都市間高速鉄道

Monday, July 16, 2018

北のスットコドッコイ

前エントリーの続きです。本題に入る前にこのニュース。

人口、最大の37万人減 生産年齢人口は6割切る  :日本経済新聞
死亡数と出生数の差の自然減が39万人で海外との転出入を加えて37万人の減少ってことです。当然ながら15-64歳の生産年齢人口の減少はもっと多いわけです。都道府県別では東京、埼玉、千葉、神奈川、の首都圏4都県と愛知県と沖縄県のみ増加ですが、そのうち自然増は沖縄県だけで、他の5都県は転入超過による社会増ですから、その分地方の人口減の勾配もきついわけです。

あと外国人の増加が16万人ってことですが、いろいろ問題が指摘される外国人技能実習生だけでも25万人を受け入れていて、その他留学生や高度スキルの就労ビザ対象者もいるわけですから、純増が16万人ってことは相当数の帰国外国人がいるってことです。移民や永住権取得が難しいからこうなるわけで、人手が足りないから外国人就労を拡大といっても、現実の生産年齢人口の減少には追い付かないわけです。人口減という現実を受け入れるしかないわけです。

この状況を踏まえて以下をお読みいただきたいんですが、事故や不祥事が重なって先行きが危ぶまれているJR北海道に未来はあるか?っていう話です。JR北海道もJR総連系のJR北海道労組が組織率8割を超える中で、JR東日本と明らかに異なる労使関係があるわけです。

元々赤字基調だからってことで経営安定基金が与えられ、その運用益で赤字を補填するスキームだったわけですが、90年代半ば以降の低金利によって赤字補填が果たせなくなり、基金の積み増しをした上で現状(独)鉄道建設運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)への預託で高金利運用という事実上の利子補給による補助金でどうにか最終赤字を回避している状況です。

加えて事故の原因となった老朽設備の更新も国の支援を得ながら進めている状況なのですが、事故や不祥事の背景として、JR北海道は益出しのために努力してきたんですが、その結果必要な人手確保がままならなくなり、それが事故の遠因となったり、データの錯誤に見られる不祥事につながったわけですね。その意味で強面の労組は役割を果たせなかった訳です。

JR北海道で起きていたのはおそらく労使の癒着だったと思われます。それ故現場の人手不足もゴマカシがまかり通る状況だったと考えられます。そんな状況を変えようとしたのが自殺した中島社長って話がここへきて出てきています。

そのために島田現社長を総務部長に据えて労組との交渉窓口の一本化を狙ったものの、JR北海道労組は反発して険悪になった状況で、事故や不祥事が重なって国交省の立ち入り検査を受けることになり、JR北海道労組も協力を約束していたものの、直後に札幌労基署による本社社員の36協定違反の摘発があり、労組側が態度を硬化して島田総務部長の関連会社出向を余儀なくされたという経緯がありました。それで追い詰められての自殺ではないかという見立てです。

本社社員もJR北海道労組に所属していたのだから、労組側が知らなかった筈はないと言われてますが、おそらくこれ本社社員だけの問題じゃなかったんじゃないでしょうか。各現場で人手不足が起きていて、36協定順守ところじゃなかったとすれば、そりゃ事故や不祥事も起きるし、労組側からの改善要求もあったはずです。しかし増収とコストカットに励む経営陣を動かせなかったという意味で、労組側からすればスルー出来ない問題ではあります。労使の癒着自体は日本の大企業で結構見られますが。

というわけで、国主導で島田氏の社長指名と設備更新補助金の交付が決まったものの、覆水盆に返らず、労使関係は険悪なまま、後ろ盾のない島田社長は指導力発揮もままならない中で、自力での維持が困難な線区を発表し、自治体にボールを投げたのが現状です。ただ現実的には冒頭の人口減のニュースに見られるように、北海道で言えば札幌都市圏以外の地域の人口減少は今後も続くと見るべきですから、その中でJR北海道が必要な人手を確保して現在の規模を維持できると考えるのは現実的ではありません。人口動態に合わせて身を縮めるのはほぼ唯一の現実解でしょう。

自治体にとっては青天の霹靂でしょう。元々人口減少が止まらず、財政再建団体に指定された夕張市はいち早く廃止を受け入れ、JR社員の出向など条件闘争で実を取った形ですが、夕張支線のように単一自治体だからという面もあります。廃止若しくは公的支援を求めるエリアは広大で、広域自治体としての北海道の対応が待たれますが、高橋知事は経済や人口の状況が分割民営化時と著しく変化していることを理由に国に対応を求めています。財政負担を警戒してという側面はあるものの、経営安定基金による赤字補填もままならず、沿線人口の減少も収まらない中で、交通政策基本法を盾に対応を迫られても受け入れられないってのは正論です。

加えて国絡みの問題も多数あります。例えば北海道新幹線の札幌延伸問題も、JR北海道は自治体との合意を得て国に要望してきたものの、時期の問題が見通せないまま、札幌駅の新幹線駅スペースと見込まれていた駅南の用地に駅ビル(JRタワー)を建てたことで、道庁などから非難されましたが、商業スペースとして価値の高い遊休地の有効活用は当然の話ですし、建設時点で札幌延伸は決まっていませんでした。

その結果新幹線札幌駅の位置問題が二転三転して大東案に決まったのは最近のことです。北海道新幹線の札幌延伸が前進して2030年開業が決まったものの、駅をどうするかで迷走したわけです。当初北口側に新ホームを作って順繰りに振って1,2番線を新幹線用に転用する案が提案されたものの、既に北口の開発が進んで支障する建物が多数あると断念され、西案、東案、地下駅案が検討されたものの何れも却下され、修正東案として1番線南にギリギリ設置可能な1線分のスペースを新幹線上りに充て、1番線を新幹線下りに転用した上で東へ延伸して在来線とずらして設置する修正東案に落ち着いたものの、これも東日本大震災を受けて耐震補強が必要となり、結局在来線駅から離れた元の東案を大東案として決まったものです。位置的には札幌市営パーキングがあるということで、新幹線ターミナル駅設置のスペースも十分な上、駅前に新たな再開発ビル建設の可能性もあり、JR北海道の経営にもプラスと評価されますが、地権者の札幌市の意向は現時点で不明です。

あとJR貨物問題もあります。北海道の農産物を消費地の首都圏や近畿圏に輸送する上でJR貨物の役割は大きいのですが、それが結果的に線路を痛める原因にもなっております。加えてJR貨物は国の支援を得て設備強化投資をした結果、ドライバー不足によるトラック輸送からの移転もあって黒字転換が見込まれる状況ですから、格安な線路使用料を強いられてきたJR北海道には見逃せない問題です。まして株式上場まで取り沙汰されてますから尚更です。

温暖化の影響もあって北海道が稲作適地になりつつある現状もあり、競争力のある農業が叫ばれる中、その競争力を維持する意味で市場アクセスに欠かせないインフラとしての貨物鉄道という視点から、国の関与を強める余地はあります。貨物輸送のためにJR北海道の路線の一部を国の所有としてJR貨物やJR北海道に留まらず、自治体出資の三セクが第二種事業者としてローカル輸送に参入する余地を持たせるあたりに着地点があると思いますが、国が動く気配はありませんね。

加えて訪日外国人が増えている中、北海道観光人気で新千歳空港の利用が増えており、千歳線支線(南千歳―新千歳空港)が単線で空港駅も1面2線のため、対応しきれていない状況にあります。そこで新千歳空港駅を移転して3面4線とし、外側2線を千歳線につなげ、途中で単線を分岐して石勝線につなげる改良案が提案され、2022年の完成を目指すとされてますが、事業費は1,000億円規模になるということで、費用負担を巡ってひと悶着ありそうです。

実現すれば複線のまま空港新駅へ入れるだけでなく、苫小牧方面や帯広方面からも直接アクセスできるようになり、輸送力面に留まらず利便性も改善されますが、よく考えたら自衛隊と共用時代の千歳空港ターミナルビルとこ線橋で直結だった千歳空港駅(現南千歳駅)の機能を取り戻すだけであり、民間空港分離で誕生した新千歳空港のターミナルビルが離れた位置に作られたから仕方なく単線の空港支線を作った訳で、ここでも国の政策に翻弄された現実があります。しかも費用負担の問題でおそらく国の支援制度活用となるでしょうけど、JR北海道の事業縮小構想もあり自治体との調整は微妙です。また滑走路下のトンネル工事など難工事も予想されます。

あとこの問題は思わぬところへ飛び火しております。コメントを頂いたはまださんにご指摘いただいた日本ハムファイターズの北広島ボールパーク構想です。ダルビッシュや大谷をメジャーリーグへ送り出しながら若手の育成で実力を維持し、人気球団となったファイターズですが、不自由な札幌ドームに不満を抱いていたわけですが、ポスティングの補償金を得てそれを活かしたボールパーク構想を発表し、自治体向けに誘致コンペを行うというスキームを打ち出したところ、応札して勝ち抜いたのが北広島市です。

元々市民運動公園整備を構想し広い用地を確保していたところへ、ファイタースのコンペでボールパークをコア施設としてアクセスも千歳線に新駅を作って直結というもので、JR北海道にとっては増収策になるから大歓迎かといえば、空港輸送で線路容量に余裕のない状況では、寧ろ負担になりかねないということでご議論を呼んでいます。竣工予定は2023年3月ですが、空港新駅がそれまでに完成している確率はかなり低いと言えます。

さて、一番のスットコドッコイは誰?

