリカの好調をどう見るかですが、シェール革命の影響の大きさを見るべきでしょう。

共和党大会で透ける「エネルギー孤立主義」 米州総局 稲井創一 :日本経済新聞
シェール革命でエネルギー自給が可能になれば、アメリカの経常収支が改善する可能性があります。そうするとエネルギー自給体制の中で国内産業を再生して雇用を生み出すというのは結構リアルなシナリオになります。トランプドクトリンも必然か?てなわけで、世界は今までとかなり違った方向へ踏み出しつつあるようです。気候変動バリ協定が空洞化される心配はありますが。

で、日本ですが、これだけ世界が変わっているのに、日本はなぜ変われないのか。一言で言えば変わりたくないんだろうということですかね。アベノミクスの弊害がこれだけ明らかなのに、当面食うに困らない程度の安定はあるから、それを崩したくないってことでしょう。これは同時に大胆な規制緩和にもマイナスに働きますし、例えば憲法改正も難しくしますから、それだけ現状維持圧力というか慣性が強いってことなんでしょう。

世界史的に似た状況は19世紀末の1873年から1996年までのイギリスに見られます。当時のイギリスは産業革命のアドバンスを使い果たし、米独仏の新興工業国の追い上げで窮地にあったのですが、同時に都市中間層の台頭もあり、紆余曲折はあったものの、中間層のヘゲモニーとしての民主政治が確立した時代でもあります。そして世界の労働法規のひな型となったイギリス労働法で労働時間に上限が設けられ、労働者の立場が確立した時代です。イギリスは結局覇権国の地位を失いますが、その一方でゆりかごから墓場までの手厚い社会保障を実現していくわけですが、これ丁度アベノミクスの逆ってことです。むしろこの大不況期にイギリスは経常赤字を拡大したのですが、日本は経常黒字を継続しており、打つ手もあるわけです。てなわけで Asset Bubble EXIT 略してABEXITがテーマになるわけです。

とはいえアベノミクスの本質はダメノミクスであり、出口でのリバウンドのショックは考慮する必要はあります。例えば今の日本でいきなり利上げができるかと言えば答えはNoです。まずは伸びきった日銀のバランスシートを徐々に縮小するしかありません。具体的には物価目標を取り下げた上で、保有国債は満期まで保有して償還させるわけですが、保有国債の期限も伸びて平均7年になってますから、保有水準を下げるだけで少なくとも7年以上かかるわけです。しかも高値で買い取っていてマイナス金利債もありますから、発券銀行の特権である通貨発行益の多くが失われ、経常経費を差し引いた剰余金の政府上納も減るわけで、その分財政に負担を与えます。結局金融政策は時間軸での資金の移転に過ぎないわけで、将来世代の負担増になるという意味では赤字国債による財政出動と大差ないわけです。

ただし国債償還による自然減もさらに時間をかけないと財政を通じた経済下押しJは避けられないわけで、実際には国債買い入れ額を徐々に減らしながら、日銀の保有国債全体でマイナス金利にならない範囲で対応するぐらいしかできません。急に買い入れをなくせばそのことによる国債暴落が起きかねませんので。てことは現状維持を言いながら徐々に買い入れ額を減らすぐらいしか方法がないわけで、その分出口に要する期間は伸びることになります。

また注意すべきは日銀当座預金の銀行勘定ですが、すべてマイナス金利が適用されているわけではなく、当座預金の名が示す通り、法定準備金相当額は金利なし、法定分を超えた超過準備のうちマイナス金利実施日の今年2月16日時点の当座預金残高の超過分に限定的にマイナス金利が適用されます。ですから銀行は以後の当座預金増加分にマイナス金利がかかるわけですから、預金を増やさないようにする一方、新発国債までマイナスの現状ではプラス0.1%の部分の預金準備を死守しようとします。事実上の不胎化というわけですね。この状況で国債が暴落して年利0.1%以上の利回りが見込まれると取り崩しが始まるわけで、ベースマネーの減少が早く進んで市場が収拾がつかなくなる事態もあり得ます。準備預金マネーが地雷になるわけで国債買い入れを減らすだけでも慎重にしなければなりません。現実的には10年20年と長い時間をかけざるを得ない。わけです。

