都市間高速鉄道

Sunday, August 18, 2019

困難なインフラのトリアージ

2030年の北海道新幹線札幌延伸に伴う並行在来線問題の検討が前倒しされました。

北海道新幹線の並行在来線、「存廃判断」5年前→前倒し  :日本経済新聞
対象区間は沿線人口が少なく、財政力の弱い町村が連なるだけに、調整は相当手間取りそうです。バス化も含めた検討ですから、廃止も有り得る訳ですが、貨物列車をどうするかが悩ましいところです。

JR貨物の問題は東北新幹線延伸のときに並行在来線を三セクで引き受ける時に、ローカル輸送対応ならば複線電化の東北本線の設備は明らかにオーバースペックとなりますから、JR貨物が貨物列車を維持することが困難と発議されました。その際JR貨物が負担する線路使用料がタダ同然の格安だったことから、並行在来線引き受け三セクにとっては負担ばかりになるということで揉めました。結果的にはJR貨物が支払う線路使用料と三セクが受け取るコスト見合いの線路使用料の差額をJR東日本の負担で補填することで決着しました。加えて北斗星やカシオペアの運行に伴う運賃料金収入もあり、それで経営の屋台骨を支えることで決着しました。貨物幹線だけに貨物廃止は無理だった訳です。

JR東日本にとっては整備区間より手前の根元区間の受益があるので、貨物輸送に伴う負担増は受け入れ可能だった訳ですが、同様の問題に直面した九州新幹線の八代―川内間ではこの手は使えず、並行在来線三セクの肥薩オレンジ鉄道にJR貨物が出資することで、貨物列車向けの電化設備等を維持するという方法が採られました。肥薩オレンジ鉄道のローカル列車は軽量ディーゼル車によるワンマン列車です。

北陸のIRいしかわ鉄道とあいの風富山鐡道では、当初検討されたサンダーバードの富山乗り入れは結局JR貨物とのコスト分担問題で実現しませんでした。IGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道が客単価の高い寝台特急の収入を当てにしたのとは対照的です。という具合に並行在来線貨物問題は統一的なスキームはなく個別対応に終始しました。言い換えれば行き当たりばったりだった訳です。

北海道新幹線に関しては、経営危機にあるJR北海道に追加負担を求めるのはそもそも無理ですし、これまで以上に沿線人口が少なく、財政力の弱い町村に負担を強いることになります。貨物廃止してバス転換もあり得る訳ですが、青函トンネル開通で天候に左右されない輸送手段として特に農産物輸送で優位性を発揮する貨物の廃止は、北海道経済に大きな打撃を与えるだけに、簡単にはいきません。

青函トンネルの新幹線と貨物の供用区間が速度と列車本数の制約条件になっていることから、国交省の本音は貨物廃止に傾いているようで、実際船舶へのシフトが検討されてますが、輸送量から言えば可能でも、天候の影響は避けられず、鉄道による安定輸送が北海道産農産品の競争力となっている現実から無理筋でしょう。

加えて東北新幹線の並行在来線三セクであるIGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道にとっては、寝台特急の廃止で旅客収入を減らした上に、JR貨物の線路使用料収入まで減れば、存続が危うくなります。こうなると北海道の都合だけで決めることもできず、着地点が見えなくなります。あとJR貨物自身も国の支援で基盤強化投資を行った結果、黒字転換して株式上場も視野に入る中で、その基盤を国に潰されることになる訳です。この点も将に行き当たりばったりです。

山線区間を除く長万部以南の区間はJR貨物が出資するということも考えられますが、北海道経済に関わる問題だけに、北海道庁が動かなければまとまらない可能性があります。とするとJR北海道に冷たい道庁の対応から見て期待できそうにありませんね。これインフラの積み増しによる維持費拡大問題として指摘しましたが、こうして過剰インフラを抱えると、その廃止も簡単ではないってことで、寧ろ問題を複雑にして解決を困難にします。

一方九州でも問題が起きています。

JR九州「自社株買い」株主総会で否決、青柳社長「今後も対話」  :日本経済新聞
株式上場したばかりに、株主となった投資ファンドからの圧力を受けている訳ですが、同時に豪雨被害で不通の日田彦山線の復旧を巡って関連自治体との間で困難な話し合いが行われています。日田彦山線自体は現状既に都市間輸送も貨物輸送も担っていない純然たるローカル線で、企業経営的には災害復旧するよりバス転換する方が合理的ではあります。

しかし忘れてはいけないのは、JR九州が株式上場に当たって上場基準クリアのために行った経営安定基金を取り崩して新幹線リース料の一括納付と償却資産の減損処理の結果、減価償却費を圧縮して本業の赤字体質を改善した一方、減価償却費の減少は同時にフリーキャッシュフローの減少を意味しますから、災害復旧の資金捻出を困難にしているという側面もあります。言い方は悪いですが、株式上場したために災害復旧もままならなくなったってことです。日経記事では複数のステークホルダーへの対応の困難さと纏めてますが、覚悟がないなら上場なんかするなって言いたいところです。

というわけで公共インフラの民営化は万能薬でも何でもない訳で、例えば大阪メトロや大阪シティバスの民営化の意義は今もって理解に苦しみますが、とりあえずここでは踏み込みません。しかし過剰インフラの淘汰を資本の論理に委ねて良いのかってところはあまり議論されてません。そんな中で北越急行ほくほく線の生き残り策は示唆に富みます。

元々スーパー特急方式を想定していたJR西日本区間の北陸新幹線は、ほくほく線経由で越後湯沢で上越新幹線に乗り継ぐ形が想定されていて、それを前提に北越急行では線路の高速化と共にJR西日本の681/683系を導入し、段階的にスピードアップして160km/hの営業運転を実現した訳ですが、北陸新幹線のフル規格化で梯子を外された形になりました。

そこで利益の一部を基金として内部留保して将来の減収に備える一方、特急廃止でお役御免となる681/683系をJR西日本に売却しローカル輸送に特化します。減収にはなりますが、特急車両の譲渡収入が得られる一方、通過車両キロの減少で保守負担が減少しますから、そこで収支をバランスさせることで存続を図ります。超快速スノーラビットで都市間輸送を維持しつつ、鈍速列車スノータートルという企画列車を走らせるなどして増収に励む一方、2018年12月1日には運賃値上げして収支改善を図ります。万博輸送対応の車両を大阪市に譲渡した北大阪急行と同じ手ですね。

幸いなことに高速化で高規格な線路故にメンテナンスフリーなのと、積雪対策により運休が少ないということで、ローカルな利用者の信頼を得ていることで、安定した収支を実現しています。てことでJR北海道もJR九州の前例を梃子に電化や線路強化や積雪対策などで将来のメンテナンスコストを圧縮することと、運賃改定を併せて収支改善を図るのが、道庁が当てにならない以上必要ではないかと。利子補給されているとはいえ低金利で運用益が期待できない経営安定基金ですが、現物投資は優先順位を間違わなければ本業でのハイリターンが可能です。

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Sunday, August 11, 2019

マグロ化するマクロ経済

毎年お盆シーズンには仕入れ先と取引先の休みを確認してスケジュール組んでましたが、今年はアッサリ10日から9連休ということで、働き方改革が進んでるんだろうか?単に今までが惰性だった?てことで社畜大移動は相変わらずですが、後半には台風直撃の予想もあり、実家から戻れない大惨事も^_^;。まあなるようにしかなりませんが。

4~6月GDP、消費が押し上げ 増税前に心理は陰り  :日本経済新聞
令和改元の10連休を含みますので、その分の上振れはあるとしても、予想を超える消費の強さには違和感があります。気になるのが消費の物差しとして家計調査から商業統計にシフトしたことがあります。家計調査はサンプル数の制約から誤差が大きいという理屈で、より誤差の少ない商業統計を用いたというのが公式見解ですが、商業統計にはインバウンド消費の数値が入っている訳で、適切なデータ補正を行うのでなければ、データの連続性は損なわれますが特に言及されてません。10月の消費税増税を前に消費を強く見せる必要がある訳で、邪推したくなります。

その一方で消費動向調査や景気ウォッチャー調査など消費者心理の物差しは悪化傾向が見られます。これだけが原因ではないとしても、設備投資や在庫投資は概して低調で輸出減の影響で経常収支の黒字幅も減少しています。米中摩擦や日韓摩擦で先行きに暗雲が垂れ込めてますから、ある意味企業のこうした動きは合理的でもある訳です。加えて14年の消費税増税時には凡そ3か月前から見られた前倒し消費の気配が見られず、プレミアム商品券やポイントバックなどの一連の消費落ち込み回避策も不発の可能性すらあります。控えめに言ってもお先真っ暗です。

てことでアベノミクスの神通力も尽きた現状ですが、世界を見渡せばアベノミクスの失敗を追随する動きがみられる点が気になります。例えば米FRBの10年ぶりの利下げですが、0.25%の利下げで且つ追加利下げを否定するパウエル議長の発言もあって市場は落胆し、NY株は連日下げ続けることになります。そしてトランプ政権高官の怒りの発言です。

米大統領補佐官、FRBに利下げ要求 「0.75%か1%」  :日本経済新聞
これゼロ年代の小泉政権時代に財務省の溝口財務官による非不胎化為替介入に、速水日銀総裁の後継総裁として福井総裁が協力して量的緩和を行ったことが思い出されます。福井氏は平成の鬼平と言われた三重野総裁や速水総裁に近いタカ派と見られていただけに、驚きと共に政府や市場から歓迎されました。