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Sunday, June 10, 2018

ポピュリズムで仕方ネーション

G7サミットを前に制裁関税を打ち出した米トランプ台帳料ですが、制裁対象となったカナダやEUが猛反発。報復合戦の様相を見せてますが、冷静に見ればこれアメリカに有利な喧嘩なんですよね。報復対象国は何れも対米貿易黒字国ばかりで、制裁関税に報復関税を課しても、より経済的に打撃を受けるのは経済規模が相対的に小さい黒字国側なんで、ある意味アメリカは負けない喧嘩を仕掛けているわけです。

しかも米経済はとりあえず好調です。それもトランプが仕掛けた税制改革の結果が効いているわけで、自信の裏付けにもなってるわけです。そのトランプ税制ですが、従来居住地課税だったアメリカの法人税を源泉地課税にシフトした大改革なんですが、仕向け地課税をぶち上げて引っ込めたこともあり、その一方で盛り込まれたレバトリエーション税制(レバトリ税)と共に、日本の報道では扱いが小さいものの、現在のアメリカの経済好調に寄与していることは間違いありません。住宅バブルに沸いていたリーマン前と似た構図で、実際オートローンなどでバブルの気配はあるものの、単体ではより小粒で、それ自体で経済ショックに至る可能性は低いとは言えます。

リーマン前と大きく異なるのが石油価格でして、リーマン後の中国の財政出動をはじめ先進国の落ち込みを新興国が支える構図から、原油先物が買われて原油高が実現したわけですが、それがアメリカのシェール革命につながって、従来コスト面で採掘が難しいとされたアメリカの国内油田開発に火が付き、生産量でサウジアラビアやロシアと肩を並べるレベルまで生産量を増やしました。その結果OPECとロシア・メキシコなど非OPEC諸国の協調減産により安値で増えた消費国の備蓄を減らし、今は奇妙な均衡を保っています。加えて気候変動対策としてのCO2排出削減の動きで再生エネルギーの技術革新による価格破壊が起きて、原油価格の上昇は末端の消費を冷え込ませるまでに石油依存を減らしたことも寄与します。

その結果ドル高と原油高の共存という「今までにないパターンが出現しています。一番割を食うのは原発事故の影響もあってCO2排出を増やしている日本だったりします。ドル円はあまり動きが見られませんが、これはドル高と連動して円が上昇しているからで、ドル以外の通貨に対しては円高が進んでおり、一方原油をはじめ輸入に頼る資源の輸入決済はドル建てですから、日本企業は原料高と円高に苦しむということですね。唯一対米輸出だけは例外ですが、すでに鉄鋼アルミで制裁関税を課され、いずれ自動車も対象になりそうですが、アメリカに物言えぬ日本政府です。例えばこれ。

トランプ氏、拉致問題の提起を明言 米朝首脳会談で (写真=AP) :日本経済新聞
北朝鮮に拘束されていた3人の米国人の救出にCIAが秘密交渉に動いて取り戻した一方、圧力一辺倒で直接交渉してこなかった日本はアメリカに「お願い」するしか手はないんですが、当然ディールのバーターで二国間協議を迫られております。加えて米朝協議で朝鮮戦争終結となれば、北朝鮮の復興資金として日本の戦後補償が求められるのは必然ですから、トランプ政権との距離の取り方を間違えると、負担ばかり押し付けられる結果となります。この辺意図的に進めているとすれば、トランプ大統領はかなりの曲者です。

そもそもトランプ大統領は選挙で自分を勝たせてくれた有権者に対しては約束を守ろうとしております。移民排斥もTPP離脱もパリ協定離脱も公約通りですし、イラン核合意離脱やイスラエルの米大使館エルサレム移転もそうですが、ある意味愚直に取り組んでおります。米朝会談もオバマ大統領の戦略的無視政策を転換した結果と喧伝できる状況にあり、トランプ大統領自身が前のめりになっている状況です。ことほど左様に従来のエスタブリッシュメント層に支持された政治エリートの逆張りという意味では一貫しているわけで、こういう大統領を選んだアメリカ国民の声を反映しているわけです。だから旧来の政治エリートが好んで使うポピュリズム批判は寧ろ国民の喝采の対象になるわけですね。ポピュリズムの裏に約束を果たさない政治エリートへの失望があるわけで、これ先進国の多くで見られる現象です。その1つがBrexitだったりするわけですが、ある意味欧州はポピュリズム先進国でもあります。

イタリア、一転コンテ内閣発足へ 3カ月の政治空白に幕  :日本経済新聞
総選挙から3か月の空白を経てやっと新政権が成立したイタリアですが、単独過半数を獲得した党はなく、比較第一党の五つ星運動の連立協議に同盟が乗って新政権発足となったのですが、主に南部の低所得層を支持基盤とする五つ星運動と元々北部同盟と称して工業地帯で富裕な北部の分離独立を主張してきた同盟とは主張がかなり異なります。喩えて言えば日本の立憲民主党と維新の会が連立組むようなあり得ない組み合わせですが、反EUの一点で共闘しようというものです。

EUは元々アルザス地方の資源争奪戦で紛争が絶えなかったドイツとフランスの紛争解決のために独仏とベネルクス3国で締結された欧州石炭鉄鋼同盟(ECSC)が前進で、その後加盟国を増やしながら市場統合を目指し関税同盟から通貨同盟へと進化してきたもので、欧州共同の家といった理念を掲げ、加盟国の主権の一部を肩代わりしつつ機能を拡大してきたんですが、結果的に欧州の政治エリートによる官僚組織としての性格が強まってきました。これ穿った見方ですが、27省4独立市2特別行政区の上位に君臨する官僚組織たる中国共産党との相似形になっているわけです。

特にユーロ導入の矛盾が噴出したのがギリシャショックだったわけですが、今回のイタリア新政権にはその時の負のイメージが付きまといます。元々ユーロ圏全体の経常収支はほぼ均衡ラインにありましたが、ギリシャショック後黒字基調に転換しております。これつまりユーロの為替レートが割安な結果と見ることができますが、その安いユーロのメリットを享受するのがドイツなど一部の国に偏っており、フランスですら赤字基調から抜け出せない状況にあります。

南欧諸国は元々地政学上のリスクを抱えておりまして、例えばギリシャは冷戦期に東欧圏に属していたバルカン諸国やイスラム諸国との境界の位置にあり、NATOのメンバーとして過大な軍事費負担を強いられてきました。つまり元々財政が窮屈だったのに、EUに加盟して厳しい財政運営を迫られた結果ですから、ある意味ギリシャショックは必然だったと言えます。

その意味で冷戦終結もありNATOメンバーでありEUへの加盟を希望してきたトルコがEU加盟を果たせば状況は改善するかもしれませんが、キプロス問題がネックで足踏みする結果になっております。キプロスはギリシャ系住民主体のキプロス共和国(南キプロス)とトルコ系住民主体のキプロス連邦(北キプロス)で対立が続く分断国家ですが、EUは南キプロスの加盟を認めております。分断国家の片方だけの加盟ということ自体が状況を複雑にしておりますし、スコットランドやカタルーニャの独立を認めないEUの姿勢からしても違和感のある対応です。その南キプロス国民の多数がギリシャ国債を保有していたことで、ギリシャショックでパニックに陥り、ビットコインへの資本逃避が起きたことも知られております。南欧地域のEUに対する不信感は根深いのです。

その意味でイタリアの新政権がどんな政策を打ち出してくるかは注目されますが、EU離脱を模索するときに避けて通れないユーロ離脱に道筋をつける可能性のあるミニBOTと呼ばれる政府保証債券発行が検討されているところに注目しております。政府保障債券とは財政資金の資金繰りのために政府が発行する短期の無利子国債のことですが、それを小口化して流通させることを考えているようです。つまり政府紙幣の発行ということですね。

実際には流通のためのインフラがなければ機能しないわけですが、フィンテックを活用して電子決済システムを構築するなどすれば、リアリティが出てきます。実際新政権がどこまで本気かわかりませんが、二重通貨状態を意図的に作り出してユーロ離脱のショックに備える意味もあります。加えて一定量が決済手段として流通すれば、その分の信用創造によって財政運営が楽になるわけですね。五つ星運動が目指す所得移転政策がやりやすくなるわけです。

ただしリスクもあります。元々放漫財政と見做される政府が発行する債券ですから、信用度を維持できるのか?ってことですね。当面ユーロベックで発行量を慎重に管理するとしても、財政需要を満たすレベルまで発行量を増やせるのか?財政の都合で過剰発行されないか?といった疑念が付きまといます。日本のQQEが財政規律を失わせたようなことがあり得るわけです。


イタリアはシリア難民が押し寄せる位置にあることも大きく、元々英仏両国の石油権益保護のために泥沼化したシリアから押し寄せる難民の受け皿という損な役回りをいつまでも引き受けたくないわけです。難民の定住は非熟練労働市場に供給過剰をもたらしますから、貧困層ほど影響を受けます。こういった現実に国民国家(ネイション)をリードしてきた政治エリートが解決策を提示できないことが、有権者の反乱を招いたわけです。ポピュリズムを安易な大衆迎合主義と見ることでは解決につながらない訳です。