ヘリコプターマネー導入の議論で期待が膨らんだのか、BREXIT後の円高が反転してドル円は一時107円まで戻しましたが、60年償還ルールのある日本では導入は不可能です。というよりも、赤字国債の借換債発行が制度化されていて、それが財政赤字の歯止めを失わせた現実があり、実質ヘリマネと変わらないということで、追加策としては不可能という意味ですが、それだけ後始末は困難を極めます。ある意味上記の経常黒字の継続が財政赤字の許容度を高めている可能性があり、困った問題です。

てことで参院選でアベノミクス継続を訴えて勝利した与党陣営ですが、早速秋の臨時国会で大規模な財政出動を打ち出すとしております。課題は財源で、10兆円20兆円といった数字が飛び交っているものの、既に税収の上振れ分やマイナス金利で浮いた国債金利見込み額も使い切り、真水となる剰余金は1兆円がいいとこ。残りは建設国債や財投で水増しとなりそうです。しかし建設国債は使途がインフラ建設に限られる一方、人手不足で執行が滞っている現状ではあまり増やせません。見方を変えれば建設コストの見直しで人件費を高く設定することで、間接的に賃上げにつなげるという経路は考えられますが、不足している建設職人は養成に10年はかかり実際建設現場では高齢の職人ばかりという状況では賃上げは彼らの懐を潤すだけで若年層の雇用増にはつながりません。

加えて先進国で公共インフラがかなり整っている日本のような国では、追加的なインフラ整備は収益逓減の法則で経済効果が低下する一方、固定資本の増加は維持費に相当する固定資本減耗の増加でそれ自体が財政を圧迫しますから、国全体で見た生産性を下げるだけです。あと財投活用は結局民間資金を吸い上げるだけですから、民間の設備投資の代替で低収益の投資が行われるわけで、これも成長の足を引っ張るだけで無意味です。

インフラ投資を是とする議論は、結局ストックの増加に意味があるのですが、そのストックの収益性が低下することを防ぐ手立てはないわけです。逆に社会保障に関しては高齢化による財政の圧迫から給付を見直せのような議論はフローしか見ていないのですが、例えば年金制度は制度ストックとしての意味合いがあるわけで、収支のデコボコはあっても持続可能であれば機能するわけで、そのためには保険料の原資となる雇用者所得が安定していることが大事なわけです。その意味でGPIFのリスク投資は避けるべきですが、いくら得した損したという議論は相手の議論の土俵に乗るだけです。制度の安定性を図って未納をなくすことが重要。将来の保険料の原資を増やす意味で最低賃金の上昇などで後押しすることが重要です。最低賃金問題は目先の景気への直接的な効果をうたうならばフローの議論の範疇を抜けられず、ちょっと違うというべきです。

また気になるのがこれだけ若者の貧困が言われているのに、廉価な公営住宅が不足している点。一方で人口減少の結果としての空き家の増加という現象があるわけですが、民間住宅ストックを活用した公営住宅の充実という形で、低稼働の民間ストックを活用して低所得層の生活支援を行うというようなストック面で国民生活を支える仕組みがあって良いのですが、一方で住宅ローン減税など持ち家を後押しして住宅ストックを増やして空き家問題を深刻化させるというバカなことを止めるべきです。結果的に住宅ストックの稼働率が上がって生産性を改善できます。

そんなこんなでまとまりつかないけど最後にこれ。

ナリタ・ハネダを経由しない訪日客が急増する?:日経ビジネスオンライン
あまり知られていませんが、富士ドリームエアラインズ(FDA)が好調です。発着枠の制限が厳しい成田・羽田に対してがら空きで着陸料も格安どころか補助金もらえるところすらある地方空港を活用し、エンブラエルの80人乗りクラスのリージョナルジェット機を用い、パイロット養成も自前。お陰で同型機を使うJALのパイロット養成まで受託収益の柱の1つにし、小型で燃費が良く80人乗りで搭乗率を高く維持できる一方LCCのように安売りはしないから利益率が高いというわけです。加えて国際チャーター便への参入を目指しているとか。バス2台分程度の定員ならばツアーの募集のハードルも下がり、外国人観光客を直接地方空港へ送り込むことも計画中ということです。