しかし福井氏の狙いは、速水氏のゼロ金利解除時に受けたバッシングで後に量的緩和に追い込まれた経緯を見て、量的緩和の出口と再利上げをスムーズに進めるため、量的緩和が無意味な政策であることを実証するためという倒錯したスタンスのものでした。そして後に景気を見ながら量的緩和の解除と利上げを粛々と進めてバッシングを受けます。それでも僅か0.5%とはいえ利上げに踏み込んだ結果、リーマンショックに直面した後任の白川総裁に利下げ余地をもたらしました。

しかし緩和バンザイのリフレ派は納得せず、後の安倍政権誕生による白川総裁へのあからさまな政治圧力となり、セントラルバンカーとして受け入れられない白川総裁は辞任します。そして後任の黒田総裁による異次元緩和に繋がる訳ですから、今振り返れば福井総裁の思惑が時を重ねて逆に作用したと言えます。その意味で景気悪化が見られない中で政治圧力をかわすための予備的利下げに踏み込んだFRBパウエル議長の対応は、まるで福井総裁のそれとよく似ています。何しろ「為替操作国」中国に対抗するために利下げしろ!って話ですから。しかしタイミング良くIMFが反論します。

IMF「中国の為替介入みられず」 年次報告書で指摘 (写真=ロイター) :日本経済新聞
中国人民元の国際化に助言してきたIMFから見れば当然の指摘です。主要通貨バスケット連動の実効為替レートに基づく基準値に一定の変動幅を認める現在の為替政策もIMFの助言に基づきます。そのため変動幅を抑える目的の為替介入はありますが、基本的には変動相場制に近いものになっており、アメリカの「為替操作国」指定は言いがかりと言って良いでしょう。

視点を変えて日米中のドル建て名目GDPの推移を見ると、アメリカの焦りもわかります。日米のGDPが最も接近したのが1995年でアメリカ7.6兆ドルに対して日本5.5兆ドルと7割水準でしたが、当時円高で国内景気は不透明な一方、ITとネットで新ビジネスが勢いを増していたアメリカとは差が開く傾向にありました。ちなみに当時中国は0.7兆ドルでアメリカの1割にも満たない存在でした。

それが2018年にはアメリカ20.5兆ドル、日本5兆ドルに対して、中国は13.4兆ドルにまで肉薄しています。しかもITとネットが息切れ気味のアメリカに対して、まだ伸びしろのある中国ですから、アメリカの焦りは大きい訳です。一方日本は停滞著しく、アメリカの1/4、中国の1/3弱と差をつけられています。加えてドル建てではなく実効為替レートで見たGDPは2014年に既に米中逆転が起きています。つまり物価水準が低いから名目値は追いつかないけど、少なくとも1億人は居ると言われる先進国レベルの高収入層の購買力は既に逆転しているってことです。

実はこれが中国の高成長をけん引していると見られます。現状沿岸の都市部限定でしょうけど、バブル期の日本に匹敵するようなボリュームのコンシューマーが国内市場を活性化させていて、残る13億の民がそれを支えている構図ですが、よくよく考えれば日本の高成長も後背地としての台湾、韓国、ASEANの成長に支えられてきた訳で、そうして日本が築き上げたアジア型バリューチェーンを中国は国内に抱えてるってことです。

実はこれ、欧州と中東アフリカの関係やアメリカと中南米の関係も似ていますが、経済成長に伴って国民意識が芽生えてくると、いつまでも開発独裁的な先進国にとって都合の良い途上国に留まることが難しくなり、民主化される訳です。そうして新興国としてグローバル市場に出てくると、取引相手を自分たちで選びますから、アジアの国が成長著しい中国になびくのも自然ですし、同様に中南米やアフリカも、民主化や人権問題でとかく内政に口出ししたがる欧米より寛容な中国を選ぶ傾向も出て來る訳です。逆に香港の民主化やウイグルの自立は中国政府として認め難い問題ってことですね。アメリカのベネズエラへの圧力も同じ文脈で見ることが出来ます。

あとEUの東方拡大も中国と同じ成長の構図を作るためという見方が可能です。面白いのは東方拡大に積極的だったイギリスがBrexitで揺れている一方、東西統一で旧東ドイツを国内に取り込んだドイツはそうでもなかったけど、結局東欧からの移民取り込みにはうまく対応した一方、誇り高いフランスは波に乗れなかったので、EUの統合強化に活路を求めている訳です。この構図で見ると、朝鮮半島の南北融和は少子化が進む韓国にとっては成長戦略なんですね。確実に言えるのは、某日本国は取り残されつつあるってことです。

ただ誇ることじゃないんだけど、日本の低成長は欧米にも同様に起きており、その意味では日本は世界をリードしてたことは間違いありません。その意味でFRBパウエル議長の利下げを巡る動きが福井日銀総裁の轍を踏んでいるように見える問題は示唆に富みます。低成長化するアメリカが中国の追い上げに危機感を抱き、金融政策への政治介入まで日本を見倣うのか?

これトランプ政権だけの問題じゃなくて、対中強硬策は寧ろ民主党議員の方が熱心だったりします。しかも日本の異次元緩和に倣って現代貨幣理論(MMT)を唱えて社会保障充実を主張する大統領候補者まで現れてます。幸いアメリカの主流派経済学者たちはこぞってMMTを批判してますが、逆に日本では歓迎する人たちがいて、かつて日銀を叩いた所謂リフレ派と被っています。結局金融緩和と財政出動を重ねて効果が逓減している日本と同じ轍を踏むだけですね。尤も米中摩擦で輸出に頼れず財政出動で強引に経済を下支えしようとする中国もいずれ同じ轍を踏みます。マクロ経済政策が効かなくなって経済がマグロ化する訳です。

中国に関しては日本に先んじている部分もありまして、短期間で急速にインフラ整備を行った結果、鉄鋼やセメントの供給過剰でダンピングまがいの低価格輸出に向かったのも確かですし、過剰な生産力を国内で消化しきれないから一帯一路で周辺国へのインフラ輸出攻勢をかけている訳ですが、それでも過剰生産力を抱えた国有企業のゾンビ化は避けられず、その裏には過剰債務があり銀行から見れば不良債権なんですが、ハードランディングは暴動を誘発しかねないので、時間をかけて処理する結果、いつまでも処理が進まないってことになります。蛇足ですが、中国の高速鉄道は日本列島改造論で描かれた旅客列車を高速新線に移して在来線の貨物輸送を強化するというコンセプトに忠実です。

地方の隅々まで立派な道路が出来て、世界一の高速鉄道網を完成させたものの、内実は大赤字だったりします。この面では北海道新幹線を除いて辛うじて黒字の日本の整備新幹線の先を行ってます。投資主導型の経済成長の限界から来る帰結ですが、票になるからとにかく新幹線という日本が危ういのは固定資本減耗に沈む未来に繋がるからですね。いい加減目を覚ませ!

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Sunday, August 04, 2019

リアル自爆炎上の恐怖

京都アニメ―ション放火事件という死者35名もの大事件がありました。40Lものガソリンを撒いて火をつけりゃこうなるってのは、ひょっとしたら容疑者自身が巻き添えになる可能性の認識が無かったのでしょう。

2003年の韓国大邱市の地下鉄放火事件では、ペットボトル1本分のガソリンで当局の対応のまずさもあって192名の死者を出してますし、2015年の東海道新幹線ののぞみ225号焼身自殺事件では、巻き添えの女性1名の死亡の他乗客乗員28名が重軽傷になるなど、身近な危険物としてのガソリンの危険性の認識が甘いんじゃないかと思います。学園や街頭で火炎瓶飛び交う時代を経験した私ら世代から見ると、昔はホントガバガバだったし、実際ガソリン放火事件は多数ありました。例えば1980年の新宿西口バス放火事件が思い出されます。

昔は成人男性の多くが喫煙者でマッチやライターを普通に携行していて、ガソリン販売の規制も緩い状況でしたが、その後規制強化されてはいますが、未登録の農機やフォークリフト、小型発電機の給油というニッチな需要がある以上、販売時に店員が用途を尋ねても抑止効果は限られます。今回の事件では500mほど離れたセルフスタンドで購入したと報じられており、セルフスタンドでの携行缶販売は法令違反ですが、店員の質問をクリアして購入できている訳です。こうなると身分証提示など一段の規制強化は必要ではないでしょうか。そうしないと、この事件で明らかになったガソリンの威力が悪用される事態もあります。その結果がこれ。

慰安婦少女像の展示中止 愛知の国際芸術祭 (写真=共同) :日本経済新聞
大村愛知県知事は河村名古屋市長のクレームに対しては「行政が展示物に干渉すべきでない」として見識を示した一方、脅迫まがいの抗議電話やガソリン放火を予告するFAXまで送付され、職員の安全を図るため中止を決断せざるを得ない無念を示しています。