この辺のことがEUの鉄道政策にも影響している可能性があります。TGVに始まる高速鉄道の整備ですが、一時EU統合の象徴的な事業として熱狂的に進められましたが、事故が起きたり寧ろ地域間格差を拡大した疑いが持たれたりして見直されております。結果的に鉄道ビッグ3の一角に数えられたシーメンスが鉄道部門をライバルのアルストムに売却した訳です。中国が国策で中国北車と中国南車を統合して中国中車として世界一の規模を実現したことへの対抗策という見方も可能ですが、シーメンスにしてみれば、IoTなど元々強みがあり、ドイツ政府のインダストリー4.0政策とも整合的なところへの選択と集中をを狙ったと見るべきでしょう。ある意味欧州の鉄道事業は最先端ではないという見切りと見ることができます。

翻って日本では相変わらず中途半端な整備新幹線に入れ込んでますが、北海道新幹線の不振を直視すべきですね。仮に札幌延伸が実現しても青函トンネル区間の貨物との共用がネックで本数も増やせないしスピードアップもできないわけで、いい加減目を覚ませと言いたいところです。

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Sunday, May 13, 2018

国敗れて鉄路なし?

加入権維持で今どき意地でADSLでやせ我慢してたら通信障害ですが、NTTも最早メタル回線のメンテナンスをまともにやる気がないらしく、渋々ひかり電話へ切り替えましたが、新年度で引っ越しシーズンってことで工事スケジュールが混み合ってて1箇月を超える空白期間を余儀なくされました。そんな中でスマホのフリック入力でアップした前エントリーの見通し通り、北朝鮮を巡る情勢が急展開しております。南北首脳の本気とノーベル平和賞期待のトランプ大統領の色気が妙にかみ合ってきております。

慌てたのは日本政府。何しろ日米安保体制の前提となる朝鮮戦争の終結につながる話なんで困ってます。朝鮮戦争は現在休戦中ですが、韓国は休戦協定に参加しておらず、頭越しに米朝で休戦というねじれた状況です。元々は北朝鮮の南進に対して安保理決議で朝鮮国連軍が組成され、在日米軍に総司令部を置く形だったのですが、現在の休戦ラインに押し返すのがやっとで、国連軍参加国の撤退が相次いで今の形になった訳ですが、当時の韓国政府が休戦を認めず協定に参加しなかったわけです。

にも拘らず総司令部を米軍が抑えているから韓国軍が独自の軍事行動はできないわけで、事実上韓国軍は米軍の下請け機関のような扱いになっておりました。故にベトナム戦争への参戦も強要されましたし、韓国の世論の不満も大きく、停戦となれば韓国軍はその呪縛から解放されることになります。文在寅大統領への世論の支持はこういう背景があるわけですね。

シンガポールで行われる米朝首脳会談でどこまで踏み込むかはわかりませんが、共同宣言が出されて停戦協定と平和条約の締結のための実務者協議が始まるというあたりが落としどころでしょう。実務者協議がすんなり進むかどうかはともかく、枠組みとして不可逆な形になるということで、停滞はあっても逆戻りは無いという見立ては成り立ちます。

そうなると在韓米軍と在日米軍のの扱いが問題になるのですが、韓国として在韓米軍の全面撤退までは望んでないでしょうけど、朝鮮半島の非核化というのは、核保有国であるアメリカの核持ち込みも無くすってことも含みますから、どういう妥協点を見いだせるかはこれからの話です。

厄介なのが在日米軍でして、朝鮮国連軍総司令部がある三沢基地のほか、在日米軍の相当部分が朝鮮国連軍としての駐留なんで、縮小することになるんでしょうけど、在日米軍の任務は非公開で、どこまでが朝鮮国連軍としての任務なのかはわからないわけです。日本政府がきちんとアメリカと交渉する必要がありますが、黙っていれば事実上アメリカのフリーハンドになりますし、場合によっては北朝鮮のミサイルの標的になるリスクもあります。

一方でアメリカはイラン核合意からの離脱を決めました。今のところ他の5カ国が踏み止まっていて、アメリカの追加制裁も発動までの猶予期間があるということで、市場は安ど感に包まれておりますが、火種であることに変わりはありません。というわけで、市場は膠着し、円高予想はやや肩透かしですが、これドル高が相殺してるだけですね。FRBの利上げとレバトリ税制(米企業の海外留保益金の税制優遇)で資金還流が起きている状況を反映したものですが、マイナス金利にまで踏み込んだ日銀に追加策がないことに変わりはありません。為替水準の予想はあまり意味はありませんけど。

北朝鮮の問題では日本政府の出遅れは明らかですが、ロシアはどうかと言えば、まあ様子見でしょう。中国の出方次第ですが、朝鮮戦争停戦はロシアが以前から狙っていた北朝鮮を介した韓国との鉄道連絡のチャンスでして、中国が中央アジア経由のチャイナランドブリッジを売り込んでますが、バム鉄道とシベリア鉄道を介した欧州連絡ルートができれば強力なライバルになります。そうなるとロシアがオファーしてきたサハリン経由の日ロの鉄道連携は可能性が絶たれます。ここでも日本は後れを取るわけですね。安倍政権の外交政策は悉く裏食ってます。

かように地政学の変化に鉄道も無縁じゃないわけですが、サイドバーの直近の2冊の本を読んで気づいたことがありまして、JR7社の経営トップが国鉄OBで占められていることです。歴代でもJR東日本の初代社長の住田正二氏が運輸省OBで、大臣と対立して退官していた結果スカウトされたのが唯一の例外です。JR九州初代社長の石井幸幸孝氏の本では人口密度と鉄道の収支の関連をグラフで示していて興味深いのですが、人口減少で収支の悪化が避けられない中で、関連事業の強化で鉄道事業のウエートを下げたJR九州の自慢話こそ具体的な一方、新幹線物流などの提言は国鉄OBの思考の枠組みから出られていないと感じます。

一方川辺謙一氏の本は、日本の鉄道の特徴として利用客の多さを国際比較の中で明らかにし、要因として人口密度の高さと共に鉄道万能主義の存在を指摘してより客観的に日本の鉄道を見ています。例えばニューヨーク地下鉄の24時間運行について、港湾労働者の通勤の足として始まったことを指摘しています。よくニューヨークでできてなぜ東京でできないか?ということが言われますが、これ謂わば港湾都市としてのニューヨークのレガシーでありそのまま東京に持ち込むことはできません。

他にもいろいろありますが、超電導リニアとハイパーループの比較を取り上げます。旧国鉄時代から半世紀に亘って開発が続けられ、着工にこぎつけたリニアですが、人手不足や談合事件の影響で事業の遅れや事業費の拡大は避けられないところ。一方アイデアとしては古くからあるハイパーループが世界的に注目されてます。

きっかけは2013年にテスラやスペースXのCEOのイーロン・マスク氏の提唱で開発が始まり、2017年には実物大モックアップによる試験運行が始まるという風に急ピッチで開発が進んでいます。元々はサンフランシスコ―ロスアンジェルス間のカリフォルニア高速鉄道プロジェクトの対案として提案されたもので、同区間での事業化が目論まれております。

原理は中を真空近くに減圧した鋼管チューブの中を28人乗り程度のカプセルを搬送させるもので、当初空気浮上の計画を永久磁石による磁気浮上に改め、時速760マイル(1,220km/h)を目指すってことで、音速域でジェット旅客機の1.5倍の速さです。若干の勾配への対応は考えられておりますが、曲線走行は不得手ってことで、日本のように平地が狭く山がちな地形では導入が難しいのですが、広い平野部にまばらな人口密度の大陸国にとっては、これぐらいのスピードで航空客すら取り込むようなものでなければ事業化が難しいという側面はあります。

カリフォルニア高速鉄道の事業費は800億ドルに達すると言われますが、需要面を考慮すれば公的支援抜きの事業化は不可能で、州民の理解も得にくい訳ですが、ハイパーループは高速道路に併設することで100億ドル程度の事業費で実現可能としており、開発費も含めてクラウドファンディングで資金集めをしており、投資家の関心も集めているということで、いかにもアメリカらしい話ですが、欧州の鉄道事業者やサウジアラビアなどの産油国も興味を示していて大化けの気配があります。鉄軌道の高速鉄道よりもコストのかかる超電導リニアのマッチョな時代錯誤ぶりに疑問を感じない石井氏もやはり国鉄OBなんだなあと。

そうそうイランと言えば共和制だったのにアメリカの秘密工作でパーレビ国王という傀儡を立てて親米政策に舵を切った結果、イスラム革命を呼び込んだんですが、そのパーレビ時代にイランに新幹線を作りたいとオファーがあって当時の国鉄は大乗り気だったようですが、イスラム革命でご破算になりました。他方アメリカ製兵器の購入で代金を支払った後でイスラム革命が起きて引き渡しが行われなかった結果、イランによる代金返却が求められ、核合意に関連して返却されたようですが、その一部が北朝鮮に流れたという観測があります。核実験やミサイル実験を繰り返してた資金はイランから?ま、国鉄は実害がなくて結果的には良かったんですが。