日本全国に立派な地方空港があり、それを小型のリージョナルジェット機で結べば、新幹線よりもはるかに小さな需要でも成り立つわけで、しかも国際チャーター便で直接外国人を地方へ送り込むといった新幹線にはできない芸当もできるわけです。並行在来線切り離しを含めて地方財政の重荷になる整備新幹線よりもこれだろって話です。立派だけど赤字を垂れ流す地方空港の収支改善にもなり、活性化にもつながるわけです。FDAに限らず例えば北海道庁は新幹線に期待するより北海道エアライン(HAC)を支援する方が良いのではないかと。その上でJR北海道の路線維持は市町村を巻き込んで模索するということですね。これ交通政策基本法の趣旨にも合致します。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, June 26, 2016

英国EU離脱騒動の後始末

ポンド飛び出し案の定進んだ円高ですが、過剰反応ですね。事前の世論調査では拮抗しつつも残留派やや優勢だったことから、離脱の結果がサプライズになったわけですが、元々調査サンプルが偏ってたんでしょう。日本の参院選も共産党を含む野党統一候補擁立が進んだことから、従来の票読みノウハウが通用するかどうか微妙です。ま、嫌でも2週間後には結果が出ますが。ドル円で一時99円まで進んだ円高も、週明けを待たずに102円台まで戻しています。金融的な混乱は一時的なもので、どっかの首相がサミットでぶち上げたリーマン級危機には程遠いと言えます。

そもそも今回のイギリスの国民投票ですが、元々EU離脱を主張するイギリス独立党の議席が増えないよう、2015年総選挙のマニフェストで、EUとの条件交渉を行ったうえで国民投票を行うことを約束したもので、残留派のキャメロン首相の狙いはガス抜きと残留派勝利による政権の安定にあったんですが、前ロンドン市長のボリス・ジョンソン氏がそこへ付け込んで離脱派を盛り上げて、キャメロン首相追い落としを狙ったものです。

キャメロン首相の後継にはオズボーン財務相が控えており、このままではジョンソン氏の出番は無いと見られ、勝負に出たもので、権力闘争の側面もあります。離脱に票を投じた有権者は、緊縮財政で福祉が切り捨てられる一方、EUの規制で不利益を被るなどで、とにかく現状を変えたかったということですね。ジョンソン氏はそれを見抜いて離脱派のムーブメントに乗っかったわけで、政治家としての勘の良さを感じさせます。イギリスのトランプみたいに言われますが、はるかに教養人です。憲法改正に取りつかれた安倍晋三を止められない日本の政治家は論外ですが。

というわけで、元々キャメロン首相の政権基盤固めが逆に利用され裏目に出たわけですが、国民投票そのものには法的拘束力はないわけで、不都合な結果を受けて「新しい判断」^_^;なんて言わずに辞任表明は潔いところ。ま、事態の収拾の困難さを考えたら「続けます」とは言えないでしょうけど。経緯からすれば後継者最短距離はジョンソン氏ということになりますが、保守党内での評判が芳しくない。この点はトランプそっくりですが^_^;。

EU憲章では加盟国からEU委員会に離脱の通告を受けてから2年間は現状が維持されます。その間に通商や規制などの協議を行って個別協定を結んで、スイスやノルウェーなどのような準加盟国的なポジションに落ち着くわけですが、交渉は困難を伴います。だからEU側からはイギリスの準備が整わないうちに早期通告して協議に入るよう促している一方、当のイギリスは首相交代でひと悶着、外交を巡る手続きですから下院の同意を取り付けるのにもハードルがあるわけで、当然すぐには対応できません。民主政治の手続き論ですから、イギリス側はいくらでも待たせることができます。下院の議論如何では解散総選挙の可能性もあり、それだけ通告は遅れます。