愛知県警に相談しても、FAXはネットで匿名化されているから遡及は無理という意味不明の理屈で断っている訳で、これ明らかに愛知県警のサボタージュです。令状取ればプロバーダーに通信ログ開示を指示できますし、匿名化までしての脅迫ですから、寧ろそのことが犯行の意志を示します。ま、時間がかかるしそれ以前に犯行阻止のために警備強化はしなければならず、面倒ってことですね。G20大阪サミットで見せたガチガチの過剰警備に見られるように政権肝いりでなければ面倒は受けたくないってことですね。逆に2020東京五輪は戒厳令並みの警備体制確定でしょう。典型的な恣意的な公権力の行使です。ヤレヤレ。公権力の行使は公平公正でなければならないってのは、国民国家の基本中の基本ですね。

そんな状況で開催されるオリパラですが、選手村や競技施設が集中する湾岸エリアでは東京港の処理能力を超えた貨物の集中で道路がパンク寸前なのに、オリパラ関係者の移動のための大規模な交通規制が敷かれます。物流が滞ることは間違いありません。あ、だから日韓関係拗らせて貿易減らす?まさかね。

一方現状でも朝の通勤ラッシュで混雑している通勤鉄道に世界から観戦客が押し寄せる訳ですから、相当な混乱は避けられません。上述ののぞみ225号の事件のときにも新幹線のセキュリティチェックが言われJR東海が無理と即座に否定しましたが、混雑する通勤鉄道はテロLリストから見れば格好のソフトターゲットになります。繰り返しますがペットボトル1本のガソリンで大惨事の大邱市の事件など、新幹線でも不可能な通勤鉄道のセキュリティチェックの困難性は言うまでもありません。

加えて各スタジアムで入場時に行われると考えられるセキュリティチェックの長い列が鉄道駅に伸びた時に何が起きるか?駅外の混雑で予想外の事故を誘発した2015年の事故のリンク貼っときます。

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Saturday, July 27, 2019

減耗する固定資本に沈む夕陽

参院選が終わり、投票率は5割を切って「盛り上がらなかった」「投票しない奴が悪い」類の話がありますが、選挙期間中に法定の政見放送以外に特段の選挙特番を打たなかったんだから、関心が薄いのはある意味当然です。おそらく固定票を持つ自民公明両党の支持者も大勢に影響なしと投票所に行かなかった可能性があります。

一方で諸派の泡沫候補としてマスメディアがガン無視したれいわ新選組が2議席を確保したばかりか、NHKから国民を守る党も1議席、存亡の危機にあった社民党も1議席確保して、共に選挙区の得票率で政党要件を満たすという椿事も起きています。れいわとN党はYoutubeとSNSを駆使したネット発信で票を獲得し、資金はクラウドファンディングで集めるという形で、既存メディアに依存しない選挙戦を展開しました。

6年前に東京選挙区でトップ当選したれいわの山本太郎氏を泡沫とは言えないでしょうけど、合区で選挙区を失った与党議員の救済策として押し込まれた比例区の特別枠を利用して重度障碍者2名を擁立したれいわの戦略は、結果的に票の掘り起こしに寄与して2議席確保して政党要件を満たしました。代表の山本氏は議席を失っても、党代表として足場が出来た訳で、作戦は成功しました。尤もこれは感性に訴えるポピュリストの手法という批判はありますが、この点に関する論評は避けます。ただ確実に言えるのは、電波メディアを中心とするマスメディアの衰退は確実に進んでいるってことです。

山本氏に関しては明仁天皇に手紙を手渡ししたことが天皇の政治利用だとして批判された過去もありますが、ふけいざいエントリーで指摘したように、憲法第16条の請願権の行使と見れば問題ありません。ただし政治に関わらない象徴天皇ですから、天皇は規定に従って手紙を内閣に回送しましたが、内閣は請願に対して誠意を以て回答することが義務付けられているのに、回答があったという話は聞こえてきません。

対する安倍首相の選挙遊説は動員がかけられて周りを固める一方、一般人は近づけないようにしていました。そんな中で札幌のヤジ排除事件が起きました。道警とSPの連携だそうですが、当初公職選挙法違反を発表したら弁護士会などから拡声器も使わない1人の肉声は選挙妨害に当たらないという最高裁判例を引いて批判が出たため、混乱を避けるためという風に改めました。しかし憲法第16条の請願権の行使と見れば、これもれっきとした憲法違反です。

それはともかく、選挙戦に関するマスメディアの露出が少なかった一方、頻繁に流れる自民党のCMスポット。選挙特番で声高に放送法第4条の二の公平性を言い立てるのは専ら政権党の自民党ってこともあり、選挙期間中の特番はメンドクサイものと放送事業者が忌避した結果、自民党CMが目立つ結果になってます。この辺を考慮すると、改選議席を減らして憲法改正発議に必要な2/3を割り込んだのは、結構ショックだったかもしれません。という具合に非対称が目立った参院選でした。

ただ政権選択ではない参院選ですから、長期的視点から問題提起して論戦に結び付ける議論があまりなかったのは残念です。少なくとも野党はアベノミクスの出口戦略できちんと議論して欲しかった。例えば3年前の参院選後のアベノミクスの出口に関する論考をアップしましたが、野党の関心は1人区を中心とした選挙協力に終始していた感じで、各党の思惑には残念ながらズレが見られます。この辺を深めておかないと、結局参院選ではまとまっても衆院選では不発の可能性があります。

例えばふけいざいエントリーでも取り上げましたが、GDP500兆円の日本で固定資本減耗が107兆円あり、しかも増え続けている現実があります。これ企業会計で言えば減価償却費に当たる資本の維持費なんですが、経済規模に対して大き過ぎないかってことを申し上げたい訳です。これ民間資本なら当該企業の減価償却費て手当てできますが、公共投資で作られるインフラに関しては、維持管理のための予算措置が必要になりますから、過剰な公共投資は皮肉にも公共投資の原資となる予算を長期間にわたって圧迫することになります。例えば五輪のレガシーと称する競技施設の数々ですが、維持管理して未来へつなぐ戦略は見られません。

こういうところをもっと突くべきだし、その方が有権者への訴求力も増したんじゃないかと思います。思い返せば2009年総選挙の前には、この手の議論がそれなりにありましたし、そうした中から「コンクリートから人へ」といったキャッチ―なフレーズで闘えたんですね。ま、政権交代後に露呈した未熟さで台無しにはなりましたが。

例えば、佐賀の乱で孤立線になる長崎新幹線ですが、事業仕分けで軌間可変車両の実現可能性を厳しく査定できなかった結果、拗れてしまいました。佐賀県区間のフル規格化を与党議員が画策してますが、財源の壁が立ちはだかります。とにかく今使える財源は30年の北海道新幹線札幌開業まで決まっており、尚且つ人件費増など事業費の拡大で危うい綱渡りをしています。

てことで、気になるのがJR北海道なんです。帳簿上JR北海道に属する6,822億円の経営安定基金ですが、実際は鉄道・運輸機構に預託されておりますが、アベノミクスの低金利のお陰で損失補填は果たせず、とはいえ旅客会社法で定義された特殊会社たるJR北海道は一存で処分もできません。

以下は仮定の話ですが、JR北海道の経営がいよいよ成り立たなくなって、何らかの対応を迫られたときに政府がどうするかですが、未上場企業で一般株主が居ませんから、政府の一存で潰すことも選択肢になります。経営再建のための再国有化という名目で、JR北海道が策定したリストラ策を維持しながら、経営安定基金を切り離して旧鉄道整備基金の勘定に入れれば、あら不思議財源が出来た-_-;。後は佐賀県の同意が得られれば着工となります。

気になるのが高橋前北海道知事が「国の問題」としてJR北海道の再建に後ろ向きだったことも、政権との阿吽の呼吸があった可能性を示唆します。鈴木新知事に代わって変化があるかどうかですが、夕張市長時代に夕張支線の廃止に道筋をつけたとはいえ、夕張市だけの都合で動けた条件闘争に過ぎず、広域自治体として関連自治体を調整しまとめ上げる立場で何ができるかは不明です。寧ろ政権との近さを考えると、高橋道政の継承となる可能性があります。

つまり北海道からお金取って九州へ回すってことですが、北のスットコドッコイで指摘した総連系労組が力を持つJR北海道は潰しても惜しくないでしょう。何しろJR東労組を挑発して窮地に追い込んだぐらいですから。JR北海道がこれを回避するには、鉄道ジャーナルの枝久保氏のコラムにあるように、JR北海道自身が経営安定基金を経営強化策に使う策を明らかにすることでしょう。

本題に戻しますが、公共投資の拡大は、固定資本減耗の拡大で国民生活を圧迫します。これも仮定の話ですが、財政出動を拡大して公共投資を増やして仮にGDPを600兆円に増やせたとしても、固定資本減耗が200兆円とかになれば、結局国民生活へのメリットはほぼありません。寧ろ公共投資の拡大は民間投資を圧迫しますし、折角の公共インフラも乗数効果が無ければただ生産性を下げるだけの存在になります。

一応直近の民間投資はGDP比16%ありますが、減価償却費を引いた純投資は1%です。結局バブル期の過剰投資で稼働率低下を招いたトラウマで思い切った投資ができない一方、余った投資資金は銀行にブタ積みされ国債投資を通じて公共投資で無駄に経済を圧迫することになります。野党の議論もこの辺まで踏み込んで欲しいところです。この悪循環を抜け出せなければ、ボロボロの公共インフラに夕陽が沈む光景を力なく見る未来が待っています。

