都市間高速鉄道

Sunday, March 17, 2019

思い出されるBrexit

Brexitが迷走しているように見えますが、私はほぼ想定内のプロセスを踏んでいると見ます。そして追い込まれているかに見えるイギリスのメイ政権ですが、強硬離脱反対の下院議決を得たことで、寧ろEU側が追い込まれたと見ています。理由は簡単で、強硬離脱を避けたいのはEUも同じ、対立が解けない英国内世論の中で、強硬離脱だけは避けたいという意思が示された訳ですから、メイ首相はこれを対EUの交渉のカードに利用すると考えられます。

あと国内経済が好調なのも追い風です。これBrexitのゴタゴタでEU圏からの移住者が減って失業率が歴史的低水準にあり、消費が堅調なことによります。EUに加盟しながら移動の自由を保障するシェンゲン協定未加入というイギリスですが、市場統合が進み、特に東欧圏へ拡大した結果、相対的に貧しい東欧圏の住民が流入して労働市場を圧迫してきたことがBrexitの議論の背景にあります。元々移民受け入れに寛容なイギリスで単純な反移民という訳ではありません。その流入が減って経済が上向いたんですからこれゴタゴタのお陰?

一方EU側はイギリスに厳しい態度を取り続けてきましたが、その狙いはイギリスを離脱撤回に追い込むことです。何しろBrexitのゴタゴタでイギリスを忌避した東欧諸国の労働者がその分大陸諸国に押し寄せてますし、加えてシリア難民の受け入れ問題も重なって大混乱し、移民排斥の機運が高まっている訳です。その結果反EU勢力が支持め加盟国で議席を確保し、無視できない存在になっております。EUとしてはこの面でもイギリスに甘い顔ができない訳で、着地点としてイギリスの離脱撤回がベストシナリオになる訳です。

それがイギリス下院の強制離脱反対決議と翌日の離脱延期決議によって、EUも延期承認の決断が求められることになります。延期については全加盟国の承認が必要ですが、承認されずに強制離脱に追い込まれることは避けたい訳ですから、EU側としては延期承認でまとめるしか選択肢はありません。しかもここへきてユーロ圏の経済が足踏み状態となり、ECBによる緩和縮小も当面見送られる状況ですから、強制離脱でより深傷を負うのはEU側ということになります。

このイギリスの政治的混乱は理解しにくいことも確かです。しかしイギリスがコモンセンスの慣習法の国であり、主要国で唯一成文憲法を持たない国という点から見れば、不思議でも何でもありません。そんな国の議会に付与された立法権というのは、つまるところ時代の変化で不具合が出てきた慣習法の修正に力点が置かれます。故に現実にどんな不具合があるかが出発点になります。

所謂立法事実が問われ、議会で成案を得ればそれがそのまま法律として発効する訳で、成文憲法に照らした違憲立法という概念すらないが故に、文字通り熟議を経て必要な修正を加えて可決成立に至る訳で、某日本国みたいにろくな議論も無しに数の優位で押し切られるのとは違います。Brexit関連では、そもそもキャメロン政権が行った国民投票も、日本ならば憲法改正の要件として国民投票が憲法に明記されてますし(第96条)、辺野古埋立問題で実施された県民投票も法的拘束力はないと説明されてますが、憲法第95条で国会での不利益立法の禁止が定められています。

イギリスの国民投票が取扱注意なのは、例えば結果を無視して政府が離脱撤回したり、あるいは違う結果を得るために国民投票のやり直しをして異なる結果を得た場合などはそれが慣例となってしまうということになります。故に政府としては不都合であれ何であれ、国民投票で示された民意を尊重しつつ議論を重ねるしかない訳です。その辺を踏まえずに直接民主制の弊害やポピュリズムを指摘する議論はインチキってことがわかります。

ある意味イギリスはこういった混乱を重ねながら歴史を刻んでまして、例えばメージャー政権で手掛けた鉄道改革を巡る混乱は政治に翻弄された英国鉄道改革鉄道書評、民営化で誰が得をするのかで取り上げましたが、一方ブレア政権での見直しで高速新線(STRL)High-Speed1が建設されユーロスターのスピードアップとドーバーまでの近郊輸送が劇的に改善しロンドンオリンピック輸送にも貢献したことは近郊型消滅? suburban首都圏品質で取り上げました。当初の混乱が見直しで改善されたことは、Step by Stepで議論を重ねるイギリス流ってことですね。

尚、このHigh-Speed1ですが、ユーロスター単独では採算性に疑問符が付くところ、ロンドンの近郊輸送の改善と抱き合わせたところがミソ。日立製のClass395"Javellin"がMax225km/hで走りドーバーがロンドンの衛星都市になるという変化も生まれてます。これ国鉄の通勤新幹線構想そのままです。この構想は実現しませんでしたが、新幹線網を全国展開する上でネックとなる首都圏のアプローチ区間を通勤新幹線として先行整備して短期的には首都圏の通勤輸送改善を狙った意欲的なものでした。公社時代の国鉄ではこうした柔軟な発想は実現できなかったんですね。

ふと思うのは整備新幹線を巡る我田引鉄ぶりやJR北海道の経営を巡る混乱を見ると、結果的に上下分離とフランチャイズ制による参入障壁の撤廃で活性化された英国鉄道の方が今となっては優れていると言えるかも知れません。逆に成文憲法を持つ日本の場合は、民主党政権で閣議決定されながら震災の影響で断念された交通基本法が、自公政権で交通政策基本法として成立したものの、移動権を憲法の基本的人権に紐付けて国、自治体、事業者の役割を規定した部分が省かれた結果が、国の責任ばかりを言い立てて具体策を出さない北海道庁や関連自治体の態度になっているのではないかと思います。

Brexitに話を戻しますが、北アイルランド問題がネックになっている訳ですが、現実的な落としどころとしては北アイルランドをEU圏に残して1国2制度にするぐらいしかないでしょうけど、それだと英国内に実質的な国境ができることになります。故にメイ首相がEUと取り交わした離脱案では北アイルランドの国境問題の恒久的な解決策が見つかるまでEU圏に残留させるという表現になっておりますが、これが実質EU残留の恒久化につながるとして強硬離脱派からも残留派からも反対されている訳です。

その対立は解けないままですから、離脱延期しても同じことを繰り返すだけで、結局延期を繰り返してゴタゴタが続くことになりますが、ある意味根競べというか、いずれ諦めから政府案に収斂されるってところでしょうか。とはいえ時間をかけることは民間企業に判断の余地を与えるので、それを織り込んだ動きで強制離脱のショックもマイルドになるという面もあります。そんな中でのこのニュース。

ホンダ社長、英での生産終了21年中に トルコでも休止  :日本経済新聞
Brexitは無関係と明言された社長会見ですが、勿論無関係ではありませんが、背景としてホンダの欧州での販売不振があり、スウィンドン工場出荷分の大半は北米向け輸出に回っていて、欧州に生産拠点を置く意味が薄れたので、モデルチェンジのタイミングで生産拠点を見直すのが主眼です。北米では売れているホンダですが、欧州で認められて一流という意識から古くからF1参戦してきたものの、果たせず撤退ってことです。欧州で認められたという意味で日系企業では日産が先行しており、ホンダは及ばなかったってことです。これある意味不振企業の撤退を促している訳で、ゾンビ企業を温存して低迷する日本ンとは大違いです。

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Sunday, February 17, 2019

鈍器法定

統計不正問題がいよいよ森加計問題と酷似してきました。これ統計法違反という明らかな違法行為なんですが、捜査当局は動く気配なし。そして関与した上級官吏は口をそろえてゴマカシや答弁拒否。一方実行部隊の下級官吏からはリーク続々。アベノミクスの成果を良く見せる改編が行われたと考えてほぼ間違いありませんが、ウソノミクス統計135°でさわりは明らかにしてますので、ここでは踏み込まず別の話題。

大林組、増収増益  :日本経済新聞
「受注企業JR東海が差配」 大成と鹿島、無罪を主張 リニア談合初公判 他2社と認否真っ二つ :日本経済新聞
元々大林組が公取委に申告して発覚したものですが、談合を認め処分を軽減した大林組、清水建設に対して、争う姿勢を見せる大成建設、鹿島建設という構図で公判も分離されてますが、主張は真っ向対立してます。

既に分離公判で有罪が確定している大林組ですが、120日間の民間土木工事中止の処分も受けてますが、実は増収増益。つまりリニアは儲からないから逃げ出したってことですね。加えて2025年の大阪万博開催が決まり、関西地盤の大林組は竹中工務店と共に受注が増えることが見込まれます。つまり大手ゼネコンが仕事を選ぶようになったってことです。

これJR東海にとっては痛い話です。というのは、そもそもリニア建設着手は国鉄民営化時に新幹線保有機構からリースする形で、リース料に旧国鉄債務の一部を乗っけたスキームから、JR東日本の上場審査の過程で主たる収益資産が自己保有でないことのリスクを指摘され、同じ立場のJR東海、JR西日本と共に国に譲渡を申し入れたことで、譲渡代金のローンが始まり、それが2017年にほぼ完済されたことから生じる資金余剰があってこその自前整備ですから、逆に言えば予算上限は厳しく管理する必要があります。

