大人の事情でNoと言えないこどもの日本
こどもの日本Part3です*1。両エントリー共にミサイルネタですが、関連する話題がイラン戦争関連で英エコノミスト誌のコラムで取り上げられてます*2。戦争状態のホルムズ海峡周辺の衛星写真は西側企業に対しては軍事的理由でシャッターコントロールと呼ばれる規制がされます。撮影場所や解像度を制限することで軍事機密を保持するためです。しかしSNS上には中国企業による鮮明な衛星写真が多数リリースされてます。そしてそれがイランによる湾岸諸国の米軍事施設や石油施設、LNG施設へのミサイルやドローンによる打撃を可能にしている現実があります。中国の衛星画像技術はほぼアメリカと遜色ないレベルということです。
てことは日本の防衛力強化で反撃能力としてミサイル配備が進む状況ってのは無効じゃないかってことですね。仮に存立危機事態になったとしてもミサイル基地は先に潰される可能性が高い訳です。また湾岸の米軍基地が攻撃されたように、日米安保による国内米軍基地も攻撃対象になることを示します。こどもでもわかる話ですね。しかし大人の事情でそれを指摘する話はメディアにもほとんど載りません。しかし1973年の第一次オイルショックでは事情が違いました。当時の田中角栄首相がキッシンジャーに「文句あるならアメリカの石油を寄越せ」(意訳)と言い放ったことは指摘されてます*3。親イスラエルのニクソン政権にアラブ寄りの外交姿勢を懸念されてのやり取りですが、当時の田中首相は緊急事態の認識から危機対応としてこういう舵取りをしたもので、政敵の福田赳夫氏を大蔵大臣に任命し、持論の日本列島改造論を封印して総需要抑制策を認め、経済分野の全権委任をしたものです。以後公共事業の抑制や東北、上越新幹線の建設凍結などで狂乱物価を収め、国民に省エネ自粛を呼び掛けました。
田中氏にとっては不本意な意思決定でしたが、状況に応じたプランBという意味で今こそ参照されるべきですが高市政権は景気腰折れ懸念を公言して対応しません。高市首相は19年前に科学技術庁長官時代に「イノベーション25」と呼ばれる文書に記述した技術力に対する強いこだわりを反映した危機管理を成長につなげる方針として展開されてます*4。
ここで思い出されるのが石原慎太郎氏と盛田昭夫氏の共著[Noと言える日本」*5で盛田氏が指摘した日本の半導体なしにアメリカのハイテク兵器は造れないというくだりです。時は日米半導体摩擦の最中で日本の半導体産業が世界をリードしていましたが、その後失速して今に至ります。その現実をアップデートできていないのでしょう。危機管理を安保防衛と狭く認識して日本抜きでアメリカの兵器産業も成り立たないと二重に現実とズレた認識だから、1973年の第一次オイルショック以上の今そこにある危機を認識できず*6、安保防衛で成長という妄想に取りつかれているとしか思えません*7。こんな高市首相が目指す憲法改正での緊急事態条項が如何なるものか。防衛を口実にした独裁にしかならないのは言うまでもありません。
石原氏はその後都知事になって金融危機対応として都出資の新銀行を設立して銀行の貸し渋り対策を打ち出しましたが、素人判断の甘い融資審査で不良債権の山を築き負の遺産を残しました。その新銀行東京の資産を継承したきらぼし銀行が都出資の優先株400億円の年内返済を発表しました*8。これも日銀の利上げで金利復活したから融資の利幅が増えて実現したことでもあり、低金利政策が終わったことも影響してます。リーダーの思い込みの後始末が如何に厄介かを示します。
そして高市首相ですが、一方で明らかに現実認識が変なところが見られます。成長17分野を巡る民間との認識のずれがあります*9。南海フェリーの代替新造船はコスト高で断念されるけど*10防衛関連で政府が買う艦船建造は取り上げられている一方で、自動車は除外されて業界から驚きの声、EVの壁*11はガン無視。食糧安保上重要なコメ増産は見直すのに高く売れるイチゴは注力とかチグハグ過ぎて眩暈がします。
てことで最後に鉄分補給^_^;。難工事で遅れている北海道新幹線の事業費膨張で財政審議会がB/C比を見直した結果「中止すべき水準」と*12。但し便益(分子のB)はそのままに費用(分母のC)だけを見直した結果ですが、重金属残土の処理や硬い岩石層で切羽の破損とかトンネル工事に伴う不確実性から更に費用は膨張する可能性がある一方、インフレによる上振れでJR北海道の受益に基づく線路使用料の増額がどこまで可能かとか、外部経済効果の上振れとかは計算されていないので、片手落ちの議論とは言えますが、現在の整備新幹線スキームでは解決困難なことも確かです。例えば燃油高騰で苦境にあるエアラインのコードシェアを解禁してJR北海道以外からの線路使用料収受と共に、経営悪化確実なエアラインの救済策を便益に加えるというような工夫が必要と考えます。
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