あと例えば自動運転車の登場に危機感を口にするJR首脳はいますが、欧州では鉄道事業者が自動運転バスの実証実験に取り組んでたりしてて、やはり周回遅れ感が否めません。自動運転車に関しては法制度の問題の方が大きく、現状でも適切なゾーニングができれば導入できるところはそれなりにあると思いますが、そういった議論は進みませんね。

てなわけで、JR経営陣が国鉄OBで占められている現状に危うさを感じます。いずれJRプロパーのトップが登場するかもしれませんが、幹部社員の学歴面で見ると旧帝大卒中心だった国鉄時代とは様変わりしており、JRのような大組織を動かせる人材が出てくるかどうか。というか国鉄OBの覚え目出度い社員が出世して次世代リーダーになるとすると、申し訳ないけどJRの将来は暗いと感じます。

議論を拡張して今や失敗確実のMRJの何が問題だったのかにも触れておきます。ボーイングとエアバスの2大メーカーのラインナップから外れる100人乗り以下の小型機でボンバルディアとエンブラエルが争う中に割り込もうとしたわけですが、新興国の経済成長と共に低燃費の小型機の需要は確実に拡大すると見込まれますから、狙いはわかりますが、安直じゃないかと。

小型機メーカー2社は母国のカナダもブラジルも国土が広く国内に小型機の巨大市場がある訳で、鉄道のシェアが高く国内市場が当てにできない日本で開発する意味を問うたのか?って疑問が湧きます。開発直後にジェット時代になって時代遅れになったYS11ですら、当時国内ローカル空港のジェット化は夢物語だった時代で、ある程度国内で消化できる見込みがあった訳ですが、それすら怪しいプロジェクトがうまくいくと考えていたとすれば大甘ですね。

一方エアバスではバッテリー駆動のモータープレーンを開発中で、フィンランドその他で導入の検討がされてます。現状バッテリー性能の制約から航続距離は数百km程度ですが、国内線で使うには十分だし再生可能エネルギーの活用で石油輸入を減らせるしCO2排出量も減らせるということでのチャレンジです。MRJもこれぐらいのチャレンジがあっても良かったのでは?

てなわけで、魚と大組織は頭から腐るって同じ結論です^_^;。

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Sunday, April 15, 2018

クサレアタマでかわせ円高

米英仏のシリア攻撃ですが、鉄道員の賃下げ法案で不人気のマクロン大統領とBrexitで指導力不足を露呈するメイ首相が正当化の為にアメリカを巻き込んだものですね。

メイ首相にはロシアを悪者にしてEUとの一体感を煽る動機もあります。トランプ大統領もイランと北朝鮮の両睨みの思惑があり、三者三様の呉越同舟、同床異夢。現時点で確実に言えるのはシリア情勢はますます混沌とすることぐらいです。

逆にアメリカの中東へのコミットは北朝鮮との開戦の可能性の低下を意味しますから、米朝首脳会談が注目されます。恐らく米本土を射程に収める長距離弾道ミサイルの開発凍結あたりが当面の落しどころでしょうか。経済制裁も韓国や中国に限っての一部緩和あたりでしょうか。

この辺北朝鮮は周到に事を進めてます。不仲が言われた中国との関係修復も北朝鮮が中国の核の傘に入ると見れば基本アメリカを同盟国とする韓国や日本と対等になるってことですね。

北朝鮮は核弾頭搭載可能な中距離ミサイルを配備してるんだから云々を言う人居ますが、核保有国ではない日本や韓国を北朝鮮が核攻撃するとすれば、米軍が核兵器を持ち込んだ場合だけです。逆にここに反応すれば核持ち込みを疑わせることになります。そっちの方がヤバいだろ。

寧ろ梯子を外されかけて慌ててセッティングした日米会談がシリア攻撃で無意味化したことの方が深刻です。日本政府の外交音痴ぶりは目眩がします。

一応トランプ大統領がTPP復帰を指示したそうで、話すことはあるにしても、TPP再交渉か日米FTAの何れかの選択を迫られます。前者は他の加盟国が認めないでしょうから後者一択で為替条項が盛り込まれるシナリオですね。その意味で米韓FTAで盛り込まれたことが重石になります。

これ自動車の輸入枠拡大と共に韓国の大幅譲歩ですが、米国製自動車の輸入を増やす訳じゃないところがミソでして、あくまでも関税の優遇枠拡大ですから、売れるかどうかは米国メーカー次第ですし、元々非公開の為替介入が疑われていた韓国ですが、リベラル派の文在寅大統領にとっては企業優遇のウォン安より国民生活にプラスのウォン高容認は寧ろ自らの考えに沿ったものでもあります。

南北融和で支持率低下が報じられてますが、元々70%あったものが少し落ちて60%半ばになった程度の話。度重なる不祥事で支持率落としまくりの某国首相とは比べ物にならないほど国民の支持を得ています。

北朝鮮も一連の核ミサイル開発の進捗で外交カードを得たと同時に、カリスマではない若い三代目リーダーとして権力掌握を終えたとすれば、南北対話は必然とも言えます。あとはアメリカとの首脳会談次第ですが、前述の中国の核の傘が保険になります。つまり今以上に事態が悪くなることはないってことです。

さてそうすると対北朝鮮で強硬一辺倒だった日本政府は四面楚歌。シリア攻撃の支持を表明してロシアとの関係も微妙になって、国内は不祥事が止まらない。日米FTAはアベノミクスの自己否定になるし、支持率ダダ下がりで憲法改正どころか政権維持も苦しくなる。

シリア攻撃で市場がリスクオフにシフトして円高は益々進みます。現在の心理的バリアの105円突破は時間の問題でこちらもアベノミクスにはマイナス。既にマイナス金利まで踏み込んだ日銀に追加策は見当たらず、寧ろ銀行の経営を圧迫して銀行危機すらあり得る展開です。リストラを発表したメガバンクよりも疲弊する地方銀行がヤバい。

よく魚は頭から腐ると言いますが、組織も同じでトップが腐ると組織に不祥事が蔓延る訳で、内閣人事局で人事で官僚を操る今のスタイルを維持する限り、今後も問題は起こる訳で、さっさと総辞職が一番傷つかないけど、それがわかる知性は持ち合わせてないようです。

公共事業も人手不足で進まない上にリニア談合事件で大手ゼネコンが指名停止食らって益々ですし、大手ゼネコンが仲間割れしたことが一番影響あるかも。当然リニア工事も進まなくなります。

てなわけでクサレアタマで迷走する日本の明日はどっちらけwww。

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Sunday, April 01, 2018

Noと言えるお役人の働き方改革

通信トラブルで更新が滞っております。このエントリーもスマホの小さな画面でフリップ入力ってことでメンドクサ。

しかしアベノミグルシイが続いたお陰でPVは下がらすに草生えます。てなわけで続きですwww。

佐川前理財局長の国会証人喚問が茶番で終わりましたが、これで解決ではないですね。森友問題を離れても、公文書改ざんは悪質な犯罪です。偽札事件に喩えられますが、小切手の金額書換えや手形の裏書き消去なども近いかも。何れも重大犯罪です。

実際佐川氏は訴追の恐れを理由に証言拒否してる訳で、法令違反の自覚があったという意味で犯罪の構成要件を満たします。謂わば白状したも同然です。

判っていてそこまでやる?って話なんですが、理財局の独自判断があり得ないのは自明です。政治家の関与無しにはあり得ません。

具体的な指示の有無は問題ではないんで、そうしなければ前川前文科次官のように退官させられたりするとすれば、意に沿った対応をせざるを得ない訳です。どこぞのブラック企業ではありふれた話ですね。

しかしその結果犯罪者にされてしまう悲しいお役人のあり方こそが問題ですね。頭痛いのは公務員は労働三権が制限されていることで、実質的に逆らえないことです。

これ公僕だからって理由のようですが、公僕なのは国会議員や裁判官などの特別公務員も同じどころか、より大きな責任を負うべきなのに、知人への利益誘導を平気でやる訳です。その結果の尻拭いまでやらされるお役人は本当に気の毒です。

なるほど、そんな政府の考える働き方改革がろくなもんじゃないのはある意味自明です。てなわけで、法令違反の恐れのある仕事はたとえ冷遇されても断るのが正解です。

思えば『チャレンジ」と称して粉飾させたり「歩留まり上げろ」と現場に指示してデータ改ざんさせた企業あれこれも同様の構図です。

台車枠の亀裂問題でも台車の設計が軸バネ座などの部材取付にあたって平面を出す為に削らなきゃならない仕様だったり検査で見落とされたり異音を確認しながらが指令が止めなかったりもありました。不祥事は官民問わず似ています。

岡山の両備Gのバス廃止問題も、前中国運輸局長時代には八晃運輸の申請を認可しない方針だったものが、人事異動で赴任した新任局長が聴取もせずに認可した訳で、地域住民にとっては預り知らぬ中央官庁人事で事態が動いた訳で、地域公共交通活性化再生法以前の問題です。裏でどんな政治力学が働いたのやら。

てなわけでアベノミグルシイはまだまだ続くか?