それでも当初名古屋まで5.1兆円と言っていた事業費が膨らみ5.4兆円となっているように、ジワジワと膨張しているわけです。当然利益を削られるゼネコンにとっては旨味が少ないのですが、それでも五輪後を睨めば無下にできない訳で、特に五輪関連や豊洲市場など東京都が絡む事業に深く食い込んでいる大成建設や鉄道会社との関係を気にする鹿島建設は断れない。そしてこうなるってことですね。これだけなら民間同士の話ですから、談合事件で公取委が動くことにはならないのですが。

しかし大阪への早期延伸を望む声が与党議員から出てきて財投債で9兆円の融資を決めたことで、公共性ありと判断されて事件化されるんですから、何がどう転ぶかわかりません。それでも談合事件の立件は難しいところ。大林組の申告が渡りに船だったのでしょう。政府が関与するといろいろ不都合が生じるのは森加計問題や統計不正問題ばかりではありません。

JR東日本の整備新幹線区間への追加投資に絡んで、整備新幹線の法定速度って話題がネットに出てきて「法定速度を超えると線路使用料が上がる」などの妄言も見られますが、これ根拠法の全国新幹線鉄道整備法で定義されている設計最高速度が法定速度と誤って理解されているのが実際です。そもそも東海道新幹線の設計最高速度は210km/hですが285km/hで営業運転されてます。東海道新幹線の建設時には整備法は無かったので超法規的に独自規格で作られたもの。その結果を踏まえて全国新幹線網整備に当たって将来の技術革新によるスピードアップを先取りする形で定められた基準がそのまま見直されずに来たというのが実際です。

そもそも新幹線の事業主体は国であり、国の鉄道事業を体現する国鉄がその任に当たるという前提で作られた法律ですから、国の事業である以上恣意的な解釈で骨抜きにすることは許されないということから、設計最高速度やそれに付帯する最急勾配や最小回転半径などの基準が定められたのが実際。それが国鉄分割民営化で事業主体が消滅すると当時の与党議員が騒いで事業主体となる国のところを各旅客会社に読み替えることで延命させた結果です。

しかも財源がないからあの手この手で財源をひねり出すために、並行在来線の切り離しなどでJRに負担をかけないことや、受益者となる地方の負担も定めるなどされたものです。結局整備計画の延命のために恣意的解釈をした訳ですが。尚、最急勾配は九州新幹線や北陸新幹線では事業費圧縮の要請から一部基準を超える急勾配があり、将来のスピードアップの可能性を狭めています。

JR東海も当初は中央リニアを整備新幹線の枠組みで考えていたようですが、現実に存在しないリニア新幹線は基準に適合しないってことで当時の運輸省はほぼ門前払いに近い扱いをしていたようです。当時は所謂整備5線(東北新幹線延伸部、北海道新幹線、北陸新幹線、九州新幹線鹿児島ルート、同長崎ルート)の扱いすら決まっていない状態で、そちらを優先しないと地元選出議員からクレームがつく状態でしたから、中央リニアの整備新幹線化は実現可能性が無かったと言えます。

それが新幹線譲渡に絡んで譲渡代金の産出に時価法の一種である再取得価格法が適用されました。これは現在時点で同等の資産を新たに取得する場合に想定される価格ってことで、地価や建設費などの相場を反映したものですが、仮定の置き方で数値は変わり得るものでもあります。当時の運輸省はこれを利用して資産の非償却部分となる土地やトンネルなどのインフラ部分の数値を嵩上げし、嵩上げ分を新設の鉄道整備基金に持たせて整備新幹線の財源に利用することで財源論に道筋をつけました。数値を操作して財源をねん出した訳で、こういったことがあるから統計不正にリアリティが出てきます。

その結果JR本州3社はローン負担を負う訳ですが、同時に整備新幹線事業の推進力を得ることとなりました。加えて新幹線が自社保有となり、膨大な減価償却費が発生し無税で利益控除できますから、これで得たキャッシュフローで設備投資に弾みを付けます。その結果JR東海は品川新駅開業によるのぞみ中心のダイヤ編成で増収を図り、自己資本による東名間先行の整備計画をぶち上げることになる訳です。

で、JR東海をリニア建設に向かわせた新幹線譲渡代金ローンの終了はJR東日本やJR西日本も同様で、規模の違いはありますが、それぞれ異なった動きを見せています。ウソノミクスでも触れたように一つは東北新幹線盛岡以北の高速化に向けた設備増強ですが、もう一つ大きなプロジェクトも動き出しました。

JR東 都心と羽田空港結ぶ新線、29年度にも開業  :日本経済新聞
羽田空港の国際化と発着枠拡大で今後とも利用Y差は増えると見込んでいる訳ですが、同時に成田スカイアクセスとローコストリムジンバスに食われて劣勢の成田空港輸送の挽回の意図もありそうです。

整備区間の北半分は休止中で遊休化している東海道貨物線の浜松町―東京貨物ターミナル間の線路を活用し、東海道線に合流させて上野東京ラインで埼玉や北関東のアクセスを図るというもの。加えてりんかい線経由で山手西ルートから中央線や埼京線方面、と京葉線や武蔵野線方面の3方向の列車設定を想定しています。千葉県や千葉市が要求する京葉線から総武線への連絡線が実現すれば、羽田空港と成田空港を直結することもあのうになりますから、将来的には成田空港輸送のてこ入れにもなるという訳です。

既存施設を活用するプロジェクトですから、資金手当てが見通せれば実現可能性は高いですが、一つネックとなるのがりんかい線の扱いでしょうか。東京都はJR東日本に東京臨海高速鉄道の引き受けを以前から打診してますが、これが動く可能性はあります。都市興津に関わる新線計画ですから、国と地方に応分の負担を求めることになると思いますが、東京都の負担分を東京臨海高速鉄道の株式で行い、事実上のりんかい線引き受けにつなげる可能性はあります。ただしJR東日本の営業規則上、東京近郊区間に組み込まれることになれば、現在の認可運賃から大幅減額となりますから、それによる減収の評価をどうするか。株式評価を下げて都が実質補償するか、あるいは東京近郊区間から外して現行認可運賃を存続させる形にするか、交渉次第でしょうけど注目されます。

おまけ。リニアで散財するJR東海と対照的に経営基盤強化に資するプロジェクトに選択的に投資するJR東日本ですが、JR西日本はといえば、尼崎事故以後の安全投資優先の影響もあって遅れている老朽車両の更新に回るものと見られます。だから広島に錆びない電車が登場し、大阪環状線もリニューアルされると。

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Saturday, January 19, 2019

ウソノミクス発覚

ひでーなー。政府統計のウソが発覚しました。

勤労統計調査ミス、長期放置か 復元加工は昨年分のみ  :日本経済新聞
厚労省の毎月勤労統計で、5~499人の事業所は無作為抽出によるサンプル調査ですが、500人以上の事業所では全数調査するところを、2004年以降東京都分の500人以上の1,400余りの事業所の内500事業所しか調査していなかったことが発覚したものです。

一般論として大規模事業所の方が賃金水準が高く、特に東京都は他地域より賃金水準が高い訳ですから、結果的に高賃金事業所が調査対象から外れて統計数値が過少に計上されていた訳です。同統計は雇用保険の失業給付の基準となるので、2004年以降の給付対象者延べ約2,000万人で530億円の過少給付となっていて、その修正のために閣議決定済みの19年度予算案を組み直す異例の事態となりました。

閑話休題。499人以下の事業所が無作為抽出によるサンプル調査なのは、数が多いことと数値のバラツキが多く異常値が混入する可能性があることと、統計調査への回答を行う事務処理能力が欠けるケースもあり、全数調査よりサンプル調査が適当です。逆に大規模事業所は事務処理能力の余裕もあり、毎月定例の調査ですから、ルーティン化できるし回答スキルも上がって正確な数値が期待できます。全数調査をしない理由は見当たらない訳です。

加えて同統計は政府のGDP算出や景気判断にも使われていた訳ですし、日銀の金融政策や民間企業も参照する重要な基幹統計だったからさあ大変。加えてOECDやILOへの報告にも使われますから、日本政府の国際的信用にも関わるものと、その影響範囲は甚大です。もう中国のこととやかく言えませんね。

しかも発覚の経緯が酷くて、数値を実態に近づけるために東京都分を3倍にする復元加工をした結果、18年度の賃金が不自然にハネ上がっておかしいと突っ込まれてバレたっていうんですからもう滅茶苦茶。厚労省といえば労基法改正でも裁量労働制の方が労働時間が短いとするウソのデータを国会に提出して大炎上したことが思い出されます。加えてこのエントリーで取り上げたこの記事も見てみましょう。

(真相深層)政府統計、信頼に揺らぎ GDPなど、日銀が精度に不信感 :日本経済新聞
ここでも毎日勤労統計への疑義が指摘されてますが、他にも指摘された統計データのおかしさがあります。厚労省叩いて済む問題じゃなく、他の統計も見直す必要があり、まだまだ影響は拡大すると予想されます。

2004年と言えば小泉政権で社会保障改革と称して年金保険料の毎年度のアップと給付制限の為のマクロ経済スライドの導入及び積立金の一部取り崩しを決めた年です。小泉政権では膨張する社会保障支出をプラス2,200億円以内に抑える歳出キャップをかけていて、失業給付に連動する毎月勤労統計を過少算出する動機は存在します。加えて派遣労働解禁に舵を切り、失業が増え非正規労働者が増えた時期とも符合しますから、失業給付の減額はその面からも求められます。そしてアベノミクスの成果を示したいと賃金の伸びが弱いことを突かれて復元加工とすれば、始まりも終わりも政治圧力の結果と見ることができます。将にアベノミクスならぬウソノミクスです。今月始まる通常国会はいきなり政局です。