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Saturday, May 25, 2019

佐賀と滋賀で「詐欺だ!」

Brexitが迷走しております。

メイ英首相、辞任を表明 EU離脱混迷で引責 (写真=ロイター) :日本経済新聞
EUと合意した離脱案が議会で承認されず、残留派が求める国民投票の再実施を、盛り込んだ離脱案を議会に提出したことで、与党からそっぽ向かれた結果です。残留派の多い自民党や労働党との譲歩を狙ったけど、寧ろ与党陣営から不信感を持たれたってことですね。

とはいえ与党の離脱派に戦略があるという訳ではなく、強制離脱しても大丈夫という楽観論以上のアイデアはないようです。強硬姿勢のEUから譲歩を引き出せなかったことで弱腰外交と言われ、強硬論に勢いを与えてしまいました。よく見ればEUでも強硬論を唱えるのは専らマクロン仏大統領で、他国は寧ろ強硬離脱のダメージを心配しているのが実際です。フランスはWW1の戦後処理でドイツに法外な戦後賠償を課してナチスの台頭をもたらした歴史がありますが、同じ愚を繰り返すのか?ここまでボタンの掛け違いが起きると、解決は困難になります。

てな世界の動きと比べっるとずっと小さなスケールでのボタンの掛け違いが起きているのが我が日本です。フリーゲージトレイン(FGT)という和製英語で呼ばれる軌間可変車(GCT)の開発を当てにして当初狭軌のスーパー特急方式で整備を予定していた長崎新幹線がGCTの開発断念で、全線フル規格化を求めるJR九州と長崎県に対して、佐賀県がNoを突きつけた結果佐賀県バッシングが起きているという小さな話です。国家主権に関わるスケールのBrexitに比べると、ローカルな綱引きで揉めてるってのはある意味日本らしいですが。

整備新幹線としての九州新幹線は当初スーパー特急方式を前提に鹿児島ルートの八代市―鹿児島市間が先行整備されましたが、整備途上で度々見直され、八代以南の工事途上で船小屋温泉―八代間の工事着手が決まり、更に博多―船小屋温泉間も着手し、しかもフル規格に変更されました。その際、当初駅設置予定の無かった佐賀県にも建設キロ案分で負担を求められ、佐賀県は抵抗したものの押し切られ、せめて駅を作ってくれということで、当初予定されていなかった新鳥栖駅の設置が決まった経緯があります。

一方の長崎ルートは武雄温泉―諫早間のスーパー特急方式のまま着工順位待ち状態だったところ、鹿児島ルートの全線フル規格化で長崎県が熊本に後れを取りたくないとフル規格化と早期着手を求めるようになりましたが、有明海の堆積土で軟弱地盤の佐賀県が、事業費膨張による負担を嫌って反対します。

加えてルートから外れる鹿島市など3市町で反対の声が上がり、反対派首長が選出される事態となりました。並行在来線として肥前山口ー諫早間が切り離されることになりますから当然の声ですね。その中で国が開発中だったGCTの採用で佐賀県に配慮することになり、また並行在来線も県が線路保有してJRが第2種事業者として当面営業し、博多―肥前鹿島間の特急を走らせるなどの譲歩の結果、整備区間のフル規格化と諫早―長崎間の追加整備も決まり、工事着手されて2022年開業予定となっております。見果てぬ夢
が曲りなりに動き出した訳です。

しかしGCTの開発は無理と踏んで車輪の下で論じましたが、案の定GCTの開発はました。GCTは車軸に沿って車輪をスライドさせストッパーで所定の位置に固定する仕組みですが、その分余分な部品が必要で重量増となりますし、しかも高速走行で振動に晒されるバネ下重量の増加ですから、その分線路を痛めます。加えて相当な強度を求められますから、それも重量増の要因となり、実用レベルのものにするのは困難な訳です。バネ下重量が大きいためにモーター筐体や歯車装置がゴツくなる吊り掛け駆動が淘汰されたのと同じ問題です。

加えて山陽新幹線に乗り入れて新大阪まで走る前提ということで、当時のぞみで主力の300系に合わせて270km/hで安定走行の開発目標だったのですが、その後500系が300km/h、700系が285km/hとスピードアップされたため、270km/hの目標をクリアしても山陽新幹線を走れないということになります。とはいえ元々バランスの難しいGCTでは簡単にスピードアップはできません。加えてGCTならではの欠点も明らかになります。

1つは新幹線での高速走行を前提とするが故に、在来線に比べてホームが高く、それに合わせて床を高くしなければならないことになります。これは高速走行のための大出力モーターの架装の必要性もある訳ですが、そうすると車輪径を大きくするとかもバネ下重量増の要因になりますし、同時に台車軸距を伸ばさないと狭軌の車輪間に納める大出力モーターの架装が難しくなります。

この点は標準軌のミニ新幹線とは異なる訳で、JR東日本の400系、E3系、E6系ではヨーダンパを二重化して短軸距で高速安定性を担保しながらカーブの多い在来線区間の滑らかな走行を両立させてますが、GCTでは軸距を伸ばさざるを得ず、台車枠が大柄になってこれも重量増の要因になりますし、在来線区間での滑らかな走行を望むべくもなく、それどころかフランジとレールにかかる横圧が大きくなり線路を痛めます。故にGCT走行区間の在来線は軌道強化を余儀なくされますし、曲線通過速度も10km/hから30km/h程度の減速を余儀なくされます。余談ですが解決策として炭素繊維車輪なんてもんが開発され、熊本電気鉄道で採用されてますが、軌道が弱いローカル私鉄にとっては光明でも、購買力を考えると開発費の回収は難しいでしょう。

そして軌間可変部分の部品の劣化で頻繁な交換が必要ということが明らかになり、メンテナンスコストを押し上げます。結局これが決め手となり、JR九州が採用見送りを決め、全線フル規格化を要求することになります。GCT開発に入れ込む国(鉄道・運輸機構)に対しては民主党政権時代の事業仕分けにかけられ、あわや開発中止の可能性もありましたが押し切られました。ここで引導を渡していれば、少なくとも拗れることはなかったかもしれません。国の問題もありますが、鉄道のプロとしてのJR九州の不見識も問題です。

そもそも佐賀県は地方創生の成功例と言われる福岡都市圏に木菟する訳で、新幹線の直接的な恩恵はあまりありません。この辺東海道新幹線の南びわこ駅問題でJR東海にNoを突きつけた滋賀県と似ています。滋賀県は元々近畿圏アーバンネットワークの勝ち組で、転入人口増で潤っている訳で、財政負担してまで新幹線駅を作る必要はない訳です。北陸新幹線の延伸問題で滋賀県を避けたルートが取り沙汰される一方で、並行在来線として湖西線の切り離しなんて話が出てきて滋賀県は態度を硬化させてます。佐賀共々こう叫びたいでしょう。「詐欺だ!」関連してこんな記事を紹介しましょう。

隣の大都市と補完 山形・大津・佐賀市の活性化策  :日本経済新聞
奇しくも大津と佐賀の事例が出てますが、隣接大都市との補完関係を築くことで活性化が図れるってことです。地域活性化のための新幹線って、結局並行在来線の引き受けまで視野に入れると、地域に負担がのしかかることも忘れてはいけません。そしてこれ。
九州・北陸新幹線、建設中の区間で「投資効果<費用」  :日本経済新聞
人件費の上昇で費用対効果比が悪化しているって話です。長崎ルートに関してはGCT開発失敗の影響もありますが、現状ではJR九州が引き受けを渋っています。勿論全線フル規格着工に誘導するための条件闘争でしょうけど、GCTも代共々JR九州の見識を疑います。

元々投資収益逓減の法則で、後発案件ほど費用対効果比は悪化するんですが、整備新幹線もご多分に漏れずってことです。元々需要の旺盛なところから事業着手される一方、完成後の経済活性化で需要の弱いところの経済効果が厳しくなります。元々新幹線売却代金に上乗せされて発足した鉄道整備基金ですが、鉄道・運輸機構に引き継がれてますが、別に新幹線財源に限定したものではなく、つくばエクスプレスの建設でも使われています。基金ですから基本は低利融資なんで、完成引き渡し後30年で償還される前提ですが、それじゃ足りないと与党サイドの声を反映して財務省が償還期間を50年に延ばそうとしてますが、整備新幹線の受益の範囲の負担というルールを無視してます。

寧ろ例えばJR北海道の体質改善投資など、より必要性の高い投資にシフトすることが望ましいところですが、肝心の道知事が鉄道廃止上等のスタンスなのが残念です。

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Sunday, March 17, 2019

思い出されるbrexit

Brexitが迷走しているように見えますが、私はほぼ想定内のプロセスを踏んでいると見ます。そして追い込まれているかに見えるイギリスのメイ政権ですが、強硬離脱反対の下院議決を得たことで、寧ろEU側が追い込まれたと見ています。理由は簡単で、強硬離脱を避けたいのはEUも同じ、対立が解けない英国内世論の中で、強硬離脱だけは避けたいという意思が示された訳ですから、メイ首相はこれを対EUの交渉のカードに利用すると考えられます。

あと国内経済が好調なのも追い風です。これBrexitのゴタゴタでEU圏からの移住者が減って失業率が歴史的低水準にあり、消費が堅調なことによります。EUに加盟しながら移動の自由を保障するシェンゲン協定未加入というイギリスですが、市場統合が進み、特に東欧圏へ拡大した結果、相対的に貧しい東欧圏の住民が流入して労働市場を圧迫してきたことがBrexitの議論の背景にあります。元々移民受け入れに寛容なイギリスで単純な反移民という訳ではありません。その流入が減って経済が上向いたんですからこれゴタゴタのお陰?