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Sunday, March 04, 2018

トランプ円上昇法^h^h炎上商法とアベノミグルシイ

見苦しいタイトルで失礼いたします^_^;。その前に前エントリーで取り上げた岡山の後日談。

バス、収益路線参入に抗議 両備「赤字路線維持できぬ」  :日本経済新聞
八晃運輸、「健全な競争」強調 バス路線参入で説明文  :日本経済新聞
八晃運輸の認可前に両備Gが呼び掛けて実現しなかった地域公共交通協議会が開催されることになりましたが、あくまでも両備Gの路線廃止だけが課題で八晃運輸は呼ばれておりません。つまりぶっちゃけ認可しちゃった八晃運輸抜きで両備Gの路線廃止対策つまり自治体が路線維持に幾ら出すかってフレームです。行政の不作為の結果、望ましくない形になった訳です。

これ前エントリーでも触れましたが、需給調整規制の撤廃は良いんですが、許認可権限を国が握ったまま故の矛盾ですね。確かに事業者同士不仲が言われ、行政が及び腰なのでしょうけど、許認可権限が県若しくは複数県の広域連合に移譲されていれば、許認可権限を梃子に事前調整できた可能性はあります。もちろんダークサイドに流れれば国会議員より口利きが容易な地方議員の不適切な関与を呼び込む可能性は否定できませんが、逆に地域の問題で地方議員がどう動いたかは見えやすいわけで、住民チェックは働きやすくなります。地方創生よりも地方分権ってこういうことなんですね。

国レベルでは裁量労働制が厚労省データの捏造がバレて頓挫。しかしマル生エントリーで指摘したように真の狙いは残業代カットであり3段階の仕掛けがされているわけです。これ第一次安倍内閣で打ち出して引っ込めたホワイトカラーエグゼンプションの焼き直しで、その分巧妙に仕掛けられたレトリックになっているわけです。

つまり長時間労働規制の導入に見せかけて、それを骨抜きにする仕組みて、高度プロフェッショナル制度は見せ球で撥ねられても、裁量労働制の拡大が実現すれば良しという見通しだったんじゃないかと。ところが落し処と見ていた裁量労働制が否定されて財界からは「残念」の声が上がりながら高プロは引っ込めないってますます無理筋になってます。高プロ制度も業種が限定されていて年収1,075万円以上で本人の承諾が必要とされてますが、業種も年収要件も省令で定めることになってますから、通してしまえばいくらでも書き換えられますし、本人承諾も就業規則の片隅にこっそり書き込んで入社時に就業規則遵守の誓約書に署名させれば承諾したことになるとかって逃げ道があります。働き方改革関連法丸ごとの撤回しかあり得ません。

新幹線初の重大インシデントとされた台車枠の亀裂問題でも進展がありました。

のぞみ台車製造に川重の不備 140台超、薄く削る  :日本経済新聞
川崎重工業の製造現場のミスが明らかになった訳ですが、削り過ぎた140台超の台車の中には溶接段階で生じた亀裂が成長したと見られるものもあり、JR西日本の検査で発見できなかった訳で、検査体制にも問題がありそうです。

加えて設計の瑕疵の指摘もあります。問題の台車枠は鋼板をプレスで曲げてコの字型にして最中状に溶接して箱型にしたもので、荷重を支える軸バネ座を二番溶接する底面に丁度側構の最中溶接の合わせ目があるわけで、平面を取るために削る必要がある設計仕様です。尤もこれは現在標準的な工法であって、これ自体が危険と言えるかは微妙ですが、事実としてJR東日本の新幹線車両では用いられていませんし、JR東海/西日本のN700Aでも平面の底面板にコの字型プレス鋼板を被せる形のものに変更されてます。設計段階で瑕疵が認識されていた可能性は否定できません。

リニア談合でも大きな動きがありました。

リニア談合、鹿島幹部と大成元幹部逮捕 東京地検  :日本経済新聞
これまでの捜査でJR東海の提示価格が厳しすぎるので、仕事を分け合うために談合したというストーリーですが、大成と鹿島は談合を認めておらず、結果キーマンの身柄拘束という荒業となりました。

しかし談合の挙証は難しく、実際大成、鹿島両社は難工事の技術的な意見交換として談合の意識はなかったと思います。逆に大林組は「品川を譲るから名古屋から手を引いてほしい」と自覚的に動いたから談合の意識があったのでしょう。この辺が談合事件の難しさなんですが、かつての官製談合と違うのは、発注者のJR東海はコストを切り詰める方向で動いており、談合の問題点とされる高値受注なのか?ってところが微妙です。例えば東京都による豊洲新市場の受注率90%超とか、談合が疑われる事例は他にもありますし、リニアでjは寧ろJR東海の優越的地位利用の方が独禁法に抵触する可能性があります。東京地検特捜部は功を焦ったかも。

そしてグローバルプリズンから抜け出せない日本にとっては災難なニュースがこれ。

鉄鋼・アルミ関税、すべての国対象と示唆 米商務長官 (写真=ロイター) :日本経済新聞
まさかここまでやるとは、というのが正直なところですが、これがトランプ流なんでしょう。狙いはあくまでも過剰生産が言われる中国の鉄鋼とアルミなんですが、第三国経由の輸入にも網をかけようってことですね。こうなると日本の鉄鋼メーカーに留まらず米国内の製造拠点を拡充している日本の自動車メーカーもとばっちりを受けます。実際この発表で世界の株価は下げました。

二国間貿易交渉を重視するトランプ政権で貿易が二国間で完結しないと認めた矛盾は置いとくとしても、これまでレーガン政権をtレースするようなトランプ政権がこれだけはある意味レーガン政権を超えた対応をしています。適温経済と言われてトランプ大統領自身が勝ち誇ったように言及していた株高が否定されたわけですから、その迷走ぶりは間違いなく大ニュースです。

以下新聞などではあまり触れられない視点からの解説になりますが、そもそも適温経済とは何だったのか?ですが、これFRBの3次に亘る量的緩和(QE)という環境下でのレーガン流双子の赤字政策として見れば腑に落ちます。つまり大規模減税と財政出動の組み合わせを経常赤字国のアメリカが採用した結果、財政赤字が拡大する一方、その穴埋めを輸入に頼らざるを得ないから経常赤字が拡大して両者がリンクする訳ですが、その結果輸入が増えて物価上昇を抑えるから低金利でも利ザヤが取れるから適温ですし、低金利且つ緩和による資金過剰で配当利回りが債券よりはマシな水準まで株価を押し上げた結果の安定だった訳です。

しかし流石に失業率が歴史的低水準にある中での財政出動は労働需給を逼迫させますから、インフレ圧力を生みます。それに加えての今回の鋼材アルミの関税による輸入制限ですから、結果的にこれも物価押し上げ要因になり、既に緩和縮小から利上げに動いているFRBも利上げ加速をせざるを得ません。つまり投資家目線からFRBのタカ派的利上げが心配されていたんですが、今回トランプ政権自ら適温経済を破壊してタカ派に与したって話です。

話はそれだけでは終わらない。アメリカがインフレ傾向を強める中、QQEでも2%のインフレ目標を達成できない日本は取り残され円高になります。既に手段が出尽くした日銀は打つ手なし。財務省による為替介入はトランプ政権に献花売るようなもので無理。見守るしかないわけです。貯蓄投資バランスが崩れて余剰資金が海外へ向かい、所得収支の黒字で経常黒字基調にある日本に打つ手があるとすれば、賃上げや社会保障の充実による個人消費拡大を通じた輸入増ぐらいですが、安倍政権がここに踏み込む気配なし。寧ろ働き方改革と称して官製ベアと引き換えに残業代カットを画策するように、名目賃金が増えても手取りは増えず、増税で可処分所得を減らそうと画策してるのが現実。

加えて適温相場の調整でボラティリティが高まっており、今後も調整が続きますから、投資家心理は悪化しリスクオフになります。これも円高要因です。最悪の財政赤字を垂れ流す日本がなぜリスクオフで円高になるかと言えば、財政赤字を経常黒字の裏にある過剰貯蓄でファイナンスしているからなんですが、加えて外国人投資家も低金利の円資金を調達して投資してますから、投資の縮小は円資金の還流となるわけで、円高へということですね。

おまけで言えば出国税や森林税などの新税導入の目的は消費税10%へアップするときの軽減税率の財源って話です。インボイス導入無しの複数税率は混乱と不正の温床になること確実ですが、見直しはなさそうです。

てなわけで結論。アベノミクス完敗。

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Sunday, December 31, 2017

台車枠の亀裂

今年もあとわずかですが、このニュースはやはり取り上げるべきだろうと思いまして、こんなタイミングでのアップとなります。

亀裂、あと3センチで破断 新幹線のぞみ台車  :日本経済新聞
「あと3センチで断裂」というきわどい重大インシデントとなりました。最初に疑問に思ったのが、異音を確認しながら3時間も運行を続けたことで、実際JR西日本は非難を浴びましたが、その後岡山から添乗したJR西日本社員が東京指令所の司令員に新大阪駅での床下点検を提案したものの、司令員が上司の指示を受けたていたために聞き逃し、運行を継続した経緯が明らかになります。結構ありふれたヒューマンエラーがあったわけです。