かように日本の官僚機構は政治圧力に弱い存在で、よく「日本の官僚は優秀だ」と言われますが、どうもメッキが剥がれてきたようです。それが見えなかったのは単に公文書を残さないで情報を秘匿していたからというのが実際のようです。そして公文書管理の杜撰さ故にどうもろくな引継ぎが行われず、チグハグな対応になってしまうということですね。そしてそこへ付け込んで与党が政治圧力をかけて、ツケは国民へっていい加減にして欲しい(怒)。例えば整備新幹線。この仕組みも国鉄民営化で宙に浮く新幹線整備法を与党の圧力で延命させたものですが、それ故の矛盾も。例えばこのニュース。

東北新幹線、盛岡以北の高速化検討 JR東が騒音対策  :日本経済新聞
最高速320km/hのE5系が盛岡以北の整備新幹線区間で260km/hで運行していることに対して、国の線路使用料増額がネックなどといった議論がある訳ですが、変節黒田節で取り上げたように、整備新幹線が自社保有ではないことがネックであることは間違いありませんが、今回JR東日本が自前で投資するって話です。これの資金手当てですが、一つ心当たりがありまして、株式上場に備えてJR東日本が発議した新幹線譲渡代金のローンが17年3月に終わるってことです。

これJR東海が5.1兆円の負担を終えて余剰資金をリニアに注ぎ込むのと同じスキームですね。JR東日本の所謂1号債務は凡そ2,1兆円で、91年10月以来年1,000億円規模の債務償還が続いてきたんですが、18年3月でなくなる訳で、この部分のキャッシュフローが充当できるってことですね。これ大宮以南の最高速130km/h化や秋田新幹線の大規模改良などで投資を充実させていることとも符合します。

そして背景としてE5系の走行データが蓄積されてきたってこともあります。最高速260km/hとされる整備新幹線区間でも騒音対策を強化すればとりあえず320km/hまでは何とかなりそうという判断なんでしょう。減価償却されないインフラ部分は触らず、追加設備は自前で減価償却すれば、資金を回転させて継続的な設備改良に道が開けます。但し法的な所有者である国(鉄道・運輸機構)の同意は必要ですが、新幹線の財源探しに鵜の目鷹の目の与党政治家たちが横槍入れて線路使用料増額をねじ込む危険性はあります。北陸新幹線の大阪延伸や長崎新幹線のフル規格化などで財源探しに躍起となってますから。

そしてこのキャッシュフローの余剰を利益計上せずに設備投資に振り向けたJR東日本の判断は評価できます。利益を増やして法人税が増えるなら、投資へ回そうってのは民間企業として真っ当な判断です。やや蛇足ですが距離が長くスピ度アップ効果が見込める東北新幹線へは追加投資を厭わない一方、上越新幹線は最高速240km/hのままと選択と集中もされてます。この観点から言えば法人税減税が設備投資を促すって大ウソだってわかりますよね。ここにもウソノミクスです。ホント腹立つ!

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Sunday, January 06, 2019

林檎が落ちると

世界が混乱します。少なくとも短期的には。そんな波乱の新年をいかがお過ごしでしょうか。発端は2日のアップル社の売上高下方修正ですが、中国でのiPhone販売不振が理由ですから、アップルショックというよりは実質チャイナショックです。中国の経済減速がはっきり見えてきたってことですね。

加えてiPhoneが拓いたスマホ市場の飽和が背景にあります。アップルはハイエンド化による高価格政策で対応している訳ですkが、ローエンド品も性能が上がれば差別化が難しくなるから、結局ハイエンド化による高価格戦略は長続きしない訳です。これ悉く縮小均衡に陥った日本の家電メーカーと同じ袋小路に入ったってことですね。

一方でFRBの金融政策への批判も相次ぎました。先月のFOMCで年4回目の利上げを決めて、更に引き締め継続を示唆したことで、市場関係者の批判を浴び、トランプ大統領もパウエル議長解任を示唆するなどゴタゴタしました。そうした中で4日にパウエル議長が講演で利上げ一時停止を示唆したことが好感され、4日のNY市場は反発しました。「FRBプット健在」と好感された訳です。ただし3-5年物の国債金利が短期物より低いイールドカーブの矛盾はそのままです。これ投資家の質への逃避の心理を反映したもので、リスクオフ相場の特徴鮮明です。これによって為替は円高に振れますから、週明けの東京市場は期待しない方が良いでしょう。

よく言われる「長期停滞で財政赤字が大きい日本がなぜ買われるのか?」という疑問ですが、350兆円と言われる累積経常黒字がある限り、買われるのは当然。むしろ実体はそれだけの余剰資金があるから、リスク投資を手仕舞いすると自動的に円が買われるので、不思議でも何でもありません。これつまり国内の貯蓄過剰が海外投資へ向かっていたからで、海外投資へ向かう過程で売られた円が買い戻されるってことです。所謂貯蓄投資バランス問題なんですが、解決策は内需拡大により貯蓄過剰を解消することですが、これに失敗し続けて長期停滞から抜け出せないのが現在の日本です。

その日本を後追いしてきたのがアジア諸国ですが、その中で最大の国が中国です。その中国は日本の長期停滞を研究して回避策を探ってきたのですが、結果的にはリーマンショック対策で地方政府を中心に過剰な開発投資を重ねた結果、日本のバブル崩壊の教訓を生かせず、水面下で債務超過を拡大して身動きが取れなくなっています。そこへ米中貿易摩擦が加わり、問題を大きくしています。つまり中国は日本の轍を踏んじゃった訳です。この辺は前々エントリー
もご参照ください。

しかし中国の経済的ウエートは大きい上、日本のバブル崩壊後の停滞を埋めるように90年代以降の中国の台頭があった訳ですが、中国の停滞を埋める例えばインドの台頭は未だ力不足なので、当面の経済停滞はかなり深刻なものにならざるを得ません。世界は長いトンネルに入ります。ただしそれだけ石油など資源価格へのストレスは低下しますから、円高と相まって交易条件が改善しますから、日本経済にとっては悪いことばかりではありません。これを機に内需を深掘りして過剰貯蓄が国内投資に向かうようになれば、とりあえず目先の様々な問題には解決の糸口となります。

例えば高齢化自体は解決できないんですが、かつて若年人口の多かった日本で貯蓄性向が高かったのが、高齢化でリタイアが増えれば過去の貯蓄が取り崩されますから、自然に過剰貯蓄は解消に向かうのに、人手不足を理由に高齢者の労働力化を進めるのは、過剰貯蓄を増やす上に労働市場を圧迫して低賃金化を促しますから、寧ろ若年層の負担増となって逆効果となります。年金制度を安定させて安心してリタイアできる環境を整えることが重要です。

その意味で消費税増税問題ですが、野田政権当時の三党合意で消費税を社会保障目的税にするという約束を反故にする大盤振る舞いは問題です。社会保障に使われるならということで消費税増税を渋々認めた国民を欺くことです。選挙で思い知らせてやりましょう。

という訳で、2019年という年は明るい展望が描きにくいのですが、過去に遡れば1997年の消費税3%から5%へアップしたときとよく似た局面です。この年アジア経済危機と山一證券、拓銀などの破綻に端を発する金融危機があった年で、日本経済は大きく足踏みしました。これを全て消費税増税の栄養と捉えるのは間違いです。僅か2%英率アップで、所得効果はマイナス1.9%です。しかし同時に社会保障改革と称して年金保険料が値上げされており、それを加味した所得効果はマイナス3%を超えます。加えて企業の採用手控えもあって所謂ロスジェネ問題でより負担感が強まったことも指摘できます。

結論としては97年の足踏みは果たして消費税増税のせいなのか?ってことには大いに疑問があります。元々の経済ファンダメンタルズの弱体化に加えて年金保険料アップを含む公的負担増が重なった結果と見るべきでしょう。その意味では経済の停滞の中での増税という意味で97年の再現となる可能性はかなり高いと言えます。

但し違いもあります。1つは労働市場の現状ですが、企業の採用手控えこそないものの、高プロ導入や入管難民法改正による外国人労働者の導入拡大などで労働市場に圧力がかかる制度改正がありますから、制度の運用次第では97年よりひどい状況もあり得ます。加えて年金の支給減額や後期高齢者医療保険の負担増など実質的な公的負担の増加は消費税に留まりません。こうした中で一時的なバラマキで乗り切ろうとしている政府の姿勢では、結局単なる問題先送りに留まらず、需要の先食いを助長して却って混乱します。

人口減少下での消費拡大は主にサービス部門の拡大になりますから、モノは売れない訳で、工業セクターの生産性改善では解決できません。逆にサービスは生産と消費が同時に起こる特徴があり、在庫が効かない訳ですが、ITによるマッチング機能の進化で生産性改善の可能性が見えてきています。

具体的にはこのエントリーで取り上げたMaaSが典型ですが、移動のサービス化で複数の交通機関をスマホアプリでシームレスに利用できて決済まで可能となる方向性が見えています。これ必ずしも自動運転の実現などを待たずとも、需給のマッチングで従来不可能とされてきたサービス部門の労働生産性向上が可能になります。その意味で時代錯誤なこのニュース。