てなわけで、日本のメディアではその辺の手続き論には触れずに直ちに対EU輸出関税が適用されるようなミスリードが見られましたが、ホントちゃんと取材しろよな(怒)。仮に交渉が決裂して関税が課される事態になったとしても、ポンド安で相殺される可能性が高いわけで、日本企業なども急いで独仏などへ拠点を移す必要はありません。日立の鉄道事業も当面はイギリスの高速車両受注ですから影響はないです。ま、大陸の新規案件には手を上げにくい状況ではありますが、規模縮小のEUにどれだけ投資案件が出るか。むしろイギリスに抜けられて痛いのはEUの方だということは冷静に見るべきです。

「英なきEU」に課題山積 経済や安保、地盤沈下  :日本経済新聞
GDPでも人口でもEUの1割以上を占めるイギリスの離脱は、EUの存在感を低下させますし、拠出金がなくなればその分EU委員会の予算規模が縮小しますし、それを回避するために加盟国の拠出金の増額というのはやりにくいでしょう。特にEUの勝ち組と目されてきたドイツのダメージは大きくなります。その一方で加盟国には健全財政を求めてばかりという不満もあり、優等生のドイツに負担を片寄せするとか、さらに進んで財政統合を行うとかといった議論はますます停滞を余儀なくされます。

一方のイギリスは中国と接近しており、オイルマネー由来のユーロダラー市場を先導したようにIMF-SDRの構成通貨となった人民元のオフショア市場の先導を狙っています。ある意味アメリカの同盟国としては異例の動きですが、逆にアジア地域でアメリカが出遅れているからチャンスと見ているフシがあります。例のパナマ文書流出はそんなイギリスへのアメリカのけん制と見ると、何だかきな臭くなりますが、金融資本主義時代の帝国主義競争という側面はあります。憲法解釈を変えてまで集団的自衛権行使に踏み込み、軍備を増強するアジア某国の世紀を超えた周回遅れっぷりは笑うしかないのか。

てなわけで、暫くは大きな動きはないと思いますが、金融政策には影響も。

米の追加利上げ遠のく FRB、英EU離脱で市場安定最優先  :日本経済新聞
6月の利上げ観測を先送りした米FRBはこれでますます動きにくくなりました。FRBの利上げを織り込んで動かなかった日銀とECBは追加緩和の圧力にさらされることになりますが、日銀に関しては三菱東京UFJ銀行の離反もあって、マイナス金利の深掘りはやりにくいところ。そもそも危機でも何でもなかった2014年のハロウイン緩和のような余計なことをするから打つ手がなくなってきており、動くに動けないのが実情です。

で、政府による為替介入も選挙絡みで話題になってますが、これも無理。ポンド安でドル高が予想される中で円売りドル買い介入なんかしたら、アメリカの仕返しが怖いことに。多分パナマ文書以上のスキャンダルが暴かれて政権が吹っ飛びますぜ。どうする安倍さん。

あとロンドンやスコットランドの独立によるEU単独加盟や国民投票のやり直し請願などのノイズもありますが、現実的には離脱協議の中で例外扱いの可能性はあります。特にロンドンを失うことのダメージをEUもわかってますし。しかしロンドンは王族が入るときにロンドン市長の同意が必要ってぐらい強い自治権を持っていますし、成文憲法のないイギリスの融通無碍さからいって中国じゃないけれど一国二制度は問題になりません。実際タックスヘイブンとされる英国領の多くは、独自の法律を持っていてイギリス法の適用外だったりしますし、かくも複雑なイギリスの統治システムからすれば、何とかなる問題にも見えます。

こういった地方の自治権の強さはイギリスの強みでもあるわけで、地方創生とか言って国が予算をばらまくどっかの国とは大違い。そもそも首相の電話1本で知事の頸が飛ぶなんてあり得ません。いっそ2020年五輪をロンドンに譲ってイギリスの新たな挑戦を後押ししたら?