とはいえ司令員の責任を問うのは難しいところで、そもそも頑丈に作られていて入念な点検を受けている台車に亀裂が見つからなかったから出庫して運用されたわけで、目視が困難な程度の亀裂で直ちにに断裂することがないように安全マージンを大きくとっています。点検時点で見つからなかった瑕が台車枠の断裂に至るようなことは想像すらできなかったはずです。現時点で原因は不明ですが、専門家の見方はこれです。

新幹線の「亀裂」はなぜ発見できなかったのか | 新幹線 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
記事の著者の見立てでは、側バリの軸箱近傍の溶接部付近で起きた典型的な疲労破壊ということで、突然発生したものではなく、長時間に亀裂が伸長したものということです。ということで、現時点でも入念に行われている検査体制で発見できなかったわけですから、検査体制の見直しは避けられません。

既にJR東海は従来台車枠では行っていなかった超音波探傷(非破壊検査)を検討すると発表しました。わずかの傷でも重大事故につながる車軸では行われていたものの、台車枠ではそこまでは必要ないということで、通常は目視検査で済ませていたようです。それでこれまで特段のトラブルはなかったわけで、このこと自体は問題ではないんですが、逆にめったに見られない台車枠の亀裂を見る機会そのものが少ないと、特に若い検査員は育たないというジレンマもあります。

この辺日産の完成検査問題で若手の見習い工にわざと不具合を仕込んだ個体を検査させて発見できれば一人統制前といった現場ルールを思い起こさせますが、上記記事で「航空機は故障率が高いので、ダイヤ統制部門は整備士の意見を最重視する」そうですが、元々過大な安全マージンを取っている鉄道の場合、指令員の判断も運行継続に傾きやすいということもあるでしょう。加えて岡山で添乗したJR西日本社員と東京指令所のJR東海の指令員という会社跨りの問題もあるわけで、実際新大阪で引継ぎを受けて添乗したJR東海社員の判断で名古屋で運行を打ち切ったわけで、流れでJR西日本の不始末のように見えてしまったということも指摘すべきでしょう。

似たような問題は東急田園都市線で東武鉄道の車両トラブルで架線事故が発生したってのもありました。こちらは新幹線のように車両の仕様が統一されているわけではありませんから、より問題が複雑です。

加えてもっと気になるのが上記記事でも指摘されている溶接後の熱処理が適切に行われているのかという問題と、記事ではあえて触れられておりませんが、神戸製鋼の品質データ改ざん問題で明るみに出た鋼材の品質問題の可能性も視野に入れておく必要があります。特に両者の合わせ技で、あるはずの過大な安全マージンがほとんどなかったってこともあり得ます。実際台車枠に亀裂が絡むこんな事故がありました。

東武東上線「脱線事故」は、なぜ起きたのか | 通勤電車 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
東武東上線中板橋付近での脱線事故で、30年選手の10000系初期車の事故ですが、台車の亀裂が確認されてます。尤もこの事故では亀裂が事故原因なのか脱線の結果台車に亀裂が生じたのかは不明ですが、鉄道特有の過大な安全マージンが、検査の形骸化を生んでいた可能性もあるわけで、今回の新幹線事故との比較は必要でしょう。

また神戸製鋼の品質データ改ざん問題に代表される素材メーカーの不祥事も、商慣習として定着しJIS法でも認められている特採が言い訳に使われたように、要求品質自体が安全マージンを過大に見積もっていた可能性もあります。ってことで、台車枠の鋼材で勝手特採やられて且つ溶接後の熱処理が不適切だと、結果的に要求性能は大幅に低下します。何が言いたいかというと、川下の素材メーカーから中間の加工メーカーを経て組み立てメーカーへ納入される一連の中で、各社が独自にコスト削減には減むと会社単位での部分最適が追及されて全体最適を失う合成の誤謬が発生する可能性を否定できないってことです。

これユーザーである鉄道事業者自身も技術革新と品質の向上で検査周期の延長を当局に求めているわけですが、川下側の劣化を見過ごして延長が認可されれば、日本の鉄道が自慢とする安全が砂上の楼閣になる危険性があるわけです。この辺自動車の完成検査問題もそうですけど、規制当局である国土交通省がそこまで目利きできるのかということでもあります。規制改革の難しさは実に奥深いところです。

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Sunday, December 24, 2017

名古屋リニヤ談合だがや

リニア回りが騒がしくなっております。

名古屋市内の工事で不正か リニア建設入札で大林組  :日本経済新聞
この時点では偽計業務妨害容疑でしたが、東京地検特捜部が動いてるんですから、それで終わるはずは無いです。案の定これ。
独禁法違反容疑で大手ゼネコン4社捜索へ リニア工事  :日本経済新聞
てことで本丸は独禁法違反ですが、リニアがJR東海の民間事業だから、入り口として技研業務妨害を利用したわけです。JR東海社員による予定価格漏洩もあるので、構図としてはかつての官製談合と同じです。

若干のおさらいですが、リニア建設は当面名古屋までで、当初5.1兆円の事業費を見込んでいました。これ新幹線買い取り代金のJR東海負担分の5.1兆円と同額で、しかも元利均等半年賦の支払いで2017年に終了します。つまりその分以後の会計年度でキャッシュフローの余剰が出るので、それを建設資金に充てるって構図が見えてきます。実際は駅設置費用を自治体負担から自己負担に付け替えたりして事業費を5.3兆円に膨らませてます。

メディアやネットでは3兆円、9兆円や、中には30兆円なんて数字まで踊って混乱が見られますが、事実に基づいて見ると、まず9兆円は2047年に予定される大阪延伸を含む事業費9.1兆円を指すものです。そして近畿選出の国会議員からの要望があって、大阪延伸を前倒しする目的で、財政投融資資金から3兆円を融資してJR東海の資金繰りを支援するという話になり、JR東海は既に融資申請を済ませておりますが、大阪延伸部分の着工前倒しが実現したわけではありません。当面は名古屋までの建設工事を本格化させることに集中する予定です。

これが実は今回JR東海の躓きの石になった可能性があります。財投資金の投入自体は融資ですが、政府保証付きの財投債を起債して投資家から集めた資金を融資に回す形で、政府保証がついてますから、万が一のデフォルトの際には政府財政負担で投資家へ弁済される形で、間接的ながら財政負担の可能性があり、公的資金と言えるものです。故に民間企業としてのJR東海が事業主体なんですから、随意契約で建設業者を決めても良かったところを、競争入札で形式を整える必要があったと考えられます。

一方で建設業界は空前の人手不足で、震災復興も道半ばなのに五輪特需で人手を取られ、そればかりかセメントや鋼材の値上がりもあり、ゼネコンの収益を圧迫しています。鋼材に関しては中国の過剰生産対策で生産が減ったことに加え、異次元緩和に伴う円安で円建て資源価格の上昇もあり、それらが重くのしかかります。そうすると、上述のような新幹線買い取りローンの終了に伴うキャッシュフローの余剰の範囲でのリニア建設が難しくなるわけで、財投資金融資はその意味で渡りに船だったんでしょうけど、同時にタイトな資金計画を変更することは難しく、JR東海自身が事業費圧縮の音頭を取らざるを得ない中での今回の談合と見ると、よりクリアな構図が見えてきます。

あと言われているのがJR東海名誉会長の葛西敬之氏と安倍首相との親密さでして、モリカケスパコンに続くアベ友大疑獄事件の本命という見方もされていて、東京地検特捜部の標的は政治家とも見られております。そして仮にリニア建設費が膨張しても政府が面倒見るはずだから、最大30兆円の国民負担って憶測も出てくるわけです。事実に基づけばそこまでの構図を現時点で論じるのは無理があります。

寧ろ良かれと思って財投資金融資の助け舟を出したことが災いしたとすると、何とも皮肉ですが、実はこれアベノミクス全般に見られる不整合なんですよね。そもそも各種経済指標は景気拡大を示唆しており、金融緩和も財政出動も必要なのか?という疑問のあるところ。ただでさえ震災復興需要と五輪特需がある中で、人手不足は起きるべくして起きたものです。実際失業率は過去最低、有効求人倍率は上昇の一途です。財政出動による景気刺激はあくまでも失業対策として余剰労働力を吸収するから意味があるわけで、現在の雇用情勢での財政出動は単に人手不足を深刻化させる意味しかないわけです。有体に言えばアベノミクスは逆効果なんです。

そして中央リニア建設計画はまんまとその罠に嵌まったわけです。というわけで、アホとしか言いようがない。おまけですが、名古屋、大林組、談合の三題噺として地下鉄談合の過去エントリーを置いときます。

おまけのおまけ。リニアの工事に関してはJR東海の秘密主義がいろいろ摩擦を生んでます。大きなところでは南アルプストンネル工事に伴う水脈断裂を静岡県が心配しているのに、駅ができない静岡県は自治体協議に加われないとか、大深度地下や長大トンネルから発生する大量の残土の処理が不透明とか、東農地区あるウラン鉱脈との近接工事で万が一放射性残土が出れば工事自体が止まるに留まらず周辺の土地封鎖まであり得ますが、JR東海の秘密主義は問題の発覚を遅らせて被害を生じる可能性があるとかですが、こういう憶測を生むのはJR東海の秘密主義匂うところが大きいわけで、そんな片りんを見せたニュースがこれ。