2019年 展望 時速360キロで試運転、輸出も JR東海社長 金子慎氏 :日本経済新聞
鉄道にとってのスピードアップは、単位時間当たりの輸送人キロを拡大しますから重要なんですが、人口減少下では顕在化している需要だけを見ていても先細りにしかならない訳で、潜在需要の掘り起こしという点でMaaSの可能性は大きい訳で、こういうマッチョなスピード至上主義は必ずしも正解とは言えません。まして東海道新幹線のスピードアップよりも技術的優位を示して輸出を狙うってのがもうダメ。外需依存ではなく内需の深掘りで過剰貯蓄を消費に結びつけて且つ国内投資に向かわせることで、長期停滞の原因と言える過剰貯蓄が解消されるんですが、全く逆行してます。ヤレヤレ。

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Sunday, December 09, 2018

CASE by MaaS

前エントリーの続きですが、フランスのマクロン政権がデモの影響で燃料税増税を断念しました。東名ルノー日産問題でフランス政府の干渉は防げそうですが、日産には別の問題が持ち上がっています。

自動車産業の激変が予想される中、日産の検査不正が新たに発覚しました。今回はブレーキなど安全に関わる部分の不正という重大なもので、ゴーン氏の報酬チョロマカシよりもガバナンス上の問題は大きいですし、ゴーン体制に責任を負わせるわけにはいきません。

完成検査の無視覚検査は、法令違反とは言え悪質性の程度は低かったし、そもそも制度自体が曖昧で非関税障壁の疑いもあるものでしたが、今回は国交省の業務改善命令を受けて現場調査する中で発覚したもので、検査不正は相当広範囲に行われていた模様です。ルノーとのアライアンスで海外製造拠点への投資が優先された事情から、その分国内製造拠点への投資や人員配置が手薄になったのは否めませんが、こうした製造現場の実態を把握できていなかった日産経営陣の責任は重大です。

検査不正の背景に。検査場の狭さとか検査員の不足といった事情があったようで、その中で増産体制が組まれた結果、検査部門がボトルネックとなり、検査で引っかかるとたちまち検査品で検査場が埋め尽くされてしまうため、右から左に流すしかなかったというような事情があったようです。それに対してスペースや人員の拡充を求める現場の声は経営陣に届かず放置された結果ということで、役員報酬を巡る金商法違反などより重大なガバナンスの欠如と言えます。必要な投資が行われなかったという意味で、経営陣の責任は重大です。

それはさておき、自動車産業を巡る変化予想でCASEというキーワードが語られます。繋がる(Connected)、自動化(Autonomy)、共有化(Shareing)、電動化(Electrical)です。これ相互に関連があって、車をスマホのようにネットにつなぐことで、付加的なサービスや機能が提供されるに留まらず、自動運転との関連で車間通信で衝突回避しますし、自動運転が実現すれば、稼働率の低いマイカーという保有形態が見直され、必要な時だけスマホで呼び出して使うことが可能になりますし、電動化は自動運転との相性が良く、また部品点数も減って特にエンジンのような作り込みも要らないから価格低下が予想され、自動車メーカーの優位性がなくなると言われます。

そのため自動車各社は優位性を維持するための投資を求められますが、例えば自動運転に関してはグーグル系列のウェイモが先行していて後追いになっている現状があります。電動化に関してもトヨタがハイブリッドシステムで世界をリードしたものの、特許で囲い込んだために追随するメーカーが現れず、米カリフォルニア州のZEV規制からも外されて焦っております。トヨタとしては究極のエコカーとして燃料電池車(FCV)を想定し、ハイブリッド車はつなぎという位置づけだったのですが、本命のFCVも水素供給網の整備が進まず、他方バッテリーEV向けの急速充電器の設置は進んでおり、またVWのディーゼル不正問題もあって自動車各社のEVシフトが鮮明になる中、トヨタは梯子を外された格好です。

EVに関しては日産が先行してますが、ビジネス的には大成功には至らず、新興企業の米テスラモーターズの先行を許しています。テスラモーターズ自体は典型的なガレージメーカーからスタートしたもので、ZEV規制が示すように環境意識の高いカリフォルニアでマイカーを電動化するガレージメーカーは多数存在しましたが、その中でイギリスのライトウエートスポーツ車のロータスエリートのプラットフォームを利用して、ノートPC用のリチウムイオン電池など汎用部品を使って世界初の量産EVとなるロードスターを世に問い成功を収めます。

バッテリーの搭載量で性能が規定されるEVです。とはいえ重量の嵩むバッテリーを大量に搭載すれば良いとはいきません。その意味で実用的なセダンではなく2シーターのロードスターならばパッケージしやすいし、趣味性故に高く売れるわけですね。こうして投資資金を上手に回収しながら技術を磨き、高級セダンのタイプSやクロスオーバーSUVのタイプXへと展開した戦略は見事です。加えてソーラー発電や家庭用バッテリーなどの事業化でシナジーを追求してEVのバリューを高めます。日本でも日産リーフが同様の訴求をしてますが、普及には至っておりません。

そして量産型セダンのタイプ3では製造ラインの自動化でコスト圧縮に挑みます。これは必ずしもうまくいかなかったのですが、マスク氏は製造現場との徹底した対話で解決策を見出し軌道に乗せます。この辺は日産幹部にとっては耳の痛い話でしょう。同時に自動車産業の雇用創出力という観点からは、従来通りとはいかない厳しい現実を示してもいるわけです。

とはいえテスラの成功はあくまでも所得水準の高い先進国の話でして、新興国への波及はむしろシェアリングが中心になると考えられます。そのときのキーワードがMaaSです。Mobility as a Serviceの略で、クラウド上のソフトウエアを利用するSoftware as a Serviceのもじりでもあります。言い換えれば移動(mobility)のサービス化でもあります。これ喩えればPCからスマホへの変化に相当します。これつまりハードとしての自動車のコモディティ化を意味します。

ただしMaaS技術的ハードルは決して低くはないので、先進国で先行して新興国へ波及する流れもスマホと同じと考えられます。そうすると自動車メーカーはまず利益の取れる先進国市場の劣化を余儀なくされるわけで、先進国にとっては雇用の縮小と共に格差拡大を覚悟しなきゃならないってことでもあります。

逆に言えば輸送サービスを提供する運送業にとっては劇的な生産性向上のチャンスでもあり、生産性格差で人手不足を余儀なくされる現状を良い方向へ転換できるチャンスではあります。但しあくまでもチャンスであって、AI自動運転で人手不足が解消するという発想では未来は開けません。

例えば自動運転が実現すれば移動中に仕事するとか就寝中に移動するとかが可能になるわけで、これある意味交通機関に求めらR3エルスピードの概念が変わることを意味します。朝の懐疑に間に合わせるために早起きして始発に乗るとか、前泊するとかが必要なくなるわけですから、この観点から言えばスピードを訴求するリニアは無用の長物になる可能性があります。公共交通にも変化をもたらす訳です。

そんな中で京浜急行が富岡地区の住宅地でゴルフ用電動カートを用いた興味深い社会実験を行いました。

「電動カート」は郊外住宅地の新交通になるか | ローカル線・公共交通 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
ゴルフ場用の電動カートを用いた輸送サービスの実験です。京急沿線には丘陵地帯を切り開いた住宅地が多数存在しますが、道路が狭く勾配も急ということで、バス路線の設定が難しく、高齢化で居住を諦めたり相続放棄で放置されたりして空き家が増えている訳ですが、20km/h以下の低速ながら勾配に強い電動カートを用いて最寄りのバス停やスーパーまでの輸送サービスを行ったものです。

面白いのはスマホアプリの京急バスナビに連動させることで、モードの異なる交通システムをシームレスにつないだ点で、システム開発には横浜国大やベンチャー企業も関与する形で、謂わばオープン化が実現している点です。住宅地内のラストマイルの交通手段ですが、MaaSの要素が揃っています。京急にとっては高齢化が進む沿線住宅地のてこ入れではありますが、鉄道がラストマイルの戸口輸送にアプローチする流れは東急田園都市線や江ノ島電鉄などでも無人運転バスの実証実験の事例があり今後活発化すると見られます。

この観点から注目なのがJR東日本の品川新駅です。先日「高縄ゲートウェイ」の駅名決定を発表しネット上ではいろいろ言われてますが、これかつて東海道上にあった高輪大木戸と呼ばれる簡易関所に因んだ名前だそうです。そうなら駅名は「高縄大木戸」にして英語名をTakanawaGatewayと案内すれば特に外国人の混乱するカタカナ駅名を避けられたし、地域の歴史文化を踏まえた新しい街づくりとしての重厚感も演出できたはず。JR東日本のネーミングセンスはホント酷いです。

これE電騒動以来繰り返されてますが、もう少し何とかならなかったかと思います。ただしゲートウェイに込めた玄関口の意味は分かります。先進的な職住近接開発を目論んでいる訳ですが、新駅を起点にしたMaaSを考えているとすれば、JR東日本の思い入れが偲ばれます。そこは理解できるけど、ネーミングセンスは残念過ぎます。

MaaSと直接関係はありませんが、東武鉄道のTJライナーやリバティ、西武鉄道のSトレイン、京王電鉄のけ京王ライナー、意外性の東急Qシートと有料続いています。JR東日本は元々グリーン車や通勤ライナーのサービスを行っていましたが、これ首都圏だけの話ではなく、京阪電気鉄道のプレミアムカーのように関西でも見られます。