一方EU側はイギリスに厳しい態度を取り続けてきましたが、その狙いはイギリスを離脱撤回に追い込むことです。何しろBrexitのゴタゴタでイギリスを忌避した東欧諸国の労働者がその分大陸諸国に押し寄せてますし、加えてシリア難民の受け入れ問題も重なって大混乱し、移民排斥の機運が高まっている訳です。その結果反EU勢力が支持め加盟国で議席を確保し、無視できない存在になっております。EUとしてはこの面でもイギリスに甘い顔ができない訳で、着地点としてイギリスの離脱撤回がベストシナリオになる訳です。

それがイギリス下院の強制離脱反対決議と翌日の離脱延期決議によって、EUも延期承認の決断が求められることになります。延期については全加盟国の承認が必要ですが、承認されずに強制離脱に追い込まれることは避けたい訳ですから、EU側としては延期承認でまとめるしか選択肢はありません。しかもここへきてユーロ圏の経済が足踏み状態となり、ECBによる緩和縮小も当面見送られる状況ですから、強制離脱でより深傷を負うのはEU側ということになります。

このイギリスの政治的混乱は理解しにくいことも確かです。しかしイギリスがコモンセンスの慣習法の国であり、主要国で唯一成文憲法を持たない国という点から見れば、不思議でも何でもありません。そんな国の議会に付与された立法権というのは、つまるところ時代の変化で不具合が出てきた慣習法の修正に力点が置かれます。故に現実にどんな不具合があるかが出発点になります。

所謂立法事実が問われ、議会で成案を得ればそれがそのまま法律として発効する訳で、成文憲法に照らした違憲立法という概念すらないが故に、文字通り熟議を経て必要な修正を加えて可決成立に至る訳で、某日本国みたいにろくな議論も無しに数の優位で押し切られるのとは違います。Brexit関連では、そもそもキャメロン政権が行った国民投票も、日本ならば憲法改正の要件として国民投票が憲法に明記されてますし(第96条)、辺野古埋立問題で実施された県民投票も法的拘束力はないと説明されてますが、憲法第95条で国会での不利益立法の禁止が定められています。

イギリスの国民投票が取扱注意なのは、例えば結果を無視して政府が離脱撤回したり、あるいは違う結果を得るために国民投票のやり直しをして異なる結果を得た場合などはそれが慣例となってしまうということになります。故に政府としては不都合であれ何であれ、国民投票で示された民意を尊重しつつ議論を重ねるしかない訳です。その辺を踏まえずに直接民主制の弊害やポピュリズムを指摘する議論はインチキってことがわかります。

ある意味イギリスはこういった混乱を重ねながら歴史を刻んでまして、例えばメージャー政権で手掛けた鉄道改革を巡る混乱は政治に翻弄された英国鉄道改革鉄道書評、民営化で誰が得をするのかで取り上げましたが、一方ブレア政権での見直しで高速新線(STRL)High-Speed1が建設されユーロスターのスピードアップとドーバーまでの近郊輸送が劇的に改善しロンドンオリンピック輸送にも貢献したことは近郊型消滅? suburban首都圏品質で取り上げました。当初の混乱が見直しで改善されたことは、Step by Stepで議論を重ねるイギリス流ってことですね。

尚、このHigh-Speed1ですが、ユーロスター単独では採算性に疑問符が付くところ、ロンドンの近郊輸送の改善と抱き合わせたところがミソ。日立製のClass395"Javellin"がMax225km/hで走りドーバーがロンドンの衛星都市になるという変化も生まれてます。これ国鉄の通勤新幹線構想そのままです。この構想は実現しませんでしたが、新幹線網を全国展開する上でネックとなる首都圏のアプローチ区間を通勤新幹線として先行整備して短期的には首都圏の通勤輸送改善を狙った意欲的なものでした。公社時代の国鉄ではこうした柔軟な発想は実現できなかったんですね。

ふと思うのは整備新幹線を巡る我田引鉄ぶりやJR北海道の経営を巡る混乱を見ると、結果的に上下分離とフランチャイズ制による参入障壁の撤廃で活性化された英国鉄道の方が今となっては優れていると言えるかも知れません。逆に成文憲法を持つ日本の場合は、民主党政権で閣議決定されながら震災の影響で断念された交通基本法が、自公政権で交通政策基本法として成立したものの、移動権を憲法の基本的人権に紐付けて国、自治体、事業者の役割を規定した部分が省かれた結果が、国の責任ばかりを言い立てて具体策を出さない北海道庁や関連自治体の態度になっているのではないかと思います。

Brexitに話を戻しますが、北アイルランド問題がネックになっている訳ですが、現実的な落としどころとしては北アイルランドをEU圏に残して1国2制度にするぐらいしかないでしょうけど、それだと英国内に実質的な国境ができることになります。故にメイ首相がEUと取り交わした離脱案では北アイルランドの国境問題の恒久的な解決策が見つかるまでEU圏に残留させるという表現になっておりますが、これが実質EU残留の恒久化につながるとして強硬離脱派からも残留派からも反対されている訳です。

その対立は解けないままですから、離脱延期しても同じことを繰り返すだけで、結局延期を繰り返してゴタゴタが続くことになりますが、ある意味根競べというか、いずれ諦めから政府案に収斂されるってところでしょうか。とはいえ時間をかけることは民間企業に判断の余地を与えるので、それを織り込んだ動きで強制離脱のショックもマイルドになるという面もあります。そんな中でのこのニュース。

ホンダ社長、英での生産終了21年中に トルコでも休止  :日本経済新聞
Brexitは無関係と明言された社長会見ですが、勿論無関係ではありませんが、背景としてホンダの欧州での販売不振があり、スウィンドン工場出荷分の大半は北米向け輸出に回っていて、欧州に生産拠点を置く意味が薄れたので、モデルチェンジのタイミングで生産拠点を見直すのが主眼です。北米では売れているホンダですが、欧州で認められて一流という意識から古くからF1参戦してきたものの、果たせず撤退ってことです。欧州で認められたという意味で日系企業では日産が先行しており、ホンダは及ばなかったってことです。これある意味不振企業の撤退を促している訳で、ゾンビ企業を温存して低迷する日本ンとは大違いです。

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Sunday, February 17, 2019

鈍器法定

統計不正問題がいよいよ森加計問題と酷似してきました。これ統計法違反という明らかな違法行為なんですが、捜査当局は動く気配なし。そして関与した上級官吏は口をそろえてゴマカシや答弁拒否。一方実行部隊の下級官吏からはリーク続々。アベノミクスの成果を良く見せる改編が行われたと考えてほぼ間違いありませんが、ウソノミクス統計135°でさわりは明らかにしてますので、ここでは踏み込まず別の話題。

大林組、増収増益  :日本経済新聞
「受注企業JR東海が差配」 大成と鹿島、無罪を主張 リニア談合初公判 他2社と認否真っ二つ :日本経済新聞
元々大林組が公取委に申告して発覚したものですが、談合を認め処分を軽減した大林組、清水建設に対して、争う姿勢を見せる大成建設、鹿島建設という構図で公判も分離されてますが、主張は真っ向対立してます。

既に分離公判で有罪が確定している大林組ですが、120日間の民間土木工事中止の処分も受けてますが、実は増収増益。つまりリニアは儲からないから逃げ出したってことですね。加えて2025年の大阪万博開催が決まり、関西地盤の大林組は竹中工務店と共に受注が増えることが見込まれます。つまり大手ゼネコンが仕事を選ぶようになったってことです。

これJR東海にとっては痛い話です。というのは、そもそもリニア建設着手は国鉄民営化時に新幹線保有機構からリースする形で、リース料に旧国鉄債務の一部を乗っけたスキームから、JR東日本の上場審査の過程で主たる収益資産が自己保有でないことのリスクを指摘され、同じ立場のJR東海、JR西日本と共に国に譲渡を申し入れたことで、譲渡代金のローンが始まり、それが2017年にほぼ完済されたことから生じる資金余剰があってこその自前整備ですから、逆に言えば予算上限は厳しく管理する必要があります。

それでも当初名古屋まで5.1兆円と言っていた事業費が膨らみ5.4兆円となっているように、ジワジワと膨張しているわけです。当然利益を削られるゼネコンにとっては旨味が少ないのですが、それでも五輪後を睨めば無下にできない訳で、特に五輪関連や豊洲市場など東京都が絡む事業に深く食い込んでいる大成建設や鉄道会社との関係を気にする鹿島建設は断れない。そしてこうなるってことですね。これだけなら民間同士の話ですから、談合事件で公取委が動くことにはならないのですが。

しかし大阪への早期延伸を望む声が与党議員から出てきて財投債で9兆円の融資を決めたことで、公共性ありと判断されて事件化されるんですから、何がどう転ぶかわかりません。それでも談合事件の立件は難しいところ。大林組の申告が渡りに船だったのでしょう。政府が関与するといろいろ不都合が生じるのは森加計問題や統計不正問題ばかりではありません。