斜面崩壊はリニア関連工事が原因、発破で地山緩む  :日本経済新聞
無理を重ねていることが窺われます。

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Sunday, August 27, 2017

ザ・シビル・ウォー

米トランプ政権がバノン上級顧問の更迭を決めた後、流れたニュースがこれ。

アフガン早期撤収否定 米大統領、駐留規模明示せず (写真=ロイター) :日本経済新聞
バージニア州シャーロッツビルの非白人至上主義者とカウンターの衝突に対するトランプ大統領の声明文の中で「すべての立場の人々」という部分が取り上げられて差別容認姿勢としてメディアが一斉に報じて非難する騒ぎになったわけですが、考えてみれば変です。

大統領選当時からヘイトと見られかねないきわどい発言を繰り返し、直近では北朝鮮を挑発するようなツイッター発言など、他にツッコミどころがありそうなものです。公式の声明文だからってのはあるかもしれませんが、仮にそうだとしても公式声明文を綴るコメントライターが不注意だっただけ?ってことじゃないかと。で、待ってましたとばかりにメディアが囃し立てて大炎上。結果としてバノン氏の更迭に至ったわけですが、バノン氏自身は白人至上主義者を「愚かな奴ら」と軽蔑していたと伝えられており、ここがつながりません。経済ナショナリズムを標榜し対中強硬派とされることからの印象で反グローバルの軍事強硬派との印象が持たれてますが、実像とは違います。

でアフガンの早期撤収否定の発表でピンときたんですが、アフガン即時撤退を主張していたのがバノン氏で、娘婿のクシュナー氏が民間軍事会社活用を提案して対立していたわけですが、今回の決定はクシュナー氏の案も退けられて、事実上の米軍増派ですから、トランプ政権のスタンスが明確に変化してます。一方で進まない閣僚などホワイトハウスのスタッフ人事も気が付けば米軍OBが幅を利かせており、政権内部の力関係が変化している可能性があります。で、今回の騒動は軍産複合体にとって目障りなバノン氏の更迭で収拾されており、影のシナリオライターがいるんじゃないかと。状況証拠だけですが。

バノン氏は北朝鮮問題でも「在韓米軍がいるから緊張を高めている」と発言したり、沖縄駐留米軍の削減にも言及しておりますが、日本のメディアではほとんど報じられておりません。むしろアメリカの反差別をほめそやす発言がリベラル陣営から聞こえますが、おめーら辺野古や高江の問題の解決が遠のいた現実をどーすんだよ。こういう似非リベラルどもは信用できません。

てなことはともかく、南北戦争の南軍の将軍像の撤去を巡る争いで、南北戦争自体は奴隷制度の是非を巡る紛争だったわけですが、単純に奴隷解放の正義の戦いという見方は、結局それで人種差別自体が消滅したような錯覚をもたらすものです。事実はその後も人種差別は社会に根付き、流血を伴う事件は発生しております。それだけアメリカの歴史に暗い影を落とす出来事だったわけで、単純化した理解は禁物です。

背景として当時の南部は産業革命で蒸気動力の紡績業で経済成長の只中にあったイギリスへ原材料となる綿花を供給する綿花栽培が主要産業であり、競争力維持のためには格安な奴隷労働力の存在は不可欠でした。加えて輸出を通じた外需依存の産業構造だったこともあり、自由貿易主義の立場でした。

一方の北部は米英戦争の影響でイギリスからの工業製品の輸入が細ったために、輸入代替工業が勃興したのですが、封建領主のエンクロージャーで土地付きの農奴が追放されて都市貧困層を形成していたイギリスと異なり、工業生産を支える労働者の確保に苦しんでいました。それ故南部の奴隷を解放 して北部の工業化を担わせることを望んでいましたし、輸入代替工業ですから、日本の戦前の殖産興業や戦後復興のように保護主義的な立場でした。

今流に翻訳すれば奴隷労働前提のグローバリゼーションと工業化のための保護主義の間の紛争だったわけです。仮に南軍が勝利していたら、アメリカは未だに新興国に留まってたかも。工業化の新興国への拡散を伴う現代のグローバリゼーションでは新興国の輸入代替のための工業化であっても、保護主義は許されないとされるので、ある意味昔より過酷な状況とも言えます。そんな中でバノン氏のような立場を表明する人が出るのも当然かもしれません。

更に言えばナポレオン戦争で財政を疲弊させたフランスからルイジアナ植民地を譲り受け、メキシコから独立したテキサスとカリフォルニアの編入もあり、特にカリフォルニアが北部諸州に倣って非奴隷州となったことで力関係が崩れ、南北戦争に至ります。思えばルイ15世に仕えた史上初のリフレ派ジョン・ローの失敗の後始末としてのフランス革命の帰結でもあったわけです。クロダ異次元緩和は世界史に何を残す?

この辺の歴史の綾の微妙さは味わい深いんですが、そもそもイギリスの産業革命が単純な技術革新ではなく、前述のように封建領主の農地囲い込み(エンクロージャー)による生産手段の独占が起こり、それによって蓄財した王侯貴族が最初の資本家層を形成する一方、英東インド会社が輸入するインドの物産の消費が盛んになり、対インドで貿易赤字を拡大します。茶葉やキャラコなどのインドの薄物綿織物の輸入拡大があり、特に後者は欧州や奴隷貿易の供給元である西アフリカ地域の支配層にも支持されたこともあり、輸入代替できればイギリスの慢性的な貿易赤字の解消になるわけですが、そこへワットの蒸気機関の改良があり、国内産の石炭を使って安定した動力を得られるようになり、機械紡績での綿織物生産が始まります。

その原材料である綿花の供給元はアメリカ南部で、綿花の輸入代金は奴隷貿易で取り戻すという形でバランスされました。イギリスが産業革命で先行した事情はこうしてエンクロージャーによる資本蓄積と農奴追放による都市貧困層の出現によって労働者予備軍となり、投資先としての機械工業の出現につながるわけです。単純な技術革新ではない社会経済現象だったわけです。そうして繁栄を貪るイギリスを後追いしたい北部諸州にとっては打破したい現実でもあったわけです。

ちなみに当時の中国は清王朝の時代で、イギリスへは茶葉、陶磁器、絹織物などの輸出が盛んで、やはりイギリスの貿易赤字が常態化しておりました。それを解消すべくイギリスが清に持ち込んだのがインド産のアヘンでして以下略。1854年の黒船来航、総領事ハリスと徳川幕府の勘で交わした日米修好通商条約締結が1856年ですが、ハリスはイギリスのアヘン戦争を批判しながらアメリカとの条約締結を迫ったのですが、これがとんでもない不平等条約だったわけですね。

こんな状況の中で1861年に南北戦争が始まり1865年に北軍勝利で終結し、奴隷解放に至りますが、両軍で50万人近くの戦死者を出しながら、南部諸州では人種差別を合法化する州法を成立させたり有名なKKKなどの白人至上主義団体が活発に活動するなど社会的亀裂を深めます。そんな状況でイギリスなどに伍して日本の明治政府にしっかり食い込んだ底力は大したもんです。

このように国を二分する内戦は日本で言えば1858年―1869年の戊辰戦争ですかね。鳥羽伏見に始まり官軍が幕府軍を掃討した戦いですが、その後の薩長閥による政治支配は続き、ある意味安倍政権もその末裔でしょう。西南戦争は新政府内部の抗争による内乱と言うべきでしょう。こうして南北戦争と比べてみると明治維新の過剰評価は要注意ですね。

あと欧米と比べて日本の工業化は、ちょっと遅かっただけでそれほどの差はないことも意外な感じです。エンクロージャーと自由貿易が産業革命へ導いたイギリス、奴隷解放と保護貿易で後を追ったアメリカ、王政復古を旗印とした宮廷革命の日本と、それぞれの歴史の違いが面白いですが、後の時代への影響もそれぞれで複雑です。

そんな日本の高速鉄道がイギリスとアメリカへ売り込みがかけられているってのは面白いところ。イギリスはCTRL-HighSpeed1のClass395ジャベリンと都市間高速列車Class800ヴァージンあづまが日立製車両で営業してますが、更にJR東日本が英ミッドランド鉄道の営業権を取得したのは既報の通りですが、更にロンドン―エジンバラ間のHighSpeed2と呼ばれる最高速400km/hの高速鉄道新線計画があり、ひょっとするとJR東日本は参入を狙っているかもしれませんね。実際傘下の鉄道コンサルタント会社は関わってます。ただし事業費が膨らんで200㎞弱の新線に15兆円ということで、財政負担の面でスムーズにはいかないかも。

一方JR東海はテキサス高速鉄道に新幹線方式の高速新線計画を売り込んでおり、実現可能性ありと言われておりますが、度々指摘してますが、既存の鉄道インフラと断絶した独自規格の事業はハードルが高いところです。ただしこちらは一応純民間事業ということで、財政面の問題よりも資金集めがうまくいくのかというハードルがあります。自動車社会のアメリカで鉄道建設への理解が得られるかどうか。