京阪の合インバウンドで特急列車の混雑が常態化しており、着席サービスの導入を求める声があったようですが、この辺大量輸送を得意としながら過去の投資不足もあって混雑解消が進まない中で、公共交通と言えども将来安泰とは言えない時代を迎えるということで、選択的優良着席サービスは輸送の質を求めるユーザーを取りこぼさず増収機会も得られ、駅から先のラストマイル輸送との一貫性を持たせる意味も考えられます。そう見ると興味深い動きではあります。

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Sunday, November 25, 2018

お水の都大阪

カルロス・ゴーン会長逮捕に始まり、大阪万博開催決定に至る騒がしい1週間でした。一方で問題だらけの入管難民法改正案や水道民営化法案の審議が始まりましたが、こちらのメディアでの扱いは小さく、しかも的外れなものが多く、困ったものです。そんな目晦ましに惑わされず、事実関係を掘り起こすことは大事です。

ゴーン氏逮捕の報に拭えない違和感があります。罪状は有価証券報告書虚偽記載で、ゴーン氏自身の役員報酬を50億円過少申告したとして金融商品取引法違反を問われております。実は有価証券報告書の虚偽記載自体はありふれた事件で、例えば西武鉄道を上場廃止に追い込んだ株式名義貸し事件で、堤義明会長を失い迷走した西武鉄道の事件などは日産の今後に対して示唆に富むものですが、それより気になるのは、虚偽記載と言っても粉飾とは言えない今回の事件でいきなり逮捕っていうのがよくわからないところです。

上場企業の通信簿である有価証券報告書の虚偽記載は確かに許されることではありませんが、粉飾ではないということは指摘しておくべきでしょう。報酬を誤魔化したとはいえ、別の費目に付け替えているから、決算数字自体は変わらない訳です。この辺会長派中心の日本人取締役達による粉飾決算を告発しようとした外国人社長を解任したオリンパスの事例でも、原子力事業を巡る損失隠しで粉飾した東芝の事例でも、逮捕者は出ていない訳で、いきなりの逮捕という今回の事件がこれらより悪質性が高いとはとても言えません。

それどころか公判を維持できるのかという疑問があります。例えばより重罪の特別背任に問うとすると、ゴーン氏が会社に損害を与える意図をもって虚偽記載したことを挙証しなければなりませんが、報道された投資名目の付け替えや自宅購入、成果インセンティブなどは、投資は成果が出るまでにタイムラグがありますし、自宅などの不動産購入も、転売目的の投資で、値が下がったから使っていたという釈明が可能ですから、それを崩すのは容易ではありません。何だかリニア談合事件のような地検特捜部の勇み足の気配があります。

しかも司法取引が行われたということで、日産の取締役が対象だそうですが、両罰規定による法人としての日産も免訴されるとすれば、西川社長は会見で否定したものの、事実上のクーデターと見做すことができます。そして限られた拘留期間で取り調べがどこまでできるのか。保釈交渉で住所をどうするなど難題山積です。加えてゴーン氏の会長職解任はできたけど、西川氏の後任会長人事はルノー系取締役の反対で決められず、取締役の補充すら流動的です。

ましてこの体制で、刑事罰は免訴されても、株主代表素養など民事の訴訟は免訴されませんから、片肺飛行状態で対応を迫られることになります。加えてフランス政府肝いりのルノーとの経営統合問題への対応もありますし、クーデター説に説得力はあるものの、脇が甘いと言いますか、本当にこの経営陣で難局を乗り切れるのか、疑問は尽きません。

そして与野党対決法案の入管難民法改正案の審議入りと継続審議の水道民営化法の国会審議の報道露出の少なさを考えると、政治介入の疑惑が頭をもたげます。内部告発の内偵段階はともかく、ゴーン氏逮捕の報が事前に官邸にもたらされていた可能性はあるのではないでしょうか。

あるいはルノーとの経営統合問題でフランス政府と対峙を迫られる決断を、ゴーン氏の悪だくみを見逃し司法取引でも民事は別と考えが及ばない現経営陣がこんな重大な決断ができたのは何故か?例えば日産株43%を保有するルノーの議決権を無効化するために日産のルノー株補修比率を15%から25%に買い増すための資金供与を日本の政策金融を動員するといった裏の約束があったとすれば、日産経営陣の背中を押すことになるんじゃないかとか。裏で画を描いた奴が居る気がします。

それはさておき、問題だらけの水道民営化問題ですが、何が問題かというと、様々ある民営亜手法の中で、敢えてコンセッション方式を推奨し、補助金付けて誘導している点です。立法事実として人口減少による料金収入減少で設備の維持が困難になっている点、故に老朽化が進んで漏水などが増えている点、また地震対策として耐震菅への交換が進んでいないこと等から、自治体毎の事業を広域化する必要があるけれど、それがなかなか進まないことから、民間活力を活用して問題解決しようということで、一見よさそうな話に見えますが、問題大ありです。

まずコンセッション方式とは、設備の所有権の公共部門に残して長期に亘る運営権を民間に売却するって仕組みですが、日本では民主党政権時代の2011年6月のPFI法改正で取り入れられ、関空など関西3空港の民営化で採用された手法です。思い出していただきたいのは今年の台風24号の上陸で関空が冠水し船舶の衝突で連絡橋が破損し、8,000人もの人が取り残されたことです。インフラ保有部門と運営する民間部門の連携のまずさが露呈したものですが、コンセッション方式にはこの手の問題があるということは押さえておきましょう。

水道事業は現在地方公営企業が担っていますが、基本的に料金収入で設備投資から運営、保守、設備更新までも一貫して行い、原則税金の投入はありません。事業が黒字の場合は剰余金が自治体の歳入に繰り入れられ、赤字の場合は欠損が自治体から補助されるので、地方議会のチェックは受けるものの、民間に準じた複数年度会計で減価償却も行われますから、結果的に市民の共有財産のような形になっています。

ただし職員は地方公務員の身分なので、条例で定員が定められていたりして、広域化の妨げとなってもいます。素直に考えれば地方公営企業をそのまま株式会社化できれば、複数自治体で事業を統合して自治体が株式を持ち合う形にできれば広域化は問題ないはずで、敢えてコンセッション方式を推奨し、補助金で誘導する理由はありません。で、水道事業民営化で先行したフランス、パリ市は、コンセッション方式は問題が多いとして再公有化されましたし、世界的にも見直しの機運が高まっており、日本は完全に周回遅れです。このタイミングでの水道民営化は再公営化で事業機会を失ったフランスのヴェオリア、スエズ両社を助ける意味しかありません。はて、そうすると政府は日産をルノーに売り渡すつもりかも。

で、地方公営企業繋がりで、公営交通の民営化も留まるところがありません。元々高待遇の地方公務員の身分故に高給取りになったバス運転士への批判が起きたことと、一方で民間事業者では分社化により組合の強い本体から切り離した新規採用者の賃金圧縮が進んだ結果、高賃金で赤字体質の公営交通に批判が集まり、路線の民間移譲、株式会社化、運営の民間委託など手法は様々ながら実質的な公営交通縮小が進みました。万博開催が決まった大阪市の地下鉄やバスの民営化は記憶に新しいところです。その大阪市でこのニュース。

自治体の貯金、大阪市が最多2400億円 2位は江戸川区  :日本経済新聞
橋下市政時代から、とにかく金が無い金が無いの連呼で学校給食を安物弁当に変えたり文楽協会への補助金削ったりしてた大阪市ですが、」実はたっぷり貯金してます。これ剰余金を基金として積み立てているんですが、よく考えたら歳入不足で地方交付税の交付を受けている大阪市が蓄財するっておかしい訳で、これ大阪市に限らず多くの自治体で同じようなことやってます。何故かと言えば人口減少で税収が伸びない中、夕張市のように破綻して財政再建団体になれば大変だという恐怖心からです。夕張市への国の対応が厳しすぎたってことです。

加えて大阪市では地下鉄とバスの民営化で資産売却益が得られたことで、基金が膨らみました。そこへ2025年の万博開催決定の報ですから要注意です。会場の夢洲への地下鉄整備その他の万博関連事業で基金が蒸発すること間違い無し。市民サービスを犠牲にして得た基金が蒸発するのを市民は指をくわえて見なきゃならない。訳です。ですから万博開催をおめでとうと祝う言葉は言いません。ご愁傷さま。

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Sunday, November 18, 2018

誰得な領土問題

日ロ首脳会談で二島返還って話。様々な評価がネットで見られますが、報道でも取り扱いが難しいようです。

日ロ領土問題、思惑にずれ (写真=共同) :日本経済新聞
冷静に考えれば日米安保条約第5条で米軍は日本が領有権を有する地域のどこへでも基地を置く権利があり、日本側に拒否権は定義されていません。辺野古見ればわかりますが。故にソビエト時代から進まなかった領土交渉ですが、今回の首脳会談の意義は、改めてそのことが明らかになったってことです。これ領土問題に煩い一団の人々を黙らせられるという意味で、安倍首相以外では不可能な着地点です。たまには褒めてやるwwwwwww。