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, June 12, 2016

ポンド飛び出し円の切れ目

サミットも終わり「新しい判断」とやらで世界経済リスクを理由に消費税増税延期が決まった日本ですが、世界から見ればヤバいのは日本だったりします。こんなニュースが案外重要です。

三菱UFJ銀、国債離れ 入札の特別資格返上へ  :日本経済新聞
プライマリー・ディーラーを降りることを検討中ということですが、新発国債を引き受ける義務と引き換えに当局に意見が言える権利で、大手銀行以外にも証券・生保などがメンバーで、市場環境を睨みながら国債の安定消化を支えてきた仕組みですが、メガバンクの一角の三菱東京UFJ銀行が離脱するということですから、穏やかではありません。

今のところ他のメガバンクや証券・生保などは様子見で追随の動きはありませんが、最大手の三菱東京UFJ銀が動いたわけですし、そうなるのも無理もない現実があります。言うまでもなく日銀が導入したマイナス金利政策の影響です。日銀の説明ではあくまでも新規受け入れ分だけに限定したマイナス金利適用で影響は軽微としてきたわけですが、実際は家計消費の低迷と企業の内部留保拡大で預金が増えている状況で、日銀の大量買い付けで利回りがマイナスになった国債を買うか、日銀に預けてマイナス金利を甘受するかという究極の選択となっているわけで、こんなことやってられないわけです。

加えて消費税増税延期で格付けを下げられた日本国債の大量保有は、国際銀行規制でリスク負担を求められ、資本の積み増しを求められることになります。また当然日本国債の担保価値も低下しますから、海外展開で必要な外貨調達でジャパンプレミアムとでも呼ぶべき上乗せ金利を要求されることになり、海外事業の利ザヤまで圧迫されるわけですから、遅かれ早かれこう動かざるを得ない状況にあったといえます。さてそうなると銀行が引き受けた新発国債を日銀が高値で買い取ることでベースマネーを増やす政策が入口のところで経路が切れるわけですから、日銀の異次元緩和(QQE)への影響は避けられません。実際日銀審議委員の中曾副総裁からこんな発言が。

BOJ点描 中曽副総裁「国債市場の機能維持が重要」 国債離れに危機感も  :日本経済新聞
銀行の反乱がどう決着するかはわかりませんが、日銀の強面は続かないということは言えそうです。そんな日銀が期待していた米FRBの利上げは、米雇用統計の発表で予想外の弱さが明らかになり、イエレン議長のこんな発言につながります。
FRB議長、米利上げ時期特定せず 雇用悪化に「失望」  :日本経済新聞
景気は上向いているはずなのに雇用は増えない。正確には予想を下回る増え方しかしないということですが、これが結果的にドル高回避につながり、あえて動かなくても米利上げで緩和効果を期待していた日銀の読みが外れたわけです。それでも追加緩和に動けないのは、メガバンクの反乱だけでなく、イギリスのEU離脱問題という頭の痛い問題が立ちはだかっており、今は動きにくい局面です。所謂BREXIT問題ですが、当のイギリスでは国内対立が大きくなっています。
疲弊する英国の地方都市、EU離脱論が噴出  :日本経済新聞
まるでTPPを巡る中央と地方の対立に酷似します。グローバル化と称する経済連携のメリットは中央の大企業や金融機関が受ける一方、EU由来の規制は地方が負担していて、何も良いことがないという状況です。TPP交渉で大幅譲歩した日本の農林水産業の未来図が垣間見えます。BREXITは対岸の火事ではありません。巷間言われる経済停滞も、影響を被るのはシティの金融機関だけだとすると、イギリス全体ではマイナスかどうかは微妙です。むしろEU離脱を心配するのは独仏など直接利害のある国に留まらず、EU域内の拠点としてイギリスに現地法人を置くアメリカや日本の企業にとっては悩ましいところ。実際はスイスやノルウェーのようにEUとの個別協定が結ばれるはずですから、その内容次第では影響は限られますし、移行期間の特例もあるはずですが、結局中身が決まるまでイギリスへの新規投資は手控えられることにはなります。これがリーマン級の経済ショックをもたらすかといえば、出口があるだけに一時的停滞はあっても答えはNoでしょう。