JR東日本の整備新幹線区間への追加投資に絡んで、整備新幹線の法定速度って話題がネットに出てきて「法定速度を超えると線路使用料が上がる」などの妄言も見られますが、これ根拠法の全国新幹線鉄道整備法で定義されている設計最高速度が法定速度と誤って理解されているのが実際です。そもそも東海道新幹線の設計最高速度は210km/hですが285km/hで営業運転されてます。東海道新幹線の建設時には整備法は無かったので超法規的に独自規格で作られたもの。その結果を踏まえて全国新幹線網整備に当たって将来の技術革新によるスピードアップを先取りする形で定められた基準がそのまま見直されずに来たというのが実際です。

そもそも新幹線の事業主体は国であり、国の鉄道事業を体現する国鉄がその任に当たるという前提で作られた法律ですから、国の事業である以上恣意的な解釈で骨抜きにすることは許されないということから、設計最高速度やそれに付帯する最急勾配や最小回転半径などの基準が定められたのが実際。それが国鉄分割民営化で事業主体が消滅すると当時の与党議員が騒いで事業主体となる国のところを各旅客会社に読み替えることで延命させた結果です。

しかも財源がないからあの手この手で財源をひねり出すために、並行在来線の切り離しなどでJRに負担をかけないことや、受益者となる地方の負担も定めるなどされたものです。結局整備計画の延命のために恣意的解釈をした訳ですが。尚、最急勾配は九州新幹線や北陸新幹線では事業費圧縮の要請から一部基準を超える急勾配があり、将来のスピードアップの可能性を狭めています。

JR東海も当初は中央リニアを整備新幹線の枠組みで考えていたようですが、現実に存在しないリニア新幹線は基準に適合しないってことで当時の運輸省はほぼ門前払いに近い扱いをしていたようです。当時は所謂整備5線(東北新幹線延伸部、北海道新幹線、北陸新幹線、九州新幹線鹿児島ルート、同長崎ルート)の扱いすら決まっていない状態で、そちらを優先しないと地元選出議員からクレームがつく状態でしたから、中央リニアの整備新幹線化は実現可能性が無かったと言えます。

それが新幹線譲渡に絡んで譲渡代金の産出に時価法の一種である再取得価格法が適用されました。これは現在時点で同等の資産を新たに取得する場合に想定される価格ってことで、地価や建設費などの相場を反映したものですが、仮定の置き方で数値は変わり得るものでもあります。当時の運輸省はこれを利用して資産の非償却部分となる土地やトンネルなどのインフラ部分の数値を嵩上げし、嵩上げ分を新設の鉄道整備基金に持たせて整備新幹線の財源に利用することで財源論に道筋をつけました。数値を操作して財源をねん出した訳で、こういったことがあるから統計不正にリアリティが出てきます。

その結果JR本州3社はローン負担を負う訳ですが、同時に整備新幹線事業の推進力を得ることとなりました。加えて新幹線が自社保有となり、膨大な減価償却費が発生し無税で利益控除できますから、これで得たキャッシュフローで設備投資に弾みを付けます。その結果JR東海は品川新駅開業によるのぞみ中心のダイヤ編成で増収を図り、自己資本による東名間先行の整備計画をぶち上げることになる訳です。

で、JR東海をリニア建設に向かわせた新幹線譲渡代金ローンの終了はJR東日本やJR西日本も同様で、規模の違いはありますが、それぞれ異なった動きを見せています。ウソノミクスでも触れたように一つは東北新幹線盛岡以北の高速化に向けた設備増強ですが、もう一つ大きなプロジェクトも動き出しました。

JR東 都心と羽田空港結ぶ新線、29年度にも開業  :日本経済新聞
羽田空港の国際化と発着枠拡大で今後とも利用Y差は増えると見込んでいる訳ですが、同時に成田スカイアクセスとローコストリムジンバスに食われて劣勢の成田空港輸送の挽回の意図もありそうです。

整備区間の北半分は休止中で遊休化している東海道貨物線の浜松町―東京貨物ターミナル間の線路を活用し、東海道線に合流させて上野東京ラインで埼玉や北関東のアクセスを図るというもの。加えてりんかい線経由で山手西ルートから中央線や埼京線方面、と京葉線や武蔵野線方面の3方向の列車設定を想定しています。千葉県や千葉市が要求する京葉線から総武線への連絡線が実現すれば、羽田空港と成田空港を直結することもあのうになりますから、将来的には成田空港輸送のてこ入れにもなるという訳です。

既存施設を活用するプロジェクトですから、資金手当てが見通せれば実現可能性は高いですが、一つネックとなるのがりんかい線の扱いでしょうか。東京都はJR東日本に東京臨海高速鉄道の引き受けを以前から打診してますが、これが動く可能性はあります。都市興津に関わる新線計画ですから、国と地方に応分の負担を求めることになると思いますが、東京都の負担分を東京臨海高速鉄道の株式で行い、事実上のりんかい線引き受けにつなげる可能性はあります。ただしJR東日本の営業規則上、東京近郊区間に組み込まれることになれば、現在の認可運賃から大幅減額となりますから、それによる減収の評価をどうするか。株式評価を下げて都が実質補償するか、あるいは東京近郊区間から外して現行認可運賃を存続させる形にするか、交渉次第でしょうけど注目されます。

おまけ。リニアで散財するJR東海と対照的に経営基盤強化に資するプロジェクトに選択的に投資するJR東日本ですが、JR西日本はといえば、尼崎事故以後の安全投資優先の影響もあって遅れている老朽車両の更新に回るものと見られます。だから広島に錆びない電車が登場し、大阪環状線もリニューアルされると。

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Saturday, January 19, 2019

ウソノミクス発覚

ひでーなー。政府統計のウソが発覚しました。

勤労統計調査ミス、長期放置か 復元加工は昨年分のみ  :日本経済新聞
厚労省の毎月勤労統計で、5~499人の事業所は無作為抽出によるサンプル調査ですが、500人以上の事業所では全数調査するところを、2004年以降東京都分の500人以上の1,400余りの事業所の内500事業所しか調査していなかったことが発覚したものです。

一般論として大規模事業所の方が賃金水準が高く、特に東京都は他地域より賃金水準が高い訳ですから、結果的に高賃金事業所が調査対象から外れて統計数値が過少に計上されていた訳です。同統計は雇用保険の失業給付の基準となるので、2004年以降の給付対象者延べ約2,000万人で530億円の過少給付となっていて、その修正のために閣議決定済みの19年度予算案を組み直す異例の事態となりました。

閑話休題。499人以下の事業所が無作為抽出によるサンプル調査なのは、数が多いことと数値のバラツキが多く異常値が混入する可能性があることと、統計調査への回答を行う事務処理能力が欠けるケースもあり、全数調査よりサンプル調査が適当です。逆に大規模事業所は事務処理能力の余裕もあり、毎月定例の調査ですから、ルーティン化できるし回答スキルも上がって正確な数値が期待できます。全数調査をしない理由は見当たらない訳です。

加えて同統計は政府のGDP算出や景気判断にも使われていた訳ですし、日銀の金融政策や民間企業も参照する重要な基幹統計だったからさあ大変。加えてOECDやILOへの報告にも使われますから、日本政府の国際的信用にも関わるものと、その影響範囲は甚大です。もう中国のこととやかく言えませんね。

しかも発覚の経緯が酷くて、数値を実態に近づけるために東京都分を3倍にする復元加工をした結果、18年度の賃金が不自然にハネ上がっておかしいと突っ込まれてバレたっていうんですからもう滅茶苦茶。厚労省といえば労基法改正でも裁量労働制の方が労働時間が短いとするウソのデータを国会に提出して大炎上したことが思い出されます。加えてこのエントリーで取り上げたこの記事も見てみましょう。

(真相深層)政府統計、信頼に揺らぎ GDPなど、日銀が精度に不信感 :日本経済新聞
ここでも毎日勤労統計への疑義が指摘されてますが、他にも指摘された統計データのおかしさがあります。厚労省叩いて済む問題じゃなく、他の統計も見直す必要があり、まだまだ影響は拡大すると予想されます。

2004年と言えば小泉政権で社会保障改革と称して年金保険料の毎年度のアップと給付制限の為のマクロ経済スライドの導入及び積立金の一部取り崩しを決めた年です。小泉政権では膨張する社会保障支出をプラス2,200億円以内に抑える歳出キャップをかけていて、失業給付に連動する毎月勤労統計を過少算出する動機は存在します。加えて派遣労働解禁に舵を切り、失業が増え非正規労働者が増えた時期とも符合しますから、失業給付の減額はその面からも求められます。そしてアベノミクスの成果を示したいと賃金の伸びが弱いことを突かれて復元加工とすれば、始まりも終わりも政治圧力の結果と見ることができます。将にアベノミクスならぬウソノミクスです。今月始まる通常国会はいきなり政局です。

かように日本の官僚機構は政治圧力に弱い存在で、よく「日本の官僚は優秀だ」と言われますが、どうもメッキが剥がれてきたようです。それが見えなかったのは単に公文書を残さないで情報を秘匿していたからというのが実際のようです。そして公文書管理の杜撰さ故にどうもろくな引継ぎが行われず、チグハグな対応になってしまうということですね。そしてそこへ付け込んで与党が政治圧力をかけて、ツケは国民へっていい加減にして欲しい(怒)。例えば整備新幹線。この仕組みも国鉄民営化で宙に浮く新幹線整備法を与党の圧力で延命させたものですが、それ故の矛盾も。例えばこのニュース。