冗談はさて置いて,実質的に歯舞色丹二島周辺は良い昆布の漁場でして、ロシア人は昆布を食用しませんから、ここに日本の漁業権が設定できるなら、主権云々は横に置いて成果として評価することは可能です。というか、元々地元では密漁が横行していた訳で、それが合法化されるなら地元にとっては歓迎されるでしょう。しかも煩い一団の人々が文句言わないなら尚良しです。

また昆布以外でも、例えば花咲ガニのロシア漁船による水揚げが90年代から増えている現実があります。ロシア漁船だって高く売れる方へ持って行く訳です。勿論乱獲による資源枯渇のリスクと裏腹ですが、日本政府のウナギやクロマグロの漁獲制限が実質制限にならないガバガバな水準にあって資源枯渇が現実化している状況からいえば誤差範囲かと。

でもね、前エントリーで取り上げた入管難民法改正あ審議で法務省が提出した技能実習生の失踪問題に関するデータに重大なミスありました。

入管法改正案、実質審議入り先送り 調査ミスに野党反発  :日本経済新聞
これExelの操作ミスと言い訳されてますが、失踪理由として「より高い賃金を求めて」として集計されたデータが最低賃金以下、明示された賃金以下、低賃金の3つのデータを合算した結果の集計ミスであり、しかも実習生側の都合に見える言い換えまでされているという意味で、通常国会の厚労委員会で問題になった裁量労働制のデータ改ざんに通底する法改正のために都合の良い粉飾がされているところが問題です。官邸がウソつきだと官僚が忖度する構図は森加計問題以来続きます。官邸のウソつきぶりは身内の日銀からも指摘されてます。
(真相深層)政府統計、信頼に揺らぎ GDPなど、日銀が精度に不信感 :日本経済新聞
これ2016年のGDP推計の改定で研究開発費や特許権の資本勘定算入その他の新基準が適用され、1994年まで遡って数値が改定されました。この改定は基準が曖昧との指摘が以前からありましたが、賃金データの動きが不自然ということで、日銀からクレームがついたってことなんですが、デフレ脱却を目標にする日銀にとっては賃金推移のデータは重要なだけに、内科k府に元データの開示を要求したところ拒否されたという展開です。ま、ぶっちゃけGDP数値の捏造疑惑ってことです。

これ改定に伴って直近の成長率が高く出た一方、2009-12年の民主党政権時代の成長率が相対的に低くなっているということで、疑惑がもたれていましたが、内閣府は元データの開示を拒んで否定し続けていました。それが遂に身内の筈の日銀からも疑惑の目が向けられた訳です。アベノミクス自体がインチキだった可能性がある訳ですね。

で、領土問題も結構なんですが、以前から指摘しているように、地方の疲弊が止まらない中で、内なる領土の消失とも言うべきことが起きていることにもっと目を向けるべきですね。北方領土間近の北海道がどうなっているか。札幌圏への人口集中の一方で、道東道北の輸送インフラのJR北海道が瀕死の状態です。年間400億円の欠損ってのはもうシャレになりません。しかも100億円は北海道新幹線から発生している訳で、残念ながら新幹線の札幌延伸による延命効果も疑問符が付く状態です。北海道新幹線をJR北海道から切り離して例えばJR東日本に移譲するとかできれば良いんですが、整備新幹線故にそれも難しいところです。

その一方で小樽―新千歳空港間を結ぶ空港快速は15分ヘッドでも大混雑で、座席指定のuシートもプラチナチケットになっている状況です。これインバウンド需要による外国人観光客の増加が寄与しているんですが、この増強が喫緊の課題なのにできない。理由は南千歳から分岐する空港支線が単線で6連しか入れないから、今以上の輸送力増強はできない訳で、北のスットコドッコイで取り上げた新ターミナル駅への移転を待たざるを得ませんが、公費負担を含めて具体化は進んでいません。

あくまでも個人の見解ですが、かつて千歳空港ターミナルビルと直結だった南千歳駅を国の航空政策で失ったことに対する原状回復の保障措置として、全額公費負担でJR北海道の経営支援するぐらいの対応が望ましいところです。てことで、誰得の領土問題よりも地方の過酷な現実こそ目を向けるべきです。

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Monday, October 08, 2018

史上最大の敗戦

7世紀のミッドウエー海戦とも称されるのは白村江の戦です。日本書紀に記された大敗戦の記録ですが、唐では既に大型船の建造が可能で、多数の兵士を乗せた大型軍船で船団を組んで航行することで敵を威圧するような戦い方がされていた一方、当時の日本の造船技術では外洋航海も危険が伴う小舟しかなく、当然一斉に出発しても船団を維持できず縦長の隊列で唐の船団と対峙したため、次から次へと打ち取られ、歴史的敗戦を喫します。

朝鮮半島三国時代に、劣勢だった新羅が唐と同盟して対高句麗、百済で攻勢に出て百済王朝が滅ぼされますが、王朝は滅んでも唐や新羅の支配を受け入れ難い百済人の抵抗は続き、対新羅で攻勢ですらあった緒戦の状況から、同盟関係にあった当時の大和朝廷は援軍を送りますが、第一波は主に食糧その他の戦争に必要な物資の供給が中心でした。現代流に言えば後方支援です。

しかし唐、新羅連合軍が巻き返したことと、トップのいない百済人の内紛もあって戦況が悪化し、兵を出すことになったのですが、その結果は上述の通り、結果的に戦力の逐次投入で被害を拡大するあたりミッドウエーそっくりです。結果的に百済の再興はならず歴史的敗戦を喫します。この敗戦はまた壬申の乱を引き起こすことになり、東方の小中華帝国を目指し律令国家建設に邁進していた大和朝廷を揺さぶります。

そんな敗けられない戦いを敗けた大事件も中国や朝鮮の史書には記述が見当たらず、中国史、朝鮮半島史の観点からは些事だったってことですね。この辺も日本軍には重大だったけど米軍にはそうでもなかったという意味でミッドウエー海戦に似ています。しかしそこは古代の話。人口も生産量も遥かに少なかった時代故に単純比較はできませんが、そんなスケール感の違いはあるものの、日本史に繰り返し現れる構造的パターンが見えるのが面白うところです。

当時のリーダーは大化の改新を主導した中大兄皇子(天智天皇)ですが、蘇我馬子の謀殺には成功したものの、有力豪族の面従腹背に悩まされ、律令国家建設は遅々として進みませんでした。そんな時の百済滅亡の報せは大いに動揺したでしょうけど、同時に内政の停滞の打開に外交を利用することもあり得ます。古代のことですから、史料の裏付けは得にくいですが、可能性の指摘はできます。事実白村江の戦の敗戦で兵を出した豪族は疲弊し、朝廷にとっては統治改革を進めやすい状況にはなりました。後付けの論だと言われればその通りではありますが。

しかし疲弊した西国に対して相対的に兵力を温存していた東国の豪族たちが吉野で出家していた中大兄の弟の中大海王子(後の天武天皇)を立てて謀反を起こします。壬申の乱ですね。かくして東西に分かれて雌雄を決したのが美濃国西部の平原、後の関ヶ原という奇遇です。当然東軍の大勝で天智帝→天武帝への政権交代が起こり天武帝は国を失った百済人を渡来人として受け入れ、力を失った豪族たちを抑えて律令国家を完成に導きます。ザックリですが戦功をあげた諸大名への報償の枯渇から朝鮮出兵に踏み切った秀吉の後始末としての関ヶ原と、その後の豊臣→徳川の政権交代と、その後の幕藩体制整備という相似相が見られます。

7世紀にミッドウエーと関ヶ原を体現する日本史のフラクタル構造の恐ろしさというか、逆に言えば歴史に学べば防げた間違いも多いと見ることもできます。日本史の範疇を超えますが、前エントリーに照らせば、コンコルドの失敗やトランスラピートの開発断念を捉えてリニア建設を見直すとかですね。尚、天武帝は唐、新羅が攻めてくると危機感を煽って国内の体制固めをしたと言われますが百済滅亡の現実の前には一定のリアリティがあったとしても、唐には東の端の島国への野心はなかったようです。

気になったのが沖縄知事選。玉城デニー氏が当選しましたが、選挙戦中の玉城氏に対する酷いデマの数々ですが、玉城氏が当選すれば米軍が撤退して中国が攻めてくるってのがありました。何を根拠にしてるかわかりませんが、玉城氏自身は基地問題一辺倒ではなく、基地に頼らない、同時に政府の沖縄振興策に頼らない、観光振興を中心とした経済政策で若い有権者を引き付けました。基地に対しては米軍と自衛隊の共同管理などある意味翁長前知事よりも柔軟な姿勢を見せており、47都道府県中最下位に安住する従来の在り方に一石を投じる議論が見られます。

米軍が撤退したら中国が攻めてくるってデマですが、資源もないし平野も少なく農業に不向きな沖縄を含む日本を中国が軍事的に制圧して領有するメリットが思い浮かびません。いや技術や資本があるじゃないかって言いますが、それなら合弁事業による中国投資や中国資本による日本企業買収や技術者のヘッドハンティングが最適油断ですし、いずれも実行されてます。7世紀の天武帝に倣ったのかもしれませんが愚劣です。寧ろ7世紀の唐帝国が日本に関心を示さなかったことが繰り返されていると。