むしろEUが恐れているのは、厳しい加盟条件を突きつけられている東欧諸国の不満が噴出することでしょう。ギリシャ問題で南欧諸国への対応の甘さを見せているだけに、イギリスの残留のためにEUがさらに譲歩するようなことはできにくいわけです。加えてイギリス同様に各国内に離脱を訴える愛国右派を抱えていますから尚更です。結局EUは動けずどちらに転んでも混乱は避けられない。とすると案外震源地のイギリスが一番安定するという変なことも起こりそうです。ただ日銀にとっては金融の混乱はリスクオフ要因で円高となりますから、祈るような思いで見ていることでしょう(苦笑)。

てなわけで日本に戻りますが、消費税増税延期と経済対策としても財政出動を打ち出した安倍政権ですが、日銀が追加緩和に動きにくい状況での財政出動ですから、財政健全化は後退を余儀なくされるわけで、これリカードの等価性定理そのままに、財政悪化は将来の増税を連想させて消費を冷やしますから、結局消費は回復せずむしろ家計は貯蓄に励みますが、三菱東京UFJ銀の反乱で、預金の増加分を国債で吸収する回路が細くなるわけで、いよいよアベノミクスが構造的に動かなくなる局面ということですね。それでも財政出動で経済を争点に選挙で勝つシナリオを描いているんですからおめでたい。例えばリニア。

リニアに3兆円支援 鉄道網整備へ政府マネー拡大  :日本経済新聞
これ2027年予定の名古屋開業後8年のインターバルを置いて大阪延伸を着工するところを8年前倒しだけですから、最速2037年の大阪延伸という話であって、目先の経済に直接プラスになる話じゃないです。むしろ財投債という政府保証債を用い、これ事実上の国債で民間資金より低利で調達できるってだけの話です。むしろこれを突破口として整備新幹線の財源に同じ手法を用い、前倒し着工することが狙いでしょう。現状既に整備区間の開業で発生するリース料まで財源に充ててまだ足りず、着工区間の開業後のリース料を担保に民間から借り入れて手当てしている状況を政府保証債に切り替えて安定財源にしようということです。例えばJR北海道の経営不振で札幌延伸が間に合わない可能性があるわけで、これで首の皮1枚ということでしょうけど、その前にJR北海道助けてやれよ。そもそも青森県の惨状を見れば、新幹線は開業しても観光地へアクセスする二次交通が枯渇していては無意味です。地方を救うのはむしろこちらかも。
ウーバー、京都で始動 地方創生をネット企業が支援  :日本経済新聞
ウーバーに代表されるライドシェア問題は、過去に放置国家の呆の支配ギグ老いるショックなどのエントリーで指摘してきましたが、記事は京都府京丹後市久美浜町でNPO法人がウーバーの相乗り配車アプリを活用して地域の足を確保するということで特区構想に名乗りを上げたものですが、結果的には道路運送法第78条、第79条で定義される自家用自動車の有償運行として認可を受ける形で実現しました。京丹後市といえば北近畿タンゴ鉄道の経営不振から入札によりウィラーの支援で京丹後鉄道として再出発したところですが、鉄道は残ってもタクシー会社すら撤退して二次交通壊滅状態だったわけで、78条運行は一応理に適ってます。

ウーバーとしてはこれを突破口に都市部への進出を狙っているようですが、むしろ世界中のユーザーが直接配車アプリを使うことで、どれだけ域外の観光客を呼び込めるかが注目点でしょう。それ次第で公共交通の衰退で観光客すら呼べない地方の起爆剤になる要素はあります。ただし日本では結局地方のタクシー会社との提携などの形に落ち着くんじゃないかと思います。というのは、京丹後市でも問題になりましたが、自家用車が任意保険に入っているかなどの問題で規制をせざるを得ない状況がありますので、それならば地方の法人タクシーがリスクテイクする形の方が法的にもすっきりします。世界的なネット企業といえども日本の法の支配は尊重すべきことは言うまでもありません。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

より以前の記事一覧