東北新幹線、盛岡以北の高速化検討 JR東が騒音対策  :日本経済新聞
最高速320km/hのE5系が盛岡以北の整備新幹線区間で260km/hで運行していることに対して、国の線路使用料増額がネックなどといった議論がある訳ですが、変節黒田節で取り上げたように、整備新幹線が自社保有ではないことがネックであることは間違いありませんが、今回JR東日本が自前で投資するって話です。これの資金手当てですが、一つ心当たりがありまして、株式上場に備えてJR東日本が発議した新幹線譲渡代金のローンが17年3月に終わるってことです。

これJR東海が5.1兆円の負担を終えて余剰資金をリニアに注ぎ込むのと同じスキームですね。JR東日本の所謂1号債務は凡そ2,1兆円で、91年10月以来年1,000億円規模の債務償還が続いてきたんですが、18年3月でなくなる訳で、この部分のキャッシュフローが充当できるってことですね。これ大宮以南の最高速130km/h化や秋田新幹線の大規模改良などで投資を充実させていることとも符合します。

そして背景としてE5系の走行データが蓄積されてきたってこともあります。最高速260km/hとされる整備新幹線区間でも騒音対策を強化すればとりあえず320km/hまでは何とかなりそうという判断なんでしょう。減価償却されないインフラ部分は触らず、追加設備は自前で減価償却すれば、資金を回転させて継続的な設備改良に道が開けます。但し法的な所有者である国(鉄道・運輸機構)の同意は必要ですが、新幹線の財源探しに鵜の目鷹の目の与党政治家たちが横槍入れて線路使用料増額をねじ込む危険性はあります。北陸新幹線の大阪延伸や長崎新幹線のフル規格化などで財源探しに躍起となってますから。

そしてこのキャッシュフローの余剰を利益計上せずに設備投資に振り向けたJR東日本の判断は評価できます。利益を増やして法人税が増えるなら、投資へ回そうってのは民間企業として真っ当な判断です。やや蛇足ですが距離が長くスピ度アップ効果が見込める東北新幹線へは追加投資を厭わない一方、上越新幹線は最高速240km/hのままと選択と集中もされてます。この観点から言えば法人税減税が設備投資を促すって大ウソだってわかりますよね。ここにもウソノミクスです。ホント腹立つ!

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Sunday, January 06, 2019

林檎が落ちると

世界が混乱します。少なくとも短期的には。そんな波乱の新年をいかがお過ごしでしょうか。発端は2日のアップル社の売上高下方修正ですが、中国でのiPhone販売不振が理由ですから、アップルショックというよりは実質チャイナショックです。中国の経済減速がはっきり見えてきたってことですね。

加えてiPhoneが拓いたスマホ市場の飽和が背景にあります。アップルはハイエンド化による高価格政策で対応している訳ですkが、ローエンド品も性能が上がれば差別化が難しくなるから、結局ハイエンド化による高価格戦略は長続きしない訳です。これ悉く縮小均衡に陥った日本の家電メーカーと同じ袋小路に入ったってことですね。

一方でFRBの金融政策への批判も相次ぎました。先月のFOMCで年4回目の利上げを決めて、更に引き締め継続を示唆したことで、市場関係者の批判を浴び、トランプ大統領もパウエル議長解任を示唆するなどゴタゴタしました。そうした中で4日にパウエル議長が講演で利上げ一時停止を示唆したことが好感され、4日のNY市場は反発しました。「FRBプット健在」と好感された訳です。ただし3-5年物の国債金利が短期物より低いイールドカーブの矛盾はそのままです。これ投資家の質への逃避の心理を反映したもので、リスクオフ相場の特徴鮮明です。これによって為替は円高に振れますから、週明けの東京市場は期待しない方が良いでしょう。

よく言われる「長期停滞で財政赤字が大きい日本がなぜ買われるのか?」という疑問ですが、350兆円と言われる累積経常黒字がある限り、買われるのは当然。むしろ実体はそれだけの余剰資金があるから、リスク投資を手仕舞いすると自動的に円が買われるので、不思議でも何でもありません。これつまり国内の貯蓄過剰が海外投資へ向かっていたからで、海外投資へ向かう過程で売られた円が買い戻されるってことです。所謂貯蓄投資バランス問題なんですが、解決策は内需拡大により貯蓄過剰を解消することですが、これに失敗し続けて長期停滞から抜け出せないのが現在の日本です。

その日本を後追いしてきたのがアジア諸国ですが、その中で最大の国が中国です。その中国は日本の長期停滞を研究して回避策を探ってきたのですが、結果的にはリーマンショック対策で地方政府を中心に過剰な開発投資を重ねた結果、日本のバブル崩壊の教訓を生かせず、水面下で債務超過を拡大して身動きが取れなくなっています。そこへ米中貿易摩擦が加わり、問題を大きくしています。つまり中国は日本の轍を踏んじゃった訳です。この辺は前々エントリー
もご参照ください。

しかし中国の経済的ウエートは大きい上、日本のバブル崩壊後の停滞を埋めるように90年代以降の中国の台頭があった訳ですが、中国の停滞を埋める例えばインドの台頭は未だ力不足なので、当面の経済停滞はかなり深刻なものにならざるを得ません。世界は長いトンネルに入ります。ただしそれだけ石油など資源価格へのストレスは低下しますから、円高と相まって交易条件が改善しますから、日本経済にとっては悪いことばかりではありません。これを機に内需を深掘りして過剰貯蓄が国内投資に向かうようになれば、とりあえず目先の様々な問題には解決の糸口となります。

例えば高齢化自体は解決できないんですが、かつて若年人口の多かった日本で貯蓄性向が高かったのが、高齢化でリタイアが増えれば過去の貯蓄が取り崩されますから、自然に過剰貯蓄は解消に向かうのに、人手不足を理由に高齢者の労働力化を進めるのは、過剰貯蓄を増やす上に労働市場を圧迫して低賃金化を促しますから、寧ろ若年層の負担増となって逆効果となります。年金制度を安定させて安心してリタイアできる環境を整えることが重要です。

その意味で消費税増税問題ですが、野田政権当時の三党合意で消費税を社会保障目的税にするという約束を反故にする大盤振る舞いは問題です。社会保障に使われるならということで消費税増税を渋々認めた国民を欺くことです。選挙で思い知らせてやりましょう。

という訳で、2019年という年は明るい展望が描きにくいのですが、過去に遡れば1997年の消費税3%から5%へアップしたときとよく似た局面です。この年アジア経済危機と山一證券、拓銀などの破綻に端を発する金融危機があった年で、日本経済は大きく足踏みしました。これを全て消費税増税の栄養と捉えるのは間違いです。僅か2%英率アップで、所得効果はマイナス1.9%です。しかし同時に社会保障改革と称して年金保険料が値上げされており、それを加味した所得効果はマイナス3%を超えます。加えて企業の採用手控えもあって所謂ロスジェネ問題でより負担感が強まったことも指摘できます。

結論としては97年の足踏みは果たして消費税増税のせいなのか?ってことには大いに疑問があります。元々の経済ファンダメンタルズの弱体化に加えて年金保険料アップを含む公的負担増が重なった結果と見るべきでしょう。その意味では経済の停滞の中での増税という意味で97年の再現となる可能性はかなり高いと言えます。

但し違いもあります。1つは労働市場の現状ですが、企業の採用手控えこそないものの、高プロ導入や入管難民法改正による外国人労働者の導入拡大などで労働市場に圧力がかかる制度改正がありますから、制度の運用次第では97年よりひどい状況もあり得ます。加えて年金の支給減額や後期高齢者医療保険の負担増など実質的な公的負担の増加は消費税に留まりません。こうした中で一時的なバラマキで乗り切ろうとしている政府の姿勢では、結局単なる問題先送りに留まらず、需要の先食いを助長して却って混乱します。

人口減少下での消費拡大は主にサービス部門の拡大になりますから、モノは売れない訳で、工業セクターの生産性改善では解決できません。逆にサービスは生産と消費が同時に起こる特徴があり、在庫が効かない訳ですが、ITによるマッチング機能の進化で生産性改善の可能性が見えてきています。

具体的にはこのエントリーで取り上げたMaaSが典型ですが、移動のサービス化で複数の交通機関をスマホアプリでシームレスに利用できて決済まで可能となる方向性が見えています。これ必ずしも自動運転の実現などを待たずとも、需給のマッチングで従来不可能とされてきたサービス部門の労働生産性向上が可能になります。その意味で時代錯誤なこのニュース。

2019年 展望 時速360キロで試運転、輸出も JR東海社長 金子慎氏 :日本経済新聞
鉄道にとってのスピードアップは、単位時間当たりの輸送人キロを拡大しますから重要なんですが、人口減少下では顕在化している需要だけを見ていても先細りにしかならない訳で、潜在需要の掘り起こしという点でMaaSの可能性は大きい訳で、こういうマッチョなスピード至上主義は必ずしも正解とは言えません。まして東海道新幹線のスピードアップよりも技術的優位を示して輸出を狙うってのがもうダメ。外需依存ではなく内需の深掘りで過剰貯蓄を消費に結びつけて且つ国内投資に向かわせることで、長期停滞の原因と言える過剰貯蓄が解消されるんですが、全く逆行してます。ヤレヤレ。