加えて言えば同盟重視の結果が百済への過剰な肩入れによる白村江の敗戦につながるわけですが、覇権を失うかもしれないという恐怖心に支配された今のアメリカとの間合いのとり方は要注意です。首脳協議で結局二国間協定の交渉開始を決めた安倍政権ですが「物の通商を巡るTAG(Trade Agreement of goods)でFTAじゃない」とか「農産物などの関税もTPP水準を超えない」などの言い訳がされている一方、英文の合意書にはTAGの表記はなく、今後サービス、投資、市場アクセスへと交渉を継続することが謳われています。

つまり国内向けに嘘の説明がされてるわけです。つまり実質FTAだし今回の押し切られ方を見ればTPP水準の譲歩制限もあてにはなりません。それどころか貿易赤字解消のネタとしてシェールLNGや兵器の購入拡大がなし崩しに進む可能性があります。軍事機密の塊の兵器を輸入に頼るってのは、輸出国への軍事的従属を意味しますし、言い値で高い買い物をすれば、それだけ既存兵器のメンテナンスや弾薬など消耗品購入に使うべき防衛予算を圧迫しますから、防衛力は低下するんですが。

FTAではないとすると、アメリカに対する譲歩は他の全ての貿易相手国に適用されるのがWTOルールですが、安倍首相が言うように自由貿易体制の意義を主張していくのなら、当然WTOルールに則って行動すべきですね。確かにアメリカの制裁関税にせよ中国の報復関税にせよWTOルールに明確に反している訳ですが、TAGがFTAでないとすると、日本もWTOルールを守らないつもりなんでしょうかね。そんな中でこのニュースに注目です。

羽田新ルート 米と調整難航 在日米軍空域の通過認めず 訪日客4000万人へ壁 :日本経済新聞
2020年東京五輪で訪日外国人の増加に備えて羽田発着の新ルートで横田空域を一部通過することに対して米軍が否定的な見解を見せており、調整が難航しているのですが、横田空域問題は日米地位協定で米軍の管制下にあり、民間機が自由に飛べないエリアですが、運用で悪天候時の代替着陸や給油などの便宜供与は行われてきました。報道では新ルートが東京の市街地上空うを通過することから騒音問題などが取り上げられてますが、それを言うなら横田基地発着の米空軍機は今でも飛んでますし、時間制限もなく夜間もお構いなしですから、騒音問題がネックになることはないと言えます。

むしろ日米地位協定自体の見直しを頑なに回避して運用で凌いできた矛盾が顕在化したものです。本来日本政府が本気になって取り組みべきことを先送りし続けた結果です。地位協定問題はこれに留まらず、例えばドローン活用や空飛ぶクルマの実現などの障害にもなります。これらは航空法で高度300m以下の空白を利用する前提ですが、日本の航空法に縛られずお構いなく低空飛行する米軍機の存在がネックになります。こういった問題解決を先送りして同盟重視しても、アメリカの覇権の綻びはますます進みますから、史上最大の敗戦の将来へ向かっているってことですね。白村江の戦いが示す日本史のフラクタル構造はそれを示唆します。

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Saturday, September 29, 2018

イージー・スノッブ・ガラパゴス

安直(Easy)、俗物(Snob)、ガラパゴス(Galapagos)、略してESG。ホントは環境(Environment)、社会(Social)、統治(Governance)ですね^_^;。低炭素や生態系維持に留意し途上国の資源採掘などで見られる児童労働の産品を用いず公正で透明な企業統治を行う企業には持続可能性('Susutainability)があり長期的にリターンが期待できるってことで、ESG投信が組成され、投資家の信任を得ているというわけですが、勿論日本は周回遅れ、期待を裏切りません。それでも国内メガバンクは既に石炭火力事業への新規融資の凍結を表明するなど、ジワジワ影響が広がります。

電力供給、想定超す喪失 北海道停電の検証始動  :日本経済新聞
北海道のブラックアウトの原因究明はこれからですが、記事にあるように地震直後に道東地区と北見地区で起きた停電は、送電線の故障で系統から切り離され、域内需要13万kwに対して域内水力の43万kwの供給過剰状態で送電停止となったものということで、送電線の故障がなければ需給調整が可能だった可能性があり、北海道電力の送電網の脆弱さを示します。

北電に関しては停止中の泊原発の再稼働が滞ってますが、活断層の存在が疑われる中、再稼働に向けた追加投資が追い付かず、規制委が承認しないからですが、そのために13年から18年3月期までの5年間で発電所に3,738奥苑を投資した内1,887奥苑を泊原発に注ぎ込んでいるわけで、その分老朽火力のリプレースなどが滞っていました。だから苫東厚真の石炭火力3基をフル稼働状態で回していたわけですが、無理を重ねていたことは否定できません。

泊原発の再稼働が見通せない中、燃料費が経営を圧迫して電力料金も高止まりしていて、工場などの事業用電力を中心に新電力に狙い撃ちされて大口契約を失う中、背に腹は代えられず燃料費を抑えられる大型石炭火力に依存してたわけです。それもこれも泊原発再稼働をメインシナリオにした事業を見直せなかった経営判断の問題です。

元々広い土地に低い人口密度で風力や太陽光など再生可能エネルギー発電の適地にも拘らず、出力が不安定という理由で北電は送電線接続を渋ってきました。電力系統の出力調整は主に火力発電と揚水発電で対応しますが、火力といっても出力調整が容易な小型ガス火力が必要なわけで、元々原発のバックアップ用で稼働率が低いから出力調整機能の弱い老朽石炭火力を温存してきた結果、再生エネ増加に対応できない状況だったわけですが、泊原発に投じた1,800億円あまりをこちらに振り向けていれば対応可能だった訳で、やはり経営判断に問題があります。

勿論高値買い取りを義務付けた再生エネ買い取り制度(FIT)の下では判断が難しいのは確かですが、だからといって老朽火力をフル稼働で綱渡りの運営が正しかったとは言えません。FITに関しては過去エントリーで明確に否定しましたが、案の定太陽光バブルでワヤクチャ。加えて太陽光の国内メイーカーはコスト競争力中国やドイツの後発組に勝てないまま衰退。欧州では脱原発宣言したドイツに留まらず今年の猛暑で発電量が増えた太陽光を活かすために原発止めた国もあります。腹の座った再生エネ活用が実践されてる一方、つくづく日本は政治後進国だなあ。


あと問題なのが北電が情報開示に消極的な点。上記の道東北見地区の停電の一方、同時間帯に泊原発に近い岩内地区では停電していなかったことなど、非常用自家発電設備を持つ病院への新聞取材で明らかになったもので、北電自身の発表によるものではないという点があります。泊原発の電源確保を優先した結果ではないかと邪推されるのはこういうところにある訳です。要はガバナンスに問題ありという訳です。まとめると環境よりも目先の利益に反応し(安直)、動かせる見込みのない原発に大金注ぎ込んで(俗物)、世界の趨勢に後れを取る(ガラパゴス)ESG企業ってことです。


頭痛いのはこれ北電だけの問題じゃないことでして、多くのの日本企業が似たり寄ったりのことをしている点です。リニアに前のめりなJR東海に関しては日経ビジネスで特殊が組まれて、その中で葛西敬之名誉会長のインタビューがあります。

談合は関係なし! 神様が見たってリニアはいける:日経ビジネスオンライン
論点はいろいろあるんですが、私が特に注目したのが「財投債ですけど銀行から借りるのとまったく同じですから」の部分。1企業に3兆円も貸し込む銀行がどこにあるのか?そんな銀行があればシャープの身売りも東芝の稼ぎ頭の半導体部門売却も回避できました。銀行団による協調融資にしても先行きに懸念が起きれば参加銀行が抜けてメイン寄せが起きますから、とても引き受けられません。仮にプロジェクトとして有望ならば社債発行や増資で直接市場から資金を集められる筈.です。

しかもこの3兆円ですが、無担保30年据え置きですから、民間資金では不可能です。法令で定められた鉄道・運輸機構の融資枠で例えばJR貨物の設備強化投資やJR北海道の老朽資産更新投資などは行われてますが、リニアに関してはこうした法定の融資枠もなく、政治判断で融資が決まった訳です。モリカケ問題と何と似たことか?融資を受けたJR北海道は2016年に1,200億円の支援を得ましたが、内1/2は無利子融資で同年から返済が始まっています。経営が苦しい中でキャッシュフローを削っているわけで、とても足りないと2019年、20年限定の400億円の支援が決まったものの予定していた老朽ディーゼル車の置き換えは断念しました。既に車両故障による輸送障害が起きているにも拘らずです。リニアの財投債資金投入がいかに優遇されているかがわかります。

電力消費は新幹線の3倍、南アルプスルートの長大トンネルや都内など大都市部の大深度地下区間など難工事テンコ盛りで大手ゼネコンも後ずさり、談合事件の本質はこれですが、駅の無い静岡県では水源の遮断の可能性を指摘して工事施行許可をしない方針に対してJR東海は工事強行を示唆してます。それもこれもJR東海の情報開示が不十分だからなんですが、スピードこそ正義と言わんばかりにカエルの面にしょん便。国鉄時代の東海道新幹線の成功体験から来る楽観論など、環境無視、社会的合意無視、ガバナンス無視の安直、俗物、ガラパゴスの日本版ESG企業ですね。

資金調達面ではリニアのライバル?のハイパーループにはイーロン・マスク氏の提唱に対して民間資金が集まっています。しかも米ベンチャーキャピタルや巨大ファンドよりも、年金基金や欧州鉄道資本などの出資もあり、ESG投資が意識されています。マスク氏はテスラモータースのMBOによる非上場化をツイッターして後で取り消して市場を混乱させたとしてSECから提訴されました。市場からの資金調達で事業を拡大してきたマスク氏すらキレさせるほど市場資金の要求は過酷なんで、政府保証資金でヌクヌクしているJR東海とは比べるべくもありません。

余談ですが企業経営者の不用意なSNS発言で市場を混乱させたことに対しては制裁発動の仕組みが働きますが、主権国家の元首となるとその仕組みがないか、ハードルが高い状況です。米大統領に関しては議会が弾劾手続きの権限を持ちますが、下院の過半数と上院の2/3超の議員の同意が必要で、中間選挙で民主優勢が言われますが、上院の2/3は無理でしょう。ましてそんな仕組みの無いあの国この国は?元首でもない某日本国のプライムミニスターの言いたい放題やりたい放題は?