てなわけで、歴史的に関わりの深い英米日ですが、高速鉄道を巡る意外な接点がいかなる未来を築くのでしょうか。いずれの国も工業国としては成熟段階にあり、高速鉄道の需要誘発効果に頼るのも難しいですが、JR東日本も東海も世界へ出ることで成長を模索しています。

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Sunday, August 13, 2017

1億総社畜化社会

米朝間で子供の喧嘩みたいな罵り合いが展開されており、市場はリスクオフに振れて株価を下げたりしてますが、こういう時は落ち着きましょう。そもそもホワイトハウスの行政官ポストを埋め切れず身動きが取れていないトランプ政権に戦争準備ができているわけないですし、北朝鮮にしても核実験由来の放射性物質は1回目以外検出されていませんし、ICBM実験も高高度で発射して飛距離のポテンシャルを示してはいるものの、難しい大気圏再突入性能は検証されておりません。もちろんだからと言って核やミサイルの開発が進んでいないとまでは言えませんが、騒ぎ過ぎです。

てなことは置いといて、1年前のエントリーで取り上げた社畜ネタです。今年は例年にも増して高速道路の渋滞が酷いですが、お盆に一斉に実家へ帰るからこうなるんで、時期をずらすとか考えないと、3年後は丁度オリンピック期間とバッティングしますからどうなることやら。猛暑による熱中症問題がやっと認識され始めましたが、新国立競技場をはじめとする関連工事も人手不足出遅れが心配されてますし、その新国立競技場の工事作業員の過労自殺が報じられるなど、本当に大丈夫かいと心配になります。

ロングバケーション当たり前の欧州では、企業が従業員に有給休暇取得時期を割り振って分散しながら長い休暇を楽しむのに、短い盆休みを一斉に取って大移動する日本のビジネスマンの働き方の異常さが世界へ発信されるおぞましい2020年になりそうです。その働き方改革を巡って混乱もあります。

連合、「脱時間給」容認を撤回 政労使合意は見送り  :日本経済新聞
日経の記事は問題だらけなんですが、連合の逢見事務局長が独断で政権とやり取りして進めていた話で、神津会長は長時間労働の歯止めが認められるならば、政労使協議に応じても良いとしたものの、あくまでも年収1,075万円以上の特定職種を対象とした高度プロフェッショナル制度の話であって、脱時間給は関係ありません。

そもそも裁量労働制も成果主義賃金も現行法で違法ではないんですが、要件として募集や採用の時点で説明がされ雇用契約書にも明記されている必要がありますし、そもそもこのような雇用形態は労使間で合意が必要なんですが、御用組合をでっち上げて協定書の書面を作っても、未払い残業代請求訴訟では実体のない名ばかり組合では労働者の代表と認められず会社側が敗訴する事例が重なり、経済界から要件緩和の要求が出ていたもので、労働側から見れば当然認められません。

あと限定職種の高度プロフェッショナルにしても、高給取りで直接雇用が難しいんですから、むしろアウトソースして相対取引で条件を決めれば良いんで、労基法に盛り込む積極的な意味はありません。当然の如く連合の傘下組合から反対の声が上がって連合は撤回に追い込まれ、次期会長含みだった逢見事務局長を副会長に棚上げして神津氏の会長留任を決めて収めたって話です。早い話企業は残業代を払いたくないってのが本音です。

2020年のオリンピックと盆帰省のバッティング問題でも指摘しましたが、欧州企業では仕事の繁閑を有給休暇の分散取得消化で対応しており、そのため使用者側に有給休暇の完全消化の義務と共に取得時期調整の権利が与えられています。国によっては年度初めに従業員の有給休暇取得計画書を当局に提出する義務まで負わせているわけで、残業で繁閑調整をしている日本とは根本の考え方が違います。結局残業が日常化して長時間労働が当たり前になり、過労自殺も後を絶たないし、長時間労働で作業効率も落ちるから労働生産性が高まらず、利益率が低くなるという悪循環です。解決策は簡単で、最繁忙期に合わせて増員して有給休暇を分散取得させることです。

あと人手不足でAIへの期待が高まっておりますが、AIに限らず機械による労働の代替自体は昔から繰り返されてきたこととはいえ、単純な代替を考えているならお門違いです。AIは人間になれませんし、むしろAIが能力を発揮するための仕事の手順や環境を人が整えてやらなければならないですから、AIで人手不足解消は不可能です。これオフィスオートメーションが言われ始めた時代やコンビニのPOSシステム導入のときも言われたんですが、システムの導入に伴って業務の見直しがちゃんとできて初めて、少ない人数で多くの産出高を稼ぐことで労働生産性が向上するんで、その分を賃金に反映させて家計の購買力を底上げして初めて、経済成長につながるんですが、現実はどうも違う方向へ進みそうです。

実はこれを端的に説明するツールはマルクスが提供しておりまして、G--W--G'で表しております。Gは資本、Wは商品を意味します。ここで言う資本はぶっちゃけお金のことで、生産手段としての工場や機械に投資して、従業員を集め原材料を仕入れて生産した商品を市場へ投入して代金G'を得ることになります。このときにG<G'となるように仕組みを整えるわけです。工業化で工業製品が大量に生産され市場投入される産業資本主義過程はこれが繰り返されるわけです。

しかし大量の工業製品が市場へ投入され続けた結果、工業製品の価格は低下しますし、またスマートフォンのような汎用多機能デバイスの登場でむしろ集約が進む結果、G<G'の関係の維持が難しくなります。一方PCやスマホのような汎用デバイスはソフトウエアのバージョンアップで機能強化が進み、思いがけない用途が開発されていきますから、開発に携わるプログラマーやSEなどのIT人材が重要な生産手段となり、その調達囲い込みのために高額報酬が約束されるようになります。結果的にITデジタル技術を軸とした生産手段の組み換えが起きてデジタルブルジョワジーとデジタルプロレタリアートに分離する現実が出現したわけです。伝統的工業の衰退とIT産業の台頭で米トランプ政権誕生の背景でもあります。

困ったことにあらゆる労働がデジタル技術で代替可能なわけではなく、元々低賃金の単純労働はいつまでも機械化されずに残るどころか、かつてはノウハウの塊だった事務職や販売職も作業内容が単純化されていきますから、低賃金の単純労働はむしろ増えるわけです。つまりマルクスがプロレタリアートと命名した時間の切り売りでしか生活の糧を得る手段を持たない階層が新たに出現したと見れば、世界的にみられる格差拡大が容易ならざる事態であることがわかります。この観点からすれば労基法改正で政府が盛り込もうとする高度プロフェッショナルは保護すべき対象ではないわけです。

さらにもっと困ったことに、高給で優遇される高プロ人材の育成は困難だってこともあります。何となれば人に教える暇があるなら自ら働いて稼いだ方が良いし、人に教えてライバルを増やせば自らの市場価値を下げることになります。加えて技術革新のスピードが速くなってますから、市場価値が落ちたところで教える側に回る頃には次の新技術が出現して手持ちのスキルが陳腐化しているわけですから、教えるニーズもなくなるわけで、ある意味旬の内に稼いでセミリタイアというキャリアプランを取らざるを得なくなります。かくして技術の分断が今以上に深刻になるわけです。

また高額報酬の職業ほど資本代替のニーズが強く、高額の研究開発投資に見合うリターンが期待できますから、いずれ稼げる職業は減っていくというディストピアになりかねません。自分で自分の首を絞めることになるわけです。高プロじゃないですが、例えばかつて高給取りだったバスドライバーやトラックドライバーの賃金低下も、運送業の参入規制撤廃で進んだわけですし、タクシーに対するウーバーなどのライドシェアの挑戦も同様の文脈で理解できます。規制緩和は善として拙速に認めるのは問題です。

その先の自動運転も、当面は地域限定の交通システムとしての実現を目指すのが妥当です。トラックドライバー不足を自動運転で凌ぐのも問題です。荷物の積み降ろしや検収、場合によっては代金決済もあるわけで、その部分は自動化できないので、結局ドライバーに運転させる方が労働生産性を高めることになります。寧ろ鉄道や船舶との連携による複合一貫輸送のシステムを構築することが大事です。この辺の誤解はかなり根深いですね。

その鉄道も自動運転車の実用化で変化を迫られます。ただし道路輸送では実現不可能な大量輸送の能力が結局鉄道のレゾンデートルになるという意味で、地方のローカル線の維持はますます困難になります。また線路保守など労働集約産業の側面は残り、JRでさえ外注化で凌いでいる状況ですが、その結果日常の列車運行に支障が出るほど保守レベルが荒廃したJR北海道の問題など、解決すべき問題があります。そんな中で取り上げたいのがこれ。

JR東など、英鉄道運営を落札 12月から運行  :日本経済新聞
英国鉄道のオープンアクセス制にフランチャイズ(運行会社)として参入するというもので、遅延の多いミッドランド鉄道の定時運行率の向上をアピールして落札したということで、結構ハードルは高いと思いますが、例えばJR北海道の問題の解決策として、線路保有の国策会社を設立してフランチャイズを募集するといった事態も考えられますから、国内の鉄道事業へのフィードバックも期待できます。この辺新幹線システムの一括受注しか念頭にないJR東海の連戦連敗に対して、確実に経験値を高めるJR東日本の行き方は賢明です。

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