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Sunday, December 09, 2018

CASE by MaaS

前エントリーの続きですが、フランスのマクロン政権がデモの影響で燃料税増税を断念しました。東名ルノー日産問題でフランス政府の干渉は防げそうですが、日産には別の問題が持ち上がっています。

自動車産業の激変が予想される中、日産の検査不正が新たに発覚しました。今回はブレーキなど安全に関わる部分の不正という重大なもので、ゴーン氏の報酬チョロマカシよりもガバナンス上の問題は大きいですし、ゴーン体制に責任を負わせるわけにはいきません。

完成検査の無視覚検査は、法令違反とは言え悪質性の程度は低かったし、そもそも制度自体が曖昧で非関税障壁の疑いもあるものでしたが、今回は国交省の業務改善命令を受けて現場調査する中で発覚したもので、検査不正は相当広範囲に行われていた模様です。ルノーとのアライアンスで海外製造拠点への投資が優先された事情から、その分国内製造拠点への投資や人員配置が手薄になったのは否めませんが、こうした製造現場の実態を把握できていなかった日産経営陣の責任は重大です。

検査不正の背景に。検査場の狭さとか検査員の不足といった事情があったようで、その中で増産体制が組まれた結果、検査部門がボトルネックとなり、検査で引っかかるとたちまち検査品で検査場が埋め尽くされてしまうため、右から左に流すしかなかったというような事情があったようです。それに対してスペースや人員の拡充を求める現場の声は経営陣に届かず放置された結果ということで、役員報酬を巡る金商法違反などより重大なガバナンスの欠如と言えます。必要な投資が行われなかったという意味で、経営陣の責任は重大です。

それはさておき、自動車産業を巡る変化予想でCASEというキーワードが語られます。繋がる(Connected)、自動化(Autonomy)、共有化(Shareing)、電動化(Electrical)です。これ相互に関連があって、車をスマホのようにネットにつなぐことで、付加的なサービスや機能が提供されるに留まらず、自動運転との関連で車間通信で衝突回避しますし、自動運転が実現すれば、稼働率の低いマイカーという保有形態が見直され、必要な時だけスマホで呼び出して使うことが可能になりますし、電動化は自動運転との相性が良く、また部品点数も減って特にエンジンのような作り込みも要らないから価格低下が予想され、自動車メーカーの優位性がなくなると言われます。

そのため自動車各社は優位性を維持するための投資を求められますが、例えば自動運転に関してはグーグル系列のウェイモが先行していて後追いになっている現状があります。電動化に関してもトヨタがハイブリッドシステムで世界をリードしたものの、特許で囲い込んだために追随するメーカーが現れず、米カリフォルニア州のZEV規制からも外されて焦っております。トヨタとしては究極のエコカーとして燃料電池車(FCV)を想定し、ハイブリッド車はつなぎという位置づけだったのですが、本命のFCVも水素供給網の整備が進まず、他方バッテリーEV向けの急速充電器の設置は進んでおり、またVWのディーゼル不正問題もあって自動車各社のEVシフトが鮮明になる中、トヨタは梯子を外された格好です。

EVに関しては日産が先行してますが、ビジネス的には大成功には至らず、新興企業の米テスラモーターズの先行を許しています。テスラモーターズ自体は典型的なガレージメーカーからスタートしたもので、ZEV規制が示すように環境意識の高いカリフォルニアでマイカーを電動化するガレージメーカーは多数存在しましたが、その中でイギリスのライトウエートスポーツ車のロータスエリートのプラットフォームを利用して、ノートPC用のリチウムイオン電池など汎用部品を使って世界初の量産EVとなるロードスターを世に問い成功を収めます。

バッテリーの搭載量で性能が規定されるEVです。とはいえ重量の嵩むバッテリーを大量に搭載すれば良いとはいきません。その意味で実用的なセダンではなく2シーターのロードスターならばパッケージしやすいし、趣味性故に高く売れるわけですね。こうして投資資金を上手に回収しながら技術を磨き、高級セダンのタイプSやクロスオーバーSUVのタイプXへと展開した戦略は見事です。加えてソーラー発電や家庭用バッテリーなどの事業化でシナジーを追求してEVのバリューを高めます。日本でも日産リーフが同様の訴求をしてますが、普及には至っておりません。

そして量産型セダンのタイプ3では製造ラインの自動化でコスト圧縮に挑みます。これは必ずしもうまくいかなかったのですが、マスク氏は製造現場との徹底した対話で解決策を見出し軌道に乗せます。この辺は日産幹部にとっては耳の痛い話でしょう。同時に自動車産業の雇用創出力という観点からは、従来通りとはいかない厳しい現実を示してもいるわけです。

とはいえテスラの成功はあくまでも所得水準の高い先進国の話でして、新興国への波及はむしろシェアリングが中心になると考えられます。そのときのキーワードがMaaSです。Mobility as a Serviceの略で、クラウド上のソフトウエアを利用するSoftware as a Serviceのもじりでもあります。言い換えれば移動(mobility)のサービス化でもあります。これ喩えればPCからスマホへの変化に相当します。これつまりハードとしての自動車のコモディティ化を意味します。

ただしMaaS技術的ハードルは決して低くはないので、先進国で先行して新興国へ波及する流れもスマホと同じと考えられます。そうすると自動車メーカーはまず利益の取れる先進国市場の劣化を余儀なくされるわけで、先進国にとっては雇用の縮小と共に格差拡大を覚悟しなきゃならないってことでもあります。

逆に言えば輸送サービスを提供する運送業にとっては劇的な生産性向上のチャンスでもあり、生産性格差で人手不足を余儀なくされる現状を良い方向へ転換できるチャンスではあります。但しあくまでもチャンスであって、AI自動運転で人手不足が解消するという発想では未来は開けません。

例えば自動運転が実現すれば移動中に仕事するとか就寝中に移動するとかが可能になるわけで、これある意味交通機関に求めらR3エルスピードの概念が変わることを意味します。朝の懐疑に間に合わせるために早起きして始発に乗るとか、前泊するとかが必要なくなるわけですから、この観点から言えばスピードを訴求するリニアは無用の長物になる可能性があります。公共交通にも変化をもたらす訳です。

そんな中で京浜急行が富岡地区の住宅地でゴルフ用電動カートを用いた興味深い社会実験を行いました。

「電動カート」は郊外住宅地の新交通になるか | ローカル線・公共交通 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
ゴルフ場用の電動カートを用いた輸送サービスの実験です。京急沿線には丘陵地帯を切り開いた住宅地が多数存在しますが、道路が狭く勾配も急ということで、バス路線の設定が難しく、高齢化で居住を諦めたり相続放棄で放置されたりして空き家が増えている訳ですが、20km/h以下の低速ながら勾配に強い電動カートを用いて最寄りのバス停やスーパーまでの輸送サービスを行ったものです。

面白いのはスマホアプリの京急バスナビに連動させることで、モードの異なる交通システムをシームレスにつないだ点で、システム開発には横浜国大やベンチャー企業も関与する形で、謂わばオープン化が実現している点です。住宅地内のラストマイルの交通手段ですが、MaaSの要素が揃っています。京急にとっては高齢化が進む沿線住宅地のてこ入れではありますが、鉄道がラストマイルの戸口輸送にアプローチする流れは東急田園都市線や江ノ島電鉄などでも無人運転バスの実証実験の事例があり今後活発化すると見られます。

この観点から注目なのがJR東日本の品川新駅です。先日「高縄ゲートウェイ」の駅名決定を発表しネット上ではいろいろ言われてますが、これかつて東海道上にあった高輪大木戸と呼ばれる簡易関所に因んだ名前だそうです。そうなら駅名は「高縄大木戸」にして英語名をTakanawaGatewayと案内すれば特に外国人の混乱するカタカナ駅名を避けられたし、地域の歴史文化を踏まえた新しい街づくりとしての重厚感も演出できたはず。JR東日本のネーミングセンスはホント酷いです。

これE電騒動以来繰り返されてますが、もう少し何とかならなかったかと思います。ただしゲートウェイに込めた玄関口の意味は分かります。先進的な職住近接開発を目論んでいる訳ですが、新駅を起点にしたMaaSを考えているとすれば、JR東日本の思い入れが偲ばれます。そこは理解できるけど、ネーミングセンスは残念過ぎます。

MaaSと直接関係はありませんが、東武鉄道のTJライナーやリバティ、西武鉄道のSトレイン、京王電鉄のけ京王ライナー、意外性の東急Qシートと有料続いています。JR東日本は元々グリーン車や通勤ライナーのサービスを行っていましたが、これ首都圏だけの話ではなく、京阪電気鉄道のプレミアムカーのように関西でも見られます。

京阪の合インバウンドで特急列車の混雑が常態化しており、着席サービスの導入を求める声があったようですが、この辺大量輸送を得意としながら過去の投資不足もあって混雑解消が進まない中で、公共交通と言えども将来安泰とは言えない時代を迎えるということで、選択的優良着席サービスは輸送の質を求めるユーザーを取りこぼさず増収機会も得られ、駅から先のラストマイル輸送との一貫性を持たせる意味も考えられます。そう見ると興味深い動きではあります。

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