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Sunday, September 02, 2018

社畜の国の人工知能

暑さも峠を越したようですが、この暑さが今年だけのことで終わりそうにないのがつらいところ。ただでさえ高温多湿な日本で40℃は厚い風呂に入っているのと同じです。佇むだけで体力を消耗するレベル。ホントに2020年にオリンピックやるのか?死人出るぞ。

温暖化の影響は指摘されますが、現象はやや複雑で、温暖化による北極海の海氷減少で太陽輻射熱の反射が減って海水温が上昇し、その影響で偏西風が蛇行した結果、大陸のチベット高気圧が居座る一方、太平洋高気圧が押し上げられてチベット高気圧と合体。高気圧が上下に重なる形となり、強烈な下降気流が地表にぶつかる断熱圧縮という現象が起きて、気体の性質上圧力が増すと温度が上がる訳ですから、あの異常な暑さになった訳です。ディーゼルエンジンの原理ですな。多湿の日本だから山火事は起きにくいけど、積乱雲の発生で大雨は起きやすい訳で、利水優先の日本のダム治水の欠点も露呈しました。これ2015年の鬼怒川の決壊のときにも指摘された問題ですが、スルーされた結果の西日本洪水と見れば、人災と考えられます。

2年前のエントリーでお盆に家に帰るご先祖様と社畜についてですが、観念の産物であるご先祖様と違って物理的実体である社畜は、お盆シーズンの混雑や渋滞という外部不経済を引き起こす存在でもあります。ただ固定費負担の大きい鉄道事業者にとっては、長期休暇でビジネス利用が減る部分を帰省客が埋めてくれるありがたい存在でもあります。

新幹線は言うに及ばず、殆ど印刷代ぐらいしかコスト負担の無い青春18キップも、休校シーズンの普通列車の穴埋めになることから、周遊券など国鉄時代から続く企画商品が悉く廃止や見直しがされる中で存続しています。ただし2020年のオリンピックを睨むとこれが大きな障害になりかねないってことで、混雑対策が問題になってきます。まさか2020年夏の青春18は利用規制されるかも。社畜受難の東京五輪かも。

てな状況も生産年齢人口の減少で求人難となってくると、いつまでも社畜に頼る日本経済の持続可能性に疑問符が付くようになります。そこで慌てて子育て支援や外国人労働者の拡大を打ち出すものの、何度の指摘してますが、前者は支援に必要なマンパワーを取られて求人難が酷くなりますし、後者は移民受け入れを伴わない形で労働ビザの発給条件を緩和するものの、5年で国へ帰れってことになると単純労働しかできないし、労働力人口として定着できませんから、結局求人難の緩和にはつながりません。求人難で汲々とするような仕事は海外へアウトソースして付加価値の高い仕事が国内に残るような産業政策で人口が減っても1人当たりGDPの水準を維持するような政策へのシフトが必要です。とはいえこれが難題です。日経の連載コラムでこんなのがあります。

(モネータ 女神の警告)それぞれのジレンマ(2)41兆ドル、年金の自縄自縛 運用難、逃げ水の利回り :日本経済新聞
公的年金のジレンマを扱った記事です。これアメリカの話ですが、公的年金に共通するジレンマを表します。これも以前指摘しましたが、高金利時代に制度設計されて見直されないまま規模が拡張した結果、池のクジラとなって債券市場と株式仕様の双方で相場を持ち上げた結果、運用利回りが低下して運用難に陥っている訳です。米FRBが利上げしても長期金利が上がらないのは、ちょっと金利が上がると年金の買いが入って金利が下がってしまう訳です。その結果長短金利差が圧縮され金融仲介機能を低下させているって話です。株式の場合も株価収益率(PER)の低下が顕著ですから、基本的に同じ原理が働いています。

マイナス金利を導入した日本と結果的に似たような状況が出てきている訳ですが、年金の持続可能性への懸念は日本だけの問題じゃないってことです。日本の場合は少子高齢化による年金会計のストレスと解説されがちですが、日本でも大元の原理は同じです。とかく言われる日本の年金制度は賦課方式だからってフレーズに騙されちゃいけません。年金関連法のどこにも賦課方式なんてフレーズはありません。単純に高金利時代の設計で運用利回りを過大に設定した結果、積み立て不足が起きたってことで、アメリカと同じなんです。日本の場合低金利が長期間続いたこともあり、運用利回り自体は見直されてますが、それでも4.1%ですから、日銀の金融政策もあって長期金利が0%程度の現状では逆ザヤは無くなりません。

で、GPIFの国内株式や外国証券投資というリスク資産運用を余儀なくされるわけですが、当然相伴逆回転による損失の可能性がありますし、少しばかり積立金が増えたところで給付が増える可能性はないってことも押さえておきましょう。現状積立金は制度存続のためのバッファとsての資本勘定として機能しているわけですから、無理に積み立て不足を解消しようとせず、寧ろ報酬比例部分の支給上限を設けることで基礎年金部分を保全するのが現実的です。積立金は既に取り崩しが行われており、換金が容易な日本国債はともかく、国内株式や外国証券などは市況によって損失が出ることは避けられません。まして投資規模から言ってもGPIFの売りは相場を押し下げて損卒を拡大します。運用利回りを現実的なレベルに下げることでリスク投資を減らすことが必要です。こういう本質的な議論を避けて年金改革は実現しません。

少子高齢化問題と年金問題のリンクを外せば解決策が見えてきますが、労働力不足の解消をどうするかって話でAIに飛び付く議論が安易になされる現状はやはり問題です。次の2つの記事をご覧ください。

自動運転の波、公共交通に 日の丸交通とZMPが実験  :日本経済新聞
JAL、想定超すAI効果 新システム躍進 今期一転増益も :日本経済新聞
東京で自動運転タクシーの実証実験が始まったって話ですが、バス・タクシーなど公共交通も求人難が深刻化してますが、同時にウーバーやリフトはどのライドシェア対策という側面もあります。個人的ンはギグエコノミーで雇用を圧迫するライドシェアには否定的な立場ですが、いずれ規制緩和で認められるなら先回りってことでしょうけど、この思惑は失敗確実でしょう。

自動運転でも2地点間の単純なシャトル運行ならば、現在の技術水準でも可能なんで、実際大手町―六本木間を4往復というものです。一応ドライバーは乗車していて緊急対応する形ですが、なんでいきなり東京のような大都会でこれやるかなあ。大都市の道路事情は複雑で、アイコンタクトが使えない無人自動運転には不向きです。加えて光源が多くセンサーがノイズを拾いやすい環境でもあります。欧州で実施されている6人乗り自動運転コーチを特定ゾーンで走らせるって方向性が正解なんです。これなら現行の技術で無理なく可能だし、より深刻な過疎地の公共交通問題への対応につながります。

他方ライドシェアは有償運行の記録データが大量に発生することが注目され、トヨタをはじめ世界の有力自動車メーカーが提携に走るわけです。実走行のデータが大量に得られれば、それを解析することで、様々な状況に対応した自動運転ソフトが組めるわけです。世界に技術トレンドを読み間違えているわけです。

もう1つのJALのニュースが示唆するのは、AIの活用法の在り方が示されていることです。破綻後の社内改革で運航部門が各便の予約状況に応じて機材の入れ替えを機動的に行い、空席を減らしつつ機械ロスを最小化する取り組みの結果、機材繰りの最適化という航空会社にとって重要なレベニューマネジメントの基礎データの蓄積がったから、死すt無効親なわせてAIを導入したら、需要の予約精度が上がって搭乗率が向上し収益を改善したものです。しかも座席単価の高いビジネスクラスを減らしてエコノミークラスを増やしたにも拘らず、安売りチケットを減らして増収につながったものです。AIの活用は元データの質に左右されるっている身も蓋もない話ですが、アメーバ経営の浸透故の成果と言えるでしょう。

加えてAIに限らず機械化全般当てはまりますが、並行処理によるマルチタスクの実現が、労働生産性の向上に寄与して1人当たりGDPの水準維持に有効です。そのためにはマルチタスクを可能にする環境整備、IT投資に留まらず、ビジネスプロセス全体の見直しが必要なんですが、日本のマネジメント層はこの分野は無能です。

てことでAIは社畜の置き換えにはならないし、PCやスマホと同じくITリテラシーの有無で差がつくって話です。もっと言えば処理速度で見れば低性能な自分の生身の脳の活用すらできていないでAI活用なんて夢のまた夢。日はまた沈むな。

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